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第34回 ワルファリン服用時PT-INR2.0~3.0の根拠を説明できますか?【論文で探る服薬指導のエビデンス】

 ワルファリンはあまりにも有名な抗凝固薬であり、直接経口抗凝固薬(DOAC)もワルファリンとの非劣性試験を行っており、血栓塞栓症の予防薬としてのベンチマークとなっています。多くの薬剤師がその説明に慣れているのではないかと思いますが、スタンダードとされるその効果はどの程度で、なぜPT-INRを2.0~3.0くらいで管理する必要があるのか根拠を示しながら服薬指導できているでしょうか。今回は、意外に正確に即答するのが難しいワルファリンに関するエビデンスを紹介します。ワルファリンは脳卒中リスクを対照群に比べて60%、抗血小板薬に比べて40%低下ワルファリンの血栓塞栓症予防効果は、数多くの試験で示唆されています。非弁膜症性心房細動患者の脳卒中予防効果についてまとめたメタ解析がありますので、押さえておくとよいでしょう1)。この解析には29試験、合計2万8,044例の被験者が含まれており、その平均年齢は71歳で、平均フォローアップ期間は1.5年です。6試験、2,900例の解析によるワルファリン服用群の脳卒中の相対リスクは、抗血栓薬を服用していない対照群と比べて64%低下(95%信頼区間[CI]:49%~74%)、死亡率は26%低下しています。一方、8試験、4,876例の解析による抗血小板薬服用群の脳卒中の相対リスクは、対照群と比べて22%低下(95%CI:6%~35%)しています。また、12試験、1万2,963例の解析によるワルファリン群の脳卒中の相対リスクは、抗血小板薬群と比べて39%低下(95%CI:22%~52%)しています。対照群と比べて約60%、抗血小板薬群と比べて約40%の脳卒中リスク低減というのはとても大きな効果で、DOACが出るまでスタンダードとされていた理由もうなずけます。ただし、試験の前提としてワルファリンの用量が調整されていたことは留意しておくべきで、現実においても当然同様に必要です。上記解析では、抗血小板薬はワルファリンより小さいとはいえ、一定の脳卒中予防効果を示しています。しかし、日本人の非弁膜症性心房細動患者において、アスピリン150~200mg/日投与群と抗血小板薬や抗凝固薬を服用しないプラセボ群を比較した試験(JAST)では、アスピリンは脳卒中予防に対して有効でなかったうえに、中間解析で重篤な出血が増加して試験中止になっているため、推奨されているわけではありません2)。不整脈により生じる脳卒中予防でワルファリンがよく用いられるのにそういった背景があることを知っていると、説明で役に立つかもしれません。PT-INR 2.0~3.0管理群は1.5~1.9管理群よりも有意に深部静脈血栓塞栓症再発が少ないワルファリンの薬効評価では、血液の凝固速度を表すPT-INRの数値をみます。日本血栓止血学会によれば、ワルファリンによる一般的な抗凝固療法では2.0~3.0に管理するとあります。通常の標準値は1.0前後で、それより数値が大きいほど血が止まりにくくなるため、内出血や鼻血、歯茎からの出血などが生じやすくなります。なぜ2.0~3.0がよいのかについては、静脈血栓塞栓症予防におけるINRコントロールの最適値を検討した研究があります3)。ワルファリン治療を3ヵ月以上行っている静脈血栓塞栓症患者738例を、INR 1.5~1.9の低強度管理群とINR 2.0~3.0の通常強度管理群に1:1に割り付け、有効性と安全性を比較しています。主要アウトカムは静脈血栓塞栓症再発および出血です。その結果、深部静脈血栓塞栓症の再発は、INR 1.5~1.9管理群では16回(1.9/100人・年)、INR 2.0~3.0管理群では6回(0.7/100人・年)と有意差があり、ハザード比は2.8(95%CI:1.1~7.0)でした。一方で、重大な出血、全出血発生頻度はともに両群間に有意差はありませんでした。管理が不十分だと塞栓症リスクが3倍近く上昇することは知っておくとよいでしょう。さらに、PT-INRの目標値1.5~2.0と2.0~3.0で比較した別の研究においても、一貫性のある結果が得られており、目標値の妥当性がよくわかります。逆に3.0を超えても予防効果が用量依存的に上がるわけではなく、出血性リスクが高くなるのであくまでも基準値を目指すのがよいということになります4)。抗凝固療法などの予防薬は患者さん自身に治療効果が見えづらくてアドヒアランスが低下しがちです。どの程度の出血傾向があれば注意すべきなのかという目安を伝えることはもちろん重要ですが、治療しない場合と比べてどの程度の効果が期待できて、どのくらいの目標値で管理するとそれがリスクを避けながら最大化されるのかをしっかりと説明できるとよいと思います。そのようなときに、これらの知見をお役立ていただければ幸いです。1)Hart RG, et al. Ann Intern Med. 2007;146:857-867. 2)Sato H, et al. Stroke. 2006;37:447-451. 3)Kearon C, et al. N Engl J Med. 2003;349:631-639. 4)Crowther MA, et al. N Engl J Med. 2003;349:1133-1138.

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ようやく開けた米国への道、生じた迷いと葛藤【臨床留学通信 from NY】第8回

第8回:ようやく開けた米国への道、生じた迷いと葛藤さて、前回までにお話ししたとおり、臨床の合間を縫って地道に勉強を続け、2011年3月にECFMG certificateを取得しました。そうなれば、次は意気揚々と米国のResidencyのMatchingに参加するのが通常です。ところが私は、その段階に及んで「そもそもなぜ留学したいのか?」という根本的な動機がわからなくなり、その後数年にわたって右往左往することになりました。2011年6月に栃木県の足利赤十字病院に赴任し、カテーテル治療の勉強を開始したところでもありました。せっかくやり始めたのに、米国でResidentから、しかも内科からやることに、当時はメリットを感じられませんでした。それよりも、カテーテル治療医としてトレーニングポジションで留学をすることのほうが圧倒的に魅力的でした。そのような心持ちだったため、ResidencyのMatchingに参加することもなく、一方で、同年9月に東京海上日動メディカルサービス主催のN programと呼ばれる臨床留学の国内選考会に参加するも、1次選考会で惨敗という結果でした。ひとえに、志望動機がはっきりしないこと、圧倒的な英語力の欠如が要因でありました。選考基準にはTOEFL試験が使用されていて、ボーダーラインは120点満点中100点でしたが、当時の私の英語力は80点程度で、USMLE Step CSに合格したとはいえ、会話力、リスニング力は全くの力不足を痛感しました。さらに、カテーテル治療のポジションにスッと入り込めるほどアメリカは甘くはなく、国際学会に参加する度に著名な先生の名刺をいただいてはポジションを交渉するということを繰り返していましたが、なかなか難しいのが実情でした。当時、日本では行われていなかったMitral Clipという経皮的僧帽弁形成術を直接見ようとバージニア大学まで赴き、直接ポジションの交渉も行いましたが、それもやはり難しかったです。一方、大学の先輩方は欧州のカテーテル治療の留学を盛んに行っている時期で、目標となる人はたくさんいましたが、学会でお会いした欧州の先生方と交渉したもののなかなかうまくいきませんでした。以前と異なり、パリでのテロ事件勃発以降、国の治安等の問題から無給ではなかなか雇いづらく、多くの場合funding sourceが問題となりました。そのため、例えば今いる病院から給料をもらい続けられるならば採用してもいい、といった具合でした。実際には、それも難しく、企業からのサポートもなく、Grantを取れるほどの実績もないため、非常に難しい道のりでした。今への道しるべになった2人の恩師とりあえず留学したい、ということで始めたUSMLEへの挑戦。苦労してようやく資格を取ったのに、何がしたいのかわからず模索する日々、ただひたすら循環器内科医、カテーテル治療医としての業務に追われる月日が続きました。しかし一方で、その後につながる幸運な出会いもこの時期にありました。そのうちの1人が香坂 俊先生で、香坂先生の指導の下で臨床研究を始めることになったのです。臨床研究は本来日々の業務の合間にやるものだとも教わりました。もう1人は、足利赤十字病院の沼澤 洋平先生で、症例報告や臨床研究は学会発表で終わらせてはならず、論文にして広く世間に発表することで初めて役に立つことになるとも教わりました。実際、形になった論文で学位を取ることができました。日々の業務を丁寧にこなす中で自然と湧き出たClinical questionを解決すべく、過去の文献を検索し、さらにデータベースを用いて実際に統計的に証明するというClinical researchは、非常に自分に合っている気がしました。かつての自分は、有名な医学雑誌を毎週読んでいれば十分と思っていましたが、Clinical researchをすることで、さらに詳しく調べようとすることから知識が深まり、患者さんへの治療にもフィードバックされている手応えがありました。また、論文は留学に際して初対面の人に対して名刺代わりになると教わったこともあり、臨床だけでなく、研究、論文作成にも力を入れるようになりました。足利赤十字病院に赴任して数年経過し、可能な専門医を取得したり、学位を取得したりしているうちに、気付けば2017年になっていました。Column画像を拡大するCOVID19は米国、ニューヨークでも流行ってきており1)、私の働いている病院でも、全体として待機的手術、外来をすべて閉鎖し、全医療資源 (とくに術後ICUや人工呼吸器)をCOVID19対策に注入しようとしています。われわれ内科レジデントはまさに渦中の最中、最前線で働かなければならず、若年者があっという間にARDSになってしまう症例も経験することから、少なからず身の恐怖を感じます。また、COVID19は留学にも影響を与えているようです。3月19日現在、VISAの申請を大使館が受け付けていない状況であり2)、米国全体として渡航禁止の状況であることから、迂闊に帰国できません。1人でも犠牲者が少なく済み、一刻も早く事態が収束することを願います。1)https://public.flourish.studio/visualisation/1438279/?fbclid=IwAR1kZP36l-xPyGXGYeuDIsXuHd4-nWeFb4w7e1qwTj8CLz7J3X8OPAL5nnY2)https://www.ustraveldocs.com/jp_jp/index.html?firstTime=No

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COVID-19のCT所見、919例の系統的レビュー

 新型コロナウイルス感染症(COVID-19)のCT画像の特徴についてさまざまな論文が公表されているが、まとまった文献レビューはまだない。今回、南カリフォルニア大学ケック医科大学のSana Salehi氏らが、PubMed、Embase(Elsevier)、Google Scholar、世界保健機関のデータベースから系統的に文献を検索、レビューし、その結果を報告した。American Journal of Roentgenology誌オンライン版2020年3月14日号に掲載。 主なレビュー結果は以下のとおり。・COVID-19の初期のCT画像では、すりガラス陰影(GGO)が両側肺野、多葉性に末梢または後部に分布し、主に下葉に見られた。・初期のCT画像で、GGOに浸潤影が重なった非定型の所見が少数の患者(主に高齢者)に見られた。・まれに中隔肥厚、気管支拡張症、胸膜肥厚、胸膜下病変が見られた(主に後期)。・胸水、心膜液、リンパ節腫脹、cavitation、CT Halo sign、気胸が疾患の進行とともにまれに見られることがある。・中期のCT画像では、GGOの数・大きさの増加、GGOの多巣性浸潤影への進行、中隔肥厚、crazy-paving pattern(すりガラス陰影内部に網状影を伴う所見)が見られ、症状発現後10日前後でCT所見が最も重症となった。・COVID-19患者がICUに移る最も多い原因は急性呼吸窮迫症候群であり、この患者集団の主な死因である。・臨床的改善に相当する画像所見は通常、発症後14日目以降に見られ、浸潤影が徐々に解消され、病変や関わる葉の数が減少する。

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薬剤耐性結核、ベダキリン+pretomanid+リネゾリドが有効/NEJM

 高度薬剤耐性結核症患者の治療において、ベダキリン+pretomanid+リネゾリド併用療法による26週間の治療は、治療終了から6ヵ月時のアウトカムが良好な患者の割合が90%と高く、有害事象は全般に管理可能であることが、南アフリカ共和国・ウィットウォータースランド大学のFrancesca Conradie氏らの検討(Nix-TB試験)で示された。研究の成果は、NEJM誌2020年3月5日号に掲載された。高度薬剤耐性結核患者の治療選択肢は限られており、アウトカムは不良である。pretomanidは、最近、超多剤耐性(XDR)肺結核症(イソニアジド、リファンピシン、フルオロキノロン系抗菌薬、および1剤以上の注射薬[アミカシン、カプレオマイシン、カナマイシン]に抵抗性)または複雑型多剤耐性(MDR)肺結核症(イソニアジド、リファンピシンに抵抗性で、治療に反応しない、または副作用で治療が継続できない)の成人患者の治療において、ベダキリンおよびリネゾリドとの併用レジメンが、「限定的集団における抗菌薬および抗真菌薬の開発経路(Limited Population Pathway for Antibacterial and Antifungal Drugs)」の下で、米国食品医薬品局(FDA)の承認を得ている。経口3剤の有用性を評価する非盲検単群試験 本研究は、結核菌に対する殺菌活性を有し、既知の耐性がほとんどない3つの経口薬の併用の有用性を評価する非盲検単群試験であり、現在も南アフリカの3施設で追跡調査が継続されている(TB Allianceなどの助成による)。 対象は、XDR結核症、および治療が奏効しなかったか、副作用のために2次治療レジメンが中止されたMDR結核症の患者であった。 ベダキリンは、400mgを1日1回、2週間投与された後、200mgを週に3回、24週間投与された。pretomanidは200mgを1日1回、26週間投与され、リネゾリドは1,200mgを1日1回、最長26週間投与された(有害事象によって用量を調節した)。 主要エンドポイントは、不良なアウトカムの発生とし、細菌学的または臨床的な治療失敗、あるいは治療終了から6ヵ月までの追跡期間中の再発と定義した。6ヵ月時に、臨床症状が消失し、培養陰性で、不良なアウトカムに分類されなかった患者を良好なアウトカムとした。XDR例とMDR例で、有効性に差はない 2015年4月16日~2017年11月15日の期間に109例(XDR例71例、MDR例38例)が登録された。ベースラインの年齢中央値は35歳(範囲:17~60)、男性が52%、黒人が76%であった。HIV陽性例が51%で、胸部X線画像で空洞形成が84%にみられ、BMI中央値は19.7(12.4~41.1)であった。 intention-to-treat(ITT)解析では、治療終了から6ヵ月時に11例(10%)が不良なアウトカムを呈し、98例(90%、95%信頼区間[CI]:83~95)が良好なアウトカムであった。修正ITT解析およびper-protocol解析でも結果はほぼ同様であった。XDR例の良好なアウトカムの患者は63例(89%、79~95)、MDR例では35例(92%、79~98)だった。 不良なアウトカムの11例のうち、死亡が7例(6例は治療期間中に死亡、1例は追跡期間中に不明な原因により死亡)で、治療期間中の同意撤回が1例、追跡期間中の再発が2例、追跡不能が1例であった。 治療期間中に、全例で1つ以上の有害事象の発現または増悪が認められた。重篤な有害事象は19例(17%)にみられ、HIV陽性例と陰性例で頻度は類似していた。リネゾリドの毒性作用として予測された末梢神経障害が81%に、骨髄抑制は48%に発現し、頻度は高かったものの管理可能であったが、リネゾリドの減量または中断が多かった。 著者は、「XDRおよびMDRという治療困難な結核症で90%という高い治療成功率が達成された。これは薬剤感受性結核症における標準治療(イソニアジド、リファンピシン、ピラジナミド、エタンブトール)の成績とほぼ同等である」としている。

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単一遺伝子異常に伴う炎症性腸疾患、疑うべき臨床所見は?

 小児の炎症性腸疾患(inflammatory bowel disease:IBD)は発症時期によって特徴が異なり、臨床像が多様だ。とくに早期に発症するケースでは、単一遺伝子異常に伴うIBDの頻度が高く、原発性免疫不全症候群の可能性も考慮する必要がある。しかし、その詳細な有病率は明らかになっていない。今回、カナダ・トロント小児病院のEileen Crowley氏らは、小児IBD患者1,005例のゲノムを解析し、単一遺伝子異常に伴うIBDの有病率を決定するとともに、予測可能な臨床所見を検討した。Gastroenterology誌オンライン版2020年2月18日号掲載の報告。 0〜18歳(診断時年齢の中央値:11.96歳)の小児IBD患者1,005例、およびその家族の血液サンプル(合計2,305サンプル)を用いて、全エクソームシークエンスを実施した。IBDの原因と考えられる遺伝子変異はサンガーシークエンスで確認し、生検は免疫蛍光染色、組織化学分析を実施した。 小児IBD患者1,005例のうち、3%にIBD関連の単一遺伝子変異が確認された。年齢別の割合は、6歳未満で7.8%、6〜18歳で2.3%だった。このうち1%の患者の変異は、同種造血幹細胞移植で治療できる可能性があるものだった。 単一遺伝子異常に伴う小児IBD患者の臨床的特徴は、発症年齢が2歳未満(OR:6.30、p=0.020)、自己免疫疾患の家族歴(OR:5.12、p=0.002)、腸管外症状(OR:15.36、p<0.0001)などだった。 単一遺伝子異常に伴う小児IBD患者のうち17例がクローン病であり、症状は35%に腹痛、24%に軟便、18%に嘔吐、18%に体重減少、5%に断続的な血便がみられた。また、14例は潰瘍性大腸炎もしくは分類不能型のIBDであり、顕著な症状として78%に緩い血便がみられた。 これらの結果から、単一遺伝子異常に伴う小児IBDの予測には、早期発症、自己免疫疾患の家族歴、腸管外症状などの所見が役立つ可能性が示唆された。また、単一遺伝子異常に伴う小児IBDの一部は、同種造血幹細胞移植によって治療可能であることから、積極的に遺伝子検査を検討するべきだ、との見解を示した。

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自転車通勤は負傷リスクを上げるか?/BMJ

 自転車通勤は、公共交通機関や自動車による通勤と比較して、がんの診断や心血管イベント、死亡が少ない一方で、負傷で入院するリスクが高く、とくに輸送関連事故による負傷リスクが高いことが、英国・グラスゴー大学のClaire Welsh氏らの調査で示された。研究の成果は、BMJ誌2020年3月11日号に掲載された。英国では、自転車通勤は傷病への罹患や死亡のリスクが低いとされてきた。また、国民の自転車通勤への理解の主な障壁は、主観的および客観的な交通の危険性だが、これまでに得られた自転車と負傷に関するエビデンスの質は高くないという。通勤手段別の負傷リスクを評価する前向きコホート研究 研究グループは、自転車通勤と負傷のリスクの関連を評価する目的で、地域住民ベースの前向きコホート研究を行った(Chest, Heart, and Stroke Association Scotlandの助成による)。 解析には、UK Biobankのデータが用いられた。対象は、英国の22の地域から登録された通勤者23万390人(平均年齢52.4歳、女性52.1%)。典型的な一日で、往復の通勤に利用する輸送方式別に比較した。 徒歩、自転車、徒歩を含む混合型(非活動型+徒歩)、自転車を含む混合型(自転車+他の輸送方式)の通勤と、非活動型(自動車/エンジン駆動の乗り物、公共交通機関)の通勤とを比較した。 主要アウトカムは、初回の負傷による入院とした。自転車移動距離が長いと、負傷リスクも高い 5,704人(2.5%)が、自転車が主な通勤の輸送方式と答えた。非活動型通勤者(17万8,976人[77.5%])と比較して、自転車通勤者は年齢がわずかに若く、BMIが低く、白人男性が多く、現喫煙者や心血管疾患、糖尿病、がん、長期の疾患の病歴を持つ者が少なかった。 フォローアップ期間中央値は8.9年(IQR:8.2~9.5)で、この間に全体で1万241人(4.4%)が負傷による入院または負傷で死亡(29人)した。負傷の内訳は、自転車通勤が397人(7.0%)、非活動型通勤は7,698人(4.3%)だった。負傷の発生率は、自転車通勤が1,000人年当たり8.06件と、非活動型通勤の1,000人年当たり4.96件に比べて高く(p<0.001)、自転車を含む混合型通勤(6.99件/1,000人年)でも高い傾向がみられた。 社会人口統計学や健康、生活様式に関連する主要な交絡因子を補正すると、自転車通勤は非活動型通勤に比べ、負傷のリスクが高かった(ハザード比[HR]:1.45、95%信頼区間[CI]:1.30~1.61)。自転車を含む通勤でも、同様の傾向が認められた(1.39、1.29~1.50)。徒歩は、負傷のリスク上昇とは関連がなかった。 自転車通勤と自転車を含む通勤では、通勤中の自転車での移動距離が長いほど、負傷のリスクが高くなったが、非活動型通勤では、通勤距離は負傷のリスクとは関連しなかった。また、自転車通勤は、外的要因が輸送関連事故の場合は、負傷者数が非活動型通勤の約3.4倍多く(発生率比:3.42、95%CI:3.00~3.90、p<0.001)、自転車を含む通勤でも約2.6倍だった(2.62、2.37~2.91、p<0.001)。 自転車通勤と自転車を含む通勤は、自転車以外での通勤に比べ、心血管疾患(HR:0.79、95%CI:0.69~0.90)、がんの新規診断(0.89、0.84~0.94)、全死因死亡(0.88、0.78~1.00)のリスクが低かった。また、10年間に1,000人が自転車または自転車を含む通勤に変更した場合、負傷による新規入院は26件(1週間以内の入院23件、1週間以上の入院3件)増加するのに対し、がんの新規診断は15件減少し、心血管イベントは4件、死亡は3件減少すると推定された。 著者は、「これらの自転車通勤のリスクは、活動的な通勤による健康上の有益性との関連において考察すべきであり、英国における自転車のより安全な基盤設備の必要性を強調するものである」と指摘している。

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COVID-19への抗HIV薬ロピナビル・リトナビル、RCTで有意差認めず/NEJM

 重症COVID-19入院成人患者において、抗HIV薬のロピナビル・リトナビルは標準治療よりも有効とはいえないとの見解を、中国・National Clinical Research Center for Respiratory DiseasesのBin Cao氏らが、199例を対象に行った非盲検無作為化比較試験の結果、示した。SARS-CoV-2による重症疾患の効果的な治療としての薬物療法はまだ判明していない。結果を踏まえて著者は、「重症患者においてさらなる試験を行い、効果的と思われる治療の確認・除外を行う必要がある」と述べている。NEJM誌オンライン版2020年3月18日号掲載の報告。標準治療に加えてロピナビル・リトナビルを1日2回14日間投与 研究グループは、検査でSARS-CoV-2感染が確認され、COVID-19による肺炎が胸部画像検査で認められ、循環空気呼吸時に動脈血酸素飽和度(SaO2)94%以下、または酸素分圧(PaO2)/吸入酸素濃度(FiO2)が300mmHg未満の18歳以上の患者を対象に試験を行った。 被験者を無作為に2群に分け、一方には標準治療に加えロピナビル・リトナビル(それぞれ400mgと100mg)を1日2回14日間投与し、もう一方の群には標準治療のみを行った。 主要エンドポイントは、臨床的改善までの期間で、7分位尺度で2ポイント以上の改善または退院のいずれか早いほうとした。臨床的改善までの期間、28日死亡率も、標準治療のみ群と比べて有意差なし 適格被験者199例が無作為化を受けた(ロピナビル・リトナビル群99例、標準治療群100例)。 臨床的改善までの期間について、ロピナビル・リトナビル群と標準治療群に有意差はなかった(臨床的改善に関するハザード比[HR]:1.24、95%信頼区間[CI]:0.90~1.72)。 28日死亡率も、ロピナビル・リトナビル群19.2%、標準治療群25.0%で有意差はなかった(群間差:-5.8ポイント、95%CI:-17.3~5.7)。また、さまざま時点でウイルスRNAが検出可能だった患者の割合も両群で同程度だった。 修正ITT解析では、ロピナビル・リトナビル群は標準治療群に比べ、臨床的改善までの期間中央値が1日短いことが観察された(HR:1.39、95%CI:1.00~1.91)。 ロピナビル・リトナビル群では消化管関連の有害事象発現頻度が高かったが、重篤な有害事象の発現頻度は標準治療群で高かった。ロピナビル・リトナビル群の13例(13.8%)が、有害事象のために早期に服用中止となった。

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抗体検査【今、知っておきたいワクチンの話】総論 第4回

はじめに2019年4月から、風疹対策として、特定年齢の男性を対象とした抗体検査とワクチンの提供サービスが始まった。しかし、実際にワクチン接種の効果を判定するために測定された抗体価の解釈は難しい。ここでは抗体価検査全般とその解釈について述べる。抗体検査について理解を深める前に以下の3点に注意しておきたい。(1)現在入手可能なワクチンは、抗体を産生することで疾患を予防するという機序が主ではあるが、実際に病原体に曝露した際には細胞性免疫をはじめとした他のさまざまな免疫学的機序も同時に作用することがわかっている。したがって、抗体価と発症/感染予防には必ずしも相関性がないことがある。(2)免疫の有無は、年齢、性別、主要組織適合抗原(major histocompatibility complex::MHC)などによっても左右される。(3)“免疫能”の定義をどこにおくか(侵襲性感染症/粘膜面における感染の予防、感染/発症の予防)によっても判定基準が変わってくる。以上を踏まえた上で読み進めていただきたい。抗体検査法一般的に用いられる方法としては次の5つがある。EIA法(Enzyme-Immuno-Assay:酵素免疫法)/ ELISA法(Enzyme-Linked Immuno Sorbent  Assay:酵素免疫定量法)HI法(Hemagglutination Inhibition test:血球凝集抑制反応)NT法(Neutralization Test:中和反応)CF法(Complement Fixation test:補体結合反応)PA法(Particle Agglutination test:ゼラチン粒子凝集法)このうちCF法は感度が低いため、疾患に対する免疫の有無を判断する検査法としては適さない。ワクチンの効果判定や病原体に対する防御能の測定にあたって最も有効とされているのはPRN法(plaque reduction neutralization)による中和抗体の測定である。しかし、中和抗体の測定は手技が煩雑で判定にも時間がかかるため、実際には様々な抗体の中から発症予防との相関があるとされるもので、検査室での測定に適したものが使用されることが多い。各疾患のカットオフ値について麻疹および風疹については、発症予防および感染予防に必要とされる抗体価が検査別にある程度示されている(表1)1)が、ムンプス、水痘については未確定である。表1 麻疹・風疹における抗体価基準1)画像を拡大する1)麻疹(Measles)麻疹に対する免疫の有無を判断するうえで最も信頼性が高い検査法はPRN法による中和抗体の測定であるが、前述のように多数の検体のスクリーニングには向いていない。WHOは中和抗体(PRN法)で120mIU/mL以上をカットオフとしている2)。これは中和抗体(PRN法)≧120mIU/mLであればアウトブレイク時にも発症例が見られなかったことによる。一方、わが国で用いられている環境感染学会の医療従事者に対するワクチンガイドライン3)ではIgG抗体(EIA法)で16以上を陽性基準としており、国際単位へ変換すると720mIU/mL(EIA価×45=国際単位(mIU/mL))となる。麻疹抗体120mIU/mLは発症予防レベルであるが、報告によっては120~500mIU/mLでも発症がみられたとするものもある4)。したがって曝露の機会やウイルス量が多い危険性のある医療従事者ではより高い抗体価を求めるものとなっている。2)風疹(Rubella)古くから用いられているのはHI法であり、8倍以上が陽性基準とされている。HI法と他の検査を用いた場合の読み替えに関しては、国立感染症研究所の公開している情報が有用である5)。1985年にNCCLS(National Committee on Clinical Laboratory Standards)は風疹IgG抗体>15IU/mLを、発症予防レベルに相当する値として免疫を有している指標とした。1992年に数値は10IU/mLに引き下げられたが、それ以降のカットオフの変更はなされていない。その後の疫学データなどから独自にカットオフを引き下げて対応している国もある6)。環境感染学会のガイドラインではIgG(EIA法:デンカ生研)≧8.0を十分な抗体価としているが、国際単位へ変換すると18.4IU/mL(EIA価×2.3=国際単位(IU/mL))となり、高めの設定となっていることがわかる。これは麻疹と同様に曝露の機会や多量のウイルス曝露が起こる危険性があるためである。ただし、HI法で8倍以上、EIA法で15IU/mL以上の抗体価を有している場合でも風疹に罹患したり、先天性風疹症候群を発症したりといった報告もある7)。風疹における感染予防に必要な抗体価として、国際的なコンセンサスを得た値は示されていない。3)ムンプス(Mumps)ムンプスに対する免疫の有無を正確に測定する方法は、現在のところはっきりとはわかっていない8)。中和法で2倍もしくは4倍の抗体価が発症予防に有効であったとする報告がみられる一方、2006年に米国の大学で起こったアウトブレイクの際にワクチン株および流行株に対する中和抗体(PRN法)、およびIgG抗体(EIA法)を測定したところ、発症者は非発症者に比べて抗体価が低い傾向にはあったが、その値はオーバーラップしており、明確なカットオフを見出すことはできなかった9)。環境感染学会ではEIA価で4.0以上を陽性としているが3)、その臨床的な意義は不明である。4)水痘(Varicella)WHOが規定する発症予防に十分な抗体価はFAMA(fluorescent antibody to membrane antigen)法で4倍以上もしくはgrycoprotein(gp)ELISA法で5U/mL以上である10)。FAMA法で4倍以上の抗体価を保有していた者のうち家庭内曝露で水痘を発症したのは 3%以下であった。gp ELISA法は一般的な検査方法ではなく、偽陽性が多いのが欠点である。わが国において両検査は一般的ではなく、代替案として、中和法で4倍以上を発症予防レベルと設定し、IAHA(immune adherence hemagglutination:免疫付着赤血球凝集)法で4倍以上、EIA法で4.0以上をそれぞれ十分な抗体価としているが3)、その臨床的な意義は不明である。その他の代表的なワクチン予防可能疾患を含めた発症予防レベルの抗体価示す(表2)11,12)。一般的に抗体価測定が可能な疾患としてA型肝炎、B型肝炎について述べる。表2 代表的なワクチン予防可能疾患の発症予防レベル抗体価11,12)画像を拡大するND:未確定* :侵襲性肺炎球菌感染症の発症予防5)A型肝炎(Hepatitis A)13,14)A型肝炎ウイルスに対して、有効な免疫力を有するとされる抗体価の基準値は明確には示されていない。測定法にもよるが、有効な抗体価は10~33mIU/mLとされており、VAQTA(商標名)やHAVARIX(商標名)といったワクチンの臨床試験における効果判定は抗体価10mIU/mL以上を陽性としている。実臨床の場ではワクチン接種前に要否を確認するための測定は行うが、ワクチン接種後の効果判定として通常は測定しない。6)B型肝炎(Hepatitis B)3回のワクチン接種完了後1~3ヵ月の時点でHBs抗体価測定を行う。HBs抗体≧10mIU/mLが1回でも確認できれば、その後抗体価が低下しても曝露時に十分な免疫応答が期待できることから、WHOは免疫正常者に対してワクチンの追加接種は不要としている15)。おわりにここまで述べてきたように、各ウイルスに対する抗体価の基準についてはわかっていないことが多い。これは感染防御に働くのが単一の機構のみではないことに起因する。国際基準とわが国の基準の違いも前述の通りである。麻疹、風疹、ムンプス、水痘に関しても、代替案としての抗体検査が独り歩きしてしまっているが、個人の感染防御という点において重要なのは、抗体価ではなく1歳以上における2回のワクチン接種歴である。接種記録がなければ抗体陽性であってもワクチン接種を検討するべきである。まれな事象として2回の接種歴があっても各疾患が発症したとする報告はあるが、追加のワクチン接種で抗体価を上昇させることで、そのような事象を減らすことができるかは現時点では明確な答えは出ていない。現在、環境感染学会ではガイドラインの改訂がすすめられており、2020年1月まで第3版のパブリックコメントが募集された。近日中に改訂版が公表される予定であり、基本的には1歳以上で2回の確実な接種歴を重視した形になると考えられる16)。抗体価の測定に頼るのではなく、小児期から確実に2回の接種率を上昇させることでコミュニティーからウイルスを根絶すること、そして個人および医療機関でその記録の保管を徹底することの方が重要である。1)庵原 俊. 小児感染免疫. 2011;24:89-95.2)The immunological basis for immunization series. Module 7: Measles Update 2009. World Health Organization, 2009. (Accessed 03/25, 2019)3)日本環境感染症学会ワクチンに関するガイドライン改訂委員会. 医療関係者のためのワクチンガイドライン 第2版. 日本環境感染学会誌. 2014;29:S1-S14.4)Lee MS, et al. J Med Virol. 2000;62:511-517.5)風疹抗体価の換算(読み替え)に関する検討. 改訂版(2019年2月改定). (Accessed 03/20, 2019)6)Charlton CL, et al. Hum Vaccin Immunother. 2016;12:903-906.7)The immunological basis for immunization series. Module 11: Rubella. World Health Organization, 2008.(Accessed 03/25, 2019)8)The immunological basis for immunization series. Module 16: Mumps. World Health Organization, 2010.(Accessed 03/25, 2019)9)Barskey AE, et al. J Infect Dis. 2011;204:1413-1422.10)The immunological basis for immunization series. Module 10: Varicella-zoster virus. World Health Organization, 2008.(Accessed 03/25, 2019)11)Plotkin SA,et al(eds). Plotkin's Vaccines(7th Edition). Elsevier. 2018:35-40.e4.12)Plotkin SA. Clin Vaccine Immunol. 2010;17:1055-1065.13)The immunological basis for immunization series. Module 18: Hepatitis A. World Health Organization, 2011. (Accessed 03/25, 2019)14)Plotkin SA, et al(eds). Plotkin's Vaccines (Seventh Edition).Elsevier.2018:319-341.e15.15)The immunological basis for immunization series. Module 22: Hepatitis B. World Health Organization, 2012.(Accessed 03/25,2019)16)医療関係者のためのワクチンガイドライン 第3版. 2020.講師紹介

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認知症患者のせん妄スクリーニングと死亡率

 せん妄は、高齢者の死亡率増加に関連している。英国内のガイダンスでは、すべての認知症入院患者に対してせん妄スクリーニングが推奨されているが、その検討は行われていなかった。英国・South London and Maudsley NHS Foundation TrustのDavid Codling氏らは、認知症入院患者に対するせん妄スクリーニングの影響について検討を行った。Aging & Mental Health誌オンライン版2020年2月21日号の報告。認知症入院患者に対するせん妄スクリーニングは死亡率低下と関連 第3次認知症全国調査に参加したイングランドおよびウェールズの199施設に入院した1万47例を対象に、データの2次分析を行った。入院中に死亡した認知症患者に関するデータを、生存している患者のデータと比較した。せん妄スクリーニング、認知機能テストを行った患者の死亡率を算出し、せん妄患者では専門医の臨床レビューを行った。 認知症入院患者に対するせん妄スクリーニングの影響について検討した主な結果は以下のとおり。・認知症患者の平均年齢は84±7.9歳、男性の割合が40.1%、英国人の割合が82.1%であった。・入院中に死亡した患者は、1,285例(12.8%)であった。・せん妄スクリーニングを実施した認知症患者は4,466例(44.5%)であり、そのうち2,603例(58.6%)が陽性であった。・せん妄スクリーニング(OR:0.79、95%CI:0.69~0.90)および認知機能テスト(OR:0.71、95%CI:0.61~0.82)を実施した認知症患者の死亡率は低かった。 著者らは「認知症入院患者に対するせん妄スクリーニングおよび認知機能テストの実施は、死亡率の低下と関連していることが示唆された。これらの関連性が因果関係であるかは不明だが、本所見は、認知症入院患者に対するせん妄スクリーニングのレベル向上のために行われている努力を支持するものである」としている。

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術後肺合併症、有効な予防的介入とは/BMJ

 術後肺合併症(postoperative pulmonary complication:PPC)はよくみられる病態で、術後の合併症や死亡と関連する。英国・University College HospitalのPeter M. Odor氏らは、PPCに対する予防的介入戦略について検討し、術中の肺保護的換気や目標指向型血行動態療法の有効性を示唆する中等度の質のエビデンスはあるものの、質の高いエビデンスによって支持される介入法はないことを示した。研究の詳細は、BMJ誌2020年3月11日号に掲載された。PPCのリスクを低減するために、さまざまな介入が行われているが、実臨床での予防処置と、介入試験のアウトカムデータの不一致を示すエビデンスが報告されているという。周術期介入の効果をメタ解析で評価 研究グループは、非心臓手術を受けた成人患者において、PPCの発生を抑制する周術期介入の効果に関する最良のエビデンスを特定して評価し、これらのエビデンスを統合することを目的に、無作為化対照比較試験の系統的レビューとメタ解析を行った(研究助成は受けていない)。 1990年1月~2017年12月の期間に、医学データベース(Medline、Embase、CINHAL、CENTRAL)に登録された文献を検索した。対象は、非心臓手術の施行前、施行中または施行後に行われ、プロトコールで規定された短期的な医学的介入について検討した無作為化対照比較試験であった。解析には、PPCのアウトカムの臨床診断基準を有する試験を含め、手術手技、生理学的または生化学的なアウトカムに関する研究は除外した。 メタ解析では、リスク比(RR)とその95%信頼区間(CI)を算出した。エビデンスの質はGRADE法で要約した。主要アウトカムはPPCの発生とし、副次アウトカムには呼吸器感染症、無気肺、入院期間、死亡が含まれた。エビデンスの信頼性と結論性の評価を行うために試験逐次解析を行った。介入による有害な作用の検討は実施しなかった。7つの介入で、低~中等度の質のエビデンス 11のカテゴリーに分けられる34の介入戦略を検討した117件の試験(2万1,940例)が解析の対象となった。メタ解析には、介入が十分に同質でないため統合できない22件を除く95件の無作為化対照比較試験(1万8,062例)が含まれた。 PPCの発生を抑制する介入に関して、質の高いエビデンスは認められなかった。一方、以下の7つの介入が、PPC低減の可能性を示唆する低~中等度の質のエビデンスと信頼区間を示した。 術後回復能力強化(ERAS)経路(RR:0.35、95%CI:0.21~0.58、p<0.001、エビデンスの質:低)、予防的粘液溶解療法(0.40、0.23~0.67、p<0.001、低)、持続的気道陽圧(CPAP)による術後非侵襲的換気(0.49、0.24~0.99、p=0.05、低)、術中の肺保護的換気(0.52、0.30~0.88、p=0.001、中)、予防的呼吸器理学療法(0.55、0.32~0.93、p=0.02、低)、硬膜外鎮痛(0.77、0.65~0.92、p=0.003、低)、目標指向型血行動態療法(0.87、0.77~0.98、p=0.02、中)。 また、PPCの予防では、インセンティブスパイロメトリー(RR:1.06、95%CI:0.85~1.34、p=0.59)は有益でないことを示す中等度の質のエビデンスが得られた。試験逐次解析による調整で、4つの介入(予防的呼吸器理学療法、硬膜外鎮痛、ERAS経路、目標指向型血行動態療法)は、PPCの相対リスクの25%低減が明確に裏付けられた。ほかの介入については、これらの介入と同等の相対リスクの低減をもたらすことを、支持または支持しないデータは得られなかった。 データは少ないが、呼吸器感染症および無気肺には、CPAPによる術後非侵襲的換気(それぞれp=0.04、p=0.04)、粘液溶解療法(p=0.04、p=0.002)、呼吸器理学療法(p=0.002、p=0.01)、ERAS(p=0.05、p=0.04)の治療効果が示された。肺保護的換気も、これらの病態に有効であったが、呼吸器感染症では統計学的に有意ではなかった(p=0.09、p=0.05)。 1つの試験で、ERAS(p=0.01)と目標指向型血行動態療法(p=0.01)は入院期間を短縮した。また、きわめて限定的なデータではあるが、院内死亡率の抑制に有益な介入は1つもなかった。 著者は、「これらの介入の多くについて、有効性に関する結論的なエビデンスを得るには、バイアスのリスクが低い新たな試験が必要であることが示唆される」としている。

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上部尿路上皮がん、術後化学療法で無病生存率改善/Lancet

 局所進行上部尿路上皮がん(UTUC)患者の治療において、腎尿管全摘除術後のゲムシタビン+プラチナ製剤併用による術後補助化学療法は、これを行わない場合に比べ無病生存(DFS)率を改善することが、英国・ランカシャー州教育病院国民保健サービス(NHS)ファンデーショントラストのAlison Birtle氏らの検討「POUT試験」で示された。研究の成果は、Lancet誌オンライン版2020年3月5日号に掲載された。UTUCはまれな疾患で、膀胱上皮がんに比べて各病期の予後が不良とされる。UTUC患者の治療では、根治的腎尿管全摘除術後の術後化学療法の有益性に関して、国際的な合意は得られていないという。術後化学療法の有用性を評価する無作為化試験 本研究は、英国の71施設が参加した非盲検無作為化第III相試験であり、2012年6月~2017年11月の期間に患者登録が行われた(Cancer Research UKの助成による)。 対象は、年齢16歳以上、糸球体濾過量(GFR)≧30mL/分で、UTUCの根治的腎尿管全摘除術(画像上または肉眼的に異常と判定されたすべてのリンパ節の郭清を含む)を受け、術後のStageが筋層非浸潤性(pT2~pT4、N any)またはリンパ節転移陽性(pT any、N1~3)で、非転移性(M0)の病変を有し、組織学的に移行上皮がんが主の患者であった。 被験者は、サーベイランスを受ける群、または術後90日以内に、21日を1サイクルとする化学療法を4サイクル受ける群に、1対1の割合で無作為に割り付けられた。化学療法は、シスプラチン(CDDP、70mg/m2)またはカルボプラチン(CBDCA、AUC 4.5または5)が第1日に、ゲムシタビン(GEM、1,000mg/m2)が第1日と第8日に静脈内投与された。 主要評価項目は、intention-to-treat(ITT)集団におけるDFS(割り付け時から初回の再発、転移、死亡までの期間)の割合とした。 本試験は、261例を登録した時点で、事前に規定された中間解析において有効性に関する早期終了の基準を満たしたため、患者登録が中止された。再発/死亡リスクが55%低減 71の参加施設中57施設から261例が登録された。化学療法群に132例、サーベイランス群には129例が割り付けられ、割り付け後にデータの使用への同意を撤回した化学療法群の1例を除く260例(ITT集団)が解析に含まれた。 ベースラインの全体の年齢中央値は68.5歳(IQR 62.0~74.1)、女性が32%含まれた。94%がpT2~pT3、91%がN0で、64%がGFR≧50mL/分であった。腫瘍部位は腎盂が35%、尿管が34%、両方が30%で、術式は開放手術が15%、腹腔鏡手術が82%、ロボット手術が2%であり、顕微鏡的切除断端陽性率は12%だった。フォローアップ期間中央値は30.3ヵ月(IQR:18.0~47.5)。 実際に化学療法を受けたのは126例で、割り付け後にGFRが低下したため76例中16例(21%)がCDDPからCBDCAに、割り付けから治療開始前にGFRが上昇したため50例中1例(2%)がCBDCAからCDDPに切り替えた。 DFS関連イベントの発生率は、化学療法群が27%(35/131例)と、サーベイランス群の47%(60/129例)と比較して有意に低く、相対リスクが55%改善された(ハザード比[HR]:0.45、95%信頼区間[CI]:0.30~0.68、log-rank検定のp=0.0001)。 3年DFS率は、化学療法群が71%(95%CI:61~78)、サーベイランス群は46%(36~56)であり、両群間の推定絶対差は25%(11~38)であった。DFS期間中央値は、化学療法群は未到達、サーベイランス群は29.8ヵ月だった。また、転移または死亡のリスクは、化学療法群で52%低下した(HR:0.48、95%CI:0.31~0.74、log-rank検定のp=0.0007)。 Grade3以上の急性治療関連有害事象は、化学療法群が44%(55/126例、GEM+CDDP 44%[31/71例]、GEM+CBDCA 44%[24/55例])、サーベイランス群は4%(5/129例)で認められた(p<0.0001)。化学療法群では、Grade3以上の好中球数の減少(36%)、血小板数の減少(10%)、悪心(6%)、発熱性好中球減少(6%)、嘔吐(6%)がサーベイランス群よりも多く、重篤な有害事象は32%にみられた。治療関連死の報告はなかった。 QOL(EORTC QLQ-C30、EQ-5D-5L)は、化学療法期間中とその直後(3ヵ月時、p=0.0028)は化学療法群で不良であったが、6ヵ月後にはこの差は解消した。 著者は、「プラチナ製剤ベースの化学療法は、UTUC患者の腎尿管全摘除術後の標準的な補助化学療法と考えられる」としている。

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第38回 高電位(差)の基準、いくつ知ってる?(後編)【Dr.ヒロのドキドキ心電図マスター】

第38回:高電位(差)の基準、いくつ知ってる?(後編)「高電位(差)…」のタイトルにも関わらず、前回はQRS波の「高さ」よりも「向き」(電気軸)に注目した内容になってしまいました(笑)。前回と同じ症例を用いて、いよいよ“高すぎる”QRS波の考え方について解説します。謎の言葉“ライオン“や“エステ”などが登場しますが、読み進めると真相が明らかになるでしょう。では、さっそくDr.ヒロのレクチャーにご注目あれ!症例提示35歳、男性。腎移植後の急性拒絶反応のため、血液透析を再導入。その後、10年以上維持透析中。特別な自覚症状はなし。血圧150/90mmHg、脈拍82/分。Hb:11.9g/dL、BUN:67mg/dL、Cre:14.2mg/dL、K:4.8mEq/L。定期検査として施行された心電図を示す(図1)。(図1)定期検査の心電図[再掲]画像を拡大する【問題1】代表的な左室高電位の診断基準を念頭に置き、心電図(図1)がそれらに該当するか考察せよ。解答はこちら該当しない解説はこちら今回も前回と同じ、若年ながら維持透析がなされている男性の心電図を扱います。タイトル通り、今回のメインテーマは「QRS波高」について考えること。Dr.ヒロの系統的判読の語呂合わせでは、“クルッと”の“ル”で、R波“スパイク・チェック”の部分に該当します。「向き」「高さ」そして「幅」の3つを確認しましょう。「高さ」では、“高すぎる”と“低すぎる”の条件に該当しないかを確認するのが主なプロセスです。今回の例では“低すぎる”のほうは一見して考えにくく(細かな数値ではなく“常識”としてわかるセンスが欲しい)、主に“高すぎる”かどうかについて焦点を当てて見ていくことにします。“答えなき質問で負けん気に火がつく”心電図でQRS波高が“高すぎる”、すなわち「(左室)高電位」(increased QRS voltage)と診断するための基準ですが、果たして皆さんはいくつ言えるでしょうか? 2個?3個?それとも5個ですか? 基準に登場する細かな数値を必死で覚えようとするあまり、心電図が嫌いになるようでは本末転倒なので、最終的にはボク流のオススメな考え方に着地して安心してもらうつもりです。前フリとして、少ーしだけ昔話を。10年ほど前のことですが、今でも昨日のことのように思い出されるエピソードがあります。当時、ボクはピチピチ!?の大学院生でした。循環器レジデントも終え、臨床にもある程度手応えを感じ、心電図に関しても以前のような“劣等生”ではなくなっていた頃です。病棟だったか研究室だったかは忘れましたが、心電図や不整脈に詳しいX先生から試問を受けました。【X先生】「高電位の診断基準は? 10個は言えるわな。」【Dr.ヒロ】「えっ?10個ですか! V1のS波とV5のR波を足して35mmとか、V5かV6でしたっけ、20…いくつでしたかね…」【X先生】「V5が26mm、V6は20mmな*1。そいでほかは?」【Dr.ヒロ】「え? まだあるんですか…」【X先生】「あるよ。何言ってんのよ。肢誘導とかもあるだろ。先生は心電図のごくごく表面しか知らないな。あのなぁ、本当のプロになりたかったらな、こんなん10個は空で言えないと失格なんだよ!」そう言って、正解は教えないままその先生はボクの元を去りました。*1:今回紹介する基準とは若干違います。欧米の文献と日本人の違いなどもあるのでしょうか。前置きが長くなりましたが、こんな経緯があったためか、「高電位(差)」という言葉を聞くと、今でも無性にチャレンジスピリットが湧いてくるんです! ですから、今回のレクチャーはいつも以上に熱いです(笑)。早速はじめましょう。次のリスト(図2)を見てください。(図2)こんなに覚えられない!…「左室肥大」の診断基準画像を拡大するボクが事あるごとに参照しているガイドライン的文献1)からの引用です。タイトルは「左室肥大の診断基準」ですが、その大半が「左室高電位」の条件で占められていることがわかるでしょう。はじめに言っておきますが、これを必死で覚える必要はありません(誰も本気でしようと思わないでしょうが)。当然、項目一つ一つを解説することも、皆さんに覚えてもらうこともボクの本意ではありません。なので、この中の“定番商品”に値する有名な3つの診断基準パッケージから紹介していきます。“最も有名な『そこのライオン』基準”まずは“そこのライオン”から。「また!何言ってんの、この人?」って思った方、英字を見てください。ね、“そこの(Sokolow)ライオン(Lyon)でしょ(笑)。■Sokolow-Lyon基準2)■ “そこのライオン”(1)SV1+RV5(or V6) ≧ 35mm(2)RaVL ≧ 11mmこの基準は有名です。(1)は先ほどの会話にも登場していましたが、ボクが最初に覚えたもので、この和を「Sokolow-Lyon(S-L) index」と呼びます。『V1のS波(深さ)とV5のR波(高さ)を足して35mmね。心電図ってそうやって読むのか。なんか高尚だなぁ』、そんな風に感じた記憶があります。実際はV5でもV6でもいい(大きいほうを採用)のですが、V5が用いられることが多いかもしれません。このような“◯+△”型のクライテリアは、もとは「RI+SIII」2)に始まり、一般的に「左室パターン」(第17回)のQRS波形を呈する“イチエル・ゴロク”(I、aVL、V5、V6)のどれかと“その反対側”から構成されると考えると理解しやすいです。肢誘導界の円座標を頭に思い描けば、IIIは“Iの反対側”ですし、胸部誘導ではV5・V6の反対側と言ったらV1ですよね。この“反対側”では、左室のど真ん前に位置する”イチエル・ゴロク”(側壁誘導)でR波として表現される左室成分がS波として反映されているのだと考えれば良いのです。心電図(図1)で見てみましょう。「SV1」、「RV5」、そしてS-L indexが「R+S:3.88mV」と表示されています。これがそうです。「3.88mV」を長さに直せば「38.8mm」となるので、このSokolow-Lyon基準では「左室高電位」に該当します。“そこのライオンで気をつけること“Sokolow-Lyon基準の原典3)はなんと、70年前の論文です。それが今もなお生き続けていることは称賛すべきですが、S-L indexに関しては、いくつか問題点が指摘されています。何と言っても、対象の「年齢」や「性別」が考慮されていないという点です。25歳の男性も80歳の女性も同じ35mm(3.5mV)で判定するのです。冷静に考えると、これってオカシイですよね。健診の心電図や心エコーでの計測値だって、年齢・性別に応じた基準値が設けられています。今回の症例は若年ながら病気を有していますが、同年代の大半の男性はそうではなく、健康だと思います。「RV5(or RV6)」は左室の“パワー”(起電力)を反映するものですから、本人も心臓も元気みなぎる若年男性では、ピンッと立ったスパイクとなり、高率に基準(1)を満たしてしまうことが知られています。左室高電位は左室肥大の条件の一つです。その病的意義を考えると、若くて健康な男性に「左室肥大(疑い)」を頻発させてしまうこの基準は、あまり現実にそぐわないのかもしれません。同様なことが男女問わずアスリート(競技者)にも言われています*2。*2:普段、日本で診療しているとあまり意識されないかもしれませんが、「人種」も考慮すべき一因です。それを解決する一つの方法として、若い男性についてはカットオフを35mmではなく「50mm」にしたほうがいいという声があります4)。国内の心電計メーカーでも同様な点を踏まえて、年齢・性別に応じた高電位差の基準として、20~30歳前後の男性では50mm前後を自動診断の閾値として採用しているところがあるようです。ですから、今回の心電図(図1)では、左室高電位の基準に満たないというのがボクの見解になります。では、一方の(2)「RaVL≧11mV」ではどうでしょうか? 前回のレクチャーで述べましたが、今回のように「左脚前枝ブロック」(LAFB)の心電図では、「肢誘導が“縦に伸びる”」ことに注意する必要があるのでした。つまり、肢誘導のQRS波高が本来よりも“かさ増し”されている場合があるのです。そのため、IやaVLを含む高電位基準はそのままでは使えない可能性が高いです。そこで、LAFBでは、胸部誘導を用いるほう方がいいという意見5)はもっともかもしれません(あまり浸透していませんが)。もう一つは、“そこのライオン”基準をmodifyするやり方で、“2割増し”の「13mm」をカットオフにする考え方1)。ボク自身はこれがお気に入りです。今回の心電図では、RaVLは「11mm基準」にも該当しませんが、この点は知っておくと“物知り”だと思われること確実です。若かりし頃のボクは、基準(2)を覚えたのが嬉しくて、LAFBなのに「11mm」基準のまま“フェイク”の「左室高電位」を乱発していた日々が恥ずかしく思い出されます*3。読者の皆さんもご注意あれ。*3:投稿した論文でreviewerに指摘された記憶も…(笑)“こなれた男女は意外とふくよか?”2つ目のユニークな基準は、“こなれた男女、サイズは3L”です。正式にはCornell基準ですが、ここでもボク流を受容する大きな心を持ってくださいね(笑)。ニューヨークからの報告ですから、なんかオシャレ、いや~こなれてマス。■Cornell基準6)■ “こなれた男女、サイズは3L”(i)SV3+RaVL > 28mm(男性)(ii)SV3+RaVL > 20mm(女性)“男女”は性別ごとに基準が違いますよ、ということ。今回取り上げる中で唯一「性差」が考慮されている点は評価できるのですが、実際には驚くぐらい浸透していません(ボクもよく忘れます)。この基準を涼しい顔で言える人はタダモノではないはず! なお、女性に関しては「+2mm」して「22mm」のほうがいいという議論もあり、なおややこしいことになっています7)。(図1)の男性では、「SV3=17mm」、「RaVL=9mm」なので、一応セーフでしょうか。ちなみに、“サイズは3L”は「SV3+RaVL」を思い出しやすくするためにつけています。ただ、V3誘導がaVL誘導の“反対側”とはイメージしにくいため、個人的にはこうもしないと覚えられません…。“浪費エステはポイント制“紹介する3つ目はRomhiltとEstesの二氏らによる診断基準です。ボク流に言うと“浪費エステはポイント制”です。だんだん無理くり感が…。■Romhilt-Estesスコア8)■ “浪費エステ”(A)肢誘導:R波(or S波)≧ 20mm(B)SV1(or V2) ≧ 30mm(C)RV5(or V6) ≧ 30mmこの“浪費エステ”は「左室肥大」を診断するために開発されたスコアリングシステム(それが“ポイント制”とした意味です)で、そこからQRS波高に関連する部分を抜き出しています(残りの条件に関しては、次回述べる予定)。(A)~(C)いずれか一つを満たすときに「3点」とします*3。これまでと少し数値が異なる点がややこしいでしょうか。でも、これが一つの“完成品”なので文句は言えません。*3:最高13点。4点以上で「probable/likely」、5点以上で「definite/present/certainly」とされる。今回の心電図は(A)~(C)のいずれも該当しません。“最近の心電計と現実的な対応”さて、ここまでの話、いかがですか? 『とっても覚えられないよ(泣)』なんて方も少なくないと予想します。それでも、“そこのライオン”と“こなれた男女”そして“浪費エステ”の3つの診断基準で7個…。前述のX先生の要望には及びません。ただ、これだけでも多くの人にとって、長期間正しく暗記できるレベルを越えていると思います。やはり“記憶”に関してはコンピュータに任せましょう(Dr.ヒロでいう“カンニング法”)。最近の心電計の波形認識・診断システムには、たくさんの左室高電位基準が網羅されており、心電計が「高電位」と言ったら素直にそうなのかと認める姿勢も悪くないとボクは思います。心電図(図1)でも、「高電位(左室に対応する誘導)V1、V5」と表記されていますね。これは普段から最後に自動診断にも必ず目を通すクセをつけておくことで決して忘れません。ただ、先ほど述べた年齢・性別の影響や、S-L indexだけ満たして、ほかはすべて該当しない時に、それを「高電位」と診断するかどうかの最終判断が、われわれ“人間”の仕事です。もう一つ。ボクの教科書は、原則、数値の暗記にこだわらないスタンスなので、次のやり方を紹介しておきましょう9)。この手法、“(ブイ)シゴロ密集法”とでも名付けましょうか。“シゴロ”はV4、V5、V6のことで、このR波が3つとも空をつんざくほどの勢いで直上の誘導領域まで届いているときに「左室高電位」と診断する方法です。別症例の心電図(図3)を見てください。(図3)左室高電位はブイシゴロに注目!画像を拡大する赤太枠で囲った部分にご注目あれ! この心電図は閉塞性肥大型心筋症で通院中の80歳、女性のものです。たしかに“(ブイ)シゴロ密集法”陽性で、典型的なST-T変化も伴いますので、バリッバリの「左室肥大」が疑われます。この場合、今回述べた「左室高電位」基準をほぼすべて満たしますが、これを得意のエイヤッでV4~V6誘導だけの“見た目”で診断しちゃえというのがDr.ヒロ流。こうすることで細かな数値と決別することができるんです。この感覚で、もう一度心電図(図1)を見直してみましょう。するとV6誘導がおとなしめなので、その意味でも「該当しない」と言っていいのではないでしょうか。“おわりに”以上、話し出すとキリがないのですが、2回に分けて “高すぎる”QRS波形の考え方についてお送りしました。最後の最後で一言。私たちは普段「高電位」のことを“ハイ・ボル(テージ)”(high voltage)などと呼んでしまいがちですが、ボクの調べた限りでは“和製英語”のようです(間違ってたらゴメンナサイ)。「increased QRS voltage」というのが正しいそう。知らなかった方は気を付けてくださいね。次回は、“Romhilt-Estes”(浪費エステ)のスコアを用いて「左室肥大」について考えてみましょう。では! …とまぁ、とかく“欲張り”なDr.ヒロなのでした。Take-home MessageQRS波高が“高すぎる”の診断基準はたくさんあり、可能な範囲で代表的なものをおさえておこう。数値を覚えるのが苦手なら、“(ブイ)シゴロ密集法”がオススメかも!?1):Hancock EW, et al. Circulation. 2009 Feb 19.[Epub ahead of print]2):Gubner R, et al. Arch Intern Med.1943;72:196-209.3):Sokolow M, et al. Am Heart J. 1949;37:161-186.4):Macfarlane PW, et al. Adv Exp Med Biol.2018;1065:93-106.5):Bozzi G, et al. Adv Cardiol.1976;16:495–500.6):Casale PN, et al. Circulation. 1987;75:565-572.7):Dahlöf B, et al. Hypertension.1998;32:989-997.8):Romhilt DW, et al. Estes EH Jr. Am Heart J.1968;75:752-758.9):杉山裕章. 心電図のみかた、考え方[応用編]. 中外医学社;2014.p.125-149.【古都のこと~梅宮大社】京都の梅を語りましょう。『古都のこと』でも既にいくつか紹介していますが*1、今回は右京区梅津の梅宮大社(うめのみやたいしゃ)です。松尾大社からも徒歩で行ける距離にあります。元々は山城国にあり*2、平城京を経て嵯峨天皇の皇后であった橘嘉智子により平安時代前期に現在の場所に遷座されたとのこと。御祭神として酒解神(さかとけのかみ)を本殿に祀ります。文字通り“酒造の神様”ですね*3。訪れたのは、梅産祭(うめうめまつり)が休日に重なった日でしたが、新型コロナウイルスの影響で、恒例の梅ジュース・清酒の振る舞いも中止になっていました。参拝者も少なく、どんよりとした気分が立ちこめていましたが、境内および四季折々の花が美しい回遊式庭園のある神苑には、至る所で紅白梅が元気に花を咲かせていました。桜とは異なる種類の春の訪れ。来年こそは、この感動をより多くの方々と共有したいなぁと心の底から思いました。*1:北野天満宮を筆頭に、岡崎別院、随心院でも扱った。*2:綴喜(つづき)群井出町付近とされる。橘諸兄(もろえ)の母県犬養三千代(あがたいぬかいみちよ)が橘氏の氏神として創祀したと伝わる。三千代は藤原不比等の夫人となったため、藤原氏の摂政・関白の家筋が橘氏長者も代行し、春日神社(藤原氏の氏神)同様に梅宮大社にも崇敬を捧げた。*3:他に橘嘉智子が梅宮神に祈願し皇子(仁明天皇)を授かったことから、授子安産の神徳もあるとされる。本殿横の「またげ石」を跨ぐと子を授かると伝わる。

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小細胞肺がんの1次治療、アテゾリズマブ+化学療法の患者評価(IMpower133)/Ann Oncol

 進展型小細胞肺がん(ES-SCLC)へのカルボプラチン+エトポシド(CP/ET)+抗PD-L1抗体アテゾリズマブの併用の1次治療に関する「IMpower133試験」の安全性および患者報告アウトカムの評価結果が、米国・メイヨー・クリニックのA.S. Mansfield氏らにより示された。アテゾリズマブ+CP/ETレジメンはプラセボ+CP/ETと安全性プロファイルが同様であり、患者報告の健康関連QOL(HRQoL)に重大な影響は与えないことが示された。結果を踏まえて著者は、「示されたデータは、ES-SCLC 1次治療としてのアテゾリズマブ+CP/ETのベネフィット・リスクプロファイルを明確に示すもので、同レジメンを新たな標準治療として支持することをさらに裏付けるものであった」とまとめている。Annals of Oncology誌2020年2月号掲載の報告。  IMpower133試験において患者は、CP/ETに加えてアテゾリズマブまたはプラセボの21日/サイクルを4サイクル受け(導入期)、その後アテゾリズマブまたはプラセボを、病勢進行またはベネフィットがなくなるまで投与された(維持期)。有害事象(AE)の評価と、治療期間中3週間ごとにEuropean Organisation for the Research and Treatment of Cancer(EORTC)の生活の質に関する質問票(Core 30[QLQ-C30]とQLQ-LC13)を用いた評価が行われた。  主な結果は以下のとおり。 ・全AEおよびGrade3~4のAE、重篤なAEの発現頻度は、両フェーズ(導入期、維持期)ともに、アテゾリズマブ群とプラセボ群で同程度であった。・免疫関連AEの発現頻度は、両フェーズともにアテゾリズマブ群でより高率であった。導入期は28% vs.17%、維持期は26% vs.15%であった。・免疫関連AEで最も発現頻度が高かったのは、発疹(導入期:11% vs.9%、維持期:14% vs.4%)、甲状腺機能低下症(4.0% vs.0%、10% vs.1%)であった。・生活の質低下に関連した患者報告に基づく治療関連症状の変化は、導入期では概して同程度であり、変化のほとんどは維持期で認められた。・患者報告に基づく機能およびHRQoLは、治療開始後に両群で改善したが、アテゾリズマブ群ではHRQoLの改善がより顕著かつ持続的に認められた。

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冠動脈疾患における抗血栓療法にフォーカスしたガイドラインを公開/日本循環器学会

 日本循環器学会は2020年3月13日、「2020年JCSガイドライン フォーカスアップデート版 冠動脈疾患患者における抗血栓療法」を学会ホームページに公開した。本ガイドラインは、2019年に発表された「急性冠症候群ガイドライン(2018 年改訂版)」と「安定冠動脈疾患の血行再建ガイドライン(2018年改訂版)」の2つのガイドラインの抗血栓療法に関して、発表後に多くの重要なエビデンスや新たな概念が発表されたことから、この内容にのみ焦点を当て作成された。ガイドラインには周術期の抗血栓療法に関する項目が新設 今回の冠動脈疾患患者における抗血栓療法にフォーカスしたガイドラインでは、諸外国と異なっていると言われるわが国の虚血と出血のリスクバランスを考慮し、国内の臨床試験や大規模臨床研究を数多く引用し作成された。今回のアップデートにおける特徴は以下のとおり。1)2019年4月に欧米誌に同時掲載された学術研究コンソーシアムによる高出血リスク患者についてのコンセンサスドキュメント(Academic Research Consortium for High Bleeding Risk:ARC-HBR)を治療戦略のガイドとして採用2)ARC-HBRの評価基準を基に、低体重、フレイル、心不全、透析などのリスク因子を加味した「日本版HBR評価基準」を作成3)急性冠症候群(ACS)と安定冠動脈疾患を併せて冠動脈疾患全般における抗血栓療法とし、また実臨床に即して時系列に沿って項立て4)ガイドラインの必須項目に限定した簡易なフローチャートを作成5)「周術期の抗血栓療法」に関する項目が新設 出血リスクの評価方法については、2018年改訂版のガイドラインでは、ACS、安定冠動脈疾患ともにPRECISE-DAPTスコアが採用されたが、最近、提唱された高出血リスク(HBR)の概念が、出血リスクが高いと言われる東アジアでより実践的と考えられることから、本ガイドラインではHBRの概念が基本戦略として採用された。 今回の冠動脈疾患患者における抗血栓療法にフォーカスしたガイドラインでは他にも、Loadingのタイミングや薬剤選択が明記され、また、HBRをガイドにした抗血栓薬の投薬期間を定められた(短期DAPT後はP2Y12阻害薬単剤を推奨)。さらに、心房細動後のde-escalationについてはエビデンスに基づくものになっている。

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消火器を口腔内に噴射した男性【Dr. 倉原の“おどろき”医学論文】第159回

消火器を口腔内に噴射した男性pixabayより使用私は、これまでの人生で一度だけ消火器を使ったことがあります。大学の学園祭で小さなボヤを起こして、消火器を使ったことがあるのです。ホースを持って、レバーをぐっと握るので、そうそう失敗することはないのですが、世の中には珍しい症例報告があるもので。高橋 洋子,他消火薬剤を口腔内に噴射し, 心停止に陥った1例.日本救急医学会雑誌. 2007;18(5):208-215.これは日本救急医学会雑誌の症例報告です。タイトルの通り、消火器を口腔内に噴射してしまったというものです。この症例は68歳の男性でした。統合失調症で入院している最中、施設の消火器を自ら口にくわえて噴射したそうです。直後から全身の発汗と四肢の冷感が出現し、武蔵野赤十字病院救命救急センターへ搬送されました。収縮期血圧が60mmHgのショック状態であり、血清カリウムは10.3mEq/Lまで上昇していたそうです。消火器は40%w/w(純度)の炭酸カリウム水溶液を主成分としており(1mL中に8mEqのカリウムを含有)、これが大量に体内に吸収される可能性があります。この症例も、搬送されてから38分後に心肺停止になったそうです。また消火器はpH11.6という強アルカリ性の溶液が充填されており、強い粘膜障害が予想されます。本症例では幸いにも消化器粘膜に重度の障害はなかったそうですが、気道・食道の両方に腐食障害を起こすリスクがあるので注意が必要です。実際に気道に吸引した重症例が報告されています1)。本症例は、2時間以上にわたって心肺蘇生が行われ、CHDF等の集中治療によって救命できたそうです。ドイツでも消火用パウダーを自殺目的に飲み込み、重度のアシドーシスに陥った症例が報告されており2)、本症例のように精神科疾患がある患者さんや自殺企図のある人では、消火器ですら危険になりうるため注意が必要ですね。1)Morita S, et al. Respiratory failure by inhalation of a fire extinguisher. J Trauma.2005 Aug;59(2):504.2)Becker TS, et al. Life-threatening metabolic acidosis after ingestion of fire extinguisher powder. Anaesthesist.2018 Sep;67(9):674-678.

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長時間作用型アリピプラゾールに関するコホート研究

 アリピプラゾール月1回投与(アリピプラゾール持効性注射剤:AOM)を使用した統合失調症治療の機能およびウェルビーイング(身体的、精神的、社会的に良好な状態)に対する有効性について、ドイツ・ハンブルク・エッペンドルフ大学医療センターのDaniel Schottle氏らが実臨床での評価を行った。BMC Psychiatry誌2020年2月22日号の報告。 本研究は、6ヵ月間の多施設プロスペクティブ非介入研究として実施された。対象は、経口薬による治療から9.7(±22.3)ヵ月後にAOMへ切り替えを行い症状が安定した統合失調症患者242例(平均年齢:43.1±15.1歳、男性の割合:55%)。評価項目は、機能の全体的評価尺度(GAF)、患者のウェルビーイング(WHO-5精神健康状態表)、AOMの有効性と忍容性に関する患者および臨床医の評価とした。また、治療関連有害事象(TRAE)を評価した。 主な結果は以下のとおり。・ベースライン時の平均GAFスコアは47.0±13.9であった。患者は、機能に重大な障害を経験していることが示唆された。・治療中に60.2±17.0へと継続した改善が認められ、4週間後には強力かつ有意な改善が認められた。・ベースライン時において、患者のウェルビーイングは低く、WHO-5の平均スコアは10.6±5.6であった。・治療中に患者のウェルビーイングの継続的な改善が認められ、4週間後には強力かつ有意な改善が認められた。エンドポイントのスコアは15.4±5.5であり、6ヵ月間で4.8±6.9の改善が認められた。・これらの結果を層別化すると、35歳以下の患者でより顕著な効果が認められた(GAF:p<0.05)。・AOMの有効性および忍容性の評価では、患者(89.2%、93.7%)、臨床医(91.4%、96.8%)ともに良好/非常に良好と評価された。・TRAEの発生は、まれであった。 著者らは「統合失調症患者、主に安定している患者に対するAOM治療の開始は、機能やウェルビーイングへの有意な効果を示し、この効果は35歳以下の患者でより顕著であった。実臨床における本結果は、これまでのランダム化試験の結果を支持するものである」としている。

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COVID-19治療薬スクリーニングのための原薬提供など、各社対応/製薬協

 日本製薬工業協会(製薬協)は3月18日、治療薬スクリーニングのための原薬提供など、会員各社の新型コロナウイルス感染対策への取り組み(3月10日時点の会員会社の開示情報)について発表した。 会員各社は、厚生労働省事務連絡「新型コロナウイルス感染症の治療に用いる医薬品のスクリーニングに用いる原薬の提供依頼について」を受け、国立感染症研究所(感染研)における「新型コロナウイルス感染症の治療に用いる医薬品の基礎的なスクリーニング計画」に協力し、感染研での治療薬スクリーニングのために化合物原薬または関連論文を提供している。 また、厚生労働省事務連絡「新型コロナウイルスに関連した感染症発生に伴う医薬品原料等の確保について」の要請に応じ、医療用医薬品の安定供給のために、中国で製造されている医薬品の原料などの在庫状況および今後の製造の見通しなどの確認、必要に応じた別の製造ルートの確保など、安定供給に向けて尽力している。 なお、日本製薬工業協会では、新型コロナウイルス感染による被災救済の一環として、COVID19治療・予防研究開発を支援するためにGISAID(Global Initiative on Sharing All Influenza Data、所在地:ドイツ)に5万ユーロ(約600万円)を拠出した。

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T1N0肺がん、縮小手術の候補となるのは?

 日本人の早期肺がんの肺葉切除に関するエビデンスが示された。神奈川県立がんセンターの伊藤 宏之氏らは、薄切CTに基づき臨床病期T1N0肺がん患者の肺葉切除後の長期アウトカムを評価し、consolidation tumor ratio(胸部薄切CT上、最大腫瘍径に対する充実性成分の比=C/T比)0.5以下および腫瘍径3cm以下の患者は、予後良好で縮小手術の候補である可能性を示唆した。Journal of Thoracic and Cardiovascular Surgery誌オンライン版2020年1月11日号掲載の報告。 研究グループは、肺葉切除を受けた肺腺がん患者543例の病理データを収集し、C/T比と腫瘍径によって以下の4グループに分類し、10年間の全生存率、無再発生存率を調査した。・グループA:C/T比≦0.5で腫瘍径≦2cm・グループB:C/T比≦0.5で腫瘍径≦3cm・グループC:C/T比>0.5で腫瘍径≦2cm・グループD:C/T比>0.5で腫瘍径2~3cm 主な結果は以下のとおり。・肺葉切除を受けた543例全体の10年全生存率は80.4%、10年無再発生存率は77.1%であった。・グループ別の10年全生存率は、グループAで94.0%、グループBで92.7%、グループCで84.1%、グループDで68.8%であった。・グループ別の10年無再発生存率は、それぞれ94.0%、89.0%、79.7%、66.1%であった。・グループA+Bは、グループC+Dより10年全生存率が良好で(ハザード比[HR]:2.78、95%信頼区間[CI]:1.45~5.06)、10年無再発生存率も良好であった(HR:2.74、1.55~4.88)。・グループAでは、再発は認められなかった。 進行中のJCOGの試験において、区域切除の生存に関する肺葉切除との非劣性が確認されれば、区域切除は標準治療に入るであろうと筆者らは述べている。

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アルツハイマー病の認知機能やBPSDに対するスギの香りの影響

 秋田大学の高橋 裕哉氏らは、嗅覚神経刺激によりアルツハイマー病(AD)患者の認知症状が改善するかについて、検討を行った。Neuropsychopharmacology Reports誌オンライン版2020年2月9日号の報告。 嗅覚機能障害のないAD患者を抽出するため、スティック型嗅覚同定能力検査を実施した。次に、これらの患者を介入群(19例)と対照群(17例)にランダムに割り付けた。嗅覚神経刺激の効果を評価するため、介入群には、スギからのアロマ成分を添加した消毒エタノールを用い、対照群にはアロマ成分を添加しないエタノールを用いた。両群ともに、8週間の介入を行い、治療前後の認知機能および行動機能の評価を行った。評価には、Neuropsychiatric Inventory(NPI)、Zarit介護負担尺度日本語版(J-ZBI)、アルツハイマー病評価尺度-認知行動(ADAS-cog)を用いた。 主な結果は以下のとおり。・介入群は、対照群と比較し、4週目と8週目のNPIスコアおよびJ-ZBIの有意な改善が認められた。・ADAS-cogのスコアでは、有意な差は認められなかった。 著者らは「スギの香りは、アルツハイマー病患者の周辺症状(BPSD)を改善し、介護負担を軽減する可能性がある。この介入は、その有効性に加え、手順がシンプルで侵襲性が低いため、価値のある非薬物療法となりうる可能性が示唆された」としている。

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FDA、二ボルマブ・イピリムマブ併用、肝細胞がんに迅速承認

 米国食品医薬品局(FDA)は、3月10日、ソラフェニブ既治療の肝細胞がん患者に対するニボルマブとイピリムマブの併用療法を迅速承認した。 この併用療法の有効性は、ソラフェニブ治療で進行した、または不耐性の肝細胞がん患者を対象に実施された多施設コホート非盲検試験CheckMate-040のコホート4で調査された。合計49例の患者に、イピリムマブ3mg/kgとニボルマブ1mg/kgを3週間ごと4サイクル、その後ニボルマブ240mgを2週間ごと、疾患進行または忍容できない毒性が発現するまで投与した。 主要有効性評価項目は、盲検化独立中央委員会評価の全奏効率(ORR)と奏効期間(DoR)であった。ORRは33%(n=16、CR4例、PR12例)であった。DoRは4.6〜30.5ヵ月以上で、奏効患者の31%は24ヵ月以上効果が持続した。 ニボルマブとイピリムマブの併用による一般的な副作用(20%以上)は、疲労、下痢、発疹、そう痒症、嘔吐、筋骨格痛、発熱、咳、食欲減退、嘔吐、腹痛、呼吸困難、上気道感染、関節痛、頭痛、甲状腺機能低下症、体重減少、めまいであった。

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