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国試勉強を“未来の武器”づくりだと考える【研修医ケンスケのM6カレンダー】第8回

国試勉強を“未来の武器”づくりだと考えるさて、お待たせしました「研修医ケンスケのM6カレンダー」。この連載は、普段は初期臨床研修医として走り回っている私、杉田研介が月に1回配信しています。私が医学部6年生当時の1年間をどう過ごしていたのか、月ごとに振り返りながら、皆さんと医師国家試験までの1年をともに駆け抜ける、をテーマにお送りして参ります。今年もあっという間に秋が過ぎ、寒く感じる日が続くようになりましたね。先月より埼玉県和光市内の国立保健医療科学院を中心に、公衆衛生の研修をしています。約1ヵ月経ってみて、改めて公衆衛生に魅了されています。この研修がなければまず初期臨床研修医の時点で行くことはなかったであろう、WHO本部やGavi、Global Fundをはじめ、厚生労働省や千葉県庁、習志野保健所など、さまざまな層の政策立案と現場を視察できて、毎日ワクワクが止まりません。皆さまいかがお過ごしでしょうか。卒業試験で心の余裕が全くない、そんな方でも気軽に読むことができるよう、少し変わったトピックを今月は扱おうと思います。なぜ国試の知識は役に立たないと言われるか?(WHO本部にて「そちらの方」)この記事を読む皆さんには、国試対策に真面目に取り組むことが、合格後の自分を大いに助けてくれるということを知ってほしいです。「国試の知識なんて、役に立たないよ」こんな言葉を耳にしたことはないでしょうか。実習に出た時に現場のドクターからの質問に答えられなかった時や、研修先の先輩からやる気をそがれるような一言を受けたときに、そう感じたことがあるかもしれません。ですが、あえてポジショントークをするなら、私は「そんなことない」と断言します。医師国家試験対策に真面目に取り組んでいたおかげで、初期臨床研修に出た時にその恩恵を受けたことが何度もあるからです。とはいえ、先ほどの「役に立たない」という発言にも一理あります。きっと「医学」と「医療」の違いが、背景にあるのだと思います。学生時代の座学が、実践の土台となる(スイスといえばチーズフォンデュ!美味しい!けど、物価高いぃ)「医療とは、医学の社会的実践である」これは元日本医師会長である武見太郎先生の言葉で、私が大学の卒業式答辞でも用いた言葉です。初期臨床研修は研修として学ぶ側面を持ちながら、仕事をする訳です。皆さんが持つ医学的知識を活用し診療をするには、さらなる座学の知識と、現場での多職種連携や、社会的側面も考慮した包括的な視点がなければなりません。研修の始めのうちは国家試験以上の知識や実践的なスキルがなく、病院独自のルールや物品の場所もわからないため、仕事ができないと責められることはありません。指導してくれる2年目の先輩が神様のように見えることでしょう。ところが、数ヵ月もすると、ある程度コツが掴めてくるようになります。少しずつ症例をこなすことができるようになります。そして、ここで重要なのは「仕事に慣れる」と「理解してできる」は違う、ということです。できなかった仕事ができる、より効率的にできるようになることは素晴らしいことです。ただここは冷静に、医学的な背景知識を理解して医療を実践できているか、は日々振り返るようにしてください。診療の中でもらったフィードバックや講義内容が実践できたか、そこがポイントです。そして、現場に出てから得た診療技術を根本から支えるのには、やはり学生時代に積み上げた座学の知識が欠かせません。実感が湧かないこともあると思いますが、研修医になってもなお国家試験問題を見ている私はそう思います。試験対策でつけた知識が、現場に出たあなたを支えてくれます。初期臨床研修医向けの本を1冊買う(クラシックな街並みにうっとり)近年の国家試験では、実践的な知識を直接問う問題はさすがに出題されませんが、知っておくと解くのが楽になる問題はあります。特にA・Dブロックの判断力を問う、得点差がつく臨床問題です。「臨床やっている立場からは当たり前に感じるけどな」と評される問題ですね。ところが、実践的な知識やTipsを医師国家試験対策用の教材から学ぶことはやや難しいです(MECのサマライズなど一部例外はありますが)。そこで私からの提案としては、初期臨床研修医向けの入門書を1冊買ってみることです。研修医になって遭遇する主な疾患や症候について概要がまとまっていて、かつ実践的なTipsも載っているので国家試験対策に役立つことはもちろん、社会人・研修医としての心構えについても記載されており、来年度以降の働き方や生活のイメージが膨らむことと思います。いずれ4月頃には1冊手にするようなものなので、肩の力を抜いて気分転換がてら、サクッと読んでみるのもありです。思わぬTipsと巡り合うかもしれませんよ。デジタルで、まとめの土台を作っておくところでみなさんは普段の学習には何を用いているでしょうか、どんなツールを用いているでしょうか。学部学生時代のうちに、研修医以降も使うことができるまとめ、的なものを作っておくと便利です。まとめを作ることが目的で肝心の試験対策が進まないのは本末転倒ですが、学生時代に使っていた教材や成果物が研修医になってすっかり忘れ去られるのはもったいないです。そして研修医になってから、自分なりのまとめがあると、診療や診療後の振り返りに非常に役立ちます。まとめはぜひデジタルデバイスを用いてください。有名どころだと、NotionやEvernote、PowerPointでもWordでも何でも良いです(筆者のおすすめはNotion)。必ずいつでも、どこでも見返す、編集できる形が好ましいです。タイピング操作が必要なまとめ方が良いです。研修医になってから苦労することの1つにカルテ入力があります。電子カルテの表示や操作はメーカーによってそれぞれなので仕方がないところが多いですが、よくよく聞くとタイピングが遅いだけでは?ということがあります。基本的な入力はもちろん、ショートカットキーも使いこなすことができるようにトレーニングしましょう。最後に(ジュネーブのシンボル大噴水とスイス国旗。綺麗で治安のいい街だな)いかがだったでしょうか。今月は卒業試験・国家試験対策に直接関わらない、合格後の生活に向けた、少し背伸びをした内容でした。研修医になってから医師国家試験を解いてみると、「この問題サラッと流していたけど、現場のここにつながるのか!」ということが多々あります。もしこの記事を読んでくださっている研修医の先生がいらっしゃったら、数問ぜひチャレンジしてみてください。試験対策に日々励むことは合格を勝ち取ることはもちろん、未来の診療技術向上に大いに役に立つと信じて、今日もまた頑張ってください!応援しています!

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心不全に伴う体液貯留管理(3):症例1(97歳女性)【Dr.わへいのポケットエコーのいろは】第9回

心不全に伴う体液貯留管理(3):症例1(97歳女性)前回、下大静脈の見かたとVMTスコアの出し方について解説しました。今回は、VMTスコアを用いて管理を行った症例を紹介します。息切れの症状が強い97歳女性【今回の症例】97歳女性主訴室内歩行時の息切れが困る現病歴タクシー運転手の息子と2人暮らし。室内での転倒が多いものの、息子のために家事をしたいという希望が強く、台所に立つ。5分おきに椅子に座りながら、洗い物・料理などを行っている。内服薬(服薬管理者:息子)カンデサルタン8mg 2×、アムロジピン2.5mg 1×、ミラベグロン25mg 1×、エペリゾン50mg 1×、酸化マグネシウム1,320mg 2×、ゾルピデム10mg 1×併存症高血圧、脂質異常症、高尿酸血症、不眠症、過活動性膀胱、便秘症バイタル体温36.6℃、血圧174/97mmHg、脈拍68回/分 整、安静時SpO2 97%(room air)今回は、室内で歩く時に息切れの症状が強い97歳女性を例に考えます。会話をすると「先生、ぜえぜえ、病院? いや、絶対行かない。家にいたい」と言います。このように途切れ途切れで喋るのですが、息子のために家事がしたいと主張します。家事は5分おきに椅子に座ってやっているとのこと。内服薬を見ていただくとわかると思うのですが、心不全の指摘はありませんでした。そのような場合、息切れの要素を考えると心不全だけではなく、肺気腫や間質性肺炎もチェックしていく必要があります。それを踏まえて、エコーの所見を見ていきたいと思います。このような方は、意外に安静時のSpO2は高いことがあり、この患者も97%でした。治療経過初回の心エコーを見てみましょう。下大静脈(IVC)を見ると20mmです。呼吸性変動があるので推定右房圧は8mmHgとなります(図1)。これだけではなんとも言えないですね。図1 IVCのエコー像画像を拡大する続いて、VMTを見ていきましょう。こちらは僧帽弁が先に開いています(図2)。そのため、点数としては2点となります。また、胸水の有無を確認すると、胸水はありませんでした(図3)。図2 三尖弁と僧帽弁のエコー像画像を拡大する図3 胸水の有無画像を拡大するどうでしょうか。もしVMTスコアがなければ、IVCが20mmというだけで心不全として治療するかどうか、結構迷いどころですよね。もちろんこの2つの指標に限らず、余裕があれば心エコーをしっかり行っても問題ありません。それでは短い動画を見てみましょう。治療介入前の心エコー像心エコー検査を行うと、駆出率(EF)は45%程度、大動脈弁口面積(AVA)は1.5cm2程度、そして弁の石灰化は強いことがわかります。つまり、慢性心不全の中等度の大動脈弁狭窄症(AS)があって、徐々に悪くなっていったのだろうということで、クリニカルシナリオ(CS)分類はCS2。そして、ステージ分類ではステージC、NYHA分類は3と判断できました。この患者の治療介入として、フロセミド20mgを投与してみました。すると、1ヵ月後の評価では、下腿のむくみは少し減ったようですが、まだ少し残っている印象でした。VMTでは三尖弁と僧帽弁が開くタイミングがほぼ同時になり、IVCの拡張もやや改善がみられました。治療開始1ヵ月後の三尖弁と僧帽弁のエコー像まだまだこれだけでは評価が難しいため、16週後までの経過を見ていきました。すると、どうでしょうか。心エコーの動画を見てみてください。治療開始16週後の三尖弁と僧帽弁のエコー像体重は2kgしか減っていませんでしたが、エコーの所見としては三尖弁のほうが先に開いていて、VMTスコアが1~0程度になっていたのです(図4)。図4 治療開始16週後のNT-proBNP・症状・VMTスコア画像を拡大する今回の症例をまとめます。治療介入から4ヵ月後には、何かにつかまらなくても立って夕飯の支度ができるようになりました。そして、ふらつきが減って室内を動き回って、30分連続して台所に立つことができたとのことです。高齢のため家族のサポートも重要ですが、治療介入が在宅の患者さん自身の「やりがい」の回復に繋がったケースでした(図5)。図5 治療介入16週後の患者の状態画像を拡大する

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街路樹の多さは歩行者の転倒を防ぐ?

 街路樹は、木の成長に伴い根が隆起して歩道を押し上げ(いわゆる根上がり)、歩行者がつまずいて転倒する危険性を高める。そのため、訴訟リスクへの懸念から植樹運動に消極的な建物所有者もいる。しかし新たな研究で、街路樹が多い地域ほど歩行者の転倒事故が少なく、街路樹が転倒防止に役立つ可能性が示唆された。米コロンビア大学メイルマン公衆衛生大学院教授のAndrew Rundle氏らによるこの研究結果は、「American Journal of Epidemiology」に10月14日掲載された。 Rundle氏は、「歩道関連の負傷は、公衆衛生上の大きな負担となっている。屋内での転倒は個人の健康要因と関連付けられることが多いのに対し、屋外での転倒は環境条件に左右される。この研究結果は、樹木が周囲の気温を下げることで転倒リスクを軽減する可能性があることを示唆している」と同大学のニュースリリースの中で述べている。 この研究では、緊急医療サービス(EMS)のデータを用いて、樹冠被覆率(ある土地の面積に対して木の枝や葉が覆っている面積の割合)と歩行者の転倒の発生場所との関連を調べる多都市・位置情報に基づくケースコントロール研究を実施できるかが検討された。調査対象は、2019年4月から9月の間にEMSが転倒事故で負傷した歩行者に対応した497地点と、対照として転倒事故が発生しなかった994地点とした。 その結果、転倒発生地点の樹冠被覆率の中央値は8%であるのに対し、対照地点は14%であり、樹冠被覆率が高いと転倒が発生する確率は低くなることが示された(調整オッズ比0.57、95%信頼区間0.45〜0.74)。 研究グループは、「われわれの知る限り、本研究は、樹冠被覆率と歩行者の転倒との間の逆相関関係を示す2番目の研究だ。これら2件の研究における樹冠被覆率の転倒防止効果は、最終的には樹木の気温を下げる効果により説明できる可能性がある。というのも、近年の文献では、気温の上昇が屋外での転倒リスクを高めることを示唆しているからだ」と述べている。 では、なぜ高温が転倒リスクを高めるのか。研究グループは、「高温は、人体の生理機能に悪影響を及ぼすだけでなく、道路や歩道の表面を劣化させる。高温によりアスファルトが軟化し、歩道の舗装材がずれて転倒の危険を生じさせる」と説明している。その上で研究グループは、「木陰はその危険性を軽減する可能性がある」と述べるとともに、「歩くことは健康にさまざまな恩恵をもたらすが、この研究結果は、都市の緑がおそらく周辺環境を冷却することで歩行者の安全性に寄与している可能性を示す新たなエビデンスとなるものだ」との見方を示している。 Rundle氏は、「今後の研究では、樹冠の冷却効果がどのように転倒リスクに直接影響するのかを調べるべきだ」と話している。

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第37回 ありふれた転倒が引き起こす「見逃せない頭部外傷」【救急診療の基礎知識】

●今回のPoint1)転倒は「ありふれた外傷」ではない! 2)初診時のCT所見が正常でも油断は禁物!3)慢性硬膜下血腫は予後良好とは限らない!【症例】80歳男性。施設職員が部屋を訪れると、ベッド上で普段と様子が異なる状態を発見した。しばらく様子をみていたが、症状が改善しないため、職員の付き添いのもと車椅子で外来を受診した。●受診時のバイタルサイン意識E4V4M5/GCS血圧142/90mmHg脈拍78回/分(整)呼吸18回/分SpO296%(RA)体温36.6℃瞳孔3.5/3mm +/+頭部外傷の現状救急外来では外傷患者を診療する機会が多いですが、その多くは激しい交通事故ではなく、高齢者の自己転倒です。自宅や路上でつまずいて転倒し、体動困難のため受診し、精査の結果、大腿骨近位部骨折と診断される症例は非常に多いと思います。そして、それ以上に多いのが頭部外傷です。外傷症例の約3分の1が頭部外傷であり、とくに75歳以上の高齢者ではその頻度が非常に高いのが現状です1)。高齢者が平地で転倒し、頭部を打撲して救急外来を受診するケースは日常的に見られます。その多くは軽症頭部外傷(Glasgow Coma Scale [GCS]14~15)です。頭部外傷の診療では、Canadian CT Head Rule(CCHR)などを参考に頭部CT検査の必要性を判断することが一般的です。しかし、CCHRはもともと「意識障害、意識消失、健忘を認める症例」を対象としており、それに満たない症例では個別の判断が求められます。わが国ではCT機器が広く普及し、また初療を担当する医師が研修医や非専門医であることも多いため、頭部CT検査が比較的多くオーダーされているのが現状です。もちろん、検査の必要性を常に考慮することは重要ですが、患者自身が画像検査を希望する場合も少なくありません。そのため、「不要だから撮らない」と突き放すよりも、検査の意義や限界を丁寧に説明し、納得のうえで方針を決定することが望ましいといえます。中等症以上の頭部外傷(GCS≦13)*ではCT検査後に入院管理となることが多いですが、軽症頭部外傷の場合には帰宅となるケースが多いでしょう。その際、今後起こり得る合併症として慢性硬膜下血腫(CSDH)の可能性を説明することが多いと思いますが、どのような点を意識して説明しているでしょうか。具体的な数値とともに整理しておきましょう。*わが国では頭部外傷のうちGCS14~15点を軽症頭部外傷と定義しますが、海外では13~15点を軽症と分類しています。軽症頭部外傷後の頭蓋内出血リスクとその経過軽症頭部外傷患者で頭部CT検査を行い、とくに異常所見が認められなかった場合、その後に頭蓋内出血を新たに認めることは、どの程度あるのでしょうか。慢性硬膜下血腫は、頭部外傷後数週間を経て発症するものと定義されていますが、それより早期に頭蓋内出血を生じる場合があります。外傷直後のCT検査で異常を認めないにもかかわらず、数時間から数日後に新たに出血を呈する病態を「遅発性頭蓋内出血」と呼びます。この遅発性出血の発生率はおおむね0.3%程度であり、発症までの期間は3~5日が一般的な数字です。抗血栓薬服用の有無で発生率に有意差はなく、これらの結果からルーティンの入院や再CT検査は不要とされています2)。一方、初診時に急性硬膜下血腫(ASDH)を認めた患者(平均71.4歳、男性56.7%)では、慢性硬膜下血腫への移行率は約5.5%と報告されています。抗凝固薬の使用や、初回入院時に穿頭ドレナージを受けたか否かは有意な関連を示しませんでした3)。さらに、慢性硬膜下血腫に対して穿頭ドレナージを施行した症例を対象とした解析では、急性硬膜下血腫の約12~13%が慢性硬膜下血腫へ移行していたと報告されています4)。また、慢性硬膜下血腫症例のうち、画像上で急性硬膜下血腫を先行していたものは37%に過ぎず、残り63%は急性期出血を伴わず発生しているとの報告もあります5)。すなわち、初診時の頭部CTで異常を認めない場合、早期に出血を生じることは極めてまれです。しかし、その後に慢性硬膜下血腫へと移行するか否かは、初期血腫量や抗血栓薬使用、基礎疾患などの要因により異なり、経過を丁寧に追わなければ判断が難しいといえるでしょう。慢性硬膜下血腫の実像慢性硬膜下血腫と聞くと、高齢者が頭部外傷後に意識変容や歩行障害を認め来院し、穿頭ドレナージ術を行い帰宅。比較的予後が良い疾患に感じるかもしれませんが、本当にそうでしょうか?わが国の慢性硬膜下血腫の現状をお伝えしておきましょう。平均年齢は76歳、男性が68%と多くを占めます。70歳以上が78%を占め、とくに80歳代が37%と最多です。90%以上が穿頭ドレナージを受け、開頭術を要したのは1.5%でした6)。意識障害は54%に認められ、加齢とともに頻度が増加します。高齢者の意識障害の原因として脳卒中などを含めた神経救急の割合は20%程度ですが、急性経過の意識障害では慢性硬膜下血腫も重要な鑑別疾患の1つです。高齢化が進むわが国においては、「なんとなく普段と違う」といった訴えであっても、慢性硬膜下血腫を念頭に置く必要があります。もちろん、症状を説明しうる他の原因がある場合には過度に懸念する必要はありませんが、外傷歴がない、あるいは確認できないからといって安易に否定してはいけません。退院時に予後良好(mRS**0~2)であったのは全体の72%にとどまり、すなわち約3割は介助を要する状態です。けっして「予後良好」とは言えず、年齢とともに悪化傾向を示します。自宅退院率は70歳未満では90%以上ですが、80歳代では約30%に低下します6)。**modified Rankin Scale(mRS):脳卒中などの後遺症による日常生活動作の自立度を0~6の7段階で評価するスケールです。0は「症状なし」、6は「死亡」を意味します。1~2は軽度の後遺症で自立生活が可能、3~5は介助を要する段階を示します。最後に「頭部外傷の経過観察は丁寧に」慢性硬膜下血腫は、けっして「軽い病気」ではありません。高齢化の進行とともに、その発症頻度は今後さらに増加していくと考えられます。高齢者は筋力や視力の低下に加え、基礎疾患や多剤内服を抱えていることが多く、転倒リスクが常に存在します。転倒後の対応はもちろん重要ですが、そもそも転倒を防ぐための予防的な取り組みこそが最も効果的です。医療現場では、頭部CT検査の撮影閾値がやや低くなることは止むを得ませんが、受傷機転を丁寧に確認し、CT検査で異常を認めなくても「時間を味方につけた対応」を意識することが大切です。小さな転倒が大きな転帰を左右することがあります。だからこそ、「ありふれた外傷」を軽視せず、経過を丁寧に見守る姿勢が求められます。 1) Shibahashi K, et al. World Neurosurg. 2021;150:e570-e576. 2) Chenoweth JA, et al. JAMA Surg. 2018;153:570-575. 3) Wasfie T, et al. Am Surg. 2022;88:372-375. 4) Liebert A, et al. Neurosurg Rev. 2024;47:247. 5) Edlmann E, et al. J Neurotrauma. 2021;38:2580-2589. 6) Toi H, et al. J Neurosurg. 2018;128:222-228.

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骨粗鬆症、予防には若年からの対策が重要/J&J

 ジョンソン・エンド・ジョンソン メディカル カンパニーは、10月20日の世界骨粗鬆症デーに関連し、疾患啓発イベント「親子で話す骨のこと」を開催した。慶應義塾大学 整形外科 教授の中村 雅也氏、歌手の早見 優氏が登壇し、若年期からの骨粗鬆症予防の重要性を伝えた。 骨粗鬆症の患者数は毎年増加傾向にあり、2023年のデータで受診者数は138万人、うち9割以上を女性が占める1)。中村氏は「女性は閉経後から骨密度が急速に低下し、70代以降では骨折リスクが大幅に上昇する。患者数増加は高齢化に加え、疾患への意識向上による受診増加も要因だと考えられる」と解説した。さらに中村氏は、「骨粗鬆症は進行するまで自覚症状が乏しいため、注意を払われにくい。高齢になって転倒や骨折を経験してから骨の健康を考えるのでは遅い。閉経期を迎える40~50代から骨密度変化に関心を持ち、早期に介入することが重要」と強調した。 そして、さらに早期からの介入の重要性についても言及。「骨の健康は中年~高齢期だけの問題ではない。骨密度のピークは10〜20代で形成されるが、20代で骨量が低い人は、その後の減少がより顕著になる傾向がある」と指摘。若い時期の十分な栄養、運動、日光浴によるビタミンD合成といった生活習慣が、将来の骨折リスクを左右するとした。「若い女性は過度なダイエットで十分な栄養素を摂れていないケースが多く、これが骨密度のピークを下げている可能性がある」と指摘した。さらに、運動と日光曝露の重要性も指摘、「日焼けを気にして屋内に閉じこもる人もいるが、少しの時間でも日光に当たり、体を動かすことが大切だ」とした。2人の娘の親である早見氏も「10代のしっかりとした食生活や運動による“骨貯金”が、40~50代になって効いてくるということですね」と応じた。骨粗鬆症に関する最新のエビデンスと推奨事項・40~50代では閉経後に骨密度が低下しやすくなる一方、10~20代の骨密度にも注目が集まっている。20代は骨密度のピークを迎える時期だが、生活習慣によってそのピーク値は変動し、将来の骨密度に影響を与えるとされる。若い時期の過度なダイエットや運動が骨密度低下の引き金になる可能性もある。・国内の大学による20年以上の追跡調査では、20代で骨密度が低かった人は、40代でより骨密度が低下しやすい傾向があることが明らかになっている。・骨への機械的刺激が骨形成を促進するため、骨密度を高めるためには、負荷のかかる下肢運動(階段昇降、かかと上げ、軽いジャンプなど)などが効果的。・運動環境にも注意が必要。日光を浴びない屋内ジムだけで運動していると、骨を強くするために必要なビタミンDの生成が不足する可能性がある。紫外線を気にする人が多いが、朝15分程度の日光浴でも十分な効果が期待できる。・カルシウムだけでなく、ビタミンD、ビタミンK、タンパク質、ミネラルなどをバランスよく摂取することが骨の健康維持には不可欠。 中村氏は、臨床現場での課題として「骨粗鬆症は診断の機会が限られている」ことを指摘。とくに閉経前後や長期ステロイド使用中の女性、低BMI、家族歴を有する患者など、ハイリスク群への骨密度測定(DXA)の積極的実施を推奨した。中村氏は「骨粗鬆症の予防は、家庭での会話から始まる」とし、親世代が自身の骨の健康に関心を持ち、子供世代と共に学ぶことで、ライフコースを通じた骨粗鬆症予防の文化が形成されることの重要性を訴えた。

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肝疾患患者の「フレイル」、独立した予後因子としての意義

 慢性肝疾患(CLD)は、肝炎ウイルス感染や脂肪肝、アルコール性肝障害などが原因で肝機能が徐々に低下する疾患で、進行すると肝硬変や肝不全に至るリスクがある。今回、こうした患者におけるフレイルの臨床的意義を検討した日本の多機関共同後ろ向き観察研究で、フレイルが独立した予後不良因子であることが示された。研究は、岐阜大学医学部附属病院消化器内科の宇野女慎二氏、三輪貴生氏らによるもので、詳細は9月20日付けで「Hepatology Reseach」に掲載された。 CLDは進行すると予後不良となることが多く、非代償性肝硬変患者では5年生存率が約45%と報告されている。このため、将来的な疾患進行や合併症のリスクを減らすには、高リスク患者の早期特定が重要である。一方、最近の研究では、フレイルもCLD患者の予後に影響する独立因子であることが示されており、肝機能だけでなく身体全体の脆弱性を考慮した評価の重要性が指摘されている。Clinical Frailty Scale(CFS)は2005年に開発され、米国肝臓学会もCLD患者のフレイル同定に推奨する評価ツールであるが、これまで日本人CLD患者においてCFSを用いた評価は行われておらず、その臨床的意義は明らかでなかった。こうした背景から、著者らはCFSを用いて日本人CLD患者のフレイルの有病率、臨床的特徴、ならびに予後への影響を明らかにすることを目的とした。 本研究では、2004年3月~2023年12月の間に岐阜大学医学部附属病院、中濃厚生病院、名古屋セントラル病院に入院した成人CLD患者とした。CFSスコアは、入院当日の情報に基づき、併存疾患、日常生活動作、転倒リスクに関する質問票を後ろ向きに評価し、スコアが5以上(CFS 5~9)の場合をフレイルと定義した。本研究の主要評価項目は全死亡とした。群間比較には、カテゴリ変数に対してはカイ二乗検定、連続変数に対してはマン・ホイットニーU検定を用いた。生存曲線はカプラン-マイヤー法で推定し、群間差はログランク検定で比較した。フレイルが死亡に与える予後影響はCox比例ハザードモデルで評価し、結果はハザード比(HR)と95%信頼区間(CI)で示した。フレイルと関連する因子は多変量ロジスティック回帰モデルで解析した。 最終的に、本研究には715人のCLD患者(中央値年齢67歳、男性49.5%)が含まれた。最も多かった病因はウイルス性(38.7%)であり、続いてアルコール性(22.2%)、代謝機能障害関連(9.5%)であった。Child-Pugh分類およびModel for End-Stage Liver Disease(MELD)スコアの中央値はそれぞれ7と9であり、CFSスコアの中央値は3であった。これらの患者のうち、フレイルは137人(19.2%)に認められた。フレイル患者のCFSスコア中央値は6であり、年齢が高く、BMIが低く、肝予備能も低い傾向にあった。 中央値2.9年の追跡期間中に221人(28.0%)が肝不全などで死亡した。フレイル患者は、非フレイル患者に比べて有意に生存期間が短かった(中央値生存期間:2.4年 vs. 10.6年、P<0.001)。多変量Cox比例ハザード解析の結果、フレイルはCLD患者における独立した予後不良因子であることが示された(HR:1.75、95%CI:1.25~2.45、P=0.001)。 また、フレイルの決定因子に関して、多変量ロジスティック回帰解析をおこなったところ、高齢、肝性脳症、低アルブミン血症、血小板減少、国際標準比(INR)の延長がフレイルと関連していることが示された。さらにフレイルの有病率はChild-Pugh分類の悪化とともに有意に増加し、Child-Pugh A群では4%、B群では22%、C群では55%の患者にフレイルが認められた。 著者らは、「本研究から、CLD患者ではフレイルが高頻度に認められ、独立した予後不良因子としての役割を持つことが示された。予後への影響を考慮すると、CLD患者ではフレイルを日常的に評価し、転帰改善を目的とした介入を検討することが望ましい」と述べている。

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ホスピスでよく使われる薬は認知症患者の死亡リスクを増加させる

 ホスピスでケアを受けているアルツハイマー病および関連認知症(ADRD)患者に対するベンゾジアゼピン系薬剤(以下、ベンゾジアゼピン)および抗精神病薬の使用は、患者の死を早めている可能性のあることが新たな研究で示された。ホスピス入所後にベンゾジアゼピンまたは抗精神病薬の使用を開始したADRD患者では、使用していなかった患者と比べて180日以内に死亡するリスクがそれぞれ41%と16%高いことが示されたという。米ミシガン大学の老年精神科医であるLauren Gerlach氏らによるこの研究の詳細は、「JAMA Network Open」に10月14日掲載された。 ホスピスケアは、もともとは死期の近いがん患者の精神的・身体的苦痛を緩和するために作り出されたが、今ではその対象は認知症などの他の末期疾患患者にも広がっている。研究グループによると、ホスピスに入所するADRD患者の割合は、1995年の1%未満から2023年には25%にまで増加している。しかし、ADRDはがんと比べると、長期にわたり予測不可能な経過をたどるため、ホスピス入所患者が必ずしもすぐに死亡するわけではない。実際、これらの患者の約20%は、ホスピス入所条件である予後6カ月を超えて生存し、ケアプログラムを終えていると研究グループは述べている。 研究グループによると、ホスピス入所患者の興奮、不安、せん妄の管理ではベンゾジアゼピンや抗精神病薬が処方されることが多い。しかし、これらの薬の使用は、転倒や混乱、鎮静のリスクを高め、患者の生活の質(QOL)に影響を及ぼす可能性がある。 この研究でGerlach氏らは、ホスピス施設に処方箋の報告が義務付けられていた2014年7月1日から2018年9月30日までの間の全国のメディケアデータを分析した。対象は、ホスピス入所前の6カ月間にベンゾジアゼピンや抗精神病薬の使用歴がないADRD患者13万9,103人(平均年齢87.6歳、女性75.8%)とした。ホスピス入所時にベンゾジアゼピンおよび抗精神病薬の使用リスクが高いとされた患者はそれぞれ10万58人と11万4,933人で、入所後、4万7,791人(47.8%)と1万5,314人(13.4%)で実際に薬の使用が開始されていた。患者のホスピス滞在日数の平均は130日を超えていた(ベンゾジアゼピン使用患者で136.4日、抗精神病薬使用患者で154.0日)。 ベンゾジアゼピンと抗精神病薬の使用患者と非使用患者を1対1でマッチングしたペア(ベンゾジアゼピンで2万6,872ペア、抗精神病薬で1万240ペア)を抽出して、それぞれの薬の使用と死亡との関連を検討した。その結果、使用患者では非使用患者と比べて、薬の使用開始後180日以内に死亡するリスクが、ベンゾジアゼピンでは41%、抗精神病薬では16%、有意に上昇することが示された。 Gerlach氏は、「こうした早期の処方パターンは、これらの薬が個々の患者に合わせて調整されるのではなく、標準的なホスピスケアの実践の一部として使用されているケースがあることを示唆している」と述べている。その上で同氏は、「ホスピス滞在期間中に認知症患者に使用する薬は、QOLを低下させるのではなく、向上させるものでなければならない」と話す。さらに同氏は、「メディケアのホスピス給付は、加入者のほとんどががん患者で、病状の経過が短く予測可能であることを想定して設計されている。病気の進行が何年にもわたることがあるADRD患者に適したケアモデルと処方ガイドラインが必要だ」と指摘している。

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認知症/MCI患者に対する抗コリン薬の使用率は?

 認知機能が低下している高齢者は、抗コリン作用を有する薬剤の累積使用による副作用の影響を受けやすいとされている。しかし、このような患者における入院リスクに関する研究は依然として限られており、入院の具体的な原因に焦点が当てられていない場合が多い。マレーシア・University MalayaのRenuka Rahoo氏らは、軽度認知障害(MCI)または認知症の高齢者における抗コリン薬の負担とその役割、さらに入院リスクおよび入院理由との関連を調査した。Clinical Interventions in Aging誌2025年9月25日号の報告。 本後ろ向き研究は、2022年に物忘れ外来を受診したMCIまたは認知症の高齢者を対象に実施した。社会人口学的情報、併存疾患、認知機能評価、機能評価、神経精神症状、服薬歴に関するデータを電子カルテから収集した。抗コリン薬による負担は、抗コリン作用負荷(ACB)スコアを用いて評価した。ACBスコアと入院リスクとの関連を評価するため、Cox比例ハザード分析を用いた。入院の根本原因は、異なるACBスコア群間で比較した。 主な結果は以下のとおり。・解析対象となった高齢者は合計657例、平均年齢は80.66±7.39歳。・抗コリン薬の使用率は35.5%、ACBスコアの平均値は0.8±1.3であった。・ACBスコアが高い高齢者は、抗コリン薬による負担のない場合と比較し、介護施設入居、神経精神症状の発現、認知機能および身体機能の低下、処方薬数の増加との関連が認められた。・単変量解析では、ACBスコアが1~2の高齢者は、入院リスクが高かった(ハザード比:1.84、95%信頼区間:1.17~2.90)。しかし、交絡因子を調整後、この関連性は減少した。・入院理由は、肺炎(5.7%)が最も多く、次いで急性腎障害(3.8%)、せん妄(2.6%)、転倒(2.6%)であった。・とくに、重篤な心血管イベントまたは褥瘡感染で入院した高齢者は、ACBスコアが有意に高かった。 著者らは「MCIまたは認知症の高齢者の3人に1人は抗コリン薬を使用しており、これは健康状態を悪化させる可能性がある」とし「これらの知見は、この脆弱な集団における抗コリン薬の負担を最小限に抑えるために、定期的な服薬レビューと減薬戦略の重要性を強調している」と結論付けている。

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外来ベンゾジアゼピン減少戦略、入院中の不眠症治療標準化がポイント

 不眠症は、頻繁にみられる臨床的愁訴であり、入眠障害、夜間の中途覚醒、早朝覚醒、熟眠障害といった症状を呈する。これらの睡眠障害は、さまざまな精神疾患や身体疾患と関連していることが多く、生活の質の低下や広範な社会的負担につながる可能性がある。ベンゾジアゼピン系薬剤(BZD)は入院患者の不眠症マネジメントに広く用いられているが、とくに高齢者においては、認知機能低下、転倒、骨折などの有害事象との関連が指摘されている。広島大学病院では、より安全な処方実践を促進するため、入院患者向け処方集およびクリニカルパスガイダンスを2021年11月に改訂し、入院中のBZD新規処方開始抑制を目指している。同病院の大本 亜沙妃氏らは、外来患者における睡眠薬処方を分析し、入院時の不眠症治療薬の標準化が、外来の不眠症治療薬処方に及ぼす影響を評価した。Cureus誌2025年7月29日号の報告。 外来患者における睡眠薬処方について、記述統計学的手法を用いて分析するため、医療記録をレトロスペクティブにレビューした。本分析では、入院患者の不眠症治療薬の標準化が、医師による外来患者への不眠症治療薬処方の動向に及ぼす影響を評価した。 主な結果は以下のとおり。・研究期間中、BZDおよびBZD以外の薬剤の処方率が低下したことが示された。・さらに、3ヵ月間にわたり、BZDの新規処方が減少傾向にあることが認められた。 著者らは「入院患者における不眠症治療薬としてのBZDの処方を制限することで、医師による外来患者への不眠症治療薬の処方が適正化される可能性があることが示唆された」と結論付けている。

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内視鏡鎮静に新たな選択肢、レミマゾラムが覚醒時間を半減/ムンディファーマ

 2025年6月、短時間作用型ベンゾジアゼピン系鎮静薬レミマゾラムベシル(一般名:レミマゾラム、商品名:アネレム)の新規格である20mg製剤が消化器内視鏡診療時の鎮静を効能・効果として新規に承認され、既存の50mg製剤も追加承認を取得した。50mg製剤は2020年に全身麻酔の導入・維持を適応として承認されていたが、今回の承認により、消化管内視鏡時の鎮静用途において、国内初のベンゾジアゼピン系薬剤として保険適用を取得した。これを受け、ムンディファーマは9月19日、「消化器内視鏡診療における鎮静の重要性について」と題したメディアセミナーを開催した。北里大学病院 内視鏡センター長の池原 久朝氏が登壇し、内視鏡検査の現状と新薬の臨床的意義について講演した。内視鏡受診を阻む苦痛と不安、従来薬は転倒リスクも【池原氏】がんは依然として日本人の死因の第1位であり、とくに胃がん、大腸がんの早期発見は内視鏡検査に依存する部分が大きい。にもかかわらず、検診受診率は欧米諸国に比べ低水準に留まる。この背景には、検査時の苦痛、恥ずかしさ、鎮静薬に対する不安などがあるとされる。これまで、日本の臨床現場における内視鏡検査の鎮静には、ミダゾラムやプロポフォールなどの薬剤を適応外で用いてきた。ただ、これらは鎮静からの回復に時間がかかり、リカバリールーム不足による検査数の制限や、高齢者の転倒リスクの要因となっていた。検査・処置の双方で鎮静効果を証明 今回のレミマゾラム承認の根拠となったのは、私たちが行った複数の医師主導治験だ。もともと鎮静薬は価格が安く、適応外使用の薬剤であっても保険適用となる現状があり、なかなか企業主導治験が組みにくい状況だった。私たちが論文から見つけたレミマゾラムはその有効性が期待できるものだったが、臨床現場で広げるためには、臨床試験で有用性を証明し、正面突破で保険承認を得るしかないと考え、医師主導治験に踏み切った。 最初に行った用量探索試験では、日本人に対しては、米国で承認されている7mgの半量以下の3mgで効果があることがわかった。その後、内視鏡検査目的として上部・下部消化管内視鏡を対象に、プラセボ対照ランダム化二重盲検試験を実施。上部では92%、下部では95%の鎮静成功率を示した。続く内視鏡処置を対象とした試験では、早期胃がんの内視鏡的粘膜切除術、大腸ポリープ切除、胆道結石摘出、小腸内視鏡など多様な処置を対象に実施し、62例で98%の処置成功率を達成した。いずれの試験でも重篤な有害事象は認めなかった。特筆すべきは「覚醒の速さ」 レミマゾラムの特徴は、なんといっても超短時間作用型である点だ。投与後速やかに鎮静導入が得られ、検査終了後は5~9分程度で歩行可能なレベルにまで覚醒する。従来の薬剤では検査終了から30分程度のリカバリー時間が必要だったが、これが半分以下にまで短縮する。具体的には、これまで1人当たり1時間かかっていた外来の内視鏡検査が30分で終わるイメージだ。実際、北里大学病院における鎮静ありの内視鏡検査はこれまで35~50%程度だったが、レミマゾラム導入後は急速に増加している。覚醒の速さでリカバリールームの回転率が改善し、より多くの患者に鎮静を提供できる環境が整ったためだ。とくに炎症性腸疾患(IBD)患者など定期的に内視鏡検査が必要な患者では、苦痛の少ない検査が継続受診率を高め、長期の予後改善に寄与することが期待できる。追加の臨床試験も進行中 今回承認されたレミマゾラムは、日本の内視鏡診療を「苦痛を伴う検査」から「快適で継続しやすい検査」へ転換する「ゲームチェンジャー」になり得る薬剤だ。患者の心理的障壁を取り除き、検診受診率を高めることは、胃がん・大腸がんの早期発見・治療に直結する。現在、検査後に車の運転が可能かを検証する追加の臨床試験を進行しており、車での来院者が多い地方の医療機関・患者にとっては重要なポイントになるだろう。市販後の全例調査を含め、本薬剤を臨床現場に広げるためにデータをさらに蓄積していく予定だ。

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災害時に不眠を訴える避難者への対応【実例に基づく、明日はわが身の災害医療】第7回

災害時に不眠を訴える避難者への対応大地震の後、余震が続く避難所において、不眠を訴える高齢の避難者がいます。本人はこれまで睡眠障害を経験したことはないものの、慣れない避難生活により睡眠が十分に取れず、体調を崩すことへの不安を口にしています。こうした状況にどのように対応すればよいでしょうか?災害時の不眠私自身、東日本大震災の医療支援として南三陸町に入った際、小学校の校舎を避難所として使用しました。当時は灯油が不足し、暖房が使えない中、寝袋にくるまっても寒さでまったく眠れなかった経験があります。避難者は、住居の損壊、親族の安否への不安、さまざまな環境要因により、十分な睡眠が得られないことは容易に想像できます。事実、東日本大震災後には、東京において不眠を訴える人が普段の1.5~2倍に増加し、被害の少なかった大阪でも、繰り返される被災映像の影響で急性ストレス障害に似た症状が現れ、不眠が増加したことが報告されています1)。避難所や車中泊は、自宅と比較して、睡眠環境(騒音・寒冷/暑熱・硬い寝具・プライバシー欠如)が悪く、睡眠連続性を悪化させ、自律神経・血糖変動にも影響することが示されました2)。今回は、災害時の睡眠障害について、その対応を概説します。DPATの介入が必要な不眠避難者に対して、まずせん妄や精神病症状の有無を確認することが大切です。強い不眠を訴え、その後、朦朧状態になったり、不穏・興奮状態のほか、手の震えや発汗、動悸などがみられればせん妄を疑います。習慣的に飲酒のある方が震災後に急に断酒した後、せん妄が出現することがあります(振戦せん妄)。また、大切な人を亡くして自殺念慮がある場合もあります。これらの症状がみられた場合には、DPAT(災害派遣精神医療チーム)へ相談が必要です3)。DPATは、被災地域の支援を目的とした専門的な研修・訓練を受けた災害派遣精神医療チームであり、私は何度も一緒に活動したことがありますが、とても親身になり専門的な介入をしてくれます。非薬物療法が原則せん妄や精神症状でない場合には、原則、非薬物療法が最優先されます。「眠れないから薬がほしい」と希望される方もいますが、災害など大きな精神的ストレスがかかった直後の睡眠問題は一般的であり、決して珍しいことではないこと、自然軽快が多いことを説明します。避難所の管理者と相談し、環境を整えるように努めることも大切です。具体的には、マットや毛布など寝具の整備、夜間の騒音・光の低減、就寝スペースの区画、耳栓・アイマスク配布などが推奨されています2)。夜間に消灯して眠る、というのは実は容易ではなく、逆に目がさえることもあり、寝なくてはいけない、という強迫観念も不眠を助長します。そのようなときは、昼寝を取り入れる、夜中起きていられるスペースを作ってあげることも有効です。不眠には、睡眠に対する考え方(認知)が関与しているといわれています。睡眠に対する考え方を指導してくれるCognitive Behavior Therapy for Insomnia(CBT-I)と呼ばれる不眠症に対する認知行動療法があり4)、これもDPATに相談してもいいでしょう。実際の例として、私自身も不眠を感じるときにはYouTubeで漫才を聴くようにしています。すると条件反射のように眠りにつくことができ、漫才を最後まで聴き終えたことはほとんどありません。やむを得ない場合の薬物療法もともと不眠で睡眠薬が処方されている場合、離脱症状が出現する場合があるので継続することが必要です。残量が少ない場合には錠剤を半分に割るといった工夫をするように指導します。どうしてもやむを得ない場合には、短期間のベンゾジアゼピン系の睡眠剤を短期間使用することもありますが、依存性・転倒のリスクもあり、例外的です。小児や思春期には原則処方しないこととされています5)。国立精神・神経医療研究センター精神保健研究所の三島 和夫先生が書かれた「震災時の睡眠マニュアル6)」はわかりやすく、とても読みやすいので参考にしていただければ幸いです。また、非専門家や一般の方向けに、被災者や犯罪の被害を受けた方などと関わる時の対応として、「サイコロジカルファーストエイド(心理的応急処置)」を知っておくことが推奨されています7)。WHOが中心となって開発したものが最も広く用いられています。 1) Sugiura H, et al. Prevalence of Insomnia Among Residents of Tokyo and Osaka After the Great East Japan Earthquake: A Prospective Study. Interact J Med Res. 2013;2:e2. 2) Ogata H, et al. Evaluation of Sleep Quality in a Disaster Evacuee Environment. Int J Environ Res Public Health. 2020;17:4252. 3) DPAT(災害派遣精神医療チーム) 4) Edinger JD, et al. Behavioral and psychological treatments for chronic insomnia disorder in adults: an American Academy of Sleep Medicine clinical practice guideline. J Clin Sleep Med. 2021;17:255-262. 5) Sateia MJ, et al. Clinical Practice Guideline for the Pharmacologic Treatment of Chronic Insomnia in Adults: An American Academy of Sleep Medicine Clinical Practice Guideline. J Clin Sleep Med. 2017;13:307-349. 6) 三島和夫. 震災に関連した不眠・睡眠問題への対処について. 国立精神・神経医療研究センター精神保健研究所 7) 国立精神・神経医療研究センター ストレス・災害時こころの情報支援センター. WHO版PFAマニュアル

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日米の高齢者がん手術、術後転帰に大きな違い

 高齢者の消化器がん外科手術において、日本と米国の全国データベースを比較すると、年齢に伴う術前合併症や術後転帰の変化パターンは類似しているものの、移動能力や機能面では両国間に差があることが明らかになった。福島県立医科大学の小船戸 康英氏らによる本研究はAnnals of Gastroenterological Surgery誌2025年4月21日号に掲載された。 がんは日米両国における主要な死因の1つであり、生涯に少なくとも一度はがんを経験する人口の割合は日本で5割超、米国で4割弱と推定されている。外科治療は依然としてがんの根治的治療の主軸であり、世界的な高齢化のなか、併存疾患や虚弱状態を多く有する高齢がん患者を対象とした研究の重要性が増している。 研究者らは、日本の臨床データベース(National Clinical Database:NCD)と米国の米国外科学会全国外科品質改善プログラム(American College of Surgeons National Surgical Quality Improvement Program:NSQIP)から、65歳以上で消化器がん(食道、胃、大腸、十二指腸、肝臓、膵臓、胆道)の外科手術を受けた患者のデータを収集し、65~74歳、75~84歳、85歳以上に分け、術前の併存疾患、認知機能、移動機能、術後合併症などを比較した。 主な結果は以下のとおり。・日本(NCD)から2,703例、米国(NSQIP)から1,342例が対象となった。【手術の内訳】 上部消化管手術(食道切除:日本12.6%/米国2.1%、幽門側胃切除:28.3%/1.9%、胃全摘:10.6%/0.4%)は日本のほうが多く、下部消化管手術(結腸右半切除:13.4%/50.5%、低位前方切除:14.0%/25.9%)は米国のほうが多かった。肝切除(8.9%/7.6%)および膵頭十二指腸切除(12.2%/11.6%)の頻度は同様だった。【術前の併存疾患】 両国とも加齢に伴い、呼吸困難、高血圧、出血性疾患、緊急手術が増加したが、肥満率と緊急手術の頻度は米国でより高かった。慢性疾患に対するステロイドの使用や術後48時間以内の敗血症の頻度も米国では高齢群のほうが頻度が高かったが、日本ではこの傾向はみられなかった(慢性疾患に対するステロイド/日本:65~74歳1.7%、75~84歳1.3%、85歳以上0.6%、米国:4.7%、6.5%、10.4%、48時間以内の敗血症/日本:0.3%、0.1%、0.6%、米国:4.7%、7.2%、13.0%)。【認知機能】 両国とも、年齢と共に認知症の既往、代理人による同意、術後せん妄の頻度は上昇し、両国で類似した傾向を示した。【移動能力/機能】 両国とも、年齢と共に歩行補助器具の使用、転倒歴、高転倒リスク、新たな歩行補助具の使用、術後の移動機能低下などが増加した。これらの変数および術後の機能依存低下の頻度は米国のほうが高かった。【術後合併症】 多くの術後合併症は年齢との関連を示さなかったが、術後敗血症、長時間の人工呼吸器使用、新たな歩行補助具使用や移動機能低下、自宅以外への退院は米国のほうが多かった。 研究者らは「米国と日本の両国において、消化器がんの外科手術を受ける65歳以上の高齢者では、年齢の上昇に伴って術前併存症の増加や認知機能低下、術後の移動能力/機能が低下することは共通していた。しかし、移動機能の低下や自宅以外への退院などの項目では両国間で大きな差がみられ、米国のほうがより重篤で頻度が高い傾向があった。日本では、術前からの回復可能性や退院先・介護体制を見据えた手術適応や統合的なケアが比較的整っている可能性がある。今後、高齢患者の手術適応、術前準備、術後リハビリ、退院調整などを、国や地域の実情に応じて最適化することが求められる」とした。

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小児の創傷処置【すぐに使える小児診療のヒント】第6回

小児の創傷処置子供は日々、転んだりぶつけたりして小さなけがを繰り返します。診療所で出会う「擦り傷」「切り傷」は一見軽症に見えることもありますが、保護者の不安は強く、処置や家庭での経過観察の仕方について「どう説明すべきか」と迷うことは少なくありません。症例5歳、男児。公園で走って遊んでいたら転倒して前額部に創傷を負ったため、受診。父親「血が出ていてびっくりしたので、とりあえず絆創膏を貼ってきました。消毒したほうがよいでしょうか?」小児の創傷処置の基本1.消毒は不要かつては「まず消毒」というのが常識でした。しかし、アルコールやヨードは殺菌効果を有する一方で、健常な細胞まで障害し、創傷治癒を遅らせることが知られています。NEJMの総説(Singer, 2008)でも一般的な創傷に対して消毒は推奨されておらず、流水による十分な洗浄が最も重要です。2.乾燥ではなく湿潤環境「かさぶたを作って自然に治す」という従来の考え方は、実は治癒を遅らせ、瘢痕も残りやすいことが明らかになっています。湿潤環境を維持すると血管新生やコラーゲン合成が促進され、その結果、上皮化が進み早く治癒します。疼痛が少なく、創面がきれいに治ることも多くの臨床試験で示されています。創面は適切な被覆材で覆い、乾燥させないことが原則です。3.基本的に抗菌薬は不要小さな創傷には必ずしも抗菌薬を投与する必要はありません。むしろ耐性菌リスクや副作用の観点から投与すべきではないとも言えます。ただし、動物咬傷や深い創傷、汚染創では抗菌薬の投与を検討します。また、破傷風リスクの評価も重要です。三種・四種・五種混合ワクチンには、破傷風ワクチンが含まれています。母子手帳を確認してワクチン歴が不明・不十分であれば破傷風トキソイドの接種を考慮します。■破傷風トキソイド・免疫グロブリン製剤の投与基準■破傷風リスクの評価低リスク汚染がなく小さい創傷高リスク土壌や糞便・唾液で汚染されたもの、動物咬傷、熱傷、刺傷、挫滅創、皮膚欠損を伴うものなど縫合や特別な処置が必要な創傷の見分け方「この創は縫合すべきか」は診療の現場で迷いやすいポイントです。以下に、縫合や病院への紹介を考慮すべき目安をまとめます。圧迫しても止血が得られない皮膚の離開を伴う(寄せても傷口が自然に開いてしまう)皮弁や段差を伴う関節に及ぶ深い創、筋膜や脂肪層が露出している顔など整容上重要な部分汚染が強く、十分な洗浄が難しいガラス片や砂利など皮下異物が疑われる爪床損傷基本的に皮下に達する場合は縫合が必要になることが多いです。また処置の「Golden period」の目安は四肢では6~10時間程度、頭皮や顔面では24時間程度とされています。それを超えてはならないというほど厳密なものではありませんが、受傷から時間が経つと縫合が難しくなったり、縫合した場合の感染リスクが上がったりしてしまうため、迷う場合は早めの処置または紹介が望ましいでしょう。一方で、手技として縫合が可能であっても、創が大きい・複雑な形状・強い汚染を伴う場合、縫合が難しい部位(眼瞼、耳介、口唇、陰部など)、体動の抑制が難しく安全に処置できない場合は、より専門的な施設に紹介したほうが安心です。小児では鎮静下での処置が必要となるケースもあり、施設ごとの体制などに応じて判断することが大切です。紹介先については、小児専門病院が近くにない地域では、形成外科医院、または形成外科や救急科を有する総合病院などへの紹介が現実的です。地域の医療資源に応じて適切な連携先を把握しておくことが望まれます。紹介の際には「受傷からの時間」「洗浄の有無」「止血の状態」を伝えると、2次施設での処置が円滑になります。被覆材の種類と使い分け被覆材は「創傷を乾燥させない」ためのものであり、滲出液の量や部位に応じて選ぶことが多いです。保護者には「貼りっぱなしではなく、1日1回は観察し、汚れたり剥がれたりしたら交換してください」と伝えるとよいでしょう。一般的な絆創膏:浅い擦過傷や小切創に。最も身近。乾燥はしやすい。フィルム材(例:オプサイト):滲出液が少ない浅い創に。透明なので観察はしやすい。ハイドロコロイド材(例:デュオアクティブ):滲出液の多い擦過傷や浅い潰瘍に。滲出液を吸収すると親水性ゲルになり、創面に固着せず湿潤環境を維持できる。疼痛も少ない。柔軟なので指尖部や鼻翼など凹凸のある部位にフィットしやすい。アルギネート材(例:カルトスタット)やハイドロファイバー材:滲出液が多い創に。吸収性に優れる。止血効果もある。ガーゼ+ワセリン:固着を防ぐ。ガーゼは非固着性のもの(例:デルマエイド)を使用するとよりよい。冒頭の症例では、まず創部を流水で洗浄しました。創部の離開はなく、擦過傷で縫合の必要性はありませんでした。滲出液が多かったためハイドロコロイド材で被覆し、経過観察を指示しました。四種混合ワクチンの定期接種が完了していたため、破傷風トキソイドも不要と判断しました。保護者への説明の工夫子供がけがをして受診する保護者の多くは、「痛がっていてかわいそう」「この傷はきれいに治るのだろうか」「傷跡が残ってしまわないか」「自分が目を離していたせいではないか」と、不安や自責の気持ちを抱えて来院します。だからこそ、どんなに小さな傷でも傷の状態を的確に評価し、適切なケア方法をわかりやすく伝えることが非常に重要です。説明の際には、保護者を責めるのではなく、まずは「見せに来てくれてありがとうございます」と声をかけることで、安心感を与えることができます。こうした一言が、その後の信頼関係を築く大切なきっかけになるように感じます。まとめ小児の創傷処置において大切なのは、1.消毒ではなく流水洗浄2.乾燥ではなく湿潤環境3.抗菌薬は原則不要、咬傷や汚染創では適応を判断4.処置が必要と考えられる症例はためらわず紹介5.被覆材は創の性状に応じて選択保護者が根拠に基づいたケアを実践できるように説明するとともに、縫合や特殊処置が必要な場合は迅速に紹介する必要があります。子供のけがは日常の中でなかなか避けられない出来事ですが、適切な初期対応と説明によって、子供と保護者双方の安心につなげることができます。次回は、食物蛋白誘発胃腸炎(消化管アレルギー)についてお話します。 1) Singer AJ, et al. N Engl J Med. 2008;359:1037-1046. 2) Junker JP, et al. Adv Wound Care. 2013;2:348-356. 3) Nuutila K, et al. Adv Wound Care. 2021;10:685-698. 4) Trott AT原著. 岡 正二郎監訳. ERでの創処置 縫合・治療のスタンダード 原著第4版. 羊土社;2019. 5) Minnesota Department of Health:Summary Guide to Tetanus Prophylaxis in Routine Wound Management

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老年医学のトビラ

何となくではなく そろそろちゃんと勉強したい皆さん 5Mでひらく高齢者診療へようこそ目の前には常に高齢の患者さんがいます。老年医学の「トビラ」は、現在の高齢者診療の複雑な問題の象徴です。本書はこのトビラを開く鍵となる「5つのM」に沿って解説しています。5つのMとは、Mobility(身体機能)、Mind(認知機能・精神的側面)、Medications(薬剤)、Multicomplexity(複雑性・多疾患併存)、Matters Most(最も大切なこと)。これを軸に、転倒やせん妄、認知症、うつ病・不眠、薬剤、フレイル、尿失禁・便秘、さらに高齢者の「見えない」「聞こえない」「においがわからない」「食べられない」の訴えにアプローチしていきます。スクリーニング・予防,事前指示、ケアのゴール設定も含めて1冊で勉強できる、これが老年医学入門の「新定番」です。画像をクリックすると、内容の一部をご覧いただけます。※ご使用のブラウザによりPDFが読み込めない場合がございます。PDFはAdobe Readerでの閲覧をお願いいたします。目次を見るPDFで拡大する目次を見るPDFで拡大する老年医学のトビラ定価4,840円(税込)判型A5版頁数276頁発行2025年8月監修山田 悠史ご購入はこちらご購入はこちら電子版はこちら医書.jpでの電子版の購入方法はこちら紙の書籍の購入はこちら

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厳格な血圧コントロールは心臓の健康だけでなく費用対効果も改善

 厳格な血圧コントロールは心血管疾患のリスクが高い患者の健康だけでなく、医療費の費用対効果にも良い影響をもたらすことが、新たな研究で示された。収縮期血圧(SBP)の目標値を120mmHg未満に設定することは、それよりも高い目標値を設定する場合と比べて、より多くの心筋梗塞や脳卒中、心不全、そのほかの心疾患の予防につながるほか、費用対効果もより優れていることが明らかになったという。米ブリガム・アンド・ウイメンズ病院のKaren Smith氏らによるこの研究結果は、「Annals of Internal Medicine」に8月19日掲載された。 論文の筆頭著者であるSmith氏は、「この研究は、心血管リスクが高い患者やその診療に当たっている医師にとって、厳格な血圧目標値の達成に向けて取り組むことにさらなる自信を与えるはずだ」とマス・ジェネラル・ブリガム(MGB)のニュースリリースの中で述べている。また同氏は、「われわれの研究結果は、SBPが120mmHg未満という厳格な目標値が、より多くの心血管イベントを予防し、かつ費用対効果も優れていることを示唆している。さらに、このことは測定値が必ずしも完璧でない場合でも当てはまる」と説明している。 現行の血圧管理のガイドラインでは、SBPが130mmHg以上の場合を高血圧と定義している。米国心臓協会(AHA)によると、正常血圧はSBPが120mmHg未満であり、120~129mmHgの場合は血圧上昇とされている。 Smith氏らはこの研究で、画期的な臨床試験として知られるSystolic Blood Pressure Intervention Trial(SPRINT)などの既存の臨床試験や文献のデータ(2013~2018年)を収集・統合した。その上で、そのデータを用いて、50歳以上の心血管疾患のリスクが高い患者がSBPの目標値を、1)120mmHg未満、2)130mmHg未満、3)140mmHg未満に設定した場合の生涯にわたる心臓の健康リスクをシミュレーションした。また、降圧薬による重度の副作用のリスクや、日常的な血圧測定における一般的な誤差も考慮に入れた。 その結果、血圧測定値に誤差が含まれていても、SBPの目標値を120mmHg未満に設定する方が、130mmHg未満に設定する場合よりも多くの心血管疾患を予防できることが示された。一方、降圧の目標値をより厳格に設定することで、処方薬や通院回数が増え、医療費も高くなり、また転倒や腎障害、低血圧、徐脈など治療関連の有害事象の発生頻度も高まることが明らかになった。それでもなお、目標値を120mmHg未満に設定することは、目標値をより高く設定した場合と比べて費用対効果に優れていた。例えば、目標値を120mmHg未満とすることは、質調整生存年(QALY)1年当たり4万2,000ドル(1ドル147円換算で約617万円)のコストと関連していたが、この額は130mmHg未満を目標とした場合と比べてわずか1,300ドル(同約19万円)高いだけであった。 ただしSmith氏は、「降圧薬に伴う有害事象のリスクを考慮すると、厳格な血圧コントロールが全ての患者に適しているとは言えない」と述べ、慎重な解釈を求めている。さらに同氏は、「患者の希望に基づき、患者と医師が協力して適切な治療強度を見極めることが重要だ」と強調している。

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システム統合型の転倒予防プログラムは高齢者に有効か/JAMA

 世界的に高齢化が急速に進む中、医療資源に乏しい地域に居住する高齢者における効果的な転倒予防戦略のエビデンスは十分ではないとされる。中国・Harbin Medical UniversityのJunyi Peng氏らは、同国農村部の転倒リスクがある高齢者において、プライマリヘルスケアのシステムに組み込まれた転倒予防プログラムの有効性を評価する、12ヵ月間の実践的な非盲検クラスター無作為化並行群間比較試験「FAMILY試験」を実施し、転倒のリスクが有意に低減したことを明らかにした。研究の成果は、JAMA誌オンライン版2025年8月25日号で報告された。128の農村で、バランス・機能訓練の転倒予防効果を評価 本研究は、2023年9月19日~11月15日に中国の4省128農村で被験者を登録して行われた(Harbin Medical Universityなどの助成を受けた)。これらの農村を、プライマリヘルスケアのシステムに統合された転倒予防介入として、参加者にバランス・機能訓練と地域参加型の健康教育を行う群(介入群)、または地域の積極的な関与がない通常ケアとして健康教育のみを行う群(対照群)に、1対1の割合で無作為に割り付けた。 解析には、年齢60歳以上で、過去12ヵ月間に少なくとも1回の転倒を経験、または転倒の懸念があると自己報告した2,610例(介入群[64農村]1,311例、対照群[64農村]1,299例)が含まれた。平均追跡期間は、介入群358.4(SD 31.5)日、対照群357.7(31.1)日であった。ベースラインの参加者全体の年齢中央値は70.0歳(四分位範囲:66.4~74.2)で、1,553例(59.5%)が女性だった。1年1回以上の転倒報告が有意に少ない 主要アウトカムである、介入後12ヵ月間に少なくとも1回の転倒を報告した参加者の割合は、対照群が38.3%(497/1,298例)であったのに対し、介入群は29.7%(388/1,308例)と有意に少なかった(オッズ比[OR]:0.67[95%信頼区間[CI]:0.48~0.91、p=0.01)。 6つの副次アウトカムのうち、次の5つは対照群に比べ介入群で有意に良好であった。(1)1人年当たりの平均転倒件数:介入群0.8(SD 2.4)件vs.対照群1.4(3.5)件、率比(RR):0.66(95%CI:0.46~0.94)、p=0.02 (2)転倒による身体の損傷:15.2%vs.21.6%、OR:0.65(95%CI:0.48~0.88)、p=0.005 (3)30秒椅子立ち上がりテスト(CST:≦12回で転倒リスク上昇):10.4(SD 3.8)回vs.9.9(4.0)回、RR:1.06(1.02~1.09)、p=0.003 (4)4段階バランステスト(FSBT:徐々に難しくなる4つの姿勢をそれぞれ10秒ずつ保持。臨床的に意義のある最小差[MCID]の設定はない)のすべてを完遂した参加者の割合:33.7%vs.26.5%、OR:1.49(95%CI:1.20~1.84)、p<0.001 (5)QOL(平均EQ-5D-5Lスコア):0.89(SD 0.19)点vs.0.85(0.22)点、β:0.03(95%CI:0.02~0.05)、p<0.001 ただし、(3)30秒CSTは、MCID(2回)を満たさなかった。(5)QOL(平均EQ-5D-5Lスコア)は、高齢者の転倒予防のMCID(0.03点)を満たした。TUGテストには差がない もう1つの副次アウトカムであるTimed Up and Go(TUG)テスト(椅子から立ち上がって10フィート[3メートル]歩き、向き直って椅子に戻り座る一連の動作。所要時間≧13.5秒で転倒リスク上昇)では、機能的移動能力を評価した。平均所要時間は、介入群13.3(SD 4.6)秒、対照群13.2(5.6)秒(β:0.18[95%CI:-0.26~0.62]、p=0.42)であり、両群間に差を認めなかった(MCIDは2秒の短縮)。 著者は、「プライマリヘルスケアシステムへの転倒予防プログラムの統合が、中国農村部の高齢者の自己報告による転倒のリスクを有意に低減することが明らかとなった」「このバランス訓練と機能訓練、さらに地域参加型の健康教育から成る介入は、人口の高齢化と医療資源の制約の両方に直面する低・中所得国で拡大する可能性がある」としている。

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看護師の燃え尽きがインシデントを招く?データが示す実態【論文から学ぶ看護の新常識】第28回

看護師の燃え尽きがインシデントを招く?データが示す実態看護師の燃え尽き症候群(バーンアウト)が、患者の転倒や投薬エラーといったインシデントの発生と関連していることが、最新の大規模メタアナリシスで示された。Lambert Zixin Li氏らによる研究で、JAMA Network Open誌2024年11月4日号に掲載された。看護師のバーンアウトと患者の安全、満足度、ケアの質との関連:システマティックレビューとメタアナリシス研究チームは、看護師のバーンアウトと、患者の安全、満足度、ケアの質との関連の大きさと、その調整因子を評価することを目的に、システマティックレビューとメタアナリシスを実施した。Web of Scienceなどの7つのデータベースを用いて、1994年1月1日から2024年2月29日までの研究を検索した。主な結果は以下の通り。32ヵ国、28万8,581名の看護師を含む85件の研究が対象となった。患者の安全への影響:看護師のバーンアウトは、患者の安全に関する以下の指標の悪化と関連していた。安全文化・風土の低下(標準化平均差[SMD]:−0.68、95%信頼区間[CI]:−0.83~−0.54)患者安全評価グレードの低下(SMD:−0.53、95%CI:−0.72~−0.34)院内感染の増加(SMD:−0.20、95%CI:−0.36~−0.04)患者の転倒の増加(SMD:−0.12、95%CI:−0.22~−0.03)投薬エラーの増加(SMD:−0.30、95%CI:−0.48~−0.11)有害事象や患者安全インシデントの増加(SMD:−0.42、95%CI:−0.76~−0.07)看護ケアの未実施の増加(SMD:−0.58、95%CI:−0.91~−0.26)(褥瘡の頻度との有意な関連はなかった)患者満足度への影響:看護師のバーンアウトは、患者満足度の評価の低下と関連していた(SMD:−0.51、95%CI:−0.86~−0.17)。(患者からの苦情や患者虐待の頻度とは有意に関連しなかった。)ケアの質への影響:看護師のバーンアウトは、看護師自身が評価したケアの質の低下と関連していた(SMD:−0.44、95%CI:−0.57~−0.30)。(標準化死亡率とは有意に関連しなかった。)関連の強さ:上記の関連は、看護師の年齢、性別、職務経験、地域によらず一貫しており、年数が経過しても持続していた。患者安全のアウトカムでは、バーンアウトの「個人的達成感の低さ」は、「情緒的消耗感」や「脱人格化」よりも関連が小さく、また「大学教育を受けた看護師」においても関連が小さかった。看護師のバーンアウトは、医療の質と安全性の低下、そして患者満足度の低下と関連していることが明らかになった。最新のシステマティックレビューとメタアナリシスから、看護師のバーンアウトが患者の安全、満足度、そしてケアの質に直接影響を与えることが明らかになりました。これは、看護師個人の情緒的消耗や脱人格化といった問題にとどまらず、医療現場における安全文化の低下、院内感染の増加、転倒、投薬エラー、看護ケアの未実施など、具体的なインシデントに直結することがデータで示されています。この「バーンアウトと、患者安全・満足度・ケアの質の低下」という重要な関連は、看護師の年齢や性別、職務経験、働く国や地域によらない、普遍的な課題であることが示されました。さらに、バーンアウトによる患者安全への悪影響は過去30年間改善されることなく続いており、ケアの質への悪影響は、時代と共に強まっているという深刻な実態も明らかになりました。これらの結果は、臨床現場でインシデントが増加している場合、その原因を看護師個人の問題として叱責したり、表面的な要因の追求だけで終わらせるべきではないことを示しています。むしろ、スタッフの精神的な疲労やバーンアウトが根底にある可能性をぜひ考慮してみてください。この視点を持つことで、問題への介入方法が大きく転換し、看護師のウェルビーイング向上だけでなく、患者さんへの安全で質の高いケアの提供に直接繋がることが、本研究でも示唆されています。さらには、本研究結果を通して、エッセンシャルワーカーである私たち看護師の労働環境や待遇の改善について、組織や行政が改めて考える一つのきっかけになることを願います。論文はこちらLi LZ, et al. JAMA Netw Open. 2024;7(11):e2443059.

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「高齢者の安全な薬物療法GL」が10年ぶり改訂、実臨床でどう生かす?

 高齢者の薬物療法に関するエビデンスは乏しく、薬物動態と薬力学の加齢変化のため標準的な治療法が最適ではないこともある。こうした背景を踏まえ、高齢者の薬物療法の安全性を高めることを目的に作成された『高齢者の安全な薬物療法ガイドライン』が2025年7月に10年ぶりに改訂された。今回、ガイドライン作成委員会のメンバーである小島 太郎氏(国際医療福祉大学医学部 老年病学)に、改訂のポイントや実臨床での活用法について話を聞いた。11領域のリストを改訂 前版である2015年版では、高齢者の処方適正化を目的に「特に慎重な投与を要する薬物」「開始を考慮するべき薬物」のリストが掲載され、大きな反響を呼んだ。2025年版では対象領域を、1.精神疾患(BPSD、不眠、うつ)、2.神経疾患(認知症、パーキンソン病)、3.呼吸器疾患(肺炎、COPD)、4.循環器疾患(冠動脈疾患、不整脈、心不全)、5.高血圧、6.腎疾患、7.消化器疾患(GERD、便秘)、8.糖尿病、9.泌尿器疾患(前立腺肥大症、過活動膀胱)、10.骨粗鬆症、11.薬剤師の役割 に絞った。評価は2014~23年発表の論文のレビューに基づくが、最新のエビデンスやガイドラインの内容も反映している。新薬の発売が少なかった関節リウマチと漢方薬、研究数が少なかった在宅医療と介護施設の医療は削除となった。 小島氏は「当初はリストの改訂のみを行う予定で2020年1月にキックオフしたが、新型コロナウイルス感染症の対応で作業の中断を余儀なくされ、期間が空いたことからガイドラインそのものの改訂に至った。その間にも多くの薬剤が発売され、高齢者にはとくに慎重に使わなければならない薬剤も増えた。また、薬の使い方だけではなく、この10年間でポリファーマシー対策(処方の見直し)の重要性がより高まった。ポリファーマシーという言葉は広く知れ渡ったが、実践が難しいという声があったので、本ガイドラインでは処方の見直しの方法も示したいと考えた」と改訂の背景を説明した。「特に慎重な投与を要する薬物」にGLP-1薬が追加【削除】・心房細動:抗血小板薬・血栓症:複数の抗血栓薬(抗血小板薬、抗凝固薬)の併用療法・すべてのH2受容体拮抗薬【追加】・糖尿病:GLP-1(GIP/GLP-1)受容体作動薬・正常腎機能~中等度腎機能障害の心房細動:ワルファリン 小島氏は、「抗血小板薬は、心房細動には直接経口抗凝固薬(DOAC)などの新しい薬剤が広く使われるようになったため削除となり、複数の抗血栓薬の併用療法は抗凝固療法単剤で置き換えられるようになったため必要最小限の使用となっており削除。またH2受容体拮抗薬は認知機能低下が懸念されていたものの報告数は少なく、海外のガイドラインでも見直されたことから削除となった。ワルファリンはDOACの有効性や安全性が高いことから、またGLP-1(GIP/GLP-1)受容体作動薬は低体重やサルコペニア、フレイルを悪化させる恐れがあることから、高齢者における第一選択としては使わないほうがよいと評価して新たにリストに加えた」と意図を話した。 なお、「特に慎重な投与を要する薬物」をすでに処方している場合は、2015年版と同様に、推奨される使用法の範囲内かどうかを確認し、範囲内かつ有効である場合のみ慎重に継続し、それ以外の場合は基本的に減量・中止または代替薬の検討が推奨されている。新規処方を考慮する際は、非薬物療法による対応で困難・効果不十分で代替薬がないことを確認したうえで、有効性・安全性や禁忌などを考慮し、患者への説明と同意を得てから開始することが求められている。「開始を考慮するべき薬物」にβ3受容体作動薬が追加【削除】・関節リウマチ:DMARDs・心不全:ACE阻害薬、ARB【追加】・COPD:吸入LAMA、吸入LABA・過活動膀胱:β3受容体作動薬・前立腺肥大症:PDE5阻害薬 「開始を考慮するべき薬物」とは、特定の疾患があった場合に積極的に処方を検討すべき薬剤を指す。小島氏は「DMARDsは、今回の改訂では関節リウマチ自体を評価しなかったことから削除となった。非常に有用な薬剤なので、DMARDsを削除してしまったことは今後の改訂を進めるうえでの課題だと思っている」と率直に感想を語った。そのうえで、「ACE阻害薬とARBに関しては、現在では心不全治療薬としてアンジオテンシン受容体ネプリライシン阻害薬(ARNI)、β遮断薬、ミネラルコルチコイド受容体拮抗薬(MRA)、SGLT2阻害薬が登場し、それらを差し置いて考慮しなくてもよいと評価して削除した。過活動膀胱治療薬のβ3受容体作動薬は、海外では心疾患を増大させるという報告があるが、国内では報告が少なく、安全性も高いため追加となった。同様にLAMAとLABA、PDE5阻害薬もそれぞれ安全かつ有用と評価した」と語った。漠然とした症状がある場合はポリファーマシーを疑う 高齢者は複数の医療機関を利用していることが多く、個別の医療機関での処方数は少なくても、結果的にポリファーマシーとなることがある。高齢者は若年者に比べて薬物有害事象のリスクが高いため、処方の見直しが非常に重要である。そこで2025年版では、厚生労働省より2018年に発表された「高齢者の医薬品適正使用の指針」に基づき、高齢者の処方見直しのプロセスが盛り込まれた。・病状だけでなく、認知機能、日常生活活動(ADL)、栄養状態、生活環境、内服薬などを高齢者総合機能評価(CGA)なども利用して総合的に評価し、ポリファーマシーに関連する問題点を把握する。・ポリファーマシーに関連する問題点があった場合や他の医療者から報告があった場合は、多職種で協働して薬物療法の変更や継続を検討し、経過観察を行う。新たな問題点が出現した場合は再度の最適化を検討する。 小島氏らの報告1,2)では、5剤以上の服用で転倒リスクが有意に増大し、6剤以上の服用で薬物有害事象のリスクが有意に増大することが示されている。そこで、小島氏は「処方の見直しを行う場合は10剤以上の患者を優先しているが、5剤以上服用している場合はポリファーマシーの可能性がある。ふらつく、眠れない、便秘があるなどの漠然とした症状がある場合にポリファーマシーの状態になっていないか考えてほしい」と呼びかけた。本ガイドラインの実臨床での生かし方 最後に小島氏は、「高齢者診療では、薬や病気だけではなくADLや認知機能の低下も考慮する必要があるため、処方の見直しを医師単独で行うのは難しい。多職種で協働して実施することが望ましく、チームの共通認識を作る際にこのガイドラインをぜひ活用してほしい。巻末には老年薬学会で昨年作成された日本版抗コリン薬リスクスケールも掲載している。抗コリン作用を有する158薬剤が3段階でリスク分類されているため、こちらも日常診療での判断に役立つはず」とまとめた。

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