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遺伝学的に血清Caが高い人は骨折しにくいのか/BMJ

 正常カルシウム値の集団において、血清カルシウムを増加させる遺伝的素因は、骨密度の上昇とは関連せず、臨床的に意義のある骨折予防効果をもたらさないことが、カナダ・マギル大学のAgustin Cerani氏らの検討で示された。研究の成果は、BMJ誌2019年8月1日号に掲載された。カルシウム補助剤は、一般住民において広く使用されており、骨折リスクの低減を意図して用いられることが多いが、冠動脈疾患のリスクを増大させることが知られており、骨の健康への保護効果は依然として不明とされる。遺伝学的血清カルシウム増加の影響を評価するメンデル無作為化研究 研究グループは、遺伝学的に増加した血清カルシウムが、骨密度の改善や骨粗鬆症性骨折の抑制をもたらすかを評価する目的で、メンデル無作為化研究を行った(カナダ衛生研究所[CIHR]などの助成による)。 解析には、(1)UK Biobankコホートの遺伝子型と骨密度のデータ、(2)英国、米国、欧州、中国の25のコホートの遺伝子型と骨折のデータ、(3)欧州の17のコホートの遺伝子型と血清カルシウム値のデータの要約統計量を使用した。 6万1,079例の血清カルシウム値のゲノムワイド関連メタ解析データを用いて、血清カルシウム値の遺伝的決定因子を同定した。次いで、UK Biobank研究のデータを使用して、血清カルシウム値上昇の遺伝的素因と、平均カルシウム値が正常範囲の42万6,824例の骨密度(踵骨の超音波測定)との関連を評価した。 さらに、平均カルシウム値が正常範囲の骨折症例7万6,549例と対照47万164例を含む24のコホートとUK Biobankのデータを用いて、骨折のゲノムワイド関連メタ解析を実施した。ベネフィットよりリスクが大きい可能性 カルシウム増加と関連する7つの一塩基多型はいずれも、骨密度および骨折との間に有意なゲノムワイド関連を認めなかった(すべてのp>0.08)。 逆分散法によるメンデル無作為化分析では、遺伝学的な血清カルシウム値の1標準偏差(0.13mmol/L、0.51mg/dL)の上昇は、骨密度の上昇(0.003g/cm2、95%信頼区間[CI]:-0.059~0.066、p=0.92)および骨折リスクの低下(オッズ比:1.01、95%CI:0.89~1.15、p=0.85)と関連しなかった。 潜在的な多面的作用(pleiotropic effect)を探索するために、3つの感度分析を行ったが、エビデンスは得られなかった。 また、アジア人家系のコホートの影響を評価するために、中国南部で行われた研究(HKOS)を除外して、骨折のゲノムワイド関連研究のメタ解析を行ったところ、操作変数の要約統計量およびメンデル無作為化の結果は、主解析と実質的に同一であり、アジア人家系の影響は認めなかった。 著者は「生涯にわたって遺伝学的に誘導された血清カルシウムの増加が、長期的なカルシウム剤の補充の効果をどの程度再現するかは不明である」とし、「遺伝学的に増加した血清カルシウムは冠動脈疾患のリスク上昇と強く関連するため、一般住民におけるカルシウム補助剤の広範な普及は、ベネフィットよりもリスクが大きいと考えられる」と指摘している。

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保存期CKD患者の貧血治療が経口薬で(解説:浦信行氏)-1101

 従来、CKDに合併する腎性貧血は透析例も含めて赤血球造血刺激因子製剤(ESA)が治療の主体であった。roxadustatは経口投与の低酸素誘導因子(HIF)の分解酵素阻害薬であり、結果的にHIFを安定化させて内因性エリスロポエチン(EPO)の転写を促進して腎性貧血の改善を促す。現在、roxadustatを含めて5製剤が開発中である。同時に鉄吸収や肝臓からの鉄の放出を抑えるヘプシジンの産生を抑制して、鉄利用を高める作用も併せ持つ。 今回の第III相の結果は貧血改善に著効を呈し、しかも反応も2~3週間後の早期から期待できるようだ。これにはEPO産生の増加だけでなく、EPOの受容体も活性化し、加えて鉄供給・利用も連動することによると考えられる。これまでは保存期CKDは2~4週ごとのESAの皮下または静脈注射を余儀なくされ、また、EPO抵抗性の症例もあることから、HIF刺激薬は治療利益が大きいと考えられる。また、LDLコレステロールも25.3mg/dL低下し、有意な減少であったため付加価値的要素もあるが、同時にHDLコレステロールも10mg/dL程度低下するため、その価値は大きくはなさそうである。一方でHIF刺激の結果、長期的には血管新生を惹起する可能性は否定できず、糖尿病症例の網膜症悪化や、腫瘍進展のリスクの懸念は残るので、長期的なリスクの評価が必要と考える。

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第26回 “上品な”不整脈のトリセツ【Dr.ヒロのドキドキ心電図マスター】

第26回:“上品な”不整脈のトリセツ2018年8月末から隔週連載でスタートしたドキ心も今回で26回目。約一年が経過しましたが、すべては皆さまのおかげです。でもね、正直まだ全然話し足りない! 心電図には魅力的な話題があと2倍、5倍、いや10倍はあるんですよ!(ただのオシャベリなだけかも…)前2回のエッセーで途切れてしまいましたが、今回は、ここ数回で登場している「ラダーグラム」を用いて、心室期外収縮(PVC)の秘密にDr.ヒロが迫ります!症例提示68歳、男性。心筋症のため循環器科に通院中。以下に定期外来での心電図を示す(図1)。(図1)定期外来時の心電図画像を拡大する【問題1】心電図所見として正しいものを2つ選べ。1)右房拡大2)心室期外収縮3)心房期外収縮4)右室肥大5)QT延長解答はこちら2)、5)解説はこちら「心筋症」および「循環器科に定期通院」というフレーズから何らかの心臓病がありそうな准高齢者ですね。1問目はいつもと同じ。「系統的判読」で読んでいきましょう(第1回)。1)×:ここは“ピッタリ”部分の確認。「右房拡大」では、下壁誘導、つまりニサンエフでP波の“ツンッ”(尖鋭化)と増高(2.5mm以上)が特徴です。むしろ本例では、IIとV1誘導に着目すれば、以下の「左房拡大」の基準にほぼ該当します。(図2)左房拡大の診断基準杉山 裕章. 心電図のみかた・考え方(応用編).中外医学社;2014.p.26-27を改変.画像を拡大する2)○:大半を占める心拍のP波は“イチニエフの法則”を満たすので、基本的には「洞調律」でOKです。残る肢誘導2、5拍目と胸部誘導2拍目だけQRS波形が異なっています。洞周期から予想される位置よりも“先行”して出て、どう見ても異質なカタチ、幅もワイドでP波の随伴もありません。これは「心室期外収縮」(PVC)でいいでしょう。3)×:「心房期外収縮」(PAC)の場合、基本は洞収縮QRS波と同じ波形、先行P波(P'波)があるはずですが、これには該当しません。4)×:1)に続き、これも“左右違い”(笑)。正しくは「左室肥大」です。左側胸部誘導(V4~V6)でQRS波形同士が重なって見える“密集感”と“ストレイン・パターン”(strain pattern)と呼ばれる典型的なST-T変化を認めます(下行型ST低下と陰性T波の組み合わせ)。5)○:今まであまり扱わなかった“バランスよし!”の部分です。QT間隔(QRS波の「はじまり」~T波の「おわり」)を目視でR-R間隔と比べましょう(目視法)。機械に頼るのも一手です。補正値(QTc)がいずれも上限450ms(0.45秒)を大きく越えており、「QT延長」と言えます。以上、診断をまとめます。この方の基礎疾患は「肥大型心筋症」(HCM)でした。いずれの所見も“さもありなん”な典型心電図だと思います。考えられる心電図診断をまとめると次のようになります。心電図診断心室期外収縮(頻発性)左房拡大左室肥大QT延長【問題2】肢誘導からI誘導の抜粋を示す(図3)。本リズム・ストリップ(rhythm strip)のラダーグラムを描け。(図3)I誘導のみ抜粋画像を拡大する解答はこちら図4の下図(図4)肢誘導(I誘導)のラダーグラム画像を拡大する解説はこちら期外収縮のポイントである『線香とカタチと法被が大事よね』の“大事よね”は何でしたか? …ええ、回復周期(または休止期)の「代償性」です。そして、ここでも出た「ラダーグラム」! 胸部誘導では、洞収縮部分に若干のR-R間隔に不整(洞[性]不整脈?)があるため、あえて肢誘導で鋭く見やすいP波のあるI誘導をチョイスしています。洞収縮では当然QRS波の手前、そしてPVCではST部分かT波上行脚に“トンガリ”があり、これがP波です。P-P間隔はほぼ整であることもわかるでしょう。PVC直後のP波にはQRS波が続かず、この「1拍抜ける」メカニズムを描くには、「不応期」という概念が必要です。“逆行性シグナルは不応期を残す”今回のレクチャーのポイントは、“お上品”なPVCのラダーグラムを描くこと。PVCの“上品さ”とは、洞結節の活動(ペース)には干渉しないことを意味するのでした(第21回)。洞収縮のラダーグラムに関しては、すでに扱っていますから(第22回、第23回)、PVCの前後を含む(肢誘導)3~6拍目を抜き出して解説しましょう。ボクがまだまだ若手だった頃、PVCによる“脈飛び”は、洞結節、心房を経て下向き(心室方向)に伝わる興奮と、PVC起源である心室からの上向き(心房方向)興奮とが房室結節あたりで“ぶつかる”ためと思っていました。この「衝突モデル」、まったくダメかと言うとそうではないのですが、実にオシイ。今回は詳しく述べませんが、これでは説明不能な現象(間入性PVCなど)があります。洞結節にはじまる興奮は刺激伝導系という“高速道路”を通りますから、心房、房室結節までは瞬時に伝わります。ただ、心房から心室への“関所”(房室接合部)を抜けるときだけ時間がかかります。“ETC”ではなく、“料金所”で財布から小銭を出して支払っているイメージでしょうか(笑)。一方、多くのPVCは刺激伝導系から外れた“片田舎”で発生し、“下道”をノンビリと心房に向かうシグナルを送ります。この片方は「上から下」、もう片方が「下から上」のシグナルは心房と心室の“はざま”である「房室接合部」で拮抗することになります。ここは、ラダーグラムでは「A-V」フロアと表記するのでした(第22回)。P波とQRS波の時間的な前後関係を考慮すると、このゾーンに心室からの“逆走”刺激が先に到着し、一部の組織を興奮させます。ボクはこの所見を見ると、かつてのチビDr.ヒロが熱中した『ゼルダの伝説~リンクの冒険~』に登場し、勇者リンクがマスターする“上突き”と言われる技のイメージが頭をよぎります(笑)ボク的には“グサッ”と音が出んばかりに“爪痕”を残すイメージです。実際には、PVC起源からのシグナルが房室接合部のどこまで突き刺さるかは、出る場所やタイミングなどいくつかの要素が関係します。ただ、「A-V」フロア領域の一部が強制的に興奮させられた結果、その後しばらく興奮できない“休憩時間”に入るということが大事。“グサッ”と剣でやられて“ウギャー”となって、しばらく傷を癒やすのに時間を必要とし、その時間が「不応期」(refractory period)ということになります。このようにPVCからの“上突き”は体表面心電図には表れない、いわば“空想の産物”(正式名称は「不顕(または潜伏)伝導」[concealed conduction])なのですが、不整脈を理解する“キモ”の一つです。この用語は初学者には難しいかと思うので、 “上突き”でいいと思います。これより以下の話は、やや古典的な概念だと仰せの方もいるかもしれませんが、“ニバイニバーイの法則”を満たすPVCの性質を理解するのに便利なのでご紹介します。“2種類の不応期とPVCラダーグラム”不応期には2つの時相があります。まず1つ目。興奮した(“上突き”された)直後は“永遠の眠り”と思わせるような「絶対不応期」(ARP:absolute refractory period)と呼ばれる時期。この間は、いかに大きな声で呼ぼうと、体を揺り動かそうと、電気ビリビリを流そうとも房室接合部の心筋は目覚めません。この時期が一定時間続いた後、心筋たちは「相対不応期」(RRP:relative refractory period)に突入します。これが2つ目の不応期になります。房室接合部は、この時期も基本“居眠り中”で、つまり上(心房)からの電気刺激は通れないはずなのですが、タイミングなどの関係で“寝ぼけマナコ”で反応することがあります。その場合、通常よりはだいぶ減速はするものの、洞結節からの“使者”の通過を許すことになるのです。通常のPVCの多くは、回復周期が「代償性」となり、PVCを挟むR-R間隔*が洞周期の2倍となります(ニバイニバーイの法則)。そのためには、洞結節がほかに乱されず己のペースで興奮し続けることと“洞結節発”の興奮が1回遮断される必要があります。前者はPACと違って、PVCでは「リセット現象」が起こらないことで、そして後者はシグナルが房室接合部の「絶対不応期」にぶつかることで理解すればいいのです。*:より正確には「P-P間隔」ですが、おおむね「R-R間隔」で代用できるのでした(第21回)。ラダーグラムでは、PVCからの“上突き”が残す不応期の「絶対」ゾーン(ARP)にぶつかる様子を描きます。直後の「相対」ゾーン(RRP)ではありませんよ。そして同時に、PVCの影響は「房室接合部(A-V)」フロアにとどまり、洞結節の興奮ペースに影響を与えないことも理解してもらえるでしょうか。これが“干渉”しない“上品さ”なんです。以上の様子を(図5)に示すので、カラー線部分にご注目下さい。(図5)PVCラダーグラム~不応期とともに~画像を拡大する1回こそ絶対不応期の「壁」に阻まれ遮断されたものの、左から4つ目の洞結節シグナルは予定通りP波を作り、そして房室接合部から心室に通じて何もなかったかのように涼しい顔で“いつも通り”のQRS波を作ります。これを理解すれば、もう皆さんは回復周期が代償性を示す“上品な”PVCのラダーグラムを描くことができ、自然と“ニバイニバーイの法則”も理解できているはずです。「不応期」の帯を取って遠目で眺めれば、実は上からと下からの刺激が“ぶつかる”感じに相違ない様子が描写されており(図4)、未熟なかつてのDr.ヒロのイメージもあながち悪くはないのかもしれません。このラダーグラムを一度図示しておけば、PVCの重要な性質も理解でき、かなり強固な記憶として定着するかと思います。“「相対不応期」も少しだけ”ちなみに、「相対不応期」のほうはと言えば、「間入性(interpolated)PVC」と呼ばれる、やや特殊なPVCを理解するのに役立ちます。「間入性PVC」では、PVCを挟む洞収縮の距離(R-R間隔)が“ほぼ洞周期”、つまりイチバイ(1倍)に近くなります*2。きれいに“ピッタリ2倍”の「代償性PVC」とは異なり、実際には“1倍ちょっと”のR-R間隔になるケースが大半で、そのカラクリを理解するカギが「相対不応期」があります。折をみて、この点に関しても解説したいですが、今回はこれで終わりましょう。*2:P波が見えないこともありますが、「P-P間隔」なら“ピッタリ1倍”、つまり洞周期そのものです。Take-home MessagePVC起源からの“上突き”は房室接合部に不応期を残す。“ニバイニバーイの法則”も絶対不応期を意識したラダーグラム描画で理解できる!【古都のこと~三明院】三明院(さんめいいん)は、三宅八幡宮から徒歩数分の場所にあります。初めて八幡宮に行った時に、道の途中でひときわ目立つ朱色の建物に遭遇しました。神社関連施設なのかと思ったら、こちらは真言宗の「お寺」でした。明治39年(1906年)開山と京都の中では比較的新しい寺院で、当然ながら弘法大師が本尊です。ボクが気になった仏塔は多宝塔*といい、「宝(方)形造」と呼ばれる“四角錐屋根”型の上に相輪が立ち、四隅に鎖をかけるのがお決まりのデザインなのだそう。この三明院は“隠れ紅葉スポット”で、多宝塔の朱色味がより一層増して感じられる秋にぜひまた訪れようと思いました。おっと、本堂でのお参りも忘れずにね。*:釈迦と多宝如来の二仏を祀る。毎月1日にご開帳される。

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がん次世代シークエンス、シンプル解説【Oncologyインタビュー】第12回

出演:国立がん研究センター研究所 ゲノム生物学研究分野 分野長 河野 隆志氏次世代シークエンスを用いたがん遺伝子パネル検査が保険償還された。次世代シークエンスとは何か、がん遺伝子パネル検査とは何かを、がんゲノム医療のスペシャリスト国立がん研究センター研究所の河野 隆志氏がシンプルに解説する。※当コンテンツは、一部の会員の方に期間限定でアップ付き配信していましたが、当配信ではアップは付きませんので、ご了承ください

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加熱式タバコに含まれる未知の物質【新型タバコの基礎知識】第6回

第6回 加熱式タバコに含まれる未知の物質Key Points加熱式タバコには、タバコ会社の報告よりも実際には多くの化学物質が含まれている。これらの化学物質の有害性はデータが不十分で、未知なものが多い。第5回では、加熱式タバコからも紙巻タバコと同じぐらい多くの種類の有害物質が出ているということをご紹介しました。しかし、これらも加熱式タバコに含まれる有害物質の中の、一部に過ぎません。2012年に米国食品医薬品局(FDA)は、タバコ製品から出る93種類の有害物質を指定し、これらについては調査・報告することをタバコ会社に求めました。しかし、フィリップモリス社が米国でアイコスを申請*1した際に報告した化学物質は58種類で、ここにはFDAが求めた有害物質93種類のうちの40種類しか含まれなかったという事実があります*2。このとき報告されなかった53種類のうちの50種は、発がん性物質でした1)。実は、フィリップモリス社はこの米国での申請過程における補足資料で、113種類の化学物質が測定されたという結果を一度は報告していました(前述の58種類のうちの56種類の他に、それ以外の57種類が報告されていた)。同社は、報告した58種類のうちの9種の有害物質ではアイコスの方が量が少なかったことを根拠にして、“紙巻タバコと比べて有害物質が約90%低減している”と宣伝・広告しており、この9種類以外の物質量については言及していないのです。補足資料で報告されたものの、その後同社が報告しなかった57種類の化学物質について、その含有量をみると、実は、1種類を除く56種類の化学物質で、アイコスから紙巻タバコよりも多くの量が検出されていました。22物質では3倍以上になっており、7物質では10倍以上になっていたのです。これらの化学物質の有害性はデータが不十分で未知なものが多いのが現状です。しかし、それらの物質そのもの、そして複合的に作用することによる毒性が、アイコス全体の有害性を構成する主成分となる可能性もあります。

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統合失調症におけるムスカリン性アセチルコリン受容体の役割

 統合失調症の病態生理において、ムスカリン受容体機能障害が重要な役割を担っていることが示唆されている。最近、神経伝達物質受容体に対する免疫反応性が、統合失調症のいくつかのケースにおいて、病原性の役割を担う可能性についても明らかとなっている。オーストラリア・クイーンズランド大学のAlexander E. Ryan氏らは、統合失調症におけるムスカリン受容体機能障害のケースをレビューし、この機能障害からムスカリン受容体標的抗体の開発が支持されるかについて検討を行った。The Australian and New Zealand Journal of Psychiatry誌オンライン版2019年7月26日号の報告。 統合失調症におけるムスカリン受容体の研究および抗ムスカリン性アセチルコリン受容体抗体の存在と潜在的な役割についてレビューを行った。 主な結果は以下のとおり。・ムスカリンシグナル伝達の変化または欠乏が、統合失調症のいくつかの重要な臨床的特徴の根底にあるとのエビデンスが蓄積されている。・統合失調症における抗ムスカリン性アセチルコリン受容体抗体について調査した研究は比較的少ないが、このような抗体が一定の割合の患者に存在することが一貫して認められた。・統合失調症において、これらの抗体が病原性作用を有する、または未知の病態生理学的過程に対するバイオマーカーとして存在することが示唆された。 著者らは「高レベルの抗ムスカリン性アセチルコリン受容体抗体の存在は、統合失調症患者のサブグループを特定し、病因や臨床症状、治療に役立つ可能性がある。これまでの研究では、とくに抗精神病薬治療を長期にわたり受けている慢性期統合失調症患者を対象としている。抗精神病薬は免疫機能を調整し、受容体濃度を調整するため、今後の研究では、初回エピソード統合失調症患者における抗ムスカリン抗体の存在をスクリーニングすることが推奨される」としている。

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乳がんリンパ浮腫のセルフケア、Webとパンフレットどちらが効果的

 乳がん治療関連リンパ浮腫(breast cancer-related lymphedema:BCRL)患者のケアに対するウェブベースのマルチメディアツールを用いた介入(Web Based Multimedia Intervention:WBMI)の結果が示された。米国・ヴァンダービルト大学のSheila H. Ridner氏らによる検討で、WBMIを受けた患者は、対照(パンフレットのみ)より生物行動症状(気分)が改善し、介入に対する知覚価値も高いことが示されたという。ただし、WBMI群は完遂率が低く、他の評価項目については大きな違いはみられなかったとしている。Journal of Women's Health誌オンライン版2019年7月17日号掲載の報告。 研究グループは、BCRLを有する女性患者の症状負荷、機能、心理面の健康、費用および腕の体積に対するWBMIの効果を評価する目的で、患者をWBMI群(80例)および対照群(80例)に無作為に割り付けた。WBMIは12項目から成り、それぞれ約30分を要した。対照群へは、パンフレットを提供するのみで、読むのに約2時間を要した。 介入前および介入後1、3、6および12ヵ月時に症状負荷、心理面の健康、機能および経費に関するデータを収集し、45例のサブグループは介入前および介入後3、6および12ヵ月時に腕の細胞外液量を生体インピーダンス法で測定した。また、介入に対する知覚価値についても調査した。 主な結果は以下のとおり。・介入の完遂率は、WBMI群58%、対照群77%で、統計学的に有意な差があった(p=0.011)。・Lymphedema Symptom Intensity and Distress Scale-Arm(LSIDS-A)に基づく症状の評価では、生物行動症状(気分)数はWBMIで減少を示したが、その他の症状については2群間で統計学的な有意差がなかった(効果量:0.05~0.28、p>0.05)。・他の変数の変化については、2群間で有意差は観察されなかった。・WBMIは、パンフレットよりもセルフケア情報が優れていると認識されていた(p=0.001)。 WBMIは生物行動症状を改善し、より質の高い情報と認識された。他の変数において統計的な有意に至らなかったのは、WBMI患者の介入完遂率の低さが影響している可能性があると筆者は結んでいる。

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心房細動を洞調律から検出、AI対応ECGによるPOCT/Lancet

 新たに開発された人工知能(AI)対応心電図(ECG)アルゴリズムを用いた臨床現場即時検査(point of care test:POCT)は、標準12誘導ECGで洞調律の集団の中から心房細動患者を同定できることが、米国・メイヨー・クリニックのZachi I. Attia氏らの検討で示された。研究の成果は、Lancet誌オンライン版2019年8月1日号に掲載された。心房細動は無症状のことが多いため検出されない場合があるが、脳卒中や心不全、死亡と関連する。既存のスクリーニング法は、長期のモニタリングを要するうえ、費用の面と利益が少ないことから制限されている。機械学習を用い、迅速かつ安価なPOCTを開発 研究グループは、機械学習を用いて、心房細動患者を同定するための迅速かつ安価なPOCTを開発する目的で、後ろ向きのアウトカム予測解析を行った(特定の研究助成は受けていない)。 畳み込みニューラルネットワーク(CNN)を用い、標準12誘導ECG(10秒)で洞調律の患者において、心房細動発現のECG上の特徴を検出するAI対応ECGを開発した。 対象は、1993年12月31日~2017年7月21日の期間に、メイヨー・クリニックのECG検査室で、仰臥位での標準12誘導ECGを1回以上受け、洞調律であった年齢18歳以上の患者であった。ECGで1回以上の心房細動または心房粗動の調律がみられた患者を心房細動とした。全患者およびそのECGのデジタルデータを、訓練データセット、検証データセット、テストデータセットに、7対1対2の割合で無作為に割り付けた。 テストデータセットに適用する確率閾値を選択するために、検証データセットの受信者動作特性曲線(ROC)の曲線下面積(AUC)を算出した。AUCおよび精度、感度、特異度、F1値とともに、その両側95%信頼区間(CI)を算出し、テストデータセットを用いてモデル性能を評価した。洞調律ECG上のわずかなパターンを検出 18万922例の64万9,931件の洞調律ECGが解析に含まれた。12万6,526例(ECGデータ45万4,789件、患者1例当たりのECG件数3.6[SD 4.8]件)が訓練データセットに、1万8,116例(6万4,340件、3.6[SD 4.8]件)が検証データセットに、3万6,280例(13万802件、3.6[SD 4.9]件)がテストデータセットに割り付けられた。訓練データセットを用いてモデルが構築された。 全体の平均年齢は60.3(SD 16.5)歳、男性が8万9,791例(49.6%)であり、モデルにより1万5,419例(8.5%)で1回以上の心房細動が記録された。検証データセットでは1,573例(8.7%)で、テストデータセットでは3,051例(8.4%)で、それぞれ1回以上の心房細動が検出された。 個々の患者の初回洞調律ECGに関してモデル性能を評価したところ、AI対応ECGによる心房細動検出のROC AUCは0.87(95%信頼区間[CI]:0.86~0.88)、感度は79.0%(77.5~80.4)、特異度は79.5%(79.0~79.9)、F1値は39.2%(38.1~40.3)であり、全体の精度は79.4%(79.0~79.9)であった。 同じ患者の関心期間(心房細動が記録されていない患者は初回ECG施行日以降、記録されている患者は記録されたECG施行日の31日前以降)の最初の1ヵ月に得られたすべての洞調律ECGに関して、モデル性能を評価すると、ROC AUCが0.90(0.90~0.91)へと改善し、感度は82.3%(80.9~83.6)、特異度は83.4%(83.0~83.8)、F1値は45.4%(44.2~46.5)、全体の精度は83.3%(83.0~83.7)へと、それぞれ向上した。 著者は、「これらの知見は、洞調律ECG上のわずかなパターンが、心房細動の発現を示唆する可能性があるとの仮説を支持するものである」とまとめ、「検出されずに見落とされる可能性のある心房細動患者を、安価で非侵襲的、かつさまざまな環境で利用可能なPOCTを用いて同定することは、心房細動のスクリーニングや、原因不明の脳卒中の既往歴のある患者のマネジメントにおいて、重要な実臨床上の意義を有する」と指摘している。

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慈善団体の患者支援プログラム、経済的困窮者の多くが対象外/JAMA

 米国の大規模な独立慈善団体が運営する疾患別患者支援プログラム(274件)の97%が、無保険患者を対象外としており、また、プログラムがカバーしている医薬品の年間薬剤費はカバー対象外の医薬品と比べ3倍以上であることが、同国ジョンズホプキンス大学のSo-Yeon Kang氏らの調査で示された。研究の詳細は、JAMA誌2019年8月6日号に掲載された。米国の独立慈善団体による患者支援プログラムは、高額な処方薬への患者アクセスを改善するが、最近の連邦政府の調査では、薬剤費の増大や反キックバック法違反の疑いが生じている。また、これらプログラムの構成や患者の適格基準、カバーされる医薬品の詳細はほとんど知られていないという。6つの慈善団体のプログラムの記述的横断研究 研究グループは、米国の独立慈善団体による患者支援プログラムの適格基準と、プログラムによってカバーされている医薬品の詳細を調査する目的で、記述的横断研究を行った(Arnold Venturesの助成による)。 調査対象は、2018年において、メディケア加入者に限定せずに患者支援プログラムを提供する、6つの大規模な独立慈善団体(CancerCare Co-Payment Assistance Foundation、Good Days、The HealthWell Foundation、The PAN Foundation、The Patient Advocate Foundation Co-Pay Relief、Patient Services Incorporated)であり、274件の疾患別の患者支援プログラムを提供していた。 医薬品を同定するために、Medicare Part D Drug Spending Dashboardで報告されるあらゆる使用医薬品と、2016年のメディケア受給者1人当たりの支出額が1万ドル超であったあらゆる特許切れ先発医薬品についてサブグループ解析を行った。 主要アウトカムは、患者支援プログラムの特性(支援のタイプ[支払金の補助、健康保険料補助]、健康保険要件の有無、所得の適格条件など)とした。副次アウトカムは、患者支援プログラムがカバーしている医薬品のコスト(薬剤費)、およびカバーしている高額な特許切れ先発医薬品vs.代用可能な後発医薬品の比較などであった。プログラム対象医薬品の年間薬剤費中央値は1,157ドル、対象外医薬品は367ドル 解析に含まれた6つの独立慈善団体の2017年の収入総額は、2,400万~5億3,200万ドルであった。また、患者支援プログラムの支出総額は2,400万~3億5,300万ドルであり、収入に占める支出の割合は平均86%であった。 これらの団体によって提供された274件の患者支援プログラムのうち、168件(61%)が支払金補助の提供のみを、9件(3%)が健康保険料補助の提供のみを行っており、90件(33%)はいずれか一方を選択可能であった。また、最も多かった保障対象の治療領域はがんまたはがん治療関連症状(113件[41%])と、遺伝性疾患/希少疾患(93件[34%])であった。 267件(97%)のプログラムが、適格基準として保険加入を求めていた(無保険の患者は対象外)。また、259件(94%)のプログラムが、所得(年収)要件として連邦貧困水準の400%(119件[43%]、個人の場合は4万8,560ドル、4人家族では10万400ドル)または500%(140件[51%]、6万700ドル、12万5,500ドル)を設けていた。 プログラム(123件)がカバーしている医薬品の年間受益者当たり薬事費の中央値は1,157ドル(IQR:247~5,609)と、カバー対象外の同薬剤費367ドル(100~1,500)の315%に相当し、高額であった。 特許切れの先発医薬品(薬剤費>1万ドル)は、平均3.1(SD 2.0)件の患者支援プログラムでカバーされていたのに対し、後発医薬品をカバーするプログラムは平均1.2(1.0)件であった。たとえば、ボルテゾミブの先発品をカバーするプログラムは8件であったのに対し、その後発品をカバーするプログラムは1件のみだった。 著者は「これらの知見により、プログラムのいくつかの特徴が、経済的に困窮した患者への有益性を制限し、高額な薬剤の使用を強化している可能性が示唆される」としている。

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収縮期血圧、拡張期血圧ともその上昇は心血管系発症リスクであることを確認(解説:桑島巖氏)-1099

 本論文は130万例という膨大な症例数の観察研究から、収縮期/拡張期血圧の心血管合併症発症リスクを高血圧の定義を130/80mmHg、140/90mmHgに分けて検討したものである。 結果としていずれの定義であっても収縮期血圧、拡張期血圧は、各々独立した発症リスクの予測因子であることが示され、収縮期血圧のリスクは拡張期血圧よりも予測リスクが高いことを証明した。 観察研究において収縮期血圧と拡張期血圧とを各々分け、心血管リスク評価にあたってはその解釈に十分に注意する必要がある。なぜなら加齢変化により収縮期血圧は上昇傾向となり、拡張期血圧は下降傾向をたどるからである。すなわち高齢者により脈圧が大きくなることは多くの臨床家が経験していることである。 観察疫学研究では必ず65歳前後からの心血管疾患発症リスクは、収縮期血圧が上昇するほど右肩上がりに高まる一方で、拡張期血圧は低くなるほど高まりJカーブ現象は必ず認められるのである。しかしこの現象をもって拡張期血圧を80mmHg以下に下げることは危険であるとの誤った判断をして一世を風靡したCruickshank博士(Cruickshank JM. BMJ. 1988;297:1227-1230.)に代表されるような専門医がわが国でも非常に多かったのである。 疫学研究での結果はランダム化試験によって確認される必要があるが、事実Jカーブ現象についてもSPRINT研究では認められていない。 観察研究である本論文でも拡張期血圧と血管リスクとの間にJカーブ現象が観察されているが、その関連性においては年齢およびその他共変量のいずれか1つの関与が示唆されていると述べていることから経年的変化によって生じた現象である事を示唆している。 拡張期血圧最低四分位範囲の対象例では、収縮期血圧の影響がより大きいとの結論を導きだしているのは妥当な解釈といえよう。

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デュラグルチドは心血管イベント低リスク患者においても有用である(解説:住谷哲氏)-1103

 GLP-1受容体作動薬を用いた心血管アウトカム試験CVOTは、経口セマグルチドによるPIONEER 6を除くと、これまでにELIXA(リキシセナチド)、LEADER(リラグルチド)、EXSCEL(徐放型エキセナチド)、SUSTAIN-6(セマグルチド)、Harmony Outcomes(アルビグルチド)の5試験が報告されている。これら5試験と比較して本試験REWINDの特徴は、(1)非劣性試験ではなく優越性試験である、(2)心血管イベントの既往のない1次予防患者が多く含まれている(2次予防患者は全体の31.5%)、(3)女性が多く含まれている(全体の46.3%)、(4)HbA1cが比較的低い(平均7.3%)、(5)観察期間が長い(中央値5.4年)が挙げられる。対象患者の糖尿病罹病期間は10.5年であり、80%以上がメトホルミン、45%以上がSU薬を投与されていることから初回治療患者ではないが、心血管イベントリスクの低い、われわれが日常診療で出会う患者像に比較的近いといって良い。CVOTはすべてランダム化比較試験であるため、介入の有効性efficacy、因果関係causalityを明らかにすることができるが、一般化可能性generalizabilityに問題があるとされている。これまでに発表されたGLP-1受容体作動薬のCVOTの結果が心血管イベントリスクのきわめて高い患者で得られたのに対して、REWINDはより低リスクである患者が多く含まれているため、その結果はわれわれの日常臨床で多くの患者に適用できる可能性がある。 主要評価項目の3-point MACEはプラセボ群の663例(13.4%、2.7件/100人年)に比べ、デュラグルチド群は594例(12.0%、2.4件/100人年)、ハザード比[HR]:0.88、95%信頼区間[CI]:0.79~0.99、p=0.026とデュラグルチド群で有意に減少した。その内訳は、非致死的脳卒中(HR:0.76、95%CI:0.61~0.95、p=0.017)はデュラグルチド群で有意に減少したが、心血管死(0.91、0.78~1.06、p=0.21)と非致死的心筋梗塞(0.96、0.79~1.16、p=0.65)は両群間に有意差を認めなかった。さらに総死亡も両群間に差はなかった(デュラグルチド群536例[10.8%]vs.プラセボ群592例[12.0%]、HR:0.90、95%CI:0.80~1.01、p=0.067)。 SGLT2阻害薬のCVOTの結果はすべての試験でほぼ一貫した結果が得られているが、GLP-1受容体作動薬の結果は各試験間のばらつきが大きい印象がある。それを長時間作用型vs.短時間作用型、ヒトGLP-1由来vs. exendin-4(トカゲ)由来などの各薬剤間の差に基づいて説明する意見もあるが、筆者は各試験デザインの差、特に患者背景と観察期間の差ではないかと考えている。つまり、患者背景と観察期間を一致させて各薬剤を用いた試験を実施すれば、ほぼ同じような結果が出るだろうと予測している。もしそうであれば、注射回数は少ないほうが良いと思われるので、週1回製剤であるデュラグルチドは他剤に比べて有利だろう(持効型エキセナチドはデバイスと適応の点で難がある)。問題は日本での投与量上限が0.75mgであり、本試験で使用された1.5mgではない点にある。同じGLP-1受容体作動薬であるリラグルチドも長らく投与量上限が0.9mgに設定されていたが、先日国際標準量である1.8mgに変更された。なぜ日本人だけが投与量を少なくする必要があるのか筆者には不明であるが、REWINDのエビデンスを活用するためにも一日でも早く投与量上限が1.5mgに変更されることを期待したい。

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医学論文史上、最凶最悪の誤嚥論文!【Dr. 倉原の“おどろき”医学論文】第145回

医学論文史上、最凶最悪の誤嚥論文!いらすとやより使用さて、この論文を紹介するにあたり、虫が嫌いな人はご注意を! 満を持して登場する、私が数多く見てきた中で、最凶最悪の誤嚥論文です。心して読めッ!Vazirani J, et al.A complicated cockroach-ectomy.Respirol Case Rep. 2018;6:e00332.発作性心房細動の既往歴がある42歳男性がゴキブリを吸い込んだ! ということで救急部を受診しました。キャーーーー!!! もうこの時点でアウトーッ!!ゴキブリを吸い込んでしまった後、胸部の圧迫感、息切れ、そして肺の中を虫が動き回る感覚を訴えたそうです。いや、吸い込むってどういうことだよ、と突っ込みたくなるのですが、……おええええ! 想像もしたくない。バイタルサインはおおむね問題なかったのですが、左側の呼吸音が減弱し、喘鳴を聴取しました。ゴキブリ喘鳴。しかし、胸部レントゲン写真では特段異常はみられませんでした。この時点では、「うーん、ゴキブリを吸い込んだ? まさか患者さんの狂言じゃないだろうな…」と主治医も思っていたかもしれません。念のため…と気管支鏡検査を行ったところ、まずちぎれたゴキブリの下半分(腹部以下)が舌区に深く入りこんでおり、その他のゴキブリの破片も気管内に散在していました。疑ってスイマセン、本当でしたね…。見たくない…。見たくないよぉ……!論文には、絶対に見てはいけない「endobronchial cockroach(気管支内ゴキブリ)」の写真が掲載されています。見たい人はどうぞ、PubMedでフリーで読めます。処置の途中、急激に酸素飽和度が低下しました。ゴキブリによるアレルゲン曝露なのか、喉頭痙攣か、とにかく処置が継続できませんでした。いったん中断し、酸素化改善を待つしかありませんでした。その後、残りのゴキブリは咳嗽とともに喀出されたものもあったそうです。状態が落ち着いてきたので、念のため全身麻酔下でもう一度気管支鏡で摘出し、晴れて気管支からゴキブリは消え去りました。ふぅ、やれやれ。その後、患者さんは発熱し、血培からMicrococcus luteusが検出されました。踏んだり蹴ったり。泣きっ面に蜂。ゴキブリの持っていた腐敗菌だったのかどうかはわかりませんが、しかるべき抗菌薬によって治療されました。さて、ゴキブリ誤嚥は、小児で過去に1例報告されています1)。小児や精神科疾患の患者さんでは仕方ないのかなという気持ちはありますが、基本的に元気な成人がこんなもん誤嚥することはないはずです。なぜ誤嚥したのか結局よくわからなかったためか、論文のDiscussionではミクロコッカス菌血症やアレルギーの話が主体になっています(笑)。1)Marlow TJ, et al. J Emerg Med. 1997;15:487-489.

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認知機能低下と入院の関連、外科と内科で違いは/BMJ

 手術による2泊以上の入院は、平均的な認知機能の経過(the cognitive trajectory)にわずかながら影響を及ぼしたが、非外科的入院ほどではなかった。重大な認知機能低下のオッズは、外科手術後で約2倍であり、非外科的入院の約6倍よりも低かったという。米国・ウィスコンシン大学のBryan M. Krause氏らが、加齢に伴う認知機能の経過と大手術との関連を定量化する目的で行った前向き縦断的コホート研究の結果を報告した。手術は長期的な認知障害と関連する可能性があるが、これらの関連性を検討した先行研究では、認知機能低下が加齢に伴い加速するという認知機能の経過を考慮しておらず、方法論的な問題のため一貫した結果が得られていなかった。著者は、「本研究の情報は、インフォームドコンセントの際に、手術による健康上の有益性の可能性と比較検討されるべきである」とまとめている。BMJ誌2019年8月7日号掲載の報告。Whitehall IIコホート研究の参加者を対象に19年間追跡 研究グループは、Whitehall II研究において1997~2016年の間に認知機能の評価を5回行った成人7,532例を対象に、Hospital Episode Statistics(HES)データベースを用いて、手術と加齢に伴う認知機能の経過との関連を解析した。 注目した曝露は入院で、追跡期間中の2泊以上の入院を“大きな入院”と定義し、主要評価項目は論理的思考、記憶、音素流暢性(phonemic fluency)、意味流暢性(semantic fluency)を含む認知機能検査一式から得られた全般的認知機能スコア(global cognitive score)とした。 ベイズ線形混合効果モデルを用いて入院後の加齢に伴う認知機能の経過における変化を算出するとともに、手術によって引き起こされた重大な認知機能低下(最初の3回の認知機能評価データに基づく予測経過から標準偏差1.96を超えると定義)のオッズも同様に算出した。重大な認知機能低下のオッズは、外科的入院で約2倍、内科的入院で約6倍 加齢に伴う認知機能の経過を考慮した後でも、大手術(“大きな入院”を要した手術)はわずかな認知機能低下と関連があり、平均して5ヵ月未満の加齢に相当した(95%信用区間[CrI]:0.01~0.73)。一方、内科疾患および脳卒中による入院は、それぞれ1.4年(95%CrI:1.0~1.8)と13年(95%CrI:9.6~16)の加齢と関連していた。 重大な認知機能低下は、非入院患者の2.5%、外科入院患者の5.5%、内科入院患者の12.7%で確認された。“大きな入院”をしていない患者と比較すると、外科的または内科的イベントを伴う"大きな入院"をした患者は、認知機能の予測経過からかなり低下する傾向にあった(外科的入院オッズ比:2.3[95%CrI:1.4~3.9]、内科的入院オッズ比:6.2[95%CrI:3.4~11.0])。 なお、著者は研究の限界として、因果関係は不明で、麻酔投与のデータは限られており、長期的な認知機能の変化における麻酔の影響は評価していないことなどを挙げている。

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妊娠性肝内胆汁うっ滞症、ウルソデオキシコール酸常用は再考を/Lancet

 妊娠性肝内胆汁うっ滞症の妊婦をウルソデオキシコール酸で治療しても、周産期の有害転帰は低下しないことから、ウルソデオキシコール酸の常用は再考されるべきである。英国・キングス・カレッジ・ロンドンのLucy C. Chappell氏らが、イングランドとウェールズの33施設で妊娠性肝内胆汁うっ滞症の妊婦を対象に実施した多施設共同二重盲検無作為化プラセボ対照比較試験(PITCHES)の結果を報告した。妊婦の皮膚掻痒と血清胆汁酸濃度の上昇で特徴づけられる妊娠性肝内胆汁うっ滞症は、死産、早産、新生児治療室への入室の増加と関連がある。ウルソデオキシコール酸はこの治療に広く使用されているが、先行研究では症例数が限られており統計学的な有意差もなく、エビデンスは不十分であった。Lancet誌オンライン版2019年8月1日号掲載の報告。ウルソデオキシコール酸群vs.プラセボ群を検討 研究グループは、18歳以上、妊娠週数20週~40週6日の単胎または双胎の妊婦で、致死的胎児異常がない妊娠性肝内胆汁うっ滞症患者を、ウルソデオキシコール酸群またはプラセボ群に1対1の割合で無作為に割り付け、ウルソデオキシコール酸500mg錠を1日2錠投与した。投与量は、1日最低1錠、最大4錠の範囲で担当医師の裁量により増減可とし、登録時から出産まで治療を継続した。 主要評価項目は、周産期死亡(無作為化後の子宮内胎児死亡または生後7日以内の新生児死亡)、早産(妊娠週数37週未満)、4時間以上の新生児治療室入室(出産から退院まで)の複合エンドポイント(新生児は複数該当時も1例としてカウント)とし、intention-to-treat解析を行った。ウルソデオキシコール酸群とプラセボ群で周産期の有害転帰に有意差なし 2015年12月23日~2018年8月7日に605例が登録され、ウルソデオキシコール酸群305例、プラセボ群300例に無作為に割り付けられた。主要評価項目の解析対象は、ウルソデオキシコール酸群が妊婦304例および新生児322例(妊婦1例と新生児2例についてはデータ使用の同意が撤回された)、プラセボ群がそれぞれ300例および318例であった。 複合エンドポイントのイベントは、ウルソデオキシコール酸群で新生児322例中74例(23%)、プラセボ群で新生児318例中85例(27%)に発生した(補正リスク比0.85、95%信頼区間[CI]:0.62~1.15)。重篤な有害事象は、ウルソデオキシコール酸群で2例、プラセボ群で6例報告され、治療に関連する重篤な有害事象は確認されなかった。 著者は、プラセボ群におけるイベント発生率が予想よりも低かったこと、症例数が少なく検出力が不足していたことなどを研究の限界として挙げている。

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病院ランキングと患者アウトカムは関連する?/JAMA Surgery

 出版不況と言われる中、相変わらず病院ランキング本だけは堅調と言われている。米国の病院ランキング本をめぐる興味深いエビデンスが報告された。米国・カリフォルニア大学アーバイン医療センターのSahil Gambhir氏らが、US News & World Report(USNWR)掲載の年間ランキングが最高位の病院について、ランキング外の病院と比較した結果、高度な腹腔鏡下消化器外科手術に関する病院ランキングデータと、良好な患者アウトカムは関連していないことが示された。手術件数は3倍の差があったが、その量的格差と患者アウトカム改善の関連は認められなかったという。JAMA Surgery誌オンライン版2019年7月31日号掲載の報告。 研究グループは、消化器外科手術に関してUSNWRで最高位ランクの病院が、ランク外の病院と比較して、一般的な高度腹腔鏡下消化器手術について患者のアウトカムを改善したかを調べた。 検討には、米国の大学病院およびその関連病院について、入院患者の情報(入院治療情報、臨床情報、費用情報)が含まれるVizient社のデータベースを使用した。2017年1月1日~12月31日に行われた高度腹腔鏡下消化器手術に関する、USNWR最高位ランク病院とランク外病院のデータを入手し解析した。対象とした手術は、減量手術、大腸および食道裂孔ヘルニアの手術であった。 評価項目は、院内死亡率、死亡率指標(予想に対して観察された死亡率の比)、重篤な合併症、入院期間、コストなどであった。 主な結果は以下のとおり。・合計5万1,869件の高度腹腔鏡下消化器手術が、351の大学医療センターおよび関連病院で施行された。1万6,296件(31.4%)が最高位ランク41病院で施行されたものであり、3万5,573件(68.6%)がランク外310病院での施行であった。・年間症例件数は、最高位ランク病院397件に対し、ランク外病院は114件であった。・最高位ランク病院とランク外病院の間に、院内死亡率(0.04% vs.0.07%、p=0.33)、重篤な合併症(1.06% vs.1.02%、p=0.75)について有意差は認められなかった。・ランク外病院と比較して最高位ランク病院で施行される高度腹腔鏡下消化器手術は、平均コストがより高値であり(7,128ドル vs.7,742ドル、p<0.01)、平均入院期間がより長期であった(2.38日 vs.2.73日、p<0.01)。

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うつ病に対するブレクスピプラゾール補助療法~メタ解析

 藤田医科大学の岸 太郎氏らは、うつ薬治療に奏効しなかったうつ病患者に対するブレクスピプラゾール補助療法(0.5~3mg/日)の二重盲検ランダム化比較試験を含むシステマティックレビューおよびメタ解析を実施した。The International Journal of Neuropsychopharmacology誌オンライン版2019年7月27日号の報告。 アウトカムは、奏効率(主要)、寛解率(副次)、Montgomery Asbergうつ病評価尺度(MADRS、副次)、シーハン障害尺度(SDS、副次)、臨床全般印象/重症度(CGI-I/CGI-S)、中止率、有害事象とした。6週目のデータにおけるサブグループメタ解析において、2mg/日超または2mg/日以下の投与量でアウトカムの比較を行った(2mg/日が推奨投与量)。 主な結果は以下のとおり。・9試験、3,391例が抽出された。・任意の用量におけるブレクスピプラゾール補助療法は、プラセボと比較し、奏効率(リスク比[RR]:0.93、95%信頼区間[CI]:0.89~0.97、NNT:17)、寛解率(RR:0.95、95%CI:0.93~0.98、NNT:25)、MADRSスコア(標準化平均差[SMD]:-0.20、95%CI:-0.29~-0.11)、SDSスコア(SMD:-0.12、95%CI:-0.21~-0.04)、CGI-I/CGI-Sが優れていた。一方で中止率は高く、アカシジア、不眠、情動不安、傾眠、体重増加が認められた。・投与量が2mg/日超(0.96)では、2mg/日以下(0.89)と比較して奏効率が有意に高かった。さらにプラセボと比較すると、アカシジア(RR:4.58)、傾眠(RR:7.56)の発生率が高く、体重増加ともわずかな関連が認められた(RR:3.14、p=0.06)。 著者らは「うつ薬治療に奏効しなかったうつ病患者に対するブレクスピプラゾール補助療法は有効である。6週目において、投与量2mg/日以下は2mg/日超よりも、優れたリスクとベネフィットのバランスが示された」としている。■「ブレクスピプラゾール」関連記事ブレクスピプラゾールのリバウンド現象抑制作用

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HIV感染症の治療も、過ぎたるは猶及ばざるが如し(解説:岡慎一氏)-1098

 HIV感染症治療で、4剤併用療法と3剤併用療法のどちらが効果があるかを比較したRCTに関するsystematic review and meta-analysisである。 1987年初めて開発された抗HIV薬がAZTであった。当然単剤治療であり、その治療効果は半年しか持たなかった。1990年代に入り、AZT+ddIやAZT+3TCなどの核酸系逆転写酵素阻害薬2剤による併用療法が可能になった。しかし、やはりその効果は長く続かなかった。薬剤耐性ウイルスが原因であった。ところが、1996年後半からプロテアーゼ阻害薬もしくは非核酸系逆転写酵素阻害薬が追加され3剤併用療法になった途端、HIV感染者の予後は劇的に改善した。耐性ウイルスが出にくくなったからである。しかし、当時の3剤併用療法も現在のものに比べれば治療効果は劣り、治療失敗例も少なからずあった。このため、4剤併用療法にしてさらなる改善を目指したのであろう。解析された論文の多くは2010年以前のものである。多くのプロトコールが考えられたのは2000年以前であろう。今では考えられないような、いやむしろ禁忌といえるような組み合わせの併用療法が散見される。当然結果は3剤併用療法を上回ることはなかった。もし、もっと続けていれば、重篤な副作用が多発したであろう。過ぎたるは猶及ばざるが如し、である。 現在の治療薬の進歩は著しく、1日1回1錠で治療は完結する。もちろん、3つの薬剤の成分が合剤となっているのである。毎日服用してくれさえすれば、ほぼ治療失敗のことを考える必要もなくなっている。むしろ、この強力な薬剤を背景に2剤でも治療が可能ではないかという研究が、盛んに行われるようになっている。再び2剤併用療法の時代へ先祖返りするかもしれない。 なぜ、この時代に、このようなsystematic review and meta-analysisを行ったのか? それが問題だ。

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食道アカラシアに対する内視鏡的筋層切開術(POEM)はバルーン拡張術より優れている(解説:上村直実氏)-1100

 下部食道の良性狭窄により食物の通過障害、嘔吐、胸痛、誤嚥性肺炎などを生じる疾患である食道アカラシアの原因は下部食道のアウエルバッハ神経叢の変性消失と考えられている。治療法として薬物療法、内視鏡的バルーン拡張術、ボツリヌス菌毒素局注療法、外科的治療として腹腔鏡下Heller手術などが行われていたが、2008年に経口内視鏡を用いて食道の筋層切開を行い、食道アカラシアの狭窄を改善する内視鏡的筋層切開術(POEM)が現日本消化器内視鏡学会理事長である井上晴洋氏により開発された。その後、2012年から先進医療として施行された後、2016年に保険収載され、手術例数はわが国で2,000例以上、世界中では3,000例に達している。 わが国の臨床現場では、食道アカラシアに対する治療法として侵襲性が低いと考えられている内視鏡的バルーン拡張術が頻用されているが、今回、バルーン拡張術とPOEMのアカラシアに対する有用性と安全性を比較検討した無作為比較試験(RCT)が海外の6施設において施行された結果がJAMAに掲載された。主要アウトカムとされた狭窄症状スコアの改善が治療終了2年後のみでなく3ヵ月後および1年後においてもPOEM群のほうがバルーン拡張群に比べて有意なスコア改善を示した。それだけでなく、安全性に関してもバルーン拡張群でみられた重篤な有害事象である食道穿孔はPOEM群で認められなかった。臨床現場で問題となる術後の逆流性食道炎がPOEM群のほうに多くみられていることから、POEM後の胃食道逆流症に対する対策が課題であると思われた。 最後に、このPOEMがわが国で初めて開発された素晴らしい内視鏡的治療技術であるにもかかわらず、その臨床的有用性を科学的に証明する最初の臨床研究(多施設共同の介入試験)を本邦で行うことができずに海外から報告されたことは問題である。新たな診療技術の開発に加えて、その技術の臨床的有用性や安全性を検証する臨床研究を実践する体制を構築することが本邦の課題である。

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名医を紹介してくれる人【Dr. 中島の 新・徒然草】(285)

二百八十五の段 名医を紹介してくれる人紹介されてきたのは、職員の親戚の叔父さん、70代。主訴は歩行障害です。パーキンソン病とか脊柱管狭窄症とか、いろいろな疑い病名が付きました。でも、どの医療機関でも最後には「ウチじゃなさそう」と言われたそうです。もともと元気だった叔父さんも「一体、俺は何処に行ったらエエねん」と、すっかり落ち込んでしまいました。そこで、職員の間で、「中島先生に相談したら、誰か名医を紹介してくれるかも?」となったそうです。ここ間違えないように。中島先生自身が名医というわけではありません。あくまでも「名医を紹介してくれる人」という位置付けです。職員の皆さん、よく見ていますね。というわけで、とりあえず叔父さんに外来を受診してもらいました。ちょうど医学生が見学に来ていたので、良い経験になればいいのですけど。叔父さんにちょっと歩いてもらうと、確かに右足に軽い障害があります。なんでも、3年ほど前から右足ではつま先立ちができなくなったのだとか。それと、坂道を下るのは恐怖だけど、上るのは調子いいそうです。一般に、脊柱管狭窄症の人は前屈姿勢だと調子が良くなります。人間、坂を上るときは必然的に前屈姿勢になるので、この叔父さんが脊柱管狭窄症だとすると、話が合うわけです。症状からは脊柱管狭窄症ですが、持参されたMRIでは大した狭窄は見当たらず。むしろ椎間板ヘルニアが見られます。うーん、これは難しい!症状からは脊柱管狭窄症、画像からは椎間板ヘルニア。そして複数の整形外科からは「ウチじゃない」と言われてしまっています。中島「よし、人力で腰を引っ張ってみましょう」患者「なんか、整形でベルトみたいなモンを巻いて牽引したことはあるけど」中島「それ、効果ありましたか!」患者「全然あれへん」中島「角度の問題かも。真っ直ぐじゃなくて、少し前屈気味に引いたらどうでしょうか」患者「ほな、いっぺんやってみて下さい」中島「とはいっても、どないしたらエエんかな?」患者「いつもやっている通りでいいですよ」中島「これやるの、初めてなんすよ」患者「なんやて?」中島「とにかくそこの診察台に仰向けになってください」患者「こうでっか?」中島「それでちょっと上体をあげてもらって、僕が引っ張りますから」両脇に手を入れて引っ張ってみると、診察台の上をズルズルと移動するだけです。医学生の手を借りることにしました。中島「君、ちょっと足首を掴んで下に向かって引っ張ってくれるか?」医学生「こうですか」中島「そや。それでお互い反対に引っ張ってみよう」今度は上下から引っ張ったので、ズルズルとはいきませんでした。でも、冷静に考えてみると、ずいぶん間抜けな姿です。大の男が大真面目に患者さんを上と下から引っ張っているわけですから。汗だくになって脇を引っ張りながら、思わず笑いそうになりました。「でも、ここで笑っては駄目だ! 何もかもぶち壊しになる」そう思って堪えました。患者さんのほうは、なされるがままです。中島「じゃあ、もう一度歩いてみましょう」患者「はい」中島「どうですか。生まれ変わりましたか?」軽くギャグをかましたつもりでしたが。患者「生まれ変わった!」中島「なーに言ってんですか。今のは冗談ですよ」患者「ホンマやがな」確かに、さっきより歩くスピードが上がっています。恐るべし、人力牽引!患者「そない言うても、30秒で元に戻ったけどな」中島「たった30秒でも、良くなったということは凄いことですよ!」患者「確かに腰が伸びて、しばらく調子良かったわ」診断は別として、腰の牽引によって、神経根の圧迫が一時的に緩和されたのかも。ということは、少し前屈気味に腰を引っ張ったらいい、ということになります。とはいえ、どうしたら効果的に引っ張れるのか?患者「ほな、家にあるバランスボールで引っ張ったらどないでっしゃろ」中島「おっ、それいいですね。自宅でできますから」患者「うつ伏せでボールに乗ったら、自然に腰も伸びるし」中島「そうそう!」患者「どのくらいやったらエエんでっか?」中島「1分くらいでいいんじゃないですか」この辺は適当です。中島「何回でも、バランスボールで腰を伸ばしたらいいんですよ」患者「ほな、やってみます」中島「じゃあ、1ヵ月後に効果を確認しましょう。手術はあくまでも最終手段ですから、バランスボールで治ったら儲けモンですよ」患者「やっぱり手術は怖いしな。バランスボールで頑張ってみますわ」後で考えたら、感覚障害も診ておくべきでしたね。もし神経根症だったら、レベルのほうも確認できたはずでしたから。まあ、それは再診の時の楽しみにとっておきましょう。それにしても、見学に来た医学生もびっくりしたことでしょう。まさか、汗だくで足を引っ張ることになるとは想像もしていなかったと思います。私の診察を見て、足首以外にも何か大切なものを掴んでくれた、と信じたいところ。よくわからなくても、とにかく患者さんのために頑張ることが大切ですね。ということで最後に1句引っ張って 生まれ変わった 腰椎が!

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