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世界中でがんによる死亡者数は増加傾向

 世界的な高齢化が拍車をかけ、がんの患者数は増加の一途をたどり、2050年までに3500万人に達するだろうとの予測が、米国がん協会(ACS)が「CA: A Cancer Journal for Clinicians」に4月4日発表した「Global Cancer Statistics 2022」の中で示された。この報告書によると、2022年には世界で推定2000万人が新たにがんの診断を受け、970万人ががんにより死亡したという。報告書の共著者である、ACSがんサーベイランス上級主任科学者であるHyuna Sung氏は、「2050年までに予測されるこのがん患者数の増加は、現在の罹患率が変わらないと仮定した場合、人口の高齢化と増加のみに起因するものだ」と説明している。 Sung氏は、「不健康なライフスタイルの選択もまた、新たながん患者の発生に関与し続けるだろう。注目すべきは、不健康な食事、運動不足、多量のアルコール摂取、喫煙などのがんの主要なリスク因子を有する人が世界中で増加していることだ。大規模な介入を施さない限り、将来のがんによる負担を増大させる可能性が高い」とACSのニュースリリースの中で述べている。 2022年において世界中で最も診断数が多かったがんは肺がんの約250万人(全がん症例の12.4%)であり、次いで、女性での乳がん(11.6%)、大腸がん(9.6%)、前立腺がん(7.3%)、胃がん(4.9%)の順だった。肺がんは、がんによる死亡の原因としても最も多く、2022年には180万人(がんによる死亡者の18.7%)が肺がんにより死亡していた。肺がんの次には、大腸がん(9.3%)、肝臓がん(7.8%)、女性での乳がん(6.9%)、胃がん(6.8%)による死亡者が多かった。新規罹患者数と死亡者数が最も多かったがんは、男性では肺がん、女性では乳がんだった。 女性では、2022年には毎日約1,800人が子宮頸がんに罹患し、約1,000人が同がんにより死亡していた。研究グループは、子宮頸がんは予防可能ながんであり、事実上、全ての子宮頸がんはHPV(ヒトパピローマウイルス)によって引き起こされているにもかかわらず、世界でのHPVワクチンの接種率はわずか15%だと指摘している。接種率には中央・南アジアでの1%からオーストラリア・ニュージーランドでの86%までの幅がある。同様に、世界での子宮頸がんの検診受診率も36%と低い。子宮頸がんは、サハラ以南のアフリカとラテンアメリカの37カ国の女性のがんによる死因の第1位であり、エスワティニ、ザンビア、マラウイ、ジンバブエ、タンザニアでの罹患率(10万人当たり65〜96人)は米国の罹患率(10万人当たり6人)の10倍から16倍であるという。 さらに報告書では、低所得国においては早期発見・早期治療サービスが不十分なため、がんの罹患者数が少ないにもかかわらず、がんによる死亡率は高いことが指摘されている。例えば、エチオピアでは、乳がんの罹患率は米国と比べて60%も低い(10万人当たり40人対60人)一方で、乳がんによる死亡率は米国の2倍(10万人当たり24人対12人)である。 報告書の上席著者で、ACSのサーベイランスと健康の公平性に関する科学分野でバイスプレジデントを務めるAhmedin Jemal氏は、「世界のがんによる死亡の半分以上は予防可能だ。がん予防は最も費用対効果が高く、持続可能ながん対策である。例えば、禁煙だけで、がんによる死亡者の4人に1人、つまり年間約260万人の死亡を防ぐことができる」と話している。 一方、ACSの最高経営責任者(CEO)であるKaren Knudsen氏は、「世界のがん負担を理解することは、全ての人ががんを予防し、がんが発見され、がん治療を受け、生存する機会を確保するために極めて重要である」と述べている。

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第210回  大病院で繰り返されるがん“見逃し”事故、名大病院が画像診断レポートの所見に担当医が対応せず肺がんが進行し、死亡した事例を公表

CTで肺がんの疑いが指摘されたにもかかわらず担当医が対応せず放置、患者は検査から約6年後に死亡こんにちは。医療ジャーナリストの萬田 桃です。医師や医療機関に起こった、あるいは医師や医療機関が起こした事件や、医療現場のフシギな出来事などについて、あれやこれや書いていきたいと思います。民間の有識者でつくる人口戦略会議(議長=三村 明夫・日本製鉄名誉会長)は4月24日、全国の市町村のうち4割超にあたる744自治体が「消滅する可能性がある」というショッキングな報告書を公表しました。これらの自治体では20〜39歳の女性人口が2050年にかけて50%以上減少し、いずれ消滅する可能性があるとのことです。人口減少については、本連載の「第161回 止められない人口減少に相変わらずのんきな病院経営者、医療関係団体。取り返しがつかなくなる前に決断すべきこととは…(前編)」などでも書いてきたことですが、医療関係者や、公立・公的病院の再編を担う自治体関係者は、地域の医療・介護リソースの集約などについて、早急に議論を進めていくべきだと思いました。さて今回は4月11日に名古屋大学医学部附属病院(名古屋市。以下、名大病院)が公表して全国ニュースにもなった、がん“見逃し”事故について書いてみたいと思います。名大病院は、CTで肺がんの疑いが指摘されたにもかかわらず、担当医が画像診断レポートに記載された所見に対応せず放置し、患者は検査から約6年後に死亡した事例を公表しました。同様の事故は全国各地で頻発しており、その都度の注意喚起が行われてきましたが、一向になくなっていないようです。また、今回の報告書概要で知ったのですが、名大病院では2015年以降、同様の“見逃し”による患者死亡事例が今回の例を含め、なんと6例もあったというのです。こんな事故が大学病院で頻発していたことに、本当に呆れるしかありません。報道では「肺がん疑い見逃し」などと書かれていますが、実際のところ”見逃し”ではなく、単なる職務怠慢だと言えるでしょう。「事案の重大性、他病院に対する警鐘、再発防止の必要性に鑑み」て報告書概要を公表名大病院は4月11日、泌尿器科外来で2016年3月に行った胸部CT検査の画像診断レポートを、主治医が確認はしたものの精査するなど適切な対応をしなかったために診断が遅れ、80代男性患者が約6年後の2022年3月に死亡した事例があったと公表しました。同病院は今年3月25日、遺族に対し説明と謝罪、賠償の約束を行い、遺族の承諾を得て、同病院のwebサイトで外部専門家を主体とする事例調査委員会の報告書概要を公表しました。あえて公表したのは、「事案の重大性、他病院に対する警鐘、再発防止の必要性に鑑み」てのことだそうです。泌尿器科の主治医が画像診断レポートの指摘を熟読できていなかったため肺野の所見への対応行われず公表された報告書概要1)によれば患者は80代男性(2022年3月時点)で、臨床経過は以下のようなものでした。患者は名大病院泌尿器科において2007年から前立腺がんの治療を受け、その後は同科に定期通院していました。2016年3月28日の受診の際、左下腹部痛の原因精査のために胸腹部単純CT検査を受けたところ、放射線科医から画像診断レポートにおいて肺右上葉にすりガラス影を伴った索状影を指摘され、肺がんの除外のための精査が推奨されました。しかし、泌尿器科の主治医が画像診断レポートの指摘を熟読できていなかったため、肺野の所見への対応等が行われなかったとのことです。2018年12月に患者の血液疾患に対する精査が開始されたところ、その最中に上述の肺の病変が認識され、2019年7月に肺がんと確定診断されました。その後、肺がんに対する治療が行われましたが根治には至らず、確定診断から33ヵ月後の2022年3月に死亡しました。3カ月後に再度CT検査を実施していれば、臨床病期IA期の末梢小型肺がんと診断・治療できた可能性が高い報告書概要の「事例検証」の項では、患者の死因は「肺癌及び肺癌転移による腫瘍死」とされ、2016年3月の3ヵ月後に再度CT検査を実施していれば、臨床病期IA期の末梢小型肺がんと診断・治療できた可能性が高い、としています。そして、「本患者は2016年3月のCT検査後及び2017年9月の血液検査実施時に適切な対応がなされなかったことにより、肺癌の診断がなされる機会を失い肺癌が進行したと言える。特に2016年3月については、患者は肺癌の進行により根治的治療を受ける機会を失い病態に差が生じ生命予後を損なったと考えられる」と結論付けています。「画像像診断レポートを熟読できておらず、悪性疾患を疑う所見としてその後のフォローがなされなかったことは、標準的な対応と言えない」「事故発生原因に対する検討」の項では、放射線科医が2016年3月28日(撮影当日)に患者を撮影したCT画像を読影し、「両肺下葉主体に1cm大までの多数の結節を認めます」、「肺転移が除外できません」、「肺癌の除外が必要」、「これらの肺の所見は3ヶ月程度のCT再検または、可能なら過去の画像との対比を推奨します」などと画像診断レポートに記載したにもかかわらず、外来担当医がまったく対応しなかったことが事故発生の原因としています。報告書は、「外来担当医は、4月4日に本患者の次回外来の予習を行った際に、CT画像診断レポートから放射線科医による指摘部分についてコピー&ペースト機能を利用し本患者の電子カルテに転記した。しかし、担当医は肺野の所見は第一に炎症性変化によるものと考えた。3カ月後に再度CT検査を行い評価することも考えていたが、最終的には良性疾患との意識が勝り、『肺癌を強く疑い、必ず3カ月後にCTを撮る』との明確な方針決定に至らず、専門診療科である呼吸器内科への相談、その後肺野の所見への対応等はしなかった。(中略)。担当医は外来診察の準備の段階で放射線科医の記載を熟読できておらず、自らの読影見解のみから判断を行った。担当医が放射線科医による画像診断レポートの記載を熟読できておらず、悪性疾患を疑う所見としてその後のフォローがなされなかったことは、標準的な対応とは言えない」と断じています。「熟読できておらず」という表現になっていますが、その後の対応を考えると、コピー&ペーストをしただけで「読んでいなかった」というのが実情と考えられます。「重要レポートにフラグをつけていなかったことは、当時の水準に照らし標準から逸脱したものではないが、現在の水準に照らせば改善の余地あり」「事故発生原因に対する検討」の項ではまた、名大病院における重要画像診断レポートのフォロー体制の不備についても言及しています。それによれば、「2016年当時、当院では、画像診断レポートの未読問題には着手をしていたが、重要所見を熟読できていないという問題については着手していなかった。また、放射線科医が重要画像診断レポートに目印(フラグ)をつけるといった取り組みは行っていなかった。この背景には、当時,当院では画像診断レポートの既読管理の導入に重点が置かれ、重要画像診断レポートのフォロー体制については検討が開始されたばかりであるという事情があった。また、当院放射線科においては放射線科医の読影所見にあえて軽重を付けることは画像診断業務の原則から好ましいことではなく、目印の付け忘れや主治医が目印の無い画像診断レポートに注意を払わなくなるといった別のリスクも生まれうることから、積極的に行っていなかったという事情もあった。2016年当時、当院が重要画像診断レポートに何らかの目印をつけていなかったことは、当時の水準に照らし標準から逸脱したものではない(ただし、現在の水準に照らせば改善の余地がある)」としています。2015年以降、今回の例を含めて6例も同様の見逃しによる患者死亡事例報告書は以上を踏まえ、1)画像診断レポートの対応漏れ対策、2)血液検査結果の対応漏れ対策、3)重要検査結果に対するフラグ付け機能と第三者モニターシステムの構築、4)患者情報の誤記載や誤伝達につながる可能性のあるコピー&ペースト機能に対する注意喚起――の4点の再発防止策の提言を行っています。冒頭でも書いたように、今回、名大病院が事故の概要を公表したのは、「事案の重大性、他病院に対する警鐘、再発防止の必要性に鑑み」て、ということで、それはそれで評価できます。しかし、驚いたのは、報告書概要の最後に添付されている「画像診断レポート見逃し事故経過表」です。この事故経過表には、今回の例を含めて実に6例も同様の見逃しによる患者死亡事例が記載されているのです。報告書概要によれば、最初の患者死亡は2015年4月で、耳鼻咽喉科にかかっていた患者でした。やはり肺がんの診断遅れで、読影リポートが2010年2月に提出されたものの、確認されたのはなんと37ヵ月後でした。その他の事例では、レポート確認が69ヵ月後というケースもありました。ちなみに6例中5例が肺がん、1例が大腸がんです。なお、今回の見逃しについて報告書概要には、「外来担当医のヒューマンエラーに加え、当時当院では未読画像診断レポート管理システムの導入に重点的に取り組んでいた時期であり、重要画像診断レポートのフォロー体制については検討が開始されたばかりであったことが挙げられる」と書かれています。どうやら今回の事故は、度重なる見逃し事故を背景に対策を徹底しようとした矢先に起こってしまったようです。なお、現在、名大病院では、一連の事故の反省から未読画像診断レポート管理システムを導入、45日以上の未読画像診断レポートのゼロ化を達成しているとのことです。デジタル化で便利になり過ぎたことが、逆にヒューマンエラーを招いているのでは今回のような、画像診断レポート見逃し事故については、2020年7月22日掲載の本連載「第16回 デジタル化が進んでも、繰り返される『CT見落とし』」でも取り上げました。このときは旭川医科大学病院での見逃しについて書いたのですが、同様の事故は千葉大学医学部附属病院、兵庫県立がんセンター、横浜市立大学附属病院でも起こっており、医療現場(とくに大病院)では頻繁に起こっていたインシデントだと言えるでしょう。事実、日本医療機能評価機構が定期的に報告している「医療安全情報」では、2012年2月と2018年5月の2回、「画像診断報告書の確認不足」をテーマに掲げ、「画像を確認した後、画像診断報告書を確認しなかったため、検査目的以外の所見に気付かず、治療が遅れた事例が報告されています」と注意喚起をしています。CTの読影を主治医ではなく放射線科医が担当する分業体制になっている、電子カルテ導入などによってデジタル化が進み過ぎた、などさまざまな要因、背景が考えられます。デジタル化で便利になった(報告書を熟読しなくても、コピー&ペーストでカルテ記載ができる、など)ことが、逆にヒューマンエラーを招いている可能性もあります。医療DX流行りで、画像診断などではAIも積極的に活用されているようですが、最終的に判断するのは生身の人間です。名大の“見逃し”事故の報告書を読んで、デジタルと人間(アナログ)のインターフェースの大切さを改めて感じた次第です。参考1)画像診断レポートに記載された所見に対応せず,肺癌が進行し死亡した事例

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PD-L1高発現NSCLCに対するネシツムマブ+ペムブロリズマブの可能性(K-TAIL-202)/AACR2024

 免疫チェックポイント阻害薬(ICI)は進行非小細胞肺がん(NSCLC)の標準治療となっている。KEYNOTE-024試験でみられるように、抗PD-1抗体であるペムブロリズマブはPD-L1発現≧50%の進行NSCLCにおいてPFS(無増悪生存期間)とOS(全生存期間)を有意に延長している1,2)。しかし、PD-L1陽性であってもICIが奏効しない症例は依然として存在する。 EGFRの発現はPD-L1のグリコシル化を介しPD-L1の発現を安定化させ、PD-1とPD-L1の結合を強化することが報告されており3)、抗EGFR抗体ネシツムマブと抗PD-1抗体ペムブロリズマブの併用療法は新しい治療コンセプトとして期待されている。K-TAIL-202試験はPD-L1高発現NSCLCの初回治療として、ネシツムマブとペムブロリズマブの併用を評価した第II相試験。昭和大学の堀池 篤氏が米国がん研究協会年次総会(AACR2024)で結果を発表した。・対象:未治療のPD-L1発現≧50%の進行NSCLC(EGFR、ALK変異なし)・介入:ネシツムマブ+ペムブロリズマブ 3週ごと2年間または35サイクル(n=50)・評価項目:[主要評価項目]奏効率(ORR)[副次評価項目]PFS、OSORR期待値の設定はKEYNOTE-024試験のORR44.8%1)を10ポイント上回る54.8%とした。 主な結果は以下のとおり。・追跡期間中央値は14.2ヵ月であった。・患者の年齢中央値は72歳、男性が76%、現・過去喫煙者が88%、腺がんが60%であった。・ORRは76.0%で、病勢コントロール率は86.0%(CR2%、PR74%、SD10%)であった。・58%の患者が50%以上の標的病変縮小を示した。・PFS中央値は15.7ヵ月、OS中央値は未到達であった。・ネシツムマブによる試験治療下における有害事象(TEAE)発現は全Gradeで98%、Grade≧3は40%で、頻度の高いTEAEは、ざ瘡様皮疹、低マグネシウム血症などであった。・治療中止に至ったTEAEは26%、死亡に至ったTEAEは2%(1例)に発現した。・Grade3の間質性肺疾患が10%(5例)で発現したが、ステロイド治療により改善した。 今回のK-TAIL-202試験結果から、PD-L1高発現進行NSCLC初回治療におけるネシツムマブとペムブロリズマブ併用の可能性が示唆される。

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肺がん診療ガイドラインのトリセツ【DtoD ラヂオ ここが聞きたい!肺がん診療Up to Date】第5回

第5回:肺がん診療ガイドラインのトリセツパーソナリティ日本鋼管病院 呼吸器内科 部長 田中 希宇人 氏ゲスト藤田医科大学病院 呼吸器内科・アレルギー科 大矢 由子 氏参考1)日本肺癌学会 肺癌診療ガイドライン2023(オンライン版)関連サイト専門医が厳選した、肺がん論文・ニュース「Doctors'Picks」(医師限定サイト)講師紹介

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アレクチニブによるALK陽性肺がん術後補助療法をFDAが承認/中外

 中外製薬は2024年4月19日、ALK阻害薬アレクチニブ(商品名:アレセンサ)について、ALK陽性非小細胞肺がん(NSCLC)に対する腫瘍切除後の補助療法として、FDAより承認を取得したと発表。 今回の承認は、完全切除ALK陽性NSCLCの術後補助療法を対象とした国際第III相臨床試験であるALINA試験の成績に基づいている。 同試験では、完全切除したStageIB(腫瘍径4cm以上)~IIIA期(UICC/AJCC 第7版)のALK陽性NSCLCにおいて、アレクチニブはプラチナベース化学療法と比較して、再発または死亡のリスクを76%低下させることを示した(ハザード比[HR]:0.24、95%信頼区間[CI]:0.13~0.43、p<0.001)。探索的解析である中枢神経系(CNS)の無病生存期間についても、アレクチニブはプラチナベース化学療法と比較して、再発または死亡のリスクを78%低下させた(HR:0.22、95%CI:0.08~0.58)。アレクチニブの安全性および忍容性は過去の試験と同様であり、予期せぬ所見は認められなかった。 これらのデータは、欧州臨床腫瘍学会(ESMO2023)のLate Breaking oral演題として講演発表され、New England Journal of Medicine誌にも掲載された。

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切除不能StageIIIのNSCLCにおけるCRTとデュルバルマブの同時併用の成績(PACIFIC-2)/ELCC2024

 切除不能StageIIIの非小細胞肺がん(NSCLC)におけるデュルバルマブと化学放射線療法(CRT)の併用は主要評価項目を達成できなかった。 切除不能StageIIIのNSCLCに対するCRT+デュルバルマブ地固め療法は、第III相PACIFIC試験において、全生存期間(OS)と無増悪生存期間(PFS)の持続的な改善をもたらした。現在、PACIFICレジメンは切除不能なStageIIIのNSCLCにおける標準治療となっている。PACIFIC-2は同対象に対して、PACIFICレジメンの初回治療をデュルバルマブ+CRTとした治療シークエンスを評価する第III相試験である。欧州肺がん学会(ELCC2024)で最終結果が発表された。・対象:切除不能な局所進行StageIIIのNSCLC・試験群:デュルバルマブ 4週ごと+CRT→デュルバブマブ(Dur+CRT群)・対照群:プラセボ 4週ごと+CRT→プラセボ(CRT群)・評価項目[主要評価項目]盲検下独立中央判定(BICR)評価によるPFS[副次評価項目]OS、奏効率(ORR)、PFS2、奏効期間、病勢コントロール率、健康関連QOLなど 主な結果は以下のとおり。・BICR評価のPFS中央値はDur+CRT群13.8ヵ月、CRT群9.4ヵ月であった(ハザード比[HR]:0.85、95%信頼区間[CI]:0.65〜1.12、p=0.247)。・OS中央値はDur+CRT群36.4ヵ月、CRT群29.5ヵ月であった(HR:1.03 、95%CI:0.78〜1.39、p=0.823)。・ORRはDur+CRT群60.7%、CRT群60.6%であった(p=0.976)。・Grade3/4の有害事象(AE)はDur+CRT群の53.4%、CT群の59.3%に発現した。・死亡に至るAEはそれぞれ13.7%と10.2%、治療中止に至るAEはそれぞれ25.6%と12.0%に発現した。・放射線性も含めた肺臓炎の頻度はDur+CRT群28.8%、CRT群28.7%と同等であった。 CRT+デュルバルマブ→デュルバルマブ地固め療法は切除不能StageIIIのNSCLCの生存改善を示さなかった。これらの結果を受け、発表者は、切除不能なStageIIIのNSCLC患者に対する標準治療は依然としてPACIFICレジメンであると結んだ。

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緩和ケアでも身体疾患を考える重要性【非専門医のための緩和ケアTips】第74回

第74回 緩和ケアでも身体疾患を考える重要性緩和ケアって「コミュニケーション」や「スピリチュアルペイン」など、ほかの診療領域には、あまりない分野が注目されがちです。診療領域の特徴の1つなので当然のことではあるのですが、そうした面ばかりに目を向けると危険もあります。今回の質問在宅療養している患者の訪問診療に行った際のこと。高齢の認知症患者なのですが、いつもよりも元気がないように感じました。「もう生きているのがつらい」と話すので、スピリチュアルペインかと思い、いろいろ話を聞きました。時間をかけて話を聞いた後にバイタル測定をすると38℃の発熱があり、尿路感染症が生じていました。今回は発熱があったため気付いたものの、つらさの原因を気持ちやスピリチュアルにばかり向けていたら、疾患を見逃していたかもしれません…。こうしたことはありますか?はい、めちゃくちゃあります。心理的なつらさだと思ったら根底には身体疾患があった、というケースはよくありますし、私自身も身体疾患を見逃して反省したことがあります。緩和ケアを受けるがん患者が発熱した場合、その原因の多くが感染症だとされています。そうした意味では、「腫瘍熱」という診断に飛びつくのも危険です。がん患者の発熱で、腫瘍熱の頻度は5~10%ともいわれています1)。こうした「何となく」が原因と思いがちな病名には、注意が必要です。私自身が心掛けていることを紹介します。それは「それって本当?」と自問自答する、というやり方です。「うーん、がん患者だし、腫瘍熱かなぁ」と思った時に、「それって本当?」と別の私が問い掛けるという感じです。「気持ちのつらさが原因だろうなあ。しっかり傾聴しよう…」と思った時にも、一度立ち止まって「それって本当?」という思考を挟むようにしていると、身体疾患を疑うクセが身に付きました。実はこの技、救急でも活用できます。「軽症だから入院は必要ないな。帰宅させて経過観察で大丈夫」と思った時、「それって本当?」と「もう1人の自分」がささやきます。もちろん、たいていは元の判断で問題ないのですが、いったん立ち止まって慎重に検討できます。何度かこの作業に助けられたこともあります。この手法の注意点は、あくまでも「自分に対して行う」ことです。他者に「それって本当?」とやっては単なる「嫌なヤツ」ですからね。まして研修医など、若手指導の際は控えたほうがよいでしょう。ぜひ、自問自答で見逃しを防ぎましょう。今回のTips今回のTips患者のつらさは精神的なものとは限らない。身体疾患を見逃さないよう「それって本当?」と自問自答しよう。1)Toussaint E, et al. Support Care Cancer. 2006;14:763-9.

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オシメルチニブ耐性肺がんに対するamivantamab+化学療法はPD後も生存ベネフィットを示す(MARIPOSA-2)/ELCC2024

 amivantamab+化学療法は化学療法単独と比べ、オシメルチニブ耐性のEGFR変異陽性進行非小細胞肺がん(NSCLC)の治療進行後の有意な生存ベネフィットを示した。 MARIPOSA-2試験における、amivantamabと化学療法の併用はオシメルチニブ耐性EGFR変異陽性NSCLC の無増悪生存期間 (PFS)を有意に延長している1)。・対象:オシメルチニブ単剤療法耐性のEGFR変異(exon19 delまたはL858R)NSCLC・試験群1:amivantamab+lazertinib+化学療法(カルボプラチン+ペメトレキセド)(ALC群、n=263)・試験群2:amivantamab+化学療法(同上)(AC群、n=131)・対照群:化学療法(同上)(C群、n=263)・評価項目:[主要評価項目]盲検下独立中央判定(BICR)評価によるPFS[副次評価項目]客観的奏効率(ORR)、奏効期間(DOR)、全生存期間(OS)、PFS2、安全性、治療開始から後治療までの期間(TTST)など[探索的研究]治療開始から中止までの期間(TTD) 主な結果は以下のとおり。・BICR評価のPFS中央値はAC群6.3ヵ月、C群4.2ヵ月でAC群で有意に改善した(HR:0.48、95%信頼区間[CI]:0.36~0.64、p<0.001。・TTD中央値はAC群11.0ヵ月、C群4.5ヵ月でAC群で有意に改善した(HR:0.37、95% CI:0.28〜0.50、P

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がんスクリーニング試験の主要評価項目、StageIII/IVがん罹患で代替可能か/JAMA

 がんスクリーニングに関する無作為化試験では一般的に、がん特異的死亡が主要評価項目として用いられている。その代替評価項目としてStageIII~IVのがん罹患を用いるのは、一部のがん種については適切ではないことが、フランス・国際がん研究機関(IARC)のXiaoshuang Feng氏らによる検討で示された。StageIII~IVのがん罹患を代替評価項目として用いると、がんスクリーニング無作為化試験をより早期に終了できる可能性が示唆されていた。著者は、「今回の結果は、多がんスクリーニング検査の臨床試験に影響を及ぼすだろう」と述べている。JAMA誌オンライン版2024年4月7日号掲載の報告。介入群と比較群との間の減少率を評価 研究グループは、メタ解析およびシステマティックレビューにて、がんスクリーニング無作為化試験の評価項目としてのがん特異的死亡とStageIII~IVのがん罹患を比較した。 検討には、2024年2月19日までに出版された欧州、北米およびアジアで行われた41の無作為化試験の論文を包含した。介入群(がんスクリーニングに関する臨床試験でスクリーニング検査が実施された群)と比較群(がんスクリーニングに関する臨床試験の比較群)の参加者数、がん種、がん死者数のデータを抽出し、各臨床試験におけるスクリーニング効果について、がん特異的死亡およびStageIII~IVのがん罹患の介入群と比較群との間の減少率を算出して評価した。 評価項目としてのがん特異的死亡とStageIII~IVのがん罹患を、ピアソン相関係数(95%信頼区間[CI])、線形回帰および固定効果メタ解析を用いて比較した。減少率の相関関係、がん種によりばらつき 解析対象は、乳がん(6件)、大腸がん(11件)、肺がん(12件)、卵巣がん(4件)、前立腺がん(4件)およびその他のがん(4件)のスクリーニングの有益性を検討した無作為化試験であった。 がん特異的死亡とStageIII~IVがん罹患の減少率の相関関係は、がん種によってばらつきが認められた。 相関関係は、卵巣がん(ピアソン相関係数p=0.99[95%CI:0.51~1.00])、肺がん(p=0.92[0.72~0.98])で最も強く認められたが、乳がん(p=0.70[-0.26~0.96])は中程度であり、大腸がん(p=0.39[-0.27~0.80])、前立腺がん(p=-0.69[-0.99~0.81])では弱かった。 線形回帰スロープ(LRS)推定値は、卵巣がん1.15、肺がん0.75、大腸がん0.40、乳がん0.28、また前立腺がんは-3.58であり、StageIII~IVがん罹患の減少の大きさが、がん特異的死亡の発生に異なる大きさの変化をもたらすことが示唆された(不均一性のp=0.004)。

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進行肺がん、初診から治療までの待機期間が治療効果に影響/日本呼吸器学会

 肺がん治療において、初診から治療開始までの時間が長くなるほど悪液質の発症率は増加し、さらに悪液質があると治療効果が低下すると示唆された。 悪液質は進行がんの50〜80%に合併し、がん死亡の20〜30%を占める予後不良な病態であるため、早期からの介入が重要である。肺がんでは、治療が進化する一方、病期診断、病理学的診断に加え、遺伝子変異の有無やPD-L1の発現率などの専門的検査が必要となり、初診から確定診断・治療開始までに一定の期間が必要となる。 この初診から治療開始までの待機期間に全身状態が悪化し、抗がん剤治療の導入自体ができなくなる例がある。また、治療導入できても悪液質に陥った状態で化学療法を開始した患者では、初回治療の効果が不良となりやすい。関西医科大学の勝島 詩恵氏は、初診から治療開始間に起きる身体機能変化、がん悪液質の発生について、第64回日本呼吸器学会学術講演会で発表した。 主な結果は以下のとおり。・初診から治療開始までの期間中央値は、手術症例37.0日、化学療法症例42.5日であった。・初診時と治療開始時の身体機能の変化はBMI(p=0.001)、握力(p=0.009)、MNA-SF(Mini Nutritional Assessment-Short Form)精神ストレススコア(p=0.001)と有意に相関していた。・初診から治療開始までの期間中央値を基準に早期群と遅延群で悪液質発症率を評価すると、早期群では初診時61%、治療開始時61%と変化がなかった。一方、遅延群では初診時37%、治療開始時87%と悪液質の発生が増加していた。・病期別で悪液質発症率を評価すると、StageI~IIIAでは初診時と治療開始時で変化はなかった一方、StageIIIB/CとIVでは治療開始時に悪液質発症が増えた。とくにStageIVでは初診時から治療開始時のあいだに新規に悪液質発症が有意に増加していた(8例→16例、p=0.008)。・悪液質発症の有無と治療効果を評価すると、病勢制御率(DCR)は悪液質あり群66.7%、なし群100%、初回治療完遂率は悪液質あり群58.3%、悪液質なし群では100%であった。 進行期の肺がん患者においては、初診から確定診断・治療までの待機時間は長く1ヵ月を超える。この期間に悪液質を発症した結果、初回治療の機会さえ失ってしまう症例がある。たとえ治療導入ができても、この待期期間中に身体機能が落ち、悪液質の状態となっていると初回化学療法の効果が劣ることが示唆された。 勝島氏は「よりよい治療選択のための精査にかかる時間は、初回治療導入のチャンスを失うリスク、身体機能低下のリスク、治療効果を下げるリスクを抱える。悪液質に対する真の『早期』からの介入とは、化学療法開始時ではなく、さらに前の初診時なのかもしれない。今後、悪液質に対する適切な介入時期についても検討していきたい」と述べた。

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ALK陽性非小細胞肺がんの術後補助療法、アレクチニブvs.化学療法/NEJM

 切除可能なStageIB~IIIAのALK融合遺伝子陽性非小細胞肺がん(NSCLC)の術後補助療法として、アレクチニブはプラチナ製剤ベースの化学療法と比較し無病生存期間(DFS)を有意に改善した。中国・南方医科大学のYi-Long Wu氏らALINA Investigatorsが、日本を含む26ヵ国の113施設で実施した国際共同無作為化非盲検第III相試験「ALINA試験」の結果を報告した。切除可能なALK融合遺伝子陽性NSCLC患者の術後補助療法はプラチナ製剤ベースの化学療法が標準治療であるが、化学療法と比較したアレクチニブの有効性および安全性についてはデータが不足していた。NEJM誌2024年4月11日号掲載の報告。StageIB~IIIAのALK融合遺伝子陽性NSCLC患者が対象、DFSを比較 研究グループは、18歳以上で抗がん剤による全身療法歴のない切除可能なStageIB(腫瘍≧4cm)、II、またはIIIA(UICC/AJCC第7版に基づく)のALK融合遺伝子陽性NSCLC患者を、アレクチニブ群(600mgを1日2回、24ヵ月間または再発・容認できない毒性発現まで経口投与)またはプラチナ製剤ベースの化学療法群(1サイクル21日として最大4サイクル静脈内投与)に、1対1の割合で無作為に割り付けた。 主要評価項目はDFS、副次評価項目は全生存期間(OS)と安全性で、探索的評価項目は中枢神経系のDFS(CNS-DFS)などとした。DFSの解析には事前に規定した階層的手順を用い、まずStageII~IIIAの患者集団で有意差が認められた場合にITT集団で解析した。 本試験は、事前に計画され独立データモニタリング委員会により実施された中間解析(StageII~IIIAの患者でDFSイベントが予定の67%発生した時点で実施)において、統計学的に有意な結果が得られたことから、本報告となった。2年DFS率、アレクチニブ93.8%、化学療法群63.0% 2018年8月~2021年12月に、計257例がアレクチニブ群(130例)または化学療法群(127例)に無作為に割り付けられた。手術から無作為化までの期間中央値は1.7ヵ月で、データカットオフ日(2023年6月26日)時点で、アレクチニブ群の20.3%が治療を受けていた。 2年DFS率は、StageII~IIIA集団において、アレクチニブ群93.8%、化学療法群63.0%(再発または死亡のハザード比[HR]:0.24、95%信頼区間[CI]:0.13~0.45、p<0.001)、ITT集団においてはそれぞれ93.6%、63.7%であった(HR:0.24、95%CI:0.13~0.43、p<0.001)。 CNS-DFSについても、アレクチニブは化学療法と比較して臨床的に意義のある改善を示した(HR:0.22、95%CI:0.08~0.58)。 OSは、イベントの発生がアレクチニブ群2例、化学療法群4例であり、データとして未成熟(immature)であった。 安全性については、予期しない所見は確認されなかった。 なお、著者は研究の限界として、非盲検試験であること、再発後の治療の選択肢は治験責任医師の裁量であること、分子標的薬を用いた術後補助療法の最適な時期や期間については確立されていないことなどを挙げている。

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第190回 2025年、かかりつけ医機能報告制度スタートに向けて検討/厚労省

<先週の動き>1.2025年、かかりつけ医機能報告制度スタートに向けて検討/厚労省2.新型コロナ治療薬ラゲブリオ、7月から8.2%薬価引き下げ/厚労省3.マイナ保険証利用促進に向けた集中取り組み月間開始/厚労省4.少子高齢化が進行、65歳以上の人口が初めて2,000万人を超える/総務省5.子供の入院時、4割の医療機関が家族付き添いを要請/こども家庭庁6.画像診断の報告書確認が遅れ、患者が死亡/名古屋大学1.2025年、かかりつけ医機能報告制度スタートに向けて検討/厚労省厚生労働省は、4月12日に「かかりつけ医機能が発揮される制度の施行に関する分科会」を開催、2025年4月に施行予定の「かかりつけ医機能報告制度」に向けて、医療機関からの報告要件を議論した。この制度は、医療機関がどのようなかかりつけ医機能を有しているかを患者に対して明らかにし、患者の医療機関選択をサポートする目的で実施される。さらに地域医療の提供体制を強化するため、地域全体で機能を補完する形の協力体制を確立することも求められている。分科会では、医療機関に要求される報告内容として、通常の診療時間外の対応、入退院時の支援、在宅医療の提供、介護との連携などが提案されている。また、地域における医療ニーズに応じたかかりつけ医機能の確保と、それに必要な医師の教育や研修の充実が議論された。報告の具体案は、2024年5月の会合で示される予定であり、病院や診療所がどのように機能しているかの透明性を高めることが期待されている。報告制度は、地域ごとの医療の質の向上に寄与し、患者が自分の症状に最適な医療機関を選べるようにすることを目指している。参考1)第4回 かかりつけ医機能が発揮される制度の施行に関する分科会 資料(厚労省)2)「かかりつけ医機能」報告、厚労省が論点示す 報告内容など、5月中に具体案(CB news)3)かかりつけ医機能報告制度、「患者の医療機関選択」支援を重視?「地域での医療提供体制改革」論議を重視?-かかりつけ医機能分科会(Gem Med)2.新型コロナ治療薬ラゲブリオ、7月から8.2%薬価引き下げ/厚労省厚生労働省は、新型コロナウイルス感染症治療薬ラゲブリオ(一般名:モルヌピラビル)の薬価を7月1日から8.2%引き下げると発表した。この薬価改定は、中央社会保険医療協議会(中医協)において承認された費用対効果評価結果に基づいて行われるもの。モルヌピラビルは現在、1回の治療費が9万4,312円で、7月からの新薬価は8万6,596円となる。この薬はとくに重症化リスクが高い成人患者向けに使用され、治療の有効性とコストのバランスが評価された。分析では、ラゲブリオを使用した患者群と抗ウイルス薬を使用しない患者群との間で入院や死亡リスクに有意な差はみられなかった一方で、治療費の増加が確認されたため薬価の調整が必要と判断された。同様の評価が他の薬にも適用され、一例として慢性腎臓病治療薬ケレンディア(同:フィネレノン)は2.7%の薬価引き下げとなった。これらの薬価調整は、医療機関の在庫への影響を考慮し、新薬価の適用開始日が設定されている。中医協は、この決定を通じて、医療の費用効率の向上と患者への負担軽減を図ることを目指している。参考1)医薬品・医療機器等の費用対効果評価案について(厚労省)2)コロナ飲み薬 7月から薬価引き下げ 厚労省、費用対効果を分析(朝日新聞)3)中医協総会 ケレンディアは2.7%、ラゲブリオは8.2%薬価引下げ了承 費用対効果評価で 7月1日適用(ミクスオンライン)4)ラゲブリオ薬価8.2%引き下げ、7月から ケレンディアはマイナス2.7%(CB news)3.マイナ保険証利用促進に向けた集中取り組み月間開始/厚労省厚生労働省は、4月10日に社会保障審議会医療保険部会を開催した。現行、紙の健康保険証は、2024年12月2日に廃止される一方、利用が伸び悩んでいるマイナ保険証の利用促進強化を進めることを決定した。厚生労働省によれば、2023年3月のマイナ保険証利用率は5.47%と低迷しており、これを改善するために2024年5月~7月までを「マイナ保険証利用促進集中取組月間」と定め、積極的な推進活動を行う。経済団体、医療団体、保険者などが連携する健康寿命延伸と医療費適正化の支援活動を行う「日本健康会議」は、4月25日に東京都で医療DX推進フォーラム「使ってイイナ!マイナ保険証」を開催する。このイベントはオンラインでも中継され、武見 敬三厚生労働省大臣を含む3閣僚が参加し、利用促進宣言を行う予定。具体的な施策として、医療機関や薬局でマイナ保険証の利用者数を増やした場合、最大20万円の一時金が支給されることになった。支給の条件には、患者への声掛けやチラシの配布などが条件となっているさらに、厚労省は広範なメディアを利用した広報活動を展開し、医療機関のデジタル化推進体制整備に対しても支援を行う。また、新たに設けられた一時金は、医療機関が2023年10月以降に利用率向上を達成した場合に支給される。一方、この政策には批判もあり、公的資金を使用してのキャンペーンに対する疑問の声が上がっている。とくに金銭的インセンティブを用いた利用促進策が適切かどうかが議論の的となっている。しかし、厚労省はマイナ保険証が医療の質を向上させる重要なツールであるとし、その普及に向けた努力を続けるとしている。参考1)医療DX推進フォーラム「使ってイイナ!マイナ保険証」開催のお知らせ(日本健康会議)2)マイナ利用増、支援金 厚労省、医療機関に最大20万円(毎日新聞)3)「マイナンバーカードによる受診」実績等もとに、最大で病院20万円、クリニック10万円の一時金を今夏支給-社保審・医療保険部会(Gem Med)4)マイナ促進、6-11月の支援金を「一時金」に見直し 医療DX推進加算の新設に伴い(CB news)5)マイナ保険証利用促進宣言へ、日本健康会議 25日の医療DXフォーラムで、3閣僚出席(同)4.少子高齢化が進行、65歳以上の人口が初めて2,000万人を超える/総務省総務省は、4月12日に2023年のわが国の人口が前年比59万5,000人減少し、総人口は1億2,435万2,000人になったと発表した。わが国の人口減少は、13年連続で減少率は1950年以降で2番目に大きい。とくに、65歳以上の高齢者人口は2,007万8,000人増加し、全人口の約16.1%を占める。これは、少子高齢化の進行を示し、生産年齢人口(15~64歳)は1995年をピークに減少が続き、全体の約59.5%となった。厚生労働省の国立社会保障・人口問題研究所の推計によれば、2033年には世帯の平均人数が初めて2人を割り、1.99人になると予測されている。2050年までに、わが国の5,261万の全世帯のうち44.3%が1人暮らしの独居世帯となり、高齢者が半数近くを占める見込み。さらに未婚率の高い高齢者の割合も急増し、未婚の男性高齢者は約60%、女性は約30%に上るとされている。この人口動態の変化は、社会保障制度、とくに年金制度に大きな影響を与えており、労働力人口の減少と高齢者人口の増加により、年金財政の悪化が進行し、将来的な制度改革が急務となっている。さらに、外国人労働者の増加が新たな労働力として注目されている一方で、わが国の社会保障制度の持続可能性の確保が重要な課題となっている。参考1)人口推計(2023年)ー全国:年齢(各歳)、男女別人口・都道府県:年齢(5歳階級)、男女別人口ー(総務省)2)『日本の世帯数の将来推計(全国推計)』[2024年推計](国立社会保障・人口問題研究所)3)日本人人口、減少幅最大の83万人 外国人が労働力補う(日経新聞)4)平均世帯人数、初の2人割れへ=22年に、厚労省研究所推計-未婚化で単独高齢者増加(時事通信)5)23年総人口、13年連続減 59万人少ない1億2,435万人(日経新聞)6)2023年の日本の総人口 前年より60万人近く減少と推計 総務省(NHK)5.子供の入院時、4割の医療機関が家族付き添いを要請/こども家庭庁こども家庭庁によると、子供が入院する際、44%の医療機関が家族の付き添いを要請していることが明らかになった。付き添い入院は、原則任意であり、看護師が主にケアを担当することが一般的だが、小児の入院の際は家族が協力を求められるケースが多いとされていた。同庁が実施した調査結果によれば、付き添いが難しいと感じた家族が入院を見送ったり、他院への転院を考えたりする例が36%に上った。多くの医療機関は、とくに小さな子供の場合に付き添いを求める際に、家族の付き添いは子供の不安を和らげる効果もあるためと回答している。しかし、付き添い中の家族が直面する困難も多く、適切な寝具の提供がないためソファで寝るケースや、食事の調達が問題となることもある。実際、寝具の貸与が行われていない病院は15%に上り、食事は主にコンビニでの購入となっている。今回の調査結果を受け、同庁は医療機関に対して、保育士の配置など家族を支援する体制整備を促している。今後、付き添い入院の環境改善に向けた対策が、さらに進むことが期待される。参考1)令和5年度子ども子育て支援推進調査研究事業「入院中のこどもへの家族等の付添いに関する病院実態調査」の報告書及び事例集について(こども庁)2)子供入院時の家族付き添いは「病院が要請」44%、ソファで寝るケースも こども庁調査(産経新聞)3)子どもへの「付き添い入院」医療機関の4割要請…こども家庭庁調査、保育士らの手厚い配置促す(読売新聞)4)こどもの入院で家族の付き添い4割、転院調整も 全国医療機関調査(朝日新聞)6.画像診断の報告書確認が遅れ、患者が死亡/名古屋大学名古屋大学医学部附属病院は、画像診断の報告書の見落としによって肺がん診断が遅れ、患者が死亡する事例が発生したことを4月11日に公表した。報告書によると2016年3月、80代男性患者が腹痛を訴え胸腹部のCT検査を受けた。放射線科医は、肺に異常陰影を認めたため、肺がんの除外目的で追加検査を推奨した。しかし、泌尿器科の主治医はこの報告書を十分に熟読せず、放置したため、患者はその後、無治療で過ごし、2019年7月に肺がんと診断された。肺がんの発見が遅れたために患者の病状は進行し、手術不可能な状態となり、患者は2022年3月に肺がんおよび転移による腫瘍死によって死亡した。名古屋大学の安全推進委員会によって設置された「事例調査委員会」によってこの事例が調査され、2024年3月に調査報告書が取りまとめられた。報告書によると、肺がんの診断が適切に行われていれば、肺がんは初期段階で発見され、根治可能であった可能性が高いとされている。事例調査委員会の報告を踏まえ、病院は遺族に対して説明と謝罪を行い、賠償を行った。さらに、放射線科の報告書に対する対応の見落としを防ぐための再発防止策を強化することを発表した。この事例から、画像診断レポートの確実な読解と対応の重要性が再確認され、放射線科医からの報告に対する適切な臨床的フォローアップの必要性が浮き彫りとなった。また、患者とのコミュニケーションの改善と、医療チーム内の情報共有の徹底が求められている。参考1)画像診断レポートに記載された所見に対応せず、肺癌が進行し死亡した事例について(名大)2)肺がん疑い見落とし治療2年以上遅れるミス、病状悪化し80代男性死亡…名古屋大病院が遺族に謝罪(読売新聞)3)名大病院で医療ミス、医師がCT結果見落とす 肺がん進み男性死亡(朝日新聞)

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肺がん化学放射線療法の症例データベース検索システムを共同開発/富士フイルム・AZ

 富士フイルムとアストラゼネカは、切除不能StageIII 非小細胞肺がん(NSCLC)の化学放射線療法(CRT)の過去症例を検索できるシステムを共同開発した。富士フイルムは、この検索機能を3D画像解析システム「SYNAPSE VINCENT Ver7.0」にオプション機能として搭載した。SYNAPSE VINCENT Ver7.0は富士フイルムメディカルを通じて4月10日より提供を開始した。 今回開発したシステムは両社が2021年から共同で開発を進めてきた医療情報システムで、切除不能StageIII NSCLCに対するCRT症例の検索に加え、放射線治療計画の表示が可能。アストラゼネカが14の医療機関からNSCLCに対するCRT適用例1,900症例の放射線治療計画を収集し、富士フイルムがデータベース化および検索機能の開発を行った。 医師がCT画像を入力し腫瘍の位置や検索条件を指定すると、データベースから腫瘍中心位置が近い過去症例を検索し、放射線治療計画の作成をサポートする。

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アレクチニブ1次治療肺がん患者のリアルワールドデータ(ReAlec)/ELCC2024

 アレクチニブの1次治療を受けたALK陽性非小細胞肺がん(NSCLC)患者の特徴と、後治療のリアルワールドデータが示された。 ALK陽性進行NSCLCに対するアレクチニブの1次治療は優れた有用性を示す。しかし、アレクチニブ後の治療シークエンスについては十分な知見がない。ReAlec試験はアレクチニブ治療患者の特徴をリアルワールドで確認する後ろ向き多施設コホート観察研究である。欧州肺がん学会(ELCC2024)では、イタリア・サクロ クオーレ カトリック大学のEmilio Bria氏が、アレクチニブの1次治療患者を対象としたReAlec試験コホート1(データカットオフ2023年5月10日)の初回中間解析結果を報告した。・対象:進行ALK陽性NSCLC・コホートA:試験登録→アレクチニブ1次治療(256例)・コホートB:アレクチニブ1次治療→試験登録(489例)・評価項目 [主要評価項目]治験担当医評価の無増悪生存期間(PFS)およびアレクチニブ1次治療後の治療シークエンス[副次評価項目]アレクチニブ治療患者の属性・特徴、ALK検査からアレクチニブ治療開始までの時間、後治療選択、全生存期間(OS)、安全性など 主な結果は以下のとおり。・患者の年齢中央値は両コホートとも58歳、女性の比率は両コホートとも半数以上であった。・データカットオフ時点(治療期間中央値:コホートA 8.3ヵ月、コホートB 13.8ヵ月)における、アレクチニブの投与中止はコホートAでは21.9%(256例中56例)、コホートBでは15.3%(489例中75例)であった。・投与中止の理由は疾患進行が最も多く、コホートAでは56例中41例(73.2%)、コホートBでは75例中65例(86.7%)であった。一方、有害事象によるものはそれぞれ5例と2例で少数であった。・コホートAの16.8%(256例中43例)、コホートBの13.3%(489例中65例)でアレクチニブ後の治療が行われた。・後治療薬は分子標的治療薬が最も多く、コホートAでは43例中36例(83.7%)、コホートBでは65例中56例(86.2%)を占めた。・分子標的治療薬の中でもロルラチニブが最も多かった(コホートA、Bとも分子標的治療薬の7割超がロルラチニブ)。・アレクチニブの全Gradeの治療関連有害事象(TRAE)はコホートAの35.2%とコホートBの21.7%で発現した。なお、治療中止に至ったTRAEは1.6%と0.6%であった。

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便秘なのに下痢? 不思議な病態を知っていますか?【非専門医のための緩和ケアTips】第73回

第73回 便秘なのに下痢?不思議な病態を知っていますか?緩和ケアは高齢者を診る機会が多く、しばしば遭遇する症状に「便秘」があります。そして、これは時に非常に悩まされる症状でもあります。今回は、便秘の中でもちょっと意外なパターンを紹介します。今回の質問訪問診療で診ている高齢の患者さん。先日、看護師より「下痢が続いている」と相談がありました。診察すると確かにオムツの中に泥状の便が確認され、1週間ほど続いているとのことでした。普段から便秘がちの方で、下剤が効き過ぎたのかと思って下剤を中止したところ、今度はひどい便秘になってしまいました。どのように対応するべきだったのでしょうか?貴重な経験に基づいたご質問、ありがとうございます。こうして振り返ることは非常に大切ですよね。ご質問の内容だけから確信を持ってコメントするのは難しいのですが、これは「溢流(いつりゅう)性便秘」に注意が必要なパターンに感じました。溢流性便秘って聞いたことがありますか? あまり知られてないようなので、この機会に紹介させてください。「溢流」は「あふれ出る」という意味で、言葉通り、「便があふれ出ている便秘」です。「便秘なのに便があふれ出る」とはどういうことでしょうか? それは、硬くなった便塊により、大腸内が宿便でいっぱいになった状態に起因します。そうすると、便が宿便よりも口側に長時間貯留してしまいます。その結果、腸が炎症を起こし、下痢便になるのです。口側にどんどん下痢便が貯留し、限界に達すると、宿便の脇からあふれた下痢便が肛門から排出されます。この現象により、「下痢が続いている」という奇妙な便秘が生じるのです。つまり、溢流性便秘は、便秘としては非常に重症なのです。溢流性便秘を疑った時には、摘便などで経直腸的に大腸内の宿便を解除することが重要です。物理的な閉塞が解除されれば、口側に溜まっていた下痢便もスムーズに排出されます。あとは通常の便秘に準じた薬物療法を検討しましょう。この溢流性便秘という病態には「落とし穴」があります。それは、「下剤による下痢」だと評価して下剤を中止すると、むしろ悪化してしまう点です。見分けるのはなかなか難しいですが、今回の症例であれば「便秘が続く中で生じた下痢だった」という点が、気付くきっかけになったかもしれません。時々見かける病態である、下痢は出ているけどむしろ重度の便秘である「溢流性便秘」について考えてみました。ぜひ頭の片隅に留めておいてください。どこかできっと出合うと思います。今回のTips今回のTips便秘なのに下痢便が出る、溢流性便秘という病態に注意しよう。

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【医師×がん経験者×教育者】がん教育ガイドライン座談会

【医師×がん経験者×教育者】がん教育ガイドライン座談会がん教育の経験者4人が熱弁!『学校側が求める授業とは?』『がん経験者と医療者、それぞれ何を伝える?』医療者・がん経験者・教育者の先生方に、ガイドラインの解説と体験談、そして醍醐味を語っていただきました。出演<ファシリテーター>神奈川県立がんセンター臨床研究所/群馬大学 片山 佳代子 氏<パネリスト>(五十音順)北里大学医学部新世紀医療開発センター 佐々木 治一郎 氏神奈川県教育局指導部保健体育課 佐藤 栄嗣 氏神奈川県がん患者団体連合会 長谷川 一男 氏神奈川県がん教育ガイドラインは こちら

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NSCLCへの周術期ニボルマブ上乗せ、術前療法が未完了でも有効か(CheckMate 77T)/ELCC2024

 切除可能非小細胞肺がん(NSCLC)患者を対象とした国際共同第III相無作為化二重盲検比較試験(CheckMate 77T試験)において、周術期にニボルマブを用いるレジメンが良好な結果を示したことがすでに報告されている。本レジメンは、術前にニボルマブと化学療法の併用療法を4サイクル実施するが、有害事象などにより4サイクル実施できない患者も存在する。そこで、CheckMate 77T試験において術前薬物療法が4サイクル未満であった患者の治療成績が検討され、4サイクル未満の患者でも周術期にニボルマブを用いるレジメンが治療成績を向上させることが示された。米国・ダナ・ファーバーがん研究所のMark M. Awad氏が、欧州肺がん学会(ELCC2024)で報告した。・試験デザイン:国際共同第III相無作為化二重盲検比較試験・対象:StageIIA〜IIIB(American Joint Committee on Cancer[AJCC]第8版)の切除可能NSCLC患者・試験群:ニボルマブ(360mg、3週ごと)+プラチナダブレット化学療法(3週ごと)を4サイクル→手術→ニボルマブ(480mg、4週ごと)を最長1年(ニボルマブ群、229例)・対照群:プラセボ+プラチナダブレット化学療法(3週ごと)を4サイクル→手術→プラセボを最長1年(プラセボ群、232例)評価項目:[主要評価項目]盲検下独立中央判定に基づく無イベント生存期間(EFS)[副次評価項目]盲検下独立病理判定に基づく病理学的完全奏効(pCR)、病理学的奏効(MPR)、安全性など 今回報告された主な結果は以下のとおり。・ニボルマブ群の17%(38例)、プラセボ群の12%(27例)が術前薬物療法を3サイクル以下で中止した。このうち、有害事象による中止はそれぞれ55%(21例)、41%(11例)であった。・術前薬物療法のサイクル数別にみたEFS中央値は以下のとおり。 -4サイクル完了:ニボルマブ群未到達、プラセボ群未到達(ハザード比[HR]:0.57、95%信頼区間[CI]:0.42~0.79) -4サイクル未満:それぞれ未到達、7.8ヵ月(同:0.51、0.23~1.11)・術前薬物療法のサイクル数と手術の有無別にみたpCR率は以下のとおり。 -4サイクル完了:ニボルマブ群26.7%、プラセボ群5.4%(群間差:21.3%、95%CI:14.3~28.4) -4サイクル未満:それぞれ18.4%、0%(同:18.4%、2.9~33.4) -4サイクル完了かつ手術あり:それぞれ32.3%、6.5%(同:25.7%、17.4~33.9) -4サイクル未満かつ手術あり:それぞれ35.0%、0%(同:35.0%、2.5~56.7)・術前薬物療法のサイクル数と手術の有無別にみたMPR率は以下のとおり。 -4サイクル完了:ニボルマブ群38.2%、プラセボ群13.7%(群間差:24.6%、95%CI:16.1~32.7) -4サイクル未満:それぞれ21.1%、0%(同:21.1%、5.1~36.3) -4サイクル完了かつ手術あり:それぞれ46.2%、16.7%(同:29.5%、19.6~38.7) -4サイクル未満かつ手術あり:それぞれ40.0%、0%(同:40.0%、6.9~61.3)・無作為化された全患者および術前薬物療法のサイクル数別にみた死亡または遠隔転移までの期間の中央値は以下のとおり。 -全患者:ニボルマブ群未到達、プラセボ群38.8ヵ月(HR:0.62、95%CI:0.44~0.85) -4サイクル完了:それぞれ未到達、38.8ヵ月(同:0.61、0.42~0.88) -4サイクル未満:それぞれ未到達、10.9ヵ月(同:0.46、0.22~0.98)・術後薬物療法を受けた患者の割合は、術前薬物療法を4サイクル完了した集団ではニボルマブ群69%(131例)、プラセボ群71%(145例)であり、4サイクル未満の集団ではそれぞれ29%(11例)、26%(7例)であった。術後薬物療法のサイクル数中央値は、いずれの集団においても両群13サイクルであり、多くの患者が術後薬物療法を完了した。 Awad氏は、本結果について「CheckMate 77T試験の探索的解析において、切除可能NSCLC患者に対する周術期のニボルマブ上乗せは、術前薬物療法4サイクル完了の有無にかかわらず有効であった。手術を実施した患者集団において、4サイクル完了した患者集団と4サイクル未満の患者集団のpCR率とMPR率は同様であった」とまとめた。

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ドライバー遺伝子陰性NSCLC、CGP検査で20%超にドライバー遺伝子異常を検出

 肺がんにおいては、診断時にマルチ遺伝子検査によってドライバー遺伝子が調べられることが一般的である。しかし、進行非小細胞肺がん(NSCLC)患者におけるドライバー遺伝子の種類は年々増加しており、長期生存例などでは十分に調べられていない可能性もある。遺伝子パネル検査(がんゲノムプロファイリング[CGP]検査)が2019年に保険適用となり実施され始めているが、診断時にドライバー遺伝子異常が陰性であった患者のCGP検査でのドライバー遺伝子異常の検出状況は明らかになっていない。そこで、診断時にドライバー遺伝子異常が陰性であった進行NSCLC患者におけるCGP検査の結果が解析され、24.5%にドライバー遺伝子異常が認められた。本研究結果は、京都府立医科大学の石田 真樹氏らによってCancer Science誌オンライン版2024年3月7日号で報告された。 本研究は、がんゲノム情報管理センター(C-CAT)に登録されたデータを用いて、2019年8月~2022年3月にCGP検査を受けた進行NSCLC患者986例を対象として実施した。対象患者のCGP検査におけるドライバー遺伝子異常の頻度を調査した。また、診断時にドライバー遺伝子異常が陰性であった330例(EGFR遺伝子変異、ALK融合遺伝子、ROS1融合遺伝子、BRAF V600E遺伝子変異がすべて陰性であった患者)のCGP検査におけるドライバー遺伝子異常の頻度も調査した。 主な結果は以下のとおり。・CGP検査は765例(77.6%)が組織検体、221例(22.4%)が血液検体を用いて実施した。・CGP検査において986例中451例(45.7%)にドライバー遺伝子異常が認められた。主な遺伝子はEGFR遺伝子(16.5%)、KRAS遺伝子(14.5%)であった。・腺がんでは、CGP検査において764例中417例(54.6%)にドライバー遺伝子異常が認められた。・診断時にドライバー遺伝子異常が陰性であった患者では、CGP検査において330例中81例(24.5%)にドライバー遺伝子異常が認められた。そのうち20例(6.1%)にはEGFR遺伝子変異、ALK融合遺伝子、BRAF V600E遺伝子変異が認められた。KRAS G12C遺伝子変異は23例(7.0%)、HER2遺伝子変異は20例(6.1%)、MET exon14スキッピングは14例(4.2%)、RET融合遺伝子は4例(1.2%)に認められた。 本研究結果について、著者らは「診断時にドライバー遺伝子異常が陰性であった進行NSCLC患者においてもCGP検査は有用であることが示された」とまとめた。

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