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日本人の乳がん検診の障壁は「痛み・恐怖・予約」~Xの投稿を解析

 乳がん検診の受診率が米国(70%超)と比較して日本(50%未満)で停滞している現状を背景に、SNS投稿の言葉から異文化間における検診の障壁を比較評価したインフォデミオロジー(情報疫学)研究のデータを、名古屋市立大学の寺田 満雄氏らが報告した。解析の結果、英語圏では主に制度的・経済的負担を反映している一方、日本では「痛み」「恐怖」「予約」が密接に関連する心理的・身体的障壁が支配的であることが示唆された。Journal of Medical Internet Research誌2026年7月31日号に掲載。 本研究は、2025年にX(旧Twitter)から収集された4万6,823件の乳がん検診に関する投稿(日本語3万27件、英語1万6,796件)を対象とした。大規模言語モデルを用いた感情極性スコアリングや共起ネットワーク解析などを統合した自動化自然言語処理パイプラインを開発し、障壁のインフォマティクスプロファイルを比較・評価した。 主な結果は以下のとおり。・全体的な感情の分布において、実質的に意味のある文化的な差異は認められなかった。・英語コホートでは、制度的障壁に対する中等度のネガティブな感情が集中しており、「費用」が主な障壁(7.4%)であったのに対し、「痛み」への言及は比較的低かった(5.0%)。また、一般人の意識の高まりから「高濃度」乳房に関する話題が重要な臨床トピックとして浮上した。・日本語コホートでは心身の障壁がボトルネックとなっており、「痛み」「恐怖」「予約」が密接に関連するネットワークを形成し、中でも「痛み」が圧倒的に支配的な障壁(19.3%)であった。・日本のサブグループ解析では、検診前の心理的不安(「恐怖」19.4%)や物理的な懸念(「予約」40.9%)から、検診後は「痛み」という不快な記憶の強い持続(15.6%)へと経時的な移行が確認された。・マンモグラフィに対する感情スコアは超音波検査単独よりも有意に低く(ネガティブ)、超音波検査における痛み言及は、マンモグラフィと同時施行された場合に5.0%から18.2%へと急増した。 著者らは、「日本における受診率向上には、個別最適化した疼痛軽減の圧迫プロトコルとマンモグラフィの不快感を併用検査から切り離す動線設計が必要であり、それによって痛みに関連した防御的回避を防ぎ、さらにアクセス改善のために予約プロセスといったロジスティクス上の障害を減らす必要がある」と指摘している。

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うつ症状の変化の評価、PHQ-9の閾値「6点」は妥当か/BMJ

 患者健康質問票(Patient Health Questionnaire:PHQ)-9は、臨床現場で広く使用されている精神保健アウトカムの指標であり、PHQ-8およびPHQ-2はその短縮版である。英国国民保健サービス(NHS)のTalking Therapiesプログラムでは、治療中の患者における病態の変化の評価にPHQ-9の信頼性変動指数(reliable change index:RCI)の閾値6点(測定誤差を超える変化が起きたことを95%の信頼性で示す最小可検変化量[minimal detectable change:MDC][MDC95]に相当)を使用しているが、その確実性を裏付ける分析結果は報告されていないという。カナダ・マギル大学のYutong Wang氏らDEPRESsion Screening Data(DEPRESSD)PHQ Collaborationは、PHQ-9、PHQ-8、PHQ-2のMDCの評価を行い、年齢、性別、参加者の医療環境、大うつ病の有無によってMDCが異なるかを検証した。研究の成果は、BMJ誌2026年7月23日号に掲載された。大うつ病性障害の個別参加者データのメタ解析 研究グループは、2000年1月1日~2018年5月9日に発表された文献から収集した個別の参加者データを用いてメタ解析を行った(カナダ保健研究機構[CIHR]などの助成を受けた)。 対象は、年齢18歳以上、精神科以外の領域から募集され、精神保健医療を求める集団を募集していない論文(記述言語は問わない)とした。解析には、PHQ-9、PHQ-8、PHQ-2の実施から2週間以内に行われた半構造化または完全構造化インタビューに基づき、大うつ病性障害または大うつ病性エピソードに分類された参加者のデータセットを用いた。 PHQ-9、PHQ-8、PHQ-2について、測定誤差を超える変化が生じたことを、95%、90%、67%の信頼性で示すMDC(それぞれMDC95、MDC90、MDC67)を設定し、変量効果メタ解析を用いて各研究の統合MDCを推算した。PHQ-9のMDC95は5.72点 PHQ-9、PHQ-8、PHQ-2の解析には、それぞれ4万2,548人(94研究)、4万2,592人(94研究)、4万4,085人(98研究)の参加者が含まれた。全体の平均年齢は49(SD 17)歳で、60%が女性であった。参加者の10%(研究ごとの範囲:1~57%)が大うつ病に分類された。 PHQ-9のMDC95は5.72点(95%信頼区間[CI]:5.54~5.90、95%予測区間[PI]:4.00~7.44)であり、PHQ-8では5.51点(95%CI:5.33~5.68、95%PI:3.87~7.15)、PHQ-2では2.26点(95%CI:2.15~2.37、95%PI:1.20~3.32)であった。 PHQ-9については、MDC95が最も高かったのは、入院医療施設からの参加者の6.48点(95%CI:6.05~6.92、95%PI:4.82~8.15)であった。また、PHQ-9のMDC95は、大うつ病を有する参加者の割合が10%増加するごとに0.40点(95%CI:0.25~0.55)上昇した。 一方、性別および年齢とMDCとの関連性はごくわずかか、あるいはまったく認められなかった。PHQ-8およびPHQ-2についても、サブグループ解析およびメタ回帰分析の結果はPHQ-9と同様であった。PHQ-9閾値6点は、うつ症状の変化を適切に評価可能 これらの結果から、著者は「PHQ-9における6点の差は、うつ症状を呈する個別の患者における病態の変化の評価や、最小重要差の推定値を評価するための閾値として使用可能と考えられる」としている。 また、「専門的な精神保健治療の環境下にある人びとに対しては、より高いPHQ-9閾値を設定することが、より適切となる可能性がある」「MDC67やMDC90の閾値では、変化が生じたことの信頼性が低くなる可能性がある」「予測区間の上限値を使用するなどの代替戦略は、確実性を高める一方で、変化を認識できない可能性が高くなる」と指摘している。

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LDL-C上昇の成人が世界で46億人に増加、高齢化で疾病負担増/JAMA

 心血管疾患は、早期死亡の主要な原因であり、LDL-C値の上昇は介入可能なリスク因子とされる。LDL-Cに関連する疾病負担を評価することは、心血管疾患の予防および治療戦略を策定するうえできわめて重要と考えられる。米国・ワシントン大学のChristian Razo氏らGBD 2023 LDL Cholesterol Collaboratorsは、世界疾病負担(GBD)研究の一環として、1990~2023年におけるLDL-C値上昇(35~54mg/dLとの比較)に起因する虚血性心疾患および虚血性脳卒中の疾病負担を、世界、地域、国ごとに推定し、人口増加、高齢化、曝露量の変化などが疾病負担の傾向に及ぼす影響を定量化した。研究の成果は、JAMA誌オンライン版2026年7月29日号で報告された。204の国と地域で、LDL-C関連の死亡数、DALYを評価 研究グループは、204の国と地域における人口レベルのLDL-C曝露量、およびそれに関連する健康損失を推定した(ゲイツ財団の助成を受けた)。平均LDL-C値は、161ヵ国の806件の研究に基づいて推算した。また、相対リスクは、38件の無作為化臨床試験を対象としたメタ解析から導出した。 1990~2023年に、年齢25歳以上の成人について、死亡および障害調整生存年(DALY)の集団寄与危険割合(PAF)を年齢層別および性別に推定し、95%不確実性区間(UI)を算出した。 主要評価項目は、虚血性心疾患および虚血性脳卒中によるLDL-Cに起因する死亡数およびDALYのPAF、件数、発生率(全年齢および10万人当たりの年齢調整値)とした。LDL-C上昇の成人が、25億人から46億人に増加 1990~2023年に、LDL-C値が54mg/dL以上の25歳以上の成人数は、約25億人(95%UI:24億~26億)から約46億人(95%UI:43億~47億)へと増加した。 1990年以降、LDL-C値上昇による死亡数とDALYは約39%増加した。2023年に、LDL-C値の上昇は、360万人(95%UI:220万~540万)の死亡(世界の総死亡数の6.0%)と、9,070万DALY(95%UI:5,890万~1億2,330万)(総DALYの3.2%)の原因となった。 2023年に、LDL-Cが寄与したDALYの33%が、LDL-C値54~116mg/dLの人々であり、残りの67%は同値が116mg/dL以上であった。LDL-C関連の心血管疾患死亡率は大幅に減少 全世界の全年齢層では安定していたものの、1990年以降、LDL-C値上昇に起因する心血管疾患による年齢調整死亡率が45.6%、DALY率は39.5%減少しており、年間減少率は0.45%だった。 また、男女とも、DALY率は年齢の上昇に伴って着実に増加した。2023年に、LDL-C関連DALYは女性(3,570万、95%UI:2,240万~5,180万)に比べ男性(5,500万、95%UI:3,730万~7,530万)で高かった。1990~2023年に、LDL-Cによる年齢層別のDALY率は、全年齢層および男女とも世界的に減少した。人口増加と高齢化が、LDL-Cの負担増加を牽引 2023年に、LDL-Cの寄与による年齢調整DALY率は東ヨーロッパ(2,252.6/10万人、95%UI:1,507.4~3,038.2)で最も高く、高所得のアジア太平洋地域(322.0/10万人、95%UI:208.7~446.6)で最も低かった。世界のLDL-Cによる健康負担の3分の1(34%)は、インドと中国で発生していた。 人口増加と高齢化が、LDL-Cによる負担の増加を牽引していた。また、LDL-Cへの曝露およびリスク補正後DALY率には顕著な地域格差がみられ、その傾向は社会人口統計学的特性指数(SDI)が中位の国へと転換していた。公平なスクリーニングと対象を絞った介入の拡大が急務 これらの結果を踏まえて著者は、「LDL-C値の上昇を予防・管理することは、世界的に心血管疾患による死亡を回避し、健康寿命を延ばすことにつながる」「LDL-Cの管理法は進歩しているものの、1990年以降、人口増加と高齢化により、その絶対的な負担は増加し続けており、その傾向はSDI中位国への転換が進んでいる」とまとめている。 また、「国連の持続可能な開発目標(SDGs)の期限が迫る中、これらの知見は、医療へのアクセスを改善し、生涯にわたって心血管の健康を促進するために、偏りのない公平なスクリーニングと対象を絞った介入の拡大が、緊急に必要であることを強調するもの」と指摘している。

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膵臓がんワクチン、高リスク者の9割で免疫応答

 膵臓がんは、特に発症リスクを大幅に高める遺伝子変異を受け継いだ人では、「サイレントキラー」となり得る。しかし、こうした高リスク者における膵管腺がん(PDAC)の予防に新たな希望が見えてきた。米ジョンズ・ホプキンス大学シドニー・キンメル総合がんセンターのElizabeth Jaffee氏らは、PDACやその前がん病変で高頻度に認められるKRAS変異を持つ細胞を免疫系が認識して排除するよう誘導するワクチンを開発し、その小規模試験の結果を、「Cancer Discovery」に7月16日付で報告した。試験では、PDACの遺伝的リスクが高い20人のうち18人でワクチンによる免疫応答が確認され、その免疫応答が長期間持続することも示されたという。 膵臓がんは、長期間にわたって症状が現れないまま進行し、治療が難しい段階になってから発見されるケースが少なくない。米国がん協会(ACS)は、米国では2026年に6万7,000人以上が膵臓がんと診断され、約5万3,000人が膵臓がんで死亡すると予測している。 PDACは膵臓がんの約90%を占め、PDAC症例の約10%では親から受け継いだ遺伝子変異が発症リスクを著しく高めている。このような人では、将来的にがんへ進展する可能性がある前がん病変が生じやすいという。論文の上席著者であるシドニー・キンメル総合がんセンターのNeeha Zaidi氏によると、現在、こうした高リスク者にとって唯一の選択肢は、「サーベイランスにより経時的に膵臓の変化を監視すること」であるという。異常が見つかった場合には、膵臓の患部を外科的に切除する。しかし、この処置によりPDACを完全に防げるわけではない。同氏は、「手術後の病変再発率は最大80%に達する。また、PDACの前がん病変の多くは顕微鏡でしか確認できない大きさであり、画像検査では検出できない」と指摘している。 KRAS変異は、PDACやその前がん病変の約90%に認められることが知られている。研究グループはこれまでに、PDACで高頻度に認められる6種類のKRAS変異を標的とするペプチドワクチン「mKRAS-VAX」を開発していた。このワクチンはこれらのKRAS変異を持つ細胞を免疫系が認識して排除するよう誘導する。 今回の試験では、遺伝的にPDACのリスクが高く、画像検査で膵臓に異常所見が認められた高リスク患者20人を対象に、mKRAS-VAXの安全性、免疫原性、およびT細胞の持続性を評価した。患者は、1週目、3週目、5週目、13週目に計4回、ワクチンの皮下注射を受けた。 その結果、20人中18人(90%)でKRAS変異に特異的なT細胞応答が誘導された。また、T細胞受容体(TCR)シーケンスという解析法でワクチンによって誘導されたKRAS特異的T細胞クローンを追跡したところ、最長2年間体内に残存していることが確認された。さらに、中央値16.5カ月の追跡期間中にPDACを発症した患者はいなかった。安全性については、グレード1~2の副作用にとどまり、重篤な副作用は確認されなかった。 Jaffee氏は、「これはまだ始まりに過ぎない。この結果は、免疫システムが活性化されていることを示唆している。取り組むべき課題はまだたくさん残されているが、これまで誰も考えたことのなかった予防を目的とするアプローチの良い第一歩となった」とニュースリリースで述べている。 ただし研究グループは、この試験は安全性とワクチンによる免疫応答を評価することを目的とした小規模試験であり、ワクチンが膵臓がんを予防することを証明したものではないと強調している。それでも、この試験の成功は、ワクチンによるPDAC予防が実現可能であることを示す「概念実証」として意義があり、今後のより大規模な臨床試験を後押しすると期待される。

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尿検査により前立腺がんの監視療法を正確にモニタリング

 低悪性度前立腺がんの非侵襲的モニタリングに尿中バイオマーカー検査を用いることで、生検および画像検査の必要性を減らせる可能性があるという研究結果が、「The Journal of Urology」に5月20日掲載された。 米ヴァンダービルト大学医療センターのJeffrey J. Tosoian氏らは、監視療法(AS)中の患者における生検の必要性を判定するため、直腸指診を行わない尿検査を開発し、検証した。ASの一環として生検が予定されているグレードグループ(GG)1の前立腺がん患者330人を対象に、生検の必要性を判定する尿検査の診断性能および臨床的影響を、マルチパラメトリックMRI(mpMRI)と比較した。 その結果、生検では、患者の9.4%でGG3以上へのグレード上昇が、37%でGG2以上へのグレード上昇が認められた。MyProstateScore 2.0-Active Surveillance(MPS2-AS)バイオマーカーモデルの曲線下面積は、mpMRIと比較して、GG3以上への上昇(0.82対0.73)とGG2以上への上昇(0.74対0.64)のいずれについても高かった。生検前にMPS2-ASを使用した場合には、不必要な生検の約3分の2(64%)が回避でき、GG3以上への上昇の見逃しは3.2%にとどまると推定された。一方、Prostate Imaging Reporting and Data System(PI-RADS)3以上を基準とした場合には、不必要な生検の回避は50%、GG3以上への上昇の見逃しは18%と推定された。MPS2-ASの性能は、確認生検および監視生検、黒人および非黒人患者など、臨床的に関連するサブグループ全体で一貫していた。 Tosoian氏は、「本研究結果は、低悪性度前立腺がんのモニタリングを受けている患者において、この尿検査を用いることで、治療を必要とする高悪性度がんの迅速な検出を損なうことなく、侵襲的な生検の必要性を減らせる可能性を示している」と述べている。 なお、複数の著者が製薬企業との利益相反(COI)に関する情報を明らかにしている。

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緑内障手術後、約3人に1人で眼瞼下垂――濾過手術でリスク高く

 緑内障手術後には眼瞼下垂(まぶたが下がる症状)が生じることがあるが、その経過は十分に分かっていなかった。今回、患者を1年間追跡した研究で、約3人に1人に眼瞼下垂がみられ、特に濾過手術では術後1年まで進行する可能性が示された。研究は、神戸大学医学部眼科学教室の奥住奈南美氏、盛崇太朗氏らによるもので、詳細は6月25日付の「Graefe's Archive for Clinical and Experimental Ophthalmology」に掲載された。 緑内障手術は近年の進歩により広く行われるようになった一方で、術後の眼瞼下垂が課題となっている。眼瞼下垂は見た目だけでなく、視野や患者満足度にも影響を及ぼす可能性が指摘されているが、発生頻度や経過、術式による違いを長期間にわたって検討した研究は限られていた。そこで著者らは、複数の緑内障手術を対象に、術前から術後1年まで眼瞼下垂の発生や経過を前向きに評価した。 著者らは、2023年10月~2024年12月に神戸大学医学部附属病院で初回の緑内障手術を受けた167人を対象に前向き研究を実施した。対象となった術式は、低侵襲緑内障手術であるマイクロフックを用いた眼内線維柱帯切開術、プリザーフロ・マイクロシャント留置術、線維柱帯切除術、アーメド緑内障バルブ留置術の4術式である。術前から術後1年まで定期的に撮影した写真を用いて上まぶたの位置を客観的に評価し、術前より1mm以上低下した場合を眼瞼下垂と定義して、術式ごとの発生状況や関連因子を解析した。 解析の結果、術後1年時点で眼瞼下垂は54人(32.3%)に認められた。上まぶたの位置は術後1カ月から低下し、その低下傾向は1年後まで持続した。 マイクロフックでは有意な変化はみられなかった一方、プリザーフロ、線維柱帯切除術、アーメドなどの濾過手術では、上まぶたの位置の有意な下垂が認められた。 また、アーメド緑内障バルブ留置術と術前の瞼裂(目の開き)が大きいことが眼瞼下垂のリスク因子として特定された。 著者らは、本研究は緑内障手術後の眼瞼下垂が術後6カ月を超えて1年まで進行する可能性を初めて示した研究だとしている。また、濾過手術で眼瞼下垂が生じやすい理由について、術中の機械的な刺激だけでは説明できず、インプラントや濾過胞とまぶたとの摩擦などが関与している可能性があると考察している。さらに、緑内障手術を行う医師は術後の眼瞼下垂を認識し、経過を注意深く観察する必要があるとしている。 一方、本研究は単施設で日本人のみを対象とした研究であり、特にアーメド緑内障バルブ留置術は8例と症例数が少なかったことから、この術式に関する結果の解釈には注意が必要だとしている。

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抗凝固療法が必要な症例に、PCIを行った後の至適な抗血栓療法とは(解説:山地杏平氏)

 抗凝固療法が必要な症例に経皮的冠動脈インターベンション(PCI)を施行した際の抗血栓療法では、虚血イベントを抑制しながら、いかに出血リスクを低減するかが重要な課題となっています。これまでWOEST、PIONEER AF-PCI、RE-DUAL PCI、AUGUSTUS、ENTRUST-AF PCIなどの試験により、経口抗凝固薬にP2Y12阻害薬を加えた2剤併用療法は、3剤併用療法と比較して出血リスクを低減できることが示され、その安全性が確立されてきました。一方で、この2剤併用療法をどの程度の期間継続すべきかについては、依然として明確なエビデンスが不足していました。 少なくともPCIから1年以上経過した患者を対象としたOAC-ALONE試験や、AFIRE試験では、安定冠動脈疾患を有する心房細動患者において、抗凝固単独療法は、出血イベントのみならず複合臨床イベントも抑制することが示されました。今回発表されたOPTIMA-AF試験では、さらに期間を短縮し、PCI後1ヵ月で抗凝固単独療法とすることは、12ヵ月間2剤併用療法を継続するものと比較して、死亡・血栓塞栓イベントに対する非劣性を示すとともに、出血リスクを約50%減少させることが示されています。 一方で、本試験の対象患者は約94%が慢性冠症候群であり、急性心筋梗塞患者は含まれていないことには注意が必要です。また、主要有効性イベントの発生率は当初想定していた約10%ではなく4%程度にとどまりました。1ヵ月群の有効性は統計学的には非劣性を示したものの、真の差がまったくないとまでは証明できていません。これらを総合的に踏まえると、慢性冠症候群症例において、問題なくPCIが行われた症例に限定して、早期の抗凝固単独療法への移行を検討するというのが現実的であると考えられます。 最後に余談になりますが、本試験を主導された外海 洋平先生は、欧州留学中から質の高い臨床研究を次々と発表され、その活躍ぶりは周囲の研究者の間でも大きな話題となっていました。筆者も同時期に欧州に留学していましたが、新しい論文が次々と発表されるたびに、仲間内で「今月の月刊外海が出版された」と、その研究の質とスピードに驚かされたことをよく覚えています。 帰国後は、日本ならではの診療や研究体制の中で、本試験のような国際的に高く評価される研究をまとめ上げられました。日本発のランダム化比較試験がLancet誌に掲載されることは、わが国の循環器診療・研究にとっても大変意義深く、外海先生をはじめ、本試験に携わられたすべての先生方に心より敬意を表するとともに、心からお祝いを申し上げます。

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宮崎大学医学部附属病院 臨床腫瘍科【大学医局紹介~がん診療編】

細川 歩 氏(教授)秋月 渓一 氏(助教)田村 穂高 氏(助教)末田 光恵 氏(助教)大槻 佑生子 氏(医員)講座の基本情報当科独自の取り組み・特徴、医師の育成方針宮崎大学医学部附属病院臨床腫瘍科は2018年10月に設立され、悪性腫瘍に対する専門的な薬物療法および緩和ケアを提供するとともに、がん診療を担う人材の育成に取り組んでいます。また、都道府県がん診療連携拠点病院として、宮崎県のがん診療の質の向上に貢献するとともに、がんゲノム医療の推進にも積極的に取り組んでいます。薬物療法では、消化器悪性腫瘍および原発不明がんを中心に診療を行っており、当院におけるがん薬物療法の中核を担っています。また、西日本がん研究機構(WJOG)の特定臨床研究をはじめとする多施設共同研究や治験に積極的に参加し、新たな治療法の開発にも取り組んでいます。さらに、若手医師は消化器悪性腫瘍の診療に必要な内視鏡検査を含めた幅広い診療に携わりながら経験を積むことができ、当科では診断から治療まで一貫して担うことのできる専門医の育成に努めています。力を入れている治療当科では、食道がん・胃がん・大腸がんを中心とした消化器がんの薬物療法を専門的に行っています。分子標的治療薬や免疫チェックポイント阻害薬など最新の治療を取り入れ、エビデンスに基づく診療を実践しています。また、肉腫や原発不明がんなどの希少がん診療にも積極的に取り組んでおり、幅広い悪性腫瘍の診療経験を積むことができます。当科でのがん診療消化器外科や放射線科など関連診療科と連携し、集学的ながん診療を実践しています。定期的なキャンサーボードでは多職種で症例を検討し、外科治療・放射線治療・薬物療法を組み合わせた最適な治療戦略を学ぶことができます。診断から再発後治療、緩和ケアまで一貫して患者さんに関わることで、総合的ながん診療能力を養えます。医学生・初期研修医へのメッセージがん診療に興味のある方はもちろん、進路を検討中の方にも幅広い学びの機会があります。ぜひ見学にお越しいただき、患者さんに寄り添うがん医療の魅力を体感してください。力を入れている診療テーマ私は初期研修修了後、3年間一般消化器内科を専攻し、その後がん薬物療法に従事して4年目となりました。進行がんの根治が難しい現代においては、今ある医療を最大限に生かして患者さんに届けることと、未来のよりよいがん診療のための治療法の開発の2つの軸が大切だと感じています。当科で力を入れているテーマは、質の高い日常診療と地方から臨床研究に携わることの両立です。当科の魅力中核病院で長く研鑽されてこられた細川教授のがん診療の考え方や技術を間近で勉強しつつ、WJOG、北海道消化器化学療法研究会(HGCSG)、富山大学との共同研究などさまざまな多施設共同臨床試験を経験させていただいています。また、薬物療法だけでなく、内視鏡検査や中心静脈ポート造設などの手技、多様な症状に対する他科との連携、また地域連携や緩和医療にも携わります。それぞれの分野に温かく指導してくださるメンターがおり、総合的ながん診療を学べる恵まれた環境だと感じています。当科の雰囲気大所帯ではありませんが、地域のがん治療を支えるという志を共有できる医師、看護師、薬剤師などのメディカルスタッフが在籍しています。私の隣の細川教授の診察室からは、いつも患者さんとの自由な会話や笑い声が聞こえてきます。真剣さの中にも明るく前向きな雰囲気のあるチームです。臨床腫瘍科の中で緩和医療を担当しています。多職種で構成された緩和ケアチームの専任医師として、院内のいろいろな科で治療を受けられている患者さんの身体的苦痛の緩和や、精神的な問題やせん妄への対応、療養場所選定のサポートなどを行っています。大学病院の緩和ケアチームということで、対象の患者さんはベストサポーティブケア(BSC)となった方だけでなく、がんの診断時や治療中の苦痛がある方も対象ですので、オピオイドを中止することができる患者さんの診療に携わることもあります。これは、治療中の患者さんが対象だからこそできる経験ではないでしょうか。また、治療中の患者さんが対象となっていることが多いため、主治医との連携もとても大切で、できるだけ密にコミュニケーションをとるよう心がけています。患者さんや主治医が望んでいる治療が少しでも苦痛なく行えるよう、また、継続できるようしっかりとサポートをしていくことが役割と考えています。緩和医療というと何か特別なもの、というイメージを持つ医師が多いようですが、がん治療の一部でもありますので、少しでも興味を持っていただける医師が増える一助になれるとうれしいです。これまでの経歴宮崎県に生まれ育ち、宮崎大学医学部へ進学、卒業しました。在学中に祖父が胃がんと診断され、家族として治療や意思決定に関わったことをきっかけに、がん診療に興味を抱きました。宮崎大学病院での臨床研修を修了後、消化器内科や臨床腫瘍科での研鑽を開始し、宮崎でも質の高いがん薬物療法を提供できるよう、日々患者さんと向き合っています。現在学んでいること消化器がん領域を中心としたがん薬物療法の知識や技術に加え、内視鏡診療や緩和医療についても学んでいます。がん診療では治療を行うだけでなく、患者さんやご家族の思いに耳を傾けながら、1人ひとりに合った医療を考えることが大切だと感じています。また、学会発表や研究活動にも取り組み、診療で得た経験を学びにつなげることを心がけています。今後のキャリアプラン今後は消化器内科医としての専門性を高めるとともに、がん薬物療法専門医の取得を目指しています。地域においても高度ながん医療を提供できる医師となり、患者さんに寄り添いながら安心して治療を受けられる環境づくりに貢献していきたいと考えています。宮崎大学医学部附属病院 臨床腫瘍科住所〒889-1692 宮崎県宮崎市清武町木原5200問い合わせ先cancer-center@med.miyazaki-u.ac.jp医局ホームページ宮崎大学医学部附属病院 臨床腫瘍科宮崎大学医学部附属病院 がんセンター所属スタッフが取得している専門医資格日本内科学会 総合内科専門医日本臨床腫瘍学会 がん薬物療法専門医日本がん治療認定医機構 がん治療認定医日本消化器病学会 消化器病専門医日本消化器内視鏡学会 消化器内視鏡専門医 など研修プログラムの特徴(1)消化器悪性腫瘍を中心に、診断から薬物療法、緩和医療まで一貫した診療を経験することができます。(2)化学療法レジメン、有害事象マネジメント、画像評価など、がん薬物療法に必要な実践的な知識・技術を体系的に身につけることができます。(3)がんゲノム医療や臨床研究に触れ、がん診療に必要な知識や考え方を学ぶことができます。(4)多職種と連携し、患者さん1人ひとりに寄り添った緩和医療を経験することができます。

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脂質異常症治療の30年を振り返って【温故知新30年】

講師紹介1. 30年前の脂質異常症治療1976年頃、スタチンを開発した遠藤章氏が、HMG-CoA阻害効果を持つ結晶粉末(後のコンパクチン)を内藤氏のところに持参し、私たちが扱っていたラットの肝細胞で効果を検討してくれという依頼があった。しかし、コンパクチンはラットの肝細胞では全く効果がないことが判明した。その後、機会を得て、1980年に米国・シカゴ大学への留学が決まった。米国では、動脈硬化研究は極めてホットな研究分野(欧米での死亡率のトップは虚血性心疾患であった)であり、しのぎを削っての競争世界であった。一方、1976年にBrown & GoldsteinのLDL-受容体(LDL-R)発見の論文が掲載された。また、同じ年に遠藤氏のコンパクチンが発表されていた。シカゴ大学の研究室ではLDL-Rの話題は極めて活発化しており、1981年の研究室内のプログレス・ミーティングで日本でのコンパクチンが話題になり、それを手に入れることはできないかとボスから尋ねられた。しかし、筆者には手に入れることはかなわず、筆者も指示されたサルでの実験はできなかった。筆者は1982年に帰国し、大学で脂質異常症の治療を始めた。その当時はもっぱらフィブラート系薬剤とニコチン酸系薬剤がわずかながら効果があるということで、食事療法や運動療法とともに、これらの薬剤を用いた治療を行っていた。また、1985年にプロブコールが発売され、そのコレステロール低下効果は驚くべきものがあったが、これらが本来の目的である動脈硬化予防に効果があるのかは疑問符がついたままであった。約40年以上前のことである。2. この30年でどのように診療が進歩したのか(30年前~10年前)30年前、すなわち1996年頃は1994年に4Sという二次予防試験、1995年にはWOSCOPSという一次予防試験が発表され、もっぱらスタチンの動脈硬化性疾患の予防効果検証の時代であった。我が国では、米国に遅れて1989年にプラバスタチンが発売されたが、発売に至るには険しい道のりがあった。プラバスタチンの効果検証の第II相試験(ダブルブラインド)において立て続けに試験対象者に脳出血の報告があったのである。やむなくこの2例に限ってオープンするという苦渋の決断になり、オープンしたところその2例とも対照薬であることが判明し、試験は継続・完了し、プラバスタチンの有効性並びに安全性も証明され、発売に至ったのである。その当時、わが国でもWOSCOPSと同様のプラバスタチンの試験を行いたいと検討をしていたが、法律家の委員の先生から我が国では慎重にすべきという助言をいただき臨床試験はできなかった。このスタチンを用いた4SやWOSCOPSが発表されると、その後続々とさまざまな対象者に対する大規模臨床試験が発表され、特に”Lower the Better”というような試験が発表されると、二次予防を熱心にしている循環器専門医が中心となって、スタチンを使用するようになった。しかし、スタチンだけではLDL-Cの低下効果は十分ではないことが指摘されていた。その後、コレステロール吸収を抑制するエゼチミブが2007年に発売され、スタチンとエゼチミブを併用することにより、より低下効果が高まり、これも大規模臨床試験で有効性が明らかになった。最近ではその配合剤も発売されこれらの薬剤が汎用されるようになった。3. この30年でどのように診療が進歩したのか(10年前~現在)2016年に、PCSK9モノクローナル抗体という新たな発想による治療薬が発売されるに及んで、最近ではLDL-Cは際限なく(つまり血中では0mg/dL近くまで)下げられること、並びにそれで安全であることも示され、新たな世界に入った感がある。この注射薬は2週間に1回の注射で十分であることが示され、患者の自己注射も可能となった。さらに、インクリシランというPCSK9の合成を抑制するsiRNAも2023年に薬剤として発売され、6ヵ月に1回の注射で十分な効果を発揮することが示され、まさに画期的であった。このほかにも、これまで2週間に1回程度のLDL-アフェレーシスしか選択肢のなかったホモ型家族性高コレステロール血症(Ho-FH)に対する治療薬としてMTP阻害薬であるロミタピドが2016年に発売されたが、Ho-FHの症例数が少ないのと(約30万人に1人の発症率といわれ、発見率も低い)、下痢などの副作用があり、脂肪食の摂取制限などの課題もあり、十分な使用実績がない。しかし、LDL-Cの低下効果は十分認められ、症例の発掘と副作用の軽減化が課題となっている。4. 私にとってのパラダイムシフトこのような治療薬のエビデンスの集積があり、日本動脈硬化学会でも脂質異常症治療のガイドライン(GL)作りが開始され、私は1997年に初めて動脈硬化性疾患診療GLに携わることとなった。そして2002年にはGL作成委員長を拝命し、以後2012年の改定まで3回の改訂作業に携わった。これまで触れてきたように、その間に多くの薬剤開発がなされ、その都度治療エビデンスも蓄積しており、それに対応すべく改定作業が行われてきた。その過程で、GLには薬剤が関与している関係から私のCOIの問題を感ずるようになった。その頃、日本医学会や日本医療機能評価機構におけるMindsというGLの指針が出てきたことにより、私の立場(その当時多くの製薬会社の協賛で寄付講座を持っていた)から、第一線を退くこととした。また、その当時は日本医学会の副会長に任命されており、さらには日本専門医機構の理事長を拝命することにより、いずれの学会の立場から離れるべきという立場となった。とはいえ、自身のクリニックでは高コレステロール血症の治療を行う立場でもあり、批判的に薬剤を使用する立場となった。そのことにより、実臨床で疑問に思うことも多々あり、GLの在り方、専門医の在り方なども深く考えるようになった。そのなかで、脂質異常症の治療薬はほぼ完成したという考えに至ったところに、新たな発想の薬剤が開発され、まだまだ今後の発展がありうると実感している。5. 次の5年で脂質異常症診療はこう変わる今後の5年では、現在の脂質異常症治療薬の使い方の徹底がなされるべきであるとともに、アンメットニーズを抉り出し、それに応じた診療を開発すべきであり、できると思う。1つは高コレステロール血症患者で治療すべき患者の選択であり、選択した患者のうちどの薬剤で、どの程度治療すべきなのか、つまりプレシジョンメディスンを実臨床で行えるようになると思う。そして、今後、さらに長期的にLDL-Cを低下させる治療法が開発され、遺伝子情報から比較的早くから一生のうち1ないし2回くらい治療すれば済むというワクチン的なLDL-C低下療法が筆者の夢である。さらには、食事の吸収に関する遺伝子が発見され、それに関連した治療薬が開発されることにより、肥満も含めて、食事療法が必要なくなる(?)という将来を筆者は夢見ている。

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第331回 ポストバイオティックがGLP-1を増やして体重を減らす

小規模ながら二重盲検のプラセボ対照無作為化試験で、経口服用の不活化細菌サプリメント(ポストバイオティック)が肥満/過体重成人の体重を有意に減らしました1,2)。GLP-1受容体作動薬(GLP-1薬)が肥満治療の主役に一気に躍り出たものの、治療が長続きしないことは少なくないようです。たとえば米国成人の4~5割ほどが開始から1年と経たずにGLP-1薬の使用を止めてしまっており、胃腸の有害事象を生じた患者はとくにそうでした3,4)。それゆえ、GLP-1薬のような生理作用をGLP-1薬が強いる負担なしでもたらす治療選択肢を必要とする患者は多いようです。有益作用をもたらす不活化微生物やその成分であるポストバイオティックがその需要に応えられるかもしれません。たとえばオリーブやキムチなどの発酵食品を介して口に入る細菌のラクチプランチバチルス プランタルム(Lactiplantibacillus plantarum[L. plantarum])にその可能性があります。熱で不活化したL. plantarumが短鎖脂肪酸(SCFA)を作る乳酸菌などの細菌を増やし5)、SCFAが豊富だと腸細胞からのGLP-1分泌が促進すること6)が先立つ研究で示されています。ゆえに不活化L. plantarumはGLP-1伝達を介して体重管理を助ける働きがあるかもしれません。そこでアラバマ大学のCharitharth Vivek Lal氏らは、不活化L. plantarumを含むポストバイオティック製品の体重への効果などを米国の過体重/肥満成人80人を募って試みました。使われた製品はResMと呼ばれ、不活化L. plantarumに加えてビタミンなどの微量栄養素と植物抽出物を含みます。被験者は1対1の割合で1日1回ResM服用群かプラセボ服用群に割り振られました。2ヵ月後、ResM群に割り振られた被験者の体重は、ベースライン時に比べて平均3%(2.6kg)減っていました。一方、プラセボ群の体重は減らず、ベースライン時より0.5kg増えていました。また、ResM群の血中のGLP-1活性はベースライン時に比べて2倍ほどに上昇していました。一方、プラセボ群ではほとんど変化がみられませんでした。GLP-1薬につきものの胃腸症状の心配はResMでは比較的少ないらしく、今回の試験で胃腸症状はむしろプラセボ群により多く生じました。深刻な有害事象はResM群とプラセボ群のどちらでもみられませんでした。GLP-1薬がすでに経ているような大規模試験で長期投与の効果持続のほどなどを今後調べる必要があります。それに、ResMの種々の成分の体重低下への寄与のほどもはっきりさせなければなりません。それらのさらなる検討で確かな裏付けが晴れて確立すれば、ResMはGLP-1薬に比べて副作用がより少なくて安上がりな体重減量や減った体重の維持手段を担うようになるかもしれません。参考(1)Pala OSK, et al. medRxiv. 2026 Jul 27. [Epub ahead of print](2)Postbiotic supplement boosts body’s own GLP-1 and weight loss / NewScientist(3)Do D, et al. JAMA Netw Open. 2024;7:e2413172.(4)Rodriguez PJ, et al. JAMA Netw Open. 2025;8:e2457349.(5)Huang Y, et al. Foods. 2025;14:2799.(6)Tolhurst G, et al. Diabetes. 2012;61:364-371.

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超多剤併用高齢患者の処方を減量・中止させるには

 高齢になると多数の併存疾患が存在し、このため処方される薬剤も多く、いかに減量・中止するか、いわゆる「ポリファーマシー」が課題となっている。ポリファーマシーを成功させるには何が必要であろう。このテーマについて、オランダ・SIR薬局業務・政策研究所のGert Baas氏らの研究グループは、高齢患者の処方薬の減量・中止について、臨床的服薬レビュー(CMR)が薬剤数に影響を及ぼすかどうかを調査した。その結果、研修を受けた薬剤師によるCMRは薬剤数に影響を及ぼすことがわかった。この内容はAge and Ageing誌2026年7月2日号に掲載された。研修を受けた薬剤師が薬剤を減量・中止させることを示唆 研究グループは、1回服用分包(MDD)システムを利用している超多剤併用(ベースラインで慢性疾患治療薬が 10 種類以上)の75歳以上の患者を対象に、研修を受けた薬剤師による減量・中止に重点を置いたCMRが薬剤数に及ぼす影響を調査した。このクラスター無作為化比較試験では、薬剤師に対し服薬削減に重点を置いたCMRの実施に関する研修を行った一方で、対照群の薬局では通常のケアを提供した。対象は75歳以上で超多剤併用状態にあり、MDDを利用している患者。主要評価項目は、6ヵ月後の患者1人当たりの減量・中止された薬剤数とした。副次評価項目は、薬剤の総数、健康上の問題、および生活の質(EQ-5D-5L、EQ-VAS)とした。主要評価項目の解析には、一般化線形混合モデルを用いた。 主な結果は以下のとおり。・58の薬局から計318例の患者が登録された(介入群155例、対照群163例)。・6ヵ月時点で介入群の患者は1人当たり平均2.5剤、対照群の患者は1人当たり平均1.7剤(平均差0.79、95%信頼区間[CI]:0.29~1.28、p=0.002)と介入群で多くの薬剤が有意に減量・中止されていた。・6ヵ月時点での薬剤総数には、群間に有意差は認められなかった(介入群-0.30 vs.対照群+0.12、p=0.108)。・健康上の問題や生活の質において有意差は認められなかった。 研究グループは、この結果から「研修を受けた薬剤師による減量・中止に重点を置いたCMRは、MDDシステムを利用する超多剤併用状態の高齢患者において、薬剤の減量・中止を促進することに成功した。その一方で、6ヵ月間において健康上の問題や健康関連の生活の質に変化は認められなかった」と結論付けている。

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ベンゾジアゼピンの投与量と死亡リスクとの関連

 フィンランド・トゥルク大学のHanna Sarkila氏らは、フィンランド人の集団において、ベンゾジアゼピン系薬剤およびZ-drug(以下、BZD)の使用を新たに開始した患者を対象に、5年間のフォローアップ期間中における用量依存的なBZD使用とすべての原因による死亡および原因別死亡リスクとの関連を調査した。Acta Psychiatrica Scandinavica誌オンライン版2026年6月21日号の報告。 対象は、2004~05年にBZDの使用歴がなく、2006年にBZDの使用を開始した患者。薬剤調剤に関する情報はPRE2DUP法を用いてモデル化し、調剤のたびに更新される時間依存性変数として扱った。そのうえでBZDの用量に基づき、低用量群(1日当たり1.0DDD[Defined Daily Dose:1日規定用量]未満)、中~高用量群(同1.0~3.0DDD未満)、超高用量群(同3.0DDD以上)の3群に分類した。死亡リスクの検討にはCox回帰モデルを用いた。 主な結果は以下のとおり。・対象患者は、BZDを新規に使用した18~65歳の4万8,124例(男性の割合:44.4%)。・5年間のフォローアップ期間中の死亡は2,294例(4.9%)。・BZD非使用期間と比較し、BZDの使用は死亡リスクの増大と関連していた(調整ハザード比[aHR]:1.28、95%信頼区間[CI]:1.16~1.41)。・BZD非使用期間と比較すると、中~高用量群(aHR:1.58、95%CI:1.36~1.74)および超高用量群(aHR:2.68、95%CI:2.20~3.26)は、いずれもすべての原因による死亡リスクの増大と関連していた。一方、低用量群では、そのような関連は認められなかった。・最も高いリスク推定値は、BZDの超高用量での使用および過剰摂取(aHR:6.18、95%CI:3.77~10.12)、自殺(aHR:4.46、95%CI:2.79~7.13)、事故(aHR:3.77、95%CI:2.66~5.35)といった、いずれも予防可能な死亡において認められた。 著者らは「BZDを超高用量で使用している患者は、非使用者と比較し、過剰摂取による死亡リスクが6倍高く、中~高用量で使用している患者では同リスクが3倍高かった。一方、低用量では、すべての原因による死亡リスクは上昇しなかった。死亡リスクは、BZDの用量と強く関連しており、複数のBZDの同時併用を伴うケースが多いという特徴が示唆された」としている。

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「右利き」か「左利き」かは何によって決まる?

 字を書く、ボールを投げる、道具を使うといった日常的な動作をするとき、右利きの人は右手、左利きの人は左手の方がはるかに上手に動かせるのはなぜだろうか。新たな研究で、利き手の優れた運動能力は練習の積み重ねによって形成されるものであり、人の利き手を決定付けるような生まれつき固定された大脳半球の優位性は存在しないことが示された。米カリフォルニア大学ロサンゼルス校(UCLA)デイヴィッド・ゲフィン医学部神経内科のAhmet Arac氏らによるこの研究の詳細は、「Proceedings of the National Academy of Sciences(PNAS)」に6月30日掲載された。 これまでの研究では、すでに胎児の段階で左右の四肢のどちらかを優先して動かす傾向が見られ、その傾向から出生後にどちら側が利き手になるのか予測できることが示されている。このことから、人では一方の脳半球が運動制御において優れているため、その半球が主に制御する手や腕も、もう片方より巧みに動かせると考えられてきた。しかし、今回の結果はこの説に異を唱えるものだ。研究を主導したArac氏は、「利き手の優位性は、単にその手や腕に関わる脳半球が運動をうまく制御できるからではない。道具の使用や文字を書くといった複雑な動作を生涯にわたって練習してきた結果なのだ」とニュースリリースの中で述べている。 今回の研究でArac氏らは、健康な成人を対象に利き手と非利き手の運動能力を比較する一連の実験を行い、利き手の運動制御が優れている理由は、脳の左右差による生まれつきの運動能力の差なのか、それとも長年の経験によって培われた技能なのかを検証した。 最初の実験では、モーションキャプチャーカメラを用いて、被験者が5つのターゲットに向かって腕を伸ばす際の3次元の動作を分析した。動作は、1)通常の状態、2)手首に約4ポンド(約1.8kg)の重りを装着した状態、3)道具使用を模倣するため、前腕に軽い棒を固定した状態の3条件で実施された。 その結果、通常条件では、利き手と非利き手の動きの精度はほぼ同等だった。また、重りを装着した状態でも、両腕の動きの精度は同程度だった。しかし、棒を固定した状態で手を伸ばすという、より高い運動制御能力と精密さが求められる条件では、利き手の方が明らかに高い精度を示した。 次の実験では、参加者に左右それぞれの手で文字や数字を書いてもらった。次いで、左右それぞれの肘にペンを固定して、文字や数字を書いてもらった。その結果、肘に固定したペンで書いたときには、通常見られる利き手の優位性は完全に消えていた。予想通りの結果ともいえるが、左右の肘で書かれた文字はいずれもひどいものだった。 Arac氏は、「筆記という動作を一度も行ったことのない身体部位である肘に切り替えると、練習によって得られた利き手の優位性は消えてしまう」と言う。さらに、練習を重ねると、左右どちらの肘も同程度に上達し、最終的には非利き手では達したことのないレベルまで向上したという。 研究グループは、今回の研究結果は運動技能を再学習する必要がある脳卒中やその他の脳損傷を負った患者を助ける上で、新たな視点をもたらす可能性があると述べている。また、この結果は、人がどのように技能を要する運動を学習し、それを脳がどのように処理しているのかを解明する一助になる可能性があるとしている。

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コーヒー摂取量が多いほど肝硬変・肝細胞がんリスク低下

 朝のコーヒーの魅力は、カフェインによる目覚め効果だけではないかもしれない。新たな研究で、コーヒーの摂取量が多いほど、肝硬変、肝細胞がん、および肝疾患による死亡リスクが低いことが明らかになった。米シーダーズ・サイナイ医療センター肝がんプログラムのメディカルディレクターを務めるJu Dong Yang氏らによるこの研究結果は、7月1日付で「Clinical Gastroenterology and Hepatology」に掲載された。Yang氏は、「今回の結果は、もともとコーヒーを好み、問題なく飲める人に対して、適度なコーヒー摂取を支持するものだ」と述べている。 過去の研究で、コーヒーの摂取は肝疾患リスクの低下と関連することが報告されている。しかし、画像バイオマーカーやプロテオミクス、コーヒーの摂取状況を組み合わせて評価した大規模な前向き研究は限られている。この研究では、ベースライン時に肝硬変や肝細胞がんのなかったUKバイオバンク参加者35万4,957人のデータを用いて、コーヒー摂取と肝硬変、肝細胞がん、および肝疾患関連の死亡との関連を検討した。コーヒーの摂取量、種類(カフェイン入り、カフェインレス)、および添加物(砂糖、甘味料)は質問票によって評価した。また、MRI検査を受けたサブコホート(2万8,961人)については、肝脂肪量(プロトン密度脂肪分画〔PDFF〕)、肝鉄量、および線維化・炎症(鉄補正T1値)の評価を行い、さらに4万4,633人についてはプロテオーム解析も実施した。 中央値13年間追跡した結果、コーヒー摂取量が多いほど肝疾患のリスクが段階的に低下することが示された。1日5杯以上摂取する人では、コーヒーを飲まない人と比べて、肝硬変のリスクが32%(ハザード比0.68、95%信頼区間〔CI〕0.58~0.79)、肝細胞がんのリスクが47%(ハザード比0.53、95%CI 0.34~0.83)、肝疾患による死亡リスクが42%(ハザード比0.58、95%CI 0.45~0.74)、それぞれ低かった。コーヒー摂取とリスク低下との関連は、カフェイン入りかカフェインレスかを問わず認められた。また、砂糖や人工甘味料を加えて摂取している場合でもリスク低下との関連は維持されたが、これらの使用は鉄補正T1値のわずかな上昇と関連していた。 MRI解析では、コーヒーの摂取量が多い人ほど、肝脂肪量と肝内鉄量が少なく、鉄補正T1値も低かった。一方、プロテオーム解析からは、コーヒーの摂取量が多い人ほど、肝細胞で産生されるタンパク質や補体系に関連するタンパク質のレベルが高くなる一方、線維化およびマクロファージ活性化に関連するマーカーのレベルは低かった。 ただし研究グループは、「これらの結果は1日に5杯以上のコーヒーを飲むことを推奨するものではない」と強調し、1日1~2杯でもリスク低下との関連が認められ、3~4杯でリスク低下との関連が最も強くなる傾向が見られたとしている。さらに、カフェインレスコーヒーでも肝臓の健康との関連が認められたことから、カフェイン以外の成分が作用している可能性があることに言及している。 Yang氏らは、さらなる研究が必要としながらも、「コーヒーの摂取は、運動、適正体重の維持、飲酒量の抑制といった健康的な生活習慣を補完する可能性がある」との見方を示している。 共著者の1人であるシーダーズ・サイナイ医療センター消化器・肝臓部門のShelly Lu氏は、「次の研究では、コーヒーに含まれる化合物のうち何が肝臓の保護作用に関与しているのかを特定したいと考えている。今回の結果は、炎症や線維化に関わる生物学的経路を示すとともに、コーヒーがどのように肝臓の健康に影響を及ぼすのか、また、どのような人が最も恩恵を受けるのかを理解するために、今後の研究で検討すべき分子標的を示している」と述べている。

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元プロサッカー選手、中年期から脳萎縮の可能性

 サッカーW杯の熱狂が米国を席巻する中、サッカーのもう一つの側面、すなわちサッカーが脳に及ぼす影響に光を当てた研究が報告された。中年期の元プロサッカー選手では、コンタクトスポーツの経験がない人と比べて、脳の重要な領域の萎縮がより顕著であることが明らかになった。また、元選手では、うつ症状や不安症状が多く見られ、計画や問題解決の困難を訴える傾向も認められたという。英インペリアル・カレッジ・ロンドン(ICL)のCaleigh Grace Lynch氏らによるこの研究結果は、アルツハイマー病協会国際会議(AAIC 2026、7月12~15日、英ロンドン)で発表された。 Lynch氏はニュースリリースで、「これらの結果は、元トップレベルのサッカー選手では、通常では神経変性疾患が臨床的に明らかになる以前の段階である中年から、脳の健康に測定可能な影響が生じている可能性を示唆している」と述べている。 サッカーでは、主に頭部でボールを扱うヘディングによって、頭部への反復的な衝撃が生じる。他のコンタクトスポーツでは、こうした反復的な頭部への衝撃は、反復する頭部外傷との関連が指摘されている神経変性疾患である慢性外傷性脳症(CTE)の発症に関与する可能性が報告されている。 今回の研究では、元プロサッカー選手142人と、コンタクトスポーツ経験のない同年代の健常者56人(男性43人)を比較した。元選手の内訳は、少なくとも3年間フルタイムのプロ契約を結んでいた男性126人と、英国でプロサッカープレイヤーとしてプレーしていた女性16人で、年齢はいずれも30~60歳であった。 その結果、臨床的に重要なうつ症状が認められた割合は、元プロサッカー選手で31%だったのに対し、対照群では9%であった。また、臨床的に重要な不安症状が認められた割合は、元選手で42%、対照群で25%であった。さらに元選手では、計画、集中、問題解決、日常業務の管理能力についても自己評価が著しく低いことが示された。 124人の元選手のMRI画像を用いた解析からは、記憶、注意、意思決定、感情の調節に重要な役割を果たす前頭葉、帯状回、視床などの複数の脳領域で灰白質の体積が減少していることが明らかになった。脳全体の体積も、対照群より小さかった。さらに、神経放射線科医がMRI画像を臨床的観点から評価したところ、約2%で神経変性疾患を示唆する臨床的に重要な脳萎縮が認められたという。 Lynch氏は、「客観的な認知機能検査では両群に有意な差は認められなかったものの、自覚症状や脳構造には重要な違いが観察された」と述べている。研究グループは、今後も元サッカー選手を追跡し、本研究で認められた脳の萎縮がCTEや認知症、アルツハイマー病の症状につながるかどうかを検証する予定である。 主任研究者であるICLのThomas Parker氏はニュースリリースで、「参加者を長期間追跡することで、頭部への反復的な衝撃が長期的な脳の健康や神経変性疾患にどのような影響を及ぼすのかをより深く理解し、将来の世代にとってスポーツをより安全なものにするための戦略づくりに役立てたい」と述べている。 一方、アルツハイマー病協会の最高科学責任者兼医療担当責任者で、本研究には関与していないMaria Carrillo氏は、「このような研究は、生涯を通じた脳の健康に影響する要因への理解を深めるとともに、けがの予防と継続的なモニタリングの重要性を改めて示すものだ。得られた知見は、選手、医師、スポーツ団体がコンタクトスポーツのリスクをより正しく理解し、安全に競技へ参加するための一助となる」と話している。 なお、学会発表された研究結果は、査読を受けて医学誌に掲載されるまでは一般に予備的なものと見なされる。

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マイクロプラスチックは心筋梗塞と関連?

 心筋梗塞を起こした人では、血液中からマイクロプラスチックおよびナノプラスチック(MNP)が高い割合で検出され、その濃度も高いことを示すデータが報告された。サピエンツァ大学サンタンドレア病院(イタリア)のPasquale Paolisso氏らの研究によるもので、詳細は7月14日付で「European Heart Journal」に掲載された。喫煙や大気汚染も、MNPの検出と関連があるという。 この論文では、「先行研究により、ヒトの臓器や組織にMNPが存在していることが既に示されている」と、研究背景が記されている。しかし、筆頭著者であるPaolisso氏によると、冠動脈(心臓の筋肉に血液を供給する動脈)の血液中にもMNPが存在するのか、また、喫煙や大気汚染などの環境要因がその存在に影響を与えるのかどうかという点については、「ほとんど知られていなかった」という。そこで同氏らは、冠動脈疾患の疑いのため造影検査を受けた患者61人を対象とする横断研究により、これらを検討した。 61人のうち19人はST上昇型という治療の緊急性が高い心筋梗塞(STEMI)を起こしていた。20人は冠動脈疾患があるものの心筋梗塞は起きていない慢性冠症候群で、22人は冠動脈疾患を認めない比較対照群とされた。MNPの濃度は冠動脈と末梢血管から採血した血液で測定した。大気汚染への曝露については、検査当日と過去2年間のデータを基に評価した。 STEMI群の84%で、血液中からMNPが検出された。これは、慢性冠症候群の40%や対照群の32%よりも有意に高い割合だった(P=0.002)。 MNPの検出には、喫煙や大気汚染との関連も認められた。PM2.5への長期曝露量が多い人や喫煙者では、血液中からMNPが検出されやすかった。喫煙とPM2.5への高い曝露の両方に当てはまる患者では全員からMNPが検出され、反対に、非喫煙者でPM2.5への曝露量が少ない患者では12.5%にとどまった。さらに、多変量解析では、喫煙歴がMNPの検出と独立して関連する唯一の因子だった。 論文の上席著者である同大学のEmanuele Barbato氏は、この研究結果について、「本研究は、MNPが心筋梗塞を引き起こすことを証明するものではない。しかし、大気汚染への曝露、血液中のMNP、そして冠動脈疾患との間に、強い関連性があることが明らかになった」と述べている。また、「喫煙歴と血液中のMNPの検出との間に強固な関連があった。これは、喫煙によってMNPが肺を介して血流に入りやすくなる可能性を示唆している。大気汚染も同じように作用するのかもしれない」と考察を加えている。 ヨハネス・グーテンベルク大学(ドイツ)のAndreas Daiber氏らは、本研究に関連する論説を発表。「MNPが潜在的な健康の脅威として浮上してきている。MNPはこれまで、心血管疾患のリスク因子として過小評価されていたのではないか」と述べている。今回のPaolisso氏らの報告については、「サンプルサイズが小さいという限界点はあるが、MNPが心筋梗塞などの急性心血管イベントと関連している可能性を示す、初期の臨床的エビデンスである」と評している。

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苛立った患者への対応で救急医が疲弊

 救急外来といえば、人気ドラマ『ザ・ピット/ピッツバーグ救急医療室(原題:The Pitt)』が思い出されるが、現実の米国の救急外来では、日々のさまざまな出来事によって医師が疲弊し、その結果、医療の質の低下につながる可能性が、新たな研究で示唆された。医師のストレスの大きな要因の一つが、苛立った患者への対応であることが示されたという。米マサチューセッツ大学アマースト校社会心理学教授のLinda Isbell氏らによるこの研究の詳細は、7月12日付で「BMJ Quality & Safety」に掲載された。 Isbell氏は、「医療には本質的に、不確実性と感情的な要素を伴う。特に救急外来(ER)ではその傾向が強い」と指摘した上で、「医療における不確実性や感情といった人間の現実を認識し、医師と患者の双方が、全ての人々の健康とウェルビーイングの実現という共通の目標に向かって取り組めるようにするシステム全体の変革が必要だ」と主張している。 研究グループによると、ERのスタッフはこれまで長い間、横柄で要求の多い患者への対応が業務を困難にしていることを訴えてきた。しかし、そのような患者とのやり取りが患者に対するケアにどの程度の悪影響を与えるのかを検証した研究は実施されていなかった。 今回の研究では、134人の医師を対象にコンピューター上の模擬診療(ビネット実験)を行い、患者の苛立った態度が、医師の感情や患者評価、臨床判断、診療行動に与える影響を検討した。各医師は、苛立っている/落ち着いている、精神疾患の既往あり/なしが組み合わされた4人の患者を診察し、患者の電子カルテ、診察場面の動画、身体所見を見た上で、患者の評価、臨床上の決定、検査の指示、診断を行った。また、診察ごとに各患者に対する感情的な反応を報告し、全ての患者の評価後に不確実性ストレス尺度(SUS)に回答した。Isbell氏は、「重要なのは、患者が穏やかだったか苛立っていたかにかかわらず、医師に伝えた医学的な情報は全く同じ内容だった点だ。変えたのは感情的な態度だけだった」とニュースリリースの中で説明している。 その結果、穏やかな患者に接したときと比べて苛立った患者に接したときには、医師は不安や怒り、疲労感が増加し、共感や幸福感、熱意は低下したことを報告した。また、患者の症状の訴えに対する不信感も強まり、患者について「痛みを大げさに訴えている」「協力的ではない」「診療に積極的に関わろうとしない」「好感を持ちにくい」「治療を遵守しない」「仕事に復帰できない」などと評価する傾向が強いことも明らかになった。さらに、日常的な医療行為に付き物である診断や治療に伴う不確実性にストレスを感じやすい医師ほど、こうした苛立った患者から影響を受けやすいことも明らかになった。 Isbell氏は、このような状況は、医療の質や治療成績の低下につながり、その影響は医師と患者の双方に及ぶ可能性があると指摘している。同氏はまた、ストレスを抱えた患者に対して、時には一歩引いて、医療従事者もひとりの人間であることを思い出してほしいと呼びかけている。 Isbell氏は「感情は人間に生来備わっているものであり、人間らしさを形作る要素である。しかし長年にわたり、医療現場では、医師は感情を診察室内に持ち込むべきではないと考えられてきた。これは全く現実的ではない」と話している。

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低ナトリウム血症、腎機能が高くても低くてもリスク上昇

 低ナトリウム血症は日常診療でよく遭遇する電解質異常だが、腎機能との関連は十分に明らかになっていなかった。今回、日本の外来患者13万人超を対象とした解析で、腎機能と低ナトリウム血症リスクにはU字型の関連が認められ、腎機能が高い場合と低い場合の双方でリスクが上昇することが報告された。研究は聖路加国際病院腎臓内科の長浜正彦氏らによるもので、詳細は6月25日付の「Clinical and Experimental Nephrology」に掲載された。 低ナトリウム血症は、血液中のナトリウム濃度が低下した状態で、体内の水分バランスを調節する仕組みの異常などによって生じる。腎機能が低下すると余分な水を排泄する能力が低下するため、低ナトリウム血症のリスクが高まると考えられている。一方、腎機能と低ナトリウム血症との関連については、これまで主に慢性腎臓病患者や入院患者を対象に検討されており、腎機能が保たれた外来患者を含めた大規模な検討は十分に行われていなかった。こうした背景から、著者らは成人外来患者を対象に、腎機能と低ナトリウム血症との関連を検討した。 著者らは、聖路加国際病院(東京)において、2010年4月~2020年3月に外来を受診した成人患者を対象とする後ろ向き横断研究を実施した。血清ナトリウム値、血清クレアチニン値、尿検査のデータが同一受診日にそろっている患者を抽出し、透析患者などを除外した13万194人を解析対象とした。血清ナトリウム値135mEq/L以下を低ナトリウム血症と定義し、推算糸球体濾過量(eGFR)と低ナトリウム血症との関連を、多変量ロジスティック回帰分析を用いて評価した。解析では、年齢や性別に加え、併存疾患や薬剤使用、各種臨床因子の影響を調整した。また、低ナトリウム血症患者では、尿浸透圧/血漿浸透圧比を指標として、eGFRと尿濃縮能との関連も検討した。 低ナトリウム血症の有病率は4.3%だった。低ナトリウム血症患者は、低ナトリウム血症のない患者と比べて高齢で、併存疾患が多かった。 低ナトリウム血症の有病率は、eGFRが70~80mL/min/1.73m2の群で最も低く、それよりeGFRが低い場合と高い場合のいずれでも増加し、腎機能と低ナトリウム血症リスクにはU字型の関連が認められた。特に、高eGFR群では有病率の上昇が顕著だった。 多変量解析では、併存疾患や薬剤使用を調整後もこの関連は維持された。さらに、炎症やバソプレシンによる水分調節に関連する臨床・検査因子を調整すると、eGFRが低い群で認められたリスク上昇は大きく減弱した一方、高eGFR群ではリスク上昇が持続した。完全調整モデルでは、eGFR 150mL/min/1.73m2以上の群のオッズ比は4.63(95%信頼区間 3.73~5.75)、eGFR 10mL/min/1.73m2未満の群では1.56(95%信頼区間 1.02~2.39)だった。 また、低ナトリウム血症患者では、高eGFR群ほど尿浸透圧/血漿浸透圧比が高く、尿濃縮能が保たれていた。 著者らは、「低ナトリウム血症は腎機能低下例だけでなく、腎機能が比較的保たれた患者でもその可能性を考慮すべきである」としている。また、高eGFR群と低eGFR群では低ナトリウム血症の発症機序が異なる可能性があると考察しており、高eGFR群では保たれた尿濃縮能とバソプレシンの作用が、低eGFR群では腎機能低下そのものやネフロン機能の低下など複数の要因が発症に関与している可能性があるとしている。 なお、本研究は横断研究のため因果関係は不明であり、尿濃縮能やバソプレシンを直接評価していない点などが限界として挙げられた。 本研究は、外来患者13万人超を対象に、腎機能が保たれた患者も含めて低ナトリウム血症との関連を検討した大規模解析であり、腎機能の高低で背景機序が異なる可能性を示した点が注目される。

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SNAP試験:MSSA菌血症に対するセファゾリンの位置付けを変えるエビデンス(解説:小金丸博氏)

 MSSA(methicillin-susceptible Staphylococcus aureus)菌血症に対する治療では、長年、欧米を中心にflucloxacillin、クロキサシリン、nafcillinなどの抗ブドウ球菌用ペニシリン(antistaphylococcal penicillin:ASP)が標準治療として位置付けられてきた。一方、セファゾリンは広く使用されているものの、とくに重症感染症における有効性については、ASPと比較した質の高いエビデンスが十分ではなかった。この長年の臨床的疑問に対して、大規模ランダム化比較試験で答えを示したのがNEJM誌2026年6月18日号に報告された「SNAP試験」である。 本試験はMSSA菌血症患者を対象とした国際共同ランダム化比較試験であり、セファゾリン群671例とflucloxacillinまたはクロキサシリン群670例を比較した。主要評価項目は90日死亡率で、解析対象患者においてセファゾリン群15.0%(97/645例)、ASP群17.0%(109/642例)であった。調整オッズ比は0.81(95%信頼区間[CI]:0.59~1.12)であり、事前に設定された非劣性基準を99.2%の確率で満たした。すなわち、セファゾリンはMSSA菌血症における死亡リスクに関してASPに劣らないことが示された。一方で、セファゾリンがASPより優れていると結論付ける試験ではない点には注意が必要である。死亡率低下に関する優越性の事後確率は89.8%であり、有効性の面でセファゾリンを支持する傾向は認められたものの、明確な優越性を証明した結果ではなかった。 注目すべき点は、安全性における差である。急性腎障害の発生率は、セファゾリン群13.9%(92/660例)に対してASP群19.6%(127/648例)であり、調整オッズ比は0.67(95%CI:0.50~0.89)とセファゾリン群で有意に低かった。MSSA菌血症に対して同等の治療効果を維持しながら腎障害リスクを低減できる可能性は、実臨床において重要な意味を持つ。 これまでセファゾリンについては観察研究やメタ解析からASPと同等の治療成績が示唆されていたものの、治療選択には一定の不確実性が残されていた。その背景には、cefazolin inoculum effect(CzIE)への懸念がある。これは高菌量条件下で一部のMSSA株においてセファゾリンの活性低下が認められる現象であり、感染性心内膜炎や深部感染症などではASPを優先すべきではないかという議論につながっていた。今回のSNAP試験は、CzIE陽性株に限定した検討ではなく、またすべての特殊な感染病態に対する最適治療を決定したものではない。しかし、実臨床に近い幅広いMSSA菌血症患者集団において、セファゾリンがASPと比較して死亡率で劣らないことを示した点は、これまでの懸念を大きく軽減する結果といえる。 日本の臨床現場では、セファゾリンは以前からMSSA菌血症の主要な治療選択肢として使用されてきた。その理由には、十分な抗菌活性に加え、投与の利便性、腎毒性の少なさ、忍容性の高さなどがある。今回のSNAP試験は、日本で広く行われてきた診療を単純に追認するものではなく、セファゾリンという薬剤がMSSA菌血症治療において国際的にも標準的な選択肢となりうることを、高品質なエビデンスで示した点に意義がある。ただし、本試験によってすべての臨床的課題が解決されたわけではない。感染性心内膜炎、中枢神経感染症、人工物関連感染、さらにCzIE陽性株における最適な治療戦略については、今後も検討が必要である。

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第307回 特定健診は初の6割台 メタボ該当・予備群は880万人で横ばい/厚労省

<先週の動き> 1.特定健診は初の6割台 メタボ該当・予備群は880万人で横ばい/厚労省 2.熊本地震で病院船が初出動 DMAT・JMATなど災害医療チームも活動/熊本県 3.OTC類似薬「薬剤費25%」が患者負担に、長期処方での配慮対象は限定的/厚労省 4.医療・介護AIに重点投資 AX・DX推進本部を設置/厚労省 5.国立大学の経営危機、東大にも波及 研究力低下への懸念強まる/東大ほか 6.正常な脳組織を誤って摘出 50代女性が自発呼吸不能の重篤状態/京大 1.特定健診は初の6割台 メタボ該当・予備群は880万人で横ばい/厚労省厚生労働省は、2024年度の特定健康診査・特定保健指導の実施状況を公表した。特定健診の対象者は約5,142万人、受診者は約3,161万人で、実施率は61.5%となり、前年度から1.6ポイント上昇した。2008年度の制度開始時は38.9%で、今回初めて6割を超えた。国は2029年度までに70%以上の実施を目標としている。性別では男性65.9%、女性57.0%で、男性が8.9ポイント高かった。年齢別では45~49歳が66.8%で最も高く、60歳未満ではおおむね6割台を維持した一方で、65~69歳は52.8%、70~74歳は47.5%まで低下した。保険者別では健康保険組合83.8%、共済組合83.3%に対し、全国健康保険協会60.6%、市町村国保38.8%と大きな差がみられた。特定保健指導は、対象者約524万人のうち約148万人が終了し、実施率は28.3%。前年度から0.7ポイント上昇し過去最高を更新したものの、2029年度目標の45%以上とはなお大きな開きがある。保険者別では単一健康保険組合が46.1%で最も高く、小規模市町村国保が45.3%で続いた。メタボリックシンドロームの該当者・予備群は約880万人で、2008年度比では17.2%減少しており、減少幅は前年度から横ばい推移となった。また、特定健診受診者の31.1%は高血圧症、糖尿病、脂質異常症の治療薬を1種類以上服用していた。受診率は着実に改善しているが、年齢や保険者による格差の縮小に加え、健診後の保健指導や必要な治療へ確実につなげることが今後の課題となる。 参考 1) 2024年度 特定健康診査・特定保健指導の実施状況(厚労省) 2) 特定健診、実施率は61.5%に上昇 24年度、保健指導は28.3%(MEDIFAX) 3) 特定健診実施率、初の6割超え24年度 29年度までに7割以上目標 厚労省(CB news) 2.熊本地震で病院船が初出動 DMAT・JMATなど災害医療チームも活動/熊本県政府は8月5日、7月28日に発生した令和8年熊本地震で多数の医療機関が被災した熊本県八代市の八代港で、防衛省による民間船舶(PFI船)を活用した医療提供(船舶活用医療)を初めて実施した。熊本県知事が8月1日に国へ要請したもので、2021年成立の「災害時等における船舶を活用した医療提供体制の整備の推進に関する法律」に基づく初の船舶活用医療となる。内閣府、防衛省、熊本県に加え、日本赤十字社、DMAT、JMATなどが連携。船内では発熱などの内科診療、熱中症や軽傷への対応、薬の処方などを行い、併せて被災者への入浴支援も実施した。8月5日午後2時から医療提供を開始し、初日の医療利用者は13人、活動した医療従事者は23人だった。その一方で、「はくおうII」への乗船者は187人、うち182人が入浴支援を利用した。台風13号の接近に伴い、同船は6日午前6時に八代港を出港し、医療提供も一時中断している。被災地ではDMAT、DPAT、日赤救護班、災害支援ナース、JMATなども活動を継続している。透析は一時13施設で実施が困難となったが、8月6日時点で実施困難な2施設についても他院での透析が手配済みとなった。船舶は陸上の医療機関やライフラインが被災した際にも、医療、衛生、生活支援を一体的に提供できる新たな災害医療拠点として期待される一方で、今回の台風による中断は、気象条件に左右される運用上の課題も示した。 参考 1) 令和8年熊本地震に係る被害状況等について(内閣府) 2) 令和8年熊本地震における船舶活用医療の実施について(同) 3) 熊本の被災地にあすから「病院船」、防衛省の船舶活用し初の取り組み…内科診療や熱中症治療・薬の処方も(読売新聞) 4) 防衛省チャーター舶「はくおうII」が入浴や医療提供 断水や猛暑に苦しむ熊本の被災者支援(産経新聞) 5) 避難者支援で医療チームが相次ぎ活動 熊本地震 DMAT・DPAT・災害支援ナースなど(CB news) 3.OTC類似薬「薬剤費25%」が患者負担に、長期処方での配慮対象は限定的/厚労省厚生労働省は8月5日、「OTC類似薬の保険給付の見直しの実施に向けた技術的検討会」で中間とりまとめを了承した。2027年3月から、市販薬と成分・投与経路が同一で1日最大用量も異ならないOTC類似薬について、薬剤費の25%相当を保険給付の対象外とし、通常の1~3割の自己負担とは別に「特別料金」として患者が負担する。8月時点の対象は77成分1,042品目で、解熱鎮痛薬、抗アレルギー薬、湿布、保湿剤など日常診療で使用頻度の高い薬剤が含まれる。ただし、一定の患者や使用場面には配慮措置を設ける。がんや指定難病の患者、公費負担医療の対象者は、原疾患や治療に関連する症状への処方であれば追加負担の対象外とする一方で、花粉症など原疾患と無関係な症状への処方は対象となる。18歳未満の子供や入院中・退院時の処方も対象外。外来・在宅でも、生検、処置、手術など侵襲的医療行為に伴い新たに処方する薬は原則14日分まで対象外とする。長期使用の扱いも焦点となる。内服薬は年間おおむね50週の処方が目安で、診療情報提供書、お薬手帳、オンライン資格確認の薬剤情報などで処方歴を確認する。初診で過去の処方歴が確認できない場合は、少なくとも6ヵ月間の症状の持続・反復と薬剤使用を確認した上で、医師が通年使用を必要と判断する。外用薬はさらに条件が厳しく、湿布などの鎮痛消炎外用薬は長期使用でも原則追加負担となる。ただし2028年度末までは、画像検査で重度の変形性膝関節症などが確認され、医師が毎日の継続使用を必要と判断する場合に限り対象外とする。アトピー性皮膚炎に対するヘパリン類似物質や尿素の通年使用は対象外となる。また、医療用薬とOTC薬で効能・効果が一致しない場合は追加負担を求めない。たとえばフェキソフェナジンは、OTCにない蕁麻疹や皮膚疾患に伴うそう痒への使用では対象外となる一方で、アレルギー性鼻炎では原則対象となる。7月にOTC薬が発売された睡眠薬ラメルテオンも対象成分に追加された。今回の制度変更は現場にも大きく影響する。医療機関には対象外と判断した根拠を診療報酬請求書などに記載することが求められる方向で、処方箋様式の変更や電子カルテ、レセコン改修も見込まれる。検討会でも、医師や薬剤師の確認業務が過度に複雑にならない簡素な運用を求める声が相次いだ。厚労省は8月6日から中間とりまとめへのパブリック・コメントを実施しており、8月20日が締め切りとなっている。全国保険医団体連合会(保団連)は、慢性疾患でも配慮対象にならないケースが多いうえ、対象外か否かを判断する医療現場の負担が大きいとして、医療関係者らに厚労省のパブコメへ意見を提出するよう呼びかけている。意見はe-Govのパブリック・コメントから提出できる。厚労省は今後、さらに医療保険部会や中医協で議論し、今秋に省令・告示、関連通知などを取りまとめる予定。 参考 1) 第4回OTC類似薬の保険給付の見直しの実施に向けた技術的検討会(厚労省) 2) 「OTC類似薬の保険給付の見直しの実施に向けた中間とりまとめ」について(同) 3) 入院患者は追加負担対象外 OTC類似薬で厚労省案 がんの主たる疾患や副作用の薬も(産経新聞) 4) OTC類似薬の技術的検討会が中間取りまとめ 湿布薬は慢性・重度の変形性膝関節症は除外 対象1042品目(ミクスオンライン) 5) OTC類似薬保険除外 厚労省が配慮措置(中間とりまとめ)のパブコメ募集開始 8月20日まで(保団連) 6) 湿布は長期使用でもOTC類似薬の追加負担に 厚労省検討会で了承(朝日新聞) 7) OTC類似薬の患者特別負担の詳細固まる、アトピーへの「ヘパリン類似物質・尿素」通年処方は特別負担対象外-厚労省技術的検討会(Gem Med) 8) OTC類似薬の保険給付の見直しの実施に向けた中間とりまとめ」に関する意見公募の実施について(パブリック・コメント) 4.医療・介護AIに重点投資 AX・DX推進本部を設置/厚労省厚生労働省は8月5日、医療・介護・福祉分野でAIやデジタル技術の活用を推進する「厚生労働省ヘルスケアAX・DX推進本部」の初会合を開いた。本部長を務める上野 賢一郎厚労相は、従来の医療DXに加え、AIトランスフォーメーション(AX)も省を挙げて戦略的、総合的に推進する方針を示し、各部局に2027年度予算の概算要求へ必要な事業や経費を盛り込むよう指示した。推進本部は、これまで各部局で進めてきたAI・DX関連施策を一元的に把握し、全省的に加速させる司令塔として4日に発足した。本部長に厚労相、副本部長に事務次官、厚生労働審議官、医務技監などを置き、関係部局長が参加するほか、「AI for ヘルスケア成長戦略室」を新設し、迫井 正深医務技監を室長として、具体的施策の検討や関係省庁との調整を行う。背景には、政府が日本成長戦略で「AI・半導体」を17の戦略分野の1つに位置付けたことがある。医療・介護ではAIロボットなどの「フィジカルAI」、医療・介護・福祉では領域特化型の「バーティカルAI」の開発・導入を進める。政府はフィジカルAIで2040年に世界シェア3割超、市場規模20兆円、バーティカルAIでは2030年までに世界で5兆円超の市場獲得を目標に掲げる。看護記録などの文書作成や福祉相談業務を支援するAIの普及、研究開発・実証、AI活用に必要なデータ基盤の整備などが想定される。創薬・先端医療でも、AIやデータ活用による研究開発プロセスの高度化・効率化を推進する。政府は成長戦略で新設した、予算要求上限を設けない「『強く豊かな日本』投資枠」も活用し、官民投資を促す方針。厚労省は今後、8月末の概算要求に向けて施策を具体化する。 医療DXが電子化や情報連携を中心としてきたのに対し、今後は診療・看護・介護など実務そのものをAIで変革するAXへ政策領域が広がることになる。 参考 1) 第1回厚生労働省ヘルスケアAX・DX推進本部 資料(厚労省) 2) 医療や介護のAI活用を支援 厚労省が推進本部設置(日経新聞) 3) 厚労省 ヘルスケアAX・DX推進本部が初会合 上野厚労相「日本成長戦略実現に向け概算要求へ」(ミクスオンライン) 4) 政府が医療・介護分野でAI活用推進へ「ヘルスケアAX・DX推進本部」初会合(CB news) 5.国立大学の経営危機、東大にも波及 研究力低下への懸念強まる/東大ほか東京大学が2026年度に2年連続の最終赤字となる見通しであることがわかった。国立大学法人化した2004年度以降、2年連続の赤字は初めて。25年度は数十億円、26年度は約40億円の赤字を見込み、大学の「貯金」に当たる繰越金も数年で枯渇する可能性がある。財務状況が改善しなければ、研究者数の削減など研究・教育体制の縮小も避けられないという。東大の年間収入は約3,000億円で国立大学最大規模。24年度は運営費交付金や補助金が約969億円、附属病院収入が約585億円、企業との共同研究や大型研究事業などの外部資金が約1,160億円だった。その一方で、実験機器・材料などの物件費は約1,794億円、人件費は約1,105億円に上る。人事院勧告に伴う給与上昇で人件費は5年間で約100億円増加し、物価高による研究機器や資材価格の上昇も経営を圧迫している。背景には国立大学法人全体の構造問題がある。国からの運営費交付金は26年度で1兆971億円と、法人化した04年度から1,445億円減少。科研費は増えたものの、その増加は649億円にとどまり、基盤的経費の減少を補えていない。わが国の大学の研究開発費も2000年から23年までに1.2倍にとどまり、米国の2.1倍、中国の16.5倍と大きな差がある。大学病院の経営難も大学本体に影響する。国立大学病院44施設のうち25年度は31病院が赤字となる見通しで、経常赤字は計244億円。高度医療や希少疾患診療では高額医薬品・資材の使用が避けられず、診療収入だけではコスト増を吸収しにくい。東大は国際卓越研究大学への認定を目指しているが、文部科学省による審査が継続中となっており、認定見送りとなれば財政改善はさらに厳しくなる。国立大学の研究力と高度医療を維持するため、安定した基盤財源の確保が改めて問われている。 参考 1) 東大が2年連続赤字へ 「貯金」数年で枯渇、研究者の削減不可避(日経新聞) 2) 国立大学法人モデル、岐路に 東大も自立運営困難 収入増、規制が足かせ 研究開発費は20年横ばい(日経新聞) 6.正常な脳組織を誤って摘出 50代女性が自発呼吸不能の重篤状態/京大京都大学医学部附属病院は8月7日、50代女性の脳腫瘍摘出手術で、腫瘍ではない正常な脳組織を誤って摘出し、脳幹などを損傷する医療事故があったと発表した。患者は術後、自発呼吸ができず人工呼吸器による管理が続き、手足も動かない重篤な状態となっている。病院によると、患者はめまいやふらつきはあったものの、手術前は生活に大きな支障はなく通常の生活を送っていた。検査により小脳橋角部に約3cmの良性腫瘍「髄膜腫」が疑われ、7月末に全身麻酔下で開頭手術を受けた。執刀したのは40代の脳神経外科医で、医師として20年以上の経験があり、同様の手術を約100例担当していた。手術中には、摘出した組織の一部を調べる術中病理診断が行われ、「腫瘍ではない」との結果が2度示された。それでも執刀医は、腫瘍の端の組織を採取したため腫瘍成分が含まれていなかった可能性があるなどと判断し、摘出を継続したという。約10時間の手術後も患者の意識や呼吸が十分に回復しなかったためMRI検査を実施したところ、本来摘出する予定だった腫瘍は残存しており、右小脳扁桃や呼吸機能に関わる脳幹の側面から背側にかけて大きな損傷があることが判明した。脳幹には呼吸など生命維持に不可欠な機能を担う神経中枢が集まっており、患者は現在も人工呼吸器を必要としている。京大病院は医療事故として患者と家族に謝罪し、厚生労働省や京都府警など関係機関にも報告した。高折 晃史病院長は「患者と家族に心よりおわび申し上げる」と陳謝。病院側は、執刀医の判断ミスや思い込みが影響した可能性にも言及しており、今後、外部有識者を含む事故調査委員会を設置し、手術中の判断過程や安全確認体制を検証し、原因究明と再発防止を進める方針だ。 参考 1) 脳腫瘍摘出術中の誤認による摘出部位誤り事例について(京大医学部附属病院) 2) 京都大病院、正常部位摘出し脳幹損傷 患者は重篤な状態(日経新聞) 3) 京大病院で医療事故 脳腫瘍の手術で誤って正常な脳の一部摘出(NHK) 4) 京都大病院が脳腫瘍手術で誤って正常な組織摘出、50代女性患者は呼吸に関わる脳幹損傷・人工呼吸器装着つづく(読売新聞)

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