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うつ病は高血圧発症の危険因子か?

長い間、うつと高血圧の関連していることは知られていたが、うつ病が高血圧発症の危険因子であるかどうかは不明であった。中国 吉林省の吉林大学第一病院のMeng氏らは、観察研究のメタアナリシスの結果、うつ病が高血圧発症の独立した危険因子である可能性が高いことを発表した。Meng氏は「高血圧症の予防と治療においてうつ病を考慮することが重要である」と言及している。うつ病患者では高血圧発症の危険性が1.4倍高いMeng氏らは、PubMed、EMBASE、 Cochrane、PsycINFOより、健康な正常血圧者におけるうつ病と高血圧発症の相関を報告した前向きコホート研究を検索し、ベースライン時のうつ症状/うつ病の記録を保有していた研究を解析の対象に選んだ。「高血圧」は、複数機会にわたる140/90mmHgを超える血圧値、降圧薬の服用、自己申告、高血圧という診断の記録のいずれかと定義した。横断研究、ケースコントロール研究は解析対象から除外した。主な結果は下記のとおり。 1) 9つの研究が解析対象の基準を満たし、計22,367名の対象者が  含まれていた。観察期間の平均値は9.6年。2) うつ症状/うつ病患者では高血圧の発症リスクが1.42倍高かった  (補正後相対リスク:1.42、95%信頼区間:1.09-1.86、P=0.009)。3) 高血圧発症リスクは、観察期間の長さ(P = 0.0002)、  ベースライン時のうつ病有病率(P

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ACC 2012 速報

2012年3月24日~27日まで米国・シカゴで『第61回米国心臓病学会(ACC.12)』が開催されます。Late-Breaking Clinical Trialsの発表を含めた主要トピックスの中から、事前投票で先生方からの人気の高かった上位6演題のハイライト記事をお届けします。ACC2012 注目の演題一覧2012年3月28日掲載現地時間:3月27日発表CCTAを用いてACS鑑別改善:ROMICAT II現地時間:3月25日発表経カテーテル的腎除神経術、降圧作用は3年間持続:Symplicity HTN-12012年3月27日掲載現地時間:3月26日発表「マルチスライスCCTAによるACS除外」の有用性示唆:ACRIN PA 4005現地時間:3月26日発表"On-pump" CABGに対する "Off-pump”の優越性示せず:CORONARY試験2012年3月26日掲載現地時間:3月24日発表自己骨髄単核球移植、虚血性心疾患例の心機能を改善せず:FOCUS-CCTRN試験現地時間:3月24日発表動脈硬化性疾患例に対するPAR-1阻害薬上乗せの有用性は確認されず:TRA 2°P-TIMI 50

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ACC 2012 速報 経カテーテル的腎除神経術、降圧作用は3年間持続:Symplicity HTN-1

治療抵抗性高血圧に対し著明な降圧作用を示す「経カテーテル的腎除神経術」だが、その有用性は、少なくとも3年間は持続する可能性が示された。また当初「無効」と思われながら、のちに降圧作用が発現する患者も相当数、存在することが明らかになった。"Symplicity HTN-1" 3年間追跡データとして、米国オハイオ州立大学のPaul A. Sobotka氏が、一般口演にて報告した。Symplicity HTN-1は、治療抵抗性高血圧に対する「カテーテルを用いた腎動脈アブレーション」による、降圧の可能性を検討したコホート研究である。現在、153例が登録されている。利尿薬を含む3剤以上〔平均:5.1±1.4剤)の降圧薬服用にもかかわらず、収縮期血圧(SBP)は160mmHg以上が対象となった(血圧平均値:175/98mmHg)。追跡開始時の平均年齢は57歳。腎機能は、推算糸球体濾過率(eGFR)45ml/分/1.73m2未満が除外されているため、平均83±20mL/分/1.73m2に保たれていた。3年間の追跡が終了したのは、153例中24例である。追跡開始時からの降圧幅は「33/19mmHg」。2年間の追跡完了59例における「33/15mmHg」、2年半追跡24例の「33/14mmHg」からの減弱は観察されなかった。「SBP<140mmHg」達成率も、2年間追跡時、3年間追跡時とも40%前後で、差はなかった。興味深いのは、腎除神経術による降圧作用が経時的な増強傾向を示した点である。「SBP≧10mmHgの降圧」が認められた割合は、除神経術施行後1か月後の69%(143例中)から時間の経過にしたがい増加し、3年後には100%(24例中)となっていた。また、腎除神経術施行1か月後に「SBP≧10mmHgの降圧」が認められなかった45例でも、3ヶ月後には58%(45例中)で10mmHg以上の降圧を達成し、達成率は2年後に82%(17例中)、3年後では100%〔8例中)と増加傾向を示した。一方、腎除神経術の降圧作用が減弱するサブグループは、認められなかった。「年齢(65歳未満/以上)」、「糖尿病合併の有無」、「腎機能低下(eGFR60mL/分/1.73m2未満)の有無」にかかわらず、除神経によりSBP、拡張期血圧とも、著明に低下していた。重篤な有害事象は、3年間追跡でも認められなかった。腎機能の著明低下は認めず、また懸念されていた腎動脈狭窄は、中等度狭窄を1例に認めるも血行動態に影響はなく、介入の必要はなかったという。3例が死亡の転帰をとったが、いずれも腎除神経術とは無関係とのことだ。なお現在、シカゴ大学George Bakris氏を主任研究者とする無作為化試験 "Symplicity HTN-3" が進行している。治療抵抗性高血圧に対する腎除神経術による「イベント抑制作用」が検討される。来年3月には終了予定とのことで、結果が待たれる。

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両腕のSBP差15mmHg以上、血管疾患や死亡の指標に

両腕の収縮期血圧(SBP)の差が10mmHg以上の場合、末梢血管疾患などを想定した精査が必要で、差が15mmHg以上になると血管疾患や死亡の指標となる可能性があることが、英エクセター大学のChristopher E Clark氏らの検討で示された。末梢血管疾患は心血管イベントや死亡のリスク因子だが、早期に検出されれば禁煙、降圧治療、スタチン治療などの介入によって予後の改善が可能となる。両腕のSBP差が10~15mmHg以上の場合、末梢血管疾患や鎖骨下動脈狭窄との関連が指摘されており、これらの病態の早期発見の指標となる可能性があるという。Lancet誌2012年3月10日号(オンライン版2012年1月30日号)掲載の報告。両腕の血圧差と血管疾患、死亡率との関連をメタ解析で検証研究グループは、両腕の血圧差と血管疾患、死亡率との関連を検証するために、系統的なレビューとメタ解析を行った。Medline、Embase、Cumulative Index to Nursing and Allied Health Literatureなどの医学関連データベースを検索して、2011年7月までに公表された文献を抽出した。対象は、両腕のSBPの差と鎖骨下動脈狭窄、末梢血管疾患、脳血管疾患、心血管疾患、生存のデータを含む論文とした。変量効果を用いたメタ解析を行い、両腕のSBP差と各アウトカムの関連について評価した。10mmHg以上の差があると、鎖骨下動脈狭窄のリスクが約9倍に28編の論文がレビューの条件を満たし、そのうち20編がメタ解析の対象となった。血管造影法を用いた侵襲的な試験では、狭窄率>50%の鎖骨下動脈狭窄の患者における両腕のSBP差の平均値は36.9mmHg(95%信頼区間[CI]:35.4~38.4)であり、10mmHg以上の差は鎖骨下動脈狭窄の存在と強い関連を示した(リスク比[RR]:8.8、95%CI:3.6~21.2)。非侵襲的な試験の統合解析では、両腕SBPの15mmHg以上の差は、末梢血管疾患(RR:2.5、95%CI:1.6~3.8、感度:15%、特異度:96%)、脳血管疾患の既往(RR:1.6、95%CI:1.1~2.4、感度:8%、特異度:93%)、心血管死の増加(ハザード比[HR]:1.7、95%CI:1.1~2.5)、全死因死亡(HR:1.6、95%CI:1.1~2.3)と関連を示した。10mmHg以上の差は末梢血管疾患と関連した(RR:2.4、95%CI:1.5~3.9、感度:32%、特異度:91%)。著者は、「両腕のSBPの10mmHg以上または15mmHg以上の差は血管の精査を要する患者の同定に役立ち、15mmHg以上の差は血管疾患や死亡の有用な指標となる可能性がある」と結論している。(菅野守:医学ライター)

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80歳以上高血圧患者への積極的降圧治療、早期から長期にが支持される

収縮期血圧が160mmHg以上の80歳以上の超高齢高血圧患者に対する降圧治療は、効果が開始直後から認められ、長期的には全死亡と心血管死亡の有意な低下をもたらすことが明らかにされた。超高齢高血圧に対する降圧治療については、無作為化対照試験HYVETでベネフィットがあることが認められているが、早期からベネフィットが得られるかどうかを調べるため、英国・インペリアル・カレッジ・ロンドンのN.Beckett氏らがオープンラベルでの延長試験を1年間行った。結果を受けて、「超高齢高血圧患者への、早期から、かつ長期にわたる降圧治療が必要であることが支持された」と結論している。BMJ誌2012年1月14日号(オンライン版2012年1月4日号)より。HYVET被験者への治療をオープンラベルで1年延長し転帰を検討試験グループは、HYVET(Hypertension in the Very Elderly Trial)参加者への積極的治療をオープンラベルで1年間延長し、転帰について追跡した。試験は東西ヨーロッパ、中国、チュニジアの病院とクリニックを通じて行われ、HYVETによる二重盲検試験を終了した患者に延長試験への参加が認められた。積極的降圧治療の参加者は降圧薬を服用し続け(継続群)、プラセボの投与を受けていた参加者は新たに積極的降圧治療による介入を受けた(新規群)。治療投薬は従前試験と同じくインダパミドSr 1.5mg(商品名:ナトリックス、テナキシル)](+必要に応じてペリンドプリル2~4mg)の投与で、血圧目標も同じ150/80mmHg未満とした。主要転帰はすべての脳卒中のほか全死因死亡、心血管死亡、心血管イベントを含めた。全死因死亡、心血管死亡で、継続群と新規群で有意差認められる結果、参加適格者は1,882例で、うち1,712例(91%)かが延長試験に加わることに同意した。延長期間中に1,682人・年分のデータが集まった。結果、治療開始後6ヵ月間は、継続群と新規群の2群間の血圧差は1.2/0.7mmHgだった。以前の試験で積極的薬物治療を受けていた人とプラセボを投与されていた人を比較すると、脳卒中(13例、ハザード比:1.92、95%信頼区間:0.59~6.22)、心血管イベント(25例、同:1.72、0.36~0.78)には、有意差は認められなかった。一報で、全死因死亡(死亡47例、同:0.48、0.26~0.87、P=0.02)と心血管死亡(死亡11例、同:0.19、P=0.03)については、2群間に有意な差が認められた。

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米国で高齢者の心不全入院率が過去10年間で3割低下

米国高齢者の心不全による入院の割合は1998年からの10年間で、およそ3割低下したことが報告された。米国・エール大学医学部循環器内科部門のJersey Chen氏らが、米国とプエルトリコに住む約5,500万人超の高齢者について調べ明らかにしたもので、JAMA誌2011年10月19日号で発表した。米国では心不全の原因の一つである虚血性心疾患の罹患率が近年低下傾向にあり、また高血圧に対する降圧薬でのコントロールなども改善してきているが、一方でそれらと関連が深い心不全による入院や死亡が減少しているのかどうかについては検討されていなかった。心不全入院率、1998~2008年で相対割合29.5%減少研究グループは、メディケアの出来高払い制プランに加入し、1998~2008年の間に急性期病院からの退院の診療コードが心不全であった合計5,509万7,390人について、人口動態的変化や、共存症、心不全入院率、1年死亡率の変化を調査した。結果、被験者の平均年齢は、1999~2000年の79.0歳から、2007~08年の79.9歳へと、上昇していた(p<0.001)。心不全入院率は、年齢、性別、人種による補正後、1998年の10万人・年当たり2,845人から2008年の同2,007人へと、相対割合で29.5%減少していた(p<0.001)。年齢補正後の心不全入院率は、いずれの人種・性別においても、同期間において低下の傾向が認められた。心不全入院後1年死亡率は、1999~2008年で相対割合6.6%減少にとどまる心不全入院率の低下傾向には、州によって格差があることも認められた。リスク補正後の同率低下速度が全国平均より有意に速かったのは16州、遅かったのは3州(ワイオミング州、ロードアイランド州、コネチカット州)だった。一方、リスク補正後の心不全入院後1年死亡率は、1999年の31.7%から2008年の29.6%へと、相対割合で6.6%の低下傾向にとどまった(p<0.001)。州別では、同期間に同1年死亡率が有意に低下したのは4州、有意に増加したのは5州だった。(當麻あづさ:医療ジャーナリスト)

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チョコレート高摂取による心血管代謝障害の抑制効果が明らかに

チョコレートの摂取量と心血管代謝障害(cardiometabolic disorder)の発生リスクには実質的な関連が認められることが、英国・ケンブリッジ大学のAdriana Buitrago-Lopez氏らの検討で示された。WHOによれば2030年までに約2,360万人が心血管疾患で死亡するとされ、現在、世界の成人の約5分の1が、糖尿病や心血管疾患の増加をもたらすメタボリック症候群に罹患しているとの研究結果もある。近年、心血管代謝障害が世界的に増加しているが、その多くは予防可能と考えられており、ココアやチョコレートは降圧、抗炎症、抗動脈硬化、抗血栓作用を有することが示唆されている。BMJ誌2011年10月1日号(オンライン版2011年8月29日号)掲載の報告。心血管代謝障害の発生リスクに及ぼす影響をメタ解析で評価研究グループは、チョコレートの摂取と心血管代謝障害のリスクの関連を評価するために、無作為化対照比較試験および観察試験の系統的レビューを行い、メタ解析を実施した。2010年10月までに発表された文献のデータベース(Medline、Embase、Cochrane Library、PubMed、CINAHL、IPA、Web of Science、Scopus、Pascal)を検索し、関連論文の文献リストを参照した。抽出された論文の著者に電子メールで連絡をとった。主要評価項目は、心血管疾患(冠動脈心疾患、脳卒中)、糖尿病、メタボリック症候群を含む心血管代謝障害とした。メタ解析では、チョコレートの摂取量が最も多い群と少ない群を比較することで、心血管代謝障害の発生リスクを評価した。最大摂取量群で、心血管疾患リスクが37%、脳卒中リスクが29%低下選択基準を満たした7試験(11万4,009人)のうち6つがコホート試験(日本の1試験[Oba S、et al. Br J Nutr 2010;103:453-9]を含む)、1つは横断的試験であり、無作為化試験は含まれなかった。これらの研究には、チョコレート摂取量の測定法、試験方法、アウトカムの評価法に大きな差異が認められた。5つの試験では、チョコレート摂取量が多いほど心血管代謝障害のリスクが低下していた。摂取量が最も多い群では、最も少ない群に比べ心血管疾患リスクが37%低下(相対リスク:0.63、95%信頼区間:0.44~0.90)し、脳卒中リスクが29%低下(同:0.71、0.52~0.98)した。心不全の抑制効果はみられなかった(相対リスク:0.95、95%信頼区間:0.61~1.48)。日本の試験では、男性で糖尿病の抑制効果が認められた(男性:ハザード比0.65、95%信頼区間0.43~0.97、女性: 同0.73、0.48~1.93)。著者は、「観察試験のエビデンスに基づけば、チョコレートの摂取量と心血管代謝障害のリスク低下には実質的な関連が認められた」と結論し、「チョコレート摂取のベネフィットを確定するには、さらなる検討が必要である」と指摘している。(菅野守:医学ライター)

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プライマリ・ケアにおける高血圧診断、ABPMが費用対効果に優れる

24時間自由行動下血圧測定(ABPM)は、診察室(CBPM)や家庭(HBPM)での血圧測定よりも費用対効果が優れ、高血圧の診断戦略として最も有用であることが、イギリス内科医師会(Royal College of Physicians)のKate Lovibond氏らによる調査で示された。従来、プライマリ・ケアにおける高血圧の診断はCBPMに基づいて行われるが、HBPMやABPMのほうが心血管アウトカムとよく相関し、ABPMはCBPMやHBPMに比べ高血圧の診断精度が高いことが示されている。Lancet誌2011年10月1日号(オンライン版2011年8月24日号)掲載の報告。高血圧診断戦略としての費用対効果をMarkovモデルで解析研究グループは、Markovモデルを用いて、高血圧の診断戦略としてのCBPM、HBPM、ABPMの費用対効果を比較するために、基本ケース解析(base-case analysis)を行った。スクリーニング時の血圧が140/90mmHg以上で一般集団と同等のリスク因子を有する40歳以上の仮説的なプライマリ・ケア受診集団を対象とした。CBPM(月1回、3ヵ月)、HBPM(週1回)、ABPM(24時間)について、生涯コスト、質調整生存年(QALY)、費用対効果の評価を行った。ABPMは全年齢でコストが削減、50歳以上でQALYが延長ABPMはCBPMやHBPMに比べ全年齢の男女において費用対効果が優れていた。ABPMは全年齢の男女でコストが削減され(CBPMとの比較、範囲:75歳男性の56ポンド削減から40歳女性の323ポンド削減まで)、50歳以上の男女ではQALYが延長した(CBPMとの比較、範囲:60歳女性の0.006年から70歳男性の0.022年まで)。HBPMも同様に、全年齢の男女でコストが削減され(CBPMとの比較、範囲:75歳男性の16ポンド削減から40歳女性の68ポンド削減まで)、50歳以上の男女でQALYが延長した(CBPMとの比較、範囲:60歳女性の0.001年から70歳男性の0.005年まで)が、ABPMに比べて費用対効果は低かった。著者は、「診察室での初回血圧測定値が高値を示した集団における高血圧の診断戦略として、ABPMは誤診を減らし、コストを削減する優れた方法である」と結論し、「ABPMで新たに生じるコストは、より対象を絞り込んだ高血圧治療の実現によるコストの削減で相殺された。降圧薬治療開始前の患者の診断には、ABPMが推奨される」と指摘している。(菅野守:医学ライター)

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頭蓋内動脈狭窄症に対するPTAS vs. 積極的薬物治療

頭蓋内動脈狭窄症患者に対するステント治療と積極的薬物治療とを比較検討した試験「SAMMPRIS」の結果、積極的薬物治療単独のほうが予後が優れることが明らかになった。検討されたのはWingspanステントシステム(米国ボストンサイエンス社製)を用いた経皮的血管形成術・ステント留置術(PTAS)であったが、その施術後の早期脳梗塞リスクが高かったこと、さらに積極的薬物治療単独の場合の脳梗塞リスクが予測されていたより低かったためであったという。PTASは、脳梗塞の主要な原因であるアテローム硬化性頭蓋内動脈狭窄症の治療として施術が増えているが、これまで薬物療法との無作為化試験による比較検討はされていなかった。米国・南カリフォルニア大学のMarc I. Chimowitz氏を筆頭著者とする、NEJM誌2011年9月15日号(オンライン版2011年9月7日号)掲載報告より。頭蓋内動脈狭窄症患者451例を積極的薬物治療単独群とPTAS併用群に無作為化SAMMPRIS(Stenting and Aggressive Medical Management for Preventing Recurrent Stroke in Intracranial Stenosis)試験は、米国神経疾患・脳卒中研究所(NINDS)から資金提供を受けた50施設から登録された、直近の一過性脳虚血発作または主要頭蓋内動脈径の70~99%狭窄を原因とする脳梗塞患者を対象とした無作為化試験であった。被験者は、積極的薬物治療単独群(アスピリン、クロピドグレル、各種降圧薬、rosuvastatinなどによる)か、積極的薬物治療に加えてPTASを併用する群に割り付けられ前向きに追跡された。主要エンドポイントは、「試験登録後30日以内の脳梗塞または死亡」「追跡調査期間中に施行された適格病変部位への血管再生処置後30日以内の脳梗塞または死亡」「30日超での適格動脈領域における脳梗塞」とした。積極的薬物治療単独群がPTAS併用群を上回る好成績本試験は、脳梗塞または死亡の30日発生率が、PTAS併用群14.7%(非致死的脳梗塞12.5%、致死的脳梗塞2.2%)、薬物治療単独群5.8%(非致死的脳梗塞5.3%、脳梗塞と関連しない死亡0.4%)となったため(P=0.002)、無作為化された被験者数451例(PTAS併用群224例、薬物治療単独群227例)で登録中止となった。追跡期間は11.9ヵ月であった(2011年4月28日現在)。事前予想では、主要エンドポイントの評価には追跡期間2年が必要と推定していた。また過去の同様の試験結果からPTAS併用群の主要エンドポイント発生は29%、一方、薬物治療単独群の同発生は24.7%とそれぞれ推定し、必要被験者数各群382例と試算して試験をデザインされていた。追跡調査は、本論発表現在も続けられているという。30日超での適格動脈領域における脳梗塞は、両群ともに13例の発生であった。1年時点の主要エンドポイントのイベント発生率は、PTAS併用群20.0%に対し薬物治療単独群は12.2%で、時間経過とともに有意に異なっていた(P=0.009)。(朝田哲明:医療ライター)

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国民への心血管疾患予防プログラム、適度の達成で年間医療費3,000万ポンド削減可能

英国・バーミンガム大学医療経済学教室のPelham Barton氏らは、「国民への心血管疾患予防を目的としたリスク因子低減の各種プログラムは、適度でも達成さえすれば国民の健康増進とともに、医療制度財源の正味のコスト削減にも結びつく」ことを、イングランドとウェールズ全住民を対象としたモデル研究の結果、報告した。英国での心血管疾患死亡は年間15万人以上、罹患者は500万人以上、医療コストは年間300億ポンド以上に上るという。BMJ誌2011年8月13日号(オンライン版2011年7月28日号)掲載報告より。モデル分析で、降圧、減塩など各種プログラムの10年効果を試算Barton氏らは経済モデル分析法にて、心血管疾患リスク因子を減らす各種国民啓発・介入プログラムの疾患予防効果および費用対効果を評価した。10年間にわたる心血管疾患低下のためのプログラム効果を測定する表計算式を作成し、ベネフィットが男女、全年齢、全リスク群に適用され続けた場合と仮定したモデルを作成。同モデルを、血圧と総コレステロールを少しでも減らすことを目的とした2つの一般向け啓発プログラムと、塩分とトランス脂肪酸の摂取減を定めた2つの法的介入プログラムに適用して試算した。主要評価項目は、介入効果によって回避された心血管イベント数、獲得されたQALYs(質調整生存年)、削減された医療コストとした。目標アウトカム達成のために費やされた対価についても推定された。コレステロール、血圧の平均値5%低下で8,000万~1億ポンド以上の医療費削減結果、プログラム1つの介入で、何も介入がされなかった場合と比較して、心血管イベントは年間、イングランドとウェールズ全住民(約5,000万人)の1%までに減少し、医療コストは3,000万ポンド以上削減されると試算された。また、コレステロールと収縮期血圧の平均値低下5%が達成となれば(5%は他国ではすでに達成されている)、医療コスト削減は8,000万~1億ポンド以上と試算された。塩分摂取を3g/日とする(現状では約8.5g/日)法的およびその他の対策による効果は、年間で約3万例の心血管イベント回避と、4,000万ポンド以上の医療コスト削減をもたらすと試算された。トランス脂肪酸については、摂取量を総エネルギー量の約0.5%までに減らし続ければ、約57万生存・年の獲得と、英国の国民健康保険制度であるNHSに年間2億3,000万ポンドのコスト削減効果をもたらす可能性が試算されたという。

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非糖尿病性腎症患者、ガイドライン推奨値の減塩維持が蛋白尿減少と降圧の鍵

ACE阻害薬最大量で治療中の非糖尿病性腎症患者には、ガイドライン推奨レベルの減塩食を持続して摂らせることが、蛋白尿減少と降圧に、より効果的であることが52例を対象とする無作為化試験の結果、示された。試験は、オランダ・フローニンゲン大学医療センター腎臓病学部門のMaartje C J Slagman氏らが、同患者への追加療法として、減塩食の効果とARB追加の効果とを比較したもので、両者の直接的な比較は初めて。Slagman氏は、「この結果は、より有効な腎保護治療を行うために、医療者と患者が一致協力して、ガイドラインレベルの減塩維持に取り組むべきことを裏付けるものである」と結論している。BMJ誌2011年8月6日号(オンライン版2011年7月26日号)掲載報告より。ACE最大量投与中にARB and/or減塩食を追加した場合の蛋白尿と血圧への影響を比較Slagman氏らは、ACE阻害薬最大量服用中の非糖尿病性腎症患者の蛋白尿や血圧への影響について、減塩食を追加した場合と最大量のARBを追加した場合、あるいは両方を追加した場合とを比較する多施設共同クロスオーバー無作為化試験を行った。被験者は、オランダの外来診療所を受診する52例で、ARBのバルサルタン(商品名:ディオバン)320mg/日+減塩食(目標Na+ 50mmol/日)、プラセボ+減塩食、ARB+通常食(同200mmol/日)、プラセボ+通常食の4治療を6週間で受けるように割り付けられた。ARBとプラセボの投与は順不同で二重盲検にて行われ、食事の介入はオープンラベルで行われた。試験期間中、被験者は全員、ACE阻害薬のリシノプリル(商品名:ロンゲス、ゼストリルほか)40mg/日を服用していた。主要評価項目は蛋白尿、副次評価項目が血圧であった。直接対決では減塩食の効果が有意平均尿中ナトリウム排泄量は、減塩食摂取中は106(SE 5)mmol/日、通常食摂取中は184(6)mmol/日だった(P

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食塩摂取や肥満などの環境因子が遺伝子を変え、塩分感受性高血圧を発症する ―東大 藤田氏らが世界に先駆けて解明―

食塩や肥満などの環境因子が食塩排泄性遺伝子WNK4遺伝子の転写活性を抑制し、高血圧を生じることを藤田敏郎氏らの研究チームが世界で初めて明らかにした。この研究結果は4月17日、米国の科学雑誌「Nature Medicine」のオンライン版に掲載された。本研究は「エピジェネティクス」と呼ばれる新しい研究分野で、「遺伝子配列は変えずに後天的な作用により遺伝子の形質変異によって疾病がもたらされる」という研究結果を、環境因子の影響が強い生活習慣病の発症においてエピジェネティクスとの関与を解明したのは世界で初めて。以下、藤田氏とディスカッションした内容より、今回の研究結果の科学的な意義をまとめる。ゲノムを解き明かせばすべてがわかる?2003年4月にヒトゲノムプロジェクトの終了が宣言された。ヒトゲノムプロジェクトは、DNAの台本をすべて読み解くという画期的な情報をもたらしたが、いざそれを疾病の遺伝的要因に関連づけようとすると、DNAの書き損じによって説明できる疾病はほんの一握りであった。「ゲノムを解き明かせばすべてがわかる」と思いきや、ヒトゲノムの解読はエピジェネティクスの入り口でしかなかった。環境因子による遺伝子の形質変化が疾病をもたらす! ―エピジェネティクス―米国ではヒトゲノムプロジェクト終了後、「エピジェネティクス」という遺伝学に研究費の使途がいち早くシフトした。エピジェネティクスとは、後天的な修飾により遺伝子発現が制御されることに起因する遺伝学あるいは分子生物学の研究分野である。すなわち、エピジェネティクスは「食塩摂取、肥満、ストレスなどの環境因子が、遺伝子の配列ではなく、形質変異をもたらすことで、疾病を発症する」という概念を基盤としている。現在、形質変異には次の2種が知られている。 1.DNA塩基のメチル化による遺伝子発現の変化2.ヒストンの化学修飾による遺伝子発現の変化(ヒストンのメチル化、アセチル化、リン酸化など)エピジェネティクスはがん研究分野で花盛り「エピジェネティクス」は、これまでがん治療においてさかんに研究され、すでに治療に応用されている疾患もある。骨髄異形性症候群は、がん抑制遺伝子がメチル化されその働きを失うというエピジェネテイックな異常によって生じる。5-アザシチジンはDNAメチルトランスフェラーゼの阻害因子であり、2011年3月にわが国でも発売された。また、ヒストン脱アセチル化酵素(HDAC)阻害剤ボリノスタットは2006年にFDAに認可され、皮膚T細胞性リンパ腫や他のがんの治療薬として使われている(本邦承認申請中)。塩分の過剰摂取によって発症する高血圧では、遺伝子レベルで何が起こっているのか?話は高血圧に戻る。塩分の過剰摂取が高血圧をきたすことは古くから知られている。しかし、塩分に対する血圧の反応性は個人差があり、塩分摂取によって血圧が鋭敏に上昇する塩分感受性者と、そうでない者が存在する。血圧の塩分感受性は遺伝的素因によって規定されるが、環境因子の影響も受ける。たとえば、肥満やメタボリックシンドロームを有する者は、塩分感受性者であることが多いと報告されている。これらの塩分感受性高血圧患者では食塩摂取によって交感神経活性が亢進し、ナトリウム排泄が低下し、ナトリウムが体内に貯留することで血圧が上昇すると考えられている。一方、治療抵抗性高血圧患者の腎交感神経アブレーションによって30mmHg以上の有意な降圧効果が認められた無作為化試験の結果が2010年12月にLancet誌に発表された。腎交感神経の活性化は本態性高血圧の重要な病因であり、その除神経によって治療効果が認められている。しかし、なぜ、腎臓における交感神経活性の亢進が、ナトリウム排泄を低下させ、血圧を上昇させるのかについての詳細は解き明かされていなかった。今回、藤田氏らの研究グループは、交感神経活性の亢進によって活性化されるβ2アドレナリン作動性受容体による刺激が、ヒストンのアセチル化を引き起こし、塩分排泄関連遺伝子「WNK4遺伝子」の発現を抑制することを発見した。WNK4遺伝子は腎臓の遠位尿細管のNa-Cl共輸送体(NCC)活性を抑制し、ナトリウム排泄を促すことは知られているため、WNK4遺伝子が抑制されることでナトリウムは体内に貯留する。藤田氏らの研究によると、下記のメカニズムによって、交感神経活性の亢進がWNK4遺伝子の発現を抑制すると説明できる。 1.食塩摂取によって交感神経活性が亢進すると、ノルアドレナリンが放出され、β2アドレナリン作動性受容体が活性化される。2.この刺激によってヒストン脱アセチル化酵素(HDAC8)がリン酸化し、ヒストンの脱アセチル化が阻害され、ヒストンアセチル化がもたらされる。3.ヒストンアセチル化によってネガティブ糖質コルチコイド認識配列(nGRE)が刺激されると、nGREに遺伝子調節蛋白が作用しやすくなり、WNK4遺伝子の転写を抑制する。通常、ヒストンアセチル化は遺伝子の転写活性を促進させるが、WNK4遺伝子の場合は抑制されていた。この謎を解明するのに研究グループは1.5年の歳月を費やしたという。研究グループはWNK4遺伝子の上流にあるプロモーター領域に、nGREが発現していることを発見した。nGREがヒストンアセチル化によって刺激されることで、nGREに遺伝子調節蛋白が作用しやすくなり、転写を抑制し、結果としてWNK4遺伝子を抑制することを見出した。この研究結果は、腎臓学の側面から塩分過剰摂取による高血圧発症の新たな分子機構を解明したことに新規性があるだけでなく、遺伝学的な側面において、生活習慣病において食塩や肥満などの環境因子が塩分排泄性遺伝子WNK4遺伝子の転写活性を変えるという「エピジェネティクス」が関与しているということを世界で初めて発見したことに大きな成果があるといえる。ヒストン修飾薬によって塩分感受性高血圧症の治癒も夢ではない「基礎と臨床を繋ぐことが私たちの役目の一つでもある」と藤田氏は言う。塩分感受性の高血圧症では遺伝子レベルでヒストンのアセチル化が起こり、それがナトリウム排泄を促進させるWNK4遺伝子を抑制するのであれば、ヒストンのアセチル化を阻害する「ヒストン修飾薬」を創薬のターゲットとすれば良い。既に藤田氏らは、ラットに同薬を投与したところ、WNK4遺伝子の発現が抑制され、動脈圧が有意に低下した結果を得ている。「このヒストン修飾が塩分貯留に特異的であるかはさらなる研究が必要であるが、ヒストン修飾薬によって塩分感受性高血圧症の治癒も夢ではない」と、藤田氏はヒストン修飾薬の開発によって高血圧治療を一変させることに大いなる期待を抱く。(ケアネット 藤原 健次)

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ARBカンデサルタン、急性脳卒中への有用性:SCAST試験

血圧の上昇を伴う脳卒中患者における、アンジオテンシンII受容体拮抗薬(ARB)カンデサルタン(商品名:ブロプレス)の有用性について、ノルウェー・オスロ大学のElse Charlotte Sandset氏らが実施したSCAST試験の結果が報告された。血圧の上昇は、急性脳卒中の一般的な原因であり、不良な予後のリスクを増大させる要因である。ARBは梗塞サイズや神経学的機能に良好な効果を及ぼすことが基礎研究で示され、高血圧を伴う急性脳卒中患者を対象としたACCESS試験では、カンデサルタンの発症後1週間投与により予後の改善が得られることが示唆されていた。Lancet誌2011年2月26日号(オンライン版2011年2月11日号)掲載の報告。1週間漸増投与の有用性を評価SCAST試験の研究グループは、血圧上昇を伴う急性脳卒中患者に対するカンデサルタンを用いた慎重な降圧治療の有用性を評価する二重盲検プラセボ対照無作為化試験を実施した。北ヨーロッパ9ヵ国146施設から、18歳以上、症状発現後30時間以内、収縮期血圧≧140mmHgの急性脳卒中(虚血性あるいは出血性)患者が登録された。これらの患者が、カンデサルタン群あるいはプラセボ群に無作為に割り付けられ、7日間の治療を受けた。第1日に4mgを、第2日に8mgを投与し、第3~7日には16mgが投与された。患者と担当医には治療割り付け情報は知らされなかった。主要評価項目は、血管に関する複合エンドポイント(6ヵ月以内の血管死、心筋梗塞、脳卒中)および機能アウトカム(6ヵ月の時点において修正Rankinスケールで評価)とし、intention-to-treat解析を行った。主要評価項目に大きな差は認められず2,029例が登録され、カンデサルタン群に1,017例、プラセボ群には1,012例が割り付けられた。そのうち6ヵ月後に評価が可能であったのは2,004例(99%、カンデサルタン群:1,000例、プラセボ群:1,004例)であった。7日間の治療期間中の平均血圧は、カンデサルタン群[147/82mmHg(SD 23/14)]がプラセボ群[152/84mmHg(SD 22/14)]よりも有意に低下した(p<0.0001)。6ヵ月後のフォローアップの時点における複合エンドポイントの発生率は、カンデサルタン群が12%(120/1,000例)、プラセボ群は11%(111/1,004例)であり、両群間に差を認めなかった(調整ハザード比:1.09、95%信頼区間:0.84~1.41、p=0.52)。機能アウトカムの解析では、不良な予後のリスクはカンデサルタン群のほうが高い可能性が示唆された(調整オッズ比:1.17、95%信頼区間:1.00~1.38、p=0.048)。事前に規定された有用性に関する副次的評価項目(全死亡、血管死、虚血性脳卒中、出血性脳卒中、心筋梗塞、脳卒中の進行、症候性低血圧、腎不全など)や、治療7日目のScandinavian Stroke Scaleスコアおよび6ヵ月後のBarthel indexで評価した予後はいずれも両群で同等であり、事前に規定されたサブグループのうちカンデサルタンの有用性に関するエビデンスが得られた特定の群は一つもなかった。6ヵ月のフォローアップ期間中に、症候性低血圧がカンデサルタン群の9例(1%)、プラセボ群の5例(<1%)に認められ、腎不全がそれぞれ18例(2%)、13例(1%)にみられた。この結果から、血圧の上昇を伴う急性脳卒中患者においては、ARBであるカンデサルタンを用いて慎重に行った降圧治療は有用であることを示すことはできなかった。

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CRP濃度は、スタチンの血管ベネフィットに影響しない:HPS試験サブ解析

ベースラインのC反応性蛋白(CRP)濃度はシンバスタチン(商品名:リポバスなど)治療の血管ベネフィットに影響を及ぼさないことが、Heart Protection Study(HPS)の研究グループが行ったサブグループ解析で示された。CRP濃度に基づく炎症状態はスタチン治療の血管保護効果に影響を及ぼすことが示唆されている。特に、CRP濃度が高い患者はスタチンのベネフィットがより高く、CRPとLDLコレステロール値がいずれも低値の場合は、スタチンは無効との見解もあるという。Lancet誌2011年2月5日号(オンライン版2011年1月28日号)掲載の報告。約2万人をCRP濃度で6群に分類HPS試験は、血管イベントの発生リスクが高い患者に対するスタチン治療の有用性を評価するプラセボ対照無作為化試験。今回、研究グループは、スタチン治療の効果はベースラインのCRP濃度によって異なるとの仮説を検証するサブグループ解析を行った。1994~1997年までにイギリスの69施設から冠動脈疾患、冠動脈以外の血管の閉塞性疾患、糖尿病、降圧薬治療の既往歴のある40~80歳の2万536人が登録され、平均5年間シンバスタチン40mg/日を投与する群(1万269例)あるいはプラセボ群(1万267例)に無作為に割り付けられた。患者は、ベースラインのCRP濃度によって6つの群(<1.25、1.25~1.99、2.00~2.99、3.00~4.99、5.00~7.99、≧8.00mg/L)に分類された。主要評価項目は、重篤な血管イベント(冠動脈死、心筋梗塞、脳卒中、血行再建術の複合エンドポイント)であった。CRP濃度が最低のグループでもスタチン群が有意に良好無作為割り付け後の重篤な血管イベントの発生率は、シンバスタチン群が19.8%(2,033例)と、プラセボ群の25.2%(2,585例)に比べ相対的に24%(95%信頼区間:19~28)低下した。ベースラインのCRP濃度に比例して複合エンドポイントおよび個々の構成因子の低下率が変化するとのエビデンスは得られなかった(傾向検定:p=0.41)。ベースラインのCRP濃度が<1.25mg/Lの患者においても、重篤な血管イベントはシンバスタチン群[14.1%(239例)]がプラセボ群[19.4%(329例)]よりも有意に29%(99%信頼区間:12~43、p<0.0001)低下した。ベースラインのLDLコレステロール値とCRP濃度の高低の組み合わせで定義された4つのサブグループ間で、相対リスク低下率の不均一性に有意な差を認めなかった(p=0.72)。特に、低LDLコレステロール値/低CRP濃度のグループでは、シンバスタチン群[15.6%(295例)]がプラセボ群[20.9%(400例)]に比べ有意に27%(99%信頼区間:11~40、p<0.0001)低下した。著者は、「この大規模無作為化試験のエビデンスは、ベースラインのCRP濃度がスタチン治療による血管ベネフィットに実質的な影響を及ぼすとの仮説を支持しない」と結論し、「この知見は他のスタチンにも広範に一般化可能と推察される」と指摘している。(菅野守:医学ライター)

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患者中心の協同介入がうつ病と慢性疾患のコントロールをともに改善

うつ病は、糖尿病や冠動脈心疾患患者で多くみられ、セルフケア力を弱めるため、合併症や死亡のリスク因子になっているという。また、これら複数の慢性疾患を有する患者は多くの医療コストも必要とする。そこで米国ワシントン大学精神・行動学部門のWayne J. Katon氏らは、プライマリ・ケアベースで複数疾患の疾病管理を、患者中心で協同介入することが、これら患者の疾病管理を改善するかどうかを検討する単盲検無作為化対照試験を行った。結果、内科的疾患、うつ病ともにコントロールの改善が認められたという。NEJM誌2010年12月30日号掲載より。ともに働く看護師とガイドラインに即し、リスク因子のコントロール達成を目指す試験は、ワシントン州の統合医療システムに参画する14の診療所で行われた。被験者は2007年5月~2009年10月の間に募集された214例で、糖尿病のコントロール不良、冠動脈心疾患のいずれかもしくは両方を有し、かつうつ病を有しており、通常ケアを受ける群か介入群かに無作為に割り付けられ、追跡された。介入群には、各患者のかかりつけ医とともに働き医学的指導を受けた看護師が、疾病ガイドラインに即して、複数疾患のリスク因子のコントロールを目標に協同的なケアマネジメントを提供した。主要転帰は、12ヵ月時点での患者のリスク因子の目標達成の割合で、糖化ヘモグロビン、LDL-C、収縮期血圧、SCL-20尺度によるうつ病転帰を同時モデル化し、単一全般的な治療効果の評価が行われた。介入群の方が改善度は大きく、患者QOL・満足度も高い結果、通常ケア群との比較で介入群は、12ヵ月時点の全般的改善度が大きかった。糖化ヘモグロビン値の通常ケア群とのコントロールの差は0.58%、LDL-Cは同6.9mg/dL、収縮期血圧は5.1mmHg、SCL-20スコア差は0.40ポイントであった(いずれもP<0.001)。また、介入群の患者は、インスリン(P=0.006)、降圧薬(P<0.001)、抗うつ薬(P<0.001)の調整を1回以上行われることが多く、良好なQOL(P<0.001)、糖尿病と冠動脈心疾患のいずれかもしくは両方のケアに対する満足度が高く(P<0.001)、うつ病のケアに対する満足度も高かった(P<0.001)。(武藤まき:医療ライター)

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カテーテルベースの腎除神経術、治療抵抗性高血圧の降圧に有用

治療抵抗性の高血圧患者に対するカテーテルベースの腎除神経術は実質的な降圧効果を示し、安全に施行可能なことが、オーストラリアBaker IDI心臓・糖尿病研究所(メルボルン)のMurray D Esler氏らが行った「Symplicity HTN-2」試験で示された。腎臓の交感神経系の活性化は本態性高血圧の主病因とされる。降圧薬が一般化する以前から、重症高血圧の治療として非選択的な交感神経除去術の有効性が示されていたが、近年の血管内カテーテル技術の進歩により、腎動脈内腔にラジオ波を当てることで腎動脈外膜に局在する腎神経を選択的に除神経することが可能になった。Lancet誌2010年12月4日号(オンライン版2010年11月17日号)掲載の報告。腎除神経術の効果と安全性を評価する無作為化試験Symplicity HTN-2試験の研究グループは、治療抵抗性の高血圧患者に対する降圧療法としてのカテーテルベースの腎除神経術(Symplicityカテーテルシステム)の、効果と安全性を評価する目的で、プロスペクティブな無作為化試験を実施した。ヨーロッパ、オーストラリア、ニュージーランドの24の施設が参加し、3剤以上の降圧薬を服用してもベースラインの収縮期血圧が≧160mmHgの患者(2型糖尿病を合併する場合は≧150mmHg)が、これまでの治療に加え腎除神経術を施行する群あるいはこれまでの治療のみを継続する群(対照群)に無作為に割り付けられた。データ解析の担当者には治療割り付け情報が知らされなかった。効果に関する主要評価項目は6ヵ月後の診察室における坐位収縮期血圧の変化とし、6ヵ月の時点でフォローアップを継続中の全例が解析の対象となった。6ヵ月後には33/11mmHgの差が2009年6月9日~2010年1月15日までに、適格基準を満たした190例のうち106例(56%)が、腎除神経術群(52例)あるいは対照群(54例)に割り付けられた。6ヵ月後に主要評価項目の評価が可能だったのは、腎除神経術群49例(94%)、対照群51例(94%)であった。診察室血圧は、腎除神経術群がベースラインの178/96mmHg(SD 18/16mmHg)から32/12mmHg(SD 23/11mmHg、p<0.0001)低下したのに対し、対照群はベースラインの178/97mmHg(SD 17/16mmHg)から1/0mmHg(SD 21/10mmHg、収縮期:p=0.77、拡張期:p=0.83)しか変化しなかった。6ヵ月後の両群間の血圧の差は33/11mmHgであり、有意差を認めた(p<0.0001)。6ヵ月後に収縮期血圧が10mmHg以上低下した患者は、対照群が51例中18例(35%)にすぎなかったのに比べ、腎除神経術群は49例中41例(84%)に上った(p<0.0001)。手技あるいはデバイス関連の重篤な有害事象はみられず、有害事象の頻度は両群間で差はなかった。腎除神経群の1例で動脈硬化病変の進行がみられたが、治療の必要はなかった。(菅野守:医学ライター)

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低用量のEPA-DHA摂取、心筋梗塞患者のイベント抑制に効果は認められず

心筋梗塞後で最新の降圧療法、抗血栓療法、脂質補正療法を受けている患者に、海産物由来のn-3系脂肪酸であるエイコサペンタエン酸(EPA)、ドコサヘキサエン酸(DHA)、また植物由来のα-リノレン酸(ALA)の低用量摂取を行っても、主要心血管イベント発生率が有意には低下しなかったことが報告された。オランダWageningen大学栄養学部門のDaan Kromhout氏らAlpha Omega試験グループが行った多施設共同二重盲検プラセボ対照臨床試験による。これまで行われた前向きコホート試験や無作為化対照試験により、n-3系脂肪酸には心血管疾患に対して保護作用があるとのエビデンスが得られていた。NEJM誌2010年11月18日号(オンライン版2010年8月29日号)掲載より。60~80歳の心筋梗塞後患者4,837例に40ヵ月間摂取してもらい追跡Alpha Omega試験は、オランダ国内32病院で、心筋梗塞後に最新の降圧療法、抗血栓療法、脂質補正療法を受けている60~80歳の4,837例(男性78%)を対象に行われた。被験者は40ヵ月間、次の4つの試験用マーガリンのうちの一つを摂取するよう無作為化された。(1)EPA-DHA配合添加マーガリン(EPA-DHAを1日400mg付加摂取が目標)、(2)ALA添加マーガリン(ALAを1日2g付加摂取が目標)、(3)EPA-DHAとALAが添加されたマーガリン、(4)プラセボマーガリン。主要エンドポイントは、致死性・非致死性心血管イベントおよび心臓介入から成る主要心血管イベントの発生率であった。データはCox比例ハザードモデルを用いintention-to-treat解析され検討された。EPA-DHAまたALA摂取でも主要心血管イベント発生は低下せず被験者が摂取した1日のマーガリン量は平均18.8gだった。(1)~(3)のマーガリンを摂取した群においては、EPAは226mg、DHAは150mg、ALAは1.9gの摂取増加がみられた。追跡期間中、主要心血管イベントは671例(13.9%)で発生した。EPA-DHA摂取、またALA摂取のいずれによっても、同イベント発生率は低下しなかった。EPA-DHA摂取群のハザード比は1.01(95%信頼区間:0.87~1.17、P=0.93)、ALA摂取群は同0.91(0.78~1.05、P=0.20)であった。ただ、女性のみを対象としたサブグループ解析の結果では、ALA摂取群で主要心血管イベント発生率の低下が、プラセボまたはEPA-DHA摂取群と比べて、有意に近い関連で認められた(ハザード比:0.73、95%信頼区間:0.51~1.03、P=0.07)。有害事象については、4群間で有意差は認められていない。(武藤まき:医療ライター)

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第2回 減塩 2010 (2) 1日6gの減塩をあきらめない

前回に引き続き、第33回日本高血圧学会総会からの演題から減塩を中心にレポートする。患者の食塩摂取量を簡便に把握する方法とともに、減塩の具体的な方策についてもまだ手探り状態といえる。本総会においても画期的な試みの成果が発表された。「減塩食はまずい」からの脱却 ―第33回日本高血圧学会総会 メディカル・コメディカル合同シンポジウムより―今回の総会においても、医師自らが率先して減塩することを意図し、昨年の総会に引き続き、ランチョンセミナーで「減塩・ヘルシー弁当」が提供された。今回は福岡女子大学 早渕仁美氏らが食品加工業者10社と連携し、減塩素材を利用することで食塩量を2gに抑えた減塩弁当である。1日目のランチョンセミナーで、減塩弁当(食塩相当量:1.06g)と、それと見た目が同じ対照弁当(食塩相当量:1.73g)が、減塩弁当がどちらかは告げられずに提供され、「どちらが減塩と思うか」など参加者にアンケートの記入を依頼した。翌日のシンポジウムにおいて早渕氏よりアンケート結果(n=776)が発表された。その結果、62.1%の回答者が正答したが、自信をもって回答したのは正答回答者の51.0%であった。正答回答者において減塩弁当を対照弁当より好むと回答した割合が多く、「減塩食=まずい」というイメージ払拭の第一歩となった。早渕氏は今回の結果を踏まえ、減塩調味料や減塩加工食品を用いることで、無理なく美味しい減塩料理をつくることが可能であると述べた。日本人はしょうゆと漬物から3割の塩分をとっている ―同シンポジウムより―結核予防会の奥田奈賀子氏は、国際共同研究INTERMAPのデータを用いて日本人の食塩摂取量の寄与割合が大きい食品を検討した。その結果、高塩分加工食品36.9%(漬物10.9%、塩干物8.1%、みそ汁7.1%ほか)、高塩分調味料27.1%(しょうゆ17.2%、塩8.6%ほか)の摂取が食塩摂取全体の6割程度を占めた。高塩分摂取者の特徴としては、日本食の高塩分加工食品の摂取が多く、米飯や野菜を煮物やおひたしで食べる量が多いなど、和食中心の食事傾向が認められた。一方、低塩分摂取者では、パン、乳・乳製品などの洋風の食材の摂取が多かった。奥田氏は高塩分加工食品の摂取を控えるとともに、ご飯に合う洋風のおかずを勧めることも減塩指導に有効であると考えを示した。地域のレストランを巻き込んで美味しく減塩 ―同シンポジウムより―日下医院の日下美穂氏は2008年より広島県呉市での減塩食普及に向けての地域ぐるみの取り組みついて講演した。日下氏は、呉市内のレストランで美味しさにこだわった減塩低カロリー食を各店1点以上メニューに入れてもらうという「こだわりのヘルシーグルメダイエットレストラン」という企画を立ち上げ、活動している。企画への参加基準として食塩2~3g、カロリー400~600kcalなどを設け、栄養士が基準を満たしているかを計算・評価する仕組みをとっている。また、民間のタウン情報誌、インターネットで参加店を検索できるなど市民、患者への広報にも力を入れている。日下医院に通院している生活習慣病患者388例に意識調査をした結果、84%が「以前に比べ、塩分を控えるようになった」と回答し、328例の高血圧患者の平均血圧、目標達成率は、企画開始前に比べ、有意に改善したことも発表した。日下氏はこの企画を継続させる上で大切な事は料理人のモチベーションを保つことであり、参加店に何度も足を運ぶ努力も必要であることも述べた。現在、広島市をはじめとする広島県下の地域でも実施中であり、興味を示す他の都道府県も現れ始めているという。減塩モニタによる食塩排泄量の自己測定と減塩教室は減塩に効果的 ―同ポスター発表より―西九州大学の安武健一郎氏は、健常者に対する2回にわたる減塩教室と食塩排泄量の自己測定が、高塩分食品の摂取頻度を低下させ、食塩排泄量の最大値と変動幅を低下させることを発表した。健常者50名に対し、ベースライン時に2週間にわたって減塩モニタによる食塩排泄量の自己測定と、高塩分食品(漬物、汁物、干物、塩蔵品、麺類、外食)の摂取頻度チェックを依頼した。また、2、4ヵ月後に管理栄養士による減塩教室を実施し、減塩教室の翌日から2週間自己測定と高塩分食品の摂取頻度チェックを依頼した。その結果、2ヵ月目で外食、4ヵ月目で漬物、汁物の摂取頻度が有意に減少し、4ヵ月目の食塩排泄量の最大値、変動幅が有意に減少した。排泄量の平均値に有意な減少は認められなかったが、55歳以上の群では4ヵ月には有意に減少した。各地で食品加工企業や地域飲食店を巻き込んだ減塩への取り組みが少しずつ行われてきているが、医師個人で取り組める減塩指導の方法や支援ツールを作成するなど具体的な方策を確立していく必要がある。最後に減塩への取り組むベネフィットの大きさについて米国のシミュレーション結果があるので紹介したい。3g/日の減塩効果は年間10%の冠動脈疾患の発症が抑制できる ― NEJM誌 2010年2月18日号より―それでは減塩への取り組みがもたらすベネフィットはどれくらいか?米国では1日3gの減塩がもたらす心血管イベント、全死因死亡、医療費への影響をシミュレーションモデルにより予測している。これによると、たとえ1日1gの減塩を2010年から10年かかってでも達成できさえすれば、すべての高血圧患者への降圧薬治療よりも費用対効果が大きいことを予測した。減塩量がわずかであっても、心血管イベントの発症および医療費を抑制することが期待できそうだ。この1年の間に、減塩のベネフィットを支持するエビデンスが得られ、減塩の重要性がより一層高まってきている。それを日常臨床においてどう実行するか。今、簡便な食塩摂取量の把握と、効果的な減塩指導法が求められている。第3回は、「微量アルブミン尿」に関してレポートする。(ケアネット 藤原 健次)

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高血圧2010 第1回 減塩 2010 (1)患者さんの食塩摂取量を知る

第33回日本高血圧学会総会が10月15~17日に開催された。前回の開催以降、高血圧の領域では、レニン阻害薬、 ARBとCa拮抗薬の配合剤が発売され、これら薬剤の処方のあり方が話題になりがちではあり、本総会でもそれらを主眼としたセッションが開かれた。それらは他の情報ソースに任せるとして、ケアネットでは前回の総会が開催された 2009年10月からこの1年の間に影響力が大きい研究結果が発表された「減塩」「微量アルブミン尿」「降圧目標」の3つにテーマを絞り、学会での発表内容とこの1年間のトピックスをシリーズで採り上げたいと思う。第1回、第2回は「減塩」を採り上げる。現状:「1日6g以下」の減塩を指示している医師は3割未満 ―第33回日本高血圧学会総会より―久留米大学心臓・血管内科の甲斐久史氏らは「高血圧治療ガイドライン2009(JSH2009)」が実地医家における有用度および診療実態に関するアンケート調査結果を発表した。対象は福岡県内科医会と佐賀県医師会内科医部会の会員2,415 名に郵送し、896名から回答を得た(回答率37.1%)。1日の食塩摂取量をどのくらいに指導しているかという質問に対して、 JSH2009で推奨している「6g以下」と回答したのは30%未満であったの対し、「7g以下」が約17% 、「10g以下」が約16% 、「指示していない」が約23%にのぼった。+5g/日の食塩摂取により脳卒中が23%増える ―BMJ誌2009年12月5日号より―減塩の重要性を支持する新しい知見が昨年12月に得られた。この報告によると、塩分摂取量が多い群は、少ない群よりも脳卒中のリスクが有意に高く(相対リスク:1.23、95% 信頼区間:1.06-1.43 、p=0.007)、心血管疾患のリスクは有意差がないものの高い傾向がみられた(相対リスク:1.14 、95% 信頼区間:0.99-1.32 、p=0.07)。これは過去 40年に実施されたプロスペクティブ試験13件、19コホートをメタ解析し、17万7,025人(正常血圧者も含む、87,809 名は日本人)のデータから得られた結果で、1日の塩分摂取量が 5g多いと脳卒中のリスクが23%、心血管疾患のリスクが17%高まることを示した。弊社が実施したアンケートにおいても高血圧診療における減塩に関する重要度は他の生活習慣修正に比べて群を抜いて高い。高血圧診療において減塩が重要であると認識されているにもかかわらず、減塩指導が難しいのはなぜか。減塩指導の第一歩である食塩摂取量の評価にその一因がある。実際に患者さんの食塩摂取量を把握するのに難渋している先生方も多いと思われる。本総会でも、より簡便に、それであって正確に食塩摂取量を評価する方法について発表された。起床後第2尿は、24時間蓄尿に近い信頼性で食塩摂取量を評価できる ―第33回日本高血圧学会総会ポスター発表より―岩手県立中央病院の大本晃弘氏は、起床から臥位にならずに採取した「起床後第2尿」が簡便かつ「24時間蓄尿」に近い信頼性が得られることはすでに報告されているが、「随時尿」では食塩摂取量を過少評価することを発表した。減塩下における男性(n=53)の食塩摂取量を「24時間蓄尿」「起床後第2尿」「随時尿」によって評価したところ、それぞれ6.6±1.5g、6.2±1.7g、5.6±1.5gであり、随時尿による評価は24時間蓄尿に比べ、有意に低く評価された。女性では有意差が認められなかった。次に男性高血圧患者(n=22)において高食塩食を摂取した期間の「24時間蓄尿」「起床後第2尿」「随時尿」によって食塩摂取量を評価したところ、15.7±2.1g、16.2±2.3g、11.3±1.3gであった。これらの結果から、随時尿は24時間蓄尿に比べ、有意に低く評価し、特に高食塩摂取下では過小評価の程度が著しいことを示した。高血圧患者では正常血圧者より減塩モニタによる食塩排泄量が高値 ―第33回日本高血圧学会総会ポスター発表より―減塩モニタは、夜間尿(約8時間相当)の食塩量を電動法を用いて測定し、そこから24時間食塩排泄量を推定する。すでに減塩モニタを用いた自己測定が簡便かつ信頼性が高いことが報告されている。国立病院機構の今泉悠希氏は、減塩モニタを用いた自己測定によって高血圧患者、正常血圧者の食塩排泄量を家庭での自己測定により、30日間の平均値を比較検討した。その結果、高血圧患者の30日間平均食塩排泄量は9.1g/日と、正常血圧者の8.3g/日より高かった。特に肥満高血圧では9.6g/日と高く、非肥満群では8.1g/日と正常血圧者と同程度であり、肥満高血圧患者における減塩指導戦略の構築の必要性を訴えた。日本高血圧学会 減塩ワーキンググループの報告では、食塩摂取量の各評価法について信頼性と簡便性を比較しているが、「起床後第2尿」は、簡便性がやや劣るものの、信頼性はやや優れると評価し、「減塩モニタ」は、信頼性がやや劣るものの、簡便性が優れると評価している。診療現場で食塩摂取量を評価する目的は、正確性よりむしろ患者に減塩を継続しようという意識をもってもらうことであり、種々の評価法の特徴を把握し、診療現場に合わせて選択することが薦められている。では、減塩指導の方法についてどのような試みがみられているのだろうか。 次回は、減塩に対する試みの成果をレポートする。(ケアネット 藤原 健次)

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無症候性頸動脈狭窄症に対する即時的頸動脈内膜剥離術、長期的な予後改善効果が明らかに

無症候性頸動脈狭窄症に対する即時的な頸動脈内膜剥離術(CEA)の施行は、遅延的にCEAを行う場合に比べその後10年間の脳卒中リスクを有意に抑制することが、イギリスJohn Radcliffe病院のAlison Halliday氏らが行った無作為化試験で示された。CEAは頸動脈の狭窄を除去するものの、脳卒中や死亡のリスクを引き起こす可能性もある。一方、直近の脳卒中症状やその他の神経学的症状がみられない無症候性の頸動脈狭窄症に対するCEAは脳卒中の発症を数年にわたり抑制することが示されているが、長期的な予後を検討した試験はないという。Lancet誌2010年9月25日号掲載の報告。10年間に30ヵ国126施設から3,120例を登録ACST-1の研究グループは、無症候性の頸動脈狭窄症に対する即時的CEAの長期的な脳卒中予防効果を評価する二重盲検無作為化試験を実施した。1993~2003年までに30ヵ国126施設から無症候性頸動脈狭窄症患者3,120例が登録され、即時的にCEAを施行する群(施行までの期間中央値1ヵ月)あるいは遅延的に施行する群(93%が1年以内には施行されなかった)に無作為に割り付けられた。フォローアップは、患者が死亡するか、生存期間中央値が9年に達するまで継続された。主要評価項目は、周術期の死亡率/罹病率(30日以内の死亡、脳卒中の発症)および非周術期の脳卒中の発症率とした。脳卒中リスクが即時的施行群で46%低下CEA即時的施行群に1,560例、遅延的施行群にも1,560例が割り付けられた。1年後も無症候であった症例は、即時的施行群が89.7%、遅延的施行群は4.8%であり、5年後はそれぞれ92.1%、16.5%であった。全体の30日以内の周術期脳卒中/死亡リスクは3.0%(95%信頼区間:2.4~3.9%、CEA 1,979件中、非障害性脳卒中26例+障害性/致死的イベント34例)であり、両群間に差はみられなかった。周術期イベントおよび脳卒中以外の原因による死亡を除外すると、5年後の脳卒中リスクは即時的施行群が4.1%、遅延的施行群は10.0%、10年後はそれぞれ10.8%、16.9%であり、脳卒中発症率比は0.54(95%信頼区間:0.43~0.68、p<0.0001)と即時施行群で有意に低下した。障害性/致死的脳卒中は即時的施行群が62件、遅延的施行群は104件、非障害性脳卒中はそれぞれ37件、84件であった。周術期イベントと脳卒中を合わせると、5年後のリスクはそれぞれ6.9%、10.9%、10年後のリスクは13.4%、17.9%であった。試験期間を通じてほとんどの症例が抗血栓療法や降圧療法を受けており、薬物療法の施行状況は同等であった。脂質低下療法の有無にかかわらず、また75歳未満では男女ともに即時的施行群でリスクが有意に低下したが、75歳以上では有意差を認めなかった。著者は、「75歳以下の無症候性頸動脈狭窄症に対する即時的CEAは施行後10年間の脳卒中リスクを有意に抑制し、その半数は障害性あるいは致死的脳卒中リスクの低減であった」と結論し、「将来的なベネフィットはCEAが施行されなかった病変のリスク(薬物療法で治療可能)、今後の手術リスク(本試験のCEAとは異なる可能性あり)、平均余命が10年を超えるか否かに依存する」と指摘している。(菅野守:医学ライター)

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