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1日1回経口投与のzenagamtide、2型糖尿病の血糖改善効果は?/Lancet

 2型糖尿病患者において、1日1回経口投与のzenagamtide(6、25、50mgの3用量ともに)はプラセボと比較して、ベースラインから36週までのHbA1c変化量において、臨床的に意義のある改善がみられ、その差は統計学的にも有意であった。安全性および忍容性プロファイルは、他のGLP-1受容体作動薬およびアミリン受容体作動薬と同程度であった。米国・テキサス大学サウスウェスタン医療センターのPablo Mora氏らが、36週の第II相多施設共同無作為化並行群間二重盲検プラセボ対照用量設定試験の結果を報告した。zenagamtide(旧称amycretin)は、GLP-1受容体、アミリン受容体、カルシトニン受容体に作用する単分子ペプチド作動薬である。2型糖尿病を伴わない過体重または肥満者を対象とした初期の臨床試験では、皮下投与および経口投与の両製剤について評価が行われ、いずれも2型糖尿病患者を対象とした第II相の用量反応試験における検討を支持する知見が示されていた。Lancet誌2026年8月15日号掲載の報告。1日1回経口投与の有効性と安全性に関する用量反応試験(6、25、50mg) 2型糖尿病の成人患者を対象に、プラセボと比較したzenagamtideの1日1回経口投与の有効性と安全性に関する用量反応関係を検討する試験は、11ヵ国(ブルガリア、クロアチア、ドイツ、ギリシャ、ハンガリー、日本、ポーランド、ルーマニア、スロバキア、スペイン、米国)の83の病院およびクリニックで行われ、3週のスクリーニング期間、36週の投与期間、4週のフォローアップ期間で構成された。 対象は、2型糖尿病(HbA1c値7.0~10.0%[53~86mmol/mol])の成人(18~75歳)で、SGLT2阻害薬投与の有無を問わずメトホルミン安定用量で治療を受けている患者とした。BMI値は23.0以上50.0未満を適格とした。 被験者は、無作為化・治験薬管理システムを用いて、1日1回経口投与のzenagamtide群またはプラセボ群に5対1の割合で割り付けられ、さらに3つの用量群(6、25、または50mg)のいずれかに1対1対1の割合で無作為に割り付けられた。プラセボ群に割り付けられた被験者も同様に、各投与スケジュールに対応する適合プラセボ投与群に割り付けられた。無作為化では、スクリーニング時のHbA1c値(8.5%未満または8.5%以上)、居住国(日本またはその他)で層別化も行われた。 zenagamtide経口投与は1.5mgで開始し、維持用量(6、25、50mg)に到達するまで4週ごとに漸増した。被験者および試験スタッフは、各用量群においてプラセボまたはzenagamtideの割り付けを盲検化された。 主要評価項目は、ベースラインから36週までのHbA1c変化量とした。主要評価項目は、無作為化された全被験者を対象とし、レスキュー薬を投与することなく治験薬の投与を継続している間に収集されたデータに基づくefficacy estimandを用いて評価された。安全性は、無作為化された全被験者を対象に評価された。36週時点のHbA1c推定変化量は-0.9%~-1.4% 2024年8月7日~12月27日に、スクリーニングされた915例のうち186例(20%)が、経口zenagamtide群(6mg群54例、25mg群51例、50mg群51例)またはプラセボ群(30例)に無作為化され、全例が解析対象集団に組み入れられた。 ベースライン特性は治療群間で類似しており、平均年齢は55.6歳(SD 9.7)、平均HbA1c値は8.0%(SD 0.8、各群平均値の範囲:7.9~8.1%)、平均BMI値は34.8(SD 6.3)であり、平均糖尿病罹病期間は8年(SD 6)であった。113/186例(61%)が男性であった。 36週時点のベースラインからのHbA1c推定変化量は、zenagamtide 6mg群が-0.9%(対プラセボの推定治療群間差[ETD]:-0.54%、95%信頼区間[CI]:-1.04~-0.04、p=0.033)、zenagamtide 25mg群が-1.3%(ETD:-0.99%、95%CI:-1.49~-0.49、p=0.0001)、zenagamtide 50mg群が-1.4%(ETD:-1.09%、95%CI:-1.59~-0.59、p<0.0001)であった。 有害事象の大部分は消化器系の事象で、zenagamtide 6mg群14/54例(26%)、zenagamtide 25mg群21/51例(41%)、zenagamtide 50mg群24/51例(47%)、およびプラセボ群7/30例(23%)に発現した。 重篤な有害事象は、zenagamtide全投与群の7/186例(4%)で報告された(6mg群2例、25mg群2例、50mg群3例)。プラセボ群において重篤な有害事象は報告されなかった。試験期間中に死亡は認められなかった。 著者は、「全体として、試験で報告された知見は臨床的に意義のあるものであり、第III相試験におけるzenagamtideの1日1回経口投与に関する検討を支持するものであった」とまとめている。

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スタチン使用に伴う重篤な筋障害はまれ

 スタチンによる重篤な筋障害への懸念は過大視されている可能性があるようだ。英オックスフォード大学の研究グループが開発した新たなリスク予測モデルでスタチン治療の適応となる成人の重篤な筋障害リスクを推定したところ、98%超が低リスクであることが示された。この研究結果は、「The Lancet Digital Health」に6月25日掲載された。筆頭著者である同大学のTing Cai氏はニュースリリースで、「重篤な筋障害は、スタチンに関して最も広く懸念されている副作用の一つである。しかし今回の結果から、スタチン治療の効果を期待できる大多数の人では、そのリスクは極めて低いことが示唆された」と述べている。 スタチン使用に伴う副作用として最も多いのは筋肉痛であり、インターネット上では「スタチンは活動的な中高年や高齢者の活動を妨げるのではないか」といった懸念が広がっている。そこで研究グループは、こうした懸念に根拠があるのかを検証するため、1998年1月1日から2018年12月31日の間にイングランドで収集された178万5,207人分の電子健康記録(EHR)を用いて、スタチン使用に伴う入院または死亡に関連する重篤な筋障害の1年・5年・10年間の発症リスクを予測するモデルを開発した。このモデルでは、年齢、性別、筋障害の既往、ビタミンD欠乏、併用薬など、日常診療で記録される22項目の情報を用いてリスクを評価する。さらに別の388万9,504人の検証コホートでこのモデルの予測精度を確認した。 その結果、検証コホートの99.6%で10年間の重篤な筋障害の発症リスクは10%未満と予測され、スタチン使用に伴う重篤な筋障害の発生は極めてまれであることが示された。また、臨床的にスタチン治療の適応が確認された患者でも98.1%は10年間の重篤な筋障害リスクが10%未満であり、大半が低リスクと推定された。 Cai氏は、「個々の患者のリスクを把握することは、スタチンにまつわる懸念を適切にとらえることにつながり、十分な情報に基づく治療方針の決定を支え、患者に安心感を与えることができる。リスクが比較的高い少数の患者においては、経過観察や検査、あるいは代替治療について医師と相談するための、より明確な判断材料になる」と述べている。 本研究では重篤な筋障害に焦点を当てているが、研究グループは、筋肉痛や筋肉の違和感といった軽度の症状の多くは、通常、スタチンが原因ではないことにも言及している。また、スタチン治療の適応がある患者の62.5%が、心血管疾患リスクが高いにもかかわらず、実際にはスタチンを処方されていないことも明らかになった。 論文の上席著者であるニコシア大学(キプロス)医学部医療統計学分野のConstantinos Koshiaris氏はニュースリリースで、「治療方針は治療効果の予測に基づいて決定されることが多いが、潜在的な有害事象を理解することも同様に重要である。このモデルは、個々の患者のリスクを定量的に評価できるため、治療選択肢に関するバランスの取れた話し合いを支援するものとなる」と述べている。

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健康的な脳の老化にはDHAが重要~EPAとの比較

 高齢者では脳萎縮が認知機能低下に先行することが多いため、脳構造の評価は神経保護の中間バイオマーカーとなる。近年、n-3系多価不飽和脂肪酸(PUFA)、とくにドコサヘキサエン酸(DHA)の血中濃度は、脳の構造的完全性との関連が示唆されている。しかし、魚の摂取量が多く、n-3系PUFA濃度がかなり高い日本人のデータは少なく、また、脳構造との関連でDHAとエイコサペンタエン酸(EPA)を比較した研究はほとんどない。今回、滋賀医科大学NCD疫学研究センターの近藤 慶子氏らが、高齢日本人女性においてEPA、DHA、EPA+DHAの血清濃度と脳容積の関連を検討したところ、DHAはEPAよりも灰白質容積との関連が強く、EPAとの関連は限定的なことがわかった。Journal of Nutrition誌オンライン版2026年7月25日号に掲載。 本研究は、滋賀県草津市在住の60~85歳の女性527人(平均年齢:74.2歳)を対象した横断研究である。EPAおよびDHAの血清濃度をガスクロマトグラフィー法により測定した。脳容積(全脳・灰白質・白質・海馬の容積)は、1.5テスラ磁気共鳴画像法を用いて評価した。共分散分析を行い、EPA、DHA、EPA+DHA濃度の四分位に基づいて調整した脳容積の平均値を比較した。共変量には年齢、全頭蓋内容積、BMI、教育年数、喫煙・飲酒状況、歩数、糖尿病、高血圧、スタチン使用を含めた。 主な結果は以下のとおり。・血清DHA濃度は灰白質容積と有意な正相関を示した(傾向のp=0.036)が、血清EPA濃度は相関が認められなかった。EPA+DHA濃度は灰白質容積と正相関の傾向を示した(傾向のp=0.085)。・EPA、DHA、EPA+DHAの血清濃度と、白質容積、全脳容積、海馬容積との間には有意な関連は認められなかった。 今回の結果から、著者らは「DHAが豊富な食事が健康的な脳の老化にとって重要であることが裏付けられた」と結論している。

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肥満症治療薬単独では血管の健康改善効果は限定的

 GLP-1受容体作動薬などの肥満症治療薬は、肥満治療を大きく変えつつある。しかし、血管の健康の維持には、運動が依然として決定的な役割を果たす可能性を示した研究が、6月24日付で「Nature Metabolism」に掲載された。論文の上席著者であるコペンハーゲン大学(デンマーク)生物医学分野教授のSigne Torekov氏は、「本研究は、薬物療法は体重維持を支える一方で、血管の健康を改善するのは、薬物療法の有無にかかわらず運動であることを示している」と述べている。 肥満と身体活動不足は、血管内皮機能の低下や動脈硬化と関連付けられている。この研究では、8週間の低カロリー食による減量プログラムにより平均約13.7 kgの減量に成功した肥満の成人130人を対象に、運動とGLP-1受容体作動薬のリラグルチドが、減量後の血管の健康に与える影響が検討された。対象者は52週間にわたる体重維持のための介入として、1)運動を行う群、2)リラグルチドを使用する群、3)運動とリラグルチド使用を併用する群、4)プラセボを使用する群のいずれかにランダムに割り付けられた。 その結果、52週間の介入後に、心疾患や脳卒中リスクの指標とされる頸動脈の内膜中膜複合体厚(cIMT)は、運動群で7%、併用群で6%減少した。また、運動群では炎症性サイトカインであるインターロイキン(IL)-6とインターフェロン(IFN)-γが低下し、併用群では対象とした4種類の血管内皮機能マーカーのうちの3種類(sICAM-1、sVCAM-1、tPA)も改善した。一方、リラグルチド単独群では、cIMTの変化や血管内皮機能マーカーの改善は認められなかった。 Torekov氏は、「肥満症治療薬は重要な治療手段であるが、本研究の結果は、それが運動の代わりにはならないことを示している。心臓や血管を守るためには、身体活動が依然として不可欠である」と述べている。 では、どの程度の運動が必要なのだろうか。世界保健機関(WHO)は、中強度の運動を週に150分以上、または高強度の運動を週に75分以上行うことを推奨している。本研究の参加者が実施した運動プログラムは、この推奨内容に一致するよう設計されていた。

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2型糖尿病に対するトリプルアゴニストretatrutideの効果(解説:小川大輔氏)

 2型糖尿病の治療薬としてGLP-1受容体作動薬が登場し、その後GIP受容体に対する作用を併せ持つGIP/GLP-1受容体作動薬が使用されるようになった。そしてGIP受容体、GLP-1受容体に加え、グルカゴン受容体を同時に刺激するGIP/GLP-1/グルカゴン受容体作動薬、いわゆる「トリプルアゴニスト」が開発されている。今回2型糖尿病に対するトリプルアゴニストretatrutideの第III相試験の結果が報告された1)。 食事療法と運動療法で血糖コントロール不良(HbA1c 7.0~9.5%)の2型糖尿病患者を対象に、retatrutide群(4mg、9mg、12mg)とプラセボ群に無作為に割り付け、40週間投与した。retatrutideはGLP-1受容体作動薬セマグルチドやGIP/GLP-1受容体作動薬チルゼパチドと同じく週1回投与の注射製剤である。主要エンドポイントであるベースラインから40週時のHbA1cの変化量は、プラセボ群と比較しretatrutide群で有意差を認めた(retatrutide 4mg群-0.88%、9mg群-1.04%、12mg群-1.12%)。 グルカゴンは膵臓のα細胞から分泌されるホルモンで、肝臓でのグリコーゲン分解促進、糖新生の促進、脂肪組織での脂肪分解の促進などの作用により血糖値を上げる働きをする。retatrutideのグルカゴン受容体刺激により血糖値上昇が懸念されるが、グルカゴン受容体への作用が低親和性に調整されていること、またGLP-1およびGIPによるインスリン分泌作用、食欲抑制作用および胃排泄遅延作用により実際には血糖値は上昇しない2)。またretatrutideのグルカゴン受容体への作用により、エネルギー消費量の増加、肝臓の脂肪代謝改善、中枢性の食欲抑制などにより血糖値はむしろ低下し、さらに体重減少効果もあると考えられている3)。 GLP-1とGIPの受容体に働くデュアルアゴニストのチルゼパチドは、血糖降下作用に加えて体重減少効果もあり、現在実臨床でよく使用されている。そしてGLP-1、GIPに加え、グルカゴン受容体にも働くトリプルアゴニストのretatrutideは、グルカゴン受容体の刺激が加わることで、食欲抑制やインスリン分泌だけでなく、エネルギー消費や脂肪燃焼の効果がさらに高まると考えられ、チルゼパチドよりも強力なのではないかと期待されている。現在、retatrutideをシングルアゴニストのセマグルチドと比較する試験や、腎障害のある糖尿病患者を対象とした試験が行われており、今後の報告に注目したい。

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日本人Lp(a)の実態解明、2つのカットオフ値を提案(LEAP研究)

 日本人のLp(a)濃度分布やLp(a)の心血管疾患(CVD)との関連を明らかにするために国内で実施されている多施設共同後ろ向き観察研究(LEAP研究)。2025年の第57回日本動脈硬化学会総会・学術集会での発表時には、日本人におけるLp(a)濃度分布と冠動脈疾患(CAD)をはじめとする併存疾患の関連性について、具体的に示されていなかった。今回、本研究の筆頭著者である山田 知明氏(東京科学大学病院 医療情報部)らはそれらを明らかにし、Journal of Atherosclerosis and Thrombosis誌2026年8月1日号で報告した。 Lp(a)は動脈硬化の独立したリスク因子として世界的に注目されている一方、日本国内では測定機会が限られており、日本人集団における正確な濃度分布やリスクの閾値(カットオフ値)に関する実臨床データは十分に明らかになっていない。そこで本研究グループは、国内6施設(東京科学大学、国立循環器病研究センター、大阪医科薬科大学、金沢大学、東京慈恵会医科大学、杏林大学)においてLp(a)が測定された6,173例を対象に解析を行った。本研究の測定患者は除外基準を設けず全例登録され、また、2種類の免疫学的測定キット(日東紡、積水メディカル)が用いられていたLp(a)測定値を既報の変換式に基づき「nmol/L」単位に標準化したうえで解析を実施した。 主な結果は以下のとおり。・6,173例のうち男性は58.3%で、年齢中央値は63歳であった。・有病率は家族性高コレステロール血症(FH)18.5%、CAD25.7%、動脈硬化性心血管疾患(ASCVD)28.3%、糖尿病(DM)30.1%であり、全体としてCVDリスクが高い集団であった。・測定値を標準化した後のLp(a)中央値は20.88nmol/L(75パーセンタイル:61.7nmol/L、90パーセンタイル:137.1nmol/L)であり、右に裾が長い分布を示した。・Lp(a)中央値は、DMを除くいずれの併存疾患において、併存群は非併存群と比較して有意に高値であった。ただし、DMにおいては、併存群は非併存群と比較して有意に低値であった。 ● CAD:31.5nmol/L vs.19.4nmol/L(p<0.05) ● ASCVD:33.8nmol/L vs.18.7nmol/L(p<0.05) ● 慢性腎臓病(CKD):31.4nmol/L vs.19.2nmol/L(p<0.05) ● DM:16.5nmol/L vs.23.5nmol/L(p<0.05) ● FH:53.0nmol/L vs.18.0nmol/L(p<0.05)・FHの遺伝型別(非FH<ヘテロ接合体<ホモ接合体)でLp(a)値が高くなる段階的な傾向が観察された。・ROC解析において、CADおよびASCVD発症に対するLp(a)のAUCはそれぞれ0.60、0.59であった。・感度・特異度の均衡から第1のカットオフ値25nmol/L(注意・リスク評価を考慮する水準)を、特異度0.90を超える閾値として第2のカットオフ値125nmol/L(高リスク水準)を日本人基準として提案した。・年齢、性別、LDL-C、DM、CKDを調整した多変量解析においても、Lp(a)25~125nmol/L群、および125nmol/L超群は、25nmol/L未満群と比較してCADおよびASCVDに対する独立した有意なリスク因子であることが確認された。 山田氏は、日本動脈硬化学会が5月に開催したプレスセミナーにおいて、「大規模データをnmol/L単位へ標準化し、日本人のLp(a)分布および各種動脈硬化性疾患との関連を可視化した初めての取り組み」であることを強調し、「これまで不明であった日本人でのLp(a)の実態、FHとの明確な関連を示すことができた点は非常に意義深い」とコメント。また、「解析により提案されたカットオフ値25nmol/Lは、(一次予防・一般人口における絶対的なリスク境界というよりも)二次予防や併存疾患を有する集団における『スクリーニングや個別リスク評価を考慮すべき注意信号』としての役割を持つ。一方、125nmol/Lを超える高リスク群に対しては、積極的な介入やFHに準じたカスケードスクリーニング(血縁者診断)を行う重要な基準となる」とも説明した。 最後に、「現状、国内のLp(a)の測定機会は限られているが、脂質異常症や動脈硬化性疾患リスクを持つ患者に対し少なくとも“生涯に1回”の測定が行われるよう、日常診療や健診での啓発と普及を進めていきたい。また、健康成人を含む一次予防に対する研究も実施段階であり、今後詳細を明らかにしていきたい」と結んだ。

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糖尿病CKDへのフィネレノン、eGFR低下を有意に抑制/NEJM

 非糖尿病の慢性腎臓病(CKD)成人患者において、非ステロイド型ミネラルコルチコイド受容体拮抗薬フィネレノンはプラセボと比較して、32ヵ月間にわたる推算糸球体濾過量(eGFR)の低下を抑制したことが示された。オーストラリア・ニューサウスウェールズ大学のHiddo J. L. Heerspink氏らFIND-CKD Investigatorsが、国際共同第III相二重盲検無作為化試験の結果を報告した。先行の無作為化試験において、フィネレノンは2型糖尿病およびCKDを有する患者における腎・心血管アウトカムを改善したが、糖尿病を伴わないCKD患者への効果は明らかになっていなかった。NEJM誌2026年8月6日号掲載の報告。ベースラインから32ヵ月時点までのeGFRの平均年間変化率を評価 研究グループは、糖尿病を伴わないCKD(eGFR:25mL/分/1.73m2以上60mL/分/1.73m2未満かつ尿中アルブミン/クレアチニン比[UACR]:200~500mg/g、またはeGFR:25mL/分/1.73m2以上90mL/分/1.73m2未満かつUACR:500~3,500mg/g)を有し、レニン・アンジオテンシン系阻害薬を服用している成人を対象に、フィネレノンの有効性と安全性を検証した。 被験者を、フィネレノン(10mgまたは20mgを1日1回)またはプラセボを投与する群に無作為に割り付けた。 主要評価項目は、総eGFRスロープ(ベースラインから32ヵ月時点までのeGFRの平均年間変化率と定義)で、2スロープ線形スプライン混合効果モデル(ベースラインから3ヵ月時点までの効果[すなわち急性eGFRスロープ]と3ヵ月時点から治療中止までの有効性を区別する[両者は異なると予想された]ためのモデル)で評価した。副次評価項目は、腎・心血管複合イベント(eGFRのベースラインからの持続的低下が57%以上、腎不全、心不全による入院または心血管死)、腎複合イベント、心血管複合イベントなどであった。eGFR年間変化率、フィネレノン群-3.3mL/分/1.73m2/年で有意に抑制 2021年9月21日~2023年5月12日に1,584例が無作為化された(793例がフィネレノン群、791例がプラセボ群)。両群のベースライン特性は類似しており、平均年齢は54.7歳、535例(33.8%)が女性で、UACR中央値は818.9mg/gであった。 ベースラインのeGFRは、フィネレノン群46.8±16.2mL/分/1.73m2、プラセボ群46.6±16.0mL/分/1.73m2であった。ベースラインから3ヵ月時点までのeGFRの平均変化量は、フィネレノン群(-2.0mL/分/1.73m2)がプラセボ群(-0.8mL/分/1.73m2)よりも1.2mL/分/1.73m2大きかったが、3ヵ月以降、フィネレノン群のeGFR低下率は緩徐になった。 主要評価項目のベースラインから32ヵ月時点までのeGFRの平均年間変化率は、フィネレノン群で-3.3mL/分/1.73m2/年(95%信頼区間[CI]:-3.6~-3.1)、プラセボ群で-4.0mL/分/1.73m2/年(95%CI:-4.3~-3.8)であった(群間差:0.7、95%CI:0.3~1.1、p<0.001)。 事前に規定された階層的検定で、腎・心血管複合イベントリスクは、フィネレノン群でプラセボと比較して低いことが示された(ハザード比[HR]:0.77、95%CI:0.60~0.99、p=0.04)。HRは、腎複合イベントについては0.78(95%CI:0.60~1.01)、心血管複合イベントについては0.60(95%CI:0.27~1.33)であった。 最も多くみられた有害事象は高カリウム血症であった(フィネレノン群135例[17.0%]、プラセボ群105例[13.3%])。高カリウム血症により、それぞれ12例(1.5%)と1例(0.1%)で試験治療が中止され、7例(0.9%)と5例(0.6%)が入院に至った。

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週1回皮下投与のzenagamtide、2型糖尿病に対する有効性は?/Lancet

 2型糖尿病患者において、zenagamtide 0.4~40mgの週1回皮下投与はプラセボと比較して、ベースラインから36週までのHbA1c変化量において、臨床的に意義のある改善がみられ、その差は統計学的にも有意であった。安全性および忍容性プロファイルは、他のGLP-1受容体作動薬およびアミリン受容体作動薬と同程度であった。米国・テキサス大学サウスウェスタン医療センターのPablo Mora氏らが、36週の第II相多施設共同無作為化並行群間二重盲検プラセボ対照用量設定試験の結果を報告した。zenagamtide(旧称amycretin)は、GLP-1受容体、アミリン受容体、カルシトニン受容体に作用する単分子ペプチド作動薬で、2型糖尿病を伴わない過体重または肥満者を対象に評価が行われた初期の臨床試験において、2型糖尿病患者を対象としたさらなる検討を支持する知見が示されていた。Lancet誌オンライン版2026年7月30日号掲載の報告。週1回皮下投与の有効性と安全性に関する用量反応試験 2型糖尿病の成人患者を対象に、プラセボと比較したzenagamtideの週1回皮下投与の有効性と安全性に関する用量反応関係を検討する試験は、11ヵ国の83の病院およびクリニックで行われ、3週のスクリーニング期間、36週の投与期間、4週のフォローアップ期間で構成された。 対象は、2型糖尿病(HbA1c値7.0~10.0%[53~86mmol/mol])の成人(18~75歳)で、SGLT2阻害薬投与の有無を問わずメトホルミン安定用量で治療を受けている患者とした。BMI値は23.0以上50.0未満を適格とした。 被験者は、無作為化・治験薬管理システムを用いて、週1回皮下投与のzenagamtide群またはプラセボ群に6対1の割合で割り付けられ、さらに6つの用量群(0.4、1.5、5、10、20、または40mg)のいずれかに1対1対1対1対1対1の割合で無作為に割り付けられた。プラセボ群に割り付けられた被験者も同様に、各投与スケジュールに対応する適合プラセボ投与群に割り付けられた。無作為化では、スクリーニング時のHbA1c値(8.5%未満または8.5%以上)、居住国(日本またはその他)で層別化も行われた。 zenagamtide皮下投与は0.2mgで開始し、維持用量(0.4~40mg)に到達するまで4週ごとに漸増した。被験者および試験スタッフは、各用量群においてプラセボまたはzenagamtideの割り付けを盲検化された。 主要評価項目は、ベースラインから36週までのHbA1c変化量とした。主要評価項目は、無作為化された全被験者を対象とし、レスキュー薬を投与することなく治験薬の投与を継続している間に収集されたデータに基づくefficacy estimandを用いて評価された。安全性は、治験薬の投与を受けた無作為化された全被験者を対象に評価された。36週時点のHbA1c推定変化量、6用量群で-0.9%~-1.7% 2024年8月7日~12月27日に、スクリーニングされた915例のうち262例(29%)が、zenagamtide群(225例)またはプラセボ群(37例)に無作為化された。被験者はさらに、6用量群のいずれか1用量群(0.4mg群38例、1.5mg群36例、5mg群37例、10mg群38例、20mg群38例、40mg群38例)またはプラセボ群(37例)に無作為化され、261例が治験薬の投与を受けた。 ベースラインにおける全群のHbA1c平均値は7.8%(SD 0.8)であった。36週時点で、HbA1c推定変化量は、zenagamtide 0.4mg群の-0.9%(対プラセボの推定治療群間差:-0.77%、95%信頼区間[CI]:-1.26~-0.28、p=0.0021)からzenagamtide 40mg群の-1.7%(同:-1.56、95%CI:-2.05~-1.07、p<0.0001)の範囲にわたっていた。 有害事象の大部分は消化器系のもので、重症度は軽度~中等度であった。重篤な有害事象は、21/261例(8%)で報告された(0.4mg群4例、1.5mg群3例、5mg群2例、10mg群5例、20mg群3例、40mg群1例、プラセボ群3例)。死亡は報告されなかった。

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第328回 「骨太の方針2026」の注目ポイント(後編) 地域医療構想ガイドライン公表を受け医療提供体制への言及多数、「攻めの予防医療」は総花的で斬新さなし

「注釈」で「有床診療所も含めて医療機関の役割分担の明確化を図ることを含む」と有床診の役割見直しを示唆こんにちは。医療ジャーナリストの萬田 桃です。医師や医療機関に起こった、あるいは医師や医療機関が起こした事件や、医療現場のフシギな出来事などについて、あれやこれや書いていきたいと思います。この週末は、5月に内側側副靱帯損傷で傷めた左ひざの最終リハビリ目的で、山梨県の茅ヶ岳(「日本百名山」の著者・深田 久弥が登山中に急逝した山)に登ってきました。3ヵ月ぶりの登山でしたが、左足はほぼ完調で、急な上り下りが特徴の山でしたが、ストックを使うこともなく無事山行を終えました。が、下山してみると今度は右足の裏、土踏まずのあたりに痛みが発生し、次第に強くなりました。足底腱膜炎の症状です。登山中、知らず知らずのうちに左足をかばっていたツケと思われます。左足を受傷して3ヵ月、歩行のシンメトリー(対称性)の重要性に改めて気づかされた登山でした。ちなみに、茅ヶ岳の麓にある深田記念公園には、深田直筆の「百の頂に百の喜びあり」の言葉が刻まれた記念碑があります。実に深い言葉です。しかし、今の私には「百の頂に百の苦しみあり」と読めました。さて、今回も前回に引き続き、7月21日にようやく閣議決定された「経済財政運営と改革の基本方針2026 『責任ある積極財政』元年 ~日本の挑戦を起動する!」(骨太の方針2026)の注目ポイントについて書いてみたいと思います。「骨太の方針2026」では前回書いた社会保障改革関連の記述以外では、新たな地域医療構想のガイドラインが公表されたことを受け、次のように医療提供体制への言及が多くありました。「2040年に向けて、病床数の適正化を着実に実施した上で、2027年度以降の地域医療構想を踏まえた医療機関の連携・再編・集約化を促進するとともに、地域包括ケアシステムの深化を図り、地域の実情に応じた質の高い効率的な医療・介護サービス提供体制を構築する」。なお、本文中の「医療機関の連携・再編・集約化」の文言には、「有床診療所も含めて医療機関の役割分担の明確化を図ることを含む」とする「注釈」が付きました。有床診療所の施設数・病床数は減少傾向にあり、人材不足、経営悪化、後継者不足などによりその存続が危ぶまれています。一方で、2040年に向けて、高齢者救急、在宅医療、看取り、介護施設との連携の需要は高まると考えられ、既存の有床診療所をそうした機能を提供するインフラとしてどう活用していくかが大きな課題となっています。この「注釈」から、有床診療所の役割の明確化と再評価が行われるだろうということが予想できます。救急医療体制の確保、人生の最終段階における医療・ケア、医師偏在対策、医学部定員削減も盛り込むその他の医療提供体制関連では、「妊娠・出産の経済的負担軽減と安心・安全な小児・周産期医療提供体制の両立、救急医療体制の確保、ドクターヘリの安全で持続可能な運航の確保、看取りなど人生の最終段階における患者中心の適切な医療・ケア、精神医療に関する地域医療構想を踏まえた取組、訪問看護の適切な実施、中山間・人口減少地域での柔軟な介護・障害福祉サービスの提供」などが挙げられていました。加えて、「かかりつけ医機能の発揮や医師の地域・診療科偏在の更なる是正策、大学病院等からの医師派遣の推進を含めた総合的な医師偏在対策、地域の実情を考慮した2028年度以降の医学部定員の削減に取り組む」と、医師偏在対策、医学部定員削減も盛り込まれました。また、「医療分野においては、新たな地域医療構想の下、将来需要を踏まえ、老朽化・災害対策を含む地域に不可欠な施設・設備の計画的な整備への必要な支援の在り方を検討する。介護・福祉分野においても、老朽化・災害対策を含む施設・設備の計画的な整備を支援する」と、地域医療構想を前提としながらも、施設・設備の整備についても記述されました。建設費や設備費の高騰で病院の建て替えや新設が滞っている地域は少なくありませんが、補助金等による国による何らかの対応が行われそうです。薬剤処方の適正化、効率化に関する検討項目が多数列挙医療保険制度関連では、前回詳しく書いた70歳以上の高齢者の医療費窓口負担割合に関する記述のほかは、「長期処方やリフィル処方箋の活用、地域フォーミュラリの全国展開、休薬・減薬などの効果的・効率的な治療の促進等により、給付の効率化や適正化を図りつつ、質の高いサービスを提供する。セルフメディケーション推進の観点からの更なる医薬品・検査薬のスイッチOTC化に向けた実効的な方策を検討し、必要な措置を行う」など、薬剤処方の適正化、効率化に関する検討項目が多数列挙されました。一見目新しい「攻めの予防医療と疾病対策」今回の「骨太の方針2026」で一見目新しいのは、高市 早苗首相が過去の記者会見でも強調していた「攻めの予防医療と疾病対策」の項目です。「国民のWell-beingの向上と健康寿命の延伸を図り、誰もが社会の担い手として活躍できる日本を実現する」として、「攻めの予防医療」を推進するとしています。具体的には、「健康増進、肥満症を含む疾病予防、早期発見、早期介入及び行動変容に関係機関が連携して取り組む。栄養・食生活を含む健康リテラシーの向上、地域住民の健康増進に資する薬局機能及び薬剤師の果たす役割の強化、学齢期の健康診断の在り方の見直し、予防接種、HIVや性感染症の予防、下水サーベイランス等の感染症対策、がん検診や精密検査の受診率向上、循環器病・糖尿病を含む生活習慣病等の予防、いわゆる国民皆歯科健診の具体化、口腔と全身の健康の関係に基づく歯科疾患対策・口腔健康管理、認知症の早期診断・早期対応、予防・医療・介護を通じた切れ目のないリハビリテーション、PHRの利活用と情報連携を推進する」としています。さらに、「更年期世代の女性への医療の推進や女性の健康総合センターの機能強化、『プレコンセプションケア推進5か年計画』の工程表の策定と実行、企業と保険者のコラボヘルス、睡眠対策を含む健康経営の推進等、予防・健康づくりを支えるヘルスケア産業の育成等を図る。 がん、脳卒中・心臓病その他の循環器病、慢性腎臓病、慢性閉塞性肺疾患、慢性疼痛、難病、アレルギー、依存症、難聴、睡眠障害等の疾病対策や移植医療対策を推進する」ともしています。新しさに欠ける「U.E.N.O.Plan~攻めの予防医療 厚生労働省関係施策~」よく読んでみると、予防医療と疾病対策の項目が総花的に羅列してあるだけで、どこが「攻め」なのかよくわかりません。「責任ある積極財政」と同じように、実態は二の次に、見た目(読んだ感じ)が一見カッコいいキャッチコピーにしたのでしょう。7月27日付のミクスオンライン等の報道によれば、上野 賢一郎厚生労働大臣は7月24日の閣議後会見で、「骨太方針2026」に盛り込んだ「攻めの予防医療」について、「健康寿命の更なる延伸や社会保障を支える基盤の維持・強化に向けて、取り組みを速やかに実施していく」と述べたとのことです。なお、具体化に向けて厚労省は「骨太の方針2026」が閣議決定された2日後の7月23日、「U.E.N.O.Plan~攻めの予防医療厚生労働省関係施策~」を公表しています。「U.E.N.O.」は厚労大臣の名前から取ったキャッチコピーで、「Understand, Exercise, Nourish and Optimize for Better Health」の略だそうです。ちょっと強引なコピーですね。同プランは「栄養・食生活」「がん・循環器病等」「歯科保健」「認知症」「リハビリテーション」「性差に由来するヘルスケア」の6領域を「直ちに取り組むべき第一弾の重点領域」として位置づけ、「攻め」の取り組みを具体化するため施策を盛り込んだものとのことです。ただ、その内容を見てみると、「栄養・食生活」は「食事ガイドを作成する」、「がん・循環器病等」は「がん検診の受診率60%、精密検査受診率90%の達成」、「認知症」は「新たな検査技術を活用し、早期診断・早期対応等を推進」というように、「攻め」という割には、従来施策の踏襲で、それほど斬新な取り組みが並んでいるわけではありません。というわけで、高市政権のさまざまな政策においても指摘されている、「華々しくぶち上げていること」と「実際にやっていること」の乖離を感じた今年の「骨太の方針」でした。

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LDL-C上昇の成人が世界で46億人に増加、高齢化で疾病負担増/JAMA

 心血管疾患は、早期死亡の主要な原因であり、LDL-C値の上昇は介入可能なリスク因子とされる。LDL-Cに関連する疾病負担を評価することは、心血管疾患の予防および治療戦略を策定するうえできわめて重要と考えられる。米国・ワシントン大学のChristian Razo氏らGBD 2023 LDL Cholesterol Collaboratorsは、世界疾病負担(GBD)研究の一環として、1990~2023年におけるLDL-C値上昇(35~54mg/dLとの比較)に起因する虚血性心疾患および虚血性脳卒中の疾病負担を、世界、地域、国ごとに推定し、人口増加、高齢化、曝露量の変化などが疾病負担の傾向に及ぼす影響を定量化した。研究の成果は、JAMA誌オンライン版2026年7月29日号で報告された。204の国と地域で、LDL-C関連の死亡数、DALYを評価 研究グループは、204の国と地域における人口レベルのLDL-C曝露量、およびそれに関連する健康損失を推定した(ゲイツ財団の助成を受けた)。平均LDL-C値は、161ヵ国の806件の研究に基づいて推算した。また、相対リスクは、38件の無作為化臨床試験を対象としたメタ解析から導出した。 1990~2023年に、年齢25歳以上の成人について、死亡および障害調整生存年(DALY)の集団寄与危険割合(PAF)を年齢層別および性別に推定し、95%不確実性区間(UI)を算出した。 主要評価項目は、虚血性心疾患および虚血性脳卒中によるLDL-Cに起因する死亡数およびDALYのPAF、件数、発生率(全年齢および10万人当たりの年齢調整値)とした。LDL-C上昇の成人が、25億人から46億人に増加 1990~2023年に、LDL-C値が54mg/dL以上の25歳以上の成人数は、約25億人(95%UI:24億~26億)から約46億人(95%UI:43億~47億)へと増加した。 1990年以降、LDL-C値上昇による死亡数とDALYは約39%増加した。2023年に、LDL-C値の上昇は、360万人(95%UI:220万~540万)の死亡(世界の総死亡数の6.0%)と、9,070万DALY(95%UI:5,890万~1億2,330万)(総DALYの3.2%)の原因となった。 2023年に、LDL-Cが寄与したDALYの33%が、LDL-C値54~116mg/dLの人々であり、残りの67%は同値が116mg/dL以上であった。LDL-C関連の心血管疾患死亡率は大幅に減少 全世界の全年齢層では安定していたものの、1990年以降、LDL-C値上昇に起因する心血管疾患による年齢調整死亡率が45.6%、DALY率は39.5%減少しており、年間減少率は0.45%だった。 また、男女とも、DALY率は年齢の上昇に伴って着実に増加した。2023年に、LDL-C関連DALYは女性(3,570万、95%UI:2,240万~5,180万)に比べ男性(5,500万、95%UI:3,730万~7,530万)で高かった。1990~2023年に、LDL-Cによる年齢層別のDALY率は、全年齢層および男女とも世界的に減少した。人口増加と高齢化が、LDL-Cの負担増加を牽引 2023年に、LDL-Cの寄与による年齢調整DALY率は東ヨーロッパ(2,252.6/10万人、95%UI:1,507.4~3,038.2)で最も高く、高所得のアジア太平洋地域(322.0/10万人、95%UI:208.7~446.6)で最も低かった。世界のLDL-Cによる健康負担の3分の1(34%)は、インドと中国で発生していた。 人口増加と高齢化が、LDL-Cによる負担の増加を牽引していた。また、LDL-Cへの曝露およびリスク補正後DALY率には顕著な地域格差がみられ、その傾向は社会人口統計学的特性指数(SDI)が中位の国へと転換していた。公平なスクリーニングと対象を絞った介入の拡大が急務 これらの結果を踏まえて著者は、「LDL-C値の上昇を予防・管理することは、世界的に心血管疾患による死亡を回避し、健康寿命を延ばすことにつながる」「LDL-Cの管理法は進歩しているものの、1990年以降、人口増加と高齢化により、その絶対的な負担は増加し続けており、その傾向はSDI中位国への転換が進んでいる」とまとめている。 また、「国連の持続可能な開発目標(SDGs)の期限が迫る中、これらの知見は、医療へのアクセスを改善し、生涯にわたって心血管の健康を促進するために、偏りのない公平なスクリーニングと対象を絞った介入の拡大が、緊急に必要であることを強調するもの」と指摘している。

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脂質異常症治療の30年を振り返って【温故知新30年】

講師紹介1. 30年前の脂質異常症治療1976年頃、スタチンを開発した遠藤章氏が、HMG-CoA阻害効果を持つ結晶粉末(後のコンパクチン)を内藤氏のところに持参し、私たちが扱っていたラットの肝細胞で効果を検討してくれという依頼があった。しかし、コンパクチンはラットの肝細胞では全く効果がないことが判明した。その後、機会を得て、1980年に米国・シカゴ大学への留学が決まった。米国では、動脈硬化研究は極めてホットな研究分野(欧米での死亡率のトップは虚血性心疾患であった)であり、しのぎを削っての競争世界であった。一方、1976年にBrown & GoldsteinのLDL-受容体(LDL-R)発見の論文が掲載された。また、同じ年に遠藤氏のコンパクチンが発表されていた。シカゴ大学の研究室ではLDL-Rの話題は極めて活発化しており、1981年の研究室内のプログレス・ミーティングで日本でのコンパクチンが話題になり、それを手に入れることはできないかとボスから尋ねられた。しかし、筆者には手に入れることはかなわず、筆者も指示されたサルでの実験はできなかった。筆者は1982年に帰国し、大学で脂質異常症の治療を始めた。その当時はもっぱらフィブラート系薬剤とニコチン酸系薬剤がわずかながら効果があるということで、食事療法や運動療法とともに、これらの薬剤を用いた治療を行っていた。また、1985年にプロブコールが発売され、そのコレステロール低下効果は驚くべきものがあったが、これらが本来の目的である動脈硬化予防に効果があるのかは疑問符がついたままであった。約40年以上前のことである。2. この30年でどのように診療が進歩したのか(30年前~10年前)30年前、すなわち1996年頃は1994年に4Sという二次予防試験、1995年にはWOSCOPSという一次予防試験が発表され、もっぱらスタチンの動脈硬化性疾患の予防効果検証の時代であった。我が国では、米国に遅れて1989年にプラバスタチンが発売されたが、発売に至るには険しい道のりがあった。プラバスタチンの効果検証の第II相試験(ダブルブラインド)において立て続けに試験対象者に脳出血の報告があったのである。やむなくこの2例に限ってオープンするという苦渋の決断になり、オープンしたところその2例とも対照薬であることが判明し、試験は継続・完了し、プラバスタチンの有効性並びに安全性も証明され、発売に至ったのである。その当時、わが国でもWOSCOPSと同様のプラバスタチンの試験を行いたいと検討をしていたが、法律家の委員の先生から我が国では慎重にすべきという助言をいただき臨床試験はできなかった。このスタチンを用いた4SやWOSCOPSが発表されると、その後続々とさまざまな対象者に対する大規模臨床試験が発表され、特に”Lower the Better”というような試験が発表されると、二次予防を熱心にしている循環器専門医が中心となって、スタチンを使用するようになった。しかし、スタチンだけではLDL-Cの低下効果は十分ではないことが指摘されていた。その後、コレステロール吸収を抑制するエゼチミブが2007年に発売され、スタチンとエゼチミブを併用することにより、より低下効果が高まり、これも大規模臨床試験で有効性が明らかになった。最近ではその配合剤も発売されこれらの薬剤が汎用されるようになった。3. この30年でどのように診療が進歩したのか(10年前~現在)2016年に、PCSK9モノクローナル抗体という新たな発想による治療薬が発売されるに及んで、最近ではLDL-Cは際限なく(つまり血中では0mg/dL近くまで)下げられること、並びにそれで安全であることも示され、新たな世界に入った感がある。この注射薬は2週間に1回の注射で十分であることが示され、患者の自己注射も可能となった。さらに、インクリシランというPCSK9の合成を抑制するsiRNAも2023年に薬剤として発売され、6ヵ月に1回の注射で十分な効果を発揮することが示され、まさに画期的であった。このほかにも、これまで2週間に1回程度のLDL-アフェレーシスしか選択肢のなかったホモ型家族性高コレステロール血症(Ho-FH)に対する治療薬としてMTP阻害薬であるロミタピドが2016年に発売されたが、Ho-FHの症例数が少ないのと(約30万人に1人の発症率といわれ、発見率も低い)、下痢などの副作用があり、脂肪食の摂取制限などの課題もあり、十分な使用実績がない。しかし、LDL-Cの低下効果は十分認められ、症例の発掘と副作用の軽減化が課題となっている。4. 私にとってのパラダイムシフトこのような治療薬のエビデンスの集積があり、日本動脈硬化学会でも脂質異常症治療のガイドライン(GL)作りが開始され、私は1997年に初めて動脈硬化性疾患診療GLに携わることとなった。そして2002年にはGL作成委員長を拝命し、以後2012年の改定まで3回の改訂作業に携わった。これまで触れてきたように、その間に多くの薬剤開発がなされ、その都度治療エビデンスも蓄積しており、それに対応すべく改定作業が行われてきた。その過程で、GLには薬剤が関与している関係から私のCOIの問題を感ずるようになった。その頃、日本医学会や日本医療機能評価機構におけるMindsというGLの指針が出てきたことにより、私の立場(その当時多くの製薬会社の協賛で寄付講座を持っていた)から、第一線を退くこととした。また、その当時は日本医学会の副会長に任命されており、さらには日本専門医機構の理事長を拝命することにより、いずれの学会の立場から離れるべきという立場となった。とはいえ、自身のクリニックでは高コレステロール血症の治療を行う立場でもあり、批判的に薬剤を使用する立場となった。そのことにより、実臨床で疑問に思うことも多々あり、GLの在り方、専門医の在り方なども深く考えるようになった。そのなかで、脂質異常症の治療薬はほぼ完成したという考えに至ったところに、新たな発想の薬剤が開発され、まだまだ今後の発展がありうると実感している。5. 次の5年で脂質異常症診療はこう変わる今後の5年では、現在の脂質異常症治療薬の使い方の徹底がなされるべきであるとともに、アンメットニーズを抉り出し、それに応じた診療を開発すべきであり、できると思う。1つは高コレステロール血症患者で治療すべき患者の選択であり、選択した患者のうちどの薬剤で、どの程度治療すべきなのか、つまりプレシジョンメディスンを実臨床で行えるようになると思う。そして、今後、さらに長期的にLDL-Cを低下させる治療法が開発され、遺伝子情報から比較的早くから一生のうち1ないし2回くらい治療すれば済むというワクチン的なLDL-C低下療法が筆者の夢である。さらには、食事の吸収に関する遺伝子が発見され、それに関連した治療薬が開発されることにより、肥満も含めて、食事療法が必要なくなる(?)という将来を筆者は夢見ている。

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第331回 ポストバイオティックがGLP-1を増やして体重を減らす

小規模ながら二重盲検のプラセボ対照無作為化試験で、経口服用の不活化細菌サプリメント(ポストバイオティック)が肥満/過体重成人の体重を有意に減らしました1,2)。GLP-1受容体作動薬(GLP-1薬)が肥満治療の主役に一気に躍り出たものの、治療が長続きしないことは少なくないようです。たとえば米国成人の4~5割ほどが開始から1年と経たずにGLP-1薬の使用を止めてしまっており、胃腸の有害事象を生じた患者はとくにそうでした3,4)。それゆえ、GLP-1薬のような生理作用をGLP-1薬が強いる負担なしでもたらす治療選択肢を必要とする患者は多いようです。有益作用をもたらす不活化微生物やその成分であるポストバイオティックがその需要に応えられるかもしれません。たとえばオリーブやキムチなどの発酵食品を介して口に入る細菌のラクチプランチバチルス プランタルム(Lactiplantibacillus plantarum[L. plantarum])にその可能性があります。熱で不活化したL. plantarumが短鎖脂肪酸(SCFA)を作る乳酸菌などの細菌を増やし5)、SCFAが豊富だと腸細胞からのGLP-1分泌が促進すること6)が先立つ研究で示されています。ゆえに不活化L. plantarumはGLP-1伝達を介して体重管理を助ける働きがあるかもしれません。そこでアラバマ大学のCharitharth Vivek Lal氏らは、不活化L. plantarumを含むポストバイオティック製品の体重への効果などを米国の過体重/肥満成人80人を募って試みました。使われた製品はResMと呼ばれ、不活化L. plantarumに加えてビタミンなどの微量栄養素と植物抽出物を含みます。被験者は1対1の割合で1日1回ResM服用群かプラセボ服用群に割り振られました。2ヵ月後、ResM群に割り振られた被験者の体重は、ベースライン時に比べて平均3%(2.6kg)減っていました。一方、プラセボ群の体重は減らず、ベースライン時より0.5kg増えていました。また、ResM群の血中のGLP-1活性はベースライン時に比べて2倍ほどに上昇していました。一方、プラセボ群ではほとんど変化がみられませんでした。GLP-1薬につきものの胃腸症状の心配はResMでは比較的少ないらしく、今回の試験で胃腸症状はむしろプラセボ群により多く生じました。深刻な有害事象はResM群とプラセボ群のどちらでもみられませんでした。GLP-1薬がすでに経ているような大規模試験で長期投与の効果持続のほどなどを今後調べる必要があります。それに、ResMの種々の成分の体重低下への寄与のほどもはっきりさせなければなりません。それらのさらなる検討で確かな裏付けが晴れて確立すれば、ResMはGLP-1薬に比べて副作用がより少なくて安上がりな体重減量や減った体重の維持手段を担うようになるかもしれません。参考(1)Pala OSK, et al. medRxiv. 2026 Jul 27. [Epub ahead of print](2)Postbiotic supplement boosts body’s own GLP-1 and weight loss / NewScientist(3)Do D, et al. JAMA Netw Open. 2024;7:e2413172.(4)Rodriguez PJ, et al. JAMA Netw Open. 2025;8:e2457349.(5)Huang Y, et al. Foods. 2025;14:2799.(6)Tolhurst G, et al. Diabetes. 2012;61:364-371.

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低ナトリウム血症、腎機能が高くても低くてもリスク上昇

 低ナトリウム血症は日常診療でよく遭遇する電解質異常だが、腎機能との関連は十分に明らかになっていなかった。今回、日本の外来患者13万人超を対象とした解析で、腎機能と低ナトリウム血症リスクにはU字型の関連が認められ、腎機能が高い場合と低い場合の双方でリスクが上昇することが報告された。研究は聖路加国際病院腎臓内科の長浜正彦氏らによるもので、詳細は6月25日付の「Clinical and Experimental Nephrology」に掲載された。 低ナトリウム血症は、血液中のナトリウム濃度が低下した状態で、体内の水分バランスを調節する仕組みの異常などによって生じる。腎機能が低下すると余分な水を排泄する能力が低下するため、低ナトリウム血症のリスクが高まると考えられている。一方、腎機能と低ナトリウム血症との関連については、これまで主に慢性腎臓病患者や入院患者を対象に検討されており、腎機能が保たれた外来患者を含めた大規模な検討は十分に行われていなかった。こうした背景から、著者らは成人外来患者を対象に、腎機能と低ナトリウム血症との関連を検討した。 著者らは、聖路加国際病院(東京)において、2010年4月~2020年3月に外来を受診した成人患者を対象とする後ろ向き横断研究を実施した。血清ナトリウム値、血清クレアチニン値、尿検査のデータが同一受診日にそろっている患者を抽出し、透析患者などを除外した13万194人を解析対象とした。血清ナトリウム値135mEq/L以下を低ナトリウム血症と定義し、推算糸球体濾過量(eGFR)と低ナトリウム血症との関連を、多変量ロジスティック回帰分析を用いて評価した。解析では、年齢や性別に加え、併存疾患や薬剤使用、各種臨床因子の影響を調整した。また、低ナトリウム血症患者では、尿浸透圧/血漿浸透圧比を指標として、eGFRと尿濃縮能との関連も検討した。 低ナトリウム血症の有病率は4.3%だった。低ナトリウム血症患者は、低ナトリウム血症のない患者と比べて高齢で、併存疾患が多かった。 低ナトリウム血症の有病率は、eGFRが70~80mL/min/1.73m2の群で最も低く、それよりeGFRが低い場合と高い場合のいずれでも増加し、腎機能と低ナトリウム血症リスクにはU字型の関連が認められた。特に、高eGFR群では有病率の上昇が顕著だった。 多変量解析では、併存疾患や薬剤使用を調整後もこの関連は維持された。さらに、炎症やバソプレシンによる水分調節に関連する臨床・検査因子を調整すると、eGFRが低い群で認められたリスク上昇は大きく減弱した一方、高eGFR群ではリスク上昇が持続した。完全調整モデルでは、eGFR 150mL/min/1.73m2以上の群のオッズ比は4.63(95%信頼区間 3.73~5.75)、eGFR 10mL/min/1.73m2未満の群では1.56(95%信頼区間 1.02~2.39)だった。 また、低ナトリウム血症患者では、高eGFR群ほど尿浸透圧/血漿浸透圧比が高く、尿濃縮能が保たれていた。 著者らは、「低ナトリウム血症は腎機能低下例だけでなく、腎機能が比較的保たれた患者でもその可能性を考慮すべきである」としている。また、高eGFR群と低eGFR群では低ナトリウム血症の発症機序が異なる可能性があると考察しており、高eGFR群では保たれた尿濃縮能とバソプレシンの作用が、低eGFR群では腎機能低下そのものやネフロン機能の低下など複数の要因が発症に関与している可能性があるとしている。 なお、本研究は横断研究のため因果関係は不明であり、尿濃縮能やバソプレシンを直接評価していない点などが限界として挙げられた。 本研究は、外来患者13万人超を対象に、腎機能が保たれた患者も含めて低ナトリウム血症との関連を検討した大規模解析であり、腎機能の高低で背景機序が異なる可能性を示した点が注目される。

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第307回 特定健診は初の6割台 メタボ該当・予備群は880万人で横ばい/厚労省

<先週の動き> 1.特定健診は初の6割台 メタボ該当・予備群は880万人で横ばい/厚労省 2.熊本地震で病院船が初出動 DMAT・JMATなど災害医療チームも活動/熊本県 3.OTC類似薬「薬剤費25%」が患者負担に、長期処方での配慮対象は限定的/厚労省 4.医療・介護AIに重点投資 AX・DX推進本部を設置/厚労省 5.国立大学の経営危機、東大にも波及 研究力低下への懸念強まる/東大ほか 6.正常な脳組織を誤って摘出 50代女性が自発呼吸不能の重篤状態/京大 1.特定健診は初の6割台 メタボ該当・予備群は880万人で横ばい/厚労省厚生労働省は、2024年度の特定健康診査・特定保健指導の実施状況を公表した。特定健診の対象者は約5,142万人、受診者は約3,161万人で、実施率は61.5%となり、前年度から1.6ポイント上昇した。2008年度の制度開始時は38.9%で、今回初めて6割を超えた。国は2029年度までに70%以上の実施を目標としている。性別では男性65.9%、女性57.0%で、男性が8.9ポイント高かった。年齢別では45~49歳が66.8%で最も高く、60歳未満ではおおむね6割台を維持した一方で、65~69歳は52.8%、70~74歳は47.5%まで低下した。保険者別では健康保険組合83.8%、共済組合83.3%に対し、全国健康保険協会60.6%、市町村国保38.8%と大きな差がみられた。特定保健指導は、対象者約524万人のうち約148万人が終了し、実施率は28.3%。前年度から0.7ポイント上昇し過去最高を更新したものの、2029年度目標の45%以上とはなお大きな開きがある。保険者別では単一健康保険組合が46.1%で最も高く、小規模市町村国保が45.3%で続いた。メタボリックシンドロームの該当者・予備群は約880万人で、2008年度比では17.2%減少しており、減少幅は前年度から横ばい推移となった。また、特定健診受診者の31.1%は高血圧症、糖尿病、脂質異常症の治療薬を1種類以上服用していた。受診率は着実に改善しているが、年齢や保険者による格差の縮小に加え、健診後の保健指導や必要な治療へ確実につなげることが今後の課題となる。 参考 1) 2024年度 特定健康診査・特定保健指導の実施状況(厚労省) 2) 特定健診、実施率は61.5%に上昇 24年度、保健指導は28.3%(MEDIFAX) 3) 特定健診実施率、初の6割超え24年度 29年度までに7割以上目標 厚労省(CB news) 2.熊本地震で病院船が初出動 DMAT・JMATなど災害医療チームも活動/熊本県政府は8月5日、7月28日に発生した令和8年熊本地震で多数の医療機関が被災した熊本県八代市の八代港で、防衛省による民間船舶(PFI船)を活用した医療提供(船舶活用医療)を初めて実施した。熊本県知事が8月1日に国へ要請したもので、2021年成立の「災害時等における船舶を活用した医療提供体制の整備の推進に関する法律」に基づく初の船舶活用医療となる。内閣府、防衛省、熊本県に加え、日本赤十字社、DMAT、JMATなどが連携。船内では発熱などの内科診療、熱中症や軽傷への対応、薬の処方などを行い、併せて被災者への入浴支援も実施した。8月5日午後2時から医療提供を開始し、初日の医療利用者は13人、活動した医療従事者は23人だった。その一方で、「はくおうII」への乗船者は187人、うち182人が入浴支援を利用した。台風13号の接近に伴い、同船は6日午前6時に八代港を出港し、医療提供も一時中断している。被災地ではDMAT、DPAT、日赤救護班、災害支援ナース、JMATなども活動を継続している。透析は一時13施設で実施が困難となったが、8月6日時点で実施困難な2施設についても他院での透析が手配済みとなった。船舶は陸上の医療機関やライフラインが被災した際にも、医療、衛生、生活支援を一体的に提供できる新たな災害医療拠点として期待される一方で、今回の台風による中断は、気象条件に左右される運用上の課題も示した。 参考 1) 令和8年熊本地震に係る被害状況等について(内閣府) 2) 令和8年熊本地震における船舶活用医療の実施について(同) 3) 熊本の被災地にあすから「病院船」、防衛省の船舶活用し初の取り組み…内科診療や熱中症治療・薬の処方も(読売新聞) 4) 防衛省チャーター舶「はくおうII」が入浴や医療提供 断水や猛暑に苦しむ熊本の被災者支援(産経新聞) 5) 避難者支援で医療チームが相次ぎ活動 熊本地震 DMAT・DPAT・災害支援ナースなど(CB news) 3.OTC類似薬「薬剤費25%」が患者負担に、長期処方での配慮対象は限定的/厚労省厚生労働省は8月5日、「OTC類似薬の保険給付の見直しの実施に向けた技術的検討会」で中間とりまとめを了承した。2027年3月から、市販薬と成分・投与経路が同一で1日最大用量も異ならないOTC類似薬について、薬剤費の25%相当を保険給付の対象外とし、通常の1~3割の自己負担とは別に「特別料金」として患者が負担する。8月時点の対象は77成分1,042品目で、解熱鎮痛薬、抗アレルギー薬、湿布、保湿剤など日常診療で使用頻度の高い薬剤が含まれる。ただし、一定の患者や使用場面には配慮措置を設ける。がんや指定難病の患者、公費負担医療の対象者は、原疾患や治療に関連する症状への処方であれば追加負担の対象外とする一方で、花粉症など原疾患と無関係な症状への処方は対象となる。18歳未満の子供や入院中・退院時の処方も対象外。外来・在宅でも、生検、処置、手術など侵襲的医療行為に伴い新たに処方する薬は原則14日分まで対象外とする。長期使用の扱いも焦点となる。内服薬は年間おおむね50週の処方が目安で、診療情報提供書、お薬手帳、オンライン資格確認の薬剤情報などで処方歴を確認する。初診で過去の処方歴が確認できない場合は、少なくとも6ヵ月間の症状の持続・反復と薬剤使用を確認した上で、医師が通年使用を必要と判断する。外用薬はさらに条件が厳しく、湿布などの鎮痛消炎外用薬は長期使用でも原則追加負担となる。ただし2028年度末までは、画像検査で重度の変形性膝関節症などが確認され、医師が毎日の継続使用を必要と判断する場合に限り対象外とする。アトピー性皮膚炎に対するヘパリン類似物質や尿素の通年使用は対象外となる。また、医療用薬とOTC薬で効能・効果が一致しない場合は追加負担を求めない。たとえばフェキソフェナジンは、OTCにない蕁麻疹や皮膚疾患に伴うそう痒への使用では対象外となる一方で、アレルギー性鼻炎では原則対象となる。7月にOTC薬が発売された睡眠薬ラメルテオンも対象成分に追加された。今回の制度変更は現場にも大きく影響する。医療機関には対象外と判断した根拠を診療報酬請求書などに記載することが求められる方向で、処方箋様式の変更や電子カルテ、レセコン改修も見込まれる。検討会でも、医師や薬剤師の確認業務が過度に複雑にならない簡素な運用を求める声が相次いだ。厚労省は8月6日から中間とりまとめへのパブリック・コメントを実施しており、8月20日が締め切りとなっている。全国保険医団体連合会(保団連)は、慢性疾患でも配慮対象にならないケースが多いうえ、対象外か否かを判断する医療現場の負担が大きいとして、医療関係者らに厚労省のパブコメへ意見を提出するよう呼びかけている。意見はe-Govのパブリック・コメントから提出できる。厚労省は今後、さらに医療保険部会や中医協で議論し、今秋に省令・告示、関連通知などを取りまとめる予定。 参考 1) 第4回OTC類似薬の保険給付の見直しの実施に向けた技術的検討会(厚労省) 2) 「OTC類似薬の保険給付の見直しの実施に向けた中間とりまとめ」について(同) 3) 入院患者は追加負担対象外 OTC類似薬で厚労省案 がんの主たる疾患や副作用の薬も(産経新聞) 4) OTC類似薬の技術的検討会が中間取りまとめ 湿布薬は慢性・重度の変形性膝関節症は除外 対象1042品目(ミクスオンライン) 5) OTC類似薬保険除外 厚労省が配慮措置(中間とりまとめ)のパブコメ募集開始 8月20日まで(保団連) 6) 湿布は長期使用でもOTC類似薬の追加負担に 厚労省検討会で了承(朝日新聞) 7) OTC類似薬の患者特別負担の詳細固まる、アトピーへの「ヘパリン類似物質・尿素」通年処方は特別負担対象外-厚労省技術的検討会(Gem Med) 8) OTC類似薬の保険給付の見直しの実施に向けた中間とりまとめ」に関する意見公募の実施について(パブリック・コメント) 4.医療・介護AIに重点投資 AX・DX推進本部を設置/厚労省厚生労働省は8月5日、医療・介護・福祉分野でAIやデジタル技術の活用を推進する「厚生労働省ヘルスケアAX・DX推進本部」の初会合を開いた。本部長を務める上野 賢一郎厚労相は、従来の医療DXに加え、AIトランスフォーメーション(AX)も省を挙げて戦略的、総合的に推進する方針を示し、各部局に2027年度予算の概算要求へ必要な事業や経費を盛り込むよう指示した。推進本部は、これまで各部局で進めてきたAI・DX関連施策を一元的に把握し、全省的に加速させる司令塔として4日に発足した。本部長に厚労相、副本部長に事務次官、厚生労働審議官、医務技監などを置き、関係部局長が参加するほか、「AI for ヘルスケア成長戦略室」を新設し、迫井 正深医務技監を室長として、具体的施策の検討や関係省庁との調整を行う。背景には、政府が日本成長戦略で「AI・半導体」を17の戦略分野の1つに位置付けたことがある。医療・介護ではAIロボットなどの「フィジカルAI」、医療・介護・福祉では領域特化型の「バーティカルAI」の開発・導入を進める。政府はフィジカルAIで2040年に世界シェア3割超、市場規模20兆円、バーティカルAIでは2030年までに世界で5兆円超の市場獲得を目標に掲げる。看護記録などの文書作成や福祉相談業務を支援するAIの普及、研究開発・実証、AI活用に必要なデータ基盤の整備などが想定される。創薬・先端医療でも、AIやデータ活用による研究開発プロセスの高度化・効率化を推進する。政府は成長戦略で新設した、予算要求上限を設けない「『強く豊かな日本』投資枠」も活用し、官民投資を促す方針。厚労省は今後、8月末の概算要求に向けて施策を具体化する。 医療DXが電子化や情報連携を中心としてきたのに対し、今後は診療・看護・介護など実務そのものをAIで変革するAXへ政策領域が広がることになる。 参考 1) 第1回厚生労働省ヘルスケアAX・DX推進本部 資料(厚労省) 2) 医療や介護のAI活用を支援 厚労省が推進本部設置(日経新聞) 3) 厚労省 ヘルスケアAX・DX推進本部が初会合 上野厚労相「日本成長戦略実現に向け概算要求へ」(ミクスオンライン) 4) 政府が医療・介護分野でAI活用推進へ「ヘルスケアAX・DX推進本部」初会合(CB news) 5.国立大学の経営危機、東大にも波及 研究力低下への懸念強まる/東大ほか東京大学が2026年度に2年連続の最終赤字となる見通しであることがわかった。国立大学法人化した2004年度以降、2年連続の赤字は初めて。25年度は数十億円、26年度は約40億円の赤字を見込み、大学の「貯金」に当たる繰越金も数年で枯渇する可能性がある。財務状況が改善しなければ、研究者数の削減など研究・教育体制の縮小も避けられないという。東大の年間収入は約3,000億円で国立大学最大規模。24年度は運営費交付金や補助金が約969億円、附属病院収入が約585億円、企業との共同研究や大型研究事業などの外部資金が約1,160億円だった。その一方で、実験機器・材料などの物件費は約1,794億円、人件費は約1,105億円に上る。人事院勧告に伴う給与上昇で人件費は5年間で約100億円増加し、物価高による研究機器や資材価格の上昇も経営を圧迫している。背景には国立大学法人全体の構造問題がある。国からの運営費交付金は26年度で1兆971億円と、法人化した04年度から1,445億円減少。科研費は増えたものの、その増加は649億円にとどまり、基盤的経費の減少を補えていない。わが国の大学の研究開発費も2000年から23年までに1.2倍にとどまり、米国の2.1倍、中国の16.5倍と大きな差がある。大学病院の経営難も大学本体に影響する。国立大学病院44施設のうち25年度は31病院が赤字となる見通しで、経常赤字は計244億円。高度医療や希少疾患診療では高額医薬品・資材の使用が避けられず、診療収入だけではコスト増を吸収しにくい。東大は国際卓越研究大学への認定を目指しているが、文部科学省による審査が継続中となっており、認定見送りとなれば財政改善はさらに厳しくなる。国立大学の研究力と高度医療を維持するため、安定した基盤財源の確保が改めて問われている。 参考 1) 東大が2年連続赤字へ 「貯金」数年で枯渇、研究者の削減不可避(日経新聞) 2) 国立大学法人モデル、岐路に 東大も自立運営困難 収入増、規制が足かせ 研究開発費は20年横ばい(日経新聞) 6.正常な脳組織を誤って摘出 50代女性が自発呼吸不能の重篤状態/京大京都大学医学部附属病院は8月7日、50代女性の脳腫瘍摘出手術で、腫瘍ではない正常な脳組織を誤って摘出し、脳幹などを損傷する医療事故があったと発表した。患者は術後、自発呼吸ができず人工呼吸器による管理が続き、手足も動かない重篤な状態となっている。病院によると、患者はめまいやふらつきはあったものの、手術前は生活に大きな支障はなく通常の生活を送っていた。検査により小脳橋角部に約3cmの良性腫瘍「髄膜腫」が疑われ、7月末に全身麻酔下で開頭手術を受けた。執刀したのは40代の脳神経外科医で、医師として20年以上の経験があり、同様の手術を約100例担当していた。手術中には、摘出した組織の一部を調べる術中病理診断が行われ、「腫瘍ではない」との結果が2度示された。それでも執刀医は、腫瘍の端の組織を採取したため腫瘍成分が含まれていなかった可能性があるなどと判断し、摘出を継続したという。約10時間の手術後も患者の意識や呼吸が十分に回復しなかったためMRI検査を実施したところ、本来摘出する予定だった腫瘍は残存しており、右小脳扁桃や呼吸機能に関わる脳幹の側面から背側にかけて大きな損傷があることが判明した。脳幹には呼吸など生命維持に不可欠な機能を担う神経中枢が集まっており、患者は現在も人工呼吸器を必要としている。京大病院は医療事故として患者と家族に謝罪し、厚生労働省や京都府警など関係機関にも報告した。高折 晃史病院長は「患者と家族に心よりおわび申し上げる」と陳謝。病院側は、執刀医の判断ミスや思い込みが影響した可能性にも言及しており、今後、外部有識者を含む事故調査委員会を設置し、手術中の判断過程や安全確認体制を検証し、原因究明と再発防止を進める方針だ。 参考 1) 脳腫瘍摘出術中の誤認による摘出部位誤り事例について(京大医学部附属病院) 2) 京都大病院、正常部位摘出し脳幹損傷 患者は重篤な状態(日経新聞) 3) 京大病院で医療事故 脳腫瘍の手術で誤って正常な脳の一部摘出(NHK) 4) 京都大病院が脳腫瘍手術で誤って正常な組織摘出、50代女性患者は呼吸に関わる脳幹損傷・人工呼吸器装着つづく(読売新聞)

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温故知新―糖尿病治療の変遷―【温故知新30年】

講師紹介温故知新―糖尿病治療の変遷―「科学研究は、まさに温故知新の繰り返しであり、未来のあるべき姿に多くの示唆を与えてくれている。」最近、研修医に「血糖値が1分で測定できるようになったのは54年前、HbA1cが一般臨床に普及したのは45年前のことだ」と話すと、彼らは一様に驚き、「それまでは何を指標に糖尿病診療を行っていたのですか」と問い返してくる。血糖値の変動を連続的に“見える化”できることが当たり前となった世代にとって、かつて手探りで行われていた糖尿病診療は想像し難いのであろう。振り返れば、筆者の糖尿病研究と診療の歩みそのものが温故知新であった。過去の研究成果や技術開発が新たな発想を生み、その積み重ねが今日の診療を支えている。そこで本稿では、血糖値を「診る」技術の源流の一つとして、筆者らが約50年前に世界に先駆けて開発した人工膵島と、その後の持続血糖モニタリング(CGM)へと至る歩みを振り返ってみたい。筆者は1971年、インスリン発見50周年の年にトロント大学Banting & Best Instituteで研究を開始した。健常犬および膵全摘犬を用い、門脈内にブドウ糖、インスリン、グルカゴンなどを投与し、radio-isotope tracer dilution法により肝臓からのブドウ糖放出率や骨格筋でのブドウ糖取り込み率を定量的に解析した。その結果、食事や運動時にも血糖恒常性が保たれるのは、インスリンとグルカゴンが適切なタイミングで分泌され、肝臓と骨格筋の糖代謝を精緻に制御している結果であることを明らかにした。1974年に大阪大学第一内科へ帰局後、Charles Best博士の「私どもが発見し、もう50年も使用してきたインスリンの効果を最大限に発揮させるには、人工臓器を作るべきである」という理念の実現を目指し、人工膵島の開発研究を開始した。そして1977年には世界で初めて人工膵島の臨床応用を開始した。本システムは、高精度血糖測定器、生理的インスリン分泌を再現する制御アルゴリズム、適切なインスリン注入装置から構成されていた。特に制御アルゴリズムは、膵全摘犬を用いた研究成果を基盤として開発し、糖尿病患者においても生理的なインスリン分泌動態を再現し、血糖の日内変動を正常域へ回復させることを可能にした。このベッドサイド型人工膵島はその後、日機装株式会社により製品化され、現在も世界の臨床現場で広く活用されている。また、筆者らはstable isotope-labelled glucoseを用いたトレーサー技術と組み合わせることで、内因性インスリン分泌能や肝・骨格筋におけるインスリン作用の定量評価を行い、厳格な血糖管理がインスリン分泌能やインスリン感受性の改善をもたらすことなど、多くの重要な知見を発表することができた。一方、このシステムは採血用カテーテルを必要とするため、患者がベッド上から動けないという制約があった。そこで筆者らは携帯型人工膵島の開発に取り組み、その過程で皮下間質液中のブドウ糖を連続測定する針型グルコースセンサーを考案し、その詳細を1982年にLancet誌に報告した(図1)1)。このセンサーは現在の持続血糖モニタリング(CGM)の原型となった。しかし、間質液測定では血糖値との時間的遅延や絶対値の低さ、さらにそれらに個人差が存在することから、1型糖尿病患者各々で、それを把握したうえで、アルゴリズムを作成し、携帯型人工膵島にて、血糖応答正常化を維持し続けることができた2)。しかし、皮下投与インスリンの作用遅延なども加わるため、完全なclosed-loop制御の実現は容易ではなかった。その後、Medtronic社をはじめとする企業が技術改良を重ね、2000年頃からCGMが実用化されるようになった。センサー性能の向上に加え、膨大なデータを利用した補正アルゴリズムの進歩は目覚ましく、CGMは今や糖尿病診療に不可欠なツールとなっている。これらの技術を実用化した企業の永年にわたる努力に対して、筆者は深い敬意を抱き、感謝している。しかし、CGMには今も限界はある。間質液濃度測定による時間遅れを是正するため、食後の血糖上昇時には表示値が実際より急激に高くなる、夜間血糖値下降時には、より低く想定し示すこともある。最新機種でも平均絶対相対誤差(MARD)は約9%であり、医療者と患者はその特性を十分理解して活用する必要がある。これらの課題は、実は40年以上前の携帯型人工膵島開発時代から本質的には変わっていない。図1:筆者らが作成したneedle-type glucose sensor(1982年、Lancet)画像を拡大する従来、糖尿病患者の血糖変動評価は血糖値、HbA1c、自己血糖測定値(SMBG)に依存していた。しかしCGMの普及により、血糖応答を「点」ではなく「線」として把握できるようになった。この変化は糖尿病診療に革命をもたらした。近年ではFreeStyle LibreやDexcom G7などの高性能CGMが普及し、1型糖尿病患者においてすら正常に近い血糖プロファイルを維持することが現実的な治療目標となった。CGMを多数例で活用していると、「糖尿病コントロールにとって、食事摂取方法・身体活動量ほど重要なものはない!」ことを改めて認識させられた。そこで筆者は、インスリン非使用の2型糖尿病患者にもCGMを活用してきた。患者は食事内容や摂取方法、間食、運動量などが血糖に及ぼす影響を自ら確認できるため、生活習慣改善への理解と意欲が著しく高まる。また主治医も、患者ごとのインスリン分泌能やインスリン作用を推定しながら緻密な個別化治療を行うことができる。2024年にはインスリン非使用者にも保険適用が拡大され、CGMは血糖測定機器から患者教育と個別化医療を支える重要な診療ツールへと進化した。さらに、CGMデータを食事記録や生活行動と結び付けて振り返るアプリも登場している。血糖変動を可視化するだけでなく、その要因を理解し、行動変容につなげることが可能となりつつある。現在、筆者は健診で発見された2型糖尿病患者に対し、「発症前の状態に戻りましょう」と説明し、CGMとAIを活用した早期介入研究を企画している。高血糖の放置は膵β細胞の機能障害とアポトーシスを招き、インスリン分泌能を急速に低下させることなど分子レベル、臨床応用で証明してきた。したがって早期介入こそが重要であり、CGMはその強力な支援ツールとなる。一方、1型糖尿病の究極の治療は、生理的なインスリン分泌動態を再現し、門脈へ適切にインスリンを供給することであると考える。そのためには、より高度な人工膵島の開発に加え、膵β細胞再生や膵島移植などの再生医療の発展が不可欠であろう。温故知新の精神のもと、過去の研究成果を礎として、糖尿病の予防・寛解・根治を目指す医療の実現に今後も挑戦し続けていただきたい。1)Shichiri M, Kawamori R, et al. Wearable artificial endocrine pancreas with needle-type glucose sensor. Lancet 1982;2:1129.2)Shichiri M, Kawamori R, et al. The development of wearable-type artificial endocrine pancreas and its usefulness in glycaemic control of human diabetes mellitus. Biomed Biochim Acta 1984;43:561.

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GLP-1薬は骨折リスクを上げる?下げる?

 GLP-1受容体作動薬(以下「GLP-1薬」)の投与開始は、DPP-4阻害薬の投与開始と比較して、2型糖尿病患者における脆弱性骨折リスクの低下と関連することが、米国・カリフォルニア大学のChristopher D. Hamad氏らの研究で示された。一方、GLP-1薬開始群と非開始群を比較した糖尿病の有無別の感度分析では、非2型糖尿病患者においてGLP-1薬使用は骨折リスク増加と関連していた。JAMA Network Open誌オンライン版2026年7月24日号掲載の報告。 これまでの研究では、BMIと脆弱性骨折リスクとの間にはU字型の関連があり、低体重や肥満では骨折リスクが高くなること、急速または大幅な体重減少でも骨折リスクが高くなることが報告されている。GLP-1薬は臨床試験で有意な体重減少をもたらしているため、骨への影響が懸念されているものの、その影響については十分なエビデンスが得られていない。そこで研究グループは、2型糖尿病患者におけるGLP-1薬開始と脆弱性骨折リスクとの関連について、DPP-4阻害薬開始を比較対照として検討する標的試験エミュレーションを実施した。 米国の電子カルテデータベースTriNetXを用いて、2015年1月1日~2022年12月31日に新たにGLP-1薬またはDPP-4阻害薬を開始した50~90歳の2型糖尿病患者を対象とした。患者は骨折、死亡、365日を超える医療受診の中断、または3年間の追跡終了まで追跡された。主要評価項目は、立位からの転倒など低エネルギー外傷による脆弱性骨折の発生とした。糖尿病の有無による違いを検討するため、GLP-1薬開始群と非開始群を比較する感度分析を実施したほか、BMIおよびHbA1cの変化が骨折リスクとの関連を媒介するかどうかについても解析した。 主な結果は以下のとおり。・傾向スコアマッチング後、13万3,606例(各群6万6,803例)の患者が解析に含まれた。GLP-1薬開始群およびDPP-4阻害薬開始群の平均年齢は63.2歳vs.63.8歳、男性が52.7%vs.54.0%、平均BMIは33.0 vs.32.9、平均HbA1cは8.48 vs.8.40であった。・3年間の追跡調査期間中、GLP-1薬開始群2,030例とDPP-4阻害薬開始群2,484例に脆弱性骨折が発生した。・GLP-1薬の開始は、DPP-4阻害薬の開始と比較して脆弱性骨折リスクの低下と関連していた。 -ハザード比(HR):0.79(95%信頼区間[CI]:0.76~0.83) -絶対リスク減少:0.79%(95%CI:0.60~0.99) -治療必要数:126(95%CI:101~168)・骨折リスク低下との関連は1年目と2年目で有意に認められたが、3年目には有意ではなくなった。 -1年目 HR:0.72(95%CI:0.67~0.78) -2年目 HR:0.77(95%CI:0.71~0.83) -3年目 HR:0.94(95%CI:0.86~1.02)・骨折リスク低下との関連は年齢、性別、フレイルの程度にかかわらず一貫して認められた。最も大きなリスク低下は、椎骨骨折および股関節・大腿骨骨折であった。・媒介分析では、GLP-1薬使用による骨折リスク低下の大部分は、BMIやHbA1cの低下を介さない直接効果によることが示唆された(HR:0.81[95%CI:0.76~0.86])。・糖尿病の有無別にGLP-1薬開始群と非開始群を比較した感度分析では、GLP-1薬使用は2型糖尿病患者では骨折リスク低下と関連した一方、非2型糖尿病患者では骨折リスク増加と関連していた(交互作用のp<0.001)。 -2型糖尿病患者 HR:0.91(95%CI:0.88~0.95) -非2型糖尿病患者 HR:1.13(95%CI:1.04~1.23) これらの結果より、研究グループは「2型糖尿病患者へのGLP-1薬の投与開始は、DPP-4阻害薬の投与開始と比較して、BMIおよびHbA1cの変化では説明されない形で3年間の脆弱性骨折リスク低下と関連していた。因果関係を確立し、骨への長期的な影響を明らかにするためには前向き研究が必要である」とまとめた。

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長鎖脂肪酸代謝異常症患者のエネルギー代謝を改善/ウルトラジェニクス ジャパン

 希少疾患分野に特化し、治療薬の研究開発・製造・販売を行うウルトラジェニクス ジャパンは、希少疾患である長鎖脂肪酸代謝異常症(LC-FAOD)について、2026年5月21日に治療薬トリヘプタノイン(商品名:ドジョルビ内用液100%)を発売した。この発売によせ、都内でメディアセミナーを開催した。セミナーでは、LC-FAODの診療やトリヘプタノインの概要などについて専門医がレクチャーを行った。日本でも年間数十人の新生児が長鎖脂肪酸代謝異常症と診断 「エネルギー代謝の破綻にどのように向き合うか-長鎖脂肪酸代謝異常症とトリヘプタノイン-」をテーマに村山 圭氏(順天堂大学大学院医学研究科 小児科学講座 /難治性疾患診断・治療学 教授)が、LC-FAODの病態や診療の実際、トリヘプタノインの特徴や臨床試験の概要などを説明した。 人間は生存において空腹時には脂肪をエネルギー変換することで、生き延びることができるように進化した。この脂肪酸のミトコンドリア内輸送やβ酸化が障害される先天代謝異常症が脂肪酸代謝異常(FAOD)であり、「カルニチン回路異常」と「脂肪酸β酸化酵素異常」の2種類がある。 その中でもLC-FAODは、長鎖脂肪酸代謝障害を特徴とし、生命を脅しかねない常染色体潜性遺伝性疾患群である。本症はエネルギー産生の急性クリーゼと慢性的なエネルギー不足を引き起こす。約100例 米国では2,000~3,500例の患者が推計され、年間約100例の新生児がLC-FAODと確定診断を受けている。また、わが国では年間10~50例の発症患者が推定されている。LC-FAODの症状は通常、出生直後および乳児期早期に始まるが、一部には疾患の進行が遅い場合があり、後年になるまで診断されないケースもある。現在は、新生児マススクリーニングでほとんどの患者が診断されている。LC-FAODの症状は、肝臓、心臓、骨格筋など、脂肪酸酸化によるエネルギー産生に依存する組織に発現する。たとえば、肝臓では低ケトン性低血糖や肝機能障害などが起き、心臓では肥大型および/または拡張型心筋症や心嚢液貯留、心不全などが起きる。そのほか、神経症状、骨格筋ミオパチー、網膜疾患、消化器症状など多臓器に多彩な症状を来す。患者は、こうした症状により日常のQOL低下や過大な医療費の負担、そして、潜在的に高い死亡率につながる急性症状と慢性症状に直面している。 とくに急性症状では、横紋筋融解症、心筋症、または低ケトン性低血糖症などが発現するとともに、LC-FAODの一部では、突発的な意識障害やけいれんが起こることもあり、入院、救急外来の受診、緊急の治療介入、突然死に至ることもある。LC-FAOD患者の多くは、継続的な疾病の管理、心の健康管理、不安への対応のほか、トリガー回避などのために生活が制限されるとともに、重大な合併症や生命を脅かす合併症を経験している。 LC-FAODの治療はこれまで対症療法が中心であり、基本的には「長時間の空腹の回避」「糖中心のエネルギー摂取(頻回摂取)」「MCT(中鎖脂肪酸トリグリセリド)による代替エネルギー」「ベザフィブラート(酵素誘導)」「シックデイ対応」の5つが行われている。しかしながら、患者の根本的なエネルギー不足は解決されておらず、脂肪摂取制限の有効性に明確なエビデンスがないなどの課題を村山氏は指摘する。大事なことはエネルギー代謝の正常化 こうした問題の解決の一助として開発されたのがトリヘプタノインである。トリヘプタノインは、2つの代謝経路でエネルギーの産生に寄与し、脂肪酸代謝の改善とエネルギー産生の向上が期待されている。 トリヘプタノインは、炭素数7のヘプタン酸3分子がグリセロールで結合した合成中性脂肪で、LC-FAODに対して迅速かつ効率的なエネルギー源となる。経口摂取後に腸管内より吸収・代謝されたヘプタン酸は、長鎖脂肪酸とは異なり直接ミトコンドリア内に拡散移動し、生体エネルギー産生回路であるTCAサイクルの基質であるアセチルCoAとTCAサイクルの中間体であるスクシニルCoAを生成し、その後、速やかにTCAサイクルに入ることで患者のエネルギー産生に働く。 トリヘプタノインの海外第II相試験(UX007-CL201試験)では、LC-FAOD患者におけるトリヘプタノインの有効性および安全性評価を目的に24週間投与後の効果などが試験された。対象は、現行の管理法(低脂肪・高炭水化物食による管理、MCTオイルまたはMCT含有ミルクのいずれかを投与)にもかかわらず、重篤な臨床症状を示す生後6ヵ月以上のLC-FAOD患者29例。4週間の導入期間中、患者は現行の管理を継続し、導入期間終了後、ベースライン時に偶数鎖MCT(以降MCT)の使用を中止し、他の食事制限を維持しつつ、トリヘプタノインの投与を開始した。24週間投与し、その後、さらに54週間の継続期間において投与を継続した(合計78週間)。その結果、主要臨床イベントの年換算発現率では、トリヘプタノイン投与前(29例)1.69回/年に対し、トリヘプタノイン投与開始後(同)では0.88回/年となり、48.1%減少していた(p=0.0208)。また、年換算発現日数では、トリヘプタノイン投与前(29例)5.96回/年に対し、トリヘプタノイン投与開始後(同)では2.96回/年となり、50.3%減少していた(p=0.0284)。安全性について主な副作用は、下痢、腹痛、上腹部痛などの消化器症状が多く、死亡などの重篤なものはなかった。 最後に村山氏は「トリヘプタノインはエネルギー代謝ネットワークを再構築する可能性があり、エネルギー代謝の“断絶”を“連結”へと取り戻す治療ができる。新生児スクリーニングで本症と診断された患者に早く治療が届くように『こどもの未来に光を!』」と語り、講演を終えた。

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orforglipronはSGLT2阻害薬を超えた存在になるか?:ACHIEVE-2試験から(解説:永井聡氏)

 orforglipronは、空腹時の服用や飲水制限といった条件が不要で、食後投与が可能な経口GLP-1受容体作動薬である。本剤の2型糖尿病に対する実薬対照RCTとしてはすでにACHIEVE-3試験が発表されており、低用量(12mg)でも経口セマグルチド14mgに対して有意なHbA1c低下を示し「勝利」を収めている1)。 今回取り上げるACHIEVE-2試験は、メトホルミンでコントロール不十分な2型糖尿病患者を対象に、orforglipron(3/12/36mgカプセル)とSGLT2阻害薬ダパグリフロジン10mgを比較した国際多施設共同試験である。結果は、orforglipronが全用量においてダパグリフロジンに対し血糖降下作用の非劣性および優越性を示し、再び「完全勝利」となった。PIONEER 2試験において経口セマグルチド14mgがエンパグリフロジン25mgを凌駕したことを踏まえれば2)、この結果は想定内とも言えるが、実臨床に与える影響は小さくない。 本邦の2型糖尿病の薬物治療アルゴリズム3)では、病態に応じた薬剤選択(肥満)の推奨薬として、メトホルミン、SGLT2阻害薬、GLP-1受容体作動薬の順に記載されている。SGLT2阻害薬が優先される理由は、豊富な心血管・腎臓への保護効果のエビデンスに加え、既存の経口GLP-1受容体作動薬が服用条件に制約があるのに対し、処方や内服が容易であるためである。しかし、他の降圧薬等と一包化も可能で服薬条件に縛られないorforglipronの登場は、血糖降下作用と利便性の両面でSGLT2阻害薬を上回る存在になりうる。現在実施中の心血管アウトカム試験(ACHIEVE-4)の結果次第では、将来的に推奨順位が逆転する可能性もある。 一方で、試験結果の解釈は慎重にすべき点もある。第一に、orforglipron群は盲検化されたがダパグリフロジン群は非盲検であったため、新薬への「期待バイアス」が生じた可能性は否めず、orforglipronの臨床効果は過大評価となった可能性である。第二に、消化器症状による脱落率の高さである。本試験では、ダパグリフロジン群の6%に対し、orforglipron群では15%以上と高率であった。継続できなければ期待される恩恵にあやかれない。第三に、DECLARE-TIMI 58やDAPA-CKDなどで確立された長期安全性や心腎保護、二次予防の観点では、依然としてダパグリフロジンに軍配が上がることである。新薬への「期待バイアス」は患者だけではなく処方する医師にも起こりうる。さらに盲点となるのが薬物相互作用である。CYP3A4に関連する薬剤(クラリスロマイシンやイトラコナゾール)などではorforglipronとの併用注意・併用回避が必要な場合があり、多剤併用中の高齢者への処方はとくに注意が必要である。 ともあれ、かつて脂質異常症の治療は食事療法が主体であったが、ストロングスタチンの登場により、厳格な食事指導が緩和された歴史がある。糖尿病においても食事療法が基本であることに変わりはないが、強力な食事制限なしに血糖値と体重の改善をもたらすorforglipronは、まさに糖尿病領域における「ストロングスタチン」となる可能性がある。日進月歩でGLP-1関連薬は次々と新薬開発が進むが、個々のライフスタイルに合わせた処方や早期介入が進むことで、糖尿病寛解が夢物語でなくなることを願うばかりである。

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第327回 「骨太の方針2026」の注目ポイント(前編) 医療給付費に対GDP比という数値目標設定を提言、医療関係団体は「キャップ制」導入を警戒

熊本地震、10年前と変わらぬ雑魚寝状態の避難所こんにちは。医療ジャーナリストの萬田 桃です。医師や医療機関に起こった、あるいは医師や医療機関が起こした事件や、医療現場のフシギな出来事などについて、あれやこれや書いていきたいと思います。7月28日夕刻に発生した熊本地震は、地域的な事情(今回は大都市である熊本市内の被災が少ない等)もあると思いますが、10年前よりも全体的に医療機関の被災は少なく、医療提供体制に壊滅的な影響は出てはいないようです。地震翌日、知人の熊本市内の病院理事長に聞いたところ、「熊本市内のライフラインは大丈夫。当院も救急搬送が多く医師、医療スタッフはてんてこ舞いだが、10年前のような大混乱はない」とのことでした。とはいえ、酷暑、猛暑下での避難や支援は熱中症など、さまざまな体調不良を生じさせます。震災関連死を減らすには、これまでの震災とは次元が異なる対応が必要になりそうです。各メディアの報道の中で気になったのは、避難所に段ボールベッドが十分に用意されておらず、床に雑魚寝をしている被災者が少なくなかったことです。2011年の東日本大震災のとき、筆者が取材で訪れた石巻市の福祉避難所「遊学館」は、それはひどい状況でした。比較的健康な人も要介護状態の人も、皆一緒に床にびっしりと寝かされていたのです。そうした反省から、段ボールベッド(簡易ベッド)の必要性が十分認識されていたにもかかわらず、5年後、2016年の熊本地震でもほとんど用意されずに問題となりました。そして10年、今回の地震でもまったく同じ状況が起こっています。床に直接寝る状態が続いたり、長時間同じ姿勢を強いたりすることで、エコノミークラス症候群(深部静脈血栓症)の発生率が高まることや、劣悪な生活環境によるストレスでさまざまな循環器疾患が悪化し、災害関連死が増えることはもはや常識です。また、感染症予防の観点からも床寝はNGです。15年以上前から課題として挙がり、準備しておくべき重要装備(しかも比較的安価)の段ボールベッドを各自治体が十分用意していないとは一体どういうことなのでしょうか。国は県に、県は各市町村に段ボールベッド確保の要請をしておくべきでしたが、それが十分に行われていなかったのでしょう。断水や停電などはある意味不可抗力と言えます。しかし、ベッド不足は人災です。政府は、防災庁設置など目に見える“体裁”の整備には力を入れる一方で、やろうと思えばできていたはずの防災準備をおろそかにしていたわけです。本当に呆れますね。「骨太ショック」が起こり、閣議決定に至るまでいつになくバタバタさて、今回は、遅れに遅れ、7月21日にようやく閣議決定された「経済財政運営と改革の基本方針2026『責任ある積極財政』元年~日本の挑戦を起動する!」(骨太の方針2026)について書いてみたいと思います。今年の「骨太の方針2026」は、6月30日に原案がまとまり公表されましたが、その後、「骨太ショック」と呼ばれる事態が起こり、閣議決定に至るまでいつになくバタバタしました。「骨太ショック」とは、昨年まで明記されていた「財政健全化」の文言が原案から消えたことや、「『強い経済』に向けては、適切な金融政策運営が行われることも非常に重要」という文面によって、政府(利上げを嫌う高市政権)が日銀に介入するのでは、との憶測が広がったことで債券市場が大きく動揺、長期金利は約30年振りの高水準となり、併せて円安が急速に進行した事態を指します。焦った政府は原案を修正、日銀法第3条に触れる注釈を付け、「金融政策の具体的な手法については日銀に委ねられる」といった日銀の自主性を尊重する記述を加えるなど“火消し”対応が行われ、「骨太」は例年より約1カ月遅れての閣議決定となりました。7月22日付の日本経済新聞の記事によれば、「高市政権発足から間もない2025年11月。『自分たちで一から書く、財務省に原案を作らせない』」と、高市早苗首相のブレーンだけで構成される検討チームで「骨太」の作業に入ったとのことです。同記事は「財務省から奪還した主導権を存分に活用した初の骨太の方針。それは皮肉にも市場と首相との距離感を浮き彫りにすることになった」と批判的に書いています。皇室典範改正や、国旗損壊処罰法・「副首都」法成立など、高市首相の強引さが一際目立つようになり、各メディアの支持率も下落傾向です。全国紙の評価も総じて厳しく、7月26日付けの朝日新聞社説は、高市首相が初めて臨んだ国会について、「見えたのは、説明責任から逃げ、『数の力』で押し通そうとする首相と、それを制御できない自民党の責任政党としての劣化であった」と厳しく断じています。懸案だった「70歳以上の高齢者の医療費窓口負担割合3割」は明記されずさて、「骨太の方針2026」は、その副題に「『責任ある積極財政』元年~日本の挑戦を起動する!」とあるように、補助金により成長分野の企業の供給力拡大を国主導で後押しすることが主眼となりました。戦略17分野、62製品・技術で2040年度までに370兆円の官民投資を行うとしています。また、補正予算に頼り過ぎず、恒常的な施策は当初予算で対応する方針が明確になりました。一見華々しい成長分野での記述に対し、医療・介護をはじめとする社会保障の予算については、「医療・介護を中心とした社会保障制度改革を着実に実行することにより、現役世代の保険料率の上昇を止め、引き下げていくことを目指す」との方針の下、「歳出改革努力を継続し、2027年度の社会保障負担率が2025年度と比較して上昇しないよう取り組む」と厳しい考えが示されました。ただし、懸案だった「70歳以上の高齢者の医療費窓口負担割合3割」は明記されませんでした。与党である日本維新の会が強く求めていましたが、自民党はこれを嫌い、最終的に「原則3割となっている現役世代との間で年齢によらない真に公平な応能負担を実現する観点から見直しを行う」という記述に留まり、「そのための改革工程表を26年度末までに策定する」となりました。現役世代の「3割」という文言を入れることで、高齢者の負担割合は明示しないものの、「いずれ3割を目指すんだな」と意識させるという、絶妙な作文に落ち着いたわけです。医療給付費に対GDP比という数値目標を設定、その目標達成のために診療報酬を調整医療関係者がとくにカチンときたのは、社会保障改革について「2026年度中に改革項目の具体化と工程の明確化を図り、順次実施する」という本文の欄外に付けられた次の「注釈」でした。「医療給付費については、経済が成長し賃上げが継続する『強い経済』の構築に向けた取組を進める中で、診療報酬に経済・物価動向等を基本的に反映しつつも、医療給付費の対GDP比や雇用者報酬の伸びとの関係などを参照しつつ、医療費適正化計画の次期改定に向けて抜本的な見直しを行うことを含め、改革を継続する』。つまり、医療保険制度全体で給付される医療費の総額である医療給付費に対GDP比という数値目標を設定、その目標達成のために診療報酬を調整していく、と言っているわけです。対GDP比の数値目標の導入等の考えに「到底容認できない」と日医医療関係団体はすぐさま反応しました。ミクスオンライン等の報道によれば、日本医師会の松本 吉郎会長は7月22日の定例会見で、「骨太方針2026」に医療給付費対GDP比、社会保障費の対GDP比の数値目標の導入等の考えが入ったことに対して、「到底容認できない」と語るとともに、医療費に上限をかけるような「キャップ制につながらないよう、強く主張していきたい」と牽制。また、「70歳以上の高齢者の医療費窓口負担原則3割」も「到底容認できない」と語ったとのことです。また、キャリアブレインマネジメント等の報道によれば、日本病院団体協議会の代表者会議は7月24日、「骨太方針2026」などについて議論、会議後に神野 正博議長(全日本病院協会会長)は、代表者会議では注釈の記述について社会保障費への「キャップ制ではないか」と警戒する声が相次いだと明かした上で、「成長戦略を否定するものではないが、成長の中に社会保障制度が取り残されないよう再生医療や新薬、新しい医療材料などもしっかりと伸ばしてほしいという強い思いがある」と述べたとのことです。「骨太の方針2026」が閣議決定されてから9日後の7月30日、高市早苗首相は食料品にかかる消費税率を2027年4月から1%に引き下げる方針を表明しました。年5兆円という財源は相変わらず示されませんでした。「骨太」といい「食品消費税1%」といい、いずれも社会保障費、ひいては診療報酬に直結する問題です。高市政権下、医療機関にとってはなかなか厳しい局面が続きそうです。次回は「骨太の方針2026」に書かれた社会保障費関連以外の部分も見てみたいと思います。(この項続く)

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医師の4割が抱える歯の悩みとは/医師1,000人アンケート

 近年、口腔疾患は糖尿病、脳梗塞、動脈硬化に伴う心筋梗塞など、全身疾患リスクとの関連性が見いだされたり、高齢者の健康寿命を縮める10大原因の1つとしても問題視されたりしている。このような状況を踏まえ、日本でも2026年度より『歯周病検診マニュアル2023』1)や歯科健康診査票を用いた歯周病検診がスタートし、国を挙げて国民の歯周病の早期発見・重症化予防に乗り出している。そこで今回、日々患者の健康を守る医師自身の定期検診や歯周病検診の受診率、口腔ケアの実態についてアンケート調査を行い、医師自身の歯科領域に対する意識を可視化した。歯周病や歯間への挟まりに悩む まず、自身の歯の健康やオーラルケアに対する意識(Q1)について、「意識している」と回答した医師は約90%に上り、年齢による差はみられなかった。診療科別では、血液内科(100%)、脳神経外科(97%)、呼吸器科(95%)の順で意識が高いものの、眼科医は76%と意識が低かった。 口腔内の健康で気になっていること・悩み(Q2)については、歯周病(38%)が最も多く、歯と歯の間にものが挟まりやすい(29%)、歯の着色・黄ばみ(26%)と続いた。しかし、これらは加齢による影響も大きいことから、歯周病に対する意識は年齢とともに上昇する傾向がみられた。一方で、20代医師の悩みの多くは、歯の着色・黄ばみ、口臭、歯並びなど審美的要素が中心であった。 日常のオーラルケア・審美目的で行っていること(Q3)は、デンタルフロス・歯間ブラシの使用(59%)、電動歯ブラシ・特殊な歯ブラシの使用(32%)、マウスウォッシュ・洗口液の使用(26%)と続いた。デンタルフロス・歯間ブラシの使用はいずれの年代でも最も多く、上述の悩みの解消のために実践されていた。歯周病検診や定期検診の受診率は約60% 歯周病検診を含め、定期検診やメンテナンスで歯科受診している医師の割合は60%に上り、20代を除く30代以降の半数以上が、なんらかの目的で1年に1回以上は歯科受診していた。その年間費用は、80%以上の医師で「5万円未満」であったが、50万円以上という回答も30代以上では1%ほどみられた。意識と行動のギャップ、「頭で理解していても通えていない」 全体を通して、日常のオーラルケアへの意識がある医師は約90%と非常に高い水準であるが、不定期を含め受診経験のある医師は約60%(定期的に通う医師は54%)にとどまり、約40%は受診していなかった。歯のケアなどに関する自由記入では、以下のような声が寄せられた。―――・定期検診の必要性はわかるが、予約が取りづらく、なかなか歯科に行けない(60代、形成外科)・セカンドオピニオンが医科よりも難しい(60代、耳鼻咽喉科)・どれくらいの間隔で歯科受診したらいいのか?(50代、小児科)・顎関節症、口臭、舌痛など、どの医療機関に相談したらよいかわからないことが多い(50代、耳鼻咽喉科)・歯石除去予防が困難(60代、内科)・若いうちにケアしておくべきだったと後悔しています(50代、麻酔科)――― このように、口腔の悩みやセルフケアの必要性を認識しているものの、通院時間や業務の忙しさなどのアクセス面が障壁となり、適切な治療に到達できていない可能性が浮き彫りになった。また、医師であっても自身の受診のみならず、医科歯科連携先の歯科医院選択などの悩みを抱えており、その詳細は以下のページに掲載している。医師自身の口腔ケア問題、その対策は?/医師1,000人アンケート

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