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尿検査で腎臓がん手術後の再発を検出

 尿中グリコサミノグリカンプロファイル(GAGome)は遠隔転移のない淡明細胞型腎細胞がん(M0ccRCC)の手術後の再発に高い感度を示すことが確認されたとする研究結果が、欧州泌尿器科学会議(EAU 25、3月21〜24日、スペイン・マドリード開催)で発表された。 ルンド大学(スウェーデン)のSaeed Dabestani氏らは、Leibovichスコアが5以上のM0ccRCC患者を対象に多施設共同前向きコホート研究を実施し、手術後の再発検出におけるGAGomeの有用性を評価した。スクリーニングを受けた393人の患者のうち、134人が適格基準を満たした。対象者は、手術後の標準的な画像検査により最長18カ月まで放射線学的再発の評価を受け、尿中GAGomeも3カ月ごとに測定された。 中央値15カ月にわたる追跡期間中に、15.7%の患者でがんの再発が確認された。放射線学的再発に対するGAGomeスコアの感度は90%、特異度は51%、ROC曲線下面積(AUC)は0.73であり、陽性的中率は26%、陰性的中率は97%であった。リードタイム(GAGomeスコアで最初に陽性と判定されてから放射線学的再発までの時間差)の中央値は4.2カ月であった。GAGomeスコアの10ポイント増加ごとの再発のハザード比は1.62であった。GAGomeスコアと放射線学的再発との間には線形の相関が見られ、最後の追跡調査時に確認された再発率とGAGomeスコアに基づき予測された再発率の一致度は良好であった。 Dabestani氏は、「がんの再発を正確に示す尿検査があれば、リスクレベルをより適切に評価し、必要な画像検査の頻度を減らすことができる。今回の結果に基づけば、患者に必要とされる画像検査の頻度は、安全に半分に減らせる可能性がある」と述べている。

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センサー搭載のマスクが呼気から慢性腎臓病を検出

 特殊な呼気センサーを搭載した改良型医療用マスクにより、マスク着用者が慢性腎臓病(CKD)であるか否かを正確に判定できる可能性があるようだ。研究では、アンモニアやエタノールなどのCKDに関連する代謝物を検知するセンサー搭載のこのマスクにより、CKD患者と非CKD患者を正確に区別できたという。ローマ・トル・ヴェルガータ大学(イタリア)のAnnalisa Noce氏らによるこの研究の詳細は、「ACS Sensors」に5月7日掲載された。 米国でのCKD患者数はおよそ3500万人と推定されているが、CKDに気が付いていない潜在的な患者も含めると、それ以上に上るとみられている。腎臓は、血液を濾過して余分な水分や老廃物を尿として排泄する役割を担っている。しかし、腎機能が低下すると、老廃物が十分に排出されずに体内に蓄積する。 CKDは主に尿検査と血液検査により診断されるが、研究グループは、CKD患者の呼気中にアンモニアなどのCKDに関連する化学物質が含まれていることに着目し、アンモニアとその他のCKD関連代謝物を同時に検出できる特殊なセンサーの開発を試みた。 まず、揮発性化合物に敏感な分子であるポルフィリンで修飾した導電性ポリマーで銀製の電極をコーティングし、感度を高めた。次に、このコーティングされた電極を使い捨ての医療用マスクの層の間に配置し、ワイヤーでデバイスと電子読み取り装置を接続した。これにより、マスク着用者の呼気に含まれる特定のガスがポリマーと反応した際に生じる電気抵抗の変化を検出できるようにした。初期実験では、アンモニア、エタノール、プロパノール、アセトンなどのCKD関連代謝物に対するこのセンサーの高い感度が確認された。 このセンサー搭載マスクの性能を、18〜80歳の101人(CKD患者53人、健常者48人)を対象に評価した。CKD患者のステージは2〜5だった。その結果、このマスクのCKDに対する真陽性率(CKD患者を正しくCKDと判定した割合)は93.3%、真陰性率(非CKD患者を正しくCKDではないと判定した割合)は86.7%であることが示された。また、センサーにより測定された結果がCKDのステージの推定にも有用な可能性も示唆された。 研究グループは、これらの結果は、このセンサー搭載マスクがCKD患者に対する簡単で非侵襲的かつ費用対効果の高いモニタリング方法になり得ることを示していると述べている。Noce氏と論文の共著者であるローマ・トル・ヴェルガータ大学のSergio Bernardini氏は、「この技術の導入により、CKDの進行の変化をタイムリーに特定しやすくなり、疾患管理の向上が期待される」と話している。

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第264回 あの3医学誌を“腐敗”呼ばわり、トランプ氏より危険な人物

トランプ大統領の影で大暴れする人物各種報道で話題になっているように、米・ハーバード大学とトランプ政権の攻防はエスカレートする一方だ。きっかけはトランプ政権が同大学の「“反ユダヤ主義的な差別”への取り組みが不十分」だと非難し、「応じなければ助成金や政府との契約を見直す」と発表。この要求を同大学が拒否したため、政権側は約23億ドル分(4月15日時点)の助成金と契約を凍結すると明言した。これに対し、同大学は凍結取り消しを求めて4月21日にマサチューセッツ州連邦地裁へ提訴。しかし、政権側は同大学に対し5月2日に免税措置を取り消し、22日に留学生受け入れ資格の停止、27日には推定1億ドル(日本円で約144億円)とも言われる政府との全契約打ち切り公言など、相次ぐ報復に踏み切った。ちなみに留学生受け入れ資格の停止についても同大学は即座に提訴し、マサチューセッツ州連邦地裁は翌23日に政府による措置の一時差し止め決定を下した。人によって評価は分かれるかもしれないが、私個人のトランプ大統領のこの間の言動に対する評価は「常軌を逸している」の一言に尽きる。まるで漫画「ドラえもん」に登場するガキ大将・剛田 武、通称ジャイアン並みの傍若無人ぶりである。そして世界中がトランプ大統領の言動に視線が集まる中、もう1人の主役が“大暴れ中”である。トランプ政権の保健福祉省長官であるロバート・F・ケネディ・ジュニア氏(以下、ケネディ氏)である。米国の3医学誌を腐敗呼ばわりケネディ氏は以前から極端なワクチン懐疑主義を唱え、コロナ禍中はその治療薬として一部で妄信的とも言える“期待”が語られた抗寄生虫薬のイベルメクチン支持者だったことでも知られる。このためケネディ氏の保健福祉省長官への就任には根強い反対論があり、上院での採決では身内の共和党も造反し、賛成51票・反対48票でかろうじて長官人事が承認された経緯がある。さてそのケネディ氏は5月27日、ポットキャストでLancet、New England Journal of Medicine、JAMAの3誌を「製薬企業が資金提供した研究ばかりが掲載され、腐敗している」と批判。「国立衛生研究所(NIH)の研究者にこれらの雑誌で論文を発表するのを止めさせる」とまで語った。もっともご存じの人も多いと思うが、ケネディ氏の主張は100%間違っているわけではない。これら医学誌に製薬企業の資金提供による論文が数多く掲載されていることは事実であり、またコロナ禍中には査読の甘さゆえに信頼性の低いデータに基づく論文が撤回されたこともある。とはいえ、世界各国の研究者がこの3誌に論文投稿する価値は十分あり、同時に各国の多くの研究者たちが愛読している雑誌である。少なくともNIH関係者が投稿を止めねばならないほど腐敗があると認める人は、この世界では極めて少数派だろう。それをケネディ氏の一存で止めさせようというのだから、相当なトンデモである。しかも、ケネディ氏はこれに代わる新たな医学誌の創刊をぶち上げたらしいが、医学誌1つの創刊と発行継続に、どれだけの資金と人員が必要かについては無頓着のようである。トランプ政権が各種予算を驚くような勢いで削減している中で、そのような費用の支出を政権として承認するかどうかは甚だ疑問である。ここぞとばかりに、ワクチンスケジュール削除また、同日には健常な子どもと妊婦に対する新型コロナワクチン接種を米国疾病予防管理センター(CDC)が推奨するワクチン接種スケジュールから削除したと自身のSNSを通じて発表している。CDCの推奨ワクチンについては、外部専門家で構成されるACIP(予防接種の実施に関する諮問委員会)が年数回開催する公開会議で、データに基づき厳格な審議と投票が行われる。その結果にパブリックコメントも踏まえた勧告案をCDCに提出し、CDC所長による承認を経て正式決定と公表がなされる。今回こうしたプロセスは一切経ていない。もはやここまでいくと「リーダーシップ」のふりをした「ディクテイターシップ(独裁制)」である。米国小児科学会(AAP)はさっそく声明を発表。ケネディ氏の“決定”は「独立した医療専門家を無視し、子どもたちを危険にさらすもの」「保険福祉省が収集したデータをAAPが分析した結果、2024~25年の呼吸器ウイルス流行期に1万1,199人の子どもが新型コロナで入院し、うち7,746人が5歳未満だったことが判明した」「健康な妊婦を除外するという決定は、65~74歳の高齢者と妊婦が新型コロナによる入院率が同程度にもかかわらず、もはや生後6ヵ月未満の乳児が保護を受けられなくなることを意味する」などと述べ、反発を強めている。また、米国産婦人科学会(ACOG)も「妊娠中の新型コロナ感染は悲惨であるとともに、重大な障害につながる可能性があり、家族にとって壊滅的な結果をもたらす可能性があることは明らか。新型コロナワクチンは妊娠中に安全であり、ワクチン接種は患者と出生後の乳児を守ることができる」との声明を発表した。さらに保健福祉省は28日、バイデン政権期に決定していたモデルナ社による高病原性鳥インフルエンザ(H5N1)のmRNAワクチン開発への助成を打ち切ると発表。同省は打ち切りについて、「連邦政府の投資継続に必要な科学的基準や安全性の期待を満たしていない」との見解を示したと報じられている。あくまで省として決定と伝わっているが、長官であるケネディ氏が「新型コロナのmRNAワクチンにはマイクロチップが含まれている」という陰謀説の出元と言われるだけに、同氏の関与をどうしても疑ってしまう。やりたい放題、いつまで続く?極めつきは5月22日に発表された「MAHA(Make America Healthy Again=米国を再び健康にする)委員会」の報告書だ。これは2月13日付でMAHA委員会を設置し、同委員会にアメリカ国民を不健康にしている原因究明とその解消策提言をするよう求めた大統領令に基づくもの。委員長はケネディ氏である。その内容を細かく取り上げるときりがないが、大雑把に要約すると「アメリカの子どもの慢性疾患は深刻で、その原因は加工食品や化学物質、薬の過剰投与、ワクチンの過剰接種が原因の可能性がある」というもの。トランプ政権入りする以前からのケネディ氏の主張そのままである。冒頭で触れたハーバード大学の留学生追放やすでに報じられている科学関連予算の大幅削減にこうしたケネディ色がトッピングされたら、4年後のアメリカはどうなってしまうのだろうか? 正直、嫌な予感しかないのだが…。

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疫学・自然経過―その2【脂肪肝のミカタ】第3回

疫学・自然経過―その2Q. 肝臓だけではない、イベント数の実態は?代謝機能障害関連脂肪性肝疾患(MASLD)は肝臓だけの病気と考えるべきではない。肝硬変や肝がんを含む肝疾患イベントよりも、心血管系イベントや肝臓以外の悪性疾患患者のほうが多いとされる(図2)。(図2) 虎の門病院で組織学的にMASLDと診断された552例における各種イベント発生頻度画像を拡大する肝外悪性疾患では、男性で大腸がん、女性で乳がんのリスクが増加することが示されており、健康診断や人間ドック等による、年齢に応じた悪性疾患のスクリーニングの重要性も啓発していく必要がある1-4)。また、心血管系リスク症例の絞り込みも重要な課題である。動脈硬化性疾患予防ガイドラインで、動脈硬化性心血管疾患の発症予測モデルとして採用されているスコアなどの活用も検討されるべきである5)。MASLDは背景にメタボリックシンドロームが存在するため、肝臓の線維化の状態に寄らず、常に心血管系イベントや肝臓以外の悪性疾患にも注意を払う必要がある。とくに、肝臓の線維化が進行していない症例では、心血管や肝臓以外の悪性疾患のイベントのほうが目立ち、肝臓の線維化進行例では肝硬変や肝がんを含む肝疾患イベントのほうが目立つ6)。すなわち、イベントの頻度は相対的に考えるべきといえる(図3)。(図3)MASLDからの各種イベントの実態画像を拡大する1)Rinella ME, et al. Hepatology. 2023;77:1797-1835.2)European Association for the Study of the Liver (EASL) ・ European Association for the Study of Diabetes (EASD) ・ European Association for the Study of Obesity (EASO). J Hepatol. 2024;81:492-542.3)日本消化器病学会・日本肝臓学会編. NAFLD/NASH診療ガイドライン2020. 南江堂.4)Akuta N, et al. BMC Gastroenterol. 2021;21:434.5)日本動脈硬化学会:動脈硬化性疾患予防ガイドライン2022.6)Vuppalanchi R,et al. Nat Rev Gastroenterol Hepatol. 2021;18:373-392.

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整形外科の薬物療法・保存療法

薬物療法、保存療法を実診療に即して解説「ニュースタンダード整形外科の臨床」第3巻整形外科の実臨床に真に役立つテキストシリーズ。整形外科の外来において日常的に診察する痛み、しびれ、関節リウマチ、外傷に対する薬物療法、保存療法を実診療に即して解説。従来の薬剤、注射法、ギプス、包帯固定、副子、装具、理学療法、作業療法に加え、新しく登場した鎮痛薬や抗RA薬、近年注目されているハイドロリリース、多血小板血漿(PRP)療法、脂肪由来幹細胞(ASC)療法、運動器カテーテル治療・動注治療なども詳述。臨床に役立つ動画多数収載。以前からある鎮痛薬や慢性疼痛・神経障害性疼痛に対する新しい鎮痛薬についてもわかりやすく解説関節リウマチに対する新旧治療薬を網羅ジェネラリストでも知っておいた方がよい、腱鞘内注射法や関節内注射法、さらに新しい治療法のハイドロリリースや多血小板血漿法なども動画やエコーを多数使って解説ギプス固定法の基本やテーピング、徒手整復・矯正などを動画や写真を使ってわかりやすく解説というように、ジェネラリストや非専門医にとっても役立つ知識を多数収載。画像をクリックすると、内容の一部をご覧いただけます。※ご使用のブラウザによりPDFが読み込めない場合がございます。PDFはAdobe Readerでの閲覧をお願いいたします。目次を見るPDFで拡大する目次を見るPDFで拡大する整形外科の薬物療法・保存療法定価12,100円(税込)判型B5判頁数410頁発行2025年5月専門編集・編集委員井尻 慎一郎(井尻整形外科)編集委員田中 栄(東京大学)松本 守雄(慶應義塾大学)ご購入(電子版)はこちらご購入(電子版)はこちら紙の書籍の購入はこちら医書.jpでの電子版の購入方法はこちら紙の書籍の購入はこちら

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抗精神病薬の過剰治療はどう変化しているのか

 抗精神病薬による過剰治療は、副作用の観点から重要な懸念事項である。これまでの研究では、抗精神病薬の多剤併用や過剰な高用量投与に焦点が当てられてきた。オランダ・フローニンゲン大学のStijn Crutzen氏らは、潜在的な過剰治療、抗精神病薬の多剤併用、抗精神病薬の総投与量、主観的な副作用の負担について、経時的な変化をマッピングし、総投与量および多剤併用と主観的な副作用の負担との関連を調査するため、長期ケアを受けている患者を対象とした自然主義的コホート研究のデータを解析した。Schizophrenia Bulletin誌オンライン版2025年5月7日号の報告。 自然主義的縦断的コホート研究であるPHAMOUS調査のデータ(2013~21年)を用いた。潜在的な過剰治療の定義は、リスペリドン換算5mg超の抗精神病薬投与量、または高い主観的な副作用の負担を伴う抗精神病薬の多剤併用とした。潜在的な過剰治療、多剤併用、総投与量、主観的な副作用の負担における傾向を調査し、総投与量および多剤併用と主観的な副作用の負担との関連を評価するため、混合効果モデルを用いた。 主な結果は以下のとおり。・全体で、5,107例における1万5,717件の観察データを用いた。・対象患者の3分の1に過剰治療の可能性があり、経時的な変化は認められなかった。・抗精神病薬の多剤併用の頻度は増加していたが、リスペリドン換算5mg超の投与量の頻度は減少しており、主観的な副作用の負担は軽減していた。・抗精神病薬の高用量投与および多剤併用は、主観的な副作用の負担の増加と関連が認められた。 著者らは、「抗精神病薬による過剰治療の可能性がある患者は、治療変更の必要性の評価のため再調査すべきである」とし、「患者が本当に過剰治療されているかどうかの評価には、患者の病歴、再発回数、患者の希望、全体的な機能、抗精神病薬治療の減少を試みた治療歴、過去の疾患重症度を考慮する必要がある」とまとめている。

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ASCO2025スタート!注目演題を集めた特設サイトオープン

 5月30日~6月3日(現地時間)、世界最大の腫瘍学会であるASCO 2025(米国臨床腫瘍学会年次総会)が、米国シカゴとオンラインのハイブリッド形式で開催される。 ケアネットが運営する、オンコロジーを中心とした医療情報キュレーションサイト「Doctors'Picks」(医師会員限定)では、ASCO 2025のスタートにあわせ、5,000を超える演題の中から、複数のエキスパートが専門分野の注目演題をピックアップした特設サイトをオープンした。 「ASCO2025特設サイト」では、「肺がん」「消化器がん」「乳がん」「泌尿器がん」のカテゴリに分け、エキスパートのコメントとともに、ASCO視聴サイトの該当演題へのリンクを掲載している。 エキスパートが選定した、がん種別の注目演題の一部は以下のとおり。このほかにも多くのユーザーが注目すべき演題を紹介している。今年は各がん種のOral演題を一覧にし、ASCO視聴サイトの該当演題やエキスパートのコメント、まとめ記事へのリンクを掲載した「演題スケジュール」も作成したため、視聴の参考にしていただきたい。【肺がん】山口 央氏(埼玉医科大学国際医療センター 呼吸器内科)によるまとめ【消化器がん 食道・上部消化器がん中心】山本 駿氏(国立がん研究センター中央病院 頭頸部・食道内科)によるまとめ【消化器がん 下部消化器がん中心】中村 将人氏(相澤病院 がん集学治療センター)によるまとめ【乳がん】下井 辰徳氏(国立がん研究センター中央病院 腫瘍内科)によるまとめ【泌尿器がん】竹村 弘司氏(虎の門病院 臨床腫瘍科)によるまとめ――――――――――Doctors’Picks ASCO2025 特設サイト―――――――――― 学会終了後は、聴講レポートやまとめ記事なども続々とアップしていく予定。

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肺サルコイドーシスの1次治療、メトトレキサートvs. prednisone/NEJM

 未治療の肺サルコイドーシス患者おいて、メトトレキサートはprednisoneに対して、ベースラインから24週時までの%FVC(努力肺活量[FVC]の予測値に対する実測値の割合)の変化量に関して非劣性であることが示された。オランダ・エラスムス医療センターのVivienne Kahlmann氏らが同国17施設で実施した無作為化非盲検非劣性試験「PREDMETH試験」の結果を報告した。prednisoneは現在、肺サルコイドーシスの第1選択治療薬として推奨されているが、多くの副作用を伴うことがある。一方、第2選択治療薬として推奨されているメトトレキサートは、prednisoneより副作用は少ないが、作用発現が遅いとされている。肺サルコイドーシスの1次治療として、メトトレキサートの有効性および副作用プロファイルをprednisoneと比較したデータが必要とされていた。著者は、「副作用プロファイルの違いは、医療従事者と患者による治療選択に関する共同意思決定に役立つ可能性がある」とまとめている。NEJM誌オンライン版2025年5月18日号掲載の報告。ベースラインから24週時の%FVC変化量を比較 研究グループは、未治療の肺サルコイドーシス患者を、事前に規定された治療スケジュールに従い、prednisone群またはメトトレキサート群に1対1の割合で無作為に割り付けた。 主な適格基準は、米国胸部学会、欧州呼吸器学会(ERS)および世界サルコイドーシス肉芽腫性疾患学会の定義にしたがって肺サルコイドーシスと診断され、治療開始の肺適応があること(現在のERSガイドラインの推奨に従い、中等度以上の症状があり健康悪化や死亡のリスクを有するもの)、%FVC<90%、%DLco<70%、過去12ヵ月以内に%FVCが5%以上低下または%DLcoが10%以上低下、治験責任医師評価による実質的な肺異常所見ありであった。 prednisoneは1日40mg経口投与から開始して、4週ごとに減量し16週時には維持量1日10mgとした。メトトレキサートは週15mg経口投与から開始して、4週ごとに5mgずつ増量し最大投与量は週25mgとした。 主要エンドポイントは、24週時における%FVCのベースラインからの平均変化量であった。無作為化され少なくとも1回以上治験薬の投与を受けた患者を解析対象集団として、反復測定混合モデルを用いて解析し、非劣性マージンは群間差の95%信頼区間(CI)の下限が-5%ポイントとした。メトトレキサートはprednisoneに対して非劣性 2020年7月17日~2024年2月22日に138例が登録され、無作為化された(prednisone群70例、メトトレキサート群68例)。有効性解析対象集団には、prednisone群68例、メトトレキサート群67例、計135例が含まれた。 %FVCのベースラインから24週時までの変化量(調整前平均値)は、prednisone群6.75%ポイント(95%CI:4.50~8.99)、メトトレキサート群6.11%ポイント(3.72~8.50)であった。24週時の変化量の補正後群間差(最小二乗平均値)は、-1.17%ポイント(95%CI:-4.27~1.93)であり、メトトレキサートのprednisoneに対する非劣性が示された。 有害事象の発現割合は、prednisone群96%、メトトレキサート群94%と同程度で、主な有害事象はprednisone群が体重増加、不眠症、食欲増進、メトトレキサート群が悪心、疲労、および肝機能検査値異常であった。

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重症大動脈弁狭窄症、supra-annularの自己拡張弁は非劣性を示せず/Lancet

 症候性重症大動脈弁狭窄症患者の経カテーテル大動脈弁置換術(TAVR)において、ACURATE neo2は既存の市販弁と比較し、主要複合エンドポイント(1年時の全死因死亡、脳卒中、再入院)に関して非劣性基準を満たさなかった。米国・Cedars-Sinai Medical CenterのRaj R. Makkar氏らACURATE IDE study investigatorsが、米国とカナダの71施設で実施した無作為化非劣性試験「ACURATE IDE試験」の結果を報告した。ACURATE neo2は、オープンセル構造でsupra-annularタイプの自己拡張型経カテーテル大動脈弁であり、50ヵ国以上で販売されているが、これまで無作為化試験による評価は実施されていなかった。Lancet誌オンライン版2025年5月21日号掲載の報告。ACURATE neo2をSAPIEN 3もしくはEvolut(対照)と比較検証 研究グループは、症候性の重症大動脈弁狭窄症で、手術リスクのレベルにかかわらずハートチームによりTAVRの適応と判断された患者を、ACURATE neo2群または対照群(SAPIEN 3[SAPIEN 3、SAPIEN 3 Ultra]、Evolut[Evolut R、Evolut PRO、Evolut PRO+、Evolut FX])に1対1の割合で無作為に割り付けた。無作為化は、疑似乱数生成器を用いコンピュータで作成された置換ブロック法を用いて行われた。実施施設および対照弁の種類で層別化も行った。 すべてのデバイスは、製造メーカーの指示に従って留置された。 主要エンドポイントは、1年時の全死因死亡、脳卒中および再入院の複合とし、ベイズ法を用いて非劣性を検証した。主要解析はITT集団を対象とし、非劣性マージンは8.0%とした。1年時の主要複合エンドポイントおよび各イベント、ACURATE neo2群で発生率が高い 2019年6月10日~2023年4月19日に1,500例が無作為化された(ACURATE neo2群752例、対照群748例)。患者の年齢中央値は79歳(四分位範囲:74~83)で、女性が778例(51.9%)、男性が721例(48.1%)であった。 1年時の主要複合エンドポイントの事後確率中央値は、ACURATE neo2群16.2%(95%ベイズ信用区間[Crl]:13.4~19.1)、対照群9.5%(7.5~11.9)で、群間差は6.6%(3.0~10.2)、群間差の事後確率は>0.999であった。群間差の95%ベイズCrlは事前に規定した非劣性マージン8.0%を超え、非劣性は示されなかった。 Kaplan-Meier法による解析では、1年時の複合エンドポイントの発生率は、ACURATE neo2群14.8%(95%信頼区間[CI]:12.5~17.6)、対照群9.1%(7.2~11.4)であり、ACURATE neo2群が有意に高かった(ハザード比[HR]:1.71、95%CI:1.26~2.33、p=0.0005)。 1年時の全死因死亡は、ACURATE neo2群で752例中36例、対照群で748例中28例であり(HR:1.30、95%CI:0.80~2.14)、脳卒中はそれぞれ41例、25例(1.68、1.02~2.75)、再入院は38例、25例(1.57、0.95~2.61)に発生した。 1年時の心血管疾患による死亡(ACURATE neo2群3.7%vs.対照群1.8%、p=0.024)および心筋梗塞(2.4%vs.0.7%、p=0.0092)の発生率はACURATE neo2群で高く、1年時の人工弁大動脈弁逆流(中心弁および弁周囲弁)の発生率もACURATE neo2群で有意に高かった(軽度逆流42.5%vs.24.8%、p<0.0001、中等度逆流4.4%vs.1.8%、p=0.0070、重度逆流0.5%vs.0%、p=0.12)。

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世界の主要な20の疾病負担要因、男性の健康損失が女性を上回る

 2021年の世界疾病負担研究(GBD 2021)のデータを用いた新たな研究で、女性と男性の間には、疾病負担の主要な20の要因において依然として格差が存在し、過去30年の間にその是正があまり進んでいないことが示された。全体的に、男性は新型コロナウイルス感染症(COVID-19)や交通事故など早期死亡につながる要因の影響を受けやすいのに対し、女性は筋骨格系の疾患や精神障害など致命的ではないが長期にわたり健康損失をもたらす要因の影響を受けやすいことが示されたという。米カリフォルニア大学サンディエゴ校(UCSD)のVedavati Patwardhan氏らによるこの研究の詳細は、「The Lancet Public Health」5月号に掲載された。 Patwardhan氏らは、GBD 2021のデータを用いて、1990年から2021年における10歳以上の人を対象に、世界および7つの地域における上位20の疾病負担要因の障害調整生存年(DALY)率について、男女別に比較した。DALYとは、障害や疾患などによる健康損失を考慮して調整した指標であり、1DALYとは1年間の健康な生活の損失を意味する。20の疾病負担要因は、COVID-19、心筋梗塞、交通事故、脳卒中、呼吸器がん、肝硬変およびその他の慢性肝臓病、慢性閉塞性肺疾患(COPD)、腰痛、うつ病、結核、頭痛、不安症(不安障害)、筋骨格系疾患、転倒、下気道感染症、慢性腎臓病、アルツハイマー病およびその他の認知症、糖尿病、HIV/エイズ、加齢性難聴およびその他の難聴であった。 その結果、2021年では、検討した20要因のうちCOVID-19や肝臓病など13要因で男性のDALYは女性よりも高いことが推定された。男女差が最も顕著だったのはCOVID-19で、年齢調整DALY(10万人当たり)は男性で3,978、女性で2,211であり、男性の健康負担は女性に比べて44.5%高かった。COVID-19の負担は地域を問わず男性の方が高かったが、特に差が大きかったのはサハラ以南のアフリカ、ラテンアメリカ諸国、カリブ海諸国だった。 DALYの男女差の絶対値が2番目に大きかった要因は心筋梗塞で、10万人当たりのDALYは男性で3,599、女性で1,987であり、男性の健康負担は女性より44.7%高かった。地域別に見ると、中央ヨーロッパ、東ヨーロッパ、中央アジアでは男女差が大きかった。 また、女性に比べて男性に多い要因は、年齢が低いほどリスク増加が小さい傾向が認められたが、交通事故による負傷は例外であり、世界中で10〜24歳の若い男性で不釣り合いに多く発生していた。 一方、女性は長期的な健康損失をもたらす疾患において男性よりもDALYが高い傾向が見られた。特にDALYの男女差が顕著だったのは、腰痛(絶対差478.5)、うつ病(同348.3)、頭痛(332.9)であった。また、女性には、人生の早い段階からより深刻な症状に悩まされ、その症状は年齢とともに悪化する傾向も認められた。 論文の共著者である米ワシントン大学保健指標評価研究所(IHME)のGabriela Gil氏は、「女性の健康損失の大きな要因、特に筋骨格系疾患と精神疾患は十分に注目されているとは言えない。女性のヘルスケアに対しては、性や生殖に関する懸念などこれまで医療制度や研究資金が優先してきた領域を超えた、より広範な取り組みが必要なことは明らかだ」と述べている。 論文の上席著者であるIHMEのLuisa Sorio Flor氏は、「これらの結果は、女性と男性では経時的に変動したり蓄積されたりする多くの生物学的要因と社会的要因が異なっており、その結果、人生の各段階や世界の地域ごとに経験する健康状態や疾患が異なることを明示している」との見方を示す。その上で、「今後の課題は、性別やジェンダーを考慮した上で、さまざまな集団において、早期から罹患率や早期死亡の主な原因を予防・治療する方法を設計して実施し、評価することだ」と述べている。

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人類の存続に必要な出生率とは?

 テスラ社のCEOで、少なくとも14人の子どもの父親であるイーロン・マスク(Elon Musk)氏は、出生率の低下は「人類存続の危機である」と警告し、話題を呼んだ。新たな研究によれば、この脅威はマスク氏の警告よりさらに深刻かもしれない。人口が長期的に増減することなく一定に保たれる水準(人口置換水準〔replacement level fertility;RLF〕)はこれまで女性1人当たり2.1人と考えられていたが、新たな研究で、それよりも高い2.7人であることが示唆された。フィリピン大学ロスバニョス校のDiane Carmeliza Cuaresma氏らによるこの研究の詳細は、「PLOS One」に4月30日掲載された。 Cuaresma氏は、「人口の持続可能性を確保するには、標準的なRLFよりも高い出生率が必要だ」と話す。上述のように、現状では、RLFは2.1とされているが、研究グループによると、G7加盟国の出生率は、イタリア1.29、日本1.30、カナダ1.47、ドイツ1.53、英国1.57、米国1.66、フランス1.79であり、いずれの国も2.1を大きく下回っているという。また、出生率が最も低いのは韓国(0.87)であることや、出生率がRLFを下回ったままである場合、日本の人口は世代ごとに31%ずつ減少すると予測されていることも付け加えている。 ただし研究グループは、この2.1という数字は低い死亡率や出生時の性比が1対1であることを前提に算出されたものであり、個体のランダムな出生や死亡などにより生じる偶然の変動(人口学的確率性)を考慮していないと指摘している。人口学的確率性は、特に小規模集団では影響が極めて大きく、絶滅の要因となることもあるという。このことを踏まえて研究グループは今回、人口学的確率性や性別特異的死亡率を考慮した上で、生殖可能年齢の女性の出生率に関する絶滅の閾値を検討した。具体的には、出産する女性の割合、出生時の性比、生殖年齢前の死亡率などの要素が考慮された。 その結果、人類の存続に必要なRLFは約2.7であり、従来考えられていた2.1よりはるかに高いことが明らかになった。また、男児よりも女児の出生数の方が多くなると、絶滅の閾値は2.7よりも低くなることも示された。 こうした結果から研究グループは、戦争や飢饉、疫病などの過酷な状況下では男児よりも女児の方が多く生まれる傾向が観察されているが、この現象は、本研究結果により説明できる可能性があると主張する。 研究グループは、「ほとんどの先進国は人口が多いため、絶滅は差し迫った問題ではない」と話す。ただし、ほとんどの家系は子孫が途絶えることを示唆する結果ではあると指摘し、「今回の結果は、個人の視点で見ると重大な意味合いを持つ。ほぼ全ての人の家系は途絶える運命にあり、ごく少数の例外のみが何世代にもわたって生き残る可能性がある」と述べている。 さらに研究グループは、「言語もまた消滅の危機に瀕している。世界には6,700以上の言語があるが、そのうち少なくとも40%が今後100年以内に消滅する可能性がある。言語の消滅は、文化、芸術、音楽、口承伝統の消滅につながる」と話している。

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中年期に運動量を増やすとアルツハイマー病のリスクが低下する

 中年期に運動量を増やすことが、後年のアルツハイマー病(AD)のリスク低下につながることを示唆するデータが報告された。バルセロナ国際保健研究所(スペイン)のMuge Akinci氏らの研究によるもので、詳細は「Alzheimer’s & Dementia」に4月30日掲載された。 運動習慣がADのリスクを低下させる可能性のあることは既に知られていて、ADの13%は運動不足が関与して発症するという報告もある。しかし、中年期の運動習慣の変化が高齢期のADのリスクに、どのような影響を及ぼすのかは明らかになっていない。Akinci氏らはこの点について、スペインにおけるADの患者と家族に関する研究(ALFA研究)のデータを用いた縦断的解析を行った。 解析対象者は、年齢が45~65歳でADリスク(家族歴など)を有しており、研究参加時点(ベースライン)で認知機能障害がなく、ベースラインと追跡調査時における脳画像検査データや運動習慣に関するデータに欠落のない337人(ベースライン年齢60.5±4.78歳、女性62%)。ベースラインと追跡調査の間隔は、平均4.07±0.84年だった。 運動を行っているか否か、および、世界保健機関(WHO)が推奨する運動量(週に中強度運動を150~300分または高強度運動を75~150分)を満たしているか否かにより、全体を以下のように分類した。一つ目の群は、ベースラインと追跡調査の2時点ともに運動を行っていない「座位行動維持群」で29.4%。二つ目は、2時点ともに運動はしていたもののWHOの推奨を満たしていない「非遵守群」24.3%。三つ目は、2時点ともにWHOの推奨を満たしていた「遵守群」16.9%。四つ目は、遵守から非遵守または運動せずに変化した「非遵守への変化群」13.6%。五つ目は、非遵守または運動せずから遵守に変化した「遵守への変化群」15.7%。 年齢、性別、教育歴、遺伝的リスク因子(ApoE4)の影響を調整後、「座位行動維持群」を基準として、ADの発症にかかわるアミロイドβというタンパク質の脳内の蓄積量を比較すると、「遵守への変化群」はその増加量が有意に少ないことが分かった(P=0.014)。また、「遵守群」を基準とする比較では、「非遵守への変化群」はアミロイドβの増加量が有意に多いことが分かった(P=0.014)。 論文の上席著者である同研究所のEider Arenaza-Urquijo氏は、「われわれの研究結果は、AD予防のための公衆衛生戦略として、中年期の運動を推奨することの重要性を裏付けるものだ。運動量の増加を促す介入が、将来のAD罹患率を低下させる鍵となる可能性がある」と話している。

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糖尿病関連腎臓病、日本人の病的バリアントが明らかに

 糖尿病関連腎臓病(DKD)は2型糖尿病の長期合併症であり、心血管系合併症や死亡率の高さに関連している。今回、日本国内におけるDKD患者の病原性変異について明らかにした研究結果が報告された。研究は東京大学医学部附属病院腎臓・内分泌内科の羽柴豊大氏らによるもので、詳細は「Journal of Diabetes Investigation」に4月8日掲載された。 DKDは、長期の糖尿病罹病期間と糖尿病網膜症の合併に基づき、腎生検を必要とせずに臨床的に診断される。糖尿病患者の中には、同様に血糖コントロールを行っているにもかかわらず、腎機能障害を発症する患者としない患者がいることから、遺伝的要因が糖尿病およびDKD発症の根底にある可能性がある。実際、2021年には米国の1型および2型糖尿病を患うDKD患者370名を対象とした研究から、白人患者の22%で病原性変異が特定されている。しかし、この割合は民族やデータベースの更新状況によって異なっている可能性も否定できない。このような背景を踏まえ、著者らは最新のデータベースを用いて、日本の2型糖尿病を伴うDKD患者のサンプルから全ゲノム配列解析(WGS)を実施し、病原性変異を持つ患者の割合を決定することとした。 本研究には、東京大学糖尿病性腎疾患コホートよりWGSの検体提供に同意した79人(平均年齢72歳)のDKD患者が組み入れられた。全体の25名(31.6%)に糖尿病網膜症が認められ、9名(11.4%)に腎臓病の家族歴があった。 WGSの結果、27人(34.1%)の患者で、24の遺伝子(29の部位)に位置する病原性変異が同定された。すべての変異はヘテロ接合型であり、ホモ接合型は検出されなかった。同定されたヘテロ接合型病原性変異は、大きく、糸球体症関連(23.7%)、尿細管間質性腎炎関連(36.8%)、嚢胞性腎疾患/繊毛病関連(10.5%)、その他疾患関連(28.9%)に分類された。 27人の患者で同定された変異のうち、常染色体顕性(優性)遺伝パターンに関連し、疾患の発症に潜在的に影響を及ぼすものを「診断的変異」と定義した。診断的変異は7つの遺伝子(ABCC6、ALPL、ASXL1、BMPR2、GCM2、PAX2、WT1)において10人(12.7%)の患者で認められた。これらの遺伝子はすべて常染色体顕性遺伝性疾患と関連していた。 本研究の結果について著者らは、「日本では、相当数のDKD患者において腎臓関連のヘテロ接合型病原性変異が特定された。これらの知見は、この変異に民族間の差異が存在する可能性を示唆しており、データベースの更新が変異検出に与える影響を浮き彫りにしている」と述べている。今回、DKD患者で認められた変異の臨床的意義については、「依然として不明であり、その意義をさらに検討するためにはより大規模なコホート研究が必要」と付け加えた。 本研究の限界点として、サンプル数が少なく、日本国内の単一施設のコホート研究であったことから、一般化に制約があることが挙げられる。また、WGS解析はDKD集団のみを対象としており、健常者や腎障害のない糖尿病患者との比較が行われなかったため、本研究は記述的研究にとどまるものとされている。

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昭和の理不尽【Dr. 中島の 新・徒然草】(582)

五百八十二の段 昭和の理不尽と卓球部の記憶しばらく雨が降っては、また晴れるという日々が続いています。知らない間に梅雨が近づいているのでしょうか。さて、今回は昭和の理不尽について述べましょう。というのも、ごく最近、中学校時代の卓球部の集まりがあって、いろいろと思い出したからです。当日は同学年の10人ほどが近くのうどん屋に集まりました。これまでも数年に1回くらいは集まりがあったようですが、私が出席したのは40年ぶり。盛り上がったのは当時のいろいろな出来事。今の価値観に照らしてみると、無茶苦茶でした。まず口火を切ったのはT君。T「体育館を入って右側にマットが丸めて置いてあったやろ」一同「あった、あった」T「それでお前らが下級生を簀巻きにして遊んどったら、監督のB先生に見つかってな」一同「覚えてへんなあ」T「全員が並んで殴られたんや。たまたま遅れて行った俺まで『ちょうどええ所に来た』とかいって殴られて……理由を知ったのは後からや」一同「そうやったんか」T「B先生は小さかったからな、中島には『ちょっと低くなれ』と言って殴ってたぞ」中島「なんじゃ、そりゃ?」T「俺もお前も巻き添えになったんや!」確かに簀巻は危険。でも、そんなことがあったなんて、全然覚えていません。K「Tが皆にバッジを配って『今日から俺らはT組やからな』と言ったのを覚えているか?」T「そんなことを俺が言ったんか?」K「そや。でも、後で担任に死ぬほど怒られたのは俺やぞ。配ったのはTやのに……」T「覚えてないなあ」神戸という土地柄のせいか、担任の先生も子供の悪ふざけで済ませるわけにいかなかったのでしょう。K「俺が○○で所長をしとった時にな。Aがアルバイトに応募してきよったんや。皆、Aを覚えているか?」忘れるはずもありません。Aはとんでもないド不良でした。K「こりゃまずい、と思ったんでオレは身を隠したんや。『あいつだけは絶対に採用するなよ』と担当者に言ってな」一同「当然、不採用やな」K「後で家の留守電にAからのメッセージが入っていてな。『K、お前は冷たい奴っちゃのう』とあって、ゾッとしたで」一同「ひゃ~!」1学年が15クラスもあった時代、AがKの名前を知っていたことも驚きですが、立場や自宅の電話番号まで割れていたんですね。なんといっても理不尽なのはY君のこと。中島「2年生の春、個人戦の出場選手を決めた時のことを覚えているか?」一同「覚えてないなあ」中島「部内で試合して、2年生のYが勝って3年生のNさんが負けたんや。そやからYが出るのかと思ったら、監督が『Yは遠慮しろ。代わりにNを出す』とか言い出してな」Y「そんなことがあったんか」中島「お前、ワンワン泣いとったのに、覚えてないんか?」Y「いや、全然」人間、本当に辛かった記憶は消し去るようにできているのかもしれません。そんなことがありながらも、Yは辞めずに最後まで卓球部を続けました。話は他校にも及びます。H「それにしてもミナチューのC監督は怖かったな」一同「あれは無茶苦茶やった!」ミナチューというのは当時のライバル中学の別称です。残念ながら、少子化で閉校になってしまいました。C監督は気に食わないことがあったら、試合中でもベンチを飛び出して選手を殴っていたのです。H「あの人、何で怒り出すかわからんからな。俺、心から『ポンチューで良かった!』と思ったぞ」一同「確かに」H「俺らも監督に殴られとったけど、ちゃんとした理由はあったからな」ポンチューというのは、われわれが通っていた中学の別称です。あまりにもミナチューの監督が怖かったので、いつも対戦相手のほうが泣きそうになっていました。もっとも、当時の男子中学生のアホさ加減を考えてみると、殴って言うことをきかせる方が早かったのかもしれません。もちろん昭和の話ですけどね。H「それにしてもTの家に遊びに行ったら、お祖母ちゃんが厳しかったなあ」T「明治生まれで11人の子供を育てたからな。頑固そのものやぞ」H「お前のお祖母ちゃんに『玄関では脱いだ靴をキチンと揃えろ!』と言われてたんで、今でも俺はそのクセが抜けへんぞ」一同「そりゃ、お祖母ちゃんの躾の成果や!」そんなこんなで閉店時間まで盛り上がった宴会。改めて思い返してみると、昭和というのは何かと大変な時代でした。ということで、昔の俳人・中村 草田男の代表作に敬意を表しつつ最後に1句降る雨や 昭和は遠く なりにけり

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副作用の徐脈性不整脈、QT延長症候群を考えよう(3)【モダトレ~ドリルで心電図と不整脈の薬を理解~】第3回

副作用の徐脈性不整脈、QT延長症候群を考えよう(3)Question通常の心拍数(正常の洞結節の活動電位)の方へアドレナリンとジギタリス製剤をそれぞれ投与した場合、活動電位はどのような変化を起こすでしょうか?

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第13回 コロナ・インフル「同時予防ワクチン」、その実力とは?

毎年、冬になると猛威を振るう季節性インフルエンザ。未だ世界中で散発的な流行を起こす新型コロナウイルス感染症(COVID-19)。これら2つの感染症は、とくに50歳以上の人や基礎疾患を持つ人にとって、重症化や入院、時には死に至る危険性もはらんでいます。現在、これらの感染症を予防するためには、それぞれ別のワクチンを接種する必要があります。世界保健機関(WHO)やアメリカ疾病予防管理センター(CDC)は、2つのワクチンの同時接種を推奨しており、これにより接種率の向上が期待されています。しかし、その推奨にもかかわらず、両方のワクチンの接種率は必ずしも高くないのが現状です。もし、1回の注射でインフルエンザと新型コロナの両方に対応できるワクチンがあれば、接種を受ける人の負担が減り、より多くの人が予防接種を受けやすくなるかもしれません。そんな期待を背負って開発が進められてきたのが、新しい混合ワクチンです。この記事では、季節性インフルエンザと新型コロナウイルスの両方に対応するmRNAワクチン「mRNA-1083」の安全性と免疫反応を評価した最新の研究論文1)について解説します。新しいmRNA多価ワクチン「mRNA-1083」とは?今回報告された「mRNA-1083」は、mRNAワクチンの一種です。mRNAワクチンは、ウイルスのタンパク質を作るための設計図(mRNA)を体内に送り込み、それをもとに体内でタンパク質の一部が作られます。すると、私たちの免疫システムがそのタンパク質を「異物」と認識し、それに対する抗体などを作り出すことで、本物のウイルスが侵入してきた際に備えることができる仕組みです。mRNA-1083には、インフルエンザウイルスの表面にあるヘマグルチニンというタンパク質と、新型コロナウイルスのスパイクタンパク質の一部の設計図が含まれています。これらは、それぞれインフルエンザワクチン(mRNA-1010)と新型コロナワクチン(mRNA-1283)の成分であり、過去の研究でそれぞれ良好な安全性と免疫反応が確認されています。ワクチンの効果と安全性をどうやって調べたのか?この研究は、mRNA-1083の有効性と安全性を評価するための第III相臨床試験として、アメリカ国内146施設で実施されました。参加者は50歳以上の成人で、「65歳以上」と「50~64歳」の2つの年齢層に分けられました。これは、推奨されるインフルエンザワクチンの種類がこれらの年齢層で異なるためです。参加者は、ランダムに2つのグループに分けられました。mRNA-1083群新しい多価ワクチンmRNA-1083と、プラセボ(生理食塩水)を接種(比較群が2つのワクチン接種を受けるため、あえてプラセボを1本接種しています)比較群インフルエンザワクチンと既存の新型コロナワクチンを同時接種試験は盲検化して行われました。これにより、結果に対する先入観を排除することができます。主な目的は、接種29日後に、mRNA-1083が既存のワクチンと同等以上の免疫反応(非劣性)を示すかどうか、そして安全性を評価することでした。この研究で何がわかったのか?合計8,015人がこの試験に参加し、ワクチンを接種しました。結果として、mRNA-1083は、対象となったすべての型のインフルエンザウイルスおよび新型コロナウイルス(XBB.1.5)に対して、既存のワクチンと同等以上の免疫反応を示し、非劣性基準を達成しました。さらに、mRNA-1083はいくつかの点で、既存のワクチンよりも優れた免疫反応(優越性)を示しました。50歳~64歳mRNA-1083は、標準用量のインフルエンザワクチンと比較して、4種類すべてのインフルエンザウイルスに対してより高い免疫反応を示しました。また、新型コロナウイルスに対しても同様の結果でした。 65歳以上mRNA-1083は、高用量のインフルエンザワクチンと比較して、3種類のインフルエンザウイルス(A/H1N1、A/H3N2、B/Victoria)に対してより高い免疫反応を示しました。ただし、B/Yamagata株に対する免疫反応は、優越性の基準には達しませんでした。新型コロナウイルスに対しても、mRNA-1083はより高い免疫反応を示しました。 なお、インフルエンザB/Yamagata株は、近年の流行がみられないため2024~25年シーズンのワクチンからは除外することがWHOから推奨されています。この点を考慮すると、mRNA-1083は重要な3種類のインフルエンザウイルス(A/H1N1、A/H3N2、B/Victoria)と新型コロナウイルスの両方に対して、既存の推奨ワクチンよりも優れた免疫反応を50歳以上の成人に誘導したといえます。安全性は?ワクチンの安全性は非常に重要です。この研究では、mRNA-1083接種後の副反応も詳しく調べられました。その結果、mRNA-1083を接種した群では、既存のワクチンを接種した群と比較して、副反応を報告した人の割合や重症度がわずかに高い傾向がみられました。たとえば、65歳以上では、mRNA-1083群の83.5%に対し、比較群では78.1%が副反応を報告しました。50~64歳では、それぞれ85.2%と81.8%でした。しかし、報告された副反応のほとんどは、軽度(Grade1)または中等度(Grade2)であり、短期間で回復するものでした。最も多かった副反応は、注射部位の痛み、倦怠感、筋肉痛、頭痛でした。重篤な副反応(Grade4、すべて発熱)は非常にまれで、両年齢層のmRNA-1083群で合計4人(0.1%未満)でした。試験期間を通じて、新たな安全性の懸念は確認されませんでした。また、この研究では、ワクチン接種後の数日間の生活の質(QOL)への影響も調査されています。その結果、mRNA-1083を接種したグループでは、接種後2日目に一時的なQOLスコアの低下が見られましたが、3日目には回復しました。この低下の度合いは、既存のインフルエンザワクチンや新型コロナワクチンで報告されているものと同程度か、それ以下であり、臨床的に意味のある大きな変化ではありませんでした。研究の限界この研究は重要な知見をもたらしましたが、いくつかの限界も認識しておく必要があります。まず、この研究では、ワクチンが実際にインフルエンザや新型コロナの発症をどの程度防ぐかという「有効性」は直接評価されていません。ただし、評価された免疫反応の指標(抗体価)は、それぞれインフルエンザと新型コロナワクチンの有効性と関連する信頼性の高い指標とされています。また、試験参加者はアメリカ国内の住民で、人種構成はアメリカの一般人口を反映していますが、他の地域や人種グループにそのまま結果を当てはめられるかはさらなる検討が必要です。今後の展望今回の第III相臨床試験の結果は、mRNA多価ワクチン「mRNA-1083」が、50歳以上の成人において、4種類のインフルエンザ株と新型コロナウイルス(XBB.1.5)に対して、既存の推奨ワクチンと同等以上の免疫反応を誘導し、安全性も許容範囲であることを示しました。とくに、臨床的に重要なインフルエンザウイルスと新型コロナウイルスに対しては、既存ワクチンよりも優れた免疫反応が確認された点は注目に値します。1回の接種で2つの主要な呼吸器感染症を予防できる可能性を秘めたこの新しいワクチンは、公衆衛生の観点からも大きな期待が寄せられます。今後の実用化に向けた取り組みが注目されます。参考文献・参考サイト1)Rudman Spergel AK, et al. Immunogenicity and Safety of Influenza and COVID-19 Multicomponent Vaccine in Adults ≥50 Years: A Randomized Clinical Trial. JAMA. 2025 May 7. [Epub ahead of print]

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肥満体型の若い女性の健康状態は良好か

 体型と健康状態に相関はあるのだろうか。このテーマについて、オーストラリア・クイーンズランド大学公衆衛生学部オーストラリア女性少女健康研究センターのAnnette J. Dobson氏らの研究グループは、若年女性に多くみられる健康状態の年齢別有病率とBMIカテゴリーとの関連性が世代間で異なるかどうかを検討するため、18~30歳の女性の体重と身長を解析した。その結果、低体重・過体重の女性では、健康状態が良好ではないことが判明した。この結果は、Obesity誌オンライン版2025年5月13日号に掲載された。低体重でも過体重でも健康状態に影響 研究グループは、1973~78年と1989~95年生まれの参加者で、それぞれ1996年と2013年に募集された“Australian Longitudinal Study on Women's Health”からのデータを基に、18~23、22~27、25~30歳の各年齢で体重と身長を報告した女性を対象とした。評価項目は、自己評価による健康状態、一般的な疾患の有病率、月経症状、妊娠合併症。オッズ比(OR)は、反復測定を考慮した一般化推定方程式を用いたロジスティック回帰モデルを用いて推定した。 主な結果は以下のとおり。・自己評価による健康状態が「普通」または「不良」の場合、低体重域の女性(OR:1.51、95%信頼区間[CI]:1.30~1.74)または過体重域の女性(OR:1.47、95%CI:1.34~1.60)でORが高かった。 ・標準体重の女性と比較して、肥満の女性(OR:3.04、95%CI:2.76~3.35)で最もORが高く、より最近のコホートでもORが高かった(OR:1.50、95%CI:1.38~1.63)。 ・上記と同じパターンがすべての評価項目でみられた。 以上の結果から研究グループは、「BMIの増加による健康への影響は、近年においても軽減されていない。この結果は、若い女性に正常なBMIの利点を広めるために利用できる」と結論付けている。

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定年後も働きたい?医師が望むセカンドキャリア/医師1,000人アンケート

 近年、医師の定年後の過ごし方は多様化している。今回、CareNet.comでは、「医師の定年後の過ごし方」と題したアンケートを実施し、何歳まで働き続けたいかや、希望するセカンドキャリアなどを聞いた。対象はケアネット会員医師のうち、50代の勤務医が中心の1,002人で、内科系(545人)、外科系(282人)、その他診療科(175人)の3群に分けて傾向を調査した。何歳まで働くか? Q1では「何歳まで働きたいか」を聞いた。全体で最も多かった回答は「66~70歳まで」で28%、「61~65歳まで」が21%、「71~75歳まで」が22%だった。診療科系別にみると、「60歳まで」と回答した割合はその他診療科が12%で最も高く、「生涯現役」と回答した割合は内科系が13%でほかより若干高かった。定年後は非常勤の希望が最多 Q2では「定年後はどのような働き方を希望するか」を単一回答で聞いた。全体では、「非常勤・アルバイト」を希望する医師が65%と最も多く、「常勤」は24%、「就業は希望しない」は10%だった。診療科系別にみると、「常勤」を希望する割合は外科系がやや高く、「就業を希望しない」割合はその他診療科がやや高い傾向にあった。現勤務先か、ほかの医療機関に転職か Q3では「定年後に就業するなら、どのような仕事を希望するか」を複数回答で聞いた。全体では、「ほかの医療機関に転職」したい医師が52%、「現勤務先で継続」したい医師が49%と、この2つの選択肢が回答の上位を占めている。次いで、「産業医」11%、「僻地医療」8%、「就業は希望しない」8%、「医療コンサルタント」7%、「医療関連以外」7%と続いた。診療科系別にみると、「ほかの医療機関に転職」を希望する割合は外科系が最も高く、「現勤務先で継続」を希望する割合はその他診療科が最も高い傾向にあった。働く理由は「経済的な理由」だけではない Q4では「定年後も就業する理由」を複数回答で聞いた。「経済的な理由」が52%と最も多く、次いで「社会貢献」34%、「生涯現役」31%、「医師不足解消に貢献」22%となっている。診療科系別にみると、「経済的な理由」を挙げる割合はその他診療科と外科系がやや高く、「社会貢献」「生涯現役」「医師不足解消に貢献」を挙げる割合は、内科系がやや高い傾向にあった。「家族・周囲からの期待」の割合は、その他診療科でやや高い結果となった。仕事以外では旅行や趣味が人気 Q5では「就業以外で定年後にやりたいこと」を複数回答で聞いた。全体では、「旅行」が65%、「趣味」が61%と、この2つがとくに多い回答であった。そのほか、「健康維持活動」42%、「家族や友人と過ごす」32%などが上位に挙げられた。診療科系別にみると、「旅行」と回答した割合は外科系が最も高く、「健康維持活動」「家事」「医学以外の学習・資格取得」と回答した割合は、その他診療科で比較的高い結果となった。 Q6では、自由回答として「定年後にセカンドキャリアとして挑戦したいこと」を聞いた。医師の定年後のセカンドキャリアは、医療への貢献継続意向と異分野への挑戦意欲が共存しており、多岐にわたるユニークな回答が寄せられた。 回答を分類すると、「医療関連」「研究」「教育」が65件、「学び」「語学」が35件、「趣味」が33件、「社会貢献」が31件、「旅行」が23件、飲食業や不動産業などの「事業」が21件、「のんびり過ごしたい」というものが21件など、これらのカテゴリーに多くの回答が寄せられた。このほかより具体的なものとして、農業、創作活動、スポーツ、投資などの意見も少なくなかった。アンケート結果の詳細は以下のページに掲載中。医師の定年後の過ごし方/医師1,000人アンケート

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日本における片頭痛患者の市販薬使用状況調査〜OVERCOME第2回研究

 片頭痛患者は、さまざまな理由で市販薬(OTC)を好む傾向があるが、OTC頭痛薬の過剰使用は、薬物乱用性頭痛を引き起こす可能性がある。京都府立医科大学の石井 亮太郎氏らは、片頭痛の疫学、治療、ケアに関する観察研究であるOVERCOME(Japan)第2回研究を分析し、日本における片頭痛患者のOTC頭痛薬の実際の使用状況が適切な医療の妨げとなっている可能性について、考察を行った。The Journal of Headache and Pain誌2025年5月7日号の報告。 本研究は、成人片頭痛患者を対象に、横断的地域住民ベースの全国オンライン調査として実施された。調査内容には、片頭痛に対する処方薬およびOTC薬の使用経験、片頭痛薬の認知度、片頭痛に対する態度についての報告を含めた。1ヵ月当たりの頭痛日数(MHD)および1ヵ月当たりのOTC頭痛薬の使用頻度に基づきサブグループ解析を実施した。 主な結果は以下のとおり。・片頭痛患者1万9,590例(女性の割合:68.8%、平均年齢:40.5±13.1歳)の平均MHDは3.5±5.2であり、過去1年間で片頭痛のために医師の診察を受けた患者は29.0%にとどまった。・過去1年間のOTC頭痛薬の使用は、医師の診断やMHD数に関わらず、62.1%以上と高かった。・片頭痛発作時に処方薬を使用すると回答した患者のうち、通常OTC頭痛薬も使用すると回答した割合は35.2%であった。・過去1年間で医師の診察を受けた患者の51.3%は、OTC頭痛薬の使用頻度が処方薬の使用頻度と同等もしくはそれ以上であると回答した。・過去1年間で医師とOTC頭痛薬について話し合ったのは、わずか14.6%であった。・OTC頭痛薬を1ヵ月当たり10日以上使用している患者でも、片頭痛薬へのアクセスや認知度は限定的であった。18.2%がトリプタンを使用している一方で、65.5%はトリプタンについて聞いたことがないと回答した。・医師の診察を躊躇したことがあると回答した37.1%の患者において、躊躇する理由として最も多かった回答は「OTC頭痛薬で対処可能」であった(34.9%)。 著者らは「片頭痛患者は、OTC頭痛薬を頻繁に使用するが、そのことについて医師と話し合う機会は少ないことが明らかとなった。OTC頭痛薬を頻繁に使用している患者でも、片頭痛へのアクセスや認知度は低かった。片頭痛に対する薬物濫用を防ぐためにも、OTC薬の使用について話し合い、管理していく必要性が示唆された」と結論付けている。

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乳がん家族歴のある女性の検診、3D vs.2D/JAMA Oncol

 乳がんの家族歴のある女性を対象とした大規模コホート研究において、デジタル乳房トモシンセシス(DBT)を用いた乳がん検診が、従来のデジタルマンモグラフィ(DM)と比べ再検査率が大幅に低下し、特異度が向上したことをオーストラリア・シドニー大学のTong Li氏らが報告した。とくに、第1度近親者に乳がん患者がいる女性や乳腺散在乳房の女性でその効果が顕著で、きわめて高濃度乳房の女性では進行がん率を低下させることが示唆された。JAMA Oncology誌オンライン版2025年5月22日号に掲載。 本研究では、2011~18年に米国・Breast Cancer Surveillance Consortiumの加盟施設でDBTまたはDMによる検診を受けた、18歳以上の乳がん家族歴のある女性20万8,945人、延べ50万2,357件の検診データを解析した。主要評価項目は、治療の逆確率重み付けを行った再検査率、がん発見率、中間期がん(検診と次回の検診の間に発見されるがん)率、進行がん率、生検率、陽性反応的中度、感度、特異度におけるDBTとDMの絶対リスク差(ARD)であった。 主な結果は以下のとおり。・全体として、DBTはDMより再検査率が有意に低く(調整後ARD:-1.51%)、特異度が有意に高かった(同:1.56%)。とくに第1度近親者に1人の乳がん患者がいる女性では、DBTはDMより再検査率が有意に低く(同:-1.72%)、特異度が有意に高かった(同:1.75%)。・乳腺密度別にみると、脂肪性乳房の女性ではDBTの非浸潤性乳管がん(DCIS)発見率はDMより有意に低かった(-0.71/1,000検査)。乳腺散在乳房の女性では、DBTの再検査率はDMより有意に低く(ARD:-1.90%)、特異度が有意に高かった(同:1.93%)。不均一高濃度乳房の女性では、DBTの再検査率はDMより有意に高かった(同:1.75%)。きわめて高濃度乳房の女性は、DBTの生検率はDMより有意に高く(同:0.48%)、進行がん率が有意に低かった(-0.61/1,000検査)。・DBTによる検診ではDMよりも早期の浸潤がんで発見される割合が高かった。

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