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第111回 手術動画提供で機器メーカーの不当な現金供与発覚、類似事件がなくならないワケとは

手術動画を患者や勤務先に無断で医療機器メーカーに繰り返し提供こんにちは。医療ジャーナリストの萬田 桃です。医師や医療機関に起こった、あるいは医師や医療機関が起こした事件や、医療現場のフシギな出来事などについて、あれやこれや書いていきたいと思います。週末は深田 久弥の著作「日本百名山」に掲載されている100座の山を登ろうという百名山ハンターの友人に付き合って、関東最難関(岩場、鎖場が多く、1日の行動時間も10時間超になるため)の皇海山(すかいさん:栃木県と群馬県県境)に登ってきました。金曜夕方に登山の起点となる庚申山荘(ここまでも2時間歩きます)に到着したのですが、平日にもかかわらず山荘は宿泊客で既に満員。「百名山」の名前の威力に改めて驚かされました。岩場、鎖場だけでなく、下山路に使う谷沿いのトラバース道も相当危険で、高齢者の転落事故が多いのもうなずけました。どんなに危険でもここを登っておかないと「百名山クリア」を自慢できないわけで、深田 久弥も罪な山を選んだものだと思った次第です。さて今回は、5月半ばに発覚した、眼科医の白内障手術動画の提供事件について書いてみたいと思います。事件発覚のきっかけはNHKの報道でした。2022年5月14日、NHKは全国の総合病院などに勤務する眼科医5人が、白内障の手術の動画を患者や勤務先に無断で医療機器メーカーに繰り返し提供し、現金を受け取っていたと報じました。手術の動画は個人情報保護法に基づいて、病院が適切に管理することが求められていています。NHK報道によれば、各病院は医師を指導するなどしたうえで、「管理が不適切だった。再発防止に努めたい」などと話しているとのことです。「コンプライアンス上、問題があった可能性がある」とメーカー現金を受け取っていたとされるのは、北海道の社会福祉法人北海道社会事業協会・帯広病院(帯広協会病院)、愛知県の医療法人済衆館・済衆館病院、広島県の広島県厚生農業協同組合連合会・廣島総合病院(JA広島総合病院)、福井市の日本赤十字社・福井赤十字病院、大阪府の社会医療法人生長会・府中病院の5病院の眼科に勤める5人の医師です。5人は、米国の医療機器メーカー、STAAR SURGICAL社の日本法人、スター・ジャパンとの間で、この会社が製造するレンズを使用した白内障手術の動画を作成する契約を結んだ上で、手術動画を繰り返し提供、2021年までの3年間に現金40万~105万円、総額で700万円を超える額を受け取っていたとのことです。NHK報道では、5人の医師は患者からの同意も取っていなかったとのことです。またスター・ジャパンはNHKの取材に対し、「眼内レンズを使用した外科技術の教材を作成するプログラムを行っていた。コンプライアンス上、問題があった可能性があり、日本の医療機器業公正取引協議会および関係当局に報告するとともに、外部の法律事務所に委託し調査を実施している。事態を重く受け止め、医療従事者や患者、ご家族にご心配とご迷惑をおかけしていることをおわびします」などと回答したとのことです。医療機器業公正取引協議会、厚労省調査に乗り出すこの事件の報道を聞いて、医師の皆さんの中には「これはそれほどの事件なのか?」と思った方もいるのではないでしょうか。それはおそらく、「個人情報保護法の問題」と「現金供与の問題」が混在し、事件の焦点(いったい何が悪いのか)がボケてしまったためと思われます。病院や医師、メーカーはコメント上では反省しているようですが、「コンプライアンス上、問題があった可能性がある」といった発言からは、それほどの切迫感、緊張感は伝わって来ません。その後の続報によると、医療機器メーカーの業界で作る医療機器業公正取引協議会が、医師への現金提供の目的が景品表示法に基づく自主規制のルールで禁じられた自社製品の販売促進だった可能性もある、として調査を始めました。また、厚生労働省も会社側から聞き取りを行うなど契約内容の調査を始めたとのことです。こうした流れからも“事件”としての側面は、若干弱い感じもします。実際、NHK報道をきっかけにいくつかのマスコミも報道しましたが、その後尻すぼみとなりました。実は罰則が緩い個人情報保護法この事件、法律的にもなかなか微妙です。手術の動画は、映像や音声などから患者の特定につながるおそれがあるため、医療機関には漏えいなどを防ぐために個人情報保護法に基づいて適切な管理や従業員の監督を行うことが求められています。ただ、適切でなかったからといって、すぐに法律で罰せられるわけではありません。違法性がある場合、まず個人情報保護委員会(個人情報の適切な管理と利活用を監督する政府機関)が事業者に立ち入り検査などを行い、実態に応じて指導や勧告、命令を出します。そしてこの命令に違反した場合に、「個人は1年以下の懲役または100万円以下の罰金、法人は1億円以下の罰金」が科せられます。つまり、一医師が手術動画をメーカーに提供したからと言ってすぐに罪を問われることはなく、せいぜい個々の病院の就業規則違反止まりなのです。「整形外科医に巨額リベート」事件との共通点現金供与の方はどうでしょう。医療機器業公正取引協議会は、医師への現金提供の目的が景品表示法に基づく自主規制のルールで禁じられた自社製品の販売促進だった可能性もある、として調査を始めています。学会での紹介や医師への説明などに使うため、動画を含む医用画像の提供を医師から受け、その対価として謝礼を支払うことは基本問題ないとされています。しかし、 今回は動画の活用がなかった(つまり医師に現金を支払うためだけに動画の提供を受けた)ケースもあるようです。この事件を聞いて思い出したのは、本連載の「第35回 著名病院の整形外科医に巨額リベート、朝日スクープを他紙が追わない理由とは?」で書いた、2020年11月に発覚した、医療機器メーカーから整形外科医に現金供与が行われていた事件です。この事件では、米国の医療機器メーカー、Globus Medical社の日本法人が、同社の機器を購入した病院の医師20数人に対し、売上の10%前後をキックバックしていました。スクープした朝日新聞の記事によれば、キックバック額は2019年の1年間で総額1億円超となり、医師本人ではなく、各医師や親族らが設立した会社に振り込む形で行っていたとのことです。グローバスメディカル日本法人は、背骨や腰の治療で使う脊椎インプラントなどを販売する整形外科専門の医療機器メーカーです。20数人の医師は関東や関西、九州の大規模な民間病院の勤務医で、東京慈恵会医科大学病院や岡山済生会総合病院などの名前が挙がっていました。リベートや不当な現金供与が罰せられない日本この時は、朝日新聞が報道するのみで、他媒体はほとんど後追いしませんでした。おそらく、日本にはリベート供与を罰する法律が整備されておらず、企業も医師も法律上は「何の罪も犯していない」状況で、事件性が薄かったためと思われます。日本には、過大な景品提供などによる不公正な取引を防ぐため、個々の業界が定めた自主規制ルールである「公正競争規約」があります。同規約は景品表示法第31条に基づくものですが、あくまでも業界の自主ルールであり、そこに法律違反は発生しません。一方、米国にはリベートを罰する法律があり、受け取った医師も罰せられます。この時も、医療機器業公正取引協議会が調査に乗り出すのみで、事件は収束に向かいました。今回発覚したスター・ジャパンの事件も、同協議会が調査に乗り出していますが、おそらく協議会の内部処分で終了となるでしょう。整形外科医の時は朝日新聞の報道のみであったのに対し、今回のケースはNHKの報道を他メディアも後追いしています。それは、現金供与に加えて、「個人情報=患者情報」も絡んでいたことが関係していそうです。ただ、その患者情報についても、無断提供が発覚したところで、厳しい罰則は現在のところありません。以前の記事では、「医薬品業界よりも医療機器業界のほうが『公正競争規約』などの自主規制ルールやその運用自体が“緩い”とみる専門家もいるようです。今後、同社以外の“不適切事例”もひょっとしたら出てくるかもしれません」と書きましたが、実際その通りになってしまいました。医療機器絡みのリベートや不当な現金供与は、そろそろ「自主規制ルール」ではなく、何らかの法律で罰するようにしたほうがよいのではないでしょうか。医療機関が購入する医療機器の代金はそもそも公的財源も入った診療報酬で賄われています。その代金にあらかじめリベートや不当な現金供与分も上乗せされているとしたら、それは大きな問題だからです。

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日本人統合失調症患者におけるQOLと臨床的要因の関係

 徳島・城南病院のYoshimune Ishii氏らは、統合失調症入院患者におけるQOLと臨床的要因の関係を明らかにするため検討を行った。その結果、抑うつ症状の治療が統合失調症入院患者の主観的QOLの改善に影響を及ぼす可能性が示唆された。The Journal of Medical Investigation誌2022年1.2号の報告。 対象は、統合失調症入院患者50例(平均年齢:56.48±11.93歳)。主観的QOLの評価には、統合失調症QOL尺度日本語版(JSQLS)および主観的ウェルビーイング評価尺度短縮版-日本語版(SWNS-J)を用い、認知機能の評価には、ミニメンタルステート検査(MMSE)-日本語版を用いた。うつ症状の重症度、精神症状、薬物誘発性錐体外路症状の評価には、それぞれ、カルガリー統合失調症用抑うつ症状評価尺度日本語版(JCDSS)、簡易精神症状評価尺度(BPRS)、薬原性錐体外路症状評価尺度(DIEPSS)を用いた。JSQLSおよびSWNS-Jに影響を及ぼす因子を特定するため、段階的回帰分析を実施した。 主な結果は以下のとおり。・うつ症状の重症度を評価するJCDSSは、主観的QOLを評価するJSQLSの2つのスケールの予測因子であり、同じくSWNS-Jの総スコアと2つのサブスケールの予測因子でもあった。・他の臨床的因子では、JSQLSおよびSWNS-Jとの関連は認められなかった。

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米国における片頭痛治療開始患者に対するフレマネズマブの有効性

 成人の片頭痛予防に承認されている、カルシトニン遺伝子関連ペプチド(CGRP)を選択的標的としたヒト化モノクローナル抗体(IgG2Δa)フレマネズマブの有効性および忍容性は、ランダム化二重盲検比較プラセボ対照試験で実証されている。リアルワールドでのデータはこれら臨床試験のデータを支持しており、フレマネズマブの臨床的ベネフィットは明らかになっている。オランダ・Teva PharmaceuticalsのMaurice T. Driessen氏らは、実臨床診療に従って治療された成人片頭痛患者の臨床アウトカム改善に対するフレマネズマブの有効性を評価するため、チャートレビューを実施した。その結果、実臨床において、投与レジメンや過去の片頭痛予防治療の失敗数にかかわらず、最大6ヵ月間のフレマネズマブ治療の有効性が確認されたことを報告した。The Journal of Headache and Pain誌2022年4月11日号の報告。 米国医師による電子症例報告フォームを用いて、レトロスペクティブ、パネルベースのオンライン医師チャートレビュー研究を実施した。患者の選択基準は、医師による片頭痛の診断、FDA承認後に18歳以上でフレマネズマブ治療を開始、フレマネズマブ治療1回以上、1ヵ月当たりの片頭痛日数(MMD)2以上の評価(治療開始前30日間で1、治療開始後1以上)とした。MMD、1ヵ月当たりの頭痛日数(MHD)、片頭痛評価尺度(MIDAS)、Headache Impact Test 6(HIT-6)スコアのベースラインからの変化を6ヵ月間にわたり評価した。これらのエンドポイントは、全体の母集団とサブグループで、投与レジメンおよび過去の片頭痛予防治療の失敗数で除して評価を行った。 主な結果は以下のとおり。・臨床医421人が参加し、1,003例の患者データが収集された。・フレマネズマブ治療開始時の平均年齢は、39.7歳であり、多くは女性であった(75.8%)。・母集団全体では、ベースライン時の平均MMDは12.7、平均MHDは14.0であった。・MMDとMHDの平均減少数(割合)は以下のとおりであった。【MMD】1ヵ月:-4.6(36.2%)、3ヵ月-6.7(52.8%)、6ヵ月:-9.2(72.4%)【MHD】1ヵ月:-4.7(33.6%)、3ヵ月:-6.8(48.6%)、6ヵ月:-9.8(70.0%)・MIDASおよびHIT-6スコアの平均値も、ベースラインから1ヵ月および6ヵ月にわたり、減少が認められた。【MIDAS】1ヵ月:-6.2(21.6%)、6ヵ月:-18.1(63.1%)【HIT-6】1ヵ月:-8.4(14.0%)、6ヵ月:-16.2(27.0%)・評価したすべてのサブグループにおいて、6ヵ月間にわたり、これらアウトカムの改善が認められた。

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オミクロン含む2価ワクチン、秋までに国内提供予定/モデルナ

 2022年5月27日、モデルナ・ジャパンはメディアセミナー「mRNAワクチンの革新と使命~最新エビデンスとパイプラインから~」を開催した。 セミナーでは、モデルナ チーフメディカル・オフィサー(CMO、最高医療責任者)ポール・バートン氏が、開発中の2価ワクチンや今後のmRNAワクチンの展望について説明した。(写真)モデルナ・ジャパン提供さらなる変異に備えて~COVID-19用2価ワクチンの役割~ SARS-CoV-2が急速に変化し新しい変異株が出現するなか、ワクチンの感染予防効果が経時的に減弱することを踏まえると、定期的なワクチン追加接種による効果の回復が望まれる。バートン氏は、モデルナの既存ワクチン・スパイクバックスの4回目接種による予防効果を示したうえで、より広い免疫を確保できる可能性があるワクチンとして、開発中の2価ワクチンを紹介した。 2価ワクチン候補の1つである、武漢株とβ株に対する有効成分を組み合わせた「mRNA-1273.211」は、第II/III相試験において追加接種用スパイクバックスと同等の安全性と免疫原性が確認された。さらに追加接種1ヵ月のデータにおいては、オミクロン株とデルタ株を含むすべての検討した変異株に対する優位性が示された。 また、第III相および第II/III相試験中の「mRNA-1273.214」は武漢株とオミクロン株に関する有効成分を組み合わせたワクチンであり、オミクロン株に対応でき従来よりも高いレベルで長い効果が期待できるとして、最有力に位置づけられている追加接種用2価ワクチン候補である。「mRNA-1273.214」については数週間以内にデータを公表のうえ、緊急承認制度などを活用し、今年秋までの国内提供を目指すという。潜在性ウイルスに対するmRNAワクチンの可能性 続いて、COVID-19ワクチン以外の開発中のワクチンとして、サイトメガロウイルス(CMV)やプロピオン酸血症(PA)といった潜在性ウイルスに対するワクチンの開発状況が説明された。中でもCMVは従来のワクチン開発技術では対応が難しいウイルスであったが、モデルナが開発するCMVワクチン候補mRNA-1647は6つのmRNAを組み合わせることで、第II相試験で免疫原性に関して良好な結果が得られ、現在第III相試験に進んでいる。mRNA技術のリーダーとして、情報提供や「日本発信型」の活動を このような独自のmRNAプラットフォームをもつ同社だが、まだ十分に普及していないmRNA技術のリーダーとして、適切なコミュニケーションも求められている。登壇者であるモデルナ・ジャパン 代表取締役社長の鈴木 蘭美氏は、mRNAのもつ機能や力をわかりやすく理解してもらえるような対談の機会や動画を用いた情報発信を検討していると述べた。また鈴木社長は今後の展望として、モデルナのmRNAプラットフォームを活用したパートナーシップにより、日本のさまざまな研究の成果を世界に広げる「日本発信型」の活動を行っていきたいと語った。同社はパンデミック時のスピーディーなワクチン提供を可能とすべく、日本での製造拠点設立の協議も進めているという。

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オミクロン株優勢下、小児~青少年でも追加接種が必要か/JAMA

 重症急性呼吸器症候群コロナウイルス2(SARS-CoV-2)のオミクロン変異株が優勢な時期に、年齢5~15歳の小児・青少年では、BNT162b2ワクチン(Pfizer-BioNTech製)の2回接種後の推定有効率は高くなく(約60%)、その後2ヵ月後までに急速な低下が認められたが、12~15歳では3回目の追加接種により上昇に転じたことが、米国・疾病予防管理センター(CDC)のKatherine E. Fleming-Dutra氏らの調査で示された。研究の成果は、JAMA誌オンライン版2022年5月13日号で報告された。米国の検査陰性デザインの症例対照研究 研究グループは、オミクロン変異株優勢期の小児および青少年における症候性SARS-CoV-2感染症とBNT162b2ワクチン接種との関連を評価し、当ワクチンの有効率を推定する目的で、検査陰性者を対照とする症例対照研究を行った(米国・CDCの助成を受けた)。 解析には、Increasing Community Access to Testing(ICATT)プラットホームのデータが用いられた。ICATTは米国保健福祉省(HHS)のプログラムで、ドライブスルー形式のSARS-CoV-2検査を全国的に展開する4つの商業的な薬局チェーンが参加しており、今回は、このうち1つのチェーンのデータについて解析が行われた。 対象は、2021年12月26日~2022年2月21日の期間に、SARS-CoV-2の核酸増幅検査(NAAT)を受けた新型コロナウイルス感染症(COVID-19)様疾患を呈する小児(5~11歳)および青少年(12~15歳)であった。6,897ヵ所の検査所(ノースダコタ州を除く49州とワシントンDC、プエルトリコ)で行われた12万1,952件(5~11歳:7万4,208件、12~15歳:4万7,744件)の検査が解析に含まれた。 5~11歳では、SARS-CoV-2検査の2週間以上前にBNT162b2ワクチンの2回目接種を受けた集団と未接種の集団、12~15歳(追加接種が推奨された)では、検査の2週間以上前に2回または3回の接種を受けた集団と未接種の集団の比較が行われた。 主要アウトカムは症候性SARS-CoV-2感染症(COVID-19様疾患を呈し、NAATでSARS-CoV-2陽性の場合と定義)とされた。ワクチン接種と症候性SARS-CoV-2感染症の関連の補正後オッズ比(OR)を用いて、推定ワクチン有効率([1-OR]×100%)が算出された。5~11歳で追加接種が必要となる可能性も 年齢5~11歳の7万4,208件のSARS-CoV-2検査のうち、3万999件が陽性(症例)で、4万3,209件は陰性(対照)であった。また、12~15歳の4万7,744件の検査では、2万2,273件が陽性(症例)、2万5,471件は陰性(対照)だった。全体では、症例が5万3,272人(43.7%)、対照は6万8,680人(56.3%)であった。 全体で、検査を受けた集団の年齢中央値は10歳(IQR:7~13)、6万1,189人(50.2%)が女児で、7万5,758人(70.1%)は白人、2万9,034人(25.7%)はヒスパニック系/中南米系であった。5~11歳の7万4,208件の検査のうち、5万8,430件(78.7%)はワクチン未接種者のもので、1万5,778件(21.3%)は2回接種者であった。12~15歳の4万7,744件では、それぞれ2万4,767件(51.9%)および2万2,072件(46.2%)で、残りの905件(1.9%)は3回目の追加接種を受けていた。 2回目接種後2~4週の時点において、5~11歳では、補正後ORが0.40(95%信頼区間[CI]:0.35~0.45)で、推定有効率は60.1%(95%CI:54.7~64.8)であり、12~15歳では、補正ORが0.40(95%CI:0.29~0.56)、推定有効率は59.5%(95%CI:44.3~70.6)と、有効率は高い値ではなかった。 また、2回目接種後2ヵ月の時点では、5~11歳の補正後ORは0.71(95%CI:0.67~0.76)、推定有効率は28.9%(95%CI:24.5~33.1)で、12~15歳はそれぞれ0.83(95% CI:0.76~0.92)および16.6%(95%CI:8.1~24.3)であり、いずれの年齢層でも有効率は急速に低下していた。 2回目接種後1ヵ月までは、5~11歳と12~15歳で推定有効率に有意差はなかったが、2ヵ月後には5~11歳が12~15歳よりも推定有効率が高かった(0ヵ月後p=0.99、1ヵ月後p=0.40、2ヵ月後p=0.01、0~2ヵ月後p=0.06)。 12~15歳のうち追加接種を受けた集団では、3回目接種後2~6.5週の補正後ORは0.29(95%CI:0.24~0.35)、推定有効率は71.1%(95%CI:65.5~75.7)であり、推定有効率の上昇が認められた。 著者は、「これらの知見は、オミクロン変異株が優勢な時期に成人で観察されたパターンと類似する」とし、「成人におけるmRNAワクチン2回接種後や追加接種後の有効率の漸減パターンを考慮すると、12~15歳では追加接種による感染防御の期間の監視が重要であり、5~11歳でも、オミクロン変異株に対する感染防御効果を最適化するために、追加接種が必要となる可能性がある」と指摘している。

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リサーチ・クエスチョンのブラッシュアップー関連研究レビュー 学術誌、論文、著者の影響力の指標 その3【「実践的」臨床研究入門】第20回

かつては、出版した論文(掲載誌)のインパクトファクター(Impact factor:IF)の総計で、研究者個人の研究業績評価がなされている向きがあったかもしれません(もしかしたら、一部では今でも?)。繰り返しになりますが、IFは学術誌の影響力を測るひとつのものさしであり、個々の論文の影響力や、ましてや論文著者の研究業績を評価する指標ではありません(連載第18回、第19回参照)。今回は、研究者(論文著者)の影響力や業績評価の指標について解説します。研究者(論文著者)の影響力の指標 h-index研究者の影響力や業績評価もまた、学術誌や個々の論文の影響力の指標と同じく、被引用回数に基づく指標が用いられています。研究者が出版した論文の被引用回数が多ければ多いほど、それだけその研究者の論文が注目されているということであり、ひいては質の高い業績がある、と評価されます。研究者個人単位での業績評価には近年、h-indexという指標が多く用いられています。h-indexは、「その研究者が出版した論文のうち、被引用回数がh回以上である論文がh本以上であることを満たす最大値h」と定義されています。「ちょっと何言ってるかわからない」ですかね。もし、ある研究者のh-indexが20であったとすると、その研究者は20回以上引用されている論文が20本以上ある、ということです。このように、h-indexは研究者が出版した論文の「被引用回数」と「論文数」という、その研究者の影響力と生産性を同時に示すことができる指標です。h-indexが高いほど、その研究分野への貢献度が高いと評価されます。具体的な-indexの算出方法は下記のとおりになります。1.その研究者が出版した論文を被引用数が多い順(降順)にすべて並べる2.順位の数値が被引用数より高くなった手前の順位の数値が、その研究者のh-indexh-indexは、実際には上記の手順で手計算で算出するのではなく、ScopusやGoogle Scholarなどの検索データベースで簡単に調べることができます。ScopusとGoogle Scholarどちらで調べれば良いかについては、筆者はScopusをおすすめします。その理由は下記のとおりです。ScopusはMEDLINE(PubMed)を100%、EMBASE収録誌のほとんどを網羅しており(連載第17回参照)、これらの電子データベースに収載された論文を1本でも出版したすべての研究者の情報が公開されています。一方、Google Scholarでは、アカウントを登録し自分のプロフィールの公開を許可している研究者の情報しか閲覧できません。また、Google Scholarが収録している文献情報は、学会抄録やMEDLINEやEMBASEに収載されていない(低レベルの)学術誌も含まれており、Scopusよりh-indexが見かけ上高く出る傾向があります。ほとんどの研究教育施設ではScopusを機関契約していると思いますが、h-indexなどの研究者プロフィールは、無料で利用可能なScopus Previewでも調べられます(一部機能制限あり)。著者検索ページにアクセスし、著者の姓、名、および所属機関を英語入力することで、その研究者情報を閲覧できます。それでは、前回もとりあげたコクラン・フル・レビュー論文著者のh-indexをScopusで調べてみましょう。筆頭著者のDeirdre Hahn氏、責任著者のDenis Fouque氏のh-indexを上記の手順で検索すると、連載第20回執筆時点(2022年5月)では、それぞれ10と64と表示されます。おそらくHahn氏は比較的若手の、Fouque氏はシニアの大御所研究者であることが推測されます。このようにh-indexもIFと同様に研究歴の浅い若手には不利な数値となります。そのため直近5年間のh5-indexという指標が使われることもあります。また、これもIFと同じですが、異なる研究分野間での研究者のh-indexの比較も難しいとされています。関連研究レビューの際に、その論文著者の影響力評価のひとつの指標としてh-indexも参考にしてみてください。h-indexはメンター探しのツールとしても有用かもしれません。1)Hirsch JE. Proc Natl Acad Sci U S A. 2005;102:16569-72. doi: 10.1073/pnas.0507655102.2)Hahn D, et al. Cochrane Database Syst Rev 2020:CD001892.doi: 10.1002/14651858.CD001892.pub4.

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英語で「ゼーゼーする」は?【1分★医療英語】第30回

第30回 英語で「ゼーゼーする」は?Hi doc, he started wheezing last night and did not sleep well.(先生こんにちは、彼が昨夜からゼーゼーしていてよく眠れなかったみたいです)Has he had any wheezing episodes in the past?(過去に喘鳴のエピソードはありますか?)《例文1》I do not hear wheezing now, but he might benefit from an inhaler.(今喘鳴はないようですが、吸入器が有効かもしれませんね)《例文2》Is there an over-the-counter medicine for wheezing?(ゼーゼーに効く市販の薬はないのでしょうか?)《解説》一般小児領域では、「ゼーゼー」「ヒューヒュー」という呼吸音を主訴に来院される方が多くいらっしゃいます。その表現にぴったり当てはまる言葉が“wheezing”です。英語での定義は“Wheezing is a high-pitched whistling sound during breathing.”(呼吸時の甲高い音)と記載されています。非医療者の方は“wheezing”を日常会話でよく使用するのですが、医療用語としても成立するため、身体所見も“No rales/stridor/wheezing/rhonchi”(ラ音、吸気性喘鳴、喘鳴、いびき音なし)のように記載します。原型は“wheeze”(苦しそうに息をする[動詞]・ゼーゼーいう音[名詞])という単語ですが、ing形で使用されることがほとんどという印象です。余談ですが、《例文2》に出てきた“over-the-counter drug/medicine”は、日本と同じで「処方箋なしで購入できる薬(OTC)」という意味になります。海外でも、一般の方・医療者共によく使用する表現ですので、こちらも併せて覚えておくと便利でしょう。“wheezing”は非常に簡単で使いやすい表現ですので、喘息や心不全等の患者さんを診察する際にぜひ使ってみてください。講師紹介

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第114回 英国のサル痘患者7人の経過や抗ウイルス薬の効果の兆候

サル痘は動物を出どころとするヒト感染症で、天然痘ウイルスと同じ類のオルソポックスウイルスの一種によって生じます。1970年に中央アフリカで初めて見つかり、世界で最も貧しく、見放された地域でこれまで流行していました1)。しかしここにきていまや高所得国を含む少なくとも20ヵ国でいつにないサル痘感染の増加が認められています2)。サル痘の症状は発熱・発疹・リンパ節の腫れを特徴とし、悪くすると間質性肺炎・脳炎・視力を損ないうる角膜炎・細菌二次感染などを合併する恐れがあります。サル痘による死亡率は症例の見立ての偏りの影響が大きく、報告によってかなり異なります。より強毒らしい一派のウイルスが広まるコンゴ盆地でのサル痘死亡率はおよそ1~10%と報告されています3,4)。一方、ナイジェリアで最近流行した西アフリカのウイルス一派の死亡率はおおむね低くておよそ3%未満です4,5)。これまでのサル痘での死亡例のほとんどは幼い子やHIV感染者です。サル痘のヒトからヒトへの感染はよく知られていますが、どう広がっていくかはよく分かっていません。これまでの報告一揃いによると感染者と接触した家族への伝播率はおよそ8%です。サル痘ウイルス血症や皮膚からのウイルス排出の流行に寄与する臨床的な意義はいまだ不確かです。英国では2018年以降に4人が旅行絡みのサル痘に感染し、それら4人から3人への感染の伝播が認められています1)。感染が伝播した3人のうち1人は医療従事者で、院内でサル痘ウイルスに感染しました。他の2人は感染者の子供と母親です。二次感染も含むのべ7人のそれら英国感染者のうち最初の3人には抗ウイルス薬・brincidofovir(ブリンシドフォビル)、別の1人(母親)にはSIGA Technologies社の抗ウイルス薬tecovirimat(テコビリマット;製品名 TPOXX)が経口投与されました。brincidofovirはどうやら肝毒性があり、投与された3人全員が肝酵素上昇によりその投与を中止しています。一方、合併症予防と入院期間の短縮を目指してtecovirimatが2週間投与された1人は有害事象を被ることなく他の6人に比べて早く退院できました。またウイルス排出期間も短くて済んでいました。7人のうち1人は退院から6週後に軽い再発を経験しています。上気道からのウイルス排出は皮膚病変解消後も長く続きうるらしく、3人の患者の上気道のサル痘ウイルスDNA検出は少なくとも3週間認められています。5人はウイルス検出(PCR検査陽性)が長く続いたため隔離を3週間超(最長39日間)続けました。他のヒトへの感染の伝播しやすさのデータは不十分で今後調べる必要があります。また、サル痘への抗ウイルス薬投与の試験が急務です2)。サル痘がまん延する中央アフリカ共和国ではすでにtecovirimatの試験が進行中です6)。その試験ではサル痘入院患者に同剤を広く提供し、将来の同剤使用や臨床開発に役立つ効果や安全性の情報を揃えることを目指しています。SIGA社は同試験でのtecovirimat一通り投与最大500回分を無償で提供することを去年7月に約束しています7)。その取り組みが功を奏し、やがては同剤が最も必要とされる人に使われて重宝されるようになることを中央アフリカ共和国の試験代表者Emmanuel Nakoune氏等は望んでいます8)。参考1)Adler H,et al. Lancet Infect Dis. 2022 May 24:S1473-3099.00228-6. [Epub ahead of print]2)Disease experts call on WHO, governments for more action on monkeypox / Reuters3)Jezek Z,et al. Bull World Health Organ. 1988; 66: 459-464.4)Beer EM, Rao VB. PLoS Negl Trop Dis. 2019; 13.e0007791. 5)Yinka-Ogunleye A,et al. Lancet Infect Dis. 2019; 19: 872-879. 6)Expanded access protocol for the use of tecovirimat for the treatment of monkeypox infection. ISRCTN433079477)SIGA Announces Collaboration with Oxford University to Support Expanded Access Protocol for Use of TPOXX? (Tecovirimat) To Treat Monkeypox in Central African Republic / GlobeNewswire8)Nakoune E, Olliaro P. BMJ. 2022 May 25;377:o1321.

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血圧コントロールのため慢性心不全治療の見直しを提案【うまくいく!処方提案プラクティス】第47回

 今回は、心不全患者の降圧薬の処方提案について紹介します。高血圧が理由でデイサービスの利用に影響が生じた場合は降圧だけに着目しがちですが、慢性心不全の標準治療薬を見直して心不全そのものをコントロールすることで、血圧やうっ血などの改善も兼ねられます。患者情報70歳、女性(グループホーム入居)基礎疾患慢性心不全(HFrEF)、心房細動、狭心症、高血圧服薬管理施設管理処方内容1.クロピドグレル錠75mg 1錠 朝食後2.ジゴキシン錠0.125mg 1錠 朝食後3.ランソプラゾール口腔内崩壊錠15mg 1錠 朝食後4.カンデサルタン錠4mg 1錠 朝食後5.フロセミド錠20mg 1錠 朝食後6.アトルバスタチン錠5mg 1錠 朝食後7.カルベジロール錠2.5mg 1錠 朝食後8.スピロノラクトン錠25mg 1錠 朝食後本症例のポイントこの患者さんは、最近は収縮期血圧が170~180台と高値が持続するようになり、下腿浮腫も増強したことからフロセミド錠20mgが開始となりました。下腿浮腫は軽減しましたが、血圧は高値で横ばいの状態が続き、デイサービスの利用や入浴の制限などがかかったことから、施設スタッフより医師に降圧薬追加の依頼がありました。そこで、医師よりCa拮抗薬を追加しようと思っているがどの薬がいいか、と相談がありました。確かに血圧だけを下げるのであればCa拮抗薬が妥当ですが、現在の患者さんの状態や治療薬などから、ほかの薬剤でうまくコントロールできないか検討することにしました。まず、基礎疾患とその治療をみると、HFrEFの治療として標準治療薬であるARBのカンデサルタン、β遮断薬のカルベジロール、MR拮抗薬のスピロノラクトンを服用しています。また、下腿のうっ血治療として直近でフロセミド錠が追加されています。現行の薬剤の増量やCa拮抗薬の追加によって降圧を図るという方法もありますが、うっ血症状が最近現れるようになったことから心不全治療薬の再考も選択肢となります。「2021年 JCS/JHFS ガイドライン フォーカスアップデート版 急性・慢性心不全診療」の治療アルゴリズムのとおり、ARBからARNIへ基本薬の変更を行うことは、血圧のコントロールに加え、心不全の管理としても有効ではないかと考えました。処方提案と経過医師に、「Ca拮抗薬の追加も選択肢の1つですが、降圧とともにうっ血症状の管理が必要なため、心不全管理の観点からカンデサルタンをARNIのサクビトリルバルサルタンに変更してみるのはどうですか」と提案しました。心不全診療ガイドラインの改訂についてはPDFファイルでその場で医師と共有してARNIの位置づけを再確認し、提案内容で2週間様子をみようと承諾を得ることができました。翌日の朝よりカンデサルタンからサクビトリルバルサルタン100mg 朝食後に切り替えとなり、開始4日目から血圧は130/80台で安定するようになりました。その後も過度に血圧が下がることはなく、下腿浮腫の増悪や体重増加もなく経過は安定しています。日本循環器学会 / 日本心不全学会.2021年 JCS/JHFS ガイドライン フォーカスアップデート版

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アルツハイマー病の脆弱性と出生した季節との関係

 愛知・国立長寿医療研究センターの安野 史彦氏らは、高齢のアルツハイマー病(AD)患者において、患者の出生した季節がADの病理学的脆弱性に及ぼす影響を評価するためPETを用いた検討を行った。その結果、秋冬に出生した人は、春夏に出生した人と比較し、タウ蓄積が少ないことが明らかとなった。これは、秋冬に出生した人のタウ病理に対する脆弱性を示唆しており、寒い季節関連のリスク因子による周産期または出生後の脳損傷が影響している可能性があるという。Psychogeriatrics誌オンライン版2022年4月26日号の報告。 Alzheimer's Disease Neuroimaging Initiativeのデータセットを分析した。分析対象は、認知機能正常者234例、軽度認知障害患者(MCI)114例、AD患者38例であった。アミロイドβ(Aβ)/タウ蓄積の指標として18F-AV-45および18F-AV-1451の標準化取込値比(SUVR:standardized uptake value ratios)を用い、共分散分析により春夏の出生と秋冬の出生について群間比較を行った。さらに、出生した季節が18F-AV-45および/または18F-AV-1451のSUVRの予測因子であるかを検証し、その差を明らかにするため、多重線形回帰分析を行った。 主な結果は以下のとおり。・出生した季節の違いは、18F-AV-1451のSUVRの予測因子であった。・タウ蓄積に影響を及ぼす可能性がある年齢、性別、教育年数、ADAS-cogスコアで調整した後、認知機能正常者およびMCI/AD患者いずれにおいても、秋冬に出生した群は春夏に出生した群よりも、18F-AV-1451のSUVRが低値であった。

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nAMD/DME治療薬、バビースモ発売/中外製薬

 中外製薬株式会社は5月25日付のプレスリリースで、中心窩下脈絡膜新生血管を伴う加齢黄斑変性(nAMD)および糖尿病黄斑浮腫(DME)の治療薬であるバビースモ硝子体内注射液120mg/mL(一般名:ファリシマブ[遺伝子組換え])の販売を開始したことを発表した。 バビースモは、眼科領域における初のバイスペシフィック抗体であり、血管内皮増殖因子-A(VEGF-A)およびアンジオポエチン-2(Ang-2)の働きを阻害することでnAMD、DMEに関与する2つの疾患経路を阻害し、視力を改善する作用を持つ。 本剤の承認根拠となった、4本のグローバル第III相臨床試験(DME:YOSEMITE試験およびRHINE試験、nAMD:TENAYA試験およびLUCERNE試験)において、バビースモは主要評価項目である視力の改善を示すとともに、両疾患に対する眼内注射剤の第III相臨床試験で初めて最長16週間隔の持続性を達成した。 代表取締役社長 CEOの奥田 修氏は、「当社が初めて本格参入する眼科領域において、領域初のバイスペシフィック抗体バビースモを発売できることを心よりうれしく思う。バビースモの適応症である2つの疾患は、適切な治療がなされない場合、視力の大幅な低下や失明のリスクを伴う。こうした疾患に対しバビースモをお役立ていただけるよう、医療専門家への情報提供活動とともに、疾患啓発ウェブサイト等を通じた患者さん・ケアギバーのサポートにも注力していく」と述べた。 なお、バビースモに関する同社の情報提供活動では、新たに設置する眼科専門MRとエリア担当MRが連携して、より専門性の高い情報へのニーズに対応していく予定としている。

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オンデキサ発売、国内初の直接作用型第Xa因子阻害剤中和剤/アレクシオンファーマ・アストラゼネカ

 アストラゼネカは5月25日付のプレスリリースで、アレクシオンファーマが製造販売承認を取得したオンデキサ静注用 200mg(一般名:アンデキサネット アルファ[遺伝子組換え]、以下:オンデキサ)の販売を開始したことを発表した。オンデキサ投与後12時間で患者の79.6%に有効な止血効果 直接作用型第Xa因子阻害剤は、血栓が形成されないよう血液の凝固を防ぐ一方で、生命を脅かす重大な出血のリスクを高める可能性がある。しかし、大出血を起こした直接作用型第Xa因子阻害剤を服用している患者に対して中和剤はこれまでなく、高いアンメットニーズが存在していた。 オンデキサは、血液凝固に関与するヒト血液凝固第Xa因子の遺伝子組換え改変デコイタンパク質であり、国内で唯一第Xa因子阻害剤に結合し、その抗凝固作用を速やかに中和する作用をもつ薬剤として承認された。 オンデキサ承認の根拠となった国際共同第IIIb/IV相14-505(ANNEXA-4)試験では、直接作用型第Xa因子阻害剤の投与を受けており、急性の大出血を起こした患者を対象に、オンデキサの有効性(第Xa因子阻害剤の抗第Xa因子活性の中和効果、および止血効果)と安全性が評価された。 オンデキサ承認の根拠となったANNEXA-4試験の主な結果は以下の通り。・オンデキサはいずれの第Xa因子阻害剤を投与した患者でも、本剤を静脈内投与後には抗第Xa因子活性を速やかかつ有意に低下させた。・オンデキサ投与後12時間の時点で患者の79.6%(258/324例)に有効な止血効果が確認された。・オンデキサの副作用の発現頻度は、11.9%(57/477例)で、主な副作用は、虚血性脳卒中1.5%(7/477例)、頭痛1.0%(5/477例)、脳血管発作、心筋梗塞、肺塞栓症、発熱各0.8%(4/477例)、脳梗塞、塞栓性脳卒中、心房血栓症、深部静脈血栓症、悪心各0.6%(3/477例)であった。 オンデキサは、第Xa因子阻害剤であるアピキサバンまたはリバーロキサバン投与中に大出血を起こした患者に対する中和剤として、2018年5月に米国食品医薬品局より迅速承認制度による承認を受け、2019年4月に欧州委員会から条件付き承認を取得した。日本でオンデキサは、2019年11月19日付で希少疾病用医薬品に指定されている。

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ワクチンはlong COVIDに有効か/BMJ

 新型コロナウイルス感染症(COVID-19)におけるlong COVID(罹患後症状、いわゆる後遺症)の発現は、COVID-19ワクチンの登場以降に減少し、2回目の接種後は少なくとも約2ヵ月にわたり持続的な改善が得られることが、英国・国家統計局のDaniel Ayoubkhani氏らの調査で示された。研究の詳細は、BMJ誌2022年5月18日号に掲載された。英国の地域住民ベースの観察研究 研究グループは、COVID-19ワクチン接種前に重症急性呼吸器症候群コロナウイルス2(SARS-CoV-2)に感染した成人において、ワクチン接種とlong COVIDの症状の関連を評価する目的で、地域住民ベースの観察研究を実施した(特定の研究助成は受けていない)。 対象は、英国・国家統計局が行ったCOVID-19 Infection Survey(CIS)の参加者のうち、2021年2月3日の時点で年齢が18~69歳であり、SARS-CoV-2感染陽性と判定されたのち、アデノウイルスベクターワクチンまたはmRNAワクチンの接種を少なくとも1回受けた集団であった。 主要アウトカムは、2021年2月3日~9月5日の期間に、感染から12週以上が経過した時点におけるlong COVIDの症状の発現とされた。アウトカムの軌道解析では、各ワクチン接種前の受診時を0と設定して追跡が行われた。long COVID症状発現率は23.7% 2万8,356例(mRNAワクチン1万2,859例、アデノウイルスベクターワクチン1万5,497例)が登録された。平均(±SD)年齢は45.9(±13.6)歳で、1万5,760例(55.6%)が女性であり、2万5,141例(88.7%)が白人だった。 追跡期間中央値は、1回目接種(全参加者)から141日で、2回目接種(参加者の83.8%)からは67日であった。追跡期間中に、6,729例(23.7%)から、重症度を問わず少なくとも1回のlong COVIDの症状が報告された。 ワクチンの1回目接種により、long COVIDの症状発現のオッズが当初12.8%(95%信頼区間[CI]:-18.6~-6.6、p<0.001)減少し、その後、2回目接種までの週当たりの軌道には増減(0.3%/週、95%CI:-0.6~1.2、p=0.51)が認められた。 2回目接種では、long COVIDのオッズが当初8.8%(95%CI:-14.1~-3.1、p=0.003)減少し、その後は週当たり0.8%(95%CI:-1.2~-0.4、p<0.001)減少した。 一方、アデノウイルスベクターワクチン接種者とmRNAワクチン接種者で、接種後のlong COVIDの軌道に差はなかった。また、社会人口学的特性(年齢、性別、人種、5段階の地理的剥奪)、健康関連因子(自己報告による健康状態、急性期COVID-19による入院の有無)、SARS-CoV-2感染からワクチン接種までの期間の違いで、ワクチン接種とlong COVID症状発現に関連はみられなかった。 1回目接種後に発現率が数値上で最も低下したlong COVID症状は嗅覚障害(-12.5%、95%CI:-21.5~-2.5、p=0.02)で、次いで味覚障害(-9.2%、-19.8~2.7、p=0.13)、睡眠障害(-8.8%、-19.4~3.3、p=0.15)の順であった。2回目接種後は、疲労(-9.7%、-16.5~-2.4、p=0.01)、頭痛(-9.0%、-18.1~1.0、p=0.08)、睡眠障害(-9.0%、-18.2~1.2、p=0.08)の順で低下の幅が大きかった。 著者は、「この観察研究のエビデンスから因果関係を導き出すことはできないが、ワクチン接種はlong COVIDによる住民の健康負担の軽減に寄与する可能性がある。今後、より長期の追跡調査が必要である」としている。

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機械学習でアルコール使用障害の再発リスクを予測

 機械学習により治療終了後に再発するリスクの高いアルコール使用障害(AUD)患者を特定できる可能性のあることが、新たな研究で明らかにされた。米イェール大学医学部精神医学分野のWalter Roberts氏らが実施したこの研究の詳細は、「Alcoholism: Clinical and Experimental Research」に4月14日掲載された。 AUDに対する治療は再発率が高く、多くの患者が治療中や治療後に大量のアルコール飲料を摂取してしまう。そのため、特に重度のAUD患者では、長期にわたる禁酒を成功させるまでに、繰り返し治療を受けることも珍しくない。AUDの再発は、医療費にかける負担が大きいだけでなく、患者の治療に対する意欲を損なう。過去の研究では、治療アウトカムと関連するAUD患者の特徴が特定されているが、これらを体系的に活用して臨床的アウトカムの予測を試みた研究は少ない。 そこでRoberts氏らは、AUDと薬物療法に関する最大の臨床試験であるCOMBINE試験(対象者1,383人)のデータを基に機械学習による予測モデルを構築し、AUD患者の臨床的アウトカムに対する予測能を検証した。同試験の対象患者は、薬物療法、または薬物療法+行動療法など9種類の介入法のうちのいずれかを4カ月間受ける群にランダムに割り当てられていた。予測ターゲットは、治療開始後1カ月以内、治療終了前1カ月間、または隔週で行われる治療セッション間での大量飲酒とされた。なお、大量飲酒は、女性では1日4杯以上、男性では1日5杯以上の飲酒と定義された。 その結果、このモデルは再発リスクの予測に優れ、大量飲酒に舞い戻るリスクが高く、介入を追加することでベネフィットを得られる可能性のある患者を、臨床医よりも正確に特定できる可能性が高いことが明らかになった。 また、AUD再発を予測する上で最も重要な因子は、肝酵素レベル、アルコール依存症が始まった年齢などの他、飲酒行動や精神症状に関連する自記式の調査スコアなどであることが分かった。Roberts氏らは、「これらの因子に関する情報は、AUDの治療中に比較的容易かつ安価に得ることができる」と指摘している。さらに、過去の研究では有害な飲酒と関連を示す因子に性差のあることが示されていたが、今回の研究でもそれらの知見と一致する結果が得られた。 以上のような結果を踏まえた上でRoberts氏らは、「この研究により、定期的に収集された臨床データを用いれば、機械学習によりAUDに対する治療のアウトカムを予測できる可能性のあることが明らかになった。この手法を用いることで、高額で侵襲的な評価方法を使わずとも、臨床上の予測精度を大幅に向上させることができるかもしれない。こうしたモデルをどのように活用するのが最善なのか、さらなる研究で追求する必要がある」と結論付けている。

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武田(ノババックス)ワクチンの副反応

武田(ノババックス)コロナワクチンの主な副反応初回接種(1、2回目)追加接種(3回目)(%)1001001001回目81.42回目80808063.362.760606050.032.743.354.651.046.945.940404029.321.3 20.729.317.3 10.0 10.7 8.728.617.3 15.313.3 11.3 2020202.72.74.711.310.313.317.33.3000<背景>国内第I/Ⅱ相試験(TAK-019-1501試験)の結果を基に作成。ワクチン接種群150例(新型コロナウイルス感染症ワクチン未接種の20歳以上の日本人健康成人)から報告された局所反応別割合の結果をグラフ化。<背景>海外第I/Ⅱ相試験(2019nCoV-101試験 第2相パート)の結果を基に作成。ワクチン接種群97例(本剤を3週間隔で2回接種した18~84歳の健康成人)から報告された局所反応別割合の結果をグラフ化。・本剤は組換えタンパクワクチンで、不活化ワクチンの一種です。・ワクチン未接種の方、1回目や2回目にほかのワクチンを接種した方でも接種可能です。また、mRNAワクチンにアレルギーがあった方でも受けられる場合があります。・上記グラフは発現頻度が10%以上の副反応を示し、「発熱」については追加接種(3回目)後に報告されました。いずれの副反応も大部分は接種後1~2日以内に発現し、持続期間の中央値は1.0~2.5日でした。出典:ヌバキソビッド筋注添付文書、厚生労働省_武田社の新型コロナワクチン(ノババックス)についてCopyright © 2022 CareNet,Inc. All rights reserved.

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第102回 サル痘にも有効な「天然痘ワクチン」、国内備蓄の活用を検討

<先週の動き>1.サル痘にも有効な「天然痘ワクチン」、国内備蓄の活用を検討2.来年度から「マイナ保険証」義務化、健康保険証は原則廃止/厚労省3.後期高齢者の所得確認にもマイナ活用、プラットフォーム創設4.サイバー攻撃対策強化、職員向けセキュリティ研修が義務に/厚労省5.検査キット販売や看護師・薬剤師のタスクシェアなど、規制緩和を検討へ6.大麻取締法の改正について議論開始、医療ニーズへ対応/厚労省1.サル痘にも有効な「天然痘ワクチン」、国内備蓄の活用を検討欧米を中心に感染報告が相次いでいる感染症「サル痘」について、有効とされる天然痘ワクチンに注目が集まっており、すでに各国が確保に動き出している。後藤 茂之厚生労働相は27日の閣議後の記者会見で、わが国では以前からテロ対策を目的に天然痘ワクチンの生産・備蓄が行われており、政府がワクチンの活用方法について検討を進めていると述べた。世界保健機関(WHO)や国立感染症研究所などによると、サル痘は主にアフリカで流行する感染症で、発疹や発熱などの症状が出る。天然痘ワクチンには、サル痘の発症予防効果が約85%あるとされ、英国では感染が疑われる人への接種が進められている。現時点で国内での感染例はなく、後藤氏は「人から人への感染はまれとされている。国内外の発生動向を監視しつつ、必要な対応を講じる」と話した。(参考)サル痘とは?(ケアネット 患者説明用スライド)天然痘ワクチン「国内で備蓄」 サル痘にも有効―後藤厚労相(時事通信)サル痘に有効とされる天然痘ワクチン 日本も備蓄、活用方法を検討(毎日新聞)2.来年度から「マイナ保険証」義務化、健康保険証は原則廃止/厚労省厚生労働省は25日の社会保障審議会にて、健康保険証を原則廃止とし、2023年度からすべての医療機関・調剤薬局でマイナンバーカードと健康保険証を一体化した「マイナ保険証」の導入を義務付けることを決定した。政府によれば、オンライン資格確認に必要な顔認証付きカードリーダーの申し込みは約6割(約13万)の施設が済ませているが、運用を開始している施設は19%であり、マイナンバーカードによる資格確認の迅速な導入が求められている。2022年度上半期には導入の加速化が図られるよう集中的な取り組みを行い、未対応の施設は遅くとも9月頃までに顔認証付きカードリーダーの申し込みが必要とし、働きかけを行っていく。(参考)保険証「原則廃止」へ マイナンバーカードに一本化 政府検討(朝日新聞)マイナ保険証、病院に義務化 患者負担軽減も視野 厚労省検討(日経新聞)資料 オンライン資格確認等システムについて(厚労省)3.後期高齢者の所得確認にもマイナ活用、プラットフォーム創設政府が本年6月に取りまとめる経済財政運営方針「骨太の方針」に、75歳以上の後期高齢者の保険料の見直しについて、株式や配当などの金融所得も含めて勘案するため、マイナンバーカードを活用することが盛り込まれる。これによって、後期高齢者の医療費を支える現役世代の負担を軽減できる可能性がある。今後、金融資産がある高齢者の負担は増える見込みだ。このほか、「全国医療情報プラットフォーム」の創設を行い、電子カルテの診療情報やワクチン接種歴などを医療機関や自治体が共有し、患者が最適な治療を受けられるような情報基盤を作ることが決定した。災害時など、かかりつけ外の医療機関でも患者情報を確認し必要な治療の継続が可能になるほか、救急搬送された意識障害患者等の手術や薬剤情報等を確認することで、より適切で迅速な検査、診断、治療等の実施が可能となる。なお医療機関・薬局への情報共有は、個別に同意を得る仕組みを構築した後に運用を開始するとされ、2023年5月が目途。(参考)75歳以上保険料決定に「マイナンバー」活用も ”骨太の方針”原案判明(FNNプライムオンライン)医療情報、デジタル化で共有 プラットフォーム創設 骨太方針に明記(産経新聞)全国の医療機関で診療情報(レセプト・電子カルテ)を共有する仕組み、社保審・医療保険部会でも細部了承(Gem Med)4.サイバー攻撃対策強化、職員向けセキュリティ研修が義務に/厚労省近年、病院への大規模なサイバー攻撃がわが国でも増加していることを踏まえ、厚労省は27日に医療機関でのサイバーセキュリティ対策の方針を明らかにした。平時の医療機関での情報共有基盤として、医療版のISAC(Information Sharing and Analysis Center)を立ち上げてサイバーセキュリティのリスクマネジメントを強化支援する仕組みを確立するほか、脆弱性が指摘されている機器のアップデートや、医療従事者へのセキュリティ対策研修の充実を図る。診療録管理体制加算を算定する400床以上の医療機関には、年1回程度以上の職員向け情報セキュリティ研修の実施が求められる。(参考)医療機関へのサイバー攻撃対策、「ISAC」設立へ 200床未満の施設に「お助け隊」活用促進(CB news)病院に相次ぐサイバー攻撃 遅れる医療の防衛、日経調査 大規模3病院に侵入 3分の2でパスワード漏れも(日経新聞)医療分野のサイバーセキュリティ対策について(厚労省)5.検査キット販売や看護師・薬剤師のタスクシェアなど、規制緩和を検討へ岸田内閣の諮問機関である規制改革推進会議は、27日、政府に答申を提出した。5つの重点分野のうち、医療・介護・感染症対策として、オンライン診療の拡充により、自宅で受診・健康管理から薬剤・医薬品受け取りまでを可能とする方策や、薬剤師による調剤業務の一部外部委託を可能とする検討のほか、薬局での抗原定性検査キット販売の完全解禁などを求めている。また今後、介護需要増加に伴い人手不足が見込まれる介護施設での人員配置基準の緩和や、薬剤師による看護業務のタスクシェアのほか、機械学習を行うプログラム医療機器(SaMD)のアップデート時の審査の省略・簡略化についても検討を求めている。(参考)オンライン診療拡充、抗原キット薬局販売…規制改革推進会議が答申取りまとめ(読売新聞)国承認コロナ検査キット ネットでなぜ買えない? 政府見直し議論へ(朝日新聞)医療改革、スピード不可欠 規制改革会議が答申 看護、薬剤師が分担/介護人員を変更(日経新聞)6.大麻取締法の改正について議論開始、医療ニーズへ対応/厚労省厚労省は、大麻の規制について検討する委員会を25日新たに立ち上げた。2021年6月に出された「大麻等の薬物対策のあり方検討会」の取りまとめを踏まえ、大麻取締法、麻薬及び向精神薬取締法改正に向けて、議論を開始する。米国やG7諸国で承認されている大麻から製造された難治性のてんかん治療薬の事例等を参考に、医療ニーズへの対応や適切な利用を推進するとともに、大麻事犯の検挙人員が7年連続で増加していることを鑑みて大麻使用罪を創設するなど、不適切な大麻利用・乱用に対しても対応していく。(参考)大麻の「使用罪」導入の方向で議論 厚労省の新たな小委員会がスタート(BuzzFeed)第1回 厚生科学審議会医薬品医療機器制度部会大麻規制検討小委員会 資料

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「医師の常識」を疑え【今日から始める「医師の働き方改革」】第11回

第11回 「医師の常識」を疑えお話を伺った森内 浩幸氏(長崎大学医学部小児科学教室 教授)日々仕事に邁進し、同僚など特定の人としか会話しないと、今いる世界の常識にどっぷりと浸ってしまい、「当たり前」を疑うことが難しくなります。どの業界にも言えることですが、多忙な医師はとくに陥りやすい状況ではないでしょうか。そんな「当たり前」を疑うことで医局の働き方改革を前進させた、長崎大学医学部小児科学教室の森内 浩幸氏にお話を伺いました。―大学全体の働き方改革プロジェクト「ワークスタイル・イノベーション」に参加してみていかがでしたか?プロジェクト参加がきっかけで、医局全体の意識が変わりました。小児科は子供が相手で人手が必要で、非常に多忙です。それでも、長く健康に働き続け、よい医療を提供するためには自分たちのワークライフバランスが重要だ、という認識を新たにしました。具体的な変化もいくつかありました。1)夜間や週末の病状説明を原則廃止お子さんの病状や診療方針を両親に説明する際、これまでは希望に応じて夜間や週末にも対応してきました。でも、今は「大切なお子さんのためですから、平日の診療時間内に時間をつくっていただけませんか?」と相談し、対応してもらっています。2)院内カップルへの配慮職場内にパートナーがいるという医師が少なくなく、人事や異動のタイミングで相手側の医局長と話し、小児科側の意向を伝えるようにしています。とくに子どもがいる医師の場合、異動が家庭に与える影響は大きいですから、事前に本人と併せ、パートナー側の状況までを把握することが大切だと考えています。長崎大学医学部小児科学教室(病棟カンファレンス)―これまで当然とされてきた医局の「当たり前」を変えたのですね。医師の世界では当たり前でも、外から見れば当たり前とは程遠いとことは少なくありません。「医師は長時間労働が当たり前」という「常識」も今後は確実に変わっていくでしょう。私の場合、米国留学の経験が常識を疑うことの大切さを知るうえで大きかったですね。米国の医師の常識は日本の医師とは違う部分も多く、とくにオンオフの切り替えがはっきりしており、当番の日でなければ定時で帰って家族と食事をする、というのがあちらの「常識」でした。今はインターネットでさまざまな情報が取れる時代ですから、他の世界の常識を知ることが、変革のヒントになるはずです。長崎大学医学部小児科学教室(病棟回診)〈解説〉「当たり前」と思っていることは盲点になりやすく、自分たちでは気付きにくいものです。書籍『思考の枠を超える』(篠原 信、日本実業出版社)では、自分の常識を問い直す手法として、「言語化」というものが紹介されています。言語化とはその意味通り、「今起こっていることや気付いたことを他の人に話す」というものです。言葉にすると、説明できることと説明できないことがあることに気付きます。うまく説明できない、話せない部分にこそ「自分が常識と思っている盲点」が隠れています。言語化を使うためには、医師以外の方が参加する勉強会などに参加したり、友人と話したりする機会を持つとよいでしょう。共有する知識の少ない人にある程度抽象化して話すことで、自分の組織をいつもとは違った目で見ることができます。私たちのような働き方改革の専門家に相談することも組織の問題を言語化する大きな機会となるでしょう。今では働き方改革の先進病院として注目される長崎大学病院も、当初はどの先生も葛藤を持ちながら、自分の常識を言葉にし、それを問い直すことから始めました。ぜひ、皆さんも自分と組織の「当たり前」を問い直す作業に挑戦してみてください。

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