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4001.

ロタウイルスワクチン、腸重積罹患率を増大せず

乳幼児への5価ロタウイルス(RV5)ワクチン接種は、接種後1~7日、同1~30日後の腸重積罹患率を増大しないことが報告された。米国・ハーバード公衆衛生大学院のIrene M. Shui氏らが、米国のワクチン安全データリンク(VSD)に登録された、RV5接種を受けた乳幼児について調べ明らかにしたもので、JAMA誌2012年2月8日号で発表した。RV5ワクチン接種後の腸重積発症は、開発試験段階では報告されなかったが、承認後の国際的なトライアルで、特に1回目の接種後1週間以内の低レベルのリスク上昇の可能性が示唆されていた。約79万回のRV5接種について追跡調査研究グループは、2006年5月~2010年2月の間に、VSDに登録された、生後4~34週にRV5ワクチン接種を受けた乳幼児について、その後の腸重積罹患率について追跡調査を行った。主要アウトカムは、接種後1~7日、同1~30日間の、それぞれの腸重積罹患率だった。対照群として、RV5以外の推奨ワクチンを接種した乳幼児の同罹患率について比較した。試験期間中に被験者が受けたRV5ワクチン接種回数は、78万6,725回で、うち初回接種は30万9,844回だった。接種後7日、30日までのそれぞれの腸重積罹患率に増大なしその結果、RV5接種群で、非RV5接種群と比べ、接種後1~7日、同1~30日後の腸重積罹患率の有意な増大は認められなかった。具体的には、接種後1~30日後の腸重積発症数は、RV5接種群で21人に対し、非RV5接種群の期待値は20.9人だった(標準化罹患比:1.01、95%信頼区間:0.62~1.54)。また初回接種後1~30日後の同発症数も、それぞれ7人と5.7人だった(同:1.23、同:0.5~2.54)。接種後1~7日後の腸重積発症数は、RV5接種群が4人に対し、非RV5接種群期待値は4.3人(同:0.92、同:0.25~2.36)、初回接種後はそれぞれ1人と0.8人(同:1.21、同:0.03~6.75)であり、いずれも有意差はなかった。なお、この初回接種後1~7日での発症に関する標準化罹患比の95%信頼区間上限値の6.75は、初回接種者6万5,287人につき1例の発症リスクを示すものだった。(當麻あづさ:医療ジャーナリスト)

4002.

後発医薬品10成分と「ジフルカン」の新剤形の承認取得

 ファイザー株式会社は15日、後発医薬品10成分21品目と深在性真菌症治療剤「ジフルカンドライシロップ350mg/1400mg」(一般名:フルコナゾール)の承認を取得したと発表した。 今回、後発医薬品として初めて承認されたゾルピデム酒石酸塩錠、パロキセチン錠、ロサルタンK錠を含む10成分21品目は、注射剤1成分と内服剤8成分、外用剤1成分で、順次発売される予定だ。 また、深在性真菌症治療剤「ジフルカンドライシロップ350mg/1400mg」は2月14日に承認を取得し、カプセル、静注液に加えてドライシロップ剤形が追加される。ジフルカンは、成人・小児におけるカンジダ属およびクリプトコッカス属による各種真菌症の治療、造血幹細胞移植患者の真菌感染症の予防に使用されている。フルコナゾールの内服薬としては、1989年にカプセル剤が承認されているが、「医療上の必要性の高い未承認薬・適応外薬検討会議」での検討結果を受け、懸濁剤の追加について2010年5月21日付で、厚生労働省より同社対して開発要請がなされた。今回の承認により、カプセル剤の服用が困難な乳幼児や嚥下障害のある成人のために、海外ではすでに上市されている懸濁剤を導入するという。 詳細はプレスリリースへhttp://www.pfizer.co.jp/pfizer/company/press/2012/2012_02_16.html

4003.

慢性C型肝炎標準療法無効例への直接作用型抗ウイルス薬のベネフィット

慢性C型肝炎の標準療法であるインターフェロン併用療法(ペグインターフェロン+リバビリン)が無効であった患者に対し、直接作用型抗ウイルス薬を追加投与することのベネフィットについて検討された予備的試験の結果、2つの抗ウイルス薬のみ投与でもウイルス持続陰性化(SVR)が得られることが示され、追加併用投与では高率のSVRが得られることが示された。米国・ミシガン大学医療センターのAnna S. Lok氏らによるオープンラベル第2a相無作為試験の予備的試験報告で、NEJM誌2012年1月19日号で発表された。慢性HCV遺伝子型1型感染患者21例を対象に予備的試験研究グループは、12週間以上のペグインターフェロン+リバビリン併用療法が無効[HCV RNAが2 log(10)以上にならなかった]であった慢性HCV遺伝子型1型感染患者21例の予備的コホートを対象とする試験を行った。被験者は無作為に、2つの直接作用型抗ウイルス薬であるNS5A複製複合阻害薬daclatasvir(60mgを1日1回)とNS3プロテアーゼ阻害薬asunaprevirのみを投与する群(グループA、11例)と、これら2つの抗ウイルス薬を前治療に追加して併用投与する群(グループB、10例)に割り付けられ、24週間投与された。主要エンドポイントは、治療期間終了後12週間のSVRを得られた患者の割合であった。抗ウイルス薬投与群のみでもSVR達成、併用投与群では高いSVR達成結果、抗ウイルス薬2剤のみ投与のA群において、12週時点でSVRを得ていたのは4例(36%)で、これらは24週時点でもSVRが認められた。4例を詳細な遺伝子型別にみると、HCV遺伝子型1a型9例中の2例と同1b型2例中の2例であった。SVRが得られなかった遺伝子型1a型の7例のうち、6例は24週の治療期間中にウイルス再燃(VBT)をきたし、2つの抗ウイルス薬に対する耐性変異の発生がみつかった。残る1例は治療期間終了時点ではSVRが得られていたが、その後再発に至った。一方、抗ウイルス薬2剤をインターフェロン併用療法に追加して投与したB群では、12週時点で全10例がSVRを得ており、9例は24週時点でもSVRを持続していた。有害事象については、最も頻度が高かったのは両群ともに下痢であった。また、6例(A:4例、B:2例)に、アラニンアミノトランスフェラーゼが正常上限値の3倍超となる一過性の上昇が認めれた。(武藤まき:医療ライター) ※ペグインターフェロン(商品名:ペガシス、ペグイントロン)+リバビリン(商品名:コベガス、レベトールほか)。本試験ではペガシス+コベガスで検討されている。

4004.

認知症高齢者、入院率は1.4倍に増大

高齢者において、認知症は入院を有意に増大するリスク因子であることが米国・ワシントン大学のElizabeth A. Phelan氏らによる調査の結果、報告された。認知症高齢者の入院率はそうでない高齢者の約1.4倍に上り、なかでも細菌性肺炎や尿路感染症のような外来治療可能な疾患での入院率が、約1.8倍多かったという。同氏らが3,000人超の高齢者について調べた結果で、JAMA誌2012年1月11日号で発表した。補正前入院率、非認知症は200件/1,000人・年、認知症は419件/1,000人・年研究グループは、65歳以上の3,019人の1994~2007年のデータについて、後ろ向き縦断コホート調査を行った。 主要評価項目は、認知症の有無による、全原因入院率や外来治療可能疾患(ambulatory care–sensitive conditions:ACSC)による入院率とした。結果、追跡期間中に認知症を発症したのは494人で、うち427人(86%)が1回以上入院した。認知症を発症しなかった2525人では、うち1478人(59%)が入院した。補正前入院率は、非認知症群が200件/1,000人・年だったのに対し、認知症群は419件/1,000人・年に上った。認知症群の全入院率比は1.41倍、ACSCによる入院率比は1.78倍年齢、性別やその他交絡因子を補正後、認知症群の非認知症群に対する入院率比は、1.41(95%信頼区間:1.23~1.61、p<0.001)だった。ACSCによる入院に関する同入院率比は、1.78(同:1.38~2.31、p<0.001)とさらに高かった。入院の原因器官系別に入院率をみたところ、大半で認知症群が非認知症群より有意に高率だった。また細菌性肺炎やうっ血性心不全、尿路感染症による入院は、ACSCでの入院の3分の2を占め、いずれの補正後入院率も、認知症群が非認知症群より有意に高率だった。(當麻あづさ:医療ジャーナリスト)

4005.

単純ヘルペスワクチン、HSV-1型とHSV-2型で有効性に違い

単純ヘルペスウイルス(HSV)ワクチンの有効性について、HSV-1型とHSV-2型への有効性に違いがあることが報告された。米国・セントルイス大学のRobert B. Belshe氏らが、両タイプ血清陰性の一般女性8,300例超を対象に、糖蛋白Dを含有するHSV-2サブユニットワクチンの有効性を検討した試験の結果で、HSV-1型の予防には効果が認められたが、HSV-2型の予防に対する有効性は認められなかったという。同ワクチンについての2つの先行研究(HSV抗体陽性と陰性の男女カップル対象、どちらが陽性かは問わない)では、抗体陰性の女性では、性器ヘルペス予防に関してタイプを問わず有効性が認められていた(HSV-1型73%、HSV-2型74%)。一方で、男性と、HSV-1型血清陽性の女性では有効性が認められていなかった。NEJM誌2012年1月5日号掲載報告より。HSV-1型とHSV-2型の抗体陰性女性対象に二重盲検試験を実施Belshe氏らは、米国40施設、カナダ10施設から登録した、HSV-1型とHSV-2型ともに抗体陰性だった18~30歳の女性8,323例を対象に、無作為化二重盲検有効性実地試験を行った。一部の被験者に対して、0、1、6ヵ月で、本試験HSVワクチン(HSV-2由来の糖蛋白D 20μgと、アジュバントとしてミョウバンと3-o脱アシル化モノホスホリル脂質Aを含む)を接種し、対照被験者には、A型肝炎予防ワクチンを720 ELISA(酵素免疫吸着検定法)単位で接種した。主要エンドポイントは、2ヵ月後(2回目接種の1ヵ月後)から20ヵ月後の間におけるHSV-1またはHSV-2いずれかによる性器ヘルペスの発症とした。HSV-2関連疾患・感染の予防には有効性認められずHSVワクチン接種群(3,798例)では、対照ワクチン群(3,076例)と比べて、局所反応のリスク増加が認められ、HSV-2に対するELISAおよび中和抗体を誘導した。全体として、HSVワクチンの有効性は認められなかった。性器ヘルペスに対する有効性は20%(95%信頼区間:-29~50)であった。しかし、HSV-1型の性器ヘルペスに対する有効性は58%(同:12~80)だった。感染に対する有効性(疾患発症の有無にかかわらず)は、HSV-1型に対しては35%(同:13~52)だった。しかしHSV-2型では-8%(同:-59~26)で有効性は観察されなかった。(朝田哲明:医療ライター)

4006.

インフルエンザウイルスによる小児の急性下気道感染が世界的な疾病負担に

インフルエンザウイルスは、急性下気道感染(ALRI)罹患小児で同定される最も一般的な病原体であり、世界的な医療サービスの実質的な負担となっていることが、英国・エジンバラ大学のHarish Nair氏らの調査で明らかとなった。肺炎や気管支炎などのALRIは小児の罹病や死亡の主な原因であり、ALRIの新規罹患者は毎年、世界で約1億5,600万人に上り、2008年には約156万人の小児が感染の結果として死亡している。一方、小児における季節性インフルエンザウイルスに起因する世界疾病負担は明らかでなかった。Lancet誌2011年12月3日号(オンライン版2011年11月11日号)掲載の報告。インフルエンザウイルスによるALRIの世界的な発生率、死亡率を評価研究グループは、5歳未満の小児におけるインフルエンザウイルスによる下気道感染症の世界的な発生率および死亡率を評価するために、系統的なレビューとメタ解析を行った。1995年1月1日~2010年10月31日に報告された試験および未報告の16件の地域住民ベースの調査を系統的にレビューしたデータを用いて、5歳未満の小児におけるインフルエンザのエピソード、インフルエンザウイルス関連ALRIおよびインフルエンザウイルス関連の重篤なALRIの発生率を年齢別に推算した。得られた発生率を2008年の推定世界人口に適用してこの年の推定値を算出した。また、インフルエンザウイルス関連ALRIによる死亡率を算定した。インフルエンザウイルス関連ALRIによる小児の死亡は2万8,000~11万1,500例43件の試験が同定され、約800万人の小児のデータが得られた。2008年に、世界の5歳未満の小児のうち9,000万人(95%信頼区間[CI]:4,900万~1億6,200万)が新たにインフルエンザに罹患し(9試験のデータ)、2,000万人(同:1,300万~3,200万)にインフルエンザウイルス関連ALRIが発生し(6試験のデータ、全小児ALRIの13%に相当)、100万人(100万~200万)がインフルエンザウイルス関連の重篤なALRIを発症した(39試験のデータ、すべての重篤な小児ALRIの7%に相当)。2008年における5歳未満の小児のインフルエンザウイルス関連ALRIに起因する死亡は2万8,000~11万1,500例と推算されたが、その99%は開発途上国で発生していた。発生率および死亡率は年ごとに実質的に変動していた。著者は、「インフルエンザウイルスはALRI罹患小児で同定される最も一般的な病原体であり、世界的な医療サービスの実質的な負担となっている」と結論し、「小児のALRIによる死亡において、インフルエンザウイルスがどのような役割を果たしているかを正確に推定するにはデータが不十分である」と指摘している。(菅野守:医学ライター)

4007.

自宅での自己採取HPV検査は子宮頸がん予防に有効か?

自宅で行う腟分泌物自己採取法によるヒトパピローマウイルス(HPV)DNA検査は、細胞診よりも陽性適中率は低いものの、医療資源に乏しく有効な細胞診プログラムを実施できない環境下では、グレード2以上の頸部上皮内がん(CIN)を検出するのに好ましい方法であることが報告された。メキシコ国立公衆衛生研究所のEduardo Lazcano-Ponce氏らによる。腟分泌物HPV DNA検査は、診療所で行う場合は、細胞診と同じかそれ以上の検出力があることが明らかになっていたが、自宅で行う場合の有効性については明らかにされていなかった。Lancet誌2011年11月26日号(オンライン版2011年11月2日号)掲載報告より。25~65歳の低所得・低医療サービス地域のメキシコ女性2万5,061例を対象に研究グループは、診療所での子宮頸部細胞診と比較した、自宅で行う腟分泌物自己採取法によるHPVスクリーニングとの相対感度と陽性適中率の検証を行うことを目的に、地域ベースの無作為化同等性試験を行った。対象は、25~65歳のメキシコ女性2万5,061例で、社会経済的地位が低く、同国モレロス州、ゲレロ州の医療サービスが不十分な、主として農村部の540地点から登録された。主要エンドポイントは、コルポスコピーによって確認されたCIN 2以上とされた。解析はper-protocolおよびintention-to-screenにて行われた。被験者は、コンピュータにて無作為にHPVスクリーニング群(1万2,330例)と子宮頸部細胞診群(1万2,731例)に割り付けられた。その後、割り付け情報を知らされていない8人の地域看護師が、被検者氏名・住所リストをデイリーで受け取り、割り付けられた訪問を行い、いずれの検査でも陽性であった女性がコルポスコピー検査を受けた。プロトコルを遵守したのは、HPVスクリーニング群9,202例、子宮頸部細胞診群1万1,054例だった。HPV検査は細胞診と比べて、CIN 2以上特定3.4倍、侵襲性がん検出4.2倍以上結果、HPV有病率は9.8%(95%信頼区間:9.1~10.4)、異常細胞率は0.38%(同:0.23~0.45)だった。CIN 2以上女性の特定は、1万人あたり、HPV検査は117.4件(同:95.2~139.5)だったのに対し、細胞診は34.4件(同:23.4~45.3)で、HPV検査の相対感度は、3.4倍以上(同:2.4~4.9)に上った。同様にHPV検査は、侵襲性のがんを細胞診よりも4.2倍以上検出した[1万人あたり30.4件(同:19.1~41.7)vs. 7.2(同:2.2~12.3)]。一方で陽性適中率は、HPV検査は12.2%(同:9.9~14.5)、細胞診は90.5%(同:61.7~100)だった。

4008.

心不全による感染性心内膜炎、弁手術実施で入院死亡率、1年死亡率ともに大幅低下

心不全による感染性心内膜炎は、初回入院時に弁手術を実施することで、入院死亡率、1年死亡率ともに、およそ半減することが示された。米国デューク大学メディカルセンターのTodd Kiefer氏らが、4,000人超について行った前向きコホート試験の結果、明らかにしたもので、JAMA誌2011年11月23・30日号で発表した。28ヵ国、61ヵ所の医療センターで4,000人超を追跡研究グループは、2000年6月~2006年12月にかけて、28ヵ国、61ヵ所の医療センターで、固有弁または人工弁感染性心内膜炎を呈した4,166人について、前向きコホート試験を行った。被験者のうち、心不全の有無や程度が確認された4,075人について、弁手術実施の有無と、入院死亡率、1年死亡率の関連を分析した。被験者のうち、心不全は1,359人(33.4%)で、そのうちNYHA心機能分類でクラスIIIまたはIVが906人(66.7%)だった。心不全患者の61.7%にあたる839人が、弁手術を行った。1年死亡率、非実施群58.4%に対し弁手術実施群は29.1%と半減結果、被験者全体の入院死亡率は29.7%(95%信頼区間:27.2%~32.1%)だった。弁手術実施群の入院死亡率は20.6%(同:17.9%~23.4%)と、非実施群の44.8%(同:40.4%~49.0%)に比べ、有意に低率だった(p<0.001)。また1年死亡率も、弁手術実施群で29.1%(同:26.0%~32.2%)と、非実施群の58.4%(同:54.1%~62.6%)に比べ、有意に低率だった(p<0.001)。Cox比例ハザードモデルによる分析の結果、高齢、糖尿病、医療サービスに関連した感染、黄色ブドウ球菌または真菌による感染、NYHA心機能分類でクラスIIIまたはIV、脳卒中、弁周囲合併症が、1年死亡率増加に関与していた。一方で、初回入院時の弁手術実施は、同死亡率低下に関与していた。(當麻 あづさ:医療ジャーナリスト)

4009.

B型慢性活動性肝炎治療薬 ペグインターフェロン-α-2a製剤(商品名:ペガシス)

 ペグインターフェロン-α-2a製剤(商品名:ペガシス)が、2011年9月、「B型慢性活動性肝炎におけるウイルス血症の改善」の効能・効果追加を承認された。ペガシスの適応追加に関する審査は、優先審査に指定され、申請から約8ヵ月という異例のスピードであった。B型慢性肝炎の経過は多様 B型肝炎は、肝臓がんの原因の17%を占め、わが国には約150万人のB型肝炎キャリアがいると報告されている。B型肝炎キャリアの多くは、無症候性キャリアであるが、無症候性キャリアからも肝臓がんが突然発症するなどB型肝炎の経過には多様性があり、治療が難しい疾患である。治療の中心はIFNとエンテカビル 現在のB型慢性肝炎は、おもにインターフェロン(IFN)、核酸アナログ製剤、肝庇護薬で治療されており、2011年B型慢性肝炎の治療ガイドラインでは、35歳未満はIFN、35歳以上は核酸アナログ製剤のエンテカビルが、多くの患者カテゴリーで治療の中心とされている1)。 しかし、従来のIFNは、適応がHBe抗原陽性例のみであったため対象が限定され、さらに、一般的に3回/週の投与を必要としたため、利便性も高いとはいえなかった。核酸アナログ製剤は、B型肝炎ウイルスの増殖を強力に抑制し、かつ、経口投与のために利便性が高いものの、長期にわたり投与する必要があり、耐性ウイルスの出現や投与中止による肝炎の急性増悪も懸念されている。ペガシスはHBe抗原陽性例に加え陰性例にも有効 そのような中、ペガシスがB型慢性活動性肝炎に対して適応追加された。ペガシスは、従来のIFN-α-2aに40KDaのポリエチレングリコール(PEG)を結合させ血中からのIFN消失時間を延長し効果を持続させた薬剤である。すでにC型慢性肝炎での高い治療実績がある。 ペガシスは、HBe抗原陽性例を対象に、有効性・安全性をみた国内第Ⅱ/Ⅲ相試験において、用量、投与期間に応じて高い効果が認められた。その試験において、ペガシス90μg48週群は17.1%、180μg48週(3回/週)群は19.5%の有効率を示し、ペガシス週1回48週投与のIFNα週3回24週投与に対する非劣性が検証された。また、ペガシス90μg48週投与により、投与終了24週時で24.4%にHBeセロコンバージョンが認められた。 ペガシスは、HBe抗原陰性例を対象とした国内第Ⅱ/Ⅲ相試験において、90μg週1回48週投与により、投与終了後24週時に、HBV DNA <4.3Log copies/mL達成率が37.5%、ALT≦40IU/L達成率が68.8%となり、HBe抗原陰性例に対しても優れた効果が認められた。 B型慢性活動性肝炎におけるウイルス血症の改善に対する国内臨床試験において、副作用(臨床検査値異常を含む)は225例全例に認めらている。主な副作用は、発熱71.6%、頭痛65.3%、倦怠感63.1%等であった。興味深いのはHBsセロコンバージョンの達成 HBs抗原陽性かつHBe抗原陰性例における肝癌の発生率は、HBs抗原陰性かつHBe抗原陰性例の9.6倍であると報告され2)、最近ではHBsセロコンバージョンを治療目標のひとつとするようになってきている。 このHBsセロコンバージョンに対して、ペガシスは興味深いデータがある。ペガシスは、B型慢性活動性肝炎に対する国内臨床試験で、90μgおよび180μg48週投与の両群で、投与終了24週後に、それぞれHBsセロコンバージョン(いずれも1/41例)が見られている。IFNによる免疫の賦活化は投与終了後も継続するため3)、投与終了からの期間が長くなると、HBsセロコンバージョン率がさらに上昇すると予想される。HBsセロコンバージョンは、核酸アナログ製剤では達成が難しいため、ペガシス特有の作用として注目される。ペガシスへの期待 ペガシスのB型慢性活動性肝炎への適応追加により、投与回数の少ないIFN(従来のIFN:1週3回、ペガシス:1週1回)が使用可能となった。また、48週の投与が可能となり、従来のIFNよりも高い治療効果(HBeセロコンバージョン率、HBsセロコンバージョン率等)が期待できるようになった。さらに、HBe抗原陰性例にもIFNが使用可能となった。 今後、ペガシスにより、B型肝炎の新たな治療戦略が登場することが期待される。特に妊娠を希望する若い世代には朗報と言えるのではないだろうか。

4010.

今年はどうなる?抗インフルエンザ薬

QLifeは18日、同社が行った調査『抗インフルエンザウイルス剤の処方動向調査2011』の結果を発表した。昨シーズンに抗インフルエンザイウルス剤を処方した全国の医師にアンケートを行い、内科・小児科を中心とする505人から回答を得た。今年のインフルエンザは、厚生労働省からワクチン供給予定量が当初見込みより下回ることが発表された直後に、例年よりも早い流行入りの可能性がマスコミによって報道されていた。2009~2010年の新型インフルエンザ(A/H1N1)発生以降、インフルエンザ情報に対して敏感になっている人も多いため、医師は、受診した患者や家族に対してインフルエンザの正しい対処法を説明することがより重要になっている。ところが、医師の間でも耐性ウイルスに関しては情報・認識が錯綜しているのが現状だ。「耐性ウイルスが市中で広く流行しているとお考えですか」との設問に対して、「流行している」「流行していない」の両回答が21%と拮抗した。また増殖性、病原性についても、「耐性ウイルスの方が強い」が18%と、「通常のウイルスの方が強い」回答12%を上回る結果となった。昨シーズンに処方した抗ウイルス剤の比率をきいたところ、タミフルが57%と最も多く、次いでイナビル20%、リレンザ19%、ラピアクタ2%の順であった。今後の処方意向に関しても「対成人」「対10歳未満」の両方でタミフルが最も多く、リレンザは対成人と対10歳未満とで大きく異なる結果となった。また、自由回答コメントのなかには「必要ないと思われる場合でも、薬を強く希望する人が増えた」という医師からの回答もあった。詳細はプレスリリースへhttp://www.qlife.co.jp/news/2417.html

4011.

ヘルスケア施設関連C. difficile感染と保菌、宿主因子と病原菌因子が異なる

 ヘルスケア施設関連での集団下痢症の主な原因であるClostridium difficile(C. difficile)感染症について、感染と保菌では、宿主因子および病原菌因子が異なることが明らかにされた。施設関連の同感染については、無症候でも保菌が認められる場合がある。カナダ・McGill大学ヘルスセンターのVivian G. Loo氏らが、カナダの6つの病院で15ヵ月間にわたり、C. difficile感染症患者と保菌患者の宿主因子および細菌因子の同定を行った前向き研究の結果、報告した。NEJM誌2011年11月3日号掲載報告より。カナダ6病院で前向き研究研究グループは、2006年3月6日~2007年6月25日にわたり、カナダのケベック州とオンタリオ州にある6つの国立病院で15ヵ月間にわたる前向き研究を行った。対象病院の患者に関して、人口統計学的情報、既知のリスク因子、潜在的な交絡因子などの情報収集と、週1回の便検体または直腸スワブの収集を行い解析した。C. difficile分離株の遺伝子型の同定はパルスフィールドゲル電気泳動法(PFGE)にて行い、C. difficile毒素AおよびBの血清抗体値測定なども行った。合計4,143例の患者の情報が収集され解析された。感染例2.8%、保菌例3.0%で、北米PFGE1型(NAP1)株は感染例では62.7%、保菌例36.1%ヘルスケア施設関連C. difficile感染例は117例(2.8%)、保菌例は123例(3.0%)だった。ヘルスケア施設関連C. difficile感染例は、「より高齢」「抗菌薬・PPI使用」と有意な関連が認められた。一方保菌例については、「以前に2ヵ月間入院したことがある」「化学療法・PPI・H2ブロッカーを使用」「毒素Bに対する抗体」が関連していた。また、北米PFGE1型(NAP1)株を有していたのは、感染例では62.7%であったが、保菌例では36.1%だった。(武藤まき:医療ライター)

4012.

臓器移植レシピエントのがん発症リスクは2倍以上、最大は非ホジキンリンパ腫の7.5倍

臓器移植を受けた人(レシピエント)のがん発症リスクは、一般の人の2倍以上に増大することが明らかにされた。32種類のがんについてレシピエントの発症リスク増大が認められ、なかでも最も発症頻度が高かったのは非ホジキンリンパ腫で、発症リスクは約7.5倍に上った。米国国立がん研究所(NCI)のEric A. Engels氏らが、約18万人のレシピエントと、13州のがんに関する登録簿を調べ、明らかにしたもので、JAMA誌2011年11月2日号で発表した。これまでの研究から、レシピエントは、免疫機能低下や臓器ウイルス感染が原因で、がんの発症リスクが増大することは知られていた。がん全体の標準化罹患比は2.10、過剰絶対リスクは10万人・年当たり719.3研究グループは、1987~2008年の米国移植レシピエントの登録簿「US Scientific Registry of Transplant Recipient」に登録された17万5,732人の臓器移植レシピエントを元に、多種のがん発症リスクについて分析した。同レシピエントのうち、腎臓が58.4%、肝臓が21.6%、心臓が10.0%、肺が4.0%だった。全体では、がんを発症したのは1万656人で、発症率は1,375人/10万人・年、標準化罹患比は2.10(95%信頼区間:2.06~2.14)、過剰絶対リスクは719.3/10万人・年(同:693.3~745.6)だった。肝臓移植後6ヵ月以内の肝臓がん発症リスクは500倍超なかでも、非ホジキンリンパ腫の発症頻度が最も高く、発症者数は1,504人、発症率は194.0/10万人・年、標準化罹患比は7.54(同:7.17~7.93)、過剰絶対リスクは168.3/10万人・年(同:158.6~178.4)だった。次いで頻度が高かったのは肺がんで、発症者数は1,344人、発症率は173.4/10万人・年、標準化罹患比は1.97(同:1.86~2.08)、過剰絶対リスクは85.3/10万人・年(同:76.2~94.8)。続いて肝臓がんで、発症者数は930人、発症率は120.0/10万人・年、標準化罹患比は11.56(同:10.83~12.33)、過剰絶対リスクは109.6/10万人・年(同:102.0~117.6)、腎臓がんの、発症者数752人、発症率は97.0/10万人・年、標準化罹患比は4.65(同:4.32~4.99)、過剰絶対リスクは76.1/10万人・年(同:69.3~83.3)だった。肺がんについては、肺移植レシピエントで最も発症リスクが高く標準化罹患比は6.13だったが、他の臓器移植レシピエントでも高く、心臓2.67、肝臓1.95、腎臓1.46であった。肝臓がんについては、肝移植レシピエントでのみ発症リスクが増大し、標準化罹患比は43.83、なかでも移植後6ヵ月の同リスクは著しく高く同比508.97に上った。術後10~15年のリスクも2倍以上に上った(標準化罹患比:2.22、95%信頼区間:1.57~3.04)。腎臓がんは、腎移植レシピエントで高く標準化罹患比は6.66で、その値は追跡期間中に上昇したり下降したりした。また肝移植レシピエント(同1.80)、心移植レシピエント(同2.90)でもリスク増大が認められた。

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プライマリ・ケア施設でのCD4ポイント・オブ・ケア検査、HIV陽性例の治療前追跡不能率が低下

HIV陽性例におけるCD4細胞検査を、検査施設ではなくプライマリ・ケアの現場でのポイント・オブ・ケア検査とすることで、患者登録後の迅速なCD4ステージングが可能となり、抗レトロウイルス療法開始前に追跡不能となる患者が減少したことが、モザンビークInstituto Nacional da SaúdeのIlesh V Jani氏らの調査で明らかとなった。低所得国では抗レトロウイルス療法開始前に追跡不能となるHIV陽性例が増加しており、治療普及上の課題となっている。追跡不能となった患者を見つけ出すことは困難で、費用がかかり、非効率的でもあるため、追跡不能の防止に焦点を当てた検討が進められている。Lancet誌2011年10月29日号(オンライン版2011年9月26日号)掲載の報告。治療導入前の患者保持を評価するコホート試験研究グループはアフリカ・モザンビークにおいて、CD4細胞のポイント・オブ・ケア検査が、免疫学的診断や治療導入の前に追跡不能となる患者の保持に及ぼす影響を検討する観察的コホート試験を行った。HIV治療およびCD4のポイント・オブ・ケア検査を行う4つのプライマリ・ケア施設の患者記録から、HIVの管理や抗レトロウイルス療法導入の登録データをレトロスペクティブに抽出した。治療導入前の準備段階における追跡不能率および準備期間を調査し、CD4ポイント・オブ・ケア検査開始前のベースラインのデータと比較した。治療前の追跡不能患者率が半分に低下CD4のステージングを完了する前に追跡不能となった患者の割合は、CD4ポイント・オブ・ケア検査導入前の57%(278/492例)から導入後は21%(92/437例)まで低下した(調整オッズ比:0.2、95%信頼区間:0.15~0.27)。抗レトロウイルス療法開始前の追跡不能患者率も、CD4ポイント・オブ・ケア検査導入前の64%(314/492例)から導入後には33%(142/437例)まで低下した(調整オッズ比:0.27、95%信頼区間:0.21~0.36)。抗レトロウイルス療法導入患者の登録率は、12%(57/492例)から22%(94/437例)へ上昇した(調整オッズ比:2.05、95%信頼区間:1.42~2.96)。登録から抗レトロウイルス療法導入までの期間(中央値)は、CD4ポイント・オブ・ケア検査導入の前後で48日から20日へと短縮しており(p<0.0001)、その主な理由はCD4ステージングに要する期間(中央値)が32日から3日まで低下したためであった(p<0.0001)。CD4ステージングから抗レトロウイルス療法開始までの期間における追跡不能患者率には有意な変化は認めなかった(調整オッズ比:0.84、95%信頼区間:0.49~1.45)。著者は、「CD4ポイント・オブ・ケア検査の導入により、患者登録後の診療所の現場における迅速なCD4ステージングが可能となり、治療前に追跡不能となる患者が減少した」と結論し、「CD4ポイント・オブ・ケア検査は治療前の追跡不能率の改善に有効な介入法となる可能性がある」と指摘している。(菅野守:医学ライター)

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史上最多の患者報告数を更新―RSウイルス感染症 大流行の恐れ―

全国約3,000の小児科定点医療機関から報告されるRSウイルス感染症(Respiratory syncytial virus infection)の患者数が増え続けている。2011年の第42週(10月17日~23日)時点ですでに1,800例に迫り1)、この冬の大流行が現実になりつつある。RSウイルス感染症は、病原体であるRSウイルスに感染することで発症する呼吸器感染症である。年齢を問わず、生涯にわたり顕性感染を繰り返し、特に乳幼児の場合は生後1歳までに半数以上が、2歳までにほぼ100%が感染するとされ、細気管支炎や肺炎など下気道の炎症を中心とした重篤な症状を引き起こす。例年、RSウイルス感染症の患者報告数は夏期に少なく、冬期にピークを迎える。しかし、2011年は夏ごろから例年を大きく上回るペースで増加し続け、2004年以降の同時期の報告数としては史上最多であり、現在こうした状況が第16週以降継続している(図)。第42週の都道府県別の報告数をみると、大阪府(130)、東京都(128)、愛知県(95)、北海道(90)、埼玉県(82)、福岡県(75)となっている。RSウイルス感染症は、乳幼児にとっては重症化すれば生命を奪われかねない、臨床的および公衆衛生的にきわめて重要な感染症である。今冬の大流行に備え、よりいっそうの注意が求められる。出典:1)IDWR(Infectious Diseases Weekly Report Japan)2011年第42週(10月17日~23日):通巻第13巻 第42号.(ケアネット 呉 晨)

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4価HPVワクチン、男性同性愛者の肛門上皮内腫瘍予防に有効

男性との性交渉を持つ男性のHPV感染関連の肛門上皮内腫瘍に対する、4価HPVワクチンの有効性と安全性を検討した試験の結果、グレード2または3の腫瘍の発生率低下が認められ、安全性プロファイルも良好であり、肛門がんリスクの低下に役立つ可能性が示された。米国・カリフォルニア大学サンフランシスコ校のJoel M. Palefsky氏らが、ワクチンに関する大規模無作為化試験に参加した男性との性交渉を持つ男性602例についてサブ解析を行った結果、報告した。肛門がんは男女ともに増えており、特に男性との性交渉を持つ男性で増大している。HPV-16、-18を主としたHPV感染によって引き起こされる肛門がんは、先行して高度な(グレード2または3)肛門上皮内腫瘍が認められることから、本検討が行われた。NEJM誌2011年10月27日号掲載より。602例対象に有効性と安全性を検討対象となった602例は、7ヵ国(オーストラリア、ブラジル、カナダ、クロアチア、ドイツ、スペイン、米国)から参加した16~26歳の男性との性交渉を持つ男性で、無作為に4価ワクチンを受ける群とプラセボを受ける群に割り付けられ36ヵ月間追跡された。主要な有効性評価項目は、HPVの4つのウイルスタイプ(6、11、16、18)感染に関連した肛門上皮内腫瘍または肛門がんの予防とした。有効性に関する解析はintention-to-treatと、per-protocol有効性集団(フォローアップを完遂した432例、71.8%)にて行われた。有害事象の発生率についても文書化された。4価ワクチンタイプのHPV肛門持続感染リスク、59.4%低下4価ワクチンの有効率は、intention-to-treatでは50.3%(95%信頼区間:25.7~67.2)、per-protocol集団では77.5%(同:39.6~93.3)であった。HPVのタイプを問わない場合の有効率は、intention-to-treatでは25.7%(95%信頼区間:-1.1~45.6)、per-protocol集団では54.9%(同:8.4~79.1)であった。肛門上皮内腫瘍の発生率は、100人・年当たり、intention-to-treatではプラセボ群17.5に対しワクチン群13.0であった。per-protocol集団ではプラセボ群8.9、ワクチン群4.0だった。4タイプのHPV感染関連のグレード2または3の肛門上皮内腫瘍の発生率は、intention-to-treatでは54.2%(同:18.0~75.3)減少、per-protocol集団では74.9%(同:8.8~95.4)減少した。4タイプのHPVの肛門への持続感染リスクは、intention-to-treatでは59.4%(同:43.0~71.4)低下、per-protocol集団では94.9%(同:80.4~99.4)低下した。ワクチン関連の重篤な有害事象は報告されなかった。(武藤まき:医療ライター)

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RSウイルスはなぜ脅威となるのか

 RSウイルス(Respiratory Syncytial Virus)は、生体外でも長時間の感染力を保つ。通常は鼻炎などの上気道炎の原因となるが、乳児や高齢者が感染すると、下気道炎を発症させることが問題 RSウイルスの潜伏期間は2~8日、典型的には4~6日とされているが、咳嗽、鼻汁などの上気道症状が2~3日続いた後、感染が下気道に及ぶ。細気管支が狭くなるに従い、呼気性喘鳴、多呼吸、陥没呼吸などを呈するがあり、心肺に基礎疾患を有する児においては、しばしば遷延化、重症化し、喀痰の貯留により無気肺を起こしやすくなる。初期症状としては発熱が多くみられるが、入院時には38℃以下、もしくは消失していることが多い。 また、RSウイルス感染症は、乳幼児における肺炎の原因の約50%、細気管支炎の50~90%を占めるという報告もあるが、乳児期がRSウイルス感染症に罹患すると、喘鳴および喘息を発症するリスクが高くなることも報告されている。 2011年第1~39週のRSウイルス感染症患者累積報告数(38,041)における年齢群別割合をみると、0歳児42.1%(0~5ヵ月19.4%、6~11ヵ月22.6%)、1歳児32.6%、2歳児13.5%、3歳児6.4%、4歳児3.0%の順となっており、1歳児以下が全報告数の約70%以上を、3歳児以下が全報告数の90%以上を占めているのは、2004年以降変わっていない(図)1)。 RSウイルス感染症は乳幼児において重症化しやすいが、そのなかでも早産児の入院率は正期産児よりも大幅に高いことが知られている。その原因の一つとして、早産児は正期産児に比べ肺の発達が不完全なため、下気道感染症を発症すると無気肺などが生じやすくなることが挙げられる。また、もう一つの原因として、早産児は気管支が狭いため、RSウイルス感染によって細気管支の気道上皮に炎症や浮腫が発生したり、気道分泌が亢進したりすると、気道狭窄に発展しやすいことが挙げられる。さらに、母親からの移行抗体の濃度が正期産児に比べて大きく下回るため、早産児のRSウイルスに対する中和抗体を含むIgGの濃度が正期産児より低いことも原因の一つとなる。 RSウイルス感染症には、いまだワクチンや有効な治療法がないが、現在、重症化を抑制する唯一の薬剤として、RSウイルスに対し特異的な中和活性を示すモノクローナル抗体であるパリビズマブ(商品名:シナジス)が使用されている。その使用対象は以下のようになっている。1)在胎期間28週以下の早産で、12ヵ月齢以下の新生児及び乳児 2)在胎期間29週~35週の早産で、6ヵ月齢以下の新生児及び乳児3)過去6ヵ月以内に気管支肺異形成症(BPD)の治療を受けた24ヵ月齢以下の新生児、乳児及び幼児4)24ヵ月齢以下の血行動態に異常のある先天性心疾患(CHD)の新生児、乳児及び幼児(パリビズマブ添付文書より)RSウイルス感染症には有効な治療法がなく、重症化した乳児に対しては酸素テントに収容するなどの対症療法を行うしかなく、乳幼児の感染予防は困難とされている。そのため、とくに重症化しやすい早産児に対しては、徹底した感染予防対策のほか、重症化の抑制も重要となる。出典:1)IDWR(Infectious Diseases Weekly Report Japan)2011年第39週:通巻第13巻 第39号.

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結核/HIV二重感染患者へのART療法開始時期 その1

ヒト免疫不全ウイルス(HIV)感染患者で結核感染が認められた二重感染患者について、抗レトロウイルス療法(ART)の開始時期に関する試験結果が報告された。フランス・ビセートル病院(パリ)のFrancois-Xavier Blanc氏らCAMELIA試験グループによる本報告は、ART開始時期について抗結核療法開始2週後と8週後を比較したもので、2週後のほうが生存が有意に改善されたという。本報告の被験者のCD4+T細胞数中央値は25個/mm(3)だった。NEJM誌2011年10月20日号掲載報告より。カンボジアの5病院から被験者を募り、2週後開始vs. 8週後開始を検討CAMELIA(Cambodian Early versus Late Introduction of Antiretrovirals)試験グループは、カンボジアの5つの病院から被験者を募り、ART開始について抗結核療法開始2週後と8週後とを比較する多施設共同前向き無作為化非盲検優越性試験を行った。具体的には、2006年1月31日~2009年5月27日に被験者を募り、「新たに結核と診断されたCD4+T細胞数200個/mm(3)以下のARTを受けていないHIV患者では、ARTの開始時期が死亡率に有意な影響をもたらす」との仮説検証を目的とした。ART療法は、スタブジン+ラミブジン+エファビレンツの3剤併用療法だった。被験者は、結核の標準治療(6ヵ月間の抗結核療法)開始後、無作為に早期ART開始群(抗結核療法開始2週±4日後に開始)か待機的ART開始群(同8週±4日後に開始)に割り付けられ、生存を主要エンドポイントに追跡された。待機的ART群と比べた早期ART群の死亡リスクは0.62倍と有意に低下試験には661例(早期ART群332例、待機的ART群329例)が登録され、中央値25ヵ月間追跡された。被験者のCD4+T細胞数中央値は25個/mm(3)、ウイルス量中央値は5.64 log(10)コピー/mLだった。結果、各群の死亡は、早期ART群は59/332例(18%)だったのに対し、待機的ART群は90/329例(27%)で、早期ART群のハザード比0.62(95%信頼区間:0.44~0.86、P=0.006)と同群死亡リスクが有意に低かった。一方で、結核関連の免疫再構築症候群(IRIS)リスクは、早期ART群の有意な上昇が認められた(ハザード比:2.51、95%信頼区間:1.78~3.59、P<0.001)。また両群とも、CD4+T細胞数増大の中央値は114個/mm(3)であり、50週時点でウイルス量は患者の96.5%で検出されなくなっていた。(武藤まき:医療ライター)

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結核/HIV二重感染患者へのART療法開始時期 その2

ヒト免疫不全ウイルス(HIV)感染患者で結核感染が認められた二重感染患者について、抗レトロウイルス療法(ART)の開始時期に関する試験結果が報告された。米国・カリフォルニア大学サンフランシスコ校のDiane V. Havlir氏らAIDS Clinical Trials Group Study A5221試験グループによる本報告は、ART開始時期について抗結核療法開始2週以内の早期開始群と同8~12週以内の待機的開始群とを比較したもので、AIDS疾患の新規発症率および死亡率に両群間で有意差は認められなかったという。被験者のCD4+T細胞数中央値は77個/mm(3)だった。なお試験では無作為化の際、CD4+T細胞数50個/mm(3)未満と50個/mm(3)以上とで階層化しての検討も行っており、その結果50個/mm(3)未満群においては早期開始群でのAIDS疾患の新規発症率および死亡率は有意な低下が認められたという。NEJM誌2011年10月20日号掲載報告より。ART開始について抗結核療法開始後2週以内開始vs. 8~12週開始を比較本試験は、2006年9月~2009年8月に4ヵ国26施設から被験者809例が登録されて行われた非盲検無作為化試験だった。被験者は、CD4+T細胞数250個/mm(3)以下の、ARTを受けていない、結核感染が確認または疑われる患者だった。被験者は、抗結核療法開始後、2週間以内にARTを開始する早期ART群と、同8~12週以内開始の待機的ART群に無作為化され追跡された。また無作為化に際し、被験者をCD4+T細胞数50個/mm(3)未満と50個/mm(3)以上とで階層化した。なおART療法は、エファビレンツ+エムトリシタビン・テノホビル ジソプロキシル フマル酸の併用療法だった。主要エンドポイントは、48週時点で生存および新規AIDS疾患の発症が認められなかった患者の割合とした。CD4+T細胞数50個/mm(3)未満群では早期ART群の生存が有意被験者809例の基線でのCD4+T細胞数中央値は77個/mm(3)、HIV-1 RNAウイルス量中央値は5.43 log(10)コピー/mLだった。48週時点までのAIDS疾患新規発症および死亡の発生率は、早期ART群12.9%、待機的ART群16.1%で、早期ART群の有意な低下は認められなかった(発生率差の95%信頼区間:-1.8~8.1、P=0.45)。しかしCD4+T細胞数50個/mm(3)未満の患者における同値は、早期ART群15.5%、待機的ART群26.6%で、早期ART群での有意な低下が認められた(同:1.5~20.5、P=0.02)。結核関連の免疫再構築症候群(IRIS)は、早期ART群のほうが待機的ART群より頻度が高かった(11%対5%、P=0.002)。ウイルス抑制率は48週時点で74%で、両群間の差はなかった(P=0.38)。(武藤まき:医療ライター)

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MF59アジュバント不活化インフルエンザワクチン、乳幼児への有効性確認

新たなアジュバント製法によって開発された不活化インフルエンザワクチンについて、乳幼児に対する有効性が無作為化試験によって確認されたことが報告された。不活化インフルエンザワクチンは、乳幼児においては有効性が乏しいことが知られている。新たなアジュバントは水中油型乳剤のMF59で、成人用季節性インフルエンザに対する三価不活化インフルエンザワクチン(TIV)のアジュバントとして1997年以降27ヵ国で利用接種が承認されている。乳幼児に対する有効性を検討した無作為化試験は、2ヵ国2シーズンにわたって行われた。NEJM誌2011年10月13日号掲載報告より。アジュバントワクチン(ATIV)、非アジュバントワクチン(TIV)、対照群で無作為化試験乳幼児(生後6ヵ月以上72ヵ月未満)におけるMF59アジュバントの三価不活化インフルエンザワクチンの有効性に及ぼす影響について検討した試験は、2回のインフルエンザ流行期にわたり、2007~2008年シーズンにドイツ(654例)、2008~2009年シーズンにドイツ(2,104例)、フィンランド(1,949例)の、合計4,707例の健常児を対象に行われた。被験児は、MF59アジュバント添加ワクチン(ATIV)接種群、アジュバント非添加ワクチン(TIV)接種群、非インフルエンザワクチン接種(対照)群に無作為化され接種を受け、インフルエンザ様疾患に対する絶対効果と相対効果について評価された。インフルエンザ様疾患の確認はPCR法にて行われた。なお接種間隔・回数はいずれも、28日間隔の2回で行われ、またアジュバント用量は年齢(生後6~36ヵ月未満、36~72ヵ月未満)により調整がされた。インフルエンザ様疾患発症率、ATIV群0.7%、TIV群2.8%、対照群4.7%PCR法にて確認されたインフルエンザ様疾患の発症率は、2回の流行期を合わせて、ATIV群0.7%、TIV群2.8%、対照群4.7%であった。全インフルエンザ株110例中94例はワクチンと一致するH3N2ウイルスだった。それら(全インフルエンザ株)に対する絶対効果は、ATIV群86%(95%信頼区間:74~93)、TIV群43%(同:15~61)であり、ATIVのTIVに対する相対効果は75%(同:55~87)だった。対象年齢別にみた有効率は、ATIV群は、生後6~36ヵ月未満児群79%(同:55~90)、36~72ヵ月未満児群92%(同:77~97)であったが、TIV群はそれぞれ40%(同:-6~66)、45%(同:6~68)だった。抗体反応はATIVのほうが高く、その状態は181日目まで持続した。ATIVとTIVそれぞれの、全身反応・局所反応の発現率は、生後6~36ヵ月未満児群においては同程度であったが、36~72ヵ月未満児群では全身性イベントの頻度がATIV群では63%と、TIV群44%、対照群50%より高かった。重篤な有害事象は3群で同程度だった。(武藤まき:医療ライター)

4020.

新生児単純ヘルペスウイルス感染症への経口アシクロビルによる抑制療法

病変が中枢神経系に及んだ新生児単純ヘルペスウイルス(HSV)感染症に対して、経口アシクロビル(商品名:ゾビラックスほか)の6ヵ月間にわたる抑制療法が、神経発達アウトカムを改善することが報告された。新生児単純HSV感染症の生存例では、神経発達のアウトカム不良や皮膚病変の再発が、容認できないほど高頻度にみられることから、米国・アラバマ大学小児学部門のDavid W. Kimberlin氏らが、経口アシクロビルによる抑制療法のアウトカムへの効果を検討した。NEJM誌2011年10月6日号掲載報告より。中枢神経系型と表在型それぞれに同一治療を行い有効性と長期安全性を評価試験は、治療は同一ながら対象を異にした2つの二重盲検プラセボ対照試験を並行して行う方法で検討された。HSV感染症が中枢神経系に及んだ新生児は第1試験に、皮膚・目・口腔のみの表在型発症の新生児は第2試験にそれぞれ登録された。治療は、まず非経口アシクロビルを中枢神経系型群は21日間、表在型群は14日間それぞれ投与完了後、ただちに、経口アシクロビル抑制療法(300mg/m2体表面積の経口投与を1日3回×6ヵ月間)を開始する群とプラセボを投与する群に無作為に割り付けられ、有効性と長期使用の安全性について評価が行われた。なお皮膚病変再発時には、オープンラベルで治療が行われた。中枢神経系群では、アシクロビル抑制療法群はプラセボ群より有意にスコア上昇登録された新生児は、中枢神経系型群45例、表在型群29例の合計74例だった。中枢神経系型群45例中28例(62%)について、生後12ヵ月時点での新生児発達スコアのベイリー・スケール神経発達指数(スコア範囲:50~150、平均値100、それ以上のスコアは良好な神経発達アウトカムを示す)を評価した。共変量補正後の同指数は、アシクロビル抑制療法を受けるよう無作為に割り付けられた群は88.24で、プラセボに割り付けられた群68.12よりも有意にスコアが高かった(P=0.046)。なお全体的に、アシクロビル群のほうが、プラセボ群よりも好中球減少症を呈する傾向が認められた(P=0.09)。(武藤まき:医療ライター)

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