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第12回 呼吸困難 意外に多い呼吸困難の原因とは?【救急診療の基礎知識】

●今回のPoint1)呼吸数に注目し、帰してはいけない患者を見逃さないようにしよう!2)バイタルサインは必ず普段のADLで評価しよう!3)検査は事前確率に応じて、適切な検査を提出・実施しよう!【症例】70歳男性。来院当日、奥さんと買い物中に呼吸困難を自覚した。途中、近くのベンチで休み症状は改善傾向にあったが、心配となり帰宅途中にかかりつけのクリニックを受診した。原因は何が考えられるか? どのようにアプローチするべきだろうか?●受診時のバイタルサイン意識清明血圧152/98mmHg脈拍100回/分(整)呼吸24回/分SpO295%(RA)体温36.2℃瞳孔3/3mm+/+既往歴高血圧(51歳~)、2型糖尿病(54歳~)内服薬アムロジピン(Ca拮抗薬)、メトホルミン(メトホルミン塩酸塩)「意識障害」の後は、救急外来や一般の外来で出会う頻度の多い主訴のうち、時に重篤な場合がある症候を、順に取り上げていこうと思います。今回は「呼吸困難」です。X線やCT検査をすれば大抵の診断はつきますが、画像で異常が認められない場合やそもそも重症度を見誤り、適切な画像検査を行わず見逃してしまうことがあるため注意が必要です。高齢者の呼吸困難の原因呼吸困難の患者を診たら、(1)心不全などの心疾患、(2)肺炎などの肺疾患、(3)上部消化管出血などの貧血、(4)過換気症候群などの心因性の4つに分類し、考えて対応しています。若年者が急性の呼吸困難を訴えた場合には、気胸や喘息が鑑別の上位にあがりますが、高齢者ではどうでしょうか? 原因は多岐にわたりますが、頻度を考慮し、[1]心不全、[2]肺炎、[3]COPD(慢性閉塞性肺疾患)の急性増悪、[4]肺血栓塞栓症の4つをまずは念頭に鑑別を進めるとよいでしょう1)。初療時の鑑別のポイント:やはり“Hi-Phy-Vi”が大切!細かいことは抜きにして、[1]~[4]の鑑別ポイントを改めて理解しておきましょう。●病歴(History):発症様式に注目!一般的に肺炎やCOPDの急性増悪が突然発症することはありません。数日前、最低でも数時間前から咳嗽や発熱などの症状を認めるはずです。それに対して、後負荷がドカッと上がるびまん性肺水腫を主病態とする心不全や、肺血栓塞栓症は急激な発症様式を呈することが多く、救急外来でもしばしば出会います。真のonsetをきちんと聴取し、いつから症状を認めているのかを正確に把握しましょう。心不全の既往、発作性夜間呼吸困難は、心不全らしい所見であり、既往歴やいつ(就寝中、労作時など)症状を認めるかなども忘れずに聴取しましょう。就寝前までおおむね問題なかった患者が、夜間に突然呼吸が苦しくなった場合には、素直に考えれば肺炎よりも心不全らしいですよね。●身体所見(Physical):左右差に注目!呼吸音、心音、頸部所見(頸静脈怒張の有無)、下肢の浮腫や左右差などの身体所見は、ごく当然にとる必要があることは言うまでもありませんが、発症初期では聴取が難しい、III音は聴く努力をしながらもやっぱり難しいし、足の浮腫もいつからなんだか…など実際の現場では悩ましいことが多いのも事実です。最も簡単な方法は、左右差に注目することです。呼吸音に左右差があれば、肺炎らしく(初期では全吸気時間で聴取:holo crackles)、両側に喘鳴を聴取すれば心不全らしいでしょう。当たり前ですが、何となく聴診していると明らかな喘鳴の聴取は容易でも、わずかな場合や肺炎の初期の副雑音をキャッチできないことは珍しくありません。下腿の浮腫は、両側性の場合には心不全を示唆しますが、左右差を認める場合には、肺血栓塞栓症の原因の大半を占める深部静脈血栓症の存在を示唆します(エコーを当てれば瞬時に判断できます)。Thinker's sign(Dahl's sign)は、呼吸困難を軽減させるための姿勢によって生じた所見であり、慢性の呼吸不全の存在を示唆します2)。気管短縮や呼吸音の減弱、心窩部心尖拍動とともに患者の肘や膝上の皮膚所見も確認する癖を持ちましょう。●バイタルサイン(Vital signs):脈圧に注目!「呼吸困難を訴えるもののSpO2の低下がない」これは逆に危険なサインです。頻呼吸で何とか代償しようとしている、もしくは気道狭窄を示唆し、異物や喉頭蓋炎、アナフィラキシーの可能性を考え対応するようにしましょう。SpO2の低下を認め、[1]~[4]を鑑別する場合には、脈圧がヒントになります。肺炎など感染症が関与している場合には、通常脈圧は開大します。それに対して心機能が低下しているなどアウトプットが低下している場合には、脈圧が低下します。両者が混在する場合や、普段の患者背景にもよりますが、脈圧が低下している場合には、虚血に伴う心不全、submassive以上の肺血栓塞栓症など重篤な病態を早期に見抜く手掛かりになります。呼吸困難患者の脈圧が低下している場合には、早期に心電図を確認することをお勧めします(ST変化などの虚血性変化、洞性頻脈・SIQIIITIIIなどの肺血栓塞栓症らしい所見をチェック)。普段のADLと比較!初療時には酸素を必要としていた患者さんの中には、精査中にoffにすることができる場合があります。そのような場合には安心しがちですが、もう一歩踏み込んでバイタルサインを確認しましょう。ストレッチャー上のバイタルサインではなく、普段と同様のADLの状態でのバイタルサインを評価してほしいのです。本症例の原因は肺血栓塞栓症でしたが、安静時には酸素を要さず、呼吸回数は落ち着いてしまいました。しかし、帰宅前に歩行をしてもらうとSpO2が低下し、呼吸困難症状の再燃を認めたのです。肺血栓塞栓症は、過換気症候群や原因不明として見逃されることがあり、私は普段と同様のADLで(1)他に説明がつかない頻呼吸、(2)他に説明がつかない低酸素、(3)他に説明がつかない頻脈の場合には、疑って精査するように努めています3)。さいごに呼吸困難を訴える患者では、胸部X線、CT検査ですぐに確認したくなりますが、それのみではなかなか確定診断は難しく、また、肺炎と心不全は両者合併することも珍しくありません。D-dimerも役には立ちますが、それのみで肺血栓塞栓症や大動脈解離を診断・除外するものではありません。“Hi-Phy-Vi”を徹底し、鑑別疾患を意識して検査結果をオーダー、解釈することを常に意識しておきましょう。1)Ray P, et al. Crit Care. 2006;10:R82.2)Patel SM, et al. Intern Med. 2011;50:2867-2868.3)坂本壮. 救急外来ただいま診断中!. 中外医学社;2015.p.216-230.

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国内初1日1回経口投与の子宮筋腫症状治療薬「レルミナ錠40mg」【下平博士のDIノート】第25回

国内初1日1回経口投与の子宮筋腫症状治療薬「レルミナ錠40mg」今回は、GnRH(性腺刺激ホルモン放出ホルモン)アンタゴニスト製剤「レルゴリクス錠(商品名:レルミナ錠40mg)」を紹介します。本剤は、フレアアップ現象を生じることなく子宮筋腫に基づく諸症状を改善する国内初の経口薬です。<効能・効果>本剤は、子宮筋腫に基づく諸症状(過多月経、下腹痛、腰痛、貧血)の改善の適応で、2019年1月8日に承認され、2019年3月1日より発売されています。また、2021年12月に「子宮内膜症に基づく疼痛の改善」の適応が追加されました。<用法・用量>通常、成人にはレルゴリクスとして40mgを1日1回食前に経口投与します。なお、初回投与は月経周期1~5日目に行います。本剤の投与によって、エストロゲン低下作用に基づく骨塩量の低下がみられることがあるので、6ヵ月を超える投与は原則として行われません。<副作用>国内第III相試験で認められた主な副作用は、不正子宮出血(46.8%)、ほてり(43.0%)、月経異常(15.5%)、頭痛、多汗、骨吸収試験異常(各5%以上)などでした。なお、重大な副作用としてうつ状態(1%未満)、肝機能障害(頻度不明)、狭心症(1%未満)が認められています。<患者さんへの指導例>1.この薬は、下垂体に作用して卵巣からの女性ホルモンの分泌を低下させることで、子宮筋腫に基づく過多月経、下腹痛、腰痛、貧血などの症状を改善します。2.初回は、月経が始まった日から5日目までの間に服用を開始してください。3.食後の服用では薬の効き目が低下するため、食事の30分以上前に服用してください。4.この薬を服用している間はホルモン性避妊薬以外の方法で避妊をしてください。5.長期に使用すると骨塩量が低下することがあるため、日ごろから適度な運動を心がけ、カルシウムやビタミンD、ビタミンKを含む食材を積極的に取りましょう。6.気分が憂鬱になる、悲観的になる、思考力が低下する、眠れないなど、うつ様の症状が現れた場合にはご連絡ください。7.女性ホルモンの低下によって、ほてり、頭痛、多汗などの症状が現れることがあります。症状がつらいときはご相談ください。<Shimo's eyes>従来、子宮筋腫の薬物療法としてGnRHアゴニストであるリュープロレリン酢酸塩(商品名:リュープリン注)やブセレリン酢酸塩(同:スプレキュア皮下注/点鼻液)などが用いられています。GnRHアゴニストは、下垂体前葉にあるGnRH受容体を継続的に刺激することで本受容体を減少させ、卵胞刺激ホルモン(FSH)や黄体形成ホルモン(LH)の分泌を抑制させます。投与開始初期にはFSHやLH分泌が一過性に増加するため、不正性器出血や月経症状の増悪などのフレアアップ現象が生じやすいことが知られています。これに対しGnRHアンタゴニスト製剤である本剤は、GnRH受容体を選択的に阻害することでFSHとLHの分泌を抑制します。このため、投与開始初期であってもフレアアップ現象を生じることなく女性ホルモンであるエストラジオールおよびプロゲステロンの産生を低下させます。本剤は1日1回服用の経口薬であり、子宮筋腫に伴う諸症状に悩んでいる患者さんのアドヒアランスとQOLの向上が期待できます。投与に当たっては、妊娠中や授乳中でないかを確認するとともに、服用タイミングなどの指導をしっかり行ってこまめに経過を観察するようにしましょう。※2021年12月の添付文書改訂に伴い、一部内容の修正を行いました。

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消化器がん 海外学会レポート

ASCO-GI、ASCO、ESMOの重要トピックを紹介ASCO-GIASCOESMOASCO-GI2018会員聴講レポート02/02 ASCO-GI2018レポートASCO2019現地シカゴからオンサイトレビュー06/05 ASCO2019現地速報 消化器がん2018現地シカゴからオンサイトレビュー06/04 ASCO2018レポート 現地速報【Upper GI】06/04 ASCO2018レポート 現地速報【Lower GI】会員聴講レポート07/26 ASCO2018レポート 消化器がん(肝胆膵)06/28 ASCO2018レポート 消化器がんESMO2019現地バルセロナからオンサイトレビュー10/02 ESMO2019レポート現地速報 消化器がん2018現地ミュンヘンからオンサイトレビュー10/23 ESMO2018レポート現地速報 消化器がん会員聴講レポート11/26 ESMO2018レポート 消化器がん

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第9回 高齢者糖尿病の薬物療法(総論、SU薬)【高齢者糖尿病診療のコツ】

第9回 高齢者糖尿病の薬物療法(総論、SU薬)Q1 低血糖リスクを考慮した薬剤選択の原則について教えてください高齢者の糖尿病治療では、まずは患者ごとに適正な血糖コントロール目標値を設定することが重要です(第4回参照)。そのうえで、低血糖リスクを考慮しつつ各薬剤をどのように使い分けるか、考え方を以下にご紹介します。DPP-4阻害薬は、単独では低血糖リスクがきわめて低く、腎障害があっても使用できる薬剤があります。またSU薬に加えることで、SU薬の減薬や中止をする際に非常に有用です。また、同じインクレチン関連薬であるGLP-1受容体作動薬の使用も考慮されることがあります。フレイルの高齢者で、SU薬以外の内服薬±GLP-1受容体作動薬が、SU薬やインスリンを中心とした場合に比べ低血糖の発症が1/5になったというデータもあります(図)1)。画像を拡大するメトホルミンは高齢者で唯一投与できるビグアナイド薬です。高齢者でもメトホルミンの使用は心血管疾患、死亡のリスクを減らし、サルコペニア、フレイルなどへの好影響を及ぼすという報告があります。したがって、海外のガイドラインでは高齢者でもメトホルミンは第一選択薬とされており、低血糖リスクを考慮すると、DPP-4阻害薬とともに高齢者でまず選択すべき薬剤の1つとなります。メトホルミンはeGFR 30mL/分/1.73m2以上を確認して使用します(第10回、Q1で詳述)。DPP-4阻害薬、メトホルミンでも血糖コントロールが不良の場合には、少量のSU薬、SGLT2阻害薬、グリニド薬、αグルコシダーゼ阻害薬(α‐GI)、チアゾリジン薬のいずれかを選択します。SU薬は高用量で投与すると低血糖の重大なリスクとなるため、SU薬使用者では血糖コントロール目標値に下限値が設けられています(第6回参照)。したがって、SU薬はなるべく使わず、使用したとしても少量の使用にとどめることにしています。グリクラジドで20mg(できれば10mg)/日、グリメピリドで0.5mg(できれば0.25mg)/日以下にとどめます。肥満がなくインスリン分泌が軽度低下している場合、少量のSU薬が血糖コントロールに有用なケースもあります。この場合の投与量は空腹時血糖が低血糖にならないレベルに設定するべきであり、可能であればCGM(Continuous Glucose Monitoring)を行って、夜間・空腹時低血糖がないことを確認することが望まれます。なお、グリニド薬はSU薬に比べ重症低血糖のリスクは少ないものの、やはり注意が必要です。α‐GIは腸閉塞など腹部症状のリスクがあり、開腹歴のある患者では使用を控えます。チアゾリジン薬は浮腫・心不全、またとくに女性において骨折のリスクが知られており、心不全患者には投与しないようにします。女性では少量(たとえば7.5 mg)から開始し、慎重に投与します。Q2 SU薬の減量と他剤への切り替えのポイントは?SU薬は腎排泄なので、腎機能低下例(eGFR<45mL/分/1.73m2)では減量、 eGFR<30では原則中止して、DPP-4阻害薬などの他剤へ切り替えます。しかし、SU薬をDPP-4阻害薬にいきなり切り替えると高血糖になることが少なくありません。そのため、まずはSU薬の用量を半分に減らし、DPP-4阻害薬を追加することをおすすめします。さらに、腎機能低下が軽度にとどまる場合は、メトホルミン、また肥満・インスリン抵抗性が疑われる場合はSGLT2阻害薬へ切り替えるケースもありますが、それぞれ第10回で後述する注意点があります。このほか、グリニド薬、α‐GI、チアゾリジン薬などのいずれかを追加することで、徐々にSU薬を減らしていくといいと思います。しかし、これらの薬剤のアドヒアランス低下がある場合や使用できない場合は、DPP-4阻害薬をGLP-1受容体作動薬に変更するとうまくいく場合があります(第10回、Q3)。食事量にムラがある場合は、インスリン分泌に影響のある薬剤を投与すると低血糖を起こしやすいため、やはりDPP-4阻害薬を中心としたレジメンとなります。また、中等度以上の認知症で食事量が不規則な場合、体重減少が著しい場合、HbA1c値が目標下限値を下回った場合(たとえばHbA1c 6.0%未満または6.5%未満)には低血糖リスクが高い薬剤から減薬を試みます。1)Heller SR, et al. Diabetes Obes Metab. 2018;20:148-156.

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孤立性の三尖弁閉鎖不全への開心術、長期予後改善せず?【Dr.河田pick up】

 中等度から重症の三尖弁閉鎖不全症の患者は米国では160万人以上おり、その予後は一般的に不良である。現在のACC/AHAガイドラインでも三尖弁閉鎖不全症に対する開心術は、重症で、症状があり、弁周囲の拡大と右心不全がある患者に推奨されているが、エビデンスは乏しい。 左心系の弁膜症のない孤発性の三尖弁閉鎖不全症患者に対しては、長い間保存的な薬物治療が行われてきた。この論文では、孤発性の三尖弁閉鎖不全症に対する外科的弁修復および弁置換の効果を検証している。米国・マサチューセッツ総合病院のJason H. Wasfy氏らによる、Journal of American College of Cardiology誌オンライン版5月3日号への報告。心エコーのデータベースから3,276例の孤発性の三尖弁閉鎖不全症を解析 2001年11月から2016年3月までの心エコーの経時的なデータベースを用いて、3,276例の孤発性の三尖弁閉鎖不全症を有する患者を後ろ向きに解析した。開心術を受けた症例と受けなかった症例における全死亡率を、コホート全体およびプロペンシティスコアを用いてマッチングされたサンプルにおいて比較した。死亡バイアス(エコーで三尖弁閉鎖不全症の診断がついてから開心術を受けるまでの期間に死亡が発生しない)の可能性を評価するために、診断から手術までの時間を時間依存共変量として、解析が行われた。三尖弁閉鎖不全症に対する弁修復・弁置換は予後を改善せず 3,276例の孤発性の重症三尖弁閉鎖不全症患者のうち、171例が三尖弁に対する手術を受け、143例(84%)が弁修復術、28例(16%)が弁置換術を受けていた。残りの3,105例(95%)には保存療法が行われていた。手術を時間依存性の共変量として考慮し、プロペンシティスコアをマッチングさせたサンプルと比較した結果、内科的に保存療法を受けた患者の全生存率は、開心術を受けた患者の全生存率と有意な違いは認められなかった(ハザード比 [HR]:1.34、95%信頼区間[CI]:0.78~2.30、p=0.288)。開心術を受けたサブグループにおいて、弁修復と弁置換を受けた患者間でも違いは認められなかった(HR:1.53、95% CI:0.74~3.17、p=0.254)。 孤発性の重症三尖弁閉鎖不全症患者において、生存バイアスを考慮した上で解析を行った結果、外科手術は内科的保存療法と比較して、長期の生存率を改善しなかった。 開心術について無作為化するのは困難であり、単施設の後ろ向き解析ではあるが、本解析は三尖弁閉鎖不全症に対する論文の中でも大規模なものと言える。ただ、プロペンシティスコアを用いてもさまざまなバイアスを排除するのは難しい。今後、カテーテルによる三尖弁閉鎖不全症に対する治療がより一般的になっていくと考えられ、三尖弁閉鎖不全症に対する侵襲的治療の効果を評価する前向き無作為化試験の実施が期待される。(Oregon Heart and Vascular Institute 河田 宏)

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統合失調症患者の同意能力と認知機能との関係

 同意の意思決定能力は、倫理的および法的な新しい概念であり、重要な医学的決定や臨床研究への参加に直面している患者において、自己決定と密接に関連するものである。国立精神・神経医療研究センターの菅原 典夫氏らは、統合失調症患者における同意の意思決定能力と認知機能との関係について、Frontiers in Psychiatry誌2019年4月12日号で報告した。 主な内容は以下のとおり。・近年、意思決定能力を評価するため、4つの側面(理解、感謝、推論、選択の表現)からなる半構造化インタビューのMacArthur能力評価ツール(MacCAT)が開発された。・MacCATで測定された統合失調症患者群の意思決定能力は、健常対照群と比較し、損なわれていることが示唆されている。・このことは、統合失調症患者の意思決定能力が、必ずしも低下していることを意味するものではない。・リアルワールドでは、統合失調症患者からインフォームドコンセントを得ることが求められるが、そのためには、精神病理学的特徴と疾患における意思決定能力との関係を評価することが重要である。・統合失調症患者では、陰性症状が、意思決定に関連する情報を理解する能力、合理的な理由、状況の理解、その結果と関連していることが証明されている。・一方で、幻覚や妄想などの陽性症状は、低い能力との一貫した相関はみられていない。・いくつかの研究では、統合失調症の中核症状の1つである認知機能障害が、陽性症状や陰性症状よりも、意思決定能力に対し、より大きく関与している可能性が示唆されている。 著者らは「統合失調症患者の認知機能を強化し、同意や自主性を促進する能力を向上させることは、医学的治療や臨床研究への参加において合理的であると考えられる。このことや関連する問題を解明するためには、さらなる研究が求められる」としている。

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腰痛診療ガイドライン2019発刊、7年ぶりの改訂でのポイントは?

 2019年5月13日、日本整形外科学会と日本腰痛学会の監修による『腰痛診療ガイドライン2019』(編集:日本整形外科学会診療ガイドライン委員会、腰痛診療ガイドライン策定委員会)が発刊された。本ガイドラインは改訂第2版で、初版から実に7年ぶりの改訂となる。いまだに「発展途上」な腰痛診療の道標となるガイドライン 初版の腰痛診療ガイドライン作成から現在に至るまでに、腰痛診療は大きく変遷し、多様化した。また、有症期間によって病態や治療が異なり、腰痛診療は複雑化してきている。そこで、科学的根拠に基づいた診療(evidence-based medicine:EBM)を患者に提供することを理念とし、『Minds 診療ガイドライン作成の手引き 2014』で推奨されるガイドライン策定方法にのっとって腰痛診療ガイドライン2019は作成された。腰痛診療ガイドライン2019は9つのBackground Questionと9つのClinical Question 腰痛診療ガイドライン2019では、疫学的および臨床的特徴についてはBackground Question (BQ)として解説を加え、それ以外の疫学、診断、治療、予防についてはClinical Question (CQ)を設定した。それぞれのCQに対して、推奨度とエビデンスの強さが設定され、益と害のバランスを考慮して評価した。推奨度は、「1.行うことを強く推奨する」、「2.行うことを弱く推奨する(提案する)」、「3.行わないことを弱く推奨する(提案する)」、「4.行わないことを強く推奨する」の4種類で決定する。エビデンスの強さは、「A(強):効果の推定値に強く確信がある」、「B(中):効果の推定値に中程度の確信がある」、「C(弱):効果の推定値に対する確信は限定的である」、「D(とても弱い):効果の推定値がほとんど確信できない」の4種類で定義される。腰痛診療ガイドライン2019では腰痛の定義がより明確に 腰痛診療ガイドライン2019において、腰痛は「疼痛の部位」、「有症期間」、「原因」の3つの観点から定義された。疼痛の部位からの定義では、「体幹後面に存在し、第12肋骨と殿溝下端の間にある、少なくとも1日以上継続する痛み。片側、または両側の下肢に放散する痛みを伴う場合も、伴わない場合もある」とされた。有症期間からは、発症から4週間未満のものを急性腰痛、発症から4週間以上3ヵ月未満のものを亜急性腰痛、3ヵ月以上継続するものを慢性腰痛と定義した。原因別の定義では、「脊椎由来」、「神経由来」、「内臓由来」、「血管由来」、「心因性」、「その他」に分類される。とくに「悪性腫瘍」、「感染」、「骨折」、「重篤な神経症状を伴う腰椎疾患」といった重要疾患を鑑別する必要がある。腰痛診療ガイドライン2019では運動療法は慢性腰痛に対して強く推奨 腰痛診療ガイドライン2019では、運動療法については「急性腰痛」、「亜急性腰痛」、「慢性腰痛」のそれぞれについて評価され、そのうち「慢性腰痛」に対しては、「運動療法は有用である」として強く推奨(推奨度1、エビデンスの強さB)されている。それに対して、「急性腰痛」、「亜急性腰痛」に対してはエビデンスが不明であるとして推奨度は「なし」とされた。腰痛診療ガイドライン2019では各薬剤の推奨度とエビデンスの強さを評価 腰痛診療ガイドライン2019が初版と大きく異なる点は、推奨薬の評価方法である。まず、腰痛診療ガイドライン2019では、「薬物療法は疼痛軽減や機能改善に有用である」として、強く推奨(推奨度1、エビデンスの強さB)されている。そのうえで、腰痛を「急性腰痛」、「慢性腰痛」、「坐骨神経痛」に区別して、各薬剤についてプラセボとのランダム化比較試験のシステマティックレビューを行うことでエビデンスを検討し、益と害のバランスを評価して推奨薬を決定した。オピオイドについては、過量使用や依存性を考慮して弱オピオイドと強オピオイドに分けられている。 腰痛診療ガイドライン2019での各薬剤の推奨度とエビデンスの強さは以下のとおり。●急性腰痛に対する推奨薬<非ステロイド性抗炎症薬> 推奨度1、エビデンスの強さA<筋弛緩薬> 推奨度2、エビデンスの強さC<アセトアミノフェン> 推奨度2、エビデンスの強さD<弱オピオイド> 推奨度2、エビデンスの強さC<ワクシニアウイルス接種家兎炎症皮膚抽出液> 推奨度2、エビデンスの強さC●慢性腰痛に対する推奨薬<セロトニン・ノルアドレナリン再取り込み阻害薬> 推奨度2、エビデンスの強さA<弱オピオイド> 推奨度2、エビデンスの強さA<ワクシニアウイルス接種家兎炎症皮膚抽出液> 推奨度2、エビデンスの強さC<非ステロイド性抗炎症薬> 推奨度2、エビデンスの強さB<アセトアミノフェン> 推奨度2、エビデンスの強さD<強オピオイド>(過量使用や依存性の問題があり、その使用には厳重な注意を要する) 推奨度3、エビデンスの強さD<三環系抗うつ薬> 推奨度なし*、エビデンスの強さC(*三環系抗うつ薬の推奨度は出席委員の70%以上の同意が得られなかったために「推奨度はつけない」こととなった)●坐骨神経痛に対する推奨薬<非ステロイド性抗炎症薬> 推奨度1、エビデンスの強さB<Caチャネルα2δリガンド> 推奨度2、エビデンスの強さD<セロトニン・ノルアドレナリン再取り込み阻害薬> 推奨度2、エビデンスの強さC

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英国の性交頻度、性的活発集団で急低下/BMJ

 性的に活発な人々の割合や、この集団における性交頻度の低下が、日本を含むいくつかの国で観察されている。英国・ロンドン大学衛生熱帯医学大学院のKaye Wellings氏らは、同国の全国調査のデータを解析し、最近は性交頻度に低下傾向が認められ、とくに25歳以上および結婚/同棲者で顕著であることを明らかにした。BMJ誌2019年5月7日号掲載の報告。3つの反復的な横断研究間で、実際/望ましい性交頻度を比較 研究グループは、英国における性交頻度およびその生活様式上の因子との関連の経時的な変化を調査する目的で、3つの反復的な横断研究のデータの解析を行った(英国Wellcome Trustなどの助成による)。 National Surveys of Sexual Attitudes and Lifestyles(Natsal)-1は、年齢16~59歳の1万8,876例と面談し、1991年に終了した。また、Natsal-2は、年齢16~44歳の1万1,161例を対象とし、2001年に終了しており、Natsal-3の対象は、年齢16~74歳の1万5,162例で、2012年に終了した。 年齢16~44歳(3つの調査で一般的な年齢層)における実際の性交頻度と望ましい性交頻度を、16~24歳、25~34歳、35~44歳に分けて、3つの調査間で比較した。また、Natsal-3のデータを用いて、週1回以上の性交頻度と関連する因子の評価を行った。 主要アウトカムは、最近4週間の性交頻度および望ましい性交頻度とした。健康、雇用、所得が良好な集団で頻度が高い 過去1ヵ月の性交回数中央値は、女性ではNatsal-1とNatsal-2が4回で、Natsal-3は3回であり、男性では3つの調査とも3回であった。 過去1ヵ月に性交なしと回答した割合は、女性ではNatsal-1の28.5%からNatsal-2の23.0%へと減少し、男性では30.9%から26.0%へと低下したが、Natsal-3では女性が29.3%、男性は29.2%へとそれぞれ増加した。 過去1ヵ月の性交回数が10回以上と回答した割合は、女性ではNatsal-1の18.4%からNatsal-2の20.6%へと上昇し、男性では19.9%から20.2%へと増加したが、Natsal-3では女性が13.2%、男性は14.4%へとそれぞれ減少した。 年齢25歳以上および結婚/同棲の集団では、性交頻度が最も急低下していた(交互作用検定 p<0.05)。また、性交頻度の低下とともに、性交頻度はもっと高いほうが好ましいとの回答の割合の増加が認められた。 過去1ヵ月の性交回数が4回以上と回答した集団で、さまざまな因子との関連を評価したところ、男女ともに身体的健康および心の健康が良好な集団で性交頻度が高く、同様に完全雇用および高所得の集団でも高頻度であった。 著者は、「英国の性交頻度の低下は、性的に活発な集団における頻度の低下によって促進されていた」とまとめ、「これらの知見とその意義は、英国の技術的、人口統計学的、社会的な変化との関連において説明する必要があり、さらなる検討を要する」としている。

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労作ではあるがnegative studyである(解説:野間重孝氏)-1051

 評者は多くの読者がこの論文を誤解して読んだのではないかと危うんでいる。つまり、非ST上昇型心筋梗塞(NSTEMI)による心停止から回復した患者に対する治療方針として、血管インターベンション(PCI)を前提とした緊急冠動脈造影を行うのが望ましいのか、待機的冠動脈造影とするのが望ましいのかを検討した論文として読んだ方が多いのではないだろうか。また、ある方はもっとストレートに、NSTEMIを基礎として起こった心停止例の治療に対して緊急PCIが望ましいのか、待機的PCIが望ましいのかを検討した成績として読んだ方もいらっしゃるかもしれない。確かに、この論文の筆致から致し方がないようにも思われるのだが、もう一度この論文の題名を確かめていただきたい。“Coronary Angiography after Cardiac Arrest without ST-Segment Elevation”となっており、NSTEMIといった言葉は入っていないことに気付かれると思う。論文評としてはいささか妙な書き出しになったのは、実は評者自身一読した段階で誤解しそうになったからだ。 重篤な不整脈による心停止の原因として圧倒的に虚血発作が多いことは、いくつもの観察研究ですでに明らかになっている。しかし、ER到着時にST上昇がない症例については、多少のST-T変化があったとしても虚血性心疾患とは断定できない場合が多い。発生からの時間により心筋逸脱物質もまだ上昇していない場合もあれば、ある程度上昇していてもそれが冠動脈疾患によるものなのか、心停止による心筋障害なのか区別がつかない場合も多い。重症心不全もなく、本研究の除外基準であるショック、治療抵抗性の不整脈の発生もない症例で、ただ心停止回復後で意識が戻らないという症例をみたときにどうするのか。そういった症例に対して、確定診断+場合による治療の目的で緊急冠動脈造影をすることが正しいのか、それとも内科的至適治療をしながら意識が戻るのを待ち、待機的に造影をすることが正しいのか、これが本研究の問い掛けなのである。後者を考える場合“意識が戻る”というのが重要で、脳死状態に移行していってしまう患者に対して、それ以上の検査・治療行為は無駄であるからである。その結論が、「緊急冠動脈造影とその結果による緊急PCIを行うか行わないかは、90日生存率に影響を与えない」、つまり緊急冠動脈造影を行う必要はないというものだったのである。この場合NSTEMIであるのかどうかは関係がない。実際、冠動脈造影の1/3の症例で冠動脈は正常だったし、血栓性閉塞だったと考えられた症例は両群を合わせても22例しかいなかったことからも明らかだろう。 本研究で重要な点は上記に加えて、心停止後の生命予後の決定因子としては、神経損傷の程度が心筋損傷の程度に比べて圧倒的に重要であることを示したことである。しかし残念ながら、現行の医学のレベルにおいては神経損傷の程度を急性期に正確に評価する方法はなく、また予後不良であることが予測できた場合でも、積極的にインターベンションを加える方法は確立されていない。本研究では低体温療法における目標体温までの到達時間に差があったことを論じているが、低体温療法自体がどの程度の効果があるのか結論が出ていない今、多少の時間の違いを論じてもあまり意味がないだろう。なお、著者は目標体温到達まで時間を要してしまったことが、緊急血管造影の潜在的ベネフィットを弱めた可能性があると付け加えている。おそらくどれも有意差が出なかった中でこの項目だけ差が出てしまったため、著者らとしては言及せざるを得なかったのだろうが、これは神経損傷因子を修飾する付加的因子であるので、両群間で神経損傷による死亡率に差が出たのならそれも言えるが、そうではない以上、この議論は不要であると考えられた。 こうした臨床研究に出会ったときにいつも述べることなのだが、普段私たちがあまり疑問に思わないでいるような事柄も、実は検証してみないとわからない場合が多い。そういう意味でこの研究にも敬意を表するものではあるのだが、では、こうした患者を診たときにお前は造影をするのかしないのかと聞かれれば、やはりすると答えてしまうのはカテ屋の性のようなものだろうか。というのは素直でない表現になってしまったが、実臨床では害がないのならば早い時期に確定診断を付けて、できる治療はやってしまいたいと考える実地医家は少なくないのではないかと思う。著者らの意図とは別に意見の分かれるところではないだろうか。これは問題の冠動脈造影の時期については結局negative studyであったのだから、致し方がないと思う。 苦言を呈するとすれば、appendixにではなく、本文中のMethodsの項に対象の基準、除外基準を書き込み、統計法についてももう少し詳しく言及し、appendixを読まなくても独立した論文として読める体裁にまとめてほしかったと感じた。実際、本論文では除外基準が重要であるのだが、全体像はappendixを読まないとわからない。近年論文の長さに制限を設け、細かな内容についてはappendixを付けてそちらに書き込むように指導する雑誌が増加しているようだ。細かなCOIに関する項目やプロトコールの詳細、フローチャート、統計にしても細かな数式上の問題などはappendixに書き込んでいただいたほうが本文は読みやすくなって助かるが、それも程度の問題であり、本文がそれだけでは独立性がなくなってしまうようでは本末転倒であると思う。この部分は論文評とは言えないが、各誌にご一考を求めたいと思う。

19110.

ダンボ【なぜ飛ぶの? 私たちが「飛ぶ」には?(褒めるスキル)】

今回のキーワード信頼関係主流秩序リフレーミング自己成長「褒めの引き出し」ピグマリオン効果両面提示ウィンザー効果皆さんは、相手をどう褒めて良いか分からなくて困ったことはありませんか? その相手は、職場の部下、同僚、上司でしょうか? さらには、家族、友人、そしてパートナーでしょうか? そもそもなぜ褒めるのでしょうか? そして、どう褒めるのが良いでしょうか?これらの答えを探るために、今回は、ディズニーの名作映画「ダンボ」の2019年実写版を取り上げます。ダンボと言えば、遊園地のアトラクションの1つである「空飛ぶゾウさん」を思い浮かべると分かりやすいでしょう。ダンボはなぜ飛ぶのでしょうか? そして、私たちが「飛ぶ」にはどうすれば良いでしょうか?この空飛ぶゾウの「ダンボ」の映画には、3つのテーマがあります。そのテーマを通して、褒める心理を掘り下げ、褒めるスキルを一緒に考えてみましょう。ダンボのテーマとは?ストーリーの舞台は、1900年代前半のアメリカ。巡業中のサーカスファミリーは、新たに赤ちゃんゾウを迎え、ダンボと名付けます。ダンボは、その大きくて奇妙な耳で、観客たちからはブーイングを浴びてしまいます。ところが、団員の子どもたちは、その耳を使ってダンボが飛べることを発見します。そして、ダンボはサーカスの人気者になっていきます。その後、それを聞きつけた遊園地・ドリームランドの社長はダンボをビジネスに利用するため、母ゾウを処分しようとします。それをサーカスファミリーの団員たちが阻止し、最後は、ダンボは母ゾウとともに故郷インドに帰るというハッピーエンドです。ストーリーの設定も展開も、とてもシンプルで分かりやすいです。まずは、この映画のテーマを大きく3つ挙げてみましょう。(1)相手の幸せを願うつながり ―信頼関係団員の子どもであるミリーとジョーは、ダンボのお世話を熱心にします。母ゾウから引き離されてしまったダンボの悲しさをよく分かっているのでした。なぜなら、2人とも母をインフルエンザで亡くしていたからでした。自分たちと同じ思いをさせたくないと思い、「いつもそばにいるよ」とダンボに伝え、勇気付けています。また、2人は、ダンボの幸せが母ゾウと一緒にいることであるのを分かっているだけに、「飛んで稼げば、ジャンボ(母ゾウ)を買い戻せて会えるよ」「もう1回飛んで、ジャンボ(母ゾウ)に会いに行こう」と声を掛けています。ミリーとジョーの父親であるホルトは、戦地で片腕を失い帰ってきていますが、彼自身も、片腕だけでなく、妻も失っていました。母ゾウが処分されると聞いたミリーとジョーが悲しんでいる時、ホルトは、2人の子どもにどうやって接したら良いか分からず、何もしていませんでした。彼は、ダンボに乗る空中曲芸師のコレットに「アニー(母親)ならどう言えばいいか分かっただろに。おれは口下手だから」とぼやきます。すると、コレットは「2人とも完璧な父親を必要としているわけじゃないのよ。ただ、自分たちを信じてほしいだけ」と諭します。彼は「そんな簡単なことか!?」とふに落ちます。彼は、子どもたちに「自分が好きなものを好きになれ」「自分みたいに考えろ」という自分のやり方を押し付けていたことに気付くのです。そして、もっと純粋に子どもたちの言葉に耳を傾け、必要な時にそばにいてあげたいと思うようになります。1つ目のテーマは、相手の幸せを願うつながりです(信頼関係)。それは、ホルトとミリーとジョーの親子愛、ホルトとコレットの友情、さらにはミリーとジョーがダンボをサーカスファミリーの一員として大切にする家族愛として描かれています。一方、ドリームランドの社長であるヴァンデヴァーは、ミリーから「ダンボに幸せになってほしくないの?」と聞かれて、「私が幸せにしたいのは観客だ」と答えています。彼は、「ダンボは母ゾウと一緒にいる限り、母ゾウの言う通りにするだろう。動物の調教では、調教師の言うことだけを聞くように親から放すのが第一原則だ 」「動物には私の言うことだけを聞いてもらいたい」という理由で、母ゾウを処分しようとします。また、彼の恋人でもあるコレットがいざダンボに乗って飛ぼうとした時、彼は、ショーを魅力的にするとの理由で、安全ネットを撤去させてしまいます。さらに、一度雇い入れたサーカスファミリーの団員たちを、邪魔に感じるとすぐに解雇し、使い捨てにしてしまいます。彼は、損得勘定という結果を重視するあまりに、相手とのつながりというプロセスを軽視する悪役として描かれています。(2)不完全さという違いにこそある強み ―リフレーミングダンボは、初舞台で巨大な耳があらわになった時、観客から「偽物だ」とブーイングをされてしまいます。ゾウらしくない、本物ではないと思われたのでした。このような不完全さは、戦地で片腕を失ったホルト、インフルエンザで母親を失ったミリーとジョー、もともと低身長の団長、そして何かしらの「普通」ではないほかの団員たちも当てはまります。彼らは、社会の多数派が持っている価値観(主流秩序)からすると、「変わり者」「はぐれ者」「よそ者」になってしまうでしょう。しかし、彼らは孤立せず、ファミリーとしてつながって、その違いを生かしています。ダンボの奇形の耳は、ミリーとジョーのダンボの幸せを願う気持ちによって、空を飛ぶための羽という個性として発揮され、観客を楽しませるようになります。2つ目のテーマは、不完全さという違いにこそある強みです(リフレーミング)。相手とのつながりによって、不完全であるという弱みを強みに変えられることが描かれています。一方、ゾウの飼育担当であるルーファスは、ゾウたちを従わせるために、殴ったり暴言を吐いたりして、おびえさせていました。彼は、新しくダンボの飼育担当になった片腕のホルトに「何かが足りないんじゃないか?」と嫌みを言い、優位に立とうとします。ルーファスは、ダンボを見て、団長に「おめでとう。このドアホ!わざわざ怪物の赤ん坊を買ったわけだ」と皮肉を言います。最後は、暴れてしまったダンボの母ゾウをさらに挑発して、倒れたサーカス小屋の下敷きになります。彼は、相手の弱みにつけ込むあまりに、そのしっぺ返しで破滅する悪役として描かれています。(3)心のとらわれからの独り立ち ―自己成長ダンボが母ゾウと離れ離れになった時、ミリーは亡き母親の形見の鍵のネックレスをダンボに見せて、「私の母さんがくれたのよ。『いつか鍵のかかったドアに閉じ込められたような気がした時は、ドアを思い浮かべてこれを回すのよ』って」と言います。彼女は、鍵のネックレスに頼って日々の生活を送っていました。その後、ドリームランドの火事でミリーたちが火に包まれた時、ミリーはダンボの目の前で鍵のネックレスを炎の中に投げ込みます。そして「どんなドアだって、私は自分の力で開けられる。あんたもできるよ」とダンボに言います。ダンボはもともと鳥の羽根がひらひら舞うのを目の前に見て飛ぶことができました。ダンボも羽根に頼って飛んでいました。しかし、その時初めて、羽根がなくても飛べるようになったのです。そして、ラストシーンでは、ダンボは故郷のインドで、母ゾウと仲間のゾウを前にして、自由に飛び回ります。3つ目のテーマは、心のとらわれからの独り立ちです。(自己成長)。心のとらわれを自覚して、自分自身の強みを信じることで、自分で考えて行動をすることができるという心の自立が描かれています。一方、ヴァンデヴァーは、「いいか、偉大な男や伝説の男は皆、家族を捨てねばならない」「歴史に名を残す人物になるには、ほかの連中と群れてはいかん。一人で立つんだ」と言い放っています。彼の心のとらわれが表現されています。そして、彼は、相手が相手自身で考えて行動すると、自分の思い通りに相手をコントロールできなくなると恐れてもいます。最後は、思い通りにいかない腹立たしさから、自暴自棄になり、ドリームランドを火事で失ってしまいます。彼は、自分の理想や結果にとらわれるあまりに、プレッシャーが過剰になり、相手だけでなく、自分自身も追い込んでしまい、破滅する悪役としても描かれています。 なぜ褒める?ダンボは飛びました。それでは、私たちが「飛ぶ」にはどうすれば良いでしょうか? それが、褒めることです。もともと、褒めるとは、人間関係(集団)において、望ましい言動を指摘することです。そして、褒める理由は、褒められる快感(社会的報酬)により、相手に望ましい言動を促すことです(正の強化因子による行動療法)。ただし、望ましい言動という結果を最優先にして褒めるとどうなるでしょうか? 相手をコントロールしがちになります。これは、先ほど紹介したヴァンデヴァーのやり方です。そうではありません。褒めることにおいて最優先にするのは、相手の存在をそのまま認めることです。そして、相手が幸せになるための成長を促すことです。その結果、望ましい言動がついてきます。これは、先ほど紹介したミリーとジョーのやり方です。つまり、優先順位は、まず「そのまま認める」、最後に「望ましい結果」です。その逆ではありません。さらに、褒めることで得られる副産物が3つあります。1つ目は、強みを指摘されることで、相手がそれを生かすことに意識を向けて乗り気になることです(ピグマリオン効果)。2つ目は、相手の強みをみつける視点が自分自身にも向き、自分も自分の強みに気付いて前向きになることです(プラス思考)。3つ目は、相手とのつながりが強まることで、お互いに相手が素晴らしいと思えるようになることです(魅力の互恵性)。 どう褒める? ―褒めるスキルそれでは、私たちが「飛ぶ」ために、具体的にどう褒めれば良いでしょうか?ここから、褒めるスキルを、3つのポイントに分けてご紹介しましょう。(1)何を褒める? ―褒めるポイントの観察ミリーはダンボが耳を使って飛べることを発見しました。彼女の観察力は鋭く、将来の夢はサーカスの団員ではなく科学者です。1つ目は、「何を褒める?」、つまり褒めるポイントを観察することです。大きく3つに分けてみましょう。a.会った瞬間の見た目1つ目は、会った瞬間の見た目です。手始めであり基本中の基本です。あいさつのように褒めましょう。そのために、まずその日の最初に会った瞬間、表情、服装、声、動きなどに細かく着目します。たとえば、「元気な笑顔。こっちも元気になる」「良い色のシャツ。部屋が明るくなる」「今日もテキパキしてるね」などです。たとえ望んでいない言動でも「そう来るか~」「なるほど」と受け止めて、褒めている雰囲気を出すこともできます。褒めること自体が目的なので、「いいよ、いいよ~」「さすがだわ」と独り言のようにつぶやきながら相手の後ろを素通りします。これは「つぶやき褒め」「感心褒め」と言えます。b.これまでの成果2つ目は、これまでの成果です。これは、相手へのねぎらいや感謝などの褒める点をあらかじめ会う前から頭の中にスタンバイさせておき、会った瞬間のたびに出していくことです。「褒めの引き出し」と言えます。たとえば、「昨日はありがとね。○○してくれて」などの通常の内容から、「エレベータのドアを閉めずに待っていてくれたのね」などの些細な内容までです。また、「あなたは○○だ」という直接的で断定的な言い回し(あなたメッセージ)ではなく、「あなたが○○で私はうれしい」という間接的で情緒的な言い回し(私メッセージ)をして、最後は「ありがとう」で締めます。これは「感謝褒め」と言えます。c.これからの期待3つ目は、これからの期待です。これは、信頼や結束の確認です。これも「褒めの引き出し」に用意できます。とくに、これまでの成果として伝えられることがない場合は、これからの期待に重点を置くことができます。たとえば、「あなたがいてくれると盛り上がりそう」「あなたがいると助かる」「頼りにしている」などです。これは「期待褒め」と言えます。このように、ポイントは無条件に褒めることです。ところで、そもそも相手に褒めることがないと困っている人はいますでしょうか? そんなことはないです。物事には、表と裏の両面があります。一見褒められないと思っていたことも、裏を返せば、褒められることに変えることができます。発想の転換です(リフレーミング)。たとえば、相手が「私、気にし過ぎるんです」と相談しに来た場合です。よくある相談事です。その時は、何を気にし過ぎるかを掘り下げて、最後は「だからこそ、今の仕事に向いている」「だって、観察力が鋭いってことだから」と断定します。この「だからこそ」は、物事のプラス面とマイナス面を逆転させるつなぎの言葉の力を持っています。そのほかの例は、表1をご参照ください。なぜ褒める?(2)誰を褒める? ―相手のタイプの分析ヴァンデヴァーは、団長にサーカスの巡業が落ち目であることを指摘します。そして、団長にドリームランドの共同所有者になることで、未来が明るくなると説きます。ヴァンデヴァーは、いぶかしがる団長に、具体的なビジョンを示して、理性的に褒めています。結果的に、ヴァンデヴァーは団員も含めてサーカス団を丸ごと買収し、ダンボを手に入れます。ホルトは、片腕であることで卑屈になり、サーカスを見に来た子どもたちが怖がるのではないかと思い悩んでいました。そんなホルトの思いをくんで、ヴァンデヴァーは、「片腕になった戦争の英雄の馬乗り」を描いた垂れ幕をつくり、ドリームランドで馬乗りショーをする提案をします。もともと馬乗りであるホルトのくすぶっていたプライドをくすぐります。片腕は怖いネガティブものではなく、「英雄」の証というポジティブな意味付けをしたのです。これは、ホルトには思い付かなかった発想の転換です。それをわざわざ垂れ幕まで作って、ひとひねりして褒めています。結果的に、ヴァンデヴァーは、ダンボの飛ばし方を聞き出します。彼は、相手がどんな人物かよく分析し、相手に合わせた褒め方をしています。2つ目は、「誰を褒める?」、つまり相手のタイプを分析することです。相手によっては、褒めていてもあまり効果がなかったり、逆効果になっていることがあります。その原因は、相手のタイプを見抜いておらず、ほかの人と同じように褒めるからです。相手のタイプを分析して、こちらが褒め方を変えることが必要です。ここから、相手のタイプを4つに分けてみましょう。a.過剰適応タイプ1つ目は、過剰適応タイプです。このタイプは協力的です。よって、それをこちらも率直に受け止め、感情的にそのまま褒めることが効果的です。たとえば、「何か好きだわ」「理由はないけど心を許せちゃう」などです。褒めるのが簡単な相手とも言えます。b.不適応タイプ2つ目は、不適応タイプです。このタイプは、その集団の中での役割意識や所属意識(集団アイデンティティ)が不確かなため(アイデンティティ拡散)、手ごわいです。「だまされないぞ」とひねくれている場合もあります。よって、感情的にそのまま褒めても素直に受け止めてくれない可能性があります。よって、理性的に理由付けをして褒めることが効果的です。たとえば、「いや、だってね。前にクライアントさんに○○って言ってるのをたまたま聞いて感心したんだから」とのエピソードを紹介します。また、「前回より○○の点が良くなったから」と過去との比較をすることです。また、集団の役割意識をこちらがお膳立てして、ヒーローに仕立て上げるのも効果的です。たとえば、「あなただからできる」「あなたにしかできない」「あなたにぴったりの仕事」「○○の仕事と言えばあなたね」などです。さらには、「あなたは○○を頑張っている」「できないわけがない」と決めつけるワザもあります。これは、「レッテル褒め」(ピグマリオン効果)と言えます。そして、最終的には「あなたが必要」という結論に持っていけます。c.受け身タイプ3つ目は、受け身タイプです。このタイプは、何をして良いかよく分かっていないことが多いです。よって、具体的にピンポイントで褒めることが効果的です。たとえば、「あなたの○○はすごい」と限定することです。すると、その点をもっと続けようと動機付けされます。逆に、「あなたはすごい」と全肯定して伝えてしまうと、受け身のやり方自体が肯定されたと思い込み、積極的にやろうとする努力を怠るため、注意が必要です。d.積極的タイプ4つ目は、積極的タイプです。このタイプは、すでに本人なりに考えて行動しています。よって、その考えを汲み取った上で、あえてひとひねりして間接的に褒めることが効果的です。たとえば、「どうやって思い付いたの?」「うまくいく秘訣を教えて?」と質問をすることです。これは、「質問褒め」(暗示的インタビュー法)と言えます。また、「○○さん(上司)がしっかりしてるって感心してたよ」「○○さん(取引先)が気遣いが行き届いてるって話してたの小耳に挟んだよ」とその人が尊敬している人や権威的な人に登場してもらい、その人の言葉を借りて褒めることです。これは、「権威褒め」と言えます。さらに、「あなたのやり方を後輩が学びたいと言っている」「○○さん流を新人に広めてくれるといいな」「あなたの言うことは新人に響く」などのように、次世代への影響力をほのめかすことです。これらは、より多くの人に評価されていることが伝わり、こちらが単独で褒めるよりも一層の社会的報酬の効果が高まります。「あなたの後輩はしっかりしてるわ。あなたは教えるのがうまいのね」「息子さん礼儀正しいわね」などのように、相手の所属や家族を褒めることも、所属意識(集団アイデンティティ)や子ども自慢(トロフィーキッズ現象)の視点から効果があります。「あなたが本気になったら、患者さんの人気は独り占めね」「あなたはトップまで上り詰める勢いあるわ」というもしも話(仮定法)も、先ほどの決めつけワザ(ピグマリオン効果)に通じて、効果があります。これは、「仮定褒め」と言えます。以上のタイプをグラフ1にまとめてみましょう。グラフの横軸は、周りに合わせ過ぎる過剰適応タイプか、周りに合わせにくい不適応タイプかを示しています。縦軸は、自分なりの考えを持つ積極的タイプか、自分なりの考えを持たない受け身タイプかを示しています。真ん中は、癖がない平均的な普通タイプになります。すると、右上は過剰適応で積極的な優等生タイプ(ヒーロータイプ)、左上は不適応で積極的なヤンキータイプ(スケープゴートタイプ)、右下は過剰適応で受け身なお調子者タイプ(ピエロタイプ)、左下は不適応で受け身なひきこもりタイプ(ロストチャイルドタイプ)にそれぞれ分けられます。ここで誤解がないようにしたいのは、お調子者タイプは、積極的に思われがちですが、あくまでそれは笑いや周りへのウケに対してです。逆に、周りが見ていなければサボり癖が出てきます。つまり、仕事に対しては受け身であると言えます。 (3)あえて褒めない? ―褒めない状況の調整サーカス団の団長は、大人数の団員たちを取りまとめるため、調子の良いことを言いつつ、時に彼らに厳しく接し、バランスを取っています。3つ目は、「あえて褒めない?」、つまり褒めない状況を調整することです。あえて褒めない状況をつくることによって褒めることを最大限に高めるという高度なスキルになります。ただし、団長と団員たちのように、信頼関係がもともとあることが大前提です。ここから、褒めない状況を3つに分けてみましょう。a.褒める前後の状況1つ目は、褒める前後の状況であえて褒めないことです。たとえば、褒める前に不愛想になったり不機嫌になったりして、あえて冷たい態度をとり、相手を不安にさせることです。そして、その直後に褒めることです。また、「あなたの時間にルーズなのは困るけど、仕事はきっちりするのよね」「覚えるのに時間はかかるけど、いったん覚えると絶対に忘れないよね」と良い点と悪い点のコントラストを付けることです(両面提示)。そうすることで、その褒めの部分のインパクトを大きくします。逆に、褒めた後に「褒め過ぎたよ。今のは忘れて」とあえてつっけんどんにすることです。人間は、忘れようと思うと逆に忘れられなくなるという心理(禁断的思考)を利用します。これは、「ツンデレ褒め」と言えます。b.気まぐれの状況2つ目は、何回かに1回の気まぐれの状況であえて褒めないことです。大きく2つの理由があります。1つは、褒められる時に褒められないことがあると褒められたいという気持ちがより高まるからです(変率強化)。この起源は、原始の時代、狩猟をしている私たちは獲物を惜しくも逃した場合にもうちょっと頑張ってみようという気持ちを高めたことです。そして、そういう遺伝子を持つ種が、獲物を仕留めて、より生き残りました(ギャンブル脳)。それが、現在の私たちです。もう1つは、正確に褒めないことで見くびられなくなるからです。逆に言えば、正確に褒めてしまうと、残念ながら見くびられやすくなります。分かりやすく言えば、それはロボットだからです。もちろん、相手とのつながりによって、見くびられるということがないようにするのが一番良いです。しかし、相手も人間です。つながりはありつつも、見くびる人はいます。時々、虫の居所の悪いフリをしてでも、「精巧なロボット」ではなく「生身の人間」であると印象付けるのも効果的であるということです。これは、「気まぐれ褒め」「ギャンブル褒め」と言えます。c.誰かが代わりに褒める状況3つ目は、誰かが代わりに褒める状況であえて褒めないことです。たとえば、同僚や友人などの信頼できる人に、「○○さん(自分)が褒めてた」と言わせます。すると、褒められたことが集団に広まっていることをほのめかすことができて、本人の社会的報酬がより満たされるからです(ウィンザー効果)。これは「三角褒め」と言えます。恋愛における三角関係の「三角」が語源です。褒めるとは?「何を?」「誰を?」「あえて褒めない?」というポイントを通して、褒めるスキルをご紹介しました。ここから分かることは、うまく褒めることができるかどうかは、相手の問題ではなく、自分の問題であることに気付きます。つまり、褒めるとは、相手に褒めることがあり、なおかつこっちが褒めたい時に褒めるのではないです。たとえ相手に褒めることがないと最初に思ったとしても、相手の存在をそのまま認めることで、褒めることを見いだしていくことです。その必要や責任は自分にあると自覚することです。このように、褒めることの意味をよく理解したとき、ダンボとは、まさに人間性の本質のシンボルであることに私たちは気付かされます。ダンボのように、私たちも、誰かとのつながりという「心の燃料」をまず燃やし続けることで、不完全であるという弱みを強みに向き変える「心の操縦桿」を働かせ、心のとらわれから解放されて、より自由に「飛ぶ」ことができるのではないでしょうか? ■関連記事(外部サイト含む)2019年サンプルスライド「どう褒める?【褒めるスキル】」神様からひと言【なぜクレームするの?どう応じれば良いの?(断るスキル)】ブル【どう頼む?どう分かってもらう?】謝罪の王様【どう謝る?なぜ許す?】Part 1東京タラレバ娘【ブリーフセラピーとは?】クレヨンしんちゃん【ユーモアのセンス】Part 1逃げるは恥だが役に立つ【アサーション】1)ディズニーシネストーリー「ダンボ」:カリ・サザーランド、講談社、20192)ネガポ辞典:ネガポ辞典制作委員会、主婦の友社、20123)すごい!ホメ方:内藤誼人、廣済堂文庫、20074)上司のちょっとした言い回し:吉田幸弘、ダイヤモンド社、2013

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加熱式タバコ学の教科書【Dr.倉原の“俺の本棚”】第17回

【第17回】加熱式タバコ学の教科書タバコ・禁煙の世界で有名な田淵 貴大先生の書籍です。外来で「加熱式タバコに変えたほうがいいですか?」という質問をもらうことが多いと思いますが、加熱式タバコの概要や有害性についてイマイチよくわかっていない人は、ぜひこの本を読んでください。『新型タバコの本当のリスク アイコス、グロー、プルーム・テックの科学』田淵 貴大/著. 内外出版社. 2019本書では加熱式タバコと電子タバコを合わせて“新型タバコ”と記載していますが、この書評ではわかりやすく“加熱式タバコ”に統一します。加熱式タバコは、アイコス、プルーム、グローの3ブランドが国内で販売されています。この本のツカミがうまいなと思ったのは、最初のほうで「アメトーーク!」の話を入れてきたことです。日本で加熱式タバコが爆発的にヒットしたのは、2016年4月の「アメトーーク!」で放送された、「アイコス芸人」がきっかけです。田淵先生はこの「アメトーーク!」効果についても論文にまとめていらっしゃいます1)。あ、そういうのも論文にできるんだ!と目からウロコでした。紙巻きタバコから出る有害物質と加熱式タバコから出る有害物質を、研究ごとにわかりやすく表にまとめて掲載して、どの成分が多い・少ないという議論にまで踏み込んでいるうえ、その研究がどういう助成を受けたものか、利益相反はないか、そういうところまで考察されています。そもそも、タバコから出てくる物質に安全なレベルなんてないので、紙巻きタバコであろうと加熱式タバコであろうと、吸わないのが一番体に良いわけです。しかしながら、禁煙に向けてのステップダウン・緩衝材として加熱式タバコが使用されているプライマリケアの現状に、筆者は警鐘を鳴らしておられます。私もこれには至極同意で、「紙巻きタバコよりはマシだから」という理由で加熱式タバコを勧めるのは間違いだと思っています。ただ、サイエンティフィックな観点からは、紙巻きタバコと加熱式タバコのどちらかを吸わないといけないのならば、後者のほうが幾分マシであろうという意見も私は持っています。「どちらも吸わないという選択肢が“ない”と仮定した場合、あなたならどちらを選ぶか」という究極の命題は残ったままです。というわけで、Pros/Consの両立場から読んでも、非常に勉強になる本でした。「タバコ学なんて学びたくない」と思う人も多いでしょうが、今の時代、加熱式タバコについてどこかで勉強しなければ、外来なんてやっていけませんぜ。『新型タバコの本当のリスク アイコス、グロー、プルーム・テックの科学』田淵 貴大/著出版社名内外出版社定価本体2,200円+税サイズB6判刊行年2019年1)Tabuchi T, et al. Tob Control. 2018;27:e25-e33.

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第38回 初めて「自分の患者だ」と思った日【週刊・川添ラヂオ】

動画解説薬剤師にはそれぞれに忘れられない患者さんがいるもの。今回は心に残る患者さんシリーズとして、1996年の病院薬剤師時代に川添先生が「自分の患者だ」と初めて認識し、その後の人生をも大きく変えた80代女性のエピソードをお話しします。皆さんの心に残るエピソードもぜひ番組にお寄せください!

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進行胆道がん、nab-パクリタキセルの上乗せで生存延長/JAMA Oncol

 進行胆道がんの生存期間改善に有望な治療法が示唆された。現在、進行胆道がんに対する標準治療はゲムシタビン+シスプラチンであるが、無増悪生存期間(PFS)中央値は8.0ヵ月、全生存期間(OS)は11.7ヵ月である。米国・アリゾナ大学がんセンターのRachna T. Shroff氏らは、ゲムシタビン+シスプラチンへのnab-パクリタキセルの上乗せ効果について検討し、nab-パクリタキセル+ゲムシタビン+シスプラチン併用療法により、ヒストリカルコントロール(ゲムシタビン+シスプラチン)の報告と比較し、PFSおよびOSが改善したことを報告した。著者は「今回の結果は、第III相の無作為化臨床試験で検証されることになるだろう」とまとめている。JAMA Oncology誌オンライン版2019年4月18日号掲載の報告。 研究グループは、ゲムシタビン+シスプラチンへのnab-パクリタキセル上乗せが進行胆道がん患者のPFSを改善するかどうかを評価する目的で、テキサス大学MDアンダーソンがんセンターおよびアリゾナ州フェニックスのメイヨー・クリニックにて、単群非盲検第II相臨床試験を実施した。 2015年4月14日~2017年4月24日の期間に進行胆道がん患者62例が登録され、ゲムシタビン(1,000mg/m2)、シスプラチン(25mg/m2)およびnab-パクリタキセル(125mg/m2)を3週間間隔で1日目と8日目に投与された。最初に登録された32例に血液学的有害事象が認められたため、残りの患者では用量をそれぞれ800mg/m2、25mg/m2および100mg/m2とした。 主要評価項目は、intention-to-treat集団における治験担当医師の評価によるPFSである。 主な結果は以下のとおり。・治療を開始した60例の患者背景は、平均年齢58.4歳、肝内胆管がんが38例(63%)、肝外胆管がんが9例(15%)、胆嚢がんが13例(22%)で、47例(78%)が転移を有する症例、13例(22%)が局所進行例であった。・追跡期間中央値12.2ヵ月において、PFS中央値は11.8ヵ月であった。・部分奏効率は45%、病勢コントロール率は84%、OS中央値は19.2ヵ月(95%CI:13.2~評価不能)であった。・安全性解析集団(57例)において、治療サイクル数中央値は6であり、26例(46%)では試験期間を通じて開始用量が維持された。・Grade3以上の有害事象の発現率は58%であった。9例(16%)が有害事象のために試験中止となった。最も発現率が高かったGrade3以上の有害事象は好中球減少症(19/57例、33%)であった。・事後解析の結果、開始用量、胆道がんの種類または疾患状態と有効性との間に有意な関連は認められなかった。また、忍容性は減量例で改善した。

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睡眠時間と青年期うつ病との関連

 青年期の睡眠時間とうつ病との関連について、再現性の懸念が高まっていることを考慮し、米国・ミネソタ大学のA. T. Berger氏らは、青年期の睡眠と精神的ウェルビーイングとの関連を新たなデータセットを用いて、これまでの分析を概念的に再現した。Sleep Health誌2019年4月号の報告。 START研究のベースラインデータを用いて、以前の分析(Sleep Health, June 2017)を概念的に再現した。START研究は、高校の始業時間を遅らせた際、青年期の体重変化に対する睡眠時間の影響を自然実験で評価した縦断的研究である。STARTとそれ以前の研究において、学校がある日の就寝、起床時間、6項目のうつ病サブスケールアンケートを学校で自己報告により回答してもらった。睡眠変数(睡眠時間、起床時間、就寝時間)と一連のアウトカムとの関連性および95%信頼区間(CI)を、ロジスティック回帰モデルを用いて算出した。 主な結果は以下のとおり。・両分析において、睡眠時間が長いほど、抑うつ気分の6つの指標すべてのオッズ比が低くかった(p<0.0001)。・START研究における6つの睡眠時間の推定値のうち5つ、および起床時間の6つの推定値のうち4つは、以前の分析の95%CI内に入っていた。・しかし、起床時間とアウトカムとの関連は、2つの研究の分析で異なっていた。 著者らは「本調査結果は、睡眠時間の短さとうつ病との関連を示唆するエビデンスを強く裏付けた。青年期の睡眠時間が短くなっていることや、学校のスケジュールが睡眠に及ぼす潜在的な影響を考慮すると、この問題は学区内での注目に値するであろう」としている。

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急性期脳梗塞の血栓溶解療法、発症後9時間まで有効?/NEJM

 救済可能な脳組織を有する急性期脳梗塞患者の治療において、発症後4.5~9時間または脳梗塞の症状を呈して起床した場合のアルテプラーゼ投与による血栓溶解療法は、プラセボと比較して神経障害がない/軽度(修正Rankinスケールスコアが0/1)の患者の割合が有意に高いことが、オーストラリア・メルボルン大学のHenry Ma氏らが行ったEXTEND試験で示された。研究の成果は、NEJM誌2019年5月9日号に掲載された。急性期脳梗塞に対する静脈内血栓溶解療法の開始時期は、一般に発症後4.5時間以内に限られる。一方、画像所見で、脳組織の虚血がみられるが梗塞は認めない患者では、治療が可能な時間を延長できる可能性が示唆されている。低灌流だが救済可能な脳領域を有する患者が対象 本研究は、研究者主導の多施設共同無作為化プラセボ対照第III相試験であり、2010年8月~2018年6月の期間に、オーストラリア16施設、ニュージーランド1施設、台湾10施設、フィンランド1施設で患者登録が行われた(オーストラリア国立保健医療研究審議会などの助成による)。 対象は、18歳以上、登録前の身体機能が修正Rankinスケールスコア(0[症状なし]~6点[死亡])<2点、脳卒中の重症度はNIH脳卒中スケール(NIHSS、0~42点、点数が高いほど重症度が高い)4~26点であり、自動解析灌流画像で低灌流だが救済可能な脳の領域が認められる脳梗塞患者であった。 被験者は、脳梗塞発症後4.5~9時間、または起床時に脳梗塞の症状がみられる場合(睡眠の中央時間から9時間以内)に、アルテプラーゼ(0.9mg/kg体重[最大90mg]、静脈内投与)群、またはプラセボを投与する群に無作為に割り付けられた。 主要アウトカムは、90日時の修正Rankinスケールスコアが0または1であることとした。主要アウトカムのリスク比は、ベースラインの年齢と臨床的重症度で補正した。 予定された310例のうち225例が登録された時点で、先行する試験(WAKE-UP試験)により肯定的な結果が報告され、均衡が失われたため、2018年6月6日に本試験は中止された。症候性脳出血の頻度は血栓溶解療法のほうが高い 225例のうち、113例(平均年齢73.7±11.7歳、男性52.2%)が血栓溶解療法であるアルテプラーゼ群に、112例(71.0±12.7歳、58.9%)はプラセボ群に割り付けられた。初回臨床評価時のNIHSSスコア中央値は、アルテプラーゼ群が12.0点(IQR:8.0~17.0)、プラセボ群は10.0点(6.0~16.5)だった。 脳梗塞発症から無作為化までの時間は、全体の25%が治療可能時間の後期(発症後>6.0~9.0時間)で、10%が早期(発症後>4.5~6.0時間)であり、残りの65%は発症時間が不明で起床時に症状がみられた患者であった。 主要アウトカムは、血栓溶解療法のアルテプラーゼ群が40例(35.4%)で達成され、プラセボ群の33例(29.5%)に比べ有意に良好であった(補正後リスク比:1.44、95%信頼区間[CI]:1.01~2.06、p=0.04)。補正前リスク比に有意差はなかった(1.2、0.82~1.76、p=0.35)。 副次アウトカムである修正Rankinスケールのスコア分布の順序尺度に関する分析では、90日時の身体機能の改善(修正Rankinスケールスコアで1点以上の改善)において両群間に有意な差はみられなかった(共通オッズ比:1.55、95%CI:0.96~2.49)。24時間時の再灌流や再疎通、早期の主要な神経学的改善(NIHSSスコアが8点以上低下または0/1点)は、アルテプラーゼ群のほうが良好だった。 症候性脳出血は、血栓溶解療法のアルテプラーゼ群で7例(6.2%)に認められ、プラセボ群の1例(0.9%)に比べ多かった(補正後リスク比:7.22、95%CI:0.97~53.5、p=0.05)。 著者は、「本試験は早期に終了となり、副次アウトカムの身体機能の改善に関して両群間の有意差を示すことができなかったため、限定的な結論にとどまる。この治療可能時間における血栓溶解療法については、さらなる試験が求められる」としている。

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貧血/鉄欠乏の心臓手術患者、術前日の薬物治療で輸血量減少/Lancet

 鉄欠乏または貧血がみられる待機的心臓手術患者では、手術前日の鉄/エリスロポエチンアルファ/ビタミンB12/葉酸の併用投与により、周術期の赤血球および同種血製剤の輸血量が減少することが、スイス・チューリッヒ大学のDonat R. Spahn氏らの検討で示された。研究の詳細は、Lancet誌オンライン版2019年4月25日号に掲載された。貧血は、心臓手術が予定されている患者で高頻度に認められ、赤血球輸血量の増加や、死亡を含む有害な臨床アウトカムと関連する。また、鉄欠乏は貧血の最も重要な要因であり、鉄はエネルギーの産生や、心筋機能などの効率的な臓器機能に関与する多くの過程で中心的な役割を担っている。そのため、貧血と関連がない場合であっても、術前の鉄欠乏の治療を推奨する専門家もいるという。術前の超短期間の薬物併用治療による、輸血量削減効果を評価 本研究は、術前の超短期間の薬物併用投与による、周術期の赤血球輸血量の削減と、アウトカムの改善の評価を目的に、単施設(チューリッヒ大学病院臨床試験センター)で実施された二重盲検無作為化プラセボ対照並行群間比較試験であり、2014年1月9日~2017年7月19日に患者登録が行われた(Vifor Pharmaなどの助成による)。 対象は、貧血(ヘモグロビン濃度が、女性は<120g/L、男性は<130g/L)または鉄欠乏(フェリチン<100mcg/L、貧血はない)がみられ、待機的心臓手術(冠動脈バイパス術[CABG]、心臓弁手術、CABG+心臓弁手術)が予定されている患者であった。 被験者は、手術の前日(手術が次週の月曜日の場合は金曜日)に、カルボキシマルトース第二鉄(20mg/kg、30分で静脈内注入)+エリスロポエチンアルファ(40,000U、皮下投与)+ビタミンB12(1mg、皮下投与)+葉酸(5mg、経口投与)を投与する群(併用治療群)またはプラセボ群に無作為に割り付けられた。 主要アウトカムは、手術施行日から7日間の赤血球輸血とした。赤血球輸血コストは低いが、総コストは高い 修正intention-to-treat集団は484例であった。243例(平均年齢69歳[SD 11]、女性35%)が併用治療群に、241例(67歳[12]、34%)はプラセボ群に割り付けられた。 手術日から7日間の赤血球輸血中央値は、併用治療群では0単位(IQR:0~2)であり、プラセボ群の1単位(0~3)に比べ、有意に低かった(オッズ比[OR]:0.70、95%信頼区間[CI]:0.50~0.98、p=0.036)。また、術後90日までの赤血球輸血も、併用治療群で有意に少なかった(p=0.018)。 輸血された赤血球の単位が少なかったにもかかわらず、併用治療群はプラセボ群に比べ、術後1、3、5日のヘモグロビン濃度が高く(p=0.001)、網赤血球数が多く(p<0.001)、網赤血球ヘモグロビン含量が高かった(p<0.001)。 新鮮凍結血漿および血小板輸血量は、術後7日および90日のいずれにおいても両群で同等であったが、同種血製剤の輸血量は術後7日(0単位[IQR:0~2]vs.1単位[0~3]、p=0.038)および90日(0[0~2]vs.1[0~3]、p=0.019)のいずれにおいても併用治療群で有意に少なかった。 術後90日までの赤血球輸血の費用は、併用治療群で有意に安価であったが(中央値0スイスフラン[CHF、IQR:0~425]/平均値370 CHF[SD 674]vs.231 CHF[0~638]/480 CHF[704]、p=0.018)、薬剤費を含む総費用は、併用治療群で有意に高額であった(682 CHF[682~1,107]/1,052 CHF[674]vs.213 CHF[0~638]/480 CHF[704]、p<0.001)。 副次アウトカムは、重篤な有害事象(併用治療群73例[30%]vs.プラセボ群79例[33%]、p=0.56)および術後90日までの死亡(18例[7%]vs.14例[6%]、p=0.58)を含め、そのほとんどで両群に有意差はみられなかった。 著者は、「待機的心臓手術を受ける患者では、ヘモグロビンと鉄のパラメータをルーチンに測定し、手術前日であっても貧血/鉄欠乏への併用薬物治療を考慮する必要がある。この点は、急性心イベントから数日以内に行われる待機的心臓手術の割合が増加している現状との関連で、とくに重要と考えられる」としている。

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エンドセリン受容体拮抗薬は糖尿病腎症の新しい治療アプローチとなるか?(解説:小川大輔氏)-1049

オリジナルニュースエンドセリン受容体拮抗薬の糖尿病性腎症への効果は?:SONAR試験/国際腎臓学会(2019/4/18掲載) 糖尿病腎症の治療において血糖のコントロールは基本であるが、同時に血圧や脂質、体重などを適切に管理することも重要である。そして早期の糖尿病腎症であれば多面的かつ厳格な管理により腎症の進展を抑制することが示されている。ただひとたび腎障害が進行すると、集約的な治療を行っても腎不全への進展を阻止することが難しい。 今年4月に開催された国際腎臓学会(ISN-WCN 2019)において、SGLT2阻害薬カナグリフロジンが顕性アルブミン尿を呈する糖尿病腎症患者の腎アウトカムを有意に改善するという結果(CREDENCE試験)が報告され注目を集めている。実はこの学会でもう1つ、糖尿病腎症に対する薬物療法の試験結果(SONAR試験)が発表された。この試験も顕性腎症患者を対象としており、エンドセリン受容体拮抗薬atrasentanの有効性と安全性が検討された。 この試験の特徴は、試験デザインが通常の二重盲検法ではなく、まず本試験の前に6週間atrasentanの投与を行い(著者らはこの期間を“enrichment period”と称している)、アルブミン尿が30%以上低下し、かつ体液貯留の認められなかった症例(“responders”)を選び出し、それから2群に分けて試験を開始している点である。 エンドセリン受容体拮抗薬はアルブミン尿減少効果や血圧低下作用と同時にナトリウム貯留作用がある。以前に糖尿病患者を対象とした別のエンドセリン受容体拮抗薬の試験で体液貯留により心不全が増加したため、その反省を踏まえ副作用を回避しつつ効果を最大限に発揮させるためにこれまでの臨床試験にはなかった試験デザインになっている。 中央値2.2年の観察期間で、主要評価項目の「クレアチニンの2倍化あるいは末期腎不全への移行」はプラセボ群と比較しatrasentan群で有意に抑制されたが、それに寄与したのはクレアチニンの2倍化であった。またatrasentan群で末期腎不全への移行や心血管イベントの抑制は認められなかった。懸念される有害事象の心不全はプラセボ群とatrasentan群とで有意差はなかったが、体液貯留と貧血はatrasentan群で有意な増加を認めた。 本試験前に6週間atrasentanを投与された症例の約35%が“non-responders”であった点を踏まえると、糖尿病腎症患者すべてがこの薬剤の適応とはならないだろう。もしエンドセリン受容体拮抗薬を糖尿病腎症患者に投与するならば、著者らが行ったように投与開始初期の蛋白尿の減少効果を確認し、継続か中止を判断するのが妥当と思われる。また継続投与する際には体液貯留の出現や貧血の進行に注意し、場合によっては利尿薬を追加・増量する必要があると考えられる。 エンドセリン受容体拮抗薬の効果が期待できる症例の選択方法や、適正な使用方法についてはさらに検証する余地があると思われるので、今後の検討に注目したい。

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スマホが銃撃から女性を守ったという論文【Dr. 倉原の“おどろき”医学論文】第139回

スマホが銃撃から女性を守ったという論文ぱくたそより使用ドラマかよ!というような、とても珍しい医学論文がありました。 Thabouillot O, et al.A Fortunate Story of an Unusual AK-47 Bullet Trajectory: Always Keep a Smartphone in Your Pocket.Prehosp Disaster Med. 2016;31:343-345.2015年11月13日のフランス、パリ。皆さんは何が起こったか記憶にありますでしょうか? そう、パリ同時多発テロ事件があった日です。ISIL(イスラム国、IS)の戦闘員とみられる複数のジハーディストのグループによる銃撃および爆発が同時多発的に発生し、死者130名、負傷者は300名以上に上ったテロ事件です。使用された銃は、AK-47。かの有名なカラシニコフが設計したもので、1949年にソ連軍が採用した自動小銃として知られています。この論文の主人公が銃撃を受けたのは、ハードロックバンドが演奏していたライブハウスでした。3人のテロリストが急襲し、AK-47を群衆に向かって乱射したのです。180cmの30歳だった男性は、愛する彼女を守るため※、彼女を抱きしめてテロリストに背を向けました。コイツだけは俺が守る! くぅ~、カッコイイ!※論文中には愛していたのかどうかは記載されていない。あくまで私の妄想である。彼の左臀部に銃弾が当たってしまい、男女もろとも地面に倒れ込みました。幸いにも2人の命に別状はありませんでしたが、彼は大腿部に派手な銃創を負ってしまいました。病院に到着し、彼はポケットに入っていたスマホを医師に見せました。スマホは弾丸で粉々になっていました。スマホがなければそのまま貫通して彼女に当たっていたのかもしれませんが、弾丸はスマホのおかげでリバウンドし、彼の大腿の筋肉内にとどまったのです。その後、彼は手術を受け、経過は良好だったようです。さてさて、それから2人はどうなったのか。残念ながら、この論文には書いていませんでした。いや、しかしコレは女性としては、ほれてまうやろー!これによく似た都市伝説として、「胸ポケットのジッポーが弾丸を止めた」というものがあります。第二次世界大戦中、ベルギー戦線に従軍していた米軍兵士がドイツ軍に狙撃されたものの、弾丸は胸ポケットに入れていたポケット版聖書を貫通し、ジッポーライターにヒット。弾丸はジッポーの所で停弾したというものです。こちらの真偽は不明です。

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尿酸値が低いと認知症リスクは増大するのか?~44年の追跡調査

 血清尿酸が減少すると抗酸化力が損なわれる可能性があるため、血清尿酸値が低いと認知症リスクが増大することが示唆されている。一方、血清尿酸値が高いと心血管リスクが増加し、認知症とくに血管性認知症のリスクが増大する恐れがある。今回、スウェーデン・ヨーテボリ大学のLieke E.J.M. Scheepers氏らによる集団ベースの研究で、アルツハイマー病や血管性認知症などの認知症のサブタイプにかかわらず、血清尿酸値が高いと認知症リスクが低いことが示された。Alzheimer's & Dementia誌オンライン版2019年5月2日号に掲載。高い尿酸値は認知症における低いリスクと関連 1968~69年に38~60歳の女性1,462人を44年(平均33.1年)にわたって追跡調査し、血清尿酸(1968〜69年および1992~94年に調査)と晩年の認知症リスクとの関連を調べた。 その結果、44年の追跡調査期間中、高い血清尿酸値(標準偏差76.5μmol/L当たり)は、認知症(n=320、ハザード比[HR]:0.81、信頼区間[CI]:0.72~0.91)、アルツハイマー病(n=152、HR:0.78、CI:0.66~0.91)、および血管性認知症(n=52、HR:0.66、CI:0.47~0.94)における低いリスクと関連していた。 今回の結果は、アルツハイマー病および血管性認知症といった認知症のサブタイプにかかわらず、認知症発症において血清尿酸が保護的役割を果たすという仮説を支持する。著者らは、「これは、痛風患者の認知症治療および高尿酸血症の治療目標に重要な意味を持つかもしれない」としている。

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