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第45回 南ア株にワクチンは確かに効き難く、先立つ感染も通用しなさそう/エボラ潜伏の恐れ

南アフリカ変異株にワクチンは確かに効き難く、先立つ感染も通用しなさそう世界屈指の製薬会社Johnson & Johnson(J&J)と米国メリーランド州のバイオテクノロジー企業Novavax(ノババックス)社の新型コロナウイルス(SARS-CoV-2)感染症(COVID-19)予防ワクチンそれぞれの試験結果が先週末に相次いで発表され、南アフリカで最初に見つかってとりわけ心配されている変異株B.1.351への効果はどちらのワクチンもだいぶ低めでした1)。J&JのワクチンJNJ-78436735(Ad26COVS1)の第III相試験における米国での予防効果は72%、南アフリカでは57%であり、南アフリカでの感染のほぼすべて(95%)は変異株B.1.351によるものでした2)。NovavaxのワクチンNVX-CoV2373は英国での第III相試験結果と南アフリカでの後期第II相試験結果が報告され、英国試験での効果は大変有望な89%でした。しかし南アフリカ試験での効果はJ&Jのワクチンと同様に低く49%(HIV陰性被験者では60%)であり、ウイルス配列が調べられた感染のほぼすべて(93%)はJ&Jワクチンの試験と同様に変異株B.1.351によるものでした3)。Novavaxワクチンの南アフリカでの試験に組み入れられた被験者のおよそ3分の1は先立つ感染経験があることを裏付ける抗体保有者(seropositive)でした。上述の解析ではそれら3分の1の被験者は除外されていますが、それら被験者を含めたプラセボ群のCOVID-19発現率は抗SARS-CoV-2抗体を有していようといまいと変わらず、変異前のウイルスに感染したところで変異株B.1.351の感染は防げないようです4)。効果は低めとはいえワクチンがB.1.351に有効なことは朗報ですが、先立つ感染がどうやら通用しないというのは心配です。米国の有力なアナリスト会社Leerinkの見通しは不吉で、B.1.351のような厄介な変異株はこれから世界に広がり、先立つ感染やワクチンの普及は新たな変異株の出現をひたすら後押しするだろうと予想しています1)。Novavaxのワクチンは先月中頃に英国での承認申請がすでに始まっており、J&Jのワクチンは今月中に米国に認可申請されます。どちらも世に出ることになるでしょうが、変異株への対応などに追われ、ワクチン開発の一段落まではまだまだ長い時間がかかりそうです。Moderna社がB.1.351に対するワクチンの開発に着手したのと同様にNovavaxも変異株を標的とする新たなワクチンの開発を先月の早くから開始しています3)。その臨床試験がまもなく今春(第2四半期)に始まる予定です。Pfizerも同様です。新たに出回る変異株が見つかったらワクチンの効果をその都度検証し、必要とあらば変異株に対応できるようにワクチンに手を加えていくと同社CEO・Albert BourlaはBloombergニュースに話しています5)。エボラ感染後の抗体が周期的に増減~潜伏ウイルスの仕業?エボラウイルス(EBOV)感染を切り抜けてもはや健康な115人の感染後30~500日の血液中の抗EBOV抗体を調べたところその量がどうやら周期的に増減を繰り返しうると示唆されました6,7)。その理由はこれから調べる必要がありますが、一つの可能性として眼・中枢神経系・精巣などの免疫が手加減(immunologically privileged)する組織で細々と増える潜伏EBOVが抗体減少につけ込んでその都度引き起こす小ぶりな感染が周期的な抗体反応をもたらすことによるのかもしれません7)。COVID-19を経た人がそうであるようにEBOV感染を経た人の多くも頭痛、疲労、視覚障害、筋肉痛などを特徴とする長患い・エボラ後症候群(post-Ebola syndrome)に陥ります。アフリカのリベリアでの試験(PREVAIL)によるとEBOVのRNAはおよそ3人に1人の精液から検出され、その検出は最長で発症から40ヵ月後にも認められました8)。免疫が手加減する組織・精巣は感染を繰り返し引き起こして抗体生成を突発させるEBOVの潜伏先かもしれません7)。PREVAIL試験の結果はEBOVの細々とした複製が抗体の時おりの急増を招くという考えを支持しています。しかしPREVAIL試験では抗体量とエボラ後症候群の症状の関連は認められておらず、抗体分泌細胞(プラズマ細胞)や抗体量の維持に寄与するまだよく分かっていない仕組みが存在しているようです。今回の研究を実施した英国リバプール大学のチームはCOVID-19を経た人の抗体の推移も調べ始めています9)。参考1)Novavax and J&J join the Covid-19 vaccine push / Evaluate2)Johnson & Johnson Announces Single-Shot Janssen COVID-19 Vaccine Candidate Met Primary Endpoints in Interim Analysis of its Phase 3 ENSEMBLE Trial / PRNewswire3)Novavax COVID-19 Vaccine Demonstrates 89.3% Efficacy in UK Phase 3 Trial / GlobeNewswire4)Announcement of UK and South Africa Trial Results / Novavax5)Pfizer to Deliver U.S. Vaccine Doses Faster Than Expected / Bloomberg6)Adaken C, et al.Nature. 2021 Jan 27:1-5.7)Antibodies periodically wax and wane in survivors of Ebola / Nature8)PREVAIL III Study Group, N Engl J Med. 2019 Mar 7;380:924-934.9)Antibody highs and lows in survivors of Ebola / Eurekalert

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バーチャル開催のJSMO2021、注目演題を発表/日本臨床腫瘍学会

 2021年2月18日(木)~21日(日)、第18回日本臨床腫瘍学会学術集会(JSMO2021)が完全バーチャル形式で開催される。これに先立ち、プレスセミナーが開催され、今回のJSMO2021の取り組みや注目演題等が発表された。JSMO2021のテーマは「Evolving Treatment Paradigms for Precision Oncology」 この中で、会長を務める西尾 和人氏(近畿大学医学部ゲノム生物学教室 教授)が学会の概要を説明。昨年夏にいち早く完全バーチャル形式での開催を決めたJSMO2021は、例年より長めの日程となり、海外演者も数多く登壇予定だ。「朝は7時から夜は23時まで多くの演題を用意し、勤務のある方でも参加しやすくした」(西尾氏)。 JSMO2021のテーマは「Evolving Treatment Paradigms for Precision Oncology」で、2019年にがん遺伝子パネル検査が保険収載となってから1年半あまりで、がんの臨床現場を大きく変えたゲノム医療についてリアルワールドデータやアジア各国のとの協働研究の結果が報告される。また、15の学術部会による教育シンポジウムや患者支援企画、国際学会としてASCO(米国腫瘍学会)やESMO(欧州腫瘍学会)とのジョイントセミナーや少人数で各国の腫瘍内科医とディスカッションする「Meet the Experts」も多数設けられた。その他の注力テーマとしては「COVID-19流行下におけるがん診療」と、リキッドバイオプシーや人工知能(AI)の臨床応用といった「新しいテクノロジーにおけるがん医療の変革」が設定され、いずれも複数のセッションが予定されている。 続けて、中川 和彦氏(近畿大学医学部内科学教室 教授)が、JSMO2021における900題にのぼる一般演題の中で、とくに注目される3つのPresidential Sessionについて、詳細を解説した。Presidential Session 12月19日(金) 14:00~15:55 「免疫チェックポイント阻害剤の治療開発」1)進行食道がんに対するペムブロリズマブ+化学療法 KEYNOTE-590:原 浩樹氏(埼玉県立がんセンター)2)MSI-high/dMMR の転移のある大腸がんに対するペムブロリズマブvs.化学療法KEYNOTE-177:吉野 孝之氏(国立がん研究センター東病院)3)進行非扁平上皮非小細胞肺がんに対するニボルマブ+プラチナ化学療法+ベバシズマブ 日本人サブ解析:樋田 豊明氏(愛知県がんセンター)4)肺肉腫に対する2つの抗PD-1抗体(ニボルマブとペムブロリズマブ):板橋 耕太氏(国立がん研究センター中央病院)5)R/R AML患者におけるAMG330:Farhad Ravandi氏(米MDアンダーソンがんセンター)Presidential Session 22月20日(土) 15:30~15:35 「分子標的治療と殺細胞性抗がん剤治療」1)術後ハイリスク頭頸部がんに対する化学療法 :田原 信氏(国立がん研究センター東病院)2)EGFR遺伝子変異陽性非小細胞肺がんに対するベバシズマブ+エルロチニブ OSとctDNA解析:福原 達朗氏(宮城県立がんセンター)3)HER2陽性進行乳がんへのペルツズマブ再投与:遠山 竜也氏(名古屋市立大学)4)再発または転移のある子宮頸がんに対するtisotumab:Robert L. Coleman氏(米国立がん研究所)5)進行大腸がんにおけるAMG510:久保木 恭利氏(国立がん研究センター東病院)Presidential Session 32月21日(日) 14:50~16:50 「ゲノム医療と希少がん」1)進行胃がんにおけるctDNAによる遺伝子異常 SCRUM-Japan MONSTAR SCREEN:舛石 俊樹氏(愛知県がんセンター)2)泌尿生殖器がんにおけるctDNAによるゲノム解析:野々村 祝夫氏(大阪大学)3)日本におけるがんゲノム医療における初期エキスパートパネルのパフォーマンス:角南 久仁子氏(国立がん研究センター中央病院)4)原発不明がんに対するNGSを用いた遺伝子発現解析と遺伝子変異による原発巣推定に基づくSite-Specific Treatment:新井 誠人氏(千葉大学)5)小児がん患者における抗悪性腫瘍剤投与に伴う悪心・嘔吐予防としてのパロノセトロン:古賀 友紀氏(九州大学) 19~21日には、その日に発表された演題の中から、とくに注目すべきものを識者が解説する「Highlight of the Day」(1時間)も予定されている。◆第18回日本臨床腫瘍学会学術集会(JSMO2021)ライブ配信:2021年2月18日(木)~21日(日)オンデマンド配信:2021年3月1日(月)~31日(水)

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神経線維腫症1型〔NF1:Neurofibromatosis1〕

1 疾患概要■ 概念・定義神経線維腫1型(NF1)は、1882年にレックリングハウゼン氏により初めて報告されたため、「レックリングハウゼン病」とも呼ばれる。カフェ・オ・レ斑、神経線維腫という特徴的な皮膚病変を生じ、そのほか中枢神経系、骨などさまざまな臓器に多彩な病変を合併する母斑症である。■ 疫学人種に関係なく出生約3,000人に1人の割合で発症する。浸透率は100%で、わが国の患者数は約40,000人と推定されている。常染色体優性の遺伝性疾患であるが、半数以上は家族歴のない孤発例である。出現する症状は時期により異なる。■ 病因原因遺伝子は17番染色体上に位置し(NF1遺伝子)、その蛋白産物はニューロフィブロミンと呼ばれる。ニューロフィブロミンはRAS蛋白の機能を負に制御しており、細胞増殖を抑制する作用を持つ(がん抑制遺伝子)。そのため本遺伝子に異常を来すとRAS/MAPK経路やPI3K/AKT経路の活性化が生じ、病変を生じると推測されている。NF1ではもともと一方のallele(アレル)に変異があるが、さまざまな病変部でもう片方にも異常を来していることが確認されている。■ 症状症状は多彩であり、同一家系内においても合併する症状は異なる。以下に代表的な症状を列挙する。1)カフェ・オ・レ斑出生時からみられるミルクコーヒー色の長円形色素斑で(図1)、6個以上あれば最終的にほとんどの例でNF1と診断される。2)神経線維腫皮膚の神経線維腫は淡紅色の柔らかい腫瘍で(図2)思春期頃から生じ、年齢とともに増加する。時に数百から数千に及ぶことがある。一方、びまん性(蔓状)神経線維腫は生下時から存在する腫瘍で、小児期から急速に増大し、日常生活に支障を与える場合が多い。痛みを生じたり、悪性化(悪性末梢神経鞘腫瘍)する可能性がある。3)雀卵斑様色素斑主に腋窩や鼠径に多発するそばかす様の小褐色斑である。4)中枢神経系の病変視神経膠腫(7%)や脳腫瘍を生じることがある。また、小児では知的障害、限局性学習症、注意欠如多動症、自閉スペクトラム症を合併する頻度が健常人と比較して高い。5)骨病変出生時から頭蓋骨の部分欠損(5%)や四肢骨の変形(3%)がみられる場合がある。また、10歳頃から脊椎の変形を来すことがある(10%程度)。6)NF1モザイク(部分的なNF1)上記の症状が体表の一部に限局してみられる例があり、モザイクと呼ばれる(頻度は全体の10%程度)。体細胞突然変異によるものと考えられている。図1 カフェ・オ・レ斑の皮膚所見画像を拡大する図2 神経線維腫の皮膚所見画像を拡大する■ 分類わが国では皮膚病変(D)、神経症状(N)、骨病変(B)の程度に応じて、重症度が5段階に分類されており、重症度が3以上であれば公的補助の対象となる。海外ではRiccardiによる重症度分類(4段階)が用いられている。■ 予後NF1では悪性腫瘍を合併する割合が健常人と比較して約3倍高く、平均寿命は10~15年短いとの報告がある。特に合併頻度の高い腫瘍は悪性末梢神経鞘腫瘍(100倍以上)であるが、女性では乳がんのリスクも4~5倍高くなると報告されており、注意が必要である。2 診断 (検査・鑑別診断を含む)次世代シーケンサーを用いた変異の検出率は90%以上である。しかしながら、わが国では遺伝子診断は保険適用外であり、検査が可能な施設もほとんどない(2020年11月から外注検査が可能になったが、各施設の専門医による遺伝カウンセリングを受けたのちに必要に応じて遺伝学的検査を行うことが望ましい)。そのため、通常は臨床的診断基準(表1)を用いて診断を行う。7項目中2項目以上当てはまれば、NF1と診断される。しかしながら、NF1の診断基準を満たした患者の1~2%程度はレジウス症候群の可能性がある。レジウス症候群では色素斑の合併はみられるが、腫瘍性病変を生じることはない。皮膚の神経線維腫は、多くの場合、思春期頃から出現するため、家族歴がなければ臨床症状のみで小児期に診断するのは難しい。その他、RAS/MAPK経路に関わる遺伝子の変異により発症するRasopathyと呼ばれる疾患群では、カフェ・オ・レ斑を合併する場合があり、時に鑑別を要する。小児では脳のMRI検査で70%近くにT2強調画像で高信号を呈するunidentified bright objectが認められるが、自然消退するため、治療の必要はない。まれに脳腫瘍の合併がみられるが、スクリーニングのためだけに闇雲に画像検査を繰り返すべきではない。小児では検査に鎮静(全身麻酔)が必要であるため、身体所見で何らかの異常が疑われる場合に検査を行う。3歳頃から眼科的検査で80%以上の例で虹彩小結節がみられるようになるため、診断の一助となる。各々の検査で異常がみられれば各領域の専門医と相談し、治療方針を決定する。表1 神経線維腫症1型の臨床的診断基準(日本皮膚科学会)1)6個以上のカフェ・オ・レ斑2)2個以上の神経線維腫(皮膚の神経線維腫や神経の神経線維腫など)またはびまん性神経線維腫3)腋窩あるいは鼠径部の雀卵斑様色素斑(freckling)4)視神経膠腫(optic glioma)5)2個以上の虹彩小結節(Lisch nodule)6)特徴的な骨病変の存在(脊柱・胸郭の変形, 四肢骨の変形, 頭蓋骨・顔面骨の骨欠損)7)家系内(第1度近親者)に同症上記の7項目中2項目以上で神経線維腫症1型と診断する。(吉田雄一、ほか. 日皮会誌. 2018;128:17-34.より引用・改変)3 治療現時点ではわが国において発症を予防する根治的な治療薬はないため、対症療法が行われている(表2に治療の概略を示す)。カフェ・オ・レ斑や雀卵斑様色素斑は整容的な面で問題となるが、レーザー治療の有用性は明らかではない。皮膚の神経線維腫は数が増えると整容的あるいは社会生活を行う上で支障となるため、希望に応じて外科的切除が行われる。しかしながら、びまん性(蔓状)神経線維腫は根治的な切除が難しい場合が多い。骨病変(骨欠損・骨変形)は必要に応じて外科的治療が行われる。その他、脳腫瘍、小児期の限局性学習症、注意欠如多動症などNF1に合併するさまざまな症状に対して、各領域の専門医により必要に応じて対症療法が行われる。表2 神経線維腫症1型の治療の概略1)皮膚病変色素斑(カフェ・オ・レ斑、雀卵斑様色素斑:希望に応じてレーザー治療、カバーファンデーションの使用など)神経線維腫(1)皮膚の神経線維腫:希望に応じて外科的切除(2)神経の神経線維腫:必要に応じて外科的切除(3)びまん性神経線維腫:可能であれば、増大する前に外科的切除(4)悪性末梢神経鞘腫瘍:広範囲外科的切除、放射線療法、化学療法2)中枢神経系の病変脳腫瘍:脳神経外科専門医へ紹介し、必要に応じて治療を考慮Unidentified bright object(UBO):通常治療は必要としない3)骨病変脊椎変形:変形が著しくなる前に整形外科専門医へ紹介し、必要に応じて治療を考慮四肢骨変形(先天性脛骨偽関節症):整形外科専門医へ紹介し、外科的治療頭蓋骨・顔面骨の骨欠損:脳神経外科専門医へ紹介し、外科的治療を考慮4)眼病変虹彩小結節:通常治療は必要としない視神経膠腫:小児科、眼科、脳神経外科専門医へ紹介し、必要に応じて治療を考慮(吉田雄一、ほか. 日皮会誌. 2018;128:17-34.より引用・改変)4 今後の展望2020年4月に米国で小児のびまん性(蔓状)神経線維腫に対してMEK阻害薬(セルメチニブ)が認可され、現在わが国においても臨床試験が行われている。また、皮膚の神経線維腫に対してAMED(国立研究開発法人 日本医療研究開発機構)の支援を受け、シロリムスゲル(外用薬)による医師主導治験が進行中である。これらの薬剤の安全性および有効性が確認されれば、将来的にわが国で使用される可能性がある。5 主たる診療科皮膚科、小児科、形成外科、整形外科※ 医療機関によって診療科目の区分は異なることがあります。6 参考になるサイト(公的助成情報、患者会情報など)診療、研究に関する情報日本レックリングハウゼン病学会(一般利用者向けと医療従事者向けのまとまった情報)難病情報センター 神経線維腫症I型(一般利用者向けと医療従事者向けのまとまった情報)小児慢性特定疾病情報センター レックリングハウゼン病(一般利用者向けと医療従事者向けのまとまった情報)患者会情報社会福祉法人復生あせび会(患者とその家族および支援者の会)1)吉田雄一、ほか. 日皮会誌. 2018;128:17-34.公開履歴初回2021年2月1日

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慢性期CMLの無治療寛解をめざす:first line DADI試験【Oncologyインタビュー】第28回

BCR–ABL TKIの出現で慢性期のCML(慢性骨髄性白血病)の治療成績は向上した。しかし、再発予防のため、TKIは生涯服用しなければならないと言われてきた。そのような中、慢性期CML 1次治療における第2世代TKIダサチニブの中止試験が行われ、Lancet Haematology誌で発表された。また、どのような患者がTKを中止できるのか、後ろ向き研究がMolecular Cancer Therapeutics誌で発表された。この2つの研究について佐賀大学の嬉野博志氏に聞いた。CML患者に恩恵もたらすTKI…“やめどき”が今後の研究課題―first line DADI試験を実施した背景について教えていただけますか。イマチニブをはじめとするTKIの出現で、慢性期CMLの治療成績は向上しました。一方、再発防止のためTKIは生涯服用し続けなければいけない、というのが通説でした。しかし、臨床現場では服用をやめざるを得ないケースもあります。そのような中、2010年、Lancet Oncology誌に第1世代TKIイマチニブのSTIM(Stop IMatinib)試験が発表されました。結果は、イマチニブで深い分子遺伝学的寛解(以下、DMR:deep molecular response)を2年間維持している患者では、1年後も38%がDMRを維持し続けたというものでした1)。その後も慢性期CMLにおけるTKIの中止を検討する、いわゆる「STOP試験」が行われるようになりました。2015年には、私ども佐賀大学が中心となり、イマチニブ不応・不耐用患者の2次治療にダサチニブを用いた、世界初の第2世代TKIのSTOP試験であるDADI(DAsatinib DIscontinuation) 試験を行いました。この試験ではダサチニブのDMR維持期間は1年間としました。イマチニブでは2年でしたが、抗腫瘍活性が高いことからダサチニブでは1年短縮したのです。DADI試験の結果、12ヵ月時点で48%、36ヵ月で44%の無治療寛解(以下、TFR:treatment free remission)が示されました2)。DADI試験の良好な結果を受け、ダサチニブを初回治療から用いたらイマチニブ以上に中止人数を増やせるのではないか、という仮説のもと、ダサチニブの1次治療のSTOP試験「first line DADI trial」を実施しました。ダサチニブDMRの維持期間はDADI試験と同様1年間です。first line DADI試験の概要日本の23施設による多施設単群第II相試験対象: ダサチニブの治療(24ヵ月以上)により、DMRを1年間維持している慢性期のCML症例。ECOG PS0〜2主要評価項目:上記患者におけるダサチニブ中止後6ヵ月時の分子学的無再発生存(TFR)主な結果2013年9月20日〜2016年7月12日に、ダサチニブの治療を24ヵ月以上行いDMRとなった 68例が登録され、1年間の強化治療相に割り当てられた。10例が除外され58例が評価対象となった。ダサチニブ投与中止後6ヵ月のTFRを達成した患者は55.2%(58例中32例)であった(追跡期間23.3ヵ月)。ダサチニブの投与期間中央値は40.4ヵ月であった。ダサチニブの主な有害事象は貧血(21%)。Grade3の好中球減少は4%、1%でGrade4のリンパ球減少が発現した。第2世代TKIではさらに早い薬剤離脱が可能か―この結果についてどう評価されますか。まず、薬剤中止までのDMRの維持期間を、第1世代TKIの2年から第2世代TKIダサチニブでは1年に短縮できることが示されました。また、6ヵ月のTFR達成患者の割合は55%でしたが、その後3年程度観察しても脱落した患者はいません。この服用期間で起こらなければ、そのあとの再発の可能性はかなり低いことも示唆されます。ダサチニブの3年強の服用で、薬がやめられる患者が一定数いることが明らかになったということは、以前のCMLの予後を考えると、すばらしい成果だと思います。TKI離脱はどのような患者で達成されるのか―TFRはどのような患者でもたらされるか、更なる研究も行っているそうですね。われわれの以前の研究で、キラー細胞免疫グロブリン様受容体(以下、KIR:Killer Immunoglobrin-like Receptor)およびHLA多型が慢性期CML患者のDMR達成と関係することが示唆されていました。そこでわれわれは、TKIを中止できた慢性期CML患者におけるTFRとKIRおよびHLAの多型との関係を調べるため、佐賀大学での慢性期CML患者を後ろ向きに解析しました。―結果はどのようなものでしたか。佐賀大学を受診した慢性期CML患者76例が登録されました。76例のうち33例がTKIを中止でき、そのうち1年後にTFRを達成した患者は21例(63.6%)でした。多変量解析の結果、男性(HR:0.157、p=0.003)、HLA-02:01、11:01、24:02(HR:6.386、p=0.006)がTFRと関係していることが明らかになりました。DMR達成症例ではNK細胞の高い活性が示されたものの、TFRの達成とKIRの相関はないため、NK細胞の関連は認められませんでした。一方、日本人に頻度の高いHLA多型が相関することから、TFRの達成にはT細胞免疫の関連が示唆されました。これらの結果から、NK細胞はDMRの達成に関与し、T細胞免疫はTFRの達成に関与することも推測することも可能ですが、今後、より大規模な研究が必要だと思います。発表論文Kimura S, el.al. Treatment-free remission after first-line dasatinib discontinuation in patients with chronic myeloid leukemia (first-line DADI trial): a single-arm, multicenter, phase 2 trial. Lancet Haematol. 2020 Mar 7.[Epub ahead of print]Ureshino H,et al. HLA Polymorphisms Are Associated with Treatment-Free Remission Following Discontinuation of Tyrosine Kinase Inhibitors in Chronic Myeloid Leukemia. Mol Cancer Ther. 2021;20;142-149.出典1)Mahon FX, et al. Lancet Oncol. 2010 Nov 11.2)Imagawa J, et al. Lancet Haematol. 2015 Dec 2.

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うつ病増強療法の中止が治療転帰にもたらす影響~メタ解析

 慶應義塾大学のHideo Kato氏らは、うつ病の治療において増強療法のために追加した薬剤を継続すべきか、また継続する場合の期間について明らかにするため、メタ解析を実施した。Pharmacopsychiatry誌オンライン版2020年12月23日号の報告。 うつ病患者を対象に増強療法で追加した薬剤を中止した場合の影響を調査した二重盲検ランダム化比較試験を特定し、メタ解析を実施した。すべての原因による試験中止率、再発率、増強療法継続群と中止群における有害事象を比較した。 主な結果は以下のとおり。・7件の研究(継続群:841例、中止群:831例)をメタ解析に含めた。・すべての原因による試験中止率は、両群間で有意な差が認められなかった(リスク比[RR]:0.86、95%CI:0.69~1.08、p=0.20)。・再発による試験中止率は、中止群よりも継続群のほうが低かった(RR:0.61、95%CI:0.40~0.92、p=0.02)。しかし、この有意差は、esketamineを用いた研究1件を除外すると消失した。・ランダム化前の安定化期間を含む5つの研究データの分析では、中止群よりも継続群において再発率が低かった(RR:0.47、95%CI:0.36~0.60、p<0.01)。 著者らは「研究数が少なく、確固たる結論には至らない」としながらも「うつ病に対する増強療法で使用されたesketamine以外の薬剤は、中止される可能性が高いことが示唆された。しかし、増強療法で維持されている寛解患者では、当てはまらない可能性がある」としている。

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乳がん関連遺伝子バリアントのリスクを評価/NEJM

 乳がんの遺伝性の病原性バリアントを有する女性のリスク評価と管理では、がん素因遺伝子の生殖細胞系列の病原性バリアントと関連する、集団ベースの乳がんリスクの推定がきわめて重要とされる。米国・メイヨークリニックのChunling Hu氏らCARRIERS(Cancer Risk Estimates Related to Susceptibility)コンソーシアムは、同国の一般集団において、既知の乳がん素因遺伝子の病原性バリアントと関連する乳がんの有病率とリスクの評価を行った。その結果、BRCA1とBRCA2の病原性バリアントは乳がんリスクが最も高いことを示した。NEJM誌オンライン版2021年1月20日号掲載の報告。米国の集団ベースの症例対照研究 同コンソーシアムは、乳がん女性3万2,247例(乳がん診断時平均年齢62.1歳、乳がん家族歴あり20.4%)と、マッチさせた非乳がん女性(対照)3万2,544例(試験登録時平均年齢61.2歳、乳がん家族歴あり14.3%)を対象に、集団ベースの症例対照研究を行った(米国国立衛生研究所[NIH]と乳がん研究財団[BCRF]の助成による)。 多遺伝子アンプリコンベースのカスタムパネルを用いてシークエンスを行い、28のがん素因遺伝子の生殖細胞系列の病原性バリアントを同定した。次いで、個々の遺伝子の病原性バリアントと乳がんリスクの関連を評価した。BRCA1と2バリアントの生涯乳がんリスクは約50% 12の確立された乳がん素因遺伝子の病原性バリアントが、乳がん群の5.03%(1,621例)および対照群の1.63%(531例)で検出された。 BRCA1とBRCA2の病原性バリアントは乳がんリスクが最も高く、BRCA1のオッズ比(OR)は7.62(95%信頼区間[CI]:5.33~11.27、p<0.001)、BRCA2のORは5.23(4.09~6.77、p<0.001)だった。また、PALB2の病原性バリアントの乳がんリスクは中等度(OR:3.83、2.68~5.63)であった。 BRCA1、BRCA2、およびPALB2の病原性バリアントはいずれも、エストロゲン受容体陽性乳がん(OR[95%CI]:BRCA1 3.39[2.17~5.45]、BRCA2 4.66[3.52~6.23]、PALB2 3.13[2.02~4.96])、同陰性乳がん(26.33[17.28~41.52]、8.89[6.36~12.47]、9.22[5.63~15.25])、およびトリプルネガティブ乳がん(42.88[26.56~71.25]、9.70[5.97~15.47]、13.03[7.08~23.75])のリスクが高かった。 一方、BARD1(OR[95%CI]:2.52[1.18~5.00])、RAD51C(2.19[0.97~4.49])、およびRAD51D(3.93[1.40~10.29])の病原性バリアントはエストロゲン受容体陰性乳がんのリスクが高く、BARD1(3.18[1.16~7.42])はトリプルネガティブ乳がんのリスクも高かったのに対し、ATM(1.96[1.52~2.53])、CDH1(3.37[1.24~10.72])、およびCHEK2(2.60[2.05~3.31])はエストロゲン受容体陽性乳がんのリスクが増大していた。 ミスマッチ修復遺伝子(MLH1、MSH2、MSH6)やNBNを含む16の乳がん素因遺伝子候補は、いずれも乳がんリスクの増加とは関連がなかった。また、BRCA1とBRCA2の病原性バリアントの生涯乳がんリスクは約50%で、PALB2は約32%だった。 著者は、「これらの知見は、一般集団におけるがん素因遺伝子の病原性バリアントを有する女性において、がんのスクリーニングやリスク管理戦略に有益な情報をもたらすと考えられる」としている。

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オンライン血圧管理で、良好な収縮期血圧コントロール/BMJ

 コントロール不良の高血圧患者において、デジタル技術を用いた介入による「家庭オンライン血圧管理・評価(Home and Online Management and Evaluation of Blood Pressure:HOME BP)」は通常治療と比較して、1年後の収縮期血圧のコントロールが良好で、費用の増分も低いことが、英国・オックスフォード大学のRichard J. McManus氏らが実施した「HOME BP試験」で明らかとなった。研究の成果は、BMJ誌2021年1月19日号に掲載された。これまでの自己モニタリングと自己管理の試験では、血圧低下に関する有効性が示されているが、効果を得るには比較的高価な技術や時間がかかる一連の訓練を必要とすることが多い。また、デジタル介入の短期試験では、血圧コントロールの改善の可能性が示唆されているが、広く実施するための十分なエビデンスは得られていないという。プライマリケアでの無作為化対照比較試験 研究グループは、血圧の自己モニタリングと生活様式の自己管理を統合した高血圧管理のためのデジタル介入の、プライマリケアにおける有用性を評価する目的で、非盲検無作為化対照比較試験を行った(英国国立健康研究所[NIHR]の助成による)。 この試験には英国の76の総合診療施設が参加した。対象は、治療を行っても血圧コントロールが不良(>140/90mmHg)で、インターネットが使用可能な環境にある患者622例であった。 被験者は、HOME BPによる血圧自己モニタリングとデジタル介入を受ける群(介入群、305例)または通常治療(ルーチンの高血圧治療、受診の予約、総合診療医の裁量による薬剤の変更)を受ける群(317例)に無作為に割り付けられた。 デジタル介入では、患者と医療従事者に血圧測定の結果がフィードバックされ、生活様式への助言や動機付けを高めるための支援を受ける選択が可能であった。高血圧、糖尿病、80歳以上の人々の目標血圧は英国の国のガイドラインに準拠した。 主要アウトカムは、ベースラインの血圧、目標血圧、年齢、診療内容で補正した1年後の収縮期血圧(2回目と3回目の測定値の平均値)の差とされた。欠測値は多重代入法で補完された。用量・薬剤の変更が多く、1mmHg低下の増分費用は11ポンド ベースラインの平均年齢は、介入群が65.2(SD 10.3)歳、通常治療群は66.7(10.2)歳で、女性はそれぞれ47.5%および45.0%であった。1年後に552例(88.6%)のデータが得られ、残りの70例(11.4%)のデータは補完された。 平均血圧は、介入群がベースラインの151.7/86.4mmHgから1年後には138.4/80.2mmHgへ、通常治療群は151.6/85.3mmHgから141.8/79.8mmHgへと低下した。収縮期血圧の両群間の平均差は-3.4mmHg(95%信頼区間[CI]:-6.1~-0.8)、拡張期血圧の平均差は-0.5mmHg(-1.9~0.9)であった。また、完全ケース分析では同様の結果が得られた(収縮期血圧の平均差:-3.5mmHg[95%CI:-6.2~-0.9]、拡張期血圧の平均差:-0.5mmHg[-1.8~0.9])。 頻度の高い有害事象として、関節のこわばり(介入群56.8%、通常治療群55.6%)、疼痛(47.5%、46.8%)、睡眠困難(45.7%、51.2%)、疲労(46.3%、43.3%)、咳嗽(34.6%、37.5%)などが認められたが、両群間に有意差があるものはなかった。また、高血圧に特異的な症状(下肢/くるぶしの腫脹、ほてり感、胃のむかつき、めまい、インポテンス)の頻度にも両群間に差はなかった。 介入群は通常治療群に比べ、試験期間中に降圧薬の投与を受ける患者の割合が高かった。また、用量の変更(相対的リスク:2.0、95%CI:1.5~2.7)および薬剤の変更(1.5、1.1~1.9)の割合が高かった。 試験期間中のQOL(EuroQoL5D-5L)には両群間に差はみられなかった。また、介入群の1例の増分費用は38ポンド(95%CI:27~47)であり、収縮期血圧の1mmHg低下当たりの増分費用は11ポンド(95%CI:6~29)(15ドル、12ユーロ)だった。 著者は、「HOME BPをプライマリケアで実施するには、臨床ワークフローへの統合と、デジタル技術を使用しない人々への配慮が求められる」としている。

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SGLT2阻害薬とGLP-1作動薬の有効性と有害事象をレビュー(解説:桑島巖氏)-1349

 最近の2型糖尿病治療薬の進歩は目覚ましい。DPP-4阻害薬登場によってHbA1cのコントロールは容易になったが、大規模臨床試験では心血管イベント抑制効果は見いだせなかった。しかし、その後登場したSGLT2阻害薬とGLP-1作動薬については、血糖値低下のみならず、心血管イベント、腎障害進展や死亡を抑制するという臨床試験の成績が相次いで発表されている。そして両薬剤は、いまや単に糖尿病治療薬の域を越え、心・腎・脳血管障害予防薬としての地位を確保しつつある。 本論文は、SGLT2阻害薬とGLP-1作動薬に関して、プラセボや従来治療、その他の血糖降下薬とを比較した764トライアル、約42万人についてのsystematic reviewとメタ解析のレビューである。その結論としては、SGLT2阻害薬は心不全による入院と死亡の回避という点でGLP-1作動薬よりも優れており、一方、非致死的脳卒中予防においてはGLP-1作動薬のほうが優れていたというものである。また有害事象に関しては、SGLT2阻害薬は、高率に生殖器感染を惹起する一方、GLP-1作動薬は重症な消化管イベントを惹起したという。 SGLT2阻害薬、GLP-1作動薬に関しては信頼性の高いプラセボ対照無作為ランダム化試験の成績がいくつか発表されており、上記の両薬剤の心血管イベント抑制効果に関する有効性はすでに明らかになっている。 それらは、SGLT2阻害薬の心血管アウトカム試験としては、エンパグリフロジン(商品名:ジャディアンス)のEMPA-REG OUTCOME研究、カナグリフロジン(同:カナグル)のCANVAS研究、ダパグリフロジン(同:フォシーガ)のDECLARE-TIMI 58研究、ertugliflozin(本邦未発売)のVERTIS CV研究、sotagliflozin(同)のSOLOIST-WHF研究が発表されている。またGLP-1作動薬の心血管アウトカム試験としては、リラグルチドのLEADER研究、リキシセナチドのELIXA研究、デュラグルチドのREWIND研究、セマグルチドのSUSTAIN-6研究などである。 これらのランダム化試験の結果から、SGLT2阻害薬は高リスク症例で、非致死的心筋梗塞、非致死的脳卒中は抑制しないものの、心不全の入院と死亡を減少させることがクラスエフェクトとして明らかになっている。これはSGLT2阻害薬の利尿作用とそれに伴う血圧低下、心負荷の軽減が心不全の抑制につながっている。 一方、GLP-1作動薬は心不全による入院や死亡の抑制効果は認められないが、死亡、非致死的心筋梗塞、非致死的脳卒中の複合エンドポイントは有意に抑制するという結果が発表されている。しかし、その機序については不明である。 しかしながら、本論文の膨大な数の比較試験を収集したメタ解析は、その異質性、多様性ゆえに、おおよその両薬剤の有効性、有害性をまとめるうえでは有用であっても、エビデンスレベルはランダム化試験のほうが上である。 しかし両薬剤が単に血糖値を下げるだけの薬剤ではなく、心血管保護薬として心血管疾患を有している症例の2次予防治療薬として有望であることを、あらためて示した点では意味がある。

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COVID-19によるうつ症状や孤独感と社会的および性的つながりとの関係

 米国・インディアナ大学のMolly Rosenberg氏らは、COVID-19によるうつ症状や孤独感の有症率を推定し、社会的および性的つながりの頻度との関係について調査を行った。Social Psychiatry and Psychiatric Epidemiology誌オンライン版2021年1月2日号の報告。 18~94歳の米国成人の代表的なサンプル1,010例を対象に2020年4月10日~20日にオンライン横断調査を実施した。うつ症状(CES-D-10スケール)、孤独感(UCLA3項目孤独感尺度)、対面およびリモートでの社会的つながりの頻度(家族とのハグ、ビデオチャットなど4項目)、性的関係の頻度(パートナーとの性的関係、マッチングアプリの使用など4項目)について調査した。 主な結果は以下のとおり。・対象者の3分の1にうつ症状が認められ(32%)、孤独感が高かった(平均:4.4±1.7)。・うつ症状を有する人は、女性、20~29歳、未婚、低所得である可能性が高かった。・非常に頻繁な対面によるつながりは、うつ症状や孤独感の低下と関連が認められたが、頻繁なリモートによるつながりでは、この関連は認められなかった。 著者らは「米国におけるCOVID-19パンデミックの初期において、うつ症状や孤独感の上昇が認められた。リモートではなく、対面による社会的および性的つながりを維持した人では、メンタルヘルスのより良い結果が得られた。COVID-19に対する社会的な制限は依然として必要であるが、高リスクの人のためのメンタルヘルスサービスの拡充、リモートによる社会的および性的なつながりを維持する効果的な方法の特定が重要となる」としている。

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超急性期脳梗塞の血管内治療、rt-PA併用に対して非劣性を認めず/JAMA

 急性脳主幹動脈閉塞に対する機械的血栓回収単独療法は、機械的血栓回収+静脈内血栓溶解併用療法と比較し、良好な機能的アウトカムに関して非劣性は示されなかった。日本医科大学の鈴木 健太郎氏らが、医師主導型多施設共同無作為化非盲検非劣性試験「Randomized study of endovascular therapy with versus without intravenous tissue plasminogen activator in acute stroke with ICA and M1 occlusion(SKIP study)」の結果を報告した。急性脳主幹動脈閉塞患者において、機械的血栓回収療法に静脈内血栓溶解の併用が必要かどうかは不明であった。JAMA誌2021年1月19日号掲載の報告。超急性期脳梗塞患者約200例で有効性を比較 研究グループは2017年1月1日~2019年7月31日に、全国23施設で脳主幹動脈閉塞による急性期脳梗塞患者204例を登録し、機械的血栓回収療法単独群(101例)(MT単独群)と機械的血栓回収+静脈内血栓溶解併用療法(アルテプラーゼ0.6mg/kg)併用群(103例)(MT+rt-PA併用群)に無作為に割り付け、2019年10月31日まで追跡調査した。 有効性の主要評価項目は、発症90日時点の修正Rankinスケール(mRS)スコア0~2で定義した良好な機能的アウトカムとした。非劣性マージンはオッズ比(OR)0.74、有意性水準は片側0.025(97.5%信頼区間[CI])とした。 事前に設定した副次評価項目は、発症90日までの死亡などを含む7項目、安全性評価項目は発症36時間以内の頭蓋内出血など4項目であった。90日時点の良好な機能的アウトカムに両群で有意差なし 204例(年齢中央値74歳、男性62.7%、米国国立衛生研究所脳卒中スケール[NIHSS]中央値18)が登録され、全患者が試験を完遂した。 主要評価項目を達成した患者の割合はMT単独群59.4%(60例)、MT+rt-PA併用群57.3%(59例)であり、両群間に有意差は認められなかった(群間差:2.1%[片側97.5%CI:-11.4~∞]、OR:1.09[片側97.5%CI:0.63~∞]、非劣性のp=0.18)。 有効性の副次評価項目7項目および安全性評価項目4項目のうち、90日死亡(7.9% vs.8.7%、群間差:-0.8%[片側95%CI:-9.5~7.8]、OR:0.90[95%CI:0.33~2.43]、p>0.99)を含む10項目で、有意差は確認されなかった。 なお、全頭蓋内出血の発生についてのみ、MT単独群がMT+rt-PA併用群と比較して有意に少ないことが確認された(33.7% vs.50.5%、群間差:-16.8%[95%CI:-32.1~-1.6]、OR:0.50[95%CI:0.28~0.88]、p=0.02)。症候性頭蓋内出血は、両群で差はなかった(5.9% vs.7.7%、群間差:-1.8%[95%CI:-9.7~6.1]、OR:0.75[95%CI:0.25~2.24]、p=0.78)。

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乳がんリスクが高い9遺伝子を推定/NEJM

 英国・ケンブリッジ大学のLeila Dorling氏らBreast Cancer Association Consortium(BCAC)の研究チームは、乳がんリスクのゲノム関連解析の結果、乳がんリスクを予測する遺伝子パネルに組み込む臨床的に最も役立つ遺伝子を特定し、遺伝カウンセリングを導入するためのタンパク質切断型変異による乳がんリスクを推定した。乳がん感受性遺伝子検査は広く用いられるようになったが、多くの遺伝子は乳がんとの関連性に関するエビデンスが弱く、リスク推定値は不正確で、信頼できる亜型特異的リスクのデータも不足していた。NEJM誌オンライン版2021年1月20日号掲載の報告。11万3,000例以上を対象に、34の乳がん感受性遺伝子を解析 研究グループは、BCACの研究に参加している乳がん患者6万466例、および対照者5万3,461例の検体を対象に、感受性遺伝子と考えられている34の遺伝子パネルを用いDNAシークエンシングを実施した。 遺伝子変異は、タンパク質切断型変異とまれなミスセンス変異についてそれぞれ解析し、すべての乳がんおよびサブタイプ別のオッズ比を推定するとともに、ミスセンス変異の関連性を評価した。遺伝子間のリスクの差が明らかに 5つの遺伝子(ATM、BRCA1、BRCA2、CHEK2、PALB2)のタンパク質切断型変異は、乳がん全体のリスクと関連していた(p<0.0001)。4つの遺伝子(BARD1、RAD51C、RAD51D、TP53)のタンパク質切断型変異も乳がん全体のリスクと関連していた(p<0.05およびベイズ偽陽性確率<0.05)。残り25遺伝子のうち19のタンパク質切断型変異は、乳がん全体のオッズ比の95%信頼区間上限値が2.0未満であった。 ATMおよびCHEK2のタンパク質切断型変異では、エストロゲン受容体(ER)陰性乳がんと比較して、ER陽性乳がんの発症リスクが高かった。BARD1、BRCA1、BRCA2、PALB2、RAD51C、RAD51Dのタンパク質切断型変異では、ER陽性乳がんと比較してER陰性乳がんの発症リスクが高かった。 ATM、CHEK2、TP53のまれなミスセンス変異は、乳がん全体のリスクと関連していた(p<0.001未満)。BRCA1、BRCA2、TP53については、標準的な基準に従い病的変異に分類される可能性があるミスセンス変異が、乳がん全体のリスクと関連しており、そのリスクはタンパク質切断型変異と同程度であった。

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ラリキンが……死んだ【Dr. 中島の 新・徒然草】(359)

三百五十九の段 ラリキンが……死んだ年が明けてから雪になったり雨になったり。パッとしない天気が続きます。さて、米国大統領就任式が無事に終わったと思ったら、突然のニュースが飛び込んできました。あのラリキン・ライブのラリー・キング氏が87歳で亡くなった(Larry King, legendary talk show host, dies at 87)というのです。ついに1つの時代が終わってしまいました。サスペンダーでズボンを吊り、シャツを腕まくり。画面からはみ出さんばかりの顔でまくしたてる黒ブチ眼鏡のオッサン。並みいる有名人ゲストを圧倒するオーラ。私にとってラリー・キング氏は、アメリカのテレビの象徴でした。ちくしょう、死ぬなよ、ラリキン!彼を知らない読者のために、ラリキンの生涯を振り返ってみましょう。彼は、1933年にニューヨークのブルックリンで移民2世として生まれました。フロリダのローカルラジオ局で雑用係として働いていたのですが、ある日、司会に穴が空いたため、急遽代役を務めることになったのです。その時の彼の本名は、東欧だかロシアだかの発音もスペルも難しいものだったので、上司に言われて出演直前にラリー・キングという名前を付けたそうです。幸運にもその2日後には、地元のレストランにやってきた有名人にインタビューするチャンスがありました。以来、彼の司会するラジオ番組やテレビ番組は大当たりし、1985年からはCNNで「ラリー・キング・ライブ」が始まります。CNNの台頭と共にラリー・キングも売れ、視聴者は毎晩のように彼の顔を見ることになりました。1990年代にアメリカに住んでいた私にとっても、CNNといえばラリキン・ライブでした。なんといってもラリキンを特徴付けるのは、色とりどりのサスペンダーです。滅多にジャケットを着ることはありません。彼のインタビューは対決を避けているとか、ゲストが答えやすい質問しかしないとか、散々な言われようでした。でも、むしろラリキンは言い過ぎじゃないのか、と私は思っていました。ズバズバ質問しながら、全く嫌味を感じさせなかったのが彼の上手いところなのでしょう。相手を攻撃しようとかやり込めようとか、そんな印象は全くなし。視聴者のニーズを察知してゲストにストレートに質問する、そういうスタイルでした。時にはゲスト同士の議論が沸騰し、さすがのラリキンも閉口したこともあります。CMが入った後で、「『クロスファイア』へようこそ。おっと間違えた!『ラリキン・ライブ』だった」そう言ってとりなしたところが笑えました。ちなみに「クロスファイア」は、ゲスト同士が収拾つかないくらい大論争をするので有名なCNNの別の番組です。今回の訃報で初めて知ったのですが、生涯7人の奥さんと8回結婚していたそうです。私生活のエネルギーも尋常なものではありませんでした。5人いた子供のうち、2人は父親よりも早く、いずれも病気で亡くなったのだとか。ラリー・キング自身も1980年代に心疾患で手術を受けたことから、財団をつくって心臓病になった人のために貢献していました。単に自己主張が強いだけのオッサンではなかったわけですね。不世出のインタビュアー、ラリー・キング氏の御冥福をお祈りいたします。最後に1句冬の空 天に召された サスペンダー

4753.

早期乳がん、“切らない治療”の実現を目指す:AMATERAS-BC試験【Oncologyインタビュー】第27回

出演:群馬県立がんセンター 乳腺科 藤澤 知巳氏  :呉医療センター 乳腺外科 重松 英朗氏術前補助療法で完全奏効となったcT1~2N0M0のHER2陽性乳がんに対する非切除治療を評価するJCOG1806/AMATERAS-BC試験が始まる。研究代表者の群馬県立がんセンター 藤澤知巳氏と研究事務局の呉医療センター 重松英朗氏に研究実施の背景と目標について聞いた。

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日本人双極性障害患者とうつ病患者の認知機能の比較

 国立精神・神経医療研究センターの松尾 淳子氏らは、双極性障害(BD)患者における病期別の認知機能を調査し、うつ病患者や健康対照者の認知機能との比較を行った。Psychiatry and Clinical Neurosciences誌オンライン版2020年12月27日号の報告。 BD患者139例(寛解期:55例、非寛解期:84例)、うつ病患者311例(寛解期:88例、非寛解期:223例)、健康対照者386例を対象に、ウェクスラー成人知能検査(Wechsler Adult Intelligence Scale-RevisedまたはWAIS-III)を実施した。対象は、日本人の非高齢者で通常推定病前知能指数(IQ)が90超であり、年齢、性別、病前IQは、グループ間で一致していた。 主な結果は以下のとおり。・非寛解期BD患者は、健康対照者と比較し、言語IQ、パフォーマンスIQ、フルスケールIQ、知覚の体制化、ワーキングメモリ、処理速度のスコアが有意に低かった(すべて、p<0.001)。・同様に、非寛解期うつ病患者と比較し、言語IQ、パフォーマンスIQ、フルスケールIQ、ワーキングメモリのスコアが有意に低かった。・非寛解期うつ病患者は、健康対照者と比較し、パフォーマンスIQ(p<0.001)、フルスケールIQ、処理速度(p<0.001)のスコアが有意に低かった。・寛解期BD患者は、健康対照者と比較し、パフォーマンスIQのスコアが有意に低かった(p=0.004)。・寛解期うつ病患者は、健康対照者と比較し、処理速度のスコアが有意に低かった(p=0.030)。 著者らは「うつ病患者では、処理速度のみが明らかな問題であると思われる点と比較し、BD患者では、非寛解状態で全体的かつより重度の認知機能障害が出現している。双極性障害、うつ病患者ともに、寛解期であっても認知機能低下が認められるようである」としている。

4755.

1型DM患者へのインスリンポンプ、従来型vs.次世代型/Lancet

 血糖管理がチャレンジングである1型糖尿病の青年および若年成人患者において、既存のMedtronic製のMiniMed 670Gハイブリッド型クローズドループ・システム(HCL)と比べて、その進化版である開発中のアドバンスハイブリッド型クローズドループ・システム(AHCL)は、低血糖症を増やすことなく高血糖症を抑制することが示された。米国・HealthPartners InstituteのRichard M. Bergenstal氏らが、4ヵ国7医療機関を通じて行った無作為化クロスオーバー試験「Fuzzy Logic Automated Insulin Regulation:FLAIR試験」の結果を発表した。著者は、「今回示されたAHCLの効果を確認するためにも、社会経済的要因で十分サービスを受けられない集団や、妊娠中および低血糖症に対する認識が低い患者における長期試験の実施が必要と思われる」と述べている。Lancet誌2021年1月16日号掲載の報告。 14~29歳の1型DM患者113例を対象に試験 FLAIR試験は2019年6月3日~8月22日に、米国、ドイツ、イスラエル、スロベニアの7つの内分泌系治療施設を通じて、診断後1年以上の14~29歳の1型糖尿病患者113例を対象に行われた。被験者は、インスリンポンプまたは頻回インスリン注射法を行っており、HbA1c値は7.0~11.0%(53~97mmol/mol)だった。 試験ポンプの使用法習得のためのrun-in期間の後、被験者は無作為に2群に割り付けられ、一方は既存のHCLを、もう一方は開発中のAHCLを、それぞれ12週間使用し、その後クロスオーバーを受け(washoutなし)もう一方のインスリンポンプを12週間使用した。AHCLは、HCLと比べて、人工膵臓アルゴリズムの機能が強化され、5分ごとに自動修正ボーラスが配信されるなど新たな技術が施されている。 主要評価項目は2つで、日中(6時00分~23時59分)の血糖値180mg/dL超の時間の割合(優越性を評価)と、24時間の血糖値54mg/dL未満の時間の割合で(非劣性を評価、マージン2%)とした。解析は、intention to treat法にて実施。安全性は、治療割り付け全対象者について評価した。日中血糖値180mg/dL超の割合、従来型37%に対し次世代型は34% 被験者113例は、平均年齢19歳(SD 4)、女性70例(62%)だった。 日中血糖値180mg/dL超(>10.0mmol/L)の平均時間割合は、ベースライン42%(SD 13)、HCL使用期間37%(9)、AHCL使用期間34%(9)だった(AHCL-HCLの平均群間差:-3.00%、95%信頼区間[CI]:-3.97~-2.04、優越性のp<0.0001)。 24時間の血糖値54mg/dL未満の割合は、ベースライン0.46%(SD 0.42)、HCL使用期間0.50(0.35)、AHCL試用期間0.46%(0.33)だった(AHCL-HCLの平均群間差:-0.06%、95%CI:-0.11~-0.02、非劣性のp<0.0001)。 AHCLで重症低血糖症1例が発生したが、試験治療とは無関係と判断された。HCLでは発生は報告されなかった。

4756.

elective PCIの抗血小板療法としてクロピドグレルとチカグレロルに差はない?(解説:上田恭敬氏)-1346

 安定冠動脈疾患患者のelective PCIにおいて、周術期の虚血性合併症を減少させるために、クロピドグレルよりもチカグレロルのほうが優れているか否かを検討するための無作為化比較試験であるALPHEUS試験が、フランスとチェコの49病院が参加して実施された。 対象患者はクロピドグレル群(ローディング量300~600mg、維持量75mg/日)とチカグレロル群(ローディング量180mg、維持量180mg/日)に無作為に割り付けられ、48時間以内(または退院まで)のPCI-related type 4の心筋梗塞・傷害を主要評価項目とし、同じく48時間以内(または退院まで)の出血性イベント(major bleeding)を主要安全性評価項目としている。 クロピドグレル群954症例とチカグレロル群956症例が登録され、主要評価項目も主要安全性評価項目も群間に有意差がないことが示された。ただし、30日間のminor bleedingはチカグレロル群で有意に多かった(11%対8%、p=0.007)。この結果から、著者らはelective PCIにおける標準的な抗血小板療法としてクロピドグレルを使用することが支持されたと結論している。さらに、メタ解析の結果から、elective PCIにおいて、クロピドグレルより強力なP2Y12阻害薬であるチカグレロルやプラスグレルを使用することに有用性はないと議論している。 この結果自体に異議はないが、その解釈には日本人としてかなり違和感を感じる。まず、本試験はPCI周術期の心筋梗塞・傷害によって評価しているが、退院後の抗血小板療法の効果や、単剤に変更する際にP2Y12阻害薬を残す可能性も考慮すると、さらに長期の影響も考慮すべきで、それらを検討せずに周術期の結果だけからクロピドグレルを推奨するのは無責任な解釈に思える。次に、遺伝的にCYP2C19 loss-of-function allelesを持つ人が多い東アジアでは、クロピドグレルの効果が不十分となることの影響が想定されるが、そのことはLimitationで一言触れているだけで、その影響を無視した結論である。次に、日本のプラスグレルの量は海外の量とは異なって日本人用に選ばれた量であり、上記遺伝子多型のためにクロピドグレルの効果が不十分な人でも十分な効果が得られるようになるだけで、いずれの薬剤でも十分な効果が得られる人では同程度の抗血小板効果が得られる量となっている。すなわち、日本において、プラスグレルはクロピドグレルより強力な抗血小板療法ではない。最後に、著者らも述べているように、ローディングで投与された人は約半数のみで、効果発現が早いチカグレロルの優位性が十分評価できていない可能性がある。以上より、elective PCIであっても、本試験の結果はクロピドグレルの使用を推奨する根拠とならないと思われる。

4757.

アベマシクリブ+内分泌療法、高齢乳がん患者での有効性と安全性(MONARCH-2、-3)

 ホルモン受容体(HR)陽性HER2陰性進行乳がんに対する、アベマシクリブと内分泌療法(ET)の併用は、第III相MONARCH-2試験(フルベストラント)およびMONARCH-3試験(アナストロゾールまたはレトロゾール)で有効性が示されている。米国・メイヨー・クリニックのMatthew P Goetz氏らは、両試験の年齢別サブグループ解析を実施。高齢患者における有効性と安全性について、Breast Cancer Research and Treatment誌オンライン版2021年1月3日号で報告した。 MONARCH-2および-3試験における探索的解析が、3つの年齢グループ(<65歳、65~74歳、および≧75歳)に対して行われた。安全性については両試験からのプールデータが用いられ、有効性についてはPFSのサブグループ解析を各試験データでそれぞれ実施した。 主な結果は以下のとおり。・プールされた安全性データは、1,152例について利用可能であった。・臨床的に関連する下痢(Grade2/3)は、アベマシクリブ+ET群で多く発生し、65歳以上の2つのグループでより多くみられた(<65歳:39.5%、65~74歳:45.2%、≧75歳:55.4%)。プラセボ+ET群では、<65歳:6.8%、65~74歳:4.5%、≧75歳:16.0%。・VTE発生率(全Grade)は、アベマシクリブ+ET群では<65歳(4.1%)および65~74歳(5.0%)となり、≧75歳(13.3%)でより高い傾向がみられた。プラセボ群では<65歳:0.5%、65~74歳:0.9%、≧75歳:2.0%。・悪心や食欲不振は、アベマシクリブ+ET群で多く発生し、65歳以上の2グループでやや増加する傾向がみられた。・一方、好中球減少症、貧血、白血球減少症などの血液毒性(全Grade)は、プラセボ群と比較してアベマシクリブ+ ET群で多かったが、年齢グループ間で発生率に差はみられなかった。・アベマシクリブ+ ET群での用量調整(<65歳:63.1%、65~74歳:74.4%、≧75歳:75.9%)および有害事象(AE)による治療中止(<65歳:8.8%、65~74歳:14.2%、≧75歳:24.1%)は、65歳未満と比較して65歳以上でやや増加していた。・アベマシクリブ+ ET群は、患者の年齢に関係なく、プラセボ+ ET群と比較してPFSを改善し、3つの年齢グループ間で治療効果に有意差はみられなかった(MONARCH-2:相互作用のp=0.695、MONARCH- 3:相互作用のp=0.634)。推定ハザード比は、0.523~0.633(MONARCH-2)および0.480~0.635(MONARCH-3)の範囲であった。 著者らは、高齢の患者ではより高い割合の有害事象が報告されたが、それらは用量調整と併用薬で管理可能であり、すべての年齢層で一貫した有効性の利点が観察されたと結論づけている。

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2型糖尿病の寛解に低炭水化物食は有効か?/BMJ

 低炭水化物食を6ヵ月間継続した2型糖尿病患者は、有害事象なく糖尿病が改善する可能性があることを、米国・テキサスA&M大学のJoshua Z. Goldenberg氏らが、システマティックレビューおよびメタ解析により明らかにした。これまでのシステマティックレビューでは、低炭水化物食の定義が広く(総カロリーの45%未満)、糖尿病の寛解について評価されていなかった。ただし、今回の結果に関するエビデンスの質は低~中であり、著者は「何を糖尿病の寛解とするか、また、長期にわたる低炭水化物食の有効性、安全性および食生活の満足度について、さらなる議論が必要である」との見解を示している。BMJ誌2021年1月13日号掲載の報告。12週間以上の超低~低炭水化物食を評価した無作為化試験についてメタ解析 研究グループは、CENTRAL、MEDLINE、Embase、CINAHL、CAB、臨床試験レジストリ(ClinicalTrials.govなど)および灰色文献ソース(BIOSIS Citation Index、ProQuest Dissertations & Theses Globalなど)から、2020年8月25日までに発表された研究を検索し、システマティックレビューおよびメタ解析を行った。 適格研究は、成人2型糖尿病患者を対象に、12週間以上の低炭水化物食(炭水化物摂取量が1日130g未満、または2,000kcal食の26%未満)もしくは超低炭水化物食(総カロリーの10%未満)を評価した無作為化試験とした。2人の著者が独立して適格性のスクリーニングおよびデータ抽出を行った。 主要評価項目は、糖尿病の寛解(糖尿病治療薬の使用の有無にかかわらずHbA1c<6.5%または空腹時血糖値<7.0mmol/L)、体重減少、HbA1c、空腹時血糖値および有害事象、副次評価項目は健康関連QOLおよび生化学的検査データで、6ヵ月(±3ヵ月)および12ヵ月(±3ヵ月)時の報告とした。 Cochrane RoB 2.0を用いてバイアスリスクを評価し、Revman(ver.5.3)およびRのメタパッケージ(ver.3.6.1)を用いてメタ解析を行い、リスク推定値および95%信頼区間(CI)を算出し、事前に設定した最小重要差にしたがって臨床的意義を評価した。また、GRADEアプローチにより、各評価項目のエビデンスの質を評価した。6ヵ月時の寛解達成率が高く体重減少も大きいが、12ヵ月時はQOLやLDL-C悪化も 23の研究(1,357例)が適格基準を満たし解析に組み込まれた。これらは、バイアスリスクの評価において、全体で40.6%が低いと判定された。 6ヵ月時における糖尿病寛解率は、治療薬使用の有無は問わずHbA1c<6.5%と定義した場合は、低炭水化物食群(57%、76/133例)が対照食群(31%、41/131例)より高率であった(リスク差:0.32[95%信頼区間[CI]:0.17~0.47]、8研究、264例、I2=58%、p=0.02、GRADE:中)。一方、治療薬なしでHbA1c<6.5%達成を糖尿病寛解と定義した場合、低炭水化物食の相対的効果は低下した(リスク差:0.05[95%CI:-0.05~0.14]、5研究、199例、GRADE:低)。 信頼性基準を満たしたサブグループ解析の結果、インスリン使用患者を含む研究では、低炭水化物食による寛解率は著しく低下したことが示された。 なお、12ヵ月時の糖尿病寛解率を報告した研究は3つと少なく、効果が小さいとするものから、糖尿病のリスクをわずかに増大するというものまで、結果はさまざまであった。 体重減少、トリグリセライドおよびインスリン感受性に関しては、6ヵ月時は低炭水化物食による臨床的に重要で大きな改善が認められたが、12ヵ月時には効果がみられなかった。 信頼性基準を満たしたサブグループ解析で、6ヵ月時の体重減少効果は、超低炭水化物食群のほうが、より制限の少ない低炭水化物食群よりも小さかった。ただし、この効果については食事療法の順守が影響していることが示され、超低炭水化物食のアドヒアランスが高い患者は低い患者と比較し、臨床的に重要な体重減少が認められた。 低炭水化物食は、6ヵ月時におけるQOLに有意な影響は及ぼさなかったが、12ヵ月時のQOLおよびLDLコレステロール値については、臨床的に重要な悪化が認められた。そのほか有害事象または血中脂質に関して、6ヵ月時および12ヵ月時のいずれにおいても、グループ間で有意または臨床的に重要な差はみられなかった。

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超高齢者でもLDLコレステロール上昇は心筋梗塞、動脈硬化性疾患のリスクである(解説:平山篤志氏)-1347

 LDLコレステロール(LDL-C)と動脈硬化性疾患の関連は、多くの疫学研究や大規模臨床試験で明らかにされてきた。しかし、75歳までのデータが多く、75歳以上さらに80歳以上の高齢者のデータはほぼなかった。本論文のCopenhagen General Population Study(CGPS)では動脈硬化性疾患の既往のない健康人を追跡した結果、高齢になればなるほど、心筋梗塞および動脈硬化性疾患(心筋梗塞、致死的冠動脈疾患、非致死的、致死的脳梗塞)の発生頻度が増加しかつ、LDL-C値が高くなればなるほど増加している。LDL-C 1mmol/L(ほぼ38.5mg/dL)の上昇の心血管イベント発生率に及ぼす影響は高齢になるほど大きかった。これまでは、疫学調査でも高齢者のfollow-upが十分でない、期間が短いなどの限界があったが、この研究ではほぼ100%の追跡ができている点、80~100歳が3,188人(全体の3%)、70~79歳が1万591人(全体の12%)と多数例が追跡されている点で実態を正確に反映していると考えられる。この対象にmoderate-intensity statinを使用することで、LDL-C 1mmol/Lを低下することで、5年間の心筋梗塞予防のNNTが80歳以上では80、70~79歳では145と他の年齢に比較して効果があると結論付けている。これはあくまで、これまでの介入試験でのLDL-C低下効果の結果からの類推であり、1次予防効果のエビデンスではないことに留意が必要である。ただ、わが国のエゼチミブを用いた75歳以上の高齢者を対象にしたEWTOPIA75試験でもLDL-C低下によるイベント抑制効果が示されている。超高齢化社会に突入したわが国で、高齢者、とくに超高齢者はポリファーマシー、フレイルなど多くの問題を抱えている。脂質低下療法は2次予防では、論をまたないであろうが、1次予防において積極的介入をすべきかどうかは今後明らかにする必要がある。

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第44回 南アの変異株は免疫をかわし、ワクチンは絶えず手入れが必要かもしれない~実際のワクチン効果

ひとしきり新型コロナウイルス(SARS-CoV-2)感染(COVID-19)を済ませるかワクチンを接種すればあとは大丈夫というわけではなさそうなことが示されつつあります。南アフリカで見つかった変異株は備わった免疫をかわしうるSARS-CoV-2変異株のうち南アフリカで去年遅くに見つかった501Y.V2は最も懸念されています1)。501Y.V2は免疫系の主な狙い所であるスパイクタンパクに多くの変異を有し、厄介なことにそれらの変異のいくつかは抗体を効き難くします。南アフリカの生物情報学者Tulio de Oliveira氏やウイルス学者Alex Sigal氏等は、同国で501Y.V2が急に広まったことへのその免疫回避の寄与を調べるべく、感染者から単離した501Y.V2を他のSARS-CoV-2感染を経た6人の血清と相見えさせました2,3)。感染を経た人の血清にはウイルスを中和、すなわち阻止する抗体が主に備わっています。検討の結果、感染者血清の501Y.V2の中和活性はより初期の感染流行で出回ったSARS-CoV-2の中和活性に比べてだいぶ劣りました。SARS-CoV-2そのものではなくその代理ウイルス(pseudovirus)を使った別の研究でも501Y.V2変異が中和活性を妨げうることが示されています4)。代理ウイルスはSARS-CoV-2のスパイクタンパク質を使って細胞に侵入するように加工したHIVです1)。南アフリカのヨハネスブルクのウイルス学者Penny Moore氏のチームは501Y.V2の変異一揃いを持つ代理ウイルスと感染者検体(血清/血漿)をde Oliveira氏等の試験と同様に相見えさせました4)。その結果、44の感染者検体のうち約半数(48%;21/44人)は501Y.V2変異代理ウイルスを中和できませんでした。南アフリカでは501Y.V2の再感染がすでに確認されています1)。COVID-19が席巻した地域でその変異株が広まるのは先立つ感染で人々に備わった免疫を切り抜けうることを後ろ盾としていることはかなり確かになりつつあるようです1)。mRNAワクチンは定期的な手入れが必要かもしれないSARS-CoV-2のスパイクタンパク質を作るmRNAを成分とするPfizer/BioNTechやModernaのワクチン(mRNA-1273やBNT162b2)が計画通り2回接種された20人の血液を調べたところスパイクタンパク質受容体結合領域(RBD)へのIgMやIgG抗体は先立つ報告と同様に豊富で、COVID-19を経た人と同等のSARS-CoV-2細胞侵入阻止(中和)活性やRBD特異的メモリーB細胞量を備えていました5,6)。しかし、英国や南アメリカで見つかって広まるスパイクタンパク質変異・E484K、N501Y、K417N:E484K:N501Yを擁するSARS-CoV-2変異株へのワクチン接種者血漿の中和活性は劣りました。それに、ワクチン接種者に備わった最も強力なモノクローナル抗体一揃いの大部分(17のうち14)の中和活性はE484K、N501Y、K417N:E484K:N501Yで減じるか消失しました。英国ケンブリッジ大学のウイルス学者Ravindra Gupta氏が率いた別の研究でも、BNT162b2ワクチンが1回接種された後の血清は英国で見つかった変異株B.1.1.7のスパイクタンパク質変異に効き難いことが示されています7)。この研究に血清を提供した人はほとんどが高齢者で年齢の中央値は82歳でした。一方、BNT162b2を生み出したドイツのバイオテクノロジー企業BioNTechのチームの検討では変異の有意な影響はみられず、BNT162b2が2回接種された16人から採取した血清はB.1.1.7の変異スパイクタンパク質を纏った代理ウイルスを対照ウイルスとほぼ変わらず中和しました8)。血清を提供した16人のうち8人は比較的若く18~55歳、あとの8人はより高齢で56~85歳です。いずれにせよそれらはいずれも試験管研究であり、実際(real life)はどうかを調べる必要があるとGupta氏は言っています7)。変異はいまのところワクチンの予防効果に差し支えないかもしれないが、備わった抗体が減ってきたら影響があるかもしれません。また、SARS-CoV-2感染予防mRNAワクチンはインフルエンザワクチンがそうであるように効果を保つために定期的な手入れが必要かもしれません5)。[追記] その予想どおり、南アフリカで見つかった変異株(南ア変異株)を標的とする新たなCOVID-19ワクチンの開発にModerna社が早くも着手しています(プレスリリース)。すでに世界で接種され始めたmRNA-1273が南ア変異株に弱いらしいことが接種者血清と代理ウイルスを使った実験(bioRxiv. January 25, 2021)で示されたからです。実験の結果、mRNA-1273が臨床試験で2回投与された8人(18~55歳)の血清は南ア変異株の変異スパイクタンパク質を纏った代理ウイルスを中和し、その抗体活性は感染防御に必要な水準を恐らく満たしていたものの低めでした(対照ウイルス中和活性の6分の1)。その結果を受けてModerna社は南ア変異株を専門とするワクチン候補mRNA-1273.351の開発に着手しており、前臨床試験が始まります。また、Modernaの現在のワクチン接種は2回ですが、さらに多く接種したときの中和活性増強を調べる第I相試験も始まります。イスラエルでPfizerのCOVID-19ワクチン1回目接種が感染の3割を防いだCOVID-19ワクチンのこれからは別にして、世界に出回り始めた現在のワクチン普及の効果の一端がイスラエルから発表されました。イスラエルはアラブ首長国連邦と並んでワクチン接種率が世界で最も高く、両国とも人口のおよそ4分の1を占める200万人超が接種を済ませています9)。イスラエルの今回の解析ではPfizer/BioNTechのワクチンBNT162b2が接種された60歳超高齢者20万人と非接種20万人が比較されました。その結果、2回接種が必要なそのワクチンの1回目を済ませてから2週間後の検査陽性(感染)率は非接種者より33%低いことが示されました。もう何週間かすると2回目の接種を済ませた人が揃ってさらに確かな結果が判明します9)。今回のひとまずの結果を受け、BNT162b2の1回目接種後の感染阻止効果は思ったより低いようだとイスラエル最大の医療団体Clalit Health Servicesの疫学者Ran Balicer氏は言っています10)。参考1)Fast-spreading COVID variant can elude immune responses / Nature 2)Escape of SARS-CoV-2 501Y.V2 variants from neutralization by convalescent plasm.medRxiv. January 21, 20213)New Covid-19 501Y.V2 variant escapes antibodies / Africa Health Research Institute 4)SARS-CoV-2 501Y.V2 escapes neutralization by South African COVID-19 donor plasma. bioRxiv. January 19, 20215)mRNA vaccine-elicited antibodies to SARS-CoV-2 and circulating variants. bioRxiv. January 19, 2021. 6)COVID vaccines might lose potency against new viral variants / Nature 7)Impact of SARS-CoV-2 B.1.1.7 Spike variant on neutralisation potency of sera from individuals vaccinated with Pfizer vaccine BNT162b2. medRxiv. January 20, 20218)Neutralization of SARS-CoV-2 lineage B.1.1.7 pseudovirus by BNT162b2 vaccine-elicited human sera. bioRxiv. January 19, 20219)Are COVID vaccination programmes working? Scientists seek first clues / Nature10)Single Covid vaccine dose in Israel 'less effective than we thought' / Guardian

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