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従来療法に劣らぬ効果が報告された新・抗HIV療法

HIV感染症の治療は、抗HIV薬の多剤併用療法(HAART)の導入により劇的な進歩を遂げた。しかし、初回の抗HIV療法に失敗した感染者に対して、いかにウイルスを抑制し、その効果を長期間持続させていくかはいまだに大きな課題となっている。そのような中で開発された新規プロテアーゼ阻害薬(PI)のdarunavir(DRV:日本では申請中)について、 7月7日付のLancet誌に興味深い報告が発表された。ブラジル・サンパウロのCentro de Referência e Treinamento DST/AIDSのMadruga氏らが行った第III相無作為臨床試験「TITAN」の結果、darunavirとリトナビルの配合剤(DRV/r)が、現在繁用されているPI配合剤のロピナビル・リトナビル配合剤(LPV/r)に劣らぬ抗ウイルス効果を示すことが明らかにされたのだ。48週投与で抗HIV療法経験者の77%に抗ウイルス効果Madruga氏らは、これまでLPV/rが安全性と抗ウイルス効果の両面から、抗HIV療法経験者に対する治療法として最も有望視されてきたことから、 DRV/rをLPV/rと比較することとした。対象は、すでに抗HIV療法を経験しているが、ロピナビルの使用経験はない18歳以上のHIV感染者(血中HIV RNA量>1,000コピー/mL)とし、これらをDRV/r群(298例)とLPV/r群(297例)に無作為化して、48週間のウイルス抑制効果を検討した。その結果、 治療48週後にウイルス抑制効果(血中HIV RNA量<400コピー/mLの達成)が認められたのは、DRV/r群が77%、LPV /r群が68%で、9%の差が見られた(per-protocol 解析)。DRV/r群でいずれも小さかった変異発現率またPI耐性につながる変異の発現率は、DRV/r群が21%、LPV/r群が36%。核酸系逆転写酵素阻害薬(NRTI)耐性関連の変異発現率は、DRV/r群14%、LPV/r群27%と、いずれもDRV/r群のほうが小さかった。安全性に関する結果は、両群同等だった。以上よりMadruga氏らは、ロピナビル未使用の抗HIV療法経験者に対し、DRV/rはLPV/rに劣らぬ抗ウイルス効果を示したとして、DRV/rをこれらのHIV感染者にする治療選択肢として考慮すべきだと結論づけている。

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メタ解析で明らかになったHIV/AIDSにおける発癌リスク

HIV治療の進歩により、HIV感染後の生命予後は以前に比べだいぶ長くなった。そこで近年、関心の高まりを見せているのが、「発癌リスク」などHIVの長期感染に伴う合併症の問題だ。元来、免疫低下が直接関係する癌としてHIV感染者やAIDS患者で指摘されてきたのは、カポジ肉腫、非ホジキン性リンパ腫、子宮癌の3種のみだが、臓器移植後の免疫低下患者では、広範囲の癌種の発症増加が報告されている。 このような中、7月7日付Lancet誌で報告されたオーストラリアにあるニュー・サウス・ウェールズ大学のGrulich氏らの研究では、HIV/AIDSを対象にしたコホート試験と、臓器移植のレシピアントを対象にしたコホート試験とをメタ解析した結果、臓器移植レシピアント群だけでなくHIV/AIDS群においても、免疫低下が主因と考えられる多種の感染症由来の癌発症リスクが増大していることが明らかにされた。HIV/AIDS群でも20種類の癌が増加、多くの主因は免疫低下同研究では、これまでに報告されている文献の中から、HIV/AIDSを対象にしたコホート研究7件(合計444,172例)と、臓器移植のレシピアントを対象にしたコホート研究5件(合計31,977例)を抽出し、ともに免疫低下を有する双方の集団において、癌種や発癌状況に関するメタ解析を行った。その結果、HIV/AIDS群においても臓器移植レシピアント群においても、検討した28種類の癌種のうち20種類の発症率が、対照群より有意に高いことが明らかになった。HIV感染症の長期合併症として危惧される感染症関連の各種癌これら発症増加の見られた癌のほとんどは、epstein-Barrウイルス(EBV)が関連するホジキン性リンパ腫や非ホジキン性リンパ腫、ヒト・ヘルペスウイルスが関連するカポジ肉腫、B型肝炎ウイルスやC型肝炎ウイルスが関連する肝癌、ヘリコバクター・ピロリ(H. pylori)が関係する胃癌など、何らかの感染症が関与すると考えられる癌だったという。以上のように、HIV/AIDS群と臓器移植レシピアント群という異なる免疫低下集団において同様の発癌パターンが見られたことから、Grulich氏らは「これらの癌増加の主要リスクファクターは、『免疫低下』だと考えられる」と考察しており、HIV感染症の長期的合併症として今後、感染症関連の癌の重要性が増大していくだろうと喚起している。

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HPVワクチンの子宮頸癌予防効果を確認、PATRICIA studyの中間解析から

子宮頸癌の主要な原因としてヒトパピローマウイルス(HPV)感染が注目を集め、その対策としてHPVワクチンの予防投与への期待が高まっている。子宮頸癌の発症率が高いアフリカ、南アジア、南米の途上国における普及が急がれる一方で、先進国では女児への予防投与によって若者の性道徳が乱れるのではないかとの懸念の声が上がるなど、一般市民レベルの議論もさかんだ。 発癌性を有するHPVは15のタイプが確認されており、そのうちHPV16およびHPV18が子宮頸癌の70%以上に関連することが国際的な調査で示されている。フィンランド・ヘルシンキ大学産婦人科のPaavonen氏らは、子宮頸癌の予防法としてのHPV16/18 L1ウイルス様粒子ワクチン投与の有用性を評価するための国際的な無作為化第III相試験(PATRICIA study)を実施しており、6月30日付Lancet誌上でその中間解析の結果を報告した。途上国を含む14ヵ国が参加する大規模臨床試験2004年5月~2005年6月の間に、途上国を含む14ヵ国において15~25歳の若年女性18,525名が、HPV16/18ワクチン群(9,258名)あるいは対照群(A型肝炎ワクチン、9,267名)に無作為に割り付けられた。これらの対象には、すでに軽度の細胞学的異常でワクチン投与を受けているものや、HPV16、HPV18以外の発癌性HPVに感染(多くの症例が複数種のウイルスに感染)しているものが含まれた。子宮頸部の細胞診および生検を行い、PCR法にて14の発癌性HPVタイプの有無を評価した。子宮頸癌の予防の指標は、HPV16あるいはHPV18を伴うgrade 2~3の子宮頸部上皮内腫瘍(CIN2+)に対する抑制効果とした。今回の中間解析は、病変部にHPV16あるいはHPV18が確認されたCIN2+の患者が23例に達した時点で開始した。平均フォローアップ期間は14.8ヵ月であった。HPV16/18ワクチンはCIN2+の発症を有意に抑制23例のCIN2+のうち、2例はHPV16/18ワクチン群であったが、21例は対照群であった。複数のHPV タイプに感染していた症例は14例であり、2例がHPV16/18ワクチン群、12例が対照群であった。これらのデータを解析したところ、CIN2+に対するHPV16/18ワクチンの有効性は90.4%(97.9%信頼区間:53.4-99.3、p<0.0001)であった。安全性については、両群間に臨床的に意味のある差は認めなかった。Paavonen氏は、「HPV16/18ワクチンを用いた補助療法は、HPV16あるいはHPV18感染によるCIN2+の発症に対して有意な予防効果を示したことから、子宮頸癌の予防法として有用と考えられる」と結論している。(菅野 守:医学ライター)

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99%の外科医が研修中に針刺し事故を経験

研修中の外科医が針刺し事故を被るリスクは高く、事故の報告を適切に行うことが、早めの予防処置あるいは治療開始に重要なステップとなる。米国ジョンズ・ホプキンズ大学のMartin A. Makary氏らは、その実態調査を行った。NEJM誌6月28日号からの報告。アンケート回答率は95%調査は17の医療センターで研修中の外科医に、これまでに被った針刺し事故について、回答用紙を郵送で返送してもらう方法で行われた。調査内容は、最新の事故が被雇用者保健サービス(employee health service)に報告されていたかどうか、およびハイリスク患者(すなわちHIV・B型肝炎・C型肝炎ウイルスの感染既往歴がある、あるいは注射薬使用のいずれか1つに該当する)に関与したかどうかについて。また、事故原因と周囲の状況についても調べられた。回答率は95%だった。卒後年数が増すほど事故件数が増加回答者699人のうち582人(83%)が針刺し事故を被っていた。また平均事故件数が、卒後1年目では1.5件、2年目では3.7件、3年目では4.1件、5年目では7.7件と、卒後年数(PGY)が増すほど増える傾向にあることが明らかとなった。研修期間の最終年までに研修医の99%が事故を被り、そのうち53%はハイリスク患者に関与するものだった。半数以上が未報告一方、報告状況については、最新の578件中297件(51%)が被雇用者保健サービスに報告されていなかった。その理由として最も多かったのが「時間がない」(42%)。未報告の事故について本人以外で誰が知っているかについては、最も多かったのは指導医(51%)、最も少なかったのは配偶者や恋人などの身内(13%)だった。以上の結果を踏まえMakary氏らは、「針刺し事故は研修中の外科医の間でごく普通のことで、報告されていないことが多い。予防・報告ストラテジーを改善することが、外科医療提供者の職業安全を向上するために必要である」とした。(武藤まき:医療ライター)

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進行パーキンソン病の遺伝子治療、世界的に注目を集める試験で一定の成果が

掲載誌の発行前からその成果が伝えられ、発表後は日本でも一般紙などがさかんに報じている注目の研究。 パーキンソン病では黒質のドパミン作動性ニューロンの消失によって基底核回路に変化が起き、視床下核への抑制性のγ-アミノ酪酸(GABA)作動性インプットの低下などをきたす。そのため、運動開始困難、筋硬直、振戦を特徴とする運動障害が起きる。ドパミン作動性神経伝達薬の有効性は確立されているが、進行パーキンソン病ではジスキネジアやmotor fluctuationなど許容しえない薬剤関連合併症が多くみられる。 アメリカNYにあるコーネル大学Weill 医学部脳神経外科のMichael G. Kaplitt氏らは、運動回路内に正常な脳活性を再確立すれば、パーキンソン病の運動障害は回復するとの仮説のもと、アデノ随伴ウイルス(AAV)ベクターを用いてGABAの産生を促進するグルタミン酸脱炭酸酵素(GAD)遺伝子を視床下核ニューロンへ直接導入する遺伝子治療を試みた。Lancet誌6月23日号の報告。高、中、低用量のAAV-GADを視床下核の片側に手術的に注入Kaplitt氏らは、パーキンソン病12例(男性11例、女性1例、平均年齢58.2歳)を対象に、GAD遺伝子を移入したアデノ随伴ウイルスベクター(AAV-GAD)を視床下核の片側(対側半身の運動機能に対応)に手術的に注入し、その安全性および認容性を検討するオープンラベル試験を実施した。症例選択基準は、Hoehn and Yahr stage 3以上で、少なくとも5年以上の病歴があり、薬剤効果非発現時にmotor fluctuationがみられる70歳以下の症例とした。AAV-GADを低、中、高用量投与する3群に分け、それぞれに4例ずつを登録した。臨床評価は、ベースライン(併用薬の効果発現時、非発現時)、術後1、3、6、12ヵ月後に行い、日常生活動作(ADL)の評価にはUnified Parkinson’s Disease Rating Scale(UPDRS)を用い、神経心理学的検査、PET検査を施行した。治療関連有害事象は認めず、3ヵ月後に運動能が有意に改善、1年後も持続全登録例が手術を受け、脱落例やフォローアップ不能例はなかった。治療に関連した有害事象は認めなかった。遺伝子治療3ヵ月後には、視床化核のAAV-GAD注入側とは対側半身の運動関連UPDRSスコアが有意に改善し(併用薬効果非発現時:p=0.0015、同発現時:p=0.01)、その効果は12ヵ月後も持続していた。PET検査では、治療側に限定的な視床部代謝の減少が確認され、臨床的運動スコアと補足運動野の脳代謝に相関が認められた。以上の結果により、Kaplitt氏は「進行パーキンソン病において、視床下核のAAV-GAD遺伝子治療は安全で良好な認容性を示し、成人脳に対するin vivo遺伝子治療は種々の神経変性疾患に対し安全に施行可能なことが示唆された」と結論した。なお、現在、日本で進められている遺伝子治療(自治医大神経内科・中野今治氏)では、hAADC遺伝子を組み込んだAAV-2ベクターを線条体に注入するとともにL-DOPAを経口投与する方法が採用されている。(菅野 守:医学ライター)

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低出生体重児へのフルコナゾール予防投与で真菌定着を抑制

早産児の疾病および死亡の主原因である侵襲性カンジダ感染症を回避する手法について、イタリア・トリノの聖アンナ病院のPaolo Manzoni氏らのグループは、フルコナゾールの予防投与による効果を検証した。超低出生体重児における真菌定着と感染症予防について、多施設共同での無作為化二重盲検プラセボ対照試験を実施。その結果、フルコナゾールの予防投与が、出生時体重1500g未満の新生児で、真菌の定着と侵襲性感染症の発病率を低下させることが明らかになったという。NEJM誌6月14日号で報告された。6mg投与群、3mg投与群とプラセボに割り付け試験方法は、イタリアにある8つの第三次新生児集中治療施設を対象に、15ヵ月の間に出生した体重1500g未満の新生児322例を、ランダムに30日間(出生時体重1000g以下の新生児は45日間)、フルコナゾール投与群(体重kg当たり6mg投与群と3mg投与群)とプラセボ群に割り付け、菌の監視培養と系統的な感受性試験を毎週実施した。真菌定着、感染症発生ともに有意に低く予防投与は有効その結果、フルコナゾール投与群における真菌の定着率は、6mg投与群が9.8%、3mg投与群は7.7%で、いずれもプラセボ投与群の29.2%と比較して有意に低いことがわかった(いずれもP

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