サイト内検索

検索結果 合計:1046件 表示位置:1 - 20

1.

パーキンソン病患者は腎機能低下リスクが約1.9倍/慶應義塾大

 わが国の全国規模の医療保険請求データと健康診断データを用いた疫学コホート研究の結果、パーキンソン病はその後の腎機能低下リスク上昇と関連していることが、慶應義塾大学の満野 竜ノ介氏らによって示された。Nephrology Dialysis Transplantation誌オンライン版2026年4月15日号掲載の報告。 近年、慢性腎臓病(CKD)や末期腎不全(ESKD)などの腎機能低下がパーキンソン病の発症リスク上昇と独立して関連していることが示されているが、パーキンソン病発症後の腎転帰については十分に検討されていない。そこで研究グループは、大規模集団ベースコホートを用いて、パーキンソン病患者とパーキンソン病のない成人の間で腎機能低下のリスクを比較した。 研究ではDeSCデータベースを用いて、2014年4月~2024年8月に少なくとも1回の健康診断を受けた18歳以上の成人200万793人を特定した。すでにESKD既往歴または腎代替療法導入歴のある患者などを除外した165万9,421人(年齢中央値68歳、男性41.9%)を解析対象とした。 主要評価項目は、ESKDへの進行(追跡時のeGFRが15mL/分/1.73m2未満)、腎代替療法の開始、ベースラインからのeGFRの30%以上低下を含む複合腎アウトカムとした。初回健康診断から複合腎アウトカムの発生、保険制度からの脱退(死亡を含む)、2024年8月のいずれか早い時点まで追跡した。 主な結果は以下のとおり。・コホート全体で1万1,497例(0.7%)がベースライン時点でパーキンソン病を有していた。・中央値1,092日(四分位範囲:631~1,520)の追跡期間中、複合腎アウトカムが発生したのは、パーキンソン病群361例、非パーキンソン病群3万2,974例であった。・Kaplan-Meier解析では、パーキンソン病群は非パーキンソン病群に比べて複合腎アウトカムのリスクが有意に高かった(log-rank検定のp<0.001)。・年齢、性別、高血圧、糖尿病、ベースラインのeGFRなどを調整した多変量Cox比例ハザードモデルでは、パーキンソン病は複合腎アウトカムと独立して関連していた(ハザード比:1.91[95%信頼区間:1.72~2.12])。・女性およびパーキンソン病治療薬投与群では、腎機能低下との関連がより顕著であった。・この関連性は、認知症や起立性低血圧、排尿障害などを除外した複数の感度分析でも一貫していた。 研究グループは、「今回の研究結果は、パーキンソン病が腎機能低下の臨床的に重要なリスク因子である可能性を示唆している。パーキンソン病の長期的な管理の一環として腎機能をモニタリングすることは、リスクの高い患者の特定に役立つ可能性がある」とまとめた。

2.

重症CKDでも降圧療法で心血管イベント抑制/Lancet

 英国・オックスフォード大学のGuyu Zeng氏らBlood Pressure Lowering Treatment Trialists' Collaboration(BPLTTC)はメタ解析を実施し、心血管リスク低減の観点からは、慢性腎臓病(CKD)患者における降圧治療の相対的効果は、非CKD患者における効果と同等であり、CKDの病期、血圧閾値、蛋白尿の有無にかかわらず一貫した有効性が認められることを示した。ただし、糖尿病合併CKD患者ではこの相対的効果が弱まるため、これらの高リスクサブグループに適合する治療戦略が必要であるという。また、CKDにおける主要な降圧薬のクラス特異的な効果は、CKDの病期や蛋白尿の有無にかかわらず、一般集団で観察される効果と同様であることも示された。CKD患者、とくに進行期の患者について、心血管リスク管理に関するエビデンスは依然として不足していた。Lancet誌2026年4月25日号掲載の報告。RCT46件・約28万5,000例をメタ解析 研究グループは、第3期BPLTTCにおいて血圧降下療法群と対照群に割り付けた無作為化試験の被験者個人データを用いて、1段階法によるメタ解析を実施した。 適格とした無作為化試験は、言語や発表時期を問わず、各群1,000人年以上の追跡期間があり、ベースラインの血圧値およびクレアチニン測定値、ならびにイベント発生までの期間の結果があるものとした。無作為化手順が不明確、心不全または急性期医療に限定されたものは除外した。心不全既往患者や、クレアチニン値が極端な患者は除外した。年齢は問わなかった。 主要アウトカムは主要心血管イベント(致死的または非致死的脳卒中、虚血性心疾患、心不全による入院もしくは死亡の複合で定義)とし、相対的治療効果は層別Cox比例ハザードモデルで推定した。治療効果の異質性は、事前に定義されたCKDの状態、CKDステージ(1~5)、糖尿病、蛋白尿、およびベースライン血圧で分類したサブグループ間で評価した。また、5つの主要な降圧薬クラスにおいて、サブグループ間で治療効果が異なるかどうかを層別ネットワークメタ解析で評価した。 52件の無作為化試験(36万3,684例)のうち、適格基準を満たした46件・28万5,124例が解析に組み込まれた。女性11万6,145例(40.7%)、男性16万8,979例(59.3%)、ベースラインにおけるCKD患者は5万9,185例(20.7%)、2型糖尿病患者は8万6,067例(30.2%)であった。収縮期血圧5mmHg低下で、主要心血管イベントリスクが約10%低下 追跡期間中央値4.4年(四分位範囲:3.2~5.1)において、収縮期血圧の5mmHg低下により、主要心血管イベントのリスクは、CKD患者(ハザード比[HR]:0.91、95%信頼区間[CI]:0.87~0.94)および非CKD患者(HR:0.90、95%CI:0.88~0.93)の両方において、低下が認められた(相互作用のp>0.99)。さらに、観察された相対リスク低下は、ステージ4~5を含むすべてのCKDステージで一貫していた(相互作用のp>0.99)。 同様の治療効果の観察は、蛋白尿の有無別や、120/70mmHg未満群を含む各血圧区分においても認められた。しかしながら、CKD患者における相対的治療効果は、糖尿病合併例(HR:0.96、95%CI:0.90~1.02)で非合併例(HR:0.88、95%CI:0.84~0.93)と比較して著しく減弱していた(相互作用のp=0.044)。 各薬剤クラス内の層別解析では、心血管リスクに対する降圧薬とプラセボのクラス固有効果は、調査したサブグループ全体で変わらないことが示された。

3.

心血管疾患の再発予防には、LDLコレステロール値もthe lower, the better(解説:桑島巖氏)

 LDLコレステロールが心筋梗塞や脳梗塞などの重大なリスク因子であることは議論の余地はないが、その治療目標値においては、各国のガイドラインに差異がみられる。1次予防に関しては、リスクの有無により<120~140mg/dLとされ、各国ガイドラインに差がみられるが、2次予防に関しては、より厳格な管理が有効であるとするエビデンスが相次いで発表されている。日本では標準的2次予防目標値として100mg/dL未満、急性冠症候群、糖尿病、非心原性脳梗塞合併例などの非常に高リスクな場合には、70mg/dL未満が目標値として掲げられている。 今回、韓国から発表されたEz-PAVE研究は、LDLコレステロール値が70mg/dL以上の冠動脈疾患既往歴、脳血管疾患、末梢動脈硬化性疾患の既往歴を有する3,048例を、LDLコレステロール値低下目標値を55mg/dL未満に下げる強化群と70mg/dL未満とする従来群に1:1にランダム化して3年間追跡したランダム化比較研究である。その結果、主要エンドポイント(心血管死、非致死的心筋梗塞、非致死的脳卒中、血行再建術または不安定狭心症による入院)は、強化群での6.6%が、従来群の9.7%に比べて有意(p=0.002)に抑制率が高かったという結果であった。治療薬としては、スタチンの増量と、エゼチミブの併用、PCSK9併用などが推奨されているが、懸念される筋肉症状などの有害事象の発現率には差がなかったという。 2次予防におけるLDL-C目標値に関して、わが国の動脈硬化学会のガイドライン2022年版では70mg/dL未満としているが、欧州ガイドラインでは超ハイリスク例では55mg/dL未満としている。高カロリー食を好む欧米人では、脳卒中よりも心筋梗塞発症率が高く、米飯食を主食とするアジア人は脳卒中のほうが多いとされてきたが、わが国の食事内容も欧米化している現状を考慮すると、この韓国での本試験の結果は日本人にも適用できる結果であろう。 高血圧と同じく、心血管疾患の再発予防におけるコレステロール管理においては、The lower, the betterを証明したという点で意義のある臨床試験であろう。

4.

学会抄録のかたちにまとめる【「実践的」臨床研究入門】第63回

これまでの連載を通じ、架空の臨床シナリオを題材に、「漠然とした臨床上の疑問」であるクリニカル・クエスチョン(CQ)を「具体的で明確な研究課題」であるリサーチ・クエスチョン(RQ)に変換し、段階的にブラッシュアップしてきました。さらに、仮想データ・セットを用いて、EZR(Easy R)による基本的な統計解析手法の実際についても解説してきました。今回からは、これまでに得られた解析結果も含め、学会抄録のかたちにまとめてみたいと思います。構造化抄録学会抄録や原著論文のAbstractは、現在も多くの場合、IMRAD形式と呼ばれるかたちでまとめられています。IMRADとは、Introduction、Methods、Results、And Discussionというそれぞれの頭文字を取った略語です。日本語抄録では「背景・目的」、「方法」、「結果」、「考察・結論」という見出しで示されることが一般的です。しかし、IMRAD形式の抄録では研究方法に関する特定情報を迅速に把握しにくいことがあり、著者によってはそもそも重要な方法論の記述が十分になされていないこともあります。臨床研究における重要な特定情報とは、たとえば、研究デザインやP(対象)やIまたはE(介入または曝露要因)、O(アウトカム)といった構成要素とそれらの定義など、です。構造化抄録とは、IMRAD形式のうち、とくにMethods(方法)の記述の粒度を高め、より細分化して明示的な見出し(ラベル)を付した形式を指します。構造化抄録の典型的な構成要素は以下の通りです。Background(背景):研究の目的や重要性を簡潔に記載Objective(目的):研究の具体的な問い(RQに相当)Design(研究デザイン):研究デザインの種類(例:ランダム化比較試験、コホート研究、など)Setting(セッティング):研究が行われた場所や施設(例:単施設・多施設、外来・入院、大学病院・プライマリケア、など)Patients/Participants(対象):参加者数、主要な選択基準・除外基準Intervention/Exposure(介入または曝露):比較した介入内容(観察研究の場合は曝露要因)Measurements(評価項目):主要な評価指標(プライマリアウトカム)Results(結果):主要な結果(数値データ、信頼区間、p値など)Conclusions(結論):結果に基づいた結論とその臨床的意義このような構成は、JAMAやBMJ、Annals of Internal Medicineなどのトップジャーナルが定めるAbstractの形式に近く、近年では国内外で広く浸透しつつあります。構造化抄録はIMRAD形式の枠組みを拡張したものであり、読者が研究の内容や質をより迅速かつ明確に理解、評価する助けとなります。これまでの連載内容を踏まえ、われわれの研究を下記の通り構造化抄録のかたちにまとめてみました(連載第40回、41回、44回、45回、47回、53回、59回参照)。【背景】たんぱく質摂取制限は慢性腎臓病(CKD)進行抑制に推奨されているが、厳格な低たんぱく食(Low protein diet:LPD)の遵守と腎予後との関連については十分に検討されていない。【目的】保存期CKD患者において、推定たんぱく質摂取量(estimated daily protein intake:eDPI)と末期腎不全(ESKD)発症リスクおよび推定糸球体濾過量(eGFR)低下速度との関連を検討する。【研究デザイン】後ろ向きコホート研究【セッテイング】単施設外来【対象】成人保存期CKD患者(ネフローゼ症候群は除外)638例の連続症例。【曝露要因】24時間蓄尿検体からMaroni式を用いてDPIを推定し、0.5g/kg標準体重/日未満を厳格LPD遵守あり群(212例)、以上を遵守なし群(426例)として分類した。【評価項目】ESKD発症(維持透析導入または先行的腎移植)およびeGFR年間低下速度(mL/min/1.73m2/年)。【結果】平均観察期間3.9年において、ESKD発症率に両群間で有意差は認められなかった。Cox比例ハザード回帰モデルによる解析では、年齢、性別、糖尿病の有無、収縮期血圧、ベースラインeGFR、尿たんぱく定量、血清アルブミン値、ヘモグロビン値で調整した結果、厳格LPD遵守あり群のESKD発症に対する調整ハザード比は0.82(95%CI:0.60~1.14、p=0.24)であった。一方、多変量重回帰分析の結果、eGFR年間低下速度は厳格LPD遵守あり群が遵守なし群よりも2.03mL/min/1.73m2/年緩徐であった(95%CI:1.61~2.45、p<0.001)。【結論】非ネフローゼ症候群の保存期CKD患者において、DPI0.5g/kg標準体重/日未満の厳格なLPDの遵守はESKD発症リスクの低下とは関連しなかったが、eGFR低下速度の抑制に寄与する可能性が示唆された。

5.

第317回 妊娠高血圧腎症の血液ろ過治療が小規模試験で有効

抗体を使った血液ろ過による妊娠高血圧腎症治療が少人数の臨床試験で効果を示しました1-4)。妊娠高血圧腎症は命を落とすこともある妊娠中の重大な合併症で、高血圧を引き起こして母親と赤ちゃんの両方に深刻な害を及ぼす恐れがあります。残念ながらこれといった根本治療法はありません。妊娠高血圧腎症の進展につれて、胎盤が放つタンパク質のsFlt-1が増加します。sFlt-1は血管新生を促すVEGFやPLGFを阻止する抗血管新生因子として知られ、妊娠高血圧腎症の発症の主因の1つと目されていますsFlt-1を狙う抗体を妊婦に投与することが治療の手立てとなりそうですが、いかんせん胎児への害が心配です3)。そこでCedars-Sinai Medical CenterのAnanth Karumanchi氏らは抗体を体内に投与するのではなく、体外でsFlt-1を除去する手段を開発しました。その方法は抗sFlt-1抗体入りの吸着剤を詰めた血液ろ過(アフェレーシス)装置を使います。患者の血液を一旦体外に出し、透析に似た要領でその装置をくぐらせて体内に戻すことで血中のsFlt-1を除去します。まず妊娠したヒヒ(baboon)で試したところ、血中のsFlt-1の量がおよそ半減しました。続いて、出産にはまだ早い妊娠高血圧腎症の妊婦16例に試したところやはりsFlt-1濃度が低下し、動脈圧が低下しました。また、動脈圧の低下とsFlt-1濃度の低下が強く関連しました。そして何よりなことに妊娠をより長く保つ効果も示唆されました。入院してからの妊娠が中央値で10日間維持され、未治療の場合の見込み(4日間)2)を2倍超上回りました。母親の有害事象は軽微でした。軽度の低カルシウム血症が3例、針を指した部位の皮膚出血が1例、仮性陣痛が1例に生じました。赤ちゃんへの重大な害は認められませんでした。赤ちゃんの出産を急いで母親の命を繋ぎ止めることが今のところ妊娠高血圧腎症への唯一の対処法です。それはとりも直さず超早産の心配事と隣り合わせです。今回開発されたsFlt-1ろ過手段が使えるようになれば超早産の危機をより柔軟に乗り越えうるようになる、とCedars-Sinaiの産婦人科の長であるSarah Kilpatrick氏は言っています4)。今回の試験の位置付けはあくまでも予備試験(pilot trial)です。次の段階として、開発された手段が妊娠を確実に延長しうるかどうかや経過の改善をもたらすかどうかを、より大人数の対照群ありの試験で調べる必要があります2)。ちなみに、sFlt-1を体外で取り除く試みは他にもあり、たとえば15年ほど前の2011年にはsFlt-1を吸着するデキストラン硫酸セルロース(DSC)によるアフェレーシスの予備試験の結果が報告されています。妊娠高血圧腎症の3例がDSCアフェレーシスを複数回受け、入院後の妊娠が長ければ23日間保たれました5)。 参考 1) Thadhani R, et al. Nat Med. 2026 Apr 27. [Epub ahead of print] 2) Medicine: Blood filtering may provide treatment for preeclampsia / Nature. 3) Could blood filtering help treat one of pregnancy’s most deadly conditions? / Scientific American 4) Study: New preeclampsia treatment may safely extend pregnancy / Eurekalert 5) Thadhani R, et al. Circulation. 2011;124:940-50.

6.

妊婦・授乳婦・透析患者の尿路感染症、何を処方する?【Dr.山本の感染症ワンポイントレクチャー】第26回

Q26-1 妊婦・授乳婦の尿路感染症、何を処方する?妊婦、授乳中の方の尿路感染症で、使いやすい処方を教えてください。Q26-2 透析患者の尿路感染症、抗菌薬の選択は?ほとんど自尿がない透析患者では、尿路感染症への抗菌薬は何を選択すればよいでしょうか?

7.

eGFR slopeは腎予後と有意に関連/慈恵医大

 大規模な日本人IgA腎症コホートにおいて、腎機能の経時的変化を示すeGFR slopeと腎予後との関連性を検討した結果、eGFR slopeの悪化は腎予後不良と有意に関連し、独立した予測因子となる可能性が示された。東京慈恵会医科大学の佐々木 峻也氏らによる報告で、Nephrology Dialysis Transplantation誌オンライン版2026年4月16日号に掲載された。 IgA腎症は進行速度の個人差が大きく、長期予後の評価には時間を要する。そのため、早期に予後を反映する代替エンドポイントは長期的な転帰を理解するうえで重要である。これまでの研究ではeGFR slopeが潜在的な役割を果たす可能性が示唆されているが、その妥当性については十分な検証がなされていなかった。そこで研究グループは、日本の多施設共同研究であるIgA腎症前向きコホート研究(J-IGACS)において、eGFR slopeと腎予後との関連を検討した。 対象は、腎生検で診断されたIgA腎症患者937例(平均年齢39歳、男性51%)であった。eGFR slopeは、線形混合効果モデルを用いて推定した。中央値6年の追跡期間におけるeGFRの年間変化率を算出し、複合腎アウトカム(eGFRの40%以上低下または腎代替療法導入)との関連を検討した。解析には、縦断データとイベント発生を同時に評価可能なジョイントモデリングを用い、臨床因子および病理学的因子、さらに現在のeGFR値で補正した。 主な結果は以下のとおり。・中央値6年の追跡調査期間中に、937例中78例(8.3%)が複合腎アウトカムに至った。・eGFR slopeの悪化は腎予後不良と有意に関連していた。eGFR slopeが1SD悪化(低下速度が0.31mL/分/1.73m2/年速まる)するごとの複合腎アウトカムのハザード比は1.82であった(p<0.001)。・ベースライン時に治療を受けていた患者に限定した感度分析では関連性はやや減弱したものの有意性は維持された。eGFR測定値が少なくとも5回得られた患者に限定した解析でも同様の結果が得られた。 これらの結果より、研究グループは「IgA腎症患者において、eGFR slopeは現在のeGFR値とは独立してさらなる予測情報を提供することが示された。今回の知見は、臨床試験および日常診療におけるリスク層別化において、eGFR slopeが代替エンドポイントとして有用であることを支持する結果となった」とまとめた。

8.

第58回 【解説】医療機器サプライチェーンの危機:日米が直面する「透析インフラ」の脆弱性

近年、私たちの生命維持に直結する医療インフラが思わぬ形で脅威にさらされています。現在、日本とアメリカの双方で、人工透析などに不可欠な医療機器の供給危機が表面化しています。引き金となった原因は両国で異なりますが、浮き彫りになったのは「医療物資のサプライチェーンが抱える構造的な脆弱性」という共通の課題です。本稿では、日米それぞれの現状と今後の見通しについて解説していきます。中東情勢が直撃する日本現在、日本が直面しているのは、中東情勢の悪化に端を発するプラスチック原料「ナフサ」の世界的欠乏による直接的な打撃です。日本やアジアの医療機器メーカーは、製造工程において中東産のナフサに大きく依存しています。ロイター通信の報道によると、ナフサの供給不足により、国内シェアの大部分を占める医療機器メーカーのタイやベトナム工場で生産に遅れが生じ始めています1)。影響は深刻で、人工透析に使用されるチューブなどの「透析回路」は、早いもので2026年8月ごろから国内への出荷が困難になる可能性が指摘されています。また、手術用の廃液容器に至っては4月半ばで供給が途絶える見込みとされています。日本国内には約34万人(2024年末時点)の透析患者がおり、代替品の確保や調達先の多角化は待ったなしの状況です2)。 政府も危機感を強めており、高市政権下で経済産業省などがエネルギーの安定供給を含めた対応策の整理を急いでいるようです。構造的弱点が露呈した米国一方、アメリカの状況は日本とは少し異なります。アメリカでは、国内で豊富に採れる天然ガス由来の「エタン」をプラスチックの主な代替原料としているため、今回の中東情勢を起因とするナフサ不足の直接的な影響は受けていません。しかし、それならアメリカで全く問題がないのかといえば、そうではありません。アメリカもまた透析回路をはじめとする医療機器の深刻な不足にあえいでいるのです。その原因は、サプライチェーンの「極端な寡占化」と「製造拠点の偏在」という構造的な弱点にあるようです。アメリカでは、2025年初頭に主要サプライヤーの工場で発生した製造・供給トラブルの余波が現在も長引いており、FDAのリストでも血液回路が全国的な不足状態の物品に指定されています3)。 過去にも自然災害による特定工場の被災で全米の透析液が枯渇する事態が起きており、単一の企業や地域に過度に依存するリスクが恒常的に顕在化しているのです。命をつなぐインフラを守るための課題と今後の展望「原材料の海外依存(日本)」と「サプライヤーの寡占化(米国)」。原因は違いますが、一部の供給網の乱れが即座に患者の命を脅かすというリスクは日米共通です。この危機を乗り越えるため、日米の現場では使用機材の最大限の節約と、重症患者への優先使用といった運用レベルの対応が迫られています。さらに抜本的な対策として、米国腎臓学会は政府に対し、透析関連物資を自然災害や有事に備える「国家戦略備蓄」に正式に組み込むよう強く求めています4)。日本においても、今回のナフサ不足を教訓とし、調達ルートの多角化や国内製造基盤の支援、さらには重要医療物資の国家的な備蓄体制の構築が不可欠となるでしょう。グローバル化に伴い、いわば効率化されすぎてしまったサプライチェーンを、いかに強靱なものにしていくか。日米の医療現場と政府は今、大きな岐路に立たされているといえるでしょう。 1) Reuters(ロイター通信)「ナフサ供給不足に関する報道」2026年3月27日(参照日:2026年4月17日) 2) 日本透析医学会(JSDT)統計調査委員会「わが国の慢性透析療法の現況(2024年12月31日現在)」日本透析医学会ホームページ(統計調査資料)(参照日:2026年4月17日) 3) U.S. Food and Drug Administration (FDA), “Disruptions in Availability of Hemodialysis Bloodlines - Letter to Health Care Providers,” 2025 Mar 14. (参照日:2026年4月17日) 4) American Society of Nephrology (ASN), “RE: CMS-1516-ANPRM-Medicare Program; Ensuring Safety Through Domestic Security with Made in America Personal Protective Equipment (PPE) and Essential Medicine Procurement in Medicare Participating Hospitals” (comment letter), 2026 Mar 30.(参照日:2026年4月17日)

9.

1型糖尿病合併CKDに対するフィネレノンの可能性と限界―FINE-ONE試験が示したもの(解説:石上友章氏)

 1型糖尿病合併CKDに対する腎保護は、2型糖尿病合併CKDとは景色が異なる。2型ではSGLT2阻害薬が腎・心血管保護の中核に位置付けられ、そこにフィネレノンをどう上乗せするかが論点になりやすい。一方、1型では今なおインスリンを基盤とした良好な血糖管理が治療の根幹であり、KDIGOも1型では血糖管理の基盤をインスリンと整理している。さらにDCCT/EDICは、早期からの強化血糖管理が腎症を含む合併症の発症・進展抑制につながることを示しており、1型糖尿病合併CKDではまず血糖管理の質そのものが腎保護の出発点である。近年はCGM活用の重要性も一段と高まっている。 そのうえでFINE-ONE試験は、RAS阻害薬投与下の1型糖尿病合併CKD患者において、フィネレノンが6ヵ月時点のUACRを有意に低下させた点で意義深い。もっとも、その効果は手放しでは評価できない。高カリウム血症は増加し、eGFRは治療中により低下した一方、washout後にはeGFR差が縮小し、UACR改善もやや減弱した。したがって本剤の効果の少なくとも一部は、糸球体内圧変化を含むhemodynamicな機序を介した可逆的・機能的変化である可能性がある。これはRAS阻害薬や従来のステロイド性MRAにも通じる現象であり、本試験だけで長期腎予後や構造的腎保護を断定するのは早い。ただし、1型糖尿病合併CKDで新たな上乗せ治療の選択肢を示した意義は小さくない。 SGLT2阻害薬との比較では、2型糖尿病の経験をそのまま1型に持ち込めない点にも注意が必要である。FINE-ONE試験では、少なくともスクリーニング前8週間以内のSGLT2/1阻害薬またはGLP-1受容体作動薬使用例が除外されており、1型糖尿病合併CKDでフィネレノンとSGLT2阻害薬の優劣を直接論じられる設計ではない。加えて米国では、ダパグリフロジンは1型糖尿病の血糖管理適応を有しておらず、DKAリスク増加への注意喚起がなされている。欧州でも1型糖尿病適応は撤回されている。したがって現時点での本試験の位置付けは、「1型糖尿病合併CKDでは血糖管理とRAS阻害薬が主軸であり、そのうえにフィネレノンという新たな腎保護オプションが加わった」とみるのが最も妥当だろう。なお、民族差やアジア人集団での解釈は、今回の試験規模では探索的にとどまると受け止めたい。

10.

イプタコパンがIgA腎症の腎機能障害を有意に抑制(解説:浦信行氏)

 イプタコパンは補体代替経路の補体B因子の経口阻害薬であり、2025年2月のNEJM誌(Perkovic V, et al. N Engl J Med. 2025;392:531-543.)に9ヵ月時点での有意な蛋白尿減少効果が報告されている。今回は最終24ヵ月までの推算糸球体濾過率(eGFR)の変化度をプラセボ群と対比した。結果の概要はCareNet.comの2026年4月14日配信の記事に示されているが、イプタコパン群のeGFRの変化は-3.10mL/分/1.73m2/年とプラセボ群の-6.12mL/分/1.73m2/年に比較して腎機能障害進行の程度が半減していた。有害事象はやはり感染関係が多かったが、有害事象の発生率と重篤な有害事象の発生率に差はなかった。サブグループ解析では、年齢、性別、アジア人と非アジア人、尿蛋白の程度、eGFRの程度、血尿の有無、SGLT2阻害薬使用の有無で効果に差はなかった。わが国では発症が多いとされるIgA腎症であるが、効果は同様に期待でき、またSGLT2阻害薬使用下でも同様の効果があることから併用療法の有効性もあるものと考えられる。 近年はIgA腎症の病態の一端が徐々に明らかとなり、その病態の各段階に作用する薬剤の開発が盛んに行われ、多くの開発中の薬剤の尿蛋白低減効果が報告されている。しかし、長期の腎機能保護効果を報告するものは少なく、また長期とは言っても24ヵ月程度の成績である。現時点では腸管に限定的に作用するグルココルチコイドのブデソニドはやはり腎機能障害の程度は有意に半減したが、エンドセリンとアンジオテンシン両者の受容体阻害効果を示すsparsentanは減少の傾向にとどまった。その他の新規開発薬剤もこれから報告が相次ぐと思われるが、より長期の保護効果に関する成績や、組織的にも有意な改善があるかの検討も待たれる。なお、現時点での成績では腎機能障害の程度は半減しているが、それでも毎年eGFRが3mL/分減少するため末期腎不全までの進行は避けられない。この減少が1mL/分/1.73m2/年以内にとどまれば言うことはないのだが。

11.

第309回 ホルムズ海峡封鎖、不足が懸念される医療資材とは

INDEXホルムズ海峡封鎖が医療問題にも発展か日本のナフサ対策と現状ホルムズ海峡封鎖が医療問題にも発展かイランと米国・イスラエルによる戦争は、現時点では2週間の停戦が継続中で、一部では停戦期間の延長とともにイランと米国の停戦協議が続けられると報じられている。一方、イランにより事実上封鎖されていたペルシャ湾入り口のホルムズ海峡では、この停戦期間中に米海軍が進出し、イランへの逆封鎖に転じた。情勢は今も不透明で、気まぐれな米国・トランプ大統領の発言にも左右される状況である。先日、本連載(第303回)では原油、液化天然ガス(LNG)の供給不安化をもとに今後の電気料金上昇の影響を試算したが、昨今では石油製品の一種である「ナフサ」の供給不安が各メディアで報じられている。ナフサは、エチレン、プロピレン、ブタジエン、ベンゼン、トルエン、キシレンといった石油化学基礎製品の原料であり、これからもわかる通り、ナフサの供給不安は国内の幅広い消費財の供給に影響を及ぼす。石油化学工業協会(JPCA)によると、2024年のナフサ輸入量は約2,056万kLで、うち中東からの輸入割合は73.6%。原油と違って国家備蓄はなく、民間在庫は国内消費の20日分程度といわれている。国内の石油化学工業各社は現在、米国や中南米などへ輸入先の転換を図っているとされる一方、関連各社からは自社製品の値上げや出荷制限の発表が相次いでいる。この状況は医療関連製品も無縁ではないのは多くの人が承知していることだろう。ナフサを原料とする医療資材は、ざっと挙げるだけでも、透析装置部品(透析回路、廃液容器、輸液バッグなど)、注射器、輸液バッグ、カテーテル、輸液ライン、人工血管・人工心肺回路、手術用手袋・ガウン・マスク、検査キット・診断用ディスポ製品、消毒薬原料(アルコール・フェノール系)、医薬品原料(合成薬の中間体)、医薬品添加物(ワセリンなど)、医薬品包装(PTPシートなど)と多岐にわたるからだ。実際、透析を行う医療機関の不安の声などはすでにメディア各社によって報じられているほか、科学・産業機器や病院・介護用品の商社であるアズワンは医療用ニトリル手袋や注射針回収ボックスなどの出荷制限を始めた。今のところこの件に関して、いわゆるパニックバイと呼ばれるような供給不安に基づく買い占めは起きていない模様だ。これは一般大衆と違い、医療者はある程度の情報リテラシーがあることや、ナフサの供給不安定化の影響があまりにも広範囲過ぎてどうしてよいかわからないという2つの要素があるのだろうと個人的には感じている。日本のナフサ対策と現状もちろん国も手をこまねいているわけではなく、厚生労働省と経済産業省は「中東情勢の影響を受ける医薬品、医療機器、医療物資等の確保対策本部」(本部長:上野 賢一郎厚生労働相・赤沢 亮正経済産業相)を設置し、3月31日に初会合が開かれ、これまで4月16日までに3回の会合が行われた。同対策本部ではメーカーや卸業者向けと医療機関向けの相談窓口を開設し、医療機関126施設を対象とした定点観測の実施、広域災害救急医療情報システム(EMIS)を用いたオンラインによる随時報告システムの運用も始めている。16日現在、両窓口に寄せられた相談は2,956件で、供給に影響が及んでいると判断された資材は34件、うち10件は当面の供給は解決済みとしている。こうした中で注目すべきは、高市 早苗首相のある行動だ。高市氏は4月5日、X(旧Twitter)であるポスト(投稿)を行った。端的に要約すれば、今年6月までに日本のナフサ供給が途絶する可能性を指摘した報道番組を受け、現在の国内のナフサ在庫量や今後の調達見通しなどに関して具体的な数字をあげて、「報道番組の指摘は現実とは異なる」旨を伝えたものだ。実は現代のSNS社会を念頭にパニックバイを防ぐために専門家などから指摘されている有効な手段が「供給量の可視化」と「初動の迅速な情報発信」の2つであり、高市首相のポストはこれをおおむね兼ね備えている。とくに首相自身のXは約285万人のフォロワーがおり、厚生労働省、経済産業省のそれぞれ公式Xのフォロワー数(前者が約100万人、後者が約34万人)とは比較にならない拡散力を持つ。私自身は職責の性格上(?)、あまり政治家の行動を褒めることはないのだが、これについては明らかなファインプレーだと思っている。ただし、国としては、これを首相個人の功績で終わらせるのではなく、公的に受け継いで信頼性の高い情報発信をできるかが、今回の供給不安を終息させるカギを握ると考えている。そのうえで高市氏のポストの内容で個人的にちょっと惜しいと感じたのは、在庫の開示や現実の調達能力に関して「◯ヵ月」「kl/月」が入り混じっていたところである。少なくとも石油化学製品のサプライチェーンに関しては、医療者も素人であり、とくに前者の「在庫◯ヵ月」はイメージが湧きにくい。これを平時の国内の調達量と、現在の在庫量・調達量をすべてkl単位で定期的に比較公表すれば、おそらく国民の多くがより信頼性の高い情報と認識するだろうし、そこで平時とあまり変わらない在庫量・調達量が示されれば、安心感も増すだろう。もちろんこの方式を取れば、実際に調達量が細ってきたときは不安に駆られる人も出てくる。しかし、この場合は細った調達量に対して、どのような対策を打っているかをリアルタイムで開示していけばよい。これで医療者も含めた国民の不安のかなりの部分は解消できるはずである。

12.

猫さん糖尿病の顛末記 ― 主治医は獣医、コンサル先は教授【Dr.中川の「論文・見聞・いい気分」】第95回

帰宅しても返事がない家「ただいま」玄関のドアを開けた瞬間、空気の密度が違うことに気付きます。これまでは決まって「ニャオー」と勇ましい出迎えがあったはずの気配が、ない。2025年10月、愛猫レオは猫の星へと旅立ちました。こうしてわが家には、静かすぎる帰宅が日常となりました。猫の糖尿病は、予想以上に「フルスペック」だった以前の本エッセイでも触れましたが、2024年春、レオに持病が見つかりました。主訴は多飲多尿。獣医さんを受診すると、血糖値は500mg/dLを超えています。文句なしのDM(糖尿病)診断です。治療はもちろんインスリン。持続型製剤を朝夕2回投与する生活が始まりましたが、問題は用量調節です。人間と違い、猫の体はあまりにコンパクト。1.8単位、2.2単位……この「0.2単位を刻む世界」は、老眼が進み始めた眼球にはきわめて非友好的です。さらに、猫用SGLT2阻害薬も併用。ナトリウム・グルコース共輸送体をブロックし、尿糖排泄を促進する――。学生時代、まさか人間と同じ最新の医学ロジックを、ヒゲの生えた四足歩行の患者に適応する日が来るとは夢にも思いませんでした。教授への「アポなし猫コンサルト」ここで白状します。血糖コントロールが難航し、低血糖リスクに怯えていたある日、私は禁じ手を使いました。勤務先の糖尿病内分泌・腎臓内科の教授の部屋をノックしたのです。もちろん、患者は猫。しかもアポなし。完全なる「猫糖尿病コンサルト」です。にもかかわらず、教授は嫌な顔ひとつせず、インスリンの薬物動態から投与量調整のロジックまで、実に真顔でレクチャーしてくださいました。「猫ですか……なるほど、興味深い」この一言に、医師としての、そして人としての底知れぬ懐の深さ(あるいは重度の動物好きの片鱗)を見ました。この場を借りて、改めて深謝申し上げます。予後は一進一退、そして「終末期」の選択多くの方のサポートもあり、レオは一時、QOLを取り戻しました。「このまま維持できるかも」という淡い期待を抱いた時期もありましたが、2024年秋に再入院。点滴で持ち直しはしたものの、それ以降は緩やかな下り坂でした。それでも、レオは1年以上も病魔と付き合い、立派に生き抜きました。2025年夏の終わり、食欲不振が顕著になります。9月下旬にはADLが著しく低下。再入院の際、獣医さんは静かに言いました。「……そろそろ、お家で過ごさせてあげませんか」医師としての私、飼い主としての妻、そしてプロフェッショナルである獣医さん。三者の目に映る「予後」の景色が、完全に一致した瞬間でした。「これ以上、何ができるのか」その問いへの答えは、ガイドラインには載っていないシンプルなものでした。「ただ、最後までそばにいること」です。プロ顔負けのラスト・メッセージレオは最期まで見事でした。バスタオルの上で静かに横たわり、撫でるとしっぽの先を数ミリだけ動かす。それが彼なりの「インフォームド・コンセント」だったのかもしれません。午前3時頃。妻がおでこを撫でていると、彼は残った力を振り絞るように前脚を伸ばし、おでこで指をぐっと押し返します。「もっと撫でろ」そう命じられた直後、彼は静かに呼吸を止めました。不思議なことに、押し寄せたのは悲しみよりも安堵でした。「もう、打たなくていいんだ。苦しくないんだ」という想いだけが、深夜のリビングに満ちていました。ちなみに、毛並みは最期まで最高の手触りでした。いつまでも撫でていたかった。瞳も綺麗なままです。美しい姿です。猫のいない家と、尊敬の過去形声を上げて泣きたい時、一緒に泣いてくれる妻がいます。レオのいたずら、表情、賢さを語り合いながら、私たちは「欠員」の出た家で、生活を続けました。「ほんと、すごい猫だったよね」これは単なる過去形ではありません。最大の敬意を込めた、完了形に近い過去形です。「新患」ルナの来訪「次の猫は迎えない」それが当初の夫婦のコンセンサスでした。しかし半年が過ぎ、悲しみが穏やかな思い出へと昇華された頃、自然とこう思えたのです。「また、猫と暮らしたい」それはきっと、レオが遺していった最高のギフトでした。そんな折、運命の出会いがありました。里親を探していたメスの子猫――ルナです。初対面で直感しました。「……ビビッときた」医学的根拠はありません。しかし、臨床医としての長年の勘によれば、この「ビビッ」は、エビデンスを凌駕する正解なのです。オチ:主治医交代のお知らせ ルナと運動療法中 現在、わが家には再び猫がいます。ただし、以前とは立ち位置が異なります。今度は、私が「診察」される側です。深夜の運動療法(強制運動)、早朝の覚醒チェック、そして厳格な生活指導(主に激しい叱責)。レオは「人生」を教えてくれましたが、ルナは「生活習慣の矯正」を徹底してくれます。 私は今日も帰宅し、「ただいま」と言います。 今度は、耳をつんざくような、やたら元気なレスポンスが返ってきます。

13.

心血管疾患2次予防、目標LDL-C値55mg/dL未満でリスク低下/NEJM

 動脈硬化性心血管疾患患者において、目標LDL-C値は55mg/dL未満が70mg/dL未満よりも、3年時点の心血管イベントリスクの低下に結び付いたことを、韓国・延世大学校医科大学のYong-Joon Lee氏らEz-PAVE Investigatorsが行った非盲検無作為化優越性試験の結果で報告した。ガイドラインでは動脈硬化性心血管疾患患者におけるLDL-C値低下を推奨しているが、これらの患者の2次予防のための適切な目標LDL-C値について評価した無作為化試験からのエビデンスは限定的なままであった。NEJM誌2026年4月9日号掲載の報告。主要エンドポイントは、3年時点の心血管死等の複合 研究グループは、19~80歳の動脈硬化性心血管疾患患者(次のいずれか1つ以上の既往または現有で定義:急性冠症候群[心筋梗塞または不安定狭心症]既往、画像検査または機能検査で確認された安定狭心症、冠動脈血行再建術またはその他の動脈血行再建術、脳卒中または一過性脳虚血発作、末梢動脈疾患あり)を、目標LDL-C値を55mg/dL(1.4mmol/L)未満とする群(強化群)または70mg/dL(1.8mmol/L)未満とする群(従来群)に1対1の割合で無作為に割り付け追跡評価した。 主要エンドポイントは、3年時点の心血管死、非致死的心筋梗塞、非致死的脳卒中、あらゆる血行再建術、または不安定狭心症による入院の複合であった。安全性も評価した。イベントの累積発生率は強化群6.6%、従来群9.7%で有意な差 2021年1月~2022年7月に韓国17施設で3,048例が無作為化された(強化群1,526例、従来群1,522例)。両群の患者特性はバランスが取れており、平均年齢は64.4±9.0歳、女性が638例(20.9%)で、LDL-C中央値は76mg/dL(四分位範囲[IQR]:61~96)であった。1,694例(55.6%)が急性冠症候群既往で、1,474例(48.4%)が画像検査または機能検査で確認された安定狭心症を、2,049例(67.2%)が冠動脈血行再建術またはその他の動脈血行再建術を有していた。 追跡期間中央値は3.0年(IQR:3.0~3.0)。試験期間中のLDL-C中央値は、強化群56mg/dL(1.4mmol/L)、従来群66mg/dL(1.7mmol/L)であった。 主要エンドポイントのイベント発生は、強化群100例(推定Kaplan-Meier累積発生率6.6%)、従来群147例(9.7%)であった(ハザード比:0.67、95%信頼区間[CI]:0.52~0.86、p=0.002)。 事前に規定した安全性エンドポイントの発生は、強化群でクレアチニン値上昇の発現割合が有意に低かったこと(1.2%vs.2.7%、群間差:-1.5%ポイント、95%CI:-2.5~-0.5、p=0.004)を除き、両群で同程度であった。

14.

IgA腎症、イプタコパンが有効~APPLAUSE-IgAN最終解析/NEJM

 イプタコパンは、補体代替経路の補体B因子を標的とする強力な経口補体阻害薬。「APPLAUSE-IgAN試験」の9ヵ月時点の中間解析で、急速な疾患進行のリスクが高いIgA腎症患者において、本薬はプラセボと比較して24時間尿蛋白/クレアチニン比の有意な減少(38.3%の減少、p<0.001)をもたらし、安全性プロファイルは許容範囲内であることが示されたため、すでに原発性IgA腎症の治療薬として米国食品医薬品局(FDA)の迅速承認を得ている(本邦ではIgA腎症に対しては未承認)。英国・University of LeicesterのJonathan Barratt氏らは、今回、同試験の24ヵ月時の最終解析を実施。イプタコパンはプラセボと比較して腎機能低下を有意に減速させたことを報告した。研究の成果は、NEJM誌オンライン版2026年3月29日号で発表された。国際的な無作為化プラセボ対照第III相試験 APPLAUSE-IgAN試験は、日本の施設も参加した国際的な二重盲検無作為化プラセボ対照第III相試験であり、2021年1月~2025年9月に患者を登録した(Novartisの助成を受けた)。 対象は、年齢18歳以上、ACE阻害薬やARBなどによる支持療法にもかかわらずIgA腎症を認め(生検で確定)、推算糸球体濾過量(eGFR)≧30mL/分/1.73m2、24時間尿蛋白/クレアチニン比≧1の患者であった。 被験者を、イプタコパン(200mg、1日2回)またはプラセボを経口投与する群に、1対1の割合で無作為に割り付けた。 主要エンドポイントは、24ヵ月間にわたるeGFRの年間総変化量とした。副次エンドポイントとして、複合腎不全エンドポイント(eGFRのベースラインとの比較で30%以上の低下が4週間以上持続、eGFR<15mL/分/1.73m2の状態が4週間以上持続、維持透析[4週間以上]の導入、腎移植の実施、腎不全による死亡)のtime-to-event解析も行った。eGFRの年間総変化量が有意に良好 477例を登録し、イプタコパン群に238例(平均[±SD]年齢39.7[±11.6]歳、男性56.3%)、プラセボ群に239例(39.2[±12.5]歳、50.6%)を割り付けた。それぞれ18.9%および36.8%の患者が、主にeGFRの30%以上の低下が原因で試験薬の投与を中止した。 24ヵ月の時点でのeGFRの年間総変化量(最小二乗平均)は、イプタコパン群が-3.10mL/分/1.73m2/年と、プラセボ群の-6.12mL/分/1.73m2/年に対し、低下の勾配が有意に緩徐であった(群間差:3.02mL/分/1.73m2/年、95%信頼区間[CI]:2.02~4.01、補正後のp<0.001)。 また、複合腎不全エンドポイントの発生率は、イプタコパン群が21.4%と、プラセボ群の33.5%と比べて有意に低かった(ハザード比[HR]:0.57、95%CI:0.40~0.81、p=0.003)。 もう1つの副次エンドポイントである9ヵ月時の24時間尿蛋白/クレアチニン比<1の患者の割合は、イプタコパン群が43.9%とプラセボ群の17.5%に比べて有意に高かった(群間差:26.4%[95%CI:18.7~34.0]、オッズ比[OR]:4.45[2.79~7.09]、p<0.001)。有害事象の8割が軽度~中等度 有害事象の発生率は、イプタコパン群で87.0%、プラセボ群で89.1%であった。イプタコパン群で頻度の高い有害事象は、COVID-19(21.0%)、上気道感染症(16.0%)、上咽頭炎(10.1%)であった。同群の有害事象の重症度別の発生率は、軽度が46.6%、中等度が34.0%、重度が6.3%だった。 重篤な有害事象は、イプタコパン群で12.2%、プラセボ群で11.7%に発現し、重篤な感染症はそれぞれ6.7%および2.1%にみられた。試験薬との関連が疑われた有害事象は20.2%および20.5%、試験薬の投与中止に至った有害事象は4.6%および4.6%に発現した。死亡例は認めなかった。 著者は、「イプタコパン群は慢性的なeGFR低下の発生率がプラセボ群の約半分であり、腎機能の全体的な低下の幅も著明に小さかった」とし、「イプタコパンは、進行リスクの高いIgA腎症患者において、腎機能の低下の速度を有意に減速した」と結論付けている。また、「本試験は、尿蛋白高値に基づき進行リスクが高いと判定されたIgA腎症を対象としており、低リスク例におけるイプタコパンの効果は不明である」と指摘している。

15.

MASLD患者の心血管疾患入院、糖尿病合併で院内死亡リスク約2倍

 代謝異常関連脂肪性肝疾患(MASLD)患者が心血管疾患(CVD)で入院した場合、糖尿病併存例では院内死亡や合併症のリスクが有意に高いことが、日本の大規模レジストリ研究で明らかになった。研究は、宮崎大学医学部内科学講座循環器・腎臓内科学分野の小牧聡一氏、松浦祐之介氏らによるもので、2月15日付の「Diabetic Medicine」に掲載された。 MASLDは、従来の非アルコール性脂肪性肝疾患(NAFLD)に代わる新たな疾患概念として提唱されており、世界で最も頻度の高い慢性肝疾患の一つとされる。CVDとの関連が強いことから心血管リスク評価の重要性が指摘されているが、診断基準を構成する各代謝因子が予後に及ぼす影響については、十分に明らかになっていなかった。糖尿病はMASLDにおける肝関連合併症との関連が知られる一方、CVDで入院したMASLD患者の院内転帰に及ぼす影響については不明な点が多かった。そこで研究グループは、日本全国の心血管入院データを用いて、MASLD患者における糖尿病と院内転帰(死亡・合併症)との関連を検討した。 本研究は、2012年4月から2023年3月までの全国規模の日本循環器疾患レジストリ(Japanese Registry of All Cardiac and Vascular DiseasesーDiagnosis Procedure Combination:JROADーDPC)のデータを用いた後ろ向き横断研究である。解析対象は、CVDで入院したMASLD患者10,614人。MASLDは、肝脂肪化に加え、少なくとも1つの心代謝リスク因子(高血圧、脂質異常症、糖尿病、関連薬剤の使用、またはBMI23kg/m2以上〔アジア人のBMI基準〕)を有する場合と定義した。主要評価項目は院内死亡、副次評価項目は主要な心血管系および非心血管系の院内合併症発生とした。統計解析では、糖尿病の有無による患者背景および転帰を比較したうえで、院内死亡との関連を検討するため多変量ロジスティック回帰解析を実施した。 対象患者の年齢中央値は66歳で、66.9%が男性だった。MASLD患者10,614人のうち、4,550人(42.9%)が糖尿病を合併していた。糖尿病非合併患者と比較して、糖尿病合併患者では虚血性心疾患(35.5% vs. 30.8%)、急性冠症候群(18.8% vs. 16.9%)、心不全(27.3% vs. 25.4%)の割合がいずれも有意に高かった(いずれもP<0.05)。 院内死亡率(5.6% vs. 3.3%、P<0.001)および全合併症発生率(23.6% vs. 19.7%、P<0.001)も糖尿病合併群で有意に高く、合併症発生率の差は主として心血管系イベント(16.8% vs. 10.5%、P<0.001)の増加によるものと考えられた。さらに心血管系イベントの内訳では、糖尿病合併例で入院後の心不全や急性冠症候群の発症が多く、大動脈内バルーンパンピング(IABP)、体外式膜型人工肺(ECMO)、人工呼吸管理などの高度治療を要する割合も高かった。 多変量ロジスティック回帰解析の結果、糖尿病は院内死亡の独立した予測因子であることが確認された(オッズ比 1.99、95%信頼区間 1.60~2.47、P<0.001)。さらに、敗血症、大出血、がんも院内死亡の独立した規定因子であった。一方、脂質異常症や虚血性心疾患は死亡リスク低下と関連し、抗血小板薬、スタチン、ACE阻害薬/ARBの使用も死亡率低下と関連していた。 著者らは、CVDで入院したMASLD患者において、糖尿病合併が院内死亡率および合併症発生率の上昇と関連していたと結論づけた。そのうえで、「MASLDの心代謝リスク因子が予後に及ぼす影響を一律に捉えるのではなく、特に糖尿病の有無といった代謝表現型に基づいて層別化して評価することが、より精度の高いリスク評価や個別化医療の推進につながる可能性がある」としている。 なお、本研究の限界として、診断が病名コードに基づくため誤分類の可能性がある点、検査値や治療詳細が含まれていない点、残余交絡の可能性や因果関係を示せない点、非MASLD対照群がない点が挙げられている。

16.

中等度慢性腎臓病(CKD)の腎機能の経過の評価にはクレアチニンとシスタチンCの両者が必要(解説:浦信行氏)

 糸球体濾過率(GFR)の正確な評価にはイヌリンクリアランスや125I-イオサラメートクリアランスが必要であるが、日常臨床では方法の煩雑さや放射性同位元素の取り扱いなどで現実的にはほぼ困難である。したがって、クレアチニンやシスタチンCを用いた推算値(eGFR)が算出されるが、結果の即時性からクレアチニンによるeGFRが一般的に用いられている。 英国のバーミンガム大学を中心とした多施設共同研究で、正確な腎機能変化の評価にはクレアチニンとシスタチンCの両者を用いた方法が優れることを3年間の前向き研究で明らかにした。詳細な報告はCareNet.comの2026年4月2日掲載の解説を参照されたい。中等度CKDのクレアチニンとシスタチンCを半年ごとに測定し、Log変換した値を用いてeGFRの3年間のスロープを評価した結果、クレアチニンとシスタチンC各々で評価した値よりは両者を併用した値が、基準値であるイオヘキソールを用いたGFRにより近似していたとの報告である。両者を同時評価することの重要性を示唆している。日本腎臓学会でも、評価方法は異なるが両者を用いたeGFRの同時評価を先行して行ってイヌリンクリアランスと対比し、2012年のCKD診療ガイドラインに両者の平均eGFRの正確度が高いと報告している。しかし、両者の平均値で評価するのも症例によっては限界がある。この研究の対象は58.1~73.6歳で平均67.1歳である。日常臨床で75歳以上の高齢者では自力で元気に外来通院する症例もいるが、一部に自力歩行に難渋するか不可能な症例も少なからずいる。サルコペニアなどによりクレアチニンでのeGFR計算値が極端に高値の場合も珍しくない。両者の併用の意義は理解できるが、症例の病態やADLを考慮した評価も念頭に置く必要があると考える。

17.

尿路結石の再発予防、水分摂取への介入は無効/Lancet

 尿路結石再発予防のための水分摂取を促す行動介入プログラムは、ガイドラインベースのケアと比較して、2年間の追跡期間中、症候性の結石再発を減少させず、尿量増加もわずかだった。米国・セントルイス・ワシントン大学のAlana C. Desai氏らUrinary Stone Disease Network Investigatorsが、アドヒアランス介入に関する無作為化試験の結果を報告した。尿路結石の再発リスク減少のために水分摂取量を増やすことが広く推奨されているが、アドヒアランスが課題となっている。水分摂取量を維持するための介入効果について、これまで十分に試験されていなかった。Lancet誌2026年3月21日号掲載の報告。多要素行動介入群vs.ガイドライン準拠ケア群で症候性結石再発を評価 研究グループは、水分摂取量を増やすことを促す多面的な行動介入プログラムが、対照と比較して尿路結石の再発を減らすかどうかを明らかにする検討を行った。米国の6つの大学医療センターで、12歳以上、尿路結石の既往があり、現行ガイドラインに基づく24時間尿量が少ない被験者を登録した。 被験者は、水分摂取量を増やすことを促すようデザインされた多要素行動介入群、またはガイドラインに準拠したケアを受ける対照群に1対1の割合で無作為に割り付けられた。介入は、目標水分摂取量の設定、目標水分摂取量を順守するための金銭的インセンティブ、水分摂取量を増やすことに対する障壁を克服するための健康指導、そして患者の選択に基づくアプローチ(水分摂取量増加を維持するためのテキストメッセージなど)で構成された。 無作為化割り付けは、遠隔的にコンピュータで生成され、治験担当医師、治療担当医師、アウトカム評価者、および判定者はグループ割り付けを知らされなかった。 主要アウトカムは、症候性の結石再発(2年間の追跡期間中の結石排出または結石に対する処置介入として定義)で、ITT集団を対象として解析した。副次アウトカムは、24時間尿量の変化、尿路症状、画像上の新規結石形成または既存結石の増大、および症候性の結石再発・新規結石形成・既存結石の増大の複合などであった。安全性エンドポイントとして、入院を要した低ナトリウム血症を評価した。追跡期間中央値738日時点で症候性の結石再発、介入群19%、対照群20% 2017年10月26日~2022年2月18日に、1,658例が介入群(826例)または対照群(832例)に無作為化された。被験者は、年齢中央値44歳(四分位範囲[IQR]:29~59)、女性が946例(57%)であった。 追跡期間中央値738日(IQR:711~778)時点で、症候性の結石再発は、介入群154例(19%)、対照群165例(20%)で発生した(ハザード比[HR]:0.96、95%信頼区間[CI]:0.77~1.20)。1,658例のうち1,104例(66.6%)が結石再発患者であった。 24時間尿量は、両群ともベースラインから増加したが、6ヵ月、12ヵ月、18ヵ月、24ヵ月時点でいずれも、対照群と比較して介入群で尿量が多かった。 頻尿、尿意切迫および夜間頻尿の尿貯留症状は、介入群では対照群と比較して6ヵ月および12ヵ月時点では多かったが、その後の時点では差はなかった。 ベースラインから試験終了時の画像検査までに、既存結石の2mm以上の増大または新規結石形成について両群間で差は認められず、症候性の結石再発・新規結石形成・既存結石の2mm以上の増大の複合アウトカムについても両群間で統計学的有意差は認められなかった。 入院を要した低ナトリウム血症エピソードは報告されなかったが、無症候性の低ナトリウム血症が介入群12例(1%)、対照群2例(<1%)で報告された。

18.

中等度CKDの腎機能追跡、クレアチニン・シスタチンC併用eGFRが良好/BMJ

 血清クレアチニンとシスタチンCの両方のバイオマーカーを用いた糸球体濾過量(GFR)の推算式は、それぞれの単一バイオマーカーに基づく推算式より、実測GFRの変化との一致率が高いことが、英国・バーミンガム大学のKatie Scandrett氏らによる前向きコホート研究の結果で明らかになった。慢性腎臓病(CKD)のモニタリングはGFRを用いて行われているが、実測GFRはあまり使用されていない。一方、血清クレアチニン値に基づく推算糸球体濾過量(eGFR)が一般的に使用されているが、不正確な場合があるという課題があった。BMJ誌2026年3月19日号掲載の報告。実測GFRと各種推算式によるeGFRで3年後の変化を比較 研究グループは、2014年4月1日~2017年12月31日にイングランドの6施設(プライマリケア、2次および3次医療施設)において、登録前の少なくとも3ヵ月間、クレアチニンに基づくeGFRが30~59mL/分/1.73m2でステージ3のCKDを有する18歳以上の成人1,229例を登録した。 主要解析では、3年間にわたるGFRモニタリングにおける推定式の精度を評価。実測GFR(基準値)とeGFRの年間変化量の差が±3mL/分/1.73m2/年以内の場合を一致とみなした。副次解析では、疾患進行(実測GFRの25%以上低下、かつ病期分類の悪化)に関するeGFRの検出力を評価した。 基準となる実測GFRはイオヘキソールクリアランス法により測定し、eGFRは血清クレアチニンおよびシスタチンC濃度より慢性腎臓病疫学共同研究(Chronic Kidney Disease Epidemiology Collaboration:CKD-EPI)および欧州腎機能コンソーシアム(European Kidney Function Consortium:EKFC)の推定式を用いて算出した。実測GFRとの一致率が最も高いのは、クレアチニンとシスタチンCに基づくeGFR 解析対象は、ベースラインおよび3年後の両方で実測GFRおよびeGFRのデータが得られた875例であった。 実測GFRの中央値は、ベースラインの48.1mL/分/1.73m2から、3年後は43.6mL/分/1.73m2に低下した。実測GFR変化量の中央値は、検討したすべての推算式(CKD-EPIcreatinine、CKD-EPIcystatin、CKD-EPIcreatinine-cystatin、CKD-EPI(2021)creatinine、CKD-EPI(2021)creatinine-cystatin、EKFCcreatinine、EKFCcystatin、EKFCcreatinine-cystatin)によるeGFR変化量の中央値を上回った。 eGFR変化量と実測GFRの変化量の一致の程度は良好であった。一致率は72.6~80.2%の範囲であり、2つのバイオマーカーを用いた推算式で実測GFRの変化量との一致率が高かった。一致率は、CKD-EPIcreatinine(73.1%、95%信頼区間:70.1~76.1)との比較において、CKD-EPIcreatinine-cystatin(78.6%、75.8~81.3)、CKD-EPI(2021)creatinine-cystatin(78.1%、75.2~80.8)、EKFCcreatinine-cystatin(80.2%、77.4~82.8)が有意に良好であった(すべてのp<0.001)。 CKDの進行は139例(15.9%)で認められた。すべてのeGFRにおいてCKDの進行に関する感度は低かった(<54.1%)が、特異度は高かった(>90.4%)。 著者らは、「すべての推算式によるeGFRがGFRの経時的低下を過小評価していたことについて、さらなる検討が必要である」としたうえで、「臨床現場において複数マーカーに基づく推算式の活用を拡大することが、疾患モニタリングの改善、ひいては臨床ケアの向上に寄与する可能性がある」とまとめている。

20.

透析患者でもGLP-1薬開始で心血管イベント・死亡リスク低下と関連

 維持透析を受けている腎不全の2型糖尿病患者において、GLP-1受容体作動薬(GLP-1薬)の新規使用は、他の一般的な血糖降下薬と比較して心血管イベントおよび全死因死亡のリスク低下と関連していたことを、米国・Duke University School of MedicineのBenjamin Catanese氏らが示した。Journal of the American Society of Nephrology誌オンライン版2026年3月12日号掲載の報告。 GLP-1薬は、透析を必要としない慢性腎臓病患者において心血管イベントリスクを低減することが報告されている。しかし、透析に至った腎不全患者におけるGLP-1薬の有益性は依然として不明であり、腎不全患者の心血管アウトカムを改善する治療選択肢は限られている。そこで研究グループは、腎不全と2型糖尿病を併発している患者を対象に、GLP-1薬または他の血糖降下薬を新たに使用開始した場合の心血管アウトカムを比較する観察研究を実施した。 電子カルテ、メディケア請求データ、米国腎臓データシステム(United States Renal Data System、2011~21年)を用いて、維持透析中の2型糖尿病患者におけるGLP-1薬、DPP-4阻害薬、スルホニル尿素薬(SU薬)の新規使用者を特定した。主要解析では61の共変量を用いた傾向スコアマッチングにより、GLP-1薬とDPP-4阻害薬の開始者を1対1で比較した。副次解析として、GLP-1薬とSU薬の開始者についても同様に比較した。 主要アウトカムは全死因死亡を含む修正主要心血管イベント(MACE)で、副次アウトカムには主要アウトカムの個々の構成要素と心不全による入院が含まれた。原因別Cox比例ハザードモデルによりハザード比(HR)と95%信頼区間(CI)を推定した。 主な結果は以下のとおり。・新規使用者は、GLP-1薬3,629例、DPP-4阻害薬2万1,369例、SU薬3万2,296例で、最大2年間追跡された。・GLP-1薬とDPP-4阻害薬の開始者3,284組のマッチングにおいて、GLP-1薬の使用はMACE、全死因死亡、心不全による入院のリスク低下と関連していた。 MACE HR:0.87(95%CI:0.78~0.97) 全死因死亡 HR:0.83(95%CI:0.74~0.94) 心不全による入院 HR:0.90(95%CI:0.83~0.99)・GLP-1薬とSU薬の開始者2,792組のマッチングにおいて、GLP-1薬の使用はMACEおよび全死因死亡のリスク低下と関連していた。 MACE HR:0.83(95%CI:0.74~0.93) 全死因死亡 HR:0.80(95%CI:0.69~0.91)

検索結果 合計:1046件 表示位置:1 - 20