プライマリ・ケアにおける高血圧診断、ABPMが費用対効果に優れる

提供元:ケアネット

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公開日:2011/10/13

 



24時間自由行動下血圧測定(ABPM)は、診察室(CBPM)や家庭(HBPM)での血圧測定よりも費用対効果が優れ、高血圧の診断戦略として最も有用であることが、イギリス内科医師会(Royal College of Physicians)のKate Lovibond氏らによる調査で示された。従来、プライマリ・ケアにおける高血圧の診断はCBPMに基づいて行われるが、HBPMやABPMのほうが心血管アウトカムとよく相関し、ABPMはCBPMやHBPMに比べ高血圧の診断精度が高いことが示されている。Lancet誌2011年10月1日号(オンライン版2011年8月24日号)掲載の報告。

高血圧診断戦略としての費用対効果をMarkovモデルで解析




研究グループは、Markovモデルを用いて、高血圧の診断戦略としてのCBPM、HBPM、ABPMの費用対効果を比較するために、基本ケース解析(base-case analysis)を行った。

スクリーニング時の血圧が140/90mmHg以上で一般集団と同等のリスク因子を有する40歳以上の仮説的なプライマリ・ケア受診集団を対象とした。CBPM(月1回、3ヵ月)、HBPM(週1回)、ABPM(24時間)について、生涯コスト、質調整生存年(QALY)、費用対効果の評価を行った。

ABPMは全年齢でコストが削減、50歳以上でQALYが延長




ABPMはCBPMやHBPMに比べ全年齢の男女において費用対効果が優れていた。ABPMは全年齢の男女でコストが削減され(CBPMとの比較、範囲:75歳男性の56ポンド削減から40歳女性の323ポンド削減まで)、50歳以上の男女ではQALYが延長した(CBPMとの比較、範囲:60歳女性の0.006年から70歳男性の0.022年まで)。

HBPMも同様に、全年齢の男女でコストが削減され(CBPMとの比較、範囲:75歳男性の16ポンド削減から40歳女性の68ポンド削減まで)、50歳以上の男女でQALYが延長した(CBPMとの比較、範囲:60歳女性の0.001年から70歳男性の0.005年まで)が、ABPMに比べて費用対効果は低かった。

著者は、「診察室での初回血圧測定値が高値を示した集団における高血圧の診断戦略として、ABPMは誤診を減らし、コストを削減する優れた方法である」と結論し、「ABPMで新たに生じるコストは、より対象を絞り込んだ高血圧治療の実現によるコストの削減で相殺された。降圧薬治療開始前の患者の診断には、ABPMが推奨される」と指摘している。

(菅野守:医学ライター)