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がん診療に携わるすべての人のレベルアップ目指しセミナー開催/TCOG

 東京がん化学療法研究会(TCOG)は、第25回臨床腫瘍夏期セミナーをオンラインで開催する。 同セミナーは、がん診療に携わる医師、薬剤師、看護師、臨床研究関係者、製薬会社、CROなどを対象に、治療の最新情報、臨床研究論文を理解するための医学統計などさまざまな悪性腫瘍の基礎知識から最新情報まで幅広く習得できるよう企画している。セミナー概要・日時:2025年7月18日(金)~19日(土)・開催形式:オンライン(ライブ配信、後日オンデマンド配信を予定)・定員:500人・参加費:15,000円(2日間)・主催・企画:特定非営利活動法人 東京がん化学療法研究会・後援:日本医師会、東京都医師会、東京都病院薬剤師会、日本薬剤師研修センター、日本癌治療学会、日本臨床腫瘍学会、日本産科婦人科学会、日本医療薬学会、日本がん看護学会、西日本がん研究機構、North East Japan Study Group・交付単位(予定):日本薬剤師研修センターによる単位(1日受講:3単位、2日受講:6単位)、日本医療薬学会 認定がん専門薬剤師・がん指導薬剤師認定単位(7/18受講:2単位、7/19受講:2単位)、日本看護協会 認定看護師・専門看護師:「研修プログラムへの参加」(参加証発行)、日本臨床腫瘍薬学会 外来がん治療認定薬剤師講習(研修)認定単位(1日受講:3単位、2日受講:6単位)プログラム(要約)7月18日(金)9:30~16:509:30~10:55【がん薬物療法 TOPICS】 胃がん化学療法、ASCOにおける肺癌最新の話題11:05~12:30【医学統計】 臨床研究のための統計学の基本知識、臨床に生かすために知っておきたい医学統計13:50~15:15【最新のがん薬物療法I】 膵がん・胆道がん、大腸がん化学療法 ガイドライン改定を踏まえて15:25~16:50【妊孕性と家族性腫瘍】 遺伝性腫瘍~遺伝学的診断と遺伝カウンセリング、CAYAがん患者等に対する妊孕性温存/がん・生殖医療の現状と課題7月19日(土)9:30~16:509:30~10:55【がんにおける新規抗体医薬】 二重特異性抗体(バイスペシフィック抗体)の特徴と臨床成績、抗体薬物複合体(ADC)11:05~12:30【TOPICS 2】 MRDが拓く癌治療の新しいストラテジー、ctDNAによるがん種横断的なMRD検査の時代へ13:50~15:15【最新のがん薬物療法II】 子宮頸がん・子宮体がん薬物療法のトピックス、泌尿器がんに対する薬物療法UpDate202515:15~16:50【緩和医療と支持療法】 骨転移の緩和ケア、コミュニケーション/遺族ケア/気持ちのつらさガイドラインのエッセンス申し込みはTCOG「臨床腫瘍夏期セミナー」ページから「臨床腫瘍夏期セミナー」プログラム

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単純性淋菌感染症、新規抗菌薬gepotidacinが有効/Lancet

 gepotidacinは、細菌のDNA複製を阻害するファーストインクラスの殺菌作用を持つトリアザアセナフチレン系抗菌薬。英国・Birmingham University Hospitals NHS Foundation TrustのJonathan D. C. Ross氏らは「EAGLE-1試験」において、泌尿生殖器の単純性淋菌(Neisseria gonorrhoeae)感染症の治療では、細菌学的治療成功に関して本薬はセフトリアキソン+アジスロマイシン併用療法に対し非劣性で、新たな安全性の懸念は認めないことを示した。研究の成果は、Lancet誌2025年5月3日号で報告された。6ヵ国の第III相無作為化実薬対照非劣性試験 EAGLE-1試験は、泌尿生殖器の単純性淋菌感染症の治療における経口gepotidacinの有効性と安全性の評価を目的とする第III相非盲検無作為化実薬対照非劣性試験であり、2019年10月~2023年10月に6ヵ国(オーストラリア、ドイツ、メキシコ、スペイン、英国、米国)の49施設で患者を登録した(GSKなどの助成を受けた)。 年齢12歳以上、体重45kg以上で、臨床的に泌尿生殖器の単純性淋菌感染症が疑われるか淋菌検査陽性、あるいはこれら両方の患者を対象とした。被験者を、gepotidacin 3,000mg経口投与(10~12時間間隔で2回)を受ける群(314例)、またはセフトリアキソン500mg筋肉内投与+アジスロマイシン1g経口投与を受ける群(併用群、314例)に無作為に割り付けた。 有効性の主要エンドポイントは細菌学的治療成功とし、治癒判定(test-of-cure:TOC)時(4~8日目)の培養で確定された泌尿生殖器部位からのN. gonorrhoeaeの消失と定義した。非劣性マージンは-10%に設定し、細菌学的ITT(micro-ITT)集団で解析した。両群とも淋菌の持続生残は認めない 628例(ITT集団)を登録し、gepotidacin群に314例(平均年齢33.9歳、女性11%)、併用群に314例(33.7歳、11%)を割り付けた。micro-ITT集団は406例で、それぞれ202例(33.2歳、8%)および204例(33.0歳、8%)であり、372例の男性のうち82例(20%)が女性と性交渉する男性(MSW)であったのに対し、290例(71%)は男性間性交渉者(MSM)だった。人種は、白人が74%、黒人またはアフリカ系が15%であった。 micro-ITT集団におけるTOC時の細菌学的治療成功の割合は、gepotidacin群が92.6%(187/202例、95%信頼区間[CI]:88.0~95.8)、併用群は91.2%(186/204例、86.4~94.7)であった(補正後治療群間差:-0.1%[95%CI:-5.6~5.5])。両側95%CIの下限値が非劣性マージン(-10%)を上回ったため、gepotidacin群の併用群に対する非劣性が示された。 また、両群とも、TOC時の泌尿生殖器における淋菌の持続生残(bacterial persistence)は認めなかった。治療関連の重度または重篤な有害事象はない gepotidacin群では、有害事象(74%vs.33%)および薬剤関連有害事象(68%vs.14%)の頻度が高く、主に消化器系の有害事象(67%vs.16%)であった。これらのほとんどが軽度または中等度だった。治療関連の重度または重篤な有害事象は、両群とも発現しなかった。 著者は、「これらの知見は、単純性泌尿生殖器淋菌感染症に対する新たな経口薬治療の選択肢を提供するものである」としている。

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好酸球数高値COPD、メポリズマブで中等度/重度の増悪低減/NEJM

 インターロイキン-5(IL-5)は好酸球性炎症において中心的な役割を担うサイトカインであり、慢性閉塞性肺疾患(COPD)患者の20~40%に好酸球性炎症を認める。メポリズマブはIL-5を標的とするヒト化モノクローナル抗体である。米国・ピッツバーグ大学のFrank C. Sciurba氏らMATINEE Study Investigatorsは、「MATINEE試験」において、好酸球数が高値のCOPD患者では、3剤併用吸入療法による基礎治療にプラセボを併用した場合と比較してメポリズマブの追加は、中等度または重度の増悪の年間発生率を有意に低下させ、増悪発生までの期間が長く、有害事象の発現率は同程度であることを示した。研究の成果は、NEJM誌2025年5月1日号に掲載された。25ヵ国の無作為化プラセボ対照第III相試験 MATINEE試験は、血中好酸球数が高値で、増悪リスクのあるCOPD患者における3剤吸入療法へのメポリズマブ追加の有効性と安全性の評価を目的とする二重盲検無作為化プラセボ対照第III相試験であり、2019年10月~2023年8月に25ヵ国344施設で患者を募集した(新型コロナウイルス感染症のため2020年3月23日~6月9日まで募集を中断)(GSKの助成を受けた)。 スクリーニング時に年齢40歳以上で、少なくとも1年前にCOPDの診断を受け、増悪の既往歴を有し、3剤吸入療法(吸入ステロイド薬、長時間作用型β2刺激薬、長時間作用型抗コリン薬)を3ヵ月以上受け、血中好酸球数≧300/μLの患者804例(平均[±SD]年齢66.2[±8.0]歳、女性31%)を修正ITT集団として登録した。 被験者を、4週ごとにメポリズマブ(100mg)を皮下投与する群(403例)、またはプラセボ群(401例)に無作為に割り付け、52~104週間投与した。 主要エンドポイントは、中等度または重度の増悪の年間発生率であった。治療への反応性には差がない 重度増悪の既往歴はメポリズマブ群で22%、プラセボ群で19%の患者に認めた。全体の25%の患者が過去または現在、心疾患の診断を受けており、72%が心血管疾患のリスク因子を有していた。平均曝露期間は両群とも約15ヵ月だった。 中等度または重度の増悪の年間発生率は、プラセボ群が1.01件/年であったのに対し、メポリズマブ群は0.80件/年と有意に低かった(率比:0.79[95%信頼区間[CI]:0.66~0.94]、p=0.01)。 また、副次エンドポイントである中等度または重度の増悪の初回発生までの期間中央値(Kaplan-Meier法)は、プラセボ群の321日と比較して、メポリズマブ群は419日であり有意に長かった(ハザード比:0.77[95%CI:0.64~0.93]、p=0.009)。 治療への反応性(QOLの指標としてのCOPDアセスメントテスト[CAT:0~40点、高スコアほど健康状態が不良であることを示す]のスコアが、ベースラインから52週目までに2点以上低下した場合)を認めた患者の割合は、メポリズマブ群が41%、プラセボ群は46%であり(オッズ比:0.81[95%CI:0.60~1.09])、両群間に有意な差はなかったため、階層的検定に基づきこれ以降の副次エンドポイントの評価に関して統計学的検定を行わなかった。MACEは両群とも3例に発現 投与期間中およびその後に発現した有害事象の割合は、メポリズマブ群で75%、プラセボ群で77%であった。投与期間中に発生した重篤な有害事象・死亡の割合はそれぞれの群で25%および28%であり、投与期間中およびその後の死亡の割合は両群とも11%(3例)だった。投与期間中およびその後に発生した主要有害心血管イベント(MACE:心血管死、非致死性の心筋梗塞・脳卒中、致死性または非致死性の心筋梗塞・脳卒中)は、両群とも11%(3例)に認めた。 著者は、「これらの知見は、ガイドラインに基づく維持療法のみを受けている患者に対して、メポリズマブ治療は付加的な有益性をもたらすことを示している」「先行研究と本試験の結果を統合すると、選択されたCOPD患者における2型炎症を標的とする個別化治療の妥当性が支持される」「増悪関連のエンドポイントはメポリズマブ群で良好であったが、CAT、St. George's Respiratory Questionnaire(SGRQ)、Evaluating Respiratory Symptoms in COPD(E-RS-COPD)、気管支拡張薬投与前のFEV1検査で評価した治療反応性は両群間に実質的な差を認めなかったことから、これらの原因を解明するための調査を要する」としている。

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大惨事はがんの診断数を減少させる

 自然災害やパンデミックなどの大惨事は、がんによる死者数の増加につながるかもしれない。新たな研究で、ハリケーン・イルマとハリケーン・マリアが2週間間隔でプエルトリコを襲った際に、同国での大腸がんの診断数が減少していたことが明らかになった。このような診断数の低下は、新型コロナウイルス感染症(COVID-19)パンデミックの発生直後にも認められたという。プエルトリコ大学総合がんセンターのTonatiuh Suarez-Ramos氏らによるこの研究結果は、「Cancer」に4月14日掲載された。 米国領プエルトリコでは、2017年9月初旬に超大型ハリケーン・イルマが島の北を通過したわずか2週間後に、カテゴリー5の最強ハリケーン・マリアが上陸し、甚大な被害を出した。当時、稼働していた病院はほとんどなく、高い貧困率などが原因ですでに制限されていた医療へのアクセスがさらに悪化した。さらに2020年にはCOVID-19パンデミックが発生した。政府が実施した厳格なロックダウン政策は、感染の抑制には効果的だったが、医療サービスの利用低下につながった。 Suarez-Ramos氏らは、このような大規模イベント発生による医療システムの混乱により、プエルトリコで2番目に多いがんである大腸がんの検診へのアクセスが制限され、それががんの早期発見の妨げとなった可能性があるのではないかと考えた。それを調べるために同氏らは、プエルトリコ中央がん登録簿の2012年1月1日から2021年12月31日までのデータを入手し、ハリケーン・イルマとハリケーン・マリアおよびCOVID-19パンデミックの発生直後および発生期間中に大腸がんの診断数がどのように変化したかを調査した。 その結果、2つのハリケーンがプエルトリコを襲った2017年9月の大腸がんの診断数は82件だったことが明らかになった。ハリケーンがなかった場合に想定された診断数は161.4件であり、統計モデルにより、ハリケーンによる即時の影響として診断数が28.3件減少したと推定された(17.5%の減少に相当)。 一方、パンデミック発生に伴うロックダウン後(2020年4月)の大腸がん診断数は50件であった。ロックダウンがなかった場合に想定された診断数は162.5件であり、統計モデルにより、ロックダウンにより診断数は即時的に39.4件減少したと推定された(24.2%の減少に相当)。 2021年12月の研究終了時点でも、早期大腸がんの診断数と50~75歳での診断数は、想定される診断数に達していなかった。また、末期大腸がんの診断数と、50歳未満および76歳以上の診断数は、想定される診断数を上回っていた。 論文の筆頭著者であるSuarez-Ramos氏は、「これらの調査結果は、ハリケーンの襲来やパンデミックの発生により医療へのアクセスが制限されたことが原因でがんの発見が遅れ、患者の健康状態が悪化した可能性があることを示唆している」とニュースリリースの中で述べている。研究グループは、このようなスクリーニング検査の混乱により、「将来的には、大腸がんが進行してから検出される患者が増え、生存率が低下する可能性がある」と危惧を示している。 米国地質調査所によると、気候変動による気温上昇により、より激しい嵐や壊滅的な山火事の発生が増え、海面上昇も進んでいるという。論文の上席著者であるプエルトリコ大学のKaren Ortiz-Ortiz氏は、「医療制度はこうした災害下でも人々が必要ながんの検査を受けられる方法を見つけておく必要がある。われわれの最終的な目標は、危機的状況下でも医療システムの回復力とアクセス性を高めること、また、人々がより長くより健康的な生活を送れるように支援することだ」とニュースリリースの中で語っている。

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DapaTAVI試験―構造的心疾患に対するSGLT2阻害薬の効果(解説:加藤貴雄氏)

 2025年ACCで発表されたDapaTAVI試験(Raposeiras-Roubin S, et al. N Engl J Med. 2025;392:1396-1405.)であるが、TAVI前に心不全および、中等度腎機能障害・糖尿病・左室駆出率低下のいずれかを持つ大動脈弁狭窄症患者が登録された試験である。左室駆出率<40%の患者は約18%で多くがHFmrEF/HFpEFの患者であり、平均年齢が82歳と高齢で、女性が約半数登録された。また、中等度~高度の左室肥大を伴う患者は約60%であった。 結果は、主要評価項目(全死亡または心不全増悪の複合エンドポイント)は、ダパグリフロジン追加群で有意に低い結果で、全死亡では有意な差がなく心不全増悪の差が主に結果に影響していた。主要な2次評価項目でも、心不全入院・心不全の緊急受診においてダパグリフロジン追加群で有意に低い結果であった。 試験結果を実臨床に生かすうえでのポイントは2点あり、1点目は、実臨床における大動脈弁狭窄症の患者層(高齢者・女性・左室肥大例)が登録され有効性を示した点である。安全性について、入院が必要もしくは敗血症につながる尿路感染症の頻度には差がなかったが、性器感染症・低血圧はダパグリフロジン追加群に多い結果であった点は、注意すべき点である。 2点目は、TAVI後の構造的異常として左室肥大がありNT-proBNPが5,300~6,300pg/mLと高い患者層で試験が開始され、心不全悪化を防止した点である。 SGLT2阻害薬は、心不全に対するガイドライン推奨薬の一角に位置付けられている薬剤であり、HFpEF/HFrEFに対する試験結果とも合致する。心不全の既往のある患者を除外した急性心筋梗塞患者対象のSGLT2阻害薬の試験(James S, et al. NEJM Evid. 2024;3:EVIDoa2300286., Butler J, et al. N Engl J Med. 2024;390:1455-1466.)では対照群も含めイベント率が低かった点を合わせて考えると、イベントを起こしやすい構造的心疾患を持つ、ハイリスクな患者へのしっかりとした薬剤の介入の必要性を示したと考えられる。

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小児期ワクチン接種率低下で、麻疹など再流行の可能性/JAMA

 小児期のワクチン接種率の低下は、ワクチンで予防可能な、かつて排除された感染症(eliminated infectious diseases)のアウトブレイクの頻度と規模を増加させ、最終的には再びエンデミック(endemic)レベルに戻る可能性があることが、米国・スタンフォード大学のMathew V. Kiang氏らによるシミュレーションモデルの解析の結果で明らかとなった。米国では、小児期のワクチン接種の普及により多くの感染症が排除されてきたが、近年、ワクチン接種率は低下傾向にあり、小児期のワクチン接種のスケジュールを縮小する政策議論も続いている。そのため、かつて排除された感染症の再流行が懸念されていた。著者は、「流行がエンデミックレベルに再び戻る時期と閾値は感染症によって大きく異なり、麻疹が最初にエンデミックレベルに戻る可能性が高く、現在のワクチン接種率でも対策が改善されなければその可能性がある」と指摘している。JAMA誌オンライン版2025年4月24日号掲載の報告。麻疹・風疹・ポリオ・ジフテリアの予防接種率低下と感染者数、シミュレーションモデルで推定 研究グループは、ワクチンで予防可能な4つの感染症(麻疹、風疹、ポリオ、ジフテリア)について、小児期のワクチン接種率が低下した場合の感染者数および感染関連合併症数を推定するシミュレーションモデルを構築し、米国50州とコロンビア特別区におけるこれら感染症の輸入(importation)と動的伝播(dynamic spread)を評価した。 このモデルは、人口動態、集団免疫状態、感染症の輸入リスクに関する地域別推定値に基づくデータを用いてパラメーター化され、25年間にわたる異なるワクチン接種率のシナリオを評価した。現在のワクチン接種率は、2004~23年のデータを用いた。 主要アウトカムは、米国の麻疹、風疹、ポリオ、ジフテリアの推定感染者数、副次アウトカムは感染関連合併症(麻疹後神経学的後遺症、先天性風疹症候群、麻痺性ポリオ、入院、死亡)の推定発生率、および感染症が再びエンデミックレベルとなる可能性とその時期とした。現在の接種率でも、麻疹が再びエンデミックレベルとなる可能性 シミュレーションモデルにおいて、現在の州レベルのワクチン接種率では、麻疹が再びエンデミックレベルとなる可能性は83%、エンデミックレベルとなるまでの平均期間は20.9年、25年間で推定感染者数は85万1,300例(95%不確実性区間[UI]:38万1,300~130万)に上ることが予想された。 麻疹・流行性耳下腺炎・風疹(MMR)ワクチン接種率が10%減少した場合、麻疹の感染者数は25年間で1,110万例(95%UI:1,010万~1,210万)となり、一方、接種率が5%増加した場合は5,800例(3,100~1万9,400)にとどまると予測された。 他の感染症については、現在のワクチン接種率ではエンデミックレベルとなる可能性は低いが、小児期の定期接種が50%減少した場合、25年間で麻疹5,120万例(95%UI:4,970万~5,250万)、風疹990万例(640万~1,300万)、ポリオ430万例(4~2,150万)、ジフテリア197例(1~1,000)が発生すると予測された。 この場合、エンデミックレベルとなるまでの期間は麻疹が4.9年(95%UI:4.3~5.6)、風疹は18.1年(17.0~19.6)であり、ポリオについてはエンデミックレベルとなる可能性は56%で、エンデミックレベルとなるまでの期間は19.6年(95%UI:4.0~24.7)と予測された。 なお、米国内での影響には大きなばらつきがみられた。

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気管支拡張症、DPP-1阻害薬brensocatibが有用/NEJM

 気管支拡張症患者において、経口可逆的ジペプチジルペプチダーゼ1(DPP-1)阻害薬brensocatib 10mgまたは25mgの1日1回投与は、プラセボと比較して肺疾患増悪の発生率を低下させ、25mg群ではプラセボと比較して1秒量(FEV1)の低下が少ないことが、英国・ダンディー大学のJames D. Chalmers氏らASPEN Investigatorsが35ヵ国390施設で実施した第III相無作為化二重盲検比較試験「ASPEN試験」の結果で示された。気管支拡張症において好中球性炎症は増悪および病勢進行リスクの増大と関連しており、brensocatibは好中球性炎症の主要なメディエーターである好中球セリンプロテアーゼを標的としている。気管支拡張症成人患者を対象とした第II相試験では、brensocatib 10mgまたは25mgの1日1回24週間投与により、プラセボと比較して、初回増悪までの期間延長および増悪率の低下が示されていた。NEJM誌2025年4月24日号掲載の報告。肺疾患増悪発生率をbrensocatib 10mg群と25mg群、プラセボ群で比較 研究グループは、スクリーニング前12ヵ月間に少なくとも2回の増悪を呈しスクリーニング時のBMIが18.5以上の18~85歳(成人)、ならびにスクリーニング前12ヵ月間に少なくとも1回の増悪を呈しスクリーニング時の体重が30kg以上の12~17歳(青少年)の気管支拡張症患者を、brensocatib 10mg群、25mg群またはプラセボ群に、成人では1対1対1、青少年では2対2対1の割合で無作為に割り付け、1日1回投与した。 主要エンドポイントは52週間における年率換算した肺疾患増悪発生率(1年当たりのイベント数)であり、副次エンドポイントは階層的検定順序に基づいた、52週間における初回増悪までの期間、52週間無増悪の患者の割合、52週時の気管支拡張薬投与後のFEV1のベースラインからの変化量、重度肺疾患増悪の年率換算した発生率、およびQOLの変化(成人のみ)とした。brensocatib群で肺疾患増悪発生率が有意に低下 2020年11月~2023年3月に1,767例が無作為に割り付けられ、brensocatibまたはプラセボを投与された1,721例(成人1,680例、青少年41例)がITT集団となった(brensocatib 10mg群583例、25mg群575例、プラセボ群563例)。 年率換算した肺疾患増悪発生率は、brensocatib 10mg群1.02、25mg群1.04、プラセボ群1.29であり、プラセボ群に対する発生率比はbrensocatib 10mg群で0.79(95%信頼区間[CI]:0.68~0.92、補正後p=0.004)、25mg群で0.81(0.69~0.94、p=0.005)であった。 初回増悪までの期間のハザード比(HR)は、10mg群0.81(95%CI:0.70~0.95、補正後p=0.02)、25mg群0.83(0.70~0.97、p=0.04)であった。また、52週間無増悪の患者の割合は、brensocatib各群48.5%(10mg群283/583例、25mg群279/575例)に対しプラセボ群40.3%(227/563例)であり、HRは10mg群で1.20(95%CI:1.06~1.37、補正後p=0.02)、25mg群で1.18(1.04~1.34、p=0.04)であった。 52週時のFEV1のベースラインからの低下(平均値±標準誤差)は、brensocatib 10mg群50±9mL、25mg群24±10mL、プラセボ群62±9mLで、プラセボ群との最小二乗平均差は10mg群11mL(95%CI:-14~37、補正後p=0.38)、25mg群38mL(11~65、p=0.04)であった。 有害事象の発現率は、brensocatib群で過角化の発現率が高かったことを除き、両群で同様であった。

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高齢の心不全患者が感染症で再入院にいたる因子とは

 心不全(HF)患者の再入院は、患者の死亡率上昇だけでなく、医療機関に大きな経済的負担をもたらす。高齢HF患者では、しばしば感染症による再入院がみられるが、この度、高齢のHF患者における感染症関連の再入院にフレイルと腎機能の低下が関連しているという研究結果が報告された。徳島大学大学院医歯薬学研究部臨床薬学実務実習教育分野の川田敬氏らの研究によるもので、詳細は「Geriatrics & Gerontology International」に3月11日掲載された。 世界でも有数の高齢化社会を擁する日本では、高齢のHF患者が大幅に増加している。高齢者では免疫力が低下することから、高齢HF患者の感染症による再入院率も増加していくと考えられる。これまでの研究では60代や70代のHF患者に焦点が当てられてきたが、実臨床で増加している80代以上の高齢HF患者、特に感染症による再入院に関連する因子については調べられてこなかった。このような背景から、川田氏らは、高齢化が特に進む日本の高知県の急性肥大症性心不全レジストリ(Kochi YOSACOI Study)のデータを使用して、高齢HF患者の感染症による再入院に関連するリスク因子を特定した。 研究には、2017年5月から2019年12月の間に急性非代償性心不全(ADHF)でレジストリに登録された1,061名を含めた。この中から死亡した患者30名、左室駆出率、日本版フレイル基準(J-CHS)スコア、その他の検査結果などが欠落していた302名を除外し、729名を最終的な解析対象に含めた。 解析対象729名のHF患者の平均年齢は81歳(四分位範囲72.0~86.0)であった。患者は退院後2年間の追跡期間中に感染症関連の再入院を経験した121名(17%)と、感染症関連の再入院を経験しなかった患者608名に分けられた。 HF患者の感染症関連再入院に関連する因子はロジスティック回帰分析により決定した。その結果、独立した予測因子として、J-CHSスコア≧3(調整オッズ比1.83〔95%信頼区間1.18~2.83〕、P=0.007)が特定された。 次に感染症関連再入院の確率を予測するために、各患者について勾配ブースティング決定木(GBDT)モデルを構築した。GBDTモデルでは、J-CHSスコアの高さと推算糸球体濾過量(eGFR)の低下が、感染症関連再入院の増加を予測する最も重要な因子であり、それぞれ「スコア≧3」、「eGFR<35mL/min/1.73m2」の場合にリスクの増加が観察された。また、決定木分析より、感染症関連再入院のリスクは高(J-CHSスコア≧3)、中(J-CHSスコア<3、eGFR≦35.0)、低(J-CHSスコア<3、eGFR>35.0)に分類された。 本研究について著者らは、「本解析より、高齢のHF患者に発生する感染症関連の再入院は、フレイルの程度とeGFR値に関連することが示された。これらの知見は、医療提供者が高齢のHF患者の再入院リスクを適切に管理し、患者の転帰を改善するための貴重なインサイトを提供するものである」と述べた。 本研究の限界点については、観察研究でありワクチン接種などの交絡変数が考慮されていないこと、Kochi YOSACOI Studyには平均年齢81歳という高齢の患者集団が含まれており、HF患者全体に一般化することができないことなどを挙げた。

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第10回 年間10万人、CT検査の氾濫が生む“将来のがん”

近年、CT検査は診断能が飛躍的に向上し、急速に普及したため、米国では2023年に6,151万人に対し、約9,300万件もの検査が実施されました。人口当たりに直すと、1,000人当たり約280件となり、数字の大きさがより実感しやすいかもしれません。これは実際、世界でもトップレベルの頻度です。CT検査で用いられるX線は、細胞の損傷や遺伝子の突然変異を起こすのに十分なエネルギーを持つ「イオン化放射線」に分類され、「既知の発がん性物質」として扱われています。今回ご紹介するSmith-Bindman氏らの研究では、このCTの撮像回数から被曝量を割り出し、この被曝が米国国民の発がんにどの程度寄与するのかを推計しています1)。検査氾濫が招く10万件超のがんリスク彼らの研究モデルによれば、CT検査に伴うイオン化放射線による将来のがん発症数は、平均で年間約10万3,000件に上り、米国における年間新規がん診断の約5%を占めるという衝撃的な推計が行われました。子供では検査1件当たりのリスクが高くなるものの、検査件数そのものは成人に偏っているため、結果的に成人へのCT検査が総発がん数の約91%(約9万3,000件)を担うと報告されています。がんの内訳を見ると、肺がんが最も多く2万2,400件、次いで大腸がん、白血病、膀胱がんと続きます。女性では乳がんが5,700件と推計されました。部位別では、成人の腹部・骨盤部のCT検査が3,000万件(全検査の32%)実施され、それに由来するがんは3万7,500件と最も多く、続いて胸部CTが2,000万件(21%)で、将来のがんは2万1,500件と見積もられています。多様な分析を行ったうえでも、推計の総発がん数は8万~12万7,000件の範囲となり、推計値の不確実性を勘案しても、変わらず重要性の高い問題であると考察されています。この報告が重要なのは、単に「CTは放射線リスクを伴う」といった抽象的な議論ではなく、検査件数と年齢・部位別の実測の放射線量データを用いて、具体的な将来の発がん数を予測した点にあります。日本では――適正化への道標では、この結果を日本でどう受け止めればよいでしょうか。日本もOECD加盟国のなかでCT検査件数が常に上位にあり、米国ほどではないものの、検査回数も1人当たり高水準で推移しています。日本国内のNDBオープンデータに基づく推計では、例年人口1,000人当たり200~250件前後という高い水準です2,3)。今回の報告を参考にすると、日本で検査に伴う放射線発がんの潜在的負荷は決して無視できません。もちろんこれは、診断に必要とされる場合など、必要なCT検査をやめましょうという話ではありません。しかし、「一応、CTを撮っておきましょう」と必要性が曖昧な検査が行われていることも事実です。これについては、見直しが必要であることを改めて教えてくれる研究結果であったと思います。代替手段として超音波検査などで対応できたものもあるでしょう。また、可能な限り被曝を抑えた撮影条件を徹底し、検査部位を最小限に留めるなどの対策も重要です。結論として、本論文は「CT検査は命を救うが、利用過多は将来のがんを増やす」というトレードオフを定量的に示し、検査適正化と線量管理の徹底こそが利益と安全性の両立に不可欠であることを教えてくれます。医療者も患者も、急ぎでないCT検査の必要性を立ち止まって見極める意識がますます重要といえるのではないでしょうか。 1) Smith-Bindman R, et al. Projected Lifetime Cancer Risks From Current Computed Tomography Imaging. JAMA Intern Med. 2025 Apr 14. [Epub ahead of print] 2) Tsushima Y, et al. Radiation Exposure from CT Examinations in Japan. BMC Med Imaging. 2010;10:24. 3) 厚生労働省.【NDB】NDBオープンデータ.

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統合失調症の新たなアプローチとなるか? ムスカリン受容体作動薬KarXTのRCTメタ解析

 統合失調症は、陽性症状、陰性症状、認知関連症状を特徴とする複雑な精神疾患である。xanomelineとtrospiumを配合したKarXTは、ムスカリン受容体を標的とし、ドパミン受容体の遮断を回避することで、統合失調症治療に潜在的な有効性をもたらす薬剤である。エジプト・ Assiut UniversityのHazem E. Mohammed氏らは、KarXTの有効性および安全性を評価するため、システマティックレビューおよびメタ解析を実施した。BMC Psychiatry誌2025年3月31日号の報告。 2024年10月までに公表されたランダム化比較試験(RCT)をPubMed、Scopus、Web of Science、Cochraneデータベースより、システマティックに検索した。KarXTによる治療を行った成人統合失調症患者を対象としたRCTを分析に含めた。エビデンスの質の評価はGRADEフレームワーク、バイアスリスクはCochrane Risk of Bias 2.0ツールを用いて評価した。 主な結果は以下のとおり。・4つのRCT、690例をメタ解析に含めた。・KarXTは、プラセボと比較し、陽性・陰性症状評価尺度(PANSS)の合計スコアの有意な低下(平均差:−13.77、95%信頼区間[CI]:−22.33〜−5.20、p=0.002)、陽性症状および陰性症状のサブスケールスコアの有意な改善を示した。・PANSSスコアの30%以上低下の割合も有意な増加が認められた(リスク比:2.15、95%CI:1.64〜2.84、p<0.00001)。・さらに、KarXTは良好な安全性プロファイルを有しており、嘔吐や便秘などの副作用は、軽度かつ一過性であった。・注目すべきことに、KarXTは、従来の抗精神病薬で頻繁に認められる体重増加や錐体外路症状との有意な関連が認められなかった。 著者らは「KarXTの独特な作用機序および忍容性は、統合失調症治療における満たされていないニーズを解決する可能性を示唆している。今後の研究において、KarXTの長期的有効性、遅発性の副作用、既存治療との有効性比較を検討していく必要がある」と結論付けている。

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腫瘍浸潤クローン性造血、固形がんの死亡リスクと関連/NEJM

 「未確定の潜在能を持つクローン性造血(clonal hematopoiesis of indeterminate potential:CHIP)」は加齢に伴う病態で、がん患者における死亡率の上昇と関連する。腫瘍で変異アレル頻度(VAF)の高いCHIP変異が検出されることがあり、英国・フランシス・クリック研究所のOriol Pich氏らは、この現象を「腫瘍浸潤性クローン性造血(tumor-infiltrating clonal hematopoiesis:TI-CH)」と呼ぶ。同氏らは、今回、TI-CHは非小細胞肺がん(NSCLC)患者のがん再発や死亡のリスクを高め、固形腫瘍患者で全死因死亡のリスクを上昇させ、腫瘍免疫微小環境をリモデリングし、腫瘍オルガノイドの増殖を促すことを示した。研究の成果は、NEJM誌2025年4月24日号で報告された。TRACERx研究とMSK-IMPACTコホートの患者を解析 研究グループは、TRACERx研究に参加した未治療のStageIA~IIIAのNSCLC患者421例と、MSK-IMPACT汎がんコホートの75のがん種の患者4万9,351例(原発腫瘍3万1,556例、転移性腫瘍1万7,795例)において、CHIPおよびTI-CHの特徴を評価した(英国王立協会の助成を受けた)。 TI-CHと生存および再発との関連を調査し、肺腫瘍の生物学的特徴に及ぼすTET2変異CHIPの機能的影響について検討した。TI-CHにより固形腫瘍患者の死亡リスクが1.17倍に NSCLC患者では、CHIPを有する集団の42%(60/143例)にTI-CHを認めた。TI-CHは、死亡または再発のリスクが高いことの独立の予測因子であり、補正後ハザード比は、CHIPを有さない場合との比較で1.80(95%信頼区間[CI]:1.23~2.63、p=0.003)、TI-CHがなくCHIPを有する場合との比較で1.62(1.02~2.56)であった。 固形腫瘍患者では、CHIPを有する集団の26%(1,974/7,450例)にTI-CHが存在した。TI-CHがある場合の全死因死亡のリスクは、TI-CHがなくCHIPを有する場合の1.17倍(95%CI:1.06~1.29)であった。TET2変異―TI-CHの最も強力な遺伝的予測因子 TET2変異はTI-CHの最も強力な遺伝的予測因子であった。マウスでは、TET2変異が肺腫瘍細胞への単球の遊走を増強し、骨髄系細胞に富む腫瘍微小環境を強化し、腫瘍オルガノイドの増殖を促進することが示された。 著者は、「これらの結果は、加齢に伴う血液のクローン性増殖が腫瘍の進展に影響を与えるという考えを支持する」「がん診断にTI-CHが有用である可能性が示唆される」としている。

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中国で豚由来腎臓移植が成功、生存中の患者としては3人目

 遺伝子編集された豚の腎臓を移植された中国人女性が、順調に回復していることが報告された。現在、世界で豚由来腎臓移植を受けて生存しているのは、この女性が3人目となる。研究者らは、将来的には豚の肝臓が人への移植の選択肢となる可能性にも言及している。 NBCニュースなどの報道によると、この女性は69歳で、豚由来腎臓を移植される以前、8年にわたり腎不全状態にあった。手術は第四軍医大学西京病院(中国)で行われ、移植チームの一員であるLin Wang氏によると、術後の患者は現在、病院で経過観察中であり腎機能は良好で容態も良いという。 この手術は、移植治療に必要な人の臓器が不足しているという現状に対応し、豚の臓器を遺伝子編集して用いるという試みの一環として実施されたもので、臓器機能不全に対する治療法としてまだ確立されたものではない。しかし既に世界でこれまでに、この手法を用いて4人が豚由来腎臓、2人が豚由来心臓を移植されている。この試みの初期段階には移植手術後の結果が芳しくないケースもあった。ただし、より最近になって米国で豚由来腎臓移植を受けた、アラバマ州の女性とニューハンプシャー州の男性の2人は、いずれも順調に回復していることが報じられている。 さらにWang氏らの研究チームは、腎臓だけでなく、豚の肝臓を移植に用いる試みも行っている。3月26日に「Nature」に掲載されたWang氏らの論文によると、脳死患者に豚由来の肝臓を移植して10日間にわたり経過を観察した。その結果、移植した肝臓は機能をし始める兆候を示し、肝機能として重要な胆汁とアルブミンの生成も開始した。その生成量は人の肝臓よりは少なかったが、「理論的には肝不全の患者をサポートするという目的に応用できる可能性がある」と同氏は述べている。 一方、Wang氏らの研究チームとは別に、米国の研究者らは、あたかも透析装置を使って血液を濾過するかのように、豚の肝臓を体外に取り付けるという試みを始めている。この研究には関与していない、米テキサス大学サウスウェスタン医療センターのParsia Vagefi氏は、「試みられている手法は、うまくいけば臓器不足解決に近づく一歩となり得る。しかし、他の優れた研究の初期段階と同様に、現時点では『答え』よりも『疑問』の方が多く存在している」と話している。 なお、Wang氏は、前述の脳死患者とは別の脳死患者に対して、人の肝臓を豚由来の肝臓に完全に置き換える試みを行っており、「現在、その結果の解析を進めている最中」と語っている。

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ADHD治療薬は心臓の健康に有害か?

 注意欠如・多動症(ADHD)の治療薬が心臓の健康に悪影響を及ぼす可能性が心配されている。こうした中、英サウサンプトン大学小児・青少年精神医学部門のSamuele Cortese氏らが実施したシステマティックレビューとネットワークメタアナリシスにおいて、ADHD治療薬が収縮期血圧(SBP)や拡張期血圧(DBP)、脈拍に及ぼす影響はわずかであることが確認された。この研究の詳細は、「The Lancet Psychiatry」5月号に掲載された。 Cortese氏らは、12の電子データベースを用いて、ADHD治療薬に関する短期間のランダム化比較試験(RCT)を102件抽出し、結果を統合して、ADHD治療薬がDBP、SBP、脈拍に与える影響をプラセボや他の薬剤との比較で検討した。これらのRCTで対象とされていたADHD治療薬は、アンフェタミン、アトモキセチン、ブプロピオン、クロニジン、グアンファシン、リスデキサンフェタミン、メチルフェニデート、モダフィニル、ビロキサジンであった。追跡期間中央値は7週間で、参加者として小児・青少年1万3,315人(平均年齢11歳、男子73%)と成人9,387人(平均年齢35歳、男性57%)の計2万3,702人が含まれていた。 解析の結果、小児・青少年では、アンフェタミン、アトモキセチン、メチルフェニデート、ビロキサジンがSBPやDBP、脈拍の有意な上昇と関連することが示された。なかでも、アンフェタミンによるDBPの平均上昇量1.93mmHg(95%信頼区間0.74〜3.11)と、ビロキサジンによる脈拍の平均上昇量5.58回/分(同4.67〜6.49)は、いずれもエビデンスの質が「高」と評価された。 一方、成人では、アンフェタミン、リスデキサンフェタミン、メチルフェニデート、ビロキサジンが、SBPやDBP、脈拍の上昇と関連していたが、いずれの指標においてもエビデンスの質は「非常に低い」と評価された。 さらに、小児・青少年においても成人においても、SBP、DBP、脈拍の上昇について、メチルフェニデートやアンフェタミンなどの中枢神経刺激薬とアトモキセチンやビロキサジンなどの非中枢神経刺激薬との間に有意な差は認められなかった。 Cortese氏は、「他の研究では、ADHD治療薬の使用が死亡リスクを低下させ、学業成績の向上に寄与することが示されている。また、高血圧のリスクがわずかに増加する可能性は示唆されているが、他の心血管リスクの増加については報告されていない。総合的に見て、ADHD治療薬使用のリスクとベネフィットの比率は安心できるものだと言えるだろう」とサウサンプトン大学のニュースリリースで述べている。 一方、論文の筆頭著者であるサンパウロ大学(ブラジル)医学部のLuis Farhat氏は、「われわれの研究結果は、中枢神経刺激性であるか否かに関わりなくADHD治療薬使用者の血圧と脈拍を体系的にモニタリングする必要性を強調するものであり、将来の臨床ガイドラインに反映されるべきだ。中枢神経刺激薬だけが心血管系に悪影響を及ぼすと考えている医療従事者にとって、これが意味することは非常に大きいはずだ」と述べている。 研究グループは、さらなる研究でADHD治療薬の長期的な影響について理解を深める必要があるとしている。Cortese氏は、「現時点では、リスクの高い個人を特定することはできないが、精密医療のアプローチに基づく取り組みが将来的に重要な洞察をもたらすことを期待している」と述べている。

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オキシトシン受容体拮抗薬atosibanは48時間以内の分娩を予防するが、新生児転帰を改善せず(解説:前田裕斗氏)

 切迫早産に対する子宮収縮抑制薬の分娩延長効果、新生児転帰の改善効果をプラセボと比較したランダム化比較試験である。子宮収縮抑制薬にはβ刺激薬やCa拮抗薬など、すでに点滴製剤がさまざまにある中で、今回新たにオキシトシン受容体拮抗薬についての研究が出された背景には、(1)オキシトシン受容体拮抗薬は副作用が他薬と比べて起こりにくいこと(2)オキシトシン受容体拮抗薬の大規模な研究、とくにRCTが存在しなかったことの2点がある。 結果からは、48時間以上の妊娠期間延長(atosiban群78%vs.プラセボ群69%、リスク比[RR]:1.13、95%信頼区間[CI]:1.03~1.23)および副腎皮質ステロイドの投与完遂率(atosiban群76%vs.プラセボ群68%、RR:1.11、95%CI:1.02~1.22)については有意に認められたものの、新生児死亡ないし重大合併症をまとめた複合アウトカムについては有意な減少効果は認められなかった(atosiban群8%vs.プラセボ群9%、RR:0.90、95%CI:0.58~1.40)。 他の子宮収縮抑制薬と比較すると、Ca拮抗薬、β刺激薬ともに48時間の分娩延長効果は有意に認められており、新生児転帰の改善効果についてはβ刺激薬では認められず、Ca拮抗薬ではメタアナリシスで有意な改善が報告されている。これだけ見るとCa拮抗薬に軍配が上がりそうだが、atosibanは今回の研究でも合併症発生率が低く検出力が足りていなかった可能性があること、研究数が少なくメタアナリシスが困難であることなどから結論は出せないと考えてよい。 日本ではatosibanは未発売であるが、今後発売されれば副作用の少なさから他薬より優先的に使用される可能性はあるだろう。最後にこれは感想であるが、本研究を見ていると早産治療の限界を感じる。短期間の子宮収縮抑制薬+副腎皮質ステロイド投与という標準治療を、切迫早産疑いの妊婦におしなべて投与するだけでは効果不十分であるかもしれないと考えると、本当に早産になる症例の予測か、あるいは新規に新生児転帰を改善する治療法の出現が待たれる。

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AIチャットボットに看護師と同等の効果?不安・抑うつの軽減効果を検証【論文から学ぶ看護の新常識】第13回

AIチャットボットに看護師と同等の効果?不安・抑うつの軽減効果を検証Chen Chen氏らの研究で、香港市民向けに開発したAIチャットボットと従来の看護師ホットライン(電話相談)の効果が比較され、不安や抑うつの軽減において両者が同等の効果を持つ可能性が示された。JMIR Human Factors誌2025年3月号に掲載された。AIチャットボットと看護師ホットラインの不安・抑うつ軽減効果の比較:パイロットランダム化比較試験研究チームは、地域住民向けのAIチャットボットを開発し、香港市民の不安および抑うつの軽減において、AIチャットボットと従来の看護師ホットラインの効果を比較することを目的に、パイロットランダム化比較試験(RCT)を実施した。試験の実施期間は2022年10月から2023年3月であった。対象は香港市民124名で、AIチャットボット群と看護師ホットライン群に1:1の割合で無作為に割り付けられた。最終的に、AIチャットボット群では62名、看護師ホットライン群では41名が介入前後の調査に参加した。参加者は、介入前後にGAD-7(全般性不安障害尺度)、PHQ-9(Patient Health Questionnaire-9)、および満足度アンケートを含む質問票に回答した。分析には、独立標本および対応のあるt検定(両側検定)ならびにカイ2乗検定を用いて、不安と抑うつレベルの変化を評価した。主な結果は以下の通り。AIチャットボット群:介入前の抑うつスコアは平均5.13(標準偏差[SD]:4.623)であったのに対し、介入後は平均3.68(SD:4.397)と統計的に有意な低下が認められた(p=0.008)。同様に、不安スコアも介入前は平均4.74(SD:4.742)、介入後は平均3.40(SD:3.748)となり、こちらも統計的に有意な低下が認められた(p=0.005)。看護師ホットライン群:抑うつ(p=0.28)および不安(p=0.63)スコアにおいて、介入前後のスコア差に有意差は認められなかった。両群の比較:介入前における両群間の抑うつ(p=0.76)および不安スコア(p=0.71)にも統計的に有意差はなかった。介入後のスコアは、AIチャットボット群の方がわずかに低かったものの、有意な差は認められなかった(すべてのp値>0.05)。抑うつ(p=0.38)および不安(p=0.19)における介入前後スコアの変化量(差分)を両群間で比較した結果においても、有意な差は認められなかった。両群間におけるサービス満足度にも有意差は認められなかった(p=0.32)。AIチャットボットは、従来の看護師ホットラインと同等に不安や抑うつを軽減する効果があることが示された。さらに、AIチャットボットは短期的な不安や抑うつの軽減に有効である可能性が示された。今回の研究では、AIチャットボットが従来の看護師ホットラインと同程度の効果を持つ可能性を示唆しており、とくに短期的な不安軽減においてはAIチャットボットが優れている可能性も示唆されました。これは、メンタルヘルスサポートの選択肢を広げる上で興味深い結果と言えるでしょう。一方で、看護師による電話相談には、AIでは対応が難しい個別の状況に応じたきめ細やかな対応や、より複雑な相談への対応力が期待されます。本文中でも触れられていますが、AIチャットボットは診断や長期的な治療戦略を提供するものではなく、あくまで初期的な情報提供や一時的な感情のサポートを目的としたツールと考えられます。この点から、将来、看護師の専門性はより複雑なメンタルサポートを行うことにシフトしていく可能性があります。今回の研究はパイロット試験(本格的なRCTを行う前に実施する小規模なRCT)であり、対象者も限られています。今後より大規模な研究によって、AIチャットボットと看護師によるサポートが、それぞれどのような場面で最も有効なのか、また、両者をどのように連携させていくのが望ましいのかが、さらに明らかになることが期待されます。論文はこちらChen C, et al. JMIR Hum Factors. 2025;12:e65785.

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ピロリ除菌後の胃がんリスクを予測するバイオマーカー~日本の前向き研究

 Helicobacter pylori(H. pylori)除菌後においても0.5~1.2%の人に原発性胃がんが発生する可能性がある。このような高リスクの集団を識別する新たなバイオマーカーとして、非悪性組織におけるepimutationの蓄積レベル(epimutation負荷)ががんリスクと関連していることが複数の横断的研究で報告されているが、前向き研究でリスク予測におけるDNAメチル化マーカーの有用性は確認されていない。今回、星薬科大学の山田 晴美氏らの研究により、epimutation負荷のDNAメチル化マーカーであるRIMS1がH. pylori除菌後の健康人における原発性胃がんリスクを正確に予測可能であることが示された。Gut誌オンライン版2025年4月15日号に掲載。 本研究では、H. pylori除菌後の健康人でopen typeの萎縮性胃炎を有する人を前向きに募集し、胃前庭部と胃体部の生検検体でマーカー遺伝子であるRIMS1のDNAメチル化レベルを測定した。主要評価項目は胃がん発生率で、主要な目的はメチル化レベルの最高四分位と最低四分位におけるハザード比の比較であった。副次的な目的は、2年に1回の内視鏡検診より年1回の検診から利益を得られる可能性のある人を特定するためにRIMS1メチル化レベルのカットオフ値の決定であった。メチル化レベルのカットオフ値は、NNS(number needed to screen)に対応する推定1年胃がん発生確率とした。 主な結果は以下のとおり。・1,624人の参加者が1回以上の内視鏡検査を受け、追跡期間中央値4.05年で27人に原発性胃がんが発生した。・RIMS1メチル化レベルの最高四分位群では10万人年当たり972.8人と、最低四分位群の127.1人年よりも発生率が高かった。・Cox回帰分析の結果、単変量ハザード比(HR)は7.7(95%信頼区間[CI]:1.8~33.7)、年齢・性別調整HRは5.7(同:1.3~25.5)であった。・超高リスク集団を特定するためのメチル化レベルのカットオフ値は、NNS1,000の場合は25.7%(年齢・性別調整HR:3.6、95%CI:1.7~7.7、p<0.001)であった。  本結果から、著者らは「DNAメチル化マーカーは、H. pylori除菌後に胃がん検診を免除できる人を特定できる可能性がある」とし、一方で「DNAメチル化マーカーによって特定された超高リスク集団は、現行のガイドラインのように2年に1回ではなく、毎年胃がん検診を受ける必要がある」としている。

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治療抵抗性うつ病に対する第2世代抗精神病薬増強療法〜ネットワークメタ解析

 治療抵抗性うつ病の成人患者に対する抗うつ薬と併用した第2世代抗精神病薬(SGA)増強療法のレジメンの根底にある「time window」効果をフォローアップ期間で調整しながら調査するため、中国・大連医科大学のBinru Bai氏らは、ネットワークメタ解析を実施した。BMC Psychiatry誌2025年4月5日号の報告。 Embase、PubMed、Scopus、Cochrane Library、Google Scholars、Clinicaltrials.govを含むデータベースより、2024年5月15日までに公表されたランダム化比較試験を検索した。主要エンドポイントは、Montgomery Asbergうつ病評価尺度(MADRS)スコアとした。副次的エンドポイントはMADRS反応率、3次エンドポイントは臨床全般印象度(CGI-S)およびMADRS寛解率とした。標準平均差(SMD)およびハザード比(HR)は、それぞれ二値変数および連続変数との比較について、ベイジアンネットワークメタ回帰(NMR)により算出した。 主な結果は以下のとおり。・NMRには、24種類の増強薬を用いた23件(1万679例)の研究を含めた。・抗うつ薬治療と比較し、主要エンドポイントで有意な効果が得られた増強療法は、次のとおりであった(SMD:−0.28〜−0.114)。 ●アリピプラゾール 3〜12mg/日 ●ブレクスピプラゾール 1〜3mg/日 ●cariprazine 1.5〜3mg/日 ●オランザピン 6〜12mg/日+fluoxetine 25〜50mg/日併用 ●クエチアピンXR・エフェクトサイズは同等であり、フォローアップ期間を調整した後、クエチアピンXRを除き、主要エンドポイントの結果は同様であった(SMD:−0.10、95%信頼区間:−0.212〜−0.014)。・time windowが認められた薬剤は、次のとおりであった。 ●ブレクスピプラゾール 3mg/日:7.22週 ●cariprazine 1〜2mg/日:2.97週 ●cariprazine 2〜4.5mg/日:2.81週 ●cariprazine 3mg/日:7.16週 ●オランザピン 6〜12mg/日:4.11週 ●クエチアピン 150〜300mg/日:3.89週・MADRS反応率では、ブレクスピプラゾール3mg/日およびリスペリドン0.5〜3mg/日が他の薬剤よりも明らかに優れていた(HR:1.748〜2.301)。・抗うつ薬治療と比較し、CGI-S(SMD:−0.438〜−0.126)およびMADRS寛解率(HR:0.477〜3.326)において顕著な有効性を示した増強療法は、次のとおりであった。【CGI-S】 ●アリピプラゾール 2〜20mg/日 ●ブレクスピプラゾール 2〜3mg/日 ●cariprazine 3mg/日 ●オランザピン 6〜12mg/日+fluoxetine 25〜50mg/日併用 ●リスペリドン 0.5〜3mg/日【MADRS寛解率】 ●アリピプラゾール 2〜20mg/日 ●ブレクスピプラゾール 3mg/日 ●cariprazine 3mg/日 ●リスペリドン 0.5〜3mg/日 著者らは「各エンドポイントと対応するtime windowを総合的に考慮すると、特定のSGAは、治療抵抗性うつ病に対する抗うつ薬の補助療法として有用であり、とくにアリピプラゾールは、他の薬剤よりも有効性および忍容性が良好であることが示唆された」と結論付けている。

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デルゴシチニブ クリーム、重症慢性手湿疹に有効/Lancet

 重症の慢性手湿疹の治療において、デルゴシチニブ クリーム (外用汎ヤヌスキナーゼ[JAK]阻害薬)はalitretinoin経口投与と比較して、24週間にわたり優れた有効性と良好な安全性プロファイルを示すことが、スペイン・Universitat Pompeu Fabra大学のAna Maria Gimenez-Arnau氏らtrial investigatorsが実施した「DELTA FORCE試験」で明らかとなった。研究の成果は、Lancet誌オンライン版2025年4月16日号で報告された。欧米10ヵ国の第III相無作為化実薬対照比較試験 DELTA FORCE試験は、重症慢性手湿疹の治療において、全身療法薬として欧米で唯一承認されている経口alitretinoinとの比較におけるデルゴシチニブ クリームの有効性と安全性の評価を目的とする第III相評価者盲検無作為化実薬対照比較試験であり、2022年6月~2023年12月に北米と欧州の10ヵ国102施設で参加者の無作為化を行った(LEO Pharmaの助成を受けた)。 年齢18歳以上の重症慢性手湿疹(Investigator’s 's Global Assessment for Chronic Hand Eczema[IGA-CHE]スコア[0~4点]が4点)の患者513例(年齢中央値45.0歳[四分位範囲:33.0~56.0]、女性65%)を対象とし、デルゴシチニブ クリーム(20mg/g、1日2回)を塗布する群(254例)、またはalitretinoin(30mg、1日1回)を経口投与する群(259例)に1対1の割合で無作為に割り付け、最長で24週間投与した。 主要エンドポイントは、手湿疹重症度指数(HECSI)スコア(範囲:0~360点、6つの臨床徴候[各0~3点]、5つの部位[各0~4点])のベースラインから12週までの変化量とした。主な副次エンドポイントもすべて有意に良好  デルゴシチニブ クリーム群の250例とalitretinoin群の253例を最大の解析対象集団(FAS)とし、ベースラインのHECSIデータが得られなかったそれぞれ1例および3例を主解析から除外した。曝露期間平均値は、それぞれ149.7日および119.8日だった。 HECSIスコアのベースラインから12週までの変化量の最小二乗平均値は、alitretinoin群が-51.5(SE 3.4)点であったのに対し、デルゴシチニブ クリーム群は-67.6(3.4)点と改善効果が有意に優れた(群間差:-16.1点[95%信頼区間[CI]:-23.3~-8.9]、p<0.0001)。 また、7項目の主な副次エンドポイントはいずれも、デルゴシチニブ クリーム群で有意に良好であった(12週時のHECSI-90[HECSIの90%以上の改善、p=0.0027]、12週時のIGA-CHEに基づく治療成功[スコアが0または1点で、ベースラインから2点以上の改善、p=0.0041]、12週時の手湿疹症状日誌[HESD]のそう痒の変化量[p=0.0051]、12週時のHESDの疼痛の変化量[p=0.018]、24週時のHECSI-90のAUC[p=0.0010]、24週時の皮膚科疾患生活の質指数[DLQI]のスコア低下のAUC[p<0.0001]、24週時のHECSIスコアの変化量[p<0.0001])。試験薬関連・投与中止に至った有害事象が少ない 有害事象は、alitretinoin群で247例中188例(76%)に認めたのに比べ、デルゴシチニブ クリーム群では253例中125例(49%)と少なかった(率比:0.39[95%CI:0.34~0.45]、リスク群間差:-26.7%[95%CI:-34.5~-18.3])。 最も頻度の高い有害事象は、頭痛(デルゴシチニブ クリーム群4%vs.alitretinoin群32%、率比:0.14[95%CI:0.09~0.23]、リスク群間差:-28.4%[95%CI:-34.8~-22.1])、鼻咽頭炎(12%vs.14%、0.71[0.46~1.09]、-1.9%[-7.8~4.0])、悪心(<1%vs.6%、0.06[0.01~0.43]、-5.3%[-8.9~-2.4])であった。 重篤な有害事象の頻度に両群で差はなく(デルゴシチニブ クリーム群2%vs.alitretinoin群5%、率比:0.36[95%CI:0.13~1.02]、リスク群間差:-2.9%[95%CI:-6.5~0.4])、死亡例の報告はなかった。また、試験薬関連の有害事象(probablyまたはpossibly)(9%vs.54%、0.08[0.06~0.12]、-44.8%[-51.6~-37.2])および試験薬の恒久的な投与中止に至った有害事象(1%vs.10%、0.08[0.03~0.22]、-8.9%[-13.4~-5.1])はalitretinoin群で多かった。 著者は、「デルゴシチニブ クリームは、コルチコステロイド外用薬や全身療法の長期使用に伴う安全性の懸念なしに、効果的な疾患コントロールをもたらす非ステロイド外用薬の選択肢を提供する可能性がある」としている。

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コントロール不良高血圧、lorundrostatが有望/NEJM

 コントロール不良の高血圧の治療において、プラセボと比較してアルドステロン合成酵素阻害薬lorundrostatは、24時間平均収縮期血圧を有意に低下させ、安全性プロファイルは許容範囲内と考えられることが、米国・Cleveland Clinic FoundationのLuke J. Laffin氏らが実施した「Advance-HTN試験」で示された。研究の成果は、NEJM誌オンライン版2025年4月23日号に掲載された。米国の第IIb相無作為化プラセボ対照比較試験 Advance-HTN試験は、コントロール不良または治療抵抗性の高血圧の治療におけるlorundrostatの有効性と安全性の評価を目的とする第IIb相二重盲検無作為化プラセボ対照比較試験であり、2023年3月~2024年10月に米国の103施設で参加者のスクリーニングを行った(Mineralys Therapeuticsの助成を受けた)。 年齢18歳以上、2~5種類の安定用量の降圧薬による治療を受けており、診察室血圧が収縮期140~180mmHgで拡張期65~110mmHg、または収縮期血圧を問わず拡張期血圧90~110mmHgの患者に対し、それまでの降圧薬の投与を中止して標準化された降圧薬レジメンを3週間投与した。 その後、コントロール不良(24時間自由行動下平均収縮期血圧130~180mmHg、平均拡張期血圧>80mmHg)の患者を、lorundrostat 50mgを1日1回、12週間投与する群(安定用量群)、lorundrostat 50mgを4週間投与し、診察室収縮期血圧が130mmHg以上の場合は100mgに増量して8週間投与する群(用量調節群)、またはプラセボ群に1対1対1の割合で無作為に割り付けた。 主要エンドポイントは、24時間平均収縮期血圧のベースラインから12週目までの変化量とした。2群とも主要エンドポイントが有意に改善 285例(平均年齢60歳、男性60%、黒人53%)を登録し、安定用量群に94例、用量調節群に96例、プラセボ群に95例を割り付けた。262例が無作為化から4週時の血圧測定を、241例が12週時の血圧測定を完了した。 無作為化から12週の時点における24時間平均収縮期血圧の最小二乗平均変化量は、安定用量群で-15.4mmHg、用量調節群で-13.9mmHg、プラセボ群で-7.4mmHgであった。プラセボで補正後の血圧変化量は、安定用量群で-7.9mmHg(97.5%信頼区間[CI]:-13.3~-2.6、p=0.001)、用量調節群で-6.5mmHg(97.5%CI:-11.8~-1.2、p=0.006)といずれも有意な改善を認めた。 2つのlorundrostat群を合わせた188例における、ベースラインから4週目までの24時間平均収縮期血圧のプラセボで補正後の変化量は-5.3mmHg(95%CI:-8.4~-2.3、p<0.001)であり、有意に良好だった。試験薬関連の重篤な有害事象は3例 重篤な有害事象は、安定用量群で6例(6%)、用量調節群で8例(8%)、プラセボ群で2例(2%)に発現した。試験薬に関連した重篤な有害事象は、それぞれ2例(2%)、1例(1%)、0例であった。用量調節群の1例が動脈硬化で死亡したが、試験薬との関連はないと判定された。 カリウム値が6.0mmol/Lを超えた患者は、安定用量群で5例(5%)、用量調節群で7例(7%)であり、プラセボ群には認めなかった。用量の調節を要する推算糸球体濾過量(eGFR)の低下は、それぞれ3例(3%)、7例(7%)、3例(3%)にみられた。 著者は、「観察された有効性は、アルドステロンが高血圧の病因において重要な役割を果たしているという考え方をより強固なものにする」「スクリーニングを受けた患者の大部分が標準化された降圧薬レジメンにより血圧コントロールを達成したため、無作為化の対象とならなかった。おそらく、コントロール不良の治療抵抗性高血圧が確認された患者のみが無作為化を受けることができたという事実が、黒人の参加者の割合が高かったことに寄与したと考えられる」としている。

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