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待機的冠動脈造影には、よりすぐれたリスク選別の方法が必要

心臓カテーテル検査適応患者の選別に関して、ガイドラインではリスクアセスメントと非侵襲検査を推奨している。米国デューク大学臨床研究所のManesh R. Patel氏らの研究グループは、実施されている非侵襲検査の種類と、冠動脈疾患が疑われる患者に施行するカテーテル検査の診断精度について、米国の最新サンプルデータを用いて検討を行った。NEJM誌2010年3月11日号掲載より。待機的心カテ検査の精度は3分の1強にとどまる試験は、2004年1月から2008年4月にかけてAmerican College of Cardiology National Cardiovascular Data Registryに参加する663病院で、待機的カテーテル検査を受けた冠動脈疾患の既往のない患者を同定し対象とした。患者の人口統計学的特性、リスクファクター、症状、非侵襲検査の結果について、閉塞性冠動脈疾患との関連性を調査。その際、閉塞性冠動脈疾患は左主幹冠動脈の直径50%以上の狭窄または主要心外膜血管の直径70%以上の狭窄と定義された。この研究では、合計39万8,978例の患者が対象となり、年齢中央値は61歳、男性が52.7%、26.0%に糖尿病が、69.6%に高血圧症がみられた。非侵襲検査は患者の83.9%に実施された。カテーテル検査から37.6%(14万9,739例)に閉塞性冠動脈疾患が認められ、冠動脈疾患なし(狭窄が全血管の20%未満と定義)は39.2%だった。リスク層別化の優れた方策の必要性を強調解析の結果、閉塞性冠動脈疾患の独立予測因子として、「男性」(オッズ比:2.70、95%信頼区間:2.64~2.76)、「高齢」(5歳加齢当たりオッズ比:1.29、95%信頼区間:1.28~1.30)、「インスリン依存性糖尿病を有する」(オッズ比:2.14、95信頼区間:2.07~2.21)、脂質異常症(同:1.62、1.57~1.67)だった。非侵襲検査の結果が陽性の患者は、検査を一つも受けなかった患者と比べ閉塞性冠動脈疾患を有する割合が高かったが、わずかだった(41.0%対35.0%、P

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心血管リスクを有する耐糖能異常(IGT)患者において、バルサルタンが2型糖尿病への進行を抑制-NAVIGATOR試験の結果から

 ノバルティスファーマ株式会社は18日、9,000名以上が参加した高血圧治療薬バルサルタンのランドマーク試験であるNAVIGATORの結果から、心血管疾患または心血管リスクのある耐糖能異常(IGT)患者において、バルサルタンが2型糖尿病への進行を遅らせることが明らかになったと発表した。それによると、バルサルタン群では、糖尿病の新規発症リスクが14%減少したが、心血管イベントのリスクは減少しなかった。またナテグリニド群では、糖尿病の新規発症リスクも、心血管イベントのリスクも減少しなかったという。●詳細はプレスリリースへhttp://www.novartis.co.jp/news/2010/pr20100318_02.html

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HbA1c値、糖尿病および心血管アウトカムを予測

糖尿病診断の基準として空腹時血糖値が使用されてきたが、近年、食事や運動など生理的影響を受けにくい糖化ヘモグロビン(HbA1c)値の使用が推奨されるようになっている。今年1月の米国糖尿病協会(ADA)の推奨の動きに続き、日本でも診断基準改定の動きが本格化している。そのHbA1c値と従来の空腹時血糖値の予後予測能(糖尿病または心血管疾患リスク同定)について、米国ジョンズ・ホプキンス大学ブルームバーグ校疫学部門のElizabeth Selvin氏らのグループが、比較試験を行った。NEJM誌2010年3月4日号より。HbA1c値が増すほど、糖尿病、冠動脈疾患、脳卒中のリスクは高まるSelvin氏らは、全米4地区で行われているAtherosclerosis Risk in Communities(ARIC)前向き研究参加者で、1990~1992年の2回目の被験者登録時に、糖尿病または心血管疾患の既往歴がなかった黒人および白人成人11,092例の全血サンプルから測定したHbA1c値をベースラインとした。その後約15年追跡した、両群の各イベント発症を比較した。結果、ベースラインのHbA1c値と、新たに診断された糖尿病並びに心血管アウトカムとの相関が確認された。HbA1c値「5.0%未満」「5.0~5.5%未満」「5.5~6.0%未満」「6.0~6.5%未満」「6.5%以上」の各グループの、糖尿病と診断されるリスクの多変量補正ハザード比は「5.0~5.5%未満」を基準とした場合、「5.0%未満」群0.52(95%信頼区間:0.40~0.69)、「5.5~6.0%未満」群1.86(同:1.67~2.08)、「6.0~6.5%未満」群4.48(同:3.92~5.13)、「6.5%以上」群16.47(同:14.22~19.08)だった。冠動脈疾患のハザード比は、「5.0%未満」群:0.96(同:0.74~1.24)、「5.5~6.0%未満」群:1.23(同:1.07~1.41)、「6.0~6.5%未満」群1.78(同:1.48~2.15)、「6.5%以上」群1.95(同:1.53~2.48)だった。脳卒中のハザード比も同程度だった。空腹時血糖値モデルでは予測できないものもHbA1c値を加えると……一方、全死因死亡率とHbA1c値とは、J字型曲線の相関を示した。 これらHbA1c値モデルにおける、糖尿病、心血管アウトカム、死亡率との関連性はいずれも、ベースラインの空腹時血糖値による補正後も有意だった。対照的に空腹時血糖値モデルでは、心血管疾患および全死因死亡リスクとの関連が、全共変量による補正後モデルにおいても有意性は認められなかった。冠動脈疾患のリスクとの関連については、空腹時血糖モデルにHbA1c値がつけ加えた場合に有意となった。これらからSelvin氏は、「非糖尿病成人の地域ベースの集団において、HbA1c値は空腹時血糖値と比較して、糖尿病リスクについては同程度の相関を、心血管疾患および全死因死亡リスクについてはより強い相関を示した。このことは、糖尿病診断にHbA1c値を活用するべきことを裏づけるエビデンスが得られたことを意味する」と結論している。(医療ライター:朝田哲明)

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スタチン治療により糖尿病発症リスクがわずかに増大、診療方針には変更なし

スタチン治療により、糖尿病の発症リスクがわずかながら増大するものの、心血管疾患のリスクを有する患者や心血管疾患患者の診療方針を変更するほどではないことが、イギリスGlasgow大学Glasgow心血管研究センターのNaveed Sattar氏らによるメタ解析で示された。スタチンのプラセボ対照試験における糖尿病の発症率は、JUPITER試験ではロスバスタチン群で高かったのに対し、WOSCOPS試験ではプラバスタチン群で低いなど相反する知見が得られている。これによりスタチンの長期使用の安全性に疑問が生じたため、系統的な検討が求められていた。Lancet誌2010年2月27日号(オンライン版2010年2月17日号)掲載の報告。1,000例以上の大規模な無作為化試験のメタ解析研究グループは、スタチンの使用と糖尿病発症の関連性について、公表されたデータと未発表のデータを用いてメタ解析を行った。データベース(Medline、Embase、Cochrane Central Register of Controlled Trials)を用いて、1994~2009年までに実施されたスタチンの無作為化対照比較試験を検索した。1,000例以上が登録され、1年以上のフォローアップが両群で等しく行われた試験のみを解析の対象とした。臓器移植患者や血液透析を要する患者の試験は除外した。糖尿病発症リスクが9%増大したが、絶対リスクは低い13のスタチンに関する試験(ASCOT-LLA、HPS、JUPITER、WOSCOPS、LIPID、CORONA、PROSPER、MEGA、AFCAPS TexCAPS、4S、ALLHAT-LLT、GISSI HF、GISSI PREVENZIONE)が同定された(合計91,140例)。平均4年間に4,278例が糖尿病を発症した(スタチン群2,226例、対照群2,052例)。スタチン治療により糖尿病の発症リスクが9%増大した(オッズ比:1.09、95%信頼区間:1.02~1.17)。試験間の不均一性はほとんど認めなかった[I(2)=11%]。メタ回帰分析では、スタチンによる糖尿病の発症リスクはより高齢の患者を対象とした試験で高かったが、ベースライン時のBMIやLDLコレステロール値の変化はリスクに影響を及ぼさなかった。4年間のスタチン治療を255例(95%信頼区間:150~852例)に対して行うと、1例が糖尿病を発症することが示され(スタチン群:12.23/1,000人・年、対照群:11.25/1,000人・年)、絶対リスクは低かった。著者は、「スタチン治療により糖尿病の発症リスクがわずかに増大したが、絶対リスクは低く、冠動脈イベントの低減効果と比べてもリスクは低かった」と結論し、「心血管疾患のリスクが中等度~高度の患者や心血管疾患患者の診療方針を変更する必要はない」と指摘している。(菅野守:医学ライター)

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HbA1c値、診断基準として正式採用/国際標準化へ(第44回糖尿病学の進歩)

わが国でも、欧米と同様に、HbA1c値を診断基準に取り入れることが検討されていたが、2010年3月3日、HbA1c値を現行の診断基準に加えることが決定され、2010年3月4日から2日間にわたって開催されている「第44回糖尿病学の進歩」で発表された<演者:清野 裕氏(関西電力病院)>。これまでわが国では、「空腹時血糖値」、「75gOGTT2時間血糖値」、「随時血糖値」の3項目が診断基準として用いられていたが、HbA1c値が加われば、「空腹時血糖値≧126mg/dL」、「75gOGTT2時間血糖値≧200mg/dL」、「随時血糖値≧200mg/dL」のいずれか1項目と、「HbA1c値≧6.1%」を満たせば、その日に「糖尿病」と診断できることになる。HbA1c値の診断基準への追加決定と合わせて、新たな「糖尿病の診断基準フローチャート(案)」が公開されたが、正式な発表は、2010年5月に岡山で開催される「第53回日本糖尿病学会年次学術集会」になる。また、同講演で、HbA1c値の国際標準化についても発表された。現在、日本で表記されているHbA1c値と、日本以外の国で表記されているHbA1c値に0.4%の差がある(日本では、「HbA1c値6.5%以下が血糖コントロール良」となっているが、この数値は、日本以外の国で言うと、7.1%にあたる)。以前より、HbA1c値を海外の数値と合わせるべきと言われていたが、2012年4月より、諸外国の数値と合わせて記載されることが決定した。それまでは、日本での数値と、海外に合わせた時の数値と2つが併記されることとなる。例:HbA1c 6.1%(JDS値)/ 6.5%(NGSP値)*JDS値・・日本での表記、NGSP値・・海外での表記(ケアネット 栗林 千賀)

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mTOR阻害剤が腎細胞がんにもたらす可能性

2010年1月、mTOR阻害による抗悪性腫瘍剤としては日本初となる「エベロリムス(商品名:アフィニトール)」が承認を得た。ここでは、2月22日、アーバンネット大手町ビルにて開催された「mTOR阻害剤『アフィニトール』が腎細胞がん治療にもたらす可能性」と題するプレスセミナーをお届けする。帝京大学医学部泌尿器科学教室 主任教授 堀江重郎氏は、mTOR阻害剤の基礎から臨床治験まで広範にわたり講演した。<ノバルティス ファーマ株式会社主催> がん治療における新しい戦略無秩序な細胞増殖を繰り返すがんにおいて、その制御を失った細胞周期を停止させるのが従来の抗がん剤の作用機序であるが、さらに近年、がんそのものが自らを養う血管を新生させることから、そこをターゲットとする分子標的薬による治療が進んできている。そして新たにmTOR阻害剤など、無制限な細胞内の代謝もがん進行の要因となっている点に着目した治療戦略が、難治性がんへの福音となる可能性が強まってきた。mTORとは堀江氏はまず、mTORとその阻害剤について概説した。mTORとはマクロライド系抗生物質ラパマイシンの標的分子として同定されたセリン・スレオニンキナーゼであり、細胞の分裂や成長、生存における調節因子である。その重要性を示唆する事実として、酵母からヒトにいたるまで95%以上相同な蛋白であるため、mammalian Target Of Rapamycin(=mTOR)と総称される。正常細胞においては、栄養素や成長因子、エネルギーといった「エサ」があると活性化し、エサのない状況ではいわば冬眠状態となっている。栄養素やその他増殖促進経路からのシグナル伝達を制御する役割から、糖尿病や生活習慣病への関与も報告されている。一方、mTOR阻害剤のアフィニトールやラパマイシンは、タクロリムスと同様の機序で免疫抑制効果を持つ。分子生物学的には、細胞周期をG1期で停止させることや、低酸素誘導因子(HIF※)の安定化および転写活性を抑制することが示されている。多くのがんでmTORシグナル伝達経路が調節不全を起こして常に活性化しており、mTOR阻害剤の抗腫瘍効果が臨床レベルでも検討されている。(※HIF:mTOR活性化や低酸素によって細胞内に蓄積し、血管新生や解糖系代謝を亢進させる。)昨年Natureで発表され話題となった、興味深い知見がある。ラパマイシン適量をマウスに投与したところ、加齢期であっても寿命延長効果が見られた。これはカロリー制限したサルの方が長寿命であったデータと同等と考えられる、と堀江氏は語った。また、がん患者を高カロリー摂取群とカロリー制限群に分けたところ、制限群の方が長生きしたという結果が複数出ており、これまでは切り離して考えられていた「がん」と「体内環境」の密接な関連に関心が寄せられている。がん細胞の代謝にも影響するmTOR阻害剤は、この流れに合致する薬剤といえる。 腎細胞がんわが国における腎がんの9割は腎細胞がんであり、好発年齢は50歳以降、男女比は約2:1である。年間で発症数は1万人を超えて増加傾向にあるとされ、約7千人が死亡する。寒冷地方に多く発症し、ビタミンD欠乏との関連が指摘されている。遺伝性にフォン・ヒッペル・リンダウ(VHL)遺伝子が変異または欠失しているVHL症候群は120家系あり、遺伝性腎細胞がんを発症する割合は50%程度。根治的治療は手術で、StageⅣであってもなるべく切除した方が予後良好である。分子標的薬登場以前はサイトカイン療法しか薬物治療がなく、治療抵抗性のがんの一つである。 腎細胞がんとmTOR阻害剤堀江氏によると、腎細胞がん患者においてはmTORの上流蛋白Aktの過剰な活性化や、血中血管内皮増殖因子(VEGF)濃度の上昇が認められ、増殖シグナルが亢進している。加えて、mTORに至るシグナル経路を抑制する因子の変異・機能低下や、VHL遺伝子変異によるHIFの過剰産生が見られ、抑制シグナルの低下もある。正常ではVHLはがん抑制因子であってHIFを抑制しているが、腎がんの多くでは変異による不活化が起こっている。もともと腎臓は血管に富み、VHL変異で異常な血管が作られやすい。mTOR阻害剤は、このようにVHLが機能しない状況でもHIF合成を阻止する。また、VEGF-Aの産生も阻害し、結果として腫瘍細胞での血管新生を抑制する。このように、がん細胞の増殖抑制と血管新生阻害の抗腫瘍効果を併せ持つmTOR阻害剤のアフィニトールの、VEGF受容体チロシンキナーゼ阻害剤(スニチニブまたはソラフェニブ)が無効となった進行性腎細胞がんを対象として有効性および安全性について検討した臨床試験がRECORD-1である。患者をBSC+アフィニトール群とBSC群に無作為割付した結果、アフィニトール群で無増悪生存期間が有意に延長し、抗腫瘍効果も示された。副作用発現は、対象患者が比較的PSが良好というバイアスはあるが、高グレードがあまり多くない印象があるとのことである。注意すべきものとして、アジア人に多い間質性肺疾患、免疫抑制による感染症、インシュリン抵抗性となるための高血糖、糖尿病の発症・増悪などが挙げられた。mTOR阻害剤の間質性肺疾患については、副腎皮質ホルモン剤への反応性が高いことが報告されている。堀江氏は、がんへの本質的なアプローチといえるmTOR阻害剤、アフィニトールが承認され、VEGF受容体チロシンキナーゼ阻害剤投与後の進行性腎細胞がんの治療における期待が寄せられるとした。なおわが国では現在、乳がん、胃がん、悪性リンパ腫、膵内分泌腫瘍を対象とした、第Ⅲ相の国際共同治験に参加している。(ケアネット 板坂倫子)

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早死にを招く、小児期の心血管リスク因子

糖尿病の早期発症が死亡率を高めること、成人期における心血管リスク因子と寿命との関連性は明らかだが、小児期における心血管リスク因子が寿命に影響を及ぼすメカニズムはほとんどわかっていない。米国NIHのPaul W. Franks氏ら研究グループは、その関連性を明らかにすることは、小児期の心血管リスク因子が与える人的・経済的損失を予測可能とし、健康状態を改善し早世率(本論では55歳未満での死亡と定義)を低下させるための介入が可能になるとし、40年にわたる追跡調査を行った。その結果が、NEJM誌2010年2月11日号で発表されている。アメリカ先住民4,857例の早世例をリスク因子ごとに評価研究グループは、1945~1984年の間に生まれた非糖尿病のアメリカ先住民4,857例の小児コホート(平均年齢11.3歳)について、BMI、耐糖能、血圧、コレステロールの各値を調査し(計12,659回)、早世の予測因子となるかどうかを評価した。各リスク因子は性、年齢で標準化され、比例ハザードモデルを用いて、55歳未満で死亡するまでの期間との関連が判定された。モデルは、基線での年齢、性、出生コホート(アメリカ先住民の系統としてピマ族かトホノ・オオダム族か)によって補正された。肥満は2倍、耐糖能異常は1.73倍、高血圧は1.5倍、早世率を高める追跡期間中央値23.9年間で、内因性死亡は166例(コホートの3.4%)あった。内因性死亡率について、BMI値が最高四分位群の小児は、同最低四分位群の2倍以上だった(出現率比:2.30、95%信頼区間:1.46~3.62)。耐糖能異常では、最高四分位群の死亡率が、最低四分位群より73%高かった(同:1.73、1.09~2.74)。一方、内因性または外因性の死亡率と、小児期コレステロール値、収縮期・拡張期血圧値との間には有意な関連性はみられなかった。ただし、小児期高血圧は内因性による早世と有意な関連が認められた(同:1.57、CI 1.10~2.24)。研究グループは、「この集団において、小児期の肥満、耐糖能異常、高血圧は内因性による早世率の上昇と強く関連していた。対照的に、小児期高コレステロール血症は内因性による早世の主要な予測因子ではなかった」とまとめている。(医療ライター:武藤まき)

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利尿薬ベースの降圧療法、セカンドライン選択は?:住民ベースの症例対照研究

米国ワシントン大学心血管ヘルス研究ユニットのInbal Boger-Megiddo氏らは、利尿薬を第一選択薬とし降圧療法を受けている高血圧患者の、併用療法移行時の選択薬は、β遮断薬、Ca拮抗薬、RA系阻害薬いずれが至適かを明らかにするため、心筋梗塞および脳卒中の発生率を主要評価項目に、住民ベースの症例対照研究を行った。結果、Ca拮抗薬追加群の心筋梗塞発生リスクが、他の2群よりも高いことが明らかになったという。BMJ誌2010年2月6日号(オンライン版2010年1月25日号)より。症例群353例、対照群952例で検討研究グループは本研究を実施した背景について、「ALLHAT試験で、低用量利尿薬が第一選択薬としてCa拮抗薬やRA系阻害薬よりも優れていることが示唆され、そのエビデンスを踏まえたガイドラインが米英で作成されている。一方で、降圧療法を受ける高血圧患者の半数は併用療法を要する。だが利尿薬ベースの患者の心血管疾患予防を見据えたセカンドラインの選択薬はどれが至適か明らかになっておらず、米国NHLBI(National Heart, Lung, and Blood Institute)は、試験実施の勧告を出しているが、いまだ実施されていない」と述べている。試験は、ワシントン州シアトル市に拠点を置くヘルスケアシステム「Group Health Cooperative」の加入者データから、症例群353例、対照群952例の被験者を選定し行われた。症例群は、30~79歳の降圧療法を受けていた高血圧患者で、1989~2005年に致死性または非致死性の初回の心筋梗塞か脳卒中を発症したと診断記録があった人だった。対照群は、降圧療法を受けていた高血圧患者が無作為にGroup Health Cooperative加入者から選ばれた。なお、心不全、冠動脈疾患、糖尿病、慢性腎不全患者は除外された。+Ca拮抗薬は心筋梗塞リスクを増大する結果、心筋梗塞リスクについて、利尿薬+Ca拮抗薬群が、+RA系阻害薬群、+β遮断薬群よりも高いことが認められた。+β遮断薬群を基準とした、+Ca拮抗薬群の心筋梗塞リスクの補正後(年齢、性、服薬期間、喫煙、飲酒)オッズ比は、1.98(95%信頼区間:1.37~2.87)だった。脳卒中リスクについては、増大は認められず、オッズ比は1.02(同:0.63~1.64)だった。一方、+RA系阻害薬群の心筋梗塞および脳卒中リスクは、ともに有意ではなかったものの低く、心筋梗塞リスクの同オッズ比は0.76(同:0.52~1.11)、脳卒中は0.71(同:0.46~1.10)だった。研究グループは結果を踏まえ、「低リスクの高血圧患者を対象とした本試験で、セカンドラインにCa拮抗薬を選択することは、他の薬剤を選択するよりも心筋梗塞リスクが高いことが明らかになった。この結果はNIHCE(National Institute for Health and Clinical Excellence)ガイドラインを支持するもので、米国NHLBIが勧告する大規模試験を行うべきであろう」とまとめている。

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GLP-1受容体作動薬「ビクトーザ」、いよいよ治療の選択肢に

 2010年1月20日、国内初のGLP-1受容体作動薬「ビクトーザ(一般名:リラグルチド)」が承認された。ここでは、2月16日に大手町サンケイプラザ(東京都千代田区)にて開催された糖尿病プレスセミナー「国内初のGLP-1受容体作動薬 ビクトーザ承認取得-2型糖尿病治療のパラダイムシフト」(演者:東京大学大学院医学系研究科 糖尿病・代謝内科 教授 門脇 孝氏)<ノボ ノルディスクファーマ株式会社主催>について報告する。糖尿病患者は十分コントロールされていない わが国の糖尿病患者は、この50年で38倍も増加しており、その原因として考えられるのが、近年の食生活の変化や運動不足である。糖尿病治療では、血糖、体重、血圧、脂質を総合的にコントロールし、合併症の発症・進展を防ぎ、健康な人と変わらない日常生活の質を維持し、寿命を確保することを目標としている(日本糖尿病学会編. 糖尿病治療ガイド2008-2009)。しかし、実際には、腎症や虚血性心疾患、脳梗塞などにより、糖尿病患者の平均寿命は、男性で約10年、女性で約14年短いことが報告されている。 そして、血糖コントロールの評価として、HbA1c値 6.5%未満、空腹時血糖値139mg/dL未満、大血管障害の独立した危険因子である食後2時間血糖値180mg/dL未満が「良」とされているが、門脇氏は「現状では、十分コントロールされているとはいえない」と述べた。早期から、低血糖を起こさずに厳格な血糖コントロールを UKPDS80で早期治療による「Legacy Effect(遺産効果)」が示されたこと、UKPDS、ACCORD、VADTなど、5つの大規模試験のメタ解析でも、厳格な血糖コントロールにより、心血管イベントリスクの減少が示されたことを報告し、門脇氏は「大血管障害の発症・進展を阻止するためには、やはり早期から厳格な血糖コントロールを行うべき」と強調した。そして、強化療法群による死亡率増加のために中止されたACCORD試験に対して、その原因の一つが低血糖であると考察した上で、「できるだけ低血糖を起こさずに、厳格に血糖コントロールすることが重要」と述べた。 また、自身が中心となって現在進められている「J-DOIT3(2型糖尿病患者を対象とした血管合併症抑制のための強化療法と従来療法のランダム化比較試験)」を紹介し、できるだけ低血糖を起こさず、厳格な血糖コントロールを行うために、チアゾリジン薬をベースにしていると述べた。 さらに、中止されたACCORD試験では、強化療法群で著明な体重増加を認めていることから、体重増加をきたさずに血糖コントロールを行うことも重要であると述べた。国内初のGLP-1受容体作動薬「ビクトーザ」 2010年1月20日に承認された国内初のGLP-1受容体作動薬「ビクトーザ」は、1日1回投与のGLP-1誘導体。GLP-1は、消化管ホルモンであるインクレチンの1つであり、栄養素が消化吸収されると消化管から分泌され、膵β細胞のGLP-1受容体に結合して、インスリンを分泌させる。しかし、血中で酵素(DPP-4)により分解されてしまうため、分解されないようにしたものがGLP-1誘導体である。GLP-1は、グルコース濃度に依存して分泌されるため、GLP-1誘導体は、単独で低血糖を起こしにくい。 門脇氏は、その血糖降下作用について、HbA1cの目標達成率が高いことを報告、欧米人と異なり、インスリン分泌の少ない日本人の2型糖尿病の病態に適しており、少量で優れた効果が得られることを示した。 また、食欲抑制作用があると述べ、実際に、体重増加がない、あるいは肥満では体重が減少することを報告した。 糖尿病患者の膵β細胞の機能は、発症した時点で、すでに健康な人の半分以下になっている。たとえ治療を行っても、膵β細胞の機能低下を阻止することは困難で、罹病期間が長くなると、インスリン治療を行わなければならない患者が多くなる。GLP-1誘導体は、動物で膵β細胞の機能を改善させることが報告されていることから、門脇氏は、「GLP-1誘導体は、膵β細胞機能の改善により、糖尿病の進行を阻止する可能性がある」と述べた。発症早期からの処方を 門脇氏は、いくつかの臨床試験の結果を紹介した上で、ビクトーザの有用性として、■血糖降下作用に優れる■低血糖が少ない■体重増加がない(時に体重減少)■膵β細胞保護により、糖尿病の進行を阻止する可能性があるなどを挙げ、糖尿病発症早期から適応できるとの見解を示した。そして、具体的には、臨床試験の結果から、HbA1c 7.5%以下であれば単独で、8.0%以下であれば、現在保険適応とされているSU薬との併用で十分な効果が得られるだろうと述べた。 主な副作用として、消化器症状(悪心、腹痛、下痢、嘔吐)があるが、少量から開始し、漸増していくことで、軽減できる。長期的な安全性としては、動物実験で甲状腺腫瘍が見られているが、臨床データでは報告されていないと述べた。また、膵炎については、糖尿病では、非糖尿病に比べて多く認められるが、ビクトーザでの有意な増加の報告はないと述べた。 さらに、これまでの糖尿病治療薬は、使用されるようになってから、作用機序が明らかになっていたが、GLP-1誘導体は、「GLP-1受容体への作用」という作用機序が明確であることから、この点も安全性の観点から重要であると述べた。しかし、長期的な安全性については、今後も検討していく必要があるとした。

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2型糖尿病の発症予測、遺伝学的リスクモデルは有用でない:Whitehall II試験

2型糖尿病の発症予測では、表現型に基づく非遺伝学的なリスクモデルの方が、2型糖尿病関連一塩基多型(SNP)に基づく遺伝子型モデルよりも有用なことが、イギリスUniversity College London心血管遺伝学センターのPhilippa J Talmud氏らが行ったコホート研究(Whitehall II試験)で示された。イギリスでは最近、発症予測に関する2つの非遺伝学的モデル(ケンブリッジ2型糖尿病リスクスコア、フラミンガム子孫試験2型糖尿病リスクスコア)が確立され、ルーチンに用いられている。その一方で、2型糖尿病の発症に関連する20のSNPが同定されているが、発症予測にどの程度役立つかは明らかにされていなかった。BMJ誌2010年1月23日号(オンライン版2010年1月14日号)掲載の報告。1980年代に開始された前向きコホート研究の7回目のスクリーニングの解析Whitehall II試験の研究グループは、将来の2型糖尿病の発症予測において、2型糖尿病関連SNPの有用性を評価し、すでに確立されている表現型に基づく非遺伝学的モデルにこれらの遺伝情報を付加することで予測能を向上させられるか否かを評価するために、プロスペクティブなコホート研究を実施した。Whitehall II試験には、1985~1988年までに35~55歳のロンドン市の公務員10,308人が登録された。7回目の調査(2003~2004年)において、6,156人からDNAが採取された。登録時に健康であった5,535人(平均年齢49歳、女性33%)のうち、第7回調査の時点で302人が10年以上持続する新規の2型糖尿病に罹患していた。表現型に基づく非遺伝学的リスクモデルのうち、ケンブリッジ2型糖尿病リスクスコアは年齢、性別、薬物療法、2型糖尿病の家族歴、BMI、喫煙歴に基づいて算出され、フラミンガム子孫試験2型糖尿病リスクスコアは年齢、性別、親の2型糖尿病既往歴、BMI、HDLコレステロール、トリグリセライド、空腹時血糖から計算された。遺伝学的リスクモデルには、2型糖尿病との関連が確認されている20のSNPが使用され、リスク対立遺伝子(allele)の保有数(0~40個)と遺伝学的リスク機能(個々のリスク対立遺伝子を遺伝子研究のメタ解析で得られたオッズ比に従って重み付け)に基づいてスコアが算出された。2型糖尿病の発症は、標準的な経口ブドウ糖負荷試験(OGTT)、主治医による診断、あるいは糖尿病治療薬の使用によって確定された。表現型リスクモデルと遺伝学的リスクモデルを合わせても識別能は改善されず遺伝学的リスクスコアは将来の糖尿病患者を識別できなかった。ケンブリッジ2型糖尿病リスクスコアとフラミンガム子孫試験2型糖尿病リスクスコアは、遺伝学的リスクスコアよりも識別能が優れていた。表現型によるリスクモデルに遺伝学的情報を加味しても識別能は改善されず、モデルの精度を調整(キャリブレーション)してもわずかな改善効果しか得られなかった。ケンブリッジリスクスコアに遺伝学的情報を加えた場合は約5%の改善効果が得られたが、フラミンガム子孫リスクスコアに付加しても識別能は改善されなかった。著者は、「表現型に基づくリスクモデルの方が遺伝学的リスクモデルよりも将来の2型糖尿病患者の識別能が優れており、両者を合わせた場合、最良でもわずかな改善効果しか得られなかった」と結論し、「2型糖尿病関連遺伝子に関するトランスレーショナル研究の成果を臨床に適用する場合は、病因や治療標的の面からアプローチする方がよいかもしれない」と考察している。(医学ライター:菅野守)

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0.5Gy以上の被曝で心疾患、脳卒中のリスクが増大、広島・長崎の被爆者調査から判明

放射線被曝線量が0.5Gyを超えると、心疾患や脳卒中のリスクが増大することが、放射線影響研究所(広島市)疫学部のYukiko Shimizu氏らが広島・長崎の被爆者を対象に行ったコホート研究で明らかとなった。ホジキン病や乳がんに対する放射線治療の際に心臓や頭頸部に高線量が照射されると、心疾患や脳卒中による死亡が増加することが知られているが、中~低線量でもこれらの疾患のリスクが増大するか否かは不明であったという。頭部や胸部のCT検査および放射線照射によるインターベンション治療が急速に増加している現在、1Gy未満の線量が循環器疾患に及ぼす影響を明らかにすることは重要な課題とされている。BMJ誌2010年1月23日号(オンライン版2010年1月14日号)掲載の報告。被爆者の53年の長期フォローアップデータを用いた前向きコホート研究研究グループは、電離放射線への曝露量がどの程度になると心疾患や脳卒中による死亡リスクが増大するかを検討するために、広島および長崎の原爆被害者の53年(1950~2003年)にわたるフォローアップデータを用いたプロスペクティブなコホート研究を行った。寿命調査(Life Span Study;LSS)の登録者のうち、原爆投下により0~3Gy以上の放射線に被曝したと推測される86,611人(86%が0.2Gy未満)が解析の対象となった。心疾患および脳卒中による死亡率を調査し、原爆放射線による被曝線量反応関係を評価した。0.5Gy以上で脳卒中、心疾患のリスクが上昇、0.5Gy未満では不明1950~2003年までに、約9,600人が脳卒中で死亡し、約8,400人が心疾患で死亡した。脳卒中については、線形線量反応モデルによる1Gy当たりの過剰相対リスク推定値(estimated excess relative risk)は9%(95%信頼区間:1~17%、p=0.02)と有意差が認められたが、上向き曲率(upward curvature)を指標としても低線量での相対リスクはほとんど示されなかった。心疾患に関する1Gy当たりの過剰相対リスク推定値は14%(95%信頼区間:6~23%、p<0.001)と有意差を認めた。線形モデルでは最適フィット(best fit)が得られ、低線量における過剰リスクが示唆された。しかし、0~0.5Gy以上の線量での線量反応効果は有意ではなかった。喫煙、アルコール摂取、教育、職業、肥満、糖尿病は、放射線被曝による脳卒中および心疾患のリスクにほとんど影響を及ぼさなかった。がんを誤診して循環器疾患とされた場合にも、リスクには影響しなかった。これらの知見を踏まえ、著者は「被曝線量が0.5Gy以上になると脳卒中および心疾患のリスクがともに上昇したが、0.5Gy未満の場合のリスクは不明であった」と結論し、「被爆者においては、脳卒中と心疾患を合わせた放射線関連死は、がんによる死亡の約3分の1と考えられる」と指摘している。(医学ライター:菅野守)

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重篤な低血糖により糖尿病患者の死亡リスクが増大、ACCORD試験の疫学的解析

ACCORD試験のレトロスペクティブな疫学的解析の結果、2型糖尿病患者では重篤な症候性低血糖により、血糖低下療法の強度にかかわらず死亡リスクが増大するが、1回以上の低血糖エピソードのある患者では強化血糖低下療法の方が標準的血糖低下療法よりも死亡リスクは低いことが示された。ACCORD試験は、心血管リスクが高度な2型糖尿病患者では血糖値を積極的に正常化させることでリスクを低減できるとの仮説を検証するために実施されたが、平均フォローアップ期間3.5年の時点で強化血糖低下療法の方が有意に死亡率が高いことがわかり、2008年2月に中止された。アメリカ国立衛生研究所(NIH)心肺血液研究所(NHLBI)のDenise E Bonds氏らが、BMJ誌2010年1月16日号(オンライン版2010年1月8日号)で報告した。ACCORD試験登録患者データを用いた後ろ向きの疫学解析研究グループは、ACCORD試験の登録患者データを用いて低血糖と死亡率の関連を検討するレトロスペクティブな疫学的解析を行った。ACCORD試験の対象は、スクリーニング時のHbA1C値≧7.5%の2型糖尿病患者で、心血管疾患を有する40~79歳の患者、あるいは潜在疾患が証明されるか2つ以上の心血管リスク因子を有する55~79歳の患者であった。強化血糖低下療法群はHbA1C値<6.0%を、標準的血糖低下療法群はHbA1C値7.0~7.9%を目標に治療が行われた。重篤な低血糖により両群とも死亡リスクが増大、低血糖だけでは死亡率の差は説明できない解析の対象となったのは、ACCORD試験の登録患者10,251例のうち、通常のフォローアップ期間中に少なくとも1回の低血糖の評価が行われた10,194例であった。強化療法群の非補正年間死亡率は、低血糖[血糖値<2.8mmol/L(50mg/dL)]のエピソードがない患者が1.2%(201/16,315人・年)であったのに対し、少なくとも1回以上の低血糖エピソードがみられ治療および補助を要する患者では2.8%(53/1,924人・年)と有意に高値を示した(補正ハザード比:1.41、95%信頼区間:1.03~1.93)。標準療法群でも同様のパターンがみられた[年間死亡率:1.0%(176/17,297人・年) vs. 3.7%(21/564人・年)、補正ハザード比:2.30、95%信頼区間:1.46~3.65]。低血糖エピソードがあり治療および補助を要する患者の解析では、強化療法群と標準療法群で死亡リスクに有意な差は認めなかった(補正ハザード比:0.74、95%信頼区間:0.46~1.23)。低血糖エピソードがあり治療のみを要する患者では、強化療法群の方が標準療法群よりも死亡リスクが有意に低かった(補正ハザード比:0.55、95%信頼区間:0.31~0.99)。ACCORD試験では、強化療法が中止となるまでに451例が死亡し、そのうち1例は明らかに低血糖が原因と判定された。著者は、「重篤な症候性低血糖は、強化療法群、標準療法群の双方において死亡リスクを増大させた。しかし、低血糖エピソードのある患者では標準療法群よりも強化療法群で死亡リスクが低かった」と結論したうえで、「重篤な症候性低血糖の発現だけでは、ACCORD試験の強化療法群における死亡率の増加は説明できない」と指摘している。(医学ライター:菅野守)

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多彩な冠疾患のリスクマーカー、その強みと弱み

冠疾患との関連が指摘されるリスクマーカーは心理社会的、行動的、生物学的など多様である一方、それぞれが現にガイドラインに含まれている。そうした中で、これまでのシステマティックレビューは、1つのリスクマーカー、1つの研究デザインに焦点を合わせた「縦」の比較検討がされてきたが、異なるタイプのリスクマーカー、異なる固有の限界や不足を有する異なる研究デザインを組み込んでの「水平」比較が必要ではないかとの指摘が高まった。ロンドン大学衛生熱帯医学校のHannah Kuper氏らは、この「水平」比較に取り組み、BMJ誌2009年11月28日号(オンライン版2009年11月5日号)で結果を発表した。うつ、運動、CRP、2型糖尿病の4つのリスクマーカーを水平比較冠疾患の多様なリスクマーカーのエビデンスを系統的に比較するための新しい方法論を開発し、さらに求められたエビデンスとガイドラインにおける勧告とを比較するため、Kuper氏らは、Medlineとガイドラインを基に水平システマティックレビューを行った。2人のレビュアーにより、4つのリスクマーカー(うつ、運動、C反応性蛋白:CRP、2型糖尿病)のエビデンスを求めた3つの異なる試験デザイン(観察研究、遺伝子研究、無作為化試験)の適格性を判定。4つのリスクマーカーについて、観察研究の大規模メタ解析、遺伝学的研究、メタ解析と個々の無作為化試験の分析が行われた。現行ガイドラインは、うつとの関連に重きを置きすぎている観察研究のメタ解析による冠疾患の補正相対リスクは、うつが1.9(95%信頼区間:1.5~2.4)、運動の最高と最低との4分位の比較で0.7(0.5~1.0)、CRPの最高と最低との3分位の比較で1.6(1.5~1.7)、そして糖尿病では女性は3.0(2.4~3.7)、男性は2.0(1.8~2.3)だった。事前特定された試験の限界は、うつと運動で最も多く見られたという。遺伝的変化を用いて交絡因子を排除するメンデル無作為化試験のメタ解析では、CRPを特定することはできた(ただしそれがもたらす影響の裏づけはできなかった)が、運動、糖尿病、うつの影響については確認できなかった。無作為化試験の検討からは、冠疾患の発病率とうつ、運動、CRPとの関連を示すエビデンスは求められず、糖尿病患者の試験において、血糖コントロールが冠疾患リスクに対する予防効果があることがわずかに認められた。冠疾患患者にうつ病治療を行っていた4つの無作為化試験は、いずれも冠動脈イベントリスクの低下は示されていなかった。これらを踏まえ、2007年に公表された2つのガイドラインと今回の水平エビデンス・レビューとを比較した結果、ガイドラインではうつに重きを置きすぎているという点で明らかな食い違いが見られたという。研究グループは、今回の水平システマティックレビューによって、うつ、運動、CRP、糖尿病を冠疾患の原因とするエビデンスの弱みと強みを特定することができたと述べ、この新しい手法が、今後のガイドラインおよび研究開発に寄与するであろうと報告をまとめている。

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低用量アスピリン、糖尿病患者の心血管イベント1次予防効果はメタ解析でもやはり不明

糖尿病患者の主要な心血管イベントの1次予防に、ほとんどのガイドラインで、低用量アスピリンの投与が推奨されている。しかし一方では、その効果については論争の的ともなっている。イタリアのConsorzio Mario Negri SudのGiorgia De Berardis氏らのグループは、最新の無作為化試験を含むメタ解析を行った結果、明白な利点は証明されなかったことを報告した。BMJ誌2009年11月28日号(オンライン版2009年11月6日号)掲載より。アスピリンとプラセボを比較した無作為化試験をメタ解析Berardis氏らは、心血管疾患のない糖尿病患者に対する低用量アスピリンの有効性と有害性を評価することを目的として、無作為化試験のメタ解析を行った。Medline(1966年~2008年11月)、コクランライブラリー2008にて文献検索を行い、データを収集・解析した。試験適格としたのは、糖尿病患者で心血管疾患の既往のない患者についてアスピリンとプラセボとの比較を無作為化試験で行っていたもので、文献検索された157試験のうち適格となったのは6試験だった(患者10,117例)。主要な心血管イベント(心血管系による死亡、非致死性の心筋梗塞、非致死性の脳卒中、全死因死亡)に関するデータを抽出し、ランダム影響モデルを用いて分析。結果は相対リスクで表し、95%信頼区間とともに報告された。明らかなベネフィットは見いだせず結果、アスピリン投与がプラセボと比べて、主要心血管イベントリスク(5研究:9,584例)の相対リスクは0.90(95%信頼区間:0.81~1.00)、心血管系による死亡(4研究:8,557例)は0.94(0.72~1.23)、全死因死亡(4研究:8,557例)は1.05(0.93~0.82)で、統計学的に有意に心血管イベントを減少することは見いだされなかった。心筋梗塞(I2=62.2%; P=0.02)と脳卒中(I2=52.5%; P=0.08)に関する解析では有意な不均一性が見つかった。アスピリンは男性で有意に心筋梗塞のリスクを低下させたが(0.57、0.34~0.94)、女性では認められなかった(1.08、0.71~1.65)。脳卒中では投与量(100mg/日以下と超)、投与期間(5年以下と超)の違いによる影響が見られた。有害関連エビデンスは一貫していなかった。Berardis氏は、糖尿病患者のアスピリンの主要な心血管イベントの1次予防に対するメリットは明らかにできなかったと述べ、男女差による効果の影響の可能性を指摘し、さらに毒性についてはさらなる調査が必要と述べている。

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アンジオテンシンII受容体拮抗薬ミカルディス欧州委員会より追加適応の承認を取得

ドイツ・ベーリンガーインゲルハイム社は27日(現地時間)、欧州委員会より、アンジオテンシンII受容体拮抗薬ミカルディス(一般名:テルミサルタン)が、「I.アテローム性動脈硬化性疾患(冠動脈心疾患、脳卒中、閉塞性動脈硬化症)または II.臓器障害を合併する2型糖尿病 を有する患者での心血管疾患発現リスクの減少」の追加適応を承認されたと発表した。今回の承認は、臨床試験ONTARGETを中心とした臨床データに基づいたもの。この試験では、心血管イベント高リスク患者25,620例を対象に、ミカルディスについて、心血管イベントの抑制効果を有するARBの中で唯一の治療選択肢として検証が行われた。また従来ゴールデンスタンダード(標準治療薬)であったラミプリルと比べて忍容性が高く、優れたアドヒアランスも示されたとのこと。詳細はプレスリリースへhttp://www.boehringer-ingelheim.co.jp/com/Home/Newscentre/pressrelease/news_detail.jsp?paramOid=9872

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高血圧症治療薬「COZAAR」の高用量投与により総死亡および心不全による入院リスクが減少する

米国メルク社は、11月にオーランドで開催された第82回米国心臓協会(AHA: American Heart Association)学術集会において、高血圧症治療薬「COZAAR(一般名:ロサルタンカリウム錠)」の高用量投与による試験「HEAAL(Heart failure Endpoint evaluation of the A-II-Antagonist Losartan)」の結果を発表した。日本法人である万有製薬株式会社が2日に公表した。HEAAL試験の結果は11月17日(現地時間)、第82回米国心臓協会学術集会のレイトブレイキングセッションで発表された。HEAAL試験は、アンジオテンシン変換酵素(ACE)阻害薬に忍容性のない心不全患者を対象に、COZAAR(日本販売名:ニューロタン錠/一般名:ロサルタンカリウム)の2種類の用量(50mg、150mg)における安全性および有効性について、30ヵ国255施設で実施されたもの。この試験の結果、150mgの1日1回投与は、同錠50mgを1日1回投与した場合に比べ、総死亡または心不全による入院リスクを有意に減少させたという。COZAARは、米国では慢性心不全患者の治療に適応を有していない。HEAAL試験で用いられた150mgの服用はいかなる適応に対しても承認されていないが、アンジオテンシンII受容体拮抗薬(AIIA)、心血管系治療薬として、「高血圧症の単剤治療または利尿薬を含む他の降圧剤との併用治療」「左室肥大を伴う高血圧患者の脳卒中リスク低減。但しこの効果は黒人患者に対しては適用されない」「2型糖尿病および高血圧患者における血清クレアチニンの上昇及び蛋白尿(尿中アルブミン/クレアチニン比300mg/g以上)を伴う糖尿病性腎症の治療。この治療において、COZAARは、血清クレアチニン値倍増または末期腎不全(透析あるいは腎移植の必要性)をエンドポイントとして、腎機能低下率を低減させる」3つの適応が承認されている。詳細はプレスリリースへhttp://www.banyu.co.jp/content/corporate/newsroom/2009/merck_1202.html

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2型糖尿病・CKD患者への貧血治療薬darbepoetin alfa投与はリスクが上回る

貧血症が、2型糖尿病と慢性腎臓病(CKD)患者の心血管および腎臓イベントの、リスク増加と関連することは知られているが、貧血治療薬darbepoetin alfaの、これら患者の臨床転帰に対する効果は十分検討されていない。米国ブリガム&ウィメンズ病院循環器部門のMarc A. Pfeffer氏らは、被験者約4,000名を対象とした無作為化二重盲検プラセボ対照試験「TREAT」にて、その効果について検討した。NEJM誌2009年11月19日号(オンライン版2009年10月30日号)より。死亡または心血管イベントと、死亡またはESRDの各複合転帰を評価TREAT(Trial to Reduce Cardiovascular Events with Aranesp Therapy)試験には、24ヵ国623施設から、糖尿病、CKD、貧血症を有する患者4,038例が参加した。被験者は、ヘモグロビン濃度約13g/dLを目標として、darbepoetin alfa投与群(2,012例)とプラセボ投与群(2,026例)に無作為に割り付けられた。なお、ヘモグロビン濃度9.0g/dL未満となった場合は緊急的にdarbepoetin alfaを投与することとされた。主要エンドポイントは、死亡または心血管イベント(非致死的心筋梗塞、うっ血性心不全、脳卒中、心筋虚血による入院)、死亡または末期腎不全(ESRD)の各複合転帰とした。複合転帰改善せず、脳卒中リスクを増加死亡または心血管イベントの複合転帰は、darbepoetin alfa群では632例で発生し、プラセボ群は602例だった(ハザード比:1.05、95%信頼区間:0.94~1.17、P = 0.41)。死亡またはESRDの複合転帰は、darbepoetin alfa群では652例発生し、プラセボ群は618例だった(1.06、0.95~1.19、P = 0.29)。また致死的あるいは非致死的脳卒中が、darbepoetin alfa群で101例発生した。プラセボ群では53例で、ハザード比は1.92(95%信頼区間:1.38~2.68、P

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糖尿病は、食事/運動療法により長期にわたり予防しうる:DPPアウトカム試験

食事/運動療法による生活習慣の改善やメトホルミン(商品名:メルビン、グリコランなど)投与による糖尿病の予防効果は、10年が経過しても維持されることが、「糖尿病予防プログラム(DPP)(http://www.bsc.gwu.edu/dpp/index.htmlvdoc)」の長期フォローアップ(DPPアウトカム試験;DPPOS)の結果から明らかとなった。DPP無作為化試験の2.8年のデータでは、糖尿病発症リスクの高い成人において、強化ライフスタイル介入(7%の減量と週150分以上の中等度~高度の身体活動の達成とその維持)により糖尿病発症リスクがプラセボに比べ58%低下し、メトホルミンの投与では31%低下することが報告されている。Lancet誌2009年11月14日号(オンライン版2009年10月29日号)掲載の報告。追加フォローアップ期間5.7年における長期データの解析DPPOSの研究グループは、DPP無作為化試験(1996~1999年)の終了後もフォローアップを続け、今回、10年の調査結果を報告した。なお、DPP無作為化試験は二重盲検試験だが、強化ライフスタイル介入とメトホルミンの有効性が確認された2001年以降はオープンラベルとなっている。DPPへの積極的な参加者はいずれもフォローアップ継続の適格例とした。3,150人中2,766人(88%)が中央値5.7年の追加フォローアップを受けた。そのうち、ライフスタイル介入群が910人、メトホルミン群が924人、プラセボ群は932人であった。DPPの強化ライフスタイル介入の成果に基づいて、3群の全参加者にグループで行うライフスタイル介入が提供された。メトホルミン群はそれまでの治療法(850mg×2回/日が耐用可能)を継続し、参加者には割り付け情報が知らされた。強化ライフスタイル介入群には、新たなライフスタイル支援が追加された。主要評価項目は、アメリカ糖尿病学会(ADA)の判定基準による糖尿病の発症とした。10年糖尿病発症リスク低下率:強化ライフスタイル介入群34%、メトホルミン群18%DPPへの無作為割り付け後10年のフォローアップ期間中に、開始時のライフスタイル介入群は解消され、体重が元に戻った参加者もいた。メトホルミン群では軽度の体重減少が維持されていた。DPP試験期間中の糖尿病発症率は、強化ライフスタイル介入群が100人・年当たり4.8例であり、メトホルミン群が7.8例/100人・年、プラセボ群は11.0例/100人・年であった。これに対し、今回の追加フォローアップ期間における糖尿病発症率は、それぞれ5.9例、4.9例、5.6例/100人・年であった。DPPへの無作為割り付け後10年間における、プラセボ群との比較による糖尿病発症リスクの低下率は、強化ライフスタイル介入群が34%、メトホルミン群は18%であった。研究グループは、「DPP試験後のフォローアップ期間中に、プラセボ群とメトホルミン群の糖尿病発症率は強化ライフスタイル介入群と同程度にまで低下したが、10年間の累積発症率は依然として強化ライフスタイル介入群が最も優れていた。強化ライフスタイル介入およびメトホルミンによる糖尿病発症の予防あるいは遅延効果は、少なくとも10年間は持続することが示された」と結論している。また、「今後は、さらなるフォローアップにより長期の死亡率などの重要データを提供する予定」としたうえで、「DPPOSの次の試験では、細小血管-神経障害に関連した複合アウトカム(糖尿病性網膜症、神経障害、足の表在触覚障害)を主要評価項目とし、副次評価項目には心血管疾患、血糖やインスリンの測定、健康関連QOL、医療経済評価などが含まれる」としている。(菅野守:医学ライター)

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2009新型インフル、治療の実態:アメリカの4~6月の入院患者

本論は、アメリカの「2009パンデミックインフルエンザA(H1N1)ウイルス入院医療調査チーム」からの報告で、米国で2009年4月1日~6月5日にかけて新型インフルに感染し入院治療を受けた患者(生後21日~86歳)の臨床上の特性について解説したものである。NEJM誌2009年11月12日号(オンライン版2009年10月8日号)に掲載された。入院患者272例のうち、ICU入院25%、死亡7%。ICU入院患者年齢中央値は29歳調査チームは患者カルテから、インフルエンザ様疾患で24時間以上入院し、リアルタイム逆転写酵素ポリメラーゼ連鎖反応法によって2009H1N1ウイルス陽性だった、272例の患者に関するデータを集め分析した。調査対象となった272例のうち集中治療室(ICU)に入院したのは67例(25%)、死亡は19例(7%)だった。ICU入院患者の年齢中央値は29歳(範囲:1~86)。またICUに入院した67例のうち42例(63%)が人工呼吸器を装着していた。24例が急性呼吸不全症候群(ARDS)、21例が敗血症と診断されている。ICUで治療を受けた65例のうち抗ウイルス薬治療を受けたのは56例(86%)で、発症から抗ウイルス薬治療開始までの時間の中央値は6日(範囲:0~24)、発症後48時間以内治療開始は23%だった。入院患者には抗ウイルス薬治療の早期開始が有益入院患者272例のうち、18歳未満の子どもは122例(45%)で、65歳以上の高齢者は14例(5%)だった。また、患者198例・73%(子ども60%、成人83%)は1つ以上の基礎疾患(喘息、糖尿病、心疾患、肺疾患、神経疾患、妊娠)を有していた。妊婦は18例(7%)だった。なお2つ以上の基礎疾患を有していたのは32%だった。入院時に胸部X線撮影を受けた249例のうち100例(40%)に、肺炎と同様の所見が見られた。抗ウイルス薬治療に関するデータが入手できた268例のうち、治療を受けたのは200例(75%)で、発症から治療開始までの時間の中央値は3日(範囲:0~29)、発症後48時間以内治療開始は39%だった。研究チームは、「評価期間中に、新型インフルは肺炎や死亡など入院を要する重度疾患を引き起こすこと、患者の約4分の3に1つ以上の基礎疾患があること、65歳以上では重症の報告が少ないことが確認された」と述べるとともに、「入院患者には早期からの抗ウイルス療法が有益なようだ」とまとめている。(医療ライター:朝田哲明)

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新規GLP-1アナログ製剤liraglutide、肥満者の体重が減少、糖尿病前症の抑制効果も

新たなグルカゴン様ペプチド1(GLP-1)アナログ製剤であるliraglutideは、肥満者の体重を減少させて肥満関連リスク因子を改善し、糖尿病前症を低減することが、デンマークCopenhagen大学生命科学部のArne Astrup氏らNN8022-1807 Study Groupが実施した無作為化試験で明らかとなった。ヨーロッパでは過去20年間で肥満者が3倍に増え、成人の約半数が過体重だという。liraglutideはヒトGLP-1と97%の構造的相同性を持つアナログ製剤で、半減期が約13時間と長いため1日1回皮下注で治療が可能。用量依存性に体重を減少させ、HbA1cの低減作用を持ち、膵β細胞機能および収縮期血圧を改善することが確認されており、2型糖尿病と肥満の治療薬として期待されている。Lancet誌2009年11月7日(オンライン版2009年10月23日号)掲載の報告。4種類の用量群、プラセボ群、orlistat群の6群を比較する二重盲検試験NN8022-1807 Study Groupは、liraglutideが2型糖尿病を有さない肥満者の体重に及ぼす影響および耐用性について検討する二重盲検プラセボ対照無作為化試験を実施した。2007年1~9月までに、ヨーロッパの8ヵ国19施設から18~65歳の肥満者(BMI 30~40kg/m2)564人が登録された。これらの肥満者が、liraglutideの4種類の用量を1日1回皮下注する群[1.2mg群(95人)、1.8mg群(90人)、2.4mg群(93人)、3.0mg群(93人)]、プラセボ群(98人、1日1回皮下注)あるいは承認済みの抗肥満薬である消化管リパーゼ阻害薬orlistat 120mgを投与する群(95人、1日3回経口投与)のいずれかに無作為に割り付けられた。被験者は、2週間のrun-in期間と20週の試験期間中は1日500kcalの低エネルギー食を摂り、身体活動の増強の指導を受けた。主要エンドポイントはintention-to-treat解析による体重の変化とした。試験完遂者は引き続き84週のオープンラベル試験に登録された。用量依存性に体重が減少、高用量ではorlistatと有意差が、降圧作用や糖尿病前症抑制効果もプラセボ群に比べ、liraglutide 1.2mg群(p=0.003)およびliraglutide 1.8~3.0mg群(p<0.0001)は有意に体重が減少し、orlistat群との比較でもliraglutide 2.4mg群(p=0.003)およびliraglutide 3.0mg群(p<0.0001)の体重減少は有意差が認められた。減少した体重の平均値は、liraglutide 1.2mg群が4.8kg、1.8mg群が5.5kg、2.4mg群が6.3kg、3.0mg群が7.2kgであったのに対し、プラセボ群は2.8kg、orlistat群は4.1kgであった。liraglutide群はプラセボ群よりも体重が2.1~4.4kg減少した。体重が5%以上減少した被験者の割合は、liraglutide3.0mg群が76%(70人)であったのに対し、プラセボ群は30%(29人)、orlistat群は44%(42人)であった。liraglutide群はすべての用量で血圧が低下し、1.8~3.0mg群では糖尿病前症が84~96%低減した。liraglutide群はプラセボ群に比べ悪心・嘔吐の頻度が高かったが、有害事象の多くは一過性で治療中止に至るものはまれであった。著者は、「肥満者に対する20週にわたるliraglutide治療は、耐用性が良好で体重を減少させ、一定の肥満関連リスク因子の改善効果や糖尿病前症の抑制効果を認めた」と結論し、「liraglutideは既存薬とは異なる作用機序を有し、減量効果も高く、肥満の糖尿病前症で有効な可能性が示唆される。一方、体重減少そのものよりも心血管イベントとの臨床的関連が強いと考えられるリスク因子の改善効果が示されたものの、長期的なリスク-ベネフィットのプロフィールや体重維持能が確立されたわけではない」と考察している。(菅野守:医学ライター)

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