重症の慢性手湿疹の治療において、デルゴシチニブ クリーム (外用汎ヤヌスキナーゼ[JAK]阻害薬)はalitretinoin経口投与と比較して、24週間にわたり優れた有効性と良好な安全性プロファイルを示すことが、スペイン・Universitat Pompeu Fabra大学のAna Maria Gimenez-Arnau氏らtrial investigatorsが実施した「DELTA FORCE試験」で明らかとなった。研究の成果は、Lancet誌オンライン版2025年4月16日号で報告された。
欧米10ヵ国の第III相無作為化実薬対照比較試験
DELTA FORCE試験は、重症慢性手湿疹の治療において、全身療法薬として欧米で唯一承認されている経口alitretinoinとの比較におけるデルゴシチニブ クリームの有効性と安全性の評価を目的とする第III相評価者盲検無作為化実薬対照比較試験であり、2022年6月~2023年12月に北米と欧州の10ヵ国102施設で参加者の無作為化を行った(LEO Pharmaの助成を受けた)。
年齢18歳以上の重症慢性手湿疹(Investigator’s 's Global Assessment for Chronic Hand Eczema[IGA-CHE]スコア[0~4点]が4点)の患者513例(年齢中央値45.0歳[四分位範囲:33.0~56.0]、女性65%)を対象とし、デルゴシチニブ クリーム(20mg/g、1日2回)を塗布する群(254例)、またはalitretinoin(30mg、1日1回)を経口投与する群(259例)に1対1の割合で無作為に割り付け、最長で24週間投与した。
主要エンドポイントは、手湿疹重症度指数(HECSI)スコア(範囲:0~360点、6つの臨床徴候[各0~3点]、5つの部位[各0~4点])のベースラインから12週までの変化量とした。
主な副次エンドポイントもすべて有意に良好
デルゴシチニブ クリーム群の250例とalitretinoin群の253例を最大の解析対象集団(FAS)とし、ベースラインのHECSIデータが得られなかったそれぞれ1例および3例を主解析から除外した。曝露期間平均値は、それぞれ149.7日および119.8日だった。
HECSIスコアのベースラインから12週までの変化量の最小二乗平均値は、alitretinoin群が-51.5(SE 3.4)点であったのに対し、デルゴシチニブ クリーム群は-67.6(3.4)点と改善効果が有意に優れた(群間差:-16.1点[95%信頼区間[CI]:-23.3~-8.9]、p<0.0001)。
また、7項目の主な副次エンドポイントはいずれも、デルゴシチニブ クリーム群で有意に良好であった(12週時のHECSI-90[HECSIの90%以上の改善、p=0.0027]、12週時のIGA-CHEに基づく治療成功[スコアが0または1点で、ベースラインから2点以上の改善、p=0.0041]、12週時の手湿疹症状日誌[HESD]のそう痒の変化量[p=0.0051]、12週時のHESDの疼痛の変化量[p=0.018]、24週時のHECSI-90のAUC[p=0.0010]、24週時の皮膚科疾患生活の質指数[DLQI]のスコア低下のAUC[p<0.0001]、24週時のHECSIスコアの変化量[p<0.0001])。
試験薬関連・投与中止に至った有害事象が少ない
有害事象は、alitretinoin群で247例中188例(76%)に認めたのに比べ、デルゴシチニブ クリーム群では253例中125例(49%)と少なかった(率比:0.39[95%CI:0.34~0.45]、リスク群間差:-26.7%[95%CI:-34.5~-18.3])。
最も頻度の高い有害事象は、頭痛(デルゴシチニブ クリーム群4%vs.alitretinoin群32%、率比:0.14[95%CI:0.09~0.23]、リスク群間差:-28.4%[95%CI:-34.8~-22.1])、鼻咽頭炎(12%vs.14%、0.71[0.46~1.09]、-1.9%[-7.8~4.0])、悪心(<1%vs.6%、0.06[0.01~0.43]、-5.3%[-8.9~-2.4])であった。
重篤な有害事象の頻度に両群で差はなく(デルゴシチニブ クリーム群2%vs.alitretinoin群5%、率比:0.36[95%CI:0.13~1.02]、リスク群間差:-2.9%[95%CI:-6.5~0.4])、死亡例の報告はなかった。また、試験薬関連の有害事象(probablyまたはpossibly)(9%vs.54%、0.08[0.06~0.12]、-44.8%[-51.6~-37.2])および試験薬の恒久的な投与中止に至った有害事象(1%vs.10%、0.08[0.03~0.22]、-8.9%[-13.4~-5.1])はalitretinoin群で多かった。
著者は、「デルゴシチニブ クリームは、コルチコステロイド外用薬や全身療法の長期使用に伴う安全性の懸念なしに、効果的な疾患コントロールをもたらす非ステロイド外用薬の選択肢を提供する可能性がある」としている。
(医学ライター 菅野 守)