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免疫チェックポイント阻害薬、再投与における免疫関連AE再発率/JAMA Oncol

 免疫関連有害事象(irAE)発現後の免疫チェックポイント阻害薬(ICI)再投与の安全性に関するデータが示された。フランス・ノルマンディー大学のCharles Dolladille氏らによる世界保健機関(WHO)のデータベース「VigiBase」を用いた医薬品安全性監視(pharmacovigilance)コホート研究の結果で、著者は、「適切なモニタリングとともに、有害事象を特定し治療する標準的な治療アルゴリズムを用いることにより、特定の患者にはICI再投与を考慮できるだろう」とまとめている。JAMA Oncology誌オンライン版2020年4月16日号掲載の報告。 研究グループは、irAEを発現したがん患者において、ICI再投与後にICI治療中止に至った同一のirAE再発率と、irAE再発に関連する臨床的特徴を明らかにする検討を行った。 130ヵ国以上から個別症例安全性報告を集めたWHOのデータベース「VigiBase」を用い、2019年9月1日までに報告された1つ以上のirAEを発現したICI治療症例を特定し解析した。 主要評価項目は、ICI再投与後の最初のirAEの再発率、副次評価項目は再投与後のirAE再発に関連する要因、ICI治療レジメン別の再発率(抗PD-1抗体または抗PD-L1抗体単剤、抗CTLA-4抗体単剤、または併用療法)、および再投与後の異なるirAEの発現率であった。 主な結果は以下のとおり。・解析対象である1つ以上のirAEを発現したICI治療患者は、2万4,079例であった。・ICIの再投与が行われたのは6,123例で、このうち452例(7.4%)で効果が認められた。・452例中130例(28.8%、95%信頼区間[CI]:24.8~33.1)で、初回投与時と同じirAEの再発が観察された。・再投与において、大腸炎(報告オッズ比[OR]:1.77、95%CI:1.14~2.75、p=0.01)、肝炎(報告OR:3.38、95%CI:1.31~8.74、p=0.01)、および肺炎(報告OR:2.26、95%CI:1.18~4.32、p=0.01)は再発率が高く、一方、副腎障害は再発率が低かった(報告OR:0.33、95%CI:0.13~0.86、p=0.03)。

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アルナイラム社とVir社、COVID-19 治療薬候補(VIR-2703)を特定

 Vir Biotechnology社およびアルナイラム社は、COVID-19の原因ウイルスであるSARS-CoV-2ゲノムを標的とするRNAi治療薬研究の開発候補として、VIR-2703を選定したと発表した。両社は、近日中にFDAおよび他の規制当局と面会し、2020年末を目処にヒトにおける臨床試験を開始する見込みだとしている。 アルナイラム社は、SARS-CoV-2ゲノムの高度に保存された領域を標的とするRNAiを媒介するsiRNAを350種以上合成し、ウイルス複製を1/1000以下まで低減した有力なsiRNAを複数特定した。なかでも、VIR-2703は、SARS-CoV-2のウイルスモデルを使って感染性ビリオン(感染性を有するウイルス粒子)産生の抑制を測定する用量反応試験で、50%阻害濃度(EC50)が100ピコモル未満、EC95が1ナノモル未満であることを示した。さらに、VIR-2703は、4,300以上のSARS-CoV-2ゲノムのうち、99.9%以上に対して反応し、2003年のSARSアウトブレイクから発生したSARS-CoVゲノムに対しても反応すると予測されている。この結果を受け、両社は、VIR2703を開発候補薬に選定し、臨床試験に進めることとした。

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脊髄性筋萎縮症治療に新しい治療薬登場/ノバルティス ファーマ

 5月13日、中央社会保険医療協議会は、オンラインで総会を開催し、脊髄性筋萎縮症(SMA)に対する遺伝子治療用製品としてノバルティス ファーマ株式会社が3月19日に製造販売承認取得したオナセムノゲン アベパルボベク(商品名:ゾルゲンスマ点滴静注)の薬価につき1億6,707万7,222円とすることを了承した。薬価収載は5月20日に行われ、同日に発売された。 ゾルゲンスマは、SMAの根本原因である遺伝子の機能欠損を補う遺伝子補充療法で、1回の点滴静注で治療が完了する。SMAの概要とゾルゲンスマの特性 対象疾患となるSMAとは、脊髄前角細胞の変性・消失によって進行性に筋力低下と筋萎縮を呈する下位運動ニューロン病。常染色体劣性遺伝性の希少疾病であり、発症年齢と最高到達運動機能によってI~IV型の4タイプに分類される。とくにI型(乳児型)SMAは、重症かつ高頻度にみられ、0~6ヵ月で発症し、患児の90%以上が20ヵ月前に死亡または人工呼吸器による永続的な呼吸管理が必要な状態となる。そのほかII、IIIまたはIV型においても、病状の進行により歩行機能の喪失および筋力低下により、社会生活が困難となり、QOLを著しく低下させる。 特定医療費(指定難病)受給者証所持者数は、平成30年度末、全国で858人(うち0~9歳は30人)と報告され、本症は遺伝性疾患による乳幼児の主な死亡原因となっている。 ゾルゲンスマは、SMAの原因遺伝子であるヒト運動神経細胞生存(Survival Motor Neuron: SMN)タンパク質をコードする遺伝子を組み込んだ、野生型のアデノ随伴ウイルス9型(AAV9)を利用した遺伝子治療用ベクター製品。静脈内に投与され、SMAの根本原因であるSMN1遺伝子の機能欠損を補い、運動ニューロンでSMNタンパク質を発現させ、運動ニューロンの変性・消失を防ぎ、神経および筋肉の機能を高め、筋萎縮を防ぐことで、SMA患者の生命予後および運動機能を改善することが期待されている。また、導入したSMN遺伝子は患者のゲノムDNAに組み込まれることなく、細胞の核内にエピソームとして留まり、運動ニューロンのような非分裂細胞に長期間安定して存在するように設計されている。ゾルゲンスマの概要一般名:オナセムノゲン アベパルボベク製品名:ゾルゲンスマ点滴静注効能・効果:脊髄性筋萎縮症(臨床所見は発現していないが、遺伝子検査により脊髄性筋萎縮症の発症が予測されるものも含む)ただし、抗AAV9抗体が陰性の患者に限る。用法・用量:通常、体重2.6kg以上の患者(2歳未満)には、1.1×1014ベクターゲノム(vg)/kgを60分かけて静脈内に単回投与する。本品の再投与はしないこと。薬価:1億6,707万7,222円承認取得日:2020年3月19日薬価収載日:2020年5月20日発売日:2020年5月20日主な患者数:年間の投与対象患者数は15~20人程度

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初回エピソード統合失調症の10年間の軌跡と陰性症状アウトカム

 初回エピソード統合失調症スペクトラム障害患者における10年間の軌跡と陰性症状アウトカムについて、中国・香港大学のSherry Kit Wa Chan氏らが、調査を行った。Schizophrenia Research誌オンライン版2020年4月8日号の報告。 標準治療と早期介入における10年間のアウトカムを比較した歴史的対照研究から対象患者を抽出した。特定された298例中、10年間のフォローアップで臨床的および機能的なアウトカムを収集できた患者は214例であり、最終分析には209例が含まれた。カルテ情報は、標準化されたデータ入力フォームを用いてシステマティックに収集した。陰性症状、入院、雇用に関する情報は、最初の1~3年は月に1回、4~10年は3ヵ月に1回収集した。10年間の陰性症状のクラスターを調査するため、階層クラスター分析を用いた。クラスターメンバーシップに関連する人口統計および初期の臨床症状、10年間のフォローアップ期間中の陰性症状について、さらに調査を行った。 主な結果は以下のとおり。・クラスター分析では、陰性症状の3つのクラスターが特定された。15%の患者は再発例であった。・標準治療と早期介入の間に、クラスターメンバーシップの違いは認められなかった。・陰性症状再発と有意に関連する因子は、男性、4年目の入院であった。・10年間のフォローアップ期間中、全体的な陰性症状の予測因子は以下のとおりであった。 ●教育レベルの低さ ●1年目の陰性症状スコアの高さ ●最初の3年間の失業期間の長さ・男性は、意欲と快楽消失の予測因子であり、精神疾患の未治療期間は、快楽消失の予測因子であった。 著者らは「本結果より、長期的なアウトカムの不均一性が認められ、個別化された介入の重要性が示唆された」としている。

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COPD患者の退院後呼吸リハ、早期開始で死亡リスク減/JAMA

 慢性閉塞性肺疾患(COPD)で入院したメディケア受給者では、退院後3ヵ月以内の呼吸リハビリテーションの開始により、1年後の死亡リスクが低減することが、米国・マサチューセッツ大学のPeter K. Lindenauer氏らの検討で示された。研究の成果は、JAMA誌2020年5月12日号に掲載された。COPD増悪後の呼吸リハビリテーション(運動訓練、自己管理教育)が生存率を改善することはメタ解析で示唆されているが、この解析に含まれた試験は患者数が少なく、異質性が高いという。米国の現行ガイドラインでは、COPD患者に、退院後は呼吸リハビリテーションに参加するよう推奨している。90日以内と以降の開始を比較する開始コホート研究 本研究は、2014年に米国の4,446の急性期病院にCOPDで入院した出来高払い方式メディケア受給者の保険請求データを、後ろ向きに解析した開始コホート研究(inception cohort study)(米国国立心肺血液研究所[NHLBI]の助成による)。最終フォローアップ日は2015年12月31日だった。 呼吸リハビリテーションを、初回退院後90日以内に開始した患者と、90日以降(91~365日)に開始または呼吸リハビリテーションを行わなかった患者を比較した。また、傾向スコアでマッチさせた患者の比較も行った。 主要アウトカムは、1年後の全死因死亡とした。探索的解析として、呼吸リハビリテーションの開始時期と死亡率との関連、および終了した呼吸リハビリテーションの回数と死亡率との関連の評価を行った。1年死亡率:7.3% vs.19.6% 4,446病院に入院したCOPD患者19万7,376例(平均年齢76.9歳、女性11万5,690例[58.6%])が解析の対象となった。このうち、2,721例(1.5%)が退院後90日以内に呼吸リハビリテーションを開始し、3,161例(1.6%)は91~365日に開始した。 退院から1年以内に3万8,302例(19.4%)が死亡した。このうち、7.3%が90日以内に呼吸リハビリテーションを開始し、19.6%は90日以降に開始または呼吸リハビリテーションを行わなかった。90日以内開始群は、90日以内非開始群に比べ、1年死亡リスクが有意に低かった(1年死亡率:7.3% vs.19.6%、絶対群間リスク差[ARD]:-6.7%、95%信頼区間[CI]:-7.9~-5.6、ハザード比[HR]:0.63、95%CI:0.57~0.69、p<0.001)。 90日生存例(1年死亡率:90日以内開始群6.2% vs.90日以内非開始群13.4%、ARD:-5.8%、95%CI:-6.9~-4.6、オッズ比[OR]:0.54、0.46~0.63)に限定した解析でも、生存に関して同様の効果が認められた。 また、在宅酸素療法の使用例(ARD:-5.7%、95%CI:-7.4~-3.5、OR:0.60、0.49~0.75、p<0.001)と非使用例(-6.8%、-8.0~-5.4、0.43、0.34~0.54、p<0.001)、併存疾患の負担が軽度(-7.6%、-8.6~-6.2、0.27、0.19~0.39、p<0.001)、中等度(-5.0%、-6.7~-2.8、0.57、0.43~0.75、p<0.001)、重度(-3.8%、-6.7~-0.5、0.76、0.59~0.97、p=0.03)の患者のいずれにおいても、90日以内開始群で死亡リスクが低かった。 傾向スコアでマッチさせた患者(両群2,710例ずつ)でも、90日以内開始群で死亡リスクが低かった(7.3% vs.14.1%、ARD:-6.8%、95%CI:-8.4~-5.2、HR:0.50、95%CI:0.42~0.59、p<0.001)。 呼吸リハビリテーションの開始時期別の比較では、90日以内非開始群に比べ、退院後30日以内に開始した患者(ARD:-4.6%、95%CI:-5.9~-3.2、HR:0.74、95%CI:0.67~0.82、p<0.001)、31~60日に開始した患者(-10.6%、-12.4~-8.4、0.43、0.34~0.54、p<0.001)および61~90日に開始した患者(-11.1%、-13.2~-8.4、0.40、0.30~0.54、p<0.001)のいずれも死亡リスクが低かった。 退院から90日までに受けた呼吸リハビリテーションの回数の中央値は9回(IQR:4~14)であった。回数が3回(1週間の推奨回数)増えるごとに、死亡リスクが有意に低下した(HR:0.91、95%CI:0.85~0.98、p=0.01)。 著者は、「これらの知見は、COPDで入院後の呼吸リハビリテーションに関する現行ガイドラインの推奨を支持するものだが、交絡が残存する可能性があり、さらなる検討を要する」としている。

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COVID-19へのヒドロキシクロロキン、気管挿管・死亡リスク抑制せず/NEJM

 米国では、新型コロナウイルス感染症(COVID-19)の治療薬として、ヒドロキシクロロキンが広く投与されているが、その使用を支持する頑健なエビデンスはなかったという。同国コロンビア大学のJoshua Geleris氏らは、ニューヨーク市の大規模医療センターでCOVID-19入院患者の調査を行い、本薬はこれらの患者において気管挿管や死亡のリスクを抑制しないと報告した。研究の成果は、NEJM誌オンライン版2020年5月7日号に掲載された。ヒドロキシクロロキンは、マラリアやリウマチ性疾患の治療に広く使用されており、抗炎症作用と抗ウイルス作用を持つことから、COVID-19に有効な可能性が示唆されている。米国では、2020年3月30日、食品医薬品局(FDA)が緊急時使用許可(Emergency Use Authorization)を発出し、臨床試験に登録されていないCOVID-19患者への使用が認可された。ガイドラインでは、肺炎のエビデンスがある入院患者に本薬の投与が推奨されており、世界中の数千例の急性期COVID-19患者に使用されているという。米国の単施設のコホート研究 研究グループは、COVID-19患者におけるヒドロキシクロロキンの使用は、気管挿管および死亡のリスクを抑制するとの仮説を立て、これを検証する目的でコホート研究を行った(米国国立衛生研究所[NIH]の助成による)。 対象は、2020年3月7日~4月8日の期間に、ニューヨーク市のマンハッタン区北部に位置する急性期病院であるニューヨーク・プレスビテリアン病院(NYP)-コロンビア大学アービング医療センター(CUIMC)に入院し、鼻咽頭または口咽頭拭い液を検体として用いた検査でSARS-CoV-2陽性の成人患者であった。 救急診療部受診から24時間以内に、気管挿管、死亡、他の施設へ転送となった患者は除外された。フォローアップは4月25日まで継続した。ヒドロキシクロロキンは、1日目に負荷投与量600mgを2回投与後、400mgを1日1回、4日間投与するレジメンが推奨された。 主要エンドポイントは気管挿管および死亡の複合としtime-to-event解析を行った。傾向スコアによる逆確率重み付けを用いた多変量Coxモデルを使用して、ヒドロキシクロロキンの投与を受けた患者と非投与患者を比較した。有益性、有害性とも排除されない、推奨はすでに削除 1,376例が解析の対象となった。フォローアップ期間中央値22.5日の時点で、346例(25.1%)に主要エンドポイントのイベントが発生した(挿管されずに死亡166例、挿管180例)。データのカットオフ時(4月25日)には、232例が死亡(66例は挿管後)し、1,025例が生存退院しており、119例は入院中(挿管なしは24例のみ)だった。 1,376例中811例(58.9%)にヒドロキシクロロキンが投与され(投与期間中央値5日)、565例(45.7%)には投与されなかった。投与群の45.8%は救急診療部受診後24時間以内に、85.9%は48時間以内に投与が開始された。 傾向スコアでマッチさせていない患者では、ヒドロキシクロロキン投与量は、年齢層や性別、人種/民族、BMI、保険の有無、喫煙状況、他の薬剤の使用状況の違いで異なっていた。また、ベースラインの重症度は、投与群が非投与群に比べて高く、動脈血酸素分圧(PaO2)/吸入気酸素濃度(FIO2)比中央値は投与群が223、非投与群は360であった。 傾向スコアでマッチさせた患者は、投与群が811例、非投与群は274例だった。 未補正の粗解析では、ヒドロキシクロロキン投与群は非投与群に比べ、主要エンドポイントのイベント発生率が高かった(32.3%[262/811例]vs.14.9%[84/565例]、ハザード比[HR]:2.37、95%信頼区間[CI]:1.84~3.02)。 一方、傾向スコアによる逆確率重み付けを用いた多変量解析では、ヒドロキシクロロキンとイベント発生率に有意な関連は認められなかった(HR:1.04、95%CI:0.82~1.32)。 著者は、「この観察研究の結果は、デザインと95%CI値を考慮すると、ヒドロキシクロロキン治療の有益性と有害性のいずれをも排除しないが、現時点では、有効性を検証する無作為化臨床試験以外では、その使用を支持しない」としている。なお、NYP-CUIMCでは、すでにガイダンスを改訂し、COVID-19患者におけるヒドロキシクロロキン治療の推奨は削除されたという。

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COVID-19と共存する診療の指針を示す動画公開/高血圧学会

 2020年初頭より長らく続いたCOVID-19の感染拡大と、それに伴う外出自粛や制限が相次いで緩和され、非常時から通常時へと戻る兆しが見え始めた。しかしながら、今後はCOVID-19を包含しながらの“新たな日常”となることは間違いない。そうしたCOVID-19を念頭に置いた高血圧診療をどう進めるべきかについて指針を示すべく、日本高血圧学会(理事長:伊藤 裕)はこのほど、各領域のスペシャリストによる解説動画コンテンツを作成1)。5月22日よりYouTubeの学会公式チャンネルで公開している。同学会では、これに先立って高血圧治療を受ける患者向けの動画コンテンツを公開しており、今回新たに追加された全10本はいずれも医師をはじめとする医療従事者向けの内容。 詳しい動画コンテンツのラインナップは以下のとおり。<パンデミックと高血圧診療>1.COVID-19到来と日本高血圧医療のNew Normal  解説:伊藤 裕氏(日本高血圧学会理事長、慶應義塾大学腎臓内分泌代謝内科教授)2.高血圧はCOVID-19の感染・重症化のリスク要因か?  解説:三浦 克之氏(滋賀医科大学公衆衛生学部門教授)3.降圧薬とCOVID-19:RAS阻害薬は是か非か?  解説:甲斐 久史氏(久留米大学医学部教授)4.COVID-19パンデミック下での減塩の重要性とその指導法  解説:日下 美穂氏(日下医院院長)<パンデミックと高血圧性臓器障害:メカニズムと診療のポイント>5.COVID-19と血栓症・脳卒中  解説:豊田 一則氏(国立循環器病研究センター副院長)6.COVID-19と心臓病  解説:大西 勝也氏(大西内科ハートクリニック院長)7.COVID-19と腎臓病:CKDと急性腎障害(AKI)  解説:向山 政志氏(熊本大学大学院生命科学研究部腎臓内科学教授)<パンデミック下における実地医家の役割>8.COVID-19と実地診療  解説:勝谷 友宏氏(勝谷医院院長、大阪大学大学院臨床遺伝子治療学招聘教授)9.New Normal時代に向けてのかかりつけ医の役割  解説:宮川 政昭氏(医療法人社団愛政会宮川内科小児科医院院長)10. COVID-19パンデミック下での医療対策:日本医師会の取り組み  解説:羽鳥 裕氏(日本医師会常任理事)

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医師目線と患者目線の確率は違う、新型コロナウイルスからの考察【Dr.中川の「論文・見聞・いい気分」】第23回

第23回 医師目線と患者目線の確率は違う、新型コロナウイルスからの考察この原稿を書いているのは、2020年5月初旬のゴールデンウィークです。新型コロナウイルス(COVID-19)対策として、緊急事態宣言がなされ、外出の自粛要請・施設の使用制限などの感染予防対策が行われています。これを遵守して、自宅でパソコンに向かって駄文を練っております。このコロナウイルスに感染しているかどうかを調べるPCR検査のあり方について議論が続いています。当初は、感染者との濃厚接触があり、発熱などの症状のある人に限定して PCR検査が行われてきました。もっと検査の対象をひろげ、検査数を増やすべきであるという議論です。PCR検査が陽性であれば間違いなく感染者で、検査が陰性であれば間違いなく感染者ではない、こうであれば理想的です。しかし、現実は異なります。本当は感染者なのにPCR検査が陰性になる場合や、検査結果が陽性でも実際には感染者ではない場合があります。この検査精度については、感度と特異度の2つの観点から評価されます。感度は感染者を陽性と判定できる確率で、特異度は非感染者を陰性と判定できる確率です。新型コロナウイルスへのPCR検査の感度は70%程度とされ、感染者の30%は検査で陰性と判定されることが問題です。テレビのワイドショーでは、識者と呼ばれる方々が賛成・反対の立場で熱く持論を展開しています。感度・特異度だけでなく検査前確率や陽性的中率などの統計的な専門用語を駆使して語る方もおられます。その意見は間違っている訳ではないのですが、正しくもないように思います。そもそも、確率や統計学的な論理を理解するには、一定の知的水準と数学的な素養が要求されます。理解できない人をバカにしている訳ではありません。収入も減少し、社会不安があり、何よりも先が見通せない状況においては、冷静な判断は難しいものです。政策や対応策を立案する部門では詳細な数値に基づいて考察すべきですが、実際に困難に直面している各個人に確率的なことを説明することの意味は難しいのです。これは、新型コロナウイルスにおいてだけではありません。ある患者さんに手術前の説明をする場面を考えてみます。「どのような手術でも100%安全という訳ではありません。100%安全と言い切ることはできないのです」このように説明します。「それはわかっています。どの程度の危険性があるのですか?」不安そうにたずねます。「そうですね。この手術で死亡する確率は0.1%ほどでしょうか」医師が答えます。患者さんと家族に表情に安堵が感じられます。なにより1,000人手術を受けても999人が生存するのです。どうみても上手くいく手術に思われます。ところが、その患者さんが手術合併症で命を落としたとします。1,000人に1人の死亡例に該当してしまったのです。その亡くなった本人にとっては、1,000分の999は生きていて、1,000分の1だけ死んでいるのではありません。0.1%の出来事ではなく、死亡したという事実は100%のできごとです。確率的な考察は、サンプル数や施行数が多い場合に意味を持ちます。人生において何千回も手術を行う医療提供者には死亡率0.1%は意味がありますが、手術を人生で1回しか受けない患者サイドでの死亡率0.1%の解釈は難しいです。「サイコロで6が出る確率は、出るか出ないかだから1/2だ」と言う人に、数学的にそれが1/6であることの説明・証明は可能でしょう。しかし、サイコロを何回も、何十回も、何百回もふってこそ1/6に近づいていくのです。1回しかサイコロをふるチャンスがなければ、当人とすれば、出るか出ないかの二者択一すなわち1/2の確率ともいえます。新型コロナウイルス騒動の収束と終息を願うばかりです。収束は、「収まる」「束ねる」ということから、状況が一定の状態に落ち着くとことを意味し、「終息」は完全に終わるという意味です。新型肺炎の状況が落ち着いてくるのが収束、完全に制圧された場合が終息となります。収束してから終息です。言葉遊びをしている場合ではなく、とにかくシュウソクしてほしいです。

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第7回 アビガン中間解析の怪、試験終了後に有効性は示せるか

Webニュースを見て「ああ、またか」とため息が出た。5月20日朝、共同通信が新型インフルエンザ治療薬アビガン(一般名・ファビピラビル)に関して、藤田医科大学で進行中の新型コロナウイルス感染症(COVID-19)に対する臨床研究の中間解析で有効性が示されなかったという記事を公開した件だ。同社はメディア各社にニュースを配信する通信社でもあるため、これを機に他の報道機関各社もこのニュースを配信し始めた。藤田医科大学側は同日夕、反論の記者会見を開催し、あくまで中間解析は安全性の確認が主たる目的であり、現時点では有効性確認は行っていないとの見解を表明した。共同通信、藤田医科大、どっちが正しい?そもそもアビガンに関しては、冒頭の共同通信の記事でも言及しているように、安倍首相自らが5月4日の記者会見で有効性が確認されれば今月中の承認を目指す意向を表明しているほど政治側が迅速承認に前のめりである。首相が特定の薬剤名を口にすれば、当然メディアはそれを報じ、ちまたではその断片的なニュースが勝手に増幅して期待感が高まる。断片を増幅させる点では、今回一気に言葉だけは有名になってしまったPCR検査のようだが、PCR検査はあくまでAを増幅してもAだが、ニュースの場合はしばしばAが増幅してまったく違うBになってしまうのが厄介である。アビガンに関しては、まさにAがBになってしまった状態で、医療従事者の中には過度な期待が高まっていることに対して警戒感・嫌悪感を持っている人も少なくない。今回、共同通信にこのような記事が出たのも、そうした感情を持つ関係者によるリークの可能性がある。結局のところ藤田医科大学が中間解析は「試験継続の是非を検討するため主に安全性に重点を置いた」との主張はおおむねそうであろうが、参考値として算出したウイルス量低減効果は共同通信が報じたように現時点で有意差はなかったのが本当のところだろうと推察する。藤田医科大アビガン臨床研究に見える疑問点だが、そもそもこの藤田医科大学による臨床研究が真の意味でアビガンの有効性を示せる試験になるかそのものに私は大いに疑問がある。この臨床研究は無症状・軽症のCOVID-19患者でのアビガンのウイルス量低減効果の検討を目的とした多施設非盲検無作為化試験である。対象は86例で、試験開始日から10日目までアビガンを服用する群と試験開始6日目~15日目までアビガンを服用する群との比較試験である。今回報道されたのは、うち40例での中間報告らしい。主要評価項目であるウイルス消失率は、両群とも試験開始6日目に測定する。投与開始時期に差を設けることで事実上治療開始から5日までをアビガンvs.プラセボという立て付けにしているのだろう。これは致死性のあるウイルス感染症に対するプラセボ使用に倫理面から追求を受けることへのエクスキューズと見るのが順当だろう。さてここで私が考える疑問点を順次示したい。ご存じのようにCOVID-19患者の8割を占める無症候・軽症者は、大掛かりな医療的介入がなくとも回復することが知られている。だとするならば、プラセボ投与による事実上の無治療(厳格には対症療法のみ)も倫理的には許容されるはずである。この試験デザインで自然回復と薬効の違いを明確かつ厳格に見ることができるかはやや疑問である。また、無症候・軽症患者が対象となると、定量指標は体液・血液中のウイルス量の変動にならざるを得ないだろう。しかし、一部のウイルス感染症ではウイルス量が減っても、感染によって発生した炎症がその後、ウイルス量と無関係に独り歩きして症状の治癒まで時間を要することもある。COVID-19でも感染によって引き起こされた心血管炎が重症化につながるとの仮説もあり、ウイルス量の低減効果が必ずしもその後の良好な転帰につながらない可能性がある。一方、少なくとも報道を見る限り、共同通信が記事化した中間解析結果というのは、日本経済新聞の報道によると、第三者機関の勧告を意味しているらしい。結論から言えば、藤田医科大学が主張するように安全性には問題がないと第三者機関は結論付けたとは言えるだろう。ただ、第三者機関が有効性のデータをまったく目にしていないとは思えず、もし最初の5日間で両群に目を見張るウイルス量低減効果の差があれば、今後の臨床研究参加患者や他の臨床研究試験参加者の不利益を考え、試験の中止を勧告するはずである。「対象症例を増やせば、統計学的有意差が出るのでは?」という意見もあるだろう。これに対しては前回のレムデシビルの件でも触れたように、統計学的検討では症例数を増やせば微小な差も有意差として検出できる特性があることを考えれば、そのような意見、したがって出る統計学的有意差とは「その程度の小さな差」に過ぎないことになる。さらに無症候・軽症のCOVID-19患者が特段の医療的介入なしで回復すると言われている中、ご存じのように催奇形性の危険性を指摘され、かつ高価なアビガンを投与することはコスト・パフォーマンス、リスク・ベネフィットの点からも疑問符が付く。本来、COVID-19でのアビガンの効果を検証するならば、重症患者を対象に主要評価項目はハードエンドポイントである死亡率にすべきだろう。それで明確な効果が示せる薬剤ならば、COVID-19におびえる国民の期待にも沿えるというもの。やや辛い言い方になるが、そもそもこの試験のデザインそのものが、フルマラソンが怖いのでハーフマラソンにした的な腰が引けたものに映る。いずれにせよ今現在公開されているデータでアビガンがCOVID-19に有効といえるようなものは、ほとんどないのが実情である。衣類の防虫剤CMの「タンスにゴン」の合言葉のごとく「新型コロナにアビガン」という趣旨を声高に叫んでいる政治家とテレビに登場する魑魅魍魎的なコメンテーターの一部にはお黙りいただきたい。適切な情報を発信するための一里塚は、科学的に厳格なデザインの臨床研究結果が明らかになることである。

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扁平上皮肺がん、1次治療としてのアテゾリズマブ+化学療法は?(IMpower131)/JTO

 進行扁平上皮非小細胞肺がん(NSCLC)への1次治療として、アテゾリズマブ+プラチナ併用化学療法は、化学療法単独と比較して、無増悪生存(PFS)期間は有意に改善した。しかし、全生存(OS)期間の有意な延長は得られなかった。米国・ロッキーマウンテンがんセンターのRobert Jotte氏らが、第III相無作為化試験「IMpower131試験」の有効性と安全性の結果を報告した。細胞傷害性抗がん剤には免疫調節作用があり、抗PD-L1抗体アテゾリズマブの作用が化学療法との併用で強化される可能性が示唆され、これまで転移のある非扁平上皮NSCLC患者を対象とした1次治療に関する試験(IMpower130試験、IMpower150試験)でPFS、OSの有意な改善が示されていた。それらの結果を踏まえて欧米では、転移のある非扁平上皮NSCLC患者に対するアテゾリズマブ+プラチナ併用化学療法が承認されていた。Journal of Thoracic Oncology誌オンライン版2020年4月7日号掲載の報告。 研究グループは、化学療法未治療の転移のある扁平上皮NSCLC患者1,021例を、アテゾリズマブ+カルボプラチン+パクリタキセル(A+CP)群(338例)、アテゾリズマブ+カルボプラチン+nab-パクリタキセル(A+CnP)群(343例)、またはカルボプラチン+nab-パクリタキセル(CnP)群(340例)に、1対1対1の割合で無作為に割り付け、21日を1サイクルとして4または6サイクル投与した。その後、A+CP群またはA+CnP群は、進行またはクリニカルベネフィットがなくなるまで、アテゾリズマブ維持療法を行った。 主要評価項目は2つで、ITT集団における治験責任医師評価によるPFSおよびOS。副次評価項目は、PD-L1発現別サブグループのPFSおよびOS、そして安全性であった。 すでにA+CnP群およびCnP群を比較した、PFS主解析(クリニカルカットオフ日2018年1月22日)およびOS最終解析(同2018年10月3日)は、それぞれ報告されている。 主な結果は以下のとおり。・ITT集団におけるPFS中央値は、A+CnP群6.3ヵ月、CnP群5.6ヵ月と、A+CnP群で有意に改善することが示された(ハザード比[HR]:0.71、95%信頼区間[CI]:0.60~0.85、p=0.0001)。・OS中央値は、A+CnP群14.2ヵ月、CnP群13.5ヵ月で、統計学的有意差は認められなかった(HR:0.88、95%CI:0.73~1.05、p=0.16)。・PD-L1高発現のサブグループのOSは、CnP群に比べ、A+CnP群で良好であった(HR:0.48、95%CI:0.29~0.81)。・Grade3~4の治療関連有害事象、および重篤な有害事象の発現率は、A+CnP群でそれぞれ68.0%および47.9%、CnP群で57.5%および28.7%であった。

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小児・青年に対する抗精神病薬使用と急性ジストニア

 小児および青年における抗精神病薬治療による急性ジストニアの発生率とそのリスク因子について、トルコ・Ankara Yildirim Beyazit UniversityのSelma Tural Hesapcioglu氏らが検討を行った。Journal of Child and Adolescent Psychopharmacology誌オンライン版2020年4月7日号の報告。 2015~17年に大学病院の小児および青年期精神科外来を受診し、抗精神病薬による治療を受け、2回以上のフォローアップを受けた患者を対象に、レトロスペクティブチャートレビューに基づくコホート研究を実施した。 主な結果は以下のとおり。・抗精神病薬治療を受けた4~19歳の患者は、441例であった。・抗精神病薬治療の理由は、以下のとおりであった。 ●行動障害(21.5%) ●注意欠如多動症(13.2%) ●知的障害を伴う過敏性と攻撃性(12.9%)・急性ジストニアは、30例(6.8%)で発生し、フォローアップ99.5±223.3日(中央値:34日)後に認められた。・急性ジストニアは、1つの抗精神病薬で治療された患者391例中11例(2.8%)、2つの抗精神病薬で治療された患者50例中19例(38.0%)で発生した(p<0.001)。・1つの抗精神病薬で治療された患者における急性ジストニア発症までの期間は、抗精神病薬治療開始後4.0±4.0日、抗精神病薬増量後2.7±2.4日であった。・2つの抗精神病薬で治療された患者における急性ジストニア発症までの期間は、2つ目の抗精神病薬を追加後3.0±2.3日、2つ目の抗精神病薬増量後1.6±0.8日であった。・1つの抗精神病薬で治療された患者における急性ジストニア発生率は、第1世代抗精神病薬(FGA)で10.5%、第2世代抗精神病薬(SGA)で2.2%であった(p=0.037)。・急性ジストニアの発生により、抗精神病薬を変更した患者は急性ジストニアの症例30例中12例(40.0%)であった。・急性ジストニアに関連する独立したリスク因子は、以下のとおりであった。 ●抗精神病薬の多剤併用(p<0.0001) ●入院治療(p=0.013) ●FGA使用(p=0.015) ●統合失調症の診断(p=0.039) ●双極性障害の診断(p<0.0001) 著者らは「小児および青年における急性ジストニアのリスクは、SGAや低力価FGAでは低く、中~高力価FGAでは高かった。急性ジストニアの発生には、積極的な抗精神病薬による治療が関連している可能性がある」としている。

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新型コロナPCR検査、偽陰性が多い期間は?

 新型コロナウイルスのPCR検査の感度や特異度は十分に特定されておらず、偽陰性となる可能性が最も高い期間はよくわかっていない。今回、米国ジョンズ・ホプキンズ大学のLauren M. Kucirka氏らが7つの研究のプール解析を行ったところ、偽陰性率は、発症後3日目(感染後8日目)に最も低くなることがわかった。著者らは、偽陰性の可能性を最小限にするために、検査は発症から3日間待って実施すべきとしている。また、臨床的にCOVID-19が疑われる場合は、PCR陰性のみで除外診断すべきではなく、臨床的および疫学的状況を慎重に検討する必要があると述べている。Annals of Internal Medicine誌オンライン版2020年5月13日号に掲載。PCR検査の偽陰性率は発症から3日目が20%と最低 本研究は、鼻咽頭または咽頭スワブを用いたPCR検査のデータを有する7つの研究のプール解析(入院または外来患者計1,330例)で、感染(曝露)後もしくは発症(症状発現)後の偽陰性率について、階層ベイズモデリングを用いて算出した。 PCR検査の偽陰性率について算出した主な結果は以下のとおり。・PCR検査の偽陰性率は感染1日目が100%(95%CI:100~100%)であり、4日目が67%(95%CI:27~94%)と5日目(COVID-19の典型的な発症日)まで減少した。 ・発症日(感染5日目)の偽陰性率は38%(95%CI:18〜65%)であった。・感染8日目(発症から3日目)の偽陰性率は20%(95%CI:12~30%)と最低となり、その後、9日目(21%、95%CI:13~31%)から再び増加し、21日目に66%(95%CI:54〜77%)となった。 なお、本研究の限界として、プール解析した基の研究のデザインの不均一性により、推定が不正確であることを挙げている。

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COVID-19、ヒドロキシクロロキンで院内死亡低下せず/JAMA

 ニューヨークの新型コロナウイルス感染症(COVID-19)入院患者において、抗マラリア薬ヒドロキシクロロキン、抗菌薬アジスロマイシンまたはこれらの両薬を治療に用いた患者は、いずれも使用していない患者と比較して、院内死亡率に有意差はなかった。米国・ニューヨーク州立大学のEli S. Rosenberg氏らが、COVID-19入院患者の後ろ向き多施設共同コホート研究の結果を報告した。ヒドロキシクロロキンの単独またはアジスロマイシンとの併用は、COVID-19に対する治療法の候補と考えられているが、有効性や安全性に関するデータは限定的であった。JAMA誌オンライン版2020年5月11日号掲載の報告。無作為抽出したCOVID-19入院患者約1,400例を後ろ向きに解析 研究グループは、ニューヨーク都市圏の25施設に2020年3月15日~28日の間で24時間以上入院したCOVID-19患者7,914例(同期間でのニューヨーク都市圏におけるCOVID-19全入院患者の88.2%を占める)から、施設単位で無作為に抽出した1,438例について、治療薬、既往症、入院時臨床所見、転帰および有害事象に関するデータを解析した。最終追跡調査は2020年4月24日。 解析対象症例を入院期間中の治療に基づいて、ヒドロキシクロロキンとアジスロマイシンの両方を使用(併用群)、ヒドロキシクロロキンのみ、アジスロマイシンのみ、どちらも非投与の4群に分類し、院内死亡率(主要評価項目)、心停止および不整脈/QT延長の心電図異常所見など(副次評価項目)を評価した。ヒドロキシクロロキン服用群、非服用群と院内死亡率に有意差なし 解析対象の1,438例(男性858例[59.7%]、年齢中央値63歳)において、ヒドロキシクロロキン単独群(271例)、アジスロマイシン単独群(211例)および併用群(735例)は、非投与群よりも、糖尿病、呼吸数>22回/分、胸部画像の異常所見、酸素飽和度90%未満、AST>40U/Lの患者が多い傾向にあった。 院内死亡率は、全体で20.3%(95%信頼区間[CI]:18.2~22.4)であり、治療別では併用群25.7%(22.3~28.9)、ヒドロキシクロロキン単独群19.9%(15.2~24.7)、アジスロマイシン単独群10.0%(5.9~14.0)、非投与群12.7%(8.3~17.1)であった。 調整Cox比例ハザードモデルでは、非投与群と比較し、併用群(HR:1.35、95%CI:0.76~2.40)、ヒドロキシクロロキン単独群(1.08、0.63~1.85)およびアジスロマイシン単独群(0.56、0.26~1.21)で、院内死亡率に有意差は確認されなかった。 ロジスティック回帰モデルでは、非投与群と比較し、併用群(補正後オッズ比:2.13、95%CI:1.12~4.05)で心停止のリスクが有意に高かったが、ヒドロキシクロロキン単独群(1.91、0.96~3.81)とアジスロマイシン単独群(0.64、0.27~1.56)では有意差は確認されなかった。また、調整ロジスティック回帰モデルでは、心電図異常所見に相対的なリスクの差は認められなかった。

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切除不能肝細胞がん、アテゾリズマブ+ベバシズマブが有効/NEJM

 切除不能肝細胞がん患者において、アテゾリズマブ+ベバシズマブ併用療法はソラフェニブと比較して、全生存期間(OS)および無増悪生存期間(PFS)を延長した。米国・Geffen School of Medicine at UCLAのRichard S. Finn氏らが、国際共同非盲検第III相試験「IMbrave150試験」の結果を報告した。切除不能肝細胞がん患者を対象とした第Ib相試験で、アテゾリズマブ+ベバシズマブ併用療法の抗腫瘍活性と安全性が示唆されていた。NEJM誌2020年5月14日号掲載の報告。アテゾリズマブ+ベバシズマブ併用vs.ソラフェニブで有効性と安全性を検証 研究グループは、2018年3月15日~2019年1月30日の期間で、全身療法未治療の切除不能肝細胞がん患者をアテゾリズマブ+ベバシズマブ群またはソラフェニブ群に2対1の割合で無作為に割り付け、それぞれ許容できない毒性の発現あるいは臨床的ベネフィットの消失まで投与を継続した。 主要評価項目は、intention-to-treat(ITT)集団における独立評価委員会判定によるOSおよびPFSで、RECIST 1.1を用いて評価した。 解析対象(ITT集団)は、アテゾリズマブ+ベバシズマブ群336例、ソラフェニブ群165例であった。アテゾリズマブ+ベバシズマブ群でOSとPFSが有意に延長 主要解析時点(クリニカルカットオフ日2019年8月29日)で、ソラフェニブ群に対するアテゾリズマブ+ベバシズマブ群の死亡のハザード比(HR)は0.58(95%信頼区間[CI]:0.42~0.79、p<0.001)であり、12ヵ月全生存率はアテゾリズマブ+ベバシズマブ群67.2%(95%CI:61.3~73.1)、ソラフェニブ群54.6%(95%CI:45.2~64.0)であった。 PFS中央値は、アテゾリズマブ+ベバシズマブ群6.8ヵ月(95%CI:5.7~8.3)、ソラフェニブ群4.3ヵ月(95%CI:4.0~5.6)であり、アテゾリズマブ+ベバシズマブ群で有意に延長した(HR:0.59、95%CI:0.47~0.76、p<0.001)。 治験薬を1回以上投与された安全性解析対象集団において、Grade3/4の有害事象はアテゾリズマブ+ベバシズマブ群(329例)で56.5%、ソラフェニブ群(156例)で55.1%に発現した。Grade3/4の高血圧症はアテゾリズマブ+ベバシズマブ群で15.2%に確認されたが、その他のGrade3/4の有害事象の頻度は少なかった。 なお、著者は、本試験は非盲検試験であり、Child-Pugh分類Aの肝機能が保たれた患者を対象としていることなどを研究の限界として挙げている。

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循環器領域のプレシジョン・メディシンを目指して(解説:香坂俊氏)-1232

Precision Medicine(プレシジョン・メディシン)という言葉がある。個別化医療と訳されることがあるが、こちらは実はPersonalized Medicineのことであり、日本語では「精密医療」と訳されることが多い。Precision Medicineという言葉が一躍脚光を浴びるようになったのは、バラク・オバマが大統領であった時期である(遠い昔のように思われるが、2015年のことだ)。彼がその年の一般教書演説で「今後米国はPrecision Medicineの徹底を目指す」と宣言し、そしてそのために巨額の研究費を支出することが表明され、欧米の学会で取り上げられることが多くなった。この一般教書演説のときのPrecision Medicineのイメージとしては「遺伝子の情報に応じたオーダーメイド治療の実現」という側面が強い。古典的なEBMが大規模RCTの結果を「極力すべての人たちにあてはめる」ということをゴールにするとしていたとすると、Precision Medicineはさらにその先、遺伝子のタイプに応じて医療を使い分けるということをゴールにしていた(完全な個別化ではなく、遺伝子の情報によって集団をさらに小分けにするという感じ)。この医療のPrecision化はがん領域において進捗が著しく、がん患者のがん遺伝子を調べ、選択的な治療薬の投与を行うという手法で、乳がん、肺がんなどの領域で実績を上げている。一方で循環器領域では、正直いまひとつパッとしていなかったが、今回取り上げる「Genotype-Guided Strategy for P2Y12 Inhibitors(POPular Genetics試験)」が初めて抗血小板領域におけるPrecision化に道筋をつけた。この試験では、遺伝子型に応じて抗血小板薬を選択するプレシジョン群と従来通りの治療を行う群にSTEMI症例(Primary PCI実施例)をランダム化した。プレシジョン群ではCYP2C19機能喪失型アレル保有者であればプラスグレルかチカグレロル(強めの抗血小板薬)を投与し、非保有者には従来通りのクロピドグレル(普通の抗血小板薬)を投与したが、その結果として2群で塞栓系のイベントの発症率には変化がなく、プレシジョン群で出血イベントの発症率が低かった(12ヵ月のハザード比:0.78、95%CI:0.61~0.98、p=0.04)。このことは日本人のACS患者さんにとっても意義が深い。なぜならば、日本人ではとくにCYP2C19機能喪失型アレル保有者は多いとされているからである(約6人に1人)。それならばすべてのACS患者さんにプラスグレルなどの「強めの抗血小板薬」を投与すればよいかというと、東アジア人においてはこうした薬剤で出血する割合も高いとされており、そういうわけにもいかない(日本では減量されたプラスグレルが市販されているが、それでも最近の解析結果をみてみると出血する割合はクロピドグレルよりも高くなるようである:Shoji S, et al. JAMA Netw Open. 2020;3:e202004. あるいは Akita K, et al. Eur Heart J Cardiovasc Pharmacother.2019 Oct 8. [Epub ahead of print])。このように、徐々にではあるが、循環器領域においてもプレシジョン化が進みつつある。抗血小板薬や抗凝固薬の使用に関してとくに有望であるとされているが、ほかに希望が持たれている分野としてはスタチンの使用(遺伝子型に応じて副作用の発症頻度が異なる)、あるいは心不全に対するACEやARBの使用(性差が存在し、それも遺伝子型によるものではないかと推測されている)などが挙げられ、引き続き注目していきたい分野である。

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第15回 治療編(1)薬物療法・その2【エキスパートが教える痛み診療のコツ】

第15回 治療編(1)薬物療法・その2前回は、主として末梢性疼痛に用いられる薬物療法について解説しましたが、今回は、末梢性神経障害性疼痛への除痛適応を持つ、新薬ミロガバリンとプレガバリン、そして比較的副作用の少ない鎮痛薬ノイロトロピンについて説明しましょう。表に神経障害性疼痛の原因になりうる疾患を示しております。この中でも、末梢性神経障害性疼痛の代表症例として、糖尿病性末梢神経障害性疼痛、帯状疱疹後神経痛、椎間板ヘルニアによる慢性疼痛が挙げられます。画像を拡大する(1)ミロガバリン<作用機序>神経前シナプスの電位依存性カルシウムイオン(Ca2+)チャネルから流入したCa2+により神経が興奮して、サブスタンスP、グルタミン酸、カルシトニン遺伝子関連ペプチド(CGRP)など、いわゆる神経伝達物質が放出されます。このCa2+チャネルにはいくつかのサブユニットで構成されておりますが、ミロガバリンはそのうちのでもα2δサブユニットに結合することによりCa2+チャネルの活動が抑制されることでCa2+の流入が低下します。その効果により、神経伝達物質の放出が抑制されて痛みが緩和されると考えられています。<投与上の注意>1日2回投与が基準です。2.5mg、5mg、10mg、15mg錠がありますが、基本的には5mgX2で開始しますが、患者さんが少しきついと感じられた時には2.5mgX2で開始し、副作用あるいは疼痛緩和効果が見られなければ、1~2週間ごとに10mgX2、15mgX2と漸増し、最終的には1日30mgまで投与します。副作用としては、傾眠、浮動性めまい、体重増加などがあります。高齢者では転倒・骨折の恐れがあるので、細心の注意が必要です。また、自動車運転などの機械操作は回避する必要があります。(2)プレガバリン<作用機序>前述のミロガバリンと同様の作用機序、鎮痛効果を発揮します。<投与上の注意>ミロガバリンと同様ですが、中枢性神経障害に対する適応も有しています。元はカプセル剤でしたが、和製でOD錠になりましたので、疼痛時にはそのまま服用できるのが魅力です。25、75、150mgOD錠があり、1日4回まで、最高600mgまで処方できます。副作用もミロガバリンと同様で、眠気には注意が必要です。眠前に服用するとよく眠れるようです。(3)ワクシニアウイルス接種家兎炎症皮膚抽出液含有製剤(商品名:ノイロトロピン)<作用機序>ノイロトロピンは、ワクシニアウイルスを摂取した家兎の炎症性皮膚組織から抽出した300種類以上非蛋白性生体活性物質を含んでおり、単一での効果成分は不明です。作用機序としては、下行性疼痛抑制系の活性化が考えられております。その他、抗炎症作用、興奮性神経ペプチドの放出の抑制、交感神経作用抑制、血流改善、神経保護作用などが推測されています。<投与上の注意>副作用には発疹、掻痒、悪心、眠気などが認められていますが、その発現頻度や重症度は極端に低いため、高齢者や長期療養者に対しても使いやすいことが特徴です。1日4錠(1錠4単位)を朝夕2回に分けて経口投与します。注射薬では1日1回1管を静脈内、筋肉内または皮下に注射します。以上、痛み治療の第1段階における薬物を取り上げ、その作用機序、投与における注意点などを述べさせていただきました。痛みの患者さんに接しておられる読者の皆様に少しでもお役に立てれば幸いです。1)花岡一雄. ペインクリニック. 2013; 34: 1227-12372)花岡一雄. ペインクリニック. 2011; 143: 441-4443)花岡一雄ほか監修. 痛みマネジメントupdate 日本医師会雑誌. 2014;143:S168

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コロナを巡る4つのお話【Dr. 中島の 新・徒然草】(324)

三百二十四の段 コロナを巡る4つのお話東京も大阪も新型コロナによる新たな感染者はどんどん減ってきました。緊急事態宣言が続いている8都道府県の解除も噂されています。これですんなり収まったら、それは出来すぎ! まだまだ油断大敵と私は思っています。さて、コロナを巡るお話をいくつか紹介します。その1:とある外科系診療科の先生。外科「中島先生、急がない手術は先延ばしにしなくちゃいけないんですよね」中島「確かに、病院からはそのように言われていますね」外科「ウチなんか、全部の手術が不要不急なんですけど」中島「不急かもしれんけど、不要ってことはないでしょう!」外科「そう言われれば、そんな気もします」自らを「不要不急」と断言するとは、なかなかの大物です。でも本人は大真面目でした。その2:別の外科系診療科。「手術が少ない時は、汚い医局を何とかしろ!」若手たちが偉い先生に説教をくらったそうです。先日、数人のレジデントが掃除をしているところに出くわしました。なぜか妙にサマになっています。よく見れば、揃ってスクラブと帽子とマスク。手術室でのいつものスタイルじゃないですか。道理で似合うはずだ!その3:保健所への電話もっとPCR検査をするべきだ、とメディアは大合唱!検査件数を絞りすぎていると保健所が批判されています。しかし、私がPCRを依頼して断られたことは一度もありません。確かに、4月頃は保健所の電話がつながりにくかったのは事実です。電話がつながってからも、担当者と話をするまで時間がかかりました。でも、徐々に保健所のシステムも改善されたようです。最近は1発で電話がつながり、すぐに担当者と話しをすることができます。人員が増えたのかもしれません。慣れてきたのか、電話でのやり取りも以前よりスムーズになりました。地域によってかなり対応が違うのだとは思いますが。その4:外食しなくなった外食せず、もっぱら自宅で食べております。女房だけでなく私も作ります。本やネットを参考に、パスタとか丼とか簡単なものばかりですけど。作って食べた後で、レシピを記録しながら反省する毎日。「塩はもっと少な目に」とか「赤ワインを切らせていた」とか。あと、毎回食べる前にスマホで写真を撮っています。美しく撮るためのコツは、テーブルクロスを敷くことかな。料理も写真も素人ですけど、やってみると面白いですね。ということで最後に1句自粛して 掃除に料理 新鮮だ

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第7回 「医療の国家戦略」の信頼感揺るがした不倫騒動の顛末

コロナ禍を傍目に、マスコミを賑わした和泉 洋人・首相補佐官と大坪 寛子・厚生労働省大臣官房審議官の不倫騒動。事は単なる上司と部下の不倫話では済まず、医療の国家戦略における官僚の独善的な運営を明らかにし、医療人らの不信を買う結果を招いた。大坪氏は4月3日付で、兼任していた内閣官房「健康・医療戦略室」の次長職を解かれた。室長は和泉氏だった。大手紙記者は「不倫問題だけでなく、官邸への答弁能力などにも疑問符が付いたようだ」と説明する。大坪氏は和泉氏と共に昨年夏、京都大学iPS細胞研究所を訪問。所長の山中 伸弥教授に対し、iPS細胞ストック事業への政府補助金削減を通告した。ストック事業は文部科学省の有識者会合で継続が認められたばかりだったにもかかわらずだ。3人だけの面談だったため、山中教授は昨年11月、「透明性の高い議論で決めてほしい」と日本記者クラブの会見で訴えた。また、和泉・大坪両氏は、日本医療研究開発機構(AMED)への人事介入や予算決定、研究内容を巡り、当時の末松 誠理事長とも激しく対立した。和泉氏は、AMEDの理事や執行役らを呼び付け、大坪氏の言うことを聞いてうまくやらなければ、人事を動かすと恫喝したという。和泉・大坪両氏の“専横”ぶりに、末松氏は「昨年7月以降、大坪氏が次長になってから、我々のオートノミー(自律性)は完全に消失した」と訴えていた。大坪氏と対立した末松氏は、3月末に1期5年の任期を終えた。続投への思いを垣間見せていたが、再任はなかった。官邸関係者は、大坪氏と末松氏の人事について「一緒に対応した」と話しており、喧嘩両成敗の形になった。もともと健康・医療戦略室は、民主党政権が2011年、日本発の医薬品や再生医療などの実用化を目指して内閣官房に設けた「医療イノベーション推進室」を改組したもの。室長にゲノム研究の第一人者の中村 祐輔・東京大学医科学研究所教授(当時)が就くなど、室長代行や次長にも著名な医療人らが名を連ねていた。しかし、中村教授は「省庁間の縦割りに無力を感じた」として、わずか1年足らずで辞任することになる。そして第2次安倍政権発足後の2013年に、同推進室を改組した健康・医療戦略室の室長に就いたのが、元建設省官僚の和泉氏だった。この人事を契機に、同戦略室は官僚中心の組織に変貌。厚労省医系技官の大坪氏は、同戦略室次長になると同時に、本省課長ポストを経ることなく審議官に昇進。厚労省側の官邸への忖度ぶりを見せつけた。ちなみに大坪氏は、横浜沖に滞在したクルーズ船「ダイヤモンド・プリンセス」への対応に当たった際、同様の業務に当たった自見 英子・厚労政務官と対立、主導権争いをしていたとの話も省内に広がっていた。そもそも健康・医療戦略室は、「アベノミクス」の第3の矢として打ち出された「日本再興戦略」の目玉の1つで、米国立衛生研究所(NIH)にならった「日本版NIH」構想の一翼を担う組織だった。内閣に設けられた「健康・医療戦略推進本部」(本部長・安倍首相)が総合戦略を策定し、AMEDがその戦略に沿った研究費の配分や研究環境の整備などを手掛けることになっている。しかし、同本部の実働部隊である健康・医療戦略室の和泉・大坪両氏による一連の“不祥事”によって、3者の信頼関係は事実上破綻したといっていいだろう。軋轢を生んだ相手は医療界にも広がる。ある医療関係者は「健康・医療戦略室として何を推進するのかといったコンセプトはなく、大坪氏にはコストカットしかなかった。それを和泉氏が手柄にしていたのだろう。だから大坪氏は医療人に嫌われていた」と話す。そのため、大学医学部や学会を横断的に「大坪寛子被害者の会」が結成されたと打ち明ける。その大坪氏が健康・医療戦略室次長職を解かれ、被害者の会は溜飲を下げたと思いきや、そうでもないらしい。前出の医療関係者によると、週刊誌に不倫問題が報じられた際、「美人官僚」と表現されたことを大坪氏が喜んでいたり、会議に出ても臆した様子がなかったり、上司だった和泉氏におとがめなしだったりしたことが会員の怒りを増幅し、さらには安倍首相に対する不信感をもたらしているという。「間違いを認めない内閣」の弊害が、医療界にまで及んでいる。

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