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高齢者だから一律に減量・ICI単剤ではない!【高齢者がん治療 虎の巻】第6回

<今回のPoint>高齢者にも適応可能な標準治療が増えており、「高齢だから治療しない」という考えはもはや通用しない。免疫チェックポイント阻害薬は、高齢者でも適切に使えば有効性があり、副作用リスクとのバランスを見ながら“使いどころ”を見極めることが重要。ベストサポーティブケアは多職種と共有しながら日常診療に組み込むことで実践的な価値が生まれる。<症例>81歳、男性。嗄声のため耳鼻科を受診したところ胸部CTで左肺に腫瘤を指摘された。精査の結果、肺腺がんStageIVB(骨転移、副腎転移あり)と診断され、本人は積極的な治療を希望している。既往に高血圧、脂質異常症、脊柱管狭窄症があり、Performance Status(PS)は1。82歳の妻と同居しているが、妻は脳梗塞後遺症のため介護が必要である。息子夫婦は車で40分程度の地域で生活している。娘は他県に嫁いでおり、治療のサポートは困難である。遺伝子変異検査ではドライバー変異なしPD-L1 TPS 5%G8:11点(失点項目:年齢、併用薬数、BMI、食事量の減少など)CARGスコア:platinum-doubletを想定 11点[高リスク(陽性項目:年齢、転倒歴、歩行)]多職種カンファレンスで治療方針を決定することになった。「高齢だから治療しない」はもう古い―肺がん治療にエビデンスあり75歳の日本人の平均余命は、男性で12.13年、女性で15.74年とされています1)。一方、切除不能・進行非小細胞肺がんでベストサポーティブケア(BSC)のみが行われた場合、予後は一般に1年未満です。そのため、明らかな命に関わる併存疾患がない場合には、遺伝子変異が陰性であっても、暦年齢のみで治療を見送るのではなく、何らかの積極的治療を検討する必要があります。以下は70歳以上を対象とした主な非小細胞肺がんの臨床試験の要約です。(表1)画像を拡大する免疫チェックポイント阻害薬の有効性と“使いどころ”現在、ドライバー遺伝子変異が陰性の非小細胞肺がんに対しては、免疫チェックポイント阻害薬(ICI)を中心とした治療が1次治療の主軸となっています。しかしながら、高齢者に対してICIをどのように使用するのかの指針はなく、irAE管理の問題から高齢者には使用しにくいという声もあると聞きます。以下に、ICI関連の高齢者を対象とした臨床試験をまとめます。(表2)画像を拡大するNEJ057試験の結果からは、一部の高齢者ではICI単剤が適切と考えられることが示唆されており、どのような患者がその適応となるかを見極めることが重要です。また、免疫老化の影響から高齢者ではICIの効果が劣る可能性が指摘される一方で、臨床試験の結果からは、高齢者こそICIの恩恵を受ける可能性があるとも考えられます。治療選択にあたっては、PD-L1発現、腫瘍サイズや転移部位といった腫瘍側の因子に加えて、個々の免疫状態を考慮することが重要です。暦年齢にとらわれず、適切な症例選択を行うことで、ICI治療の真の価値を引き出すことが可能になります。高齢者機能評価(GA)の日常診療での有用性筆者らは、根治的治療が困難な75歳以上の非小細胞肺がん患者1,020例を対象に、患者満足度を主要評価項目としたクラスターランダム化第III相比較試験「ENSURE-GA study」を実施しました。本試験は全国78施設に協力いただき、治療開始前にGAを実施し、その結果を患者・家族と共有するとともに多職種チームにより脆弱性を認めた項目に関してできる限り介入をする群(GAM群)と、GAの結果は提供せず通常通りに診療を実施する非介入群(SC群)に施設をランダム化しました。その結果、GAM群では患者満足度が有意に上昇することが明らかとなりました2)。また、本試験では開始前と終了後に参加施設へアンケート調査を実施したところ、試験開始時にGAを日常診療で実施している施設の割合は25%にとどまっていました。ところが、2022年の試験終了時には、GA導入率は56%と大幅に上昇していました。さらに、「GAの実施は日常診療に役立ったか?」という問いに対しては、すべての施設から「役立った」との肯定的な回答が得られています。これらの結果は、GAの実施が患者満足度を向上させるのみならず、医療現場への定着・活用を促す実践的な意義を示しています。今後は、治療適応の見極めにとどまらず、患者の価値観や希望に基づいた支援を継続的に提供するための枠組みとして、GAのさらなる普及が期待されます。冒頭の症例の治療選択肢に正解はないと思います。GA結果を患者と家族に提示しつつ、患者の希望や環境に合わせた治療を、医療者とともに納得して選択した治療内容が正解だと思います。どの治療を選ぶとしても食事量の低下や転倒歴への対応、有害事象を早めに覚知できる体制を構築してから治療を開始することが重要です。日本人肺がん患者におけるG8とCARGスコア:ENSURE-GA試験より第2回ではG8(Geriatric 8)、第5回ではCARGスコア(Cancer and Aging Research Groupスコア)を紹介しましたが、いずれも「日本では妥当性が検証されていない点に注意」と述べました。ENSURE-GA試験では、これらのスクリーニングツールについて日本人肺がん患者における実際の妥当性を検討しています。G8については、国際的なカットオフ値である14点を用いた場合、91.4%(908例中834例)が陽性と判定され、ほとんどの症例が「脆弱性あり」とされました3)。この結果は、「日本人高齢者においては従来の基準は過度に感度が高過ぎる可能性」を示唆しており、日本人に適したカットオフ値の再検討や、肺がん患者に特化した新たなスクリーニングツールの開発の必要性を浮き彫りにしています。現時点では、75歳以上の非小細胞肺がん患者でG8が15点以上の症例は、上位10%の“お元気な”高齢者とみなすことができるため、ほぼperfect healthとして標準的治療を選択するといった活用法が有効です。一方、CARGスコアについては、治療レジメンごとに有害事象との関連を解析しましたが、Grade3以上の有害事象を予測するには十分な鑑別能は確認されませんでした(表3)4)。今後はがん種別・治療内容別に有害事象をより精緻に予測できる新たなスコアリングツールの開発が求められます。(表3)画像を拡大する1)厚生労働省:令和5年簡易生命表の概況2)Soda S, et al. J Clin Oncol. 2023;41:12041.3)中島和寿. 第64回日本肺癌学会学術集会(2023年). 「高齢肺癌患者における機能評価の有用性を検討するクラスターランダム化第III相試験 (ENSURE-GA study)」4)ASCO2024:Geriatric assessment in older patients with non-small cell lung cancer: Insights from a cluster-randomized, phase III trial-ENSURE-GA study (NEJ041/CS-Lung001).講師紹介

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EGFR陽性肺がん1次治療頂上決戦! FLAURA2対MARIPOSA【肺がんインタビュー】第119回

第119回 EGFR陽性肺がん1次治療頂上決戦! FLAURA2対MARIPOSAEGFR変異陽性肺がんの1次治療に登場したFLAURA2とMARIPOSA。期待の両レジメン、優秀なのはどちら?臨床で使うならどちら?出演<ファシリテーター>関西医科大学 池田 慧氏<プレセンター>帝京大学 落合 亮介氏関西医科大学 山中 雄太氏<ディスカッサント>都立駒込病院 品田 佳那子氏聖マリアンナ医科大学 西山 和宏氏

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EGFR陽性MET増幅進行NSCLC、savolitinib+オシメルチニブがPFS改善/Lancet

 EGFRチロシンキナーゼ阻害薬(EGFR-TKI)治療後に進行したEGFR変異陽性かつMET増幅を有する進行非小細胞肺がん(NSCLC)患者において、savolitinib+オシメルチニブ併用療法はプラチナ製剤ベースの標準併用化学療法と比較して、良好な忍容性プロファイルを維持しながら無増悪生存期間(PFS)を延長したことが示された。中国・上海交通大学のShun Lu氏らSACHI Study Groupが、第III相の多施設共同非盲検無作為化試験「SACHI試験」の中間解析の結果を報告した。著者は「本レジメンは、バイオマーカーで選択された本集団における経口治療の選択肢となりうることが示された」とまとめている。Lancet誌オンライン版2026年1月13日号掲載の報告。階層的方法を用い最初に第3世代EGFR-TKI未治療集団でPFSを評価 SACHI試験は中国国内の68病院で実施された。適格対象は、局所進行または転移のあるEGFR変異陽性非扁平上皮NSCLCで、EGFR-TKI無効後にMET増幅が認められた成人患者。研究グループは対象者を、1日1回経口投与のsavolitinib+オシメルチニブ群または静脈投与による化学療法(ペメトレキセド+シスプラチン/カルボプラチン)群に1対1の割合で無作為に割り付けた(両群とも21日サイクル)。双方向ウェブ応答システムを用いて混合ブロックサイズ法を使用した中央無作為化法により割り付け、脳転移の有無、第3世代EGFR-TKIによる治療歴の有無、およびEGFR変異サブタイプに基づく層別化も行った。 主要評価項目は、治験担当医師の評価によるPFS(RECIST v1.1に基づく)。階層的方法を用い、最初に第3世代EGFR-TKI未治療集団で評価し、有効性が認められた場合にITT集団で評価した。 安全性解析は、試験薬を少なくとも1回投与された全患者を対象に行った。 中間解析のデータカットオフ日は、2024年8月30日であった。savolitinib+オシメルチニブ群のPFSが有意に延長、ITT集団でも 2021年10月15日~2024年8月30日に211例が登録され、savolitinib+オシメルチニブ群(106例)または化学療法群(105例)に無作為化された。137/211例(65%)が第3世代EGFR-TKI未治療(savolitinib+オシメルチニブ群69例、化学療法群68例)であった。savolitinib+オシメルチニブ群の年齢中央値は59.4歳(四分位範囲:54.3~65.8)、女性62例(58%)、男性44例(42%)であり、化学療法群はそれぞれ61.9歳(56.3~69.1)、55例(52%)、50例(48%)であった。全被験者がアジア人。 第3世代EGFR-TKI未治療集団における評価で、PFS中央値は、savolitinib+オシメルチニブ群が化学療法群に対して有意に延長した(9.8ヵ月[95%信頼区間[CI]:6.9~12.5]vs.5.4ヵ月[4.2~6.0]、ハザード比[HR]:0.34[95%CI:0.21~0.56]、p<0.0001)。 ITT集団においてもPFSが有意に延長した(8.2ヵ月[95%CI:6.9~11.2]vs.4.5ヵ月[3.0~5.4]、HR:0.34[95%CI:0.23~0.49]、p<0.0001)。 Grade3以上の治療中に発現した有害事象は両群で同程度であり、savolitinib+オシメルチニブ群60/106例(57%)、化学療法群55/96例(57%)であった。

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お看取りが近い患者のお風呂はどうしていますか?【非専門医のための緩和ケアTips】第116回

お看取りが近い患者のお風呂はどうしていますか?皆さんはお風呂、好きですか? 私は元々そんなに好きではなかったのですが、この年齢になってくると温泉と聞くとテンションが上がります。とくに運動の後に温泉に入ると最高ですよね。緩和ケアでもお風呂はしばしば話題になるのですが、今日はそんなお話です。今日の質問お看取りに対応している施設の方からの問い合わせ。「予後1週間以内が予想される状況の方をお風呂に入れたいが、ダメですよね?」というものでした。元々風呂がすごく好きな方で、「亡くなる前に一度でいいから入浴させたい」と家族から要望があったようです。介護スタッフは不安が強いようですが、こうした場合の対応はどう考えていますか?海外の緩和ケア医や、私の施設に見学に来た海外の医療者と話していると、病院に入浴用のバスタブがあることに驚かれます。海外の医療機関にもシャワーはあるのですが、日本の病院にはバスタブがあり、さらには日常生活動作(ADL)が低下した状態でも入浴できる機械浴の設備まであるのを見ると、非常に驚かれます。在宅医療でも訪問入浴サービスがありますが、よく考えてみたら専用の簡易バスタブを組み立て、専用スタッフが入浴させてくれるってすごいことですよね。ケアの観点から入浴を考えると、やはり入浴できるとできないとでは雲泥の差があります。病状が進行すると入浴できなくなり、清拭中心となることが一般的ですが、一度入浴すれば整容面は格段に改善します。身体症状の強さや患者負担とのバランスですが、やはり可能であれば入浴するというのは、ケアの面からも合理的だと感じます。さて、ここまで話してきて、お看取りが近い病状での入浴について考えてみましょう。私も慢性期病棟や施設スタッフから同様の相談を受けることがあります。スタッフのよくある懸念は、「入浴が負担となって、残された時間が短くなってしまうのではないか?」「入浴中に急変したら、ご家族から責められないか」といったことです。私のスタンスとしては、「『入浴しなかったら病状が変化しない』という保証はないので、入浴がご本人や家族にとって大切ならば、入浴させましょう」とお話しします。そして、「やめておけばよかった」「入浴させたから悪くなった」といった後悔につながらないよう、ご家族を中心に事前の話し合いを行います。実際、終末期の入浴に関する興味深い研究があります1)。私の知り合いの医師が取り組んだものですが、「終末期に入浴しても生存とは関係がなかった」という結果でした。観察研究ですのでこれを根拠に必ず大丈夫とは言えませんが、少なくとも「『終末期の患者に入浴は絶対ダメ』と言わなくてもよいだろう」と背中を押してくれる、臨床的な研究結果です。「入浴させたいけれど、大丈夫?」という質問の背景には、さまざまな不安が存在します。そうした不安の背景を探り、一緒に答えを考えることが良いケアを提供するために重要な姿勢です。今回のTips今回のTips終末期の入浴、周囲との話し合いのうえでチャレンジすることも検討しましょう。1)Oya K, et al. Palliat Med Rep. 2021;2:59-64.

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「全国がん登録」での初の5年生存率発表、小児/成人・性別・進展度・都道府県ごとに集計/厚労省

 厚生労働省は、2026年1月14日に「2016年全国がん登録生存率報告」の結果を公開した。この「全国がん登録」は、すべての病院と都道府県が指定する診療所に対し、がん患者の情報の登録を義務付けた制度であり、2016年から登録が開始され、今回、初めて5年生存率が公表された。【調査概要】目的:全国がん登録によりがん医療の質向上、がんの予防推進、情報提供の充実およびそのほかのがん対策を科学的知見に基づき実施するため、がんの罹患、治療、転帰などの状況を把握し、分析する。調査期間:2016年1月1日~2021年12月31日対象:わが国で診断された日本人および外国人方法:病院などの管理者は、届出対象となっているがんの診断または治療をした場合に届出票を作成し、都道府県知事を介して厚生労働大臣に提出。集計は国立がん研究センターが実施。男性と女性で生存率の部位に差【5年純生存率】 思春期・若年成人(AYA)・成人(15歳以上)の2016年診断の5年純生存率は、胃がんで64.0%、大腸がん(直腸・結腸がん)で67.8%、肝および肝内胆管がんで33.4%、肺がんで37.7%、女性乳房のがんで88.0%、子宮がんで75.5%、前立腺がんで92.1%だった。 国際比較用の年齢調整5年純生存率では、胃がんで67.3%、大腸がん(直腸・結腸がん)で70.2%、肝および肝内胆管がんで37.5%、肺がんで43.3%、女性乳房のがんで86.8%、子宮がんで69.8%、前立腺がんで93.2%だった。 小児では、全分類で82.4%であり、網膜芽腫が97.6%、リンパ腫・リンパ網内系腫瘍が95.7%と高い純生存率を示している一方で、中枢神経系、そのほか頭蓋内、脊髄腫瘍は60.8%と低く、分類によって大きな差が見られた。 2016年の部位別5年純生存率では、男性で5年純生存率が比較的高い(70~100%)部位は、前立腺、甲状腺、皮膚、乳房、喉頭だった。その一方で、生存率が比較的低い(0~29%)部位は、胆のう・胆管、膵臓だった。女性で5年純生存率が比較的高い部位(70~100%)は、甲状腺、皮膚、乳房、子宮体部、喉頭、子宮頸部だった。生存率が比較的低い(0~29%)部位は、男性同様、胆のう・胆管、膵臓だった。【進展度別年齢調整5年純生存率】 進展度別の5年純生存率では、限局と診断されたがんでは、胃がんで90.8%、大腸がん(直腸・結腸がん)で91.6%、肝および肝内胆管がんで51.1%、肺がんで77.4%、女性乳房のがんで98.4%、子宮がんで93.9%、前立腺がんで105.3%となっていた。その一方で、遠隔転移まで進行すると、胃がんで6.0%、大腸がん(直腸・結腸がん)で17.0%、肝および肝内胆管がんで2.5%、肺がんで9.4%、女性乳房のがんで40.1%、子宮がんで21.0%、前立腺がんで53.0%だった。【年齢階級別5年純生存率】 AYA・成人(15歳以上)について、性別・年齢階級別5年純生存率の最大値と最小値の差で見ると、多くの部位で年齢階級を追うごとに生存率は低くなっていたが、前立腺がんでは若年の生存率のほうが低く、皮膚がんでは全年齢階級でほとんど生存率が変わらなかった。 男性では結腸がん、乳房のがん、食道がんおよび前立腺がん、女性では乳房のがん、結腸がんでも年齢階級による生存率の差は小さかった。その一方で、男性では白血病、脳・中枢神経系、悪性リンパ腫および多発性骨髄腫、女性では卵巣、白血病、脳・中枢神経系で差が大きかった。年齢階級による生存率の差は、多くの部位で、男性に比べて女性のほうが大きかった。【罹患数、登録精度、生存率集計対象数】 罹患数、登録精度、生存率集計対象者数について、罹患数の総計は115万3,828例だった。そのうち、死亡情報のみの登録(DCO)が3万1,897例で全体の2.8%、悪性腫瘍以外13万2,492例(11.5%)、診断時年齢不詳および100歳以上1,512例(0.1%)、性別不詳9例(0.0%)を除外して集計対象とした。これらの除外基準は、症例によっては重複して当てはまるものがある。 この結果、生存率集計対象は98万8,985例(本集計時点での上皮内がんなどを含む2016年の罹患数の85.7%)だった。このうち小児の対象者は2,148例だった。【診断から5年後の予後状況】 診断から5年の予後について、全国では52.8%の患者が5年後に生存しており、最も高い55.2%から最も低い49.2%まで、ばらつきの範囲は6ポイントだった。

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診療科別2025年下半期注目論文5選(呼吸器内科編)

Effectiveness of high-dose influenza vaccine against hospitalisations in older adults (FLUNITY-HD): an individual-level pooled analysisJohansen ND, et al. Lancet. 2025 Nov 22;406:2425-2434.<FLUNITY-HD試験>:高齢者のインフルエンザ・肺炎入院予防、高用量ワクチンが標準用量に勝る事前に規定された統合解析において、高用量不活化インフルエンザワクチン(HD-IIV)は標準用量インフルエンザワクチン(SD-IIV)と比較して、インフルエンザまたは肺炎による入院に対し優れた予防効果を示し、また、副次評価項目である心肺疾患による入院、検査確定インフルエンザ入院、全原因入院の発生率も減少させました。HD-IIVは、本邦でも2026年10月より75歳以上を対象に定期接種化が決まっています。Inhaler-Related Greenhouse Gas Emissions in the US: A Serial Cross-Sectional AnalysisFeldman WB, et al. JAMA. 2025;334:1638-1649.<吸入器と環境問題>:米国における吸入器関連の温室効果ガス排出量本研究は、米国における過去10年間の吸入器関連の温室効果ガス排出量を分析したもので、とくに噴射剤(HFC)を含む加圧式定量噴霧吸入器(pMDI)が排出量の98%を占めることを明らかにしました。その社会的コストは57億ドル(1ドル150円換算で約8,550億円)と試算されています。これはもはや医療者個人だけの問題ではなく、政策レベルでの対応が求められる公衆衛生上の課題です。患者さんの吸入デバイス選択においては、吸気力や手技などを最優先すべきですが、環境負荷の少ないドライパウダー吸入器(DPI)やソフトミスト吸入器(SMI)への切り替えが可能かどうかを常に念頭に置く必要があります。Systemic Corticosteroids, Mortality, and Infections in Pneumonia and Acute Respiratory Distress Syndrome : A Systematic Review and Meta-analysisSoumare A, et al. Ann Intern Med. 2025 Dec 2. [Epub ahead of print]<重症肺炎・ARDSへのステロイド>:死亡率低下と感染リスクへの影響市中肺炎におけるステロイド投与に関する長年の論争に1つの決着を与える重要なメタ解析です。非COVIDの重症肺炎やARDSにおいて「低用量・短期間(プレドニン換算3mg/kg/日以下、15日以内)」かつ「早期導入」であれば、死亡率を有意に低下させ、かつ懸念される院内感染のリスクを増やさないという結果でした。集中治療領域において、適切なプロトコル下でのステロイド投与を支持する強固なエビデンスと言えます。Hypertonic Saline or Carbocisteine in BronchiectasisBradley JM, et al. N Engl J Med. 2025;393:1565-1577.<CLEAR試験>:気管支拡張症の増悪予防、高張食塩水とカルボシステインに効果なし気管支拡張症の増悪予防に対し、高張食塩水やカルボシステイン(ムコダインなど)は海外を中心に広く使用されていますが、そのエビデンスは限定的でした。本研究は、英国の大規模な2×2要因RCTで、結果は標準治療への上乗せ効果として、高張食塩水もカルボシステインも52週間の増悪回数を有意に減らさないというものでした(p=0.12、p=0.81)。健康関連QOL(QoL-B、SGRQ、EQ-5D-5L)も改善をしませんでした。本邦ではカルボシステインの使用頻度が高い状況があります。日常診療で気管支拡張症に対して、ルーチンに処方する意義を再考しても良いのかもしれません。Overall Survival with Amivantamab-Lazertinib in EGFR-Mutated Advanced NSCLCYang JC, et al. N Engl J Med. 2025;393:1681-1693.<MARIPOSA試験>:EGFR変異陽性NSCLCの1次治療におけるアミバンタマブ+ラゼルチニブの全生存期間MARIPOSA試験の最終OS解析結果です。現在の標準治療であるオシメルチニブ単剤に対し、アミバンタマブ・ラゼルチニブ併用がHR:0.75(p=0.005)と有意なOS延長を示したことは、EGFR変異陽性肺がん治療における大きなマイルストーンです。3年生存率60%という数字は驚異的ですが、一方でGrade3以上の有害事象が80%(オシメルチニブ群は52%)と高率である点には十分な注意が必要です。とくに皮膚障害や静脈血栓塞栓症(VTE)の管理が実臨床での導入の鍵となります。高い有効性と忍容性のバランスを患者ごとにどう判断するかが、われわれ臨床医に問われています。

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間質性肺炎合併NSCLC、遺伝子検査の実施状況と治療成績は?

 進行非小細胞肺がん(NSCLC)では、治療標的となるドライバー遺伝子異常の有無を遺伝子検査で確認することが一般的である。しかし、間質性肺炎(IP)を合併するNSCLC患者は、薬剤性肺障害のリスクが懸念され、一般的なドライバー変異(EGFR、ALKなど)の頻度が低いことが報告されていることから、遺伝子検査が控えられる場合がある。そこで、池田 慧氏(関西医科大学 呼吸器腫瘍内科学講座)らは、びまん性肺疾患に関する調査研究班の分担・協力施設による多施設共同後ろ向き研究を実施し、IP合併NSCLC患者における遺伝子検査の実態、ドライバー遺伝子異常の頻度、分子標的治療の安全性・有効性を調査した。その結果、マルチ遺伝子検査の実施率は依然として低い一方で、特定の遺伝子変異(KRAS、BRAF、METなど)は一定頻度で検出された。また、ドライバー遺伝子異常を同定して適切に治療を行うことで、生存期間の改善につながる可能性も示唆された。本研究結果は、European Journal of Cancer誌で2026年1月12日にオンライン先行公開された。 研究グループは、本邦の37施設において2019年6月~2024年6月に診断した進行・再発の慢性線維化性IP合併NSCLC患者1,256例を対象として、後ろ向きに解析を行った。遺伝子検査の実施状況、ドライバー遺伝子異常の検出頻度、分子標的治療の安全性・有効性、全生存期間(OS)などを評価した。 主な結果は以下のとおり。・解析対象患者の年齢中央値は74.0歳、喫煙歴ありが95.5%であった。IPの臨床診断は、特発性間質性肺炎(IIPs)が88.1%(1,106/1,256例)を占め、特発性肺線維症が48.7%(612/1,256例)となり、IIPsのなかで最多であった。・遺伝子検査の実施割合は59.2%(95%信頼区間[CI]:56.5~62.0)、治療開始前のマルチ遺伝子検査は41.0%(95%CI:38.3~43.8)にとどまった。・治療開始前にマルチ遺伝子検査を実施した患者(515例)において、13.2%にドライバー遺伝子異常が検出された。最も頻度が高かったのはKRAS遺伝子変異(4.7%、G12C変異が1.9%)であった。EGFR遺伝子変異(2.9%)、BRAF V600E遺伝子変異(1.6%)、MET遺伝子exon14スキッピング変異(1.6%)が続いた。・非扁平上皮NSCLC(320例)に限ると、KRAS遺伝子変異が6.9%(G12Cは3.1%)、EGFR遺伝子変異は3.8%であった。・ドライバー遺伝子異常が検出された患者(84例)のうち、33.3%が分子標的治療を受けた。分子標的治療を受けた患者(28例)における薬剤性肺臓炎の発現割合は、全体で25.0%であり、オシメルチニブ以外の薬剤性肺臓炎はGrade1であった。薬剤別の発現割合は以下のとおり。 ソトラシブ0%(0/6例) オシメルチニブ50.0%(4/8例:Grade2が3例、Grade5が1例) アレクチニブ33.3%(1/3例) ダブラフェニブ+トラメチニブ25.0%(1/4例) テポチニブ25.0%(1/4例)・ドライバー遺伝子異常の状況別にみたOS中央値は、陽性の集団が22.1ヵ月、陰性/不明の患者が13.8ヵ月であり、陽性の集団が良好であった(ハザード比[HR]:0.46、95%CI:0.33~0.64)。・ドライバー遺伝子異常陽性患者のうち、分子標的治療の有無別にみたOS中央値は、分子標的治療ありの集団が39.2ヵ月、なしの集団が24.0ヵ月であった(HR:0.67、95%CI:0.33~1.36)。・多変量解析において、ドライバー遺伝子異常陽性はOS改善と有意な関連がみられた(全体集団のHR:0.57、95%CI:0.38~0.86、p=0.007、何らかの遺伝子検査実施集団のHR:0.42、95%CI:0.23~0.77、p=0.005)。 本研究結果について、本論文の筆頭著者の池田氏にコメントを求めたところ、以下の回答が得られた。【池田氏のコメント】 これまで実臨床の現場では、「IP合併例ではEGFR変異などの頻度が低い」「分子標的薬は薬剤性肺障害のリスクが高い」という懸念から、遺伝子検査、とくにマルチ遺伝子検査の実施自体が手控えられてきた側面が少なからずあったと思います。しかし本研究により、マルチ遺伝子検査を行うことで、KRAS G12C、BRAF V600E、MET exon14スキッピング変異といった、近年治療薬が登場した希少フラクションが一定の割合で確実に存在することが明らかになりました。また、リスク管理を行いつつ適切な分子標的治療へつなげることで、生存期間の延長が得られる可能性も示されました。治療の選択肢が少ないこの患者層において、治療標的を見いだすことは、患者さんにとって大きな希望となります。本研究結果が、IP合併例に対しても「まずはマルチ遺伝子検査を行う」という診療行動への動機付けとなり、1人でも多くの患者さんの治療機会の拡大と予後改善につながることを強く期待しています。

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外科医のための肺がん周術期療法講座【肺がんインタビュー】第118回

第118回 外科医のための肺がん周術期療法講座著しく進歩する非小細胞肺がんの周術期治療。術後に加え、術前および術前+術後レジメンが加わり外科医の役割はますます重要になりつつある。国立がん研究センター東病院の青景圭樹氏に外科医の視点で周術期治療を解説いただいた。

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望ましい死亡診断とは【非専門医のための緩和ケアTips】第115回

望ましい死亡診断とは死亡診断、医師にとって、とくに終末期医療に関わる医師にとって避けて通れない仕事ですが、皆さんは死亡診断時に気を付けていることはありますか? 今回は緩和ケア医として定期的に考えたくなる、死亡診断に関する話題です。今日の質問死亡診断の際、病室に時計がなかったので、自分のスマホの時刻で死亡時刻を確認しました。ご家族からとくに何かを言われたわけではないのですが、自分でも少し違和感を抱いてしまいました。死亡診断の際の行動について、何らかの指針はあるのでしょうか?緩和ケアにおける死亡診断は、それまで積み重ねてきたケアの集大成のような瞬間ですので、大切にしている方も多いと思います。一方、研修医や若手医師であればまだしも、ある程度経験を積んでくるとほかの医師の診療を見ることもなくなるため、私自身、「皆はどうしているのだろう?」と思うときがあります。若手の医師を指導しているときに受けた死亡診断に関連した質問を思い起こしてみました。死亡診断の際、モニターの電源は切るのか診察はどの程度行うのか。服の上から聴診をしてもよいかご家族にどのような声掛けをするとよいか自分が主治医でない患者を看取る際には、どのような点に注意すればいいのかこうしてみると、一つひとつは小さなことですが、患者さんとご家族にとって大切な瞬間における適切な立ち居振る舞いとは、こうした小さなことの積み重ねです。医学部における卒前教育でも、初期研修でも、こうしたことを細かく教えてもらう機会も多くないでしょう。結果として、それぞれの医師の工夫やスタイルが出やすい分野です。今回のご質問にある「死亡診断の指針」ですが、専門家の意見に基づいて作成された死亡診断のガイドブックが存在します1)。とくに在宅におけるお看取りの際の注意点がわかりやすくコンパクトにまとまっています。死亡診断時に「本人と家族へ会釈をし、生きている人と同じように接する」「事務的に見えないように配慮する」といった態度面にも言及されています。私自身としては、死亡診断はそれまでの患者・家族と医療者の関係性や文脈の中で行われるものであり、多くの人が抵抗感を抱くような立ち居振る舞いでなければ、それぞれの医師のスタイルで行えばよいと思っています。「必ずこうしなければならない」ことはそうないですし、質問にあるように「スマホで時刻を確認するのは非常識」とも言い切れないと思います。ただ、後から自身の態度を振り返ることは大切ですし、違和感があったのであれば、「次は腕時計をしていこう」と改善していくことが大切です。忘れてほしくないのは、看取りの瞬間の中心にあるのは患者自身とその家族なので、医師が変に目立ったり、印象付けようと頑張ったりする必要はない、ということです。まあ、これも私の死亡診断の考え方なので、皆さんもそれぞれ考えていただけたらと思います。今回のTips今回のTips日々振り返りをしながら、より良い死亡診断を模索しましょう。1)えんじぇる班. 地域の多職種でつくった『死亡診断時の医師の立ち居振る舞いについてのガイドブック』;2014.

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ROS1陽性NSCLCで4剤目、タレトレクチニブの特徴は?/日本化薬

 日本化薬は、タレトレクチニブ(商品名:イブトロジー)を2025年11月12日に発売した。タレトレクチニブは、ROS1融合遺伝子陽性非小細胞肺がん(NSCLC)に対するROS1チロシンキナーゼ阻害薬(ROS1-TKI)として、本邦では4剤目の薬剤となる。本剤の発売を機に2025年11月20日に開催されたメディアセミナーでは、林 秀敏氏(近畿大学医学部内科学腫瘍内科部門 主任教授)がROS1融合遺伝子陽性NSCLC治療の現状や本剤の特徴を解説した。ROS1融合遺伝子陽性NSCLCの特徴 ROS1融合遺伝子は、ROS1遺伝子が染色体上でパートナー遺伝子(CD74、SLC34A2、EZRなど)と再構成することで生じる。ROS1融合遺伝子から産生されるROS1融合タンパクは、ROS1の下流のシグナル伝達経路(ERK1/2、AKTなど)を恒常的に活性化し、腫瘍の増殖が引き起こされる。 ROS1融合遺伝子の頻度は、NSCLCの1~2%とされる。希少遺伝子異常ではあるが、林氏は「肺がん患者全体の母数が多いため、国内の患者数は2,800~5,600例と推定される。これは急性リンパ性白血病の患者数と同程度である」と述べ、治療法開発の重要性を指摘した。これまでの治療の現状と課題 ROS1融合遺伝子陽性NSCLCに対する治療薬としては、タレトレクチニブの発売前に、クリゾチニブ、エヌトレクチニブ、レポトレクチニブが臨床応用されている。これらの3剤はいずれも高い有効性を有する薬剤ではあるが、課題も存在すると林氏は指摘する。 ROS1融合遺伝子陽性NSCLCは、脳転移が生じる頻度が高いという特徴があるが、脳転移例への効果は薬剤によって異なり、とくに第1世代のクリゾチニブは脳内移行性が低いという課題がある。また、クリゾチニブやエヌトレクチニブに対する耐性が生じた場合、ROS1-TKIの効果が限定的であるという課題も存在する。さらには、既存の薬剤はめまいなどの神経学的有害事象の発現が多いというアンメットニーズもある。神経学的有害事象にはTRKB阻害が関与していると考えられていることから、ROS1阻害活性を維持しつつTRKBに対するオフターゲット活性を抑え、神経学的有害事象の軽減を目指した薬剤開発が望まれていた。神経学的有害事象の軽減を目指して開発されたタレトレクチニブ 今回発売されたタレトレクチニブは、ROS1などに対する阻害活性を有するTKIであり、既存のROS1-TKIと作用機序は同様である。しかし、本剤は野生型ROS1融合タンパクおよびROS1-TKI耐性変異体の両方に対して有効性を示し、脳転移に対しても有効で、神経学的有害事象を軽減することを目指して開発された薬剤である。 そのため、ROS1-TKI耐性変異の1つであるROS1 G2032R変異体に対しても高い阻害活性を有する。また、本剤のROS1への選択性は、神経学的有害事象との関連が考えられるTRKBの11.0~20.1倍であった。in vitroにおいて、ATP濃度をATPに対する各標的キナーゼのKm値付近に設定したときのROS1、ROS1 G2032R変異体、TRKBに対するIC50値は、以下のとおりであった(タレトレクチニブ、クリゾチニブ、エヌトレクチニブ、レポトレクチニブの順に示す)。・ROS1:0.0732、0.661、0.710、<0.05nmol/L・ROS1 G2032R:0.202、86.2、88.0、0.0946nmol/L・TRKB:1.47、6.75、0.155、<0.05nmol/L既治療例や脳転移例にも有効 タレトレクチニブの有効性と安全性は、主に国際共同第II相試験「TRUST-II試験」と、中国で実施された海外第II相試験「TRUST-I試験」で評価された1)。両試験は、ROS1融合遺伝子陽性のNSCLC患者を対象とした試験であり、ROS1-TKI未治療例と既治療例が含まれ、統合解析の対象は273例であった。 両試験の統合解析では、ROS1-TKI阻害薬未治療の集団(160例)において、主要評価項目の奏効割合(ORR)88.8%、副次評価項目の無増悪生存期間(PFS)中央値45.6ヵ月という良好な成績が示された。とくにPFS中央値について、林氏は「数字上はクリゾチニブやエヌトレクチニブの2倍以上の期間となる」と評価した。 また、ROS1-TKI既治療の集団(113例)においても、ORR 55.8%、PFS中央値9.7ヵ月という良好な成績が示された。これについて、林氏は「ROS1-TKI既治療例に対する治療選択肢が増えたことは非常に大きい」と述べた。 脳転移を有する症例に対しても高い頭蓋内奏効割合(未治療集団76.5%、既治療集団65.6%)が確認された。また、主要な耐性変異であるROS1 G2032R変異を有する患者においても、ORR 61.5%と良好な成績が示された。これらについて、林氏は「本剤の有効性が高かったことの一因であると考えられる」と考察した。 安全性については、有害事象として肝機能障害(AST増加71.9%、ALT増加67.6%)、下痢(63.6%)などの消化器系有害事象の発現が多かったが、これらの多くはGrade1~2であった。また、神経学的有害事象として浮動性めまい(21.3%)がやや多く発現したが、ほとんどがGrade1~2であり、林氏は「TRKBの阻害に関連する有害事象は軽減されていると感じている」と述べた。 2025年11月に改訂された『肺癌診療ガイドライン2025年版』2)では、既存のROS1-TKI 3剤(クリゾチニブ、エヌトレクチニブ、レポトレクチニブ)と並んで、本剤がROS1-TKI単剤療法の推奨薬の1つとして掲載されている(推奨の強さ:1、エビデンスの強さ:C)。なお、本ガイドラインでは、ROS1-TKIの使用順序については言及されていない。 以上を踏まえ、林氏は「ドライバー遺伝子変異陽性NSCLCにおいての分子標的治療薬の使い分けとして、安全性を加味しつつ、有効性の高い薬剤から使用するのが基本である」と述べたうえで、「ROS1-TKIの治療歴を問わず、タレトレクチニブがROS1融合遺伝子陽性NSCLCに対して幅広く使用されることが期待される」と締めくくった。Q&A 講演後、実臨床での使用に関して林氏に質問したところ、以下の回答が得られた。Q. 肝機能障害の有害事象が多いが、肝転移のある患者への使用は可能か? A. 肝酵素の上昇は、薬剤が肝臓で代謝されることに起因する副作用であり、肝転移があるからといって悪影響が増強されるわけではない。ビリルビン値が高いなど、肝機能が著しく悪い場合を除き、肝転移があっても基本的には使用できると考えている。Q. 他の3剤と異なり、用法・用量に「空腹時投与」とあるが、服用の工夫や指導は?A. ライフスタイルによるが、私は「朝起きてすぐ、朝食を食べる前に飲んでください」と指導することが多い。これが最もわかりやすく、飲み忘れも防げると感じている。タレトレクチニブは1日1回投与なので、患者の負担も比較的少ないと感じている。

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『がん患者におけるせん妄ガイドライン』改訂、抗精神病薬+ベンゾジアゼピン系薬など現場で多い処方を新規CQに 

 2025年9月、『がん患者におけるせん妄ガイドライン 2025年版』(日本サイコオンコロジー学会/日本がんサポーティブケア学会編、金原出版)が刊行された。2019年の初版から改訂を重ね、今回で第3版となる。日本サイコオンコロジー学会 ガイドライン策定委員会 せん妄小委員会委員長を務めた松田 能宣氏(国立病院機構近畿中央呼吸器センター心療内科/支持・緩和療法チーム)に改訂のポイントを聞いた。――「がん患者におけるせん妄」には、その他の臨床状況におけるせん妄とは異なる特徴がある。がん治療にはオピオイド、ステロイドなどの薬剤が多用されるが、それらが直接因子となったせん妄が多くみられる。さらに、近年では免疫チェックポイント阻害薬に代表されるがん免疫療法の普及に伴い、この副作用としてせん妄を発症する患者も増えている。また高カルシウム血症や脳転移など、がんに伴う身体的問題を背景としてせん妄を発症することもある。進行がん患者におけるせん妄は、その原因が複合的であることが多い。さらに、終末期におけるせん妄では身体的要因の改善が困難であり、治療目標をせん妄の回復からせん妄による苦痛の緩和に変更し、それに合わせてケアを組み立てていく必要もある。総論に7つの個別テーマを新設 2025年版は前版と比較して約40ページ増となった。総論では、「関連する病態についてより詳しく説明できるとよいのでは」という委員会の議論を経て、7つのテーマを追加した。 総論に追加したテーマは以下のようになっている。1.アルコール離脱せん妄(評価のためのスコア、薬物治療)2.術後せん妄(周術期神経認知障害、超高齢・がん外科治療の文脈も含む)3.低活動型せん妄(頻度・症状・鑑別・マネジメント)4.身体拘束に関する考え方(実態・葛藤・多職種アプローチ・法的倫理的視点)5.認知症に重畳するせん妄(頻度・リスク因子・評価・対応)6.せん妄とがん疼痛の合併(終末期、可逆的などで分岐する対応アルゴリズムなど)7.在宅におけるせん妄診療(介護者負担、投与経路制限、在宅継続の可否、在宅アルゴリズムなど) 「アルコール離脱せん妄」はがん患者に限ったものではないが、アルコールが関連するがん、たとえば頭頸部がんとの関連が深いため、別個に取り上げた。通常、せん妄治療にベンゾジアゼピン系薬を単剤で使うことはほぼないが、アルコール離脱せん妄の場合は適応となるなど、治療の独自性も高い。「術後せん妄」は、通常のがん患者におけるせん妄とはまた状況が異なり、頻度も高いため、改めて扱うこととした。 せん妄は「過活動型せん妄」「低活動型せん妄」「活動水準混合型」の3つに分類される。中でも低活動型せん妄は見逃しやすく、がん患者での頻度が高いために取り上げた。「身体拘束」は、これまで過活動型の患者に対し、安全性確保のために拘束するケースがあった。しかし、近年はその有害性が報告されるようになっており、拘束を最小限にするための多職種によるアプローチをまとめた。 高齢化社会の進行の中で「認知症」とせん妄を併発する患者が増えている。なかなか鑑別が難しいが、評価や対応についてまとめた。また、「せん妄とがん疼痛の合併」も非常に多いパターンで、中等度以上の痛みを伴うがん患者の3分の1以上がせん妄を合併している、との報告もある。ここには厚労省科研費里見班による報告があったので、そちらの治療アルゴリズムを掲載している。前版までは病院におけるせん妄治療が中心だったが、在宅医療におけるせん妄も増加していることを受け、介護者の存在や薬剤の制限など、在宅医療独自の状況を踏まえて項目を作成した。CQでは予防と併用療法の項目を追加 CQは4つ新設し、前版の12から15となった。増えたCQは以下のとおりとなっている。CQ3:ラメルテオン単独投与による予防は推奨されるか?CQ4:オレキシン受容体拮抗薬単独投与による予防は推奨されるか?いずれも「単独で投与しないことを提案する」(推奨の強さ:2、エビデンスの確実性:D) 予防目的の薬物治療として、新規睡眠薬(ラメルテオン/オレキシン拮抗薬)を明示的に扱うようになったのが大きな変更点となる。いずれも現時点では予防に有効とのエビデンスは確立しておらず、「単独で投与しないことを提案する」との記載となった。予防には非薬物的介入が第1選択という点は前版から変わらないが、実臨床においてはせん妄予防よりも睡眠リズムをつくることを目的に新規睡眠薬を投与する医師が一定数いると予想され、こうした処方までを一概に否定するものではない。高リスク群など一部の集団においては「個々の患者の状況やリスクを適切に評価し、予防的投与の妥当性を判断することが必要」との点も明記した。CQ11:症状軽減を目的に、抗精神病薬+ベンゾジアゼピン系薬の併用投与は推奨されるか?「併用で投与することを提案する」(推奨の強さ:2、エビデンスの確実性:C) このCQに関する文献は1件のみで、エビデンスとして質の高い研究ではあったものの、試験対象が「すでにハロペリドールを定時投与されている終末期の重症せん妄患者」に限定されていたことには注意が必要だ。よって、どんな症例でも併用投与を推奨するわけでなく、症例ごとの見極めが重要になる。また、試験の治療薬はロラゼパム注とハロペリドール注であったが、日本ではロラゼパム注が使われることは少なく、今後は日本で汎用されているベンゾジアゼピン系薬での検討や、重症例以外の検討が求められる。CQ12:症状軽減を目的に、抗精神病薬+抗ヒスタミン薬の併用投与は推奨されるか?「併用で投与しないことを提案する」(推奨の強さ:2、エビデンスの確実性:D) せん妄に認められる不穏の症状に対して、抗ヒスタミン薬や抗精神病薬を用いることがあるが、抗ヒスタミン薬はせん妄の原因ともなり得るなど安全性の懸念も残る。検討対象となった観察研究では、併用投与によるアウトカム改善は認められなかったため、「併用で投与しないことを提案する」との記載になった。 がん患者のせん妄は、臨床試験が組みにくく、エビデンスが蓄積されにくい分野だ。理由としては、患者ごとにせん妄の原因が異なっているため試験の組み入れ条件をそろえることが難しい、終末期患者が多く同意取得が困難、といった背景がある。一方、患者数は多く、医療者・患者/家族ともケアに悩むことが多い分野でもある。今後も限られたエビデンスを集め、ガイドラインのアップデートや外部評価に努めたい。患者自身や家族がケアに関わることも多いので、同じ学会で作成する『がん患者における 気持ちのつらさガイドライン』『がん医療における 患者・医療者間のコミュニケーションガイドライン』と一緒に、患者向けガイドの作成も進めている。

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がん免疫療法、投与時刻が効果に影響

 がん免疫療法の効果は、免疫チェックポイント阻害薬(ICI)を投与する時刻によって異なる可能性のあることが、新たな研究で示唆された。進展型小細胞肺がん(extensive-stage small-cell lung cancer;ES-SCLC)患者を対象にしたこの研究では、15時より前にICIの点滴を受けた患者では、15時以降に点滴を受けた患者に比べて無増悪生存期間(PFS)と全生存期間(OS)が有意に長かったことが示されたという。中南大学(中国)湘雅医学院付属腫瘍病院のYongchang Zhang氏らによるこの研究結果は、「Cancer」に12月8日掲載された。 Zhang氏は、「点滴を行う時刻の調整は、生存期間を延ばすための安価な方法となる可能性がある。追加費用も不要で、さまざまな医療現場で容易に実施できる簡単な介入だ」と述べている。 この研究では、2019年5月から2023年10月までの間にES-SCLCと診断され、化学療法に抗PD-L1抗体(アテゾリズマブまたはデュルバルマブ)を併用する一次治療を受けた397人を対象に、ICIの投与時刻が効果に影響するのかどうかが検討された。ICIの投与時刻は、各患者の最初の4サイクルのICI投与時刻の中央値とした。 解析の結果、ICIの効果を最大限に高める最適な投与時刻のカットオフは15時であることが示された。15時より前にICI投与を受けた患者では、15時以降に投与を受けた患者と比べて、PFSとOSが有意に長かった。多変量解析では、15時より前の早い投与時刻はPFSとOSのいずれにおいても独立した予後因子であることが確認され、病勢が進行するリスクは約52%(調整ハザード比0.483)、死亡リスクは約63%(同0.373)低下すると推定された。 Zhang氏は、「この研究結果は即時的な臨床的意義があり、現在のES-SCLC治療のプロトコルに変革をもたらす可能性を秘めている」と述べている。 研究グループは、ICIの投与時刻による効果の差は、体内時計(概日リズム)が免疫反応を含むさまざまな生体機能に影響するためだと考えている。それでも、概日リズムががん治療に及ぼす影響を理解し、患者の概日リズムを治療に最大限に活かす方法を確立するには、さらなる研究が必要だと指摘している。 研究グループは、「今回の知見は、生体リズムとICIによる治療の重要な相互作用を示しており、治療戦略の最適化に向けた新しい可能性を開くものだ」と結論付けている。(HealthDay News 2025年12月9日)

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化学療法中のワクチン接種【かかりつけ医のためのがん患者フォローアップ】第6回

化学療法中のがん患者は、化学療法の影響や原疾患により免疫力が低下しているため、感染症に罹患しやすく重症化しやすい傾向があります。国内のガイドラインやASCOガイドラインおいても、がん患者の治療やケアにおいて適切なワクチン接種がもたらす良い影響が述べられています。今回は固形がん化学療法中の患者を想定した、5つの主なワクチンの特徴や効果、推奨される接種時期についてお話しします。1)インフルエンザワクチン背景がん患者がインフルエンザに罹患した場合、死亡のリスクが高いことが複数の研究から報告されています。とくに肺がんや血液腫瘍患者はより重症化するリスクが高いことが知られています。インフルエンザワクチンは、A型(H3N2・H1N1)とB型の3株を含む混合ワクチンであり、世界的流行株とWHO推奨株に基づき毎年選定されるため、毎年の接種が推奨されます。健康な人における有効性は70~90%程度とされていますが、流行株との一致度により変動します。予防効果と安全性複数の研究から、血清学的な反応は健康な人と比較して劣る可能性はあるものの、予防医学的な意義は明らかであることがメタアナリシスにより示されています。近年、高用量インフルエンザワクチン(商品名:エフルエルダ筋注)が承認され、米国では65歳以上のがん患者に高用量ワクチン接種が推奨されています。化学療法中のインフルエンザワクチン投与に関してとくに重篤な有害事象が増加するという報告はありません。注意点リツキシマブやオファツムマブ、オビヌツズマブなどの治療後は、少なくとも半年間はワクチン効果が期待できない可能性があります。また、免疫抑制薬を服用中の患者でも効果が低い場合があります。接種時期インフルエンザワクチンは10~12月までの接種が推奨されています。化学療法の開始前(少なくとも2週間前)に接種するのが理想ですが、治療中に流行期を迎える場合は接種時期を調整する必要があります。化学療法中は骨髄抑制の最も低下した時期(nadir)を避けて接種することが望ましいです。2)肺炎球菌ワクチン背景日本の成人市中肺炎では、肺炎球菌が最も頻度の高い起炎菌です。65歳以上や糖尿病・心不全などの基礎疾患を有する場合には、重症感染症を起こしうるため、肺炎球菌ワクチン接種が推奨されています。国内データでは、侵襲性肺炎球菌感染症の死亡率は約19%と高く、患者の約7割は65歳以上です。また、固形がん患者や脾摘患者が肺炎球菌感染症に罹患した場合、非がん患者と比較して死亡のリスクが高いことが報告されています。予防効果と安全性肺炎球菌ワクチンによる抗体価の上昇は、化学療法中であっても健康な人と同等であると報告されています。化学療法中の肺炎球菌ワクチン投与に関してとくに重篤な有害事象が増加するという報告はありません。ワクチンの特徴ポリサッカライドワクチン(ニューモバックス[PPSV23]:定期接種)と結合型ワクチン(キャップバックス[PCV21]、プレベナー20[PCV20]、バクニュバンス[PCV15])の2種類があります。免疫力をつける力(免疫原性)はPCV21/20/15のほうがPPSV23より高いです。日本ワクチン学会・日本感染症学会・日本呼吸器学会では、がん患者へのPCV20の1回接種もしくはPCV15とPPSV23の連続接種を推奨しています。画像を拡大する接種時期肺炎球菌感染症は1年を通して発生するため、季節を問わず接種が可能です。化学療法開始前(少なくとも2週間前)に接種、もしくは化学療法中は骨髄抑制の最も低下した時期(nadir)を避けて接種することが望ましいです。3)帯状疱疹ワクチン背景水痘帯状疱疹ウイルス(ヘルペスウイルス3型)初感染は水痘として発症し、感染後に後根神経節に不活性状態で長期間潜伏します。その後、加齢・疲労・病気などで免疫が弱まるとウイルスが再活性化し、帯状疱疹として発症します。症状は片側に帯状に広がる発疹と刺すような痛みが典型的で、約10%の症例で帯状疱疹後神経痛が発生し、QOLを低下させる原因になります。免疫不全のない患者と比較して、固形がん患者は約5倍、血液がん患者は約10倍帯状疱疹の頻度が高いことが報告されています。画像を拡大する安全性化学療法中の帯状疱疹ワクチン投与に関してとくに重篤な有害事象が増加するという報告はありません。生ワクチンは、免疫低下患者(がん薬物療法中やステロイド使用中)には接種不可です。接種時期化学療法の開始前(少なくとも2週間前)に接種します。化学療法中は骨髄抑制の最も低下した時期(nadir)を避けて接種することが望ましいです。4)新型コロナ(COVID-19)ワクチン背景がん患者はCOVID-19に罹患すると重症化しやすいため、ワクチン接種の利益は大きいです。そのため、基本的には接種を検討すべきとされています。ただし、がんの種類や治療内容、免疫状態により、効果や副反応が異なる可能性があります。治療のタイミングにより接種時期を調整したほうがよい場合もあります。副反応が治療の有害事象と区別しにくい場合があるため注意が必要となります。総じて、患者ごとの状況に応じて主治医と相談して判断することが重要と考えられます。予防効果と安全性ワクチンを接種したがん患者約3万例を対象とした観察研究が報告されており、がん患者であってもCOVID-19ワクチンを2回接種することで感染リスクが低下することが示されています。一方でワクチンの感染リスク低下効果は58%(非がん患者:90%以上)であり、がん患者ではワクチンの効果が減弱する可能性が示唆されています。とくにワクチン接種前6ヵ月以内に化学療法を受けた場合はワクチンの効果が低いことが報告されています。定期的な追加接種が推奨され、感染時は早期の受診と抗ウイルス薬治療が重要となります。接種時期基本的に最新の推奨スケジュールに従った接種が推奨され、明確な最適時期はまだ不明ですが化学療法の開始前に接種して、化学療法中は骨髄抑制の最も低下した時期を避けて接種することが望ましいです。抗CD20抗体(リツキシマブやオビヌツズマブなど)治療後半年以内はワクチンの効果が乏しいことが示されています。注意事項ワクチン接種により、接種側の腋窩・鎖骨上窩・頸部リンパ節の腫大が報告されており、PETでも集積を認めることがあり、転移との鑑別が必要になる場合があります。画像検査の際にはワクチン接種歴と部位の情報を得ておくことが望ましいです。5)RSウイルスワクチン背景高齢者、慢性の基礎疾患(喘息、COPD、心疾患、がんなど)、免疫機能が低下している人は、RSウイルス感染症の重症化リスクが高く、肺炎、入院、死亡などの重篤な転帰につながる可能性があります。また、RSウイルス感染症は、喘息、COPD、心疾患などの基礎疾患の増悪の原因となることもあり、日本では約6万3,000例の入院と約4,500例の院内死亡が推定されています。米国での大規模データ研究では、がん患者がRSウイルス感染症に罹患した場合、非がん患者と比較して死亡のリスクが2倍以上高いことが報告されています。画像を拡大する接種時期化学療法の開始前(少なくとも2週間前)に接種します。化学療法中は骨髄抑制の最も低下した時期(nadir)を避けて接種することが望ましいです。1)Kamboj M, et al. JCO Oncol Pract. 2024;20:889-892. 2)日本癌学会、日本癌治療学会、日本臨床腫瘍学会. 新型コロナウイルス感染症とがん診療について(医療従事者向け)Q&A:2021.3)国立がん研究センター:がん情報サービス4)日本乳癌学会. 乳癌診療ガイドライン2022年版. 金原出版:2022.5)アレックスビー筋注用添付文書6)アブリスボ筋注用添付文書

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対象者全員の検診受診で肺がんによる死亡は大幅に回避可能

 全ての肺がん検診対象者が検診を受ければ、5年間で回避可能な肺がんによる死亡は現状の1万4,970件から6万2,110件にまで大幅に増加する可能性のあることが、新たな大規模研究で示された。米国では、2024年に肺がん検診の対象となる成人のうち、実際に検診を受けたのは約5人中1人にとどまっていたことも明らかになった。米国がん協会(ACS)がんリスク因子・スクリーニング・サーベイランス・リサーチのサイエンティフィックディレクターであるPriti Bandi氏らによるこの研究の詳細は、「Journal of the American Medical Association(JAMA)」に11月19日掲載された。 Bandi氏は、「肺がん検診の受診率がこれほどまでに低いままであるのは残念なことだ。より深刻なのは、この低い受診率が現実に命を救うチャンスの喪失につながっている点だ。対象者の全員が検診を受ければ、肺がんによる死亡を大幅に防げたはずだ」とニュースリリースの中で述べている。 米国では、肺がんはがんによる死亡の最大要因であり、2025年には肺がんにより12万5,000人が死亡すると予測されている。また、肺がんの新規診断数は年間約22万5,000件で、全てのがんの中で2番目に多い。米疾病対策センター(CDC)によると、肺がんの有無を調べるための低線量胸部CT検査の対象となるのは、喫煙歴が20パックイヤー(Pack-Year)以上で現在も喫煙しているか、過去15年以内に禁煙した50~80歳の人である。1パックイヤーとは1年間に1日1箱のタバコを吸った喫煙量に相当する。例えば、1日1箱を20年間吸った場合、あるいは1日2箱を10年間吸った場合は、どちらも20パックイヤーとなる。 今回の研究では、CDCが毎年実施している米国国民健康面接調査(National Health Interview Survey;NHIS)の2024年のデータが分析された。その結果、肺がん検診の対象と想定される約1276万人の米国人のうち、実際に検診を受けたのは18.7%にとどまっていた。もし、検診対象者の全員が検診を受けた場合、5年間で6万2,110件の肺がんによる死亡を回避でき、87万2,270年の延べ生存年数が得られると推定された。現状の受診率では、回避できている死亡は1万4,970件、得られている延べ生存年数は19万30年にとどまる。これは、受診率が100%に達した場合に得られる効果のわずか4分の1程度しか実現できていないことを意味する。 Bandi氏は、「われわれは、肺がんの検診受診率を上げる必要がある。50~80歳で喫煙の経験があれば、自分が肺がん検診の対象となるのかどうか、また、検診が自分に適切かどうかを医師に相談してほしい」と呼びかけている。さらに同氏は、「禁煙後の年数にかかわらず検診対象となるよう、対象枠を拡大することも必要だ。このことは人々の命を救う一助になるだろう」と述べている。 ACSがん行動ネットワーク(ACS CAN)代表のLisa Lacasse氏は、「今回報告された研究は、人々が確実に予防や早期発見を目的とした検診をすぐに無償で利用できる医療アクセスの保護とその拡大が急務であることを示している」とニュースリリースの中で述べている。 また、Lacasse氏は、「ACS CANは今後も議員らと協力し、全ての保険支払者による検診およびフォローアップ検査の患者負担撤廃を目指すとともに、命を救う検診へのアクセスを改善し、肺がん死亡を減らす取り組みを進めていく。われわれはこうした取り組みを通じて、がんのない未来に近付くことを目指している」と付け加えている。

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副作用対策、用量調節で悩ましいこと 【高齢者がん治療 虎の巻】第5回

<今回のPoint>「プロの勘」ではなく、高齢者機能評価(Geriatric Assessment:GA)で根拠を可視化しチームで共有することが信頼される医療の土台に治療方針決定にGAを活用すれば、単なる点数評価で終わらず、個別化した薬剤調整が可能にGAは多職種との連携に使ってこそ意味がある<症例>(第1回、第2回、第4回と同じ患者)88歳、女性。進行肺がんと診断され、本人は『できることがあるなら治療したい』と希望。既往に高血圧、糖尿病、軽度の認知機能低下があり、PSは1〜2。診察には娘が同席し、『年齢的にも無理はさせたくない。でも本人が治療を望んでいるなら…』と戸惑いを見せる。遺伝子変異検査ではドライバー変異なし、PD-L1発現25%。G8:10.5点(失点項目:年齢、併用薬数、外出の制限など)/HDS-R 20点(認知症の可能性あり)多職種カンファレンスで免疫チェックポイント阻害薬(ICI)の単剤投与を提案。薬剤師には併用薬の整理を、MSWには家庭環境の支援を依頼し、チームで治療準備を整えた。副作用なく3サイクル投与できたが病勢は進行。ベストサポーティブケア(BSC)への移行を提案したが、本人は次治療を希望。TTF-1陰性でありカルボプラチン(CBDCA)+ナブパクリタキセル(nab-PTX)療法が検討された1)が、標準量か減量すべきかが議論された 。その道のプロにGAは不要!?GA普及の初期、しばしば耳にしたのが、 「患者が診察室に入ってくる足音で脆弱性の有無がわかる」「結局、全例抗がん剤減量するからGAは不要」 といった声です。つまり“プロの勘があるのでGAは必要ない”という意見です。おそらく、臨床経験豊富な先生は頭の中で独自のGAを実施されているものと思います。ですが、そのプロの勘を見える化し、チームで共有することができているでしょうか。GAの本質は、「コンセンサスのあるツールで構造化された評価を行い、結果を共有して意思決定の質を高め、必要な介入へとつなげる」点にあります。多職種とつなげて点から線へ流れを作り、評価するだけのGAではなく、使いこなしてこそ価値が出るものと考えます。それこそが「プロの勘」をチーム医療の武器に変える力と言えるでしょう。GAのSDMへの貢献:再治療をどうするか冒頭の症例は、ICIによる副作用を認めなかったことで、本人・家族とも「次もいけるかも」という安心感がありました。ここで、改めて高齢者機能評価を実施してみましょう。生活機能基本的日常生活動作(BADL)…自立手段的日常生活動作(IADL)…買い物、食事の支度、交通手段に関して介助が必要G89点(失点項目:年齢、併用薬数、外出の制限、体重減少など)CARGスコア2)(失点項目:移動の制限、転倒歴など)*CARGの詳細は本文後半のコラム参照<図1より算出したCARGスコア>多剤併用標準量13点、高リスク多剤併用減量11点、高リスク単剤標準量11点、高リスク単剤減量9点、中リスク(図1)CARGスコア[参考]画像を拡大するG8は初回治療前と比較し、若干の体重減少のため点数が下がっていました。また、転倒歴が判明し、栄養指導や自宅環境の整備を再度実施することにしました。カンファレンスではこの結果をもとに「単剤減量+支持療法強化」が提案されると判断しました。本人と家族には、「細胞傷害性抗がん薬の投与は高リスクであること」「前回のように必ずうまくいくとは限らないこと」を丁寧に説明した結果、十分な支持療法を実施しながらnab-PTX単剤を減量して開始する方針になりました。GAによる「見える根拠」を示した説明で、本人・家族の納得度を高め、信頼関係の構築にもつながった症例です。(図2)高齢者機能評価は誰のため?GAにより治療選択とその対策を見える化する画像を拡大する適切な投与量調節とはGAで脆弱性を認める→減量すべき、は一見自然な流れですが「どのくらい減らすか」には明確な指針がありません。米国・ロチェスター大学教授Supriya G. Mohile氏のラボでは、GAで脆弱性がある場合、細胞傷害性抗がん薬は一律80%の減量を行っていました。非常に明快な指針ですが、日本では減量にもエビデンスが必要と考える文化が根強く、考え方をそのまま導入するのは困難だと思います。そこで、以下の視点から減量を検討することを提案いたします。一律の減量ではなく、エビデンスに基づいた減量レジメンの選択臨床試験で用いられた減量基準に従った投与量調整GAを活用し、医師自身が理論的に納得したうえで減量を提案たとえ結果的に減量という同じ結論に至っても、そのプロセスが納得に裏付けられたものであるかどうかがSDMの質を左右すると考えます。このように、高齢者に抗がん剤治療を行う場合は最終的に減量を推奨することも多いと思いますが、GAを用いて理論的に担当医自身も納得したうえで患者や家族に提案すること、点数だけで治療を決めず、介入や十分な支持療法を検討することも重要だと思います。Chemo-Toxicity Calculator、CARG scoreとは何か?2,3)CARGスコアは、米国のArti Hurria氏らが高齢がん患者における化学療法の毒性リスクを予測するために開発したツールで、Cancer and Aging Research Group(CARG)によって報告されました。65歳以上の多がん種患者を対象に、化学療法前に包括的高齢者機能評価(CGA)を実施し、治療中に生じたCTCAE Grade3以上の有害事象との関連からリスク因子を抽出しています。評価項目には、年齢・性別・身長/体重・がん種・レジメンの強度・Hb・Cr値に加え、難聴、転倒歴、100m歩行の制限、人付き合いの制限など、身体的・社会的な要素が含まれています。G8だけでは算出できない項目が多く、CARGスコアの計算はより包括的な高齢者評価を行う良い契機になります。リスクスコアは低(0~5点)、中(6~9点)、高リスク(10点以上)に分類され、視覚的に有害事象リスクを把握しやすいのが利点です。ただし、細胞傷害性抗がん薬を対象としたツールであり、ICIや分子標的薬には適用できず、日本では前向き研究による妥当性検証がされていない点には注意が必要です。1)Kogure Y, et al. Lancet Healthy Longev. 2021;2:e791-e800.2)Hurria A, et al. J Clin Oncol. 2011;29:3457-3465. 3)Cancer and Aging Research Group:Chemo-Toxicity Calculator講師紹介

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肺がん治療における経済的視点/治療医に求められる役割

 がん治療の経済的毒性が注目される中、日本肺癌学会が開催する肺がん医療向上委員会において、近畿大学の高濱 隆幸氏が講演した。高濱氏は肺がん診療の現場において、治療医が患者とのShared Decision Making(SDM)に、経済的視点を組み込む重要性を訴えた。治療の進歩と経済的負担の長期化 分子標的薬や免疫チェックポイント阻害薬といった新薬の登場により、肺がん患者の生存期間中央値は2年を超え、予後は著しく改善している。これらの新薬は高額であり、生存期間の長期化の見返りとして治療費や通院費などの副次的費用が増加する。また、離職による収入減で経済的負担を長期にわたって強いられる患者もいる。日本肺がん患者連絡会の調査では、肺がん患者の88%が高額療養費制度を利用しているにもかかわらず、63%が何らかの経済的負担を感じているという。診察室での経済的負担への対応 現状、診察室で医療費に関する議論を行うことは時間的制約などから難しく、患者も医師も金銭的な話題を避けがちである。この結果、患者は治療選択に必要な重要な経済情報を得る機会を逸している可能性が高い。 治療医は、治療の説明を行うだけでなく、患者にとって「最初の窓口」としての役割を再認識し、金銭的な問題を持つ患者を院内の適切な専門職へ迅速につなぐことが求められる。医師がすべての経済的負担を抱え込むのではなく、専門家との連携を強化することが、患者にとって最善のサポートを提供するカギとなる、と高濱氏は述べる。SDMにおける経済的背景の考慮 SDMにおいては、エビデンスに加え、患者の価値観、ライフスタイル、さらに経済的背景を把握する姿勢が不可欠である。肺癌診療ガイドライン2025年版に、初めて薬剤費の目安が記載されたことは、その必要性の高まりを示すものである。処方医は、自身が選択するレジメンのコストを最低限の基礎知識として身に付けておくべき時代、ともいえる。 国際的には、ASCOのValue FrameworkやESMOのMagnitude of Clinical Benefit Scaleなど、コスト効率を評価するツールが存在する。今後は、日本国内でも実用的なツール開発が今後検討されるべきであろう。 治療医は、最善の治療を届けたいという気持ちを忘れずに、どのようにしたら日本の医療制度が残せるのかを考えていくべきであり、学会は客観的なデータに基づいた議論を主導していくことが、最善の治療を患者に届けるための基盤となる、と高濱氏は結んだ。

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透析患者の緩和ケア【非専門医のための緩和ケアTips】第114回

透析患者の緩和ケア非がん疾患の緩和ケア、さまざまな疾患領域で語られるようになってきていますが、今後さらに重要になりそうな分野の1つが透析患者の緩和ケアです。私も十分な経験があるわけではなく、これから勉強していく分野ですが、読者の皆さんと一緒に考えたいと思います。今回の質問当院は透析施設があるのですが、通院する患者さんが高齢化しています。また、悪性疾患が併存している人もいて、将来のお看取りを支援することも求められそうです。透析患者にも緩和ケアが必要だと思うのですが、どのような注意点がありますか?透析導入からの生存期間が延び、末期腎不全と透析管理だけでなく、幅広い疾患への対応を求められるようになっています。併存症を抱え、人生の最終段階に差し掛かる透析患者においては、「いつまで透析をするか問題」に頭を悩ませます。今日は「いつまで透析を継続するか」という議論を中心に考えてみましょう。ご存知の方も多いと思いますが、さまざまな基礎疾患を背景に腎機能が低下し、末期腎不全に至ると透析を導入するかの議論がなされます。透析導入後は週に3回程度の通院が必要になり、腎臓が果たしている機能を透析で提供することになります。透析を継続できているあいだは良いのですが、お看取りの時期が近くなってくると血圧を維持できず、安全に透析を実施することが難しくなるケースがあります。一方、透析を中止すると尿毒症が悪化し、多くは1〜2週間で亡くなるため、透析を含む腎代替療法を中止する行為は倫理的な検討も含め、慎重に判断する必要があります。私自身の実感としては、近年では本人の意思として透析を導入しないことや、透析中止の希望を表明する患者さんを見ることが増えましたが、皆さんの経験ではいかがでしょうか?ここで、透析患者の緩和ケアが重要になってきます。妥当なプロセスを経て透析を導入しない、もしくは中止するという意思決定をした場合、適切な身体症状の緩和や心理サポートが重要になります。よくある身体症状としては、尿毒症の症状であるかゆみに対して、抗ヒスタミン薬や外用薬、ナルフラフィン(商品名:レミッチ)といった薬物療法を検討します。また、溢水症状による呼吸困難は非常に苦しい症状になるので、必要に応じて鎮静を検討する場合もあります。このように身体症状に対する介入は大切ですが、もう1つ、心理的サポートも忘れないでほしいポイントです。「サイコネフロロジー」という言葉を聞いたことがある方もいるかもしれません。これは腎不全に関連した心理的諸問題について扱う専門分野です。このように透析患者には多面的な支援が必要であり、透析患者の緩和ケアという分野の重要性が高まっています。今回のTips今回のTips透析患者の抱えるつらさを和らげるために、透析患者の緩和ケアにも注目してみましょう。

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第41回 「採血だけでがんが見つかる」は本当か? 「リキッドバイオプシー」の現在地

痛い検査なしで、採血一本でがんを早期発見したい。 これは多くの人にとっての願いであり、医療界が追い続けてきた夢でもあります。近年、日本でも自由診療のクリニックなどで「血液でわかるがん検査」を目にする機会が増えました。しかし、最新の科学はどこまでその「夢」に近づいているのでしょうか。医学雑誌Nature Medicine誌に掲載された最新の論文1)を基に、この技術の「期待」と「現実」を解説していきます。そもそも「リキッドバイオプシー」とは何か?まずは言葉の意味を確認しておきましょう。私たちが健康診断で行う血液検査とは異なり、がん細胞から血液中に漏れ出した微量なDNAなどを検出する技術を「リキッドバイオプシー」と呼びます。がん細胞は通常の細胞と同じように死滅し、その際に自分自身のDNAの断片を血液中に放出します。この「がんの破片」を高度な遺伝子解析技術で見つけ出し、がんの有無や性質、薬が効くかどうかを調べようというのが、このリキッドバイオプシーです。従来のがんの診断法である組織生検(体に針を刺したり手術で組織を切り取ったりする検査でこれが従来からバイオプシーと呼ばれるもの)に比べて、体への負担が圧倒的に少ないのが最大の特徴です。「がん検診」としての実力は?現在、最も関心が高いのは「健康な人が採血だけでがんを見つけられるか(スクリーニング)」という点でしょう。しかし、結論から言えば、「技術は進歩しているが、早期発見ツールとしてはまだ課題が多い」というのが現状です。実際、論文の中でも、一度に50種類以上のがんを検出できるとされる「Galleri」という検査の臨床試験データが紹介されています。この検査は、StageIV(進行がん)であれば93%という高い感度でがんを見つけることができました。しかし、私たちが検診に求めるStage I(早期がん)の検出率は、わずか18%にとどまりました。つまり、症状が出る前の「治りやすい段階」のがんを見つけることは、現在の技術でもまだ難しい場合があるのです。さらに問題となるのが「偽陽性(本当はがんではないのに陽性と出る)」です。ある追跡調査では、検査で「陽性」と出た人のうち、本当にがんだったのは半数以下(陽性の61%が偽陽性)でした。健康な人がこの検査を受け、「陽性」と言われれば、大きな不安を抱えながらCTやMRIなどの精密検査を受けることになります。結果的に何もなかったとしても、CTやMRIも早期のがんを見つけるのに優れたものとはいえず、その精神的負担やさらなる追加検査のリスクは無視できません。すでに「当たり前」になりつつある分野も一方で、リキッドバイオプシーがすでに医療現場で不可欠なツールとなっている領域もあります。それは、「すでにがんと診断された患者さんの治療方針決定」です。とくに進行がんの患者さんにおいて、どの抗がん剤や分子標的薬を使うべきかを決めるための遺伝子検査として、米国食品医薬品局(FDA)も複数の検査を承認しています。たとえば肺がんにおいて、組織を採取するのが難しい場合でも、血液検査で特定の遺伝子変異(EGFR変異など)が見つかれば、それに合った薬をすぐに使い始めることができます。これにより、治療開始までの時間を短縮できるというメリットも確認されています。また、手術後の「再発リスク」の予測にも大きな期待が寄せられています。手術でがんを取り切ったように見えても、目に見えない微細ながん(MRD:微小残存病変)が残っていることがあります。手術後の血液検査でこの痕跡が見つかった場合、再発のリスクが高いと判断でき、抗がん剤治療を追加するかどうかの重要な判断材料になりつつあります。自由診療での検査を受ける前に知っておくべきこと冒頭で述べたように、日本国内でも、がんの早期発見をうたった高額な血液検査が自由診療として提供されていることがあります。しかし、今回の論文が指摘するように、多くの検査法(マルチキャンサー検査など)は、まだ「検査を受けることで生存率を改善する(命を救う)」という明確な証拠が確立されているわけではありません。論文では、現在の技術的な限界として、血液中のがんDNAがあまりに微量であることや、加齢に伴って正常な血液細胞に生じる遺伝子変異をがんと見間違えてしまうリスクなどが挙げられています。もし、あなたが「安心」のためにこうした検査を検討しているのであれば、以下の点を理解しておく必要があります。 「陰性」でも安心はできない 早期がんの多くを見逃す可能性があります(Stage Iの検出率はまだ低い)。 「陽性」が本当とは限らない がんではないのに陽性と出る可能性があり、その後の精密検査の負担が生じます。 従来の検診の代わりにはならない 現時点では、確立されたがん検診(便潜血検査やマンモグラフィなど)を置き換えるものではありません。 未来への展望:AIと新技術の融合とはいえ、未来は決して暗くもないと思います。現在進行形で、DNAの断片化パターンや、DNAへの目印など、複数の情報をAIで統合的に解析する新しい手法を開発しています。これにより、早期がんの検出率を上げ、偽陽性を減らし、さらには「どこの臓器にがんがあるか」まで正確に予測できるようになると期待されているからです。リキッドバイオプシーは、間違いなく医療の未来を変えうる技術です。しかし、それが「魔法の杖」として誰もが手軽に使えるようになるまでには、もう少し時間がかかりそうです。今は過度な期待を持たず、しかしその進歩に注目し続ける、そんな冷静な視点が必要とされていると思います。 参考文献・参考サイト 1) Landon BV, et al. Liquid biopsies across the cancer care continuum. Nat Med. 2025 Dec 10. [Epub ahead of print]

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