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絶食治療患者の消化吸収力と血糖管理/糖尿病学の進歩

 2019年3月1~2日に開催された第53回糖尿病学の進歩において、瓜田 純久氏(東邦大学総合診療・救急医学講座)が「絶食治療を要する疾患で救急搬送された糖尿病患者の臨床経過と栄養管理」について講演し、絶食治療による消化吸収とそれに付随する血糖値変動について講演した(特別企画1:低栄養リスクのある糖尿病患者の栄養サポートと栄養管理)。救急搬送される糖尿病患者の栄養状態とは? 慢性的な栄養不足は、栄養障害によるランゲルハンス島細胞の栄養不良、β細胞量と機能の低下などを引き起こす。そして、救急搬送される患者の多くには、β細胞機能不全を招くほどの急性の負荷が生じている。このような状況下での低栄養を防ぐため、瓜田氏は同施設における2005年7月からの1,531名のカルテを用いて、糖尿病患者の急性疾患時の栄養状態をケトアシドーシス以外の観点から解析した。 まず、救急搬送された患者の糖尿病の有無と絶食期間を調べるために、入院後3日以上の絶食が必要な症例を抽出、HbA1cで区分したところ、HbA1cが6%より高い患者の割合は4割程度であった。また、高齢糖尿病入院患者の栄養状態をMNA-SF1)(簡易栄養状態評価表)で評価したスペインの研究2)によると、入院患者の54%に低栄養または低栄養の恐れがあったという。これらのことから、急性疾患によって搬送される糖尿病患者は、意外と栄養状態が悪いということが明らかになった。栄養障害の原因を探る方法 同施設で入院後3日以上の絶食が必要な症例は、肺炎、急性腸炎、憩室炎、イレウス、消化管出血、虫垂炎、尿路感染症などが全体の45%を占め、同氏が担当する症例には、糖尿病患者の血糖コントロールを悪化させるような急性疾患が多く含まれている。そこで、同氏らは、栄養障害がみられる全患者に対して「食事摂取状況の写真撮影とRapid turnover protein(RTP:レチノール結合タンパク)によるタンパク漏出測定による診断」を実施し、栄養障害の早期発見に努めている。 タンパク質の合成障害や摂取不足がある状態では、半減期(Alb:20日、Tf:7~10、Pre Alb:3~4日、RTP:半日)が短い成分ほど大きく低下するが補いやすい。この性質を活かし、栄養障害がタンパク合成能、摂取不足どちらに起因しているものかをRTPで判断する。たとえば、1900kcalの食事をしっかり食べているにもかかわらずAlb値が下がる糖尿病患者に対し、この検査を実施すると合成障害とわかり、「糖尿病患者のタンパク合成能は落ちていない」と判断することができるという。ただし、下痢、体重減少、貧血、腹部膨満感、浮腫、無力脱力感などがある場合は、まずは、消化管検査や心電図を含む主要な検査を実施して評価を行うことが望ましく、それらに異常がない場合は、開腹などの既往歴や吸収障害を惹起する薬剤(ステロイド、刺激性下剤、酸分泌抑制薬など)の服用を確認してから、低栄養と断定する」と、栄養評価時の注意ポイントを示した。食事を再開した時の消化吸収力と血糖コントロール 絶食治療後の明確な食事再開基準はなく、患者の意思に委ねられている。同氏は、この問題を解決する方法として“呼気中水素総排出量”の算出が有用と考えている。これは炭水化物の消化吸収を表す指標で、絶食期間中は低値を示す。実際に、同氏の解析したデータでも食事再開時は消化吸収の効率が低下していることが明らかとなり、「糖尿病患者の血糖値に“食べた物がすべて反映されている”という考えを間引かなければならない」とし、「たった1日の絶食が消化吸収阻害に影響を及ぼしている」と、絶食におけるリスクを示した。 最後に同氏は「絶食治療により、消化吸収は大きく変化する。絶食治療は必要であるが、血糖、栄養、消化吸収を同時に評価する必要性がある」と締めくくった。■参考1)Nestle Nutrition Institute:MNA-SF2)Sanz Paris A,et al. Nutr Hosp. 2013;28:592-599.

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スコットランドにおける双極性障害に対する処方変化

 双極性障害患者は、一般的にうつや躁状態を予防するために、長期の薬理学的治療が必要とされる。しかし、エビデンスに基づくガイドラインは、しばしば従われておらず、一部の国では、リチウムの処方量は減少している。また、多剤併用も双極性障害の治療において一般的に認められる。英国・グラスゴー大学のLaura M. Lyall氏らは、2009~16年のスコットランドにおける双極性障害治療のための処方パターンについて、データリンケージアプローチを用いて評価した。The British Journal of Psychiatry誌オンライン版2019年2月28日号の報告。 Scottish Morbidity Recordの処方データより、2009~16年に向精神薬を処方された双極性障害患者2万3,135例を特定し、6つの薬物カテゴリについて、処方された患者割合の傾向を調査した。何年にもわたる処方の変化は、ランダム効果ロジスティックモデルを用いて調べた。 主な結果は以下のとおり。・最も一般的な治療法は、抗うつ薬単独療法で24.96%であった。一方、リチウム単独療法は、5.90%であった。・2009~16年で、抗精神病薬(オッズ比[OR]:1.16、95%CI:1.15~1.18)および抗てんかん薬(OR:1.34、95%CI:1.32~1.36)の処方は増加していた。一方、リチウム(OR:0.83、95%CI:0.82~0.85)の処方は減少していた。・2009~16年で、バルプロ酸の処方は、女性(OR:0.93、95%CI:0.90~0.97)で減少したが、男性(OR:1.11、95%CI:1.04~1.18)で増加していた。 著者らは「スコットランドでは、抗うつ薬単独療法が双極性障害の最も一般的な治療法であり、リチウムの処方は、2009~16年にかけて減少していた。本調査結果より、治療ガイドラインと臨床診療におけるギャップが明らかとなった」としている。■関連記事双極性障害治療における新規非定型抗精神病薬の薬理学的および臨床的プロファイル双極性障害、リチウムは最良の選択か双極性障害治療、10年間の変遷は

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誤解されやすいが重要な研究(解説:野間重孝氏)-1019

 多くの忙しい医師たちは論文を熟読するよりabstract部分をチェックして、自分が本当に興味のあるものならば熟読するし、そう思えなかった場合はすぐに次の論文のチェックに移っていくというのが実情なのではないかと思う。そう考えると、バッグマスクによる陽圧換気が誤嚥リスクを増大させるのではないかという問題にあまり関心がない医師がこの論文を読んだ場合、低酸素血症の発生頻度がバッグマスクによる陽圧換気群で低かったという一見当たり前の結論のほうばかりに目が行ってしまい、著者らの研究の真意が伝わらなかった可能性が懸念される。著者らが言いたかったことは結論の後半部分で、バッグマスク陽圧呼吸は誤嚥を増加させなかったというほうなのである。 酸素飽和度のほうにばかり関心が向いてしまった読者には、挿管後2分間に観察された最低酸素飽和度や酸素飽和度80%未満低下というのはsurrogate endpointでtrue endpointは心停止や低酸素脳症などの重篤な合併症なのであり、実際この研究中に心停止事故などは発生していないのだから、この程度の一時的な酸素飽和度の低下の有無に意味があるのか、と考えてしまう可能性がある。そうではなく、著者らはバッグマスク陽圧呼吸の安全性を検証してみせたのである。これは重要な検証である。なぜなら、誤嚥の発生リスクを増大させないならば、バッグマスクによる陽圧換気を行ったほうが安全に決まっているからである。 ちょうどこの論文評を書いている時に、日本医療安全調査機構の『医療事故の再発防止に向けた提言 第7号』が配達された。この提言はNPPV、TPPV療法中の患者に緊急事態が起こった場合の対処法を議論しているため、本研究の趣旨とは少しずれるが、NPPV装着患者の緊急時にはバッグマスクを用いた用手呼吸を行うことが適当であること、さらにその際パルスオキシメータによるモニターを行うべきであるとしている。この提言がバッグマスクによる陽圧換気の安全性を前提としていることは言うまでもないことで、その意味でも本研究の重要さが理解できよう。なお日本麻酔科学会、救急医学会などのマニュアルでも合併症として誤嚥性肺炎の記述はあるものの、バッグマスクによる陽圧換気は当然のように記載されていることは皆さんご存じのとおりである。ただ、一般にわが国のマニュアルでは大抵バッグマスクの使用と救急蘇生における合併症は切り離したかたちで記載されているため、バッグマスク使用そのものの合併症として誤嚥が問題になると認識している医師が少ない可能性は指摘されなければならないだろう。 論文に戻って不満点を言えば、どのような患者を対象としたのかが明示されていない点が挙げられる。対象についてはSupplementary Appendixの中で示されているが、抽象的で定義として不十分ではないかと思われた。こうした研究ではdouble blind化ができないだけに主治医の判断の自由度が大きくなり過ぎる懸念があるからだ。もっとも救急の場面を対象とした7施設共同による臨床研究では、そこまで縛りをきつくすることはできなかったのだろう。もう1点挙げるならば、401例という症例数が統計学的に妥当であるかどうかという点だろう。著者らはもちろんこの問題にdiscussion部分で触れているが、十分な説明になっていないと感じられた。 臨床研究では一見当たり前のように見える事柄が検証されるケースが多々ある。評者は臨床研究では一見当たり前に見えるような事柄を検証することが重要であることを以前から強調してきたが、本論文もそうした範疇に入るものであると考える。それだけに、論文全体の筆致が読者にこの研究の目的について誤解を与えかねないものである点が残念に感じられた。

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36)レスピマット(スピリーバ)/使用の前準備【吸入薬使い方ガイド】

※上の画像をクリックすると別のウィンドウにて「環境再生保全機構」の動画ページが開きます。■今回の内容今回は、レスピマット(スピリーバ)使用の前準備を説明します。※初回のみ行う操作です。手順としては、使用開始時、箱を開封する→キャップを閉じた状態で、安全止めを押しながら透明ケースをはずす→カートリッジの緑色の部分を上にして、本体に挿入する(非常に固いので、机などの固い平面で、ガチッとカートリッジが本体にほとんど隠れるまで、真っすぐ奥に押し込む)→透明キャップを装着する→キャップを閉じたまま上向きにし、片手で本体上部を固定し、反対の手で本体下部をカウンターの赤い矢印の方向にカチッと音がするまで180度回転させる→キャップを開ける→下を向け、黒い噴射ボタンを押し、ミストの噴射(約1.5秒間)を確認する→もう一度キャップを閉じ、180度回転→ミストの噴射を3回繰り返す→前準備完了※一度挿入したカートリッジは、絶対に抜かないでください。※顔に向けて噴射しないように注意してください。●主な製剤(2015年3月時点のデータ)スピリーバ

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追憶の研修医時代が手の中でよみがえる本【Dr.倉原の“俺の本棚”】第15回

【第15回】追憶の研修医時代が手の中でよみがえる本Yahoo!ニュース個人で2015年12月、2016年8月、2017年6月、2018年6月のMVA賞を受賞し、『医者の本音』(SBクリエイティブ)で10万部を超える爆発的ヒットをたたき出した外科医の中山 祐次郎先生※。一時期、福島県の高野病院院長として赴任したことでも知られています。私は、中山先生にTwitterでたまにちょっかいを出しているのですが(笑)、何といきなり彼が処女小説を発表しました。おいおい、ちょっと聞いてないよ!これは読まずにはいられないと思い、発売日に本屋さんへGOしました。※同じ執筆ドクターとしては10万部超えにジェラシーを感じるのである!キーッ!『泣くな研修医』中山 祐次郎/著. 幻冬舎. 2019「直木賞や芥川賞を取ったワケじゃないんだから、期待し過ぎじゃないの?」と思われるかもしれませんが、吐きそうなくらいリアルな医療小説でビックリしました。バラエティ番組を横で流しながら読むつもりだったのですが、とうの昔に番組が切り替わっていることにすら気付かず、時が経つのも忘れて読み終えてしまいました。研修医の時って、みんなものすごくキラキラしていますよね。疾患や命と真正面からぶつかって、はじき返されて、涙して、立ち直って、笑って。でもちょっと自信がなくて、主人公の雨野のようにどこか暗いカゲを持っている研修医もいる。私みたいな中堅医師になると、研修医時代の思い出って希薄になり色あせてしまいます。どんな色だったのかなぁって思い出せないくらい、医療に慣れちゃう。この本は、読んでいる人の懐旧の情が膨らんでくる感覚と、最終章で明らかになる雨野の原体験がうまい具合に混ざり合う、独特の読了感があります。それにしても、1つ1つの症例に、まるで現場を横からビデオカメラで撮影しているような臨場感があります。さすが外科医だなぁと思ったのは手術シーン。外科医でないと、ここまで見事に書けない。ちなみに、この本で私が一番共感した文章は、「患者さんを乗せたベッドを押して病院内を進むのはかなりの技術を要した」です。そこかよ!と思われそうですが、ストレッチャーをスムーズに移動させるのって結構難しいじゃないですか。研修医にいたっては、ギャッジアップさせる操作すら知らなくて白い目で見られちゃったりして。こういう研修医時代の小さな失敗体験が随所に散りばめられていて、読者を飽きさせません。映画化とドラマ化を早々に期待しています。ヤバイぜ、中山先生!『泣くな研修医』中山 祐次郎/著出版社名幻冬舎定価本体1,300円+税サイズB6判刊行年2019年■関連記事何もかも前代未聞な本

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国内で開発された新規末梢性神経障害性疼痛治療薬「タリージェ錠2.5mg/5mg/10mg/15mg」【下平博士のDIノート】第21回

国内で開発された新規末梢性神経障害性疼痛治療薬「タリージェ錠2.5mg/5mg/10mg/15mg」今回は、「ミロガバリンベシル酸塩錠(商品名:タリージェ錠2.5mg/5mg/10mg/15mg)」を紹介します。本剤は、α2δサブユニットに強力かつ特異的に結合してカルシウムイオンの流入を抑制することで、興奮性神経伝達物質の過剰放出を抑制し、痛みを和らげることが期待されています。<効能・効果>本剤は、末梢性神経障害性疼痛の適応で、2019年1月8日に承認され、2019年4月15日より販売されました。※2022年3月、添付文書改訂による「中枢性神経障害性疼痛」の効能追加に伴い、適応は「神経障害性疼痛」となりました。<用法・用量>通常、成人にはミロガバリンとして初期用量1回5mgを1日2回経口投与し、その後1回用量として5mgずつ1週間以上の間隔を空けて漸増します。維持用量は、年齢・症状により1回10~15mgの範囲で適宜増減します。なお、腎機能障害患者に投与する場合は、投与量および投与間隔の調節が必要です。<副作用>日本を含むアジアで実施された臨床試験において、糖尿病性末梢神経障害性疼痛患者を対象とした854例中267例(31.3%)、帯状疱疹後神経痛患者を対象とした553例中241例(43.6%)に臨床検査値異常を含む副作用が認められました。主な副作用は、傾眠(12.5%/19.9%)、浮動性めまい(9.0%/11.8%)、体重増加(3.2%/6.7%)などでした(承認時)。なお、弱視、視覚異常、霧視、複視などの眼障害が現れることがあるため注意が必要です。<患者さんへの指導例>1.過敏になっている神経を鎮めることで、しびれ、電気が流れているような痛み、焼けるような痛みなど、末梢神経障害による痛みを和らげます。2.服用中は、めまい、強い眠気、意識消失などが現れることがあるので、自動車の運転など危険を伴う機械の操作はしないでください。3.本剤の服用を長く続けたり量を増やしたりすることで、体重が増加することがあります。実際に体重が増加し始めた場合はご相談ください。4.この薬を突然中止すると、不眠、吐き気、頭痛、下痢、食欲低下などの症状が現れることがあります。自己判断で減らしたりやめたりしないでください。5.本剤を服用中に飲酒をした場合、注意力、平衡機能の低下を強める恐れがあるので注意してください。<Shimo's eyes>神経障害性疼痛は、『神経障害性疼痛薬物療法ガイドライン(改訂第2版)』で「体性感覚神経系の病変や疾患によって引き起こされる疼痛」とされ、神経の損傷部位によって“末梢性”と“中枢性”に分類されます。本剤の作用機序は既存薬のプレガバリンと同様ですが、神経障害性疼痛全般に使用できるプレガバリンとは異なり、本剤の適応は「末梢性神経障害性疼痛」に限られています。末梢性神経障害性疼痛の代表例としては、坐骨神経痛、帯状疱疹後神経痛、糖尿病の合併症による神経障害性疼痛(痛み・しびれ)、抗がん剤の副作用による神経障害性疼痛などがあります。本剤は低用量から開始して、有効性や安全性を確認しながら維持量に漸増します。腎機能障害のある患者さんや高齢者では副作用が発現しやすいため、慎重に症状や副作用を聞き取りましょう。とくに高齢者ではめまいなどの副作用が生じると、転倒による骨折などを起こす恐れがあるため、細やかな投与量の調節が必要です。神経障害性疼痛は罹病期間が長引きがちで、さらに不安や睡眠障害を引き起こすこともあり、患者さんのQOLに与える影響は甚大です。末梢神経障害性疼痛の治療選択肢が増え、痛みに悩む患者さんの生活に改善がもたらされるのは喜ばしいことです。なお、2019年1月時点において、海外で承認されている国および地域はありませんので、副作用に関しては継続的な情報収集が必要です。※2022年3月、添付文書の改訂情報を基に一部内容の修正を行いました。参考1)PMDA 添付文書 タリージェ錠2.5mg/タリージェ錠5mg/タリージェ錠10mg/タリージェ錠15mg

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日本は職業階層が高いと冠動脈疾患リスク高い?

 欧米では、職業階層が高い(専門職や管理職)ほど、冠動脈疾患(CHD)や脳卒中を含む心血管疾患リスクが低いと報告されているが、日本では明らかになっていない。今回、東京大学/Harvard T.H. Chan School of Public Healthの財津 將嘉氏らが実施した病院ベースの症例対照研究の結果、日本では職業階層が高いほどCHDリスクが高く、脳卒中リスクは低いことが報告された。著者らは、「心血管疾患における職業による“勾配”(地位の高い仕事に就業している人ほど低リスク)は普遍的ではなく、現代の日本社会では、管理職や専門職のCHDリスクは高い可能性がある」と指摘している。Journal of the American Heart Association誌2019年3月19日号に掲載。 本研究は、日本の全国的な多施設の入院患者データ(1984~2016年)を使用し、約110万例の被験者を対象とした症例対照研究。国内の標準的分類に基づいて、それぞれの産業分野(ブルーカラー産業、サービス産業、ホワイトカラー産業)の中で、最も長く就業している職業階層(ブルーカラー、サービス、専門職、管理職)により患者をコード化した。オッズ比と95%信頼区間(95%CI)は、ブルーカラー産業のブルーカラーの労働者を基準とし、性別・年齢・入院日・入院病院を調整して、多重代入法を用いた条件付きロジスティック回帰によって推定した。さらに喫煙と飲酒について調整した。 主な結果は以下のとおり。・職業階層が高い(専門職および管理職)ほど、CHDの過剰リスクと関連していた。喫煙・飲酒の調整後も、すべての産業で過剰オッズはCHDと有意に関連し、サービス産業の管理職で最も顕著だった(オッズ比:1.19、95%CI:1.08~1.31)。・一方、高い職業階層におけるCHDの過剰リスクは、低い脳卒中リスク(例:ブルーカラー産業における専門職のオッズ比:0.77、95%CI:0.70~0.85)で代償されていた。

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せん妄のマネジメントと予防のための薬理学的介入~メタ解析

 せん妄に対する薬理学的介入については、さまざまな調査が行われているが、全体的なベネフィットや安全性はよくわかっていない。台湾・林口長庚紀念医院のYi-Cheng Wu氏らは、せん妄の治療および予防に対する薬理学的介入に関するエビデンスの評価を行った。JAMA Psychiatry誌オンライン版2019年2月27日号の報告。 せん妄の治療および予防に対する薬理学的介入を検討した、2018年5月17日までのランダム化臨床試験(RCT)を、各種データベース(PubMed、Embase、ProQuest、ScienceDirect、Cochrane Central、Web of Science、ClinicalKey、ClinicalTrials.gov)より検索した。事前リストに従いデータを抽出した。PRISMA(システマティックレビューおよびメタ解析のための優先的報告項目)ガイドラインを適用し、すべてのメタ解析は、ランダム効果モデルを用いて行った。主要アウトカムは、せん妄患者の治療反応およびせん妄リスクのある患者におけるせん妄発生率とした。 主な結果は以下のとおり。・合計58件のRCTが抽出された。内訳は、治療アウトカムを比較したRCTが20件(1,435例、平均年齢:63.5歳、男性の割合:65.1%)、予防を検討したRCTが38件(8,168例、平均年齢:70.2歳、男性の割合:53.4%)であった。・ネットワークメタ解析では、ハロペリドールとロラゼパムの併用が、プラセボや対照群と比較し、せん妄の治療に最も高い奏効率を示した(オッズ比[OR]:28.13、95%CI:2.38~333.08)。・せん妄の予防については、ラメルテオン(OR:0.07、95%CI:0.01~0.66)、オランザピン(OR:0.25、95%CI:0.09~0.69)、リスペリドン(OR:0.27、95%CI:0.07~0.99)、デクスメデトミジン塩酸塩(OR:0.50、95%CI:0.31~0.80)が、プラセボや対照群と比較し、せん妄の発生率を有意に低下させた。・いずれの薬理学的介入も、プラセボや対照群と比較し、すべての原因による死亡リスクと有意な関連は認められなかった。 著者らは「せん妄の薬理学的介入において、治療にはハロペリドールとロラゼパムの併用、予防にはラメルテオンが最良の選択肢である可能性が示唆された。また、せん妄の治療および予防に対するいずれの薬理学的介入も、すべての原因による死亡率を上昇させなかった」としている。■関連記事せん妄に対する薬物治療、日本の専門家はどう考えているかせん妄治療への抗精神病薬投与のメタ解析:藤田保健衛生大せん妄ケアの重要性、死亡率への影響を検証

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ショック非適応の院外心停止、高度気道管理で生存率改善/BMJ

 All-Japan Utstein Registryの登録患者から約31万人を対象に行われた日本発のコホート試験の結果、院外心停止患者に対する高度気道管理(advanced airway management:AAM)は、初回心電図波形でショック適応と判断した患者では生存との関連が認められなかったが、ショック非適応患者では良好な生存との関連が示されたことを、東京慈恵会医科大学麻酔科学講座の井澤 純一氏らが、BMJ誌2019年2月28日号で報告した。多くの観察研究で、院外心停止患者へのAAMとアウトカムとの関連は不良であることが報告されている。一方、最近行われた無作為化試験で、バッグバルブマスク法が気管挿管に対して非劣性であることを立証できなかった。日本で行われた本試験では、救急医療サービス(EMS)の隊員による院外心停止患者へのAAMが生存を増大するかについて、時間依存的介入や共変量を補正して検討が行われた。時間依存的傾向スコアで適合し、1ヵ月時点の生存率、退院生存率を比較 試験は、全国的な住民ベースのレジストリ「All-Japan Utstein Registry」の参加者を対象に、2014年1月~2016年12月にかけて行われた。院外心停止を呈した成人連続患者を、初回に記録された心電図波形で、ショック適応群(心室細動または無脈性心室頻拍)、ショック非適応群(無脈性電気活動または収縮不全)の2つのサブグループに分類して検討した。 時間依存的傾向スコアに基づき、心肺蘇生中にAAMを受けた患者と、同一時間(分)内のAAMリスク患者を経時的に適合して、1ヵ月時点の生存率、または1ヵ月間の退院生存率を評価した。介入有無の生存率の補正後リスク比は、ショック適応群1.00、ショック非適応群1.27 同期間中にレジストリには約36万8,000例が登録。そのうち、本試験コホートには31万620例が含まれた。ショック適応群は2万516例、ショック非適応群は29万104例であり、心配蘇生中にAAMを受けたのは、ショック適応群8,459例(41.2%)、ショック非適応群12万1,890例(42.0%)であった。また、時間依存的傾向スコアで適合後、ショック適応群1万6,114例、ショック非適応群23万6,042例が同一時間で適合した。 ショック適応群では、生存率について、AAMを受けた患者と受けなかった患者に差は認められなかった(1,546/8,057例[19.2%]vs. 1,500/8,057例[18.6%]、補正後リスク比[RR]:1.00、95%信頼区間[CI]:0.93~1.07)。一方、ショック非適応群では、AAMを受けた患者のほうが受けなかった患者よりも良好な生存率が示された(2,696/11万8,021例[2.3%]vs. 2,127/11万8,021例[1.8%]、補正後RR:1.27、1.20~1.35)。

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正常眼圧緑内障にも遺伝子変異の関与が示唆

 原因が特定されていない正常眼圧緑内障(NTG)について、ミオシリン(MYOC)遺伝子変異にp.Gln368Terが関与しているとの知見が報告された。MYOC遺伝子変異は、原発開放隅角緑内障における緑内障遺伝子として同定されている。今回、米国・アイオワ大学のWallace L. M. Alward氏らは2つの症例対照研究を行い、p.Gln368Terの関連を調査。その結果、NTG患者への関連頻度は、既報の高眼圧(IOP)患者のそれよりは低かったものの認められることを報告した。p.Gln368Terについては、これまでに最大30mmHg以上のIOPの原発開放隅角緑内障患者で1.6%の関連が報告されている。一方、眼圧21mmHg以下のNTG患者での関連は不明であった。著者は、「IOP患者と同様、21mmHg以下の正常眼圧患者においても、p.Gln368Terが緑内障と関連している可能性が示唆された」とまとめている。JAMA Ophthalmology誌オンライン版2019年2月28日号掲載の報告。 研究グループは、NTG患者のMYOC遺伝子変異におけるp.Gln368Terの役割を評価する目的で、症例対照研究を実施。コホート1は、米国(アイオワ、ミネソタおよびニューヨーク)およびイギリスのNTG患者772例と対照者2,152例。コホート2には、Massachusetts Eye and Ear InfirmaryとNEIGHBORHOOD consortiumのNTG患者561例と対照者2,606例が含まれていた。 ジェノタイピングには、リアルタイムPCR(サンガー法)、imputation法によるゲノムワイド関連解析(GWAS)または全エクソーム解析(WES)を用いた。解析期間は2007年4月~2018年4月、主要評価項目はNGTのMYOC遺伝子変異におけるp.Gln368Terの発現頻度で、フィッシャーの直接確率検定により対照群と比較した。 主な結果は以下のとおり。・全解析対象6,091例中、女性が3,346例(54.9%)、白人が5,799例(95.2%)であった。・p.Gln368Terの発現頻度は、コホート1:NTG患者群0.91%(7/772例)、対照群0.33%(7/2,152例、p=0.03)、コホート2:0.71%(4/561例)、0.38%(10/2,606例、p=0.15)であった。・両コホートを合わせると、p.Gln368Terの発現頻度はNTGと関連していた(オッズ比:2.3、95%信頼区間[CI]:0.98~5.3、p=0.04)。

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女性研究者は性差に関する論文を多く書いていた(解説:折笠秀樹氏)-1018

 本研究では、計量書誌学(Bibliometrics)という珍しい手法が使われた。図書館情報学ではよく使われる手法のようだ。著者の性別を知るために、Web of Scienceという文献データベースでは、2008年から姓(Family name or Last name)と名(Given name or First name)を分けてデータベース化し始めたようである。けれども、名から性別をどう判別するのだろうか。基本は言語や国ごとに、名と性別を対応させたリストをデータベース化しているようである。しかしながら、イニシャルしか書いていない論文があるらしく、性別が判明しなかったのも25%近くあったようだ。 こうした計量書誌学的分析の結果、性別をテーマに挙げた研究論文で、女性研究者がファーストオーサーやラストオーサーになっている割合が多かった。女性著者は男性著者に比べて、1.26倍、性差に関する論文を執筆していたようなのだ。なぜ、女性は性差に関する論文を多く書くのだろうか。女性はマイノリティ扱いされたり、女性研究者の賞があったり、女性対象の学会があったりと、女性のほうが性差を意識する場が多いためではないだろうか。黒人もマイノリティ扱いされることがあるが、そのせいか、人種差については白人より黒人のほうが関心を持つ。特別な扱いをされることにより、自然に興味を持つようになると思われる。 雑誌別にみると、やはり産婦人科学や発生学に関する雑誌で、性別をテーマにした研究論文を多く掲載する傾向がみられた。国別では、何とアフリカが2倍以上も女性テーマの論文を執筆していた。アフリカの女性がどうして性差に興味が高いのだろうか。アフリカには黒人が多く、黒人研究者ではマイノリティ扱いされる。女性研究者も同じくマイノリティ扱いされる。このように、二重にマイノリティ扱いされる黒人女性研究者は、性差について強い関心を持つのだろう。 残念ながら、性別をテーマにした研究論文、インパクトファクターは低い傾向にあったようである。これは、女性著者の研究能力が低いことを意味しているわけではない。性別をテーマにした研究論文は、なかなか出版されない事情を反映したものだろう。

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八日目の蝉【なぜ人を好きになれないの?毒親だったから!?どうすれば良いの?(好きの心理)】

今回のキーワード反応性愛着障害毒親条件付きの愛情自分が許す子育て心理希望皆さんの中で、人を好きになれないと悩んでいる人はいませんか? なぜ好きになれないのでしょうか?逆に、なぜ好きになるのでしょうか? 人を好きになるにはどうすれば良いでしょうか? そもそもなぜ好きという気持ちは「ある」のでしょうか?これらの疑問を解き明かすために、今回は、映画「八日目の蝉」を取り上げます。この映画を通して、反応性愛着障害の理解を深め、好きの心理を進化心理学的に掘り下げ、いわゆる「毒親」を分析します。そして、より良い子育て心理、そしてより良いコミュニケーションを一緒に考えていきましょう。人を好きになれないとは?主人公は恵里菜。彼女は、生後6ヵ月で父親の元不倫相手に誘拐され、4年間、その女性に育てられていたのでした。そして、4歳の時、その女性は捕まり、もとの両親宅に戻ったのでした。しかし、21歳の大学生になっても、彼女は、人を好きになれません。ここから、彼女の心理を3つ探ってみましょう。(1)自分はだめだ -自己否定感恵里菜は「うちの家族は壊れちゃってた」「お父さんは誘拐犯の愛人として仕事を転々として、お酒ばっか飲んで」「お母さんも疲れちゃったんだと思うよ。ずっとパートに行って、全然うちにいなくなった。ご飯はいつもスーパーのお総菜と焼いてないパン」「嫌だったけどそういうものかなと思ってた」と語っています。彼女は、クリスマスなどの楽しい家族のイベントを経験しないで育っていたのでした。ところが、小学2年生の時に友達のお誕生日会で、その子の赤ちゃんからの成長ビデオを見せつけられ、その愛され方の違いにショックを受けるのでした。1つ目の心理は、自分はだめだと思うことです(自己否定感)。自分は大切にされていないと認識することで、自分自身を大切にしなくなり、自分には価値がないと思うようになることです。そこから、自分は頑張ってもどうせうまくいかないと思い込むようになります。(2)心を閉ざす -不信感恵里菜は、アルバイト仲間から飲み会に誘われても、無愛想に断ります。実は幼なじみだった千草が、恵里菜に近付いてきますが、なかなか心を開きません。大学の食堂では、いつも1人で食べています。その理由を千草に聞かれ、「楽だから」と答えています。また、恵里菜は妻子ある岸田に言い寄られて流されるままに交際を続けます。そして、彼に「私、よく分からないんだ。好きになるって、どういうこと?」「好きでいるのやめるってどういうこと?」と尋ねます。彼女は、信頼関係の築き方がよく分からず、近づくことも離れることもできないのでした。2つ目の心理は、心を閉ざすことです(不信感)。自分は大切にされてこなかったので、相手をどう大切にしていいのかよく分からないのでした。人を好きになることも、人から好かれることもあきらめてしまい、心を閉ざしているのでした(反応性愛着障害)。そして、自己否定感と不信感が相まって、人間関係を避けがちにもなっているのでした(回避性パーソナリティ)。(3)自分が悪い -罪悪感恵里菜は「母親も困っていたんじゃないかな」「私が近くにいると事件のことを思い出すみたいで」と言うと、千草から「困るって。なんで? あんたは何も悪くないじゃん」と言われます。その後に「そんなふうに言ってくれる人、今まで誰もいなかった」「岸田さんしかいなかった」「私、嫌だったからさ。母親が泣いたり怒鳴ったりするの、全部自分のせいだと思ってた」と打ち明けます。これが、岸田に心を許した理由でした。しかし、彼女は、岸田の子を妊娠しても、その事実を岸田に告げません。3つ目の心理は、自分が悪いと思うことです(罪悪感)。自分には価値がないので、自己主張ができません。結果的に、何事も人のせいにせず、自分のせいにして、抱え込むのです。なぜ人を好きになれないの?恵里菜が人を好きになれないのは、自分はだめで、心を閉ざし、自分が悪いと思っているからということが分かりました。それでは、なぜそうなったのでしょうか? 4歳以降の恵里菜を育てた実の母親の恵津子の心が鍵になります。 ここから、彼女の心理を3つ探ってみましょう。(1)揺れやすい ―情緒不安定恵津子は、幼い恵里菜の寝かしつけの時、「日記には本当のことを書きなさい」と絵本の読み聞かせを満面の笑顔でしています。その後に、恵里菜から「お星様の歌を歌って」と言われて歌い出しますが、歌が違うと繰り返し言われてしまいます。すると、恵津子は堪えられなくなり、突然「なんでなの?」と鬼の形相で叫び、泣き崩れます。最後は、恵里菜が「お母さん、ごめんなさい」と連呼するのです。このワンシーンだけを切り取れば、もはやホラー映画です。1つ目の心理は、心が揺れやすいことです(情緒不安定)。子どもの恵里菜としては、正直に言いなさいと言われて、そう言ったら、怒鳴られたわけです。これは、親の言っていることとやっていることが矛盾しており(ダブルバインド)、子どもを混乱させ、怯えさせます(心理的虐待)。親を求めて近付いていったら、逆に離れていったわけです。すると、子どもとしてみれば、逆説的ですが、親を求めて近付こうとすることをあえて最小限に抑える、つまり心を閉ざすことで、親との距離をある一定範囲内にとどめておこうとします。これは、何かあった時に逃げ込むべきところであるはずの親自身が、子どもに恐怖を与える張本人でもあるという逆説的で極限的な状況です。例えるなら、親は、もはや守ってくれる安心で安全な基地ではなく、逃れられない恐怖で危険な檻(おり)になっています。これが、恵里菜の自己否定感や不信感を生み出しました。同時に、この恐怖心を植え付けることは、結果的に親が子どもを従わせる無意識の心理戦略になっています(操作性)。(2)独りよがり ―条件付きの愛情恵津子は、戻ってきた4歳の恵里菜がなついてくれず、戸惑います。幼い恵里菜が家出をした時、交番で恵津子は「こんなに心配かけて。どんだけ悪い子なの?」「そんなに、うちが嫌いか?」「そんな悪い子はうちの子じゃないよ」と脅して、突き放します。父親が「いいよ。この子、怖がってる」と止めようとしているのにです。そもそも、恵里菜はその家が嫌だから家出をしたのに、追いかけてきたあげくに「うちの子じゃない」と言われると、混乱してしまいます。また、恵津子は、恵里菜が「そやなくて」「あんな」などの方言を使うと、毎回「それじゃなくて」「あのね」などとすかさず言い直して、直させています。さらに、大人になった恵里菜が、妊娠4ヵ月であることを恵津子に打ち明けた時、恵津子は即座に「堕ろしなさい。今すぐ一緒に病院に行ってあげる」「そんな子ども育てられるはずないでしょ」「父親もいないのに」と感情的に答えます。「ちゃんと恵里菜の話を聞こう」という父親の言葉かけには耳を傾けません。そして、「私だってね、ちゃんとふつうの母親になりたかったのよ」「恵里菜ちゃんのことをふつうに育てたかったの」と打ちひしがれます。2つ目の心理は、独りよがりで押し付けがましいことです(条件付きの愛情)。恵津子は、自分が生後4年間育てていない分、なおさら自分は母親らしくあるべきだ、恵里菜は早く自分の子どもらしくなるべきだというプレッシャーがありました。このプレッシャーは自分を追い詰めると同時に、子どもも追い詰めています。子どもの恵里菜としては、言うことを聞かなければ見捨てられると思い込みます。本来、親の愛情は、どんな時もどんなにしていても大切にされ守ってくれる無条件であるはずです。しかし、言うことを聞かない、「ふつう」ではないと急に見捨てられるという条件付きになっています。これは、恵里菜の罪悪感を生み出しました。同時に、この罪悪感を植え付けることも、結果的に親が子どもを従わせる無意識の心理戦略になっています(操作性)。(3)ひがみっぽい ―被害者感情恵津子は、恵里菜に「親だって思ってないくせに。私のこと、苦しめたいんでしょ」「私が親じゃなかったら、こんな目に遭わなかったのにって思ってるんでしょ」と言い放ちます。そして、包丁を恵里菜に向けて、「私が恵里菜ちゃんを大切かどうやって分かってくれるの!?」と迫ります。もはや脅迫です。最後には、「どうすればいいの? 恵里菜ちゃんに好かれたいの」と泣きじゃくります。恵里菜は、「お母さん、ごめんなさい」とまた謝ります。そして、哀れで気の毒になり、母親の手を握り、抱きしめます。もはや、どちらが母親か分からなくなります。3つ目の心理は、ひがみっぽいことです(被害者感情)。相手の話を聞かず、こんなにしているのにあなたは分かってくれない、ひどいことをするという一方的な自分の視点しかありません。子どもを愛することよりも、子どもから愛されることが第一になっています。また、恵津子は恵里菜に「(誘拐犯は)世界一、悪い女」と吹き込みます。そして、物事がうまくいかないのは「すべてあの女のせいだ」という被害者感情にとらわれ、すり替えられ、自分の問題点や改善点に目を向けられなくなっています。これが、恵里菜の罪悪感や同情を生み出しました。同時に、この同情を植え付けることも、結果的に親が子どもを従わせる無意識の心理戦略になっています(操作性)。ちなみに、恵里菜は、大学進学を機に、母親の強い反対を押し切って、一人暮らしを始めます。また、妊娠報告の際には、相手を「お父さんみたいな人」「家庭があって父親にはなってくれない人」と説明します。誘拐犯になった父親の不倫相手は、かつて父親の子を妊娠しますが、中絶して、子どもが産めない体になっていました。その不倫相手に自分を重ねた、とても挑発的な言い回しです。恵里菜には、支配的な母親に対しての抵抗や復讐心もあるようです。なぜ人を好きになるの?恵里菜が人を好きになれなくなったのは、実の母親の恵津子が揺れやすく、独りよがりで、ひがみっぽいからであることが分かりました。それでは、逆に、なぜ人を好きになるのでしょうか? 4歳以前の恵里菜を誘拐して育てた父親の不倫相手の希和子の心が鍵になります。ここから、彼女の心理を3つ探ってみましょう。(1)とにかく守りたい ―信頼感希和子は、赤ちゃんを見れば不倫をあきらめられると思い、赤ちゃんだけの留守の家に忍び込みました。後の裁判で「あの笑顔に慰められた」「この子を守る」「この子は許してくれている、そう思いました」と語っているように、衝動的に恵里菜を誘拐しました。そして、恵里菜に「薫」という中絶しなければ本来生まれるはずだった子どもの名前を新しく付けます。希和子は、薫(恵里菜、以下略)とともに逃避行を続ける中、「薫と一緒におれますように。明日も明後日もその次も。どうかどうか一緒におれますように」と祈ります。1つ目の心理は、とにかく守りたいことです(信頼感)。守るためにただ一緒にいたいという気持ちから、希和子は薫の存在をそのまま丸ごと受け止めています。薫にとって、安心で安全な基地になっています。対照的に、恵津子は、一緒にいないことが多く、突き放すこともあり、恵里菜をそのまま受け止めてはおらず、決して守ってはいませんでした。(2)全部あげる ―無条件の愛情希和子は、3歳の薫に「いろんなとこ行こう。いろんなものをママと一緒に見よう。きれいなもの全部。ママ、働くよ」と伝えます。その後、薫が4歳になり、警察の捜査が間近に迫っていることを悟った希和子は、写真館に行き、薫との記念写真を撮ります。そして、「薫、ありがとう。ママは薫と一緒で幸せだった」と言い、両手を合わせて膨らませて、何かを上げるしぐさをします。「なあに?」ときょとんとする薫に希和子は「ママはもういらない。何にもいらない。薫が全部持っていって。大好きよ」と言い残します。2つ目の心理は、全部あげることです(無条件の愛情)。「全部持って行って」という言い回しは、裏を返せば、「もうあげられない」という無念さも込められています。それくらい希和子は薫に自分のできるすべて、自分の全部をあげたかったのでした。いろいろ見せて、どきどきわくわくする思い出を一緒に積み重ねたかったのでした。希和子の愛情は無条件です。対照的に、恵津子は、家族のイベントをまったくしておらず、恵里菜に本当に大事なものはほとんど見せず、ほとんどあげていませんでした。(3)ただ幸せを願う ―コミットメント希和子は、最後に逮捕された時、薫を保護する女性刑事に「その子はまだご飯を食べていません。よろしくお願いします」と叫びます。後の裁判の時、希和子は「4年間、子育てをする喜びを味わわせてもらったことを秋山さん(恵津子)夫妻に感謝します」「お詫びの言葉もありません」と述べます。そして、懲役6年の刑で出所してから、薫との記念写真をわざわざ取りに行っています。3つ目の心理は、ただ幸せを願うことです(コミットメント)。逮捕された時、自分の身よりも、薫がお腹を空かせていることがまず気になるくらい、薫のことを一番に考えています。そして、その気持ちは、裁判の時も、出所してからもずっと変わりません。お詫びをはっきり言わなかったのは、薫と一緒にいた4年間はかけがえのない意味のあるものだったと確信しているからでしょう。もう一度人生をやり直すとしても、同じことをすると確信しているからでしょう。そこには、法律的な善し悪しは別にして、信念(コミットメント)があります。はっきりお詫びをしてしまったら、それが間違いだったと認めることになります。原作では、薫との4年間の思い出を心のよりどころにして、希和子が生き続ける様子が描かれています。かつて子どもの産めない体になった希和子は、恵津子から「がらんどう」と言われました。その後の希和子は、もはや決して「がらんどう」ではないことが分かります。その4年間が希和子の生きた証になったのでした。対照的に、恵津子は、自分の思い通りになるという自分の幸せを第一にしてしまい、恵里菜の幸せを第一にしていませんでした。人を好きになるとは? 人を好きになるには?4歳まで恵里菜を育てた希和子は、とにかく守りたくて、全部あげたくて、ただ幸せを願っていることが分かりました。そんな希和子との空白の記憶を、恵里菜は千草と回想旅行をする中、少しずつ思い出していきます。そして、ラストシーンでは、恵里菜に劇的な心の変化が起こります。彼女は、人を好きになりはじめるのです。ここから、その心理を3つ探ってみましょう。そして、人を好きになるにはどうすれば良いか考えてみましょう。(1)自分は大丈夫 ―自己肯定感恵里菜は、かつて希和子と仮住まいをしていた小豆島を訪ねた時、「薫ちゃ~ん、ご飯やで」「薫、ブランコしよ」「薫、気い付けて遊べや」「薫、早うおいでや」と周りの大人や子どものみんなから声をかけられていた記憶を蘇らせます。そして、写真館の主人に、希和子が恵里菜との記念写真を年月が経って取りに来た事実を聞かされます。その写真には、恵里菜を抱いた希和子の涙をこらえた笑顔が映っていました。1つ目の心理は、自分は大丈夫だと思うことです(自己肯定感)。もともと、自分はだめだという自己否定感を抱いていました。しかし、自分が希和子に心から愛されていた記憶を思い出しただけでなく、たとえ会えなくても今もどこかで自分の幸せをただ願っている眼差しを感じたのです。自分は大切にされていると認識できたことで、自分自身を大切にするようになっていきます。そこから、自分は何かあっても大丈夫だと思えるようになったのです。ちなみに、大人になった恵里菜のボーイッシュな服装は、かつて小豆島で着ていたお下がりの男の子用の服装に重なります。恵里菜の一人暮らしのアパートが和室であるのも、かつての小豆島の仮住まいに重なります。恵里菜が自転車で坂を下る時に脚を開くしぐさは、かつて希和子の自転車に乗せられて脚を開いていたポーズに重なります。希和子との記憶は、すでに恵里菜の心や体に染みついていたということに私たちは気付かされます。人を好きになるには、まず自分を好きになっていることがポイントになります。たとえば、自分のポジティブな面に目を向けることです。また、恵里菜が恵津子から距離を置いているように、逆にネガティブな面には目を向けないことです。(2)心を開く ―信頼感恵里菜は、もともと「世界一悪いあの女(希和子)がうちをめちゃくちゃにしたんだ」と思っていました。しかし、ラストシーンでは、恵里菜は「憎みたくなんかなかった」「お母さんのことも、お父さんのことも、あなた(希和子)のことも」「この島に本当は戻りたかった」「そんなこと考えちゃいけないと思ってた」と千草に打ち明けます。そして、「私、なんでだろう。もうこの子(生まれてくる子)が好きだ。まだ顔を見ていないのに」と泣きながら笑顔で言います。2つ目の心理は、心を開くことです(信頼感)。もともと、不信感から周りへの憎しみが強まっていたのでした。しかし、自分を大切に思えるようになったことで、周りの人も大切に思えるようになったのです。心を開き、「憎い」から「ありがとう」に変わったのでした。人を好きになるには、自分の理解者と一緒にいることがポイントになります。たとえば、恵里菜が千草と一緒にいたように、家族以外に友人などの仲間、カウンセラーでも良いですし、さらには新しい出会いを受け入れることでもあります。(3)自分が許す ―寛容の精神恵里菜は、かつて千草に「なんで母親になれるって思うの? なれるわけない。子育てなんてできるわけない」「だって、知らないもん。どんなふうにかわいがって、叱って、どんなふうに仲良くなっていいか分かんない。母親になんかなれない」と打ち明けていました。しかし、ラストシーンでは、写真館から走り出し、「私、働くよ。働いて、いろんなもの見せてあげるんだ。かわいい服、着させて、おいしいもの食べさせて、何にも心配いらないよって教えてあげる。大丈夫だよって。世界で一番好きなんだよって何度も言うよ」と力強く言います。千草から「生まれたら、お父さんとお母さんに見せに行こうよ」と聞かれると、「かわいがってくれるかな」と笑顔で言います。3つ目の心理は、自分が許すことです(寛容の精神)。もともと、恵里菜は憎しみや罪悪感を抱いていました。しかし、周りを大切に思えるようになったことで、今度は自分が周りに何かしてあげたいと思えるようになったのです。恵里菜の言動から、そのエネルギーに満ち溢れた躍動感も伝わってきます。恵里菜は、親や誘拐犯を赦し、自分自身を赦し、自分の境遇を前向きに受け入れるように変わったのです。人を好きになるには、相手をよく知り、理解することがポイントになります。たとえば、恵里菜が恵津子のことを理解したように、「親には親の事情があった」「親も完璧ではなかったけど、親なりに自分を頑張って育ててくれた」「親を反面教師として、自分はより良い親になれる」とポジティブに思えることです。先ほどにも触れましたが、距離はとったままで、とくに仲良くするわけではないです。自分の心の平和を得ることを一番の目的とすることです。なぜ好きという気持ちは「ある」の?これまで、人を好きになれない心理となれる心理の特徴とその原因である親の心理を掘り下げてきました。それでは、そもそもなぜ好きという気持ちは「ある」のでしょうか? その心理を2種類に分けて、進化心理学的に考えてみましょう。(1)子育てしたい ―無条件に好き哺乳類が約2億年前に誕生してから、その母親は子どもを哺乳する、つまり乳を与えて育てるというメカニズムを進化させました。これは、自分の栄養を与えるという自己犠牲の上に成り立っています。飽食の現代では想像しにくいですが、常に飢餓と隣り合わせの原始の時代、それでも母親は命がけで自分の栄養を子どもに分け与えて、子孫を残してきました。人類が約700万年前に誕生してから、母親と父親と子どもたちが一緒に暮らす家族をつくり、父親も猛獣などの天敵や自然環境から命がけで子どもを守りました。そうする種がより生き残りました。1つ目は、子育てしたいという心理です。これは、自己犠牲や命がけという点で、本来、無条件です。そして、原始的である点で、食欲や性欲などの身体的な欲求と並ぶ精神的な欲求、エゴイズムの1つとも言えます。この心理は、これまで「母性」と呼ばれていました。ただし、「母性」という言葉は、母親や女性に限定的なニュアンスが伴います。実際には、この心理は、母親だけでなく、父親や祖父母をはじめ、血のつながっていない養父母を含めた養育者全般にもあります。よって、これは、子育て心理と言い換えることができるでしょう。ただし、食欲や性欲が旺盛な人もそうじゃない人もいるのと同じように、子育て心理も程度の違いがあります。希和子は、この心理が旺盛であったために、誘拐してまで恵里菜を無条件に愛そうとしました。犯罪行為である点では決して許されないのに、同時に、私たちはその行為に心打たれるのは、希和子の愛が無条件だからでしょう。子育て心理は、理屈では割り切れない要素があります。また、この心理は、情の深さや献身さにもつながっているという点で、希和子が恵里菜の父親との不倫関係を解消できなかった原因にもなった言えるでしょう。一方、恵津子は、子育て心理が旺盛ではなかったことが分かります。なぜでしょうか? その心理の程度の違いは、3つの要因が考えられます。1つ目の要因は、子育て期間です。この心理は、生まれてから子育てをすること自体を通して高まるものです。また、子どもから愛情を求められることを通して高まるものです。恵津子は、その大事な期間を恵里菜が4歳になるまで奪われていました。2つ目の要因は、世代間連鎖です。まさに恵里菜は、恵津子と同じように、この心理が危うくなっていました。恵里菜は、希和子との記憶を思い出していなければ、生まれてくる子に対して、恵津子と同じような仕打ちをしていたでしょう。同じように、恵津子の母親は、恵津子ほどではないにしても、子育て心理が旺盛ではなかった可能性も考えられます。3つ目の要因は、もともとの気質です。最近の研究では、子育て心理の程度の違いの要因として、遺伝子の配列の違いが報告されています。ちょうど食欲や性欲の程度の違いも、遺伝的な違いがあるのと同じです。子育て心理は、遺伝的にも文化的にも受け継がれていると言えます。(2)つながりたい ―条件付きで好き人類が約300~400万年前に草原(サバンナ)に出てから、家族は、よりいっそう猛獣に狙われたり、食料が獲れないという自然の脅威に直面しました。そのため、血縁によってつながった村(社会)をつくり、助け合いました(社会脳)。そして、そうする種がより生き残りました。2つ目は、つながりたいという心理です。これは、助け合いにならなければつながらないという点で、条件付きです。家族以外の人間関係においては、無条件に好きにはなれないです。たとえば、職場や学校の人間関係においては、お互いに協力するからこそ、つながっています。友人関係や夫婦などのパートナーシップにおいても、お互いに協力したり一緒にいて心地良いからこそ、つながっています。恵津子は、自分が満足しなければ、恵里菜を好きになれない点で、条件付きだったということです。18世紀の産業革命以前の封建社会では、誘拐という特殊な事情がなくても、恵津子のような条件付きの愛情は、とくにめずらしくなかったと考えられます。その理由は、産業革命以前は、個人よりも社会に重きが置かれていました。貧困の状況では、「間引き」「口減らし」「子捨て」さえもありました。恵津子のように、恐怖心、罪悪感、同情を植え付けて、子どもを従わせることは、むしろ社会にとっては好都合でした。しかし、約200年前の産業革命により、個人主義が広がりました。さらに、1990年以降の情報革命により、個人主義が強まったことで、社会よりも個人に重きが置かれるようになりました。そして、昨今、条件付きの愛情を注ぐ恵津子のような親は、毒親と呼ばれるようになりました。子どもを毒する、つまり害を及ぼす親という意味です。彼らは、子どもが幸せになることよりも、自分が幸せになることを第一にします。たとえば、子どもはペットのような自分の所有物であるという感覚を持っています。まるで親友であるかのように子どもに愚痴を垂れ流します。恵津子の場合は誘拐犯の悪口でした。実際によくあるのが、母親が父親や姑の悪口を子どもに吹き込みます。逆に、子どもが自分の考えに従ってくれないと不安になります。子どもを従わせるために、「親不孝者」「恩知らず」「親への態度が悪い」という言い回しを親自らが多用します。これは、親子関係の問題を、本質(内容)ではなく、見かけ(形式)ですり替えています。「八日目の蝉」とは?恵里菜と再会して間もない千草が「蝉って何年も土の中にいるのにさ」「たった7日で死んじゃうなんてあんまりだよね」と言うと、恵里菜は「ほかのどの蝉も7日で死んじゃうんだったら、別に寂しくない。だってみんな同じだし。でも、もし8日目の蝉がいたら、仲間みんな死んじゃって。そのほうが悲しいよ」と言います。回想旅行をする最中、千草が「八日目の蝉は、ほかの蝉には見られなかった何かを見られるんだもの。もしかして、それすごくきれいなものかもしれないよね」と言うと、恵里菜は「そうかもね」と静かにうなずきます。恵里菜は、「八日目」という状況を「ふつう」じゃないこととしてネガティブにとらえていました。それが、「ふつう」じゃなくても、「ふつう」じゃないからこそ、自分ならではのものが見れるとポジティブにとらえ直しています。それは、ひと言で言えば、希望でしょう。私たちも、病気や事故などの災難に遭い、「八日目」を迎えた時、「ふつう」じゃないと絶望するか、それでも希望を見いだすかは、私達自身の心のあり方次第であるということに、この映画を通して気付かされるのではないでしょうか? そして、その心のあり方こそが、人を好きになることにつながっていくのではないでしょうか?■関連記事(外部サイト含む)2019年サンプルスライド 「反応性愛着障害」積木崩し真相Mother(続編)【虐待】Mother(中編)【母性と愛着】1)乳幼児のこころ:遠藤利彦ほか、有斐閣アルマ、20112)愛着障害:岡田尊司、光文社新書、20113)「毒親」の正体:水島広子、新潮新書、2018

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第15回 アナタの心電図は“男女”どっち?【Dr.ヒロのドキドキ心電図マスター】

第15回:アナタの心電図は“男女”どっち?皆さんは心電図に「性差」があるのをご存知ですか? 男性と女性では、波形にいくつかの違いがあるのです。今回は、それを見極めるために、ST部分の“男女差”についてDr.ヒロが解説します。症例提示81歳、男性。糖尿病、高血圧、睡眠時無呼吸症候群(CPAP治療中)で通院中。以前から徐脈を指摘されており、不定期にめまいを認める。以下に定期外来での心電図を示す(図1)。(図1)定期外来時の心電図画像を拡大する【問題1】心電図(図1)の所見として誤っているものはどれか。1)洞(性)徐脈2)時計回転3)ST低下4)右軸偏位5)陰性T波解答はこちら4)解説はこちらいつ・どんな時でも系統的な判読が大事です(第1回)。1)○:“レーサー(R3)・チェック”をしましょう。R-R間隔は整、心拍数は42/分(検脈法:10秒)です。遅くてもP波はコンスタントで、向きも“イチニエフの法則”を満たします。「めまい」は徐脈に関連した症状かもしれず、精査対象となる可能性があります。2)○:「回転」は移行帯の異常です。胸部誘導の上からR波(上向き)とS波(下向き)のバランスを見ていきます。「R>S」となるのがV5とV6誘導の間であり、「時計回転」の診断でOKです。3)○:ST偏位は、J点に着目して、基線(T-Pライン)からのズレを見るのでした(第14回)。V5、V6誘導で「ST低下」があります(水平型)。4)×:I誘導:上向き、aVF(またはII)誘導:下向きは「左軸偏位」でしたね(第8回)。具体的な数値は、“トントン法Neo”を利用すると「-40°」です(トントン・ポイントは-aVRとIIの間で後者寄りです)。5)○:T波の「向き」を“スタート”の“ト”でチェックします。aVR誘導以外は上向きなのが基本です。全体をくまなく見渡して、aVL、V5、V6誘導で「陰性T波」を指摘して下さい。問題を続けましょう。次が今回の本題、男女に特徴的なST部分の“型”に関する問いです。【問題2】この高齢男性のST部分は男性型か、女性型か述べよ。解答はこちら女性型解説はこちら「ST部分」には、明確な性差が存在します。つまり男女で波形が異なる訳です。ただし、生物学的な“男・女”と100%完全には一致しません。前回扱った若年男性の心電図は、「男性型」の典型で、V1~V4誘導の“猛々しい”「ST上昇」が特徴です(この所見は女性では珍しい)。ただ、加齢と共に低下傾向を示し、高齢になると「女性型」を示すこともまれではありません。このST部分の性差について理解しておきましょう。皆さんは、心電図波形に「性差」があるって知っていましたか?…実際、男性か女性かまで意識して心電図を読んでいる方は、あまり多くないのではと推察します。しかし、純然たる“違い”があることが古くから知られており、とりわけ「ST部分」に現れやすいとされています*1。はじめに言っておくと、今回の話もあくまでも“雑談”です。細部まで逐一暗記しようとせず、『ふーん、そうなのかぁ』程度に思ってもらえば大丈夫。注目するのはV1~V4(前胸部)誘導のJ点とST角度(ST angle)の2点。「J点」はQRS波の“おわり”で、いわゆる“変曲点”です(第14回)。もう一つの「ST角度」という名前は聞き慣れないかもしれないので、図2で説明しましょう。(図2)J点とST角度の関係画像を拡大する男女別のST部分の差を3つに分類したSurawicz先生によると、J点を認識し、そこを通り基線に平行な線Aを引きます。次に、J点と点B(J点から60ms[1.5mm]先のST部分で“ST60”と称される)を結ぶ線がなす角度(図中のC)を表します。ST部分の“傾き”と理解すれば良いでしょう。では、この2つを用いてST部分を1)女性型(F型)、2)男性型(M型)、3)不定型(I型)の3つに分類する方法*2を紹介します(図3)。(図3)J点・ST角度によるST型分類画像を拡大するまずは、V1~V4誘導でJ点レベルが最高となる誘導に注目します。V1~V4誘導のいずれでもJ点が「0.1mV」、つまり、基線からの上昇が1mm未満なのが「F型」(ST角度は不問)です。今回の心電図(図1)も、これに相当します。残る2つ(M型、I型)では、4誘導のどこかで1mm以上のST上昇(J点)があるわけですが、今度は「ST角度」も見渡してみて下さい。角度が一番キツい(最大となる)誘導で、その角度が20°以上だったら「M型」、それ未満なら「I型」とします。具体的な数値は忘れてかまいませんが、若年男性ほど角度が急峻、つまり「M型」となる傾向なんです。ボクの経験上、ST角度はおおむねT波高が一番のところで最大となるため、ざっと見てJ点が1mm以上であれば、T波が最も高くツンと立った誘導を使ってST角度を調べるスタンスでOKです。『そんなこと言われても、どれを選ぶか悩むよなぁ~』というアナタ!…ならエイヤッとV2誘導の“一択”でJ点レベルとST角度を調べる感じで大丈夫かも(前回学んだように、多くのケースでJ点(ST)レベルが最大となりますから)。性別によってST部分に差があって、こうやって見るんだと知ってもらえたらボク的には十分。あくまでも厳格な心電図診断というよりは、“趣味”の世界みたいなものなので、がんじがらめにならずに楽しみましょう!この分類法のルールさえわかったら、皆さんも心電図を見て、どの型になるか言えますでしょ? 上記で説明したそれぞれのST型を以下に示したので、作図法も確認してみて下さい(図4)。I型とM型ではいずれもV3誘導でT波高が最大に見えるため、そこにフォーカスしてST角度を測りました。(図4)SurawiczらによるST型の3区分を作図画像を拡大するさて、現実にはどの型が多いのでしょうか?…Circulationという有名誌に前述のSurawicz先生が年齢・性別ごとの違いを報告しているので、そのグラフを以下に示します(図5)。(図5)性別・年齢によるSTパターン画像を拡大するまず、女性のほうはシンプル。全年代にわたって8割方がF型です。残り2割、成人の場合ではM型とI型が半分ずつ占めています。一方の男性はどうでしょう? 思春期以降、40歳くらいまではM型ないしI型で9割近くを占め、“若さ”の象徴的な「ST上昇」が目立ちます。ただ、よーく見ると、成人以降、M型は徐々に減り、代わりにF型がぐんぐん増えてきます(I型は1~2割のままほぼ一定)。50歳前後でF型はM型を凌駕し、最終的に今回の症例のような高齢男性では、7割がF型となる様子が読み取れます。心電図が年をとった結果、生物学的には男性でも、心電図は“女性”…そんなことが珍しくないというワケ。この“理由”はと言えば、皆さんお察しの通り「性ホルモン」の影響が強いようです。“力こぶ”を連想させるST-T部分はテストステロンの影響を受けるため、加齢によって“更年期”を迎え、最終的には枯渇してゆく…。そんな様子には、はかなさすら漂います…。ですから、STEMI(ST上昇型急性心筋梗塞)の診断を考えた場合、F型が増加するのは嬉しいです(つくづく、うまくできてるなぁと思います)。でも、高齢でも2~3割の男性はM型ないしI型ですから、注意が必要ですね。最後に、こうしたST型の分類は、あくまでも正常QRS-T波形を想定したもので、脚ブロックや心室肥大などのいわゆる「二次性ST変化」をきたす波形には適用できないので、ご注意あれ!今回は、あまり真面目に語られることのない、性別による心電図波形の違いについて扱いました。やや雑学的はハナシですが、ボクが医学生の頃、友達と面白いなぁと話した日々を懐かしく思いました。Take-home MessageJ点(STレベル)とST角度には性差が現れやすい(3つの区分あり)男性に特徴的な加齢に伴うST型の変化を知っておこう1)Bidoggia H, et al. Am Heart J. 2000;140:430–436.2)Surawicz B, et al. J Am Coll Cardiol. 2002;40:1870–1876.【古都のこと~南禅寺水路閣】時は明治、東京遷都で意気消沈した京都リバイバルのカギであった琵琶湖疎水事業。施工責任者は田邉朔郎(さくろう)。史上初ジャパン・オリジナルの大規模土木建設の重積が、大卒間もない一青年*の肩にいかほどに感じられたか…。南禅寺(左京区)の敷地内に同居する水路閣もその一部。赤レンガ・花崗岩によるモダンな風貌、アーチ型橋脚の見事な曲線美に圧倒されました。老朽化が叫ばれていますが、130年たった今でも文明開化当時の“勢い”が感じられるボクのお気に入りスポットです。*:後に東京・京都帝国大学の教授となった

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第30回 住環境を踏まえた服薬指導、できてますか?【週刊・川添ラヂオ】

動画解説WHOによる健康の定義は肉体的にも、精神的にも、社会的にも満たされた状態とされています。つまり薬を必要としている患者さんの健康を支えるために、薬剤師はその3つの因子について知る必要があるのです。実は患者さんには心配事があるかもしれない、居住環境に問題があるのかもしれない。目に見える身体だけではなく、患者さんの心や、環境因子にも関心を寄せる事が大切です。

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大腸治療ガイドライン2019年 薬物療法の改訂【消化器がんインタビュー】第4回

第4回 大腸治療ガイドライン2019年 薬物療法の改訂解説:静岡県立静岡がんセンター 消化器内科 山崎健太郎氏本年(2019年)1月に改訂された大腸治療ガイドライン2019における改訂ポイントを、薬物療法に焦点を当て静岡がんセンター 山崎健太郎氏が解説

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加齢で脆くなる運動器、血管の抗加齢

 2月18日、日本抗加齢医学会(理事長:堀江 重郎)はメディアセミナーを都内で開催した。今回で4回目を迎える本セミナーでは、泌尿器、内分泌、運動器、脳血管の領域から抗加齢の研究者が登壇し、最新の知見を解説した。年をとったら骨密度測定でロコモの予防 「知っておきたい運動器にかかわる抗加齢王道のポイント」をテーマに運動器について、石橋 英明氏(伊奈病院整形外科)が説明を行った。 厚生労働省の「国民生活基礎調査」(2016)によると、65歳以上の高齢者で介護が必要となる原因は、骨折・転倒によるものが約12%、また全体で関節疾患も含めると約5分の1が運動器疾患に関係するという。とくに、高齢者で問題となるのは、気付きにくい錐体(圧迫)骨折であり、外来でのFOSTAスコアを実施した結果「25歳時から4cm以上も身長が低下した人では、注意を払う必要がある」と指摘した。また、「骨粗鬆症治療薬のアレンドロン酸、リセドロン酸、デノスマブによる大腿骨近位部骨折の予防効果も、近年報告されていることから、積極的な治療介入が望ましい」と同氏は語る。 そして、「50代以降で骨の検査をしたことがない人」「体重が少ない人」など6つの条件に当てはまる人には、「骨粗鬆症の早期発見のためにも、骨密度検査を受けさせたほうがよい」と提案する。また、筋力は「加齢、疾患、不動、低栄養」を原因に減少し、40歳以降では1年間に0.5~1%減少すると、筋力低下についても注意喚起。この状態が続けばサルコぺニアに進展する恐れがあり、予防のため週2~3回の適度な運動とタンパク質などの必須栄養の摂取を推奨した。 そのほかロコモティブシンドローム防止のため日本整形外科学会が推奨するロコモーショントレーニング(スクワット、片脚立ち運動など)は、運動機能の維持・改善になり、実際に石橋氏らの研究(伊奈STUDY)1)でも、運動機能の向上、転倒防止に効果があったことを報告し、レクチャーを終えた。血管からみた認知症予防の最前線 同学会の専門分科会である脳血管抗加齢研究会から森下 竜一氏(同会世話人代表、大阪大学大学院医学系研究科 臨床遺伝子治療学寄付講座 教授)が、「血管からみるアンチエイジング」をテーマに、血管の抗加齢や認知症診断の最新研究について説明した。 はじめに最近のトピックスである食後高脂血症(食後中性脂肪血症)について触れ、多くの人々が6時間後に中性脂肪がピークとなるため1日の大部分を食後状態で過ごす中で、食後の中性脂肪値を抑制することが重要だと指摘する。実際、食後高脂血症は動脈硬化を促進し、心血管疾患のリスク因子となる研究報告2)もある。また、即席めんやファストフードに多く含まれる酸化コレステロールについて、これらはとくに肥満者や糖尿病患者には酸化コレステロールの血中濃度を上昇させ、動脈硬化に拍車をかけると警鐘を鳴らしたほか、食事後の短時間にだけ、人知れず血糖値が急上昇し、やがてまた正常値に戻る「血糖値スパイク」にも言及。こうした急激な血糖値の変動が高インスリン血症をまねき、過剰なインスリン放出が認知症の原因とされるアミロイドβを蓄積させると指摘する。 そして、認知症については、軽度認知障害(MCI)の段階で発見、早期治療介入により予防する重要性を強調した。その一方で、認知症の評価法について現在使用されている簡易認知機能検査(MMSE)、アルツハイマー病評価スケール(ADAS)などでは、検査に時間要すだけでなく、被験者の心理的ストレス、検査者の習熟度のばらつきなどが問題であり、スクリーニングレベルで使用できる簡便性がないと指摘する。そこで、森下氏らは、被験者の目線を赤外線で追うGazefinder(JCVKENWOOD社)を使用した視線検出技術を利用する簡易認知機能評価法の研究を実施しているという。最後に同氏は「今までの認知症の評価法のデメリットを克服できる評価法を作り、疾患の早期発見・予防に努めたい」と展望を述べ、講演を終えた。■参考文献1)新井智之、ほか. 第2回日本予防理学療法学会学術集会.2015.2) Iso H, et al. Am J Epidemiol. 2001;153:490-499.■参考脳心血管抗加齢研究会日本抗加齢医学会

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気候変動と認知症入院リスクとの関連

 人間が引き起こす気候変動がここ数十年で加速しており、健康への悪影響が懸念されている。しかし、高齢者の神経疾患に対する気候変動の影響は、まだよくわかっていない。米国・ハーバード公衆衛生大学院のYaguang Wei氏らは、ニューイングランドにおける認知症の入院と夏季、冬季の平均気温および気温変動との関連について検討を行った。Environment International誌オンライン版2019年2月26日号の報告。 認知症の入院と夏季、冬季の平均気温および気温変動との関連を推定するため、時間依存共変量Cox比例ハザードを用いた。各地域の気温は、衛星画像データを利用した予測モデルを用いて推定した。 主な結果は以下のとおり。・夏季(ハザード比[HR]:0.98、95%信頼区間[CI]:0.96~1.00)または冬季(HR:0.97、95%CI:0.94~0.99)の気温が平均よりも高かったとき、認知症関連入院リスクは低下した。一方、気温変動の大きい地域の高齢者では、認知症関連入院リスクが上昇した。・性別、人種、年齢、メディケア二重資格による交互作用(Effect modification)は、サブグループにおける脆弱性を調査するために考慮された。 著者らは「本結果より、平均気温より低いとき、および気温変動が大きいときに、認知症関連入院リスクの上昇が示唆された。気候変動は、認知症の進行やそれに伴う入院コストに影響を及ぼす可能性がある」としている。■関連記事なぜ、フィンランドの認知症死亡率は世界一高いのか統合失調症患者の入院、1日の気温差が影響気温31℃超で気分症状が再発!入院も増加(3月18日 記事の一部を修正いたしました)

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死産後の妊娠間隔と出産転帰に関連性はあるのか/Lancet

 3つの高所得国では、死産から12ヵ月以内の受胎は63%と一般的であり、この間隔での次回妊娠は、不良な出産アウトカムのリスク増大とは関連しないことが、オーストラリア・カーティン大学のAnnette K. Regan氏らの調査で明らかとなった。研究の成果は、Lancet誌オンライン版2019年2月28日号に掲載された。世界保健機関(WHO)は、次回の妊娠における不良な出産アウトカムのリスクを低減するために、次の受胎までは、生児出産後は2年以上、流産または人工妊娠中絶後は6ヵ月以上の間隔をあけるよう推奨しているが、死産後の次回受胎までの至適な期間の推奨はないという。在胎期間22週以上で死産に終わった女性の単胎妊娠が解析対象 研究グループは、死産後の妊娠間隔と、次回妊娠における不良な出産アウトカムとの関連を検討する目的で、国際的なコホート研究を実施した(オーストラリア国立保健医療研究評議会[NHMRC]とノルウェー研究評議会[RCN]の助成による)。 解析には、フィンランド(1987~2016年)、ノルウェー(1980~2015年)、オーストラリア(主に西オーストラリア州、1980~2015年)のデータを用いた。対象は、直近の妊娠が在胎期間22週以上で死産に終わった女性の単胎妊娠とした。 妊娠間隔は、妊娠終了(出産日)から次回妊娠開始(次回出産日から出産時の在胎期間を減じた日)の期間と定義し、6ヵ月未満、6~11ヵ月、12~23ヵ月、24~59ヵ月、60ヵ月以上に分けて検討が行われた。 各国の妊娠間隔別の死産、早産、在胎不当過小出産のオッズ比(OR)を算出し(母親の年齢、経産回数、出産の年代、前回の妊娠の在胎期間で補正)、固定効果を用いたメタ解析を行い、統合ORを推算した。死産後の妊娠の37%は6ヵ月以内に妊娠、生児出産後の推奨妊娠間隔とアウトカムに差はない 前回の妊娠が死産であった女性において、1万4,452件の単胎出産が同定された。死産後の妊娠間隔中央値は9ヵ月(IQR:4~19)と、前回が生児出産の女性の妊娠間隔25ヵ月(15~42)に比べ有意に短かった(p<0.0001)。9,109件(63%)は死産後12ヵ月以内、5,393件(37%)は6ヵ月以内の妊娠であった。3ヵ国で、死産後の妊娠間隔はほぼ同様であった。 死産後の妊娠女性1万4,452件の出産のうち、1万4,224件(98%)が生児出産で、228件(2%)が死産であり、2,532件(18%)が早産、1,284件(9%)は在胎不当過小出産であった。 妊娠間隔24~59ヵ月(WHOが推奨する生児出産後の妊娠間隔)と比較して、死産後12ヵ月以内の妊娠では死産のオッズは増加しておらず(妊娠間隔6ヵ月未満の補正OR:1.09、95%信頼区間[CI]:0.63~1.91、6~11ヵ月の補正OR:0.90、95%CI:0.47~1.71)、早産(0.91、0.75~1.11、0.91、0.74~1.11)および在胎不当過小出産(0.66、0.51~0.85、0.64、0.48~0.84)にも有意な増加は認められなかった。 国別の比較では、59ヵ月未満の妊娠間隔と、死産、早産、在胎不当過小出産との関連の差は小さかった。 また、前回の死産の在胎期間別(22~27週、28~36週、37週以上)の解析では、妊娠間隔と次回の死産(p interaction=0.60)、早産(p interaction=0.69)、在胎不当過小出産(p interaction=0.18)の関連にも差はみられなかった。 著者は、「これらのデータは、死産後に妊娠を計画している女性および死産後まもなく意図せずに妊娠した女性に、次回妊娠における不良なアウトカムのリスクは高くないと助言する際に活用でき、今後、高所得国における死産後の妊娠間隔の推奨を決める際には、有益な情報となる可能性がある」としている。

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テストステロンが血栓塞栓症、心不全、心筋梗塞に関連/BMJ

 JMJD1C遺伝子変異で予測した遺伝的内因性テストステロンは、とくに男性において、血栓塞栓症、心不全および心筋梗塞にとって有害であることを、中国・香港大学のShan Luo氏らが、UK Biobankのデータを用いたメンデル無作為化試験の結果、明らかにした。テストステロン補充療法は世界的に増大しているが、心血管疾患でどのような役割を果たすのか、エビデンスは示されていない。そうした中、最近行われたメンデル無作為化試験で、遺伝的予測の内因性テストステロンが、虚血性心疾患や虚血性脳卒中と、とくに男性において関連していることが示されていた。検討の結果を踏まえて著者は、「内因性テストステロンは、現在の治療法でコントロール可能であり、血栓塞栓症や心不全のリスク因子は修正可能である」と述べている。BMJ誌2019年3月6日号掲載の報告。UK Biobank40~69歳の英国人男女39万2,038例のデータを用いて評価 研究グループは、内因性テストステロンが血栓塞栓症、心不全、心筋梗塞と因果関係を有するのかを明らかにするため、無作為化試験「Reduction by Dutasteride of Prostate Cancer Events(REDUCE)」の被験者から遺伝的予測の内因性テストステロンを入手。UK Biobankのデータを用いて、それらテストステロンと血栓塞栓症、心不全および心筋梗塞との関連性を評価し、「CARDIoGRAMplusC4D 1000 Genomes」でゲノムワイドベースの関連性検証試験を行った。 被験者数は、REDUCE試験は50~75歳の欧州系の男性3,225例、UK Biobankは40~69歳の英国人男女39万2,038例、CARDIoGRAMplusC4D 1000 Genomesは17万1,875例(約77%が欧州直系)であった。 主要評価項目は、自己申告と、病院エピソードおよび死亡記録に基づく血栓塞栓症、心不全、心筋梗塞の発生であった。JMJD1C遺伝子変異を活用、女性では関連性認められず UK Biobankの被験者のうち、血栓塞栓症の発生は1万3,691例(男性6,208例、女性7,483例)、心不全は1,688例(それぞれ1,186例、502例)、心筋梗塞は1万2,882例(1万136例、2,746例)であった。 男性において、JMJD1C遺伝子変異で予測した遺伝的内因性テストステロンは、血栓塞栓症(対数変換テストステロン値[nmol/L]の単位増加当たりのオッズ比[OR]:2.09、95%信頼区間[CI]:1.27~3.46、p=0.004)、心不全(7.81、2.56~23.81、p=0.001)と明らかな関連性が認められたが、心筋梗塞との関連性は認められなかった(1.17、0.78~1.75、p=0.44)。ただし検証試験では、被験者全体において、JMJD1C遺伝子変異による遺伝的予測の内因性テストステロンと心筋梗塞の、明らかな関連性が認められた(1.37、1.03~1.82、p=0.03)。 女性においては、いずれも明らかな関連性はみられなかった(ORは血栓塞栓症:1.49[p=0.09]、心不全:0.53[p=0.47]、心筋梗塞:0.91[p=0.80])。 アウトカムと関連する遺伝子変異において、過剰な不均一性は観察されなかった。一方で、潜在的なSHBG遺伝子多面的変異で予測した遺伝的内因性テストステロンが、アウトカムと関連しないことも示された。

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