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第279回 経口GLP-1薬orforglipronで体重が12%ほど減少~投資家落胆

経口GLP-1薬orforglipronで体重が12%ほど減少~投資家落胆1日1回服用の経口GLP-1受容体作動薬(GLP-1薬)orforglipron高用量が、72週間の第III相ATTAIN-1試験で太り過ぎか肥満の患者の体重を平均12.4%減らしました1)。orforglipronはLillyが開発しています。ATTAIN-1試験には高血圧症、脂質異常症、閉塞性睡眠時無呼吸症候群(OSA)、心血管疾患などの体重関連の持病を有している太り過ぎか肥満の成人3,127例が参加しました。先立つ第III相ACHIEVE-1試験は2型糖尿病患者を対象としましたが2)、今回のATTAIN-1試験に糖尿病患者は含まれません。ATTAIN-1試験のorforglipron投与群の被験者はまず全員が1mgを服用し、低(6mg)、中(12mg)、高(36mg)の3つ維持用量へと段階的に服用量を増やしました。orforglipron低、中、高用量の72週時点のベースライン時と比べた体重低下率はそれぞれ7.8%、9.3%、12.4%で、プラセボ群の0.9%低下を有意に上回り、試験の主要評価項目を達成しました。しかし競争が激しいGLP-1薬界隈では目標を達成しただけで十分とは限らず、今回の試験結果に投資家はかなり落胆したようで3)、Lillyの米国ニューヨーク証券取引所での株価は木曜日の取引で1割超下落しました。先立つ第II相試験でのorforglipron 36mg投与群の36週時点の体重は13.5%低下しました4)。第II相試験は今回の第III相試験と同様に糖尿病ではない太り過ぎか肥満の成人を募っています。現在の肥満薬市場を切り開いたNovo NordiskのGLP-1薬セマグルチドの経口剤は、64週間の第III相OASIS 4試験の解析で、多ければ16.6%の体重低下を示しています5,6)。そのような背景があって投資家の多くはATTAIN-1試験でorforglipron高用量群の体重は14~15%ほど減るだろうと期待していましたが、実際はその予想にほんの2%ばかり届きませんでした3)。糖尿病患者を募った先立つ第III相ACHIEVE-1試験に比べて安全性も若干不調なようで、10例に1例ほどの10.3%が有害事象のためにorforglipron高用量服薬を止めています。GLP-1薬につきものの胃腸症状はやはり多く、高用量投与群の4例に1例ほどの24%に嘔吐が生じました。そんなこんなでLillyの株価はだいぶ下落しましたが、過剰反応だと見る向きもあります。効果に関して議論はあるでしょうが、体重減少が2%ほど不足したばかりにorforglipronの需要に大した影響が出るかどうかは不明であり、今回の発表を受けてのLillyの株価下落は買い時だろうとアナリストの1人は言っています3)。ともあれLillyは今年中に世界の国々でのorforglipronの承認申請を始めます。Novo Nordiskのセマグルチド25mg経口薬による体重管理の開発はorforglipronに比べてだいぶ先行しており、今年2月に米国FDAにすでに承認申請されています5)。この5月初めまでにFDAはその承認申請を受理しており、審査結果は今年中に判明する見込みです7)。ちなみにATTAIN-1試験結果の発表を受けて、Novo Nordiskの株価は木曜日に7%ほど上昇しています。 参考 1) Lilly's oral GLP-1, orforglipron, delivers weight loss of up to an average of 27.3 lbs in first of two pivotal Phase 3 trials in adults with obesity / PR Newswire 2) Rosenstock J, et al. N Engl J Med. 2025 Jun 21. [Epub ahead of print] 3) Lilly's obesity pill lags Novo's Wegovy injection in key trial / Reuters 4) Wharton S, et al. N Engl J Med. 2023;389:877-888. 5) Novo Nordisk:Financial report for the period 1 January 2025 to 31 March 2025 6) Novo Nordisk:Investor presentation First three months of 2025 7) FDA accepts filing application for oral semaglutide 25 mg, which if approved, would be the first oral GLP-1 treatment for obesity / PR Newswire

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HER2+炎症性乳がん、術前アントラサイクリン上乗せは有用か?

 HER2陽性乳がんの術前療法にアントラサイクリンを追加することによるベネフィットは、無作為化臨床試験において示されなかったが、炎症性乳がんにおける有効性は明らかになっていない。HER2陽性の炎症性乳がんを対象とした後ろ向き研究の結果、術前療法でのアントラサイクリン追加は病理学的完全奏効(pCR)との関連は示されなかったものの、疾患コントロール期間の延長に寄与する可能性が示唆された。米国・テキサス大学MDアンダーソンがんセンターの岩瀬 俊明氏らによるBreast Cancer Research and Treatment誌オンライン版2025年8月2日号への報告。 2014~21年に、MDアンダーソンがんセンター、IBCネットワーク関連施設、ダナ・ファーバーがん研究所にて術前療法と胸筋温存乳房切除術を受けたHER2陽性原発性炎症性乳がん患者を対象に後方視的な検討が行われた。主要評価項目はpCR率、副次評価項目には、局所・領域再発までの期間(TLRR)、無イベント生存期間(EFS)、全生存期間(OS)が含まれた。単変量解析および多変量解析が、臨床的に関連する交絡因子を調整したうえで実施された。 主な結果は以下のとおり。・対象となった101例のうち、39例はドセタキセル+カルボプラチン+トラスツズマブ+ペルツズマブ併用療法(TCHP)を受け、62例はドセタキセル+トラスツズマブ+ペルツズマブ+ドキソルビシン+シクロホスファミド併用療法(THP-AC)を受けた。追跡期間中央値は3.02年であった。・pCR率は治療レジメン間で有意差を認めなかった(TCHP:48.7%vs.THP-AC:53.2%、p=0.659)。・年齢とエストロゲン受容体の状態で調整した多変量ロジスティック回帰分析において、pCR率と治療レジメンの間に関連はみられなかった。・一方、多変量Cox比例ハザードモデルでは、THP-AC群においてTLRR(ハザード比[HR]:0.279、95%信頼区間[CI]:0.102~0.765、p=0.0131)およびEFS(HR:0.462、95%CI:0.228~0.936、p=0.032)が有意に良好であったが、全生存期間(OS)には差を認めなかった。

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髄外病変を有する多発性骨髄腫、CAR-T細胞vs.二重特異性抗体

 多発性骨髄腫で骨髄外に悪性形質細胞腫瘍がある場合は髄外病変(EMD)と定義され、通常は予後不良である。今回、ドイツ・University Hospital of WurzburgのMaximilian J. Steinhardtらは、再発多発性骨髄腫に有効なCAR-T細胞療法(イデカブタゲン ビクルユーセル[ide-cel]、シルタカブタゲン オートルユーセル[cilta-cel])と二重特異性抗体療法(テクリスタマブ、トアルクエタマブ)のEMDへの効果を後ろ向きに評価した結果、CAR-T細胞療法が意味のあるベネフィットをもたらす可能性が示唆された。Blood Cancer Journal誌2025年7月30日号に掲載。 本研究では、ドイツの 3 つの大学病院でide-cel、cilta-cel、テクリスタマブ、トアルクエタマブによる治療を受けた、骨に隣接しないEMD患者80例を後ろ向きに解析した。 主な結果は以下のとおり。・すべての患者は複数の前治療歴があり、すべてのコホートにおいて5〜7ラインの治療歴(中央値)があった。患者の41%以上に高リスクの細胞遺伝学的プロファイルが認められた。cilta-cel、ide-cel、テクリスタマブを投与された患者の88%超はB細胞成熟抗原(BCMA)を標的とした前治療歴はなかった。・奏効率は、CAR-T細胞療法(cilta-cel:100%、ide-cel:82%)が二重特異性抗体療法(トアルクエタマブ:29%、テクリスタマブ:36%)よりも有意に高かった(p<0.0001)。・完全奏効率は、CAR-T細胞療法(cilta-cel:69%、ide-cel:41%)が二重特異性抗体療法(トアルクエタマブ:18%、テクリスタマブ:24%)よりも高かった(p=0.001)。・追跡期間中央値は12.2ヵ月で、無増悪生存期間中央値はcilta-celは未到達、ide-celは7.3ヵ月で、トアルクエタマブ(4.0ヵ月)やテクリスタマブ(2.6ヵ月)より有意に延長していた。

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インフルワクチン接種回数と認知症リスクが逆相関~メタ解析

 インフルエンザワクチン接種と認知症リスク低下との関連性については、一貫性のない結果が報告されており、この関連性は明確になっていない。台湾・Keelung Chang Gung Memorial HospitalのWen-Kang Yang氏らは、全人口および慢性腎臓病(CKD)、慢性閉塞性肺疾患(COPD)、血管性疾患などの認知症高リスク患者におけるインフルエンザワクチン接種と認知症リスクとの関連を評価するため、システマティックレビューおよびメタ解析を実施した。Age and Ageing誌2025年7月1日号の報告。 2025年4月6日までに公表された研究をPubMed、Embase、CENTRALよりシステマティックに検索し、ランダム効果メタ解析を実施した。バイアスリスクの評価には、ニューカッスル・オタワ尺度を用いた。 主な結果は以下のとおり。・8件のコホート研究より993万8,696人をメタ解析に含めた。・1件を除き、メタ解析に組み込んだ研究のバイアスリスクは低かった。・インフルエンザワクチン接種は、認知症高リスク患者において認知症発症リスクの低下と関連していたが、全人口においては関連が認められなかった(ハザード比[HR]:0.93、95%信頼区間[CI]:0.86〜1.01)。・高リスク患者においては、インフルエンザワクチン接種を2回以上受けると認知症発症リスクの低下との関連が認められた。【2〜3回接種】HR:0.84、95%CI:0.76〜0.92【4回以上接種】HR:0.43、95%CI:0.38〜0.48 著者らは「インフルエンザワクチン接種と認知症発症リスク低下との関連には、用量反応関係が認められた」と結論付けている。

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処方箋避妊法の無料化で、LARCが著増/BMJ

 処方箋に基づく避妊法は、多くの国でその費用がアクセスの障壁となっており、とくに最も効果的な避妊法とされる子宮内避妊器具や皮下避妊インプラントなどの長期作用型可逆的避妊法(long-acting reversible contraception:LARC)は、初期費用が高額なため利用度が顕著に低いとされる。カナダ・ブリティッシュコロンビア大学のLaura Schummers氏らは、同国ブリティッシュコロンビア(BC)州では無料で処方箋避妊法へのアクセスが可能となる公的保健医療サービスの導入により、使用者が好みの方法を選択できるようになったことでLARCの使用が著しく増え、ひいては処方箋避妊法全体の増加につながったと報告した。研究の成果は、BMJ誌2025年7月28日号に掲載された。無料でない他州と比較する分割時系列解析 研究グループは、BC州において処方箋を要する避妊法の使用を無料化する公的保健医療サービスを導入する施策の効果を評価する目的で、BC州を含むカナダの全10州で住民ベースの対照比較分割時系列解析(interrupted time series analysis)を行った(カナダ健康研究所[CIHR]の助成を受けた)。 2021年4月1日~2024年6月30日に、BC州で生殖年齢(15~49歳)の女性に調剤された処方箋医薬品について、他の9州を合わせた対照群、およびBC州に居住する年齢15~49歳の住民ベースの女性コホート(処方箋医薬品の調剤の有無を問わない集団、85万9,845人)と比較した。 本研究の介入として、2023年4月1日、BC州で処方箋に基づく避妊法の費用を全額、公的保険で支払う保健医療サービスが導入された。 避妊法の使用に関して5つの評価項目について検討した。(1)LARCの月間の調剤数、(2)LARCを含むすべての処方箋避妊法の月間の調剤数、(3)LARCを使用した生殖年齢女性の割合、(4)すべての処方箋避妊法を使用した生殖年齢女性の割合、(5)処方箋避妊法の使用者のうちLARC使用者の割合(LARCの市場占有率)。導入後15ヵ月でLARC調剤数が1.49倍に BC州におけるLARCの月間調剤数は、無料化施策導入前は、2021年4月の3,249件(95%信頼区間[CI]:3,066~3,391)から2023年3月には2,841件(2,616~2,945)へと、2年間で毎月17件(-30~-7)ずつ減少したが、無料化施策導入後、ただちにLARCの月間調剤数が1,050件(95%CI:942~1,487)に増え、その後は増加した状態が堅調に続いた。 BC州の施策導入から15ヵ月後(2024年6月)の月間LARC調剤数は、無料化施策がなかったと仮定した場合の予測値よりも1,273件(95%CI:963~1,698)多く、介入によって1.49倍(95%CI:1.34~1.77)に増加した。 一方、介入のなかった対照群では、BC州での施策導入の前後でLARC調剤数の水準と傾向に大きな変化はなかった。15ヵ月後のLARC市場占有率が1.9%上昇 BC州のLARCを含むすべての処方箋避妊法の月間調剤数は、施策導入15ヵ月後に、無料化施策がなかった場合よりも1,981件(95%CI:356~3,324)増え、介入によって1.04倍(95%CI:1.01~1.07)に増加した。 また、BC州の年齢15~49歳の女性85万9,845人のうち、2021年4月の時点で9.1%がLARCを使用していた。施策導入15ヵ月後の月間LARC調剤数は、無料化施策がなかった場合の予測値よりも1万1,375件(95%CI:1万273~1万3,013)多く、人口の1.3%(95%CI:1.2~1.5)に相当する数の増加を示した。 この施策導入により、15ヵ月後のBC州の生殖年齢女性の処方箋避妊法の使用率が導入前の傾向に基づく予測値よりも1.7%(95%CI:1.5~2.3)増え、15ヵ月後のLARCの市場占有率は1.9%(1.2~2.3)上昇した。 著者は、「大規模で多様な集団を対象に無料の避妊法を提供する施策は、処方箋に基づく避妊法の使用の増加をもたらし、最も効果的な方法への移行を促した」「人口レベルでの避妊法の使用とその選択に、費用は重要な影響を及ぼすと考えられる」「ほぼすべての処方箋避妊法の無料化により、使用者が好みの方法を選択できるようになったことが、LARCの使用が著しく増えた要因と思われる」としている。

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肥満・過体重の減量に、cagrilintide/セマグルチド配合薬が高い効果/NEJM

 肥満または過体重の成人において、プラセボと比較してcagrilintide/セマグルチド配合薬(以下、CagriSema)は、有意で臨床的に意義のある体重減少をもたらし、消化器系有害事象の頻度が高いものの多くは一過性で軽度~中等度であることが、米国・アラバマ大学バーミングハム校のW. Timothy Garvey氏らREDEFINE 1 Study Groupが実施した「REDEFINE 1試験」で示された。研究の成果は、NEJM誌オンライン版2025年6月22日号で報告された。22ヵ国の第IIIa相無作為化対照比較試験 REDEFINE 1試験は、非糖尿病の肥満または過体重の成人における固定用量のcagrilintide(長時間作用型アミリン類似体)とセマグルチド(GLP-1受容体作動薬)の配合薬による減量効果の評価を目的とする第IIIa相二重盲検無作為化プラセボ/実薬対照比較試験であり、2022年11月~2023年6月に22ヵ国で参加者を登録した(Novo Nordiskの助成を受けた)。 糖尿病がなく、BMI値30以上、またはBMI値27以上で少なくとも1つの肥満関連合併症を有し、減量を目的とする食事制限に1回以上失敗したと自己報告した成人を対象とした。 被験者を、CagriSema(各0.25mgで開始、4週ごとに増量して16週までに各2.4mgとし、これを維持量として52週間投与)、セマグルチド単剤(2.4mg)、cagrilintide単剤(2.4mg)、プラセボの皮下投与(週1回)を受ける群に、21対3対3対7の割合で無作為に割り付け68週間投与した。全例にライフスタイルへの介入を行った。 主要エンドポイントは、プラセボ群との比較におけるCagriSema群のベースラインから68週までの体重の相対的変化量と、5%以上の体重減少の2つであった。また、検証的副次エンドポイントとして、20%以上、25%以上、30%以上の体重減少について評価した。2つの単剤群との比較でも有意な減量効果 3,417例を登録し、2,108例をCagriSema群、302例をセマグルチド群、302例をcagrilintide群、705例をプラセボ群に割り付けた。全体の平均年齢は47.0歳、女性が67.6%で、白人が72.0%であった。ベースラインの平均体重は106.9kg、平均BMI値は37.9、平均ウエスト周囲長は114.7cmであり、最も頻度の高い肥満関連合併症は脂質異常症と高血圧症で、32.1%が糖尿病前症だった。 ベースラインから68週までの体重の推定平均変化率は、プラセボ群が-3.0%であったのに対し、CagriSema群は-20.4%と有意な減量効果を示した(推定群間差:-17.3%ポイント、95%信頼区間[CI]:-18.1~-16.6、p<0.001)。セマグルチド群の体重の推定平均変化率は-14.9%(-5.5%ポイント[-6.7~-4.3]、p<0.001)、cagrilintide群は-11.5%(-8.9%ポイント[-10.1~-7.7]、p<0.001)であり、いずれもCagriSema群のほうが有意に優れた。 また、5%以上の体重減少の達成割合は、プラセボ群の31.5%に比べCagriSema群は91.9%であり有意に高率であった(推定群間差:60.4%ポイント[95%CI:56.4~64.5]、p<0.001)。 20%以上の体重減少(53.6%vs.1.9%、p<0.001)、25%以上の体重減少(34.7%vs.1.0%、p<0.001)、30%以上の体重減少(19.3%vs.0.4%、p<0.001)の達成割合についても、CagriSema群はプラセボ群と比較し有意に優れた。 さらに、ベースラインから68週までの推定平均変化量は、ウエスト周囲長がCagriSema群-17.5cm、プラセボ群-4.0cm(p<0.001)、収縮期血圧はそれぞれ-9.9mmHgおよび-3.2mmHg(p<0.001)、SF-36の身体機能スコアは7.1点および3.6点(p<0.001)と、いずれもCagriSema群で有意に良好だった。これまでで最も高水準の減量効果 悪心、嘔吐、下痢、便秘、腹痛などの消化器系の有害事象の頻度が、プラセボ群(39.9%)に比べCagriSema群(79.6%)で高かったが、その多くが一過性で重症度は軽度~中等度であった。注射部位反応(12.2%vs.3.0%)と胆嚢関連障害(4.1%vs.1.0%)もCagriSema群で多かった。 重篤な有害事象(9.8%vs.6.1%)、恒久的な投与中止に至った有害事象(5.9%vs.3.5%)、恒久的な投与中止に至った消化器系有害事象(3.6%vs.0.6%)も、CagriSema群で多く発現した。同群で2例(自殺、原発不明がん)が死亡した。 著者は、「CagriSema群で観察された体重減少は、既存の減量介入でこれまでに達成されたものの中で最も高い水準にある」「プラセボ群に比べ同群では糖化ヘモグロビン値も改善しており、これはベースライン時に糖尿病前症であった集団における血糖値が正常化した患者の割合(87.7%vs.32.2%)に反映している」「同群では、体重減少が最大値に到達する前に血圧の改善が起き、68週まで持続しており、降圧の程度は降圧薬の臨床試験に匹敵するものだった」としている。

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免疫介在性炎症性疾患患者のCVDによる死亡率は、男性よりも女性の方が高い

 免疫介在性炎症性疾患(IMID)患者の心血管疾患(CVD)による死亡率は1999年から2020年にかけて低下したが、死亡率の男女差が依然として認められることを示したリサーチレターが、「Circulation: Cardiovascular Quality and Outcomes」に5月5日掲載された。 米クリーブランド・クリニックのIssam Motairek氏らは、米疾病対策センター(CDC)が提供している1999~2020年の複合死因(Multiple Cause of Death)データを用い、基礎疾患としてIMIDを有する患者のCVD関連死を特定し、死亡率の男女差を検討した。IMID関連死28万1,355件から、CVD関連死12万7,149件を抽出して分析した。 解析の結果、粗死亡率は、女性では10万人当たり1999年の3.9人から2020年の2.1人に、男性では1.7人から1.2人に低下した。年齢調整死亡率は、女性では10万人当たり3.3人から1.4人に、男性では2.3人から1.1人に低下した。CVDの死亡率に見られる典型的な男女差とは対照的に、研究期間全体を通して女性における死亡率が男性よりも有意に高かった(死亡率比1.5)。1999年から2020年にかけて死亡率は男女ともに有意に低下したが、一貫して女性の方が高く、この差は縮小しつつも持続し、追跡調査の最終年でも有意であった。コホート内の主な死因は虚血性心疾患および脳血管疾患であり、いずれもIMIDを有する女性に不均衡に影響を与えていた。 米ケース・ウェスタン・リザーブ大学およびクリーブランド・クリニックLerner College of Medicineの上席著者Heba S. Wassif氏は、「われわれの研究は、免疫介在性炎症性疾患の患者では心血管疾患が深刻な負荷となっており、特に女性に対し不均衡に影響を与えていることを浮き彫りにしている。診断時に加え、それ以降も定期的に心血管リスク因子をスクリーニングし、早期に対応することが極めて重要である」と述べている。

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早過ぎる子どものスマホデビューは心の発達に有害

 子どもの心身の健康を大切に思うなら、子どもがティーンエイジャーに成長するまではスマートフォン(以下、スマホ)は与えないほうが良いかもしれない。新たな研究で、18~24歳の若者のうち13歳未満でスマホを与えられた人では、自殺念慮、攻撃性、現実からの乖離感、感情調節困難、自己肯定感の低下などのリスクが高いことが示された。米Sapien LabsのTara Thiagarajan氏らによる詳細は、「Journal of Human Development and Capabilities」に7月20日掲載された。 Thiagarajan氏は、「われわれのデータは、早期からのスマホの所持と、それに伴うソーシャルメディアの利用が、成人期早期の心の健康とウェルビーイングに大きく影響することを示している」とジャーナルの発行元であるTaylor & Francis社のニュースリリースの中で話している。その上で、「当初は研究結果が強力であることに驚いた。しかし、よく考えてみれば、発達段階にある若い心は、その脆弱性や人生経験の少なさからオンライン環境からの影響を受けやすいというのは当然のことかもしれない」と述べている。 Thiagarajan氏らは今回、現代社会がメンタルヘルスに与える影響を評価することを目的としたグローバル・マインド・プロジェクト(Global Mind Project)の一環として、世界の10万人以上の若年成人のデータを分析した。参加者は、社会的、感情的、認知的、身体的なウェルビーイングの状態を示す「心の健康指数(Mind Health Quotient ;MHQ)」を評価するための質問票に回答していた。本研究では、1997~2012年に生まれ、幼少期からスマホとソーシャルメディアのある環境で育った「Z世代」に着目して解析を行った。 その結果、13歳になる前からスマホを所持していた若年成人は、13歳以降にスマホを持つようになった人と比べてMHQ(Mental Health Quotient)のスコアが低く、自殺念慮に加えて、攻撃性や現実からの乖離感、幻覚などの深刻な症状が多く報告されていた。こうした傾向は、スマホを所持し始めた年齢が低いほど顕著であった。例えば、5、6歳でスマホを持つようになった女性の約半数(48%)が自殺念慮を報告していたのに対し、13歳時からスマホを持ち始めた女性ではその割合は28%にとどまっていた。さらに、低年齢時からスマホを持っていた女性は、セルフイメージや自己肯定感が低く、自信がなく、感情面のレジリエンス(立ち直る力)も弱い傾向が認められた。一方、低年齢時からスマホを持っていた男性では、精神的な安定性や自己肯定感、共感力が低い傾向が見られた。 これらの結果の原因を探ったところ、低年齢からのスマホの所持と早期成人期のメンタルヘルス状態の悪化との関連の約40%は早期のソーシャルメディア利用により説明できることが示された。また、ネットいじめ(10%)、睡眠の乱れ(12%)、不良な家族関係(13%)などもメンタルヘルス悪化の要因として挙げられた。 Thiagarajan氏は、「これらの結果とともに、世界各国で初めてスマホを手にする年齢が13歳未満となっている現状を踏まえ、われわれは政策立案者に飲酒や喫煙と同様の予防的アプローチを採用することを強く要求する。具体的には、13歳未満でのスマホ利用の制限、デジタルリテラシー教育の義務化、企業の説明責任の徹底を求める」と提言している。 なお、Thiagarajan氏によると、フランス、オランダ、イタリア、ニュージーランドなどでは、すでに学校でのスマホ使用を禁止または制限しているという。また米国でも、州によっては学校でのスマホの使用を制限または禁止する法律が可決されている。

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第255回 「専門医シーリング」、医師の偏在解消に効いてる?-偏在是正と医師のキャリアを読み解く

お盆休みに入り、のんびり過ごされている会員の先生も多いかと思いますが、今回は医師の偏在を左右するお話についてお届けします。さて、「専門医シーリング」って聞くと当事者の専攻医や研修医以外には関係がない印象がありますが、実は医師の働き方や進路に直結する重要な制度です。最近の審議会資料をもとに、医師偏在やキャリア形成の今後を一緒にのぞいてみましょう。同じ診療科にどれだけ残る? 男女差が見える「生残率」最初は、7月24日に開かれた医道審議会医師分科会医師専門研修部会で示された「診療科別生残率」や「病院・診療所勤務医師の平均勤務時間」です。これらは厚生労働科学特別研究「専門研修の募集定員設定のための都道府県別・診療科別の医療ニーズの算出に係る研究」の結果から引用されており、各診療科の医師の労働時間、専門医としてどれくらい同じ診療科を続けられるかという興味深いものでした。ここで述べられている診療科別生残率とは、医籍登録から3年後をスタートにして、「この診療科に何年残っているか」を年ごとに追ったもので、医師のキャリア選択と定着の実態を示唆する重要な指標となります。男女別に比較すると、生残率には顕著な差が見られており、とくに女性医師の離脱率の高さが一部の診療科では顕著であることが読み取れます(図1、2)。図1 診療科別生残率(男性)画像を拡大する図2 診療科別生残率(女性)画像を拡大するまず、外科系診療科(外科、整形外科、脳神経外科など)では、男性の生残率が比較的高いのに対し、女性はキャリア早期から離脱する傾向があり、登録後5〜10年で大きく低下する傾向があります。これには、当該診療科の医師の長時間労働や当直の頻度、技術習得のハードルの高さなどが背景にあると考えられます。加えて、外科系は男性医師が多いことから、女性にとって目標となるようなロールモデルが乏しく、育児や家庭を抱えながらキャリアを継続する意欲が阻害される環境要因も影響していると考えられます。その一方で、皮膚科や眼科、小児科などでは男女の生残率に大きな差が少なく、むしろ女性の方が高くなる診療科もあります。これらの診療科は、比較的勤務時間が安定しており、子育てや家庭生活との両立が可能とされるため、女性医師にとって継続しやすい職場環境が整っている可能性があります。近年では女性医師の数自体が増加しており、女性向きの診療科を選択をする傾向をさらに強めていると考えられます。興味深いのは、内科も例外ではなく、男女差が見られる点です。女性は一定期間までは生残率が高いものの、10年以降に大きく減少します。これは、内科領域でも勤務時間や責任の重さが影響していることに加え、専門医取得後に勤務形態の見直しや転科、開業を選択するケースがあるためと考えられます。このような傾向を踏まえると、専門医シーリング制度を運用する際には、単に医師数の需給だけでなく、性別による定着率の違いを考慮することが不可欠であると思われます。とくに女性医師のキャリア継続支援(時短勤務や復職支援、当直負担軽減など)は、診療科ごとの医師数の安定供給を図る上で欠かせない政策的課題といえるでしょう。医学部定員と専門医シーリングの今後次は8月6日に開催された「医師養成過程を通じた医師の偏在対策等に関する検討会」の『医師の確保・偏在対策における医学部臨時定員の方針等について』です。35歳未満医師数の割合と医師偏在指標(図3)を見ると、都道府県別の医療施設従事医師数に占める35歳未満医師数の割合では、栃木、千葉、東京、岡山、和歌山が高く、医師多数県であっても熊本、徳島は15%未満と低くなっています。図3 35歳未満医師数の割合と医師偏在指標画像を拡大するこのような医師偏在の対策の一環として導入された医学部の臨時定員制度は、今後も地域偏在の是正と専門医制度の地域定着強化のため、運用の見直しと恒久定員内での地域枠強化が図られる見通しです。とくに女性医師の働き方と都市部への若手集中という2つの課題は、制度設計において避けて通れない論点となっています。女性医師への配慮として、将来の出産・育児などによる勤務形態の変化や離職を前提としたキャリア設計が重要です。検討会では、恒久定員内への地域枠導入の加速が示されていますが、女性医師の地域定着率を高めるためには、地元出身女性を対象とした地域枠や、地域に戻りやすい仕組み作りがカギとなりそうです。たとえば柔軟な研修や、地元での復職を後押しする制度などがあると、安心して戻れるはずです。一方、若手医師の都市集中は依然として解消が難しい問題であり、現行の専門医シーリング制度では東京や大阪などの「医師多数県」において募集定員を制限する方針が維持される見通しです。今後のシーリング枠の改定で、足下の医師数に加えて「35歳未満医師割合」や「75歳以上医師割合」といった年齢構成指標を取り入れる方針が示されており、若手の集中度が高い都道府県では、より厳格な定数制限が導入される可能性があります。また、資料からは、医師多数県から医師少数県への「恒久定員の移し替え」や「地元大学を持たない県への大学間地域枠の設置」が打ち出されており、都市部に集まりやすい若手医師の進路誘導が進められる見込みです。さらに、都道府県知事が大学に地域枠設置を要請できる法制度がすでに整備されており、今後はより強制力を伴う運用が想定されます。総じて、今後のシーリング制度と医学部定員政策は、(1)女性医師のキャリア継続支援と、(2)若手医師の地域定着強化を両輪として再構築されていくことになります。今後、女性医師の働き方の多様化や、若手医師の都市集中といった課題に向き合う制度設計が求められます。とくに、専門医制度や人事交流を通じて、「地域で育て、地域で活躍できる」そんなキャリアの選択肢がもっと広がれば、働き方も未来も変わってくるかもしれません。 参考 1) 2025年度プログラム募集シーリング数(日本専門医機構) 2) 令和9(2027)年度のシーリングについて[医道審議会医師分科会医師専門研修部会](厚労省) 3) 厚生労働行政推進調査事業費補助金(厚生労働科学特別研究事業)令和6年度 総括研究報告書 専門研修の募集定員設定のための都道府県別・診療科別の医療ニーズの算出に係る研究(同) 4) 医師の確保・偏在対策における医学部臨時定員の方針等について(同)

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耳鼻咽喉科ニューフロンティア -近未来医療を手にする

最新のエビデンスとサイエンスに基づく耳鼻咽喉科の臨床基準書「プラクティス耳鼻咽喉科の臨床」第7巻耳鼻咽喉科・頭頸部外科領域で現在臨床現場に普及しつつある検査・診断・治療の最前線を中心に、さらに実験段階を終え臨床研究に入り将来が期待できる医療、ポストコロナ診療、医療DX、AI診療などにおいて第一線で活躍する執筆陣80名が解説。「感覚器医療・コミュニケーション医療」「QOL、生命維持」「診療支援」「医療DX」の機能的なカテゴリーに分けて構成。いま始まりつつある近未来の耳鼻咽喉科診療が1冊に。画像をクリックすると、内容の一部をご覧いただけます。※ご使用のブラウザによりPDFが読み込めない場合がございます。PDFはAdobe Readerでの閲覧をお願いいたします。目次を見るPDFで拡大する目次を見るPDFで拡大する耳鼻咽喉科ニューフロンティア -近未来医療を手にする定価13,200円(税込)判型B5判(並製)頁数336頁発行2025年5月総編集・専門編集大森 孝一(京都大学)ご購入(電子版)はこちらご購入(電子版)はこちら紙の書籍の購入はこちら医書.jpでの電子版の購入方法はこちら紙の書籍の購入はこちら

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診療ガイドライン 2025年版 第7版

新たな要素が加わり、ブラッシュアップされた改訂版、出来!本版では「患者会や膵がん教室への参加」「老年医学的評価」に関する2つのCQが、医療者と患者市民団体で構成されるグループで検討された臨床疑問として、初めて掲載された。また「Future Research Question」を新設し、バイオマーカーやがん遺伝子パネルを用いた診断、メタリックステント留置後の偶発症への対応など、膵診療における最新の動向についても解説した。診断から治療まで最新のエビデンスを網羅し、患者・市民の視点も取り入れた、膵診療に携わるすべての医療者にとって必携の1冊。画像をクリックすると、内容の一部をご覧いただけます。※ご使用のブラウザによりPDFが読み込めない場合がございます。PDFはAdobe Readerでの閲覧をお願いいたします。目次を見るPDFで拡大する目次を見るPDFで拡大する膵診療ガイドライン 2025年版 第7版定価4,180円(税込)判型B5判頁数352頁発行2025年7月編集日本膵臓学会膵診療ガイドライン改訂委員会ご購入はこちらご購入はこちら

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扇風機、CDC推奨より高温環境でも効果

 米国疾病管理予防センター(CDC)は、体温を上昇させる可能性があるとして、摂氏32度を超える温度での扇風機の使用を推奨していない。一方、モデル化によると、扇風機は湿度に応じて体温を低下させる可能性があるという。カナダ・モントリオール心臓研究所およびオーストラリア・シドニー大学の研究チームは、高齢者58例を対象に、扇風機の使用が高温多湿の環境下で心臓への負担を軽減する一方で、非常に高温で乾燥した環境下では心臓への負担を3倍に増加させることを報告している1)。今回、同チームが、扇風機使用が体温、発汗、暑さの感じ方、快適度にどう影響するかを検証した結果が、JAMA Network Open誌2025年7月29日号Research Letterに掲載された。 参加者は、高温多湿(38度・湿度60%)または非常に高温で乾燥(45度・湿度15%)の環境下に置かれた。高温多湿環境では、全参加者は72時間以上の間隔を空けて、「介入なし」「扇風機使用」「肌を濡らす」「扇風機使用と肌を濡らすの組み合わせ」の環境下にランダムに置かれた。非常に高温で乾燥した環境では、冠動脈疾患(CAD)を有する被験者は「介入なし」「肌を濡らす」のみを受けた。事前に設定された二次アウトカムは直腸温度の変化(自己挿入型サーミスタ)、発汗率(体重変化)、および熱感覚と快適度の変化で、それぞれ7段階と4段階のスケールで測定された。 主な結果は以下のとおり。・58例(CADなし31例、あり27例、男性67%、平均年齢68歳)が解析に含められ、計320回の曝露を受けた。【38度・湿度60%/高温多湿】・扇風機の使用により、直腸温度が低下(-0.1度)した。肌を濡らす単独、扇風機+肌を濡らすは体温との関連は認められなかった。・発汗量は、扇風機の使用で増加(57mL/h)し、肌を濡らす単独で減少(-67mL/h)した。扇風機+肌を濡らすは発汗量に影響しなかった。・熱感覚は、扇風機の使用(-0.6)、肌を濡らす(-0.4)、扇風機+肌を濡らす(-1.1)で改善した。・快適度は、扇風機の使用(-0.6)、肌を濡らす(-0.4)、扇風機+肌を濡らす(-0.7)で改善した。【45度・湿度15%/非常に高温乾燥】・扇風機の使用により直腸温度が上昇(0.3度)した。肌を濡らす単独、扇風機+肌を濡らすは体温との関連は認められなかった。・発汗量は、扇風機の使用(270mL/h)、扇風機+肌を濡らす(205mL/h)でそれぞれ増加したが、肌を濡らす単独では減少(-121mL/h)した。・熱感覚は、扇風機の使用で悪化(0.5)し、肌を濡らすで改善(-0.4)した。扇風機+肌を濡らすは熱感覚に影響しなかった。・快適度は、扇風機の使用で悪化(0.5)し、肌を濡らす、扇風機+肌を濡らすは快適度に影響しなかった。 研究者らは「CDCの助言とは対照的に、38度・湿度60%の湿度下で扇風機を使用しても、CADの有無にかかわらず高齢者の体温は上昇せず、むしろ体温をわずかに低下させ、感覚を改善した。一方、非常に高温で乾燥した熱環境では、扇風機の使用はすべてのアウトカムを悪化させており、これらの条件下では扇風機の使用を控えるべきだろう。一方、肌を濡らすことは両方の環境下で発汗を減少させ、感覚を改善させており、脱水リスク低減策として推奨される可能性がある」とした。

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周術期心停止で緊急手術と待機的手術では差異があるか/浜松医科大

 周術期の心停止は緊急手術でより頻度が多く、死亡リスクを伴うが、その発生率、原因、および転帰を調査した大規模な研究は不足している。そこで、このテーマについて浜松医科大学医学部附属病院集中治療部の姉崎 大樹氏らの研究チームは、全国のICUデータを基にわが国の緊急手術と待機的手術における周術期心停止の疫学を調査した。その結果、緊急手術では待機的手術と比較し、周術期心停止の発生率が高いことが判明した。この結果は、British Journal of Anaesthesia誌オンライン版2025年7月24日号に公開された。緊急手術と待機的手術で異なる周術期心停止の発生率、手術手技 研究グループは、日本集中治療患者データベース(JIPAD)という全国的なICU登録データベースを用い、2015年4月~2023年3月までの間に手術室からICU入院前に心停止を経験した患者を対象に調査を行った。患者は、緊急手術と待機的手術に分類され、発生率、手術手技、原因、臨床転帰に関する群間比較を行う多施設共同後ろ向きコホート研究を実施した。 主な結果は以下のとおり。・手術関連ICU入院患者21万4,303例中874例(0.41%)で周術期心停止が発生した。内訳は、緊急手術が3万2,408例中563例(1.74%)、待機的手術が18万1,895例中311例(0.17%)だった。・心停止が最も多く発生した手術手技は、緊急手術群では急性大動脈解離手術で90例(16.0%)、待機的手術群では消化管腫瘍切除術で39例(12.5%)だった。・心停止の主な原因は、緊急手術群では急性大動脈症候群で176例(31.3%)であり、待機的手術群では弁膜症48例(15.4%)と急性冠症候群42例(13.5%)だった。・緊急手術群では、院内死亡率(46.2%vs.15.8%)および他の医療施設への転院率(28.8%vs.14.8%)が有意に高かった。 以上の結果から研究グループは、「全国調査により緊急手術と待機的手術における周術期心停止の発生率、手術手技、病因、臨床転帰に有意な差があることが明らかになった」と結論付けている。

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不眠症に対する各運動介入の比較〜ネットワークメタ解析

 中国・北京中医薬大学のZhi-Jun Bu氏らは、不眠症における重症度の軽減および睡眠の質の改善に対するさまざまな運動介入の有効性を比較するため、システマティックレビューおよびメタ解析を実施した。BMJ Evidence-Based Medicine誌オンライン版2025年7月15日号の報告。 2025年4月1日までに公表された研究をPubMed、Cochrane Library、Embase、Web of Science、SPORTDiscus、PsycINFOデータベースより検索した。成人不眠症患者を対象に、介入を評価したランダム化比較試験(RCT)をメタ解析に含めた。バイアスリスクの評価には、Cochrane Risk of Bias 2 Toolを用いた。エビデンスの確実性は、ネットワークメタ解析信頼性(CINeMA)プラットフォームを用いて評価した。各介入の有効性を評価するため、頻度主義ネットワークメタ解析を実施し、平均差(MD)および95%信頼区間(CI)をアウトカムとして算出した。睡眠アウトカムの評価には、ピッツバーグ睡眠品質指数(PSQI)、不眠症重症度指数(ISI)、睡眠日誌などの検証済みのツールおよび睡眠ポリグラフ、アクチグラフィーなどの客観的睡眠指標を複合的に測定した。 主な結果は以下のとおり。・22件のRCT、1,348例をメタ解析に含めた。・13種類の介入のうち、運動介入は7種類で、ヨガ、太極拳、ウォーキング/ジョギング、有酸素運動と筋力トレーニングの併用、筋肉トレーニング単独、有酸素運動と治療の併用、有酸素運動の混合であった。・対象研究のバイアスリスクは、低いが4件(18%)、中程度が15件(68%)、高いが3件(14%)であった。・ヨガは、積極対照群(通常ケア、生活習慣改善など)と比較し、睡眠日誌より収集したデータに基づき総睡眠時間の増加、睡眠効率の改善、入眠後の中途覚醒時間の減少、入眠潜時の短縮が認められた。【総睡眠時間】MD:110.88分、95%CI:58.66〜163.09、エビデンスの確実性:中【睡眠効率】MD:15.59%、95%CI:5.76〜25.42、エビデンスの確実性:低【入眠後の中途覚醒時間】MD:−55.91分、95%CI:−98.14〜−13.68、エビデンスの確実性:低【入眠潜時】MD:−29.27分、95%CI:−50.09〜−8.45、エビデンスの確実性:低・ウォーキング/ジョギングは、ISIスコアの大幅な低下につながる可能性が示唆された(MD:−9.57ポイント、95%CI:−12.12〜−7.02、エビデンスの確実性:低)。・太極拳は、PSQIスコアを低下させる可能性があり、睡眠日誌より収集したデータに基づき総睡眠時間の増加、入眠後の中途覚醒時間の減少、入眠潜時の短縮が認められた。【PSQIスコア】MD:−4.57ポイント、95%CI:−7.50〜−1.63、エビデンスの確実性:低【総睡眠時間】MD:52.07分、95%CI:25.53〜78.61、エビデンスの確実性:低【入眠後の中途覚醒時間】MD:−36.11分、95%CI:−62.81〜−9.42、エビデンスの確実性:低【入眠潜時】MD:−24.76分、95%CI:−41.07〜−8.46、エビデンスの確実性:低・さらに、太極拳では、客観的睡眠指標を複合的に測定した結果、総睡眠時間を増加させる可能性が示唆された(MD:24.09分、95%CI:4.66〜43.52、エビデンスの確実性:低)。 著者らは「運動介入は、不眠症患者の睡眠改善に有効であり、中でもヨガ、太極拳、ウォーキング/ジョギングは、他の運動よりも効果的であることが示唆された。これらの結果をさらに検証し、強化するためにも、大規模かつ高品質の適切に設定されたRCTの実施が望まれる」と結論付けている。

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成人期の継続的な身体活動は死亡リスクを低下させる

 成人期を通じて継続的に身体活動を行っている人は、成人期を通じて非活動的だった人に比べて、あらゆる原因による死亡(全死因死亡)リスクが29〜39%低いことが、新たな研究で明らかになった。このようなリスク低下は、成人期の途中で身体活動習慣を身に付けた人でも認められたという。クイーンズランド大学(オーストラリア)のGregore I Mielke氏らによるこの研究結果は、「British Journal of Sports Medicine」に7月10日掲載された。研究グループは、「成人期に身体活動を始めることは、開始時期がいつであれ、健康にベネフィットをもたらす可能性がある」と述べている。 この研究でMielke氏らは、臨床的疾患を持たない一般成人を対象に、身体活動について少なくとも2時点で評価し、全死因死亡・心血管疾患による死亡・がんによる死亡との関連を検討した、2024年4月9日までに英語で発表された前向きコホート研究を85件選出し、メタアナリシスを実施した。対象者の規模は研究ごとに異なり、最小357人から最大657万人であった。全死因死亡を評価していた研究は77件、心血管疾患による死亡を評価していた研究は34件、がんによる死亡を評価していた研究は15件であった。 解析の結果、全体的には身体活動量が多いほど全死因死亡、心血管疾患による死亡、およびがんによる死亡のいずれのリスクも低い傾向が認められた。特に、一貫して非活動的な群と比較して、身体活動が一貫して多い群では全死因死亡リスクが29〜39%、途中から増加した群では22〜26%低く、心血管疾患による死亡リスクは30~40%低かった。一方で、身体活動の減少と死亡リスクの関連は明確ではなかった。また、がんによる死亡と身体活動との関連は弱く、結果の頑健性も低かった。 さらに、身体活動に関するガイドラインの推奨を満たすことで全死因死亡リスクと心血管疾患による死亡リスクが低下するものの、推奨量を満たしていなくても継続的に身体活動を行っている場合や身体活動量が増加している場合でも、健康へのベネフィットは認められた。このことから研究グループは、「これは、ガイドラインの推奨よりも少ない身体活動量でも、健康には大きな利点をもたらす可能性があることを示すエビデンスや、身体活動を全くしないよりは多少でもする方が良いとする主張と一致する結果だ」と述べている。さらに、「推奨される1週間当たりの運動量を超えて運動しても、追加のリスク低下はわずかだった」と付け加えている。 米疾病対策センター(CDC)は、毎週150分以上の中強度の身体活動、または75分以上の高強度の身体活動を推奨している。CDCによれば、中強度の運動の例は、早歩き、低速度の自転車こぎ、ダブルスのテニス、アクティブヨガ、社交ダンスやラインダンス、一般的な庭仕事、水中エアロビクスなど、高強度の運動の例は、ジョギング、水泳、シングルスのテニス、エアロビクスダンス、高速での自転車こぎ、縄跳び、シャベルで土を掘るなどの作業を伴う庭仕事などであるという。

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慢性蕁麻疹に最も効果的な治療薬は何?

 皮膚に強いかゆみを伴う隆起した膨疹(みみず腫れ)が生じる蕁麻疹のうち、発症後6週間以上が経過したものを慢性蕁麻疹という。このほど新たな研究で、慢性蕁麻疹のかゆみや腫れの軽減に最も効果的な治療法は、注射用抗体薬のオマリズマブと未承認の錠剤remibrutinib(レミブルチニブ)であることが示された。マクマスター大学(カナダ)医学部のDerek Chu氏らによるこの研究結果は、「The Journal of Allergy and Clinical Immunology(JACI)」に7月15日掲載された。 蕁麻疹は、アレルギー反応の一環として皮膚の肥満(マスト)細胞がヒスタミンを放出することで生じる。ヒスタミンは血管の透過性を高め、毛細血管から血漿成分が皮膚に漏れ出すことで膨疹が現れる。 Chu氏らは今回、論文データベースから抽出した慢性蕁麻疹に対する全身性免疫調整薬による治療に関する93件の研究(対象者の総計1万1,398人、ランダム化比較試験83件、非ランダム化比較試験10件)を対象に、その安全性と有効性を比較検討した。これらの研究に含まれていた慢性蕁麻疹の治療法は42種類に及んだ。評価項目は、蕁麻疹活動スコア(かゆみおよび膨疹)、血管性浮腫の活動性、健康関連の生活の質(QOL)、および有害事象であった。 その結果、評価項目に対する有効性が最も高いとされた治療薬はオマリズマブ(4週おきに標準用量300mg)とremibrutinibであった。ただし、remibrutinibの安全性に関するエビデンスの確実性は低かった。また、注射薬のデュピルマブは、蕁麻疹活動性の抑制効果は認められたがQOLの改善効果は不明であり、血管性浮腫に対する効果は検討されていなかった。シクロスポリンは、蕁麻疹活動性の抑制に有効な可能性がある一方で、腎臓障害や高血圧などの有害事象の発生頻度が最も高まる可能性が示唆された。そのほか、アザチオプリン、ダプソン、ヒドロキシクロロキン、ミコフェノール酸、スルファサラジン、ビタミンDもアウトカム改善に有効な可能性が示唆された。一方、ベンラリズマブ、キリズマブ、テゼペルマブについては、有効性が確認されなかった。 Chu氏は、「慢性蕁麻疹に対する全ての先進的な治療選択肢を対象とした今回の初めての包括的な分析により、患者と臨床医が選択できる、明確でエビデンスに基づいた『治療選択肢のメニュー』を提示することが可能になった」と述べている。 研究グループは、「本研究結果は蕁麻疹の治療に関する新たな国際臨床ガイドラインの作成に役立つだろう」と述べている。

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一部のグルテン不耐症は思い込みによる可能性も

 自分はグルテン不耐症だと信じている過敏性腸症候群(IBS)患者の一部で見られる症状は、実際にはグルテンのせいではなく思い込みにより生じている可能性のあることが、小規模な臨床試験で示された。IBS患者を対象としたこの臨床試験では、グルテンや小麦が含まれていないシリアルバーでも、摂取後に消化器症状の悪化を訴える人がいたという。マクマスター大学(カナダ)医学部教授のPremysl Bercik氏らによるこの研究結果は、「The Lancet Gastroenterology and Hepatology」に7月21日掲載された。 グルテンは小麦、大麦、ライ麦などの穀物に含まれるタンパク質の一種である。米ハーバード大学T.H.チャン公衆衛生大学院によると、グルテンに対してアレルギーがある人や、グルテンによって免疫反応が引き起こされ腸が損傷される可能性がある人では、グルテンの摂取が消化器系の問題をもたらすことがあるという。  今回報告されたランダム化クロスオーバー試験は、グルテンフリーの食事で症状が改善したとの報告があった28人のIBS患者を対象に実施された。各参加者には、3種類のシリアルバーを3回、間隔を空けて食べてもらった。3本のシリアルバーのうち1本はグルテンを、1本は小麦を含み、もう1本はどちらも含んでいなかった(シャム)。 その結果、IBS症状のスコア(IBS-SSS)が50点以上悪化した参加者の割合は、小麦含有シリアルバー摂取後で11人(39%、シャムのシリアルバーとのリスク差は0.11、95%信頼区間−0.16〜0.35)、グルテン含有シリアルバー摂取後で10人(36%、シャムとのリスク差は0.07、同−0.19〜0.32)、シャムのシリアルバー摂取後は8人(29%)であった。これらの結果は、小麦およびグルテン摂取群とシャム群との間で、IBS症状の悪化率に統計学的な有意差はないことを示している。 Bercik氏は、これはネガティブな予測のみによって実際に身体症状が引き起こされる「ノセボ効果」と呼ばれる現象に起因している可能性があるとの見方を示している。同氏は、「グルテンに反応していると思っている患者の全てが実際にグルテンに反応しているわけではない。本当に食物タンパク質に感受性を持っている人もいるが、多くの場合、グルテンが症状の原因だとする思い込み自体が症状を引き起こし、グルテンが含まれている食品を避けるという選択につながっている」とニュースリリースの中で述べている。 Bercik氏は、特にソーシャルメディアやオンラインコミュニティーが「グルテンは有害である」という考えを助長している可能性があると指摘している。同氏は、「IBS患者の中には、どうして良いのか分からないままでいるのではなく、グルテンを避けることが自分の状況をコントロールする手段の一つになると考える人もいる可能性がある。グルテンフリーの食事を続けることは不必要な食事制限にはなるが、症状を自分でコントロールしようとする患者にとってはすぐに取り組むことができる具体的な方法にもなり得る」と述べている。実際、どのシリアルバーが症状を引き起こしたのかを後で知らされても、多くの参加者は自分の考えや食事内容を変えなかったという。 こうした人がグルテンに対する不安を克服するためには、セラピーやコーチングが必要になるかもしれないとBercik氏は言う。「このような患者に対する臨床的な管理でわれわれが改善すべき点は、単に患者に『グルテンが原因ではない』と伝えて終わるのではなく、さらに寄り添って対応することだ。多くの患者にとって、グルテンや小麦に対する偏見をなくし、安全にこれらを再び食事に取り入れるための心理的サポートや指導が有益かもしれない」と述べている。 Bercik氏らは、今後の研究では、今回の臨床試験の結果をより大規模な集団で検証し、なぜグルテンに関する思い込みがIBSの症状を引き起こすのかを解明する必要があると話している。

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犬がにおいでパーキンソン病患者を検知

 犬の鋭い嗅覚は、逃亡犯の追跡や遺体の発見、違法薬物の捜索などに役立っている。過去の研究では、前立腺がん、マラリア、新型コロナウイルス感染症(COVID-19)などの疾患を嗅ぎ分けることができたことも示されている。では、犬の嗅覚は、脳や神経系の疾患を検知できるほど鋭敏なのだろうか。 新たな研究で、嗅覚を使ってパーキンソン病を検知できるように訓練された2匹の犬が、皮脂スワブ検体からパーキンソン病患者を最高80%の精度で検出できたことが示された。英ブリストル大学獣医学部のNicola Rooney氏らによるこの研究の詳細は、「Journal of Parkinson’s Disease」に7月14日掲載された。Rooney氏は、「私は、パーキンソン病患者を特定するための迅速で非侵襲的かつ費用対効果の高い方法の開発に犬が役立つと確信している」と同大学のニュースリリースの中で述べている。 パーキンソン病は進行性の運動障害であり、脳の重要な神経伝達物質であるドパミンを産生する脳細胞が変性・減少することで発症する。主な症状は、手足の震え(振戦)、筋肉のこわばり(筋硬直)、バランス維持や協調運動の障害などである。研究グループによると、パーキンソン病の初期症状の一つとして、皮膚の脂腺から皮脂が過剰に分泌され、過度に蝋状または油っぽくなることがあるという。このことからRooney氏らは、犬が皮脂から生じる独特のにおいを頼りにパーキンソン病を検知できるのではないかと考えた。 この仮説を検証するためにRooney氏らは、5頭の犬に皮脂スワブ検体を使ってパーキンソン病のにおいを検知するための訓練を開始した。最終的に3頭が脱落し、ゴールデンレトリバーのバンパー(2歳、雄)とラブラドールレトリバーとゴールデンレトリバーのミックス犬のピーナッツ(3歳、雄)の2頭がパーキンソン病患者とパーキンソン病ではない人(対照)から採取した205点の皮脂スワブ検体を使って38〜53週間に及ぶ訓練を受けた。訓練では、犬がパーキンソン病患者の検体を正しく示すか、対照の検体を正しく無視するたびに報酬が与えられた。訓練の完了後、40点のパーキンソン病患者の検体と60点の対照の検体を用いた二重盲検試験で犬の検知能力を検証した。 その結果、2頭の犬の感度(パーキンソン病患者の検体を正しく識別する能力)は、それぞれ70%と80%、特異度(対照の検体を正しく無視する能力)は、それぞれ90%と98%であることが示された。 論文の上席著者で、英国の慈善団体メディカル・ディテクション・ドッグズのCEO兼最高科学責任者であるClaire Guest氏は、「犬が疾患を極めて正確に検知できることを改めて発表できることを非常に誇りに思う。現状ではパーキンソン病を早期発見するための検査は存在せず、症状が目に見える形で現れるようになり、それが持続して確定診断に至るまでに最大で20年もかかることがある。しかし、パーキンソン病でとりわけ重要なのは早期診断だ。なぜなら、それにより治療で疾患の進行を遅らせ、症状の重症度を軽減できる可能性があるからだ」と述べている。

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GLP-1RAで痩せるには生活習慣改善が大切

 オゼンピックやゼップバウンドなどのGLP-1受容体作動薬(GLP-1RA)の減量効果が高いため、注射さえしていればあとは何もしなくても体重を減らせると思っている人がいるかもしれない。しかし専門家によると、それは誤りだ。適切に体重を減らしてそれを維持するには、注射に加えて生活習慣の改善も必要だという。米ブリガム・アンド・ウイメンズ病院のJoAnn Manson氏らによる、GLP-1RA治療中の生活習慣改善に関するアドバイス集が「JAMA Internal Medicine」に、患者対象情報として7月14日掲載された。 Manson氏は、「GLP-1RAによる減量治療を開始後に、多くの患者が脂肪量だけでなく筋肉量も減少してしまう。また、胃腸症状が現れて治療を中止せざるを得なくなることも多い」と述べ、GLP-1RA使用時の生活習慣改善の重要性を指摘している。例えば、GLP-1RAのみで体重を減らした場合、減った体重の25~40%は除脂肪体重(多くは筋肉)が占めるとのことだ。 筋肉を減らさないための対策として、専門家らは「毎食、魚、豆、豆腐などの食品から20~30gのタンパク質摂取を」と推奨する。「一般的な運動量の人なら、体重1kg当り1.0~1.5gのタンパク質を毎日摂取し、食欲がないときには1食につき少なくとも20gのタンパク質を含むシェイクを飲むと良い」としている。 またGLP-1RAは食欲抑制作用があるため、適切な栄養素摂取が妨げられる可能性があるという。発表されたアドバイス集では、「適量の食事と軽食(果物、ナッツ類、無糖ヨーグルトなど)を取ることで、エネルギーを維持する」ことを推奨している。さらに、「炭水化物については、血糖値の急激な変動を引き起こす精製穀物や加糖飲料ではなく、サツマイモやオートミールなどの消化の遅いものを選択する。満腹感を長続きさせるには、オリーブオイルやアボカドなどの健康的な脂質食品を食事に加えると良い」とのことだ。 GLP-1RAによる減量中には、バランスの取れた栄養価の高い食事が重要になる。不適切なカロリー制限は、不健康な体重減少、必須栄養素やビタミンの不足による栄養失調のリスクにつながるため避けなければならない。一方、GLP-1RAの副作用として多く見られる胃腸症状に対しては、以下の推奨事項が示されている。・吐き気を和らげるには、脂質の多い揚げ物や加工食品を避け、お腹に優しい少量の全粒粉トーストやシリアル、果物、ジンジャーティーを食べたり飲んだりする。・胸焼けを抑えるには、少量ずつ食べ、食後2~3時間は横にならないようにする。揚げ物よりも焼き物を選び、黒コショウ、唐辛子、ニンニクなどの刺激の強いスパイスは避ける。・便秘には、オートミール、リンゴ、野菜、ナッツなど、食物繊維が豊富な食品の摂取量を増やす。水分を十分に取り、市販の下剤や便軟化剤の使用も検討。 また、GLP-1RAが脱水傾向を招くこともあるため、こまめに水分を取る必要があり、キュウリやスイカといった水分を多く含む果物や野菜の摂取が効果的だとしている。 このほかに、筋肉量を維持するため、週に2〜3回の30分の筋力トレーニングも大切。運動は体重のリバウンドを抑えるためにも重要で、早歩き、サイクリング、軽い庭仕事など、中強度の運動を週に150分程度、筋力トレーニングに加えて行う必要がある。 著者らは、「GLP-1RAの登場は肥満治療の大きな進歩ではあるが、減量効果の長期的な維持には、個別化された食事・運動療法を並行して行わなければならない。そのような包括的なアプローチによって、副作用を軽減し、筋肉量を維持して、栄養失調を回避しつつ、持続的な減量が達成される」と述べている。

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