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新型コロナ集団免疫は期待薄、感染者25万人のスペインでの調査/Lancet

 スペインで6万人超の国民を対象に新型コロナウイルス(SARS-CoV-2)の血清疫学調査を行ったところ、感染蔓延(ホットスポット)地域でさえも大部分の人が血清反応陰性で、PCR検査で確認された大半の症例で検出可能な抗体が認められる一方、新型コロナウイルス感染症(COVID-19)に関連した症状を有するかなりの人がPCR検査を受けておらず、血清反応陽性者のうち3分の1以上の人が無症状であることが明らかにされた。スペイン・National Centre for EpidemiologyのMarina Pollan氏らが、約3万6,000件の家庭を対象に行った調査の結果で、著者は、「スペインでは、COVID-19の影響が大きいにもかかわらず推定有病率は低いままで、集団免疫の獲得には明らかに不十分である。獲得には多くの死亡者や医療システムへの過度な負担なしにはなし得ない状況にある」と述べ、「今回の結果は、新たなエピデミックを回避するためには、公衆衛生上の対策を継続していく必要性を強調するものであった」とまとめている。Lancet誌オンライン版2020年7月3日号掲載の報告。スペイン6万1,075人を対象に調査 スペインは、ヨーロッパ諸国の中でCOVID-19のパンデミックによる影響が最も大きな国の1つであるが、無症状のケースが存在し、診断テストへのアクセスがほとんどないことから、エピデミックの程度の評価に有用なツールである血清学的調査を行った。全国的な住民ベースの調査によって、SARS-CoV-2の国および地域レベルの血清有病率を推定することを目的とした。 地方自治体名簿を基に、州および市の規模により層別化した2段階無作為抽出法を用いて3万5,883世帯を選択し、各世帯すべての住民に同調査への参加を促した。 2020年4月27日~5月11日にかけて、6万1,075人(選択世帯住民の75.1%)がCOVID-19に関連した症状の履歴やリスク因子に関する質問票に回答し、ポイント・オブ・ケア(POC)の抗体検査を受けた。さらに同意が得られた場合には、採血を行い化学発光微粒子免疫測定法(CMIA)を行った。IgG抗体の有病率は、サンプリング重み付け・事後層別法で補正を行い算出し、年齢群や性別、国勢統計区の所得に基づく非回答率の格差は許容した。 両方の検査結果から、特異度(両検査ともに陽性)または感度(いずれかの検査が陽性)を最大化する血清有病率の範囲値を求めた。各検査による血清有病率は5%前後、地域差大 血清有病率はPOC検査では5.0%(95%信頼区間[CI]:4.7~5.4)、CMIAでは4.6%(4.3~5.0)、特異度-感度の範囲値は3.7%(3.3~4.0、両検査陽性)~6.2%(5.8~6.6、いずれかの検査陽性)だった。性差は認められず、また10歳未満の子供の血清有病率は低かった(POC検査で3.1%未満)。 地域による差は大きく、マドリード周辺では10%超だったのに対し、沿岸部では3%未満だった。調査開始の14日以上前にPCR検査で陽性だった195人の血清有病率は、87.6%(95%CI:81.1~92.1、両検査陽性)~91.8%(86.3~95.3、いずれかの検査陽性)だった。 嗅覚消失または3つ以上の症状が認められた7,273人の血清有病率は、15.3%(95%CI:13.8~16.8、両検査陽性)~19.3%(17.7~21.0、いずれかの検査陽性)だった。 血清反応陽性者のうち約3分の1が無症状者で、21.9%(95%CI:19.1~24.9、両検査陽性)~35.8%(33.1~38.5、いずれかの検査陽性)だった。症状が認められた者のうち、POC抗体検査、CMIAともに血清反応陽性だったのは、わずかに19.5%(95%CI:16.3~23.2)だった。

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第15回 凋落の東京女子医大、吸収合併も現実味?

看護師退職希望が400人超こんにちは。医療ジャーナリストの萬田 桃です。医師や医療機関に起こった、あるいは医師や医療機関が起こした事件や、医療現場のフシギな出来事などについて、あれやこれや書いていきたいと思います。先週も書きましたが、東京の新型コロナウイルス感染症患者の数が減っていきません。この状況下で、国は7月22日から国内観光需要喚起を目的とした「Go To Travelキャンペーン」をスタートさせようとしています。地方への感染拡大が気になるところですが、このキャンペーン、旅行者が事務局に還付を申請する仕組みもあるようで、何やら特別定額給付金のときのような混乱がまた起こるのではと、イヤな予感がします。さて、今回気になったのは、東京女子医科大学病院(東京)で看護師の退職希望者が400人を超えた、というニュースです。この事実が全国に広まったきっかけは、7月2日の参議院厚生労働委員会です。日本共産党の小池 晃書記局長が、新型コロナ対応で経営危機に直面している医療機関の支援措置を政府に要請しました。その際、東京女子医大の名を挙げ、同大が「夏季一時金を支給しない」と労組に回答したことに言及、さらに看護師の退職希望が法人全体の2割にあたる400人を超えている、と指摘したのです。7月3日付けのしんぶん赤旗によれば、小池氏は「大学側にも責任がある」としつつ、コロナ感染症対策の先頭に立つ医療機関が経営危機に直面している事実を指摘。コロナ患者を受け入れた医療機関だけでなく、受け入れていない医療機関も経営が悪化しているとして、「日医や病院団体が要求しているように、過去の診療実績による概算払いを認めるなど、当面の資金ショートやボーナスカットを回避する緊急措置が必要だ」と迫ったそうです。コロナで約30億の赤字コロナ患者への対応で疲弊した職員にボーナスを払わない、400人超の看護師が離職しようとしている、というニュースは医療メディア以外にもインパクトがあったようで、日刊ゲンダイのほか、多くの一般メディアもこのニュースを取り上げました。同大学の労働組合のホームページには、「組合だより」が公開されています。そこに書かれた大学側と組合の交渉経緯によれば、大学側は「コロナ感染の影響は想像以上に大きい。4月、5月の2カ月間で30億円近いマイナスとなっている。現状では上半期賞与を支給する要素は全くない」として、ボーナスゼロの回答を行ったようです。7月8日の日刊ゲンダイはこうした大学側の対応への職員の声として、「実際、同大の看護師が投稿したとみられる口コミサイトには、<コロナ騒動の際も毎日出勤していたが、ボーナスなしの仕打ち。大学側からは大学の運営のために我慢しろという回答><コロナ対応など必死に取り組みました。世間も医療関係を応援してくれています。なのにこの法人はコロナ赤字でボーナス0><コロナを受け入れて経営悪化。危険手当なし、夏季ボーナスなし>……など怨嗟の声で溢れている」と書いています。「最終的にベッド数に見合った看護師を補充すれば良い」6月29日発行の「組合だより」に書かれた団体交渉のやり取りを見ると、「看護師の退職希望者の予想数が400名を超えると聞いたが、そのことに対してどう考えているのか」という質問に対し、大学側の代理人である弁護士は「深刻だとは思うが、足りなければ補充するしかない。現在はベッド稼働率が落ちているので、仮に400名が辞めても何とか回るのでは。最終的にベッド数に見合った看護師を補充すれば良いこと。申し訳ないが、これは完全に経営の問題であり、組合に心配してもらうことではない」と答えたとのことです。ボーナスの交渉は、労使のあいだの問題なので外野がとやかく言うことではありませんが、この弁護士の言葉が東京女子医大の経営者の考えを本当に代弁しているとしたら、とても残念なことです。看護師を単なる診療報酬を得るためのコマとしか考えていないように見えるからです。また、コロナによる影響で収入が激減しボーナスが払えない、とのことですが、それはどこの医療機関でも同様な状況にあるわけで、東京女子医大だけが特別ではありません。7月13日のNHKニュースは「医療機関の3割で夏のボーナス引き下げ」として、日本医療労働組合連合会が加盟する医療機関を対象に今年の夏のボーナスについて調査した結果を報じています。それによると、6月30日の時点で回答した338の医療機関のうち、およそ3割にあたる115の医療機関でボーナスの額が去年より引き下げられていたということです。このコロナ禍の中、3割は引き下げるものの、7割の医療機関は昨年並にボーナスを払おうとしているわけです。特定機能病院、承認未だ取り消し中東京女子医大病院については、最近は悪い話しか聞こえてきません。同院は2014年に人工呼吸中の2歳10ヵ月の男児に、ICUの小児には「原則禁忌」(当時)とされていたプロポフォールを大量投与し、結果として患児が死亡するという医療事故を起こし、2015年に特定機能病院の承認を取り消されています。同院が特定機能病院の承認取り消しにあったのは2度目です。1度目は2002年で(2007年に再承認)、前年に起こった日本心臓血圧研究所(心研、現:心臓病センター)の医療事故がきっかけでした。当時12歳の患者が心房中隔欠損症と肺動脈狭窄症の治療目的で手術を受けたものの、脱血不良で脳障害を来し、死亡したという事故です。この事故については、その後起訴された医師の1人(人工心肺装置の操作を担当した助手)が裁判で無罪となっています。その背景には、東京女子医大が設置した院内事故調査委員会の報告書がありました。同委員会には心臓血管外科医や人工心肺のことがわかる人が1人もおらず、死亡した手術に携わった当事者の意見聴取すらされないままに報告書が作成されていたのです。このことが後に判明し、報告書の内容は否定されています。2015年に取り消された東京女子医大の特定機能病院の承認は、今も再承認に至っていません。取り消し直後は、患者数の激減や私学助成金の減額等で、経営状況の悪化や経営陣の内紛に関する報道もありました。2019年には理事長が交代し、新体制で特定機能病院の再承認を目指していた矢先の、今回の新型コロナ感染症の感染拡大です。病院も大学も経営の舵取りはますます難しくなっているとは思いますが、職員の働きをリスペクトするような経営を行ってもらいたいものです。疲弊と不満が現場に広がってしまっては医療安全上も心配です。どこか似ているフジテレビと女子医大東京女子医大は1970〜90年代には、日本の大学病院としては最先端の経営を行っていました。心研をはじめ、消化器病・脳神経・腎臓病の各センターなど、臓器別のセンター方式をどこよりも早く導入、それぞれにスター教授を配して、臨床だけではなく、研究でも最先端をいっていました。80~90年代にかけ、私はよく新宿区河田町にある東京女子医大病院に取材に通っていました。隣にはお台場に移転する前のフジテレビ本社がありました。フジテレビも「オレたちひょうきん族」のヒットなどで、視聴率で在京キー局のトップを走っていたと記憶しています。あれから30〜40年が経ち、どちらも昔日の面影はありません。フジテレビでは最近、女子プロレスラーを自殺に追い込んだ「テラスハウス」事件がありました。週刊誌などの報道では、出演者を「視聴率をとるためのただのコマ」としか考えない、テレビ局側の姿勢が問題視されています。どこでどう間違ってしまったのでしょうか…。東京女子医大は、このまま経営難が続けば、ことあるごとに噂になる早稲田大学による吸収合併も現実味を帯びてくるかもしれません。

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コロナ自粛でイライラや暴力行為、低年齢ほど傾向強く

 新型コロナウイルスの流行は、感染への不安や恐れもさることながら、さまざまな社会・経済行動の自粛とstay homeによる生活の変化がもたらした緊張やストレスも大きかった。国立成育医療センターは、全国の7~17歳までの子供および0~17歳の子供がいる保護者を対象に、インターネットでアンケートを実施。その回答結果によると、すぐにイライラしたり、自傷や他人への危害といった何らかのストレス反応を呈したりした子供が75%にのぼった一方、保護者の62%が心に何らかの負担を感じていたことがわかり、これまでに経験したことのない自粛生活が親・子の双方に大きく影響を及ぼしていた様子がうかがえる。 本調査は、4月30日~5 月31日、インターネット上で実施された。アンケート内容は、(1)コロナ関連(2)学校・勉強・友人への連絡状況(3)外出頻度・運動・スクリーンタイム・生活リズム(4)子供たちの健康とQOL(5)ストレス反応(6)親子の関わり(7)保護者のメンタルヘルス(8)子供たちが必要としている支援や情報について、などを選択式で回答する項目と、自由記述で構成。2,591人の子供と6,116人の保護者、計8,707人が回答した。 このうち、ストレス反応についての項目で、「最近集中できない」は、小学4~6年生と中学生が40%、高校生が42%だった。「すぐにイライラする」は、小学4~6年生が38%と最も多く、小学1~3年生が33%、中学生が30%、高校生が29%だった。「自分の体を傷つけたり、家族やペットに暴力をふるうことがある」(原文ママ)は、小学1~3年生の16%、小学4~6年生の10%が該当し、中学生・高校生は各5%だった。イライラしたり、暴力的になったりする傾向は低学年ほど強く表れる結果となった。 一方、保護者の回答では、子供に対して「感情的に怒鳴った」が49%と約半数が該当し、とくに年少~年長、小学1年~3年の保護者では6割にのぼった。こうした家庭内のトラブルについて、コロナ流行前の今年1月時点と比べて「少し増えた」「とても増えた」と回答したのは、年少の保護者が45%ともっとも多く、以下、小学1年~3年(38%)、小学4~6年(27%)、未就学児(26%)の保護者の順に多かった。 学校や園の季節休暇以外で、今回ほど長期の休みが続き、外出を制限されるという経験は誰もしたことがなく、在宅ワークが急きょ始まって戸惑う保護者も多かった。こうした状況下で、子供全体の78%が保護者について「一緒にいると安心できる」と回答しているのに対し、保護者のメンタルヘルスを問う6項目の質問について5段階に点数化したところ、全体の62%が中等度(心に何らかの負担がある状況)~極強度(深刻な心の状態のおそれがある)に該当した。家の中で、大人への安心感を感じる子供と、仕事やコロナ感染への不安、子供の教育などに対する情報不足などが相まって大きなストレスを抱えている保護者のあり様が対照的な結果となった。 本調査をまとめた報告書の終わりには、「急性期には目立たなかった影響が、少し時間が経ってから顕在化していることもある。今後もし感染が早期に完全に終息して日常が取り戻されたとしても、子供たちの様子はしばらくの間、注意深く見守る必要がある」と記されている。また、本調査に関し、「より強いストレスや苦しい生活状況に直面している子供や保護者には、本調査の案内が届かなかったり、協力いただけなかったりした可能性もある」とし、国立成育医療センターでは、同調査を今後も継続的に実施する予定だ。 コロナ収束には今しばらくかかる様相だが、学校が再開され、社会が本格的に再稼働し始めた。かかりつけ医の皆さんには、子供や保護者と顔を合わせた際、長い自粛期間を経た後に、心身の小さな変化がないか、注意してみていただきたい。

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アビガン、ウイルス消失傾向も有意差示せず/多施設無作為化試験

 新型コロナウイルス感染症(COVID-19)の無症状および軽症患者に対するファビピラビル(商品名:アビガン)のウイルス量低減効果を検討した多施設非盲検ランダム化臨床試験の最終結果の暫定的な解析から、通常投与群(1日目から投与)は遅延投与群(6日目から投与)に比べて6日までにウイルスの消失や解熱に至りやすい傾向が見られたが、統計学的に有意ではなかったことを、7月10日、藤田医科大学が発表した。本研究の詳細なデータを速やかに論文発表できるよう準備を進めるという。 本研究は、藤田医科大学を代表機関とし全国47医療機関で実施している「SARS-CoV2感染無症状・軽症患者におけるウイルス量低減効果の検討を目的としたファビピラビルの多施設非盲検ランダム化臨床試験」(研究責任医師:藤田医科大学医学部感染症科 教授 土井 洋平氏)。 3月上旬~5月中旬にCOVID-19患者89例が参加し、うち44例がファビピラビルの通常投与群、45例が遅延投与群に無作為割り付けされた。遅延投与群のうち1例が割り付け直後に不参加を希望したため、臨床的評価は通常投与群44例、遅延投与群44例を対象とした。またウイルス量に関する評価は、研究参加時に既にウイルスが消失していたことが後日判明した19例を除外し、通常投与群36例、遅延投与群33例を対象とした。研究参加中に重症化または死亡した患者はいなかった。 主な結果は以下のとおり。・主要評価項目である「6日目まで(遅延投与群が内服を開始するまで)の累積ウイルス消失率」は、通常投与群66.7%、遅延投与群56.1%で、調整後ハザード比(HR)は1.42(95%信頼区間[CI]:0.76~2.62、p=0.269)であった。・副次評価項目である「6日目までのウイルス量対数値50%減少割合」は、通常投与群94.4%、遅延投与群78.8%で、調整後オッズ比は4.75(95%CI:0.88~25.76、p=0.071)であった。・探索的評価項目である「37.5℃未満への解熱までの平均時間」は、通常投与群2.1日、遅延投与群3.2日で、調整後HRは1.88(95%CI:0.81~4.35、p=0.141)であった。・ファビピラビル投与に関連する有害事象については、血中尿酸値上昇が84.1%、血中トリグリセライド値上昇が11.0%、肝ALT上昇が8.5%、肝AST上昇が4.9%に見られた。これらの異常値は、内服終了後(16日目または28日目)に再度採血された患者(38例)のほぼ全員で平常値まで回復していた。また、痛風発症例はいなかった。

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HIV感染症患者は新型コロナウイルスに罹りにくいのか?【新興再興感染症に気を付けろッ!】

ケアネットをご覧の皆さま、こんにちは。国立国際医療研究センター 国際感染症センターの忽那です。本連載「新興再興感染症に気を付けろッ!」、通称「気を付けろッ」は「新興再興感染症の気を付け方」についてまったりと、そして時にまったりと、つまり一貫してまったりと学んでいくコーナーです。1年半ぶりに復活! 今回も少数精鋭の読者に向けてと何事もなかったかのように普通に冒頭を書き出してみましたが(正確に言うと前回の文章をコピペした)、実に1年半ぶりの再開です。この1年半、いろいろなことがありました…。「ピエール瀧の逮捕」、「沢尻エリカの逮捕」、そして「新型コロナウイルスの流行」…。ピエール瀧と新型コロナウイルス感染症(COVID-19)を並べて書いたのは私が世界初ではないでしょうか。そんなわけで、「新興再興感染症」という誰も興味のなさそうなテーマの連載でしたが、よく考えたら「今しか注目されるときはないんちゃうか」というタイミングであり(むしろ若干タイミングを逃した感あり)、「医療界の冨樫」がついに重い腰を上げたわけです。というわけで、冨樫義博先生(漫画家)を見習って10回くらいの予定で(打ち切られなければ)、新型コロナウイルスに関する話題を皆様にご提供したいと考えております。ときどき「Yahooの記事とほぼ同じやないか!」と思われる回が登場するかもしれませんが(予言)、それはご愛嬌ということでよろしくお願いします。でもね、Yahooの記事って「いつも読んでます!」とかめっちゃ言われるんですが、この連載でそんなこと言われたことほとんどないんですよ、悲しいことに。たぶん5人くらいしか読んでないんじゃないでしょうか。まあどっちにしても原稿料はもらえるし、別に5人でも構いません。少人数制で頑張っていきましょう。HIV治療薬とCOVID-19の治療薬?の関係それでは5人の読者の皆様、お待たせいたしました、新型コロナシリーズ第1回は「HIVとコロナ」です。HIV感染症と言えば世界3大感染症の1つであり、ヒト免疫不全ウイルス(HIV)に感染することでCD4陽性リンパ球が減少し、細胞性免疫不全が起こる疾患です。日本でも約3万人の感染者がおり、今もなお年間1,000人以上が新規患者として診断されています。CD4数が低下すると「日和見感染症」と呼ばれるニューモシスチス肺炎やサイトメガロウイルス網膜炎などの感染症に罹患しやすくなり、また、一般の感染症に罹患した際も重症化しやすいとされます。しかし、一般的にHIV感染症の患者さんも“ART(Antiretriviral Therapy)”と呼ばれる抗HIV薬を組み合わせた治療を行えば、CD4数は正常の範囲を保つことができることが多く、その場合は日和見感染症に罹るリスクはほとんどなくなります。では、HIV感染症の患者がCOVID-19に感染した場合、重症化するのでしょうか。「COVID-19の悪化にはサイトカインストームが関与しており、免疫反応が弱いHIV感染症患者では重症化しないのではないか」という仮説を唱えている人もいるようですが、この辺はまだ結論が出ていません。まだプレプリントですが、HIV感染症患者はHIV-negativeの人と比べて死亡リスクが高いという南アフリカの大規模コホート研究があります。その前に、そもそもHIV感染症の患者はCOVID-19に感染するのでしょうか? 答えはもちろんイエスであり、国内最初のHIV感染症患者のCOVID-19症例は我々が診断しています(てへん)1)。しかし、「HIV感染症の患者でART中の方はCOVID-19に罹患しにくいのではないか」という説がまことしやかに囁かれていました。正確には私自身が囁いていました。なぜならば、一部の抗HIV薬はin vitroでは新型コロナウイルスに活性があるためです。一時期、国内でもCOVID-19症例の治療にカレトラが使用されていましたが、これはリトナビルというプロテアーゼ阻害薬がSARSコロナウイルスやMERSコロナウイルスにin vitroで活性があるためでした2)。しかし、リトナビル/ロピナビルの合剤であるカレトラはRCTで有効性を示せず3)、現在カレトラはCOVID-19の治療では積極的に使用されなくなっています。しかし、今度は核酸系逆転写酵素阻害剤(NRTIs)が新型コロナウイルスに動物実験系では有効性を示したという報告も出てきており4)、「何だやっぱりARTはCOVID-19に効くんじゃないか」という揺り戻しが起こっていました。最新の臨床研究からみてみたさて、そんな中、ついに「実際にARTを受けているHIV感染症患者はCOVID-19に罹っているのか」という命題に応える臨床研究が出ました5)。概要としては、スペインでARTを受けている77,590人のコホート研究で、このうち236人がCOVID-19と診断され、151人が入院し、15人がICUに入院し、20人が死亡した。COVID-19の診断および入院のリスクは、男性および70歳以上の高齢者で高かった。1万人あたりのCOVID-19の入院リスクはテノホビル アラフェナミド/エムトリシタビン(TAF/FTC)投与群で20.3(95%CI、15.2~26.7)、テノホビル ジソプロキシルフマル酸塩//エムトリシタビン(TDF/FTC)投与群で10.5(CI、5.6~17.9)、アバカビル/ラミブジン(ABC/3TC)投与群で23.4(CI、17.2~31.1)、その他のレジメン投与群で20.0(CI、14.2~27.3)であった。1万人あたりのCOVID-19罹患(診断)リスクは、それぞれTAF/FTC投与群で39.1(CI、31.8~47.6)、TDF/FTC投与群で16.9(CI、10.5~25.9)、ABC/3TC投与群で28.3(CI、21.5~36.7)、その他のレジメン投与群で29.7(CI、22.6~38.4)であった。TDF/FTCを受けた患者でICUに入院した患者や死亡した患者はいなかった。比較対象として、同期間のスペインの20~79歳の一般集団では、COVID-19の診断リスクは1万人あたり41.7人(医療従事者を除くと1万人あたり33.0人)であり、死亡リスクは1万人あたり2.1人であった。というものであり、このコホート研究からはやはり「ART中、特にTDF/FTCを飲んでいるHIV感染症患者ではリスクが多少低くなるかもしんまい!」ということが言えそうです。現在、TDF/FTCを内服していた患者は腎臓や骨への副作用が少ないTAF/FTCへの切り替えが行われていることが多いと思いますが、思いがけずTDF/FTCの方が優れた結果になっていますが、これはTDFの方がTAFよりも血漿中および細胞外濃度が高いためではないかと考えられます(もともとTAFはTDFよりも効率的にリンパ球などの標的細胞に取り込まれるというのがTAFのメリットだったわけですが)。ARTを受けていない患者では、非HIV感染者と比較してどうかはこの研究からはわかりません。結論はまだ出ていないこうなってくると、HIV感染症じゃない人もCOVID-19予防効果を期待してTDF/FTCを内服したいという人が出てきそうですが、これはあくまでコホート研究ですので、一時期のトランプ大統領のように結果的に「ヒドロキシクロロキン、やっぱ効果ありませんでした」みたいな結果にならないとも限りませんし、スペインの単施設の研究ではテノホビルを内服していた方がCOVID-19に罹患しやすかったという真逆の結果の報告も出ています6)ので、とりあえず今行われているRCTの結果を待ちましょう。ちょっと1年半ぶりで気合が入りすぎてしまったかもしれません。次回からはもう少し適当に書きたいと思います。それでは(たぶん)また2週間後にお会いしましょう!1)Nakamoto T, et al. J Med Virol. 2020;10.1002/jmv.26102. doi: 10.1002/jmv.26102.2)de WildeAH, et al. Antimicrob Agents Chemother. 2014;58:4875-4884.3)Cao B, et al. N Engl J Med. 2020;382:1787-1799. 4)Park SJ, et al. mBio. 2020;11:e01114-20.5)Del Amo J, et al. Ann Intern Med. 2020. doi: 10.7326/M20-3689.6)Vizcarra P, et al. Lancet HIV. 2020;S2352-3018(20)30164-30168.

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第16回 COVID-19食い止めにT細胞が貢献?/ジャーナル購読の莫大な費用をソフトウェア解析で節約

COVID-19食い止めにT細胞が貢献か?抗体検査のみでは感染者数過小評価の恐れ新型コロナウイルス(SARS-CoV-2)への抗体は検出されずともT細胞は検出される場合があり、抗体検査だけではその感染(COVID-19)者数を少なく見積もってしまう恐れがあります1)。また、SARS-CoV-2への曝露があっても軽症か発症しないケースではT細胞が貢献しているかもしれません2)。フランスの7家族を調べた試験の結果1)、SARS-CoV-2感染者と密に接したその家族8人のうち6人からはSARS-CoV-2へのT細胞が検出されましたが抗体は見つかりませんでした。スウェーデンの約200例を調べた試験では無症状か軽症のSARS-CoV-2感染者のほとんどから強いメモリーT細胞反応が検出され、それらのT細胞反応獲得者に抗体反応が欠如していることは稀ではありませんでした3)。SARS-CoV-2に曝露か感染すれば抗体がどうあれ重度COVID-19を防げるようになる可能性があるようです。また、メモリーT細胞反応は抗体反応より2倍多く認められ、抗体検査頼りだとSARS-CoV-2に対抗する免疫がどれだけ広まっているかを少なく見積もってしまうようです。SARS-CoV-2へのT細胞反応は風邪症状を引き起こす別のコロナウイルスへの感染によって備わるらしいことも示されています4)。目下のCOVID-19流行からだいぶ前の2015~18年に採取されて保管されていた血液検体を調べたところ約半数にSARS-CoV-2を認識するヘルパーT細胞が備わっていました。風邪を引き起こす4つのヒトコロナウイルスのいずれかに感染したことでSARS-CoV-2も認識しうるT細胞が発生したのだろうとLa Jolla Instituteの研究チームは考えています。そのチームはCOVID-19から回復した10人の全員からSARS-CoV-2スパイクタンパク質を認識するヘルパーT細胞が検出されたことも併せて報告しています。また、スパイクタンパク質以外のタンパク質に反応するヘルパーT細胞も検出されました。現在開発中のワクチンのほとんどはスパイクタンパク質への免疫反応を誘発することを目指しています。しかしもっと欲張った方が良さそうです。他のタンパク質に反応するヘルパーT細胞が今回確認されたことから察するに、それらのタンパク質へも免疫系を駆り立てるワクチンはいっそう有効かもしれません。1つのタンパク質だけにぞっこんにならない方が良いと米国ノースカロライナ大学の分子微生物学者Rachel Graham氏はScience誌に話しています5)。ジャーナル購読の莫大な費用をソフトウェア解析で節約可能に?今年2020年4月にニューヨーク州立大学(SUNY)はオランダの巨大出版会社Elsevier(エルゼビア)との値が張る一括購読契約を打ち切り、248雑誌の購読を中心とするこじんまりとした契約に切り替えました6)。SUNYはその絞り込みで年間購読料を500~700万ドルも減らせる見込みです。Science誌のニュースによるとUnsubというソフトウェアがその絞り込みを手伝いました7)。SUNYがそれまで年間およそ900万ドルを払っていた2,200ものElsevier発行雑誌の10分の1ほどの248雑誌を年間200万ドル払って購読すればSUNYの64施設の研究者は今後5年間に読むであろうElsevier出版論文の約7割を制限なく入手できるとUnsubは推定しました。UnsubはSUNYのそれぞれの図書館の雑誌利用データを解析し、SUNYの施設や学生がすでに無料で利用できるネット上の論文を考慮してそう推定しました。SUNYは支払いを続ける必要がある雑誌を独自に見繕い、その一覧はUnsubが打ち出した一覧と一致していました。Unsubは一大技術であり、おかげで大学の図書館がもはや大金を注ぎ込まずとも機能を保ってやっていけると分かったとSUNY図書館の運営戦略リーダーMark McBride氏は言っています。Unsubは2017年に誕生したUnpaywallというツールを発展させて去年2019年11月に発売されました。Unsubの前身のUnpaywallはネットから無料の論文を探し出し、合法的に支払いを回避して目当ての論文を読めるようにするものです。Unpaywallの欠点を解消して出来上がったUnsubの年間使用料は1,000ドルであり、Unsubを販売する学術支援企業Impactstoryの設立者の1人・Jason Priem氏によるとすでに300の図書館がUnsub使用を決めています。SUNYが踏み切ったような巨額契約打ち切りがこの夏には増え、図書館は交渉力を取り戻すことになるだろうとPriem氏は言っています。SUNYが新たな契約の下で手に入れうる論文のうちおよそ30%はオープンアクセスなのですでに無料で読むことができ、25%はSUNYが何年か契約を続けたことで入手可能です。新たな契約の下で入手不可能な論文はどうするかというと、SUNYのそれぞれの施設ごとに必要な雑誌を個別購読したり他の図書館から一時的な閲覧権を購入して読めるようにします。また、論文の単品購入もあります。それらの追加出費を含めても新たな契約は余りある節約をもたらすと前述のMcBride氏は言っています。顧客の好みがどうあれ高品質な出版物をお値打ち価格で公平にいらつかせず提供することに変わりはないとElsevierの広報担当者はScience誌に話しており、Unsubが台頭したところで同社は特に何か手を打つつもりはないようです。ところでUnsubと似た目的の1figrというソフトがあったのですが、その販売会社1Scienceとその親会社Science-MetrixがElsevierに取得された後に残念ながら姿を消しました。参考1)Intrafamilial Exposure to SARS-CoV-2 Induces Cellular Immune Response without Seroconversion. medRxiv. June 22, 20202)Scientists focus on how immune system T cells fight coronavirus in absence of antibodies / Reuters 3)Robust T cell immunity in convalescent individuals with asymptomatic or mild COVID-19. bioRxiv. June 29, 2020 4)Grifoni A, et al. Cell. 2020 Jun 25. [Epub ahead of print]5)T cells found in COVID-19 patients ‘bode well’ for long-term immunity / Science 6)State University of New York Steps Away From the “Big Deal” with Elsevier 7)This tool is saving universities millions of dollars in journal subscriptions / Science

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COVID-19でみられる後遺症は?/JAMA

 新型コロナウイルス感染症(COVID-19)では、回復後もなお、しつこく残るだるさや息苦しさを訴えるケースが多くみられるが、その実態は不明である。イタリア・ローマの大学病院Agostino Gemelli University PoliclinicのAngelo Carfi氏ら研究グループは、COVID-19回復後に退院した患者の持続的な症状について追跡調査を行った。その結果、COVID-19発症から約2ヵ月の時点においても87.4%の患者が何らかの症状があることがわかった。COVID-19を巡っては、これまでもっぱら急性期に焦点を当てて研究や分析が進められてきたが、著者らは、退院後も継続的なモニタリングを行い、長期に渡る影響についてさらなる検証を進める必要があるとしている。JAMA誌2020年7月9日号リサーチレターでの報告。 本研究では、2020年4月21日~5月29日までの間に、COVID-19から回復し、退院した患者179例が対象となった。このうち、研究への参加を拒否した14例およびPCR検査陽性の22例を除く143例の患者について追跡調査を実施した。COVID-19の急性期における症状の有無を遡及的に再評価し、各症状が調査時も持続しているか尋ねた。また、患者自身にCOVID-19の前および調査時のQOLを0(最低)~100(最高)のスコアで評価してもらった。  主な結果は以下のとおり。・患者143例の平均年齢は56.5(SD 14.6)歳(範囲:19~84歳)、男性90例(63%)で女性53例(37%)だった。・COVID-19症状発現から平均60.3(SD 13.6)日後に患者を評価したところ、評価時点で無症状だったのは18例(12.6%)で、患者の32%は1~2つの症状があり、55%は3つ以上の症状が見られた。・患者の44.1%でQOLの低下が見られ、とくに倦怠感(53.1%)、呼吸困難(43.4%)、関節痛(27.3%)、胸痛(21.7%)を訴える人の割合が高かった。このほか、咳、臭覚の異常、ドライマウス/ドライアイ、鼻炎、目の充血、味覚の異常、頭痛、喀痰、食欲不振、咽頭痛、めまい、筋肉痛、下痢といった症状を訴える患者もいた。・本研究では、COVID-19から回復した患者の87.4%が何らかの症状を有していた。 著者らは、143例という比較的少数の患者による単一施設の研究であること、ほかの理由で退院した患者の対照群がないことなど研究の限界として挙げ、これらの所見が必ずしもCOVID-19によるものとは限らない可能性があるとしている。

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第15回 医師過労死の長崎みなとメディカル、控訴から一転和解へ

<先週の動き>1.医師過労死の長崎みなとメディカル、控訴から一転和解へ2.日本医師会、「骨太の方針2020」(原案)に対する3つの懸念3.情報ギャップを解消し、信頼できる医療情報へのアクセスを支援/Google4.コロナに直面する医療機関の経営支援を!超党派議連が発足5.がん疑い3例、診断遅れによる死亡を旭川医科大学病院が公表1.医師過労死の長崎みなとメディカル、控訴から一転和解へ長崎市立病院機構・長崎みなとメディカルセンターに勤務して過労死した医師の遺族が損害賠償を求めていた裁判で、病院側に1億7,000万円の支払いを命じた1審判決に対し、控訴を取り下げ、和解することとなった。今回、過労死を認めないとの方針を大きく変えたのは、理事長、病院長の交代を機にメンバーが一新された理事会において、当時、過労死水準をはるかに超える異常な長時間労働に当該医師が従事していたことを大学側が認め、遺族との和解に至った。医師の働き方改革により、2024年4月以降は医師の時間外労働の上限規制が強化される。病院の勤務医に限らず、労働者の働き方改革については大きな関心が寄せられており、今回の動きはほかの医療機関にも大きく影響を与えると考えられる。(参考)当院の医師の過労死事案について(長崎みなとメディカルセンター)医師の働き方改革について(厚生労働省医政局 医療経営支援課)2.日本医師会、「骨太の方針2020」(原案)に対する3つの懸念日本医師会の中川会長は、政府が現在取りまとめに動いている「骨太方針2020」の原案について、「薬価調査・薬価改定」、「医療機関経営」、「オンライン診療」の主に3点に関する見解を10日に取りまとめた。薬価調査・薬価改定については、新型コロナで予断を許さない状況下、製薬企業や医薬品卸の営業が医療機関にほとんど訪問できていないため、薬価調査を実施できる環境ではないとしている。また、医療機関の経営状態については、コロナ感染拡大に伴い、受診抑制など深刻な影響が出ており、新型コロナウイルス感染症重点医療機関などを支えるための支援も不可欠とし、追加支援を求めている。最後に、オンライン診療についても、原文に「診察から薬剤の受け取りまでオンラインで完結する仕組みを構築する」とあることに対し、ただちに現状と平時の対面診療とを比較できるわけでないため、合意形成しながらの仕組み構築を要望した。(参考)「経済財政運営と改革の基本方針2020(仮称)」(原案)について(日本医師会)3.情報ギャップを解消し、信頼できる医療情報へのアクセスを支援/Google検索エンジン大手Googleは、信頼できる医療情報へのアクセスを支援するために、新たなツール「Question Hub (クエスチョンハブ)」を設け、7日から運用を開始した。これは、ユーザーが適切な情報にたどり着けていないと考えられる検索キーワードを自動的に収集し、表示するもの。今回はβ版として、新型コロナウイルス感染症に関する未回答のキーワードを集め、医療従事者および専門家、メディカルノート、メドレーのプロジェクトチームと協力することで、情報ギャップの解消を目指す。(参考)より信頼できる医療情報へのアクセスを(Google Japan Blog)4.コロナに直面する医療機関の経営支援を!超党派議連が発足7日、有志の国会議員による「コロナと闘う病院を支援する議員連盟」の設立総会が開かれた。新型コロナウイルス感染拡大により、経営が悪化している医療機関への財政的な支援を求める目的で設立された。当日は会場に100名以上の国会議員、秘書などが集まった様子が、参加した議員などから報告されている。今後は日本医師会、日本病院協会からヒアリング、病院の視察など実施し、具体的には省庁予算概算要求の前の8月までに提言の形で政府に申し入れをする見込み。メンバーは自民党、公明党、立憲民主党、国民民主党、日本維新の会以外にも超党派のメンバーにより形成され、共同代表に中谷 元氏(自民党)、富田 茂之氏(公明党)、羽田 雄一郎氏(国民民主党)が選ばれ、幹事長には増子 輝彦氏(国民民主党)が就いた。(参考)超党派「コロナと闘う病院を支援する議員連盟」(仮称)の設立趣意書(案)5.がん疑い3例、診断遅れによる死亡を旭川医科大学病院が公表10日に、旭川医科大学病院が開催した記者会見において、がんが疑われた8人の患者のうち、診断が遅れて3人が死亡していたことが発表された。大学側によると「がん疑い」の画像診断報告書がありながら、主治医に共有されていなかったことが原因であったとし、今後は医師の確認漏れを防ぐために、未読の報告書があれば、自動的に通知が届く新たなシステムを導入するなど再発防止に努めるという。日本医療機能評価機構によれば、医師が画像診断の報告書などを確認しないまま、病気を見逃して治療が遅れたケースは、2012年から8年間で125件報告されている。厚労省は、2019年12月に「画像診断報告書等の確認不足に対する医療安全対策の取組について」として、「医療安全に資する病院情報システムの機能を普及させるための施策に関する研究」の事務連絡を医政局総務課医療安全推進室より発出している。(参考)旭川医大病院 診断遅れで陳謝(NHK)「画像診断報告書の確認不足(第2報)」(医療安全情報No.138)(日本医療機能評価機構)「医療安全に資する病院情報システムの機能を普及させるための施策に関する研究」報告書資料(厚労省)

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COVID-19、市販の抗体検査の診断精度は?/BMJ

 カナダ・Research Institute of the McGill University Health CentreのMayara Lisboa Bastos氏らは、新型コロナウイルス感染症(COVID-19)の血清検査(抗体検査)の診断精度をシステマティックレビューおよびメタ解析により検証し、現在のエビデンスでは既存のポイントオブケア(迅速)抗体検査の使用を継続することは支持されないと報告した。著者は、「COVID-19抗体検査の診断精度を評価する質の高い臨床試験が早急に必要」と強調している。抗体検査は急速に普及してきており、多くが迅速検査として市販されているが、これら抗体検査の診断精度に関するエビデンスは、正式に評価されていなかった。BMJ誌2020年7月1日号掲載の報告。抗体検査の診断精度をメタ解析で評価 研究グループはMedline、bioRxiv、medRxivを用いて、2020年1月1日~4月30日の期間に発表された、COVID-19の概念および抗体検査に関する単語を見出しまたは小見出しに含む論文を検索した。 適格基準は、COVID-19抗体検査の感度または特異度、あるいはその両方を、標準試料のウイルス培養または逆転写ポリメラーゼ連鎖反応(RT-PCR)検査と比較した研究とし、5例または5検体未満の研究は除外した。QUADAS-2(Quality Assessment of Diagnostic Accuracy Studies 2)を用いてバイアスリスクを評価し、併合した感度と特異度はランダム効果二変量解析を用いて推定した。 主要評価項目は、抗体検査法(酵素結合免疫吸着測定法[ELISA]、ラテラルフローイムノアッセイ[LFIA]、化学発光免疫測定法[CLIA])と免疫グロブリンクラス(IgG、IgM、または両方)で層別化した感度および特異度。副次評価項目は、研究あるいは患者特性(発症からの期間など)で定義されたサブグループ内における感度および特異度であった。迅速抗体検査の市販キットの感度は65.0% 5,016報が特定され、40件の研究が解析に組み込まれた。バイアスリスクについては、母集団および方法を含め49の評価が行われ、患者の選択バイアスは98%(48/49評価)が高リスク、性能または解釈のバイアスは73%(36/49評価)が高リスクまたは不明であった。外来患者も対象とした研究は10%(4/40件)のみで、迅速抗体検査を評価した研究は2件のみであった。 各検査法の感度と特異度は、免疫グロブリンクラスと関連しなかった。抗体検査の感度は、ELISA法(IgGまたはIgM測定)が84.3%(95%信頼区間[CI]:75.6~90.9)、LFIA法が66.0%(49.3~79.3)、CLIA法が97.8%(46.2~100)であった。すべての解析において、感度は迅速抗体検査であるLFIA法で低下した。特異度の範囲は、96.6~99.7%であった。 特異度の推定に用いられた検体のうち、83%(1万465/1万2,547例)がCOVID-19の流行前または疑いがない集団からの検体であった。LFIA法の中でも、市販の抗体検査キットの感度(65.0%、95%CI:49.0~78.2)は、非営利の検査よりも低値であった(88.2%、83.6~91.3)。 すべての解析で異質性が認められ、感度は、発症後1週以内(13.4~50.3%)と比較して発症後3週以上(69.9~98.9%)で高かった。

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忘れてはいけない日本の貢献(解説:後藤信哉氏)-1254

 欧米列強に追い付け追い越せの明治時代の日本の勢いはすさまじかった。国力の勝負としての戦争は歴史に残る。日露戦争はとても互角とは言えない相手に競り勝ち、大東亜戦争も常識的に勝てるはずのない相手と同じ土俵に乗った。医学の世界でも、北里 柴三郎による破傷風の抗毒素血清療法は画期的であった。細菌学における日本の貢献は、その時の経済力から考えると驚異的である。 近年はやりの抗凝固薬、抗血栓薬の開発にも日本は画期的役割を果たした。とくに、「止血のための抗線溶薬」となると世界における日本の貢献は突出している。線溶を担うプラスミンの選択的阻害薬トラネキサム酸を開発したのは日本である。「止血薬」となると世界の第1選択はトラネキサム酸である。消化管出血でも、まず安価なトラネキサム酸にて止血を図ろうとするのが世界の標準医療である。 Yes/Noの明確な英語の世界では「正しい」治療と「正しくない」治療が定義されている。「正しい」治療とはランダム化比較試験により検証された治療であり、検証されていない治療は「正しくない」かもしれないとされる。本研究では、世界で第一にひらめく線溶阻害薬トラネキサム酸に出血死亡予防効果があるか否かが、世界1万2,009例のランダム化比較試験により検証された。プラセボとトラネキサム酸では死亡率に差がないとされた。1万2,009例ものランダム化比較試験が世界にて施行できたことに驚く。また、十分に経済成長していない日本にて世界標準の出血阻害薬トラネキサム酸が開発された歴史的事実にも驚愕する。 少なくとも先人の世代まで日本は「すごい国」だったし、医学領域でも世界の誰からも尊敬される日本人がいた。さて、われらの世代から世界を驚嘆させる新薬の開発などが可能だろうか?

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第14回 尾身副座長すら寝耳に水だった?急転直下の専門家会議廃止の裏側

政府の「新型コロナウイルス感染症対策専門家会議」(以下、専門家会議)が廃止され、代わりに新設された「新型コロナウイルス感染症対策分科会」(以下、分科会)が7月6日、初会合を開いた。一連の背景には、担当大臣のスタンドプレーや経済活動を優先したい官邸の思惑もあり、果たして分科会が有効に機能するかどうかは疑問だ。廃止の一報が流れたのは、6月24日、専門家会議の尾身 茂副座長らがまさに日本記者クラブで会見中のことだった。席上、記者から質問された尾身氏が「知りませんでした」と答え、多くの人に奇異な印象を与えた。同じ時間帯に、別の会見で廃止を発表した西村 康稔・経済再生相兼新型コロナ対策担当相は、「唐突」などと与野党から批判を受け、「『廃止』と強く言い過ぎたことを反省している。十分に説明できず申し訳ない」と陳謝。首相の座を目指す西村大臣の“スタンドプレー”が明らかとなる一幕であった。専門家会議は、政府の新型インフルエンザ感染症対策本部の下、医学的な見地から適切な助言を行うことを目的に、2月に設けられた。「3密」「オーバーシュート」「ロックダウン」などの言葉も専門家会議から広がり、新型コロナ対策で大きな影響を与えた。一方で、議事録を作成していなかったことなど、多くの批判にもさらされた。専門家会議を前面に出し、責任回避とも取れる西村大臣の言動も影響していると思われる。特定業種名を挙げたクラスター情報も発信していたことから、ある構成員は「身の危険を感じる人もいた」と打ち明ける。このような経緯も踏まえ、専門家会議は6月24日の会見で、「あたかも専門家会議が政策を決定しているような印象を与えた」と振り返り、「政府との関係性を明確にする必要がある」と提言。それを制するかのように、西村大臣は「廃止」を公表したのだった。西村大臣は以前、感染症や公衆衛生の専門家が中心の同会議に、経済の専門家を入れるよう打診したが、断られた。一方、分科会には感染症の専門家や医療関係者だけでなく、経済学者や県知事、政権に近い新聞社の役員なども構成員となっている。また、新型インフルエンザ等対策閣僚会議の下、特別措置法を根拠とする有識者会議の分科会として発足しており、責任や権限の範囲も明確になった。分科会は経済活動を優先したい首相にとって、専門家会議より都合の良い組織に衣替えした。しかし、経済活動を優先するあまり、新型コロナ対策の科学的知見が軽視される懸念はないだろうか。東京を中心に感染者数が大きく右肩上がりになっている昨今。分科会が医学的見地をなおざりにした結果、収束が遠のいたなんていうことになれば、本末転倒という以外の何物でもない。

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COVID-19重症例、フサン+アビガンで臨床症状が改善/東大病院

 2020年7月6日、東京大学医学部附属病院は医師主導の多施設共同研究である『集中治療室(ICU)での治療を必要とした重症新型コロナウイルス感染症(COVID-19)に対するナファモスタットメシル酸塩(以下、ナファモスタット[商品名:フサン])とファビピラビル(商品名:アビガン)による治療』の成績について発表した。それによると、治療対象者11例(男性:10例、女性:1例、年齢中央値:68歳)のうち10例で臨床症状の軽快が見られた。また、回復症例は人工呼吸器使用が7例、うち3例がECMOを要したが、16日(中央値)で人工呼吸器が不要となった」ことが明らかになった。本研究成果はCritical Care誌2020年オンライン版7月3日号に掲載報告された。 東京大学医学部附属病院救命救急センター・ER准教授の土井 研人氏らが5月8日に実施を発表した本研究(国内8施設で実施)では、ナファモスタットとファビピラビルをICU管理が必要なCOVID-19の重症患者11例(2020年4月6日〜21日に入院)に投与し、臨床経過について観察を行った。11例のうち8例は人工呼吸器を、うち3例でECMOを使用した。ナファモスタットの点滴静注を0.2mg/kg/時で14日間投与(中央値)、ファビピラビルの内服を初日3,600mg/日、2日目から1,600mg/日で14日間(中央値)投与した。 研究者らは今回の結果に対し、「新型コロナウイルス抑制に対するナファモスタットとファビピラビルの異なる作用機序、ナファモスタットの抗凝固作用の有効性が示唆された。ファビピラビル単独での効果について、現時点では国内臨床研究の結果が報告されていない。そのため、ナファモスタット単独の効果、ナファモスタットとファビピラビル併用効果の両方が考えられ、今後の臨床研究の必要性を示唆する結果」としている。

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新型コロナ感染の川崎病様小児患者、大半で心機能障害/NEJM

 米国ニューヨーク州では5月上旬時点で、新型コロナウイルス(SARS-CoV-2)への感染が認められた小児発症性多系統炎症症候群(MIS-C)は95例に上ったことが、米国・ニューヨーク州保健局(New York State Department of Health:NYSDOH)のElizabeth M. Dufort氏らによる調査により明らかにされた。そのほとんどで、C反応性蛋白(CRP)値、Dダイマー値、トロポニン値が上昇し、心機能障害との関連が認められたという。MIS-Cは、皮膚・皮膚粘膜症状、消化器系症状を伴うhyperinflammatory syndromeで、新型コロナウイルス感染症(COVID-19)との関連が示唆されており、NYSDOHでは、同症状を呈した入院患者の記述的サーベイランスを州全体で強化していたという。NEJM誌オンライン版2020年6月29日号掲載の報告。川崎病、MIS-C疑い例など21歳未満の入院患者を対象に調査 研究グループは、2020年3月1日~5月10日にNYSDOHに報告された川崎病、毒素性ショック症候群、心筋炎、およびMIS-Cが疑われる21歳未満の入院患者を対象に調査を行った。 NYSDOHのMIS-C症例基準に適合した患者について、臨床症状、合併症、アウトカムを要約した記述的分析を行った。ICU治療は80%、昇圧剤サポートは62% 2020年5月10日時点で191例の症例がNYSDOHに報告された。 このうち、MIS-Cと診断(急性または最近のSARS-CoV-2感染が検査で確認)されたのは95例、また臨床・疫学的基準に適合しMIS-Cの疑いがあると判断された症例が4例で、54%(53例)が男性だった。人種別では、31/78例(40%)が黒人、31/85例(36%)がヒスパニック系だった。年齢別では、0~5歳が31例(31%)、6~12歳が42例(42%)、13~20歳が26例(26%)だった。 全例で主観的な発熱または寒気があり、頻拍は97%、消化器系症状は80%、発疹は60%、結膜充血は56%、粘膜変化は27%にそれぞれ認められた。 CRP値、Dダイマー値、トロポニン値の上昇は、それぞれ100%、91%、71%で認められた。昇圧剤サポートを要したのは62%、心筋炎のエビデンスが認められたのは53%、集中治療室(ICU)での治療を要したのは80%、死亡は2例だった。 入院期間の中央値は6日だった。

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こんなときだから、自分のため&社会のためにぜいたくしよう!【医師のためのお金の話】第34回

新型コロナウイルス感染症のため、東京オリンピックは1年延期されました。さらに緊急事態宣言が発令されたため、多くの事業者が大打撃を被りました。その中でも、ホテル業界は、消費者の巣ごもりと東京オリンピックの延期によって不振を極めています。本来、東京オリンピックは2020年7月24日~8月9日の日程で開催される予定でしたが、1年延期されたために同時期の宿泊予約が軒並みキャンセルになりました。オリンピックの延期が決まってから一気に客室が供給されたため、本来ならハイシーズンのはずの8月前半からお盆にかけての都内ホテルの宿泊料金は、例年に比べて信じられないほど値下がりしています。この状況は、クラブフロアを擁するような高級ホテルも例外ではありません。どうせならば、「クラブフロア」に宿泊をクラブフロアとは、五つ星の高級ホテルの特別階に存在するエリアで、出入りできるのはクラブフロアの宿泊者のみ。外来者はもちろん、通常フロアの宿泊客も出入りできません。詳細は第23回 ホテルの「クラブフロア」を使ってみよう!を参照いただきたいのですが、クラブフロアの宿泊には下記のような特典が含まれることが多いです。クラブラウンジを利用できるジムやプールが無料になるクラブラウンジでチェックインやチェックアウトができる駐車場が無料になるクラブフロア内にあるクラブラウンジでは、各種おつまみや軽食、そして夕方以降にはアルコールを無料で楽しめます。本稿執筆時(2020年6月)では、新型コロナウイルス感染症の影響でおつまみや軽食の提供が中止され、クラブラウンジのサービスが縮小されているホテルもあります。しかし、流行が終息に向かえば、全面的に再開されていくことでしょう。お盆時期の都心ホテルは穴場!私がクラブフロアを頻回に利用したのは2008~2009年でした。この時期はリーマンショック後で景気が冷え切っており、格安でクラブフロアに宿泊することができました。都内をはじめ日本全国のいろいろなホテルのクラブフロアに宿泊したことは非常に良い思い出になりました。無料でプールやジムを利用できたり、1日5回のフードプレゼンテーションがあったり。ホスピタリティの高さも格別です。このような特典があるにもかかわらず、当時は1泊3万円台から宿泊できるホテルがたくさんありました。しかし、2013年からの好景気でクラブフロアの宿泊料金が高騰したためお得感がなくなり、しばらく足が遠のいていました。しかし、今回のコロナ禍のために、クラブフロアの宿泊料金は再び低下しています。普段から、都心ホテルのクラブフロアは、ゴールデンウイーク、お盆、年末年始などの時期でもリゾートホテルほどに宿泊料金が高くなりません。これに加えて今年は東京オリンピックの延期も重なり、クラブフロアが投げ売りされている状況なのです。お子さんのいる方は夏休み短縮に注意! 「お盆の時期に1泊3万円台で都内のクラブフロアに宿泊できる!」そう言うと、思わず旅行サイトで予約ボタンをクリックしそうになる方も多いことでしょう。しかし、ちょっと待ってください! 予約の際には家族の予定をきっちり確認する必要があります。「何言ってんの、お盆の時期だから大丈夫」と思うのは早計です。今年は、小学生から高校生まで、学校の夏休みが短縮されるケースが多いからです。周知のように5月も臨時休校となった地域が多いですが、臨時休校した学校では夏休みを返上して授業が行われる可能性が高いです。せっかくお盆の時期にクラブフロアを予約しても、子供の夏休みがなくなっては家族での利用は難しいですから…。不況時こそ、少しのぜいたくを楽しもう注意点はあるものの、お子さんがいない方などは、ぜひ夏季休暇にクラブフロアでの宿泊を検討してみてください。不況時にはみんなが縮こまってしまい、ますます世の中の雰囲気が悪くなります。この数ヵ月、職場でコロナの患者さんを受け入れ、大変な思いをされた方もいるでしょう。また、コロナ余波の患者減で収入面での打撃を受けた方も多いかと思います。それでも、医師には世間一般よりは余裕のある方が多いですし、大変だった自分をねぎらってまた頑張るためにも、少しのぜいたくとリフレッシュは大切です。世の中を助けるためにも、ちょっとしたぜいたくを格安で楽しみましょう。

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第14回 コロナ患者のカルテ不正閲覧、鳥取でなぜ起きた?

感染者が少な過ぎても神経を使う世知辛い世の中にこんにちは。医療ジャーナリストの萬田 桃です。医師や医療機関に起こった、あるいは医師や医療機関が起こした事件や、医療現場のフシギな出来事などについて、あれやこれや書いていきたいと思います。東京の新型コロナウイルス感染症患者の数がなかなか減っていきません。地方のみならず、隣接する埼玉県の知事ですら、「都内で飲んでくるな」と言い出す始末。未だ感染者が出ていない岩手県の飲食店の中には「県外者お断り」の貼り紙があるところもあるそうです。感染者が多過ぎても大変ですが、少な過ぎても神経を使う世知辛い世の中になってきたようで…。さて、今回気になったのは、1ヵ月ほど前に報じられた、鳥取県立中央病院で職員による患者カルテの不適切な閲覧が起きていた、というニュースです。6月10日の山陽新聞朝刊によれば、鳥取県立中央病院は6月9日に記者会見を開き、県内で初めて新型コロナウイルスに感染した同市の60代男性の電子カルテを、治療に関係のない職員27人が閲覧していたと発表した、とのことです。病院の説明では、電子カルテは約900人の職員が見られるようになっており、内規で正当な理由なく閲覧することを禁じていましたが、4月10日~14日に男性のカルテを見た206人のうち、看護師22人、検査技師1人、医療秘書4人を業務外の不当な閲覧と認定したそうです。また、2人目の入院患者となったNHK鳥取放送局職員の20代男性のカルテも、入院していた4月18日~5月25日に127人が閲覧し、うち看護師3人と医療秘書2人は不当なアクセスだったと判断しています。同病院は4月14日、最初の患者の時点で200人近くがカルテを見ていることを把握、業務外での閲覧をしないよう注意喚起はしたもののその後6月まで閲覧状況をきちんと調べていなかった、とのことです。なお、閲覧していた職員は、病院の聞き取りに対し「病状が気になった」「院内感染が不安だった」と話したそうです。廣岡 保明院長は会見で「カルテを見ても院内感染が起きているかは分からず、不適切だ。興味本位ととられても仕方がない」と断じています。同じような事件が隣県、島根でもこのニュースを聞いて、同じような事件が数年前にあったことを思い出しました。それは2018年11月に島根大学医学部附属病院で起きました。出雲市で発生した殺人事件の被害者が搬送された際に、医師ら職員による電子カルテの不適切な閲覧記録が確認された、というものです。このとき、電子カルテへアクセスしたのは312人、同病院は記者会見で「診療・業務に関連したものではない者が含まれている」との見解を発表しました。鳥取県、島根県という日本海側の病院で同種の事件が発覚しているのは果たして偶然でしょうか。人口が少なく、人と人とのつながりが強い分、病院職員でありながら自らの興味が前面に出てしまったのかもしれません。さらに、「興味本位の閲覧」が出来てしまうセキュリティの甘いシステムと、電子カルテは究極の個人情報を扱っているのだという意識、言い換えれば職業倫理の欠如も原因に挙げられるでしょう。島根大学医学部附属病院は事件後、個人情報保護や職業倫理、臨床倫理に関する研修を強化したと聞いています。また、電子カルテを改修し、アクセスした際に画面に「業務外」の閲覧に対して注意喚起するメッセージを表示させたり、カルテ閲覧数のモニタリングを始めたりした、とのことです。一方、今回のコロナ患者のカルテ閲覧が発覚した鳥取県立中央病院は6月19日、同病院のホームページに「当院における個人情報取扱の対策強化について」として、以下の5つの対策を講じると公表しました。1)全職員を対象に、個人情報に関する研修を行うこととしました。2)特定の患者のカルテを閲覧する際にパスワードが設定できるよう電子カルテシステムの改修を行うこととしました。3)特定の患者のカルテには個人情報を匿名化できるようにしました。4)電子カルテの全端末に個人情報の取扱に関する注意喚起を表示することとしました。5)「情報セキュリティ運用規程」(セキュリティポリシー)に「病院が個人情報を利用する場合の目的」を明記し、この目的以外は不適切な閲覧に当たることを定め、職員に周知することとしました。6)定期的に不適切なアクセス等がないかチェックを行うこととしました。これらの対策、今さら感はありますが、今回、事件が表沙汰になったことで、同病院の不正閲覧はさすがになくなるでしょう。不正閲覧には民事訴訟のリスクところで、病院職員によるカルテの不正閲覧については、個人情報保護法による罰則というより、民事訴訟になるリスクのほうが大きい、と言えます。2014年、宮城県の大崎市民病院で、同院で働いていた事務職員の家族のカルテを同僚らが業務外で閲覧したことが判明し、問題となりました。当時の報道によれば、患者は父親の家庭内暴力で保護入院していた事務職員の子どもらで、カルテを見なければわからない入院に至った経緯を上司が知っていたことをこの職員が不審に思い、発覚したとのことです。事務職員と子どもらは、プライバシーを侵害されたとし、同病院および派遣会社に対し計900万円の慰謝料を求めて提訴。2018年1月に和解が成立しています。電子カルテは患者情報の共有という意味で確かに便利ですが、こと患者の立場に立ってみれば、多くの医療スタッフに自分の情報を覗かれるというある種の気味の悪さがあります。特に、地方都市においては、基幹病院は地域の雇用を担う一大産業であり、住民の知り合いの誰かしらは病院で働いていたりするものです。いい医師、適切な診療科を紹介してもらえる、というメリットもあるかもしれませんが、逆に病院で働く知人に自分の病気のことは知られたくない、と心配する人も少なくないでしょう。県立病院、大学病院クラスの医療機関ですら起こったということは、カルテ不正閲覧は、日本の病院で結構、日常茶飯事に行われているのかもしれません。類似の事件が再び起こらないためにも、鳥取県立中央病院が示したような対策の徹底が、全国の病院で望まれます。

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米国・3人に1人が新型コロナ消毒方法を間違える/CDC

 新型コロナウイルス感染症(COVID-19)の流行以来、米国では洗剤や消毒薬曝露に関する毒物センターへの問い合わせが急激に増加している。そこで、米国疾病予防管理センター(CDC)COVID-19 Response TeamのRadhika Gharpure氏らが米国人の消毒薬の使用状況を調査した。その結果、洗剤や消毒薬の安全な準備・使用・保管に関する知識には個人差が見られ、回答者の約3分の1は「食品へ漂白剤を使用」「皮膚に家庭用洗浄剤や消毒薬を使用」「洗剤や消毒薬の吸入または摂取」など、新型コロナウイルス(SARS-CoV-2)感染を防ぐためには推奨できない方法をとっていたことが明らかになった。研究者らは、手指衛生や手で触れやすい場所の清掃や消毒など、家庭でのSARS-CoV-2感染予防のための根拠に基づく安全な清掃・消毒の実践法について、引き続き強調する必要があるとしている。2020年6月12日CDC・Morbidity and Mortality Weekly Report (MMWR)掲載の報告。 研究者らは2020年5月4日、調査企業のPorter Novelli Public Services と ENGINE Insights を介してパネル型のインターネット調査を実施。対象者は18歳以上の米国成人で、502人が回答した。調査は、対象者を性別、年齢、地域、人種/民族、および教育などの組み合わせで分類し、クォータサンプリングが行われた。アンケートの質問内容は、家庭用洗剤や消毒薬の使用に関連する一般的な知識、考えなどについて。 主な結果は以下のとおり。・回答者の年齢中央値は46歳(範囲:18~86歳)で、52%が女性だった。・回答者の人種は、非ヒスパニック系白人(63%)、ヒスパニック系(すべての人種、16%)、非ヒスパニック系黒人(12%)、多民族またはその他の人種/民族(8%)だった。また、居住エリアは南部(38%)、西部(24%)、中西部(21%)、北東部(18%)だった。・回答者は、洗浄液と消毒薬を安全に準備する方法について限られた知識しか持っておらず、漂白剤の希釈調製に室温の水のみを使用すると回答したのは23%、漂白剤と酢を混合してはいけないと理解していたのは35%、漂白剤をアンモニアと混合してはいけないと理解していたのは58%だった。・一方、保護具の使用に関する知識を持つ回答者は多く、64%は洗剤や消毒薬使用時の眼の保護の必要性を理解し、71%は洗剤などを使用する際に手袋の着用が推奨されると回答した。このほか、洗剤や消毒薬の使用後に手洗いが必要(68%)、洗剤や消毒薬使用時には適切な換気が必要(73%)と回答した。保管に関して、回答者の79%は洗剤と消毒薬は子供の手の届かないところに保管する必要があると答えた。・回答者のうち60%は、SARS-CoV-2感染防止の目的で、家の掃除や消毒の頻度が前月に比べて高かった。・回答者の39%は食品(果物や野菜など)に漂白剤を使用し、18%は手や皮膚に家庭用洗剤や消毒薬を使用していた。さらに、回答者の6%は家庭用洗剤や消毒薬の蒸気を吸入し、希釈した漂白剤溶液、石けん水、およびその他の洗浄剤や消毒薬溶液を摂取、またはうがいした者がそれぞれ4%いた。・回答者の25%は前月に1つ以上の健康への影響を報告し、洗浄剤または消毒薬の使用が原因であると考えられた。その内訳は、鼻や副鼻腔への刺激(11%)、皮膚への刺激(8%)、目の炎症(8%)、めまい・立ちくらみ・頭痛(8%)、胃のむかつきまたは吐き気(6%)、呼吸障害(6%)だった。・SARS-CoV-2関連の清掃および消毒情報について、「最も信頼できる情報源を求める際に誰に尋ねたか」を質問したところ、上位3つの回答はCDC(65%)、州または地方の保健機関(49%)、医師・看護師などの医療従事者(48%)だった。

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カリウムイオンを補足する非ポリマー型高K血症治療薬「ロケルマ懸濁用散分包5g/10g」【下平博士のDIノート】第53回

カリウムを便中に出す非ポリマーの高カリウム血症治療薬「ロケルマ懸濁用散分包5g/10g」今回は、高カリウム血症改善薬「ジルコニウムシクロケイ酸ナトリウム水和物(商品名:ロケルマ懸濁用散分包5g/10g、製造販売元:アストラゼネカ)」を紹介します。本剤は、体内に吸収されない非ポリマーの無機陽イオン交換化合物で、消化管内のカリウムイオンを選択的に捕捉して便中に排泄させることにより、血清カリウム値を低下させます。<効能・効果>本剤は高カリウム血症の適応で、2020年3月25日に承認され、2020年5月20日より発売されています。なお、本剤は効果発現が緩徐であるため、緊急の治療を要する高カリウム血症には使用できません。<用法・用量>通常、成人には開始用量として1回10gを水で懸濁して1日3回、2日間(血清カリウム値や患者の状態に応じて最長3日間まで)経口投与します。以後の維持量は1日1回5gですが、血清カリウム値や患者の状態に応じて1日1回15gを超えない範囲で適宜増減できます。なお、増量を行う場合は5gずつとし、1週間以上の間隔を空けます。血液透析施行中の場合は、初回から1回5gを水で懸濁して、非透析日に1日1回経口投与します。なお、最大透析間隔後の透析前の血清カリウム値や患者の状態に応じて、1日1回15gを超えない範囲で適宜増減します。<安全性>本剤承認の根拠となった主要な第III相試験(非透析患者を対象としたHARMONIZE Global試験、J-LTS試験および慢性血液透析患者を対象としたDIALIZE試験)において確認された主な副作用は、浮腫、体液貯留、全身性浮腫、末梢性浮腫、末梢腫脹、便秘(いずれも10%未満)などでした(承認時)。なお、重大な副作用として、低カリウム血症(11.5%)、うっ血性心不全(0.5%)が報告されています。<患者さんへの指導例>1.このお薬は、消化管内で吸収される前のカリウムを吸着し、便とともに排泄することで、血液中のカリウム値を低下させます。2.分包された薬剤を容器にすべて出してから、約45mL(大さじ3杯)の水と合わせて服用します。この薬は水に溶けないため、よくかき混ぜて、沈殿する前に飲んでください。飲んだ後に容器に薬が残っていたら、水を追加して再度かき混ぜてすべて服用してください。3.飲み忘れた場合は、1回飛ばして、次に飲む時間に1回分を飲んでください。絶対に2回分を一度に飲まないでください。4.いつもと違う手足のだるさ、力が抜ける感じ、筋肉のこわばり、呼吸のしにくさ、めまい、動悸などがある場合は、薬が効き過ぎている可能性があるため、すぐにご連絡ください。<Shimo's eyes>通常、カリウムは腎臓から排泄されて血中のカリウム値は一定の範囲に保たれますが、慢性腎臓病患者や透析患者では、腎機能の低下によりカリウム排泄が低下するため、高カリウム血症を発症しやすくなります。高カリウム血症に用いる既存のカリウム吸着薬としては、ポリスチレンスルホン酸ナトリウム製剤(商品名:ケイキサレート)およびポリスチレンスルホン酸カルシウム製剤(同:カリメート、アーガメイトゼリーなど)があり、いずれもポリマーで構成された陽イオン交換樹脂製剤です。既存薬には独特の味と舌触りがあり、投与量が多いことも相まって、患者さんが継続服用するのが困難な場合があります。飲みにくさを改善するために、ゼリー製剤やフレーバーが開発されているだけでなく、複数の医療機関から飲みやすさの工夫に関する研究結果も報告されています。また、ポリマー性吸着薬は水分によって膨張するため、便秘や腹痛、腹部膨満感などの懸念があります。本剤は国内初となる非ポリマー無機陽イオン交換化合物で、消化管内のカリウムイオンを選択的に捕捉して便中に排泄させます。無味無臭の白色粉末で、開始時は10gを1日3回経口投与であるものの、3日目からは通常5gを1日1回となり、服用量・回数共に比較的少ないため、アドヒアランスの向上が期待できます。本剤の相互作用については、胃内pHの上昇によって、アゾール系抗真菌薬、チロシンキナーゼ阻害薬などの溶解性低下が起きることがあるので、注意が必要です。生活指導としては、腎臓への負担を少しでも減らすために、カリウムを多く含む食品の過剰摂取に注意することや、茹でたり水にさらしたりするなどの調理方法の工夫を伝えましょう。参考1)PMDA 添付文書 ロケルマ懸濁用散分包5g/ロケルマ懸濁用散分包10g

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第15回 COVID-19でも顕在化か、ワクチン不信/血液脳関門の定説を覆す結果!?

COVID-19ワクチン接種予定の米国人はわずか2人に1人~ワクチン信用の底上げが必要1月20日に米国で初めて新型コロナウイルス(SARS-CoV-2)感染(COVID-19)が確認されるやいなや、反ワクチン活動家はすぐに腰を上げ、そんなウイルスは実在せず、ワクチンで稼ぐためのでっちあげだとのツイッターを投稿しはじめました1)。それから半年近くが過ぎ、世界の科学者たちはCOVID-19ワクチン開発に勤しみ、反ワクチン活動家からの大量の誤った情報は増加の一途を辿っています。そういった情報に惑わされることなく、COVID-19ワクチンを受け入れてもらうための土壌作りを今からはじめる必要があると健康情報の専門家は言っています。実際、今のままだと米国でのCOVID-19ワクチンの普及はあまり期待できそうにありません。最近の調査でCOVID-19ワクチンが使えるようになったら接種すると答えたのはわずかに2人に1人(49%)のみでした。5人に1人(20%)は接種しないと答え、約3~4人に1人(31%)は決めかねていると答えました。そのような調査結果を背景にして、アメリカ疾病管理センター(CDC)はワクチンの信用底上げに取り組むことを計画しています。ワクチン不信は米国に限った問題ではなく、世界の健康機関もワクチンに反対する人々を翻意させるためのあの手この手の取り組みをしています。世界保健機関(WHO)もそれを承知であり、2019年にはワクチン拒否を最も心配な10の公衆衛生問題の1つに数えています。ワクチン不信を取り除くためには、反ワクチン活動家も使うツイッター等のソーシャルメディアを駆使したデジタル世界での取り組みも必要でしょうが、電話でのワクチン接種案内等の血の通った地道な働きかけがより有効かもしれないとノースカロライナ大学の行動科学者Noel Brewer氏はScienceに話しています。また、公衆衛生機関はさまざまな人の輪のリーダーと話して意思疎通をはかり、ワクチンを医療機関に来てもらって接種するのではなく職場や店舗に自ら出向いていって接種することも検討すべきだろうとジョンズホプキンス大学の医学人類学者Monica Schoch-Spana氏は言っています。定説に反し、老化するほど血液脳関門はタンパク質を通し難くなる~若い脳ほど取り込みが旺盛血液脳関門(BBB)は老化につれてより通過しやすくなるとこれまで考えられていましたが、どうやらそうとも限らないようで、若い健康なマウスの脳は血液中のタンパク質を思ったより多く受け入れており、老化は脳に入る血漿タンパク質をむしろ減らすと分かりました2,3)。今回の研究では、マウスの生来の血漿中タンパク質一揃いに印を付けてその行き先を追跡しました。その結果、若いマウスの脳にはこれまでの想定以上の量の血漿タンパク質が移行しました。それらのタンパク質は神経回路とおそらく相互作用しており、全身のタンパク質の有り様は行動や情緒などの神経機能を変化させるようです。今回のような生来のタンパク質ではない、作り物の標識分子を用いたかつての実験では、老化につれてBBBは通過しやすくなることが示されていましたが、生来のタンパク質の動向を追った今回の研究では逆に老化マウスの脳は血漿タンパク質を受け入れ難くなっていました。老化した脳にタンパク質が入り難いことに寄与するBBB経細胞輸送の変化も、今回の研究では把握されています。血液中のタンパク質がBBBの内皮細胞を横断して脳に入る経路は、目当てのタンパク質を取り込む受容体が携わる経細胞輸送が若い頃には優勢ですが、老化すると受容体の媒介がめっきり減って受容体を介さないやみくもな経細胞輸送が優勢になります。ゆえに老化すると脳に入り込むタンパク質はより雑多になり、老化した脳は目当てのタンパク質を若い頃のようにはおそらく受け取れなくなります。過去の作り物の分子を用いた実験ではおそらくやみくもな経細胞輸送のみが測定されていたため、若い脳への血漿タンパク質移行量が過少になっていたようです。若い脳で優勢と今回の研究で判明した受容体媒介経細胞輸送は脳への治療薬投与に利用されています。たとえば米国サンフランシスコ拠点のバイオテック企業Denali Therapeutics社はBBBのトランスフェリン受容体に運ばれて脳に届く薬DNL310を開発しており、ハンター症候群小児対象の第1/2相試験(NCT04251026)が間もなく始まる予定です4)。ALPLというタンパク質を阻害するとトランスフェリン受容体を介した経細胞輸送が向上しうることが今回の研究で判明しており、ALPL阻害剤とDNL310の併用は一層効果的かもしれません。また、ALPLは老齢マウスの脳ほど発現が多く、ALPL阻害は高齢者脳へのトランスフェリン受容体を介した治療薬運搬にとりわけ役立ちそうです。参考1)Just 50% of Americans plan to get a COVID-19 vaccine. Here’s how to win over the rest / Science 2)Unexpected amount of blood-borne protein enters the young brain / Nature3)Andrew C Yang,et al. Nature.2020 Jul 1. [Epub ahead of print]4) Denali Therapeutics Announces Publication of Two New Papers Describing Its Blood-Brain Barrier Delivery Technology in Science Translational Medicine / GlobeNewswire

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「コロナ疲れ」が単なる疲労で済まされない理由

 コロナ禍において、日本でも「コロナ不安」「コロナ疲れ」という言葉がメディアやSNS上で散見される。現在、米国では国民の約半数がこの状況下でメンタルヘルスに支障をきたし、ワシントンポスト紙の調査によれば、新型コロナウイルス感染症(COVID-19)流行拡大によるストレスレベルは2009年のリーマン・ショック時よりも高くなっているー。2020年6月18日、2020年度第1回メディアセミナーがWeb開催され、堀江 重郎氏(順天堂大学大学院医学系研究科泌尿器外科学教授/日本抗加齢医学会 理事長)が「Stay Homeのアンチエイジング」と題し、コロナ疲れがDNAレベルにもたらす影響やその対策法を語った(主催:日本抗加齢医学会)。コロナ疲れの回避策として心のアンチエイジング 「コロナ疲れ」とは、COVID-19というストレッサー(脅威)に対して心理的な闘争・逃走反応が続くことで、次第にネガティブ感情が増幅して生じる状態である。堀江氏はコロナ疲れの原因の1つに在宅勤務(テレワーク)を挙げ、「『3密』(密閉、密集、密接)を回避した新しい生活様式を遂行するうえで推奨されているが、テレワークの増加に伴い、プライベートと仕事の空間が混在し、長時間労働になることでワーク・ライフ・バランスに悪影響を及ぼすことが研究報告されている1)」と問題点を指摘した。この研究結果によると、ワーク・ライフ・バランスが崩壊することで、燃え尽き症候群になりやすく、仕事や人生への満足感が減ることが明らかになっていることから、コロナ疲れの回避策として「心のアンチエイジングが重要」と同氏は述べた。 一般的なアンチエイジング対策には、加齢に伴い増加する酸化ストレスをいかに抑制させるかが鍵となるが、心のアンチエイジングを保つための有用な方法として、同氏はセルフ・コンパッションを推奨。セルフ・コンパッションとは、「あらゆる人の幸せを願う」「あらゆる人の苦しみがなくなることを願う」「あらゆる人の幸せを喜ぶ」「偏りのない平静で落ち着いた心」という、ダライ・ラマ14世の教えである。これにより、他人のために何かをしようとする前に自分自身を労ろうという考え(自分への優しさ、共通の人間性の認識、マインドフルネス)を意識することで、幸福感や打たれ強さ、つながり感が増幅し、ストレス・うつ・不安になりにくい体質が形成されることが明らかになってきている。セルフ・コンパッションの効用をまとめると、1)幸福感を高める、2)ストレスを減少させる、3)レジリエンス(回復力、弾性)が高い、4)自己改善のモチベーションが高く自分らしい人生を送れる、などがある。近年、セルフ・コンパッションの概念を持つ人はテロメアが長いことも報告されており、抗加齢医学の研究でも重要な役割を果たすとされている。「コロナ疲れ」だけで済ませてはいけない理由 遺伝子の老化度を示すテロメアの長さはセルフ・コンパッションにより保たれる。その一方、コロナ疲れのような心理的ストレスの影響を大きく受けている人ほどテロメアは短縮し、動脈硬化や心臓病の発症リスクが高くなる。過去に性差を比較した研究2)では、男性のほうが女性よりも早くテロメアが短くなることも報告されている。これらを踏まえ、テレワークをする男性が、寿命延伸やテロメアの長さを死守するため「コロナ疲れ」を単なる「疲れ」で済ますのは、リスクが大きいのかもしれない。 最後に同氏は「テレワークの増加により中年期以降のうつの増加も懸念される。酸化ストレスが免疫を抑制し、心理的ストレスがそれを助長することから、自宅でもハツラツと過ごすために、まずは自分自身をいたわるセルフ・コンパッションを学んでほしい」と締めくくった。

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