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認知症は運動で予防できない?(解説:岡村毅氏)-1045

 運動不足は認知症発症リスクではないという報告だ。認知症予防について、無垢な時代が終わり、新たな時代の号砲を告げる論文かもしれない。はじめに私の立場をはっきりさせておくと、予防が完成すれば認知症は駆逐されるという楽観主義でも、予防なんて無意味だからすべて受け入れようという悲観主義でもない。私の立場は、真実は中庸にありというものだ。 論文にはこうある。認知症になる前(前駆期)、活動性は低下している。したがって運動もしなくなっている。ある段階で運動をしている人、していない人に分けると、していない人には前駆期の人が含まれる。彼らはしばらくすると認知症を発症する。すると「運動をしなかったから認知症になった」と第1種過誤が起きる。短期間の観察では必ずこうなるが、乗り越えることはできる。前駆期の長さ以上の観察期間をとればよいのだ。 本論文はメタアナリシスであるが、すべてのケースで認知症発症リスクを見ると、確かに運動をしていないとリスクは高い(1.4倍くらい)。ところが、10年以上経過を見たケースに限定すると、あら不思議、リスクは消えてしまう。 個人的見解だが、認知症予防に関しては○○が効いたという報告があり、しばらくしてメタアナリシスで疑問が呈される、ということが繰り返されているように思う。最初の報告はセンセーショナルで、話題になる。そして後の疑問は、もはや話題にならない。 つまり人は見たいものを見る、聞きたいことを聞く、ということだ。この現象は、正常性バイアスみたいなものだろう。命題(1)認知症は予防できるはずだ、命題(2)予防は健康的な生活習慣と関係する、と人は考えるのだ。 私は何もこのネガティブデータを見て、「予防なんて無意味だ」「ほら見たことか」と言いたいわけではない。予防研究は非常に重要だ。私が言いたいことは、予防に重心が置かれ過ぎると、認知症になった場合に「きちんと予防しなかった自分が悪い」「予防させなかった家族が悪い」と、怒りと絶望に苛まれる人がしばしばいるということだ。なるときはなる、と考えたほうがいい場合もある。だって人間だもの。 言うまでもなく(そしてこの論文にも書いてあるが)、糖尿病や冠動脈疾患は、運動で予防できる。それに運動すると気持ちいいではないか。認知症になったとしても運動する習慣があったほうが、運動を続けられるだろう。認知症を予防できるかどうかまだわからないが、楽しく運動しましょう。

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不全心筋への間葉系前駆細胞の注射はLVAD離脱率を改善しない(解説:佐田政隆氏)-1046

 重症心不全に対する唯一の効果的な治療法は心移植であるが、日本では、ドナーが絶対的に不足している。その打開策となるのではと注目されてきたのが成体幹細胞移植である。心筋梗塞や心筋症のモデルで、骨髄細胞を注入すると心機能が著明に改善するという動物実験が2001年頃から報告されるようになった。当初は、骨髄細胞が心筋細胞や血管細胞に分化すると想定されていたが、現在のところは、どうも注入した細胞からのサイトカイン分泌によるパラクライン効果と見なされている。その後、有望な動物実験を基に、世界各地で臨床研究が多数行われてきたが、そのすべてが無効、もしくは効果があってもごくわずかという結果である。 本試験でも、補助人工心臓(LVAD)植え込みを必要とする重症心不全患者を対象にして、同種異系間葉系前駆細胞の心筋内注入は6ヵ月時点でLVADからの一時的離脱成功率を改善しないことが報告されている。北米の19施設でLVADを植え込む患者159例を対象にして、手術時に間葉系前駆細胞もしくは培地を注入する群を2:1に無作為に割り振って1年間追跡した。注入する間葉系前駆細胞は、Mesoblastという会社で健康なドナーの骨髄由来の単核球からSTRO-3+ 細胞を選択し、Good Manufacturing Practice環境下で増殖されたもので、1回あたり1億5千万個が心外膜から注入された。結果として、LVADからの離脱、心移植までの期間、死亡とも差が認められなかった。一方、心筋炎、新生物、心破裂などの有害事象においても差は認められなかった。 著者らは、その理由として、(1)この治療法が有効でない、(2)心外膜側からの注入が適当でなかった(他の論文でのメタ解析では、心内膜側からの注入が最も有効と報告されている)、(3)細胞注入時期がLVADの植え込みと同時であり、炎症反応が強く、移植細胞の残存率やパラクライン効果が減少したのではないかと推測している。しかし、私は、移植した細胞が同種異系、つまり他人由来の物であり、拒絶された影響が大きいと思う。実際、間葉系前駆細胞移植群で1型HLA抗原に対する同種感作が認められている。本来は、患者一人ひとりから骨髄細胞を採取して、間葉系前駆細胞の精製、増殖を行うのが最適と思われるが、膨大な費用と時間が必要と思われ、あらかじめ企業が大量に作成した“製品”を使わざるを得なかったのであろう。 興味深いのは、間葉系前駆細胞注入群で、消化管出血や鼻出血が有意に減少したことである。筆者らは、右心不全が改善して静脈圧が低下したためではなく、間葉系前駆細胞は血管周皮細胞前駆細胞でもありアンジオポエチン1を分泌したため微小血管が安定化したのではないかと推測している。移植した間葉系前駆細胞が何らかの効果をもたらしているのは確かなようであり、今後の展開が期待される。 いずれにせよ、骨髄細胞移植が心不全の一般的な治療になるには、まだまだハードルは高いと感じた。

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エーラス・ダンロス症候群〔EDS:Ehlers-Danlos syndrome〕

1 疾患概要■ 概念・定義エーラス・ダンロス症候群(Ehlers-Danlos syndrome:EDS)は、皮膚・関節の過伸展性、各種組織の脆弱性を特徴とする遺伝性結合組織疾患の総称である。■ 疫学EDS全体としての頻度は1/5,000人程度と推定されている。古典型EDSでは1/2万人、関節過可動型EDSでは1/5,000~2万人、血管型EDSでは1/5~25万人、後側弯型EDSでは1/10万人とされる。それ以外の病型ではさらに頻度は低くまれとなる。詳しい病型は後述する。■ 病因コラーゲン分子、もしくは修飾酵素の遺伝子変異などにより発症する。古典型EDSはV型コラーゲン遺伝子変異、血管型EDSはIII型コラーゲン遺伝子変異によるdominant negative効果またはハプロ不全に基づき発症する。筋拘縮型EDSでは、デルマタン4-0-硫酸基転移酵素-1またはデルマタン硫酸エピメラ-ゼの欠損に基づき、代表的なデルマタン硫酸(DS)含有プロテオグリカンであるデコリンのグリコサミノグリカン鎖の組成が変化し(DSの消失、コンドロイチン硫酸への置換)、デコリンが媒介するコラーゲン細線維のassembly不全を来すことによって進行性の結合組織脆弱性を生じる。関節過可動型EDSでは、いまだ原因遺伝子は同定されていない。■ 症状EDSの各病型の臨床症状は、後述する表2の診断基準のとおりである。血管型EDSでは、薄く透けて見える皮膚、易出血性、特徴的な顔貌、動脈・腸管・子宮の脆弱性を特徴とする。血管破裂・解離、腸管破裂、臓器破裂は70%の成人例における初発症状となる(平均年齢23歳)。新生児期には、内反足、先天性股関節脱臼を、小児期には鼠径ヘルニア、気胸、反復性関節脱臼・亜脱臼を合併しうる。妊婦では分娩前後の動脈・子宮破裂により、死亡する危険性がある(~12%)。古典型EDSでは、滑らかでベルベット様の皮膚、過伸展性、脆弱性が目立ち、創傷治癒が遅れ瘢痕が薄く伸展する(萎縮性瘢痕:シガレットペーパー様と称される)。また、縫合部位は離開しやすい。肩、膝蓋骨、指、股、橈骨、鎖骨などが容易に脱臼するが、自然整復または自力で整復できることが多い。運動発達遅延を伴う筋緊張低下、易疲労性、筋攣縮、易出血性がみられることがある。妊婦は前期破水・早産(罹患胎児の場合)、会陰裂傷、分娩後の子宮・膀胱脱を生じうる。関節過可動型EDSでは、皮膚の過伸展性は正常もしくは軽度であるが、関節過伸展性が顕著であり、脱臼・亜脱臼の頻度も高い。変形性関節症もよくみられる。関節痛を含めた慢性疼痛が深刻であり、身体的・精神的な障害となりうる。しばしば胃炎、胃食道逆流、過敏性腸症候群といった消化器合併症を呈する。筋拘縮型EDSでは、先天性多発関節拘縮(内転母指、内反足)、顔貌上の特徴、内臓や眼の先天異常など先天異常関連症状、そして、皮膚の脆弱性、関節の易脱臼性、足・脊椎の変形、巨大皮下血腫、大腸憩室など進行性の結合組織疾患脆弱性関連症状を呈する。■ 分類1998年に発表された国際命名法により、6つの主病型に分類されてきたが,近年新たな病型がその生化学的・遺伝学的基盤とともに報告されており、2017年に新たな国際分類が定められ13の病型に分類された(表1)。表1 2017年に発表された新たなEDSの国際分類画像を拡大する■ 予後予後は各病型によりさまざまである。血管型EDSでは生涯を通じて易出血性を呈する。20歳までに25%の症例が、40歳までに80%の症例が深刻な合併症を発症し、死亡年齢の中央値は48歳とされる。とくに誘因もなく突然発症し、突然死、脳卒中、急性腹症、ショックといった形で現れることも多い。2 診断 (検査・鑑別診断も含む)診断では、表2に示したEDSの各病型の診断基準を参照されたい。関節過可動型EDSを除きいずれの病型でも、最終診断には分子遺伝学的検査が必須となってくる。関節過可動性の評価としては、Beightonの基準を用いる。(1)小指の他動的背屈>90°(片側1点)、(2)母指が他動的に前腕につく(片側1点)、(3)肘の過伸展>10°(片側1点)、(4)膝の過伸展>10°(片側1点)、(5)前屈で手掌が床につく(1点)(計9点中5点以上で関節過可動性ありと判断)。表2 EDS各病型の診断基準画像を拡大する画像を拡大する画像を拡大する画像を拡大する画像を拡大する画像を拡大する3 治療 (治験中・研究中のものも含む)各病型に共通している診療のポイントは、医療者(関係各科、救急)と患者・家族が疾患についてあらゆる情報を共有し、起こりうる合併症の早期発見・早期治療を行うことである。病型にもよるが皮膚裂傷や関節過伸展性・脆弱性に対しては、激しい運動を控えサポーターなどで保護を行う。関節過可動型EDSでは、関節保護の理学療法、補装具の使用、鎮痛薬投与なども必要であり、重症患者では身体障害や難治性疼痛への負担に配慮した心理カウンセリング、抗うつ薬の投与などの対応が必要な時もある。血管型EDSでは動脈合併症予防のためセリプロロール(商品名:セレクトール)投与を考慮する。急性の動脈病変(瘤、解離)が生じた場合、可能な限り保存的に対処するが、病状が進行する場合は、血管内治療を考慮する。手術を行う場合は、血管および組織脆弱性を考慮し、細心の注意が必要になる。患者の妊娠はハイリスクであり、カップルに対し十分な情報提供を行ったうえで、心臓血管外科のバックアップができる施設において、陣痛開始前のコントロールされた分娩(おそらくは帝王切開のほうが安全)を行う。古典型EDSの裂傷の予防対策として、小児で皮膚裂傷を予防するためには、前頭部、膝、頸部を保護する。縫合に際しては、張力をかけない、できれば2層で縫合するなど十分注意を払う。さらに瘢痕を広げないよう、抜糸までの期間を通常の2倍程度に延ばす、テープで補強するなどの工夫が必要となる。また、遺伝カウンセリングについてふれると、これは「臨床遺伝専門医を中心に認定遺伝カウンセラー、担当医、看護・心理職種が協力して、患者自身または家族の遺伝に関する問題を抱える患者を対象に、臨床情報の収集に基づき正確な診断と発症・再発リスク評価を行い、わかりやすく遺伝に関する状況の整理と疾患に関する情報提供を行うこと、同時に患者が遺伝に関連したさまざまな負担に、その人らしく向き合い、現実的な意思決定を行っていけるような継続的な心理社会的支援を行うことを含んだ診療行為」とされる。EDSの病型は常染色体優性遺伝が多く、この場合、本症と診断されることは、患者自身が難治性疾患であることに加え、次世代が罹患する確率が50%であることを示すものである。また、稀少病型の多くは常染色体劣性遺伝であり、発症者の同胞への再発率は25%とされる。診断の時点、家族計画の相談が出た時点など診療の局面で、遺伝子医療部門への紹介を考慮したい。4 今後の展望次世代シークエンスを活用した、網羅的な遺伝学的検査の運用が始まっている。現在、唯一原因遺伝子が同定されていない関節過可動型EDSの原因遺伝子同定に向けた研究が進行中である。5 主たる診療科小児科、皮膚科、整形外科、循環器内科、心臓血管外科、消化器内科、消化器外科、眼科、耳鼻咽喉科、泌尿器科、リハビリテーション科、麻酔科(ペインクリニック)、リウマチ科、救急科、遺伝子医療部門など関与する診療科は多岐にわたる。各科との連携が重要である。6 参考になるサイト(公的助成情報、患者会情報など)診療、研究に関する情報難病情報センター エーラス・ダンロス症候群(一般利用者向けと医療従事者向けのまとまった情報)小児慢性特定疾病情報センター エーラス・ダンロス(Ehlers-Danlos)症候群(一般利用者向けと医療従事者向けのまとまった情報)Gene Reviews(医療従事者向けの研究情報:英文のみ)Gene Review Japan(医療従事者向けの研究情報。血管型、古典型、関節可動型について詳細説明あり)患者会情報日本エーラスダンロス症候群協会(友の会)(患者とその家族および支援者の会)公開履歴初回2019年5月14日

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「0402通知」が早くも調剤料引き下げの議論に【早耳うさこの薬局がざわつくニュース】第24回

先日のコラム『「薬剤師以外による調剤可能」通知の衝撃度』において、「非薬剤師による調剤」を可能と明示した通知「調剤業務のあり方について」を紹介しました。この通知は「0402(ぜろよんぜろに)通知」と呼ばれていますが、このような呼び方になじみがないという方もいると聞きます。行政から発出され、業界に大きな影響を及ぼす通知は、その発出された月と日の数字を四桁にして並べ固有名詞化することがあります。たとえば、10月26日に発出された通知だったら「1026(いちぜろにろく)通知」となります。このような呼び方は、これからも採用されると思いますので、法則を覚えておくとよいと思います。それはさておき、そのコラムの最後を「このくらいのサプライズがまだほかにあっても不思議ではない」と締めくくりましたが、すでにその兆候が出てきているように感じています。その兆候の最も顕著なものが、2020年度調剤報酬改定への影響です。次回の改定までまだあと1年もあるじゃん!とお思いの方もいるかもしれませんが、すでに議論は始まっています。むしろ、毎回このくらいの時期に、エビデンスが存在する内容や発出された通知の内容が改定の目玉になることが多いように思います。非薬剤師による調剤や機械化により調剤料は引き下げ?ゴールデンウイーク前の4月23日、各省庁への予算を振り分ける財務省が財政制度等審議会財政制度分科会を開催し、社会保障に関する改革案を提示しました。その中には、調剤報酬に関して、0402通知などを参考に挙げながら、対物業務が調剤業務のあり方や技術進歩などによって効率化できること、薬剤師を対人業務へシフトさせていく中でかかりつけ機能の有無による薬局の報酬水準の適正化が必要であることなどから、調剤基本料、調剤料および薬学管理料などの見直しを行うべきとの意見が、改革の方向性として記載されています。この0402通知に関して、ピッキングなどは非薬剤師が行ってもその後の監査で薬剤師がきっちり監査をしていれば問題ないということが白黒はっきりしただけ、と認識している方もいるかもしれません。私も単純なピッキングを含めてすべて薬剤師が行わなければならないという規制には疑問を感じていたので、はっきりしたのはよかったと思っていますが、このタイミングでの通知発出とそれを基にした財務省での議論、という流れをみると、何か根本的なものが変わるのではないかと推察できます。0402通知にもあるように、軟膏剤、水剤、散剤などの計量、混合や監査、そして薬剤の管理などは薬剤師が行うこととありますので、対物業務の責任は減りません。しかし、極論を言えば、次回の改定で「薬剤師は対人業務のみを評価する」となる可能性もゼロではありません。2020年4月になって急に慌てて対人業務に専念することは無理があると思いますので、薬を渡した後のフォローや医師へのフィードバックなどの新たな取り組みを行いつつ、実際の調剤や薬剤管理の手順の構築などの業務効率化を図る必要もありそうです。

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爪白癬が完治しない最大の原因とは?

 日本人の10人に1人が罹患し、国民病とも言われる爪白癬。近年、外用薬が発売され、本来、経口薬が必要なケースにも外用薬が安易に処方されることで、治癒率の低下が問題視されている。2019年4月19日、「感染拡大・再発を防ぐカギは完全治癒~爪白癬の完全治癒に向けて~」と題し、常深 祐一郎氏(埼玉医科大学皮膚科学教授)が登壇、経口薬による治療メリットについて解説した(佐藤製薬株式会社・エーザイ株式会社共催)。爪白癬の現状 日本人の足白癬、爪白癬の患者数はそれぞれ2,100万人、1,100万人(そのうち両者を併発している症例は860万人)と推測されている1)。これらの感染経路は多岐にわたり、罹患率を年齢別にみると、足白癬は40~50歳代でピークとなり減少するが、爪白癬は年齢とともに増え続けている2)。これに対し、常深氏は「働き盛り世代は革靴を履いている時間が長く足白癬に罹患しやすい。足白癬は市販の塗り薬でも治るので、靴を履く時間が短くなる年代で減少すると推測できる。しかし、爪白癬は内服薬を使ってしっかり治療しないと治癒せず、一度罹患するとそのままとなるため、高齢者ほど多くなってしまっている」と爪白癬治療の問題点を挙げた。爪白癬の原因・白癬菌の生息実態 爪白癬の原因となる白癬菌は、角質に含まれるケラチンというタンパク質が大好物である。生きた皮膚の細胞は防御反応を起こすため、菌も近寄りがたい。一方で、その表面にある角質は死んだ細胞のためそのような反応が起こらず、角質が厚く豊富な足や爪などは白癬菌の生息地として適しているのだという。また、床やバスマット、じゅうたん、畳などは白癬菌が角質とともに落下することで感染源となる。同氏は「角質に付着した白癬菌は長期間生存しているため、他人が落とした白癬菌を踏みつけて白癬菌に感染する。なかには、治療前に自分の落とした白癬菌が治療後に自分に戻るケースすらある。温泉やプールなどの床には多数の白癬菌を含んだ角質が落ちていることがわかっているので、自宅では定期的に洗濯・掃除することで落下した角質を除去し、温泉やプールから帰宅した際には、足を洗い、付着した白癬を除去して感染を予防しなければならない」とコメントした。爪白癬はなぜ治さなければならないのか? 爪白癬は白癬菌の巣のようなもので、これを放置すると何度も足白癬を繰り返す。また、爪白癬や足白癬から白癬菌が広がり顔や身体に白癬菌が増殖し、いわゆる「タムシ」の原因にもなる。そして、厚くなった爪は歩行の際の痛みの原因になるだけではなく、指に食い込んで傷を作り細菌感染症のもとにもなる。そうならないうちに爪白癬は治療しなければならないのである。爪白癬と確定するには? 爪が白いと“爪白癬”と思われがちだが、乾癬や掌蹠膿疱症、扁平苔癬、爪甲異栄養症など爪が白くなる疾患は多数存在する。その違いを外観で判断することは非常に難しいため顕微鏡検査が必須となる。ところが、同氏によると「検査を行わずに臨床所見で白癬と判断する医師は多く、その診断はよく外れる」とコメント。同氏は自身の研究データ3)を踏まえ、「そこそこ経験を積んだ皮膚科医ですら、見た目で爪白癬を診断すると7割弱しか正答できない。ほかの科の先生ではもっと低くなるだろう」と見た目だけの診断に警鐘を鳴らし、顕微鏡による検査が必須であることを強調した。爪白癬の適正な治療とゴール 最近では爪白癬用の外用液の普及により経口薬が用いられない傾向にあり、これが完全治癒に至らない最大の問題だという。外用薬は一部の特殊な病型や軽症例には有効であるが、多くの爪白癬の症例には経口薬が必要であるという。同氏は「外用液の場合、1年間塗り続けても20%の患者しか治らず、途中でやめてしまう人も多いため完治に至るのは数%ほどと推測される。新しい外用薬が登場したことで経口薬が用いられず、きちんとした治療がなされないという本末転倒の状況になっている」と述べ、爪白癬治療の現状を憂慮した。 経口薬は肝・腎機能への影響、薬物相互作用が懸念され、そのリスク因子が高い患者や高齢者には使いにくい印象があるが、「実際は、相互作用の少ない薬剤もあり、肝臓や腎臓についても定期的に検査すれば過剰に心配する必要はない。完治を目指し治癒率の高い経口薬を用いるべきである。最近は、相互作用が少なく、12週間という短期間の服用で治癒率の高い経口薬も登場した」と述べた。同氏は、爪白癬の治療に際し、『足の水虫を何度も繰り返す原因になります』、『家族の方にもうつしてしまうかもしれません』、『足以外の体にまでカビが生えてしまう前に治しましょう』、『しっかりと治療すれば完治も目指せますよ』、『短期間で終わる薬もあります』などのように説明し、治療の動機づけや継続率を高める工夫をしている。薬剤の選択と並んで、患者のやる気を引き出すことが爪白癬治療の重要なポイントだそうだ。 最後に「『完全治癒』とは、“菌を完全に排除”し“臨床的に爪白癬症状なし”とすることであり、これを達成できないと菌の残存により再発する」と述べ、治癒に至る可能性の高い経口薬の使用を強く訴えた。 なお、「皮膚真菌症診断・治療ガイドライン」は、来年までに改訂が行われる予定である。■関連記事患者向けスライド:爪白癬足白癬患者の靴下、洗濯水は何℃が望ましいか第10回 相互作用が少なく高齢者にも使いやすい経口爪白癬治療薬「ネイリンカプセル100mg」【下平博士のDIノート】

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NSCLC患者ががん治療に対し望むこと

 自分が受けているがん治療に対し、患者は何を望み、どのように考え、どんな情報を求めているのだろうか。 日本ベーリンガーインゲルハイム株式会社は、「非小細胞肺がん(NSCLC)患者さんにおける治療選択に関する意識調査」を実施し、その結果を2019年5月9日に発表した。 本調査は、2018年12月13~16日に、NSCLC治療経験のある患者(現在薬物治療中または薬物治療終了から1年未満)139例を対象に、がん情報サイト「オンコロ」にてアンケート形式で実施された。 主な結果は以下のとおり。・がん治療を行ううえで望むことは「生存期間が延びること(28.8%)」が最も多く、次いで「進行/再発しない期間が延びること(23.7%)」「これまでと変わらない生活ができること(23.7%)」だった。・薬剤を選ぶに当たり参考にした情報は「主治医の説明(85.6%)」が最も多く、次いで「患者さんが書いているブログ(36.0%)」「学会からの情報(ガイドライン等)(32.4%)」だった。・患者の41.7%は「薬剤による効果の差」について説明を受け、そのうち「生存期間」について説明を受けた患者は22%に留まった。・「二次治療で使う薬剤について」説明を受けた患者は30.2%だった。・初回の薬物治療開始時に先生から受けた説明の満足度を聞いたところ、37.5%の患者が、「どちらとも言えない」「あまり満足していない」「満足していない」と回答した。選択した理由として、「説明不足だと感じた」「選択肢が無いように思えた」「知識がなく質問などができなかった」などの回答が得られた。・薬剤を投与できる可能性が何%であっても再生検(遺伝子検査)を受けたいと回答した患者が70.5%にのぼり、陰性であった場合でも繰り返し検査を受けたいという意向を持つ患者は73.4%だった。・87.6%がリアルワールドデータを参考にしたいと回答し、96.4%の患者が自分のデータを進んで活用してもらいたいと回答した。「活用してもらいたいと思わない」と回答した患者はいなかった。 本調査結果を受けて、小林 国彦氏(埼玉医科大学リサーチアドミニストレーションセンター 教授)は「この調査からQOLを保ちつつ長期生存を望む患者さんの姿が明らかになった。また、初回治療だけではなく、二次治療も含めた治療の全体像を説明してもらいたいという様子が伺える。とくに重要な情報源は医師からの情報だが、十分な説明がされていないと感じている患者さんも少なくなく、医師と患者さんのコミュニケーションギャップが見てとれるため、一人ひとりの希望を聞きながら患者さんと一緒に治療選択を進めていく重要性が確認された」とコメントしている。■参考日本ベーリンガーインゲルハイム株式会社 プレスリリースがん情報サイト「オンコロ」

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抗うつ薬ミルタザピンの速効性と費用対効果との関連

 これまでの研究で、ミルタザピンは他の抗うつ薬と比較し、効果発現が速い特徴を有するといわれている。いくつかの研究において、費用対効果が評価されているが、その際、早期寛解については考慮されていなかった。慶應義塾大学の佐渡 充洋氏らは、この研究ギャップに対処するため、正確な臨床データを用いることで、日本におけるミルタザピンの費用対効果について評価を行った。Psychiatry and Clinical Neurosciences誌オンライン版2019年4月11日号の報告。 週ごとの推移確率を反映するためのマルコフモデルを開発した。マルコフ周期は、1週間に設定した。臨床パラメータは、主にメタ解析から抽出し、費用関連データは、行政報告から抽出した。費用対効果は、確率感度分析に基づいて推定された質調整生存年の増分費用対効果比(incremental cost effectiveness ratios:ICER)により評価した。ICERは、2、8、26、52週で推定した。 主な結果は以下のとおり。・重症うつ病のICERは、87万2,153円~177万2,723円であった。ICERの閾値を500万円とした場合、費用対効果でミルタザピンが効果的な割合は、0.75~0.99の範囲であった。・中等度うつ病のICERは、235万6,499円~477万145円であった。ICERの閾値を500万円とした場合、費用対効果でミルタザピンが効果的な割合は、0.55~0.83の範囲であった。 著者らは「ミルタザピンの効果発現の速さを考慮すると、日本国内においてとくに重度のうつ病や早期治療では、SSRIと比較し費用対効果が高いと考えられる。しかし、本研究の限界として、ミルタザピンと各SSRIを比較していない点、併用療法を考慮していない点が挙げられる」としている。■「抗うつ薬比較」関連記事抗うつ薬21種の有効性と忍容性を検討~522試験のメタ解析/Lancet

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米国成人の座位時間、1日1時間増加/JAMA

 長時間の座位は、多くの疾患や死亡のリスクを増大させる。カナダ・Alberta Health ServicesのLin Yang氏らが、米国における2001~16年の座位行動の傾向を調査した結果、1日に2時間以上のテレビ/ビデオ視聴の割合は高いまま安定しており、余暇におけるコンピュータ使用は全年齢層で増加し、1日の総座位時間は青少年および成人で有意に延長したことが明らかとなった。2018年に発表された「米国人のための身体活動ガイドライン(Physical Activity Guidelines for Americans)第2版」により、座位に伴う健康上のリスクが知られただけでなく、中~高強度の身体活動の増加と座位時間の短縮の双方によって、多くの人々が健康上の利益を得ていることが初めて示されたが、座位時間の定量的な主要ガイドラインは記載されていないという。JAMA誌2019年4月23日号掲載の報告。経時的な傾向を調査する連続的な横断研究 研究グループは、米国における座位行動のパターンおよびその経時的な傾向を調査し、社会人口統計学的特性や生活様式上の特性との関連を検討する目的で、連続的な横断研究を行った(米国国立がん研究所などの助成による)。 米国の全国健康栄養調査(NHANES)のデータを用い、小児(5~11歳、2001~16年)、青少年(12~19歳、2003~16年)、成人(20歳以上、2003~16年)に分けて解析を行った。 主要アウトカムは、1日2時間以上の座位でのテレビ/ビデオ視聴、1日1時間以上の学校または職場以外でのコンピュータの使用、および総座位時間(12歳以上における1日の座位時間)であった。 2001~16年のNHANESから得た5万1,896人(平均年齢37.2[SE 0.19]歳、2万5,968人[50%]が女性)のデータを解析した。小児が1万359人、青少年が9,639人、成人は3万1,898人だった。2007~16年に、1日の総座位時間が青少年と成人で約1時間延長 2015~16年度における1日2時間以上の座位テレビ/ビデオ視聴の割合は全年齢層で高く、小児が62%(95%信頼区間[CI]:57~67)、青少年が59%(54~65)、成人が65%(61~69)であり、成人のうち20~64歳が62%(58~66)、65歳以上では84%(81~88)に達した。 2001年から2016年までに、1日2時間以上の座位テレビ/ビデオ視聴の割合は、小児(差:-3.4%、95%CI:-11~4.5、傾向性のp=0.004)では非ヒスパニック系白人を中心に経時的に有意に低下し、青少年(-4.8%、-12~2.3、p=0.60)および20~64歳の成人(-0.7%、-5.6~4.1、p=0.82)では安定していたが、65歳以上の成人(3.5%、-1.2~8.1、p=0.03)では有意に増加した。 1日1時間以上の学校/職場以外でのコンピュータ使用の割合は、全年齢層で経時的に増加した。小児では2001年の43%(95%CI:40~46)から2016年には56%(49~63)へ(差:13%、95%CI:5.6~21、傾向性のp<0.001)、青少年では2003年の53%(47~58)から2016年には57%(53~62)へ(4.8%、-1.8~11、p=0.002)、成人では2003年の29%(27~32)から2016年には50%(48~53)へ(21%、18~25、p<0.001)と、それぞれ有意に増加した。 1日当たりの総座位時間は、青少年では2007年の7.0時間(95%CI:6.7~7.4)から2016年には8.2時間(7.9~8.4)へ(差:1.1、95%CI:0.7~1.5、傾向性のp<0.001)、成人でも5.5時間(5.2~5.7)から6.4時間(6.2~6.6)へ(1.0、0.7~1.3、p<0.001)と、いずれも有意に増加した。 著者は、「注目すべきは、青少年と成人の総座位時間の増加は、テレビ/ビデオ視聴以外の座位行動に起因すると考えられ、これはコンピュータ使用時間の増加によってある程度促進された可能性があることだ」としている。

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DS-8201、HER2陽性乳がん第II相臨床試験の結果/第一三共

 第一三共株式会社とアストラゼネカは、HER2陽性の再発または転移のある乳がん患者を対象とした抗体薬物複合体トラスツズマブ デルクステカン(DS-8201)の第II相臨床試験(DESTINY-Breast01)において、臨床的意義のある効果が示されたと発表。 同試験は、T-DM1治療を受けたHER2陽性の再発または転移のある乳がん患者253例を対象とした北米、欧州および日本を含むアジアにおけるグローバル第II相臨床試験。同試験の主要評価項目である客観的奏効率は、2019年4月に医学雑誌「The Lancet Oncology」にて公表された本剤の日米共同第1相臨床試験の結果と同様の傾向が認められた。また、本試験において安全性上の新たな懸念は認められなかった。 同剤は、米国食品医薬品局より、HER2陽性の再発・転移性乳がん治療を対象として画期的治療薬(Breakthrough Therapy)指定およびファストトラック指定を受けている。また、厚生労働省よりがん化学療法後に増悪したHER2過剰発現が確認された治癒切除不能な進行・再発胃がんに対する治療として先駆け審査指定を受けている。 同試験結果の詳細は、今後、学会にて公表する予定とのこと。

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女性医師だけの問題ではない…!?(解説:小松郷子氏)-1041

 これまでにも大規模な質的研究における母親差別、セクシャルハラスメント、給与やキャリアへの性差別の報告がいくつもあるが、今回の研究は英国とオーストララシアの女性医師を対象にして、外科研修プログラムを途中で辞めた(辞めざるを得なかった)要因をブロックで視覚的にまとめたものである。スノーボール・サンプリング法による対象者はわずか12名で、インタビュアーのバイアスも除外しきれない中で逆に深く掘り下げることにより、新たな6つの要因を浮き彫りにしている。性差比較の研究結果の多くが先進国を含む世界中で同じ傾向にあることは残念ではあるが、悪しき要因改善を促す研究が世の中に出てくるようになったことは進歩なのかもしれない。 ただこれは「women」に限ったことではないのではないか。たしかに、男性医師は外科専門医の男性比率が高く交流しやすいだろう。同性社会の中で精神衛生状態が悪いことも少ないだろう。生物学的に妊娠出産がないからその時期のキャリアの中断もなければ、子育ては多くが(女性医師よりも)家族の協力を得やすいことが推測される。それでもハードな外科系を選択する男性医師は年々減少し、マンパワーに診療科間の不均等が生じているのも事実であり、しんどいとされる診療科では医師全体が過重労働になっている。男性医師でも「病気などで休暇を取ることが難しい」「休暇の正当な理由についての区別が曖昧」などの環境は似たようなものではないだろうか。だからこそ、「外科分野の研修プログラムは性別に重点を置くのではなく、多様な因子に気を配りながら、予期せぬ負の影響の可能性に留意した介入が必要となる」と述べている。外科研修プログラムの構造改革は、実は「men」にとっても重要なことだと暗に言っている。 「医者は事務職ではない」という上司の一言で労働基準法は無視され、時短勤務どころか育休すらなかった世代から見ると今は隔世の感があるが、それでもまだまだ周囲の理解は難しい。社会環境が整うには時間を要するが、相手の立場をあと一歩だけ慮り、チーム間のコミュニケーション・相互理解を深めれば、柔軟にキャリアを積める空気も生まれるだろう。今後sexual and gender minoritiesの声を拾ったデータも出てくるようになれば、某大学の入学式の祝辞が話題になることもない、生物学的性別を意識しない時代になるかもしれない。「Resilience」:柔軟性と適応力はどの分野でも必要なことである。MinoritiesのほうがResilienceは優れている可能性もある。

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ABATE Infection trial:非ICUにおけるクロルヘキシジン清拭は耐性菌発生を抑制できるか?(解説:小金丸博氏)-1043

 医療関連感染(Health-care-associated infections)は頻度が高く、重大な合併症を引き起こすことがあるため、世界中で予防策が検討されている。予防策の1つが患者の皮膚や鼻腔に定着した病原体の除菌であり、医療関連感染の発生や伝播を減らすことが期待されている。これまでに発表された、いくつかのクラスター無作為化比較試験において、ICU入室患者に対するクロルヘキシジン清拭やMRSAの鼻腔除菌が血流感染症やMRSA感染症を抑制することを示してきたが、非ICU入院患者に対する効果ははっきりしていなかった。 今回発表された研究(ABATE Infection trial)は、非ICU入院患者に対するICU同様の感染対策(全例に対するクロルヘキシジン清拭とMRSA保菌者に対するムピロシン鼻腔内塗布の併用)の感染予防効果を検討したクラスター無作為化比較試験である。米国の53病院(ICUを除いた194病棟)を対象とし、介入群と通常ケア群(非消毒薬による清拭、石鹸を用いたシャワー浴)との間でMRSAやバンコマイシン耐性腸球菌(VRE)の培養検出率や、全病原体による血流感染症発生率などを比較検討した。その結果、ベースライン期と比べた介入期のMRSA培養陽性またはVRE培養陽性のハザード比は、クロルヘキシジン清拭+ムピロシン鼻腔除菌群0.79(95%信頼区間:0.73~0.87)、通常ケア群0.87(同:0.79~0.95)であり、有意差は認めなかった(p=0.17)。全病原体による血流感染症の発生率にも有意差はなかった。有害事象の発生率は、クロルヘキシジン清拭群で1%未満と低率だった。 本研究では、非ICU入院患者に対するクロルヘキシジン清拭とMRSA保菌者に対するムピロシン鼻腔内塗布の併用は、通常ケア群と比較して、MRSAやVREの発生率や全病原体による血流感染症発生率を有意に低下させなかった。本研究の結果は、大きなサンプルサイズの無作為化試験の中で、かつ高いプロトコル遵守率の中で得られた結果であり、非重症患者全例に対する介入はそれほど有用ではない可能性が高い。その一方で事後のサブグループ解析では、中心静脈カテーテルなどのデバイスが留置されていた患者において、介入群で全病原体による菌血症が32%、MRSAまたはVRE発生率が37%減少していた。デバイスが留置されている患者に対しては有用な介入である可能性があるが、あくまで事後解析の結果であり、追加の確認試験が必要であろう。 クロルヘキシジンは日常的によく用いられる消毒薬であり、忍容性は良好だが、局所の皮膚毒性やアナフィラキシーと関連する。クロルヘキシジンに繰り返し曝露されると細菌の感受性低下を誘導するため、クロルヘキシジンの使用は患者の利益が明確な状況に限定されるべきと考える。

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第13回 カプランマイヤー法、Cox比例ハザードモデルとは?【統計のそこが知りたい!】

第13回 カプランマイヤー法、Cox比例ハザードモデルとは?生存率の分析手法に、「カプランマイヤー法」「Cox比例ハザードモデル」があります。これらの手法は、ある事象が起こった群と起こらない群の2群に対して、時間的な要素を考慮して解析する方法です。目的変数は「アウトカム」とも呼ばれ、死亡/生存(時には、再発する/再発しない、寛解する/寛解しないなど)の2群のカテゴリーデータになります。今回は、2つの生存率の分析手法を学習します。■カプランマイヤー(Kaplan-Meier)法アウトカムが死亡/生存という簡単な事例を示します。事例では、再発がん患者の生命予後の改善を見るために、従来の標準治療に加えて、患者424例には製品Aを投与、464例にはプラセボを投与し、36ヵ月間の経過観察を行いました。治療開始時は当然100%の患者さんが元気でしたが、時間の経過と同時に、残念ながらがんが進行し、1人また1人と亡くなられていく患者さんの割合が増加します。時間の経過とともに生存の割合(生存率)は下がります。図 事例のカプランマイヤー法の生存曲線カプランマイヤー法は、製品A群とプラセボ群の生存率を計算して、グラフを描く解析手法です。製品A群とプラセボ群の生存率の違いを調べ、製品Aの延命効果を把握する方法です。■Cox比例ハザードモデル(Cox回帰モデル)カプランマイヤー法では、生存期間と生存率の関係をプロットすることによって、製品A群とプラセボ群それぞれの生存期間の全体像がわかります。Cox比例ハザードモデルは、性別や年齢、Stageなどの生存率に影響を与える説明変数との関係式を作成し、関係式の係数から延命に寄与する要因を把握する方法です。説明変数に、投与薬剤(製品A群、プラセボ)を適用すれば、製品Aの延命効果を把握することができます。このように説明変数が生存期間に与える影響を考慮したうえで、製品Aの効果を評価するために広く用いられているのが、Cox比例ハザードモデルです。生存期間を解析するときの要因として、カプランマイヤー法は死亡や再発などのイベントの有無という1つの変数しかみていませんが、Cox比例ハザードモデルでは複数の要因を評価することができます。ちなみに、カプランマイヤー曲線のグラフの空いたところにハザード比やハザード比の95%信頼区間が記載されていることがありますが、カプランマイヤー曲線とは関係なく、Cox比例ハザードモデルで算出されています。■さらに学習を進めたい人にお薦めのコンテンツ「わかる統計教室」第1回 カプランマイヤー法で生存率を評価するセクション1 生存率を算出する方法セクション2 カプランマイヤー法で累積生存率を計算してみるセクション3 カプランマイヤー法の生存曲線を描いてみるセクション4 カプランマイヤー法の生存曲線を比較する

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第19回 心電図界のギョーカイ用語、知りたくない?~QRS波の命名法~(後編)【Dr.ヒロのドキドキ心電図マスター】

第19回:心電図界のギョーカイ用語、知りたくない?~QRS波の命名法~(後編)第17回に続き、今回もQRS波(群)の命名法を扱いましょう。各要素は、上向きのR波を起点に前後の下向き波(Q波・S波)を命名するのが基本でした。今回の後編では、心疾患があるような人に見られる、より複雑な波形の呼び方についてDr.ヒロが解説します。【問題】次のQRS波はどう呼んだらいいか? 波形に注目して「~型」と答えよ。(図1)各QRS波形を表現できますか?画像を拡大する解答はこちら(1)rSR'型、(2)Rsr'S'型、(3)Qrsr's'型、(4)RR'型、(5)rSS'型、(6)rsR'R''s'型解説はこちらゴールデンウイーク中に“おさらい”の回を挟みましたが、今回もQRS波のカタチから「~型」と名前を与える問題を考えましょう。前々回に学んだ基本を覚えていますか?QRS波は、上向きが「R波」、下向きが「Q波」または「S波」と表現するのでした。各要素が1つずつなら、話はカンタンですが、複数あったらどうでしょう? Q波はあっても1つですが、ほかのR波やS波は2個、3個となる可能性があります。その時の対応方法がわかったら、より複雑な波形の命名も可能になりますよ。“2号や3号をどう呼ぶか?”今回は、より複雑なカタチをしたQRS波に名前を付けていきます。早速(1)からいきましょう。ちなみに最後のほうにある、なだらかな下向き波は「陰性T波」です。これは無視して、あくまでもQRS波にフォーカスして命名するのでご注意あれ! まず、見つけるべきは上向きの波形要素「R波」でしたね。…あれっ? よーく見ると、深掘れの“谷”を挟んで最初に小さな「r波」、そして最後に立派な「R波」と、2つの上向き波がありませんか?こういう時の呼び方はちゃんと決められており、“心電図業界”では、R波がいくつかある場合、左(手前)から順に「R波」、「R’波」、「R’’波」…とダッシュ「’」を付けて表現するんです。“~1号、~2号、~3号”みたいなノリで、2つ目の「R波」なら「アールダッシュ(R’)」、3つ目もあったら「アールダブルダッシュ(R”)」のように呼ぶんです。この(1)には「Q波」はなく、間の“谷”が「S波」になるので、「rSR'型」が正解になります。QRS幅も3.5mm(0.14秒[140ms])と幅広で、これは「完全右脚ブロック」の時にV1やV2誘導で見られる典型波形です。続いて(2)です。これも水平なST部分を介してなだらかな陰性T波に接続していますので、左端から9mmちょっとまでがQRS波です。これも「Q波」はなく、「R波」、「S波」ともに2つあるでしょう? ST部分につながる下向き波は幅広ですが(スラー)、これが2つ目の「S波」です。“2号”にダッシュがつくのは「R波」も「S波」も同じなので、「Rsr'S'型」が正解です。ここで『2つの「R波」に挟まれた“谷”は、深いのでは?』という人がきっといるはず(若かりし時のボクにもそう見えた)。こういう場合、“海抜0m地帯”、すなわち基線からの“振れ”を下向き波のサイズとして判定するんですって。基線とは…そう、T-Pライン(ないしT-QRSライン)です(第14回)。今回の波形は2心拍なく、T-PあるいはT-QRSラインが適用できないため、通常は同一線上にある「PR部分」(P波のおわり~QRS波のはじまり)で代用すると良いでしょう。すると、“谷”の部分は最初の「R波」の頂点からはガクンと落ち込みますが、下向き波としては1.5mm程度の深さとなるため、小文字アルファベットで表記するのです。では、より複雑な(3)はどうでしょう? なんかこの波形、見た目にもギザギザでヤバいですよね? 最初は「Q波」。これは幅が広く(1mm以上)なので「異常Q波」として扱います(第17回)。ここからは複雑なので、拡大して解説します(図2)。“地平線”的に基線を意識し、網掛け部分のQRS波に狙いを定めます。(図2)QRS波形(3)を拡大画像を拡大するすると、基線より上の“地上”にわずかに頭を出した小さい「r波」が2つ。その間に小さな「s波」(1つ目)、そして5番目、最後の下向き波も“地下”3mmに届かないので「s'波」(2つ目)です。よって、正解は「Qrsr's'型」。このように、ギザギザ・チックなQRS波は、高率で病的なことが多く、「fragmented QRS(complexes)」と呼ばれています。“幻の小さい波に惑わされるな”どんどんいきましょう。次の(4)は、これもQRS幅がワイドで「完全左脚ブロック」と診断する時に、V5やV6誘導、そして“ご近所”のIやaVL誘導で認められる波形です。恥ずかしながら、若かりし日のDr.ヒロは、ある程度QRS波の命名ができるようになってからも、これが“RsR'型”だと思っていました。ただし、教科書では「RR'型」となっていて、これが正解です。『あれ?2つのR波にある、ちーさな下向きの波は…「s波」とは違うの?』そう思う人いませんか?でも、これは違うんです。だって、“地下”に掘れてないもの。実は、基線より下向きの振れではないと「S波」と言わないのです。今思うと“常識”ですが、あまり教科書にも書かれてないこともあり、当時のボクがそれに気づくまでしばらく時間がかかりました。だからこそ、Dr.ヒロは取り上げます!次の(5)もまったく同じ考え方で大丈夫。1mmにも満たないはじめの「r波」を見逃さず、かつ“rS型”でも、ましてや“rSr'S'型”でもありません(これではボクと“同じ穴のむじな”状態になってしまいますよ~)。正しい答えは「rSS'型」。(4)も(5)も「R波」ないし「S波」が連続する時には、反対向きの小波はカウントせず、間にノッチ(notch)があると表現します。では、最後に“卒業問題”の(6)を扱って終わります。P波や(陰性)T波に惑わされず、基線を意識しながら波の上下を見定め、ノッチの“罠”にひっかからないように…。正解は「rsR'R''s'型」です。うーん、これが正しく言えたのなら、アナタはもうどんなQRS波形を見ても正しく命名できるでしょう。Dr.ヒロが太鼓判を押しますよ。“QRS fragmentationの臨床的意義”今回扱ったギザギザ波形の場合、「QRS fragmentation」または「fragmented QRS」があるという表現をします。これは心室内における電気伝導の遅延を反映しており、心臓病が起こって“キズ”がついていると理解するのがスムーズです。もっともシンプルなのは、心筋梗塞などの話です。次の図は、虚血性心疾患において「fragmented QRS」の有無で生存曲線を比較したものですが、有意差がありますね(図3)。(図3)Fragmented QRSの意義画像を拡大するそして、心筋症や弁膜症などの非虚血性心疾患でも心電図上の独立した予後不良因子*1となります。また、そのほか多くの疾患で死亡・心臓突然死などの予測因子の一つであることも示されています。ただ単に名前が言えるだけではなく、実臨床での話に還元すると非常に興味深いですよね。最後に、前編・後編で扱ったQRS波の命名ルールをまとめました(図4)。(図4)QRS波の命名法まとめ画像を拡大する2回に分けてお送りした「QRS波の命名法」、いかがだったでしょうか。個々の波を正しく認識し、ルールに沿って全体の波をどう呼ぶかを考える。複雑な波形の名前がビシッとうまく言えたとき、何だかオレ(ワタシ)成長しなたなぁ…そんな風に思うのではないでしょうか?QRS波に命名する…それは“我が子”に名を与える親の様子にも似ているなぁ。QRS波一つ一つの“名付け親”になることで波形が愛おしくなり、世界中の皆さんが心電図を好きになってくれたらなぁ…と考えてしまうDr.ヒロなのでした。Take-home MessageQ波はあっても1つだが、R波やS波は複数あったら「ダッシュ(’)」を用いて表現する上向きか下向きかは、基線(T-P [QRS] ライン)からの上下で見極めよう脚ブロックに典型的なQRS波の名称(型)と形をイメージできるようになろう!*1:Jain R, et al. Curr Cardiol Rev. 2014;10:277-286.杉山 裕章. 心電図のみかた、考え方[基礎編]. 中外医学社;2013.p.68-74.【古都のこと~日本循環器学会学術集会2019】今回は、京都を飛び出して「特別編」をお送りします。2019年3月末、パシフィコ横浜で行われた第83回日本循環器学会学術集会に参加してきました。新幹線を降りた時、やや肌寒さを感じましたが、会場はアツかった! セッションやセミナー各種、展示企画まで盛りだくさんの内容でした。自己研鑽以外、もう一つの“お目当て”が。それは、学会に合わせて刊行した2冊の書籍の様子伺いをすることでした。うち1冊の『心電図の読み“型”教えます!Season 1』は、本連載(初回~第11回)の内容をベースに、加筆・修正したものです。陳列された実際の書籍を目にすると、学会直前ギリギリまで作業を続けてくれた中外医学社の関係諸氏への感謝の念が湧き上がります。普段、編集を担当してくれている土井女史とも喜びを分かち合い、書籍コーナーで記念写真をパシャ(笑)これもいい記念になりました。爽やかな刺激を受けたことで、ボクももっとやらなきゃと謙虚な気持ちになり、適度な疲れとともに家路につきました。なお、食いしん坊は、中華街にもちゃっかり足を伸ばし、点心コースを堪能しましたとさ…。

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第37回 大学院在学中、川添58歳への挑戦【週刊・川添ラヂオ】

動画解説4月から大学院修士課程に在籍している川添先生。博士課程の修了は6年後58歳となる予定です。病院、薬局、在宅とさまざまな場所で活躍する川添先生ですが、研究発表では「うまくできていない」と先輩方からはなじられることもあったそう。大学院進学を決断した川添先生が説く「薬剤師への大学院進学の勧め」。

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第14回 医療の質・安全学会学術集会【ご案内】

 2019年11月29日(金)、30日(土)の2日間、第14回医療の質・安全学会学術集会が国立京都国際会館で開催される。今回のテーマは、「レジリエンスの探求~つながり、共創、イノベーション~」。レジリエンスとは、システムの特性を表す用語で、柔軟性、弾力性、しなやかさを意味する。 本学術集会は、さまざまな専門性や多様性を有する医療者が「医療の質・安全」を共通言語としてつながり、創発的なひらめきを共創し、機能・価値の創造と技術革新などのイノベーションを引き起こし、ヘルスケアシステムにレジリエンスを実装することを目的としている。レジリエンス・エンジニアリングの世界的権威であるエリック・ホルナゲル教授をはじめ、国内外からさまざまな学際領域の専門家が招聘され、学術的かつ実践的な議論が行われる予定だ。4月24日(水)より演題登録を行っているので、ご興味のある方は、ぜひ登録をお願いしたい。 開催概要は以下のとおり。【日時】2019年11月29日(金)~30日(土)【場所】国立京都国際会館【大会長】大阪大学医学部附属病院中央クオリティマネジメント部 教授 中島 和江氏【テーマ】レジリエンスの探求~つながり、共創、イノベーション~Enabling Resilient Health Care through Connections, Co-creation and Innovation【お問い合わせ先】大阪大学医学部附属病院 中央クオリティマネジメント部〒565-0871 大阪府吹田市山田丘2-15株式会社コンベンションリンケージ内〒531-0072 大阪府大阪市北区豊崎3-19-3 PIAS TOWER 11FTEL 06-6377-2188FAX 06-6377-2075E-mail:14jsqsh@c-linkage.co.jp第14回医療の質・安全学会学術集会詳細はこちら

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がん患者のVTE、抗凝固薬投与は3ヵ月以上?

 静脈血栓塞栓症(VTE)は、がん患者における上位の疾患・死亡要因である。がん患者のVTE治療は、現在のところ3~6ヵ月以上の抗凝固療法が推奨されているが、至適期間は不明であった。米国・クリーブランドクリニックのAlok A. Khorana氏らは、新たに診断されたVTEを有するがん患者について、後ろ向きコホート研究を行い、抗凝固療法は3ヵ月以上でVTE再発リスクを約50%低下させることを明らかにした。Supportive Care in Cancer誌オンライン版2019年2月8日号掲載の報告。 研究グループは、がん患者における抗凝固療法の実施期間とVTE再発との関連を調査する目的で、The Humana claimsデータベースを用い、2013年1月1日~2015年5月31日に初回VTEの診断を受け、注射または経口の抗凝固療法を開始した新規がん患者を特定し、治療開始から追跡(2015年6月まで)。Cox比例ハザードモデルを用いて治療を中止した患者における治療期間別のVTE再発リスクを評価した。 主な結果は以下のとおり。・解析対象は1,158例であった。・VTE治療期間が0~3ヵ月の患者と比較し、3~6ヵ月の患者および6ヵ月以上の患者は、VTE再発率が有意に低かった。・患者背景を補正後もVTE治療期間が0~3ヵ月の患者と比較し、3~6ヵ月の患者(HR:0.53、95%CI:0.37~0.76)、および6ヵ月以上の患者(HR:0.48、95%CI:0.34~0.68)は、VTE再発リスクが有意に低かった(いずれもp<0.01)。・VTEイベントの定義に外来患者を含んだ場合も、類似の結果が得られた。

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親密なパートナーからの暴力への介入、妊婦の産後QOLを改善するか/JAMA

 親密なパートナーからの暴力(intimate partner violence:IPV)は公衆衛生上の課題であり、女性や子供に重大で有害な結果をもたらす。カナダ・マックマスター大学のSusan M. Jack氏らは、初めての子供を持つ社会的および経済的な不利益を経験している妊婦への看護師による自宅訪問プログラム(nurse home visitation program)に、IPVへの包括的な介入を加えても、出産後の母親の生活の質(QOL)の改善は得られないことを示した。研究の詳細はJAMA誌2019年4月23日号に掲載された。米国の3つの無作為化試験では、看護師による自宅訪問プログラムは妊娠アウトカム、子供の健康、母親のライフコース(life-course)における成長を改善すると報告されているが、IPVが中等度~重度の母親ではこの効果は得られていない。また、他の米国とオランダの試験では、IPVへの同プログラムの効果に関して相反する知見が得られているという。IPV介入による強化の有用性を評価するクラスター無作為化試験 研究グループは、看護師による自宅訪問プログラムをIPV介入で強化することによる、母親のQOLへの影響を評価する目的で、単盲検クラスター無作為化試験を行った(米国国立傷害予防管理センター[NCIPC]などの助成による)。 2011年5月~2015年5月の期間に、米国8州の15施設で、社会的不利益を受け、2.5年間の看護師による自宅訪問プログラムに参加している16歳以上の妊娠女性492例を登録した。参加施設は、看護師による自宅訪問プログラム+IPV介入を行う強化プログラム群(7施設、229例)または看護師による自宅訪問プログラムのみを行う標準プログラム群(8施設、263例)に無作為に割り付けられた。 強化プログラム群の施設では、看護師が集中的なIPV教育を受け、IPV介入を行った。介入には、安全性計画(safety planning)、暴力の認識(violence awareness)、自己効力感(self-efficacy)、社会的支援への紹介に焦点を当てた評価や個別的ケアを支援するクリニカルパスが含まれた。標準プログラムには、暴力曝露に関する限定的な質問と、虐待を受けた女性に関する情報が含まれたが、看護師への標準化されたIPV研修は行われなかった。 主要アウトカムは、ベースラインおよび出産後から24ヵ月までの6ヵ月ごとの面談で得られたQOLとした。QOL評価にはWHOQOL-BREF(0~400点、点数が高いほどQOLが良好)を用いた。7つの副次アウトカムにも有意差なし 全体の平均年齢は20.3(SD 3.7)歳で、白人が62.8%、黒人/アフリカ系米国人が23.3%であり、高卒/職業訓練校修了が53.3%、独身/未婚が80%、被扶養/無収入が35.7%だった。421例(86%)が試験を完遂した。 WHOQOL-BREFスコアは、強化プログラム群ではベースラインの299.5(SD 54.4)点から24ヵ月後には308.2(52.6)点へ、標準プログラム群では293.6(56.4)点から316.4(57.5)点へといずれも改善し、QOLはむしろ標準プログラム群のほうで良好な傾向がみられた。マルチレベル成長曲線分析では有意な差はなかった(モデル化スコア差:-4.9、95%信頼区間[CI]:-16.5~6.7)。 7つの副次アウトカム(Composite Abuse Scale[CAS]によるIPV、SPANによる心的外傷後ストレス障害[PTSD]、Patient Health Questionnaire 9[PHQ-9]によるうつ状態、TWEAKによる飲酒問題、Drug Abuse Severity Test[DAST]による薬物問題、12-Item Short-Form Health Survey[SF-12]による心の健康および身体的健康)はいずれも、両群に有意差はみられなかった。また、有害事象の記録は両群ともになかった。 著者は、「これらの知見は、この複雑で多面的なIPVへの介入によって、看護師による自宅訪問プログラムを強化した支援を支持しない」としている。

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ABO血液型不適合腎移植は、生存・生着を改善するか/Lancet

 ABO血液型不適合腎移植(ABOi-rTx)は、脱感作プロトコルや最適化に進展がみられるものの、3年以内の死亡率や移植腎の非生着率がABO血液型適合腎移植(ABOc-rTx)を上回ることが、ドイツ・オットー・フォン・ゲーリケ大学マクデブルクのFlorian G. Scurt氏らによるメタ解析で示された。研究の成果はLancet誌オンライン版2019年4月18日号に掲載された。ABOi-rTxは、提供臓器不足の打開策としてその使用が増加しているが、早期および長期のABOc-rTxに対する非劣性のエビデンスが求められている。ABOc-rTxを対照とし追跡期間1年以上の観察研究のメタ解析 研究グループは、ABOi-rTxとABOc-rTxのアウトカムを比較した観察研究を系統的にレビューし、メタ解析を行った。2017年12月31日までに発表され、ABOc-rTxを対照として移植術後1年以上のフォローアップが行われ、移植腎および移植を受けた患者の生存に関するデータを含む論文を選出した。死体腎ABOc-rTxは除外した。 主要エンドポイントは、術後1、3、5年および8年以降の全死因死亡、および移植腎の生着率とした。メタ解析では、I2が0の場合は固定効果モデルを、I2が0以上の場合は固定効果と変量効果モデルの双方を用いた。 1998年1月~2017年9月に発表された40件(日本の12件を含む)の試験に参加した6万5,063例を解析の対象とした。ABOi-rTx群が7,098例(平均年齢:44.9歳[範囲:34~56])、ABOc-rTx群は5万7,965例(43.1歳[31~55])であった。長期的な生存、生着には差がない、組み直し腎臓提供の強化を ABOi-rTx群はABOc-rTx群に比べ、移植後の1年死亡率(オッズ比[OR]:2.17、95%信頼区間[CI]:1.63~2.90、p<0.0001、I2=37%)、3年死亡率(1.89、1.46~2.45、p<0.0001、I2=29%)および5年死亡率(1.47、1.08~2.00、p=0.010、I2=68%)が有意に高かったが、8年以降の死亡率に有意差は認めなかった(1.18、0.92~4.51、p=0.19、I2=0%)。 移植腎生着率(death-censored graft survival)については、ABOi-rTx群はABOc-rTx群に比べ、1年時(OR:2.52、95%CI:1.80~3.54、p<0.0001、I2=61%)および3年時(1.59、1.15~2.18、p=0.0040、I2=58%)は有意に低く、5年時(1.31、0.96~179、p=0.09、I2=75%)および8年以降(1.07、0.64~1.80、p=0.79、I2=66%)は有意な差がなかった。 移植腎喪失の割合は、5年時および8年以降は両群で同等であった。一方、ABOi-rTx群で敗血症の割合が高かったが、尿路感染症やサイトメガロウイルス感染症には有意な差はなかった。また、ABOi-rTx群は出血や血腫、リンパ嚢腫の頻度が高かった。拒絶反応の割合は、全体、境界領域、T細胞関連型には両群で差はなかったが、急性抗体関連型の拒絶反応はABOi-rTx群で高かった。 リツキシマブベースの脱感作プロトコルは、これを用いた場合および用いなかった場合の死亡率が、初回脱感作プロトコルの有無にかかわらず、1年時(リツキシマブ不使用[OR:2.70、95%CI:1.74~4.18、I2=27%、pheterogeneity=0.23]、リツキシマブ使用[1.97、1.14~3.42、I2=45%、pheterogeneity=0.02])および3年時(リツキシマブ不使用[2.37、1.04~5.42、I2=47%、pheterogeneity=0.11]、リツキシマブ使用[1.77、1.20~2.60、I2=11%、pheterogeneity=0.33])ともに、ABOi-rTx群がABOc-rTx群よりも高かった。 出版バイアスは検出されなかった。また、移植後5年までの結果は頑健であったが、それ以降のデータは無効または非結論的だった。 著者は、「これらの知見は、ABO血液型不適合腎移植を進めるのではなく、組み直し腎臓提供(kidney paired donation)を支持するものであり、腎臓交換プログラムのネットワークを拡大し、その活用を強化する行動を求めるものである」としている。

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長時間作用型持効性注射剤による統合失調症患者の機能アウトカムへの効果~メタ解析

 心理社会的機能障害は、統合失調症で一般的にみられる。非定型抗精神病薬の長時間作用型持効性注射剤(LAI)は、アドヒアランスを改善することにより、心理社会的機能を改善すると考えられる。しかし、臨床試験において非定型抗精神病薬LAIが心理社会的機能に及ぼす影響を検討したシステマティックレビューは報告されていない。オーストラリア・アデレード大学のAndrew T. Olagunju氏らは、非定型抗精神病薬LAIとプラセボまたは経口抗精神病薬を比較したランダム化比較試験のシステマティックレビューおよびメタ解析を実施した。The Australian and New Zealand Journal of Psychiatry誌オンライン版2019年4月8日号の報告。 主要データベースより、2018年までの非定型抗精神病薬LAIとプラセボまたは経口抗精神病薬を比較したランダム化比較試験を言語の制限なく検索した。心理社会的機能の変化とその予測因子に関する調査結果をシステマティックにレビューした。心理社会的機能の変化に関するデータは、ランダム効果モデルを用いてメタ解析を行った。 主な結果は以下のとおり。・システマティックレビューには26研究、メタ解析には19研究、8,616例(男性の割合:68.1%)が含まれた。・非定型抗精神病薬LAIは、心理社会的機能の改善において、プラセボ(標準化平均差[SMD]:0.39、95%信頼区間[CI]:0.32~0.47、p<0.001、I2=0%、9研究)および経口抗精神病薬(SMD:0.16、95%CI:0.01~0.31、p=0.04、I2=77%、10研究)と比較し優れており、その優位性は、短期および長期試験においても維持されていた。・心理社会的機能の不良の予測因子は、治療期間の長さ、症状重症度、認知機能不良、病識不良であった。・機能の評価は、単一または複数の方法の組み合わせにより評価したが、ほとんどの研究において、主要アウトカムではなかった。・その他のバイアス要因としては、盲検およびランダム化不良の報告が含まれていた点であった。 著者らは「非定型抗精神病薬LAIの心理社会的機能に対する改善効果は、プラセボと比較し有益であったが、経口抗精神病薬に対する優位性は大きくなかった。ベースライン時の重度な精神症状は、心理社会的機能の不良を予測した」としている。

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HIV予防薬服用で性感染症が増加するのは悪いことなのか?(解説:岡慎一氏)-1040

 いったんHIVに感染すると、現在の治療では治癒は不可能である。つまり、一生涯におよぶ治療が必要となる。日本では、年間の医療費は約250万円/人である。30歳前後でHIVに感染し、40年間治療を受ければ1人約1億円の医療費がかかる。HIV治療の公費負担は感染者が増えれば増えるほどかさむことになる。この10年間、毎年1,500人前後の新規感染者が発見されている。残念ながら、コンドーム推進キャンペーンが有効だとはいえない状況である。 世界で唯一、新規感染者を減らす方法として有効性が確立されているのは、今回の論文に出てくるHIV Pre-Exposure Prophylaxis(PrEP)である。PrEPとは、HIV感染リスクの高い人が前もって予防薬を服用することである。この予防法は非常に有効で、しっかりと予防薬さえ飲んでいれば、コンドームなどを使わなくてもHIVに感染することはほぼゼロになる。使わなくてもよければ使わない人が増えるのは当然で、その結果として、その他の性感染症(STI)が増加することは容易に予測される。この研究でも実際にSTIが増加したことが示されている。当然PrEPを始めると定期的にSTIの検査を受けるので、より多くのSTIが見つかるはずである。したがって、この論文では、検査件数で補正している。PrEP前に比べ検査件数で補正するとSTI全体で1.12倍増えている。しかしである。たった1.1年のフォローアップ期間である。PrEPにより定期的なSTI検査と早期診断・早期治療を徹底していけば、STI自体も減ってくるはずである(そのような地域もある)。さらに、HIV感染症と他のSTI、たとえば注射一本で治る淋病との重要度は比べようもない。HIVに対するrisk compensationとして1.12倍STIが増えたとしても取るに足らないことであろう。 現在、新規HIV感染者が激減しているのは、PrEPが実施されている国や地域のみである。2016年にWHOがHIVガイドラインでPrEPを強く推奨してから、2019年4月現在、世界ではすでに44ヵ国でPrEPが承認されている。そろそろ日本もcost effectivenessの確立されたPrEPの薬事承認をすべきときに来ている。

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