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新型コロナは依然として高齢者に深刻な脅威、「結核・呼吸器感染症予防週間」でワクチン接種の重要性を強調/モデルナ

 モデルナ・ジャパン主催の「呼吸器感染症予防週間 特別啓発セミナー」が9月24日にオンラインで開催された。本セミナーでは、9月24~30日の「結核・呼吸器感染症予防週間」の一環として、迎 寛氏(長崎大学大学院医歯薬学総合研究科 呼吸器内科学分野[第二内科]教授)と参議院議員であり医師の秋野 公造氏が登壇し、新型コロナウイルス感染症(COVID-19)が、とくに高齢者にとって依然として深刻な脅威であると警鐘を鳴らした。新型コロナの5類移行から3年が経ち、社会の警戒感や関心が薄れているなか、継続的なワクチン接種と社会全体の意識向上の重要性を訴えた。隠れコロナ感染と高齢者の重症化リスク セミナーの冒頭では、迎氏が新型コロナの現状と高齢者が直面するリスクについて、最新のデータを交えながら解説した。 新型コロナが5類に移行して以降、定点報告上の感染者数は減少傾向にあるものの、入院患者数は依然として高止まりしている。神奈川県の下水疫学データによると、とくに2025年以降、定点報告数と下水中の新型コロナウイルス(SARS-CoV-2)濃度との間に大きな乖離が生じており、下水データは市中に依然として不顕性を含む新型コロナウイルス感染者が多く存在することが示唆されている1)。迎氏は、定点報告では捉えきれていない「隠れコロナ感染者」が市中に多数存在し、その中から一定数の高齢者や基礎疾患を持つ人が重症化して入院に至っている可能性を指摘した。死因の第8位、死者の多くは高齢者 新型コロナは2023年と2024年の2年連続で、日本の死因第8位となっている。とくに深刻なのは高齢者の状況で、死亡者の97%が65歳以上、そのうち79%が80歳以上の高齢者で占められている2)。死亡者数はインフルエンザと比較して、新型コロナが約15倍であるという。こうしたデータから、迎氏は「コロナは風邪と同じ」という認識が誤りであるという見解を示した。また、新型コロナの感染拡大期には、高齢者のフレイル有病率も増加するという影響が懸念されている3)。 迎氏が所属する長崎大学病院には、この5年間で新型コロナにより1,047例が入院したという。臨床データからは、入院患者の死亡率は高齢になるほど顕著に高くなる一方で、ワクチン未接種の患者群は、接種済みの患者群に比べて、重症化する割合が明らかに高い結果となった。迎氏は、とくに高流量酸素療法が必要な患者や重症患者のうち、約4割がワクチン未接種者であったことは、ワクチンの重症化予防効果を明確に裏付けていると指摘した。 迎氏は日本が世界的にみてワクチンへの信頼度が低い傾向にあることに触れ4)、接種率が低下している現状を変えるためにも、9月24~30日の「結核・呼吸器感染症予防週間」を通じて、80歳以上の高齢者の死亡リスクやワクチン接種の重要性について啓発していきたいと述べた。「結核・呼吸器感染症予防週間」創設 続いて秋野氏が政策的な観点から、呼吸器感染症対策の現状と課題、そして今後の展望について語った。 秋野氏は、自身も創設に尽力した「結核・呼吸器感染症予防週間」について触れた。2024年度より、毎年9月24〜30日は、以前まで実施されていた「結核予防週間」が「結核・呼吸器感染症予防週間」に改められた。この期間には、インフルエンザや新型コロナなど、呼吸器感染症が例年流行する秋冬前に、呼吸器感染症に関する知識の普及啓発活動が行われる。秋野氏は、肺炎が依然として日本人の死因の上位を占める中で、秋冬の感染症シーズンを前に正しい知識を普及させることの重要性を強調した。普及啓発のシンボルとなる「黄色い縁取りのある緑色のリボン」のバッジや、啓発のためのポスターが5)、日本呼吸器学会、日本感染症学会、日本化学療法学会の協力のもと作成された。ワクチン定期接種は「65歳以上一律」でよいのか 秋野氏は、現在の新型コロナワクチンの定期接種制度が「65歳以上」と一律に定められている点が課題となっていることについて言及した。先に迎氏が述べたとおり、実際の死亡リスクは80歳以上で急激に高まる。研究によると、新型コロナの重症化リスクとして、「年齢(とくに80歳以上)」、「ワクチン接種から2年以上空いていること」が重要な因子となっている6)。こうした科学的知見に基づき、リスクの特性に応じた、よりきめ細やかな制度設計が必要だと主張した。とくに死亡リスクが突出して高い80歳以上に対し、費用負担のあり方や国による接種勧奨の必要性について、改めて検討すべきだと訴えた。海外のワクチン助成のあり方 さらに秋野氏は、肺炎球菌ワクチン接種に公的補助があった自治体の接種率は全国平均よりも2倍以上高いという研究を挙げ7)、公費助成とワクチン接種率には密接な関連が考えられると述べた。また、海外の新型コロナワクチン接種支援策との比較によると、米国、英国、フランス、オーストラリアなどの国々では、高齢者に対して年2回や無償での接種といった手厚い支援が行われており、接種率も高い水準を維持している。これに対し、日本の支援は年1回の定期接種で一部自己負担であり、国の助成が縮小されれば自己負担額が1万5,000円を超える可能性もあり、これが接種率低下の一因となりかねないと指摘した。 秋野氏は、「国民の命を守るため、最新の知見に基づいた柔軟な対応が必要」とし、今後も国会で働きかけていきたいと述べた。また、今回の「結核・呼吸器感染症予防週間」を通じて、新型コロナに対する現状を国民に広く知っていただき、高齢者の命を守る対策について共に考えていきたいとして、講演を終えた。■参考文献1)AdvanSentinel. 神奈川県におけるCOVID-19流行動向の多角的分析 - 下水疫学データが示す「見えざる感染リスク」(2025年7月22日)2)厚生労働省. 人口動態調査の人口動態統計月報(概数)3)Hirose T, et al. J Nutr Health Aging. 2025;29:100495.4)de Figueiredo A, et al. Lancet. 2020;396:898-908.5)厚生労働省. 感染症対策のための普及・啓発ツール6)Miyashita N, et al. Respir Investig. 2025;63:401-404.7)Naito T, et al. J Infect Chemother. 2014;20:450-453.

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新たな血液検査が頭頸部がんの早期発見を可能に

 新たな血液検査により、症状が現れる最大10年前からヒトパピローマウイルス(HPV)が原因の頭頸部がんを検出できる可能性のあることが、新たな研究で明らかになった。HPV-DeepSeekと呼ばれるこの検査は、腫瘍から剥がれて血流に入ったHPV DNAの微細な断片を検出するものだという。米ハーバード大学医学大学院および米Massachusetts Eye and EarのDaniel Faden氏らによるこの研究結果は、「Journal of the National Cancer Institute」に9月10日掲載された。 研究グループは、この検査の妥当性が確認されれば、HPV関連の頭頸部がんを検査できる初のスクリーニング検査になる可能性があるとしている。Faden氏は、「われわれの研究は、無症状の個人において、がんと診断される何年も前にHPV関連頭頸部がんを正確に検出できることを初めて示した」と話している。 頭頸部がんは、首から上の領域に発生するがんの総称で、口腔がん、咽頭がん、喉頭がん、鼻腔・副鼻腔がん、唾液腺がんなどが含まれる。米国における頭頸部がんの約70%はHPVが原因である。研究グループによると、頭頸部がんにはスクリーニング検査が存在しないため、がんが進行して体の他の部位に転移してから診断されるケースが多いという。 研究グループによると、HPV-DeepSeekに関する過去の研究では、診断精度が99%に達する可能性が示されているという。今回の研究でFaden氏らは、Mass General Brighamのバイオバンクから、HPV関連頭頸部がん診断の1.3〜10.8年前に採取された血漿サンプル28点と、これらのがん患者と年齢および性別を一致させたがんではない対照の血漿サンプル28点を用いて、HPV-DeepSeekの実臨床での有用性を検討した。 その結果、HPV-DeepSeekはがん患者の28点の血漿サンプルのうち22点で陽性反応を示し(感度79%)、最長で診断の7.8年前にがんを検出できることが示された。一方、対照サンプルで陽性例はなかった(特異度100%)。診断精度は、がん診断前4年以内で最も高く、HPV抗体検査よりも有意に優れていた(P=0.004)。研究グループがさらに、AIを活用して独立した306人のコホートで訓練・検証したところ、28例のがん症例のうち27例を特定することに成功し、感度は96%に向上した。最も早い例では、診断の10.3年前から疾患を予測した。  Faden氏は、「患者が、がんの症状を抱えてクリニックを訪れる頃には、重篤で生涯にわたる副作用を伴う治療が必要になる。HPV-DeepSeekのようなツールによって、これらのがんを非常に早い段階で発見し、最終的には患者の転帰と生活の質(QOL)を向上させることができると期待している」と話している。 研究グループは現在、米国立がん研究所から採取した数百点のサンプルを使った追跡研究で、これらの結果の検証作業を行っているところである。

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第287回 ヘパリン吸入で新型コロナウイルス感染症(COVID-19)入院患者の挿管か死亡が減少

ヘパリン吸入で新型コロナウイルス感染症(COVID-19)入院患者の挿管か死亡が減少オーストラリア国立大学が英国のKing’s College Londonと協力して手掛けた試験の解析で、新型コロナウイルス感染症(COVID-19)入院患者の挿管か死亡を減らす未分画ヘパリン(UFH)吸入の効果が示されました1-3)。新型コロナウイルス(SARS-CoV-2)は2019年12月に中国で報告されて世界に広がりました。流行の第一波でのCOVID-19患者は5例に1例近くが低酸素血症を発現し、それが入院の主な原因となりました。入院したCOVID-19患者のかなりが急性呼吸不全となり、7~8例に1例ほど(12~14%)が挿管での侵襲性人工呼吸を必要としています。その後の新参株の流行での入院、急性呼吸不全、死亡率は集団免疫の向上を背景にして低下しました。しかし挿管患者の生存は低いままのようです。少し前の報告になりますが、2020年8月末~2021年7月中旬までの約1年間に発表された試験を探してメタ解析したところ、COVID-19で挿管した患者の死亡率は流行第一波よりその後のほうがむしろ上昇しており、それぞれ62.2%と72.6%でした4)。ヘパリンはよく知られる血液の抗凝固活性に加えて抗炎症作用やウイルス全般を阻止する作用を有し、肺損傷に有益なことが示唆されています。SARS-CoV-2に限って言うと、スパイクタンパク質と細胞受容体ACE2の結合を妨げるヘパリンの効果が報告されています。UFHはスパイクタンパク質に結合して変形を強い、ACE2に結合できなくして感染を阻止します。UFHは炎症を封じる作用も有します。その抗炎症作用がCOVID-19の肺損傷に寄与する好中球細胞外トラップ(NET)生成や肺の過度の炎症を鎮める働きを担うようです。それに、ヘパリンのおはこの抗凝固作用も有益なようで、微小血管血栓症などのCOVID-19で重視すべき病変を制限しうることが示唆されています。4年近く前の2022年の始めに発表されたオーストラリア国立大学の研究者によるレトロスペクティブ解析では、入院COVID-19患者のUFH吸入と酸素指標の改善の関連が、挿管しているかどうかを問わず認められています5)。同研究チームは今回の解析で、未挿管のCOVID-19入院患者のUFH吸入の効果を調べました。7ヵ国の10病院での6つの無作為化試験の結果を集めて、あらかじめ決めていた計画に沿ってメタ解析しました。7ヵ国の1つのオーストラリアでは事務手続きの遅れにより被験者を集められず、実質的には6ヵ国で組み入れられた被験者478例が解析されました。その結果、挿管か死亡した患者の割合は、標準治療に加えて噴霧UFHを吸入する群(UFH吸入群)では11.2%、標準治療のみを行う群では22.4%でした。すなわちUFH吸入群の挿管か死亡の発生率は標準治療群の半分ほどで済みました(オッズ比:0.43)1)。UFHの効果はSARS-CoV-2に限らず種々のウイルス、さらには細菌にも有効かもしれません。ヒトのあちこちの組織の表面で発現するヘパラン硫酸などのプロテオグリカンとの相互作用を頼りに侵入しようとするそれら病原体一揃いなどをUFHは阻止できそうです。それに緑膿菌やインフルエンザウイルスなどの病原体の数々の接着を制限する作用があり、それらの働きによって肺炎や菌血症を防ぎうることがヒトや動物での検討で示唆されています。実際、研究チームはインフルエンザや呼吸器合胞体ウイルス(RSV)などのSARS-CoV-2以外の呼吸器感染症へのUFHの効果を確かめる試験を欧州で実施するつもりです2,3)。また、吸入用のヘパリンの開発にも取り組んでいます。 参考 1) van Haren FMP, et al. eClinicalMedicine. 2025 Sep 27. [Epub ahead of print] 2) Low-cost drug shows promise for patients with life-threatening respiratory infections/Australian National University(ANU) 3) Low-cost drug shows promise for patients with life threating respiratory infections/King’s College London 4) Xourgia E, et al. Expert Rev Respir Med. 2022;16:1101-1108. 5) van Haren FMP, et al. Br J Clin Pharmacol. 2022;88:2802-2813.

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第263回 インフルエンザ全国で流行入り、ワクチンは11月末までに接種を/厚労省

<先週の動き> 1.インフルエンザ全国で流行入り、ワクチンは11月末までに接種を/厚労省 2.公立・大学病院の赤字拡大が過去最大に、人件費高騰で持続性に黄信号/総務省 3.機能強化型在支診・在支病を再定義へ 緊急往診・看取りなどの評価へ/中医協 4.周産期・小児医療の集約化が本格議論へ、地域単位での再編を/厚労省 5.医療事故調査制度創設10年、医療事故判断のプロセスを明文化へ/厚労省 6.有料老人ホーム、囲い込み禁止へ 登録制で参入規制強化へ/厚労省 1.インフルエンザ全国で流行入り、ワクチンは11月末までに接種を/厚労省厚生労働省は、9月22日~28日のインフルエンザの定点報告で患者数4,030人、定点当たり1.04人とし、全国流行入りを公表した。昨季より約5週早く、過去20年で2番目の早さである。定点1を超えたのは15都府県で、沖縄8.98、東京1.96、鹿児島1.68などが高かった。保育園・学校などの休校・学級閉鎖は135施設(前週比増)、東京都内でも9月だけで61件の集団感染が報告された。流行前線は、観光地を含む関東・関西・九州・沖縄で目立ち、今季は台湾・香港で夏に流行したA型(H3N2)が国内でも主流になる可能性が指摘されている。インバウンドや海外渡航を介したウイルス流入が早期流行に影響したとの見方が有力。一方、新型コロナの定点は5.87(前週比0.85倍)と2週連続の減少で、呼吸器感染症の鑑別と同時流行への備えが求められる。新型コロナウイルスの流行は例年どおり12月末~2月と見込まれているが、寒冷化とともに患者は増えるため、高齢者・基礎疾患・小児にはワクチン接種を推奨する。なお、インフルエンザワクチンとして、2~18歳には、経鼻生ワクチン(商品名:フルミスト)が昨季から接種可能で、発症リスクを約28.8%低下させる国内成績がある。副反応は、鼻閉・咳などが多く、妊娠・免疫不全・重度喘息、授乳や同居に免疫不全者がいる場合は不活化ワクチンを用いる。基本対策(手洗い、混雑場面でのマスク、体調不良時の外出回避)を徹底し、学齢期の動向に留意した上で、重症化リスクへの早期介入(抗インフルエンザ薬の適応判断、合併症監視)を行いたい。なお、定点数縮小に伴い今季は「流行レベルマップ」と全国推計患者数の公表が停止されている。 参考 1) インフルエンザ全国で流行入り 厚労省、過去20年で2番目の早さ(日経新聞) 2) インフルエンザ、はや流行期入り 昨シーズンより5週早く 厚労省(朝日新聞) 3) インフルエンザ流行入り、2023年除き2番目の早さ…専門家「訪日客の増加が影響」(読売新聞) 2.公立・大学病院の赤字拡大が過去最大に、人件費高騰で持続性に黄信号/総務省総務省が明らかにした地方公営企業決算によると、2024年度の公立病院事業の経常赤字は3,952億円と過去最大(前年2,099億円の約2倍)となった。844病院のうち83.3%が赤字に陥った。要因は賃上げによる人件費の増加、医薬品や診療材料費の上昇、エネルギー価格の高騰で、2025年度の経営状態について、各団体の試算・発言からは厳しい発言が相次いでいる。四病院団体協議会の定期調査でも、2025年6月単月の経営は前年同月よりさらに悪化しており、24年度通年も医業収支・経常収支とも悪化し、赤字病院割合の上昇が報告された。大学病院の打撃はより深刻とされており、全国医学部長病院長会議の集計では、81大学病院の24年度経常赤字は計508億円に拡大(医薬品費+14.4%、診療材料費+14.1%、給与費+7.0%)している。国立大学病院は25年度、経常赤字が400億円超へ拡大する見通しで、42病院中33病院が現金収支赤字に転落する見込み。このため医療機器の更新や建物整備の先送りが常態化し、高度医療や医学研究や人材育成に支障が出始めている。赤字拡大を受けて、病院団体からは2026年度の診療報酬改定に向けて診療報酬の引き上げ要求が相次いでいる。物価・賃金上昇の「2年分」を本体に反映する大幅プラス改定(四病協・大学病院団体は10%超~約11%を要望)、必要なら期中改定の実施も求めている。このほか、急性期の入院基本料や救急・周産期・小児などの基礎コストを底上げし、夜間・時間外、救急搬送受け入れ、重症患者対応の評価を拡充も求めている。さらに働き方改革に伴う人件費増(医師時間外上限、看護職の処遇改善など)を恒常費として補填も求めている。さらに医薬品・診療材料の市況高騰を包括点数や出来高評価に機動的に転嫁(DPC包括の原価乖離補正、材料価格スライド)するほか、高額な医薬品については費用対効果評価の厳格化・再算定を進め、真に臨床的価値の高い薬剤の適正評価を求めている。また、緊急の補正予算による機器更新・老朽施設更新の原資を確保するほか、地域医療構想のために、地域医療が弱体化しないように、過疎・離島や大学の医師派遣機能に配慮した加算の新設を求めている。同じく大学病院団体側は「このままでは高度医療・人材育成・研究の基盤が損なわれる」とし、診療報酬と公的支援の両輪による早期の資金手当てを求めている。今後、患者負担・給付と負担の議論が行われ、次年度の改定を前に政府で社会保障費について検討される見込み。 参考 1) 令和6年度地方公営企業等決算の概要(総務省) 2) 「令和6年度大学病院の経営状況」(国立大学病院長会議) 3) 全国の公立病院、24年度は過去最大の赤字 人件費増が重荷に(日経新聞) 4) 病院経営がさらに悪化、「かなり深刻」四病協調査 6月単月で(CB news) 5) 国立大病院の赤字、今年度は過去最大400億円超の見通し 物価高や人件費上昇(産経新聞) 6) 81大学病院の経常赤字は昨年より悪化、計508億円の赤字に(日経メディカル) 7) 2024年度に大学病院全体で「508億円の経常赤字」、22年度比で医薬品費が14.4%増、診療材料費が14.1%増と経営圧迫-医学部長病院長会議(Gem Med) 3.機能強化型在支診・在支病を再定義へ 緊急往診・看取りなどの評価へ/中医協厚生労働省は、10月1日に開かれた中央社会保険医療協議会(中医協)の総会で、2026年度改定に向け在宅医療の評価見直しを議論した。2020年から2040年にかけて、85歳以上の救急搬送は75%増加し、85歳以上の在宅医療需要は62%増加することが見込まれ、これに対して在宅医療の質的な充実が求められている。連携型の機能強化型在支診・在支病について、24時間往診体制の「実質的な貢献度」に応じた評価を導入すべきだと支払側が主張する一方、診療側は撤退誘発を懸念し、反対した。厚労省提示のデータでは、連携型在支診の往診体制時間は「常時」と「極めて短い」で二極化しており、緊急往診・看取り実績は在宅緩和ケア充実加算の要件超えが多数認められ、重症患者比率が高い施設も一定数あった。これらを踏まえ、(1)地域の中核として、十分な医師配置を行い、在宅での看取りや重症対応を実施して他機関を支援し、さらに医育機能も担う在宅医療機関を評価すること、(2)在宅緩和ケア充実加算を統合して再設計すること、の2点を主要論点として位置付けた。一方、診療側は、要件を強化したり医育機能を加算の要件に組み込んだりする案に反対を示した。併せて、包括的支援加算の算定にばらつきが生じていることから、要介護度の低い患者の割合を報酬に反映させる支払側の提案に対して、診療側は「要介護度が低くても、通院困難で在宅医療が必要な患者が多数存在する」ため、要介護度のみに着目した評価に反対した。へき地診療所については、派遣元が時間外対応を担う場合に在医総管・施設総管を算定できるようにする方向で双方が賛同した。さらに、退院直後の訪問栄養食事指導を新たに評価することも検討し、入退院支援から急変対応・看取りに至るまで在宅医療を整備し、評価にメリハリを付ける方針を、改定の論点として示した。今後、これらの論点についてさらに検討の上、来年度の改定に盛り込まれる見込み。 参考 1) 中央社会保険医療協議会 総会(厚労省) 2) 在宅医療及び医療・介護連携に関するワーキンググループにおける検討事項等について(同) 3) 訪問診療の報酬に「患者の状態」反映、厚労省案 要介護度低い割合など(CB news) 4) 「在宅医療及び医療・介護連携に関するワーキンググループ」の初会合が開催(日経メディカル) 5) 24時間往診体制への貢献度に応じた評価に意見が分かれる(同) 4.周産期・小児医療の集約化が本格議論へ、地域単位での再編を/厚労省厚生労働省は、10月1日に「小児医療及び周産期医療の提供体制等に関するワーキンググループ」を開催し、少子化と医師偏在の進行を踏まえ、周産期医療と小児医療の提供体制を抜本的に見直す方針を示した。従来の二次医療圏にこだわらず、地域の実情に応じて柔軟に医療圏を設定し、分散した医療資源を集約化する方向性である。小児医療・周産期医療のワーキンググループ(WG)で論点が示され、2025年度末までに一定の取りまとめを行う見通し。周産期医療では、ハイリスク分娩に限らず、一般的な分娩を含む医療圏の再編が検討される。出産件数の減少により、分娩取扱施設は全国で減少傾向にあり、とくに地方では産婦人科医や小児科医、助産師の確保が課題となっている。厚労省は、263ヵ所ある周産期医療圏を再構築し、妊婦健診や産後ケアを担う施設との連携を強化するとともに、周産期母子医療センターの整備や無痛分娩の安全提供体制も検討課題とした。参加した委員からは出生数が減ると分娩を取り扱う医療機関の経営が成り立たなくなるとの指摘もあり、さらに分娩施設の急減は安全確保に影響する可能性があり、早期の結論が求められている。一方、小児医療では、全国1,690病院のうち約48%が常勤小児科医2人以下にとどまり、医療資源の薄い分散配置が明らかとなった。厚労省は「小児医療圏」単位での集約化・重点化を提案し、2030年度から始まる第9次医療計画で具体化する考えを示した。小児医療圏は現行306ヵ所で、救急機能を含め常時小児診療を提供できる体制の確保を求める方針。また、地域で小児科の診療所が不足する場合には、病院の小児科が一般診療に参加し、内科医との連携やオンライン診療、「#8000」電話相談などを組み合わせて医療提供体制を維持する方策も提示された。厚労省は、今後の議論を通じて、人口減少下でも「安全に産み育てられる地域医療体制」の再構築を進める方針である。 参考 1) 第1回小児医療及び周産期医療の提供体制等に関するワーキンググループ(厚労省) 2) 常勤小児科医2人以下の病院が約半数 厚労省(CB news) 3) 周産期医療、ハイリスク分娩以外も集約化へ 年度末をめどに取りまとめ 厚労省(同) 5.医療事故調査制度創設10年、医療事故判断のプロセスを明文化へ/厚労省厚生労働省は、10月1日に開いた「医療事故調査制度等の医療安全に係る検討会」で、医療事故調査制度の創設から10年を迎えるのに合わせ、医療機関が医療事故を判断する体制や手順を自ら定め、医療安全管理指針に明記する方針を示した。患者の予期せぬ死亡が「医療に起因するか」について医療機関と遺族が対立する事例が相次いでおり、判断の質と透明性を高める狙いがある。同制度は2015年に導入され、病院や診療所、助産所で医療に起因する、またはその疑いがある予期せぬ死亡が発生した場合、第三者機関への報告を義務付けている。しかし、事故に該当するかの判断を管理者が単独で行うことが多く、施設間で判断基準にばらつきがあった。今回の見直しでは、全死亡例を対象としたスクリーニング体制を構築し、疑義がある場合の検討過程を記録として残すことを求める。新たな指針では、医療事故に該当するかの検討を行う際の工程や、遺族からの申し出に応じて再検討する仕組みを明文化する。さらに、判断に至った理由、遺族への説明経過などを保存し、事後検証可能な形で管理することを義務付ける方針。また、厚労省は、管理者に対して医療事故調査制度の研修受講を促すとともに、未修了の場合は修了者である医師や看護師など実務担当者が支援できる体制を整えるとした。日本病院会の岡 俊明副会長は、「全死亡例を対象にスクリーニングし、判断根拠を明確に残すことが制度の信頼性向上につながる」と述べている。同制度は今年3月末までに3,338件の報告があり、厚労省は今後、関連指針の改訂を進める方針。 参考 1) 第4回医療事故調査制度等の医療安全に係る検討会(厚労省) 2) 医療事故の判断、指針明記へ 遺族対応も、調査制度創設10年(共同通信) 3) 医療事故の判断プロセス、安全管理指針に明記へ 判断理由の記録も保存を 厚労省(CB news) 6.有料老人ホーム、囲い込み禁止へ 登録制で参入規制強化へ/厚労省厚生労働省は、10月3日に「有料老人ホームにおける望ましいサービス提供のあり方に関する検討会」を開き、有料老人ホームをめぐる規制強化の方針を示した。中重度の要介護者や医療ケアが必要な高齢者を受け入れる施設の一部について、現行の「届け出制」から「登録制」へ移行する方向で検討を進める。事業計画の不備や虐待などの行政処分歴がある事業者の参入を拒否できる仕組みを設け、質の担保と安全性確保を狙う。これまで届け出制では、行政が開設を拒めないことから、不適切な事業者が参入し、給与未払い・集団退職・転居強要などのトラブルも相次いだ。登録制では、参入要件を満たさない事業者に対し、開設制限をかけることが可能になる。同時に、介護サービス事業者との「囲い込み」の是正も進める。住宅型ホームで、入居契約時に提携する居宅介護支援事業所や介護サービスの利用を条件としたり、家賃優遇などで自法人サービスを誘導したりする行為を禁止する。さらに、かかりつけ医やケアマネジャーの変更を迫る行為も明確に禁止される。厚労省は、契約の透明化と利用者の選択権を守る観点から、契約締結・ケアプラン作成手順のガイドライン整備を義務付け、行政が事後的にチェックできる仕組みを設ける方針。今後、パブリックコメントを経て報告書をまとめ、老人福祉法改正を視野に制度化を進める。医療現場への影響としては、入居者の医療的ケア連携が明確化され、外部医師の関与が阻まれるリスクが減る点が挙げられる。今後は、地域医療連携室や在宅医が入居後も継続的に介入できる体制が求められ、医療と介護の分断是正に資する動きとなりそうだ。 参考 1) 有料老人ホームにおける望ましいサービス提供のあり方に関する検討会 とりまとめ素案(厚労省) 2) 重度者向け老人ホームに登録制検討 厚労省、質懸念なら参入拒否(日経新聞) 3) 老人ホーム「囲い込み」是正 ケアマネ変更の誘導・強要を禁止 厚労省 ルール厳格化へ(JOINT) 4) 有料老人ホーム、家賃優遇の条件付け禁止へ「囲い込み」対策 厚労省(CB news)

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肺炎は認知症リスクを高めるか~メタ解析

 肺炎が認知症や認知機能低下のリスクの上昇と関連するかいまだ不明である。今回、中国・Hangzhou Geriatric HospitalのZhen Yan氏らが系統的レビューとメタ解析で検討した結果、肺炎と認知症リスクの関連が示唆され、高齢者でより顕著であった。Annals of Medicine誌2025年12月号に掲載。 本研究は、MEDLINE(PubMed経由)、EMBASE(Excerpta Medica Database)、Cochrane Central Register of Controlled Trials(CENTRAL)、Web of Science、Scopus、ClinicalTrials.gov、World Health Organization International Clinical Trials Registry Platform(WHO ICTRP)データベースを用いて、2024年2月29日までに発表され、成人肺炎患者における認知症または認知機能低下に関するアウトカムを報告した研究を対象とした。統合ハザード比(HR)およびオッズ比(OR)と95%信頼区間(CI)は、ランダム効果モデルを用いて算出した。年齢、地域、研究デザイン、肺炎のタイプによるサブグループ解析を行った。 主な結果は以下のとおり。・さまざまな母集団を対象とした10研究が含まれた。・プール解析により、肺炎と認知症リスク増加との間に有意な相関が示された(HR:1.738、95%CI:1.358~2.225)が、研究間でかなりの異質性が認められた(I2=97.1%)。・サブグループ解析では、この関連は高齢者においてより顕著であり、地域や研究デザインによって若干異なることが示された。細菌性肺炎と非定型肺炎でリスクに有意差はなかった。 著者らは、「これらの結果は、肺炎から回復した患者、とくに高齢者において、潜在的な認知機能低下を軽減するための注意深いモニタリングと予防戦略の必要性を強調するもの」と結論している。

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60歳以上への2価RSVワクチン、全心肺疾患による入院も抑制/JAMA

 60歳以上の高齢者における呼吸器合胞体ウイルス(RSV)感染症に対する2価RSV融合前Fタンパク(RSVpreF)ワクチン接種は、同ワクチンを接種しなかった場合と比較し、全心肺疾患による入院を有意に減少させた。デンマーク・Copenhagen University Hospital-Herlev and GentofteのMats C. Hojbjerg Lassen氏らが、DAN-RSV試験の事前に規定された2次解析の結果を報告した。RSV感染は、とくに心血管疾患(CVD)の既往を有する患者で心血管リスクの上昇と関連している。最近、RSVpreFワクチンがRSV関連下気道疾患の予防として承認されたが、心血管アウトカムに対する有効性を評価した無作為化試験はなかった。著者は、「今回の結果は、全CVDによる入院に対する効果は有意ではなかったものの、RSVワクチン接種が心肺疾患に対しても有用である可能性を示唆している」とまとめている。JAMA誌オンライン版2025年8月30日号掲載の報告。デンマークの60歳以上、約13万例をRSVpreFワクチン接種群と未接種群に無作為化 DAN-RSV試験は、研究者主導のプラグマティックな第IV相無作為化非盲検並行群間比較試験で、2024~25年冬季シーズンにデンマーク在住で市民登録番号を有する60歳以上の高齢者を、RSVpreFワクチン接種群(単回筋肉内投与、RSVpreF群)またはワクチン未接種群(対照群)に1対1の割合で無作為に割り付け追跡評価した。 主要エンドポイントはRSV関連呼吸器疾患による入院で、結果は別途報告されている(ジャーナル四天王「60歳以上への2価RSVワクチン、RSV関連呼吸器疾患による入院を抑制/NEJM」)。 本論では、副次エンドポイントである全心肺疾患による入院について評価し、さらに、RSVpreFワクチンの有効性を全心肺疾患の2つの構成要素(全呼吸器疾患による入院[副次エンドポイント]、全CVDによる入院[探索的エンドポイント])と、全CVDの各項目(心不全、心筋梗塞、心房細動、脳卒中による入院)に関して評価した。 ベースラインデータおよびアウトカムデータは、デンマーク登録番号を介し各種全国医療レジストリから収集した。2024年11月18日に最初の参加者が登録され、初回試験来院予定日の14日後から2025年5月31日まで追跡調査が行われた。 DAN-RSV試験のITT集団は13万1,276例(RSVpreF群6万5,642例、対照群6万5,634例、平均年齢69.4[SD 6.5]歳、男性50.3%)で、このうち2万8,662例(21.8%)(RSVpreF群1万4,377例、対照群1万4,285例、平均年齢71.8[SD 6.9]歳、男性64.3%)がベースラインでCVD既往であった。1,000人年当たりの全心肺疾患入院26.3 vs.29.2、全CVD入院16.4 vs.17.7 ITT集団において、全心肺疾患による入院の発生率は、1,000人年当たりRSVpreF群26.3、対照群29.2であり、RSVpreF群で有意に低かった(絶対発生率減少:1,000人年当たり2.90[95%信頼区間[CI]:0.10~5.71]、ワクチン有効率9.9%[95%CI:0.3~18.7]、p=0.04)。この効果は、ベースラインにおけるCVDの有無による有意な相互作用は認められなかった(ワクチン有効率:CVDあり5.0%[95%CI:-11.2~16.7]、CVDなし15.2%[2.2~27.1]、相互作用のp=0.27)。 全CVDによる入院の発生率は1,000人年当たりRSVpreF群16.4、対照群17.7(ワクチン有効率7.4%、95%CI:-5.5~18.8、p=0.24)、脳卒中による入院の発生率は1,000人年当たりそれぞれ3.0と3.8(19.4%、-8.6~40.4、p=0.14)であった。心筋梗塞、心不全ならびに心房細動による入院についても統計学的な有意差はなかった。

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搾乳した母乳は採乳時間に合わせて授乳すべき

 母親が朝に搾乳した母乳を乳児に夕方に与えると、母乳が持つ本来のリズムと異なる合図を乳児に与えてしまう可能性があるようだ。母乳の中には、乳児の睡眠・覚醒リズムに関与すると考えられるホルモンや免疫因子なども含まれているが、それらは日内で変動することが、新たな研究で明らかにされた。このことから研究グループは、午前中に搾乳して保存した母乳を午後や夕方に与えると、意図せず乳児の休息を妨げる可能性があると警告している。米ラトガース大学栄養科学分野のMelissa Woortman氏らによるこの研究結果は、「Frontiers in Nutrition」に9月5日掲載された。 Woortman氏は、「母乳は栄養価の高い食品だが、搾乳した母乳を乳児に与える際には、タイミングを考慮する必要がある」と話している。また、論文の上席著者であるラトガース大学生化学・微生物学分野教授のMaria Gloria Dominguez-Bello氏は、「このような情報を受け取るタイミングは、幼少期、とりわけ、体内時計がまだ発達段階にある乳児期には特に重要だろう」と同大学のニュースリリースの中で述べている。 医師は母乳を、乳児の免疫システムの構築や成長中の身体の栄養を助けるビタミン、ミネラル、化合物を豊富に含む「スーパーフード」と見なしている。母乳は乳児にとって最良の栄養源であると広く考えられている。しかし、1日を通して常に直接授乳することができないため、搾乳して保存しておいた母乳を後で与える母親は少なくない。 今回の研究は、38人の授乳中の母親から、1日(24時間)の中で4つの異なる時間帯(午前6時、正午、午後6時、午前0時)に採取した母乳サンプルを収集し、その成分の変動を解析した。調べた成分は、メラトニン、コルチゾール、オキシトシン、免疫グロブリンA(IgA)、ラクトフェリンで、いずれもELISA法を用いて濃度を測定した。また、微生物組成は16S rRNA解析により評価した。 メラトニンとコルチゾールは、いずれも睡眠・覚醒リズムに関与するホルモンであり、メラトニンは夜間に分泌が増えて睡眠を促し、コルチゾールは朝に分泌が増えて覚醒を促す。オキシトシンは「愛情ホルモン」とも呼ばれ、母子の絆形成に関与するとされる。IgAは免疫系によって産生される抗体の一種であり、ラクトフェリンは糖タンパク質で乳児をさまざまな感染症から守る働きを持つ。これらはいずれも乳児の免疫機能や消化器系の発達などに影響を与える。 解析の結果、メラトニンとコルチゾールの濃度には明確な日内変動が認められ、メラトニンは真夜中、コルチゾールは早朝に濃度がピークに達することが明らかになった。この結果についてWoortman氏は、「血液中のホルモンは概日リズムに従って変動する。授乳中の母親では、それが母乳に反映されやすい。メラトニンやコルチゾールなどのホルモンも、概日リズムに従って母体循環から母乳に移行する」と説明している。他の成分は、1日を通してほぼ安定していた。一方、母乳中の微生物組成は昼夜で変動し、夜間には皮膚由来の細菌、日中には環境由来の細菌が増加することが示された。 研究グループは、「この結果は、搾乳した母乳はできるだけ採乳・保存した時間帯に合わせて与えるべきであることを示唆している」と述べている。Dominguez-Bello氏は、「搾乳した母乳に『朝』『午後』『夕方』のラベルを貼り、それに応じて授乳すれば、搾乳と授乳のタイミングをそろえ、母乳本来のホルモン・微生物組成や概日リズムの情報を保つのに役立つ可能性がある」とアドバイスしている。一方、Woortman氏は、「母親が1日中乳児と一緒にいることが難しい現代社会において、授乳時間と搾乳時間を合わせることは、搾乳した母乳を与える際に母乳のメリットを最大限に引き出すシンプルで実用的な方法だ」と述べている。

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絞扼性イレウスの見落とし?【医療訴訟の争点】第15回

症例絞扼性イレウスは、緊急の開腹手術が第1選択となり、機を逃すと致死的な結果を招くにもかかわらず、鑑別が容易でないことも珍しくない。本稿では、診療過程における絞扼性イレウスの見落としが争点となった東京地裁令和3年11月29日判決を紹介する。<登場人物>患者男児(8歳)原告患者の両親被告大学病院事案の概要は以下の通りである。平成28年2月20日(土)患児は、夜から嘔吐を繰り返す。2月21日(日)午前10時8分休日診療所を受診。受診時、嘔気と嘔吐を訴え、体温は38.3度、下痢なし、咽頭・胸部異常なし、インフルエンザ検査は陰性。同診療所で診察した医師は、急性胃腸炎と診断し、第二次救急医療機関であるA医療センターを紹介した。正午頃A医療センターを受診受診時、患児は、心拍数210回/分、体温38度、腸音通常で、腹部はやや硬く全体的に圧痛が認められた。A医療センターの医師は、PSVT(発作性上室頻拍)を認めて処置を行ったが、A医療センターでの薬物治療および原因検索は困難であるとして、PSVTの治療をお願いする旨の申し送りをし、第三次救急医療機関である被告病院に転送した。午後5時頃被告病院に到着。到着時、茶褐色の嘔吐。午後5時28分頃12誘導心電図検査を実施。このときの心拍数は200回/分午後5時35分頃茶褐色の嘔吐をした。診察した医師は、超音波検査および診察を行い、劇症型心筋炎の可能性は低いと判断。午後5時56分頃PSVT治療のため、午後5時56分頃にアデホス0.1mL、同日午後5時58分頃にアデホス0.2mL、同日午後6時2分頃にアデホス0.4mL、同日午後6時31分頃にアデホス0.5mL、同日午後6時44分頃にワソラン0.5アンプルの静注を行った。午後6時15分頃不穏な言動をするなどして意識障害様の症状がみられる。午後6時52分頃茶褐色の嘔吐。午後8時30分頃頭部および胸腹部の単純CT検査(本件CT検査)を実施。胃および小腸の著明な拡張ならびに腹水貯留が認められており、「イレウス疑い・腹水貯留」と診断午後9時1分頃PEA(無脈性電気活動、心停止)状態午後10時25分心臓マッサージ開始午後11時24分死亡死亡後本件患者の死因につき、絞扼性イレウスも考えられることを原告らに対し説明実際の裁判結果原告側は、繰り返す嘔吐、腹痛といった所見から、絞扼性イレウスを疑うべきであった、腹部単純X線や超音波検査を行えば異常が把握でき、緊急手術により救命できた可能性が高い旨を主張した。これに対し、被告病院は、搬送時から頻拍・低血圧が続き、心筋炎や循環動態不全が強く疑われる状況であった、嘔吐も循環器疾患や感染症に伴う可能性があり、腹部疾患に直ちに結びつく特異的所見ではない旨を主張した。具体的には、以下のタイミングで、腹部検査(単純レントゲン検査、単純CT検査、造影CT検査および超音波検査など)を行う義務があったかが争われ、裁判所は以下のとおり判断した。(1)「傷病名胃腸炎、受診前日より腹痛・嘔吐を認める」旨が記載された診療情報提供書が送付され、被告病院に到着し、嘔吐があった時(2月21日午後5時10分)の検査義務について裁判所は、以下の点を指摘し、「まず行うべき処置は、PSVTを含む循環器疾患に対する処置であり、本件患児が被告病院に到着した平成28年2月21日午後5時10分頃の時点において、被告病院の医師が絞扼性イレウスを含む腹部疾患を疑って、直ちに本件腹部検査を行うべきであったとはいえない」とした。前医(A医療センター)は、傷病名をPSVT、急性胃腸炎とし、上室性頻拍に対する迷走神経刺激手技などの治療を行っていること前医(A医療センター)での上記治療が行われるも、頻脈が持続し、A医療センターでの薬物治療と原因検索は困難であるとして、被告病院に紹介していることA医療センターの医師は、被告病院の医師に電話でPSVTの治療をお願いする旨の申し送りをしていること循環器疾患の中でも、心筋炎は、発熱、腹痛、嘔吐の前駆症状を伴うことが多く、また、細菌ウイルスなどによる感染起因のものが多く何らかの感染症に罹患している可能性もあること。循環器疾患が強く疑われていたことを踏まえると、急性胃腸炎との傷病名や腹痛・嘔吐などの経過報告の記載は循環器疾患に付随する情報提供と考えることが合理的であること(2)再度の茶褐色の嘔吐があり、心エコーおよび診察にて劇症型心筋炎の可能性が低いと判断された時(2月21日午後5時40分)の検査義務について裁判所は、以下の点を指摘し、「循環器疾患の原因として感染症が疑われることや循環動態の悪化が継続したことによる嘔吐も考えられ、嘔吐は消化器以外に原因があることが少なくないことを踏まえれば、本件患児の場合、嘔吐が認められたからといって、腹部疾患を疑って本件腹部検査をすべきであったとはいえない」とした。劇症型心筋炎の可能性は低いと判断されたものの、本件患児の心拍数は、2月21日午後5時28分頃の12誘導心電図検査の段階で200回/分と、非常に高値であったこと12誘導心電図では、PSVTと矛盾しない所見が得られている上、初診時に認めた発熱、低血圧などの所見は、PSVTや心筋炎の所見と矛盾なく、循環器疾患の疑いはなお強い状態であったこと被告病院医師の初診時、本件患児の腹部は平坦で軟であり圧痛はなく、腹部超音波検査時にも腹部の張りや筋性防御を認めなかった上、明確な腹痛の主訴もなかったこと(3)アデホスを3回投与したが頻脈が治らない一方、嘔吐を繰り返している時(2月21日午後6時2分)の検査義務について裁判所は、以下の点を指摘し、「本件腹部検査をすべきであったということはできない」とした。アデホスは、短時間作用性のため繰り返し使用できる一方で、再発の可能性も高く、頻拍の再発があったからといって、循環器疾患を否定できるものではないこと2月21日午後5時39分頃の血液検査によれば、心筋炎症マーカーが高値となっており、急性心筋炎が強く疑われる状態であったこと(4)アデホスを4回投与した上、ワソランを投与したが頻脈が治らない一方、さらに嘔吐した時(2月21日午後6時52分)の検査義務について裁判所は、以下の点を指摘し、「被告病院の医師をして、絞扼性イレウスを含む緊急性のある腹部疾患を疑って本件腹部検査をすべきであったとはいえない」とした。本件患児は急性心筋炎が強く疑われる状態であり、被告病院の医師は、種々の細菌検査、複数回の12誘導心電図検査、アデホスとワソランの投与などを行っていること急性心筋炎は感染起因が多いこと、急性心筋炎には繰り返しの心電図検査が肝要であること、アデホスとワソランはPSVTの薬物治療として有用であることから、被告病院で行われた検査や治療はいずれも適切であったことアデホスとワソランの薬物治療が奏功しなくても、急性心筋炎といった緊急性のある循環器疾患は否定できないものであること発熱、意識障害を伴う嘔吐は中枢神経疾患の鑑別に重要であることから、感染を原因としてウイルス性脳炎などの可能性を疑ったことにも不適切な点はないこと午後6時52分頃まで、本件患児の病状が絞扼性イレウスの所見と矛盾しない症状を呈していたことは認められるものの、非特異的所見であること絞扼性イレウスをとくに示唆する腹部膨満や激しい腹痛は午後6時52分の時点においても認められず、他方で急性心筋炎、感染症、脳炎などを疑う症状もあったこと。とくに急性心筋炎は本件患児の臨床症状や検査結果からその存在を積極的に疑うべき状態に変わりはなかったこと注意ポイント解説本判決は、小児の消化器症状を循環器疾患とどう峻別すべきかが焦点となった事例である。繰り返す嘔吐は腹部疾患を疑わせるものであるが、必ずしも特異的ではなく、心筋炎などでも同様の症状を呈し得るものであること、診療情報の流れや臨床所見から循環器疾患がより強く疑われたことから、裁判所は、腹部検査を直ちに行うべき注意義務を否定した。また、本件では、死亡の数時間前の午後8時30分頃に撮影されたCTにて、胃および小腸の著明な拡張ならびに腹水貯留が認められており、「イレウス疑い・腹水貯留」と診断されているものの、解剖やCTによる死後画像造影が行われておらず、死因としては、急性心筋炎、脳症、絞扼性イレウスなどが考えられ、絞扼性イレウスであったと特定することができないこともまた、上記の判断に影響した部分があると思われる。このため、仮に、前医から腹部疾患を強く疑われる旨の診療情報が提供されていたり、非特異的な所見にとどまらず、腹部膨満や激しい腹痛などの絞扼性イレウスを示唆する所見が確認されていたりする場合には、異なる判断となった可能性がある点に留意する必要がある。なお、上記のとおり、本件患児の死因は、急性心筋炎、脳症、絞扼性イレウスなどの複数が考えられ、特定ができない中、「イレウスが死因かもしれない」旨の説明を受けることで、見落としへの不信を募らせたために訴訟に至っていると思われる。このため、顛末報告の説明は必要であるが、限られた情報の中で、誤解や不信感を抱かれないよう、丁寧に説明をする必要があることが改めて確認される事案でもある。医療者の視点本判決は、小児の非特異的な症状から重篤な疾患を鑑別する、臨床現場の難しさを反映したものと考えられます。裁判所は、頻拍や低血圧といった循環器系の異常を重視し、そちらの検査・治療を優先すべきであったと判断しました。これは、生命維持に直結する循環・呼吸の安定化を最優先するという救急医療の原則に合致しており、臨床医の判断プロセスと非常に近いものです。一方で、実臨床では、一つの疾患に絞って診断を進めるわけではありません。循環器疾患の治療を行いながらも、「嘔吐が続く」という情報から消化器疾患の可能性を常に念頭に置き、状態の変化を注意深く観察します。訴訟では特定の時点での「検査義務」が問われますが、現場では治療と並行して、どのタイミングで次の検査に踏み切るかという、より動的で連続的な判断が求められます。とくに、本件のように循環動態が不安定な患児をCT室へ移動させることには大きなリスクが伴います。そのため、まずはベッドサイドでできる治療や検査を優先するという判断は、実臨床ではやむを得ない、むしろ標準的な対応と言えるでしょう。この症例は、非特異的な症状であっても、絞扼性イレウスを示唆する腹部膨満や圧痛といった特異的な所見を見逃さないために、繰り返し身体所見をとることの重要性を改めて教えてくれる事例です。

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早期梅毒に対するペニシリンの1回投与、3回投与と同等の効果を示す

 早期梅毒に対するペニシリンの1回投与は、現在、臨床現場で広く行われている3回投与と同等の治療効果を有することが、新たな臨床試験で示された。ベンザチンペニシリンG(BPG)の3回投与は、早期梅毒の治療に追加的な効果をもたらさないことが示されたという。米国立アレルギー感染症研究所(NIAID)の資金提供を受けて米アラバマ大学バーミンガム校のEdward Hook III氏らが実施したこの研究結果は、「The New England Journal of Medicine(NEJM)」に9月3日掲載された。 この研究には関与していない、NIAID腸管・性感染症部門の責任者を務めるCarolyn Deal氏は、「BPGは梅毒に非常に効果的だが、3回投与のレジメンは患者への負担が大きく、フォローアップ診察の受診をためらわせる可能性がある」と話す。その上で同氏は、「1回投与が3回投与と同等の効果を持つことを示した今回の知見は、治療を簡素化できる可能性を示しており、特に、梅毒の罹患率が依然として非常に高い状況下では歓迎すべきエビデンスとなるものだ」と述べている。 研究グループは、梅毒は性的に活発な米国人にとって依然として健康上の脅威であると指摘している。米国では2023年に20万9,000件以上の梅毒症例が確認された。これは、2019年比で61%の増加に当たるという。梅毒は、放置すると脳障害、臓器不全、妊娠合併症、先天異常を引き起こす可能性があるだけでなく、HIV感染やHIV感染拡大のリスクを高めもする。 BPGは、梅毒に効果を発揮することが知られている数少ない抗菌薬の一つである。研究グループによると、現在、米国ではBPGが全国的に不足しており、輸入に頼らざるを得ない状況だという。 今回の研究では、米国の10カ所の医療センターの早期梅毒患者249人(男性97%、HIV感染者61%)を対象に、BPGの1回投与と3回投与の効果を比較した。試験参加者は、BPG1回240万単位を1回投与する群と、週に1回、計3回投与する群にランダムに割り付けられた。なお、「単位」とは、ペニシリンの効き目(抗菌力)をもとに決められた投与量の基準のことである。 その結果、6カ月時点の血清学的反応、すなわち、RPRテスト(Rapid Plasma Reagin Test)の値が治療前の4分の1まで下がるか(2段階以上低下)、またはRPRが完全に陰性になった割合は、1回投与群で76%、3回投与群で70%であり、群間差は−6%であった。この結果から、1回投与は3回投与に対して非劣性であることが示された。 Hook III氏は、「梅毒は1世紀以上にわたって研究・治療され、BPGは50年以上使用されている。それにもかかわらず、われわれはいまだに治療の最適化に役立つ情報を十分に得られていない。今回の研究結果が、梅毒の予防と診断における科学的進歩によって補完されることを期待している」と米国立衛生研究所(NIH)のニュースリリースの中で述べている。研究グループはまた、BPGの投与を1回に制限することで、細菌の薬剤耐性獲得を防ぐとともに、薬剤不足の影響を抑えることにも役立つ可能性があると見ている。 さらに研究グループは、この臨床試験では、BPGの1回投与が3回投与と同等の効果を有することのエビデンスが得られたものの、このような短期間での治療戦略の可能性を完全に理解するにはさらなる研究が必要だとの考えを示している。また、BPGの1回投与が末期梅毒患者や細菌が神経系に侵入した梅毒患者にも有効なのかどうかも明らかになっていないと付け加えている。

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第262回 風疹流行から10年 ワクチン推進で日本が「排除」認定/WHO

<先週の動き> 1.風疹流行から10年 ワクチン推進で日本が「排除」認定/WHO 2.全国で「マイナ救急」導入、救急現場で医療情報を共有可能に/消防庁 3.分娩可能な病院は1,245施設に、34年連続減少/厚労省 4.高額レセプトの件数が過去最高に、健康保険組合は半数近くが赤字/健保連 5.アセトアミノフェンと自閉症 トランプ大統領の発表で懸念拡大/米国 6.救急搬送に選定療養費 軽症患者が2割減、救急車の適正利用進む/茨城・松阪 1.風疹流行から10年 ワクチン推進で日本が「排除」認定/WHO厚生労働省は9月26日、「わが国が風疹の『排除状態』にあると世界保健機関(WHO)西太平洋地域事務局から認定を受けた」と発表した。「排除」とは、国内に定着した風疹ウイルスによる感染が3年間確認されないことを指し、わが国では2020年3月を最後に土着株の感染例が報告されていなかった。風疹は、発熱や発疹を引き起こす感染症で、妊婦が感染すると先天性風疹症候群を発症した子供が生まれるリスクがある。国内では2013年に約1万4千人が感染し、2018~19年にも流行が発生。過去には妊婦の感染により、45例の先天性風疹症候群が報告されていた。流行の中心は予防接種の機会がなかった40~50代の男性であり、国は2019年度からこの世代を対象に無料の抗体検査とワクチン接種を実施した。その結果、2021年以降は年間感染者数が10人前後に抑えられ、感染拡大は収束した。今回の認定はこうした取り組みの成果を示すもので、厚労省は「引き続き適切な監視体制を維持し、ワクチン接種を推進する」としている。一方で、海外からの輸入例は依然としてリスクが残る。今後も免疫のない世代や妊婦への周知徹底が課題となる。風疹排除はわが国の公衆衛生政策の大きな成果だが、維持のためには医療現場と行政が協力し続ける必要がある。 参考 1) 世界保健機関西太平洋地域事務局により日本の風しんの排除が認定されました(厚労省) 2) 風疹の土着ウイルス、日本は「排除状態」とWHO認定…2020年を最後に確認されず(読売新聞) 3) WHO 日本を風疹が流行していない地域を示す「排除」状態に認定(NHK) 4) 日本は風疹「排除状態」、WHO認定 土着株の感染例確認されず(朝日新聞) 2.全国で「マイナ救急」導入、救急現場で医療情報を共有可能に/消防庁救急現場での情報確認を迅速化する「マイナ救急」が、10月1日から全国の消防本部で導入される。マイナンバーカードと健康保険証を一体化した「マイナ保険証」を活用し、救急隊員が、患者の受診歴や処方薬情報を即時に確認できる仕組みである。患者本人や家族が説明できない状況でも、カードリーダーで情報を読み取り、オンライン資格確認システムに接続して必要な医療情報を閲覧できるようになる。これにより、救急隊は持病や服薬を把握した上で適切な搬送先を選定し、受け入れ先の医療機関では治療準備を事前に進めることが可能となる。患者が意識不明の場合には、例外的に同意なしで情報参照が認められる。2024年5月から実施された実証事業では、救急隊員から「服薬歴の把握が容易になり、搬送判断に役立つ」との評価が寄せられた。わが国では高齢化に伴い、多疾患併存やポリファーマシーの患者が増加している。救急現場での服薬歴不明は治療遅延や薬剤相互作用のリスクにつながるため、本制度は臨床現場の安全性向上に資する。その一方で、救急時に確実に活用するためには、患者自身がマイナ保険証を常時携帯することが前提となる。厚生労働省と消防庁は「とくに高齢者や持病のある方は日頃から携帯してほしい」と呼びかけている。マイナ保険証の登録件数は、2025年7月末時点で約8,500万件に達しているが、依然として所持率や利用登録の偏りは残る。医師にとっては、救急現場から搬送される患者情報がより早く共有されることで、初期対応の迅速化や医療安全の強化が期待される。他方、情報取得の精度やシステム障害時の対応など、運用上の課題にも注意が必要となる。「マイナ救急」は、地域を越えて情報を共有し、救急医療の質を底上げする国家的インフラの一環であり、今後の運用実績を踏まえ、医療DXの具体的成果として浸透するかが注目される。 参考 1) あなたの命を守る「マイナ救急」(総務省) 2) 救急搬送時、マイナ保険証活用 隊員が受診歴など把握し適切対応(共同通信) 3) 「マイナ救急」10月から全国で 受診歴や服用薬、現場で確認(時事通信) 3.分娩可能な病院は1,245施設に、34年連続減少/厚労省厚生労働省が公表した「令和6年医療施設(動態)調査・病院報告」によれば、2024年10月1日現在、全国の一般病院で産婦人科や産科を掲げる施設は計1,245施設となり、前年より9施設減、34年連続の減少で統計開始以来の最少を更新した。小児科を有する一般病院も2,427施設と29施設減少し、31年連続の減少となった。全国的に病院数そのものが減少傾向にあり、とくに周産期・小児医療を担う診療科の縮小は地域医療体制に大きな影響を及ぼすとみられる。調査全体では、全国の医療施設総数は18万2,026施設で、うち活動中は17万9,645施設。病院は8,060施設で前年比62施設の減、一般病院は7,003施設と62施設の減、診療所は10万5,207施設で微増、歯科診療所は6万6,378施設で440施設の減となった。病床数でも全体で約1万4,663床減少し、とくに療養病床と一般病床が減少した。病院標榜科の内訳をみると、内科(92.9%)、リハビリテーション科(80.5%)、整形外科(69.1%)が多い一方で、小児科は34.7%、産婦人科15.0%、産科2.8%にとどまる。産婦人科と産科を合わせた比率は17.8%であり、地域により分娩を担う施設が極端に限られる状況が続いている。また、病院報告では、1日当たりの外来患者数が前年比1.7%減の121万2,243人と減少した一方、在院患者数は113万3,196人で0.8%増加し、平均在院日数は25.6日と0.7日短縮した。医療需要は依然高水準である一方で、入院期間短縮と医療資源の集約化が進む姿が浮かんだ。今回の結果は、産科・小児科医師の偏在や医師不足が長期的に続いている現実を裏付けるものであり、医師にとっては、地域における出産・小児救急の受け皿が細り続ける中で、救急搬送の広域化や勤務負担の増大が避けられない。各地域での分娩体制再編や周産期医療ネットワーク強化の重要性が一層高まっている。 参考 1) 令和6年医療施設(動態)調査・病院報告の概況(厚労省) 2) 産婦人科・産科が最少更新 34年連続、厚労省調査(東京新聞) 3) 産婦人科・産科がある病院1,245施設に、34年連続の減少で最少を更新 厚労省調査(産経新聞) 4.高額レセプトの件数が過去最高に、健康保険組合は半数近くが赤字/健保連健康保険組合連合会(健保連)は9月25日、「令和6年度 高額医療交付金交付事業における高額レセプト上位の概要」を発表した。1ヵ月の医療費が1,000万円を超える件数は2,328件(前年度比+8%)で10年連続の最多更新となり、過去10年で6倍超に増加した。上位疾患の約8割は悪性腫瘍で、CAR-T療法や遺伝子治療薬などの登場が背景にある。最高額は約1億6,900万円で、単回投与型の薬剤を用いた希少疾患治療が占めた。これらの薬剤は患者に新たな治療選択肢を提供し、長期生存やQOL改善につながる一方で、健保組合の財政に直結する。健保連の制度により高額事例は共同で負担される仕組みだが、件数増加は拠出金を押し上げ、結果として保険料率や現役世代の負担増につながる。実際に2024年度の平均保険料率は9.31%と過去最高となり、1/4の組合は「解散ライン」とされる10%を超えた。臨床現場にとっても影響は現実に及ぶ。新規薬剤を希望する患者からの説明要請が増えており、医師は「なぜこの薬が高額なのか」「自分に適応があるのか」「高額療養費制度でどこまで自己負担が軽減されるのか」といった質問に直面している。加えて、長期投与が前提となる免疫療法や分子標的薬では、累積コストや再投与リスクについても説明が欠かせない。患者や家族が治療継続の是非を判断する際、経済的側面を含めた十分な情報提供が求められる。今後は、がん免疫治療の投与拡大、希少疾患への新規遺伝子治療薬導入などにより、高額レセプトはさらに増加すると予測される。薬価改定で一定の調整は行われるが、医療費全体に占める薬剤費の比重は確実に高まり、制度改革や患者負担の見直し議論は避けられない。現場の医師には、エビデンスに基づく適正使用とともに、経済的影響を含めた説明責任がより重くのしかかる局面にある。 参考 1) 令和6年度 高額医療交付金交付事業における高額レセプト上位の概要(健保連) 2) 高額レセプト10年連続で最多更新 24年度は2,328件 健保連(CB news) 3) 「1,000万円以上」の高額医療8%増 費用対効果の検証不可欠(日経新聞) 4) 綱渡りの健康保険 組合の4分の1、保険料率10%の「解散水準」に(同) 5) 健保1,378組合の半数近く赤字、保険料率が過去最高の月収9.3%…1人あたりの年間保険料54万146円(読売新聞) 6) 健保連 昨年度決算見込み 全体は黒字も 半数近くの組合が赤字(NHK) 5.アセトアミノフェンと自閉症 トランプ大統領の発表で懸念拡大/米国米国トランプ大統領は9月22日、解熱鎮痛薬アセトアミノフェン(パラセタモール)が「妊婦で自閉スペクトラム症(ASD)リスクを大幅に上げる」として服用自粛を促した。これに対し、わが国の自閉スペクトラム学会は「十分な科学的根拠に基づく主張とは言い難い」と懸念を表明している。米国産科婦人科学会(ACOG)も「妊娠中に最も安全な第一選択肢」と反論。WHO、EU医薬品庁、英国規制当局はいずれも「一貫した関連は確認されていない」とし、現行推奨の変更不要とした。一方、米国の現政権は葉酸関連製剤ロイコボリンのASD治療薬化にも言及したが、大規模試験の根拠は乏しい。わが国の医療現場にも余波は広がり、妊婦・家族からの不安相談が増加する懸念や、自己判断での服用中止による解熱の遅延、SNS起点の誤情報拡散が想定されている。妊娠中の高熱は、胎児に不利益を与え得るため、わが国の実務ではアセトアミノフェンは適応・用量を守り「必要最小量・最短期間」で使用するのが原則となっている。他剤(NSAIDs)は妊娠後期で禁忌・慎重投与が多く、安易な切り替えは避けるべきとされる。診療現場では、現時点で因果を支持する一貫した証拠はないこと、高熱の速やかな改善の利点、自己中断せず受診・相談すること、市販薬も含む総服薬量の確認を丁寧に説明することが求められる。ASDの有病増加には、診断基準変更やスクリーニング拡充も影響し、単一因子で説明できない点もあり、過度な警告は受療行動を阻害し得る。医師には、ガイドラインや専門学会の公的見解に基づく対応が求められる。 参考 1) 自閉症の原因と治療に関するアメリカ政府の発表に関する声明(自閉スペクトラム学会) 2) WHO アセトアミノフェンと自閉症「関連性は確認されず」(NHK) 3) トランプ政権“妊婦が鎮痛解熱剤 自閉症リスク高” 学会が反対(同) 4) トランプ氏「妊婦の鎮痛剤、自閉症リスク増」主張に日本の学会が懸念(日経新聞) 5) 解熱剤と自閉症の関連主張 トランプ大統領に批判集中(共同通信) 6) 「鎮痛剤が自閉症に関係」 トランプ政権が注意喚起へ(時事通信) 6.救急搬送に選定療養費 軽症患者が2割減、救急車の適正利用進む/茨城・松阪救急搬送の「選定療養費」徴収を導入した2つの自治体で、適正利用の進展が確認された。三重県松阪地区では、2024年6月~2025年5月に基幹3病院で入院に至らなかった救急搬送患者の一部から7,700円の徴収を開始した。1年間の救急出動は1万4,184件で前年同期比-10.2%、搬送件数も-10.6%。軽症率は55.4%から50.0%へ-5.4ポイント、1日50件以上の多発日は86から36日へ減少した。搬送1万4,786人(乳幼児193人を含む)のうち帰宅は7,585人(51.3%)、徴収は1,467人(全体の9.9%)。疼痛・打撲・めまいなどが多かった。並行して1次救急(休日・夜間応急診療所)受診が31%、救急相談ダイヤル利用が34%増え、受診先の振り分けが進んだ。茨城県の検証(2025年6~8月)でも、対象22病院の徴収率は3.3%(673/20,707)と限定的ながら、県全体の救急搬送は-8.3%、うち軽症などは-19.0%、中等症以上は+1.7%と、救急資源の選別利用が進んだ。近隣5県より減少幅が大きく、呼び控えによる重症化や大きなトラブルの報告は認められなかった。なお、電話相談で「出動推奨」だった例は徴収対象外とし、誤徴収は月1件程度で返金対応としている。現場の医師は、徴収対象と除外基準の周知徹底、乳幼児や高齢者などへの配慮のほか、1次救急・電話相談との連携による適正振り分け、会計時の説明の一貫性などが課題となる。今後は「安易な利用抑制」と「必要時にためらわず利用できる安心感」の両立を、医師と行政が協働して救急現場に反映させることが問われている。 参考 1) 救急搬送における選定療養費の徴収に関する検証の結果について(概要版)(茨城県) 2) 一次二次救急医療体制あり方検討について(第四次報告)(松阪市) 3) 軽症者の救急搬送19%減 茨城県が「選定療養費制度」を検証(毎日新聞) 4) 選定療養費 軽症搬送、前年比2割減 6~8月 茨城県調査「一定の効果」(茨城新聞) 5) 救急搬送の一部患者から費用徴収、出動件数は1年間で10.2%減 松阪市「適正利用が進んだ」(中日新聞) 6) 救急車「有料化」で出動数1割減 「持続可能な医療に寄与」と松阪市(朝日新聞)

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抗菌薬の学び方【Dr.伊東のストーリーで語る抗菌薬】第1回

抗菌薬の学び方最近は感染症の入門書が増えてきました。新しい医学書が出るとつい買ってしまう。そんな先生方も多いのではないでしょうか。問題は、その新しく買った医学書で、抗菌薬を満足に勉強できるかどうかです。勉強はしているのに、抗菌薬を覚えるのに苦労されている先生方は結構いらっしゃるのではないかと思うわけです。では、どうしてそんなに苦労するかというと、これまでの感染症の書籍はきわめて各論的に書かれているからなのですね。言い換えるとストーリー形式になっていない。あるいは、網羅的だけれども有機的ではない。そういった問題があるわけです。では、どうすれば抗菌薬を理解できるのでしょうか。抗菌薬を理解するコツは、よく使う抗菌薬の歴史的背景などの周辺知識を知っておくことです。本連載では、いろいろと雑学を挟んで楽しみながら抗菌薬の知識を身に付けていただくことを目的としていますので、楽しみにしていてください。βラクタム系抗菌薬を優先的に学ぶ理由先ほど「よく使う抗菌薬」の歴史的背景と述べました。「よく使う抗菌薬」というのは、βラクタム系抗菌薬のことです。つまりは、ペニシリン系、セフェム系、カルバペネム系などのことです。βラクタム系さえあれば、日常診療は大抵間に合ってしまう。だからこそ、βラクタム系を優先的に勉強してしまうわけです。では、βラクタム系以外の抗菌薬を覚える時はどうすればよいか? という疑問がもしかしたら生じるかもしれません。これは、βラクタム系を先にしっかりとインプットしたうえで、それと関連付けるようにして非βラクタム系を覚えるのがオススメです。つまり、βラクタム系が骨の知識に、非βラクタム系が肉の知識になるというわけです。このようにして覚えておくと、実臨床でも応用が利きやすいのでオススメです。具体例をお示ししましょう。化学療法を行っているなかで、発熱性好中球減少症を発症した60歳女性を例にとって考えてみます。起因菌や熱源ははっきりしませんが、緑膿菌をカバーするためにセフェピムを使っていたとします。ところが、そこに薬疹が出現します。口腔粘膜疹も出現してしまい、重症薬疹を否定できなくなってしまいます。このような時にどうしたらよいのでしょうか。ここで、レボフロキサシンをセフェピムと関連付けながらインプットしていると、レボフロキサシンと即答することができます(図1)。もちろん、別解としてアズトレオナムやアミノグリコシド系を使ったレジメンも考えられますが、今回は深入りしないでおきます。図1 βラクタム系と関連付けて覚える画像を拡大する細菌の分類ここで、抗菌薬の勉強に入る前に、少しだけ細菌の話をさせてください。医学部の授業などでは、細菌をグラム陽性球菌、グラム陽性桿菌、グラム陰性球菌、グラム陰性桿菌、細胞内寄生菌などに分類していたかと思います。ただ、これだと覚えないといけない細菌の種類が多すぎて少々辛いところです(図2)。図2 従来の細菌の分類画像を拡大するそこで、このレクチャーでは細菌を3つの分類で整理していただければと思います。グラム陽性球菌、グラム陰性桿菌、そして嫌気性菌の3つです(図3)。図3 覚えやすい細菌の分類画像を拡大するここで、嫌気性菌は偏性嫌気性菌、つまり酸素があると上手く生きられない細菌のことを指していると考えてください。どうしても分類がMECE(Mutually Exclusive and Collectively Exhaustive)になっていなくて気持ち悪いという方もいらっしゃるとは思いますが、その点はご容赦ください。さて、グラム陽性球菌はブドウ球菌とレンサ球菌、グラム陰性桿菌は腸内細菌目と非発酵菌、嫌気性菌は横隔膜から上のものと下のものとに大雑把に分けることができます。腸内細菌目や非発酵菌など、ややこしい言葉が出てきましたが、腸内細菌目は大腸菌やクレブシエラのこと、非発酵菌は緑膿菌のことと思っていただければ差し当たっては十分です(図4)。図4 グラム陽性球菌、グラム陰性桿菌、嫌気性菌画像を拡大するグラム陽性球菌のうち、ブドウ球菌はグラム染色で丸く見える細菌で、クラスター状に集まることで知られています。基本的には皮膚にいる細菌で、皮膚軟部組織感染症やカテーテル関連血流感染症などで問題になります(図5)。図5 ブドウ球菌画像を拡大するレンサ球菌はA群β溶血性レンサ球菌が代表的で、広い意味では肺炎球菌などもこのグループに入ります。基本的には咽頭や皮膚にいる細菌で、皮膚軟部組織感染症や肺炎・中耳炎などの上下気道感染症などで問題になります(図6)。図6 レンサ球菌画像を拡大するグラム陰性桿菌でよく見かけるのは大腸菌ですが、これは腸内細菌目に分類されます。名前のとおり、腸管内にいる細菌ですが、腹腔内感染症や尿路感染症で問題になります。腸内細菌目は形態学的には腸詰め、ウインナーのように見えることが多いです(図7)。図7 腸内細菌目画像を拡大する一方の非発酵菌は、嫌気性の環境でブドウ糖を発酵できない細菌のことで、緑膿菌が代表的です。基本的には水回りやデバイスと親和性があります。酸素があった方が生きやすい細菌なので、血液培養の時に好気ボトルだけで発育するということもよく経験します。形態学的にはチョリソーっぽく見えます(図8)。図8 非発酵菌画像を拡大する嫌気性菌は、グラム染色で見る機会が少なく、培養でも発育しにくい細菌なので、形態学的な話は割愛させていただこうと思います。横隔膜から上の嫌気性菌は口腔内にいる細菌で、フソバクテリウム属やパルビモナス属などが該当しますが、これらは細かいのでまったく覚えていただかなくて構いません。横隔膜から下の嫌気性菌は腸管内の細菌です。こちらもあまり覚えなくてよいのですが、ひとつだけ、余裕があればバクテロイデス・フラジリス(Bacteroides fragilis)という名前だけ覚えていただければと思います。基本的にこのレクチャーで横隔膜から下の嫌気性菌というときは、バクテロイデス・フラジリスを指しているものとお考えください。腸内細菌目? 腸内細菌科?ここまで、基本的な内容を解説してきました。余力がある人向けに、ちょっとだけマニアックなお話もさせてください。先ほど、腸内細菌目と述べましたが「腸内細菌科の間違いでは?」と思った先生方も多いのではないかと思います。じつは遺伝子レベルでの分析が進むことで、それまで腸内細菌科だった細菌の一部が、腸内細菌科から外れてしまうという出来事がありました。具体的にはプロテウス属などの細菌などが該当するのですが、今後の議論を進めていくうえでは不都合ということで、腸内細菌科ではなく腸内細菌目という言葉を使いました。感染症の勉強の厄介なところは、こういった細かい知識のアップデートが頻繁に行われるところにあるのですが、この連載では全体像を見失わないようにやっていきたいと思います。まとめ第1回をまとめていきます。抗菌薬を覚えるにはβラクタム系から攻めるのが鉄則です。非βラクタム系はその後に肉付けする形で覚えましょう。また、細菌については、グラム陽性球菌、グラム陰性桿菌、嫌気性菌の3つに分類して、それ以外については各論的に補足していくスタンスで臨むと分かりやすいです。次回は、タイムマシンに乗ってペニシリンG誕生の瞬間を見に行こうと思います。歴史を見ていると、ペニシリン系のスペクトラムの成り立ちがよくわかりますので、楽しみにしていてください。

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生後1週間以内の侵襲性感染症が小児てんかんリスクと関連

 てんかんは小児期に発症することの多い神経疾患で、健康や生活への影響が生涯にわたることも少なくないため、予防可能なリスク因子の探索が続けられている。オーフス大学病院(デンマーク)のMads Andersen氏らは、新生児期の侵襲性感染症罹患に伴う炎症が脳損傷を引き起こし、てんかんリスクを押し上げる可能性を想定し、全国規模のコホート研究により検証。結果の詳細が「JAMA Network Open」に7月7日掲載された。 この研究では、1997~2013年にデンマーク国内で、在胎35週以上の単胎児で重篤な先天異常がなく出生した全新生児を対象とし、2021年まで、または18歳になるまで追跡した。生後1週間以内に診断された敗血症または髄膜炎を「出生早期の侵襲性細菌感染症」と定義し、そのうち血液または脳脊髄液の培養で細菌性病原体が確認された症例を「培養陽性感染症」とした。てんかんは、診断の記録、または抗てんかん薬が2回以上処方されていた場合で定義した。 解析対象となった新生児は98万1,869人で、在胎週数は中央値40週(四分位範囲39~41)、男児51%であり、このうち敗血症と診断された新生児が8,154人(0.8%)、培養陽性敗血症は257人、髄膜炎と診断された新生児は152人(0.1%未満)、培養陽性髄膜炎は32人だった。追跡期間中に、1万2,228人(1.2%)がてんかんを発症していた。 出生早期の侵襲性細菌感染症がない子どもの追跡期間中のてんかん発症率は、1,000人年当り0.9であった。それに対して出生早期に敗血症と診断されていた子どもは同1.6であり、発症率比(IRR)は1.89(95%信頼区間1.63~2.18)だった。一方、出生早期に髄膜炎と診断されていた子どもは発症率が8.6(4.2~5.21)で、IRRは9.85(5.52~16.27)だった。 性別、在胎週数、出生体重、母親の年齢・民族・喫煙・教育歴・糖尿病などを調整したCox回帰分析の結果、出生早期に敗血症と診断されていた子どもは、追跡期間中のてんかん発症リスクが有意に高いことが示された(調整ハザード比1.85〔1.60~2.13〕)。 Andersen氏らは、「この結果は出生後早期の細菌感染の予防と治療が、小児てんかんのリスク抑制につながる可能性を示唆している」と述べている。なお、著者の1人がバイオ医薬品企業との利益相反(COI)に関する情報を開示している。

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性的マイノリティ女性は乳がん・子宮頸がん検診受診率が低い、性特有の疾患における医療機関の課題

 性的マイノリティ(SGM)の女性は、乳がんや子宮頸がんの検診受診率が非SGM女性に比べて低いことが全国調査で明らかになった。大腸がん検診では差がみられず、婦人科系がん特有の課題が示唆されたという。研究は筑波大学人文社会系の松島みどり氏らによるもので、詳細は「Health Science Reports」に8月4日掲載された。 がん検診は、子宮頸がんや乳がんの早期発見と死亡率低下に重要な役割を果たしている。先進国と途上国を含む10カ国以上では、平均的なリスクを持つ全年齢層で20%の死亡率低下が報告されている。しかし、日本では2022年時点での子宮頸がん・乳がんの検診受診率はそれぞれ43.6%、47%にとどまっている。この受診率の低さの背景として、教育や所得の問題が議論されてきたが、日本ではSGMの問題という重要な視点が欠けていた。 海外の調査では、SGMの女性は子宮頸がんや乳がん検診を受ける可能性が低いことが明らかになっている。その背景には、拒絶や差別への恐れ、性的指向の隠蔽などが影響していると指摘される。また日本では、子宮頸がんや乳がんの検診が通常産婦人科で行われることから、この日本特有の状況も受診の障壁となっている可能性がある。このような背景から、本研究ではSGM女性は非SGM女性よりも子宮頸がんおよび乳がん検診を受ける可能性が低いという仮定を立て、全国規模のオンライン調査データを用いて検証した。また、大腸がん検診も対象に加え、結果が女性特有のがんに限られるのかどうかを調べた。 本研究では、オンライン縦断調査プロジェクトである「日本における新型コロナウイルス感染症(COVID-19)問題および社会全般に関する健康格差評価研究(JACSIS Study)」のデータベースより、JACSIS 2022モジュールのデータを使用した。2022モジュールは、2022年9月12日~10月19日の間に行われた追跡調査であり、合計3万2,000のサンプルが含まれた。サンプルを20~69歳の女性に限定した結果、最終的な解析対象は1万2,305人(SGM女性1,371人、非SGM女性1万934人)となった。 調査の結果、子宮頸がん検診の受診率はSGM女性で36.2%、非SGM女性で47.4%、乳がん検診は41.8%対50.1%であり、いずれもSGM女性の方が有意に低かった(いずれもカイ二乗検定、P<0.001)。一方、大腸がん検診の受診率はSGM42.5%、非SGM45.2%であり、その差は小さく統計学的な有意差は認められなかった(カイ二乗検定、P=0.23)。 また、人口統計学的特性および社会経済的地位を考慮したロジスティック回帰分析の結果、SGM女性は非SGM女性に比べて子宮頸がん検診(オッズ比〔OR〕 0.78、95%信頼区間〔CI〕 0.69~0.88、P<0.001)および乳がん検診(OR 0.77、95%CI 0.64~0.93、P<0.01)を受ける可能性が低いことが明らかになった。一方、大腸がん検診についてはSGM女性と非SGM女性の間に有意な差は認められなかった(OR 0.96、95%CI 0.80~1.16)。 著者らは、「本研究は、SGMの女性が子宮頸がんや乳がんなど女性特有のがん検診を受けにくい現状を明らかにし、この分野の理解を深めるものとなっている。結果は、医療現場でSGMの問題に配慮するための政策の重要性を示しており、具体的にはガイドラインの整備や性的に配慮したコミュニケーションの研修、さらに自己採取型HPV検査の導入などが挙げられる。なお、本データでは約12.5%の女性が性的マイノリティであると回答しており、受診率の低さが課題の日本において、国の政策としても決して看過されるべき課題ではない」と述べている。 なお、本研究の限界として、サンプル数の少なさから対象をSGMと非SGMの2群に単純化している点が挙げられる。この単純化により、SGM内の特定のグループ(トランスジェンダーなど)が抱える経験やニーズが見落とされていた可能性がある。著者らは、こうしたグループの独自の医療ニーズや課題を明らかにするためには、より大規模で多様なサンプルを用いた研究が必要であると指摘している。

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第281回 コロナ治療薬の今、有効性・後遺症への効果・家庭内感染予防(後編)

INDEXレムデシビルエンシトレルビル感染症法上の5類移行後、これまでの新型コロナウイルス感染症(以下、新型コロナ)の動向について、感染者数、入院者数、死亡者数から薬剤に関するNature誌、Science誌、Lancet誌、NEJM誌、BMJ誌、JAMA誌とその系列学術誌に掲載され、比較対照群の設定がある研究を紹介した(参考:第277回、第278回、第279回、第280回)。今回はようやく最終回として前回と同じ6誌とその系列学術誌を中心に掲載されたレムデシビル(商品名:ベクルリー)、エンシトレルビル(同:ゾコーバ)に関する比較対照群を設定した研究を紹介する。レムデシビル新型コロナウイルス感染症の治療薬として初めて承認された同薬。当初は重症患者のみが適応だったが、その後の臨床試験結果などを受けて、現在は軽症者も適応となっている。新型コロナ治療薬の中で、日本の新型コロナウイルス感染症診療の手引き1)に定義される軽症、中等症I、中等症II、重症までのすべてをカバーするのはこの薬だけである。この薬に関して前述6誌の中で2023年5月以降に掲載された研究は、2024年6月のLancet Infectious Diseases誌に掲載された香港大学のグループによる研究2)である。この研究は評価したい因果効果をみるのに理想的な無作為化比較試験(target trial)をイメージして、可能な限りそれに近づけるように観察データ分析をデザインしていく手法「target trial emulation study」を採用したもの。利用したのはオミクロン株系統が感染の主流となっていた2022年3~12月の香港・HA Statistics保有の電子健康記録。この中からレムデシビル単独療法群(4,232例)、ニルマトレルビル/リトナビル単独療法群(1万3,656例)、併用療法群(308例)の3群を抽出し、主要評価項目を全死因死亡率(90日間追跡、中央値84日)として比較した。レムデシビル単独療法群と比較したハザード比(HR)は、ニルマトレルビル/リトナビル単独療法群が0.18(95%信頼区間[CI]:0.15~0.20)、併用療法群が0.66(95%CI:0.49~0.89)でいずれも有意に死亡率は低下していた。副次評価項目については、ICU入室・人工呼吸器使用の累積発生率でのHRが、ニルマトレルビル/リトナビル単独療法群が0.09(95%CI:0.07~0.11)、併用療法群が0.68(95%CI:0.42~1.12)、人工呼吸器使用率はニルマトレルビル/リトナビル単独療法群が0.07(95%CI:0.05~0.10)、併用療法群が0.55(95%CI:0.32~0.94)で、いずれもレムデシビル投与群に比べ有意に低かった。ただし、ICU入室率のみでは、ニルマトレルビル/リトナビル単独療法群が0.09(95%CI:0.07~0.12)と有意に低かったものの、併用療法群では0.63(95%CI:0.28~1.38)で有意差はなかった。この臨床研究は結果として、レムデシビルに対するニルマトレルビル/リトナビルの優越性を示しただけで、オミクロン株系統以降のレムデシビルそのものの有効性評価とは言い難いのは明らかである。だが、対象6誌とその系列学術誌では、オミクロン株優勢期のレムデシビルの有効性を純粋に追求した研究は見当たらなかった。対象学術誌の範囲を広げて見つかるのが、2024年のClinical Infectious Diseases誌に製造販売元であるギリアド・サイエンシズの研究者が発表した研究3)だ。これはオミクロン株系統優勢期である2021年12月~2024年2月の米国・PINC AI Healthcare Databaseから抽出した後向きコホートで、新型コロナで入院し、生存退院した18歳以上の患者を対象にしている。レムデシビル投与群が10万9,551例、レムデシビル非投与群が10万1,035例と対象症例規模は大きく、主要評価項目は30日以内の新型コロナ関連再入院率。結果はオッズ比が0.78(95%CI:0.75~0.80、p<0.0001)で、レムデシビル群の再入院率は有意に低下していた。再入院率の有意な低下は、入院中の酸素投与レベルに関係なく認められ、65歳以上の高齢者集団、免疫不全患者集団でのサブグループ解析でも同様の結果だった。もっとも前述したように、製造販売元による研究であることに加え、対象者のワクチン接種歴や過去の感染歴が不明という点でイマイチ感が残る。一方、オミクロン株系統優勢期での後遺症に対するレムデシビルの有効性を評価した研究は対象6誌では見当たらない。オミクロン株系統優勢期という縛りを外すと、世界保健機関(WHO)が主導した無作為化比較試験「SOLIDARITY試験」の追跡研究として、Nature誌の姉妹誌Communications Medicine誌に2024年11月に掲載されたノルウェー・オスロ大学による研究4)がある。無作為化後、3ヵ月時点での呼吸器症状を中心とする後遺症を調査したものだが、対症療法単独群(一部ヒドロキシクロロキン投与例を含む53例)と対症療法+レムデシビル投与群(27例)との比較では有意差は認められなかった。エンシトレルビル言わずと知れた新型コロナウイルスに対する国産の抗ウイルス薬である。その承認時には主要評価項目の変更などで物議を醸した。該当6誌で研究を探して見つかったのは、JAMA Network Open誌に掲載された同薬の第II/III相臨床試験Phase3 part(SCORPIO-SR試験)の結果、まさに日本での緊急承認時に使用されたデータ5)のみである。改めてその内容を記述すると、発症から72時間未満にいずれも5日間投与されたエンシトレルビル1日125mg群(347例)、1日250mg群(340例)、プラセボ群(343例)の3群でオミクロン株感染時に特徴的な5症状(鼻水または鼻づまり、喉の痛み、咳の呼吸器症状、熱っぽさまたは発熱、疲労感)が消失するまでの時間を主要評価項目としている。この結果、エンシトレルビル群はプラセボ群と比較して5症状消失までの時間を有意に短縮(p=0.04)。症状消失までの時間の中央値は、125mg群で167.9時間(95%CI:145.0~197.6時間)、プラセボ群で192.2時間(95%CI:174.5~238.3時間)だった。また、副次評価項目では、ウイルスRNA量の変化が125mg投与群では投与4日目でプラセボ群と比較して有意に減少(p<0.0001)、感染性を有する新型コロナウイルスウイルス力価)の陰性化が最初に確認されるまでの時間がプラセボ群と比較して有意に短縮した(p<0.001)。ウイルス力価陰性化までの時間の中央値は、125mg群が36.2時間、プラセボ群が65.3時間だった。なお、エンシトレルビルに関しては米国での上市を念頭に置き、北米、南米、欧州、アフリカ、日本を含むアジアで軽症・中等症の非入院成人(ほとんどがワクチン接種済み)の新型コロナ感染者を対象にした第III相の無作為化二重盲検プラセボ対照試験「SCORPIO-HR試験」(患者登録期間:2022年8月~2023年12月)も行われ、2025年7月にClinical Infectious Diseases誌に論文6)が掲載された。主要評価項目は新型コロナの15症状が持続的(2日以上)に消失するまでの平均時間だったが、エンシトレルビル群(1,018例)とプラセボ群(1,029例)との間で有意差は認められなかった。この主要評価項目はエンシトレルビルの承認申請を前提に米国食品医薬品局(FDA)との合意で決定されたものだったため、この結果を受けてエンシトレルビルの承認申請は行われていない。一方で塩野義製薬側は、ターゲットを曝露後予防にしたプラセボ対照二重盲検第III相試験「SCORPIO-PEP試験」を2023年から開始。同社の発表によると、試験は米国、南米、アフリカ、日本を含むアジアで実施し、新型コロナウイルス検査で陰性が確認された新型コロナ感染者の12歳以上の同居家族または共同生活者2,387例が登録された。同試験の結果は論文化されておらず、あくまで塩野義製薬の発表になるが、主要評価項目である「投与後10日までの新型コロナ発症者の割合」はエンシトレルビル群が2.9%、プラセボ群が9.0%であり、エンシトレルビル群は統計学的に有意に相対リスクを低下させたという(リスク比:0.33、95%CI:0.22~0.49、p<0.0001)。今後、塩野義製薬は各国で曝露後予防への適応拡大を目指す考えである。 参考 1) 厚生労働省:新型コロナウイルス感染症診療の手引き(第10.1版)(厚生労働省 2024年4月23日発行) 2) Choi MH, et al. Lancet Infect Dis. 2024;11:1213-1224. 3) Mozaffari E, et al. Clin Infect Dis. 2024;79:S167-S177. 4) Hovdun Patrick-Brown TDJ, et al. Commun Med (Lond). 2024;4:231. 5) Yotsuyanagi H, et al. JAMA Netw Open. 2024;7:e2354991. 6) Luetkemeyer AF, et al. Clin Infect Dis. 2025;80:1235-1244.

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9月26日 大腸を考える日【今日は何の日?】

【9月26日 大腸を考える日】〔由来〕9の数字が大腸の形と似ていることと、「腸内フロ(26)ーラ」と読む語呂合わせから、健康の鍵である大腸の役割や生息する腸内細菌叢のバランスを健全に保つための方法を広く知ってもらうことを目的に森永乳業が制定。関連コンテンツ中等症~重症の活動性クローン病、グセルクマブ導入・維持療法が有効/Lancetコーヒー摂取量と便秘・下痢、IBDとの関連は?PPI・NSAIDs・スタチン、顕微鏡的大腸炎を誘発するか?日本人大腸がんの半数に腸内細菌が関与か、50歳未満で顕著/国立がん研究センターほか大腸がん死亡率への効果、1回の大腸内視鏡検査vs.2年ごとの便潜血検査/Lancet

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帯状疱疹ワクチンは心血管イベントリスクを低下させる?

 帯状疱疹ワクチンは、痛みを伴う皮膚感染症を予防するだけでなく、心筋梗塞や脳卒中などの心血管イベントのリスクも低下させる可能性のあることが、新たな研究で明らかになった。帯状疱疹ワクチンのシングリックスを製造販売するグラクソ・スミスクライン(GSK)社のワクチン担当グローバル・メディカル・アフェアーズ・アソシエイト・メディカル・ディレクターのCharles Williams氏らによるこの研究結果は、欧州心臓病学会年次総会(ESC Congress 2025、8月29日~9月1日、スペイン・マドリード)で発表された。 帯状疱疹は水痘(水ぼうそう)を引き起こす水痘・帯状疱疹ウイルスの再活性化によって引き起こされる。水痘に罹患すると、治癒後もウイルスが神経系に潜伏し続け、加齢に伴い免疫力が低下すると、ウイルスが再活性化して帯状疱疹を引き起こすことがある。研究グループによると、水痘罹患経験者の約3人に1人は、ワクチンを接種しなければ帯状疱疹を発症する可能性があるという。米疾病対策センター(CDC)は、50歳以上の人に対して帯状疱疹ワクチンの接種を推奨しているほか、免疫不全状態にある19歳以上の人にも接種を推奨している。さらに研究グループによると、帯状疱疹の発症は心筋梗塞リスクを高める可能性や、ウイルスが頭部の大小の血管に侵入して脳卒中リスクを高める可能性も示唆されているという。 今回の研究でWilliams氏らは、帯状疱疹ワクチン(乾燥組換え帯状疱疹ワクチン、生弱毒化帯状疱疹ワクチン)の心血管イベントに対する効果を検討した研究を検索し、基準を満たした9件(観察研究8件、ランダム化比較試験1件)のデータを統合してメタアナリシスを実施した。9件の研究の参加者は男性が53.3%を占め、平均年齢は53.6~74歳だった。 その結果、帯状疱疹ワクチンを接種した群では未接種の群に比べて、心筋梗塞や脳卒中などの心血管イベントの発生リスクが有意に低下することが明らかになった。リスク低下の大きさは、18歳以上の人では18%、50歳以上の人では16%であった。 これらの結果からWilliams氏は、「現時点で入手可能なエビデンスを検討した結果、帯状疱疹ワクチンの接種は心筋梗塞や脳卒中などの心血管イベントのリスク低下と関連していることが分かった」と述べている。ただし研究グループは、対象とした9件の研究のうち8件は観察研究であるため、本研究によりワクチン接種と心血管イベントの発生リスク低下との間に因果関係があることを証明することはできないと指摘している。 さらにWilliams氏は、「メタアナリシスに用いられた研究は全て、一般集団における帯状疱疹予防の手段としてのワクチンの効果を調べることを目的としたものである。それゆえ、今回の結果を、心血管イベントリスクが高い集団に一般化するには限界がある可能性がある。これは、帯状疱疹ワクチンの接種と心血管イベントとの関連を検討するためのさらなる研究が必要であることを意味する」と述べている。 なお、学会発表された研究結果は、査読を受けて医学誌に掲載されるまでは一般に予備的なものと見なされる。

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RSウイルスワクチンの1回接種は高齢者を2シーズン連続で守る

 米国では、60歳以上の人に対するRSウイルス感染症を予防するワクチン(RSウイルスワクチン)が2023年より接種可能となった。米疾病対策センター(CDC)は、75歳以上の全ての人と、RSウイルス感染症の重症化リスクがある60〜74歳の人は1回接種を推奨している。このほど新たな研究で、高齢者はRSウイルスワクチンの1回接種により2シーズン連続でRSウイルス関連の入院を予防できる可能性のあることが示された。米ヴァンダービルト大学医療センターのWesley Self氏らによるこの研究の詳細は、「Journal of the American Medical Association(JAMA)」に8月30日掲載された。 Self氏は、「これらの結果は、RSウイルスワクチンにより高齢者のRSウイルス感染による入院や重症化を予防できることを明確に示している。この新しいワクチン接種プログラムが公衆衛生に有益であることを目の当たりにするのは本当に喜ばしいことだ」と話している。 研究グループによると、RSウイルス感染症は秋から冬にかけて60歳以上の高齢者に深刻な影響を及ぼし、毎年15万人が入院、8,000人が死亡しているという。Self氏らは今回、2023年10月1日~2024年3月31日、または2024年10月1日~2025年4月30日のRSウイルス流行期に急性呼吸器疾患により米国20州の26病院に入院した60歳以上の人6,958人(年齢中央値72歳、女性50.8%)を対象に、RSウイルス関連の入院に対するワクチンの有効性を検討した。対象者のうち、821人(11.8%)はRSウイルス感染症症例(症例群)、6,137人が対照群とされた。また、1,829人(26.3%)は免疫抑制状態にあった。 RSウイルスワクチンを接種していたのは、症例群で63人(7.7%)、対照群で966人(15.7%)だった。2シーズンを合わせたワクチンの有効性は58%と推定された。また、RSウイルス感染症の発症と同じシーズンに接種した場合のワクチンの有効性は69%、前シーズンに接種した場合の有効性は48%であったが、この差は統計学的に有意ではなかった(P=0.06)。さらに、2シーズンを合わせたワクチンの有効性は、免疫抑制状態にない群で67%であったのに対し、免疫抑制状態にある群では30%と有意に低かった。同様に、非心血管疾患患者でのワクチン有効性は80%であったのに対し、心血管疾患を有する群では56%と有意に低かった。 Self氏は、「われわれのデータは、RSウイルスワクチンの有益な効果は時間の経過とともに弱まる傾向があることを示している」とヴァンダービルド大学のニュースリリースで述べている。 CDCのウェブサイトには、「すでに1回接種を受けた人(昨年を含む)はワクチン接種を完了と見なされ、現時点で追加の接種を受ける必要はない」と記載されている。Self氏は、「本研究結果は、ガイドラインの見直しが必要である可能性があることを示している。初回接種後、一定の間隔を置いてワクチンを再接種することは、より長期間にわたりRSウイルスに対する予防効果を維持するための戦略となり得る」と述べている。その上で同氏は、「単回接種後の効果の持続期間や再接種の必要性について理解するために、ワクチンの有効性を今後も綿密にモニタリングしていくことが重要だろう」との見方を示している。

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唾液に果汁ジュースによる虫歯を防ぐ効果

 虫歯になるのが心配で、果汁ジュースを子どもに与えないようにしている親がいる。しかし、唾液の驚くべき特性のおかげで、ジュースが子どもの口腔内の健康に与える悪影響は長くは続かないことが、新たな研究で示唆された。唾液は、歯の表面に滑らかな膜を作ることで歯や歯茎を細菌から守り、歯のエナメル質の初期の損傷の修復を助ける。研究からは、リンゴジュースを飲むと、一時的にこの保護作用が阻害されるものの、その影響は10分以内に消失し始めることが明らかになったという。英ポーツマス大学歯学・健康ケア学部のMahdi Mutahar氏らによるこの研究結果は、「PLOS One」に9月3日掲載された。 今回の研究では、32人の健康な大学生と大学職員が、水で口をすすぐ群(対照群)とリンゴジュースで口をすすぐ群(ジュース群)に分けられた。Mutahar氏らは両群から、ベースライン時、水またはジュースで口を1分間すすいでから1分後と10分後の3時点で唾液を採取し、口腔内の潤滑性を評価する摩擦測定(トライボロジー試験)や唾液中のタンパク質分析などを行い、両群の唾液の違いを比較検討した。 その結果、水やジュースで口をすすぐと一時的に唾液の潤滑力が低下するが、10分程度で元に戻ることが明らかになった。また意外なことに、潤滑力の低下の程度は水の方が強いことも示された。さらに、ジュースを飲むと、シスタチン類や炭酸脱水酵素など唾液に含まれる主要なタンパク質に影響が及ぶことも示された。 Mutahar氏は、「この結果には本当に驚かされた。これまで長い間、リンゴジュースなどの酸性の飲み物は、飲んだ直後から口腔内の健康、特に歯に対して悪影響を及ぼすものだと考えられてきた。しかし、われわれの研究は、口の中を保護し、迅速に修復して長期的な損傷を回避する上で、唾液が重要な役割を果たしていることを示している」と言う。同氏らは、「リンゴジュースをひと口飲んだ後には、潤滑の中心的役割を担う糖タンパク質のムチンの働きにより潤滑性が回復する可能性が考えられる」と考察している。ただし、注意点もある。同氏は、「リンゴジュースを何度も飲む、あるいは飲んだ後に口を水ですすがずにいるといった理由で長時間にわたって口の中にジュースが残っていると、口腔内の健康に長期的な悪影響が及ぶ可能性がある」と注意喚起している。 Mutahar氏はさらに、「一番の驚きは、水道水で口をすすぐ方がリンゴジュースよりも口腔内の摩擦や乱れを引き起こしやすいことだった」と言う。同氏は、「われわれが使用したポーツマスの水には、ジュースよりも唾液の潤滑性をもたらすタンパク質に干渉するミネラルが含まれているようだ」と話す。 Mutahar氏らは、果汁ジュースを飲みたい子どもや大人に対して以下の推奨を示している。・ゆっくり少しずつ飲むのではなく、素早く飲む。・飲んだ直後に水で口の中をすすいで残った酸や糖を取り除く。・ストローを使い、果汁ジュースが直接歯に触れにくくする。・果汁ジュースを飲んだ後は、次に飲むまで口の中が回復する時間を設ける。 Mutahar氏らは現在、人々が1日に何度も果汁ジュースを飲んだ場合に何が起こるかを調べている。同氏らは、将来的には日常的な飲み物にムチンのような保護的に働く成分を加えることで、人々の歯や歯茎を守れるかどうか検討することも研究課題になり得ると考えている。

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赤肉の摂取は腹部大動脈瘤の発症につながる?

 赤肉を大量に摂取すると、致死的となることもある腹部大動脈瘤(AAA)の発症リスクが高まる可能性があるようだ。赤肉や他の動物性食品に含まれる成分は、腸内細菌によって分解されたのち、肝臓で酸化されてTMAO(トリメチルアミンN-オキシド)となり、血液中に蓄積する。新たな研究で、血中のTMAOレベルが高い人ほどAAAの発症リスクが高いことが示された。米クリーブランド・クリニック血管医学部門長のScott Cameron氏らによるこの研究結果は、「JAMA Cardiology」に8月20日掲載された。 AAAは腹部の最も太い動脈(腹部大動脈)に瘤のような膨らみが生じる病態である。通常、大動脈の壁は、心臓から送り出される血液の圧力に耐えられる程度に強固である。しかし、動脈硬化などにより部分的に血管壁が弱くなると、そこに膨らみが生じる。このような大動脈瘤は、大きくなるにつれて破裂のリスクが高まり、破裂が病院外で発生した場合には、80%のケースで致死的になるという。 Cameron氏によると、現状ではAAAに対する治療選択肢は手術かステント留置術のみであり、動脈瘤リスクを有する人を予測できる血液検査は存在しない。また、AAA患者は通常、大動脈が破裂して体内に大量出血が起こるまで症状が現れないという。 動物実験では、TMAOはAAAの進行や破裂を促進することが報告されている。今回の研究では、大動脈の定期的な画像検査サーベイランスを受けている2つのコホートのデータを用いて、TMAOレベルとAAA発症や急速な拡大(年間4.0mm以上)、外科手術が推奨される状態(直径5.5cm以上、または急速な拡大)との関連が検討された。コホートの1つはヨーロッパ人(237人、年齢中央値65歳、男性89.0%)、もう1つは米国人(658人、年齢中央値63歳、男性79.5%)で構成されていた。 解析の結果、ヨーロッパコホートでは、血中のTMAOレベルが高いことはAAAの従来のリスク因子(喫煙、高血圧など)や腎機能とは独立してAAAリスクの上昇と関連していることが示された。また、高TMAOにより、急速に拡大するAAAのリスク(調整オッズ比2.75、95%信頼区間1.20〜6.79)、および手術が推奨される状態になるリスク(同2.67、1.24〜6.09)を予測できる可能性も示された。さらに、米国コホートでも、ヨーロッパコホートと米国コホートを統合して解析しても、同様の結果となることが確認された。 Cameron氏は、「これらの結果は、TMAOレベルを標的とすることが、手術以外の動脈瘤疾患の予防と治療に役立つ可能性があることを示唆している」と述べている。また研究グループは、今回の結果がAAAの有効な血液検査の開発につながる可能性があるとの見方も示している。 さらに研究グループは、本研究結果が、AAAリスクを有する人が赤肉の摂取量を減らすことで、自らを守るための対策を講じるのに役立つ可能性があると話している。論文の上席著者である、クリーブランド・クリニック心臓血管・代謝科学部長のStanley Hazen氏は、「TMAOの生成には腸内細菌が関与しており、動物性食品や赤肉を摂取すると、そのレベルが高くなる。TMAOの産生経路を標的とした薬剤は、前臨床モデルにおいて動脈瘤の発生と破裂を阻止することが示されているが、ヒトではまだ利用できない。本研究結果は、手術が必要になるまで経過観察する現在の臨床診療と比較して、大動脈の拡張や早期動脈瘤の予防や治療における食事療法の重要性を示唆しているため、共有する価値がある」と述べている。 ただし研究グループは、赤肉や動物性食品を多く含む食生活とAAAを直接結び付けるには、さらなる研究が必要だと指摘している。

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脂肪分の多い食事が好中球性喘息の一因か

 脂肪分の多い食べ物は、子どもの喘息の一因となる可能性があるようだ。特定の食品に含まれる脂肪が、微生物や細菌のタンパク質によって引き起こされる非アレルギー性の喘息である好中球性喘息に関連していることが、新たな研究で示された。米フィラデルフィア小児病院のDavid Hill氏らによるこの研究結果は、「Science Translational Medicine」に8月27日掲載された。Hill氏らによると、好中球性喘息はアレルギー性喘息よりも治療が難しく、入院が必要になるほど重篤な症状が引き起こされる可能性がアレルギー性喘息よりも高いという。 好中球性喘息は、好中球が過剰に集まって炎症を起こすタイプの喘息であり、この過程には免疫細胞のマクロファージも関与している。マクロファージは吸入されたアレルゲンなどの異物を認識し、炎症性サイトカインなどを分泌する。これにより好中球が誘導され、気道炎症が悪化する。一方、肥満は、慢性炎症や代謝異常を通じてマクロファージを含む免疫細胞の性質を変化させることが知られている。過去の研究では、肥満が喘息、特に好中球性喘息と関連することが示されていたが、その要因が肥満そのものなのか、食事成分なのかは明らかになっていない。 この研究でHill氏らはまず、前臨床試験として動物に高脂肪食を与える実験を行った。その結果、動物性脂肪や加工食品に含まれていることの多い飽和脂肪酸の一種、ステアリン酸が肺のマクロファージに蓄積し、肥満を引き起こすことなく気道の炎症を誘導することが確認された。その一方で、オリーブオイルなどに含まれている一価不飽和脂肪酸のオレイン酸には炎症抑制効果が認められることや、炎症性サイトカインのインターロイキン(IL)-1βやタンパク質のIRE1αを阻害すると、ステアリン酸による肺炎症が抑えられることも確認された。さらに、肥満の小児喘息患者においても、高脂肪食の摂取に関連してマクロファージ様細胞の活性化が認められた。 Hill氏は、「この研究以前は、小児肥満を好中球性喘息の原因と疑う人が多かった。しかし、肥満ではない小児でも好中球性喘息が見られるため、別のメカニズムが存在する可能性も指摘されていた」と同病院のニュースリリースの中で説明する。その上で同氏は、「本研究では、前臨床研究と小児を対象にした研究の両方において、特定の飽和脂肪酸を含む食事は、肥満とは無関係に好中球性喘息を引き起こす可能性のあることが示された」と述べている。 一方、論文の共著者であるフィラデルフィア小児病院呼吸器・睡眠医学部長のLisa Young氏は、「喘息は小児の最も一般的な慢性疾患の一つであり、喘息のサブタイプに応じて異なる治療が必要になることもある。喘息に関連するリスク因子や誘因はさまざまにあるが、本研究は、特定の食事成分が、特に治療の難しい好中球性喘息にどのように関連しているかを示すエビデンスを提供している。これらの知見は新たな治療戦略の開発を促すものであり、標的を絞った食事療法がこのタイプの喘息の予防に役立つ可能性を示唆しており、大変励みになる」と述べている。

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