強化血糖降下療法は2型糖尿病の全死因死亡、心血管死を改善しない

提供元:ケアネット

印刷ボタン

公開日:2011/08/12

 



2型糖尿病患者に対する強化血糖降下療法は、全死因死亡および心血管死を改善せず、そのベネフィットは限定的であることが、フランス・クロード・ベルナール・リヨン第1大学のRemy Boussageon氏らの検討で明らかとなった。強化血糖降下療法は、2型糖尿病の治療や長期的な心血管合併症、腎機能障害、視覚機能障害の予防を目的に広く行われているが、臨床的な有用性は必ずしも明確ではないという。BMJ誌7月30日号(オンライン版2011年7月26日号)掲載の報告。

死亡リスクに及ぼす効果のメタ解析




研究グループは、2型糖尿病に対する強化血糖降下療法に関連する全死因死亡および心血管死のリスクを評価するために、無作為化対照比較試験のメタ解析を行った。

データベースを用い、18歳以上の2型糖尿病患者に対する強化血糖降下療法が、心血管イベントおよび細小血管合併症に及ぼす効果を評価した無作為化対照比較試験を抽出した。主要評価項目は全死因死亡および心血管死とし、副次的評価項目は重篤な低血糖および大血管/細小血管イベントとした。

強化血糖降下療法と標準治療のリスク比およびその99%信頼区間(CI)を算出した。2つの治療法がアウトカムに及ぼす効果は固定効果モデルを用いて評価し、臨床試験の質はJadadスコアで評価した。

死亡リスクは改善されず、重篤な低血糖が2倍以上に




13試験に登録された3万4,533例が解析の対象となった。そのうち強化血糖降下療法群が1万8,315例、標準治療群は1万6,218例であった。

全死因死亡のリスク比は1.04(99%CI:0.91~1.19)、心血管死のリスク比は1.11(同:0.86~1.43)であり、強化血糖降下療法群は標準治療群に比べ有意な効果は示さず、むしろ死亡リスクが高い傾向がみられた。

非致死的心筋梗塞のリスク比は0.85(99%CI:0.74~0.96、p<0.001)、微量アルブミン尿のリスク比は0.90(同:0.85~0.96、p<0.001)と、いずれも強化血糖降下療法群で有意な改善効果が認められたが、重篤な低血糖のリスク比は2.33(同:21.62~3.36、p<0.001)であり、強化血糖降下療法群で有意に2倍以上リスクが高かった。質の高い試験(Jadadスコア>3)に限定した解析では、強化血糖降下療法によるリスク低減効果はまったく認めず、うっ血性心不全のリスクは有意に47%増加していた(リスク比:1.47、99%CI:1.19~1.83、p<0.001)。

著者は、「このメタ解析の結果により、全体として、全死因死亡や心血管死に関する強化血糖降下療法のベネフィットは限定的であることが示された」と結論し、「大血管障害や細小血管障害の予防における強化血糖降下療法のベネフィット-リスク比は依然として不明である。強化血糖降下療法のベネフィットは重篤な低血糖によって相殺される可能性がある。2型糖尿病の最良の治療アプローチを確立するには、さらなる二重盲検無作為化対照比較試験が必要である」と指摘している。

(菅野守:医学ライター)