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これだけは押さえておかないと話にならない調剤報酬改定のポイント【早耳うさこの薬局がざわつくニュース】第42回

2020年2月上旬に次回調剤報酬改定の個別項目の点数や割合が決まりました。対物業務から対人業務へのシフトという大きい動きがあったにもかかわらず、例年より短冊が出てからの展開が早かったような気がします。今回は、主に保険薬局に関する変更点について、変更前後を比較しながら紹介します。全体的には、中小規模のチェーン薬局に厳しい改定になるという気がしています。とくに、後述のように調剤基本料1を算定する薬局が減ることが予想できますが、その場合は地域支援体制加算でハードルの高い要件が求められるようになります。毎回算定する調剤料も7日目と14日目を中心に引き下げられ、しかも多くの患者さんは数種類の剤が処方されるため、ジワジワ苦しくなるかもしれません。今回の改定で点数が増えたのは主に対人業務に関する項目ですので、「調剤後のフォロー」に対する加算を確実に押さえていくことの重要性を感じます。そして、この流れは次回の改定でも継続・強化されそうですので、薬局や薬剤師の仕事がガラッと変わる予感がします。それでは詳しくみていきましょう。1.調剤基本料調剤基本料は、調剤基本料2(26点)や調剤基本料3(21点 ※同一グループの枚数による)の対象範囲が拡大となります。具体的には、調剤基本料2は処方箋受付回数が1,800回/月超、集中率95%超、調剤基本料3は同一グループで処方箋受付回数が3.5万回/月超となります。これに伴い、調剤基本料1(42点)の対象範囲は縮小することになるでしょう。中小規模のチェーン薬局を中心に、点数が下がる薬局のほうが多いと思われます。また、いわゆる施設内薬局が算定する特別調剤基本料が従来の11点から9点(処方箋受付1回につき)に引き下げられ、その施設基準の集中率も95%超から70%超に引き下げられます。2.地域支援体制加算地域支援体制加算は地域包括ケアを推進する中で、地域医療に貢献する薬局を評価するために2018年度の改定で新設されました。今回の改定では35点から38点に引き上げられます。変更前は、調剤基本料1さえ算定できていればほとんどの薬局が地域支援体制加算も算定できたことから、「地域医療に貢献した実績ではなく、立地と会社規模の評価」といわれていたとかいなかったとか。それが今回の改定で、地域医療への貢献に対する実績を求めるという本来の目的に立ち返るべく、以下のように変更になります。<調剤基本料1を算定している場合の地域支援体制加算の算定要件>多少、ハードルが上がりましたね。これだけは実績として最低限あってほしいというものがピックアップされたように思います。一方、上記で紹介したように、今回の改定によって調剤基本料1を算定できなくなる薬局が増えると予想されますが、その場合の算定要件は以下のように変更になります。<調剤基本料1を算定していない場合の地域支援体制加算の算定要件>地域特性で夜間の対応が難しい、麻薬指導管理加算の実績が少ないなどの意見から、算定要件9つのうち8つ以上を満たせばよいということになりました。多少現実味を帯びたかもしれませんが、全体的な難易度は変わらないと感じます。この要件は、国が示した目指すべき薬局像といえますので、次回以降の改定でも残る、もしくはもっとハードルが上がる可能性すらあると予想できます。今回調剤基本料1から外れた薬局も、諦めずにぜひ取り組んでほしいと思います。3.調剤料調剤料は、下表のように変更になります。7日目と14日目が引き下げになるって、うまいこと考えたな…と思ってしまいますが、その他の日数の調剤料についても全体的に数点引き下げられます。これは1剤ごとの点数なので、数種類の剤があればその分減算が増えることになります。調剤料の改定理由に「対物業務から対人業務への構造的な転換の観点から見直しを行う」とあり、調剤料は対物業務とされたために引き下げられたと解釈できます。4.かかりつけ薬剤師指導料かかりつけ薬剤師指導料は全体的に点数が上がります。かかりつけ薬剤師指導料は73点から76点、かかりつけ薬剤師包括管理料は281点から291点になります。こちらは施設基準として、患者さんとのやりとりが他者に聞こえないようにパーテーションなどで区切るといったプライバシー配慮要件が追加されました。5.薬剤服用歴管理指導料今回新設された、いわゆる「服薬後のフォロー」に対して算定できる加算です。がん領域、呼吸器領域、糖尿病領域、経管投与で薬学的な支援を行った場合に、それぞれ「薬剤服用歴管理指導料 特定薬剤管理指導加算2(100点、1ヵ月に1回まで)」「同 吸入薬指導加算、(30点、3ヵ月に1回まで)」「同 調剤後薬剤管理指導加算(30点、1ヵ月に1回まで)」「経管投薬支援料(100点、初回のみ)」が算定できるようになります。要件として地域支援体制加算を届け出ている薬局が対象であり、またこれらの指導を行った場合に医師などへの報告が必要です。個人的には、この薬剤服用歴管理指導料を算定する薬局が多くなり、次回の改定で算定の対象となる領域が広がってほしいなぁと思っています。6.後発医薬品関連後発医薬品の使用促進に関しては、後発医薬品の使用割合が低い場合の加算は引き下げられ、高い場合は引き上げられます。使用割合が高い薬局を評価しており、さらなる後発医薬品の使用促進を促すという意図が読み取れます。一方で、著しく後発医薬品の使用割合が低い薬局に対する減算規程は20%から40%に引き上げられます。医療機関でもこれらと同様の対応が実施され、一般名処方加算も引き上げられますので、医療機関での後発医薬品の使用促進も加速すると考えられます。2017年に閣議決定されたいわゆる「骨太の方針2017」で、2020年9月までに後発医薬品の使用割合を80%とするという目標が決まっていますが、現時点ではまだ達していません。その期限までにテコ入れできるのは今回の改定が最後ですので、個人的にはこの点数ではまだ弱いのではないかとソワソワしていますが、この最後の一押しでどうなるか見守りたいと思います。報酬改定は決められた期間で議論し結論を出すというものですので、議論には挙がったけれど変更までに至らなかった論点もあります。今回の場合、市販薬類似品の保険適用除外とフォーミュラリーがその代表格なのではないでしょうか。これらは次回までの宿題となるでしょう。この2年間で現場の薬局がどのような結果を出し、どのような議論がなされるのか、引き続き追っていきたいと思います。

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難病対策は未来への架け橋

難病対策は未来への架け橋わが国では1972年の難病対策要綱の制定から、世界でも類をみない難病対策、すなわち研究推進と患者支援が行われてきましたが、認定疾患が少ない、国の予算確保が難しいなど様々な課題を抱えていました。多くの議論を経て2015年から「難病の患者に対する医療等に関する法律」(難病法)が施行され、一定の要件を満たすものは指定難病として認定され、その数は今年度には333に増加しています。指定難病には、免疫不全症、脊髄小脳変性症などのように包括病名が多数あり、各々何十ものあるいは百を超える個別の疾患を含むため、実際は1000を超える個別の疾患が含まれており、非常に多くの疾患が指定されています。難病は原因や発症機序が不明で有効な治療法が無く、しばしば進行性で長期の療養を要することから、患者さんやご家族にとってはまさに塗炭の苦しみです。このような中、一定の要件を満たした難病は数の制限なく指定を受けることができることはまさに画期的と言えます。とくに近年の医学の進歩はめざましく、発症機序の解明が進み、自己免疫疾患などでは分子標的薬の開発が着実に発展しています。近い将来、現在の「難病」が十分に治療可能な普通の病気になることを祈念する次第です。すなわち「難病」の無くなる日こそが難病関係者の究極の目標とも言えます。実は、そのような中にあって、まだ診断すらついていない稀な難病といえる「未診断疾患」が多数存在しています。2019年11月で9027の遺伝性疾患の内3306で原因が不明です*。これらを一刻も早く解明し、病的遺伝子(変異)の全容を解明することで、難病に限らず多くの疾患の病的代謝経路(病的分子ネットワーク)の解明に大きく貢献すると期待されます。既に糖尿病のSGLT2阻害薬、高脂血症のPCSK9阻害薬、骨粗鬆症の抗RANKL抗体など、稀少難病の原因遺伝子から開発されたコモンな疾患の治療薬は良く知られていますが、難病研究の貢献は決して難病患者さんの為だけに止まらないことは明白です。なお、研究推進や経済的支援のみならず、住み慣れた地域社会での生活や就労の支援までを含めた包括的な対策が難病法のめざす処と思います。各都道府県には難病診療連携拠点病院や難病医療協力病院の認定が、全国的には難病医療支援ネットワークの構築が進みつつ有ります。さらに小児の患者さんでは小児慢性特定疾患の患者さんも多く、指定難病とのスムースな連携が進められており、小児期から成人期への移行期医療のモデルとしての発展が期待されています。わが国の難病対策が未来への架け橋となることを祈念いたします。(*OMIMによる)

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COVID-19、年代別の致命率は~4万例超を分析

 4万4,000例を超える新型コロナウイルス感染症(COVID-19)の疫学的調査結果が報告された。2020年2月11日時点で、中国で診断された全症例の記述的、探索的分析の結果が示されている。CCDC(中国疾病管理予防センター)のYanping Zhang氏らによるChinese journal of Epidemiology誌オンライン版2020年2月17日号掲載の報告。COVID-19症例の年齢分布や致命率を分析 著者らは、2020年2月11日までに報告されたすべてのCOVID-19症例を、中国の感染症情報システムから抽出。以下の6つの観点で分析を実施した:(1)患者特性の要約、(2)年齢分布と性比の分析、(3)致命率(死亡例数/確定例数、%で表す)と死亡率(死亡例数/総観察時間、per 10 person-days[PD]で表す)の算出、(4)ウイルスの広がりの地理的時間的分析、(5)流行曲線の構築、(6)サブグループ解析。 患者特性はベースライン時に収集され、併存疾患は自己申告による病歴に基づく。症例は、確定(咽頭スワブでのウイルス核酸増幅検査陽性)、疑い(症状と暴露状況に基づき臨床的に診断された症例)、臨床診断(湖北省のみ、COVID-19と一致する肺造影像疑いの症例)、無症候(検査陽性だが、発熱やから咳などの症状がみられない症例)に分類された。 流行曲線における発症日は、本調査中に患者が発熱または咳の発症を自己申告した日付として定義。重症度は、軽度(非肺炎および軽度肺炎の症例が含まれる)、中等度(呼吸困難[呼吸数≧30/分、血中酸素飽和度≦93%、PaO2/FiO2比<300、および/または24~48時間以内に>50%の肺浸潤])、重度(呼吸不全、敗血症性ショック、および/または多臓器障害)に分類された。COVID-19の致命率は2.3% COVID-19症例の年齢分布や致命率を分析した主な結果は以下のとおり。・計7万2,314例の患者記録が分析された。内訳は、確定が4万4,672例(61.8%)、疑いが1万6,186例(22.4%)、臨床診断が1万567例(14.6%)、無症候が889例(1.2%)。以下のデータはすべて確定例での分析結果。・年齢構成は、9歳以下が416例(0.9%)、10~19歳が549例(1.2%)、20~29歳が3,619例(8.1%)、30~39歳が7,600例(17.0%)、40~49歳が8,571例(19.2%)、50~59歳が1万8例(22.4%)、60~69歳が8,583例(19.2%)、70~79歳が3,918例(8.8%)、80歳以上が1,408例(3.2%)。・男性が51.4%、湖北省で診断された症例が74.7%を占め、85.8%で武漢市と関連する暴露が報告された。・重症度は、軽度が3万6,160例(80.9%)、中等度が6,168例(13.8%)、重度が2,087例(4.7%)、不明が257例(0.6%)。・併存疾患は、高血圧が2,683例(12.8%)、 糖尿病1,102例(5.3%)、心血管疾患874例(4.2%)、慢性呼吸器疾患511例(2.4%)、がん107例(0.5%)であった。・1,023例が死亡し、全体の致命率は2.3%。・年齢層別の死亡数(致命率、死亡率[per 10 PD])は、9歳以下はなし、10~19歳が1例(0.2%、0.002)、20~29歳が7例(0.2%、0.001)、30~39歳が18例(0.2%、0.002)、40~49歳が38例(0.4%、0.003)、50~59歳が130例(1.3%、0.009)、60~69歳が309例(3.6%、0.024)、70~79歳が312例(8.0%、0.056)、80歳以上が208例(14.8%、0.111)。・併存疾患別の死亡数は、致命率および死亡率が高い順に、心血管疾患92例(10.5%、0.068)>糖尿病80例(7.3%、0.045)>慢性呼吸器疾患32例(6.3%、0.040)>高血圧161例(6.0%、0.038)>がん6例(5.6%、0.036)。なお、併存疾患のない患者で死亡は133例発生し、致命率は0.9%、死亡率は0.005 per 10 PDであった。・発症の流行曲線は1月23~26日頃および2月1日にピークに達し、その後減少傾向にある。・COVID-19は、2019年12月以降に湖北省から外部に広がり、2020年2月11日までに、31省すべてに広がった。・1,716例の医療従事者が確定例に含まれ、5例が死亡している。 著者らは、COVID-19は確定例の約81%で軽度であり、致命率は2.3%と非常に低いとしている。1,023例の死亡のうち、過半数が60歳以上および/または併存疾患を有しており、軽度または中等度の患者では死亡は発生していない。しかし、COVID-19が急速に広がったことは明らかで、湖北省から中国本土の残りの地域に広がるまでたった30日しかかからなかったと指摘。多くの人が春節の長い休暇から戻った現在、流行のリバウンドに備える必要があるとしている。

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服薬負担を考慮した剤形・服用回数の変更提案【うまくいく!処方提案プラクティス】第15回

 今回は患者さんの服薬負担を考慮した処方提案を紹介します。さまざまな薬の剤形や規格を把握している薬剤師だからこそ提案できる場面は多くあります。薬学的な判断を行いつつ、患者さんの想いも実現できるように寄り添いましょう。患者情報90歳、女性(施設入居)体  重:50kg基礎疾患:心房細動、閉塞性動脈硬化症、高血圧症、糖尿病、褥瘡既 往 歴:とくになし直近の血液検査:TG:151mg/dL処方内容1.ジゴキシン錠0.125mg 1錠 分1 朝食後2.エソメプラゾールカプセル20mg 1カプセル 分1 朝食後3.スピロノラクトン錠25mg 2錠 分1 朝食後4.アピキサバン錠2.5mg 2錠 分2 朝夕食後5.トコフェロールニコチン酸エステルカプセル200mg 2カプセル 分2 朝夕食後6.ニコランジル錠5mg 3錠 分3 毎食後7.イコサペント酸エチルカプセル300mg 6カプセル 分2 朝夕食後8.ポラプレジンク口腔内崩壊錠75mg 2錠 分2 朝夕食後本症例のポイントこの患者さんは、以前より両下肢の冷感と違和感を自覚しており、定期訪問診療で閉塞性動脈硬化症による血流障害を指摘され、イコサペント酸エチル(以下EPA)が開始となりました。EPAには300mgの軟カプセル(直径約18mm)と、300mg/600mg/900mgの3規格の小さな粒状カプセル(直径約4mm)の分包包装があります。今回、軟カプセルが処方されたのは、いつもの定期薬と一包化することで服薬アドヒアランスに影響を与えることなく治療が可能と判断されたためです。処方提案と経過しかし、実は患者さんはこれ以上薬を増やすことが嫌で、大きい薬は服用が難しいということを話されていました。また、併用注意のアピキサバンを服用していることから、EPA1,800mg/日では出血に関わる副作用を助長する可能性があり、開始用量も慎重に検討したほうがいいと考えました。そこで、患者さんの想いに沿って、負担の少ない剤形と用法用量への変更を医師に提案することにしました。医師への疑義照会を電話で行い、アピキサバンの出血リスクからEPAは900mg/日に減量し、患者さんの心理的負担を軽減するために小さい粒状カプセルに変更して1日1回服用にまとめるのはどうか提案しました。その結果、出血リスクを懸念した医師に提案を承認してもらうことができました。現在、患者さんはEPA900mgを夕食後に1包服用しており、薬剤は増えたものの問題なく服薬を続けて症状は改善傾向にあります。

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新型コロナウイルス受診の目安を発表/厚生労働省

 国内での新型コロナウイルスの感染拡大が懸念される中、先日開催された内閣の新型コロナウイルス感染症専門家会議で議論された「新型コロナウイルス感染症についての相談・受診の目安」が、2月17日に厚生労働省より発表された。主な目的は、国民の新型コロナウイルスへの不安の鎮静化と検査や診療による医療機関への過度な集中を防ぐためのものである。 具体的な相談・受診の目安として、「風邪の症状や37.5℃以上の発熱が4日以上続く」「強いだるさや息苦しさがある」、また、「高齢者や基礎疾患(糖尿病、心不全など)があり、前記の2つの症状が2日程度続く」という人は、各都道府県に設置されている帰国者・接触者センターへの相談を要請している。 同省では、同時に「国民の皆さまへのメッセージ」として風邪や季節性インフルエンザ対策と同様に各自の咳エチケットや手洗いなどの実施による感染症対策の励行のほか、症状がある人には「帰国者・接触者相談センター」への相談を呼び掛けている。また、国民向けに啓発資料として「マスクについてのお願い」「一般的な感染症対策について」「手洗いについて」「咳エチケットについて」なども掲載されている。 なお、症状に不安がある場合など、一般的な問い合わせ先も掲載されている。・厚生労働省 相談窓口 電話番号:0120-565653(フリ―ダイヤル) 受付時間9:00~21:00(土日・祝日)・電話でのご相談が難しい方 FAX:03-3595-2756新型コロナウイルス感染症についての相談・受診の目安1.相談・受診の前に心がけていただきたいこと○発熱等の風邪症状が見られるときは、学校や会社を休み外出を控える。○発熱等の風邪症状が見られたら、毎日、体温を測定して記録しておく。2.帰国者・接触者相談センターに御相談いただく目安○以下のいずれかに該当する方は、帰国者・接触者相談センターに御相談ください。 ・風邪の症状や37.5℃以上の発熱が4日以上続く方 (解熱剤を飲み続けなければならない方も同様です) ・強いだるさ(倦怠感)や息苦しさ(呼吸困難)がある方○なお、以下のような方は重症化しやすいため、この状態が2日程度続く場合には、帰国者・接触者相談センターに御相談ください 。 ・高齢者 ・糖尿病、心不全、呼吸器疾患(COPD等)の基礎疾患がある方や透析を受けている方 ・免疫抑制剤や抗がん剤などを用いている方 (妊婦の方へ) 妊婦の方については、念のため、重症化しやすい方と同様に、早めに帰国者・接触者相談センターに御相談ください。 (お子様をお持ちの方へ) 小児については、現時点で重症化しやすいとの報告はなく、新型コロナウイルス感染症については、目安どおりの対応をお願いします。○なお、現時点では新型コロナウイルス感染症以外の病気の方が圧倒的に多い状況であり、インフルエンザ等の心配があるときには、通常と同様に、かかりつけ医等に御相談ください。3.相談後、医療機関にかかるときのお願い○帰国者・接触者相談センターから受診を勧められた医療機関を受診してください。複数の医療機関を受診することはお控えください。○医療機関を受診する際にはマスクを着用するほか、手洗いや咳エチケット(咳やくしゃみをする際に、マスクやティッシュ、ハンカチ、袖を使って、口や鼻をおさえる)の徹底をお願いします。(厚生労働省 新型コロナウイルス感染症についてのサイトより引用)

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日本人男性の食事と死亡率、60年でこう変わった

 日本人の食事の欧米化が進んでいるが、過去60年間の食事パターンはどの程度変化しているのだろうか。また、それは冠動脈疾患の死亡率に関連しているのだろうか。久留米大学の足達 寿氏らは、Seven Countries Studyの中の日本人コホートである田主丸研究(久留米大学による久留米市田主丸町住民の疫学調査)において、栄養摂取量の変化と冠動脈リスク因子または死亡率の関係を調査した。Heart and Vessels誌オンライン版2020年1月29日号に掲載。 本研究では40~64歳の男性すべてを登録し、被験者数は、1958年628人、1977年539人、1982年602人、1989年752人、1999年402人、2009年329人、2018年160人であった。1958~89年は24時間思い出し法、1958~89年は食事摂取頻度調査票を用いて、食事摂取パターンを評価した。 主な結果は以下のとおり。・1日当たりの総エネルギー摂取量は、2,837kcal(1958年)から2,096kcal(2018年)に減少した。・炭水化物摂取量の全体に対する割合は84%から53%に著しく減少したが、脂肪摂取量の割合は5%から24%に大幅に増加した。・年齢調整後の平均コレステロール値は167.9mg/dLから209.4mg/dLに急激に上昇し、BMIも21.7から24.4に増加した。・喫煙率は69%から30%に減少した。・脳卒中およびがんによる死亡率は低下したが、心筋梗塞および突然死による死亡率は低いまま安定していた。

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新型コロナウイルス肺炎、重症例の特徴と院内感染の実態/JAMA

 中国・武漢大学中南医院のDawei Wang氏らは、2019年新型コロナウイルス(2019-nCoV)肺炎(NCIP)の臨床的特徴(特に重症例)を明らかにするため、自院の入院患者138例について調査した。その結果、重症例では年齢が高く、高血圧や糖尿病といった併存疾患を有する割合が高く、呼吸困難や食欲不振を訴える患者が多かった。また、138例中57例(41.3%)で院内感染が疑われるという。JAMA誌オンライン版2020年2月7日号に掲載。 著者らは、2020年1月1~28日に同院で2019-nCoVが確認された全症例について後ろ向き調査を実施した。症例はRT-PCRで確認し、疫学的、人口統計学的、臨床的、放射線学的特徴および検査データを解析した。アウトカムは2020年2月3日まで追跡された。 主な結果は以下のとおり。・年齢中央値は56歳(22~92歳)で、75例(54.3%)が男性であった。・一般的症状として、発熱136例(98.6%)、倦怠感96例(69.6%)、から咳82例(59.4%)が報告された。・リンパ球減少症(リンパ球数:0.8×109/L[四分位範囲:0.6~1.1])が97例(70.3%)、プロトロンビン時間延長(13.0秒[同:12.3~13.7])が80例(58%)、LDH上昇(261U/L [同:182~403])が55例(39.9%)で認められた。・胸部CTは、全症例で両肺の斑状あるいはすりガラス状の陰影が認められた。・抗ウイルス薬治療(オセルタミビル)を124例(89.9%)が受け、抗菌薬治療を多くの患者が受けた(モキシフロキサシン:89例[64.4%]、セフトリアキソン:34例[24.6%]、アジスロマイシン:25例[18.1%])。また、グルココルチコイド療法を62例(44.9%)が受けた。・36例(26.1%)がICUに移された。理由は急性呼吸促迫症候群(ARDS)22例(61.1%)、不整脈16例(44.4%)、およびショック11例(30.6%)を含む合併症のため。・最初の症状から呼吸困難までの時間の中央値は5.0日、入院までは7.0日、ARDSまでは8.0日であった。・ICUで治療された患者(36例)は、ICUで治療されなかった患者(102例)と比較して、年齢が高く(中央値:66歳 vs.51歳)、併存疾患を有する割合が高かった(26例[72.2%] vs.38例[37.3%])。主な併存疾患は高血圧(21例[58.3%] vs.22例[21.6%])、糖尿病(8例[22.2%] vs.6例[5.9%])、心血管疾患(9例[25.0%] vs.11例[10.8%])など。また、呼吸困難(23例[63.9%] vs.20例[19.6%])、食欲不振(24例[66.7%] vs.1例[30.4%])が多くみられた。・ICUの36例のうち、4例(11.1%)が高流量酸素療法、15例(41.7%)が非侵襲的換気療法、17例(47.2%)が侵襲的換気療法を受けた(うち4例は体外式膜型人工肺に切り替え)。・2月3日時点で、47例(34.1%)が退院し、6例が死亡(全体の死亡率:4.3%)、残りの患者は入院中。・退院した患者47例において、入院期間の中央値は10日間であった(四分位範囲:7.0~14.0)。・57例(41.3%)が院内で感染したと推定され、その中にはすでに他の理由で入院していた17例の患者(12.3%)と40例の医療従事者(29%)が含まれる。・感染した患者のうち、7例は外科部門、5例は内科部門、5例は腫瘍科部門に入院していた。感染した医療従事者のうち、31例(77.5%)が一般病棟で、7例(17.5%)が救急部門で、2例(5%)がICUで勤務していた。

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新型コロナウイルス肺炎41例の臨床的特徴(解説:小金丸博氏)-1186

オリジナルニュース新型コロナウイルス、感染患者の臨床的特徴とは?/Lancet(2020/01/28掲載)論文に対するコメント: 2019年12月に中国湖北省武漢市で発生した新型コロナウイルス(2019-nCoV)による感染症が世界中に拡大しつつあり、本稿執筆時点(2020年2月4日)で確定患者は2万人を超え、そのうち約400人が死亡したと報告されている。そんな中Lancet誌オンライン版(2020年1月24日号)より、2020年1月2日までに新型コロナウイルス肺炎で入院となった41例の患者背景、臨床症状、臨床経過、放射線画像検査の特徴などが報告された。結果の概要は以下のとおりだが、今回の報告は肺炎を発症し入院となった重症患者のまとめであり、自然軽快する軽症例は含まれていないことに留意しながら結果を解釈する必要がある。患者背景: 患者の73%が男性で、年齢の中央値は49.0歳(四分位範囲:41.0~58.0)だった。32%が何らかの基礎疾患(糖尿病、高血圧、心血管疾患など)を有していた。66%が感染源と推測されている華南海鮮市場と何らかの接点があった。男性が多い理由としては、海鮮市場の関係者が多く含まれていることが要因と思われる。臨床症状: 頻度の高い症状は、37.3℃以上の発熱(98%)、咳嗽(76%)、呼吸困難(55%)、筋肉痛または疲労感(44%)だった。ウイルス性肺炎であるためか喀痰は28%とそれほど多くなかった。下痢などの消化器症状の報告は少なく、鼻汁、咽頭痛などの上気道症状をほとんど認めなかったことも特徴的である。臨床経過: 重症例では、発症から約1週間で入院、8日目ごろに呼吸困難が出現、9日目ごろに急性呼吸窮迫症候群(ARDS)を合併し、10日目以降に集中治療室(ICU)へ入室するという経過をたどった。合併症としてARDS(29%)、急性心障害(12%)、2次感染(10%)などを認めた。32%がICUへ入室し、15%が死亡した。軽症例を含めれば、合併症発生率や致死率は低下することが予想される。放射線画像所見: 胸部CT画像では、98%で両肺野に浸潤影を認め、非ICU入室患者ではスリガラス影が典型的な所見だった。治療: 全例に抗菌薬の投与、93%に抗ウイルス薬(オセルタミビル)の投与、22%に全身ステロイド投与が行われた。ステロイドの有用性については、さらなる症例の集積が必要である。また、新型コロナウイルス感染症に対して、抗HIV薬であるロピナビルとリトナビルの併用療法の有用性を検討するランダム化比較試験が開始されている。 本論文は、新型コロナウイルス肺炎の臨床的特徴を初めて記載したものである。今後さらに症例を蓄積していくことで、軽症例や無症候例の存在、伝染性、正確な致死率などが判明していくと思われる。 コロナウイルスはいわゆる「風邪」の原因ウイルスであるが、ヒトに対して強い病原性を示したSARSやMERSの原因ウイルスでもある。今までの報告からはSARSやMERSほど致命率は高くないと考えられるものの、まだ明らかとなっていないことが多く、今後の動向を注視したい。医療従事者への院内感染事例も報告されており、手指衛生や咳エチケットなどの標準予防策に加え、適切な経路別予防策の実施を心掛けたい。

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2020調剤報酬改定 「対物」点数はどこまで下がるのか?【早耳うさこの薬局がざわつくニュース】第41回

2020年度の診療報酬・調剤報酬改定の議論が着々と進んでいます。1月31日に中央社会保険医療協議会(中医協)より、「個別改定項目について」(いわゆる短冊)が公表されました。これで何を変えるかという大枠が決まったことになります。今後は具体的な個別項目の議論に移り、要件や点数などの詳細が決まっていきます。薬局に関しては、やはり「患者のための薬局ビジョン」に掲げられた対物業務から対人業務へのシフトが改定の核になっているという印象があります。今回は、うさこ的に気になったいくつかのポイントを紹介します。1.薬局からの情報提供2018年度の改定において、重複投薬の解消を目的として服用薬剤調整支援料が新設されました。算定要件のハードルの高さが話題になりましたが、今回はもう少しマイルドな「服用薬剤調整支援料2」が新設されます。要件としては、複数の医療機関において6種類以上の内服薬が処方されている場合に、重複投薬などの状況を含めた一元的把握を行い、医師に重複投薬解消に係る提案を行った場合に算定することができます。残薬への対応としては、薬剤服用歴管理指導料の要件にお薬手帳による医療機関への情報提供を推進する規定が追加されます。重複投薬でも残薬対応でも、薬局が一元的に情報を集めて、医師へ効率的に情報提供する流れを整えたいという意図が読み取れます。2.地域への貢献、連携地域への貢献や連携は今までも求められていましたが、医療機関と薬局との連携、地域と薬局との連携、他職種と薬剤師との連携など、さまざまな連携が複数の加算の要件として具体的な数字で求められます。たとえば、地域支援体制加算の要件として「研修認定薬剤師が地域の多職種と連携する会議に●回以上出席」「在宅患者に対する薬学的管理および指導の回数●回以上」「患者の服薬情報等を文書で医療機関に提供した実績●回以上」など、より具体的な貢献や連携が必要とされます。年度末に慌てることのないようにスケジュールを立てて日々取り組みたいものです。※●はいずれも数字未定3.専門領域における服薬後のフォローがん領域、呼吸器領域、糖尿病領域、経管投与で薬学的な支援を行った場合に、それぞれ「薬剤服用歴管理指導料 特定薬剤管理指導加算2」「同 吸入薬指導加算」「同 調剤後薬剤管理指導加算」「経管投薬支援料」が算定できるようになります。薬剤師は薬剤師にしかできない対人業務に専念してね、といった感じでしょうか。これらはいわゆる「服薬後のフォロー」に対して算定できるものですが、その結果を医師に報告することが要件となりそうですので、医師への報告方法について事前に確認する必要がありそうです。4.対物業務の減点ここまでは新設される要件を紹介してきましたが、明確に点数を減らされるなという予感がするものもあります。それは、おそらく対物業務に分類されている調剤基本料と調剤料です。調剤料は、現状では14日分以下の場合は「7日目以下の部分(1日分につき5点)」「8日目以上の部分(1日分につき4点)」に小さく分かれていて、15日分以上の場合は段階的に点数が上がっていくという構造です。まだ具体的な点数は決まっていませんが、今回の改定では14日分以下であっても「7日分以下の場合」と「8日分以上14日分以下の場合」の2段階に分かれます。調剤料の改定箇所に「対物業務から対人業務への構造的な転換の観点から見直しを行う」と記されていることから、これは対人業務の点数は上げますが対物業務の点数は減らしますよという予告で、確実に点数が減らされると思っています。2019年4月2日付で発出された「調剤業務のあり方について」(いわゆる0402通知)によって、薬剤師以外の薬局従事者による調剤ができることになったことも後押ししているのでしょう。先日の薬機法改正において、「地域連携薬局」と「専門医療機関連携薬局」という新たな認定薬局制度を設ける旨が定められました。2020年度の報酬改定にこの認定制度は間に合いませんが、次回の改定では何らかの点数に絡んでくるものと思われます。点数ゲットだけを目標とするのはいかがなものかと思いますが、対人業務による加算を確実に押さえていかないといけないのだとひしひし感じます。対物業務から対人業務への足音は、実は既存の調剤業務の点数を減らす足音でもあったようです。

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日本人高齢男性における飲酒と認知機能との関係

 大量の飲酒は、認知機能障害のリスク因子として知られているが、適度な飲酒においても同様の影響が認められるかどうかは、よくわかっていない。これまでの観察研究では、とくに高齢者において、中程度の飲酒による認知機能への潜在的なベネフィットが報告されているが、アジア人ではこの影響が実証されていなかった。滋賀医科大学のAli Tanweer Siddiquee氏らは、認知障害のない日本人高齢男性を対象に、飲酒レベルと認知機能との関連について調査を行った。Alcohol誌オンライン版2020年1月7日号の報告。 飲酒と認知機能との関連を調査するため、進行中のプロスペクティブ人口ベース研究である滋賀動脈硬化疫学研究(SESSA)の断面データを用いた。65歳以上の男性585人を対象に、週ごとのアルコール摂取量の情報を収集し、摂取量に応じて分類した。飲酒歴の分類は、元飲酒者、非常に軽度(14g/日未満)、軽度(14~23g/日)、中程度(24~46g/日)、重度(46g/日超)とした。認知機能の測定には、Cognitive Abilities Screening Instrument(CASI)を用いた。 主な結果は以下のとおり。・年齢、教育、BMI、喫煙、運動、高血圧、糖尿病、脂質異常症で調整したロジスティック回帰モデルでは、全体および領域特有の認知機能のCASIに、飲酒歴の有無による、有意な差が認められなかった。・元飲酒者は、非飲酒者と比較し、全体の認知機能(多変量調整平均CASIスコア:88.26±2.58 vs.90.16±2.21)および抽象化、判断の領域(多変量調整平均CASIスコア:8.61±0.57 vs.9.48±0.46)において、CASIスコアが有意に低かった。 著者らは「日本人高齢男性では、飲酒と認知機能との間に、有益または不利益な影響は認められなかった。しかし、元飲酒者の認知機能が低いことから、飲酒を中止した要因を特定するための今後の調査が必要である」としている。

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ビタミンDとオメガ3脂肪酸は糖尿病性腎臓病の進展を抑制しない(解説:住谷哲氏)-1183

 ビタミンDまたはオメガ3脂肪酸が健常人の心血管イベントやがんの発症を抑制するか否かを検討した大規模無作為化試験VITALの結果はすでに報告されているが、残念ながらビタミンDおよびオメガ3脂肪酸の両者ともに心血管イベントもがんも抑制しなかった1,2)。本試験はこのVITALに組み込まれた糖尿病患者を対象としたsupplementary trial VITAL-DKDであり、主要評価項目は治療開始5年後のeGFRの低下である。 この試験の背景には動物実験でビタミンDの投与が(1)レニン・アンジオテンシン・アルドステロン系を抑制する、(2)腎臓での炎症および線維化を抑制する、(3)ポドサイトのアポトーシスを抑制する、(4)アルブミン尿および糸球体硬化の程度を軽減すること、ならびにオメガ3脂肪酸が抗炎症作用および抗血栓作用を有することがある。また多くの観察研究において血中25(OH)D3濃度低値、少ない魚摂取量、血中オメガ3脂肪酸濃度低値がアルブミン尿の程度およびeGFRの低下と相関することが報告されている。つまり動物実験と観察研究の結果からは、ビタミンDまたはオメガ3脂肪酸の投与による糖尿病性腎臓病の進展抑制の可能性が示唆されたことになる。 2×2要因デザインを用いてビタミンD3(2,000 IU/日)またはオメガ3脂肪酸(エイコサペンタエン酸とドコサヘキサエン酸:1g/日)が投与された。主要評価項目である5年後のeGFRの低下はビタミンD3投与群、オメガ3脂肪酸投与群および両者の投与群とプラセボ群との間に有意な差は認められなかった。また副次評価項目である臨床的腎アウトカム(eGFRの40%以上の低下、腎不全、死亡からなる複合アウトカム)ならびに尿アルブミンについてもプラセボ群との間に有意差を認めなかった。 ビタミンDならびにオメガ3脂肪酸をサプリメントとして服用している糖尿病患者は少なくないと思われる。本試験の結果から考えると、糖尿病患者がこれらのサプリメントを摂取しても糖尿病性腎臓病進展の予防効果は期待できないだろう。やはりサプリメントに頼らず、エビデンスに基づいた治療と健康的な食生活とを目指すのが賢明だろう。

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第23回 意識しよう 免疫力を高めるビタミンDの食材一覧表【実践型!食事指導スライド】

第23回 意識しよう 免疫力を高めるビタミンDの食材一覧表医療者向けワンポイント解説ビタミンDは、紫外線(日光)を浴びることにより、皮膚で合成されるビタミンとしても有名です。しかし、皮膚合成だけでは不十分であるため、食事からの摂取が見直されつつあります。厚生労働省は、5年ごとに改定する「日本人の食事摂取基準」2020年版において、ビタミンDについても変更を加えています。ビタミンDの指標設定については、「骨折リスクを上昇させないビタミンDの必要量に基づき目安量を設定」とされ、2015年度に比べると18歳以上の男女ともに5.5μg/日から8.5μg/日に変更されています。ビタミンDの欠乏や不足におけるリスクは、くる病や骨軟化症のなどが有名ですが、ほかにも骨粗鬆症、感染症、自己免疫、炎症性疾患、心血管病変、がんなどが報告されています。また、ビタミンDは、自然免疫系を増強させ、獲得免疫系の制御をすると考えられ、風邪、インフルエンザ、肺炎など呼吸器感染症の予防が期待されています。また、ビタミンDの不足は糖尿病のリスクを高めるという報告もあります。しかし、糖尿病に関しては、「2型糖尿病の高リスク者に対して、ビタミンD補充をしても、リスクは低下しなかった」という報告*もあり、糖尿病に対して、ビタミンDを摂取すれば良いという考え方ではなく、日常の体づくりに対しての摂取を考えていくべきかもしれません。ビタミンDを食事から摂取しようとする場合、食材は限られており、多く含まれるのは、「魚」「きのこ類」「たまご」です。100gあたりのビタミンD量を比較すると、乾燥きくらげが圧倒的に多く85.4μgです。しかし、実際に1度の食事で摂取できる量は3g程度であり、ビタミンDに換算すると約2.6μgです。そのほか、きのこ類では、舞茸に多く含まれ、大きなパック1個分(100g)で約4.9μgとなります。魚では、サケなどが摂りやすく33μg/100gであり、切り身1枚(80g)程度でも約26.4μgと目安量を簡単に摂取することが可能です。しらす干しは大さじ1杯(5g)で約3μgのビタミンDが摂取できます。魚やきのこは嗜好や食生活の環境によって摂取量が左右されるため、毎日意識をして摂取することがカギとなります。*:Pittas AG, et al. N Engl J Med. 2019;381:520-530.

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抗菌薬が十分量処方されていなかったため上乗せを提案【うまくいく!処方提案プラクティス】第14回

 今回は、動物咬傷による皮膚軟部組織感染に対する抗菌薬の処方提案です。病状の改善や耐性菌を生み出さないためには抗菌薬を十分量投与する必要があります。医師の選択した抗菌薬の種類だけでなく、投与量も適切かどうか確認するクセをつけましょう。患者情報50歳、男性(外来)体  重:60kg基礎疾患:高血圧症、糖尿病、足白癬既 往 歴:とくになし主  訴:ペットの犬に噛まれた右手の疼痛、発熱直近の検査値:血清クレアチニン(Scr)0.9mg/dL推算CCr:83.3mL/min処方内容1.アムロジピン錠5mg 1錠 分1 朝食後2.シタグリプチン錠50mg 1錠 分1 朝食後3.テルビナフィンクリーム 10g 1日1回 足全体4.エフィナコナゾール液10% 3.56g 1日1回 爪全体5.アモキシシリン・クラブラン酸配合錠250RS 3錠 分3 毎食後本症例のポイント糖尿病患者さんは、感染症に罹患しやすく、重篤化しやすいため、十分量の抗菌薬が処方されているか慎重に確認する必要があります。今回の患者さんは、糖尿病の基礎疾患があり、動物咬傷による皮膚軟部組織感染と推察できますので、アモキシシリン・クラブラン酸配合錠250RS 3錠/日(アモキシシリンとして750mg/日)では治療効果が十分ではなく、1,500mg/日程度が必要と考ました。しかし、アモキシシリンが治療に有効な力価になるまで配合錠を増量すると、クラブラン酸が高用量になり過ぎてしまいます。高用量のクラブラン酸は下痢や嘔気などの消化器症状が増加する懸念がある一方で、抗菌効果の増強にはならないと指摘されていますので良いところなしです。そのため、アモキシシリンの用量を上げたい場合は、アモキシシリン・クラブラン酸配合錠を増量するのではなく、アモキシシリン単剤を追加してアモキシシリンの力価だけを増やすことがあります。アモキシシリン・クラブラン酸配合錠とアモキシシリン錠の先発品名から「オグサワ」と呼ばれる有名な治療方法です。海外製品のアモキシシリン・クラブラン酸配合錠の標準比は、アモキシシリン:クラブラン酸=4:1だが、日本製品(成人用)は2:1でアモキシシリンの配合比が低い。アモキシシリン・クラブラン酸配合錠250RS 3錠/日にアモキシシリン単剤250mg 3錠/日を追加することでアモキシシリン:クラブラン酸=4:1となり、クラブラン酸を増量せずに十分量のアモキシシリンを投与することができる。処方提案と経過処方医に想定される起炎菌と重症度を確認したところ、傷の深さや発熱などの症状から重症度は高めで、ブドウ球菌や嫌気性菌を考えているとのことでした。核心の用量については、逆に抗菌薬の十分量について質問を受けたので、上記のアモキシシリン250mg/回を追加することで十分な治療効果が見込め、腎機能も推算CCrから問題ない旨をお伝えしました。その結果、処方はアモキシシリン錠250mg 3錠 分3 毎食後をアモキシシリン・クラブラン酸配合錠に同日数分上乗せするよう指示を受けました。数日後、医師より患者さんの体調が回復したというご報告と、オグサワの使用経験がなく不安があったが今後の診療でも活用していきたいというコメントを頂きました。1)Gilbert DNほか編. 菊池賢ほか日本語版監修. <日本語版>サンフォード 感染症治療ガイド2019(第49版). ライフサイエンス出版;2019.2)オーグメンチン配合錠インタビューフォーム

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かかりつけ医のための適正処方の手引き(脂質異常症)が完成/日本医師会

 日本医師会の江澤 和彦氏(常任理事)が、『超高齢社会におけるかかりつけ医のための適正処方の手引き(4)脂質異常症』の完成を記者会見で発表した。高齢患者における適正診療を10ページでガイド わが国では生活習慣の欧米化に伴い、脂質異常症の患者は年々増加傾向にある。高齢者の脂質異常症の特徴としては、(1)成人に比べ動脈硬化性疾患の発症リスクが高い、(2)脳血管障害、冠動脈疾患を発症した患者の予後が不良で、要介護状態となるリスクも高いなどが挙げられる。江澤氏は「動脈硬化性疾患の一次予防、二次予防に向けて適切に管理することがきわめて重要になっている」と指摘した。 本手引きは、75歳以上の高齢者と老年症候群を合併した65歳から74歳の前期高齢者を対象に、「脂質管理目標値」として、リスク区分別の目標値の考え方を示している。ほかにも、脂質異常症のスクリーニングのためのフローチャートや、専門医との連携が必要な例などを紹介。 今回、『(1)安全な薬物治療』、『(2)認知症』、『(3)糖尿病』に続く第4弾としての発刊。いずれも日本医師会のサイトに全ページがpdfで掲載されている。次年度は『高血圧症』について、同様の手引きが作成される見込みだ。超高齢社会におけるかかりつけ医のための適正処方の手引き(4)脂質異常症《目次》1.脂質異常症の現状と治療総論2.動脈硬化性疾患の検査方法3.高齢者の脂質異常症の治療4.高齢の患者における脂質異常症の薬物療法5.高齢者の脂質異常症の薬物療法の注意点6.高齢者の脂質異常症の薬物療法の支援

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脂肪萎縮症〔lipodystrophy〕

1 疾患概要■ 概念・定義脂肪萎縮症は、脂肪細胞機能の異常により、脂肪組織が全身性あるいは部分性に減少・消失し、それに起因する糖脂質代謝異常(糖尿病、高中性脂肪血症)および脂肪肝などを合併する疾患の総称で、エネルギー摂取不良による痩せとは区別される。■ 疫学脂肪萎縮症の有病率についての報告は少ない。わが国においては、1985年の厚生省特定疾患、難病の疫学調査研究による脂肪萎縮性糖尿病の全国調査の結果、2007年の日本内分泌学会内分泌専門医を対象としたアンケート調査の結果から、有病率は約130万人に1人と推定される。米国では、100~500万人に1人と推定されている。■ 病因脂肪萎縮症は、全身の脂肪組織が減少・消失する全身性脂肪萎縮症と、下肢などの特定の身体領域に限局して脂肪組織が減少・消失する部分性脂肪萎縮症に大別される。原因として、遺伝子異常、自己免疫、ウイルス感染、薬剤などが知られている。主に、脂肪細胞の発生・分化や、脂肪組織における脂質蓄積に関わる遺伝子変異が原因であることが知られているが、その詳細は明らかではない。原因遺伝子としては、先天性全身性脂肪萎縮症ではAGPAT2、BSCL2、CAV1、PTRF遺伝子が、家族性部分性脂肪萎縮症ではLMNA、PPARG、AKT2、PLIN1、CIDEC、LIPE遺伝子が報告されている。遺伝性が疑われるが、原因遺伝子が特定されていない症例もある。また、脂肪萎縮を発症しやすい特定の自己免疫疾患やウイルス感染は解明されていない。薬剤性としては、ヌクレオチド系逆転写酵素阻害薬やプロテアーゼ阻害薬などのHIV治療薬による後天性部分性脂肪萎縮症がある。■ 症状先天性全身性脂肪萎縮症では、生下時より全身性の脂肪組織の減少・消失が認められるが、家族性部分性脂肪萎縮症では、乳幼児期の脂肪組織分布は正常で、小児期あるいは思春期に四肢の脂肪組織が減少・消失してくることが多い。また、後天的に脂肪萎縮症を発症する症例の中には、ウイルス感染を契機として、短期間に全身の脂肪萎縮に至る症例もある。脂肪萎縮症では、原因のいかんにかかわらず、糖尿病、高中性脂肪血症などの糖脂質代謝異常および脂肪肝を高頻度に合併する。脂肪萎縮の程度と、代謝異常の重症度は相関するとされている。脂肪萎縮に伴う糖尿病は、とくに「脂肪萎縮性糖尿病」とも呼ばれ、重度のインスリン抵抗性のために従来の経口血糖降下薬は無効であり、インスリンを大量に使用しても十分な血糖コントロールが得られないことがしばしばである。また、黒色表皮腫、女性症例では多嚢胞性卵巣を伴う月経異常が高頻度に認められる。脂肪萎縮症では、脂肪細胞由来ホルモンであるレプチンは著しく低下し、食欲は亢進する。まれに精神発達遅滞、下顎顔面異形成、早老症を合併することもある。■ 分類脂肪萎縮症は、脂肪萎縮の程度や部位により、全身性脂肪萎縮症あるいは部分性脂肪萎縮症に大別される。さらに脂肪萎縮の原因により、それぞれ先天性あるいは後天性に区別されることから、典型的には先天性全身性脂肪萎縮症、後天性全身性脂肪萎縮症、家族性部分性脂肪萎縮症、後天性部分性脂肪萎縮症の4つに分類される。薬剤の皮下注射や皮下脂肪織炎、圧迫などにより、狭い範囲に限局した脂肪萎縮が起こることがあるが、脂肪萎縮に起因する代謝異常の合併はない。■ 予後脂肪萎縮症は、糖尿病合併症、非アルコール性脂肪肝炎、肝硬変、肥大型心筋症などにより、平均寿命は30~40歳ともいわれる予後不良な疾患である。レプチン補充治療は、合併する代謝異常の改善に有効で、予後の改善が期待される。2 診断 (検査・鑑別診断も含む)〔診断基準〕■ 脂肪萎縮症の診断脂肪組織の萎縮の確認低栄養や消耗性疾患などによる痩せの除外病歴聴取による先天性、後天性の判断先天性→遺伝子解析により原因遺伝子に異常を認めた場合には確定後天性→発症原因が明らかである場合には確定インスリン抵抗性高中性脂肪血症脂肪肝※中尾一和・編. 最新内分泌代謝学. 診断と治療社; 2013. より引用■ 脂肪萎縮症を強く示唆する臨床的特徴脂肪萎縮症の主要臨床症候全身あるいは部分的な皮下脂肪の減少または欠損家族性部分性脂肪萎縮症の主要臨床症候思春期以降に発症する四肢や臀部の皮下脂肪の減少(頭頸部や腹部の脂肪は残存もしくは過剰に蓄積)脂肪萎縮症を示唆する臨床的症候1)重度のインスリン抵抗性を伴う糖尿病の存在(1)高用量のインスリン治療を必要とする糖尿病(200単位/日以上、2単位/体重kg/日以上、U-500インスリン製剤の使用など)(2)ケトーシスに陥りにくい糖尿病2)重度のインスリン抵抗性を示唆するその他の所見(1)黒色表皮腫(2)PCOSあるいはPCOS様の症候(高アンドロゲン血症、過少月経、多嚢胞性卵巣など)3)高中性脂肪血症の存在(1)重度の高中性脂肪血症(500mg/dL以上)(2)食事療法などの治療への反応が乏しい(250mg/dL以上)(3)高中性脂肪血症に起因する膵炎の既往4)脂肪肝や脂肪性肝炎の存在(1)明らかな原因(例: ウイルス感染)のない、肝腫大や血中トランスアミナーゼ値の上昇などの非アルコール性脂肪肝に合致する所見(2)脂肪肝の画像所見(超音波検査やCT)5)身体的症候や脂肪組織の減少に関する家族歴6)四肢の著明な筋肥大や静脈の怒張7)体格に見合わない過食(食事を止められない、空腹で目が覚める、食欲と葛藤しているなど)8)2次性の性腺機能低下(男性)、原発性あるいは2次性の無月経(女性)※米国臨床内分泌学会[AACE]のコンセンサスステートメントより引用3 治療 (治験中・研究中のものも含む)脂肪萎縮症の治療は、脂肪萎縮に対する治療と脂肪萎縮に起因する合併症に対する治療に大別される。最近承認されたレプチン補充治療は、脂肪萎縮に起因する合併症を改善させる。■ 脂肪萎縮に対する治療現時点では、脂肪萎縮に対する根本的な治療法はない。後天性の脂肪萎縮については、原因疾患の治療、すなわち皮下脂肪織炎の治療、自己免疫異常の治療、HIV関連脂肪萎縮症ではHIV感染によるものと治療薬によるものを区別して治療する必要がある。脂肪細胞分化のマスターレギュレーターであるPPARγを活性化させるチアゾリジン誘導体は、全身性脂肪萎縮症では無効、部分性脂肪萎縮症では残存脂肪組織を肥大させたのみで脂肪分布異常を改善しなかったと報告されている。また、後述するレプチン補充治療によっても、脂肪萎縮は改善しない。■ 脂肪萎縮に起因する合併症に対する治療従来は、低脂肪食を中心とした食事療法や運動療法のみであった。わが国ではIGF-I製剤による治療が試みられたが、その治療効果は限定的である。脂肪萎縮症では、脂肪細胞由来ホルモンであるレプチンが欠乏しており、生理量のレプチン(商品名: メトレレプチン)を補充するレプチン補充治療は、脂肪萎縮に起因する糖脂質代謝異常(糖尿病、高中性脂肪血症)、脂肪肝などの合併症を改善させる。さらに、亢進した食欲を抑制し、食事療法を行いやすくする。レプチン補充治療は、2013年に世界で初めてわが国で承認され、2014年には米国でも承認された。4 今後の展望今後、脂肪萎縮に対する根本的な治療法の開発が期待される。とくに原因遺伝子が同定されている脂肪萎縮症については、脂肪萎縮の発症機序を明らかにすることで、脂肪の再生治療を含めた、新規治療法が開発される可能性がある。また、最近、少数例ではあるが、全身性あるいは部分性の脂肪萎縮とともに付随する特徴的な身体徴候(早老症様顔貌、皮膚病変、骨病変など)を呈する疾患群が報告されてきており、典型例とは区別する必要がある。5 主たる診療科内分泌代謝内科、糖尿病内科※ 医療機関によって診療科目の区分は異なることがあります。6 参考になるサイト(公的助成情報、患者会情報など)診療、研究に関する情報難病情報センター 脂肪萎縮症(一般利用者向けと医療従事者向けのまとまった情報)認定NPO法人日本ホルモンステーション 脂肪萎縮症委員会(一般利用者向けと医療従事者向けのまとまった情報)1)Garg A. J Clin Endocrinol Metab. 2011;96:3313-3325.2)海老原健ほか.肥満研究. 日本肥満学会. 2011;17:15-20.3)中尾一和 編. 最新内分泌代謝学. 診断と治療社;2013.4)Handelsman Y, et al. Endocr Pract. 2013;19:107-116.5)Ebihara K, et al. J Clin Endocrinol Metab. 2007;92:532-541.6)Brown RJ, et al. J Clin Endocrinol Metab. 2016;101:4500-4511.7)日本内分泌学会. 脂肪萎縮症診療ガイドライン. 2018;94:1-31.公開履歴初回2015年02月12日更新2020年02月03日

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「しょっちゅうこむら返りになる」という患者さん【Dr. 坂根の糖尿病外来NGワード】第29回

■外来NGワード「この薬さえ、飲んでおけば大丈夫です!」(運動療法に触れない)「何か、運動しなさい!」(あいまいな運動指導)「糖尿病の合併症ですよ。もっと血糖値を下げないと!」(医学的脅し)■解説 有痛性筋痙攣(muscle cramp)、いわゆる「足がつる」状態や「こむら返り」は、健康な人でも久しぶりに運動したときなどに起こります。一方、糖尿病や肝硬変の患者さんでは、ふくらはぎなどの下肢だけでなく、上肢に起こる人もいます。高齢者糖尿病ではとくに頻度が高く、日中にも症状が出現することが報告されています。また、利尿薬、スタチン、β2刺激薬(吸入薬)を使用している人は、リスクが高まるといわれています。この有痛性筋痙攣は、時に睡眠を妨げ、患者さんのQOL(生活の質)を低下させる恐れがあります。しかし、この「こむら返り」をかかりつけ医に相談していない事例も多いようです。高リスクの患者さんには、よく眠れているか確認してみましょう。症状が出たときの対処法としては、膝を押さえ下腿三頭筋を他動的に伸展させる方法がよく用いられています。芍薬甘草湯などの漢方薬が汎用されますが、寝る前のストレッチや足の軽い運動なども効果があるので、運動療法と併せて治療を行うことが大切です。 ■患者さんとの会話でロールプレイ患者最近、夜中に足がつることが多くて…。医師それは大変ですね。最近、血糖が高い状態が続いているので、何か関係しているのかも。患者やっぱり、糖尿病のせいなんですか?(やや不安そうな顔)医師影響は考えられますね。整形外科的な疾患ではないと思うので…。患者夜中に、痛くて目が覚めてしまうんです。どうしたらいいですか?医師漢方薬などもありますが、もっといい方法がありますよ。患者なるべく薬は増やしたくないので、教えてほしいです!(興味津々)医師寝る前にできる、簡単な足の運動です。ちょっと、一緒にやってみませんか?患者(実際に足を動かして)これぐらいなら、一人でもできそうです。医師お風呂上がりやテレビを見ているとき、歯磨きの後などでもいいので、寝る前にぜひやってみてください。患者はい。わかりました。(嬉しそうな顔)■医師へのお勧めの言葉「寝る前にできる、簡単な足の運動です。ちょっと、一緒にやってみませんか?」1)餘目千史ほか.日本糖尿病教育・看護学会誌. 2016;20:211-220.

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アルポート症候群〔AS:Alport syndrome〕

1 疾患概要1-3)■ 概念・定義アルポート症候群(Alport syndrome:AS)は、古典的には進行性の遺伝性腎症(しばしば腎炎とも呼ばれる)に難聴を伴う症候群をさすが、近年ではIV型コラーゲン遺伝子バリアントによるものとするのが一般的である2、3)。■ 疫学約8割がX連鎖型であるが、常染色体劣性・優性のものもある。頻度は欧米の報告では1/5,000~1/10,000で、人種差や地域差はないと考えられている。また、約50,000出生に1例との報告がある。■ 病因1,3)ASの原因は、IV型コラーゲンの遺伝子バリアントである。1)IV型コラーゲンとα鎖IV型コラーゲンの網目状ネットワークを形成する基本分子はモノマーと呼ばれ、3本のα鎖がらせんを巻いた構造をしている。α鎖はN末端側のGly-X-Yの繰り返し構造をもつ約1,400残基のコラーゲンドメイン(collagenous domain)と、C末端側の約230残基の非コラーゲンドメイン(NC domain)からなる。IV型コラーゲンの構成鎖はαl〜α6鎖が知られているが、α6鎖は糸球体基底膜には存在しない。生体においてらせんを形成する3本のα鎖の組み合わせは、(1)αl-α1-α2、(2)α3-α4-α5、(3)α5-α5-α6の3種類である。2つのモノマーがC末端側の非コラーゲンドメインで結合してダイマー、4つのモノマーがN末端側のコラーゲンドメインで結合してテトラマーを形成する。モノマー、テトラマーが互いに絡み合い、かつ側面で結合しIV型コラーゲンのネットワーク構造を形成する。α1、α2鎖は糸球体基底膜以外にもメサンギウム基質、尿細管基底膜、血管基底膜など、腎組織に広範に存在する。一方、α3、α4、α5鎖は糸球体基底膜、ボーマン嚢、一部の尿細管基底膜に限局して存在する。α6鎖は糸球体基底膜には存在せずボーマン嚢に発現している。2)IV型コラーゲン遺伝子1,3)IV型コラーゲン遺伝子はいずれも非常に大きく約250kbある。αl、α2鎖をコードするCOL4A1、COL4A2遺伝子は13番染色体上に、α3、α4鎖をコードするCOL4A3、COL4A4遺伝子は2番染色体上に、α5、α6鎖をコードするCOL4A5、COL4A6遺伝子はX染色体上に存在する。したがって、大部分を占めるX連鎖型ではα5鎖、常染色体性ではα3またはα4鎖の遺伝子バリアントが原因である。これらの遺伝子バリアントにより、糸球体基底膜に存在するIV型コラーゲン分子のネットワークの破綻が引き起こされる。■ 症状3)病初期には血尿が唯一の所見となる。血尿は持続性の顕微鏡的血尿に、発熱時などに肉眼的血尿を伴うことが多い。タンパク尿は進行とともに増加していき、ネフローゼ症候群を呈することもよくある。発熱時の肉眼的血尿はIgA腎症でもしばしばみられることがよく知られているが、ASでも珍しくないことに留意が必要である。特徴的な難聴や眼病変がみられれば診断上有用である。難聴は神経性(感音性)難聴で、7~10歳頃両側性に出現し、まず高周波領域における聴力低下が起こり、進行性に増悪していく。患者の約1/3に難聴がみられるが、男児に多く、女児にはまれである。本人、家族に難聴がみられなくても、本症であることがしばしばあり、注意が必要となる。眼病変としてはanterior lenticonus、posterior subcapsular cataract、posterior polymorphous dystrophy、retinal flecksなどがある。びまん性平滑筋腫症(diffuse leiomyomatosis)の合併が認められることがある。本症は良性の平滑筋細胞の増殖で、食道での報告が多い。本症合併例ではCOL4A5遺伝子5'端とCOL4A6遺伝子5'端を含む欠失が報告されており、食道にはα6鎖が多く発現していることから、本症責任遺伝子はα6鎖遺伝子と考えられている。■ 分類先述の通り、遺伝形式は80%がX連鎖型であるが、常染色体劣性(15%)・優性(5%)のものもある。常染色体優性遺伝形式を示し、複数世代で血尿を認めるが腎不全に進行しない家系において、臨床的に良性家族性血尿と呼ばれてきた。しかし、遺伝子解析の進歩・普及により、これらにおいてIV型コラーゲン遺伝子バリアントが原因となることが明らかになり、これらの家系のバリアントがペアとなって遺伝した場合に、常染色体劣性型ASになる。さらに、片方のアリルのバリアントのみでもまれに末期腎不全に進行する場合があり、この患者は常染色体優性型ASということになる。したがって、近年ではASと良性家族性血尿の境界は曖昧である2,3)。■ 予後ASの重症度は、腎機能、難聴の程度、視力により規定される。本症候群は進行性の慢性腎症であるが小児期には通常腎機能は正常で、思春期以後徐々に腎機能が低下しはじめ、男性患者では10代後半、20代、30代で末期腎不全に至る例が多い。腎保護薬なしでの末期腎不全進行への自然歴は、X連鎖型男性患者で25歳までに50%、42歳までに90%とされる。X連鎖型の女性患者は一般に進行が遅く、腎不全に進行することは少ないと考えられていたが、近年ではX連鎖型女性患者でも中年期以降腎不全に進行することも珍しくなく、蛋白尿が持続する症例では注意がいる。X連鎖型女性に関しては、40歳までに12%、60歳以降に30~40%が末期腎不全に進行するということが判明している。一方、X連鎖型では原因遺伝子バリアントを有するが無徴候の女性例が約10%存在し、本人はまったく正常であっても子供に発症する場合がある。この場合、家系内で世代間に隔たりがあるようにみえるが、それにより本症候群を否定してはいけない。また、X連鎖型女性患者が男性と同様に重症で、10代後半に末期腎不全に進行することもある。このようにX連鎖型女性患者の重症度はバリエーションに富んでおり、胎児期早期に起きるX染色体の不活化によるものと推測されている。一方、男性患者の重症度は遺伝子バリアントパターンによるところが大きい。常染色体性ASでは、症状に男女差はなく予後不良である。2 診断 (検査・鑑別診断も含む)3)ASの診断基準を表に示す。血尿患者をみたときに、患者やその家族が積極的に家族の検尿異常を述べるとは限らないので、必ずできる限り詳細に家族歴を聴取し、家族性の尿異常をもらさないことが重要である。家族に尿異常者がある場合は、腎不全の有無を詳細に確認し、腎不全の家族歴がある場合は腎生検を施行する。表 アルポート症候群診断基準(平成27年2月改訂)●主項目に加えて副項目の1項目以上を満たすもの。●主項目のみで副項目がない場合、参考項目の2つ以上を満たすもの。※主項目のみで家族が本症候群と診断されている場合は「疑い例」とする。※無症候性キャリアは副項目のIV型コラーゲン所見(II-1かII-2)1項目のみで診断可能である。※いずれの徴候においても、他疾患によるものは除く。たとえば、糖尿病による腎不全の家族歴や老人性難聴など。タイトルI.主項目:I-1 持続的血尿 *1II 副項目:II-1IV型コラーゲン遺伝子変異 *2II-2IV型コラーゲン免疫組織化学的異常 *3II-3糸球体基底膜特異的電顕所見 *4III 参考項目:III-1腎炎・腎不全の家族歴III-2両側感音性難聴III-3特異的眼所見 *5III-4びまん性平滑筋腫症厚生労働科学研究費補助金(難治性疾患等政策研究事業)「腎・泌尿器系の希少・難治性疾患群に関する診断基準・診療ガイドラインの確立」班*1 3ヵ月は持続していることを少なくとも2回の検尿で確認する。まれな状況として、疾患晩期で腎不全が進行した時期には血尿が消失する可能性があり、その場合は腎不全などのしかるべき徴候を確認する。*2 IV型コラーゲン遺伝子変異:COL4A3またはCOL4A4のホモ接合体またはヘテロ接合体変異、またはCOL4A5遺伝子のヘミ接合体(男性)またはヘテロ接合体(女性)変異をさす。*3 IV型コラーゲン免疫組織化学的異常:IV型コラーゲンα5鎖は糸球体基底膜だけでなく皮膚基底膜にも存在する。抗α5鎖抗体を用いて免疫染色をすると、正常の糸球体、皮膚基底膜は線状に連続して染色される。しかし、X連鎖型アルポート症候群の男性患者の糸球体、ボーマン嚢、皮膚基底膜はまったく染色されず、女性患者の糸球体、ボーマン嚢、皮膚基底膜は一部が染色される。常染色体劣性アルポート症候群ではα3、4、5鎖が糸球体基底膜ではまったく染色されず、一方、ボーマン嚢と皮膚ではα5鎖が正常に染色される。注意点は、上述は典型的パターンであり非典型的パターンも存在する。また、まったく正常でも本症候群は否定できない。*4 糸球体基底膜の特異的電顕所見:糸球体基底膜の広範な不規則な肥厚と緻密層の網目状変化により診 断可能である。良性家族性血尿において、しばしばみられる糸球体基底膜の広範な菲薄化も本症候群においてみられ、糸球体基底膜の唯一の所見の場合があり注意を要する。この場合、難聴、眼所見、腎不全の家族歴があればアルポート症候群の可能性が高い。また、IV型コラーゲン所見があれば確定診断できる。*5 特異的眼所見:前円錐水晶体(anterior lenticonus)、後嚢下白内障(posterior subcapsular cataract)、後部多形性角膜変性症(posterior polymorphous dystrophy)、斑点網膜(retinal flecks)など。ASがIV型コラーゲン異常によるものであることが判明し、特徴的な糸球体基底膜の電子顕微鏡所見やIV型コラーゲン異常が証明されれば、家族歴や難聴は診断に必須ではない。したがって、家族歴のない例ではASを念頭に置かないと正しく診断できないことがあり、注意を要する。すなわち、家族歴のない血尿症例においても突然変異例が含まれるので、原則的に血尿がみられる疾患はすべて鑑別疾患となる。したがって、非家族性血尿の症例においても腎生検をする場合には、電顕による糸球体基底膜の観察が重要である。小児期、特に10歳以下の症例では血尿が唯一の症状であることが多く、腎不全の家族歴が明らかでない場合、鑑別は困難である。家族性に血尿がみられるが腎不全の家族歴がない場合、その血尿患者の腎生検の適応は通常の腎生検の適応と同じであるが、経過中に腎不全の家族歴が確認された場合や本人に病的タンパク尿が持続するときは腎生検を施行し、糸球体基底膜の電顕による観察により鑑別することが重要である。1)ASの腎病理所見1,3)光学顕微鏡所見は非特異的である。泡沫細胞は高度タンパク尿によるもので、本症候群に特異的というわけではないが診断上参考になる。電子顕微鏡所見は特異的で、糸球体基底膜の広範な不規則な肥厚と緻密層の網目状変化がみられれば本症候群と診断できる。良性家族性血尿において、しばしばみられる糸球体基底膜の広範な菲薄化も本症候群においてみられ注意を要する。糸球体基底膜の厚さは正常では300nm以上あるが、良性家族性血尿や本症候群では150〜200nmと異常に薄い場合がみられ、糸球体基底膜が断裂して糸球体上皮細胞と内皮細胞が直接接触していることもある。本症候群の糸球体基底膜は、網目状変化のために肥厚した部分、異常に薄い部分、正常な部分が混在する。疾患の進行に伴い糸球体基底膜は肥厚し、薄い部分、正常な部分は減少していく。正確に評価された腎電顕所見により家族歴や難聴等の無い場合でも診断が可能である。2)免疫組織学的検索による診断1,3,4)IV型コラーゲン遺伝子バリアントの影響を蛋白レベル、すなわちα鎖の発現を検索し、本症候群の確定診断可能な場合がある。IV型コラーゲンα5鎖は糸球体基底膜だけでなく皮膚上皮基底膜にも存在する。抗α5鎖抗体を用いて免疫染色をすると、正常の糸球体、皮膚基底膜は線状に連続して染色される。しかし、X連鎖型ASの男性患者の糸球体、皮膚基底膜はまったく染色されず、女性患者の糸球体、皮膚基底膜は一部が染色される。X連鎖型ASの男性患者の糸球体基底膜は正常では存在するα3鎖とα4鎖も欠損し、かつ疾患の重症度と関係を認める。注意を要する点は、上述は典型的パターンであり、非典型的パターンも存在する。また、抗α5鎖抗体を用いた染色が正常でも本症候群は否定できない。X連鎖AS男性患者の糸球体基底膜では、患者の一部にα5鎖が発現している例があり、これらの患者は非発現例と比較して、軽症例であることが明らかになっている5)。3)遺伝子診断1-3)確定診断のためα3〜α5鎖遺伝子のバリアントが検索されている。ゲノムDNAを用いてすべてのエクソンとプロモーター領域をPCRで増幅し、ダイレクトシークエンスを行うことで80%を超える遺伝子バリアントの検出率が得られる。さらに、RNAを使用する方法やMLPA法(Multiplex Ligation-dependent Probe Amplification)などによりほぼ100%原因遺伝子バリアントが検出できる。近年では、次世代シーケンサを用いたパネル解析が有用である。ASの遺伝子診断について、原因遺伝子が大きくホットスポットもなく、現時点で労力とコストの面から考えて容易とは言えないが、遺伝子解析技術の進歩に伴い診断における意義が高まると考えられる。3 治療 (治験中・研究中のものも含む)3)現時点では疾患特異的治療はなく、対症療法が中心である。アンジオテンシン変換酵素阻害薬(ACEI)やアンジオテンシンII受容体拮抗薬(ARB)の投与により、腎機能障害進行阻止が可能となり、末期腎不全への進行年齢を遅らせられていることが報告されている。ただし、一般的にACEIやARB使用中は容易な脱水から腎機能低下を引き起こすので、水分が十分摂取できないときは中止するなどの指示が重要である。これまでの知見では、AS患者の透析導入後および腎移植後の予後は、他疾患に存在する腎予後に影響する併存合併症が少ないために良好であると考えられる。そのため、ASに対する腎代替療法を特別視することなく、他の慢性腎臓病と同様の腎代替療法導入基準・適応でよいと考えられる。各腎代替療法における注意事項としては、血液透析ではASに特異的な注意事項はないと考えられる。腹膜透析では血管基底膜への影響により被嚢性腹膜硬化症が増加するのではないかという可能性を論じた報告があるが推測の域を出ず、大規模データの予後結果を踏まえると、腹膜透析を避ける根拠にはならないと考えられる。腎移植においては、遺伝性疾患であるため生体腎移植時の腎提供者(ドナー)の問題、また、腎移植後の再発性腎炎(新規抗糸球体基底膜抗体腎炎)の問題が存在する。4 今後の展望■ 薬物療法近年、バルドキソロンメチルの治験がASで実施され、eGFRの改善において有効な結果が示されている(ClinicalTrials.gov Identifier: NCT03019185: A Phase 2/3 Trial of the Efficacy and Safety of Bardoxolone Methyl in Patients With Alport Syndrome – CARDINAL.■ 遺伝子治療遺伝子治療の1つとして、神戸大学小児科を中心にエクソンスキッピング療法の開発が進行中である(AMED:希少難治性疾患に対する画期的な医薬品医療機器等の実用化に関する研究薬事承認を目指すシーズ探索研究(ステップ0)「Alport症候群に対する新規治療法の開発」)。5 主たる診療科腎臓専門医(小児科、内科)、耳鼻科、眼科※ 医療機関によって診療科目の区分は異なることがあります。6 参考になるサイト(公的助成情報、患者会情報など)診療、研究に関する情報小児慢性特定疾病情報センター 慢性糸球体腎炎(一般利用者向けと医療従事者向けのまとまった情報)難病情報センター アルポート症候群(一般利用者向けと医療従事者向けのまとまった情報)Alport Syndrome Foundationホームページ(日本語の選択も可能)(一般利用者向けと医療従事者向けのまとまった情報)1)Nozu K, et al. Clin Exp Nephrol. 2019;23:158-168.2)Kashtan CE, et al. Kidney Int.2018;93:1045-1051.3)日本小児腎臓病学会編集. アルポート症候群診療ガイドライン2017. 診断と治療社;2017.p.1-85.4)Nakanishi K, et al. Kidney Int. 1994;46:1413-1421.5)Hashimura Y, et al. Kidney Int.2014;85:1208-1213.公開履歴初回2020年02月10日

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