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認知症予防に「エビデンス」はあるか? Lancetの14の危険因子を読み解く(前編)【外来で役立つ!認知症Topics】第38回

認知症を「予防」できるのか?認知症基本法の2つの軸は、予防と共生だとされる。この法律の成立過程では「認知症を予防できるのか? できもしないものを法律の目玉にするのはいかがなものか」という厳しい意見が相次いだ。背景には、家族が懸命に予防に努めながらも発症を防げなかったという、切実なケースが少なくなかったからだ。「主人はアルツハイマー病予防に良いとされる運動も脳トレも十分やった。睡眠もしっかり取り、栄養面では私が地中海式の食事作りに励んだ。だけどアルツハイマー病になり、最後は何もわからなくなって亡くなった。私たちが予防を怠けていたからこうなったと言うの?」確かに臨床の場においてこのような例は少なくない。血管性認知症なら血圧や血糖管理に一定の予防効果が期待できるだろう。しかし、アルツハイマー型認知症については、少なくとも近年までは「これ!」という手応えのある予防法はなかった。だからこそLancet誌では、2017年からGill Livingston氏を中心に認知症の真の危険因子を特定する試みを始め、2020年、2024年に改訂版が出された1,2,3)。最新の2024年版では「14の因子」が示され、これらに対応することで認知症発症を45%抑制できると述べられている。危険因子の定義と分類そもそも「危険因子(リスクファクター)」とは何か? どんな疾患も、とくに認知症のような生活習慣病においては、科学的根拠に基づき、疾患の発生と関連するとされる個々の因子を指す。科学的根拠があるとは因果関係が証明されていることである。危険因子は以下の5つのカテゴリーに分類される。1)行動危険因子:喫煙・飲酒、運動習慣などライフスタイル。2)生理学的危険因子:高血圧、肥満など主に生活習慣病に関連するもの。3)人口統計学的危険因子:年齢や性別など基本属性。4)環境危険因子:大気汚染や温暖化など。5)遺伝的危険因子:アルツハイマー病ならAPOE遺伝子など。Lancet誌が示したリスク因子は、これら5つのうち、1)行動危険因子、2)生理学的危険因子、4)環境危険因子に関わるものである。3)人口統計学的危険因子と5)遺伝的危険因子といった、個人の努力で修正不可能な因子は除外されている。画像を拡大するLancet誌のリスク因子は、1)として教育、運動、肥満、飲酒、喫煙、孤独、うつ、2)では糖尿病、高血圧、高LDL、難聴、視力低下、頭部外傷、4)として大気汚染に分けられる。アルツハイマー病理の変遷と「リスク」の正体アルツハイマー病研究の源流は、老人斑の主成分アミロイドβ、神経原線維の主成分タウにある。ところが、近年の抗アミロイドβ抗体薬の治験等を通じて、これらを減らしてもアルツハイマー型認知症は進行することが明らかになった。そこで近年では、神経炎症、酸化ストレス、さらに血液脳関門(BBB)などを介して病勢が進むと考えられ、その方向に沿った新薬も開発されつつある。ある要因をアルツハイマー病など認知症の「リスク」と呼ぶ以上、その要因がなぜ認知症の病理を生じさせるのか合理的説明が必要だ。その考え方に沿って、報告されたリスクに関する文献をたどってみた。ほとんどの要因について、アミロイドβやタウといった「伝統的」なものに働きかけるメカニズムだけでなく、神経炎症、酸化ストレス、さらにBBBを介する「新顔」のメカニズムにも言及されていた。以上の、いわばリスク総論に基づいて、これから14の危険因子の特徴を簡潔にまとめていく。今回は、これらのうち発症への寄与率がいずれも7%と最も高い「中年期からの難聴」と「高LDL」について、その具体的なメカニズムを整理したい。1.難聴がもたらす影響難聴については、「社会的孤立」「認知負荷の増大」「脳の構造的変化」という3つの考え方が主流になっている。まず「社会的孤立」は、聞こえにくくなると他人との交わりを避けるようになり、それが脳への刺激を減らし認知機能の低下を招く。次に「認知負荷の増大」は、難聴になると会話を理解するうえで大きな処理能力が必要になり、その負担が本来なら記憶や思考に使われるべき脳のリソースを損なうとする、いわばエネルギー保存の法則である。さらに「脳の構造的変化」は、長期間にわたる聴覚刺激の減少により、脳の聴覚野が萎縮し始め、この変化が脳全体の萎縮や神経回路の変性を促進する。2.高LDLが脳に与えるダメージ高LDLについては、まず「脳血管障害説」がある。脂質プラークが血管壁に蓄積し、血管を狭窄させて脳への血液灌流を減少させるという。またこれは、脳内でアミロイド前駆体タンパク質の分解酵素を活性化してアミロイドβ生成を高める。さらに、高LDLに関連する酸化LDL(Ox-LDL)がミクログリアを活性化することでサイトカイン放出を増加させ、脳内の慢性的な炎症状態が続き、神経細胞死を促進させる。残りの危険因子については、次回に取り上げる。参考文献1)Livingston G, et al. Dementia prevention, intervention, and care. Lancet. 2017;390:2673-2734.2)Livingston G, et al. Dementia prevention, intervention, and care: 2020 report of the Lancet Commission. Lancet. 2020;396:413-446.3)Livingston G, et al. Dementia prevention, intervention, and care: 2024 report of the Lancet standing Commission. Lancet. 2024;404:572-628.

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ALT・AST上昇例へのスタチン【日常診療アップグレード】第49回

ALT・AST上昇例へのスタチン問題75歳男性。現在、症状はない。狭心症と2型糖尿病、高血圧、代謝機能障害関連脂肪性肝疾患(Metabolic dysfunction-Associated Steatotic Liver Disease:MASLD)による代償性肝硬変の既往がある。処方薬はアスピリン、クロピドグレル、カルベジロール、リシノプリル、デュラグルチド、ピタバスタチンである。過去1年間に薬剤の変更はない。身体診察では、バイタルサインおよびその他の所見は正常である。1年前と同様の軽度の肝トランスアミナーゼ上昇がある(AST 55U/L、ALT 65U/L)。肝トランスアミナーゼ値が上昇しているが、ピタバスタチンを継続した。

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2月10日 フットケアの日【今日は何の日?】

【2月10日 フットケアの日】〔由来〕糖尿病や末梢動脈疾患による足病変の患者が増加していることから、足病変の予防・早期発見・早期治療の啓発を目的に、「フ(2)ット(10)=足」と読む日付の語呂合わせから日本フットケア学会、日本下肢救済・足病学会、日本メドトロニックが共同で制定した。関連コンテンツ爪切り処置の飛び散り対策【Dr.デルぽんの診察室観察日記】爪甲除去術の査定と復活【斬らレセプト シーズン4】手足がしびれるときの症状チェック【患者説明用スライド】足の指の変形【患者説明用スライド】補助具や便利グッズの紹介【患者説明用スライド】

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医師会員の57%が花粉症と回答、オススメの予防法は

 全国的にスギ花粉の飛散が始まろうとしている。厚生労働省の統計によると、花粉症の有病率は2019年に42.5%となり、年々有病者数は増加しているという。国民病となった花粉症について、医師における有病率の違い、医師ならではの予防や対策などはあるのであろうか。 CareNet.comでは、2026年1月19~25日にかけて、会員医師1,000人(うち耳鼻咽喉科の医師100人を含む)に「医師の花粉症とその実態」についてアンケートを行った。花粉症へのアレルゲン免疫療法、生物学的製剤などの治療数は少ない 質問1で「花粉症かどうか」(単回答)を聞いたところ、「花粉症ではない」が40%と一番回答率高く、(診断を受け)「花粉症である」が33%、(診断を受けず)「花粉症である」が24%、「わからない」が3%の順で多かった。しかしながら、診断の有無を考慮しない場合、全体の57%が「花粉症である」を回答していた。 質問2で「花粉症で困る症状について」(複数回答)を聞いたところ、全体では「鼻汁」が81%、「くしゃみ」が59%、「目、皮膚、喉のかゆみ」が58%の順で多かった。耳鼻咽喉科とそれ以外の診療科の医師との比較では、両方で「鼻汁」が一番多かったが、「くしゃみ」、「目、皮膚、喉のかゆみ」、「鼻閉」などで若干の差がみられた。また、「集中力の低下」と「倦怠感・頭痛」は、それ以外の診療科の医師からの回答数が耳鼻咽喉科の医師の回答の2倍以上だった。 質問3で「花粉症の治療としてどのようなことをしているか」(複数回答)を聞いたところ、全体では「医療用医薬品の内服薬」が72%、「OTC薬の内服薬や外用薬」が29%、「医療用医薬品の外用薬」が26%の順で多かった。耳鼻咽喉科とそれ以外の診療科の医師との比較では、両方で「医療用医薬品の内服薬」が一番多かったが、「OTC薬の内服薬や外用薬」と「医療用医薬品の外用薬」で順位が逆転していた。また、それ以外の診療科の医師では「アレルゲン免疫療法」、「生物学的製剤」、「手術」の治療を行っていたが、耳鼻咽喉科の医師は行っていないという回答結果だった。 質問4で「お勧めの花粉症予防法・対策」(自由記載)について聞いたところ、全体では「マスクの着用」が19%で多く、「専用眼鏡・ゴーグルの着用」と「鼻洗浄・鼻うがい」は4%と同じ回答率だった。耳鼻咽喉科とそれ以外の診療科の医師との比較では、耳鼻咽喉科の医師では「専用眼鏡・ゴーグルの着用」の回答率が多く、「鼻洗浄・鼻うがい」はほぼ同じ回答率だった。 質問5で「花粉症にまつわるエピソード」を聞いたところ、下記のようなコメントが寄せられた。【花粉症の症状のエピソード】・くしゃみが止まらなくて、風邪と判断されることが多々ある(30代/膠原病・リウマチ科)・花粉症の活動期は喘息発作も起きやすくなるので注意している(60代/麻酔科)【治療薬に関するエピソード】・ワセリンの鼻への塗布が有効(40代/麻酔科)・花粉の飛散の日内変動は朝と夕方にあるので、作用時間の長い薬剤の方が効果的(60代/糖尿病・代謝・内分泌内科)【患者への助言などのエピソード】・患者に自分が使っている薬を教えると喜ばれる(50代/耳鼻咽喉科)・処方に合わせて鼻うがいを指導している(30代/耳鼻咽喉科)【花粉症予防に関するエピソード】・だいたいバレンタインデーの頃から花粉症の問診と処方を開始する(50代/心療内科)・花粉に曝露しないことが一番大事。曝露したときは鼻うがいで洗い流すが、真水ではだめ(60代/耳鼻咽喉科)■参考医師の花粉症とその実態について/医師1,000人アンケート

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コルヒチンによる死亡例発生、適正使用を呼びかけ/PMDA

 医薬品医療機器総合機構(PMDA)は2月6日、「痛風発作の緩解及び予防」および「家族性地中海熱」の効能・効果を有するコルヒチン錠(商品名:コルヒチン錠0.5mg「タカタ」)の適正使用のお願いを、同機構ホームページの「製薬企業からの適正使用等に関するお知らせ」で公開した。 2026年1月31日までに国内において、承認された用法・用量の範囲(1.8mg)を超える高用量を投与後に死亡に至った症例が報告されたことから、改めて添付文書の「効能又は効果」および「用法及び用量」「用法及び用量に関連する注意」などの関連項目を確認するとともに、下記の留意点を踏まえ適正に使用するよう呼びかけている。<留意点>――――――――――――――●コルヒチンの1日量1.8mgを超える高用量投与により、重篤な中毒症状(胃腸障害、血液障害、腎障害、肝障害など)をきたし、死亡に至る可能性があります。●1日量1.8mgを超える用量については、臨床上やむを得ない場合を除き投与は避けてください。●「痛風発作の緩解」の目的で本剤を使用した場合は、疼痛が改善したら速やかに中止してください。●患者が自身の判断で1日量3錠を超える用量を服用しないよう指導してください。――――――――――――――――――― また、本剤の禁忌(肝臓または腎臓に障害のある患者で、肝代謝酵素CYP3A4を強く阻害する薬剤またはP糖蛋白を阻害する薬剤を服用中の患者)についても併せて注意喚起した。添付文書での痛風発作緩解の1日量 添付文書における「痛風発作の緩解」の場合の用法及び用量は「1日3~4mgを6~8回に分割経口投与する。なお、年齢、症状により適宜増減する」とされているが、用法及び用量に関連する注意において「投与量の増加に伴い、下痢等の胃腸障害の発現が増加するため、1日量は1.8mgまでの投与にとどめることが望ましい」と記載されている。 なお、高尿酸血症・痛風の治療ガイドライン第3版(2022年追補版)でも「低用量コルヒチン投与法が推奨される」および「コルヒチンは発症12時間以内に1mg、その1時間後に0.5mgを投与する」と示されている。

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「白湯は健康によい?」「バリウム検査は受けるべき?」…患者によく聞かれる質問に解答

 CareNet.comの人気連載「NYから木曜日」「使い分け★英単語」をはじめ、多くのメディアで健康・医療情報を発信する米国・マウントサイナイ医科大学 老年医学科の山田 悠史氏。医学専門書はもとより、健康などのテーマで一般向け書籍も多く執筆する山田氏の最新作が『最新科学が覆す 体にいいのはどっち?』(サンクチュアリ出版)だ。 本書は、しばしば話題になる「健康についての疑問」を、健康診断/医療・食事・健康・運動・睡眠などのジャンルごとに100問集め、最新のエビデンスを踏まえたうえで「正しいか・正しくないか」を提示し、解説する構成になっている。 100問の中から、いくつかを紹介する。1)がん検診の胃のバリウム検査は受けたほうがいい?2)コーヒーを適量飲めば、病気のリスクが減るのは本当?3)白湯は本当に健康にいい?4)プロテインは筋トレしてなくても飲んだほうがいい?5)日光浴は睡眠にいい? 書籍内で紹介された解答と解説は以下のとおり。1)×現時点では、無症状の人へのバリウム検査がリスク減少に寄与するというエビデンスは限定的で、検診目的であれば内視鏡検査がより有効とされる。特定の症状がある人の検査目的なら有用。2)○毎年多くの研究結果が報告されるコーヒーと健康の関係について、1日3~5杯の摂取で、病気リスクが低下傾向になることが報告されている。一方で、飲み過ぎは不眠・動悸の原因にもなり、妊娠中なども摂取量に注意が必要。3)×現時点では、「白湯だけ」がもたらす特別な効果は証明されていない。水分摂取で大切なのは温度より「量」と「継続」であり、好きな温度で続ければよい。4)×食事でタンパク質摂取ができていれば、プロテイン摂取は不要。筋トレをしていない人が飲んでも筋力が付くわけではない。プロテインはあくまで補助食品であり、適切な栄養摂取はまず食事の見直しから始めるべき。5)○日光を浴びることで体内時計が整えられる。メラトニンの分泌を促し、睡眠の質を改善する。日光浴の時間は1日5~30分程度でOK。山田氏に今回の執筆の経緯などを聞いた。 ――今回は一般書なので、まずは読者の方に関心を持ってもらおうと、「よくある健康関連の疑問に対し、○×で答えを提示する」という目を引く構成にしました。診察室でも、患者さんから「はっきりとは答えにくい質問」を受けることがよくあります。「テレビで見たんですけど、本当ですか?」「SNSで話題なんですけど、どうなんですか?」といったように。それに対し、「私ならどう答えるか」とシミュレーションする気持ちで執筆しました。 とはいえ、医師の方であればご存じのとおり、医療・健康に関する情報は「完全に正しい=白」でも「完全に間違い=黒」でもなく、その間のグレーゾーンにあることが大半です。でも、「はっきりとはわかっていません」と言い続けるだけでは、強い主張をするSNSなどの誤情報に負けてしまうことがある。なので、現時点におけるエビデンスを調べ尽くしたうえで、「あえて言うならこちら」と解答を提示し、本文でフォローしています。論拠とした論文はすべて巻末に掲載しているので、関心のあるテーマを深掘りしたり、患者さんとの対話の中で役立てたりしていただければと思います。 本書でとくに印象に残っているのは、「健康にいいおやつは、ドライフルーツよりナッツって本当?」という疑問です。当然ながら、両者を直接比較した試験はなく、私自身もこれまで似た質問を受けたとき、「はっきりとはわかっていません」と答えていました。でも、「白黒を付ける」という本書の方針のもと、ドライフルーツとナッツそれぞれの研究結果を踏まえ、「あえて言えば、ナッツのほうが健康によい」と判断して「○」としました。 100の疑問は、編集の方が出してきたものをそのまま採用しています。私が修正や追加したものはなく、完全に一般の方の「生の声」です。「ネギを首に巻くと風邪は治る?」「こんにゃくをお腹にのせると腹痛が治る?」といった、民間療法に類する質問も入れました。私からすれば診察室でもなかなか聞くことのない、「そこを疑問に思うんだ!」と驚くような質問にも出会え、執筆自体が大きな学びとなりました。 今回の書籍のターゲットは、30~40代のビジネスパーソンです。 私の専門は老年医学なので、普段は高齢の患者さんと接することが多い。健康を失った高齢の方と話していると、若い時期にした小さな「選択ミス」が傷口となり、だんだんとその差が広がり、ついに病気になってしまった、と感じるケースが多くあります。高齢では間に合わないことも、中年から改善すれば間に合うのです。自分の30~40年後を見据え、健康を守るために正しい知識を得て、より良い選択を積み重ねてほしいと思います。書籍紹介『最新科学が覆す 体にいいのはどっち?』

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デジタルピアサポートアプリ介入が歩数目標達成率と歩数に与える影響──前糖尿病・早期2型糖尿病での非ランダム化比較試験

 前糖尿病や早期2型糖尿病では、血糖コントロールのために運動習慣を身につけることが重要とされている。しかし現実には、運動を「始める」よりも「続ける」ことのほうが難しい。こうした課題に対し、オンライン上で仲間とつながり、互いに励ましあいながら目標行動の維持を支えるデジタルピアサポートに注目した研究が行われた。前糖尿病および早期2型糖尿病を対象とした本研究では、アプリを用いた介入によって、日々の歩数目標の達成率および平均歩数が高まることが示された。研究は、北里大学大学院医療研究科の吉原翔太氏らによるもので、詳細は12月15日付で「JMIR Formative Research」に掲載された。 2型糖尿病は世界的な公衆衛生課題であり、運動不足などの生活習慣が発症に関与している。運動療法の中でも歩行は、日常生活に取り入れやすく、運動に伴うリスクが小さいとされ、前糖尿病や2型糖尿病において血糖改善と関連することが報告されている。一方で、前糖尿病や2型糖尿病患者の運動習慣を支援する対面型ピアサポートは、人的・時間的資源を要するため、広く継続的に提供することが難しい。そこで本研究は、前糖尿病および早期2型糖尿病を有する者を対象に、オンライン上で仲間とつながりながら相互に支援し合うデジタルピアサポートアプリが、歩数目標達成率および平均歩数に与える影響を検証した。 本研究は、「神奈川ME-BYOリビングラボ」プログラムの一環として、2019年10~12月に実施された前向きの非ランダム化比較試験である。参加者は、神奈川県在住または県内企業に勤務する40~79歳の成人38人で、HbA1c値が5.6~7.0%の前糖尿病または早期2型糖尿病に該当する者とした。参加者は、デジタルピアサポートアプリ(「みんチャレ」、A10Lab Inc.)群と対照群に分けられた。デジタルピアサポートアプリ群では、日々の歩数をアプリで記録し、その進捗を少人数(最大5人)のピアグループ内で共有するとともに、リアルタイムのフィードバックや支援を受けた。対照群では、万歩計を用いて各自が個別に歩数を記録した。主要評価項目は、3ヵ月間における1日平均歩数目標の達成率とした。副次評価項目として、期間中の1日平均歩数、BMI、HbA1c、血圧、および自己申告による生活習慣を評価した。 本研究を完遂した参加者は計32人であり、内訳はデジタルピアサポートアプリ群18人、対照群14人であった。参加者のベースライン特性は2群間で有意な差は認められなかった。 デジタルピアサポートアプリ群では、対照群と比較して、1日歩数目標の達成率の中央値が有意に高く(57.2%〔四分位範囲:32.2~90%〕 vs 26.7%〔10~64.4%〕、P=0.04)、1日歩数の中央値も有意に多かった(6854歩〔4846~10,388歩〕 vs 3946歩〔3176~6832歩〕、P=0.03)。線形混合効果モデルによる解析では、歩数の経時的変化は群間で異なり、デジタルピアサポートアプリ群では時間経過に伴う有意な低下は認められなかった一方、対照群では時間とともに有意に減少した(P<0.001)。 一方、HbA1c値、血圧、生活習慣行動の変化については、両群間で有意差は認められなかったが、BMIの介入前後の変化については、デジタルピアサポートアプリ群のみで改善傾向がみられた(P=0.07)。 著者らは、「前糖尿病および早期2型糖尿病を対象に、デジタルピアサポートアプリは歩数目標達成率と平均歩数を維持し、歩数の低下抑制に寄与した可能性がある。リアルタイムのフィードバックや仲間からの承認が動機づけに関与した可能性があり血糖改善は短期間では限定的だったが、行動変容を促す有効な手段と示唆された」と述べている。 なお今後の研究課題として、デジタルピアサポートが行動変容の「きっかけ」として機能するのか、あるいは継続利用によって運動習慣そのものを支える仕組みとなるのかについて、さらなる検証が必要とされている。

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心不全の新たな治療戦略:次の10年を見据えて【心不全診療Up to Date 2】第6回

心不全の新たな治療戦略:次の10年を見据えてKey PointsHFpEF治療は「SGLT2阻害薬+MRAを基盤」とする新パラダイムが確立され、治療戦略は“症候改善のみ”から“イベント抑制”の時代へ心臓指向性AAVベクター(AB-1002)を用いた遺伝子治療が安全性と有効性のシグナルを示し、心不全治療に新しい地平を拓きつつあるIL-6を標的とした抗炎症療法や、CCMなどのデバイス治療が、GDMT抵抗性の心不全患者に対する新たな選択肢として開発が進むはじめに本連載では1年間にわたり、心不全診療の最新トピックスを取り上げてきた。最終回となる本稿では、現在臨床試験段階にある新規治療や将来有望な治療戦略について考えていきたい。HFrEF治療ではβ遮断薬、RAS阻害薬/ARNI、MRA、SGLT2阻害薬の「4本柱」が確立し、HFrEF患者の予後は著しく改善した。一方、高齢化の進展とともに増加する左室駆出率の保たれた心不全(HFpEF)、そしてGDMT(guideline-directed medical therapy)に抵抗性を示す患者に対しては、さらなる治療選択肢が求められている。本稿では、(1)HFpEF治療の新展開、(2)遺伝子治療、(3)抗炎症療法、(4)デバイス治療の4領域について、最新のエビデンスと今後の展望を述べる。HFpEF治療の新展開:フィネレノンの登場第4回で述べたように、HFpEF治療においてSGLT2阻害薬が不動の地位を確立した。これに加え、2025年7月、米国・FDAは非ステロイド性ミネラルコルチコイド受容体拮抗薬(nsMRA)であるフィネレノン(商品名:ケレンディア)を、左室駆出率(LVEF)≧40%の心不全患者に対する適応で承認した。本邦でも、2025年12月22日、慢性心不全への適応追加が承認された。この承認の根拠となったFINEARTS-HF試験では、HFpEF/HFmrEF患者6,001例(左室駆出率(LVEF)≧40%、NYHA II~IV度)を対象に、標準治療へのフィネレノン上乗せ効果が検証された1)。中央値2.7年の追跡期間において、主要評価項目である心血管死および心不全イベント総数(初発および再発の心不全入院、緊急心不全受診)の複合は、フィネレノン群でプラセボ群と比較して16%有意に減少した。また、フィネレノンは従来のステロイド性MRA(商品名:スピロノラクトン、エプレレノン)と比較してMRへの選択性が高く、性ホルモン関連の副作用(女性化乳房など)が少ないことが特徴である2)。なお、本試験ではプラセボと比較して高カリウム血症の頻度は増加したが、従来のステロイド性MRAと比較して高カリウム血症リスクが低い可能性が示唆されてきた点や、忍容性の観点から実臨床での使いやすさが期待される薬剤と位置付けられる。フィネレノンの登場により、HFpEF/HFmrEFにおいても「SGLT2阻害薬+MRAを基盤とした治療」が現実的な標準治療戦略となりつつある。とくにCKDや糖尿病を併存する症例では、心不全イベント抑制とともに心腎双方のアウトカム改善を期待できる点で臨床的意義は大きい。第4回で述べた「SGLT2阻害薬を基盤とし、表現型に応じた治療を追加する」というHFpEF治療の新パラダイムにおいて、フィネレノンが加わることで、「SGLT2阻害薬+MRAを基盤とした治療」へと進化したといえる。なお、ステロイド性MRAのHFpEF患者に対する有効性は、TOPCAT試験の結果を受け※、SPIRRIT試験(NCT02901184)、SPIRIT-HF試験(NCT04727073)にて改めて検証中である。今後、nsMRAとステロイド性MRAの位置付けや使い分けが、HFpEF/HFmrEF領域における重要な論点となるだろう。※TOPCAT試験にて、HFpEFに対するMRAの有効性が検証されたが、結果は、心血管死、蘇生できた心停止、心不全入院の主要複合エンドポイントの有意な低下は認めなかったが…続きはこちら副次エンドポイントの1つである心不全入院については有意な低下を認めた(HR:0.83、95%信頼区間[CI]:0.69~0.99、p=0.043)。心不全入院は、本試験の主要複合エンドポイントの中で最も高頻度に発生したイベントでもあり、心不全入院率低下、それによるQOL改善効果については有用性が期待できる結果であったといえる。また、本試験は事後解析でHFpEFに対するMRAの有効性に関する興味深いデータが多く報告されていることでも有名な試験である。その1つとして、本試験は、12ヵ月以内の心不全(各施設の診断)の入院歴(第1層)、またはこれを満たさない場合、60日以内のナトリウム利尿ペプチド上昇(BNP≧100pg/mLあるいはNT-proBNP≧360pg/mL)(第2層)をエントリー条件とした試験であるが、その第2層でエントリーされたサブグループにおいては、主要エンドポイントの低下が認められた4)。また、本試験は米国、カナダ、アルゼンチン、ブラジルというグループと、ロシア、グルジアというグループの間に心不全の重症度や試験開始後の収縮期血圧4)、イベント発生に大きな差があっただけでなく、前者のグループでは1次エンドポイントに有意差が認められた5)。さらには、スピロノラクトンを内服していれば血中に認めるはずの代謝産物が、ロシアの症例では認めない症例の割合が30%とかなり多かったという報告があり(米国やカナダの症例では3%のみ)、ロシアの症例ではアドヒアランスがかなり悪かった(スピロノラクトン群であるにもかかわらずスピロノラクトンがしっかり内服されていなかった)可能性も指摘されている6)。心不全に対する遺伝子治療の進歩心不全に対する遺伝子治療は、これまでSERCA2a(筋小胞体Ca2+-ATPase)を標的としたCUPID試験シリーズが先駆的に行われてきた。CUPID第I/II相試験では、AAV1ベクターを用いたSERCA2a遺伝子の冠動脈内投与が安全に実施され、予備的な有効性シグナルが観察された7-9)。しかし、続く第IIb相試験(CUPID2)では主要評価項目を達成できなかった。その原因として、AAV1ベクターの心臓向性(cardiotropism)の限界、投与量の不足、既存の中和抗体の影響などが指摘されている。2025年、Nature Medicine誌に新たな遺伝子治療AB-1002のfirst-in-human第I相試験結果が報告され、心不全遺伝子治療に再び期待が高まっている10)。AB-1002は、心臓向性を強化したキメラAAVベクター(AAV2i8)を用いて、恒常活性型プロテインホスファターゼ1阻害因子(I-1c)を心筋細胞に導入する治療法である。心不全患者では、プロテインホスファターゼ1(PP1)の活性が亢進し、ホスホランバン(phospholamban:PLN)の脱リン酸化が進行してSERCA2a活性が低下する。I-1cはPLNの脱リン酸化を抑制することでSERCA2a活性を回復させ、カルシウムサイクリングを正常化する。すなわち、CUPID試験がSERCA2aの「発現量増加」を目指したのに対し、AB-1002は「活性回復」という異なるアプローチを採用している。本試験では、非虚血性心筋症によるNYHA III度心不全患者11例(LVEF 15~35%)を対象に、冠動脈内投与によるAB-1002の単回投与が実施された10)。低用量群と高用量群の2コホートで検討され、12ヵ月の追跡が行われた。主要評価項目である安全性について、治療に起因する重篤な有害事象は認められず、1例の死亡(治療との関連なしと判定)を除き、有害事象は軽度から中等度であった。高用量群で一過性の肝酵素上昇が観察されたが、自然軽快している。有効性評価では、両群でNYHAクラスの改善、LVEFの改善、peak VO2や6分間歩行距離の改善傾向が観察された。もちろん、長期有効性、安全性、費用対効果といった課題は残されている。しかしAB-1002は、「心不全を遺伝子レベルで修飾する時代」が現実味を帯びてきたことを示す重要な一歩であり、現在進行中の第II相GenePHIT試験(NCT05598333)を含め、今後の大規模試験の結果が強く待たれる。(表1)AAVベクターを用いた心不全遺伝子治療の臨床開発の歩み画像を拡大する炎症を標的とした新規治療心不全の病態生理において炎症が重要な役割を果たすことは古くから知られていたが、初期の抗炎症療法は期待された結果を示せなかった。TNF-α阻害薬を用いたATTACH試験およびRENEWAL試験は、いずれも有効性を示すことができず、むしろ高用量群では有害事象の増加が観察された11-13)。これらの失敗は、心不全における炎症制御の複雑さを示すとともに、より選択的な標的の必要性を浮き彫りにした。近年、インターロイキン(IL)シグナルを標的とした治療戦略に注目が集まっている。IL-1βに対するモノクローナル抗体カナキヌマブ(商品名:イラリス)を用いたCANTOS試験では、心筋梗塞の既往歴がある高感度C反応性蛋白(hsCRP)値2mg/L以上の患者において主要心血管イベントの有意な減少が示され、さらに心不全入院リスクの低下も観察された14)。この結果を受けて、心不全患者を対象としたIL-1阻害薬anakinra(国内未承認)の複数の第II相試験が実施され、運動耐容能や炎症マーカーの改善が報告されている15)。TNF-α阻害薬が失敗に終わった一方で、IL-1βやIL-6が注目されている背景には、これらのサイトカインが動脈硬化・心不全リモデリングにおける慢性炎症ネットワークの”ハブ”として機能しているという病態理解の進展がある。すなわち、全体の炎症反応を無差別に抑え込むのではなく、病態の中核となるシグナルを選択的に制御する方向に戦略がシフトしているといえる。さらに、IL-6を直接標的とした大規模臨床試験が複数進行中である。IL-6リガンド阻害薬ziltivekimabは、動脈硬化性心血管疾患の既往を有するCKD患者(hsCRP≧2mg/L)を対象としたZEUS試験(NCT05021835)、HFpEF/HFmrEF患者(hsCRP≧2mg/L)を対象としたHERMES試験(NCT05636176)、急性心筋梗塞入院患者を対象としたARTEMIS試験(NCT06118281)などで検証中である。2025年に発表されたACC Scientific Statementは、心血管疾患における炎症の役割を包括的にまとめ、今後の抗炎症療法の方向性を示している16)。IL-6阻害薬の心不全に対する大規模試験結果は2026年後半から2027年にかけて報告される見込みであり、心不全治療における炎症制御の意義が明らかになることが期待される。デバイス治療の新たな展開:心臓収縮力調節療法心臓収縮力調節(Cardiac Contractility Modulation:CCM)療法は、心臓の絶対不応期に非興奮性電気刺激を与えることで心筋収縮力を増強する植込み型デバイス治療である。心臓再同期療法(CRT)の適応とならないQRS幅正常(<130ms)の症候性心不全患者に対する新たな治療選択肢として注目されている17)。CCM療法の作用機序は、非興奮性電気刺激により細胞内カルシウムハンドリングが改善され、心筋収縮力が増強されることに加え、心不全で異常発現している複数の遺伝子発現を正常化することにあるとされる18)。興味深いことに、このカルシウムハンドリングの改善という点で、前述の遺伝子治療AB-1002と共通する機序を有している。FIX-HF-5C試験およびFIX-HF-5C2試験の結果から、CCM療法はLVEF 25~45%の症候性心不全患者において、運動耐容能(peak VO2)とQOL(Minnesota Living with Heart Failure Questionnaire)を有意に改善することが示されている19)。また現在、HFpEF/HFmrEF患者(LVEF 40~70%)を対象としたAIM HIGHer試験(NCT05064709)が進行中であり、GDMT抵抗性のHFpEF/HFmrEF患者に対するCCM療法の有効性が検証されている。第4回で述べたように、HFpEF/HFmrEFにおいても収縮障害が潜在している可能性があり、CCM療法による収縮力増強が有効であるかどうか結果が楽しみである20,21)。また、HFrEF患者を対象としたCCM療法とICDを組み合わせたCCM-Dシステムの第III相INTEGRA-D試験(NCT05855135)も2025年に組み入れを完了しており、心不全症状の軽減と突然死予防の両立を目指した新たなデバイス戦略として期待されている。おわりに:次の10年に向けて1年間の連載を通じて、心不全診療が近年急速に進歩していることをお伝えしてきた。HFrEFに対する「4本柱」の確立、HFpEFに対するSGLT2阻害薬とフィネレノンの登場、インクレチン製剤による肥満合併HFpEFへの新たなアプローチ、そして特定の心筋症に対する分子標的治療(例:マバカムテン、ブトリシラン、アコラミディス)など、治療選択肢は着実に広がっている。今後の10年を展望すると、本稿で紹介した遺伝子治療や抗炎症療法といった病態修飾治療の実用化、精密医療(Precision Medicine)の進展、そしてデバイス治療のさらなる進化が期待される。とくに、心不全の表現型(phenotype)に基づいた個別化治療戦略の確立は、治療反応性を最大化し、非反応者を最小化するために不可欠である。画像を拡大する心不全治療は今も進化の途上にあり、その最前線はこれからも更新され続けるだろう。本連載が、その変化を少しでも臨床現場につなぐ一助となっていたなら望外の喜びである。最後に、本連載を1年間ご愛読いただいた先生方に心より感謝申し上げる。心不全診療は依然として多くの課題を抱えているが、エビデンスに基づいた最適な治療を患者一人ひとりに提供することで、予後改善とQOL向上を実現できると確信している。読者の先生方とともに、今後も心不全診療のさらなる発展に貢献していきたい。 1) Solomon SD, et al. N Engl J Med. 2024;391:1475-1485. 2) Agarwal R, et al. Eur Heart J. 2021;42:152-161. 3) Pitt B, et al. N Engl J Med. 2014;370:1383-1392. 4) Shah AM, et al. Circulation. 2015;132:402-414. 5) Rossignol P, et al. Circulation. 2015;131:7-10. 6) de Denus S, et al. N Engl J Med. 2017;376:1690-1692. 7) Hajjar RJ, et al. J Card Fail. 2008.;14:355-367. 8) Jessup M, et al. Circulation. 2011;124:304-313. 9) Zsebo K, et al. Circ Res. 2014;114:101-108. 10) Henry TD, et al. Nat Med. 2025;31:3845-3852. 11) Chung ES, et al. Circulation. 2003;107:3133-3140. 12) Mann DL, et al. Circulation. 2004;109:1594-1602. 13) Lincoff AM, et al. JAMA. 2003;289:853-863. 14) Ridker PM, et al. N Engl J Med. 2017;377:1119-1131. 15) Hartrampf N, et al. Science. 2020;368:980-987. 16) Mensah GA, et al. J Am Coll Cardiol. 2025;S0735-1097:07555-2. 17) Pipilas DC, et al. J Soc Cardiovasc Angiogr Interv. 2023;2(6Part B):101176. 18) Butter C, et al. J Am Coll Cardiol. 2008;51:1784-1789. 19) Abraham WT, et al. JACC Heart Fail. 2018;6:874-883. 20) Talha KM, et al. J Card Fail. 2022 Dec;28:1717-1726. 21) Tschope C, et al. ESC Heart Fail. 2020;7:3531-3535.

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糖尿病における血圧と転帰の関係はJカーブか?線形か?~587万例の用量反応メタ解析

 2型糖尿病における血圧とアウトカムとの関連は、とくに血圧が低い場合には十分に解明されておらず、低血圧域において死亡や心血管リスクが増加するJカーブ現象の有無が議論されてきた。今回、2型糖尿病患者を対象に、収縮期・拡張期血圧と全死亡や心血管イベント、腎アウトカムとの関連を検討した用量反応メタ解析により、血圧と多くのアウトカムとの関係は見かけ上のJ字型を示す場合があるものの、低血圧域でのリスク上昇は明確ではなく、全体としては線形または単調な関連を示すことを、中国・上海交通大学のSiyu Wang氏らが明らかにした。Journal of the American College of Cardiology誌オンライン版2026年1月14日号掲載の報告。 研究グループは、PubMed、Embase、Web of Scienceをデータベース開始から2024年11月30日まで体系的に検索し、血圧値と全死亡、心血管疾患および腎疾患との関連を評価したコホート研究を抽出した。血圧とアウトカムとの曲線的関連を評価するため、1段階混合効果モデルを用いた用量反応メタ解析を実施した。 主な結果は以下のとおり。・2型糖尿病患者587万5,364例を含む113論文から、89コホート研究が同定された。・全体解析では、収縮期血圧と全死亡・心血管イベント、ならびに拡張期血圧と全死亡においてJ字型の関連が認められた。しかし、低血圧域におけるリスク上昇の勾配は緩やかで、実質的にはリスクは平坦化していた。・ベースライン時に心血管疾患またはがんを有する参加者を含む研究を除外した解析の結果、収縮期血圧が低いほど心血管イベントのリスクは有意に低下し、全死亡リスクも上昇に転じることなく平坦化した。・腎イベント、推定糸球体濾過量の低下およびアルブミン尿の新規発現または進行についてはJ字型の関連は認められず、血圧上昇に伴う正の線形または単調な関連が認められた。 これらの結果より、研究グループは「低い収縮期血圧は、高い収縮期血圧と比較して全死亡リスクを増加させる明確な証拠は認められなかった。これまで報告されてきたJカーブ現象は、逆因果関係および未調整の交絡因子による影響である可能性が高いことを示唆している」とまとめた。

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ロジスティック回帰分析 その2【「実践的」臨床研究入門】第61回

ロジスティック回帰モデルの基本的な考え方 その2オッズ比(odds ratio:OR)はロジスティック回帰モデルにおいて、ある事象の起こりやすさが説明変数の影響によって、どの程度変化するかを示す重要な指標として用いられます。今回は前回のオッズの解説に引き続き、ORについて説明します。オッズは「ある事象が起こる確率と起こらない確率の比」であり、Aという事象が起こる確率をp(A)とした場合、事象Aのオッズはでした。ORは2つの群のオッズの比であり、事象Aがある群で起こる確率をp(A)、別の群で起こる確率をq(A)とした場合、となり、ORの取りうる値の範囲はオッズと同様に0から∞になります(連載第60回参照)。ここからは、ロジスティック回帰モデルの考え方の説明に戻ります。前回解説したように、ロジスティック回帰モデルの基本的な形は、以下のような数式で表されます。今回も、われわれのResearch Question(RQ)を題材に具体的な事例で解説します(連載第60回参照)。たとえば、「厳格低たんぱく食の遵守あり」という事象Aの起こりやすさを、対象患者特性の1つである、糖尿病(DM)の有無でORを用いて比較することを考えてみます。DMありの場合に事象Aの起こる確率がp(A)、DMなしの場合の事象Aの起こる確率がq(A)だとした場合、そのロジットはそれぞれ下記の数式になります(連載第60回参照)。次に求めるのは、DMの有無による事象AのORの対数(log OR)です。高校の数学で習った次の公式を用いると、DMの有無による事象AのORの対数(log OR)は、下記のように計算できます。ORの値の取りうる範囲はオッズと同様に0から∞ですが、その対数(log OR)をとることで-∞から∞の範囲の値として扱えるようになります。上記の式のとおり、DMの有無による事象AのORの対数(log OR)は、DMあり・なしの項以外はすべて相殺されて、DMの項の回帰係数b1となります。また、これも高校の数学で習った次の公式より、xの自然対数をyとした場合、xは自然対数の底eのy乗となります。したがって、DMの有無による事象AのORは、eb1として、計算で求めることができるのです。では、この計算式から得られるORはどのように解釈できるでしょうか。ロジスティック回帰モデルを用いた多変量解析により、交絡因子を調整して算出されたORは「調整OR」です。これは、注目している説明変数(DMの有無)以外の交絡因子(年齢、性別、血圧、eGFR、蛋白尿定量、血清アルブミン値、ヘモグロビン値)の影響を統計学的に制御し、それらがすべて同一であるとみなした条件下で、注目している説明変数(DMの有無)のみが変化した場合の事象AのORを示しています。そのため、単純な2群比較で求めたORよりも、交絡となりうる要因の影響をある程度取り除いた、より信頼性の高い指標として解釈できます。

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キャリア中断後に見つけた 総合診療能力で専門性を強化する新しい診療スタイル【ReGeneral インタビュー】第4回

キャリア中断後に見つけた 総合診療能力で専門性を強化する新しい診療スタイル「医師という仕事が好きです。総合診療の入り口を担いながら、専門的なことももっと学んで、糖尿病や内分泌疾患を中心にコモンディジーズや救急初期対応ができるようになりたい」そう語るのは、総合医育成プログラム修了生の帆秋 理笑子氏。糖尿病内科専攻後、家庭の事情で約7年間のブランクを経て、再び糖尿病を中心にした診療スタイルに戻るまでの道のりで出会ったのが、総合診療でした。専門性を高めることと総合診療がどのように関連するのかを聞きました。プライマリ・ケア認定医取得を機に、専門キャリアを再設計――現在どのような診療をされているか教えてください。流動的ですが、糖尿病内科7割、一般内科3割くらいで診療をしています。約1年前に今の勤務先に赴任した当時は、糖尿病診療よりも誤嚥性肺炎などを診ることが多かったのですが、だんだんと引継ぎと新患どちらも増えて、現在は糖尿病を中心に内科診療を行っています。前職は大分県内の同じような中核病院で働いていましたが、糖尿病専門医を取得したいという思いがあり、研修施設である今の職場に移りました。2023年にプライマリ・ケア認定医を取得したことが、このキャリアチェンジを実行する自信にも武器にもなりました。――2023年に認定医取得とのことですが、プログラムはいつ・どのような経緯で受講されたのですか。受講は2021年からです。きっかけは2016年に常勤で診療を再開したことです。卒後数年してから、糖尿病内科を専攻していましたが、9年目くらいから臨床から離れた期間が7年ほどあり、最初は老健施設から仕事を再開して徐々に体力面と治療のアップデートを行いました。前職の病院で糖尿病を診ながら一般内科診療も始め、地域医療でさまざまな役割を担ううちに、「ジェネラルに診られるようになりたい、総合診療のトレーニングを受けたい」と強く思うようになりました。そこで、2019年に勇気を出して大分大学総合診療科に研修希望で見学に伺い、このプログラムを教えていただきました。私の話に耳を傾けてくれた先生方に今でもとても感謝しています。当時は東京に行って受講する形式で費用も高くて諦めていましたが、2021年にオンライン化されて「ああ、これなら家でもできる。チャンスだ!」と思って参加を決めました。2023年に認定医を取得した後も受講を続けています。大人の学び直し 安心して飛び込める環境――印象的な講義はありましたか。診療実践コースでは、整形外科、循環器内科が印象的でした。整形外科では、脊髄からの神経支配域を身振り手振りや語呂合わせで教えてくれたのをよく覚えています。また骨折の写真や整形外科的診察の動画をたくさん使って説明してくださったのが面白くて理解しやすかったです。循環器では、日常診療で使える心電図の読み方や高血圧の診療、胸痛への対応などをざっくばらんに教えていただきました。循環器は興味があっても苦手に感じていた分野なので、動画を何度も見返して勉強した分、印象が強いですね。ノンテクニカルスキルコースでは、ミーティング・ファシリテーションの講義が記憶に残っています。ここで会議やグループ活動の舵取りの手法を学びました。板書の効果や、会議に応じた机や椅子の並べ方、アイデアを広げてからまとめる方法など、これまで無意識に行っていたことも、意識を向けると意味があると知りました。――受講中に苦労した点はありますか。糖尿病や、それに関連する腎臓や認知症の講義は安心して受けられましたが、あまり馴染みのない科、たとえばマイナーエマージェンシーや救急、耳鼻科の講義を受けるときは、自信がなく不安が大きかったです。実際に受講してみると、講師の先生方はとても優しく熱心でしたし、講義のやり方も工夫されていて新鮮でした。また、事務局が手厚くサポートして心理的安全性をしっかり担保してくれたのが大きな支えになりました。オンラインですので、受講中に画面がフリーズしてしまうことも何度かありましたが、講義によっては復習用動画を作って何度も視聴できるような環境を整えられていて、聴き取れなかった部分は後から補うことができました。――心理的安全が保たれた。それはどんなサポートだったのですか。たとえば、質問のときです。質問するのは意外と難しいんです。自分がよく知っている疾患なら「いい質問だね」と言ってもらいやすいですが、詳しくない分野だと的外れになりがちです。講師からしたらわけがわからない質問かも…と不安になることもありました。実際、一度スルーされたのかな?と思った瞬間もあります。ですが、運営の先生方が参加者全員の質問をリストアップして、どんな質問も漏れなくすべて扱ってもらえる仕組みになっていました。それから、最初の受講時に「ほかの人の発言を否定しないでください」というアナウンスもありました。この声掛けがあったので、自分の意見を批判されることはあっても、否定されない。これが安心感につながって、得意ではない診療科の授業にも思い切って飛び込むことができましたし、質問やグループ内での発言を行うことができました。――ご自身の診療にこのプログラムはどう役立っていますか。最近の出来事だと、糖尿病性の足壊疽を診るとき、皮膚科の褥瘡の講義で学んだ内容がとても役立っています。壊疽も褥瘡も血流障害が関係していることが多く、評価や薬の選択がリンクしていて、受けてよかったなと思う瞬間でした。それから、腎臓内科の講義を受けたことで、糖尿病診療の中で腎臓を診るときに、薬をいつまで継続すべきかといった、細かい判断がしやすくなりました。糖尿病の合併症で腎機能が悪化して透析になる方も多いですから、お互いの専門領域に関わる聞きづらい質問ができたのは、このプログラムならではかもしれません。専門医がその疾患をよく理解していることは確かですが、付随するさまざまな問題や合併症の管理に他科の医師の協力は必要不可欠です。その時に、こうして他科の医師の考え方を知ったおかげで、コミュニケーションを取りやすくなりました。糖尿病という疾患を診るときの視野が広がりましたし、自分の専門性を高める上でも、何をもっと勉強しなければならないのかが少しずつ見えてきた気がします。ほかにも一般内科の診療を行う上でリハビリテーションの必要性は年々高まっていると感じていたため、リハビリの講義で、リスク管理や障害の診断とADLの評価法などを学び、疾患と生活を結びつける上でとても役立っています。――他科の先生から刺激を受けたという点で、印象に残っていることはありますか。行動変容1)という診療実践コースの授業のグループワークが印象に残っています。行動変容というと、問診で情報を引き出して患者さんが生活習慣を修正できるように導くといった、糖尿病内科で日頃からやっていることがテーマになります。正直、自分は得意だと思っていました。でも、同じグループのある先生の問診に目を見張りました。外科出身で、今は開業して一般内科を診ているこの先生は、私よりずっと上手だったんです。本当に驚きました。糖尿病内科では診察に追われて、ついイエス・ノーで答えられるクローズドクエスチョンで聞いてしまうことが多いのですが、その先生はオープンクエスチョンをとても上手に使って、患者役の方から自然に話を引き出していました。その姿を見て、私ももっと頑張ろうとやる気になりましたし、負けられないという刺激にもなりました。他科の先生が自分より上手だと落ち込むこともできますけど、前向きに捉える方がいいですよね。いろんな先生のやり方を、自分が奮起する材料にできるといいなと思っています。総合診療能力を活かして専門性も磨く、新しい働き方――専門性を磨きたいと思う人にとっても、総合診療能力は必要でしょうか。わたしはそう思います。総合診療の必要性を感じて大分大学総合診療科を見学したとき、自分の進みたい方向をもう一度深く考えました。そこでクリアになったのは、私は専門の糖尿病と隣接する内分泌の診療の幅を広げながら、同時に一般内科の初期対応やマネジメントといった“総合診療の入り口”をマスターしたいという希望でした。さまざまな専門性・働き方の先生方を尊重し、そこから真摯に学び、力を借りながら、自分が決めた進路を進みたいと思ったんです。一方で専門だけでは対応しきれない現実も理解しています。患者さんの多くは高齢で、認知症や肺炎や骨折など複数の疾患があり、生活や家族の問題も絡んでいます。都会なら各診療科に回せるかもしれませんが、地方や個人病院では難しい。だから、専門的な治療だけでなく、専門と専門の間をつなぐマネジメントや初期対応は、どの科の専門医にも必要なのではないかと思います。総合診療的なアプローチを学ぶことは、専門診療の視野が広がる、地域のニーズに応えられることでキャリアの選択肢が増えるという2つの点で、専門性を高めたいと思う人にも価値があると思います。大人になってからの学習ですから、習ったことすべてをすぐに活用・実践できるというような大きな期待は持たずに、経験を積みながら少しずつできることを増やしていくくらいの気楽な気持ちで始めてもよいのではないでしょうか。――今後の展望は?総合診療の基本的なことを今以上にできるようになりながら、糖尿病と内分泌の専門的な診療を深めていくのが個人的な夢です。 人間は忘れる生き物だと痛感しているので、この先も反復学習と実臨床での実践を続けて、総合医育成プログラムの内容をしっかりできるようになりたい。そして専門以外でも得意な分野が生まれてくるといいなと思っています。私自身はプログラムを受けていてもできていないことが多々あります。でも全部を自分で賄えなくても、このプログラムで学んだエッセンスを活かしながら他の人の力を借りて、少しでもよい方向に診療を進めていき、自分の夢が実現するように頑張っていきたいと思っています。――同じように専門性を大切にしながら、総合診療にも興味を持たれた方にメッセージを。私は約7年のブランクを経て、再び臨床に戻る決断をしてからの一歩一歩が、このプログラムとの出会いにつながりました。時間はかかりましたが、希望していた糖尿病診療を増やすことができ、プログラムでの学びは一般内科や救急だけでなく、自分の専門にも新しい発見をもたらしています。努力しても診療がうまくいかず落ち込む日もあれば、うれしくて喜びを感じる瞬間もあります。一喜一憂の毎日ですが、やりがいがあり、この仕事が好きです。プログラムに参加して、恥をかくのは確かに嫌です。ただ自分のやりたいことに挑戦しないと失敗もないけれど進歩もありません。挑戦して、そこから学べることはありますし、次につなげていくこともできます。そして何より、医師になってある程度経験を積んでから、もう一度、大人の学び直しをできることがすごく楽しいです。このプログラムは、授業料を払い土日を費やしてでも学びたいと思っている、年齢も専攻科も異なるさまざまな背景を背負った全国のやる気に満ちた医師仲間と知りあうことができ、切磋琢磨しながら学べる貴重な場です。事務局のサポートも手厚く、先生方も熱心です。また私のように診療の第一線から離れた医師が復職する上でも大きな助けになってくれると思います。取り組み方次第で道は開けます。もし迷っているなら、ぜひ思い切ってチャレンジしてみてください。 引用 1) 行動変容:喫煙・食事・運動に関する患者の行動変容を支援する面接技法を学び、準備段階の評価や効果的な対話を通じて生活習慣改善を促す力を養うことを目的としたセッション

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抗加齢医学の初心者にもおすすめ『第8回アンチエイジングセミナーin松山』【ご案内】

 2026年3月8日(日)、松山市立子規記念博物館にて『第8回アンチエイジングセミナー in 松山』が開催される。参加費は無料で、医師・歯科医師・研究者・メディカルスタッフなど、医療関係者であれば誰でも参加可能。申込締切は3月3日(火)、定員100名に達し次第締め切りとなる。 本セミナーは、「抗加齢医学に興味はあるが、これまで体系的に学ぶ機会がなかった」「日常診療にどのように取り入れればよいのか知りたい」といった医療従事者にも参加しやすい内容となっている。 老化を疾患として捉え、長寿研究を基礎に学際的な視点から健康長寿を目指す抗加齢医学は、循環器疾患、認知症、生活習慣病、フレイル対策など、日常診療と密接に関わる分野として注目を集めている。本セミナーでは、抗加齢医学を取り巻く最新の知見を踏まえつつ、日常診療や生活指導、予防医療の現場での実践につながる視点を中心に、明日から活かせる内容をわかりやすく解説する。 主催の日本抗加齢医学会では、「愛媛県をはじめとする地域から抗加齢医学の輪を広げ、日常診療に役立つ知見を共有する場にしたい」としており、専門分野や経験年数を問わず、幅広い医療関係者の参加を呼びかけている。 開催概要は以下のとおり。開催日時:3月8日(日)13:00~16:15開催場所:松山市立子規記念博物館    〒790-0857 愛媛県松山市道後公園1-30 TEL:089-931-5566     道後温泉駅より徒歩5分/JR松山駅より市内電車20分     開催形式:会場開催(WEB配信はなし)参加方法:無料(事前参加登録制)申込締切:3月3日(火)または定員100名になり次第終了■参加登録はこちらから【プログラム】座長:北野 克宣氏(医療法人菅井内科 理事長・院長/抗加齢・生活習慣病センター長)講演1 13:00~13:45「統合医療としての抗加齢〜Life’s crucial 9と糖化対策〜」    山岸 昌一氏    (昭和医科大学医学部内科学講座糖尿病・代謝・内分泌内科学部門 主任教授)講演2 13:45~14:30 「食健幸プロジェクト」    高橋 路子氏    (神戸大学医学部附属病院糖尿病・内分泌内科/栄養管理部長)休憩  14:30~14:45講演3 14:45~15:30 「認知症予防における歯周炎対策の重要性」    伊賀瀬 道也氏    (愛媛大学病院抗加齢予防医療センター長/愛媛大学大学院循環器・呼吸器・腎高血圧内科学講座 特任教授)講演4 15:30~16:15 「笑顔と健幸プロジェクト    〜疲労と睡眠・精神健康対策でHealthy Ageingの社会実装を目指す〜」    北野 克宣氏    (医療法人菅井内科 理事長・院長/抗加齢・生活習慣病センター長)【主催】 一般社団法人日本抗加齢医学会【お問い合わせ先】 日本抗加齢医学会事務局 〒103-0024 東京都中央区日本橋小舟町6-3 日本橋山大ビル4F TEL:03-5651-7500 FAX:03-5651-7501 E-mail:seminar@anti-aging.gr.jp 学会ホームページはこちら

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米国の肥満有病率、2035年に向けて人種/民族問わず増加の見込み/JAMA

 1990~2022年の間の米国における成人肥満(BMI値30以上)有病率の変動を集団単位で調べた結果、人種/民族、居住州、性別、年齢によって大きな違いがみられたものの、すべての集団で肥満の有病率は高く、2035年に向けて増加し続けると見込まれることが、米国・ワシントン大学のNicole K. DeCleene氏らによって示された。米国における肥満の有病率は、過去数十年で急激に上昇しており、公衆衛生上の大きな負担となっている。集団によってかなりのばらつきがあることが示されている一方で、保健政策の策定や格差の縮小に必要な、集団レベルの肥満推計や予測の詳細情報は不足していた。JAMA誌オンライン版2026年1月28日号掲載の報告。合計1,131万5,421人のBMIデータを解析 研究グループは、人種/民族、居住州、性別、年齢(20歳以上)別に、1990~2022年の米国における肥満(BMI値30以上)の有病率を推定し、2035年に向けた傾向を予測した。 米国の国民健康栄養調査(National Health and Nutrition Examination Survey:NHANES)からのBMI測定データと、行動リスク要因サーベイランスシステム(Behavioral Risk Factor Surveillance System:BRFSS)およびGallup Daily Surveyの、自己申告の身長と体重から算出したバイアス調整後BMI値を、時空間ガウス過程回帰法と年率換算変化率・メタ回帰ベイジアンスプライン統合モデルを用いて解析した。 入力データのサーベイは、州別および人種/民族別の集団ベースサンプリングを用いて行われ、米国人合計1,131万5,421人が参加した。 結果は、ヒスパニック系(人種は問わない)、非ヒスパニック系黒人、非ヒスパニック系白人の集団について報告された。1990年19.3%から2022年42.5%に上昇、2035年には46.9%に 2022年の米国成人のうち肥満者は推定1億700万人(95%不確実性区間[UI]:1億101万~1億1,300万)で、米国成人の42.5%(95%UI:40.2~45.0)を占め、1990年の3,470万人(95%UI:3,110万~3,830万)・19.3%(95%UI:17.3~21.3)から増加しており、2035年には1億2,600万人(95%UI:1億1,800万~1億3,400万)・46.9%(95%UI:43.9~49.9)まで増加すると予測された。 全米全体でみると、2022年の人種/民族別にみた年齢標準化肥満有病率は、非ヒスパニック系白人男性の40.1%(95%UI:37.8~42.5)から非ヒスパニック系黒人女性の56.9%(95%UI:54.1~59.9)の範囲にわたっていた。 肥満有病率は、州レベルの差異が大きく、中西部および南部の州で最も高く、また州内の人種/民族によっても格差が見られ、男性よりも女性で格差は大きかった。 肥満有病率は年齢によってもばらつきが大きく、中年成人で最も高く、また若年成人のとくに女性で大幅に増加していた。

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最新科学が覆す 体にいいのはどっち?

ニューヨークの専門医×最新論文で解き明かす本書では、ニューヨークの老年医療の最高峰であるマウントサイナイ医科大学に勤める山田 悠史氏が、「白湯は体にいい?」「バリウム検査は受けたほうがいい?」「グルテンフリーは健康にいいの?」など、多くの人が気になる健康神話を、食事・健康・運動・睡眠・民間療法などといったジャンルごとに分類し、最新の論文をもとに「本当に正しいのはどちらか」を解説します。画像をクリックすると、内容の一部をご覧いただけます。※ご使用のブラウザによりPDFが読み込めない場合がございます。PDFはAdobe Readerでの閲覧をお願いいたします。目次を見るPDFで拡大する目次を見るPDFで拡大する最新科学が覆す 体にいいのはどっち?定価1,870円(税込)判型四六判頁数272頁発行2025年12月著者山田 悠史ご購入はこちらご購入はこちら

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妊娠中の血圧上昇は早産・低出生体重リスクと関連

 妊娠から出産までの健康を良好に保つ上では、妊婦の血圧を管理することが重要となりそうだ。新たな研究で、遺伝的要因に基づき収縮期血圧(SBP)が10mmHg高いと予測される妊婦では、母子双方の有害な妊娠・周産期アウトカムのリスクが高いことが示された。ノルウェー公衆衛生研究所・生殖・健康センターのMaria Magnus氏らによるこの研究結果は、「BMC Medicine」に1月14日掲載された。 Magnus氏は、「本研究の結果は、母体の血圧上昇が、早産、低出生体重児の出産、分娩誘発の必要性、妊娠糖尿病の発症、新生児集中治療室(NICU)への入室など、複数の有害な妊娠アウトカムのリスク上昇と関連することを示している」とニュースリリースで述べている。 Magnus氏は、こうした知見は多くの妊婦に関係すると指摘し、「肥満の増加や出産年齢の高齢化が進むとともに、高血圧を有する妊娠可能年齢の女性も増加している。高血圧は妊娠中によく見られる医学的問題であり、妊婦のおよそ10人に1人が影響を受けている」と話す。 今回の研究では、主にヨーロッパ系の女性を対象に、遺伝的に予測された妊娠中のSBPおよび拡張期血圧(DBP)の上昇が妊娠および周産期アウトカム(主要評価項目として16種類、副次評価項目として8種類)に及ぼす影響を、メンデルのランダム化解析により検討した。解析には、SBP/DBPに関する大規模ゲノムワイド関連解析(GWAS)のメタアナリシス(対象者102万8,980人)、および妊娠・周産期アウトカムに関するGWASのメタアナリシス(対象者7万4,368~71万4,899人)のデータを用いた。 その結果、遺伝的要因に基づきSBPが10mmHg高くなると推測される女性では、妊娠・周産期アウトカムのオッズが有意に上昇していた。具体的には、分娩誘発の必要性、妊娠糖尿病の発症、NICU入室のオッズ比はいずれも1.11、早産のオッズ比は1.12、在胎週数に比して小さい児(SGA)を出産するオッズ比は1.16、低出生体重児を出産するオッズ比は1.33であった。一方で、巨大児や高出生体重児を出産するか、在胎週数を超えて出生する(過期産)オッズには有意な低下が見られた(オッズ比はそれぞれ、0.87、0.76、0.94)。 こうした結果から研究グループは、「母体の血圧を下げることは、母子双方の健康に幅広い利益をもたらす可能性が高い」と結論付けている。また、論文の上席著者である英ブリストル大学病因疫学分野のCarolina Borges氏は、「本研究では、遺伝情報を用いて因果関係をより明確にすることで、母親の血圧そのものが妊娠および新生児の合併症に寄与しているかどうかを明らかにした。これは、母体および乳児のアウトカムを改善するための予防、モニタリング、治療戦略を導くエビデンスを強化するという点で、臨床医療や公衆衛生にとって重要だ」と述べている。 ただし研究グループは、「妊娠中の血圧をどのように治療・管理すれば合併症を最も効果的に予防できるのかについては、さらなる研究が必要だ」と述べている。

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チルゼパチドは肥満症患者などの精神症状のリスクとならない

 肥満症の患者にチルゼパチドを処方した場合、何らかの精神症状を伴うのであろうか。このテーマについてアメリカのペンシルベニア大学ペレルマン医学大学院精神医学科のThomas A. Wadden氏らの研究グループは、SURMOUNT試験の事後解析を行った。その結果、既往の精神症状のない過体重または肥満症患者にはチルゼパチドはうつなどのリスクと関連しないことがわかった。この結果は、Obesity誌2026年1月15日オンライン版に公開された。チルゼパチドの使用で精神疾患の有害事象はプラセボとおおむね同等 研究グループはチルゼパチドの臨床試験であるSURMOUNT試験1~3より既往の主要精神病理を伴わない肥満成人を対象に、チルゼパチド投与に伴う精神科的変化を事後解析で評価した。 方法としてプラセボ対照群と比較したチルゼパチド投与群(5/10/15mgまたは最大耐容量10/15mg)の4,056例について、抑うつ症状は患者健康質問票-9(PHQ-9)により、自殺念慮(SI)および自殺行動(SB)はコロンビア自殺重症度評価尺度(C-SSRS)により測定し、神経系および精神疾患の有害事象(AE)を収集した。 主な結果は以下のとおり。・ベースライン時のPHQ-9スコアの平均値(SD)は、チルゼパチド群で2.7(SD3.0)、プラセボ群で2.6(SD3.1)であり、うつ病の症状は皆無またはごくわずかだった。・72週時点のスコアは、チルゼパチド投与群で1.9(SD2.7)、プラセボ群で2.4(SD3.3)だった(推定治療差[SE]:-0.6[0.1])、p<0.001。・チルゼパチド投与群では、より重症なPHQ-9カテゴリーへの移行率が低かった(18.2%vs.24.3%、p<0.001)。・C-SSRSでは、各群の0.6%がSIを報告したが、そのほとんどは低リスクと評価された。・非致死性SBは、チルゼパチド投与群で0.1%、プラセボ群では0.0%に発生した。・AEは各群でおおむね同様だった。 研究グループは、この結果から「既往の主要精神病理を伴わない過体重または肥満症患者において、チルゼパチドはプラセボと比較し、うつ病リスクの増加と関連していないことが示唆された。チルゼパチド投与群で観察された自殺念慮/自殺行為の発生率は、他のインクレチン系治療薬と同程度だった。重篤な精神疾患を有する患者におけるチルゼパチドの安全性に関しては、さらなる研究が必要」と結論付けている。

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GLP-1受容体作動薬は大腸がんリスクを低下させる?

 オゼンピックやウゴービなどのGLP-1(グルカゴン様ペプチド-1)受容体作動薬は、減量や糖尿病の管理だけでなく、大腸がんの予防にも役立つ可能性のあることが、新たな研究で示唆された。GLP-1受容体作動薬の使用者では、アスピリン使用者と比べて大腸がんを発症するリスクが26%低かったという。米テキサス大学サンアントニオ校血液腫瘍内科のColton Jones氏らによるこの研究結果は、米国臨床腫瘍学会消化器がんシンポジウム(ASCO GI 2026、1月8〜10日、米サンフランシスコ)で発表された。 Jones氏は、「これまでアスピリンの大腸がん予防効果について研究されてきたが、効果は限定的であり、また、出血リスクが使用の妨げになる。糖尿病や肥満の治療で広く使われているGLP-1受容体作動薬は、代謝管理とがん予防の両面で、より安全な選択肢になる可能性がある」と述べている。 米国では、2025年には約15万人が大腸がんと診断され、5万人以上が死亡したと推定されている。GLP-1受容体作動薬は、インスリンや血糖値の調節を助け、食欲を抑え、消化を遅らせるホルモンであるGLP-1の作用を模倣する薬剤である。代表的な薬剤には、オゼンピックやウゴービなどのセマグルチド、マンジャロやゼップバウンドなどのチルゼパチドがある。 今回の研究では、商業医療データベースTriNetXから、GLP-1受容体作動薬の使用者と、アスピリン使用者を傾向スコアマッチング後に14万828人ずつ(計28万1,656人、平均年齢58歳、女性69%)抽出し、大腸がんの発症を比較した。各薬剤の初回処方日を起点に、その6カ月後から追跡を開始した。追跡期間中央値は、GLP-1受容体作動薬群で2,153日、アスピリン群で1,743日であった。 その結果、GLP-1受容体作動薬群ではアスピリン群と比較して、大腸がんリスクが26%低いことが明らかになった(リスク比0.741、95%信頼区間0.612〜0.896)。絶対リスク差から算出した治療必要数(NNT)は2,198であった。この結果は、追跡開始後12カ月および36カ月を対象とした感度解析においても、また、年齢層、BMI、糖代謝などで層別化したサブグループ解析においても、概ね一貫していた。GLP-1受容体作動薬を個別に解析すると、セマグルチドのみが有意な効果を示した。副作用については、GLP-1受容体作動薬使用者の方が、腎障害、胃潰瘍、消化管出血といった重篤な副作用は少なかった一方で、下痢や腹痛はより多く発生していた。 この研究をレビューした米クリーブランド・クリニックTaussig Cancer CenterのJoel Saltzman氏は、「GLP-1受容体作動薬は、体重減少以上の恩恵をもたらす可能性がある。これらの結果は、がん予防戦略においても重要な役割を果たす可能性を示している。アスピリンや非ステロイド性抗炎症薬(NSAIDs)、スタチンの大腸がん予防効果は長年研究されてきたが、今回のリアルワールドデータは、GLP-1受容体作動薬がこの分野で有望な役割を担う可能性を示唆している」と述べている。 なお、学会発表された研究結果は、査読を受けて医学誌に掲載されるまでは一般に予備的なものと見なされる。

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GLP-1受容体作動薬、乾癬患者の死亡および心血管系・精神系リスクを低減/BJD

 糖尿病または肥満を有する乾癬患者において、GLP-1受容体作動薬による治療は、ほかの抗糖尿病薬または抗肥満薬による治療と比較し、心血管系および精神疾患系の合併症リスク、ならびに全死因死亡リスクを低減し、そのリスク低減効果は乾癬のないコホートと比較して高いことが明らかになった。ドイツ・リューベック大学のHenning Olbrich氏らは、米国のリアルワールドデータを用いた大規模コホート研究結果を、British Journal of Dermatology誌2026年1月号に報告した。 本研究は後ろ向きの人口ベースコホート研究であり、米国・TriNetXのリアルワールドデータを使用し、2年間の追跡期間中にGLP-1受容体作動薬による糖尿病または肥満治療を受けた乾癬患者を、ほかの全身性抗糖尿病薬または抗肥満薬により治療した患者と比較した。関連するリスク因子について1:1の傾向スコアマッチングを行った後、各コホートに3,048例の参加者が組み入れられた。主要評価項目には、心血管代謝系・精神疾患系・自己免疫系の合併症リスクのほか、全死因死亡、薬剤による潜在的有害事象が含まれた。非乾癬患者のコホートを使用して解析を繰り返し、(1)異なる(より最近の)追跡期間、(2)膿疱性乾癬患者を除外した2つの感度分析を通じて結果を検証した。 主な結果は以下のとおり。・GLP-1受容体作動薬で治療した乾癬患者(女性:60.4%、平均年齢:56.94[SD 12.02]歳)と、ほかの抗糖尿病薬および抗肥満薬で治療した乾癬患者(女性:61.9%、平均年齢56.42[14.16]歳)のマッチドコホートにおける比較の結果、GLP-1受容体作動薬による治療は全死因死亡リスク(ハザード比[HR]:0.219、95%信頼区間[CI]:0.123~0.391、p<0.001)および主要心血管イベントリスク(HR:0.561、95%CI:0.442~0.714、p<0.001)の有意な低下と関連していた。・さらに、アルコール(HR:0.346、95%CI:0.174~0.685、p=0.009)および薬物乱用(HR:0.510、95%CI:0.350~0.743、p=0.002)リスク低下との関連が認められた。・GLP-1受容体作動薬コホートにおける典型的な薬物有害事象の頻度は高くなかった。・乾癬患者のコホートでは、乾癬のない肥満や糖尿病患者のコホートと比較しリスクの減少がより顕著であった。 著者らは今回の結果を受けて、「医師は、乾癬患者が肥満または糖尿病を併発している場合、GLP-1受容体作動薬の使用を検討すべき」としている。

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PPI長期使用は本当に胃がんリスクを高めるのか/BMJ

 2023年に発表された3つのメタ解析では、プロトンポンプ阻害薬(PPI)の使用により胃がんのリスクが約2倍に増加することが示されているが、解析の対象となった文献にはいくつかの方法論的な限界(因果の逆転[プロトパシック バイアス]、症例分類法の違い[方法論的異質性]、Helicobacter pylori[H. pylori]菌感染などの交絡因子の調整不能など)があるため、この結論は不確実とされる。スウェーデン・カロリンスカ研究所のOnyinyechi Duru氏らは、これらの限界を考慮したうえで、無作為化試験の実施は現実的でないためさまざまなバイアスの防止策を講じた観察研究「NordGETS研究」を行い、PPIの長期使用は胃腺がんのリスク増加とは関連しない可能性があることを示した。研究の成果は、BMJ誌2026年1月21日号に掲載された。北欧5ヵ国の人口ベースの症例対照研究 NordGETS研究は、1994~2020年に、北欧5ヵ国(デンマーク、フィンランド、アイスランド、ノルウェー、スウェーデン)の各国で前向きに収集されたレジストリデータを用いた人口ベースの症例対照研究(Swedish Research Councilなどの助成を受けた)。 噴門部を除く胃腺がん患者1例に対し、背景因子をマッチさせた対照を10例ずつ5ヵ国の全人口から無作為に抽出した。胃噴門部の腺がんは、PPIの適応症である胃食道逆流症による交絡を回避するために除外した。 曝露は長期(1年超)のPPIの使用とし、診断日(症例)と登録日(対照)の前の12ヵ月間のアウトカムは解析から除外した。PPI使用に関する知見の妥当性と特異性を評価するために、ヒスタミンH2受容体拮抗薬(H2RA)の長期(1年超)使用の解析も行った。 主要アウトカムは、胃(非噴門部)腺がんであった。マッチング変数の調整とともに、多変量ロジスティック回帰分析により、国、H. pylori菌治療、消化性潰瘍、喫煙関連疾患、アルコール関連疾患、肥満または2型糖尿病、メトホルミン・非ステロイド性抗炎症薬・スタチンによる薬物療法を調整したオッズ比(OR)と95%信頼区間(CI)を算出した。H2RAの長期使用も関連がない 胃(非噴門部)腺がん群に1万7,232例(年齢中央値74歳[四分位範囲:65~81]、女性42.4%)および対照群に17万2,297例(74歳[65~81]、42.4%)を登録した。PPIの長期使用は、胃(非噴門部)腺がん群で1,766例(10.2%)、対照群で1万6,312例(9.5%)であった。 最長で26年に及ぶ調査期間中に、PPIの長期使用は胃(非噴門部)腺がんの発症と関連しなかった(補正後OR:1.01、95%CI:0.96~1.07)。粗オッズ比は上昇していたが(1.16、1.10~1.23)、交絡因子(とくにH. pylori菌関連の変量)で調整すると関連性は消失した。 また、H2RAの長期使用も、胃(非噴門部)腺がんのリスク上昇とは関連がなかった(補正後OR:1.03、95%CI:0.86~1.23)。長期使用の利益と不利益を慎重に検討すべき 偽陽性をもたらすエラーの発生源として、(1)胃腺がん診断直前のPPI使用の包含、(2)PPIの短期使用、(3)噴門部腺がん、(4)H. pylori菌関連の変数の調整不足を特定した。 著者は、「本研究の結果は、PPIの長期使用が胃腺がんのリスク増加と関連するとの仮説を支持しない」「バイアスの防止に用いたさまざまな手順のすべてが、潜在的な誤った関連性の発生を防ぐために不可欠であった」「これらの知見は、胃食道逆流症などの適応症の治療でPPIの長期使用を要する患者に安心感をもたらすが、クロストリジウム・ディフィシル関連下痢や骨粗鬆症、ビタミン・電解質吸収不良などの重篤な病態のリスク増加の可能性が指摘されているため、長期使用の利益と不利益を慎重に検討し、PPI継続の必要性を定期的に再評価する必要があると考えられる」としている。

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DM合併冠動脈疾患、Abluminus DES+シロリムスステントの有用性は?/Lancet

 経皮的冠動脈インターベンション(PCI)を受ける糖尿病合併患者において、血管壁側(abluminal)およびバルーン表面をコーティングしたシロリムス溶出ステント(Abluminus DES+SES)は、XIENCE耐久性ポリマーエベロリムス溶出ステント(XIENCE EES)と比較し、12ヵ月時の虚血による再度の標的病変血行再建術および標的病変不全の発生率が高く、非劣性は認められなかった。ブラジル・Heart Institute of University of Sao PauloのAlexandre Abizaid氏らが、16ヵ国74施設で実施した無作為化非盲検比較試験「ABILITY Diabetes Global試験」の結果を報告した。著者は、「糖尿病合併患者における治療成績の最適化が依然として課題であることが浮き彫りとなり、この患者集団における虚血リスクを低減するためステント設計および補助的薬物療法のさらなる革新が必要である」とまとめている。Lancet誌2026年1月17日号掲載の報告。Abluminus DES+SESのXIENCE EESに対する非劣性を評価 研究グループは、慢性冠症候群または非ST上昇型急性冠症候群で少なくとも1つの新規冠動脈病変に対しPCIを施行する1型または2型糖尿病の成人(18歳以上)患者を、Abluminus DES+SES群またはXIENCE EES群に1対1の割合で無作為に割り付けた。 Abluminus DES+SES群では、薬剤移行を促進するためにバルーン拡張時間を45秒以上とすることが推奨された。また、全例に、臨床ガイドラインおよび現地の標準治療に基づいて2剤併用抗血小板療法を行った。 主要エンドポイントは、per-protocol集団における12ヵ月時点の虚血による再度の標的病変血行再建術(ID-TLR)および標的病変不全(TLF)(心血管死、標的血管心筋梗塞、またはID-TLRの複合エンドポイントと定義)の2つで、非劣性マージンはそれぞれ2.8%および3.0%とした。いずれも累積発生率はKaplan-Meier法で推定し、Cox比例ハザードモデルを用いてハザード比(HR)とその95%信頼区間(CI)を算出した。複合主要エンドポイントのID-TLRとTLFの発生、非劣性基準を満たさず 2020年6月12日~2022年9月9日に、3,032例がAbluminus DES+SES群(1,514例)またはXIENCE EES群(1,518例)に無作為に割り付けられた。3,032例中2,931例(96.7%)が死亡までまたは24ヵ月間の追跡調査を完了した。年齢中央値は68.0歳(四分位範囲:60~74)で、879例(29.0%)が女性、2,153例(71.0%)が男性であった。 per-protocol集団における12ヵ月時のID-TLRは、Abluminus DES+SES群で1,421例中67例(Kaplan-Meier推定値:4.8%、95%CI:3.9~6.2)、XIENCE EES群で1,446例中30例(2.1%、1.6~3.2)に認められ、絶対リスク群間差は2.7%(95%CI:1.3~4.1)で非劣性基準を満たさなかった(非劣性のp=0.44)。 また、TLFはAbluminus DES+SES群で137例(Kaplan-Meier推定値:9.7%、95%CI:8.4~11.5)およびXIENCE EES群で89例(6.2%、5.3~7.8)に認められ、絶対リスク群間差は3.5%(95%CI:1.5~5.5)であり(非劣性のp=0.68)、いずれの主要エンドポイントも絶対リスク群間差の95%CIの下限が0を上回った。 TLFを個別にみると、標的血管心筋梗塞は、Abluminus DES+SES群のほうが発生率は高かったが(Kaplan-Meier推定値:5.2%[95%CI:4.1~6.5]vs.3.1%[2.4~4.3])、心血管死(2.9%[2.1~3.9]vs.2.1%[1.5~3.0])および全死因死亡(3.7%[2.8~4.8]vs.3.3%[2.5~4.4])に有意差は認められなかった。 結果は、24ヵ月時点でもITT集団において一貫性が認められたが、12ヵ月から24ヵ月までのランドマーク解析では、両群間に有意差は認められなかった。

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