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【GET!ザ・トレンド】小さじ10分の1の血液で、アルツハイマー病前臨床段階でのアミロイドβを検出(2)

CareNet.com会員からの質問に田中 耕一氏が回答今回の測定原理において、測定物質にどのような性質があると検出しやすいのでしょうか?まずイオン化しやすいもの、そして電気信号として検出できる物質です。分子量が15万もある抗体のような大きな物質をそのまま測る場合、イオンになったとしても電気信号として検出されるのは難しいのです。今回は、タンパク質ではなく分子量が5千程度のペプチドをバイオマーカーにできたことが、成功の大きな理由だと思います。今回の測定技術は、がんの早期診断に応用できますか?がんは遺伝子が傷つくことで発症しますが、質量分析は、その遺伝子からできるタンパク質だけでなく、代謝物などをも含む様々な化合物がどのくらい体に含まれているかを、早期に確認できます。すでに多くの研究機関でがんの早期診断の研究がなされています。さらにそれは、血液に限らず、尿や唾液など受診者に負担の少ない検体にも応用可能だと思います。ノーベル賞を受賞した当時から現在までに、国内企業での研究事情はどのように変化したと思われますか? 医学分野との融合についてはいかがでしょうか?田中氏が所長を務める島津製作所田中耕一記念質量分析研究所かつては、「質量分析で微量なものを測れるはずがない」という考えが、日本に根強くあったように思います。医学分野においても、成果が十分に伝わっておらず、ご理解いただけなかったこともあります。一方、海外では、すでに医学部と分析機器メーカーの共同研究が活発に行われていました。ただ、そういった状況も、2000年頃から変化し始めました。今では日本でも、質量分析の応用研究は加速度的に進み出しています。医療者に伝えたいことをお聞かせください。今回の研究で用いた質量分析器の前で、田中氏と金子氏東大阪、東京の墨田区、大田区などには、世界に誇る技術を持った企業がたくさんありますが、どうもモノ作りの旗色が悪いですね。優れた技術を医療に活かすには、コミュニケーションが重要だと思います。話し合う機会がないと、せっかくの基礎研究や応用研究がモノ作りに結び付きにくい。お互いをつなげられれば、医学界にも、分析機器を含めた製造業にとっても、意義深い。先進国はすべて高齢化の課題を抱えていますが、医工連携で日本は課題解決先進国になれる可能性が大いにあり、世界の方々に日本発の製品や技術を喜んで取り入れていただけるようになると思っています。

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ギラン・バレー症候群の治療に新たな光-千葉大の研究-

 ギラン・バレー症候群は、手足のしびれ・麻痺を急速に生じる末梢神経の病気で、先進国で最も多い急性四肢麻痺の原因だ。日本でも年間約1,400人が発症する。しかし、25年以上にわたり、有効性を示すギラン・バレー症候群の新たな治療法の報告はなく、難病とされてきた。 今回、千葉大学医学部附属病院 神経内科教授の桑原 聡氏らの研究グループは、ギラン・バレー症候群の患者への臨床試験を行い、薬剤「エクリズマブ」の有効性を世界で初めて示した(Lancet Neurology誌オンライン版2018年4月20日号に掲載)。ギラン・バレー症候群の治療については、1992年に免疫グロブリン療法の有効性がオランダから報告されて以来の進展で、日本から新規治療の可能性を示すことができたのは、今回が初。ギラン・バレー症候群は患者の約4割が職業変更を迫られる難病 ギラン・バレー症候群の治療は、回復を早めるために免疫グロブリン療法や血漿交換療法が行われるのが一般的だ。しかし、重症例には、現在の治療法は十分ではなく、強い炎症による大きなダメージが末梢神経に生じる。 実際、患者の約5%が死亡に至り、約2割は急性期を過ぎた後も重い麻痺や感覚低下が残り、約4割で職業変更を迫られる。そのため、ギラン・バレー症候群の新たな治療が望まれていた。ギラン・バレー症候群治療6ヵ月で、7割以上が後遺症をほぼ残さずに回復 今回、桑原氏らの研究グループは、発症間もないギラン・バレー症候群の重症患者34例を対象に、免疫グロブリン療法に加えて、エクリズマブの効果を検討する臨床試験を行った。本研究は、厚生労働科学研究受託事業、日本医療研究開発機構(AMED)の支援を受けて実施された第II相多施設共同前向き試験である。 結果は、エクリズマブ投与により、ギラン・バレー症候群の治療開始4週時点で自力歩行可能まで回復した患者が61%(従来治療:プラセボ群では45%)、24週時点で走行可能まで回復した患者が74%(プラセボ群では18%)に認められた。 ただし、推定期待値を下回る結果であったため、統計学的には有意な有効性との結論には至らなかった。 関連が否定できない重篤な有害事象として、アナフィラキシー、脳膿瘍が認められたが、いずれの患者も回復。死亡、髄膜炎菌感染は認められていない。ギラン・バレー症候群に対する25年ぶりの新規治療の可能性に寄せられる期待 桑原氏はこの結果を受け、「本試験は規模も小さく、統計学的に有意と結論できる有効性は検出できなかったものの、治療開始6ヵ月で、7割以上が走ることができるまでに回復したという事実は、ギラン・バレー症候群の克服を予感させる結果である」とコメントしている。 今後は、検証的な第III相試験に向けた取り組みを行い、最終的には、臨床現場で薬が実際に利用できるようになることを目指すという。 25年以上進歩のなかったギラン・バレー症候群の新規治療の可能性に、世界中の専門家が大きな期待を寄せている。

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第1回 意識障害 その1 客観的な意識の評価方法【救急診療の基礎知識】

72歳男性の意識障害:典型的なあの疾患の症例72歳男性。友人と食事中に、椅子から崩れるようにして倒れた。友人が呼び掛けると開眼はあるものの、反応が乏しく救急車を要請した。救急隊到着時、失語、右上下肢の麻痺を認め、脳卒中選定で当院へ要請があった。救急隊接触時のバイタルサインは以下のとおり。どのようにアプローチするべきだろうか?●搬送時のバイタルサイン意識:3/JCS、E4V2M5/GCS血圧:188/102mmHg 脈拍:98回/分(不整) 呼吸:18回/分SpO2:95%(RA) 体温:36.2℃ 瞳孔:3/3mm+/+意識障害の認識意識障害のアプローチにおいて、重要なことは何でしょうか。原因検索、バイタルサインの改善、安定化はもちろんですが意外と忘れがちなことがあります。それは、「目の前の患者は意識障害」だと認識することです。当たり前のようですが、この当たり前のことができておらず、対応が遅れる、または重症度を見誤ってしまうことが少なくありません。とくに初診患者や高齢者の患者ではありがちです。発熱のせい、認知症のせい、難聴のせいなど、「普段からこんなものだろう」と軽度の意識障害は軽視されがちです。必ず、普段の意識状態と比較して判断するようにしましょう。また、主治医や家族への確認、以前のカルテ記載の検索も怠らずに行いましょう。そして、患者の以前の状態をよく知る家族や施設職員からの、「普段とは違います」というコメントを軽視してはいけません。逆に、見当識障害や失語が認められても、普段と同様であれば焦る必要はないでしょう。認知症や脳卒中後が代表的です。救急の現場において、緊急性が高い病態、重篤な病態を見逃さないようにするためには、症状や検査異常が急性のものか、慢性のものかを判断することが大切です(コラム(1)参照:急性か慢性か、それが問題だ!)。軽度であっても突然、もしくは急性発症の意識障害は早期に対応する必要があるのに対して、慢性経過の意識障害であれば原因検索は必要ですが、1分1秒を争う病態ではありません。意識障害の評価意識障害患者を診たら、まずは客観的な指標で程度を評価しましょう。意識障害の評価では、Glasgow Coma Scale(GCS)(表1)、Japan Coma Scale(JCS)(表2)が有名です。画像を拡大する画像を拡大する救急外来では他科の先生方へコンサルトすることも多く、「様子がおかしい」という表現では相手に患者さんの状況をうまく伝えられません。また、意識障害の経時的な変化は鑑別に大きく影響するため、その時々の意識障害の程度を把握し、記載しておくことも重要です。たとえば初診時にはE3V4M5/GCSであった意識状態が、薬剤などの介入がなく自然にE4V5M6/GCSへ改善したのであれば、低血糖や脳卒中は否定的です。この場合には、痙攣などが鑑別の上位に挙がるでしょう。そして、GCS、JCSはそれぞれの長所、短所を理解したうえで使用する必要があります(表3)。画像を拡大するここでは、GCS、JCSを評価する際の注意点を理解しておきましょう。どちらも開閉眼の有無が点数に大きく反映されますが、診察時に閉眼していたからといってGCSはE3以下、JCSは2桁以上というわけではありません。呼び掛けたその後が問題です。閉眼していたとしても、呼び掛け問診にきちんと応じることができる場合にはGCSではE4、JCSでは1桁ということになります。それに対して、開眼するものの、問診中に(話し掛けているにもかかわらず)閉眼してしまう場合には意識障害と捉える必要があります。私は、15秒程度開眼を維持することができなければ、意識障害ありと判断し対応しています。そのほかにもGCS、JCSの短所を解消すべく開発されたECS(Emergency Coma Scale)(表4)というものがあります。画像を拡大する救急外来で使用するために作成されたものであり、まばたきや睫毛反射の有無(まばたきが可能であれば、脳幹網様体の機能は正常)や、脇を閉じているか否かで除脳硬直、除皮質硬直を区別して分類している点が特徴です。現在、国内の救急隊はJCSを使用し、海外の論文などではGCSを採用しているのが現状であるため、ECSはわが国の救急外来では普及していないのが現状ですが、評価項目や作成に至った経緯は参考になるため、興味がある方は調べてみてください。さて、前置きが長くなりましたが、実際の症例をみてみましょう。72歳男性の意識障害の原因は何でしょうか? 多くの方が急性期脳梗塞、その中でも心原性脳塞栓症を考えるでしょう。それでは、その可能性はどの程度でしょうか? 100%ですか? それとも70%、50%…また、鑑別すべき疾患は何でしょうか? 迷わず血栓溶解療法を行ってよいのでしょうか?意識障害にかかわらず、患者さんが訴える症状や症候に対してアプローチする際には、患者さんごとにアプローチを変えていては、時間が限られている救急外来では見落としの原因となってしまいます。そこで次回は、「意識障害の具体的なアプローチ」を学んでいきましょう!コラム(1) 急性か慢性か、それが問題だ!バイタルサインや検査値の異常を拾いあげることは重要ですが、緊急性を判断するためには、その異常がいつからかを把握することが大切です。Na 126mEq/Lという結果をみて、低ナトリウム血症と判断することは簡単ですが、治療の緊急度は数値の絶対値以上に変化のスピードが重要です。1ヵ月前の検査結果で125mEq/Lであれば、著明な症状が出る可能性は低く、緊急性は高くありません。それに対して、数日前のNa値が135mEq/Lであれば、急性の変化であり、緊急性が高くなります。胸部の異常陰影や心電図変化、Hb値なども同様です。急性か慢性かを判断し、緊急性の適切な判断を行いましょう。(次回は5月23日の予定)

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POEMS(クロウ-深瀬)症候群

1 疾患概要■ 概念・定義POEMS症候群の名称は、polyneuropathy、organomegaly、endocrinopathy、M-protein、skin changeの頭文字に由来する。「クロウ-深瀬症候群」、「高月病」とも呼ばれる。名称のとおり、多発ニューロパチーを中核症状とし、肝脾腫などの臓器腫大、内分泌異常、皮膚変化(色素沈着、剛毛、血管腫など)という多彩な症状を呈し、M蛋白を伴う全身性の疾患である。症状は多彩であるが、その病態基盤は形質細胞異常(plasma cell dyscrasia)とサイトカインである血管内皮増殖因子(vascular endothelial growth factor:VEGF)の上昇であると考えられている。多発ニューロパチーが中核症状となることが多い一方で、plasma cell dyscrasia由来の疾患でもあり、神経内科または血液内科で診療することが多い。2015年1月に、新規に指定難病の1つとなった。■ 疫学わが国で行われた2003年の全国調査に基づく推定有病率は、10万人当たり0.3人であり、いわゆる希少疾病である。しかし、その多彩な症状ゆえに、診断が困難な例も少なくなく、実際の有病率はもう少し高い可能性がある。平均発症年齢は50代であるが、30代の発症もまれではない。男性に多い。■ 病因上述のごとく、POEMS症候群の病態の中心はplasma cell dyscrasiaとVEGFの上昇であると推定されている。VEGFは血管新生作用以外に強い血管透過性亢進作用を持ち、本症候群で特徴的に認められる浮腫、胸腹水などの所見とよく合致する。しかし、plasma cell dyscrasiaとVEGF上昇がどのように関連するかについては、現時点では不明である。また、多発ニューロパチー、内分泌異常、皮膚異常などの症状が生じるメカニズムについても明確になっていない。VEGF上昇とともに、TNFα、IL6、IL-12を含む複数の炎症性サイトカインの上昇も確認されており、複雑な病態に関与している可能性が高い。■ 症状POEMS症候群で認められる臨床症状として頻度が高いのは、多発ニューロパチー、浮腫、皮膚変化、リンパ節腫脹、女性化乳房である。典型的な多発ニューロパチーは、下肢優位の四肢遠位のしびれと筋力低下を呈する。重症度は症例により異なり、アキレス腱反射の低下のみの症例から重度の四肢麻痺の症例まで存在する。また、数ヵ月の経過で、歩行に介助が必要になるまで進行する例が多い。通常、浮腫は下腿以遠に目立つ。進行例では、明確な圧痕を残すほど顕著となり、腹部、上肢、顔面にも浮腫が出現する。皮膚変化は、色素沈着、剛毛の頻度が高い。色素沈着は独特のやや赤味を帯びた褐色を呈する(図)。剛毛は前腕や下腿に目立つ。画像を拡大する■ 予後POEMS症候群の機能・生命予後は、適切な治療が行われない場合、不良である。機能予後は、多発ニューロパチーの重症度に依存する。無治療では過半数の症例が、発症1年以内に杖歩行となる。また、1980年代は適切な治療が行われなかったため、平均生存期間は33ヵ月と報告されている。近年、疾患の認知度向上による診断技術の向上、ならびに骨髄腫治療の本症候群への応用による治療の進歩で、予後は大幅に改善しつつある。しかし、急速な悪化を認めうる疾患であり、また多臓器障害が生じることも少なくないので、治療方針検討や経過観察には、慎重を期す必要がある。低アルブミン血症、初回治療への反応性不良、高齢(50歳以上)、肺高血圧、胸水、腎機能障害などが、予後不良因子として挙げられている。2 診断 (検査・鑑別診断も含む)POEMS症候群の診断は診断基準に基づいて行われる。しかし、類似の診断基準が複数あり、いずれも感度・特異度について検討されていないのが、現在の問題点である。国際的に最も代表的な基準は、2012年のCochrane database systematic reviewで採用されているものである。しかし、わが国では、下表の診断基準が指定難病の認定に使用されている。本診断基準の特徴は、単クローン性形質細胞増殖が検出できない例であっても、積極的に診断できる点において優れている。そのため、日常診療で運用する上では、下表の診断基準を用いる方が、診断感度も高く、利便性にも優れる。表 POEMS症候群の診断基準●大基準多発ニューロパチー血清VEGF上昇(1,000 pg/mL以上)M蛋白(血清または尿中M蛋白陽性 [免疫固定法により確認] )●小基準骨硬化性病変、キャッスルマン病、臓器腫大、浮腫、胸水、腹水、心嚢水、内分泌異常*(副腎、甲状腺、下垂体、性腺、副甲状腺、膵臓機能)、皮膚異常(色素沈着、剛毛、血管腫、チアノーゼ、爪床蒼白)、乳頭浮腫、血小板増多(1)Definite:大基準3つ+小基準 少なくとも1つ(2)Probable:大基準2つ+小基準 少なくとも1つ*糖尿病と甲状腺機能異常は有病率が高いため、これのみでは本基準を満たさない。引用: Misawa S, et al. Clin Exp Neuroimmunol. 2013;4:318-325.以下に、検査、診断に際しての注意点を列記する。1)多発ニューロパチー明確な自覚症状を認めない場合もあり、神経伝導検査によるニューロパチーの有無の検索と性状の確認は必須である。原則は、本症候群のニューロパチーの性状は脱髄と二次的軸索変性である。非常に軽症例では、ごくわずかの異常しか認められない場合もある。2)単クローン性の形質細胞増殖血液・尿のM蛋白のスクリーニングにより、大部分の症例では検出可能である。しかし、POEMS症候群ではM蛋白の量は非常に微量のため、免疫固定法による確認が必須である。M蛋白のサブクラスの多くはIgGまたはIgAのλ型である。3)VEGF外注検査会社で測定可能である。VEGF値の測定は、診断確定、治療効果判定に非常に有用であるが、現時点では保険適用にないことが大きな問題点である。血清・血漿のいずれで測定すべきかの結論は出ていない。しかし、指定難病の認定は血清で行われている。外注検査会社に「血清で測定」の指示にて依頼する。4)骨病変硬化性変化が一般的である。しかし、溶骨性変化や混合性変化を認めることもある。胸腹水の検索目的で施行した胸腹骨盤部のCT検査の骨条件で胸骨、椎体、骨盤などの硬化性病変をスクリーニングすることが可能である。さらに精査を進める際には、PET検査が有用である。5)内分泌障害性腺機能異常、甲状腺機能異常、耐糖能異常、副腎機能異常などの頻度が高い。スクリーニング検査として、LH・FSH・E2(エストラジオール)・テストステロン・TSH・FT3・FT4・血糖・インスリン・ACTH・コルチゾールなどの検査を行う。鑑別診断として問題となりやすいのは、慢性炎症性脱髄性多発根ニューロパチー(chronic inflammatory demyelinating polyradiculoneuropathy:CIDP)、ALアミロイドーシスである。POEMS症候群の進行例では、浮腫・皮膚障害をはじめ、多彩な典型的症状を伴うため、鑑別が問題となることは少ない。しかし、発症初期で臨床症状や検査所見が揃わない場合には、ニューロパチーの臨床および神経伝導検査所見を詳細に比較することにより、鑑別が可能となる。CIDPの典型例の臨床症状は、左右対称性のしびれと近位筋を含む筋力低下であり、四肢遠位優位のしびれと筋力低下を呈するPOEMS症候群とは臨床症状が異なる。しかし、CIDP、POEMS症候群とも、神経伝導検査は脱髄所見を示すこと、CIDPのほうが有病率・認知度ともに高いことが影響し、POEMS症候群がCIDPと初期診断される確率は高い。典型的CIDPの多くの症例では、ステロイド、免疫グロブリン、血漿交換などの治療に反応する。したがって、治療抵抗例では診断の再考が必要な場合がある。ALアミロイドーシスは、POEMS症候群と同様、四肢遠位優位のしびれと筋力低下を呈する。しかし、神経伝導検査では軸索変性所見を呈するため、POEMS症候群とは異なる。その他、大量の胸水や腹水単独で発症する例もあり、原因が特定できない場合には、本症候群を鑑別疾患の1つとして挙げることも考慮する。3 治療 (治験中・研究中のものも含む)POEMS症候群の症状は多彩であるが、治療のターゲットはplasma cell dyscrasiaである。そのため、近年は骨髄腫の治療法が本症候群に応用されている。治療方針の原則は、若年者では自家移植、高齢者では免疫調整薬が第1選択とされてきた。移植適応年齢の上限は、65歳から70歳へと、近年引き上げられつつある。自家移植に伴う関連死や再発のリスクが明確になりつつあることを考慮すると、若年軽症例、とくに30代の患者では、リスクとベネフィットおよび長期にわたる疾患コントロールの観点から、移植が第1選択とは必ずしもいい切れなくなってきている。そのような症例では、免疫調整薬が第1選択となる可能性がある。以下に、現在有効であると考えられている治療法について概説する。しかし、いずれも保険適用がないのが、問題点となっている。■ 自己末梢血幹細胞を伴う高用量化学療法通常、骨髄腫とほぼ同様の方法で行われている。自己末梢血幹細胞採取は、顆粒球コロニー刺激因子単独またはシクロホスファミド(商品名:エンドキサン)併用で行われる。続いて、高用量のメルファラン(同:アルケラン)による前処置後に幹細胞移植が行われる。最近では、移植前にサリドマイド(同:サレド)、レナリドミド(同:レブラミド)やボルテゾミブ(同:ベルケイド)などの前治療を行い、病勢をコントロールしてから、自家移植へ進むこともある。移植後、VEGF値は約1~3ヵ月で速やかに低下し、引き続き臨床症状全般の改善が生じる。移植後の再発に関する報告も増えつつあり、無増悪生存率は1年で98%、5年で75%とされる。再発後の治療の選択肢としては再移植、サリドマイドなどの免疫調整薬などが選択されることが多い。■ 免疫調整薬現時点における免疫調整薬の選択肢は、サリドマイド、レナリドミドである。サリドマイド、レナリドミドとも、やはり骨髄腫と同様の用法・用量で使用されており、デキサメタゾン(同:レナデックス、デカドロンなど)が通常併用される。ポマリドミド(同:ポマリスト)は、レナリドミドの次に開発された免疫調整薬であるが、本症候群への使用の報告はまだない。サリドマイドは、本症候群における有効性が、プラセボ対照二重盲検ランダム化群間比較試験で、唯一示されている薬剤である。前記試験は、わが国において医師主導治験として実施されており、適用取得に向けて準備中である。レナリドミドについても、単群オープン試験が報告されており、やはり有効性が示されている。副作用として、サリドマイドでは徐脈、末梢神経障害などに、レナリドミドでは骨髄抑制に、とくに注意が必要である。若年軽症例では、現時点では自家移植ではなく免疫調整薬を選択しても、将来的には自家移植の適応となる可能性がある。その際には、レナリドミドの長期使用により、幹細胞採取が困難となる可能性があるため、長期的な展望の下に、薬剤の選択と治療期間の検討を行う必要がある。■ プロテアソーム阻害薬骨髄腫治療薬として主要な位置付けとなっているプロテアソーム阻害薬も、POEMS症候群に有効な可能性がある。本症候群においては、ボルテゾミブの有効性についての症例報告が集積されつつある。臨床試験の報告はない。カルフィルゾミブ(同:カイプロリス)については、1例の報告のみで、神経症状の安定化が認められたとされる。イキサゾミブ(同:ニンラーロ)については、現在、米国で臨床試験が進行中である。用法・用量は、骨髄腫と同様に使用されることが多い。しかし、プロテアソーム阻害薬の注意すべき副作用として、末梢神経障害がある。そのため、投与中は末梢神経障害の発現に注意しつつ、投与間隔の延長や治療の中断を考慮する。ボルテゾミブに関しての報告が最も多く、効果の発現が免疫調整薬と比較し、速やかな可能性がある。亜急性進行を示す例において、選択肢の1つとなる可能性がある。4 今後の展望現在、骨髄腫治療薬は、早いスピードで開発が進んでいる。これまでの免疫調整薬・プロテアソーム阻害薬の本症候群における有効性を鑑みると、新規薬もおそらく有効である可能性が高い。そのため、本症候群に応用できる選択肢が、今後も引き続き増加することが予測される。現時点では、本症候群における新規治療の試みは、希少かつ重篤な疾患であるがゆえに、1~数例の報告が主体である。しかし、サリドマイドの本症候群への適応拡大のために行われたランダム化群間比較試験のように、今後は適切な臨床試験を可能な限り行い、エビデンスを積み重ね、治療戦略を構築する試みを継続すべきである。治療の進歩に伴い、本症候群の認知度は確実に向上しており、早期診断・治療の加速により、予後は明らかに改善しつつある。また、稀少疾病の新規治療開発を加速させる手段の1つとして、本症候群の症例登録システムも構築されている。全国に散在している症例の情報を集積し、新規治療の有効性や予後について明らかにすることが目的である。さらに、未来の新規治療薬の臨床試験においては、適応となりうる患者に迅速に情報を届けることも、もう1つの主要な目的である。一方で、診断・病勢のマーカーとなるVEGF測定や有効とされる新規治療が、いまだ1つも保険適用とされていないことが、すべての患者さんが、いずれの医療機関でも標準的な診療を受けることへの大きな障壁となっている。このような問題点に関しても、今後の解決が期待される。5 主たる診療科神経内科または血液内科 ※ 医療機関によって診療科目の区分は異なることがあります。6 参考になるサイト(公的助成情報、患者会情報など)診療、研究に関する情報難病情報センター クロウ・深瀬症候群(一般利用者と医療者向けのまとまった情報)千葉大学大学院医学研究院 神経内科学 J-POST trial(医療者向けのまとまった情報)千葉大学大学院医学研究院 神経内科学 患者登録システム(一般利用者と医療者向けの症例登録の窓口)患者会情報POEMS症候群 サポートグループ(本症の患者および家族の会)1)Kuwabara S, et al. Cochrane Database Syst Rev. 2012;6:CD006828.2)Misawa S, et al. Clin Exp Neuroimmunol. 2013;4:318-325.3)Dispenzieri A. Am J Hematol. 2014;89:214-223.4)Misawa S, et al. Lancet Neurol. 2016;15:1129-1137.5)Jaccard A. Hematol Oncol Clin North Am. 2018;32:141-151.6)Nozza A, et al. Br J Haematol. 2017;179:748-755.7)Mitsutake A, et al. J Stroke Cerebrovasc Dis. 2018.[Epub ahead of print]公開履歴初回2015年07月28日更新2018年04月24日

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【GET!ザ・トレンド】小さじ10分の1の血液で、アルツハイマー病前臨床段階でのアミロイドβを検出(1)

「物質をレーザー照射によりイオン化(電荷を付加)する」技術(MALDI)と「真空中での飛行時間が質量によって異なる性質を利用し、物質を特定する」技術(TOF)を組み合わせた「MALDI-TOF*」。この質量分析法が、0.5mLの血液を用いるだけで、アルツハイマー病の前臨床段階から、脳内に蓄積するアミロイドの状態を推定することを可能にした。研究はNature誌で2018年2月に発表され、大きな話題となった。質量分析の研究(ソフトレーザー脱離イオン化法)で、2002年のノーベル化学賞を受賞した、島津製作所シニアフェロー(田中耕一記念質量分析研究所 所長)田中 耕一氏に、この発表内容について聞いた。*MALDI-TOF:matrix-assisted laser desorption ionization time-of-flight今回確立したアミロイドβの検出方法の概要をご紹介ください。一言でいうと、質量分析という高感度な方法を用いて、微量の血液0.5mLで、アルツハイマー病の原因といわれているアミロイド関連ペプチドを検出する方法です。0.5mLというと、だいたい小さじ10分の1に当たります。画像を拡大する抗体ビーズ法でAβ関連ペプチドを取り出す脳内で作られたアミロイドβ(Aβ)関連ペプチドが、血液中に漏出していることは以前から報告されていました。しかし、血液中には非常に多種多量のタンパク質やペプチドがあり、その中から極めて微量しかないAβ関連ペプチドの検出は、かなり難しい。草原の中から珍しい種子を探すようなものです。Aβ関連ペプチドの検出には、従来抗体を用いた質量分析(免疫沈降質量分析:IP-MS)が使われていましたが、精度は不十分でした。そのような中、当研究室の金子 直樹(島津製作所 田中耕一記念質量分析研究所 アプリケーショングループ 主任)が、Aβ関連ペプチドと結合する抗体を数多く付けた酸化鉄のビーズを用いた前処理方法(抗体ビーズ法)を大幅に改良し、Aβ関連ペプチドのみを血液から取り出すことに成功しました。その抗体ビーズからAβ関連ペプチドを分離して、マトリックス(イオン化補助剤)を添加し、レーザー照射でイオン化して、真空中の飛行時間からペプチドの質量を測定するのです。その結果、従来は存在すらわかっていなかったものも含め、22種類のAβ関連ペプチドが検出されました。ビーズ抗体に付着したAβ関連ペプチドを引き寄せ、取り出す原理(解説:田中 耕一氏)そこで検出されたAβ関連ペプチドから新たなバイオマーカーが発見されたわけですね?Aβ関連ペプチドとして、すでにAβ1-40とAβ1-42が知られていました。当初はAβ1-42の絶対量がバイオマーカーとして有用だと思っていたのですが、それより良い結果を示すものがありそうだと、この研究で新たに発見されたAβ関連ペプチドAPP* 699-711に着目したのです。Aβ1-42はアミロイド生成の原料となるため、血液への漏出が減少します。一方、Aβ1-40、APP 699-711は、血液への漏出はほぼ一定の割合です。この性質を利用し、APP 699-711/Aβ1-42のペプチド比からアミロイド蓄積の有無を高い精度で判別することができました。研究成果は2014年に発表しています。画像を拡大するその後、予備研究を行い、APP 699-711/Aβ1-42にAβ1-40/Aβ1-42を組み合わせた2つのペプチド比による複合バイオマーカーで、さらなる精度を証明したのが今回の発表です。有用性は、日本とオーストラリアの計373例のサンプルにおけるAβ蓄積について、PET画像判定と血漿の質量分析の結果を、ブラインドで検証しました。PET画像による脳内Aβ蓄積陽性・陰性例に対するROC解析のAUCが0.967、PET画像との正診率が約9割という良好な結果を示しました。従来はPETや脳脊髄液検査という負担の大きい検査が必要でしたが、質量分析によって、0.5mLの血液を用い、脳内Aβの蓄積量を前臨床段階から推定できました。*APP(Amyloid Precursor Protein):アミロイド前駆タンパク質今回の検出方法の確立までに苦心されたことは?抗体ビーズ法でAβ関連ペプチドの取り出しに成功し、血液バイオマーカーの共同研究を行った金子 直樹氏まず1つは、今までお話しした、バイオマーカー候補の発見までです。次は、臨床情報が付帯している検体を持っている方と組むことでした。弊社の金子が前処理方法を開発し、道具はそろっていたものの、判定に使えるかどうかかわからないという状態でした。医学界とのコミュニケーションが十分ではなかったので、適切なパートナーを探せなかったのです。そんな時、国立長寿医療研究センターの柳澤 勝彦先生とお会いできました。柳澤先生とは進む方向が一緒だったので研究もうまくいき、2014年の発表につながったと思います。さらに、海外とも一緒に研究しようという話になり、Nature誌で発表した今回の研究に広がっていきました。本研究のアルツハイマー病治療への活用についてお聞かせください。画像を拡大する現時点ではあくまで可能性の段階ですが、応用としては、3つ考えられます。1つ目はアルツハイマー病の根本治療薬の開発です。現在、アルツハイマー病を前臨床期から見分けられるのはアミロイドPETあるいは脳脊髄液検査だけです。コストも高く受診者への侵襲度も高くなります。私達の方法であれば、低コストかつ低侵襲で超早期のアミロイド蓄積度合いが推定可能です。現在の治療は、認知障害や諸症状が現れてから介入される場合がほとんどであり、アミロイドが完全に蓄積する前の状態がわかれば、根本治療薬開発が容易になります。2つ目は認知症の鑑別への応用です。たとえば、脳内のアミロイド蓄積を血液で推定することで、アルツハイマー病とその他の認知症を見分けることが容易になると聞いています。3つ目は超早期診断への応用です。アミロイドがたくさん蓄積する前の状態が見つけられれば、将来、治療や予防法の開発が伴うことで、早期治療や発症予防に活用できると思います。今後、医療分野において挑戦したい研究、疾患領域は?質量分析は、特定かつ微量な物質だけの検出もできます。それは、様々な病気の早期の状態を見る準備ができた、ということです。フェニルケトン尿症を含む新生児マススクリーニング検査や、微生物の同定など、臨床現場でもすでに活用されています。解決すべき課題はいくつもありますが、今後は、心臓を含む内臓疾患や様々ながんなどについても、少量の血液で早期に診断できるようになるかもしれません。この研究成果をサービスとして提供する予定はありますか?治療方法が十分ない現段階で検査として用いると、アルツハイマー病の危険性だけを発症する約20年も先んじて示唆することになってしまいます。治療薬や予防的介入が確立するまでは、一般に幅広く行う検査としては用いないほうが良いと思います。研究成果は当面、大学や製薬会社などからの受託分析で、創薬やアルツハイマー病のメカニズムの解明などの基礎研究に提供することとしています。実際、日米欧の様々な公的機関や企業から問い合わせをいただいています。

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全身麻酔と認知症リスクに関するコホート研究

 全身麻酔が認知症リスクを増加させる可能性があることについて、関心が高まっている。しかし、麻酔とその後の認知症との関連については、まだよくわかっていない。韓国・翰林大学校のClara Tammy Kim氏らは、全身麻酔実施後に認知症リスクが増加するかについて検討を行った。Journal of Alzheimer's disease誌オンライン版2018年3月29日号の報告。 2003年1月~2013年12月までの50歳以上の21万9,423例を対象に、Korean National Health Insurance Service-National Sample Cohortのデータベース分析を用いて、人口ベースのプロスペクティブコホート研究を実施した。 主な結果は以下のとおり。・全身麻酔群4万4,956例、対照群17万4,469例を、12年間フォローアップした。・全身麻酔の経験に関連する認知症リスクは、性別、年齢、ヘルスケア訪問頻度、併存疾患などのすべての共変量で調整した後、増加していた(ハザード比:1.285、95%CI:1.262~1.384、時間依存型Coxハザードモデル)。・さらに、投与した麻酔薬の数、全身麻酔の回数、累積時間、手術における臓器カテゴリは、認知症リスクと関連が認められた。 著者らは「認知症による社会的な負担の増大を考えると、全身麻酔後の患者に対する認知症の注意深い観察や予防ガイドラインが必要とされる」としている。■関連記事高齢者に不向きな抗うつ薬の使用とその後の認知症リスクとの関連電気けいれん療法での麻酔薬使用、残された課題は?乳がんの手術方法とうつ病発症に関するメタ解析

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てんかんおよび抗てんかん薬と重大な交通事故に関するコホート研究

 てんかんや抗てんかん薬と、救急医療を必要とする重大な交通事故または死亡事故との関連性について、スウェーデン・リンショーピング大学病院のHelene E. K. Sundelin氏らが調査を行った。Neurology誌2018年3月27日号の報告。 スウェーデンレジストリを用いて、脳性麻痺または知的障害のない18歳以上のてんかん患者2万9,220例と、マッチした対照群26万7,637例を抽出した。本コホート研究では、重大な交通事故に関して、2006~13年までフォローアップを行った。てんかん患者と対照群の重大な交通事故リスクを分析するため、Cox回帰分析を用いた。てんかん患者の薬剤服用期間と非服用期間のリスクを比較するため、層別Cox回帰分析を用いた。調整は、世間的な地位、雇用、教育、居住エリア、フォローアップ開始前の精神疾患、向精神薬で行った。 主な結果は以下のとおり。・てんかん患者は、対照群と比較して、重大な交通事故リスクが高かった(ハザード比[HR]:1.37、95%CI:1.29~1.46)。・歩行者事故(HR:2.24、95%CI:1.69~2.97)、自転車事故(HR:1.68、95%CI:1.49~1.89)、自動車事故(HR:1.31、95%CI:1.19~1.44)のリスクが増加していた。・てんかん患者の間での分析で、抗てんかん薬の使用は、集団レベルの比較(HR:0.97、95%CI:0.85~1.11)または各個人内での比較(HR:0.99、95%CI:0.69~1.42)において、重大な交通事故リスクに影響しなかった。 著者らは「重大な交通事故は、てんかん患者においてより一般的に認められたが、このリスクは抗てんかん薬の使用とは無関係であった」としている。■関連記事てんかんドライバーの事故率は本当に高いのか自動車事故リスク、うつ病や抗うつ薬ではどうかてんかん診断後の自動車運転再開に関する研究

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神経内科」は「脳神経内科」へ

 2018年3月、日本神経学会(代表理事:高橋良輔[京都大学])は、学会ホームページ上で会員向けに「標榜診療科名を『脳神経内科』に変更することにつきまして」と題するお知らせを公開した。 この動きは、平成29年度第4回日本神経学会理事会(2017年9月16日開催)での決定、社員総会(2018年1月8日開催)での報告を経たもので、今後学会は会員に向け、学会内で使用する診療科名は、順次「脳神経内科」を用い、「神経内科」標榜の医療機関には「脳神経内科」への変更をお願いしていくとしている。診療内容のさらなる明確化が狙い 今回の変更の狙いとして「診療内容をよりよく一般の方々に理解していただくこと」をあげている。 1975年の診療科認可以来、「神経内科」が使用されてきたが、現在でも心療内科や精神科と混同されることがある一方で、脳卒中や認知症などのコモンディジーズを専門的に診療する科であることが広く知られていない状況が続いているという。このことで、神経内科を受診して欲しい患者さんが神経内科受診を思いつかずに、診断がつかない状態が何年も続いたり、適切な治療のタイミングを逸したりすることが問題だと指摘する。 こうした経緯を踏まえ、今回の名称変更で本科が、脳・神経の疾患を内科的専門知識と技術をもって診療する診療科であることがわかりやすくなり、また、「脳神経外科」の内科側のカウンターパートであるとの位置付けが明確化し、専門診療を必要とする患者さんの大きな利益につながればと説明する。 今後は、関係機関・学会への説明を行い、専門医の名称変更などの課題も含め、適切に対応していくとしている。■参考一般社団法人日本神経学会 お知らせ

1891.

米国の長期介護における向精神薬を使用した認知症ケア改善に関する研究

 養護老人施設における認知症ケア改善のための、メディケアおよびメディケイド・サービスセンター(CMS)国家パートナーシップ(以下、パートナーシップ)は、抗精神病薬の処方の割合を測定し、認知症者のケアの質を向上させるために設立された。米国・ミシガン大学のDonovan T. Maust氏らは、長期介護を受ける高齢者への抗精神病薬および他の向精神薬の処方傾向とパートナーシップとの関連について検討を行った。JAMA internal medicine誌オンライン版2018年3月17日号の報告。 2009年1月~2014年12月までのメディケアサンプル20%の断続的な時系列分析を、パートD(処方箋薬剤給付保険)を有する長期介護のメディケア受給者63万7,426例を対象に実施した。データ分析は、2017年5月1日~2018年1月9日に行われた。主要アウトカムは、抗精神病薬と他の向精神薬(抗うつ薬、気分安定薬[バルプロ酸、カルバマゼピンなど]、ベンゾジアゼピン、他の抗不安薬、催眠鎮静薬)の四半期における使用率とした。 主な結果は以下のとおり。・対象者63万7,426例のうち、女性は44万6,538例、男性は19万888例で、養護老人施設入所時の平均年齢は79.3±12.1歳であった。・対象者における向精神薬使用は、気分安定薬を除き、パートナーシップ開始前に減少していた。・2009年の第1四半期において、14万5,841例中3万1,056例(21.3%)に抗精神病薬が処方されており、これはパートナーシップ開始まで四半期ごとに-0.53%減少していた(95%CI:-0.63~-0.44%、p<0.001)。・その時点での、四半期ごとの減少率は-0.29%であり(95%CI:-0.39~-0.20%、p<0.001)、パートナーシップ後の四半期ごとの減少率は0.24%と減速していた(95%CI:0.09~0.39%、p=0.003)。・気分安定薬の使用は、パートナーシップ開始前に増加し続けており(率:0.22%、95%CI:0.18~0.25%、p<0.001)、開始後にはそれが加速し(変化率:0.14%、95%CI:0.10~0.18%、p<0.001)、2014年の最終四半期までに35万5,716例中7万1,492例(20.1%)まで達した。・抗うつ薬は全体として最も頻繁に処方された薬剤であり、2009年初めには14万5,841例中7万5,841例(52.0%)に処方されていた。・抗精神病薬と同様に、抗うつ薬の使用は、パートナーシップ開始前後どちらでも減少していたが、減少率は減速していた(変化率:0.34%、95%CI:0.18~0.50%、p<0.001)。・認知症者に限定した場合でも、同様な結果が得られた。 著者らは「長期介護において向精神薬の処方は減少していたが、パートナーシップでこの減少は加速しなかった。パートナーシップ開始後に、長期介護者や認知症者に対する気分安定薬の使用が増加し、それが加速したことは、抗精神病薬の代替品として使用されたためであると考えられる。抗精神病薬のみの使用を評価することは、ケアの質の面では不十分であり、リスクとベネフィットのバランスが良くない代替品への処方変更に寄与している可能性がある」としている。■関連記事警告後、認知症への抗精神病薬処方は減少したのか認知症者への抗精神病薬投与の現状は日本では認知症への抗精神病薬使用が増加

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多発性硬化症の症状は個人差が大きく確定診断まで約3年を待つ

 2018年3月29日、バイオジェン・ジャパン株式会社とエーザイ株式会社は、多発性硬化症に関するメディアセミナーを都内で共同開催した。セミナーでは、女性に多い本症について、疾患概要だけでなく、女性視点から闘病への悩みなども取り上げられた。多発性硬化症は全国で約2万人が苦しむ難病 セミナーでは、清水 優子氏(東京女子医科大学病院 神経内科 准教授)を講師に迎え、「多発性硬化症の治療選択-女性患者のアンメットニーズとライフステージ」をテーマに講演が行われた。 多発性硬化症は、中枢神経系の自己免疫性脱髄疾患であり、ミエリン(髄鞘)が障害されることで、視力障害や運動麻痺、排尿障害、感覚障害など、さまざまな症状を引き起こす。多発性硬化症の症状出現の仕方・時間は、患者の個人差も大きく、診断に苦慮する難病である。なお、多発性硬化症の診断では、一般的な問診・検査に加え、MRI検査により、ほぼ確定診断が行われる。主な診療は、神経内科が担当するが、眼科、整形外科、一般内科で気付かれる例も多いという。 多発性硬化症の発症年齢は20~30代にあり、患者は女性に多い。発症原因は不明で、わが国では患者数が年々増加しており2015年度で1万9,389例の患者が登録されている(特定疾患医療受給者証交付件数)。また、多発性硬化症の特徴として、治療が奏効しても再燃と寛解を繰り返し、徐々に症状の重症度が上がっていき(発症初期から進行性の経過をとる一次性進行型はまれ)、進行型の予測も難しいという。多発性硬化症の症状を疑ったらMRI検査へ 多発性硬化症の治療では、初発から再発寛解までの時間が、治療のゴールデンタイムと言われる。この時間に確定診断が行われ、きちんとした治療が行われるかどうかで予後が変わるという。しかしながら、初発の症状では、多発性硬化症と診断される例が少なく、確定診断まで平均3.7年かかるという報告もある(バイオジェン・ジャパンと全国多発性硬化症友の会との合同アンケート調査より)。「初発症状である温度変化による症状の悪化(ウートフ現象)、手足の突っ張り感、脱力、過労やストレス、風邪などの易感染、出産後3ヵ月間などの主訴から診断初期で、いかに本症を思い浮かべ、MRIなどの検査に送ることができるかが、治療を左右する」と清水氏は指摘する。 急性期、慢性期、再発防止の3期に分けて多発性硬化症の治療薬は使われる。急性期ではステロイド・パルス療法、血液浄化療法が、慢性期では対症療法、リハビリテーションが、再発防止ではインターフェロンβ1a/b、グラチラマー、フマル酸ジメチル、フィンゴリモド、ナタリズマブが、個々の患者病態に合わせて選択されている。しかし、完全寛解まで至る治療薬は現在ない。多発性硬化症患者の妊娠・出産の悩みに応える 続いて多発性硬化症の女性患者の出産、妊娠について解説を行った。多発性硬化症の発症時期は、こうしたイベントと重なることが多く、女性患者にとっては切実な問題だという。実際、妊娠、出産に関しては、病態が管理できているのであれば、いずれも問題はないという。ただ、妊娠中は免疫寛容が母体に働くために多発性硬化症の症状は安定または軽くなるものの、「出産後早期は、再発リスクがあり、注意が必要だ」と同氏は述べる。また、生まれてくる胎児への影響はなく、授乳も多発性硬化症の再発リスクにもならないが、「不妊治療については、悪化させる報告もあるので、妊娠を希望する場合、病態の安定化が重要だ」と同氏は指摘する。多発性硬化症の症状に周囲の理解が大事 女性患者の就労に関しては、脱力、しびれ感、目のかすみなどの症状が、外観から理解されにくく、誤解を受けやすいことから悩みを抱えている現状が紹介された。先に紹介したアンケート調査を引用し、「疾患により仕事内容の変更・異動、転職・退職を経験したことがあるか?」(n=210)との問いに複数回答ながら「退職」(34.3%)、仕事内容の変更(21.9%)、「就職をあきらめた」(19.5%)の順で回答が寄せられ、就労の難しさをうかがわせた。体が思うように動かない、多発性硬化症の症状の説明が周囲に難しいなどの理由により仕事に就きたいが就労できない状況が、さらに経済状態を悪化させ不安感を増大させるなどして、女性患者を負のスパイラルに陥らせていることを指摘した。 最後に清水氏は「女性にとって多発性硬化症の罹患年齢は、働き盛り、妊娠・出産の世代に重なる。そのため医療者をはじめとする一般社会の理解がないと、これらの問題解決は難しい。多発性硬化症の社会認識と理解・啓発、就労関係の整備が実現され、患者の社会貢献ができることを望む」と期待を述べ、レクチャーを終えた。

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民谷式 内科系試験対策ウルトラCUE Vol.2

第5回 膠原病/アレルギー 第6回 神経 第7回 循環器1 第8回 循環器2  内科系試験に対応した全3巻の基本講座の第2巻です。試験内容が異なる認定内科医と総合内科専門医試験ですが、学生の頃に学んだことを復習するというスタートラインは同じ。全13領域で出題頻度の高いテーマを、わかりやすいシェーマと明快な講義で総復習しましょう。題名の「CUE」は放送業界用語の「キュー」、『臨床的有用性』(Clinical Utility)、そしてパーキンソン病医療における「CUE」から来ています。つまり、「動こうとしてもはじめの一歩が踏み出せない状態」に対して、このレクチャーが試験勉強を始める一歩を踏み出すきっかけになってほしいという思いです。講師の民谷先生の実臨床経験を組み込んだクリアな解説は、とても役に立ちます。専門外や苦手科目からチェックして、次のステップへ進んでください。第5回 膠原病/アレルギー 膠原病の領域は、類縁疾患を含めると疾患が非常に多く、症状が多彩なのが特徴です。民谷式では疾患を大きく3つに分類し、それぞれの特徴をオリジナルのシェーマと症例問題をもとに解説していきます。第6回 神経 神経の疾患は非常に多岐にわたりますが、どこが障害してどんな症状が出るかを理解するためには、まずは正常な状態を理解するのが得策。わかりやすく簡略化してある民谷式のオリジナルシェーマで重要疾患の病態生理を再整理してください。第7回 循環器1 出題範囲が広い循環器領域で、まず押さえるべき疾患は虚血性心疾患と心不全。狭心症と心筋梗塞の病態の違いや心電図の見方、エコーの基本となる解剖生理など、基礎をしっかりと復習します。第8回 循環器2 出題範囲が広い循環器領域。循環器の後半は弁膜症と心筋症、そして不整脈について復習します。心臓で起こったことが、心電図ではどう見えるのか?民谷式のシェーマを用いてわかりやすく解説しているので、知識の整理に役立ちます。

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心房細動の認知率が低い県は?全国5万人の調査

 心房細動は最も一般的な心原性脳塞栓症の原因であることから、心原性脳塞栓症の予防には心房細動の認知度を知ることが重要である。今回、聖マリアンナ医科大学の秋山 久尚氏らは、日本全国における心房細動の認知レベルについて大規模インターネット調査を実施。5万人以上から回答が得られ、心房細動をよく知っている人の割合は3.8%と非常に低く、また、年齢、性別、地域による認知度の違いがみられた。秋山氏らは「年齢や性別による認知度の違いを考慮し、認知度が低い都道府県を優先する啓発活動が将来的に心原性脳塞栓症の予防に重要」としている。Geriatrics & gerontology international誌オンライン版2018年3月30日号に掲載。 本研究では、調査モニターの属性データを用いてサンプリングした、47都道府県における50歳以上の17万2,824人に対し、心房細動についての認知度を調査するためにインターネット調査を行った。 主な結果は以下のとおり。・5万3,128人から有効な回答を得た。・「心房細動という言葉を聞いたことがない」人は1万3,119人(27.5%)、「心房細動をよく知っている」人は1,791人(3.8%)、「名前は知っているが疾患や治療を理解していない」人は2万7,351人(57.3%)であった。・「心房細動という言葉を聞いたことがない」人の割合は高知県で最も高く(36.0%)、山梨県では最も低かった。・「心房細動をよく知っている」人の割合は京都府が最も高く(5.1%)、鳥取県が最も低かった。名前だけ知っている人の割合は、青森県が63.0%と最も高かった。・「心房細動という言葉を聞いたことがない」に有意に寄与する因子には、年齢、男性、人口が小規模(地方)が含まれていたが、不整脈/脳卒中の専門医の数は含まれなかった。

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siponimod、二次性進行型多発性硬化症の身体的障害の進行を抑制/Lancet

 スフィンゴシン-1-リン酸(S1P)受容体のS1P1およびS1P5サブタイプ選択的調節薬であるsiponimodは、二次性進行型多発性硬化症(SPMS)患者において、身体的障害の進行リスクを低下させ、安全性プロファイルは他のS1P受容体調節薬と同様であることが認められた。スイス・バーゼル大学のLudwig Kappos氏らが、siponimodの無作為化二重盲検プラセボ対照第III相試験(EXPAND試験)の結果を報告した。SPMSは、再発とは無関係に障害が徐々に進行し続けることが特徴で、これまで身体的障害の進行を遅延させる効果を示した治療はなかった。著者は、「siponimodはSPMSの治療に役立ちそうである」とまとめている。Lancet誌オンライン版2018年3月22日号掲載の報告。SPMS患者約1,650例で身体的障害の進行を評価 EXPAND試験は、31ヵ国の292施設で、総合障害度評価尺度(EDSS)が3.0~6.5点のSPMS患者(18~60歳)を対象に行われた。被験者を、siponimod群(1日1回2mgを経口投与)またはプラセボ群に2対1の割合で無作為に割り付け、最長3年、あるいは事前に定義した身体的障害の進行(confirmed disability progression:CDP)イベントが生じるまで投与した。 2013年2月5日~2015年6月2日に、1,651例が無作為化を受けた(siponimod群1,105例、プラセボ群546例)。 主要評価項目は、3ヵ月以上継続するCDPが認められるまでの期間。有効性は最大解析集団(無作為化と試験薬の投与を受けた全患者)で、安全性は安全性解析対象集団で評価し、Cox比例ハザードモデルを用いて解析した。3ヵ月以上継続する身体的障害の進行リスク、siponimod群21%低下 1,651例の患者背景は、多発性硬化症の罹病期間が平均(±SD)16.8±8.3年、SPMSへ移行してからの期間が平均3.8±3.5年で、1,055例(64%)は過去2年間に再発がなく、918例(56%)が歩行介助を必要とした。 解析集団には、siponimod群の同意が得られなかった1例と試験薬の投与を受けなかった5例を除く計1,645例(siponimod群1,099例、プラセボ群546例)が包含され、siponimod群903例(82%)、プラセボ群424例(78%)が試験を完遂した。 siponimod群1,096例中288例(26%)、プラセボ群545例中173例(32%)で、3ヵ月以上継続するCDPが確認された(ハザード比:0.79、95%CI:0.65~0.95、相対リスク低下21%、p=0.013)。有害事象の発現率はsiponimod群89%(975/1099例)、プラセボ群82%(445/546例)で、重篤な有害事象はそれぞれ197例(18%)および83例(15%)が報告された。リンパ球減少症、肝トランスアミナーゼ上昇、投与開始時の徐脈/徐脈性不整脈、黄斑浮腫、高血圧、帯状疱疹、痙攣に関しては、プラセボ群よりsiponimod群で多く認められた。心臓への影響は初期の漸増投与により軽減した。感染症や悪性腫瘍の頻度、および死亡率は両群に違いはなかった。

1896.

「二次性進行型」多発性硬化症患者における身体機能障害の進行抑制に朗報(解説:森本悟氏)-837

 多発性硬化症(MS)患者の約85%が再発寛解型であり、その約25%が10年以内に、約75%以上が30年後には二次性進行型MS(secondary progressive multiple sclerosis、以下SPMS)に移行する1,2)。また、早期からの軸索障害を反映してか、比較的障害度の低い早期(EDSSスコア3程度)から障害の慢性的な進行は始まっているとされる3)。SPMSにおいては、古典的かつ優れた治療薬であるインターフェロンβ(IFNβ)製剤について、再発の重畳やガドリニウム造影病巣を伴ったりする場合でのみ有効性が期待されているが、身体機能障害の進行抑制に対して確実に有効といえる薬剤が乏しいのが現状である4)。 当該試験で使用されたSiponimod(BAF312)は、スフィンゴシン-1-リン酸(S1P)受容体の特定サブタイプの選択的アゴニストであり、BAF312はリンパ球上のS1Pのサブ受容体であるS1P1に結合することで、リンパ球がMS患者の中枢神経系に移行することを阻止する5,6)。これにより、BAF312の抗炎症作用が生じると考えられている。また、同クラスの既存薬であるFingolimodと比較し、S1P1およびS1P5への選択的親和性を有し、とくにS1P3の活性化に起因する徐脈や血管収縮といった副作用が少ないとされる。また、半減期が短いことも、副作用の軽減に寄与する可能性がある7)。 当該試験は、31ヵ国、292施設、合計1,651人のSPMS患者を対象としたこれまでにない大規模臨床試験であり、登録患者のEDSSの中央値が6点と、比較的症状の重い(歩行時補助具使用レベル相当)患者を対象としている。 結果として、「再発の有無を問わず」、SPMSにおける身体機能障害の進行リスク低下効果(3-month CDPおよび6-month CDPを指標)が示された。さらには、年間の再発、脳萎縮、およびT2強調像による高信号病変容積の増加を有意に抑制した。また、Fingolimodで問題となっている徐脈などの心臓への初回投与効果については、漸増投与法を導入することで緩和された。 これらの結果は、これまでにSPMSにおける身体機能障害進行抑止の明確なエビデンスを有する薬剤に乏しかった中で、Siponimodが非常に有望な治療薬となりうる可能性を示した。■参考文献1)Multiple Sclerosis International Federation. Atlas of MS 2013. 2017.2)Tremlett H, et al. Mult Scler. 2008;14:314-324.3)Kremenchutzky M, et al. Brain 2006;129:584-594.4)Kappos L, et al. Neurology. 2004;63:1779-1787.5)Brinkmann V, et al. Nat Rev Drug Discov. 2010;9:883-897.6)Chun J, et al. Clin Neuropharmacol. 2010;33:91-101.7)Gergely P, et al. Br J Pharmacol. 2012;167:1035-1047.

1897.

認知症発症に対するアルコール使用障害の影響に関するコホート研究

 認知症は、60歳以上の5~7%に影響を及ぼす一般的な症状であり、世界的に60歳以上の人々にとって主要な障害の原因となっている。フランス・国立保健医学研究所(INSERM)のMichael Schwarzinger氏らは、若年性認知症(65歳未満)に焦点を当て、アルコール使用障害と認知症リスクとの関連について検討を行った。The Lancet Public health誌2018年3月号の報告。 2008~13年のフランス都市部における20歳以上の成人入院患者を対象とした、退院コホート研究を分析した。主要曝露はアルコール使用障害、主要アウトカムは認知症とした。いずれもICD-10(国際疾病分類第10版)診断コードで定義した。若年性認知症は、2008~13年における一般的な症例より研究を行った。認知症発症に対するアルコール使用障害および他の危険因子との関連性は、2008~10年に認知症の記録がなく2011~13年に入院した患者において、多変量Coxモデルを用いて分析を行った。 主な結果は以下のとおり。・2008~13年に退院した3,162万4,156例のうち110万9,343例が認知症と診断され、分析に含まれた。・若年性認知症者5万7,353例(5.2%)のうち大部分は、アルコール関連疾患がある(2万2,338例、38.9%)、またはアルコール使用障害の診断が追加されたケース(1万115例、17.6%)であった。・アルコール使用障害は、認知症発症の最も強い修正可能なリスクファクターであり、調整ハザード比(aHR)は、女性で3.34(95%CI:3.28~3.41)、男性で3.36(95%CI:3.31~3.41)であった。・認知症症例の定義(アルツハイマー病を含む)または高齢の研究対象集団における感度分析で、アルコール使用障害は、男女ともに認知症発症と関連したままであった(aHR:1.7超)。・アルコール使用障害は、認知症発症の他のすべてのリスクファクターと有意な関連が認められた(すべてp<0.0001)。 著者らは「アルコール使用障害は、すべてのタイプの認知症、とくに若年性認知症発症の主要なリスクファクターであった。そのため、重度の飲酒をスクリーニングすることは、定期的な医療の一部であり、必要に応じて介入や治療を行うべきである。さらに、一般住民の重度の飲酒を減らすためにも、他のアルコール政策を考慮する必要がある」としている。■関連記事うつ病とアルコールとの関係:2014年英国調査よりお酒はうつ病リスク増加にも関連日本人若年性認知症で最も多い原因疾患は:筑波大学

1898.

スペインにおける妊娠中の抗てんかん薬使用に関する比較研究

 妊娠中の抗てんかん薬処方パターンは、変化してきているが、スペインでどの程度の変化が起こっているかは、よくわかっていない。妊娠中の発作をコントロールするための新薬の有効性は重要であり、長年にもわたり医師がこれらの新薬を使ってきたことによって、その処方パターンは変化している可能性がある。スペイン・Hospital Mutua de TerrassaのM. Martinez Ferri氏らは、これらの疑問を評価するため、12年にわたって収集したスペインEURAPレジストリの結果を報告した。Neurologia誌2018年3月号の報告。 インフォームドコンセントに署名した後、患者はレジストリに登録され、妊娠初期、妊娠第2期、第3期の終わり、出産後、出産1年後に評価が行われた。抗てんかん薬、てんかんの種類、妊娠1期当たりおよび妊娠期間中全体での発作頻度、妊娠中の発作のない頻度、先天性奇形の頻度について分析を行った。2001年6月~2007年10月(前期)と2008年1月~2015年5月(後期)のデータの比較を行った。 主な結果は以下のとおり。・前期より304報、後期より127報の単剤療法の文献について比較を行った。・カルバマゼピン、フェニトイン、フェノバルビタールの使用が減少し、レベチラセタムの使用が明らかに増加した。また、バルプロ酸の使用がわずかに減少し、ラモトリギンおよびoxcarbazepineの使用がわずかに増加した。・カルバマゼピンおよびバルプロ酸で治療したてんかんの種類に変化は認められなかったが、後期においてラモトリギンで治療した全般てんかん症例は少なかった。・この傾向は、発作頻度の有意な変化とは関連が認められず、妊娠第3期における新規発作に対するより良いコントロールと関連が認められた。・発作コントロールに関して、レベチラセタムは、カルバマゼピンやバルプロ酸と同等であり、ラモトリギンよりも有効であった。・全般てんかんは、レベチラセタムで治療された症例の64%を占めていた。 著者らは「スペインにおける妊娠中の抗てんかん薬処方パターンは変化しており、カルバマゼピン、フェニトイン、フェノバルビタールの使用が減少していた。全般てんかんに対するラモトリギン使用が少ないため、この変化はてんかんの種類の影響を受けている。レベチラセタムは、古典的な抗てんかん薬と同様の発作コントロールを示し、ラモトリギンよりも効果的かつ良好であった」としている。■関連記事妊娠可能年齢のてんかん女性にはレベチラセタム単独療法がより安全「妊娠、抗てんかん薬」検索結果は患者に役立つか?新規抗てんかん薬の催奇形性リスクは

1899.

授乳中の抗てんかん薬使用に関する母親への情報提供

 さまざまな抗てんかん薬の母乳中への移行、それによる乳児に対する影響についての情報は限られている。これらの問題が明らかとなっていないため、抗てんかん薬服用中の患者には母乳による育児を推奨することができない。スイス・ローザンヌ大学のM. Crettenand氏らは、授乳中の抗てんかん薬に関する利用可能なデータを包括的にレビューし、これらの情報を添付文書(SmPC)に記載されている内容と比較し、母乳育児中の女性にこれらの薬剤を使用するための推奨を提供するため、検討を行った。Der Nervenarzt誌オンライン版2018年2月27日号の報告。 23種類の抗てんかん薬の母乳育児データに関するシステマティックレビューを行った。授乳適合性スコアを作成し、検証を行った。システマティックレビューに基づく推定スコアは、添付文書に記載された推奨に基づく推定スコアとの比較を行った。 主な結果は以下のとおり。・授乳中における15種類の抗てんかん薬の投与および安全性に関するデータを含む75報を特定した。・レビューおよび添付文書に基づくスコア値の比較では、一致率が非常に低かった(重み付けκ係数:0.08)。・授乳中の抗てんかん薬として、適していると考えられる薬剤は以下5種類。 フェノバルビタール、プリミドン、カルバマゼピン、バルプロ酸、レベチラセタム・母乳育児中に、乳児の副作用を慎重に観察することができれば、推奨可能である薬剤は以下10種類。 フェニトイン、エトスクシミド、クロナゼパム、オクスカルバゼピン、ビガバトリン、トピラマート、ガバペンチン、プレガバリン、ラモトリギン、ゾニサミド・母乳育児によるリスクを適切に評価するためのデータが不十分なため、原則として推奨されないが、ケースバイケースで注意深く評価する必要がある薬剤は以下8種類。 mesuximide、クロバザム、ルフィナミド、felbamate、ラコサミド、スルチアム、ペランパネル、retigabine 著者らは「実際には、母乳育児を希望する抗てんかん薬治療を受けている母親ごとにリスクとベネフィットを分析し、患者と話し合う際には、個別のリスク要因を適切に考慮する必要がある」としている。■関連記事授乳中の気分安定薬は中止すべきか「妊娠、抗てんかん薬」検索結果は患者に役立つか?授乳中の抗精神病薬使用、適切な安全性評価が必要

1900.

日本人アルツハイマー病に対するメマンチンのメタ解析

 第一三共株式会社のKaoru Okuizumi氏らは、アルツハイマー病(AD)患者に対する臨床的に有用な薬物治療を明らかにするため、臨床的悪化を評価するレスポンダー解析を用いて評価を行った。Expert opinion on pharmacotherapy誌オンライン版2018年3月6日号の報告。 本研究は、2つの24週間多施設ランダム化二重盲検プラセボ対照研究のメタ解析として実施した。対象は、中等度~重度の日本人AD患者633例(メマンチン[20mg/日]群318例、プラセボ群315例)。 主な結果は以下のとおり。・メマンチン群とプラセボ群を比較した臨床的悪化の減少に対する全体的なオッズ比(OR)は、それぞれの総合評価尺度において統計学的に有意であった。 ◆重度認知症患者向けの認知機能評価尺度日本語版(Severe Impairment Battery:SIB-J)OR:0.52、95%CI:0.37~0.73、p=0.0001 ◆アルツハイマー病行動病理学尺度(Behavioral Pathology in AD Rating Scale: BEHAVE-AD)  OR:0.53、95%CI:0.37~0.75、p=0.0003 ◆SIB-Jと臨床面接による認知症変化印象尺度日本語版(Clinician's Interview-Based Impression of Change:CIBIC-plus-J)  OR:0.53、95%CI:0.37~0.77、p=0.0009・メマンチン群は、プラセボ群と比較し、SIB-J、BEHAVE-AD、CIBIC-plus-Jを組み合わせた評価尺度において、3重の悪化リスクの有意な減少が認められた(OR:0.38、95%CI:0.22~0.65、p=0.0003)。 著者らは「メマンチンは、AD患者の認知障害だけでなく、認知症患者の行動と心理症状(BPSD)を含むより広範な症状に対する治療選択肢でもある」としている。■関連記事中等度~高度AD患者にメマンチンは本当に有効か?―メタ解析結果より―ドネペジル+メマンチン、アルツハイマー病への効果はどの程度認知症患者の興奮症状に対するメマンチンの効果を検討

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