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砂糖の取り過ぎは認知症リスクと関連するか

 過剰な糖質の摂取は、認知症リスクの上昇と関連しているといわれているが、これまでの研究ではサンプル数が少なく、糖質の総量に着目しているため、特定の糖質サブタイプに関する調査は限られていた。中国・西安交通大学のYue Che氏らは、糖質の摂取量およびサブタイプと認知症リスクとの関係を評価するため、プロスペクティブコホート研究を実施した。The Journal of Prevention of Alzheimer's Disease誌オンライン版2025年7月31日号の報告。 英国バイオバンク参加者のうち、24時間食事回想法を1回以上実施した17万2,516人を対象に分析を行った。糖質の総量およびサブタイプ(遊離糖、果糖、ブドウ糖、ショ糖、麦芽糖、乳糖、その他の糖類)について、Cox比例ハザードモデルを用いて、認知症リスクに関するハザード比(HR)および95%信頼区間(CI)を推定した。性別による層別化分析も実施した。 主な結果は以下のとおり。・糖類の総量(HR:1.292、95%CI:1.148〜1.453)、遊離糖の量(HR:1.254、95%CI:1.117〜1.408)が多い場合、認知症リスク上昇との関連が認められた。・乳製品以外の外因性糖類(HR:1.321、95%CI:1.175〜1.486)、ショ糖(HR:1.291、95%CI:1.147〜1.452)においても、認知症リスクとの正の相関が認められた。・これらの関連性は、女性において顕著であり、糖類の総量および遊離糖、ブドウ糖、ショ糖、乳製品以外の外因性糖類の摂取量の増加は、それぞれ独立して認知症リスク上昇との関連が認められた。一方、男性では有意な関連は認められなかった。 著者らは「糖類の総量および遊離糖、ショ糖、乳製品以外の外因性糖類の摂取量が多いと、とくに女性では認知症リスクが上昇することが示唆された」としている。

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高齢やフレイルのCLL患者、アカラブルチニブ単剤で高い奏効率(CLL-Frail)/Blood

 80歳以上の高齢やフレイルの慢性リンパ性白血病(CLL)患者を対象とした前向きのCLL-Frail試験の結果、アカラブルチニブ単剤治療により高い奏効率とフレイルの改善が認められた。また、予期しない安全性シグナルはみられず、重篤な有害事象はほとんどが感染症であったという。ドイツ・ケルン大学のFlorian Simon氏らがBlood誌オンライン版2025年9月4日号に報告した。 CLL-Frail試験は、German CLL Study Groupによる医師主導国際多施設共同第II相試験である。本試験の対象は、ECOG PSが3以下で、80歳以上および/またはフレイルスケールスコアによりフレイルとみなされたCLL患者で、1ラインまで前治療が認められた。主要評価項目は6サイクル治療後の全奏効率(ORR)で、ORR≦65%とする帰無仮説を検証した。 主な結果は以下のとおり。・登録された53例中34例が治療継続中で、早期中止の最も多かった理由は有害事象(10例)で5例が死亡した。年齢中央値は81歳、47.2%がフレイルであった。・3サイクル以上治療を受けた46例のORRは93.5%(95%信頼区間:82.1~98.6)であり、主要評価項目を達成した(p<0.001)。・追跡期間中央値19ヵ月で、推定12ヵ月無増悪生存率および全生存率はそれぞれ93.3%、95.7%であった。・53.5%の患者がフレイルの改善を自己申告した。・全例に有害事象が認められ、重篤な有害事象(CTCAE 3以上)が63.5%で発現したが、重篤な出血イベントは認められず、心房細動はまれ(CTCAE 2/3が2例)であった。死亡した5例中4例は治療中または治療後28日以内に死亡し、うち3例は感染症/COVID-19が原因だった。 著者らは、「慎重な患者選択と意思決定の共有が不可欠ではあるが、この試験における高い奏効率とフレイルの改善は、これまで十分な治療効果が認められていなかったこの年齢層でのアカラブルチニブによるブルトン型チロシンキナーゼ(BTK)阻害の顕著な有効性と実行可能性を強調している」と結論した。

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EGFR陽性NSCLCの1次治療、オシメルチニブ+化学療法がOS改善(FLAURA2)/WCLC2025

 EGFR遺伝子変異陽性の進行・転移非小細胞肺がん(NSCLC)に対する1次治療として、オシメルチニブ+化学療法とオシメルチニブ単剤を比較する国際共同第III相無作為化比較試験「FLAURA2試験」が実施されている。世界肺がん学会(WCLC2025)において、本試験の全生存期間(OS)の最終解析結果がDavid Planchard氏(フランス・Institut Gustave Roussy/パリ・サクレー大学)によって報告され、併用群でOSの有意な改善が認められた。すでに主解析の結果、併用群で無増悪生存期間(PFS)が有意に改善したことが報告されており(ハザード比[HR]:0.62、95%信頼区間[CI]:0.49~0.79)1)、OSも第2回中間解析の結果から併用群が良好な傾向が示されていた。試験デザイン:国際共同第III相非盲検無作為化比較試験対象:EGFR遺伝子変異陽性(exon19欠失/L858R)でStageIIIB、IIIC、IVの未治療の非扁平上皮NSCLC成人患者557例試験群:オシメルチニブ(80mg/日)+化学療法(ペメトレキセド[500mg/m2]+シスプラチン[75mg/m2]またはカルボプラチン[AUC 5]を3週ごと4サイクル)→オシメルチニブ(80mg/日)+ペメトレキセド(500mg/m2)を3週ごと(併用群、279例)対照群:オシメルチニブ(80mg/日)(単独群、278例)評価項目:[主要評価項目]RECIST 1.1を用いた治験担当医師評価に基づくPFS[副次評価項目]OSなど 主な結果は以下のとおり。・本試験の対象患者は、ベースライン時に約4割が脳転移を有していた(併用群42%、単独群40%)。EGFR遺伝子変異の内訳は、exon19欠失変異/L858R変異が、併用群61%/38%、単独群60%/38%であった。・データカットオフ時点(2025年6月12日)のOS中央値は、併用群47.5ヵ月、単独群37.6ヵ月であり、併用群が有意に改善した(HR:0.77、95%CI:0.61〜0.96、p=0.02)。・2年、3年、4年時のOS率は、併用群がそれぞれ80%、63%、49%であり、単独群がそれぞれ72%、51%、41%であった。・OSに関するサブグループ解析では、ほとんどのサブグループで併用群が良好な傾向にあったが、中国人を除くアジア人のサブグループのHRは1.00(95%CI:0.71~1.40)であった。・治療期間中央値は、併用群がプラチナ製剤2.8ヵ月、ペメトレキセド8.3ヵ月、オシメルチニブ30.5ヵ月であった。単独群のオシメルチニブによる治療期間中央値は21.2ヵ月であった。・進行後に後治療を受けた割合は、併用群69%、単独群77%であった。後治療を受けた患者のうち、化学療法を用いた割合は、併用群74%、単独群75%であった。・Grade3以上の有害事象は併用群70%、単独群34%に発現したが、主解析時から2年超の追跡期間を経ても、安全性に関する新たなシグナルはみられなかった。・オシメルチニブの中止に至った有害事象は、併用群12%、単独群7%に発現した。 本試験結果について、Planchard氏は「オシメルチニブ+化学療法はOSを有意に改善したことから、EGFR遺伝子変異陽性の進行NSCLCに対する1次治療の標準治療であることが確認された」とまとめた。

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降圧薬で腸管血管性浮腫の報告、重大な副作用を改訂/厚労省

 2025年9月9日、厚生労働省より添付文書の改訂指示が発出され、アンジオテンシン変換酵素阻害薬(ACE阻害薬)やアンジオテンシンII受容体拮抗薬(ARB)などの降圧薬で重大な副作用が改められた。 今回、ACE阻害薬、ARB、アンジオテンシン受容体ネプリライシン阻害薬(ARNI)および直接的レニン阻害薬の腸管血管性浮腫について評価した。その結果、「血管性浮腫の一種である腸管血管性浮腫についても、潜在的なリスクである可能性があること」「国内外副作用症例において、腸管血管性浮腫に関連する報告が認められていない薬剤もあるものの、複数の薬剤において腸管血管性浮腫との因果関係が否定できない症例が認められていること」「医薬品医療機器総合機構で実施したVigiBaseを用いた不均衡分析において、複数のACE阻害薬およびARBで『腸管血管性浮腫』に関する副作用報告数がデータベース全体から予測される値より統計学的に有意に高かったこと」を踏まえ、改訂に至った。◆例:アジルサルタンの場合[重大な副作用]血管浮腫顔面、口唇、舌、咽・喉頭等の腫脹を症状とする血管性浮腫があらわれることがある。↓血管性浮腫顔面、口唇、舌、咽・喉頭等の腫脹を症状とする血管性浮腫があらわれることがある。また、腹痛、嘔気、嘔吐、下痢等を伴う腸管血管性浮腫があらわれることがある。 対象医薬品は以下のとおり。<ACE阻害薬>アラセプリル(商品名:セタプリル錠)イミダプリル塩酸塩(同:タナトリル錠)デラプリル塩酸塩(同:アデカット錠)トランドラプリル(同:オドリック錠)ペリンドプリルエルブミン(同:コバシル錠)<ARB>アジルサルタン(同:アジルバ錠)イルベサルタン(同:アバプロ錠)オルメサルタン メドキソミル(同:オルメテック錠)カンデサルタン シレキセチル(同:ブロプレス錠)バルサルタン(同:ディオバン錠)アジルサルタン・アムロジピンベシル酸塩(同:ザクラス配合錠)イルベサルタン・アムロジピンベシル酸塩(同:アイミクス配合錠)イルベサルタン・トリクロルメチアジド(同:イルトラ配合錠)オルメサルタン メドキソミル・アゼルニジピン(同:レザルタス配合錠)カンデサルタン シレキセチル・アムロジピンベシル酸塩(同:ユニシア配合錠)カンデサルタン シレキセチル・ヒドロクロロチアジド(同:エカード配合錠)テルミサルタン・アムロジピンベシル酸塩(同:ミカムロ配合錠)テルミサルタン・アムロジピンベシル酸塩・ヒドロクロロチアジド(同:ミカトリオ配合錠)テルミサルタン・ヒドロクロロチアジド(同:ミコンビ配合錠)バルサルタン・アムロジピンベシル酸塩(同:エックスフォージ配合錠)バルサルタン・シルニジピン(同:アテディオ配合錠)バルサルタン・ヒドロクロロチアジド(同:コディオ配合錠)ロサルタンカリウム・ヒドロクロロチアジド(同:プレミネント配合錠)<ARNI>サクビトリルバルサルタンナトリウム水和物(同:エンレスト錠)<直接的レニン阻害薬>アリスキレンフマル酸塩(同:ラジレス錠) このほか、メサラジン(同:ペンタサ、アサコール ほか)、サラゾスルファピリジン(同:アザルフィジン、サラゾピリン ほか)アダリムマブ(同:ヒュミラ ほか)、イピリムマブ(同:ヤーボイ)・ニボルマブ(同:オプジーボ)、メロペネム水和物(同:メロペン)に対しても、それぞれ重大な副作用などが追加された。

1605.

ベルイシグアト、急性増悪のないHFrEFのイベント抑制効果は?/Lancet

 急性増悪の認められない左室駆出率が低下した心不全(HFrEF)患者において、ベルイシグアトは複合エンドポイント(心血管死または心不全による入院までの期間)のリスクを低下させなかったことが、米国・Baylor Scott and White Research InstituteのJaved Butler氏らVICTOR Study Groupによる第III相の無作為化二重盲検プラセボ対照試験「VICTOR試験」の結果で報告された。ただし、心血管死についてプラセボ群よりベルイシグアト群で少なかったことが観察されている。ベルイシグアトは、急性増悪が認められたHFrEF患者において、心血管死または心不全による入院リスクを軽減するための使用が認められている。VICTOR試験の目的は、急性増悪の認められないHFrEF患者におけるベルイシグアトの有効性を評価することであった。Lancet誌オンライン版2025年8月29日号掲載の報告。36ヵ国482施設で経口ベルイシグアトとプラセボを比較 VICTOR試験は36ヵ国482施設で行われ、18歳以上、HFrEF(左室駆出率≦40%)で無作為化前6ヵ月以内に心不全による入院歴がなく、無作為化前3ヵ月以内に外来での利尿薬の静脈内投与を必要としなかった患者を対象とした。 被験者を、経口ベルイシグアト群または適合プラセボ群に、双方向応答システムを用いて無作為に1対1の割合で割り付けた。経口ベルイシグアトの投与量は、導入時1日1回2.5mgとし、無作為化後14(±4)日目に5mg、28(±4)日目に10mgへと漸増された 主要エンドポイントは、心血管死または心不全による入院までの期間の複合とした。重要な副次エンドポイントは、無作為化から心血管死までの期間とした。その他の副次エンドポイントとして、無作為化から心不全による初回の入院までの期間なども評価した。探索的エンドポイントとして、無作為化から心不全による初回の入院または予定外の心不全外来受診までの期間などを評価した。有効性のエンドポイントは、ITT集団で評価した。 有害事象の評価は、無作為化され試験薬を少なくとも1回投与された全患者(安全性集団)を対象に行われた。主要エンドポイントの発生に統計学的有意差認められず 2021年11月2日~2023年12月21日に、1万921例がスクリーニングを受け6,105例が無作為化された(ベルイシグアト群3,053例、プラセボ群3,052例)。年齢中央値は68.0歳(四分位範囲[IQR]:61.0~75.0)、女性1,440例(23.6%)、男性4,665例(76.4%)、白人3,934例(64.4%)であり、2,899例(47.5%)には心不全による入院歴がなかった。 追跡期間中央値18.5ヵ月(IQR:13.6~24.7)において、主要エンドポイントのイベントは、ベルイシグアト群549例(18.0%)、プラセボ群584例(19.1%)が報告され、両群間に統計学的有意差はみられなかった(ハザード比[HR]:0.93、95%信頼区間[CI]:0.83~1.04、p=0.22)。 プロトコールで事前に規定されていたように、主要エンドポイントについて統計学的有意差が示されなかったため、すべての副次エンドポイントおよび探索的エンドポイントについては正式な統計解析を実施せず、名目上の値として報告された。心血管死の発生は、ベルイシグアト群292例(9.6%)、プラセボ群346例(11.3%)であった(HR:0.83、95%CI:0.71~0.97)。心不全による入院の発生は、ベルイシグアト群348例(11.4%)、プラセボ群362例(11.9%)であった(0.95、0.82~1.10)。 重篤な有害事象は、ベルイシグアト群717/3,049例(23.5%)、プラセボ群751/3,049例(24.6%)に発現した。最も多くみられた有害事象は症候性の低血圧で、ベルイシグアト群345/3,049例(11.3%)、プラセボ群281/3,049例(9.2%)に認められた。全死因死亡は、ベルイシグアト群377/3,049例(12.3%)、プラセボ群440/3,049例(14.4%)が報告された(HR:0.84、95%CI:0.74~0.97)。

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他者を手助けする活動で認知機能の低下速度が緩やかに

 年齢を重ねても脳の健康を維持したい人は、定期的に地域や近所でボランティア活動を行うか、友人や家族を手助けすると良いようだ。そうした他者を手助けする活動を定期的に行っている人では、その活動が公式か非公式かにかかわらず、加齢に伴う認知機能の低下速度が緩やかであることが、新たな研究で示された。米テキサス大学(UT)オースティン校人間発達・家族科学分野のSae Hwang Han氏らによるこの研究の詳細は、「Social Science & Medicine」10月号に掲載された。Han氏は、「組織的なものであれ個人的なものであれ、日常的に他者を手助けすることは認知機能に永続的な影響を及ぼす可能性がある」と述べている。 この研究では、1998年から2020年の間にU.S. Health and Retirement Study(全米健康と退職研究)に参加した米国の51歳以上の成人3万1,303人のデータを用いて、他者を手助けする役割の変化やその活動時間の増減が認知機能にどのように影響するのかを検討した。他者を手助けする役割は、公式なボランティア活動と、家族や友人を手助けする個人的な援助に分けて検討した。個人的な援助の例は、友人の医療機関受診の予約を取ることや、ベビーシッターをすることなどである。 その結果、公式なボランティア活動か個人的な援助かを問わず、他者を助ける活動を始めた人では、そうした活動をしていない人に比べて認知機能が高く、加齢に伴う認知機能の低下がより緩やかであることが明らかになった。また、他者を手助けする活動を継続的に行うことは認知機能に累積的なベネフィットをもたらし、時間が経つほどその効果が大きくなることも示された。さらに、認知機能へのベネフィットを得るためには、そうした活動を行う時間が1週間に2~4時間程度と中程度の活動量で十分であることも示された。 Han氏は、「私にとって印象的だったのは、他者を手助けすることでもたらされる認知機能へのメリットが短期的なものではなく、そうした活動を継続することで経時的に蓄積されるという点だ。こうしたメリットは、公式なボランティア活動と非公式な援助の両方で認められた」とUTのニュースリリースの中で述べている。同氏は、「それだけでなく、わずか2~4時間程度の関与でも、一貫して大きなベネフィットにつながっていた」と付け加えている。 Han氏はまた、「個人的な手助けは非公式であり社会的に認知されないため、健康に対する効果が小さいと思われがちだ。しかし、そうした行為でも公式なボランティア活動に匹敵する認知機能の向上が見られたことは、嬉しい驚きだった」と語っている。 研究グループは、毎年のように他者を手助けする活動を行うことが習慣になっている人の間では、より大きなベネフィットを期待できるのではないかとみている。Han氏は、「一方で、他者を手助けする活動を完全にやめてしまうことは、認知機能の低下と関連していることが示された。これは、高齢者が可能な限り何らかの形でそうした活動に関わり続けることの大切さを示しており、そのためには適切なサポートや配慮が必要なことを示している」と述べている。 研究グループは、他者を手助けする活動によりもたらされるベネフィットは、社会的つながりの強化か、あるいは毎日の生活の中で抱えるストレスの軽減によりもたらされる可能性が高いと見ている。こうした活動は、時間の経過とともに人の認知機能を蝕むとされる孤立感や孤独感を軽減することができる可能性があるという。

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AIチャットボットによるてんかん教育介入の効果、「えぴろぼ」の実用性と今後の課題

 てんかんを正しく理解し、偏見なく接する社会をつくるには、患者本人だけでなく周囲の人々の知識と意識の向上が欠かせない。こうした中、患者やその支援者にてんかんに関する情報や心理的サポートを提供する新しい試みとして、人工知能(AI)を活用したチャットボット「えぴろぼ」が登場した。今回、「えぴろぼ」の利用によって、てんかん患者に対する態度の改善や疾患知識の向上が認められたとする研究結果が報告された。研究は、国立精神・神経医療研究センター病院てんかん診療部の倉持泉氏らによるもので、詳細は「Epilepsia Open」に7月28日掲載された。 近年、AIやデジタルヘルスの進展により、チャットボットを活用した医療支援が注目されている。てんかん患者の多くは、自身の疾患に関する知識が不十分で、治療への関与や生活の質(QoL)にも影響を及ぼしている。また、スティグマや心理的負担から、教育プログラムへの参加率も低いのが現状である。こうした課題を受けて、埼玉医科大学、埼玉大学、国立精神・神経医療研究センターなどの研究チームは、患者や支援者が場所や時間を問わず情報にアクセスできる新たな教育支援ツールとして、AIチャットボット「えぴろぼ」を開発した。本研究では、「えぴろぼ」がてんかんに関する知識や意識の改善にどのように寄与するかを検討した。 本研究は2つのフェーズで構成されていた。最初に、チャットボットの内容を洗練させるための予備的な試験フェーズを実施し、その後、本介入フェーズに移行した。本フェーズでは、スマートフォンアプリを通じて「えぴろぼ」を利用するために176名(てんかん患者13名、現在支援者として関わっている者69名、将来支援者となる可能性がある者28名、その他66名)が登録した。調査では、チャットボット使用前後での、てんかんに関する知識や偏見・スティグマ、患者自身のセルフスティグマ(内在化されたスティグマ)を評価した。経時的な変化の分析には、対応のあるt検定およびWilcoxonの符号付き順位検定を用いた。 登録した176名のうち、82名(てんかん患者9名、患者家族25名、支援者25名、医療従事者12名、その他11名)が介入前後の調査を完了した。参加者の平均年齢は41.8歳であり、ほとんどの参加者がてんかんについてある程度の知識をもっていた。約半数の参加者はてんかん発作を目撃した経験があると回答していたが、発作への対応について自信があると回答した者は半数に満たなかった。 「えぴろぼ」による介入は、てんかん患者に対する職場での平等に関する意識に有意な改善をもたらし(P<0.001)、てんかん治療に関する知識の向上にもつながった(P=0.022)。QOLやてんかんに関する一般的な知識については、統計的に有意ではなかったものの改善傾向を示した。一方で、てんかん患者(n=9)では、てんかんに関連するセルフスティグマのわずかな増加が観察された(P=0.31)。 本研究について著者らは、「今回の結果は、『えぴろぼ』がてんかんに関する教育や心理的支援において、広く活用できるデジタルツールとしての可能性を示している。その一方で、患者自身のセルフスティグマへの対応は今後の課題として残されている」と述べた。 なお、介入によりセルフスティグマが増加した理由について、著者らは評価期間が約1カ月と短いこと、また対象に含まれるてんかん患者が少数であることを限界として指摘した上で、「教育介入によって知識が増えた結果、むしろ自身が置かれた社会的立場や偏見を意識するようになり、結果として一時的にセルフスティグマが強まった可能性が考えられる」と言及している。

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腎盂腎炎のCT検査、その診断精度は?【Dr.山本の感染症ワンポイントレクチャー】第11回

Q11 腎盂腎炎のCT検査、その診断精度は?腎盂腎炎を疑って泌尿器科にコンサルトすることがありますが、CT検査で腎周囲の脂肪織濃度の上昇がないと、尿検査が陽性でも腎盂腎炎ではない、と言われます。実際はどうなのでしょうか。

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副作用編:手足症候群(抗がん剤治療中の皮膚障害対応)【かかりつけ医のためのがん患者フォローアップ】第4回

今回は化学療法中の「手足症候群」についてです。手足症候群はとくにマルチキナーゼ阻害薬などで発症する副作用の1つです。患者さん自身には病状の深刻さがわかりづらく、気付いたときには重症化しているケースもたびたび見受けられます。足底部の手足症候群が増悪すると歩行困難となり、治療機関が遠方の場合は自宅近くのクリニックへ来院するケースもあります。今回は、手足症候群で受診された際に有用な鑑別ポイントや、患者さんへの対応にフォーカスしてお話しします。【症例1】72歳、男性主訴歩行困難病歴局所進行大腸がん(StageIV)に対する緩和的化学療法を実施中。数日前から歩行時に足裏の痛みを感じていた。今朝から足底部に発赤と水疱を自覚。疼痛で歩行困難となり、かかりつけ医(クリニック)を受診。診察所見発熱なし、呼吸器症状、腹部症状なし。食事摂取問題なし。両足足底部に発赤および水疱を認める。手掌も発赤あり。内服抗がん剤フルキンチニブ5mg/日(Day18)画像を拡大するステップ1 鑑別と重症度評価は?抗がん剤治療中の手足症候群のほとんどが使用中の抗がん剤によるものですが、感染症なども念頭におく必要があります。他の要因も含めて押さえておきたいポイントを挙げます。(1)手足症候群の原因が本当に抗がん剤かどうか確認服用中または直近に投与された抗がん剤の種類と投与日を確認。他の原因(主に感染:蜂窩織炎や真菌感染など)との鑑別。手足症候群以外の症状やバイタルの変動を確認。鑑別疾患とポイント画像を拡大する手足症候群の原因となる医薬品と頻度画像を拡大する(2)CTCAEを用いた重症度評価外来受診時のGrade判定の目安としては、初期症状である手足がチクチクするといった軽度の疼痛のような感覚異常はGrade1、明確な痛みを伴う場合はGrade2、歩行困難などの日常生活に支障を来す場合はGrade3となります。機能障害の程度の判定は、ボタンがかけられない、痛くて水仕事ができない、歩行ができないなどを指標とします。CTCAE v5.0 手掌・足底発赤知覚不全症候群画像を拡大するステップ2 対応は?では、冒頭の患者さんの対応を考えてみましょう。来院時はすでに歩行困難であり、CTCAEで評価すると重症度はGrade3に相当しました。両手・両足に症状が出現しており、フルキンチニブによる手足症候群の診断となりました。発熱の有無や他の副作用の有無も聴取したうえで、抗がん剤の内服中止と自宅での安静としました。このケースではストロンゲストのステロイド軟膏を処方し、疼痛に対してはアセトアミノフェンを処方したうえで、治療機関への連絡(抗がん剤の再開時期や副作用報告)を説明して帰宅としました。症状と対応画像を拡大する内服抗がん剤を中止してよいか?診察時に患者さんより「抗がん剤を継続したほうがよいか?」と相談を受けた場合、基本的に内服を中止しても問題ありません。手足症候群を生じるような内服抗がん剤の場合、自己判断で抗がん剤を減量すると副作用の過小評価につながる可能性があるため、判断に迷う場合は治療機関へ問い合わせるよう、患者さんへ説明いただけますと助かります。1)厚生労働省:重篤副作用疾患別対応マニュアル 手足症候群2)中外製薬:手足症候群 Hand-foot Syndrome Atlas3)有害事象共通用語基準 v5.0 日本語訳JCOG版講師紹介

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体がだるくて横になりたい【漢方カンファレンス2】第5回

体がだるくて横になりたい以下の症例で考えられる処方をお答えください。(経過の項の「???」にあてはまる漢方薬を考えてみましょう) 【今回の症例】 30代男性 主訴 全身倦怠感、頭痛、めまい、微熱 既往 特記事項なし 生活歴 医療従事者、喫煙なし、機会飲酒 病歴 X年8月に新型コロナウイルス感染症(COVID-19)に罹患。咽頭痛や38℃台の発熱があったが、合併症はなく2日後には解熱した。 その後、全身倦怠感、頭痛、ふらふらとするめまいが出現、夕方になると37℃台の微熱がでる日が続いた。疲労感が強く仕事に支障が出るようになり、休息をとったり、欠勤したりしないと体が動かない。 総合診療科で精査を受けたが明らかな異常なし。11月に漢方治療目的に受診。 現症 身長174cm、体重78.5kg。体温37.2℃、血圧110/60mmHg、脈拍56回/分 整 経過 初診時 「???(A)」エキス+「???(B)」エキス3包 分3で治療を開始。 2週後 少し動けるようになった。まだ仕事を休むことがある。 寒くなって体が冷えるようになった。 ブシ末エキス1.5g 分3を併用。 1ヵ月後 めまいや頭痛が改善した。まだ体が冷える。 「???(B)」を「???(C)」エキスに変更した。(解答は本ページ下部をチェック!) 2ヵ月後 冷えと全身倦怠感が軽くなった。 5ヵ月後 普通に働けるようになり、残業もできるようになった。 問診・診察漢方医は以下に示す漢方診療のポイントに基づいて、今回の症例を以下のように考えます。【漢方診療のポイント】(1)病態は寒が主体(陰証)か、熱が主体(陽証)か?(冷えがあるか、温まると症状は改善するか、倦怠感は強いか、など)(2)虚実はどうか(症状の程度、脈・腹の力)(3)気血水の異常を考える(4)主症状や病名などのキーワードを手掛かりに絞り込む【問診】<陰陽の問診> 寒がりですか? 暑がりですか? 体の冷えを自覚しますか? 体のどの部位が冷えますか? 横になりたいほどの倦怠感はありませんか? 感染してから寒がりになって体が冷えるようになりました。 いつも厚着をしています。 体全体が冷えます。 きつくていつも横になりたいです。 微熱はどのくらいですか? いつ出ますか? 熱っぽさはありますか? 37℃前半です。 夕方に出ることが多いです。 体熱感はありません。 熱が出る前はぞくぞくと体が冷えます。 入浴では長くお湯に浸かるのが好きですか? 入浴で温まると体は楽になりますか? 冷房は苦手ですか? 入浴時間は長いです。 温まると少し楽になるのですが、入浴後はすぐに体が冷えてしまいます。 冷房は嫌いです。 のどは渇きますか? 飲み物は温かい物と冷たい物のどちらを好みますか? のどは渇きません。 温かい物を飲んでいます。 <飲水・食事> 1日どれくらい飲み物を摂っていますか? 食欲はありますか? 味覚はありますか? 1日1Lくらいです。 食欲はあります。 味覚は異常ないです。 <汗・排尿・排便> 汗はよくかくほうですか? 尿は1日何回出ますか? 夜、布団に入ってからは尿に何回行きますか? 便秘や下痢はありませんか? 汗はあまりかきません。 尿は4〜5回/日です。 布団に入ってからはトイレに行きません。 下痢気味で1日2〜3回です。 便の臭いは強いですか? 弱いですか? 嘔気はありませんか? 便の臭いは強くありません。 嘔気はありません。 <ほかの随伴症状> 頭痛やめまいはどのような感じですか? 雨や低気圧で悪化しませんか? 頭痛は頭全体が重い感じがします。 歩くとふらふらとめまいがします。 雨が降ると頭痛やめまいはひどい気がしますが、天気がよくても頭痛はあります。 全身倦怠感はとくにいつが悪いですか? とくにきついときはいつですか? 横になると楽になりますか? 日中きついですが朝がとくにぐったりします。 仕事をしたり、動いたりすると悪化します。 仕事もきつくて休みがちです。 よく眠れますか? 中途覚醒や悪夢はありませんか? 眠れますが熟睡感はありません。 中途覚醒や悪夢はありません。 咳や痰はありませんか? 昼食後に眠くなりませんか? のどのつまりはありませんか? 抜け毛が多いですか? 集中力がなかったりしませんか? 皮膚は乾燥しますか? 咳や痰はなくなりました。 昼食後は眠くなります。休みの日はほぼ1日中寝ています。 のどのつまりはありません。 抜け毛が多いです。 集中できずに、頭が働かない感じがあります。 皮膚は乾燥します。 意欲の低下や不安はありませんか? 体がきつくてやる気が出ません。 このまま治らないのではと不安です。 【診察】診察室でも厚手の上着を羽織っている。脈診では沈で反発力の非常に弱い脈。また、舌は暗赤色、湿潤した薄い白苔、舌下静脈の怒張あり。腹診では腹力はやや充実、両側胸脇苦満(きょうきょうくまん)、心下痞鞕(しんかひこう)、腹直筋緊張、両臍傍の圧痛を認めた。下肢の触診では冷感あり。カンファレンス 今回は30代男性のCOVID-19罹患後症状の症例です。 頻度は高くないものの、コロナ感染後にいわゆる後遺症といわれるような全身倦怠感を中心としたさまざまな症状が持続する方がいます。現代医学的にも確立された治療法がないので漢方という選択肢があるのはよいですね。 漢方治療でもCOVID-19罹患後症状は症状が多彩でまだ確立された治療があるとはいえませんが、こんなときこそ漢方診療のポイントに沿った治療が大事です。今回の症例は、全身倦怠感以外にも、頭痛、めまい、微熱、集中力の低下と症状がたくさんあります。 どこから手をつけるべきか悩ましいですね。全身倦怠感、めまい、頭痛ということで気虚や水毒が目立つ気がします。 漢方診療のポイントに沿って全体像を捉えていくことが大事だよ。 わかりました。では漢方診療のポイント(1)病態の陰陽ですが、本症例は37℃台前半の熱があることから陽証で、さらに夕方に熱が出るという病歴から少陽病の往来寒熱(おうらいかんねつ)が考えられます。 よく覚えていますね。胸脇苦満もありますし、少陽病の往来寒熱と合致しますね。 体温をそのまま熱ととってはいけないよ。漢方では体温計で測定した温度でなく、あくまで患者の自覚的な熱や冷えを重視するんだ。陰証で発熱するときに用いる漢方薬があるよ。覚えているかい? えっと、少陰病の麻黄附子細辛湯(まおうぶしさいしんとう)です。寒が主体の陰証の風邪に用いるのでした。 そのとおり。発熱はあってもゾクゾクと冷えて倦怠感が強いことが特徴でしたね。 ほかには?? …わかりません。 同じく少陰病の真武湯(しんぶとう)、さらに四逆湯(しぎゃくとう)でも発熱がみられることがあるんだ。陰証の最後のステージである厥陰病では「陰極まって陽」のように強い冷えがあるにもかかわらず、逆に発熱があったり、顔が赤かったりすることがあり、それを裏寒外熱(りかんがいねつ)とよぶよ。だから、一見すると陽証にみえることもあるんだ。 厥陰病でも発熱がみられることがあるのですね。アイスクリームの天ぷらのような状態ですね。 裏寒外熱がある場合は通脈四逆湯(つうみゃくしぎゃくとう)が典型だけど、真武湯や四逆湯の適応例でも発熱する場合があるとされているよ。これらは、真の熱ではなく、見せかけの熱といった意味で虚熱(きょねつ)というよ。 患者の自覚的な熱感や冷えのほかに鑑別する方法はありますか? 入浴や飲み物などの寒熱刺激に対する情報や四肢の触診などの所見も大事だけど、最終的には脈の浮沈や反発力が頼りになるね。陰証の場合の脈は沈・弱が特徴だからね。 もう一度、本症例の漢方診療のポイント(1)陰陽の判断からみていきましょう。 微熱がありますが体熱感がなく、感染後から寒がりで体が冷えるようになった、厚着、入浴時間は長い、入浴後にすぐに体が冷えるなどから陰証が揃っていますね。それに脈も沈ですから少陽病とは考えにくいですね。 そうだね。入浴で温まってもすぐに冷える、下肢の触診でも冷感があり、冷えの程度が強そうだね。六病位はどうだろう? 横になりたいほどの倦怠感からは少陰病が示唆されます。本症例の微熱を裏寒外熱とすれば、厥陰病の可能性もありますか? そうですね。脈の力が非常に弱いので厥陰病で四逆湯の適応も考えられます。ですからこの症例は少陰病〜厥陰病、虚証でよいでしょう。 「しまりがなく、細い茹でうどんが水にふやけたような」軟弱無力な脈は四逆湯の診断に重要だね。当科の回診でもこの脈が四逆湯の適応だ! と強調して必ず研修に来た先生に触れてもらっているよ。 本症例の虚実ですが、脈は弱ですが、腹力は中等度より充実と一致していません。どう考えたらよいでしょうか? 脈のほうが変化が早く、現在の状態を表しているといえるので、脈の所見を重視したほうがよいだろうね。それも軟弱無力な典型的な四逆湯の脈だからね。 漢方診療のポイント(3)気血水の異常はどうでしょうか? 全身倦怠感、昼食後の眠気は気虚です。頭痛やめまいがありますが、雨天と関連があるので水毒です。 気虚と水毒がありますね。下痢や尿の回数が4〜5回と少ないのも水毒です。ほかはどうでしょうか? 抜け毛が多い、皮膚の乾燥は血虚です。 頭が働かない感じで集中できないというのも血虚を示唆するよ。血虚は皮膚、筋肉、髪だけの問題ではないからね! COVID-19罹患後症状のブレインフォグは血虚や腎虚と考えるとよい印象があるね。 覚えておきます。とくに朝調子が悪い、やる気が起きないというのは気鬱でしょうか。 そうだね。これだけきつそうだと気鬱もあるよね。ほかにはどうだろう? 舌下静脈の怒張、臍傍圧痛は瘀血です。今回の症例は気血水の異常もたくさんありますね。 なかなか手強い症例ですね。また精査で明らかな異常はなく、30代と働き盛りなのにこれだけきつがっているのは非常につらい倦怠感で煩躁(はんそう)と考えてよさそうですね。 ハンソウ? どこかで聞いたような? 非常に苦しがっている状態を煩躁というのでしたね。煩躁といえば、考えられる処方は? …。 陽証だと大青竜湯(だいせいりゅうとう)、陰証だと呉茱萸湯(ごしゅゆとう)、茯苓四逆湯(ぶくりょうしぎゃくとう)が代表でした。インフルエンザの症例で、麻黄湯(まおうとう)のように無汗、多関節痛に加えて、非常に苦しがっている場合に大青竜湯、頭痛で非常に苦しがっている場合に呉茱萸湯、冷えて非常につらい倦怠感を訴える場合に茯苓四逆湯が適応になるのでした。 ここはキモだから覚えておかないといけないね。その他エキス剤にはないけど、小青竜加石膏湯(しょうせいりゅうかせっこうとう)、乾姜附子湯(かんきょうぶしとう)、桂枝加黄耆湯(けいしかおうぎとう)などが煩躁に適応する処方だよ。 本症例をまとめます。 【漢方診療のポイント】(1)病態は寒が主体(陰証)か、熱が主体(陽証)か?厚着、寒がり、体が冷える、下肢の冷感、横になりたいほどの倦怠感、脈:沈→陰証(少陰病〜厥陰病)×微熱、往来寒熱、胸脇苦満→脈や冷えから少陽病ではなさそう(2)虚実はどうか脈:非常に弱い、腹:やや充実→虚証(脈を優先)(3)気血水の異常を考える全身倦怠感、食後の眠気→気虚意欲の低下、朝調子が悪い→気鬱頭痛、めまい、雨天に悪化→水毒抜け毛、皮膚の乾燥、集中力の低下→血虚舌下静脈の怒張、臍傍圧痛→瘀血(4)主症状や病名などのキーワードを手掛かりに絞り込む非常につらい倦怠感、脈が軟弱無力解答・解説【解答】本症例は、茯苓四逆湯の方意でA:真武湯+B:人参湯(にんじんとう)で治療開始しました。また経過中に人参湯からC:附子理中湯(ぶしりちゅうとう)に変更しました。【解説】四逆湯は少陰病〜厥陰病に用いられる漢方薬で附子(ぶし)、乾姜(かんきょう)、甘草(かんぞう)で構成されます。四逆湯を現代医学で例えると、敗血症性ショックで低体温をきたした症例に保温しながら急速補液とノルアドレナリンで昇圧するイメージです。動物実験で出血性ショックモデルに対して茯苓四逆湯を投与すると心拍出量の増加と体温保持作用を示したという研究1)や四逆湯類がエンドトキシンショックに対して、血圧上昇、好中球数の上昇の抑制などによりショック予防効果を示したとする報告2)があります。現代は四逆湯を重篤な急性疾患に用いることはまれですが、慢性疾患で冷えや全身倦怠感がともに高度な場合に活用します。通脈四逆湯も四逆湯と同じく附子、乾姜、甘草で構成されますが、乾姜の比率が多くなります。乾姜はとくに消化・呼吸に関連する臓器を温めて賦活する作用が主体で、通脈四逆湯は体の中心を温めて元気をつけていくような漢方薬です。茯苓四逆湯は四逆湯に補気作用のある茯苓(ぶくりょう)と人参(にんじん)を加えたものです。茯苓四逆湯や通脈四逆湯はエキス製剤にはありませんが、茯苓四逆湯は人参湯エキスと真武湯エキスで代用できます。今回のポイント「少陰病・厥陰病」の解説陰証は寒が主体の病態で、少陰病になってくると寒が強く全身に及び、陰証のまっただ中になります。新陳代謝が低下して体力が衰えていることが特徴です。そのため少陰病は、生体の闘病反応が乏しく実証(じっしょう)であることはなく虚証(きょしょう)のみになります。脈も沈んで反発力が弱くなります。疲れやすくてすぐに横になりたがることが多く、「横になるところがあれば横になりたいですか?」「座るところがあったら座りたいですか?」と問診して、少陰病でないか確認します。さらに陰証の最後のステージである厥陰病に進行すると、冷えと全身倦怠感の程度が一段と強くなり、「極度の虚寒」、「極虚(きょくきょ)」といわれます。脈は沈んで、反発力が非常に弱い軟弱無力な脈で、「しまりがなく、細い茹でうどんが水にふやけたような、緊張感のない脈」とたとえられます。厥陰病は急性感染症ではショック状態に陥ったような危篤状態ですが、慢性疾患では冷えと倦怠感がどちらも強度で極度に疲弊した状態を厥陰病と捉えて治療します。また厥陰病では「陰極まって陽」のように強い冷えがあるにもかかわらず、逆に発熱があったり、顔が赤かったりすることがあります(裏寒外熱)。そのため一見すると陽証にみえることもあります。少陰病や厥陰病の治療では、代表的な熱薬である附子(トリカブトの根を加熱処理して弱毒化したもの)を含む漢方薬を用いて治療します。少陰病では真武湯や麻黄附子細辛湯が代表です。さらに進行すると附子とともに乾姜(生姜を蒸して乾燥させたもの)を用いて強力に体を温める治療を行います。附子、乾姜、甘草の3つの生薬から構成される漢方薬は四逆湯が基本となり、茯苓四逆湯や通脈四逆湯を用いて治療します。今回の鑑別処方附子と乾姜はそれぞれ温める力の強い熱薬といわれる生薬です。それぞれ温める部位や作用に違いがあって附子は先天の気を貯蔵する腎とかかわりが強く、そのほかに関節痛などに対する鎮痛作用があります。乾姜は消化や呼吸にかかわる消化管や肺を温める作用があります。また温め方にも違いがあり、附子はバーナーで炙ったり、電子レンジで温めたりするような急速に体全体を温めるイメージですが、乾姜は炭火でコトコトじっくり内臓を温めるイメージです。表に附子や乾姜が含まれる代表的な漢方薬を示しました。乾姜を含む漢方薬の場合、漢方薬が合っている場合は乾姜の辛みを感じずに甘く感じることがあります。逆に乾姜を含む漢方薬を必要としない症例では、辛くて飲みづらいと訴えます。人参湯には乾姜が含まれ、さらに附子を加えると附子理中湯になります。同様に大建中湯(だいけんちゅうとう)や苓姜朮甘湯(りょうきょうじゅつかんとう)も冷えが強ければ附子を加えて治療します。四逆湯は附子と乾姜を両方とも含みます。本症例のように茯苓四逆湯は人参湯エキスと真武湯エキスを併用するとエキス製剤で代用が可能です。通脈四逆湯には乾姜が多く含まれています。ちょっと苦しいですが、エキス剤のなかで比較的乾姜の量の多い苓姜朮甘湯にブシ末を併用することで代用することもあります。また実際の附子の漸増の方法として、慎重に行う場合、(1)最も気温が低下する朝1包(0.5g)増量、(2)朝夕に1包ずつ増量(1.0g)、(3)毎食後3包 分3に増量(1.5g)と順を追ってするとよいでしょう。慣れてくれば本症例のように、常用量のブシ末を一度に3包(1.5g)分3で増量することも可能です。参考文献1)木多秀彰 ほか. 日東医誌. 1995;46:251-256.2)Zhang H, et al. 和漢医薬雑誌. 1999;16:148-154.

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第280回 ターミナルケア・ビジネスの危うさ露呈、「医心館」で発覚した「実態ない診療報酬請求」、調査結果の解釈はシロなのかグレーなのか?(前編)

アンビス運営のホスピス型住宅で起きていたと報道された診療報酬の不正請求について特別調査委員会が報告書を公表こんにちは。医療ジャーナリストの萬田 桃です。医師や医療機関に起こった、あるいは医師や医療機関が起こした事件や、医療現場のフシギな出来事などについて、あれやこれや書いていきたいと思います。この週末はいろいろなことがありました。石破 茂首相が突然、退陣表明をしました。各紙報道を読む限り、どうやら参院選大敗の責任をとったのではなく、自民党内の権力闘争に敗れた結果ということのようです。自民党は相変わらず国民の生活そっちのけで、旧態依然とした党内抗争を続けています。そのこと自体が参院選の敗北含めた国民離れを招いていることに気付いていないのでしょうか。謎です。ロサンゼルス・ドジャースの山本 由伸投手が、ノーヒット・ノーランを最後のワンアウトで逃したのも残念な結果でした。なぜ山本投手はあそこでカットボールを投げたのでしょう(この日結構投げていたので狙われた可能性も) 。素人考えですが、スプリットを低めに落としておけば楽に三振を取れたような気もします。こちらも謎です。さて、2025年8月8日、アンビスホールディングス(東京都中央区、代表取締役CEO柴原 慶一)は、同社子会社運営のホスピス型住宅で診療報酬の不正請求があったとの報道に関し、特別調査委員会の報告書を公表しました。報告書は「通知に係る法的認識の不十分さや記録の不整備」により、診療報酬請求の要件を満たしていなかった事案があったとする一方で、「多額の診療報酬を受けるために架空の事実をねつ造したような悪質な不正請求の事案とまでは認められない」と結論付けました。この報告書によって、「不正請求はなかった」と一件落着したように見えますが、なかなかどうして、その後も不正行為の存在を報じる報道もあり、問題の収束にはまだ時間がかかりそうです。「医心館」併設の訪問看護ステーションで不正に診療報酬を請求していた疑いがあると共同通信が報道アンビスホールディングスの子会社のアンビス(東京都中央区)は、末期がん患者や難病患者向けのホスピス型住宅「医心館」を全国で運営しています。同社は名古屋大学出身の医師、柴原 慶一氏が2013年に設立。末期がんや難病の人を最期まで看取る施設が少ないことから急成長し、8月末日現在、全国で約130ヵ所を展開するまでになっています。ホスピス型住宅は、施設のカテゴリーとしては「住宅型有料老人ホーム」に位置付けられます。住宅型とは、施設内のスタッフではなく、外部(といっても、併設の訪問看護ステーション、訪問介護事業所を使うケースが大半ですが)スタッフによって看護・介護を提供します。今年3月、共同通信がこの「医心館」において併設する訪問看護ステーションで不正に診療報酬を請求した疑いがある、と報じたことをきっかけに、医心館のケア内容に注目が集まることになりました。訪問看護だけでなく訪問介護についても不正があったようだとの続報も「【独自】ホスピス最大手で不正か 全国120ヵ所『医心館』」と題された3月23日付の共同通信の記事は次のように書いています。「『医心館』のうち複数のホームで、併設の訪問看護ステーションが入居者への訪問について実際とは異なる記録を作り、不正に診療報酬を請求していたとみられることが23日、内部文書や複数の元社員の証言で分かった。元社員らは、必要ないのに訪問して過剰に報酬を請求する行為も常態化していたと指摘している」。さらに、「末期がんなどの患者への訪問看護では、必要があれば1日3回まで診療報酬を請求でき、複数人での訪問には加算が付く。訪問時間は原則、30分以上と定められている。関東のそれぞれ別の地域で働いていた複数の看護師によると、医心館では併設のステーションの看護師らが入居者の居室を巡回。いずれも『必要性に関係なく全員、最初から1日3回訪問と決まっていた』と証言した。『実際には大半が数分間の訪問だったが『30分』と記録していた』『1人で訪問した場合でも複数人での訪問として、報酬を請求していた』などと口をそろえた」と具体的な請求方法について元職員の証言をベースに報じました。さらに共同通信は4月27日、「医心館、訪問介護でも不正請求か ホスピス最大手、会社ぐるみ疑い」と題するニュースを発信、「『医心館』を巡り、訪問介護でも不正・過剰な介護報酬を請求していたとみられることが27日、複数の現・元社員の証言で分かった。共同通信が入手した社内のオンライン会議の動画では、会社ぐるみで不正を行っていた疑いも判明した」と報じ、「医心館では看護・介護とも入居者への訪問予定表が1日ごとに作成される。『予定表通りに実施した』として記録を作り、報酬を請求していたが、実際には予定通り訪問しないことが多かった」などという元職員の証言を紹介しています。「批判を受けるに値する」としつつも「多額の診療報酬を受けるために架空の事実をねつ造したような悪質な不正請求の事案とまでは認められない」と報告書こうした不正請求疑惑に対し、アンビスホールディングスは、3月27日に社外の弁護士や会計士で構成された特別調査委員会を設置、報道内容に関わる事実関係として、(1)1日3回の訪問看護を設定する必要性の有無、(2)短時間訪問の実態、(3)複数名での訪問看護を設定する必要性および複数名訪問看護の実態、(4)(1)~(3)の検討結果等を踏まえたアンビスによる診療報酬請求の当否、(5)類似事案の有無、について調査を進めてきました。8月8日に公表された調査の結果では、「本件通知(厚労省通知)に定める訪問看護時間に比して明らかに短時間であると認められる事例や、複数名訪問の同行者を欠いたと認められる事例が存した。また、勤怠記録と訪問看護記録の齟齬並びに確定時期の異常値に照らせば、訪問実態に疑義を呈さざるを得ない事例も存した」として、さまざまな記録の不備、営利優先の発想が認められること、訪問看護におけるルートの設定及び人員配置の問題性、法令遵守の意識の低さ、業務遂行を確保する組織体制が不十分であったこと、社内におけるコミュニケーションの不足など、さまざまな問題点を指摘、「批判を受けるに値する」としつつも「多額の診療報酬を受けるために架空の事実をねつ造したような悪質な不正請求の事案とまでは認められない」としました。厚労省通知に定める「訪問看護」の実態を欠く事案は診療報酬額で約5,300万円に相当調査の結果、明らかに短時間の訪問と見なされた訪問看護記録は6万5,227件で、そこから複数名の訪問看護を要すると判断される記録を除く9,990件は、通知に定める「訪問看護」の実態を欠く事案であると判定、診療報酬額で約5,300万円に相当するとしました。加えて、訪問看護記録上は複数名訪問となっていたが実態が認められなかったと判定したのは1,352件(約359万円)でした。この他、調査の過程で、本社コンプライアンス部の運営指導対策の一環として、タイムカードの写しが書き換えられていたことも判明しています。職員の勤怠記録と訪問看護記録の食い違いがあった訪問看護または訪問介護業務について、ほかの資料などからも、サービス提供の実態があったと確認できなかった事案が970件(約514万円)あったとしました。 特別調査委員会は、正確な記録を残していなかった、通知との適合性確認を十分行わないなど法令順守の意識が低かった、現場任せの運用で適切な訪問看護業務を遂行するための組織体制が整備されていなかった、などの点が訪問実態に疑義のある事案が発生した原因になったと分析。再発防止策として、正確な記録作成の徹底、適正な訪問ルートの作成とそれに見合った人員配置、内部統制の再構築などを提言しています。アンビスホールディングスは「影響額は僅少なもの」と発表調査報告書を受けた後、8月8日にアンビスホールディングスは「特別調査委員会の調査報告書受領に関するお知らせ」を公表、「本件調査での影響額としては63 百万円あまり(調査対象期間売上総額の0.05%程度)と僅少なもの」と報告、この金額について「訪問看護記録を検証した場合に、看護実態を示す記載が不十分であると認定されたものであり、看護実態がないと認定されたものではございません」とするとともに、「訪問看護における医療行為が実態のあるものと特別調査委員会により判断されたものと認識」「看護実態について根拠資料の記載が不十分であると認定されたケースは、記録の登録ミス及び記載不足などによる形式的なエラーがその大部分を占めるものと認識」など、意図的な不正請求はなかった点を強調しています。そして、訪問看護の提供実態の根拠となる資料の記載が不十分であるとの指摘には、「調査報告書の指摘を真摯に受け止め、改善に努める」「組織構造の変更・人員配置の適正化で記録の不備が起きにくい体制を構築するとともに、少額ではあるものの誤謬が発生したことに対し、より一層ミスが起きにくい組織体制を実現するよう取り組んでいく」としました。気になった報告書の内容とアンビスの解釈のズレ特別調査委員会の報告書は、端的に言えば”上場企業にもかかわらず、運営体制はグダグダでひどすぎる”という内容でした。「批判を受けるに値する」という厳しい指摘もありました。しかし当のアンビスホールディングスは「訪問看護には実態があった。不正請求はなかったと判断された」と少々ズレた受け止め方をしています。加えて、業績に対する影響の話とはいえ「6,300万円は売上総額の0.05%程度で僅少」という捉え方にも違和感を覚えます。株主対策として「僅少」と言いたいのかもしれませんが、診療報酬には税金も入っており、単なる企業の売上とは意味合いが異なります。普通、医療機関が6,300万円も不正請求をしたら、保険医療機関取り消しとなるでしょう。ズレ、違和感は、マスコミの報道でも感じました。共同通信や全国紙の多くが「実態のない診療報酬の請求額が6,300万円あった」ことにフォーカスしていた一方で、「結果はシロ」「共同通信社に対する訴訟も求める声も高まっている」と、真逆ともとれる報道をするメディアもありました。一体、どちらの解釈が正しいのでしょうか?(この項続く)

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末梢静脈穿刺における「超音波ガイド法」vs.「ランドマーク法」【論文から学ぶ看護の新常識】第30回

末梢静脈穿刺における「超音波ガイド法」vs.「ランドマーク法」超音波ガイド法の有用性は患者の穿刺困難度によって大きく異なり、困難例には有用な一方で、容易例には逆効果となり得ることが、多田 昌史氏らの研究により示されている。The Cochrane Database of Systematic reviews誌2022年12月12日号掲載のこの報告を紹介する。成人患者の末梢静脈穿刺における超音波ガイド法とランドマーク法との比較研究チームは、成人患者への末梢静脈カニューレ挿入時における超音波ガイド法の有用性を、ランドマーク法(触診と視診だけを頼りに血管を探す標準的な方法)と比較評価することを目的に、システマティックレビューとメタアナリシスを行った。主要評価項目は、初回穿刺成功率、カニューレ挿入の全体的成功率、および疼痛とした。副次評価項目は、初回穿刺の処置時間、カニューレ挿入全体の処置時間、試行回数、患者満足度、および合併症とした。主な結果は以下の通り。合計2267例の参加者を対象とした16の研究(うちランダム化比較試験[RCT]14件、準RCT2件)が分析対象となった。穿刺が「困難」な患者の場合:超音波ガイド下では、初回穿刺の成功率が1.5倍に上昇し(リスク比[RR]:1.50、95%信頼区間[CI]:1.15~1.95)、穿刺の試行回数も減少した(平均差[MD]:−0.33、95%CI:−0.64~−0.02)。カニューレ挿入の全体的成功率(RR:1.40、95%CI:1.10~1.77)、および患者満足度(標準化平均差[SMD]0.49、95%CI:0.07~0.92)も向上した。一方で、初回穿刺の手技時間は119.9秒延長した(95%CI:88.6~151.1)。穿刺の困難度が「中等度」の患者の場合:超音波ガイドは、初回穿刺の成功率が1.14倍(RR:1.14、95%CI:1.02~1.27)に上昇したが、手技時間も95.2秒延長した(95%CI:72.8~117.6)。穿刺が「容易」な患者の場合:超音波ガイド下では、初回穿刺の成功率が11%低下し(リスク比:0.89、95%CI:0.85~0.94)、疼痛が有意に増加した(MD:0.60、95%CI:0.17~1.03)。また、初回穿刺の手技時間も94.8秒延長した(95%CI:81.2~108.5)。超音波ガイドは、穿刺が困難な患者では利益をもたらす可能性があるが、穿刺が容易な患者においては初回成功率の低下や疼痛の増加により利益をもたらさない可能性がある。今回は、多くの看護師が直面する「困難な末梢静脈確保(Difficult IntraVenous Access:DIVA)」という課題に対し、超音波ガイド下末梢静脈カテーテル挿入の有用性を評価した、システマティックレビューをご紹介します。看護師が主体となってエコーを用いる機会は増えているように感じます。その効果を最大化させるための参考になると思いますので、ぜひ活用してみてください。ポイント1:DIVAが予測される、または既に複数回穿刺に失敗している患者さんには、超音波ガイド下穿刺を積極的に検討研究結果では、DIVA患者に対する超音波ガイド法の有効性が明確に示されました。視触診で血管が見えない・触れない場合や、過去に複数回の穿刺失敗歴がある患者さんには、積極的に超音波の使用を検討すべきです。これにより、患者さんの苦痛軽減と効率的な血管確保に繋がります。ポイント2:容易に血管が見つかる患者さんには、従来のランドマーク法を優先研究結果から、穿刺が容易な患者さんへの超音波ガイド法は逆効果であることが示されています。実際に手技時間が延長するだけでなく、初回穿刺の失敗率も上昇、痛みも増加しています。全例に超音波を適用すると、機器の準備や管理、スタッフの重複などから業務負担が増加するかと思います。あくまでも超音波の使用が適切か判断して使用することが望ましいでしょう。ポイント3:技術の習得が不可欠超音波ガイド下穿刺の効果を最大限に引き出すには、看護師の技術習得が不可欠です。定期的なトレーニングや経験を積み、熟練度を維持・向上させることが重要です。また超音波ガイド下で挿入が可能なスタッフを少しずつ増やして行きましょう。この研究結果から、末梢静脈確保における超音波の適切な活用が、看護ケアの質を向上させる有力な手段であることが示されました。適切な患者選定と、看護師の皆さんのスキルアップが、より安全で効率的な血管確保に繋がります。論文はこちらTada M, et al. Cochrane Database Syst Rev. 2022;12(12): CD013434.

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日本女性、出産意欲の向上に関連する要素は?/神奈川県立保健福祉大学

 少子化が進む日本では、合計特殊出生率が2024年に1.15と過去最低を記録し、社会保障制度や労働力維持への影響が深刻化している。女性の就労率は上昇しているものの、長時間労働や不十分な育児支援のため、キャリアと出産・育児の両立は依然として課題である。こうした中、東京・丸の内エリアの企業に勤務する女性を対象に、キャリア志向と妊娠意欲の関連を明らかにする大規模調査が行われ、その結果がBMC Women’s Health誌2025年9月2日号に掲載された。 本研究は「働く女性の健康スコア」プロジェクトとして産学連携で実施され、三菱地所、ファムメディコの協力のもと、神奈川県立保健福祉大学教授の吉田 穂波氏らが中心となって行った。2022年9月13~10月11日に14社に勤務する19~65歳の女性社員を対象にオンライン調査を行い、3,425人が回答した。妊娠意欲の分析対象は40歳未満の1,621人とした。調査内容には年齢、婚姻状況、妊娠希望の有無に加え、月経症状や婦人科受診歴、生活習慣、勤務形態、職場環境、キャリア意識などの情報が含まれた。 主な結果は以下のとおり。・妊娠希望は、現在子供がいるかどうかにかかわらず、「将来子供を持つこと、またはさらに子供を持つことを希望する人」と定義された。40歳未満の妊娠希望群1,108例(将来妊娠を希望:922例、すでに子供がおり、さらに妊娠を希望:186例)と妊娠希望なし群513例が解析対象となった。・妊娠希望群は妊娠希望なし群と比較して、若く、既婚で、自身の健康管理に積極的である傾向が強かった。また、身体的健康への自信があり、睡眠の質も良好な傾向があった。・月経困難症の重症度、月経前症候群、健康リテラシー全般に関しては、両群間に有意差は認められなかった。・妊娠希望群は、正社員・フルタイム労働者であること、事務職ではなく営業職に就いていること、キャリアアップへの意欲が高い傾向があった。・職場環境要因(仕事へのエンゲージメントや、女性特有の症状に対する男性同僚の理解など)については、両群間に有意差は認められなかった。 研究者らは「調査の結果、妊娠意欲と関連していたのは、職業の安定性、職種、キャリア志向、健康管理への積極性であった。自身のキャリアの将来性に自信を持つ女性は、子供を持つことにも前向きになる可能性が示された。一方、日本では女性管理職比率が13%と主要国に比べ低水準であり、長時間労働や男性の育児休業取得率の低さ(2023年時点で17.1%)が依然として障壁となっている。昇進の継続性や雇用安定性を保障し、家庭形成とキャリアを両立可能にする制度設計が、出生率回復に寄与する可能性がある」とした。

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双極症に対する気分安定薬使用が認知機能に及ぼす影響〜メタ解析

 気分安定薬は、双極症に一般的に用いられる薬剤である。中国・四川大学のChang Qi氏らは、双極症患者に対する気分安定薬の使用が認知機能に及ぼす影響を評価するため、ランダム化比較試験(RCT)のシステマティックレビューおよびメタ解析を実施した。Journal of Affective Disorders誌オンライン版2025年7月26日号の報告。 PubMed、Web of Science、Embase、Cochrane library、PsycInfoのデータベースよりシステマティックに検索した。データ抽出はPRISMAガイドラインに従い、品質評価はCochrane Handbookに準拠し、実施した。メタ解析には、RevMan 5.4ソフトウェアを用いた。 主な結果は以下のとおり。・RCT9件、双極症患者570例をメタ解析に含めた。・思春期の双極症患者における気分安定薬治療は、感情処理の正確性(標準化平均差[SMD]:-1.18、95%信頼区間[CI]:-1.69〜-0.67、p<0.00001)、反応時間延長(SMD:-0.39、95%CI:-0.73〜-0.05、p=0.02)に対し、有意な影響が認められた。・気分安定薬治療は、青年期の双極症における注意力(SMD:0.21、95%CI:-0.16〜0.58、p=0.27)および作業記憶(SMD:-0.09、95%CI:-2.19〜2.00、p=0.93)、成人期の双極症における全般的認知機能(SMD:0.48、95%CI:-0.49〜1.45、p=0.33)に対し、有意な影響を及ぼさなかった。・リチウム治療は、青年期の双極症における注意力(SMD:0.21、95%CI:-0.16〜0.58、p=0.27)、成人期の双極症における全般的認知機能(SMD:0.43、95%CI:-0.50〜1.35、p=0.37)に対し、有意な影響を及ぼさなかった。 著者らは「気分安定薬治療は、青年期の認知機能全般および特定の認知機能に悪影響を及ぼすことなく、感情処理の正確性を向上させ、反応時間を延長させる可能性が示唆された。これらの知見を裏付けるためにも、さらなる研究が求められる」としている。

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がん患者への早期緩和ケア、終末期の救急受診を減少

 がん患者を中心に、早期からの緩和ケア介入の重要性が示唆されているが、実際の患者アウトカムにはどのような影響があるのか。緩和ケア受診後の救急外来受診のタイミングと回数について調査した、韓国・ソウル大学病院で行われた単施設後ろ向きコホート研究の結果がJAMA Network Open誌2025年7月15日号に掲載された。 ソウル大学病院のYe Sul Jeung氏らは2018~22年に、ソウル大学病院で緩和ケア外来に紹介され、2023年6月25日までに転帰が確定した成人の進行がん患者3,560例(年齢中央値68歳、男性60.2%)を解析した。主要評価項目は全期間と終末期(死亡前30日内)の救急外来受診数だった。 主な結果は以下のとおり。・3,560例中、救急外来を受診したのは920例(25.8%)で延べ数は1,395件、終末期の救急外来受診は378例(10.6%)で延べ数は474件だった。・早期の緩和ケアの紹介は、終末期の救急外来受診の減少と関連した(紹介から死亡までの期間が1ヵ月延びるごとにオッズ比[OR]:0.84、95%信頼区間[CI]:0.80~0.89)。一方、早期に緩和ケアに紹介された患者は観察期間が延びることが影響し、全期間での救急外来受診数は増加した(OR:1.04、95%CI:1.02~1.06)。・救急外来の受診理由のうち、68.7%ががん関連症状だった。終末期は呼吸器症状(37.3%)、重症者(韓国式トリアージ・緊急度判定尺度[KTAS]に基づく)が多く(45.2%)、救急外来滞在時間中央値は11.6時間で、非終末期(20.0%、8.5時間)よりも重篤かつ長時間だった。・救急外来受診のリスク因子は、年齢が若い(65歳未満、全体OR:1.25、終末期は有意差なし)、首都圏在住(全体OR:2.92、終末期OR:3.29)、造血器腫瘍(全体OR:2.46、終末期OR:2.79)、紹介時にがん治療継続計画あり(両者ともOR:2.60)だった。・アドバンス・ケア・プランニング(ACP)文書を作成していた患者は、緩和ケア紹介前では1割に満たなかった。緩和紹介後の作成場所としては、緩和ケア外来での作成が最多だったが、救急外来での作成例も2割(救急外来受診690例中138例)存在した。 研究者らは「早期の緩和ケア紹介群は観察期間が長くなり、全期間の救急外来受診数は増えたものの、終末期の救急外来受診回数が減るという臨床的メリットが示された。これには症状マネジメント、ケア調整、ACPの段階的な実施が寄与していると考えられる。一方、若い患者や造血器腫瘍の患者は終末期を含む救急外来受診のリスクが高く、こうした患者には先制的な症状管理、在宅支援、緊急時の手順作成を手厚くするなどの対応が必要だろう」としている。

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小児心臓弁膜症、部分心臓移植は実現可能か/JAMA

 現在、弁形成術の適応とならない小児の心臓弁膜症の治療に使用されている、死亡ドナー由来の同種組織(ホモグラフト)のインプラントは成長能力や自己修復能力を持たないことから、これらの患者はインプラント交換のために何度も再手術を受けることになる。米国・デューク大学のDouglas M. Overbey氏らは、先天性心臓弁膜症患者における成長能力を有する心臓弁を用いた部分心臓移植(=生体弁置換術)の初期の結果を記述し、実行可能性、安全性、有効性を評価する症例集積研究を実施した。JAMA誌オンライン版2025年8月27日号掲載の報告。半月弁の移植を受けた19例 本研究では、2022年4月~2024年12月に米国内の小児心臓外科・移植センターで部分心臓移植を受けた最初の19例について解析した(Brett Boyer Foundationなどの助成を受けた)。 これらの患者は修復不可能な先天性心臓弁機能不全を有しており、ドナー心臓由来の半月弁(大動脈弁、肺動脈弁)を用いた部分心臓移植が行われた。維持免疫抑制療法としてタクロリムス単剤(トラフ値の目標値は4~8ng/mL)を投与した。 19例(男性10例[53%]、女性9例[47%])の移植時の年齢中央値は97日(範囲:2日~34年)、体重中央値は4.65kg(2.5~85.8)であった。追跡期間中央値は26.4週(範囲:11.3~153.6)。弁輪径、弁尖長が増加、狭窄や逆流は発生せず 最初の9例について移植弁の成長を調べた。移植されたすべての弁は良好に機能し、適切なzスコアに即した成長を示した。 弁輪径中央値は、大動脈弁で7mmから14mmへ、肺動脈弁で9mmから17mmへとそれぞれ増加した。肺動脈弁の弁輪径の増加は統計学的に有意であった(p=0.004)。同様に、弁尖長中央値も、大動脈弁で0.5mmから1mmへ、肺動脈弁で0.49mmから0.675mmへと増加した。肺動脈弁の弁尖長の増加は統計学的に有意だった(p=0.004)。 術後早期と追跡期間中の最新の心エコー検査所見を比較検討したところ、観察された肺動脈弁輪径の増加は、弁の拡張ではなく成長を反映するものと考えられた。全体として、退院時に、移植された大動脈弁または肺動脈弁に重大な狭窄や逆流が生じた患者はいなかった。免疫抑制薬関連の重大な合併症はない 術後1ヵ月に1例が再手術を要したが、移植弁との関連はなかった。1例で、B群溶血性レンサ球菌による呼吸器感染症が発生したが、抗菌薬治療で回復した。また、2例に腎障害が発現し、免疫抑制薬の用量調節を要したものの、免疫抑制薬に関連した重大な合併症は認めなかった。 著者は、「部分心臓移植は、弁置換術に成長可能な生体組織を提供し、これは現行の技術の重大な限界の克服につながる可能性がある」「この方法は万能な解決策ではなく、さらなる改良を要する発展段階にある有望な技術と認識することがきわめて重要である」「長期的な影響を完全に理解し、より広範な先天性心疾患への適用を進めるための研究が求められる」としている。

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「かぜ」への抗菌薬処方、原則算定不可へ/社会保険診療報酬支払基金

 社会保険診療報酬支払基金は8月29日付けの「支払基金における審査の一般的な取扱い(医科)において、一般に「風邪」と表現される「感冒」や「感冒性胃腸炎」などへの内服の抗生物質製剤・合成抗菌薬を処方した場合の算定は、“原則認められない”とする方針を示した。 支払基金・国保統一事例は以下のとおり。取扱い 次の傷病名に対する抗生物質製剤【内服薬】又は合成抗菌薬【内服薬】※の算定は、原則として認められない。※ペニシリン系、セフェム系、キノロン系、マクロライド系の内服薬で効能・効果に次の傷病名の記載がないものに限る。(後述参照)(1)感冒(2)小児のインフルエンザ(3)小児の気管支喘息(4)感冒性胃腸炎、感冒性腸炎(5)慢性上気道炎、慢性咽喉頭炎取扱いを作成した根拠等 抗生物質製剤は細菌または真菌に由来する抗菌薬、合成抗菌薬は化学的に合成された抗菌薬で、共に細菌感染症の治療において重要な医薬品である。 感冒やインフルエンザはウイルス性感染症、気管支喘息はアレルギーや環境要因に起因して気道の過敏や狭窄等をきたす疾患、また、慢性咽喉頭炎を含む慢性上気道炎は種々の原因で発生するが、細菌感染が原因となることは少ない疾患で、いずれも細菌感染症に該当しないことから、抗菌薬の臨床的有用性は低いと考えられる。 以上のことから、上記傷病名に対する抗生物質製剤【内服薬】又は合成抗菌薬【内服薬】の算定は、原則として認められないと判断した。<製品例>ペニシリン系アモキシシリン水和物(商品名:サワシリン、ワイドシリン ほか)アモキシシリン水和物・クラブラン酸カリウム(同:オーグメンチン、クラバモックス ほか)アンピシリン水和物(同:ビクシリン ほか)セフェム系セファレキシン(同:ケフレックス ほか)セフジニル(同:セフゾン ほか)セフカペンピボキシル塩酸塩水和物(同:フロモックス ほか)キノロン系レボフロキサシン水和物(同:クラビット ほか)シタフロキサシン水和物(同:グレースビット ほか)トスフロキサシントシル酸塩水和物(同:オゼックス ほか)メシル酸ガレノキサシン水和物(同:ジェニナック)ラスクフロキサシン塩酸塩(同:ラスビック)マクロライド系アジスロマイシン水和物(同:ジスロマック ほか)クラリスロマイシン(同:クラリス、クラリシッド ほか)エリスロマイシンステアリン酸塩(同:エリスロシン ほか)

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AIによる診療記録作成で医師のバーンアウトが減少

 診察室での医師と患者の会話を自動的に記録して解析し、診療記録を生成する技術をAmbient Documentation Technology(ADT)という。新たな研究で、ADTの使用は臨床医のバーンアウト(燃え尽き症候群)の減少やウェルビーイングの向上と関連していることが示された。米マス・ジェネラル・ブリガム(MGB)のRebecca Mishuris氏らによるこの研究の詳細は、「JAMA Network Open」に8月21日掲載された。 この研究の背景情報によると、診療記録の負担は臨床医のバーンアウトの一因とされている。今回の研究でMishuris氏らは、ADTを試験的に導入しているマサチューセッツ州のMGBとジョージア州のエモリーヘルスケアにおけるADTの使用状況を調べ、ADTの使用が臨床医の記録業務負担の感じ方およびバーンアウトに与える影響を検討した。 ADTを用いる場合、臨床医は人工知能(AI)が作成したレポートを確認してから、電子医療記録(EHR)に入力する。MGBでは2023年7月に18人の医師によりADTプログラムの使用が開始され、1年後には使用者が800人以上にまで拡大した。2025年4月には全ての医療提供者がADTシステムを利用できるようになり、3,000人以上が日常的にツールを活用しているという。 対象は、ADTを42日以上使用し、使用前後の調査に回答したMGBの臨床医873人(65.6%は医師の経験が10年超、女性54.8%)とエモリーヘルスケアの臨床医557人(51.3%は医師の経験が10年超、女性55.5%)の計1,430人である。MGBの臨床医のうち265人が事前調査と42日後の事後調査、192人が事前調査と84日後の事後調査に回答した。一方、エモリーヘルスケアの臨床医は、62人が事前調査と84日後の事後調査に回答した。 MGBでは128人(48.5%)が50%以上の診察記録にADTを使用していると回答した。一方、エモリーヘルスケアでは27人(43.5%)がほとんどもしくは全ての診療記録にADTを使用していると回答した。また、ADTを人に勧めたいと思うかを0〜10点で評価するスコア(10点が最高)は、MGBでもエモリーヘルスケアでも中央値が8.0点と高く、ADTに対する満足度の高いことが示された。 さらに、MGBでのバーンアウト発生率は、ADT使用の42日後には使用前の50.6%(134/265人)から29.4%(78/265人)へ、使用の84日後には使用前の52.6%(101/192人)から30.7%(59/192)へといずれも有意に減少していた。一方、ウェルビーイングについては、エモリーヘルスケアにおいて、「ADTがウェルビーイングに良い影響を与える」と答えた割合が、使用前の1.6%(1/62人)から使用後には32.3%(20/62人)へと有意に増加していた。 調査に回答した臨床医の一人は、「ADTは非常に役立っている。患者やその家族とのコミュニケーションが確実に改善され、診療が楽になった」と回答した。また別の医師は、「患者との会話で、後で話の内容を忘れてしまう心配をせずに患者の目を見て話せるので、診療の喜びが確実に増加した。ツールが進化すれば、医師としての経験を根本的に変えることになると思う」と回答した。さらに、「AIが生成した文章をコピー&ペーストして編集するのは面倒だが、それはある意味、機械的にできる作業だ。何時間も経ってから一から文章を作るのは、もっと頭を使う作業になる。午後になると集中力が途切れ、忙しいときには記入すべきカルテが山積みになり、もはや記録する余裕すらなくなる。そのため、記録が半分完成しているのは本当に助かる」という回答も見られた。 研究グループは、AIが進化するにつれ、バーンアウトの発生率が経時的に改善するかどうかを継続的に追跡していく予定だと述べている。

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肺切除後の肺瘻リスク、低侵襲開胸手術で軽減の可能性

 肺切除術は肺がん治療の要となるが、術後早期に肺瘻(空気漏れ)が生じることも少なくない。今回、手術アプローチの違いが肺瘻の発生率や転帰に影響する可能性があるとする研究結果が報告された。ILO1805試験の事後解析で、胸腔鏡手術(TS)の方が低侵襲開胸手術(MIOS)よりも肺瘻の発生率が有意に高く、その持続期間やドレーン留置期間も長くなる傾向が示されたという。研究は山形大学医学部附属病院第二外科の渡辺光氏らによるもので、詳細は「Scientific Reports」に7月21日掲載された。 肺切除後の遷延性肺瘻は患者の5〜25%に発生し、膿胸や再手術、入院延長を招く代表的な合併症である。肺瘻のリスクを抑えるためには、術中の適切な空気漏れの修復が重要だが、TSでは視野が限られ、処置が難しい場合がある。一方、直接視野と胸腔鏡補助を組み合わせたハイブリッド胸腔鏡補助下手術(VATS)やMIOSは、空気漏れの修復を容易にする可能性がある。しかし、これらの手術アプローチと術後の肺瘻との関連は十分に検証されていない。ILO1805試験は国内21施設で実施された、肺切除後の肺瘻に対するドレーン管理法を検討する前向き観察研究であるが、手術アプローチや周術期管理に関する統一プロトコルは設けられていなかった。このような背景から著者らは、この試験の事後解析として、手術アプローチが術後転帰に及ぼす影響を検討した。 本解析には、ILO1805試験参加者2,187名のうち、皮膚切開8cm以下で解剖学的肺切除術を受けた1,168名が含まれた。患者は手術アプローチに基づき、TS群(皮膚切開5cm以下で肋骨開排なし)とMIOS群(皮膚切開5〜8cm)の2群に分類された。両群のバランスを調整するため2:1の傾向スコアマッチングを行い、最終的な解析対象はTS群284名、MIOS群142名となった。早期の術後肺瘻(E-AL)は術後0日または1日に発生した空気漏れと定義し、単変量および多変量のロジスティック回帰モデルにより、E-ALと有意に関連するリスク因子を特定した。 参加者の年齢中央値は71歳で、男性は683名(58.5%)含まれた。手術アプローチについては1022名(87.5%)がTS手術を受けていた。肺切除後のE-ALは290名(24.8%)に認められた。 E-ALのリスク因子を特定するために単変量ロジスティック回帰解析を行った結果、E-ALを認めた患者は、男性(P<0.001)、喫煙歴あり(P=0.007)、BMI<18.5 kg/m2(P=0.024)、FEV1.0%≦70%(P=0.013)、胸膜癒着あり(P<0.001)、TS(P=0.024)、およびフィブリンシーラント使用(P<0.001)である可能性が高かった。対応する多変量モデルでは、男性、BMI<18.5 kg/m2、TS、胸膜癒着、フィブリンシーラント使用がE-ALに関連する因子として同定された。 傾向スコアマッチング後の解析では、術後0日目のE-AL発生率はTS群でMIOS群より有意に高かった(33.8% vs. 16.9%、P<0.001)。この差は術後1日目でも認められた(28.2% vs. 16.2%、P=0.009)。術後の空気漏れの平均持続期間は、TS群よりMIOS群で有意に短かった(1.2±2.0日 vs. 0.6±1.7日、P=0.003)。ドレーン留置期間の平均も同様に、MIOS群で短かった(2.9±1.8日 vs. 2.4±1.9日、P=0.009)。 本研究について著者らは、「本研究は、MIOSアプローチが術中の空気漏れの修復においてより有効であり、結果として肺瘻のリスクを低下させる可能性を示唆している。ただし、E-ALの頻度低下が合併症の減少や入院期間の短縮といった臨床的な利点につながるかどうかは明らかではない。空気漏れの持続期間の差は小さいものの、E-ALを抑制することで、MIOSアプローチは術後の早期退院に寄与する可能性がある。これらの利点を検証するには、今後の前向き研究が必要である」と述べている。

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白血球増多【日常診療アップグレード】第38回

白血球増多問題52歳男性。健康診断で白血球数14,000/μLと、白血球数の増加を認めたため二次健診で受診した。昨年度の健診では白血球数12,000/μLであった。症状はない。ヘモグロビンと血小板数には異常を認めない。既往歴に脂質異常症があり、アトルバスタチンを内服中である。20歳から20本/日の喫煙歴がある。バイタルサインと身体所見は正常である。白血球増多は喫煙のためと判断した。

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