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早期乳がん、遺伝子診断を加えたリスク評価で術後内分泌療法も省略可能に?(MINDACT)/ASCO2021

 MammaPrintによるゲノムリスクが超低リスクの患者では、8年時の無遠隔転移生存率(DMFI)が97.0%と非常に高いことが明らかになった。米国臨床腫瘍学会年次総会(2021 ASCO Annual Meeting)で、オランダ・Netherlands Cancer InstituteのJosephine Lopes Cardozo氏が、第III相MINDACT試験から、超低リスク患者の長期生存についての解析結果を報告した。 本試験は、術後補助化学療法の対象の選択において、標準的な臨床病理学的判定基準に、70遺伝子シグニチャー検査を追加することの臨床的な有用性を前向きに評価する第III相無作為化試験。これまでに、臨床リスクが高いがゲノムリスクが低い患者において、化学療法が省略できる可能性があることを示唆する結果が報告されている。・対象:年齢18~70歳、リンパ節転移0~3個、遠隔転移のない切除可能な浸潤性原発乳がん(最大腫瘍径5cm)患者 6,693例※70遺伝子シグニチャー検査(MammaPrint)の結果、超低リスク:1,000例(15%)、低リスク:3,295例(49%)、高リスク:2,398例(36%)と報告されている。・評価項目:MammaPrint評価による高リスク/低リスク/超低リスク患者における、5年および8年時のDMFIと乳がん特異的生存率(BCSS)。 主な結果は以下のとおり。・追跡期間中央値は8.7年。・ゲノムリスクが超低リスクと評価された患者では、>50歳:67%、腫瘍径≦2cm:81%、リンパ節転移陰性:80%、Grade 1または2:96%、HR陽性/HER2陰性:97%であった。術後に全身療法を受けなかったのは16%、内分泌療法を受けたのは69%、化学療法を受けたのは14%だった。・超低リスク患者を臨床リスクでみると、高リスクが259例、低リスクが741例。臨床リスク高の患者は腫瘍径が大きく、Gradeが高く、リンパ節転移陽性の傾向がみられた。・5年時のDMFIは、ゲノムリスクの超低リスク:98.1%(95%信頼区間[CI]:97.2~99.0)、低リスク:97.5%(97.0~98.1)、高リスク:92.5%(91.4~93.6)だった(p<0.0001)。・8年時のDMFIは、ゲノムリスクの超低リスク:97.0%(95.8~98.1)、低リスク:94.5%(93.6~95.3)、高リスク:89.2%(87.9~90.5)だった(p<0.0001)。・臨床病理学的特性および治療特性で調整後のDMFIのハザード比は、超低リスク vs.低リスク:0.65(0.45~0.94)、高リスク vs.低リスク:2.17(1.68~2.80)であった。・ゲノムリスク超低リスクの患者について臨床リスクで層別化して8年時のDMFIをみると、やや差がみられた(臨床リスク低:97.6%[96.4~98.8]、臨床リスク高:95.0%[92.3~97.8]、p=0.02)。・ゲノムリスク超低リスクの患者について術後に受けた治療で層別化して8年時のDMFIをみると、全身療法なし:97.8%(95.3~100)、内分泌療法のみ:97.4%(96.1~98.7)、化学療法±内分泌療法:94.9%(94.4~98.7)だった(p=0.37)。臨床病理学的特性で調整後のDMFIのハザード比は、化学療法あり vs.化学療法なし:0.98(0.37~2.61)、内分泌療法あり vs. 内分泌療法なし:0.59(95%CI:0.27~2.13)だった。・8年時のBCSSは、ゲノムリスクの超低リスク:99.6%(99.1~100)、低リスク:98.2%(97.7~98.7)、高リスク:93.7%(92.6~94.7)だった(p<0.0001)。・ゲノムリスク超低リスクの患者について臨床リスクで層別化してBCSSをみると、差はみられなかった(臨床リスク低:99.7%[99.3~100]、臨床リスク高:99.2%[98.0~100]、p=0.96)。 演者のCardozo氏は、MammaPrintによる評価で超低リスクとなった患者では、臨床リスクによらず8年BCSSが99%を超え、8年DMFIが95~98%という優れた予後を示したとまとめ、超低リスク患者は治療のさらなるde-escalationが可能な候補者であるとした。ディスカッサントを務めたフランス・Gustave RoussyのFabrice Andre氏は、本解析だけでは症例数が少ないが、ゲノムリスクが超低リスクかつ臨床リスクが低リスクの患者については術後内分泌療法を省略できる可能性があるとして、より詳細な研究が必要と述べた。

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「リモート医事(iisy)」で医療事務作業を改善/ソラスト

 医療事務受託サービスを展開する株式会社ソラストは、医療従事者の業務負担の軽減や患者の待ち時間短縮など、これからの時代に即した医療DX(Digital Transformation)パッケージ「リモート医事(iisy)」に関するメディア発表会をオンラインで行った。 今回発表された「リモート医事」は、医療機関の医療事務作業を“リモートセンター”からリアルタイムにサポートするサービスであり、医療事務だけでなく、「診療サポート」「経営支援」「ITサポート」を包括的にDX化して支援する。iisyのリモート医事サービスで現場の負担を軽減する はじめに同社の代表取締役社長の藤河 芳一氏が、会社概要の説明とともに「リモート医事」について、これから日本が直面する労働人口減少社会でのDX化が医療機関の直面する課題であり、これらに対応するために開発を行ったと経緯を説明。「今回の製品“iisy”は最初のステップであり、将来的には『医療・介護のデータビジネス』へステップアップしていきたい」と今後の展望を述べた。 続いて、「リモート医事サービス」について大島 健太郎氏(同社スマートホスピタル開発部長)が概要を説明した。 医療事務の仕事は、受付からはじまり料金計算、会計、レセプト請求処理、カルテ管理など多岐にわたる。リモート医事サービスは、これらの業務をオンラインで集約化して、スタッフの生産性の向上をはかることができるという。 iisyのリモート医事サービスは主に診療所や中小病院を対象とし、リモート医事センターのスタッフがオンラインで「予約、問い合わせ対応、受付処理、料金計算、レセプト事務」を行うもので、患者あたりの従量制の料金が予定されている。また、セキュリティではISMS/ISO27001認証取得と関係する省庁の2つのガイドラインに準拠した環境でのサービスが提供される。 リモート医事のメリットとして、医療事務では「専門性の向上」「デジタルへの移行」、医師・看護師では「本来業務への集中」「労務管理の軽減」、患者では「接遇が厚くなる」「院内滞在時間の短縮」などがあげられる。サービスの提供開始は、本年6月から提供され、本格的な展開は10月を予定している。すでに実証試験を行ったクリニックでの結果は良好だったという。 大島氏は最後に「本年は100医療機関の導入を目指す」と抱負を語った。なお、iisyのリモート医事サービスの展開では、協働先としてソフトバンク、名古屋大学医学部附属病院、日本医師会なども名を連ねている。

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抗HER3-ADC薬、治療抵抗性EGFR変異NSCLCに有望/ASCO2021

 前治療としてのTKIやプラチナ製剤に抵抗性となったEGFR変異陽性非小細胞肺がん(NSCLC)に対する、HER3を標的とした抗体薬物複合体(ADC)であるPatritumab-Deruxtecan(HER3-ADC)は、新規治療薬として有望であるとの発表が、米国臨床腫瘍学会年次総会(2021 ASCO Annual Meeting)において、米国・Dana-Farber Cancer InstituteのPasi A. Janne氏よりなされた。  HER3-ADCのNSCLCでの推奨用量は第I相試験で5.6mg/kgとされた。今回は第I相試験用量拡大パートの報告である。 ・対象:オシメルチニブを含むEGFR-TKIとプラチナ製剤の治療を受け抵抗性となったEGFR変異陽性NSCLC81例・介入:HER3-ADC 5.6mg/kg投与57例と3.2~6.4mg/kg投与24例(脳転移の有無は問わず)・評価項目:[有効性評価項目]全奏効率(ORR)、病勢コントロール率(DCR)、無増悪生存期間(PFS)、奏効期間、奏効とHER3発現の関連など[安全性評価項目]全有害事象(TAE)、治療関連有害事象 有効性解析は57例を、安全性評価は81例を対象とした。  主な結果は以下のとおり。 ・患者背景は、年齢中央値65歳、脳転移あり47%、前治療の中央値は4ライン(オシメルチニブの投与は86%、プラチナ製剤投与は91%、免疫チェックポイント阻害剤既治療は40%)であった。・観察期間中央値10.2ヵ月(データカットオフ:2020年9月)時点でのORRは39%(CR1例)で、DCRは72%であった。・PFS中央値は8.2ヵ月で、奏効期間中央値は6.9ヵ月であった。・脳転移あり症例のORRは32%、PFS中央値8.2ヵ月、脳転移なし症例のORRは41%、PFSは8.3ヵ月と、脳転移の有無とは関連がみられなかった。・抗腫瘍効果は、EGFR変異や他遺伝子の変異を問わず認められた。・HER3発現とORRの間には相関は認められなかった。・Grade3以上の全有害事象は、血小板減少、好中球減少、倦怠感、貧血などで、治療関連死は無かった。治療関連の間質性肺疾患は全症例のうち5%に発現したが、Grade4/5はなかった。  発表者は「本剤は、臨床的に意味のある有効性を示しており、忍容性も確認された。他のNCSLCの治験も進行中である」と結んだ。

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D-ダイマー高値COVID-19入院患者、治療的 vs.予防的抗凝固療法/Lancet

 D-ダイマー値上昇の新型コロナウイルス感染症(COVID-19)入院患者に対し、リバーロキサバンやエノキサパリンなどによる治療的抗凝固療法は、予防的抗凝固療法に比べ臨床アウトカムを改善せず、一方で出血リスクを増大したことが示された。米国・デューク大学のRenato D. Lopes氏らが、600例超を対象に行った多施設共同非盲検(評価者盲検)無作為化比較試験「ACTION試験」の結果で、著者は「経口抗凝固療法適応のエビデンスがない場合は、リバーロキサバンおよびその他の直接経口抗凝固薬の治療的投与は避けなくてはならない」と警鐘を鳴らした。COVID-19は、有害転帰につながる血栓形成促進との関連が示されているが、これまで治療的抗凝固療法がCOVID-19入院患者の転帰を改善するかどうかは不明だった。Lancet誌2021年6月12日号掲載の報告。治療的抗凝固療法としてリバーロキサバンを30日間投与 研究グループはブラジル31ヵ所の医療機関で、COVID-19で入院した18歳以上の患者を対象に試験を行った。被験者はD-ダイマー値上昇が認められ、無作為化時点でCOVID-19の症状継続期間が最長で14日だった。 被験者を治療的抗凝固療法群と予防的抗凝固療法群に割り付け、治療群には、臨床的安定な患者に対してはリバーロキサバン(1日20mgまたは15mg)を投与し、臨床的不安定な患者にはエノキサパリン皮下投与(1mg/kgを1日2回)または未分画ヘパリン皮下投与(目標抗Xa濃度:0.3~0.7IU/mL)を行った後にリバーロキサバンを30日間投与した。 予防群に対しては、入院標準治療のエノキサパリンまたは未分画ヘパリンを投与した。 有効性の主要アウトカムは、死亡までの期間、入院期間または30日目までの酸素補充を要した期間の階層的解析結果で、勝利比メソッド(比率1超は治療的抗凝固療法のアウトカムがより良好)を用いてITT集団で評価した。 安全性の主要アウトカムは、30日間の大出血、または臨床的に関連する非大出血だった。治療的抗凝固療法で出血リスクは3.64倍に 2020年6月24日~2021年2月26日にかけて、3,331例をスクリーニングし、うち615例を無作為化した(治療的抗凝固療法群311例、予防的抗凝固療法群304例)。臨床的安定な患者は576例(94%)で、不安定な患者は39例(6%)だった。治療群の患者1例が同意の取り下げでフォローアップが完遂できず、主要解析に含まれなかった。 有効性の主要アウトカムは両群で差が認められなかった(勝利比:0.86、95%信頼区間[CI]:0.59~1.22、p=0.40)。この傾向は、臨床的安定な患者と不安定な患者それぞれで、一貫していた。 安全性の主要アウトカムについては、大出血または臨床的に関連する非大出血の発生率は、予防群2%(7例)に対し、治療群8%(26例)だった(相対リスク:3.64、95%CI:1.61~8.27、p=0.0010)。試験薬のアレルギー反応は、治療群2例(1%)、予防群3例(1%)で報告された。

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進行胃・食道がん1次治療、ニボルマブ+化学療法でOS延長/Lancet

 未治療の進行胃がん・胃食道接合部がんまたは食道腺がんの1次治療について、ニボルマブ+化学療法の併用療法は化学療法単独に対して、全生存(OS)期間および無増悪生存(PFS)期間を有意に延長し、許容可能な安全性プロファイルが示された。米国・スローン・ケタリング記念がんセンターのYelena Y. Janjigian氏らが、第III相国際多施設共同無作為化非盲検試験「CheckMate 649試験」の結果を報告した。進行または転移のあるHER2陰性の胃がんまたは胃食道接合部腺がんにおける、1次化学療法のOS期間中央値は1年未満である。CheckMate 649試験は、胃がん・胃食道接合部がん/食道腺がんの1次治療としての、抗PD-1阻害薬ベースの化学療法の評価を目的に行われた。本論はニボルマブ+化学療法vs.化学療法単独の有効性および安全性に関して初となる報告で、結果を踏まえて著者は、「ニボルマブ+化学療法は、これらの患者における1次治療の新たな標準治療である」とまとめている。Lancet誌オンライン版2021年6月4日号掲載の報告。主要評価項目はPD-L1 CPS≧5の患者のOS、PFS CheckMate 649試験は29ヵ国175病院・がんセンターから、18歳以上の未治療で切除不能でありHER2陰性の胃がん・胃食道接合部がんまたは食道腺がんの患者を登録して行われた。PD-L1の発現は問わなかった。 被験者はウェブシステム(ブロックサイズ6)を介して、非盲検下で無作為に1対1対1の割合で次の3群に割り付けられた。(1)ニボルマブ(360mg[3週ごと]または240mg[2週ごと])+化学療法(カペシタビン+オキサリプラチン[XELOX、3週ごと]またはロイコボリン+フルオロウラシル+オキサリプラチン[FOLFOX、2週ごと])、(2)ニボルマブ+イピリムマブ、(3)化学療法単独。 主要評価項目は、PD-L1 CPS≧5の患者における、ニボルマブ+化学療法の併用療法vs.化学療法単独のOSまたはPFSであった。 安全性の評価は、割り付け治療を少なくとも1回受けた全患者を対象とした。OS、PFSを有意に延長、PD-L1 CPS≧1集団や全無作為化集団でも有益 2017年3月27日~2019年4月24日に、2,687例の患者が適格性の評価を受け、そのうち1,581例が無作為に治療に割り付けられた(ニボルマブ+化学療法群[789例、50%]、化学療法単独群[792例、50%])。OSに関する追跡期間中央値は、ニボルマブ+化学療法群13.1ヵ月(IQR:6.7~19.1)、化学療法単独群11.1ヵ月(5.8~16.1)であった。 最短追跡期間12.1ヵ月時点で、PD-L1 CPS≧5の患者において、ニボルマブ+化学療法群は化学療法単独群と比べて、OS(ハザード比[HR]:0.71、98.4%信頼区間[CI]:0.59~0.86、p<0.0001)およびPFS(HR:0.68、98%CI:0.56~0.81、p<0.0001)を有意に延長した。OS期間中央値は14.4ヵ月(95%CI:13.1~16.2)vs.11.1ヵ月(10.0~12.1)、PFS期間中央値は7.7ヵ月(7.0~9.2)vs.6.0ヵ月(5.6~6.9)であった。 また、PD-L1 CPS≧1の患者集団における解析でも、OSの有意な延長が示され(HR:0.77、99.3%CI:0.64~0.92、p<0.0001)、PFSにもベネフィットがあることが示された(HR:0.74、95%CI:0.65~0.85)。同様に全無作為化集団においても、OSの有意な延長が示され(HR:0.80、99.3%CI:0.68~0.94、p=0.0002)、PFSへのベネフィットも示された(HR:0.77、95%CI:0.68~0.87)。 治療を受けた全患者におけるGrade3/4の治療関連有害事象の発現は、ニボルマブ+化学療法群462/782例(59%)、化学療法単独群341/767例(44%)であった。最も頻度の高い全グレードの治療関連有害事象(25%以上)は、両群ともに悪心、下痢、末梢神経障害であった。 ニボルマブ+化学療法群16例(2%)の死亡、化学療法単独群4例(1%)の死亡が治療に関連していると見なされた。なお、新たな安全性シグナルは確認されなかった。

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第62回 アデュカヌマブFDA承認、効こうが効くまいが医師はますます認知症を真剣に診なくなる(前編)

アミロイドβを減少させることが認められた世界初の薬剤こんにちは。医療ジャーナリストの萬田 桃です。医師や医療機関に起こった、あるいは医師や医療機関が起こした事件や、医療現場のフシギな出来事などについて、あれやこれや書いていきたいと思います。この週末は久しぶりに東京・下北沢の駅前劇場という小劇場に演劇を観に行ってきました。年に1回公演をするかしないかの劇団「動物電気」2年ぶりの公演です。緊急事態宣言下、ただでさえ小さな劇場がソーシャルディスタンスで客席もかなり間引かれていて、採算は合うのだろうか、役者の取り分はあるのだろうかと心配になりました。もっともお客さんの入りは上々で、くだらなくて下品な笑いがこれまでと同じように劇場に溢れていたのには安心しました。さて、この1週間の個人的な大ニュースは大谷 翔平選手のアリゾナ・ダイアモンドバックス戦での2連続ボーク、ではなく、アルツハイマー治療薬アデュカヌマブのFDA承認です。米国バイオジェンとエーザイは日本時間6月8日、共同開発した「ADUHELM」(一般名:アデュカヌマブ)が、米国食品医薬品局(FDA)の迅速承認を取得したと発表しました。アルツハイマー病の原因の一つと言われるアミロイドβプラークを減少させることが認められた世界初の薬剤となりました。知人のベテラン医薬専門記者も「マジか!」と深夜に叫んでしまったというアデュカヌマブ承認。私もいくつか気になった点がありますので、それについて書いてみたいと思います。迅速承認に至るまでは紆余曲折FDAがアデュカヌマブを迅速承認した根拠は、アルツハイマー病の臨床症状の悪化抑制の予測可能性が高いバイオマーカー、アミロイドβプラークの減少が臨床試験で実証されたため、とされています。これまでの治験の経緯から、アデュカヌマブがFDAで承認されるかどうかは、専門家の間では否定的見解のほうが多かった印象です。迅速承認に至るまでは紆余曲折がありました。臨床第III相試験は中止となり、 その結果も「1勝1敗」だったからです。第III相試験としては、アルツハイマー病初期段階の軽度認知障害(MCI)と軽度認知症の患者を対象とした1,600例規模の2つの試験が行われましたが、結果はお互いに矛盾したものでした。一方の臨床試験では、高用量を投与された被験者で、臨床的認知症重症度判定尺度(Clinical Dementia Rating Sum of Boxes:CDR-SB)をはじめとする臨床的有用性の評価指標がすべて改善していたのに対し、他方の臨床試験では、高用量を投与された群で臨床的有用性の評価指標が悪化するなど、矛盾する結果が得られたのです。その後、バイオジェンは改めて事後解析を行い、高用量群で評価項目が有意に改善したデータなどと共に、昨年7月にFDAに承認申請しました。有用性を示せない場合は承認取り消し薬剤の有用性評価を巡ってFDAの諮問委員会でも厳しい評価であったアデュカヌマブが承認に至った大きな理由の一つは、迅速承認(Accelerated Approval)という米国独自の仕組みにあります。迅速承認とは、「重篤で医療ニーズを満たす薬剤がない疾患については、 薬剤の臨床的有用性を完全に証明できていなくても、有用性を合理的に予測できる代替エンドポイントを根拠に、 早期に承認する仕組み」のことです。真の臨床的有用性については市販後臨床試験で実証することになります。FDAはリリースで「代替エンドポイントとしての脳内アミロイドβプラークの減少に基づく迅速承認である」と説明しています。市販後の検証的試験において臨床的有用性を示すことができない場合は、承認は取り消されることになります。サブ解析を繰り返し、なんとかCDR-SBが改善するという結果を導き承認申請したものの、FDAはCDR-SBの評価では厳しいと判断、脳内アミロイドβプラークの減少という代替エンドポイントで評価し、迅速承認という言わば“裏技”で承認までこぎつけた、というのが大まかな流れとなります。承認に否定的見解を示していたFDA諮問委員会の11人の専門家のうち3人が抗議のために辞任したとの報道もありました。 適応は「アルツハイマー病」「アミロイドβが神経細胞を死滅させることでアルツハイマー病になる」というのが依然として仮説であること、CDR-SBという当初の主要評価項目がどこかにいってしまい、アミロイドβの減少だけでFDAが承認したこと、迅速承認でありこれから市販後の検証的試験が行われることなど、医学的にも不確定要素が多く、批判も多いアデュカヌマブですが、気になるのはその使われ方です。臨床試験は軽度認知障害(MCI)と軽度認知症を対象に行われましたが、承認された適応は「アルツハイマー病」になりました。「アルツハイマー型認知症」ではなく、アルツハイマー病となったということは、米国で用いられているアルツハイマー病の診断基準(NINCDS-ADRDAの診断基準など/認知症の症状とアミロイドβなどのバイオマーカーの蓄積で診断する)さえクリアすれば、症状がごく軽微の段階から重度まで広く治療の対象になる、ということです。もっとも、報道によればその治療費は1回412ドル、年間5万6,000ドル(体重74キロの患者の場合)と高額なので、患者が契約する保険会社や、公的保険制度であるメディケア(高齢者向け)、メディケイド(低所得者向け)がそれぞれ、アデュカヌマブをどの段階のアルツハイマー病患者まで使用を許可するかで、対象者は大きく異なってくるでしょう。ロイターの報道では、米国の民間保険会社の幹部は「ほとんどの保険会社は、同薬への保険の適用を臨床試験に参加した患者と同じような患者に限定するだろう」と話したとしています。日本の皆保険制度で使える薬なのか?このアデュカヌマブ、日本国内でも2020年12月にバイオジェン・ジャパンが承認申請しています。田村 憲久厚生労働大臣は6月8日の閣議後の記者会見で、アデュカヌマブのFDA承認について「大きな一歩だ」と語り、国内での承認について「画期的な治療薬だ」と評価した上で「安全性、有効性をしっかりと確認させた上で対応する」と述べたとのことです。同じく6月8日の共同通信は、「厚生労働省が年内にも承認の可否を判断する可能性があると明らかにした」として、加藤 勝信官房長官の「日本でも実用化されれば、認知症施策推進大綱が掲げる共生と予防の推進にも資する」というコメントを報道しています。エーザイの株価も一時ストップ高となったようですが、果たしてこれは本当にそんなにおめでたい話なのでしょうか。日本で承認され使われる場合、米国と違って国民皆保険という大きなハードルがあります。米国のように各保険会社が独断で適応を絞る、ということが皆保険下ではできません。あと、ただでさえアルツハイマー病をはじめとする認知症を真面目に診る医師がいない状況下、中途半端な薬剤が市場に出ることは、現場の認知症診療やケアを逆に妨げてしまう可能性もあります。来週は、日本での承認の可能性と臨床現場への影響についてもう少し考えてみたいと思います(この項続く)。

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進行TN乳がんIMサブタイプの1次治療にfamitinib+camrelizumab+nab-パクリタキセルが有望(FUTURE-C-PLUS)/ASCO2021

 immunomodulatory(IM)サブタイプの進行トリプル(TN)乳がんの1次治療として、中国で複数のがんに承認されている抗PD-1抗体camrelizumabとnab-パクリタキセルの併用に、VEGFR-2、PDGFR、c-kitを標的とした経口チロシンキナーゼ阻害薬famitinibを追加することにより、有望な抗腫瘍活性および管理可能な毒性プロファイルを示したことが、前向き単群第II相試験のFUTURE-C-PLUS試験で示された。中国・Fudan University Shanghai Cancer CenterのZhi-Ming Shao氏が、米国臨床腫瘍学会年次総会(2021 ASCO Annual Meeting)で発表した。 camrelizumabおよびnab-パクリタキセルは、転移を有するIMサブタイプのTN乳がんに有望な抗腫瘍活性を示すことが報告されている(第Ib/II相アンブレラ試験のFUTURE試験で、複数の抗がん剤治療歴のある患者における奏効率52.6%)。一方、血管新生阻害薬は免疫チェックポイント阻害薬への反応を増強することが知られていることから、IMサブタイプのTN乳がんに対するfamitinib+camrelizumab+nab-パクリタキセルの3剤併用の有効性と安全性を評価した。・対象:治療歴のない切除不能な局所進行もしくは転移を有するIMサブタイプのTN乳がん・介入:camrelizumab(200mgを1、15日目に静注、4週ごと)+nab-パクリタキセル(100mg/m2を1、8、15日目に静注、4週ごと)+famitinib(20mg 1日1回を1~28日目に経口投与、4週ごと)を病勢進行もしくは耐容不能な毒性の発現まで継続(nab-パクリタキセルは最低6サイクル投与)・評価項目:[主要評価項目]奏効率(ORR)[副次評価項目]無増悪生存期間(PFS)、全生存期間(OS)、奏効期間(DOR)、安全性 主な結果は以下のとおり。・2019年10月~2020年10月に48例が登録された。・奏効率は、ITT集団で81.3%(48例中39例、95%信頼区間[CI]:70.2~92.3)、per protocol集団で84.8%(46例中39例、95%CI:74.4~95.2)だった。・2021年4月30日時点で観察期間中央値は11.5ヵ月、PFS中央値は未到達で、9ヵ月でのPFS率は60.2%(95%CI:43.2~77.3) 、10ヵ月でのPFS率は53.5%(95%CI:37.6~69.3)だった。・奏効までの期間の中央値は 1.8ヵ月(95%CI:1.8~2.0)だった。・重篤な治療関連有害事象(TRAE)は2例(4.2%)、投与中止に至ったTRAEは3例(6.3%)に発現し、治療関連死亡はなかった。・Grade 3/4の有害事象として、好中球減少症(33.3%)、貧血(10.4%)、発熱性好中球減少症(10.4%)、血小板減少症(8.3%)、高血圧症(4.2%)、甲状腺機能低下症(4.2%)、末梢感覚ニューロパチー(2.1%)、ALT/AST上昇(2.1%)、蛋白尿(2.1%)、敗血症(2.1%)、免疫関連心筋炎(2.1%)がみられた。・バイオマーカー分析から、次世代シークエンサーパネルで検出されたBACA1、KAT6A、PKD1の体細胞変異が免疫療法の効果を予測できる可能性が示唆された。 現在、無作為化比較試験のFUTURE-SUPERが進行している。

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コントロール不良2型DM、CGMでHbA1c改善/JAMA

 食前インスリン療法は行わず、基礎インスリン療法でコントロール不良な2型糖尿病の成人患者の血糖測定法として、持続血糖モニタリング(CGM)は通常の血糖測定器(BGM)によるモニタリングと比較して、8ヵ月後の糖化ヘモグロビン(HbA1c)値が統計学的に有意に低下することが、米国・International Diabetes Center, Park Nicollet Internal MedicineのThomas Martens氏らが実施した「MOBILE試験」で示された。JAMA誌2021年6月8日号掲載の報告。米国のプライマリケア施設の無作為化臨床試験 本研究は、プライマリケア施設で基礎インスリン療法を受けている2型糖尿病成人患者におけるCGMの有効性の評価を目的とする無作為化臨床試験であり、米国の15施設が参加し、2018年7月~2019年10月の期間に患者登録が行われた(米国・Dexcomの助成による)。 対象は、年齢30歳以上、2型糖尿病でプライマリケア医の治療を受け、持効型または中間型基礎インスリンを1日1~2回投与され、食前インスリン療法は行っていない患者であり、非インスリン血糖降下薬の投与の有無は問われなかった。 被験者は、CGM(Dexcom G6 CGMシステム)またはBGMでのモニタリングを行う群に2対1の割合で無作為に割り付けられた。CGM群は、間質液中のグルコース濃度を5分ごとに測定し、必要に応じてBGMでのモニタリングが行われた。BGM群は、空腹時および食後に、1日1~3回、血糖値が測定された。 主要アウトカムは、8ヵ月後の平均HbA1c値とした。目標範囲内時間の割合が高く、血糖値>250mg/dLの時間の割合は低い 175例(平均[SD]年齢57[9]歳、女性88例[50%]、平均HbA1c値9.1%[0.9])が登録され、CGM群に116例、BGM群に59例が割り付けられた。このうち165例(94%)が試験を完了した。 平均HbA1c値は、CGM群がベースラインの9.1%から8ヵ月後には8.0%へ、BGM群は9.0%から8.4%へと低下し、CGM群で有意な改善効果が認められた(補正後群間差:-0.4%、95%信頼区間[CI]:-0.8~-0.1、p=0.02)。 CGM群はBGM群に比べ、血糖値が目標範囲内(70~180mg/dL)の時間の割合(59% vs.43%、補正後群間差:15%、95%CI:8~23、p<0.001)、血糖値>250mg/dLの時間の割合(11% vs.27%、-16%、-21~-11、p<0.001)、ベースライン値で補正された8ヵ月後の血糖値(179mg/dL vs.206mg/dL、-26mg/dL、-41~-12、p<0.001)が、いずれも有意に良好であった(割合と血糖値は平均値)。 重篤な低血糖は、CGM群で1例(1%)、BGM群で1例(2%)に発現した。糖尿病性ケトアシドーシスは、CGM群で1例(1%)にみられた。 著者は、「本試験はプライマリケア施設で患者の募集が行われ、内分泌専門医は関与していないが、糖尿病専門医がプライマリケア医に助言を行っており、これは現在の標準的な診療形態ではないため、得られた知見の一般化可能性には限界がある」としている。

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第64回 COVID-19のmRNAワクチン接種後の心筋炎~主に若い男性の2回目接種後に発生

米国で新型コロナウイルス感染症(COVID-19)mRNAワクチン2回目接種後の心筋炎/心膜炎が16~24歳の若者に想定より多く認められており、その検討を含む米国疾病予防管理センター(CDC)専門家会議が今週18日に急遽開催されます。その開催を報じた先週10日の米国小児科学会(AAP)ニュース1)によると30歳以下の若者のPfizer/BioNTechかModernaのCOVID-19 mRNAワクチン接種後の心筋炎/心膜炎は有害事象記録VAERS(Vaccine Adverse Event Reporting System)に475例報告されており、それらのうち転帰がわかっている285人中270人は退院し、ほとんど(およそ81%)は完全に回復しています。15人は依然として入院していて3人は集中治療室(ICU)にいます。2回目接種後の16~17歳の心筋炎/心膜炎の報告数は79例で、その数は想定数2~19例を上回っています。18~24歳での報告数は196例で、やはり想定数8~83例を上回っていました。500万人超がPfizer/BioNTechのワクチン接種済みのイスラエルでは去年2020年12月から2021年5月に心筋炎の報告が275例あり2)、それらのうち148例はワクチン接種のころに生じたものであり、米国と同様に多くは2回目の接種後で、主に16~19歳の若い男性に認められました。イスラエルはワクチンと心筋炎の関連を調査中ですが、2回目のワクチン接種と16~30歳の若い男性の心筋炎発症は関連するかもしれないと現時点では判断されています。CDCによると幸い経過はおおむね良好なようで、mRNAワクチン接種後に心筋炎/心膜炎を呈して手当を受けた患者のほとんどは薬の投与や休息で良くなっており、速やかに回復しています3)。心筋炎/心膜炎の同定の主な手がかりは胸痛です。Pfizer/BioNTechワクチン接種後に心筋炎や心筋心膜炎を生じた14~19歳の男児7人の詳細を記したPediatrics誌の報告4)によると全員が2回目接種後4日以内の胸痛により受診しました。また、5人は発熱があり、他に息切れ、疲労感、両腕の痛み、吐き気、嘔吐、頭痛、食欲不振、脱力感が1人以上に認められました5)。7人とも多臓器炎症症候群(MIS-C)ではなく、2~6日間の入院で全員回復しました。7人のうち6人は非ステロイド性抗炎症薬(NSAID)治療を受け、それらの3人の治療はNSAIDだけで済みました。4人は免疫グロブリン静注とコルチコステロイドで治療されました。MIS-Cではない一過性のCOVID-19ワクチン接種後心筋炎に静注免疫グロブリンやコルチコステロイドをきまって投与すべきかどうかは定かではありません。ワクチン接種後7日以内に胸痛、息切れ、動悸が認められたら受診することをCDCは要請しています3)。医療従事者は小児や若い成人がそれらの症状を呈して来院したら心筋炎/心膜炎を疑い、まずは心電図、トロポニン、C反応性タンパク質(CRP)や赤血球沈降速度などの炎症マーカーの検査を試みる必要があります。それらが正常ならおそらく心筋炎/心膜炎ではないでしょう6)。心筋炎はCOVID-19に伴って生じうることも知られています。たとえば大学の感染運動選手1,597人を調べた最近の報告では心臓MRIを含む検査で2.3%に心筋炎が認められています7,8)。参考1)CDC confirms 226 cases of myocarditis after COVID-19 vaccination in people 30 and under/AAP2)Surveillance of Myocarditis (Inflammation of the Heart Muscle) Cases Between December 2020 and May 2021 (Including) / Israel Ministry of Health3)Myocarditis and Pericarditis Following mRNA COVID-19 Vaccination/CDC4)Marshall M,et al,. Pediatrics. 2021 Jun 4:e2021052478.5)Report details 7 cases of myocarditis after COVID-19 vaccination/AAP6)Clinical Considerations: Myocarditis and Pericarditis after Receipt of mRNA COVID-19 Vaccines Among Adolescents and Young Adults/CDC7)Daniels CJ, et al,JAMA Cardiol. 2021 May 27. [Epub ahead of print]8)Study: Cardiac MRI Effective in Detecting Asymptomatic, Symptomatic Myocarditis in Athletes / Ohio State University

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子供への新型コロナワクチン、接種を進めるべき9つの理由

 2021年6月1日、日本におけるCOVID-19ワクチンの接種対象が、16歳から12歳に引き下げられた。海外での子供を対象とした治験のデータ等を踏まえたものだ。Pediatrics誌2021年6月号には、子供へのワクチン接種を進めるべきとする提言が掲載されている。 この中で、成人へのワクチン接種が進むことでCOVID-19の感染流行は抑えられるものの、ワクチン忌避者や抗体価の低下によって、COVID-19を根絶することは難しいとし、今後も散発的な発生や時折の大流行という形で存続する可能性がある、とした。それを踏まえ、子供の臨床試験でワクチンの有用性が明らかになれば、子供たちへのワクチン接種を義務付けることが重要だとし、その根拠として下記を挙げている。1)子供の感染は多くの場合で無症候か軽症だが、まれに小児多系統炎症性症候群(MIS-C)や肺疾患のかたちで重症化する。2)子供が感染してウイルスを排泄することで、親や教師、他の子供に感染する可能性がある。3)子供の感染は無症候のことが多く、他の予防策では十分ではない。4)変異株によって長期的に免疫が低下したとしても、感染や再接種への対応を早めることができる。5)高い接種率と集団免疫獲得のためには、子供へのワクチン接種が必要である。6)英国で発生したような変異株は、子供への感染力がより強い。7)子供の予防接種プログラムは、国際的に感染症減少に大きな成果を上げた実績がある。8)子供の予防接種にあたって、十分に整備された国際的なインフラがある。9)教師への予防接種に続いて子供への予防接種を行うことで、学校の開校を加速させ、子供たちの活動を正常化させることができる。 米国小児科学会は、2020年12月までに200万例を超える小児感染者が発生したと報告しており、22の州に住む子供達の有病率を調べたところ、10万人あたり17.2人の入院率が明らかになり、カナダでは臨床症状が確認された例の1.9%を占め、うち約7%が集中治療を受けた。5歳未満の子供でも重症化することがあり、12~17歳では重症化する割合が高いことが報告されている。さらに、川崎病に類似したMIS-Cは学童期の子どもに最も多く発生し、平均年齢は8歳だった。 著者らは、上記の点に加え、妊婦や高齢者への感染防止の観点からもワクチンの子供への有用性が確認され次第、子供への接種を義務化し、継続的に大規模な予防接種キャンペーンを行うべきだとしている。

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急性期統合失調症におけるルラシドンの有効性と安全性

 千葉大学の伊豫 雅臣氏らは、日本および世界各国における急性期統合失調症に対するルラシドンの有効性を評価するため、検討を行った。Psychiatry and Clinical Neurosciences誌オンライン版2021年4月23日号の報告。 18~74歳の統合失調症患者483例を対象に、ルラシドン40mg/日(ルラシドン群)またはプラセボ群にランダムに割り付けた。有効性の主要エンドポイントは、6週間後の陽性・陰性症状評価尺度(PANSS)合計スコアのベースラインからの変化とし、副次的エンドポイントは、臨床全般印象度の重症度(CGI-S)スコアの変化とした。安全性のエンドポイントには、有害事象、検査値、心電図のパラメータを含めた。 主な結果は以下のとおり。・対象患者には、日本人が107例含まれた。・ベースラインから6週間後のPANSS合計スコアの平均変化量は、ルラシドン群で-19.3、プラセボ群で-12.7であった(治療による差:p<0.001、エフェクトサイズ:0.41)。・ベースラインから6週間後のCGI-Sスコアの変化量は、ルラシドン群で-1.0、プラセボ群で-0.7であった(治療による差:p<0.001、エフェクトサイズ:0.41)。・6週間でのすべての原因による中止率は、ルラシドン群で19.4%、プラセボ群で25.4%であった。有害事象による中止率は、ルラシドン群で5.7%、プラセボ群で6.4%であった。・ルラシドン群の2%以上で認められ、その発生率がプラセボ群の2倍以上であった主な有害事象は、アカシジア(4.0%)、めまい(2.8%)、傾眠(2.8%)、腹部不快感(2.0%)、疲労感(2.0%)であった。・体重および代謝パラメータに有意な変化は認められなかった。 著者らは「日本人を含む急性期統合失調症患者に対するルラシドン40mg 1日1回による治療は、有効性が確認され、一般的に安全かつ忍容性が良好な治療法である」としている。

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CLL/SLL初回治療、イブルチニブ+ベネトクラクスは高リスク群でも高い有用性/ASCO2021

 慢性リンパ性白血病(CLL)/小リンパ球性リンパ腫(SLL)に対する1次治療として、ブルトン型チロシンキナーゼ(BTK)阻害薬イブルチニブとBCL-2阻害薬ベネトクラクスの併用療法の有用性をみた国際多施設共同第II相試験CAPTIVATEの追加解析結果について、イタリア・ビタ・サルート・サンラファエル大学のPaolo Ghia氏が米国臨床腫瘍学会年次総会(2021 ASCO Annual Meeting)で発表した。 CAPTIVATE試験は、被験者を微小残存病変(MRD)コホートと治療期間を固定したFixed-duration(FD)コホートに分けて実施。MRDコホートの分析結果は2020年の米国血液学会(ASH)で既に報告されており、イブルチニブを3サイクル投与後、12サイクルのイブルチニブ(Ib)+ベネトクラクス(V)を投与したところ、3分の2以上が検出不能なMRD(uMRD)となり、さらにIb+V投与後にMRDの状態に基づいた無作為化治療を実施したところ、30ヵ月後の無増悪生存(PFS)率が95%以上と高い奏効を示した。 今回はFDコホートの分析結果が発表された。・対象:70歳以下で治療歴のない、ECOG PS 0~2のCLL/SLL患者・介入:Ib(420mg/日)を3サイクル投与後、Ib(同量)+V(最初の5週間で20mgから400mg/日まで増量)を12サイクル投与・評価項目:[主要評価項目]17p欠失のない患者における完全奏効(CR)および血球数が未回復な完全奏効(CRi)率[副次評価項目]奏効率(ORR)、奏効期間、uMRD率、無増悪生存期間(PFS)、全生存期間(OS)、腫瘍崩壊症候群(TLS)リスク低減、安全性 主な結果は以下のとおり。・159例(年齢中央値60歳)が登録され、Ibによる導入治療を完了して併用療法を開始したのは153例、12サイクルのIb+V療法を完了したのは147例(92%)、観察期間中央値は27.9(0.8~33.2)ヵ月だった。・高リスク要因は、IGHV(免疫グロブリン重鎖可変領域遺伝子)変異なしが56%、17p欠失/TP53変異が17%、17p欠失が13%、11q欠失が18%、複雑核型が19%だった。またリンパ節のサイズが5cm以上の患者は30%だった。・17p欠失なし(136例)におけるCR/CRi率は56%(95%信頼区間:48~64)、全患者では55%(48~63)となり、事前に設定された最小値37%を有意に超え(p

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術前化療後に残存病変を有するTN乳がん、術後カペシタビンvs.プラチナ(ECOG-ACRIN EA1131)/ASCO2021

 術前療法施行後にも残存腫瘍を有するトリプルネガティブ乳がん(TNBC)患者に対する、術後の追加療法としてのプラチナ製剤とカペシタビンとの比較試験の結果が、米国臨床腫瘍学会年次総会(2021 ASCO Annual Meeting)において、米国・ECOG-ACRINグループのIngrid A. Mayer氏から発表された。 術前療法後に残存腫瘍を有するTNBC患者に対するカペシタビン追加投与の有用性は、すでに日韓共同のCREATE-X試験によって示唆されている。本試験は対象患者層が異なるプラチナ製剤とカペシタビンとの第III相の無作為化比較試験である。・対象:初診時にStage II/IIIのTNBCで、タキサン±アントラサイクリンの術前治療を受け、手術後の評価で1cm以上の残存腫瘍がある症例(リンパ節転移は問わず)遺伝子検査キットPAM50にてBasalタイプとNon-Basalタイプを判定・試験群:カルボプラチン(AUC 6)またはシスプラチン(75mg/m2)を3週ごとに4サイクル投与(Pt群)・対照群:カペシタビン(1,000mg/m2)を2週投与1週休薬を1サイクルとして6サイクル投与(Cape群)・評価項目:[主要評価項目]Basalタイプにおける無浸潤疾患生存期間(iDFS)[副次評価項目]全生存期間(OS)、無再発生存期間(RFS)、Basalタイプの割合、Non-BasalタイプのiDFS 主な結果は以下のとおり。・試験の統計学的設計は、初めに非劣性を検証し、それがクリアされれば優越性も検証するデザインであった。・2021年1月に5回目の中間解析が実施され、Pt群のCape群に対するハザード比[HR]は1.09(95%信頼区間[CI]:0.62~1.90)であり、Pt群の非劣性または優越性がクリアされる可能性は低く、有害事象も多かったことから、2021年3月に安全性データモニタリング委員会が試験中止を勧告した。・Basalタイプの症例は308例(78%)、Non-Basalタイプが86例登録された。・患者背景は、タキサン+アントラサイクリンの投与が約85%、放射線治療ありが約75%、リンパ節転移なしがほぼ半数であった。・Basalタイプの3年時のiDFS率は、Pt群42%、Cape群49%、HRは1.06(95%CI:0.62~1.90)であった。・同様にBasalタイプの3年時のOS率は、Pt群58%、Cape群66%、HR 1.13(95%CI:0.71~1.79)であり、3年時のRFS率は、Pt群46%、Cape群49%、HRは0.99(95%CI:0.67~1.45)であった。・主な有害事象は貧血、白血球減少がPt群で多く、下痢や手足症候群がCape群で多かった。・Pt群では、プロトコール治療を完遂できたのは82.2%、Cape群78.7%であり、用量変更があったのはPt群52.4%、Cape群73.2%であった。 最後に演者は「今回の結果から、術前療法後に残存腫瘍を有する症例に、プラチナ製剤の術後投与の出番はないが、引き続きカペシタビンの役割は重要であることが確認された」と述べた。

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高リスク尿路上皮がんの術後補助療法、ニボルマブが有効/NEJM

 根治手術を受けた高リスクの筋層浸潤性尿路上皮がん患者の術後補助療法において、ニボルマブはプラセボと比較して、6ヵ月後の無病生存率が統計学的に有意に高く、プログラム細胞死リガンド1(PD-L1)発現率≧1%の患者集団でも無病生存(DFS)率が優れることが、米国・スローン・ケタリング記念がんセンターのDean F. Bajorin氏らが実施した「CheckMate 274試験」で示された。NEJM誌2021年6月3日号掲載の報告。29ヵ国156施設の国際的な無作為化第III相試験 研究グループは、高リスク筋層浸潤性尿路上皮がん患者の術後補助療法におけるニボルマブの有用性を評価する目的で、二重盲検無作為化対照比較第III相試験を行った(Bristol Myers Squibb、Ono Pharmaceuticalの助成による)。2016年4月~2020年1月の期間に、日本を含む29ヵ国156施設で参加者の無作為化が行われた。 対象は、根治手術を受けた再発リスクの高い尿路上皮がん(膀胱、尿管、腎盂を原発とする)で、全身状態(ECOG PS)が0または1の患者であり、シスプラチンベースの術前補助化学療法の有無は問われなかった。被験者は、術後補助療法としてニボルマブ(240mg、静脈内投与)またはプラセボを2週ごとに投与する群に1対1の割合で割り付けられた。投与期間は最長1年間であった。 主要エンドポイントは、intention-to-treat(ITT)集団およびPD-L1発現率≧1%の集団におけるDFS期間(無作為化の日から、初回再発[尿路・尿路外の局所再発または遠隔再発]までの期間、あるいは死亡)であった。尿路外の無再発生存期間を副次エンドポイントとした。尿路外再発は、骨盤内の軟部組織の再発または大動脈分岐部下の骨盤内リンパ節に関連する再発とした。DFS期間が約2倍に延長、治療関連の肺臓炎死が2例 本試験には709例が登録され、ニボルマブ群に353例(平均年齢65.3歳[範囲30~92]、男性75.1%)、プラセボ群に356例(65.9歳[42~88]、77.2%)が割り付けられた。PD-L1発現率≧1%の患者は、ニボルマブ群が140例(39.7%)、プラセボ群は142例(39.9%)であり、術前補助化学療法を受けていた患者はそれぞれ153例(43.3%)および155例(43.5%)であった。 ITT集団における無病生存期間は、ニボルマブ群が20.8ヵ月(95%信頼区間[CI]:16.5~27.6)、プラセボ群は10.8ヵ月(8.3~13.9)であった。6ヵ月時の無病生存率は、ニボルマブ群が74.9%と、プラセボ群の60.3%に比べ有意に高率であった(再発または死亡のハザード比[HR]:0.70、98.22%CI:0.55~0.90、p<0.001)。また、PD-L1発現率≧1%の集団の6ヵ月無病生存率は、ニボルマブ群が74.5%であり、プラセボ群の55.7%に比し有意に良好だった(HR:0.55、98.72%CI:0.35~0.85、p<0.001)。 ITT集団における尿路外の無再発生存期間中央値は、ニボルマブ群が22.9ヵ月(95%CI:19.2~33.4)、プラセボ群は13.7ヵ月(8.4~20.3)であった。6ヵ月時の尿路外無再発生存率は、ニボルマブ群が77.0%、プラセボ群は62.7%であった(尿路外の再発または死亡のHR:0.72、0.59~0.89)。また、PD-L1発現率≧1%の集団の6ヵ月時の尿路外の無再発生存率は、ニボルマブ群が75.3%、プラセボ群は56.7%だった(HR:0.55、95%CI:0.39~0.79)。 Grade3以上の治療関連有害事象は、ニボルマブ群が17.9%、プラセボ群は7.2%で発現した。ニボルマブ群で最も頻度の高い有害事象は、そう痒(23.1%)、疲労(17.4%)、下痢(16.8%)であり、Grade3以上ではリパーゼ上昇(5.1%)、アミラーゼ上昇(3.7%)、下痢(0.9%)、大腸炎(0.9%)、肺臓炎(0.9%)の頻度が高かった。治療関連の肺臓炎による死亡が、ニボルマブ群で2例認められた。 著者は、「無再発生存期間のサブグループ解析では、膀胱がん患者は腎盂がんや尿管がん患者よりも、また術前補助化学療法を受けた患者は受けていない患者よりも効果量が大きかったが、試験デザインを考慮すれば、これらは仮説生成的な知見と考えるべきである」としている。

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第38回 変動係数とは?【統計のそこが知りたい!】

第38回 変動係数とは?「変動係数」はバラツキを表す指標の1つです。通常、私たちが使うバラツキを表す指標は「標準偏差」「分散」がほとんどです。「データをみるうえで変動係数がないと困る」という場面が少ないからかもしれません。しかし、変動係数はとても便利な統計の道具の1つです。変動係数を知るといろいろなことがわかります。今回は、変動係数について解説します。■変動係数(Coefficient of variation)標準偏差を平均で割った値を「変動係数」といいます。変動係数は単位のない数値で、相対的なバラツキを表しています。男性と女性の身長などの平均値が異なる集団、身長(cm)と体重(kg)などのデータ単位の異なる集団のバラツキを比較する場合に用いられます。■変動係数の計算式ある健診センターで、デジタル身長体重計を新しく導入することにしました。実際に検診で使用する前に何人かの職員で身長と体重を測定してみたところ、下表のデータが得られました。身長と体重それぞれの変動係数を求めてみましょう。身長、体重をそれぞれ前述の計算式にあてはめて計算します。身長の変動係数:96÷160=0.6体重の変動係数:55÷50=1.1となります。標準偏差の値が大きいからバラツキも大きいと勘違いしないようにすることが大事です。身長(cm)と体重(kg)のように単位が異なる標準偏差を、そのまま数値の大小でバラツキの大きい小さいを判断することはできません。■変動係数に関する留意点上記の例でもわかるように「変動係数には単位がありません!」。これは重要な特徴です。単位が異なるデータはもちろんですが、単位が同じだとしても平均値が異なるデータの標準偏差では、比較すると意味がありません。そのようなときが変動係数の出番です。単位がなければ、どのようなスケール、どのような単位であっても比較可能になります。「変動係数がいくつ以上あればバラツキが大きい」という統計学的基準はありませんが、1以上は「大きい」、0.5以上1未満は「やや大きい」といえます。■さらに学習を進めたい人にお薦めのコンテンツ「わかる統計教室」第4回 ギモンを解決! 一問一答質問3 標準偏差と標準誤差の違いは何か?質問6 比較する群が3つ以上ある場合の母平均の差の検定方法は?(その1)質問6(続き) 比較する群が3つ以上ある場合の母平均の差の検定方法は?(その2)

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BRCA変異陽性HER2-早期乳がんへの術前talazoparib、単剤でpCR45.8%(NEOTALA)/ASCO2021

 生殖細胞系列のBRCA遺伝子(gBRCA)変異を有するHER2陰性早期乳がんに対する術前のtalazoparib単剤投与が、良好なpCR率を示した。米国臨床腫瘍学会年次総会(2021 ASCO Annual Meeting)で、米国・テキサス大学MDアンダーソンがんセンターのJennifer Keating Litton氏が、第II相NEOTALA試験の早期解析結果を発表した。 本試験は、非無作為化、単群の多施設共同非盲検試験。gBRCA変異を有するHER2陰性早期乳がんに対する術前補助療法としてのtalazoparibの有効性と安全性の評価を目的に実施された。・対象:gBRCA変異を有するHER2陰性早期進行乳がん患者 61例・試験群:talazoparib(1mg/日、中等度腎機能障害がある場合0.75mg/日)を24週経口投与・評価コホート:[評価対象集団]治療開始時に処方されたtalazoparibについて80%以上の投与を受け、乳房手術と病理学的完全奏効(pCR)評価を受けた患者およびpCR評価前に進行した患者[安全性およびITT解析集団]1回以上のtalazoparib投与を受けた全患者・評価項目:[主要評価項目]独立中央委員会(ICR)評価による評価対象集団におけるpCR。本試験における有効性は事後確率としてのpCR>45%とされた。[副次評価項目]ICR評価によるITT集団におけるpCR、両集団における残存腫瘍量(RCB)、治験担当医評価(INV)による両集団におけるpCR、無イベント生存期間(EFS)、全生存期間(OS)、安全性など※評価は術後に行われ、治験担当医選択による術後抗がん剤治療は可能とされた。 主な結果は以下のとおり。・talazoparibによる治療を受けた61例のうち、48例が評価対象集団の条件を満たした。・ITT集団のベースライン特性は、平均年齢44.6歳、閉経前/後が59.0%/41.0%、BRCA1/BRCA2変異陽性が78.7%/21.3%、TNBCが100%、StageI/II/IIIが32.8%/44.3%/22.9%。また、扁平上皮がん1例を除き、他はすべて腺がんであった。・ITT集団における平均治療期間は23.3週間で、90.2%の患者がtalazoparibによる治療を20週以上受けていた。平均相対的治療強度(RDI)は84.5%であった。・ICR評価によるpCRは、評価対象集団で45.8%/ITT集団で49.2%。・INV評価によるpCRは、評価対象集団で45.8%/ITT集団で47.5%。・ICR評価によるRCBは、0:評価対象集団45.8%/ITT集団49.2%、I:0%/1.6%、II:31.3%/27.9%、III:0%/0%、その他:22.9%/21.3%。・治療中に発生した有害事象は、患者の95.1%で報告された(Grade1:36.1%、Grade2:14.8%、Grade3:42.6%、Grade4:1.6%)。・多くみられたのは疲労(Grade1:55.7%、Grade2:19.7%、Grade3:1.6%)、吐き気(Grade1:50.8%、Grade2:11.5%、Grade3:1.6%)、脱毛症(Grade1:54.1%、Grade2:3.3%)、貧血(Grade1:6.6%、Grade2:1.6%、Grade3:39.3%)。死亡例は報告されていない。 Litton氏は、術前talazoparib単剤療法は有効であり、アントラサイクリン+タキサンベースの併用化学療法で観察された値に匹敵するpCR率を示し、一般的に忍容性は良好で、新たな安全性シグナルは確認されていないと結論づけている。

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CLLに対するBTK阻害薬、アカラブルチニブvs.イブルチニブ/ASCO2021

 2021年3月、再発・難治の慢性リンパ性白血病(CLL)治療に対して選択的ブルトン型チロシンキナーゼ(BTK)阻害薬アカラブルチニブが国内承認された。アカラブルチニブの有用性を先行薬イブルチニブと比較した非盲検非劣性第III相無作為化比較試験ELEVATE-RRの結果について、オハイオ州立大学のJohn C. Byrd氏らが米国臨床腫瘍学会年次総会(2021 ASCO Annual Meeting)で発表した。BTK阻害薬比較でアカラブルチニブはイブルチニブより心毒性が少ない・対象:17p欠失または11q欠失判定、ECOG PS≦2で治療歴のあるCLL患者(17p欠失の有無、ECOG PS[2vs.≦1]、前治療の回数[1~3 vs.≧4]で層別化)・試験群:アカラブルチニブ群(Aca群:100mg 1日2回)・対照群:イブルチニブ群(Ib群:420mg 1日1回) いずれも無増悪または許容できない毒性が発現するまで経口投与・評価項目:[主要評価項目]無増悪生存期間(PFS)[副次評価項目]全Gradeの心房細動(AF)、Grade3以上の感染症、リヒター症候群、全生存期間(OS) BTK阻害薬を比較した主な結果は以下のとおり。・533例(Aca群:268例、Ib群:265例)は年齢中央値66歳、前治療歴中央値2回、17p欠失45.2%・11q欠失64.2%だった。・観察期間中央値40.9ヵ月時点での両群のPFS中央値は38.4ヵ月で、Aca群はIb群に対して非劣性を示した(HR:1.00、95%CI:0.79~1.27)。・AF発生率では、Aca群がIb群よりも統計的に優れていた(9.4%vs.16.0%、p=0.023)。・副次評価項目のうち、Grade3以上の感染症(Aca群:30.8%、Ib群:30.0%)およびリヒター症候群(Aca群:3.8%、Ib群:4.9%)の発生率は同等だった。・いずれかの群で20%以上の患者に発生した有害事象のうち、Aca群は高血圧(9.4%、23.2%)、関節痛(15.8%、22.8%)、下痢(34.6%、46.0%)の発生率が低かったが、頭痛(34.6%、20.2%)、咳(28.9%、21.3%)の発生率が高かった。・有害事象により治療を中止したのは、Aca群では14.7%、Ib投与群では21.3%だった。 Byrd氏は、アカラブルチニブはイブルチニブと比較して心毒性が少なく、有害事象による中止も少なく、PFSが非劣性であることが示された、とまとめている。

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植込み型ループレコーダーの遠隔モニタリングが虚血性脳卒中のAF検出に有効/JAMA

 心房細動(AF)の既往歴のない虚血性脳卒中患者における長期間の心電計によるモニタリング法として、12ヵ月間の植込み型ループレコーダーは30日間の体外式ループレコーダーと比較して、1年間のAF検出率が有意に優れることが、カナダ・アルバータ大学のBrian H. Buck氏らが実施した「PER DIEM試験」で示された。研究の成果は、JAMA誌2021年6月1日号に掲載された。植込み型ループレコーダーを遠隔モニタリングする群と体外式を装着する群の非盲検無作為化試験 本研究は、カナダ・アルバータ州の2つの大学病院と1つの地域病院が参加した医師主導の非盲検無作為化試験であり、2015年5月~2017年11月の期間に患者登録が行われた(カナダAlberta Innovates Health Solutions Collaborative Research and Innovations Opportunities[AIHS CRIO]などの助成による)。 対象は、年齢18歳以上、AFの既往歴がなく、無作為化前の6ヵ月以内に虚血性脳卒中と診断された患者であった。 被験者は、長期心電図モニタリング法として、植込み型ループレコーダーを装着し遠隔モニタリングを行う(Reveal LINQ、Medtronic製)群、または体外式ループレコーダー(SpiderFlash-t、Sorin製)を装着する群に、1対1の割合で無作為に割り付けられた。参加者は、フォローアップのために、30日、6ヵ月、12ヵ月後に受診した。 主要アウトカムは、definite AFまたはhighly probable AF(無作為化から12ヵ月以内に、2分以上持続する新たなAFと判定された場合)の発現とした。植込み型ループレコーダー遠隔モニタリング群が主要アウトカムで有意に高率 300例が登録され、植込み型ループレコーダーを装着し遠隔モニタリングを行う群と体外式ループレコーダーを装着する群に150例ずつが割り付けられた。全体の年齢中央値は64.1歳(IQR:56.1~73.7)、121例(40.3%)が女性で、66.3%がCHA2DS2-VAScスコア(0~9点、点数が高いほど虚血性脳卒中の年間リスクが高い)中央値4(IQR:3~5)の原因不明の脳卒中であった。このうち273例(91.0%)が24時間以上の心臓モニタリングを完了し、259例(86.3%)が割り付けられたモニタリングと12ヵ月後のフォローアップ受診を完遂した。 主要アウトカムは、植込み型ループレコーダー遠隔モニタリング群が15.3%(23/150例)で検出され、体外式ループレコーダー群の4.7%(7/150例)に比べ、有意に高率であった(群間差:10.7%、95%信頼区間[CI]:4.0~17.3、リスク比:3.29、95%CI:1.45~7.42、p=0.003)。 事前に規定された8つの副次アウトカムのうち6つには有意差が認められなかった。すなわち、無作為化から2分間以上持続するAFの初回検出までの時間(年齢と性別で補正したハザード比[HR]:3.36、95%CI:1.44~7.84、p=0.005、log-rank検定のp=0.002)と、12ヵ月以内のAFの検出と死亡の複合(植込み型17.3% vs.体外式6.7%、群間差:10.7%、95%CI:3.4~17.9、p=0.007、補正後HR:2.64、95%CI:1.27~5.49、p=0.009)は植込み型ループレコーダー遠隔モニタリング群で良好であったが、虚血性脳卒中再発(3.3% vs.5.3%、群間差:-2.0%、95%CI:-6.6~2.6)、頭蓋内出血(0.7% vs.0.7%、群間差:0%、95%CI:-1.8~1.8)、死亡(2.0% vs.2.0%、群間差:0%、95%CI:-3.2%~3.2%)、デバイス関連の重篤な有害事象(0.7% vs.0%)などには、植込み型ループレコーダー遠隔モニタリング群と体外式ループレコーダー群間に差はなかった。 著者は、「これらのモニタリング戦略に関連する臨床アウトカムや相対的な費用対効果を比較するには、さらなる研究を要する」としている。

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1型DM成人患者、リアルタイムCGMで血糖コントロール改善/Lancet

 1型糖尿病成人患者の血糖測定法を、必要に応じて測定する間欠スキャン式持続血糖モニタリング(isCGM)から、リアルタイムで測定し血糖値の高低を予測して警告を発する機能の選択肢を有する持続血糖モニタリング(rtCGM)に変更すると、isCGMの使用を継続した場合と比較して、6ヵ月後のセンサーグルコース値が70~180mg/dLの範囲内にある時間の割合が高くなり、全体として血糖コントロールが改善されることが、ベルギー・KU Leuven病院のMargaretha M. Visser氏らが実施した「ALERTT1試験」で示された。Lancet誌オンライン版2021年6月2日号掲載の報告。ベルギーの6病院の無作為化対照比較試験 本研究は、ベルギーの6つの病院が参加した無作為化対照比較試験であり、2019年1月29日~7月30日の期間に参加者の募集が行われた(米国・Dexcomの助成による)。 対象は、年齢18歳以上、1型糖尿病の診断から6ヵ月以上が経過し、頻回注射またはインスリンポンプによる治療を受けており、糖化ヘモグロビン(HbA1c)値≦10%で、少なくとも6ヵ月間isCGMを使用している患者であった。 被験者は、isCGMからrtCGM(Dexcom G6)に変更する群(介入群)またはisCGMを継続する群(対照群)に、1対1の割合で無作為に割り付けられた。参加者、担当医、試験チームは割り付け情報をマスクされなかった。 主要エンドポイントは、intention-to-treat集団における6ヵ月後の血糖値が目標範囲内(センサーグルコース値3.9~10.0mmol/L[70~180mg/dL])にある時間(time in range:TIR)の平均群間差とした。HbA1c値、低血糖、低血糖恐怖スコアもrtCGM群で良好 254例が登録され、rtCGM群に127例(平均年齢42.8[SD 13.8]歳、男性64%)、isCGM群に127例(43.0[14.5]歳、60%)が割り付けられ、それぞれ124例および122例が試験を完了した。ベースラインの平均HbA1c値は両群とも7.4(0.9)%だった。 6ヵ月の時点におけるTIRの割合は、rtCGM群が59.6%と、isCGM群の51.9%に比べ有意に高かった(平均群間差:6.85ポイント、95%信頼区間[CI]:4.36~9.34、p<0.0001)。 また、rtCGM群はisCGM群に比べ、6ヵ月時のHbA1c値(rtCGM群7.1% vs.isCGM群7.4%、p<0.0001)、臨床的に意義のある低血糖(センサーグルコース値<54mg/dL)の時間の割合(0.47% vs.0.84%、p=0.0070)、低血糖恐怖調査(Hypoglycaemia Fear Survey version II worry subscale)のスコア(15.4点vs.18.0点、p=0.0071)がいずれも良好であった。 重症低血糖は、rtCGM群で少なかった(3例vs.13例、p=0.0082)。センサー挿入部位からの出血の報告はrtCGM群(12例に14件、このうち5件でセンサーの交換を要した)でのみ認められた。皮膚反応はisCGM群で頻度が高かった。 著者は、「rtCGM群はisCGM群よりも、血糖コントロールと患者報告アウトカムが良好であり、臨床医は患者の健康状態や生活の質を改善するために、rtCGMを考慮すべきと考えられる」としている。

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HR+/HER2+進行乳がん1次治療、トラスツズマブ+内分泌療法vs.化学療法(SYSUCC-002)/ASCO2021

 ホルモン受容体陽性HER2陽性(HR+/HER2+)進行乳がんの1次治療において、トラスツズマブ+内分泌療法がトラスツズマブ+化学療法に対し非劣性で毒性も少ないことが、第III相SYSUCC-002試験で示された。中国・Sun Yat-sen University Cancer CenterのZhongyu Yuan氏が、米国臨床腫瘍学会年次総会(2021 ASCO Annual Meeting)で発表した。 HER2+進行乳がんの1次治療において、抗HER2治療+化学療法は生存ベネフィットが示されている。一方、HR+進行乳がんには、安全性の面で化学療法より内分泌療法が推奨されている。しかしながら、HR+/HER2+進行乳がんの1次治療として、抗HER療法に内分泌療法と化学療法のどちらを併用したほうがよいのか示されていない。そこで、Yuan氏らは、中国の9病院で2013年9月16日~2019年12月28日に登録された、HR+/HER2+進行乳がん患者を対照に非盲検非劣性第III相無作為化比較試験を実施した。・対象:18歳以上、術後無病期間12ヵ月超、ECOG PS 0もしくは1、HR+/HER2+の進行乳がん 396例・試験群:内分泌療法+トラスツズマブ(内分泌療法群)196例・対照群:化学療法(タキサン、カペシタビン、ビノレルビン)+トラスツズマブ(化学療法群)196例・評価項目:[主要評価項目]無増悪生存期間(PFS)(ハザード比[HR]の非劣性マージン上限を1.35とした)[副次評価項目]全生存率(OS)、奏効率、安全性 主な結果は以下のとおり。・主要評価項目であるPFSでは、内分泌療法群の化学療法群に対するHRが0.88(95%信頼区間[CI]:0.71~1.09、log-rank p=0.250)と非劣性を示した(非劣性のp<0.0001)。・OSについては、内分泌療法群の化学療法群に対するHRは0.82(95%CI:0.65~1.04、log-rank p=0.090)であった。・探索的解析では、術後無病期間が24ヵ月より長い患者では内分泌療法群のほうが良好(HR:0.77、95%CI:0.53~1.10)であり、24ヵ月以下の患者では化学療法群のほうが良好(HR:0.77、95%CI:0.97~1.980)である可能性が示唆された。・有害事象は、化学療法群で内分泌療法群に比べて発現頻度が高かった(白血球減少症:50.0% vs.6.6%、悪心:47.4% vs.12.2%、疲労:24.0% vs.15.8%、嘔吐:23.0% vs.6.1%、頭痛:33.2% vs.12.2%、脱毛症:63.8% vs.4.1%)。

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