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COVID-19流行、 ACSの入院数減に影響か/Lancet

 イングランドでは、急性冠症候群(ACS)による入院患者数が、2019年と比較して2020年3月末には大幅に減少(40%)し、5月末には部分的に増加に転じたものの、この期間の入院数の低下は、心筋梗塞による院外死亡や長期合併症の増加をもたらし、冠動脈性心疾患患者に2次予防治療を提供する機会を逸した可能性があることが、英国・オックスフォード大学のMarion M. Mafham氏らの調査で示された。研究の成果は、Lancet誌オンライン版2020年7月14日号に掲載された。COVID-19の世界的流行期に、オーストリアやイタリア、スペイン、米国などでは、ACSによる入院数の低下や、急性心筋梗塞への直接的経皮的冠動脈インターベンション(PCI)の施行数の減少が報告されているが、入院率の変化の時間的な経過やACSのタイプ別の影響、入院患者への治療などの情報はほとんど得られていないという。ACSのタイプ別に、入院と手技の数、減少率を評価 研究グループは、イングランドにおける種々のタイプのACS入院患者数の変化の規模、性質、期間を把握し、COVID-19の世界的流行の結果としての、患者の院内管理への影響を評価する目的で検討を行った(英国医学研究評議会[MRC]などの助成による)。 解析には、Secondary Uses Service Admitted Patient Careデータベースに記録されたイングランドにおける2019年1月1日~2020年5月24日の、ACSのタイプ別の入院データを用いた。 入院患者は、ST上昇型心筋梗塞(STEMI)、非STEMI(NSTEMI)、タイプ不明の心筋梗塞、その他のACS(不安定狭心症を含む)に分類された。また、入院期間中に受けた血行再建術(PCIを行わない冠動脈造影、PCI、冠動脈バイパス術[CABG])が同定された。 入院と手技の数を週単位で算出し、入院とACSタイプ別の減少率および95%信頼区間(IC)が算定された。5月最終週の減少率は16%、入院日数も短縮 ACSによる入院は、2020年2月中旬から減少しはじめ、2019年のベースラインの3,017件/週から、2020年3月末には1,813件/週へと40%(95%CI:37~43)低下した。この減少傾向は、2020年4月~5月には部分的に増加に転じて、5月最終週には2,522件/週へと上昇し、ベースラインからの減少率は16%(13~20)となった。 入院数の減少期間中は、ACSのすべてのタイプで入院数が低下したが、STEMIとNSTEMIでは、NSTEMIで減少率が高く、2019年の1,267件/週から2020年3月末の733件/週へと42%(95%CI:38~46)低下した。 並行して、PCI施行数も減少し、STEMIでは2019年の438件/週から2020年3月末には346件へと21%(95%CI:12~29)低下し、NSTEMIでは383件/週から240件/週へと37%(29~45)減少した。 また、ACS患者の入院期間中央値は、2019年は4日(IQR:2~9)であったが、2020年3月末には3日(1~5)へと短くなった。STEMIは3日から2日へ、NSTEMIは5日から3日へ短縮した。 著者は、「ACSの患者管理へのCOVID-19の影響の全容は、これらの解析を更新することで、引き続き評価されるだろう」とし、「COVID-19の次なる流行時に、不必要な死亡や障害を回避するためにも、ACSなどの緊急性の高い疾患の患者が救急診療部を受診しない理由を解明し、速やかに対処すべきである」と指摘している。

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新型コロナ重症例、デキサメタゾンで28日死亡率が低下/NEJM

 英国・RECOVERY試験共同研究グループのPeter Horby氏らは 、新型コロナウイルス感染症(COVID-19)で入院した患者のうち、侵襲的人工呼吸器または酸素吸入を使用した患者に対するデキサメタゾンの投与が28日死亡率を低下させることを明らかにした。NEJM誌オンライン版2020年7月17日号に掲載報告。なお、この論文は、7月17日に改訂された厚生労働省が発刊する「新型コロナウイルス感染症(COVID-19)診療の手引き 第2.2版」の“日本国内で承認されている医薬品”のデキサメタゾン投与の参考文献である。 この研究では、2020年3月19日~6月8日の期間にCOVID-19入院患者へのデキサメタゾン投与における有用性を把握するため、非盲検試験が行われた。対象者をデキサメタゾン投与群と通常ケア群にランダムに割り当て28日死亡率を評価し、人工呼吸器管理や酸素吸入の有無によるデキサメタゾン投与の有用性を検証した。デキサメタゾン群には1日1回6 mgを最大10日間、経口または点滴静注で投与した。通常ケア群には、日常臨床でデキサメタゾンを使用している患者が8%含まれていた。薬物療法として、アジスロマイシンは両群で使用(デキサメタゾン群:24% vs.通常ケア群:25%)、そのほか通常ケア群ではヒドロキシクロロキン、ロピナビル・リトナビル、IL-6アンタゴニストなどが投与された。また、レムデシビルは2020年5月26日より使用可能となり一部の症例で投与された。 主な結果は以下のとおり。・全参加者11,303例のうち、他の治療を受けるなどの理由で4,878例が除外された。残り6,425例をデキサメタゾン投与群2,104例(平均年齢±SD:66.9±15.4歳)と通常ケア群4,321例(平均年齢±SD:65.8±15.8歳)に割り付けた。・6,425例の呼吸器補助別の割り付けは、侵襲的人工呼吸器管理が1,007例、酸素吸入が3,883例、呼吸器補助なしは1,535例だった。・28日死亡率は、デキサメタゾン群が482例(22.9%)、通常ケア群は1,110例(25.7%)で、デキサメタゾン群で有意に低下した(Rate Ratio[率比]:0.83、95%信頼区間[CI]:0.75〜0.93、p<0.001)。・呼吸器補助レベルを考慮した場合、侵襲的人工呼吸器管理の患者において絶対的・相対的ベネフィットが示される傾向で、デキサメタゾン群は通常ケア群より死亡発生率が低く(29.3% vs.41.4%、率比:0.64、95%CI:0.51~0.81)、酸素吸入群においても同様だった(23.3% vs.26.2%、率比:0.82、95%CI:0.72~0.94)。しかし、呼吸器補助を受けていない患者において、デキサメタゾンの効果は明らかではなかった(17.8% vs.14.%、率比:1.19、95%CI:0.91~1.55)。・副次評価項目として、デキサメタゾン群は通常ケア群より入院期間が短く(平均入院日数:12日 vs.13日)、28日以内の退院の可能性が高かった(率比:1.10、95%CI:1.03~1.17)。この最大因子は侵襲的人工呼吸器管理だった。・呼吸器補助を受けていない患者において、副次評価項目である侵襲的人工呼吸器管理や死亡の複合は通常ケア群よりデキサメタゾン群で低かった(率比:0.92、95%CI:0.84~1.01)。

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“do処方”を見直そう…?(解説:今中和人氏)-1263

 誰しもが駆け出しとして医師人生をスタートする。医療におけるさまざまな処置や処方には、往々にして歴史的な変遷や患者限定の根拠があったりして実に奥深く、駆け出しがすべてを理解して対応するのは事実上不可能だが、何でもかんでも先輩に尋ねるわけにもゆかない。まして「これは本当に必要なんですか?」なんて、一昔前の「仕分け」のような質問をすればうっとうしがられること必定だから、いわゆる“do処方”の乱発が起きる。もちろん、自分なりに意味付けをしてのことだが、世の中には実はほとんどアップデートされておらず、もはや伝統芸能の域に達しているような処置や処方も存在する。 黎明期から見れば、開心術は医療器材的にも技術的にも異次元とすらいえる進歩を遂げた。人工心肺による循環変動、コンタクト・サーフェスに由来する著明な炎症反応がサイトカイン・ストーム状態と、それに伴う臓器障害や凝固異常を惹起する、といった触れ込みで昔から使われてきたのがステロイドである。ステロイドには免疫抑制や過血糖などの作用もあるため、誰しも一度は必要性を疑ったはずだが、私が属したほぼすべての施設で人工心肺症例には一律、成人でも小児でも相当な量のステロイドが投与されていたし、それでもサイトカイン・ストームを疑う、妙にFP ratioの低い症例は存在した。だが指導的立場になった後、積極的に「伝統」を廃する決断は、「意外と効いているかも」「自分が知らないだけかも」となかなか難しく、当施設でステロイド投与をやめたのは約10年前からである。やめたところでプラスにもマイナスにも変化を感じていないが、その後2012年にDECS study、2015年にSIRS trialという成人症例対象の大規模RCTが発表され、いずれも大量ステロイド投与に便益なしと結論付けられた。2019年のEACTS等の成人対象のガイドラインでは、ステロイドの一律使用はclass IIIとなっている。 本論文は、一昔前BRICsと注目されたうちの3ヵ国・4施設における約3年間の乳児開心術394例(中央値6ヵ月、新生児5%)に対するRCTで、9割以上はロシアの2施設の症例だった。麻酔導入後、study群はデキサメタゾン1mg/kgを、control群は生食を静注した。平均人工心肺時間は各50分と46分、直腸温36℃で、術後30日以内または在院中死亡、心筋梗塞、ECMO、急性腎障害などをprimary、人工呼吸期間、カテコラミン補助、出血量などをsecondaryエンドポイントと定義した。最終的に10例が人工心肺非使用術式に変更になり、各群15%、22%が主にアレルギー疑いでステロイドを追加投与された。結論は、サブグループ解析も含め、各項目とも大量ステロイドの一発打ちに有意な便益はなかったが、感染症も各2%、1.5%と増えなかった(血糖値は論じられていない)。要するに投与してもしなくてもあまり違わなかったわけだが、小児心臓外科の世界ではステロイド投与に関して見解が割れており、昨今も54%と半数以上の患児がステロイド投与を受けているそうである。評者は、薬剤は投与必要性を吟味すべきで“do処方”は見直そう、という意見だが、最近、コロナ肺炎でサイトカイン・ストームの難治性がクローズアップされている一方、多くの症例で早めのステロイド投与が有効という、理論的に納得しやすい報告もあるので、ステロイドに関しては、相当な大量でも有害事象がほとんど増えないなら、便益も証明されてはいないが、典型的compromised hostである小児開心術患者には投与しておく、でもよいのかも…と、思わず腰が引けてしまう。 諸先生はいかがであろうか?

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第18回 待望のプラセボ対照無作為化試験でCOVID-19にインターフェロンが有効

中国武漢での非無作為化試験1)や香港での無作為化試験2)等で示唆されていたインターフェロン1型(1型IFN)の新型コロナウイルス感染症(COVID-19)治療効果が小規模ながら待望のプラセボ対照無作為化試験で裏付けられました3,4)。先週月曜日(20日)の速報によると、英国のバイオテクノロジー企業Synairgen社の1型IFN(インターフェロンβ)吸入薬SNG001を使用したCOVID-19入院患者が重体になる割合はプラセボに比べて79%低く、回復した患者の割合はプラセボを2倍以上上回りました。わずか100人ほどの試験は小規模過ぎて決定的な結果とはいい難いと用心する向きもありますが、SNG001は新型コロナウイルス(SARS-CoV-2)食い止めに大いに貢献する吸入薬となりうると試験を率いた英国・サウサンプトン大学の呼吸器科医Tom Wilkinson教授は言っています5)。Synairgen社を率いるCEO・Richard Marsden氏にとっても試験結果は朗報であり、COVID-19入院患者が酸素投与から人工呼吸へと悪化するのをSNG001が大幅に減らしたことを喜びました。投資家も試験結果を歓迎し、Synairgen社の株価は試験発表前には36ポンドだったのが一時は236ポンドへと実に6倍以上上昇しました。この記事を書いている時点でも200ポンド近くを保っています。Synairgen社は入院以外でのSNG001使用も視野に入れており、COVID-19発症から3日までの患者に自宅でSNG001を吸入してもらう初期治療の試験をサウサンプトン大学と協力してすでに英国で始めています6)。米国では1型IFNではなく3型IFN(Peginterferon Lambda-1a)を感染初期の患者に皮下注射する試験がスタンフォード大学によって実施されています7)。インターフェロンは感染の初期治療のみならず予防効果もあるかもしれません。中国・湖北省の病院での試験の結果、インターフェロンを毎日4回点鼻投与した医療従事者2,415人全員がその投与の間(28日間)COVID-19を発症せずに済みました8)。インターフェロンはウイルスの細胞侵入に対してすぐさま強烈な攻撃を仕掛ける引き金の役割を担います。新型コロナウイルス(SARS-CoV-2)はどうやらインターフェロンを抑制して複製し、組織を傷める炎症をはびこらせます4,9)。ただしSARS-CoV-2がインターフェロン活性を促すという報告10)や1型IFN反応が重度COVID-19の炎症悪化の首謀因子らしいとする報告11)もあり、インターフェロンは場合によっては逆にCOVID-19に加担する恐れがあります。米国立衛生研究所(NIH)のガイドライン12)では、重度や瀕死のCOVID-19患者へのインターフェロンは臨床試験以外では使うべきでないとされています。2003年に流行したSARS-CoV-2近縁種SARS-CoVや中東で依然として蔓延するMERS-CoVに感染したマウスへのインターフェロン早期投与の効果も確認されており13,14)、どの抗ウイルス薬も感染初期か場合によっては感染前に投与すべきと考えるのが普通だとNIHの研究者Ludmila Prokunina-Olsson氏は言っています15)。参考1)Zhou Q, et al. Front Immunol. 2020 May 15;11:1061.2)Hung IF, et al. Lancet. 2020 May 30;395:1695-1704.3)Synairgen announces positive results from trial of SNG001 in hospitalised COVID-19 patients / GlobeNewswire 4)Can boosting interferons, the body’s frontline virus fighters, beat COVID-19? / Science 5)Inhaled drug prevents COVID-19 patients getting worse in Southampton trial 6)People with early COVID-19 symptoms sought for at home treatment trial 7)OVID-Lambda試験(Clinical Trials.gov)8)An experimental trial of recombinant human interferon alpha nasal drops to prevent coronavirus disease 2019 in medical staff in an epidemic area. medRxiv. May 07, 2020 9)Hadjadj J, et al. Science. 2020 Jul 13:eabc6027.10)Zhuo Zhou, et al. Version 2. Cell Host Microbe. 2020 Jun 10;27(6):883-890.11)Lee JS, et al. Sci Immunol. 2020 Jul 10;5:eabd1554.12)Coronavirus Disease 2019 (COVID-19) Treatment Guidelines,NIH 13)Channappanavar R, et al. Version 2. Cell Host Microbe. 2016 Feb 10;19:181-93. 14)Channappanavar R, et al. J Clin Invest. 2019 Jul 29;129:3625-3639.15)Seeking an Early COVID-19 Drug, Researchers Look to Interferons / TheScientist

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自閉スペクトラム症と統合失調症の鑑別症状

 自閉スペクトラム症(ASD)と統合失調症(SZ)は、類似症状を呈する異種性の神経発達障害である。米国・イェール大学のDominic A. Trevisan氏らは、ASDとSZの重複および鑑別する症状の特定を試みた。Frontiers in Psychiatry誌2020年6月11日号の報告。 対象は、成人のASD患者53例、SZ患者39例、定型発達者40例。すべての対象者に、ASD評価のための半構造化観察検査(ADOS-2)および陽性・陰性症状評価尺度(PANSS)による評価を行った。ADOSの感度と特異性は、診断カットオフ値を用いて評価した。群間の重複症状の分析には、IQと性別分布による群間差をコントロールした後、ANOVA、ROC曲線、ANCOVAを用いた。 主な結果は以下のとおり。・成人のASDとSZの鑑別にADOSは有用であったが、DSM-VでASD基準を満たさないSZ患者では、偽陽性率が高かった。・SZ患者の特異性が低い理由を特定するため、ASDとSZの症状を正の症状(異常行動あり)と負の症状(通常行動なし)に分類した。・ASDとSZでは、典型的な社会的およびコミュニケーション上の行動の欠如に関連する負の症状に重複が認められたが、疾患特有の正の症状では違いが認められた。・ASDでは、反復繰り返し行動や常同的な言語のスコアが高く、SZでは、幻覚・妄想などの精神病性症状のスコアが高かった。 著者らは「ASDとSZの鑑別では、正の症状に焦点を当てることが有用である可能性が示唆された。ASD症状を正と負に分類するための標準化された測定法は開発されていないが、実行可能な臨床ツールであると考えられる」としている。

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急性脳梗塞/TIA、チカグレロル+アスピリン併用で予後改善/NEJM

 軽症~中等症の急性非心原性虚血性脳卒中または一過性脳虚血発作(TIA)で、静脈内または血管内血栓溶解療法を受けなかった患者において、チカグレロル+アスピリン併用療法はアスピリン単独療法と比較し、発症後30日時点の脳卒中/死亡の複合アウトカムの発生が低下した。米国・テキサス大学オースティン校のS. Claiborne Johnston氏らが、無作為化二重盲検プラセボ対照比較試験「THALES試験」の結果を報告した。先行研究では、チカグレロルはアスピリンと比較して、脳卒中/TIA後の血管イベントまたは死亡の予防という点で良好な結果は示されておらず、脳卒中予防に対するチカグレロル+アスピリン併用療法の有効性は十分検討されていなかった。NEJM誌2020年7月16日号掲載の報告。虚血性脳卒中/TIA患者約1万1,000例を対象に試験 研究グループは、米国国立衛生研究所脳卒中スケール(NIHSS)のスコアが5未満(範囲:0~42、スコアが高いほど重症度が高い)の軽症~中等症の急性非心原性虚血性脳卒中、またはTIA患者で、血栓溶解療法または血栓除去を実施していない1万1,016例を、発症後24時間以内にチカグレロル(180mg負荷投与後に90mgを1日2回)+アスピリン(初回投与300~325mg、その後75~100mg/日)併用群、またはプラセボ+アスピリン群に1対1の割合で無作為に割り付け(チカグレロル併用群5,523例、アスピリン単独群5,493例)、それぞれ30日間投与した。 主要評価項目は30日以内の脳卒中または死亡の複合アウトカム、副次評価項目は30日以内の虚血性脳卒中の初回再発および身体障害で、主要安全性評価項目は重度出血(GUSTO出血基準)とし、intention-to-treat解析を実施した。チカグレロル併用により、脳卒中または死亡の複合アウトカムのリスクが低下 主要評価項目のイベントは、チカグレロル併用群で303例(5.5%)、アスピリン単独群で362例(6.6%)発生した(ハザード比[HR]:0.83、95%信頼区間[CI]:0.71~0.96、p=0.02)。虚血性脳卒中は、チカグレロル併用群で276例(5.0%)、アスピリン単独群で345例(6.3%)発生した(HR:0.79、95%CI:0.68~0.93、p=0.004)。障害の発生率については、両群間で有意差は認められなかった。 重度出血は、チカグレロル併用群で28例(0.5%)、アスピリン単独群で7例(0.1%)発生した(p=0.001)。

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第16回 治療編(1)薬物療法・その3【エキスパートが教える痛み診療のコツ】

第16回 治療編(1)薬物療法・その3前回は、神経障害性疼痛への緩和適応を有する薬物について説明しました。今回は、侵害受容性疼痛に対して使用されているオピオイドについて説明しましょう。オピオイドには、麻薬指定を受けていない薬物と、麻薬指定薬とがあります。麻薬は、国の指定によって「麻薬」になります。したがって、同じ薬でも麻薬としての扱いは国によって異なります。オピオイドを使用している患者さんが外国に旅行される場合、訪問国の麻薬事情を調べておく必要があります。ここでは、わが国における非麻薬系のオピオイドとして、トラマドール製剤とブプレノルフィン貼付薬について解説します。(1)トラマドール<作用機序>オピオイド受容体への作用と、下行性抑制系の賦活効果を示すノルアドレナリン・セロトニンの再取り込みの阻害作用によって、鎮痛効果を発揮します。<投与上の注意>通常の鎮痛薬では効果が得られない非がん性慢性疼痛の患者さんでは、1日2回投与が基準です。25mg錠と50mg錠がありますが、基本的には25mg×2で開始します。高齢者には、就寝前投与25mg1錠から開始し、患者さんが薬物に慣れたら朝夕の25mg×2に増量します。通常、とくに副作用や疼痛緩和効果が見られなければ、25mg×4、50mg×4と順次増量していきます。最大投与量は、400mg(50mg×8/日)です。副作用としては、嘔気・嘔吐、食欲低下、便秘、口渇、ふらつき、傾眠、意識消失などがあります。肝機能障害にも注意が必要です。(2)トラマドール塩酸塩徐放錠(商品名:ワントラム)<作用機序>トラマドール製剤なので、本質的に上記と同様です。<投与上の注意>トラマドールの必要投与量が25mg×4になるようであれば、ワントラム1錠(トラマド-ル100mg含有)が便利です。これはトラマドールの徐放剤であり、トラマドール25mgが1日4回の経時的投与されているのと同様の血中濃度を維持でき、しかも1日1回の投与ですので、患者さんにとってもコンプライアンスの維持が容易になります。(3)トラマドール塩酸塩・アセトアミノフェン配合剤錠(商品名:トラムセット)<作用機序>上記トラマドールの作用機序に、アセトアミノフェンの作用機序が加わります。すなわち、中枢性プロスタノイドの抑制、内因性下行性抑制系セロトニン系の活性化、内因性オピオイドの増加などの鎮痛機序がアシストされることが推定され、トラマドール単独に比較して、より疼痛緩和効果が期待できます。<投与上の注意>トラマドール37.5mgとアセトアミノフェン325mgとの配合薬です。非がん性慢性疼痛では、1回1錠、必要に応じて1日4回投与します。基本的には、投与間隔を4時間は空けるようにします。最大投与量は1回2錠、1日8錠までとなっています。投与を中止する際には、トラマドール製剤なので、いずれも漸次減量していきます。アセトアミノフェンを別に投与する場合には、必ず、トラムセットに含まれているアセトアミノフェンの含有量を計算し、4,000mg/日を超えないように注意してください。アセトアミノフェンの副作用に肝機能障害がありますので、長期投与する場合は、いずれにしても肝機能をモニタリングすることが重要です。(4)ブプレノルフィン(商品名:ノルスパン テープ)<作用機序>オピオイド受容体への作用は部分的作動性ではありますが、親和性は強く、強力な鎮痛作用を示します。皮膚から吸収される1週間貼付の徐放剤です。同じ貼付部位での1週間貼付剤なので、皮膚への影響により掻痒を訴え、剥がすと発赤が認められる場合があります。そのために、1週間ごとに貼付部位をローテーションしていきます。<投与上の注意>投与に際しては、e-ラーニングの習得が必要です。保険適応症例は、腰痛症と変形性関節症のみです。また、現在のところ2週間分の処方しかできないので、患者さんの受診は最長2週間ごとになります。最大投与量は20mg/週(20μg/時)です。5、10、20mgの貼付薬があり、痛みの強度により、投与量を決めていきます。そのため、基本的には5mg貼付薬から開始し、1~2週間ごとに投与量の増減を行い、適切な貼付量を決めていきます。貼付開始後および増量後には、3日程度の観察期間が必要です。副作用としては、トラマドールと同様に嘔気・嘔吐、食欲低下、便秘、口渇、頭痛、ふらつき、傾眠、意識消失など、通常のオピオイドに見られる症状があります。1週間という長期間貼付なので、掻痒、発赤などの皮膚症状が見られることがあり、貼付部位をローテーションすることが重要です。以上、痛み治療の第2段階における薬物を取り上げ、その作用機序、投与における注意点などを述べさせていただきました。痛みの患者さんに接しておられる読者の皆様に少しでもお役に立てれば幸いです。次回はさらに痛みの程度が強くなった場合に使用する強力な麻薬性オピオイドについて解説します。1)花岡一雄ほか監修. 痛みマネジメントupdate 日本医師会雑誌. 2014;143:S156-S1572)花岡一雄ほか監修. 痛みマネジメントupdate 日本医師会雑誌. 2014;143:S1553)花岡一雄ほか監修. 痛みマネジメントupdate 日本医師会雑誌. 2014;143:S154

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小児精神疾患における80種の向精神薬の安全性~メタ解析

 精神疾患は、小児期や青年期にしばしば発症する。小児精神疾患の治療に適応を有する向精神薬はさまざまあり、適応外での使用が往々にして行われる。しかし、これら向精神薬の副作用については、発達途上期間中であることを踏まえ、とくに注意が必要である。イタリア・パドヴァ大学のMarco Solmi氏らは、小児および青年の精神疾患に対する抗うつ薬、抗精神病薬、注意欠如多動症(ADHD)治療薬、気分安定薬を含む19カテゴリ、80種の向精神薬における78の有害事象を報告したランダム化比較試験(RCT)のネットワークメタ解析およびメタ解析、個別のRCT、コホート研究をシステマティックに検索し、メタ解析を行った。World Psychiatry誌2020年6月号の報告。 主な結果は以下のとおり。・ネットワークメタ解析9件、メタ解析39件、個別のRCT90件、コホート研究8件が抽出され、分析対象患者は33万7,686例であった。・78の有害事象について20%以上のデータを有していた薬剤は以下のとおりであった。 ●6種の抗うつ薬:セルトラリン、エスシタロプラム、パロキセチン、fluoxetine、ベンラファキシン、vilazodone ●8種の抗精神病薬:リスペリドン、クエチアピン、アリピプラゾール、ルラシドン、パリペリドン、ziprasidone、オランザピン、アセナピン ●3種のADHD治療薬:メチルフェニデート、アトモキセチン、グアンファシン ●2種の気分安定薬:バルプロ酸、リチウム・これらの薬剤のうち、カテゴリごとにより安全なプロファイルを有していた薬剤は以下のとおりであった。 ●抗うつ薬:エスシタロプラム、fluoxetine ●抗精神病薬:ルラシドン ●ADHD治療薬:メチルフェニデート ●気分安定薬:リチウム・入手可能な文献より、安全性の懸念が最も高かった薬剤は以下のとおりであった。 ●抗うつ薬:ベンラファキシン ●抗精神病薬:オランザピン ●ADHD治療薬:アトモキセチン、グアンファシン ●気分安定薬:バルプロ酸・カテゴリごとに最も関連が認められた有害事象は以下のとおりであった。 ●抗うつ薬:悪心・嘔吐、有害事象による中止 ●抗精神病薬:過鎮静、錐体外路症状、体重増加 ●ADHD治療薬:拒食、不眠 ●気分安定薬:過鎮静、体重増加 著者らは「本結果は、臨床診療、研究、治療ガイドライン作成を行ううえで役立つであろう」としている。

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新型コロナワクチン、米の第I相試験で全例が抗体獲得/NEJM

 米国・国立アレルギー・感染症研究所(NIAID)とModerna(米国マサチューセッツ州ケンブリッジ)が共同で開発中の新型コロナウイルス(SARS-CoV-2)mRNAワクチン「mRNA-1273」の、第I相臨床試験の結果が発表された。全例で中和抗体が検出され、試験中止について事前に規定した安全性に関する懸念は発生しなかった。米国・カイザーパーマネンテ(Kaiser Permanente Washington Health Research Institute)のLisa A. Jackson氏らmRNA-1273 Study Groupによる報告で、著者は「結果は、本ワクチンのさらなる開発を支持するものであった」とまとめている。NEJM誌オンライン版2020年7月14日号掲載の報告。25μg、100μg、250μgを28日間隔・2回投与 研究グループは2020年3月16日~4月14日にかけて、18~55歳の健康な成人45例を対象に、第I相の用量漸増非盲検試験を行った。被験者を15例ずつ3群に分け、mRNA-1273ワクチンを、25μg、100μg、250μgのいずれかの用量で28日間隔・2回投与した。2回投与後の全身性有害事象、25μg群54%、100μg・250μg群は全例 1回投与後(29日目)の抗体反応は高用量群ほど高く、酵素結合免疫吸着検定法(ELISA)によるS-2P抗体の幾何平均抗体価(GMT)は、25μg群が4万227、100μg群が10万9,209、250μg群が21万3,526だった。 2回投与後(57日目)のELISAによるS-2P抗体のGMTは、25μg群が29万9,751、100μg群が78万2,719、250μg群が119万2,154と上昇した。これらは、SARS-CoV-2感染回復者のGMTの14万2,140を上回っていた。 また、2回接種後、評価が行われた全被験者において、血清中和抗体は2通りの方法(pseudotyped lentivirus reporter single-round-of-infection neutralization assay[PsVNA]とplaque-reduction neutralization testing[PRNT])で検出された。同検出値は、感染回復期血清検体パネルの上半分値とほぼ同等だった。 被験者の半数以上で認められた有害事象は、疲労感、悪寒、頭痛、筋肉痛、注射部位痛だった。2回投与後の全身性有害事象の頻度は高く、低用量の25μg群では7/13例(54%)、100μg、250μg群では全員(それぞれ15例、14例)と高用量群で高かった。250μg群の3例(21%)では、1つ以上の重篤有害事象が報告された。

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自分で自分の帝王切開をやってしまった女性【Dr. 倉原の“おどろき”医学論文】第167回

自分で自分の帝王切開をやってしまった女性pixabayより使用私の指導医のFacebookページで知った論文なのですが、衝撃的だったので紹介したいと思います。Molina-Sosa A, et al.Self-inflicted cesarean section with maternal and fetal survival. International Journal of Gynecology & Obstetrics. 2004; 84 (3): 287-290. doi:10.1016/j.ijgo.2003.08.0182000年3月のことでした、40歳のメキシコ人女性が、出産間近の状態でしたが、病院に行くことができませんでした。夜から陣痛が始まり、かなり強くなってきました。そこで何を思ったのか、彼女は、刃渡り15cmはあろうかという包丁を取り出し、自分の腹部へザクッ!!キャーーーーー!!!まず、ほかにやれることはなかったのか……。右季肋部から恥骨部にかけて、17cmほど、包丁で皮膚を切り裂きました。もちろんこれ、麻酔なしでやったんでしょうね……。案の定、ハサミで臍帯を切断した後、いったん意識を失ってしまいました。その後、意識が回復し、4kmほど離れた病院に搬送されたそうです。そして、外科的修復が必要な状態にあったため、さらに高次病院へ搬送されました。その後、手術は無事に終了し、彼女は退院したそうです。現在は、親子ともに幸せに暮らしているとか。めでたしめでたし。それにしても、包丁で切った場所が消化器系ではなくて、子宮だったのが幸いでしたね。腕に自信がある皆さんも、ブラックジャックじゃないんですから、自分で自分の手術をしないように気を付けてくださいね。ちなみに、過去の自己帝王切開22例をまとめた珍しいレビューがあります1)。22例のうち7例は、自分の子供を殺そうとして(もはや帝王切開とは違いますね…汗)、4例には精神障害があり、8例は痛みがひどすぎて我慢できずに……ということのようです。1) Szabó A, et al. Auto-Caesarean section: a review of 22 cases. Arch Womens Ment Health. 2014 Feb;17(1):79-83.

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第16回 世界が嘱望の新型コロナ予防ワクチン試験、質が伴うスピード感?

7月に入り第2波ではないかと噂されるほど感染者が急増している新型コロナウイルス感染症(COVID-19)。いま、医療従事者も一般人も一番待ち望んでいるのが予防ワクチンの登場だ。そのような中、開発中のワクチンの中では最も先行していると言われるアストラゼネカ社とオックスフォード大学の第I/II相試験結果がLancet誌に掲載1)され、メディアもこれを取り上げている。オックスフォード大のワクチン、初期の治験で効果確認(朝日新聞)新型コロナ ワクチン臨床で抗体 英・中のチーム発表(毎日新聞[共同通信配信記事])コロナワクチン臨床試験、治験者95%で抗体4倍増…英製薬大手が中間発表(読売新聞)英アストラゼネカのワクチン「強い免疫反応」 初期治験(日本経済新聞)4本の記事を比べると、読売以外は「有望」「期待」という用語を使っており、この記事を読み「いよいよワクチンが登場してくるのか」と期待を膨らませる人は少なくないはずだ。今回の試験は、COVID-19ワクチン候補を髄膜炎菌ワクチンと比較した被験者1,077例の無作為化単盲検比較試験で、うち10例は無作為化の対象とせず、ワクチンのブースター(28日の間隔を置いた2回接種)投与を受けている。また、一部の被験者ではワクチンの副反応軽減目的でアセトアミノフェンの投与が行われている。この結果、投与14日後には新型コロナウイルス(SARS-Cov-2)のスパイクタンパク質に特異的なT細胞反応がピークに達し(n=43)、投与28日後のSARS-Cov-2のスパイクタンパク質に対するIgG抗体量の上昇(n=127)が確認された。抗体量は一部の単回投与例とブ―スター投与例では56日後まで上昇し続けた。また、投与28日後のSARS-Cov-2のスパイクタンパク質に対する中和抗体反応は91%(n=35)で認められ、ブースター投与9例では全例で確認されたとのこと。主な有害事象は疲労感(アセトアミノフェン非投与群70%vs.アセトアミノフェン投与群71%)と頭痛(同68%vs.61%)。このほかには筋肉痛、不快感、熱感、悪寒など(発現率は50~60%前後)で、重篤なものは認められなかった。このようにしてみると、まだ第I/II相試験ということもあり、抗体量の測定などが行われたn数も少なく、個人的には前向きには捉えられるものの、まだまだプリミティブな結果だと受け止めている。ただ、この各紙を一覧すると、細かいことを書いたらそもそも読んでもらえないという一般向け紙面の限界もあり、漠然とした希望だけを持ってしまいかねない。もっともこの中でも朝日新聞は研究チームの会見コメントとして、まだ課題も多く先行き不透明なものであることを強調している。Lancet誌の論文内ではこの点について、まず被験者の年齢中央値が35歳であることを指摘している。第I/II相試験ゆえにこうした年齢中央値になるのはやむを得ないが、COVID-19で重症化、死亡リスクが高いとされる集団の一つは高齢者である。実際、米国医師会雑誌(JAMA)に中国の国立疾病予防管理センター(中国名:中国疾病預防控制中心[中国CDC])のグループが発表した新型コロナ感染者4万4,672人の解析データ2)では、40歳代までの致死率は最大でも0.4%に過ぎないが、50歳代では1.3%、60歳代で3.6%、70歳代で8.0%、80歳代以上では14.8%と右肩上がりに上昇する。このためワクチンが登場した暁には高齢者は優先接種の対象となる可能性は高い。だが、B型肝炎ワクチンに代表されるように加齢とともに抗体価を獲得しにくいワクチンもあるため、今後高齢者を対象とした試験が必要になるはずだ。また、研究グループは論文内でベクターとして使用しているアデノウイルスに対する抗体の影響評価も必要と指摘している。そして、この試験は今年の4月23日~5月21日までに行われたもので、主要評価項目は接種後6ヵ月間のCOVID-19発症抑制と重篤な有害事象の発現率である。単純計算すれば試験終了は11月末になり、データの解析はその後ということになる。ただ、従来からアストラゼネカ社は9月には供給を開始したい旨を公表している。国内外で特例承認のようなスキームを活用すると思われるが、2009年の新型インフルエンザと違い、これまでまったくワクチンのなかったコロナウイルスに対してこのスピードはすごいと思う以上に、「???」「大丈夫?」と思ってしまう。私は最近、こうした仕事柄もあり医療に無縁な人から「新型コロナのワクチンっていつぐらいまでにできる?」と尋ねられることはよくあるが、以前から「まあ極めて順調に行って、来春ぐらいじゃない? でもできない可能性も十分あるよ」と答えている。少なくとも今回の結果を見てもこの答えに変更はない。参考1)Folegatti PM, et al. Lancet. 2020 Jul 20.[Epub ahead of print]2)Wu Z,et al. JAMA. 2020 Feb 24.[Epub ahead of print]

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精神科入院患者のリハビリテーション、マインドフルネスグループの導入効果

 精神科リハビリテーションサービスを受けている患者は、複雑な長期にわたる問題を抱えており、しばしば治療抵抗性といわれる。このような患者では、統合失調症などのメンタルヘルス診断と合わせて、複雑なトラウマ歴、アルコール依存や薬物乱用、認知障害が頻繁にみられる。治療抵抗性統合失調症の治療では、クロザピン療法以外の効果的な治療法は知られていないが、マインドフルネスがストレス体験に対処する能力を向上させることが予備的エビデンスで示されている。英国・エディンバラ大学のAudrey Millar氏らは、マインドフルネスプラクティスグループが、入院患者のリハビリ環境下で許容できる治療介入であるかについて検討を行った。また、ウェルビーイングのモニタリングも実施した。BMC Psychiatry誌2020年6月20日号の報告。 マインドフルネスプラクティスグループは、精神科病院の15床のリハビリテーション病棟で実施した。A区では3回/週、5ヵ月間実施し、B区では1回/週、18ヵ月間実施した。介入は、臨床心理士より行った。A区では、Warwick-Edinburgh well-being scaleを用いたウェルビーイングの測定も行った。介入の許容可能性に関する補足情報として、患者、グループファシリテーター、スタッフより定性的インタビューを行った。 主な結果は以下のとおり。・A、B区ともに1回以上参加した患者は約3分の2(65%および67%)、定期的に参加した患者は約3分の1であった。・ウェルビーイングへの影響は認められなかった。・質的インタビューでは、参加した患者には多くのベネフィットがあり、グループが病棟内の治療文化を強化する可能性が示唆された。 著者らは「臨床ガイドラインでは、精神疾患と診断されたすべての患者に心理療法が利用されるべきであることが示唆されているが、入院患者のリハビリテーションでの心理療法の利用は困難な場合がある。マインドフルネスプラクティスグループは、許容可能な介入であり、治療抵抗性精神疾患に対するマインドフルネスの有効性を検討するためのさらなる研究は価値がある」としている。

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ダウン症候群とアルツハイマー型認知症の深い関係(解説:岡村毅氏)-1262

 ダウン症候群の人(通常は2本ある21番染色体を3本持っている人)は比較的早期からアルツハイマー型認知症になりやすいことは昔から知られていた。アルツハイマー型認知症の病理の中核にある「アミロイドβ」の前駆体の遺伝子は、まさに21番染色体に存在するので、理論上も合致する。家族性アルツハイマー型認知症も21番染色体に連鎖することが知られている。ダウン症候群とアルツハイマー型認知症は、21番染色体が鍵という点でつながっている。 この論文では、多数のダウン症候群の人に詳細な認知機能検査を行うと同時に、さまざまなバイオマーカー(血液、脳脊髄液、脳機能画像、脳構造画像)を測定し、ダウン症候群の人々におけるアルツハイマー型認知症の病理の進展を分析したものである。 本研究は横断研究であるが、ADNI(Alzheimer’s Disease Neuroimaging Initiative)のような思想で認知症の病理の進展に迫っている。 これにより、ダウン症候群の人ではアルツハイマーの病理が早期に始まり非常にゆっくりと進行していくことがわかった。最も早く(30歳ごろ)変化が始まるのは血漿ニューロフィラメント軽鎖と脳脊髄液アミロイドβ比であり、それは実際に発症する20年以上前である。 さて近年、アルツハイマー型認知症の根本治療薬開発のために、プレクリニカル期(アミロイドはたまり始めているが症状はまだない時期)から先制的にアミロイドを減らすような薬剤が試されてきた。しかし成果はまだ出ていない。著者らは、ダウン症候群の人々がこのような介入の受益者であると論じている。同時に、治験においては説明と同意の問題から排除されているとしている。そして、本研究で彼らが経験したさまざまな(時には痛いし面倒だし)検査を現実に受けることができたのであるから、治験に参加することも可能だとも述べている。 最後に、答えの出ないことを語ってこのコラムを終えよう。著者らはダウン症候群の人が科学の進歩を享受できていないと述べており、私はその善き意思を疑うつもりは毛頭ない。同時に、今後ダウン症の人を対象にして認知症の治験が多く行われるようになる時に、人間の尊厳が脅かされないかという不安もある。実は私は学生時代にダウン症候群などを持つ子供たちに水泳を教えるボランティアをやっていた(こう見えても水泳部だったのだ)。とはいえ「倫理的にどうよ?」というのがいつも正義とは限らない。得るものも確かにあるのだから、学生時代に私の接した親御さんたちは「この子が将来認知症になって苦労しないために治験に参加します」と、本人たちも「役に立てるならどうぞ」とあっさりと言いそうな気もする。きちんと本人とも対話して、オープンに進めるべきだ、としか言いようがない。そういう点では最近の外国雑誌に多いpatient and public involvementが(見落としていなければ)この論文に載っていないことが気になる。いまこそ出番じゃないか…と思うのだが。私の少ない経験では、ダウン症候群の当事者や家族の会などは活発だし、きちんと説明して納得したらきっと応援してくれると思う。 なお3月21日は「世界ダウン症の日」です。

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子供の教育費と親のうつ病との関係

 韓国では、社会文化的背景の影響により高等教育(higher education)が急速に成長しており、子供の教育には、世帯収入の大部分が費やされている。学習塾や予備校などの私教育(private education)は、子供の心理や行動に影響を与えると考えられてきた。しかし、これらの費用を支払う両親を対象とした研究は、これまで行われていなかった。世帯収入や教育レベルは、社会経済的地位(SES)を決定する重要な因子であり、教育費の捻出は、抑うつ症状の発症に影響を及ぼす可能性がある。韓国・延世大学校のByeong Cheol Oh氏らは、韓国における私教育費と両親のうつ病との関係について調査を行った。BMC Public Health誌2020年6月20日号の報告。 2015年と2018年のKoWePS福祉パネルよりデータを収集した。分析対象は、父親397人(2015年)と337人(2018年)、母親403人(2015年)と370人(2018年)であった。本研究の独立変数は、私教育費の割合とした。この比率は、各世帯の等価可処分所得に占める私教育費の割合として算出した。主な目的変数は、両親のうつ病自己評価尺度(CESD-11)に対する反応とした。私教育費の割合が両親のうつ病に及ぼす影響を調査するため、一般線形モデルを用いた。 主な結果は以下のとおり。・私教育費の割合が高い父親は、低い父親と比較し、CESD-11スコアが高く(moderate:β=0.419、S.E=0.164、p=0.0105、high:β=0.476、S.E=0.178、p=0.0076)、私教育費の比率が高いほど、父親のうつ病に悪影響を及ぼす可能性があることが示唆された。・母親では、識別可能な相関関係は認められなかった(moderate:β=-0.078、S.E=0.250、p=0.7555、high:β=0.003、S.E=0.215、p=0.9882)。 著者らは「父親と母親で差がみられたことは、韓国社会では父親は母親よりも経済的負担が大きい傾向にあることが要因かもしれない」としている。

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COVID-19、31ヵ国716例にみる皮膚科症状の特徴は?

 新型コロナウイルス感染症(COVID-19)は、特徴的な皮膚科症状が認められると伝えられている。米国・ハーバード大学医学大学院/マサチューセッツ総合病院皮膚科部門のEsther E. Freeman氏らは、それらの皮膚科症状を特徴付け、根底にある病態生理の解明を促進する目的で、国際レジストリの症例集積研究を行った。その結果、多くの症状は非特異的であったが、COVID-19の病態生理における潜在的な免疫や炎症性反応の解明に役立つ可能性がある知見が得られたという。Journal of the American Academy of Dermatology誌オンライン版2020年7月2日号掲載の報告。 研究グループは、米国皮膚科学会および国際皮膚科学会連盟の国際レジストリを用いて症例集積研究を行い、COVID-19が確認または疑われ、新規発症の皮膚科症状が認められた患者のデータを分析した。 主な結果は以下のとおり。・レジストリから、COVID-19確認/疑い症例716例が収集された。・検査でCOVID-19が確認された患者は171例であった。・そのうち最も一般的に認められた皮膚科症状の形態的特徴は、麻疹様(22%)で、次いでペルニオ様(18%)、蕁麻疹(16%)、黄斑紅斑(13%)、小胞(11%)、扁平上皮丘疹(9.9%)、網状紫斑(6.4%)であった。・ペルニオ様病変は、疾患が軽症の患者で一般的に認められた。・網状紫斑は、入院を要した患者にのみ認められた。・なお、著者らは、「本検討では発生率や有病率を推定できず、またバイアスの確認が必要という点で結果は限定的である」としている。

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緩和ケアは非がん患者の救急受診と入院を減らす?/BMJ

 緩和ケア(palliative care)は、非がん患者においても潜在的ベネフィットがあることが、カナダ・トロント大学のKieran L. Quinn氏らによる住民ベースの適合コホート試験で示された。人生の終末期(end of life:EOL)が近い患者の多くは、救急部門の受診および入院の頻度が高く、それが人生の質を低下するといわれていれる。緩和ケアは、がん患者についてはEOLの質を改善することが示されているが、非がん患者に関するエビデンスは不足していた。今回の結果を踏まえて著者は、「EOLは、医師のトレーニングへの持続的な投資とチーム医療で行う緩和ケアの現行モデルの利用を増やすことで改善可能であり、医療政策に重大な影響を与える可能性があるだろう」と述べている。BMJ誌2020年7月6日号掲載の報告。救急部門受診率、入院率、ICU入室率などを緩和ケア非受療患者と比較 試験はカナダ・オンタリオ州の住民を対象に行われた。2010~15年に、医療機能を問わず入院し、最後の6ヵ月間に医師による緩和ケアを開始した、がんおよび非がん疾患で死亡した成人11万3,540例を特定。入院医療リンクデータを用いて、死因、病院のフレイルリスクスコア、転移がんの有無、居住地(オンタリオ州のすべての医療サービスを編成する14の地域医療統合ネットワーク区分で分類)、および緩和ケアを受ける蓋然性(年齢・性別で導出した傾向スコア)で患者を特徴付け、直接的に照合して1対2の割合となるよう緩和ケアを受けなかった対照群を特定した。 主要評価項目は、救急部門受診率、入院率、ICU入室率と、初回緩和ケア後の在宅死vs.院内死のオッズ比(OR)であった。患者の特性(年齢、性別、並存疾患など)で補正を行った。緩和ケア群のほうが救急部門受診などは低率、在宅/ホーム死は高率 慢性臓器障害(心不全、肝不全、脳卒中)に関連していた非がん死患者において、緩和ケア受療群は非受療群と比較して、救急部門受診率(粗発生率1.9[SD 6.2]vs.2.9[8.7]人年、補正後率比[RR]:0.88、95%信頼区間[CI]:0.85~0.91)、入院率(6.1[10.2]vs.8.7[12.6]人年、0.88、0.86~0.91)、ICU入室率(1.4[5.9]vs.2.9[8.7]人年、0.59、0.56~0.62)は低かった。さらに、これらの患者では、院内と比較して在宅またはナーシングホームでの死亡ORが高いことが確認された(6,936例[49.5%]vs.9,526例[39.6%]、補正後OR:1.67、95%CI:1.60~1.74)。 全体的に、認知症による死亡患者においては、緩和ケアはICU入室率の低下とは関連せず(0.2[2.1]vs.0.2[2.1]人年、1.03、0.96~1.11)、救急部門受診率(1.2[SD 4.9]vs.1.3[5.5]人年、補正後RR:1.06、95%CI:1.01~1.12)、入院率(3.6[8.2]vs.2.8[7.8]人年、1.33、1.27~1.39)の増加と関連したが、在宅/ナーシングホームでの死亡ORは低かった(6,667例[72.1%]vs.1万3,384例[83.5%]、補正後OR:0.68、95%CI:0.64~0.73)。 一方で、これらの割合は、認知症で死亡した患者が居宅で暮らしていたかナーシングホームに入所していたかによっても異なった。同居宅患者では、医療サービスの利用と緩和ケアとに関連性はみられず、在宅での死亡ORが高かった。

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ISCHEMIA-CKD試験における血行再建術の有用性検討について(解説:上田恭敬氏)-1259

 中等度から高度の心筋虚血所見を認める重症CKD合併安定狭心症患者に対して、薬物療法に加えて血行再建術(PCIまたはCABG)を施行する(invasive strategy)か否か(conservative strategy)で2群に無作為に割り付けたRCTであるISCHEMIA-CKD試験からの報告で、invasive strategyの症状軽減効果について解析した結果である。 3ヵ月の時点ではinvasive strategyで症状軽減効果が示されたが、3年後にはその差は消失した。また、試験登録時の症状出現頻度が低いほど、その有効性は小さかった。著者らはconservative strategyに比してinvasive strategyに有用性はないと結論している。 本当に意味のない試験あるいは解析と言ったら言い過ぎだろうか。まず、試験登録時点で症状を認めない患者が約半数含まれており、これらの対象患者への症状軽減効果を検討すること自体無意味であろう。また、invasive strategy群に割り付けられた患者が実際に血行再建術を受けた割合が約50%というのもお粗末な結果である。血行再建術を行わなかった「common」な理由として狭窄病変がなかったことと記載されていることや、そもそも虚血評価をコアラボで行っていないことから考えると、適切な対象患者が選択されたのか疑問である。さらに、conservative strategy群でも約20%の患者で血行再建術が施行されていることも、invasive strategyの効果を正しく検証することを妨げる要因となっているだろう。 明らかに労作性狭心症の原因となる狭窄病変があり、血行再建術が成功すれば、症状は消失あるいは軽減するはずである。その有効性が失われるとすれば、血行再建術の不成功、再狭窄や新規病変の出現が原因となることが想定されるが、この影響がCKDを合併している患者群においては大きいかもしれず、血行再建術の効果が十分発揮されないかもしれないという考えが、本試験を企画するモチベーションとなっていたのだろう。しかし、その点を検証するには、あまりにも不適切な試験デザインとなってしまったのではないだろうか。「CKD合併狭心症患者では、症状改善効果も期待できないため、PCIをしても意味がない」といった間違ったメッセージだけがエビデンスと称して独り歩きしないか心配である。

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進行胃がんに対する薬物療法が大きく変わる―免疫チェックポイント阻害薬と抗体薬物複合体(解説:上村直実氏)-1260

 本論文では既治療に対して抵抗性のHER2陽性進行胃がんを対象として、抗HER2抗体であるトラスツズマブに新規トポイソメラーゼI阻害薬のデルクステカンを結合させた抗体薬物複合体であるトラスツズマブ デルクステカンの有効性が示されている。すなわち、抗体薬物複合体により薬物の抗腫瘍効果を大きく引き上げることが証明された研究成果は特筆される。 最近、わが国における手術不能の進行胃がんに対する薬物療法が大きく変化している。TS-1を用いる1次治療の効果が少ない患者に対して行う、第2次・第3次治療におけるニボルマブ(商品名:オプジーボ)などの免疫チェックポイント阻害薬と抗体薬物複合体の登場により、従来と大きく異なる成果すなわち生存率の延長や完全寛解を示す患者を認めるようになっている。 HER2陽性胃がんは約20%を占めるが、日本で開発されたトラスツズマブ デルクステカンが米国と日本において薬事承認されたことは、根治不能とされてきた進行胃がん患者に朗報である。ただし、効果のある薬剤には重篤な副作用があることも忘れてはいけないことで、本薬剤にも骨髄抑制および間質性肺疾患の副作用が顕著にみられたことから、医療現場では注意深い投与が必須である。 このように、がんに対する有効な薬剤が盛んに開発されているが、新規薬物が非常に高価であり、日本の医療費を圧迫しつつあり、今後、国民皆保険制度の維持に大きな影を落としつつあることも事実である。さらに、がんに対する薬物の臨床試験での被検者は、薬理試験の性格上、仕方ないものと思われるが、performance status(PS)0ないしは1という日常生活にほぼ支障を認めない元気な症例でかつ75歳未満かつ肝機能や腎機能に異常を認めないというエントリー基準が多いが、薬事承認後、臨床現場で遭遇する胃がん患者は75歳以上ないしはPSが2以上であったり、腎機能の低下を認めるケースが多い。すなわち、これらの薬剤を高齢者のがん患者に対して使用する行為は科学的な根拠に基づく医療ではないことにも十分に注意しておく必要があろう。さらに言うならば、今後、臨床試験の対象者を臨床現場を考慮した基準に改めるべきと思われる。

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第17回 COVID-19の疲労症候群~筋痛性脳脊髄炎/慢性疲労症候群研究のまたとない機会

ウイルス感染が去ってすぐの疲労感は珍しいことではなく、たいていすぐに消失しますが、長引く疲労を特徴とする筋痛性脳脊髄炎(ME)/慢性疲労症候群(CFS)に時に陥る恐れがあります。かつて単に慢性疲労症候群(CFS)と呼ばれていたME/CFSは運動や頭を使った後に疲労が悪化することを特徴とし、軽く歩いただけ、または質問に答えただけで何日も、悪くすると何週間も起き上がれなくなることがあります1)。新型コロナウイルス(SARS-CoV-2)感染(COVID-19)を経た患者の長患いも最近明らかになっており、COVID-19を経た640人へのアンケートでは多くが胸痛や胃腸不調、認知障害や酷い疲労が収まらないと回答しました2)。米国国立アレルギー感染病研究所(NIAID)を率いるAnthony Fauci(アンソニー・ファウチ)氏もCOVID-19一段落後のそういった症状を認識しており、長きにわたる疲労症候群がCOVID-19に伴う場合があり、その症状はME/CFSに似ているとの見解を今月初めのAIDS学会での記者会見で表明しています3)。ME/CFSは謎に包まれており、それ故に偏見を通り越して無きものとする医師や研究者も少なくありません。ウイルス感染や神経疾患などの何らかの診断を試みた上でどこも悪くないとし、挙げ句にはもっと運動することを勧める医師もいるほどです。運動はME/CFSを悪化させる恐れがあります1)。無きものとして長くみなされていたため患者の多くは病因と思しき脳や脊髄の炎症の関与を見て取れる病名・筋痛性脳脊髄炎(ME)と呼ばれることを好みます。しかしながら脳脊髄炎の裏付けといえば脳の炎症マーカー上昇や脊髄液のサイトカイン変化を報告している日本での被験者20人ほどの試験4)ぐらいであり、米国疾病管理センター(CDC)を含む研究団体のほとんどはME/CFSと呼ぶようになっています。ME/CFSの原因は謎ですが、感染症との関連が示唆されており、米国・英国・ノルウェーでの調査によるとME/CFS患者の75%近くがその発症前にウイルス感染症を患っていました5)。また、西ナイルウイルス(WNV)、エボラウイルス(EBV)、エプスタインバーウイルス(EBV)等の特定の病原体とME/CFS様症状発現の関連が相当数の患者で認められています。2003年に蔓延したSARS-CoV-2近縁種SARS-CoVの感染患者の退院から1年後を調べた試験6)では、実に6割が疲労を訴え、4割以上(44%)が睡眠困難に陥っており、6人に1人(17%)は長引く不調で仕事に復帰できていませんでした。そういった試験結果を鑑みるに、SARS-CoV-2感染患者の体の不具合が収まらずに続く場合があることはほとんど疑いの余地がないとME/CFS研究連携を率いるモントリオール大学のAlain Moreau氏は言っており、同氏や他の研究者の関心は今やSARS-CoV-2がME/CFSを引き起こすかどうかではなく、どう誘発しうるのかに移っています。いくつか想定されている誘発の仕組みの中で自己免疫反応の寄与を米国NIHの神経ウイルス学者Avindra Nath氏はとくに有力視しています。最近イタリアの医師は重度のSARS-CoV-2感染症(COVID-19)患者に自己免疫様症状・ギランバレー症候群(GBS)が認められたことを報告しており7)、ME/CFS患者を調べた2015年報告の試験8)では自律神経系受容体への自己抗体上昇が認められています。もしCOVID-19が自己免疫疾患を招きうるなら何らかのタンパク質へのT細胞やその他の免疫の担い手の反応が血液中に現れるはずです。そこでエール大学の免疫学者岩崎 明子氏等はCOVID-19入院患者数百人の血液検体を採取し、すぐに元気になった場合とそうでない場合の免疫特徴を比較する試験を開始しています。Moreau氏とNath氏等もCOVID-19患者を長く追跡してME/CFSの原因を探る試験9)を始めており、それらの試験結果はCOVID-19を経た人のみならず世界中のME/CFS患者のためにもなるはずです。研究所や政府はCOVID-19患者がME/CFSに陥りうることに目を向け、資源や人を配して事に当たるべきであり、さもないとME/CFSの謎の解明のまたとない機会がふいになってしまうとNath氏は言っています1)。参考1)Could COVID-19 Trigger Chronic Disease in Some People? 2)What Does COVID-19 Recovery Actually Look Like? An Analysis of the Prolonged COVID-19 Symptoms Survey by Patient-Led Research Team3)Coronavirus may cause fatigue syndrome, Fauci says4)Nakatomi Y, et al. J Nucl Med. 2014 Jun;55:945-50.5)Pendergrast TR, et al. Chronic Illn. 2016 Dec;12:292-307.6)Tansey CM, et al. Arch Intern Med. 2007 Jun 25;167:1312-20. 7)Toscano G, et al. N Engl J Med. 2020 Jun 25;382:2574-2576.8)Loebel M, et al. Brain Behav Immun. 2016 Feb;52:32-39.9)OMF Funded Study: COVID-19 and ME / CFS

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認知症発症に対する修正可能なリスク因子~メタ解析

 高齢者の認知症発症に対する修正可能なリスク因子について、中国・蘇州大学のJing-Hong Liang氏らが、システマティックレビューおよびベイジアン・ネットワークメタ解析を実施した。Journal of the American Medical Directors Association誌オンライン版2020年6月17日号の報告。 複数の電子データベースより、2019年5月1日までのプロスペクティブコホート研究を網羅的かつ包括的に検索した。認知症でない参加者は、50歳以上とした。ベイジアン・ネットワークメタ解析を行うため、必要なデータを適格研究より抽出した。 主な結果は以下のとおり。・43件のコホート研究より27万7,294例が抽出された。・抗酸化物質を除く、以下の定義されたリスク因子は、すべての原因による認知症発症リスクの低下と関連していた。 ●睡眠障害なし(オッズ比[OR]:0.43、95%確信区間[CrI]:0.24~0.62) ●教育水準の高さ(OR:0.50、95%CrI:0.34~0.66) ●糖尿病の既往歴なし(OR:0.57、95%CrI:0.36~0.78) ●非肥満(OR:0.61、95%CrI:0.39~0.83) ●喫煙歴なし(OR:0.62、95%CrI:0.45~0.79) ●家族との同居(OR:0.67、95%CrI:0.45~0.89) ●運動の実施(OR:0.73、95%CrI:0.46~0.94) ●禁酒(OR:0.78、95%CrI:0.56~0.99) ●高血圧症の既往歴なし(OR:0.80、95%CrI:0.65~0.96) 著者らは「修正可能な身体的およびライフスタイル因子が、すべての原因による認知症の強力な予測因子であることが示唆された」としている。

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