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肺がん1次治療における抗PD-1抗体sintilimab+化学療法の成績(ORIENT-11)/WCLC2020

 新たな抗PD-1抗体sintilimabの非扁平上皮非小細胞肺がん(NSCLC)における有効性は、第Ib相試験で示された。この結果を基に、無作為化二重盲検第III相ORIENT-11試験が行われ、その初回解析の結果を中国・Sun Yat-Sen University Cancer Centreの Zhang Li氏が、世界肺癌学会WCLC2020Virtual Presidential Symposiumで発表した。sintilimabがPFSを有意に延長・対象:未治療の局所進行または転移のあるNSCLC患者・試験群:sintilimab(200mg)+ペメトレキセド(500mg/m2)+シスプラチン(75mg/m2)またはカルボプラチン(AUC5) 3週ごと4サイクル投与→sintilimab+ペメトレキセド維持療法(sintilimab群)・対照群:プラセボ+ペメトレキセド+プラチナ 3週ごと4サイクル投与→ペメトレキセド維持療法(化学療法群) 化学療法群のsintilimab群へのクロスオーバーは許容された。・評価項目: [主要評価項目]独立放射線審査委員会評価の無増悪生存期間(PFS) [副次評価項目]全生存期間(OS)、客観的奏効期間(ORR)、効果発現までの時間、安全性 sintilimabのNSCLCにおける有効性を評価した主な結果は以下のとおり。・対照患者397例はsintilimab群266例、プラセボ群131例に2対1で無作為に割り付けられた。プラセボ群のsintilimabへのクロスオーバーは35例(31.3%)であった。・追跡期間中央値8.9ヵ月でのPFS中央値は、sintilimab群8.9ヵ月、化学療法群5.0ヵ月と、sintilimab群で有意に長かった(HR:0.482、95%CI:0.362〜0.643、p<0.00001)。・OS中央値は、両群とも未達であった(HR:0.609、95CI:0.400〜0.926、p=0.01921)。・ORRは、sintilimab群51.9%、化学療法群で29.8%であった。・Grade3以上の有害事象発現率は、sintilimab併用群61.7%、プラセボ併用群58.8%であった。 Discussantである米国・Karmanos Cancer Canterの長阪 美沙子氏は、当試験が東アジアのデータであることを重要であるとした。また、PFS、OSは他の免疫チェックポイント阻害薬のNSCLC1次治療のデータと匹敵するものだとしながら、PFSの改善がOSの改善に結びつかないこともあることから、長期のフォローアップの必要性を強調した。 この試験の結果は、Journal of Thoracic Oncology誌2020年8月8日オンライン版にも同時掲載された。

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第38回 緑内障治療薬はどのくらい眼圧を下げ、視野を保つか【論文で探る服薬指導のエビデンス】

 眼圧上昇は緑内障を進行させる代表的な要因です。眼球内の房水が充満して圧力が上がれば視神経を圧迫し、視神経が弱れば視野狭窄や視力の低下を招きます。眼圧を下げる点眼薬が緑内障治療の中心となりますが、しばしばノンアドヒアランスが問題になります。ノンアドヒアランスの原因については横断研究でいくつか指摘されています。緑内障が視力低下を引き起こすことを十分認識できていなかったり、点眼薬で視力低下を緩和できることに懐疑的であったりするなどさまざまです。ほかにも緑内障についての知識不足、点眼やスケジュール理解の難しさ、コスト、副作用、生活上のストレスなど患者さんによって事情は異なりますが1)、根治療法がないため、視力や視野を維持するためにはどうしても長期間にわたる治療が必要です。緑内障・高眼圧症治療の点眼薬を続ければ、視野狭窄の進行が緩和されることはオープンラベルの研究で示されています。今回は緑内障治療の第1選択薬の1つであるプロスタグランジン関連薬のラタノプロスト点眼液のプラセボ対照比較試験を紹介します2)。これは緑内障の視野欠損に対する点眼薬の効果を調査した初のプラセボ対照のランダム化比較試験です。対象は開放隅角緑内障の患者516例(平均65.5歳、男性53%、糖尿病10.5%)で、介入群(ベースライン眼圧19.6mmHg、258例)はラタノプロスト0.005%点眼液を1日1回両目に投与、対照群(ベースライン眼圧20.1mmHg、258例)はプラセボ点眼薬を1日1回両目に投与し、24ヵ月以内の視野悪化までの時間を主要アウトカムとして調査しています。患者、介入者、評価者のトリプルマスキングで、介入者は患者に眼圧の測定結果を伝えないようにして、プラセボ点眼薬はラタノプロストの容器に入れて用いられています。割り付けられた516例のうち461例が解析に含まれました。両群のベースラインの特徴は似通っており、コルチコステロイド(吸入含む)の使用はプラセボ群17例(7%)、ラタノプロスト28例(11%)とやや後者が多くなっていますが、おおむね対等な比較となっています。94例に24ヵ月以内の緑内障の進行を伴う視野の悪化が認められ、その内訳は次のとおりでした。・ラタノプロスト:35/231例(15.2%)、眼圧変化-3.8mmHg・プラセボ:59/230例(25.6%)、眼圧変化-0.9mmHg・視野悪化の調整ハザード比:0.44(95%信頼区間[CI]:0.28~0.69、p=0.0003)ラタノプロスト群で視野の保持期間が有意に長いという結果でした。ラタノプロストを継続すると、眼圧がこのくらい下がるというのを目安として知っておくと効果判定に有用そうです。有害事象については目立ったものは報告されず、結膜炎がややラタノプロストで多い程度でした。結膜炎、充血に加え、プロスタグランジン系点眼薬ではまつげが異常に伸びたり、まぶたや虹彩に色素沈着が生じたりするといった美容に関わる副作用があります。対策として、点眼後の拭き取りをお伝えしましょう。逆手にとって美容目的でまつげに綿棒で付ける方もいますが。正常眼圧緑内障でも眼圧を下げることで進行を抑制日本人には正常眼圧緑内障が多いですが、その場合でも点眼薬が有用です。眼圧が正常範囲でも、無治療時の眼圧から30%以上の眼圧低下を目標として治療した群と無治療群では、視野障害の進行に有意な差があることが米国における多施設共同研究で示されています3)。合計140眼のうち、治療群の7眼(12%)と対照群の28眼(35%)が緑内障性視神経乳頭の進行または視野欠損のエンドポイントに達し、治療群の平均生存期間が2,688±123日であったのに対して、対照群では1,695±143日と長期的に大きな差が出ることがわかっています。なお、ランダム化割り付け時点の眼圧のベースラインは、対照群16.1±2.3mmHg、治療群16.9±2.1mmHgなので、眼圧が15mmHg以下だった場合の有効性は不明です。根拠をもって治療の効果を説明することで、ノンアドヒアランスの原因となる認識不足を解消できることもあると思いますので、服薬指導の参考にしていただければ幸いです。1)Newman-Casey PA, et al. Ophthalmology. 2015;122:1308-1316.2)Garway-Heath DF, et al. Lancet. 2015;385:1295-1304.3)Collaborative Normal-Tension Glaucoma Study Group. Am J Ophthalmol. 1998;126:487-497.

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がん患者の脱毛軽減に有用な頭皮冷却装置、国内初の製造販売承認

 2020年7月10日、「抗がん剤治療の副作用による脱毛を低減・抑制する国産初の『頭皮冷却装置』発表記者会見」が開催された(株式会社毛髪クリニックリーブ21主催)。小林 忠男氏(大阪大学大学院医学系研究科保健学専攻 招へい教授)が「乳がん化学療法患者さんにおけるリーブ21 CellGuard(セルガード、頭皮冷却装置)を用いた脱毛の軽減化について」を、渡邉 隆紀氏(仙台医療センター乳腺外科医長)が「乳がんにおける化学療法と脱毛の問題点」について講演した。 がん化学療法に伴う容姿変化が原因で治療介入に対し消極的となる患者も存在する。そのような患者のサポートを行う上でエビデンスが集約され治療に役立つのが、「がん患者に対するアピアランスケアの手引き」である。これには脱毛をはじめ、爪の変形や皮膚への色素沈着などへの対応法がまとめられ、たとえば、脱毛に関しては“CQ1:脱毛の予防や重症度の軽減に頭皮冷却は有用か”の項で、頭皮冷却の推奨はC1a(科学的根拠はないが、行うように勧められる)とされている。しかし、日本は海外に比べ、医療施設への頭皮冷却装置の導入が遅れているのが現状であるー。頭皮冷却装置でがん患者の満足度アップ 小林氏は化学療法に誘発される脱毛(CIA:Chemotherapy induced-alopecia)のメカニズムについて、頭皮冷却の理論的根拠(温度低下により血管が収縮→血流低下により薬剤濃度低下、または反応速度低下→毛根細胞生存の維持)や脱毛頻度の高い抗がん剤開発と頭皮冷却の歴史を交えて解説。CIAが女性患者にもたらす影響として以下を述べた。●身体的また精神的な悪影響●心理学的な症状●ボディイメージの低下●乳房を失うよりも強いトラウマ●QOLの低下:Identityと個性に強い影響を及ぼす●治療後も持続的な髪質の変化(くせ毛・量・太さ) これらの悩みを解決するべく誕生したのがセルガードであり、この特徴として、「制御付き頭皮冷却のデジタルシステムである。頭皮温度を氷点下で維持することで毛根周囲の血管を収縮させて、毛根周辺毛細血管に到達する抗がん剤の量を抑制することができる。また、1台で2名が利用でき外来化学療法に有用」と説明した。上田 美幸氏らが第18回日本乳癌学会学術総会(2010年)で報告した『頭皮冷却キャップ装着に伴う変化 患者満足度アンケート』によると、装着の問題、使用中の気分不快、頭痛について調査し大多数で満足が得られているほか、加藤乳腺クリニックの29例を対象とした調査では、NCI-CTC scale Grade0は8例、Grade1は17例、Grade2は4例という結果が得られた。これを踏まえ同氏は、「セルガードによる頭皮冷却法がCIAに効果的であると証明された。今後、患者のQOLを向上させるだけではなく、より良い治療へ貢献する可能性がある」と語った。脱毛に関する不安、患者と医療者で大きな差 脱毛の臨床的な見解を示した渡邉氏は、がん化学療法を受けた患者の苦痛調査1,2,3,4)から「脱毛は、この30年間で常に上位に位置するほど患者の大きな悩み。また、別の調査5)でも治療時の不安において、患者は脱毛を4番目に挙げる一方、看護師は9番目、医師は12番目に挙げた」と、がん患者・看護師・医師の認識の乖離を指摘。なかでも、乳がんは患者の増加、初発年齢の若さ、適格な診断・予後の良さに加え、近年では外来化学療法が主流となっているが、体毛すべてに影響を及ぼす乳がん再発予防の治療は患者に大きな負担をもたらしている。同氏らが行った調査6)によると乳がん患者が脱毛した場合、再発毛しても頭髪8割以上の回復は60%、頭髪5~8割の回復は25%、頭髪5割未満の回復は15%で、再発毛不良部位は前頭部と頭頂部が圧倒的に多いことが明らかになった。また、ウイッグの使用期間は平均12.5±9.7ヵ月で、60ヵ月以上もウィッグを手放せない患者も存在した。このことから同氏は「脱毛程度の軽減、再発毛の促進に頭皮冷却装置の効果を期待する」と締めくくった。日本人向け脱毛防止装置で苦痛開放へ 日本での冷却装置導入の遅れに注目したリーブ21代表取締役社長の岡村 勝正氏は、「女性にとって乳がん治療はがん告知、乳房、髪の毛を失う三重の苦しみがあると言われている。欧米で発売されている頭皮冷却装置は日本人に適さないことから、脱毛で悩む日本人を救うため開発を行った」とし、「同製品は本年秋頃、全国のがん診療連携拠点病院に対してプロモーションを予定している」と話した。■参考リーブ21:頭皮冷却装置<セルガード> 1)Coates A, et al. Eur J Cancer Clin Oncol. 1983;19:203-208.2)Griffin AM, et al. Ann Oncol. 1996;7:189-195.3)Dennert MB, et al. Br J Cancer. 1997;76:1055-1061.4)Carelle N, et al. Cancer. 2002;95:155-163.5)Mulders M, et al. Eur J Oncol Nurs. 2008;12:97-102.6)Watanabe T, et al. PLoS One.2019;14:e0208118.

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CABANA試験におけるカテーテルアブレーション/薬物療法のAF再発の割合【Dr.河田pick up】

 CABANA試験は、心房細動(AF)に対しカテーテルアブレーション(CA)治療もしくは薬物療法のQOL改善効果を比較する非盲検無作為化試験であり、2009年11月~2016年4月に10ヵ国126施設で2,204例の患者が登録された。Intention to treat分析では、非有意だったものの、CAが主要評価項目である死亡、後遺障害を伴う脳卒中、重大な出血、心停止などを14%減らすことが示された。今回、米国・ワシントン大学のJeanne Poole氏ら研究グループにより、CABANA試験のサブ解析ともいえる論文が発表された。この研究の目的はCABANA試験におけるAFの再発を評価することである。JACC誌2020年6月30日号に掲載。CABANAモニターを用いて、症候性/無症候性AFを検知 試験に参加した患者は、CA群もしくは薬物療法群にランダマイズ化し、専用のCABANAモニターでフォローされた。このモニター心電図は、患者自身が症状に応じて簡易心電図を記録でき、また24時間のAF自動検知も可能である。AFの再発は、90日間のブランキング(再発の評価に含めない期間)後、30秒以上続く心房頻拍と定義された。1日におけるAFの割合の評価には、6ヵ月ごとのホルター心電図が用いられた。  CABANAモニターを使用し、90日間のブランキング後に心電図記録を提出した患者は1,240例で、登録患者の56%に相当した。治療効果の比較は、修正intention-to-treatを用いて行われた。AFの割合はCA群で有意に減少 1,240例の年齢の平均中央値は68歳で、34.4%は女性であった。43.0%の患者が発作性AFを有していた。 60ヵ月のフォローアップ期間中、症状の有無にかかわらず、すべてのAF(ハザード比[HR]:0.52、95%信頼区間[CI]:0.45~0.60、p<0.001)および症候性AF(HR:0.49、95%CI:0.39~0.61、p<0.001)は、CA群で有意に減少していた。 また、試験開始前のホルター心電図におけるAFの割合は48%で、試験開始後12ヵ月の時点では、CA群6.3%、薬物療法群14.4%であった。5年間のフォローアップ期間におけるAFの割合は、CA群では、すべてのAF(有症候性/無症候性を含む)の再発を48%減少させ、症状を伴うAFを51%減少させた。さらに、AFの頻度は試験開始前のAFの種類に関わらず、有意に減少した。◆◇◆◇◆ 個人的には、CA後のAF再発率と頻度を評価したこの論文は、JAMAに掲載されたCABANAスタディと同じぐらい重要だと考えます。5年間で症候性/無症候性を含めたAFの再発はCA群で52.1%でした(薬物療法群は70.8%)。正確な数値はわかりませんが、症候性AFに限って見れば、再発率は20%近くまで減っています。これらの数字は、実臨床での印象と大きな相違はありません。結局、CAのスタディの結果は、AFの定義(この研究では30秒以上を心房頻拍と定義)やモニターの実施方法に大きく依存します。また、無症候AFがいかに多く、モニターを長時間、高頻度に行えば行うほど、CAの成績は悪くなるのは明らかです。そうした観点から、CA後においても、症状ではなく、リスク(CHADS2VASC2スコアなど)に応じて抗凝固剤を続けるということは理に適っていると思われます。 CAのスタディでは、心房性頻拍の再発率にのみ着目する傾向があります。今回の論文含めたCABANA試験の結果(約50%の再発率)を見て、CAを行わない循環器内科医や内科医は、その効果を疑問視するかもしれません。CAを行う不整脈医はCAによるAFの根治を目指してはいますが、現状における第一の目的は症状の改善もしくはQOLの改善です。だからこそ、CAを実施するケースの多くはAFによる症状、もしくはQOL低下に苦しんでいる患者さんであり、適切な症例の選択が必要です。薬物療法と比較してもCAは症状の強い患者にとっては非常に有効な治療法だと考えられます。逆に、症状のない高齢者などはCAの対象ではないと考えられます。 一方で、CA後の10年を超えた長期成績は不明な点もあります。無症候でも若年、心不全、薬物療法が使えない患者に対しては、CAによりQOLや予後を改善できる可能性があるため、AFの根治を目指したCAを行うことも妥当だと考えられます。この研究からもAFに対するCAの症例選択は、個々の症状や年齢に応じた十分な検討が必要だということが言えると思います。(Oregon Heart and Vascular Institute  河田 宏)■関連コンテンツ循環器内科 米国臨床留学記

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COVID-19、小児は軽症でもウイルス量が成人の10~100倍

 子供がCOVID-19に罹患した場合、一般的には成人に比べて比較的軽度の症状を示す。米国・イリノイ州シカゴAnn & Robert H. Lurie Children's HospitalのTaylor Heald-Sargent氏らが、軽~中等症のCOVID-19患者におけるウイルス量を年齢との相関で調べたところ、5歳未満の小児では症状が軽くてもウイルス保有量が多く、とくに上気道から検出されたSARS-CoV-2は成人の10~100倍にも相当することがわかった。JAMA Pediatrics誌オンライン版2020年7月30日号のリサーチレターに掲載。 本研究では、2020年3月23日~4月27日の期間、シカゴの3次医療機関においてCOVID-19の症状発症から1週間以内の入院および外来、救急部門、ドライブスルーで収集された145例の鼻咽頭スワブから検体を採取し、PCR検査を実施。cycle threshold(Ct)値を記録し、SARS-CoV-2 RNAウイルス量を評価した。 主な結果は以下のとおり。・患者はいずれも軽~中等症で、5歳未満が46例、5~17歳が51例、18~65歳が48例。いずれも発症から1週間以内に検体を採取した。・5~17歳のグループのCt値は、18~65歳のグループとほぼ同等であった(中央値[四分位範囲]:11.1[6.3~15.7] vs. 11.1[6.9~17.5])。・一方、5歳未満のグループのCt値は有意に低かった(同:6.5[4.8~12.0])。・5歳未満の小児とその他2つのグループのCt値の差異により、小児においては、とくに上気道のSARS-CoV-2が約10~100倍多いことが示唆される。 著者らは、本研究で明らかになったのはあくまで小児における高いウイルス核酸の検出量であると断っているが、これまでのSARS-CoV-2の研究では、より高い核酸レベルと感染力のあるウイルスの培養能力との相関が報告されている。このため著者らは、公衆衛生対策を進めるうえで小児の感染および拡散リスクを理解することが重要であると述べている。

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PPI服用や便秘がフレイルに影響

 フレイルと腹部症状の関連性はこれまで評価されていなかったー。今回、順天堂東京江東高齢者医療センターの浅岡 大介氏らは病院ベースの後ろ向き横断研究を実施し、フレイルの危険因子として、プロトンポンプ阻害薬(PPI)の使用、サルコペニア、低亜鉛血症、FSSG質問表(Frequency Scale for the Symptoms of GERD)でのスコアの高さ、および便秘スコア(CSS:Constipation Scoring System)の高さが影響していることを明らかにした。Internal Medicine誌2020年6月15日号掲載の報告。 同氏らは、2017~19年までの期間、順天堂東京江東高齢者医療センターの消化器科で、65歳以上の外来通院患者313例をフレイル群と非フレイル群に分け、フレイルの危険因子を調査した。患者プロファイルとして、骨粗しょう症、サルコペニア、フレイル、栄養状態、上部消化管内視鏡検査の所見、および腹部症状の質問結果(FSSG、CSS)を診療記録から入手した。 おもな結果は以下のとおり。・対象者は、男性134例(42.8%)、女性179例(57.2%)、平均年齢±SDは75.7±6.0歳で、平均BMI±SDは22.8±3.6kg/m2だった。・そのうち71例(22.7%)でフレイルを認めた。・一変量解析では、高齢(p<0.001)、女性(p=0.010)、ヘリコバクターピロリ菌の除菌成功(p=0.049)、PPIの使用(p<0.001)、下剤の使用(p=0.008)、サルコペニア(p<0.001)、骨粗しょう症(p<0.001)、低亜鉛血症(p=0.002)、低アルブミン血症(p<0.001)、リンパ球数の低下(p=0.004)、CONUT(controlling nutritional status)スコアの高さ(p<0.001)、FSSGスコアの高さ(p=0.001)、CSSスコアの高さ(p<0.001)がフレイルと有意に関連していた。・また、多変量解析の結果でもフレイルと有意に関連していた。高齢[オッズ比(OR):1.16、95%信頼区間[CI]:1.08~1.24、p<0.001]、PPI使用(OR:2.42、95%CI:1.18~4.98、p=0.016)、サルコペニア(OR:7.35、95%CI:3.30~16.40、p<0.001)、低亜鉛血症(OR:0.96、95%CI:0.92~0.99、p=0.027)、高FSSGスコア(OR:1.08、95%CI:1.01~1.16、p=0.021)、高CSSスコア(OR:1.13、95%CI:1.03~1.23、p=0.007)。

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DOAC服用心房細動患者のイベント発生予測因子/日本循環器学会

 心房細動患者の抗凝固薬治療と予後を調べた多施設共同前向き観察研究であるRAFFINE研究から、直接経口抗凝固薬(DOAC)服用患者における脳梗塞および全身塞栓症の独立した予測因子として年齢、糖尿病、脳梗塞の既往が、また重大な出血の独立した予測因子として年齢、脳梗塞の既往が示唆された。第84回日本循環器学会学術集会(2020年7月27日~8月2日)で宮崎 彩記子氏(順天堂大学医学部循環器内科)が発表した。 RAFFINE(Registry of Japanese Patients with Atrial Fibrillation Focused on anticoagulant therapy in New Era)研究は、心房細動治療の実態把握とDOAC服用者におけるイベント発生の予測因子の調査を目的とした前向き研究である。対象は、2013~15年に研究参加施設に外来通院していた20歳以上の非弁膜症性心房細動(発作性、持続性、永続性のすべて)患者で、入院患者、研究参加の同意が得られなかった患者、余命1年以下と判断された患者を除外した3,706例が解析対象となった。観察は1年ごとに3年(最大5年)まで、観察期間中央値は1,364日であった。 主な結果は以下のとおり。<ベースライン時の状況>・3,706例の非弁膜症性心房細動患者のうち、ワルファリン服用患者(ワルファリン群)1,576例、DOAC服用患者(DOAC群)1,656例、経口抗凝固薬(OAC)投与なしの患者(No-OAC群)474例であった。・年齢およびCHADS2スコアはワルファリン群で高く、No-OAC群では低かった。また、うっ血性心不全既往歴、高血圧、糖尿病、脳梗塞/TIA既往歴を有する患者の割合もワルファリン群で高く、No-OAC群で低かった。・発作性心房細動の割合は、ワルファリン群28.0%、DOAC群41.0%、No-OAC群64.6%とNo-OAC群で高かった。消化管出血はNo-OAC群が最も高く、HAS-BLEDスコアはワルファリン群で最も高かった。・抗血小板薬を投与されていた割合は、ワルファリン群28.6%、DOAC群17.9%、No-OAC群40.7%で、No-OAC群で高かった。<観察期間での調査>・DOAC服用患者の割合はベースライン44.7%から3年時の58.7%まで徐々に増加していた。・DOAC投与量については、適応内の通常用量が38%、適応内の減量が29%、適応外の低用量が27%、適応外の過量が6%で、適応外用量は33%であった。適応外用量の割合を薬剤別にみると、ダビガトラン(n=653)では35%、リバーロキサバン(n=569)では35%、アピキサバン(n=408)では27%、エドキサバン(n=26)では31%であった。・DOAC服用者における脳梗塞および全身塞栓症の独立した予測因子として、年齢(ハザード比[HR]:1.09、95%CI:1.04~1.13、p<0.0001)、糖尿病(HR:2.17、95%CI:1.23~3.82、p=0.007)、脳梗塞/TIAの既往(HR:2.65、95%CI:1.46~4.80、p=0.001)が示唆されたが、適応外用量は関連しなかった。また、重大な出血(ISTH基準)の独立した予測因子としては、年齢(HR:1.07、95%CI:1.03~1.10、p<0.0001)、脳梗塞/TIAの既往(HR:2.06、95%CI:1.17~3.61、p=0.011)が示唆され、抗血小板薬投与は関連しなかった 宮崎氏は、DOAC服用者における適応外用量が33%に認められたことから、イベント発生におけるDOACの適応外用量の影響を調べるためにさらなる研究が必要と述べた。

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渡米までのカウントダウン開始!最後まで気が抜けない事務手続き【臨床留学通信 from NY】第10回

第10回:渡米までのカウントダウン開始!最後まで気が抜けない事務手続き今回は、マッチ後から渡米までの手続きの流れについてご紹介します。一般的にマッチが決まるのは3月中旬であり、渡米までの猶予は3ヵ月しかありません。その間にビザの取得と、病院で働くために必要な書類を揃えなければならず、かなりタイトなスケジュールでした。国の情勢でも変わるビザのルールとメリット/デメリット私の場合、まずは同じ病院で働くことになる同僚達と連絡を取り合い、必要書類を確認しました。本当に事務手続きが苦手で、渡米前から現在に至るまで同僚にはいつも助けられています。ビザは大きくJ-1ビザとH-1Bビザがあります。H-1B ビザには「2年ルール」がなく、5年が経過した後はグリーンカードの申請ができます(編集部注:2020年6月22日付米国大統領令により、グリーンカードおよび就労ビザの新規発給は2020年末まで停止中)。その代わりTax returnはなく、フェローシップのマッチングにおいて受け入れてくれるプログラムが限定されるというデメリットもあります。またH-1B ビザ取得にはUSMEL Step3をパスしていることが必須条件です。一方、J-1ビザのデメリットは、7年を超えて米国に滞在することが難しく、2年での帰国、もしくは3年のwaiver(医療過疎地、軍人退役病院への勤務)を余儀なくされることです。その時点で相当な業績があればOビザ(卓越能力者ビザ)に切り替えますが、2年ルールからは逃れられません。私の場合はレジデンシーマッチ後、次の大きなフェローシップへのマッチングが主な目的となるため、J-1ビザを選択しました。それが正しかったかどうかは今でもわかりませんが、当時、どうしても永住したいという意思がなかったことに加え、Cardiologyは競争率が高く、IMG(international medical graduate)であることや、卒後年数が経過していることからも不利となることが予想され、より確実なJ-1ビザを選択しました。J-1ビザ取得に必要な書類は、厚生労働省とやりとりをしてStatement of Needと呼ばれる政府証明書をECFMG(Education Commission of Foreign Medical Graduates)に送ります。証明書の申請に必要となる主な書類は、(1)病院の契約書原本とその和訳(2)履歴書(3)保証書(J-1ビザは帰国が前提であるため、帰国後の勤務を保証してくれる書類)(4)誓約書などです。契約書類については、PDFで送られてくるものだと思って数日待っていたのですが、一向に送られて来ません。実はすべてNew Innovationというサイト(就労前に全ての書類を病院側に提出する際に使用するサイト)上に転がっていたのです。私はしばらくそのことに気付かず、貴重な時間をロスしてしまいましたので、思い込みにはくれぐれもご注意ください。さらに、書類の英訳を同僚数人で分割して行い、厚労省に郵送したのですが、日本の3~4月はちょうど年度の変わり目で担当者が代わる時期であったため、より一層時間がかかりました。ひと通りの書類を申請し、病院側のIMGの窓口担当者と連絡を取り合い、ECFMG certificate(USMEL Step2までの合格証明書)や医学部の卒業証明書をアップロードしてもらい、最終的にDS2019という書類を入手します。DS2019を入手したら、記載された番号などにより大使館の予約が出来ます。大使館ウェブサイトに必要事項を入力するわけですが、家族の分も必要で数時間かかってしまいますが、手続きを先に進めるためにはやむを得ません。また、混んでいる時期だとすぐに予約ができないこともあるため要注意です。大使館で面接を受けると、1週間ほどビザが手元に届き、晴れて渡航準備は完了です。ただし、こうした手続きは時期によって大きく変わるものなので、申請する方は必ず最新情報を入手するようにしてください。「たかが…」と思うことなかれ!事務手続きの山は最後までハード事務手続きと並行して、米国の病院で働くためのオリエンテーションをweb上で履修します。膨大な数のネット講習を受ける必要があり、ナメてかかるとIDカードがもらえなかったりするので、確実に履修しなければならず、本当に面倒でした。一連の事務作業が終わり、残りの期間は、渡米後に機会が増えるであろう米国の学会(AHAなど)への参加を見越して、病院のカテーテルデータをまとめたり、慶應関連病院のPCI registryからの論文作成1)やAHAへのSubmit2,3)をしたりしたほか、久しぶりの総合内科研修を控え、MKSAPという米国内科専門医の取得のための問題集を地道に解いて少しでもスムーズに入れるように準備をしました。参考1)https://pubmed.ncbi.nlm.nih.gov/30819656/2)https://pubmed.ncbi.nlm.nih.gov/30212493/3)https://www.ahajournals.org/doi/10.1161/circ.138.suppl_1.10930Column画像を拡大するニューヨークの新型コロナ患者はかなり減少し、現在はたまに診察する程度です。ただ3~5月のパンデミック中は途方もない多くの方々が罹患し、亡くなりました。そうした患者さんの最期にPalliative care teamの介入が有用ではないかという論文が先日オンラインとなりましたので、皆さんに共有させていただきます。不幸にも未曾有のウィルスに罹患し、治療が奏功しなかった患者さんが最期をいかに迎えるのか、いろいろと考えさせられました。参考サイト:https://twitter.com/MSBI_IM/status/1286667020751245313

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第20回 風邪コロナウイルスがSARS-CoV-2免疫を授けうる? / キャンプ場で小児にCOVID-19が大流行

風邪コロナウイルス反応T細胞がSARS-CoV-2も認識する?新型コロナウイルス(SARS-CoV-2)に感染していないのにSARS-CoV-2に反応するCD4+ T細胞が少なくとも5人に1人、多ければ2人に1人に備わっていると示唆されています。SARS-CoV-2が流行する前に25人から採取した血液検体を調べた新たなScience誌報告でもこれまでの幾つかの研究と同様にSARS-CoV-2反応T細胞が見つかり、SARS-CoV-2の142の領域(抗原決定基)がT細胞への反応と関連しました1,2)。そして、これまでにない新たな発見として、SARS-CoV-2に反応するT細胞が風邪を引き起こす馴染みのコロナウイルス(風邪コロナウイルス)4種のSARS-CoV-2に似た抗原決定基にも同様に反応しうることが示されました。この結果は、SARS-CoV-2流行前から馴染みのコロナウイルスに曝露したことでSARS-CoV-2にも反応しうるT細胞が備わったという考えを支持しています3)。また、感染前から備わるSARS-CoV-2への免疫反応はT細胞だけではなさそうです。先月23日にmedRxivに発表された報告によると、英国で新型コロナウイルス感染症(COVID-19)が本格的に流行する前の2018~2020年初めに非感染者262人から採取した血液検体のうち15検体(6%)にはSARS-CoV-2に反応する抗体が認められました4)。さらに特筆すべきことに小児でのその割合はとくに高く、1~16歳の小児48人のうち少なくとも21人(44%)はSARS-CoV-2スパイクタンパク質に反応するIgG抗体を有していました。小児は一般的に他のコロナウイルスとの接触がより多く、それが小児にIgG抗体が多い理由かもしれません。そのようなSARS-CoV-2反応抗体は小児におけるCOVID-19感染者の多くがかなり軽症で済むことの理由の一つかもしれないと著者の1人Rupert Beale氏はツイートしています5)。ただし、SARS-CoV-2への幾ばくかの免疫で感染を絶対に防げるという保証はありませんし、悪くすると正反対の効果、免疫反応を乱して手に負えない炎症やウイルスの蹂躙を招く恐れがあります。たまたま備わったSARS-CoV-2反応T細胞はとくに高齢者にとっては有害になる恐れがあるとシンガポールの免疫学者Nina Le Bert氏は言っています3)。Le Bert氏もCOVID-19へのT細胞反応を調べている研究者の一人です。キャンプ場で小児にCOVID-19が大流行小児はSARS-CoV-2感染しても多くが軽症で済み、それに感染し難いことが示唆されている一方で、米国ジョージア州のキャンプ場で6月に発生した小児のCOVID-19大流行はどの年齢の小児も感染と無縁ではないことを改めて示しました6)。そのキャンプ場では、キャンプする小児(6~19歳、中央値12歳)の受け入れの準備のためにまずは世話係(年齢14~59歳、中央値17歳)が6月17日にキャンプ場に集まり、キャンプはその週末21日から始まりました。キャンプ場のCOVID-19食い止め対策は完全ではなく、世話係は綿製マスク着用が義務でしたがキャンプする小児のマスク着用は必須とせず、ドアや窓を開けて建物内の換気を促すこともしませんでした。6月23日に10代の世話係の1人が前の晩に寒気を覚えてキャンプ場を去り、検査の結果24日にSARS-CoV-2感染が確認されました。キャンプ場は24日から滞在者を帰宅させはじめ、27日に閉鎖しました。キャンプには世話係251人とキャンプ参加小児346人合わせて597人が集い、検査結果が判明した344人(内訳は未報告)のうち260人(76%)が陽性でした。マスクが必須ではない環境で大勢が集まって同じ部屋で寝て、勢いよく歌ったり声援したりを繰り返したことが恐らく感染を広まらせたようであり、集いの場では相手との距離を保ってマスクを絶えず装着する必要があると著者は言っています。参考1)Selective and cross-reactive SARS-CoV-2 T cell epitopes in unexposed humans. Science 04 Aug 20202)Exposure to common cold coronaviruses can teach the immune system to recognize SARS-CoV-2 / Eurekalert 3)Does the Common Cold Protect You from COVID-19? / TheScientist4)Pre-existing and de novo humoral immunity to SARS-CoV-2 in humans. bioRxiv. July 23, 20205)Rupert Beale氏ツイッター 6)SARS-CoV-2 Transmission and Infection Among Attendees of an Overnight Camp - Georgia, June 2020. MMWR. Early Release / July 31, 2020

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米国学校閉鎖でCOVID-19罹患率・死亡率が約6割減/JAMA

 米国で2020年3月9日~5月7日にわたった州レベルの学校閉鎖が、新型コロナウイルス感染症(COVID-19)の罹患率と死亡率を一時的に減少したことが明らかにされた。閉鎖が早かった州では、累積罹患率が低い時点で学校閉鎖を行った場合ほど、相対的減少率が大きかったという。米国・シンシナティ小児病院のKatherine A. Auger氏らが、全米50州について行った観察試験の結果で、JAMA誌オンライン版2020年7月29日号で発表した。なお、結果について著者は、「減少には、同時期の他の非薬物的介入が関連している可能性は捨てきれない」と述べている。学校閉鎖・時期で減少に差があるかを検討 研究グループは2020年3月9日~5月7日の期間に米国住民ベースの観察試験を行い、遅延期を組み込んだ分割時系列分析を実施し、学校閉鎖およびその時期がCOVID-19罹患率・死亡率の減少と関連しているかどうかを検証した。検証の対象としたのは初等・中等学校(幼稚園~12学年)。 州レベルの非医薬品による公衆衛生上の対策と属性を、負の二項回帰モデルに組み入れ、学校閉鎖とアウトカムの関連を分離。各州について、学校閉鎖時の10万人ごとのCOVID-19累積罹患率に応じ、4等分に分類したうえで、統計モデルを用いて、閉鎖した学校と閉鎖しなかった学校のCOVID-19罹患率・死亡率の絶対差、また州が学校を閉鎖した時のCOVID-19累積罹患率が最も低い四分位範囲群と最も高い四分位範囲群の、罹患率と死亡率の絶対差を算出し評価した。学校閉鎖時の州累積罹患率が低いほど、罹患率・死亡率は低値 学校閉鎖時の州のCOVID-19累積罹患率は、0~14.75/10万人だった。 学校閉鎖により、COVID-19罹患率は有意に低下し、補正後の週当たりの相対変化率は-62%(95%信頼区間[CI]:-71~-49)だった。死亡率も有意に低下し、補正後同変化率は-58%(-68~-46)だった。 これら罹患率・死亡率の低下は、学校閉鎖時の州のCOVID-19累積罹患率が低いほど顕著だった。同累積罹患率が最も低かった州では、COVID-19罹患率の週当たりの相対変化率は-72%(95%CI:-79~-62)だった一方、最も高かった州の同変化率は-49%(-62~-33)だった。 この解析から作成したモデルにおいて、州のCOVID-19累積罹患率が最低四分位範囲で学校閉鎖を行った場合、最高四分位範囲で行った場合に比べ、COVID-19の罹患者は26日間で128.7/10万人、死亡は16日間で1.5/10万人少なくなると推定された。

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COVID-19へのヒドロキシクロロキン、AZM併用でも臨床状態改善せず/NEJM

 軽症~中等症の新型コロナウイルス感染症(COVID-19)の入院患者の治療において、標準治療にヒドロキシクロロキン(HCQ)単剤またはHCQ+アジスロマイシン(AZM)を併用しても、標準治療単独と比較して15日後の臨床状態を改善しないことが、ブラジル・HCor Research InstituteのAlexandre B. Cavalcanti氏らが行った「Coalition COVID-19 Brazil I試験」で示された。研究の詳細は、NEJM誌オンライン版2020年7月23日号に掲載された。HCQは、in vitroで抗ウイルス作用が確認され、小規模な非無作為化試験において、AZMとの併用で重症急性呼吸器症候群コロナウイルス2型(SARS-CoV-2)のウイルス量を減少させると報告されている。これらの知見に基づき、HCQはCOVID-19患者の治療に用いられているが、安全性や有効性のエビデンスは十分ではないという。3群を比較する無作為化対照比較試験 本研究は、ブラジルの55の病院が参加した非盲検無作為化対照比較試験であり、2020年3月29日~5月17日の期間に患者登録が行われ、2020年6月2日にフォローアップを終了した(Coalition COVID-19 BrazilとEMS Pharmaの助成による)。 対象は、年齢18歳以上、酸素補充療法を受けていないか、最大4L/分の酸素補充を受けており、発症から14日以内の入院中のCOVID-19疑い例または確定例であった。 被験者は、標準治療を受ける群(対照群)、標準治療+HCQ(400mg、1日2回)を受ける群(HCQ群)、標準治療+HCQ(400mg、1日2回)+AZM(500mg、1日1回)を受ける群(HCQ+AZM群)に、1対1対1の割合で無作為に割り付けられ、7日間の治療が行われた。 主要アウトカムは、修正intention-to-treat(mITT)集団(COVID-19確定例)における、7段階の順序尺度(1[入院しておらず、活動に制限がない]~7[死亡])で評価した15日後の臨床状態とした。すべての副次アウトカムにも差はない 667例が無作為割り付けの対象となり、504例がmITT解析に含まれた。221例がHCQ群、217例がHCQ+AZM群、229例が対照群に割り付けられた。全体の平均年齢は50歳、58%が男性で、42%が酸素補充療法を受けていた。 COVID-19確定例における、15日後の7段階順序尺度スコア中央値は3群とも1(IQR:1~2)であった。高スコア(臨床状態不良)の比例オッズ(OR)は、対照群と比較して、HCQ群(OR:1.21、95%信頼区間[CI]:0.69~2.11、p=1.00)およびHCQ+AZM群(0.99、0.57~1.73、p=1.00)のいずれにおいても有意な差は認められなかった。また、HCQ群とHCQ+AZM群の間にも、差はみられなかった(0.82、0.47~1.43、p=1.00)。 副次アウトカム(7日後の6段階[非入院~死亡]順序尺度、15日以内の呼吸補助なしの日数、15日以内の高流量鼻カニューレ/非侵襲的換気の使用日数、15日以内の機械的換気の使用日数、入院日数、院内死亡、15日以内の血栓塞栓症の発生割合、15日以内の急性腎障害の発生割合)のすべてで、有意差は確認されなかった。 補正後QT間隔の延長は、対照群に比べHCQ群およびHCQ+AZM群で頻度が高く、フォローアップ期間中に連続心電図検査を受けた患者は対照群で少なかった。また、肝酵素値(ALT、AST)の上昇は、対照群に比しHCQ+AZM群で高頻度であった。 著者は、「この研究の効果の点推定は、主要アウトカムに関して群間に大きな差はないことを示唆するが、試験薬の実質的な有益性および有害性のいずれかを確実に排除することはできない」としている。

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閉経後ホルモン補充療法、乳がんへの長期影響は?/JAMA

 2件の無作為化試験の長期フォローアップの解析から、子宮摘出術を受けた女性において、結合型エストロゲン(CEE)単独療法を受けた患者群はプラセボ群と比較して、乳がん発生率および乳がん死亡率の低下と有意に関連していることが明らかにされた。また、子宮温存療法を受けた女性において、CEE+メドロキシプロゲステロン酢酸エステル(MPA)療法を受けた患者群はプラセボ群と比較して、乳がん発生率は有意に高く、乳がん死亡率に有意な差はみられなかった。米国・Harbor-UCLA Medical CenterのRowan T. Chlebowski氏らによる報告で、これまで閉経後ホルモン療法の乳がんへの影響は、観察研究と無作為化試験の所見が一致せず結論には至っていなかったことから、一般閉経後女性を対象としたホルモン補充療法の大規模前向き無作為化試験「Women's Health Initiative」参加者の長期追跡評価試験を行い、CEE+MPA療法またはCEE単独療法の乳がん発生・死亡への影響を調べる検討を行った。JAMA誌2020年7月28日号掲載の報告。CEE単独またはCEE+MPA療法の対プラセボ評価を20年超追跡 2件のプラセボ対照無作為化試験の長期追跡評価は、乳がんの既往がなく、ベースラインのマンモグラフィで陰性が確認された50~79歳の閉経後女性2万7,347例を対象に行われた。対象者は、1993~98年に米国内40ヵ所のセンターで登録され、2017年12月31日まで追跡を受けた。 このうち、子宮が温存されている1万6,608例を対象とした試験では、8,506例がCEE 0.625mg/日+MPA 2.5mg/日を投与され、8,102例がプラセボを投与された。また、子宮摘出術を受けていた1万739例を対象とした試験では、5,310例がCEE 0.625mg/日単独投与を、5,429例がプラセボ投与を受けた。 CEE+MPA試験は、中央値5.6年後の2002年に中止となり、CEE単独試験は中央値7.2年後の2004年に中止となっている。 主要評価項目は、乳がんの発生(プロトコールは有害性についての主要モニタリングアウトカムと規定)、副次評価項目は、乳がん死および乳がん後の死亡であった。 対象者2万7,347例はベースラインの平均年齢63.4(SD 7.2)歳で、累積フォローアップ中央値20年超において98%以上の死亡情報の入手・利用が可能であった。子宮摘出CEE単独は発生率・死亡率とも低下、子宮温存CEE+MPAは発生率上昇 子宮摘出術を受けていた1万739例において、CEE単独療法はプラセボと比較して、統計学的に有意に乳がんの発生率が低かった(238例[年率0.30%]vs.296例[0.37%]、ハザード比[HR]:0.78、95%信頼区間[CI]:0.65~0.93、p=0.005)。また、乳がん死も統計学的に有意に低率だった(30例[0.031%]vs.46例[0.046%]、0.60、0.37~0.97、p=0.04)。 対照的に、子宮が温存されていた1万6,608例において、CEE+MPA療法はプラセボと比較して、統計学的に有意に乳がんの発生率が高く(584例[年率0.45%]vs.447例[0.36%]、HR:1.28、95%CI:1.13~1.45、p<0.001)、乳がん死の有意差はみられなかった(71例[0.045%]vs.53例[0.035%]、1.35、0.94~1.95、p=0.11)。

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COVID-19治癒後、8割に心臓MRIで異常所見

 最近COVID-19が治癒した100例におけるコホート研究で、心臓MRI(CMR)により78%に心臓病併発、60%に進行中の心筋炎症が認められたことを、ドイツ・フランクフルト大学病院のValentina O. Puntmann氏らが報告した。また、これらは既往歴、COVID-19の重症度や全体的な経過、診断からの期間とは関連がなかったことという。JAMA Cardiology誌オンライン版2020年7月27日号に掲載。 COVID-19の心血管系への影響は症例報告では示唆されているが、全体的な影響は不明だった。今回、著者らはCOVID-19が最近治癒した患者の心筋障害の存在を調査するために、2020年4~6月にフランクフルト大学病院COVID-19レジストリにおいて、COVID-19が最近治癒した100例を対象とした前向き観察コホート研究を実施した。COVID-19の治癒については、上気道スワブのRT-PCR検査でSARS-CoV-2消失とした。人口統計学的特徴、心臓の血中マーカー、CMRについて、年齢と性別を一致させた健康ボランティアの対照群(n=50)と危険因子を一致させた患者の対照群(n=57)と比較した。 主な結果は以下のとおり。・100例のうち、男性は53例(53%)で、年齢中央値(四分位範囲[IQR])は49(45~53)歳であった。・COVID-19診断からCMRまでの期間の中央値(IQR)は71(64~92)日であった。・COVID-19が最近治癒した100例のうち、67例(67%)が自宅で治癒し、33例(33%)が入院を必要とした。・CMRの時点で、COVID-19が治癒した71例(71%)で高感度トロポニンT(hsTnT)が検出され(3pg/mL以上)、5例(5%)で著明な増加を示した(99パーセンタイルの13.9pg/mL以上を「著明な増加」と定義)。・COVID-19治癒患者群は、健康ボランティアの対照群と危険因子を一致させた患者の対照群と比較して左室駆出率が低く、左室容積および左室心筋重量が大きく、native T1およびT2が上昇していた。・COVID-19が治癒した78例(78%)で、心筋のnative T1の上昇(73例)、心筋のnative T2の上昇(60例)、心筋のlate gadrinium enhancement(32例)、心膜のenhancement(22例)などのCMRの異常所見がみられた。・自宅で治癒した患者と病院で治癒した患者では、native T1 mappingについて、わずかだが有意な差があった(中央値[IQR]:1122 [1113~1132] ms vs.1143 [1131~1156] ms、p=0.02)が、native T2 mapping、hsTnTでは差がなかった。これらはいずれもCOVID-19診断からの日数と相関していなかった(native T1:r=0.07、p=0.47、native T2:r=0.14、p=0.15、hsTnT:r=-0.07、p=0.50)。・hsTnTは、native T1 mapping(r=0.35、p<0.001)およびnative T2 mapping(r=0.22、p=0.03)と有意に相関していた。・重症所見がみられた患者の心筋生検で、活動性のリンパ球性炎症がみられた。 この結果から著者らは、COVID-19の心血管系への長期における影響を継続的に調査する必要があるとしている。

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緑茶は血圧を1mmHgだけ下げる【Dr. 倉原の“おどろき”医学論文】第168回

緑茶は血圧を1mmHgだけ下げるpixabayより使用緑茶は体にいい!それは間違いないと思うのですが、血圧に対してはどうでしょうか。緑茶に含まれるカフェインの利尿作用が血圧を下げることに加えて、抗酸化作用があるとかないとか……。こうなったらメタアナリシスを実施して、血圧がどのくらい下がるか調べてみよう!というのが今回の研究。Xu R, et al.Effect of green tea supplementation on blood pressure: A systematic review and meta-analysis of randomized controlled trials.Medicine (Baltimore). 2020 Feb;99(6):e19047. doi: 10.1097/MD.0000000000019047.過去の観察研究や動物の研究では、緑茶によって収縮期血圧を下げられることが示されていますが、ランダム化比較試験ではいまだに結論が出ていません。今回、ランダム化比較試験を集めたメタナアリシスをおこない、緑茶が収縮期血圧を低下させるかどうかを調べました。電子データベースにおいて、2019年8月までの文献を検索しました。研究の質はJadadスコアによって評価され、出版バイアスについても評価しました。週2回以上の緑茶摂取の習慣があることが前提とされました(量は規定されず)。1,697人の被験者を対象とした24試験がメタアナリシスに含まれました。これらをプール解析したところ、緑茶の摂取は収縮期血圧(平均差-1.17 mmHg、95%信頼区間[CI]:-2.18~-0.16mmHg、p=0.02)および拡張期血圧(平均差-1.24 mmHg、95%CI:-2.07~-0.40mmHg、p=0.004)を有意に低下させることが示されました。……平均差が1mmHgちょいなので、もうぶっちゃけほとんど変わらないといっても過言ではない気がしますが。いずれの血圧パラメータも異質性がみられたものの、出版バイアスは明らかではありませんでした(p=0.674およびp=0.270)。というわけで、ちょびーーっとだけ血圧が下がる効果はあるかもしれません。それに何を期待すればよいのかはともかく。

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自殺予防介入とその後の自殺企図との関連~メタ解析

 自殺による死亡を予防するためには、救急医療機関において自殺リスクを有する患者へのメンタルヘルスへのアクセスを確保し、それまでの間、安全を継続できるツールが必要とされる。米国・ペンシルベニア大学のStephanie K. Doupnik氏らは、簡潔な急性期自殺予防介入とその後の自殺企図、フォローアップケア、フォローアップ時のうつ症状との関連について、調査を行った。JAMA Psychiatry誌オンライン版2020年6月17日号の報告。 2000年1月~2019年5月に公表された自殺、予防関連研究の参考文献および関連文献を特定するための臨床試験をOvid MEDLINE、Scopus、CINAHL、PsychINFO、Embaseより検索した。単発の自殺予防介入の臨床研究を説明した研究を選択に含めた。2人の独立したレビュアーがすべての文献をレビューし、適格基準を判断した。また、PRISMAガイドラインに従ってデータを抽出し、Cochrane Risk of Bias toolを用いてバイアスリスクを評価した。各アウトカムのデータは、変量効果モデルを用いてプールした。出版バイアスを含む小規模研究効果は、Peter and Egger regression testを用いて評価した。自殺予防介入後の自殺企図、フォローアップケアとの関連、フォローアップ時のうつ症状の3つの主要アウトカムについて検討した。自殺企図およびフォローアップケアとの関連は、検証済みの自己報告指標と診療情報のレビューを用いて測定した(エフェクトサイズを推定するために、オッズ比とHedges g標準平均差をプールした)。うつ症状は、介入2~3ヵ月後に、検証済みの自己報告指標を用いて測定した(エフェクトサイズを推定するために、プールしたHedges g標準平均差を用いた)。 主な結果は以下のとおり。・14研究より4,270例を研究に含めた。・プールされた効果推定値では、簡潔な自殺予防介入は、その後の自殺企図の減少(プールされたオッズ比:0.69、95%CI:0.53~0.89)およびフォローアップケアへの参加の増加(プールされたオッズ比:3.04、95%CI:1.79~5.17)と関連していたが、抑うつ症状の軽減との関連は認められなかった(Hedges g:0.28、95%CI:-0.02~0.59)。 著者らは「簡潔な自殺予防介入は、その後の自殺企図の減少と関連していた。対面で行われる単発の自殺予防介入は、その後の自殺企図を減少させ、フォローアップ時のメンタルヘルスケアを行ううえで効果的であることが示唆された」としている。

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精神疾患の疫学研究~大規模コホート

 中国は、ここ30年の間、過去にない経済的発展と社会的変化が起きており、政策立案者や医療専門家は、モニタリングすべき重要なポイントとして、メンタルヘルスへの注目が集まっている。中国・Guangdong Academy of Medical ScienceのWenyan Tan氏らは、過去10年間で2,000万件の実臨床フォローアップ記録を用いて、広東省における精神疾患の疫学研究を実施した。BMC Medical Informatics and Decision Making誌2020年7月9日号の報告。 2010~19年の広東省精神保健情報プラットフォームより、データを収集した。このプラットフォームは、6カテゴリの精神疾患患者約60万人と統合失調症患者40万人を対象とした疾患登録およびフォローアップが標準化されている。患者の疾患経過による臨床病期分類を行い、さまざまな因子でデータを分類した。疾患に関連性の高い指標を調査するため、定量分析を行った。地域分布分析のため、結果を地図に投影した。主な結果は以下のとおり。・精神疾患発症の多くは、15~29歳で認められた。ピーク年齢は、20~24歳であった。・罹病期間が5~10年の患者が最も多かった。・疾患経過に伴い、治療効果は徐々に減少し、リスクが上昇した。・影響因子分析では、経済状況の悪化はリスクスコアを上昇させ、適切な服薬アドヒアランスが治療効果の改善に効果的であることが示唆された。・より良い教育は、統合失調症リスクを低下させ、早期治療効果を高めた。・統合失調症の地域分布分析によると、経済状況の発展や医療資源の豊富な地域では、疾患リスクが低下し、経済状況が思わしくない地域では、疾患リスクが上昇した。 著者らは「経済状況や服薬アドヒアランスは、統合失調症の治療効果やリスクに影響を及ぼしていた。経済状況の発展とより良い医療資源は、精神疾患治療に有益である」としている。

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新しく出てくるTAVI弁は使えるか?(解説:上妻謙氏)-1264

 重症大動脈弁狭窄症(AS)に対する経カテーテル大動脈弁置換術(TAVR)は、その低侵襲かつ有効な治療のため世界中で急速に普及し、一般的な医療となってきた。今まで世界で市販され使用されてきた人工弁はバルーン拡張型と自己拡張型に分かれるが、新規で市販されてくる人工弁は自己拡張型ばかりである。先行するメドトロニック社のコアバルブシリーズの人工弁はsupra-annularタイプといって元々の自己弁輪部よりも大動脈の上部に新規の人工弁が存在するようになり、石灰化の強いAS患者において自己弁部の石灰化で人工弁が変形した影響を受けにくくなるメリットがある。今までのところコアバルブシリーズは標準人工弁として使用されているバルーン拡張型SAPIEN 3に対し非劣性を示しており、主力人工弁の1つとなっている。一方で自己拡張型のACURATE neo弁はSAPIEN 3に対し非劣性を示すことができなかった試験があり、すべての人工弁を同様の適応として使用することは適切でない可能性がある。 本PORTICO IDE試験で使用されたPortico弁は、他の新規で登場した人工弁と同様に自己拡張型であるが、自己弁輪部に留置するもので、完全にリリースするまで回収できる点は自己拡張型弁としての特徴を有している。米国とオーストラリアの52施設でNYHA class II以上の重症大動脈弁狭窄症を登録して行われた。重症ASの基準は一般的なもので、外科手術がハイリスクな患者を対象としている。一時、弁尖の無症候性血栓症の問題が上がったため11ヵ月間エントリーが中断した時期があり、予定症例数が1,610から1,206、さらに908と段階的に少なく設定されるようになり、最終的に750例のトライアルとなった。順調に進行しなかったことでも有名な試験である。 Portico弁をスタディデバイスとし、現在市販されて使用できるSAPIEN、SAPIEN XT、3と自己拡張型デバイスであるCoreValve、Evolut-RまたはEvolut-Proを対照群として1対1にランダマイズして比較したもので、安全性プライマリーエンドポイントは30日の全死亡、脳卒中、輸血を要する出血、透析を要する急性腎障害、重大な血管合併症の複合エンドポイントで、有効性のプライマリーエンドポイントは1年の全死亡と脳卒中である。いずれも非劣性検定のデザインで、非劣性マージンが安全性8.5%、有効性が8.0%で、サンプルサイズを減らすに当たって、検出力は80%に落とされた。また人工弁の弁口面積や圧較差を2年までフォローしている。 結果、Portico群は安全性および有効性のプライマリーエンドポイントの非劣性は達成したが、イベントの頻度をみると30日の安全性のイベント発生率はPortico群で高い傾向となり、13.8%と9.6%と非劣性ではあるが、優越性検定では対照群がp=0.071とぎりぎりで有意差がつくところであった。それはとくに最初の半分の症例の死亡率と血管合併症で差が出ており、デバイスに対する習熟度が改善した後半ではみられなかったと分析された。症状やQOLの改善については同等で、弁口面積や圧較差については対照群よりも良いデータとなったが、これはSAPIEN弁に対する優位性であり、Evolut弁とは同等で、自己拡張型のメリットであった。しかし中等度以上の大動脈弁逆流の残存はPortico弁が多かった。途中でサンプルサイズを変更し、対照群のイベント率が実際には9.6%であったところで、8.5%の非劣性マージンで80%の検出力を妥当とするかにも議論があるといえるため、Portico群の死亡率の高さは無視できないところがある。 このスタディ結果は、この人工弁が18-19フレンチの大径のシースを必要とし、最近の一般に使用されている人工弁と比較して不利な点が大きいことが影響していると考えられる。現在市販されている製品は、14フレンチまで小径化して、逆流防止のためのスカートが付いており、今までの問題点が解決されてきた経緯があり、安全性が大幅に改善して、普及してきた。これらの対策はPortico弁がマーケットに出てきて対等に使用されるために必須の条件と考えられる。新規に市場に登場するデバイスはまだ発展途上のデバイスが多いと考えられ、TAVRに関しては必須となる条件がはっきりしてきたといえる。

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新型コロナ感染症、ARDSの新たな機序の発見?(解説:山口佳寿博氏)-1265

 本論文は、新型コロナ(SARS-CoV-2)に罹患し肺炎、ARDSを基礎とした重篤な呼吸不全のために死亡した7症例の肺組織を用いて病理・形態像(光顕、走査電顕、微小CT画像、免疫組織化学)ならびに血管増生に関与する323個の遺伝子の発現動態を解析したものである。比較として、A型インフルエンザ(AH1N1)で死亡した症例の肺(7例)と正常肺(10例、肺移植に使用されなかった肺)を用いて上記と同様の解析が施行された。SARS-CoV-2、AH1N1肺の基本病理像はDAD(diffuse alveolar damage)であったが、肺重量はAH1N1で重くSARS-CoV-2肺の1.4倍であった。すなわち、AH1N1肺では血液成分の漏出に起因する肺水腫がより著明であることが示唆された。免疫組織化学による肺胞上皮細胞、肺毛細血管細胞におけるACE2(angiotensin-converting enzyme 2:SARS-CoV-2の受容体でウイルスのS1-RBD[S1領域のreceptor binding domain]と結合)の発現は、正常肺に比べSARS-CoV-2、AH1N1肺で有意に増加していたが、AH1N1肺で最も著明であった。AH1N1の受容体はヒト型シアル酸でウイルスの血球凝集素(HA:hemagglutinin)と結合しACE2とは無関係である。にもかかわらず、AH1N1肺でACE2の発現が増加していたことは興味深い知見である。ARDSは非特異的にACE2の発現を抑制すると報告されてきたが(Patel AB, et al. JAMA. 2020 Mar 24. [Epub ahead of print])、本研究はそれと逆の結果を示しており、どちらが正しいのか、さらなる検討が必要である。CD8陽性T細胞はAH1N1肺で、CD4陽性T細胞はSARS-CoV-2肺で有意に増加していた。しかしながら、これらT細胞の違いがSARS-CoV-2とAH1N1のいかなる病態の差異に結び付いているかに関しては議論されていない。 本研究で最も価値ある解析は、血管内皮細胞傷害と微小血管病変に対する電子顕微鏡的、分子生物学的アプロ-チである。SARS-CoV-2肺では、血管内皮細胞内にウイルスが包埋され、一次性血管内皮細胞炎(endothelialitis)の所見を呈した。それと関連し、広範囲な肺循環(筋性肺動脈、前毛細管性肺細動脈、肺毛細血管、後毛細管性肺細静脈)で血栓形成を認めた。さらに、これらの血管病変には著明な血管増生(angiogenesis)が随伴していた。SARS-CoV-2肺の血管増生はAH1N1肺に比べ2.7倍強く、入院期間が長いほど血管増生の程度は強くなった。一方、AH1N1肺における血管増生は入院期間と無関係にほぼ一定に維持されていた。血管増生に関与する323個の遺伝子解析では、69個の遺伝子がSARS-CoV-2肺のみで変化(upregulation or downregulation)、26個の遺伝子がAH1N1肺のみで変化、45個の遺伝子が両肺で変化していた。すなわち、SARS-CoV-2肺で35%、AH1N1肺で22%の血管増生関連遺伝子が変化しており、SARS-CoV-2感染肺においてより強い血管増生が発生していることを支持する知見であった。 以上の結果は、SARS-CoV-2による重篤な肺病変(ARDS)の主体は、一次性のウイルス誘発性endothelialitisとそれに伴うangiogenesisであり、従来報告されていなかった新たなARDS発生機序を示唆するものである。重篤なendothelialitisはARDSの1つの特徴である肺循環の低酸素性肺血管攣縮麻痺(paralysis of hypoxic pulmonary vasoconstriction)をより強く発現させ、右-左血流シャントを増加、重篤な低酸素血症を惹起するものと予想される(Som A, et al. N Engl J Med. 2020 Jul 17. [Epub ahead of print])。すなわち、SARS-CoV-2由来の低酸素血症は他の原因によるARDSよりも重篤でECMOなどを用いた高度の呼吸管理が必要になることを示している。 本論文の結果は、十分に説得力のある内容であるが反対論文も散見される。SARS-CoV-2感染で死亡した14例の全臓器剖検例の検討で、Bradleyらは(Bradley BT, et al. Lancet. 2020 Jul 16. [Epub ahead of print])、14例中5例で肺微小血管に血栓を認めたものの肺を含む全臓器でendothelialitisを同定できた症例は1例もなかったと報告している。本論文は、SARS-CoV-2にあって最も重要な肺病変(ARDS)に関して新たな分子生物学的概念を提示したが、基本となるendothelialitisの存在については議論があるところであり、さらなる検討が望まれる。

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第18回 オンライン資格確認は医療現場の救済か、お荷物か?

2021年3月から「オンライン資格確認」が始まる。コロナ禍以前からの計画ではあるが、結果的には現況の社会にも対応した厚生労働省の「データヘルスの集中改革プラン」の基盤となるものだ。医療機関や薬局において、患者のマイナンバーカードか健康保険証を基に医療保険の資格などをすぐに確認できるので、厚生労働省は医療機関・薬局側にとって「入力の手間が省ける」「患者の待ち時間が短縮できる」などのメリットを強調する。一方、医療機関からは、マイナンバーの初期認証作業や、本人確認のやり方がわからない高齢者などに対しスタッフが説明しなければならず、逆にスタッフの手間が増えるのではとの指摘が出ている。マイナンバーの場合、顔認証付きカードリーダーか、窓口スタッフによる目視を行う。もしくは、4桁の暗証番号を患者本人に入力してもらう。健康保険証の場合は、窓口スタッフが保険証の記号番号などを端末に入力する。いずれかの方法で本人確認をした上で、患者の資格情報を取得、社会保険診療報酬支払基金や国民健康保険中央会が管理している資格履歴を照会、患者の現在の医療保険資格の状況を確認する。厚労省はオンライン資格確認のメリットとして、患者の保険資格情報の入力の手間が省けるほか、資格過誤によるレセプトの払戻作業が削減できたり、患者の同意があれば過去3年分の投薬情報や5年分の特定健診の情報を医師・歯科医師・薬剤師の間で共有できたりする点などを挙げる。これに対し、医療現場からは懸念の声が上がっている。ある歯科医師は「銀行のATMでは、一定の年齢層ではいまだに操作の仕方がわからず、行員が近くに待機している。オンライン資格確認も高齢者などで顔認証の仕方がわからない患者が出てくるだろうが、診療報酬の点数が低い歯科の診療所で説明要員を雇う余力はない」と話す。また、カメラやカードリーダーなどがある資格確認機器の表面は窓口スタッフに見えないように設置することになるが、患者が操作の仕方がわからない場合はスタッフが操作の仕方を教えるため患者側に回り込んで、マイナンバーカードを触ったり見たりせざるを得ないケースも予想される。これでは個人情報の管理を巡るトラブルになりかねない。さらに、マイナンバーは初期認証を行って保険証情報と一致させる作業をしないと使えないが、厚労省はこの作業を医療機関でも行えるようにしようとしている。このため、医療機関の間では、二重三重に窓口の手間がかかり、今まで以上に患者を待たせることになるのではと懸念の声が広がっている。オンライン資格確認システムを導入する際、初期導入経費は医療情報化支援基金による補助金を活用できるが、管理・維持費は医療機関持ち。厚労省は2019年度に300億円、20年度に768億円を基金の予算として計上している。経済界は潤うだろうが、医療機関は負担を強いられる。コロナ禍の下、1,000億超の予算を投じてまで、本当に今やるべき事業なのだろうか。はなはだ疑問である。

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COVID-19パンデミック時の不安やうつ症状の有症率とその予測因子

 COVID-19による世界的なパンデミックの効果的なマネジメントのため、厳格な移動制限の実施とソーシャルディスタンスを保つことが求められている。キプロス大学のIoulia Solomou氏らは、一般集団におけるCOVID-19パンデミックの心理社会学的影響を調査し、メンタルヘルスの変化を予測するリスク因子と保護因子の特定を試みた。また、ウイルス蔓延を阻止するための予防策の準拠についても調査を行った。International Journal of Environmental Research and Public Health誌2020年7月8日号の報告。 社会人口統計学的データ、予防策の準拠、QOL、全般性不安障害尺度(GAD-7)およびこころとからだの質問票(PHQ-9)を用いたメンタルヘルスの状態を、匿名のオンライン調査で収集した。 主な結果は以下のとおり。・調査を完了した参加者は、キプロス島在住の成人1,642人(女性の割合:71.6%)。・重大な経済上の懸念が報告されたのは48%、QOLの有意な低下が認められたのは66.7%であった。・不安に関連する症状は、軽度が約41%、中等度~重度が23.1%報告された。・うつ病に関連する症状は、軽度が48%、中等度~重度が9.2%報告された。・不安やうつ病のリスク因子は、女性、若年(18~29歳)、学生、失業、精神疾患の既往歴、QOLへの悪影響の大きさであった(p<0.05)。・予防策の準拠レベルは、最も若い年齢層および男性で低かった。・予防策の準拠レベルが高いほど、うつ病スコアの低下が認められたが(p<0.001)、個人的な衛生状態の維持に関する不安は増加した。 著者らは「本研究により、COVID-19アウトブレイクがメンタルヘルスやQOLに及ぼす影響が明らかとなった。政策立案者は、効果的なメンタルヘルスプログラムおよび公衆衛生戦略としての予防策を実施するためのガイドラインを検討する必要がある」としている。

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