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塩分の多い食事で心不全リスクが上昇

 塩分の過剰摂取が高血圧につながり得ることは周知の事実だが、実はそれ以上に危険かもしれない。新たな研究で、心不全(HF)高リスク群におけるナトリウムの過剰摂取は、HFの新規発症と関連することが示された。米ヴァンダービルト大学トランスレーショナル・臨床心血管研究センター(VTRACC)のDeepak Gupta氏らによるこの研究結果は、「Journal of the American College of Cardiology: Advances(JACC:Advances)」に3月18日掲載された。 この研究では、米国南東部で進行中のSouthern Community Cohort Studyに参加している2万5,306人(年齢中央値54歳、女性63%)を対象に、食事からのナトリウム摂取とHF発症との関連が検討された。対象者には、従来、HFリスクが高いグループとされる黒人(69%)と年収2万5,000ドル(1ドル159円換算で約398万円)未満の低所得者(87%)が多く含まれていたが、研究開始時にHFのある参加者はいなかった。食事からのナトリウム摂取量は検証済みの質問票で評価し、HFの新規診断はメディケアやメディケイドの請求データから把握した。対象者の1日当たりの食事からのナトリウム摂取量は平均4,269±2,502mgであり、米国心臓協会(AHA)や米国政府の指針で推奨されている摂取量(2,300mg/日)を大きく上回っていた。 追跡期間中央値9.8年の間に7,039人(27.8%)がHFを発症した。解析の結果、社会人口統計学的特徴、食事の質、摂取カロリー、運動、脂質異常症などを調整しても、食事からのナトリウム摂取量が1,000mg/日増えるごとにHFリスクが有意に8%上昇することが示された。さらに、高血圧、BMI、睡眠、冠動脈疾患を調整しても結果は同様であった。糖尿病患者でも同様の関連が認められ、食事からのナトリウム摂取量が1,000mg/日増えるごとにHFリスクは8%上昇した。さらに、人口寄与危険割合(PAF)の解析から、ナトリウム摂取量を4,000mg/日以下に低減することで、10年間でHFの6.6%(95%信頼区間3.6~9.6%)を予防できる可能性が示された。 こうした結果を受けてGupta氏らは、「ナトリウム摂取量をわずかに減らすだけでも、この高リスク群におけるHFの負担を大幅に減らせる可能性がある」と述べている。ただし、ナトリウム摂取量を控えるという解決策は一見簡単に思えるものの、多くの人にとっては簡単ではないと研究グループは指摘する。なぜなら、低所得コミュニティでは、新鮮で低ナトリウムの食品を手に入れることが難しく、そうした食品を扱うより良い食料品店への交通手段も限られていることが多いためだ。研究グループは、「高リスクで資源の限られたコミュニティにおいて、食事からのナトリウム摂取量を下げるための多層的な公衆衛生戦略を実施するべきだ」と結論付けている。 米国では、HFが年間42万5,000人以上の死亡に関わっており、事態は深刻だ。さらにHFは、人命への影響だけにとどまらず、経済的な影響も甚大だ。Gupta氏らは、ナトリウム摂取量を減らすことで、年間約20億ドル(約3180億円)の医療費削減が見込まれると推計している。

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心血管疾患の再発予防には、LDLコレステロール値もthe lower, the better(解説:桑島巖氏)

 LDLコレステロールが心筋梗塞や脳梗塞などの重大なリスク因子であることは議論の余地はないが、その治療目標値においては、各国のガイドラインに差異がみられる。1次予防に関しては、リスクの有無により<120~140mg/dLとされ、各国ガイドラインに差がみられるが、2次予防に関しては、より厳格な管理が有効であるとするエビデンスが相次いで発表されている。日本では標準的2次予防目標値として100mg/dL未満、急性冠症候群、糖尿病、非心原性脳梗塞合併例などの非常に高リスクな場合には、70mg/dL未満が目標値として掲げられている。 今回、韓国から発表されたEz-PAVE研究は、LDLコレステロール値が70mg/dL以上の冠動脈疾患既往歴、脳血管疾患、末梢動脈硬化性疾患の既往歴を有する3,048例を、LDLコレステロール値低下目標値を55mg/dL未満に下げる強化群と70mg/dL未満とする従来群に1:1にランダム化して3年間追跡したランダム化比較研究である。その結果、主要エンドポイント(心血管死、非致死的心筋梗塞、非致死的脳卒中、血行再建術または不安定狭心症による入院)は、強化群での6.6%が、従来群の9.7%に比べて有意(p=0.002)に抑制率が高かったという結果であった。治療薬としては、スタチンの増量と、エゼチミブの併用、PCSK9併用などが推奨されているが、懸念される筋肉症状などの有害事象の発現率には差がなかったという。 2次予防におけるLDL-C目標値に関して、わが国の動脈硬化学会のガイドライン2022年版では70mg/dL未満としているが、欧州ガイドラインでは超ハイリスク例では55mg/dL未満としている。高カロリー食を好む欧米人では、脳卒中よりも心筋梗塞発症率が高く、米飯食を主食とするアジア人は脳卒中のほうが多いとされてきたが、わが国の食事内容も欧米化している現状を考慮すると、この韓国での本試験の結果は日本人にも適用できる結果であろう。 高血圧と同じく、心血管疾患の再発予防におけるコレステロール管理においては、The lower, the betterを証明したという点で意義のある臨床試験であろう。

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第60回 プラスチックを「7日間」やめてみたら

ペットボトルの飲み物、ラップに包まれた弁当、シャンプーの容器。私たちの暮らしは、数えきれないほどのプラスチックに支えられています。その便利さの裏側で、これらの製品からはごく微量の化学物質が少しずつ溶け出し、私たちの体に取り込まれていることが、近年の研究で明らかになってきました。代表的なものに、プラスチックを柔らかくするためのフタル酸エステル類やポリカーボネート、缶の内側コーティングに使われるビスフェノール類があります。これらは「内分泌かく乱物質」として知られ、心血管の病気や代謝の異常との関連を示唆する研究が積み重なっています1~3)。とはいえ、「日常生活の工夫で、体に入る量を本当に減らせるのか」という点については、これまできちんと答えた介入研究はほとんどありませんでした4)。そこに一石を投じたのが、2026年にNature Medicine誌で報告された、オーストラリアで行われたPERTH試験です5)。7日間、徹底的にプラスチックを避けた人たちPERTH試験では、健康な成人60人を5つのグループにランダムに割り付け、7日間の介入が行われました。あるグループには、生産・加工・包装・配送に至るまでプラスチック接触を最小限に抑えた食材だけが届けられ、別のグループにはガラスや木製の調理器具まで提供されました。さらに、シャンプーや化粧品など日用品だけを低プラスチック品に置き換えるグループ、食事と日用品の両方を変えるグループ、そして何もしない対照群も設定されました。結果はとても印象的なものになりました。なんと、低プラスチック食品と調理器具を組み合わせたグループでは、尿中のフタル酸代謝物が37〜54%、ビスフェノールAは約60%も減少していたのです。たった1週間の生活の見直しだけで、体内に取り込まれる量がはっきりと減少しうることが、ランダム化比較試験という質の高いデザインで初めて示されたのです。さらに興味深いことに、シャンプーや化粧品だけを変えたグループでも、特定のフタル酸代謝物が独立して減少していました。皮膚からの曝露も決して小さくないことがうかがい知れます。減ったもの、減らなかったものただし、「うまくいったこと」ばかりではありませんでした。実は、ビニール製品などに広く使われるDEHPという物質の代謝物は、低プラスチック食を続けたグループでも下がらず、むしろわずかに増える傾向さえ見られました。研究者たちは、食品以外の経路、たとえば室内のほこりや空気からの曝露の影響、あるいはDEHPが脂肪組織にゆっくりと蓄えられ、時間をかけて尿に出てくる可能性を指摘しています。体に溜まりにくい物質はすぐに減っても、体に溜まりやすい物質はそう簡単には抜けてくれないのかもしれません。また、尿中DEHP代謝物が多い人ほど炎症マーカーや一部の心血管リスク指標が低い、という一見直感に反する結果も得られました。ただし、これはあくまで健康な人を対象とした横断的な観察であり、因果関係を示すものではありません。また、代謝の個人差や測定されていない生活習慣が関与している可能性もあり、研究者自身も慎重な解釈を呼びかけています。明日からできること、できないことこの研究が私たちに示してくれたのは、「加工食品をやめれば健康になる」といった単純なことではありません。対象は健康なオーストラリア成人60人、期間はわずか7日間。日本の生活にそのまま当てはまるとは限りませんし、低プラスチックの食材や日用品を完全にそろえることは、価格や入手のしやすさの面で誰にでもできることではないでしょう。また、実際に心血管や代謝への臨床的な利益が証明されたわけでもありません。それでも、缶詰や加工食品、プラスチック容器入りの食品を少し控える。できる範囲で、ガラスや陶器、木の調理器具を取り入れる。温かい料理をプラスチック容器のまま電子レンジにかけない。こうした小さな積み重ねが、わずか1週間で体内の化学物質量を測定可能なレベルで動かしうる、という事実はとても心強いものです5,6)。ゼロにすることは現実的ではないかもしれません。けれど、減らすことはできる。プラスチックと健康をめぐる長い議論のなかで、PERTH試験はその確からしい一歩を、データとともに示してくれた研究になったのではないでしょうか。 1) Landrigan PJ, et al. The Minderoo-Monaco Commission on Plastics and Human Health. Ann Glob Health. 2023;89:23. 2) Trasande L, et al. Phthalates and attributable mortality: a population-based longitudinal cohort study and cost analysis. Environ Pollut. 2022;292:118021. 3) Dunder L, et al. Urinary bisphenol A and serum lipids: a meta-analysis of six NHANES examination cycles (2003-2014). J Epidemiol Community Health. 2019;73:1012-1019. 4) Sieck NE, et al. Effects of behavioral, clinical, and policy interventions in reducing human exposure to bisphenols and phthalates: a scoping review. Environ Health Perspect. 2024;132:36001. 5) Harray AJ, et al. Low-plastic diet and urinary levels of plastic-associated phthalates and bisphenols: the randomized controlled PERTH Trial. Nat Med. 2026 Apr 21. [Epub ahead of print] 6) Muncke J, et al. Health impacts of exposure to synthetic chemicals in food. Nat Med. 2025;31:1431-1443.

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加熱式タバコは2型糖尿病罹患と関係するか/JIHS

 近年、紙巻タバコに代わり加熱式タバコ(HTP)での喫煙が増えている。HTPの健康への影響のエビデンスはまだ少ないが、糖尿病罹患との関連はあるのだろうか。このテーマについて、国立健康危機管理研究機構(JIHS)の胡 歓氏らの研究グループは職域多施設研究(J-ECOHスタディ)から約3万人を追跡調査した。その結果、HTPのみで喫煙している人は、紙巻タバコのみで喫煙している場合と比較し、2型糖尿病発症のリスク低下と関連していなかったことがわかった。American Journal of Preventive Medicine誌オンライン版4月7日号に掲載。喫煙者の糖尿病罹患リスクは非喫煙者と比べ高い 研究グループは、J-ECOHスタディのベースライン時(2018年4月~2019年3月)に2型糖尿病を有していなかった参加者2万9,584人(男性82.5%、平均年齢45.9歳[標準偏差9.9])を対象に調査を行った。参加者は、自己申告によるタバコの喫煙状況に基づき、非喫煙者、元喫煙者、紙巻タバコのみで喫煙する者、HTPのみで喫煙する者、および紙巻タバコとHTPの両方で喫煙する者の5群に分類した。2型糖尿病の新規発症は、2019~25年に実施された健康診断で特定された。ハザード比(HR)および95%信頼区間(CI)の推定はCox比例ハザードモデルを用いた。 主な結果は以下のとおり。・14万797人年の追跡期間中、2,141人が2型糖尿病を発症した(1,000人年当たり15.2)。・喫煙する群(1,000人年当たり18.5~21.7)では、喫煙歴のない群(1,000人年当たり11.3)と比較し、糖尿病の罹患率が高かった。・喫煙歴のない群と比較して、HTPのみで喫煙する群(HR:1.61、95%CI:1.39~1.86)、紙巻タバコとHTPの両方で喫煙する者(HR:1.76、95%CI:1.48~2.09)、および紙巻タバコのみで喫煙する者(HR:1.53、95%CI:1.34~1.74)は、糖尿病罹患のリスクが高かった。・喫煙歴のある人の中で、HTPのみで喫煙する人の糖尿病リスクは、紙巻タバコのみで喫煙する人とほぼ同等だった(HR:1.01、95%CI:0.86~1.18)。これは、追跡期間中にリスクの有意な低下が認められなかったことを示唆している。・すべてのタバコ喫煙グループで、1日当たりのタバコ製品の喫煙量と糖尿病リスクとの間に用量反応関係が認められた。 研究グループは、この結果から「HTPのみで喫煙している人(そのほとんどが過去に紙巻タバコの喫煙経験あり)において、追跡期間中、HTPのみでの喫煙は紙巻タバコのみでの喫煙と比較して、2型糖尿病のリスク低下とは関連していなかった。本研究の結果では、リスクの上昇がHTP使用の独立した影響によるものか、あるいは過去の紙巻タバコ曝露の残留効果によるものかを区別できないため、HTP使用者と紙巻タバコ喫煙者との間で糖尿病リスクが時間経過とともに異なるかどうかを評価するには、より長期の追跡調査が必要である」と結論付けている。

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1次予防の脂質低下療法強化の指標、apoBが費用対効果優れる/JAMA

 スタチンの適応があり、かつアテローム動脈硬化性心血管疾患(ASCVD)のない成人の1次予防において、脂質低下療法の強化のマーカーとして、アポリポ蛋白B(apoB)値はLDLコレステロール(LDL-C)値や非HDLコレステロール(non-HDL-C)値と比較して、質調整生存年(QALY)が増加し、増分費用効果比(ICER)が基準値を満たし、費用効果に優れることが、米国・ Northwestern University Feinberg School of MedicineのSamuel Luebbe氏らによる検討で示された。リスクの予測や脂質低下療法の強度決定の指針として、apoB値の優位性は十分に確立されているが、検査費用などの問題のため、主要な脂質マーカーとして採用することには懸念もあるという。研究の成果は、JAMA誌オンライン版2026年4月8日号に掲載された。NHANESデータに基づくコホートの経済的評価 研究グループは、1次予防における高強度スタチンおよびエゼチミブによる脂質低下療法の強化に関する3つのマーカー(LDL-C、non-HDL-C、apoB)の相対的な費用対効果を検討する目的で、コンピュータシミュレーションモデル(心血管疾患[CVD]Policy Model)を用いて経済的評価を行った。 2005~16年の米国の国民健康栄養調査(NHANES)の参加者4,149例(平均[SD]年齢66.5[11.0]歳、女性1,691例[40.8%]、平均[SD]LDL-C値119.2[42.2]mg/dL、同apoB値110.8[39.0]mg/dL、同ASCVDの10年リスクスコア20.9[14.2]%)から、確率標本抽出法により、スタチンが適応で、かつASCVDのない成人のシミュレーションコホート(25万例)を構築した。 参加者に対し、脂質スクリーニング後にシミュレーションを開始し、2018年版AHA/ACCガイドラインに基づきスタチン治療を行った。モデルへの入力データは、全国的な調査、統合された縦断的コホート研究、公表された文献から取得した。 治療を行っても、目標値(LDL-C値<100mg/dL、non-HDL-C値<118mg/dL、apoB値<78.7mg/dL)が達成されない場合に、脂質低下療法を強化することとした。 生涯QALYと費用(2025年の米ドル換算)を算出。主要アウトカムはICER(1QALY獲得に要する費用)とした。AHA/ACCの推奨に基づき、ICERが1QALY獲得当たり12万ドル未満の場合に、その方針は費用効果があると判定した。apoB群のICERは3万300ドル 脂質低下療法の強化のマーカーとしてLDL-Cを目標値とした場合(通常治療)に比べnon-HDL-Cを目標値とすると、25万例当たり617件(95%不確実性区間[UI]:-245~1,422)のASCVDイベントを予防すると推定され、965QALY(95%UI:-3,551~5,341)の増加とともに、210万ドル(95%UI:-9,420万~9,200万)の費用削減が推定された。 また、非HDL-C値と比較してapoBを目標値とすると、25万例当たり1,018件(95%UI:-1,974~-6)のASCVDイベントを予防し、1,324QALY(95%UI:-2,602~5,669)の増加とともに、4,020万ドル(95%UI:-4,360万~1億3,400万)の費用増が推定された。ICERは1QALY獲得当たり3万300ドルであり、apoB値の費用効果を認めた。apoBが最適目標値の確率は65% 1QALY獲得の支払意思額閾値を12万ドルとすると、確率論的解析(モデル解析を1,000回反復)でapoB値が目標値として最適となる確率は65%であり、non-HDL値が最適となる確率は25%であった。LDL-C値の確率は10%と低かった。 目標値をLDL-Cとした場合に比べ、non-HDLとapoBの目標値は生涯の慢性期および急性期ASCVDに要する費用をわずかに抑制したが、スタチン治療とASCVD以外の費用が増加した。apoB検査の費用はごく安価であり、apoBを目標値とした患者における費用の増加は、主に余命の延長および予防治療の長期化によるものであった。 著者は、「これらの知見は、1次予防における脂質低下療法の指針となり、集団ヘルス(population health)の改善に寄与する費用効果の高いマーカーとして、apoB値の使用を支持するものである」としている。

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学会抄録のかたちにまとめる【「実践的」臨床研究入門】第63回

これまでの連載を通じ、架空の臨床シナリオを題材に、「漠然とした臨床上の疑問」であるクリニカル・クエスチョン(CQ)を「具体的で明確な研究課題」であるリサーチ・クエスチョン(RQ)に変換し、段階的にブラッシュアップしてきました。さらに、仮想データ・セットを用いて、EZR(Easy R)による基本的な統計解析手法の実際についても解説してきました。今回からは、これまでに得られた解析結果も含め、学会抄録のかたちにまとめてみたいと思います。構造化抄録学会抄録や原著論文のAbstractは、現在も多くの場合、IMRAD形式と呼ばれるかたちでまとめられています。IMRADとは、Introduction、Methods、Results、And Discussionというそれぞれの頭文字を取った略語です。日本語抄録では「背景・目的」、「方法」、「結果」、「考察・結論」という見出しで示されることが一般的です。しかし、IMRAD形式の抄録では研究方法に関する特定情報を迅速に把握しにくいことがあり、著者によってはそもそも重要な方法論の記述が十分になされていないこともあります。臨床研究における重要な特定情報とは、たとえば、研究デザインやP(対象)やIまたはE(介入または曝露要因)、O(アウトカム)といった構成要素とそれらの定義など、です。構造化抄録とは、IMRAD形式のうち、とくにMethods(方法)の記述の粒度を高め、より細分化して明示的な見出し(ラベル)を付した形式を指します。構造化抄録の典型的な構成要素は以下の通りです。Background(背景):研究の目的や重要性を簡潔に記載Objective(目的):研究の具体的な問い(RQに相当)Design(研究デザイン):研究デザインの種類(例:ランダム化比較試験、コホート研究、など)Setting(セッティング):研究が行われた場所や施設(例:単施設・多施設、外来・入院、大学病院・プライマリケア、など)Patients/Participants(対象):参加者数、主要な選択基準・除外基準Intervention/Exposure(介入または曝露):比較した介入内容(観察研究の場合は曝露要因)Measurements(評価項目):主要な評価指標(プライマリアウトカム)Results(結果):主要な結果(数値データ、信頼区間、p値など)Conclusions(結論):結果に基づいた結論とその臨床的意義このような構成は、JAMAやBMJ、Annals of Internal Medicineなどのトップジャーナルが定めるAbstractの形式に近く、近年では国内外で広く浸透しつつあります。構造化抄録はIMRAD形式の枠組みを拡張したものであり、読者が研究の内容や質をより迅速かつ明確に理解、評価する助けとなります。これまでの連載内容を踏まえ、われわれの研究を下記の通り構造化抄録のかたちにまとめてみました(連載第40回、41回、44回、45回、47回、53回、59回参照)。【背景】たんぱく質摂取制限は慢性腎臓病(CKD)進行抑制に推奨されているが、厳格な低たんぱく食(Low protein diet:LPD)の遵守と腎予後との関連については十分に検討されていない。【目的】保存期CKD患者において、推定たんぱく質摂取量(estimated daily protein intake:eDPI)と末期腎不全(ESKD)発症リスクおよび推定糸球体濾過量(eGFR)低下速度との関連を検討する。【研究デザイン】後ろ向きコホート研究【セッテイング】単施設外来【対象】成人保存期CKD患者(ネフローゼ症候群は除外)638例の連続症例。【曝露要因】24時間蓄尿検体からMaroni式を用いてDPIを推定し、0.5g/kg標準体重/日未満を厳格LPD遵守あり群(212例)、以上を遵守なし群(426例)として分類した。【評価項目】ESKD発症(維持透析導入または先行的腎移植)およびeGFR年間低下速度(mL/min/1.73m2/年)。【結果】平均観察期間3.9年において、ESKD発症率に両群間で有意差は認められなかった。Cox比例ハザード回帰モデルによる解析では、年齢、性別、糖尿病の有無、収縮期血圧、ベースラインeGFR、尿たんぱく定量、血清アルブミン値、ヘモグロビン値で調整した結果、厳格LPD遵守あり群のESKD発症に対する調整ハザード比は0.82(95%CI:0.60~1.14、p=0.24)であった。一方、多変量重回帰分析の結果、eGFR年間低下速度は厳格LPD遵守あり群が遵守なし群よりも2.03mL/min/1.73m2/年緩徐であった(95%CI:1.61~2.45、p<0.001)。【結論】非ネフローゼ症候群の保存期CKD患者において、DPI0.5g/kg標準体重/日未満の厳格なLPDの遵守はESKD発症リスクの低下とは関連しなかったが、eGFR低下速度の抑制に寄与する可能性が示唆された。

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卵巣明細胞がんの新規経口薬「ハイツエキシン錠10mg」【最新!DI情報】第62回

卵巣明細胞がんの新規経口薬「ハイツエキシン錠10mg」今回は、PI3Kα阻害薬「リソバリシブメシル酸塩水和物(商品名:ハイツエキシン錠10mg、製造販売元:海和製薬、販売元:大鵬薬品工業)」を紹介します。卵巣明細胞がんは治療選択肢が限られる希少がんであり、従来の治療法に抵抗性を示す卵巣明細胞がんに対する新たな治療選択肢として期待されています。<効能・効果>がん化学療法後に増悪したPIK3CA遺伝子変異を有する卵巣明細胞がんの適応で、2026年3月23日に製造販売承認を取得しました。なお、投与にあたっては、コンパニオン診断薬であるAmoyDx PIK3CA変異検出キットを用いて遺伝子変異の有無を確認する必要があります。<用法・用量>通常、成人にはリソバリシブメシル酸塩として1回40mgを1日1回空腹時に経口投与します。なお、患者の状態により適宜減量します。本剤は食事の影響を避けるため、食事の1時間前から食後2時間までの間の服用は避けます。<安全性>重大な副作用として、間質性肺疾患(8.6%)、高血糖(89.2%)による糖尿病性ケトアシドーシス(1.1%)、多形紅斑(2.2%)などの重度の皮膚障害、血小板減少症(35.5%)、重度の下痢(6.5%)、体液貯留(末梢性浮腫[26.9%]、顔面浮腫[15.1%]、低アルブミン血症[5.4%]、腹水[1.1%]など)、ニューモシスチス・イロベチイ肺炎(1.1%)などの重篤な感染症、QT間隔延長(2.2%)があります。その他の副作用として、発疹(72.0%)、口内炎(68.8%)、悪心(52.7%)、疲労(41.9%)、食欲減退(38.7%)、下痢(36.6%)、体重減少(35.5%)、嘔吐、蛋白尿(いずれも20%以上)、腹痛、低カリウム血症、貧血、好中球減少症、ALT増加、AST増加、高クレアチニン血症(いずれも10~20%未満)、腹部膨満、便秘、腹部不快感、レッチング、排便回数増加、高コレステロール血症、低ナトリウム血症、発熱、白血球減少症、γ-GTP増加、血中ビリルビン増加、血中アルカリホスファターゼ増加、頭痛、味覚不全、浮動性めまい、皮膚乾燥、湿疹、手掌・足底発赤知覚不全症候群、そう痒症、皮膚亀裂、皮膚炎(いずれも10%未満)があります。<患者さんへの指導例> 1.この薬は、PI3Kα阻害薬であり、がん化学療法後に増悪したPIK3CA遺伝子変異を有する卵巣明細胞がんに用いられます。 2.下記の症状が現れた場合は、速やかに医療機関を受診してください。 咳、息切れ、息苦しさ、発熱などが現れた場合 のどが渇く、多飲(お水をたくさん飲む)、多尿(トイレの回数が増える)、体重が減る、 疲れやすい・だるいなどが現れた場合 皮膚に発疹、発赤、乾燥、かゆみなどが現れた場合 便が泥状か、完全に水のようになる、便意切迫感がある、トイレから離れられないほど頻回の下痢などが現れた場合 手足のむくみ、靴が履きにくい、体重が増える、お腹の張り、息切れなどが現れた場合 動悸、胸の痛み、胸部の不快感、冷や汗、全身倦怠感、めまい、失神などが現れた場合 <ここがポイント!>卵巣がんは早期発見が困難で、症状が現れたときには進行していることが多いため「サイレントキラー」とも呼ばれ、婦人科の悪性腫瘍の中でもとくに治療が困難な疾患の1つです。卵巣がんは、組織学的に漿液性、類内膜、粘液性および明細胞の4つの主要な型に分類されます。このうち卵巣明細胞がんは、欧米では卵巣がん全体の約8%とまれですが、日本では約25%と高頻度に認められ、発生率に人種差が存在します。卵巣明細胞がんは、子宮内膜症を背景に発生することが古くから知られており、多くの症例がStageIで診断されます。しかし、早期発見にもかかわらず、他の組織型と比較して予後不良であることが大きな特徴です。その主要因は、卵巣がんの標準的化学療法である白金製剤をはじめとする抗がん薬に対して治療抵抗性を示すことにあります。卵巣明細胞がんの病態において、PIK3CA遺伝子の点突然変異は極めて重要な役割を果たしています。PIK3CA遺伝子変異は、患者の30~40%という高頻度で認められ、これは他の上皮性卵巣がんと比較して最も高い割合です。PIK3CA遺伝子は、細胞の増殖・生存などのコントロールにおいて中心的役割を担うPI3Kα(ホスファチジルイノシトール3-キナーゼアルファ)の触媒サブユニットをコードしています。とくにエクソン9およびエクソン20領域は変異のホットスポットとして知られ、これらの活性化変異や遺伝子増幅は腫瘍の発生・進行・維持に深く関与し、さらに薬剤耐性にも寄与すると考えられています。リソバリシブメシル酸塩水和物は、PI3KαのATP結合部位に結合してキナーゼ活性を阻害し、腫瘍増殖抑制作用を示すと考えられています。投与対象は白金系抗悪性腫瘍薬を含む化学療法歴を有する患者であり、成人には1日1回空腹時に経口投与します。本剤は、従来の治療法に抵抗性を示す卵巣明細胞がんに対する新たな治療選択肢として期待されています。化学療法歴のあるPIK3CA遺伝子変異陽性の卵巣明細胞がん患者を対象とした国際共同第II相試験(CYH33-G201試験)において、主要評価項目である盲検下独立評価委員会評価による奏効率(RECISTv1.1に基づく)は、有効性評価対象全体において34.5%(95%信頼区間[CI]:24.48~45.69)であり、95%CIの下限はヒストリカルコントロールの8%を上回ることが示されました。

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生活習慣病予防、朝と夕どちらに運動するのが効果的?

 運動を行う時間帯の違いが、健康状態に異なる影響を及ぼす可能性のあることを示唆するデータが報告された。朝に運動をしている人は、遅い時間帯に運動をしている人よりも、肥満や2型糖尿病などの有病率が低いという。米マサチューセッツ大学チャン医学部のPrem Patel氏らが3月29日、米国心臓病学会学術集会(ACC.26、3月28~30日、ニューオーリンズ)で発表した。 Patel氏はこの研究の目的を、「どんな運動でもしないよりはした方が良いことは既に分かっているが、われわれは運動を行う最適なタイミングがあると考え、その特定を試みた」と解説。そして、「朝の時間帯に運動を行える人は、心血管代謝疾患の有病率が低い傾向にあるようだ」と述べている。 この研究には、米連邦政府のサポートで行われている大規模疫学研究「All of Us」の参加者1万4,489人のデータが用いられた。研究参加者は、手首型のウェアラブルデバイスを装着して1年間にわたり生活した。この期間中、1分おきに心拍数が把握され、15分以上にわたり心拍数の上昇が続いていた場合に、運動をしていたと判定。その時間帯のパターンに基づき、参加者全体をいくつかのカテゴリーに分類した上で、疾患との関連を解析した。 疾患リスクに影響を及ぼし得る因子(年齢、性別、喫煙・飲酒習慣、睡眠時間、所得水準など)を調整した解析の結果、遅い時間に運動する習慣のある群に比較して、朝に頻繁に運動している群は、心血管代謝疾患を有する人が少なかった。例えば、肥満は35%、2型糖尿病は30%、高血圧は18%、高コレステロール血症は21%、冠動脈疾患は31%少なかった。これらの関連は、1日の総運動量とは独立したものであった。 研究者らによると、この結果は、ウェアラブルデバイスを介して長期間収集したデータに基づき、運動量と運動のタイミングを評価した初めての大規模研究の報告だという。Patel氏は、「これまでの研究は主に、運動量、運動時間、運動強度といった点に注目してきた。しかし今では米国人の3人に1人がウェアラブルデバイスを所有しているため、分単位のデータも取得できる。その結果、新たな視点で解析できる可能性が広がった」と話している。 ただし本研究は、運動をする時間帯と疾患との関連性を示しているにすぎず、朝の運動が健康の改善につながるという因果関係を示すものではない。また、仮に朝の運動がより良い健康効果をもたらすとしても、そのメカニズムは不明である。Patel氏によると、ホルモン分泌や睡眠習慣、遺伝的背景などが、本研究で観察された関連性に何らかの役割を果たしている可能性があり、さらに個人の行動や心理的側面も関係している可能性もあるという。同氏は、「朝の運動は1日を通してエネルギーレベルを高め、より健康的な食生活につながるのかもしれない」と考察を述べた上で、「あるいは単に、朝の運動を習慣としている人には、健康により注意している人が多いというだけのことかもしれない」と付け加えている。 なお、学会発表された研究結果は、査読を受けて医学誌に掲載されるまでは一般に予備的なものと見なされる。

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親のストレスが軽くなると子どもの肥満リスクが低下する

 ストレスを抱える親をサポートすることが、子どもの肥満の予防に役立つ可能性が報告された。米イェール大学医学部ストレスセンターのRajita Sinha氏らの研究によるもので、詳細は「Pediatrics」に3月6日掲載された。 この研究では、マインドフルネスのトレーニングを受けた親はストレスが低下してポジティブな感情を抱くようになり、その子どもたちの食生活が改善し、体重増加も見られなくなった。論文の上席著者であるSinha氏は、「ストレスが小児肥満の発症に大きく影響することは、すでに知られていた。しかし驚いたことに、親がストレスにうまく対処できるようになると、子育ての質が向上して、子どもの肥満リスクが低下した」と語っている。 論文中の研究背景によると、肥満の親の子どもは肥満リスクが高いことが、先行研究で示されている。研究者らによると、親のストレスが子どもの肥満の隠れた要因である可能性も指摘されており、ストレスを抱えた親は子どもの食事の調理にあまり手をかけず、ファストフードやジャンクフードに頼りがちだという。また、現行の小児肥満予防プログラムは主に栄養と運動に関する教育に重点を置いているが、その教育が持続的な改善をもたらすことは多くないとのことだ。 今回の研究では、2~5歳の子どもを持つ過体重または肥満の親をランダムに2群に分け、1群にはストレスコントロールと不健康な行動の回避に焦点を当てたマインドフルネス・トレーニングに加え、健康的な食生活と運動に関する教育介入を行った。もう一方の群(対照群)には健康的な食生活と運動に関する教育のみを行った。介入期間は両群ともに12週間で、週1回、最長2時間程度、グループ単位で実施された。この期間中、親のストレスレベルと子どもの体重をモニタリングし、また介入終了後も3カ月間、子どもの体重や食生活の変化を観察した。 解析対象となった親は114人で、平均年齢34.6±5.8歳、母親が95.6%、BMIは34.8±6.2であり、子どもは平均月齢43.5±13.5月で女児が52.6%だった。解析の結果、マインドフルネス・トレーニングを受けた群では、親のストレスが軽減して子育てを肯定的に捉えるように変化し、さらに子どもの不健康な食生活が改善された。しかし対照群ではこのような変化が認められなかった。 介入開始から介入終了後3カ月にかけて、親がマインドフルネス・トレーニングを受けた群では、BMIが85パーセンタイル(米疾病対策センター〔CDC〕による小児の過体重のカットオフ値)以上の子どもの割合には、有意な変化がなかった。それに対して対照群の子どもでは、その割合が22%から39.6%へと有意に増加していた(オッズ比6.04〔95%信頼区間1.06~34.4〕)。 Sinha氏は、「幼い子どもの親自身が、マインドフルネスなどによりストレスをコントロールする方法を身に付け、健康的な食生活と運動を実践することが、親のストレスによる体重増加という悪影響から子どもたちを守ることにつながるようだ」と述べている。

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心血管リスクが高い女性は骨折リスクも高い

 女性では心臓の健康状態が骨折のリスクと関連していることを示すデータが報告された。米テュレーン大学のRafeka Hossain氏らの研究によるもので、詳細は「The Lancet Regional Health-Americas」に3月27日掲載された。心血管イベントリスクが高い女性は、大腿骨近位部骨折のリスクもほぼ2倍に上るという。 論文の筆頭著者であるHossain氏は、「これまでの研究でも心血管疾患と骨折リスクの関連性が示唆されていたが、大腿骨近位部骨折のリスクとの関連の強さに驚いた」と述べている。また、「心血管イベントと骨折はいずれも非常に発生頻度が高く、治療費も高額となる」とし、「両者のリスクを抑制することで高齢者の生活の質(QOL)を向上させられるのではないか」と語っている。 この研究では、現在進行中の閉経後の女性を対象とする大規模観察研究「女性の健康イニシアチブ(WHI)」の参加者2万1,300人を、心血管イベントリスクの高さに基づき4群に分類し、骨折の新規発生との関連を検討した。心血管イベントリスクの評価には、米国心臓協会(AHA)が2023年に発表した、向こう10年間または30年間の心血管イベントリスクの高さを予測するツール「PREVENT」という計算式を用いた。 その結果、心血管イベントのリスクが最も高い(向こう10年で20.0%以上)と予測された群は、最もリスクが低い(同5.0%未満)群と比較して、大腿骨近位部骨折のリスクが93%高いことが明らかになった(ハザード比〔HR〕1.93〔95%信頼区間1.55~2.42〕)。心血管イベントリスクが2番目に高い(向こう10年で7.5~19.9%)群も、大腿骨近位部骨折リスクが33%高かった(HR1.33〔95%信頼区間1.14~1.56〕)。また、大腿骨近位部骨折発生までの期間が、心血管イベントリスクが最も低い群は中央値20.3年であるのに対して、心血管イベントリスクが最も高い群は同15.0年と短かった。 これらの結果に基づきHossain氏は、「心臓のための健康管理と骨のための健康管理は、切り離して考えるべきではない」と述べている。研究者らによると、慢性炎症、カルシウム代謝の変化、動脈硬化による骨の血流低下など、心臓と骨に悪影響を及ぼす可能性のある生物学的プロセスが数多く存在するという。閉経後のエストロゲンレベルの低下も、心血管疾患と骨量減少のリスクの双方を高め得るとのことだ。 一方、心血管イベントや骨折の予防についてHossain氏は、「心血管に対して保護的に働く多くの因子、例えば習慣的な運動、カルシウムとビタミンDを豊富に含む、バランスの取れた食事、禁煙、糖尿病や高血圧などの治療は、骨を守るのにも役立つ」と解説。また、「骨折リスクを抑制する効果的な治療法は多々ある。よって、心血管イベントリスクが中等度以上と判定された場合、特に閉経後の女性では、骨の健康状態に関するスクリーニング検査を受ける必要性について、医師に相談してみる価値があるのではないか」と付け加えている。ただし研究者らは、心血管イベントのリスクスコアを骨折リスク評価の標準的ツールに組み込むには、さらなる研究による検証が必要であることを強調している。

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急性腰痛・坐骨神経痛【日常診療アップグレード】第55回

急性腰痛・坐骨神経痛問題35歳女性。腰痛を主訴に来院した。2日前、3歳の子供を持ち上げた際、右下肢から右足にかけて放散する腰痛を自覚した。鋭い電撃痛で右足のしびれや脱力感もある。痛みのため、熟睡できないと訴えている。尿失禁や便失禁はない。既往歴に糖尿病があるが、コントロールは良好である。バイタルサインは正常で、右腰部の脊柱外側に圧痛がある。右下肢を伸展しながら30度まで挙上すると、右足に放散する痛みが生じる。股関節屈曲、膝関節伸展、足の背屈と底屈、および右足の親指の背屈における筋力は保たれている。下肢全体の感覚は異常がなく、下肢の反射は左右対称で正常である。NSAIDsを処方し、1週間後のMRI検査をオーダーした。

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短時間でも高強度の運動で慢性疾患リスクは低下する

 健康のために、長時間の運動は必ずしも必要ないようだ。新たな大規模研究で、毎日、ほんの数分でも強めの運動を取り入れるだけで、主要心血管イベント(MACE)や心房細動、2型糖尿病などの慢性疾患リスクを下げるのに役立つ可能性が示された。中南大学(中国)湘雅公衆衛生学院のMinxue Shen氏らによるこの研究結果は、「European Heart Journal」に3月29日掲載された。 運動時間が同じである場合、高強度の運動は中強度の運動よりも健康効果が高いことが知られている。しかし、高強度の運動がさまざまな慢性疾患にどの程度の効果があるのか、また、運動の強度と量のどちらが重要なのかは明確になっていない。 Shen氏らは今回、UKバイオバンク参加者を対象に、総運動量に占める高強度運動の割合(%VPA)と8種類の慢性疾患および死亡との関連を検討した。参加者のうち9万6,408人(平均年齢61.9歳、女性56.3%)の運動量はデバイスで測定されており、37万5,730人(自己申告群、平均年齢56.2歳、女性52.2%)は自己申告により運動量が報告されていた。慢性疾患は、MACE、心房細動、2型糖尿病、免疫介在性炎症性疾患、代謝機能障害関連脂肪性肝疾患(MASLD)、慢性呼吸器疾患、慢性腎臓病(CKD)、認知症を対象とした。 デバイス測定データのある参加者の追跡期間中央値は8.8~8.9年で、この間にMACEが9,366件、心房細動が4,123件、2型糖尿病が2,210件、免疫介在性炎症性疾患が1,721件、MASLDが1,706件、慢性呼吸器疾患が2,873件、CKDが2,565件、認知症が942件、死亡が4,219件発生した。解析の結果、%VPAの増加に伴い全ての慢性疾患リスクが低下する非線形の逆相関が認められた。この関連は、総運動量で調整後も一貫していた。また、%VPAが4%超の群では0%の群と比較して、慢性疾患のリスクが約29%(心房細動、ハザード比0.708)~63%(認知症、同0.368)低かった。さらに、関節リウマチや乾癬などの免疫介在性炎症性疾患では、運動強度が特に重要で総運動量の影響は小さい一方、2型糖尿病やMASLD、CKD、全死因死亡では、総運動量と運動強度の両方が疾患リスクに比較的バランス良く寄与していることが示された。 Shen氏は、「高強度の運動は、低強度の運動では十分に得られない、体内の特定の反応を引き起こすようだ」と話す。同氏によると、息が上がる程度の運動は、心臓の働きを効率化し、血流を改善し、炎症を抑えるのに役立つという。また、脳の健康にも良い影響を与える可能性があり、これが認知症リスクの低下につながると考えられる。 ただし、研究グループは、「高強度の運動は、特に高齢者や持病のある人にとっては安全とは限らない。その場合でも、運動量を少し増やすだけでも効果はある。それぞれの状況に合わせた運動が大切だ」と述べている。

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夜勤は2型糖尿病の管理を難しくする

 2型糖尿病患者にとって、夜勤が疾患管理の支障になっていることを示唆する実態が報告された。英キングス・カレッジ・ロンドン(KCL)のRachel Gibson氏らが、糖尿病を有する医療従事者を対象に行った研究の結果であり、詳細は「Diabetic Medicine」に2月24日掲載された。 この研究により、糖尿病を有する医療従事者(主に看護師と助産師)では、夜勤中には血糖変動の幅が大きくなることが明らかになった。研究者らは、この原因として、夜勤中には健康的な食事を取ることが難しい点を指摘している。論文の筆頭著者であるGibson氏は、「研究参加者が医療従事者であるにもかかわらず、夜間に健康的な食事を取る環境になく、個別の食事指導を受ける機会もない、というのは驚くべきことだ。彼らは、糖尿病管理のために『健康的な食生活を送るように』と医師からアドバイスを受けていることだろう。しかし夜間の食事の選択肢が限られていると、それを実践できないことがある」と述べている。 この研究は英国の医療従事者37人を対象として、10日間にわたり連続血糖測定器と活動量計を装着して勤務してもらうとともに、食事・睡眠日誌をつけてもらった。研究参加者の主な特徴は、平均年齢48.2±7.2歳、女性89.2%で、BMI33.8±5.8、糖尿病罹病期間5.4±4.1年、自己申告によるHbA1c7.2±3.1%、夜勤を含む勤務歴15.6±11.0年。 解析の結果、夜勤日には血糖変動を示す指標の一部が、夜勤明けの休日よりも有意に大きかった(平均絶対血糖変化量〔mean absolute glucose change;MAG〕はP=0.029)。エネルギー摂取量は夜勤日に最高値を示し(2,199±648kcal)、また甘い菓子類からのエネルギー摂取量の割合が、夜勤日は休日よりも高かった(13.4±12.0対7.8±11.8%〔P=0.013〕)。食事の摂取回数は夜勤日が最多であり、休日は最も少なかった(7.0±2.2対3.4±1.6回〔P<0.001〕)。 研究者らによると、夜勤中にも利用可能な自動販売機や24時間営業のカフェでは、一般的に糖分や脂肪分の多い食品が販売されており、健康的な選択肢はほとんどないという。そしてシフト勤務者の多くは、食事を作り保存しておくという時間の確保が難しく、夜勤時にこのような手軽な食品に頼らざるを得ない状況にあるとのことだ。 この研究ではまた、夜勤日には日勤日や休日よりも覚醒時間が長いことも分かった。具体的には、日勤日の覚醒時間が17.1±1.2時間、休日は15.8±1.3時間であるのに対して、夜勤日は22.2±2.4時間だった(P<0.001)。研究者らは、このような覚醒時間の変動も血糖コントロールに影響を与える可能性があるとしている。 Gibson氏は、「われわれの研究結果は、職業がその人の行動や食生活に、いかに大きな影響を及ぼすかを明らかにしている。それにもかかわらず、多くの臨床医は患者の就労状況をあまり把握していない。2型糖尿病を診る医師は、患者の就労状況を考慮して治療にあたるべきではないか」と述べている。

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超加工食品の摂取量が心臓発作や脳卒中、死亡リスクなどと関連

 工業的に多くの加工が加えられている「超加工食品」と呼ばれる食品の摂取量が、心筋梗塞や脳卒中、およびそれらによる死亡のリスクと関連していることが報告された。超加工食品を1日に平均9回分摂取する人は1回分摂取する人に比べて、7割近くハイリスクだという。米テキサス大学ヒューストン健康科学センターのAmier Haidar氏らの研究によるもので、詳細は「JACC Advances」に3月17日掲載された。 超加工食品は、未加工の食品から工業的に抽出された物質を用いて製造される。飽和脂肪酸やでんぷん、添加糖などを多用して味が整えられ、さらに見た目をよくするための加工が施され、保存性を高めるといった目的で多くの添加物も使用されている。例としては、個別包装された焼き菓子、砂糖入りのシリアル、そのまま食べられるか、温めるだけで食べられる食品、ハムやソーセージなどの加工肉などが挙げられる。これら超加工食品の摂取量が多い食生活は不健康な食生活になりやすいと考えられ、健康リスクを高める可能性がある。Haidar氏らはこの点について、米国で行われた動脈硬化に関する疫学研究(MESA)のデータを用いて検討した。 MESAの参加者は、明らかな心血管疾患のない45~84歳の米国成人。データ欠落のない6,531人(女性52.6%)を研究参加時の食事調査で把握された超加工食品の摂取量に基づき5群に分けると、最低五分位群は1日の超加工食品摂取量が1.1回分であったのに対して、最高五分位群は9.3回分摂取していた。 8万3,870人年の追跡で、710件の心血管イベント(非致死性心筋梗塞、冠動脈疾患死、脳卒中、脳卒中死、蘇生された心停止)の発生が確認された。心血管イベントリスクに影響を及ぼし得る因子(年齢、性別、人種、教育歴、収入、喫煙・運動習慣、摂取エネルギー量、血圧、血清脂質、糖尿病の既往など)を調整後、超加工食品摂取量の最低五分位群に比べて最高五分位群のイベントリスクは67%高いことが分かった(ハザード比〔HR〕1.668〔95%信頼区間1.196~2.325〕)。また、1日に超加工食品を1回分多く摂取するごとに、リスクが5%上昇するという関連も認められた(HR1.052〔同1.010~1.094〕)。 この結果についてHaidar氏は、「超加工食品は手軽に食べられ、便利な食品として利用されることが多い。しかしわれわれの研究結果は、適切な範囲の摂取にとどめるべきであることを示唆している」と語っている。また同氏は重要なポイントとして、「今回の研究では心血管イベントのリスクを左右する多くの因子を考慮に入れた。例えば、摂取エネルギー量や食事全体の質、肥満、高血圧、糖尿病などだ。それらの影響を考慮したにもかかわらず、超加工食品の摂取量の多さとイベントリスクとの関連の強さはほとんど変わらなかった」と付け加えている。 なお、本研究のみでは、超加工食品が心血管イベントリスクを高める理由を特定することはできない。ただし先行研究からは、超加工食品は高カロリーで、糖や塩、脂肪が多く含まれていることが示されている。研究者らは、超加工食品のこのような特徴が、体重増加、炎症、体脂肪の蓄積につながる可能性があると述べている。

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抗菌薬が腸内環境を変える期間は想像以上に長い

 抗菌薬は、危険な感染症を治療する重要な薬として知られている。しかし、新たな研究で、抗菌薬はこれまで考えられていた以上に長期間にわたり身体に影響を残す可能性が示された。約1万5,000人の成人を対象とした研究で、特定の抗菌薬が腸内マイクロバイオームに対して、最長で約8年にわたり影響を及ぼすことが明らかになった。ウプサラ大学(スウェーデン)のGabriel Baldanzi氏らによるこの研究結果は、「Nature Medicine」に3月11日掲載された。 この研究では、スウェーデンの3つの大規模コホート研究のデータを統合して、8年間の抗菌薬の使用歴と腸内マイクロバイオームとの関連を検討した。対象者に処方された抗菌薬は、スウェーデン処方薬レジストリを用いて把握した。対象者の総計は1万4,979人で、過去8年間で1回以上の抗菌薬使用歴があった割合は69.7〜73.7%であった。参加者から便サンプルを採取し、さらに生活習慣や食事に関する詳細なアンケートにも回答してもらった。 他の使用薬剤や腸内マイクロバイオームに影響を与える既知の因子を調整した多変量解析の結果、腸内マイクロバイオームの多様性の低下と最も強く関連していたのは抗菌薬の使用後1年未満であったが、1〜4年前および4〜8年前の使用でも関連は有意であった。抗菌薬の種類別に見ると、クリンダマイシン、フルオロキノロン系、フルクロキサシリンは、腸内マイクロバイオームの組成への影響が大きく、菌種の存在量との関連の大部分を占めていた。これらの抗菌薬の4〜8年前の使用は、解析対象菌種の10〜15%で存在量の変化と関連していた。一方、ペニシリンV、広域ペニシリン、ニトロフラントインは、数種類の菌種の変化とのみ関連していた。4〜8年前の1コースの抗菌薬の使用でも、未使用と比較すると、腸内マイクロバイオームの組成の変化と関連していた。 論文の筆頭著者であるウプサラ大学のGabriel Baldanzi氏は、「4〜8年前の抗菌薬の使用が、現在の腸内マイクロバイオームの組成と関連していることが分かった。特定の抗菌薬は、1コースの治療でもその痕跡が残る」と述べている。 腸内マイクロバイオームのバランスは、人の健康にとって極めて重要である。過去の研究でも、抗菌薬の使用量が多いほど、2型糖尿病、心疾患、肥満、重篤な消化管感染症、さらには大腸がんのリスクが高まることが報告されている。こうした長期的な腸内環境の変化が、その一因ではないかと考えられている。 研究を率いたウプサラ大学分子疫学分野のTove Fall氏は、「今回の結果は、同等の効果を持つ抗菌薬が2種類ある場合には、腸内マイクロバイオームへの影響がより小さい方を選択するなど、今後の処方指針に役立つ可能性がある」と述べている。 ただし研究グループは、医師に処方された薬の服用を自己判断で中止すべきではないと強調し、「重要なのは、本当に必要な場合に適切な抗菌薬を選択し、長期的に体内の生態系を守ることだ」としている。

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医師の働き方改革後、労働時間と収入はどう変わった?/医師1,000人アンケート

 ケアネットは2026年3月、会員医師1,000人を対象に「年収に関するアンケート」を実施した。最後の質問では、2024年4月からスタートした「医師の働き方改革」以降で、年収と労働時間がどう変化したかについて尋ねた。年収は「変化なし」7割、アップ1割、ダウン2割 2024年度以降の年収の変化では、「変わらない」が73%、「増えた」が9%、「減った」が18%だった。年代別では、「年収が増えた」の割合は35歳以下では14%、36~45歳では16%だった一方で、56~65歳は5%、66歳以上は1%と、年代が上がるにつれて減る傾向だった。若手は職位変化や専門医取得などの昇給機会が多いのに対し、ベテラン医師はそうした機会が少なく、体力面からアルバイト・副業なども減らす傾向にあることが背景にあるようだ。同様に「年収が減った」との回答割合も高齢層になるほど高かった。 診療科別(回答数30人以上の科)では、小児科は「収入が減った」の割合が33%と高く、消化器内科も25%と4分の1が減収と回答した。一方、「収入が増えた」の割合は呼吸器内科が21%と最も高く、続いて糖尿病・代謝・内分泌科の19%であった。労働時間、「減った」のは大学病院勤務が最多 労働時間の変化では、「変わらない」75%、「増えた」11%、「減った」14%と、年収とほぼ同様の割合という結果だった。年代別では、35歳以下では「減った」が24%、「増えた」が7%と労働時間の減少傾向が見られたが、36~45歳、46~55歳では「増えた」と「減った」が共に1割強と拮抗しており、若手の労働時間減少分の一部を中堅層が肩代わりしている状況が推察された。 男女別では、「労働時間が減った」割合は男性13%に対し女性21%と、女性のほうが減った割合が高かった。勤務先別では、大学病院勤務者が「減った」の割合が16%と最も高く、医師の働き方改革の実行の度合いが伺える結果となった。「年収アップで労働時間減」の理想型はわずか1% 年収と労働時間の変化の組み合わせでは、「いずれも変化なし」が63%と最も多く、医師の働き方改革が現場に与えた影響は、さほど大きくはない状況がみえた。「労働時間は減ったが、年収も減った」パターンが8%、「労働時間は増えたが、収入も増えた」パターンが4%、「労働時間は増えたのに、年収は減った」という厳しいパターンも2%存在した。理想的な「年収は増え、労働時間は減った」という医師はわずか1%であった。 収入や労働時間に関する自由回答では、収入増加のための行動として投資(有価証券、不動産など)、転職、アルバイト増加(当直、産業医など)が挙げられた。また、節税対策やふるさと納税の活用もみられた。「年収がアップしても税金が増えるだけなので、モチベーションが湧きにくい」という不満の声も複数寄せられた。総じて30~40代の医師は転職や自己研鑽、専門医取得などで収入アップを図るという声が目立ったが、50代以降では「現状で満足」「体力的に厳しいのでバイトを減らす」といった声もあった。「大学病院の給料をもっと上げるべき」「定年後の再任用で給与が激減するのを緩和してほしい」といった提言・要望も目立った。第1回のアンケート結果で紹介したように、この10年間、医師の給与はほとんど上がっておらず、物価高が続く中、さまざまな道を模索する医師の姿がうかがえる結果となった。アンケート概要対象:ケアネット会員医師1,000人(男性883人、女性117人)実施日:2026年3月2〜9日手法:インターネット調査 その他、詳細な結果については、以下のページに掲載している。医師の年収に関するアンケート2026【第4回】働き方改革による変化

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治療抵抗性の皮膚筋炎、新規経口TYK2/JAK1阻害薬brepocitinibが有効/NEJM

 brepocitinibは、皮膚筋炎への関与が知られているサイトカインシグナル伝達を遮断するfirst-in-classの経口選択的チロシンキナーゼ2(TYK2)/ヤヌスキナーゼ1(JAK1)阻害薬。米国・ハーバード大学医学大学院のRuth Ann Vleugels氏らは「VALOR試験」において、従来の治療に抵抗性の皮膚筋炎の成人患者では、brepocitinibはプラセボと比較して複合筋炎指数を有意に改善するほか、皮膚疾患の重症度、グルココルチコイドの漸減、機能障害などに関して有意な有益性を示すことを明らかにした。研究の成果は、NEJM誌オンライン版2026年3月28日号(同31日更新)に掲載された。20ヵ国の第III相無作為化プラセボ対照比較試験 VALOR試験は、20ヵ国90施設で実施した第III相二重盲検無作為化プラセボ対照比較試験であり、2022年10月~2024年6月に参加者のスクリーニングを行った(Priovant Therapeuticsの助成を受けた)。 対象は、18~75歳、欧州リウマチ学会/米国リウマチ学会(EULAR/ACR)の特発性炎症性筋疾患(definiteまたはprobable)の分類基準(2017年)と皮膚筋炎の亜分類基準を満たし、活動性の筋疾患(MMT-8スコア[0~150点、点数が低いほど筋力が低下]80~142点)および皮膚疾患(CDASI-Aスコア[0~100点、点数が高いほど疾患活動性が重度]6点以上)を有し、少なくとも1つの従来治療(全身グルココルチコイド療法、従来型DMARD、静注免疫グロブリン療法など)で効果が不十分な患者であった。 被験者を、brepocitinib 30mg、同15mg、プラセボを、1日1回経口投与する群に、1対1対1の割合で無作為に割り付けた。投与期間は52週であった。併せて標準治療を継続し、グルココルチコイドは漸減した。 主要エンドポイントは、52週の時点における、筋炎の活動性に関する6つの主要な指標を統合した加重複合筋炎指数である総合改善スコア(TIS、範囲:0~100点、点数が高いほど改善度が高い)の平均値とした。30mg群でTISが有意に改善 241例(平均年齢50.6歳、女性77.6%)を登録し、brepocitinib 30mg群に81例、同15mg群に81例、プラセボ群に79例を割り付けた。ベースラインの疾患活動性は、患者の81.3%が中等度~重度であり、皮膚疾患(平均[±SD]CDASI-Aスコア19.8[±11.5]点)、筋疾患(平均MMT-8スコア122.6[±15.9]点)とも高い活動性を示した。210例(87.1%)が52週の投与期間を完了した。 52週の時点で、平均TISは、brepocitinib 30mg群が46.5点、同15mg群が37.5点、プラセボ群は31.2点であった。30mg群とプラセボ群のTISの最小二乗平均差は15.3点(95%信頼区間[CI]:6.7~24.0、p<0.001)と有意差を認め、15mg群とプラセボ群の最小二乗平均差は6.3点(95%CI:-2.4~14.9)であった。 9項目の主な副次エンドポイントはすべて、プラセボ群に比べ30mg群で有意に優れた。たとえば、52週時にCDASI-Aスコアの40%以上かつ4点以上の改善を達成した患者の割合の最小二乗平均差は17%(95%CI:1~32、p=0.04)、52週時にTIS≧40点で、かつ経口グルココルチコイドの使用が最小限または非使用の患者の割合の最小二乗平均差は26%(95%CI:11~40、p<0.001)、機能障害の指標であるHAQ-DIスコアのベースラインから52週目までの変化量の最小二乗平均差は-0.30点(95%CI:-0.49~-0.10、p=0.004)であった。重篤な感染症が10%に 52週の投与期間に、重篤な有害事象はbrepocitinib 30mg群で13例(16%)、プラセボ群で10例(13%)に発現した。重篤な感染症の発生頻度は、プラセボ群に比べ30mg群で高かった(8例[10%]vs.1例[1%])。投与中止に至った有害事象は、30mg群で5例(6%)、プラセボ群で9例(11%)に認めた。 とくに注目すべき有害事象として、30mg群で心血管系が1例(1%)、ウイルスの再活性化が4例(5%)、ALT値またはAST値の上昇が1例(1%)にみられた。試験期間中に死亡の報告はなかった。二重の利点をもたらす可能性を示唆 著者は、「治療効果の大きさは、全身性の筋炎活動性、機能障害、皮膚疾患活動性を含む複数の領域において、確立された臨床的に意義のある最小変化量(MCID)の閾値を上回った」「臨床効果は4週目までに現れ、52週間の試験期間を通じて持続した」としている。 また、「長期の全身グルココルチコイド療法は、重大な毒性(感染症、糖尿病、心血管疾患、骨粗鬆症のリスク増大など)を伴うため、その減量は重要な治療目標とされる」とし、「本試験の知見は、brepocitinibが疾患活動性を抑制すると同時に、グルココルチコイドへの曝露を低減するという二重の利点をもたらす可能性を示唆する」と指摘している。

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食後高血糖がアルツハイマー型認知症のリスクと関連

 食後高血糖がアルツハイマー型認知症のリスクを高める可能性があることを示すデータが報告された。この関連性は、全脳体積や白質の変化では説明できないものだという。英リバプール大学のAndrew C. Mason氏らの研究の結果であり、詳細は「Diabetes, Obesity and Metabolism」に12月12日掲載された。 疫学研究により、高血糖、2型糖尿病、インスリン抵抗性などが、認知症リスクの上昇を含む脳の健康状態の悪化と関連することが示されている。しかし、そのメカニズムには不明点が多く、直接的な因果関係が存在するかどうかも明らかでない。一方、近年では空腹時血糖値、空腹時インスリン値、糖負荷2時間後血糖値(2hPG)といった糖代謝関連指標について、遺伝的背景との関係を検討することが可能となってきている。これにより、糖代謝異常と認知症との関連や、その基盤となるメカニズムをより詳細に解析できる環境が整いつつある。こうした背景の下、Mason氏らは、英国の一般住民を対象とした大規模疫学研究「UKバイオバンク」のデータを用いた検討を行った。 この研究では、観察研究の弱点である残余交絡や逆因果関係の影響を受けにくい2標本メンデルランダム化解析(2SMR)を実施した。解析対象は35万7,883人で、平均年齢56.9±8.0歳、女性54%、BMI27.4±4.8、脳卒中の既往2.6%だった。遺伝的素因に関して、インスリン抵抗性関連の53変異、空腹時血糖値関連の109変異、空腹時インスリン値関連の48変異、2hPG関連の15変異を採用し、変異と転帰との関連は10個の主成分(PCs)を調整した上で解析した。 2SMR解析の結果、2hPGが高いことが、アルツハイマー型認知症のオッズ比(OR)上昇と関連していた。具体的には、主解析に用いた逆分散重み付け法(IVW)でOR1.69(95%信頼区間1.38~2.07)、感度分析に用いた加重中央値推定法(WME)でOR1.66(同1.25~2.20)だった。つまり、2hPGの高さは、全脳体積や海馬体積の萎縮などとは独立して、アルツハイマー型認知症のリスクを高める可能性が示唆された。また2hPGは、認知症全体(あらゆる原因による認知症)との関連も有意だった(IVWでのOR1.23〔1.06~1.42〕)。ただし血管性認知症との関連は非有意だった。 2hPG以外に検討した、インスリン抵抗性、空腹時血糖値、空腹時インスリン値についてはいずれも、全脳体積、海馬体積、白質高信号病変体積との関連が見られなかった。なお、2hPGとアルツハイマー型認知症との関連の再現性をゲノムワイド関連解析(GWAS)で検討した結果、この関連は再現されなかった。 Mason氏は、「われわれの研究結果は、血糖値の全体的な管理だけでなく、特に食後の血糖値を管理することの重要性を示している。この知見は、今後のアルツハイマー型認知症予防戦略の確立に役立つのではないか」と述べている。 なお、1人の著者がアストラゼネカ社と利益相反(COI)に関する情報を開示している。

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米国のCOVID-19死亡数、過小評価の可能性

 新型コロナウイルス感染症(COVID-19)パンデミック初期における米国での実際の死亡数は、公式発表よりも大幅に多かった可能性が新たな研究で示唆された。2020年から2021年にかけて、COVID-19関連死亡のうち、最大で約15万5,000人分が見逃されていた可能性が示されたという。同期間に死亡診断書に記録されたCOVID-19による死亡数は約84万人であることから、今回の推計に基づくと、関連死亡の約19%がカウントされていなかったことになる。米ミネソタ大学社会学准教授のElizabeth Wrigley-Field氏らによるこの研究の詳細は、「Science Advances」3月20日号に掲載された。 研究グループによれば、2020年3月から2021年12月にかけてのパンデミック初期には、病院内で死亡した患者のほぼ全例が新型コロナウイルスの検査を受けており、また、この期間の病院内における内因死の超過死亡数は、COVID-19による院内死亡数と概ね一致していた。これらの点を踏まえてWrigley-Field氏らは、機械学習アルゴリズムを用いて病院内で確認されたCOVID-19死亡の特徴を学習させ、そのモデルを肺炎や糖尿病など別の死因として記録された病院外死亡に適用することで、見逃されたCOVID-19による死亡数を推定した。パンデミック初期には、病院外で死亡した多くの人が新型コロナウイルスの検査を受けていなかった。 その結果、この期間におけるCOVID-19による死亡数は、公式発表では84万251人であったが、研究グループの推計では99万5,787人であった。これは、死亡数が公式発表より19%、人数にすると15万5,536人多いことに相当する。また、このような見逃された死亡が多く見られたのは、ヒスパニック系やネイティブ・アメリカン、アラスカ先住民、アジア系、黒人、アラバマ州、オクラホマ州、サウスカロライナ州などの南部および南西部の地域、さらに世帯収入が低く住民の健康状態が不良な郡であった。 専門家は、こうした差は医療アクセスの問題を反映していると指摘している。本研究には関与していない、米バージニア・コモンウェルス大学、社会・健康センターのSteven Woolf氏は、「社会的に周縁に置かれた人々は、医療にアクセスできないために、依然として不均衡に高い割合で死亡している」とAP通信に語った。 パンデミック初期には、特に病院外での検査体制が限られており、自宅で使える検査キットも普及していなかった。そのため、診断を受けることなく死亡した人もいた。また、地域によっては、死因調査を選挙で選ばれた検視官が担っているが、そうした検視官は法医学専門医と同等の訓練を受けていない場合もある。さらに、家族が死因としてCOVID-19の記載を望まなかったケースや、死後に検査が実施されなかったケースもあった。 論文の上席著者である米ボストン大学グローバルヘルス分野のAndrew Stokes氏は、「特に大都市以外では、時代遅れの死因調査制度が正確な死亡数の把握を妨げた主な要因の一つだ」と述べている。 米疾病対策センター(CDC)によると、パンデミックの発生以降、米国でのCOVID-19による死亡数は120万人を超えており、その3分の2以上が2020年と2021年に集中しているという。パンデミックによる正確な死亡数をめぐっては、オンライン上で誤情報が拡散したこともあり、過大評価か過小評価かを含めて広く議論されている。

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腹部脂肪は心不全リスクと関連/AHA

 心不全リスクを知りたいのなら、BMIではなく腹部脂肪に注目する必要があるようだ。新たな研究で、腰回りに蓄積された脂肪は、身長と体重から算出されるBMIよりも心不全リスクとの関連が強いことが明らかになった。国立陽明交通大学(台湾)のSzu-Han Chen氏らによるこの研究結果は、米国心臓協会(AHA)の疫学・生活習慣科学セッション(EPI/Lifestyle Scientific Sessions 2026、3月17~20日、米ボストン)で発表された。Chen氏は、「この結果は、体重は正常範囲でも心不全を発症する人がいる理由を理解する手がかりになる」と述べている。 この研究では、ミシシッピ州ジャクソンで行われている心臓病の継続的研究(Jackson Heart Study)の参加者である1,998人のアフリカ系米国人を対象に、2016年12月31日まで追跡し(中央値6.9年)、腹部脂肪と心不全リスクとの関連と、その関連に炎症がどの程度関与しているかを検討した。試験参加時の年齢は35~84歳(平均年齢58歳)で、女性が36%を占めており、心不全を有する者はいなかった。腹部脂肪の指標として、体重、BMI、ウエスト周囲径、ウエスト身長比を用いた。また、血液サンプルを用いて、炎症性の指標である高感度C反応性蛋白(hs-CRP)を測定した。 追跡期間中に112人が心不全を発症した。解析の結果、過剰な腹部脂肪は心不全リスクの上昇と関連していた。具体的には、ウエスト周囲径が大きい場合、心不全リスクは31%、ウエスト身長比が高い場合、同リスクは27%上昇した。一方、BMIは心不全リスクと関連していなかった。また、hs-CRP値が高い人は心不全を発症する傾向が強いことも示された。さらに、腹部脂肪と心不全リスクとの関連のうち、約4分の1~3分の1は炎症によって説明された。 Chen氏は、「ウエスト周囲径や炎症の状態をモニターすることで、医師はリスクの高い人を早期に特定でき、症状出現前に心不全の発症を減らす予防策に重点を置くことができる可能性がある」と説明している。 今回の研究成果をレビューした、米ノースウェスタン大学心血管疫学分野教授のSadiya Khan氏は、「この研究は、ウエスト周囲径などの中心性肥満の指標を日常の予防医療に取り入れることの重要性を示している。中心性肥満などの心不全の上流要因を理解することは、心不全リスクを認識し、修正する上で重要だ」と述べている。 研究グループは今後、腹部脂肪や炎症が心不全にどのように影響を及ぼすのか、炎症の抑制が予防に役立つのかどうかを調べる研究が必要との見方を示している。 なお、学会発表された研究結果は、査読を受けて医学誌に掲載されるまでは一般に予備的なものと見なされる。

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