サイト内検索|page:3

検索結果 合計:107件 表示位置:41 - 60

41.

第14回 その失神、あれが原因ではないですか?【救急診療の基礎知識】

●今回のPoint1)失神は突然発症だ! 心血管性失神を見逃すな!2)発症時の痛みの有無を必ずチェック!3)検査前確率を正しく見積もり、必要な検査の提出を!【症例】60歳男性。工事現場で現場監督をしていた際に、気を失った。目撃した現場職員が呼び掛けたところ、数分で意識は改善した。倦怠感、37℃台の微熱も認め救急外来を独歩受診した。●来院時のバイタルサイン意識清明血圧158/98mmHg脈拍102回/分(整)呼吸18回/分SpO297%(RA)体温37.4℃瞳孔3/3mm+/+既往歴高血圧を健康診断で指摘されたことはあるが未受診内服薬定期内服薬なし意識障害vs.意識消失意識障害と意識消失の違いは理解できているでしょうか。できていない方は過去の本連載を振り返って読んでみてください。普段の意識状態と比較するのがポイントでした(普段から認知症によって3/JCSの方が見当識障害を認めても、それは意識障害とは言えませんよね)。今回の症例では、目撃した同僚の方の話では、初めは「ぼっー」としていたものの、数分で普段どおりになったようです。意識障害というよりは意識消失、そして明らかな痙攣の目撃がなく、速やかに意識が戻っているようであれば、まずは「失神」として対応するのがよいでしょう。失神のアプローチ失神の定義は前回述べたとおりですが、具体的に失神と認識したらどのようにアプローチするべきでしょうか。私は表1の事項を意識して対応しています。詳細はこちらの本(『あなたも名医! 意識障害』(日本医事新報社)1))でぜひご確認ください。表1 失神のアプローチ画像を拡大する本稿では、(4)「前駆症状(とくに痛み)を確認する」に関して取り上げましょう。前回の症例でもそうでしたが、失神? と思ったら必ず痛みの有無を確認し、頭頸部に痛みがあればクモ膜下出血を、胸背部痛など頸部以下の痛みを伴う場合には大動脈解離を一度は考え、意識して病歴や身体所見を評価することが大切です。目の前の患者は大動脈解離なのか?大動脈解離が失神の鑑別に上がっても、そこで立ち止まってしまうことはないでしょうか。大動脈解離の来院パターンはいくつかありますが、代表的なものは胸痛などの痛みを訴えて来院、意識障害、そして今回のような失神です。大動脈解離の10%程度は失神を認めるということを頭に入れておくとよいでしょう2)(表2)。表2 発症時の症状画像を拡大する医学生のときに誰もが習う、「突然発症の胸背部痛で痛みが移動し、血圧の左右差を認める」という症例は、残念ながら病院にたどり着けないことが多いものです。実臨床では、「何らかの痛みが突然始まる」と覚えておくとよいと思います。失神→心血管性失神の可能性→発症時の痛みをチェック→大動脈解離かも? クモ膜下出血かも? こんな感じです。大動脈解離らしいか否か、確定診断するために必要な造影CT検査をオーダーするか否か、これはどれほど疑っているかに依存します。すなわち検査前確率を正しく見積もり、必要な検査をオーダーすることが大切なのです。ADD risk score(表3)を意識して「らしさ」を見積もりましょう3)。(1)基礎疾患、(2)痛みの性状、(3)身体所見、これら3項目のうちいくつの項目に該当するのかを評価します。そして、それが1項目以下の場合には可能性は低く、2項目以上に該当する場合には精査をしなければなりません(図)。表3 ADD risk score -大動脈解離は否定できるか-画像を拡大する図 大動脈解離疑い症例 -実践的アプローチ-画像を拡大するD-dimerか、造影CT検査か大動脈解離を疑った際にベッドサイドで行う検査としてエコーは必須ですが、フラップや心嚢液貯留が明らかな症例は、決して多くはありません。もしあればその時点で強く疑い、専門科へコンサルト、または造影CT検査をオーダーすることに躊躇はありませんが、実際にははっきりせず採血や画像検査を行うことになるでしょう。検査が迅速に施行できない環境であれば、突然発症の痛みや痛みに伴う失神ということのみでコンサルト、転院の打診でもまったく問題ありません。D-dimerは有用な検査ですが、ルーティンに提出するものではありません。肺血栓塞栓症を疑った際にも同様ですが、可能性が低いと思っている症例にのみ提出し、陰性をもって否定するのです。具体的には先述の図にのっとればよいでしょう。ADD risk scoreを評価し、2項目以上に該当した場合には、施行すべき検査は造影CT検査です。D-dimerを出すなというわけではありません。必要な検査をきちんとやる必要があるということです。大動脈解離の典型例を見逃すことはあまりありません。一見、軽症に見える患者の中からいかにして拾い上げるのか、それがポイントとなります。繰り返しになりますが、失神は瞬間的な意識消失発作であり突然発症です。そこに痛みの関与があれば疑いたくなりますよね。本症例のように、痛みが入り口でない場合でも、転倒の背景に失神が、そして失神の原因が心血管性失神(HEARTS)ということが決して珍しくありません。バイタルサインが安定しており、重症感がない患者だからこそ、きちんと病歴を聴取し、身体所見を根こそぎ取りましょう。1)坂本壮ほか. あなたも名医! 意識障害. 日本医事新報社;2019.2)Hagan G, et al. JAMA. 2000;283:897-903.3)Adam M, et al. Circulation. 2011;123:2213-2218.4)Nazerian P, et al. Circulation. 2018;137:250-258.

42.

がん患者の偶発的肺塞栓症の再発リスクは?

 画像診断技術の進展により、がん患者に偶発的な所見が見つかる割合は高まっており、その治療に関する検討が各種報告されている。オランダ・アムステルダム大学のNoemie Kraaijpoel氏らは、国際共同前向き観察コホート研究において、偶発的な肺塞栓症を有するがん患者で、抗凝固療法を行った場合の再発リスクについて評価した。その結果、治療を行っても静脈血栓塞栓症の再発リスクが懸念されることが示されたという。リスクは、亜区域枝の肺塞栓症患者と、より中枢部の血栓を有する患者で同等であった。がん患者における偶発的な肺塞栓症は、ルーチンの画像検査で最高5%に発見されるという。しかし、とくに遠位血栓に関して、臨床的な関連や最適な治療法は明らかになっていなかった。Journal of Clinical Oncology誌オンライン版2019年5月22日号掲載の報告。 研究グループは、がん患者で偶然発見された肺塞栓症について、現在の治療戦略と長期予後を評価する目的で、2012年10月22日~2017年12月31日に国際共同前向き観察コホート研究を行った。対象は、任意抽出された、偶発的な肺塞栓症の診断を受けた活動性のがんを有する成人患者であった。 評価項目は、追跡期間12ヵ月における静脈血栓塞栓症の再発、臨床的に著明な出血および全死因死亡で、中央判定で評価した。 主な結果は以下のとおり。・合計695例の患者が解析に組み込まれた。平均年齢66歳、58%が男性で、大腸がん(21%)が最も多く、次いで肺がん(15%)であった。・抗凝固療法は675例(97%)で開始され、うち600例(89%)は低分子ヘパリンが用いられた。・再発性静脈血栓塞栓症41例(12ヵ月累積発生率:6.0%、95%CI:4.4~8.1)、大出血39例(同:5.7%、4.1~7.7)、死亡283例(同:43%、39~46)の発生が認められた。・再発性静脈血栓塞栓症の12ヵ月発生率は、肺塞栓が中枢部の患者で6.0%に対し、亜区域枝の患者では6.4%で、有意差は認められなかった(部分分布のハザード比:1.1、95%CI:0.37~2.9、p=0.93)。

43.

第12回 呼吸困難 意外に多い呼吸困難の原因とは?【救急診療の基礎知識】

●今回のPoint1)呼吸数に注目し、帰してはいけない患者を見逃さないようにしよう!2)バイタルサインは必ず普段のADLで評価しよう!3)検査は事前確率に応じて、適切な検査を提出・実施しよう!【症例】70歳男性。来院当日、奥さんと買い物中に呼吸困難を自覚した。途中、近くのベンチで休み症状は改善傾向にあったが、心配となり帰宅途中にかかりつけのクリニックを受診した。原因は何が考えられるか? どのようにアプローチするべきだろうか?●受診時のバイタルサイン意識清明血圧152/98mmHg脈拍100回/分(整)呼吸24回/分SpO295%(RA)体温36.2℃瞳孔3/3mm+/+既往歴高血圧(51歳~)、2型糖尿病(54歳~)内服薬アムロジピン(Ca拮抗薬)、メトホルミン(メトホルミン塩酸塩)「意識障害」の後は、救急外来や一般の外来で出会う頻度の多い主訴のうち、時に重篤な場合がある症候を、順に取り上げていこうと思います。今回は「呼吸困難」です。X線やCT検査をすれば大抵の診断はつきますが、画像で異常が認められない場合やそもそも重症度を見誤り、適切な画像検査を行わず見逃してしまうことがあるため注意が必要です。高齢者の呼吸困難の原因呼吸困難の患者を診たら、(1)心不全などの心疾患、(2)肺炎などの肺疾患、(3)上部消化管出血などの貧血、(4)過換気症候群などの心因性の4つに分類し、考えて対応しています。若年者が急性の呼吸困難を訴えた場合には、気胸や喘息が鑑別の上位にあがりますが、高齢者ではどうでしょうか? 原因は多岐にわたりますが、頻度を考慮し、[1]心不全、[2]肺炎、[3]COPD(慢性閉塞性肺疾患)の急性増悪、[4]肺血栓塞栓症の4つをまずは念頭に鑑別を進めるとよいでしょう1)。初療時の鑑別のポイント:やはり“Hi-Phy-Vi”が大切!細かいことは抜きにして、[1]~[4]の鑑別ポイントを改めて理解しておきましょう。●病歴(History):発症様式に注目!一般的に肺炎やCOPDの急性増悪が突然発症することはありません。数日前、最低でも数時間前から咳嗽や発熱などの症状を認めるはずです。それに対して、後負荷がドカッと上がるびまん性肺水腫を主病態とする心不全や、肺血栓塞栓症は急激な発症様式を呈することが多く、救急外来でもしばしば出会います。真のonsetをきちんと聴取し、いつから症状を認めているのかを正確に把握しましょう。心不全の既往、発作性夜間呼吸困難は、心不全らしい所見であり、既往歴やいつ(就寝中、労作時など)症状を認めるかなども忘れずに聴取しましょう。就寝前までおおむね問題なかった患者が、夜間に突然呼吸が苦しくなった場合には、素直に考えれば肺炎よりも心不全らしいですよね。●身体所見(Physical):左右差に注目!呼吸音、心音、頸部所見(頸静脈怒張の有無)、下肢の浮腫や左右差などの身体所見は、ごく当然にとる必要があることは言うまでもありませんが、発症初期では聴取が難しい、III音は聴く努力をしながらもやっぱり難しいし、足の浮腫もいつからなんだか…など実際の現場では悩ましいことが多いのも事実です。最も簡単な方法は、左右差に注目することです。呼吸音に左右差があれば、肺炎らしく(初期では全吸気時間で聴取:holo crackles)、両側に喘鳴を聴取すれば心不全らしいでしょう。当たり前ですが、何となく聴診していると明らかな喘鳴の聴取は容易でも、わずかな場合や肺炎の初期の副雑音をキャッチできないことは珍しくありません。下腿の浮腫は、両側性の場合には心不全を示唆しますが、左右差を認める場合には、肺血栓塞栓症の原因の大半を占める深部静脈血栓症の存在を示唆します(エコーを当てれば瞬時に判断できます)。Thinker's sign(Dahl's sign)は、呼吸困難を軽減させるための姿勢によって生じた所見であり、慢性の呼吸不全の存在を示唆します2)。気管短縮や呼吸音の減弱、心窩部心尖拍動とともに患者の肘や膝上の皮膚所見も確認する癖を持ちましょう。●バイタルサイン(Vital signs):脈圧に注目!「呼吸困難を訴えるもののSpO2の低下がない」これは逆に危険なサインです。頻呼吸で何とか代償しようとしている、もしくは気道狭窄を示唆し、異物や喉頭蓋炎、アナフィラキシーの可能性を考え対応するようにしましょう。SpO2の低下を認め、[1]~[4]を鑑別する場合には、脈圧がヒントになります。肺炎など感染症が関与している場合には、通常脈圧は開大します。それに対して心機能が低下しているなどアウトプットが低下している場合には、脈圧が低下します。両者が混在する場合や、普段の患者背景にもよりますが、脈圧が低下している場合には、虚血に伴う心不全、submassive以上の肺血栓塞栓症など重篤な病態を早期に見抜く手掛かりになります。呼吸困難患者の脈圧が低下している場合には、早期に心電図を確認することをお勧めします(ST変化などの虚血性変化、洞性頻脈・SIQIIITIIIなどの肺血栓塞栓症らしい所見をチェック)。普段のADLと比較!初療時には酸素を必要としていた患者さんの中には、精査中にoffにすることができる場合があります。そのような場合には安心しがちですが、もう一歩踏み込んでバイタルサインを確認しましょう。ストレッチャー上のバイタルサインではなく、普段と同様のADLの状態でのバイタルサインを評価してほしいのです。本症例の原因は肺血栓塞栓症でしたが、安静時には酸素を要さず、呼吸回数は落ち着いてしまいました。しかし、帰宅前に歩行をしてもらうとSpO2が低下し、呼吸困難症状の再燃を認めたのです。肺血栓塞栓症は、過換気症候群や原因不明として見逃されることがあり、私は普段と同様のADLで(1)他に説明がつかない頻呼吸、(2)他に説明がつかない低酸素、(3)他に説明がつかない頻脈の場合には、疑って精査するように努めています3)。さいごに呼吸困難を訴える患者では、胸部X線、CT検査ですぐに確認したくなりますが、それのみではなかなか確定診断は難しく、また、肺炎と心不全は両者合併することも珍しくありません。D-dimerも役には立ちますが、それのみで肺血栓塞栓症や大動脈解離を診断・除外するものではありません。“Hi-Phy-Vi”を徹底し、鑑別疾患を意識して検査結果をオーダー、解釈することを常に意識しておきましょう。1)Ray P, et al. Crit Care. 2006;10:R82.2)Patel SM, et al. Intern Med. 2011;50:2867-2868.3)坂本壮. 救急外来ただいま診断中!. 中外医学社;2015.p.216-230.

44.

テストステロンが血栓塞栓症、心不全、心筋梗塞に関連/BMJ

 JMJD1C遺伝子変異で予測した遺伝的内因性テストステロンは、とくに男性において、血栓塞栓症、心不全および心筋梗塞にとって有害であることを、中国・香港大学のShan Luo氏らが、UK Biobankのデータを用いたメンデル無作為化試験の結果、明らかにした。テストステロン補充療法は世界的に増大しているが、心血管疾患でどのような役割を果たすのか、エビデンスは示されていない。そうした中、最近行われたメンデル無作為化試験で、遺伝的予測の内因性テストステロンが、虚血性心疾患や虚血性脳卒中と、とくに男性において関連していることが示されていた。検討の結果を踏まえて著者は、「内因性テストステロンは、現在の治療法でコントロール可能であり、血栓塞栓症や心不全のリスク因子は修正可能である」と述べている。BMJ誌2019年3月6日号掲載の報告。UK Biobank40~69歳の英国人男女39万2,038例のデータを用いて評価 研究グループは、内因性テストステロンが血栓塞栓症、心不全、心筋梗塞と因果関係を有するのかを明らかにするため、無作為化試験「Reduction by Dutasteride of Prostate Cancer Events(REDUCE)」の被験者から遺伝的予測の内因性テストステロンを入手。UK Biobankのデータを用いて、それらテストステロンと血栓塞栓症、心不全および心筋梗塞との関連性を評価し、「CARDIoGRAMplusC4D 1000 Genomes」でゲノムワイドベースの関連性検証試験を行った。 被験者数は、REDUCE試験は50~75歳の欧州系の男性3,225例、UK Biobankは40~69歳の英国人男女39万2,038例、CARDIoGRAMplusC4D 1000 Genomesは17万1,875例(約77%が欧州直系)であった。 主要評価項目は、自己申告と、病院エピソードおよび死亡記録に基づく血栓塞栓症、心不全、心筋梗塞の発生であった。JMJD1C遺伝子変異を活用、女性では関連性認められず UK Biobankの被験者のうち、血栓塞栓症の発生は1万3,691例(男性6,208例、女性7,483例)、心不全は1,688例(それぞれ1,186例、502例)、心筋梗塞は1万2,882例(1万136例、2,746例)であった。 男性において、JMJD1C遺伝子変異で予測した遺伝的内因性テストステロンは、血栓塞栓症(対数変換テストステロン値[nmol/L]の単位増加当たりのオッズ比[OR]:2.09、95%信頼区間[CI]:1.27~3.46、p=0.004)、心不全(7.81、2.56~23.81、p=0.001)と明らかな関連性が認められたが、心筋梗塞との関連性は認められなかった(1.17、0.78~1.75、p=0.44)。ただし検証試験では、被験者全体において、JMJD1C遺伝子変異による遺伝的予測の内因性テストステロンと心筋梗塞の、明らかな関連性が認められた(1.37、1.03~1.82、p=0.03)。 女性においては、いずれも明らかな関連性はみられなかった(ORは血栓塞栓症:1.49[p=0.09]、心不全:0.53[p=0.47]、心筋梗塞:0.91[p=0.80])。 アウトカムと関連する遺伝子変異において、過剰な不均一性は観察されなかった。一方で、潜在的なSHBG遺伝子多面的変異で予測した遺伝的内因性テストステロンが、アウトカムと関連しないことも示された。

45.

VTE予防、薬物療法と間欠的空気圧迫法併用のメリットは?/NEJM

 静脈血栓塞栓症(VTE)の薬物予防法を受けている重症患者において、付加的な間欠的空気圧迫法を薬物予防法のみと比較したが、近位下肢深部静脈血栓症の発生は減少しなかった。サウジアラビアのキング・サウド・ビン・アブドゥルアジーズ健康科学大学のYaseen M. Arabi氏らが、重症患者のVTE予防における薬物予防法と間欠的空気圧迫法併用の有効性を検証した、国際多施設共同無作為化比較試験「Pneumatic Compression for Preventing Venous Thromboembolism trial:PREVENT試験)の結果を報告した。VTE予防において、間欠的空気圧迫法と薬物予防法の併用により深部静脈血栓症の発生が減少するかについてはエビデンスが不足していた。NEJM誌オンライン版2019年2月18日号掲載の報告。ICU入室後48時間以内に薬物予防法のみと間欠的空気圧迫法併用を無作為化 PREVENT試験は2014年7月~2018年8月に、サウジアラビア、カナダ、オーストラリアおよびインドの20施設で行われた。 対象は、参加施設の国内基準に基づく成人(14歳以上、16歳以上または18歳以上)の内科的、外科的または外傷性の重症患者計2,003例で、集中治療室(ICU)入室後48時間以内に、未分画/低分子ヘパリンによるVTEの薬物予防法に加えて毎日18時間以上の間欠的空気圧迫法を受ける間欠的空気圧迫法併用群(991例)と、薬物予防法のみの対照群(1,012例)に無作為に割り付けた。 主要評価項目は、週2回の下肢エコーにより検出された新たな近位下肢深部静脈血栓症の発生で、無作為化後の暦日3日後からICU退室・死亡・完全離床・試験28日目までのいずれか最初に生じるまででとした。薬物予防法のみと間欠的空気圧迫法併用とで、深部静脈血栓症の発生に有意差なし 間欠的空気圧迫法の使用時間中央値は22時間/日(四分位範囲:21~23時間/日)、使用期間中央値は7日間(同:4~13日)であった。 主要評価項目の発生は、間欠的空気圧迫群957例中37例(3.9%)、対照群985例中41例(4.2%)であった(相対リスク:0.93、95%信頼区間[CI]:0.60~1.44、p=0.74)。 VTE(肺血栓塞栓症または下肢深部静脈血栓症)は、間欠的空気圧迫法併用群991例中103例(10.4%)、対照群1,012例中95例(9.4%)に生じ(相対リスク:1.11、95%CI:0.85~1.44)、90日後の全死因による死亡はそれぞれ990例中258例(26.1%)および1,011例中270例(26.7%)で確認された(相対リスク:0.98、95%CI:0.84~1.13)。 なお、本研究結果について著者は、検出力が低かったこと、盲検法を実施できなかったこと、各施設が使用した間欠的空気圧迫装置が異なったことなどを挙げて限定的であると述べている。

46.

ビビらず当直できる 内科救急のオキテ

ひとり当直でも大丈夫! 救急外来で“いま何をすべきか”正しい判断力が身につくひとり当直でも大丈夫!当直で必要なのは「いま何をやるべきか」の正しい“判断”です。15症例をベースに救急外来で必要な考え方を学ぶことで、正しい判断力が身につきます。「心筋梗塞の初期症状は?」「肺血栓塞栓症を見逃さないためには?」あなたは自信を持って答えられますか?画像をクリックすると、内容の一部をご覧いただけます。画像をクリックすると、内容の一部をご覧いただけます。    ビビらず当直できる 内科救急のオキテ定価3,600円+税判型A5判頁数180頁発行2017年8月著者坂本 壮Amazonでご購入の場合はこちら

48.

抗凝固薬の選択~上部消化管出血とPPIの必要性(解説:西垣和彦氏)-985

抗凝固薬の宿命 “出血しない抗凝固薬はない”。もともと抗凝固薬自体に出血をさせる力はないが、一旦出血したら止血するのに時間がかかるために出血が大事をもたらすこととなる。そもそも出血傾向をもたらすことが抗凝固薬の主作用であるので至極自明なことではあるのだが、直接経口抗凝固薬(DOAC)だけでなくビタミンK依存性凝固因子の生合成阻害薬であるワルファリンを含めて、“凝固薬自体が出血を起こさせた”と理解している方がいかに多いことか。 近年、わが国だけでなく欧米においても、心房細動により生成される心内血栓が遊離して塞栓となる心原性脳血栓塞栓症には多大な配慮を行っている。この理由として、この心原性脳血栓塞栓症の発症自体は年間3~4%と低い発症率と推定されてはいるが、脳梗塞の他の病態であるアテローマ性やラクナ梗塞と同程度の頻度があり決して少なくないという点、さらに一旦発症すると非常に大きな血栓塊であることが多いため、2割が急死、4割が要介護4以上という悲惨な病状に追い込まれ、由緒正しい重度の寝たきりとなる危険性があるためである。このことは、わが国だけでなく国際的にも医療費の膨大に頭を悩ませている関係者においても、由々しき疾患であることは間違いない。そこで、抗凝固薬をなるべく多くの心房細動患者に投与し、少しでも寝たきりとなる症例を減らそうということになるが、すべからく前述の消化管出血への適切な対応が問題として浮上してくる。この、抗凝固薬の宿命ともいえる命題に対して、(1)最も上部消化管出血が少ない抗凝固薬はどれか?(2)上部消化管出血をプロトンポンプ阻害薬(PPI)は本当に予防できるのか? の2点をコホートで検証したのが本論文である。本論文のポイントは? 本論文は、2011年1月1日~2015年9月30日までにおけるメディケア受益者のデータベースを用いた後ろ向きコホート研究である。比較した抗凝固薬は、アピキサバン、ダビガトラン、リバーロキサバン、そしてワルファリンの4剤で、上部消化管出血の頻度を比較し、PPI併用あるいはPPIなしで上部消化管出血の予防効果も比較している。主要評価項目は、上部消化管出血による入院とし、抗凝固療法1万人年当たりの補正後発生率およびリスク差(RD)、発生率比(IRR)を算出。解析対象は、新規に抗凝固薬が処方された171万3,183件、164万3,123例(平均76.4歳、追跡65万1,427人年、女性56.1%、心房細動患者74.9%)。 PPI併用のなかった75万4,389人年で、上部消化管出血の発生は7,119件、補正後発生率115件/1万人年であった。薬剤別では、リバーロキサバン144件/1万人年、アピキサバン73件/1万人年、ダビガトラン120件/1万人年、ワルファリン113件/1万人年であり、上部消化管出血発生率はリバーロキサバンが最も高率、アピキサバンはダビガトラン、ワルファリンよりも有意に低かった。 PPI併用のある26万4,447人年では、上部消化管出血の発生は2,245件、補正後発生率は76件/1万人年であり、PPI併用なしと比較して上部消化管出血による入院を大きく減らした(IRR:0.66)。このことは、抗凝固薬の種類によらず(アピキサバン[IRR:0.66、RD:-24]、ダビガトラン[IRR:0.49、RD:-61.1]、リバーロキサバン[IRR:0.75、RD:-35.5]、ワルファリン[IRR:0.65、RD:-39.3])、いずれにもPPIは有効であった。本論文の意義と読み方 本論文の結論は、以下の2点である。(1)上部消化管出血による入院率は、リバーロキサバンで最も高く、アピキサバンで最も低い。(2)各抗凝固薬いずれもPPIは有効であり、上部消化管出血による入院率を低減させる。 メディケア受益者のデータベースを用いた後ろ向きコホート研究は、これまでも抗凝固薬に関連した多くの報告をしており、抗凝固薬の特性から到底割り付け困難と思われるワルファリンとの大規模無作為比較試験の結果を補正するリアルワールドの実臨床に則したデータを示してきた。DOAC間ではリバーロキサバンがアピキサバンに比べて明らかに大出血率が高い(HR:1.82)ことは以前にも報告されており1)、同じデータベースに基づくだけに結論が同じとなることは必定、新鮮味がないことは否めない。メディケアは、65歳以上の高齢者と障害者のための米国医療保険であり、国が運営する制度であるが、メディケアを受給できる人は一定の条件を満たす特別な米国人であることを忘れてはならない。あくまでも、保険請求のあった主観的な事後報告のコホート試験である。医師の薬剤選択によるバイアスや他の雑多な患者選択特性をプロペンシティ・スコア・マッチングでそろえて比較した試験であるので、エビデンスレベルとしてはお世辞にも決して高くはない。また何よりも抗凝固薬に対する大規模比較試験では、人種差や医療レベルの違いが副作用としての消化管出血の頻度に大きく影響することもすでに指摘されており、この論文の結果そのものがわが国でも当てはまるとは限らないことを強調したい。PPIの強力な上部消化管出血予防効果には既存の報告からも疑問の余地はないが、果たして万人に必要か否か、どのような患者に必要なのかという命題が依然残ることは致し方ない。最後に 確かに、近年報告される抗凝固薬を比較した大規模試験においては、リバーロキサバンの易出血性を結論付けている報告が多く、ある意味人種差を超越している。このことから、ある程度リバーロキサバンの持つ薬剤特性を捉えている可能性はあるが、DOAC相互を直接比較した無作為比較試験はいまだないことから、今なお断言できない。この命題から答えを導き出すには、わが国での製薬業界が定めた自主規制という名の行き過ぎたレギュレーションが大きな弊害となっていると憂慮するのは、私だけだろうか。

49.

非心臓手術後の心房細動患者の血栓塞栓症リスクは?【Dr.河田pick up】

 循環器内科医は非心臓手術後に生じた心房細動に関するコンサルトを受けることが多い。心房細動は術後のストレスで生じただけなのか、また、術後ということもあり、抗凝固薬を継続すべきなのかの判断が難しいことが多い。今回は、非心臓手術後に発症した心房細動患者における血栓塞栓症リスクについてデンマークのグループが評価した論文を紹介したい。 非心臓手術後に発症した心房細動に対する長期の血栓塞栓症リスクはよくわかっておらず、脳梗塞の予防に関しての十分なデータがない。コペンハーゲン大学病院のJawad H. Butt氏らは、非心臓手術後に新たに発症・診断された心房細動患者における血栓塞栓症リスクを、非外科手術、非弁膜性心房細動患者と比較した。Journal of American College of Cardiology誌オンライン版2018年10月23日号に掲載の報告。 著者らはデンマークのナショナルレジストリを用いて、1996~2015年の間に非心臓手術後に心房細動を発症したすべての患者を同定した。これらの患者を、年齢、性別、心不全/高血圧/糖尿病/血栓塞栓症、虚血性心疾患の既往、診断年をマッチさせた、外科手術と関連しない非弁膜症性心房細動患者と1対4の割合で比較した。長期の血栓塞栓症リスクについては、多変量Cox回帰モデルを用いて解析された。 非心臓手術を受けた患者のうち、6,048例(0.4%)が術後の入院中に心房細動を発症した。頻度が多かったのは胸部・肺、血管、腹部手術であった。合計3,830例の術後心房細動患者を15,320例の非弁膜症性心房細動患者とマッチさせた。経口抗凝固薬は、退院後30日の時点で24.3%と41.3%の患者でそれぞれ投与されていた(p<0.001)。血栓塞栓症の長期リスクは両群で同様であった(千人年当たり、31.7イベントと29.9イベント、ハザード比[HR]:0.95、95%信頼区間[CI]:0.85~1.07)。フォローアップ期間中の抗凝固療法は、術後心房細動群(HR:0.52、95%CI:0.40~0.67)と非弁膜症性心房細動群(HR:0.56、95%CI:0.51~0.62)のいずれにおいても血栓塞栓症イベントリスクを同様に低下させていた。 著者らは非心臓手術後新規に診断された心房細動は、非弁膜症性心房細動と同様に血栓塞栓症の長期リスクがあると結論づけている。 術後の心房細動は一過性であり、予後は良いと考えられがちだが、今回の結果から、術後の心房細動に対しても非弁膜症性心房細動と同じようにリスクに応じた抗凝固療法を行う必要があると考えられる。術後のストレスに伴う心房細動か一過性か、そうでないのかを判断するのは非常に難しい問題だといえる。(Oregon Heart and Vascular Institute 河田 宏)関連コンテンツ循環器内科 米国臨床留学記

50.

冠動脈疾患の心不全、洞調律患者に対するリバーロキサバンの効果(COMMANDER HF)検証すべき仮説だったのか?(解説:高月誠司氏)-927

 本研究は、冠動脈疾患の心不全、洞調律患者に対するリバーロキサバンの効果を検証する二重盲検の多施設ランダム化比較試験である。プラセボ群とリバーロキサバン2.5mgを1日2回投与群の2群に分け、主要アウトカムは全死亡、心筋梗塞、脳卒中の複合エンドポイントである。なぜ洞調律の冠動脈疾患の心不全例にリバーロキサバンを投与するのか、という疑問をまず持たれると思う。リバーロキサバンは非弁膜症性の心房細動の脳梗塞予防、深部静脈血栓症および肺血栓塞栓症の予防・治療薬である。本研究の背景には慢性心不全増悪後に心不全の再入院や死亡を起こすことが多く、その原因としてトロンビン関連の経路により惹起された、炎症や内皮機能不全や動脈・静脈血栓症が考えられると記載されている。思い切った仮説を検証しに行ったものである。確かに重症心不全例は心房細動や深部静脈血栓症を合併しやすく、本研究では登録時に心房細動例は除外されたものの、その後に発症した隠れ心房細動例には、若干の効果があるかもしれない。 5,022例の患者がランダム化され、フォローアップの中央値は21.1ヵ月であった。結果は、主要アウトカムの1年あたりの発症率は、リバーロキサバン群で25.0%、プラセボ群で26.2%で、有意差を認めなかった(ハザード比[HR]:0.94、95%信頼区間[CI]:0.84~1.05、p=0.27)。本研究では冠動脈疾患患者が対象で、93.1%の患者が抗血小板薬を内服し、34.8%の患者は2剤の抗血小板薬を内服していた。当然、出血性の合併症が危惧される。結果、致死的な大出血は両群間で差がなかったが、ISTHによる大出血がリバーロキサバン群でプラセボ群よりも多かった(年間発症率2.04% vs.1.21%、HR:1.68、95%CI:1.18~2.39、p=0.003)。また、プロトコールからの脱落率はリバーロキサバン群で年間あたり16.3%、プラセボ群で13.6%。理由の内訳は出血イベントがリバーロキサバン群で多かった。 本研究の結果はある意味予想どおりのnegative studyである。それを研究者が正直に発表すること、そしてnegative studyであっても雑誌がしっかり評価し公表することはきわめて大事である。ただ本研究の仮説、冠動脈疾患で洞調律の慢性心不全に抗凝固療法が有効か、これが検証すべき仮説だったかどうか、皆さんはどう感じられるだろうか。

51.

気管切開の事故防止に向け提言 医療安全調査機構

 気管切開チューブ挿入患者のケアには常に注意を要するが、とくに気管切開術後早期*のチューブ交換時に、再挿入が困難になるリスクが高いことから、日本医療安全調査機構(医療事故調査・支援センター)では、この時期のチューブ逸脱・迷入による事故防止のための提言(医療事故の再発防止に向けた提言 第4号)を公表している(6月5日)。逸脱を防ぐための移動・体位変換時の注意事項や、逸脱・迷入が生じてしまったときの具体的対応などについて、以下の7つの提言が示された。*本提言では、気管切開孔が安定するまでの時期とし、気管切開術当日からおよそ2 週間程度と定義。そのうえで、「術後 2 週間を過ぎれば生じないということではない」と注意喚起している。 提言1(リスクの把握):気管切開術後早期(およそ 2 週間程度)は、気管切開チューブの逸脱・迷入により生命の危険に陥りやすいことをすべての医療従事者が認識する。 提言2 (気管切開術):待機的気管切開術は、急変対応可能な環境で、気管切開チューブ逸脱・迷入に関する患者ごとの危険性を考慮した方法で実施する。 提言3(気管切開チューブ逸脱に注意した患者移動・体位変換):気管切開術後早期の患者移動や体位変換は、気管切開チューブに直接張力がかかる人工呼吸器回路や接続器具を可能な限り外して実施する。 提言4 (気管切開チューブ逸脱の察知・確認):「カフが見える」「呼吸状態の異常」「人工呼吸器の作動異常」を認めた場合は、気管切開チューブ逸脱・迷入を疑い、吸引カテーテルの挿入などで、気管切開チューブが気管内に留置されているかどうかを確認する。 提言5 (気管切開チューブ逸脱・迷入が生じたときの対応)気管切開術後早期に気管切開チューブ逸脱・迷入が生じた場合は、気管切開孔からの再挿入に固執せず、経口でのバッグバルブマスクによる換気や経口挿管に切り替える。 提言6 (気管切開チューブの交換時期):気管切開術後早期の気管切開チューブ交換は、気管切開チューブの閉塞やカフの損傷などが生じていなければ、気管切開孔が安定するまで避けることが望ましい。 提言7(院内体制の整備):気管切開術後早期の患者管理および気管切開チューブ逸脱・迷入時の具体的な対応策を整備し、安全教育を推進する。 この提言は、医療事故調査制度のもと収集した院内調査結果報告書を整理・分析し、再発防止策としてまとめているもの。これまでに「中心静脈穿刺合併症」、「急性肺血栓塞栓症」、「注射剤によるアナフィラキシー」をテーマとした各号が公表されている。 今回の第4号では、同制度開始の2015年10月から2018年2 月までの期間に、同機構に提出された院内調査結果報告書607件のうち、「気管切開術後早期の気管切開チューブ逸脱・迷入に係る死亡事例」」として報告された5事例を分析。“死亡に至ることを回避する”という視点で、同様の事象の再発防止を目的としてまとめられている。■参考日本医療安全調査機構:医療事故の再発防止に向けた提言 第4号■関連記事注射剤のアナフィラキシーについて提言 医療安全調査機構中心静脈穿刺の事故防止に向けて提言公表 医療安全調査機構

52.

下肢静脈瘤患者の深部静脈血栓症予防は必須か?(解説:中澤達氏)-861

 下肢静脈瘤と診断された成人患者では、深部静脈血栓症(DVT)のリスクが有意に高いことが明らかにされた。下肢静脈瘤は一般的にみられるが、重大な健康リスクと関連することはまれである。「下肢静脈瘤を放置しておいて、悪いことは起きますか?」 普段、下肢静脈瘤の血管内焼灼術をしている私たち血管外科医にとって、外来でよく受ける質問である。その度に、「大丈夫です。肺梗塞になる人はほとんどいません」 と答えている。 対照群には未診断の下肢静脈瘤を有する患者が含まれている可能性があること、下肢静脈瘤の重症度については調べていないことなどを考慮しても、下肢静脈瘤患者21万人と対照21万人を比較した結果であることから、DVTの頻度は数倍高い可能性がある。調べてみると、同様の結果の先行研究もある。しかし、もしこれが事実だとしても一次性下肢静脈瘤の患者に予防的内服、弾性ストッキング継続が望ましいとは思えない。なぜなら、下肢静脈瘤の有病率は、30歳以上の女性で20~30%と高頻度な疾患だからだ。 血管外科医としてさらなる興味は、静脈瘤の治療をすればDVTのリスクが下げられるか? という点である。ぜひ、前向き研究の結果が知りたいものだ。

53.

ポケット呼吸器診療2018

呼吸器診療で役立つマニュアルの最新版が登場!呼吸器領域の診療のお供として、絶大な支持を得ている『ポケット呼吸器診療』の最新版の登場です。今版では、改訂部分を色付けして変更点を強調、各種ガイドラインの改訂にも対応し、最新情報にアップデートしています。また、新項目として喀血、肺ノカルジア症、リンパ脈管筋腫症、胸腺腫・胸腺がん、気胸、肺血栓塞栓症などを追加しました。臨床で使える邪魔にならない小さなマニュアル(新書判)で、呼吸器疾患の診療手順/処方例/診療指針・ガイドラインを掲載しています。とくに患者さんへの病状説明のポイント、よくある質問の回答例の掲載も本書の特色です。著者の「実臨床で使用することを最優先に、不要な贅肉を極限までこそぎ落とした」という制作理念を具現化した本書は、呼吸器診療に携わる医療者は持っておきたい1冊です。画像をクリックすると、内容の一部をご覧いただけます。画像をクリックすると、内容の一部をご覧いただけます。    ポケット呼吸器診療2018定価1,800円 + 税判型新書判頁数221頁発行2018年3月著者倉原 優監修林 清二Amazonでご購入の場合はこちら

54.

肺血栓塞栓症における診断基準導入の意義(解説:今井靖氏)-827

 肺血栓塞栓症が疑わしい場合、d-dimerなどの血液検査に加え、本邦ではCT検査で肺血管から下肢静脈までをスキャンする肺静脈血栓症・深部静脈血栓症スクリーニングが普及しているが、一方で、本来不要な検査の実施が少なからず行われている実情がある。そのような状況において本論文については一読の価値があると思われる。今回取り上げる論文においては、低リスクの救急部門受診患者における肺血栓塞栓症の除外基準を導入することで血栓塞栓症イベントが抑制されるか否かについて検討した、PROPER研究の報告である。 肺血栓塞栓症を除外するための基準(PERC:pulmonary embolism rule-out criteria)、これは8つの項目(酸素飽和度94%以下、心拍数100/分以上、年齢50歳以上、片側の下腿浮腫、血痰、最近の外傷または手術歴、過去の肺血栓塞栓症または深部静脈血栓症の既往、エストロゲン補充療法の有無)からなるが、その安全性についてランダム化比較試験での検討が今まで施行されていなかった。この研究ではPERC基準を用いて肺血栓塞栓症を除外することの有用性を前向きに検討するものであり、PERC基準で該当項目がなければそれ以上のwork-upは施行せず、1つでも該当項目があればd-dimer、CTアンギオグラフィ、血流シンチグラムといった検査を施行するというものであり、対照群は初めからwork-upするということでの比較検討がなされた。 主要エンドポイントは初期診断がなされず、3ヵ月の追跡期間の間の血栓塞栓症発症とし、副次的エンドポイントとしてCTアンギオグラフィ施行率、救急部門の滞在期間の中央値、入院率とされた。平均年齢44歳、51%が女性という背景の1,916例について、PERCガイダンス群962例、対照群954例が割り付けられた。1,749例が試験を完遂し、初期段階ではPERC群で14例1.5%、対照群で26例2.7%、p=0.052であった。経過観察後の血栓塞栓症はPERC群で1例、対照群で0例であった。CTアンギオグラフィ施行率はPERC群で13%、対照群で23%と統計的有意差をもってPERC群で少なかった(p<0.001)。PERC群において救急部門滞在時間が短く(中央値:4時間36分vs.5時間14分)、かつ入院率が低かった(13% vs.16%)。肺血栓塞栓症が疑われるが非常に低リスクの患者においては、3ヵ月を超えてフォローしたところPERCガイド治療は従来の治療法に比較して血栓塞栓症の発症において非劣性を示し、PERC基準をガイドとすることの安全性を支持する結果となった。 PERC基準は、過去に欧州でその有用性が検証された試験があり、基準陰性にもかかわらず肺血栓塞栓症発症が思いのほか多かったことがあったとされるが、少なくとも今回の検討により非常にリスクが少ない集団においてPERC基準で該当項目の有無を評価することの安全面が確認されたこともあり、日常診療における意思決定の一助になるものと思われる。その経済効果などについての検討を含め、今後のさらなる検討が期待される。

55.

下肢静脈瘤で深部静脈血栓症のリスク約5倍/JAMA

 下肢静脈瘤と診断された成人患者では、深部静脈血栓症(DVT)のリスクが有意に高いことが明らかにされた。肺塞栓症(PE)と末梢動脈疾患(PAD)については、潜在的交絡因子のためはっきりしなかったという。台湾・桃園長庚紀念医院のShyue-Luen Chang氏らが、後ろ向きコホート研究の結果を報告した。下肢静脈瘤は一般的にみられるが、重大な健康リスクと関連することはまれである。一方、DVT、PE、PADも血管疾患であるが、全身に重大な影響を及ぼす。これまで下肢静脈瘤とDVT、PE、PADとの関連性はほとんど知られていなかった。著者は、「下肢静脈瘤とDVTとの関連が、因果関係によるのか、あるいは共通のリスク因子があるのかについて、今後さらなる研究が必要である」とまとめている。JAMA誌2018年2月27日号掲載の報告。下肢静脈瘤患者約21万人について下肢静脈瘤群などの発症を比較 研究グループは、台湾の国民健康保険プログラムの請求データを用いて、後ろ向きコホート研究を実施した。2001年1月1日~2013年12月31日の間に下肢静脈瘤と診断された20歳以上の患者21万2,984例(平均[±SD]年齢54.5±16.0歳、女性69.3%)を登録し、傾向スコアを用いてマッチングした下肢静脈瘤を有しない患者(DVT、PE、PADの既往歴がある患者は除く)を対照群(21万2,984例、平均年齢54.3±15.6歳、女性70.3%)として、下肢静脈瘤の有無によるDVT、PE、PADの発症率を比較した。 追跡終了日は2014年12月31日。Cox比例ハザードモデルを用いて、対照群に対する相対ハザードを推定した。下肢静脈瘤群は対照群に比べ深部静脈血栓症のリスクが5.3倍 追跡期間中央値は、下肢静脈瘤群ではDVTに関して7.5年、PE 7.8年、PAD 7.3年、対照群ではそれぞれ7.6年、7.7年、7.4年であった。 下肢静脈瘤群では対照群と比較して、いずれも発症頻度(/1,000人年)が高く、DVTは6.55 vs.1.23(1万360例 vs.1,980例、絶対リスク差[ARD]:5.32、95%信頼区間[CI]:5.18~5.46)、PEは0.48 vs.0.28(793例 vs.451例、ARD:0.20、95%CI:0.16~0.24)、PADは10.73 vs.6.22(1万6,615例 vs.9,709例、ARD:4.51、95%CI:4.31~4.71)であった。対照群に対する下肢静脈瘤群のハザード比は、DVTが5.30(95%CI:5.05~5.56)、PEが1.73(95%CI:1.54~1.94)、PADが1.72(95%CI:1.68~1.77)であった。 なお、著者は、観察研究であるため因果関係は結論付けられないこと、下肢静脈瘤群の対照群には未診断の下肢静脈瘤を有する患者が含まれている可能性があること、下肢静脈瘤の重症度については調べていないことなどを、研究の限界として挙げている。

56.

救急での肺塞栓症の除外、PERCルールが有用/JAMA

 低リスクの肺塞栓症(PE)が疑われる患者において、肺塞栓症除外基準(PERC:Pulmonary Embolism Rule-Out Criteria)を用いた場合、3ヵ月間の血栓塞栓イベント発生率は従来の方法と比較して非劣性であり、PERCルールの安全性が支持された。フランス・パリ第4大学のYonathan Freund氏らが、PERCルールを検証したPROPER試験の結果を報告した。PEを除外することを目的とした8項目からなる臨床基準PERCの安全性は、これまで無作為化試験で検証されたことはなかった。JAMA誌2018年2月13日号掲載の報告。救急受診後3ヵ月間の血栓塞栓イベント発生を、通常ルール使用と比較 研究グループは、2015年8月~2016年9月に、フランスの救急外来14施設において、臨床的に肺塞栓症の可能性が低い患者を登録し、クロスオーバークラスター無作為化非劣性試験を実施した(2016年12月まで追跡調査)。 各施設を、対照期(通常ケア)→PERC期、またはPERC期→対照期(各期6ヵ月、ウォッシュアウト2ヵ月)に無作為化した。PERC期では、PERCルール8項目(年齢50歳以上、心拍数100/分以上、SpO2が94%以下、片側下肢腫脹、血痰、最近の手術もしくは外傷、肺塞栓や深部静脈血栓の既往、エストロゲン製剤の使用)のすべてが陰性の場合、追加の検査を行わず肺塞栓症の診断は除外された。 主要評価項目は、初診で肺塞栓症と診断されなかった後の追跡3ヵ月間における血栓塞栓イベント発生(非劣性マージン1.5%に設定)。また、CT肺血管造影(CTPA)の実施率、救急外来滞在期間の中央値、入院率を副次評価項目とした。PERC群は追跡期間に血栓塞栓イベントは増加せず、CTPA実施や入院率は減少 無作為化された14施設において、登録された計1,916例(平均年齢44歳、女性980例[51%]:対照群954例、PERC群962例)のうち、1,749例が試験を完遂した。 初診で肺塞栓症と診断された患者は、対照群26例(2.7%)、PERC群14例(1.5%)であった(群間差:1.3%、95%信頼区間[CI]:-0.1~2.7%、p=0.052)。追跡期間中に、PERC群で1例(0.1%)(対照群は0例)が肺塞栓症と診断された(群間差:0.1%[95%CI:-∞~0.8%])。CTPAを実施した患者の割合はPERC群13%、対照群では23%であった(群間差:-10%、95%CI:-13%~-6%、p<0.001)。PERC群において、救急外来滞在期間の中央値(平均短縮:36分、95%CI:4~68分)と、入院率(平均減少:3.3%、95%CI:0.1~6.6%)は有意に低かった。

57.

注射剤のアナフィラキシーについて提言 医療安全調査機構

 日本医療安全調査機構(医療事故調査・支援センター)は、注射剤のアナフィラキシーによる事故防止のための提言(医療事故の再発防止に向けた提言 第3号)を公表している(1月18日)。アナフィラキシー発症の危険性が高い薬剤や発症が疑われる場合の具体的な対応、常時から備えておくべき事項などについて、以下の6つの提言が示された。提言1(アナフィラキシーの認識):アナフィラキシーはあらゆる薬剤で発症の可能性があり、複数回、安全に使用できた薬剤でも発症し得ることを認識する。提言2 (薬剤使用時の観察):造影剤、抗菌薬、筋弛緩薬等のアナフィラキシー発症の危険性が高い薬剤を静脈内注射で使用する際は、少なくとも薬剤投与開始時より5分間は注意深く患者を観察する。提言3(症状の把握とアドレナリンの準備):薬剤投与後に皮膚症状に限らず患者の容態が変化した場合は、確定診断を待たずにアナフィラキシーを疑い、直ちに薬剤投与を中止し、アドレナリン0.3 mg(成人)を準備する。提言4 (アドレナリンの筋肉内注射):アナフィラキシーを疑った場合は、ためらわずにアドレナリン標準量0.3 mg(成人)を大腿前外側部に筋肉内注射する。提言5 (アドレナリンの配備、指示・連絡体制)アナフィラキシー発症の危険性が高い薬剤を使用する場所には、アドレナリンを配備し、速やかに筋肉内注射できるように指示・連絡体制を整備する。提言6 (アレルギー情報の把握・共有):薬剤アレルギー情報を把握し、その情報を多職種間で共有できるようなシステムの構築・運用に努める。 この提言は、医療事故調査制度のもと収集した院内調査結果報告書を整理・分析し、再発防止策としてまとめているもの。第1号は「中心静脈穿刺合併症」、第2号は「急性肺血栓塞栓症」をテーマとしてそれぞれ2017年に公表されている。 今回の第3号では、同制度開始の2015年10月から2017年 9 月の 2 年間で、同機構に提出された院内調査結果報告書476 件のうち、「注射剤によるアナフィラキシーに係る死亡事例」として報告された12事例を分析。“死亡に至ることを回避する”という視点で、同様の事象の再発防止を目的としてまとめられている。■参考日本医療安全調査機構:医療事故の再発防止に向けた提言 第3号■関連記事中心静脈穿刺の事故防止に向けて提言公表 医療安全調査機構

58.

肺塞栓症診断の新アルゴリズム、CTPA施行数を低減/Lancet

 YEARSと呼ばれる新たな肺塞栓症疑い例の診断アルゴリズムは、肺塞栓症を安全に除外し、年齢を問わず、さまざまなサブグループに一貫してCT肺アンギオグラフィ(CTPA)の施行数を減少させることが、オランダ・ライデン大学医療センターのTom van der Hulle氏らが行ったYEARS試験で示された。研究の成果は、Lancet誌オンライン版2017年5月23日号に掲載された。妥当性が確認されている肺塞栓症疑い例の診断アルゴリズムは、正確に使用されないことが多く、便益は一部の患者に限られるため、CTPAの濫用を招いているという。YEARSの、発症時の鑑別的なDダイマーのカットオフ値が組み込まれた臨床的意思決定基準は、迅速性や実地臨床への適合性を有し、あらゆる年齢でCTPA施行数を減少させるために開発された。3項目とDダイマー値から成る簡便なアルゴリズム 本研究は、新たに開発された急性肺塞栓症疑い例の簡便な診断アルゴリズムであるYEARSを前向きに評価する多施設共同コホート試験であり、オランダの12施設の参加の下、2013年10月5日~2015年7月9日に実施された(各参加施設の助成を受けた)。 YEARSの臨床的意思決定基準は、3つの項目(深部静脈血栓症の臨床徴候、喀血、肺塞栓症が最も可能性の高い診断名)とDダイマー値から成り、肺塞栓症疑い例はこれらの同時評価によって管理された。3項目が1つも当てはまらずDダイマー値<1,000ng/mLの患者と、3項目のうち1つ以上が確認されDダイマー値<500ng/mLの患者は、肺塞栓症の診断から除外した。これ以外の患者はCTPAの適用と判定した。 主要評価項目は、診断戦略の安全性に関するもので、肺塞栓症除外から3ヵ月間に発生した静脈血栓塞栓症のイベント数とし、per-protocol解析を行った。副次評価項目は診断戦略の有効性に関するもので、Wells診断アルゴリズムと比較した必要なCTPAの施行数とし、intention-to-diagnose解析を行った。CTPA数が14%減少、より簡便で効果的な診断管理 肺塞栓症疑いの3,465例(平均年齢53[SD 18]歳、女性62%、外来患者86%)がYEARSアルゴリズムによる管理を受けた。ベースライン時に456例(13%)で肺塞栓症が検出された(3項目が1つもなかった1,743例のうち55例[3.2%]、1つ以上を認めた1,722例のうち401例[23%])。 ベースライン時に肺塞栓症が除外され、治療が行われなかった2,946例(85%)のうち、3ヵ月間に18例(0.61%、95%信頼区間[CI]:0.36~0.96)が症候性静脈血栓塞栓症と診断され、このうち6例(0.20%、0.07~0.44)が致死的肺塞栓症であった。 CTPA非適用例の割合は、YEARSアルゴリズムが48%(1,651例)であり、Wells基準とDダイマー値の固定閾値<500ng/mLを用いた標準的診断アルゴリズムを用いた場合の34%(1,174例)に比べ、14%(95%CI:12~16)の差があった。 YEARSアルゴリズムによるCTPA非適用例(1,629例)のうち、3ヵ月間に7例(0.43%、95%CI:0.17~0.88)が静脈血栓塞栓症を発症し、このうち2例(0.12%、0.01~0.44)が致死的肺塞栓症であった。また、YEARSアルゴリズムでCTPA適用と判定され、CTPAで肺塞栓症が除外された1,317例では、3ヵ月間に11例(0.84、0.47~1.5)が症候性静脈血栓塞栓症を発症し、4例(0.30%、0.12~0.78)が致死的肺塞栓症であった。 著者は、「全年齢を通じたCTPA施行数の14%の減少は、肺塞栓症疑い例の不要な放射線被曝の回避における大きな前進である。また、YEARSは、標準的な診断アルゴリズム(Christopher Studyアルゴリズムなど)に比べ、診断管理がより簡便で効果的なアルゴリズムであることが示された」としている。

59.

冠動脈CTAによる検死で病理解剖の回避可能か/Lancet

 成人の突然の自然死の死因究明では、冠動脈CTアンギオグラフィ(CTA)による検死(PMCTA)が、侵襲的な病理解剖(invasive autopsy)の回避をもたらす可能性があることが、英国・レスター大学のGuy N. Rutty氏らの検討で示された。研究の成果は、Lancet誌オンライン版2017年5月24日号に掲載された。病理解剖は、死因究明のゴールドスタンダードとして確立されているが、文化的、宗教的、経済的な問題などがあり、侵襲性の高い要素を死後CT(PMCT)で代替することで、これらの状況が改善される可能性があるという。一方、PMCTは成人の突然死の主要原因である冠動脈疾患の診断精度が低いという課題があり、解決策として冠動脈または全身のPMCTAの併用への取り組みが続けられてきた。単施設でPMCTAの診断精度を前向きに評価 研究グループは、初回検死技術としてのPMCTAの診断精度を評価する単施設前向き対照比較試験を行った(英国国立健康研究所[NIHR]の助成による)。 対象は、侵襲的な病理解剖が委託された自然死および異状死疑い例であった。18歳未満、感染症(結核、HIV、C型肝炎など)、体重125kg以上(CT装置の体重制限)の例は除外した。PMCTA施行後に病理解剖を行った。病理医には、潜在的なリスクが明らかでない限り、PMCTA所見がマスクされた。 病理解剖で同定された死因とその所見が、所定の条件を満たす場合、病理解剖所見のゴールドスタンダードと定義し、PMCTA、病理解剖の所見との比較を行った。病理解剖所見のゴールドスタンダードと2つの検死所見との乖離がある場合は、大(major)、小(minor)、極小(trivial)に分類した。 主要エンドポイントは、病理解剖所見のゴールドスタンダードとの比較におけるPMCTAによる死因の診断精度とした。病理解剖所見のゴールドスタンダードは、PMCTAで疑問の余地のない付加的所見が同定された場合に限り修正された。 2010年1月20日~2012年9月13日に、241例(平均年齢66[SD 19]歳、女性34%)が選出され、このうち204例(85%)でPMCTAが成功した。外傷、職業性肺疾患、届出対象疾患を見落とさずに92%の死因を特定 解析時に病理解剖データがなかった4例、非マスク(PMCTA施行チームが病理解剖も行った)の3例、検死前に外傷性の死因が明らかであった24例を除く210例(平均年齢69[SD 16]歳、女性37%、死亡からPMCTA施行までの平均期間45[SD 27]時間、PMCTAの翌日に病理解剖が行われた例が193例[92%])が診断精度解析の対象となった。 PMCTAにより、193例(92%)で死因が特定された。また、死因に関してゴールドスタンダードとの乖離が大であったのはPMCTAが12例(6%)、病理解剖は9例(5%)で、乖離が小であったのはそれぞれ21例(11%)、13例(7%)であり、いずれもPMCTAがわずかに多かったが有意な差は認めなかった(乖離が大:p=0.65、乖離が小:p=0.21)。 PMCTAによって検出された死因については、臨床的に重要な外傷、職業性肺疾患、届出対象疾患の見落としはなく、死因の全体的な人口統計データにも有意な影響を及ぼさなかった(p≧0.31)。 PMCTAは病理解剖に比べ外傷や出血(p=0.008)の同定が良好で、呼吸器疾患の乖離が小の例が多かったのに対し、病理解剖はPMCTAよりも肺血栓塞栓症(p=0.004)の同定に優れていた。 著者は、「2つの検死アプローチは、ゴールドスタンダードとの乖離に差はなく、同定した死因のタイプには違いがみられた」とまとめ、「より高度な立証が求められる場合は、検死のゴールドスタンダードにPMCTAと侵襲的な病理解剖の双方を含めるべきである」としている。

60.

スタチンが静脈血栓塞栓症を予防~メタ解析

 静脈血栓塞栓症(深部静脈血栓症と肺塞栓症)に対するスタチンの予防効果が示唆されているが、明確なエビデンスはない。英国ブリストル大学のSetor K Kunutsor氏らは観察コホート研究と無作為化比較試験(RCT)の系統的レビューおよびメタ解析を行ったところ、静脈血栓塞栓症の1次予防にスタチンが有益であることが示唆された。また、スタチンによって効果に差があることも示された。Lancet Haematology誌オンライン版2017年1月12日号に掲載。 スタチンと静脈血栓塞栓症との関連を報告した研究について、MEDLINE、Embase、Web of Science、Cochrane Libraryのデータベース、2016年7月18日までに出版された研究の参考文献のマニュアル検索、研究者との電子メールのやりとりから特定した。スタチン使用と成人の静脈血栓塞栓症/深部静脈血栓症/肺塞栓症との関連を調べた観察コホート研究、スタチン治療の効果をプラセボ投与や無治療と比較し、静脈血栓塞栓症/深部静脈血栓症/肺塞栓症の転帰に関するデータを収集している介入試験を特定した。なお、スタチンの効果を他のスタチンや脂質低下薬と比較した試験は除外した。ランダム効果モデルを用いて試験特異的な相対リスク(RR)を統合し、研究レベルによってグループ分けした。 主な結果は以下のとおり。・13のコホート研究(314万8,259例)、スタチン治療をプラセボもしくは無治療と比較した23のRCT(11万8,464例)の36試験を適格とした。・観察研究において、スタチン使用群を不使用群と比較した場合の静脈血栓塞栓症の統合RRは0.75(95%CI:0.65~0.87、p<0.0001)で、この関連性は研究レベルによってグループ分けされた場合でも同様であった。・RCTにおいて、スタチン治療をプラセボもしくは無治療と比較した場合の静脈血栓塞栓症のRRは0.85(95%CI:0.73~0.99、p=0.038)であった。・サブグループ解析では、ロスバスタチンが他のスタチンと比べ静脈血栓塞栓症リスクが最も低く(RR:0.57、95%CI:0.42~0.75、p=0.015)、スタチンの効果がスタチンによって有意に異なることが示された。・肺塞栓症へのスタチンの効果についてはエビデンスが得られなかった。・深部静脈血栓症のエンドポイントのリスクは、スタチン使用が不使用に比べて有意に低下した(RR:0.77、95%CI:0.69~0.86、p<0.0001)。

検索結果 合計:107件 表示位置:41 - 60