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futibatinib、既治療のFGFR2融合/再構成陽性肝内胆管がんに有望/NEJM

 既治療のFGFR2融合または再構成陽性の肝内胆管がん患者の治療において、次世代共有結合型FGFR1~4阻害薬であるfutibatinibは、測定可能な臨床的有用性をもたらし、奏効や生存が過去の化学療法のデータより優れ、QOLも良好であることが、米国・スタンフォード大学医学大学院のLipika Goyal氏らが実施した「FOENIX-CCA2試験」で示された。研究の成果は、NEJM誌2023年1月19日号に掲載された。13ヵ国の多施設共同非盲検単群第II相試験 FOENIX-CCA2は、日本を含む13ヵ国47施設が参加した非盲検単群第II相試験であり、2018年4月~2019年11月の期間に患者登録が行われた(Taiho OncologyとTaiho Pharmaceuticalの助成を受けた)。 対象は、年齢18歳以上、切除不能または転移性のFGFR融合陽性またはFGFR再構成陽性の肝内胆管がんを有し、1ライン以上の全身療法(FGFR阻害薬を除く)を受けた後に病勢が進行し、全身状態が良好な患者(Eastern Cooperative Oncology Group[ECOG] performance-status[PS]スコア0~1)であった。 被験者は、21日を1サイクルとする継続投与レジメンで、futibatinib 20mg(4mg錠剤×5錠)を1日1回経口投与された。 主要評価項目は、独立の中央判定による客観的奏効(完全奏効、部分奏効)であった。奏効率42%、無増悪生存期間(PFS)9.0ヵ月、全生存期間(OS)21.7ヵ月 日本人14例を含む103例(年齢中央値58歳[範囲:22~79]、女性56%)が登録された。前治療として53%が2つ以上の全身療法を受けていた。追跡期間中央値は17.1ヵ月(範囲:10.1~29.6)、治療期間中央値は9.1ヵ月であった。画像上または臨床的な病勢進行で72例(70%)が投与中止となったが、有害事象による投与中止は5%と少なかった。 奏効は、43例(42%、95%信頼区間[CI]:32~52)で達成され、完全奏効が1例含まれた。病勢コントロールは85例(83%)で得られた。奏効期間中央値は9.7ヵ月(95%CI:7.6~17.0)で、奏効例43例のうち31例(72%)は6ヵ月以上、6例(14%)は12ヵ月以上奏効が持続した。奏効は、年齢65歳以上、前治療ライン数3以上、TP53変異が共存する患者を含むサブグループのすべてで認められた。 無増悪生存期間中央値は9.0ヵ月であり、6ヵ月無増悪生存率は66%、12ヵ月無増悪生存率は40%であった。また、全生存期間中央値は21.7ヵ月で、12ヵ月全生存率は72%だった。 最も頻度の高い全Gradeの治療関連有害事象は、高リン血症(85%)、脱毛(33%)、口腔乾燥(30%)、下痢(28%)、皮膚乾燥(27%)、倦怠感(25%)であった。また、最も頻度の高いGrade3の治療関連有害事象は、高リン血症(30%)、アスパラギン酸アミノトランスフェラーゼ上昇(7%)、口内炎(6%)、倦怠感(6%)だった。 futibatinibの恒久的な投与中止の原因となった治療関連有害事象は2例(2%)で認められた(Grade2の口内炎+Grade3の口腔異常感+Grade2の咽頭炎が1例、Grade3の食道炎が1例)。治療関連死はみられなかった。QOLについては、9ヵ月の治療期間を通じてEORTC QLQ-C30スコアが安定していた。 著者は、「これらのデータは、futibatinibが本症における測定可能な臨床的有用性を有することを確証し、FGFR2阻害に反応する可能性のある腫瘍の同定における分子プロファイリングの価値を示すものである」と指摘している。

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フルボキサミン、軽~中等症コロナの症状回復期間を短縮せず/JAMA

 軽症~中等症の新型コロナウイルス感染症(COVID-19)外来患者において、フルボキサミン50mgの1日2回10日間投与はプラセボと比較し回復までの期間を改善しないことが、無作為化二重盲検プラセボ対照プラットフォーム試験「ACTIV-6試験」の結果、示された。米国・Weill Cornell MedicineのMatthew W. McCarthy氏らが報告した。著者は、「軽症~中等症のCOVID-19患者に対して、50mg1日2回10日間のフルボキサミン投与は支持されない」とまとめている。JAMA誌2023年1月24日号掲載の報告。外来患者で、持続的回復までの期間をフルボキサミンvs.プラセボで評価 ACTIV(Accelerating COVID-19 Therapeutic Interventions and Vaccines)-6試験は、軽症~中等症のCOVID-19外来患者における既存治療転用を評価するようデザインされた完全遠隔法による分散型臨床試験で、参加者の募集は2021年6月11日に開始され、現在も継続中である。 研究グループは、米国の91施設において、SARS-CoV-2感染確認後10日以内で、COVID-19の症状(疲労、呼吸困難、発熱、咳、吐き気、嘔吐、下痢、体の痛み、悪寒、頭痛、喉の痛み、鼻の症状、味覚・嗅覚の異常のいずれか)のうち2つ以上が発現してから7日以内の、30歳以上の外来患者を、フルボキサミン(50mgを1日2回10日間投与)群またはプラセボ群に無作為に割り付けた。 主要アウトカムは持続的回復までの期間(少なくとも3日間連続して症状がないことと定義)、副次アウトカムは28日目までの入院・救急外来(urgent care)受診・救急診療部(emergency department)受診・死亡の複合、28日死亡率、28日目までの入院または死亡などを含む7項目とした。持続的回復までの期間は12日vs.13日、有意差なし 2021年8月6日~2022年5月27日の期間に、計1,331例(年齢中央値47歳[四分位範囲[IQR]:38~57]、女性57%、SARS-CoV-2ワクチン2回以上接種67%)が無作為化され、このうち1,288例(フルボキサミン群674例、プラセボ群614例)が試験を完遂した。 持続的回復までの期間の中央値は、フルボキサミン群12日(IQR:11~14)、プラセボ群13日(IQR:12~13)であり、持続的回復までの期間の改善に関するハザード比(HR、HR>1が有益であることを示す)は0.96(95%信用区間[CrI]:0.86~1.06、事後解析のp=0.21)であった。 28日目までの入院・救急外来受診・救急診療部受診・死亡の複合イベントは、フルボキサミン群で26例(3.9%)、プラセボ群で23例(3.8%)確認された(HR:1.1、95%CrI:0.5~1.8、事後解析のp=0.35)。28日目までの入院はフルボキサミン群1例、プラセボ群2例で、いずれの群も死亡例はなかった。 試験薬を少なくとも1回服用した患者において、有害事象の発現率はフルボキサミン群4.7%(29/615例)、プラセボ群5.3%(30/565例)であった。

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複雑性虫垂炎の術後抗菌薬投与2日間vs.5日間/Lancet

 複雑性虫垂炎に対する術後抗菌薬静脈内投与は、90日以内の感染性合併症または死亡に関して、2日間投与が5日間投与に対して非劣性であることが示された。オランダ・エラスムス大学医療センターのElisabeth M. L. de Wijkerslooth氏らが、同国15施設で実施したプラグマティックな非盲検無作為化非劣性試験「APPIC(antibiotics following appendicectomy in complex appendicitis)試験」の結果を報告した。複雑性虫垂炎に対する術後抗菌薬の適切な投与期間は明らかになっていない。抗菌薬耐性の脅威が世界的に高まっていることから、抗菌薬の使用を制限する必要があり、それによって副作用、入院期間や費用も削減できるとされている。著者は、「今回の結果は、豊富な資源がある医療環境で実施される腹腔鏡下虫垂切除術に適用される。この戦略により、抗菌薬の副作用の減少や入院期間の短縮が期待できる」とまとめている。Lancet誌オンライン版2023年1月17日号掲載の報告。術後90日以内の感染性合併症または死亡の複合で評価 研究グループは、年齢8歳以上、米国麻酔科学会の術前状態分類がI~IIIの複雑性虫垂炎(術中評価で壊死、穿孔または膿瘍を認める)患者を、2日間投与群または5日間投与群に施設で層別化して1対1の割合に無作為に割り付け、セフロキシム(1,500mgを1日3回)またはセフトリアキソン(2,000mgを1日1回)+メトロニダゾール(500mgを1日3回)を静脈内投与した。初回投与は虫垂切除術後8時間以内に行うこととし、小児(8~17歳)では体重により投与量を調節した。 主要エンドポイントは、虫垂切除術後90日以内の感染性合併症(米国疾病予防管理センターの定義に基づく腹腔内膿瘍および手術部位感染)または死亡の複合エンドポイントとし、年齢と虫垂炎の重症度を調整した絶対リスク差(95%信頼区間[CI])を求め、非劣性マージンは7.5%と設定した。 アウトカムの評価は電子患者記録、ならびに虫垂切除術後90日の電話による構造化面接相談に基づいて行った。有効性は、intention-to-treat(ITT)およびper-protocol集団で解析。安全性アウトカムは、ITT集団にて解析した。イベント発生率は2日間10% vs.5日間8%で非劣性 2017年4月12日~2021年6月3日の間に、1万3,267例がスクリーニングされ、適格基準を満たした1,066例が無作為に割り付けられた(2日間群533例、5日間群533例)。このうち、募集または同意に過誤のあった症例を除く1,005例(2日群502例、5日群503例)がITT解析集団となった。1,005例中955例(95%)で腹腔鏡下虫垂切除術が行われた。電話による追跡調査は1,005例中664例(66%)で完了した。 主要エンドポイントのイベントは、2日間群で51例(10%)、5日間群で41例(8%)発生した。年齢と虫垂炎の重症度で調整した絶対リスク差は2.0%(95%CI:1.6~5.6)であり、2日間投与の5日間投与に対する非劣性が示された。 合併症と再介入の割合は、2日間群と5日間群で同程度であった。 抗菌薬の副作用(主に悪心・嘔吐、下痢)は、2日間群9%(45/502例)、5日間群22%(112/503例)であり、2日間群が少なかった(オッズ比[OR]:0.344、95%CI:0.237~0.498)。一方、再入院は2日間群(12%、58/502例)が5日間群(6%、29/503例)より高頻度であった(OR:2.135、95%CI:1.342~3.396)。治療に関連した死亡例はなかった。

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true worldにおけるAMI治療の実態を考える(解説:野間重孝氏)

 1月27日に掲載したコメントにつきまして、論文の内容について私が誤解していた部分がありましたため、コメントの一部を書き換えました。皆さまにご迷惑をお掛けしましたことを深くおわび申し上げます。 急性心筋梗塞(AMI)の治療成績・予後の決定因子としては、発生から冠動脈再開通までの時間(total ischemic time:TIT)のほか、年齢、基礎疾患や合併症、血管閉塞部位と虚血領域の大きさ、血行動態破綻の有無などが挙げられる。この中でもっぱら時間経過が改善項目として議論されるのは、他の因子は医療行為によっては動かすことができず、時間経過のみが可変因子であるからである。 治療行為の迅速性を表す指標としてもっぱら使用されてきたのがdoor to balloon(D2B)timeであった。ここで注意すべきなのは、D2Bは本来治療に当たった病院のシステム、ガバナンスの整備、術者の技量を評価するための指標であって、TITとは無関係とまではいわないまでも別途議論されるべき数値である点である。肝心のTITが指標として用いられる機会が少ない理由はAMIの場合onset timeがどうしても正確に同定できないからである。これは有症状性の脳梗塞と比較するとわかりやすい。脳梗塞の場合、虚血発生と同時に特徴的な症状が発現し、しかもその自覚に個人差が少ない。AMIの場合は初発症状が突然の激しい胸痛であるのはむしろ例外であり、漠然とした胸部不快感や胸部違和感である例がほとんどで、その発生時期が正確に同定できず、かつ自覚にも個人差が大きい。その歴史は比較的新しく、90年代に提唱され、本格的に問題にされるようになったのは2000年以降である。  それでもD2Bが治療に関する有力な指標として議論されてきたのは、90年代終わりから2000年代初めにかけて、米国を中心とする各急性期治療施設がD2B短縮に努力を傾けた結果、著しい治療成績の改善が見られたからである。しかしこれに対して、D2Bが施設評価の基準であって、その短縮によって見込まれる治療成績の改善には限界があることを明確に示したのが、Daniel S. Menees氏らによってNEJM誌に2013年に発表された論文だった。この論文はこの「ジャーナル四天王」でも取り上げられ(PCIを病院到着から90分以内に施行することで院内死亡率は改善したか?/NEJM)、奇縁にも評者が論文評を担当した(健全な批判精神を評価(コメンテーター:野間 重孝 氏)-CLEAR! ジャーナル四天王(138)より-)。同氏らは除外基準を厳しく設定し、biasとなる因子を持たない症例のみを対象として検討を行った結果、確かにD2B短縮に伴い治療成績は向上するがある程度のところで頭打ちになること、さらに高齢者、前壁中隔梗塞、心原性ショックなどの複雑重症例ではD2Bと治療成績に相関が見られないことを示し、さらなる治療成績の向上には別途の改善努力(たとえば患者搬送の体制など)が必要であるとした。この論文はD2Bがどのような指標であるかをあらためて明示した論文だったといえる。 本研究はこのような経緯を踏まえ、症状発現からPCI開始までの時間、救急隊員による評価からカテ室起動までの時間、最初の医療連絡から検査室起動までの時間、最初の医療連絡からデバイス準備までの時間、病院到着からPCI開始までの時間などさまざまな指標を取り混ぜて現場の実態を把握することを試みたものである。患者到着の仕方も救急搬送もあれば自家用車や徒歩での来院、他施設からの搬送などさまざまである。実際ST上昇型のAMI(STEMI)といえども診断に手間取る例もないとはいえないし、PCIの準備にしても急性期治療を標榜する施設であったとしても24時間完全スタンバイという組織ばかりではないのが実態だろう。さらに急性期施設はAMIのみを扱っているわけではなく、他疾患の影響も考えられなければならない(たとえばこの論文の検討の後半ではコロナ禍)。 この結果はサマリー(STEMIの治療開始までの時間と院内死亡率、直近4年で増加/JAMA)でもお読みのとおりである。確かに症状発現からPCI開始まで時間の短い症例では治療成績が良好であるが、肝心の全体としての種々の指標が思うように短縮しないどころか諸事情によりむしろわずかではあるものの延長してしまっていたのである。来院形態にかかわらずほとんどの四半期でシステム目標が達成されておらず、とくに病院間搬送症例では目安とされた120分以内のPCI開始例がわずか17%にすぎなかった。著者らはlimitationsの1番にレジストリのデータが自己申告制であることを挙げているが、上記で有症状型の脳梗塞と比較した例でもわかるようにAMIのonset timeの同定は難しい。しかしtrue worldに実態に迫ろうと考えた場合、ある程度のデータのズレは致し方がないものなのだろう。また、これはそれぞれの指標の目標値が妥当であるかどうかという問題にも通じる。こういった数多くの指標を用いた疫学調査の設計と解釈の難しい点である。 今回の結果をどのように解釈すべきなのだろうか。評者としては正直米国のAMI治療システムもさまざまな問題を抱えていることに驚いたのであるが、しかし振り返って考えるとき、この問題は米国に限った問題ではないことに気付かされる。形を変えてではあるが、わが国にも当てはまる問題であるのだと思う。90年代から2000年代にかけてAMIの治療成績には著しい進歩が見られた。しかし現在AMIの治療成績の向上はplateauに達しており、この状態を脱するためにはかなり根本的な改革が必要であると誰もが感じているのではないだろうか。これは実はMenees氏らが早期に指摘した内容とも合致する。同氏らはAMIの治療成績向上のためにはD2Bのようなわかりやすい院内指標の改善だけでは不十分だと指摘した。まさにそのとおりのことが本論文で指摘し直されたともいえるのである。本研究結果をややまとまりを欠いたものと受け止めた方も多いと思うが、現実はそう単純なものではないことを示して余りあるものだったと評価すべきではないかと考えるものである。

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不眠症におけるレンボレキサント長期治療中止後の影響

 不眠症に対する長期的な薬物療法を中止すると、リバウンドや禁断症状が出現し、最適でない治療につながる可能性がある。琉球大学の高江洲 義和氏らは、レンボレキサントの第III相臨床試験の事後分析を行い、不眠症治療におけるレンボレキサント長期治療中止後の影響を評価した。その結果、レンボレキサントは反跳性不眠リスクが低く、6~12ヵ月後の長期治療後に突然中止した場合でも、その有効性が維持されることを報告した。Clinical and Translational Science誌オンライン版2022年12月23日号の報告。 12ヵ月間グローバル多施設共同ランダム化第III相臨床試験E2006-G000-303研究(Study 303)において12ヵ月間または6ヵ月間のレンボレキサントによる積極的な治療とフォローアップ期間を完了した患者を対象に、二重盲検並行群間研究の事後分析を実施した。対象は、登録前4週間の間に週3回以上の主観的な入眠潜時30分以上および/または主観的な中途覚醒60分以上が認められた成人不眠症患者655例。レンボレキサント5mg(LEM5)群または10mg(LEM10)群、プラセボ群に1:1:1の割合でランダムに割り付け、6ヵ月間の治療を行った。その後、LEM5群とLEM10群ではさらに6ヵ月間治療を継続し、プラセボ群はLEM5またはLEM10の治療に1:1の割合でランダムに割り付けた。12ヵ月後に治療を中止し、2週間のフォローアップを行った。患者の主観的な睡眠関連エンドポイント(入眠潜時、中途覚醒、睡眠効率、総睡眠時間)のデータは、毎日の電子睡眠日誌より収集した。禁断症状の評価には、Tyrer Benzodiazepine Withdrawal Symptoms Questionnaire(T-BWSQ)を用いた。 主な結果は以下のとおり。・12ヵ月時点でのレンボレキサントによる睡眠アウトカムの改善は、治療中止後2週間もおおむね維持されており、スクリーニングと比較し不眠症状の有意な悪化が認められた患者は20%未満であった。・レンボレキサント中止後、T-BWSQにより禁断症状の出現は認められなかった。

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骨折後の血栓予防、アスピリンvs.低分子ヘパリン/NEJM

 手術を受けた四肢骨折患者、または手術有無を問わない骨盤・寛骨臼骨折患者の血栓予防において、アスピリンは致死的イベント抑制に関して低分子ヘパリンに非劣性を示すことが示された。アスピリンによる深部静脈血栓症・肺塞栓症・90日での全死亡の発現頻度は低かった。米国・メリーランド大学のRobert V. O'Toole氏らMajor Extremity Trauma Research Consortium(METRC)が、米国およびカナダの外傷センター21施設で実施した医師主導の実用的多施設共同無作為化非劣性試験「Prevention of Clot in Orthopaedic Trauma trial:PREVENT CLOT試験」の結果を報告した。臨床ガイドラインでは、骨折患者に対する血栓予防に低分子ヘパリンが推奨されている。しかし、低分子ヘパリンの有効性をアスピリンと比較した試験はこれまでなかった。NEJM誌2023年1月19日号掲載の報告。手術治療の四肢骨折患者、または骨盤・寛骨臼骨折患者約1万2千例を無作為化 研究グループは、受傷後48時間以内に来院し、手術による治療を受けた四肢骨折患者(股関節から中足部までの下肢、または肩から手首までの上肢)、または手術/非手術による治療を受けた骨盤・寛骨臼骨折患者(いずれも18歳以上)を登録し、入院中に低分子ヘパリン(エノキサパリン、30mg用量1日2回)を投与する群、またはアスピリン(81mg用量1日2回)を投与する群に1対1の割合に無作為に割り付けた。投与期間は各病院の臨床プロトコールに基づき、退院時に終了または退院後も継続可とした。 主要アウトカムは、無作為化後90日時点での全死亡、副次アウトカムは非致死的肺塞栓症、深部静脈血栓症、出血性合併症などであった。 2017年4月~2021年8月の期間に、計1万2,211例がアスピリン群(6,101例)または低分子ヘパリン群(6,110例)に無作為に割り付けられた。患者の平均(±SD)年齢は44.6±17.8歳、62.3%が男性で、0.7%に静脈血栓塞栓症、2.5%にがんの既往があった。90日全死亡に関して、アスピリンは低分子ヘパリンに対し非劣性 平均入院日数は5.3±5.7日、入院中の試験薬の平均投与回数は8.8±10.6回であり、退院時に処方された血栓予防薬の期間中央値は21日間であった。 intention-to-treat解析の結果、90日全死亡率はアスピリン群0.78%(47例)、低分子ヘパリン群0.73%(45例)であり、アスピリン群の低分子ヘパリン群に対する非劣性が示された(群間差:0.05ポイント、96.2%信頼区間[CI]:-0.27~0.38、非劣性のp<0.001[非劣性マージン0.75ポイント])。 90日間の深部静脈血栓症の発現率はアスピリン群で2.51%、低分子ヘパリン群で1.71%(群間差:0.80ポイント、95%CI:0.28~1.31)、非致死的肺塞栓症は両群とも1.49%であり、出血性合併症、その他の重篤な有害事象の発現率は両群で同程度であった。

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心不全へのトラセミドvs.フロセミド、全死亡に有意差なし/JAMA

 心不全で入院後退院した患者において、トラセミドvs.フロセミドは追跡期間中央値17.4ヵ月で全死亡に有意差は認められなかった。米国・デューク大学のRobert J. Mentz氏らが、米国の60施設で実施したプラグマティックな非盲検無作為化試験「TRANSFORM-HF(Torsemide Comparison With Furosemide for Management of Heart Failure)試験」の結果を報告した。フロセミドは心不全患者において最も一般的に用いられているループ利尿薬であるが、トラセミドの有用性を示唆する研究も散見されていた。JAMA誌2023年1月17日号掲載の報告。プラグマティックトライアルでトラセミドとフロセミドを直接比較 研究グループは、心不全で入院した患者において、トラセミドはフロセミドよりも死亡を低減するかを評価した。駆出率にかかわらず心不全で入院した患者(新規発症または慢性心不全の増悪による)を、トラセミド群またはフロセミド群に1対1の割合に無作為に割り付け、担当医師が選択した用法および用量で投与し追跡調査した。 主要アウトカムはtime-to-event解析による全死亡、副次アウトカムは12ヵ月間の全死亡または全入院、12ヵ月間の全入院、30日間の全死亡または全入院などであった。 追跡調査は退院後30日、6ヵ月時、以降6ヵ月ごとに電話で行った。また、転帰は医療記録や国民死亡記録(National Death Index)など複数のデータソースで確認した。 2018年6月から被験者の登録が行われ、2022年3月4日までに計2,859例が無作為化された(トラセミド群1,431例、フロセミド群1,428例)。年齢中央値は65歳(四分位範囲[IQR]:56~75)、女性が36.9%、黒人が33.9%であった。最終追跡調査日は2022年7月29日である。 計113例が試験終了前に同意を撤回した(トラセミド群53例[3.7%]、フロセミド群60例[4.2%])。追跡期間中央値17.4ヵ月の全死亡率はトラセミド群26.1%、フロセミド群26.2% 追跡期間中央値17.4ヵ月において、全死亡はトラセミド群で1,431例中373例(26.1%)、フロセミド群で1,428例中374例(26.2%)に認められた(ハザード比[HR]:1.02、95%信頼区間[CI]:0.89~1.18)。この結果は、年齢、性別、駆出率、推算糸球体濾過量など事前に設定されたサブグループ間で一貫していた。 無作為化後12ヵ月時の全死亡または全入院は、トラセミド群で677例(47.3%)、フロセミド群で704例(49.3%)に認められた(HR:0.92、95%CI:0.83~1.02)。全入院は、トラセミド群で536例(37.5%)に計940件、フロセミド群で577例(40.4%)に計987件発生した(率比:0.94、95%CI:0.84~1.07)。 なお、著者は、「結果の解釈には、追跡不能、治療のクロスオーバー、アドヒアランス不良により限界がある」としている。

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短腸症候群〔SBS:Short bowel syndrome〕

1 疾患概要■ 概念・定義先天性あるいは後天性のさまざまな病因により小腸が大量に切除され、栄養素・水分・電解質などの吸収が困難となる病態を総称して「短腸症候群」(SBS)という。75%以上の小腸が切除されると重度の消化吸収障害を呈することから、一般的には残存小腸長が、成人では150cm以下、小児では75cm以下の状態を指す。一方、わが国の小腸機能障害の障害者認定では、1級は小児30cm未満・成人75cm未満で必要栄養量の60%以上を常時中心静脈栄養にたよるもの、3級は小児30~75cm未満・成人75~150cm未満で30%以上を常時中心静脈栄養に頼るもの、4級は通常の経口からの栄養摂取では栄養維持が困難なために随時中心静脈栄養法または経腸栄養法が必要なものと定義されている。遺残腸管の部位や状態などのさまざまな要因により症状や病態が大きく異なるため、学問上は明確な定義はないのが現状である。■ 疫学発症率についてヨーロッパでは100万人当たり0.4~40人、米国では100万人当たり30人と国により大きな隔たりがみられる。これはすでに述べた通り明確な疾患定義がないことに起因するものと考える。わが国での平成28年の厚生労働省社会・援護局障害保健福祉部の報告では、小腸機能障害の障害者手帳の所持者数は約2,000人である。この中には炎症性腸疾患や吸収不良症候群などの機能性障害も含まれるが、実際には手帳の交付条件を満たさない短腸症例も多くみられるため、明確な実数は不明である。■ 病因病因は多彩であり、多い順に先天性の要因としては多発小腸閉鎖、腸回転異常症・中腸軸捻転症、壊死性腸炎などによるものがあり、その多くは小児期に発症する。一方、成人にみられる後天性のものとしては腸間膜動脈血栓症、クローン病、放射線腸炎、手術合併症、慢性特発性偽性腸閉塞症などがある。■ 症状SBS発症後の症状としては、消化吸収障害に起因する、下痢、腹痛や電解質を含む栄養障害(低カリウム・低マグネシウム血症に伴う筋力低下・不整脈など、必須脂肪酸欠乏に伴う皮膚炎・脱毛などが主たるものである。特に回腸を大量切除している症例では、ビタミンB12欠乏に伴う貧血、亜鉛欠乏に伴う味覚異常や皮膚炎など、そして腸管循環が傷害されたことによる胆汁鬱滞型肝機能障害や顕著な脂肪吸収障害もみられるようになる。一方、臨床上はSBSの固有の症状ではないが、身体的および心理社会的負担から生じる慢性疲労や無力感から生じる余暇活動・社会生活・家族生活・性生活の制限なども問題となる。■ 分類遺残腸管の状態に応じて、(1)末端空腸瘻型(typeI):口側の遺残空腸の断端に腸瘻が増設されている病態、(2)空腸結腸吻合術後(typeII):回腸の全域が切除された後に遺残腸管が吻合されている病態、(3)空腸回腸吻合術後(typeIII)の3つの型に大別される。■ 予後中心静脈栄養(PN)管理からの離脱の有無が予後に大きく関わる。長期にPN管理が必要とされる場合には、カテーテル関連血流感染症や腸管不全関連肝障害(IFALD)などの合併症の発症により、死亡率は約30~50%と非常に高い。2 診断 (検査・鑑別診断も含む)診断は上記の概念・定義の通り。3 治療 (治験中・研究中のものも含む)■ 栄養療法腸管大量切除後の腸管馴化は、腸切除後24時間以内に始まり、成人では12~18ヵ月間、小児では5歳前後まで継続する。そのため、非常に長期間にわたり多職種が協力して集学的な腸管リハビリテーション(栄養療法)を継続することが肝要となる。この間、残存小腸に負荷される栄養素量が過負荷とならないよう(1)単位時間当たりの投与量および、(2)線維・脂質投与量の制限、(3)吸収能力の低下している栄養素の投与方法の工夫など、遺残腸管の安定化を図り、腸管馴化を促すことで治療がスムーズに進むよう調整することが重要となる。■ 手術小腸移植以外の外科的治療は、吸収面積を増やすと同時に腸内容物の停滞を減らし、腸内細菌の異常増殖を予防するために行われてきた。小腸を延長する外科的処置として2つの方法が考案されている。1)Longitudinal intestinal lengthening and tailoring(LILT)法これは、1990年にBianchiらにより報告された方法である。小腸の拡張部分を長軸方向に2つに切開してそれぞれを管腔状に縫合後、これらを吻合し腸管を延長する方法である。2)Serial transverse enteroplasty(STEP)法2003年にKimらにより報告された方法である。拡張腸管を短軸方向に斜めに、内腔を保つようにジグザグに切開縫合を加え、腸管径を細くすると同時に延長する方法である。現在これらの消化管再建手術は、主に小児期に行われることが多い。一方、重症のIFALDの発症や中心静脈へのアクセス血管が喪失した場合には、小腸移植が適応される。2018年よりわが国でも保険適応となったが、長期成績をみると生存率は1年89%、5年70%、10年53%であり、グラフト生着率は1年84%、5年59%、10年41%とまだ満足できる結果には至っていない。多職種からなる腸管不全対策チームによる腸管リハビリテーションによる予後は70~85%と高いことが報告されていることから、現段階では小腸移植は最終的な救命手段として行われる治療と考える。■ 薬物療法腸管を大量に切除すると、腸管内分泌ホルモンの1つであり、腸管上皮増殖能を有するGLP-2(グルカゴン様増殖因子)の分泌も低下する。その補充療法として、GLP-2アナログ製剤であるテデュグルチド(商品名:レベスティブ)が2021年にわが国でも医薬品として承認され、SBS患者への治療的介入が始まった。短~中期の成績では、中心静脈栄養依存率の低下や下痢症状の改善などの有用性が報告されているが、長期成績がいまだ明確になっておらず、今後の検討課題である。4 今後の展望現在、遺残腸管の自己再生を促すべくさまざまな研究が開始されている。LILT手術の応用で一部の腸管をコラーゲンシートで代用して腸管延長率を上げる方法、ヒト胚性幹細胞(ES細胞)から新たに腸管を培養生成する腸オルガノイド培養技術など再生医療技術はめざましく発展してきている。加えて、2019年には腸管の恒常性維持を司る幹細胞を復活させて腸上皮再生を促進する独特の幹細胞(腸復活幹細胞[revival stem cell:revSC])が発見され、その臨床応用が期待されている。ただし、これらの新たな試みが実臨床に応用されるまでには、まだ長い時間が必要である。現状としては、今臨床ですでに利用されている治療法を先に見通しながら、どの時期にどのように組み合わせて利用すべきかの検討を行うことが、SBSの治療を有利に進めていくことにつながるものと考える。5 主たる診療科小児外科、小児科、消化器外科、消化器内科※ 医療機関によって診療科目の区分は異なることがあります。6 参考になるサイト(公的助成情報、患者会情報など)診療、研究に関する情報SBS Life(短腸症候群に関する基礎から治療までを網羅した情報や短腸症候群患者の生活をサポートするための情報)小児慢性特定疾病情報センター 短腸症(小児の本疾病に対する助成などの情報)患者会情報短腸症候群の会(患者とその家族および支援者の会)1)Jeppesen PB, et al. Gastroenterology. 2012;143:1473-1481.2)Klek S, et al. ClinNutr. 2016;35:1209-1218.3)Kocoshis SA, et al. JPEN. 2020;44:621-631.4)Chen MK, et al. J Surg Res. 2001;99:352-358.5)Workman MJ, et al. NatMed. 2017;23:49-59.6)Ayyaz A, et al. Nature. 2019;569:121-125.公開履歴初回2023年1月26日

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第29回 新型コロナワクチンは年1回の接種へ?

FDA(米国食品医薬品局)が先陣を切るかFDA(米国食品医薬品局)の本決定はまだですが(この記事が出る日に話し合われる予定)、新型コロナワクチンは、インフルエンザと同じく、健康な人は年1回の接種にする方針のようです。ただし、高齢者、子供の一部、免疫が低下している人については年2回の接種となる見込みです。基本的に2価ワクチンが勧奨される見込みです。年1回接種にするとしても、いつの変異ウイルスに合わせてワクチンを改変していくのか難しいところですが、mRNAワクチンはそういった改変を速やかに行えるメリットがあり、たとえば春~夏に流行した変異ウイルスに合わせて秋に接種などのような形が想定されています。エビデンスがあるというよりも、そういう落としどころでウィズコロナしましょうという側面が強く、年1回がベストとは限りません。今後の研究によっては、全員年2回のほうがよいというデータが出てくるかもしれません。FDAが勧奨するであろう2価ワクチンを提供しているのは、現在ファイザー社とモデルナ社の2社だけになると思われます。もう他の企業は追随できませんね、差が付いてしまった。XBB.1.5は日本ではまれご存じのとおりワクチンの感染予防効果は経時的に減衰していきますが、現在接種されているオミクロン株対応の2価ワクチンは、とりわけ高齢者では高い入院予防効果を有しています。イスラエルにおける65歳以上の高齢者に対するオミクロン株対応ワクチンは、入院予防効果81%、死亡予防効果86%と報告されています1)。オミクロン株対応ワクチンを追加接種しても、XBB.1株は免疫逃避が従来株やBA.5株よりかなり高いことが報告されています2)。また、中和活性についても従来株、BA.2系統、BA.5系統よりも顕著に低いことがわかっています3)。中和抗体の上昇が期待できるとされつつも3,4)、基本的にmRNAワクチンの改変が必要とされている状況です。XBB.1.5株は現在アメリカで猛威を振るっていますが、日本でもXBB.1.5株がいつか優勢になってくるかもしれません(図)。画像を拡大する図. ゲノム解析結果の推移(週別)(東京都新型コロナウイルス感染症モニタリング会議・分析資料より5))mRNAワクチンは、新型コロナとインフルエンザの両方に適用可能な技術であるため、将来的には1本のワクチンで両方を予防できるなんて時代が来るかもしれませんね。参考文献・参考サイト1)Arbel R, et al. Effectiveness of the Bivalent mRNA Vaccine in Preventing Severe COVID-19 Outcomes: An Observational Cohort Study. Preprints with The Lancet. 2023 Jan 3.2)Miller J, et al. Substantial Neutralization Escape by SARS-CoV-2 Omicron Variants BQ.1.1 and XBB.1. N Engl J Med. 2023 Jan 18. [Epub ahead of print]3)Uraki R, et al. Humoral immune evasion of the omicron subvariants BQ.1.1 and XBB. Lancet Infect Dis. 2023 Jan;23(1):30-32.4)Davis-Gardner ME, et al. Neutralization against BA.2.75.2, BQ.1.1, and XBB from mRNA Bivalent Booster. N Engl J Med. 2023 Jan 12;388(2):183-185.5)東京都新型コロナウイルス感染症モニタリング会議・分析資料 変異株調査(令和5年1月19日12時時点)

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マクロファージは裏切り者!?肺がんの増殖を促進か/大阪大

 大阪大学大学院医学系研究科の石井 優氏らの研究グループは、肺胞マクロファージが、細胞の増殖および分化の調節、神経細胞の生存など、さまざまな生物活性を有するサイトカイン「アクチビンA」を介して、肺がんの増殖を促進させる悪循環を形成していることを初めて明らかにした。肺胞マクロファージは、正常の肺では最も数の多い免疫細胞の1つで、肺機能の維持に重要な役割を果たしていると考えられている。一方、肺がん細胞と肺胞マクロファージとの詳細な関係については、これまでほとんど解明されていなかった。本研究結果はNature Communications誌2023年1月17日号に掲載された。 肺胞マクロファージは、肺がんの環境において何らかの影響を肺がん細胞に与えている可能性が考えられていた。しかし、肺のみに存在するため、肺がんの環境を詳細に研究できる実験系を構築することが難しいという課題があった。そこで、外科的な手法を使ってマウス生体内に肺がんを構築する「肺がんモデルマウス」を用いて研究を行った。また、肺胞マクロファージのRNA配列を読み取り、遺伝子発現を網羅的に定量する「RNAシークエンス」を行った。 主な結果は以下のとおり。・肺がん患者の組織を調べた結果、肺がん組織では肺胞マクロファージが正常組織と比べて有意に多かった(p=0.0096)。・肺胞マクロファージ上清を添加して肺がん細胞(Lewis lung carcinoma)を培養すると、未添加と比べて細胞数が有意に増加し(p<0.0001)、がん細胞の倍加時間が短縮した。・肺がんモデルマウスの生体内から肺胞マクロファージを枯渇させると、肺胞マクロファージが保たれた場合よりも、肺がんの増殖が緩やかであった。・RNAシークエンスの結果、肺胞マクロファージではインヒビンβAをコードする遺伝子Inhbaの発現が亢進し、インヒビンβAのホモダイマーであるアクチビンAの産生が増加した。アクチビンAを添加して肺がん細胞(Lewis lung carcinoma)を培養すると、未添加と比べて細胞数が有意に増加した(p<0.0001)。・肺がん患者の組織でも、肺胞マクロファージにおいてアクチビンAが多く発現していた。 本研究結果の意義について、「肺胞マクロファージの産生するアクチビンAの阻害が、肺がんの治療候補となることが期待される。また、本研究で解明されたメカニズムは、早期がんの段階から確認されており、肺胞マクロファージとアクチビンAに着目することで、肺がんを早期に診断することにも貢献できると考えられる。さらに、アクチビンAの阻害は、早期がんから進行がんへの進展を抑制することにも有用であると考えられ、肺がんを早期の段階で手術により根治する機会を増やすことにも貢献できると期待される」と、研究グループはまとめている。

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オミクロン株対応2価ワクチン、4回目接種の有用性は?/NEJM

 1価・2価のオミクロン株(B.1.1.529)BA.1系統対応BNT162b2(ファイザー製)ワクチンは、BNT162b2ワクチン(30μg)と同様の安全性プロファイルを有し、祖先株とオミクロン株BA.1系統に対して顕著な中和反応を示した。また、程度は低いものの、オミクロン株亜系統のBA.4、BA.5、BA.2.75も中和した。米国・アイオワ大学のPatricia Winokur氏らが、BNT162b2ワクチン30μgを3回接種した55歳超1,846例を対象にした無作為化比較試験で明らかにし、NEJM誌2023年1月19日号で発表した。BA.1対応1価・2価ワクチンとBNT162b2を30μgまたは60μgで比較 研究グループは、進行中の第III相試験で、BNT162b2ワクチン30μgを3回接種した55歳超を無作為化し、BNT162b2(30μgまたは60μg)、B.1.1.529変異株(オミクロン株)BA.1系統対応BNT162b2(BA.1対応1価ワクチン、30μgまたは60μg)、BA.1対応2価ワクチンを30μg(BNT162b2 15μg+BA.1対応1価ワクチン15μg)または60μg(BNT162b2 30μg+BA.1対応1価ワクチン30μg)をブースター投与した。 本試験の主要目的は、BA.1対応ワクチンの、BNT162b2(30μg)に対する優越性(対BA.1の50%中和抗体価[NT50]について)と非劣性(血清反応について)の評価。副次目的は、祖先株に対する中和活性について、BA.1対応2価ワクチンのBNT162b2(30μg)に対する非劣性の評価だった。 探索的データ解析を行い、オミクロン株の亜系統BA.4、BA.5、BA.2.75に対する免疫応答も評価した。BA.1対応2価ワクチン、祖先株に対しBNT162b2(30μg)と比べ非劣性 1,846例が無作為化を受けた(年齢中央値67歳、男性49.5%、白人86.6%)。 ワクチン接種後1ヵ月時点で、BA.1対応2価ワクチン(30μg/60μg)とBA.1対応1価ワクチン(60μg)は、BA.1に対し、BNT162b2(30μg)より優れた中和活性を示した。NT50幾何平均比(GMR)は、それぞれ1.56(95%信頼区間[CI]:1.17~2.08)、1.97(1.45~2.68)、3.15(2.38~4.16)だった。 また、BA.1対応2価ワクチン(両用量とも)とBA.1対応1価ワクチン(60μg)は、対BA.1血清反応についても、BNT162b2(30μg)に対し非劣性を示した。群間差(%)は10.9~29.1ポイントに及んだ。 BA.1対応2価ワクチン(両用量とも)は、祖先株に対する中和活性について、BNT162b2(30μg)に対し非劣性だった。NT50GMRは30μgが0.99(95%CI:0.82~1.20)、60μgが1.30(1.07~1.58)だった。 BA.4-BA.5、BA.2.75に対する中和抗体価は、BA.1対応2価ワクチン30μgが、BNT162b2(30μg)より数値が高かった。 安全性プロファイルについては、BA.1対応1価ワクチン、2価ワクチンのいずれの用量も、BNT162b2(30μg)と同様だった。有害事象の発生頻度は、BA.1対応1価ワクチン30μg群(8.5%)とBA.1対応2価ワクチン60μg群(10.4%)が、その他の群(3.6~6.6%)より高率だった。

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妊婦の罹患・死亡リスク、オミクロン株優勢中に増大/Lancet

 新型コロナウイルスのオミクロン株が懸念される変異株となった半年間について調べたところ、新型コロナウイルス感染症(COVID-19)の診断を受けた妊婦は、MMMI(maternal morbidity and mortality index、妊婦の罹患率・死亡率指数)リスクが増大していたことが明らかにされた。とくに、ワクチン未接種の重症COVID-19妊婦で、同リスク増大はより顕著だった。また、COVID-19の重症合併症に対するワクチンの有効性は、完全接種(2回またはAd26.COV2.Sワクチン1回)で48%と高かった。英国・オックスフォード大学のJose Villar氏らが、4,618人の妊婦を対象に行った大規模前向き観察試験「INTERCOVID-2022試験」の結果で、Lancet誌オンライン版2023年1月17日号で発表された。18ヵ国41病院を通じて試験 INTERCOVID-2022試験は、18ヵ国41病院を通じて行われ、リアルタイムPCR検査でCOVID-19が確定した妊婦1人について、COVID-19と診断されていない2人の妊婦(マッチングなし)を、同時かつ連続的に対照として被験者に加えた。母親と新生児について、退院まで追跡した。 主要アウトカムは、MMMIとSNMI(severe neonatal morbidity index、重度新生児罹患率指数)、SPMMI(severe perinatal morbidity and mortality index、重度周産期罹患率・死亡率指数)だった。 ワクチン有効性は、母体リスクプロファイルで補正し推算した。COVID-19妊婦、MMMIリスクは1.16倍、ワクチン非接種では1.36倍 世界保健機関(WHO)がオミクロン株に対する懸念を表明した2021年11月27日から、2022年6月30日までに4,618人の妊婦を被験者として登録した。うち、1,545人(33%)がCOVID-19と診断され(中央値:妊娠36.7週)、3,073人(67%)はCOVID-19と診断されなかった。 COVID-19群は対照群に比べ、MMMIリスク(相対リスク[RR]:1.16(95%信頼区間[CI]:1.03~1.31)、SPMMIリスク(1.21、1.00~1.46)の増大が認められた。SNMIについては、COVID-19群の対照群に対する増大が認められたが(1.23、0.88~1.71)、95%CI下限値は1を下回っていた。 COVID-19群でワクチン非接種の妊婦は、MMMIリスクのさらなる増大が認められた(RR:1.36、95%CI:1.12~1.65)。 重症COVID-19の妊婦は、重度母体合併症リスク(RR:2.51、95%CI:1.84~3.43)、周産期合併症リスク(1.84、1.02~3.34)、他科への紹介・集中治療室(ICU)入室・死亡のいずれかの発生リスク(11.83、6.67~20.97)の総合的なリスク増大がみられた。ワクチン非接種で重症COVID-19の妊婦は、MMMIリスク(RR:2.88、95%CI:2.02~4.12)と、他科への紹介・ICU入室・死亡のいずれかの発生リスク(20.82、10.44~41.54)の増大がみられた。 被験者のうちCOVID-19ワクチンを1回以上接種していた女性は2,886例(63%)で、完全接種またはブースター接種(3回またはAd26.COV2.Sワクチン2回)は2,476例(54%)だった。 他科への紹介・ICU入室・死亡のいずれかの発生に関するワクチン有効性(全ワクチン統合)は、ワクチン完全接種妊婦が48%(95%CI:22~65)、ブースター接種妊婦が76%(47~89)だった。COVID-19診断妊婦の同有効性は、それぞれ74%(48~87)、91%(65~98)だった。

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何としても次のポジションの面接を獲得する!【臨床留学通信 from NY】第43回

第43回:何としても次のポジションの面接を獲得する! 前回の記事では、幸運にもハーバード・メディカルスクール マサチューセッツ総合病院のカテーテルフェローのポジションを獲得できたことをお伝えしました。カテーテルフェローの選考プロセスは、ERAS(electronic residency application system)というウェブサイトに申請書類をアップロードし、プログラム側が書類を確認し、面接に呼ぶところまでは、米国における他科のフェローシップと同じです。ただし、カテーテルフェローの選考ではNRMP(national ranking matching program)というマッチングシステムを用いないため、候補者側には不利な仕組みになっているということは説明したとおりです。候補者側にとって、自施設で研修したい場合には、ノンマッチングシステムは就職内定のように事前に簡単に決まる点は楽かもしれません。デューク大学やクリーブランドクリニックなどの有名プログラムはERASに参加せず、あらかじめ内部生などで決まっているようです。しかしながら、私のように外の病院も視野に入れている場合は、候補者にもプログラムを選ぶ時間があり、システムに登録した候補者のランクが優先されてマッチングできるほうがありがたいです。スピード勝負のノンマッチングシステムは、ERASの申請書類がプログラム側に公開された段階で、すぐにプログラムディレクターの目に止まらないと勝負に出遅れてしまうことが危惧されます。枠も内部生で埋まってしまっていると、1つか2つしか空きがないことが多く、プログラムが気に入った候補者を呼んで、最初に面接した中で気に入った人がいればオファーをし、候補者が快諾すればそこでプログラムの枠は閉ざされてしまうのです。これまでの成果を生かし、全米各地のプログラムにアプローチ私の経歴は、まず日本でカテーテル治療医として働き、各種の専門医資格も日本で取得しているのに、米国で再びレジデントとフェローをやり直しているため、米国人には奇妙に見えるかもしれないので、履歴書だけでは判断しかねると考えました。言い換えれば、ほかのフェローに比べて臨床と研究の経験があるため、米国で培った人脈をもとに、いろいろな手段を使って自分を売り込む必要がありました。実際に行ったこととして、2年前の一般循環器フェローの応募の際に関わった先生に再度コンタクトして、ノースウェスタン大学の面接を受けることができ、ワシントン大学にも呼んでもらえることになりました。また、現在私が所属しているモンテフィオーレ医療センターの日本人の先生を経由し、スタンフォード大学の面接も取り付けることができました。TCT(Transcatheter Cardiovascular Therapeutics)というカテーテル治療学会で、コロンビア大学の日本人心臓外科医の先生を通じてプログラムディレクターと直接お会いし面接のお話もいただき、イェール大学の先生ともつながることができたり、ほかにも主に日本人の知人を通じてミシガン大学、メイヨークリニック、はたまた論文等でいつもお世話になり、TCTでご挨拶したSripal Bangalore先生を通じてニューヨーク大学、別の論文を通じて知り合った先生方やモンテフィオーレ出身のフェローがいることから、ハーバード系列のベス・イスラエル・ディーコネス医療センターの面接にも呼んでもらえることとなっていました。そのような状況に至ったものの、面接はあくまでZoomベースで、予想外にいくつかのプログラムがフライングして、12月7日のERASオープンを無視して11月中旬より面接を開始するという事態になりました。たしかに応募書類を独自に集めてしまえば、ERASより先に面接をし、優秀な候補者を獲得してしまえばいいという発想はそのとおりです。たとえばジョンズ・ホプキンス大学は面白いことに、プログラムディレクターがTwitterを通じてERASより前に書類を募集しており、その噂を聞きつけて大急ぎで書類を揃えてメールで申請しました。しかし結局のところ私の場合は、ERASがオープンする前にマサチューセッツ総合病院の面接を行い、その後ポジションが確定したため、上記の多くのプログラムに申請することなく、面接も受けずに終わってしまいました。実際の面接等については、また次回ご説明します。Column12月に開催された日本循環器学会関東甲信越地方会では、私が教えている学生が優秀賞、研修医の先生が最優秀賞を受賞しました。最優秀賞の先生は、3月の日本循環器学会学術集会で発表予定です。米国臨床留学を目指す2人を後押ししたいと思います。

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持続性AF、PVI+左房後壁乖離術で不整脈の再発率は改善せず/JAMA

 持続性心房細動(AF)患者に対する初回カテーテルアブレーションでは、肺静脈隔離術(PVI)に左房後壁隔離術(PWI)を追加しても、PVI単独と比較して12ヵ月の時点での心房性不整脈の再発回避の割合は改善されず、複数回の手技後の再発回避にも差はないことが、オーストラリア・アルフレッド病院のPeter M. Kistler氏らが実施した「CAPLA試験」で示された。研究の詳細は、JAMA誌2023年1月10日号に掲載された。PWI追加の意義を評価する3ヵ国の無作為化臨床試験 CAPLA試験は、3ヵ国(オーストラリア、カナダ、英国)の11施設が参加した医師主導の無作為化臨床試験であり、2018年7月~2021年3月の期間に患者の登録が行われた(メルボルン大学Baker Department of Cardiometabolic Healthの助成を受けた)。 年齢18歳以上、症候性の持続性AFで、初回カテーテルアブレーションを受ける患者が、PVI+PWIを行う群またはPVI単独群に無作為に割り付けられた。PVIでは、左右の肺静脈の周囲を広範に焼灼し、PVI+PWIでは、これに天蓋部(roof ablation line)と底部(floor ablation line)の焼灼が追加された。 主要アウトカムは、1回のアブレーション施行から12ヵ月の時点において、抗不整脈薬非使用下で30秒以上の心房性不整脈が記録されないこととされた。心房細動負担にも差はない 338例(年齢中央値65.6歳[四分位範囲[IQR]:13.1]、男性76.9%)が登録され、330例(97.6%)が試験を完遂した。PVI+PWI群に170例、PVI単独群に168例が割り付けられた。 12ヵ月の時点で、抗不整脈薬非使用下での心房性不整脈再発の回避が達成されたのは、PVI+PWI群が89例(52.4%)、PVI単独群は90例(53.6%)であり、両群間に有意な差は認められなかった(群間差:-1.2%、ハザード比[HR]:0.99、95%信頼区間[CI]:0.73~1.36、p=0.98)。 複数回のアブレーション後の、抗不整脈薬使用の有無を問わない心房性不整脈再発の回避(PVI+PWI群58.2% vs.PVI単独群60.1%、HR:1.10、95%CI:0.79~1.55、p=0.57)、複数回のアブレーション後の、抗不整脈薬使用の有無を問わない症候性AFの回避(68.2% vs.72.0%、HR:1.20、95%CI:0.80~1.78、p=0.36)、心房細動負担(AF burden、1年の追跡期間中における心房細動累積時間の割合)(0%[IQR:0~2.3]vs.0%[0~2.8]、p=0.47)にも、両群間に有意な差はなかった。 一方、平均手技時間(142分[SD 69]vs.121分[57]、p<0.001)とアブレーション時間(34分[SD 21]vs.28分[12]、p<0.001)は、PVI単独群で短かった。 合併症は、PVI+PWI群が6件、PVI単独群は4件発現した。手技関連死はなく、脳血管イベントや食道瘻の報告もなかった。 著者は、「PVIにPWIを追加することで、治療時間と焼灼時間が延長されるが、合併症の発生率は増加しないことが示された。この研究では、初回心房細動カテーテルアブレーションにPWIを経験的に導入する方法は支持されなかったが、PVI+PWIで利益が得られる可能性のあるサブグループを特定するために、さらなる研究が求められる」としている。

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対側乳がんリスク、生殖細胞変異で違いは?/JCO

 乳がん女性における対側乳がんリスクは年間0.5%と推定され、生殖細胞変異の有無、人種/民族、診断時年齢、閉経状態が大きく影響する。今回、米国・Mayo ClinicのSiddhartha Yadav氏らが、ATM、BRCA1、BRCA2、CHEK2、PALB2の生殖細胞系列病的変異を有する女性における対側乳がんリスクを推定したところ、BRCA1、BRCA2、CHEK2、PALB2の変異を有する女性でリスクがかなり高いことがわかった。Journal of Clinical Oncology誌オンライン版2023年1月9日号に掲載。 本研究は、浸潤性乳がんに対して同側手術を実施したCARRIERS試験において、前向きに追跡調査した1万5,104例を対象とした。各遺伝子の病的変異のある女性の対側乳がんリスクについて、死亡の競合リスクを考慮し患者および腫瘍の特性を調整した多変量比例ハザード回帰分析により病的変異のない女性と比較した。 主な結果は以下のとおり。・乳がん生殖細胞系列BRCA1、BRCA2、CHEK2変異を有する女性は対側乳がんリスクが有意に高かった(ハザード比[HR]:1.9以上)が、ER陰性乳がんではPALB2変異のある女性のみリスクが高かった(HR:2.9)。・ATM変異を有する女性では、対側乳がんリスクが有意に高くはなかった。・閉経前女性における10年累積対側乳がん発症率は、BRCA1変異を有する女性で33.4%、BRCA2変異を有する女性で27.2%、CHEK2変異を有する女性で13.2%だった。ER陰性乳がんに限るとPALB2変異を有する女性で35.5%と推定された。・閉経後女性における10年累積対側乳がん発症率は、BRCA1変異を有する女性で11.5%、BRCA2変異を有する女性で9.4%、CHEK2変異を有する女性で4.3%であった。

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英語で「順調にいっていますよ」は?【1分★医療英語】第64回

第64回 英語で「順調にいっていますよ」は?You are moving in the right direction.(順調にいっていますよ)That’s good to know.(それは良かったです)《例文1》Your father is doing well. He is moving in the right direction.(お父さんは元気ですよ。順調にいっています)《例文2》His course was complicated by aspiration pneumonia, but overall, he is moving in the right direction.(経過中に誤嚥性肺炎が起こりましたが、全体としては、彼は快方に向かっています)《解説》“move in the right direction”は直訳すると「正しい方向に動く」ですが、医療現場で病状を表す時に使うと「順調にいっている」「快方に向かっている」という意味を表します。患者さんや家族に対するポジティブな声掛けにもなるため、臨床現場でよく使われる言い回しです。なお、“direction”の発音は米国英語では「ディレクション」、英国英語では「ダイレクション」となります。また、“right”にも“direction”にも「R」が含まれるため、「L」の発音と混同しないように注意が必要です。講師紹介

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第147回 ヒトが親となる年齢は27歳~父は母より8歳ほど高齢

子に新たに生じた変異への親の年齢の影響を頼りに過去25万年前まで遡って推定したところ、ヒトが親となる年齢、すなわち子を持つ年齢の平均は約27歳(26.9歳)でした1,2)。男女別で見たところ、男性が子持ちになる年齢、すなわち父になる平均年齢は約31歳(30.7歳)で、女性が母になる平均年齢およそ23歳(23.2歳)に比べて8歳ほど遅いことが示されました。ヒトが何歳で子供を持って来たかを実際の記録なしで知ろうとすることは厄介ですが、ここ数年の遺伝配列解析技術の進歩や遺伝情報の大量の蓄積のおかげでそのヒントとなるDNAの印を見つけ出すことが可能になっています。とはいえこれまでの研究で遡れたのはせいぜい4万年前まででした。米国のインディアナ大学の進化遺伝学者Richard Wang氏らはヒトの各家系のDNA変異の発端を頼りにさらに遡って子持ちとなる年齢の推移を推定することを試みました。子のDNA配列には親の体細胞にはない25~75の新生突然変異(de novo変異)があります。それらのde novo変異はどちらかの親の生殖細胞か受精後の初期胚発生のときに生じたものです。ネコ、クマ、サルなどの哺乳類とヒトの変異の相違や相似を調べる研究の最中に年齢に応じた変異のパターンがあることにWang氏らは気付き、母親や父親の年齢に応じた子のde novo変異特徴の発見に至ります2)。その発見に基づいてWang氏らはde novo変異の発生時期を割り出して子持ちになる年齢を過去25万年前まで遡って推定し、男女の区別なしでの子持ちになる年齢の平均は26.9歳、父になる年齢は30.7歳、母になる年齢の平均は23.2歳との結果を得ました。推移に変動はありますし、最近5千年にその差は縮まっていて母になる平均年齢はより遅く26.4歳となっているものの、男性は女性に比べて一貫してより高齢になって子持ちになっていました。父になる年齢が女性より高齢であるのは、生物学的に男性は齢をより重ねてからでも子を授かれるゆえ子を持つのが遅れがちになることによると一般的には説明しうるとWang氏は言っています3)。ただしそれだけではないかもしれず、社会的な要因、たとえば父になる前に地位を築いておくことを強いる家父長社会の圧力などが父になる年齢を押し上げることに寄与しているかもしれません3,4)Wang氏らの研究での変異要因の補正は不十分であり、環境などからの種々の要因の変異が親の年齢に不均一に影響して結果を歪めているかもしれないと指摘する専門家もおり5)、親になる年齢の解析が今回で片が付いたというわけではなさそうです。Wang氏らは世界の2,500人のゲノムを使ってヒトが親になる年齢の推移を予測しましたが3)、今後の研究でさらに多くの人の情報を使って推定精度を高めていく必要があります。参考1)Wang RJ, et al. Sci Adv. 2023;9:eabm7047. 2)Study reveals average age at conception for men versus women over past 250,000 years / Eurekalert3)Dads older than mums since dawn of humanity, study suggests / Nature4)DNA evidence that dads have always tended to be older than mums / Nature5)Timing and causes of the evolution of the germline mutation spectrum in humans. bioRxiv

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コロナワクチンの免疫応答、年齢による違い/京大iPS細胞研究所

 新型コロナウイルス(SARS-CoV-2)に対するワクチンの個人差・年齢差を検討したところ、65歳以上の高齢者ではワクチン接種後のT細胞応答の立ち上がりが遅い一方、収束は早いという特徴があることを、京都大学iPS細胞研究所の城 憲秀氏らによる共同研究グループが明らかにした。Nature Aging誌 2023年1月12日掲載の報告。 一般に加齢とともに免疫機能が低下することはよく知られているが、T細胞が生体内で刺激を受けた際の応答が加齢によってどのように、またどの程度変化するかは不明であった。そこで研究グループは、ワクチン接種後のT細胞応答や抗体産生、副反応との関連を調査した。 対象は、ファイザー製のSARS-CoV-2mRNAワクチン(BNT162b2)を2回接種した65歳以上の高齢者109人(年齢中央値71歳[範囲:65~81歳]、男性56人)と、65歳未満の成人107人(年齢中央値43歳[同:23~63歳]、男性43人)の計216人であった。血液の採取は、ワクチン接種前、1回目接種から約2週間後、2回目接種から約2週間後、1回目接種の約3ヵ月後の計4回行った。 主な結果は以下のとおり。・SARS-CoV-2のスパイクタンパク質受容体結合ドメインに対するIgG抗体価は、両群ともにワクチン2回接種後に大幅な上昇が見られた。しかし、抗体価のピークの中央値は、成人群で27,200AU mL-1、高齢者群で18,200AU mL-1であり、高齢者群では約40%低かった。・ワクチン特異的ヘルパーT細胞は、両群ともに1回目の接種で大きく増加し、2回目の接種後も同程度を保ち、3ヵ月後に減少した。高齢者群では1回目接種後の増加が成人群よりも少なかったが、2回目接種後に同程度となり、3ヵ月後には再び成人群よりも少なくなった。・2回目接種後の局所的な副反応(接種部位の疼痛)は、高齢者群と成人群で同程度であったが、全身性の副反応(発熱、倦怠感、頭痛)は成人群で有意に多かった。ただし、高齢者群では、解熱鎮痛薬を服用している割合が高かった。・年齢にかかわらず、2回目接種後に38℃以上の発熱があった人では、1回目接種後のT細胞応答と2回目接種後のIgG抗体価が高かった。・ワクチン特異的Th1細胞における、T細胞活性化を抑制するPD-1の発現量は、両群ともに2回目接種後にピークを迎えたが、高齢者群では成人群と比べて有意に多かった。また、PD-1の発現量が多い高齢者では、キラーT細胞の誘導が低い傾向にあり、免疫反応にブレーキがかかりやすくなっている可能性が示唆された。 研究グループは、これらの結果から「高齢者群では、T細胞応答の立ち上がりが遅く、収束が早いことが明らかになった。本研究は、高い有効性を持つワクチンの開発と、高齢者に適したワクチン接種スケジュールの立案に役立つ可能性がある」とまとめた。

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統合失調症の脳の老化~ENIGMAコンソーシアム

 統合失調症は、生涯にわたる認知機能低下、加齢に伴う慢性疾患や早期死亡のリスク増加と関連している。英国・バース大学のConstantinos Constantinides氏らは、成人統合失調症患者における重度の脳の老化に関するエビデンスを調査し、ENIGMA Schizophrenia Working Groupによるプロスペクティブメタ解析研究にてそれらと臨床的特徴との関連を評価した。その結果、統合失調症患者における重度の構造的な脳の老化が示唆された。著者らは、統合失調症における脳の老化や介入による影響の臨床的意義に関するさらなる評価には、統合失調症とさまざまな精神的および身体的アウトカムの縦断的研究が役立つであろうと述べている。Molecular Psychiatry誌オンライン版2022年12月9日号の報告。 脳の予測年齢は、皮質厚および皮質面積の68の測定値、7つの皮質下体積、側脳室体積、総頭蓋内容積に基づく独立データにより導出されたモデルを用いて推定した。すべてのデータはT1強調MRI脳画像を用いて収集した。健康な脳の老化との違いは、脳の予測年齢と実年齢の差(脳予測年齢差、brain-predicted age difference:brain-PAD)により評価した。 主な結果は以下のとおり。・対象は、26件のコホート研究のデータより抽出された統合失調症患者2,803例(平均年齢:34.2歳、年齢範囲:18~72歳、男性の割合:67%)および健康対照者2,598例(平均年齢:33.8歳、年齢範囲:18~73歳、男性の割合:55%)。・年齢、性別、部位で調整した後、統合失調症患者は健康対照者と比較し、brain-PADが平均3.55年(95%信頼区間:2.91~4.19、I2=57.53%)高かった(Cohen's d=0.48)。・統合失調症患者において、brain-PADと特定の臨床的特徴(発症年齢、罹病期間、症状重症度、抗精神病薬の使用状況と用量)との関連は認められなかった。

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COPDガイドライン改訂―未診断者の早期発見と適切な管理を目指して

 COPDは、日本全体で約500万人を超える患者がいると見積もられており、多くの非専門医が診療している疾患である。そこで、疾患概念や病態、診断、治療について非専門医にもわかりやすく解説する「COPD(慢性閉塞性肺疾患)診断と治療のためのガイドライン第6版」が2022年6月24日に刊行された。本ガイドラインは、2018年版からの4年ぶりの改訂で、大きな変更点としてMindsに準拠した形で安定期COPD治療に関する15のクリニカルクエスチョン(CQ)を設定したことが挙げられる。本ガイドライン作成委員会の委員長を務めた柴田 陽光氏(福島県立医科大学呼吸器内科学講座 教授)に改訂点や日常診療におけるCOPD診断・治療のポイントについて、話を聞いた。未診断のCOPD患者を発見するために COPD患者は、なかなか症状を訴えないことが多いという。柴田氏は、「高齢の方は『歳だから、あるいはタバコを吸っているから仕方がない』と考えていたり、無意識のうちに身体活動レベルを落としていて、息切れを感じなくなっていたりすることもある」と話す。そのような背景から、未診断のままの患者が存在し、診断がつく時点ではかなり進行していることも多い。そこで第6版では、「風邪が治りにくい」「風邪の症状が強い」などの増悪期の症状や、気道感染時の症状で医療機関を受診したときが診断の契機となることなどを強調した。 COPDの確定診断には呼吸機能検査が必要であるが、新型コロナウイルス感染症(COVID-19)の影響や設備の問題で実施が難しい場合も多い。その場合は「長期の喫煙歴と息切れがあり、咳や痰などの慢性的な症状が併存し、他疾患を否定できればCOPDの可能性がかなり高い。病診連携などを活用して画像診断を実施し、肺気腫を発見してほしい」と述べた。また、呼吸機能検査が難しい場合の診断について、日本呼吸器学会では「COVID-19流行期日常診療における慢性閉塞性肺疾患(COPD)の作業診断と管理手順」を公表しており、本ガイドラインにも掲載されているので参照されたい。管理目標と安定期の治療 第6版では、COPDの管理目標に「疾患進行の抑制および健康寿命の延長」が追加された。その背景として、「疾患進行抑制の最大の要素である禁煙の重要性を強調したい」、「何らかの症状を抱えていたり、生活に不自由を感じていたりする患者の多いCOPDでは、健康寿命に影響を及ぼすフレイルに陥らないようにして、健康寿命を延ばすことの重要性を強調したい」という意図があると、柴田氏は述べた。 安定期の治療について、第6版では「安定期COPD管理のアルゴリズム」が喘息病態の合併例と非合併例に分けて記載された。柴田氏は「COPD患者の約4分の1が喘息を合併し、喘息合併例では吸入ステロイド薬(ICS)が治療の基本となるため、治療の入り口を分けた」と解説する。具体的には、日頃からの息切れと慢性的な咳・痰がある場合、喘息非合併例では「長時間作用性抗コリン薬(LAMA)あるいは長時間作用性β2刺激薬(LABA)」、喘息合併例では「ICS+LABAあるいはICS+LAMA」から治療を開始し、症状の悪化あるいは増悪がみられる場合、喘息非合併例では「LAMA+LABA(テオフィリン・喀痰調整薬の追加)」、喘息合併例では「ICS+LABA+LAMA(テオフィリン・喀痰調整薬の追加)」にステップアップする。 喘息非合併例では、頻回の増悪かつ末梢好酸球数増多がみられる患者には「LAMA+LABA+ICS」の使用を考慮する。なお、喘息非合併の安定期COPD治療は、LAMAまたはLABAの単剤で始めなければならないというわけではなく、「CAT(COPDアセスメントテスト)が20点以上やmMRC(modified British Medical Research Council)グレード2以上といった症状の強い患者は、LAMA+LABAで治療を開始しても問題ない。詳細はCQ5を参照してほしい」と述べた。 安定期の治療について、第6版では15個のCQが設定された。その中で「強く推奨する」となったのは、「LAMAによる治療(CQ2)」「禁煙(CQ10)」「肺炎球菌ワクチン(CQ11)」「呼吸リハビリテーション(CQ12)」の4つである。とくに「呼吸リハビリテーション」について、柴田氏は「エビデンスレベルが高く、強く推奨するという結果になったことは、まだまだ普及が進んでいない呼吸リハビリテーションを普及させるという観点から、非常に意義のあることだと考えている」と話した。 COVID-19流行期における注意点として、「COPD患者は新型コロナウイルスに感染すると重症化しやすいため、感染対策が重要となるが、身体活動性を落とさないよう定期的な運動は続けてほしい。薬物療法については、ICSを使用していてもCOVID-19の重症化リスクは上昇しないため、現在の治療を継続することが重要」とした。診断・治療共に積極的な病診連携の活用を 第6版では、病診連携の項でプライマリケア医と呼吸器専門医の役割を詳細に解説している。柴田氏は、非専門医に期待する役割について「COPD治療の基本である禁煙の徹底、併存症の管理、インフルエンザや新型コロナのワクチンに加えて肺炎球菌ワクチン接種を行ってほしい」と述べた。加えて、「COPD患者の肺がんの年間発生率は2%ともいわれるため、願わくは年1回など定期的な低線量CTを実施してほしい」とも述べた。一方、呼吸器専門医については、「呼吸機能検査を実施して診断の入口となることや、治療をしていても増悪を繰り返すような管理の難しい患者の治療、呼吸リハビリテーションの実施といった役割を期待する」と話し、病診連携を活用して呼吸器専門医に紹介してほしいと強調した。 また、COPDの薬物治療は吸入療法が中心となるため、適切な吸入指導が欠かせない。しかし、吸入薬の取り扱いや指導に不慣れな医師もいるだろう。そこで活用してほしいのが、病薬連携だという。柴田氏は「薬剤服用歴管理指導料吸入薬指導加算が算定できるため、吸入薬の取り扱いに慣れている薬局の薬剤師に、吸入指導を依頼することも可能だ。デバイスについては、患者によって向き・不向きがあり、処方変更が必要になることもあるため、病薬連携が重要となる」と述べた。COPD患者の発見と積極的な介入を 柴田氏は、非専門医の先生方へ「皆さんの思っている以上にCOPD患者は多い。70歳以上の高齢男性では4人に1人が何らかの気流閉塞があることが知られており、高血圧や循環器疾患の3人に1人はCOPDというデータもある。高齢で糖尿病を有し喫煙歴のある患者にもCOPDが多い。このような患者をどんどん発見して、治療介入してほしい。その際、本ガイドラインを活用してほしい」とメッセージを送った。COPD(慢性閉塞性肺疾患)診断と治療のためのガイドライン第6版定価:4,950円(税込)判型:A4変型判頁数:312頁発行:2022年6月編集:日本呼吸器学会COPDガイドライン第6版作成委員会発行:メディカルレビュー社

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