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地域ベースの高血圧スクリーニング、血圧を改善する?/BMJ

 地域ベースの高血圧スクリーニングと、血圧上昇が認められた人々に対する降圧治療と行動変容の勧奨は、長期的には地域レベルでの収縮期血圧に重要な影響を与えうることが示された。ドイツ・ハイデルベルク大学のSimiao Chen氏らが、中国全土の高齢者を対象としたコホート研究のデータを用いた解析結果を報告した。著者は、「このアプローチは、中国ならびに高血圧の診断と治療について大きなアンメットニーズを有する国々において、心血管疾患の高い負荷を解決するだろう」と述べている。中国やほかの中低所得国において、地域ベースの高血圧スクリーニングがその後の血圧にもたらす影響に関するエビデンスは不足していた。BMJ誌2019年7月11日号掲載の報告。高齢者約3,900例でスクリーニング介入前後の血圧を評価 研究グループは、地域密着型高血圧スクリーニングの血圧への影響を評価する目的で、中国人高齢者を対象とした長期健康長寿調査(Chinese Longitudinal Healthy Longevity Survey:CLHLS)の、2011~12年と2014年のデータを解析した。 本調査では、高血圧のスクリーニングで血圧上昇を認めた場合、治療と生活習慣(体重管理、禁煙、アルコールや塩分摂取の抑制、運動など)の改善を口頭で奨励した。 解析対象は、高血圧と診断されたことがない高齢者3,899例で、2011~12年と2014年の血圧について回帰不連続解析にて評価した。スクリーニングと指導により2年後の収縮期血圧が低下 スクリーニングの介入による収縮期血圧の変化量は、共変量のないモデルにおいて-6.3mmHg(95%信頼区間[CI]:-11.2~-1.3)、人口統計的・社会的・行動的な共変量で補正したモデルにおいて-8.3mmHg(95%CI:-13.6~-3.1)であった。拡張期血圧への影響は小さく、すべてのモデルで有意差は確認されなかった。 介入の影響を推定するため、代替関数を用い高血圧の閾値を変化させた場合でも、結果は類似していた。また、サブグループ解析でも結果は同じであった。 なお、著者は、65歳以上を対象としたこと、高血圧治療に関するデータを利用できていないことなどを研究の限界として挙げている。

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ICU患者のせん妄、家族の自由面会で減少せず/JAMA

 集中治療室(ICU)における家族の面会時間を自由にしても、制限した場合と比較してせん妄発生の有意な低下は確認されなかった。ブラジル・Hospital Moinhos de VentoのRegis Goulart Rosa氏らが、ICUにおける家族の面会がせん妄の発生に及ぼす影響を検証したクラスター・クロスオーバー無作為化臨床試験の結果を報告した。ICUにおける家族の面会時間を自由にする方針は、患者および家族中心のケアの重要なステップとして、米国クリティカルケア看護師協会(AACN)や米国集中治療医学会(SCCM)のガイドラインにより推奨されているが、その影響ははっきりしていなかった。JAMA誌2019年7月16日号掲載の報告。患者、家族、医師を組み込んだクラスター・クロスオーバー無作為化試験を実施 研究グループはブラジルの、面会時間が制限(1日4.5時間未満)されている成人ICU 36施設において、患者、家族および医師を対象としたクラスター・クロスオーバー無作為化臨床試験を実施した。 2017年4月~2018年6月の期間に参加者を募り、被験者を自由面会群(19施設、1日最長12時間、患者837例、家族652例、医師435例)または制限面会群(17施設、中央値1.5時間/日、患者848例、家族643例、医師391例)のいずれかに無作為化して、2018年7月まで追跡調査した。 主要評価項目は、ICU入室中のせん妄発生率で、Confusion Assessment Method for the Intensive Care Unit(CAM-ICU)を用いて評価した。副次評価項目は、患者のICU感染、家族の不安と抑うつ(Hospital Anxiety and Depression Scale:HADSで評価、範囲:0[良好]~21[最悪])、ICUスタッフのバーンアウト(燃え尽き症候群)(Maslach Burnout Inventoryで評価)などであった。せん妄発生率、家族の自由面会19%vs.制限面会20%で有意差なし 患者1,685例、家族1,295例、医師826例が登録され、患者1,685例全員(100%)(平均年齢58.5歳、女性47.2%)、家族1,060例(81.8%)(平均年齢45.2歳、女性70.3%)、医師737例(89.2%)(平均年齢35.5歳、女性72.9%)が試験を完遂した。 1日の平均面会時間は、家族の自由面会群で有意に長かった(4.8時間 vs.1.4時間、補正後群間差:3.4時間、95%信頼区間[CI]:2.8~3.9、p<0.001)。ICU入室中のせん妄発生率は、家族の自由面会群と制限面会群との間に有意差は認められなかった(18.9% vs.20.1%、補正後群間差:-1.7%、95%CI:-6.1%~2.7%、p=0.44)。 事前に定義した9つの副次評価項目のうち、ICU感染(3.7% vs.4.5%、補正後群間差:-0.8%、95%CI:-2.1%~1.0%、p=0.38)、スタッフのバーンアウト(22.0% vs.24.8%、補正後差:-3.8%、95%CI:-4.8%~12.5%、p=0.36)などを含む6つの項目でも、両群に有意差はなかった。家族に関しては、不安(スコア中央値:6.0 vs.7.0、補正後群間差:-1.6、95%CI:-2.3~-0.9、p<0.001)および抑うつ(スコア中央値:4.0 vs.5.0、補正後群間差:-1.2、95%CI:-2.0~-0.4、p=0.003)のいずれも、自由面会群が有意に良好であった。

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インバウンド感染症の対応に役立つサイトを公開~日本感染症学会

 2020年7月24日から東京オリンピック・パラリンピックが開催される。日本感染症学会では、海外からの持ち込み感染症への対応として、訪日外国人の受診患者の臨床症状から想起すべき感染症とその対応をコンパクトにまとめた「症状からアプローチするインバウンド感染症への対応~東京2020大会にむけて~-感染症クイック・リファレンス」を7月23日に学会ホームページに公開した。 わが国では訪日外国人が急増し、今後外国人労働者の増加も予想されるため、日本全国どこでも臨床医がインバウンド感染症に遭遇する可能性がある。東京オリンピック・パラリンピックの期間だけでなく、その終了後も臨床医にとって有用と思われる。インバウンド感染症の感染対策を提示 本サイトの特徴として以下の点が挙げられる。・患者を前にした状況で役立つ鑑別診断および関連情報を、迅速かつわかりやすく参照可能・発熱、呼吸器症状、下痢、発疹、急性神経症状などの主要症状から考えておくべき疾患に直接リンク・外来診療で、ベットサイド診察中に症状別のクイック・リファレンスが可能・国際的マスギャザリングに関連したワクチン、インバウンド感染症の感染対策を提示・感染症各論で重要な75疾患の概要がまとめられ、海外からの持ち込み感染症として忘れてはいけない疾患が参照可能 なお、この「感染症クイック・リファレンス」は「2020年東京オリンピック・パラリンピックに係る救急・災害医療体制を検討する学術連合体(AC2020)」の協賛事業として制作され、公益社団法人日本小児科学会、日本小児感染症学会の協力を受けている。また、AMED新興・再興感染症に対する革新的医薬品等開発推進研究事業「ウイルス性重症呼吸器感染症に係る診断・治療法の研究(代表:森島恒雄)」から一部助成を受けている。

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14年間追跡でもEVARの生存率に優位性なし(解説:中澤達氏)-1082

 OVER試験の最長14年間追跡で腹部大動脈瘤に対する待機的血管内治療(EVAR)は、従来の開腹手術と比較して周術期死亡率を低下させるが、4年以降の生存には差がないことが示された。EVAR-1試験、DREAM試験の長期追跡でも同様の結果であり、新しい知見は得られなかった。 破裂性腹部大動脈瘤に対する臨床的効果および費用対効果の無作為化試験「IMPROVE試験」でもほぼ同様で、3年では、EVAR群の死亡が開腹手術群よりも有意に少なかった。しかし、7年時点では、死亡率は両群とも約60%となった。3年時点ではEVARが開腹手術よりも生存期間を延長し、質調整生存年(QALY)の獲得が大きく、再手術率は同程度であり、コストは低く、費用対効果に優れていた。 これら4つの大規模臨床試験により、EVARは開腹手術と比較して、早期生存率は高く、QALYは大きい(おそらく定時手術でも予想される)、長期生存率に差はなく、再手術率は高く、コストは不明(医療制度に依存)、という結果に収束し確定した感がある。

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京アニの悲劇【Dr. 中島の 新・徒然草】(282)

二百八十二の段 京アニの悲劇2019年7月18日、京アニの愛称で知られる、京都アニメーション第1スタジオが放火されました。この火事で34人の方が死亡し、沢山の方が治療中とのことです。このニュースを伝える写真には、黒煙を上げて燃えている建物が写されていました。私が知っている京アニの作品といえば、何と言っても「涼宮ハルヒの憂鬱」です。定番の学園ものライトノベルではありますが、主人公の涼宮ハルヒと、ストーリーを語る男子高校生キョンのキャラが立っており、当時としては画期的なものでした。結果的に2000年代を代表するアニメになったといっても過言ではありません。ちょうどこの作品がアニメ化されたのが2006年、私自身が入退院を繰り返していた時でした。どこまでも明るく前向きなハルヒとキョンに、どれだけ励まされたことか。それだけに、今回の京アニの悲劇には心が痛みます。さて、今回の事件をちょっとだけ医療者の視点で振り返ってみたいと思います。おそらく、京都市内の多数の医療機関に負傷者が搬入されたことでしょう。治療の対象は、熱傷と一酸化炭素中毒になるわけですが、とくに重症感を掴みにくいのが一酸化炭素中毒です。私がこれまでに経験した一酸化炭素中毒の患者さんは、数名にすぎませんが、一見、軽症そうに見える人でも、マスクで高流量酸素吸入を行ったり、気管挿管して純酸素吸入を行ったり、といった治療が行われるのが常でした。一酸化炭素は、酸素の250倍もヘモグロビンに結合しやすいため、少しでも吸入すると、たちまち酸素欠乏になってしまうからです。このヘモグロビンに結合した一酸化炭素を、できるだけ早く酸素に置き換えるのが治療の要諦で、治療が遅れると、たとえ救命できたとしてもさまざまな後遺症が残ってしまいます。実際、後になって症状が悪化した症例もあり、一酸化炭素中毒の恐ろしさを思い知らされました。今回の事件で、日本アニメ界の至宝ともいうべき大勢の人達の命が絶たれたことは、気の毒でなりません。亡くなった方の御冥福と、治療中の方の一刻も早い回復をお祈りいたします。最後に1句京アニの 悲劇の前に 言葉なし

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第25回 対面での吸入指導がアドヒアランスに与える影響は予想以上に大きい【論文で探る服薬指導のエビデンス】

 気管支喘息やCOPD患者さんへの吸入指導は日常的にあるため、わかりやすい説明は薬剤師に求められる必須スキルの1つです。薬局で説明する旨の医師指示が処方箋に記載されているケースも少なくなく、私も新人のころはすべてのデバイスごとの手順や使用上のピットフォールを必死で覚えたものです。デモ用キット、リーフレット、ビデオなどの充実した資材が製薬会社から提供されていますので、患者さんにとって最も有用な説明手段を選択したいですよね。今回は、その参考となるリアルワールドデータ(実臨床で得られたデータ)の調査を紹介します。対面での実技指導を好む患者が83%REAL(Real-life Experience and Accuracy of inhaLer use)調査という、適切な吸入器の使用、吸入手技、吸入器の特性など、患者アドヒアランスへ影響すると考えられる23項目について電話で行われた調査があります1)。2016年1月4日~2月2日に調査が実施され、対象はブラジル、カナダ、フランス、ドイツ、イタリア、日本、オランダ、英国、米国の9ヵ国から抽出された軽度~重度のCOPD患者764例(平均年齢56±9.8歳)でした。使用吸入器の内訳は、ブリーズヘラー186例、エリプタ191例、ジェヌエア194例、レスピマット201例でした。自己申告のアドヒアランスは、66歳以上の患者と比較して65歳以下の患者では有意に低く、性別、疾患の重症度、診断からの経過時間では有意差はみられませんでした。手技の説明では、吸入器を用いた対面による指導(吸入デモ)が「とても役に立つ」と回答している割合が最も高く、吸入デモ83%>ビデオ58%>口頭による使用説明51%>リーフレット34%という結果でした。吸入デモの回数が多い患者ほどアドヒアランスが高く、さらに呼吸器科医自身による指導を受けている患者ではより良好でした。少なくとも過去2年間に医療者による吸入手技の確認を受けたことがないと回答した患者は29%で、手技の確認を受けた患者ではよりアドヒアランスが良好かつ全量を吸入できている自信がありました。なお、全量を吸入したという実感があったのは、ブリーズヘラーを用いた患者では93%、ジェヌエアでは84%、エリプタでは80%、レスピマットでは76%でした。吸入指導は、呼吸器科医(41.3%)、薬剤師(20.2%)、看護師(18.1%)、一般医(12.0%)、その他(8.4%)によって行われており、呼吸器科医は自ら患者を指導する割合が高かったのに対し、一般医はほかの医療者に委任する割合が高いという結果でした。製剤特性や用法に依存する部分もありますが、アドヒアランスを高めるポイントは、対面での吸入デモ、小まめな手技確認、とくに呼吸器科医による吸入指導、ということになると思います。患者が好む吸入器は簡単・シンプル治療満足度には、吸入指導の方法という観点とは別に、吸入器に対する好みの問題もあります。これに関しては、COPD患者、喘息患者の吸入器の好みに関するリアルワールドデータの調査があります2)。こちらは、欧州、米国、日本および中国で実施された呼吸器疾患プログラムから、喘息(12歳以上の患者)、COPD(気道閉塞が確認された40歳以上の患者)、喘息とCOPDのオーバーラップ(ACO)の7,300例を超える患者データが収集され、吸入維持療法の現在の治療法と吸入器の種類、医師の好み、患者が重要と考える吸入器の特性および満足度を変数として解析した研究です。よく処方されているのが、ドライパウダー式の吸入器(62.8~88.5%の患者)と加圧噴霧式定量吸入器(18.9~35.3%の患者)でした。ディスカス、エリプタ、タービュヘイラーなどに次いでエアゾール剤が多いというのはさほど違和感はないかと思います。吸入器の特性について重視する要素として、どの疾患においても「使い方がシンプルで簡単」ということが半数以上の患者で挙げられ、長持ちして壊れにくい、持ち運びが簡便、充填の必要がない、吸入のために息を吸い込む必要がない、毎回肺に同じ量の薬が届く、薬剤の残数がわかるなどの特性が続きます。最近の吸入器は工夫があるものも多いので、各製剤の特徴を把握して図にまとめておくと説明しやすいと思います。吸入器の種類も多様化していますので、うまく吸えないときはその原因を特定したり、改善策のアドバイスや適切な吸入器への変更を提案したりすることもあるでしょう。吸入アドヒアランスはCOPDや喘息の治療効果に直結するので、背景因子を理解して患者さんに共感しつつも、しっかりと対面で説明や提案ができるようにしておきたいものです。1)Price D, et al. Int J Chron Obstruct Pulmon Dis. 2018;13:695-702.2)Ding B, et al. Int J Chron Obstruct Pulmon Dis. 2018;13:927-936.

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TN乳がん1次治療でのアテゾリズマブ+nab-PTX、日本人サブ解析(IMpassion130)/日本臨床腫瘍学会

 局所進行/転移を有するトリプルネガティブ乳がん(TNBC)の1次治療におけるアテゾリズマブとnab-パクリタキセル(nab-PTX)併用療法が、日本人においても有用であることが示された。国際共同無作為化二重盲検第III相試験(IMpassion130)の日本人65例のサブグループ解析結果について、埼玉県立がんセンターの井上 賢一氏が、第17回日本臨床腫瘍学会学術集会(7月18~20日、京都)で発表した。 本試験では、局所進行または転移を有するTNBC患者を、アテゾリズマブ併用群(28日を1サイクルとして、アテゾリズマブ840mgを1日目と15日目に投与+nab-PTX 100mg/m2を1日目、8日目、15日目に投与)と非併用群(プラセボ+nab-PTX)に1:1に無作為化し、有効性と安全性を評価した。主要評価項目は、ITT解析集団およびPD-L1陽性患者における無増悪生存期間(PFS)、全生存期間(OS)、副次評価項目は、客観的奏効率(ORR)、奏効期間(DOR)、安全性などであった。 日本人サブグループにおける主な結果は以下のとおり。・全体集団902例(各群451例)のうち日本人症例は65例で、アテゾリズマブ併用群34例(うちPD-L1陽性12例)、非併用群31例(うちPD-L1陽性13例)であった。・PFS中央値は、ITT解析集団では併用群7.4ヵ月 vs.非併用群4.6ヵ月(ハザード比[HR]:0.47、95%信頼区間[CI]:0.25~0.90)、PD-L1陽性患者(25例)では10.8ヵ月 vs.3.8ヵ月(HR:0.04、95%CI:<0.01~0.35)であった。・OS中央値は、第2回中間解析(データカットオフ:2019年1月2日)において、ITT解析集団では21.1ヵ月 vs.21.8ヵ月(HR:0.66、95%CI:0.32~1.37)、PD-L1陽性患者では21.1ヵ月 vs.17.7ヵ月(HR:0.31、95%CI:0.08~1.19)であった。・ORRは、ITT解析集団では67.6% vs.51.6%、PD-L1陽性患者では75.0% vs.53.8%であった。・DORは、ITT解析集団では5.6ヵ月 vs.3.7ヵ月、PD-L1陽性患者では9.1ヵ月 vs.3.7ヵ月であった。・日本人集団における全Gradeの有害事象発現率は全体集団とほぼ同様であった。一方、日本人集団では全体集団に比べて、脱毛、末梢性感覚ニューロパチー、好中球数減少の発現率が高かった。免疫関連有害事象については日本人集団では検査値異常がほとんどであるが、肝炎の発現率が高かった(併用群20.6%、非併用群26.7%)。・日本人集団において治療中止に至った有害事象発現率は、併用群5.9%、非併用群0%で、投与量減少または中断に至った有害事象は併用群64.7%、非併用群56.7%であった。重篤な有害事象発現率は両群でほぼ同様であった。 この結果から井上氏は、「日本人集団におけるアテゾリズマブとnab-PTX併用の有効性・安全性が全体集団と一致しており、日本人TNBC患者における1次治療として臨床的に有用である」と結論した。

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抗凝固薬服用のまま可能な大腸ポリープ新治療法が有用~大阪国際がんセンター

 大阪国際がんセンター(大阪市中央区)の竹内洋司氏(消化管内科副部長)らの研究グループが、10mm未満の大腸ポリープに対し、電気を使わずにポリープを切除する「コールドスネアポリペクトミー」が、抗凝固薬を服用したままでも従来の治療法より出血が少なく、入院が不要で、治療時間が短いことを、多施設研究において世界で初めて証明した。この研究結果は、Annals of Internal Medicine誌2019年6月16日号に掲載。 大腸ポリープの多くは、将来的に大腸がんの原因となり得るため、一般的に内視鏡切除が行われる。その際、通電して焼灼し、血液を凝固させながら切除する方法が従来は一般的であった。 近年、不整脈などの心臓疾患による血栓症を防ぐために、ワルファリンやDOACなどの抗凝固薬を服用する患者が増加しているが、抗凝固薬を服用していると、ポリープ切除に伴う出血が増加する恐れがある。そのため、術前に服用を一時的に中止してヘパリンを点滴投与し、治療後に抗凝固薬を再開する「ヘパリン置換」が行われてきた。しかし、この処置は手順が煩雑であり、より簡便な方法が求められていた。 今回の研究では、抗凝固薬を服用し、10mm未満の大腸ポリープを有する患者182例が国内30施設から計184例が登録された。「ヘパリン置換+通電切除」群(90例)と、「抗凝固薬+コールドスネアポリペクトミー」群(92例)に無作為に割り付け、ポリープ切除から28日後に追跡調査を行い、各々の予後を検証した(2例が登録後に不参加)。主要評価項目は、ポリープ切除に関連した大出血の発生頻度であった。 その結果、「ヘパリン置換+通電切除」群では患者の12.0%で治療後に出血が見られたが(95%信頼区間[CI]:5.0~19.1)、「抗凝固薬+コールドスネアポリペクトミー」群では4.7%にとどまった(95%CI:0.2~9.2)。また、「ヘパリン置換+通電切除」群では5日程度の入院が必要で、ポリープの処置にも時間を要していたが、「抗凝固薬+コールドスネアポリペクトミー」群では、入院が不要で外来治療が可能であり、ポリープ切除にかかる平均処置時間は、約90秒から約60秒に短縮された。 今回の研究により、抗凝固薬を服用している患者の10mm未満の大腸ポリープであれば、服用を継続したままコールドスネアポリペクトミーによる切除のほうが治療後の経過が良いことがわかった。また本結果は、抗凝固薬を服用する患者だけでなく、服用しない患者とっても、コールドスネアポリペクトミーのメリットがあることを示すものである。

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高血圧症、閾値を問わず心血管転帰の独立リスク因子/NEJM

 高血圧症は、その定義(収縮期・拡張期血圧値)が130/80mmHg以上または140/90mmHg以上にかかわらず、有害心血管イベントのリスク因子であることが、一般外来患者130万例を対象に行ったコホート試験で示された。収縮期高血圧および拡張期高血圧はそれぞれ独立したリスク因子であることや、収縮期血圧上昇のほうがアウトカムへの影響は大きいことも示されたという。米国・カイザーパーマネンテ北カリフォルニア(KPNC)のAlexander C. Flint氏らによる検討で、NEJM誌2019年7月18日号で発表された。外来での収縮期・拡張期血圧値と心血管アウトカムの関連は不明なままである中、2017年に改訂された高血圧症のガイドラインでは2つの閾値が示され、治療における複雑さが増していた。8年間の有害心血管イベント発生リスクを検証 研究グループは、KPNC(カリフォルニア州北部を中心に400万人超が加入する)の会員データを用いて、一般外来成人患者130万例を対象に試験を行った。 多変量Cox生存分析により、8年間にわたる収縮期・拡張期高血圧の複合アウトカム(心筋梗塞、虚血性脳卒中、出血性脳卒中)への影響の大きさを調べた。解析では、人口統計学的特性と併存疾患について調整を行った。140mmHg以上、zスコア1上昇で心血管リスクは1.18倍 収縮期・拡張期高血圧の負担は、それぞれが有害アウトカムの独立予測因子であることが示された。生存モデルにおいて、収縮期高血圧の持続的負担は、同値140mmHg以上の場合で、zスコア1上昇におけるハザード比(HR)は1.18(95%信頼区間[CI]:1.17~1.18)だった。また、拡張期高血圧の持続的負担については、同値90mmHg以上の場合で、zスコア1上昇におけるHRは1.06(同:1.06~1.07)だった。 同様の予測結果は、高血圧症の閾値が低い場合(130/80mmHg以上)や、高血圧症の閾値を使わずに収縮期・拡張期血圧値を予測因子として用いた場合でも得られた。 また、拡張期血圧とアウトカムにはJカーブの関連性が認められた。その関連性には年齢およびその他共変量のいずれか1つ以上の関与が示唆され、また拡張期血圧が最低四分位範囲の人では、収縮期高血圧の影響がより大きいことが見てとれた。

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膝OAの人工膝関節置換術、部分vs.全置換術/Lancet

 晩期発生の孤立性内側型変形性膝関節症(膝OA)で人工膝関節置換術が適応の患者に対し、人工膝関節部分置換術(partial knee replacement:PKR)と人工膝関節全置換術(total knee replacement:TKR)はともに、長期の臨床的アウトカムは同等であり、再手術や合併症の頻度も同程度であることが示された。英国・Botnar Research CentreのDavid J. Beard氏らによる、528例を対象とした5年間のプラグマティックな多施設共同無作為化比較試験「Total or Partial Knee Arthroplasty Trial(TOPKAT)試験」の結果で、Lancet誌オンライン版2019年7月17日号で発表した。費用対効果はPKRがTKRに比べ高いことも示され、著者は「PKRを第1選択と考えるべきであろう」と述べている。PKRとTKRはいずれも晩期発生の孤立性内側型膝OAに適応される治療だが、選択のばらつきが大きく、選択のための確たるエビデンスがほとんど示されていなかった。5年後のオックスフォード膝スコアと費用対効果を比較 研究グループは、英国27ヵ所の医療機関を通じて、専門的知見かつ平等の観点で選出した孤立性内側型膝OAでPKRが一般に適応となる患者を対象に試験を行った。同グループは被験者を無作為に2群(1 vs.1)に分け、一方にはPKRを、もう一方にはTKRを行った。執刀医は、PKR専門医およびTKR専門医で、被験者は、いずれの手技も受けられるように割り付けられ、専門的観点で割り付けられた手技の実施有無が決められた。 主要エンドポイントは、5年後のオックスフォード膝スコア(Oxford Knee Score:OKS)だった。英国の2017年時点における医療費と、費用対効果についても評価した。PKRがTKRより手術・フォローアップともに低コスト 2010年1月18日~2013年9月30日に、962例が試験適格の評価を受けた。431例(45%)が除外され(121例[13%]が包含基準を満たさず、310例[32%]は参加を辞退)、528例(55%)が無作為化を受けた。そのうち94%が術後5年の追跡調査を完了した。 術後5年時点のOKSは両群で有意な差はなかった(平均群間差:1.04、95%信頼区間[CI]:-0.42~2.50、p=0.159)。 試験内費用対効果の分析で、PKRがTKRよりも5年の追跡期間中の効果が高く(追加のQALY:0.240、95%CI:0.046~0.434)、医療費は低額だった(-910ポンド、95%CI:-1,503~-317)。分析結果は、PKRがTKRに比べ、わずかだがアウトカムが良好であり、手術コストは低額で、フォローアップにかかる医療費も低額であることを示すものだった。

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統合失調症患者の再入院までの期間、持効性抗精神病薬vs.経口抗精神病薬

 統合失調症患者の再入院までの期間に、退院後の持効性抗精神病薬(LAI)治療または経口抗精神病薬治療によって違いがあるのか、台湾・高雄医学大学のChing-Hua Lin氏らが比較検討を行った。さらに、LAI処方率の傾向についても併せて調査を行った。The International Journal of Neuropsychopharmacology誌オンライン版2019年7月1日号の報告。 2006~17年に試験の実施施設から退院した統合失調症患者1万3,087例を対象に、退院後、自然主義的な条件下でフォローアップを行った。主要アウトカムは、再入院までの期間とした。LAIと経口抗精神病薬および第1世代LAIと第2世代LAIの比較において、生存分析を用いて評価した。LAIの処方率に関する時間的傾向の存在は、単純線形回帰およびコクラン・アーミテージ傾向検定を用いて評価した。 主な結果は以下のとおり。・退院後1年間では、LAI群は、経口抗精神病薬群と比較し、再入院率が有意に低く、再入院までの期間が有意に長かった。・第1世代LAI群と第2世代LAI群では、再入院率および再入院までの期間に有意な差は認められなかった。・第1世代LAI群では、第2世代LAI群と比較し、抗コリン薬を投与された割合が有意に高かった。・LAI処方率は、2006~17年にかけて、年平均0.5%の有意な増加が認められた。 著者らは「再入院リスクの低減において、LAIは経口抗精神病薬よりも有意に優れていたが、第1世代LAIと第2世代LAIでは同等であった。しかし、第2世代LAIは、第1世代LAIよりも抗コリン薬併用率が低かった。LAI処方率の増加は、臨床医がLAIによる患者の治療で経験を積み、成功体験を重ねたことに起因すると考えられる」としている。

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028)新米ナースの成長は医師にかかっている!?【Dr.デルぽんの診察室観察日記】

第28回 新米ナースの成長は医師にかかっている!?しがない皮膚科勤務医デルぽんです☆勤務先の病院でのこと。皮膚科は、診療室に1人専任の看護師さんが就いてくれるのですが、シフト制なので、日によって担当するスタッフが変わります。数ヵ月前から、新しく皮膚科に配属されるようになったAさん。熱心でテキパキと動ける、とても感じのよい人で、皮膚科の業務に慣れないながらも一生懸命考えて行動する姿に、ひそかに感心していました。配属からしばらく経ったある日のこと。Aさんの担当日に、体部白癬の患者さんが来ました。私が、患者さんの体の皮疹部から検鏡しようと、プレパラートを持って近付くと、先に患者さんのそばにいたAさんが「先生、足も診察しますか?」と言って、スッと患者さんの靴を脱がせました。体部白癬の患者さんは、足にも白癬菌を持っていることが多く、体の病変部だけではなく、足や足爪の治療も要することがあります。以前、そのことについて私が話したのをしっかり覚えていてくれたのだな、と嬉しく思いました。もちろん、人によっては、指示した診療の補助だけをしてくれればよい、とお考えの先生もいるかもしれません。ですが、自分で考え行動しようとする看護師さんの心持ちはとても素晴らしいと思います。混雑する皮膚科の外来は、熟練した看護師さんが1人いてくれるだけで、診察がスムーズになります。スタッフを育てるのもまた医師の仕事なのだな、と改めて感じました。それでは、また~!

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第1回 今さら聞けない心臓リハビリ【今さら聞けない心リハ】

第1回 今さら聞けない心リハケアネット読者の皆さん、「心臓リハビリテーション」についてどの程度ご存じでしょうか? 「心臓リハビリ」「心リハ」「Cardiac rehabilitation」、これらはすべて同じことを意味しています。日本では「心大血管疾患リハビリテーション料」という名称で、保険適用されています。『何それ、聞いたことないよ』『心臓病は自分の専門分野と違う』『循環器領域の患者を診ることなんてない』というあなた。実は、心臓リハビリテーション(以下、心リハ)の知識はご自身の健康管理上でもなくてはならないものなのです。そんな方にこそ、心リハを知ってもらいたく、この連載を執筆することになりました。医療に携わるケアネット読者の皆さんなら、生活習慣病の予防・治療に運動や食事が重要ということはすでにご存じと思います。運動不足や不健康な食習慣により、高血圧症・脂質異常症・糖尿病などの生活習慣病が生じやすくなることは、もはや“日本人の常識”と言えるでしょう。でも、具体的にどんな運動をどれくらいすればいいのか? 何をどのように食べればいいのか? となると、途端に答えられなくなる人が多いようです。生活習慣病、そしてその先にある心血管疾患に対して、健康を維持するための具体的な運動療法・食事療法を提案し、継続的に実践することをサポートする医学的介入…それが心リハです。生活習慣病をまだ発症していない、「未病」の段階から予防のための運動習慣・食習慣を実践することも、広い意味では心リハと呼べます。いかがでしょう、心リハを知りたい気持ちになっていただけましたか?~運動は医師自身にも必要~早く知りたい!手短に!というあなたのために、まずは運動の極意をお伝えしましょう。健康な方でも、生活習慣病や心血管疾患をすでに発症している方でも基本は同じ。キーワードは、『1日20~60分間の有酸素運動』です。有酸素運動=ジョギングではありません。有酸素運動とは、好気的代謝によりゆっくりとエネルギー(ATP)を消費する、長時間続けて行う運動です。好気的代謝の能力には個人差がありますので、有酸素運動と一口に言っても、一人ひとりで適切な強度が異なります。ゆっくり1時間歩くこと(時速2~3km程度)は、多くの方にとって有酸素運動ですが、若い人では強度が弱すぎて運動の効果がなかなかでません。一方で、ジョギング(時速5~6km程度)は、運動習慣を持たない中高年にとって無酸素運動となり持続することができません。では、あなたにとってのベストな有酸素運動とは、どのような運動でしょう?~ベストな運動強度の調べ方~心リハでは、患者さん一人ひとりにとって最適な運動強度を決定するために、心肺運動負荷試験(CPET:Cardiopulmonary exercise testing[CPX])という検査を行います。写真は当院でのCPXの様子です(図1)。(図1)心肺運動負荷試験[CPX]の実施風景画像を拡大する心肺~と呼ばれるのは、通常の運動負荷試験のように運動中の心電図・血圧を評価するだけではなく、口と鼻をすっぽりと覆うマスクを装着して、運動中の酸素摂取量・二酸化炭素排出量・換気量を測定するためです。運動の強度(自転車エルゴメータの仕事量[ワット数]、またはトレッドミルでの歩行速度・傾斜角度)を徐々に増加させたときに、ある強度以上で酸素換気当量(換気量/酸素摂取量)・呼吸商(二酸化炭素排出量/酸素摂取量)が急激に増加し始めます。この強度が嫌気性代謝閾値(AT:Anaerobic Threshold)であり、嫌気性代謝が始まる点です。最も効果的な有酸素運動は、ATの時点より少しだけ強度の低い運動、ということになります。AT未満の運動は、心血管疾患においても交感神経の活性化による過度の血圧上昇や不整脈を生じにくく、安全に実施しやすいため、心リハでの運動指導に用いられています。実際に運動する際は、検査で求められたAT時点の心拍数を維持することを目標に20分間以上の運動を行うようにします。有酸素運動は代謝・自律神経系の異常や血管内皮機能を改善し、さらには心血管疾患の増悪による入院率低下と生命予後の改善が数々の臨床試験で示されており、心血管疾患の治療手段の一つとして「運動療法」と呼ばれています。~自分の有酸素運動レベルを知っておく~あなたも、CPXを受けてご自身の有酸素運動レベルを知ってみたくありませんか? 「心臓ドック」の一環としてCPXの様子を行っている施設もあるみたいです。でも、なかなか検査を受けに行く時間をとれませんよね。大丈夫、特別な心血管疾患のない方であれば、AT時点の心拍数を以下の式で推定することができます。運動時の至適心拍数=安静時心拍数+0.6×(予測最大心拍数-安静時心拍数)1)一般的に、「予測最大心拍数=220-年齢」で推定できるので、たとえば、40歳で安静時心拍数が80bpmという場合、AT時点の心拍数=80*+0.6×(220-40**-80*)=80+0.6×100=140bpm*:安静時心拍数、**:予測最大心拍数と計算され、心拍数が140bpmとなるような早さで20~60分間歩く、もしくはジョギングする、というのが“ちょうどいい運動”ということになります。~心電図モニターの装着が鍵~病院で行う心リハでは、心拍計だけではなく心電図モニターを装着してもらい、心拍数のほかに不整脈も確認しながら運動を行います。頻発性の期外収縮や心房細動を有する患者などでは、通常の心拍計では正確に心拍数を評価しにくいため、心電図モニタリングが有用です。心リハの保険適用期間は5ヵ月間を基本としており、心リハ開始から5ヵ月が経過し病状が安定している患者では、病院での心電図モニター監視下での運動療法は終了し、一般のスポーツ施設や自宅などで運動療法を継続してもらうことになります。病状がまだ安定していないと考えられる場合は、期間を延長して病院での運動療法を継続します。Take home messageいかがでしたか? 今回は心リハでの運動療法と健常人が生活習慣病・心血管疾患を予防するための運動強度の決定法を中心にご紹介しました。ご自身の健康のためにも、ぜひ有酸素運動を始めてみてください。1日20~60分、と書きましたが、まずは10分でも大丈夫です。とにかく、始めることが大切。厚生労働省も『健康づくりのための身体活動指針(アクティブガイド)』で、「+10(プラス・テン)から始めよう!」(今より10分多くからだを動かすだけで、健康寿命を伸ばせます)とうたっています。勇気を出して、まずは一歩を踏み出すことが大切ですよ。次回は、心リハの対象・プログラムの内容について具体的にお話しします。ご期待ください。<Dr.小笹の心リハこぼれ話>ケアネット読者の心リハ認知度は?2010年に行われた一般健常人5,716名を対象とした心臓リハビリの認知度に関するインターネット調査では、心臓リハビリという言葉やその内容を「知っている」と回答した人はわずか7%で、「知らない」、「聞いたことはあるが内容は知らない」と答えた人が合わせて93%であったと報告されています2)。では、ケアネット読者の心リハ認知度はどうなのでしょう。実は、この連載を開始するに当たり、2019年4月、ケアネット読者(内科医102名)に任意のアンケート調査を行いました(図2)。「心リハという言葉を知らない」と答えた医師は7%とさすがに少なかったものの、「心リハという言葉は知っているが治療内容については知らない」と答えた医師は54%でした。日本はフィットネス後進国とも言われていますが、このような状況では、日本の内科医は患者の健康はおろか、自らの健康を守ることも難しいのではないかと考えられます。医療の進歩により、生活習慣病・心血管疾患を発症しても“長生き”は当たり前になった昨今ですが、運動習慣なくして“元気に長生き”はできません! 向学心旺盛なケアネット読者の皆さんには、この連載を通じて、ぜひとも心リハの基礎知識を身に付けていただきたいと願っています。(図2)ケアネット企画・心リハについての認知度調査1)JCS Joint Working Group. Circ J. 2014;78:2022-2093.2)後藤葉一. 日本冠疾患学会雑誌. 2015;21:58-66.

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ソーシャルメディア使用時間とうつ病や大量飲酒との関連

 思春期のソーシャルメディアの使用は、さまざまな否定的なアウトカムにつながっているが、この関連性については明らかとなっていない。ノルウェー・Norwegian Institute of Public HealthのGeir Scott Brunborg氏らは、ソーシャルメディアに費やされた時間の変化が、思春期のうつ病、問題行動、一過性の大量飲酒と関連しているかを、一階差分(first-differencing:FD)モデルを用いて検討を行った。Journal of Adolescence誌7月号の報告。 ノルウェーの青年763人(男性の割合:45.1%、平均年齢:15.22±1.44歳)を対象に、6ヵ月間隔で2つのアンケートを実施した。ソーシャルメディアに費やされた時間の変化とうつ症状、問題行動、一過性の大量飲酒との関連性は、すべての時系列の要因を効果的にコントロールする統計手法であるFDモデルを用いて推定した。また、スポーツの頻度、教師不在でのレジャーの頻度、友人関係の問題の3つを経時的推定交絡因子として検討を行った。 主な結果は以下のとおり。・3つの推定交絡因子で調整した後、ソーシャルメディアに費やされた時間の増加は、うつ症状(b=0.13、95%CI:0.01~0.24、p=0.038)、問題行動(b=0.07、95%CI:0.02~0.10、p=0.007)、一過性の大量飲酒(b=0.10、95%CI:0.06~0.15、p<0.001)の増加と関連が認められた。・しかし、これらの関連に対するエフェクトサイズは、あまり大きくはなかった。 著者らは「思春期においてソーシャルメディアに費やされた時間が増加すると、うつ症状、問題行動、一過性の大量飲酒の増加と、わずかではあるが関連することが示唆された」としている。

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HIV感染の1次治療、4剤cARTは3剤より優れるか/BMJ

 未治療のヒト免疫不全ウイルス(HIV)感染患者の治療において、4剤による併用抗レトロウイルス薬療法(cART)の効果は、3剤cARTと比較して高くないことが、中国・香港中文大学のQi Feng氏らの調査で示された。研究の詳細は、BMJ誌2019年7月8日号に掲載された。4剤と3剤のcARTを比較する無作為化試験は、過去20年間、継続的に行われてきた。その一方で、同時期の診療ガイドラインでは、標準的1次治療として3剤cARTが継続して推奨されており、4剤cARTへの言及はまれだという。HIV治療における4剤と3剤のcARTの有効性を比較するメタ解析 研究グループは、未治療のHIV感染患者の治療における4剤と3剤のcARTの効果を比較し、臨床および研究における既存の試験の意義を検証する目的で、系統的レビューとメタ解析を行った(特定の研究助成は受けていない)。 2001年3月~2018年6月の期間に医学データベースに登録された文献を検索し、選出された研究および関連する総説の引用文献リストも調査した。 対象は、未治療のHIV感染患者において4剤と3剤のcARTを比較した無作為化対照比較試験であり、1つ以上の有効性または安全性のアウトカムの評価を行った試験とした。 関心アウトカムは、検出限界未満のHIV-1 RNA量(<50コピー/mL)、CD4陽性T細胞数(/μL)の増加、ウイルス学的失敗、新たなAIDS関連イベント、全死因死亡、重症有害事象(≧Grade 3)とした。変量効果モデルを用いてメタ解析を行った。HIV感染患者4,251例の6つのアウトカムのすべてで、両cART群に差がない 12件の試験(HIV感染患者4,251例、このうち4剤cART群1,693例)が解析に含まれた。12試験の登録患者数中央値は214例(範囲:30~1,216例)で、平均年齢が37.1歳(32.9~43.5歳)、男性割合中央値が77.1%(58~100%)、フォローアップ期間中央値は48週(48~144週)であった。 対象のHIV感染患者について、すべての有効性および安全性のアウトカムに関して、4剤cART群と3剤cART群の効果は類似していた。3剤cART群を基準としたリスク比は、検出限界未満のHIV-1 RNA量が0.99(95%信頼区間[CI]:0.93~1.05)、ウイルス学的失敗が1.00(0.90~1.11)、新たなAIDS関連イベントが1.17(0.84~1.63)、全死因死亡が1.23(0.74~2.05)、重症有害事象は1.09(0.89~1.33)であった。また、CD4陽性T細胞数増加の2群間の平均差は、-19.55/μL(-43.02~3.92)だった。 結果は全般に、cARTのレジメンにかかわらず類似しており、すべてのサブグループおよび感度分析において頑健であった。 著者は、「これらの知見は、HIV感染患者の1次治療として3剤cARTを推奨する現行のガイドラインを支持するものである」とし、「この主題に関するこれ以上の試験は、既存のエビデンスの適正な系統的レビューで新たな研究が正当化された場合にのみ行うべきであるが、新たなクラスの抗レトロウイルス薬の登場により4剤cARTが3剤cARTを凌駕する可能性を排除するものではない」と指摘している。

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AIによる認知症診療は実現なるか、順大が日本IBMらと共同研究

 認知症の早期発見や診療において、AIは医師の強力な助っ人となるかもしれない。2019年7月10日、都内で記者説明会が開催され、AIによる新たな認知症診療システム開発と、食品介入などの臨床研究実施を目的とした産学連携プロジェクトの開始が発表された。参加企業は日本IBM、キリンホールディングス、三菱UFJリース、グローリー、日本生命、三菱UFJ信託銀行の6社。中心となる順天堂大学医学研究科神経学講座教授の服部 信孝氏をはじめ、各社の代表者が登壇し、本プロジェクトにおける役割と展望を語った。実は雑談が症状に影響? 遠隔診療でみえてきたこと 順天堂医院では、2017年からパーキンソン病をはじめとした神経難病の患者に対して、日本IBMの遠隔診療システムを一部で導入している。このシステムは、遠隔診療アプリの入ったタブレットを患者に提供し、自宅で医師の診察を受けられるというもの。患者側にはセットアップ等の必要はなく、ボタン1つで簡単に受診画面を起動できる。医師側は外来運用に合わせて予約や診察開始をコントロールでき、診察時の映像や音声データを蓄積することができる。将来的には、血圧などのデータも一元化して蓄積し、診療に活かしたいという。 費用は主に患者が負担し(プランによって異なるが月額4~5千円程度)、医師はオンライン診療料などで対応している。これまで、利用した患者の満足度はおおむね高く、医師側は症状や薬の服薬状況を会話と身体の動きから確認するほか、リラックスした状況で雑談を含めたやりとりをすることで、表情が明るくなる瞬間があるなど手応えを感じているという。 しかし日々の診察では、患者1人あたりに割ける診察時間は非常に短いのが実情だと、服部氏は指摘。パーキンソン病や認知症といった脳・神経系疾患の患者は、自宅にいる時と診察時とで状態が大きく異なったり、少しの言葉がけで大きく症状が改善したりするケースがあるとし、患者それぞれの症状・日常生活に対応した個別の介入・診療の必要性を強調した。AIを活用した診療システムで、症状やQOLを改善できるか 本プロジェクトでは、遠隔診療で得られた音声データを元に、AI(IBM Watson)を活用した会話アプリの開発を進めている。まず、医師と患者の実際の会話の中から多用される質問や声かけを抽出して、多数の会話スクリプトを準備。AIが状況を判断してその中から適切なものを選択し、学習によって精度を高めていく。医師と同じような対応ができるかどうか、実証実験を進めていく見通しだという。 さらに、それらの対応・声がけを受けた患者側にどのような影響・効果があったかの検証には、日本IBMの音声データ解析システムと、グローリーの表情認識技術を用いる。ある声がけに対して、患者の声のトーンや発語、表情にどのような変化があったかを、人間同士の対話とAIとの対話で、比較検証していく。 日本IBM常務執行役員の坪田 知巳氏は、今回の共同研究で得られたデータをもとに、対話AIによる認知症早期発見・予防効果の検証にもつなげていきたいと話す。例えば「同じ話を繰り返す」「話題が飛ぶ」「つっかえる」といった会話特性の変化、表情の変化を数値化し、将来的には、AIを使った認知症の診断基準の策定も視野に入れて支援していきたい、と展望を語った。食品や金融業界の企業が認知症研究に参画する理由 本プロジェクトのもう1つの柱として、食品や嗅覚トレーニングによる認知機能改善効果の検討が掲げられている。キリンホールディングスでは、ビールの苦み成分である熟成ホップ苦味酸と、カマンベールチーズに含まれるβラクトリンの認知機能改善効果を、ヒトを対象とした試験ですでに確認している。順天堂大学が持つ患者のバイオデータとこれらの研究結果を組み合わせ、認知症予防に関わる食事パターンの調査、食品介入による予防効果の検証を行っていく。 また、三菱UFJ信託銀行執行役員の石崎 浩二氏は、「日本の個人金融資産の70%を高齢者が保有している。認知症高齢者の保有率は6%とされるが、今後15年で倍増が見込まれており、これらが使われない資産となると日本経済への打撃は大きい」と話し、金融サービスのあり方自体に大きな変化が求められているとした。銀行窓口などで高齢者の変化に営業担当者が気づく事例が多いことにも触れ、それらを家族や専門家につなぐ役割を果たすこと、認知機能の変化に応じた新しい商品・サービスを提供することを目指すとの考えを示した。■「カマンベールチーズ認知症」関連記事認知症予防の可能性、カマンベールチーズvs.運動

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HR+/HER2-進行乳がんへのPI3K阻害薬alpelisib、日本人解析結果(SOLAR-1)/日本臨床腫瘍学会

 ホルモン受容体陽性/HER2陰性(HR+/HER2-)進行乳がんに対する、α特異的PI3K阻害薬alpelisibとフルベストラント併用療法の有効性を評価する第III相SOLAR-1試験の日本人解析結果を、第17回日本臨床腫瘍学会学術集会(7月18~20日、京都)で、愛知県がんセンターの岩田 広治氏が発表した。なお、同患者に対するalpelisib併用療法は、SOLAR-1試験の結果に基づき、2019年5月にPI3K阻害薬として初めてFDAの承認を受けている。alpelisib併用群とプラセボ群に割り付け SOLAR-1試験は、HR+/HER2-進行乳がん患者(ECOG PS≦1、1ライン以上のホルモン療法歴あり、進行後の化学療法歴なし)を対象とした国際第III相無作為化二重盲検プラセボ対照試験。登録患者はPIK3CA遺伝子変異陽性もしくは陰性コホートに分けられ、それぞれalpelisib併用群(alpelisib 300mg/日+フルベストラント500mg/1サイクル目のみ1日目、15日目に投与、以降28日を1サイクルとして1日目に投与)とプラセボ群(プラセボ+フルベストラント)に1:1の割合で無作為に割り付けられた。 主要評価項目は、PIK3CA陽性コホートにおける無増悪生存期間(PFS)。副次評価項目は、PIK3CA陰性コホートのPFS、両コホートの全生存期間(OS)、客観的奏効率(ORR)、安全性などであった。 alpelisib併用療法の主な結果は以下のとおり。・全体で572例が登録され、うち日本人は68例(PIK3CA陽性が36例、陰性が32例)。両コホートでそれぞれalpelisib併用群またはプラセボ群に無作為に割り付けられた(陽性:alpelisib併用群17例 vs.プラセボ群19例、陰性:15例 vs.17例)。・日本人集団の年齢中央値は両群とも67歳。BMI中央値は25kg/m2 vs.21.4kg/m2で全体集団(26.5kg/m2 vs.26.1kg/m2)よりも低く、PS 0の割合は88.2% vs.89.5%と全体集団(66.3% vs.65.7%)よりも高かった。その他のベースライン特性は全体集団と同様であった。・PIK3CA陽性コホートにおけるPFS中央値は、全体集団ではalpelisib併用群11.0ヵ月に対しプラセボ群5.7ヵ月とalpelisib併用群で有意に改善した(ハザード比[HR]:0.65、95%信頼区間[CI]:0.50~0.85; p=0.00065)。これに対し日本人集団では、alpelisib併用群9.6ヵ月に対しプラセボ群9.2ヵ月と両群で差はみられなかった(HR:0.78、95%CI:0.35~1.75)。・PIK3CA陽性コホートにおけるalpelisibの曝露期間は、全体集団で平均8.0ヵ月、中央値5.5ヵ月(0.0~29.0)、平均相対的用量強度(RDI)77.8%だったのに対し、日本人集団では曝露期間の平均4.2ヵ月、中央値1.4ヵ月(0.3~21.1)、平均RDI 58.8%であった。・日本人集団において、全体集団と比較してalpelisib併用群で多くみられたGrade3以上の有害事象は、皮疹(日本人集団:43.8%/ 全体集団:20.1%)、膵炎(15.6%/5.6%)、重度皮膚有害反応(9.4%/1.1%)であった。・alpelisib併用群の有害事象による治療中止は、日本人集団では全Gradeで56.3%、Grade3以上で25.0%と、全体集団(25.0%、13.0%)と比較して多く発生した。日本人集団で治療中止につながった有害事象は、高血糖症(18.8%)、皮疹(12.5%)、重度皮膚有害反応(9.4%)など。Grade3以上の皮疹は多くが14日以内に起きていた。・投与開始後8日目におけるalpelisibの血中トラフ濃度を日本人と日本人以外で比較すると、平均値474ng/mL vs.454ng/mL、中央値410ng/mL vs.442ng/mLと差はみられなかった。 ディスカッサントを務めた虎の門病院の尾崎 由記範氏は、他のPI3K阻害薬による臨床試験での重篤な皮疹の発生率は3.8~8.0%(全体集団)1)2)で、43.8%という数字は顕著に高いことを指摘。alpelisibの第I相試験で皮疹の発生は用量依存的に増加している点3)、今回のサブセット解析で最初の数週間で多く発生している点などに触れ、日本人集団での最適用量の再検討や、経口非鎮静性抗ヒスタミン薬の予防的使用の検討が必要ではないかとの考えを示した。 岩田氏は発表後の質疑において、アジア人の他のポピュレーションでは全体集団と同様の結果が得られていることを明らかにし、日本人集団を対象とした追加試験を行う必要があるとした。

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非難されても致し方がない偏った論文(解説:野間重孝氏)-1081

 今回の論文評では少々極端な意見を申し述べると思うので、もし私の思い違い・読み違いだったとしたら、ご意見を賜りたくお願いしてから本題に入らせていただく。 本研究は虚血性心筋障害が疑われる患者に対して高感度トロポニンT/Iが心筋梗塞の正確な診断に利用されうるだけでなく、その予後情報としても利用できることを示そうと行われた研究である。具体的には救急外来受診時すぐに採血された値とその後一定時間をおいてから採血された2回目の採血結果を比較し、初回値だけを見るのではなく、2回目の数値を採血の間隔とも統合して見ることにより、より正確な診断のみでなく、その後の心血管イベントの発生リスクまでも予測できるとしたものである。 ここでまず重要なことは、典型的な症状を示し、心電図上明らかなST上昇が認められた症例は除外されていることである。この論文評をお読みの方の中には研修医の方もいらっしゃるのではないかと考えるので一言しておくと、2012年のESC/ACCF/AHA/WHFによる“Third Universal Definition of Myocardial Infarction”で心筋マーカーの上昇が心筋梗塞診断要件の1つとして位置付けられたことから、急性心筋梗塞の診断には心筋マーカーの上昇が必要と考え、臨床検査の結果を待とうという向きがありはしないかと懸念される。典型的症状+心電図上のST上昇は最も確実な心筋梗塞の診断であり、血液検査結果の到着を待つことなくただちに急性期治療を開始しなければならない。若い先生方、このあたりは絶対に過たないように声を大にしてお願いしたいと思う。 さて、問題は非典型例である。わが国においては、心電図変化が非典型的であったとしても心エコー図所見からasynergyがみられれば、緊急カテーテル検査を行うという方が多数派なのではないだろうか。かくいう私もそうしたほうなのだが、現在、海外では非典型例については(処置の準備をしておくことはもちろんだが)、まず検査結果をみようという向きが結構多いように感じられる。もちろんこれには純粋な科学的な理由ばかりではなく、保健医療などの問題も関係しているのではないかと推察するが…。 そこで本題であるが、そうした医療事情等の議論はさておいて、評者にはこの論文について、2つの重大な不満点がある。 第1はトロポニン測定に関する考え方がまったく述べられていないことである。 トロポニンT/IはトロポニンCとともに結合体を作り、アクチン・ミオシンへのカルシウムのコントロールをつかさどっている。これは骨格筋と同様であるのだが、トロポニンT/Iはその立体構造(conformation)が心筋固有のもの(isoform)であるため、健常時には血中にほとんど存在せず、心筋逸脱物質として取り扱うことができる。心筋に虚血性損傷が起こるとまず細胞膜に損傷が起こり、細胞液内可溶成分画内物質が逸脱する。代表的なのがCK、CK-MB、H-FABPなどである。これらがearly markerと呼ばれる。損傷がさらに進むと心筋の損傷から筋原線維タンパクが逸脱する。これらがlate markerと呼ばれ、その代表がトロポニン、ミオシン軽鎖である。すると、なぜトロポニンが早期反応物質として使用できるのかという疑問が起こるが、これには二通りの考え方がある。実はトロポニンはその6~7%が細胞質内に浮遊しており、それが測定されるのだという考え方。もう1つはmyocardiumの損傷は早期からトロポニン複合体の剥離を起こすため、測定が可能になるという考え方である。実際、トロポニンの上昇は厳密に測定すれば2層性なのだと主張する学者もいる。ちなみにearly markerといっても、必ずしもごく早期から測定できるわけではないのはCK-MBが良い例で、損傷が起こってから3~4時間を必要とする。高感度トロポニンがなぜ2時間程度から測定できるのか正確な機序はまだわかっていない。いずれにしても逸脱物質である以上、その値から心筋損傷の程度や予後を推定しようとするなら何度か測定し、AUC(area under curve)の積分値を考える必要がある。いつ起こったともわからない心筋損傷に対して、2点、それもその間隔が比較的ゆるく決められた2点の測定で代用できるというのなら、その根拠をしっかり示し、考察する必要がある。本論文ではこの点についてまったく述べられていない。学術論文では結果だけ示せばよいというものではないし、実際たまたまそうなったという可能性も否定できないのである。 なお、さきほど研修医の皆さんについて述べたが、生体内微量物質の定量とカットオフ値についての統計学的な知識については整理しておかれることを勧める。微量物質の正常値やカットオフ値の求め方について知っておくことは重要だからである。 第2点はさらに重要である。 こうしてトロポニン測定が行われた患者たちが、具体的にどのように治療されたのかという点についてまったく言及されていないのである。この論文は異常ともいえる長さのSupplementary Appendixが付けられているが、そのどこにもこうした問題についてのプロトコールが書かれていないのである(少なくともわかりやすいかたちで明記されていない)。というより、臨床試験で実患者を対象とした試験においてはこうした項目に対する記述は論文の倫理面からも結果解釈からも最重要項目の1つであるはずであるから、本文に明記されなくてはならないはずなのだが、まったく触れられていないのである。トロポニンを測定してみて、これはかなり危ないと考えられた患者もそのまま内科的に経過観察され、30日間のイベント発生に加えられたのだろうか? 加えて、本論文では心エコー図など他の検査所見についてもまったく言及されていないのである。当たり前だが、心筋梗塞の診断は血液検査のみで行うものではない。現在心筋梗塞の急性期の患者に対しては急性期インターベンションが施行されることにより、その予後が大幅に改善されることが証明されている。高名な臨床研究施設でそれぞれの倫理委員会を通った臨床研究なのだから、いい加減なやり方ではあろうはずがないと信じるが、このままの記述では人体実験が行われたと揶揄されても仕方のない論文構成ではないだろうか。 言い方は悪くなるのだが、いくつかの施設がそれぞれ自分たちのやり方で血液検査と予後調査をして、後から全体に通用させられるプロトコールを作って無理やりまとめたような印象があると言ったら少し言い過ぎだろうか? たとえば、現時点において臨床の場でトロポニンT、トロポニンIが並列的に測定されていることが多いが、それぞれの得失についての議論はまだ定まったとは言えない。実際、上昇までの時間、持続時間が微妙に異なることが知られている。また測定系の問題から、トロポニンT値からトロポニンI値を計算したり推定したりすることはできない。なぜトロポニンの研究をしようとしてトロポニンT/Iを混用したのか。各組織の都合に合わせたということではないのかというのは邪推だろうか。研究の全体像がつかみにくく、評価が難しい論文ではないかと思う。

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ウェルナー症候群〔WS:Werner syndrome〕

1 疾患概要■ 概念・定義ウェルナー症候群(Werner syndrome:WS)とは、1904年にドイツの眼科医オットー・ウェルナー(Otto Werner)が、「強皮症を伴う白内障症例(U[ウムラウト]ber Kataract in Verbindung mit Sklerodermie:Cataract in combination with scleroderma)」として初めて報告した常染色体劣性の遺伝性疾患である。思春期以降に、白髪や脱毛、白内障など、実年齢に比べて“老化が促進された”ようにみえる諸症状を呈することから、代表的な「早老症候群(早老症)」の1つに数えられている。■ 疫学第8染色体短腕上に存在するRecQ型のDNAヘリカーゼ(WRN)遺伝子のホモ接合体変異が原因と考えられる。これまで全世界で80種類以上の変異が同定されているが、わが国ではc.3139-1G>C(通称4型)、c.1105C>T(6型)、c3446delA(1型)の3大変異が症例の90%以上を占める。一方、この遺伝子変異が、本疾患に特徴的な早老症状、糖尿病、悪性腫瘍などをもたらす機序の詳細は未解明である。■ 病因希少な常染色体劣性遺伝病だが、日本、次いでイタリアのサルデーニャ島(Sardegna)に際立って症例が多いとされる。1997年に松本らは、全世界1,300例の患者のうち800例以上が日本人であったと報告している。症状を示さないWRN遺伝子変異のヘテロ接合体(保因者)は、日本国内の100~150例に1例程度存在し、WS患者総数は約2,000例以上と推定されるが、その多くは見過ごされていると考えられる。かつては血族結婚に起因する症例がほとんどとされたが、最近では両親に血縁関係を認めない患者が増え、患者は国内全域に存在する。遺伝的にも複合ヘテロ接合体(compound heterozygote)の増加が確認されている。■ 症状思春期以降、白髪・脱毛などの毛髪変化、両側性白内障、高調性の嗄声、アキレス腱に代表される軟部組織の石灰化、四肢末梢の皮膚萎縮や角化と難治性潰瘍、高インスリン血症と内臓脂肪蓄積を伴う耐糖能障害、脂質異常症、骨粗鬆症、原発性の性腺機能低下症などが出現し進行する。患者は低身長の場合が多く、四肢の骨格筋など軟部組織の萎縮を伴い、中年期以降にはほぼ全症例がサルコペニアを示す。しばしば、粥状動脈硬化や悪性腫瘍を合併する。内臓脂肪の蓄積を伴うメタボリックシンドローム様の病態や高LDLコレステロール(LDL-C)血症が動脈硬化の促進に寄与すると考えられている。また、間葉系腫瘍の合併が多く、悪性黒色腫、骨肉腫や骨髄異形成症候群に代表される造血器腫瘍、髄膜腫などを好発する。上皮性腫瘍としては、甲状腺がんや膀胱がん、乳がんなどがみられる。■ 分類WRN遺伝子の変異部位が異なっても、臨床症状に違いはないと考えられている。一方、WSに類似の症状を呈しながらWRN遺伝子に変異を認めない症例の報告も散見され、非典型的ウェルナー症候群(atypical Werner syndrome:AWS)と呼ばれることがある。AWSの中には、LMNA遺伝子(若年性早老症の1つハッチンソン・ギルフォード・プロジェリア症候の原因遺伝子)の変異が同定された症例もあるが、WSに比べてより若年で発症し、症状の進行も早いことが多いとされる。■ 予後死亡の二大原因は動脈硬化性疾患と悪性腫瘍であり、長らく平均死亡年齢が40歳代半ばとされてきた。しかし、近年、国内外の報告から寿命が5~10年延長していることが示唆され、現在では60歳を超えて生活する患者も少なくない。一方、足部の皮膚潰瘍は難治性であり、疼痛や時に骨髄炎を伴う。下肢の切断を必要とすることも少なくなく、患者のADLやQOLを損なう主要因となる。2 診断 (検査・鑑別診断も含む)WSの診断基準を表1に示す。早老症候はさまざまだが、客観的な指標として、40歳までに両側性白内障を生じ、X線検査でアキレス腱踵骨付着部に分節型の石灰化(図)を認める場合は、臨床的にほぼWSと診断できる。診断確定のための遺伝子検査を希望される場合は、千葉大学大学院医学研究院 内分泌代謝・血液・老年内科学へご照会いただきたい。なお、本疾患は、難病医療法下の指定難病であり、表2に示す重症度分類が3度または「mRS、食事・栄養、呼吸の各評価スケールを用いて、いずれかが3度以上」または「機能的評価としてBarthel Index 85点以下」の場合に重症と判定し、医療費の助成を受けることができる。表1 ウェルナー症候群の診断基準画像を拡大する図 ウェルナー症候群のアキレス腱にみられる特徴的な石灰化像 画像を拡大する分節型石灰化(左):アキレス腱の踵骨付着部から近位側へ向かい、矢印のように“飛び石状”の石灰化がみられる。火焔様石灰化(右):分節型石灰化の進展した形と考えられる(矢印)。表2 ウェルナー症候群の重症度分類 画像を拡大する3 治療 (治験中・研究中のものも含む)■ 薬物療法WSそのものの病態に対する根本的治療法は未開発である。糖尿病は約6割の症例に見られ、高度なインスリン抵抗性を伴いやすい。通常、チアゾリジン誘導体が著効を呈する。これに対してインスリン単独投与の場合は、数十単位を要することも少なくない。ただし、チアゾリジン誘導体は、骨粗鬆症や肥満を助長する可能性を否定できないため、長期的かつ客観的な観察結果の蓄積が望まれる。近年、メトホルミンやDPP-4阻害薬、GLP-1受容体作動薬の有効性を示唆する報告が増え、合併症予防や長期予後に対する知見の集積が期待される。高LDL-C血症に対しては、非WS患者と同様にスタチンが有効である。四肢の皮膚潰瘍に対しては、皮膚科的な保存的治療を第一とする。各種の外用薬やドレッシング剤に加え、陰圧閉鎖療法が有効な症例もみられる。感染を伴う場合は、耐性菌の出現に注意を払い、起炎菌の同定と当該菌に絞った抗菌薬の投与を心掛ける。足部の保護と免荷により皮膚潰瘍の発生や重症化を予防する目的で、テーラーメイドの靴型装具の着用も有用である。■ 手術療法白内障は手術を必要とし、非WS患者と同様に奏功する。40歳までにみられる白内障症例を診た場合、一度は、鑑別診断としてWSを想起して欲しい。四肢の皮膚潰瘍は難治性であり、しばしば外科的デブリードマンを必要とする。また、保存的治療で改善がみられない場合は、形成外科医との連携により、人工真皮貼付や他部位からの皮弁形成など外科的治療を考慮する。四肢末梢とは異なり、通常、体幹部の皮膚創傷治癒能はWSにおいても損なわれていない。したがって、甲状腺がんや胸腹部の悪性腫瘍に対する手術適応は、 非WS患者と同様に考えてよい。4 今後の展望2009年以降、厚生労働科学研究費補助金の支援によって研究班が組織され、全国調査やエビデンス収集、診断基準や診療ガイドラインの作成や改訂と普及啓発活動、そして新規治療法開発への取り組みが行われている(難治性疾患政策研究事業「早老症の医療水準やQOL向上をめざす集学的研究」)。また、日本医療研究開発機構(AMED)の助成により、難治性疾患実用化研究事業「早老症ウェルナー症候群の全国調査と症例登録システム構築によるエビデンスの創生」が開始され、詳細な症例情報の登録と自然歴を明らかにするための世界初の縦断的調査が行われている。一方、WSにはノックアウトマウスに代表される好適な動物モデルが存在せず、病態解明研究における障壁となっていた。現在、AMEDの支援により、再生医療実現拠点ネットワークプログラム「早老症疾患特異的iPS細胞を用いた老化促進メカニズムの解明を目指す研究」が推進され、新たに樹立された患者末梢血由来iPS細胞に基づく病因解明と創薬へ向けての取り組みが進んでいる。なお、先述の全国調査によると、わが国におけるWSの診断時年齢は平均41.5歳だが、病歴に基づいて推定された“発症”年齢は平均26歳であった。これは患者が、発症後15年を経て、初めてWSと診断される実態を示している。事実、30歳前後で白内障手術を受けた際にWSと診断された症例は皆無であった。本疾患の周知と早期発見、早期からの適切な管理開始は、患者の長期予後を改善するために必要不可欠な今後の重要課題と考えられる。5 主たる診療科内科、皮膚科、形成外科、眼科(白内障)※ 医療機関によって診療科目の区分は異なることがあります。6 参考になるサイト(公的助成情報、患者会情報など)診療、研究に関する情報千葉大学大学院医学研究院 内分泌代謝・血液・老年内科学 ウェルナー症候群(一般利用者向けと医療従事者向けのまとまった情報)難病情報センター ウェルナー症候群(一般利用者向けと医療従事者向けのまとまった情報)米国ワシントン州立大学:ウェルナー症候群国際レジストリー(医療従事者向けのまとまった情報)患者会情報ウェルナー症候群患者家族の会(患者とその家族および支援者の会)1)Epstein CJ, et al. Medicine. 1966;45:177-221.2)Matsumoto T, et al. Hum Genet. 1997;100:123-130.3)Yokote K, et al. Hum Mutat. 2017;38:7-15.4)Takemoto M, et al. Geriatr Gerontol Int. 2013;13:475-481.5)ウェルナー症候群の診断・診療ガイドライン2012年版(2019年中に改訂の予定)公開履歴初回2019年7月23日

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