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日本で行われたARBの大規模試験に関する論文が撤回

 1日、欧州心臓病学会の学会誌であるEuropean Heart Journal誌の編集者らは、KYOTO HEART Studyに関する主要論文を同誌から撤回したと発表した。KYOTO HEART Studyは、日本人のハイリスク高血圧患者を対象にARBバルサルタンの追加投与による心血管イベントに対する有用性を検討した大規模臨床試験。編集者らは撤回理由について「この論文に発表されたデータの一部に重大な問題があった」としている。European Heart Journalhttp://eurheartj.oxfordjournals.org/content/early/2013/02/04/eurheartj.eht030.full KYOTO HEART Studyについては、昨年12月にもサブ解析結果に関する論文2報が、日本循環器学会の学会誌であるCirculation Journal誌から撤回されていた。

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糖質制限食に警鐘?-20万人以上のメタアナリシスの結果がPLoS ONE誌に発表-

 血糖を上昇させる主たる栄養素は糖質であることから、糖質制限(低炭水化物)食が流行している。これまで糖質制限食が長期予後に及ぼす影響について不明であったが、糖質制限食が死亡リスクを上昇させる危険性を示唆するメタアナリシスの結果を国立国際医療研究センター病院糖尿病・代謝・内分泌科の能登洋氏らの研究グループがPLoS ONE誌に発表した。 能登氏らは2012年9月までに発表され、その中から該当した9件をメタアナリシスの対象とした。総死亡、心血管疾患死の解析対象例はそれぞれ227,216人、249,272人。総死亡者数は15,981人であり、糖質制限食により総死亡リスクは31%有意に増加した〔調整リスク比 1.31(95%信頼区間=1.08-1.59)、P=0.007〕心血管疾患死亡者数は3,214人であり、糖質制限群で10%増加したが、統計的有意差は認められなかった〔調整リスク比 1.10(95%信頼区間=0.98-1.24)、P=0.12〕。 世間では「糖質制限食」「糖質オフダイエット」など流行になっているが、本研究は長期的な視点で考えた場合、安易な糖質制限は死亡リスクを高める可能性があるという警鐘を鳴らしている。まずは患者さんの食事内容を把握することが肝要だ。 原著論文は下記よりPDFファイルでダウンロードできる。Low-Carbohydrate Diets and All-Cause Mortality: A Systematic Review and Meta-Analysis of Observational Studieshttp://www.plosone.org/article/info%3Adoi%2F10.1371%2Fjournal.pone.0055030 論文が掲載される前に著者の能登氏に取材しているので、下記も合わせてご覧頂きたい。[関連コンテンツ]今、話題の糖質制限食は寿命を延ばすことができるのか?http://www.carenet.com/news/prognosis/carenet/33045

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降圧薬2剤併用にNSAIDsを追加併用、30日間は急性腎不全に注意が必要/BMJ

 利尿薬、ACE阻害薬あるいはARB、NSAIDsの組み合わせによる3剤併用制法は、急性腎不全リスクを増大することが、カナダ・Jewish General HospitalのFrancesco Lapi氏らによるコホート内症例対照研究の結果、報告された。リスクは、治療開始から30日間が最も強かったという。著者は、「降圧薬は心血管系にベネフィットをもたらすが、NSAIDsを同時併用する場合は十分に注意をしなければならない」と結論している。BMJ誌2013年1月12日号(オンライン版2012年12月18日号)掲載報告より。2剤併用とNSAIDsを追加した3剤併用療法の、急性腎不全リスク増大との関連を調査 研究グループは、降圧薬の利尿薬、ACE阻害薬あるいはARBの2剤併用療法に、NSAIDsを追加し3剤併用療法とした場合の、急性腎不全リスク増大との関連について調べた。 コホート内症例対照研究の手法を用いた後ろ向きコホート研究で、UK Clinical Practice Research DatalinkとHospital Episodes Statisticsデータベースから一般診療関連のデータを抽出して行われた。 主要評価項目は、直近の2剤または3剤併用療法との関連でみた急性腎不全の発生率[95%信頼区間(CI)]だった。3剤併用療法、開始後30日間の急性腎不全の補正後発生率比1.82 対象は、降圧薬を服用する48万7,372人であった。 平均追跡期間5.9年(SD 3.4)の間に、急性腎不全の発生が特定されたのは2,215件であった(発生率:7/1万人・年)。 全体として、利尿薬、ACE阻害薬、ARBのいずれかと、NSAIDsとの組み合わせによる2剤併用療法の利用者では、急性腎不全発生の増大はみられなかった。補正後発生率比は、利尿薬+NSAIDsは1.02(95%CI:0.81~1.28)、ACE阻害薬またはARB+NSAIDsは0.89(同:0.69~1.15)だった。 一方で、3剤併用療法の利用者では急性腎不全発生の増大がみられた。補正後発生率比は1.31(95%CI:1.12~1.53)だった。 また2次解析の結果、3剤併用療法で最も高率のリスクがみられたのは、使用開始後30日間だった。同期間の補正後発生率比は1.82(95%CI:1.35~2.46)だった(31~60日:1.63、61~90日:1.56、≧90日:1.01。またNSAIDs半減期別では、<12時間:1.29、≧12時間:1.77)。

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長期アスピリン常用と加齢黄斑変性リスクとの関連/JAMA

 アスピリンの常用と加齢黄斑変性(AMD)発症との関連について調査した長期試験の結果、服用期間が5年では有意な関連はみられなかったが、10年では、わずかだが統計的に有意な発症遅延リスクの上昇が血管新生型AMDでみられたことを、米国・ウィスコンシン大学医学部眼科部門のBarbara E. K. Klein氏らが報告した。アスピリンは関節炎などの疼痛緩和や心保護効果があるとして広く使用されている。その使用は、眼科医にとっても関心が高いという。JAMA誌2012年12月17日号掲載報告より。5年ごと20年間の眼底検査結果とアスピリン服用有無との関連を評価Klein氏らは、アスピリンの常用とAMD発生との関連を調べる「Beaver Dam Eye Study」を行った。同試験は、ウィスコンシン州住民ベースの長期にわたる加齢性眼疾患について調査したもので、1988~1990年から2008~2010年の20年間に、検査受診が5年ごとに行われた(ベースラインを含め計5回)。 試験には、ベースライン時に43~86歳の4,926例が参加した。被験者は、その後の調査で、アスピリンを週2回以上、3ヵ月以上服用しているかを質問された。 主要評価項目は、AMD発症が早期(ターゲット受診日より6ヵ月以上前)、遅延期(ターゲット受診日後6ヵ月以降)、および遅延期の2タイプの発症(血管新生型AMD、萎縮型AMD)とした。評価は、Wisconsin Age-Related Maculopathy Grading Systemによる眼底検査に基づき行われた。10年常用とわずかだが有意な血管新生型AMD発症とが関連 平均追跡期間は14.8年だった。試験全体で、早期AMD発症は512例(6,243人・受診につき)、遅延期AMD発症は117例(8,621人・受診につき)であった。 眼底検査前のアスピリン常用が10年で、AMDの遅延期発症と有意な関連がみられた[ハザード比(HR):1.63、95%信頼区間(CI):1.01~2.63、p=0.05]。 また、アスピリン10年常用は、AMDのタイプ別にみると、血管新生型AMDとの有意な関連がみられたが(HR:2.20、95%CI:1.20~4.15、p=0.01)、萎縮型との関連はみられなかった(同:0.66、0.25~1.95、p=0.45)。 一方で、アスピリン10年常用と早期AMDとの関連はみられなかった(HR:0.86、95%CI:0.65~1.13、p=0.28)。また早期AMDは、アスピリン5年常用でも関連はみられなかった(同:0.86、0.71~1.05、p=0.13)。アスピリン5年常用は、遅延期AMDとの関連もみられなかった(同:0.91、0.57~1.46、p=0.69)。 上記の結果について著者は、確証のためのさらなる試験が必要だと述べるとともに、「もし、アスピリン常用と血管新生型AMD発症との関連が確認されたら、アスピリンを常用する、とくに心血管疾患を有する人での血管新生型AMDの予防あるいは遅延のために、原因メカニズムを明らかにし、アスピリンの影響を遮断するための手法を開発しなければならない」とまとめている。

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聖路加GENERAL 【腎臓内科】

第1回「CKD」第2回「尿異常の検査方針」第3回「高カリウム血症」第4回「急性腎障害(AKI)」 第1回「CKD」健診で、腎機能低下を指摘され、精査を指示された65歳の女性。糖尿病で通院しているが、今まで腎臓については何も言われたことがありませんでした。検査の結果、Cr値がやや高めである以外は、特に異常はありません。しかし、このCr値を元に推算GFR推算式によってeGFRを求めてみると、意外に腎機能が低下しているらしいということがわかりました。放置すれば、約5年で人工透析という予測結果です。腎疾患の治療の目的は、まず腎機能の低下を抑えることです。腎機能は年齢とともに低下しますし、糖尿病患者では、健常な人の約10倍も低下の速度が高くなります。また、CKDは、腎臓のみならず心血管事故を起こす可能性もあります。特に欧米では、透析適応になるより、その前に心疾患で死亡する方が多いという報告もあります。まずは、自覚症状が少ないため見逃しがちなCKDについて、その診断方法と、適切な治療によって悪化を抑え、腎不全と心血管事故を防ぐための方法をお伝えします。第2回「尿異常の検査方針」健診で尿潜血と尿蛋白を指摘された28歳の男性。健診で見つかる血尿は、尿潜血反応によるもので、実際に血尿があるかどうかは顕微鏡による尿沈査検査によって確認します。実際、健診においては、3〜10%という高率で顕微鏡的血尿が見つかります。これら全員を泌尿器科に送るわけにもいきません。そこで、まず泌尿器悪性腫瘍を除外します。特に、40歳以上の男性、喫煙歴などはリスクファクターになりますので、さらに検査を進めます。そして、さらに尿蛋白も陽性だった場合、IgA腎症などの慢性糸球体腎炎の可能性が高くなります。IgA腎症は、約30%が将来的に腎不全に至ると言われており、早期発見、早期対処が求められます。この他にも、血尿と尿蛋白が出るさまざまな例について解説します。また、尿蛋白を定量するための蛋白クレアチニン比の算出方法についても、具体的な事例を用いて解説します。第3回「高カリウム血症」数日前から感冒、発熱のある65歳の男性。知人からいただいたスイカを2個食べたところ、全身脱力、筋力低下が強まり歩行困難となって受診。実は、昔から腎臓によいとされているスイカは、豊富にカリウムを含んでおり、高カリウム血症の患者にとってはとても危険。それ以外にも、糖尿病性腎症、横紋筋融解症などの既往、ARB、Nsaidsなどの薬剤など、高カリウム血症に悪影響を及ぼす要因はさまざまです。高カリウム血症への対応において、最も重要なのは不整脈を起こさないということです。そのために、積極的に心電図を活用します。治療については、一時的に細胞内へカリウムを移動する方法、体外にカリウムを排泄する方法があります。程度に応じた治療法について、具体的に丁寧に解説します。第4回「急性腎障害(AKI)」痛風、高血圧の既往歴があり、全身倦怠感と嘔気を主訴に来院した55歳男性。血清クレアチニン値が高い場合、最初にやることは、それが慢性腎臓病(CKD)なのか、急性腎障害(AKI)なのかを鑑別することです。ところが、いつからCr値が上がったのか、なかなかわからないことが多いと思います。過去の健診のデータ、前医のカルテなどが入手できればよいですが、それも難しい場合は身体所見と病歴聴取から推測します。AKIの診察のポイントは、腎前性、腎性、腎後性に分けて考えることです。特に、腎前性と腎後性は重症化する場合がありますので、見逃してはいけません。他に気を付けなければならないものとして、造影剤腎症があります。腎機能が低下している患者に造影剤を使ってよいかどうか・・・。そんな現場の悩みにも、小松先生が丁寧に答えてくださいます。

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〔CLEAR! ジャーナル四天王(42)〕 リアルワールドでのRAS阻害薬投与は左室駆出率保持の心不全の予後を改善する可能性

左室駆出率保持の心不全(HFPEF)患者の予後を改善する薬剤は見つかっていない。J-DHF試験はβ遮断薬の有用性を示唆したが、ACE阻害薬のPEP-CHF試験、ARBのCHARM-Preserved試験やI-PRESERVE試験などの無作為化大規模試験で有用性は示されなかった。しかし、臨床試験における患者の年齢や疾患分布がリアルワールドと異なるため、パワー不足となった可能性が示唆されていた。 今回の研究は、大規模前向きコホート研究でRAS阻害薬投与がHFPEF 患者の1年生存率を有意に低下することが示されたという貴重な報告である。 スウェーデンの心不全登録において、EF40%以上で定義したHFPEFの1万6,216例(平均75歳)のうち77%がRAS阻害薬投与を受けていた(ACE阻害薬:ARB=3:1)。Propensity(傾向)スコアをマッチさせたコホートでは、RAS阻害薬治療群で非投与群と比べて9%死亡が有意に低下し、年齢補正のみを行ったコホートでも同様であった。また、目標投与量50%超群でのみ有意な死亡率の低下がみられた。 従来の結果との違いは拡張不全の定義に起因する。収縮機能障害と拡張機能障害は(とくにEF40~49%で)併存するため、HFPEFはEFのみで定義される雑多な病因の集合体である。しかし、HFPEFの試験は割り付けが難しいため弁膜症を除外してきた。本研究は弁膜症を3割程度、虚血性心疾患を45%含んでいた。また、予想通り全体の4~5割を占めるEF40~49%の患者でのみRAS阻害薬投与が有効で、EF50%以上では有効ではなかった。 著者らは同様の手法でARB同士の比較をして物議をかもしたが、患者背景に差はないかが問題となった。Propensityスコア解析でバイアスを完全に除外することは不可能であるため、HFPEFの予後を改善する薬が見つかったと結論付けることはできない。

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ARBの長期使用はがんのリスクを増大させるか?

 アンジオテンシン受容体拮抗薬(ARB)の長期使用とがんとの関連については、ランダム化比較試験や観察研究のメタアナリシスで矛盾した結果が報じられており、物議を醸している。 カナダのLaurent Azoulay氏らは、ARBが4つのがん(肺がん、大腸がん、乳がん、前立腺がん)全体のリスク増大に関連するかどうかを判断し、さらにそれぞれのがん種への影響を調べるため、United Kingdom General Practice Research Databaseにおいてコホート内症例対照解析を用いて後ろ向きコホート研究を行った。その結果、ARBの使用は4つのがん全体およびがん種ごとのいずれにおいても、リスクを増大させなかったと報告した。PLoS One 誌オンライン版2012年12月12日号に掲載。 本研究では、1995年(英国において最初のARBであるロサルタンの発売年)から2008年の間に降圧薬を処方された患者コホートを2010年12月31日まで追跡調査した。 症例は、追跡調査中に新たに肺がん、大腸がん、乳がん、前立腺がんと診断された患者とした。ARBの使用と利尿薬やβ遮断薬(両方またはどちらか)の使用とを比較して、条件付きロジスティック回帰分析を行い、がんの調整発生率比(RR)と95%信頼区間(CI)を推定した。 主な結果は以下のとおり。・コホートには116万5,781人の患者が含まれ、4万1,059人の患者が4つのがん種のうちの1つに診断されていた(554/100,000人年)。・ARBの使用とがんの増加率は、利尿薬やβ遮断薬(両方またはどちらか)の使用と比較し、4つのがん全体(RR:1.00、95%CI:0.96~1.03)、およびがん種ごとのどちらにおいても関連が認められなかった。・アンジオテンシン変換酵素(ACE)阻害薬(RR:1.13、95%CI:1.06~1.20)とCa拮抗薬(RR:1.19、95%CI:1.12~1.27)の使用が、それぞれ肺がんの増加率と関連していた。 著者は、「ACE阻害薬とCa拮抗薬による肺がんの潜在的なリスクを評価するためにさらなる研究が必要」としている。

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〔CLEAR! ジャーナル四天王(40)〕 RA系抑制薬同士の併用はメリットなく、むしろ有害

レニン-アンジオテンシン(RA)系阻害薬としては、ACE阻害薬、アンジオテンシンII受容体拮抗薬(ARB)および直接的レニン阻害薬(アリスキレン)があるが、これまでONTARGET試験などで、ACE阻害薬とARBの併用は、ACE阻害薬単独に比べて心血管合併症予防効果が認められず、むしろ有害事象が増加するのみという結果が示されている。今回の結果も、RA系抑制薬同士の併用はメリットがなく、有害であることを明瞭に示した点で意義のある試験である。 このトライアルを企画した意図としては、本試験のプロトコールどおり、すでにACE阻害薬あるいはARBを服用している高血圧または高リスク症例に対して、アリスキレンを上乗せすることで、さらなるメリットが得られる可能性を期待していたと思われる。しかし、本試験の結果は直接的レニン阻害薬の存在意義そのものが危うくなる結果であり、期待は大きく崩れた。 対象例のうち、より高リスクの症例では、より多くの降圧薬に加えて抗血小板薬やスタチン薬が処方されている。しかも、対象症例の試験開始時点の収縮期血圧140mmHg以上は40.8%、拡張期血圧85mmHg以上は12.2%にすぎないということは、血圧管理もかなりなされていることになる。さらに、アリスキレン追加群の血圧下降度について、プラセボ群と比べて群間差が収縮期血圧1.3mmHg/拡張期血圧0.6mmHgということから、追加によってもさらなる降圧が見込めるわけではないことも示した。 むしろRA系同士の併用は、高カリウム血症という危険な有害事象を招く可能性があることを教えてくれた貴重なトライアルである。 やはり降圧薬併用の基本は、降圧機序の異なる薬剤同士を少量ずつ組み合わせことである。 今後、この試験の結果はガイドラインでもきちんと活かされ、かつ保険上でも併用禁忌として記載され広く臨床医に周知されるべきである。

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2型糖尿病に対するアリスキレン追加投与/NEJM

 慢性腎臓病もしくは心血管疾患、または両方を有し標準的治療(ACE阻害薬またはARB)を受ける2型糖尿病の患者に対する、直接的レニン阻害薬アリスキレン(商品名:ラジレス)追加投与に関する試験の結果が報告された。デンマーク・コペンハーゲン大学のHans-Henrik Parving氏らが、8,500人超について行ったプラセボ対照二重盲無作為化比較試験の結果で、NEJM誌2012年12月6日号(オンライン版2012年11月3日号)で発表された。ACE阻害薬またはARBにアリスキレン1日300mg投与またはプラセボを追加投与 研究グループは2007~2010年にかけて、36ヵ国の医療機関を通じ、2型糖尿病の患者8,561人を無作為に2群に分け、ACE阻害薬またはARBに加えて、一方にはアリスキレン(1日300mg)を、もう一方にはプラセボを併用投与し比較検討した。 主要エンドポイントは以下の複合イベントで、心血管死または初回心停止(その後蘇生)までの期間、非致死的心筋梗塞、非致死的脳卒中、心不全による予定外入院、末期腎不全、腎不全起因の死亡、腎代替療法必要性の発生(透析および移植が不可能または非導入)、血清クレアチニン値のベースラインからの倍増だった。 被験者の平均年齢は64~65歳、女性は31~33%だった。心血管・腎イベント発生率を比較 試験は、第2回中間効果解析後に早期に中止された。追跡期間の中央値は32.9ヵ月で、その間、主要エンドポイントが発生したのは、アリスキレン群783例(18.3%)、プラセボ群732例(17.1%)だった(ハザード比:1.08、95%信頼区間:0.98~1.20、p=0.12)。腎機能に関する副次エンドポイントは、6.0%vs. 5.9%(同:1.03、0.87~1.23、p=0.74)だった。 収縮期・拡張期血圧は追跡期間中に上昇したが、アリスキレン群がプラセボ群より低く、群間格差はそれぞれ1.3mmHgと0.6mmHgだった。平均アルブミン-クレアチニン比の減少幅も、アリスキレン群がプラセボ群より大きく、群間格差は14ポイント(同:11~17)だった。 血清カリウム値が6mmol/L以上となる高カリウム血症は、11.2%vs. 7.2%、低血圧症は12.1%vs. 8.3%だった(p<0.001)。 研究グループは試験結果を受けて、2型糖尿病患者へのアリスキレンの標準的治療への追加投与の有効性は支持されず、むしろ有害の可能性があると結論している。

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左室駆出率保持の心不全へのRAS阻害薬投与は全死因死亡を低下/JAMA

 左室駆出率保持(≧40%)の心不全(HFPEF)患者に対するレニン-アンジオテンシン系(RAS)拮抗薬投与は、全死因死亡率を低下することが明らかにされた。スウェーデン・カロリンスカ研究所のLars H. Lund氏らが、同国の心不全患者レジストリからHFPEF患者を前向きに追跡し報告した。HFPEFは、左室駆出率低下の心不全(HFREF)と同程度の高い頻度と致死性の可能性を有している。ACE阻害薬またはARB(すなわちRAS阻害薬)の3つの無作為化試験では、主要エンドポイントを達成しなかったが、選択バイアスがかかりパワー不足となった可能性があったことから、研究グループはあらためて、HFPEFの任意抽出集団における前向き研究で、RAS拮抗薬投与により全死因死亡は低下するとの仮説について調べた。JAMA誌2012年11月28日号掲載より。RAS治療群と非治療群のHFPEF(EF≧40)患者1万6,216例を前向きに検討 前向き研究は、2000~2011年にスウェーデン国内64病院と84の外来クリニックから4万1,791例が参加したSwedish Heart Failure Registryの参加者を対象に行われた。 参加者のうち、HFPEF(EF≧40)の患者(EF保持HFコホート)1万6,216例[平均年齢(SD)75±11歳、女性46%]が、RAS阻害薬投与(1万2,543例)または非投与(3,673例)のいずれかの治療を受けた。 43の変数でRAS阻害薬投与に関する傾向スコアを調べ、主要評価項目の全死因死亡との関連を、年齢、傾向スコア1対1適合コホートで評価した。また、連続共変量の傾向スコアで補正した全コホートにおける評価も行った。 整合性、年齢別、傾向スコア適合評価の解析は、RAS阻害薬投与量に即したものと、同レジストリのHFREF(EF<40%)患者(EF低下HFコホート)2万111例において行った。1年生存率が治療群で有意に低下 EF保持HF適合コホートでは、1年生存率は、治療群77%[95%信頼区間(CI):75~78]、非治療群72%(同:70~73)で、治療群で有意な低下がみられた[ハザード比(HR):0.91、95%CI:0.85~0.98、p=0.008]。 EF保持HF全体コホートでは、1年生存率は、治療群86%(同:86~87)、非治療群69%(同:68~71)で、治療群で有意な低下がみられた(傾向スコア補正HR:0.90、95%CI:0.85~0.96、p=0.001]。 EF保持HFコホートのRAS投与量別解析では、目標投与量50%超群は非投与群と比べて有意な低下がみられた(HR:0.85、95%CI:0.78~0.83、p<0.001)。一方、目標投与量50%未満群は非投与群と比べて有意差はみられなかった(同:0.94、0.87~1.02、p=0.14)。 年齢、傾向スコアを適合させたEF低下HFコホートの解析では、治療群が非治療群と比べて全死因死亡の有意な低下が確認された(同:0.80、0.74~0.86、p<0.001)。

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CKD患者の血圧管理:ARBで降圧不十分な場合、増量か?併用か?

 CKD患者の血圧管理においてARB単剤で降圧目標130/80mmHg未満に到達することは難しい。今回、熊本大学の光山氏らは、日本人対象の無作為化比較試験のサブ解析の結果、ARB単剤で降圧不十分時にARBを増量するより、Ca拮抗薬を併用したほうが心血管系イベントや死亡といったリスクを回避しやすいことを示唆した(Kidney International誌オンライン版10月10日号掲載報告)。 ARBを低用量から開始し、通常用量まで増量しても降圧目標に達しないケースでは次にどのような一手を打つべきか? さらに増量する方法のほか、Ca拮抗薬など他の降圧薬の追加も選択肢となる(『CKD治療ガイド2012』では尿蛋白を伴わず、糖尿病を合併していない場合は「降圧薬の種類を問わない」とされている)。 サブ解析は、無作為化オープン試験OlmeSartan and Calcium Antagonists Randomized(OSCAR)試験について行われた。OSCAR試験では心血管疾患もしくは2型糖尿病を1つ以上有する日本人の高齢者(65~85歳)高血圧患者1,164例を対象とし、ARB増量群(オルメサルタン40mg/日)あるいはARB+Ca拮抗薬併用群(オルメサルタン20mg/日+Ca拮抗薬)に無作為化された。今回のサブグループ解析の対象は、事前に設定されていたCKD患者(eGFR 60 mL/min/1.73 m2 未満)である。 主要評価項目は「心血管系イベント」および「非心血管疾患死」。心血管系イベントは「脳血管障害」「冠動脈疾患」「心不全」「その他動脈硬化性疾患」「糖尿病性合併症」「腎機能の悪化」と定義された。なお、本試験については、すでに2009年に小川氏(熊本大学)らによって主要結果が発表されている(Hypertens Res. 2009;32:575-580.)。 主な結果は下記のとおり。・血圧は併用群で増量群に比べ、有意に低下。・主要評価項目の発生率は併用群(16例)で増量群(30例)より少なかった(ハザード比 2.25)。・脳血管障害および心不全イベントが増量群でより多く発生した。

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歩行補助器具の使用は変形性膝関節症に影響を与えるか

 高齢になると男女ともに歩行補助器具を使用する頻度が高く、使用開始の有意な理由は膝の痛みとバランスの問題であることが、米国・退役軍人医療センターのCarbone LD氏らによる「Health ABCスタディ」の前向きコホート研究から明らかとなった。本検討では、歩行補助器具と膝の痛みスコアあるいは膝関節腔狭小化の進行との間に一貫した関連は認められなかったが、著者はさらなる研究で、変形性膝関節症の進行と歩行補助器具使用との関連について調べる必要があると述べている。Arch Phys Med Rehabil誌オンライン版2012年10月4日号の掲載報告。 歩行補助器具(AWD)の使用発生を予測する因子を特定すること、AWD使用が変形性膝関節症の変化と関連しているかを調べることを目的とした。 Health ABC(Aging and Body Composition)スタディに参加した2,639例の高齢者を対象とし、AWD使用開始について追跡した。対象のうち、いわゆる膝痛がある人(サブセット)は874例だった。 主要評価項目は、追跡3年間における、AWD使用開始、疼痛スコアWOMAC(Western Ontario and McMaster Universities Osteoarthritis Index)の平均値、X線で認められた膝関節腔の狭小化の頻度だった。 主な結果は以下のとおり。・AWD使用開始は、Health ABC全コホートで9%、膝痛サブセットで12%であった。・両グループにおいて使用開始が予想された因子は、年齢が73歳超[全コホートOR:2.07(95%CI:1.43~3.01)、膝痛サブセットOR:1.87(95%CI:1.16~3.03)]、黒人[各々OR:2.95(2.09~4.16)、OR:3.21(2.01~5.11)]、バランス機能が低率[各々OR:3.18(2.21~4.59)、OR:3.77(2.34~6.07)]だった。・平均WOMAC疼痛スコアは、AWD使用群とAWD非使用群いずれにおいても、時間とともにわずかに低下した。・AWD使用群28%、AWD非使用群20%で、少なくとも片膝における脛骨大腿関節の関節腔狭小化の進行がX線上で認められた。・AWD使用群12%、AWD非使用群14%で、少なくとも片膝における膝蓋大腿骨関節の関節腔狭小化の進行がX線上で認められた。・探索的解析において、AWDとWOMAC疼痛スコアあるいは膝関節腔狭小化の進行との間に一貫した関連性は認められなかった。

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検証!向精神薬とワルファリンの相互作用

ワルファリンと向精神薬との薬物相互作用について、米国・ボストン大学医療センターのNadkarni A氏らが最新の文献レビューを行い、「特定の症例では、服用する向精神薬によって抗凝固療法を変更しなければならない可能性がある」ことを報告した。承認される向精神薬が増加し、ワルファリン療法を受けている患者が同時服用する可能性が増えている。しかし、ワルファリンと向精神薬との薬物相互作用に関する直近の文献レビューは10年以上前のものしかなかった。Pharmacotherapy誌2012年10月号の報告。 ワルファリンは肝代謝を受けタンパク質との結合が高く、そのためとくに薬物相互作用を受けやすい。加えて、投与される患者は出血や血栓性合併症のリスクがあるなど他の治療と比べて狭い領域をターゲットにしている。そこで、ワルファリンと向精神薬との薬物相互作用について記述された文献のシステマティックレビュー(MEDLINEを使用)は、チトクロームP450代謝システムと蛋白結合を介して伝達される相互作用に焦点を合て検証した。主な結果は以下のとおり。・ワルファリンと向精神薬の間には重大な相互作用があるが、過小評価されている傾向が示唆された。・これらの相互作用は、安全性と服薬コンプライアンスの両方に対して顕著な影響を及ぼしていた。・ワルファリン療法を受けている患者に特定の向精神薬が投与開始もしくは中止されるとき、あるいは向精神薬の安定投与を受けている患者にワルファリン療法が導入されるとき、臨床医は患者の国際標準比(INR)をモニタリングする必要がある。・ワルファリンとの併用でINRが増大する特定のリスクを引き起こす向精神薬は、フルオキセチン、フルボキサミン、クエチアピン、バルプロ酸などであった。・ワルファリンとの併用でINRを有意に減少させる可能性がある向精神薬としては、トラゾドン、セイヨウオトギリソウ、カルバマゼピンなどがあった。・タバコ成分中の多環芳香族炭素(polycyclic aromatic carbons)もINRを有意に減少させる可能性があった(ただし、ニコチン自体がニコチン置換療法のように、ワルファリンの抗凝固効果を変化させることは知られていない)。関連医療ニュース ・抗精神病薬アリピプラゾール併用による相互作用は? ・認知症患者に対する抗精神病薬処方の現状は? ・ドネペジル「新たな抗血管新生治療」の選択肢となりうるか?

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〔CLEAR! ジャーナル四天王(24)〕 安定狭心症に対する最適治療法の決定に冠血流予備量比(FFR)は有用な検査法である

経皮的冠動脈インターベンション治療(PCI)が、急性冠症候群の予後改善に有効な治療法であることについては異論のないところである。しかしながら、安定狭心症に対するPCIの適用に関しては未解決な問題が多い。歴史的には選択的冠動脈造影手技が確立されたことにより、冠動脈疾患の診断・治療が長足の進歩を遂げたことは周知の事実である。しかし、冠動脈造影では、X線シネ血管撮影装置と造影剤を使用してイメージインテンシファイアー上に冠動脈イメージを映し出し、狭窄の程度を判読している。それゆえ、狭窄の程度を正確に評価するうえで、冠動脈造影だけでは必ずしも十分でない症例も存在する。 FFR測定は、冠動脈狭窄病変が心筋虚血を引き起こすか否かを機能的に評価することを可能にした有用な検査である。心筋虚血を生じない程度の狭窄病変に対して、むやみやたらにPCIを実施することの有害性を十分に認識することは、治療方針を正しく決定するために必要である。本研究では、安定狭心症で冠動脈造影所見からPCI治療が適用であると判断された患者について、FFR値が少なくとも1つの狭窄病変において0.80以下であれば無作為に対象症例を2群[薬物治療群(最適薬物療法のみ)、PCI群(PCI+最適薬物療法)]に振り分けた。すべての狭窄を有する冠動脈病変のFFR値が0.80を超えている症例については、PCIを実施せず最適薬物療法のみを行い、試験に登録のうえ、その50%が無作為に抽出された2群と同様にフォローアップされた。 倫理的理由により追跡期間が短いのが気になるが、この期間での一次複合エンドポイント発生率(死亡率、非致死性心筋梗塞発症、2年以内に起こる予期せぬ緊急血行再建のための入院)は薬物治療群で12.7%、PCI群で4.3%であり、PCI群で有意に低かった。とりわけ、緊急血行再建術実施率がPCI群で有意に低率であった(薬物治療群 11.1% vs PCI群 1.6%)。FFR値が0.80を超えていた群での複合イベント発生率は3.0%と最も低値であったが、PCI群との間には有意差はなかった。 短期のフォローアップのみの成績であるために、長期的PCI治療の成績を保証するデータでないことを考慮することも重要である。また、FFR値が0.80超の狭窄病変に対して、最適薬物療法のみで治療した群で複合イベント発生率が低かった事実は大きな意味を持つ。つまり、心筋虚血を引き起こさない程度の狭窄病変に対して、むやみやたらにPCIを実施すべきではないことを肝に銘じるべきである。本研究は、少なくとも1ヵ所以上の主冠動脈狭窄病変でFFR値が0.80以下である場合について、PCI施行後とりわけ8日以降から追跡終了までの期間で一次複合エンドポイント(とくに緊急血行再建)に関して、PCI+最適薬物療法の併用が最適薬物療法単独よりも優れているとの結果であった。安定狭心症では無用なPCIを行わないよう心がけることを頭に叩き込んでおいてほしい。メモ1.PCIには第2世代の薬物溶出ステントが使用された。2.最適薬物療法は、アスピリン、β遮断薬(メトプロロールほか)、Ca拮抗薬/長時間作用型亜硝酸製剤、RA系阻害薬(リシノプリルほかACE阻害薬、副作用があればARB)、スタチン(アトルバスタチン)、エゼチミブの多剤併用投与を意味していると理解できる。3.クロピドグレルはステントを植え込み群でのみ使用された。4.本研究では最適薬物療法の中に看護ケア、生活習慣の改善は含まれていなかった。5.すべての群で喫煙者は至適禁煙指導を受け、糖尿病を有する患者は専門的至適治療が行われた。

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エキスパートに聞く!「高血圧」Q&A

CareNet.comでは9月の高血圧特集企画を行う中で、会員の先生より「高血圧」に関する質問を募集しました。その中から、特に多くいただいた質問に対し、下澤達雄先生にご回答いただきます。家庭血圧を用いる際の留意点について教えてください。昨年8月に発表された英国の高血圧ガイドラインでは、24時間血圧あるいは家庭血圧を高血圧の確定診断ならびに降圧治療の効果判定に用いることが強く推奨されました。わが国でも家庭血圧測定の指針が高血圧学会より出されており、実臨床でも多くの先生がお使いになっていることが、今回たくさんのご質問をいただいたことからも推察されます。そこで、家庭血圧を用いる際の留意点をいくつか挙げたいと思います。1.信頼性機械そのものの信頼性は診察室で同時に用手法と比較することで確認することができますが、血圧手帳を用いた自己申告による血圧値は必ずしも信頼できません。高知県で行われた調査では実測値と自己申告値には開きがあり、患者は低めに申告することが報告されています。よって、家庭血圧が低い場合でも臓器障害がある場合にはとくに診察室血圧を参考にした降圧治療が必要となります。あるいはメモリー機能をもった家庭血圧計を用い、実測値を医療側が把握できるようにする工夫が必要です。2.家庭血圧の測定方法血圧は複数回測れば必ず異なった値を示します。一般的には数回測ると徐々に低い値となります。高血圧学会の家庭血圧の指針では1日1回でよいと書かれていますが、これはまず患者に家庭血圧を測定させるために簡便な最低限の方法が記載されていると理解しています。すでに家庭血圧を日常的に測定できる患者においては複数回測定し、一番高い値と一番低い値、あるいは平均値を記載してもらうのがいいかと思います。測定時間は服薬直前が望ましいですが、日常生活にあわせてほぼ同じタイミングで測定できる時間を指導しています。3.夜間血圧を反映するか?何がわかるのか?残念ながら夜間血圧は夜間に測定する必要があり、家庭血圧では知ることができません。正しく測定でき、正直に申告された家庭血圧で白衣性高血圧、仮面高血圧がわかることはもちろんですが、曜日による血圧変動(週末ストレスがない場合に血圧が下がる)や睡眠状態との関連を知ることもできます。4.診察室血圧との乖離前述のように白衣性高血圧、仮面高血圧と診断されますが、臓器障害がある場合は高いほうの血圧を目安に治療を行うべきです。血圧変動について教えてください。外来診察毎の血圧変動が大きいと脳血管イベントが多くなることが報告されました。以来、糖尿病の際の血糖の変動が臓器障害と関連づけられています。動物実験でも交感神経を切除して血圧変動を大きくすると、レニン・アンジオテンシン系が亢進して臓器障害が進行することが報告されています。ヒトにおいては長期にわたる一拍ごとの血圧変動をみることは困難であり確立したエビデンスはありませんが、血圧変動は少なくする方が望ましいでしょう。血圧変動が大きい原因として自律神経障害、褐色細胞腫のような器質的な異常のほかに服薬アドヒアランス不良、精神的ストレス、不眠(睡眠時無呼吸)といった要因もあり、医師のみならず看護師、薬剤師などからの患者の病歴、生活歴聴取が必要となります。服薬は管理されているにもかかわらず認知症患者ではとくに血圧変動が大きいことが問題になりますが、多くの場合は多発性脳梗塞を合併している例です。転倒のリスクがなければ認知症の進行、脳梗塞の再発予防を考えて血圧は低い値にコントロールしたいところです。実際には服薬数を増やせないなどの制限があり、合剤を積極的に使ってのコントロールとなります。食塩感受性について教えてください。塩分摂取により血圧が上昇する食塩感受性患者は、上昇しない非感受性患者にくらべ血圧値が同等でも心血管イベントが多いことから、食塩感受性の診断についての質問を多くいただきました。しかし、食塩感受性を診断するには現在のところ入院にて食塩負荷、減塩食を食べさせ、その間の血圧を測定することのほかには確実な方法はないのが現状です。実臨床においては早朝第二尿のナトリウムとクレアチニンを測定することで食塩摂取量を知ることができる(「日本高血圧学会減塩ワーキンググループ報告」日本高血圧学会より入手可能)ので塩分摂取量が多い患者について経時的に観察したり減塩指導の動機付けとして用いることもできます。あるいはサイアザイド系利尿薬に対する血圧反応性も食塩感受性を知る一つの方法です。効果的な減塩指導について教えてください。日本の食文化はみそ、塩、しょうゆの上に成り立っているので、減塩指導はともすれば日本の食文化を否定することにもなりかねません。しかし、現在の一般的食生活を見てみると加工食品がふんだんに使われており、この点を改善指導することで減塩は可能となります。たとえばソーセージ100gに塩は約2g、プロセスチーズでは約3g含まれており、こういった加工食品を減らすことを指導できるでしょう。また、加齢に伴い味覚は低下するため減塩が難しくなります。そこはワサビ、生姜、茗荷、唐辛子、胡椒といったスパイスをうまく使うように指導します。そして、食卓に出された食材に塩、しょうゆを追加でかけないよう、食卓には塩、しょうゆを置かないなどの細かな指導が必要となります。男性患者の場合、食事を実際に作る配偶者への指導も重要で、医師だけでなく看護師、栄養士、薬剤師、検査技師、保健婦など患者に関わるすべての医療従事者の協力体制が有効です。塩分過剰摂取は血圧上昇のみならず血圧が上昇しない場合でも酸化ストレスを増加させ耐糖能異常につながることが動物実験では示されており、摂取量を6g/日程度まで下げることは高血圧の有無にかかわらず有用であると思われます。降圧薬の減量、中止方法について教えてください。血圧のコントロールが良好で、臓器障害がないような場合、また尿中ナトリウムも低めの場合は降圧薬を中止できることもあります。その場合、4~5月位に中止し、夏の暑い間を経過観察し、10~11月から冬の寒い間に血圧が再上昇しないことを確認します。その後も家庭血圧で血圧を経過観察し、年に一回の臓器障害の進展のチェックを行います。多剤併用しており血圧が良好なコントロールの場合、薬剤の減量が可能です。長期にβ遮断薬を使っている場合は心筋虚血のリスクがあるのでβ遮断薬は漸減します。便秘、浮腫、歯肉腫脹、起立性低血圧がある場合はカルシウム拮抗薬の副作用の可能性もあるためカルシウム拮抗薬から減量します。昨今の酷暑ではとくに高齢者や腎機能低下例においては、レニン・アンジオテンシン系抑制剤や利尿薬の減量が必要となる例があります。早朝高血圧の対処方法について教えてください。家庭血圧を測定あるいは24時間血圧にて早朝高血圧が明らかになった場合、最近の研究では夜間高血圧ほどのリスクはないとの報告もありますが、降圧薬の服用時間を調整することでコントロール可能となることがあります。レニン・アンジオテンシン系阻害薬は夕方服用に適した薬剤といえます。ただし、夜間の過度の降圧に注意して少量より開始するのが好ましいでしょう。α遮断薬も有効とする報告もありますが、α遮断薬自体の臓器保護効果が疑問視されており、α遮断薬を追加投与するよりは現在服用しているレニン・アンジオテンシン系阻害薬の服用時間をずらすことが適切と考えます。難治性高血圧の対処方法について教えてください。異なる三系統の降圧薬を十分量を内服しても血圧のコントロールがつかない場合、難治性高血圧と呼ばれます。このような例では服薬アドヒアランス、二次性高血圧の再評価、睡眠時無呼吸の評価をまず行います。服薬アドヒアランスが不良の場合は合剤を用いること、服薬の必要性を再教育すること、服薬想起の道具(ピルボックスなど)が有効といわれており、医師だけでなく薬剤師、看護師、保健婦の協力が必要となります。すでに薬剤を服用している場合、ホルモン検査は薬剤の影響を受けるので評価が難しくなります。実臨床では副腎のCTを先行させてもいいと思います。あるいは十分量の抗アルドステロン薬(スピロノラクトンで75~100mg)を投与し治療的診断を行うことも有用です。腎血管性高血圧についてはMR angiographyが有用でしょう。以上のような精査で問題がない場合、中枢性の降圧薬(レセルピン)を少量朝1回追加することが有用である例を経験しています。あるいはジヒドロピリジン系カルシウム拮抗薬をかんきつ類と一緒に服用させる、あるいはヘルベッサーと併用しジヒドロピリジン系カルシウム拮抗薬の血中濃度を高めることも有用でしょう。白衣性高血圧の対処方法について教えてください。イギリスのガイドラインでは診察室血圧と24時間血圧、あるいは家庭血圧を用いて高血圧の診断を行い、臓器障害がない場合は白衣性高血圧は薬物介入をせずに年に1回の経過観察をするとしています。24時間血圧を用いて病院来院時のみ高血圧でその他の日常生活の中では全くの正常血圧であり、アルブミン尿も含め臓器障害が認められず、糖尿病などのリスク因子がない場合は薬物介入は必要ないと考えます。しかし、経過観察は必要で、患者には日常生活の中で突然の来客などストレスがかかると血圧が上がっている可能性を話し、徐々に臓器障害が出てくる可能性を説明する必要があるでしょう。白衣性高血圧で患者が薬物介入を希望する場合、抗不安薬も有効です。また、臓器障害がある場合はJSH2009に則って合併する臓器障害に応じて薬物を選択します。その際、心拍数が上昇するといった副作用のない薬物をまず選択します。拡張期血圧の対処方法について教えてください。収縮期血圧が大動脈のコンプライアンスと心拍出量で規定されるのに対し、拡張期血圧は全身の末梢血管抵抗と心拍出量で規定されます。よって高齢者で大血管の硬化が明らかになると収縮期血圧が上昇し脈圧が増大します。心臓の仕事量は収縮期血圧と心拍数の積に比例するため、収縮期血圧が高くなると心筋酸素消費量が増え、心虚血と心不全のリスクが増えます。一方冠動脈は拡張期に灌流されるので、拡張期血圧を下げすぎると、冠血流が低下する危険があります。実際、大規模臨床試験をみても拡張期血圧と心血管イベントにはJカーブに近い現象が認められます。拡張期のみ高い例は若年者に多く認められますが、治療の第一歩は減塩にあります。また個人的経験ですが、10年ほど前にARBが発売された当初、カルシウム拮抗薬やACE阻害薬にくらべ拡張期血圧がよく下がる印象がありましたが、統計的処理はされていません。また当時は利尿薬の使用頻度が低かったというバイアスもあります。現状では拡張期血圧のみを下げるための有効な治療法は生活習慣の改善のほかには確立されていないといえます。合剤の有用性について教えてください。いかなる服薬介入治療もその効果は服薬アドヒアランスに依存することは明白です。それゆえ、われわれは服薬アドヒアランスをよくする努力は惜しむべきではありません。アドヒアランスに関わる因子は複数ありますが、処方する立場として最も簡便にできることは服薬数を減らすことであり、その点において合剤はきわめて有効といえます。現在降圧薬に限らずぜんそく薬、糖尿病薬、高脂血症薬の合剤が日本でも使用可能ですが、海外の現状をみるとまだまだ立ち遅れています。私は実臨床の中で合剤の併用も行いARBの最大容量を合剤として処方し、3種の薬剤を2錠ですませ、患者の経済的負担も軽減するよう努力しています。

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高血圧白書2012 CONTENTS

1.調査目的と方法本調査の目的は、高血圧症診療に対する臨床医の意識を調べ、その実態を把握するとともに、主に使用されている降圧薬を評価することである。高血圧症患者を1ヵ月に10人以上診察している全国の医師500人を対象に、CareNet.comにて、アンケート調査への協力を依頼し、2012年6月15日~18日に回答を募った。2.結果1)回答医師の背景回答医師500人の主診療科(第一標榜科)は、一般内科が51.4%で最も多く、次いで循環器科で14.6%、消化器科で8.0%である。それら医師の所属施設は、病院(20床以上)が63.3%、診療所(19床以下)が36.7%となっている(表1)。表1画像を拡大する医師の年齢層は40-49歳が最も多く37.2%、次いで50-59歳以下が36.2%、39歳以下が21.9%と続く。40代から50代の医師が全体の7割以上を占めている。また62.6%もの医師が高血圧症患者を月100例以上診ている(表2)。表2画像を拡大する2)薬物治療開始血圧/降圧目標の推移年齢別薬物治療開始血圧/降圧目標の推移薬物治療開始血圧と降圧目標を年齢別でみると、一部例外はあるもののともに年々低下傾向がみられ、収縮期血圧については、65歳未満では薬物治療開始が平均146.9mmHg、降圧目標が130.5mmHg。65-74歳が同149.1mmHg、同133.5mmHg。75歳以上が同152.2mmHg、同136.8mmHgとなっている。2010年6月の調査で一時的に高くなっている理由として、Action to Control Cardiovascular Risk in Diabetes (ACCORD)試験、Valsartan in Elderly Isolated Systolic Hypertension(VALISH)試験において、積極的降圧群の結果が通常降圧群とエンドポイントの発生率で差が認められなかった無作為化比較試験の結果が、調査直前に発表されたことが影響していると考えられる。このように、高血圧症患者の年齢層が高くなるにしたがって、薬物療法開始血圧、降圧目標も高くなる傾向がみられている。(図1)図1画像を拡大する糖尿病有無別治療開始血圧/降圧目標の推移薬物治療開始血圧と降圧目標を糖尿病合併の有無別でもみると、同様に年々低下傾向がみられ、収縮期血圧については、合併症なしの場合は薬物治療開始が平均148.2mmHg、降圧目標が132.9mmHg。糖尿病を合併している場合には同132.9mmHg、同128.6mmHg。このように、糖尿病を合併している患者では降圧目標値をより低く設定し、早い段階から薬物治療を開始する傾向がみられる。(図2)図2画像を拡大する3)降圧薬の選択合併症がない高血圧症への第一選択薬合併症がない高血圧症に対する第一選択薬として最も多いのが「Ca拮抗薬」で47.3%、次いで多いのが「ARB」で43.3%と続く。以前と比べると低下しつつあるものの、今なお第一選択薬はCa拮抗薬が最も多いという結果となった(図3)。図3画像を拡大する糖尿病を合併した高血圧症への第一選択薬糖尿病を合併した高血圧症に対する第一選択薬として最も多いのが「ARB」で60.8%、次いで多いのが「Ca拮抗薬」で28.4%と続く。2009年に改訂された「高血圧治療ガイドライン」において、糖尿病合併例における第一選択薬はACE阻害薬、ARBが推奨されているが、Ca拮抗薬を第一選択薬として処方されている患者さんが3割弱いる。(図4)。図4画像を拡大するCa拮抗薬で降圧不十分な場合の選択肢Ca拮抗薬で降圧不十分な場合の選択肢として最も多いのが「ARBの追加投与」で50.1%、次いで多いのが「合剤(ARB+CCB)への切り替え」で16.8%と続く。2010年に発売されたARBとCa拮抗薬配合剤の割合が増加傾向にある(図5)。図5画像を拡大するARBで降圧不十分な場合の選択肢ARBで降圧不十分な場合の選択肢として最も多いのが「Ca拮抗薬の追加投与」で43.4%、次いで多いのが「合剤(ARB+CCB)への切り替え」で16.2%と続く。また、2006年12月にARBと利尿薬の配合剤が発売されて以来、配合剤への切り換えも含めたARBに利尿薬を追加する処方が増加し、ARBとCa拮抗薬の配合剤が発売された2010年4月以降、配合剤への切り換えも含めたARBにCa拮抗薬を追加する処方が増加してきているのがわかる(図6)。図6画像を拡大するCa拮抗薬+ARBで降圧不十分な場合の選択肢Ca拮抗薬+ARBで降圧不十分な場合の選択肢として最も多いのが「降圧利尿薬の追加投与」で32.6%、「ARBを合剤(ARB+利尿薬)に切り換え」が8.9%であるから、利尿薬成分を追加する処方が41.5%と3剤併用が普及してきている。(図7)。図7画像を拡大する降圧薬選択における重要視項目の推移降圧薬を選択するために重要視している項目を尋ねた(複数選択可)。図8には2005年時点で30%以上の医師より支持されていた項目の推移を示している。2005年に最も多かった「降圧効果に優れる」が7年間でさらに重要視される傾向にあり、90.2%の医師が重要視していた。次いで多いのが「24時間降圧効果が持続する」61.8%、「腎保護作用が期待できる」58.0%と続く。「腎保護作用が期待できる」については慢性腎臓病(CKD)の概念がわが国でも提唱された2007年以降に重要度が増している。一方、「大規模試験で評価できるエビデンスがある」は、2009年をピークに減少傾向にある。これは降圧薬を用いた大規模試験においてポジティブな結果が少なくなっていることと関係していると考えられる。これら8年にわたる重要視項目の変化は、この期間に発表されたエビデンスの多くが、「降圧薬の種類より、治療期間中の降圧度が重要である」ということを反映しているものではないかと推察している。図8画像を拡大するインデックスページへ戻る

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〔CLEAR! ジャーナル四天王(5)〕 脳卒中後に肺炎を繰り返す高血圧症例では、まずACE阻害薬を!

ACE阻害薬は、すでにわが国の『高血圧治療ガイドライン2009』でも、不顕性を含め誤嚥性肺炎を繰り返す高齢者高血圧患者に対して推奨薬となっているが、その科学的根拠は必ずしも信頼性の高いものではなかった。 しかし、本メタ解析では18のランダム化試験を含む37の臨床研究でのデータを集めており、ACE阻害薬の肺炎予防効果についての根拠としては現段階では最も信頼性の高いデータといえる。ACE阻害薬が肺炎予防効果に対する治療必要数(NNT)は65、つまり2年間で65人がACE阻害薬を飲み続けることで1人の肺炎発症を予防できることを意味しており、その有効性は非常に高い。とくに肺炎予防効果が脳卒中既往例とアジア人で高いことから日本人での脳卒中患者での予防効果は非常に大きいといえる。 理論的にはブラジキニンを介したサブスタンスPが咳反射を亢進させ、それが痰の喀出を促すことで肺炎を予防するとされ、アジア人の方が予防効果は大きいことも知られている。 肺炎予防効果はARBではみられないことも本メタ解析で示したが、実臨床では、脳卒中後に肺炎を繰り返す高血圧症例では、まずARBではなくACE阻害薬を選択し、咳も苦痛にならない程度に我慢できるのであればそれを継続することが望ましい。もちろん高血圧があり、それがACE阻害薬でコントロールできるということが最低条件である。

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3剤の降圧薬を処方しても降圧できないときの4剤目、5剤目

 利尿薬を含めた3剤併用によっても降圧目標に至らないケースは、わが国の実地医科における報告でも13%、ハイリスク例を数多く含み、プロトコルが順守される大規模臨床試験においてはその割合は30〜50%にまで上る。わが国で最も多く処方されている3剤併用療法は、ARB、Ca拮抗薬、利尿薬であるが、これら3剤を併用しても目標血圧に到達しない場合の次の処方を選択するエビデンスはほとんど見当たらない。 フランスで行われたオープン無作為化比較試験の結果によると、これら3剤に、4剤目としてアルドステロン拮抗薬、5剤目としてループ利尿薬を追加していく治療計画は、4剤目としてACE阻害薬、5剤目としてβ遮断薬を追加していく治療計画より有意に収縮期血圧を低下させた。この結果はJorunal of Hypertension誌8月号に発表された。 ARB、Ca拮抗薬、利尿薬の3剤併用によってもABPMで評価した昼間血圧が135/85mmHg未満に到達しない治療抵抗性高血圧患者167名が、下記の2つのグループに無作為化割り付けられた。2種の治療は、12週後のABPMで測定した昼間収縮期血圧が主要評価項目として検証された。順次的ネフロン遮断群 (n=85) 4剤目:アルドステロン拮抗薬(スピロノラクトン)25mg/日を追加 4週目未達の場合、5剤目:ループ利尿薬(フロセミド)20mg/日を追加 8週目未達の場合、フロセミドを40mg/日に増量 10週目未達の場合、6剤目:カリウム保持性利尿薬(アミロライド)5mg/日を追加順次的レニン・アンジオテンシン(RA)系遮断群 (n=82) 4剤目:ACE阻害薬(ラミプリル)5mg/日を追加 4週目未達の場合、ラミプリルを10mg/日に増量 8週目未達の場合、5剤目:β遮断薬ビソプロロールを5mg/日を追加 10週目未達の場合、ビソプロロール10mg/日に増量主な結果は下記のとおり。(1) 順次ネフロン遮断群で、順次RA系遮断群より昼間収縮期血圧を10mmHg低く降圧した  (P

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世界で初めて家庭血圧計の測定値に基づいた降圧目標値を東北大学が検証 ーHOMED-BP研究の最終結果ー

 東北大学を中心に全国より457名の医師が参加して家庭血圧の適正な降圧目標値を検証した大規模無作為化比較試験HOMD-BP研究の最終結果が浅山 敬 氏によってまとめられ、Hypertension Research誌に発表された。この結果は8月16日に同誌のwebサイトにて「ADVANCE ONLINE PUBLICATION」として出版前に公開された。本研究では家庭血圧に基づき、125-134/80-84mmHgを降圧目標に薬物治療を強化していく通常コントロール群と、125/80mmHg未満を降圧目標とする厳格コントロール群のいずれかに無作為に分けられ、心血管イベントの発生を一次評価項目として実施されたが、厳格コントロール群で降圧目標に達した割合が有意に低く、両群間に一次評価項目で有意な差が認められなかった。 家庭血圧測定はある特定の1日だけでなく、長期間にわたり測定することが比較的簡単に行えるため、正確性、再現性、薬効評価などに期待が持てる。わが国では2005年においても臨床医の90%は患者に家庭血圧測定を勧め、高血圧患者の70%以上は家庭血圧計を所有している。しかし、現在のガイドラインの根拠となっている大規模臨床試験の結果は、すべて診察室血圧に基づいたものであり、家庭血圧の最適な降圧目標値の検証が求められていた。 そこで本研究は世界で初めて、家庭血圧計の測定値に基づき、降圧目標を定め、薬物治療を強化していく方法を採用し、最適な家庭血圧の降圧目標値と最適な初期薬物治療を検証するために、わが国で2001年より開始された。 本研究には457名の医師が参加し、3,518例の高血圧症例(家庭血圧の測定値が135-179/85-119mmHg)がエントリーされた。患者はまず、家庭血圧値125-134/80-84mmHgを降圧目標に薬物治療を強化していく通常コントロール群と、125/80mmHg未満を降圧目標とする厳格コントロール群のいずれか2群に無作為に割り付けられ、その後、初回治療としてACE阻害薬、ARB、Ca拮抗薬のいずれか3群に割り付けられ、2×3のマトリクスデザインによって研究が行われた。 主要評価項目としたエンドポイントは、心血管系疾患死、心筋梗塞、脳卒中のいずれかの発生とした。主な結果は下記のとおり。(1) フォローアップの中央値は5.3年。(2) 厳格コントロール群は通常コントロール群に比べ、多くの降圧薬を処方していた。   厳格群=1.82剤 vs 通常群=1.74剤(P=0.045)(3) 厳格コントロール群は通常コントロール群に比べ、家庭血圧の降圧度が大きかった。  〔収縮期血圧〕厳格群=22.7mmHg vs 通常群=21.3mmHg(P=0.018)  〔拡張期血圧〕厳格群=13.9mmHg vs 通常群=13.1mmHg(P=0.020)(4) しかし、降圧目標達成率は厳格コントロール群で有意に低かった。   厳格群=37.4% vs 通常群=63.5%(P

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ACE阻害薬は肺炎リスクを減少、特に脳卒中、アジア人で大きい可能性

 ACE阻害薬とARBの肺炎リスクについて、ポルトガル・リスボン大学のDaniel Caldeira氏らによるシステマティックレビューとメタ解析の結果、これまで考えられていたようにACE阻害薬には肺炎に対する保護作用があることがエビデンスとして示された。また、「脳卒中既往」「アジア人」が最も大きな恩恵を享受できる可能性があることも示唆された。強力な支持データは不足していたが、肺炎関連死を抑制することも認められたという。BMJ誌2012年8月4日号(オンライン版2012年7月11日号)掲載報告より。システマティックレビューとメタ解析、適格試験は37件 Caldeira氏らによる検討は、PubMedを介したMedline、Web of Science、米国FDAのウェブサイトを2011年6月時点で検索して行われ、システマティックレビューと引用参考文献についても評価をした。解析対象試験は、2人の独立レビュワーにより、ACE阻害薬とARBの肺炎リスクとの関連を検討した無作為化対照試験、コホート試験、ケースコントロール試験を選出し、試験特性、推定データを取り出し分析した。適格試験は37件だった。 主要アウトカムは、肺炎罹患率とし、副次アウトカムは肺炎関連死とした。また、ベースラインで有していた疾患(脳卒中、心不全、慢性腎臓病)、患者特性(アジア人、非アジアン人)によるサブグループ解析も行われた。 主要アウトカムに関するデータが得られたのは、ACE阻害薬と対照治療とを比較検討した19試験、ARBと対照治療とを比較検討した11試験、ACE阻害薬とARBを直接比較検討した2試験だった。ACE阻害薬群は、対照治療群、ARB治療群よりも肺炎リスクが有意に減少 結果、ACE阻害薬群は対照治療群よりも[オッズ比:0.66、95%信頼区間:0.55~0.80、i2=79%]、またARB群よりも(直接的・間接的比較を合わせた推定オッズ比:0.69、0.56~0.85)、肺炎リスクの有意な減少が認められた。 サブグループ解析では、脳卒中患者において、ACE阻害薬群が対照治療群よりも(オッズ比:0.46、95%信頼区間:0.34~0.62)、またARBs群よりも(同:0.42、0.22~0.80)、肺炎リスクが低かった。 ACE阻害薬による肺炎リスクの低下は、非アジア人患者よりも(オッズ比:0.43、95%信頼区間:0.34~0.54)アジア人患者で有意に減少した(同0.82:0.67~1.00、サブグループ間p

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