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第51回 帯状疱疹ワクチンが認知症を防ぐ? 最新の大規模研究が明かす驚きの研究結果

高齢化が進む現在、認知症は誰にとっても無関係ではない重大な健康課題となっています。2050年までに世界の認知症患者数は1億5,000万人を超えると予測されていますが、いまだに根本的な治療法は確立されていません。そのような中、Nature Communications誌に掲載された最新の研究論文が、大きな注目を集めています1)。研究チームは、米国の医療システム「カイザーパーマネンテ・サザンカリフォルニア」の利用者約6万5,800人を対象に、現在主流となっている「組換え帯状疱疹ワクチン(商品名:シングリックス)」の接種状況と、その後の認知症発症率を詳しく追跡調査しました。その結果、2回のワクチン接種を完了した人は、未接種の人と比較して、その後の認知症発症リスクが51%も低いことが明らかになったのです。認知症の予防において、日々の生活習慣の改善に加えて、特定のワクチンがこれほど劇的なリスク低下をもたらすのであれば、画期的と言えるでしょう。なぜ帯状疱疹の予防が「脳」に関係するのか?しかし、そもそもなぜ皮膚の病気が主体となる帯状疱疹のワクチンが、脳の病気である認知症に影響を与えうるのでしょうか。この背景には、帯状疱疹の原因となる「水痘・帯状疱疹ウイルス」の特殊な性質が関係していると考えられています。このウイルスは、私たちが子供の頃に「水ぼうそう」として発症した後、体内の神経細胞の中に一生涯潜伏し続けます。そして、加齢や疲労、ストレスなどをきっかけに再び暴れ出し、神経を伝って帯状疱疹を引き起こします。このウイルスが再活性化するプロセスが、実は脳内での微細な炎症や神経細胞のダメージを誘発し、認知症の発症を早める一因になっているのではないかと推測されています。そして今回の研究データも、この仮説を支持するような興味深い傾向を示しています。たとえば認知症リスクの低下はアルツハイマー型認知症だけでなく脳血管性認知症にも共通して見られ、さらには認知症の前段階となる軽度認知障害(MCI)のリスク低下も示唆されています。つまり、ワクチンが特定の認知症に限らず、脳の機能低下全般に対して何らかの保護的な役割を果たしている可能性があるのです。この研究の「追加の価値」これまでにもワクチン接種と認知症リスクの低下を関連づける報告はありましたが、専門家の間では常に一つの大きな疑問が付きまとっていました。それは「自発的にワクチンを打つような人は健康意識が高く、食事や運動にも気を配っているため、もともと認知症になりにくいだけではないか」というバイアスに対する疑問符です。今回の研究が、大きな「追加の価値」を生み出している理由は、このバイアスを慎重な手法で排除した点にあります。研究チームは、帯状疱疹ワクチンを打った人と全く打っていない人を比較するだけでなく、別のワクチン(百日咳や破傷風などを予防するTdapワクチン)を接種したグループとの比較も行いました。分析の結果、帯状疱疹ワクチンの接種者は、別のワクチンを接種した健康意識の高い人たちと比べても、認知症のリスクがさらに27%低いことが判明しました。これにより、個人の健康意識の高さだけでは説明できない、帯状疱疹ワクチン固有の認知症予防効果の可能性がより強固に裏付けられたのです。現状の限界点と私たちが知っておくべきことこのように非常に希望の持てるデータが示されましたが、正しく解釈するためには、研究の「限界点」も知っておく必要があります。まず、これは過去の医療データを振り返って分析した観察研究であり、ワクチンが直接的に認知症を食い止めるメカニズムや因果関係を完全に証明したものではありません。また、認知症は通常、数十年という長い時間をかけて静かに進行する病気ですが、本研究の追跡期間は平均して約3.4年と比較的短いものです。このため、10年後、20年後といった長期的な予防効果が見られるのかについては、さらなる研究が必要です。加えて、医療機関の受診記録に基づいているため、病院を訪れない潜在的な認知症患者のデータが反映されていない点も考慮すべきでしょう。こうした限界はあるものの、今回の研究結果は私たちに前向きなメッセージを届けてくれました。帯状疱疹は50歳を過ぎると発症率が急増し、治癒後も長期間にわたって激しい痛みが続く病気です。この厄介な病気そのものを高率に防ぐというワクチンの本来の目的に揺るぎはありません。それに加えて「将来の脳の健康も守るかもしれない」という副次的メリットがあるのであれば、ワクチン接種を検討するうえでさらに前向きな材料となるのではないでしょうか。参考文献・参考サイト1)Rayens E, et al. Recombinant zoster vaccine is associated with a reduced risk of dementia. Nat Commun. 2026;17:2056.

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高リスク上咽頭がん、camrelizumabの上乗せ・維持療法が有効/BMJ

 導入化学療法後の高リスク上咽頭がん(NPC)患者において、同時化学放射線療法へのPD-1(プログラム細胞死1)阻害薬camrelizumabの上乗せおよび維持療法としてのcamrelizumab投与により、無増悪生存期間(PFS)の延長が認められたことが、中国・中山大学がんセンターのRui You氏らが同国で行った第III相の多施設共同非盲検無作為化試験の結果で示された。これまでの2つの第III相試験では、局所進行NPCへの、PD-1阻害薬と導入化学療法+同時化学放射線療法の組み合わせ治療について評価が行われ、1つの試験ではPD-1阻害薬が全過程を通して使用され、もう1つの試験ではPD-1阻害薬は維持療法として用いられていた。BMJ誌2026年2月10日号掲載の報告。主要評価項目はITT集団におけるPFS 研究グループは、高リスクNPC患者における、同時化学放射線療法+camrelizumabおよび維持療法としてのcamrelizumab投与について評価した。 試験は2020年8月~2022年6月21日に、中国の7病院で実施。18~70歳の成人NPC患者のうち、ゲムシタビンとシスプラチンによる導入化学療法を3サイクル受けた後、新たに高リスクと判定された患者(StageIVa、StageII~IIIで病状が安定または進行、あるいはEB[Epstein-Barr]ウイルスDNA検出)を対象とした。 被験者を、放射線療法+シスプラチンベースの同時化学療法を実施する群(標準治療群)または標準治療+3週ごとcamrelizumab(200mg)静脈投与を19サイクル実施する群(放射線療法+2サイクルの同時化学放射線療法への併用+17サイクルの維持療法、camrelizumab群)に、1対1の割合で無作為に割り付けた。 主要評価項目はITT集団におけるPFSで、無作為化から再発(局所または遠隔)あるいは全死因死亡までの期間で定義した。副次評価項目は、安全性、全生存期間などとした。36ヵ月PFS率、camrelizumab群83.4%、標準治療群71.3%で有意な差 390例が登録され、camrelizumab群(194例)または標準治療群(196例)に無作為化された。ベースラインでの特性は両群で類似していた。年齢中央値はcamrelizumab群46.0歳(四分位範囲[IQR]:36.8~54.0)、標準治療群45.0歳(35.0~54.0)。集団構成は、女性が107例(27.4%)、男性283例(72.6%)であった。StageIVaの患者の割合は、camrelizumab群73.2%、標準治療群72.4%。また、N3転移はcamrelizumab群41.2%、標準治療群37.8%であった。 追跡期間中央値39.9ヵ月(IQR:36.8~43.4)時点で、PFSはcamrelizumab群が標準治療群よりも有意に改善した(36ヵ月PFS率:83.4%[95%信頼区間[CI]:78.3~88.8]vs.71.3%[65.2~77.9]、層別ハザード比:0.51[95%CI:0.34~0.77]、p=0.001)。 急性および晩期有害事象(Grade3/4)の発現率は、camrelizumab群が50.5%と3.2%、標準治療群が48.7%と3.7%であった。免疫関連有害事象(Grade3/4)は、camrelizumab群19例(10.2%)で報告された。

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持効性注射剤ART、HIV患者の服薬アドヒアランス向上に寄与/NEJM

 服薬アドヒアランスに課題のあるHIV感染者において、持効性注射剤カボテグラビル・リルピビリンの月1回投与は、標準的な経口抗レトロウイルス療法(ART)よりもレジメン失敗リスクの低減に関して優れることが、米国・アラバマ大学バーミングハム校のAadia I. Rana氏らACTG A5359 LATITUDE Trial Teamによる非盲検無作為化試験の結果で示された。経口薬の服薬アドヒアランスに課題のあるHIV感染者における、持効性注射剤ARTの無作為化試験は不足していた。NEJM誌2026年2月26日号掲載の報告。ARTへの順守が不十分なHIV感染者を対象に、持効性注射剤ARTと経口ARTを比較 本試験の対象は、ARTへの順守が不十分(HIV-1 RNA値が持続的に200コピー/mL超または追跡不能)なHIV感染者であった。 被験者は、最長24週間のアドヒアランスサポート、条件付き経済的インセンティブ、および経口ARTによる標準治療を受けた(step1)。step1で、HIV-1 RNA値が200コピー/mL以下であった被験者は、経口導入療法の有無にかかわらず、標準治療を継続する群(標準治療群)または持効性注射剤カボテグラビル・リルピビリンの月1回投与に切り替える群(持効性注射剤ART群)に1対1の割合で無作為に割り付けられた(step2)。 主要アウトカムはレジメン失敗で、ウイルス学的失敗(HIV-1 RNA測定値が2回連続して200コピー/mL超)またはstep2の期間中における治療中止と定義した。48週までの累積レジメン失敗率、22.8%vs.41.2%で有意な差 2019年3月28日~2024年2月12日に、米国内33施設で適格患者453例がstep1に登録された。年齢中央値は40歳、29%が出生時女性で、63%が黒人だった。14%が注射剤を現在または過去に使用していたことを報告した。 step2にはstep1を完遂した306例が登録され、152例が持効性注射剤ART群に、154例が標準治療群に無作為化された。 追跡期間中央値48週後の事前規定の解析が行われた時点での副次アウトカムにおいて、持効性注射剤ART群の標準治療群に対する優越性が示されたため、step2の無作為化は早期に中止された。 48週までの累積レジメン失敗率は、持効性注射剤ART群22.8%、標準治療群41.2%であった(群間差:-18.4%ポイント、98.4%信頼区間[CI]:-32.4~-4.3、p=0.002)。 有害事象の累積発現率は、持効性注射剤ART群43.5%、標準治療群42.4%であった(群間差:1.1%ポイント、95%CI:-12.7~15.0)。耐性関連変異の発現は、ウイルス学的失敗が確認された各群2例で報告された。

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筋強直性ジストロフィー1型、del-desiranが有望/NEJM

 筋強直性ジストロフィー1型(DM1)は、常染色体優性遺伝性の進行性神経筋疾患であり、DMPK遺伝子の3'-非翻訳領域におけるCTGリピートの伸長によって発症する。本症は、身体機能障害を引き起こし、余命を短縮させるが、承認された治療法はない。米国・Virginia Commonwealth UniversityのNicholas E. Johnson氏らは「MARINA試験」において、本症の治療薬として開発中の抗体-オリゴヌクレオチド複合体delpacibart etedesiran(del-desiran[AOC 1001])の筋組織への送達が一部の患者で確認され、異常な選択的スプライシング(ミススプライシング)の改善を示唆するデータを得たことを報告した。del-desiranは、抗体部分がトランスフェリン受容体1を、オリゴヌクレオチド部分がDMPK遺伝子mRNAを標的とする。研究の成果は、NEJM誌2026年2月19日号で発表された。米国の無作為化プラセボ対照第I/II相試験 MARINA試験は、米国の8施設で実施した二重盲検無作為化プラセボ対照第I/II相試験(Avidity Biosciencesの助成を受けた)。2021年10月~2022年9月に、年齢18~65歳、遺伝子診断でDM1と診断され、DMPK遺伝子のCTGリピートが100回以上に伸長した患者38例(平均年齢42[±12.9]歳、女性28例[74%])を登録した。 本試験は2つのパートから成り、パートAではdel-desiran 1mg/kg体重を1回静脈内投与する群(6例)またはプラセボ群(2例)に、パートBではdel-desiran 2mg/kg体重を3回(1、43、92日)静脈内投与する群(9例)、同4mg/kg体重を3回(同)静脈内投与する群(13例)、またはプラセボ群(8例)に無作為に割り付けた。 主要エンドポイントは安全性であった。副次エンドポイントは、del-desiranの薬物動態・薬力学的プロファイル、および1mg群では投与43日目、2mg/4mg群では投与92日目(2回目投与後49日目)における下流の異常スプライシングパターンの変化とした。重篤な有害事象の1件が試験薬関連と判定 38例中35例に軽度または中等度の有害事象が発現した。プロトコールで規定された投与中止基準に該当した患者はいなかった。投与期間中に、del-desiranの投与を受けた患者のうち5例以上に発現した有害事象は、筋生検に伴う痛み、貧血、新型コロナウイルス感染症、頭痛、悪心であった。 2mg群の1例と4mg群の1例に、重篤な有害事象が1件ずつ発現した。前者は試験薬との関連はないと判定された。後者では、初回投与後24時間以内に記憶力低下と視覚障害の症状が発現し、数日後の頭部MRI検査で視床外側膝状体核領域の両側性の虚血とそれに続く出血性変化の可能性が推定され、試験薬関連と判定されたためその後の投与を中止した。 これにより、米国食品医薬品局によって新規の患者登録が一時的に停止されたが、すでに登録されていた参加者は投与の継続が許可された。この停止措置は、その後解除されている。DMPK mRNAの低下率は3つの用量で同程度 筋生検標本におけるDMPK mRNAレベルの変化率は、del-desiran 1mg群で-46%、2mg群で-44%、4mg群で-37%といずれも同程度に低下し、プラセボ群では0.9%増加した。また、低分子干渉RNA(siRNA)の血漿中最大濃度および曲線下面積は用量の増量に比例して増加し、尿中からは微量のsiRNAが回収された。 ベースラインからの平均複合ミススプライシングスコアの減少率は、1mg群で3%、2mg群で17%、4mg群で16%、プラセボ群で7%であり、2mgおよび4mg群におけるミススプライシングの改善が確認された。 著者は、「総DMPK mRNAの明らかな減少と、オルタナティブスプライシング調節の回復は、siRNAが筋組織に送達されたことを示すと考えられる」「これらのデータは、臨床研究の継続を支持するものである」としている。 現在、MARINA試験を完了した参加者を対象に、より長期の治療効果を評価する目的で、非盲検下の延長試験が進行中で、並行してdel-desiran 4mg/kg体重の8週ごとの投与を評価する二重盲検無作為化プラセボ対照第III相試験(HARBOR試験)が進められているという。

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寿命の半分以上は遺伝で決まる?

 長生きするためには、健康的な食生活を送り、適度に運動を行い、悪い習慣を避けることが基本だと言われている。しかし、遺伝の影響(遺伝率)はそれ以上に重要かもしれない。新たな研究で、寿命の約55%は遺伝によって説明される可能性が示された。これは、これまでの推定(6〜33%)を大きく上回る数字だ。ワイツマン科学研究所(イスラエル)のBen Shenhar氏らによるこの大規模研究の詳細は、「Science」に1月29日掲載された。 これまで推定された寿命の遺伝率は20~25%程度と推定されており、なかには6%と見積もられたこともあった。しかし研究グループは、これらの推定値は、事故や感染症などの外的要因による死亡(外因性死亡)と、老化や病気などの内的要因による死亡(内因性死亡)を区別せずに推定された数字だと指摘している。この欠点を踏まえて今回の研究では、外因性死亡と内因性死亡を数学的に分離するモデルを構築し、双子を対象にした3つの大規模研究のデータを用いて、内因性死亡による寿命がどの程度遺伝の影響を受けるのかを検討した。 その結果、外因性死亡の影響を補正すると、内因性死亡の遺伝率は約55%と、従来の推定値より大幅に高いことが示された。このような高い遺伝率は、ヒトの複雑な形質の多くや他の種の寿命の遺伝率とほぼ同様であった。 Shenhar氏は、「この数字は根拠のないものではない。双子研究を見ると、ほとんど全ての人間の形質の遺伝率は50%程度だ。例えば、閉経年齢の遺伝率も約50%だ」と述べている。コペンハーゲン大学(デンマーク)のMorten Scheibye-Knudsen氏も、この方法によって老化を理解する際の「外的ノイズ」を除去できたと指摘している。同氏は、「人間は、最長で120歳まで生きる。酵母の寿命は13日、ボウヘッドクジラ(北極クジラ)の寿命は200年だ。われわれは、遺伝子が寿命の限界を決めていることをすでに知っている。それゆえ、寿命は、われわれの行動だけで説明できる問題ではないということについて、もう少し考えるべきだったと思う」と話している。 一方、米バック老化研究所のEric Verdin氏は、新型コロナウイルス感染症(COVID-19)などの感染症による死亡も遺伝の影響を受ける可能性があると指摘している。しかしShenhar氏らによると、加齢に伴う健康リスクの上昇を考慮してデータを再分析しても、寿命の約50%は遺伝的要因によって説明されることが確認されたという。 さらにこの研究は、100歳まで生きる人が慢性疾患のリスクを下げる遺伝子を持っていることを示す以前の研究結果とも一致している。Shenhar氏は、「100歳まで生きる人は、単に頑張って生き延びているわけではない。加齢による悪影響から身を守る遺伝子を持っているのだ」と説明している。現在、寿命に関わることが分かっている遺伝子はFOXO3、APOE、SIRT6とわずかだが、Verdin氏は、「寿命は一つの遺伝子ではなく、多くの遺伝子が相互に作用して決まる」と述べている。 ただし、Verdin氏とShenhar氏はいずれも、生活習慣の重要性を強調している。Shenhar氏は、「遺伝が寿命の55%を決めるとしても、残りの45%は食事や運動、生活習慣などに左右される。このことは、『それなら何をしたって一緒だ。遺伝で寿命が決まっているのなら、生活習慣を改め、飲酒を控え、運動を行う必要があるのか』と悲観的に捉えられがちだ」と指摘する。その上で、「われわれの論文が伝えているメッセージは、生活習慣や運動、食事が重要ではないということではない。遺伝が潜在的な寿命の範囲を決めているとしても、それは生活習慣次第で多少は伸びたり縮んだりする。だからこそ、生活習慣は依然として大切なのだ」と強調している。

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タケノコが血糖管理などの健康維持に役立つ可能性

 タケノコが血糖コントロールをサポートするように働く可能性のあることが報告された。英アングリア・ラスキン大学のLee Smith氏らの研究によるもので、血糖コントロールのほかにも、タケノコには炎症抑制や消化促進、抗酸化作用などの働きがあるという。この研究結果の詳細は「Advances in Bamboo Science」2025年11月発行号に掲載されるとともに、1月14日に同大学からニュースリリースが発行された。 竹は地球上で最も成長の速い植物と考えられていて、種類によっては1日で3フィート(約90cm)近く成長することもある。その豊富さや軽さなどのため、建築や家具製造などに広く用いられている。さらにアジア諸国では、竹の芽(ごく若い竹の茎)であるタケノコが食されていて、一部の地域では食卓に欠かせない食材となっている。 タケノコは脂肪分が少なく、タンパク質、必須アミノ酸、食物繊維が豊富に含まれていて、カリウムやセレンなどのミネラル、および、チアミンやナイアシン、ビタミンB6、A、Eなどのビタミンの含有量も多い。このような特徴に着目して、タケノコの健康効果を検討した研究結果が既に複数報告されている。ただし、それらの報告を統合した解析はまだ行われていない。これを背景にSmith氏らは、タケノコの健康効果に関する現時点のエビデンスを、システマティックレビューによって総括することを試みた。 Medline/PubMedとWeb of Scienceという二つの文献データベースを用いた検索を行い、16件の研究報告を抽出した。ヒトを対象に行われていた4件の研究では、タケノコは糖尿病の管理(血糖コントロールの改善)や心臓病リスクの抑制(コレステロールの低下)につながる可能性が報告されていた。例えば血糖コントロールについては、糖尿病患者にタケノコを加えた食事を食べてもらったところ、食後の血糖値の上昇が穏やかになったことが報告されていた。ほかにも、実験室レベルの検討からは、タケノコには腸の機能を改善する食物繊維が含まれていること、腸内の有益な細菌を増やすこと、体内の抗酸化作用や抗炎症作用を高めることなども示されていた。 これらの健康に対する潜在的なメリットが見られた一方で、研究者らは、タケノコを正しく調理する必要があることを警告している。竹の種類によってはシアン配糖体という毒性のある物質を含むものがあり、生または加熱が不十分なタケノコを食べると、体内でシアン化物が放出されることもあり得るという。また、タケノコは甲状腺ホルモンの生成に影響を及ぼし、不適切な摂取によって甲状腺腫のリスクが高まる可能性を示唆する研究報告もあった。研究者らは、タケノコを食べる際にはまずゆでておき、それから調理することで、こうしたリスクを回避できると述べている。 論文の上席著者であるSmith氏は、「アジアで広く食べられているタケノコは、世界中の人々の健康的で持続可能な食生活の維持に利用できる可能性を秘めている。ただし、正しく調理する必要がある」としている。また、「今回のレビューでは、ヒトを対象とした研究はわずか4件だった。よって、タケノコ摂取に関する確かな推奨を提示する前に、ヒトを対象とした質の高い研究をさらに行う必要がある」と付け加えている。

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インフルA型、B型それぞれの感染に影響する個人的・環境的要因

 インフルエンザの感染伝搬について、個人的および環境的要因が及ぼす影響について評価したカナダ・マクマスター大学のNushrat Nazia氏らによる研究の結果、高年齢であることはとくにB型インフルエンザ感染において防御的に働く可能性が示された。また環境・地理的要因がインフルエンザ感染に与える影響はウイルスの型ごとに異なっていた。Influenza and Other Respiratory Viruses誌2026年2月号掲載の報告。 本研究は、カナダの厳格なキリスト教徒「フッター派(Hutterite)」のコミュニティを対象に行われた。同コミュニティは外部との接触が少なく、ライフスタイルが共通した単一的で明確な集団構造を持つ。Nazia氏らは、「階層構造を明確に定義できる」という特性を活かすことで、一般的な社会では困難な、集団と個人の各要因が感染リスクに与える影響をより高い精度で推論可能な点が本研究の強みとしている。 2008年のインフルエンザシーズンにおける、カナダの46のフッター派コロニーに属する3,271例のデータが解析された。PCR検査で確定されたインフルエンザA型およびB型の週別症例について、人口統計学的要因、ワクチン接種状況、地理的および気象条件との関連を検討した。解析には、コロニーのクラスタリングと時間的自己相関を考慮したIntegrated Nested Laplace Approximations(INLA法)によるマルチレベル・ベイズ階層モデルが使用された。 主な結果は以下のとおり。・3,271例(平均年齢26歳、女性43.5%、インフルエンザワクチン接種率24.3%)中、239例(7.3%)がPCR検査によりインフルエンザと確定された(A型:128例、B型:111例)。・年齢の高さによる防御的な効果が認められ、インフルエンザB型(相対リスク[RR]:0.93、95%信用区間[CrI]:0.91~0.95)ではインフルエンザA型(RR:0.99、95%CrI:0.98~1.00)よりも強い効果が認められた。・男性は女性と比較してわずかに感染リスクが低かった。・いずれのモデルにおいても、個別ワクチン接種による予防効果は認められなかった。しかし、コロニー単位でのワクチン接種群への割り当ては、すべてのインフルエンザ(RR:0.29、95%CrI:0.10~0.83)およびインフルエンザA(RR:0.17、95%CrI:0.04~0.62)の感染リスクの大幅な低下と関連していたが、インフルエンザBでは関連がみられなかった。・最寄りの都市までの距離と標高は、感染リスク低下と弱い関連を示したが、不確実性が大きく、その関連は限定的であった。・前週の気温の高さは、インフルエンザAの感染リスク低下(RR:0.91、95%CrI:0.86~0.95)およびインフルエンザBの感染リスク上昇(RR:1.19、95%CrI:1.09~1.31)と関連していた。

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風邪がひどくなるかどうかは「鼻の細胞」で決まる?

 なぜ、同じウイルスに曝露して、ひどく寝込む人とほとんど症状が出ない人がいるのだろうか。その答えは、「鼻の中で何が起きているか」にあるかもしれない。新たな研究で、風邪の最も一般的な原因ウイルスであるライノウイルスに対して鼻腔内の細胞がどのように反応するかが、症状が出るかどうかやその重症度を左右し得ることが明らかになった。米イェール大学医学部の免疫学者Ellen Foxman氏らによるこの研究結果は、「Cell Press Blue」に1月19日掲載された。 Foxman氏は、「この研究によって、一般的な風邪の感染時に体内で何が起きているのか、これまでになく詳細に理解できるようになった」とウォール・ストリート・ジャーナル紙に対して語っている。 ライノウイルスは1年を通して見られるものの、特に秋と冬に多くなる。このウイルスに曝露された全ての人が発症するわけではなく、実際、感染しても症状が出るのは約半数に過ぎないという。そこで研究グループは今回、ウイルス曝露時の鼻上皮における細胞レベル・分子レベルの変化を詳しく調べるため、ヒト鼻粘膜上皮細胞を気液界面で4週間培養し、繊毛を持つ細胞や粘液産生細胞を含むヒト鼻粘膜に近い組織モデルを構築した。 その結果、ライノウイルスに曝露した際の反応は、大きく2つに分かれることが分かった。1つ目は、鼻の上皮細胞でウイルスの侵入や増殖を防ぐタンパク質であるインターフェロン(IFN)応答が正常に機能している場合である。この場合、鼻の上皮細胞がIFNを産生することで、感染する細胞が2%未満に抑えられた。IFN応答が迅速に起きると、ウイルスは増殖して症状を引き起こす前に封じ込められる。 もう1つは、IFN応答が遅れたり阻害されたりする場合である。この場合、ウイルスは容易に広がり、30%超の細胞が感染した。その結果、炎症や過剰な粘液分泌が起こり、典型的な風邪症状が現れる。人が「風邪を引いた」と実感するのは、この段階である。 Foxman氏は、「どちらの反応に傾くかを決定付ける要因は、まだ完全には分かっていない」と話す。ただし、本研究では、予後の良し悪しに関連するいくつかの要因が特定された。例えば、直近で別のウイルス感染を経験していた人ではすでにIFN応答が活性化している可能性があり、新たなウイルスを素早く抑え込むのがより容易になる。また、温度も重要だと考えられる。鼻や肺の空気が冷えていると、IFNの産生が遅れ、ウイルスが拡散する時間が長くなる可能性がある。これは、冬に風邪が流行しやすい理由の一部である可能性がある。さらに、環境要因も影響する。Foxman氏は、「大気汚染やタバコの煙を吸い込むと、その後に曝露される風邪ウイルスなどに対する免疫応答が大きく変化し、たいていは、より有害な炎症反応につながる」と説明している。

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第307回 小児科医由来の抗体が強力にRSウイルスを阻止

およそひっきりなしに呼吸器ウイルスに接することがいわば宿命の小児科医の血液由来の抗体が、承認済みの抗体より25倍も強力に呼吸器合胞体ウイルス(RSV)を阻止し、しかもより多種のウイルス株を相手にできることが示されました1,2)。ニューモウイルス科に属するRSVやヒトメタニューモウイルス(hMPV)は世界の健康を蝕む主因の1つで、高齢者、免疫不全者、2歳以下の小児、とくに生後6ヵ月までの乳児の急な下気道感染症を引き起こします。RSVの融合前Fタンパク質抗原やその抗原を作るmRNA入りのワクチンの高齢者への接種は承認されていますが、小児向けの開発は難航しています。たとえば高齢者への使用が承認済みのモデルナのmRNAワクチンmRESVIAの生後8~23ヵ月の乳幼児への接種試験では、期待とは裏腹に重度/要入院の下気道感染症がより多く発生しており3)、試験中断を余儀なくされています。RSVとhMPVの両方を相手するワクチンmRNA-1365でもやはりRSVによる重度/要入院の下気道感染症がより多く発生しました。成人へのRSVワクチン接種でも心配事があります。RSVワクチンの普及は、新型コロナウイルス(SARS-CoV-2)が変異株を次々に発生させているように、網の目を潜る変異株の発生を促す恐れがあります。一方、ウイルスの不変領域に取り付く抗体であれば変異株を発生し難くできそうですが、そういう抗体はウイルス阻止効果がいまひとつという弱みがあります。では弱みのない抗体を見つけるにはどうしたらよいか? 小児のさまざまな感染症に日々取り組む仕事柄、RSVやhMPVに繰り返し接する小児科医の自然免疫は実は宝の山で、ウイルスとの歴戦で鍛え上げられた強力な抗体を備えているかもしれません。中国の重慶医科大学小児病院のHui Zhai氏らはそう考え、同病院で10年を超えて働く小児科医10人の血液を調べてみました。すると、それら小児科医の抗体のRSV阻止活性は、仕事でRSVやhMPVに接することのない健康な成人14人を3倍超上回りました。阻止活性が高かった小児科医3人の血液中の抗体をふるいに掛けところ、調べた57の抗体のほぼすべての56がRSVの融合前Fタンパク質にしかと結合しました。続いてそれらの抗体の人工品を作って研究室で検討したところ、CNR2056とCNR2053という呼び名の2つがRSV株のより多くに対してとくに活性を示しました。CNR2047という名称のもう1つの抗体はRSVとhMPVの両方を手広く阻止する交差活性がありました。CNR2056、CNR2053、CNR2047を単独または組み合わせてマウスやラットに投与したところ、RSVやhMPV感染症状を防げました。ウイルス阻止活性は強力で、既存のRSV阻止抗体のニルセビマブ(商品名:ベイフォータス)やclesrovimabを最大25倍上回りました。ニルセビマブやclesrovimabにせよRSVワクチンにせよ今のところ相手しうるRSV株の種類は限られます。小児科医がその職業人生で身に着けた自然免疫から見つかった今回の抗体の組み合わせは、多用途でより手広く感染を防ぐ手段となりうるとZhai氏らは示唆しています1)。参考1)Antibody cocktails based on the occupationally acquired immunity of pediatricians neutralize and confer protection against RSV and hMPV / Science Translational Medicine2)Paediatricians’ blood used to make new treatments for RSV and colds / NewScientist(MSN)3)Snape MD, et al. Safety and Immunogenicity of an mRNA-Based Rsv Vaccine and an Rsv/hMPV Combination Vaccine in Children 5 to 23 Months of Age. Preprints. 2024 Dec 11.

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マスクで心筋梗塞リスクが低下!?/Eur Heart J

 PM2.5への短期曝露は、急性心筋梗塞(AMI)リスクと関連することが知られている。AMIのなかでも、冠動脈閉塞を伴わない心筋梗塞(MINOCA)は、PM2.5の影響を受けやすい可能性がある。そこで、石井 正将氏(熊本大学病院 医療情報経営企画部)らの研究グループは、新型コロナウイルス感染症のパンデミックに伴うマスク着用や行動制限などの公衆衛生上の介入が、PM2.5曝露とAMIによる入院との関連に及ぼす影響を調査した。その結果、パンデミック前後のPM2.5への曝露に伴う心筋梗塞による入院リスクは、AMI全体および閉塞性冠動脈疾患を伴う心筋梗塞(MI-CAD)では不変であったが、MINOCAではパンデミック後に有意に低下した。本研究結果は、European Heart Journal誌オンライン版2026年2月13日号に掲載された。 本研究の対象は、2012年4月1日~2022年3月31日に、日本循環器学会が認定する施設へ入院したAMI患者27万91例(MI-CAD:24万7,054例、MINOCA:2万3,037例)とした。パンデミックの影響を評価するため、日本で緊急事態宣言が発令された2020年4月7日を境界として、研究期間をパンデミック前(2012年4月1日~2020年4月6日)とパンデミック後(2020年4月7日~2022年3月31日)に分類した。時間不変因子(性別、基礎疾患など)の影響を排除するため、時間層別ケース・クロスオーバー法を用いて、入院2日前のPM2.5濃度が10μg/m3上昇した際のAMIによる入院のオッズ比(OR)を算出した。気温や湿度などの気象条件、長期的なPM2.5の傾向、Googleが提供するコミュニティモビリティレポートを用いた人流データなどを調整して解析した。 主な結果は以下のとおり。・MI-CAD群、MINOCA群の年齢中央値はそれぞれ70歳、71歳であり、男性の割合はそれぞれ75.5%、65.1%であった。・全期間において、入院2日前のPM2.5濃度が10μg/m3増加するごとに、AMI全体、MI-CAD、MINOCAのいずれについても入院リスクの有意な上昇が認められた。・年間の平均PM2.5濃度を15μg/m3とした場合、2日前にPM2.5濃度が10μg/m3上昇すると、入院のORはAMI全体が1.105(95%信頼区間[CI]:1.022~1.193)、MI-CADが1.088(95%CI:1.004~1.180)、MINOCAが1.303(95%CI:1.005~1.688)に上昇した。・年間の平均PM2.5濃度を15μg/m3とした場合、パンデミック前後の比較において、AMI全体、MI-CADでは有意な変化はみられなかった。一方で、MINOCAについては、パンデミック後にリスクが減弱した。パンデミック前後のOR、交互作用のp値は以下のとおり。 AMI全体:1.105→1.091、p for interaction=0.070 MI-CAD:1.088→1.079、p for interaction=0.241 MINOCA:1.303→1.230、p for interaction=0.017・パンデミック開始日の定義を変更するなど、複数の感度分析を実施しても、パンデミック後のMINOCAによる入院リスク低下の傾向は一貫していた。 本研究結果について、著者らは「パンデミック後の期間においてMINOCAによる入院リスクが低下したことは、マスク着用や行動制限などの公衆衛生上の介入が大気汚染に関連する心血管イベントに影響を及ぼすことを示唆している」と結論を述べた。また、パンデミック後のMINOCAによる入院リスクの低下は、行動制限や他の大気汚染物質の影響を考慮しても有意であったことに触れ「MINOCAの主な原因とされる冠攣縮や冠微小循環障害に対し、行動変容が保護的に働いた可能性が強く示唆される」と考察した。

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成人の肥満、重症感染症リスクが1.7倍/Lancet

 成人肥満は、病原体の種類、集団および患者背景を問わず感染症による入院および死亡のリスク因子であり、世界中の感染症による死亡の約10例に1例が肥満に起因する可能性があることを、フィンランド・ヘルシンキ大学のSolja T. Nyberg氏らが、同国の前向きコホート研究および英国のUK Biobankのデータを解析した結果で示した。これまで成人肥満は、特定の感染症との関連は示されているが、感染症全体に及ぼす影響に関するエビデンスはほとんどなかった。Lancet誌オンライン版2026年2月9日号掲載の報告。フィンランドの2つのコホート約6万8千例と、英国の約47万9千例のデータを解析 研究グループは、フィンランドの2つの前向きコホート研究であるFinnish Public Sector(FPS)試験(ベースライン2000~02年)とHealth and Social Support(HeSSup)試験(ベースライン1998年)の統合データを用いて解析を行い、UK Biobank(ベースライン2006~10年)の独立した集団で再現性を検証した。 ベースラインでBMI値を評価し、健康体重(BMI 18.5~24.9)、過体重(BMI 25.0~29.9)、肥満(クラスI:BMI 30.0~34.9、クラスII:35.0~39.9、クラスIII:≧40.0)に分類した。 主要アウトカムは、非致死的感染症による入院または致死的感染症(重症感染症)の初回発生で、入院・死亡登録を通じて特定した。追跡調査期間は、FPS試験では2016年まで、HeSSup試験では2012年まで、UK Biobankでは2022年までであった。ベースラインまたはそれ以前に、入院登録に感染症の記録のある参加者は除外した。 肥満と重症感染症との関連についてハザード比(HR)を算出するとともに、世界疾病負担研究(GBD)のデータベースの肥満有病率推定値を用いて、2018年(COVID-19パンデミック前)、2021年(パンデミック中)、2023年(パンデミック後)における肥満に起因する致死的感染症の割合を世界全体、地域別および国別に推定した。 解析対象は、フィンランドコホートが計6万7,766例(平均年齢42.1歳[SD 10.8]、女性4万9,516例[73.1%]、男性1万8,250例[26.9%])、UK Biobankが47万9,498例(平均年齢57.0歳[SD 8.1]、女性26万1,084例[54.4%]、男性21万8,414例[45.6%])であった。重症感染症リスクは1.7倍、感染症死亡例の約10例中1例は肥満に起因 フィンランドコホートでは、追跡期間(平均±SD)14.1±3.1年において新規重症感染症が8,230例に発生した(平均年齢50.7歳)。UK Biobankでは、同様に12.6±3.2年において8万1,945例に発生した(平均年齢67.0歳)。 肥満は新規重症感染症リスクと関連し、すべてのコホートにおいてBMI値カテゴリーが上がるに従いHRも上昇した。健康体重者と比較し、クラスIII肥満者は非致死的重症感染症のリスクが3倍高く(フィンランドコホートのHR:2.75[95%信頼区間[CI]:2.24~3.37]、UK BiobankのHR:3.07[95%CI:2.95~3.19])、致死的重症感染症も同様であり(フィンランドコホートのHR:3.06[95%CI:1.25~7.49]、UK BiobankのHR:3.54[3.15~3.98])、両者の統合HR(いずれかのアウトカムに至るリスク)は、フィンランドコホートが2.69(95%CI:2.19~3.30)、UK Biobankが3.07(2.95~3.19)であった。 クラスI~IIIいずれかの肥満を有する場合、健康体重者に対する非致死的または致死的重症感染症の統合HRは1.7(95%CI:1.7~1.8)であった。この関連は、肥満の指標(BMI、腹囲、腹囲身長比)、ベースラインの人口統計学的・臨床的サブグループ、および感染症のタイプ(細菌ウイルス、寄生虫、真菌、急性、持続性など)で一貫していた。 これらのリスク推定値をGBDのデータに適用すると、肥満に起因する感染症関連死亡の人口寄与割合は、2018年で8.6%(95%CI:6.6~11.1)、2021年で15.0%(12.8~17.4)、2023年で10.8%(8.6~13.6)と推定された。

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飲んでないのに酔っぱらう? その原因は腸のまれな病気の可能性

 お酒を全く飲んでいないのに酔ったようになることがあるとしたら、それは「自家醸造症候群」という、腸内細菌が関与している珍しい病気のせいかもしれない。この病気の発症メカニズムの一端を解明した、米マサチューセッツ総合病院マス・ジェネラル・ブリガムのElizabeth Hohmann氏らの研究結果が、「Nature Microbiology」に1月8日掲載された。 食品中の炭水化物が消化の過程で腸内細菌の働きを受けると、ごくわずかなアルコール(エタノール)が生成されることがある。このような反応は誰にでも起こり得るが、生成されるエタノールは微量であるため酔うようなことはない。ところが、エタノールが大量に生成されてしまう自家醸造症候群という非常にまれな疾患があり、その患者は一切飲酒をしていないにもかかわらず酔いを呈することがある。 論文の共同責任著者の1人であるHohmann氏は、「この疾患は誤解されやすく、検査法や治療法もほとんどない。しかしわれわれの研究からは、糞便移植により治療できる可能性が示された」と話している。実際、糞便移植を受けた1人の患者は、移植後に症状が改善したという。同氏は、「この病気の原因となる腸内細菌を特定し、その細菌がエタノールを発生するメカニズムを明らかにすることが、診断・治療戦略の確立と患者の生活の質(QOL)向上につながるだろう」とも述べている。 研究者によると、自家醸造症候群は確かにまれではあるものの、これまでに考えられてきたほど希少ではない可能性があるという。米クリーブランド・クリニックの研究によれば、これまでの症例報告は100件に満たないが、この疾患の認知度が低いため、患者および医師も飲酒せずとも酔うという現象を認識できず、診断されていない患者が存在すると考えられるとのことだ。 Hohmann氏らは、自家醸造症候群の患者(22人)と、その患者と同居している健康な人(21人)、および患者と同居していない健康な人(22人)を対象とする研究を行った。論文には、この研究参加者数は自家醸造症候群に関する研究として、これまでで最大の規模だと記されている。 各群の便を採取して、エタノールをどのくらい生成するかを比較したところ、患者の症状が悪化した時に採取した便は、他群に比べて有意に多くのエタノールを生成することが分かった。この結果は、便検体を用いる検査によって、自家醸造症候群を診断できる可能性を示していると、研究者らは考えている。さらに、便検体の分析により、大腸菌やクレブシエラ菌といった一般的な細菌を含むいくつかの細菌が、この疾患の発症に関係していることが示された。 また、抗菌薬を複数回服用後に自家醸造症候群を発症した男性に対する、糞便移植による治療も試みられた。健康なドナーから採取した腸内細菌が含まれているカプセルを服用してもらったところ、その後3カ月間は症状が現れず、さらに2度目の糞便移植後には16カ月以上にわたり症状のない状態が続いた。 著者らは、「現時点で自家醸造症候群に対するコンセンサスや標準的な治療法はなく、この衰弱性疾患を持つ患者は、残念ながら診断の遅延やQOLの著しい低下を経験し、家族的・社会的・法的に困難な状況に陥ることが多い」と、本研究の背景や現状の課題を述べている。

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膀胱でアルコールを醸造していた男性【Dr. 倉原の“おどろき”医学論文】第300回

膀胱でアルコールを醸造していた男性飲酒していないにもかかわらず、体内でエタノールが産生され酩酊状態に陥る「自家醸造症候群(Auto-brewery syndrome)」をご存じでしょうか。一般的には、本連載でも取り上げた腸内細菌叢の異常による消化管内発酵が知られていますが、実は尿路においても同様の現象が起こり得ます。A Alduraywish A. Case Report: Diabetic urinary auto-brewery and review of literature. F1000Res. 2021 May 20;10:407.今回紹介する症例は、85歳の男性で、20年来の2型糖尿病があり、過去5年間はインスリン療法を受けていました。重要な点として、この患者は生涯にわたり飲酒歴がありませんでした。てんかんの既往があり、抗てんかん薬(ガバペンチン)を服用中で、慢性便秘も認めていました。発症の契機は、介護者である妻の体調不良により、約1週間にわたって食事管理と服薬が乱れたことでした。患者はめまいと意識変容から始まり、次第に尿便失禁、興奮、暴言、介助拒否といった症状が出現しました。血液検査では、HbA1cが7.25%と中等度のコントロール不良を示していましたが、肝機能・腎機能は正常範囲内でした。衝撃的だったのは、禁酒者であるにもかかわらず、血中エタノール濃度が110mg/dL、尿中エタノール濃度が580mg/dLという高値を記録したことでした。これらの数値は、多くの国で飲酒運転の基準値を大きく上回るレベルでした。アムホテリシンBの静注を5日間行い、治療開始5日後には血中・尿中エタノールは検出されなくなり、尿からカンジダも消失しました。患者の意識状態は改善し、見当識も回復して、日常生活に復帰することができました。これまでの研究の多くは腸管発酵に焦点を当てており、尿路における発酵という視点が見過ごされてきました。糖尿病患者では高血糖に伴う尿糖排泄が増加し、カンジダ属の増殖に有利な環境が形成されます。実際、2型糖尿病患者におけるカンジダ尿症の有病率は2.7〜30%と報告されており、HbA1cが7%を超える患者、尿pHが酸性(5〜6)の患者、尿糖が強陽性の患者でその頻度が高くなります。膀胱でアルコールが醸造されるという病態があること、知っておくと何かの役に立つかもしれません。

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第301回 麻疹の流行が止まらない!見落としていたもう一つのセキュリティーホール

INDEX2026年麻疹発生状況もう一つのセキュリティーホールと解決策2026年麻疹発生状況年明けからわずか2ヵ月弱だが、現在の麻疹の発生動向を見ると、何とも不気味である。国立健康危機管理研究機構が公表する感染症発生動向調査週報(IDWR)1)の2026年第6週(2月2~8日)までの速報ベースの累計報告数は32例。昨年の同週での累計が3例だったことを考えれば、年初からかなりのハイペースである。第1週から第6週を見ると以下のような推移になり、第5週を境に感染報告数が跳ね上がっている。画像を拡大する累計報告数を都道府県別で見ると、東京都が6例、栃木県、新潟県、大阪府が各4例、埼玉県、千葉県が各3例、神奈川県、岩手県が各2例、北海道、茨城県、愛知県、京都府が各1例。現状は首都圏、東海圏、近畿圏という人口密集地域での報告が主である。本連載でもすでに取り上げているが、昨年の麻疹発生状況もかなりのものだった。2025年最後の第52週(12月22~28日)までの速報ベースの累計報告数は265例で、2024年の同週(12月23~29日)の45例と比較して約6倍まで増加していた。さらに、日本の麻疹土着株の遺伝子型D5は長きにわたって検出事例はなく、それがゆえに日本は2015年、世界保健機関(WHO)西太平洋地域事務局から麻疹排除国として認定されている。現在の麻疹感染報告はいわば輸入例であり、ウイルスの遺伝子型からも、その多くが東南アジア・南アジア方面を起源とするものと推定されている。実際、米国・ボストン小児病院が開発・運営する世界の感染症発生情報を可視化したサイト「HealthMap」2)を参照すると、現状、東南アジアや南アジアでは麻疹がかなり流行していることがわかる。だからこそ、前回、この地域からの技能実習や特定技能での来日者やその雇用主へのワクチン接種の積極的勧奨、そのための接種費用の一部助成などの施策を考えてもよいのではないかと私個人は提案したのであった。もう一つのセキュリティーホールと解決策この考えに今も変更はないが、最近、もっと重要な視点が抜け落ちていると気付き始めた。それは日本人でのワクチン接種の推進である。前回も紹介したように、令和6年度(2024年4月1日~2025年3月31日)のワクチン定期接種対象者の接種率は、第1期が92.7%、第2期が91.0%であり、麻疹の集団免疫獲得に必要なワクチン接種率95%以上にはやや及ばない。ここは従来どおり、国や各自治体による地味な啓発の継続が必要である。だが、麻疹に関してはここにセキュリティーホールがあることを私自身はすっかり忘れていた。それは現在の麻疹のワクチン接種が2回体制になったのは、2006年からである。ご存じのように1回接種では、約5%の人では十分な免疫を獲得できず、また、経年での抗体価低下を補うブースター効果を期待して、このような措置へと変更された。日本で麻疹ワクチンの定期接種が始まったのは1978年で、約30年間は1回接種で済まされていた。当然ながらこの世代には、免疫獲得が不十分な人もかなり抗体価が低下した人もいるはずだ。その意味では、国がかつて風疹ワクチンの接種対象ではなかった中高年男性に対して抗体価検査の無料クーポン配布とその結果に応じた無償接種の機会を提供したことは記憶に新しい。この事業は2024年度で終了したが、改めて麻疹ワクチンの1回接種世代を対象に似たような事業を行ってもよいのではないだろうか?ちなみにざっくり対象人口を計算すると、約1億人と推計される。一般に麻疹の抗体価検査は3,000円前後であるので、この全員が抗体検査を受ければ、予算規模は約3,000億円。そのうち3割程度が接種対象だったと仮定した場合、約8,000円と言われるMRワクチンの接種費用を掛け合わせて約2,400億円。総額5,400億円の計算になる。もちろん大変な規模の支出にはなるが、その後の経済効果まで考えれば、赤字国債を発行しても元が取れるのではないだろうか? いっそこのケースでは、あの“悪名高き”肺炎球菌ワクチンや帯状疱疹ワクチンのように、各年度で対象者を絞った実施でもよいかもしれない。これならば単年度の予算規模は抑えられる。健康安全保障をキーワードに予防医療を強く訴える高市政権にとっても悪い政策ではないと思うのだが。ついでに言うならば、現在、麻疹報告数が多く、大きな予算規模を抱える東京都あたりが先鞭をつけて始めてもよいかもしれない。それこそ東京都お得意の「東京アプリ」を使って、対象者が抗体検査を受けたら〇ポイントを付与する、といった仕組みだ。麻疹に関してWHOは2026年1月26日にイギリス、スペイン、オーストリア、アルメニア、アゼルバイジャン、ウズベキスタンが排除国認定を喪失したことを発表したばかり。日本が同じ轍を踏んでほしくはない。参考1)国立健康危機管理研究機構 感染症情報提供サイト:感染症発生動向調査週報2)HealthMap

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2024~25年コロナワクチンは重症化をどれくらい防いだのか?

 2024~25年の新型コロナウイルス感染症(COVID-19)ワクチン接種がCOVID-19関連アウトカムの予防に及ぼした効果を推定した症例対照研究の結果、入院に対するワクチンの有効性は40%であった一方、アウトカムが重篤であるほど有効性は高く、最も重篤な人工呼吸器使用または死亡に対する予防効果は79%であることが示された。これらの重症化予防効果は、ワクチン接種後少なくとも3~6ヵ月は持続した。米国疾病管理予防センター(CDC)のKevin C. Ma氏らが、JAMA Network Open誌2026年2月3日号で報告した。 対象は、2024年9月1日~2025年4月30日に、米国20州の26病院でCOVID-19様症状により入院し、SARS-CoV-2検査を受けた成人患者(18歳以上)であった。主要評価項目は、COVID-19関連の入院および重篤なアウトカム(補助酸素療法、急性呼吸不全、集中治療室入室、侵襲的人工呼吸器の使用、死亡)とした。ロジスティック回帰を用いて、SARS-CoV-2検査陽性か陰性かをアウトカムとし、COVID-19ワクチン接種の有無との関連を評価した。解析は人口統計学的特性、臨床的特徴および地域で調整した。 主な結果は以下のとおり。・合計8,493例が登録された(年齢中央値:66歳、女性:51.1%)。SARS-CoV-2検査陽性群が1,888例、陰性群が6,605例であった。・2024~25年のCOVID-19ワクチン接種率は、陽性群11.4%(216例)、陰性群18.5%(1,224例)であった。・COVID-19関連入院に対するワクチンの有効性は40%(95%信頼区間[CI]:27~51)であった(接種後の期間中央値:陽性群80日、陰性群108日)。・経過時間別のCOVID-19関連入院に対するワクチンの有効性は、接種後7~89日で34%(95%CI:14~49)、90~179日で52%(95%CI:34~65)であった。研究グループは、接種早期の低い有効性については、ワクチン接種前の自然感染増加によって一時的に集団免疫が上昇した可能性を指摘している。・最も重篤な転帰である人工呼吸器使用または死亡に対するワクチンの有効性は79%(95%CI:55~92)とより高かった。・SARS-CoV-2系統別の入院に対するワクチンの有効性は、KP.3.1.1株では49%(95%CI:25~67)、XEC株では34%(95%CI:4~56)、LP.8.1株では24%(95%CI:-19~53)であった(接種後の期間中央値:KP.3.1.1株60日、XEC株89日、LP.8.1株141日)。・推定ワクチン効果は、スパイクタンパク質の変異がある場合であっても同様であった(S31欠失変異株:41%、T22NおよびF59S置換変異株:37%)。 これらの結果より、研究グループは「LP.8.1株については、免疫の経時的減弱と変異による免疫回避を区別することが困難であり、低い推定値がウイルスの遺伝子変化によるものか、あるいは接種後の経過時間が長かったことによるものかは不明」としたうえで、「JN.1系統の子孫株が進化し続けているため、重症COVID-19に対するCOVID-19ワクチンの有効性を評価することは、ワクチン接種戦略を導くうえで依然として重要である」とまとめた。

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HIV-1感染症、ARTからドラビリン+islatravir切り替えによる有効性・安全性を確認/Lancet

 HIV-1感染症治療においてドラビリン/islatravir配合錠は、有効かつ良好な忍容性を示す、初となる非インテグラーゼ阻害薬(INSTI)ベースの2剤併用療法として有望であることが、英国・ロンドン大学クイーン・メアリー校のChloe Orkin氏らによる第III相無作為化実薬対照非盲検非劣性試験で示された。すべての国際ガイドラインでは、INSTIを含むレジメンが第1選択薬として推奨されているが、INSTI耐性の出現を示すWHOのデータが示されたことから懸念が生じている。ドラビリン/islatravir配合錠は、2つの強力な抗ウイルス薬からなる開発中の1日1回投与の配合錠で、相補的な作用機序および耐性プロファイルを有する。著者は、「広範なINSTI耐性の出現に対する懸念が高まる中、抗レトロウイルス療法(ART)の変更を必要とするHIV-1感染者にとって、この1日1回の配合錠は有望な選択肢となりうるだろう」と述べている。Lancet誌2026年2月7日号掲載の報告。ドラビリン/islatravir固定用量配合錠への切り替え、有効性と安全性を評価 研究グループは、成人HIV-1感染者において錠剤経口ARTの切り替え薬として、ドラビリン(100mg)/islatravir(0.25mg)の固定用量配合錠の有効性と安全性を評価した。 試験は、8ヵ国(オーストラリア、カナダ、コロンビア、日本、南アフリカ共和国、スイス、英国、米国)53ヵ所の研究・地域・病院ベースのクリニックで行われた。対象は、18歳以上の成人で、2剤または3剤の経口ARTレジメンを3ヵ月以上受けており、ウイルス量がHIV-1 RNA 50コピー/mL未満、治療失敗歴なし、ドラビリンに対する既知の耐性なし、活動性B型慢性肝炎でないこととした。 被験者をコンピュータ生成無作為化スケジュール法(ブロックサイズは3)で、ドラビリン(100mg)/islatravir(0.25mg)配合錠を1日1回投与する群またはベースラインARTを継続する群に2対1の割合で無作為に割り付け、48週間投与した。無作為化では、ベースラインレジメンの中心となる抗レトロウイルス薬のクラス(INSTI、非ヌクレオシド系逆転写酵素阻害薬、プロテアーゼ阻害薬)によって層別化した。 主要エンドポイント(治療を受けたすべての被験者で評価)は、48週時点でウイルス量50コピー/mL以上の患者の割合であった。非劣性は、治療群間差の多重性補正後95%信頼区間(CI)の上限が4%未満の場合と定義した。安全性の解析は、無作為化され試験薬を少なくとも1回服用した被験者を対象に行われた。48週時のウイルス量50コピー/mL以上の患者割合で非劣性 2023年2月20日~10月24日に、614例が適格性についてスクリーニングされ、553例がドラビリン/islatravir群(368例)またはベースラインART群(185例)に無作為化された。551例が割り付け治療を少なくとも1回服用した(ドラビリン/islatravir群366例、ベースラインART群185例)。 551例のうち、出生時男性332例(60%)、出生時女性219例(40%)で、年齢中央値51歳(四分位範囲:41~59)、250例(45%)が自己申告に基づく黒人またはアフリカ系米国人などだった(アジア人は両群ともに5%)。 48週時点でウイルス量50コピー/mL以上の患者の割合は、ドラビリン/islatravir群1.4%(5/366例)、ベースラインART群4.9%(9/185例)で、ドラビリン/islatravir群の非劣性が示された(群間差:-3.6%、多重性補正後95%CI:-7.8~-0.8)。 治療関連有害事象は、ドラビリン/islatravir群(44/366例[12.0%])がベースラインART群(9/185例[4.9%])よりも多く観察された(群間差:7.2、95%CI:2.2~11.6)。両群(ドラビリン/islatravir群vs.ベースラインART群)の発現率は、あらゆる有害事象(79.5%[291/366例]vs.83.8%[155/185例]、群間差:-4.3[95%CI:-10.7~2.8])、重篤な有害事象(6.3%[23/366例]vs.4.9%[9/185例]、1.4[-3.2~5.2])、有害事象による試験中止(0.5%[2/366例]vs.2.2%[4/185例]、-1.6[-4.9~0.2])で同等であった。 死亡が1例報告されたが(ベースラインART群)、治療とは無関係と見なされた。プロトコールで規定されたCD4陽性細胞数または総リンパ球数の減少により治療を中止した被験者はいなかった。 著者は、「安全性および有効性の知見は、長期作用型の可能性のある薬剤としてのislatravirの開発を進めることを支持するものである」とまとめている。

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喘息の気道炎症に新知見、擬似ロイコトリエンが関与か

 喘息における気道の炎症は、主に気道が刺激された際に白血球が放出するシステイニイルロイコトリエン(CysLT)により引き起こされると考えられてきた。そのため、多くの喘息治療薬は、その作用を阻害するよう設計されている。しかし新たな研究で、炎症を引き起こしているのは、CysLTと構造は似ているものの、全く異なる経路で産生される擬似ロイコトリエンである可能性が示された。研究グループは、この発見が今後の治療法を変える可能性があるとの見方を示している。米国国立衛生研究所(NIH)の支援を受け、米ケース・ウェスタン・リザーブ大学のRobert Salomon氏らが実施したこの研究の詳細は、「The Journal of Allergy and Clinical Immunology」1月号に掲載された。 Salomon氏は、「われわれは以前、構造は似ているものの、体内で全く異なる化学経路を通じて作られる分子を発見していた。『擬似ロイコトリエン』と名付けたこれらの分子こそ、喘息を引き起こす炎症カスケードの主役である可能性があると考えている」と述べている。 研究グループは過去(2023年)の研究で、擬似ロイコトリエンは、CysLTとは全く異なる仕組みで作られることを明らかにしていた。酵素で作られるCysLTとは異なり、擬似ロイコトリエンは活性酸素種、特にフリーラジカルが脂質に酸素を付加する(酸化)ことで生成される。フリーラジカルは非常に反応性が高く、制御されないまま放置すると有害となり得る。Salomon氏は、「フリーラジカルの働きは、いわば爆発や火事のようなものだ。酸素が燃料と反応すると炎が出るのと同じで、簡単に制御不能に陥る」と言う。 今回、Salomon氏らは、喘息患者では擬似ロイコトリエンの量が増加しており、それらが気道の上皮細胞でCysLT受容体依存性の炎症シグナルを誘導しているとの仮説を立てた。その上で、ヒト尿検体およびダニアレルゲンに曝露させたマウスの肺組織を用いて擬似ロイコトリエンの量を測定するとともに、ヒト気道上皮細胞上での擬似ロイコトリエンとCysLTによる炎症シグナルの誘導作用を比較した。尿検体は、18〜79歳の35人(健康な対照5人、中等度喘息患者と重度喘息患者がそれぞれ15人ずつ)から採取された。 その結果、重度喘息患者では健康な対照と比較して、擬似ロイコトリエンが4〜5倍増加しており、その濃度が高いほど疾患の重症度も高くなることが明らかになった。また、マウスの肺でも、アレルゲン曝露後には擬似ロイコトリエンの量が2倍に増加した。さらに、擬似ロイコトリエンは実際に気道上皮細胞で炎症シグナルを引き起こすが、この反応はロイコトリエン受容体拮抗薬によって抑制されることも示された。 研究グループは、喘息患者は、通常、フリーラジカルの作用を抑えるはずの酵素や抗酸化物質が少ない可能性があると考えている。CysLTと擬似ロイコトリエンは、どちらも同じ受容体を活性化し炎症を引き起こす点では共通している。その結果、気道が狭まり、呼吸が苦しくなる。現在使われている喘息治療薬は、この受容体をブロックすることで作用する。しかし、研究グループは、将来的には、フリーラジカルそのものの働きを抑えることをターゲットにする治療薬が開発される可能性があると考えている。Salomon氏は、「今回の発見の本当の重要性は、受容体を遮断するのではなく、フリーラジカルによる脂質酸化を抑制し、擬似ロイコトリエンの産生を制御する薬によって喘息を治療できる可能性があるという点だ」と述べている。 次の段階の研究でSalomon氏らは、擬似ロイコトリエンがRSウイルス感染症、乳児の細気管支炎、慢性閉塞性肺疾患(COPD)など、他の呼吸器疾患にも関わっているかどうかを調べる予定だとしている。

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タンジール病〔Tangier disease〕

1 疾患概要■ 概念・定義タンジール病は、高比重リポ蛋白(HDL)コレステロール(HDL-C)、アポリポ蛋白(アポ)A-I濃度が著しく低下し、オレンジ色の咽頭扁桃腫大、肝脾腫、角膜混濁、末梢神経障害などの種々の臓器にコレステロールエステルが蓄積することに伴う臨床症状を特徴とする常染色体潜性(劣性)遺伝疾患である。なお、血清脂質値は常染色体共優性遺伝。1961年に米国バージニア州タンジール島の5歳の少年から摘出されたオレンジ色の異常扁桃の病理所見で、多数の泡沫細胞が存在し、この少年と姉の血清HDL-Cが極端な低値を示すことが、Fredricksonらによって報告され「タンジール病」と命名された1)。アポA-Iによる細胞からのコレステロール引き抜きに関与するATP-binding cassette transporter A1(ABCA1)の遺伝子異常に起因する極めてまれな疾患で、早発性冠動脈疾患を来すため早期診断が重要である。■ 疫学極めてまれな難病で、世界全体でこれまで約130例程度しか報告がなく2)、有病率はおよそ100万分の1と推定されている。わが国でも報告例は十数家系程度であるが、未診断例も存在する可能性がある。HDL-C値の下位1%未満の集団の10%にABCA1変異が同定されている。■ 病因ABCA1遺伝子は染色体9q31に位置し、その機能喪失型変異によりタンジール病が生じる3)。ABCA1は細胞膜上のコレステロール輸送体で、血中の遊離アポA-IがABCA1に結合し、ABCA1は細胞内から余剰のコレステロールとリン脂質を細胞外へ排出し、アポA-Iに受け渡し、原始HDLである円盤状のpreβ-HDL粒子を形成する役割を担う。本症では、ABCA1の機能喪失によりpreβ-HDL粒子が形成されず、HDL産生が著しく低下する。また、細胞内からのコレステロール搬出が障害された結果、コレステロールエステルが網内系、皮膚、粘膜、末梢神経のシュワン細胞などの細胞内に異常蓄積し、多臓器で泡沫細胞が出現して機能障害や細胞死を引き起こす。骨髄、肝、脾、リンパ節、皮膚、大腸粘膜、平滑筋などに泡沫細胞が認められ、その結果種々の症状を来す。■ 症状1)臓器腫大と機能障害コレステロールエステルの異常沈着は全身の網内系臓器や粘膜に及ぶため、多彩な臓器腫大・障害が生じる。主な所見は以下のとおりである。(1)オレンジ色扁桃腫大:扁桃は分葉・腫大し、明らかなオレンジ色または黄~灰色の表面を持つ。再発性扁桃炎や扁桃摘出の病歴がしばしば認められる(図1)。(2)肝脾腫:肝腫大は約3分の1に認めるが、肝機能障害は通常軽微である。脾腫は約半数で認められ、軽度の血小板低下症と網状赤血球増加を伴う。脾臓・肝臓への脂質沈着により腹部膨満や肝脾腫が身体診察で認められる。(3)その他臓器へのコレステロールエステル蓄積:リンパ節、胸腺、腸管粘膜、皮膚などで、組織学的には泡沫細胞浸潤として確認される。大腸粘膜沈着に起因する難治性の慢性下痢を呈したまれな症例もある。(4)眼病変:角膜へのコレステロール沈着により角膜混濁(角膜の乳白色の濁り)を来す。多くは軽度で視力障害は生じないが、進行すると視力低下を来す可能性がある。網膜にも色素変性様所見(斑点状の色素沈着)が報告されている。(5)血液・骨髄:血中HDL欠損に伴い赤血球形態異常(棘状赤血球や口裂赤血球など)が報告されており、軽度の溶血性貧血を伴う例もある。骨髄生検では泡沫化マクロファージの貯留像を認める。図1 タンジール病患者のオレンジ色扁桃A:舌扁桃 B:咽頭扁桃(文献2より引用)画像を拡大する2)末梢神経障害軽度から重症までさまざまな末梢神経障害が報告されている。知覚障害、運動障害または混合障害が、一過性または持続性に出現する。小児~若年期から発症し、シュワン細胞内へのコレステロール沈着により髄鞘脱落を起こし、多彩な神経症候を呈する。深部知覚や腱反射の低下はまれで、脳神経を含む末梢神経の再発性非対称性障害や下肢に強い対称性の末梢神経障害や脊髄空洞症様の末梢神経障害として出現する。3)早発性の動脈硬化性疾患タンジール病(ABCA1遺伝子変異ホモ接合体)中の20%で狭心症・心筋梗塞などの動脈硬化性心血管病変の症状が認められる。さらに35~65歳の本症患者では約44%と対照群(男性6.5%、女性3.2%)と比較すると著しく高頻度である。ただ、ABCA1のミスセンス変異の機能障害の違いにより、動脈硬化の程度は個々の症例により異なる。したがって、各患者での動脈硬化のリスク評価と画像診断が必要である。血管内超音波法(IVUS:intravascular ultrasound)による冠動脈の観察で、強度のびまん性の石灰化病変を認めた報告4)や、全身性の重症の動脈硬化病変を合併した症例の報告2)がある。4)耐糖能異常・2型糖尿病膵β細胞におけるABCA1欠損はインスリン分泌障害を引き起こすことが示されており、本症の患者で耐糖能異常や2型糖尿病を合併しやすい一因と考えられる。ABCA1欠損により、膵島(とくにβ細胞)へのコレステロール蓄積によるインスリン初期分泌能低下が機序と考えられる5)。耐糖能異常や2型糖尿病の管理は心血管リスク低減のためにも重要である。■ 予後タンジール病そのものは先天的代謝異常であり、生涯にわたりHDL欠損状態が続くため、長期療養と経過観察が必要である。適切な管理により小児~成人期まで比較的良好に経過する症例もあるが、若年~中年期での冠動脈疾患発症や脳卒中により生命予後が短縮するケースもある。予後改善には動脈硬化性合併症の予防と早期介入が最も重要であり、患者のQOL維持のためには症状コントロールと包括的なリスク管理を続ける必要がある。とくに、狭心症、心筋梗塞などの早発性冠動脈疾患の発症に留意し、定期的な動脈硬化性疾患のチェックが重要である。2 診断 (検査・鑑別診断も含む)■ 一般検査血液検査で脾機能亢進による血小板減少症(巨大血小板性血小板低下症)や溶血性貧血(間接ビリルビンや網状赤血球増加)が見られることがある。空腹時血糖上昇、経口糖負荷試験(OGTT)で耐糖能異常やインスリン初期分泌能の指標であるinsulinogenic index を評価し、インスリン初期分泌低下が認められることがある。■ 特殊検査1)脂質検査タンジール病(変異ABCA1遺伝子ホモ接合体または複合ヘテロ接合体)患者では、血中HDL-Cは通常5mg/dL以下(同定された症例の平均3±3mg/dL)と正常の約6%に低下しており、アポA-I値も10mg/dL以下に低下する。LDLコレステロール(LDL-C)も平均正常値の約37%に低下している。これはABCA1欠損により末梢から肝へのコレステロール逆転送が低下し、肝細胞のコレステロール不足からLDL受容体発現が亢進してLDL-Cが低下するためと考えられる。軽度の高TG血症を認めることが多く、TGに富むレムナントリポ蛋白の増加を認める。近年の研究で、ABCA1欠損が肝臓由来のangiopoietin-like protein 3(ANGPTL3)の分泌増加を招き、これが本症患者でみられる高TG血症に関与する可能性が報告されている。一方、変異ABCA1遺伝子ヘテロ接合体(キャリア)では血中HDL-CおよびアポA-I値は正常者の約50%程度に低下する。2)眼科検査コレステロール蓄積による角膜混濁を認めることがあり、眼科で角膜検査が必須である。3)耳鼻科検査本症に特徴的なオレンジ色の扁桃腫大を認めることがあり、耳鼻科での目視検査が必要となる。幼少~青年期に扁桃の著明な腫大と黄色~橙色調への変色がしばしば最初の兆候として現れる。扁桃は分葉状に肥大し、独特のオレンジ~黄灰色を呈するため「オレンジ色扁桃」と呼ばれる。小児期に反復する扁桃炎や扁桃摘出術の既往を有する患者も少なくない。4)画像・生検所見腹部超音波検査で肝脾腫を検査する。オレンジ色扁桃や肝脾腫、角膜混濁などの身体所見から本症を疑った場合、組織生検で泡沫細胞沈着を確認する。とくに直腸粘膜生検は侵襲が比較的低く有用とされ、粘膜固有層にコレステロールエステルを蓄積して泡沫化したマクロファージの集積像が認められれば支持所見となる。同様の所見は骨髄、生検可能な皮膚、肝・脾、生検可能なリンパ節などでも検出される。5)神経内科的検査末梢神経障害精査のため神経伝導速度や筋電図検査で神経障害の分布・程度を評価する。6)早発性動脈硬化性疾患の有無の評価早発性動脈硬化性疾患の有無の精査のため、運動負荷心電図、経胸壁心臓超音波検査、頸動脈エコーや冠動脈CTスキャン検査などで、動脈硬化病変のスクリーニングを行う。無症状でも思春期以降は定期的に心血管評価を実施し、動脈硬化性疾患の発症防止と早期発見に努める。家族内発症が疑われる場合は保因者(ヘテロ接合体)に対する脂質検査によるスクリーニングも重要である。■ 確定診断遺伝子診断でABCA1(ATP-binding cassette transporter A1)遺伝子変異(ホモ接合または複合ヘテロ接合体)を認める。常染色体優性遺伝でHDL-Cが著減するfamilial HDL deficiency(ABCA1遺伝子変異のヘテロ接合体やアポA-I遺伝子変異で起こり、早発冠動脈疾患を合併し、タンジール病のような全身性のコレステロール沈着[オレンジ扁桃・肝脾腫・神経障害]は伴わない)との鑑別が必要である。以下に、厚生労働省難治性疾患政策研究事業「原発性脂質異常症に関する調査研究班」による本症の診断基準を示す。難病情報センターのホームページ「タンジール病」より引用した(2026年1月20日)。最新の情報については、当該ホームページまたは厚生労働省「原発性脂質異常症に関する調査研究班」のホームページで確認いただきたい。【タンジール病の診断基準】Definite、Probableを対象とする。A.必須項目1)血清HDLコレステロールが25mg/dL未満2)血中アポA-I濃度20mg/dL未満B.症状1.オレンジ色の特徴的な扁桃腫大2.肝腫大または脾腫3.角膜混濁4.末梢神経障害5.動脈硬化性心血管病変C.鑑別診断以下の疾患を鑑別する。レシチンコレステロールアシルトランスフェラーゼ(LCAT)欠損症、アポリポタンパクA-I欠損症、二次性低HDLコレステロール血症*1*1:外科手術後、肝障害(とくに肝硬変や重症肝炎、回復期を含む)、全身性炎症疾患の急性期、がんなどの消耗性疾患など、過去6ヵ月のプロブコールの内服歴、プロブコールとフィブラートの併用(プロブコール服用中止後の処方も含む)HDL-C<25mg/dLの場合、低HDL-C血症の診断フローチャート(図2)6)に従って、二次性低HDL血症を除外し、他の原発性低HDL血症である、古典的LCAT欠損症、魚眼病、アポA-I欠損症を鑑別して診断する(表)6)。遊離コレステロールは増加しておらず、アポA-Iが20mg/dL未満であるが検出限界以下ではない場合、タンジール病が強く疑われる。D.遺伝子検査ABCA1遺伝子変異の同定。ABCA1遺伝子解析が2021年4月に保険収載されている。<診断のカテゴリー>Definite必須項目の2項目をすべて満たす例のうち、Bの1項目以上を満たし、Cの鑑別すべき疾患を除外し、Dを満たすもの。Probable必須項目の2項目をすべて満たす例のうち、Bの2項目以上を満たし、Cの鑑別すべき疾患を除外したもの。図2 遺伝性HDL欠損症の診断フローチャート(文献6より引用)表 遺伝性HDL欠損症の臨床所見の比較(文献6より引用)画像を拡大する3 治療HDL-C低値そのものを直接是正する薬剤は存在しない。また、現在のところ、遺伝子治療によるABCA1の補充などの根本的な治療はなく、臨床で利用可能な特異的治療薬は存在しない。過去にナイアシン(ニコチン酸)薬やフィブラート系薬がHDL-C上昇の目的で試みられたが、タンジール病ではABCA1欠損が根本原因のため薬物でのHDL-C正常化は困難であり、有効性を支持する明確なエビデンスはない。粥状動脈硬化性疾患の著しい増加が問題となるので、心血管リスクを下げる目的でHDL-Cを可能な範囲で増加させるための生活習慣の改善が推奨される。具体的には、有酸素運動、適正体重の維持、禁煙に加え、食事では飽和脂肪酸を不飽和脂肪酸に置き換える(地中海食的なアプローチ)ことなどが推奨される。これらによりHDL-Cが僅かに上昇し得るほか、末梢神経症状の改善が報告されている。高TG血症を伴う場合にはフィブラート系薬、選択的PPARαモジュレーターのペマフィブラート(商品名:パルモディア)や魚油製剤の使用を検討する。本症の血清LDL-C値は一般に低いが、もしそうでない場合はスタチンあるいはそのほかの薬でLDL-C値を低下させる。治療目標は症状軽減と動脈硬化危険因子の管理に置かれ、高血圧があれば厳格な降圧、喫煙者には禁煙指導を行い、すべての心血管リスク因子を包括的に管理する。血糖コントロールのための食事・運動療法(必要に応じ経口血糖降下薬やインスリンなど)も糖尿病合併例では重要となる。さらに、合併する早発性動脈硬化性疾患の早期発見と治療も行う。一方、タンジール病に伴う各臓器・組織の症状には、必要に応じて対症的・外科的介入を行う場合がある。扁桃肥大による呼吸・嚥下障害や反復炎症がある場合、扁桃摘出術を検討する。オレンジ色扁桃そのものは病的ではないが、大きさにより気道狭窄や感染温床となる場合がある。角膜混濁が進行し、視力障害を来した場合には角膜移植が考慮されるが、タンジール病の角膜混濁は軽度で視機能に問題はない例が多く、定期フォローに留めることもある。末梢神経障害に対してはリハビリテーションと支持療法を行う。筋力低下や足下垂に対しては装具装着(足関節装具など)や理学療法による歩行補助を行う。痛みやしびれが強い場合は、プレガバリンやデュロキセチンといった神経障害性疼痛の薬物療法を用いることもあるが、エビデンスは症例報告レベルである。なお、本症は2015年から「指定難病 261」として、医療費給付の対象となっている。4 今後の展望(治験中・研究中の診断法や治療薬剤など)将来的な治療法として遺伝子治療が期待されている。たとえば、肝臓におけるABCA1発現をウイルスベクターなどで補充し、HDL産生を回復させる試みが提案されている。ただし、HDL代謝は全身の細胞で営まれるため、肝細胞への遺伝子導入だけでどこまで臨床効果が得られるかは不明である。また、アポA-Iや合成HDLの補充療法、肝X受容体(LXR)作動薬による残存ABCA1の発現誘導なども理論上考えられるが、いずれも現時点では成功していない。総じて現時点では対症療法と合併症予防が中心であり、新規治療法の実現には今後の研究の進歩が必要である。5 主たる診療科(紹介すべき診療科) 患者の予後は主に動脈硬化性疾患の発症に左右されるため、長期的には主に循環器内科で心血管イベント予防に重点を置きつつ、管理を行う。神経障害やその他臓器合併症への対策を継続するために多職種チーム医療が重要であり、循環器内科医、脳神経内科医、眼科医、消化器科医、遺伝カウンセラーなどが連携して患者を包括的にケアする。また、定期フォローアップでは以下の点に留意する。1)早発性動脈硬化性疾患のモニタリング若年期より定期的な循環器内科的評価を行う。具体的には詳細な問診・診察に加え、必要に応じて心電図や心エコー、運動負荷試験、頸動脈エコー、冠動脈CTなどで無症候性の動脈硬化病変のスクリーニングを行う。血清脂質、血糖、血圧、喫煙の有無のチェックも継続し、LDL-C、TGや血圧が管理目標を逸脱していれば治療を行う。2)末梢神経障害の管理神経症状は進行したり寛解したりするため、脳神経内科医による神経学的評価を定期的に行い、筋力低下や感覚障害の変化をモニタリングする。必要に応じてリハビリ計画を見直し、装具の調整や痛みのコントロールを図る。重度の神経障害に対しては日常生活動作のサポート(理学療法士・作業療法士の介入、補助具導入など)も検討する。3)眼合併症の管理眼科検査を定期施行し、角膜混濁の進展や視力変化を評価する。角膜混濁による視力障害が生じれば眼科的介入のタイミングを検討する。4)脾腫・感染症対策脾摘を施行した場合は感染症予防を徹底する。脾腫を温存している場合も、脾臓破裂を防ぐため、激しいスポーツ時のプロテクター装着や事故防止策について指導する。5)家族検査とカウンセリング患者の血縁者に対しては遺伝カウンセリングを提供し、希望があれば保因者検査(ABCA1遺伝子検査や脂質検査)を実施する。ヘテロ接合体では動脈硬化リスクがやや高い可能性もあるため、生活習慣指導を行う。※ 医療機関によって診療科目の区分は異なることがあります。6 参考になるサイト(公的助成情報、患者会情報、主要な研究グループ、その他参考となるサイト)診療、研究に関する情報厚生労働省難治性疾患政策研究事業「原発性脂質異常症に関する調査研究」(一般利用者向けと医療従事者向けのまとまった情報)難病情報センター タンジール病(一般利用者向けと医療従事者向けのまとまった情報)日本動脈硬化学会(編):動脈硬化性疾患予防のための脂質異常症診療ガイド 2023年版 「低脂血症の診断と治療」 日本動脈硬化学会(2023年6月30日発行)(一般利用者向けと医療従事者向けのまとまった情報)大阪大学医学部附属病院循環器内科(一般利用者向けと医療従事者向けのまとまった情報)りんくう総合医療センター循環器内科  (一般利用者向けと医療従事者向けのまとまった情報) 1) Fredrickson DS, et al. Ann Intern Med. 1961;55:1016-1031. 2) Muratsu J, et al. J Atheroscler Thromb. 2018;25:1076-1085. 3) Brooks-Wilson A, et al. Nat Genet. 1999;22:336-345. 4) Komuro R, et al. Circulation. 2000;101:2446-2448. 5) Koseki M, et al. J Atheroscler Thromb. 2009;16:292-296. 6) 日本動脈硬化学会(編). 動脈硬化性疾患予防のための脂質異常症診療ガイド 2023年版. 低脂血症の診断と治療. 日本動脈硬化学会. 2023. 公開履歴初回2026年2月16日

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パーキンソン病〔PD:Parkinson's disease〕

1 疾患概要■ 概念・定義1817年、英国の外科医であり地質学者であったJames Parkinsonは“Essay on The Shaking Palsy”として6症例のパーキンソン病患者の症状を詳細に報告した。その後、神経学の祖であるJean-Martin Charcotがこのエッセイに着目し「パーキンソン病」と名付け、疾患概念が確立された。本疾患はドパミン神経細胞が脱落するため、動作緩慢、振戦、筋強剛などが出現する。進行すると姿勢保持障害、歩行障害なども顕著になり、転倒のリスクが高まる。さらに、運動症状以外にも睡眠障害、嗅覚低下、自律神経障害、認知症、精神症状など多彩な非運動症状を合併する。そのため日常生活動作が低下し、介護度が高くなり、患者本人の生活の質を悪化させるのみならず、介護者にも多大な影響が及ぶ疾患である。病理学的所見としては、黒質緻密部を中心としたドパミン神経細胞の変性・脱落とレビー小体の形成が特徴である。■ 疫学有病率は10万人当たり100~180人とされているが、65歳以上では1,000人程度存在するといわれている。海外で行われた年齢別有病率を調査した研究では、40~49歳では10万人当たり約40人であるのに対し、80歳以上では約1,900人と報告されており、加齢に伴い急激に増加することがわかる。発症頻度には地域差があり、欧州や北米では高く、アジアやアフリカでは低い傾向がある。また、海外では男性に多いとされる一方で、わが国では女性の有病率が高いと報告されている。■ 病因本疾患の病因は長らく不明とされてきたが、近年の分子病理学的・遺伝学的研究の進展により、その中核にはαシヌクレインの異常凝集と蓄積があることが明らかとなっている。αシヌクレインは、本来シナプス前終末に豊富に存在する可溶性タンパク質であるが、異常構造へ変化するとオリゴマー、プロトフィブリル、フィブリルへと段階的に凝集し、神経毒性を獲得する。これらの凝集体は、神経細胞内でレビー小体やレビー神経突起を形成し、ドパミン神経を中心とした神経変性を引き起こすと考えられている。さらに、病的αシヌクレインは細胞間を伝播する性質を有し、特定の神経回路に沿って病理が拡大することが示唆されている。その一方で、パーキンソン病は単一の原因で発症する疾患ではなく、遺伝的要因と環境要因が複雑に絡む多因子疾患である。αシヌクレインをコードするSNCAは最初に発見された家族性パーキンソン病の原因遺伝子である。さらに常染色体顕性遺伝性パーキンソン病に頻度が高いLRRK2、重大なリスク遺伝子であるGBAなどが同定されており、これらはαシヌクレインの凝集に関与している。また、孤発例においても、複数の感受性遺伝子が発症リスクに寄与することが明らかとなっており、遺伝的背景が病態形成に重要な役割を果たす。そのほか農薬曝露、頭部外傷、腸内細菌叢などの環境因子も発症リスクとして報告されており、遺伝要因と環境要因の相互作用が発症の引き金となる可能性が考えられている。さらに近年では、ミトコンドリア機能障害、酸化ストレス、神経炎症、タンパク質分解系の破綻など、複数の細胞内異常が相互に関連しながら神経変性を進行させることが示唆されている。とくにリソソーム・オートファジー系の障害は、異常αシヌクレインの蓄積を促進し、分解不能になるという悪循環を形成する重要な病態基盤と考えられている。このようにパーキンソン病の病因は、αシヌクレイン凝集を中心とした分子病態を軸に、多層的・連続的な異常が重なり合うことで発症すると考えられる。2 診断臨床診断は主に症候学的所見に基づいて行われる。2015年に国際パーキンソン病・運動障害学会が診断基準を策定した(表)。この診断基準では、寡動を中心に、振戦と筋強剛のどちらか1つがあるとパーキンソン症状があると判断し、特異的な所見である、レボドパ製剤に対する良好な反応性、レボドパ誘発性ジスキネジア、四肢の静止時振戦、嗅覚低下および123I-MIBG心筋シンチグラフィによる心臓交感神経脱落の証明を支持的診断基準としている。除外基準のみならず、パーキンソン病でも認められるが非典型的な症状や経過をレッドフラッグとして挙げている。支持的基準を2つ以上満たし、除外基準およびレッドフラッグが認められない場合は“clinically established”であり、支持的基準を満たしていてもレッドフラッグを認める場合や、レッドフラッグがなくても十分に支持的基準を満たさない場合は“probable”と診断される。診断基準の特異度は高いが感度は低く、類縁疾患である多系統萎縮症や進行性核上性麻痺といったParkinson-like disorderとの鑑別は難しい。また、運動症状が発症する前より、便秘、嗅覚低下、レム睡眠行動異常症が認められる場合がある。ビデオ睡眠ポリグラフでレム睡眠行動異常障害認められる場合、パーキンソン病を発症するリスクが高まる。採血や画像診断は補助的な診断である。採血では特異的な変化はないが、パーキンソン症状を来す疾患(甲状腺機能亢進症や低下症、ウィルソン病、抗リン脂質抗体症候群など)の鑑別は必要である。神経画像は診断に有用であり、頭部MRIやCTなどの構造画像は除外診断目的で行われる。とくにMRIは被殻の萎縮と被殻外側のスリット、脳梁の萎縮、中脳背側(中脳被蓋部)の萎縮、上/中小脳脚の萎縮、橋の萎縮などに注目し、Parkinson-like disorderと鑑別する。また、DATスキャンを行うことで、パーキンソン症状が黒質線条体のドパミン機能障害により引き起こされていることが確認できる。薬剤性パーキンソニズム、本態性振戦、ジストニア、錐体路障害などによるパーキンソン様症状は正常であり除外できる。123I-MIBG心筋シンチグラフィは心臓交感神経の脱落を確認できるが、認める場合はパーキンソン病に特異的な所見であり、重要な診断の手掛かりとなる。最近、髄液に存在する微量な凝集型αシヌクレインを増幅することで診断できる可能性が示されているが、研究レベルであり実用化はされていない。表 国際パーキンソン病・運動障害学会の診断基準画像を拡大する診断のフローを以下に示す。【パーキンソン病の診断基準(MDS)】■臨床的に確実なパーキンソン病(clinically established Parkinson's Disease)パーキンソニズムが存在し、さらに、1)絶対的な除外基準に抵触しない。2)少なくとも2つの支持的基準に合致する。3)相対的除外基準に抵触しない。■臨床的にほぼ確実なパーキンソン病(clinically probable Parkinson's Disease)パーキンソニズムが存在しさらに、1)絶対的除外基準に抵触しない。2)相対的除外基準と同数以上の支持基準がみられる。ただし、2つを超える相対的除外基準がみられてはならない。■支持的基準(Supportive criteria)1)明白で劇的なドパミン補充療法に対する反応性がみられる。この場合、初期治療の段階では正常かそれに近いレベルまで改善がみられる必要がある。もし、初期治療に対する反応性が評価できない場合は以下のいずれかで判断する。用量の増減により、顕著な症状の変動(UPDRS partIIIでのスコアが30%を超える)がみられる。または患者または介護者より治療により顕著な改善がみられたことが確認できる明らかに顕著なオン/オフ現象がみられる2)L-ドパ誘発性のジスキネジアがみられる。3)四肢の静止時振戦が診察上確認できる。4)ほかのパーキンソニズムを示す疾患との鑑別診断上、80%を超える特異度を示す検査法が陽性である。現在この基準を満たす検査として以下の2つが挙げられる。嗅覚喪失または年齢・性を考慮したうえで明らかな嗅覚低下の存在MIBG心筋シンチグラフィによる心筋交感神経系の脱神経所見■絶対的除外基準(Absolute exclusion criteria)1)小脳症候がみられる。2)下方への核上性眼球運動障害がみられる。3)発症5年以内に前頭側頭型認知症や原発性進行性失語症の診断基準を満たす症状がみられる。4)下肢に限局したパーキンソニズムが3年を超えてみられる。5)薬剤性パーキンソニズムとして矛盾のないドパミン遮断薬の使用歴がある。6)中等度以上の重症度にもかかわらず、高用量(>600mg)のL-ドパによる症状の改善がみられない。7)明らかな皮質性感覚障害、肢節観念運動失行や進行性失語がみられる。8)シナプス前性のドパミン系が機能画像検査により正常と評価される。9)パーキンソニズムを来す可能性のある他疾患の可能性が高いと考えられる。■相対的除外基準(Red flags)1)5年以内に車椅子利用となるような急速な歩行障害の進展がみられる。2)5年以上の経過で運動症状の増悪がみられない。3)発症5年以内に重度の構音障害や嚥下障害などの球症状がみられる。4)日中または夜間の吸気性喘鳴や頻繁に生じる深い吸気*注など、吸気性の呼吸障害がみられる。5)発症から5年以内に以下のような重度の自律神経障害がみられる。起立性低血圧:立位3分以内に少なくとも収縮期で30mmHgまたは拡張期で15mmHgの血圧低下がみられる発症から5年以内に重度の尿失禁や尿閉がみられる6)年1回を超える頻度で繰り返す発症3年以内の転倒。7)発症から10年以内に、顕著な首下がり(anterocollis)や手足の関節拘縮がみられる。8)5年の罹病期間の中で以下のようなよくみられる非運動症候を認めない。睡眠障害:睡眠の維持障害による不眠、日中の過剰な傾眠、レム睡眠行動障害の症状自律神経障害:便秘、日中の頻尿、症状を伴う起立性低血圧嗅覚障害精神症状:うつ状態、不安、幻覚9)他では説明のできない錐体路症状がみられる。10)経過中一貫して左右対称性のパーキンソニズムがみられる。*注:inspiratory sighs;多系統萎縮症で時にみられる呼吸障害の1つで、しばしば突然不規則に生じる深いため息様の吸気。(文献1より引用)3 治療本疾患はドパミン神経変性により運動症状および多彩な非運動症状を呈するため、ドパミン補充療法が治療の中心である。L-ドパ製剤は最も有効性が高く中心的薬剤であるが、吸収に食事の影響を受けやすいこと、phasicな刺激によりL-ドパ誘発性ジスキネジアが生じやすく、半減期が短いためウェアリングオフを誘発することが課題となる。MAO-B阻害薬はドパミン分解を抑制することで効果を発揮する。すくみ足に効果があることが示されている。ドパミン受容体作動薬は半減期が長く、continuous dopaminergic stimulation(CDS)に近い刺激が可能で、ジスキネジア発現を遅らせる一方、眠気、衝動制御障害、精神症状に注意を要する。ウェアリングオフ出現時には、L-ドパ頻回投与やCOMT阻害薬併用により血中濃度の安定化を図る。また、アマンタジンを早期から始めることで、ジスキネジアの発現抑制が可能であることが示されている。経口治療で調整困難な場合にはデバイス補助療法を考慮する。経腸的L-ドパ持続療法や皮下持続投与製剤はオフ時間を短縮し、運動の日内変動を大きく改善する。さらに、L-ドパ製剤への反応性を有し、重度の認知症や精神症状を伴わない症例では脳深部刺激療法(DBS)も考慮される。主なターゲットは視床下核(STN)と淡蒼球内節(GPi)であり、STN刺激は薬剤減量効果が期待できる一方、GPi刺激はL-ドパ誘発性ジスキネジアの抑制に有効である。効果は同等とされるが、薬剤減量ができるSTNがfirst choiceである。強い振戦が主体の場合には視床Vim核が選択される。DBSは運動症状を安定化させ、薬物治療の限界を補完する治療オプションであり、適応がある症例の場合、必ず考慮すべきである。4 今後の展望近年、分子病理学的研究やバイオマーカー研究の進展により、パーキンソン病は従来の臨床症候に基づく疾患概念から、αシヌクレイン病理を中核とした生物学的疾患概念へと大きく変容しつつある。とくに、微量な病的αシヌクレインを検出可能とする種増幅アッセイ(seed amplification assay:SAA)は、発症前・前駆期から疾患を同定しうる技術として注目されている。また、脳に蓄積するαシヌクレインを可視化するPET検査も開発されている。これらのバイオマーカーの確立は、早期診断のみならず、疾患の生物学的病期分類や層別化を可能とし、疾患修飾療法(disease-modifying therapy:DMT)の研究を推進する際に適切な対象集団の選定に直結する。現在までに、αシヌクレイン病理、神経変性、遺伝背景を統合した新たな分類・病期分類の枠組みが提唱されており、今後の臨床試験や治療戦略の基盤となることが期待される。5 主たる診療科脳神経内科脳深部刺激療法を行う場合は脳神経外科※ 医療機関によって診療科目の区分は異なることがあります。6 参考になるサイト(公的助成情報、患者会情報など)診療、研究に関する情報日本神経学会 パーキンソン病診療ガイドライン2018(一般利用者向けと医療従事者向けのまとまった情報)難病情報センター パーキンソン病(一般利用者向けと医療従事者向けのまとまった情報) 1) Bloem BR, et al. Lancet. 2021;397:2284-2303. 2) Armstrong MJ, et al. JAMA. 2020;323:548-560. 3) Ben-Shlomo Y, et al. Lancet. 2024;403:283-292. 4) Hatano T, et al. J Mov Disord. 2024;17:127-137. 5) Postuma RB, et al. Mov Disord. 2015;30:1591-1601. 公開履歴初回2026年2月13日

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月経血によるHPV検査、子宮頸がん検診に有望/BMJ

 Grade2/3以上の子宮頸部上皮内腫瘍(CIN2+/CIN3+)の検出において、ミニパッドで採取した月経血を用いたヒトパピローマウイルス(HPV)検査は、医師が採取した子宮頸部検体による検査との比較において同等の診断精度であることが、中国・華中科技大学のXun Tian氏らによる地域住民を対象とした研究で示された。月経血を用いたHPV検査は子宮頸がん検診の非侵襲的な代替手段として有望視されており、パイロット研究では医師が採取した子宮頸部検体とHPV遺伝子型の高い一致率が報告されているが、エビデンスは限定的であった。著者は、「本研究の結果は、月経血検体によるHPV検査を子宮頸がん検診ガイドラインに組み込むことを支持するものである」とまとめている。BMJ誌2026年2月4日号掲載の報告。3つの検体でCIN2+/CIN3+検出の診断精度を比較 研究グループは、2021年9月~2025年1月に、中国・湖北省の7地域(都市部4地域、農村部3地域)において、適格基準を満たした月経周期が規則的な20~54歳の女性3,068例を対象に前向き研究を実施した。 参加者から3種類の検体、すなわち、HPV検査用ミニパッドを用いた月経血検体(3ヵ月以内に参加者自身が採取して中央検査室へ直接郵送)、HPV検査用子宮頸部検体およびThinPrep細胞診用子宮頸部検体(医師採取)を採取した。 いずれかの検体でHPV陽性、または細胞診で意義不明な異型扁平上皮細胞(ASC-US)以上の判定であった場合はコルポスコピーによる生検を実施し、病理組織学的にCIN2+またはCIN3+を確定させた。 主要評価項目は、CIN2+およびCIN3+検出の診断精度であった。月経血検体によるHPV検査の感度は94.7%で、医師採取の子宮頸部検体検査と同等 CIN2+検出の感度は、ミニパッド採取検体を用いたHPV検査が94.7%(95%信頼区間[CI]:80.9~99.1)、医師採取検体によるHPV検査が92.1%(77.5~97.9)、細胞診検査が78.9%(62.2~89.9)であり、ミニパッドによるHPV検査は医師採取検体のHPV検査と同等の感度を示し(p=1.00)、統計学的有意差は認められなかったものの細胞診検査よりポイント推定値は高かった(p=0.11)。 CIN2+検出の特異度については、ミニパッドによるHPV検査は医師採取検体のHPV検査より低かったが(89.1%[95%CI:88.0~90.2]vs.90.0%[88.9~91.1]、p=0.001)、陰性的中率は同等であり(99.9%[95%CI:99.7~100.0]vs.99.9%[99.7~100.0]、p=1.00)、陽性的中率(9.9%[95%CI:7.1~13.5]vs.10.4%[7.4~14.3]、p=0.82)およびスクリーニング効率(10.1 vs.9.6、p=0.82)も同等であった。 CIN3+検出に関しても、感度、特異度、陰性予測値、陽性予測値およびスクリーニング効率のいずれもCIN2+検出と同様の結果であった。

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