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シスプラチン投与後の重篤AKI、簡易リスクスコアを開発/BMJ

 シスプラチン静脈内投与後の重篤な急性腎障害(CP-AKI)を予測する、新たなリスクスコアが開発された。米国・ブリガム&ウィメンズ病院のShruti Gupta氏らによる検討で、投与患者から容易に取得できる9つの共変量を用いた簡易リスクスコアが、従来モデルと比べて、死亡と強く関連する重篤なCP-AKIのリスクを高精度に予測可能であることが検証できたという。BMJ誌2024年3月27日号掲載の報告。CP-AKI定義は14日以内の血清クレアチニン値2倍以上、腎代替療法の実施 研究グループは、全米6ヵ所の主要ながんセンターを通じて、2006~22年に初回シスプラチン静脈内投与を受けた18歳以上の成人患者を対象に、重篤なCP-AKI発症に関する予測モデルの開発とその評価を行った。 主要アウトカムはCP-AKIで、初回シスプラチン静脈内投与から14日以内に血清クレアチニン値が2倍以上に増加、または腎代替療法の実施と定義した。CP-AKIの独立予測因子については、多変量ロジスティック回帰モデルを用いて特定し、それを基に予測モデルを開発コホートにより作成、外部検証コホートで精度を確認した。 主要モデルでは、連続変数は制限付き3次スプラインを用いて検証した。主要モデルのオッズ比をリスクポイントに変換し、簡易リスクモデルを作成。最終的に多変量Coxモデルを用いて、CP-AKI重症度と90日生存率の関連を調べた。モデルのC統計量は0.75、従来より高い識別能 合計2万4,717例の成人被験者が対象に含まれた。開発コホートは1万1,766例(年齢中央値59歳、四分位範囲[IQR]:50~67)、検証コホートは1万2,951例(60歳、50~67)だった。CP-AKI発症率は、開発コホート5.2%(608例)、検証コホート3.3%(421例)だった。 開発コホートから得られたCP-AKIの独立予測因子は、年齢、高血圧、糖尿病、血清クレアチニン値、ヘモグロビン値、白血球数、血小板数、血清アルブミン値、血清マグネシウム値、シスプラチン投与量だった。 9つの共変量(年齢、高血圧、糖尿病、現在/元喫煙者、ヘモグロビン値、白血球数、血清アルブミン値、血清マグネシウム値、シスプラチン投与量)からなる簡易リスクスコアは、開発コホートと検証コホートの両者で、CP-AKIリスクを予測することが示された。最低リスクカテゴリーの患者と比べた最高リスクカテゴリーの患者のCP-AKI発症オッズは、開発コホートで24.00倍(95%信頼区間[CI]:13.49~42.78)、検証コホートで17.87倍(10.56~29.60)だった。 主要モデルのC統計量は0.75であり、これまでに発表されたモデルの0.60~0.68に比べ高く、CP-AKI発症の識別が優れていた(それぞれの比較でDeLong P<0.001)。また、CP-AKI重症度が高いほど90日生存率が低い傾向が一貫して認められた(ステージ3のCP-AKI vs.CP-AKIなしの補正後ハザード比:4.63、95%CI:3.56~6.02)。

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糖尿病黄斑浮腫へのアフリベルセプト、高用量も安全・有効/Lancet

 糖尿病黄斑浮腫(DMO)患者へのアフリベルセプト8mgを12週ごとおよび16週ごとの硝子体内投与について、標準対照の2mgを8週ごとに投与との比較において、有効性および安全性は非劣性であることが示された。米国・Retina Consultants of AmericaのDavid M. Brown氏らが、第II/III相無作為化二重盲検非劣性試験「PHOTON試験」の48週時点の結果を報告した。アフリベルセプト8mgは同2mgと比べて、投与頻度を減少し治療アウトカムを改善できる可能性が示されていた。Lancet誌2024年3月23日号掲載の報告。7ヵ国、138医療機関でDMO成人患者を対象に試験 PHOTON試験は、7ヵ国、138の病院・網膜専門クリニックを通じ、1・2型糖尿病で中心窩を含むDMOが認められる18歳以上の患者を対象に行われた。 被験者は1対2対1の割合で、アフリベルセプト2mgを8週ごと(2q8群)、同8mgを12週ごと(8q12群)、同8mgを16週ごと(8q16群)に硝子体内投与を受ける群に無作為に割り付けられた。いずれの群も導入期投与(4週に1回)後にそれぞれアフリベルセプトの硝子体内投与を受け、16週目以降、同8q12群および8q16群は、事前に規定した疾患活動性に基づく用量レジメン修正基準を満たした場合には投与間隔が短縮された。 主要エンドポイントは、48週時点での最高矯正視力(BCVA)のベースラインからの変化で、非劣性マージンは4文字とした。有効性・安全性の分析は、無作為化後、試験薬を1回以上投与した全患者を対象に行った。8mgを12/16週ごと投与、2mgを8週ごと投与とBCVA改善は同等 2020年6月29日~2021年6月28日に970例がスクリーニングを受け、660例が登録・無作為化された。無作為化に誤りがあった2例を除く658例(99.7%)が対象の治療を受けた(アフリベルセプト2q8群167例、8q12群328例、8q16群163例)。患者の平均年齢は62.3歳(SD 10.4)で、61%(401例)が男性、72%(471例)が白人だった。 アフリベルセプト8q12群・8q16群はいずれも、2q8群に対しBCVA改善について非劣性を示した。BCVAのベースラインからの平均変化は8q12群8.8文字(SD 9.0)、8q16群7.9文字(8.4)、2q8群9.2文字(9.0)だった。最小二乗平均差は、8q12群と2q8群で-0.57文字(95%信頼区間:-2.26~1.13、非劣性のp<0.0001)、8q16群と2q8群で-1.44文字(-3.27~0.39、非劣性のp=0.0031)だった。 眼に関する有害事象の割合は、群間で類似していた(2q8群28%、8q12群32%、8q16群29%)。

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小林製薬のサプリ問題、日本腎臓学会がアンケート中間報告

 小林製薬が製造販売する『紅麹コレステヘルプ』摂取者の腎障害を含む健康被害の報告が相次いでいる―。これを受け、日本腎臓学会は3月29日より学会員を対象とした「紅麹コレステヘルプに関連した腎障害に関する調査研究」アンケートを開始。中間報告として、3月31日19時時点で47例の報告が寄せられ、本アンケートでは死亡例はなかったことを明らかにした。 本学会理事長の南学 正臣氏(東京大学大学院医学系研究科 科長・医学部長)と副理事長の猪阪 善隆氏(大阪大学大学院医学系研究科 腎臓内科学 教授)は「健康被害と紅麹コレステヘルプとの因果関係については科学的な検証が必要と考えております。原因物質については、候補物質に関する報道がなされていますが、今後、厚生労働省が国立医薬品食品衛生研究所とともに網羅的探索かつ発生機構の解明を行うことになっています。紅麹コレステヘルプに関連した健康被害として、この中間報告でお示しした以外の病態を否定するものではありませんが、被疑薬を服用された場合、被疑薬の服用を中止するとともに、腎機能検査や尿蛋白に加えて、尿糖や血清カリウム値、尿酸値、リン値、HCO3-値の測定は重要と思われます。今回の報告は中間報告であり、暫定的なものであることをご理解の上、診療にお役立てください」としている。 報告された患者背景や臨床所見については、日本腎臓学会のホームページ内の『「紅麹コレステヘルプに関連した腎障害に関する調査研究」アンケート調査(中間報告)』に詳細が示されている。 なお、本アンケートは問題となっているサプリメント摂取者の臨床的特徴の概要を調査し、一般診療に役立てることを目的に実施されており、日本腎臓学会の会員医師を対象に4月30日まで回答を受け付けている。

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新規機序のホモ接合体家族性高コレステロール血症薬「エヴキーザ点滴静注液345mg」【最新!DI情報】第12回

新規機序のホモ接合体家族性高コレステロール血症薬「エヴキーザ点滴静注液345mg」今回は、ヒト化抗ANGPTL3モノクローナル抗体「エビナクマブ(遺伝子組換え)注射液(商品名:エヴキーザ点滴静注液345mg、製造販売元:Ultragenyx Japan)」を紹介します。本剤は、LDL受容体非依存的にLDL-コレステロールを低下させるため、既存薬で効果不十分であったホモ接合体家族性高コレステロール血症患者の新たな選択肢として期待されています。<効能・効果>ホモ接合体家族性高コレステロール血症の適応で、2024年1月18日に製造販売承認を取得しました。本剤投与の要否は、HMG-CoA還元酵素阻害薬で効果不十分または忍容性が不良な場合に検討します。<用法・用量>通常、エビナクマブ(遺伝子組換え)として15mg/kgを4週に1回、60分以上かけて点滴静注します。なお、HMG-CoA還元酵素阻害薬などによる治療が適さない場合を除き、ほかの脂質低下療法と併用します。<安全性>重大な副作用として、アナフィラキシーや注入部位そう痒感を含むinfusion reaction(4.8%)が報告されています。主な副作用である上咽頭炎(1~10%未満)のほか、浮動性めまい、鼻漏、悪心、腹痛、便秘、背部痛、インフルエンザ様疾患が現れる可能性があります。<患者さんへの指導例>1.この薬は、ホモ接合体家族性高コレステロール血症の治療に用いる注射薬です。2.ほかの治療薬(HMG-CoA還元酵素阻害薬)で効果が不十分な場合または副作用のため治療ができない場合に使用されます。3.「ANGPTL3」というタンパク質を阻害することで脂質代謝を促進し、LDL-コレステロールを低下させます。4.妊娠する可能性がある女性は、この薬を使用している間および使用終了から少なくとも5ヵ月間は、適切な避妊を行ってください。<ここがポイント!>家族性高コレステロール血症(familial hypercholesterolaemia:FH)は、早発性冠動脈疾患と腱・皮膚黄色腫を高率に合併する常染色体優性遺伝性の高LDL-コレステロール血症です。ホモ接合体FH(homozygous FH:HoFH)は重度の高LDL-コレステロール血症(LDL-コレステロール値>500mg/dL[13mmol/L])を呈するまれな疾患であり、早発性の心血管系疾患(CVD)や未治療患者の若年死亡などを引き起こす可能性があります。治療にはLDL-コレステロール低下作用を持つスタチンやPCSK9阻害薬が用いられますが、LDL受容体活性が低いHoFH患者では治療抵抗性があります。本剤は遺伝子組換えヒトモノクローナル抗体で、脂質代謝の調節に関与しているアンジオポエチン様蛋白3(ANGPTL3)を特異的に阻害します。ANGPTL3の阻害により、LDL形成の上流に位置するVLDLのプロセシングおよびクリアランスを促し、LDL受容体非依存的にLDL-コレステロールを低下させると考えられています。成人および青年HoFH患者(12歳以上)を対象とした国際共同第III相試験(R1500-CL-1629試験)において、ベースラインから投与24週後のLDL-コレステロールの変化率(LS平均値)は、本剤群-47.1%、プラセボ群+1.9%で、LS平均値の群間差は-49.0%(95%信頼区間:-65.0~-33.1)であり、本剤群はプラセボ群に比べ有意なLDL-コレステロール低下を示しました。

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第208回 メトホルミンの食欲抑制を担うらしい血中成分を発見

メトホルミンの食欲抑制を担うらしい血中成分を発見メトホルミンの食欲抑制作用を担うと思しき血中成分が同定されました1,2)。糖尿病の治療薬メトホルミンは中世ヨーロッパで薬草として使われていたフレンチライラック(Galega officinalis、ガレガ草)を発祥とし、同植物に豊富に含まれる成分のグアニジンを端緒とする化合物として今からおよそ100年も前の1922年にその合成が報告されています3)。メトホルミンは血糖値の低下のみならず心血管イベント減少や生存改善ももたらしうることが1998年の試験で判明したことを受け、2型糖尿病(T2D)の高血糖管理にまず使うべき薬剤の1つと見なされるようになりました。いまや同剤はT2D治療の域を超え、多嚢胞性卵巣症候群(PCOS)、HIVリポジストロフィー、認知症などのインスリン抵抗性が絡む数々の疾患の治療やがんの予防、さらには抗老化という夢のような効果をも担いうることが示されています。何やら万能薬の様相を呈するメトホルミンですが、同剤の根本的な用途であるT2D治療の仕組みの理解はまだ不完全です。たとえばメトホルミンが体重を減らす効果には食欲抑制が寄与しているようですが、食欲抑制の仕組みはこれまでよくわかっていませんでした。メトホルミンは食欲を抑制するホルモンGDF15を増やします。2019年の報告ではその作用を介してメトホルミンは食欲を抑制すると示唆されました4)。しかし、その3年後の2022年の報告でメトホルミンはGDF15がなくとも体重を減らしうることが示され5)、メトホルミンの食欲抑制へのGDF15増加の寄与のほどは今や疑問視されています。GDF15とメトホルミンの食欲抑制作用の関わりのさらなる検討が必要である一方、ダブリン大学(Trinity College Dublin)のBarry Scott氏らは別の食欲抑制因子に当たりをつけて研究を行いました。Scott氏らが注目したのは乳酸とフェニルアラニンを結合させる酵素の産物である乳酸フェニルアラニン(N-lactoyl phenylalanine:Lac-Phe)です。Lac-Pheは激しい運動をすると食欲がなくなることに寄与する成分を探す研究で発見されました6)。肥満マウスにLac-Pheを投与すると食欲が減り、競走馬やヒトの運動後にLac-Pheが大幅に上昇することが2022年の報告で示されています。Scott氏らは新たな研究で33例の被験者の血中代謝物を調べました。その結果、メトホルミン治療を主とする糖尿病患者にLac-Pheが多く、Lac-Pheとメトホルミンの濃度が強く関連しました。また、英国の双子の追跡データ(TwinsUK)や先立つ2つの介入試験の結果を解析したところ、メトホルミン投与に伴うLac-Phe上昇が認められました。ほかでもないLac-Pheを発見したチームもメトホルミン投与に応じたLac-Phe上昇をヒトとマウスの両方で確認しており、その成果をScott氏らと時を同じくしてNature Metabolism誌に報告しています7,8)。より強力な食欲抑制作用が期待できるLac-Phe狙いの創薬により、肥満を治療する安全で効果的なこれまでにない類いの薬を生み出せそうです1)。参考1)Scott B, et al. Nat Metab. 2024 Mar 18. [Epub ahead of print] 2)Scientists uncover new secrets to natural appetite control, offering promise in the battle against obesity / Eurekalert3)Weight loss caused by common diabetes drug tied to “anti-hunger” molecule in study / Eurekalert4)Bailey CJ. Diabetologia. 2017;60:1566-1576.5)Day EA, et al. Nat Metab. 2019;1:1202-1208.6)Klein AB, et al. Cell Rep. 2022;40:111258. 7)Coll AP, et al. Nature. 2020;578:E24. 8)Xiao S, et al. Nat Metab. 2024 Mar 18. [Epub ahead of print] 9)Weight loss caused by common diabetes drug tied to “anti-hunger” molecule in study / Eurekalert

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「自閉傾向」が高い妊婦ほど、早産などのリスク上昇

 日本全国における8万7,687人の妊婦を対象とする大規模な研究が行われ、自己申告による「自閉傾向」が高いほど、早産や在胎不当過小(small for gestational age;SGA)などのリスクが高いことが明らかとなった。特に、極早産のリスク上昇が顕著だったという。国立国際医療研究センターグローバルヘルス政策研究センターの細澤麻里子氏らによる研究結果であり、詳細は「JAMA Network Open」に1月23日掲載された。 「自閉スペクトラム症(autism spectrum disorder;ASD)」は一定のスペクトラム(幅)を持つ神経発達障害であり、ASDの診断に至らなくても、一般の集団において「自閉傾向」のある人は連続的に分布しているとされる。ASDは社会的コミュニケーションの障害、限定された行動の繰り返しなどを特徴とするが、自閉傾向の高い人もASDと診断された人と同様に、社会的・心理的な困難を伴うことが報告されている。また過去の研究では、ASDと妊娠・出産の転帰不良との関連についても示されている。 そこで著者らは、一般の集団における妊婦の自閉傾向と出産の転帰との関連を検討するため、2011年1月~2014年3月に「子どもの健康と環境に関する全国調査(エコチル調査)」に参加した人を対象とするコホート研究を行った。自閉傾向は、妊娠中期・後期に自己申告による「自閉症スペクトラム指数日本語版」(AQ-J-10)で評価した。AQ-J-10は得点が高いほど自閉傾向が高く、7点以上は「臨床域」として、より詳細な評価が必要であることを示す。出産の転帰は、早産およびSGAを診療録より収集した。 8万7,687人(平均年齢31.2±5.0歳)のデータを解析した結果、AQ-J-10の平均点は2.8±1.7であり、AQ-J-10が7点以上の臨床域に該当する人は2,350人(2.7%)だった。ASDと診断を受けていた人は、わずかに18人(0.02%)のみだった。 また、自閉傾向が高い人ほど、早産(妊娠37週未満)、中等度・後期早産(32~36週)、極早産(32週未満)、SGAのリスクが高まることが明らかとなった。具体的には、対象者の背景(出産時の年齢、教育レベル、初産か経産か、妊娠中の喫煙、妊娠前のBMI、既往歴、出生児の性別)や妊娠合併症(妊娠高血圧症、妊娠糖尿病)による影響を調整して解析すると、AQ-J-10の点数が1標準偏差高くなるごとに、早産のリスクは1.06(95%信頼区間1.03~1.09)、中・後期早産は同1.05(1.01~1.08)、極早産は同1.16(1.06~1.26)、SGAは同1.04(1.01~1.06)を示した。さらに、AQ-J-10が7点未満の人と比較すると、7点以上の臨床域の女性における早産のリスクが16%、中・後期早産のリスクが12%、極早産のリスクが49%、SGAのリスクが11%、それぞれ高くなった。 以上から著者らは、「ASDの診断の有無によらず、一般の集団における妊婦の自閉傾向が高いことは、出産の転帰不良、特に極早産のリスク上昇と関連していた」と結論。この背景として、妊娠中の心理的ストレスの影響や食事などの生活習慣の影響、支援やケアへのアクセスの影響などを指摘する。その上で、自閉傾向が高い妊婦、特に自閉傾向が臨床域の得点を示す妊婦に対して、「妊娠中から適切な支援を提供することが必要だ」と述べている。

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活性型ビタミンD3がサルコペニアを予防/産業医大

 前糖尿病糖尿病はサルコペニアの独立した危険因子であることが報告されている1)。今回、前糖尿病患者への活性型ビタミンD3投与がサルコペニアを予防するかどうか調べた結果、筋力を増加させることでサルコペニアの発症を抑制し、転倒のリスクを低減させる可能性があることが、産業医科大学病院の河原 哲也氏らによって明らかにされた。Lancet Healthy Longevity誌オンライン版2024年2月29日号掲載の報告。 これまでの観察研究では、血清25-ヒドロキシビタミンD値とサルコペニア発症率との間に逆相関があることが報告されている2)。しかし、ビタミンDによる治療がサルコペニアを予防するかどうかは不明である。そこで研究グループは、活性型ビタミンD3製剤エルデカルシトールによる治療が前糖尿病患者のサルコペニアの発症を抑制するかどうかを評価するため、「Diabetes Prevention with active Vitamin D study(DPVD試験)※」の付随研究を実施した。※DPVD試験:前糖尿病の成人における2型糖尿病の1次予防として、活性型ビタミンD治療の効果を調査した多施設共同ランダム化二重盲検プラセボ対照試験。国内32施設で実施された。 対象は、耐糖能異常(75g経口ブドウ糖負荷試験で空腹時血糖値<126mg/dLおよび負荷後2時間値140~199mg/dL、かつHbA1c<6.5%)を有し、サルコペニアではない30歳以上の男女1,094例であった。エルデカルシトール(0.75μgを1日1回経口投与)群またはプラセボ群に1対1の割合に無作為に割り付けられた。 主要評価項目は、ITT集団における3年間のサルコペニア発症率で、その定義は握力が弱い(男性28kg未満、女性18kg未満)、骨格筋指数が低い(生体電気インピーダンス分析で男性7.0kg/m2未満、女性5.7kg/m2未満)こととした。副次評価項目は、3年間の転倒の発生率、握力と体組成の変化であった。 主な結果は以下のとおり。・解析にはエルデカルシトール群548例、プラセボ群546例が組み込まれた。平均年齢60.8歳、女性44.2%、平均BMI値24.5、2型糖尿病の家族歴があったのは59.5%であった。・約3年間の追跡期間中にサルコペニアを発症したのは、エルデカルシトール群4.6%、プラセボ群8.8%であり、エルデカルシトールによる治療は有意なサルコペニア予防効果を示した(ハザード比[HR]:0.51、95%信頼区間[CI]:0.31~0.83、p=0.0065)。・転倒の発生は、エルデカルシトール群24.6%、プラセボ群32.8%で有意差が認められた(HR:0.78、95%CI:0.62~0.97、p=0.0283)。・BMIと腹囲径の変化は両群で有意差は認められなかったものの、エルデカルシトール群ではプラセボ群よりも脂肪量指数が有意に減少し(-0.15% vs.0.31%、p=0.028)、骨格筋指数が有意に増加し(0.45% vs.-1.72%、p<0.0001)、握力も増加した(1.85% vs.0.45%、p=0.0003)。・有害事象の発生率は両群間で有意差は認められなかった。 これらの結果より、研究グループは「活性型ビタミンD3製剤エルデカルシトールの治療によって、骨格筋量および筋力を増加させることにより、前糖尿病患者のサルコペニアの発症を予防し、転倒のリスクを大幅に減少させる可能性を見出した。今後はサルコペニアや前糖尿病の有無にかかわらず高齢者を対象とした臨床試験を実施する予定である」とまとめた。

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diabetes mellitus(糖尿病)【病名のルーツはどこから?英語で学ぶ医学用語】第2回

言葉の由来糖尿病は英語にすると“diabetes mellitus”で、「ダイアビーティス メリタス」のような発音になります。言葉の由来は、「サイフォン」を意味するギリシャ語の“diabetes”(eの表記はeにマクロンを付した文字)と「蜂蜜のように甘い」を意味するラテン語の“mellitus”(iの表記はIにマクロンを付した文字)が組み合わさってできたとされています。糖尿病の歴史は古く、最古の記録は紀元前1,500年頃にエジプトで糖尿病の記載と思われる文章が認められています。詳しく記載されたのは古代ギリシャ時代(紀元1世紀)で、患者が過剰に尿を排泄する様子を医師がサイフォン(水が細い管を通っていったん高い位置に上がった後、低い位置に下りる装置)に例えたことから、この“diabetes”が病名として定着したとされています。その後、1,600年代に英国のトーマス・ウィリス医師が糖尿病患者の尿が甘いことに気付き、ラテン語で蜂蜜のような甘さを意味する“mellitus”を付け加え、“diabetes mellitus”と名付けました。なお、インドや中国の古代文明でも糖尿病を示唆する記録が残っており、多くの文化圏で「甘い尿が出る状態」は認知されていたようです。日本では、1,800年代に欧米から“diabetes mellitus”という病名が持ち込まれ、当初は「蜜尿病」などと訳されていましたが、蜜の成分が糖であることが知られ、「糖尿病」という名称に統一されました。しかしながら最近では、「糖が尿に出ない患者も多く、症状を正確に表していない」「尿という言葉が不潔なイメージにつながり、誤解や偏見を生んでいる」といった理由で、英語をカタカナにした「ダイアベティス」などの新しい呼称に変更することが提案されています。併せて覚えよう! 周辺単語前糖尿病状態prediabetes高血糖hyperglycemia妊娠糖尿病gestational diabetes尿崩症diabetes insipidus糖尿glycosuriaこの病気、英語で説明できますか?Diabetes is a condition that occurs when blood sugar levels are too high. It develops when a pancreas doesn't make enough insulin or doesn't make any at all, or when the body doesn't respond properly to the effects of insulin.講師紹介

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「週末戦士」でも減量効果は習慣的な運動と同じ

 運動に関するガイドラインでは、中強度の運動を週に150分以上、または高強度の運動を週に75分以上行うことが推奨されている。この運動量を、1日か2日で集中的に行う「週末戦士」でも、得られる減量効果は習慣的な運動の積み重ねでこの基準を満たしている人と同程度であることが新たな研究で明らかになった。Fuwai病院(中国)National Clinical Research Center for Cardiovascular Diseases(国立循環器病研究センター)のLihua Zhang氏らによる研究で、詳細は「Obesity」に2月20日掲載された。 この研究では、米国全国健康栄養調査(NHANES)に2011年から2018年まで参加した20〜59歳の成人9,629人(平均年齢39.0歳、男性51.6%)のデータを用いて、運動パターンと腹部および全身の脂肪蓄積との関連が検討された。運動パターンは質問票への回答に基づき、運動量が週に150分未満の「非活動的運動パターン」、週に150分以上の運動を1回か2回で行う「週末戦士型運動パターン」、週に150分以上の運動を2回以上行う「習慣的運動パターン」の3群に分類された。脂肪の蓄積量は、二重エネルギーX線吸収測定法(DXA法)と身体測定により評価した。 対象者のうち、772人(8.2%)が「週末戦士型運動パターン」、3,277人(36.9%)が「習慣的運動パターン」、5,580人(54.9%)が「非活動的運動パターン」に分類された。結果に影響を及ぼし得る因子を調整して解析した結果、非活動的運動パターン群に比べて、週末戦士型運動パターン群と習慣的運動パターン群は、DXA法で測定した脂肪蓄積量、腹囲、全脂肪量について、減少率が類似していることが明らかになった。 こうした結果を受けて研究グループは、「これは、日常生活に運動を取り入れるのが難しい人にとって朗報となる結果だ」と話す。また、Zhang氏は、「週末戦士の運動パターンは、ガイドラインで推奨されている運動頻度を満たすのが難しい人に推奨する価値があるだろう」との見方を示す。同氏は、会社員やバスの運転手など、1日の大半を座って過ごさなければならない人は、このような運動アプローチが有益だと指摘する。そして、「われわれの研究結果は、このような人に健康維持のための別の選択肢を提供する可能性がある」と話している。 この研究には関与していない、米ワイル・コーネル・メディスン包括的体重コントロールセンターのBeverly Tchang氏は、「より広い視点でとらえると、この研究結果は、『どんな活動でも、しないよりはする方が良い』という、身体活動と健康に関して昔から言われていることを再確認するものだ」と述べている。 Tchang氏は、「特筆すべきは、週末戦士のワークアウトは強度が高く持続時間が長いことだ。運動強度が高く、運動時間が長いほど、腹部脂肪の減り方も大きい。ただし、この研究から学び取ってほしいのは、人は自分のライフスタイルに合った方法で運動すればそれで良いということだ」と話している。

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グラスを変えると…

患者さん用画いわみせいじCopyright© 2021 CareNet,Inc. All rights reserved.説明のポイント(医療スタッフ向け)診察室での会話医師患者医師患者医師患者医師患者医師患者最近、お酒は何を飲んでいますか?焼酎が多いですね。そうですか。普段、焼酎を飲むときにどんなグラスを使っていますか?よくある感じのグラスですよ。なるほど。ところで、ここにあるロックグラスと画 いわみせいじトールグラス、どちらのほうがたくさん入ると思いますか?うーん、縦長のトールグラスですか?残念! どちらも同じ量になります。えっ、そうなんですか。縦長のグラスは実際より多く見えるんですね。はい。グラスを変えることで、飲む量が控えられるかもしれませんね。今日帰って、早速やってみます。(うれしそうな顔)ポイント縦長のグラスに変えることが、飲み過ぎを防ぐきっかけになるかもしれません。Copyright© 2021 CareNet,Inc. All rights reserved.

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第90回 小林製薬の「紅麹」製品自主回収、シトリニンが原因?

ベニコウジカビ(Wikipediaより)2024年3月22日、小林製薬は「紅麹原料(自社製造)の成分分析を行った結果、一部の紅麹原料に当社の意図しない成分が含まれている可能性が判明した」と発表しました1)。2024年3月27日時点の報道によると、小林製薬の紅麹製品を摂取し、腎疾患等を発症した患者の死亡が2件、入院症例は106件となっています。紅麹は、マイコトキシンの1種であるシトリニンによる健康障害が知られており、10年前にはすでにヨーロッパで規制されています2~4)。スイスでは2014年に、紅麹を成分に含む食品の売買は違法であると注意喚起されています。紅麹は現在も着色料や発酵食品などに使用されており、血清コレステロール値や血圧を下げる機能が知られています。しかし、紅麹が発酵した場合、マイコトキシンであるシトリニンが生成され、加熱しても腎障害につながる毒性が消えないため、これをいかに制御するかが課題でした。小林製薬も過去ヨーロッパで取り沙汰された紅麹の腎障害については、当然認識していました。次世代シークエンサーを使って紅麹菌3種類の全ゲノム解析を行った結果、日本で主に使われているMonascus pilosusにシトリニンが生成できないという論文が公開され5)、今回自主回収に踏み切った製品にも当然シトリニン非産生株が用いられています。――とはいえ、紅麹が腎疾患を起こしているという疑いが出て自主回収に踏み切っているわけですから、これらの製品がシトリニンを産生しているかどうか、その他健康被害を起こす物質が検出されるかどうかが注目されています。小林製薬は、過去1年間に製造した紅麹原料合計18.5トンのうち、すでに16.1トンは子会社から取引先へ販売済みであるとしています。小林製薬は、すべての紅麹原料を使用した製品の販売を停止するよう求め、回収措置を進めています。3月25日、小林製薬の株価は値幅いっぱいまで急落しました。海外で以前に問題となった紅麹関連の腎障害がここに再び現れた場合、消費者およびステークホルダーへの詳細な説明が不可欠となるでしょう。参考文献・参考サイト1)小林製薬:紅麹関連製品の使用中止のお願いと自主回収のお知らせ2)内閣府食品安全委員会:スイス連邦食品安全獣医局(BLV)、紅麹を成分に含む食品の売買は違法と注意喚起3)内閣府食品安全委員会:フランス食品環境労働衛生安全庁(ANSES)、紅麹を有効成分とするサプリメントを服用する前に必ず医師に相談するよう注意喚起4)内閣府食品安全委員会:欧州連合(EU)、紅麹由来のサプリメント中のかび毒シトリニンの基準値を設定5)Higa Y, et al. BMC Genomics. 2020 Oct 1;21(1):679.

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慢性腎臓病に対する心不全の因果関係

 心不全と慢性腎臓病(CKD)との間に因果関係のあることが、メンデルランダム化解析の結果として示された。この関係は、糖尿病と高血圧の影響を調整した後でも、依然として有意だという。湖南中医薬大学(中国)のJunyu Zhang氏らの研究によるもので、詳細は「PLOS ONE」に12月11日掲載された。 肥満や糖尿病、高血圧、冠動脈疾患、および遺伝的素因が心不全やCKDのリスク上昇と関連のあることは、多くの疫学研究の結果として示されている。ただし、それらの因果関係については未解明の点が多く残されており、特に心不全が腎機能低下やCKDのリスクを押し上げるか否かは不明。Zhang氏らはこれらの点を明らかにするため、双方向2サンプルメンデルランダム化(2SMR)解析を行った。 2SMRには欧州で行われた2件の研究データを用いた。そのうち1件の研究では4万7,309人の心不全患者群と93万14人の対照群が設定され、他の1件は5万1,256人のCKD患者群と73万6,396人の対照群が設定されていた。解析には、逆分散加重(IVW)法、加重中央値推定(WME)法、MR-Egger法など、5種類の手法を用いて、結果の正確性や一般化可能性を高めた。 2SMR解析の結果、心不全の遺伝的素因を持つ人はCKDリスクが高いことが明らかになった。具体的には、IVW法ではオッズ比(OR)1.12(95%信頼区間1.03~1.21)であり(P=0.009)、WME法ではOR1.14(同1.03~1.26)であって(P=0.008)、いずれも有意な関連が確認された。この関連は糖尿病と高血圧の影響を調整した2SMR解析においても、IVW法ではOR1.13(1.03~1.23)、WME法ではOR1.15(1.04~1.27)であって、引き続き有意だった。なお、MR-Egger法では、糖尿病と高血圧の影響の調整前〔OR1.09(0.82~1.44)〕および調整後〔OR1.12(0.85~1.48)〕ともに非有意だった。 一方、CKDの結果としての心不全という、逆方向の因果関係に関する解析の結果は、IVW法ではOR1.01(0.97~1.06)、WME法ではOR1.03(0.97~1.10)であり、有意な関連が示されなかった。検討に用いた5種類の解析手法のうち、MR-Egger法のみが有意な関連を示していた〔OR1.13(1.01~1.26)〕。また、腎機能(eGFR)低下と心不全の関連については、5種類の解析手法の全てで有意な関連が示されなかった。 著者らは、「われわれの研究結果は、CKDの進行における心不全の重要性を実証するものであり、CKDの治療および新たな介入法の開発につながる有意義なものと言える。さまざまな集団で心不全とCKDの関連を検討し、その相互関係についてより深く理解して、かつ因果関係のメカニズムを解明することで、個別化医療の道が開けるのではないか」と述べている。

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「血糖値も測れる」とうたうスマートウォッチなどの使用に米FDAが注意喚起

 米国の糖尿病患者の中には現在、「血糖変動も把握できる」とうたって販売されているスマートウォッチやスマートリングを使用している人がいる。この状況に対して2月21日、米食品医薬品局(FDA)は、皮膚への針の穿刺や留置を伴わずに血糖を測定可能とする表現は虚偽であって、その使用は潜在的に危険であるとする安全性情報(safety communications)を発出して注意を喚起した。なお、日本国内で承認され保険診療下で糖尿病治療に使われている連続血糖測定(CGM)や間歇スキャン式持続血糖測定(isCGM)用の機器は、今回のFDA安全性情報が対象としている製品とは異なる。 FDAの発表は、「これらのスマートウォッチやスマートリングの販売者は、非侵襲的な技術を使用することによって、自社の製品を用いれば指などの皮膚に針を穿刺・留置することなく血糖値を測定可能だと主張している。しかし、当局はそのようなデバイスを承認したことはなく、それらの宣伝文句を信頼することは危険な可能性がある」というもの。そして、「糖尿病患者にとって、不正確な血糖測定は、糖尿病管理の失敗(errors in diabetes management)につながることがある」と警告している。 「糖尿病管理の失敗」とは、例えば血糖値を危険な低水準まで急降下させることのある量の薬剤を使用してしまうといったことも含まれる。FDAは、「血糖降下薬を過剰に使用した場合、危険な低血糖状態に陥り、数時間以内に精神的混乱、昏睡、または死に至ることもある」と警告している。 FDAによると、現在このような未承認の機器を手軽にオンラインで購入できる状態にあり、「これらのスマートウォッチやスマートリングは数十の企業によって製造され、複数のブランド名で販売されている」とした上で、「正確な血糖測定に基づいた医療を行う際には、自分のニーズに合った、FDA承認済みの適切な機器を使用するよう、医療提供者と相談するように」とアナウンスしている。同時に米国内の医療提供者に対しては、このような危険性のある製品が流通していることについて、患者に情報を伝達するよう求めている。 FDAのこの安全性情報は、「当該製品のメーカーやブランドにかかわらず、皮膚に針を穿刺・留置せずに血糖値を測定可能と主張する全てのスマートウォッチやスマートリングに適用される」という。また、このような機器の違法販売行為を防止するための取り組みを、米国全土で行っているとのことだ。 なお、CGMやisCGMは皮下間質液中の糖濃度を測定し血糖値に換算するものであり、非侵襲ではないという点で今回のFDA安全性情報の対象製品と異なる。CGMやisCGMは既に、安全性や有用性のエビデンスが確立している。

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肉を避ければいびきをかきにくくなる?

 植物性食品中心の健康的な食事スタイルの人は、閉塞性睡眠時無呼吸(OSA)のリスクが低いことを示唆するデータが報告された。フリンダース大学(オーストラリア)のYohannes Melaku氏らの研究によるもので、詳細は「ERJ Open Research」に2月20日掲載された。 OSAは睡眠中に気道がふさがれて呼吸が止まることを繰り返す病気。睡眠が浅くなりやすく、また呼吸が止まる前後に大きないびきをかくことが多い。さらに、高血圧や2型糖尿病、脳卒中、心臓病のリスクとも関連することが知られている。このOSAは肥満に伴いやすい病気のため、摂取エネルギー量との関連がこれまでに研究されてきている。それに対してMelaku氏らは、食事の質とOSAリスクとの関連に焦点を当て、米国国民健康栄養調査(NHANES)のデータを用いた横断研究を行った。 解析対象は2005~2018年の4回のNHANES参加者のうち、データ欠落のない1万4,210人。24時間思い出し法により把握された食品摂取状況を基に、4種類の指標を用いて食事スタイルを評価し、OSAリスクとの関連を検討した。OSAリスクは、年齢、性別、BMI、血圧、いびき、疲労感などをスコア化する「STOP-BANG」という評価ツールで判定した。解析に際しては、摂取エネルギー量、喫煙・飲酒・運動習慣、睡眠時間、心血管疾患・がん・糖尿病の既往、人種、婚姻状況、教育歴、収入などの影響を調整した。 解析の結果、四つの食事スタイル指標のうち三つで、OSAリスクとの有意な関連が見つかった。まず、植物性食品ベースの指標(PDI)のスコアの四分位で4群に分けると、スコアの高い群ほどOSAリスクが低いという負の関連が認められた(傾向性P=0.008)。健康的な植物性食品(全粒穀物、果物、野菜、ナッツ、豆類など)の摂取量が多いことを表す指標(hPDI)との関連も同様の結果だった(傾向性P=0.042)。 一方、非健康的な植物性食品(精製穀物、ジャガイモ、および糖分や塩分など)の摂取量が多いことを表す指標(uPDI)は、OSAリスクと正の関連が観察された(傾向性P=0.016)。ベジタリアン食らしさを表す指標(PVDI)についてはOSAリスクとの関連が非有意だった。 各指標の第1四分位群と第4四分位群を比較した場合、PDIでは第4四分位群でOSAリスクが19%低い可能性が示された〔オッズ比(OR)0.81(95%信頼区間0.66~1.00)〕。反対にuPDIについては第4四分位群で、22%リスクが高い可能性が示された〔OR1.22(同1.00~1.49)〕。 次に、性別に解析を行うと、hPDIとの関連は男性・女性ともに非有意となった。また男性はuPDIとの関連も非有意となり、PDIとの負の関連のみ有意だった。女性ではPDIとの関連が非有意となり、uPDIとの正の関連のみ有意だった。 本研究で示された食事スタイルとOSAリスクの関連のメカニズムについて、Melaku氏は「詳細は不明」としつつも、「健康的な植物性食品ベースの食事は、炎症や肥満を軽減したり、筋肉の緊張を抑制したりする可能性があり、それらを介してOSAリスクを低下させるのかもしれない」と述べている。また、食事スタイル指標とOSAリスクとの関連が男性と女性で部分的に異なっていた点に着目し、「OSAの治療では性差への留意が重要。栄養介入の際には、指導内容を性別に合わせて変更する必要がありそうだ」と述べている。

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令和6年能登半島地震災害義援金のお礼とご報告

このたびの能登半島地震で被災された皆さま、ならびにご家族の皆さまに、心よりお見舞い申し上げます。CareNet.comでは、ポイントのご利用による「令和6年能登半島地震災害義援金」を募集いたしました。多くの方々にご協力いただき、2月29日までに2,268,612円分のポイントが集まりましたことをご報告いたします。また、ケアネットからも同額を加え、総額4,537,224円を日本赤十字社を通じて被災地にお届けいたします。皆さまより多大なるご賛同、ご協力を賜り、誠にありがとうございました。被災地の一刻も早い復旧・復興を心よりお祈り申し上げます。令和6年能登半島地震災害義援金の詳細は以下をご確認ください。(※日本赤十字社のサイトへ遷移します)https://www.jrc.or.jp/contribute/help/20240104/

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血糖値が改善する身近な香辛料は?~メタ解析

 地中海食に含まれるハーブ/スパイスが2型糖尿病患者の血糖プロファイルに及ぼす影響を調査したシステマティックレビューおよびメタ解析の結果、いくつかのハーブ/スパイス摂取が空腹時血糖、HbA1cおよびインスリン値の低下と関連していて、とくにショウガの摂取でそれらすべてが有意に改善したことを、スペイン・University of ZaragozaのMaria C. Garza氏らが明らかにした。Nutrients誌2024年3月7日号掲載の報告。 地中海食には豊富なハーブ/スパイスが含まれていて、それらが血糖値やコレステロール低下作用、抗酸化作用、抗炎症作用などを示す可能性が示唆されている。そこで研究グループは、地中海食に一般的に含まれるハーブ/スパイスが2型糖尿病患者の血糖プロファイルに及ぼす影響を調査した。 PubMed、Web of Science、Scopusの各データベースを2023年9月まで検索し、2型糖尿病の成人患者の血糖プロファイルに対するブラッククミン、クローブ、パセリ、サフラン、タイム、ショウガ、黒コショウ、ローズマリー、ターメリック、バジル、オレガノ、シナモンの影響を調査した介入研究を適格とした。主要アウトカムは空腹時血糖値、HbA1c、インスリン値の変化であった。 主な結果は以下のとおり。●システマティックレビューの対象となった論文は77報で、このうち45報(45研究、3,050例)がメタ解析の対象となった。●空腹時血糖値が有意に改善したのは、ブラッククミン、シナモン、ショウガ、ターメリック、サフランであった(以下、括弧内は95%信頼区間)。 ・ブラッククミン摂取群:26.33mg/dL低下(-39.89~-12.77、p=0.0001) ・シナモン摂取群:18.67mg/dL低下(-27.24~-10.10、p<0.001) ・ショウガ摂取群:17.12mg/dL低下(-29.60~-4.64、p=0.0004) ・ターメリック摂取群:12.55mg/dL低下(-14.18~-10.86、p<0.001) ・サフラン摂取群:7.06mg/dL低下(-13.01~-1.10、p=0.020)●HbA1cが有意に改善したのは、ショウガとブラッククミンであった。 ・ショウガ摂取群:0.56%低下(-0.90~-0.22、p=0.0013) ・ブラッククミン摂取群:0.41%低下(-0.81~-0.02、p=0.0409)●インスリン値が有意に改善したのは、ショウガとシナモンであった。 ・ショウガ摂取群:1.69 IU/μL低下(-2.66~-0.72、p=0.0006) ・シナモン摂取群:0.76 IU/μL低下(-1.13~-0.39、p<0.0001)※各ハーブ/スパイスの最も一般的な摂取量は、ブラッククミン:500mg、シナモン:1,000mg、ショウガ:2,000mg、ターメリック:2,000mg、サフラン:30~100mg。 著者らは、本研究の限界として「それぞれのハーブ/スパイスの用量が不均一であるため、有効用量を考慮することはできなかった」ことなどを挙げつつ、「ショウガは、地中海食のハーブ/スパイスの中で、空腹時血糖、HbA1cおよびインスリン値の3つの検査結果すべてに有意な影響をもたらす独特のものであるようだ」とまとめた。

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冠動脈ステント内再狭窄、DCB vs.非コーティングバルーン/JAMA

 ステント内再狭窄に対して経皮的冠動脈インターベンション(PCI)を受けた患者において、パクリタキセルコーティングバルーンは非コーティングバルーンと比較し、1年時の標的病変不全の発生が有意に少なく、優越性が示された。米国・ベス・イスラエル・ディーコネス・メディカルセンターのRobert W. Yeh氏らが、米国の40施設で実施した無作為化比較試験「A Clinical Trial to Assess the Agent Paclitaxel Coated PTCA Balloon Catheter for the Treatment of Subjects With In-Stent Restenosis:AGENT IDE試験」の結果を報告した。著者は、「パクリタキセルコーティングバルーンは、冠動脈ステント内再狭窄患者に対する有効な治療選択肢である」とまとめている。JAMA誌オンライン版2024年3月9日号掲載の報告。パクリタキセルコーティングバルーン vs非コーティングバルーン、標的病変不全を1年追跡 研究グループは、2021年5月~2022年8月にステント内再狭窄(参照血管径2.0mm以上4.0mm以下、病変長26mm未満、標的病変狭窄が症候性では50%以上100%未満、無症候性では70%以上)を有する患者600例を登録し、標的病変の前拡張成功後にパクリタキセルコートバルーン群(406例)または非コートバルーン群(194例)に2対1の割合で無作為に割り付け、施術後1年間追跡した。 両群とも、術後少なくとも1ヵ月間はアスピリンとP2Y12阻害薬による抗血小板薬2剤併用療法を行った後、抗血小板薬単剤療法を試験期間中継続した。最終追跡日は2023年10月2日であった。 主要エンドポイントは、1年時の標的病変不全(TLF)(虚血による標的病変血行再建術、標的血管関連心筋梗塞、心臓死の複合と定義)とし、ITT解析を行った。標的病変不全発生率は17.9% vs.28.6% 無作為化された600例の患者背景は、平均年齢68歳、女性26.2%、黒人7%、糖尿病併存50.7%、多枝冠動脈疾患の既往78.9%で、このうち1年間の追跡調査を完了したのは574例(95.7%)であった。 主要エンドポイントの1年時イベント発生率は、パクリタキセルコーティングバルーン群17.9%、非コーティングバルーン群28.6%であり、優越性の基準を満たした(ハザード比[HR]:0.59、95%信頼区間[CI]:0.42~0.84、両側のp=0.003)。 標的病変血行再建術の発生率は13.0% vs.24.7%(HR:0.50、95%CI:0.34~0.74、p=0.001)、標的血管関連心筋梗塞の発生率は5.8% vs.11.1%(0.51、0.28~0.92、p=0.02)で、いずれもパクリタキセルコーティングバルーン群で低かった。 心臓死の発生率は、それぞれ2.9% vs.1.6%(HR:1.75、95%CI:0.49~6.28、p=0.38)であった。

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餅70gで軽くお茶碗1杯

患者さん用画 いわみせいじCopyright© 2021 CareNet,Inc. All rights reserved.説明のポイント(医療スタッフ向け)診察室での会話患者 先生、正月に餅をついたのですが、血糖が上がるんじゃないかと心配で…。医師 なるほど。お餅、おいしいですよね。患者 はい。それで、つい食べ過ぎてしまって。医師 お餅は切り餅? それとも丸餅ですか?患者 丸餅です。画 いわみせいじ医師 お餅を丸めるとき、お勧めの方法がありますよ!患者 えっ、どんな方法ですか?(興味津々)医師 お餅の重さを測ることです。丸めるときに70gで作ってみてください。1つ分が、軽くお茶碗1杯(約100g≒160kcal)と同程度のカロリーですよ。患者 そうなんですか。私、何も考えずに食べていました。(気付きの言葉)医師 次にお餅を作るときは、ぜひ重さを測ってみてくださいね。患者 はい、わかりました!ポイント「70gが軽くお茶碗1杯分」とわかりやすく伝えることで、食べ過ぎへの意識が高まります。Copyright© 2021 CareNet,Inc. All rights reserved.

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第89回 頸動脈プラークにすでにナノプラスチックが侵入

イラストボックスより使用プラスチックは私たちの生活の一部として、なくてはならないものになっています。日持ちしない食品の安全性を高め、重い荷物の輸送費用を削減し、脆弱な物質を保護する役割もあります。何より、低コストで生産できるメリットは無視できません。しかし、プラスチックが環境に与える影響は深刻です。使用量を減らし、環境汚染を改善する試みが行われていますが、プラスチックの代替物を利用するには高いコストがかかり、経済的に厳しい状況に陥ることは容易に想像できます。私たちは、プラスチックの問題を認識しつつも、使用をやめることができないジレンマに直面しているのです。プラスチックがよくないことはわかっていても、使用をやめられないというのが現実です。さて、プラスチックが体内に蓄積するということは通常想定されていません。これは、プラスチックが吸収されずに、排泄されていくと考えられているためです。しかし、プラスチックがきわめて小さな細片となり、体内に侵入することがありえます。このプラスチックの細片のうち、大きさが1μm~5mmのものをマイクロプラスチック、より小さくnm(ナノメートル)レベルのものをナノプラスチックと呼び、MNPs(Microplastics and Nanoplastics)と総称します。最近、MNPsがペットボトルの水の中に一定レベル存在しているということが話題となっています1)。MNPsが体内に存在する可能性があるとはいえ、「まあ健康被害といえるほどではないっしょ」と楽観視していた人が多かったと思います。しかしながら、頸動脈の動脈硬化病変に対して、血管内治療を行った症例を解析したところ、対象となった257例のうち、全体の58.4%でポリエチレンが頸動脈プラークから検出されたと報告されています2)。この研究では、約3年の観察期間中に、心筋梗塞や脳卒中を発症したか、死亡した症例は、MNPsが検出されなかった症例では7.5%だったのに対し、検出症例では20.0%と有意なリスクが認められたと報告されています(ハザード比:4.53、95%信頼区間:2.00〜10.27、p<0.001)。これは衝撃的な報告です。新しい治療法の進歩や医療アクセスの向上などによる健康寿命延伸の効果のほうが大きく、MNPsよりも生活習慣や運動のほうが大事かもしれません。他のリスクとまだ比較できる段階にはないのですが、もしMNPsが人類の大きな敵であるとわかったなら、世界はこの対策をすみやかに進めなければいけません。参考文献・参考サイト1)Qian N, et al. Rapid single-particle chemical imaging of nanoplastics by SRS microscopy. Proc Natl Acad Sci USA. 2024 Jan 16;121(3):e2300582121.2)Marfella R, et al. Microplastics and Nanoplastics in Atheromas and Cardiovascular Events. N Engl J Med. 2024 Mar 7;390(10):900-910.

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