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アルコール摂取と自殺リスク~メタ解析

 アルコール摂取はいくつかのアウトカムと関連するが、その1つに自殺リスクの増加がある。イラン・Baqiyatallah University of Medical SciencesのSohrab Amiri氏らは、アルコール摂取と自殺との関連を明らかにするため、コホート研究のメタ解析を実施した。Journal of Addictive Diseases誌2020年4~6月号の報告。 コホート研究30件をメタ解析に含めた。分析は、変量効果モデルに基づき実施し、その後、さまざまな変数を基にサブグループ解析を行った。 主な結果は以下のとおり。・分析の結果、アルコール摂取と自殺との関連が認められた。・アルコール摂取と自殺のリスク比(RR)は、1.65であった。・プールされたRRは、男性で1.56(95%CI:1.20~2.03)、女性で1.40(95%CI:1.11~1.77)であった。 著者らは「アルコール摂取は、自殺のリスク因子であることが示唆された。アルコール摂取の予防や抑制は、メンタルヘルスの促進に有効であると考えられる」としている。

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ドセタキセルベースの乳がん術後化療、BMIでベネフィットに差/JCO

 タキサンなどの脂溶性薬剤は、脂肪組織に対して高い親和性を持ち、分布容積が増す。大規模アジュバント試験BIG 2-98の再分析が実施され、ベースライン時のBMIにより、乳がん患者におけるドセタキセルベースの術後化学療法のベネフィットが異なる可能性が示唆された。ベルギー・Laboratory for Translational Breast Cancer ResearchのChristine Desmedt氏らが、Journal of Clinical Oncology誌オンライン版2020年7月2日号に報告した。 BIG 2-98は、リンパ節転移陽性乳がん患者の術後化学療法として、ドセタキセルベースと非ドセタキセルベースの治療法を比較したインターグループ無作為化第III相試験。今回、研究者らは同試験の全患者(2,887例)のデータを後ろ向きに再分析し、ベースライン時のBMI値に従って、ドセタキセルベースの術後化学療法のベネフィットが非ドセタキセルベースの術後化学療法と異なるかどうかを評価した。 BMI(kg/m2)は以下のように分類されている。・やせ型:18.5~<25.0・過体重:25.0 ~<30.0・肥満:30.0 以上 主要評価項目は無病生存期間(DFS)、副次評価項目は全生存期間(OS)。二次交互作用として、治療法、BMI、およびエストロゲン受容体(ER)の発現状態について評価された。 主な結果は以下のとおり。・非ドセタキセル群では、BMIに応じたDFSまたはOSの違いはみられなかったが、ドセタキセル群では、BMI分類が上がるにつれ、DFSおよびOSの低下が観察された。・DFSおよびOSの調整ハザード比は、過体重 vs.やせ型で1.12(95%信頼区間[CI]:0.98~1.50、p=0.21)および1.27(95%CI:1.01~1.60、p=0.04)。肥満 vs.やせ型 で1.32(95%CI:1.08~1.62、p=0.007)および1.63(95%CI:1.27~2.09、p<0.001)であった。・ER陰性とER陽性を別々に検討した場合、およびドセタキセルの相対用量強度(RDI)≧85%の患者のみを検討した場合にも、同様の結果が得られた。・治療効果に対するBMIおよびER状態の共修正の役割は、DFS(調整後のp=0.06)およびOS(調整後のp=0.04)で明らかであった。 研究者らは、ベースライン時のBMIによるドセタキセルに対する反応の違いが強調される結果とまとめている。乳がんにおけるタキサン使用のリスクベネフィット比の、身体組成に基づく再評価が求められるとし、今回の結果は追加試験による確認が必要としている。

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大学での人事評価、教授への昇進で重視されるのは?/BMJ

 大学における研究者の評価は従来型の基準を重視していることが、世界各国より抽出された大学の横断研究の結果、明らかになった。カナダ・マギル大学のDanielle B. Rice氏らが報告した。教授の評価や在職期間の付与に用いる基準については変更することが推奨されているが、世界で適用されている昇進や在職期間の基準について、これまで系統的な評価は行われていなかった。結果を踏まえて著者は「大学は、非従来型の基準を奨励することを考慮すべきである」とまとめている。BMJ誌2020年6月25日号掲載の報告。論文数などの従来型基準と、被引用数等の非従来型基準について調査 研究グループは、世界大学ランキングのライデン・ランキングから無作為に選んだ170大学を対象に、助教(assistant professor)、准教授(associate professor)および教授(professor)の評価と終身在職権付与に用いるガイドラインについて調査した。 従来型基準5項目(査読論文数、論文における著者名の記載順位、論文掲載誌のインパクトファクター、助成金獲得、国内外での研究の認知)、および非従来型基準7項目(論文被引用数、データ共有、オープンアクセスの論文掲載、研究登録、論文発表ガイドラインの順守、研究の影響に関するオルトメトリクス、研究休暇制度)についてガイドラインへの記述状況などを調べた。従来型基準の中でも論文数を重視する大学がほとんど 170大学中、生命医科系学部のある大学は146校で、92校に適格なガイドラインが存在した。 ガイドラインに従来型基準5項目が記載されていた割合は、査読論文数95%(87校)、論文における著者名の記載順位37%(34校)、論文掲載誌のインパクトファクター28%(26校)、助成金獲得67%(62校)、国内外での研究の認知48%(44校)であった。 一方、非従来型基準については、論文被引用数(26%、24校)および休暇制度(37%、34校)については記載されている大学が多かったが、研究の影響に関するオルトメトリクス(3%、3校)とデータ共有(1%、1校)についてはまれで、他の3項目(オープンアクセスの論文掲載、研究登録、論文発表ガイドラインの順守)のガイドラインへの記載は確認できなかった。 教授への昇進評価に関するガイドラインでは、従来型基準が非従来型基準より多かった(従来型基準54.2% vs.非従来型基準9.5%、平均群間差:44.8%、95%信頼区間[CI]:39.6%~50.0%、p=0.001)。ガイドラインが利用可能かどうかについては、地域によるばらつきが観察された(オーストラリア100%[6/6校]、北米97%[28/29校]、欧州50%[27/54校]、アジア58%[29/50校]、南米17%[1/6校])。

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Dr.増井の心電図ハンティング

第1回 心電図のグレーゾーン第2回 心電図を3次元化する裏技第3回 ミラーイメージ使えていますか?第4回 STEMIとSTEmimic第5回 脚ブロックの虚血判断 解説編第6回 左脚ブロックの虚血判断 実践編第7回 右脚ブロックの虚血判断第8回 陰性T波の鑑別とアクション 心電図の判読に迷って「もっと早く呼べよ! 」「これは緊急じゃないよ! 」と上級医や循環器医から言われたことのある人は多いのではないでしょうか。当シリーズでは、非循環器医が即座に判断できないビミョーな症例を取り上げ、その心電図判読のコツを解説します。2次元の心電図を紙コップで3次元化させるなど、視覚的に楽しく学べる工夫も満載。この番組を見ると、すぐに心電図を読みたくなること間違いなし!そして、自信をもって、心電図を判読し、次のアクションがとれるスキルが身に付きます。さあ、心電図ハンティングに出かけましょう。この番組は中外医学社から刊行されている「心電図ハンター 胸痛/虚血編」を映像化したものです。書籍を読んで当番組を見ていただいたり、当番組を見て書籍を読んでいただければ、理解が深まります。ぜひ書籍「心電図ハンター 胸痛/虚血編」を片手に番組をご覧ください。書籍はこちら ↓ ↓【心電図ハンター 胸痛/虚血編】第1回 心電図のグレーゾーン胸痛患者の心電図を手にしたとき、30秒以内に次のアクションを決めましょう!白黒はっきりしている心電図、すなわちST上昇のある、なしがすぐさまわかる心電図であれば、すぐ決めることができます。しかし、臨床では、ST上昇ありかなしかを判読できず困る心電図があふれています。その「迷う」心電図で、どうやって異常をハンティングするのか。今回は、Case0からCase2までの3症例を判読していきます。STEMIなのか、そうでないのか?そして次へつなげるアクションは?第2回 心電図を3次元化する裏技「連続した誘導でSTの上昇」が見られたらSTEMI!と誰もが反射的に判読できます。そう、心電図でも解剖学的でも連続していれば、そんなに悩むことはありません。もともと立体である心臓を平面の心電図に落とし込んでいることが、電図を判読しにくくしている原因の1つです。それではどうすればいいのでしょうか?そうです。心電図を立体的にもどしてやることです。そのために必要なものは「紙コップ」と「ペン」だけ。この2つを用意してこの番組ご覧ください!平面的な心電図がだんだん立体的にイメージングされて、心電図を読むのが楽しくなってきますよ。第3回 ミラーイメージ使えていますか?対側誘導でのST低下、すなわちミラーイメージをどこまでハンティングできていますか。ミラーイメージは心筋梗塞を示唆する重要な所見。今回は下壁梗塞、後壁梗塞のミラーイメージを確認していきましょう。後壁梗塞のミラーイメージを見つけたら、後壁誘導のV7~V9誘導を確認!そのやり方についても解説します。第4回 STEMIとSTEmimic一見ST上昇に見えて実はSTEMIではない“擬態”ST上昇心電図。これを擬態(mimic)STEMIを略して、STEmimicと命名。このSTEmimicをハンティングできるようになれば、オーバートリアージも減り、コールされる循環器医も、コールする非専門医も、みんなハッピーになります。今回は、STEmimicの中で早期再分極やStrain Patternについて解説します。でも、STEmimicに見えて、実はSTEMIということもあるので、しっかりと確認してください。第5回 脚ブロックの虚血判断 解説編今回は脚ブロックにについて解説します。心電図のST変化、実は脚ブロックの影響かもしれません。脚ブロックの心電図では、右脚か左脚かによって、評価の方法が異なります。右脚と左脚の違いは、細かい病態生理は抜きにして、パターン認識で判断できるようになりましょう。そして、右脚か左脚かがわかれば、虚血判断です。とくに難しい、左脚ブロックの判断に方法について、フローチャートにて解説します。これで、左脚ブロックの心電図での判断に迷うことは少なくなるはず!脚ブロックの虚血判断は臨床の場では必須項目なので、正しくマスターしましょう!第6回 左脚ブロックの虚血判断 実践編今回は左脚ブロック心電図特集です!実際の臨床で、左脚ブロックだということがわかったところで、その先どう判読すればいいのか、なかなか学ぶ機会がありません。そこで千本ノックのごとく、左脚ブロック心電図を次々と出していきます。それを受けてどんどん読んでいきましょう!そうすれば、左脚ブロックの心電図が来ても、慌てることなく読影できるようになりますよ。第7回 右脚ブロックの虚血判断今回は右脚ブロック心電図特集!前回の左脚ブロック千本ノック!と同様に、右脚ブロックの心電図をどんどん読んでいきましょう!右脚ブロックの心電図を読むコツをしっかりとお教えします。脚ブロックに惑わされることなく、通常通りSTEMIをハンティングしていくことが重要です。そして右脚ブロックならではのポイントをしっかりと確認しましょう。第8回 陰性T波の鑑別とアクション陰性T波で考えられる鑑別診断は大きく3つ!それらをどのように鑑別し、次につなげるアクションは?見分けるポイントとコツをしっかりとお教えします。そして、最後に、虚血判断できない場合の対応について、今一度考えてみましょう。まずは、本当に判断できないのか?まずは、このシリーズで学んだことをしっかりと確認してみましょう!そこれまでできなかった判断ができるようになっているはずです。さらには日米欧のガイドラインも参考にし、現場でできるアクションをしっかりと身に付けてください。

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新型コロナ感染の川崎病様小児患者、大半で心機能障害/NEJM

 米国ニューヨーク州では5月上旬時点で、新型コロナウイルス(SARS-CoV-2)への感染が認められた小児発症性多系統炎症症候群(MIS-C)は95例に上ったことが、米国・ニューヨーク州保健局(New York State Department of Health:NYSDOH)のElizabeth M. Dufort氏らによる調査により明らかにされた。そのほとんどで、C反応性蛋白(CRP)値、Dダイマー値、トロポニン値が上昇し、心機能障害との関連が認められたという。MIS-Cは、皮膚・皮膚粘膜症状、消化器系症状を伴うhyperinflammatory syndromeで、新型コロナウイルス感染症(COVID-19)との関連が示唆されており、NYSDOHでは、同症状を呈した入院患者の記述的サーベイランスを州全体で強化していたという。NEJM誌オンライン版2020年6月29日号掲載の報告。川崎病、MIS-C疑い例など21歳未満の入院患者を対象に調査 研究グループは、2020年3月1日~5月10日にNYSDOHに報告された川崎病、毒素性ショック症候群、心筋炎、およびMIS-Cが疑われる21歳未満の入院患者を対象に調査を行った。 NYSDOHのMIS-C症例基準に適合した患者について、臨床症状、合併症、アウトカムを要約した記述的分析を行った。ICU治療は80%、昇圧剤サポートは62% 2020年5月10日時点で191例の症例がNYSDOHに報告された。 このうち、MIS-Cと診断(急性または最近のSARS-CoV-2感染が検査で確認)されたのは95例、また臨床・疫学的基準に適合しMIS-Cの疑いがあると判断された症例が4例で、54%(53例)が男性だった。人種別では、31/78例(40%)が黒人、31/85例(36%)がヒスパニック系だった。年齢別では、0~5歳が31例(31%)、6~12歳が42例(42%)、13~20歳が26例(26%)だった。 全例で主観的な発熱または寒気があり、頻拍は97%、消化器系症状は80%、発疹は60%、結膜充血は56%、粘膜変化は27%にそれぞれ認められた。 CRP値、Dダイマー値、トロポニン値の上昇は、それぞれ100%、91%、71%で認められた。昇圧剤サポートを要したのは62%、心筋炎のエビデンスが認められたのは53%、集中治療室(ICU)での治療を要したのは80%、死亡は2例だった。 入院期間の中央値は6日だった。

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初回エピソード統合失調症患者における非定型抗精神病薬の神経認知効果

 認知障害は、統合失調症の主要症状の1つである。初回エピソード統合失調症患者の認知機能に対する非定型抗精神病薬の影響については、これまで包括的に調査されていなかった。中国・北京大学のYanyan Hou氏らは、初回エピソード統合失調症に対するリスペリドン、オランザピン、アリピプラゾールの神経認知効果を比較するため、多施設ランダム化オープンラベル試験を実施した。Nordic Journal of Psychiatry誌オンライン版2020年6月4日号の報告。 初回エピソード統合失調症患者546例の対象患者を、リスペリドン群、オランザピン群、アリピプラゾール群のいずれかにランダムに割り付け、1年間フォローアップを行った。認知機能の評価には、認知機能評価バッテリーを用いた。 主な結果は以下のとおり。・6ヵ月時点で、言語学習と記憶を除くほぼすべての認知領域において、3群とも有意な改善が認められた。・12ヵ月時点で、3つの認知領域において、3群ともさらなる改善が認められたが、視覚学習と記憶パフォーマンスについてはベースライン値に戻っていた。 著者らは「3つの非定型抗精神病薬は、初回エピソード統合失調症患者の認知機能を改善させる。その改善効果については、薬剤間で有意な差は認められなかった」としている。

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多発性硬化症治療に新しい治療薬シポニモド登場/ノバルティスファーマ

多発性硬化症は進行すると歩行障害と認知機能障害を起こす 多発性硬化症(以下「MS」という)は、中枢神経(脳・脊髄・視神経)のミエリンが破壊され軸索がむき出しになる「脱髄」と呼ばれる病変が多発し、視力障害、運動障害、感覚障害、言語障害など多様な症状があらわれる疾患。わが国のMS患者は、約1万5千人と推定され、年々増加している。発症のピークは20歳代で、女性に多いのが特徴。発症後に再発期と寛解期を繰り返す再発寛解型MS(以下「RRMS」という)として経過し、半数は次第に再発の有無にかかわらず病状が進行するSPMSに移行する。進行期に移行すると日常生活に影響をおよぼす不可逆的な身体的障害が徐々にみられ、主に歩行障害で車いす生活を余儀なくされる場合もある。また、認知機能障害が進み、社会生活に影響をもたらすこともある。多発性硬化症の進行を遅らせるシポニモド シポニモド(以下「本剤」という)は、S1P1およびS1P5受容体に選択的に結合するS1P受容体調整薬。シポニモドはS1P1受容体に作用することにより、リンパ球がリンパ節から移出することを防ぎ、その結果、それらのリンパ球が多発性硬化症患者の中枢神経系(以下「CNS」という)に移行することを防ぐことで本剤の抗炎症作用が発揮される。また、シポニモドはCNS内に移行し、CNS内の特定の細胞(オリゴデンドロサイトおよびアストロサイト)上のS1P5受容体と結合することで、ミエリン再形成の促進作用と神経保護作用が非臨床試験で示唆されている。 国際共同第III相臨床試験(EXPAND試験)では、1,645例のSPMS患者を対象に、プラセボ対照無作為化二重盲検並行群間比較試験を実施。主要評価項目は、Expanded Disability Status Scale(EDSS)に基づく3ヵ月持続する障害進行(3m-CDP)が認められるまでの期間で、プラセボ群と比較し、シポニモド群では3m-CDPの発現リスクが21.2%有意に減少し(p=0.0134)、シポニモドが患者の障害進行を遅らせる効果が示された。また、3m-CDPが認められた患者の割合は、プラセボ群が31.7%に対し、シポニモド群では26.3%だった。また、年間再発率の負の二項回帰モデルによる推定値は、シポニモド群において、プラセボ群と比較して年間再発率が55.5%低下した(p<0.0001)。安全性について、本試験での主な副作用は、頭痛5.3%、高血圧4.5%、徐脈4.5%などが報告された。メーゼント錠の概要一般名:シポニモド フマル酸商品名:「メーゼント錠0.25mg」「メーゼント錠2mg」効能・効果:二次性進行型多発性硬化症の再発予防および身体的障害の進行抑制用法・用量:通常、成人にはシポニモドとして1日0.25mgから開始し、2日目に0.25mg、3日目に0.5mg、4日目に0.75mg、5日目に1.25mg、6日目に2mgを1日1回朝に経口投与し、7日目以降は維持用量である2mgを1日1回経口投与するが、患者の状態 により適宜減量する。製造販売承認日:2020年6月29日 同社では、「MSの進行期への移行というアンメットニーズを医療現場から拾い上げ、日本で初めてとなるSPMSの適応取得に挑戦した。この承認を通じ『医薬の未来を描く』という弊社のミッションを少しでも果たせることを願う」と意欲をにじませている。なお、薬価、発売日などは未定。

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経口JAK1阻害薬、中等症~重症ADに有用

 中等症~重症アトピー性皮膚炎(AD)に対する、1日1回服用の経口JAK1阻害薬abrocitinibの、第III相プラセボ対照無作為化試験の結果が発表された。米国・ジョージ・ワシントン大学のJonathan I. Silverberg氏らによる報告で、12歳以上の同患者における有効性および忍容性が確認された。JAMA Dermatology誌オンライン版2020年6月3日号掲載の報告。 試験は青年および成人について、同一試験デザインを用いて、二重盲検・並行群間比較にて行われた。被験者は12歳以上で、少なくとも1年以上の中等症~重症ADと臨床診断され、直近6ヵ月以内に4週間以上の外用薬治療を受けたが十分な奏効が得られなかった患者とした。オーストラリア、ブルガリア、カナダ、中国、チェコ、ドイツ、ハンガリー、日本、韓国、ラトビア、ポーランド、英国、米国の計115施設で2018年6月29日~2019年8月13日に被験者の登録が、2019年9月13日~10月25日にデータ解析が行われた。 適格患者は、2対2対1の割合で(1)経口abrocitinib(1日1回)200mg群、(2)同100mg群、(3)プラセボ群に無作為に割り付けられ、12週間投与を受けた。 主要評価項目は2つで、12週時点でInvestigator Global Assessment(IGA)反応(0:クリア、1:ほぼクリアのうち2グレード以上の改善を伴う)を達成した患者の割合、同じくEczema Area and Severity Indexスコア75%以上改善(EASI-75)を達成した患者の割合であった。 主な副次評価項目は、12週時点のPeak Pruritus Numerical Rating Scale(PP-NRS)反応(4ポイント以上の改善)を達成した患者の割合。その他の副次評価項目は、EASIスコア90%以上改善(EASI-90)を達成した患者の割合であった。安全性は、有害事象および検査室モニタリングにより評価した。 主な結果は以下のとおり。・計391例(男性229例[58.6%]、平均年齢35.1[SD 15.1]歳)が、解析に含まれた(abrocitinib 200mg群155例、同100mg群158例、プラセボ群78例)。・12週時点でデータが入手できた被験者において、200mgおよび100mg群は、プラセボ群と比べて、2つの主要評価項目がいずれも有意に高かった。 IGA達成の割合:59/155例(38.1%)・44/155例(28.4%)vs.7/77例(9.1%)、p<0.001 EASI-75達成の割合:94/154例(61.0%)・69/155例(44.5%)vs.8/77例(10.4%)、p<0.001・PP-NRS達成の推定割合も有意に高かった(55.3%[95%CI:47.2~63.5]・45.2%[37.1~53.3]vs.11.5%[4.1~19.0]、p<0.001)。・EASI-90達成の割合も高かった(58/154例[37.7%]・37/155例[23.9%]vs.3/77例[3.9%])。・有害事象は200mg群102例(65.8%)、100mg群99例(62.7%)、プラセボ群42例(53.8%)で報告され、重篤な有害事象は2例(1.3%)、5例(3.2%)、1例(1.3%)で報告された。・200mg群で、血小板数の減少(2例[1.3%])、検査室で確認された血小板減少症(5例[3.2%])が報告された。

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日本人の妊娠出産による摂食障害再発や産後うつ病

 出産可能年齢の女性における摂食障害(ED)発症についての研究が行われている。しかし、妊娠中および出産後の女性を対象とした長期フォローアップ研究は、あまり行われていない。東邦大学の牧野 真理子氏らは、妊娠中および出産後のED再発とED完全寛解の女性における産後うつ病について調査を行った。BMC Pregnancy and Childbirth誌2020年5月27日号の報告。 1994~2004年に診療所外来を受診したED患者1,008例のうち、ED寛解および妊娠した女性は55例であった。このうち、研究への参加に同意した患者は25例(神経性過食症[BN]21例、神経性食欲不振症[AN]4例)であった。最終的に、流産した患者を除く24例が研究に含まれた。対象患者は、妊娠中と出産後の両方で2週間ごとに面接を受けた。EDおよび産後うつ病の診断には、Eating Attitudes Test-26(EAT-26)、エジンバラ産後うつ病評価尺度(EPDS)を用いた。統計分析には、両側独立検定を用いた。 主な結果は以下のとおり。・妊娠中にEDを再発した患者は16例(67%)、出産後にEDを再発した患者は12例(50%)であった。・産後うつ病が認められた患者は12例(50%)、低体重児出産は4例(33%)で認められた。・産後うつ病が認められなかった患者では、低体重児出産は認められなかった。・産後うつ病群と非産後うつ病群の間に、出生時体重の有意な差は認められなかった(p=0.065)。 著者らは「妊娠中および出産後の女性では、EDの再発率や産後うつ病の発症率が高いことが明らかとなった。妊娠中および出産後の綿密なEDモニタリングが求められる」としている。

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高齢患者のポリファーマシー、電子的支援ツールで改善/BMJ

 多剤併用(ポリファーマシー)は高齢者で一般的にみられ、不適切な薬剤が含まれることや、潜在的な害を伴うことが多いとされる。ドイツ・Witten/Herdecke UniversityのAnja Rieckert氏らは、多剤併用高齢患者における潜在的不適切薬剤処方(potentially inappropriate prescribing)を改善するための電子的意思決定支援ツールを新たに開発し、その有効性を実臨床で評価した。結果は、このツールにより、予定外の入院と24ヵ月以内の死亡について決定的な効果は確認されなかったものの、患者アウトカムに悪い影響を及ぼすことなく薬剤数の削減が達成されたという。BMJ誌2020年6月18日号掲載の報告。4ヵ国の総合診療医が参加した実践的クラスター無作為化試験 研究グループは、PRIMA-eDS(polypharmacy in chronic diseases: reduction of inappropriate medication and adverse drug events in older populations by electronic decision support)と呼ばれる電子的意思決定支援ツール(https://www.prima-eds.eu)を開発し、その使用が不適切な多剤併用の減少につながり患者関連エンドポイントの改善をもたらすかを評価する目的で、実践的なクラスター無作為化対照比較試験を行った(第7次欧州連合研究開発枠組計画の助成による)。 このツールは、個々の患者データと最新の最良エビデンスに基づく包括的な薬剤レビューを自動的に生成し、医師が減薬(deprescribing)を行う際に、それを支援するものである。 2013年5月~2015年9月の期間に、4ヵ国(オーストリア、ドイツ、イタリア、英国)の5つの研究センターで、試験に参加する総合診療医(診療所)の募集が行われた(グループ診療の場合、参加は1人の医師に限定)。 参加医師は、複数の慢性疾患を有し、8剤以上の薬剤(他の医師が処方した薬剤や非処方箋医薬品を含む)を定期的に使用している75歳以上の患者を11人登録するよう求められた。 患者登録とベースラインデータの収集が終了後、参加医師は電子的支援ツールを用いて診療を行う群(介入群)または通常治療を行う群(対照群)に無作為に割り付けられた。 主要アウトカムは、予定外の入院または24ヵ月以内の死亡の複合とした。主な副次アウトカムは、薬剤数の削減であった。ITT解析で差はなし、PP解析では有意差あり 2015年1月~10月の期間に、359の診療所で3,904例が登録された。介入群に181の診療所と1,953例が、対照群には178の診療所と1,951例が割り付けられた。ベースラインの全体の患者の平均年齢は81.5(SD 4.4)歳、女性が2,240例(57.4%)で、平均使用薬剤数は10.5(2.4)剤、平均診断名数は9.5(4.9)件であった。 主要アウトカムは、介入群が871例(44.6%)、対照群は944例(48.4%)で発生した。追跡不能例(介入群126例[6.5%]、対照群111例[5.7%])をアウトカム達成例に含めたintention-to-treat解析では、両群間に有意な差は認められなかった(介入群997/1,953例[51.0%]vs.対照群1,055/1,951例[54.1%]、オッズ比[OR]:0.88、95%信頼区間[CI]:0.73~1.07、p=0.19)。欠測値の多重代入法またはCox回帰による感度分析でも、この知見を支持する結果が得られた(ハザード比[HR]:0.93、95%CI:0.82~1.05、p=0.24)。 一方、受診患者に限定したper-protocol解析では、主要アウトカムは介入群で有意に良好であった(OR:0.82、95%CI:0.68~0.98、p=0.03)。 また、最終受診時の薬剤数は、介入群で有意に少なかった(発生率比:0.95、95%CI:0.94~0.97、p<0.001)。ベースラインからの総薬剤数の変化を用いた感度分析では、これを支持する結果が得られた(平均変化量について介入群:-0.42 vs.対照群0.06、補正平均群間差:-0.45、95%CI:-0.63~-0.26、p<0.001)。 死亡(介入群19.5% vs.対照群18.8%、p=0.96)、予定外の初回入院(48.4% vs.50.7%、p=0.36)、予定外入院の期間(7.89日vs.8.47日、p=0.79)、1回以上の骨折(3.0% vs.2.3%、p=0.17)などには、両群間に有意な差はみられなかった。 著者は、「これは、電子的意思決定支援ツールのより広範な導入、できれば電子カルテ内に統合した形での導入を支持する十分な強度を持つエビデンスと考える」としている。

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第15回 COVID-19でも顕在化か、ワクチン不信/血液脳関門の定説を覆す結果!?

COVID-19ワクチン接種予定の米国人はわずか2人に1人~ワクチン信用の底上げが必要1月20日に米国で初めて新型コロナウイルス(SARS-CoV-2)感染(COVID-19)が確認されるやいなや、反ワクチン活動家はすぐに腰を上げ、そんなウイルスは実在せず、ワクチンで稼ぐためのでっちあげだとのツイッターを投稿しはじめました1)。それから半年近くが過ぎ、世界の科学者たちはCOVID-19ワクチン開発に勤しみ、反ワクチン活動家からの大量の誤った情報は増加の一途を辿っています。そういった情報に惑わされることなく、COVID-19ワクチンを受け入れてもらうための土壌作りを今からはじめる必要があると健康情報の専門家は言っています。実際、今のままだと米国でのCOVID-19ワクチンの普及はあまり期待できそうにありません。最近の調査でCOVID-19ワクチンが使えるようになったら接種すると答えたのはわずかに2人に1人(49%)のみでした。5人に1人(20%)は接種しないと答え、約3~4人に1人(31%)は決めかねていると答えました。そのような調査結果を背景にして、アメリカ疾病管理センター(CDC)はワクチンの信用底上げに取り組むことを計画しています。ワクチン不信は米国に限った問題ではなく、世界の健康機関もワクチンに反対する人々を翻意させるためのあの手この手の取り組みをしています。世界保健機関(WHO)もそれを承知であり、2019年にはワクチン拒否を最も心配な10の公衆衛生問題の1つに数えています。ワクチン不信を取り除くためには、反ワクチン活動家も使うツイッター等のソーシャルメディアを駆使したデジタル世界での取り組みも必要でしょうが、電話でのワクチン接種案内等の血の通った地道な働きかけがより有効かもしれないとノースカロライナ大学の行動科学者Noel Brewer氏はScienceに話しています。また、公衆衛生機関はさまざまな人の輪のリーダーと話して意思疎通をはかり、ワクチンを医療機関に来てもらって接種するのではなく職場や店舗に自ら出向いていって接種することも検討すべきだろうとジョンズホプキンス大学の医学人類学者Monica Schoch-Spana氏は言っています。定説に反し、老化するほど血液脳関門はタンパク質を通し難くなる~若い脳ほど取り込みが旺盛血液脳関門(BBB)は老化につれてより通過しやすくなるとこれまで考えられていましたが、どうやらそうとも限らないようで、若い健康なマウスの脳は血液中のタンパク質を思ったより多く受け入れており、老化は脳に入る血漿タンパク質をむしろ減らすと分かりました2,3)。今回の研究では、マウスの生来の血漿中タンパク質一揃いに印を付けてその行き先を追跡しました。その結果、若いマウスの脳にはこれまでの想定以上の量の血漿タンパク質が移行しました。それらのタンパク質は神経回路とおそらく相互作用しており、全身のタンパク質の有り様は行動や情緒などの神経機能を変化させるようです。今回のような生来のタンパク質ではない、作り物の標識分子を用いたかつての実験では、老化につれてBBBは通過しやすくなることが示されていましたが、生来のタンパク質の動向を追った今回の研究では逆に老化マウスの脳は血漿タンパク質を受け入れ難くなっていました。老化した脳にタンパク質が入り難いことに寄与するBBB経細胞輸送の変化も、今回の研究では把握されています。血液中のタンパク質がBBBの内皮細胞を横断して脳に入る経路は、目当てのタンパク質を取り込む受容体が携わる経細胞輸送が若い頃には優勢ですが、老化すると受容体の媒介がめっきり減って受容体を介さないやみくもな経細胞輸送が優勢になります。ゆえに老化すると脳に入り込むタンパク質はより雑多になり、老化した脳は目当てのタンパク質を若い頃のようにはおそらく受け取れなくなります。過去の作り物の分子を用いた実験ではおそらくやみくもな経細胞輸送のみが測定されていたため、若い脳への血漿タンパク質移行量が過少になっていたようです。若い脳で優勢と今回の研究で判明した受容体媒介経細胞輸送は脳への治療薬投与に利用されています。たとえば米国サンフランシスコ拠点のバイオテック企業Denali Therapeutics社はBBBのトランスフェリン受容体に運ばれて脳に届く薬DNL310を開発しており、ハンター症候群小児対象の第1/2相試験(NCT04251026)が間もなく始まる予定です4)。ALPLというタンパク質を阻害するとトランスフェリン受容体を介した経細胞輸送が向上しうることが今回の研究で判明しており、ALPL阻害剤とDNL310の併用は一層効果的かもしれません。また、ALPLは老齢マウスの脳ほど発現が多く、ALPL阻害は高齢者脳へのトランスフェリン受容体を介した治療薬運搬にとりわけ役立ちそうです。参考1)Just 50% of Americans plan to get a COVID-19 vaccine. Here’s how to win over the rest / Science 2)Unexpected amount of blood-borne protein enters the young brain / Nature3)Andrew C Yang,et al. Nature.2020 Jul 1. [Epub ahead of print]4) Denali Therapeutics Announces Publication of Two New Papers Describing Its Blood-Brain Barrier Delivery Technology in Science Translational Medicine / GlobeNewswire

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第14回 新型コロナウイルス拡大、日本の超過死亡は?

<先週の動き>1.新型コロナウイルス拡大、日本の超過死亡は?2.新型コロナウイルス感染症対策分科会、専門家会議副座長の尾身茂氏が分科会長に3.相次ぐオンライン診療の初診での恒久化を求める声4.医療機関のインターネット広告違反、美容・歯科で数多く5.医師少数区域経験認定医師の広告が許可へ1.新型コロナウイルス拡大、日本の超過死亡は?6月26日、厚生労働省より2020年4月までの人口動態統計が発表された。これによると、今年4月の死亡者数は11万3,362人で前年度4月の11万2,939人と比べると423人・0.4%の増加だった。今年1~4月の累積死亡者数を前年同時期と比較すると、1万444人・2.1%の減少となり、コロナウイルス感染拡大に伴う超過死亡は、欧米と比較してほぼなかったと考えられる。海外、とくに欧米においてはコロナウイルス感染拡大による超過死亡が報告されているが、我が国ではPCRの実施体制の不備が懸念されていたものの、幸いにも超過死亡が記録されることはなく、第1波の感染拡大が収束した。今後、第2波の襲来や冬場のインフルエンザウイルスの流行期での感染拡大が懸念されるだけに早期の感染防御やPCRの検査体制拡充が求められる。(参考)人口動態統計速報Excess Deaths Associated with COVID-19(CDC)2.新型コロナウイルス感染症対策分科会、専門家会議副座長の尾身茂氏が分科会長に政府は、7月3日の新型コロナウイルス感染症対策本部(持ち回り形式で開催)において、「新型コロナウイルス感染症対策専門家会議」の廃止を決定し、新たに特別措置法に基づいて「新型コロナウイルス感染症対策分科会」を設置することを正式決定した。この初会合は7月6日に開かれることとなっており、構成員は18人、医師や保健所の代表、全国知事会、メディアの代表などが含まれ、専門家会議で副座長を努めた尾身 茂・地域医療機能推進機構理事長がトップを務める。初回は、東京都を中心とした感染状況や PCR検査の拡充、感染者データの取り扱いなどが取り上げられる予定。(参考)政府のコロナ対策分科会メンバー一覧 経済学者や知事、マスコミも産経新聞3.相次ぐオンライン診療の初診での恒久化を求める声7月2日に開催された第8回規制改革推進会議にて、「規制改革推進に関する答申」が取りまとめられ、デジタル分野の規制改革の提言を提出された。答申案では、新型コロナウイルスの感染拡大の中、新しい生活様式への転換が求められるため、デジタル技術を徹底的に活用できるよう規制改革を行う必要があるとしたうえでデジタル時代の規制・制度のあり方や書面・押印・対面規制の見直しを求めている。医療・介護分野では、初診も含めたオンライン診療の全面解禁やスイッチOTC化の促進に向けた推進体制の充実、介護アウトカムを活用した科学的介護の推進を求めており、今後、議論を重ねていく見込み。また、同日、自民党の行政改革推進本部(塩崎 恭久本部長)が首相官邸を訪れ、菅 義偉官房長官にデジタル分野の規制改革の提言を提出した。デジタル規制改革を求める中で、オンライン診療及び遠隔教育についての効果検証を行い、恒久化していくことが求められる。(参考)第8回規制改革推進会議 規制改革推進に関する答申自民党 行政改革推進本部 デジタル規制改革ワーキンググループ4.医療機関のインターネット広告違反、美容・歯科で数多く7月2日に開かれた「医療情報の提供内容等のあり方に関する検討会」において、厚生労働省は医療機関のホームページに起因する美容医療サービスに関する消費者トラブルが発生し続けているのに対して2017年から行っているネットパトロールの結果を報告した。この中で、1万300サイトについて通報受付を受け、1,253施設の974サイトが審査対象となり、919サイトを運営する医療機関に対して、通知を行い、717サイトが改善したことを報告された。さらに、2018年6月の改正医療法施行後の医療法における広告規制の改正施行後の現状を踏まえ、全国一律の基準で運用できるよう監視指導体制の強化が必要としている。(参考)医療情報の提供内容等のあり方に関する検討会5.医師少数区域経験認定医師の広告が許可へ7月2日に開催された「医療情報の提供内容等のあり方に関する検討会」において、医師偏在対策の一環として「医師少数区域等で一定期間勤務した医師」を厚生労働大臣が認定し、認定された医師である旨を広告することを可能とする、医療広告ガイドライン指針の追記について合意した。これは今年の4月1日から施行された改正医療法・医師法に伴う関係政令等の整備の一環で、地域の医師偏在の解消を目指して、医師少数区域(人口10万対医師数に地域住民や医師の年齢構成などを加味した新たな指標を用いて、医師配置が下位3分の1となる地域)等での勤務にインセンティブを付与し、医師偏在の解消を狙うもの。若手医師の場合、4月1日以降に初期臨床研修を開始した医師が対象となり、総合的な診療能力の獲得のために地域医療への参画が求められるなど、即効性は期待できない。一方、医師免許を取得から9年以上経過した医師については、断続する勤務合計が180日に達すれば条件を満たすため、医師偏在解消のきっかけとなることが期待される。(参考)医療法及び医師法の一部を改正する法律の施行について(通知)

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恥ずかしいけど口に出したら幸せになるカード【これで「コロナ離婚」しなくなる!(レクリエーションセラピー)】Part 2

なんで幸せになりたいの?-幸福感はなんで「ある」の?そもそもなぜ幸せになりたいのでしょうか? あまりにも当たり前すぎて、考えたことがないかもしれません。幸せになりたいとは、幸福感を追い求めることです。つまり、言い換えれば、幸福感(主観的ウェルビーイング)はなぜ「ある」のでしょうか? その答えは、進化心理学的に言えば、生存、生殖、社会性(包括適応度)を促進し、集団的により多くの遺伝子を残せるからであると言えるでしょう。ここから、幸福感の心理の起源を進化心理学的に5つの段階に分けて探ってみましょう。さらに、それぞれの段階にマズローの欲求5段階説とポジティブ心理学(セリグマンによる)の「幸せのための5つの条件(PERMA)」を重ね合わせてみましょう。(1)快感約10数億年前に太古の原始生物が海で誕生してから、臭いや見た目でエサを見つけたら、ドパミンが活性化することで、より覚醒して近付くように進化しました。これが、報酬の起源です。この報酬によって食欲や性欲などが満たされることで、快感が得られます。また、獲物を追って無我夢中になっている瞬間にも、先行的に快感が得られます(報酬予測)。これは、擬似的な「狩り」「戦い」「冒険」であるスポーツや旅行にも通じます。やっているそれ自体が楽しいのです。1つ目の段階は、快感です。これは、マズローの1段目の「生理的欲求」に重なります。ポジティブ心理学では、「没頭(Engagement)」に重なります。さらには、「フロー」(チクセントミハイ)という概念にも重なります。なお、快楽の心理の詳細については、末尾の関連記事2をご参照ください。(2)安全感約5億年前に魚類が誕生し、海の中を動き回るようになってから、天敵からいち早く逃げるために、警戒センサー(扁桃体)が進化しました。これが、不安の起源です。この不安の感度が下がる、つまり不安を感じにくくなるのは、脳内のセロトニンの活性が高まっている時です。そして、この不安(危険)が少ないことで、安心・安全が得られます。2つ目の段階は、安全感です。これは、マズローのピラミッドの2段目の「安全欲求」に重なります。ポジティブ心理学では、はっきり当てはまるものはないです。(3)自尊心約2億年前に哺乳類が誕生してから、子どもはその母親からの乳によって育てられるように進化しました。子どもは、母親から無条件に守られます。この愛情によって、特定の相手とつながりたいという感覚が生まれます。これが、愛着の起源です。この愛着が高まるのは、愛情を注ぐ母親(人類では父親も)と愛情を浴びる子どもの脳内のオキシトシンが連動して活性化する時であることが分かっています。約700万年前に人類が誕生し、約300万年前にアフリカの森からサバンナに出てから、家族を中心とする親族の集団(部族)をつくるようになりました。すると、オキシトシンは、親子の愛着だけでなく部族の絆を強める役割も果たすようになりました。こうして、この愛着や絆によって、大切にされているという自尊心が得られるようになりました。3つ目の段階は、自尊心(自尊感情)です。これは、マズローの3段目の「愛情欲求、所属欲求」に重なります。ポジティブ心理学では、「関係性(Relation)」に重なります。(4)自信約300万年前に人類が部族で助け合う仲間であると認識したときに、ドパミンが活性化して心地良く感じるようにも進化しました。これが、社会的報酬の起源です。「好きだから助け合える」とよく言われます。しかし、社会的報酬の心理メカニズムを踏まえると、逆です。むしろ「助け合うと思うから好きになる」のです。これが、先ほどの魅力の返報性(互恵性)の起源です。この社会的報酬によって、仲間から役に立つと認められているという自信が得られます。4つ目の段階は、自信(自己効力感)です。これは、マズローの4段目の「承認欲求」に重なります。ポジティブ心理学では、「達成(Achievement)」に重なります。(5)自己実現約20万年前に現生人類(ホモ・サピエンス)が誕生し、複雑な発声ができるように喉(のど)の構造が進化しました。約10万年前から、言葉を使って、ものごとや出来事を関連付けたり、意味付けるようになりました。これが、概念化の起源です。この概念化によって、世界中の人たちや未来の子孫たちの幸せにも思いをめぐらすようになりました。すると、自尊心や自信を育む愛情や承認は、もはや受け取るものではなく、与えるものになります。そして、そこに幸福感を見いだすことができます。たとえば、それは、子育てや後進の育成、社会貢献をすることへの喜びです。これは、先ほど紹介した社会的な健康につながります。こうして、自分は最終的にどうなりたいのかという自分が生きる意味や生きた証を考えるようになりました。5つ目の段階は、自己実現です。これは、マズローの5段目の「自己実現欲求」に重なります。ポジティブ心理学では、「人生の意味(Meaning)」に重なります。さらには、「実存」という哲学用語にも重なるでしょう。 このカードゲームの使い道は?今回、カードゲームを通して、幸福感の起源まで迫りました。このカードゲームは、幸福感の大きな要素となる自尊心、自信、自己実現の心理を高めるセリフが盛り込まれています。このゲームは、ファミリーやカップルで楽しむだけでなく、夫婦カウンセリングやスクールカウンセリングでの「家族のルールづくり」(行動療法)のアイテムの1つとしても使うことができます。また、メンタルヘルス分野のデイケアのレクリエーションセラピーの1つとして使うこともできます。さらには、学校教育の分野や子育ての分野でも教材としても広く役立てることもできるでしょう。 ■関連記事ショーシャンクの空に【心の抵抗力(レジリエンス)】[改訂版]「カイジ」と「アカギ」(後編)【ギャンブル依存症とギャンブル脳】1)実践 ポジティブ心理学:前野隆司、PHP新書、20172)ポジティブなこころの科学:堀毛一也、サイエンス社、2019 << 前のページへ

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NSCLC術後補助療法、ペメトレキセド+シスプラチンの有効性は?/JCO

 完全切除のStageII~IIIAの非小細胞肺がん(NSCLC)に対する術後補助療法としてのペメトレキセド+シスプラチンの有効性について、ビノレルビン+シスプラチンと比較した第III相無作為化非盲検試験の結果が示された。静岡がんセンター呼吸器内科の釼持 広知氏らによる報告で、ペメトレキセド+シスプラチンの優越性は示されなかったが、補助化学療法として忍容性は良好であることが示されたという。Journal of Clinical Oncology誌オンライン版2020年5月14日号の掲載報告。 試験は、日本国内7つの臨床試験グループに属する50施設で行われた。被験者は、病理学的に完全切除が確認されたStageII~IIIA(TNM 7th editionに基づく)の非扁平上皮NSCLC患者で、ペメトレキセド(500mg/m2、day1)+シスプラチン(75mg/m2、day1)またはビノレルビン(25mg/m2、day1およびday8)+シスプラチン(80mg/m2、day1)のいずれかを投与する群に無作為に割り付けた。年齢、性別、病理学的ステージ、EGFR変異、試験地で層別化も行った。 割付治療は、3週間ごと4サイクルで計画。主要評価項目は、修正intent-to-treat集団(非適格患者を除外)において評価した無再発生存(RFS)であった。 主な結果は以下のとおり。・2012年3月~2016年8月に、804例が登録された(ペメトレキセド+シスプラチン群402例、ビノレルビン+シスプラチン群402例)。・適格患者は784例で、410例(52%)がStageIIIAで、192例(24%)がEGFR変異陽性であった。・追跡期間中央値45.2ヵ月時点で、RFS期間中央値はビノレルビン+シスプラチン群37.3ヵ月に対し、ペメトレキセド+シスプラチン群38.9ヵ月であった(ハザード比:0.98、95%信頼区間[CI]:0.81~1.20、片側検定のp=0.474)。・ビノレルビン+シスプラチン群のほうがペメトレキセド+シスプラチン群よりも、Grade3/4毒性(11.6% vs.0.3%)、および貧血(9.3% vs.2.8%)について報告頻度が高かった。・治療に関連した死亡は、各群1例ずつ報告された。

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『コロナのせいにしてみよう。シャムズの話』~気鋭の医師が提唱する未病の新たな概念

 医学書の範疇に収まらないユニークな著書を数多く持つ國松 淳和氏(医療法人社団永生会南多摩病院 総合内科・膠原病内科)の最新作は『コロナのせいにしてみよう。シャムズの話』。6月下旬に行われた出版記念セミナーにおいて、國松氏がコロナ禍の中で本書の執筆に至った経緯や読者に伝えたいポイントについて語った。 本の主題となる「シャムズ(CIAMS: COVID-19/Coronavirus-induced altered mental status)」は國松氏の造語。新型コロナウイルス感染症の流行下にあって、コロナに感染していないのに、不安から実際に体調を崩したり、他者に攻撃的になったりといったマイナスの変化が生じている人が増えたことに気づいた氏が、そうした状況と人を総称するために名付けたという。「よく間違われるのですが、シャムズは医学用語でも病名でもなく、概念に近いもの。『あれ、この人いつもと何か違うな』と周囲の人が気づくものであり、病気ではないので医師が診る必要も医療機関に行く必要もない」と國松氏は解説する。 コロナにまつわる不安が精神的加重となり、心身に変化が起きている状態がシャムズであり、その対応法は「周囲の人が気づき、話しかけること」に集約される、という。普段通りの何気ない会話が不安を取り除き、本来のその人に戻る手助けとなる。「シャムズが疑われる人だけでなく、周囲の人に誰かれ構わず話しかけてみて欲しい。そもそも職場にも家庭にも雑談が足りなさ過ぎる」(國松氏)。さらに、自己のメンテナンスとしてテレビからの過剰な情報を遮断し、ラジオや音楽を聴くことを推奨する。「シャムズは病気ではないものの、放置しておくと精神疾患、とくに重いうつと自殺につながる可能性がある。多くの人にこの概念を知ってもらい、他者への目配りと自分のケアをはじめてもらえたら」と國松氏は語る。 本書は、一般向けに平易にまとめられているが、最前線で新型コロナの対応にあたる医療者も読者として想定されており、診療現場と自らのケアの両面で役立つ内容が含まれている。章末には「医療従事者のみなさんへ」として、シャムズについて医学的な理解を助けるための章も付加されている。『コロナのせいにしてみよう。シャムズの話』(國松 淳和、金原出版、2020年6月)セミナーのご案内 ケアネットでは、7月8日(水)に國松氏と札幌厚生病院病理診断科の市原 真氏の対談をライブストリーミング配信します。◆Dr.國松とDr.ヤンデルの『また来たくなる外来』トーク◆ 配信日:7月8日(水)20~21時 (事前申し込み不要・どなたでも視聴いただけます) ※7月9~15日までCareNeTVにて無料配信予定 詳細はこちら 過去の配信 Dr.國松とDr.ヤンデルの大真面目コロナトーク(会員登録不要・無料公開中)

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混合性の双極性うつ病の小児・青年に対するルラシドンの有用性

 混合性(亜症候性躁病)の双極性うつ病の小児および青年の治療に対するルラシドンの有効性と安全性について、米国・スタンフォード大学のManpreet K. Singh氏らが、事後分析により評価を行った。Journal of Child and Adolescent Psychopharmacology誌オンライン版2020年5月8日号の報告。 DSM-Vで双極I型うつ病と診断された10~17歳の患者を対象に、6週間のランダム化二重盲検試験を実施した。対象患者は、ルラシドン20~80mg(フレキシブルドーズ)またはプラセボを1日1回投与する群にランダムに割り付けられた。混合性(亜症候性躁病)は、ベースライン時のヤング躁病評価尺度(YMRS)5以上と定義した。評価項目は、ベースラインから6週目までのChildren's Depression Rating Scale-Revised(CDRS-R)スコア(主要評価項目)および臨床全般印象度-双極性障害 重症度(CGI-BP-S)スコアとし、反復測定分析による混合モデルを用いて評価した。 主な結果は以下のとおり。・ベースライン時に亜症候性躁病が認められた患者の割合は、54.2%であった。・ルラシドン治療は、亜症候性躁病の有無にかかわらず、6週間後のCDRS-Rスコアを有意に減少させた。 ●亜症候性躁病あり:ルラシドン(-21.5)vs.プラセボ(-15.9)、p<0.01、エフェクトサイズd=0.43 ●亜症候性躁病なし:ルラシドン(-20.5)vs.プラセボ(-14.9)、p<0.01、d=0.44・ルラシドン治療は、亜症候性躁病の有無にかかわらず、6週間後のCGI-BP-Sスコアを有意に減少させた。 ●亜症候性躁病あり:ルラシドン(-1.6)vs.プラセボ(-1.1)、p<0.001、d=0.51 ●亜症候性躁病なし:ルラシドン(-1.3)vs.プラセボ(-1.0)、p=0.05、d=0.31・治療中に認められた軽躁病および躁病の発生率は、ルラシドンとプラセボで同等であった。 ●亜症候性躁病あり:ルラシドン(8.2%)vs.プラセボ(9.0%) ●亜症候性躁病なし:ルラシドン(1.3%)vs.プラセボ(3.7%) 著者らは「ルラシドンは、混合性の双極性うつ病の小児・青年の治療に有効であり、治療に伴う躁病リスクを含む安全性プロファイルは、プラセボとの差が認められなかった」としている。

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メニューへのカロリー表示が健康や経済にメリット、AHAニュース

 飲食店のメニューにカロリー表示を求める現行の連邦法は、健康的な食事の選択を促し、心血管疾患や糖尿病の患者数の減少に寄与する可能性があるとする研究結果が報告された。このモデリング研究では、人々が飲食店の栄養表示を考慮して注文することによって、2018年から2023年までに心血管疾患を1万4,698件(このうち心血管疾患による死亡は1,575件)、2型糖尿病を2万1,522件回避できると推定された。結果の詳細は米国心臓協会(AHA)が発行する「Circulation: Cardiovascular Quality and Outcomes」6月4日オンライン版に発表された。 米食品医薬品局(FDA)は2018年5月、20店舗以上の飲食店チェーンを対象に、メニューやメニューボードへのカロリー表示を義務付けた。ただし、現在は、FDAは4月1日、新型コロナウイルス感染症(COVID-19)による緊急事態が収束するまでの一時的な措置として、カロリー表示についての柔軟な対応を認めている。 論文の著者の一人で、米タフツ大学フリードマン栄養科学政策大学院のDariush Mozaffarian氏は「米国では、40年以上にわたり、国民の代謝系の健康問題が増大していたが、そこに感染症の問題も加わることになり、徐々に広がるパンデミックと急速に広がるパンデミックが重なった状況に直面している」と説明。その上で、「COVID-19によって、米国民が健康的な食品を確実に摂取できるようにすることの重要性が浮き彫りになった」と指摘している。 Mozaffarian氏によると、食事の影響を受けやすい糖尿病や高血圧、肥満などはCOVID-19の重症化リスクを高め、入院リスクも上昇させるとされている。 Mozaffarian氏らは今回、連邦政府が35~80歳の男女を対象に実施した健康と栄養に関する調査の食事摂取データを用いて、コンピューターの予測モデルに基づく研究を実施。その結果、メニューへのカロリー表示を受けて消費者が生涯にわたって低カロリーの食事を選ぶようになることで、肥満が減少し、医療費は104億ドル(約1兆1150億円)、また生産性の低下や家族による介護などのインフォーマルケアに伴う「社会的費用」も127億ドル(約1兆3600億円)削減されると推定された。さらに、生涯にわたって低カロリーの食事を選択する習慣が根付くことで、心血管疾患は13万5,781件(このうち死亡例は2万7,646件)、2型糖尿病は9万9,736件、回避できると推定された。 この研究論文の筆頭著者の一人である同大学のJunxiu Liu氏は、「飲食店が、低カロリー食を提供したり、一人前の量を減らすなどしてもっとメニューを刷新すれば、医療費や健康の面で得られる恩恵の大きさは、消費者の選択の変化だけに基づいた場合の2倍になり得る」と述べている。また、この法律は特に、ヒスパニック系や黒人、学歴が低い人や低所得者、肥満者といった特定の集団に大きな健康上の利益をもたらし、健康格差の縮小にも寄与する可能性があると指摘している。 今回の研究には関与していない米ノースウェスタン大学のNorrina Bai Allen氏は、現在カロリー表示を求める規制で一時的な緩和措置がとられていることに一定の理解を示しながらも、Mozaffarian氏らが報告した推計値を見ると、カロリー表示の義務化は有望であるとして、できるだけ早く、カロリー表示を再び義務付けるようにしてほしいと主張している。そして、「COVID-19を含めて理由が何であれ、対策が遅れれば心血管疾患による疾病負担は増大することになる。消費者が簡単に全てのカロリーに関する情報を得ることができ、それに基づいた意思決定を行える世界が理想だといえる」と話している。[2020年6月4日/American Heart Association] Copyright is owned or held by the American Heart Association, Inc., and all rights are reserved. If you have questions or comments about this story, please email editor@heart.org.

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ASCO2020レポート 乳がん

レポーター紹介2020年5月29日から6月2日まで5日間にわたり、ASCO2020が例年どおりシカゴマコーミックプレイスで開催される予定であった。しかしながら、COVID-19の流行により、今年は初のVirtual Annual Meetingが行われた。5月29日より一般演題やポスターはオンデマンドで視聴できるようになり、ハイライトセッションおよびプレナリーセッションは、ライブ配信+オンデマンドで視聴できた。2020年のテーマは“Unite & Conquer: Accelerating Progress Together”であった。プレナリーセッションを中心に、標準治療が変わる演題が多数報告された。乳がんにおいてもプレナリーセッション1題、口演17演題が発表され、標準治療を変えるもの、標準治療を変えないものの長年の臨床的疑問に一定の答えを出すものが発表された。乳がんの演題について、プレナリーセッションの1題、Local/Adjuvant口演から1演題、Metastaticから2演題を紹介する。初発IV期乳がんに対する原発巣切除の全生存期間に対する影響(E2108試験)日常臨床においては初発IV期乳がんに対して原発巣切除が行われている場合もある。後ろ向き研究では切除した場合に全生存期間が良好な傾向が示されているが、バイアスを含んでおり前向き試験が複数計画された。インドで行われた試験では、全身治療を行った後に手術群と非手術群にランダム化された。この試験では全生存期間(overall survival:OS)の差は認められなかった。さらに、トルコで行われた試験では全身治療前にランダム化され手術群で5年生存割合が良好な傾向を認めた。このように相反する結果であり、原発巣切除の意義については結論が出ていない状況であった。E2108試験は1次登録をした後に4〜8ヵ月の全身治療を行い、病勢進行が認められなかった症例を手術群と全身治療継続群に1対1にランダム化された。368例が登録され、258例がランダム化され、125例が手術群に、131例が全身治療継続群に割り付けられた。主要評価項目はOSで、53ヵ月の観察期間中央値で、生存期間中央値が54ヵ月、ハザード比1.09(90%CI:0.80~1.49、p=0.63)で両群間に有意差は認められなかった。副次評価項目の無増悪生存期間(progression-free survival:PFS)でも両群間の差は認められず、生存曲線もほぼ重なっている状態であった。サブタイプ別のサブグループ解析ではホルモン受容体陽性HER2陰性、HER2陽性では差を認めなかったが、トリプルネガティブ乳がん(triple negative breast cancer:TNBC)ではハザード比3.50(95%CI:1.16~10.57)で、手術群で有意に悪かった。これはおそらく進行の速いTNBCにおいては全身治療の継続が重要であるということを示唆しているのであろう。局所の病変進行については手術群で良好な傾向であった。QOLは両群で変化がなかった。今回の試験はネガティブであったが、この結果をもって初発IV期乳がんに対する原発巣切除に意義がないと判断することはできない。E2108は開始後に進捗が悪く、プロトコール改訂が行われサンプルサイズが減らされた。JCOG1017(研究事務局:岡山大学 枝園 忠彦氏)は同様の試験であるが、570例が1次登録され、全身治療で進行しなかった407例がランダム化されている。また、ランダム化までの期間が日常臨床で効果判定を行うことの多い3ヵ月に設定されている。JCOG1017の試験結果が得られた後に、あらためてこれまでの試験を総括し、原発巣切除の意義について議論する必要があるだろう。HER2陽性乳がんの術後化学療法におけるT-DM1+ペルツズマブとトラスツズマブ+ペルツズマブ+タキサンの比較第III相試験(KAITLIN試験)HER2陽性乳がんにおけるペルツズマブの術後化学療法における上乗せ効果はAPHINITY試験で示されており、リンパ節転移陽性であればペルツズマブを上乗せすることが現在の標準治療となっている。本試験は、トラスツズマブに微小管阻害薬であるエムタンシンを結合した抗体医薬複合体であるT-DM1の術後化学療法における有用性(トラスツズマブ+タキサンと置き換えることが可能であるか)を検証した第III相試験である。本試験ではHER2陽性でリンパ節転移陽性(N+)もしくはリンパ節転移陰性でホルモン受容体陰性かつT2以上の症例を対象として、1,846例が3~4サイクルのAC療法とトラスツズマブ+ペルツズマブ+タキサン(THP群)またはT-DM1+ペルツズマブ群(KP群)にランダム化された。主要評価項目はリンパ節転移陽性例およびITT集団における無浸潤疾患生存(invasive disease-free survival:IDFS)の2つとされた。918例がTHP群、928例がKP群に割り付けられた。約90%がN+であった。腫瘍経はT1が約30%、T2が約60%であった。ホルモン受容体は56%程度で陽性であった。1つ目の主要評価項目であるN+における3年IDFSはTHP群で94.1%、KP群で92.8%(HR:0.97、95%CI:0.71~1.32、p=0.8270)でありKP群の優越性は示せなかった。ITT集団でも同様の結果であった。PROではKP群で良好な傾向を認めたが、有害事象中止、グレード3/4の肝障害、神経障害はKP群で多かった。心毒性はTHP群で多かった。本試験は2014年の1月から2015年の6月まで登録されている。T-DM1とタキサン+トラスツズマブをHER2陽性転移乳がんの初回治療で検討したMARIANNE試験は2015年に最初の解析結果が発表されており、T-DM1のタキサン+トラスツズマブに対する優越性は示せていなかった。イベントの多く発生する転移乳がんにおいてネガティブであったことを考えると、よりハイリスクのN+が多く含まれるとはいえ、術後のセッティングで優越性を示すことは困難であったと予想される。また、APHINITY試験のときにも感じたことであるが、HER2陽性早期乳がんの予後はかなり良くなっているため、このセッティングにおける術後治療のエスカレーションは限界が来ていると考えても良いかも知れない。今後はKATHERINE試験やTNBCにおけるCREATE-X試験などのように、術前治療で治療感受性を判断し、治療効果が不十分な対象に対して別の治療アプローチを行うことがエスカレーションにおいては重要であろう。TNBC1次治療における化学療法へのペムブロリズマブの上乗せ(KEYNOTE-355試験)2018年の欧州臨床腫瘍学会でTNBC1次治療におけるアルブミン結合パクリタキセル(nab-PTX)に対する抗PD-L1抗体であるアテゾリズマブの上乗せを検討したIMpassion130試験の結果が発表され、ITT集団とPD-L1陽性群においてPFSの延長を示し、PD-L1陽性群におけるOS延長の期待が示された。これを受けて、わが国においてもPD-L1陽性TNBCに対しアテゾリズマブが承認された。他がん種ではすでに広く使われるようになっていた免疫チェックポイント阻害薬が、乳がんの日常臨床に登場した。ペムブロリズマブは抗PD-1抗体であり、TNBC初回化学療法へのペムブロリズマブの有効性を検証した試験がKEYNOTE-355試験である。847例がランダム化され、566例がペムブロリズマブ群に、281例がプラセボ群に2対1に割り付けられた。化学療法として、タキサン(nab-PTXまたはパクリタキセル)およびゲムシタビン+カルボプラチンが許容され、それぞれ約45%と55%であった。割り付け調整因子にPD-L1陽性細胞割合(CPS)1%以上または未満が含まれた。主要評価項目はPD-L1陽性集団(CPS≧1%および10%)とITT集団におけるPFS、ならびに同OSとされた。両群において、CPS≧1%は約75%、CPS≧10%は40%弱であった。CPS≧10%集団において、PFSは9.7ヵ月vs.5.6ヵ月(HR:0.65、95%CI:0.49~0.86、p=0.0012)と統計学的有意差をもってペムブロリズマブ群で良好であった。CPS≧1%集団においては7.6ヵ月vs.5.6ヵ月(HR:0.74、95%CI:0.61~0.90、p=0.0014※)と統計学的有意差は示せなかった。ITT集団においてもペムブロリズマブの上乗せを示すことはできなかった。有害事象のプロファイルは両群間で大きな差は認めなかったが、甲状腺機能障害や肺臓炎など、免疫関連有害事象と考えられるものについてはペムブロリズマブ群で多い傾向にあった。これは、これまでに他がん種でみられた、もしくはTNBCにおけるアテゾリズマブでみられたものと同様の傾向であった。本試験の結果を受けて、TNBC初回治療の際にはアテゾリズマブまたはペムブロリズマブを化学療法と併用することが選択肢として加わった。これら2剤はPD-L1の評価方法が異なっていることに注意が必要である。また、アテゾリズマブ、ペムブロリズマブいずれもTNBCに対する術前化学療法に併用することで病理学的完全奏効率を改善することが示されており、将来術前(および術後)に免疫チェックポイント阻害薬を使用した後に再発した場合、どのような治療戦略を取っていくかが今後の課題の一つとなる。※p<0.00111で有意ホルモン受容体陽性HER2陰性進行・再発乳がん1次治療におけるフルベストラント+パルボシクリブとレトロゾール+パルボシクリブを比較するランダム化第II相試験(PARSIFAL試験)ホルモン受容体陽性HER2陰性進行・再発乳がんの1次治療においては、アロマターゼ阻害薬(AI)とCDK4/6阻害薬(パルボシクリブ[Palbo]、アベマシクリブ、ribociclib)の併用がPFSを延長することが示されており、現在の標準治療となっている。また、内分泌療法で進行した場合、2次治療でフルベストラント(Ful)とCDK4/6阻害薬の併用が標準治療である。内分泌療法単剤では初発IV期乳がんを対象とした第III相試験であるFALCON試験においてFulとAI(アナストロゾール)が比較され、ITT集団でFulがAIと比較してPFSにおいて優っていることが示された。これらの試験結果から、1次治療においてCDK4/6阻害薬と併用すべきはAIか、それともFulであるか、という臨床疑問が生まれた。PARSIFAL試験はこの仮説の可能性を探ることを目的として計画されたランダム化第II相試験である。転移・再発乳がんに対する治療歴のない症例が対象となり、486例がFul+Palbo群243例とレトロゾール(LET)+Palbo群243例に1対1に割り付けられた。閉経前も登録可能で、卵巣機能抑制の併用が求められたが、割合としては7〜8%しか含まれなかった。PFSにおいてFul+Palbo群で9.3ヵ月の上乗せを仮定し、優越性を検証するデザインとされたが、優越性が検証できなかった場合には非劣性(非劣性マージン1.21)を検証するとされた。主要評価項目である研究者評価PFSにおいて、LET+Palbo群で32.8ヵ月、Ful+Palbo群で27.9ヵ月(HR:1.13、95%CI:0.89~1.45、p=0.321)であり、優越性はおろか、非劣性を示すこともできなかった(95%CIの上限が非劣性マージンである1.21を上回っている)。FALCON試験においてはサブグループ解析において臓器転移がある場合は有意差がなく、臓器転移がない場合に有意であったことから同様の解析が行われたが、いずれも差は認めず、臓器転移がある場合にはLET+Palboで良い傾向を認めた。再発と初発IV期のサブグループ解析でも両群間の差は認めなかった。副次評価項目である3年OSにおいて、LET+Palbo群で77.1%、Ful+Palbo群で79.4%(HR:1、95%CI:0.68~1.48、p=0.986)であり、こちらも両群間の差は認めなかった。有害事象も大きな差はみられなかった。Ful+CDK4/6阻害薬は初回治療として最強なのではないか、と期待して行われた第II相試験であるが、残念ながらその傾向を感じることすらできなかった。サブグループ解析では前治療(すなわち術後治療)としてAIが行われていた場合にFul+Palboが良い傾向を示したが(有意差なし)、これはAIに長期に曝露されることで約30%程度でESR1の変異を獲得するからと考えられる。AIによる治療歴がないとESR1の変異は数%でしか検出されない。エストロゲン受容体そのものの発現量を減らすというFulの作用機序は、ホルモン感受性が低下してから本領を発揮するのかもしれない。

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第13回 自由診療の抗体検査がもたらす市民の勘違い

本連載もようやく新型コロナウイルス感染症(COVID-19)から離れつつあったが、ちょっと再び戻らせてもらう。なぜかというと、最近、SNS上や報道で目にする抗体検査について不安を覚えるようになったからだ。自治体などが今後の対策のための疫学調査として抗体検査を行うことは何ら問題ないと考えている。しかし、企業が従業員に対して一斉実施したり、市中の医療機関が自由診療で抗体検査を行ったりすることに現時点では何ら意義を感じないからだ。そもそも抗体検査の結果が分かった時に人間はどんな反応を示すだろうか? まず、陰性だった場合は、「感染してなかった」と思いほっとする人、「まだ感染していないのか」とやや不安になる人の2つに分かれるだろう。だが、この陰性という結果が無駄な安心を与えてしまう事例も既に明らかになっている。6月10日に判明した名古屋市での女性の感染例だ。この女性は発熱の症状を訴え、COVID-19の抗体検査を受け陰性と判明した。その翌日は勤務先を休んだものの、解熱したとして翌々日から3日間勤務に復帰。その後、味覚・嗅覚の異常を訴え、最終的に抗体検査から1週間後にPCR検査で感染の事実が判明している。要は抗体検査で陰性の発熱だったのでCOVID-19ではないと勘違いしてしまった事例である。では陽性だったらどうだろう? そもそも市中の医療機関の自由診療でCOVID-19の抗体検査を受けに行く人の多くは、前述の名古屋の事例のような現在進行形の類似症状のあるケースよりも過去に類似の症状を経験したか、単に興味本位という人だろう。そうした人が陽性と分かったら、最初は驚き、思い当たる感染時期がないか振り返るに違いない。ただ、入院も必要もなく軽症あるいは無症状で済んだことに加え、抗体があるという事実から安心しきってしまう人がほとんどではないだろうか。ところがこの安心はかなり的外れである可能性が浮上している。新型コロナの抗体価は持続しにくい?先ごろ、nature medicineに発表された中国の重慶医科大学の研究グループによるCOVID-19感染者の血中抗体価を追跡した研究結果が明らかになった。それによると感染者の退院8週間後のCOVID-19特異的IgG抗体は、無症候者の93.3%、有症状者の96.8%で減少し、抗体減少率の中央値は無症候者で71.1%、有症状者で76.2%。また、中和抗体量は無症候者の81.1%、有症状者の62.2%で減少し、抗体減少率の中央値は無症候者で8.3%、有症状者で11.7%だった。この事実からすれば、抗体検査で陽性であっても長期的な「免疫パスポート」にはならない可能性が高いことになる。しかも、現時点では特異的な治療薬、ワクチンも存在しないという現実。つまるところ、抗体検査を受けた人は結果が陰性であれ、陽性であれ、今後注意すべきことは変わらないということである。にもかかわらず最近では大都市圏のクリニックを中心にこのCOVID-19の抗体検査を行う医療機関が増えている。少なくとも通常よりもややお金がかかる自由診療で検査を受けようとする人の心中は「何らかの安心を得たい」ことがほとんどだろう。しかし、医学的に見て何らかの安心が得られる状況ではないのは既に書いたとおりだ。逆にこうした医療機関には、自由診療で抗体検査を行うことで患者側にどんなメリットがあるのか、と問いたい。むしろ一時的かつ張りボテの安心感を与えることで、その後の感染リスクを高める害のほうが多いのではないかと考える。少なくとも私のオツムではどうしてもこの検査にメリットについて明快な答えを提示できないのである。

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カプマチニブ、METエクソン14スキッピング陽性肺がんに国内承認/ノバルティス

 ノバルティス ファーマは、2020年 6月29日、MET遺伝子エクソン14スキッピング変異陽性の切除不能な進行・再発の非小細胞肺がん(NSCLC)治療薬として、カプマチニブ(商品名:タブレクタ)に対する製造販売承認を取得したと発表。 MET遺伝子エクソン14スキッピング(METex14)変異陽性の切除不能な進行・再発のNSCLCの予後は不良で、生命を脅かす重篤な疾患である一方、治療選択肢が非常に限られており、MET遺伝子を標的とした治療法の開発が望まれていた。MET遺伝子変異を有する患者はNSCLC患者数の約3~4%と報告されており、METex14変異陽性の切除不能な進行・再発のNSCLC患者数は日本国内では約3,000名程度と推定される。 なお、METex14変異の検出には、カプマチニブのコンパニオン診断薬として中外製薬株式会社の「FoundationOne CDx がんゲノムプロファイル」が用いられる。 今回の承認は、MET遺伝子増幅又はMETex14変異を有する切除不能な進行・再発のNSCLC患者を対象に、カプマチニブ(400mgx2/日 連日投与)の単剤投与を検討する国際共同第II相試験(GEOETRY mono-1試験)の結果に基づいている。 カプマチニブは、米国では2019年9月に画期的治療薬指定、本年2月に優先審査品目指定、5月に承認を取得している。なお、本邦においてカプマチニブは2019年5月に「MET 遺伝子変異陽性のNSCLC」を予定される効能・効果として希少疾病用医薬品指定を受けている。

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