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優しい医療ミステリー【Dr.倉原の“俺の本棚”】第41回

【第41回】優しい医療ミステリー「天久鷹央(あめく・たかお)」シリーズで有名な知念先生の作品で、文庫本が発刊されていたので買って読んでみました。なんでもっと早く読まなかったのかと後悔するほど、面白い短編集でした。優しさ+医療+ミステリー。このドッキングですよ。前者2つの融合はよく目にしますし、後者2つの融合も目にします。しかぁし!3つは、さすがにない。そりゃあ、ある程度盛り込んだ作品はありますが、3原色がキレイに混ざった作品は見たことがありません。『祈りのカルテ』知念 実希人/著. KADOKAWA. 2021年「祈りのカルテ」は、研修医の主人公が初期研修中の5診療科で経験したミステリー短編5つで構成されています。すべての話に、必ず患者さんに関するミステリーがあります。解けそうで解けない謎に、思わずページをめくってしまうナニコレ。知念先生自身が医師ということもあって、描写があまりにもリアルで、本当にフィクションなのかと疑うレベルです。確かに、医療現場では、医師が診療を通して患者さんに隠された「謎」に行き当たることがあります。妻だと思っていた女性が妻じゃなかったとか、娘だと思っていた女性が妻だったとか(大阪では多い気がする)。とはいえ、「謎」っていうほどのことはないんですけど……。ウィリアム・オスラーの名言に「Listen to the patient. He is telling you the diagnosis.」というものがありますが、それを生まれつき持っているような主人公です。ミステリーは基本的に「怖い」というベースがあって、読後感もあまりよくないことが多いのですが、この本の5話は、すべてが優しさで溢れています。読んでよかったと思えるミステリーです。章ごとに科が変わるので、とくにローテート中の研修医は没入できると思います。患者さんの心の中を推理して、幸せへ導いていく、一冊。※ちなみに主人公の諏訪野は、別の作品『螺旋の手術室』『リアルフェイス』『ひとつむぎの手』にも登場します。『祈りのカルテ』知念 実希人 /著出版社名KADOKAWA定価本体640円+税サイズ文庫判刊行年2021年

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運動30分前のカフェインが脂肪を燃やす

 運動30分前のカフェイン摂取が最良の脂肪燃焼法かもしれない。これまでの研究で、カフェインが最大脂肪酸化率(MFO)と有酸素能力を増加させることが明らかになっているが、運動と組み合わせた効果は詳しくわかっていなかった。今回、スペイン・グラナダ大学のMauricio Ramirez-Maldonado氏らが、運動テスト中におけるMFOの日内変動に対するカフェイン摂取の影響を調査した結果、有酸素運動30分前のカフェイン摂取は、時間帯に関係なく運動中の脂肪酸化を増加させることを発見した。The Journal of the International Society of Sports Nutrition誌2021年1月7日号に掲載。 本研究は、プラセボ対照三重盲検クロスオーバー試験で、男性15例が参加した(平均年齢:32±7歳)。すべての被験者は次の条件に合致した(BMI:18.5~28、非喫煙者、運動によって悪化する持病がない、服薬していない、1日50mg未満のカフェイン消費、週3回以上の持久力トレーニングを最低2年間継続[自己報告]、カフェインアレルギーでない、前月に筋骨格系の損傷なし)。 7日間隔で4回の段階的な運動テストを実施、各テストの30分前に、無香料・無着色・無臭の粉末状無水カフェイン(グリーンコーヒー豆抽出物)またはプラセボ(純度100%の微結晶セルロース)のいずれか3mg/kgを250mLの水に溶解し、見分けがつかない状態で摂取した。調査は2019年6~11月の間で行われ、午前8~11時と午後5~8時に、サイクルエルゴメーターを用いた段階的なテストを一定の温度・湿度下で実施した。MFOと最大酸素摂取量(VO2max)を間接熱量測定法で測定し、MFOを誘発した運動強度(Fat max)を計算した。 主な結果は以下のとおり。・被験者のクロノタイプは均一に分布していた(適度に朝型、適度に夜型、どちらでもない各5人)。・段階的運動テスト30分前のカフェイン摂取は、時間帯に関係なく、MFO、Fat max、VO2maxを増加させた。また、すべて午前よりも午後のほうが有意に高かった(すべてp<0.05)。・プラセボと比較して、カフェインは平均MFOを午前10.7%(0.28±0.10 vs.0.31±0.09g/min、p<0.001)、午後29.0%(0.31±0.09 vs.0.40±0.10g/min、p<0.001)増加させた。・また、カフェインは平均Fat maxを午前11.1%(36.9±14.4 vs.41.0±13.1、p=0.005)、午後13.1%(42.0±11.6 vs.47.5±10.8、p=0.008)増加させた。・さらに、カフェインは平均VO2maxを午前3.9%(43.7±7.8 vs.46.7±7.0mL/kg/min、p=0.012)、午後3.2%(45.4±8.0 vs.48.2±7.0mL/kg/min、p=0.001)増加させた。 研究者らは、「カフェイン摂取と午後の適度な運動の組み合わせは、継続的な有酸素運動により脂肪燃焼量を増やしたい人にとって最良のシナリオ。なお、高用量のカフェインが全身の脂肪酸化により大きな効果を誘発し、持久力のパフォーマンスをさらに改善するかどうかはまだ調査されていない」と結論している。

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統合失調症患者の心血管リスクと認知障害との関連~メタ解析

 統合失調症では、認知機能障害とメタボリックシンドローム(MetS)などの心血管リスクとの関連が報告されている。認知機能障害や心血管リスク因子は、一般集団においても認知機能を低下させ、統合失調症の認知障害の一因となりうる。大日本住友製薬の萩 勝彦氏らは、統合失調症患者の認知機能障害と心血管リスク因子、認知障害との関連について調査を行った。JAMA Psychiatry誌オンライン版2021年3月3日号の報告。 Embase、Scopus、MEDLINE、PubMed、コクランデータベースより、2020年2月25日までに公表された研究を、キーワード(統合失調症、代謝系問題、認知機能)を使用して抽出した。会議録、臨床トライアルレジストリ、関連文献のリファレンスリストも併せて検索した。メタ解析には次の研究を含めた。(1)統合失調症または統合失調症感情障害を対象とした認知機能を調査した研究(2)MetS、糖尿病、肥満、過体重、脂質異常症、インスリン抵抗性などの心血管リスク因子とアウトカムとの関連を調査した研究(3)統合失調症または統合失調症感情障害の認知能力について、心血管リスク因子の有無により比較した研究。文献ごとに2~3人の独立したレビュアーによりデータを抽出し、ランダム効果モデルを用いてメタ解析を実施した。主要アウトカムは、臨床的に検証済みの尺度を用いて測定した全体的な認知機能とした。 主な結果は以下のとおり。・抽出された27件の研究をメタ解析に含めた(統合失調症患者:1万174例)。・MetSを有する統合失調症患者では、全体的な認知機能の欠損が認められた。 【統計学的に有意な欠損】 ●MetS(13研究、2,800例、エフェクトサイズ[ES]:0.31、95%CI:0.13~0.50、p=0.001) ●糖尿病(8研究、2,976例、ES:0.32、95%CI:0.23~0.42、p<0.001) ●高血圧(5研究、1,899例、ES:0.21、95%CI:0.11~0.31、p<0.001) 【有意差はないがより重度な欠損】 ●肥満(8研究、2,779例、p=0.20) ●過体重(8研究、2,825例、p=0.41) ●インスリン抵抗性(1研究、193例、p=0.18)・特定の認知領域に対する機能低下は、認知機能障害および心血管リスク因子と関連が認められた。 【5つの領域】 ●糖尿病 ES範囲:0.23(95%CI:0.12~0.33)~0.40(95%CI:0.20~0.61) 【4つの領域】 ●MetS ES範囲:0.15(95%CI:0.03~0.28)~0.40(95%CI:0.20~0.61) ●高血圧 ES範囲:0.15(95%CI:0.04~0.26)~0.27(95%CI:0.15~0.39) 著者らは「統合失調症患者の全体的な認知機能に対するMetS、糖尿病、高血圧の有意な関連が認められた」としている。

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高齢NVAF患者、DOAC使用実態と2年間の転帰(ANAFIEレジストリ)/日本循環器学会

 本邦では、80代あるいは90代の心房細動患者も少なくないが、最適な抗凝固療法は必ずしも明らかになっていない。85歳以上の超高齢者が約25%を占める、3万例超の日本人高齢非弁膜症性心房細動(NVAF)患者の大規模レジストリ(ANAFIE)の結果を、第85回日本循環器学会学術集会(2021年3月26日~28日)で井上 博氏(富山県済生会富山病院)が発表した。高齢NVAF患者での抗凝固療法の臨床転帰、DOACをワルファリンと比較 ANAFIEレジストリは、日本人高齢NVAF患者におけるリアルワールドでの抗凝固療法の使用状況と臨床転帰を調査するために実施された、多施設共同前向き観察研究。75歳以上のNVAF患者を登録、2年間の追跡調査が行われた。 脳卒中/全身性塞栓症(SEE)、大出血、および2年間の全死因死亡の発生率は、カプランマイヤー分析によって推定された。各イベントのハザード比は、治療群(抗凝固薬なし、ワルファリン[WF]、およびDOAC)間のCox比例ハザードモデルを使用して分析された。 75歳以上のNVAF患者を2年間追跡調査したANAFIEレジストリの主な結果は以下のとおり。・2016年10月~2018年1月に33,278例のNVAF患者が登録され、32,275例が解析対象とされた。・平均年齢は81.5歳、85歳以上は26.1%(8,419例)含まれた。男性:57.3%、平均CHA2DS2-VAScスコア:4.5、平均HAS-BLEDスコア:1.9、発作性心房細動:42.1%/持続性心房細動:16.5%/長時間持続性・永続性心房細動:41.4%であった。・92.4%が経口抗凝固薬による治療を受けていた(ワルファリン:25.5%、DOAC:66.9%)。・DOACの投与状況は通常用量(appropriate:17.7%、overdose:3.2%)、減量用量(appropriate:44.2%、underdose:16.8%)。・ワルファリンの平均至適範囲内時間(TTR)は75.5%であった。・平均追跡期間1.88年における各イベントの発生率は以下のとおり: 脳卒中/SEE(全体:3.01%、85歳未満:2.69%、85歳以上:3.91%) 大出血(全体:2.00%、85歳未満:1.80%、85歳以上:2.55%) 頭蓋内出血(全体:1.40%、85歳未満:1.28%、85歳以上:1.76%) 心血管死亡(全体:2.03%、85歳未満:1.39%、85歳以上:3.85%) 全死因死亡(全体:6.95%、85歳未満:4.89%、85歳以上:12.77%) net clinical outcome(全体:10.14%、85歳未満:7.92%、85歳以上:16.44%)・転倒歴(登録前1年以内)、カテーテルアブレーション歴が、脳卒中/SEE、大出血および全死因死亡の独立したリスク因子であり、多剤併用は大出血および全死因死亡と関連していた。・ワルファリン群と比較して、DOAC群では出血性脳卒中および消化管出血を除く全てのイベントリスクが低く、抗凝固薬なし群では脳卒中/SEEおよび全死因死亡のリスクが高かった。  これらの結果を受けて井上氏は、日本人高齢NVAF患者においてDOACは広く用いられており、良好にコントロールされたワルファリン投与群と比較して、脳卒中/SEE、大出血および全死因死亡リスクが有意に低かったとして発表を締めくくった。

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化学放射線療法後の食道がん切除例、ニボルマブ術後補助療法は?/NEJM

 導入補助化学放射線療法後に食道がん/食道胃接合部がんを切除した患者において、術後補助療法としてのニボルマブはプラセボと比較して無病生存(DFS)期間を有意に延長した。米国・ベイラー医科大学医療センターのRonan J. Kelly氏らが、第III相の国際共同無作為化二重盲検プラセボ対照試験「CheckMate 577試験」の結果を報告した。食道がん/食道胃接合部がんに対し術前補助化学放射線療法および手術を行っても、再発リスクが高いままの患者に対する術後補助療法は確立されていなかった。NEJM誌2021年4月1日号掲載の報告。術後補助療法としてのニボルマブの有効性を評価 研究グループは、術前補助化学放射線療法を受け病理学的完全奏効が得られずR0切除を行ったステージII/IIIの食道がん/食道胃接合部がん患者を、ニボルマブ群(240mgを2週ごと16週間、その後480mgを4週ごと投与)またはプラセボ群に2対1の割合で無作為に割り付け、再発または忍容できない毒性が認められるまで、あるいは患者が同意を撤回するまで、最長1年間、投与を継続した。 主要評価項目はDFS期間、副次評価項目は全生存(OS)期間であった。 2016年7月~2019年8月までの期間に、29ヵ国の170施設で794例がニボルマブ群(532例)またはプラセボ群(262例)に割り付けられた。ニボルマブによりDFS期間が有意に延長 追跡調査期間中央値24.4ヵ月(クリニカルカットオフ日2020年5月12日)において、DFS期間中央値はニボルマブ群22.4ヵ月(95%信頼区間[CI]:16.6~34.0)に対し、プラセボ群11.0ヵ月(8.3~14.3)であった(ハザード比:0.69、96.4%CI:0.56~0.86、p<0.001)。事前に規定したDFS期間のサブグループ解析の結果、ニボルマブはすべてのサブグループにおいて一貫して良好な結果であった。 治験責任医師によって治験薬に関連すると判断されたGrade3/4の有害事象は、ニボルマブ群で532例中71例(13%)、プラセボ群で260例中15例(6%)に認められた。治験薬に関連する有害事象により投与中止となったのは、ニボルマブ群9%、プラセボ群3%であった。

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オシメルチニブ以降の第3世代EGFR-TKI【肺がんインタビュー】 第62回

第62回 オシメルチニブ以降の第3世代EGFR-TKI出演:Karmanos Cancer Institute Department of Oncology 長阪 美沙子氏EGFR変異陽性非小細胞肺がんにおいて、第3世代EGFR-TKIのオシメルチニブは、すでに1次治療のスタンダードであるが、実はそれ以外にも多くの第3世代EGFR-TKIが開発中である。昨年(2020年)末のJournal of Thoracic Oncology誌に同薬のレビューを発表した米国Karmanos Cancer Instituteの長阪 美沙子氏に解説いただいた。参考Nagasaka M, et al. Beyond osimertinib: The development of 3 rd-generation EGFR Tyrosine Kinase Inhibitors. J Thorac Oncol. 2020 Dec 15

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医師がマスコットとしてSNSで発信する理由 コロワくん×コム太の犬対談

日米欧で活躍する日本人医師ら10人が、新型コロナワクチンに関する一般市民の不安や疑問を解決するために結成した「コロワくんサポーターズ」。代表は山田 悠史氏(米国内科専門医)が務め、LINEボット「コロワくんの相談室」などの情報提供プロジェクトを手掛ける。今回、プロジェクトの公式マスコット「コロワくん」と、ケアネットの公式マスコット「コム太」の対談が実現。ワクチンに関する真面目な話から、SNSで犬として発信する裏話まで、2人(匹)で語り合った。コロワくん「コロワくんサポーターズ」の公式マスコット。LINEボット「コロワくんの相談室」では、寄せられた疑問に日々真面目に答えている。秘めたる思いがあり、コム太に今回の対談を申し込んだ。好物は大福餅。コム太ケアネットの公式マスコット。主にTwitterに生息しているが、本サイトではとくに推されていない。バナーでの汎用性がウリで、社内に熱狂的なファンが数人いる。好物はサーロインステーキ。※いずれも、中の人は内科医ですが、この対談ではマスコットキャラクターになりきって話をしています。「コロワくんサポーターズ」公式HP副反応は大丈夫?新型コロナワクチンの疑問に答えるLINEボット医師が主体のプロジェクトにマスコット犬がいる理由 コロワくんはじめまして、コム太さん!「コロワ」というワン。SNSで活躍している先輩として、尊敬しているワン!! 今日はよろしくワンワン!!  コム太こちらこそよろしくだわん!センパイだなんて照れるわん。コロワくんにさっそく質問なんだけど、「コロワくんサポーターズ」は医師たちのプロジェクトなのに、どうしてマスコットキャラクターがいるの? コロワくんそれはですね、一般的な注射やワクチンって、痛い、怖い、とがっている…など、どうしてもマイナスなイメージがありませんか?このプロジェクトでは、「注射やワクチンに対する不安の緩和につながるような、あたたかい存在が必要なんじゃないか」という話になったワン! コム太なるほど。それでマスコットキャラとして、コロワくんが生まれたわんね!でも、なんで犬なの? コロワくん実は、先に「コロワ」っていう名前が決まったワン。新型コロナワクチン…コロナワクチン…コロワ、みたいな。それで、「コロワ」っぽいキャラクターは犬だろうって、連想ゲーム的な発想で生まれたワン。コム太センパイは、なんで犬のアカウントになったワン? コム太コム太は実は最初から犬だったわけではなくて、3年前に中の人が変わって、「研修医や若い世代にもリーチできるように」って方針になったわんけど、アカウント自体はニンゲンで、最初は全然うまくいかなかったわん。 コロワくんどんな感じだったんですかワン? コム太キャラ作りに思いっきり迷走して、最初は「魁!!◯塾」の江◯島平八みたいなテイストにしてた時期もあったわん。「これが研修医にオススメなのである!見るべし!」みたいな。これがまぁ刺さらなくて…。そもそも世代的に合うわけがないわんけど(笑)。 コロワくん大変な時代もあったんですワンね。そこから犬アカウントに行き着いたのは? コム太キャラをつかみかねた結果、上から「昔作った犬のキャラがあるんで、今後はこれで」って、言われるがまま犬になったわん。だから、コロワくんみたいに、「不安を和らげよう」という立派な志があったわけではなく、要するに社内事情だわんね。 コロワくん「ケアネットの犬コム太」っていうアカウント名の裏事情を垣間見た気がしますワン…(笑)。 コム太幸運なことに、犬キャラがハマって、そこからフォロワー数が伸び始めたわん。まさに「自然体でのアカウント運営が一番よい」って、SNS運用ノウハウ本とかに書かれがちなとおりになったわん。とりあえず「〜わん」をつけておけば丸く収まるみたいなとこもあって助かってるわん(笑)。ところで、コロワくんの活動は順調ですかわん? コロワくんはい!! ありがたいことに、LINEボット「コロワくんの相談室」は、NHKをはじめとするテレビや朝日新聞などの全国紙、さらには米国のCNNやワシントン・ポスト、英国のBBC、ロイターなど海外のメディアでも紹介されたんですワン。 コム太すでに海外からも注目されているマスコット犬とは…!ところで、コロワくんは何犬なのかわん? コロワくん柴犬です!! 誕生当初、犬種は決まっていなかったのですが、Twitterで柴犬愛好家の方のアカウントにフォローされて(笑)、それから柴犬ということになりましたワン。CNNの記事にも「Corowa-kun is a Shiba Inu-inspired chatbot」と書かれています。参考Why Japan took so long to start Covid-19 vaccinations, even with the Olympics looming(CNN) コロワくん別の取材では、代表の山田先生に対して、「この犬はあなたをモチーフにしたの?」と聞かれたこともあります。イメージして作ったわけではないのですが、山田先生からは「毎日向かい合っているからか、だんだん似てきている気がする」って言われてちょっとうれしかったですワンワン! コム太「犬は飼い主に似る」ってことわざを体現しているわんね(笑)。ちなみにコム太の犬種は“純血種の社畜”って設定にしてるわんけど、愛好家の方にフォローしていただけるなら、今日から柴犬ってことでもいいかもしれないわん…!そういえば、先日、本の表紙でコロワくんを見つけたわん!2021年4月22日発売!! コロワくんそうなんです!! LINEボットやSNS公式アカウントには、日々たくさんの新型コロナワクチンに関する疑問が寄せられるので、その一部を一問一答形式でまとめましたワン。これをきっかけに、普段LINEを使わない人にも、正しい情報が届くといいなと思っています。LINEボットでは答えきれないことも書いているので、すでに使ってくださっている人にも役立つ内容になっていますワン!! コム太めちゃくちゃ社会貢献活動してるわん…!SNSでは、誰かを不用意に傷つけない発信が大前提 コロワくんコム太さんは、もう3年ほどTwitterをやっているそうですが、SNSでのキャラクター作りで気を付けていることはありますかワン? コム太そうだわんねぇ…。一番大事にしてるのは、言いたいことを言うために、そうではない物事を否定しないこと。安易な「二項対立」にしないようにしてるわん。その分、表現がふんわりしてシャープさに欠けることもあるわんけど、傷つく人がなるべく少ない切り口を模索してるわん。 コロワくんそれって、日常的な患者さんとの対話で気を付けていることとも通じて、なんだか染みますワンね。僕も広く受け入れてもらえるキャラを目指していますが、ワクチン反対派からは辛辣なコメントがつくこともあって…。その言葉に僕たちが傷つくだけならまだいいのですが、「ワクチンを打とう」という前向きな気持ちを持っている人たちに対しても、ネガティブに響いてしまったらどうしようと思ってしまいますワン。 コム太ワクチンもそうだけど、人はそもそも「わからないもの」に対して不安を抱きやすいわん。確かに、そうやって不安が連鎖して、ワクチンの接種率が下がってしまうと困るけど、それに対する反論がストリクト(厳格)過ぎるのもよくないと思ってて。なぜなら、不安を抱えている人に正論を掲げても、わかり合えることってほとんどないからだわん。 コロワくんそうですよね。今の活動では、理論的なことやエビデンスを機械的に投げかけるようなことはしないように心掛けていますワン。 コム太うんうん。情報の正しさはもちろんだけど、相手の不安やいろんなネガティブな感情を理解しようとすることも同じくらい大事で、それがその先の相互理解につながる第一歩だと考えているわん。だから、コロワくんの活動にはとっても共感できるわん!まるっこいフォルムもやわらかいイメージにピッタリだわん!! コロワくんありがとうございます!!あと、これもぜひ聞いておきたいのですが、これまでSNSをやっていて、苦しい局面に出合ったことはありますかワン? コム太うーん、「これ絶対おもしろいだろ!」っていう渾身のボケツイートに、まったく「いいね」がつかなかったときだわん…(笑)。 コロワくん(苦笑) コム太幸い、これまで大きな炎上経験もなく、たまにコム太のイラストを描いてくれる人もいて、フォロワーさんとのコミュニケーションは今のところうまくいってると思えているわん。ときには、「この情報古いですよ」ってご指摘を頂くこともあるわんけど、すぐに謝罪・訂正ツイートで対応して、ツイ消しはしないようにしてるわん。 コロワくん勉強になりますワン!! コム太逆に、公式アカウントで犬キャラをやっていると、個人アカウントでもつい「わん」って言っちゃって、焦ったことは何度もあるわん(笑)。 コロワくんわかります!!以前、僕も個人アカウントで「ワン」をつけてつぶやいてしまって、慌てて消したのですが、数人には見られてしまいました(汗)。 コム太あるある(笑)。それでは最後に、今後の目標を聞かせてもらってもいいかわん? コロワくんLINE友達は数万人いるのに、Twitterのフォロワーが少ないので、SNS上での活動もしっかりやっていきたいと思っていますワン。今は時期的にもワクチン関係の活動に注力していますが、今後ワクチン接種が進んで活動が一段落したら、SNS上などでデマや誤情報が拡散されてしまうところにどうアプローチするかなど、もう少し手を広げて長期的な視野で考えていきたいと思っていますワンワン。 コム太いやぁ、大きくて素晴らしいビジョンだわんね!夢があるわん。コム太の目標はねぇ、そういう大きいのじゃなくて、まず「年内にフォロワー7,000人」っていう具体的な数値目標を果たさないと、中の人がクビになってしまうわん…(涙)。 コロワくん世知辛いですワン…。 コム太でも、今日の対談がとっても楽しかったから、これからも、このアカウントをきっかけに面白い人と対談する機会があればいいなと思うわん。仲良くなった証しに、顔交換するアプリで写真撮ろうわ〜ん! コロワくんいいですね!犬同士盛り上げていきましょう!! 今日はありがとうございましたワン!参考Why Japan took so long to start Covid-19 vaccinations, even with the Olympics looming(CNN)2021年4月22日発売!!SNSでは、誰かを不用意に傷つけない発信が大前提

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AZ製ワクチン、英国型変異株に有効率70.4%/Lancet

 新型コロナワクチンChAdOx1 nCoV-19(AZD1222)について、新型コロナウイルス(SARS-CoV-2)の新たな変異株であるB.1.1.7系統への中和活性は同系統以外の変異株との比較において低いことがin vitroにおいて示されたが、変異株B.1.1.7に対する臨床的有効率は70.4%で有効であることが示された。なお、同系統以外のウイルスに対する有効性は81.5%だった。英国・オックスフォード大学のKatherine R. W. Emary氏らが同国で行った、約8,500例を対象とした第II/III相無作為化試験の事後解析の結果で、Lancet誌オンライン版2021年3月30日号で発表した。変異株B.1.1.7は2020年11月以降、英国における新型コロナウイルス感染症(COVID-19)の主因を占めるようになっていた。NAAT陽性サンプルをシークエンシング 試験は18歳以上のボランティアを登録して行われた。被験者は無作為に2群に割り付けられ、一方にはChAdOx1 nCoV-19ワクチンが、もう一方の対照群には髄膜炎菌結合型ワクチン(MenACWY)が投与され、上気道スワブ検査を毎週実施、または咳や37.8度以上の発熱といったCOVID-19症状を呈した際にも実施された。 採取したスワブについては、SARS-CoV-2に関する核酸増幅検査(NAAT)を行い、陽性サンプルは、COVID-19ゲノム英国コンソーシアムでシークエンシングを行った。生ウイルス・マイクロ中和抗体測定法によりB.1.1.7系統ウイルスに対する中和抗体反応と、標準的な非B.1.1.7系統ウイルス(Victoria)に対する中和抗体反応を測定した。 有効性の解析では、血清反応陰性でNAAT陽性者の、ワクチン2回目接種後14日以降の症候性COVID-19などが評価された。被験者が接種を受けたワクチン別の解析も実施。ワクチン有効性については、ポアソン回帰モデルを用いて算出した1-相対リスク(ChAdOx1 nCoV-19群vs.MenACWY群)で評価した。実験室でのウイルス中和活性、B.1.1.7系統は非B.1.1.7系統より低値 有効性コホートの被験者は2020年5月31日~11月13日に集められ、同年8月3日~12月30日に2回目のワクチン接種を受けていた。主要有効性コホートの被験者数は8,534例で、うち6,636例(78%)が18~55歳、5,065例(59%)が女性だった。 2020年10月1日~2021年1月14日に、520例がSARS-CoV-2感染を呈した。これら感染者から1,466個のNAAT陽性スワブが採取され、401個のスワブ(311例)について、シークエンシングに成功した。 実験室でのワクチン誘導抗体に対するウイルス中和活性は、Victoria系統よりもB.1.1.7系統は低値だった(幾何平均値の比:8.9、95%信頼区間[CI]:7.2~11.0)。 症候性NAAT陽性感染者に対する臨床的ワクチン有効性は、B.1.1.7系統で70.4%(95%CI:43.6~84.5)、非B.1.1.7系統では81.5%(67.9~89.4)だった。

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肺動脈性高血圧症へのsotatercept、24週後の肺血管抵抗性を低下/NEJM

 肺動脈性肺高血圧症(PAH)に対するsotaterceptの皮下投与は、24週後の肺血管抵抗性を低下することが示された。NT-proBNP値の低下との関連性も認められたという。フランス・パリ・サクレー大学のMarc Humbert氏らが106例を対象に行った第II相多施設共同無作為化比較試験「PULSAR試験」の結果で、NEJM誌2021年4月1日号で発表された。PAHは、肺血管のリモデリングと細胞増殖、長期転帰は不良という特徴を有し、骨形成タンパク質経路シグナル伝達の機能不全が、遺伝性および特発性の両サブタイプに関連しているとされる。新規融合タンパク質sotaterceptは、アクチビンと増殖分化因子を結合させることで、増殖促進シグナル伝達経路と増殖抑制シグナル伝達経路のバランスを回復させる狙いで開発が進められている。24週時点の肺血管抵抗性の変化量を比較 研究グループは、PAHの基礎治療を受けている成人106例を対象に、24週間にわたる試験を行い、sotaterceptの肺血管抵抗性に対する効果を検証した。 被験者を無作為に3群に分け、sotatercept 0.3mg/kg、同0.7mg/kg、プラセボをそれぞれ3週間ごとに皮下投与した。 主要エンドポイントは、ベースラインから24週時までの肺血管抵抗性の変化量だった。24週後の肺血管抵抗性変化量、sotatercept 0.7mg群で有意に低下 被験者のベースライン特性は、3群で類似していた。 ベースラインから24週時までの、肺血管抵抗性の変化量の最小二乗平均群間差は、sotatercept 0.3mg群とプラセボ群では-145.8dyne・sec・cm-5(95%信頼区間[CI]:-241.0~-50.6、p=0.003)だった。sotatercept 0.7mg群とプラセボ群では、-239.5dyne・sec・cm-5(-329.3~-149.7、p<0.001)だった。 ベースラインから24週時までの、6分間歩行距離の変化量の最小二乗平均群間差は、sotatercept 0.3mg群とプラセボ群では29.4m(95%CI:3.8~55.0)、sotatercept 0.7mg群とプラセボ群では21.4m(-2.8~45.7)だった。 sotatercept投与群では、NT-proBNP値の低下との関連も認められた。 血液学的有害事象は、血小板減少症とヘモグロビン増加が最も多く認められた。sotatercept 0.7mg群の1例で心停止による死亡が報告された。

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境界性パーソナリティ障害患者の不眠

 睡眠障害と境界性パーソナリティ障害(BPD)は、それぞれの疾患を併発することが少なくない。チェコ・パラツキー大学のJakub Vanek氏らは、BPD患者における睡眠障害関連の知識、睡眠マネジメント、研究の今後の方向性を明らかにするため、ナラティブレビューを実施した。Nature and Science of Sleep誌2021年2月22日号の報告。 PubMedおよびWeb of Scienceより、1980年1月~2020年10月に公表された論文をキーワード(睡眠障害、不眠症、悪夢、閉塞性睡眠時無呼吸症候群、BPD)を使用して抽出した。選択基準は、査読付きジャーナルへの掲載、ヒトを対象とした研究、関連トピックのレビュー、英語での報告とした。除外基準は、会議録、解説論文、18歳未満を対象とした試験とした。101件のフルテキストを精査し、選択された42件の論文のリファレンスリストを検索し、合計71件の論文をレビューに含めた。 主な結果は以下のとおり。・BPD患者では、睡眠障害が高頻度で認められたが、調査数は限定的であり、有病率も5~45%と研究により異なっていた。・BPDにおける睡眠の客観的な変化を評価した研究結果に一貫性は認められなかった。・いくつかの研究において、レム睡眠の変化や徐波睡眠の減少が認められた。・BPD患者では、悪夢の有病率が高かった。・不眠症を治療しないことにより、情動調節を介して、BPD症状を悪化させる可能性が示唆された。・BPDの病態が、睡眠の主観的な質に影響していると考えられる。・BPD患者における睡眠障害の適切な診断および治療は、BPD治療により良い結果をもたらす可能性がある。・心理療法は、睡眠障害とBPD症状の両方を改善することが期待できる。 著者らは「BPD患者の睡眠障害を把握し、適切にマネジメントすることは、症状緩和に役立つ可能性がある。BPD患者の治療計画に睡眠関連の問題への対処を含めることは、より効果的な治療につながるであろう。さらなる研究により、信頼できる結論に至ることが望まれる」としている。

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急性・慢性心不全診療―JCS/JHFSガイドラインフォーカスアップデート版発表 /日本循環器学会

 3月26~28日に開催された第85回日本循環器学会学術集会のガイドライン関連セッションにおいて、筒井 裕之氏(九州大学循環器内科学 教授)が「2021年JCS/JHFSガイドラインフォーカスアップデート版 急性・慢性心不全診療」を発表した。本講ではHFrEF治療に対する新規薬物の位置付けに焦点が当てられた。慢性心不全の薬物治療、アルゴリズムと保険適用薬3つに注目 今回のアップデート版は2017年改訂版を踏襲している。まず、筒井氏はアルゴリズムの仕様の変更点について説明。前回の治療アルゴリズムでは、薬物治療と非薬物治療を明確に分けず疾患管理や急性増悪時の対応が不十分であった。これを踏まえ、「薬物治療と非薬物治療を明確に分け、薬物治療から非薬物治療へ移行する際に薬物治療が十分に行われていたかどうかを確認する。疾患管理はすべての心不全患者に必要なため、緩和ケアを含め位置付けを一番下部から上部へ変更し、急性増悪した際には急性心不全のアルゴリズムに移行することを追記した」と話した。 薬物治療の内容で見逃せないのは、新しく保険適用となったHFrEFに対する治療薬のHCNチャネル遮断薬イバブラジン、アンジオテンシン受容体ネプリライシン阻害薬(ARNI)サクビトリル・バルサルタン、SGLT阻害薬ダパグリフロジンの3つである。ANRI、海外と国内で選択優先度が異なる まず、特筆すべきは昨年発売されたサクビトリル・バルサルタンで、PARADIGM-HF試験と国内で実施されたPARALLEL-HF試験の結果に基づき慢性心不全治療薬として承認された。この薬剤の追加が反映されているのは心不全ステージCのHFrEF(LVEF<40%)とHFmrEF(40≦LVEF<50%)の場合。HFrEFでは基本薬(ACE阻害薬/ARB+β遮断薬+MRAから次のステップとしてACE阻害薬/ARBをARNIへ切り替え+SGLT2阻害薬)と追加薬の2本立てに変更、注釈には“ACE阻害薬/ARB未使用で入院例への導入も考慮(ただし、保険適用外)”の旨が記載された。その理由として、「2019年NEJM誌で発表されたPIONEER-HF試験において、ACE阻害薬/ARBによる前治療がない患者を53%含むHFrEF入院患者に対するNT-proBNPの減少効果が示されたから。また、ACCコンセンサス2021UpdateではARNIの使用を優先し、ACE阻害薬/ARBはARNIが禁忌、不耐性などの患者でのみ考慮されるべきと記載されている。ただし、日本では保険適用の点を考慮して注釈に留めた」と説明した。 さらに、HFmrEFでの可能性については、わが国の患者も含まれているPARAGON-HF試験やPARADIGM-HF試験から示唆、追加された。これらのARNIの推奨やエビデンスレベルについてはアルゴリズムとは別の表で推奨クラスIに位置付けられ、一方のHFpEFへの投与は「推奨してもよい」IIbとなった。基本薬のSGLT2阻害薬、追加薬のイバブラジン SGLT2阻害薬はDAPA-HF試験やその日本人サブグループ解析によって心不全への適用が認められた。また、EMPEROR-reduced試験での報告を受け、基本薬の位置付けでダパグリフロジンとエンパグリフロジンが認められた。だたし、エンパグリフロジンは国内では保険適用外である。 HFrEFの追加薬として記載されたイバブラジンは、同氏らが行ったJ-SHIFT試験でも安静時心拍数が有意に減少し、「イバブラジン群の主要評価項目のハザード比は0.67(33%のリスク低減)で、SHIFT試験と同様の有効性が示された」と今回の追加理由が解説された。非薬物療法のMitraClip(R)やカテーテルアブレーションの位置付け 経皮的僧帽弁接合不全修復術におけるMitraClip(R)の推奨については、2次性(機能性)僧帽弁閉鎖不全に対するエビデンスであるMITRA-FR試験とCOAPT試験の結果を反映している。これについて「両者の予後に対する効果には相違があったものの、COAPT試験のなかでHFrEFの心不全による入院や死亡が抑制されたことを反映し、推奨クラスをIIa、エビデンスレベルをBとした。一方で、器質性の場合は手術のエビデンスが確立しているため推奨クラスが異なる」と説明した。 カテーテルアブレーションについては、CASTLE-AF試験やCABANA試験を踏まえ、推奨レベルがIIbからIIaへ、エビデンスレベルがCからBへと上げられた。 このほか、今後期待される薬剤として記載されているvericiguat(sGC刺激薬)やomecamtiv mecarbil (心筋ミオシン活性化薬)の現状について説明し、「今後、正式な改訂版が公表される際に位置付けられる。EFによる分類なども改訂されているので本編をぜひご覧いただきたい」と締めくくった。<フォーカスアップデート版に盛り込まれた主な改訂点>1.総論:LVEFによるあらたな分類の提唱とHFmrEF、HFrecEFに関する記載の変更2.心不全治療の基本方針:心不全治療アルゴリズムの改訂3.薬物治療:Ifチャネル阻害薬(HCNチャネル遮断薬)、アンジオテンシン受容体ネプリライシン阻害薬(ARNI)、SGLT2阻害薬の項目の改訂、わが国における治験(J-SHIFT試験、PARALLEL-HF試験)をふまえた記載の追加4.非薬物治療:経皮的僧帽弁接合不全修復システムの記載の改訂5.併存症:心房細動 CASTLE-AF試験とCABANA試験をふまえた記載の改訂6.併存症:糖尿病 DAPA-HF試験、EMPEROR-Reduced試験等をふまえた記載の改訂7.手術療法:TAVIの低リスク試験 PARTER3試験、EVOLUT試験をふまえた記載の改訂、IMPELLA(R)の記載の改訂8.疾患管理:心不全療養指導士の記載の追加9.緩和ケア:緩和ケア診療加算の記載の追加10.今後期待される治療:vericiguat、omecamtiv mecarbilの記載改訂

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大うつ病性障害のない認知症患者の抑うつ、非薬物療法が有効/BMJ

 大うつ病性障害のない認知症患者の抑うつ症状の治療において、認知活性化療法やマッサージ/接触療法などを用いた非薬物的介入は、臨床的に意義のある症状の改善効果をもたらすことが、カナダ・セント・マイケルズ病院のJennifer A. Watt氏らの検討で示された。研究の成果は、BMJ誌2021年3月24日号で報告された。抑うつや孤立感、孤独感などの症状を軽減するアプローチとして、地域で患者に非薬物的介入を行う「社会的処方(social prescribing)」への関心が高まっている。また、非薬物療法(たとえば、運動)が認知症患者の抑うつ症状を低減することが、無作為化試験で示されている。一方、大うつ病性障害の診断の有無を問わず、認知症患者の抑うつ症状に関して、薬物療法と非薬物療法の改善効果を比較した研究は知られていないという。抑うつ症状の軽減効果をネットワークメタ解析で評価 研究グループは、認知症の神経精神病学的症状としての抑うつを経験するか、大うつ病性障害の診断を受けた認知症患者における抑うつ症状の軽減効果を、薬物療法と非薬物療法とで比較する目的で、系統的レビューとネットワークメタ解析を行った(カナダ・Alberta Critical Care Strategic Clinical Networkの助成による)。 2020年10月15日の時点で、5つのデータベース(Medline、Embase、Cochrane Library、CINAHL、PsycINFO)に登録された文献を検索した。また、灰色文献(grey literature)や、選出された研究の引用文献も調査した。対象は、認知症患者の抑うつ症状に関して、薬物療法または非薬物療法を、通常ケアまたはその他の介入と比較した無作為化試験とした。通常ケアは、「患者の要求や好みに基づく、医療(医師または看護師への受診)および社会的ケア(入浴などの日常生活動作の介助)の適切な利用」と定義された。 8人の研究者が2人1組で、個々の文献から集計レベルのデータを抽出し、Cochrane risk of bias toolを用いて個々の無作為化対照比較試験のバイアスのリスクを評価した。次いで、ベイズ流の変量効果ネットワークメタ解析と従来のペアワイズメタ解析を行い、コーネル認知症抑うつ尺度(CSDD)の標準化平均差と逆変換平均差を導出した。大うつ病性障害を有する患者の解析はできなかった 256件の試験(認知症患者2万8,483例)が系統的レビューに含まれた。試験の91%は平均年齢が70歳以上であり、73%は女性が50%以上を占めていた。個々の試験の知見をレビューする際の最大のリスクは、データの欠損であった。 抑うつ症状を経験し、大うつ病性障害の診断を受けていない認知症患者のネットワークメタ解析(213件の試験、2万5,177例、試験間分散[τ2]0.23[中等度])では、以下の7つの非薬物的な介入法が、通常ケアと比較して抑うつ症状の低減効果が優れていた。 認知活性化療法(平均群間差:-2.93、95%信用区間:-4.35~-1.52)、認知活性化療法とコリンエステラーゼ阻害薬の併用(-11.39、-18.38~-3.93)、マッサージ/接触療法(-9.03、-12.28~-5.88)、集学的ケア(-1.98、-3.80~-0.16)、作業療法(-2.59、-4.70~-0.40)、運動と社会的交流と認知活性化療法の併用(-12.37、-19.01~-5.36)、回想法(-2.30、-3.68~-0.93)。 大うつ病性障害の診断を受けていない認知症患者における抑うつ症状の低減に関して、マッサージ/接触療法、認知活性化療法とコリンエステラーゼ阻害薬の併用、認知活性化療法と運動と社会的交流との併用は、いくつかの薬物療法と比較して改善効果が優れていた。これら以外では、薬物療法と非薬物療法の効果には、統計学的に有意な差は認められなかった。 大うつ病性障害を有する認知症患者の抑うつ症状の低減に関しては、介入の効果を比較した研究(22件、1,829例)では、臨床的および方法論的な異質性のため、ネットワークメタ解析を行うことはできなかった。 著者は、「薬物療法単独では、通常ケアを超える効果はないことも明らかとなった」としている。

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着々と広がるコロナワクチン接種、一方で接種忌避やアクセス困難者も【臨床留学通信 from NY】第19回

第19回:着々と広がるコロナワクチン接種、一方で接種忌避やアクセス困難者もこちら米国では、COVIDワクチンが徐々に行き渡りつつあります。私の外来に来る人たちも、50歳以上もしくは糖尿病などの合併症があればワクチンを勧めることができ、1月中旬から高齢者を中心に、すでにワクチンを接種し終えている人も相当数います。米国では、3月25日時点のワクチン接種がトータルで1億6,900万回を超えている状況ですが、同時点のニューヨーク州における感染者数は1日7,000人ほどで、依然として減る兆しがありません。変異株の影響も心配されます。3月30日から30歳以上が、4月6日からは16歳以上が接種対象となり、一段とワクチン接種が加速する見通しですが、皆がワクチン接種を望んでいるわけではないのはどこの国も同じで、合併症があって、医学的に勧められても接種に前向きでない人も一定数います。また、単回接種で済むジョンソン&ジョンソン社製がより行き渡るのを待ちたい、という人もいます(Mount Sinaiで接種できるのは、現時点ではファイザー社製のみ)。ワクチンへのアクセス困難者を訪問診療でカバーさて、米国レジデントは通常のプライマリケア外来のみならず、Geriatric、すなわち老年学の勉強のため、Geriatric serviceの外来ローテーションを経験する必要があります。超高齢化社会はどこの先進国も同様であり、90歳を超えてもピンピンしている人もいれば、70歳代で合併症を抱えて、歩くのもままならない人もいます。そういった超高齢化社会に対応するのがGeriatricです。現在はコロナの影響でTelephone visit, Video visitもしていますし、Visiting doctorsとして訪問診療をすることもあります。日本では通常大きな病院が訪問診療をすることはないと思いますが、こちらでは大学病院の事業の一貫として、必要な患者さんを訪問していくわけですが、マンハッタン全域をカバーしているため移動がなかなか大変です。また家で採血、さらにはワクチンが受けられるようにセッティングするのですが、そういった方々には確かにジョンソン&ジョンソンの1回で済むワクチンが良いのかもしれません。またそういった方々の介護をしているHome aidの人に対しても、ワクチンが接種できるように手配の手助けもしています。Home aidの人がコロナに罹患して、抵抗力の弱い年配者に感染が広がると大変なので、先手の予防策は理に適っています。日本ではまだ医療従事者の段階ではありますが、システム作りの得意な米国には見習うところがあると思います(コロナの流行拡大で世界最大の感染者数を出している点はさておき)。Column画像を拡大する3月中旬のレジデントのマッチの結果が出て、7月からの次年度の当院のメンバーも決まったようです。早いもので、私のレジデント生活もあと少しで終わろうとしています。コロナのPandemicの中心にいた昨年4月を含め、激動の3年間でした。現在の職場で、コロナ関連の研究などやれることをできるだけやって、次のステップに進みたいと思います。ニューヨークは、3月上旬は-4℃くらいまで冷え込む日もありましたが、下旬には20℃を超えてきています。写真は、見頃を迎えた花の並木道を撮ったもの。春の訪れを感じます。

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第54回 AZ社COVID-19ワクチン後の普通じゃない血栓症はヘパリン起因性血小板減少症に類似

新型コロナウイルス(SARS-CoV-2)のスパイクタンパク質抗原を作るアデノウイルスを下地とするAstraZenecaのワクチンAZD1222を今年2月中頃に欧州で接種した49歳の健康な女性看護師が内臓・大動脈・脳静脈の血栓症や血小板減少を呈し、残念ながら治療の甲斐なく死亡しました。女性の治療にあたった医師らの病院で3月中旬までにさらに8人に同様の症状が認められ、AZD1222接種4~16日後に血栓症を呈し始めたそれらの9人の病態は血小板活性化抗体を原因とするヘパリン起因性血小板減少症(HIT)にはっきり似通っていました1)。HITは血小板第4因子(PF4)とヘパリンの複合体を認識する血小板活性化抗体によって生じる血栓促進性の血小板減少疾患です。9人のうち1人を除く8人は女性で、年齢は比較的若く22~49歳(中央値36歳)でした。7人は脳静脈血栓症、1人は肺塞栓症、最初の検出例である1人は上述の通り内臓や脳などの複数の組織に血栓症を呈し、9人中4人が亡くなりました。9人のうち4人の血清を調べたところどの人の血清もPF4存在下でヘパリンがなくとも血小板を強く活性化しました。誰も発症前にヘパリンを使っておらず、AZD1222接種者の血小板活性化抗体は複合体を形成していない単独のPF4にどうやら結合するようです。欧州医薬品庁(EMA)や世界保健機関(WHO)はAZD1222使用継続を支持していますが2,3)、欧州のいくつかの国やカナダでは血栓症の懸念を受けてその使用を控えています4,5)。9例の検討結果を今回報告した著者は、特に脳や腹部などでの“普通じゃない(unusual)”血栓症や血小板減少がワクチン接種からおよそ5~14日後に稀に生じることを知っておく必要があると言っています。また、その病態をvaccine induced prothrombotic immune thrombocytopenia(VIPIT) と呼ぶことを提案しています。いまのところAstraZenecaワクチンAZD1222でのみ認められているVIPITが生じたならリバーロキサバンやアピキサバンなどのヘパリン以外の抗凝固薬をまずは使ったらよさそうです1)。脳静脈洞血栓症(CVST)などの致死リスクがある血栓症に陥ったワクチン接種者には高用量免疫グロブリン静注が助けになりそうです。インフルエンザワクチンとナルコレプシーワクチンの稀な深刻な有害事象といえば10年以上前のH1N1(ブタ)インフルエンザワクチンPandemrix(AS03アジュバント添加)接種小児の慢性睡眠疾患・ナルコレプシー発現率上昇が思い出されます。発現率は投与1万8,400回あたり約1例と稀ですが、小児の発現がワクチン接種後にとくに増えました6)。AS03アジュバントとナルコレプシー発現率上昇の関連は否定されているものの7)10年以上経た今となってもPandemrixとナルコレプシーの関連性はいまだに結論がでていません8)。しかし疫学やワクチンの研究者などが集まってベルギーで3年前の2018年3月末に開催された検討会ではPandemrix接種後の一貫したナルコレプシーリスク上昇が認められていると結論され9)、同ワクチンとH1N1インフルエンザウイルスの相互作用に帰するナルコレプシーは恐らくあるようだと参加者は考えています8)。参考1)A Prothrombotic Thrombocytopenic Disorder Resembling Heparin-Induced Thrombocytopenia Following Coronavirus-19 Vaccination. Research Square. Posted 28 Mar, 20212)Statement of the WHO Global Advisory Committee on Vaccine Safety (GACVS) COVID-19 subcommittee on safety signals related to the AstraZeneca COVID-19 vaccine / WHO3)AstraZeneca COVID-19 vaccine: review of very rare cases of unusual blood clots continues / EMA4)AstraZeneca COVID Vaccine: Clotting Disorder Mechanism Revealed? / Medscape5)Germany suspends use of AstraZeneca’s Covid shot for the under-60s, dealing another blow to drugmaker / CNBC 6)Sarkanen TO, et al. Sleep Med Rev. 2018 Apr;38:177-186. 7)Weibel D, et al.Vaccine. 2018 Oct 1;36:6202-6211. 8)Why is it so hard to investigate the rare side effects of COVID vaccines? / Nature9)Edwards K, et al. Biologicals. 2019 Jul;60:1-7.

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うつ病に対するプロバイオティクスの有効性、安全性

 プロバイオティクス(腸内細菌叢)は、脳腸軸の活性を通じて、気分障害や不安症に関連する症状を改善することが、多くの研究で報告されている。しかし、治療歴のないうつ病患者を対象としてプロバイオティクスの効果を検討した試験は行われていなかった。カナダ・クイーンズ大学のCaroline J. K. Wallace氏らは、治療歴のないうつ病患者10例を対象にプロバイオティクス投与前後の抑うつ症状の変化を調査するため、8週間オープンラベル試験を実施した。Frontiers in Psychiatry誌2021年2月15日号の報告。 対象患者は、カナダ・オンタリオ州キングストンの住民より募集した。プロバイオティクス製剤(Cerebiome)を3×109CFUで1日1回、8週間投与した。うつ症状は、検証済みの臨床尺度と自己報告アンケート(CAN-BINDプロトコール)を用いて評価した。データは、ベースライン時、4、8週目に収集した。 主な結果は以下のとおり。・感情障害の改善は、投与4週目で観察され、8週目まで持続した。・主観的な睡眠の質の改善は、8週目までに認められた。・プロバイオティクスに関連した有害事象は認められなかった。 著者らは「本研究では、治療歴のない中等度のうつ病患者に対するプロバイオティクスの有効性および忍容性が示唆されが、さらに包括的な研究を通じて、結論を導き出す必要がある」としている。

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CAVIは心血管イベントを予測できるか(CAVI-J)/日本循環器学会

 高リスク患者の心血管イベント予測因子として、CAVI(cardio-ankle vascular index:心臓足首血管指数)の付加的有用性を検証したCAVI-J研究の結果を、三好 亨氏(岡山大学循環器内科)が第85回日本循環器学会学術集会(2021年3月26日~28日)のLate Breaking Sessionで発表した。本結果から、CAVIは心血管イベントの予測に役立つことが示唆された。 動脈硬化は心血管イベントの重要な予測因子であり、単一施設または小規模の研究では、CAVIと心血管イベント発症の関連が報告されている。今回、三好氏らは大規模前向きコホートで、心血管リスクのある患者においてCAVIが心血管イベントの予測に優れているかどうか、心血管イベントの予測でCAVIの追加が従来のリスク因子による予測能を改善するかどうかを検討した。CAVIは心血管リスクのある患者の心血管イベントリスクの評価に役立つ CAVI-J研究は多施設前向きコホート研究で、40〜74歳の2型糖尿病、高血圧(JSH2014による高リスク)、メタボリックシンドローム、CKD(ステージ3)、冠動脈疾患または脳梗塞の既往のある患者を対象とした。主要アウトカムは、心血管死、非致死性脳卒中、非致死性心筋梗塞の複合心血管イベントであった。2013年5月~2014年12月に計3,026例が登録され、CAVIの測定日から5年間観察した。患者をCAVIにより五分位に分け(Q1:<7.55、Q2:7.60~8.20、Q3:8.25~8.80、Q4:8.85~9.45、Q5:>9.50)、検討した。 高リスク患者の心血管イベント予測因子としてCAVIの付加的有用性を検証したCAVI-J研究の主な結果は以下のとおり。・心血管イベントは計72例(心血管死13例、脳卒中44例、心筋梗塞25例)に発症し、累積発症率のカプランマイヤー曲線ではQ5がQ1に比べ有意に高かった(log-rank検定:p<0.01)。・Q5ではQ1に比べて、複合心血管イベントの発症率が有意に高く(多変量調整ハザード比[HR]:3.31、95%信頼区間[CI]:1.26~8.71)、CAVIの1ポイント増分において有意に高かった(同:1.38、同:1.196~1.65)。・イベントのサブタイプ別にみると、心血管死(年齢・性別調整HR:1.63、95%CI:1.05~2.30)、脳卒中(同:1.49、同:1.15~1.87)、入院を伴う心不全(同:1.50、同:1.11~2.12)が有意にCAVIと関連していた。・心血管イベントの予測において、既知の心血管リスクによるモデルにCAVIを組み込んだ場合、グローバルカイ2乗スコアとNRI(Net reclassification index)は有意に増加したがC-staticの増加は有意ではなかった。 これらCAVI-J研究の結果から三好氏は、CAVIは心血管リスクのある患者の心血管イベントリスクの評価に役立つと述べた。

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降圧治療と副作用:システマティックレビューおよびメタ解析(解説:石川讓治氏)-1370

 高血圧は心血管イベント発症のリスク増加と関連し、降圧治療が心血管イベント発症を抑制することが報告されている。STRATIFY研究グループのメンバーは、降圧薬の介入試験や大規模観察研究の結果のシステマティックレビューとメタ解析を行い、降圧治療は全死亡、心血管死亡、脳卒中の発症抑制と関連し、降圧治療の副作用としては、転倒のリスク増加とは有意な関連がなく(1次評価項目:リスク比1.05、95%信頼区間0.89~1.24)、2次評価項目である急性腎障害(リスク比1.18、95%信頼区間1.01~1.39)、高カリウム血症(リスク比1.89、95%信頼区間1.56~2.30)、低血圧(リスク比1.97、95%信頼区間1.67~2.32)、失神(リスク比1.28、95%信頼区間1.03~1.59)といった副作用のリスク増加と関連していたことを報告した1)。Bromfieldら2)の以前の研究においても、降圧治療中の転倒のリスクは血圧レベルよりもフレイルの存在やポリファーマシーと関連していたことが報告されており、本研究のメタ解析においても降圧治療は転倒のリスク増加と関連していなかったことが再確認された。 日常臨床において転倒が危惧される高齢者は、多くの無作為介入試験の登録から除外されている場合が多く、本研究の結果は慎重に解釈する必要がある。また、高齢者においては下肢筋力低下による転倒と、一過性の血圧低下によるめまいや転倒を完全に区別することは困難な場合も多い。高齢者高血圧は血圧変動が大きいことが特徴であり、下肢運動機能が低下すると立位保持時に血圧が上昇し、自律神経機能低下が起こると起立性や食後低血圧が生じ、ふらつきから転倒を来すことがある。そのため急激な降圧のほうが問題となることがあり、血圧変動性亢進のリスク患者の認識をし緩徐に降圧することが、過度の血圧低下のリスクを考慮した降圧治療を行ううえで重要であると思われる。 本研究においては、降圧薬による高カリウム血症や急性腎障害は、レニン・アルドステロン系の阻害薬の使用で多かったことも報告されている。高齢者では動脈スティッフネスが亢進しており、高齢者高血圧の日常診療においてカルシウムチャネル阻害薬が選択されることが多いが、ALLHAT研究においては3)、降圧薬の種類の中でカルシウムチャネル阻害薬のアムロジピンを投与された患者で、投与開始後1年以内に転倒が多かったことも報告されており、投与開始直後には注意が必要であると思われる。

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トランスサイレチン型心アミロイドーシス〔ATTR-CM:transthyretin amyloidosis cardiomyopathy〕

1 疾患概要■ 概念・定義アミロイドーシスは、βシート構造を豊富にもつ蛋白質がさまざまな病因により前駆蛋白となり、立体構造を変化させながら、重合、凝集を来すことによりアミロイド線維を形成し、細胞外間質に沈着することで臓器障害を生じる疾患の総称である。アミロイド前駆蛋白の種類により、障害される臓器が異なる。心アミロイドーシスとして、臨床的な心臓の障害を呈するのは、トランスサイレチン(transthyretin:TTR)を前駆蛋白とするATTRアミロイドーシスと免疫グロブリン軽鎖(L鎖)を前駆蛋白とするALアミロイドーシスが主な病型である(図1)。さらにATTRアミロイドーシスは、TTR遺伝子変異を認めない野生型ATTRアミロイドーシス(ATTRwt)とTTR遺伝子変異を認める遺伝性TTRアミロイドーシス(ATTRv)に分けられる。図1 心アミロイドーシスの病型分類画像を拡大する(日本循環器学会.2020年版 心アミロイドーシス診療ガイドライン.https://www.j-circ.or.jp/guideline/guideline-series/(2021年2月閲覧).2020.p.11より引用)■ 疫学本症は従来まれな疾患と考えられてきた。しかし、後で述べる検査法の進歩により、とくにATTRwt心アミロイドーシスは、高齢者の心不全(高齢者心不全の数%の可能性)や大動脈弁狭窄症にある一定数存在することが明らかになり、日常臨床で比較的遭遇する疾患であると考えられるようになった。性差があり、高齢男性に多い。ATTRvアミロイドーシスの患者は、わが国は、ポルトガル、スウェーデンに次いで世界で3番目に多いと考えられている。数百人の患者が報告されているが、診断されていない患者も相当数いると考えられる。■ 病因TTRはおもに肝臓、一部脳の脈絡叢や網膜色素上皮細胞で産生される127個のアミノ酸からなる蛋白質であり、甲状腺ホルモンであるサイロキシンやレチノール結合蛋白を運搬する役割を担っている。TTRは、血中では四量体を形成することで安定して存在するが、何らかの原因で四量体が不安定となると解離し、単量体を形成しアミロイド線維の基質となる。TTRが不安定となる原因としては、TTR遺伝子変異が挙げられる。TTR遺伝子における140種類以上の変異型が報告されている。わが国では、30番目の アミノ酸であるバリンがメチオニンに変異するVal30Met変異型がもっとも高頻度に認められる。高齢者に多いTTR遺伝子変異を認めないATTRwtアミロイドーシスでは、単量体への解離がアミロイド線維形成に重要と考えられているものの、具体的な病態分子メカニズムについては不明な点が多い。■ 症状心アミロイドーシスの特異的な症状はなく、心不全による症状や不整脈や伝導障害による脳虚血症状などを認める。ATTRwtアミロイドーシスの主な障害臓器は、心臓に加え、腱や末梢神経が多い。手根管症候群や脊柱管狭窄症が心症状に数年先行して出現することが多く、診断の一助となる。ATTRvアミロイドーシスは、全身臓器障害による多彩な症候を認める(図2)。図2 ATTRv アミロイドーシスの多様な全身症状(日本循環器学会.2020年版 心アミロイドーシス診療ガイドライン.https://www.j-circ.or.jp/guideline/guideline-series/(2021年2月閲覧).2020.p.23より引用改変)■ 予後ATTRwtアミロイドーシスは、確定診断からの生存期間の中央値は約3年半、ATTRvアミロイドーシスでは、未治療の場合は発症からの平均余命は10年程度と報告されている。2 診断 (検査・鑑別診断を含む)心アミロイドーシスの診断において最も重要なことは、原因不明の心不全や心肥大などにおいて本症を疑うことである(図3)。図3 心アミロイドーシス診療アルゴリズム画像を拡大する(日本循環器学会.2020年版 心アミロイドーシス診療ガイドライン.https://www.j-circ.or.jp/guideline/guideline-series/(2021年2月閲覧).2020.p.62より引用)1)スクリニーング検査(1)心電図検査心房細動や伝導障害を認めることが多い。従来心アミロイドーシスの特徴といわれた低電位と偽心筋梗塞パターンの出現頻度は、ATTR心アミロイドーシスでは高くはないので注意が必要である。(2)心エコー左室壁の肥厚、心房中隔の肥厚、心房の拡大、左室心筋のgranular sparklingを認める。ドプラー検査では左室の拡張障害を認める。病期が進行すると左室長軸方向のストレイン値は心室基部から低下していくため、apical sparing(心基部の長軸方向ストレインが低下し、相対的に心尖部では保たれている所見)を認める。(3)採血検査高感度心筋トロポニンの持続高値が診断に有用である。重症度に応じて、B型ナトリウム利尿ペプチド(BNP)およびB型Na利尿ペプチド前駆体N端フラグメント(NT-proBNP)が上昇する。(4)心臓MRICine MRIによる肥大の確認と遅延造影 MRIにおける左室内膜下優位のびまん性(late gadolinium enhancement:LGE)が典型的な所見である。T1 mapping法による心筋性状の評価が、ほかの肥大心との鑑別に有用である(心アミロイドーシスではNative T1値高値、細胞外容積分画(ECV)高値)。2)二次検査(1)骨シンチグラフィ(99mTcピロリン酸シンチグラフィと99mTc-HMDPシンチグラフィ)99mTcピロリン酸シンチグラフィおよび99mTc-HMDPシンチグラフィが、ATTR心アミロイドーシスで高率に陽性になり、診断に有用である(図4)。実際には判断が困難な例も存在するが、高い感度、特異度で非侵襲的に本症を疑うことが可能である。図4 99mTc ピロリン酸シンチグラフィ画像を拡大する(2)M蛋白ALアミロイドーシスの除外診断のため、血液あるいは尿中のM 蛋白の有無を確認することも重要である。3)生検および病理診断によるアミロイドタイピング諸外国では、骨シンチの高い診断能のため、生検なしでATTR心アミロイドーシスの診断が可能とされているが、わが国では、現時点(2024年12月)で確定診断のためには組織へのアミロイド沈着の証明と病理学的なタイピングが必要である。心筋生検の陽性率は100%とされるが、その侵襲性の高さより、まずは腹壁脂肪吸引、皮膚生検、口唇唾液腺生検、胃・十二指腸などからの生検が行われるが、いずれの部位もアミロイドの検出は100%ではなく、1つの部位からの生検が陰性の場合は、他部位からの生検や繰り返しの生検、心筋生検を検討すべきである。とくにスクリーニングとして行われることの多い腹壁脂肪吸引は、ATTRwtアミロイドーシスでは陽性率が低いので注意が必要である。病理検査でアミロイドの沈着が証明された場合、各種抗体を用いた免疫染色によるタイピングが必須である。免疫染色でアミロイドタイピングの鑑別ができないときには、質量解析が有用である。4)遺伝子診断アミロイドタイピングでATTRアミロイドーシスと診断された場合、十分な配慮のもと遺伝子診断を行い、ATTRvかATTRwtかの確定診断を行う。5)診断基準アミロイドーシスに関する調査研究班が各学会のコンセンサスのもと作成したATTRwtおよびATTRvアミロイドーシスの診断基準を示す(図5)。図5 ATTRvおよびATTRwtアミロイドーシスの診断基準画像を拡大する(日本循環器学会.2020年版 心アミロイドーシス診療ガイドライン.https://www.j-circ.or.jp/guideline/guideline-series/(2021年2月閲覧).2020.p.18-20.より引用)3 治療1)アミロイドーシスに対する一般的治療(1)心不全基本は利尿剤を中心とした治療である。左室駆出率の低下した心不全(HFrEF)で生命予後改善効果のあるβ遮断薬やACE阻害薬/アンギオテンシン受容体拮抗薬の効果は明らかでは無い。(2)不整脈心アミロイドーシスに伴う心房細動では塞栓症を来しやすく、禁忌でない限りCHADS2スコアに関係なく抗凝固療法を行うべきである。心房細動の心拍数管理に関して、ジギタリスは副作用を来しやすいため禁忌である。ベラパミルも変時作用や変陰力作用が強く出やすく、左室収縮性の低下した症例では禁忌である。完全房室ブロックなどの徐脈性不整脈を認めれば、恒久的ペースメーカーを植え込む。2)TTRアミロイドーシスに対する疾患修飾治療(図6)(1)TTR産生の抑制ATTRvアミロイドーシスに対して、異常なTTRの産生を抑える目的で、肝移植による治療が行われてきた。一方、TTRのほとんどが肝臓で産生されるため、遺伝子サイレンシングの手法を用いた遺伝子治療の良い標的と考えられる。ブトリシラン(商品名:オンパットロ)は、TTRメッセンジャーRNAを標的とし、遺伝子発現を抑制し、TTRの産生を阻害する低分子干渉RNA製剤である。現時点(2024年12月)では、トランスサイレチン型家族性アミロイドポリニューロパチーに対し使用可能である。(2)TTR 四量体の安定化TTRを安定化させ、単量体になることを防ぐことで、TTRアミロイドーシスの進行が抑制されることが期待される。タファミジス(同:ビンマック)およびタファミジスメグルミン(同:ビンダケル)は、TTRのサイロキシン結合部位に結合し、四量体を安定化させる。ATTR-ACT試験において、ATTRwtおよびATTRvによる心アミロイドーシス患者に対して、全死因死亡と心血管事象に関連する入院頻度を減少し、トランスサイレチン型心アミロイドーシス(野生型および変異型)に対して適応拡大が行われた。心アミロイドーシス患者に投与する際の適正投与のための患者要件(資料)、施設要件、医師要件に関するステートメントが日本循環器学会より出されている。図6 ATTRアミロイドーシスに対する治療の進歩画像を拡大する図7 トランスサイレチン型心アミロイドーシス症例に対するビンダケル適正投与のための患者要件(1)野生型の場合ア心不全による入院歴または利尿薬の投与を含む治療を必要とする心不全症状を有することイ心エコーによる拡張末期の心室中隔厚が12mmを超えることウ組織生検によるアミロイド沈着が認められることエ免疫組織染色によりTTR前駆蛋白質が同定されること(2)変異型の場合ア心筋症症状および心筋症と関連するTTR遺伝子変異を有することイ心不全による入院歴または利尿薬の投与を含む治療を必要とする心不全症状を有することウ心エコーによる拡張末期に心室中隔厚が12mmを超えることエ組織生検によるアミロイド沈着が認められること4 今後の展望ATTR心アミロイドーシスに対するvutrisiran、ATTR心アミロイドーシスに対するTTR四量体安定化剤acoramidisの第III相試験の結果が報告され、今後の臨床現場での使用が期待されている。さらにATTRアミロイドを標的としたモノクロナール抗体などの試験が現在進行中である。5 主たる診療科循環器内科、脳神経内科※ 医療機関によって診療科目の区分は異なることがあります。6 参考になるサイト(公的助成情報、患者会情報など)診療、研究に関する情報日本アミロイドーシス学会(一般利用者向けと医療従事者向けのまとまった情報)難病情報センター 全身性アミロイドーシス(一般利用者向けと医療従事者向けのまとまった情報)日本循環器学会 トランスサイレチン型心アミロイドーシス症例に対するビンダゲル適正投与のための施設要件、医師要件に関するステーテメント(医療従事者向けのまとまった情報)1)安東由喜雄 監修. 最新アミロイドーシスのすべてー診療ガイドライン2017とQ&A―. 医歯薬出版:2017.2)2020年版 心アミロイドーシス診療ガイドライン(2024年11月25日閲覧)3)佐野元昭 編. Heart View 11月号.Medical View:2020. 4)Ruberg FL, et al. J Am Coll Cardiol. 2019;73:2872-2891.5)Kittleson M, et al. Circulation. 2020;142:e7–e22.公開履歴初回2021年4月5日更新2024年12月26日

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ニボルマブ+イピリムマブの肺がん術前治療、主要評価項目を達成(NEOSTAR)/Nat Med

 手術可能NSCLC患者を対象に、ニボルマブ+イピリムマブによる術前治療の有効性と安全性を評価する第II相NEOSTAR試験の追跡結果がNature Medicine誌に掲載された。・対象:切除可能Stage I~IIIA 非小細胞肺がん(Single N2)・arm A:ニボルマブ3mg/kg+イピリムマブ1mg/kg→ニボルマブ2週ごと3サイクル(NI群)・arm B:ニボルマブ3mg/kg→ニボルマブ2週ごと3サイクル(N群)・評価項目:[主要評価項目]N群とNI群のMPR(Major Pathologic Response、生存しうる腫瘍細胞10%以下)[副次評価項目]毒性、周術期罹患率/死亡率、奏効率(ORR)、無再発生存期間、全生存期間など 主な結果は以下のとおり。・NI群のMPR率は38%(8/21例)で、事前に指定された主要評価項(21例中6例のMPR)を達成した。・NI群のMPR率は22%(5/23例)であった。・切除を行った37例におけるMPR率は、NI群50%(8/16例)、N群24%(5/21例)であった。・NI群ではN群に比較べ、高い病理学的完全奏効率を示し(10%対38%)、生存しうる腫瘍細胞(viable tumor)も少なかった(50%対9%)。・腸内ルミノコッカス属とアッケルマンシア属の増加が併用療法のMPRと関連していた。

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脳卒中再発予防のためには、一過性脳虚血発作(TIA)症状をどこまで広くとらえるべきか?(解説:森本悟氏)-1372

 日本脳卒中学会(2019)や国際疾病分類(ICD-11)により、一過性脳虚血発作(TIA)とは、“局所脳または網膜の虚血に起因する神経機能障害の一過性のエピソードであり、急性梗塞の所見がないもの。かつ、神経機能障害のエピソードは、長くとも24時間以内に消失すること。”と定義されている。また、1975年の米国国立神経疾患・脳卒中研究所(NINDS)による報告では、突然発症の“複視、構音障害、眩暈、失調、感覚低下、両側の視覚障害”といった非進行性かつ単発の症状は、TIAとしては典型的ではないとしている(Stroke. 1975;6:564-616.)。2017年にLavallee氏らが、これらの症状をisolated atypical transient symptomsとして、1年後の脳卒中再発率を検討したところ、典型的なTIA患者と比較しても差は認められなかった(Lavallee PC, et al. Stroke. 2017;48:1495-1500.)。 そこで筆者らは、これらのTIAとして非典型的といわれる症状を“non-consensus TIA”と定義し、典型的なTIA患者(n=1,021)およびnon-consensus TIA患者(n=570)の再発リスクについて前向きに検討を行った。初回イベントの後、いずれの群の患者も適切な2次予防介入が実施されている。 筆者らは、典型的なTIA患者と同様に、non-consensus TIA患者も脳卒中の初期(90日間)および長期(10年間)再発リスクが高く、主要血管イベントについても同様であるとしている。そして、non-consensus TIAについて治療介入を要するTIAとして見直せば、TIAの診断数が約50%増加するという結果であった。本研究では、患者背景として、non-consensus TIA患者群はより若年であり、心房細動および冠動脈疾患の有病率、脳卒中の既往が半分程度であること、後方循環系の動脈狭窄(50%以上)が有意に多いという特徴を有していたことも、間接的には筆者らの結論を補強するものとなっている。 ただし、本結果にはいくつか考慮すべき点がある。まず、典型的なTIAを運動症状タイプと非運動症状タイプに分類した場合、非運動症状タイプのTIAおよびnon-consensus TIA患者群と比較して、運動症状タイプのTIA患者群では明らかに脳卒中再発リスクが高い傾向にある点、non-consensus TIA症状の中でも、眩暈/失調や構音障害単独群と比較し、複視単独群では脳卒中の再発リスクがより低い割合で長期間留まっている点、が挙げられる。 確かに、non-consensus TIAにおいても典型的なTIAと同様に、全体として経時的な脳卒中再発および主要血管イベントの増加が認められたものの、症状のタイプ別に明確なリスクの差があることは否定できない。本研究により、実際的なTIA(予防治療介入を要する群)の診断範囲を拡大することが、脳卒中予後に対して好ましい影響を与えることが示されたことは非常に重要な点である。しかしながら、non-consensus TIAの2次予防を行ううえで、除外診断を含めた臨床診断精度および症状の層別化によるリスク分析、抗血栓薬導入に伴う有害事象のリスクについては十分考慮する必要がある。

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