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中国人でも積極的降圧の有用性を証明するも、論文としての粗さも目立つ~STEP試験(解説:桑島巖氏)

 SPRINT試験は、年齢を問わずより積極的降圧が心血管イベントを抑制することを2015年に発表し、世界の高血圧治療の在り方を一変させた。中国でも負けじと2021年、ほぼ同規模の症例を対象としたSTEP試験の結果をNEJM誌で発表した。 (60歳から80歳の高齢者高血圧患者の)降圧目標値を収縮期血圧110~129mmHgとする積極治療群と130~149mmHgの標準治療群にランダム化して、3.34年追跡し、脳心血管合併症を主要評価項目として、その発症率を比較した大規模臨床試験である。 結果としてはSPRINT試験同様に、積極的降圧群のほうが標準降圧群よりも有意に脳心血管合併症を抑制した。 しかしその対象においていくつかの違いがみられる。最も大きな違いは血圧測定環境の違いである。SPRINT試験では医師やナースのいない環境の下での自動血圧計による測定であったが、STEP試験では医師またはナース同席での測定である。この点は日本の実際の高血圧診療と同様であり、外来において降圧目標値130mmHg未満を目指すことの妥当性を示した点で評価できる。また対象症例において糖尿病を除外したSPRINT試験とは異なり、STEP試験で含んでいる点は糖尿病合併高血圧症例が多いわが国の日常診療に役立つ情報である。 しかし一方において論文としての粗さがある点は否めない。方法論に家庭血圧を測定したとあるが、その結果については少なくとも本論文には掲載されていない。家庭血圧の血管については別論文で発表するのかもしれないが、まったく言及していないのは不自然である。ただsupplementにおいて、季節変動と家庭血圧測定値の推移が掲載されているが、季節を問わず治療後経年的に家庭血圧が上昇傾向するという不思議な現象がみられている。この点についての説明も本論文には記載がなく、何か不都合な真実があるのではないかと勘ぐってしまう。 低血圧がSPRINT試験では積極治療群のほうが標準治療群に比べて有意に少なかったのに対して、STEP試験では逆に有意に多くなっている。これは前者では起立性低血圧に限定したのに対して、後者では単に収縮期血圧110mmHg未満、または拡張期血圧50mmHgを低血圧としている点が異なる。低血圧によって眩暈や腎障害が積極治療群で多いというわけではないので、血圧が110/50mmHg以下に下がることの臨床的有害性は証明されなかった。 いずれにせよ、家庭血圧や有害事象の詳細な分析に関するサブ論文の発表が期待される。

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60~80歳高血圧、強化治療が標準治療のベネフィットを上回る/NEJM

 60~80歳の高血圧患者に対する収縮期血圧目標値110~130mmHgとする強化治療は、同130~150mmHgとする標準治療に比べ、心血管イベント発生リスクを約4分の3に低減する。中国・Chinese Academy of Medical SciencesのWeili Zhang氏らが、8,511例の患者を対象に行った無作為化試験の結果を報告した。高齢高血圧患者の心血管リスク低減について、適切な収縮期血圧目標値は不明なままであった。NEJM誌オンライン版2021年8月30日号掲載の報告。60~80歳の高血圧症患者を対象に強化治療vs.標準治療の無作為化試験 研究グループは2017年1月10日~12月31日に、60~80歳で収縮期血圧値が140~190mmHgまたは降圧薬服用中の中国人患者を対象に多施設共同無作為化比較試験を行った。 被験者を無作為に2群に分け、一方には収縮期血圧目標値110~130mmHgで(強化治療群)、もう一方の群は同130~150mmHgで(標準治療群)、それぞれ降圧コントロール治療を行った。 主要アウトカムは、脳卒中、急性冠症候群(急性心筋梗塞、不安定狭心症による入院)、急性非代償性心不全、急性冠動脈血行再建術、心房細動、心血管系の原因による死亡の複合だった。 9,624例が適格性についてスクリーニングを受け、8,511例が試験に登録された(強化治療群4,243例、標準治療群4,268例)。心血管イベント発生リスク、強化治療群が標準治療群の0.74倍 1年後の収縮期血圧平均値は、強化治療群127.5mmHg、標準治療群135.3mmHgだった。 追跡期間中央値3.34年の主要アウトカム発生は、強化治療群147例(3.5%)、標準治療群196例(4.6%)だった(ハザード比[HR]:0.74、95%信頼区間[CI]:0.60~0.92、p=0.007)。 主要アウトカムの個々の同HRについても、脳卒中が0.67(95%CI:0.47~0.97)、急性冠症候群が0.67(0.47~0.94)、急性非代償性心不全が0.27(0.08~0.98)、急性冠動脈血行再建術が0.69(0.40~1.18)、心房細動が0.96(0.55~1.68)、心血管系の原因による死亡が0.72(0.39~1.32)と、大半が強化治療群でより良好であった。 なお、安全性や腎アウトカムについては、低血圧症の発生頻度が強化治療群で高かった以外は、両群で有意差はなかった。

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世界の高血圧患者数、30年で2倍に/Lancet

 1990~2019年における高血圧有病率、治療率およびコントロール率の改善は、国・地域によって大きく異なり、一部の中所得国がほとんどの高所得国を上回っている現状が明らかにされた。英国・インペリアル・カレッジ・ロンドンのBin Zhou氏らが、約200の国・地域の研究1,201件、計1億400万人のデータの解析結果を報告した。著者は、「高所得国だけではなく低所得国や中所得国においても、高血圧の1次予防と治療およびコントロールの強化を介して高血圧有病率を減少させる二元的アプローチ(dual approach)は達成可能である」と強調している。Lancet誌オンライン版2021年8月24日号掲載の報告。1億400万人のデータを解析 非感染性疾患の危険因子に関する国際共同疫学研究グループ(NCD Risk Factor Collaboration:NCD-RisC)は、1990~2019年に184の国・地域で実施され、血圧測定ならびに高血圧治療に関するデータが得られる一般住民を対象とした1,201件の研究を特定し、30~79歳の1億400万人のデータを解析した。 主要評価項目は、高血圧の有病率、診断率(高血圧と診断されたことがあると報告した人の割合)、治療率(降圧薬を服用している人の割合)、コントロール率(血圧が140/90mmHg未満にコントロールされている人の割合)で、ベイズ階層モデルを用いて推定した。高血圧は、収縮期血圧140mmHg以上、拡張期血圧90mmHg以上、または降圧薬を服用していることと定義した。世界全体で2019年の高血圧有病率は約30%、診断率は50~60%、治療率は40~50% 世界全体で30~79歳の高血圧の年齢標準化有病率は、1990年が男女とも32%、2019年が男性34%、女性32%と安定していたのに対して、高血圧患者数は1990年の男性3億1,700万人、女性3億3,100万人から、2019年には男性6億5,200万人、女性6億2,600万人と2倍になった。 2019年の年齢標準化有病率は、男女ともカナダ、ペルーで最も低く、女性は台湾、韓国、日本、およびスウェーデン、スペイン、英国を含む西ヨーロッパの国で、男性はエリトリア、バングラデシュ、エチオピア、ソロモン諸島などの低・中所得国で低かった。2019年の高血圧有病率が50%を超えたのは、男性で9ヵ国(パラグアイ、ハンガリー、ポーランド、アルゼンチン、リトアニア、ルーマニア、ベラルーシ、クロアチア、タジキスタン)、女性で2ヵ国(パラグアイ、ツバル)であった。 2019年の高血圧患者において、診断率は男性49%、女性59%、治療率はそれぞれ38%、47%、コントロール率は18%、23%であった。 2019年の治療率およびコントロール率は、韓国、カナダ、アイスランドで最も高く(治療率>70%、コントロール率>50%)、次いで米国、コスタリカ、ドイツ、ポルトガル、台湾であった。ネパール、インドネシア、サハラ以南のアフリカおよびオセアニアの一部の国では、治療率が男性で20%未満、女性で25%未満であった。これらの国の男性および女性、ならびに北アフリカ、中央・南アジア、東ヨーロッパの一部の国の男性では、コントロール率が10%未満であった。1990年以降、ほとんどの国で治療率およびコントロール率は向上したが、サハラ以南のアフリカとオセアニアのほとんどの国では変化はわずかであった。治療率およびコントロール率の改善が最も大きかったのは、高所得国、中央ヨーロッパ、ならびにコスタリカ、台湾、カザフスタン、南アフリカ、ブラジル、チリ、トルコ、イランなどの中・高所得国であった。

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「エックスフォージ」の名称の由来は?【薬剤の意外な名称由来】第67回

第67回 「エックスフォージ」の名称の由来は?販売名エックスフォージ®配合錠エックスフォージ®配合OD錠一般名(和名[命名法])バルサルタン(日局、JAN)/アムロジピンベシル酸塩(日局、JAN)効能又は効果高血圧症用法及び用量成人には1日1回1錠(バルサルタンとして80mg及びアムロジピンとして5mg)を経口投与する。本剤は高血圧治療の第一選択薬として用いない。警告内容とその理由なし禁忌内容とその理由禁忌(次の患者には投与しないこと)1.本剤の成分に対し過敏症の既往歴のある患者2.ジヒドロピリジン系化合物に対し過敏症の既往歴のある患者3.妊婦又は妊娠している可能性のある女性4.アリスキレンフマル酸塩を投与中の糖尿病患者(ただし、他の降圧治療を行ってもなお血圧のコントロールが著しく不良の患者を除く)※本内容は2021年9月1日時点で公開されているインタビューフォームを基に作成しています。※副作用などの最新の情報については、インタビューフォームまたは添付文書をご確認ください。1)2020年4月改訂(第16版)医薬品インタビューフォーム「エックスフォージ®配合錠・エックスフォージ®配合OD錠」2)ノバルティス:DR’s Net

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日本人高齢者における慢性疾患治療薬の使用と新規抗認知症薬使用との関連

 新たに抗認知症薬が使用された高齢者において、慢性疾患に対する治療薬の使用状況がその後の認知症発症に影響を及ぼすかについて、東京都健康長寿医療センターの半田 宣弘氏らが、調査を行った。BMJ Open誌2021年7月15日号の報告。 首都圏の患者を対象としたレトロスペクティブコホート研究を実施した。対象は、2012年4月~6月(バックグラウンド期間)に抗認知症薬を使用していなかった柏市在住の77歳以上の高齢者4万2,024人。主要アウトカムは、2015年3月までのフォローアップ期間中の新規抗認知症薬の使用とした。対象者は、年齢別に77~81歳(1群)、82~86歳(2群)、87~91歳(3群)、92歳以上(4群)に分類した。年齢、性別に加え、バックグラウンド期間に使用していた14セットの薬剤を共変量とし、Cox比例ハザードモデルを用いて分析した。 主な結果は以下のとおり。・134万5,457人月のフォローアップ期間中(平均:32.0±7.5ヵ月、中央値:35ヵ月)に新たに抗認知症薬を使用した患者は、2,365人(5.6%)であった。・12ヵ月間の新規抗認知症薬使用率は、1.9±0.1%(1群:0.9±0.1%、2群:2.1±0.1%、3群:3.2±0.2%、4群:3.6±0.3%、p<0.0001)であった。・高齢および女性に加え、以下の薬剤の使用は、新規抗認知症薬使用と有意な関連が認められた。 ●スタチン(HR:0.82、95%CI:0.73~0.92、p=0.001) ●降圧薬(HR:0.80、95%CI:0.71~0.85、p<0.0001) ●非ステロイド性気管支拡張薬(HR:0.72、95%CI:0.58~0.88、p=0.002) ●抗うつ薬(HR:1.79、95%CI:1.47~2.18、p<0.0001) ●脳卒中後の治療薬(HR:1.45、95%CI:1.16~1.82、p=0.002) ●インスリン(HR:1.34、95%CI:1.01~1.78、p=0.046) ●抗腫瘍薬(HR:1.12、95%CI:1.01~1.24、p=0.035) 著者らは「本レトロスペクティブコホート研究により、高齢者における慢性疾患に対する治療薬と新規抗認知症薬使用との関連が特定された。これらの結果は、実臨床における認知症の臨床診断や医療政策を立案するうえで役立つであろう」としている。

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VEGFR-TKIの心毒性、注意すべきは治療開始○ヵ月【見落とさない!がんの心毒性】第4回

第4回はチロシンキナーゼ阻害薬(TKI:Tyrosine Kinase Inhibitor)の心毒性メカニズムと管理法に、草場と森山が解説します。はじめに血管は、酸素や栄養素の供給、炎症部位への細胞輸送など、ヒトのからだにとって必要不可欠な組織です。血管形成は胎生期より始まり、出生後には創傷治癒や月経などの生理的機能、がんや糖尿病などの疾病と深くかかわっています。VEGFR-TKIとは?血管内皮細胞増殖因子VEGF(Vascular Endothelial Growth Factor)のファミリーにはVEGF-A、VEGF-B、VEGF-C、VEGF-D、VEGF-E、 胎盤増殖因子(PIGF)-1、PIGF-2があり、これらは細胞表面に発現するVEGF受容体(VEGFR)-1、VEGFR-2、VEGFR-3、 NRP(neuropilin)1、NRP2のチロシンキナーゼ型受容体と結合して、下流のシグナル伝達経路を活性化することにより、血管内皮細胞の増殖・分化・遊走や血管透過性の調整など血管新生において中心的な働きをします(図1)。(図1)VEGFRシグナルとVEGFR-TKI画像を拡大する多くのがんにおいて、VEGFRを介したシグナル伝達経路の活性化は、がんの増殖や進展に促進的に働きます。VEGFRなどのチロシンキナーゼ型受容体のリン酸化を阻害するTKIは「血管新生阻害薬」の一つとして、様々ながんの治療に用いられています。VEGFR-TKIの種類VEGFR-TKI は、主な標的分子であるVEGFR以外にも複数の分子の機能を阻害します。以下に各薬剤の主な標的分子、本邦での適応疾患を(表1)に示します。(表1) VEGFR-TKI の主な標的分子と適応疾患主な心毒性とリスク因子VEGFは、血管拡張作用を有する一酸化窒素とプロスタサイクリンを増加させ、血管収縮作用を有するエンドセリン-1産生を抑制するため、VEGFの機能が阻害されると血圧が上昇すると考えられています1)。そのため、VEGFR-TKIでは高血圧の頻度が高く(15~40%)、治療開始後2ヵ月以内に発症・増悪する場合が多いのが特徴です。また、微小血管の毛細血管床の密度低下や腎臓におけるメサンギウム細胞・内皮細胞障害なども高血圧発症に関与するとされています1)。リスク因子として、高血圧症の既往、NSAIDsやエリスロポエチン製剤との併用が報告されており2)、時に高血圧緊急症に至る場合があるため、適切な治療が必要です。また、心筋障害・心不全(~5%)、血栓塞栓症(0.6~11.5%)、QT延長(0.6~13.4%)などの心血管毒性も見られます3)。がん患者を対象とした研究のメタ解析でもVEGFR-TKIは、心不全、血栓塞栓症のリスク因子と報告されているのです4)5)。そのほか、倦怠感(35~50%)、下痢(30~70%)、手足症候群などの皮膚毒性(15~70%)、肝機能障害(5~50%)の頻度が高いです。管理法予防・治療の基本は、がん治療の効果を維持しながら、毒性のリスクを減らすことを目指します。VEGFR-TKIのみを対象とした心血管毒性の管理法の研究は少なく、特異的な管理法は未確立のため、通常の心血管リスク管理が重要です。高血圧診療の目標は、早期診断と血圧管理であり、リスク因子(高血圧の既往と現在の血圧など)の評価と既存の高血圧の治療は、VEGFR-TKI投与前に開始しましょう。投与開始後は、重篤な合併症を避けるために血圧上昇の早期発見と治療が重要で、通常の高血圧治療と同様に、ACE阻害薬、ARB、ジヒドロピリジン系Ca拮抗薬が推奨されています6)。VEGFR-TKIはCYP3A4により代謝されるため、CYP3A4阻害作用を有する降圧剤(非ジヒドロピリジン系Ca拮抗薬)との併用は避ける必要があります。心機能の低下した心不全患者では、ACE阻害薬、ARB、β遮断薬を第一選択とします6)また、VEGFR-TKIは下痢の頻度が高く、利尿剤による脱水を助長する危険性もあります。利尿剤には電解質異常、二次性QT延長のリスクがあるため慎重に用います。重症高血圧があらわれた場合は、循環器専門医と連携して、頻繁なモニタリングと治療効果の評価を行うとともに、VEGFR-TKIの休薬・減量・再開について検討しましょう。心不全診療では、心不全症状発現前の心機能低下を早期発見する為に定期的な心エコー評価を行います。がん治療関連心筋障害を合併した場合は循環器専門医と相談しレニン・アンギオテンシン系阻害薬、β遮断薬などを開始します6)。血栓塞栓症診療では、下肢の浮腫やD-dimer上昇などの血栓症を疑う所見が見られた際に下肢静脈エコーで深部静脈血栓症の評価を行い、臨床的に肺塞栓症を疑う場合は胸部造影CTを行います。静脈血栓塞栓症の診断に至った際は、症例ごとに出血・血栓症のリスクを評価して抗凝固療法の適応を判断します。腎機能正常例では、ワルファリンよりも出血リスクが低い直接経口抗凝固薬(DOAC)が推奨されます6)。心不全や血栓塞栓症の症例において、がん治療を休止・中止すべきかどうかはがん治療医と循環器専門医が連携して判断する必要があります。おわりに近年、悪性腫瘍の領域において、精力的な薬剤開発と良好な抗腫瘍効果から、VEGFR-TKIはがん治療に広く用いられるようになってきました。それに伴い、心血管毒性の管理の重要性が増しており、がん治療医と循環器専門医との緊密な連携がより重要になっているのです。1)Li W, et al. J Am Coll Cardiol. 2015;66:1160-1178. 2)Robinson ES ,et al . Semin Nephrol. 2010;30:591-601.3)日本腫瘍循環器学会編集委員会編. 腫瘍循環器診療ハンドブック. メジカルビュー社;2020.4)Ghatalia P, et al. Crit Rev Oncol Hematol. 2015;94:228 -237.5)Abdel-Qadir H, et al. Cancer Treat Rev. 2017;53:120-127.6)Zamorano JL, et al. Eur Heart J. 2016;37:2768-2801.講師紹介

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「フルイトラン」の名称の由来は?【薬剤の意外な名称由来】第59回

第59回 「フルイトラン」の名称の由来は?販売名フルイトラン®錠1mgフルイトラン®錠2mg一般名(和名[命名法])トリクロルメチアジド(JAN)[日局]効能又は効果高血圧症(本態性、腎性等)、悪性高血圧、心性浮腫(うっ血性心不全)、腎性浮腫、肝性浮腫、月経前緊張症用法及び用量通常、成人にはトリクロルメチアジドとして1日2~8mg を1~2回に分割経口投与する。 なお、年齢、症状により適宜増減する。ただし、高血圧症に用いる場合には少量から投与を開始して徐々に増量すること。また、悪性高血圧に用いる場合には、通常、他の降圧剤と併用すること。警告内容とその理由設定されていない禁忌内容とその理由禁忌(次の患者には投与しないこと)1.無尿の患者[本剤の効果が期待できない。]2.急性腎不全の患者3.体液中のナトリウム、カリウムが明らかに減少している患者[低ナトリウム血症、低カ リウム血症等の電解質失調を悪化させるおそれがある。]4.チアジド系薬剤又はその類似化合物(例えばクロルタリドン等のスルホンアミド誘導体)に対する過敏症の既往歴のある患者5.デスモプレシン酢酸塩水和物(男性における夜間多尿による夜間頻尿)を投与中の患者※本内容は2021年7月7日時点で公開されているインタビューフォームを基に作成しています。※副作用などの最新の情報については、インタビューフォームまたは添付文書をご確認ください。1)2020年3月改訂(第17版)医薬品インタビューフォーム「フルイトラン®錠1mg/錠2mg」2)シオノギ製薬:製品情報一覧

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治療抵抗性高血圧に対する超音波腎デナベーションの効果(解説:石川讓治氏)

 腎デナベーションによる降圧効果を評価する臨床試験が行われてきた。ラジオ波(radiofrequency)を用いた焼灼法を用いた過去の研究においては、外来血圧を用いて評価されていたため、血圧低下度が過大評価されていたことが問題であったとされ、治療抵抗性高血圧患者を対象にラジオ波を用いた腎デナベーション群とShamコントロール群とを比較した大規模臨床試験(SYMPLICITY HTN-3)1)では、外来血圧や自由行動下血圧に有意な血圧低下は認められなかった。その原因として、降圧薬の服薬アドヒアランス、降圧薬の投与方法、手技の精度、エンドポイントの確認法などの問題点が指摘されていた。 RADIANCE-HTN SOLO研究では2)、軽度~中等度の高血圧患者を対象とし、以前の問題点であった服薬アドヒアランス、超音波腎デナベーションによる手技の精度、血圧測定方法(より正確な血圧である自由行動下血圧をエンドポイントにする)などの改善を行い、腎デナベーション群においてShamコントロール群と比較して2ヵ月後に6.3mmHg大きく自由行動下血圧の低下が認められたことが報告された。その効果は6ヵ月後、12ヵ月後にも持続していた。 本研究(RADIANCE-HTN TRIO研究)3)においては、3剤合剤(アムロジピン、バルサルタンまたはオルメサルタン、サイアザイド系利尿薬)を使用下でも自由行動下血圧135/85mmHg以上であった治療抵抗性高血圧患者においても、超音波腎デナベーション群で2ヵ月後の自由行動下血圧が、Shamコントロール群と比較して、収縮期血圧で8.0mmHg、拡張期血圧で3.0mmHg大きく低下していたことを報告した。服薬アドヒアランスに関しても、尿中の降圧薬濃度を分析して2群間に差がなかったことを確認している。2ヵ月の追跡期間における有害事象に関しても大きな差は認められなかったが、数が少なかったため、長期的な降圧効果と安全性に関しては今後の研究結果の報告を待つ必要がある。 一度は有効性が疑われた腎デナベーションではあるが、手技やデバイスを改善し、患者条件を群間で一致させ、評価方法を改善することにより、超音波腎デナベーションが将来的に降圧治療の1つの選択肢となる可能性が残された。しかし、侵襲的治療であるがゆえに対象患者は限られてくる可能性がある。最初は、降圧薬が副作用などで内服困難、若年女性で降圧薬の内服に制限がある、治療抵抗性高血圧などの患者が対象になるかもしれない。現在のところ手技における降圧度の調整も困難である。今後、超音波腎デナベーションがより有効である患者の特徴を明らかにする必要もある。腎障害、肥満、高齢者、糖尿病、2次性高血圧などの患者における降圧効果は不明である。降圧効果の持続期間の検討、長期的に腎動脈に与える影響、費用対効果の問題、高血圧性臓器障害や心血管イベントの抑制効果に対する検討も必要に思われる。

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降圧薬のイベント防止効果は1次および2次予防や心血管疾患既往の有無で異なるか?(解説:江口和男氏)-1405

 血圧は下げれば下げるほど将来の脳心血管発症リスクが減少する。わが国およびその他の国際的な高血圧ガイドラインでは、降圧薬による降圧治療の適応は、生活習慣修正により十分な降圧効果が得られない場合や、血圧レベルが高くない場合でもリスク表により高リスクと判断される場合である。一般的に降圧薬開始の基準となるのは、外来血圧140/90mmHg以上、家庭血圧135/85mmHg以上の場合であり、それ以下の血圧の場合、降圧薬治療開始の適応とはならない。高血圧のリスク表(JSH2019ガイドライン表3-2)については、糖尿病や尿蛋白の有無、心血管疾患の既往のありなしで血圧目標が異なり、日常診療で応用するにはやや複雑である。たとえば、心血管疾患既往があれば、高値血圧(130~139/80~89mmHg)の範囲であっても、リスク第三層「高リスク」に分類される。しかし、心血管疾患既往の有無やベースラインの血圧レベルで、どの程度イベント抑制効果が異なるかということについて結論が出ていなかった。 本メタ解析では48のRCTに登録された34万4,716例という膨大な数の対象者を個別解析した。ランダム化前の血圧は、心血管疾患既往者(15万7,728例)では146/84mmHg、心血管疾患既往なし(18万6,988例)では157/89mmHgであった。ベースラインのSBP<130mmHgの者は、心血管疾患既往者では3万1,239例(19.8%)、心血管疾患既往なしでは1万4,928例(8.0%)であった。中央値4.15年の観察期間で12.3%が少なくとも1回の心血管イベントを発症し、心血管疾患既往なしでは、MACEの発症率は対照群で31.9/1,000人・年、治療群で25.9人・年であった。心血管疾患既往者においては、MACEの発症率は対照群で39.7/1,000人・年、治療群で36.0人・年であった。SBP 5mmHg低下当たりのMACE発症のハザード比は、心血管疾患既往なしで0.91(95%CI:0.89~0.94)、心血管疾患既往者で0.89(95%CI:0.86~0.92)と、ともに有意であった。層別解析では心血管疾患既往の有無やベースライン血圧カテゴリー別で明らかな差は認められなかった。 本メタ解析ではSBP 5mmHg当たりの低下はMACEを約10%減少させたが、それは心血管疾患既往の有無や正常もしくは正常高値の血圧値であっても同様であった。では、本メタ解析の対象者のリスク層別化はいかがであろうか? 一般に高リスクとされる集団からイベントが発症しやすいが、実臨床では必ずしも高リスクに分類された人のみから心血管イベントが発症するとは限らず、低リスクと考えられていた人からもイベントが発症することがある。したがって、リスクの高い人だけを治療するのではなく、低リスクであっても降圧治療により下げておくメリットがある。本メタ解析の結果はTROPHY試験(Julius S, et al. N Engl J Med. 2006;354:1685-97.)―すなわち、正常高値血圧の血圧レベルでも、2年間のARB治療によって66.3%が高血圧への進展を免れうる―に通ずるところがあり、興味深い。 本メタ解析の著者らの主張としては、降圧薬治療により一定の降圧効果が得られれば、MACEの1次および2次予防効果が得られ、それは現在降圧薬治療の適応とはならない低い血圧値であっても有効であるというものである。JSH2019によれば、「正常高値血圧および高値血圧レベル、かつ低・中等リスクであれば3ヵ月間の生活習慣の是正/非薬物療法を行い、高値血圧レベルでは高リスク者であってもおおむね1ヵ月は生活習慣の是正を行い、改善が見られなければさらなる非薬物療法の強化に加え、降圧薬療法の開始を検討する」とされている。しかし、そこまで待ってよいのであろうか? 低リスクだと本当に何も起こさないのであろうか? 本メタ解析の結果を考慮すると、血圧レベルに関係なく、心血管疾患既往の有無にかかわらず、まず降圧薬による治療を開始し、同時に生活習慣の修正を試みながら可能であれば徐々に薬を減量、中止していくというアプローチのほうがいいのではないだろうか?(実際にそのようにしている臨床医も多いと思われる)

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多剤併用の高齢者、他の薬剤継続もスタチン中止で心血管リスク増

 高齢者の多剤併用(ポリピル)は主要な健康問題に発展するため、近年問題になっている。処方薬を中止すれば薬の使用を減らすことができる一方、臨床転帰への影響は不確かなままである。そこで、イタリア・University of Milano-BicoccaのFederico Rea氏らがスタチン中止によるリスク増大の影響について調査を行った。その結果、多剤併用療法を受けている高齢者において、ほかの薬物療法を維持しつつもスタチンを中止すると、致命的および非致命的な心血管疾患発生の長期リスクの増加と関連していたことが示唆された。JAMA Network Open誌2021年6月14日号掲載の報告。 研究者らはイタリア・ロンバルディア地域在住で多剤併用を受けている65歳以上を対象に、他の薬剤を維持しながらスタチンを中止することの臨床的意義を評価することを目的として、スタチン中止に関連する致命的および非致命的転帰のハザード比(HR)と95%信頼区間[CI]を推定した。対象者は2013年10月~2015年1月31日の期間(2018年6月30日までフォローアップ)に、スタチン、降圧薬、糖尿病治療薬、および抗血小板薬を継続服用していた患者。データはロンバルディ地域の医療利用データベースから収集し、2020年3~11月に分析した。また、スタチン中止後最初の6ヵ月間にほかの治療法を維持した患者とスタチンも他剤も中止しなかった患者について、傾向スコアによるマッチングを行った。 主な結果は以下のとおり。・全対象者は多剤併用の高齢者2万9,047例だった(平均年齢±SD:76.5±6.5歳、男性:1万8,257例[62.9%])。また、5人に1人が虚血性心疾患(5,735例[19.7%]を、12人に1人が脳血管疾患(2,280例[7.9%])を併存しており、そのほかにも心不全(2,299例[7.9%])や呼吸器疾患(2,354例[8.1%])があった。・全例のうちスタチンを中止するも他剤を継続したのは5,819例(平均年齢±SD:76.5±6.4歳、男性:2,405例[60.0%])で、傾向スコアでマッチングさせ4,010例が評価対象となった。 ・スタチン中止群の患者はすべて維持した群と比較して入院リスクが高く、心不全ではHR:1.24(95%CI:1.07~1.43)、心血管疾患の発生はHR:1.14(同:1.03~1.26)、あらゆる原因による死亡ではHR:1.15(同:1.02~1.30 )だった。・年齢や性別、臨床プロファイルなどの層別分析によると、スタチン中止の効果が各カテゴリー間で有意に不均一であるという証拠は示されなかった。・negative exposure analysisによれば、プロトンポンプ阻害薬の中止が死亡率に影響を及ぼしたという証拠は得られなかった(HR:1.08、同:0.95~1.22)。

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スクリーニング普及前後の2型糖尿病における心血管リスクの予測:リスクモデル作成(derivation study)と検証(validation study)による評価(解説:栗山哲氏)-1404

本論文は何が新しいか? 2型糖尿病の心血管リスクを、予知因子を用いてリスクモデルを作成(derivation study)し、さらにその検証(validation study)を行うことで評価した。ニュージーランド(NZ)からの本研究は、国のデータベースにリンクして大規模であること、データの適切性、対象者の95%がプライマリケアに参加していること、新・旧コホートの2者の検証を比較して後者での過大評価を明らかにしたこと、などの点で世界に先駆けた研究である。本研究のような最新の2型糖尿病スクリーニング普及は、低リスク患者のリスク評価にとっても重要である。リスクモデル作成研究(derivation study)と検証研究(validation study) 実地医家にはあまり聞き慣れない研究手法かもしれない。糖尿病や虚血性心疾患などにおいてリスク予測のためCox回帰モデルからリスク計算をし、それを検証する2段階の統計手法。症状や徴候、あるいは診断的検査を組み合わせてこれらを点数化し、イベント発症の可能性に応じ患者を層別化して予測する。作業プロセスは、モデル作成(derivation)と、モデル検証(validation)の2つから成る。モデル作成のコホートを検証に用いた場合、内的妥当性が高いことは自明である。したがって、作成されたモデルは他のコホート患者群に当てはめて外的妥当性が正しいか否かを客観的に検証する必要がある。心血管疾患リスクの推定は、複数の因子(例:治療法の変遷、危険因子にはリスクが高いもの[肥満]と低いもの[喫煙]があることなど)によって過大評価あるいは過小評価される可能性がある。結果の概要1)リスクモデルの作成(derivation study):2004~16年に行ったPREDICT試験を母体にしたPREDICT-1°糖尿病サブコホート試験(PREDICT-1°)において用いられたリスクの予測モデル因子は、年齢・性・人種・血圧・HbA1c・脂質・心血管疾患家族歴・心房細動の有無・ACR・eGFR・BMI・降圧薬や血糖降下薬使用、などである。これら糖尿病および腎機能関連の18の予測変数を有するCox回帰モデルから、5年心血管疾患リスクを推定した。2)リスクモデルの検証(validation study):2004~16年にかけて施行されたPREDICT-1°におけるリスク方程式を、2000~06年に行われたNZ糖尿病コホート研究(NZDCS)におけるリスク方程式にて外的妥当性を検証した。PREDICT-1°は追跡期間中央値5.2年(IQR:3.3~7.4)で、登録した46,625例の中で4,114件の新規心血管疾患イベントが発生した。心血管疾患リスクの中央値は、女性で4.0%(IQR:2.3~6.8)、男性で7.1%(4.5~11.2)であった。これに対して外的検証で用いたNZDCSにおいては心血管疾患リスクが女性では3倍以上(リスク中央値14.2%、IQR:9.7~20.0)、男性では2倍以上(17.1%、4.5~20.0)と過大評価されていることが示された。このことから、最近行われたPREDICT-1°は、過去に行われたNZDCSよりも優れたリスク識別性を有することが検証された。また、この新しいPREDICT-1°のリスク方程式によってリスク評価を行わない場合、糖尿病の低リスク患者を(新たに開発された)血糖降下薬などで過剰診療する可能性なども示唆された。糖尿病の心血管リスクスクリーニングの世界事情 先進国においては、強化糖尿病のスクリーニングを受ける成人が増加している。このため、これらの先進国では糖尿病患者の疾病リスク予測は、より早期と考えられる患者群(低年齢・軽度の高血圧や脂質異常症)に移行しており、より多くの患者が症候性になるより早期に糖尿病と診断されるようになってきた。ちなみにNZでは、スクリーニング検査の推奨項目として空腹時血糖値を非空腹時HbA1cに置き換えることにより、対象者の糖尿病スクリーニング受診率を向上させる新たな国家戦略を立ち上げ、2001年に15%、2012年に50%、2016年には対象者の90%で糖尿病スクリーニング受診という目標を達成してきた。一方、アフリカ、東南アジア、西太平洋ではスクリーニングによる診断よりは臨床診断が主体となるため、心血管疾患リスクスコアを過大評価している可能性がある。本論文から学ぶこと 最新のPREDICT-1°においては、HbA1cによるスクリーニングが普及し、心血管疾患のリスクが低い無症状の糖尿病患者が多数確認された。これにより2型糖尿病において早期発見・早期治療が可能になる。また、心血管疾患リスク評価式は、時代の変遷に応じて現代の集団に更新する必要がある。私見であるが、糖尿病への早期介入推奨の潮流は、たとえばKDIGO 2020年の糖尿病腎症治療ガイドラインなどにすでに反映されている。このガイドラインでは、腎保護戦略のACE阻害薬、ARB、SGLT2阻害薬などの薬剤介入と平行して、自己血糖モニタリングや自己管理教育プログラムの重要性にも多くの紙面を割き言及している(Navaneethan SD, et al. Ann Intern Med. 2021;174:385-394. )。 翻って、本邦での糖尿病スクリーニングによる心血管リスク予測の課題として、国家レベルでの医療データベースの充実化、健診環境のさらなる改善、そして本研究におけるPREDICT-1°に準じた新たな解析法の導入などが考えられよう。

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慢性掻痒でピンッとくるべき疾患は?【Dr.山中の攻める!問診3step】第3回

第3回 慢性掻痒でピンッとくるべき疾患は?―Key Point―皮膚に炎症がある場合は皮膚疾患である可能性が高い82歳男性。2ヵ月前から出現した痒みを訴えて来院されました。薬の副作用を疑い内服薬をすべて中止しましたが、改善がありません。抗ヒスタミン薬を中止すると痒みがひどくなります。一部の皮膚に紅斑を認めますが、皮疹のない部位もひどく痒いようです。手が届かない背中以外の場所には皮膚をかきむしった跡がありました。皮膚生検により菌状息肉腫(皮膚リンパ腫)と診断されました。この連載では、患者の訴える症状が危険性のある疾患を示唆するかどうかを一緒に考えていきます。シャーロックホームズのような鋭い推理ができればカッコいいですよね。◆今回おさえておくべき疾患はコチラ!【慢性掻痒を起こす疾患】(皮膚に炎症あり)アトピー性皮膚炎、接触皮膚炎、乾皮症、虫刺され、乾癬、疥癬、表在性真菌感染(皮膚に炎症なし)胆汁うっ滞、尿毒症、菌状息肉腫、ホジキン病、甲状腺機能亢進症、真性多血症、HIV感染症、薬剤心因性かゆみ(強迫神経症)、神経原性掻痒(背部錯感覚症、brachioradial pruritus)【STEP1】患者の症状に関する理解不足を解消させよう【STEP2】慢性掻痒の原因を見極める、診断へのアプローチ■鑑別診断その1皮膚に目立った炎症があるアトピー性皮膚炎、接触皮膚炎、乾皮症、虫刺され、乾癬、疥癬、表在性真菌感染家族や施設内に同様の掻痒患者がいる場合には疥癬を疑う。皮疹の部位が非常に重要である。陰部、指の間、腋窩、大腿、前腕は疥癬の好発部位である。皮膚に問題がない場合でも、慢性的にかきむしると苔癬化、結節性そう痒、表皮剥脱、色素沈着が起きることがある。■鑑別診断その2正常に近い皮膚なら全身性疾患によるそう痒を考え、以下を考慮する胆汁うっ滞、尿毒症、菌状息肉腫、ホジキン病、甲状腺機能亢進症、真性多血症、HIV感染症、薬剤薬剤が慢性掻痒の原因となることがあるかゆみを起こす薬剤:降圧薬(カルシウム拮抗薬、ACE阻害薬、サイアザイド)、NSAIDs、抗菌薬、抗凝固薬、SSRI、麻薬上記の鑑別疾患時に必要な検査と問診検査:CBC+白血球分画、クレアチニン、肝機能、甲状腺機能、血沈、HIV抗体、胸部レントゲン写真問診:薬剤歴■鑑別診断その3慢性的なひっかき傷がある時は、以下の疾患を想起すること心因性かゆみ(強迫神経症)、神経原性掻痒(背部錯感覚症、brachioradial pruritus)背部錯感覚症は背中(Th2~Th6領域)に、brachioradial pruritusは前腕部に激烈なかゆみを起こす。原因は不明。【STEP3】治療や対策を検討する薬が原因の可能性であれば中止する。以下3点を日常生活の注意事項として指導する。1)軽くてゆったりした服を身に着ける2)高齢者の乾皮症(皮脂欠乏症)は非常に多い。皮膚を傷つけるので、ナイロンタオルを使ってゴシゴシと体を洗うことを止める3)熱い風呂やシャワーは痒みを引き起こすので避ける入浴後は3分以内に皮膚軟化剤(ワセリン、ヒルドイド、ケラチナミン、亜鉛華軟膏)や保湿剤を塗る。皮膚の防御機能を高め、乾皮症やアトピー性皮膚炎に有効である。アトピー性皮膚炎にはステロイド薬と皮膚軟化剤の併用が有効である。副作用(皮膚萎縮、毛細血管拡張、ステロイドざ瘡、ステロイド紫斑)に注意する。Wet pajama療法はひどい皮膚のかゆみに有効である。皮膚軟化剤または弱ステロイド軟膏を体に塗布した後に、水に浸して絞った濡れたパジャマを着て、その上に乾いたパジャマを着用して寝る。ステロイドが皮膚から過剰に吸収される可能性があるので1週間以上は行わない。夜間のかゆみには、抗ヒスタミン作用があるミルタザピン(商品名:リフレックス、レメロン)が有効ガバペンチン(同:ガバペン)、プレガバリン(同:リリカ)は神経因性のそう痒に有効である。少量のガバペンチンは透析後の痒みに効果がある。<参考文献・資料>1)Yosipovitch G, et al. N Engl J Med. 2013;368:1625-1634.2)Moses S, et al. Am Fam Physician. 2003;68:1135-1142.

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厳格な降圧により心血管イベント抑制、しかし腎機能低下例は多い〜SPRINT追跡最終報告(解説:桑島巖氏)-1397

 収縮期血圧120mmHg未満の厳格な降圧が140mmHg未満の緩和降圧に比べて心血管イベントを有意に抑制するという結果を示した2015年発表のSPRINT試験は、世界のガイドラインに大きな影響を与えた。本論文はランダム化解除後、約8ヵ月延長された後のイベントを解析した追跡解析である。 主要エンドポイント(心筋梗塞、脳卒中、心不全、心血管死)の発生は、厳格治療群1.77%/年対緩和治療群2.40%/年(HR:0.75)、全死亡は各々1.06%/年対1.41%/年でいずれも厳格降圧群で有意に少なく、2015年のオリジナル発表と同じ結果であった。 急性腎障害の発生に関しては、厳格降圧群が緩和降圧群に比べて有意に多いことはオリジナル論文ですでに明らかになっていたが、可逆性であると解釈されていた。しかし今回の追跡では、eGFRが30%以上低下した腎機能低下例が厳格降圧群148例(1.39%/年)、緩和降圧群41例(0.38%/年)でHR 3.67と大幅に増えていることは注目すべきである。腎透析や腎移植にまで至った例は両群ともいなかったようであるが、実臨床にあたっては厳格降圧による心血管イベント抑制を目指す一方で、腎機能に配慮しながら慎重な個別的降圧治療が必要であることを示している。

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3剤配合剤抵抗性の高血圧、腎デナベーションが有効/Lancet

 利尿薬を含む3剤配合降圧薬に抵抗性を示す高血圧患者に対し、超音波腎デナベーションは、2ヵ月後の収縮期血圧低下に有効であることが示された。偽治療に比べ、収縮期血圧値は中央値5.8mmHg低下したという。フランス・パリ大学のMichel Azizi氏らが、米国・欧州50ヵ所以上の医療機関を通じて行った無作為化単盲検偽治療対照試験の結果を報告した。血管内腎デナベーションは、軽症~中等症高血圧患者の降圧に有効だが、真性の抵抗性高血圧患者の有効性は示されていなかった。結果を踏まえて著者は、「降圧効果と腎デナベーションの安全性が長期的に維持されるのならば、抵抗性高血圧患者にとって腎デナベーションは降圧薬に追加しうる治療法となる可能性がある」と述べている。Lancet誌オンライン版2021年5月16日号掲載の報告。2ヵ月後の日中自由行動下収縮期血圧値をITT解析で比較 研究グループは、米国28ヵ所、欧州25ヵ所の3次医療機関を通じて、利尿薬を含む3種以上の降圧薬を服用しながら、診察室血圧が140/90mmHg以上の18~75歳を対象に試験を行った。被験者は、試験開始後4週間は、Ca拮抗薬・ARB・サイアザイド系利尿薬の配合剤(投与量一定)の1日1回服用に切り替えた。 その後、日中自由行動下血圧が135/85mmHg以上の被験者を施設で層別化し1対1の割合で無作為に2群に分け、一方には超音波腎デナベーションを、もう一方には偽治療を行った。患者とアウトカム評価者は割り付けをマスクされ、規定した血圧値を超えた場合には、追加の降圧薬投与を可能とした。 主要エンドポイントは、ITT解析で評価した2ヵ月後の日中自由行動下収縮期血圧値の変化だった。安全性もITT解析にて評価した。腎デナベーション群、2ヵ月後収縮期血圧値は8.0mmHg低下 2016年3月11日~2020年3月13日に、989例が試験に登録され、そのうち136例が無作為化を受けた。腎デナベーション群69例、偽治療群67例だった。 尿検査で確認した2ヵ月時点の配合剤の服用アドヒアランスは、腎デナベーション群82%(42/51例)、偽治療群82%(47/57例)と同等だった(p=0.99)。 2ヵ月後の日中自由行動下収縮期血圧値の変化は中央値で、腎デナベーション群-8.0mmHg(四分位範囲[IQR]:-16.4~0.0)、偽治療群-3.0mmHg(-10.3~1.8)と腎デナベーション群で有意な降圧が認められた(群間差中央値:-4.5mmHg[95%信頼区間[CI]:-8.5~-0.3]、補正後p=0.022)。完全なデータが得られた被験者における群間差中央値は-5.8mmHg(-9.7~-1.6、補正後p=0.0051)だった。 なお、安全性アウトカムについては、両群で差はみられなかった。

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簡易懸濁法に合わせた薬剤への変更提案【うまくいく!処方提案プラクティス】第37回

 2020年の診療報酬改定において、簡易懸濁法導入時の薬剤師の活動が評価され、経管投薬支援料が新設されました。簡易懸濁法を導入するには、服薬管理の手順の確認や問題点の整理など薬剤師の積極的な介入が必要です。今回は、簡易懸濁法導入の際に処方提案を行った事例を紹介します。患者情報80歳、女性(グループホーム入居)基礎疾患アルツハイマー型認知症、高血圧症、慢性便秘症介護度要介護3服薬管理施設職員が管理障害自立度B-2認知症自立度IIIb処方内容 ※嚥下困難のため粉砕指示あり1.ドネペジル錠5mg 1錠 分1 朝食後2.ベニジピン錠4mg 1錠 分1 朝食後3.カンデサルタン錠4mg 1錠 分1 朝食後4.アトルバスタチン錠10mg 1錠 分1 朝食後5.エスゾピクロン錠1mg 1錠 分1 就寝前本症例のポイント介入時の患者さんは、日中は怒りっぽい様子で夜間も大声を出し、食事などの介護拒否があるなど介護負担が大きい状況でした。また、嚥下機能も低下していて、服薬時に錠剤がそのまま口中に残っていることが多いため、施設職員がすべて粉砕して、食事に混ぜて服薬させていました。この施設では同様の理由で粉砕指示となっている施設利用者が半数を占めていたため、介護負担が大きく、粉砕時の曝露に不安を覚える職員も多くいました。そこで、主任介護士と相談のうえで簡易懸濁法導入のための勉強会とデモンストレーションを実施したところ、溶解が容易な口腔内崩壊錠に統一して懸濁投与にしたいという意向を聞き取りました。提案前の整理内容1)興奮を抑えるためにドネペジルの中止を検討ドネペジル錠5mgを入居前から長期的(開始時期不明)に服用していて、賦活化作用から過覚醒状態となっている可能性があると考えました。患者家族・施設側としても本人らしさを失うような治療は望んでいません。そこで、ドネペジルの治療効果よりも薬物有害事象の問題が大きいと考え、暴力行為などが問題になる前にドネペジルの中止を提案することにしました。2)口腔内崩壊錠への変更を検討簡易懸濁法導入のため、降圧薬とスタチンを当薬局採用の口腔内崩壊錠へ変更することを検討しました。ベニジピン錠4mg→アムロジピン口腔内崩壊錠5mg 1錠カンデサルタン錠4mg→オルメサルタン口腔内崩壊錠20mg 1錠アトルバスタチン錠10mg→ピタバスタチン口腔内崩壊錠2mg 1錠3)エスゾピクロン錠からゾルピデム口腔内崩壊錠への変更を検討粉砕したエスゾピクロン服用時の苦味あるいは起床時まで残る苦味が、不機嫌や食事拒否に影響しているのではないかと考えました。エスゾピクロンはゾピクロンと比較して苦味が軽減した薬剤ですが、依然として苦味を感じる患者は多いです1)。そこで、短時間作用型薬剤かつ口腔内崩壊錠のあるゾルピデムを提案することにしました。処方提案と経過訪問診療に同行し、ラウンド前の会議で医師に上記の提案を直接伝えたところ、1)のドネペジルの件は介護士との協議後に中止の承認を得ました。2)の口腔内崩壊錠への変更についても承認いただき、変更後のバイタル推移や患者さんの状況を慎重に確認していくことになりました。なお、事前に勉強会を行っていたこともあり、介護士の簡易懸濁の手技に問題はなく、患者さんからも好意的に受け入れられました。3)の提案については、エスゾピクロンの苦味が不機嫌や食事拒否につながるのは意外な悪影響だと注目され、変更して様子を見るという条件で承認を得ることができました。変更して1週間後には患者さんの易怒性や介護拒否はなくなり、介護負担も減少したことが介護士との会話で確認できました。血圧も乱れることなく140/80台で推移しています。肝心の服薬管理も簡易懸濁法導入により、粉砕・開封・食事への混入時の施設職員への曝露や薬剤ロスを減らすことができました。1)日病薬誌. 2017;53:192-196.

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厳格降圧vs.標準降圧:SPRINT最終報告/NEJM

 糖尿病や脳卒中の既往がない心血管イベント高リスク患者では、収縮期血圧目標を120mmHg未満とする厳格降圧が同目標を140mmHg未満とする標準降圧より、無作為割り付けされた治療を受けている期間と試験終了後の両方で、主要有害心血管イベントおよび全死因死亡の発生を有意に低下させることを、米国・アラバマ大学バーミングハム校のCora E. Lewis氏らがSPRINT試験の最終報告として示した。ただし、低血圧等の有害事象の発現率は、厳格降圧群で高かった。NEJM誌2021年5月20日号掲載の報告。試験終了後約1年間の追跡データも収集し解析 研究グループは、2010年11月~2013年3月に、50歳以上で糖尿病または脳卒中の既往がなく、降圧治療の有無にかかわらず収縮期血圧が130~180mmHgの心血管イベント高リスク患者(臨床的または不顕性心血管疾患、慢性腎臓病、フラミンガムリスクスコアに基づく10年以内の冠動脈疾患発症リスク15%以上、または75歳以上のいずれか1つ以上に該当)9,361例を登録し、収縮期血圧目標120mmHg未満の厳格降圧群(4,678例)と、同目標140mmHg未満の標準降圧群(4,683例)に無作為に割り付けた。 主要評価項目は、心筋梗塞、その他の急性冠症候群、脳卒中、心不全、または心血管死の複合である。試験期間終了時(2015年8月20日)までに発生した主要評価項目イベントは、主要解析のデータロック後に解析するとともに、2016年7月29日までの試験後の観察追跡データを解析した。追跡データを合わせても、120mmHgの厳格降圧群で有意に予後良好 追跡期間中央値3.33年において、試験期間中の主要評価項目イベントの発生は標準降圧群2.40%/年、厳格降圧群1.77%/年(ハザード比[HR]:0.73、95%信頼区間[CI]:0.63~0.86)、全死亡はそれぞれ1.41%/年および1.06%/年(0.75、0.61~0.92)であり、いずれも標準降圧群に比べ厳格降圧群で有意に低かった。低血圧、電解質異常、急性腎障害/腎不全、失神などの重篤な有害事象は、厳格降圧群で有意に高頻度であった。 試験期間中と試験後の追跡データを合わせると(追跡期間中央値3.88年)、厳格降圧群は標準降圧群に比べ主要評価項目イベントおよび全死亡が有意に低いままであった(主要評価項目のHR:0.76、95%CI:0.65~0.88、p<0.001、死亡のHR:0.79、95%CI:0.66~0.94、p=0.009)。有害事象の発生についても同様の傾向がみられたが、心不全の発生は両群で差は認められなかった。

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生活習慣病に対する薬物療法の実効的カバレッジが上昇

 生活習慣病リスク因子に対する、薬物療法の実効的カバレッジ(保健システムを通して、実際に人々に健康増進をもたらすことができる割合)が上昇していることが、医薬基盤・健康・栄養研究所の池田 奈由氏らによって明らかにされた。LDLなどのコレステロール値はスタチン系薬剤によって効果的に抑えられている一方、降圧薬および糖尿病治療薬の有効性を改善するにはさらなる介入が必要だという。Journal of Health Services Research & Policy誌2021年4月号の報告。 保健システム評価指標を用い、日本における高血圧症、糖尿病および脂質異常症治療に対する健康介入の実効的カバレッジについて、その傾向を分析した。 過去15回にわたる国民健康・栄養調査(2003~17年)から、40~74歳の9万6,863人の横断的データを取得した。高血圧症、糖尿病および脂質異常症の治療必要性は、診断基準値と同等以上のバイオマーカーを示すこと、または投薬があるかどうかで規定した。投薬治療を受けた患者において、実際にバイオマーカーが低下する見込みのある割合を治療効果および実効的カバレッジとして定義し、最近傍マッチングにて推定した。 主な結果は以下のとおり。・2003~17年における年齢調整罹患率は、およそ高血圧症40%、糖尿病7%、脂質異常症33%のまま推移した。・2013~17年に治療された患者における平均治療効果は、収縮期血圧14.8mmHg(95%信頼区間:14.2~15.4)低下、HbA1c 1.2%ポイント(0.8~1.6)低下、非高密度リポタンパク質コレステロール57.9mg/dL(56.6~59.2)低下であった。・2003~07年における実効的カバレッジ(高血圧症:48.4%[44.7~52.0]、糖尿病:43.8%[35.7~51.8]、脂質異常症:86.3%[83.1~89.5])に対し、2013~17年(高血圧症:76.2%[74.2~78.2]、糖尿病:74.7%[71.0~78.5]、脂質異常症:94.6%[93.3~95.9])では、有意に上昇していた。

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降圧薬で正常血圧者も心血管イベントリスク低下?/Lancet

 降圧薬により収縮期血圧を5mmHg低下させることで、心血管疾患の既往歴の有無を問わず、また血圧が正常値や正常高値であっても、主要心血管イベントのリスクが約10%低下することが、英国・オックスフォード大学のKazem Rahimi氏らBlood Pressure Lowering Treatment Trialists’ Collaboration(BPLTTC)の検討で示された。著者は、「これらの知見により、薬剤による一定程度の降圧治療は、その時点で治療の対象とされない血圧値であっても、主要心血管疾患の1次および2次予防において、治療対象の血圧値の場合と同様に有効であることが示唆される。これは、降圧治療が、主に血圧が平均値よりも高い場合に限定されている実臨床に変革を求めるものであり、降圧薬は、血圧値や心血管疾患の既往歴を問わず、心血管疾患の予防治療の選択肢と捉えるほうがよいことを示唆する」とし、「患者に降圧治療の適応を伝える際は、血圧の低下そのものに焦点を当てるのではなく、心血管リスクの低減の重要性を強調すべきである」と指摘している。Lancet誌2021年5月1日号掲載の報告。48件の無作為化試験のメタ解析 研究グループは、無作為化試験の個々の参加者のデータを用いて、ベースラインの収縮期血圧別に、降圧治療が主要心血管イベントのリスクに及ぼす影響を評価する目的で、メタ解析を行った(英国心臓財団などの助成による)。 対象は、薬剤による降圧治療を、プラセボまたは他の薬剤クラスの降圧薬と比較、またはより強力な治療レジメンと強力でない治療レジメンを比較した無作為化試験で、追跡期間が1,000人年以上の試験であった。心不全患者に限定された試験や、急性心筋梗塞などの急性期の患者を対象とした短期的な介入の試験は除外された。 1972~2013年の期間に公表された51件の試験のデータが収集された。データは統合され、ベースラインの心血管疾患(無作為化前での、脳卒中、心筋梗塞、虚血性心疾患の報告)の有無、収縮期血圧の全体および7段階の分類別(<120~≧170mmHg)に、降圧治療の効果について層別解析が行われた。 51件の試験のうち48件(34万4,716例)の無作為化臨床試験が解析に含まれた。無作為化前の平均収縮期/拡張期血圧は、心血管疾患の既往のある参加者(15万7,728例、平均年齢65.7[SD 8.9]歳、女性32.9%)が146/84mmHg、既往のない参加者(18万6,988例、65.3[9.6]歳、48.7%)は157/89mmHgであった。降圧治療の相対的効果は、収縮期血圧の低下の程度と比例していた。降圧薬は心血管疾患の予防治療の選択肢と捉えるべき 追跡期間中央値4.15年(四分位範囲:2.97~4.96)の時点で、4万2,324例(12.3%)において1つ以上の主要心血管イベント(主要評価項目)(致死的または非致死的脳卒中、致死的または非致死的心筋梗塞・虚血性心疾患、致死的または入院を要する心不全の複合)が発生した。 intention to treat解析では、ベースラインの心血管疾患既往なし例における主要心血管イベントの発生率は、1,000人年当たり、比較対照群が31.9(95%信頼区間[CI]:31.3~32.5)、介入群は25.9(25.4~26.4)であった。また、心血管疾患既往あり例では、1,000人年当たり、それぞれ39.7(39.0~40.5)および36.0(35.3~36.7)だった。 収縮期血圧の5mmHgの低下による主要心血管イベントのハザード比(HR)は、心血管疾患既往なし例が0.91(95%CI:0.89~0.94)、心血管疾患既往あり例は0.89(0.86~0.92)であり、全体で主要心血管イベントのリスクが10%低減した(HR:0.90、0.88~0.92)。 ベースラインの7段階収縮期血圧分類別の主要心血管イベント解析では、心血管疾患既往歴の有無にかかわらず、降圧治療による収縮期血圧の5mmHgの低下によって、正常値、正常高値を含むいずれの段階の血圧でも、主要心血管イベントの発生が改善される傾向が認められた。 層別解析では、ベースラインの心血管疾患既往歴の有無や収縮期血圧分類の違いで、主要心血管イベントに対する治療効果の異質性に関して、信頼性の高いエビデンスは認められなかった。

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RAAS系阻害薬と認知症リスク~メタ解析

 イタリア・東ピエモンテ大学のLorenza Scotti氏らは、すべてのRAAS系阻害薬(ARB、ACE阻害薬)と認知症発症(任意の認知症、アルツハイマー病、血管性認知症)との関連を調査するため、メタ解析を実施した。Pharmacological Research誌2021年4月号の報告。 MEDLINEをシステマティックに検索し、2020年9月30日までに公表された観察研究の特定を行い、RAAS系阻害薬と認知症リスクとの関連を評価した。ARB、ACE阻害薬と他の降圧薬(対照群)による認知症発症リスクを調査または関連性の推定値と相対的な変動性を測定した研究を抽出した。研究数および研究間の不均一性に応じて、DerSimonian and Laird法またはHartung Knapp Sidik Jonkman法に従い、ランダム効果プール相対リスク(pRR)および95%信頼区間(CI)を算出した。同一研究からの関連推定値の相関を考慮し、線形混合メタ回帰モデルを用いて検討した。 主な結果は以下のとおり。・15研究をメタ解析に含めた。・ACE阻害薬ではなくARBの使用により、認知症(pRR:0.78、95%CIMM:0.70~0.87)およびアルツハイマー病(pRR:0.73、95%CIMM:0.60~0.90)リスクの有意な低下が認められた。・ARBは、ACE阻害薬と比較し、認知症リスクの14%低減が認められた(pRR:0.86、95%CIDL:0.79~0.94)。 著者らは「ACE阻害薬ではなくARB使用による認知症リスク低下が示唆された。認知症予防効果に対するARBとACE阻害薬の違いは、独立した受容体経路に対する拮抗作用のプロファイルまたはアミロイド代謝に対する異なる影響による可能性がある」としている。

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高血圧 変わる常識・変わらぬ非常識 臨床高血圧の125年

身近な症候「高血圧」の臨床の歴史を正しく学ぶ!2021年は、コロトコフの聴診による血圧測定法が発明された1896年から125年目にあたります。現在では、高血圧は心血管病の最大のリスクであることが判明していますが、実は近年まで、血圧は高い方がよいとされていた事実もあります。当時は常識と考えられていたことも今では非常識。降圧薬の開発にもさまざまな試行錯誤がありました。本書では、臨床高血圧の125年を振り返り、時に厳しく、時にユーモアを交え、研究の道のりと最新情報をわかりやすく解説しています。現在の「常識」があれば救えたかもしれない国内外の大物政治家の話や、日本人研究者の知られざる貢献についても数多く紹介しています。事実を正しくみるという信念を貫いてきた桑島 巖氏が、臨床高血圧研究の物語に満ちた125年をわかりやすく解説しています。各時代の研究者たちがそれぞれに真摯に治療に向き合う姿に敬意を払いつつ、どこに誤りがあったのかを考察。コラムも多く記載されており、楽しみながら高血圧について学べる1冊です。高血圧診療に携わる方から学生の方、また医学史に興味のある方にもおすすめです。画像をクリックすると、内容の一部をご覧いただけます。※ご使用のブラウザによりPDFが読み込めない場合がございます。PDFはAdobe Readerでの閲覧をお願いいたします。画像をクリックすると、内容の一部をご覧いただけます。※ご使用のブラウザによりPDFが読み込めない場合がございます。PDFはAdobe Readerでの閲覧をお願いいたします。    高血圧 変わる常識・変わらぬ非常識臨床高血圧の125年定価2,420円(税込)判型A5判頁数168頁発行2021年3月著者桑島 巖(J-CLEAR 理事長/東京都健康長寿医療センター顧問)Amazonでご購入の場合はこちら

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