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6月5日 ロコモ予防の日【今日は何の日?】

【6月5日 ロコモ予防の日】〔由来〕「ロ(6)コ(5)モ」と「ろ(6)うご(5)」(老後)と読む語呂合わせから、ロコモティブ・シンドロームの認知度を高め、その予防に関する正しい理解を広めることを目的に「ロコモティブ・シンドローム予防推進委員会」が制定。関連コンテンツ医療・介護施設従事者のための転倒・転落事故へのアプローチ ~転倒・転落事故のメカニズム、予防、事故後フォローのすべて~7つの“ロコモチェック”【Dr.坂根のすぐ使える患者指導画集】“ロコトレ”とは?【Dr.坂根のすぐ使える患者指導画集】これから、ロコモ対策、何をやる【Dr.坂根のすぐ使える患者指導画集】20代より身長4cm以上低下、椎体骨折を疑う/日本整形外科学会

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世界の主要な20の疾病負担要因、男性の健康損失が女性を上回る

 2021年の世界疾病負担研究(GBD 2021)のデータを用いた新たな研究で、女性と男性の間には、疾病負担の主要な20の要因において依然として格差が存在し、過去30年の間にその是正があまり進んでいないことが示された。全体的に、男性は新型コロナウイルス感染症(COVID-19)や交通事故など早期死亡につながる要因の影響を受けやすいのに対し、女性は筋骨格系の疾患や精神障害など致命的ではないが長期にわたり健康損失をもたらす要因の影響を受けやすいことが示されたという。米カリフォルニア大学サンディエゴ校(UCSD)のVedavati Patwardhan氏らによるこの研究の詳細は、「The Lancet Public Health」5月号に掲載された。 Patwardhan氏らは、GBD 2021のデータを用いて、1990年から2021年における10歳以上の人を対象に、世界および7つの地域における上位20の疾病負担要因の障害調整生存年(DALY)率について、男女別に比較した。DALYとは、障害や疾患などによる健康損失を考慮して調整した指標であり、1DALYとは1年間の健康な生活の損失を意味する。20の疾病負担要因は、COVID-19、心筋梗塞、交通事故、脳卒中、呼吸器がん、肝硬変およびその他の慢性肝臓病、慢性閉塞性肺疾患(COPD)、腰痛、うつ病、結核、頭痛、不安症(不安障害)、筋骨格系疾患、転倒、下気道感染症、慢性腎臓病、アルツハイマー病およびその他の認知症、糖尿病、HIV/エイズ、加齢性難聴およびその他の難聴であった。 その結果、2021年では、検討した20要因のうちCOVID-19や肝臓病など13要因で男性のDALYは女性よりも高いことが推定された。男女差が最も顕著だったのはCOVID-19で、年齢調整DALY(10万人当たり)は男性で3,978、女性で2,211であり、男性の健康負担は女性に比べて44.5%高かった。COVID-19の負担は地域を問わず男性の方が高かったが、特に差が大きかったのはサハラ以南のアフリカ、ラテンアメリカ諸国、カリブ海諸国だった。 DALYの男女差の絶対値が2番目に大きかった要因は心筋梗塞で、10万人当たりのDALYは男性で3,599、女性で1,987であり、男性の健康負担は女性より44.7%高かった。地域別に見ると、中央ヨーロッパ、東ヨーロッパ、中央アジアでは男女差が大きかった。 また、女性に比べて男性に多い要因は、年齢が低いほどリスク増加が小さい傾向が認められたが、交通事故による負傷は例外であり、世界中で10〜24歳の若い男性で不釣り合いに多く発生していた。 一方、女性は長期的な健康損失をもたらす疾患において男性よりもDALYが高い傾向が見られた。特にDALYの男女差が顕著だったのは、腰痛(絶対差478.5)、うつ病(同348.3)、頭痛(332.9)であった。また、女性には、人生の早い段階からより深刻な症状に悩まされ、その症状は年齢とともに悪化する傾向も認められた。 論文の共著者である米ワシントン大学保健指標評価研究所(IHME)のGabriela Gil氏は、「女性の健康損失の大きな要因、特に筋骨格系疾患と精神疾患は十分に注目されているとは言えない。女性のヘルスケアに対しては、性や生殖に関する懸念などこれまで医療制度や研究資金が優先してきた領域を超えた、より広範な取り組みが必要なことは明らかだ」と述べている。 論文の上席著者であるIHMEのLuisa Sorio Flor氏は、「これらの結果は、女性と男性では経時的に変動したり蓄積されたりする多くの生物学的要因と社会的要因が異なっており、その結果、人生の各段階や世界の地域ごとに経験する健康状態や疾患が異なることを明示している」との見方を示す。その上で、「今後の課題は、性別やジェンダーを考慮した上で、さまざまな集団において、早期から罹患率や早期死亡の主な原因を予防・治療する方法を設計して実施し、評価することだ」と述べている。

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高齢者の転倒対策、現場は何をすべきか?【外来で役立つ!認知症Topics】第29回

「縛るな!」――身体拘束ゼロへの取り組み病院・施設の高齢者における訴訟は増加しているが、訴訟の2大原因は、転倒と誤嚥だそうだ。いずれであれ、その判決内容、賠償金額によっては病院・施設の死活問題になりかねない。そこで誰もが転倒の予防対策として考えるのは身体抑制だろうが、これは人の尊厳を損なう最たるものである。さて「身体拘束ゼロ」、わが国のいわゆる老人病院で始まった高齢者医療・ケアの改革運動である。2001年には厚生労働省が『身体拘束ゼロへの手引き』を作成し、また、2024年には診療報酬改定で身体拘束最小化の基準が設けられた。とくに慢性期病院や介護施設は、身体拘束の最小化に向けて懸命に取り組んできた歴史がある。この流れの源流は、今年4月に亡くなられた吉岡 充医師にある。彼は、東大病院と都立松沢病院の勤務を経て、ご尊父が営む八王子の精神科病院に移られた。そこには数十年の入院生活で高齢化した統合失調症の患者さんたちがいた。これが彼の高齢者医療への取り組みの始まりだったと思う。1980年代に、この病院でアルバイトをさせてもらっていた私はこの当時、彼と初めて会った。「患者さんを縛っちゃいけないよ!」「どうして病院ではすぐに患者を縛るんだ? 朝田、おかしいと思わないか」という会話をした。正直、「理想はそう、病院では安静を守れない患者も、すぐに転んで骨折する患者もいます、必要悪ですよ」が私の本音だった。しかしその後、吉岡医師は類まれな意志力・行動力で「抑制廃止」(彼はいつも「縛るな!」と言っていた)を全国展開していった。転倒による死亡は交通事故の3倍こうした抑制廃止の裏面が、転倒である。今日、高齢者の転倒・転落は、広く高齢者医療の大きな課題として一般の人にもよく知られている。転倒による大腿骨骨頭骨折などの骨折はもとより、死亡例も驚くほど多い。2023年の資料では、こうした事故による死亡者数は全国で1万2,000例弱にも上り、交通事故死の3倍以上だというから恐ろしい1)。ところで老年医学は、1950年代からイギリス、北欧で芽生え成長してきた。この分野では、イギリスのバーナード・アイザックス(Bernard Isaacs)が1965年に提唱した「老年医学の4巨人」、すなわち転倒、寝たきり、失禁、認知症が今日に至るまで主要テーマである。筆者は1980年代にイギリスの大学老年科に留学して、老年医学の病棟のみならず患家にも立った。その影響で、帰国後は精神科領域における転倒を臨床研究のテーマにし、この領域の進歩に努めて触れてきた。そのポイントをまとめると、まずは転倒の危険因子、転倒予防、予後、そして手術と手術適応である。個人の転倒危険因子では、より高齢であること、転倒既往、認知症、パーキンソン病などの神経疾患、身体機能・ADLの低下、向精神薬など薬剤、飲酒などがある。また施設の住宅設備面から段差の解消、手すりや常夜灯の設置がある。一方で床にこぼれた水分や尿などを可及的速やかに拭き取ったり、落ちた紙などの障害物を除いたりすることも極めて重要である。というのは転倒の直接原因では、滑る・躓くが最多とされるからである。次に予後では、認知症者では、身体機能はもちろん、生命予後もよくない。アメリカのナーシングホームのデータ2)では、大腿骨頸部骨折の手術がなされた者では、6ヵ月以内に35~55%が、2年以内に64%が亡くなったとされる。また手術をしてもこうした患者の機能レベルは容易に転倒前まで戻らないこともわかっている。それだけに手術適応の決定も簡単ではない。これまで転倒予防として繰り返し強調されたのは、脚力を中心とした体力増強の運動である。もっともこの運動や薬剤の調整で発生リスクを2割ほど低減したとの数少ない論文はあるが、リスク低減のエビデンスは乏しい。今のところ、予防の決め手はないというのが現実だ。病院・施設はどのような対策をすべきか?さて訴訟に関し、転倒を含めた事故で病院・施設に過失があるとされるのは、「結果予見義務」と「結果回避義務」が尽くされなかった場合である。転倒・転落が起こるかもしれないという「結果予見義務」だが、裁判の論点にならなくなってきている。なぜなら今日では、認知症の有無、転倒歴、睡眠薬の使用などの転倒・転落リスクは、ほぼしっかり確認されているからである。そこで論点になるのが転倒・転落を防ぐための備え・工夫をしたかという「結果回避義務」になる。もっとも既述のように、転倒・転落は完全には防ぎ難いことはわかっている。それだけに事情通の弁護士によれば、転倒は予見の可能性が難しいだけに、判決として「病院・施設に責任ありとするが、賠償額を低く抑えることでバランスをとる」のが主流ではないかとの由。以上をまとめると、病院・施設側として転倒リスクの評価はまず入院時に不可欠である。そして計画した予防策は明文化し、たとえば定時の見守り・チェックなどは必ず記入する。また濡れた床拭き、靴の履き方直しなど臨機応変に対応したことの記録を残し、結果回避義務を強く意識した努力を記録として蓄積すべきだろう。参考1)厚生労働省「不慮の事故による死因(三桁基本分類)別にみた年次別死亡数及び死亡率(人口10万対)」(e-Stat). 2)Berry SD, et al. Association of Clinical Outcomes With Surgical Repair of Hip Fracture vs Nonsurgical Management in Nursing Home Residents With Advanced Dementia. JAMA Intern Med. 2018;178:774-780.

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降圧薬の心血管リスク低減効果、朝服用vs.就寝前服用/JAMA

 降圧薬の就寝前服用は安全であるが、朝の服用と比較して心血管リスクを有意に低減しなかったことが、カナダ・University of AlbertaのScott R. Garrison氏らが、プライマリケアの外来成人高血圧症患者を対象として実施した無作為化試験で示された。降圧薬を朝ではなく就寝前に服用することが心血管リスクを低減させるかどうかについては、先行研究の大規模臨床試験における知見が一致しておらず不明のままである。また、降圧薬の就寝前服用については、緑内障による視力低下やその他の低血圧症/虚血性の副作用を引き起こす可能性が懸念されていた。今回の結果を踏まえて著者は、「降圧薬の服用時間は、降圧治療のリスクやベネフィットに影響を与えない。むしろ患者の希望に即して決めるべきである」とまとめている。JAMA誌オンライン版2025年5月12日号掲載の報告。カナダのプライマリケアで試験、朝服用vs.就寝前服用を評価 研究グループは、降圧薬の朝服用と就寝前服用の、死亡および主要心血管イベント(MACE)に与える影響を、プラグマティックな多施設共同非盲検無作為化・エンドポイント評価者盲検化試験で調べた。被験者は、カナダの5つの州にある436人のプライマリケア臨床医を通じて集めた、少なくとも1種類の1日1回投与の降圧薬の投与を受けている地域在住の成人高血圧症患者であった。募集期間は2017年3月31日~2022年5月26日、最終追跡調査は2023年12月22日であった。 被験者は、すべての1日1回投与の降圧薬を朝に服用する群(朝服用群)もしくは就寝前に服用する群(就寝前服用群)に1対1の割合で無作為に割り付けられた。 主要複合アウトカムは、全死因死亡またはMACE(脳卒中、急性冠症候群または心不全による入院/救急外来[ED]受診)の初回発生までの期間であった。あらゆる予定外入院/ED受診、視覚機能、認知機能、転倒および/または骨折に関連した安全性アウトカムも評価した。主要複合アウトカムイベントの発生、安全性に有意差なし 計3,357例が無作為化された(就寝前服用群1,677例、朝服用群1,680例)。被験者は全体で女性56%、年齢中央値67歳であり、併存疾患は糖尿病が18%、冠動脈疾患既往が11%、慢性腎臓病が7%であった。また、単剤治療を受けている被験者が53.7%であり、降圧薬の種類はACE阻害薬36%、ARB 30%、Ca阻害薬29%などであった。 全体として追跡調査期間中央値4.6年において、主要複合アウトカムイベントの発生率は、100患者年当たりで就寝前服用群2.30、朝服用群2.44であった(補正後ハザード比[HR]:0.96、95%信頼区間[CI]:0.77~1.19、p=0.70)。 100患者年当たりの主要アウトカムの項目別発生率(死亡:就寝前服用群1.11 vs.朝服用群1.28[補正後HR:0.90、95%CI:0.67~1.22、p=0.50]など)、あらゆる予定外入院/ED受診の発生率(23.26 vs.25.15[0.93、0.85~1.02、p=0.10])および安全性について、両群間で差は認められなかった。とくに、転倒の自己申告率(4.9%vs.5.0%、p=0.47)や100患者年当たりの骨折(非脊椎骨折:2.18 vs.2.40[0.92、0.74~1.14、p=0.44]、大腿骨近位部骨折:0.27 vs.0.43[0.65、0.37~1.15、p=0.14])、緑内障の新規診断(0.60 vs.0.54[1.13、0.73~1.74、p=0.58])、18ヵ月間の認知機能低下(26.0%vs.26.5%、p=0.82)について差はみられなかった。

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患者安全文化が向上すれば「看護ケアの未実施」は減る?【論文から学ぶ看護の新常識】第15回

患者安全文化が向上すれば「看護ケアの未実施」は減る?患者安全文化と「看護ケアの未実施」の関連を調べた最新の研究で、両者に明確な負の相関(安全文化が良いほど「看護ケアの未実施」が少ない)が示された。Leodoro J. Labrague氏らの研究で、Journal of Advanced Nursing誌オンライン版2025年1月23日で報告した。医療現場における患者安全文化と看護ケアの未実施との関連:システマティックレビューとメタアナリシス研究者らは、患者安全文化と「看護ケアの未実施(Missed Nursing Care:MNC)」との関連性に関する既存研究を評価・統合することを目的に、システマティックレビューとメタアナリシスを実施した。2010年以降に出版された査読付き論文を対象に、5つのデータベース(CINAHL、ProQuest、PubMed、ScienceDirect、Web of Science)で検索を行った。その結果、合計9件の研究が特定され、うち7件の研究(対象者総計1661例)がメタアナリシスの対象となった。主な結果は以下の通り。メタアナリシスの結果、全体の患者安全文化と看護ケアの未実施との間には有意な負の相関が認められ、プールされた相関係数は −0.205(95%信頼区間[CI]:−0.251~−0.158、p<0.001)であった。異質性は低度から中程度(I2=13.18%、95%CI:0.00~78.60)であり、出版バイアスの検定でも有意なバイアスは示されなかった(Eggerテスト:p=0.0603、Beggテスト:p=0.3476)。本研究の結果は、患者安全文化と看護ケアの未実施との間に有意な負の相関関係があることを強調している。とくに管理職のサポート、組織学習、および部署レベルの安全文化が、看護ケア未実施の予測因子としての役割を果たすことが示された。したがって、医療組織内における患者安全文化の強化は、看護ケアの未実施を軽減するための戦略的アプローチとなり得る。医療現場における患者安全文化と「看護ケアの未実施」の関係性を検証した本メタ分析は、看護の質と患者安全における重要な課題に光を当てるものです。研究の結果、患者安全文化が良好であるほど、必要な看護ケアが実施されない状態、すなわち「看護ケアの未実施」が少ないという明確な負の相関が確認されました。とくに、管理職による安全へのサポート、組織全体での学習の推進、そして病棟単位での安全文化の醸成が、「看護ケアの未実施」を防ぐ上で極めて重要であることが示されています。これは、看護師個人の努力や能力だけでなく、組織全体の文化とシステムが、日々の看護実践の質に深く関わっていることを強く示唆しています。「看護ケアの未実施」は、患者の回復遅延、感染リスクの増加、転倒や褥瘡の発生といった、多様な有害事象を引き起こす可能性があります。それに加え、必要なケアを十分に提供できない状況は、看護師の倫理的な苦痛や燃え尽き症候群の一因ともなり得ます。本研究の結果が示すように、組織的に患者安全文化を強化することは、こうした課題を軽減するための有効な方策となり得ます。具体的には、風通しの良い組織風土のもと、リーダーが安全確保に対する強い責任感を示し、発生したインシデントから学び改善に繋げる仕組みを構築すること、そして病棟単位で職員間の円滑なコミュニケーションと相互支援を推進する取り組みが不可欠です。これらの取り組みを通じて、看護師が質の高いケアを自信を持って提供できる環境が整備され、結果として患者の安全確保と看護ケア全体の質の向上に貢献できると考えられます。この研究は、患者安全文化への組織的な投資の重要性を裏付ける、強力なエビデンスを示すものです。論文はこちらLabrague LJ, Cayaban AR. J Adv Nurs. 2025 Jan 23. [Epub ahead of print]

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転倒防止はお口の健康から(Dr.坂根のすぐ使える患者指導画集)

患者さん用画 いわみせいじCopyright© 2025 CareNet,Inc. All rights reserved.説明のポイント(医療スタッフ向け)診察室での会話患者最近、何もないところでつまずいたりして…。それに、歯の調子も良くなくて…。医師 それは心配ですね。歯の本数が少なくなると、転倒しやすいことがわかっていますからね。患者 えっ、そうなんですか。医師 はい。歯の本数が20本以上の人に比べると、19本以下の人は転倒するリスクが2.5倍にもなるそうですよ。画 いわみせいじ患者 本当ですか! けど、どうして歯がないと転びやすいんですか?(怪訝な顔)医師 その理由の1つは頭のバランスです。(身振り手振りを加えながら)患者 頭のバランス?医師 そうです。人間の頭はほかの動物と比べても大きいのですが、ものを食べる筋肉(咀嚼筋)や歯(歯根膜)から脳に向かう神経伝達で、頭部のバランスをとっています。ところが、歯がなくなったり、入れ歯をつけずに、咬み合わせが悪いと、それらがうまくできなって転倒しやすくなるんです。それに…。患者 なるほど。それに?医師 それに、かみ合わせが悪いと、力が入りにくくなって、転びそうになったときに何かにつかまることができなかったり、踏ん張ることができずに、転倒しやすくなるんです。患者 なるほど。歯は本当に大事なんですね。(納得した顔)ポイントお口の健康と転倒予防が関連することをわかりやすく説明します。Copyright© 2025 CareNet,Inc. All rights reserved.

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転倒リスクの高い2型糖尿病治療薬は?/筑波大

 骨格筋量の低下によって転倒リスクが増大することが知られており、一部の2型糖尿病治療薬は体重減少作用が強く、骨格筋量の減少を引き起こすことで転倒リスクを増大させる可能性が示唆されている。この課題について筑波大学システム情報系知能機能工学域の鈴木 康裕氏らの研究グループは、筑波大学附属病院に入院中の2型糖尿病患者を対象に転倒と糖尿病治療薬との関連を調査した。その結果、SGLT2阻害薬は転倒の危険因子であることが明らかになった。この結果はScientific Reports誌2025年3月17日号に掲載された。SGLT2阻害薬処方時は転倒リスクも考慮 研究グループは、いくつかの糖尿病治療薬、とくにSGLT2阻害薬とGLP-1受容体作動薬が、筋肉および除脂肪体重の減少を引き起こすことと、転倒の関連を評価した。方法は、筑波大学附属病院に入院中の2型糖尿病患者を対象に、毎年1回転倒調査を最長5年間実施。転倒の危険因子は離散時間生存分析モデルを用いて同定した。 主な結果は以下のとおり。・調査では、471例の参加者を中央値2年間にわたって観察した。・参加者の年齢中央値は64歳で、転倒発生率は100人年当たり17.1件だった。・独立した転倒の危険因子は、「転倒歴」、「SGLT2阻害薬の使用」、「年齢」であった。・SGLT2阻害薬のみ使用のオッズ比(OR)は1.80(95%信頼区間[CI]:1.10~2.92)、GLP-1受容体作動薬のみ使用のORは1.61(95%CI:0.88~2.84)、両方使用のORは2.89(95%CI:1.27~6.56)だった。・SGLT2阻害薬の使用は、転倒の独立危険因子だったが、GLP-1受容体作動薬の効果は統計学的に有意ではなかった。・SGLT2阻害薬とGLP-1受容体作動薬の併用は、転倒のリスクを有意に増加させた。 この結果から研究グループでは「2型糖尿病患者にこれらの薬剤を処方する際には、転倒のリスクを考慮することが重要」と示唆している。

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鼻の軟骨で膝の損傷を修復できる可能性

 ランニングやスキーなどスポーツをしているときの転倒により生じた膝の損傷は、選手が一線から退かざるを得なくするだけでなく、将来的に関節炎のリスクを高める可能性がある。しかし新たな研究で、そのような転倒で損傷することはほとんどない鼻が、膝修復の鍵になる可能性を示唆する研究結果が報告された。研究グループは、鼻の中で左右の気道を隔てる壁となっている鼻中隔軟骨から作られた人工軟骨を、最も複雑な膝の損傷の修復にも使用できるとしている。バーゼル大学(スイス)生物医学部長のIvan Martin氏らによるこの研究の詳細は、「Science Translational Medicine」に3月5日掲載された。 膝の損傷した軟骨は自然治癒しないため、活動的な人に長期的な問題を引き起こす可能性がある。軟骨は骨と骨の間でクッションの役割を果たしており、軟骨の喪失は最終的に関節炎を引き起こす。Martin氏らが開発した膝の修復プロセスは、患者の鼻中隔の小さな断片から採取した軟骨細胞を柔らかい繊維でできた足場上で培養する。その後、新たにできた軟骨を必要な形に切断し、膝関節に移植するというもの。初期の研究では有望な結果が示されていた。Martin氏は、「鼻中隔軟骨細胞は、軟骨の再生に理想的な特性を持っている」とバーゼル大学のニュースリリースの中で述べている。例えば、鼻中隔軟骨細胞は関節の炎症を抑えることが示されているという。 今回の第2相臨床試験は、4カ国、5カ所のクリニックの膝軟骨全層欠損患者108人(30〜46歳)を対象に実施された。対象者は、実験室で2日間だけ培養した未成熟の軟骨を移植する群と、2週間かけて成熟させた軟骨を移植する群にランダムに割り付けられた。主要評価項目は、手術後24カ月時点の膝損傷と変形性関節症の転帰スコア(Knee Injury and Osteoarthritis Outcome Score;KOOS)とした。KOOSは0〜100点で算出され、スコアが高いほど膝の状態が良いことを意味する。 その結果、いずれの方法でも移植手術を受けた患者には明らかな改善が認められた。ただ、より長い期間をかけて成熟させた軟骨が移植された群の方が、未成熟の軟骨を移植された群よりも膝の状態は良好であり、24カ月時点のKOOSは、前者で85点、後者で79点であった。MRI検査からは、成熟期間が長かった軟骨移植片は、より良好な移植部位の組織構成をもたらすだけでなく、周囲の元からある軟骨にも良い影響を与えることが確認された。 研究グループのリーダーでバーゼル大学のAndrea Barbero氏は、「損傷が大きい患者が成熟期間の長い軟骨の移植によって効果を得られるという点は注目に値する」と同大学のニュースリリースの中で述べている。Barbero氏はまた、他の技術を用いた軟骨の治療が奏効しなかったケースにもこの方法は有効だとしている。 研究グループは今後、膝の軟骨の変性によって起こる変形性膝関節症に対するこの治療法の有効性を検証する予定である。「試験により有効性が裏付けられれば、この治療法が人工膝関節置換術の代替となり得る」と研究グループは話している。

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転倒予防に一番効果的な介入は?【論文から学ぶ看護の新常識】第10回

転倒予防に一番効果的な介入は?病院内での転倒予防介入の効果を調べた研究により、患者および医療従事者への教育介入のみが統計的有意に転倒を減少させる効果があることが示された。Meg E Morris氏らの研究で、Age and Ageing誌2022年5月06日号に掲載された。病院内転倒を減少させる介入:システマティックレビューとメタアナリシス研究グループは、転倒予防介入が病院内における転倒率および転倒リスクに与える影響を明らかにするため、システマティックレビューおよびメタアナリシスを実施した。分析対象となったのは、入院中の成人患者を対象に転倒予防介入を行った45件の研究であり、そのうち43件がシステマティックレビュー、23件がメタアナリシスに含まれた。介入方法は、患者および医療従事者向け教育、環境改善、補助用具の使用(アラーム、センサー、歩行補助具、低床ベッドなど)、転倒予防に関連する方針・システムなどの変更、リハビリテーション、薬剤管理(ビタミンDによる栄養補助を含む)が含まれた。評価指標には、転倒率比(RaR)と転倒リスク(オッズ比[OR])が用いられ、単独介入および複合的介入(2つ以上の介入の組み合わせ)の両方を評価した。主な結果は以下の通り。教育介入のみが統計的に有意な結果を示し、転倒率(RaR:0.70、95%信頼区間[CI]:0.51~0.96、p=0.03)および転倒リスク(OR:0.62、95%CI:0.47~0.83、p=0.001)を有意に低下させた。エビデンスの質は高いと評価された(GRADE評価)。転倒予防に関するシステムについての研究(9件)は、効果量が報告されていないためメタアナリシスに含まれなかった。1時間ごとの巡回、ベッドサイドでの申し送り、電子監視または患者安全管理者の配置を調べた5つの研究では、いずれも転倒率の有意な低下は示されなかった。医学的評価とそれに基づく介入を行った研究では、1000患者日あたりの転倒率が、対照群10.6に対し、介入群1.5と有意に低下(p<0.004)した。複合的介入は、転倒率(RaR:0.8、95%CI:0.63~1.01、Z=−1.88、p=0.06)に低下傾向がみられたが、統計的有意な低下は認められなかった。スコア化転倒リスクスクリーニングツール(FRAT)は、2つの大規模RCTの結果より、スコア化を行わなくても転倒率に影響がないことが示された(統計的有意性の記載なし)。システマティックレビューに含まれた個別研究の中で、医療従事者教育、一部の複合的介入、特定のリハビリテーション、システム関連介入では、特定の介入において効果を示唆するエビデンスが報告されたが、バイアスリスクは低~中程度と評価された。院内転倒率および転倒リスクを効果的に減少させるには、患者および医療従事者への教育が最も効果的であり、複合的介入はプラスの影響をもたらす傾向があった。アラーム、センサー、スコア化転倒リスク評価ツールの使用と転倒減少との関連は確認されなかった。転倒って恐ろしいですよね…。2022年のメタアナリシス(いろんな論文を組み合わせて評価した論文)では、患者とスタッフへの教育が転倒率と転倒リスクの減少に最も効果的であることが示されました。患者教育では、入院中の転倒リスクに対する認識を高めることが重要です。65歳以上や複数の併存疾患がある50歳以上の患者は特に高リスクであり、教育プログラムを通して自身の転倒リスクを理解することで、予防行動を取ることができます。一方、スタッフ教育も重要です。転倒リスクのアセスメント、予防策の実施、転倒発生時の対応などに加えて、とくに新人や中途採用者の方には、疾患特性による転倒リスクを理解してもらうための教育が必要です。教育によるスタッフのスキル向上が、効果的な転倒予防につながります。またそれ以外の介入を組み合わせることも重要です。例えば、環境整備、補助用具の活用、リハビリテーションなど、多面的なアプローチがあります。しかし、メタアナリシスの結果では、補助用具の使用やリハビリテーションの単独での効果は限定的であり、他の介入と組み合わせることが重要だと示唆されています。入院時の環境整備や補助用具の活用、リハビリテーションによる身体機能の改善などを組み合わせることで、より効果的な転倒リスクの軽減が期待できます。転倒転落の対策は教育を軸としつつ、環境整備、補助用具、リハビリテーションなど多角的な視点からのアプローチを組み合わせることが求められます。一つの介入方法にこだわらずに、広い視野を持ちながら転倒転落を予防していきましょう!論文はこちらMorris ME, et al. Age Ageing. 2022;51(5): afac077.

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骨転移のある患者に対する緩和ケア【非専門医のための緩和ケアTips】第97回

骨転移のある患者に対する緩和ケア骨転移は進行がん患者ではよく経験する合併症です。痛みの原因となりますし、骨折をすると日常生活動作(ADL)が大きく低下します。緩和ケアを実践するうえで、こうした症状に適切に対応することは、とても重要です。今回の質問在宅診療で骨転移を伴うがん患者さんを担当しています。痛みがあり医療用麻薬を処方しているのですが、どの程度の動作まで許容されるでしょうか? 転倒して骨折をするのでは、と心配になってしまいます。骨転移を有するがん患者への緩和ケアの際、最も気になるのは「がん疼痛」と「骨折」ですよね。さらに、時折「高カルシウム血症」や「脊髄圧迫」といった救急性の高い病態を来すこともあります。骨転移の痛みに対するアプローチで基本となるのは「WHO方式がん疼痛治療法」1)です。ただ、骨転移の痛みの際はNSAIDsが比較的有効とされるので、腎機能などをみて許容できる際はオピオイドとNSAIDsを併用します。また、骨転移による痛みは動作など刺激による痛みや、骨の脆弱性による病的骨折が問題になります。ここが今回のご質問にも関連するところです。病的骨折とは通常では骨折をしない程度の荷重や刺激で骨折することを指し、骨転移はその一因です。皆さんも、ちょっとした転倒で骨折し、寝たきりになってしまった患者さんの経験があるかもしれません。かといって、動かずじっとしていれば、廃用が進んで寝たきりになってしまいます。ここで骨転移がある患者さんにお勧めしたいのが、「リハビリ」と「コルセットなどの福祉用具」の活用です。「転ばないよう注意しましょう」といっても、患者さんはどのように注意すればよいかわかりません。私自身、明らかな段差やサイズの合わないスリッパなどには注意を促しますが、動作の指導などは荷が重いと感じます。こうした場合は理学療法士などの専門職と連携して指導に当たります。私の勤務先やがん拠点病院などでは、骨転移患者の治療方針決定のための多職種カンファレンスが開催されています。このように骨転移はADLに大きく影響する病態のため、患者本人や家族に理解を促す必要があります。骨転移の注意点を説明し、ADLへの影響や不安について対話をすることが大切です。気掛かりがあれば、医師がすべてに対応する必要はないことを念頭に置き、看護師やケアマネジャーなど各職種に相談しましょう。最後に、骨転移のあるがん患者さんが不幸にして骨折してしまった場合、手術をすべきかどうかについて考えてみましょう。これはなかなか難しい問題で、ケースバイケースという答えにならざるを得ません。手術に耐えられるだけの体力があるかどうか、本人や家族の意向も関わってきます。骨折の部位や残された予後によっては手術はせずにベッド上で固定する、といった対応になることもあります。私の経験では、利き腕の上腕骨の骨転移部がポッキリ折れてしまった患者さんがいました。予後が3ヵ月以上見込めそうだったこともあり、本人と話し合い、整形外科医にコンサルトして手術をしました。結果的に手術をしたことで、食事を含めたADLが自身でできるまでに回復し、本人もとても喜んでいました。こうした個別判断が大切な分野であり、経験豊富な整形外科医を交えて治療方針を話し合いましょう。今回は骨転移のあるがん患者に対する緩和ケアについて考えました。多職種アプローチが大切なので、連携の在り方もぜひ考えてみてください。今回のTips今回のTips 骨転移に対する緩和ケア、多職種でアプローチしましょう。1)WHO方式がん疼痛治療法/日本緩和医療学会

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在宅患者がやってきた【救急外来・当直で魅せる問題解決コンピテンシー】第4回

在宅患者がやってきたPoint在宅患者は、外来に通院できない事情がある。外来患者よりもより医療を必要としている人達だ!在宅患者・家族は、最期まで在宅生活を送れないさまざまな事情も抱えている。患者・家族をはじめ在宅チームは、急変時に病院バックベッドの存在があるから、在宅で頑張れる!在宅医療の普及で、患者・家族、医療者もWin-Winに!症例88歳女性。肝内胆管がん、多発肝転移、リンパ節転移、骨転移あり。消化器科主治医からは「いつでも調子が悪くなったら病院に戻ってきていいよ」と言われたうえで、A病院からB診療所に紹介され、訪問診療が開始された。高齢の夫と長男の妻の3人暮らし。キーパーソンの長男は海外に単身赴任中。嫁に行った長女はよく顔を見にきてくれる。疼痛コントロールも良好であった。訪問診療開始1ヵ月後、長男の妻より「今朝から左手の力が入らない、移動も困難になっている」とB診療所に電話あり。トルーソー症候群(悪性腫瘍の凝固能亢進による脳梗塞)の可能性ありと判断された。在宅医は「今回脳梗塞が疑われるが、原病に伴うものであるため、在宅での継続加療も可能」と長男の妻に話したが、長男の妻の強い希望で、A病院に救急紹介された。A病院では頭部CT、頭部MRIが施行され、左右多発脳梗塞(トルーソー症候群)と診断された。長男の妻は仕事と介護で疲れもピークに達しており、「入院させてほしい」と強い希望があった。救急では入院主治医決定に難航した。原疾患の消化器内科か、脳梗塞の神経内科か。“大人の事情”の協議の末、今回は神経内科で入院加療となった。「最期まで在宅でと決まってなかったの? どうして救急に送ってくるんでしょうね」と救急当番の研修医はボソッと心なくつぶやいてしまった。「『これって在宅医が悪いの?』、『患者・家族が悪いの?』って、そんな視点をもつ医者はロクな医者にならないぞ」と指導医に叱られた。「『病気をみずして人をみろ』が実践できたら、入院主治医決定に迷うことはないんだけどね」と、悲しそうに指導医はつぶやいた。おさえておきたい基本のアプローチどんな患者さん達が在宅医療を受けているのだろうか?在宅患者の85%以上は要介護状態にあり、要介護1~5の患者がそれぞれ10~20%ずつ存在する。在宅患者の基礎疾患は多様であり、とくに循環器疾患・認知症・脳血管疾患を抱える患者の割合が大きい(図1)1)。治癒が期待できない患者(末期悪性腫瘍や人工呼吸器を使用している患者、遺伝性疾患や神経筋難病など)は約15%を占める。図1 疾患別の患者割合在宅医療を受けている患者達は、表1のような状況で、ぎりぎりで在宅生活を送っている実情を理解しておこう。病院に紹介されて疾患だけ治して、家にポイッと帰すだけでは、よい医療の質は保たれないのだ。「病気をみずして、人をみよ」とまさしく体現しているのだ。表1 在宅医療利用患者の生活背景事情独居老々介護在宅介護困難で、施設(グループホーム、老人ホームなど)に入所中家族は働いており、昼間の介護者不在で、ほぼ毎日デイサービス利用している上記などの理由で特養などの施設へ入所したいが、空き待ちの間、在宅医療を受けている一方、患者は在宅療養を受けたくてもなかなかそれができないのが現状なんだ。図2のように、在宅療養移行や継続の阻害要因と、在宅医療推進にあたっての課題が、厚生労働省からもあげられている2)。24時間の在宅医療提供体制や、在宅医療・介護サービス供給量の拡充だけでなく、在宅療養者のバックベッドの確保・整備や、介護する家族支援は欠かせないことが、理解できるだろう。疾病をもつ患者の生活も支えていくことは、医療全体の医療費負担の軽減にもつながるんだ。図2 在宅療養移行・継続阻害要因と在宅医療推進の課題画像を拡大するそんな状況でようやく在宅療養が受けられたが、在宅療養が継続できなくなって病院に紹介されてくるときに、「あ~、ダメだ。病院にお世話にならないといけなくなってしまったぁぁぁ」という患者・家族の思いや在宅医の忸怩たる思いを慮って、病院の受け入れ側医師は優しく温かく良医としての矜持をもって受け入れてほしい。在宅医療を選択することは、在宅で必ずしも死を選択しているわけではなく、まだ準備ができていない患者・家族もいる、在宅で死を迎えたいと思っていても気が変わる場合もある、そんな多様性を病院の受け入れ医師は知っておかないといけない。落ちてはいけない・落ちたくないPitfallsまず、在宅患者は、外来に通えないという前提があることを理解しよう!訪問診療の対象にある患者は、外来通院できない患者に絞られることをまず前提として理解いただきたい。外来診療に通えない人とは、疾患の重症度が高く、多疾患併存状態も多く、通えない事情として身体的要因だけでなく社会的要因も考慮しなければならないだろう。実際に、高齢者を対象として在宅医療の有無の観点から入院患者の特徴と救急車搬送により入院となる割合の違いを明らかにすることを目的とした研究がある3)。在宅医療がある症例はない症例と比較して認知症やがんなど併存症を伴う割合や低栄養および低ADL患者である割合が高く、在院日数の長期化がみられ、介護施設へ転院となる割合が高かった。また、がんをはじめ多くの主傷病において救急車搬入により入院となる割合が高かった。この研究結果を踏まえて、外来患者よりも在宅患者のほうが救急車搬入による入院が多い実態を肝に銘じていただき、患者にも家族にも優しい対応をお願いしたい。米国では、高齢者を対象に在宅医療サービスを開始したところ、登録前の1年間と登録後で同じ患者で比較して、ERの訪問が約30%、入院が10%減少したという報告もある4)。やはり在宅医療は患者・家族、医療者にとって、Win-Winな制度と考えられるだろう。Pointなぜ在宅医療を受けているのか? という理由をまず考えてみよう!急激なADLの低下出現…在宅生活本当に続けられる!?冒頭の症例の患者は末期がんの状態であり、ADLの低下は予想されていた。しかし脳梗塞による急激なADL低下に、主介護者である長男の妻より、在宅加療継続は難しいとのお話があり、入院加療となった。長男の妻は仕事で日中介護できず、在宅生活も1ヵ月近くなっており介護疲れもあった。入院後にもカンファレンスを行い、元々入っていた訪問看護以外に訪問介護導入も可能とお話したが、実母を看取った経験も踏まえて、在宅加療を継続する自信がないとのことだった。本人の気持ちも確認したが、このまま入院でよいとのお話であった(長男の妻によると、ご本人は周囲の状況を察してあまりわがままは言えない性格とのことだった)。キーパーソンの息子も帰国したが、入院加療を続けてほしいとのお話であり、転院調整中にA病院でお亡くなりになった。在宅医療は病気だけをみていたのでは始まらない。生活背景や心理的背景も考慮して、家族も支えていかないといけない。無理矢理在宅を継続することで、長男の妻が精神的にも肉体的にも追い詰められて、本当に体を壊してもいけないのだ。また海外駐在の息子さんがいるというのも、権利意識やインフォームド・コンセントにも気を遣い、診療方針決定に大きく影響を受け、そういうことまで配慮してこそ在宅医療はうまくいくのだ。高齢者は、疾病でも外傷でも容易にADLが低下する。疾病の重症度だけで帰宅可能と判断しても、実際は帰宅後の介護負担が増加して、より危険にさらされる状況になってしまうことは珍しくない。尿路感染だけ診断して安易に帰宅させた老々介護の高齢女性が、自宅で転倒し大腿骨近位部骨折を併発して、救急車で舞い戻ってきたという事例もある。ときには患者家族と救急担当医の間で患者の押し付け合いのような現象が生じる。しかし、無理に帰宅させて病状が悪化するのでは、判断が甘いといわざるを得ない。帰宅後に病態の見落としが判明する場合もある。在宅医療を受けている患者の入院・帰宅の判断の際には、帰宅後の介護負担を十分に考慮し、メディカルソーシャルワーカーなどを通じて、ケアマネジャーや在宅主治医などと連携して、帰宅後の介護や医療提供を考慮するように心がけたい5)。Point継続しておうちで過ごせそうでしょうか? ケアマネ・在宅主治医にも相談してみましょう在宅患者・家族みんなが、最期まで在宅と考えているわけではない前述の患者も、最期まで在宅と決めて、訪問診療を開始したわけではない。退院の際に病院主治医から「困ったときは入院も考慮します」と話があり、その言葉が、患者・家族・在宅チームの安心につながっていた。在宅医療を含む自宅療養を受ける際にその患者や家族が抱える問題意識として、症状急変時の対応に不安があること、症状急変時すぐに入院できるか不安があることが、図2に示されている。他のケースでも、最期は病院でと病院主治医と約束し、在宅医療開始になった患者がいる。1人は肺がん末期で、呼吸苦や疼痛はオピオイド増量でコントロールしていたが、急激に呼吸状態が悪化し、訪問看護が呼ばれ、訪問看護からの連絡で往診のうえ、家族の希望も踏まえて紹介元の病院に紹介したが、24時間以内に亡くなった。もう1人は、肝細胞がん末期、胸水腹水貯留で、腹水除去などを在宅で行っていたが、深夜呼吸苦が増悪し、在宅酸素導入したが、家族が病院紹介を希望され、この方も24時間以内に亡くなった。結構ぎりぎり最期(死ぬ直前)まで患者も家族も在宅で頑張っているんだ。「だったら最期くらい家で看取ればいいのに」なんて冷たい言い方をしてはいけない。最後の最後につらそうにしている患者を家族が在宅で看ていられなくなってしまう気持ちもわかってあげよう。家族は医療者ではなく素人であり、死に対する免疫はないのだから。オンタリオの研究では、家で看取ると思っていても、最後は不安になって16%の人は救急車を呼ぶという6)。ぎりぎりまで在宅で患者に寄り添った家族にやさしい言葉をかけられる医療者こそ、心の通った医療者なんだ。Point病院主治医に、困ったらおいでと言われていたのですね。よくここまでおうちで頑張りましたね在宅看取りのはずなのに、どうして救急搬送してしまうのか?在宅看取りを希望していても、心配で在宅主治医や訪問看護師を呼ぶ前に119番通報してしまう家族もいるものと理解しよう。気が変わるのは仕方のないこと。むしろ絶対に気が変わったらダメなんて言ったら、在宅医療は推進できない。蘇生処置を行わない意思表示(DNAR:Do Not Attempt Resuscitation)のある終末期がん患者の臨死時に救急車要請となる理由を救急救命士への半構造的面接により検討した研究論文7)では、(1)DNARに関する社会的整備が未確立(臨死時救急車以外病院搬送手段がないなど)(2)救急車の役割に対する認識不足(蘇生処置をせずに救急搬送が可能という認識の住民や医師がいるなど)(3)看取りのための医療支援が不十分(4)介護施設での看取り体制が不十分(5)救急隊に頼れば何とかなるという認識(何かあったときは119番という住民感情があるなど)(6)在宅死を避けたい家族の思い(家族が在宅死に対する地域社会の反応を気にするなど)(7)家族の動揺(DNARの意思が揺らぐ家族など)といった7つの理由が明らかになったとしている。Pointとっさに、救急車を呼んでしまったのですね。最期にこんなにバタバタするとは想像しなかったですよね。状態が悪いのを見ているのはつらいので、無理もないですよワンポイントレッスン在宅側からの取り組み─在宅看取りの文化の醸成に向けて─在宅医療を受けていても、救急車を呼び、今まで関係のなかった病院に搬送されると、死亡判定後、警察が来て検死が始まる。警察が事情を聴きに家まで来てしまうのだ。「まさか警察が来て事情聴取を受けるなんてぇ…」と、思いがけない最期に憤りや後悔をあらわにする家族もいる。家族に後悔が残らないようにするための在宅側からの取り組みを紹介する。在宅医療を地域住民に啓発しよう2014年厚生労働省より全国1,741市町村別に在宅死の割合が発表されたが、全国平均12.8%に対し、筆者のクリニックがある永平寺町は6.7%であり、福井県下でも最下位だった。永平寺町内には福井大学医学部附属病院がそびえたち、町民の生活風景のなかに大学病院があることで、何かあれば大学病院に行けばよいとの住民感情もあっただろう。大学病院なのに町立病院のような親近感をもたれているといえばそのとおりなんだけど…。そんな状況を受け、2019年8月1日に永平寺町立在宅訪問診療所(24時間体制の在宅支援診療所)が設立された。開設の約1年前から町の福祉保健課、地域包括支援センターとともに永平寺町民に向けて、在宅医療についての説明会を約2年間にわたって計70回行い、在宅医療が何なのかの啓発活動に専念した。最期がイメージしやすいパンフレットを作成がんの末期で病院から紹介いただく患者でも、最期に向けてどのような経過を辿っていくのかイメージできず、強い不安を感じている患者・家族がほとんどだ。そこで当院ではパンフレットを作成し、タイミングをみて、パンフレットを用いながら、今後の変化について、説明している(図3)。図3 最期をイメージするためのパンフレット緩和ケア普及のための地域プロジェクトがフリーで提供している「これからの過ごし方」というパンフレットも大変参考になる8)。ほかにも、疼痛などの評価ツールなども掲載されているので、ぜひ参考にされたい(緩和ケア普及のための地域プロジェクト)。救急車を呼んでしまうと、その先には!?最期のときに焦って救急車を呼んでしまうと、救命のために心臓マッサージや気管挿管が行われ、病院で最期を迎えた場合は、警察による検死も行われることもあるとパンフレットや口頭でお伝えしている。119番をコールする前に、訪問看護か在宅医にコールを! ということで、24時間連絡可能な連絡先が記載された用紙をお渡しし、家の目立つところに掲示してもらっている。最期に呼ぶのはあわてない、あわてない…最期が近いと予測されている場合、また真夜中などにおうちで息を引き取った場合、あわてずに翌朝、当方に連絡してもらえればよいこともお伝えしている。息を引き取る瞬間にご家族や医療者がもし立ち会えなかったとしても、在宅主治医が死後24時間以内に往診し診察すれば、死亡診断書が書けるのだ。家族も夜はなるべく休んでいただくよう説明している。参考1)厚生労働省. 在宅患者の状況等に関するデータ.2)厚生労働省. 在宅医療の動向.3)たら澤邦男 ほか. 日本医療マネジメント学会雑誌. 2020;21:70-78.4)De Jonge E, Taler G. Caring. 2002;21:26-29.5)太田凡. 日本老年医学会雑誌. 2011;48:317-321.6)Kearney A, et al. Healthc Q. 2010;13:93-100.7)鈴木幸恵. 日本プライマリ・ケア連合学会誌. 2015;38:121-126.8)緩和ケア普及のための地域プロジェクト(厚生労働科学研究 がん対策のための戦略研究). これからの過ごし方について.執筆

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老後を健康に過ごすには足の健康から始めよう/科研・楽天

 科研製薬は、足に関わる生活習慣の改善を目的に、楽天モバイルとの共同プロジェクト「満足プロジェクト」で業務提携契約を締結した。このプロジェクトは、楽天モバイルの健康寿命延伸サポートサービス「楽天シニア」(現在300万ダウンロード/約7割が50代以上)を通じ、足のお悩みを把握すると同時に、足の健康に関する正しい情報を提供することで、健康満足度の向上に貢献することを目指すものである。両社は、このプロジェクト発足について、3月14日に都内でメディアセミナーを開催し、高齢者の運動器障害の観点からロコモティブシンドローム(以下「ロコモ」と略す)についての概要と足の悩みの観点から巻爪、白癬などの診療と満足プロジェクトの概要が紹介された。また、科研製薬では、2025年3月27日に医療従事者向けのウェブサイト「KAKEN Medical Pro」を開設し、各製品情報に加え、足の健康を守るための「足」の疾患に関連する情報も発信し、医療従事者をサポートする。ロコモサインで早期にロコモを察知 「『満足』はロコモ対策の必要条件だ」をテーマに大江 隆史氏(NTT東日本関東病院 院長/ロコモチャレンジ!推進協議会 委員長)が、高齢者の運動器障害の原因となるロコモとその判定方法、約2万人のロコモに関するアンケート結果の概要について説明した。 「『ロコモ』とは、運動器の障害により、移動機能が低下した状態で、進行すると要介護になる危険が高いもの」と定義されている。ロコモが進展することで、生活活動や移動制限を受け、さらに疼痛や柔軟性の低下、筋力低下を来し、骨粗鬆症や変形性関節症、サルコペニアなどにいたるとされる。 そのために早くロコモに気付くことが重要となるが、ロコモの評価には、「立ち上がりテスト」「2ステップテスト」「ロコモ25」の3つテストの総合でロコモ度1~3で判定する。また、最近の研究からロコモになる前の最初の兆候も明らかになっている。とくに活動性について、「階段の昇降」「急ぎ足で歩く」「休まず歩き続ける」「スポーツや踊り」の1つにでも困難の自覚があれば、「ロコモサイン」として、早期の診療介入が望まれるという。 では、実際「ロコモ」はどの程度認知されているのであろうか。2024年12月~2025年1月にかけて楽天シニアアプリ登録者などで行われたアンケート結果を説明した(回答数1万9,299人)。 主な結果は以下のとおりだった。・「ロコモという言葉の認知度について」は、「はい」が50.2%、「いいえ」が48.9%だった。・「1日の歩数について」は、4,000~6,000歩が33.9%、8,000歩以上が26.3%、6,000~8,000歩が17.7%の順だった。・6,000歩以上歩く人では年齢によるロコモ度の差がなくなっていた。・「筋トレなどのやや強めの運動を1週間に合計どれくらいしているか」では、20分未満が67.2%、20分以上1時間未満が14.5%、2時間以上が7.7%の順で多かった。・やや強めの運動を1週間に1時間20分以上する人では年齢によるロコモ度の差がなくなっていた。爪は小さな運動器 「皮膚(爪)と足の健康との関係」をテーマに高山 かおる氏(川口総合病院 皮膚科 主任部長/足育研究会 代表理事)が、爪や足の皮膚からくる歩行障害や足爪に関するアンケート結果を説明した。 高齢者では、歩行障害、摂食障害、認知障害の順で活動が阻害される。歩行障害では、とくに爪の役割は重要だという。爪には、「指先の感覚を敏感にする」、「指先の保護」、「力のバランスをとる」という3つの働きがある。そして、足のトラブルは、皮膚と爪に表われ、日本臨床皮膚科学会の調査では、6人に1人が足爪に水虫が、7人に1人に足に水虫が、13人の1人に水虫があると報告されている。足爪のトラブルと転倒の関係では、足に何らかの問題があると、過去1年間に転倒しているリスクが高いこと、母趾爪甲の変形や肥厚は下肢機能低下をもたらすなどの報告がある。 つまずいたときに、姿勢制御の機能として、足底の触圧覚と足趾(と爪)による底面把持力により、転倒をしないように制御することから、爪に異常があると踏ん張りができないことから「爪は小さな運動器」とも言うことができる。 続いて「足爪の健康の意識調査」について、2024年9~10月にかけて楽天シニアアプリ登録者などに行われたアンケート結果を説明した(回答数2万984人)。 主な結果は以下のとおりだった。・「現在の爪の状態について」(複数回答)は、「異常なし」が50%、「水虫または過去に既往がある」が15%、「爪の肥厚またはボロボロと欠けた」が14%の順で多かった。・「アプリのコラム読後、医療機関へ受診しようと思ったか」では、「受診しない」が51%、「爪水虫に感染したら受診」が34%、「すぐ受診したい」が9%の順で多かった。・受診者または受診希望者に「なぜ治療したいか」(複数回答)では、「爪をきれいにしたい」が29%、「家族にうつさないため」が26%、「他の部位への感染を防ぐため」が24%の順で多く、「転倒リスク軽減のため」も9%でみられた。・「水虫が治ったら何をしたいか」では、「隠さずに足を出す」が21%、「いろんな人と交流したい」が20%、「履きたい靴を履きたい」が16%の順で多かった。・「健康記事のどの項目に1番興味を持ったか」では、「足爪の健康が健康寿命のカギ」が26%、「足爪、きれいに洗えていますか」が22%、「爪水虫はカビの1種」が14%の順で多かった。 おわりに高山氏は、「足爪を治療し、手入れすることで、きちんと歩く機能を維持し、健康寿命を延伸してもらいたい」と思いを語り、レクチャ-終えた。 この後のパネルディスカッションでは、足の健康啓発にこうしたアプリの利活用、複数の診療科連携による下肢機能維持などの提案がなされた。また、将来的に爪の画像を送ることでできるリモート診断やAI診断の可能性、集積されたビックデータを活用した健康指導なども期待したいと展望が語られた。 今回、科研製薬と楽天モバイルが提供する「満足プロジェクト」では、セミナー開催や「楽天シニア」内でのコラム掲載などを通じ、「歩く健康」をテーマとした足に関するさまざまな疾患の啓発活動のほか、今後、足に関する情報発信を強化するとともに、協働で健康寿命の延伸を目的とした実証事業なども実現するとしている。

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第3回 加速する高齢化と揺らぐ老年医療──迫り来る「専門医不足」の波

近年、こちらアメリカでも高齢化が急速に進んでおり、2020年の65歳以上の人口は5,580万人(総人口の16.8%)でしたが、2050年までにおよそ8,200万人(22.8%)に達すると予測されています1)。こうした状況下で注目されるのが、高齢者の医療を専門とする「老年医学」の医師不足です。今回はそんな問題を取り上げた記事をご紹介します。アメリカが直面する深刻な高齢化の現実Business Insiderの記事によれば、老年医学を専門とする医師の数は、2000年代初頭では1万人に上ったのが、今では約7,400人にまで減少しているといいます2)。その一方、今後の需要を考えれば、3万人が必要になると推定されており、現在の医療システムはすでに歪みを来し始めています。多くの病院や診療所が、限られたマンパワーの中で数多くの高齢患者を抱え、予約待ちリストが数ヵ月単位で埋まってしまうところも珍しくありません。著者の私自身、そうした現場で働いていて、身近に感じている問題ですが、このような事態は、老年医療現場の負担を今後もますます増大させ、ケアの質低下を招きかねない大きな課題となっています。敬遠される老年医学の専門性と複雑さ老年医学の道を選ぶ医師が減っている背景には、複雑な高齢者医療の現場があると考えられます。高齢者は複数の慢性疾患を同時に抱えることが多く、服薬管理だけでも薬が20種類近くに及ぶケースもあるため、医師には高い総合診療能力が求められます。にもかかわらず、報酬水準や社会的評価の面で老年医学は決して高待遇とはいえず、若い医師は循環器内科や腫瘍内科など、より専門性が高く高収入が見込まれる分野に進む傾向があります。さらに、高齢者医療を敬遠する理由として、現場での負担感や繁忙度の高さを挙げる声も少なくありません。実際、多くの医療現場でマンパワーやベッド数が圧迫され、介護施設ではスタッフ不足による新規入所者の受け入れ制限も行われている状況が報告されています。日本はさらに深刻この話題は、当然日本にとっても対岸の火事ではありません。現状の医療システムで十分高齢者医療は成立していると思われる方も少なくないかもしれませんが、本当に最適な医療が行われているのかには疑問が残ります。日本における高齢者人口は2024年時点で約3,625万人(総人口の29.3%)に上り、日本は主要国で最も高齢化率が高い国です3)。また、今後も高齢化率の上昇は続く見通しで、2040年には高齢化率34.8%と推計されています 。日本の高齢者人口は今後数十年にわたり高水準を維持し、総人口に占める割合も3人に1人から、将来的には2人に1人近くになると見込まれています。そんな中、老年科専門医の数が少ないことは、日本では話題にもあまり上らない課題です。国内の老年科専門医の数は1,800人前後です。この数字は、小児科専門医(約1万6,000人)の1割にも満たず、日本の医師全体(約34万人)からみるとごくわずかです4)。拡大する高齢者人口の規模に対して老年科専門医の数は非常に少なく、地域によっては老年医学を専門とする医師がほとんどいない状況も指摘されています。これからの高齢社会を支えるために老年医学の専門家が不足している現状は、患者だけでなく社会全体にとっても看過できません。寿命が延びるほど、転倒予防から認知症ケアまで多面的なサポートが必要になり、そうした問題に対処する十分なスキルを持つ医師や看護師、また介護スタッフなどとの連携がますます重要になります。記事でも示されているように、対策として研修プログラムの拡充や魅力的な給与体系の再検討、医療補助スタッフの育成支援などが鍵となりますが、今のところ劇的な打開策は見えていません。こうしたギャップを埋め、高齢者一人ひとりに適切な医療を提供するためには、日米両国ともに、老年科専門医の育成では足りず、医療従事者全体で高齢者医療に対応できる体制を整えていく必要があるでしょう。そのためには、医療系学生のうちからそうした学びを深めることができる仕組みこそが大切ではないかと感じています。参考文献・参考サイト1)United States Census Bureau. 2023 Population Projections for the Nation by Age, Sex, Race, Hispanic Origin and Nativity. 2023 Nov 9.2)Sor J. America's aging population faces a growing shortage of geriatric care. Business Insider. 2025 Mar 9.3)総務省統計局. 統計からみた我が国の高齢者. 2024年9月15日.4)Arai H, Chen LK. Aging populations and perspectives of geriatric medicine in Japan. Glob Health Med. 2024;6:1-5.

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介護が必要となった主な原因(男女別)

介護が必要となった主な原因(男女別)視覚・聴覚障害1.1%呼吸器疾患3.4%視覚・聴覚障害 1.0%呼吸器疾患 1.3%脊髄損傷 1.6%その他11.4%脳卒中25.2%脊髄損傷3.4%男性がん3.9%認知症13.7%パーキンソン病5.4%n=3万4,777人パーキンソン病2.5%女性骨折・転倒17.8%脳卒中11.2%関節疾患12.7%高齢による衰弱8.7%骨折・転倒6.6%認知症18.1%がん 2.1%心臓病4.4%糖尿病5.2%関節疾患 心臓病5.4% 6.5%その他10.0%糖尿病 1.7%高齢による衰弱15.6%n=6万5,223人厚生労働省「2022(令和4)年国民生活基礎調査」第023表「介護を要する者数、介護が必要となった主な原因・通院の有無・性・年齢階級別」を基に作成Copyright © 2025 CareNet,Inc. All rights reserved.

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ALSへのσ1受容体作動薬pridopidineは有効か?/JAMA

 筋萎縮性側索硬化症(ALS)の治療標的として、運動ニューロンに発現しているσ1(シグマ1)受容体(S1R)が注目を集めている。米国・Barrow Neurological InstituteのJeremy M. Shefner氏らは、「HEALEY ALS Platform試験」において、ALSの治療ではプラセボと比較してS1R作動薬pridopidineは疾患の進行に有意な影響を及ぼさず、有害事象や重篤な有害事象の頻度に臨床的に意義のある差はないことを示した。研究の詳細は、JAMA誌オンライン版2025年2月17日号で報告された。米国の無作為化第II/III相試験 HEALEY ALS Platform試験は、第III相試験に進む有望な新規ALS治療薬を迅速かつ効率的に特定することを目的とする二重盲検無作為化第II/III相試験であり、プラセボ群の共有と継続的な参加者登録が可能な方法を用いて複数の試験薬を同時に評価可能である。pridopidineは4つ目の試験薬として選択され、2021年1月~2022年7月に米国の54施設で参加者を登録した(AMG Charitable Foundationなどの助成を受けた)。 ALS患者162例(平均年齢57.5歳、女性35%)を登録し、pridopidine 45mg(1日2回)を経口投与する群に120例、プラセボ群に42例を無作為に割り付け、24週の投与を行った。また、プラセボ群に他の3つのレジメンの試験でプラセボの投与を受けた122例を加えた合計164例を共有プラセボ群とした。 有効性の主要アウトカムは、ALSの疾患重症度のベースラインから24週目までの変化とした。疾患重症度は、機能(ALS機能評価スケール改訂版[ALSFRS-R]の総スコア[0~48点、点数が低いほど機能が低下])と生存の2つの要素で評価し、これらを統合して疾患進行率比(DRR、生存期間を考慮した疾患進行の評価指標)を算出した。DRRが1未満の場合に、プラセボ群に比べpridopidine群で疾患の進行が遅いことを示す。解析には、ベイズ流のアプローチによる共有パラメータモデルを用いた。 有効性の主要アウトカムの解析の対象となった162例のうち136例(84%)が試験を完了した。5つの主な副次アウトカムにも有意差なし 主要アウトカムは、pridopidine群とプラセボ群に有意な差を認めなかった(DRR:0.99[95%信用区間[CrI]:0.80~1.21]、DRR<1の確率0.55)。ALSFRS-Rスコアの1ヵ月当たりの変化率は、pridopidine群で-0.99ポイント(95%CrI:-1.14~-0.84)、共有プラセボ群で-1.00ポイント(-1.14~-0.87)であった。また、死亡イベントの1ヵ月当たりの発生率は、pridopidine群、共有プラセボ群とも0.012件だった。 以下の5つの主な副次アウトカムにも、pridopidine群とプラセボ群で有意な差はなかった。(1)ベースラインで球麻痺を有する患者におけるALSFRS-R総合スコアが2点以上低下するまでの期間、(2)ベースラインで球麻痺を有する患者における静的肺活量(SVC)の低下率、(3)ALSFRS-Rの球麻痺スコアが悪化しなかった患者の割合、(4)ALSFRS-Rの球麻痺スコアが1点以上変化するまでの期間、(5)死亡または永続的な換気補助(PAV)までの期間。忍容性は良好、転倒と筋力低下が多い pridopidineの忍容性は良好であった。有害事象および重篤な有害事象の頻度に、両群間で臨床的に意義のある差はみられなかった。最も頻度の高い有害事象は、転倒(pridopidine群28.1%、共有プラセボ群29.3%)と筋力低下(24.0%、31.7%)だった。pridopidine群では、Fridericia式による心拍数補正QT(QTcF)間隔が臨床的に意義のある変化を示した患者はいなかった。 著者は、「最大の解析対象集団(FAS)の探索的解析では、pridopidine群で発話速度の障害と構音障害に関して名目上有意な進行の抑制がみられ、このpridopidine群における発話の改善は、関連する脳幹領域にS1Rが高密度に分布することを反映している可能性がある」「本研究で実現されたプラセボ群の参加者の共有は、より効率的な試験の実施につながると考えられる」としている。

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せん妄時にハロペリドール5mg投与は適切か?【こんなときどうする?高齢者診療】第10回

CareNeTVスクール「Dr.樋口の老年医学オンラインサロン」で2025年1月に扱ったテーマ「せん妄と認知症のBPSD:5つのMを使って症状と原因に対応する」から、高齢者診療に役立つトピックをお届けします。高齢者診療において、認知症、せん妄、抑うつの3つは頻繁にみられる精神・認知にまつわる症状です。これらはオーバーラップし、併発することも多く、正確に3つを見分けることは非常に難しいのが現実です。しかし、安易に「せん妄」とラベリングをして身体拘束、薬剤対応をするのではなく、原因を考える視点が不可欠です。今回は、ケースを通じて、適切な評価と対応について一緒に考えていきましょう。85歳女性 呼吸困難を生じ自宅で転倒。救急を受診し、心不全急性増悪と診断される。尿閉はないが、「尿量把握」のため導尿カテーテル挿入、フロセミド投与による利尿処置を行い、入院治療・観察開始。既往症高血圧、心不全、2型糖尿病、CKDIII、軽度認知機能障害、TIA(3年前)入院1日目21:30心臓モニター、酸素飽和度モニター、末梢点滴、導尿カテーテルなどを開始された状態で病棟に到着。転倒防止のためにベッドアラームも開始された。22:30「不安を訴えた」ため頓服オーダーされていたロラゼパム服用。また痒み症状緩和のためジフェンヒドラミンを経口投与された。3:00不安と痒み症状は軽快せず、体動が続き、ベッドアラーム音により興奮症状が悪化。ベッドから起きてモニターを外し、病院を出ようと試みる過活動性せん妄と判断され、ハロペリドール5mg静注。投与後、就寝し興奮・行動症状は軽快。看護師の報告には「薬剤投与による良好な効果」と記載されていた。入院2日目8:00起床せず、朝食摂取なし。10:30ベッド上におり、ほぼ目を覚まさない。薬剤で興奮がおさまったのは、本当に「良好な効果」だったのか?ベッドサイドで対応した看護師からすると、“興奮症状が出て、指示に従わず自己離床し、病院から出ようとした患者が、薬剤投与後に落ち着いて就寝した。その後、アラームが鳴らず、転倒やモニター外しなどの行動も見られなかった”という状況は、薬剤投与による「良好な効果」に見えてしまうかもしれません。しかし、この状況の正しい解釈は何だったのでしょうか。この状況の適切な解釈のひとつは「過活動性せん妄が過鎮静され、眠ってしまった」ということです。過鎮静を「治療効果」と誤認してしまうと食事摂取量の減少、身体活動量の低下、廃用症候群の進行、転倒、誤嚥リスクの上昇、そして抗精神病薬による死亡率の上昇といった負の影響を招きます1)。薬剤による身体拘束(薬剤拘束)は避けるべき。それでも薬を使うならば-ハロペリドール、クエチアピンやオランザピンのような抗精神病薬は半減期が長いものが多く、高齢者では10時間以上効果が持続する場合もあります。これらの背景を考慮して安全に使用するには、効果が期待できる最少量から始める慎重さが必要です。もちろんどの程度の用量で効果を期待できるかは、患者の身体的な状況や行動精神症状により異なりますので、少量から始め、薬剤それぞれの最高血中濃度到達時間を目安に症状を再評価、薬剤による効果を確認します。※例:静注・筋注のハロペリドールの最高血中濃度到達時間は10~20分症状が治まらなければ再度同量、または必要に応じて増量し再評価。これを繰り返して患者ごとの「効果が確認できる最少量=適量」を見つける手順を踏むのが賢明です。しかし、薬の投与方法を変更することは対処方法のひとつではあるものの、薬剤による鎮静や精神行動症状への対応も「身体拘束のひとつ」であるという認識を持っておくことが重要です。アメリカの長期療養施設や回復期病院では薬剤的か機械的(拘束帯、抑制ミトンなどの使用)かを問わず、身体拘束の実施は行政から厳しく監視されており、実施率の高い病院や施設にはさまざまなペナルティや罰則が課されるとともに、その情報も一般公開されています。日本の身体拘束の実施率は世界と比較して高く、国内でも問題視されはじめていることは近年の診療報酬改定からも明らかです。身体拘束を極力行わないという時代の流れからも、せん妄対策は予防が最も優先されるべきである2)という自覚を持ち、非薬物対応を優先して考え続けることがすべての医療者に求められています。5つのMを使ってせん妄のリスクを見つけ、予防するでは、どのようにせん妄を予防したらよいのでしょうか?ここでも5つのMが役立ちます。5つのMを使って事前にリスク要因を見つけ、環境調整によってせん妄を予防することを考えてみましょう。Matters Most    安心できる環境の欠如Medication     ベンゾジアゼピン系薬、抗コリン薬、不適切な麻薬鎮痛薬使用、中枢神経に影響を及ぼす薬剤Mind       認知症、抑うつ、不安、意思疎通の不具合Morbidity    身体行動の制限、低栄養・脱水、身体の痛み、感覚器官の不具合、照明、部屋の明るさや騒音などの環境Multi complexity急な環境の変化、社会的孤立、家族の訪問などいかがでしょうか?こうしたアセスメントから、環境の変化や痛みが身体・精神・認知に過剰なストレスを与えているかもしれない、腹痛や便秘などがあってもそれを自覚できないかもしれない、あるいは自覚があっても訴え出ることができないのではないかという仮説を立てることができ、身体症状の解消を図るなどの予防的介入を考えられるようになります。せん妄はコモンに起きていて、しかも見逃されている急性期病棟では3人に1人が発症しているといわれるほど、せん妄の頻度は高いものです3)。問題行動が目立つ過活動性せん妄は発見される一方で、その3倍以上の患者が一見症状が顕著でない低活動性せん妄を生じているという報告もあります4)。低活動性のせん妄は見過ごされやすいことに加え、せん妄が生じた後の死亡率が上昇することはあまり周知されていません5)。これらの事実と向かい合い、せん妄を予防し、非薬物療法を最大限に活用し、薬物療法を最小限にすることが、患者の予後とQOLに結び付いているかお判りいただけると思います。これを機に、せん妄の予防にぜひ一緒に取り組んでいきましょう! せん妄のより詳しい対応策はオンラインサロンでオンラインサロンメンバー限定の講義では、問診や日々の観察でせん妄に気付くためのコツ、せん妄に対応するときに使えるHELPプログラムを解説しています。また、酒井郁子氏(千葉大学大学院看護学研究院附属病院専門職連携教育研究センター長)を迎えた対談動画で、看護からみた身体拘束についての学びもご覧いただけます。参考1)Dae H Kim, et al. J Am Geriatr Soc. 2017: Jun;65:1229-1237.2)Chiba Y, et al. J Clin Nurs. 2012 May:21: 1314-1326.3)Inoue SK, et al. N Engl J Med.2006:354:1157-1165.4)Curyto KJ. Am J Geriatr Psychiatry. 2001:9:141-147.5)樋口雅也ほか.あめいろぐ高齢者診療. 112. 2020. 丸善出版

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