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第34回 「Q波探し」の実践訓練~めざせ“名探偵”~【Dr.ヒロのドキドキ心電図マスター】

第34回:「Q波探し」の実践訓練~めざせ“名探偵”~“壊死して機能しなくなった心筋の存在を示唆する心電図波形”と言えば「異常Q波」であり、前回は12誘導を「V1~V3」と「それ以外」に分けて診断する手法を学びました。今回はDr.ヒロが用意した2症例を用いて、その知識が定着しているかを確認してみましょう。早速、チャレンジ!症例提示174歳、男性。糖尿病と高血圧症に対し内服加療中である。心筋梗塞の既往があり、何度かカテーテル治療(PCI)を受けている。以下に外来での心電図を示す(図1)。(図1)定期外来の心電図画像を拡大する【問題1】心電図(図1)で「異常Q波」を指摘せよ。また、心筋梗塞はどこの部位で発生したか?解答はこちら異常Q波:I、aVL、(V1)V2~V4梗塞部位:(左室)前壁、前壁中隔、高位側壁解説はこちら心電図(図1)を見ると、前壁誘導(V1~V4)の「ST上昇」と「QS型」(QS complex)が目を引くでしょう。それだけに目を奪われたら“半人前”ですよ。Dr.ヒロ流の語呂合わせ(第1回)では、“クルッと”の“ク”が「異常Q波」を抽出するプロセスです。前回は「V1~V3」と「それ以外」で読むことをお伝えしましたよね。「それ以外」では、肢誘導を上からI→II→III、そして、aVRは除外してaVL、aVF、そして右方に目を移して胸部誘導の下半分(V4→V5→V6)を読んで、初めてコンプリートです。『“ジグザグ運動”とほとんど同じだから、ST変化と同時にチェックしたら一気にできるなぁ』そう思う方、ブラボーです。“慣れ”もさることながら、Dr.ヒロの世界観にだいぶ染まった証拠です(笑)。“「異常Q波」を拾い出そう! 周囲を見渡すのが吉”さぁ皆さん、今回のメインテーマはズバリ「異常Q波を探せ」。“名探偵”になった気分で「Q波」を探し出し、病変(心筋梗塞)の場所を推測するという練習です。これは実臨床においても非常に役立つテクニックだと思います。前回紹介した「異常Q波」の“最新定義”を覚えていますか? 12誘導を「V1~V3」と「それ以外」に分けて考えるのでした。さらに、前者では「存在」、後者では「幅・深さ」の“1mm基準”(または“1ミリの法則”)、そして隣接誘導での連続性(“お隣ルール”)がキーでしたね。早速、問題の心電図(図1)を眺めてみましょう。まず「V1~V3」から。V2、V3はちゅうちょなく完全に「QS型」ですが、V1はちょびっと「r波」があるように見えます。でも、“一昔前”の「1mmなかったらr波が“ない”のと同じ」の考え方を拝借し、“見なしQ波(QS型)”として悪くないレベルでしょう。つまり、V1~V3すべてに「異常Q波」があるということ。次に「それ以外」の誘導。肢誘導では、I、aVLが陰性波から始まっているので「q波」です。そして、胸部誘導ではV1~V3に連続する形でV4に「QS型」がありますね。aVLは“1mm基準”を満たし、V4もかなり幅広な「QS型」ですから、どちらも文句なく「異常Q波」と考えられます。ではIのほうはどうでしょう? こちらは「幅1mm・深さ1mm」と、ともに微妙だなぁと思いませんか? こういう場合には鉄則があります。■「異常Q波」か悩んだら■視点をずらして同じ誘導の「ST-T変化」の有無を見よボクの流儀では「“周囲”を見渡せ」―これが鉄則です。言うなれば“周囲確認法”でしょうか。工事現場のように、常に周りの様子に気を配ることが大事なので、単視眼的にQ波を眺めていても正解は見えてこないのです。心筋梗塞の“爪痕”的な所見として、「異常Q波」以外に「ST-T変化」が知られています。ST変化は「ST上昇」、T波は「陰性T波」が主なものです。通常は同一の誘導で見られますから、悩ましいQ波でも「ST-T変化」を伴っていたら「異常Q波」なほうにbetするのです。心電図(図1)のaVL同様、I誘導にも「陰性T波」がありますね? そして、この2つはイチエル(I・VL)を構成し、肢誘導界では“お隣”の関係です。I誘導は幅も深さも微妙ですが、陰性T波を伴い、かつ隣接するaVLでのQ波の存在を総合的に考慮すると、“合わせ技”1本で「異常Q波」と判定できるのです! ちなみに、先ほど若干悩んだV1についてもST-T部分がV2~V4に類似しており(ST上昇、2相性[陽性-陰性]T波)、その意味でも異常Q波「あり」とボクは考えます。この単一の波形要素だけで考えず、そのほかの部分も合わせて考えることは、Q波に限らず心電図を読む上で大事だと思っています。“Q波の分布パターンから梗塞部位がわかる!”以上のことから心電図(図1)では、I、aVL、そしてV1~V4に「異常Q波」があると判明しました。次にすべきは「どこの心筋梗塞か?」…つまり“梗塞部位”を考えることです。心電図のスゴイところは、「異常Q波」の分布から、心筋梗塞を起こした部位が推定できることです。次の表1は拙著からの引用です。(表1)異常Q波分布と梗塞部位の関係画像を拡大するここでは、心臓を水平面で切ったCT画像を“宇宙人”が眺めている様子で解説した図を復習しましょう(第17回)。まず、V1~V4誘導には「前壁誘導」という別称がありましたね。細かく言うと、V1は「前壁中隔*」、V2~V4が真の「前壁」なので、この領域の心筋梗塞が疑われます。*:ここでは「前壁+心室中隔」ではなく、「“前側の”心室中隔」という意味。では、I、aVLのほうはどうでしょう? これは、イチエルの組み合わせでエルを含むので、心臓の「左」、すなわち「側壁」と考えて下さい。表を見ると、「高位側壁」(high lateral)となっていて、“上のほう”の「側壁」という意味です。ですから、今回の異常Q波の分布様式からは(前側の)「心室中隔」「前壁」、そして「高位側壁」が梗塞領域だと推定されます。ここまででお腹いっぱいかもしれませんが、最後の最後。われわれ循環器のプロは、ここからもう一歩先の「冠動脈のどこがつまったのか?」(梗塞責任血管)を考えています。「前壁中隔・前壁・高位側壁」のパターンでは、冠動脈閉塞部位は左冠動脈前下行枝の近位部でほぼ決まりです。循環器お得意の“番地”で言うと“6番”(LAD#6)ね。非専門医でこんな事が言えるならば、それはもはや“セミプロ”の証拠です。■心電図診断■洞調律(63/分)異常Q波(I、aVL、[V1]V2~V4)ST上昇(V1~V4)陰性T波(I、aVL、V2~V5)時計回転では、この調子でもう一問やってレクチャーを終わりましょう。症例提示254歳、男性。心筋梗塞の既往あり。虚血性心筋症による慢性心不全でフォロー中。冠動脈造影(CAG)のため入院時検査として行った心電図を示す(図2)。(図2)検査入院時の心電図画像を拡大する【問題2】心電図(図2)で「異常Q波」を指摘せよ。また、心筋梗塞はどこの部位で発生したか?解答はこちら異常Q波:II、III、aVF、V5、V6梗塞部位:(左室)下壁、側壁解説はこちらこれも前問とまったく同じ考え方で臨みましょう。「V1~V3」は陽性波から始まっていて「Q波」はないですが、「それ以外」にはたくさんのQ(q)波が…どれが「異常」で、どれが「セーフ」なのでしょう? ここでも幅・深さの“1mm基準”と“周囲確認法”、そして”お隣ルール”をフル活用すれば正解は見えてくるでしょう。“知識の総ざらいをしましょう―Q波の仕分け”この問題で「異常Q波」の知識の総ざらいをして、今回は終わりましょう。心電図(図2)では「V1~V3」にはQ波はなく、「それ以外」では、I、II、III、aVF、V4~V6と、実に7つの誘導でQ(q)波が認められます。こういう時、まずは隣接誘導ごとに仕分けることから始めましょう。「異常Q波」は常にグループで考えていくことが大事です。すると…まずはニサンエフ(II、III、aVF)そしてブイゴロク(V5、V6)に気付くでしょう。残るIとV4は“宙ぶらりん”状態となっています。このうち、V4誘導は“玉虫色”なので注意して下さい。というのも「V1~V4」と「前壁誘導」のメンバーになったり、症例によっては「V4~V6」で「側壁誘導」を形成したりするのです。いるでしょ、こういう人って周りにも(笑)。でも、こういう時に役立つのが“周囲確認法“です。「ST-T変化」はどうでしょうか? V5、V6には「ST低下」と「陰性T波」があるのに、V4にはありません。『ブイゴロクに比べてQ波の幅も深さも軽めだなぁ…これは“除外“と考えよう』そう思えたアナタはボクと気が合います。ではIのほうはどうでしょう? すぐ“お隣”のエル(aVL)にはQ波がないですが、より広い視点でイチエルゴロク(I、aVL、V5、V6)の側壁誘導なら4つ中3つだから「隣接2つ以上」という基準にも該当するかもしれません。でも、やはり決め手は「ST-T変化」です。ST部分は基線上で「陰性T波」もありません。ですから、これは「なし」でいいと思います。単純に「Q波」だけを見ているとわかりませんが、このように考えると、最終的にはII、III、aVF、V5、V6が「異常Q波」で、表1を参考にすると梗塞巣は左室の「下壁」と「側壁」となるでしょうか。ところで、イチエルは「高位側壁」でしたが、ブイゴロクについては“低位”側壁とは言わず、単に「側壁」でOKです。個人的には言ってもいい気がしますが…「側壁」の正式な呼称は“前”や“下”という枕詞が付くため、かなりわかりづらいと思っています。(主に心エコーや核医学[RI]での呼び方で、心電図の世界ではあまりこの言い方は好まれません)なお、閉塞血管についてはマニアックなので簡単に触れるに留めますが、「下壁+側壁」のパターンの責任血管が右冠動脈か左冠動脈回旋枝かを区別するのはなかなか難しいとされます。この方は立派な右冠動脈近位部閉塞による陳旧性心筋梗塞でした。冠動脈の解剖・走行を熟知した人であれば、右冠動脈が高位側壁領域を灌流することはかなり稀と思われますから、その意味でもI誘導のq波は異常「ではない」と言えます。循環器専門医は、このように臨床的にさまざまな洞察を加えて一枚の心電図を眺めているんです。いや、もちろん慣れたら別にたいしたことじゃないんですけどね(笑)。最後はちょっとだけ難解な話もしましたが、“Q波探偵”の推察の基本がわかってもられば十分です。■心電図診断■洞調律(63/分)異常Q波・陰性T波(II、III、aVF、V5、V6)ST上昇(V1~V3)Take-home Message微妙なQ波は、同誘導のST-T変化の有無と隣接誘導の様子から「異常」と言えるか判定する。「異常Q波」の誘導分布から心筋梗塞の部位診断ができる!杉山裕章. 『心電図のみかた・考え方(応用編). 中外医学社;2014.p.80-124.【古都のこと~常照皇寺】就寝前、ベッドで庭園の写真集を見るのがボクのお気に入りの一つ。関西に移住してだいぶと日が経ちましたが、京都の良所は、歴史が育んだ名庭を実際に自分の目で楽しめることだと思います。常照皇寺(右京区)もその一つ。皆さんはこの寺をご存じですか? 周囲の京都人に聞いても「YES」はあまり多くない印象です。そもそも何と読むのでしょう? …正解はジョウショウコウジ*1。京都の庭園を紹介しているたいがいの書籍で、この寺が市内中心から最遠と書かれています。初秋の休日に訪れて最初の感想は、“最果て”かと思うほど山奥にあるなぁ、でした。山門から長い石段を登り、静寂が支配するその空間を進むと、方丈の間の向こう側にお目当ての庭が! 裏山を借景してデザインされた庭の存在感に圧倒され、寂しさの中に見え隠れする荒々しさ・力強さを言葉で表現するのはボクにとって容易ではありません(ぜひとも本物をご覧いただきたい!)。秋の紅葉時期はもちろん、天然記念物の九重桜など、春にも訪れたい“かくれ里”*2です。皆さんも京都の“秘密の山寺”を訪れてみませんか?*1:漢字4文字も珍しいが、詳名は「大雄名山万寿常照皇寺」とさらに長い。臨済宗京都嵯峨天龍寺派に属する。「常照寺」と呼ばれていた時期もある。南北朝の動乱期の貞治元年(1362年)、この地に隠棲した光厳天皇(北朝初代)の開創と伝わる。*2:白洲次郎の妻で随筆家の白洲正子の『かくれ里』にも常照皇寺が登場する。

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飲酒・喫煙と家族性乳がんリスクの関連

 飲酒および喫煙は乳がんリスクの増加と関連しているが、家族性乳がんのリスクによってその関連性は変わるのだろうか。今回、米国コロンビア大学のNur Zeinomar氏らが検討したところ、適度な飲酒は、とくにエストロゲン受容体(ER)陽性乳がんの女性において乳がんリスクの増加と関連するが、それは家族性乳がんリスクが低いと予測される女性においてのみであることがわかった。また、家族性乳がんリスクが高く、飲酒する女性では、現在の喫煙が乳がんリスク増加と関連することが示された。Breast Cancer Research誌2019年11月28日号に掲載。 本研究は、Prospective Family Study Cohortを用いて、飲酒、喫煙、乳がんリスクの関連を評価した。多変量Cox比例ハザードモデルを使用して、ハザード比(HR)と95%信頼区間(CI)を推定し、家族性リスクプロファイル(familial risk profile:FRP)によって関連性が変わるかどうかを検討した。FRPは、家系ベースのアルゴリズムであるBreast Ovarian Analysis of Disease Incidence and Carrier Estimation Algorithm(BOADICEA)により予測される乳がんの1年発症率とした。 主な結果は以下のとおり。・追跡期間中央値10.4年の間に、1万7,435人の女性のうち1,009人が乳がんを発症した。・喫煙または飲酒と乳がんリスクとの間に、全体として関連は認められなかった(非喫煙者に対する現在喫煙者のHR:1.02、95%CI:0.85~1.23、非常習飲酒者に対する週7杯以上の飲酒者のHR:1.10、95%CI:0.92~1.32)。・FRPの低い女性では、週7杯以上の飲酒者は非常習飲酒者に比べてER陽性乳がんのリスクが増加したが、FRPの高い女性では関連がなかった。例として、FRPの10パーセンタイル(5年BOADICEA:0.15%)の女性の推定HRは1.46(95%CI:1.07~1.99)だが、90パーセンタイル(5年BOADICEA:4.2%)の女性では関連がなかった(HR:1.07、95%CI:0.80~1.44)。・喫煙との関連はFRPによって変わらなかったが、飲酒する女性では喫煙状況についてFRPによる正の乗法的相互作用が認められた(相互作用のp=0.01)。ただし、非常習飲酒者については認められなかった。

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膀胱に159個も異物を入れた男【Dr. 倉原の“おどろき”医学論文】第152回

膀胱に159個も異物を入れた男ぱくたそより使用誰に聞かれたのか忘れましたが、「異物論文ってどうやって探しているんですか?」と聞かれたことがあって、「PubMedで“unusual” “foreign body”って入力して検索しているんだよ」と答えたところ、爆笑されました。ただの異物だと山のよう症例報告が引っかかるので、”unusual”を入れるかどうかが重要なんです。……いや、どうでもいい話でした。さて、今日紹介するのは、どこの異物でしょうか。異物が入れられるところなんて決まっているので、消化器系か泌尿器生殖器系か耳鼻科系を挙げておけば、だいたい当たります。今日は、泌尿器系です!Liu ZH, et al.Retrieval of 159 magnetic balls from urinary bladder: A case report and literature review.Urol Case Rep. 2019 Jul 23;26:100975.論文のタイトルに159個って載っけちゃった時点で、「159個もやばくない!?」と主治医が思ったのは明白です。これは、自分の膀胱に159個もmagnet ballを入れた、独身男性の症例報告です。適切な日本語訳がないので、見た目からmagnet ballのことをココでは「パチンコ玉」と書かせていただきます。下腹部痛と排尿障害で救急搬送されてきたこの男性は、「5時間前に…アソコに…パチンコ玉を入れましたッ…!!」と自己申告しました。主治医は、何個入れたのかイチイチ問いませんでしたが、腹部レントゲン写真で、無数のパチンコ玉がうつっていました。「おいおい、100個じゃ済まねぇぞコレ…!」さて、膀胱鏡で1つずつ取り出すことにしました。玉自体が結構な大きさだったため―“玉”とは、当然ながらパチンコ玉のことである、念のため―26Frのシースを挿入して取り掛かったのですが、つるつる滑って、なかなか難しかったそうです。それでも、わずか1時間程度の処置で0.5cmのパチンコ玉を159個取り出しました。論文のタイトルに、なぜ「159」という数字を入れたのかというと、いろいろな膀胱異物の報告がある中、159個入れたというのは、過去最も多かったからだそうです。異物論文の世界では、「過去もっとも多かった」「過去もっとも大きかった」などの新規性+異常性が重視されることがあります。みなさんも、異物論文を書くときには、この点に気を配りましょうね!!

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統合失調症患者のインスリン抵抗性有病率とその特徴

 いくつかの研究において、統合失調症患者は、インスリン抵抗性リスクが高いことが示唆されている。中国・北京大学のChen Lin氏らは、中国人統合失調症入院患者におけるインスリン抵抗性の有病率および臨床的相関について調査を行った。Comprehensive Psychiatry誌オンライン版2019年11月7日号の報告。 対象は、統合失調症患者193例(男性:113例、女性:80例)。血漿グルコースおよび脂質レベルに関するデータを含む人口統計および臨床データを収集した。認知機能の評価には、Repeatable Battery for the Assessment of Neuropsychological Status(RBANS)、精神症状の評価には、陽性・陰性症状評価尺度(PANSS)を用いた。インスリン抵抗性を評価するHOMA-IRのカットオフ値は、1.7に設定した。 主な結果は以下のとおり。・インスリン抵抗性の有病率は、37.82%(73例)であった。・インスリン抵抗性患者は、そうでない患者と比較し、ウエスト/ヒップ比、BMI、空腹時血糖、トリグリセリド(TG)、LDLレベルが有意に高かった(各々p<0.05)。・バイナリロジスティック回帰分析では、喫煙、BMI、TG、LDLレベルが、インスリン抵抗性の有意な予測因子であった。・相関分析では、ウエスト/ヒップ比、BMI、LDLレベルが、インスリン抵抗性と有意に相関していることが示唆された(Bonferroni補正:p<0.05)。・多変量線形回帰分析では、BMIと空腹時血糖が、インスリン抵抗性と関連していることが示唆された。・異なる抗精神病薬を使用している患者間で、インスリン抵抗性に有意な差は認められなかった。 著者らは「中国人統合失調症患者では、インスリン抵抗性およびそのリスク因子を有する割合が高かった。統合失調症患者のインスリン抵抗性発生を防ぐためにも、BMIやウエスト周囲を減らし、タバコの本数を減らすための積極的な体重管理が不可欠である」としている。

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乳製品摂取量と死亡リスクとの関連は? /BMJ

 米国・ハーバード公衆衛生大学院のMing Ding氏らは、3件の前向きコホート研究において乳製品の摂取量と全死亡および死因別死亡との関連を検証し、乳製品の総摂取量と死亡リスクに逆相関は確認されず、乳製品の健康への影響は代用の類似食品に依存する可能性があることを報告した。また、「わずかだががん死亡率の上昇が、有意ではないものの乳製品摂取と関連がみられており、さらなる検証が必要である」とまとめている。これまで、乳製品摂取と2型糖尿病、心血管疾患、がんなどさまざまな健康アウトカムとの関連が広く検証されているが、多くの研究で明らかな有益性あるいは有害性は示されていない。さらに、前向きコホート研究での乳製品摂取と死亡との関連に関するエビデンスは限定的であった。BMJ誌2019年11月27日号掲載の報告。米国の大規模コホート研究3件(女性約17万人、男性約5万人)について解析 研究グループは、女性および男性における乳製品の摂取と全死亡および死因別死亡リスクとの関連を調べる目的で、米国で実施された3つの前向きコホート研究「Nurses' Health Study(NHS)」「Nurses' Health Study II(NHS II)」「Health Professionals Follow-up Study(HPFS)」を用い、ベースラインで心血管疾患およびがんを有していない女性16万8,153人と男性4万9,602人について解析した。 参加者は、乳製品の摂取について食事摂取頻度調査票(Food Frequency Questionnaire:FFQ)を用いて、NHSでは1984年と1986年以降は4年ごとに、NHS IIおよびHPFSではそれぞれ1989年および1986年から4年ごとに調査を受けていた。 主要評価項目は、国民死亡記録(national death index)、州生命記録(state vital records)、または家族および郵送による報告によって2016年12月31日までに確認された死亡とした。 Cox比例ハザード回帰モデルを用いて、乳製品の摂取量と死亡リスクとの関連を解析した。多変量解析では、心血管疾患およびがんの家族歴、身体活動、食事パターン(代替健康食指数2010)、総エネルギー摂取量、喫煙状況、アルコール摂取量、閉経状態(女性のみ)、閉経後のホルモン剤使用(女性のみ)に関して補正を行い評価した。 解析は、各コホートで個別に実施した後、固定効果モデルを用いて統合・評価した。乳製品摂取量と死亡リスクに逆相関は認められず 追跡期間最大32年間で、心血管死1万2,143例、がん死1万5,120例を含む計5万1,438例の死亡が確認された。 多変量解析で統合した全死亡のハザード比(HR)は、乳製品摂取量が最低の第1群(平均0.8サービング/日)に対して、第2群(平均1.5サービング/日)で0.98(95%信頼区間[CI]:0.96~1.01)、第3群(平均2.0サービング/日)で1.00(0.97~1.03)、第4群(平均2.8サービング/日)で1.02(0.99~1.05)、最高の第5群(平均4.2サービング/日)で1.07(1.04~1.10)であった(傾向のp<0.001)。 心血管疾患死のHRは第1群に対して、第2群0.97(95%CI:0.91~1.03)、第3群0.97(0.92~1.03)、第4群0.96(0.90~1.02)、第5群は1.02(0.95~1.08)であった(傾向のp=0.49)。 がん死のHRは第1群に対して、第2群0.95(95%CI:0.90~1.00)、第3群1.00(0.94~1.05)、第4群1.04(0.98~1.09)、第5群は1.05(0.99~1.11)であった(傾向のp=0.003)。 乳製品の種類別では、全乳の摂取量増加は、全死亡(0.5サービング/日増えるごとのHR:1.11、95%CI:1.09~1.14、傾向のp<0.001)、心血管死(同1.09、95%CI:1.03~1.15、傾向のp=0.001)およびがん死(同1.11、95%CI:1.06~1.17、傾向のp<0.001)のリスク上昇と有意に関連していた。 代替食品の解析で、乳製品の代わりにナッツ、豆類、全粒穀物を摂取した場合は死亡リスク低下と関連していたが、赤身および加工肉の摂取は死亡リスク上昇と関連していた。

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プライマリケアにおけるベンゾジアゼピン減量戦略

 ベンゾジアゼピンは一般的な医療用医薬品であり、成人の約10%において、過去1年間で使用されている。これらの薬剤は依存性があり、多くの患者に対し長期間使用され、長期的な副作用も認められている。英国・NHS Greater Glasgow & ClydeのStephen Davidson氏らは、ジアゼパムを繰り返し使用している患者の処方を見直し、必要に応じて減量および中止が可能か、また、それらの変化が24ヵ月継続するかについて調査を行った。Korean Journal of Family Medicine誌オンライン版2019年11月6日号の報告。 本研究では、半農村地域の一般診療において、ジアゼパム使用を減量するための最低限の介入戦略を用いた。最近ジアゼパムを使用している患者に、一般開業医への来院を依頼した。患者ごとに減量グリッドを作成し、1mg/週の減量を行った。精神医学的併存疾患を有する患者も含まれていた。中断データは毎月のデータに含めた。アウトカムは、12ヵ月および24ヵ月に評価した。 主な結果は以下のとおり。・ジアゼパムを繰り返し使用していた患者は92例、そのうち87例(94.6%)がレビューに参加した。・精神医学的治療を受けていた患者27例(29.3%)には、精神科医のサポートの下、漸減法を実施した。・24ヵ月後、77例中63例(81.8%)が、ジアゼパムの定期的な使用を中止、もしくは中止する過程であった。・総月間ジアゼパム使用は、統計学的に有意な減少が認められた(1,000患者当たりの1日用量2.2→0.7 DDD)。 著者らは「この最小限の介入戦略は、プライマリケアとセカンダリケアの連携により、一般診療におけるジアゼパムの継続的な使用削減効果をもたらした」としている。

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飲酒と喫煙に対する健康政策はがん死を減らせるのか

 長期の飲酒と喫煙はがんの危険因子として認識されているが、飲酒と喫煙に対する公衆衛生政策ががんの死亡率に与える影響は検討されていない。今回、オーストラリア・メルボルン大学のHeng Jiang氏らが、オーストラリアにおける1950年代~2013年の飲酒および喫煙に関する政策とがん死亡率の変化との関連を検討した結果、いくつかの政策変更が飲酒・喫煙の変化とその後20年間のがん死亡率の変化に関連することが示された。BMC Medicine誌2019年11月号に掲載。 本研究では、アルコールとタバコの1人当たり消費量の1911~2013年における集団ベースの時系列データと、1950年代~2013年の頭頸部(口唇、口腔、咽頭、喉頭、食道)がん、肺がん、乳がん、大腸および肛門がん、肝臓がん、がん全体の死亡率を、オーストラリア統計局(Australian Bureau of Statistics)、ビクトリア州がん協会(Cancer Council Victoria)、WHOがん死亡データベース(WHO Cancer Mortality Database)、オーストラリア保健福祉研究所(Australian Institute of Health and Welfare)から収集した。アルコールとタバコの消費量の変化と重大な関係がある政策を初期モデルで特定後、主要な公衆衛生政策やイベントに基づいて推定遅延を伴う介入ダミーを作成し、時系列モデルに挿入して、政策変更とがん死亡率との関係を推定した。 主な結果は以下のとおり。・1960年代のアルコール販売免許の自由化は、飲酒人口の増加とその後の男性のがん死亡率の増加と有意に関連していた。・1976年以降のオーストラリアにおける任意呼気検査の導入は、飲酒人口の減少とその後の男女両方のがん死亡率の減少に関連していた。・1962年と1964年のタバコに関する英国と米国の公衆衛生報告書の発表と1976年のテレビとラジオでのタバコ広告禁止は、オーストラリアにおけるタバコ消費量の減少とその後のがん(肝臓がん除く)の死亡率の減少に関連していた。・1960年代~1980年代の飲酒と喫煙に関する政策の変更は、女性より男性でより大きな変化と関連していた(とくに頭頸部がん、肺がん、大腸がん)。

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てんかん重積、レベチラセタムvs.ホスフェニトインvs.バルプロ酸/NEJM

 ベンゾジアゼピン系薬治療抵抗性の痙攣性てんかん重積状態の患者に対し、静注用抗痙攣薬レベチラセタム、ホスフェニトイン、バルプロ酸は、いずれも効果は同等で、約半数で1時間以内に発作停止と意識レベル改善が認められることが明らかにされた。有害事象の発現頻度も3剤間で同程度だった。米国・バージニア大学のJaideep Kapur氏らが、384例を対象に行った適応的デザイン・無作為化二重盲検試験の結果で、NEJM誌2019年11月28日号で発表した。これまで、同患者への薬剤選択について十分な研究は行われていなかった。60分後までの発作停止と意識レベル改善を比較 研究グループは、ベンゾジアゼピン系薬治療抵抗性の痙攣性てんかん重積状態の小児および成人を対象に、適応的デザイン・無作為化二重盲検試験を行った。 被験者を無作為に3群に分け、静注用抗痙攣薬のレベチラセタム、ホスフェニトイン、バルプロ酸をそれぞれ投与し、有効性と安全性を比較した。 主要アウトカムは、抗痙攣薬を追加せず、薬剤の注入開始から60分後までの臨床的に明らかな発作停止と、意識レベルの改善とした。各薬剤の有効性が最も高い/最も低い事後確率を算出して評価した。 安全性アウトカムは、生命を脅かす血圧低下または不整脈、気管内挿管、発作の再発、死亡などだった。3剤の発作停止・意識レベル改善率、45~47%と同等 試験には2015年11月3日~2017年10月31日に400例が登録された。そのうち16例は再発により2回登録された患者で、2度目の登録データは除外し、384例をintention-to-treat(ITT)の解析対象とした(レベチラセタム群145例、ホスフェニトイン群118例、バルプロ酸群121例)。なお本試験は、計画されていた中間解析で事前規定の無益性基準(1つの薬剤の優劣を見いだすことが無益である)を満たしたため、2017年11月に登録が中止となった。 ITT集団のベースラインにおける患者特性は3群間で類似していた。全被験者の55%が男性で、小児および思春期(最年長は17歳)が39%、18~65歳が48%、65歳超が13%だった。また、10%で心因性発作があったことが確認された。 主要アウトカムの60分後までの発作停止と意識レベルの改善は、レベチラセタム群は68例(47%、95%信用区間[Crl]:39~55)、ホスフェニトイン群は53例(45%、同:36~54)、バルプロ酸群は56例(46%、38~55)で認められた。各薬剤の有効性が最も高い事後確率は、それぞれ0.41、0.24、0.35だった。 安全性については、数値的には血圧低下と気管内挿管はホスフェニトイン群で他の2群に比べて多く、また死亡はレベチラセタム群で他の2群に比べて多かったが、いずれも有意差はなかった。

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世界初の第3世代がん治療用遺伝子組換えヘルペスウイルス「G47Δ」

単純ヘルペスウイルスベクターを用いた抗腫瘍免疫増強法「G47Δ」※クレジットは下記の通りG47Δは、口唇ヘルペスの原因ウイルスである単純ヘルペスウイルス1型を用いた第3世代のがん治療用遺伝子組換えヘルペスウイルス。3つのウイルス遺伝子を改変することで、正常細胞では増殖せず、がん細胞だけで増殖するウイルスを作製した。東京大学医科学研究所先端医療研究センター先端がん治療分野の藤堂具紀氏らが創製に成功し、開発を進めている。ウイルス療法は、がん細胞に感染させたウイルスが増殖することで、直接的にがん細胞を破壊する治療法である。単純ヘルペスウイルス1型の主な特徴として、1)ヒトのあらゆる種類の細胞に感染、2)殺細胞効果が比較的強い、3)抗ウイルス薬があるため治療を中断できる、4)患者がウイルスに対する抗体を持っていても治療効果が減弱しない、などが挙げられている。また、G47Δは、既存のがん治療用ウイルスに比べ、安全性と治療効果が高いとされる。さらに、がん細胞を破壊する過程で抗腫瘍免疫を引き起こすため、投与部位だけでなく非投与部位のがんにも、免疫を介した抗腫瘍効果が期待できるという。加えて、がんの根治を阻害するとされるがん幹細胞をも、破壊することが知られている。G47Δは、2016年2月に、厚生労働省の「先駆け審査指定制度」の対象品目に、2017年7月には、悪性神経膠腫を対象とした「希少疾病用再生医療等製品」に指定されている。※Content Providers: CDC/ E. L. Palmer - This media comes from the Centers for Disease Control and Prevention's Public Health Image Library (PHIL), with identification number #2171.G47Δは1年生存割合において高い効果を示す藤堂氏らの研究グループは、初期治療後に残存または再発した膠芽腫病変(悪性脳腫瘍の一種)を有する予後不良の患者を対象に、医師主導治験(第II相試験)を行った。初回手術後に、放射線照射と化学療法(テモゾロミド)を行う標準治療に、G47Δによるウイルス療法を上乗せする治療法の有効性を検討した。G47Δは、定位脳手術により最大6回、腫瘍内に投与された。試験は、30例の登録を予定し、2015年5月に開始された。2018年7月、13例が治療開始から1年経過した時点で、事前に規定された中間解析が行われた。主要評価項目である1年後の生存割合は92.3%(12/13例)であり、他の複数の臨床試験の結果から算出された標準治療の1年生存割合(15%)と比較して高い有効性を示した。また副次評価項目である全生存期間中央値は、中間解析時点では中央値に達しておらず、無増悪生存期間中央値は8.6ヵ月、2年間の経過観察が終了した4例の腫瘍縮小効果の最良効果はいずれも安定(SD)であった。中間解析時に16例で安全性の評価を行ったところ、主な副作用は発熱が15例(93.8%)、嘔吐とリンパ球数減少がそれぞれ8例(50.0%)、悪心が7例(43.8%)で認められた。入院期間の延長が必要となった副作用は、Grade 2(軽度)の発熱による2例(12.5%)のみであった。これらの結果により、中間解析の時点で、本治験におけるG47Δの治療効果の有効性が確実となったため、独立データモニタリング委員会の勧告で、患者登録は終了となった。これらの知見に基づき、2020年12月、悪性神経膠腫を適応症とするG47Δの製造販売承認申請が行われた。G47Δへの期待G47Δは、動物実験で、あらゆる固形がんに有効であることが示されており、今後、速やかにすべての固形がんに適応を広げることを目指すという。2013年には、前立腺がんおよび嗅神経芽細胞腫を対象とした臨床試験が行われた。また、2018年からは、悪性胸膜中皮腫の患者の胸腔内にG47Δを投与する臨床試験も開始されている。ウイルス療法は、がん治療における標準的な治療法として確立されると期待されている。

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世界初の腎機能改善薬となるか?「Nrf2活性化薬」

抗酸化ストレス・抗炎症作用を有するNrf2活性化薬「バルドキソロンメチル」2型糖尿病に関連する慢性腎臓病(CKD)は、腎不全の主要な原因とされる。糖尿病性腎臓病(DKD)を含むCKDを放置すると、腎機能の低下とともに末期腎不全(ESKD)を来たし、慢性透析療法や腎移植を要する病態に至る。腎機能低下の進展には、酸化ストレスと炎症の双方が寄与するという。バルドキソロンメチルは、開発中のDKD治療薬であり、2018年3月、厚生労働省により「先駆け審査指定制度」の対象品目に指定されている。現時点で、糖尿病性腎症に適応のある薬剤(ACE阻害薬、ARBなど)は腎機能低下を遅延させるのみで、腎機能を改善する治療薬はない。バルドキソロンメチルは、体内のストレス防御反応において中心的な役割を担う転写因子 Nrf2(nuclear 1 factor (erythroid-derived 2)–related factor 2)を活性化する低分子化合物で、抗酸化ストレス作用と抗炎症作用により、腎機能を改善する可能性が示唆されている。これまでの検討で、推算糸球体濾過量(eGFR)の改善効果が確認されており、経過が長期にわたるため開発が困難であった腎機能改善薬の誕生となるか、関心を集めている。バルドキソロンメチルの国内第III相試験が進行中2013年に報告されたBEACON試験(国際共同第III相試験)1)では、2型糖尿病とStage 4のCKD(eGFR:15〜30mL/分/1.73m2)がみられる患者において、バルドキソロンメチル群とプラセボ群の比較が行われた。その結果、ESKDと心血管死の複合エンドポイントの発生率に差はなく、心不全による入院/死亡の発生率はバルドキソロンメチル群で高かったことから、本試験は早期中止となった。その一方で、バルドキソロンメチル群ではeGFRがベースラインから増加しており、プラセボ群に比べて有意に高いことが示された(差:6.4 mL/分/1.73m2、p<0.001)。また、バルドキソロンメチル群では、投与初期に体液貯留がみられる患者が多いことも明らかとなった。そこで、これらのリスク因子を除外基準に含めたTSUBAKI試験(国内第II相試験)が実施された。その結果、バルドキソロンメチルは主要評価項目であるステージ3患者での16週時点のGFRをプラセボに対して有意に改善(6.64mL/min/1.73m2、p=0.008)することが示された。これらの結果をふまえ、現在、DKD(CKDステージG3/G4)患者を対象としたプラセボ対照無作為化二重盲検比較試験AYAME試験(国内第III相試験)が進行中であり、2022年に終了が予定されている。バルドキソロンメチルへの期待バルドキソロンメチルによるGFR増加の機序は完全には明らかにされていないが、抗酸化ストレス作用と抗炎症作用による臓器保護効果は、DKD以外の疾患でも有益な可能性が示唆されている。現在、アルポート症候群(進行性遺伝性腎炎)患者を対象とする国際共同第2/3相試験(CARDINAL試験)や、結合組織病に伴う肺動脈性肺高血圧症を対象とする国際共同第III相臨床試験が進行中だという。参考1)de Zeeuw D, et al. N Engl J Med. 2013; 369: 2492-503.

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中止されたPPIを胃潰瘍リスクで評価して復活【うまくいく!処方提案プラクティス】第10回

 今回は、既往歴や患者情報からプロトンポンプ阻害薬(PPI)が「処方されていない」ことに疑問を持ったところから始まった処方提案です。ポリファーマシーの問題や副作用などから中止対象となることが多いPPIですが、服用継続すべき場合もあります。今回は、PPIが必要な状態について整理し、追加提案に至るまでのポイントの整理と実際の提案方法について紹介します。患者情報84歳、男性(施設入居中)、元住職基礎疾患:慢性心不全、陳旧性心筋梗塞既 往 歴:出血性胃潰瘍(81歳時)、心筋梗塞のため薬剤溶出性ステント(DES)留置(82歳時)、完全房室ブロックのためペースメーカー挿入(年齢不明)往  診:月2回処方内容1.トルバプタン錠7.5mg 1錠 分1 朝食後2.フロセミド錠40mg 2錠 分1 朝食後3.アスピリン腸溶錠100mg 1錠 分1 朝食後4.ピコスルファートナトリウム錠2.5mg 1錠 分1 夕食後5.ピコスルファートナトリウム内用液0.75% 便秘時頓用 適宜調節本症例のポイントこの患者さんは陳旧性心筋梗塞の基礎疾患があり、動脈硬化性疾患の2次予防のために低用量アスピリンが処方されています。アスピリンを長期的に服用すると、消化性出血や潰瘍のリスクがあるため、PPIやH2受容体遮断薬が予防投与されることがあります。とくに、この患者さんのように出血性胃潰瘍の既往がある場合では、PPIの予防投与が国内外のガイドラインで推奨されています。しかし、上記の処方内容のとおり、胃潰瘍の既往があり、アスピリンが処方されているにもかかわらず、PPIの投与がありませんでした。お薬手帳などを確認したところ、以前はPPIが処方されていましたが、施設入居前の処方整理でPPIが中止されたようです。<陳旧性心筋梗塞とアスピリンと潰瘍>陳旧性心筋梗塞(DES留置後)では、禁忌がない場合は低用量アスピリンを2次予防として永続投与することが推奨されている。しかし、アスピリンは低用量であっても長期服用することで、粘膜への影響により胃などに潰瘍を起こすリスクが懸念されている。とくに、出血既往歴がある患者では消化管合併症の発症率が高まることが報告されているため、PPIの併用が推奨されている。PPIが併用されておらず、出血性胃潰瘍を再発し出血性ショックをきたした一例報告もある1)。PPIを服用することのリスクとして、骨折、慢性腎臓病、クロストリジウムディフィシル感染症(CDI)、肺炎など多くの深刻な副作用がありますが、その絶対リスクは患者1人当たり年間約0.1〜0.5%増加させる程度と報告されています2)。以上の点から、出血性胃潰瘍の既往があるこの患者さんにおいてはアスピリンによる胃潰瘍再燃のリスクのほうが重要であり、今後も安全にアスピリンを服用継続するためにPPIの復活を提案することにしました。処方提案とその後の経過回診前のカンファレンスと往診同行時に、出血性胃潰瘍の既往があるのにPPIが併用されておらず、アスピリン服用に伴う出血性胃潰瘍再燃のリスクがあることを医師に相談しました。また、今回の提案の際に参考とした文献も提示し、PPI追加の妥当性について医師と検討しました。施設入居前に薬剤整理が行われたため、医師もPPIが中止になった経緯を把握していませんでしたが、既往歴と現疾患を整理すると、潰瘍リスクを捨て置くわけにはいかないという結論に至りました。そこで、往診翌日からアスピリンと併用してランソプラゾール口腔内崩壊錠30mgを朝食後に追加することになりました。患者さんは、今もアスピリンおよびランソプラゾールを併用していますが、胃部不快感や食道逆流症状、上腹部痛、嘔気などの徴候はなく経過してます。1)Platt KD, et al. JAMA intern Med.2019;179:1276-1227. 2)Vaezi MF, et al. Gastroenterology.2017;153:35-48.

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出産歴による乳がん検診開始年齢を検討/Eur J Cancer

 乳がんリスクに出産歴が影響することは認識されているが、現在の乳がん検診ガイドラインはこの因子によるリスクの違いが考慮されていない。乳がんリスクが高い女性は早期の検診が必要であることから、ドイツ・German Cancer Research CenterのTrasias Mukama氏らは、生殖プロファイルに基づくリスクに合った検診開始年齢を検討した。European Journal of Cancer誌オンライン版2019年11月21日号に掲載。 本研究は、1931年以降に生まれた509万9,172人のスウェーデン人女性の全国コホート研究。参加者におけるSwedish Cancer Registry、Multi-generation Register、Cause of Death Register、および国勢調査(1958~2015)の記録をリンクさせた。 著者らは、一般集団における40、45、50歳(現在のガイドラインで推奨されている検診開始年齢)での10年累積乳がんリスクを算出し、生殖因子(出産歴および初産年齢)が異なる群ごとにそのリスクレベルに達成する年齢を調べた。 その結果、リスクレベルに達成する年齢は、現在のガイドラインの推奨年齢と-3~+9歳の差が認められた。これらの結果は、検診開始年齢について新たな情報を提供し、個別化検診に向けて重要なステップとなる。

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デュピルマブ、中等症~重症の思春期アトピー性皮膚炎への第III相試験結果

 アトピー性皮膚炎(AD)に対する初の生物学的製剤であるデュピルマブについて、コントロール不良で中等症~重症の思春期(中央値14.5歳)AD患者に対する第III相の無作為化二重盲検並行群間比較試験の結果が報告された。米国・オレゴン健康科学大学のEric L. Simpson氏らによる検討で、16週間の治療により、プラセボと比較して症状やQOLの面で有意な改善がみられ、安全面でも忍容性が認められたという。著者は、「プラセボ調整後のデュピルマブの有効性と安全性は、思春期と成人で同等であった」と述べている。JAMA Dermatology誌オンライン版2019年11月6日号掲載の報告。 試験は2017年3月21日~2018年6月5日に、米国とカナダの45施設で行われ、局所療法によるコントロールが不十分または局所療法が不適当であった中等症~重症の思春期患者251例が参加した。 被験者は無作為に1対1対1の割合で3つの投与群に割り付けられ、16週間の治療を受けた(割り付けは双方向レスポンスシステムを利用し、疾患重症度と体重で層別化も実施)。(1)デュピルマブ200mgを2週間ごと投与(43例、ベースライン体重<60kg)または同300mgを2週間ごと投与(39例、60kg以上)、(2)デュピルマブ300mgを4週間ごと投与(84例)、(3)プラセボ投与(85例)。 主要評価項目は、16週時点の2つのエンドポイントの達成患者割合とした。1つは、EASIスコア(0~72、スコアが高いほど重症度が高い)がベースラインから75%以上改善(EASI-75)した患者の割合。もう1つは、Investigator's Global Assessment(IGA)スコア(0~4の5段階評価、スコアが高いほど重症度が高い)が0または1であった患者の割合であった。 主な結果は以下のとおり。・計251例(年齢中央値14.5歳[SD 1.7]、男性148例[59.0%])が、無作為化を受けた。データが入手できた250例の患者では、ほとんどがII型アレルギー性疾患を併存していた(喘息134例[53.6%]、食物アレルギー[60.8%]、アレルギー性鼻炎[65.6%])。・240例(95.6%)が試験を完遂し、デュピルマブの各投与群はいずれも16週時点で2つの主要エンドポイントを達成した。・EASI-75改善の達成患者割合は、2週間ごと投与群41.5%、4週間ごと投与群38.1%、プラセボ群8.2%で、投与群はプラセボ群よりベースラインから有意に増大した(対プラセボ群間差:2週間ごと投与群33.2%[95%信頼区間[CI]:21.1~45.4]、4週間ごと投与群29.9%[95%CI:17.9~41.8])(p<0.001)。・有効性は、2週間ごと投与群が4週間ごと投与群に対し、概して優れていた。・デュピルマブ投与群は、結膜炎(2週間ごと投与群9.8%、4週間ごと投与群10.8%、プラセボ群4.7%)、注射部位反応(8.5%、6.0%、3.5%)を呈した割合が高く、一方で非ヘルペスウイルス感染症(9.8%、9.6%、18.8%)を呈した割合は低かった。

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脳卒中後、CVイベント抑制のためのLDL-C目標値は?/NEJM

 アテローム性動脈硬化が証明され、虚血性脳卒中または一過性脳虚血発作(TIA)を発症した患者では、LDLコレステロール(LDL-C)の目標値を70mg/dL未満に設定すると、目標値90~110mg/dLに比べ、心血管イベントのリスクが低下することが、フランス国立保健医学研究所(INSERM)のPierre Amarenco氏らが行った「Treat Stroke to Target試験」で示された。研究の成果は、NEJM誌オンライン版2019年11月18日号に掲載された。アテローム性動脈硬化に起因する虚血性脳卒中やTIAの患者では、スタチンを用いた強化脂質低下療法が推奨されている。一方、脳卒中発症後の心血管イベントの抑制におけるLDL-Cの目標値については、十分に検討されていないという。LDL-C目標値を70mg/dL未満とする群または90~110mg/dLとする群に割り付け 本研究は、フランスの61施設と韓国の16施設が参加した無作為化並行群間比較試験であり、2010年3月~2018年12月の期間に患者の割付が行われた(フランス連帯・保健省などの助成による)。 対象は、年齢18歳以上(韓国は20歳以上)、直近3ヵ月以内に虚血性脳卒中または15日以内にTIAを発症し、脳血管または冠動脈のアテローム性動脈硬化が証明されている患者であった。 被験者は、LDL-C目標値を70mg/dL未満とする群(低目標値群)または90~110mg/dLとする群(高目標値群)に無作為に割り付けられ、スタチンまたはエゼチミブ、あるいはこれら双方による治療を受けた。 主要エンドポイントは、主な心血管イベント(虚血性脳卒中、心筋梗塞、冠動脈または頸動脈の緊急血行再建術を要する新たな症状、心血管死)の複合とした。 本試験は、主要エンドポイントが385例で発生するまで継続する予定のevent-driven試験であるが、運営上の理由で2019年5月26日に早期中止となった。この時点でイベントを発生していた277例について解析が行われた。LDL-C低目標値群と高目標値群の主要複合エンドポイント:8.5% vs.10.9% 虚血性脳卒中または一過性脳虚血発作を発症した患者2,860例が登録され、LDL-C目標値を70mg/dL未満とする低目標値群に1,430例(平均年齢66.4±11.3歳、男性67.9%)、高目標値群にも1,430例(67.0±11.1歳、67.3%)が割り付けられた。 試験期間中に、LDL-C低目標値群65.9%、高目標値群94.0%がスタチンのみの投与を受け、それぞれ33.8%、5.8%はエゼチミブ+スタチンの投与を受けていた。追跡期間中央値2.7年の時点で、低目標値群30.3%、高目標値群28.5%が治療を中止していた。 ベースラインの平均LDL-C値は両群とも135mg/dL(3.5mmol/L)であった。追跡期間中央値3.5年の時点で、平均LDL-C値は、低目標値群が65mg/dL(1.7mmol/L)、高目標値群は96mg/dL(2.5mmol/L)に低下していた。 主要複合エンドポイントの発生率は、LDL-C低目標値群が8.5%(121/1,430例)と、高目標値群の10.9%(156/1,430例)に比べ有意に低かった(補正後ハザード比[HR]:0.78、95%信頼区間[CI]:0.61~0.98、p=0.04)。 主要複合エンドポイントのイベントの多くは非致死的脳梗塞または原因不明の脳卒中(低目標値群5.7%、高目標値群7.0%)であり、これに比べると、心血管死(1.2%、1.7%)、非致死的急性冠症候群(1.0%、1.6%)、緊急冠動脈血行再建術(0.3%、0.4%)、緊急頸動脈血行再建術(0.2%、0.2%)の頻度は低かった。 副次エンドポイント(心筋梗塞または緊急冠動脈血行再建術、脳梗塞または頸動脈/脳動脈血行再建術、脳梗塞またはTIA、血行再建術[頸動脈、冠動脈、末梢動脈]、死亡、脳梗塞または頭蓋内出血、頭蓋内出血、新規に診断された糖尿病)は、いずれも両群間に有意な差は認められなかった。このうち、頭蓋内出血(1.3%、0.9%)と糖尿病(7.2%、5.7%)の発生率は低目標値群で高い傾向がみられたが、他の項目は低目標値群で低い傾向が認められた。 著者は、「韓国は患者登録の開始がフランスよりも遅く、追跡期間中央値はそれぞれ2.0年および5.3年と差があり、韓国人患者では有意な効果の検出力はない可能性がある」とし、「今回の試験結果の解釈では、試験の早期中止を考慮する必要がある」と指摘している。

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AI活用、24時間顧客問い合わせ対応のシステム導入/塩野義製薬

 塩野義製薬株式会社は、人工知能(AI)を活用した自動会話プログラムで製品に関する問合わせに回答するAIチャットボット「DI chat (Drug Information Chatbot)」を導入し、2019年12月2日より運用を開始したと発表した。 今回導入したDI chatは、木村情報技術株式会社が、IBM Watson日本語版を活用したAIチャットボットに、塩野義製薬が作成したQ&Aを学習させることで、一問一答形式での回答を実現したAI顧客問い合わせ対応システムである。医療関係者からの問い合わせをAIが理解し、最も質問の意図に近い回答を自動的に提示する。 塩野義製薬の医薬情報センターには昨年度、約8万1,000件の問い合わせがあり、そのうちゾフルーザに関する問い合わせが約21,000件を占めていたため、抗インフルエンザ薬ゾフルーザを対象とし、弊社ホームページの医療関係者向けページにて開始するという。DI chatの導入により、24時間365日、夜間や休日の問い合わせ対応も可能となり、医療関係者の情報収集チャネルの拡大および、利便性の向上が期待される。

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第4回 動脈硬化で死なないためには?【今さら聞けない心リハ】

第4回 動脈硬化で死なないためには?今回のポイント心血管疾患患者にとって、食習慣の改善は運動と同様に大切画一的な指導ではなく、病状に応じた栄養指導が重要動脈硬化疾患の予防には〇〇を断つべし!?動脈硬化予防に良い食事とは?本連載の第1~3回では、主に運動療法について書きましたが、今回は心疾患患者に対する栄養指導についてお話します。心臓リハビリテーション(以下、心リハ)において、心疾患患者は何を食べるべきか(あるいは何を食べないべきか)ということは、実は運動と同じくらい、あるいはそれ以上に大切と考えられています。わが国の心血管疾患の治療ガイドラインには、食事についての記載はほとんど認められません。わずかに、減塩や適正なカロリーの摂取についての記載があるのみです。一方、米国のガイドラインではかなり多くのページが食事・栄養に割かれており、総説や論文も多数、毎年のように出されています。日本がフィットネス後進国と言われていることは第1回でも話しましたが、実は運動だけではなく食事についても関心のある医師が少ない状況です。高血圧・糖尿病・脂質異常症・肥満などの生活習慣病の発症は、運動不足も関係しますが、食事が最も重要であるのは自明のことです。運動不足でも、食べなければ太れません。それでも、食事の根本的改善のないままに、各管理目標値を目指して薬物治療が開始されることが多いのではないでしょうか。では、動脈硬化の予防には実際どのような食事をとれば良いのでしょう。避けるべき食品はなんでしょうか。動脈硬化は、食事と運動だけでも改善できるのでしょうか?徹底的な食事療法と運動療法により冠動脈のプラーク(動脈硬化病変)が退縮することを実際に示した有名な臨床研究があります。カリフォルニア大学のOrnish氏らが1998年のJAMA誌に発表したもので、Ornish氏とその関係者は、現在もカリフォルニアを拠点にこの研究で示された有効性をもとに食事・運動療法の啓発活動を続けています。この研究では、中~高度の冠動脈疾患患者を「徹底的な食事療法・運動療法を行う介入群:28例」と、「ガイドラインで推奨されるレベルの食事療法・運動療法を行う対照群:20例」にランダムに割り付けし、冠動脈造影検査による冠動脈狭窄率の変化を5年間追跡しました。徹底的な食事療法とは、ホールフード・ベジタリアンダイエット、つまり未加工の野菜中心に油脂を使わず少ない調味料で調理するもので、脂質が占めるエネルギー量は全体の10%未満と非常に少ないものでした。また、介入群では食事療法とともに週5時間の有酸素運動を実施しました。一方、対照群でも食事中の脂質は30%未満に抑えられ、週3時間程度の有酸素運動を実施しました。1年後、介入群では37%の血清LDLコレステロール低下を認めるとともに評価部位の冠動脈の平均狭窄率が40%から37.8%に改善したのに対して、対照群ではLDLコレステロールは6%低下したものの、冠動脈の平均狭窄率は42.7%から46.1%に悪化しました。その後、対照群では過半数の患者において脂質異常症治療薬の内服が開始されましたが、5年後の両群の冠動脈狭窄率差はより顕著でした(介入群:37.3%、対照群:51.9%)。後に、同氏らはこのプログラムを冠動脈疾患の進行抑制だけではなく改善させるものとして、Intensive Cardiac Rehabilitation(包括型心リハ)と名付けています(図1)。(図1)画像を拡大するこの研究データには説得力があり、すでに1,854もの論文で引用されています(2019/11/21時点)。私の知る限り、ほかにはこのように明確に食事・運動療法の動脈硬化改善効果を示した研究はありません。Ornish食を続けるコツと適した人ホールフード・ベジタリアンダイエットは、いわゆる高血圧研究で有名なDASH(Dietary Approaches to Stop Hypertension)食とは異なり、乳製品や魚すらとりません。DASH食でさえ毎日続けるのは難しそうと感じた方には、よりハードルが高そうですが、研究に参加した患者の7割以上が、5年間この食事療法を継続できたようです。同氏によると、継続率が高いのは、これを実践した患者が速やかに自覚症状の改善を感じたからだそうです。ホールフード・ベジタリアンダイエットを本気で実践しようとすると、あれもこれも食べられませんし、それを理想と考えるなら、通常の入院食も不適切な食事です。それに、野菜は高いし調理も面倒…さまざまな事情により、実践を諦める人が多いでしょう。多くの患者にとって、同氏らの研究の中で対照群が実施したような、脂質30%未満という通常の診療で推奨されている一般的な食事療法が、許容できるぎりぎりのレベルかもしれません(一般的な食事療法でも、きっちりと指導を受け、さらに実践できている患者は多くないと思われます)。ただし、同氏の研究はあくまで中年の肥満型冠動脈疾患患者を対象にしたものであり、日本で診療する患者の多数派である高齢者を対象としていないことに注意が必要です。高齢の心疾患患者では低栄養のことも多く、そもそも野菜をかむ力すら衰えてしまっているようなオーラル・フレイルの患者も多いので、多量の野菜を摂取する必要のあるOrnish食は適応にならないでしょう。画一的な指導ではなく、患者の病状や生活環境に応じた指導が必要です。高齢の心疾患患者の場合には、少量でもしっかりとカロリーやタンパク質を補うことができるような食事のメニューを組む必要があります。これについては、第5回で詳しく説明しましょう。動脈硬化予防に食べてはいけない物最後に、“何を食べてはいけないか”―最近JACCで発表された心血管疾患予防のための栄養に関する臨床ガイドの記事を紹介します。ここでは、避けるべき食品、積極的に摂取すべき食品についてのリストとともに、詳細に記述されています。この臨床ガイドの中で、避けるべき食品としてまず挙げられているのが、「砂糖」。とくに果糖ブドウ糖液糖をはじめとする合成糖類です。砂糖の1日摂取量上限は25gまで、合成糖類は基本とらない、甘い飲料は飲んではいけないことが、エビデンスとともに記されています。詳しくリストを確認したい方は、原著をお読みください。塩のとり過ぎは高血圧を発症させるので減塩が大切ということは広く知られていますが、砂糖のとり過ぎに気を付けることも大事なのですね。ちなみに、私は甘いお菓子が大好きです。こうした情報を知ってからは、なるべく気を付けるようにしています…が、さっき頂き物のクッキーの小袋を食べてしまいました(汗)。徹底的な食事療法の実践は、なかなか難しいですね。「moderation kills」という言葉がありますが、よほどの決心がつかないと、「なるべく気を付ける」くらいの食事療法で満足してしまいそうです。読者の皆さまは、いかがでしょうか?<Dr.小笹の心リハこぼれ話>医師による栄養指導と真の対価心リハのメインは運動、食事は重要だけれど補助的役割。運動処方は医師がチェックするけれど、栄養指導は管理栄養士任せ…。心リハに携わり始めた頃は、正直、栄養については知識不足でした。そのため、患者さんに聞かれても、「塩分に気を付けてバランスの良い食事をとりましょう、具体的には栄養指導で聞いてくださいね」という、間違ってはいないものの何にも具体性がないことしか言えませんでした。現在、医学部には栄養学の講義はほとんどありません。栄養指導は管理栄養士任せという医師は多いと思われます。しかし、長年心リハで患者指導をするうちに、運動だけではだめなんだ、と気付かされるようになりました。毎日2時間も速歩でウォーキングしていてもHbA1cが8%を下回らない糖尿病患者さん、外来心リハに週3回通い、かつ自宅でも指導通り運動しているのに体重がまったく変わらないどころか逆に増えるような肥満患者さん。これらの患者さんたちは、明らかに食事に問題があるのです。今では、心リハの患者さんの栄養指導も管理栄養士にすべてお任せではなく、管理栄養士と一緒に個々の症例について介入ポイントを話合っています。それにしても、運動だけではなく、栄養指導や心リハで重要な心理ケア(ストレスマネジメントプログラム:SMP)について、1回1時間の心リハで行うことは時間的にかなり厳しいものがあります。今回紹介したOrnish氏の心リハプログラムは、米国で保険適応とされています。通常の心リハプログラムが1回1時間、週3回、12週間(合計36時間)の運動を中心としたものであるのに対して、包括型心リハでは1回4時間で運動、栄養指導、SMPを各1時間、そして残りの1時間がグループでの対話セッションで構成され、週2回、9週間(合計72時間)というもののようです(図1)。このような心リハを日本で実践するには、診療報酬制度の見直し、そして心リハを支えるマンパワーが必要です。日本でIntensive Cardiac Rehabilitation(包括型心リハ)を実現するには、今以上にコストがかかるということですね。でも、その投資は、冠動脈疾患の再発や悪化によりPCIやCABGなどの血行再建術を実施するコストに比べたら、十分価値があるのではないでしょうか。何より、患者さんにとっては疾患の再発や悪化がないことこそがHappyですよね!

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がん種を問わないNTRK融合遺伝子陽性固形がん治療薬「ロズリートレクカプセル100mg/200mg」【下平博士のDIノート】第38回

がん種を問わないNTRK融合遺伝子陽性固形がん治療薬「ロズリートレクカプセル100mg/200mg」今回は、チロシンキナーゼ阻害薬「エヌトレクチニブ」(商品名:ロズリートレクカプセル100mg/200mg、中外製薬)を紹介します。本剤は、小児から成人まで、がん種を問わず横断的に使用できるNTRK融合遺伝子陽性固形がん治療薬として期待されています。<効能・効果>本剤は、NTRK融合遺伝子陽性の進行・再発固形がんの適応で、2019年6月18日に承認され、2019年9月4日より発売されています。<用法・用量>通常、エヌトレクチニブとして、成人には1日1回600mg、小児には1日1回300mg/m2(体表面積)を経口投与します。用量は600mgを超えない範囲で、患者の状態により適宜減量できます。<副作用>多施設共同非盲検国際共同第II相バスケット試験(STARTRK-2試験)において、ロズリートレクが投与されたNTRK融合遺伝子陽性患者63例のうち、57例(90.5%)に副作用が認められました。主な副作用は、味覚異常29例(46.0%)、疲労24例(38.1%)、めまい19例(30.2%)、便秘18例(28.6%)、下痢、浮腫が各17例(各27.0%)、体重増加14例(22.2%)、貧血13例(20.6%)でした。なお、重大な副作用として、認知障害・運動失調(28.6%)、心臓障害(4.8%)、間質性肺疾患(1.6%)、QT間隔延長(頻度不明)が報告されています(承認時)。<患者さんへの指導例>1.この薬は、NTRK融合遺伝子を有するがん細胞の増殖を抑制することで、がんの進行を抑えます。2.容器を開ける際は、キャップを下に押しながら回して開けてください。3.グレープフルーツジュースを飲むと、この薬の副作用が強く現れることがあるので、摂取を控えてください。4.飲み始めてから、息苦しい、むくみや体重の増加、動悸、胸の痛み、倦怠感、発熱、めまいなどの症状が現れた場合は、すぐに医師に連絡してください。5.自分のいる場所や時間、人の名前がわからなくなったり、いつもできていたことが突然できなくなったりなど、いつもと変わった様子が見られた場合、すぐに受診してください。<Shimo's eyes>がん治療は、薬剤の開発と同時に遺伝子検査の技術も日々進歩しています。近年では、複数の遺伝子変異を一度に解析できる「がん遺伝子パネル検査」が登場しました。固形がんや肉腫からまれに見つかる異常な遺伝子の1つに、本剤の標的である「NTRK融合遺伝子」があります。この遺伝子の検出については、遺伝子変異解析プログラム「FoundationOne CDxがんゲノムプロファイル」が、本剤のコンパニオン診断として2019年6月に承認されています。本剤は、厚生労働省より先駆け審査指定制度の対象品目に指定され、2019年6月に世界で初めて承認されました。成人・小児を問わず、NTRK融合遺伝子陽性固形がんへの使用が認められています。投薬時の対応としては、本剤の服用で発現すると考えられる、貧血、味覚異常、疲労感、吐き気・嘔吐、便秘・下痢、末梢神経障害などの聞き取りが重要です。添付文書には、副作用に対する休薬、減量および中止基準が記載されていますので、疑義照会や処方提案の参考にしましょう。また、妊娠可能な女性患者や、パートナーが妊娠する可能性のある男性患者に投与した場合、妊娠後の胎児への影響が懸念されます。本剤の投与中および投与終了後、女性30日間、男性90日間は適切な避妊を行うよう指導が必要です。包装はPTPシートではなく、チャイルドプルーフキャップを採用しているバラ包装なので、開けるときはキャップを下に押しながら回すように説明しましょう。参考1)PMDA ロズリートレクカプセル100mg/ロズリートレクカプセル200mg

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ゾフルーザ耐性ウイルスの特性を解明、小児で高頻度に出現

 東京大学医科学研究所の河岡 義浩氏ら研究チームが、2018/2019シーズンに採取したA型インフルエンザ検体の遺伝子を解析したところ、バロキサビル(商品名:ゾフルーザ)を服用した12歳未満のA型インフルエンザ患者において、ゾフルーザ耐性ウイルスが高頻度で出現することが明らかになった。また、患者から分離した耐性ウイルスを動物に感染させ、感受性ウイルスと比較したところ、耐性ウイルスの増殖性および病原性は、感受性ウイルスと同等であることもわかった。Nature Microbiology誌オンライン版2019年11月25日号に掲載。 ゾフルーザは、2018年3月に日本における販売を開始。単回経口投与で済む利便性が支持されている。一方で、国立感染症研究所が先のシーズンに実施した薬剤耐性株サーベイランスでは、ゾフルーザに対して耐性を示す変異ウイルスが高い割合で検出されている1)。また、先行研究では、人工的に作られた、耐性変異を持つ組み換えインフルエンザウイルスによって増殖能が解析され、野生型の感受性ウイルスよりも増殖能が大きく劣ることが示されたものの、患者から分離された耐性ウイルスについては基本性状が明らかになっていなかった。 河岡氏らによる本研究では、2018/2019シーズンに国内の医療機関を受診したインフルエンザ患者から採取した臨床検体でウイルス遺伝子を解析。その結果、薬剤未投与のA/H1N1pdm09型の患者(74例)からはゾフルーザ耐性ウイルスは検出されなかったが、A/H3N2型の患者141例(16歳以上:40例、15歳以下:101例)のうち、15歳以下の2例で耐性ウイルスが検出された。また、ゾフルーザ服用者でも同様の解析を進めたところ、A/H1N1pdm09型の患者22例(16歳以上:7例、15歳以下:15例)のうち、5例(うち4例が15歳以下)で耐性ウイルスが検出され、A/H3N2型の患者16例(16歳以上:4例、15歳以下:12例)では、4例(すべて15歳以下)で耐性ウイルスが検出された。 本研究では、患者から分離した2型各々の耐性ウイルスを、ハムスター、マウス、フェレットに感染させ、増殖性および病原性について、ゾフルーザ感受性ウイルスと比較した。その結果、いずれの型においても感受性ウイルスと同程度の体重減少および肺などの呼吸器における増殖が認められた。 河岡氏らは、「インフルエンザウイルス感染の経験がない(あるいは少ない)小児患者ではウイルス排除に必要な免疫が十分に誘導されず、耐性ウイルスが発生しやすい可能性がある。小児患者でのゾフルーザの使用については、耐性ウイルス出現のリスクを考慮した慎重な判断が望まれる」とコメントしている。

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DPP-4阻害薬の心血管安全性はSU薬と同等(解説:吉岡成人氏)-1146

 DPP-4阻害薬であるリナグリプチンの心血管アウトカムに関する試験として、プラセボを対照として非劣性を示したCARMELINA(Cardiovascular and Renal Microvascular Outcome Study With Linagliptin)試験の結果がすでに報告されている(Rosenstock J, et al. JAMA. 2019;321:69-79.)。今回、SU薬であるグリメピリドを対照として心血管アウトカムについて検証したCAROLINA(Cardiovascular Outcome Study of Linagliptin Versus Glimepiride in Patients With Type 2 Diabetes)試験の結果が、JAMA誌に掲載された(Rosenstock J, et al. JAMA. 2019 Sep 19. [Epub ahead of print])。 心血管疾患の既往ないしは心血管リスクを有する2型糖尿病で、未治療ないしはメトホルミン、α-グルコシダーゼ阻害薬のいずれかまたは併用で治療されているHbA1c 6.5~7.5%の患者を対象としている。リナグリプチン投与群とグリメピリド投与群をランダムに割り付け、3ポイントMACE(心血管死、非致死性心筋梗塞、非致死性脳卒中の複合)の初発までの期間を主要評価項目として、中央値で6.3年間にわたって追跡したものである。 3ポイントMACEはリナグリプチン群、グリメピリド群ともに2.1/100人・年で、グリメピリドに対するリナグリプチンの非劣性が示されたものの、優越性は認められなかった。全死亡、非心血管死のリスクに対しても両群で差はなかった。試験期間を通じて、脂質プロフィールや血圧に差はなく、低血糖の発現頻度はリナグリプチン群2.3/100人・年、グリメピリド群11.1/100人・年であり、リナグリプチン群で有意に少なかった(HR:0.23、95%信頼区間:0.21~0.26)。第三者の助けが必要な重症低血糖はグリメピリド群で0.5/100人・年、リナグリプチン群で0.1/100人・年であった。 罹病期間6.3年(中央値)、メトホルミンが83%に投与されている2型糖尿病患者で、心血管疾患のリスク軽減のためにアスピリン50%、スタチン64%、RA系阻害薬75%、降圧薬88%と比較的十分な薬物治療が行われている場合には、DPP-4阻害薬を投与してもグリメピリドに勝る心血管安全性が示されなかったことが確認された。 日本においてDPP-4阻害薬は糖尿病患者の半数以上に広く用いられており、インクレチンを介した心血管保護作用も期待されている。しかし、スタチンやRA系阻害薬など心血管疾患のリスクを軽減することが十分に立証された薬剤で治療されている患者にとって、相加的な心血管保護作用を示すかどうか、慎重に見極めなくてはいけない。

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青年期うつ病の治療中および治療後の軌跡

 英国・ケンブリッジ大学のSian Emma Davies氏らは、UK IMPACT試験に参加した青年期うつ病患者を症状変化の軌跡によって分類し、その予測因子および治療反応の定義との比較を行った。Journal of Child Psychology and Psychiatry誌オンライン版2019年10月24日号の報告。 本研究は、成長混合モデリング(GMM)を用いた2次データ分析である。欠損データは補完された。対象患者465例について、86週間の6つの時点におけるスコアを用いて、自己報告された抑うつ症状の軌跡を作図した。 主な結果は以下のとおり。・患者は、最初は類似した症状軌跡をたどり、その後2種類の軌跡を示した。・この2種類のグループでは、最初の18週目までに抑うつ症状の有意な改善が認められた。・両グループの内訳は、研究期間中に症状改善が認められる「継続改善」が391例(84.1%)、ベースライン時の抑うつ症状スコアが高く、初期は早期改善が認められるものの、18週以降に改善が認められない「改善停止」が74例(15.9%)であった。・ベースライン時で併存疾患を有していた患者では、「改善停止」の増加が認められた(OR:1.40、CI:1.00~1.96)。・研究終了時までの誤分類は、臨床的寛解カットオフスコア(27以下)で15%、治療反応を示す症状改善スコア(50%以上)で31%に認められた。 著者らは「治療初期の抑うつ症状改善は、必ずしも良好な予後を示すものではない。治療開始18週以降に、改善の停止が認められる。治療反応に対する差異は、縦断的モデリングにより精度が向上する可能性がある。これまで考えられていたよりも、抑うつ症状の改善は、年単位でかかる場合がある」としている。

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