サイト内検索|page:10

検索結果 合計:33434件 表示位置:181 - 200

181.

第258回 フジテレビ第三者委員会報告書が指摘・批判する、年配男性中心の「オールドボーイズクラブ」の弊害は医療の世界でも

フジテレビ第三者委員会調査報告書、トランプ関税、任天堂「Nintendo Switch 2」こんにちは。医療ジャーナリストの萬田 桃です。医師や医療機関に起こった、あるいは医師や医療機関が起こした事件や、医療現場のフシギな出来事などについて、あれやこれや書いていきたいと思います。先週はたくさんの大きな出来事がありました。本連載でも何度か書いてきたフジテレビの一連の問題について、第三者委員会(委員長・竹内 朗弁護士)が調査報告書を3月31日に公表、4月2日にはトランプ米大統領が全世界を対象にした相互関税を発表しました。さらに同日、任天堂が「Nintendo Switch 2」の仕様と発売日を発表しました。どれも日本の医療とは関係なさそうですが、いえいえ、そんなことはありません(Switch 2は当面は無関係かもしれませんが)。ということで今回は、フジテレビの第三者委員会調査報告書について、教訓とするべきポイントや特に興味深かった内容について書いてみたいと思います。中居氏の性暴力を認定、2人だけの食事会は「業務の延長線上」フジテレビの第三者委員会調査報告書の公表版は別紙含め実に300ページ超に及びます1)。報告書は、元アナウンサーだった女性が中居 正広氏から「性暴力を受けた」と認定、週刊文春などの報道にあった2人だけの食事会は「業務の延長線上」にあったとしました。そして、対応に当たった当時の港 浩一社長ら経営幹部について、性暴力への理解を欠いており、被害者救済の視点を欠いていたとしました。1月に開かれた記者会見で、中居氏の番組を漫然と継続していたことについて港社長は「番組を突然中止すると被害者に刺激となるので中止しなかった」と意味不明な理由を述べていましたが、第三者委員会は「これらの対応は間違いだった」と断定、女性を番組から降板させたことなども含めて「二次加害行為にあたる」としました。報告書はさらに、役職員に対するアンケートや、専用ホットラインを用いた調査などから、全社的にハラスメントが蔓延していたと指摘、「性別・年齢・容姿」を理由に呼ばれる業務の延長線上の会合が恒常的に存在し、そうした場で性暴力やハラスメントに遭う例が多数あったとしています。第三者委員会の報告書が公開された翌日の4月3日には、放送事業者の監督官庁である総務省は「今回の事態は放送事業者による自主・自律を基本とする放送法の枠組みを揺るがすもので、放送法の目的に照らし極めて遺憾」などとしてフジテレビと親会社のフジ・メディア・ホールディングスに対して「厳重注意」の行政指導を行いました。放送局の人権やコンプライアンスへの対応を問題視した行政指導は異例のことだそうです。さらに4月4日には、事件当時フジテレビ専務で、その後系列局の関西テレビ(大阪市)の社長となっていた大多 亮社長が辞任を発表しています。大多氏は中居氏の性暴力が発覚した当初、港社長、編成制作局長とともに最初の対応を協議した一人で、この3人が中居氏の性暴力を「プライベートな男女間のトラブル」と即断したことについて、報告書は「リスク認識・評価を誤り、会社の危機管理としての対処をしなかった」と断じています。「BSフジLIVE プライムニュース」のキャスターの過去のハラスメントも公表この報告書の注目点の一つは、中居氏の事案だけでなく、複数の「重要な社内ハラスメント事案」についても赤裸々にその事実を公にしたことです。その一つがBSフジ「BSフジLIVE プライムニュース」のキャスターを務めているフジテレビ報道局の反町 理解説委員長の事案です。2006〜07年頃、反町氏は報道局の後輩女性社員2人に対し、それぞれ1対1の食事に誘ったり、プライベートの写真を送るよう求めたりしていました。その後、女性社員が反町氏からの誘いを断るようになると、業務上必要なメモを共有しなかったり、不当な叱責を部内全体に送信したり、威圧的な態度を取ったりしたとのことです。この事案は、2018年に週刊文春でも記事となっていますが、フジテレビは当時の記者会見で「事実無根」として否定していました。先週、3月31日の第三者委員会の記者会見でも竹内弁護士はこの事案を敢えて口頭で紹介、当事者について「その後、役員になっています」とコメントしました。記者会見では実名は明かされませんでしたが、報告書(公表版)の150ページ以降に、「反町 理氏」の事案として約9ページに渡って克明に記述されています。報告書は、ハラスメントがあってもまともに社内で調査されず、当事者に処分も下されなかったこの事案について、「フジテレビ社員に与えた負の影響は大きい」と書いています。なお、反町氏は、第三者委員会の記者会見が開かれる4日前の3月27日に取締役を退任しており、記者会見の当日、3月31日夜に予定されていたBSフジ「BSフジLIVE プライムニュース」を突如欠席(前週までは出演)、その後も出演見合わせが続いています。「女性の役員や上級管理職への登用が一向に進まず、旧態依然とした昭和的な組織風土がいまだに残存」報告書の中でもう一点興味深いのは、「オールドボーイズクラブ」の弊害に対する指摘です。中居氏の事案や反町氏の事案が起こった原因の一つとして報告書は、「『思慮の浅さ』『集団浅慮』を生む組織の同質性・閉鎖性・硬直性」を挙げており、その理由を「取締役会による役員指名ガバナンスが機能不全に陥っている」ためとしています。その上で、「杜撰な役員指名の背景には、組織の強い同質性・閉鎖性・硬直性と、人材多様性(ダイバーシティ)の欠如がある。年配の男性を中心とする組織運営は、『オールドボーイズクラブ』と揶揄される。現場ではセクハラを中心とするハラスメントの寛容な企業体質が形成され、女性の役員や上級管理職への登用が一向に進まず、旧態依然とした昭和的な組織風土がいまだに残存している」と、古い価値観を持った男たちだけで組織運営をしてきたことが、内部統制の不備を生み、今回の事案を招くに至ったと結論付けています。なお、フジテレビの「オールドボーイズクラブ」については、フジ・メディア・ホールディングスの大株主で米投資ファンドのダルトン・インベストメンツも4月3日に発表したコメントの中で、新経営陣について、「ただ人数を減らし、女性比率を高め、平均年齢を下げたというだけで、実態は5名のオールドボーイズクラブ出身者が引き続き経営の中枢を担うもので、『経営刷新』というにはほど遠い内容」と厳しく批判しています。元社長の港氏はバラエティ畑出身で、とんねるずの「とんねるずのみなさんのおかげです」のディレクター、プロデューサーとして有名です。また、元専務の大多氏は、ドラマ畑出身で、いわゆるフジテレビの「月9」ドラマの企画・プロデュースを多数手掛けました。いずれも時代の最先端を行くテレビマンでしたが、結局“旧態依然とした昭和的な組織風土”を温存し、のさばらせる張本人となってしまったわけです。大学医学部など医療界にも残る「オールドボーイズクラブ」この「オールドボーイズクラブ」の弊害は、医療の世界でも当てはまる点が多いのではないでしょうか。特に大学医学部、中でも外科系医局ではこうした組織風土が未だに存在しているところが少なくないようです。本連載の「第134回 『消化器外科手術に男女の性差なし』、女性外科医たちがBMJに研究成果を発表」では、日本では指導的立場の女性消化器外科医は少ないことから、男女の消化器外科医による手術成績に差があるのか、女性が外科医として十分活躍できる存在であるのかを調査・分析した論文がBMJ誌に掲載されたというニュースを紹介しました。この研究発表の記者会見で、調査・分析を行った女性外科医らが、女性外科医による腹腔鏡下手術が少なかった理由について「女性消化器外科医にはそもそも腹腔鏡手術困難症例の割り当てが多く、腹腔鏡技術を習得する機会が少なかった可能性がある」、「新規技術を医局で導入するときは、まず男子にやらせるといった状況もある」と指摘していたのが印象的でした。これこそ、医療界の「オールドボーイズクラブ」そのものと言えるでしょう。現在、「オールドボーイズクラブ」の中で悪戦苦闘している女性医師たちも、今回の一連のフジテレビ問題で考えるところが多々あったのではないでしょうか。というわけで、第三者委員会の調査報告書には、放送業界、エンターテインメント業界に限らず、あらゆる組織が学ぶべき教訓が数多く盛り込まれています。今後、セクハラやパワハラを認定する場合のお手本となる可能性もあります。公表版の最後には約50ページの要約版もついています。病院や医局などで管理職に就いている方は、要約版だけでも一読されることをお勧めします。参考1)調査報告書(公表版)

182.

転倒予防に一番効果的な介入は?【論文から学ぶ看護の新常識】第10回

転倒予防に一番効果的な介入は?病院内での転倒予防介入の効果を調べた研究により、患者および医療従事者への教育介入のみが統計的有意に転倒を減少させる効果があることが示された。Meg E Morris氏らの研究で、Age and Ageing誌2022年5月06日号に掲載された。病院内転倒を減少させる介入:システマティックレビューとメタアナリシス研究グループは、転倒予防介入が病院内における転倒率および転倒リスクに与える影響を明らかにするため、システマティックレビューおよびメタアナリシスを実施した。分析対象となったのは、入院中の成人患者を対象に転倒予防介入を行った45件の研究であり、そのうち43件がシステマティックレビュー、23件がメタアナリシスに含まれた。介入方法は、患者および医療従事者向け教育、環境改善、補助用具の使用(アラーム、センサー、歩行補助具、低床ベッドなど)、転倒予防に関連する方針・システムなどの変更、リハビリテーション、薬剤管理(ビタミンDによる栄養補助を含む)が含まれた。評価指標には、転倒率比(RaR)と転倒リスク(オッズ比[OR])が用いられ、単独介入および複合的介入(2つ以上の介入の組み合わせ)の両方を評価した。主な結果は以下の通り。教育介入のみが統計的に有意な結果を示し、転倒率(RaR:0.70、95%信頼区間[CI]:0.51~0.96、p=0.03)および転倒リスク(OR:0.62、95%CI:0.47~0.83、p=0.001)を有意に低下させた。エビデンスの質は高いと評価された(GRADE評価)。転倒予防に関するシステムについての研究(9件)は、効果量が報告されていないためメタアナリシスに含まれなかった。1時間ごとの巡回、ベッドサイドでの申し送り、電子監視または患者安全管理者の配置を調べた5つの研究では、いずれも転倒率の有意な低下は示されなかった。医学的評価とそれに基づく介入を行った研究では、1000患者日あたりの転倒率が、対照群10.6に対し、介入群1.5と有意に低下(p<0.004)した。複合的介入は、転倒率(RaR:0.8、95%CI:0.63~1.01、Z=−1.88、p=0.06)に低下傾向がみられたが、統計的有意な低下は認められなかった。スコア化転倒リスクスクリーニングツール(FRAT)は、2つの大規模RCTの結果より、スコア化を行わなくても転倒率に影響がないことが示された(統計的有意性の記載なし)。システマティックレビューに含まれた個別研究の中で、医療従事者教育、一部の複合的介入、特定のリハビリテーション、システム関連介入では、特定の介入において効果を示唆するエビデンスが報告されたが、バイアスリスクは低~中程度と評価された。院内転倒率および転倒リスクを効果的に減少させるには、患者および医療従事者への教育が最も効果的であり、複合的介入はプラスの影響をもたらす傾向があった。アラーム、センサー、スコア化転倒リスク評価ツールの使用と転倒減少との関連は確認されなかった。転倒って恐ろしいですよね…。2022年のメタアナリシス(いろんな論文を組み合わせて評価した論文)では、患者とスタッフへの教育が転倒率と転倒リスクの減少に最も効果的であることが示されました。患者教育では、入院中の転倒リスクに対する認識を高めることが重要です。65歳以上や複数の併存疾患がある50歳以上の患者は特に高リスクであり、教育プログラムを通して自身の転倒リスクを理解することで、予防行動を取ることができます。一方、スタッフ教育も重要です。転倒リスクのアセスメント、予防策の実施、転倒発生時の対応などに加えて、とくに新人や中途採用者の方には、疾患特性による転倒リスクを理解してもらうための教育が必要です。教育によるスタッフのスキル向上が、効果的な転倒予防につながります。またそれ以外の介入を組み合わせることも重要です。例えば、環境整備、補助用具の活用、リハビリテーションなど、多面的なアプローチがあります。しかし、メタアナリシスの結果では、補助用具の使用やリハビリテーションの単独での効果は限定的であり、他の介入と組み合わせることが重要だと示唆されています。入院時の環境整備や補助用具の活用、リハビリテーションによる身体機能の改善などを組み合わせることで、より効果的な転倒リスクの軽減が期待できます。転倒転落の対策は教育を軸としつつ、環境整備、補助用具、リハビリテーションなど多角的な視点からのアプローチを組み合わせることが求められます。一つの介入方法にこだわらずに、広い視野を持ちながら転倒転落を予防していきましょう!論文はこちらMorris ME, et al. Age Ageing. 2022;51(5): afac077.

183.

働き方改革スタートから1年、「変化を感じる」は35%/ウォルターズ・クルワー調査

 医師の働き方改革がスタートして1年。医療業界向けの情報サービス事業のウォルターズ・クルワー・ヘルスは医師を対象に「『医師の働き方改革』に関する調査」と題したアンケートを行い、その結果を発表した。1)働き方改革は進むも「自身の変化」の実感は乏しい「自身の勤務先の働き方改革の取り組み」を聞いた設問には、「取り組んでいる」との回答が83%だったが、その中で自身の働き方にも「変化を感じる」と答えた人は35%に留まった。2)「賃金・報酬制度の見直し」は35%が望むも、実施は5.8%「実際に行われている取り組み(複数回答)」を聞いた設問では、「業務の効率化」(23%)、「ミーティング・カンファレンス時間の短縮」(20%)、「ワークライフバランスの向上」(17%)が多かった。一方、医師が「取り組みが必要だと考えること」と「実際の取り組み」の間にはギャップが見られ、「業務の効率化」「ワークライフバランスの向上」は15ポイント以上の差が見られた。この差はとくに「賃金・報酬制度の見直し」の項目で大きく、約30ポイントの差があった。3)過半数が「特に成果はない」「医師の働き方改革における効果と課題」を聞いた設問では、「労働時間が短くなった」が15%、「業務が効率化された」が12%と上位に挙がったものの、「特に成果はない」が56%と過半数を占めた。4)診療・研究時間が「減った」のは2割「実際に、診療や研究にかける時間の変化」を聞いた設問では「治療方針決定にかける時間」「研究にかける時間」が「減少した」と答えたのは2割未満。7割以上が「変わらない」としており、質を維持しながら改革を進める難しさが伺える結果となった。「1日3件以上の臨床疑問がある」と答えた医師は約35%超で、うち9割以上が「すべては解決できていない」と回答した。5)過半数はDX導入に期待「勤務先のDX化(デジタル技術の導入や活用の推進)の取り組み」を聞いた設問では、45%が「勤務先はDX化に取り組んでいる」と回答したが、「自身の働き方にも変化がある」としたのはうち16%だった。「DXの導入によって働き方が改善されると思う」との回答は56%だった。「必要な取り組み・ツール」(複数回答)としては「手続きや書類管理の自動化ツール(29%)、「業務を分担するためのタスクシフト導入」(27%)、「柔軟な勤務時間制度」(25%)などが多かった。【アンケートに寄せられた声(一部抜粋)】「人材不足のままでは働き方改革の限界。離職者も増えている。行政による介入が必要」(小児科・勤続20年以上)「他社製品と比べて20年遅れた電子カルテが原因で業務に時間がかかる」(内分泌内科・10〜20年)「研修医や若手医師だけが時間短縮され、中堅医師にしわ寄せが来ている」(内科・10〜20年)「時間外労働の短縮が給与減につながるため、改革に抵抗がある」(その他診療科・10〜20年)「小手先の医療者側の改革は意味がない。患者側(国民側)の改革も必要」(麻酔科・5年未満)アンケートの概要・調査期間:2024年11月29日~12月2日・対象:全国の200床以上の医療機関の勤務医、24~69歳、206名・手法:インターネット

184.

医師の喫煙率、男女・診療科で差/日医

 日本医師会(会長:松本 吉郎氏[松本皮膚科形成外科医院 理事長・院長])は、4月2日に定例の記者会見を開催した。会見では、松本氏が3月28日に発生したミャンマー大地震の犠牲者などに哀悼の意を示すとともに、支援金として医師会より合計1,000万円を支援したことを報告した。また、2000年より医師会と日本大学が共同調査を行っている「喫煙意識調査報告」の内容、4月19日に開催されるシンポジウム「未来ビジョン若手医師の挑戦」の開催概要が説明された。男性会員医師の喫煙率は下げ止まり 「第7回(2024年)日本医師会員喫煙意識調査報告」について副会長の茂松 茂人氏(茂松整形外科 院長)がその概要を述べ、調査を行った兼板 佳孝氏(日本大学医学部社会医学系公衆衛生学分野 教授)が詳細を説明した。 この調査は、医師会の禁煙推進活動の一環として2000年より4年ごとに実施され、医師会員の喫煙の現状とその関連要因の把握を目的に行われている。 今回の主な調査目的は、「喫煙率の推移」、「喫煙に関する意識」、「加熱式たばこの使用実態」、「加熱式たばこに関する意識」の4点であり、調査方法としては日本医師会員の中より性別・年齢階級で層別化した上で無作為に抽出した男性6,000人、女性1,500人に自記式質問調査票の郵送で実施した。調査時期は2024年2~12月で、有効回答数は4,139人(反応率58.0%)だった。 主な結果は以下のとおり。・男性の喫煙率は6.9%(前回7.1%)、女性は0.9%(前回2.1%)。・年齢階級別の喫煙率につき、男性では50~59歳が8.8%、女性では70歳以上が2.3%で1番高かった。・診療科別の喫煙率につき、男性では皮膚科(12.1%)、精神科(9.7%)、整形外科(9.6%)の順で多く、参考までに呼吸器科は3.2%と低く、健診科は0%だった。・診療科別の喫煙率につき、女性では循環器科(4.0%)、健診科(3.4%)、精神科(2.0%)の順で多く、0%の診療科が呼吸器科、消化器科など8診療科あった。・現在使用しているたばこ製品については、紙巻たばこ(70.9%)、加熱式たばこ(32.7%)、そのほか(2.6%)の順で多かった。・「加熱式たばこへの心配や懸念」については、「長期間の安全性のエビデンスがないこと」(54.0%)で1番多かった。・「加熱式たばこについて質問された経験」では、「ある」が20.6%、「ない」が78.8%だった。・「加熱式たばこの正確な情報を患者に説明できるか」では、「できる」が11.4%、「できない」が87.7%だった。 今回の調査結果から茂松氏らは、「男性の喫煙率が下げ止まりとなったこと」、「男女ともに20~39歳の喫煙率の低下が顕著だったこと」、「喫煙者の中で加熱式たばこの使用者割合が増加したこと」などが判明したと言及し、「これらの研究結果を踏まえた上で、日本医師会による喫煙防止啓発活動がさらに推進されていくことが期待され、引き続き、定期的に同様の調査を実施し、医師会員の喫煙率、喫煙習慣をモニタリングしていく必要がある」と語った。 最後に常任理事の笹本 洋一氏(ささもと眼科クリニック 院長)が、シンポジウム「未来ビジョン若手医師の挑戦」について、4月19日にライブ配信で開催されること、内容は若手医師のさまざまな挑戦とシンポジウムを中心に行われることを紹介し、会見を終えた。

185.

白斑患者はがんリスクが高いのか?

 尋常性白斑患者におけるがんの発症率に関する研究では、一貫性のない結果が報告されている。イスラエル・テルアビブ大学のYochai Schonmann氏らは、約2万5千例の尋常性白斑患者を含む大規模コホートでがん発症リスクの評価を行い、結果をJournal of the American Academy of Dermatology誌2025年4月号に報告した。 研究者らは、イスラエルのClalit Health Servicesデータベース(2000~23年)を利用した人口ベースコホート研究を実施し、多変量Cox回帰モデルを用いて調整ハザード比(HR)を算出した。 主な結果は以下のとおり。・本研究には、尋常性白斑患者2万5,008例およびマッチさせた対照群24万5,550例が含まれた。尋常性白斑患者の平均年齢(SD)は35.96歳(22.39歳)、1万2,679例(50.70%)が男性であった。・がんの発症率は、尋常性白斑患者で10万人年当たり499例(95%信頼区間[CI]:468~532)、対照群で10万人年当たり487例(95%CI:476~497)であった(調整ハザード比[HR]:1.00、95%CI:0.93~1.07、p=0.999)。・尋常性白斑患者では、対照群と比較して悪性黒色腫(調整HR:0.70、95%CI:0.50~0.99、p=0.0337)、肺がん(調整HR:0.73、95%CI:0.57~0.93、p=0.007)、膀胱がん(調整HR:0.70、95%CI:0.52~0.94、p=0.0138)のリスクが低かった。 著者らは、尋常性白斑患者のがん発症率は上昇していないことが示されたとし、同患者に対するがん検診は、一般集団に推奨されている標準的なガイドラインに従って実施すべきとまとめている。

186.

ドパミンD2受容体ブロックが初発統合失調症患者の長期転機に及ぼす影響

 初回エピソード統合失調症において、持続的なドパミンD2受容体ブロックを行っているにもかかわらず再発してしまう患者の割合やD2受容体ブロック作用を有する抗精神病薬の長期使用によりブレイクスルー精神疾患を引き起こすかどうかについては、明らかになっていない。東フィンランド大学のJari Tiihonen氏らは、再発歴がなく、5年超の持続的なD2受容体ブロックによる治療を行った患者において、ブレイクスルー精神疾患の発生率が加速するとの仮説を検証するため、本研究を実施した。The American Journal of Psychiatry誌2025年4月1日号の報告。 フィンランド全国コホートのデータを用いて、1996〜2014年の45歳以下の初回エピソード統合失調症入院患者を特定した。主要アウトカムは、持続的に長時間作用型注射剤(LAI)抗精神病薬で治療を行った患者における入院につながる重度の再発とした。副次的アウトカムは、1年目を基準とした2〜10年目までの再発の発生率比(IRR)とした。主な結果は以下のとおり。・フォローアップ後30日間でLAI抗精神病薬の使用を開始した患者305例が特定された。 ・カプランマイヤー分析では、10年間のフォローアップ期間中の再発の累積発生率は45%(95%信頼区間[CI]:35〜57)であった。 ・1人年当たりの年間再発発生率は、1年目で0.26(95%CI:0.20〜0.35)であったが、5年目には0.05(95%CI:0.01〜0.19)まで減少し、IRRは0.18(95%CI:0.04〜0.74)であった。 ・6〜10年目には、128人年の再発は4件のみであり、1年目と比較したIRRは0.12(95%CI:0.03〜0.33)であった。 著者らは「初回エピソード統合失調症患者の約40〜50%は、持続的なD2受容体ブロックにもかかわらず再発する。これは、統合失調症の病態生理学における非ドパミン作動性の要因によるものであると考えられる。また、長期的なドパミンD2受容体ブロックは、ブレイクスルー精神疾患のリスク増加とは関連がないことが明らかとなった」と結論付けている。

187.

「胃治療ガイドライン」改訂のポイント~外科治療編~/日本胃学会

 2025年3月、「胃治療ガイドライン」(日本胃学会編)が改訂された。2021年から4年ぶりの改訂で、第7版となる。3月12~14日に行われた第97回日本胃学会では、「胃治療ガイドライン第7版 改訂のポイント」と題したシンポジウムが開催され、外科治療、内視鏡治療、薬物療法の3つのパートに分け、改訂ポイントが解説された。改訂点の多かった外科治療と薬物療法の主な改訂ポイントを2回に分けて紹介する。本稿では外科治療に関する主な改訂点を取り上げる。「薬物療法編」はこちら【外科治療の改訂ポイント】木下 敬弘氏(国立がん研究センター東病院 胃外科) 総論部分の大きな改訂点としては、胃の切除範囲として従来の6つの術式に加えて「胃亜全摘術(小彎側をほぼ全長に渡って切離し、短胃動脈を一部切離する幽門側の胃切除)」を追加したこと、これまであいまいだったコンバージョン手術の定義を「初回診察時に根治切除不能と診断され薬物療法が導入された症例で、薬物療法が奏効した後に根治切除を企図して行われる手術」と定めたことがある。クリニカル・クエスチョンに関する改訂点としては、「低侵襲手術の推奨度を全体的に強化」、「コンバージョン手術の推奨度を変更」、「胃切除後長期障害・高齢患者に関するCQを追加」、「病態進行(PD)の適応・断端陽性例などのCQを追加」が大きな点だ。具体的に新設・変更された主なCQは以下となっている。CQ1-1【変更】切除可能な胃に対して、腹腔鏡下手術は推奨されるか?・標準治療の選択肢の一つとして腹腔鏡下幽門側胃切除術は行うことを強く推奨する。(合意率100%、エビデンスの強さA)・c StageI胃に対して胃全摘術、噴門側胃切除術は行うことを強く推奨する。(合意率78%、エビデンスの強さC)CQ1-2【変更】切除可能な胃に対して、ロボット支援手術は推奨されるか?・切除可能な胃に対して、ロボット支援手術を行うことを弱く推奨する。(合意率100%、エビデンスの強さC)「前版では、ロボット支援手術はStageIまでの推奨だったが、今版からその記載が外れ、より広範な推奨となった。現在行われているJCOG1907試験(胃がんにおけるロボット支援下胃切除術の腹腔鏡下胃切除術に対する優越性を検証するランダム化比較試験)の結果によって、将来的には推奨度が変わる可能性がある」CQ1-3【新設】進行胃に対する腹腔鏡下胃全摘術は推奨されるか?・標準治療の選択肢の一つとして進行胃に対する腹腔鏡下胃全摘術は行うことを弱く推奨する。(合意率90%、エビデンスの強さC)「多くの後ろ向き研究で、腹腔鏡下胃全摘術は手術時間は延長するものの、出血量は少なく、再発・生存期間で開腹手術と差がないと報告されている。現在、韓国で胃全摘を要する進行胃がんを対象とした後ろ向き試験(KLASS-06)が行われており、登録が完了した段階だ」CQ1-4【新設】術前化学療法に対する低侵襲手術(腹腔鏡下手術/ロボット支援手術)は推奨されるか?・術前化学療法に対して、低侵襲手術を行うことを弱く推奨する。(合意率100%、エビデンスの強さC)「欧州と中国から、腹腔鏡下手術と開腹手術を比較した前向き研究の報告がある。生存期間や術後短期成績においては差がないと考えられるが、観察期間が短く、エビデンスレベルは高くないと判断した」CQ2-3【新設】胃上部のに対して噴門側の極小胃を温存した幽門側胃切除術は推奨されるか?・適切な切除断端が確保できれば、胃上部の早期に対して噴門側の極小胃を温存した幽門側胃切除術を行うことを弱く推奨する。(合意率100%、エビデンスの強さC)「新たに設定した胃亜全摘術に関するCQとなる。後ろ向き研究のレビューで、手術時間、合併症発生割合、術後栄養状態、術後障害などの点において胃全摘術よりも優れている可能性が示唆されている」CQ3-3【新設】十二指腸浸潤・膵頭部浸潤を来した進行胃に対して膵頭十二指腸切除は推奨されるか?・十二指腸浸潤・膵頭部浸潤を来した進行胃に対して膵頭十二指腸切除を行うことを弱く推奨する。(合意率100%、エビデンスの強さC)「リンパ節転移が比較的軽度で、R0切除が得られる、患者の全身状態が良好という条件を満たした場合に、行うことを弱く推奨とした」CQ5-2【変更】Conversion手術は推奨されるか?(術後化学療法も含む)・StageIV胃症例に対してconversion手術を行うことは、現時点ではエビデンスに乏しく明確な推奨ができない。(合意率78.9%、エビデンスの強さC)・また、conversion手術でR0切除が達成されたStageIV胃に対しては、術後補助化学療法に関する明確な推奨ができない。(合意率78.9%、エビデンスの強さC)「前版では、『化学療法により一定の抗腫瘍効果が得られ、R0切除が可能と判断される』との条件付きで『弱く推奨』としていたが、今回は投票結果が80%に至らず、推奨が出せなかった。化学療法が奏効した患者を対象にconversion手術を行い、その生存期間を報告した研究は単群の後ろ向き研究が大半で、患者選択バイアスも大きい。現在、国内で化学療法奏効例に対するConversion surgeryの意義を検討する第III相試験JCOG2301が進行中だ」CQ5-3【新設】出血/狭窄の姑息切除やバイパス手術、ステント留置術は推奨されるか?・出血/狭窄の姑息切除やバイパス手術、ステント留置術を行うことを弱く推奨する。(合意率100%、エビデンスの強さD)「ステントは短期的な有用性は高いが長期的には再狭窄のリスクがある。胃空腸バイパスは短期的な合併症リスクは高いものの長期的なQOL維持に優れているとの報告が多いなど、それぞれの特徴を理解して選択することが重要だ」CQ5-4【新設】CY1に対する胃切除術は推奨されるか?(術後化学療法も含む)・胃切除時にCY1が判明した場合は、手術を先行し、術後化学療法を行うことを弱く推奨する。(合意率94.7%、エビデンスの強さC)・また、初回治療前に審査腹腔鏡でCY1が判明した場合は、化学療法後にCY0になった時点で胃切除を行うことを弱く推奨する。(合意率100%、エビデンスの強さC)「腹腔洗浄細胞診陽性(CY1)胃がんは、2パターンに分けた推奨となった。胃切除後に化学療法を行うことにより、再現性をもって25%前後の5年生存率が示されている。また、化学療法でCY0に陰転化した場合、5年生存率は34.2%と高く、陰転化なし群と比較したハザード比は2.04と報告されている」CQ6-3【新設】食道胃接合部に対する腹腔鏡下手術/ロボット支援手術は推奨されるか?・食道胃接合部に対する手術療法として、腹腔鏡下手術またはロボット支援手術を行うことを弱く推奨する。(合意率70%、エビデンスの強さD)「食道胃接合部がんを対象に、開腹と腹腔鏡下手術を比較したランダム化比較試験の報告はない。単施設後ろ向き比較研究や症例集積研究においては、低侵襲手術で出血量が少なく、早期回復が認められたと報告されている」CQ7-2【新設】残胃に対して腹腔鏡下手術/ロボット支援手術は推奨されるか?・残胃に対する腹腔鏡下手術/ロボット支援手術について、現時点では明確な推奨ができない。(合意率70%、エビデンスの強さD)CQ7-3【新設】残胃空腸吻合部の残胃に対して空腸間膜リンパ節郭清は推奨されるか?・残胃空腸吻合部の残胃に対して、空腸間膜リンパ節郭清を行うことを弱く推奨する。(合意率100%、エビデンスの強さC)CQ8【新設】切除断端が永久標本で陽性と診断された場合に再手術は推奨されるか?・胃切除後に永久標本で切除断端が陽性と診断された場合の再手術に関しては明確な推奨ができない。(合意率100%、エビデンスの強さD)「後ろ向き研究で、早期がんでは切除断端陽性を予後不良因子とする報告が多いが、高度進行例では再手術の意義は薄れる可能性が示唆されている」CQ9【新設】胃切除後長期障害への対応・CQ9-1:脾摘後の肺炎球菌のワクチンの接種:弱く推奨(合意率90%、エビデンスの強さD)・CQ9-2:胃全摘後のVitB12投与:弱く推奨(合意率90%、エビデンスの強さC)・CQ9-3:胃切除後のヘリコバクター・ピロリ除菌:明確な推奨ができない(合意率100%、エビデンスの強さC)CQ10-1【新設】手術の術式を決める際に、年齢を考慮することは推奨されるか?・高齢者に対してはリンパ節郭清範囲を縮小した縮小手術や低侵襲手術を行うことを弱く推奨する。(合意率70%、エビデンスの強さD)CQ10-4【新設】高齢者・サルコペニア患者に対する周術期の栄養/運動療法は推奨されるか?・高齢者・サルコペニア患者に対する周術期の栄養/運動療法については明確な推奨ができない。(合意率94.7%、エビデンスの強さD)「長期生存と術後合併症についてレビューした。術後合併症については減少可能性が示唆されるが、対象患者と介入方法のばらつきが大きく、エビデンスに乏しいと判断した」

188.

前立腺がんの生検、マイクロ超音波ガイド下vs.MRI/超音波融合ガイド下/JAMA

 臨床的に重要な前立腺がんの検出において、高解像度マイクロ超音波ガイド下生検はMRI/従来型超音波融合画像ガイド下生検に対し非劣性であり、画像ガイド下前立腺生検においてMRIの代替法となる可能性があることが、カナダ・アルバータ大学のAdam Kinnaird氏らOPTIMUM Investigatorsが実施した「OPTIMUM試験」で示された。研究の成果は、JAMA誌オンライン版2025年3月23日号に掲載された。8ヵ国20施設の無作為化非劣性試験 OPTIMUM試験は、前立腺がんの検出におけるマイクロ超音波ガイド下生検とMRI融合画像ガイド下生検の有用性の比較を目的とする第III相非盲検無作為化非劣性試験であり、2021年12月~2024年9月に8ヵ国20施設で患者を登録した(Exact Imagingの助成を受けた)。 年齢18歳以上、臨床的に前立腺がんが疑われ(前立腺特異抗原[PSA]上昇または直腸診で異常所見、あるいはこれら双方)、前立腺生検の適応とされ、生検を受けたことがない男性678例(年齢中央値65歳[四分位範囲[IQR]:59~70]、PSA中央値6.9ng/mL[IQR:5.2~9.8]、白人83%)を対象とした。 被験者を、マイクロ超音波ガイド下生検を受ける群(マイクロ超音波群、121例)、マイクロ超音波/MRI融合画像ガイド下生検を受ける群(マイクロ超音波/MRI群、226例、MRIを非盲検化する前にマイクロ超音波ガイド下生検を施行)、MRI/従来型超音波融合画像ガイド下生検を受ける群(MRI/従来型超音波群、331例)の3つの群に無作為に割り付けた。全例で、これらと同時に系統的生検が行われた。 主要評価項目は、マイクロ超音波ガイド下生検+系統的生検と、MRI/従来型超音波融合画像ガイド下生検+系統的生検を用いて検出された臨床的に重要な前立腺がん(Gleason Grade Group≧2と定義)の差とした。非劣性マージンは10%に設定した。マイクロ超音波/MRI群も非劣性 Gleason Grade Group≧2のがんは、マイクロ超音波群57例(47.1%)、マイクロ超音波/MRI群106例(46.9%)、MRI/従来型超音波群141例(42.6%)で検出された。 Gleason Grade Group≧2のがんの検出に関して、マイクロ超音波群はMRI/従来型超音波群に対し非劣性であった(群間差:3.52%[95%信頼区間[CI]:-3.95~10.92]、非劣性のp<0.001)。また、副次評価項目として、マイクロ超音波/MRI群もMRI/従来型超音波群に対し非劣性だった(群間差:4.29%[95%CI:-4.06~12.63]、非劣性のp<0.001)。とくにMRI禁忌例にとって利用しやすい新たな生検法 標的生検だけで診断されたGleason Grade Group≧2のがんは、マイクロ超音波群46例(38.0%)、マイクロ超音波/MRI群91例(40.3%)、MRI/従来型超音波群113例(34.1%)であり、これらの差は有意ではなかった。 著者は、「マイクロ超音波は、前立腺生検を検討している患者、とくにMRIが禁忌の患者にとって、より利用しやすい方法となる可能性がある新たな画像診断法、生検法である」「本試験の結果は、一方の画像技術でしか見えず、他方の画像技術では見えない腫瘍が存在するという、これまでの知見を裏付けるものである。マイクロ超音波で可視、MRIで不可視の腫瘍が、マイクロ超音波で不可視、MRIで可視の腫瘍と予後が異なるかは明らかにされていない」としている。

189.

レンチウイルス抗CD20/抗CD19 CAR-T細胞、再発・難治性マントル細胞リンパ腫で全奏効率100%(第I/II相試験)/JCO

 再発・難治性マントル細胞リンパ腫(MCL)に対する二重特異性レンチウイルス抗CD20/抗CD19(LV20.19)CAR-T療法の第I/II相試験の結果、100%の全奏効率(ORR)を示し、88%で完全奏効(CR)を達成した。米国・Medical College of WisconsinのNirav N. Shah氏らがJournal of Clinical Oncology誌オンライン版2025年3月31日号で報告。 本試験は、2ラインの治療に失敗または移植後に再発したMCL患者を対象とし、LV20.19 CAR-T細胞はCliniMACS Prodigyを用いて施設内で製造された。ナイーブT細胞と幹細胞メモリー(SCM)様T細胞を増やし最終CAR-T細胞を最適化するため、8日間もしくは12日間のフレキシブルな工程で製造した。 主な結果は以下のとおり。・再発・難治性MCL患者17例(第I相:3例、第II相:14例)にLV20.19 CAR-T細胞を2.5✕106個/kg単回投与した結果、最良ORRが100%(CR:88%、部分奏効:12%)で、第II相における90日CR率の有効性基準を超えた。・データカットオフ時点で2例が再発したが、追跡期間中央値15.8ヵ月において無増悪生存期間および全生存期間の中央値には達していない。・サイトカイン放出症候群が94%(16例)に発現したが、すべてGrade1または2であった。・免疫エフェクター細胞関連神経毒性症候群が28日間で18%(3例)に発現し、うち2例は可逆的なGrade3であった。・非再発死亡が3例にみられたが、いずれもB細胞無形成の状況だった。・最終のLV20.19 CAR-T細胞はSCM様T細胞/ナイーブT細胞の割合が高く、ほとんどの患者がアフェレーシスから8日以内に投与された。 本試験から、著者らは「施設内でフレキシブルな工程で製造されたLV20.19 CAR-T細胞が、再発・難治性MCLに対して実現可能で安全かつ有効であることを示した」と結論している。

190.

食物繊維の摂取による肥満リスク低下、男性でより顕著?

 2型糖尿病患者で、食物繊維の摂取量が多いほど肥満リスクが低下することが明らかになった。新潟大学大学院医歯学総合研究科血液・内分泌・代謝内科学分野のEfrem d'Avila Ferreira氏、曽根博仁氏らの研究によるもので、詳細は「Public Health Nutrition」に2月4日掲載された。 肥満の予防と管理においては、食物繊維が重要な役割を果たすことは示されているが、性別で層別化した場合に相反する結果が報告されるなど、一貫したエビデンスは得られていない。このような背景からFerreira氏らは、日本人の2型糖尿病患者集団を性別・年齢別に層別化し、食物繊維摂取量と肥満との関連を検討した。さらに、この関連に寄与する可能性のある生活および食習慣についても検討を行った。 この横断研究では、一般社団法人糖尿病データマネジメント研究会(JDDM)のデータが用いられた。対象は、2014年12月~2019年12月の期間に、JDDMに参加する日本の糖尿病専門医クリニックで治療を受けた30~89歳までの外来患者とした。解析対象は1,565名(平均年齢62.3±11.6歳、男性63.1%)だった。 参加クリニックでは、希望する外来患者に対して、JDDMの開発した生活習慣に関するアンケートを実施。患者は身長・体重を自己申告し、食習慣については、それぞれ食物摂取頻度調査票(FFQ)に記入してもらった。栄養素および食品の摂取量は標準化された栄養計算ソフトウェアで計算し、1日当たりの摂取量が600kcal以下または4,000kcal以上の場合は外れ値として解析から除外した。身体活動は国際標準化身体活動質問表(IPAQ)の短縮版を用いて計算した。肥満の定義は日本肥満学会に従い、BMIが25kg/m2以上とした。 性別・年齢およびライフスタイル要因、主要栄養素の摂取量を調整した多変量解析を行った結果、全患者において食物繊維の摂取量が多いほど肥満リスクが低下することが明らかになった(オッズ比OR 0.591〔95%信頼区間0.439~0.795〕、P trend=0.002)。層別解析では、男性(P trend=0.002)および59~68歳群(P trend=0.038)で有意な逆相関の傾向が認められ、69~89歳群(P trend=0.057)でも有意傾向がみられた。一方で女性(P trend=0.338)および30~58歳群(P trend=0.366)では逆相関の傾向は認められなかった。また、男性では食物繊維の摂取量が多いほど、ライフスタイルが健康的であることも分かった。その特徴として、身体活動レベルが高いこと(p<0.001)や、喫煙率の低さ(p<0.001)が挙げられる。 食物繊維摂取量と食品群との相関関係をみると、全患者において、野菜、果物、大豆/大豆製品が強い相関を示したが、穀物は弱い相関を示した。ビタミンおよびミネラルの場合は、葉酸、カリウム、ビタミンCなどが食物繊維の摂取量と強い相関を示していた。 研究グループは本研究について、横断研究であり、日本人の2型糖尿病患者集団のみを対象としたことからも一般化できないといった限界点を挙げた上で、「肥満を効果的に管理するには、食物繊維の豊富な様々な食品を推進するような的を絞った取り組みが必要。また、多様な集団における食物繊維と肥満の関係を理解するには、さらなる研究が必要と考える」と総括している。

191.

今年の薬剤師国家試験の合格率は68.5%、新設の山口東京理科大が好調【早耳うさこの薬局がざわつくニュース】第149回

今年も新たな薬剤師たちが誕生しました! 第110回薬剤師国家試験の合格率は68.5%で、新設薬学部が躍進しています。厚生労働省は3月25日、第110回薬剤師国家試験について、合格率は68.85%(前年度比0.42%増)だったと発表した。合格者数は9164人と前年から132人減り、新卒に限った合格率は84.96%、合格者数は6849人だった。新卒と既卒を合わせた合格率の最下位は2025年度から入学者の募集を停止した姫路獨協大学の25.98%。次いで、薬学部の廃止を条件とした公立化を見送り、別法人への事業譲渡により薬学部を存続させた千葉科学大学の36.54%、第一薬科大学の36.98%となっている。(2025年3月26日付 RISFAX)単純に、薬剤師国家試験って110回もやってるんだ…と感慨にふけってしまいました。年に2回のチャンスがあった時代もあるので、110年間続いているわけではありませんが、薬剤師の資格の歴史の重さを感じずにはいられません。さて、今回の第110回試験の合格率や合格者数は、昨年からほぼ横ばいといった印象でしょうか。20年ほど前に受験した身としては、10年ほど前にガクンと合格率が下がったことは衝撃的でしたが、それから少し回復し、合格率は横ばいを維持しているようです。既卒者の合格率が厳しいことは今も昔も変わらないようですが、きちんと勉強した人がきちんと合格するという仕組みが保たれているようで安心します。ここ最近は、薬剤師国家試験の合格率が発表されると必ず話題になるのが、合格率が下のほうの大学についてです。新設の大学のレベルが低い、国家試験の合格率が低い、と話題になりがちですが、姫路獨協大学の薬学部が学生の募集を停止したり、千葉科学大学の薬学部は事業譲渡されたりするなど、次の展開になっています。しかしながら、既存の教育方針や教員が大きく変わる変革が行われない限り、合格率の大幅なアップは難しいのではないかと思ってしまいます。今回の結果で注目したいのが、山口東京理科大学薬学部です。2018年4月に薬学部がない山口県の公立大学薬学部として誕生しました。名前のとおり、東京理科大学が全面サポートしている大学です。卒業生を輩出する2年目となる第110回試験の合格率は92.25%でした。新設大学としては素晴らしい合格率ですね!新設だからダメということではなく、カリキュラムや教員、その地域の特性など、薬学部の作り方によってはきちんとよい薬学部が作れるという好例になったのではないでしょうか。新設ラッシュ時に創設された大学のさまざまな課題や学力の低下が懸念されている一方で、薬学部がない都道府県の薬局・薬剤師不足や過疎地域の医療なども問題になっています。山口東京理科大学の飛躍は、新たな光になるような気がします。

192.

下痢後に急速に進行する筋力低下と腱反射低下【日常診療アップグレード】第27回

下痢後に急速に進行する筋力低下と腱反射低下問題26歳女性が下肢に力が入らないと訴えて来院した。3週間前に数日間続く下痢があった。10日前から腰痛が出現し、下肢の力が入りにくく階段を上がることが次第に困難になってきた。バイタルサインは体温37.2℃、血圧120/80mmHg、脈拍数116/分、呼吸数20/分。膝蓋腱反射とアキレス腱反射は低下している。脳脊髄液検査では細胞数、タンパク質、グルコースの値は正常である。血漿交換を行うこととした。

193.

がんは、治す時代へ──今いちばん熱い「腫瘍内科」の魅力

「腫瘍内科」は臓器横断的にがん診療を行う、比較的新しい診療科だ。若くして腫瘍内科の教授になった3人が、次々登場する薬剤や治療法のダイナミズムなど、腫瘍内科の魅力やキャリアについて語り合った。【主な内容】なぜ腫瘍内科を選んだのか教授になるまでのキャリアの歩み現在の講座について(スタッフ数、関連病院、担当授業など)腫瘍内科の魅力とは?学生に魅力をどう伝える?臨床実習での工夫(37分)講師紹介

194.

遺伝性腫瘍症候群に関する多遺伝子パネル検査(MGPT)の手引き 2025年版

遺伝性腫瘍症候群診療に携わるすべての医療従事者必携の1冊!多遺伝子パネル検査(MGPT)と遺伝性腫瘍症候群・関連遺伝子に関する情報や臨床上の扱いについて包括的にまとめた、初の指針。遺伝性腫瘍症候群の診療に関する基礎的な事項、MGPTを用いた診療・管理体制など、詳しく解説している。さらに臓器・遺伝子ごとのマネジメントに関する記載も充実。診療科を問わず、遺伝性腫瘍症候群の診断・治療に携わるすべての医療従事者にオススメの1冊。画像をクリックすると、内容の一部をご覧いただけます。※ご使用のブラウザによりPDFが読み込めない場合がございます。PDFはAdobe Readerでの閲覧をお願いいたします。目次を見るPDFで拡大する目次を見るPDFで拡大する遺伝性腫瘍症候群に関する多遺伝子パネル検査(MGPT)の手引き 2025年版定価3,960円(税込)判型B5判頁数256頁発行2025年3月編集日本遺伝性腫瘍学会/令和6年度厚労科研 がん対策推進総合研究事業 平沢班ご購入(電子版)はこちらご購入(電子版)はこちら紙の書籍の購入はこちら医書.jpでの電子版の購入方法はこちら紙の書籍の購入はこちら

195.

第261回 セマグルチド使用と脱毛リスク上昇が関連

セマグルチド使用と脱毛リスク上昇が関連患者1,600万例から無作為に抽出した3千例強を調べたところ、糖尿病や肥満の治療に使われるGLP-1受容体活作動薬(GLP-1薬)セマグルチドと脱毛が生じやすことが、女性に限って関連しました1)。GLP-1薬は世界で最も処方されている薬の類いの1つであり、米国ではおよそ8人に1人がその使用経験を有します。GLP-1薬の有害事象で調べられているのはもっぱら胃腸障害ですが、使う患者がそれだけ多いと脱毛などのまれな有害事象にも注目が集まります。米国FDAに集まる有害事象を解析した昨年9月の報告では、セマグルチド使用患者の脱毛はほかの糖尿病薬に比べてより多く認められました2)。その糸口をカナダのバンクーバーのUniversity of British ColumbiaのMahyar Etminan氏らは深掘りすべく、米国のすべての外来処方と診断記録の93%を集めるデータベースIQVIA PharMetrics Plus for Academicsを使って、セマグルチドと別の肥満薬Contrave(naltrexone HCl / bupropion HCl)使用患者の脱毛の発生率を比較しました。Etminan氏らはIQVIA PharMetrics Plus for Academicsに記録された1,600万例からセマグルチドを使い始めた患者とContraveを使い始めた患者を無作為に抽出しました。糖尿病患者や血糖降下薬を先立って使ったことがある患者は除外されました。最終的な解析対象のセマグルチド使用患者は1,926例、Contrave使用患者は1,348例となり、脱毛の発生率は1,000人年当たりそれぞれ26.5と11.8でした。男女別で比較解析したところ、女性に限ってセマグルチドと脱毛が生じやすいことが関連しました。具体的には、セマグルチド使用の女性患者は、Contrave使用の女性患者に比べて脱毛の発生率が2倍ほど高いという結果となりました(ハザード比:2.08、95%信頼区間:1.17~3.72)。全被験者と男性患者のハザード比はそれぞれ1.52と0.86で、95%信頼区間はどちらも1を跨いでいました(それぞれ0.86~2.69と0.05~14.49)。セマグルチドの臨床試験結果に改めて目を向けると、Etminan氏らの解析結果と一致する傾向が見てとれます。肥満薬としての臨床試験での脱毛の発生率は、セマグルチド投与群3.3%、プラセボ群1.4%で、セマグルチド群のほうがプラセボ群より2倍半ほど高いという結果となっています3)。また、セマグルチドで体重がより減った患者ほど脱毛をより多く被りました。セマグルチド投与で体重が2割以上減った患者は、体重減少が2割未満の患者に比べて脱毛の発生率が2倍ほど高いことが示されています(5.3%vs.2.5%)。体重を減らすためだけにセマグルチドを使おうとしている人、とくに女性にとって脱毛の有害事象はそれを思いとどまらせる要因となりうるかもしれません1)。今後の課題はいくつもありますが、一例としてセマグルチド投与患者の脱毛がどれほど重症でどれだけ続くのかを調べる必要がある、とEtminan氏は言っています4)。 参考 1) Sodhi M, et al. Risk of Hair Loss with Semaglutide for Weight Loss. medRxiv. 2025 Mar 6. 2) Nakhla M, et al. Cardiovasc Drugs Ther. 2024 Sep 12. [Epub ahead of print] 3) Wegovy Product Monograph 4) Hair Loss: Another Wegovy Side Effect? / MedpageToday

196.

がん術前1ヵ月間の禁煙で合併症が減少~メタ解析

 がん手術の前に4週間禁煙した患者では、手術が近づいても喫煙していた患者よりも術後合併症が有意に少なかったことを、オーストラリア・ディーキン大学のClement Wong氏らが明らかにした。JAMA Network Open誌2025年3月7日号掲載の報告。 喫煙は術後合併症のよく知られた危険因子であり、喫煙する患者では合併症リスク増大の懸念から外科手術の延期を検討することもある。しかし、がん患者の手術が延期された場合、患者が禁煙している間に病勢が進行するリスクがある。今回、研究グループはがん患者の喫煙状態や禁煙期間とがん手術後の合併症との関連を調べるために、システマティックレビューおよびメタ解析を実施した。 Embase、CINAHL、Medline Complete、Cochrane Libraryを2000年1月1日~2023年8月10日に体系的に検索し、喫煙しているがん患者と喫煙していないがん患者の術後合併症を調査した介入研究と観察研究を抽出した。評価項目は、がんの手術前の4週間も喫煙していた患者と4週間は禁煙した患者、手術前の4週間も喫煙していた患者と生涯で一度も喫煙したことがない患者などにおける、あらゆる術後合併症のオッズ比(OR)であった。●24件のランダム化比較試験の3万9,499例が解析対象となった。肺がんは最も多く研究されたがん種であった。●手術前の4週間も喫煙していた群は、4週間は禁煙した群および生涯で一度も喫煙したことがない群と比較して、術後合併症のORが高かった。 -術前4週間も喫煙群vs.4週間は禁煙群のOR:1.31、95%信頼区間(CI):1.10~1.55、1万4,547例(17研究) -術前4週間も喫煙群vs.非喫煙群のOR:2.83、95%CI:2.06~3.88、9,726例(14研究)●手術前の2週間も喫煙していた群と、最後に喫煙したのが2週間~1ヵ月前および2週間~3ヵ月前であった群の術後合併症のORに有意な差はなかったが、点推定では禁煙期間が長いほうが有利であった。 -術前2週間も喫煙群vs.2週間~1ヵ月前に禁煙群のOR:1.20、95%CI:0.73~1.96、n=3,408(5研究) -術前2週間も喫群煙vs.2週間~3ヵ月前に禁煙群のOR:1.19、95%CI:0.89~1.59、n=5,341(10研究)●手術前の1年間に喫煙していた群の術後合併症のORは、少なくとも1年前に禁煙した群よりも高かった(OR:1.13、95%CI:1.00~1.29、3万1,238例[13研究])。 研究グループは、手術前の2週間も喫煙していた群と2週間~1ヵ月前および2週間~3ヵ月前に禁煙した群のORに有意差がなかった点について、「短い禁煙期間を比較した研究が少ないことや出版バイアスの可能性により、長い禁煙期間よりも短い禁煙期間を支持する研究が過小評価されている可能性がある」と言及したうえで、「禁煙とがんの術後合併症に関するこのシステマティックレビューおよびメタ解析では、手術の4週間前から禁煙していたがん患者は、手術が近づいても喫煙していた患者よりも術後合併症が少なかった。最適な禁煙期間を特定し、がん手術延期と病勢進行リスクとのトレードオフについての情報を臨床医に提供するためには、さらに質の高いエビデンスが必要である」とまとめた。

197.

健康行動変容支援システムは体重のリバウンド対策に有効か

 ダイエットでは体重のリバウンドが常に課題となる。では、減量した体重の維持には、認知行動療法(CBT)などを活用した健康行動変容支援システム(HBCSS)は有効だろうか。この課題に対し、フィンランドのオウル大学生体医学・内科学研究ユニットのEero Turkkila氏らの研究グループは、ウェブベースのHBCSSの長期的有効性評価を目的に、2年にわたり検証を行った。その結果、12ヵ月間のHBCSS介入では、5年後の体重減少について非HBCSSよりも良好に維持することはできなかった。この結果は、International Journal of Obesity誌2025年3月15日オンライン版で公開された。5年間の追跡では体重変化に群間差がなかった 研究グループは、合計532例の過体重または肥満(BMI27~35)の参加者を、CBTに基づくグループカウンセリング、自助ガイダンス(SHG)、通常ケアの介入強度の異なる3つのグループに分けた。これらの群はさらにHBCSS群と非HBCSS群に分けられ、HBCSSは52週間のプログラムとし、5年間追跡した。 主な結果は以下のとおり。・HBCSS群と非HBCSS群のベースラインからの平均体重変化率と95%信頼区間[CI]は、5年後にそれぞれ1.5%(-0.02~2.9、p=0.056)、1.9%(0.3~3.3、p=0.005)だった。・6群のうちHBCSSを用いなかったSHG群では、5年後の体重増加率が3.1%(95%CI:0.6~5.6、p=0.010)とベースラインから統計的に有意に増加したが、他の群では体重の有意な増加はみられなかった。・5年経過時点で体重変化では群間に有意差はなかった。・HBCSS群では、5年間で降圧薬の服用開始数が少なくなった(p=0.046)。 研究グループでは、これらの結果から「12ヵ月間のHBCSS介入群では、5年後の体重減少を非HBCSS群よりも良好に維持することはできなかった一方で、5年間を通じ有意な体重差はHBCSS群に有利であった。降圧薬の必要性が減少したことは、HBCSS群による早期からの有意な体重減少が、健康増進へレガシー効果を持ったことを示唆する」と結論付けている。

198.

組み換え帯状疱疹ワクチン シングリックス、定期接種として使用可能に/GSK

 グラクソ・スミスクラインは、2025年4月1日、予防接種法施行規則および予防接種実施規則の一部改正で帯状疱疹が予防接種法のB類疾病に位置づけられたことにより、同社の帯状疱疹のワクチン「シングリックス筋注用(以下、シングリックス)」が定期接種として使用可能となったと発表した。 シングリックスは、帯状疱疹の予防を目的とした世界で初めての遺伝子組換え型のサブユニットワクチンで、現在50ヵ国以上で販売されている。日本では、2018年3月23日に50歳以上を対象に、2023年6月26日に帯状疱疹発症リスクの高い18歳以上を対象に承認を取得している。また、シングリックスは、50歳以上で10年以上の帯状疱疹の予防効果の持続が示されている。 日本人成人の90%以上は、帯状疱疹の原因となるウイルスがすでに体内に潜んでいる可能性があり、50歳を過ぎると帯状疱疹の発症が増え始め、80歳までに約3人に1人が帯状疱疹を発症するといわれている。 また、高血圧・糖尿病・リウマチ・腎不全といった基礎疾患罹患者は、帯状疱疹の発症リスクが高くなるという報告がある。たとえば、高血圧患者は、非高血圧患者と比較して発症リスクが約1.9倍、糖尿病患者は、非糖尿病患者と比較して約2.4倍というデータが報告されている。帯状疱疹ワクチンの定期接種対象者定期接種の対象者:・65歳の者・60歳以上65歳未満の者であって、ヒト免疫不全ウイルスにより免疫の機能に日常生活がほとんど不可能な程度の障害を有する者対象者の経過措置:・令和7年4月1日から令和12年3月31日までの間に65歳、70歳、75歳、80歳、85歳、90歳、95歳又は100歳となる日の属する年度の初日から当該年度の末日までの間にある者・令和7年4月1日から令和8年3月31日までの間、令和7年3月31日において100歳以上の者帯状疱疹ワクチン「シングリックス」 製品概要製品名:シングリックス筋注用一般名:乾燥組換え帯状疱疹ワクチン効能又は効果:帯状疱疹の予防国内製造販売承認取得日:・50歳以上:2018年3月23日・帯状疱疹に罹患するリスクが高いと考えられる18歳以上:2023年6月26日販売国数:50ヵ国以上(2025年3月時点)用法及び用量:・50歳以上:0.5mLを2回、通常、2ヵ月の間隔をおいて、筋肉内に接種する。・帯状疱疹に罹患するリスクが高いと考えられる18歳以上:0.5mLを2回、通常、1~2ヵ月の間隔をおいて、筋肉内に接種する。有効性:・50歳以上の成人:97.2%・50~59歳:96.6%・60~69歳:97.4%・70歳以上:97.9%予防効果の持続性:10年以上安全性:・重大な副反応:ショック、アナフィラキシー・主な副反応:疼痛、発赤、腫脹、胃腸症状(悪心、嘔吐、下痢、腹痛)、頭痛、筋肉痛、疲労、悪寒、発熱

199.

双極症とADHD併発患者における認知機能/心理社会的機能の特徴

 双極症や注意欠如多動症(ADHD)は、神経認知および心理社会的機能に重大な影響を及ぼす慢性的な神経精神疾患である。双極症とADHDの併発は、特有の臨床的課題を呈し、認知機能および機能障害をさらに悪化させる可能性がある。スペイン・Vall d'Hebron Research InstituteのSilvia Amoretti氏らは、双極症またはADHD患者および併発した患者と健康対照者における神経認知機能および心理社会的機能の違いを明らかにするため、最新情報を統合したシステマティックレビューおよびメタ解析を実施した。Neuroscience and Biobehavioral Reviews誌2025年4月号の報告。 主な内容は以下のとおり。・包括的な検索により特定された5,639研究のうち、システマティックレビューの包括基準を満たした研究は34件、メタ解析の包括基準を満たした研究は31件。・双極症/ADHD併発患者と双極症患者では、評価された認知機能のいずれにおいても有意な差は認められなかった。・双極症/ADHD併発患者は、ADHD患者と比較し、視覚記憶の有意な低下が認められた(標準化平均差[SMD]:−0.29、95%信頼区間[CI]:−0.53〜−0.04、p=0.022)。・双極症/ADHD併発患者は、健康対照者と比較し、さまざまな認知機能の低下が認められた。【処理速度】SMD:−0.54、95%CI:−0.86〜−0.22、p<0.001【持続性注意】SMD:−0.40、95%CI:−0.62〜−0.19、p<0.001【視覚記憶】SMD:−0.47、95%CI:−0.69〜−0.26、p<0.001【作業記憶】SMD:−0.79、95%CI:−1.13〜−0.44、p<0.001【認知的柔軟性および高次実行機能】SMD:−0.52、95%CI:−0.84〜−0.20、p=0.001【言語記憶】SMD:−0.95、95%CI:−1.43〜−0.47、p<0.001・双極症/ADHD併発患者の心理社会的機能は、双極症患者(SMD:−0.46、p<0.001)、ADHD患者(SMD:−1.00、p<0.001)、健康対照者(SMD:−3.54、p<0.001)よりも有意に不良であった。 著者らは「双極症とADHDの併発は、重大な神経認知機能および心理社会的機能の悪化と関連している可能性が示唆された。本結果は、これらの併存疾患特有の課題に対処するための介入の必要性を示唆しており、臨床実践や将来の研究に役立つであろう」としている。

200.

オフポンプCABGの周術期管理、NIRS+血行動態モニタリングは有効か/BMJ

 オフポンプ冠動脈バイパス術(CABG)の周術期管理において、通常ケアと比較して、近赤外線分光法(NIRS)による組織酸素飽和度モニタリングと血行動態モニタリングのガイドに基づくケアは、組織酸素化をほぼベースラインの水準に維持するが、このアプローチは術後の主要な合併症の発生率を減少させないことが、中国・天津大学のJiange Han氏らBottomline-CS investigation groupが実施した「Bottomline-CS試験」で示された。研究の詳細は、BMJ誌2025年3月24日号で報告された。中国の単施設無作為化対照比較試験 Bottomline-CS試験は、NIRSによる組織酸素飽和度の測定と血行動態モニタリングによる周術期管理が、オフポンプCABGの術後合併症を減少させるかの評価を目的とする評価者盲検単施設無作為化対照比較試験であり、2021年6月~2023年12月に三次教育病院である天津市胸科医院で行われた(Tianjin Science and Technology Projectなどの助成を受けた)。 年齢60歳以上の待機的オフポンプCABGを予定している患者1,960例(平均年齢69歳、男性70%)を登録し、このうち修正ITT集団として1,941例をガイド下ケア群(967例)または通常ケア群(974例)に無作為に割り付けた。 全患者で、NIRSによる複数部位(左・右前額部と片側前腕の腕橈骨筋)の組織酸素飽和度モニタリングと血行動態モニタリングを行った。また、両群とも通常ケア(適応がある場合に、動脈圧、中心静脈圧、心電図、経食道心エコー図などの検査を行う)を受けた。 ガイド下ケア群では、麻酔開始から、抜管あるいは術後最長24時間まで、手術の24~48時間前に設定した術前ベースライン値の±10%以内の組織酸素化の維持を目標に、NIRSと血行動態モニタリングをガイドとしたケアを行った。通常ケア群では、治療医に組織酸素濃度測定値と血行動態データを隠蔽した状態で、通常のケアを行った。 主要アウトカムは、術後30日時点での術後合併症(脳、心臓、呼吸器、腎臓、感染症、死亡)の複合の発生率とした。組織酸素飽和度は改善、複合アウトカムに有益性はない 麻酔中に、ベースライン値の±10%の範囲を超える組織酸素飽和度測定値の曲線下面積は、通常ケア群に比べガイド下ケア群で有意に小さく(左前額部:32.4 vs.57.6%×分[p<0.001]、右前額部:37.9 vs.62.6[p<0.001]、前腕:14.8 vs.44.7[p<0.001])、ガイド下ケアによる組織酸素飽和度の改善を確認した。 これに対し、主要複合アウトカムの発生率はガイド下ケア群で47.3%(457/967例)、通常ケア群で47.8%(466/974例)と、両群間に有意な差を認めなかった(リスク比:0.99[95%信頼区間[CI]:0.90~1.08]、p=0.83)。副次アウトカムにも有意差はない 副次アウトカム(複合アウトカムの個々の項目、初発の心房細動、入院期間)にも、両群間に有意差はなかった。最も差が大きかったのは肺炎の発生率で、通常ケア群(12.4%[121/974例])よりもガイド下ケア群(9.1%[88/967例])で低く、未補正では有意差(リスク比:0.73[95%CI:0.56~0.95]、p=0.02)を認めたものの、多重比較で補正すると有意ではなくなった(p=0.60)。 著者は、「これらの知見は、オフポンプCABG中に組織酸素化を維持するためにNIRSと血行動態モニタリングをルーチンに使用することを支持しない」「主要複合アウトカムの相対リスクは95%CIの範囲が狭く(幅0.18)、これはこの偏りのない所見の頑健性を強調するものであり、本試験の検出力に不足はないことを示している」としている。

検索結果 合計:33434件 表示位置:181 - 200