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慢性疼痛の遺伝的リスクが抗うつ薬の有効性と関連

 慢性疼痛とうつ病は高頻度で併発しており、治療が困難な場合も少なくない。これまでのオーストラリアのうつ病遺伝学研究では、併存疾患がうつ病の重症度の上昇、抗うつ薬治療効果の低下や予後不良と関連していることを報告した。オーストラリア・クイーンズランド大学のAdrian I. Campos氏らは、慢性疼痛の遺伝的リスクがうつ病の遺伝的要因に影響を及ぼし、抗うつ薬の有効性と関連しているかを評価した。The Australian and New Zealand Journal of Psychiatry誌オンライン版2021年7月16日号の報告。 対象は、オーストラリアのうつ病遺伝学研究の参加者1万2,863人。慢性疼痛とうつ病のゲノムワイド関連研究より、要約統計量を用いて多遺伝子リスクスコア(PRS)を算出した。PRSと10種類の抗うつ薬治療の有効性との関連を評価するため、累積リンク回帰を用いた。 主な結果は以下のとおり。・混合ロジスティック回帰では、慢性疼痛患者は、慢性疼痛の遺伝的傾向との有意な関連が認められたが(PainPRSOR:1.17[1.12~1.22])、うつ病の遺伝的傾向との関連は認められなかった(MDPRSOR:1.01[0.98~1.06])。・抗うつ薬治療の有効性の低下と慢性疼痛またはうつ病の遺伝的リスクとの有意な関連が認められた。ただし、完全に調整されたモデルでは、PainPRS(aOR:0.93[0.90~0.96])の影響は、MDPRS(aOR:0.96[0.93~0.99])とは独立していた。・これらの結果の頑健性を評価するため、感度分析を行った。・うつ病の重症度の測定値(発症年齢、うつ病エピソード数、研究参加年齢とうつ病発症年齢の間隔)で調整した後、PainPRSと抗うつ効果が不十分な慢性疼痛患者との有意な関連は、依然として認められた(各々、0.95[0.92~0.98]、0.84[0.78~0.90])。 著者らは「これらの結果は、慢性疼痛の遺伝的リスクは、うつ病の遺伝的リスクとは独立して、抗うつ薬治療の有効性低下と関連していることを示唆しており、他の研究による関連文献と同様に、慢性疼痛を合併したうつ病サブタイプでは、治療が困難であると考えられる。このことからも、鎮痛薬と精神医学における生物学に基づいた疾患分類のフレームワークへの影響に関するさらなる調査が求められる」としている。

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ファイザー製ワクチン、SARS生存者で強力な交差性中和抗体産生/NEJM

 シンガポール・Duke-NUS Medical SchoolのChee-Wah Tan氏らは、コロナウイルス(重症急性呼吸器症候群コロナウイルス1:SARS-CoV-1)の既感染者で、新型コロナウイルス(SARS-CoV-2)に対するBNT162b2 mRNAワクチン(Pfizer-BioNTech製)の接種を受けた人では、サルベコウイルス亜属(コロナウイルス科βコロナウイルス属に属するウイルスの一群で、SARS-CoV-1やSARS-CoV-2が属する)に対する強力な交差性中和抗体が産生されることを明らかにした。この交差性中和抗体は、抗体価が高く、懸念されているSARS-CoV-2の既知の変異株だけではなく、コウモリやセンザンコウで確認されヒトへ感染する可能性があるサルベコウイルスも中和でき、著者は「今回の知見は、汎サルベコウイルスワクチン戦略の実現性を示唆するものである」とまとめている。NEJM誌オンライン版2021年8月18日号掲載の報告。SARS-CoV-1既感染者、SARS-CoV-2感染者および健常者について検討 SARS-CoV-2による新型コロナウイルス感染症(COVID-19)のパンデミックは2019年12月に始まった。SARS-CoV-2は、2002~03年に流行した重症急性呼吸器症候群(SARS)の原因ウイルスであるSARS-CoV-1と全ゲノム配列の約80%を共有している。SARS-CoV-1に感染し生存している人の多くは、感染後17年を経てもSARS-CoV-1に対する中和抗体を保有しているが、SARS患者またはCOVID-19患者の回復期血清検体は交差中和性を有していない。 そこで研究グループは、COVID-19ワクチン接種前のSARS-CoV-1既感染者ならびにCOVID-19患者の血清検体(各10例)と、健常者でBNT162b2ワクチン2回目接種後14日目に採取した血清検体(10例)、SARS-CoV-1既感染者でBNT162b2ワクチン初回接種後21~62日目に採取した血清検体(8例)、COVID-19患者でBNT162b2ワクチン2回接種後の血清検体(10例)の計5種類の血清パネルを用い、広域交差性中和抗体の産生について検討した。SARS-CoV-1既感染者でBNT162b2ワクチン接種後に広域交差性中和抗体が産生 5種類の血清パネルのうち、SARS-CoV-1既感染者でBNT162b2ワクチンを接種した群のみ、SARS-CoV-1およびSARS-CoV-2の両方に対する高抗体価の中和抗体の産生が認められた。 また、検討した10種類すべてのサルベコウイルス(SARS-CoV-2クレードの7種[SARS-CoV-2原株、SARS-CoV-2アルファ株・ベータ株・デルタ株、コウモリコロナウイルスRaTG13、センザンコウコロナウイルスGD-1・GX-P5L]、SARS-CoV-1クレードの3種[SARS-CoV-1、コウモリWIV1、コウモリRsSHC014])に対する幅広い中和抗体を有することが認められた。

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疑問点ばかりが浮かぶ研究(解説:野間重孝氏)

 ショックとは「生体に対する侵襲あるいは侵襲に対する生体反応の結果、重要臓器の血流が維持できなくなり、細胞の代謝障害や臓器障害が起こり、生命の危機に至る急性の症候群」と定義される。ショックの分類については、近年は循環障害の要因による新しい分類が用いられることが多く、次のように分類される。(1)循環血液量減少性ショック(hypovolemic shock)   出血、脱水、腹膜炎、熱傷など(2)血液分布異常性ショック(distributive shock)   アナフィラキシー、脊髄損傷、敗血症など(3)心原性ショック(cardiogenic shock)   心筋梗塞、弁膜症、重症不整脈、心筋症、心筋炎など(4)心外閉塞・拘束性ショック(obstructive shock)   肺塞栓、心タンポナーデ、緊張性気胸など ここで注意すべきなのは、どの型のショックにおいても例外なく血圧の低下を伴うことで、実際臨床で最大の指標にされるのは血圧である。ちなみにショックの五大兆候とは、蒼白・虚脱・冷汗・脈拍触知不能・呼吸不全をいう。 心原性ショックについて言えば、血液を送り出せない場合だけではなく、心臓に戻ってきた血液を受け止めきれないために生じる場合も含んでいることに注意する必要がある。心原性ショックは心筋性(心筋梗塞、拡張型心筋症など)、機械性(大動脈弁狭窄症、心室瘤など)、不整脈性の3つに分類される。 ミルリノン(商品名:ミルリーラなど)はホスホジエステラーゼ(phosphodiesterase:PDE)III阻害薬に分類される薬剤で、β受容体を介さずに細胞内cAMPをAMPに分解する酵素であるPDE IIIを抑制することによって細胞内cAMP濃度を高めると同時に血管平滑筋も弛緩させるため、inodilatorと呼ばれる。一般にドブタミンなどによる通常の治療に反応が不良であるケースに使用されるが、高度腎機能低下例(SCR≧3.0mg/dL)、重篤な頻脈性不整脈、カテコラミンを用いても血圧<90mmHgの症例には使用を避けるべきであるとされる。 本論文ではどのような患者に対して、どのような併用薬を用いて、どのような状態でドブタミンまたはミルリノンが使用されたかについての記載がまったくない。これは使用に当たって厳しい制限が課されている薬剤の研究発表としては、不適切と言わなければならないだろう。最大の問題点は血圧についての言及がないことで、では血圧が50mmHgを割っている患者に対して昇圧剤も使用せずにミルリノンを使用したのか、という単純な疑問に答えられていない。また、心室頻拍や心室細動に伴う心原性ショックに対してミルリノンが使用されることはないはずである。一連の研究について説明不足と言うべきだろう。 評者が一番の問題点、疑問点と考えるのはend pointの設定である。本研究においては院内死亡、蘇生された心停止、心移植、機械的循環補助の実施、非致死性の心筋梗塞、一過性脳虚血発作または脳梗塞、腎代替療法の開始が複合end pointとして設定されている。しかし本来、心原性ショックの治療成績は一にかかって、救命できたか・できなかったかであるはずである。重症不整脈によるショックの治療過程において、一時的に心停止を起こすことはとくに珍しいことではない。心移植や補助循環は方法であって結果ではない。また心移植というが、ショック状態の患者に対して心移植の適応はあるのだろうか(そもそも都合よくドナーがいるのかがまず問題であるが)。心筋梗塞は原因であって結果ではない。きわめてまれなことではあるが、蘇生の合併症として心筋梗塞が起こったとしても、それは合併症であって救命と直接関係した結果ではない。脳神経合併症は蘇生措置において生じた合併症であっても結果ではない。腎代替療法も補助的方法であって結果ではない。このように考えてみると、筆者らの設定したend pointはきわめて不適切であると言わざるを得ない。 現在の心原性ショックの治療の核は、原因の除去と左室を休ませることにあると言ってよい。たとえば、冠動脈閉塞が原因ならば可及的速やかに再開通を図るべきである。その際、血行動態が破綻しているならインペラ、ECMO、VADなど、あらゆる手段を用いることを躊躇するべきではない。また左室を休ませるという観点からもこれらの補助手段は大変に有効で、しかもできるだけ早期に実施することが望ましい。追加的補助として持続透析なども使用することをためらうべきではない。そこで強心薬を使用することは例外的な場合を除いてむしろ有害であり、それはドブタミンでもミルリノンでも同じではないかと考えられている。 論文という点から見ると、何点か問題があるだけでなく、シングルセンターの比較的少数の症例数であるにもかかわらずNEJM誌が掲載したことに驚いているというのが正直な感想である。見方を変えると、大変皮肉な言い方になるが、強心薬の時代は終わりを告げ、インペラ、VADなどのメカニカルサポートの時代が来ているのだと、とどめを刺すような印象を受けたことを申し添えたい。

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新型コロナの唾液PCR検査、無症候者へは推奨できない?/JAMA

 鼻咽頭スワブによるリアルタイム逆転写ポリメラーゼ連鎖反応(RT-PCR法)は新型コロナウイルス検出のための標準検査として行われているが、唾液を用いたPCR法は鼻咽頭によるPCR法より簡便であることから診断・スクリーニングにおいて魅力的な代替手段である。現に日本国内においても帰省や出張の前に検査を希望する人らが市販の唾液PCR検査キットに依存する傾向にある。しかし、米国・Children’s Hospital Los AngelesのZion Congrave-Wilson氏らが調査した結果によると、唾液を用いたPCR法(以下、唾液PCR法)は、感染初期の数週間に有症状の人の新型コロナウイルスを検出するには感度が高かったものの、無症候性の新型コロナウイルスキャリアの感度はすべての時点で60%未満だった。このことから、同氏らは無症候性感染者の唾液の感度低下を踏まえ、無症候感染者には唾液PCR法を新型コロナのスクリーニングに使用すべきではないと示唆している。JAMA誌オンライン版2021年8月13日号のリサーチレターでの報告。 研究者らは新型コロナウイルス検出のために唾液PCR法の感度が最適な検査タイミングを調査するため、2020年6月17日~2021年2月15日の期間に前向き縦断研究を実施した。2週間以内にRT-PCR法で新型コロナウイルスと判定された家族と濃厚接触した人の便宜的サンプルをChildren’s Hospital Los Angelesとその近隣地域からHEARTS( Household Exposure and Respiratory Virus Transmission and Immunity Study )のサイトを通じて募集した。 鼻咽頭と唾液のRT-PCR法のペアサンプルを、3〜7日ごとに最大4週間にわたって、鼻咽頭の2回の結果が陰性になるまで収集した。唾液PCR法の感度は鼻咽頭での陽性を参照標準として計算した。また、唾液PCR法の感度に関する臨床的特徴は、鼻咽頭陽性ペアのオッズの高さから予測した。 主な結果は以下のとおり。・参加者404例から889組の鼻咽頭スワブと唾液サンプルを得た。そのうち新型コロナウイルスは鼻咽頭で524件(58.9%)、唾液で318件(35.7%)が検出された。・新型コロナウイルスが両方の検体から検出されたのは258組(29.0%)だった。・鼻咽頭で陽性だった256例(63.4%)は、平均年齢が28.2歳(範囲:3.0~84.5歳)で、108例(42.2%)が男性だった。また、93例(36.3%)は感染期間中、無症候のままだった。・有症状の163例のうち126例(77.3%)は重症度分類が軽症だった。・唾液の感度は、感染の最初の週に収集されたサンプルで71.2%(95%信頼区間[CI]:62.6~78.8)で最も高かったのに対し、その後、週を追うごとに低下した。・感染が確認された第1週の検体採取日に新型コロナ関連の症状を呈していた参加者は、無症候性の参加者と比較して唾液PCR法の感度が有意に高かった(88.2%[同:77.6~95.1] .vs 58.2%[同:46.3~69.5]、p<0.001)。・唾液PCR法による感度は、有症状の場合は2週目まで有意に高かった(有症状:83.0%[同:70.6~91.8] .vs 無症候:52.6%[同:42.6~62.5]、p<0.001)。しかし、発症後2週間以上が経過すると症状の有無による違いは観察されず、無症候性の参加者は34.7%(同:27.3~42.7) 、症状出現前の人は57.1%(同:31.7~80.2)、後に症状を有した人は42.9%(同:36.8~49.1)と、有意差はなかった(p=0.26)。・新型コロナ発症後の各日に対し、唾液検出のオッズ比を前日で比較すると0.94(同:0.91~0.96、p<0.001)だった。・検体採取時に新型コロナ関連の有症状者または鼻咽頭でのウイルス量が多かった参加者は、無症候性または鼻咽頭のウイルス量が少ない参加者と比較して、唾液陽性のRT-PCR結果が得られる確率が高く、それぞれのオッズ比は2.8(同:1.6~5.1、p<0.001)および5.2(同:2.9~9.3、p<0.001)だった。

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高リスク尿路上皮がんのニボルマブ術後補助療法をFDAが承認/BMS

 ブリストル マイヤーズ スクイブは、2021年8月20日、米国食品医薬品局(FDA)が、術前補助化学療法やリンパ節転移の有無、PD-L1の発現レベルにかかわらず、根治切除後の再発リスクが高い尿路上皮がん(UC)患者の術後補助療法として、ニボルマブを承認したと発表。 この承認は、ニボルマブとプラセボを比較した第III相CheckMate-274試験に基づいている。 同試験において、ニボルマブ群は、プラセボ群と比較して、無病生存期間(DFS)中央値を延長した(ニボルマブ群20.8ヵ月 vs.プラセボ群10.8ヵ月、ハザード比:0.70、95% CI:0.57~0.86、p=0.0008)。

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高リスクCOVID-19外来患者への高力価回復期血漿療法の効果は?/NEJM

 高リスクの新型コロナウイルス(COVID-19)外来患者に対する、発症1週間以内の早期高力価回復期血漿療法について、重症化の予防効果は認められなかったことが、米国・ミシガン大学のFrederick K. Korley氏らの研究グループ「SIREN-C3PO Investigators」が、救急診療部門を受診した511例を対象に行った、多施設共同無作為化単盲検試験の結果、示された。COVID-19回復患者の血漿を用いた早期回復期血漿療法は、高リスクCOVID-19患者の疾患進行を防ぐ可能性があるのではと目されていた。NEJM誌オンライン版2021年8月18日号掲載の報告。 15日後の疾患進行をプラセボ投与と比較 研究グループは、救急診療部門を受診した外来患者でCOVID-19症状が認められた511例を対象に試験を行った。 被験者を無作為に2群に分け、一方にはSARS-CoV-2に対する高力価抗体を含む回復期血漿を1単位投与し、もう一方の群にはプラセボを投与した。被験者は、全員が50歳以上、または疾患進行に関するリスク因子が1つ以上認められた。また、発症から7日以内に救急診療部門を訪れ、症状は安定しており外来管理が可能だった。 主要アウトカムは、無作為化15日後の疾患進行で、あらゆる入院、救急/緊急ケアを要する事態、非入院死亡のいずれかと定義した。 副次アウトカムは、最悪の重症度(8段階順序尺度で評価)、無作為化30日以内の非入院日数、全死因死亡だった。疾患進行患者の割合、両群とも30~32%で同等 被験者511例は、回復期血漿群257例、プラセボ群254例に無作為化された。年齢中央値は54歳、発症期間中央値は4日だった。ドナー血漿のSARS-CoV-2中和抗体価の中央値は1:641だった。 疾患進行が認められたのは、回復期血漿群77例(30.0%)、プラセボ群81例(31.9%)だった(リスク差:1.9ポイント、95%信用区間:-6.0~9.8、回復期血漿群の優越性の事後確率:0.68)。 死亡は、回復期血漿群5例、プラセボ群1例が報告された。最悪の重症度、非入院日数は、両群で同等だった。

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2002~16年米国の医療費、人種・民族別で格差/JAMA

 2002~16年の米国医療費は、年齢・健康状態調整後も人種・民族で異なり、総医療費は多人種系や白人が最も高かった。また、医療サービス別医療費についても人種・民族で差があり、白人は外来医療費が、黒人は入院や救急医療費が、全体平均に比べいずれも高かった。米国・Institute for Health Metrics and EvaluationのJoseph L Dieleman氏らが、データベースを基に行った探査的研究で明らかにした。著者は、「さらなる研究で、COVID-19パンデミックに関連する支出などを含む現在の医療費を、人種・民族別に確認する必要がある」と述べている。JAMA誌2021年8月17日号掲載の報告。4種のデータベースを基に検証 研究グループは、米国内730万件の外来受診歴、入院歴、処方箋記録について「Medical Expenditure Panel Survey」(2002~16年)、「Medicare Current Beneficiary Survey」(2002~12年)を基に調べ、「National Health Interview Survey」(2002、2016年)による医療保険加入人口と推定症例数、「Disease Expenditure project」(1996~2016年)による推定医療費を統合し、米国における2002~16年の人種・民族別医療費の差を推定・検証した。 主要アウトカムは、2002~16年の人種・民族別の米国内医療費で、総額・年齢標準化額を医療サービス別に推定した。また、2016年の主要疾患の人種・民族別医療費も求めた。人種・民族別医療費の差については、利用率と価格・ケアの程度別に検証した。アジア系など、歯科以外の全タイプ医療費が平均を下回る 2016年の本調査対象とした6タイプの医療サービス費は、推定2兆4,000億ドル(95%不確定性区間[UI]:2兆4,000億~2兆4,000億)だった。同年における年齢標準化後の1人当たり推定総医療費は、アメリカ先住民とアラスカ先住民(非ヒスパニック系)が7,649ドル(6,129~8,814)、アジア系、ハワイ先住民と太平洋諸島系(非ヒスパニック系)4,692ドル(4,068~5,202)、黒人7,361ドル(6,917~7,797)、ヒスパニック系6,025ドル(5,703~6,373)、その他複数人種系(非ヒスパニック系)9,276ドル(8,066~1万601)、白人(非ヒスパニック系)8,141ドル(8,038~8,258)だった。白人が全体医療費の72%を占めた。 集団サイズおよび年齢で調整後、白人は外来医療費が、全体平均に比べ推定15%高かった(95%UI:13~17、p<0.001)。黒人(非ヒスパニック系)は、外来医療費は全体平均より推定26%低く(19~32、p<0.001)、一方で入院費は推定19%(3~32、p=0.02)、救急医療費は推定12%(4~24、p=0.04)、それぞれ高かった。ヒスパニック系は、1人当たりの外来医療費が全体平均より推定33%低く(26~37、p<0.001)、またアジア系、ハワイ先住民と太平洋諸島系(非ヒスパニック系)は歯科以外の全医療サービス分野で全体平均より医療費が低かった(すべてのp<0.001)。一方で、アメリカ先住民・アラスカ先住民(非ヒスパニック系)とその他の複数人種系(非ヒスパニック系)は、救急医療費が全体平均よりも推定でそれぞれ90%(11~165、p=0.04)、40%(19~63、p=0.006)高かった。 人種・民族別の医療費で有意差が認められた18分野については、すべて利用率の違いと一致していた。こうした格差は、潜在的疾病負荷を補正しても持続していた。

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teclistamabが再発/難治性多発性骨髄腫に有望/Lancet

 再発または難治性多発性骨髄腫の患者の治療において、B細胞成熟抗原(BCMA)×CD3二重特異性T細胞誘導抗体teclistamabは、持続的で深い奏効をもたらし、忍容性も良好であることが、米国・Levine Cancer Institute/Atrium HealthのSaad Z. Usmani氏らが実施した「MajesTEC-1試験」で示された。研究の成果は、Lancet誌オンライン版2021年8月10日号に掲載された。teclistamabにおける 5ヵ国12施設の用量漸増第I相試験 本研究は、再発/難治性多発性骨髄腫の患者におけるteclistamabの安全性、忍容性および暫定的な有効性の評価を目的とする非盲検単群第I相試験であり、2017年6月~2021年3月の期間に、5ヵ国(米国、スペイン、フランス、オランダ、スウェーデン)の12施設で患者のスクリーニングが行われた(Janssen Research & Developmentの助成による)。 対象は、年齢18歳以上、国際骨髄腫作業部会(IMWG)の診断基準で多発性骨髄腫と診断され、ECOG PSは0/1、確立された治療で再発または治療抵抗性か不耐であり、プロテアソーム阻害薬と免疫調整薬による治療歴があり、BCMA標的薬による治療歴がない患者であった。 teclistamabは、0.3μg/kgの2週ごとの静脈内投与(1、15、28日の投与で1サイクル)で開始され(0.3~19.2μg/kg)、その後、薬物動態のデータに基づき週1回投与(1、8、15、21日の投与で1サイクル)に変更され(19.2~720μg/kg)、重症サイトカイン放出症候群のリスクを軽減するために、38.4μg/kg以上となるように用量が漸増された。また、患者の利便性の増大と安全性の改善のために、皮下投与(80~3,000μg/kg/週)の検討も行われた。 主要評価項目は、第II相試験の推奨用量を決定することであり、用量制限毒性の評価が行われ(第1部)、推奨用量での有害事象や有効性が検討された(第2部)。teclistamabはBiTEに比べ半減期が長く、間欠投与が可能 157例(年齢中央値63歳[IQR:57~69]、女性46%、高リスクの細胞遺伝学的プロファイル33%、前治療ライン数中央値6[IQR:4~7]、幹細胞移植例85%)が登録され、全例が少なくとも1回のteclistamabの投与を受けた(静脈内投与:84例[2週ごと12例、週1回72例]、週1回皮下投与:73例)。 teclistamabの皮下投与では用量制限毒性は発現しなかった。また、teclistamabの最大耐用量には達しなかった。安全性、有効性、薬物動態、薬力学のデータから、第II相試験の推奨用量は、1,500μg/kgの週1回皮下投与とされた(40例、追跡期間中央値6.1ヵ月[IQR:3.6~8.2])。 第II相試験の推奨用量の投与を受けた40例で最も頻度の高かった試験薬投与後に発現または悪化した有害事象(TEAE)は、サイトカイン放出症候群(28例[70%]、すべてGrade1/2)および好中球減少(26例[65%]、このうち16例[40%]がGrade3/4)であった。 推奨用量の投与を受け、奏効の評価が可能であった40例における全奏効割合(厳格な完全奏効、完全奏効、最良部分奏効、部分奏効)は65%(95%信頼区間[CI]:48~79)で、最良部分奏効以上の割合は58%であった。また、推奨用量では、奏効期間中央値には未到達だった。 奏効例26例のうち22例(85%)は、追跡期間中央値7.1ヵ月(IQR:5.1~9.1)の時点で生存し、治療を継続していた。推奨用量のteclistamabは、目標曝露量以上で維持されており、継続的にT細胞の活性化が認められた。 著者は、「二重特異性IgG4抗体であるteclistamabは、BiTE(bispecific T-cell engager)に比べ半減期が長く、間欠投与が可能である。第II相試験で推奨される投与スケジュールと皮下投与法は、患者と医師の双方にとって利便性が高いと期待される」としている。

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フェローシップ採用面接、鉄板の質問と留学者向けの質問【臨床留学通信 from NY】第25回

第25回:フェローシップ採用面接、鉄板の質問と留学者向けの質問第24回でも触れましたが、フェローシップになるには、書類が通過し、面接に進むことが何より肝要で、最終的に私は16のプログラムから面接の声が掛かりました。日程は自分のスケジュールとの兼ね合いで、いくつか指定されたものから選ぶのですが、上位希望のところは中盤から後半にかけて、いくつか他所で面接の場数を踏んだ上で臨めるように予定を組みました。自身の経験を振り返ってみても、とく最初の2つほどは、準備して臨んだものの、緊張や不慣れなこともあり、うまく質問に答えられなかったと感じました。ちなみに、面接における鉄板ともいえる質問はこんな項目です。“Tell me about yourself”“Why this subspecialty?”“Why our institution/program?”“What are your strengths and weaknesses?”“What will you bring to our program?”“Why should we take you?”“Where do you see yourself in 5 or 10 years?”“What do you like to do in your spare time?”それに加えて私がよく聞かれたのが、“Why did you come to the US?” “Why did you decide to start training again in the US?”といった質問で、それぞれ答えを用意して臨みました。幸い、内科レジデントとして勤めていたMount Sinai Beth Israel病院には、英語の苦手な日本人用にプライベートレッスンをサポートしてくれる仕組みがあり、私はそれを利用して返答の仕方、言いまわしなどを練習しました。といっても日本の医師ではほとんどない就職活動の面接で、なかなか神経を使う上、いかに自分を売り込むのかについても工夫がいります。最終的に、渡米の目的は「臨床研究が強い米国でそれを推し進めること」としし、「2年以上の滞在で、ある程度の成果を挙げており、cardiology fellowになっても継続したい」こと、「カテーテルインターベンションの経験はあっても、日本とのデバイスの違い等から、新しいことや日米のプラクティスの違いを学びたい」ということを強調して乗り切ることとしました。前回も書きましたが、面接がzoomだったのは私には幸いで、移動による疲れもなく、渡航費用が節約できたのはが最大の利点で、かつPC越しなので、対面ほど緊張緊張することもなく、用意したA4サイズ1枚のカンペを手元に置き、尋ねられたことに対してテンポよく即答できるように対策をしました。Column画像を拡大するこちらの論文はMount Sinai Beth IsraelでレジデントしながらCardiovascular Research FoundationのDr Gregg Stoneにお世話になり、Left main coronary artery diseaseのPCI vs. CABGを調べた有名なEXCEL trialのサブ解析で、Journal of Invasive Cardiologyというカテーテル雑誌に掲載されることになりました。RCTのサブ解析の結果を論文にできるのも、留学ならではだと思います。

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第74回 デルタ株優勢の感染流行にワクチンが苦戦/追加接種に理想的なワクチン

デルタ株優勢の感染流行にワクチンが苦戦新型コロナウイルス感染症(COVID-19)ワクチンは重症化や死亡を依然としてよく食い止めていますが、デルタ変異株が優勢の目下の流行下で残念ながらワクチン接種完了者の感染は防ぎきれていないようです1)。米国全域の老人ホーム入居者を調べたところ、PfizerやModernaの新型コロナウイルス(SARS-CoV-2)mRNAワクチン感染予防効果は今年初め(3~5月)の段階では75%でしたが、デルタ変異株が優勢となったその後の6~7月には53%に下落していました2)。英国でも予防効果の減弱が伺えます。無作為に選んだ30万人超を定期的に検査した結果、アルファ変異株優勢の去年2020年12月から今年2021年5月16日のPfizerワクチンBNT162b2接種完了者のCOVID-19発症予防効果は97%でしたがデルタ変異株優勢の5月17日から8月1日には84%に低下していました1,3)。AstraZenecaワクチンAZD1222(ChAdOx1)接種完了者のCOVID-19発症予防効果も同様で、アルファ変異株優勢のときには97%だったのがデルタ変異株優勢になってからは71%に低下していました。また、ワクチン接種完了にもかかわらずデルタ変異株に感染した人の鼻や喉のウイルス量はワクチン接種完了後でもアルファ変異株に感染した人より多めであり、他の試験でも示唆されているように、ワクチン接種完了者といえどもデルタ変異株に感染すれば他の人に広まりうるようです。ニューヨーク州のデータでもワクチン効果の衰えが示唆されています。米国FDAが取り急ぎ認可したワクチンのSARS-CoV-2感染予防効果は同州でデルタ変異株が他を凌駕するようになった今年5月から7月にはそれ以前の92%から80%に落ち込んでいました4)。ただしデルタ変異株が跋扈する現在でもワクチンの重症化予防は依然として健在です。たとえばニューヨーク州のデータではワクチンはCOVID-19による入院の95%近くを防いでいます4)。イスラエルのデータでは、ワクチンは50歳までの比較的若い人の92%、50歳を超えるより高齢の人の85%の重症化を防いでいます5)。重症化が防げているからこれまで通りで十分とする向きがある一方で軽症のCOVID-19予防効果をワクチン追加接種で底上げする価値はあるとみる専門家もいます。イェール大学の岩崎 明子(Iwasaki Akiko)氏はその一人で、とくに心配な人へのワクチン接種が第一なことは言うまでもないが、もしワクチンの備えに余裕があるなら追加接種は価値があると考えています。ワクチン接種完了にもかかわらず感染した人のウイルス量は年齢を問わず多く、たとえば20歳代でさえ多めです。ゆえに防御免疫を底上げしてウイルスを抑制することは感染の伝播阻止に貢献するでしょう。防御免疫の底上げはCOVID-19感染後の長引く症状(後遺症)の予防にも役立ちそうです。COVID-19後遺症はワクチン接種完了者の感染後にも生じうることが知られています。ワクチン接種完了者の感染後のCOVID-19後遺症の発現率がたとえわずか1%だったとしてもその危険性は無視できるものではなく、COVID-19後遺症を防ぐための手を尽くす必要があると岩崎氏は言っています1)。イスラエルではすでにPfizerのCOVID-19ワクチンの3回目接種が始まっていてその効果の片鱗が伺えるようになっています。同国の人口930万人の約4人に1人を受け持つ医療提供会社Maccabiの先週水曜日の発表によると、60歳を超える人の3回目接種はその1週間後からの感染の86%を防いでいます6)。イスラエル保健省もこの週末に3回目接種の予防効果改善を発表しています7)。追加接種に理想的なワクチン追加接種をするのであれば当面はイスラエルがそうであるように手持ちのワクチンが使われるでしょうが、これからを見据えるならデルタ変異株のみならずコロナウイルス全般に有効なワクチン接種手段が開発できれば理想的です。そういう理想的なワクチンの設計のヒントとなりそうな試験結果が先週のNEJM誌に報告されています8)。目下のCOVID-19流行を引き起こしているサルベコウイルスの一員・SARS-CoV-2とゲノム配列がおよそ80%一致する別のサルベコウイルス・SARS-CoVはより凶悪で、約20年前の2002~03年に8,000人超の感染を招き、それらの10人に1人近い700人超を死に追いやりました。そのSARS-CoV感染(SARS)を切り抜けて生き残り、Pfizer/BioNTechのCOVID-19ワクチンBNT162b2接種を最近済ませた8人の血液を調べたところSARS-CoV中和抗体が向上していました。そして驚くべきことに、既知のヒト感染SARS-CoV-2変異株・アルファ、ベータ、デルタのみならずコウモリやセンザンコウが保有するヒトに感染可能と思しきコロナウイルスの数々も阻止しうる汎サルベコウイルス中和抗体一揃いも備わっていました8)。調べた8人はSARS-CoV感染の後にSARS-CoV-2に対するmRNAワクチンを接種しました。逆にSARS-CoV-2に対するワクチンをまず接種して次にSARS-CoVに対するワクチンを接種することでも8人と同様に汎サルベコウイルス中和抗体が備わるかどうかを今後調べる必要があります。もしその接種の順番で汎サルベコウイルス中和抗体が備わるならSARS-CoV-2ワクチン接種が完了した人へ追加接種として理想的なのはSARS-CoVへのワクチンとなるかもしれません。参考1)Do Delta ‘breakthroughs’ really mean vaccine protection is waning, and are boosters the answer? / Science2)Effectiveness of Pfizer-BioNTech and Moderna Vaccines in Preventing SARS-CoV-2 Infection Among Nursing Home Residents Before and During Widespread Circulation of the SARS-CoV-2 B.1.617.2 (Delta) Variant - National Healthcare Safety Network, March 1-August 1. Morbidity and Mortality Weekly Report (MMWR) August 18, 2021. 3)Impact of Delta on viral burden and vaccine effectiveness against new SARS-CoV-2 infections in the UK / COVID-19 Infection Survey4)New COVID-19 Cases and Hospitalizations Among Adults, by Vaccination Status - New York, May 3-July 25, 2021. Morbidity and Mortality Weekly Report (MMWR) August 18, 2021. 5)Israeli data: How can efficacy vs. severe disease be strong when 60% of hospitalized are vaccinated? / Covid-19 Data Science6)Third Pfizer dose 86% effective in over 60s, Israeli HMO says / Reuters7)Israel finds COVID-19 vaccine booster significantly lowers infection risk / Reuters8)Tan CW,et al. N Engl J Med. 2021 Aug 18. [Epub ahead of print]

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コロナワクチン接種後の脳静脈血栓症、VITT併存で重症化/Lancet

 新型コロナウイルス感染症(COVID-19)ワクチン接種後の脳静脈血栓症は、ワクチン起因性免疫性血栓性血小板減少症(VITT)が併存すると、これを伴わない場合に比べより重症化し、非ヘパリン抗凝固療法や免疫グロブリン療法はVITT関連脳静脈血栓症の転帰を改善する可能性があることが、英国・国立神経内科・脳神経外科病院のRichard J. Perry氏らCVT After Immunisation Against COVID-19(CAIAC)collaboratorsの調査で示された。研究グループは、これらの知見に基づきVITT関連脳静脈血栓症の新たな診断基準を提唱している。研究の成果は、Lancet誌オンライン版2021年8月6日号で報告された。VITT有無別の転帰を評価する英国のコホート研究 CAIAC collaboratorsは、VITTの有無を問わず、ワクチン接種後の脳静脈血栓症の特徴を記述し、VITTの存在がより不良な転帰と関連するかを検証する目的で、多施設共同コホート研究を行った(特定の研究助成は受けていない)。 COVID-19ワクチン接種後に脳静脈血栓症を発症した患者の治療に携わる臨床医に対し、ワクチンの種類や接種から脳静脈血栓症の症状発現までの期間、血液検査の結果にかかわらず、すべての患者のデータを提示するよう要請が行われた。 脳静脈血栓症患者の入院時の臨床的特徴、検査結果(血小板第4因子[PF4]のデータがある場合はこれを含む)、画像所見が収集された。除外基準は設けられなかった。 VITT関連の脳静脈血栓症は、入院期間中の血小板数の最低値が<150×109/L、Dダイマー値が測定されている場合はその最高値が>2,000μg/Lと定義された。 主要アウトカムは、VITTの有無別の、入院終了時に死亡または日常生活動作が他者に依存している患者(修正Rankinスコア3~6点[6点=死亡])の割合とされた。また、VITTの集団では、International Study on Cerebral Vein and Dural Sinus Thrombosis(ISCVT)に登録された脳静脈血栓症の大規模コホートとの比較が行われた。主要アウトカム:47% vs.16% 2021年4月1日~5月20日の期間に、英国43施設の共同研究者から脳静脈血栓症99例のデータが寄せられた。このうち4例は、画像で脳静脈血栓症の明確な所見が得られなかったため解析から除外された。残りの95例のうち、70例でVITTが認められ、25例は非VITTであった。 年齢中央値は、VITT群(47歳、IQR:32~55)が非VITT群(57歳、41~62)よりも低かった(p=0.0045)。女性はそれぞれ56%および44%含まれた。ISCVT群は624例で、年齢中央値37歳(VITT群との比較でp=0.0001)、女性が75%(同p=0.0007)を占めた。 ChAdOx1(Oxford-AstraZeneca製)ワクチンの1回目接種後に脳静脈血栓症を発症した患者が、VITT群100%(70例)、非VITT群84%(21例、残り4例のうち3例はBNT162b2[Pfizer-BioNTech製]の1回目接種後、1例は同2回目接種後)であり、接種から脳静脈血栓症発症までの期間中央値はそれぞれ9日(IQR:7~12)、11日(6~21)だった。 VITT関連脳静脈血栓症群は非VITT関連脳静脈血栓症に比べ、血栓を形成した頭蓋内静脈数中央値が高く(3[IQR:2~4]vs.2[2~3]、p=0.041)、頭蓋外血栓症の頻度が高かった(44%[31/70例]vs.4%[1/25例]、p=0.0003)。 退院時に修正Rankinスコアが3~6点の患者の割合は、VITT群が47%(33/70例)と、非VITT群の16%(4/25例)に比べて高かった(p=0.0061)。また、VITT群におけるこの有害な転帰の頻度は、非ヘパリン抗凝固療法を受けた集団が受けなかった集団に比べて低く(36%[18/50例]vs.75%[15/20例]、p=0.0031)、直接経口抗凝固薬投与の有無(18%[4/22例]vs.60%[29/48例]、p=0.0016)および静脈内免疫グロブリン投与の有無(40%[22/55例]vs.73%[11/15例]、p=0.022)でも有意な差が認められた。 著者は、「VITT関連脳静脈血栓症は他の脳静脈血栓症に比べ転帰が不良であることが明らかとなったが、VITTはChAdOx1ワクチン接種によるきわめてまれな副反応であり、COVID-19に対するワクチン接種の利益はリスクをはるかに上回る」としている。

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アルコール依存症に対するナルメフェンの安全性と治療継続率

 アルコール依存症に対するナルメフェンの安全性と治療継続率を評価するため、英国・Castle Craig HospitalのJonathan Chick氏らは、2つの市販後研究を基に評価を行った。Alcohol and Alcoholism誌オンライン版2021年7月1日号の報告。 START研究(EUPAS5678)およびマルチデータベースレトロスペクティブコホート(MDRC)研究(EUPAS14083)の2つの研究を評価した。START研究は、ナルメフェン治療を開始した外来患者を対象とした18ヵ月の非介入多国間プロスペクティブコホート研究(フォローアップ受診:8回)である。MDRC研究では、ドイツ、スウェーデン、英国の医療データベースより、ベースラインデータおよびフォローアップデータを収集した。両研究ともに、明確な除外基準は設けず、すべての患者を対象とした。高齢者(65歳以上)および重大な精神的および/または身体的併存疾患を有する患者によるサブグループ解析を行った。 主な結果は以下のとおり。・START研究では、ナルメフェンによる平均治療期間は10.3±7.3ヵ月(1,348例)、1年以上治療を継続していた割合は49.0%であった。治療中止の主な理由は、治療目標達成と薬剤費の問題であった。・主な副作用は、悪心(4.7%)、めまい(3.2%)、不眠(2.0%)であった。・副作用発現率は、高齢者で18.6%とより高い傾向にあったが(全体集団:12.0%)、他のサブグループでは違いが認められなかった。・MDRC研究では、2,892例を18ヵ月間以上フォローアップしたところ、ナルメフェン治療期間は2~3ヵ月、1年以上のナルメフェン治療率は5%未満であった。 著者らは「高齢者や併存疾患を有する患者を含む幅広い患者を対象とした研究であるにもかかわらず、日常診療におけるナルメフェン治療の安全性および忍容性プロファイルは、臨床研究での評価と一致していた。両試験における治療率の違いは、方法論の違いを反映している可能性があり、フォローアップ受診による心理社会的サポートとの関連が示唆された」としている。

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HER2陽性早期乳がんへのトラスツズマブの上乗せ効果~メタ解析/Lancet Oncol

 HER2陽性早期乳がんに対する補助化学療法へのトラスツズマブ上乗せによる再発率と死亡率への長期的ベネフィットについて、Early Breast Cancer Trialists’ Collaborative group(EBCTCG)が7つの無作為化試験のメタ解析により検討した。その結果、トラスツズマブ上乗せにより、患者および腫瘍の特徴にかかわらず、乳がん再発率を34%、乳がん死亡率を33%減少させたことが示唆された。Lancet Oncology誌2021年8月号に掲載。 本研究は、化学療法+トラスツズマブを化学療法のみと比較した無作為化試験における個々の症例データのメタ解析。リンパ節転移なしまたはありの手術可能な乳がん女性を登録した無作為化試験が含まれる。ベースラインの特徴、最初の遠隔再発と局所再発もしくは2次発がんの日付と部位、死亡の日付と原死因について、各症例のデータを収集した。主要アウトカムは、乳がん再発率、乳がん死亡率、再発なしの死亡率、全死亡率とした。年齢、リンパ節転移の有無、エストロゲン受容体(ER)の状態、試験で層別化し、ITT集団で解析した。トラスツズマブ併用群と化学療法単独群の年間イベント発生率比(RR)とその信頼区間(CI)をlog-rank検定を用いて推定した。 主な結果は以下のとおり。・選択基準を満たした無作為化試験は7件、計1万3,864例で、2000年2月~2005年12月に登録された。・予定治療期間の平均は14.4ヵ月、観察期間中央値は10.7年(四分位範囲:9.5~11.9)だった。・化学療法単独よりトラスツズマブ併用のほうが、乳がんの再発リスク(RR:0.66、95%CI:0.62~0.71、p<0.0001)および乳がん死亡リスク(RR:0.67、95%CI:0.61~0.73、p<0.0001)が低かった。10年での再発率は絶対値で9.0%(95%CI:7.4~10.7、p<0.0001)減少し、乳がん死亡率では6.4%(95%CI:4.9~7.8、p<0.0001)減少、全死亡率では6.5%(95%CI:5.0~8.0、p<0.0001)減少した。再発なしの死亡率は増加しなかった(0.4%、95%CI:-0.3~1.1、p=0.35)。・トラスツズマブ上乗せによる再発率の減少は、無作為化後0~1年で最大であり(RR:0.53、99%CI:0.46〜0.61)、2〜4年(RR:0.73、99%CI:0.62〜0.85)および5~9年(RR:0.80、99%CI:0.64~1.01)ではベネフィットが継続し、10年目以降はほとんどフォローアップされていなかった。また、患者および腫瘍の特徴(ERの状態含む)にかかわらず、同様だった。

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ネットワークメタ解析・システマティックレビューは語る―スタチンの1次治療は副作用を考慮しても病気予防に利得あり―(解説:島田俊夫氏)

 スタチンは高コレステロール血症の2次治療に広く使われ、有害作用として横紋筋融解症が最もよく知られている。利益・損失をトレードオフの視点から見ると利益が勝るエビデンスが多く、2次治療は素直に受け入れられている。逆に、まったく自覚症状のない1次治療は患者の多くが自分が病になる実感もなく、高リスクに晒されているとの懸念もなく、マスメディアの影響を受けやすい1)。そのうえ、スタチンの1次治療はエビデンスが乏しいこともあり、治療を受ける患者を納得させにくい。 高コレステロール血症に対するスタチンによる1次治療のエビデンスは、既存データを巧みに利用するネットワーク・メタアナリシス(NMA)/システマティックレビュー(SYSR)の利用に注目が集まっている2)。 2021年6月10日にBMJに発表されたTing Cai氏らの論文は、NMA/SYSRに基づく高コレステロール血症の1次治療目的での大規模な無作為化比較試験(RCT)を選択・吟味してNMAを行った報告である。時宜を得た研究で臨床の立場から興味深く、私見を交え解説する。 本研究はRCT62件、約12万例、追跡期間平均3.9年の研究に基づくネットワークメタ解析で心血管疾患の既往のない成人を対象にスタチン群と非投与群を比較検討し、さらに投与量、種類の異なるスタチン治療を比較してRCTを特定した。主要評価項目は一般的有害事象:自己申告による筋症状、臨床的に確認された筋障害、肝機能障害、腎機能不全、糖尿病、眼症状、および副次評価項目は有効性指標としての心筋梗塞、脳卒中と心血管疾患死亡とした。 データ解析はペアワイズメタ解析を行い、スタチン群と非投与群の評価項目のオッズ比、95%信頼区間を算出し、1年間治療を受けた患者1万人当たりのイベント数の絶対リスク差を推定した。さらに、スタチンの種類による有害事象を比較するためにネットワークメタ解析を行い、Emaxモデルで有害事象の用量反応性を評価した。 アトルバスタチン、lovastatin、ロスバスタチンは有害事象との関連は認めたが種類による差はなかった。肝機能障害に関してはアトルバスタチンで用量反応性の関与が認められたが、残りのスタチンに関しての結論は出ていない。副次評価項目はフォレストプロットに示すごとく有意に抑制されている。 スタチンの1次治療に関しては将来、起こりうるイベントの抑制効果を予測することは困難でしかも重要なうえにRCTによる前向き研究で実証するには多くの費用・時間・患者の参加が必要となる。それゆえNMA/SYSRによる手法への期待は大きい。本論文は1次治療における薬物治療の評価法に一石を投じるNMA/SYSRのこれから利用の道しるべになると考える。1次治療においても軽度の副作用はあるが利益が勝るため投与を拒む理由はないと結論している。

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耳内ゴキブリの1例【Dr. 倉原の“おどろき”医学論文】第192回

耳内ゴキブリの1例ぱくたそより使用やべぇ……。タイトルを読んだ時点でやべぇ……。ついに来ましたよ、G論文が!(G=ゴキブリ)Tsunoda K, et al.An Uninvited Guest in the EarAm Fam Physician . 2000 May 1;61(9):2606, 2611.40歳の男性が、突然の耳鳴りと左耳の激しい痛みで病院を受診しました。どうやら、眠っているあいだにこの症状が出たようで、どうやら外耳道に虫が詰まっているようです。どれどれ診せてごらん、と主治医は耳をのぞきこみました。あれ、思ったよりデカイんですけど、なんですかこの虫は。そもそも自分で取らなかったのか?と思われるかもしれませんが、耳内異物が虫の場合、引っ張って取らないのが鉄則です。まずはオリーブオイルなどで殺してしまうのがよいとされています。よくわからなかったので病院に来た患者さん、それは正解です。さて、耳から液体を流し込んで、虫くんを殺しました。さて、どんな虫かなー。ま、タイトルに書いているんですが……、初見ということにして。い、いやあああああーーーーー!!!!ゴキブリーーーーーー!!!!しかし主治医は冷静で、そこで叫ばない。患者さんには「かわいい虫がいましたよ」と伝えて、ゴキブリとは決して言わなかったそうです。論文中にはこんなことが書いています。「これで患者は快適に眠ることができます。え?ゴキブリはどうしたかって?彼はホルマリンで寝てるよ」。オリーブオイルなどで虫を中で殺してから除去するというのが一般的ですが、光で外におびきおよせるという方法もあるそうです。しかし、ゴキブリはバックできません。入ったらもう耳の奥へと突き進むのみです。エビデンスもへったくれもないので、無事に取り出せればそれでよいのですが、もしトゲのある肢が耳内に残存していると、これがあとあと感染を起こすこともあるそうです1)。1)Supiyaphun P, et al. Acute otalgia: a case report of mature termite in the middle ear. Auris Nasus Larynx 2000;27:77-8.

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免疫不全者へのブースター接種、推奨事由と対象者/CDC

 米国・疾病対策センター(CDC)は免疫不全者を対象としたCOVID-19ワクチンの追加接種(ブースター接種)の承認を受け、8月16日付でサイトの情報を更新した。主な内容は以下のとおり。・中等度から重度の免疫不全状態にある人はCOVID-19に感染しやすく、重症化、長期化するリスクも高いとされる。これらの人にはワクチンの追加接種が有効であり、接種を推奨する。・mRNAワクチン(ファイザー製およびモデルナ製)の2回目の接種から少なくとも28日経ってから追加接種を行うことを推奨する。・現時点では、他の集団に対する追加接種は推奨しない。 中等度から重度の免疫不全者は成人人口の約3%を占めており、ワクチン接種後の抗体価が十分でないケースが報告1)されている。小規模な研究2)では、ワクチン接種完了後に感染するブレークスルー感染における入院患者の大多数を免疫不全者が占め、免疫不全者が家庭内の接触者にウイルスを感染させる可能性が高いことが示唆されている。 免疫不全者の定義は以下のとおり。・腫瘍や血液のがんに対する積極的ながん治療を受けている。・臓器移植を受け、免疫抑制剤を服用している。・過去2年以内に造血幹細胞移植を受けた、または免疫抑制剤を服用している・中等度または重度の原発性免疫不全症(DiGeorge症候群、Wiskott-Aldrich症候群など)。・進行または未治療のHIV感染症患者・大量のコルチコステロイドまたは免疫抑制の可能性のある薬剤を服用1)Science Brief: COVID-19 Vaccines and Vaccination/CDC2)Data and clinical considerations for additional doses in immunocompromised people/CDC

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AZ製ワクチンによるVITTの臨床的特徴とは?/NEJM

 ワクチン誘発性免疫性血栓性血小板減少症(VITT)による死亡率は高く、とくに血小板数が低く頭蓋内出血を起こした患者で最も高いことが、英国のVITT 220例の検証の結果、明らかとなった。英国・Oxford University Hospitals NHS Foundation TrustのSue Pavord氏らが、報告した。VITTは、新型コロナウイルス感染症(COVID-19)の原因ウイルスSARS-CoV-2に対するChAdOx1 nCoV-19ワクチン(アストラゼネカ製)に関連した新たな症候群で、この疾患に対する臨床特性や予後に関するデータは不足していた。結果を踏まえて著者は、「治療法は不明なままであるが、予後マーカーの特定が今後の有効な管理に役立つ可能性がある」とまとめている。NEJM誌オンライン版2021年8月11日号掲載の報告。VITT(definite/probable)220例について解析 研究グループは2021年3月22日~6月6日に、英国の病院を受診したVITTの疑いのある患者を対象に、前向きコホート研究を実施した。 匿名化された電子フォームを用いてデータを収集し、事前に定義した基準に従ってdefinite/probable VITT症例を特定し、ベースラインの患者特性と臨床病理学的特徴、リスク因子、治療、および予後不良マーカーについて解析した。 評価対象となった患者は294例で、このうち研究グループによってdefinite VITTと判定された患者は170例、probable VITT患者は50例であった。ベースラインの血小板数と頭蓋内出血の存在が死亡リスク増加の独立因子 definite/probable VITTと判定された220例全例が、ChAdOx1 nCoV-19ワクチンの初回接種後に発症していた。ワクチン接種後発症までの日数は、5~48日(中央値14日)であった。年齢は18~79歳(中央値48歳)で、男女差はなく、特定可能な医学的リスク因子もなかった。 全体の死亡率は22%であった。死亡オッズは、脳静脈洞血栓症の患者で2.7倍(95%信頼区間[CI]:1.4~5.2)、ベースラインの血小板数が50%減少するごとに1.7倍(95%CI:1.3~2.3)、ベースラインのDダイマー値が1万FEU(フィブリノゲン換算量)増加するごとに1.2倍(95%CI:1.0~1.3)、ベースラインのフィブリノゲン値が50%低下するごとに1.7倍(95%CI:1.1~2.5)にそれぞれ増大することが示された。 多変量解析の結果、ベースラインの血小板数と頭蓋内出血の存在が死亡と独立して関連していることが認められた。観察された死亡率は、血小板数3万/mm3かつ頭蓋内出血を認めた患者では73%であった。 なお、著者は本研究の限界について、「症例確認バイアスが潜在的な弱点として挙げられる。VITTは新しい症候群であり、病態生理が十分に理解されていないため、真のVITTではない症例が含まれている可能性や、入院時の血小板数が基準を満たしておらず見逃されてしまった症例がほかにもある可能性も考えられる」と述べている。

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AZワクチンとRNAワクチンによるハイブリッド・ワクチンの効果と意義 (解説:山口佳寿博氏/田中希宇人氏)

対象論文【NEJM】Heterologous ChAdOx1 nCoV-19 and mRNA-1273 Vaccinationハイブリッド・ワクチンの原型-Gam-COVID-Vac(Sputnik V) priming(1回目接種)とbooster(2回目接種)に異なるワクチンを使用する方法は“異種ワクチン混在接種(heterologous prime-boost vaccine)”と呼称されるが、本論評では理解を容易にするため“ハイブリッド・ワクチン接種”と命名する。この特殊な接種に使用されるワクチンの原型は、adenovirus(Ad)-vectored vaccineとして開発されたロシアのGam-COVID-Vac(Sputnik V)である(山口. CareNet 論評-1366)。Gam-COVID-Vacでは、priming時にヒトAd5型を、booster時にはヒトAd26型をベクターとして用いS蛋白に関する遺伝子情報を生体に導入する特殊な方法が採用された。ChAdOx1(AstraZeneca)など同種のAdを用いたワクチンでは1回目のワクチン接種後にベクターであるAdに対する中和抗体が生体内で形成され、2回目ワクチン接種後にはAdに対する中和抗体価がさらに上昇する(Ramasamy MN, et al. Lancet. 2021;396:1979-1993.、Stephenson KE, et al. JAMA. 2021;325:1535-1544.)。そのため、同種Adワクチンでは2回目のワクチン接種時にS蛋白に対する遺伝子情報の生体導入効率が低下、液性/細胞性免疫に対するbooster効果の発現が抑制される。一方、1回目と2回目のワクチン接種時に異なるAdをベクターとして用いるハイブリッドAdワクチンでは2回目のワクチン接種時のS蛋白遺伝子情報の生体への導入効率は同種Adワクチンの場合ほど抑制されず、ハイブリッドAdワクチンの予防効果は同種Adワクチンよりも高いものと考えられる。実際、従来株に対する発症予防効果は、ハイブリッドAdワクチンであるGam-COVID-Vacで91.1%(Logunov DY, et al. Lancet. 2021;397:671-681.)、同種AdワクチンであるChAdOx1で51.1%(ワクチンの接種間隔:6週以内)、あるいは、81.3%(ワクチン接種間隔:12週以上)であり(Voysey M, et al. Lancet. 2021;397:881-891.)、同種Adワクチン接種に比べハイブリッドAdワクチン接種のほうがウイルスに対する予防効果が高いことが示されている。Ad-vectored ChAdOx1とRNAワクチンによるハイブリッド・ワクチン 以上のような結果を踏まえ、ChAdOx1の使用量が多い欧州諸国(ドイツ、フランス、スウェーデン、ノルウェー、デンマークなど)ではprimingのための1回目接種時にChAdOx1を用い2回目接種時にはより高いbooster効果を得るためにRNAワクチンを用いる方法が模索されている(European Centre for Disease Prevention and Control. 2021年5月18日)。本論評では、Normark氏らの論文ならびにBorobia氏らの論文を基に、ChAdOx1にmRNA-1273(Moderna)、あるいは、ChAdOx1にBNT162b2(Pfizer)を追加するハイブリッド・ワクチン接種時の液性免疫、細胞性免疫の動態について検証する。 Normark氏らは、スウェーデンで分離されたコロナ原株とbeta株(南アフリカ株、B.1.351)における中和抗体価を、ChAdOx1を2回接種する同種ワクチン接種の場合と1回目ChAdOx1(priming)、2回目mRNA-1273(booster)を接種するハイブリッド・ワクチン接種の場合について検討した。ChAdOx1の同種ワクチン接種における原株に対する中和抗体価は2回目接種後に2倍増強、しかしながら、beta株に対する中和抗体価には有意な上昇を認めなかった。一方、ハイブリッド・ワクチン接種では、原株に対する中和抗体価が20倍増強、beta株に対する中和抗体価も原株に対するほどではないものの有意に上昇した。以上の結果は、ChAdOx1の同種ワクチン接種に比べChAdOx1にmRNA-1273を追加するハイブリッド・ワクチン接種のほうが液性免疫の面からはより優れた方法であることを示唆する。delta株(インド株、B.1.617.2)に対する検討はなされていないが、beta株とdelta株の液性免疫回避作用には著明な差が存在しないので(Wall EC, et al. Lancet. 2021;397:2331-2333.)、Normark氏らの結果はdelta株にも当てはまるものと考えてよいだろう。残念なことに、Normark氏らは、ハイブリッド・ワクチン接種におけるT細胞由来の細胞性免疫の動態については解析していない。 Borobia氏らは、primingのための1回目にChAdOx1、boosterのための2回目にBNT162b2を接種するハイブリッド・ワクチンを使用し、液性免疫(RBDに対する特異的IgG抗体、S蛋白に対する特異的IgG抗体、中和抗体)、IFN-γを指標とした細胞性免疫の推移を観察した(CombiVacS Study)。対照群としてChAdOx1を1回接種した症例を設定しているためChAdOx1同種ワクチン接種とChAdOx1とBNT162b2によるハイブリッド・ワクチン接種の差を検出できない、中和抗体もいかなるウイルス株に対するものなのかが判然としない、などの問題点を有する論文であるが、ハイブリッド・ワクチン接種群ではRBD特異的IgG抗体、中和抗体、細胞性免疫の上昇が確認された。文献的にChAdOx1同種ワクチン接種の場合、1回目接種後にT細胞性反応は上昇するが2回目接種後にはさらなる上昇を認めないことが報告されている(Folegatti PM, et al. Lancet. 2020;396:467-478.)。それ故、Normark氏らの論文とBorobia氏らの論文を併せ考えると、ChAdOx1とRNAワクチンを組み合わせたハイブリッド・ワクチン接種は、ChAdOx1のみを使用した同種ワクチン接種よりも液性免疫、細胞性免疫の両面で優れているものと考えられる。 現時点では、Ad-vectored ChAdOx1とRNAワクチンを組み合わせたハイブリッド・ワクチン接種とRNAワクチンの同種2回接種による予防効果を直接比較・検討した臨床試験は存在しない。それ故、変異株を含めたコロナ感染症に対する臨床的予防効果が両者において差が存在するかどうかに関しては今後の検討課題である。ハイブリッド・ワクチンの医療経済的効果 ワクチンの2回接種に必要な費用は、RNAワクチンに比べChAdOx1では5~10倍安い。PfizerのRNAワクチンは37~39ドル、ModernaのRNAワクチンは30~74ドル、AstraZenecaのChAdOx1は6~8ドルである(So AD, et al. BMJ. 2020;371:m4750.)。すなわち、ChAdOx1を基礎としたハイブリッド・ワクチン接種は、RNAワクチン2回接種に比べワクチン確保に必要な費用を下げるという医療経済的効果を有する。コロナ感染症がいつまで続くかが見通せない現在、また、変異株抑制のために3回目のワクチン接種が必要になる可能性が指摘されている現在(Wu K, et al. medRxiv. 2021 May 6.)、ワクチン確保のために費やされる世界各国の出費はさらに膨大なものになることが予想される。それ故、医学的側面に加え医療経済的側面からも今後のワクチン行政を考えていく必要があるものと論評者らは考えている。

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ヘパリン増量では対応できない重症新型コロナウイルス感染症(解説:後藤信哉氏)

 新型コロナウイルス感染に対して1~2年前よりは医療サイドの対策は進んでいる。肺を守るステロイド、ECMOなどは状況に応じて広く使用されるようになった。しかし、血栓性合併症についての十分な治療が確立されていない。われわれの経験した過去の多くの血栓症ではヘパリンが有効であった。ヘパリンは内因性のアンチトロンビンIIIの構造を変換して効果を発揮するので、人体に凝固系が確立されたころから調節系として作用していたと想定される。心筋梗塞、不安定狭心症、静脈血栓症など多くの血栓症にヘパリンは有効であった。ヘパリンの有効性、安全性については重層的な臨床エビデンスがある。ヘパリンを使えない血栓症は免疫性ヘパリン惹起血小板減少・血栓症くらいであった。 重症の新型コロナウイルス感染症では、わらにもすがる思いで治療量のヘパリンを使用した。しかし、治療量と予防量のヘパリンを比較する本研究は1,098例を登録したところで中止された。最初から治療量のヘパリンを使用しても生存退院は増えず、ECMOなどの必要期間も変化しなかった。 新型コロナウイルス肺炎が注目された当初、ECMO症例の予後改善の一因にヘパリン投与の寄与が示唆された。本試験は治療量のヘパリンへの期待を打ち砕いた。 本研究は比較的軽症の新型コロナウイルス感染症に対する予防量、治療量のヘパリンのランダム化比較試験と同時に発表された。筆者の友人のHugo ten Cate博士が両論文を包括して「Surviving Covid-19 with Heparin?」というeditorialを書いている。Hugo ten Cate博士が指摘するように、重症化した新型コロナウイルス感染では免疫、細胞、など凝固系以外の因子が複雑に関与した血栓になっているのであろう。早期の血栓にはそれなりに有効なヘパリンも複雑系による血栓には無力であるとの彼の考えは、揺らぎの時期とpoint of no returnを超えた時期を有する生命現象の本質を突いていると思う。

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コロナ禍で導入されたフェローシップのzoom面接、メリットとデメリットは?【臨床留学通信 from NY】第24回

第24回:コロナ禍で導入されたフェローシップのzoom面接、メリットとデメリットは?前回述べたように、フェローシップの出願作業は、必要な書類を揃え、ERASに自身でアップロードできるものは行い、recommendation letterは推薦人にアップロードしてもらえば完成です。昨年は、コロナの影響で少し遅れて8月12日よりプログラム側がアプライされた書類を見ることができ、そこから候補者のスクリーニングが始まるため、とにもかくにもその期日までに必要な作業を完遂するのが肝要です。遅れての提出も可能ですが、プログラムによっては遅れた書類は受付不可、あるいは届いても目も通してくれない可能性もあります。とにかく1つのプログラムで平均5~7spotのフェローのポジションに対し、800通前後の書類が届くので、プログラム側も米国医学部卒業 vs. 外国人、USMLEの点数、卒後年数、有名大学病院 vs.市中病院などで容赦なくふるいをかけてくるため、なかなか私としては不利な状況が予想されました。しかし、やるべきことを終えた後は連絡をじっと待つのみ。面接に進めば、登録したメールおよびERAS側のメールボックスに複数の日付を指定され、その中から選ぶ形です。とにかく面接に呼ばれないことには始まらず、ひたすら届いたメールをチェックし、ようやく届いても「お断り」メールだったりして、まさに一喜一憂です。コロナ禍にあった昨年はzoom面接のみで移動の必要がなかったので、そこまで厳密に日程調整を考える必要がなく、それこそ呼ばれた端から予定を入れるという感じでした。私の場合、書類を出した190のプログラムのうち16プログラムから面接に呼ばれました(16/190と考えると少ないですが、10以上あれば外国人であってもアンマッチはないとされていたので、多少は安心感をもって臨めました)。なお、内科レジデントのローテーションスケジュールは、主に病棟・外来・選択科に分かれていて、病棟でなければ面接のために休んでもいいとされていました。幸いにも私の面接はいずれも病棟勤務と被らなかったので、比較的容易にスケジュールを組むことができました。もし、病棟勤務だった場合は、誰か変わりを探さなければいけません。日本では、研修医が所用で休んでも回るはずですが、米国の場合は研修医が主に雑務を担っているので、抜けると現場が回らないようになっています。言い方を変えると、指導医であっても仕事の肩代わりをしてくれないということです。昨年はzoomでしたが、例年ならば東海岸から西海岸などに移動しなければならず、なおさら大変だっただろうと思います。移動がないという点で楽だった一方、zoom面接ならではの現象もありました。引く手あまたな有力な候補者であっても、移動しなくて良いためにあえて面接を絞り込まずに受けるため、例年ならば出るキャンセル枠が減ったことです。さらにCardiologyに限って見ると、例年より15%ほど候補者が増えており、上位者以外はかなり厳しい状況でした。Column画像を拡大する3年間の集大成の論文が米国心臓病学会の雑誌であるJournal of American College of Cardiology (Impact factor=24)に共同筆頭著者および責任著者として掲載されました。内科レジデントをしながら2つの論文をJACC誌に出せたのは嬉しいかぎりです。Cardiology fellowとしての生活が先月から始まり、レジデントより忙しくなっていますが、さらに精進していきたいと思います。

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