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ファイザー社の新型コロナワクチン、接種対象が12歳以上に

 米国・ファイザー社の新型コロナウイルス感染症(COVID-19)用ワクチン「コミナティ筋注」の接種対象者が、「16歳以上」から「12歳以上」に変更・拡大された。厚生科学審議会予防接種・ワクチン分科会(分科会長:脇田隆字・国立感染症研究所所長)が5月31日、新型コロナウイルス感染症にかかる予防接種の実施について指示した厚生労働大臣通知の一部改正案の諮問を受け、これを了承した。適用は6月1日付。 新たに接種対象となった12~15歳について、同ワクチンの国内治験は実施されておらず、審議に当たっては海外の臨床試験データが提示された。それによると、ワクチンの有効性は、接種前から2回目接種後7日以前にSARS-CoV-2感染歴がない場合は100.0%(95%信頼区間[CI]:75.3~100.0)、同感染歴を問わない場合も100.0%(95%CI:89.9~97.3)だった。 また、2回目接種後1ヵ月のSARS-CoV-2血清中和抗体価の評価については、12~15歳(190例)の中和抗体幾何平均値は1239.5(95%CI:1095.5~1402.5)で、16~25歳(170例)の中和抗体幾何平均値705.1 (95%CI:621.4~800.2)に対する非劣性が示された。有害事象の頻度および種類については、16~25歳と同様だった。 「コミナティ筋注」については、5月31日付で添付文書が改訂され、「用法及び用量に関する注意」「接種回数」「特定の背景を有する者に関する注意」「副反応」「適用上の注意」の項にそれぞれ内容の追加・改訂の記載がある。

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中国のコロナワクチン2種、初の第III相試験中間解析/JAMA

 中国で開発された新型コロナウイルス(SARS-CoV-2)不活化ワクチン2種の、第III相二重盲検無作為化試験の事前規定中間解析の結果が、アラブ首長国連邦・Abu Dhabi Health Services CompanyのNawal Al Kaabi氏らによって発表された。試験は中国Sinopharmの子会社であるChina National Biotec Group(CNBG)に属する武漢生物製品研究所と北京生物製品研究所がデザインし、中東4ヵ国で被験者を集めて行われた。中間解析にはうち2ヵ国(アラブ首長国連邦とバーレーン)の被験者4万例超のデータが包含された。ワクチンの症候性COVID-19に対する予防効果はプラセボ接種の対照群と比較し72.8~78.1%であり、重篤な有害事象発生率は0.4~0.5%で対照群と同等だったという。JAMA誌オンライン版2021年5月26日号掲載の報告。SARS-CoV-2・WIV04株/HB02株からの不活化ワクチンを投与 試験に用いられたワクチンは、中国・武漢の金銀潭医院(Jinyintan Hospital)の2人の患者からそれぞれ採取されたSARS-CoV-2分離株(WIV04株とHB02株)を基に開発されたものである。 研究グループは、SARS-CoV-2等への感染歴がない18歳以上を無作為に3群に分け、WIV04株から作った不活化ワクチン(5μg/回)、HB02株から作った不活化ワクチン(4μg/回)、および水酸化アルミニウム(対照群)を、それぞれ2回、21日間隔で投与した。 主要アウトカムは、無作為化時にSARS-CoV-2感染が認められなかった被験者における、ワクチン2回投与から14日以降の症候性COVID-19(検査により確認)に対する有効性だった。副次アウトカムは、重症COVID-19に対する有効性とした。 有害事象・副反応に関するデータは、1回以上投与した被験者を対象に集計した。重症COVID-19、対照群で2人に対しワクチン群では0人 ワクチンまたはプラセボ1回以上投与を受けたアラブ首長国連邦とバーレーンの被験者は計4万382例(WIV04群1万3,459例、HB02群1万3,465例、対照群1万3,458例)で、平均年齢は36.1歳、男性が84.4%だった。このうち2回投与を受け、2回投与後14日以降に1回以上のフォローアップを実施し、また試験開始時に、RT-PCR検査でSARS-CoV-2感染が陰性だった3万8,206例(94.6%)を対象に分析を行った。 追跡期間中央値77日(範囲:1~121)において、症候性COVID-19が確認されたのは、WIV04群26例(12.1/1,000人年)、HB02群21例(9.8/1,000人年)であり、対照群は95例(44.7/1,000人年)だった。対照群と比較したワクチンの有効性は、WIV04群72.8%(95%信頼区間[CI]:58.1~82.4)、HB02群78.1%(64.8~86.3)だった(いずれもp<0.001)。 重症COVID-19の発生は、対照群で2例報告されたが、不活化ワクチン群では発生しなかった。 接種後7日間の副反応の報告は、WIV04群44.2%、HB02群41.7%、対照群46.5%だった。重篤な有害事象はまれで、WIV04群64例(0.5%)、HB02群59例(0.4%)、対照群78例(0.6%)と3群で同等だった。 なお、最終解析では、さらにエジプトとヨルダンの被験者データも包含して分析する予定となっているが、両国からの被験者数が3,469例であったことから結果が大幅に変わる可能性は低いなどとして、最終解析のためのデータ収集については未確定だとしている。

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3剤配合剤抵抗性の高血圧、腎デナベーションが有効/Lancet

 利尿薬を含む3剤配合降圧薬に抵抗性を示す高血圧患者に対し、超音波腎デナベーションは、2ヵ月後の収縮期血圧低下に有効であることが示された。偽治療に比べ、収縮期血圧値は中央値5.8mmHg低下したという。フランス・パリ大学のMichel Azizi氏らが、米国・欧州50ヵ所以上の医療機関を通じて行った無作為化単盲検偽治療対照試験の結果を報告した。血管内腎デナベーションは、軽症~中等症高血圧患者の降圧に有効だが、真性の抵抗性高血圧患者の有効性は示されていなかった。結果を踏まえて著者は、「降圧効果と腎デナベーションの安全性が長期的に維持されるのならば、抵抗性高血圧患者にとって腎デナベーションは降圧薬に追加しうる治療法となる可能性がある」と述べている。Lancet誌オンライン版2021年5月16日号掲載の報告。2ヵ月後の日中自由行動下収縮期血圧値をITT解析で比較 研究グループは、米国28ヵ所、欧州25ヵ所の3次医療機関を通じて、利尿薬を含む3種以上の降圧薬を服用しながら、診察室血圧が140/90mmHg以上の18~75歳を対象に試験を行った。被験者は、試験開始後4週間は、Ca拮抗薬・ARB・サイアザイド系利尿薬の配合剤(投与量一定)の1日1回服用に切り替えた。 その後、日中自由行動下血圧が135/85mmHg以上の被験者を施設で層別化し1対1の割合で無作為に2群に分け、一方には超音波腎デナベーションを、もう一方には偽治療を行った。患者とアウトカム評価者は割り付けをマスクされ、規定した血圧値を超えた場合には、追加の降圧薬投与を可能とした。 主要エンドポイントは、ITT解析で評価した2ヵ月後の日中自由行動下収縮期血圧値の変化だった。安全性もITT解析にて評価した。腎デナベーション群、2ヵ月後収縮期血圧値は8.0mmHg低下 2016年3月11日~2020年3月13日に、989例が試験に登録され、そのうち136例が無作為化を受けた。腎デナベーション群69例、偽治療群67例だった。 尿検査で確認した2ヵ月時点の配合剤の服用アドヒアランスは、腎デナベーション群82%(42/51例)、偽治療群82%(47/57例)と同等だった(p=0.99)。 2ヵ月後の日中自由行動下収縮期血圧値の変化は中央値で、腎デナベーション群-8.0mmHg(四分位範囲[IQR]:-16.4~0.0)、偽治療群-3.0mmHg(-10.3~1.8)と腎デナベーション群で有意な降圧が認められた(群間差中央値:-4.5mmHg[95%信頼区間[CI]:-8.5~-0.3]、補正後p=0.022)。完全なデータが得られた被験者における群間差中央値は-5.8mmHg(-9.7~-1.6、補正後p=0.0051)だった。 なお、安全性アウトカムについては、両群で差はみられなかった。

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ニボルマブ・イピリムマブ併用、悪性胸膜中皮腫に適応拡大/小野・BMS

 小野薬品工業とブリストル・マイヤーズ スクイブは、2021年5月27日、ニボルマブ(商品名:オプジーボとイピリムマブ(商品名:ヤーボイ)の併用療法について、切除不能な進行・再発の悪性胸膜中皮腫に対する効能又は効果に対する製造販売承認事項一部変更承認を取得したと発表。 今回の承認は、未治療の切除不能な悪性胸膜中皮腫患者を対象に、ニボルマブとイピリムマブの併用療法を標準治療の化学療法(ペメトレキセドとシスプラチンまたはカルボプラチンの併用療法)と比較評価した多施設国際共同無作為化非盲検第III相臨床試験(CheckMate-743試験)であらかじめ計画されていた中間解析の結果に基づいたもの。 同解析において、ニボルマブとイピリムマブの併用療法は、主要評価項目である全生存期間の有意な延長を達成した。また、本試験で認められたニボルマブとイピリムマブの併用療法の安全性プロファイルは、本併用療法でこれまでに認められているものと一貫していた。 悪性胸膜中皮腫に対する標準治療としては、ペメトレキセドとシスプラチンの併用療法が行われているが、今回の承認により、ニボルマブとイピリムマブの併用療法が悪性胸膜中皮腫患者にとって新たな治療選択肢になるものと期待されている。

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イキサゾミブ、幹細胞移植歴のない多発性骨髄腫の維持療法に適応追加/武田

 武田薬品工業は、2021年5月27日、イキサゾミブ(製品名:ニンラーロ)について、幹細胞移植歴のない多発性骨髄腫に対する初回治療後の維持療法の治療薬として、厚生労働省より多発性骨髄腫における維持療法の効能又は効果を追加する製造販売承認事項一部変更承認を取得した。 今回の承認は、主に無作為化プラセボ対照二重盲検多施設共同国際第III相試験であるTOURMALINE-MM4試験の結果に基づくものである。同試験では、幹細胞移植歴のない成人の多発性骨髄腫患者を対象に無増悪生存期間(PFS)を主要評価項目として、同剤がPFSを統計学的に有意に改善することが確認された。イキサゾミブの維持療法における安全性プロファイルは、単剤療法における既知の安全性プロファイルと同様であり、TOURMALINE-MM4試験で新たな懸念は確認されなかった。 イキサゾミブは、「再発又は難治性の多発性骨髄腫」の効能効果で、2017年3月に厚生労働省より製造販売承認を取得し2017年5月24日から発売。2020年3月25日に「多発性骨髄腫における自家造血幹細胞移植後の維持療法」に係る製造販売承認事項一部変更承認を取得している。

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非糖尿病肥満症に対するGLP-1受容体作動薬と運動の併用によるリバウンド抑制効果(解説:小川大輔氏)-1398

 肥満によるさまざまな健康障害に内臓脂肪蓄積が関与していることが知られている。また内臓脂肪蓄積があれば糖尿病や脂質異常症などの疾患を発症することが予測されるため、減量治療が推奨されている。そして治療の基本は食事療法、運動療法、行動療法などの生活習慣改善療法である。ただBMI≧35kg/m2の高度肥満症では、生活習慣改善療法で一時的に体重の減少が得られても、リバウンドを繰り返し、長期的にみると減量治療が成功しないことも多いとされている。 今回減量治療後の体重維持に、GLP-1受容体作動薬リラグルチド3mgと運動療法の併用が運動療法単独より有効であることがNEJM誌に報告された1)。この試験は非糖尿病の肥満成人(平均BMI 37.0kg/m2)を対象に、まず8週間の低カロリー食による減量を行い、その後体重がベースラインから5%以上低下した195例を4群(リラグルチド群、運動群、併用群、プラセボ群)に割り付け1年間治療が行われた。その結果、主要エンドポイントである無作為化の時点から治療終了までの体重変化は、併用群で-9.5kgと最も大きく、次いでリラグルチド群-6.8kg、運動群-4.1kgであった。また、副次エンドポイントである体脂肪率の変化は、併用群で3.9%と最も低下し、次いで運動群2.2%、リラグルチド群2.0%であった。 本試験で減量治療後のリバウンド抑制や体脂肪率低下に対し、リラグルチドと運動療法の併用が運動療法単独より有効であることが示された。また、糖化ヘモグロビン値やインスリン感受性、心肺持久力の改善が認められたのは併用群のみであったことは、従来の肥満治療に薬物療法としてGLP-1受容体作動薬を加えることの有用性を示唆していると考えられる。ただし安全性については、リラグルチド群において心拍数上昇と胆石症が併用群より多く認められており注意が必要である。また本試験はデンマークで実施された試験であり、日本人を対象にしていない点についても留意したい。 日本では現在のところ、GLP-1受容体作動薬の保険適用は2型糖尿病に限られており、非糖尿病肥満症に対しては適応外となっている。また自由診療での処方について、日本糖尿病学会は2020年7月9日に『GLP-1受容体作動薬適応外使用に関する日本糖尿病学会の見解』を発表している2)。一部引用すると、「我が国において2020年7月時点で、一部のGLP-1受容体作動薬については、健康障害リスクの高い肥満症患者に対する臨床試験が実施されていますが、その結果はまだ出ていません。したがって、2型糖尿病治療以外を適応症として承認されたGLP-1受容体作動薬は存在せず、美容・痩身・ダイエット等を目的とする適応外使用に関して、2型糖尿病を有さない日本人における安全性と有効性は確認されていません」と記されている。以前に本連載第1365回のセマグルチドの臨床試験(STEP 3)のコメントでも述べたが、リラグルチドについてもセマグルチドと同様に、日本人の非糖尿病肥満症を対象とした臨床試験で安全性や有効性が確認されれば、肥満症の治療の選択肢となる可能性があると考えられる。

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BNT162b2(コミナティ筋注)のReal-World Settingにおける予防効果はなぜ国/地域によって異なるのか?(解説:山口佳寿博氏)-1400

 mRNAワクチンであるBNT162b2(以下、ワクチン)の第III相試験が終了した後、real-world settingでの実際の予防効果が、ワクチン接種が早期に開始された中東諸国(イスラエル、カタール)、英国、米国などから相次いで報告されている。各国で報告された予防効果は、必ずしも一致せず背景因子に何らかの差が存在するものと考えられる。本論評では、Angel氏らの論文(Angel Y, et al. JAMA. 2021 May 6. [Epub ahead of print])を基礎としながら、なぜ、各国からの報告でワクチンの予防効果に差を認めたのか、その原因について考察する。Angel氏らは、2020年12月20日~2021年2月25日の2ヵ月の間にワクチンを2回接種したイスラエルの医療従事者を対象(接種者:5,517人、非接種者:757人)として2回目ワクチン接種後7日以上経過した時点での有症候性感染、無症候性感染に対するワクチンの予防効果を検討した。その結果、有症候性感染に対する予防効果は97%、無症候性感染に対する予防効果は86%であることが示された。一方、Dagan氏らは、ほぼ同じ時期(2020年12月20日~2021年2月1日)にワクチンを接種したイスラエルの一般住民を対象(接種者と非接種は同数で各59万6,681人、総数はイスラエルの総人口の13%に相当)とした解析で、2回目のワクチン接種後7日以上経過した時点での有症候性感染に対する予防効果が94%、無症候性感染を含む感染全体に対する予防効果が92%、入院予防効果が87%、重症化予防効果が92%であると報告した(Dagan N, et al. N Engl J Med. 2021;384:1412-1423.)。対象者数、従事する仕事の内容に差を認める両解析ではあるが、最も信頼できる有症候性感染予防効果に関しては2つの論文でほぼ同じ値が報告された。この時期のイスラエルでは、従来株(D614G株)から英国株(B.1.1.7)に蔓延ウイルスの置換が進んでいた時期で、上記の2つの論文は、従来株と英国株が混在した状況下でのワクチンの有効性を示したものだと判断できる。この予防効果は、従来株が主流を占めた2020年の夏から秋にかけて施行されたワクチンの第III相試験によって示された予防効果(95%)とほぼ同じであり(Polack FP, et al. N Engl J Med. 2020;383:2603-2615.)、英国株に対するワクチンの予防効果は従来株に対するそれと同等であると結論できる。 英国株が主体を占めた英国からの報告では、80歳以上の高齢者にあって、有症候性感染に対するワクチン2回接種後の予防効果は89%であり、年齢と無関係にワクチンの予防効果はほぼ維持されることが判明した(Bernal JL, et al. BMJ. 2021;373:n1088.)。 カタールでは、2021年3月31日までに26万5,410人が2回目のワクチン接種を終了した。この時期、カタールを席巻していたウイルスは、44.5%が英国株、50%が南アフリカ株(B.1.351)であり、同じ中東のイスラエルとは異なったウイルス分布を示していた。このような状況下で、Abu-Raddad氏らは英国株、南アフリカ株に対するワクチンの予防効果を検証した(Abu-Raddad LJ, et al. N Engl J Med. 2021 May 5. [Epub ahead of print])。ワクチン2回接種後14日以上経過した時点での英国株の有症候性感染に対する予防効果は89.5%、南アフリカ株の有症候性感染に対する予防効果は75%で、南アフリカ株に対するワクチンの予防効果は英国株に対する予防効果より14.5ポイント低いことが示された。この結果は、南アフリカ株が液性免疫回避変異を有し(山口. J-CLEAR論評-1381, 2021 April 28)、ワクチン接種後のウイルス中和作用を抑制したことが原因の一つであることを示唆する。 2020年12月17日~2021年3月20日の間に米国で施行されたワクチン予防効果に関する検討では(2回接種:2,776人、1回接種:3,052人、非接種:2,165人)、有症候性感染に対する予防効果が84%、無症候性感染に対する予防効果が72%であることが示された(Tang L, et al. JAMA. 2021 May 6. [Epub ahead of print])。これらの値はAngel氏らがイスラエルから報告した値に比べ13~14ポイント低い。米国において蔓延しているウイルスの種類は複雑で、米国CDCは、2021年4月30日現在、米国全土で英国株、米国株(B.1.427/429)、ブラジル株(P.1)、南アフリカ株と多数の変異ウイルスが混在して流布していると報告した(CDC COVID-19 Vaccine Breakthrough Case Investigations Team. MMWR; Vol. 70, 2021 May 25)。これらの変異ウイルスの多くは、ワクチン接種によって形成される中和抗体に対して抵抗性を有し、ワクチンの予防効果を低下させる(山口. 日本医事新報 2021;5053:32-38)。 以上のように、ワクチンの予防効果は国によって異なり、その地域に流布しているウイルスの種類が主たる規定因子として作用する。それ故、いかなるウイルスが蔓延しているかを念頭に置いて各国から報告された予防効果に関するデータを読み解く必要がある。

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キャリアを進める上で不可欠な推薦状、米国人の評価は日本よりシビア?【臨床留学通信 from NY】第21回

第21回:キャリアを進める上で不可欠な推薦状、米国人の評価は日本よりシビア?こちらニューヨーク州では、コロナ陽性者が1日5,000人くらいであった1ヵ月前に比べ、2,000人台まで減少してきました。そして5月16日現在、12歳までワクチン接種が可能になっていますが、打ちたがらない人も少なくないようで、接種率は思うように上がっていないのが実情です。そのため、ワクチン接種者に対し、ハンバーガーショップShake Shackのフリーポテトサービスや、Krispy Kreme Doughnutsのフリードーナッツサービスなど、あの手この手の優遇施策が取られているようです。さて、こうした状況下ですが、今年のフェロー候補者は現在、7月中旬までに出さなければならないアプリケーションの書類整理に追われています。私もコロナ禍の中、去年同じプロセスを経験しました。フェローのマッチングの書類は基本的にはレジデントの時と同じです。重要なのは推薦状4通で、そのほかにもCurriculum Vitae(履歴書)の充実、そしてPersonal Statement(なぜ自分がその道のフェローになりたいか、その後目指すゴールは、など)の作成があります。レジデントのマッチングにおいては、日本国内で働いていると、どうしても米国からの推薦状を得にくいことが不利になります。あらゆる手段で米国の病院の指導医からオブザーバーシップ等で推薦状を作ってもらうほか、海軍病院に勤務して推薦状をもらうなどの方法があります。ただ、いったんレジデントに入ってしまうとその先の心配はありません。大事なのは、どのような内容を誰からもらうかです。スケジュールとしては、レジデント3年目早々にアプリケーションを揃えなければいけないため、実質2年しか準備期間がありません。まず、内科のプログラムディレクター(PD)に作成してもらう書類ですが、このPDレターをいかに良い内容にしてもらうかが最も重要です。例えば普段の病棟業務も、指導医からの評価、インターン(1年目)であれば、2年目もしくは3年目のレジデントとの相互評価になります。日本と違ってweb basedの指導医からは実名ですが、レジデント同士は匿名の評価なので、悪いことを書かれると、おのずとPDからのレターのレベルも下がってしまいます。しかし、そこは日本人の勤勉さで日々真面目に働いていれば、とくに問題になることはありません。また年に1度、7~8時間ほど掛けてACP(American College of Physicians)の模試を受けるのですが、この点数も良いに越したことはないので、試験直前はMKSAP18で勉強しておきました。これは内科専門医試験の勉強にも使える教材ですが、内容は日本の専門医試験より格段に難しいです。私自身としては、真面目に働いてきたつもりで、模試の点数も悪くはなかったので、PDレターはStrongという評価だったようです(候補者には非公開で推薦者がウェブ上にアップロードするので、最後までレターの内容はわからない仕組みです)。参考1)https://pubmed.ncbi.nlm.nih.gov/33987794/2)https://www.kinpodo-pub.co.jp/book/1806-8/Column画像を拡大するCOVID-19患者約9,500例の患者のデータを使用し、回復期血漿についてRで解析した論文が先日オンラインとなりました1)。結果はeven、RCTの結果に沿う形となりました。昨年は入院時の血清antibodyが陰性なら全員に使用していましたが、現在、私の病院では、high titerを免疫不全の場合のみ、と限定されています。今回2,000万行を超えるデータを扱う解析のためにRを一から勉強したのですが、この本2)が大変参考になりました。お勧めです。

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「シグマート」の名称の由来は?【薬剤の意外な名称由来】第54回

第54回 「シグマート」の名称の由来は?販売名シグマート®錠2.5mgシグマート®錠5mg※シグマート注は錠剤のインタビューフォームと異なるため、今回は情報を割愛しています。ご了承ください一般名(和名[命名法])ニコランジル(JAN)効能又は効果狭心症用法及び用量ニコランジルとして、通常、成人1日量15mgを3回に分割経口投与する。なお、症状により適宜増減する。警告内容とその理由該当しない禁忌内容とその理由(原則禁忌を含む)(次の患者には投与しないこと)ホスホジエステラーゼ 5 阻害作用を有する薬剤(シルデナフィルクエン酸塩、バルデナフィル塩酸塩水和物、タダラフィル)又はグアニル酸シクラーゼ刺激作用を有する薬剤(リオシグアト)を投与中の患者※本内容は2021年6月2日時点で公開されているインタビューフォームを基に作成しています。※副作用などの最新の情報については、インタビューフォームまたは添付文書をご確認ください。1)2020年2月改訂(第11版)医薬品インタビューフォーム「シグマート®錠2.5mg・5mg」2)PLUS CHUGAI:製品・安全性

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第60回 スギ、亀田、セコム…。“ずる賢い”医療者たちの“抜け駆け”接種で垣間見えた病院経営のダークサイド

“抜け駆け”ワクチン接種で大騒ぎこんにちは。医療ジャーナリストの萬田 桃です。医師や医療機関に起こった、あるいは医師や医療機関が起こした事件や、医療現場のフシギな出来事などについて、あれやこれや書いていきたいと思います。先週は神宮球場にセ・パ交流戦のヤクルト−日ハム戦を観戦に行って来ました。ヤクルト球団に勤める友人に頼んで5,000人限定のチケットを確保、友人との2年ぶりのプロ野球観戦が実現しました。小雨降る中、カッパ、マスク、飲酒なしの観戦は、なかなか辛いものがありましたが、入団2年目、星稜高校出身の奥川 恭伸投手の好投を間近で観ることができ、満足の一日でした。観戦後、外苑前で一杯、と思ったのですが、当然ながらどこの飲食店もやっておらず、空きっ腹のまま現地解散になったのは少々残念でした…。さて、東京や大阪など9都道府県に出されていた緊急事態宣言が6月20日まで延長となりました。東京都、京都府、大阪府、兵庫県は4月25日からですから、実に2ヵ月近く緊急事態宣言下にあることになります。各地の新規陽性者数が引き続き高い水準であること、関西圏や北海道などで病床逼迫が続いていること、インドで発生した変異株の流行が懸念されること、などが延長の理由とされています。そんな中、医療従事者に続き、65歳以上の高齢者のワクチン接種が遅々として、ではあるものの進んでいます。予約電話がつながらない、高齢者には到底できないと思われるインターネット予約の煩雑さなどが話題となっていますが、まあ新しい試みには困難が付きものです。高齢者以外の一般人が打つころには、もう少しスムーズに予約ができるシステムになっていることを願うばかりです。今回は、高齢者接種が始まってから大騒ぎとなった”抜け駆け”ワクチン接種について考えてみたいと思います。スギ薬局を経営するスギホールディングス会長夫妻による地元・愛知県西尾市での”抜け駆け”接種未遂や、いくつかの市町村の首長の接種が話題となりましたが、先々週は亀田総合病院、先週はセコム医療システムの”抜け駆け”接種が週刊誌やTVなどで報道されました。ただ、それぞれの“抜け駆け”の意味合いや悪質性は微妙に異なっているようです。医療従事者よりVIPを優先した亀田総合病院千葉県鴨川市の医療法人鉄蕉会・亀田総合病院の”抜け駆け”接種は、週刊文春の5月27日号(5月20日発売)でスッパ抜かれました。同誌の報道によれば、東証一部上場のシステム関連会社、オービックの代表取締役会長夫妻(共に80歳代、東京都大田区在住)が、亀田総合病院に割り当てられた医療従事者枠の新型コロナウイルス・ワクチンを4月に接種していたとのことです。会長夫妻が接種した時点で、同病院の医療従事者の接種は完了していませんでした。おそらく、同病院の従業員によるタレコミで週刊文春が動いたのでしょう。同誌によれば、会長夫妻は同病院にとってのVIPであり、亀田医療大学の開学に際しての寄付など、毎年多額の寄付を行っているとのことです。会長夫妻への接種を勧め、医療従事者用のワクチンの使用を決めたのは、鉄蕉会理事長の亀田 隆明氏とされています。亀田総合病院は週刊文春に対し書面で「ご夫妻には亀田医療大学設立当初から理事にもなっていただき、以来個人として寄付をいただき何とか経営が成り立っています。(中略)ご夫妻の年齢を考慮し、早めのワクチン接種は不可欠と判断しました。(中略)当院職員の接種希望者全員分のワクチン確保の目途が立った上で、余剰分を使用しています。当院配布分の『対象となる医療従事者等』の枠を使用しました」と回答していますが、鴨川市以外の住民に、医療従事者用を自院で働くスタッフよりも先に打つのは明らかにアウトですね。なお、この件よりも前に発覚したスギ薬局の会長夫妻の接種未遂は、会長夫妻側から西尾市への強固な要請があったということです。夫妻は薬剤師の免許は持っているようですが現場には出ていないわけですから、こちらもアウトですね。亀田が位置する医療圏の高齢化、人口減は深刻さて、私は記者時代に何度も亀田総合病院を取材し、理事長の亀田氏にも取材を行ったことがあります。週刊文春は、亀田総合病院が、米週刊誌Newsweekが患者満足度などを基に毎年発表している「World's Best Hospitals 2021」で国内第3位にランクインしたことや、亀田氏が、2019年『カンブリア宮殿』(テレビ東京)に「革新経営者」として登場した、といった“明”の部分に触れていますが、地元の地銀や都銀などからの巨額な借り入れの存在や、医療以外の事業の失敗といった“暗”の部分は書かれていません。亀田氏はまだ副理事長だったバブル時代、関連企業で千葉県・幕張に「ホテルフランクス」を開業、ホテル事業に乗り出しましたが、結局失敗し、ホテルは売却に至っています。「革新経営者」は言い過ぎのような気もします。現在、亀田総合病院が位置する医療圏の高齢化や人口減は深刻で、病院経営にも少なからぬ影響を及ぼしているでしょうし、成田空港に近いことから力を入れていたメディカルツーリズムもコロナで開店休業状態でしょう。従業員のタレコミのリスクを負い、ルールを曲げてまでVIP(いわゆるパトロン)のワクチン接種を敢行しなければならないほどに、医療法人鉄蕉会の経営は苦しいのかもしれません。セコム役員が提携先の病院で接種と報道もう一つニュースになった“抜け駆け”接種は、セコムの常務で子会社・セコム医療システムの取締役会長である布施 達朗氏によるものです。5月21日、TBS(JNN系列)は警備大手セコムの役員である布施氏が、提携先の病院で“医療従事者向け”の新型コロナワクチンを接種していた、と報じました。この報道によれば布施氏は、千葉県松戸市の医療法人誠馨会・新東京病院で、3月13日と4月1日の2回、医療従事者向けに優先的に割り当てられたワクチンを接種したということです。JNNの取材に対し、セコム医療システムは「3月初旬に新東京病院から『ワクチンに余剰が出た』として、接種のお誘いを受けた」「布施会長は医師と席を同じにする機会も多く、接種の必要があるとの病院側の判断だったが、軽率であり、お断り申し上げるべきだった」とコメントしたとのことです。また、報道では、新東京病院では、ほかにも病院職員ではない取引先など、少なくともおよそ80人が医療従事者向けワクチンの接種を受けたとされています。新東京病院は「セコムの病院」このケース、亀田と似ているようで構造はまったく違います。JNNの記者はその点もきちんと報道すべきだったと思いますが、気がついていなかった可能性もあります。報道では、ワクチンを接種したのは「提携先の病院」とされていますが、新東京病院は「セコムの病院」であり、布施氏は自分が“経営する”病院でワクチン接種を行ったのです。医療関係者なら既知のことだと思いますが、セコムは「提携病院」と称して多くの病院を実質的に経営しています。セコム医療システムはセコムのさまざまな医療事業を束ねる会社であると同時に、病院経営を行う会社でもあります。その先駆けは東京都世田谷区にある久我山病院で1992年から経営に当たっています。その後も経営が傾いたり、経営者が手放したりした病院などに支援の手を差し伸べてきました。その経営スキームはさまざまですが、基本、セコムが言う「提携」とは、債務保証を含む経営支援であり、土地や建物をセコムが賃貸したり、医療機器などをセコムの関連会社が販売・リースをしたりすると共に、医療法人に経営スタッフを送り込む、という仕組みになっています。かねてから循環器系が強かった新東京病院は、2006年にセコム医療システムの提携病院となり、2008年に前から提携法人であった千葉県の医療法人誠馨会が吸収し、現在に至っています。なお、セコムの提携医療機関はセコム医療システムのサイトで見ることができます。病院については現在、北海道から兵庫まで20病院が提携先となっています。札幌で有名な手稲渓仁会病院、あの長嶋 茂雄氏もリハビリをした東京都渋谷区の初台リハビリテーション病院も提携医療機関です。アウトとセーフの間、グレーの“抜け駆け”そう見てくると、「ほかにも病院職員ではない取引先などの少なくともおよそ80人が医療従事者向けワクチンの接種を受けた」というのは、病院に出入りするセコムの関連会社の社員たちがワクチンの接種を受けた、と考えられなくもありません。善意で解釈すれば、関東地区の提携病院の中の基幹病院とも言える新東京病院でセコムの関連社員たちをまとめて受けさせ、出入りする病院で感染したり感染させたりすることを予防するのが目的であったとも考えられます。市町村の首長が優先接種の際に語る理由、「私は病院の管理者だから」というのと同じロジックです。新東京病院のホームページには「一部報道につきまして」として、今回の件について中村 淳病院長のお詫びの文章が掲載されています。そこでは「不当又は軽率な新型コロナワクチン接種はしておりません」として、「報道の一部にありました『非職員』というのは派遣業務、委託業者等で病院内部に頻回に出入りし、医療機関としての業務に携わっている者であり、患者さまにも接触する可能性のある方々です。医療従事者等に含まれうる非職員らを守るためにワクチンを接種したのではなく、あくまで病院内部で入院しておられる患者さまを守るために、通常医療を適正に提供するために」接種した、と弁明しています。他の病院では、クラークや清掃担当、そして首長も医療従事者として接種を受けているのですから、この接種はアウトとセーフの間、グレーだったと解釈できます。もっとも布施氏が既に病院にはほとんど赴かない立場だったとしたら問題ですが。 観客制限なし、マスクなしでビール飲みまくりの米国球場それにしても、日本のこのワクチン接種を巡るドタバタ振りはなんでしょう。この日曜(5月30日)、NHKBSでMLBのヒューストン・アストロズ対サンディエゴ・パドレスを観戦していたのですが、ヒューストンにあるミニッツメイド・パークはもはや観客制限はなく、ほとんどの観客はマスクなしで、ビールを飲みまくり観戦していました(州によって基準は違うようですが)。米国疾病予防管理センター(CDC)はワクチンの接種を完了すれば、屋内外を問わず、マスクを着用しなくてもよいとする新たな指針を5月13日に発表(バスや飛行機、病院など混雑した屋内では引き続きマスク着用が求められる)、それがもう全米で浸透しつつあります。全米の1日の新規感染者はまだ2万人近くもいるのに、です。私も早くワクチンを打って、神宮球場恒例の「生ビール半額ナイター」に行きたい、と切に思ったこの週末でした。

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簡易懸濁法に合わせた薬剤への変更提案【うまくいく!処方提案プラクティス】第37回

 2020年の診療報酬改定において、簡易懸濁法導入時の薬剤師の活動が評価され、経管投薬支援料が新設されました。簡易懸濁法を導入するには、服薬管理の手順の確認や問題点の整理など薬剤師の積極的な介入が必要です。今回は、簡易懸濁法導入の際に処方提案を行った事例を紹介します。患者情報80歳、女性(グループホーム入居)基礎疾患アルツハイマー型認知症、高血圧症、慢性便秘症介護度要介護3服薬管理施設職員が管理障害自立度B-2認知症自立度IIIb処方内容 ※嚥下困難のため粉砕指示あり1.ドネペジル錠5mg 1錠 分1 朝食後2.ベニジピン錠4mg 1錠 分1 朝食後3.カンデサルタン錠4mg 1錠 分1 朝食後4.アトルバスタチン錠10mg 1錠 分1 朝食後5.エスゾピクロン錠1mg 1錠 分1 就寝前本症例のポイント介入時の患者さんは、日中は怒りっぽい様子で夜間も大声を出し、食事などの介護拒否があるなど介護負担が大きい状況でした。また、嚥下機能も低下していて、服薬時に錠剤がそのまま口中に残っていることが多いため、施設職員がすべて粉砕して、食事に混ぜて服薬させていました。この施設では同様の理由で粉砕指示となっている施設利用者が半数を占めていたため、介護負担が大きく、粉砕時の曝露に不安を覚える職員も多くいました。そこで、主任介護士と相談のうえで簡易懸濁法導入のための勉強会とデモンストレーションを実施したところ、溶解が容易な口腔内崩壊錠に統一して懸濁投与にしたいという意向を聞き取りました。提案前の整理内容1)興奮を抑えるためにドネペジルの中止を検討ドネペジル錠5mgを入居前から長期的(開始時期不明)に服用していて、賦活化作用から過覚醒状態となっている可能性があると考えました。患者家族・施設側としても本人らしさを失うような治療は望んでいません。そこで、ドネペジルの治療効果よりも薬物有害事象の問題が大きいと考え、暴力行為などが問題になる前にドネペジルの中止を提案することにしました。2)口腔内崩壊錠への変更を検討簡易懸濁法導入のため、降圧薬とスタチンを当薬局採用の口腔内崩壊錠へ変更することを検討しました。ベニジピン錠4mg→アムロジピン口腔内崩壊錠5mg 1錠カンデサルタン錠4mg→オルメサルタン口腔内崩壊錠20mg 1錠アトルバスタチン錠10mg→ピタバスタチン口腔内崩壊錠2mg 1錠3)エスゾピクロン錠からゾルピデム口腔内崩壊錠への変更を検討粉砕したエスゾピクロン服用時の苦味あるいは起床時まで残る苦味が、不機嫌や食事拒否に影響しているのではないかと考えました。エスゾピクロンはゾピクロンと比較して苦味が軽減した薬剤ですが、依然として苦味を感じる患者は多いです1)。そこで、短時間作用型薬剤かつ口腔内崩壊錠のあるゾルピデムを提案することにしました。処方提案と経過訪問診療に同行し、ラウンド前の会議で医師に上記の提案を直接伝えたところ、1)のドネペジルの件は介護士との協議後に中止の承認を得ました。2)の口腔内崩壊錠への変更についても承認いただき、変更後のバイタル推移や患者さんの状況を慎重に確認していくことになりました。なお、事前に勉強会を行っていたこともあり、介護士の簡易懸濁の手技に問題はなく、患者さんからも好意的に受け入れられました。3)の提案については、エスゾピクロンの苦味が不機嫌や食事拒否につながるのは意外な悪影響だと注目され、変更して様子を見るという条件で承認を得ることができました。変更して1週間後には患者さんの易怒性や介護拒否はなくなり、介護負担も減少したことが介護士との会話で確認できました。血圧も乱れることなく140/80台で推移しています。肝心の服薬管理も簡易懸濁法導入により、粉砕・開封・食事への混入時の施設職員への曝露や薬剤ロスを減らすことができました。1)日病薬誌. 2017;53:192-196.

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MSのB細胞を標的とする治療薬発売/ノバルティス ファーマ

 ノバルティス ファーマ株式会社は、多発性硬化症(以下「MS」)に対してわが国で初めてのB細胞を標的とする治療法であるオファツムマブ(商品名:ケシンプタ皮下注 20mgペン)を発売した。 MSは、ミエリンの損傷、脳、視神経および脊髄の機能障害を特徴とする中枢神経系の慢性炎症性疾患。わが国のMS患者数は約1万5千人とされ、年々増加している。また、発症のピークは20歳代で、女性に多い疾患。MSは、再発期と寛解期を繰り返す再発寛解型MS(RRMS)として経過し、半数は次第に再発の有無にかかわらず病状が進行する二次性進行型(SPMS)に移行する。進行期に移行すると日常生活に影響を及ぼす不可逆的な身体的障害が徐々にみられるようになる。また、認知機能障害が進み、雇用に影響をもたらすこともあり、日常生活において、次第に家族のサポートが必要となることから、進行の症状は患者のみならず家族の社会生活にも少なからず影響を与える指定難病である。日本初のB細胞を標的とした治療 今回発売されたオファツムマブは、ペン型デバイスを用いて月1回皮下投与で治療可能な完全ヒト抗CD20モノクローナル抗体で、主にリンパ節のCD20陽性B細胞表面に結合することにより、B細胞の融解および減少を誘発する、国内で初めてのMSに対するB細胞を標的とする治療法。B細胞はMSの障害進行の原因となる炎症性サイトカイン産生やT細胞の異常活性化を促すため、B細胞の除去がMSの効果的な病態修飾ならびに優れた臨床的有効性の発現につながると考えられている。また、B細胞は、MS病態における初期から進行期に至る一連の臨床経過ステージにおいて関与が示唆されていることから、幅広い患者に対して治療選択肢となることが期待されている。製品概要製品名:ケシンプタ皮下注 20mgペン一般名:オファツムマブ効能・効果:下記患者における再発予防および身体的障害の進行抑制再発寛解型多発性硬化症疾患活動性を有する二次性進行型多発性硬化症用法・用量:通常、成人にはオファツムマブ(遺伝子組換え)として1回20mgを初回、1週後、2週後、4週後に皮下注射し、以降は4週間隔で皮下注射する。製造発売承認日: 2021年3月23日発売日:2021年5月24日薬価:20mg 0.4mL 1キット:230,860円製造販売元:ノバルティス ファーマ株式会社

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新型コロナ感染の後遺症リスクが高い人の特徴/BMJ

 新型コロナウイルス感染によって後遺症が出現することは多数報告されているが、重症度によって異なるのか、どんな人に起こりやすいのかなど具体的なことは不明だ。そこで、ユナイテッド・ヘルスグループOptumLabsに所属するSarah E. Daugherty氏らが新型コロナウイルス感染症の急性期後(回復期・慢性期)の後遺症発症リスクを調べた結果、「50歳以上」「既往あり」「新型コロナで入院」に該当する患者が最もリスクが高くなることを明らかにした。一方で、メンタルヘルスなどのいくつかの後遺症リスクは、年齢や既往歴の有無に関係なく増加することも示唆した。BMJ誌2021年5月19日号掲載の報告。 研究者らは、18~65歳における新型コロナウイルス感染症の回復期・慢性期に偶発的な後遺症を発症する超過リスクと相対危険度を調べるため、2019年1月から新型コロナウイルス感染症の診断日まで継続的に健康保険プランに登録されていた18〜65歳について後ろ向きコホート研究を行った。対象者を傾向スコアマッチングで調整後、3群(2020年群[新型コロナの診断がなかったもののPCR陽性または2020年に新型コロナで入院した18~65歳]、2019年群[2020年のパンデミック時に医療サービスの利用減少で発生する可能性のある確認バイアスを説明するために作成したグループ]、ウイルス性下気道疾患の既往群[過去にインフルエンザ、急性気管支炎などを発症した18~65歳])と比較し、新型コロナ急性感染後4ヵ月の超過リスクとハザード比を算出した。 主な結果は以下のとおり。・対象者の14%(2万7,074例/19万3,113例)は、回復期・慢性期に治療を要する1つ以上の新たなタイプの後遺症があり、その割合は2020年群よりも4.95%高かった。・後遺症リスクは、50歳以上ではあらゆる症状において最も高かった。一方、18 ~ 34歳の若年成人では高血圧、不整脈、凝固亢進状態、記憶障害、糖尿病、疲労などが、いくつかの条件でわずかではあるが有意に上昇した(すべてのp<0.001)。メンタルヘルスを発症するリスクは、年齢に関係なく有意に増加した (相互作用のp=0.35)。・新型コロナウイルス感染に起因する超過リスクは、急性期から4ヵ月後の診断で100人あたり0.02~2.26と低かった(すべてのp<0.001) 。 研究者らは、「新型コロナウイルス感染の回復期・慢性期において、ほかのウイルス性疾患ではあまり見られない特定のタイプの後遺症を含む、臨床的に新しい後遺症を発症する過剰なリスクが示され、これは医療計画にも影響する」としている。

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日本の小児期自閉スペクトラム症に伴う易刺激性に対するアリピプラゾールの52週間市販後調査結果

 大塚製薬のYuna Sugimoto氏らは、日本の実臨床現場における小児自閉スペクトラム症(ASD)患者の易刺激性に対するアリピプラゾールの安全性および有効性について、市販後調査のデータを用いて評価した。BMC Psychiatry誌2021年4月22日号の報告。 本市販後調査は、52週間の多施設プロスペクティブ非介入観察研究として実施された。6~17歳のASD患者に対し、実臨床下でアリピプラゾール1~15mg/日を投与した。 主な結果は以下のとおり。・対象患者510例におけるアリピプラゾールの治療継続率は、168日(24週)目で84.6%、364日(52週)目で78.1%であった。・副作用が認められた患者は、116例(22.7%)であり、主な副作用は、傾眠(9.4%)、体重増加(3.3%)であった。・4週目における異常行動チェックリスト日本語版(ABC-J)の過敏症サブスケールスコアのベースラインからの変化量は-5.7±6.8(288例)であった。・重回帰分析では、注意欠如多動症の症状を併発した患者においても、エンドポイントのABC-J過敏症サブスケールスコアに影響は認められなかった。・24週目における子供の強さと困難さアンケート(Strengths and Difficulties Questionnaire:SDQ)の総合的困難さスコアのベースラインからの変化量は-3.3±4.9(215例)、SDQの向社会的な行動スコアのベースラインからの変化量は0.6±1.7(217例)であった。 著者らは「実臨床下において、日本人小児ASD患者の易刺激性に対するアリピプラゾール治療は、長期的に忍容性が高く、有効な治療法であることが示唆された」としている。

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高齢患者の術後の記憶力低下、CABG vs.PCI/JAMA

 冠動脈バイパス術(CABG)または経皮的冠動脈インターベンション(PCI)による冠動脈血行再建術を受けた患者では、記憶力低下に関して、術式の違いによる差はないが、off-pump CABGはPCIと比較して、記憶力低下の割合が有意に高いことが、米国・カリフォルニア大学サンフランシスコ校のElizabeth L. Whitlock氏らの調査で示された。JAMA誌2021年5月18日号掲載の報告。HRSのデータを用いた後ろ向きコホート研究 研究グループは、CABGはPCIに比べ記憶力低下率が高いとの仮説を立て、これを検証する目的で後ろ向きコホート研究を行った(米国国立老化研究所などの助成による)。 解析には、米国のHealth and Retirement Study(HRS)の参加者で、1998~2015年の期間に、65歳以上の年齢でCABGまたはPCIを受けた患者のデータを使用した。血行再建術施行前の最長5年間と、施行後の10年間または死亡、脱落、2016~17年の受診までのデータがモデル化された。最終フォローアップは2017年11月だった。 主要アウトカムは、記憶力スコア(点数が高いほど複合的な記憶機能が良好)とした。記憶力スコアは、HRSで2年ごとに行われた認知検査スコアと代理人による認知報告の要約指標であり、1995年に72歳以上であったHRS参加者のzスコア(平均値0、SD 1)として標準化された。on-pump CABGが認知機能に有益な可能性 1,680例(施術時の平均年齢75歳、女性41%)が解析に含まれた。CABG群が665例(off-pump手術168例、on-pump手術497例)、PCI群は1,015例であった。 PCI群の記憶力低下率の平均値は、施行前が0.064記憶単位/年(95%信頼区間[CI]:0.052~0.078)、施行後は0.060記憶単位/年(0.048~0.071)であった(群内の変化:0.004記憶単位/年[-0.010~0.018])。また、CABG群の記憶力低下率の平均値は、施行前が0.049記憶単位/年(0.033~0.065)、施行後は0.059記憶単位/年(0.047~0.072)であった(群内の変化:-0.011記憶単位/年[-0.029~0.008])。 差分の差分法による両群間の記憶力低下の差の推定値は0.015記憶単位/年(95%CI:-0.008~0.038)であり、有意差は認められなかった(p=0.21)。 一方、off-pump CABG群では、PCI群と比較して、記憶力低下率が統計学的に有意に増加した(差分の差分法によるoff-pump CABG施行後の記憶力低下率増加の平均値:0.046記憶単位/年[95%CI:0.008~0.084])が、on-pump CABG群はPCI群に比べ有意な増加は示さなかった(差分の差分法によるon-pump CABG施行後の記憶力低下率の減速化の平均値:0.003記憶単位/年[95%CI:-0.024~0.031])。 著者は、「PCIとCABGで、晩年期の認知機能の変化率に有意差がなかったことは、血行再建の方法が、その後の認知機能の老化の強力な規定因子ではないことを示唆する。また、off-pump CABGはPCIに比べ長期的な認知機能が劣っていたことから、on-pump CABGで達成された、より耐久性に優れ完成度の高い血行再建が、認知機能に有益な影響を与えるのではないかとの仮説がもたらされた」としている。

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FDA、ソトラシブをKRAS G12C陽性肺がんに迅速承認

 米国食品医薬品局(FDA)は、2021年5月28日、RAS GTPaseファミリー阻害薬であるソトラシブを、KRAS G12C変異陽性の局所進行または転移を有する非小細胞肺がん(NSCLC)の成人患者に迅速承認した。 また、QIAGEN therascreen KRAS RGQ PCR キット(組織)および Guardant360CDx(血漿)をソトラシブのコンパニオン診断薬として承認した。 今回の承認は上記患者を対象とした、多施設非盲検単群臨床試験CodeBreaK100の結果に基づいたもの。有効性は124例の患者で評価された。患者は疾患進行あるいは許容できない毒性の発現まで、ソトラシブ960mg/日の投与を連日受けた。 主要有効性評価項目は、盲検化独立中央委員会評価の客観的奏効率(ORR)と奏効期間(DoR)であった。結果は、ORRは36%、DoR中央値は10ヵ月であった。一般的な副作用(20%以上)は、下痢、筋骨格痛、吐き気、疲労、肝毒性、咳であった。一般的な検査値異常(25%以上)は、リンパ球減少、ヘモグロビン減少、AST上昇、ALT上昇、カルシウム減少、アルカリホスファターゼ上昇、尿タンパク、ナトリウム減少であった。

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ワクチン接種で役立つ地方発の知恵/首相官邸・戸田市

 新型コロナウイルス感染症(COVID-19)の一般向けのワクチン接種が、全国的に始まり、軽微な不備はあるものの、現在は順調に進んでいる。 接種に際しては、会場設営、人口構成、医療者の分布など地域の個々の事情に応じた対応がなされている。 こうした状況の中で、首相官邸の「新型コロナウイルス感染症対策」の特設ページでは、一部の自治体だけでなく、他の自治体でも利用できる活動について収集したものを「ワクチン接種これいいね。自治体工夫集」としてまとめ、公開している。地域の状況に合わせて工夫する自治体の接種体制 工夫集は「医療従事者確保」「効率的な接種体制」「予約システム、円滑な予約体制」「大規模接種会場」の4つのパートに分かれ、各自治体の取り組みが紹介されている。【医療従事者確保】(研修医の活用や医師などのチーム編成接種会場の設置、潜在看護師の活用など)・集団接種会場への研修医の派遣(奈良県)・医師・歯科医師・看護師の「別動隊」による接種機会の拡大(神奈川県大和市)・潜在看護師の掘り起こし(滋賀県)【効率的な接種体制】(予約なしで地区ごとに接種、接種センター作り集中化、地域モデルの共有、医師が巡回して接種など)・地区ごとの集団接種(福島県相馬市)・ワクチンの集中管理(岡山県岡山市)・県内市町村のモデル事例の共有(長野県)・会場内医師巡回方式の導入(東京都調布市)【予約システム、円滑な予約体制】(独自のWEB抽選システムで申込受付)・予約抽選申込方式の導入(兵庫県加古川市)【大規模接種会場】(地元大学との連携やワクチン接種センターの設置、期間限定の高齢者接種センターの設置など)・県・市・国立大学の連携によるワクチン接種センターの開設(宮城県・仙台市)・空港・大学における大規模接種会場の設置(愛知県)・県営ワクチン接種センターの設置(群馬県)・大規模接種会場の設置(兵庫県神戸市)・県高齢者ワクチン接種センターの設置(埼玉県)いつあってもおかしくないワクチン接種のアクシデントはこれ! 埼玉県戸田市は、一般報道をもとにまとめたワクチン接種現場でのアクシデント事例集を作成し、市内の医療機関に配布した。この事例集は、ワクチン接種に携わる医療従事者向けにまとめられたもので、今後のワクチン接種活動での注意喚起を込め、同市の危機管理防災課が作成した。 アクシデント事例として「ワクチンの使用期限(6時間)の認識不足」、「保管・解凍・搬送に関する認識不足」「希釈・分注に関す認識不足」「バイアルの取り扱いに関する認識不足」「注射器の取り扱いに関する認識不足」「本人確認ミス」に分かれ、現在36項目の事例と原因が記載されている。 具体的事例として、「ワクチンに生理食塩水を注入する際、量を間違え使えなくなった。原因として調製方法がしっかりと伝わっていなかった」「中身が空である注射器を誤って接種した。原因として使用済みの注射器を廃棄せずにテーブルに置いてしまった」「集団接種会場で男性に1日2回接種した。原因として接種の案内係が男性の予診票を確認しなかった。接種した直後に誤りに気付いた」 などが記載されている。 いずれもどこの現場でも起りうる事例なので、先述の工夫集とともに今後の対策に役立てていただきたい。なお、首相官邸の工夫集、戸田市の事例集は今後も随時更新をしていく予定。

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皮膚がん再発率、広範囲切除術vs.モース手術vs.段階的切除術

 頭頸部皮膚がんの再発率について、術式による違いはあるのか。米国・インディアナ大学のPeter G. Bittar氏らはシステマティックレビューとメタ解析により、広範切除術(WLE)とモース顕微鏡手術(MMS)または段階的切除術の術後再発率を調べた結果、MMSまたは段階的切除術のほうがWLEと比べて再発率が低いことが示された。これまでに、異なる術式を比較した前向き試験は行われておらず、研究グループは各術式後の局所再発率を明らかにする目的で本検討を行った。Journal of the American Academy of Dermatology誌オンライン版2021年5月4日号掲載の報告。 研究グループは、PubMed、EMBASE、Web of Scienceを用いてシステマティックレビューを行い、頭頸部皮膚がんの手術後の局所再発率を報告しているあらゆる英語論文のケースシリーズ、コホート研究および無作為化試験を特定した。 メタ解析はランダム効果モデルを用い、各種の手術手技について、およびMMSと段階的切除のサブグループについて、加重局所再発率と信頼区間(CI)を算出し評価した。 主な結果は以下のとおり。・検索により、100本の論文原稿、1万3,998例の頭頸部皮膚がんを特定した。・1万3,998例のうち、WLEによる治療例が51.0%(7,138例)、MMSが34.5%(4,826例)、また段階的切除術は14.5%(2,034例)であった。・局所再発率は、MMSが最も低く0.61%(95%CI:0.1~1.4)であった。・次いで、段階的切除術が1.8%(95%CI:0.1~2.9)と続き、WLEは7.8%(6.4~9.3)であった。

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FDA、infigratinibを胆管がんに迅速承認

 米国食品医薬品局(FDA)は、2021年5月28日、FGFR2融合または他のFGFR2遺伝子再構成を有する既治療の局所進行または転移のある切除不能胆管がんにFGFR阻害薬infigratinibを迅速承認。FDAは同時にFoundation One CDxをinfigratinibのコンパニオン診断薬として承認した。 infigratinibの有効性は上記患者108例に対する多施設オープンラベル単群試験CBGJ398X2204試験で示された。患者はinfigratinib125mg/日を3週投与1週休薬の4週間サイクルで、疾患進行あるいは許容できない毒性の発現まで投与された。 主要有効性評価項目である全奏効率は23%(CR1例、PR24例)、奏効期間中央値は5ヵ月であった。一般的な有害事象は高リン血症、クレアチニン上昇、爪毒性、口内炎、ドライアイ、疲労、脱毛症、手掌・足底感覚異常症候群、関節痛、味覚障害、便秘、腹痛、口渇、まつげの変化、下痢、皮膚乾燥、食欲減退、視界のぼやけ、嘔吐などであった。

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インサイド・ヘッド(続編・その2)【意識はどうやって生まれるの?】Part 1

今回のキーワード舞台装置(バーチャルリアリティ)クオリア統合情報理論モニター装置(ワイプ画面)自己意識身体失認解釈装置(解説者)概念化意識はどうやって生まれるの?-脳の正体意識とは、主役ではなく観客であり、意思決定は脳活動の多数決であるという衝撃の事実が分かりました。それにしても、私たちはなかなかそう思えません。なぜなら、私たちの意識は、まさに自分が現実の世界を感じて、自分が自分であり、自分が決めている(自由意志はある)と確信してしまっているからです。それでは、私たちの意識はどうやって脳にそう思い込まされているのでしょうか?ここから、ライリーの頭の中の3つの装置から、脳の正体を解き明かし、意識がどうやって生まれるのかを見てみましょう。(1)舞台装置-「バーチャルリアリティ」によって現実の世界をそのまま認識していると思い込ませる5人の小人たちが常に見てるのは、感情操縦デスクの目の前にあるスクリーンです。よくよく見ると、まぶたの形をしています。また、小人たちは、ライリーに思い出してほしい記憶をそのつど思い出ボールからスクリーンに映し出し、重ね合わせます。つまり、ライリーが見ているのは、まぶたを通した外の現実そのものではなく、小人たちによってつくられた脳内のスクリーン(バーチャルリアリティ)であるということです。1つ目は、舞台装置です。意識が見ているのは、現実そのものではなく、脳がつくった舞台(バーチャルリアリティ)であるということです。この舞台装置によって、現実の世界をそのまま認識していると思い込まされています。つまり、私たちが、現実であると思って見ている世界は、実は脳がつくり出しているということです。私たちは、目でものをそのまま見ているのではなく、脳内の視覚野(後頭葉)の小さな小人たち(ニューラルネットワーク)が反応することで、すでにモデル化(学習)されたもの(脳内モデル)と同じ「コピー」を見ています。これは、実際に、さまざまな現象で実感することができます。たとえば、私たちは、夜に色鮮やかな夢を見ることがあります。その間は、あたかも現実の世界にいるように感じていますが、その世界は、完全に脳がつくり上げた疑似的な世界(バーチャルリアリティ)です。だまし絵(錯覚)もそうです。これは、「遠くのものは小さいはず」という遠近法の脳内モデルに影響されています。また、盲点は、月が17個分入るほどの大きさであるにもかかわらず、普段まったく気づかないのは、そのバーチャルリアリティ(VR)を、あたかも拡張現実(AR)のように補完して、盲点を埋め合わせる脳内モデルが働いていることが考えられています。ちなみに、色について言えば、赤と紫は、目に見える光波長の上限(赤外線)と下限(紫外線)の両極端です。しかし、この2つの色は私たちには近い色として感じられます。そのわけは、このどちらの色の果ての光波長にも網膜の細胞(錐体細胞)が反応しなくなるという生理的な特性としては共通しているからであると考えられています。この点で、色は、あくまで脳がつくりだしたものであることが分かります。逆に言えば、脳内モデルを学習していなければ、目に問題がなくても、脳で見えないという現象が起きます。これは、子ネコを縦縞の環境で育てる実験で確かめられています。子ネコを生後からずっと縦縞の模様の円筒の部屋に入れて育てます。首にはエリザベスカラーを付けて、ネコが自分の体を見えないようにします。すると、5ヵ月後に、さまざまな角度の線分に対しての脳内の視覚野の神経細胞の反応を調べたところ、垂直の角度に近ければ近いほどより多く反応する一方、水平の角度にはまったく反応しないという結果が出ました。そして、実際に、その子ネコは、横向きに置かれた棒切れにつまずいてしまうことから、縦長のものは見えても、横長のものは見ることができないことが考えられました。この点で、人間の赤ちゃんも、生まれたばかりだと、目の前のものがほとんど見えず、ほとんど聞こえず、痛みなどもほとんど感じないということが言えるでしょう。脳はどうやって見るか、どうやって聞くか、そしてどうやって痛がるかを学習する必要があると考えられています。なお、映画の演出上、ライリーは、生まれたてでも、ママとパパが見えて聞こえているように描かれています。一方で、たとえばデートで夕日を眺めるような生き生きとした感覚(クオリア)を体験する状況を考えてみましょう。これは、そのような現実を実際に体験しているのではなく、学習済みの脳(舞台装置)によってつくられたバーチャルリアリティにドキドキ感(新奇希求性)が追加された体験をさせられているだけであると言えるでしょう。逆に、この脳内の舞台装置は誤作動を起こす可能性があると考えれば、逆に生き生きとしていない、つまり現実感がない感覚(離人症)があるのも納得が行きます。そして、言葉に色や味を感じる共感覚、誰もいないのに声が聞こえてくる幻聴(統合失調症)、見えている世界が揺らぐ意識変容(せん妄)などの精神症状も、それほど不思議な現象ではないことが分かります。さらに、痛みは皮膚ではなく脳で感じていると考えれば、原因不明の痛みを訴える慢性疼痛(身体症状症)や、下肢切断後に下肢の痛みを訴える幻肢痛(ファントムリム)などの身体症状も不思議でないでしょう。ちなみに、先ほどご説明した脳の反応から意識に上がるまで0.3秒のタイムラグがあるのは、この脳内バーチャルリアリティという意識をつくるために、ニューラルネットワークがいったんつながり切るまでに時間がかかるからであると考えられています。これは、意識とは視床と大脳皮質の間のニューラルネットワークの情報が統合される状態であるからと考えられています(統合情報理論)。つまり、現実の世界を感じさせる舞台装置は、脳のある部位で生まれるのではなく、脳全体のネットワークで生まれるということです。なお、夢の詳細については、関連記事1をご覧ください。 次のページへ >>

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