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思春期の認知能力、早産児ほど低い/BMJ

 在胎40週出生児と比較して、在胎34~39週出生児に差はみられなかったものの、在胎34週未満児では、思春期における認知能力が実質的に劣ることが示唆されたという。英国・インペリアル・カレッジ・ロンドンのAnders Husby氏らが、デンマークの住民を対象とした完全同胞のコホート研究の結果を報告した。検討では、国語と数学の試験、知能指数(IQ)検査の結果を評価したが、在胎34週未満児ではいずれも低く、在胎週が短いほど低下が認められた。著者は、「所見は、こうした早産の悪影響をどのように防ぐことができるかについて、さらなる研究が必要であることを強調するものである」との見解を示し、「認知能力は出生時に定まっているものではなく、社会環境や養育に大きく影響されることから、早産児に対する早期介入が必要である」と述べている。BMJ誌2023年1月18日号掲載の報告。在胎週数と思春期の国語・数学試験成績やIQとの関連を解析 研究グループは、市民登録システム(Danish Civil Registration System)、出生登録(Medical Birth Registry)、デンマーク統計局の教育記録のデータを用い、1986年1月1日~2003年12月31日の期間に生まれた子供116万1,406例のうち、同期間に同じ両親の間に生まれた兄弟姉妹が1人以上いる79万2,724例を対象として、在胎週数と義務教育終了時(9年生、年齢15~16歳)の国語ならびに数学の成績(試験年を基準とするZスコアとして標準化)との関連を解析した。成績は、盲検化された評価者によって採点された全国的な年1回の試験から得られた、2001/2002年~2018/2019年の学年の成績とした。 また、男性兄弟のみのサブコホートを対象に、デンマーク国防省に登録されている徴兵制の知能検査のデータを用い、2020年12月10日を最新の試験日として徴兵時(ほとんどが18歳)の知能検査スコア(生年を基準とするZスコアとして標準化)との関連についても解析した。在胎週が短いほど成績も低い 79万2,724例の全コホートにおいて、4万4,322例(5.6%)が在胎37週未満で出生していた。複数の交絡因子(性別、出生体重、先天性異常、出生時の両親の年齢、両親の教育レベル、年上の兄姉の人数)、および兄弟姉妹間の共通の家族因子で調整後、国語の平均評点は在胎40週の出生児と比較して在胎27週以下のみ有意に低かった(Zスコアの差:-0.10、95%信頼区間[CI]:-0.20~-0.01)。 数学については、在胎40週の出生児と比較して在胎34週未満で有意に低く(在胎32~33週:-0.05[95%CI:-0.08~-0.01]、在胎28~31週:-0.13[-0.17~-0.09]、在胎27週以下:-0.23[-0.32~-0.15])、在胎週数が短いほど評点が徐々に低下することが示された。 男性兄弟のみのサブコホートでも全コホートと同様の結果であった。IQ得点は、在胎40週の出生児と比較して在胎32~33週、28~31週および27週以下でそれぞれ2.4(95%CI:1.1~3.6)、3.8(95%CI:2.3~5.3)、4.2(95%CI:0.8~7.5)低かった。一方、在胎34~39週の出生児のIQ得点は1未満低いだけであった。

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新型コロナウイルス感染症に対する経口治療薬の比較試験(ニルマトレルビル/リトナビルとVV116)(解説:寺田教彦氏)

 本研究は、新型コロナウイルス感染症(COVID-19)重症化リスクの高い軽症~中等症患者を対象とした、標準治療薬ニルマトレルビル/リトナビルと新規薬剤VV116との比較試験である。 ニルマトレルビル/リトナビルは、オミクロン株流行下におけるワクチン接種者やCOVID-19罹患歴のある患者を含んだ研究でも、重症化リスクの軽減が報告され(オミクロン株流行中のニルマトレルビルによるCOVID-19の重症化転帰)、本邦の薬物治療の考え方(COVID-19に対する薬物治療の考え方 第15版[2022年11月22日])やNIHのCOVID-19治療ガイドライン(Prioritization of Anti-SARS-CoV-2 Therapies for the Treatment and Prevention of COVID-19 When There Are Logistical or Supply Constraints Last Updated: December 1, 2022)でも重症化リスクのある軽症~中等症患者に対して推奨される薬剤である。しかし、リトナビルは相互作用が多く、重症化リスクがある高齢者や高血圧患者で併用注意や併用禁忌の薬剤を内服していることがあり、本邦では十分に活用されていないことも指摘されている。 新規薬剤のVV116はレムデシビルの経口類似体で、主要な薬物代謝酵素や薬物トランスポーターを阻害せず、他剤との相互作用は起こしづらいと考えられている薬剤である。 本研究では、重症化リスクの高い軽症~中等症のCOVID-19成人患者でVV116投与群は、ニルマトレルビル/リトナビル投与群と比較して、持続的な臨床的回復までの期間について非劣性、かつ副作用が少なかった。 VV116は、今後COVID-19の治療に用いられる可能性のある薬剤ではあるが、本研究結果のみでは、COVID-19治療に用いる根拠は乏しいと私は考えている。理由としては、本研究の主要評価項目が、持続的な臨床回復までの期間となっていることである。本文中では、ニルマトレルビル/リトナビルはWHOガイドラインで重症化リスクの高い軽症~中等症患者に推奨されているために比較群としたが、同薬剤が各国のガイドラインで推奨されている根拠は、ニルマトレルビル/リトナビルの投与により、入院・死亡などの重症化リスクが有意に軽減したことにある。limitationにも記載があるが、本研究では重症化・死亡率低下の点で有効性を評価することができておらず、VV116がニルマトレルビル/リトナビルと比較して副作用が少なかったとしても、投薬により得られるメリットがなければ推奨する根拠は乏しいだろう。ニルマトレルビル/リトナビルは、COVID-19に対して有効な抗ウイルス薬なので、投薬により持続的な臨床的回復が速やかになる可能性はあるが、私の知る限りは、ニルマトレルビル/リトナビルの投与により持続的な臨床回復までの期間が早期になったことを示す大規模研究はない。本研究ではプラセボ群もないため、重症化リスクの高い軽症~中等症のCOVID-19成人患者に対して、VV116を投与すると、COVID-19の自然経過と比較して有意に持続的な臨床的回復までの期間を短縮するとは言えないと考える。 重症化予防効果の確認はlimitationで別の試験で評価を行う予定であることが記載されている。レムデシビルは、重症化リスクのある患者の入院・死亡リスクを軽減したことが証明されており(Gottlieb RL, et al. N Engl J Med. 2022;386:305-315.)、VV116はこの経口類似体であるため、同様に重症化予防は期待されうるが、本薬剤の評価はこの結果を待ちたいと考える。 その他に、本研究を本邦の臨床現場に当てはめる場合に気になったこととしては、ワクチン接種がある。本研究では、ワクチン接種者も参加していることを特徴としている。ただし、本研究のワクチン接種者は、どのワクチンを、いつ、何回接種したかが不明である。ワクチンの種類や、接種時期、接種回数は、持続的な臨床的回復までの期間や重症化リスクに寄与する可能性があり、重症化予防効果の試験では同内容も確認できることを期待したい。 最後に、2023年1月時点、本邦で使用されている経口抗ウイルス薬の目的を整理する。ニルマトレルビル/リトナビル、モルヌピラビル、エンシトレルビルの薬剤の中で、ニルマトレルビル/リトナビル、モルヌピラビルは、重症化リスクのある患者に対して重症化予防目的に投薬が行われている。対して、エンシトレルビルの重症化予防効果は証明されておらず、重症化リスクのない患者の早期症状改善目的に投薬されるが、重症化リスクのある患者には前者の2剤を使用することが推奨されている。 しかし、今後のCOVID-19の流行株の特徴や社会情勢によっては、抗ウイルス薬に求められる役割は、重症化予防効果や症状の早期改善のみではなく、後遺症リスクの軽減、場合によっては濃厚接触後の発症予防になる可能性もあるだろう。 VV116は、相互作用のある薬剤が少なく、比較的副作用も少ない薬剤と考えられ、臨床現場で使用しやすい可能性がある。本研究からは、同薬剤を用いることで患者が得られる効果ははっきりしなかったと考えるが、今後発表される研究結果によっては、有望な抗COVID-19薬となりうるだろう。また、VV116以外にもレムデシビルの経口類似体薬が開発されており、今後の研究成果を期待したい。

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対話型人工知能「ChatGPT」を使ってみた【Dr. 中島の 新・徒然草】(462)

四百六十二の段 対話型人工知能「ChatGPT」を使ってみた最近は徐々に日が長くなってきたのを実感します。とはいえ、まだまだ朝は寒いですね。本日は今、話題になっているChatGPTについてお話しします。ChatGPTというのは、昨年11月にリリースされた対話型人工知能。マイクロソフトも出資し、わずか5日間で全世界100万人という空前の登録があったとか。何でも答えてくれる大変便利なものと聞いてやってみました。が、そもそも登録画面につながりません。“at capacity”(いっぱい、いっぱい)という表示が出たままです。アクセスが殺到しているのでしょう。そして、時間つぶしのつもりか、stand-up comedyのセリフとかポエムだとかが、次々に表示されます。PCでもスマホでも試してみましたが、いくら経ってもつながりません。ついに諦めざるを得ませんでした。が、翌日のこと。何の気なしにスマホを見たら、前夜の画面のまま“sign up”という表示がありました。いつの間にか1コマ進んでいたようで、早速登録しました。実際に使ってみると、日本語で尋ねたら日本語で返ってくるので便利。試しにこんな質問を文字で打ち込んでみます。中島「インド洋の1番深いところの水深はどのくらいあるのでしょうか?」するとこんな答えが返ってきました。ChatGPT「インド洋の最も深いところの水深は約7,450メートルです」なるほど!以下は私がChatGPTと交わした連続問答です。中島「その場所はどこですか?」ChatGPT「その場所はインド洋のJava Trenchと呼ばれています」中島「緯度経度で表現するとどうなりますか?」ChatGPT「Java Trenchの緯度経度は、約南西8°から南西11°、東経109°から112°です」中島「最深部の緯度経度は?」ChatGPT「Java Trenchの最深部の緯度経度は、約南西8°25'、東経111°30'です」なんか「約南西」とかいう謎の言葉が連発されています。中島「約南西8°25'とありますが、南緯8°25'のことでしょうか?」ChatGPT「はい、そのとおりです。南緯8°25'です」最後は素直な回答でした。次は「10巻以内で完結する面白い漫画を教えてください」としてみます。すると、返ってきた答えは、こんな感じでした。以下は完結していて面白い漫画の一部です:デスノートワンパンマン鋼の錬金術師進撃の巨人ナルト桜蘭高校ホスト部ソードアート・オンラインフルメタル・パニック!ソウルイーター黒執事確かに有名な漫画が多いですね。私自身はほとんど読んでいないので、妥当なリストか否かは判断できません。そして、いよいよ医学的な質問をしてみました。中島「周期性嘔吐症は小児の病気ですが、成人にも発症することがあるのでしょうか?」この質問に対する回答は以下のとおりでした。ChatGPT「はい、周期性嘔吐症は成人にも発症することがあります。年齢や性別に関係なく、誰でも罹患する可能性があります」そりゃあ、どんなことでも可能性があるといえばあるわけです。なので、さらに尋ねてみました。中島「診断や治療はどうしたらいいのでしょうか?」そうすると、一般的過ぎて役に立たない回答が。周期性嘔吐症の診断や治療には以下のような手順があります:医師との話し合い:症状について詳細に聞かれます。検査:血液検査や画像検査などが行われます。診断:ほかの病気を除外し、周期性嘔吐症が確定されます。治療:薬物療法、心理療法、栄養治療などが行われます。周期性嘔吐症の治療は個々人によって異なりますので、専門家に相談することが大切です。この辺がChatGPTの限界でしょうか?海外では、レポート作成に学生たちが悪用しまくっているとか。確かにそのような目的には強いのかもしれません。要は使い方の問題かな。よかったら読者の皆さんも試してみてください。最後にChatGPTに作らせた1句冬の朝 足跡刻む 鳥の群れ雪景色に鳥たちが足跡を付けているという意味なのでしょうかね。ChatGPTは五七五を無視しがちなので、適当に修正しなければなりません。「冬の朝」を使って私も1句窓を開け 眠気を飛ばす 冬の朝

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第30回 ChatGPTで医学論文を書ける?

「ChatGPT」とは読者の皆さんは「ChatGPT」をご存じでしょうか。2022年11月にリリースされた汎用型チャットボットです。チャットボットといえば、企業のホームページなどで導入が増え、機械的な答えしか返ってこないイメージがあるかと思いますが、ChatGPTはその根底を覆すほどの性能なんだとか。だいたいのことは適切に答えてくれて、ジョークも返してくれるし、それなりの随筆や小説も書けます。試しに、「新型コロナをテーマにしたラップを作ってほしい」と頼んでみると、以下のようなラップが出来上がりました。「新型コロナ、俺らにできることを知って、覚悟を持てウイルスが繁殖して、人々を傷つけた 呼吸が苦しくて気分が重い時もあった、俺らは前向き、心を強く持て家族を守り、自分自身を保て」おお、あまりうまくないけど韻を踏んでいる。(笑)私も登録していますが、どちらかといえば上記のように遊びで使っている側面が大きいです。このChatGPTを開発しているのが、サンフランシスコ拠点のOpenAIという組織です。非営利で「人類に優しいAI(friendly AI)」を開発する目的で創業されました。私は「Dr. 倉原の“おどろき”医学論文」という連載をケアネット内に持っているのですが、「珍しい直腸異物の症例報告」を探してもらったものの、ビンが肛門に入ったとか、性的玩具が入って取れなくなったとか、私にとっては大して珍しくない論文ばかりがヒットしたので、まだPubMedで検索したほうが早い印象です。科学論文の執筆は禁止残念ながら機械学習に関する国際会議のInternational Conference on Machine Learning(ICML)が、「ChatGPTのようなAIを使って科学論文を執筆することを禁止する」という方針を発表しました。とはいえ、あくまで、何から何まで作るのはダメという意味で、サポート的に使う分には問題はなさそうです。個人的には、医学論文を読むときはDeepL、英文校正は外部の校正会社に委託して、統計解析はコツコツ自分でやっていることが多いです。ChatGPTはこういうところも全部網羅してくれるサービスに化ける可能性があり、実際これを使って論文を書いている人が増えている印象です。統計解析ソフトのプログラミングコードをChatGPTで組む人も出てきて、可能性は無限大かもしれません。しかし、アメリカ・ニューヨーク市の教育局は、学校のコンピュータやネットワークからChatGPTにアクセスすることを禁止しており、事態はなかなか混沌としております。私たち医師にとって、アンメットニーズを満たす有用なツールになると、ありがたいですね。

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治療抵抗性双極性障害治療の現在と今後の方向性

 双極性障害は世界人口の1~2%に影響を及ぼすとされる慢性的な精神疾患であり、うつ病エピソードが頻繁に認められ、約3分の1の患者では適切な用量による薬物治療に反応が得られないといわれている。治療抵抗性双極性障害(TRBD)の明確な基準は存在しないが、2つの治療薬による適切な治療を行ったにもかかわらず効果不十分である場合の対処は、TRBD治療の重要な課題である。米国・ルイビル大学のOmar H. Elsayed氏らは、TRBDに対する治療介入、課題、潜在的な今後の方向性について、エビデンスベースでの確認を行った。その結果、TRBDの現在の治療法に関するエビデンスは限られており、その有効性は低かった。TRBDの効果的な治療法や革新的なアプローチは研究中であり、今後の研究結果が待ち望まれる。Neuropsychiatric Disease and Treatment誌2022年12月16日号の報告。 PubMedよりTRBD治療に関連するランダム化対照試験、ClinicalTrials.govよりTRBD/双極性うつ病治療に関連する進行中の試験を検索した。 主な結果は以下のとおり。・プラミペキソールおよびモダフィニルによる補助療法の短期的な有効性を裏付けるデータ、ラセミ体ケタミンの静脈内投与の限定されたデータが報告されている。・インスリン抵抗性患者におけるエスシタロプラムのセレコキシブ増強療法とメトホルミン治療は、有望な結果が示されている。・右片側電気けいれん療法は、有意なレスポンス率と改善を示したが、薬物療法と比較し有意な寛解は認められていない。・経頭蓋磁気刺激(TMS)療法は、TRBDの偽治療と比較し、有意な差は認められていない。・新規作用機序を有するブレクスピプラゾールやボルチオキセチンによる薬理学的治療は、単極性うつ病に対する有効性に続いて試験が行われている。・短期集中TMS療法(aTMS)などのTMSプロトコールの調査も行われている。・革新的なアプローチとして、サイケデリック支援療法、インターロイキン2、糞便移植療法、多能性間質細胞などによる治療の研究が行われている。

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高齢者への前立線がんスクリーニング、推奨なしでも行われる背景

 米国では、2021年に24万8,530例の男性が前立腺がんと診断され、3万4,000例以上が死亡したと推定されている。一方、前立腺がんは進行が遅く、70 歳以上の場合、スクリーニングは寿命を延ばすことなく、過剰診断や過剰診療の不必要なリスクをもたらす可能性があるとして、米国ガイドラインにおいて推奨されていない。 それにもかかわらず行われる「価値の低い」スクリーニングは主にプライマリケア・クリニック(家庭医)で行われており、医師の指示/依頼が多いほど低価値のスクリーニングが行われる傾向にあることが、米国・ノースカロライナ州のウェイクフォレスト医科大学の Chris Gillette氏らによる研究で示された。本結果は、Journal of the American Board of Family Medicine誌オンライン版2023年1月2日号に掲載された。 研究者らは 2013~16年および2018年のNational Ambulatory Medicare Care Surveyのデータセットの二次分析を行った。Andersenの医療サービス利用の行動モデルにより、独立変数の選択を行い、多変量解析を行った。データから、(1) 患者が男性、(2) 70歳以上、(3) プライマリケア・クリニック受診を選択し、さらに診断検査である可能性がある特定のコードを除外し、スクリーニング検査を抽出した。 主な結果は以下のとおり。・70歳以上への「価値が低い」と判断された血清PSA(前立腺特異抗原)スクリーニングは100回中6.71回(95%信頼区間[CI]: 5.19~8.23)、直腸指診は100回中1.65回(95% CI: 0.91~2.38)の割合で行われていた。・低価値のスクリーニングは、プライマリ医や医療機関によって提供/指示されたサービスの数に関連していることが判明した。具体的には、1つのサービスを依頼するごとに、低価値のPSAが実施される確率が49%、低価値の直腸指診が実施される確率が37%増加した。・過去の受診した回数の多い受診では、低価値の直腸指診を受ける確率は減少した。 研究者らは「医療者が診察時に可能な検査をすべて指示してしまう『ショットガン』アプローチはよく知られた現象であり、医療資源の浪費を引き起こし、ひどい場合は患者がその後有害な検査や処置にさらされる可能性がある。前立腺がんスクリーニングは患者の嗜好性が高く、リスクがあるにもかかわらず検査を希望している可能性がある。低価値のスクリーニングを減らしたい組織は、多くの検査をオーダーしているクリニックに介入(監査やフィードバック)すべきである。また、本研究はプライマリケア・クリニックにおけるスクリーニングの調査であり、泌尿器科専門医のものは含まれていないことに注意が必要だ」としている。

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アルツハイマー病治療薬lecanemab、厚労省の優先審査品目に指定/エーザイ・バイオジェン

 エーザイとバイオジェン・インクは1月30日、アルツハイマー病(AD)治療薬の抗アミロイドβ(Aβ)プロトフィブリル抗体lecanemabの日本における製造販売承認申請について、厚生労働省より優先審査品目に指定されたことを発表した。優先審査は、重篤な疾病で医療上の有用性が高いと認められた新薬などに与えられ、総審査期間の目標が短縮される。医薬品医療機器総合機構(PMDA)によると、申請から承認までの総審査期間は、通常品目は80パーセンタイル値で12ヵ月のところ、優先品目は9ヵ月となっている。 同社は2023年1月16日に、日本における製造販売承認申請を行った。本申請は、lecanemab投与による早期ADの臨床症状の悪化抑制を実証した臨床第III相Clarity AD試験、臨床第IIb相試験(201試験)に基づく。 本剤については、米国において、2023年1月6日に米国食品医薬品局(FDA)よりAD治療薬として迅速承認を取得し、同日、フル承認への変更に向けた生物製剤承認一部変更申請(supplemental Biologics License Application:sBLA)が提出された。欧州においても、1月9日に欧州医薬品庁(EMA)に販売承認申請(MAA)を提出し、1月26日に受理されている。中国においては、2022年12月に中国国家薬品監督管理局(NMPA)にBLAの申請データの提出を開始した。

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高齢ドライバーの運転事故は減少しているか/筑波大

 高齢者の自動車運転に起因する事故が後を絶たない。交通安全推進のため、75歳以上のドライバーを対象に、2009年から運転免許更新時の認知機能検査が義務化され、2017年からその検査結果の運用方法が変更された。これら運用変更後に、高齢ドライバーの事故は減少したのだろうか。 市川 政雄氏(筑波大学医学医療系教授)らの研究グループは、2012~19年までに全国で発生した高齢ドライバーによる交通事故のデータを用い、2017年の運用変更後に、75歳以上のドライバーの事故数が、認知機能検査の対象外である70~74歳と比べ、どの程度変化したのか分析した。また、75歳以上の高齢者が自転車や徒歩で移動中に負った交通外傷の数にも変化があったのか、同様に分析した。 その結果、ドライバーとしての事故は減少していた一方で、自転車や歩行者としての外傷は増加していたことが明らかとなった。Journal of the American Geriatrics Society誌2023年1月25日号からの報告。自動車事故は減少した一方で課題も残る【研究の背景】 わが国では、高齢ドライバーの安全確保を目的として、さまざまな運転免許証更新時の講習などの施策がとられている。しかし、本研究グループの先行研究によれば、これら導入後、75歳以上のドライバーが起こした事故は減少せず、認知機能検査導入後は、自転車や歩行者としての外傷が増加していた。本研究では、2017年3月の運用変更後に、高齢者のドライバーとしての事故や自転車や歩行者としての外傷がどの程度変化したのか分析した。【研究内容と成果】(方法) 本研究では、交通事故総合分析センターから入手した2012年7月~2019年12月までに全国で発生し、警察に報告された交通事故のデータを使用。2017年3月の認知機能検査の運用変更後に、75~79歳、80~84歳、85歳以上の男女別の各年齢層のドライバーが当事者となった事故の率(性・年齢層別の人口当たり)が、免許更新時の認知機能検査の対象外であった70~74歳のドライバーの事故率と比べて、その率比がどの程度変化したかを、分断時系列解析を用いて分析した。また、高齢者が自転車や歩行者として交通外傷を負った率(性・年齢層別の人口当たり)の変化も、同様に分析した。(結果) 2017年3月以降、ドライバーとしての事故率は、いずれの年齢層でも、男性で低下し、女性では統計学的に有意な変化がみられなかった。その一方で、自転車や歩行者としての外傷率は、とくに女性で増加していた。また、2017年3月以降の事故率・外傷率のトレンドの変化に基づき推定したところ、認知機能検査の運用が変更された2017年3月~2019年12月までに、75歳以上のドライバーとしての事故は3,670件(95%信頼区間[CI]:2,104~5,125)減少し、自転車や歩行者としての外傷は959件(95%CI:24~1,834)増加したと推定された。 以上から2017年3月の運用変更は、ドライバーとしての事故を減らした可能性がある一方で、自転車や歩行者としての外傷を増やした可能性が示唆された。 研究グループは今回の研究結果から、「自転車や徒歩で移動する際の安全対策を強化したり、それらよりも安全な移動手段を確保したりする必要がある。また、高齢ドライバーが安全に運転できる『運転寿命』を延伸する方策や、運転を止めても住み慣れた地域で暮らし続けられるようにする支援にも検討を進めることが必要」と課題を示している。

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難治性院外心停止、体外循環式心肺蘇生法vs.従来法/NEJM

 難治性院外心停止患者において、体外循環式心肺蘇生(ECPR)と従来のCPRは、神経学的アウトカム良好での生存に関して有効性が同等であることが、オランダ・マーストリヒト大学医療センターのMartje M. Suverein氏らによる多施設共同無作為化比較試験「INCEPTION(Early Initiation of Extracorporeal Life Support in Re-fractory Out-of-Hospital Cardiac Arrest)試験」の結果、報告された。ECPRは自発循環のない患者において灌流と酸素供給を回復させるが、難治性院外心停止患者における良好な神経学的アウトカムを伴う生存に対する有効性に関するエビデンスは、結論が得られていなかった。NEJM誌2023年1月26日号掲載の報告。バイスタンダーによるCPRで15分以内に自発循環が回復しなかった患者を無作為化 研究グループは、2017年5月~2021年2月に期間に、オランダの12の救急医療サービス(EMS)がある心臓外科センター10施設において、難治性院外心停止患者をECPR群または従来CPR群に、施設で層別化した置換ブロック法を用いて1対1の割合で無作為に割り付けた。 適格基準は、18~70歳で、心室性不整脈(EMSチームにより診断された心室細動または心室頻拍、あるいは自動体外式除細動器により検出されたショック適応波形)により院外で心肺停止し、バイスタンダー(現場に居合わせた人)によってCPRを受けたが、CPR開始後15分以内に自発循環が回復しなかった患者とした。ECPRは、地域の施設のプロトコールに従い、CardiohelpシステムとHLS Set Advanced 7.0/5.0を用いて実施した。 主要アウトカムは、30日後の良好な神経学的アウトカム(脳機能カテゴリー[CPC]スコア1または2と定義、スコアの範囲は1~5、スコアが高いほど障害が重度)を有する生存とし、intention-to-treat解析を行った。ECPRと従来型CPRで主要評価項目に有意差なし 160例が無作為に割り付けられ、このうち割り付け後に適格基準を満たさないことが判明した26例を除き、ECPR群70例、従来CPR群64例が解析対象集団となった。 心停止から救急車到着までの平均(±SD)時間は両群とも8±4分で、病院到着前にECPR群で44例(63%)、従来型CPR群で42例(66%)が無作為化され、心停止から救急外来到着までの平均時間はそれぞれ36±12分および38±11分であった。 ECPR群において、ECPRが開始されたのは70例中52例(74%)で、体外式膜型人工肺(ECMO)が成功した患者は46例(66%)であった。また、従来CPR群では、3例がECMO-CPRにクロスオーバーされた。 30日後に神経学的アウトカム良好で生存していた患者は、ECPR群で70例中14例(20%)、従来CPR群では30日後の評価が行われなかった1例を除く62例中10例(16%)であった(オッズ比[OR]:1.4、95%信頼区間[CI]:0.5~3.5、p=0.52)。 重篤な有害事象の平均発生数は、ECPR群1.4±0.9/例、従来CPR群1.0±0.6/例であり、両群で同程度であった。

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イバブラジン・ベルイシグアト【心不全診療Up to Date】第5回

第5回 イバブラジン・ベルイシグアトKey Points4人の戦士“Fantastic Four”を投入したその後の戦略はいかに?過去の臨床試験を紐解き、イバブラジン・ベルイシグアトが必要な患者群をしっかり理解しよう!はじめに第4回までで、左室駆出率の低下した心不全(HFrEF:Heart Failure with reduced Ejection Fraction)に対する“Fantastic Four”(RAS阻害薬/ARNi、β遮断薬、MRA、SGLT2阻害薬)の役割をまとめてきた。そして今回は、「その4剤併用療法(First-Line Quadruple Therapy)を開始、用量最適化後の次のステップ(Add-on Therapies)は?」という観点から、かかりつけの先生方の日常診療に役立つ内容を最新のエビデンスも添えてまとめていきたい。4人の戦士“Fantastic Four”を投入したその後の戦略はいかに?まず、第4回までで説明してきたとおり、大原則として、医療従事者(ハートチーム)が、目の前のHFrEF患者に対して、相加的な予後改善効果が証明されているガイドラインClass 1推奨薬4剤“Fantastic Four”をできる限り速やかにすべて投与する最大限の努力をし、最大許容用量まで漸増することが極めて重要である。なお、もしその中のどれか1つでも追加投与を見送る場合は、その薬剤を『試さないリスク』についても患者側としっかり共有しておくことも忘れてはならない。では、それらをしっかり行ったとして、次のステップ(追加治療)はどのような治療がガイドライン上推奨されているか。その答えは、米国心不全ガイドラインがわかりやすく、図1をご覧いただきたい1)。まず、β遮断薬投与にもかかわらず、心拍数≧70拍/分の洞調律HFrEF患者には、イバブラジンの追加投与がClass 2aで推奨されている。また、最近心不全増悪を認めた高リスクHFrEF患者では、ベルイシグアトの追加投与がClass 2bで推奨されている。その他RAAS阻害薬投与中の高カリウム血症に対するカリウム吸着薬(sodium zirconium cyclosilicate[商品名:ロケルマ]など)がClass 2bで推奨されているなどあるが、今回はイバブラジン(商品名:コララン)、ベルイシグアト(商品名:ベリキューボ)2つの薬剤について少しDeep-diveしていこう。画像を拡大する1.イバブラジン(ivabradine)イバブラジンとは、洞結節にある過分極活性化環状ヌクレオチド依存性(HCN)チャネルを阻害する、新たな慢性心不全治療薬である。と言われても何のことかわかりにくいが、この薬剤の特徴を一言でいうと、「陰性変力作用なく心拍数だけを減らす」というものであり、適応を一言で言うと、「心拍数の速い洞調律のHFrEF患者」である。では、このHCNチャネルとは何者か。HCNチャネルは主に洞結節に存在する6回膜貫通型膜タンパク質であり、正電荷アミノ酸(アルギニンやリジン)が多く配置されている第4膜貫通ドメイン(HCN4)が電位センサーの中心となっている。洞結節において電気刺激が自発的に発生する自発興奮機能(自動能)形成に寄与する電流は、”funny” current(If)と呼ばれ、HCNチャネル(主にHCN4)を介して生成される2,3)。イバブラジンは、このHCN4チャネルを高い選択性をもって阻害することで、Ifを抑制し、拡張期脱分極相におけるペースメーカー活動電位の立ち上がり時間を遅延させ、心拍数を減少させる。イバブラジンは用量依存的に心拍数を低下させるが、この特異的な作用機序の結果として、心臓の変力作用や全身血管抵抗に影響を与えずに心拍数だけを低下させることができる4,5)。そして、心拍数を減らすことによって、心筋酸素消費量を抑え、左室充満と冠動脈灌流を改善させ、その結果左室のリバースリモデリングを促し、心不全イベントを抑制するというわけである6)。本剤は、2005年欧州においてまず安定狭心症の適応で承認され、その後慢性心不全の適応で2012年に欧州、2015年に米国で承認された(図2)7)。その流れを簡単に説明すると、冠動脈疾患を有する左室収縮機能障害患者へのイバブラジンの心予後改善効果を検証したBEAUTIFUL試験の結果は中立的なものであったが、心拍数≧70拍/分の患者におけるイバブラジンの潜在的な有用性(冠動脈疾患発生抑制効果)について重要な洞察をもたらした8)。この結果は、次に紹介するSHIFT試験の基礎となった。画像を拡大するSHIFT試験は、NYHA II-IV、LVEF≦35%、洞調律かつ70拍/分以上の心不全患者6,505例(日本人含まず)を対象に、イバブラジンの効果を検証した第III相試験である(図2)9)。この試験の結果、主要評価項目である心血管死または心不全入院は、イバブラジン群で18%減少していた(HR:0.82、95%信頼区間[CI]:0.75~0.90、p<0.001)。ただ、これは主に心不全入院の26%減少によってもたらされたものであった。また、サブグループ解析の結果、ベースラインの安静時心拍数が中央値77拍/分より高いサブグループにおいてのみ、イバブラジンによる有意な治療効果が認められ(交互作用に対するp値=0.029)、その後の事後解析において、安静時心拍数≧75拍/分の部分集団では心不全入院だけではなく、心血管死も有意に抑制していた(HR:0.83、95%CI:0.71~0.97、p=0.017)10)。ただし、これらの知見を解釈する際には、SHIFT試験に参加した患者の大多数(約70%)が虚血性心不全をベースに持ち、植込み型除細動器の使用が少なく(不整脈イベント抑制効果は期待できない可能性あり)、β遮断薬ガイドライン推奨用量の50%以上を投与するという要件を満たした症例は56%に過ぎなかったことを念頭に置くことが重要である。以上のような経緯から、その後日本人慢性HFrEF患者を対象に実施されたJ-SHIFT試験においては、「安静時心拍数が75拍/分以上」というのが組み入れ基準の1つとして採用された11) 。その結果、SHIFT試験との結果の類似性が確認されたため、添付文書上、心拍数≧75拍/分の患者が適応となっている。なお、イバブラジンはCYP3A4による広範な肝初回代謝を受け、詳細は省くが、この点がいくつかの薬剤(ベラパミル、ジルチアゼム、その他のCYP3A4阻害薬)において薬物相互作用と関連すること、また光視症(視細胞のHCN1チャネルを阻害するためであり、可逆的)には注意が必要である。個人的には、β遮断薬の増量や導入が困難なHFrEF患者には早期からイバブラジンを投与することで、リバースリモデリングが得られ、その結果β遮断薬のさらなる増量や導入が可能となることをよく経験するため、ぜひβ遮断薬の用量をより最適化する橋渡し的な道具としても実臨床で活用いただきたい。2.ベルイシグアト(vericiguat)ベルイシグアトは、心不全を引き起こす原因の1つである内皮機能障害を調節する新しい心不全治療薬である。血管内皮は通常、一酸化窒素(NO)を生成し、可溶性グアニル酸シクラーゼ(sGC)を介した環状グアノシン一リン酸(cGMP)産生を促進する。同様に、心内膜内皮もNOに感受性があり、細胞内のcGMPを上昇させることにより収縮性や拡張能を調節している。心不全ではこの過程がうまく制御できず、NO-sGC-cGMPの不足を招き、拡張期弛緩障害と微小血管機能障害を引き起こすとされている。ベルイシグアトは、メルク社とバイエル社が共同開発したsGC刺激薬で、sGCをNO非依存的に直接刺激するとともに、内因性NOに対する感受性を増強させ、NOの効果を増強してcGMP活性を増加させるというわけである(図3)12,13)。画像を拡大するこのようなコンセプトのもと、臨床的に安定した慢性心不全患者に対するベルイシグアトの有効性を検証すべく、第II相SOCRATES-REDUCED試験が実施された(表1)14)。本試験の主要評価項目であるNT-proBNP値のベースラインから12週までの変化において、ベルイシグアトの有意な効果は認められなかったが、探索的二次解析により、高用量のベルイシグアトがNT-proBNP値のより大きな低下と関連するという用量反応関係が示唆された。画像を拡大するこのデータをもとに、その後第III相VICTORIA試験が最近入院または利尿薬静脈内投与を受けたナトリウム利尿ペプチド上昇を認める慢性心不全(EF<45%)患者5,050例を対象に実施された(無作為化30日以内のBNP≧300pg/mLもしくはNT-proBNP≧1,000pg/mL[心房細動の場合BNP≧500pg/mLもしくはNT-proBNP≧1,600pg/mL])(表1)15)。本試験のデザイン上の重要なポイントは、これまでの心不全臨床試験よりもNT-proBNP値が高く(中央値2,816pg/mL)、より重症の心不全患者を組み入れたことであり、これにより高いイベント発生率がもたらされた。また、患者はこれまでの大規模な心不全臨床試験よりも高齢であることも特徴的であった。なお、目標用量については、上記で述べたSOCRATES-REDUCED試験で得られた知見に基づき、1日1回10mgで設定された。結果については、主要評価項目である心血管死または心不全による初回入院の複合エンドポイント発生率が、プラセボ投与群と比較してベルイシグアト投与群の方が有意に低かった(ハザード比:0.90、95%CI:0.82~0.98、p=0.02)。ただし、この結果はベルイシグアト投与群の心不全入院率の低さに起因しており、全死亡には群間差は認められなかった。なお、ベルイシグアトによる副作用については両群間で有意差を認めるものはなかったが(重篤な有害事象:ベルイシグアト群32.8% vs.プラセボ群34.8%)、プラセボ投与群と比較してベルイシグアト投与群において症候性低血圧や失神がより多い傾向を認めた(表1)。以上より、ベルイシグアトは、最新の米国心不全ガイドラインにて最近心不全増悪を認めた高リスクHFrEF患者においてClass 2bで推奨されており1)、わが国のガイドラインにおいても今後期待される治療として紹介されている16)。今回は、“Fantastic Four”の次の手について説明した。繰り返しとなるが、まずは“Fantastic Four”を可能な限りしっかり投与いただき、そのうえで上記で述べた条件を満たす患者に対しては、イバブラジン、ベルイシグアトの追加投与を積極的にご検討いただければ幸いである。1)Heidenreich PA, et al. Circulation. 2022;145:e895-e1032.2)DiFrancesco D. Circ Res. 2010;106:434-446.3)Postea O, et al. Nat Rev Drug Discov. 2011;10:903-914.4)Simon L, et al. J Pharmacol Exp Ther. 1995;275:659-666.5)Vilaine JP, et al. J Cardiovasc Pharmacol. 2003;42:688-696.6)Seo Y, et al. Circ J. 2019;83:1991-1993.7)Koruth JS, et al. J Am Coll Cardiol. 2017;70:1777-1784.8)Fox K, et al. Lancet. 2008;372:807-816.9)Swedberg K, et al. Lancet. 2010;376:875-885.10)Böhm M, et al. Clin Res Cardiol. 2013;102:11-22.11)Tsutsui H, et al. Circ J. 2019;83:2049-2060.12)Evgenov OV, et al. Nat Rev Drug Discov. 2006;5:755-768.13)Armstrong PW, et al. JACC: Heart Failure. 2018;6:96-104.14)Gheorghiade M, et al. JAMA. 2015;314:2251-2262.15)Armstrong PW, et al. N Engl J Med. 2020;382:1883-1893.16)Tsutsui H, et al. Circ J. 2021;85:2252-2291.

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アトピー性皮膚炎、抗IL-13抗体薬のステロイドへの上乗せは有用か?

 中等症~重症アトピー性皮膚炎(AD)の青少年・成人患者において、インターロイキン13(IL-13)をターゲットとする高親和性モノクローナル抗体lebrikizumab(LEB)と局所コルチコステロイド(TCS)の併用は、TCS単独と比べてアウトカムの改善が認められた。米国・オレゴン健康科学大学のEric L. Simpson氏らが第III相無作為化試験「ADhere試験」の結果を報告した。安全性は先行試験の報告と一致していた。LEB単剤の有効性と安全性は、第IIb相試験の16週単独投与期間中および2件の52週の第III相試験で示されていた。JAMA Dermatology誌オンライン版2023年1月11日号掲載の報告。 ADhere試験は、第III相多施設共同無作為化二重盲検プラセボ対照試験で、2020年2月3日~2021年9月16日に、ドイツ、ポーランド、カナダ、米国の54の外来施設において16週間の期間で実施された。青少年(12歳以上18歳未満、体重40kg以上)と成人の中等症~重症AD患者を対象とした。 全体で211例が2対1の割合で、LEB+TCS群(ベースラインと2週目に500mgを投与、その後隔週で250mg投与)またはプラセボ+TCS群に無作為に割り付けられ、TCSとの併用投与を16週間受けた。 16週時点で有効性解析が行われ、主要エンドポイントは、Investigator's Global Assessmentスコア0または1(IGA[0、1])を達成かつベースラインから2以上改善した患者の割合であった。主要な副次エンドポイントは、Eczema Area and Severity Indexの75%改善(EASI-75)を達成した患者の割合(欧州医薬品庁[EMA]では本項目も主要エンドポイントに設定)、Pruritus Numeric Rating Scaleに基づくかゆみ、睡眠へのかゆみの影響、QOLなどであった。安全性評価には、有害事象(AE)のモニタリングが含まれた。 主な結果は以下のとおり。・被験者211例の平均年齢(SD)は37.2(19.3)歳で、女性が48.8%(103例)であった。人種はアジア系が14.7%(31例)、黒人/アフリカ系のアメリカ人が13.3%(28例)であった。・16週時点で、IGA(0、1)達成患者の割合は、プラセボ+TCS群が22.1%(66例)であったのに対し、LEB+TCS群は41.2%(145例)であった(p=0.01)。EASI-75達成患者の割合は、それぞれ42.2%、69.5%であった(p<0.001)。・LEB+TCS群は、主要な副次エンドポイントすべてで、統計学的に有意な改善を示した。・治療中に発現した有害事象(TEAE)のほとんどが、重篤ではなく、重症度は軽症または中等症であった。・LEB+TCS群で報告頻度が高かったTEAEは、結膜炎(7件、4.8%)、頭痛(7件、4.8%)、ヘルペス感染(5件、3.4%)、高血圧(4件、2.8%)、注射部位反応(4件、2.8%)であった。これらのTEAEのプラセボ+TCS群での発現頻度は、いずれも1.5%以下であった。・患者の報告に基づく重篤なAEの発現頻度は、LEB+TCS群(2件、1.4%)とプラセボ+TCS群(1件、1.5%)で同程度であった。

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尿酸の上昇は心房細動発症と関連

 さまざまな疫学調査より高い尿酸値は心房細動(AF)の独立したリスクとされている。今回、スウェーデン・カロリンスカ研究所のMozhu Ding氏らがスウェーデンのAMORISコホート研究から尿酸の上昇がAFの新規発症と関連することを報告した。Journal of the American Heart Association誌1月12日号からの報告。33万9,604例を対象に追跡調査 心血管系疾患の評価において尿酸値の役割はますます重要となっているが、AFとの関係は明確でない。本研究では、尿酸値とAFの新規発症リスクとの関連について検討した。 スウェーデンのAMORIS(Apolipoprotein-Mortality Risk)コホートにおいて、ベースライン時(1985~96年)に30~60歳で心血管疾患のない33万9,604例を対象に、2019年12月31日までAF発症した登録者を追跡調査。Cox回帰モデルを用い、潜在的な交絡因子で調整し、心血管疾患の発症で層別し、尿酸とAFの関連を検討した。 平均25.9年の追跡期間中に、4万6,516例のAF発症があった。尿酸の四分位が最も低い場合と比較して、上位3つの四分位はそれぞれAFのリスク上昇と用量反応的に関連していた。 調整後のハザード比は、第2四分位が1.09(95%信頼区間[CI]:1.06~1.12)、第3四分位が1.19(95%CI:1.16~1.23)、第4四分位が1.45(95%CI:1.41~1.49)だった。 これらの関連は、高血圧、糖尿病、心不全、冠動脈疾患の発症の有無にかかわらず同様だった。尿酸を繰り返し測定している人のサブサンプルでは、用量反応パターンがさらに裏付けられた。 以上から尿酸の上昇は、心血管疾患および心血管危険因子を持つ人だけでなく、持たない人においても、心房細動のリスク上昇と関連していた。尿酸を下げることがAFの予防につながるかどうかは、今後も研究が必要となる。

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13種のがん発生率と生活習慣・遺伝的因子の関係

 19万人以上のUKバイオバンクのデータを用いて、世界がん研究基金(WCRF)による生活習慣のアドバイスを遵守することが13種類のがんのリスクとどのような関係があるのか、また遺伝的リスクによってこれらの関連性が異なるのかを調査するため、前向きコホート研究が実施された。南オーストラリア大学のStephanie Byrne氏らによるInternational Journal of Epidemiology誌オンライン版2023年1月18日号への報告。 2006~10年にかけて37~73歳の参加者の生活習慣を評価し、2015~19年までがんの発生率を追跡調査した。解析対象は、悪性腫瘍の既往がない19万5,822人。13のがん種(前立腺がん、大腸がん、閉経後乳がん、肺がん、悪性黒色腫、非ホジキンリンパ腫、腎臓がん、子宮がん、膵臓がん、膀胱がん、口腔・咽頭がん、卵巣がん、リンパ性白血病)とがん全体について多遺伝子リスクスコア(PRS)を計算し、WCRFの勧告からライフスタイル指数を計算。両者の加法的・乗法的交互作用が評価された。 ライフスタイル指数は体型(BMI、腹囲)、身体活動、全粒粉・果物・野菜摂取、赤肉・加工肉摂取、アルコール消費、喫煙状況について2018 WCRF/米国がん研究財団(AICR)のスコアリングシステムに基づき評価され、スコアが高いほど推奨事項への忠実度が高いとされる。 主な結果は以下のとおり。・192万6,987人年(追跡期間中央値:10.2年)で1万5,240件のがんが発生した。・交絡因子で調整後、ライフスタイル指数の高さはがん全体のリスク(1標準偏差増加当たりのハザード比:0.89、95%信頼区間:0.87~0.90)および、大腸がん(0.85、0.82~0.89)、閉経後乳がん(0.85、0.81~0.89)、肺がん(0.57、0.54~0.61)、腎臓がん(0.78、0.72~0.85)、子宮がん(0.82、0.74~0.89)、膵臓がん(0.79、0.72~0.87)、膀胱がん(0.72、0.65~0.79)、口腔・咽頭がん(0.78、0.71~0.86)のリスク低下と関連していた。・ライフスタイル指数と悪性黒色腫、非ホジキンリンパ腫、卵巣がん、リンパ性白血病との間に関連はみられず、前立腺がんリスクとの間には、逆方向の関連性がみられた(1.04、1.01~1.08)。・PRSが高いほどがん全体および口腔・咽頭がんと卵巣がんを除く評価したすべてのがん種のリスクが高い傾向がみられた。とくに膵臓がん(1.51、1.36~1.66)、リンパ性白血病(1.50、1.33~1.69)、悪性黒色腫(1.39、1.32~1.47)、大腸がん(1.36、1.31~1.42)、前立腺がん(1.36、1.32~1.40)で高かった。・大腸がん、乳がん、膵臓がん、肺がん、膀胱がんのリスクにはライフスタイル指数とPRSの加法的相互作用がみられ、推奨されるライフスタイルは、遺伝的リスクの高い人ほど絶対リスクの変化と関連していた(すべてでp<0.0003)。 著者らは、WCRF推奨の生活習慣は、ほとんどのがんについて有益な関連性がみられたとし、さらにいくつかのがんでは遺伝的リスクの高い集団で保護的な関連が大きいと結論づけた。そのうえで、これらの知見は遺伝的にそれらのがんに罹患しやすい人々や、がん予防のための標的戦略にとって重要な意味を持つとまとめている。

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造血幹細胞移植後に心不全を発症した症例【見落とさない!がんの心毒性】第17回

《今回の症例》年齢・性別50代、男性主訴呼吸困難、血圧上昇、浮腫現病歴10年前、前医に急性骨髄性白血病(AML)と診断され寛解導入療法が施行された。地固め療法3コース、維持強化療法1コース(シタラビン+アントラサイクリン)により寛解状態となった。アントラサイクリンの総投与量はドキソルビシン換算で214mg/m2であった。その後、当センター血液内科において造血幹細胞移植(HSCT :hematopoietic stem cell transplantation)が施行された。移植前の心機能は心エコー上左室駆出率76%と正常範囲内であった。移植後の急性および慢性移植片対宿主病(GVHD :graft versus host disease)は出現せず寛解状態となり、血液内科外来ならびに近医で高血圧、軽度の腎機能低下についてフォローアップ中であった。造血幹細胞移植11年後、発熱、下痢、嘔吐が出現し浮腫ならびに腎機能悪化を認めたため精査加療目的で入院した。入院時には腎機能低下ならびに高血圧を呈しており、心陰影の拡大は認めないものの胸水貯留を認め循環器内科へ紹介された。飲酒歴(1合/日)、喫煙歴(-)――入院時現症血圧162/90mmHg、心拍数100/分。意識は清明、全身は浮腫状、眼瞼結膜に貧血所見を認めた。胸部聴診上、下肺野の呼吸音の減弱と軽度のラ音を認め心尖部に収縮期雑音を聴取した。腹部に異常は認めず、神経学的にも有意な所見は認めなかった。検査所見検尿…蛋白定性(2+)、潜血(3+)、生化学…AST 21U/L、ALT 17U/L、LDH 287U/L、CK 58U/L、BUN 58mg/dL、Cr 3.37mg /dL、 UA 17.1mg/dL、Na 136mEq/L、K 3.6mEq/L、Cl 100mEq/L、BS 106mg/dL、CRP 2.96mg/dL、BNP 905.8pg/mL。入院時の心電図所見…心拍数100/分、洞調律、ST-T変化、不整脈などの異常は認めず。胸部X線写真…CTR 44.7%、肺野のうっ血像、両側胸水を認めた。心エコー検査…左室壁運動は全周性に著明に低下し、左室駆出率34 %、左室拡張末期径/収縮末期径(LVDd/Ds)52mm/44mm、左房径(LAD)38mm、中隔厚/後壁厚 (IVST/PWT)8mm/9mm、僧帽弁閉鎖不全(MR)3度、三尖弁閉鎖不全(TR)3度 、三尖弁収縮期圧較差(TR-PG)71mmHg、肺動脈弁閉鎖不全2度。IVC 19mm(呼吸性変動低下)、echo free space (-)。【問題】本例の病状について下記の選択枝について、正しいものはどれか。当てはまるものすべてを選べ。a. アントラサイクリンの総投与量は比較的少ないことから、今回の心不全には関連性はない。b. 造血幹細胞移植後の合併症に対して投与される薬剤に加え、長期に投与された免疫抑制薬などの影響も疑われる。c. 晩期心毒性の発症には感染や生活習慣病(高血圧、糖尿病など)の増悪などが引き金になることがある。d. がんサバイバーの晩期合併症で生命予後に影響する疾患として、心血管毒性以外に二次発生がんが重要である。がん治療の進歩に伴い、今後急増するがんサバイバーにおいて出現する晩期合併症への対応が大きな問題となっています。がん治療がすでに終了(寛解)し病状が安定している慢性期から晩期にかけて、急性期がん治療を行なっている腫瘍医には対応は困難であり、数年から10年以上にわたる長期間のフォローアップを受け持つ医療リソースの不足が世界的に大きな問題となっています。そこで、がんと循環器にわたる学際領域に関する知識を有するプライマリケア医や外来かかりつけ薬剤師の養成、そしてがんサバイバーを対象とした人間ドック(がんサバイバードック)による疾病発症二次予防の開発など、新たな体制づくりが始まっています10)。※本症例は、文献11)を基に作成いたしました。あくまで臨床医学教育の普及を目的とした情報提供であり、すべての症例が類似の症状経過を示すわけではありません。1)Legha SS, et al. Ann Intern Med. 1982;96:133-139.2)Singal RK, et al. N Engl J Med. 1998;339:900-905.3)Lyon AR, et al. Eur Heart J. 2022;43:4229-4361.4)向井幹夫. 医学のあゆみ. 2020;273:483-488.5) Sakata-yanagimoto M et al, Bone Marrow Transplant. 2004;33:1043-1047. 6)Armenian SH, et al. Blood. 2012;120:4505-4512.7)Miller LW, et al. Am J Transplant. 2002;2:807-818.8)Suter TM, et al. Eur Heart J. 2013;34:1102-1111.9) Odani S, et al. Cancer Med. 2022;11:507-519.10)向井幹夫. AYA がんの医療と支援. 2022;2:16- 21.11)向井幹夫他ほか. Osaka Heart Club. 2019;43:6-10.講師紹介

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英語で「一言いいですか?」は?【1分★医療英語】第65回

第65回 英語で「一言いいですか?」は?May I chime in?([お話し中ですが]一言いいですか?)Sure thing!(もちろんです!)《例文1》May I chime in the discussion?(議論に加わってもいいですか?)《例文2》She chimed in with her opinion.(彼女は自分の意見を付け加えた)《解説》“chime in”の“chime”は音の通り「チャイム(鐘)」を意味する言葉です。しかし、ここでは“chime”に“in”が付いているので、「チャイムを鳴らして入り込む」という意味合いを持つことになります。ただし、ここでは入り込むのは家ではなく、会話や議論。そこから転じて、「会話に入り込む」、「口を挟む」などの意味合いで用いることができるフレーズになります。“interrupt”を用いて“interrupt a conversation”、あるいは“break”という動詞を用いて“break into a conversation”などと表現しても同じ意味になると思いますが、よりオシャレな表現と言えるかもしれません。たとえば、同僚の2人が熱心に話し込んでいるところに一言添えたいとき、この“May I chime in?”の一言を用いてコメントを挟むことができるでしょう。あるいは、すでに始まっているオンライン会議に遅れて入る際、“I’m chiming in.”と言って「これから(会議に)入るよ」ということを伝えることができます。ぜひ英語圏の人とのオンライン会議の際に使用してみてください。使えるシーンが意外と多いことに気付くはずです。講師紹介

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第148回 糖尿病の厄介な合併症にいとも単純な治療・アミノ酸補給が有効かもしれない

糖尿病患者のおよそ半数が主に手や足に生じる脱力、しびれ、痛みを伴う末梢神経障害を被ります。その厄介な糖尿病合併症になんとも単純な治療・アミノ酸補給が有効かもしれないことを示唆する研究成果が先週25日にNatureに掲載されました1)。米国・カリフォルニア州サンディエゴにある世界屈指の研究所・The Salk Institute(ソーク研究所)のChristian Metallo氏等のその報告によると、セリンのやりくりが不得手(恒常性異常)でセリンとグリシンが乏しいことは糖尿病マウスの末梢神経障害を生じやすくし、なんとセリンを補給するだけで糖尿病マウスの神経障害症状が緩和しました。アミノ酸は連なってタンパク質を作ります。また、神経系に豊富な特殊な脂質・スフィンゴ脂質の生成に不可欠です。アミノ酸の1つ・セリンが乏しいとスフィンゴ脂質を作るのに別のアミノ酸が使われるようになります。そうして作られるいつもと違うスフィンゴ脂質は蓄積して末梢の神経損傷にどうやら寄与します。Metallo氏が率いるチームはセリンの長期欠乏で末梢神経障害が生じるかどうかを調べるべくいつもの餌かセリン制限餌を最大12ヵ月間マウスに与えて様子を見ました。その結果、全身のセリンが乏しいことと高脂肪食の組み合わせは末梢神経障害の発生をどうやら早めると示唆され、糖尿病マウスにセリンを補給したところ末梢神経障害の進行を遅らせることができ、調子も良くなりました。また、スフィンゴ脂質の生成に使うアミノ酸をセリン以外へと切り替える酵素・セリンパルミトイルトランスフェラーゼ(SPT)の阻害薬・マイリオシン(myriocin)も高脂肪のセリン制限食マウスの末梢神経障害症状をセリン補給と同様に減らしました。SPT活性抑制もセリン欠乏絡みの末梢神経障害を緩和する作用があるようです。マイリオシンは漢方で使われるきのこ・冬虫夏草から見つかりました。マイリオシンは西洋医学にも貢献しており、多発性硬化症(MS)の治療薬・イムセラの成分フィンゴリモドはそのマイリオシンを加工して作られた化合物です2)。余談はさておき、糖尿病患者の神経障害にどうやら加担するらしいことが今回の研究で示されたセリン欠乏はこれまでの研究で種々の神経変性疾患と関連することが知られています。たとえばMetallo氏らのチームは先立つ研究で失明疾患・黄斑部毛細血管拡張症2型(MacTel 2型)患者のセリンとスフィンゴ脂質の代謝異常を発見しています3)。マウスの実験でセリン欠乏はいつもと違うスフィンゴ脂質を増やして視力低下を招きました。そういう研究成果を背景にしてMacTel 2型患者へのセリンの効果や安全性を調べる臨床試験がすでに実施されています4)。それにアルツハイマー病へのセリンの臨床試験も進行中です5)。進行性で体を消耗させる非常にまれな末梢神経疾患・遺伝性感覚-自律神経性ニューロパチー1型(HSAN1)患者へのセリン高用量経口投与の無作為化試験では有望なことにプラセボを上回る病状指標CMTNS改善効果が示されています6)。糖尿病患者の末梢神経障害の主な手当ては血糖を減らすように食事を変えることです。それに加えて鎮痛薬、理学療法、つえや車いすなどの歩行補助具も使われます。末梢神経障害に効果があるかもしれないセリンは豆類(大豆、ひよこ豆、レンズ豆)、木の実、卵、肉、魚に豊富に含まれます。セリンのサプリメントは安価で店頭販売されていますが、神経障害を防ぐのにセリンのサプリメントを糖尿病患者に服用するように勧めることはできません。その前にヒトの体内でのセリンの振る舞いをもっと調べる必要があります。セリン補給で生じうる好ましくない作用の検討も必要です。セリン補給治療実現に向け、Metallo氏等のチームはまずはセリン負荷検査(STT)の開発に取り組んでいます7)。セリンやグリシンの欠乏を招くセリン恒常性異常を検出しうるSTTは糖尿病の診断で使われる糖負荷検査(OGTT)に似たもので、セリン摂取後のセリンの取り込みや廃棄の量を調べます。STTをすればセリンをやたら廃棄していて(elevated, postprandial serine disposal)神経障害をとくに生じやすい患者を同定できるかもしれません1)。上述のアルツハイマー病患者へのセリンの試験では体重1kg当たりセリン400 mgを摂取する負荷試験が採用されています。末梢神経障害を最も生じやすい患者をSTTで見極め、それらの患者に限って治療が施せるようになることをMetallo氏等は期待しています7)。参考1)Handzlik MK, et al. Nature. 2023 Jan 25. [Epub ahead of print]2)Chiba K. J Antibiot (Tokyo). 2020 Oct;73:666-678.3)Scerri TS, Nat Genet. 2017 Apr;49:559-567.4)SAFE試験(ClinicalTrials.gov)5)LSPI-2試験(ClinicalTrials.gov)6)Fridman V, et al. Neurology. 2019;92:e359-e370.7)Supplementation with amino acid serine eases neuropathy in diabetic mice / The Salk Institute

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かかりつけ医の機能が高いとコロナ入院リスクが低下/慈恵医大

 病気をしたときに何でも相談できる「かかりつけ医」が身近にいると心強い。ましてや、現在のように新型コロナウイルス感染症(COVID-19)の流行下という環境では、かかりつけ医から的確な助言が受けられると患者は期待している。 COVID-19とかかりつけ医の関連について、青木 拓也氏(東京慈恵会医科大学 総合医科学研究センター臨床疫学研究部)らの研究グループは、COVID-19拡大後のプライマリ・ケアに関する全国的な縦断調査を実施し、かかりつけ医機能はコロナ禍での入院リスク低下と関連することを明らかにした。高いかかりつけ医機能を発揮する医師を持つ患者は、かかりつけ医なしの患者と比べ、コロナ禍での入院リスクが約6割低いという結果となった。Annals of Family Medicine誌1月号からの報告。かかりつけ医機能の高低が入院リスクを左右する【背景】 COVID-19パンデミック以前の海外研究において、質の高いプライマリ・ケアが入院リスクの低下と関連することが報告されている。そして、COVID-19パンデミックをきっかけに、「かかりつけ医」の役割に大きな注目が集まっているなかで、わが国のプライマリ・ケア機能(かかりつけ医機能)と入院リスクとの関連については、これまで国内外での検証が行われていなかった。そこで、COVID-19パンデミック下での、かかりつけ医機能と入院リスクとの関連を検証することを目的とした。【方法】 本研究は、COVID-19パンデミック下の2021年5月〜2022年4月に実施されたプライマリ・ケアに関する全国前向きコホート研究(NUCS)のデータを用いて実施。NUCSは、代表性の高い日本人一般住民を対象とした郵送法による調査研究で、民間調査会社が保有する約7万人の一般住民集団パネルから、年齢、性別、居住地域による層化無作為抽出法を用いて、40〜75歳の対象者を選定した。 追跡期間の12ヵ月間における入院の発生を主要評価項目に設定し、かかりつけ医機能は、JPCAT(Japanese version of Primary Care Assessment Tool)短縮版を用いて、ベースライン時点で評価を行った。 統計解析では、住民をかかりつけ医あり群・なし群、かかりつけ医あり群をさらに四分位群(低機能群、低中機能群、中高機能群、高機能群)に分けて、入院リスクを比較。比較の際は、多変量解析を用いて、年齢、性別、教育歴、慢性疾患数、健康関連QOLといった住民の属性の影響を統計学的に調整した。【結果】 追跡調査を完了した1,161例を解析対象者とした(追跡率92.0%)。解析対象者のうち、723例(62.3%)がかかりつけ医を有し、追跡期間中に87例(7.5%)で入院が発生した。入院した者のうち、5例(5.7%)はCOVID-19による入院だった。 住民の属性の影響を統計学的に調整した結果、かかりつけ医あり群の中でも、かかりつけ医機能が高い(JPCAT総合得点が高い)群ほど、コロナ禍での入院リスクが低下することが明らかになった(かかりつけ医なし群と比較したかかりつけ医あり・高機能群の調整オッズ比:0.37、95%信頼区間:0.16~0.83)。高機能群における入院リスク低下は、JPCATの総合得点だけでなく、下位尺度得点(近接性、継続性、協調性、包括性、地域志向性)を用いた解析でも、すべてにおいて認められた。〔「かかりつけ医なし」を1とした場合の入院リスク〕 かかりつけ医なし:1 かかりつけ医あり/低機能:0.64 かかりつけ医あり/低中機能:0.46* かかりつけ医あり/中高機能:0.45* かかりつけ医あり/高機能:0.37*(入院リスクは調整オッズ比の値/*は統計学的に有意な低下があったことを示す) 同研究グループでは、「研究成果をもとに、入院以外のさまざまなアウトカムについても検討することによって、COVID-19パンデミック後における、かかりつけ医機能やプライマリ・ケアの価値に関するエビデンスを今後もさらに構築していく」と展望を語っている。

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ワクチン未接種のコロナ感染、急性期の死亡リスク80倍超

 中国・香港大学のEric Yuk Fai Wan氏らの研究グループは、英国のデータベースを用いて、新型コロナウイルス感染症(COVID-19)の心血管疾患(CVD)発症リスクや全死亡リスクに及ぼす短期的および長期的な影響を検討した。その結果、ワクチン未接種のCOVID-19感染は急性期(感染から21日後まで)のCVD発症リスク、全死亡リスクを大きく上昇させ、これらのリスクは最長18ヵ月間の追跡においても上昇していた。Cardiovascular Research誌2023年1月19日号に掲載の報告。 英国において2020年3月~11月にCOVID-19に感染した患者7,584例(感染群)を感染から最長18ヵ月後まで前向きに追跡した。年齢と性別をマッチングさせた同時期の非感染対照7万5,790人(同時期対照群)、2018年3月~11月の非感染対照7万5,774人(過去対照群)とCVD発症リスク、全死亡リスクなどを急性期と急性期後(感染から22日後以降)に分けて比較した。解析にあたり、傾向スコア分析の拡張版であるMarginal Mean Weighting through Stratification(MMWS)法を用いて、年齢、性別、喫煙習慣、糖尿病の既往、高血圧症の既往、民族などを調整した。なお、英国では2020年3月~11月において使用可能な新型コロナウイルスワクチンは存在しなかったため、本試験の対象者はワクチン未接種であった。 主な結果は以下のとおり。・急性期の主要なCVD(心不全、脳卒中、冠動脈心疾患)発症リスクは、感染群が同時期対照群の4.3倍(ハザード比[HR]:4.3、95%信頼区間[CI]:2.6~6.9)、過去対照群の5.0倍(HR:5.0、95%CI:3.0~8.1)であった。・急性期において、脳卒中、心房細動、深部静脈血栓症(DVT)のリスクも感染群が同時期対照群(それぞれ9.7倍、7.5倍、22.1倍)および過去対照群(それぞれ5.0倍、5.9倍、10.5倍)と比べて高かった。・急性期の全死亡リスクは、感染群が同時期対照群の81.1倍(HR:81.1、95%CI:58.5~112.4)、過去対照群の67.5倍(HR:67.5、95%CI:49.9~91.1)であった。・急性期後の主要なCVD発症リスクは、感染群が同時期対照群の1.4倍(HR:1.4、95%CI:1.2~1.8)、過去対照群の1.3倍(HR:1.3、95%CI:1.1~1.6)であった。・急性期後の全死亡リスクは、感染群が同時期対照群の5.0倍(HR:5.0、95%CI:4.3~5.8)、過去対照群の4.5倍(HR:4.5、95%CI:3.9~5.2)であった。・感染群において、急性期には有意な上昇がみられなかった心膜炎発症リスクが急性期後では上昇していた。急性期後の心膜炎発症リスクは、感染群が同時期対照群の4.6倍(HR:4.6、95%CI:2.7~7.7)、過去対照群の4.5倍(HR:4.5、95%CI:2.7~7.7)であった)。 本論文の著者らは、今回の結果についてワクチン接種を受けたコホートにおける結果との比較が必要としながらも、「COVID-19患者はCVD発症リスクや全死亡リスクが上昇し、これらのリスクは回復から1年後まで上昇したままであったことから、COVID-19感染後および回復後におけるCVDの徴候や症状の継続的なモニタリングが有益であろう」とまとめている。

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統合失調症・うつ病の頓服を含む退院時処方~EGUIDEプロジェクト

 さまざまなガイドラインにおいて、統合失調症やうつ病の薬物治療では、単剤療法が推奨されている。定期処方による治療はいくつかの研究で報告されているが、頓服使用を含む薬物療法に関する報告は十分ではない。北里大学の姜 善貴氏らは、頓服使用を含む薬物療法の内容を評価し、定期処方との関連を明らかにするため、本研究を実施した。その結果、向精神薬の頓服使用を考慮すると、統合失調症およびうつ病に対する退院時の薬物治療において単剤療法率および他の向精神薬未使用率は減少することが報告された。著者らは、高い単剤療法率および定期処方での他の向精神薬の未使用は、向精神薬の頓服使用の減少につながる可能性があるとしている。Annals of General Psychiatry誌2022年12月26日号の報告。 「精神科医療の普及と教育に対するガイドラインの効果に関する研究(EGUIDEプロジェクト)」のデータを用いて、退院時における薬物カテゴリごとの向精神薬の頓服使用の有無を調査し、その割合を診断疾患別に評価した。統合失調症患者における退院時の抗精神病薬単剤療法率および他の向精神薬未使用率、うつ病患者における退院時の抗うつ薬単剤療法率および他の向精神薬未使用率を、向精神薬の頓服使用を含む定期処方ごとに医療の質指標(QI)として算出した。各診断疾患における定期処方のQI値、定期処方と頓服使用を含む処方のQI比を算出するため、スピアマン順位相関係数を用いた。 主な結果は以下のとおり。・退院時の向精神薬の頓服使用率は、統合失調症で28.7%、うつ病で30.4%であり、診断疾患による有意な差は認められなかった。・薬物カテゴリごとの頓服使用率は、統合失調症では抗精神病薬と抗パーキンソン薬が有意に高く、うつ病では抗不安薬と催眠鎮静薬が有意に高かった。・QIは、両疾患ともに、定期処方よりも頓服使用を含む退院時処方で低かった。・定期処方のQI値と、定期処方と頓服使用を含む処方のQI比との間に、正の相関が認められた。

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皮膚科の次世代型医療:Z世代の医学部生を中心に開発

 東北大学大学院医学系研究科皮膚科学分野では、志藤 光介氏の研究グループの協力のもと、医学部5年生の柳澤 祐太氏が主体となり、スマートフォンなどで簡便に撮影された画像から病変部位を認識し、その病変部位を検出し着目させる病変部抽出システムを、深層学習を用いて開発することに成功した。デジタル環境で育ったZ世代の医学部生の目線で作成された皮膚科関連AI研究である。東北大学 2023年1月26日付プレスリリースの報告。 近年、皮疹の画像を撮影しAIで解析をするシステムは世界中で開発されており、病院内でも実用化されている。患者が利用するAIでは、専用の画像撮影機器などを用いずに、スマートフォンなどを使って簡便に撮影した画像から画像解析を行えることが望ましいものの、スマートフォン撮影では一定の条件下で撮影されないため、被写体との距離が一定せず、同じ皮膚病変であっても撮影距離によって皮疹の様子が異なるという問題があった。このような撮影バイアスは疾患判別精度に大きく影響することがあり、深層学習を用いた画像解析を行ううえで技術的な課題であった。 とくにアトピー性皮膚炎は慢性疾患であり、治療が長期化することでさまざまな合併症を併発する。その中でも早期の対応が必要な細菌感染症やウイルス感染症、早期発見が予後に影響する悪性腫瘍の発見が遅れると重症化し、生命予後に関わることもある。そのため、アトピー性皮膚炎患者自身が病変の変化に気が付くのを助け、医療機関への受診を促すために気軽に使用できる疾患判定AIツールの普及が望まれていた。 そこで、柳澤氏は、志藤氏らのグループの協力のもと、デジタル機器で撮影された病変の部位を認識し、自動的に病変部位を着目して画像をトリミングする病変部抽出システムを開発した。病変部抽出システムを利用して病変部位を着目させる解析と、疾患判定画像診断解析の2段階の画像解析を行うことで、さまざまな拡大率で撮影された画像でも安定した深層学習による画像解析が可能となる。 さらに、この病変部抽出システムを利用して、アトピー性皮膚炎に合併しやすい疾患(感染症並びに悪性腫瘍)を対象に、深層学習モデルを利用したアトピー性皮膚炎合併疾患判定AIソフトウェア(AD-AI)を開発した。アトピー性皮膚炎に合併しやすい、単純ヘルペスウイルス感染症、カポジ水痘様発疹症、伝染性膿痂疹(とびひ)、菌状息肉症を対象に解析モデルの検証を行った。アトピー性皮膚炎への感染症や悪性転化を画像から判定する課題において、研究グループが開発したシステムで自動的にトリミングした画像と皮膚科専門医がトリミングした画像を用いて深層学習モデルを作成し精度を比較したところ、同程度に疾患が判定できることがわかった。 今回開発したアトピー性皮膚炎合併疾患判定AIソフトウェア(AD-AI)によって、患者が気になったときにスマートフォンで皮疹を撮影し、AIで感染症の合併が起きていないか判定ができると、これまで以上の早期発見と早期治療介入が可能となることが期待される。今後は、このAD-AIをアプリに実装し、広く一般の患者に利用してもらえるように、さらなる精度の向上ならびに使用上の規制への対応を目指し開発を進める方針とのこと。 本研究は、Journal of Dermatological Science誌オンライン版2023年1月11日号に掲載された。

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