サイト内検索

検索結果 合計:466件 表示位置:1 - 20

1.

6月5日 ロコモ予防の日【今日は何の日?】

【6月5日 ロコモ予防の日】〔由来〕「ロ(6)コ(5)モ」と「ろ(6)うご(5)」(老後)と読む語呂合わせから、ロコモティブ・シンドロームの認知度を高め、その予防に関する正しい理解を広めることを目的に「ロコモティブ・シンドローム予防推進委員会」が制定。関連コンテンツ医療・介護施設従事者のための転倒・転落事故へのアプローチこれから、ロコモ対策、何をやる(Dr.坂根のすぐ使える患者指導画集)7つの“ロコモチェック”(Dr.坂根のすぐ使える患者指導画集)初めて治療ゴールを示した「骨粗鬆症の予防と治療のガイドライン」変形性膝関節症、膝装具の追加で患者報告アウトカムが改善/BMJ

2.

骨折・転倒予防、CaとビタミンDに効果認めず~メタ解析/BMJ

 これまでの系統的レビューでは、カルシウムおよびビタミンDは、単独では骨折の減少をもたらさず、これらを併用しても結果に一貫性はなく、転倒に対するビタミンDの効果にもばらつきがみられる。それにもかかわらず、ガイドラインなどは筋骨格系の健康維持にビタミンD(±カルシウム)の補充を推奨し、2000年代初頭以降、これらの処方量は大幅に増加しているという。カナダ・CIUSSS du Nord-de-l’Ile-de-MontrealのOlivier Masse氏らは、骨折および転倒の予防において、カルシウム、ビタミンD、またはこれらを併用した栄養補充製品の有益性はほとんど、あるいはまったく認められないことを示した。研究の成果は、BMJ誌2026年5月20日号で報告された。骨折・転倒の予防効果をメタ解析で評価 研究グループは、成人における骨折および転倒に対する、カルシウム、ビタミンD、またはこれらを併用した栄養補充製品の効果を評価する目的で、関連文献の系統的レビューとメタ解析を行った(特定の助成は受けていない)。 対象は、骨粗鬆症の薬物治療を受けていない成人(18歳以上)において、骨折または転倒の予防法として、カルシウム、ビタミンD、またはこれらの併用補充製品を、プラセボまたは無治療と比較した無作為化比較試験とした。全骨折の予防効果はほとんどない 69件の試験(参加者15万3,902例)を解析の対象とした。60試験(87%)は地域在住の高齢者のみ、26試験(38%)は女性のみを対象とし、50試験(72%)の参加者は骨折や転倒のリスクが高いグループには属していなかった。全体の年齢中央値は71.2歳(四分位範囲:63.8~76.9)だった。 主要アウトカムである全骨折に関して、カルシウム補充製品(11試験、参加者9,067例、リスク比:0.91[95%信頼区間[CI]:0.81~1.01]、エビデンスの確実性:中)や、ビタミンD補充製品(36試験、9万2,415例、1.00[95%CI:0.95~1.06]、高)、併用栄養補充製品(15試験、5万1,126例、0.91[95%CI:0.84~0.99]、高)のいずれにおいても、予防効果はほとんど、あるいはまったく認めなかった。 大腿骨近位部骨折、非脊椎骨折、脊椎骨折についても、3つの補充製品とも、ほとんど予防効果はなかった。転倒の予防にも効果はない、他の介入法の可能性を 転倒の予防に関しても、カルシウム補充製品(2試験、参加者2,966例、リスク比:0.91[95%CI:0.78~1.06]、エビデンスの確実性:中)、ビタミンD補充製品(32試験、6万5,234例、1.01[95%CI:0.98~1.04]、高)、併用栄養補充製品(10試験、1万1,068例、0.92[95%CI:0.84~1.00]、中)のすべてで、予防効果はみられなかった。 また、複数のサブグループ解析により、異質性に関して広範な検討を行ったが、上記の知見の頑健性は保持されていた。 一方、高リスク例や在宅看護を要する患者については、カルシウム単独療法および併用補充療法の多くのアウトカムに関して、エビデンスは十分ではなかった。 著者は、「これらの知見は、骨折や転倒の予防を目的とするカルシウム、ビタミンD、これらを併用した栄養補充製品の日常的な摂取を支持しない」としている。また、「本研究の結果は、特定の骨疾患を有する患者、あるいは骨粗鬆症の薬物治療や、長期にわたりコルチコステロイドを使用している患者には一般化できない可能性がある」「今後は、骨折や転倒の予防に、これら以外の介入法の評価が行われる可能性があり、検討が期待される分野として、食事療法、医薬品の再評価、教育や行動変容へのアプローチ、多面的な介入、および転倒予防のためのデジタルツールなどが挙げられる」と指摘している。

3.

第63回 「自宅が病院になる」時代へ ― Hospital at Homeとは何か

高齢化が進む世界で、いま注目を集める医療提供モデルがあります。「Hospital at Home(以下、HaH)」と呼ばれる、自宅にいながら入院相当の急性期医療を受けられる仕組みです。日本ではまだなじみの薄い言葉かもしれませんが、欧米ではすでに一定の実装が進んでいます。私の勤めるマウントサイナイ医科大学にもHaHのチームがあり、救急外来からHaHに入院させることもしばしばです。今回ご紹介するのは、HaHが従来の入院医療と比べて高齢者にとって本当に有効で安全なのかを、ランダム化比較試験11件・計3,301例を統合して検証した系統的レビュー・メタ分析です1)。本稿ではまずHaHの概念を整理し、論文の知見をご紹介したうえで、日本社会への適用可能性について考えてみたいと思います。Hospital at Homeとはどのような仕組みかHaHとは、本来であれば急性期入院が必要な患者さんに対し、医師・看護師・理学療法士などの多職種チームが患者さんのご自宅へ出向き、「病院レベルの治療」を自宅で提供する仕組みです。点滴投与、バイタルサインの遠隔モニタリング、計画的な訪問診療などが組み合わされ、自宅という環境で入院に匹敵する医療が展開されます。入り口は大きく2通りに分かれます。救急外来などから直接ご自宅で治療を開始する「入院回避型(admission avoidance)」と、いったん病院で安定化させた後に早期退院し、自宅で治療を継続する「早期退院型(early discharge)」です。「住み慣れた場所で過ごしたい」という多くの高齢者の願いに応えつつ、院内感染やせん妄、廃用症候群といった「入院に伴う合併症」を減らすことが期待されています。私の所属する医療機関でも、両パターンの利用があります。メタ分析が明らかにしたこと本研究は、PubMedやCochrane Libraryなど主要なデータベースを2024年4月まで網羅的に検索し、65歳以上(または65歳以上が80%以上を占める集団)を対象とする11件のRCTを統合しました。結果は、なかなか印象的なものでした。在院日数はHaH群で平均およそ2.1日短縮し、総医療費もHaH群で有意に少なく、再入院リスクは18%の低下が示されました。さらに、手段的日常生活動作(IADL)で測る生活機能は、HaH群でわずかながら有意に改善していました。一方で、死亡率や有害事象(転倒・せん妄など)の発生頻度には両群間で差がありませんでした。安全性を損なうことなく、効率と機能予後の双方で利益があった、と読み取れる結果です。ただし、いくつかの限界もあります。再入院や費用に関する研究間のばらつきが大きく、HaHのモデル設計、医療システムの違い、患者選定の基準の違いなどが結果に大きく影響している可能性があります。著者ら自身も、対象研究の大半が西側先進国で行われており、文化や制度の異なる地域での適用可能性は不確かである、と慎重に述べています。日本に活かせるのかそれでは、HaHは日本に活かせるのでしょうか。日本は世界に類を見ない超高齢社会であり、急性期病床の逼迫、医療費の増大、そして「最期は住み慣れた場所で過ごしたい」という多くの声、いずれも切実な課題です。訪問診療・訪問看護・地域包括ケアという在宅医療の制度的基盤も整いつつあり、HaHを取り入れる素地は決して悪くないと考えられます。一方で、慎重に考えるべき点も少なくありません。HaHは「入院に代わる急性期治療」であり、24時間体制の急変対応、遠隔モニタリング、多職種連携が前提となります。日本の在宅医療は安定期の慢性管理や看取りを中心に発展してきた経緯があり、急性期医療を在宅で提供する人員配置や診療報酬体系は、現状のままでは十分とは言えないでしょう。家族介護者の負担、住環境、地域差といった現場の事情も無視できません。それでもなお、入院に伴う合併症を抑え、機能と尊厳を守りつつ医療資源を効率化できる可能性は、日本の医療にとって大きな示唆を含んでいるとも思います。本論文の知見を踏まえながら、日本の文脈に合った「日本版HaH」の検証研究や制度設計を進めていくこと。それが、これからの日本の医療界に課された大切な宿題と言えそうです。 1) He H, et al. Efficacy and Safety of Hospital-at-Home versus Traditional Hospital Care in Older Patients: A Systematic Review and Meta-Analysis of Randomized Controlled Trials. Gerontology. 2026;72:384-396.

4.

外傷性脳損傷に伴う慢性期の運動麻痺への細胞治療薬「アクーゴ脳内移植用注」発売/サンバイオ

 サンバイオは2026年5月21日に、外傷性脳損傷に伴う慢性期の運動麻痺の改善を効能、効果又は性能とした細胞治療薬「アクーゴ脳内移植用注」(一般名:パンデフィテムセル、以下「アクーゴ」)の販売を開始したことを発表した。 アクーゴは、健康なドナーの骨髄液から採取した間葉系幹細胞を培養した後、神経再生能力を高めるためのヒトNotch-1細胞内ドメイン遺伝子を導入して作られる、ヒト(他家)骨髄由来加工間葉系幹細胞である。脳内の損傷した神経組織に移植することで、タンパク質の一種であるFGF-2などが放出され、損傷した神経細胞が本来持つ再生能力を促し、神経細胞の増殖・分化を促進する作用が示唆されている。 国内においては、厚生労働省より再生医療等製品として「先駆け審査指定制度」の対象品目として指定され、2024年7月31日に条件及び期限付き製造販売承認を取得していた。また海外においては、米国食品医薬品局(FDA)よりRMAT(Regenerative Medicine Advanced Therapy)指定を、欧州では欧州医薬品庁(EMA)より先端医療医薬品(ATMP)の指定を受けている。 外傷性脳損傷は、交通事故や転倒などで頭部に外部から強い力が加わることで脳機能に障害をもたらす疾患であり、長期にわたり身体機能や認知機能、社会生活に影響を及ぼす慢性的な機能障害を伴うことから、大きなアンメットメディカル・ニーズが存在している。 アクーゴの有効性評価について、国際共同第II相臨床試験(TBI-01試験)の多施設共同偽手術対照無作為化二重盲検比較試験が米国、日本、ウクライナで実施された。主要評価項目である「24週目におけるFugl-Meyer Motor Scale(FMMS)のベースラインからの変化量」において、各用量群を併合したSB623群(46例)では8.3±10.6、偽手術群(15例)では2.3±4.7となり、有意な改善効果が認められた(p=0.0401)1)。【製品概要】販売名:アクーゴ脳内移植用注一般名:バンデフィテムセル効能、効果又は性能:外傷性脳損傷に伴う慢性期の運動麻痺の改善薬価:72,716,528円用法及び用量又は使用方法:通常、成人にはヒト(同種)骨髄由来間葉系幹細胞として、生細胞5×106個(300μL)の細胞調製液を、専用投与機器セットを用いた定位脳手術により、損傷した組織の周辺部に移植する。頭蓋骨の小孔1箇所を通り損傷周辺部に至る3つの移植経路から、1移植経路あたり細胞懸濁液100μLを最深部から5~6mm間隔で5箇所に、1箇所あたり20μL移植する。注入速度は約10μL/minとする。移植に際しては、以下を行うこと。1.手術開始前に脳神経外科用侵襲式頭部固定具に専用投与機器セットのガイド&ストップ、スタイレットを備えたインサーターを取り付ける。2.脳内移植用細胞剤を融解し、専用調製液を用いて洗浄した後、移植濃度1.67×106個/100μLになるように専用調製液で調製し、細胞懸濁液とする。専用投与機器セットの投与カニューラを固定したマイクロシリンジを専用調製液により清浄化した後、細胞懸濁液を充填する。製造販売承認取得日:2024年7月31日発売日:2026年5月21日製造販売元:サンバイオ株式会社

5.

ライフスタイル関連の認知症危険因子――Lancetの14の危険因子を読み解く(その4)【外来で役立つ!認知症Topics】第41回

前回は、病理の進行を直接抑える「表街道」と、脳の予備能を高める「援護射撃」という視点で各因子を紐解いてきた。「Lancetの14の危険因子を読み解く」シリーズの完結編となる今回は、日常の選択が脳の未来を左右する6つの因子を整理する。脳の「炎症」を助長する因子今回取り上げる6つの因子のうち、肥満、喫煙、過度な飲酒、そして大気汚染の4つは、主に神経炎症や酸化ストレスを介して認知症の悪化を加速させる危険因子である。肥満:伝統的な食事で予防中年期の肥満は、認知症のリスクを最大3倍も増加させる。肥満の原因は、高カロリーやジャンクフードといった不適切な食生活、運動不足、睡眠不足、慢性ストレスなどである。脳への悪影響のメカニズムとして、運動不足やストレスに加え、睡眠時無呼吸症候群に伴う低酸素刺激、さらにはミクログリア炎症などの脳内炎症との関連も注目されている。計画的な体重減少は認知機能を改善させる。減量には食事や運動が基本だが、最近ではセマグルチドなど、いわゆる「痩せ薬」の有用性も注目されている。ただし、筋肉喪失と骨の脆弱化を防ぐために、年間3~4kg程度の緩やかな体重減少に留めるのが望ましい。ここで興味深いデータがある。先進諸国の肥満率を比較すると、アメリカが42.9%と最高であるのに対し、日本は最低の4.9%というものである1)。その背景には、伝統的な食生活と活動的なライフスタイルが指摘されている。前者は、日本食が地中海食と同様に生活習慣病予防食である事と関連するだろう。後者については勤勉を尊ぶ日本人の伝統的な価値観が関わっているのかもしれない。喫煙:禁煙5年でリスクをリセット今現在の喫煙者は非喫煙者に比べて、認知症リスクが30~50%高い。やはり喫煙は「やめるしかない」のである。以前からCOPD予防の文脈で、禁煙すれば呼吸器系がクリーニングされると知られていた。認知症に関しても、禁煙の効果を示す報告がある。印象的なのは、禁煙の5~7年以内に、吸わない者と同程度まで認知症のリスクが低下するという報告だ2)。なお禁煙による体重の増加には留意したい。禁煙しても体重が増加すればリスク低減効果は相殺されてしまう。治療では、薬理学的治療と行動療法が組み合わされる。最近では電子タバコが良いとも言われるが、実は酸化ストレスと脳の慢性炎症をもたらす点では、従来のタバコとあまり変わらない。過度な飲酒:不定期の大量飲酒に注意飲酒については適切な基準の把握が欠かせない。純アルコール10g (ビールで200mL 日本酒で0.5合、焼酎で40mL)を1単位とした場合、1週間に14単位を超える飲酒は認知症リスクを大幅に増加させる。飲酒の安全基準には男女差があり、男性は1日2単位、女性では1日1単位である。過度の飲酒は、記憶関連の大脳領域を萎縮させ、脳内のメッセージ伝達能力を障害する。さらに高血圧や心臓病、脳卒中のリスクを増加させる。注意すべきは、定期的な飲酒以上に、不定期に大量飲酒するほうが脳への悪影響が大きいことである。飲酒の認知機能への影響について、興味深い大規模なコホート研究がある3)。軽度~中等度の継続的な飲酒者は、ずっと非飲酒者より認知症のリスクが低減する。さらに、飲酒量を多量から中等量へと節酒することで、ずっと飲まない者に比べて認知症のリスクがさらに低下するという。もっとも、認知症予防のために、わざわざ飲酒を開始すべきではないことは言うまでもない。大気汚染:PM2.5とレビー小体型認知症大気汚染、とくにPM2.5は、認知症の危険因子だと認識される。それが脳に到達するのに3つの経路が考えられる。まず肺から血液吸収され脳に至るもの、次に鼻から直接脳に到達するもの、そして血流を通して脳に至って血液脳関門(BBB)を破壊するものである。PM2.5は高齢者にとってとくに危険だが、この濃度は交通量の多い道路周辺で最高である。しかし主要道路から100メートル離れるごとに曝露量は10~15%軽減し、300メートルで30~40%低減する。大通りを避けて住宅街の裏道の利用が望ましい。また室内で空気清浄機を活用すると、PM2.5を半分以下にできる。ところでPM2.5について斬新な最近の報告がある5)。PM2.5がレビー小体型認知症(DLB)の病理学的特徴であるαシヌクレインの異常な折り畳みを引き起こし、PM2.5の曝露量が多いとDLBやパーキンソン病発症リスクが高まるという。脳への「インプット」を阻害する因子残る2つの孤独と視力障害は、脳へのインプットを阻害する因子であり、これらへの対策は認知予備能を高める側面が強い。孤独:脳の萎縮を防ぐ「社会との接点」孤独とは主観的な感覚であり、社会的孤立は交流のない状態だが、いずれも認知機能低下と強く関連する。孤独感は全認知症リスクを31%増加させる。アルツハイマー病で14%、血管性認知症で17%、軽度認知障害で12%の増加をもたらす。また社会的孤立は孤独とは独立に26~50%の増加をもたらす。孤独感が単なる「気持ちの持ちよう」というレベルではないことを示す脳画像研究がある4)。前頭前野背外側部などの大脳部位は、共感や思いやりとの関連が知られているが、これらの脳部位の萎縮と、孤独が相関するという。つまり、共感・思いやりと孤独は表裏一体をなす脳活動なのだろう。対策としては、共通の関心事に基づくグループ参加が最も効果的だとされる。筆者が経験的に良いと思うのは、ペット(ペットロボットも含む)、趣味(読書、ガーデニング、手作業)のグループを探すこと。あるいは図書館や学校(登校・放課後の見守り)などのボランティア、地域で日常的に行われているラジオ体操などもいいだろう。視力低下:認知負荷を強いる「見えにくさ」の罠視力障害のある高齢者は正常視力の人と比べ、認知症発症リスクが1.5~2.3倍高い。想定されるメカニズムとして、視覚障害により脳への感覚入力が減少し、視覚処理領域の神経萎縮が起こり、脳刺激の減少、神経細胞の消失と連鎖していくことが考えられる。また視力障害と認知低下は、基礎的なプロセスに共通性があるかもしれない。たとえば脳血管障害、アミロイドβ蓄積、慢性炎症や神経変性である。さらに、視力低下により他の認知的リソースを使って情報を得なければならないため、本来の認知能力がその分減るとする「認知負荷仮説」も考えられる。目というと視力と考えがちだが、最近では「コントラスト感度」、つまり明暗を判別する能力が重要だとされる6)。たとえば夜間の活動には、高いコントラスト感度が必要だ。また照度が低い状態や、霧、眩しさのある状況ではその感度が鈍り、転倒・転落や交通事故のリスクが高まる。視力障害への対応は、白内障手術や眼鏡処方、低視力リハビリテーションが代表的である。これらにより、臨床リスクを30%低減できる可能性がある。今回をもって「Lancetの14の危険因子を読み解く」シリーズは終了となる。繰り返しになるが、この危険因子とはアルツハイマー病のみならず、すべての認知症に対するものである。また危険因子は、古典的なアミロイド仮説に関連するもののみならず、認知予備能仮説のように最大限に脳を守る・活用していくという方向に大別される。 1) WorldAtlas. The Most Obese Countries In The World In 2024. 2) Chen H, et al. Smoking Cessation, Weight Change, and Risk of Dementia: A Prospective Cohort Study. medRxiv. 2025 Nov 6. [preprint] 3) Jeon KH, et al. Changes in Alcohol Consumption and Risk of Dementia in a Nationwide Cohort in South Korea. JAMA Netw Open. 2023;6:e2254771. 4) Lam JA, et al. Neurobiology of loneliness: a systematic review. Neuropsychopharmacology. 2021;46:1873-1887. 5) Zhang X, et al. Lewy body dementia promotion by air pollutants. Science. 2025;389:eadu4132. 6) Risacher SL, et al. Visual contrast sensitivity in Alzheimer's disease, mild cognitive impairment, and older adults with cognitive complaints. Neurobiol Aging. 2013;34:1133-1144.

6.

第315回 医療業界の贈収賄事件に変化の予兆(前編) がんセンター東病院の贈収賄事件、きわめて異例の全面無罪判決

「賄賂の趣旨があった」にもかかわらず贈賄罪には問われずこんにちは。医療ジャーナリストの萬田 桃です。医師や医療機関に起こった、あるいは医師や医療機関が起こした事件や、医療現場のフシギな出来事などについて、あれやこれや書いていきたいと思います。ゴールデンウィークの後半は、山仲間と福島県の山に行ってきました。3泊4日で安達太良山、西吾妻山、磐梯山の百名山三座を登ろうという少々欲張った計画でした。しかし、初日は雨で停滞、2日目は強風で安達太良山を途中撤退、3日目の西吾妻山は、白布峠からの西大巓(西吾妻山の南西に隣接する山)登山で雪渓を踏み抜き谷に1mほど転落、左ひざを傷めて再び撤退となりました。最終日に予定していた磐梯山も諦め、結局、一座も頂上を踏めず、会津の酒をしこたま飲んだだけの山行となりました。連休明けに近所の整形外科クリニック(大混雑でした)を受診したところ、「内側側副靭帯の損傷。半月板も傷めているかもしれないので病院でMRIを」と言われてしまいました。前回、父親の電動自転車での転倒が心配だと書きましたが、自分自身の春山登山の心配が先だったかもしれません。さて今回は、近年摘発が増える医療界の贈収賄事件について書いてみたいと思います。本連載でも三重大臨床麻酔部事件や、昨年から世間を騒がせている東大病院の贈収賄事件など、数多くの事件について書いてきましたが、収賄側、贈賄側の双方が「無罪」となったケースはありませんでした。しかし、先頃、国立がん研究センター東病院(千葉県柏市)で起きた贈収賄事件について、収賄側、贈賄側、双方の無罪が確定するケースがありました。贈賄側とされた企業の元社長については「賄賂の趣旨があった」とされたものの、贈賄罪には問われませんでした。警視庁捜査2課が関与した贈収賄事件としては極めて異例とも言える全面無罪の理由はいったい何だったのでしょうか。国立がん研究センター東病院での胆管用ステント採用を巡る事件国立がん研究センター東病院での医療機器の選定・使用を巡り、医師に便宜を図ってもらう見返りに金銭を渡したとして贈賄罪に問われた医療機器メーカー・ゼオンメディカル(東京都千代田区)の元社長(69)に対し、東京地裁(中川 正隆裁判長)は4月16日、無罪(求刑・懲役1年)とする判決を言い渡しました。元社長は、2021年5月、同病院の肝胆膵内科医長(当時)に対し、カテーテル治療で用いる胆管用ステントの自社製品を他社製よりも多く使った謝礼などとして168万円を送金したとして起訴されていました。契約自体はゼオンメディカルの胆管用ステントの安全性などについて医師に調査を依頼する内容となっていたものの、検察側は送金について「調査に実態がなく、医師に自社製品をより多く使ってもらうことに対する謝礼だった」などと主張、これに対して元社長は公判で賄賂性を否定していました。4月17日付の朝日新聞等の報道によれば、判決では「会社側は調査結果を社内で広く共有しておらず、送金には賄賂の趣旨があった」と認めました。しかし一方で、元医長が調査結果を会社側に報告していたことを踏まえ、「元医長は送金について契約に基づく報酬だと認識していた」として賄賂の認識がなかったと指摘しました。贈収賄の罪が成立するには、受け取る側と贈る側の両方が賄賂だと認識していた必要があるため、賄賂の趣旨があったとしても裁判所は被告の贈賄罪は成立しない、と判断したわけです。なお、この判決に対して東京地検は控訴せず、5月1日に無罪判決が確定しました。収賄罪に問われた元医長は今年2月に無罪確定この事件に関連しては、東京地裁(向井 香津子裁判長)は元社長から金銭を受け取ったとして収賄罪に問われた肝胆膵内科の元医長(49)について、無罪(求刑・懲役2年6ヵ月、追徴金約315万円)とする判決を今年2月6日にすでに言い渡しています。元医長は、ゼオンメディカルのステントを多用するなどの謝礼として、同社元社長らから2020年に約146万円、2021年に約168万円をそれぞれ受け取ったとする2つの収賄容疑で2023年9~10月に警視庁に逮捕され、その後、東京地検に起訴されました。公判で元医長は受け取った金銭について「賄賂ではない」と起訴事実を否認。弁護側は元医長と同社は製品の安全性などを確認する「市販後使用成績調査」の契約を結んでおり、受け取った金銭を調査報酬と考えた被告には「収賄の故意がない」と訴えていました。2月7日付の読売新聞等の報道によれば、判決では、2020年の金銭については「被告が契約に基づく調査を実際に行い、結果を同社側に伝えていたことから『被告は調査報酬と認識していた』と認定。同社側にも当初は調査結果を利用する意思があり、『便宜を図った謝礼とみること自体が困難で、収賄の客観的事実も故意もない』」と結論付けました。2021年の金銭に関しては、「同社側には調査結果を利用する意思は一切なく、『贈賄の趣旨で支払ったものだ』と指摘。ただ、被告は同社側の事情を知らず、同様の契約があると信じて行動していたとして、賄賂ではなく調査の報酬と考えて受け取った」としました。収賄罪の成立を認めなかったこの判決に対し、東京地検は控訴せず、4月21日に無罪判決が確定しています。「奨学寄附金」のように名目が曖昧な報酬は、贈賄も収賄も成立しやすい贈賄側に自社製品を有利に使ってもらう「賄賂の趣旨」があったにもかかわらず双方無罪となった最大のポイントは、収賄側の元医長に「賄賂を受け取る認識」がなく、「調査協力の報酬」だと理解していたため贈賄罪そのものが成立しなかった点です。2月に収賄側の元医長の無罪が確定しており、流れとして4月の贈賄側の無罪もほぼ予想されていたとはいえ、贈収賄事件で収賄側、贈賄側双方が無罪となるのは非常に珍しいことと言えるでしょう。今回の判決からわかるのは、医療機器メーカーなどが、医師になんらかの医療機器等を優先的に使ってもらう等の目的で調査やデータ集めを依頼し、実際にデータ等を収集してその成果物を作り活用すれば、報酬を支払ったとしても贈賄には該当しない可能性が高い、ということです。もちろん、調査やデータ集めの内容や報酬額にもよるとは思いますが、「調査やデータ集め」という医師側の行為と、支払われる「報酬」が「データ1件当たり◯円」というようにきちんと対応していることがポイントになりそうです。逆に言えば、「奨学寄附金」のようにその名目が曖昧な報酬の場合や、対価と考えられるものが風俗や高級クラブなど高額な接待の場合は、贈賄も収賄も成立しやすいと言えそうです。かつて業界関係者から、「警視庁捜査2課には医師や医療機器メーカーが関係する贈収賄のタレコミが相当数あり、その中から取捨選択してより悪質なものを捜査対象にしている」と聞いたことがあります。国立がん研究センター東病院のケースもそうであったとすれば、捜査2課は今回は下手を打ってしまったのかもしれません。今後は贈収賄が確実に成立するケースをターゲットにしてくると思われます。一方、贈収賄事件の頻発を背景に、医療機器メーカーや製薬企業の業界団体は医師や医療機関との関係を適正化するため、これまで以上に厳格な自主規制の動きも出てきています。次回は最近の業界団体の規制の動きについて書いてみます。(この項続く)

7.

高齢者の不眠症治療、非ベンゾジアゼピン系催眠薬vs.オレキシン受容体拮抗薬

 世界的な高齢化の加速に伴い、高齢者の不眠症は、公衆衛生上の大きな課題となっている。高齢者の不眠症では、認知行動療法が第1選択治療であるにもかかわらず、薬物療法も依然として広く用いられている。しかし、高齢者に対する従来の非ベンゾジアゼピン系鎮静催眠薬(非BZRA)の使用には重大な安全性上の懸念が存在する。一方、新しい二重オレキシン受容体拮抗薬(DORA)の長期的な実臨床における安全性に関するエビデンスは依然として限られている。このエビデンスのギャップを埋めることは、高齢者における安全な薬剤使用を導くうえで、きわめて重要である。中国・Nanjing Youan HospitalのShuqing Gao氏らによる、Frontiers in Pharmacology誌2026年3月10日号の報告。 米国食品医薬品局(FDA)の有害事象報告システム(FAERS)データベースを用いて、医薬品安全性監視研究を実施した。対象期間は2004年第1四半期から2025年第2四半期。65歳以上の患者で、主要な疑わしい薬剤として非BZRAまたはDORAが記載されている症例報告を対象とした。報告オッズ比(ROR)、比例報告比(PRR)、情報成分(IC)、経験的ベイズ幾何平均(EBGM)を用いて、偽陽性を最小限に抑えるための厳格な閾値を設定し、包括的な不均衡分析を実施した。 主な結果は以下のとおり。・高齢患者に関する報告5,447件を分析した。・本研究により、2つの薬剤クラス間で明確な有害事象プロファイルの違いが明らかになった。・非BZRA、とくにエスゾピクロンは、治療失敗(例:薬剤無効、不眠症)に関連する最も強いシグナルを示し、さらに味覚異常に関する特異的なシグナルも示した。・一方、DORAは、睡眠覚醒調節機構に合致する夢の異常事象(悪夢、異常な夢、幻覚など)について、強く一貫したシグナルを示した。・特筆すべきは、今回のデータセットにおいて、いずれの薬剤も転倒に関する統計的に有意なシグナルを示さなかった。・器官系分類分析の結果、精神および神経系疾患の発生率が最も高いことが示された。 著者らは「これらの結果は、非BZRAとDORAの安全性プロファイルの違いを明確に示した。非BZRAは治療失敗と味覚異常に関連しているのに対し、DORAは悪夢や幻覚などの神経精神症状と関連していた」としている。

8.

第314回 全国の在宅専門診療所の再編・統合の兆しか?在宅医療の医療法人ゆうの森が桜十字グループ入り

在宅医療の世界では名の知れた医療法人ゆうの森が新興の医療介護チェーンにこんにちは。医療ジャーナリストの萬田 桃です。医師や医療機関に起こった、あるいは医師や医療機関が起こした事件や、医療現場のフシギな出来事などについて、あれやこれや書いていきたいと思います。ゴールデンウィークの前半は、愛知県で一人暮らしをしている94歳の父親の様子を見に帰省しました。本連載でも書いたことのある父親の運転免許の返上問題ですが、昨年12月の誕生日を機にようやく「返上」を決断、20年近く乗ってきた日産マーチも今年に入って処分していてホッとしました。が、「クルマがないと不便だ」ということで、電動自転車を新車で購入していたのには驚きました。電動の三輪車ではなく二輪車です。今度は転倒の心配をしなければならないのかと、半ば呆れて実家を後にした次第です。さて、今回は昨年末に医療界の一部で大きな話題となった事業統合について書いてみたいと思います。それは、在宅医療の世界では名の知れた、医療法人ゆうの森(愛媛県松山市、永井 康徳理事長)と、熊本県から全国区に躍り出た新興の医療介護チェーン、桜十字グループ(東京都港区、西川 朋希代表)の統合です。「“在宅医療の理想形” を、日本全国へ『希望の綿毛』として届けるため」と桜十字この事業統合が発表されたのは昨年末、2025年12月16日のことでした。桜十字グループのプレスリリースには、「医療・介護・予防医療・生活支援を包括的にデザインし、ウェルビーイング・フロンティアを目指す桜十字グループ(以下、桜十字)は、在宅医療の黎明期より業界を牽引してきた医療法人ゆうの森をグループに迎え入れましたことを発表いたします。本統合は、永井医師をはじめとしたゆうの森が確立した“在宅医療の理想形” を、桜十字のネットワークを通じて、日本全国へ『希望の綿毛』として届けるための新たな挑戦です」とありました。「グループに迎え入れた」とあるように、いわゆるM&A(合併・買収)ということになります。プレスリリースにはゆうの森理事長の永井氏の、「桜十字グループとの統合は、ゆうの森が積み重ねてきた質の高い在宅医療を、全国へ広く届けるための新たな挑戦です。患者さんとご家族の満足を最優先にする文化や、多職種が支え合うチーム医療の精神を守りながら、桜十字の持つ力と共に、誰もが安心して選べる在宅医療を社会に普及させていきたい。そして次世代へ繋ぐ、新しい在宅医療の未来を共に創っていきたいと考えています」とのコメントもありました。在宅医療の世界では「たんぽぽ先生」として知られる“スター”の一人このM&Aが医療界で話題となったのには大きくは2つの理由があります。1つは永井氏が在宅医療の世界では「たんぽぽ先生」として知られる“スター”の一人だからです。永井氏は1966年生まれ、愛媛大学医学部を卒業後、同大医学部附属病院、自治医大地域医療学教室を経て、愛媛県の明浜町国保俵津診療所所長に就任、その後2000年に愛媛県松山市に在宅医療専門の「たんぽぽクリニック」を開業、多職種協働などを早くから実践し、日本の在宅医療の普及・定着を牽引してきました。在宅医療の診療報酬算定のノウハウを解説する『たんぽぽ先生の在宅報酬算定マニュアル』(日経BP社)の著者としても有名で、2012年度診療報酬改定以降、2024年までに第8版を発行するに至っています。在宅医療に取り組む医療機関では、このマニュアルのお世話になった方は少なくないでしょう。再春館製薬所と兄弟企業の桜十字グループもう1つは、統合相手が熊本を発祥の地とする桜十字グループだった点です。桜十字グループは2002年に熊本市に開業した桜十字病院を母体とする医療・介護・予防医療などを展開する一大チェーンです。現在は東京に本社(いわゆる総本部)を置くほか、熊本県、福岡県、大阪市にそれぞれ本部を構え、全国5病院の病院事業、各地の桜十字クリニックによる健診事業、高齢者住宅事業などを幅広く手掛けています。在宅介護支援事業は2006年に開始、医療法人ゆうの森の事業所以外にも、独自で居宅介護支援事業所、訪問看護事業所、訪問介護事業所などを多数運営しています。桜十字グループは医療界ではほかの病院チェーンとは“出自”が異なる“異端”と捉えられています。その理由は基礎化粧品や医薬品の製造販売で有名な株式会社再春館製薬所(熊本市、西川 正明代表取締役CEO)と兄弟企業の関係にあるからです。再春館製薬所の創業家が熊本市に桜十字病院を立ち上げ、そこを母体として急速に巨大化したのが桜十字グループなのです。ちなみに、再春館製薬所の西川 通子会長の長男が再春館の西川 正明代表取締役CEO、次男が桜十字グループの西川 朋希代表です。2人とも医師ではありません。「経営基盤を強化しながら理念を継承できる形」として桜十字グループ入りを決断というわけで、在宅医療のパイオニアの永井氏が、なぜ新興医療チェーンの傘下になることを決断したのか謎だったのですが、「日経ヘルスケア」の2026年4月号の記事「FOCUS経営戦略」に永井氏のインタビューが掲載されており、その謎が少しだけ解けました。インタビューの内容を一部紹介したいと思います。同記事で永井氏は、「40歳代で病気をしたことをきっかけに、自分の命には限りがあると実感しました。その時から『この組織をどう次の世代につなぐか』を考えるようになりました。(中略)もし私が突然いなくなってしまったら、組織が回らなくなる可能性もあります。(中略)だからこそ、元気なうちに次の体制を作る必要があると考えました。(中略)開業当初の職員数は数人でしたが、現在は100人以上です。組織を継続させる選択を第一に考えました」とその動機を語っています。そして、「理念や診療の質には自信がありますが、現実には経営の持続性、人材確保、後継者問題など課題もありました。経営基盤を強化しながら理念を継承できる形を探しました。その結果、病院グループへの統合という形が最も現実的だったのです」と桜十字グループ入りの理由を話しています。桜十字グループを選んだ理由について、「最も重視したのは『価値観の一致』」と話し、「(ゆうの森は)経営基盤や人材確保の仕組み、ITやDXの活用といった部分には弱さがあったと思います。グループに入ることでそうした部分は強化できると考えています」と話しています。なお、M&Aにより永井氏自身は理事長として残ったものの、ほかの理事は退任、桜十字から理事を迎え入れたとのことです。「在宅クリニックと病院グループの連携は今後、自然に増えていくと予想」と永井氏在宅専門診療所とは言え、100人以上となった組織の永続性と、ITやDXなどを導入した経営基盤の強化がその大きな理由と言えそうですが、「なぜ桜十字だったのか」という真の理由まではインタビューから知ることはできませんでした。とは言え、「これから在宅医療はグループ化が進むのでしょうか?」という記者の問いに対し、永井氏が「間違いなくその傾向になると思います。2000年代に在宅療養支援診療所が増えましたが、当時開業した医師の多くが60〜70歳代になっています。さらに、後継者がいないケースも多いでしょう。そのとき、『グループに入る』『若い医師に任せる』『承継する』などの選択肢が出てくると思います。(中略)在宅クリニックと病院グループの連携は今後、自然に増えていくと予想できます」と答えていたのは多分に予見的でした。ひょっとしたら今回のM&Aは、各地の在宅専門診療所の再編・統合のきっかけになるかもしれません。実は、私自身も何度か永井氏に取材したことがあります。本拠地である松山でお会いしたこともありますが、印象的だったのは東日本大震災の被災地である宮城県気仙沼市で偶然お会いしたことです。2011年4月、震災から約1ヵ月後に震災医療の現地を取材しようと気仙沼に入ったところ、医療支援で入っていた永井氏が気仙沼の医師や医療スタッフらとともに、被災地の在宅チームの編成や運営を行っている現場に出くわしたのです。松山の診療所は地元のスタッフらに任せきりで、何ヵ月も気仙沼に滞在して気仙沼の在宅医療の体制構築に尽力されていた姿は忘れられません。あのバイタリティと機動力があるならば何も桜十字入りしなくても、と考えてしまいますが、そうもいかない何らかの事情があったのかもしれません。そのあたりの本音は、今度お会いした時にでも聞いてみたいと思います。

9.

不眠にベンゾジアゼピンは使ったらダメ?【非専門医のための緩和ケアTips】第123回

不眠にベンゾジアゼピンは使ったらダメ?不眠に対する処方はどうしていますか? 従来はベンゾジアゼピン系が広く用いられてきましたが、最近はあまり処方しないほうがよいとも言われています。緩和ケアにおいてはどのように考えるのでしょうか?今日の質問訪問診療で担当している患者から、最近不眠気味なので睡眠薬を処方してほしいと相談がありました。予後は月単位と想定される方ですが、まだトイレなどで歩いていたため、転倒の心配を説明し、ベンゾジアゼピン系以外の睡眠薬を処方しました。ただ、その後もあまり眠れなかったようで、もっと強い睡眠薬はないかと相談されました。終末期が近い患者でもベンゾジアゼピン系睡眠薬は使用しないほうがよいのでしょうか?かなり実践的なご質問をいただきました。最近はベンゾジアゼピン系睡眠薬(以下、ベンゾ)の弊害が強調されるようになり、「不眠=ベンゾはNG」として処方を避ける場面が多くなっています。ただ、今回のように終末期に差し掛かった状況であれば、私自身はベンゾの処方は「あり」だと考えています。もちろん、慢性的な不眠に対して長期間使用することは推奨しませんし、転倒やせん妄といったベンゾによる弊害が強く懸念される場合も処方しません。不眠に対する睡眠薬の位置付けは、「環境調整などの非薬物療法に取り組んだうえでの手段」であり「不眠の原因を取り除く」ことが処方の目的です。そして、薬剤の選択としては、まずはベンゾを避けることが推奨されます。ベンゾは入眠効果が速い一方で、日中の眠気の持ち越し、せん妄、転倒、認知機能への悪影響といったリスクがあり、交通事故なども懸念されます。高齢者ではとくにリスクが強調され、避けられることが多くなっています。私が研修医のころは不眠を訴える入院患者にはルーティンでベンゾを処方していたことを考えると、大きく位置付けが変わったことがわかります。ただ、短期的な強いストレスで入眠困難が著明であり、確実性の高い入眠効果を期待する際には、ベンゾは今でもよい選択肢だと考えます。では、終末期の場合はどうでしょうか。予後がそう長くなく、解決困難な強い身体症状がある、そうした時に「眠れない」という状況はよくあります。身体症状を和らげるためにベストを尽くすのは大切ですが、患者自身や家族が疲弊しないことも大切です。せん妄などの弊害が許容できれば、夜間をしっかり休むことを優先してベンゾの処方も一手でしょう。長期的な予後が期待できない場合には、依存など長期使用の弊害を考慮する必要性も薄まります。このあたりの対応は、専門家間でも統一されていない印象です。ある精神科の先生は「終末期であっても、ベンゾは処方しない」という方針でした。一方、私自身は「ベンゾだからダメ」と思考停止になるのではなく、注意点をよく理解し、患者の苦痛緩和を実現するためにほかの手段がない場合には使用が許容される、というスタンスです。皆さんはどのように考えますか?今日のTips今日のTips終末期の不眠に対しては、ベンゾジアゼピン系睡眠薬の弊害をよく理解し、個々のケースで使用を検討しましょう。

10.

肝硬変患者の肝性脳症リスク、フレイル評価で予測可能か

 肝硬変では、肝臓の機能低下に伴い意識障害や認知機能低下を来す「肝性脳症」が生じ、患者の生活の質や予後に大きく影響することが知られている。今回、肝硬変患者を対象とした研究で、簡便なフレイル評価指標であるClinical Frailty Scale(CFS)が、不顕性および顕性肝性脳症の発症リスクの層別化に有用である可能性が示された。研究は、岐阜大学医学部附属病院消化器内科の宇野女慎二氏、三輪貴生氏らによるもので、詳細は2月26日付で「JGH Open」に掲載された。 不顕性肝性脳症(CHE)は肝硬変患者の約40%に認められ、転倒や事故、死亡リスクの増加などと関連することが知られている。CHEが顕性肝性脳症(OHE)へ進行すると、入院の増加や社会生活への影響など患者や家族に与える負担は大きい。しかしCHEの診断には神経心理検査が必要で、時間や専門人材を要するため臨床現場での実施には限界がある。近年、肝硬変患者ではフレイルが入院や死亡など不良転帰と関連することが報告されている。そこで本研究では、CFSによるフレイル評価が、CHEおよびOHE発症リスクの層別化に有用かを検討した。 本研究は、岐阜大学医学部附属病院に入院した肝硬変患者を対象とした後ろ向き観察研究である。OHEの既往がない18~79歳の患者のうち、2004年3月~2023年12月にCHEの評価を受けた症例を解析対象とした。フレイルはCFSを用いて評価し、CFS5以上をフレイルと定義した。CHEは神経心理学的検査により診断し、OHEはWest Haven基準に基づく臨床評価で判定した。CHEとの関連因子はロジスティック回帰分析で検討した。さらに、死亡を競合リスクとして考慮したFine―Gray競合リスク回帰モデルを用いてOHE発症との関連を解析した。 解析対象は262例で、年齢中央値は65歳(四分位範囲55~74歳)、女性は154例(58.8%)だった。フレイルは25例(9.5%)、CHEは82例(31.3%)に認められた。CHEの有病率は、フレイルあり群でフレイルなし群より有意に高かった(84.0% vs 25.7%、P<0.001)。 追跡期間中央値2.8年の間に、40例(15.3%)がOHEを発症し、20例(7.6%)が死亡した。コホート全体でのOHE累積発症率は1年7%、3年13%、5年20%だった。OHEの発症率はフレイルあり群で高く、1年、3年、5年時点の累積発症率はそれぞれ25%、33%、36%で、フレイルなし群(5%、11%、18%)より有意に高かった(P=0.009)。 年齢や肝機能指標などを調整した多変量解析では、CFSがCHEの存在(オッズ比2.13、95%信頼区間1.41~3.37、P<0.001)およびOHE発症(サブディストリビューションハザード比1.38、95%信頼区間1.02~1.87、P=0.037)の独立した関連因子であることが示された。 本研究の結果から、肝硬変患者ではフレイルを有する場合、CHEの有病率とOHEの発症率が高く、CFSがそれらの独立した関連因子であることが示された。筆者らは、「フレイル評価は肝硬変患者における肝性脳症リスクの層別化に有用である可能性があり、臨床現場でのフレイル評価の重要性を示唆する」と述べている。 なお、本研究の限界として、単施設の後ろ向き研究である点や、対象患者の病因分布が一般集団と異なる可能性がある点が挙げられ、結果の一般化には注意が必要である。

11.

進行期パーキンソン病で昇圧薬を中止したら意識消失を繰り返す事態に…【うまくいく!処方提案プラクティス】第72回

 今回は、進行期パーキンソン病(以下「PD」)における起立性低血圧の管理に介入した症例を紹介します。血圧が安定しているから昇圧薬を中止しようという判断が、結果として患者さんに意識消失を繰り返させてしまうことになり、私自身の反省を踏まえた事例です。進行期PDにおける自律神経障害の理解と、降圧薬・昇圧薬の適切な管理について、一緒に整理していただければ幸いです。患者情報79歳、男性(施設在宅)介護度要介護2基礎疾患パーキンソン病(発症70歳)、レビー小体型認知症、前立腺がん(既往)、陳旧性脳梗塞(既往)ADL歩行・食事は一部介助、排泄はオムツ使用(一部介助)、両下肢の筋力低下あり服薬管理施設スタッフが管理薬学的管理開始時の処方内容1.レボドパ・ベンセラジド配合錠 4錠 分3 毎食後(朝2・昼1・夕1)2.ドロキシドパOD錠100mg 3錠 分3 毎食後3.ミドドリン錠2mg 3錠 分2 朝夕食後(朝2・夕1)4.酸化マグネシウム錠330mg 3錠 分3 毎食後5.ソリフェナシンOD錠5mg 1錠 分1 夕食後本症例のポイント介入当初、レボドパ・ベンセラジド配合錠とドロキシドパ、ならびに昇圧薬のミドドリンが処方されていました。起立性低血圧の既往があるとの情報は得ていたものの、血圧は安定(110~140/60~80台で推移)していると施設職員から報告を受けていました。血圧が落ち着いているなら、ミドドリンは継続する必要がないのではないかと考え、担当医師にミドドリンの中止を提案しました。医師も同意して中止となりましたが、これが誤りの始まりでした。見落とした進行期PDと起立性低血圧の関係パーキンソン病は運動症状だけでなく、さまざまな非運動症状も呈します。進行期には自律神経障害が高頻度に出現し、とくに起立性低血圧は約3分の1の患者に認められるとされています1)。起立性低血圧の背景には、パーキンソン病の神経変性がノルアドレナリン系にも及び、心臓交感神経の脱落が関与していることが知られています。ドロキシドパは生体内でノルアドレナリンに変換されることで、進行期PDにおけるすくみ足・無動・姿勢反射障害だけでなく、起立性低血圧の改善にも有効とされています2)。本症例では、「現在の血圧が安定している=昇圧薬は不要」と表面的に判断してしまい、昇圧薬がその安定を支えていた可能性を考慮できていませんでした。連鎖した処方変更ミドドリン中止から2週間後、血圧の乱高下が出現しました。朝の収縮期血圧が170mmHg台まで上昇することもあると施設の看護師から相談があったので、今度は降圧薬のオルメサルタン10mgを提案・追加しました。しかし、その約1週間後から食後を中心に起立性低血圧が頻発するようになりました。施設の看護師から「血圧がずっと低くなっている」「何度も意識消失を繰り返している」と緊急の相談が入り、事態の深刻さを初めて認識しました。問題の整理ミドドリン中止により昇圧作用が喪失し、血圧が不安定化(とくに食後の低下)。朝の高血圧を起立性低血圧の代償反応として読めず、降圧薬を追加。進行期PDでは臥位高血圧と起立性低血圧が共存しやすい病態であるにもかかわらず、その特性を理解していなかった。医師への提案と経過施設看護師から相談を受けたのち、速やかに医師に状況を報告し、以下を報告しました。(1)ミドドリン中止後から血圧が不安定となり、食後の低血圧が顕著(2)オルメサルタン追加後から起立性低血圧が頻発、意識消失が複数回発生(3)進行期PDにおける自律神経障害(食後低血圧・起立性低血圧)が主因と考えられるそのうえで、オルメサルタンの中止&フルドロコルチゾン0.5錠(0.05mg)の追加を提案しました。パーキンソン病診療ガイドライン2018によれば、起立性低血圧の非薬物療法として塩分摂取の増加や急激な体位変換の回避などが挙げられており、薬物療法としてはミドドリンやフルドロコルチゾンが用いられます1)。とくに臥位高血圧を認める患者では、半減期の短いミドドリンを日中に使用することが推奨されています。しかし、本患者は薬を増やしたくないという希望があり、施設職員の服薬管理の負担軽減の観点からも1日1回朝食後の投与で済むフルドロコルチゾンを提案しました。医師への提案はすぐに採用され、フルドロコルチゾン0.5錠(0.05mg)を朝食後に追加することになりました。その後、施設の看護師から血圧が安定し、意識消失がなくなったとの報告があり、患者さんは落ち着いた経過をたどっています。考察:この事例から学んだこと1.進行期PDにおける起立性低血圧は「管理すべき症状である」起立性低血圧は進行期PDの非運動症状の代表です。進行期にはほぼ必発ともいえる重要な症状であり、転倒・失神・QOL低下の大きな要因となります。「今は血圧が安定している」という状況だけで薬剤を中止するのではなく、なぜ安定しているのか(=薬が効いているから安定している)という視点を持つことが欠かせません。2.臥位高血圧と起立性低血圧の共存進行期PDでは、自律神経障害により臥位では血圧が高く、立位では低くなるという、相反する病態が共存することがあります。朝の高収縮期血圧をみて安易に降圧薬を追加すると、日中の体動時や食後に重篤な低血圧を招くリスクがあります。3.処方変更は1つずつ丁寧に本症例では、ミドドリン中止→血圧乱高下→降圧薬追加→低血圧悪化という連続した処方変更が事態を複雑にしました。変更の際は1つずつ、十分なモニタリング期間を設けることが原則です。4.施設職員・看護師との連携の重要性施設看護師からの速やかな報告がなければ、意識消失の連発に気付くのが遅れていました。日常的に施設スタッフとの情報共有の関係を築いておくことが、重大な有害事象の早期発見につながります。1)日本神経学会「パーキンソン病診療ガイドライン2018」作成委員会. パーキンソン病診療ガイドライン2018. 医学書院;2018.2)大村友博ほか. パーキンソン病薬. In:薬局:南山堂;2021.p.138-165.

13.

在宅医療・介護の場で見逃してはいけない骨粗鬆症/日本シグマックス

 整形外科領域などで衛生材料や診療機器、サポーターなどの開発・販売を行う日本シグマックスは、2026年3月24日に都内で「在宅医療・介護で見過ごされがちな『骨粗鬆症』リスクと転倒・骨折予防の重要性」をテーマにメディアセミナーを開催した。 骨粗鬆症は自覚症状に乏しく、発見が遅れがちな疾患であり、転倒・骨折をきっかけに要介護へ移行するケースも多く、医療・介護双方で課題となっている。同社の代表取締役社長の鈴木 洋輔氏は、これらの課題の解決に「超音波医療機器の開発や機械の小型化といった知識の導入により、治療に貢献する製品を研究開発していく」と展望を述べている。 セミナーでは、骨粗鬆症の病態と予防の解説のほか、在宅医療の視点から骨折リスクとしての骨粗鬆症と在宅でできる予防法などが講演された。骨粗鬆症検診率は全国平均でまだ5% 「骨粗鬆症と骨折予防の意義」をテーマに山本 智章氏(新潟リハビリテーション病院 院長)が、骨粗鬆症の病態、高齢者と骨折、骨折予防などについて講演した。 ヒトの最大骨量は20~40代であり、男性は女性に比べてやや多い骨量となっている。とくに女性では閉経後に急激な骨量の減少がみられ、骨粗鬆症の1番の原因は閉経と老化とされる。若いときに最大骨量をいかに高められるかが、将来の骨粗鬆症の予防につながると近年の研究から判明し、生涯にわたり骨の健康を考えることが重要な時代となっている。 わが国は超高齢社会となり、2000年以降、骨折の概念は外傷性ではなく、脆弱性骨折へと変化している。実際、病院で受診する骨折患者のほとんどが脆弱性骨折であり、骨折はけがではなく、慢性疾患の中で起きる1つのイベントという認識が必要となる。 脆弱性骨折は、椎体や上腕骨、大腿骨近位部などさまざまな部位で発生する。とくに高齢者では、脊椎椎体と大腿骨頸部の骨折が多く、大腿骨近位部骨折の患者数は年々増加し、1980年代と比較すると5~6倍となり、2017年には約19万3,000例となっている1)。 大腿骨近位部骨折は、フレイル、骨粗鬆症、低栄養などさまざまな症状が併存した結果起こり、治療では手術が第1選択となる。また、骨折を起こすと医療費の増加、介護の発生、再発のリスクがあるほか、受傷1年後の患者の日常生活動作(ADL)を調査した研究によると1年以内の死亡が20%、永続的な能力障害が30%、歩行不能が40%、限定的な生活動作が80%と大きな生活上のリスクとなることが報告されている2)。そのため海外では、早期治療が有効であり、徹底して予防し、優先的に治療すべきとされている。 最近、社会的認知が広がっている「いつの間にか骨折」の椎体骨折の発生数について、ROAD研究から形態椎体骨折は420万件、臨床的椎体骨折は118万件と報告されている。多発脊椎圧迫骨折が進行すると脊柱後弯症となり、ADLの障害、慢性背部痛、呼吸換気不全などのQOLの低下を来す。また、体型バランスが変わることで転倒リスクが高くなり、さらなる転倒・骨折などを来す原因となる。 骨折について医療経済や介護環境についてみると、医療費の面で2018年の新潟県の後期高齢者入院の医療費では、「脆弱性骨折」が9.25%と1番高く、脳卒中が7.50%、そのほかの心疾患が7.40%の順で高かった。また、介護の主要因について厚生労働省の調査では、認知症が23.6%で1番高く、脳血管疾患が19.0%、骨折・転倒が13.0%と上位の3要因に入っている。骨折で介護が必要となった場合の5年間の自己負担額の試算では1,540万円と試算するデータもあり、これら介護の負担は、患者本人だけでなく、家族を巻き込み、社会的にも医療的にも問題となる。 骨折の原因となる骨粗鬆症治療を受けるべきターゲットは、「(1)(50歳以降に)骨折を起こした人、(2)骨密度の低下した人(若いときの70%以下の骨密度)のどちらかに該当する人は骨粗鬆症の治療を始めたほうがよい」と山本氏は提言する。 その一方で骨粗鬆症検診の現状は、全国平均で約5%と低く、地域によってはゼロというところもある。「健康日本21」では、「骨粗鬆症の検診率を15%まで引き上げる」という目標が設定され、今後積極的な取り組みがなされる。 わが国の高齢者の転倒発生率は80歳以上で11.1%、85歳以上で13.6%であり、その20%が治療適用となり、5~10%が骨折となる。転倒では、筋力の低下、バランス障害、歩行障害などが大きく寄与しており、正常なバランスの指標として「片足立ちができるかどうか」がある。片足でしっかり立てるということは、歩行も安定し、さまざまな場面でバランスも取れるということが転倒予防に重要となる。また、もう1つ重要なことが「環境」である。屋外はもちろん、屋内でも浴室や居間、階段などさまざまな場での転倒リスクをいかに低下させるかということを高齢者に指導していくことが重要となる。 最後に山本氏は「第28回 日本骨粗鬆症学会が新潟で開催される。『女性医学と整形老年病学』という若いときから女性がいかに元気でいられるかというテーマで開催されるので、多くの医療者に参加してもらいたい」と述べ、講演を終えた。病診連携では「再骨折予防手帳」を活用 「在宅だからこそ見逃される骨折リスクと地域連携の重要性」をテーマに山口 正康氏(医療法人社団 山口クリニック 院長)が、オンラインで在宅患者の骨粗鬆症リスクをいかに見つけ、どのように予防し、地域で支えていくかを講演した。 山口氏は、新潟市内で消化器内科を専門に、地域の在宅医療も行っている。往診先には寝たきりの患者、独居の認知症患者など、さまざまな患者が自宅で自分らしい生活を続けている中で、通院できない患者について骨折予防のため定期的に骨粗鬆症の治療も行っているという。 在宅医療患者の特性と骨折リスクとしては、身体的要因として転倒リスクが高い疾患が多いこと、服用薬の影響、加齢による骨・筋肉の脆弱化、通院できないことによる治療の放置がある。また、社会的要因として見守りの目が届きにくい住環境などに転倒誘因が多いほか、身体機能に合わない杖などの補助具の使用、閉じこもりによる身体の廃用性萎縮などがある。さらに在宅特有の診断困難性として、「DXA検査へのアクセス制限」「無症候骨折の看過」「既存骨折の未評価」「検査の遅れ」などもあり、骨折の診断・評価の機会損失が潜在化すると山口氏は警鐘を鳴らす。 骨粗鬆症財団の行った「診療所に通院する骨粗鬆症患者の合併症」の調査では、高血圧(55%)、脂質異常症(27%)、眼病(19%)、糖尿病と循環器疾患(13%)の順で多く、生活習慣病と骨粗鬆症は悪循環を形成し、心血管イベントのリスク因子となることも知られている3)。そのため在宅診療時には動脈硬化の進行度や心肺機能の検査も必要となる。 山口氏のクリニックでは、患者向けの骨粗鬆症の啓発に、疾患の説明や検査の内容を提示するとともに、待ち時間などの間に超音波測定法を用いた骨量測定器で測定なども行っている。そのほか骨粗鬆症の予防について万歩計を活用した1日8,000歩以上の励行や日常動作でのちょっとした運動の勧め、骨に関連するカルシウム、ビタミンD・Kなどの摂取について栄養士による指導も行っている。 高齢者が骨折や寝たきりの状態にならないためには、病診連携、多職種間、医療と介護、市町村と行政、患者(家族)と地域など幅広い連携が必要になる。とくに再骨折の予防のためには病診連携が重要であり、「正確な骨密度検査の結果と治療方針を病院、クリニック、患者と共有することが治療継続のための出発点となる」と山口氏は語る。 病診連携のメリットは専門医の診断により、治療方針が明確になることであり、病院の専門医と地域のかかりつけ医がそれぞれの役割を果たすことで地域全体による骨粗鬆症治療が活発化する。また、山口氏の地域では患者が病院からの紹介で受診される際、必ず「再骨折予防手帳」を持参するという。この手帳により患者の退院後の状態が容易に把握でき、病院の医師とかかりつけ医の情報共有ができ、患者の安心感につながっていく。 最後に山口氏は、「在宅医療における骨粗鬆症対策は、骨折する前に見つけることが最も重要な役割だと考えている。在宅特有の見逃されるリスクに目を向け、地域全体で骨折予防を支える体制作りを目指したい」と思いを述べ、講演を終えた。

15.

初期研修を終えた今みなさんに伝えたい大切なこと【研修医ケンスケのM6カレンダー】第12回

初期研修を終えた今みなさんに伝えたい大切なことさて、お待たせしました「研修医ケンスケのM6カレンダー」。この連載は、普段は初期臨床研修医として走り回っている私、杉田研介が月に1回配信しています。私が医学部6年生当時の1年間をどう過ごしていたのか、月ごとに振り返りながら、皆さんと医師国家試験までの1年をともに駆け抜ける、をテーマにお送りして参ります。医師国家試験後1本目は研修生活が始まる前に準備すること、というタイトルで、「学生」という立場をフル活用してほしい、準備するなら初期臨床研修医向けの書籍を活用せよ、という2つのメッセージをお届けしました。2本目となる今回は、研修が始まるに当たって何を大切にしてほしいか、をテーマに進めて参ります。前提として、私が初期臨床研修を行った環境は、313床/救急車台数10台/日(もっと来ていた気がする…)の2次救急病院でした。同期は6名、2学年で合計12名の初期臨床研修医がいます。日当直は月4〜5回。総合診療科の研修を十分に行うことができること、主治医制で自分の裁量権が多いため様々なスキル獲得を見込むことができたこと、比較的自由に自分の休みをコントロールできることなどが選んだ理由でした。上記のような環境で過ごした2年間と、他の病院で研修を終えた同級生たちからの話も含めて、振り返りたいと思います!ぜひ2本目もお楽しみください!自分のバリューを意識しよう!(上手に休むこともお忘れなく!)前回も書きましたが、初期臨床研修医とは何かにつけて初期の状態です。臨床も初心者なことはもちろん、社会人としても初期の人がほとんどだと思うのですが、何科の研修であれ「自身のバリューをいかに出すか」を意識することが大事です。初期臨床研修医、というよりも社会人基礎に近い話で、よく自己啓発本にも取り上げられていることですね。初期臨床研修医は皆さんが思っている以上に大事に、重宝されていると思います。初期臨床研修は大学生活:学校生活とは異なるため、現場で実際に戦力となることが求められますが、一方で医療者として未熟な初心者であるため、何かと教えてもらえる機会に恵まれます。実感が湧きにくいかもしれませんが、実際の症例を通して、指導医からのフィードバックのみならず、同期や先輩後輩が経験した症例、そして何より他職種から学ぶことが多くあるのです。学部学生の講義や国家試験対策の中では医学を中心に学んできましたが、これから皆さんが関わることは医学を実践する場としての医療です。教科書通りに物事が進むわけでもなく、また、教科書で学んだ知識を実践するにはどれだけの人やリソースが関わるのか、それが体感できます。やや話が逸れましたが、医療は皆さん個人のみでは決して成立しません。医学部入学の際にたくさん練習したチームワークや協調性が試されます。組織やチームの一員として動くのに、自分がどんなバリューを提供できるか、を意識することは非常に重要です。例えば、転倒後の圧迫骨折の症例を担当することになったとしましょう。正直、心不全急性増悪や脳血管障害などと比較すると、医学的にできることは地道で、面白みにやや欠けるかもしれません。多くの併存疾患の慢性管理を見直す、なども、初期臨床研修医成り立ての頃は知識・スキル不足から気付けないことも多いでしょう。皆さんならこんな症例を担当した時に、チームにどのように貢献したいと思いますか?一例ですが、私なら、スムーズな退院調整を進めるのに、どんな情報が必要か、どんな連携が必要かを考えます。初期臨床研修医は指導医ほどの経験・スキルはないですが、比較的時間にゆとりがあります。研修医室で暇を持て余すのではなく、本人のリハビリの様子を見学したり、面会時間に病棟へ待機して家族から情報収集をしたり。医学的なスキル不足を、自分の足で稼いだ情報資源として還元できる余地は大いにあるはずです。上記は臨床現場の一例ですが、もともと持っているスキルを活かして研修体制を見直したり、そもそも研修医だからこそ気づくことができる研修環境へのフィードバックなど、バリューを見出す場面は探せばいくらでもあります。ぜひ積極的に自分を売り込みましょう!経験した症例からの学びを最大化する(同期、先輩後輩はプライスレスな宝物です)初期臨床研修では入院症例、外来症例、救急外来症例など、さまざまな患者さんに出会うことでしょう。そして1人1人の患者さんから学ぶことは多いです。その機会を無駄にせず、ぜひ最大化することに努めてください。最大化するには振り返る仕組みを作ることが有効です。手段は自身で運用しやすいようにカスタマイズして良いですが、どんな症例であったのか、何を意識して臨んだか、気づいたことや感想が一目で見たときに思い出すことができる症例ログを作っておくと、後々振り返りやすいです。初めのうちは医学的な視点ばかり追いかけてしまいますが、タイムマネジメントやチームワークという観点も学びになります。診察をしながら問診をする、カルテ上でショートカットを活用する、というのも立派な学びの1つです。医学的なこと以外の仕事に慣れてくると、余裕が生まれるからでしょうか、不思議と医学的な視点もより広がってきます。この病態をより早く察知するには、この疾患で入院になるならのちにこんな項目が必要になるな、など、診療の厚みが増していきます。私自身は医学的な学びと、それ以外のマネジメント術のようなことで分けてまとめていました。初めは何をまとめたら良いのか、上手くデザインすることができませんが、知識・スキルの向上とともに徐々に自分の軸が作られていくので、その都度柔軟にまとめ方も変えていけば良いです。この連載の1番初めにお伝えした内容でしたが、研修医になっても学習会をすることは非常に有用です。自分1人だと経験できる症例が限られるほか、他の人の視点も取り入れることができる分、学びが深くなるのは学生と同様です。自分で学んだことをぜひ積極的に同期や先輩後輩にもシェアしてくださいね。そして慣れてきた方はぜひ他職種にも共有して、それぞれの立場からどんなケアが必要なのか、といったことを学び合いましょう!感染症と医療安全はどの診療科に行っても必要な座学初期臨床研修医の大きな特徴の1つは、様々な診療科をローテーションすることです。専攻医以降で外科や産婦人科、はたまた眼科や耳鼻咽喉科の現場に立つことはありません。その中で、臓器横断的な感染症と医療安全の2つは、どの診療科へ行っても確実に必要なことで、医師だからこそ知っておくと、コマンダーとしての厚みが増す大事な知識です。感染症も医療安全も、単科として研修することはない、そんな病院が多いと思います。ここでは、それぞれの専門を極める、ではなく、知識を座学として学びやすく、かつ、専門家でなくてもある程度の知識は知っておく必要があることに注目していただきたいです。イメージしやすいのは感染症でしょうか。国試対策でもそうだったように、診療科ごとに感染症のカテゴリーがあったはずです。そして必ず細菌感染を鑑別する必要がありました。細菌感染症では関与する細菌の種類は多いものの、グラム染色上で分けると4つにしか分類されません。代表的な菌を覚えて、どの臓器でメジャーな感染症を引き起こすのかを押さえておきましょう。骨折の診断で整形外科に入院していても、入院期間中に肺炎を発症してしまった、なんてことは珍しくありません。医療安全は注目されにくいですが、スーパーローテーションをする初期臨床研修医という立場を大いに活かすチャンスです。医療安全の基本概念の1つですが、Human is Error、人間同士が仕事をしている限りどうしてもエラーは付きものです。その上でいかにエラーを減らすことができるか、起きたエラーから何を学ぶかが重要です。初期臨床研修医はさまざまな診療科へ足を運ぶため、その科ごとにエラーを探知することができます。どの診療科にも共通することだけでなく、この診療科ではこのフローで行うが、ここでは違う、だからコミュニケーションエラーに繋がる、という発見は、色んな診療科を経験できる初期臨床研修医だからこそ気付きやすいと思います。上記の考え方は、冒頭に述べたバリューを出す、に繋がる話ですね。勘づかれた方、鋭いです。最後に(連載をお楽しみいただきありがとうございました!)いかがだったでしょうか。初期臨床研修医は何かと板挟みになったり、スキル・経験不足で打ちひしがれることも多いですが、伸びしろが大きい分、成長が実感できたときはとても嬉しいものです。社会人として自分で稼いだお金で、自分の人生やキャリアを拡張できるのも面白みの1つです。そして、今回がこの連載の最終回です。これまで応援いただいた皆さま、制作の方々、この場をお借りしてお礼申し上げます。連載企画という初めての機会をこうしていただけたことが嬉しいですし、企画を通して自分自身の振り返りとなり、少しでも皆さまのお役に立つことができたら本望です。今後の皆さまのご活躍を心よりお祈り申し上げます。ぜひ学会やイベントでお会いしたときはよろしくお願いいたします!

16.

意欲低下と抑うつの併存、高齢者の多面的フレイルと関連か

 高齢者のフレイルは身体機能だけでなく、認知、社会、口腔など多面的な側面を持つことが知られている。今回、地域在住高齢者を対象とした研究で、意欲低下(アパシー)と抑うつ症状はいずれも身体・認知・社会フレイルと関連し、両者を併存する場合には口腔を含む多面的フレイルとの関連が示唆された。研究は、島根大学医学部内科学講座内科学第三の黒田陽子氏、同大学地域包括ケア教育研究センター(CoHRE)の安部孝文氏らによるもので、詳細は2月6日付で「Geriatrics & Gerontology International」に掲載された。 日本の超高齢社会では健康寿命の延伸が重要課題であり、フレイルは加齢に伴う生理的予備能の低下によりストレスへの抵抗力が弱まった状態で、要介護や転倒、入院、死亡などと関連することが知られている。日本では多面的評価を可能とする「後期高齢者の質問票(Questionnaire for Medical Checkup of the Old-Old:QMCOO)」が導入されたが、各フレイル領域との関連、とくに情動機能との関係は十分に検討されていない。抑うつはフレイルとの関連が報告されている一方、アパシーとフレイルの関連や両者の違いは不明な点が多い。本研究は、地域在住高齢者を対象に、アパシーと抑うつ症状を独立して評価し、身体・口腔・認知・社会の各フレイル領域との関連を明らかにすることを目的とした。 本研究は、2024年のShimane CoHRE Studyに参加した島根県雲南市在住の75歳以上の高齢者465人を対象とした横断研究として実施された。アパシーは日本語版Starkstein Apathy Scale(やる気スコア)で16点以上、抑うつ症状はSelf-rating Depression Scaleで40点以上を基準に定義した。フレイルは、身体・認知・社会・口腔の各領域についてQMCOOを用いて評価した。解析では、年齢、性別、BMI、Multimorbidityで調整したロジスティック回帰分析を行った。 参加者の年齢中央値は78歳(四分位範囲76.0~82.0)、女性は約半数(49.7%)を占めた。参加者におけるアパシー、抑うつ症状、および両者の併存の有病割合は、それぞれ30.8%、29.9%、14.6%であった。二変量解析では、アパシー群は非アパシー群と比べて認知的フレイル(特に時間の見当識障害)や社会的フレイル(相談相手の不在など)の割合が高く、抑うつ症状群では身体機能低下を中心とした身体的フレイルとの関連が目立った。 多変量解析では、アパシーおよび抑うつ症状はいずれも身体的フレイル、運動習慣の欠如、認知的フレイル、記憶障害、社会的交流の不足と独立して関連していた。さらに、アパシーは時間の見当識障害、社会的フレイル、閉じこもり、相談相手の不在と関連し、抑うつ症状は咀嚼機能低下や身体機能低下との関連が特徴的であった。 また、アパシーと抑うつ症状の併存群では口腔・身体・認知・社会のすべてのフレイル領域と有意な関連が認められた。 著者らは、アパシーと抑うつ症状は共通して身体的・認知的フレイルと関連する一方、アパシーは特に社会的フレイルとの関連が示唆されたと結論づけている。また、「両者が併存する場合には口腔領域を含む複数のフレイル領域と関連し、多面的な脆弱性が強まる可能性がある。フレイル予防には情動機能の評価と個別化された対応が重要であり、因果関係の解明には今後の縦断研究が求められる」と述べている。 なお、本研究の限界として、横断研究デザインのため因果関係を検討できない点や自己報告によるバイアス、QMCOOのみでのフレイル評価、健診受診者に限定された集団による一般化可能性の制限などを挙げている。

17.

脳卒中後の転倒予防、在宅個別化介入で転倒率低下/BMJ

 脳卒中生存者の転倒率は、一般高齢者の転倒率と比べて2倍以上(73%vs.30%)と報告されており、多くの場合、転倒に伴う外傷や入院に至る。また、脳卒中経験者は転倒を繰り返す反復転倒者となるリスクが高く、転倒の影響は長期的な健康や幸福な生活を深刻に脅かす要因となるが、脳卒中後の転倒を予防する有効な介入法は確立されていない。オーストラリア・シドニー大学のLindy Clemson氏らは「FAST試験」において、在宅での個別化介入が、地域在住の脳卒中経験者の転倒を大幅に予防することを示した。研究の成果は、BMJ誌2026年3月24日号で報告された。理学療法士と作業療法士が連携して介入 FAST試験は、オーストラリアの3つの州で実施した無作為化第III相試験(オーストラリア国立保健医療研究評議会[NHMRC]の助成を受けた)。2019年8月~2023年12月に参加者を登録した。 対象は、年齢50歳超、脳卒中発症から5年以内で、正規のリハビリテーションを終えて退院し、地域社会に復帰しており、補助具の有無を問わず平坦な地面を10m歩行できる患者とした。一方、中等度~重度の受容性失語症の患者、または過去1年間に転倒することなく1.4m/秒以上の歩行速度を示した患者は除外した。 被験者を、介入群または対照群に無作為に割り付けた。介入群は、6ヵ月間にわたり、(1)習慣形成を目指した機能訓練(運動)、(2)自宅内での転倒の危険低減、(3)目標指向型の地域社会での移動能力の指導を受けた。対照群には通常ケアが提供された。介入は、理学療法士と作業療法士による2人1組のチームが、互いに連携して実施した。 主要アウトカムは、12ヵ月の時点での年間平均転倒率であった。転倒による骨折、入院も少ない 370例を登録し、介入群に186例(平均年齢75[SD 10]歳、女性87例[47%]、脳卒中発症後の平均経過期間27[SD 17]ヵ月)、対照群に184例(76[SD 9]歳、82例[45%]、29[SD 17]ヵ月)を割り付けた。 12ヵ月の時点での年間平均転倒率は、対照群が2.7(SD 5.5)回/年であったのに対し、介入群は1.8(SD 3.0)回/年と有意に低かった(発生率比:0.67、95%信頼区間[CI]:0.48~0.94、p=0.02)。これらの転倒の82%について、参加者は立ち上がりへの介助や医学的配慮は必要なかったと報告し、転倒による骨折(2%)および入院(4%)は少なかった。 一方、この間に転倒した参加者の割合(介入群56%[104例]vs.対照群59%[109例]、絶対リスク減少率:0.03[95%CI:-0.07~0.13]、p=0.52)は、両群間に有意な差を認めなかった。地域社会への参加、自己効力感なども改善 12ヵ月の時点における地域社会への参加(Late Life Function and Disability Instrument disability limitation[0~100点]の平均群間差:3%、95%CI:1~6、p=0.02)、自己効力感(Likert尺度[0~6点]の平均群間差:0.6、95%CI:0.2~1.0、p=0.004)、移動能力(fast walking speedの平均群間差:0.13m/秒、95%CI:0.06~0.19、p<0.001、preferred walking speedの平均群間差:0.06m/秒、95%CI:0.02~0.10、p=0.02)、バランス(Step Testの平均群間差:0.06ステップ/秒、95%CI:0.01~0.12、p=0.03)は、いずれも対照群に比べ介入群で有意に良好だった。 著者は、「自己効力感が対照群に比べ介入群で向上したことは、介入の実施における個別対応型のアプローチが、運動への継続的な参加を後押しした可能性を示唆する」「地域在住の脳卒中経験者を対象とし、自宅および地域社会で実施される介入について検証したことで、この介入法が容易に実践可能であることが示された」としている。

18.

65歳を過ぎてからの予防でも遅くはない! Lancetの14の危険因子を読み解く(その2)【外来で役立つ!認知症Topics】第39回

前回に続き、今回もLancet誌が掲げる認知症の修正可能な危険因子(リスクファクター)を扱う1)。当初は、前回解説した「難聴」と「高LDLコレステロール(LDL-C)」以外の12因子について個々に述べる予定であったが、その前に筆者自身、見落としがあると反省している。改めて注意喚起すべきは、これらはあくまで「認知症」の危険因子であって、必ずしも「アルツハイマー病(AD)」のみを指すものではないことだ。認知症の危険因子は70以上に及ぶとよく言われるが、示された14の危険因子がすべての認知症原因疾患(AD、血管性認知症、レビー小体型認知症、前頭側頭型認知症、その他)に当てはまるとは考え難い。一方で世界的に見ても、認知症の3分の2はADが占める。だから実際には、広く認知症全般に対する危険因子を論じているはずが、無意識に「ADの危険因子」として捉えてしまいがちだ。実際に、関係論文を読み込んでみても、こうした分野の知見の大部分はADに関するものであり、それ以外では血管性認知症とレビー小体型認知症に関するものがわずかにあるに過ぎない。たとえば血管性認知症については高血圧と糖尿病などが該当し、レビー小体型認知症なら大気汚染のPM2.5だろうか。いずれにせよ、認知症の危険因子を語るうえでは、ADに関わるものが主体になっている。こうした背景を踏まえ、危険因子とその対策を考えるうえで、基本でありながら見失いがちな「3つの視点」を整理しておきたい。ライフステージに沿った病理の段階を理解するまずLancetによる報告の1つの特徴は、危険因子を年代別に分けていることである。筆者は、これが「若年期・中年期・老年期」の3段階に分けられているのは、ADの発症から進行という病理の段階に沿って危険因子を説明したいからではないかと思う。その段階とは、「発病以前・発病の芽生え・発病前夜」である。1)若年期(発病以前):若年期の教育が、脳の神経回路や「認知予備能」という脳の骨格を作る。つまり大脳の基礎力がこの時期に形成されるわけだ。そして後年、これを維持し育てていくことが予防につながると考えればいいだろう。2)中年期(発病の芽生え):中年期は脳内でアミロイドの沈着が始まるという意味で、AD脳の芽生えの時期だと考えられる。この時期の危険因子では、通称「悪玉コレステロール」のLDL-Cや難聴、糖尿病などの疾病や障害が主体である。これらは中年期に発症しやすくAD病理の悪化を促進させるため、この時期に「悪の芽」を摘んでおくことが重要だ。3)老年期(発症前夜):老年期の危険因子である孤独や大気汚染、視力低下などは、発症の準備がほぼ整ったステージにおける「とどめの一押し」になりうる。これら3つの危険因子は、いずれもアミロイド仮説との直接的な関係は薄いかもしれないが、むしろ脳の衰弱ぶりを露呈させてしまう「最後の悪役」とみなすべきだろう。こうした要因はこれら3つに限らない。たとえば、せん妄や大腿骨頸部骨折、さらに入院など生活の場の変化といった要因もまた、認知症発症のとどめの一押しだったと経験された読者も多いだろう。画像を拡大する「疾患・障害」と「生活・環境」に分けて考える14の危険因子は、大きく2つのグループに分類できる。一つは、「疾患・障害リスク」である。糖尿病やLDL-Cが代表的で、これらは従来のアミロイド仮説を軸に、そこから派生した慢性炎症や抗酸化、また血管脳関門の観点から説明しやすい。もう一つは、「生活・環境リスク」だ。アミロイド仮説では説明し難いものである。上記の「教育」のように、若年期に基礎が作られた脳内ネットワーク・認知予備能といった別の考え方で説明される傾向がある。このように分類する理由を、次のように換言することもできるだろう。つまり前者の危険因子に注目することで、ADという病気の進行プロセスをくい止めようという表街道の予防法があることがわかる。また後者へ注目すれば、健常な神経細胞を増やす、あるいは減少させないという狙いの予防法もあるとわかる。前者が表街道なら、後者は側面からの援護射撃と例えられるだろう。65歳を過ぎてからの「予防」の留意点以上を踏まえて、65歳以上で現在は認知症ではない人を想定して、危険因子と予防を説明する際の留意点を述べたい。まず伝えたいのは、「若年期・中年期の危険因子は、老年期に入ったら無関係になるわけではない」ということだ。たとえば、若い頃の教育が不十分だったとしても、「生涯学習」の言葉どおり、人生を通して学び続ける姿勢は脳の維持につながるはずだ。この考え方は、中年期の危険因子の大半、とくに糖尿病や高血圧といった生活習慣病の管理にも当てはまる。一方で、こうした「老年期からの予防でも遅くはない」という考え方では難しい危険因子もある。その代表は「頭部外傷」だろう。というのは、過去の頭部外傷がもたらした脳へのダメージを癒したり進行を阻止させたりする確たる方法は、今のところなさそうだからである。実際、これまで調べた範囲では、頭部外傷という危険因子への対応の多くは、これからの転倒・転落を防ぐための方法であった。再発防止がポイントという意味で、「うつ病」への対応もそれに似ているかもしれない。最後に、老年期特有の因子として、「孤独」「大気汚染」「視力低下」がある。具体的には次回述べるが、これらは上記の「過去の蓄積」の危険因子とは異なり、「今現在の問題」である。実際の対応がそう容易だとも思われないが、これらへの備えを一念発起して始めるのに遅すぎるということはない。今からでも着手できるという意味で、最も重要かもしれない。1)Livingston G, et al. Dementia prevention, intervention, and care: 2024 report of the Lancet standing Commission. Lancet. 2024;404:572-628.

19.

130mmol/L未満の低Na血症、積極補正vs.標準ケア

 入院患者の低ナトリウム(Na)血症は、転倒や認知機能障害、死亡のリスク上昇と関連することが知られている。しかし、Na値の補正による臨床アウトカムの改善効果は不明である。そこで、Julie Refardt氏(スイス・バーゼル大学病院/オランダ・エラスムス医療センター)らの研究グループは、Na値の積極的な補正が30日以内の死亡または再入院に及ぼす影響を検討することを目的として、多施設共同無作為化比較試験「HIT試験」を実施した。その結果、慢性低Na血症を有する患者に対し、標的介入による積極的な補正を行っても、標準ケアと比較してリスクは低下しなかった。本研究結果は、NEJM Evidence誌2026年3月号に掲載された。 本研究は、欧州5ヵ国9施設で実施された。対象は、血漿Na値が130mmol/L未満の慢性の低Na血症を有する18歳以上の入院患者2,173例とした。対象患者は、専門チームによる連日の評価に基づいて原因疾患に応じた段階的な治療(水分制限、経口尿素、トルバプタンなど)を行う標的介入群(1,079例)、主治医の裁量による治療を行う標準ケア群(1,094例)に、1:1の割合で無作為に割り付けられた。主要評価項目は、30日以内の死亡または再入院の複合アウトカムとした。 主な結果は以下のとおり。・対象患者の年齢中央値は73歳(四分位範囲[IQR]:63~81)、男性の割合は48%であった。ベースライン時の血漿Na値の中央値は127.0mmol/L(IQR:124.0~128.0)であった。重度の低Na血症(120mmol/L未満)の割合は6.2%であった。・治療期間中の血漿Na値の最大変化量(平均値±標準偏差)は、標的介入群10.0±5.6 mmol/L、標準ケア群8.7±5.6mmol/Lであった。・血漿Na値が正常値(135~145mmol/L)に到達した割合は、標的介入群60.4%に対し、標準ケア群46.2%であり、標的介入群が有意に高かった(絶対差14.3%、ハザード比:1.54、95%信頼区間[CI]:1.37~1.74)。・主要評価項目の30日以内の死亡または再入院の複合の発生は、標的介入群20.5%、標準ケア群21.8%であり、両群間に有意差は認められなかった(推定絶対差-1.3%、95%CI:-4.9~2.2、p=0.45)。・30日死亡率は両群共に8.0%であった。30日以内の再入院は、標的介入群13.2%、標準ケア群で14.1%であった。・両群の患者を統合したpost-hoc解析において、退院時に血漿Na値が正常値に到達していた集団は、未到達の集団と比較して30日以内の死亡または再入院の複合のリスクが低かった(オッズ比:0.74、95%CI:0.60~0.91)。・入院期間中央値は両群共に7日であった。また、退院時および30日時点の神経認知機能評価、QOL、転倒・骨折についても両群間で差はみられなかった。・過剰補正(24時間で12mmol/L超、または48時間で18mmol/L超の上昇)は標的介入群2.3%、標準ケア群1.4%に観察されたが、両群間に有意差はみられなかった。浸透圧性脱髄症候群はいずれの群でも観察されなかった。 本研究結果について、著者らは「慢性低Na血症を有する入院患者において、多角的な標的介入による積極的な補正は、標準ケアと比較してNa値の正常化を向上させたものの、30日以内の死亡や再入院といった臨床アウトカムの改善には寄与しなかった」とまとめた。また「本結果は慢性低Na血症を治療しない理由として解釈されるべきではなく、入院中の強化治療が、必ずしも短期的な予後やQOLの改善に結びつかないことを示唆するものである」と考察している。

検索結果 合計:466件 表示位置:1 - 20