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妊娠糖尿病、インスリン使用で周産期合併症が増加/BMJ

 妊娠糖尿病の妊婦は正常血糖値妊婦と比較して、インスリンを使用していない場合は、帝王切開による分娩や早産児・巨大児が多く、インスリンを使用している場合は、母親のアウトカムに差はないものの、新生児の在胎不当過大や黄疸、呼吸窮迫症候群などの周産期合併症の割合が有意に高いことが、中国・中南大学のWenrui Ye氏らの調査で示された。研究の成果は、BMJ誌2022年5月25日号で報告された。妊娠糖尿病と妊娠有害アウトカムの関連をメタ解析で評価 研究グループは、妊娠糖尿病と妊娠有害アウトカムとの関連を、最小限の交絡因子を調整したうえで評価する目的で、系統的レビューとメタ解析を行った(中国国家自然科学基金などの助成を受けた)。 1990年1月1日~2021年11月1日の期間に、医学データベース(Web of Science、PubMed、Medline、Cochrane Database of Systematic Reviews)に登録された文献が検索された。 対象は、非妊娠糖尿病(対照群)と妊娠糖尿病(曝露群)が厳格に定義され、妊娠糖尿病と妊娠のさまざまな有害アウトカムの明確な診断基準を有するコホート研究および臨床試験の対照群とした。 これらの基準を満たした研究が、インスリンの使用状況に基づき次の3つのサブグループに分けられた。(1)インスリン非使用(疾患の経過中にインスリンを使用したことがない)、(2)インスリン使用(個別の割合で、妊婦がインスリン治療を受けている)、(3)インスリン使用の報告がない。 妊娠糖尿病や妊娠有害アウトカムに影響を及ぼす可能性のある因子(国の発展状況[先進国、開発途上国]、バイアスのリスク[低、中、高]、診断基準[WHO〔1999年版〕、Carpenter-Coustan基準、国際糖尿病・妊娠学会〔IADPSG〕、その他]、スクリーニング法[universal one step、universal glucose challenge test、リスク因子に基づく選択的スクリーニング])について、事前に計画されたサブグループ解析が行われた。 インスリンの投与を受けた患者の割合に基づきメタ回帰モデルが適用された。器械分娩や肩甲難産などには差がない 156件(インスリン非使用35件[22.4%]、インスリン使用63件[40.4%]、報告なし58件[37.2%])の研究に参加した750万6,061例の妊婦が解析に含まれた。133件(85.3%)が母親のアウトカムを、151件(96.8%)は新生児のアウトカムを報告していた。 アジアの研究が39.5%、欧州が25.5%、北米は15.4%で、84件(53.8%)が先進国で行われた研究であった。Newcastle-Ottawa尺度によるバイアスのリスクは、50件(32.1%)が低または中、106件(67.9%)は高だった。 インスリン非使用研究では、交絡因子を調整すると、非妊娠糖尿病妊婦に比べ妊娠糖尿病の妊婦で有意にオッズ比(OR)が高かったのは、次の5つの項目であった。母親のアウトカムでは、帝王切開による分娩(OR:1.16、95%信頼区間[CI]:1.03~1.32)、新生児のアウトカムでは、早産児(在胎期間<37週)(1.51、1.26~1.80)、分娩から1分後のApgarスコア低値(<7点)(1.43、1.01~2.03)、巨大児(出生時体重≧4,000g)(1.70、1.23~2.36)、在胎不当過大児(出生時体重が在胎期間の標準の90パーセンタイル以上)(1.57、1.25~1.97)。 また、インスリン使用研究では、交絡因子を調整すると、妊娠糖尿病の女性で有意にORが高かったのは次の4項目で、いずれも新生児のアウトカムであった。在胎不当過大児(OR:1.61、95%CI:1.09~2.37)、呼吸窮迫症候群(1.57、1.19~2.08)、黄疸(1.28、1.02~1.62)、新生児集中治療室入室(2.29、1.59~3.31)。 一方、器械分娩、肩甲難産、分娩後出血、死産、新生児死亡、分娩から5分後のApgarスコア低値、低出生時体重、在胎不当過小児については、交絡因子を調整しても、妊娠糖尿病の有無で明確な差は認められなかった。 サブグループ解析では、先進国よりも開発途上国において、妊娠糖尿病妊婦で巨大児が多く(インスリン使用研究のp<0.001、インスリン非使用研究のp=0.001)、インスリン使用研究ではBMIで調整すると巨大児(p=0.02)と在胎不当過大児(p<0.001)が有意に多かった。また、インスリン使用の報告がなかった研究では、選択的スクリーニングを受けた妊婦において、妊娠糖尿病妊婦で帝王切開による分娩(p<0.001)と新生児集中治療室入室(p<0.001)が有意に多くみられた。 著者は、「これらの知見は、妊娠糖尿病に関連する妊娠有害アウトカムの、より包括的な理解に寄与すると考えられる。今後の研究では、より完全な予後因子で調整することを常に心がける必要がある」としている。

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活性型ビタミンD3、2型DMの発症予防に無効か/BMJ

 活性型ビタミンD3製剤エルデカルシトールは、前糖尿病から2型糖尿病への発症予防効果は認められなかったものの、インスリン分泌が不十分な人に対する有益性を示唆する結果が得られた。産業医科大学病院の河原哲也氏らが、多施設共同無作為化二重盲検プラセボ対照比較試験「Diabetes Prevention with active Vitamin D study:DPVD試験」の結果を報告した。観察研究では、ビタミンD欠乏がインスリン抵抗性および将来的な糖尿病のリスク増加と関連することが示されている。一方、ビタミンD補充については、2型糖尿病予防を目的とした無作為化比較試験では一貫した結果は認められていないが、先行研究でビタミンD欠乏症を伴う前糖尿病者に対して有益であることが示唆されていた。BMJ誌2022年5月25日号掲載の報告。耐糖能異常からの2型糖尿病発症をエルデカルシトール群vs.プラセボ群で検討 研究グループは、2013年6月1日~2015年8月31日の期間に、国内32施設において30歳以上の耐糖能異常(75g経口ブドウ糖負荷試験で空腹時血糖値<126mg/dLおよび負荷後2時間値が140~199mg/dL、かつ糖化ヘモグロビン[HbA1c]<6.5%)患者1,256例を登録し、エルデカルシトール(0.75μgを1日1回経口投与)群またはプラセボ群に1対1の割合に無作為に割り付け、3年以上投与した。 主要評価項目は、2型糖尿病の発症で、事前に定めた基準(HbA1c≧6.5%、空腹時血糖値≧126mg/dL、負荷2時間後血糖値≧200mg/dL(11.1mmol/L)または随時血糖値≧200mg/dL)のうち少なくとも2つを満たす場合と定義した。 副次評価項目は、耐糖能異常から正常型への移行、およびベースラインの交絡因子(年齢、性別、高血圧の有無、BMI、糖尿病家族歴、HbA1c、空腹時血糖値、2時間血糖値、25(OH)D、HOMA-IR、およびインスリン分泌指数)で補正後の2型糖尿病発症に関するエルデカルシトール群のプラセボ群に対するハザード比(HR)であった。さらに骨密度、骨代謝/糖代謝マーカーについても評価した。2型糖尿病発症率、エルデカルシトール群12.5%、プラセボ群14.2%で有意差なし 1,256例の患者背景は、571例(45.5%)が女性、2型糖尿病家族歴ありが742例(59.1%)、平均年齢61.3歳、ベースラインの血清25(OH)D濃度は平均20.9ng/mL(52.2nmol/L)で、548例(43.6%)は20ng/mL(50nmol/L)未満であった。 追跡期間中央値2.9年において、2型糖尿病発症率はエルデカルシトール群で12.5%(79/630例)、プラセボ群で14.2%(89/626例)であった(HR:0.87、95%信頼区間[CI]:0.67~1.17、p=0.39)。 耐糖能異常から正常型への移行は、エルデカルシトール群で23.0%(145/630例)、プラセボ群で20.1%(126/626例)に認められた(HR:1.15、95%CI:0.93~1.41、p=0.21)。多変量分数多項式Cox回帰分析による交絡因子補正後の2型糖尿病発症に関するHRは0.69(95%CI:0.51~0.95、p=0.020)で、エルデカルシトールは2型糖尿病発症を抑制し、とくに基礎インスリン分泌量が少ない患者において有益であることが示唆された(HR:0.41、95%CI:0.23~0.71、p=0.001)。 また、追跡期間中、エルデカルシトール群ではプラセボ群と比較して、腰椎と大腿骨頸部の骨密度および血清オステオカルシン濃度が有意に上昇した(すべてのp<0.001)。 重篤な有害事象は、両群で有意差は認められなかった。

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nAMD/DME治療薬、バビースモ発売/中外製薬

 中外製薬株式会社は5月25日付のプレスリリースで、中心窩下脈絡膜新生血管を伴う加齢黄斑変性(nAMD)および糖尿病黄斑浮腫(DME)の治療薬であるバビースモ硝子体内注射液120mg/mL(一般名:ファリシマブ[遺伝子組換え])の販売を開始したことを発表した。 バビースモは、眼科領域における初のバイスペシフィック抗体であり、血管内皮増殖因子-A(VEGF-A)およびアンジオポエチン-2(Ang-2)の働きを阻害することでnAMD、DMEに関与する2つの疾患経路を阻害し、視力を改善する作用を持つ。 本剤の承認根拠となった、4本のグローバル第III相臨床試験(DME:YOSEMITE試験およびRHINE試験、nAMD:TENAYA試験およびLUCERNE試験)において、バビースモは主要評価項目である視力の改善を示すとともに、両疾患に対する眼内注射剤の第III相臨床試験で初めて最長16週間隔の持続性を達成した。 代表取締役社長 CEOの奥田 修氏は、「当社が初めて本格参入する眼科領域において、領域初のバイスペシフィック抗体バビースモを発売できることを心よりうれしく思う。バビースモの適応症である2つの疾患は、適切な治療がなされない場合、視力の大幅な低下や失明のリスクを伴う。こうした疾患に対しバビースモをお役立ていただけるよう、医療専門家への情報提供活動とともに、疾患啓発ウェブサイト等を通じた患者さん・ケアギバーのサポートにも注力していく」と述べた。 なお、バビースモに関する同社の情報提供活動では、新たに設置する眼科専門MRとエリア担当MRが連携して、より専門性の高い情報へのニーズに対応していく予定としている。

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オゼンピック皮下注の複数回使用製剤、新発売/ノボ ノルディスク ファーマ

 ノボ ノルディスク ファーマは、2022年5月25日、2型糖尿病を効能・効果とする週1回投与のGLP-1アナログ製剤「オゼンピック皮下注2mg」の販売を開始した。オゼンピック皮下注2mgは、従来からインスリン製剤等に使用されているペン型注入器「フレックスタッチ」と同様の構造であり、投与に際してはA型専用注射針(30~34G)を使用する。オゼンピック皮下注2mgは用量調節・複数回使用が可能 オゼンピック皮下注については、2020年6月29日に単回投与デバイスを用いた同0.25mg SD、同0.5mg SDおよび同1.0mg SDが発売されている。しかし、2022年3月中旬頃から日本において出荷停止となっていた。オゼンピック皮下注 SDが出荷停止となったことに伴い、医療機関では代替薬への切り替えが行われていた。このような中、用量調節が可能な複数回使用製剤であるオゼンピック皮下注2mgが発売されることとなった。 なお、同社はオゼンピック皮下注 SDについて「当面は出荷停止が続く見込みだが、日本での供給再開を目指している」と述べている。オゼンピック皮下注2mg製品概要・製品名:オゼンピック皮下注2mg・一般名:セマグルチド(遺伝子組換え)・効能・効果:2型糖尿病・用法・用量:通常、成人には、セマグルチド(遺伝子組換え)として週1回0.5mgを維持用量とし、皮下注射する。ただし、週1回0.25mgから開始し、4週間投与した後、週1回0.5mgに増量する。なお、患者の状態に応じて適宜増減するが、週1回0.5mgを4週間以上投与しても効果不十分な場合には、週1回1.0mgまで増量することができる。・適用上の注意:本剤はJIS T 3226-2に準拠したA型専用注射針を用いて使用すること・包装 1筒1.5mL:1本・承認年月日:2018年3月23日・薬価基準収載日:2022年5月25日・薬価:オゼンピック皮下注2mg:11,008円・発売日:2022年5月25日・製造販売元:ノボ ノルディスク ファーマ株式会社

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エスプレッソコーヒー、男性が飲むとコレステロール値が上がる?

 「コーヒーは身体に良い」という論文報告が散見されるも、コーヒー豆に含まれるジテルペン(とくにカフェストール、カーウェオール)が血清コレステロールを上昇させてしまうという報告1)もある。だが、このジテルペンの影響はコーヒーの抽出方法によって異なるようだ。そこで今回、ノルウェー・トロムソ大学のAsne Lirhus Svatun氏らがコーヒーの抽出方法、なかでも研究数の少ないエスプレッソコーヒー(短時間で高圧抽出)と血清総コレステロール(S-TC:serum cholesterol)との関連性を調査した。その結果、エスプレッソコーヒーの消費量は、血清総コレステロールの増加と関連しており、女性と比較して男性のほうが有意に強い関連が示された。また、ボイルド(サイフォン式など)/プランジャーコーヒー(フレンチプレスなど)を摂取したの場合は男女ともに血清総コレステロールが増加し以前の研究で示された結果と同様だったが、フィルターろ過コーヒーに至っては女性で血清総コレステロールがわずかに増加したことが示された。Open Heart誌4月号掲載の報告。エスプレッソコーヒーを毎日カップ3~5杯飲む人は血清総コレステロール増 研究者らは、ノルウェー北部で行われた横断研究であるトロムソ研究第7回調査(n=2万1,083、40歳以上[平均年齢:56.4歳])の人口データを使用。多変量線形回帰モデルを使用して、エスプレッソコーヒーの消費量と血清総コレステロールの関連を調査し、性別とコーヒー消費量の関連などを評価した。質問ではコーヒーの抽出方法を「フィルターコーヒー」「ボイルド/フレンチプランジャーコーヒー(粗挽きコーヒー)」「インスタントコーヒー」「エスプレッソベースのコーヒー(コーヒーマシン、カプセルなど)」の4種類とし、1日の消費量に応じて、対象者をカップ0杯、1〜2杯、3〜5杯、6杯以上にグループ分けした。 エスプレッソコーヒーと血清総コレステロールとの関連性を調査した主な結果は以下のとおり。・エスプレッソコーヒーの摂取量が1日あたりカップ0杯の参加者と比較して、毎日カップ3~5杯飲む人は、血清総コレステロール増加と有意に関連しており、女性で0.09mmol/L(95%信頼区間[CI]:0.01~0.17)、男性で0.16mmol/L(95%CI:0.07~0.24)だった。 ・ボイルド/プランジャーコーヒーについても1日あたりカップ0杯の人と比較して、毎日カップ6杯以上飲んだ場合は、血清総コレステロールが増加し、女性で0.30mmol/L(95%CI:0.13~0.48)、男性で0.23mmol/L(95%CI:0.08~0.38)だった。・フィルターろ過のコーヒーを毎日カップ6杯以上の飲んだ場合の血清総コレステロールは、女性で0.11mmol/L(95%CI:0.03~0.19)高くなるのに対し、男性では関連性がみられなかった。・インスタントコーヒーの消費量に有意な線形傾向があったが、飲んでいない参加者を除外した場合、用量反応関係は示されなかった。・ボイルドまたはプランジャーコーヒーを除くすべてのコーヒー抽出型で性差が有意にみられた。 なお、エスプレッソコーヒーのようにノンフィルターコーヒーではLDLコレステロールを含む成分なども取り除かれていないことから、1日あたりカップ9杯以上を摂取すると心血管疾患(CVD)による死亡リスクが最大25%増加すると、他研究2)より報告されている。

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甲状腺クリーゼ〔Thyrotoxic storm or crisis〕

1 疾患概要■ 概念・定義甲状腺クリーゼ(Thyrotoxic storm or crisis)とは、甲状腺中毒症の原因となる未治療ないしコントロール不良の甲状腺基礎疾患が存在し、これに何らかの強いストレスが加わったときに、甲状腺ホルモン作用過剰に対する生体の代償機構の破綻により複数臓器が機能不全に陥った結果、生命の危機に直面した緊急治療を要する病態をいう。■ 疫学甲状腺クリーゼはまれな病態で、入院した甲状腺中毒症の1~2%を超えないと言われている。日本甲状腺学会と日本内分泌学会の共同委員会(赤水班)による2009年の全国調査では、わが国での発生率は入院患者10万人あたり0.2人であり、推計患者数は確実例が約150人/年、疑い例が約40人/年と算出された。致死率は約11%である。■ 病因病因は不明であり、クリーゼの発症は必ずしも甲状腺ホルモンの血中濃度によらない。急激な甲状腺ホルモンの放出や、交感神経系の活性化、重症疾患でみられる甲状腺ホルモンの感受性上昇や蛋白結合能の低下などの関与が考えられている。甲状腺疾患としてバセドウ病が最も頻度が高いが、機能性甲状腺腫瘍、アイソトープ治療、甲状腺手術、破壊性甲状腺疾患などでも報告されている。甲状腺外の誘因としては、感染症、外傷、妊娠・分娩、副腎皮質機能不全、糖尿病ケトアシドーシス、虚血性心疾患、ヨード系造影剤の投与、強いストレスなど多岐にわたる。■ 症状甲状腺クリーゼでは複数臓器の機能不全が起きるが、代表的な症状は以下の通りである。1)甲状腺腫バセドウ病ではびまん性腫大を示すことが多く、結節性の甲状腺機能亢進症では、結節を触知することがある。亜急性甲状腺炎では局所の圧痛を示す。2)中枢神経症状甲状腺クリーゼの中心的な症状であり、意識障害、不穏、譫妄、精神異常、傾眠、痙攣、昏睡がある。3)発熱基礎代謝亢進にともない、発熱(38℃以上)とともに多汗を生じる。4)循環器症状高度の頻脈、心房細動、心不全症状、ショックを起こすことがある。5)消化器症状腸管蠕動運動亢進による下痢、嘔気・嘔吐、肝障害に伴う黄疸を示すことがある。また、肝機能不全による肝障害・黄疸を呈することがある。■ 予後現在においても致死率は高く、10~75%と言われていたが、わが国での全国疫学調査の結果では致死率10%以上であった。死因は、多臓器不全、腎不全、呼吸不全などで、また不可逆的な神経学的障害が残存することもある。予後規定因子として、ショック、播種性血管内凝固症候群(DIC)、多臓器不全があり、入院時に重症度に応じて予後が不良となる。2 診断 (検査・鑑別診断も含む)甲状腺クリーゼの診断には、古くからのBurch-Wartofskyの診断スコアが使用されてきたが、必ずしも科学的エビデンスに裏付けされたものではなかった。より一層科学的根拠に基づく診断基準を求めて、わが国では、赤水らによる甲状腺クリーゼの診断基準が策定された。必須項目は甲状腺中毒症の存在であり、(1)中枢神経症状、(2)発熱、(3)頻脈、(4)心不全症状、(5)消化器症状の5項目が主要な症状・症候として選択された(表1)。表1 甲状腺クリーゼの診断基準画像を拡大する甲状腺中毒症の存在下に、「中枢神経症状+他の症状項目が1つ以上あるもの」か、「中枢神経症状以外の症状項目が3つ以上あるもの」を、甲状腺クリーゼ確実例とする。中枢神経症状以外の症状項目2つ、または夜間・休日など甲状腺中毒症が確認できない状況下で、甲状腺疾患の既往、眼球突出、甲状腺腫の存在があり、確実例の条件を示す者を疑い例とする。3 治療 (治験中・研究中のものも含む)診断基準の確定の後、甲状腺クリーゼの予後改善を目指して、診療ガイドライン2017年版が作成された。甲状腺クリーゼと診断された場合、二次ABCDE評価(Airway, Breathing, Circulation, Dysfunction of central nervous system, and Exposure & environmental control)を行ない、Acute Physiologic Assessment and Chronic Health Evaluation(APACHE)IIスコアに基づき集中治療の要否を判断する。冷却・解熱剤の投与とともに抗甲状腺薬、無機ヨードならびに副腎皮質ステロイドを開始する(図)。また、APACHEIIスコア9以上では集中治療室(ICU)での管理が勧められる。図 甲状腺クリーゼ治療のアルゴリズム画像を拡大する甲状腺クリーゼに至った誘因の除去を行い、感染症などの合併に関しては個別に治療を行なう。中枢神経症状に対する治療は精神科救急医療ガイドラインなどに準じて行うが、器質的疾患(脳血管障害・髄膜炎・代謝異常・中毒など)がクリーゼの誘因となりうるので鑑別診断を必ず行う。心拍数150/分以上の洞性頻脈や頻拍性心房細動を認める場合、β1選択性短時間作動型β遮断薬やジギタリス製剤で心拍数を管理し、必要に応じて電気的除細動も考慮する(表2)。表2 甲状腺クリーゼの各々の病態に対する治療の概要画像を拡大するその他、うっ血性心不全、急性肝不全、播種性血管内凝固症候群(DIC)、急性腎不全、横紋筋融解症、成人型呼吸促拍症候群(ARDS)などがみられる場合があり、予後不良となるので、各々の病態に応じた集学的治療が必要とされる。甲状腺クリーゼにおける治療的血漿交換の絶対的適応は、急性肝不全合併例で、相対的適応はクリーゼに対する治療開始24~48時間後においてもコントロール不能の甲状腺中毒症である。APACHEIIスコアならびにSOFA(Sepsis-related Organ Failure Assessment)スコアが予後と関連する。4 今後の展望今回のガイドライン作成にあたり、国内の多くの施設に症例報告収集の支援をいただいたが、ガイドライン発行後、治療の方法ならびに生存率なども変化しているため、現在日本甲状腺学会により前向きの全国調査が行われている。5 主たる診療科内分泌・代謝内科※ 医療機関によって診療科目の区分は異なることがあります。6 参考になるサイト(公的助成情報、患者会情報など)診療、研究に関する情報日本内分泌学会 甲状腺クリーゼ(一般利用者向けのまとまった情報)難病情報センター 甲状腺中毒クリーゼ(一般利用者向けと医療従事者向けのまとまった情報)日本甲状腺学会 甲状腺クリーゼの診断基準(第2版)(医療従事者向けのまとまった情報)日本甲状腺学会 甲状腺クリーゼ診療ガイドライン2017年版Digest版(医療従事者向けのまとまった情報)1)Akamizu T, et al. Thyroid. 2012;22:661-679.2)Burch HB, et al. Endocrinol Metab Clin North Am. 1993;22:263-277.3)Isozaki O, et al. Clin Endocrinol(Oxf). 2016;84: 912-918.4)Satoh T, et al. Endocr J. 2016;63:1025-1064.5)日本甲状腺学会・日本内分泌学会. 甲状腺クリーゼガイドライン2017.南江堂,2017.公開履歴初回2022年5月26日

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新型コロナ感染者、糖尿病リスクが高まる

 COVID-19罹患後にさまざまな疾患にかかりやすくなる可能性が示唆されているが、それに糖尿病が加わる可能性がある。米国・VAセントルイス・ヘルスケアシステムのYan Xie氏らによるコホート研究の結果が、The Lancet Diabetes & Endocrinology誌2022年5月号に掲載された。 本研究では、米国退役軍人省の全国データベースを用いて、2020年3月1日~2021年9月30日にCOVID-19検査で陽性となり、その後30日間生存した群(COVID-19群)18万1,280例、同じ期間に登録した対照群(411万8,441例)、2018年3月1日~2019年9月30日に登録した過去対照群(428万6,911例)からコホートを構成した。どちらの対照群も、SARS-CoV-2感染は認められなかった。 全登録例は、試験参加前に糖尿病を発症しておらず、中央値352日(IQR:245~406)のフォローアップが行われた。事前に定義された逆確率重み付けを用いて、糖尿病の発症、血糖降下薬の使用、およびこの2つの転帰の複合を用いてリスクを推定した。リスクの指標として、12ヵ月後のハザード比(HR)と1,000人あたりの疾病負荷の2つを報告した。 主な結果は以下のとおり。・COVID-19群は対照群と比較して、糖尿病発症リスク(HR 1.40、 95% CI :1.36~1.44)および疾病負荷(13.46、 95% CI:12.11~14.84、12ヵ月の1,000人あたり)、および血糖降下薬使用のリスク(1.85、1.78~1.92 )および疾病負荷(12.35、11.36~13.38 )が増加した。・糖尿病発症または血糖降下薬使用の複合エンドポイントのリスクを推定する解析では、12ヵ月時点で1,000人あたり1.46(95%CI:1.43~1.50)のHRと18.03(95%CI:16.59~19.51)の疾病負荷だった。・急性期以降の転帰のリスクと負担は、COVID-19の急性期の重症度(患者が非入院か、入院か、集中治療室に入院したか)に応じて、段階的に増加した。・すべての結果は、過去対照群との比較においても一貫していた。 著者らは「COVID-19と糖尿病リスクとの関連を支えるメカニズムは完全には明らかにされていないが、SARS-CoV-2が膵臓でインスリンを産生する細胞に感染し複製することで、インスリンの産生および分泌が損なわれることが示唆されている。糖尿病は多面的なlong COVIDの構成要素として考慮されるべきで、COVID-19患者の急性期後のケア戦略と糖尿病のスクリーニングと管理を統合する必要がある」としている。

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第110回 高血圧治療用アプリの薬事承認取得で考えた、「デジタル薬」が効く人効かない人の微妙な線引き(後編)

日医・中川会長不出馬、政権と日医との対立構造も変化かこんにちは。医療ジャーナリストの萬田 桃です。医師や医療機関に起こった、あるいは医師や医療機関が起こした事件や、医療現場のフシギな出来事などについて、あれやこれや書いていきたいと思います。先週末、大きなニュースが飛び込んで来ました。日本医師会の中川 俊男会長が6月に予定される会長選に立候補しない意向を周囲に伝えたことがわかったのです。中川会長と日医については、本連載で幾度も取り上げて来ました。今年に入ってからも、「第107回 会長選前に日医で内紛勃発、リフィル処方箋導入で松原副会長が中川会長を批判」「第108回 『かかりつけ医』の制度化めぐり、日本医師会と財務省の攻防本格化」などで、2022年診療報酬改定を機に勃発した日医執行部内部での内紛や、財務省の力が増す中での日医の立ち位置の難しさなどについて書きました。中川会長は、中央社会保険医療協議会委員の頃から強面で、政策通を自認していました。もっとも医師の利益だけを重視する発言は昔から有名で、そのスタンスはコロナ禍となっても変わりませんでした。しかし、「第92回 改定率で面目保つも『リフィル処方』導入で財務省に“負け”た日医・中川会長」でも書いたように、リフィル処方を執行部の了解も得ずに飲んでしまったことが致命傷となりました。医師の利益よりも、権力にしがみつきたいという私欲が、日医執行部の面々をも呆れさせたのかもしれません。いったん飲んでしまってから、リフィル処方に反対する姿勢を見せてはいましたが、悪あがきのようにも映りました。結局、国民と政権からそっぽを向かれ、日医内部からもそっぽを向かれた格好です。“お山の大将”のまま日医会長になったものの、その“大将”ぶりを変えずリーダーシップを取り続けた結果、失脚してしまったというわけです。5月23日に開いた記者会見で不出馬を正式表明した中川会長は、「出馬しないことで日本医師会の分断を回避し、一致団結して夏の参院選に向かうことができるのであれば本望」と語ったとのことです。また、「強権的だったとの一部批判があった。反省している」とも述べたそうです。5月25日時点で会長選に出馬を表明しているのは日本医師会副会長の松原 謙二氏と日本医師会常任理事の松本 吉郎氏です。このうち優勢と言われる松本氏は前回会長選で敗れた横倉 義武氏(前日本医師会会長)の陣営の一員でした。仮に松本氏が新会長となり、政界ともパイプが太かった横倉氏の“路線”、“政策”を引き継ぐとしたら、政権と日医との対立構造にも少しは変化が出てくるかもしれません。DTxに対する素朴な疑問をさらに深掘りさて、先週の続きです。前回は、高血圧治療用の「CureApp HT 高血圧症治療補助アプリ」の製造販売承認(薬事承認)取得を機に盛り上がりを見せる「デジタル薬=DTx(Digital Therapeutics)」に対する素朴な疑問について書きました。今週はその疑問をもう少し深掘りしてみます。前回詳しく書いたように、「CureApp HT 高血圧症治療補助アプリ」の臨床試験では、主要評価項目であるABPM (24時間自由行動下血圧測定)による24時間のSBP(収縮期血圧)が、高血圧治療ガイドラインに準拠した生活習慣の修正に同アプリを併用した「介入群」と、同ガイドラインに準拠した生活習慣の修正を指導するのみの「対照群」を比較評価した結果、「介入群」の方が有意な改善を示した、とのことでした。もっとも、「有意な改善」とは言うものの、血圧の変化量の群間差は-2.4[-4.5〜-0.3]で、素人目には劇的というほどではありませんでした。「スマホアプリにうまく順応して素直に行動を変えられる人ならいいが、頑固でアプリのアドバイスにもなかなか従わない人に果たして効果があるのだろうか」という私の素朴な疑問に対し、DTxの開発に詳しい知人の記者は「行動変容を促すDTxは、アプリを使用するだけでなく、アプリの提案を基に患者自身が行動を起こす必要がある。通常の薬剤の“服用”よりもアドヒアランスのハードルがとても高く、臨床試験で目に見える効果を出すのが難しいと言われている」と教えてくれました。「なるほど」と思い、少し調べてみたのですが、DTxの臨床試験は、国内外でなかなか難しい状況にあることがわかってきました。大日本住友製薬は2型糖尿病管理指導用のアプリの開発を中止DTxの開発は国内外で活発化しています。対象となっている疾患領域も糖尿病、うつ病、不眠症、アルコール依存症とさまざまです。そんな中、開発に頓挫したケースもみられます。たとえば、大日本住友製薬は、日本で2型糖尿病患者を対象に第III相臨床試験を実施していたDTxの開発を2022年1月に中止しています。同DTxは、スタートアップのSave Medicalと共同開発していた2型糖尿病管理指導用のアプリです。食事や運動、体重といった生活習慣や服薬や血圧、血糖値の指標などをアプリで管理することで、患者の行動変容を促し、2型糖尿病患者の臨床的指標を改善することを目指していました。しかし、第III相臨床試験の結果、主要評価項目であるHbA1cのベースラインからの変化量が未達となり、開発は中止されました。デジタル流行りの昨今、デジタル治療の現状については、一般メディアも専門メディアも甘口の記事が多いですが、日経バイオテクは今年3月22日付の「あの『BlueStar』に学ぶ、デジタル治療の臨床開発の難しさ」というタイトルで、辛口の分析記事を掲載しています。その記事は大日本住友製薬のDTx開発断念について、「第3相のデータの詳細は明らかではないが、大日本住友製薬の幹部は、『被験者の組み入れ基準などが厳密にコントロールされていなかったことなどが課題かもしれない』と明かしており、被験者によって効果が認められた患者とそうでない患者がいた可能性がありそうだ」と書いています。臨床試験とは、良いデータを出すことが目的ではなく、その“薬”が効くかどうかを証明することが目的のはずです。しかし、ともすれば開発者は、良いデータを出すために恣意的に臨床試験をデザインすることがあります。DTxの場合であれば、対照群も含めて「アプリ治療に反応しやすい人」だけを選んでおけば、良好な結果を出しやすくなるはずです。ただ、そうした臨床試験の結果をもって「効く」と言ってしまっていいのか、難しい問題です。治験の被検者を厳格に選んでいたBlueStar先程の日経バイオテクの記事は、DTxの成功例として知られる米Welldoc社の糖尿病治療用アプリ「BlueStar」にも切り込んでいます。BlueStarとは、DTxの成功例として知られるWelldoc社の糖尿病治療用アプリのことです。米食品医薬品局(FDA)の認可を2010年8月に受けており、同社と提携したアステラス製薬が日本と一部アジア地域での共同開発と製品化を進めています。同記事によれば、2008年から行われたBlueStarの2型糖尿病患者に対する臨床試験では、標準治療群と、標準治療にアプリを上乗せした群で有意差が出た(HbA1c値は対照群では0.7%の低下に留まったが、標準治療にアプリと医師による意思決定支援を上乗せした群では1.9%低下)ものの、被検者登録の段階で2度にわたって患者の同意を取るよう医師に求めるという、極めて厳格なセレクションが行われていたとのことです。最初2,602例をスクリーニングの対象としたものの、最終的に2度の同意手続きに反応のあった163例が被験者として登録されたとのことです。同記事は「被験者登録の過程で、結果的にアプリの効果が得られやすい患者が登録されていた、という可能性も否定できない」と書いています。また、同記事は、カナダにおける多施設でのランダム化対照試験では有意差が示されなかった、とも書いています。なお、アステラス製薬はBlueStarの臨床試験を日本でまだ開始していません。CureAppは「降圧効果を十分に期待できると判断された患者を対象」にDTxのパイオニアであるBlueStarですら、相当厳格な対象患者絞り込みによって、有意差のある結果を出していたらしいという事実は、万人に効くようなDTxの開発は相当困難であることを示唆しています。逆に言えば、「こういう性格や行動パターンの人には効く」という明確な線引きが行われて、臨床試験にもそれが反映されていれば、「効能又は効果」にその旨が記載されることで、本当に効く人だけに処方されることになります。私の素朴な疑問もこれで解消です。ただ、現状、DTxの臨床試験の対象患者選びはある意味、ブラックボックス化しているようです。たとえば、PMDAが先日公開した「CureApp HT 高血圧症治療補助アプリ」の審議結果報告書1)によれば、このアプリの臨床試験の対象患者は「20歳以上65歳未満の降圧薬による内服治療を受けていないI度又はII度の本態性高血圧患者のうち、 食事・運動療法等の生活習慣の修正を行うことで降圧効果を十分に期待できると判断された患者を対象」と書かれていますが、「降圧効果を十分に期待できる」をどう判断したかについては書かれていません。なお、臨床試験の同意取得症例は946例で、うち登録例399例(治験治療実施例390例)、未登録例547例となっています。市場に出る前に効く人と効かない人の線引きを国はDTxをはじめとするプログラム医療機器(SaMD)の普及・定着に相当前のめりになっている印象です。2022年度診療報酬改定では、プログラム医療機器を使用した医学管理を行った場合に算定する「プログラム医療機器等医学管理加算」の項目が新設されました。また、3月30日のデジタル臨時行政調査会で、岸田 文雄総理大臣は医療や介護のデジタル化の推進策を取りまとめるよう規制改革推進会議に指示、同会議ではプログラム医療機器の承認審査の在り方も検討される予定です。先週、5月18日には、自民党の「医療・ヘルスケア産業の新時代を創る議員の会」(ヘルステック推進議員連盟、 田村憲久会長)がデジタルヘルス推進に向けた提言を取りまとめており、この中でもプログラム医療機器の重要性が強調され、 利活用に向けた環境整備を求めています。しかし、デジタルは万能ではありません。効果が微妙なDTxがどんどん市場に出ていっても、迷惑を被るのは患者です。「市販後調査できちんと評価」という声もあるようですが、むしろ市場に出る前に効く人と効かない人の線引きをきちんとすることの方が重要ではないでしょうか。鳴り物入りのDTxですが、医療費の無駄遣いにならないことを願うばかりです。参考1)CureApp HT 高血圧治療補助アプリ 審議結果報告書/PMDA

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リンパ節腫脹の鑑別、患者が話さない内容をしつこく聞こう!【Dr.山中の攻める!問診3step】第14回

第14回 リンパ節腫脹の鑑別、患者が話さない内容をしつこく聞こう!―Key Point―後頸部リンパ節腫脹では全身の感染症、悪性リンパ腫、頭頸部がん、菊池病を想起するEBウイルスによる伝染性単核球症では、眼瞼浮腫、頸部リンパ節腫脹、咽頭炎、肝機能障害、肝脾腫、倦怠感、頭痛が特徴である1)。Kissing diseaseと呼ばれるように唾液からの感染が原因となる。10~20代に多い症例:21歳 男性主訴)発熱、頸部腫瘤現病歴)5日前から37℃前半の発熱と咽頭痛あり。2日前から両側眼瞼の腫脹と両側頸部に腫瘤を触知することに気がついた。昨日から咽頭痛が悪化し、38℃台の発熱になったため、心配になり来院した。既往歴)なし薬剤歴)なし生活歴)飲酒:ビール500mL/毎日喫煙:10本/日(20歳~)職業:建設業身体所見)体温38.7℃、血圧142/78mmHg、心拍数98回/分、呼吸回数20回/分、意識:清明眼瞼:両側に浮腫あり口蓋扁桃:発赤腫大し白苔を認める頸部:両側の胸鎖乳突筋後方に径1~2cmのリンパ節を数個触知する。リンパ節は軟で圧痛あり腹部:平坦、軟、右肋骨弓下に肝臓を2cm、左肋骨弓下に脾臓を3cm触知する経過)血液検査:末梢血中の異型リンパ球増加あり。ASTとALTの上昇あり伝染性単核球症を考えEBウイルス抗体価を測定し、抗VCA-IgM抗体の上昇と抗VCA-IgG抗体および抗EBNA抗体の陰性を認めた新しいガールフレンドとの交際をしつこく聞いたがまったくないという。1ヵ月前に同僚たちと日本酒の回し飲みをしたとのことであった。無症状であるEBウイルス既感染者の90%は唾液にウイルスを排泄していると言われる1)NSAIDsの定期内服で症状は軽快した。脾臓破裂の可能性があるので、激しく体が接触するスポーツを1ヵ月間は避けるように指導した。◆今回おさえておくべき臨床背景はコチラ!伝染性単核球症はEBウイルスにより起こるアンピシリンの服用により皮疹が出現するサイトメガロウイルスによる伝染性単核球様症状では咽頭痛や頸部リンパ節腫脹を認めないことが多い。性的に活発な年代に多いHIVやトキソプラズマの急性感染、薬剤でも同様の症状が起こる菊池病は若年女性に好発し、頸部リンパ節腫脹、発熱、皮疹、体重減少、関節痛、肝脾腫、無菌性髄膜炎など多彩な臨床像を示す。SLEへ移行することがある【STEP1】患者の症状に関する理解不足を解消させよう【STEP2-1】症状を確認する急性発症か慢性発症かどの部位のリンパ節が腫れているか発熱、体重減少(体重の5%以上の減少)、盗汗(下着を変える必要があるほどの夜間の発汗)を伴っているか【STEP2-2】診察で詳細に確認するすべての表在リンパ節を触診する。2ヵ所以上の離れたリンパ節が腫れる全身性? 局所性?腫大したリンパ節の大きさと数を記載する圧痛があれば炎症性、圧痛がなければ悪性腫瘍の可能性が高まる炎症性では柔らかく、悪性リンパ腫では消しゴムの硬さ、癌では石のような硬さであることが多い可動性なら炎症性か悪性リンパ腫、可動性がなければ癌を示唆する肝腫大と脾腫の有無を触診で確認する直径3cm以上、硬い、可動性なし、鎖骨上窩リンパ節腫大、体重減少があれば重大な疾患の可能性がある2)【STEP3】鑑別診断を想起する3)胸鎖乳突筋の後方にある後頸部リンパ節腫脹があれば、全身の感染症(EBウイルス、サイトメガロウイルス、風疹ウイルス、HIV、結核)、悪性リンパ腫、頭頸部がん、菊池病を考える鎖骨上窩リンパ節腫大があれば、第一に悪性腫瘍を疑う。左鎖骨上窩リンパ節は消化器がんの転移部位として有名である(Virchow転移)腋窩リンパ節はネコひっかき病、乳がんで腫れる鼠径リンパ節は下肢からの感染、性感染症で腫れることが多い全身性リンパ節腫脹あれば、ウイルス感染症、結核、膠原病、成人Still病、悪性リンパ腫を疑う<参考文献・資料>1)Harrison’s Principles of Internal Medicine 20th edition. 2018. p1358-1365.2)McGee Evidence-Based Physical Diagnosis 5th edition. 2022. p221-231.3)石井義洋. 卒後10年目 総合内科医の診断術. 2015. p361-370.

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医師の会食・飲み会参加について、医師1,000人の意見

 医師の飲み会・会食参加について、ニュースで取り上げられる時もあるが、医師自身はどのように捉えているのだろうか。今回、会員医師1,000人に、最近の飲み会・会食への参加状況と感染対策について意見を聞いた。医師の飲み会参加率は飲酒を伴わない会食よりも高い 「直近1ヵ月で、3人以上の会食(同居家族を除く)に参加した回数をお教えください」という問いに対し「0回」と回答したのは、飲酒を伴わない会食で806人(81%)、飲酒を伴う飲み会で757人(76%)であり、どちらも「0回」と答えた医師は全体の68%だった。会食への参加が1回以上と回答した医師のうち、1~2回参加した人は飲酒を伴う飲み会かどうかにかかわらず75%を超え、3回以上参加した医師は少数だった。 会食の回数を年代別で見ると、1回以上と答えた医師は20~30代で最も割合が大きく、年代が上がるにつれて徐々に低下した。全年代で、飲酒を伴わない会食よりも飲酒を伴う飲み会への参加率のほうが高かった。診療科別で見ると、糖尿病・代謝・内分泌内科医がもっとも参加率が高かった。医師は飲み会をする飲食店の感染対策にメリハリを求める 医師が飲み会・会食をする飲食店での感染対策10項目について、それぞれ「必要」「どちらともいえない」「不要」を選択していただいた結果、「テーブル間のパーテーション(距離1m以上)」と「座席の対面を避けた配置」は半数以上の医師が「必要」と答えた。一方で、「トイレ等のハンドドライヤー利用停止」は、10項目で唯一「不要」と答えた割合が「必要」と答えた割合を超えていた。 医療従事者が会食に参加することに関しては、以下のような意見が寄せられた。・流行度合に合わせて参加基準を柔軟に変化させるのが望ましい。(40代・感染症内科/大阪)・これが原因でクラスターが生じるとすぐにメディアが叩きに来るからやっかい。なぜ医療従事者だけはダメなのか説明してほしい。(40代・総合診療科/大阪)・会食に伴う感染が少なくなく、現時点では控えるに越したことはない。今は少人数での会食が限界だと思います。濃厚接触者が出ると当直や外来の埋め合わせが大変である。(40代・救急科/東京)・原則、参加すべきでないが、感染対策の上でなら必要最小限の回数で参加しても良いのではないか。(40代・糖尿病・代謝・内分泌内科/福井)・バイキングの手袋等、根拠の乏しい過剰な対応が多い気がします。(30代・呼吸器内科/東京)・避けるべきなのは理解しているが、非医療者が会食や遊興を楽しんでいる中、我慢して過ごすのはつらい。(40代・循環器内科/東京)・家族限定が望ましいが、医療従事者も人なので正直人と会わないと精神的にこれ以上もたない気がする。(50代・消化器内科/東京)・年単位で交流がないことは異例であり人間関係も希薄になった印象。現状難しいが、どこかが指針を提示すべき。(20代・内科/京都)・自身は参加しませんが、「感染対策を徹底した上での参加は構わないがSNS等には書かないでほしい」はまさにその通りです。糾弾されるのがわかっていることをしないでほしい。(40代・内科/福岡)・大きな問題にはならないと思う。むしろGOサインが出たときは医師が率先して参加して、会食参加の安全性や注意事項を示した方がよい。(50代・内科/千葉)」・3密を避けていればいいのではないか。周囲に医療従事者とわからないような配慮は必要かもしれない。(60代/千葉)アンケート結果の詳細、診療科ごとの意見は以下のページに掲載中。医師の会食・飲み会参加、最近の状況と意見を聞きました!1,000人アンケート<アンケート概要>・タイトル:会食への参加についてどうお考えですか?・実施期間:2022年5月12日(木)・調査方法:インターネット・対象:会員医師 1,000人【年代】20~30代、40代、50代、60代:各250人【診療科】 内科、呼吸器内科、循環器内科、消化器内科、総合診療科、糖尿病・代謝・内分泌内科、感染症内科、救急科

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クッシング症候群の高コルチゾール血症を改善する「イスツリサ錠1mg/5mg」【下平博士のDIノート】第98回

クッシング症候群の高コルチゾール血症を改善する「イスツリサ錠1mg/5mg」今回は、副腎皮質ホルモン合成阻害剤「オシロドロスタットリン酸塩(商品名:イスツリサ錠1mg/5mg、製造販売元:レコルダティ・レア・ディジーズ・ジャパン)」を紹介します。本剤は、副腎でのコルチゾール生合成を抑制し、高コルチゾール血症を是正することでクッシング症候群の症状を改善します。<効能・効果>本剤は、クッシング症候群(外科的処置で効果が不十分または施行が困難な場合)の適応で、2021年3月23日に承認され、同年6月30日に発売されました。<用法・用量>通常、成人にはオシロドロスタットとして1回1mgを1日2回経口投与から開始し、その後は患者の状態に応じて最高用量1回30mg(1日2回)を超えない範囲で適宜調節します。なお、用量を漸増する場合は1~2週間に1回、増量幅は1回1~2mgを目安とします。中等度の肝機能障害患者(Child-Pugh分類クラスB)では1回1mgを1日1回、重度(Child-Pugh分類クラスC)では1回1mgを2日に1回を目安に投与を開始し、服用タイミングは夕方とすることが望ましいとされます。<安全性>国内外の臨床試験では、主な副作用として疲労(30%以上)、低カリウム血症、食欲減退、浮動性めまい、頭痛、低血圧、悪心、嘔吐、下痢、男性型多毛症、ざ瘡、血中コルチコトロピン増加、血中テストステロン増加、浮腫、倦怠感(5~30%未満)が報告されています。なお、重大な副作用として低コルチゾール血症(53.9%)、QT延長(3.6%)が現れる可能性があります。<患者さんへの指導例>1.体内で過剰に分泌されている副腎からのコルチゾール合成を抑えて、高コルチゾール血症を改善する薬です。2.悪心、嘔吐、疲労、腹痛、食欲不振、めまいなどが認められた場合には、体内のコルチゾール濃度が低下し過ぎている恐れがあるので、すぐに主治医に連絡してください。3.この薬の服用により低カリウム血症になる可能性があります。体の力が抜ける感じ、手足のだるさ、こわばり、筋肉痛、呼吸困難、むくみ、高血圧などが現れた場合には医師に連絡してください。4.(妊娠する可能性がある人の場合)この薬の使用期間中および使用中止後1週間は適切な避妊をしてください。妊婦または妊娠している可能性のある方は服用できません。5.(授乳中の方に対して)薬剤が乳汁中へ移行する可能性があるため、本剤を服用中は授乳しないでください。<Shimo's eyes>クッシング症候群は、副腎皮質刺激ホルモン(ACTH)による刺激または副腎皮質の機能亢進により、副腎皮質からコルチゾールが過剰分泌されることで、慢性的に高コルチゾール血症を呈する疾患です。治療しない場合、高血圧、糖尿病、骨粗鬆症などの合併症や、免疫力の低下により易感染状態をまねきます。治療の第一選択は、国内外ともに原因となる病変の外科的切除であり、手術できない場合や切除後に寛解に至らなかった場合には、薬物療法および放射線療法が選択されます。また、速やかな高コルチゾール血症の是正が必要な場合にも薬物療法が適応となります1)。本剤は、クッシング症候群の原因となるコルチゾールの生合成の最終段階である11-デオキシコルチゾールからコルチゾールへの変換を担う11β-水酸化酵素の阻害剤です。この機序により原疾患によらず、すべての内因性クッシング症候群患者において本剤の有効性が期待されます。血中濃度を安定させるため、本剤を1日2回で服用する場合は12時間間隔で、なるべく毎日同じ時間帯に服用する必要があります。服用し忘れた場合は、1回飛ばして次の回から服用を再開するように伝えましょう。重大な副作用として低コルチゾール血症が現れることがあり、副腎皮質機能不全に至る恐れがあります。そのため、定期的に血中・尿中コルチゾール値の測定が求められています。また、QT延長が現れることがあるので、投与開始前および投与開始後1週間以内、または増量時など、必要に応じた心電図検査が行われます。とくに高ストレス状態ではコルチゾール需要が増加するため、副腎不全症候群を発症する可能性があります。服薬フォローの際には、全身倦怠感、食欲不振、脱力などの症状が現れていないか聞き取ることが大切です。1)クッシング症候群診療マニュアル 改訂第2版. 診断と治療社;2015.(J Clin Endocrinol Metab. 2015;100:2807-2831.)参考1)PMDA 添付文書 イスツリサ錠1mg/イスツリサ錠5mg

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地中海食、心血管イベントの2次予防にも有用/Lancet

 心血管イベントの2次予防において、地中海食は低脂肪食よりも優れていることが、スペインのレイナ・ソフィア大学病院で実施された単施設の無作為化臨床試験「CORDIOPREV試験」で示された。同病院のJavier Delgado-Lista氏らが報告した。地中海食は心血管イベントの1次予防に有効であることが知られているが、2次予防に関するエビデンスは乏しかった。著者は、「今回の結果は、臨床診療に関連しており、2次予防における地中海食の摂取を支持するものである」とまとめている。Lancet誌オンライン版2022年5月4日号掲載の報告。冠動脈疾患既往1,002例を地中海食群と低脂肪食群に無作為化 CORDIOPREV試験の対象は、冠動脈疾患の既往(急性心筋梗塞、不安定狭心症による入院、直径2.5mm以上の心外膜血管の50%以上狭窄)を有し、過去6ヵ月間、冠動脈疾患に関連する臨床事象のない20~75歳の男女である。2009年10月1日~2012年2月28日に、1,002例(平均[±SD]年齢59.5±8.7歳、男性82.5%)が1対1の割合で地中海食群(502例)または低脂肪食群(500例)に無作為に割り付けられた。 それぞれの食事カロリーの構成は、地中海食が脂肪35%以上(1価不飽和脂肪酸22%、多価不飽和脂肪酸6%、飽和脂肪酸10%未満)、タンパク質15%、炭水化物50%以下で、低脂肪食は総脂肪30%未満(1価不飽和脂肪酸12~14%、多価不飽和脂肪酸6~8%、飽和脂肪酸10%未満)、タンパク質15%、炭水化物55%以上で、いずれの食事もコレステロールの含有量は1日300mg未満とした。 栄養士のみが割り付けを知っており、医師および臨床評価委員会委員等は割り付けを盲検化された。また、参加者は盲検化されていなかったが、食事に関することを医師に話さないよう指示された。 主要評価項目は、主要心血管イベント(心筋梗塞、血行再建、虚血性脳卒中、末梢動脈疾患、心血管死の複合)で、intention-to-treat解析を行った。追跡期間中央値7年、地中海食群の主要心血管イベント発生のHRは0.719~0.753 追跡期間中央値7年において、主要心血管イベントは198例に発生した。内訳は、地中海食群87例、低脂肪食群111例で、1,000人年当たりの粗率は地中海食群28.1(95%信頼区間[CI]:27.9~28.3)、低脂肪食群37.7(37.5~37.9)であった(log-rank検定p=0.039)。地中海食群の低脂肪食群に対する、多変量で補正後の主要心血管イベントに関するハザード比(HR)は、0.719(95%CI:0.541~0.957)~0.753(0.568~0.998)であり、地中海食が良好であった。 これらの効果は男性においてより顕著で、主要評価項目のイベント発生率は地中海食群の16.2%(67/414例)に対し低脂肪食群では22.8%(94/413例)(多変量補正後HR:0.669、95%CI:0.489~0.915、log-rank検定のp=0.013)であった。女性175例(地中海食群88例、低脂肪食群87例)では群間差は認められなかった。

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PCSK9阻害薬、エゼチミブは心血管リスクを低減/BMJ

 エゼチミブまたはPCSK9阻害薬は、忍容最大用量のスタチン投与中あるいはスタチン不忍容の、心血管リスクがきわめて高い/高い成人において、非致死的な心筋梗塞(MI)および脳卒中を抑制可能なことが示された。同リスクが中程度および低い患者では認められないという。米国・Houston Methodist DeBakey Heart & Vascular CenterのSafi U. Khan氏らがシステマティックレビューとネットワークメタ解析の結果を報告した。BMJ誌2022年5月4日号掲載の報告。スタチンの有無を含めて心血管リスクへの影響をネットワークメタ解析 研究グループは、エゼチミブおよびPCSK9阻害薬が心血管アウトカムに及ぼす影響を、忍容可能な最大用量のスタチン治療を受けている成人またはスタチン不忍容の成人において比較する検討を行った。 Medline、EMBASE、Cochrane Libraryを2020年12月31日時点で検索し、被験者500例以上、追跡期間6ヵ月以上のエゼチミブとPCSK9阻害薬の無作為化対照試験を特定。頻度論的な固定効果ネットワークメタ解析とGRADE(grading of recommendations, assessment, development, and evaluation)によるエビデンスの確実性の評価を行った。 結果には、5年間治療を受けた患者1,000人当たりの非致死的MI、非致死的脳卒中、あらゆる原因の死亡、および心血管死の相対リスク(RR)と絶対リスクが含まれた。ベースラインで受けていた治療および心血管リスクの閾値別に、一定のRR(ネットワークメタ解析から推定)を想定の下で絶対リスク差を推算。1次および2次予防における心血管リスクはPREDICTリスク計算法で算出した。 患者を、心血管リスクが「低い」~「きわめて高い」に分類。ガイドラインパネルとシステマティックレビューの著者により、最小重大差(MID)はMIが1,000例当たり12例、脳卒中が1,000例当たり10例と定められた。心筋梗塞、脳卒中の発生を抑制 検索により、スタチン治療を受けている成人8万3,660例が参加する、エゼチミブとPCSK9阻害薬を評価した14試験が特定された。 スタチンへのエゼチミブ追加は、MI(RR:0.87[95%信頼区間[CI]:0.80~0.94])および脳卒中(0.82[0.71~0.96])を抑制したが、あらゆる原因による死亡(0.99[0.92~1.06])、心血管死(0.97[0.87~1.09])は抑制しなかった。 同様に、スタチンへのPCSK9阻害薬追加は、MI(RR:0.81[95%CI:0.76~0.87])および脳卒中(0.74[0.64~0.85])を抑制したが、あらゆる原因による死亡(0.95[0.87〜1.03])または心血管死(0.95[0.87~1.03])は抑制しなかった。 また、被験者のリスク分類別に見ると、きわめて高い心血管リスク成人において、PCSK9阻害薬の追加投与がMI(16/1,000例)、脳卒中(21/1,000例)を抑制すると思われた(中程度~高い確実性)。これに対してエゼチミブの追加投与は、脳卒中(14/1,000例)は抑制するようであったが、MI(11/1,000例)は抑制するもののMIDに到達しなかった(中程度の確実性)。 PCSK9阻害薬とスタチンへのエゼチミブ追加は、脳卒中(11/1,000例)を抑制するようであったが、MI(9/1,000例)は抑制するもののMIDに到達しなかった(低い確実性)。スタチンとエゼチミブへのPCSK9阻害薬の追加は、MI(14/1,000例)、脳卒中(17/1,000例)ともに減じるようであった(低い確実性)。 心血管リスクが高い成人においては、PCSK9阻害薬の追加投与は、おそらくMI(12/1,000例)、脳卒中(16/1,000例)は抑制しうることが示唆された(中程度の確実性)。エゼチミブの追加投与は、おそらく脳卒中(11/1,000例)は抑制しうるようであったが、MI(8/1,000例)はMIDに到達しなかった(中程度の確実性)。 PCSK9阻害薬とスタチンにエゼチミブを追加しても、MIDを達成するアウトカムの減少は得られなかったが、エゼチミブとスタチンにPCSK9阻害薬を追加すると、脳卒中(13/1,000例)は抑制しうることが示唆された。 これらの結果は、スタチン不忍容の患者でも一致していた。中程度および低い心血管リスクの集団では、スタチンにPCSK9阻害薬またはエゼチミブを追加しても、MIおよび脳卒中へのベネフィットは、ほとんど/まったく得られなかった。

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統合失調症患者の併存疾患~リアルワールドデータ分析

 米国において統合失調症の影響は320万人超に及ぶとされる。しかし、統合失調症の併存疾患パターンは、リアルワールドでシステマティックに検証されていない。米国・ハーバード大学のChenyue Lu氏らはこの課題を解決するため、米国の健康保険データセットの8,600万例の患者コホートを用いた観察研究を実施した。その結果、統合失調症患者の既知の併存疾患だけでなく、これまであまり知られていなかった併存疾患パターンも特定された。Translational Psychiatry誌2022年4月11日号の報告。統合失調症患者の併存疾患の初期兆候に臨床医が注意を払う 統合失調症患者と非統合失調症患者を年齢、性別、居住地(郵便番号の最初の3桁)でマッチさせた。統合失調症患者とマッチした非統合失調症患者の疾患ごとの有病率を比較し、年齢、性別で層別化したサブグループ分析を行った。 統合失調症の併存疾患パターンを観察研究した主な結果は以下のとおり。・青年および若年成人では、統合失調症診断前に、不安症、心的外傷後ストレス障害(PTSD)、薬物乱用が認められることが多かった。・60歳以上の統合失調症患者の併存疾患として、せん妄、アルコール依存症、認知症、骨盤骨折、骨髄炎の発症リスクが高かった。・統合失調症診断前の女性では、2型糖尿病、睡眠時無呼吸症候群、摂食障害が認められることが多く、男性では、急性腎不全、横紋筋融解症、発達遅延が多かった。・統合失調感情障害患者では、他の統合失調症患者と比較し、不安症状や肥満の頻度が高かった。 著者らは「これらの併存疾患プロファイルは、同時に発生する疾患の初期兆候に臨床医が注意を払うよう導いてくれるだろう」としている。

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コロナ治療薬の早見表2種(年代別およびリスク因子有無別)

年齢別で使用できるコロナ治療薬ー新型コロナ重症化リスク因子がある人ー・重症化リスク因子とは、65歳以上の高齢者、悪性腫瘍、慢性閉塞性肺疾患、慢性腎臓病、2型糖尿病、高血圧、脂質異常症、肥満、喫煙、固形臓器移植後の免疫不全、妊娠後期などのこと軽症~中等症薬剤対象者内服点滴ラゲブリオパキロビッドパックロナプリーブゼビュディ(モルヌピラビル)(ニルマトレルビル・リトナビル)(カシリビマブ/イムデビマブ)(ソトロビマブ)発症から5日以内に5日間服用発症から5日以内に服用(1回に2種3錠を5日間服用)薬剤の大きさは約2cm薬の飲み合わせに注意が必要のため「お薬手帳」を持参して服用中のすべての薬を医療者に伝えましょう(とくに高血圧や不整脈治療薬、睡眠薬など)オミクロン株には無効アナフィラキシーや重篤な過敏症を起こす恐れがあるので投与~24時間は観察が必要発症から5~7日を目安に投与オミクロン株のBA.2系統には有効性減弱12歳以上かつ40㎏以上小児妊婦・授乳婦子どもを望む男女発症から7日以内に投与子供を望む男女が服用する場合、服用中と服用後4日間の避妊を推奨※※※65歳未満65歳以上※妊婦:治療上の有益性が危険性を上回る時に服用可、授乳婦:授乳の継続又は中止を検討出典:各添付文書、新型コロナウイルス感染症診療の手引き第7.2版、COVID-19 に対する薬物治療の考え方第13.1版Copyright © 2022 CareNet,Inc. All rights reserved.年齢別で使用できるコロナ治療薬ー新型コロナ重症化リスク因子がない人ー・薬剤が使用できる方は、重症度分類が中等症II以上(酸素投与が必要)の場合に限ります軽症※~重症薬剤対象者中等~重症点滴内服/点滴点滴内服ベクルリーステロイド薬アクテムラオルミエント(レムデシビル)(デキサメタゾン)(トシリズマブ)(バリシチニブ)投与目安は軽症者が3日間中等症以上が5日間(最大10日間)重症感染症の適応で使用発症から7日以内に使用。ステロイド薬と併用、人工呼吸器管理・ECMO導入を要する方に入院下で投与入院から3日以内に投与。総投与期間は14日間、レムデシビルと併用肝/腎機能障害、アナフィラキシーなどに注意投与目安は10日間血糖値が高い方、消化性潰瘍リスクがある方は注意が必要結核、B型肝炎の既往、糞線虫症リスクを確認。また、心疾患や消化管穿孔リスクがある方は注意が必要抗凝固薬の投与等による血栓塞栓予防を行う結核・非結核性抗酸菌症やB型肝炎リスクを確認※軽症は適応外使用小児妊婦・授乳婦子どもを望む男女3.5㎏以上※プレドニゾロン40㎎/日に変更※65歳未満65歳以上※妊婦:治療上の有益性が危険性を上回る時に服用可、授乳婦:授乳の継続又は中止を検討出典:各添付文書、新型コロナウイルス感染症診療の手引き第7.2版、COVID-19 に対する薬物治療の考え方第13.1版Copyright © 2022 CareNet,Inc. All rights reserved.

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時間限定カロリー制限食は単純カロリー制限食の体重減少効果を越える効果を持つか否かはなはだ疑問である!―(解説:島田俊夫氏)

 現代社会は食生活に関して利便性を重視し、食事の内容(質・量)に関しては無関心になっているのでは? このため外食産業が繁栄し、私たちは食事の質よりも利便性をますます重視する傾向が強くなっている。本質に立ち返り、私たちが生きていくためにはエネルギーが必要でそのソースを食物に依存していることを忘れてはいけない。 NEJM誌2022年4月21日号掲載の中国の南方医科大学のDeying Liu氏等の論文は139人中118人(84.9%)が受診ノルマを達成した肥満者をランダムに2群に分け、単純カロリー制限食群と(食事時間限定+カロリー制限)食群の2群に分類し、12ヵ月の経過から腹囲、BMI、体脂肪、除脂肪体重、血圧、代謝危険因子等についてベースラインデータと12ヵ月後の各データとの群内差および群間差を比較した結果を報告した。研究の狙いは単純食事カロリー制限食群と(食事時間限定+カロリー制限)食群との間で介入方法に基づく差があるか否かを標的とした研究である。結果は概ね同等で両群間に有意差を認めなかった。もちろん食事制限による減量効果は両群でほぼ同等に認められた。また、副作用についても両群間に差は認められなかった。 この研究の狙いがいまひとつ私にはピンとこない。時間限定カロリー制限食に関してカロリー制限による効果以外の意義を見いだせず、結果については両群で大差のないとの結果であった。これまでの短期間の小規模研究では、時間限定カロリー制限食は体重減少効果が単純カロリー制限食より大きいとの報告が多いようだが、議論の多いところでもあり1)2)、真相は藪の中である。この研究の仮説の狙いがいまひとつ私には理解しがたく、時間限定カロリー制限食の間欠的空腹期間の関与への期待は過大かもしれない。治療の主効果は両群のベースラインからの体重減少の差の群間比較であり、副次効果はウエスト周囲径、BMI、体脂肪および代謝リスク因子(血漿グルコース濃度、インスリン感受性、血清脂質、および血圧)等の測定値の変化差の群内比較としたが主効果に差がなく、群内比較は両群で同等に有意差を認めた。 著者も述べているが中国人の食習慣を配慮した研究プロトコルのために異なる習慣の国々には一般化できない可能性もある。肥満の多い欧米とは事情がわが国とは多少異なるが糖質制限食が肥満治療に用いられており、この問題も含めて食事カロリー制限の影響を3大栄養素摂取の質・量を含め検討する必要に迫られているのではないかと考える3)。この論文の結論は(食事時間限定+カロリー制限)食群の単純カロリー制限を越えてのメリットを肯定する情報を見つけ出すことはできなかった。

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高カルシウムだったら疑いたいMAH【知って得する!?医療略語】第11回

第11回 高カルシウムだったら疑いたいMAH高カルシウム(Ca)血症に遭遇した時に注意することを教えてください高Ca血症を見かけたら、悪性疾患も鑑別に想定します。悪性疾患に伴う高Ca血症と言っても、鑑別すべき病態は複数あるので注意が必要です。≪医療略語アプリ「ポケットブレイン」より≫【略語】MAH【日本語】悪性腫瘍に伴う高カルシウム血症・悪性腫瘍随伴高カルシウム血症【英字】malignancy-associated hypercalcemia【分野】腫瘍関連【診療科】全診療科【関連】局所骨溶解性高Ca血症(LOH:local osteolytic hypercalcemia)腫瘍随伴体液性高Ca血症(HHM:humoral hypercalcemia of malignancy)PTH非依存性活動性ビタミンD産生腫瘍(悪性リンパ腫)異所性PTH産生腫瘍実際のアプリの検索画面はこちら※「ポケットブレイン」は医療略語を読み解くためのもので、略語の使用を促すものではありません。最近、ハッとしたことがありました。高Ca血症の鑑別を考えたとき、悪性腫瘍に伴う高Ca血症(MAH:malignancy-associated hypercalcemia)について、筆者自身が悪性疾患を念頭に置いてどれくらい血清Ca値に注意を払えていただろうか、という振り返る機会があったからです。高Ca血症の鑑別は多岐に及びますが、悪性腫瘍に関連する高Ca血症の病態だけでも、以下のように複数挙げられます。悪性腫瘍に関連した高カルシウム血症腫瘍随伴体液性高Ca血症(HHM:humoral hypercalcemia of malignancy)(腫瘍細胞からのPTHrP過剰産生に基づく全身性液性機序)局所骨溶解性高Ca血症(LOH:local osteolytic hypercalcemia)(多発性骨髄腫・悪性疾患骨転移)悪性リンパ腫による活性型ビタミンD過剰産生異所性PTH産生腫瘍ただ、臨床現場では、血清Ca値の結果報告は、未補正値のみが表示されることが多く、意識してアルブミン値で補正しないと、軽度の高Ca血症は見落としてしまう可能性があります。また、血清Ca値が正常範囲内でも、過去のデータと見比べると上昇傾向になっている場合もあります。このため、過去のデータとの比較が重要となってきます。また、薬剤が血清Ca値を修飾する場合があります。高齢女性では骨粗鬆症の治療薬を使用している場合も多く、たとえばビスホスホネート製剤はその血中Ca濃度の低下作用から、血清Ca値の上昇をマスクしてしまう可能性も否定できません。血清Ca値を悪性疾患の早期発見やスクリーンニングという観点で利用することは難しいです。しかし、血清Caに異常を認めたときは悪性疾患をしっかり想定する必要があり、未診断の悪性疾患が潜んでいる可能性をきちんと想起したいものです。しばらく経ってから悪性疾患が見つかるという事態は極力避けたい状況であり、日常臨床で当たり前に検査している血清Caの解釈には、より一層の注意を払いたいと感じます。1)井上 大輔. 日内会誌. 2020;109:740-745.2)福原 傑. 日腎会誌. 2017;59:598-605.

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