高所得国の死産予防で優先すべきリスク因子が明らかに

提供元:ケアネット

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公開日:2011/04/28

 



高所得国の死産予防では、効果的な介入を優先すべき修正可能なリスク因子として妊婦の過体重/肥満、高齢出産、妊娠時の喫煙などが重要なことが、オーストラリアMater Medical Research InstituteのVicki Flenady氏らの調査で明らかにされた。高所得国では、1940年代以降、死産数が著明に減少したが、最近20年間はほとんど改善されていないことが示されている。死産のリスク因子の研究は増加しているものの、予防において優先すべき因子の同定には困難な問題も残るという。Lancet誌2011年4月16日号(オンライン版2011年4月14日号)掲載の報告。

5つの高所得国のデータを解析




研究グループは、高所得国の死産の予防において、有効な介入を優先的に進めるべき項目を同定するために系統的なレビューを行い、メタ解析を実施した。

データベースを検索して、死産のリスク因子を検討した地域住民ベースの試験を選出した。ライフスタイルへの介入や医学的介入による改善の可能性を基準に、報告頻度の高い因子を同定した。

高所得国の中でも死産数が多く、解析に要するデータをすべて備えた5ヵ国のデータを用いて、修正可能なリスク因子に起因する死産の数を算定し、人口寄与リスク(PAR)を算出した。

効果的な介入法を認識してその実践を促進することが重要




6,963試験中、13の高所得国から報告された96の地域住民ベースの試験(アメリカ29件、スウェーデン16件、カナダ9件、オーストラリア12件、イギリス9件、デンマーク6件、ベルギー5件、ノルウェー3件、イタリア2件、ドイツ2件、スコットランド1件、ニュージーランド1件、スペイン1件)が選出された。そのうち76試験がコホート試験(前向き試験6件、後ろ向き試験70件)、20試験が症例対照試験であった。

文献のレビューにより、死産の修正可能なリスク因子として、妊婦の体重、喫煙、年齢、初産、胎内発育遅延、胎盤早期剥離、糖尿病、高血圧が示された。

死産の修正可能リスク因子の最上位は妊婦の過体重/肥満(BMI>25kg/m2)であり、5ヵ国(オーストラリア、カナダ、アメリカ、イギリス、オランダ)のPARは7.7~17.6%、高所得国全体の妊娠期間≧22週の予防可能な年間死産数は8,064件であった。次いで、出産年齢≧35歳の高齢出産(5ヵ国のPAR:7.5~11.1%、全体の年間死産数:4,226件)、妊娠時の喫煙(同:3.9~7.1、2,852件)の順であった。

5ヵ国の高所得国の中でも、先住民など恵まれない状況に置かれた集団では、死産した妊婦における喫煙のPARは約20%と高い値であった。また、5ヵ国の死産のPARの約15%を初産婦が占めた。胎内発育遅延のPARは23%、胎盤早期剥離のPARも15%と高値を示し、死産において胎盤の病理が重要な役割を担っていることが浮き彫りとなった。糖尿病と高血圧も死産の重要な原因であった。

著者は、「高所得国における死産の予防では、過体重、肥満、出産年齢、喫煙などの修正可能なリスク因子に対する効果的な介入法を認識し、その実践を促進することが優先事項である」と結論している。

(菅野守:医学ライター)