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今後の医師のマスク着用意向は?/医師1,000人アンケート

 新型コロナウイルス感染症対策として、これまで屋内では原則マスク着用、屋外では原則マスク不要とされてきたが、2023年3月13日よりマスクの着用は個人の判断が基本となった。CareNet.comでは、医師のプライベートにおけるマスク着用意向を探るため、会員医師1,000人を対象に『今後のマスクの着用意向に関するアンケート』を実施した。その結果、大多数の医師がマスクの着用基準が個人判断になることに賛成であり、プライベートでマスクを外したい医師と外したくない医師がほぼ半数であることが明らかとなった(2023年3月2日実施)。新型コロナウイルスに感染したことがある医師は3人に1人 Q1では、これまでの新型コロナウイルスの感染歴を聞いた。感染したことのある医師は32%、感染したことがない医師は68%であった。なお、CareNet.comで2022年12月10~17日に実施した調査では、感染したことのある医師は26%、感染したことがない医師は74%で、感染したことのある医師が増えていた。着用基準が個人判断になることに賛成の医師は68% Q2では、マスクの着用基準が個人判断になることに賛成かどうかを聞いた。「とても賛成」は23%、「どちらかといえば賛成」は45%であり、個人判断になることに賛成の医師は68%であった。「どちらかといえば反対」は16%、「とても反対」は6%、「どちらともいえない/わからない」は11%であった。新型コロナウイルスの感染経験の有無別でもほぼ同様の結果であった。・感染歴あり(328人):とても賛成25%、どちらかといえば賛成46%、どちらかといえば反対16%、とても反対4%、どちらともいえない/わからない9%・感染歴なし(700人):とても賛成23%、どちらかといえば賛成44%、どちらかといえば反対15%、とても反対6%、どちらともいえない/わからない12%「外したい」「外したくない」派はほぼ同数 Q3では、マスクの着用基準が個人判断になる3月13日以降、プライベートでマスクを外したいかどうかを聞いた。「できるだけ外したい」は41%、「できるだけ外したくない」は43%でほぼ同数であった。「どちらともいえない/わからない」は16%であった。感染経験の有無別では、感染歴のある医師のほうがマスクを外したい意向がやや強かった。・感染歴あり(328人):できるだけ外したい44%、できるだけ外したくない40%、どちらともいえない/わからない16%・感染歴なし(700人):できるだけ外したい40%、できるだけ外したくない44%、どちらともいえない/わからない16%マスクを外さないほうがよい状況は「飛行機、バス、電車」 Q4では、医師としてプライベートであってもマスクを外さないほうがよいと考える状況を聞いた(複数回答)。多い順に、飛行機/バス/電車、デパート/ショッピングモール、ライブ/スポーツ観戦(観客も声を出す可能性のある催事)、映画館/美術館/博物館、近所のスーパー、飲食店、カラオケ、クラシックコンサート/観劇(観客は声を出さない催事)、スポーツジム/フィットネスクラブ、公園/路上、屋外のスポーツ競技であった。 なお、フリーコメントでは、混雑時のバスや電車はつけたほうがよいが、飛行機は必要ないと区別する意見もあった。今後感染拡大すると考える医師は67% Q5では、マスクの着用判断が個人に委ねられることで、今後の新型コロナウイルス感染症の流行に変化が生じると考えるかどうかを聞いた。「とても感染が拡大する」は16%、「やや感染が拡大する」は51%で、着用判断が個人になることで感染が拡大すると考える医師は67%と大多数であった。「あまり感染は拡大しない」は19%、「ほぼ感染は拡大しない」は5%、「どちらともいえない/わからない」は9%であった。 フリーコメントでは、「社会の流れとしてはやむを得ないと思うが、恐らく感染は拡大して多少の死者を許容する形になるだろう」「マスクを外す場合、社会として、死者数が増えることを容認することが前提。現時点ではマスクを外すことが目的になり、その先のことの説明が足りない」「緩和していくことにより死者が増え後戻りしていくと思う」など、感染の再拡大を懸念する声が寄せられた。自由回答のコメント 最後に、マスクの着用判断が個人に委ねられることや、今後のマスク着用や感染対策について意見を聞いた。マスク着用を継続したい/継続してほしい医師・医療従事者はずっとマスクを着用することになるでしょう。・医療機関、高齢者もいる公共施設では着用すべき。・人の多い閉鎖空間ではマスク必要。・感染が拡大したときの医療現場の負担や社会の混乱を考えると、少なくともマスク着用を推薦したほうがよいと思う。・マスクを外すメリットが小さいのに、リスクが多すぎます。マスクを外したい/外してもよいと考える医師・マスクは着用しなくてよいが、換気だけは十分するよう国から通達してほしい。・基本的に有症状時に着用すればよいと思います。・感染が一時的に広がっても、自然免疫をつける上でも、外したほうがよいと思う。・世界の標準に合わせるべき。・マスクしなくてよい。感染が広がってもそれが自然なことなので無理なことはしなくてよいと思う。その他・周囲からの同調圧力が心配(外せ、外すなとも)。・政府の方針が、国主導で対応→自己責任で体調管理と各病院・医院に放り投げに変わっただけ。次の流行の波が来たら、これまで以上に医療崩壊。・あまりにも感染が増加し医療体制に支障が出るようなら再検討してほしい。・個人で判断ができず、医師に聞いてくる人たちがいます。子供ではないので自分で判断してほしい。・コロナに限らず、インフルエンザなど感染症流行時は自らの判断で感染予防に努めるべき。アンケート結果の詳細は以下のページに掲載中。医師もマスクを外したい?/医師1,000人アンケート

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治療前の抗菌薬で免疫チェックポイント阻害薬の有効性が低下/JCO

 免疫チェックポイント阻害薬(ICI)治療前の抗菌薬曝露は、腸内細菌叢の変化を通じて転帰に悪影響を及ぼす可能性があるが、大規模な評価は不足している。ICI開始前の抗菌薬が全生存期間(OS)に与える影響を評価したカナダ・プリンセスマーガレットがんセンターのLawson Eng氏らによるレトロスペクティブ・コホート研究の結果が、 Journal of Clinical Oncology誌オンライン版2023年2月24日号に掲載された。 著者らは、カナダのオンタリオ州で2012年6月~2018年10月にICIによる治療を開始した65歳以上のがん患者を、全身療法投与データを用いて特定した。このコホートをICI治療の1年前と60日前の両方における抗菌薬の処方請求データを得るためにほかの医療データベースとリンクし、多変量Coxモデルにより曝露とOSの関連性を評価した。患者のがん種は肺がんが最多(53%)、メラノーマ(34%)、腎臓がん、膀胱がんがそれに続いた。ICIはニボルマブとペムブロリズマブが一般的だった。 主な結果は以下のとおり。・ICIを投与されたがん患者2,737例のうち、ICI治療の1年前に59%、60日前に19%が抗菌薬を投与されていた。・OSの中央値は306日であった。ICI投与前1年以内のあらゆる抗菌薬への曝露はOSの悪化と関連していた(調整ハザード比[aHR]:1.12、95%信頼区間[CI]:1.12~1.23、p=0.03)。・抗菌薬のクラス解析では、ICI投与前1年以内(aHR:1.26、95%CI:1.13~1.40、p<0.001)または60日以内のフルオロキノロン系抗菌薬への曝露(aHR:1.20、95%CI:0.99~1.45、p=0.06)はOSの悪化と関連しており、1年間の総被曝週数(aHR:1.07/週、95%CI:1.03~1.11、p<0.001)および60日(aHR:1.12/週、95%CI:1.03~1.23、p=0.01)に基づいて用量効果がみられた。 著者らは「ICI治療前の抗菌薬、とくにフルオロキノロン系抗菌薬への曝露が高齢のがん患者のOS悪化と関連していた。ICI治療前の抗菌薬への曝露の制限、もしくは腸内細菌叢を変化させ免疫原性を高めることを目的とした介入が、ICIを受ける患者の転帰を改善するのに役立つ可能性がある」としている。

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せん妄予防に対するラメルテオン~メタ解析

 せん妄予防に対する新たな治療オプションとして期待されているラメルテオンだが、その有効性を評価したエビデンスは、まだ限られている。台湾・長庚記念病院国際医療センターのChia-Ling Yu氏らは、アップデートメタ解析を実施し、入院患者のせん妄予防に対するラメルテオンの効果に関するこれまでのエビデンスの信頼性を調査した。その結果、ラメルテオンは、プラセボと比較し、入院患者のせん妄リスクを低減させることが最新のメタ解析で明らかとなった。Journal of Pineal Research誌オンライン版2023年2月1日号掲載の報告。 せん妄予防に対するラメルテオンの有効性を評価したランダム化比較試験を特定するため、7つの主要な電子データベースよりシステマティックに検索した。ランダム効果モデル(frequentist-restricted maximum-likelihood)を用いて、データをプールした。50%の相対リスク低減閾値を用いて、試験逐次解析を実施した。主要アウトカムは、せん妄の発生率(オッズ比[OR]、95%信頼区間[Cl])とした。副次的アウトカムは、せん妄、すべての原因による死亡、すべての原因による治療中止までの日数とした。 主な結果は以下のとおり。・特定された187研究のうち、8つのプラセボ対照ランダム化比較試験(587例)をメタ解析に含めた。・アップデートメタ解析では、ラメルテオンは、プラセボと比較し、せん妄の発生率低下と関連していることが示唆された(OR:0.50、95%信頼区間[CI]:0.29~0.86、I2=17.48%)。・試験逐次解析では、40~60%の相対リスク低減閾値を使用した場合、ラメルテオンの有意性が認められた。・サブグループ解析では、ラメルテオンは、プラセボと比較し、高齢者群(5研究、OR:0.28、95%CI:0.09~0.85、I2=27.93%)および複数回投与群(5研究、OR:0.34、95%CI:0.14~0.82、I2=44.24%)においてせん妄発生率低下との関連が認められたが、非高齢者群および非複数回投与群では認められなかった。・外科患者と内科患者別の解析では、両群ともにラメルテオンによるせん妄予防の傾向が認められたが、統計学的に有意ではなかった。・副次的アウトカムに有意な差は認められなかった。

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garadacimab、遺伝性血管性浮腫の発作数を低減/Lancet

 遺伝性血管性浮腫の予防において、活性化第XII因子(FXIIa)の完全ヒト型モノクローナル抗体garadacimabはプラセボと比較して、1ヵ月当たりの発作数を著明に減少させるとともに、出血や血栓塞栓イベントのリスクは増加しないことが、米国・ペンシルベニア州立大学のTimothy J. Craig氏らが実施した「VANGUARD試験」で示された。研究の成果は、Lancet誌オンライン版2023年2月28日号で報告された。7ヵ国の無作為化プラセボ対照第III相試験 VANGUARD試験は、日本を含む7ヵ国28施設で実施された二重盲検無作為化プラセボ対照第III相試験であり、2021年1月~2022年6月の期間に患者のスクリーニングが行われた(CSL Behringの助成を受けた)。 年齢12歳以上のI型またはII型遺伝性血管性浮腫の患者が、6ヵ月間(182日)garadacimabまたはプラセボを皮下投与する群に、3対2の割合で無作為に割り付けられた。治療期間の1日目に負荷投与量(400mg[200mg×2回])が投与され、その後は月1回の投与(200mg)が5回、患者自身または介護者によって行われた。 主要エンドポイントは、6ヵ月の治療期間中の担当医評価による遺伝性血管性浮腫の発作数(月当たりの発作数)であった。安全性プロファイルも良好 64例が登録され、garadacimab群に39例、プラセボ群に25例が割り付けられた。全体の平均年齢は41.2(SD 15.9)歳(範囲:12~69)、女性が38例(59%)で、55例(86%)が白人、6例(9%)がアジア人(すべて日本人)だった。 6ヵ月の治療期間中における、担当医判定による遺伝性血管性浮腫の発作数は、garadacimab群が63、プラセボ群は264であった。1ヵ月当たりの平均発作数は、プラセボ群が2.01(95%信頼区間[CI]:1.44~2.57)であったのに対し、garadacimab群は0.27(0.05~0.49)と有意に低く(p<0.0001)、プラセボ群に対するgaradacimab群の平均差の割合は-87%(95%CI:-96~-58、p<0.0001)であった。 1ヵ月当たりの発作数中央値は、garadacimab群が0(四分位範囲[IQR]:0.0~0.31)、プラセボ群は1.35(1.00~3.20)だった。 初回投与から、garadacimab群の77%(30例)が72日間以上発作を起こさなかったのに対し、プラセボ群では76%(19例)が5日間以上発作を起こさなかった。初回発作までの期間中央値は、プラセボ群が11日であったのに対し、garadacimab群は6ヵ月の治療期間中に50%以上の患者が発作を起こさなかったため、中央値には到達しなかった。 治療関連有害事象は、6ヵ月の治療期間中に、garadacimab群が39例中25例(64%)で75件、プラセボ群は25例中15例(60%)で54件発現した。最も頻度の高い治療関連有害事象は、上気道感染症(garadacimab群4例[10%]、プラセボ群2例[8%])、上咽頭炎(3例[8%]、1例[4%])、頭痛(3例[8%]、4例[16%])であった。 とくに注目すべき治療関連有害事象である重度の過敏反応/アナフィラキシー、血栓塞栓イベント、出血イベントは、両群ともにみられなかった。試験中止や死亡の原因となった治療関連有害事象も発現しなかった。 著者は、「これらの結果は、遺伝性血管性浮腫の患者に対する予防治療として、garadacimabの使用を支持するものである」としている。

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認定薬局のメリットはやはり大きかった!在宅件数、売上も増加【早耳うさこの薬局がざわつくニュース】第106回

皆さんの薬局は、専門医療機関連携薬局や地域連携薬局、健康サポート薬局などの認定を取得していますか? つい認定を取得することを目標としがちですが、取得がゴールではなく、実際はその取得によってようやくスタートラインに立てます。しかし、認定後の運用には課題が付いて回るため、どのように取り組んでいこうかと取得前から不安に感じている薬局は多いのではないでしょうか。この度、日本保険薬局協会(NPhA)が認定を取得した薬局を対象としてアンケートを実施しました。認定に関して知っておいて損はない、勉強になる結果となっていますので、早速見ていきましょう。このアンケートは、認定薬局の実態を把握することを目的として、在宅および連携の実績と実例、認定取得のメリット・デメリット、課題と展望についてヒアリングを行いました。2022年10~11月に会員薬局の認定薬局を対象として行われ、17社262薬局から回答を得て、2023年2月にその結果が公表されました。実際に認定を得た薬局のみからの回答であり、「実際にやってみた」人たちのリアルな意見は貴重です。私が興味を持ったのは、認定を取得した薬局にそのメリット・デメリットを聞いている項目です。まず、メリットはどのようなことが挙げられたのでしょうか。認定取得のメリットとして、半数以上の薬局が「従業員のスキル向上」「従業員のモチベーション向上」と回答しました。それに続いて、「スムーズな多職種連携、連携機会の増加」「患者からの信頼度向上」「薬局としての認知向上」などが挙げられました。実際に在宅や介護の相談や依頼が増えた、連携が進んだ、患者数や売上が向上した、などの具体的なメリットも挙げられています。「認定を取ってみたけど全然メリットがない…」ということがなくてよかったです。実際に薬局の信頼度向上につながっているのでしょう。デメリットは各所コストの増大一方、認定を取得したデメリットとして多かったものは、「業務時間・残業時間の増大」「人手不足」「教育研修コストの増大」であり、多くの薬局で各種コストが増大していることがわかります。また、無菌調剤に取り組む薬局については、その設備だけでなく研修費用やメンテナンスなどに関しても費用がかかるといったコメントもありました。業務が増えるのはやむを得ないのかもしれませんが、研修や医療機関との打ち合わせなどに時間を要する+業務量が増加する→残業が増える→従業員のモチベーションが低下する、という負の連鎖が心配です。業務の増大をモチベーションやスキルの向上といった良い方向にどうやって変えていけるかが、認定薬局の継続のポイントになりそうです。在宅対応事例についてもとても参考になります。退院時カンファレンスへの参加から在宅移行した事例や、緩和ケアや看取りにかかわった事例、施設在宅における往診同行などの介入事例などに関してはその領域や程度について掲載されていますので、ご自身の薬局における実際の患者さんと照らし合わせながら読むとよいと思います。この結果を見ると、確かに調剤や服薬指導といった日々行っているような業務とは異なり、医療機関や施設に出向き、ヒアリングや調整を行い、在宅の結果をトレーシングレポートにして報告…など、かなり時間と労力を要する業務が増えるのだなと感じます。本アンケートは回答数がそれほど多くないため、数字を追うよりもその実態に関するコメントを読むことに意味があるように思いました。NPhAのアンケートはこのような実態に沿った調査報告が公表されることが多く、背中を押してくれるような内容が多いと感じます。申請がまだという薬局でも日々の業務の参考になるのではないでしょうか。参考1)認定薬局ヒアリング調査報告書

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英語で「検査を早めたいのですが」は?【1分★医療英語】第71回

第71回 英語で「検査を早めたいのですが」は?I would like to expedite her CT scan.(彼女のCT検査を早めたいのですが)Okay. I will call her right now.(わかりました。今から彼女を呼びます)《例文1》I will expedite your MRI brain so that you can go home today.(今日中に退院できるように、あなたの頭部MRI検査を早めます)《例文2》Could you expedite his echo?(彼の心エコーを早めてもらえますか?)《解説》“expedite”は馴染みのない英単語かもしれませんが、「促進する」「時間のかかるものを早める」という意味で、「エクスパダイト」と発音します。医療現場では、CTやMRI、エコーなど、待ち時間が長い画像検査を早めたい状況でよく使われる単語で、“expedite”+検査名で「~の検査を早めたい」という意味になります。同義語としては“speed up”などがあります。講師紹介

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第154回 両親とも雄の健康なマウスが誕生/精子を増やす仕事

親がどちらも雄のマウスができた雄マウスの細胞から作成した卵細胞を使って両親とも雄のマウスを誕生させ、先立つ研究とは一線を画して生殖可能な成獣に成長させることができました1,2)。生殖研究の世界で名を馳せ、2021年から大阪大学に籍を置く3)林 克彦教授らの研究成果です。英国のロンドンでの学会「Third International Summit on Human Genome Editing」で先週8日に発表されました。まだ論文にはなっていませんが、Nature誌に投稿済みとBBCニュースは伝えています4)。両親とも雄のマウスを作ったのは実は林教授らが初めてではありません。4年半ほど前の2018年10月に中国の研究チームが両親とも雌または雄のマウスの誕生をすでに報告しています5)。両親とも雌のマウスは幸いにも生殖可能な成獣に成長できたのに対して、両親とも雄のマウスは長くは生きられず残念ながら生後数日で死んでしまいました。林教授らが作った両親とも雄のマウスはそうではなく、仔を授かれる成獣へと正常に成長することができたことが中国のチームの成果とは一線を画します。雄のマウスの細胞もヒトと同様にたいていX染色体とY染色体を1つずつ有します。林教授らはまず雄マウスの細胞一揃いを幹細胞様の細胞に作り変え、いくつかがY染色体を失うまで培養しました。Y染色体はしばしばおのずと失われることが知られています。そうしてY染色体を失った細胞から次はX染色体を2つ持つ細胞を作ります。そのためにはリバーシン(reversine)という化合物が使われました。細胞分裂の際の染色体配分にちょっかいを出すリバーシンの働きによってX染色体を2つ備えた細胞(XX細胞)を見つけ出し、続いてそれらXX細胞が卵細胞へと作り変えられました。そうしてできた卵細胞が雄の精子と受精してできた胚が雌マウスの子宮に移植され、待望の仔マウス誕生を研究者は目にすることができました。ただし成功率は低く、630もの胚を移植して誕生したマウスはわずか7匹のみでした。とはいえ7匹はどうやら正常で、生殖可能な成体に発育しました。今後の課題の1つとして両親とも雄のマウスを注意深く調べ、普通に生まれたマウスと比較して違いがあるかどうかを検討する必要があると林教授は言っています。さらなる研究の積み重ねで安全性や効率などの課題が解消してヒトでも通用するようになればX染色体を全部または部分的に欠くターナー症候群の女性の不妊やその他の性染色体関連の不妊の治療に林教授らの染色体介入技術は役立ちそうです。ターナー症候群は林教授の今回の成果のきっかけを成すものであり、それら女性の不妊治療手段の研究がそもそもの始まりでした2)。林教授らの技術は不妊治療の枠を超えた用途もありそうです。たとえば男性同士のカップルがその2人の血を引く子を代理母の助けを借りて授かれるようになるかもしれません。もっというと、1人の男性が自身の血のみを引く子をいわば“自家受精”によって授かることを遠い未来には可能にするかもしれません。とはいえそのような利用法は技術うんぬんの枠を超えたものであり、倫理や意義について手広い話し合いが必要でしょう。技術面だけに限って言うと両親とも男性の子を産むことは理論上可能でしょうが2)、人間社会に果たしてその技術が馴染むかどうかはわからない1)と林教授は言っています。精子を増やす仕事もろもろの課題が解決していつの日か男性同士のカップルが子を授かれるようになったとして、卵細胞になる細胞を提供する側と精子を提供する側を決めるのは悩ましいかもしれません。しかしいずれにせよ精子を十分に備えているに越したことはないでしょう。本連載第139回でも紹介したように世界の男性の精子数は心配なことにどうやら減っていますが、先月2月前半に発表された報告で精子数が多いことに関連する仕事の特徴が見つかっています。それは重いものを繰り返し持ち上げたり動かしたりすることです。不妊治療を求めるカップルを募って実施されているEnvironment and Reproductive Health (EARTH)試験の男性被験者の解析によって判明しました。EARTH試験は日頃接する化学物質や生活習慣の生殖への影響を調べることを目的としており、1,500人を超える男女の検体やデータが集められています。今回発表されたのはEARTH試験の男性被験者377人の解析結果であり、仕事で重いものをしばしば持ち上げたり動かしたりしている男性は仕事で体をあまり動かさない男性に比べて精子濃度が46%高く、射精中の全精子数が44%多いことが示されました6,7)。仕事でより体を動かしていると答えた男性は男性ホルモンであるテストステロン濃度が高く、意外にも、女性ホルモンであるエストロゲン濃度も高いという結果が得られています。そのエストロゲン濃度の上昇は豊富なテストステロンがエストロゲンに変換されたことによるのではないかと研究者は想定しています。それら2つのホルモンを正常範囲に保つためにテストステロンがエストロゲンに変わる仕組みがあることが知られています。不妊は増え続ける一方で、その原因は多岐にわたりますが、およそ40%は男性側の要因にあるようです。精子数と精液の質は男性が原因の不妊が増えていることに大いに寄与しているようです。EARTH試験の男性936人を調べた先立つ解析では精子濃度と精子数が2000年から2017年にそれぞれ37%と42%低下していました8)。EARTH試験に参加しているのは不妊治療を求める男性であり、今回の解析で示されたような体を動かすことと生殖指標の関連が一般男性にも当てはまるかどうかを調べる必要があります。また、体を動かすことと生殖を関連付ける生理的な仕組みがさらなる試験で明らかになることが期待されます。参考1)The mice with two dads: scientists create eggs from male cells / Nature2)Mice have been born from eggs derived from male cells / NewScientist3)大阪大学NEWS & TOPICS4)Breakthrough as eggs made from male mice cells / BBC5)Li ZK, et al. Cell stem cell. 2018;23:665-676.6)Minguez-Alarcon L, et al. Human reproduction. 2023 Feb 11. [Epub ahead of print]7)Study shows higher sperm counts in men who lift heavy objects / Harvard University8)Minguez-Alarcon L, et al. Environ Int. 2018;121:1297-1303.

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花粉症患者の5割が医療機関受診の経験なし/アイスタット

 2023年の春は「10年に1度」と言われるくらい花粉の飛散が予測され、連日、天気予報では大量飛散の注意を伝えている。花粉症関連の市販薬や花粉予防グッズの売り上げが伸びている中で、患者はどのように感じ、備えや治療を行っているのであろうか。株式会社アイスタットは2月8日に「花粉症」に関するアンケートを行った。 アンケート調査は、セルフ型アンケートツール“Freeasy”を運営するアイブリッジ株式会社の首都圏在住の会員20~59歳の300人が対象。■調査概要形式:WEBアンケート方式調査期間:2023年2月8日回答者:セルフ型アンケートツールFreeasyに登録している300人(20~59歳、東京・神奈川・千葉・埼玉居住の会員)■アンケート概要・花粉症の人は5割を超える。そのうち、花粉症歴が「長い」は24%、「中間」は14%、「短い」は14.3%・花粉症の重症度は「重症」が5.7%、「中等症」が47.8%、「軽症」が46.5%・花粉症治療の受診状況は、「医療機関に1度も受診したことがない」が最多で5割近く・医療機関を毎年受診しない理由の第1位は「費用がかかる」、第2位は「面倒」・「花粉症歴が長い」「重症・中等症」の人ほど「花粉が飛び始める1~2ヵ月前」に対策・花粉症の3大症状の「鼻水」「くしゃみ」「目のかゆみ・痛み・涙」は70%以上・花粉症対策として購入しているもの第1位は「市販の飲み薬」、第2位は「市販の目薬」・花粉症の症状は、「遺伝・体質」より「自律神経の乱れ」「生活習慣が不規則」のほうが影響している■花粉症患者が医療機関に行かない理由の第1位は経済的理由 質問1で「花粉症と自覚した時期」(単回答)について聞いたところ、「現在花粉症でない」が47.7%、「長い(20年以上)」が24.0%、「短い(10年未満)」が14.3%、「中間(10年以上~20年未満)」が14.0%の順だった。また、年代別では、「花粉症である」を回答した人は40代で最も多く、「花粉症でない」と回答した人は50代で最も多かった。 質問2で(花粉症未発症、寛解を除いた)花粉症患者157人に「自己診断で花粉症の重症度」(単回答)について聞いたところ、「中等症」が47.8%、「軽症」が46.5%、「重症」が5.7%の順で続いた。また、年代別では「重症」「軽症」と回答した人は「20・30代」で最も多く、「中等症」と回答した人は「50代」で最も多かった。 質問3で質問2で回答した157人に「花粉症の治療のための医療機関受診の有無」(単回答)について聞いたところ、「1度も受診したことがない」が49%、「その年の症状により受診」が35%、「毎年、受診している」が15.9%と続き、約半数の人に受診経験がない結果だった。また、花粉症の重症度別では、「重症・中等症」の人ほど「毎年、受診」「その年の症状により受診」が多く、「軽症」の人ほど「受診したことがない」が多い結果だった。 質問4で質問3で「毎年、受診しない」以外を回答した132人に「花粉症の治療のために医療機関を毎年受診しない理由」(複数回答)について聞いたところ、「費用(診察代)がかかる」が46.2%、「面倒」が34.1%、「市販の薬で十分」が30.3%、「待ち時間が長い、混んでいる」が25.8%の順で回答が多かった。 質問5で「いつ頃から花粉症対策を始めているか」(単回答)について聞いたところ、「特に何も対策していない」が51%、「花粉症が飛び始めてから」が19.7%、「花粉症の症状が出てから」が15%、「花粉症が飛び始める1~2ヵ月前」が10.7%の順で多かった。また、花粉症歴別・重症度別でみると、花粉症歴が長い人および症状が重症・中等症の人ほど「花粉が飛び始める1~2ヵ月前」に花粉症対策を行っていた。 質問6で「花粉症になったことがない」以外を回答した173人に「花粉症対策ですでに試したことのある療法、もしくは花粉症の有無に関わらず今後試してみたい療法」(複数回答)について聞いたところ、「対症療法」が56.6%と1番多かった一方で、「特になし」も34.7%と2番目に多かった。最近、医療機関でなされている「原因療法」は10.4%、「舌下免疫療法」は8.7%だった。 質問7で「花粉症である」と回答した157人に「花粉症の症状」(複数回答)について聞いたところ「鼻水」が80.3%、「くしゃみ」が76.4%、「目のかゆみ・痛み・涙」が72%と多く、いわゆる「花粉症の3大症状」が上位を占めた。また、花粉症の重症度別では、すべての症状で「重症・中等症」の人が多い結果だった。 質問8で「花粉症である」と回答した157人に「花粉症対策として、購入しているもの(処方箋薬は除く)」(複数回答)について聞いたところ、「市販の飲み薬」が45.9%、「市販の目薬」が43.9%、「市販の点鼻薬」が20.4%と多かった。また、上位には「緩和・ケア対策」、下位には「外出対策」の購入品の内容が占めた。 質問9で「花粉症の症状に影響するもの」(複数回答)について聞いたところ、多い順に以下の通りとなった。・1位「家の中・室内の花粉対策をしていない」(24.0%)・2位「親・兄弟が花粉症やアレルギー体質である」(23.7%)・2位「衣類・布団・布製品の花粉症対策をしていない」(23.7%)・4位「外出時の花粉対策をしていない」(19.0%)・5位「花粉症に効果がある食事をしていない」(18.7%) また、症状が「重症・中等症の人(84人)」の中では「過労、ストレスによる自律神経の乱れがある」が29.8%で最も多く、「軽症の人(73人)」の中では「親・兄弟が花粉症やアレルギー体質である」が35.6%で最も多く、「なったことはない人(143人)」の中では「あてはまるものはない」が51%で最も多かった。

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日本人の認知症リスクに対する喫煙、肥満、高血圧、糖尿病の影響

 心血管リスク因子が認知症発症に及ぼす年齢や性別の影響は、十分に評価されていない。大阪大学の田中 麻理氏らは、喫煙、肥満、高血圧、糖尿病が認知症リスクに及ぼす影響を調査した。その結果、認知症を予防するためには、男性では喫煙、高血圧、女性では喫煙、高血圧、糖尿病の心血管リスク因子のマネジメントが必要となる可能性が示唆された。Environmental Health and Preventive Medicine誌2023年号の報告。 対象は、ベースライン時(2008~13年)に認知症を発症していない40~74歳の日本人2万5,029人(男性:1万134人、女性:1万4,895人)。ベースライン時の喫煙(喫煙歴または現在の喫煙状況)、肥満(過体重:BMI 25kg/m2以上、肥満:BMI 30kg/m2以上)、高血圧(SBP140mmHg以上、DBP90mmHg以上または降圧薬使用)、糖尿病(空腹時血糖126mg/dL以上、非空腹時血糖200mg/dL以上、HbA1c[NGSP値]6.5%以上または血糖降下薬使用)の状況を評価した。認知機能障害は、介護保険総合データベースに基づき要介護1以上および認知症高齢者の日常生活自立度IIa以上と定義した。心血管リスク因子に応じた認知症予防のハザード比(HR)および95%信頼区間(CI)は、Cox比例回帰モデルを用いて推定し、集団寄与危険割合(PAF)を算出した。 主な結果は以下のとおり。・フォローアップ期間中央値9.1年の間に認知症を発症した人は、1,322例(男性:606例、女性:716例)であった。・現在の喫煙および高血圧は、男女ともに認知機能障害の高リスクと関連していたが、過体重または肥満は男女ともに認知機能障害のリスクと関連が認められなかった。・糖尿病は、女性のみで認知機能障害の高リスクと関連していた(p for sex interaction=0.04)。・有意なPAFは、男性では喫煙(13%)、高血圧(14%)、女性では喫煙(3%)、高血圧(12%)、糖尿病(5%)であった。・有意なリスク因子の合計PAFは、男性で28%、女性で20%であった。・年齢層別化による解析では、男性では中年期(40~64歳)の高血圧、女性では老年期(65~74歳)の糖尿病は、認知機能障害のリスク増加と関連していた。

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9価HPVワクチン「シルガード9」、9歳以上15歳未満の女性への2回接種の追加承認取得/MSD

 MSDは2023年3月8日のプレスリリースで、同日、ヒトパピローマウイルス(HPV)の9つの型に対応した「シルガード9水性懸濁筋注シリンジ(組換え沈降9価ヒトパピローマウイルス様粒子ワクチン[酵母由来])」について、9歳以上15歳未満の女性に対する2回接種の用法および用量を追加する製造販売承認事項一部変更承認を取得したと発表した。今回の承認により、対象年齢の女性の来院および接種回数を1回減らすことができ、ワクチン接種者や医療関係者をはじめとする接種に関わる人々の負担軽減にもつながることが期待される。 日本では、毎年約1万例の女性が新たに子宮頸がんと診断され、年間約約2,900例が亡くなっている1)。また、子宮頸がんは20代、30代の若い女性でも罹るがんで、発症年齢が出産や働き盛りの年齢と重なることもあり、治療によって命を取りとめても女性の人生に大きな影響を及ぼすことが多い疾患である。子宮頸がんの予防方法には、10代からのワクチン接種と20歳になってからの定期的な検診がある。 「シルガード9」は、9歳以上の女性を対象に、子宮頸がんなどの予防を効能または効果として、合計3回接種する用法および用量で、2020年7月21日に製造販売承認を取得している。今回の追加承認は、国内ならびに海外第III相試験の結果に基づくもので、9歳以上15歳未満の女性における2回接種の免疫原性(抗体の産生など免疫反応を引き起こす性質)および安全性は良好であることが確認された。 9価HPVワクチンは、2014年12月に世界で初めて米国で承認されて以来、2023年2月時点で80以上の国または地域で承認されている。また、米国を含む諸外国では、定期接種としておおむね11~13歳を対象に9価HPVワクチンの2回接種が推奨されている2)。 HPVワクチンの接種環境がさらに整うことにより、日本においても子宮頸がんの予防が促進されることが期待される。1)国立がん研究センターがん情報サービス「がん統計」(全国がん登録/厚生労働省人口動態統計)全国がん罹患データ(2019年)/全国がん死亡データ(2021年)2)第19回厚生科学審議会予防接種・ワクチン分科会予防接種基本方針部会2022(ワクチン評価に関する小委員会 資料1-1)

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EGFR陽性NSCLCの術後補助療法、オシメルチニブがOS延長(ADAURA試験)/AZ

 アストラゼネカは、オシメルチニブ(商品名:タグリッソ)の第III相試験(ADAURA試験)において、EGFR遺伝子変異陽性の病理病期IB~IIIAの非小細胞肺がん(NSCLC)に対する完全切除後の補助療法としてのオシメルチニブの投与により、全生存期間(OS)が有意に改善したことを2023年3月10日のプレスリリースで発表した。 ADAURA試験でオシメルチニブがEGFR陽性NSCLC術後補助療法でOS改善 国際共同第III相比較試験ADAURA試験は、EGFR遺伝子変異陽性(ex19del/L858R)の病理病期IB~IIIAのNSCLC患者のうち、腫瘍が完全切除された患者を対象とした試験。術後補助療法として、オシメルチニブ80mg/日を投与する群(オシメルチニブ群)とプラセボを投与する群(プラセボ群)に1:1の割合で無作為に割り付け、最大3年間投与した(両群とも術後化学療法の使用は許容された)。なお、再発したプラセボ群の患者は非盲検下でオシメルチニブの投与を可能とした。主要評価項目は、病理病期II/IIIA患者の無病生存期間(DFS)であり、副次評価項目は、全集団(病理病期IB~IIIA)におけるDFS、OSなどであった。 本発表では、ADAURA試験の主要な副次評価項目であるOSがオシメルチニブ群においてプラセボ群と比べて有意な改善を示し、かつ臨床的意義のある改善であったことが示されたとしている。なお、主解析においてDFSが統計学的有意かつ臨床的意義のある改善を示したことが報告されており、追跡調査ではDFSの中央値が約5.5年であったことが報告されている。ADAURA試験の結果詳細は、今後学会で発表される予定とのことである。 肺診療ガイドライン2022年版では、「CQ30. EGFR遺伝子変異陽性の術後病理病期II~IIIA期(第8版)完全切除例に対して、EGFRチロシンキナーゼ阻害薬は勧められるか?」について、EGFRチロシンキナーゼ(EGFR-TKI)による術後化学療法がOSの延長を示した試験結果は報告されていないことなどを理由として、推奨度決定不能としていた。■関連記事高リスク早期乳がんでの術後内分泌療法+アベマシクリブ、高齢患者でも有用(monarchE)/ASCO2023

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冠動脈疾患の一次予防に関する診療ガイドライン、11年ぶりに改訂/日本循環器学会

 『2023年改訂版 冠動脈疾患の一次予防に関する診療ガイドライン』が第87回日本循環器学会年次集会の開催に合わせ発刊され、委員会セッション(ガイドライン部会)において、藤吉 朗氏(和歌山県立医科大学医学部衛生学講座 教授)が各章の改訂点や課題について発表した。冠動脈疾患の一次予防に関する診療ガイドラインは全5章構成 冠動脈疾患の一次予防に関する診療ガイドラインは日本高血圧学会、日本糖尿病学会、日本動脈硬化学会をはじめとする全11学会の協力のもと、これまでの『虚血性心疾患の一次予防ガイドライン(2012年改訂版)』を引き継ぐ形で作成された。今回の改訂では、一次予防の特徴を踏まえ「冠動脈疾患とその危険因子(高血圧、脂質、糖尿病など)の診療に関わるすべての医療者をはじめ、産業分野や地域保健の担当者も使用することを想定して作成された。また、2019年以降に策定された各参加学会のガイドライン内容も冠動脈疾患の一次予防に関する診療ガイドラインと整合性のある形で盛り込み、「一般的知識の記述は最小限に、具体的な推奨事項をコンパクトに提供することを目指した」と藤吉氏は解説した。 冠動脈疾患の一次予防に関する診療ガイドラインは全5章で構成され、とくに第2章の高血圧や脂質異常などに関する内容、第3章の高齢者、女性、CKD(慢性腎臓病)などを中心に改訂している。 冠動脈疾患の一次予防に関する診療ガイドライン全5章のなかで変更点をピックアップしたものを以下に示す。冠動脈疾患の一次予防に関する診療ガイドライン第2章の改訂点<高血圧>・『高血圧治療ガイドライン2019』(日本高血圧学会)に準拠。・血圧の診断については、SBP/DBP(拡張期/収縮期血圧)130~139/80~89mmHg群から循環器疾患リスクが上昇してくるため、その名称を従来の「正常高値血圧」から「高値血圧」とした。また、診察室血圧と家庭血圧の間に差がある場合、家庭血圧による診断を優先する。・降圧目標について、75歳以上の高齢者は原則140/90mmHg未満とするが、高齢者でも厳格降圧(130/80mmHg未満)の適応となる併存疾患を有しており、かつ厳格降圧の忍容性ありと判断されれば過降圧に注意しながら130/80mmHg未満を目指すことが記されている。・降圧薬の脳心血管病抑制効果の大部分は、薬剤の特異性よりも降圧の度合いによって規定されている。その点を前提に、降圧薬治療の進め方に関する図を掲載した(p.22 図4)。<脂質異常>・脂質異常は『動脈硬化性疾患予防ガイドライン2022年版』(日本動脈硬化学会)に準拠し、危険因子の包括的評価(p.26 図5)にて、治療方針を決定する(p.23 表8)。・治療すべき脂質の優先順位を明確化した(1:LDL-C、2:non-HDL-C、3:TG/HDL-C)。<糖尿病・肥満>・糖尿病の診断早期から適切な血糖管理・治療が重要で、その理由は、糖尿病診断前のHbA1cが上昇していない耐糖能異常の段階から冠動脈疾患(CAD)リスクが上昇するため。・2型糖尿病の血糖降下薬の特徴が表で明記されている(p.31 表13)。・糖尿病患者においてCADの一次予防を目的としてアスピリンなどの抗血小板薬をルーチンで使用することを推奨しない、とした。これは近年のエビデンスを踏まえた判断であり、以前のガイドラインとは若干異なっている。<運動・身体活動>・運動強度・量を説明するため、身体活動の単位である「METs(メッツ)」や、主観的運動強度の指標である「Borg指数」に関する図表(p.42 表16、図6)を掲載し、日常診療での具体的指標を示した。<喫煙・環境要因、CAD発症時対処に関する患者教育・市民啓発、高尿酸血症とCAD>・禁煙に関する新たなエビデンスを記載し、新型タバコについても触れている。・寒冷や暑熱などの急激な温度変化がCAD誘発リスクを高めること、大気汚染からの防御などに触れている。冠動脈疾患の一次予防に関する診療ガイドライン第3章の改訂点・本章はポリファーマシー、フレイル、認知症、エンドオブライフに注目して作成されている。<高齢者>・75歳までは活発な高齢者が増加傾向である。また年齢で一括りにすると個人差が大きいため、個別評価の方法について冠動脈疾患の一次予防に関する診療ガイドラインに記載した。<女性>・CADリスクの危険因子は男性と同じだが、女性の喫煙者は男性喫煙者に比してその相対リスクが高くなる傾向がある。また、脂質異常症と更年期障害を同時に有する女性に対しては、禁忌・慎重投与に該当しないことを確認したうえでホルモン補充療法を考慮する、とした。<慢性腎臓病(CKD)>・高中性脂肪(高TG)血症を有するCKDに対する注意喚起として、フィブラート系薬剤は、高度腎機能障害を伴う場合には、ペマフィブラート(肝臓代謝)は慎重投与、それ以外のフィブラート系は禁忌であることが記載された。 このほか、冠動脈疾患の一次予防に関する診療ガイドラインで推奨した危険因子の包括的管理に関連し、第2章では包括的管理や予測モデルについて、また第4章にはリスク予測からみた潜在性動脈硬化指標に関する記載を加えた。第5章「市民・患者への情報提供」では市民への急性心筋梗塞発症時の対応や、心肺蘇生法・AEDなどについて触れている。 最後に同氏は「将来的には患者プロファイルを入力することで、必要な情報がすぐに算出・表示できるようなアプリを多忙な臨床医のために作成していけたら」と今後の展望を述べた。 冠動脈疾患の一次予防に関する診療ガイドラインの全文は日本循環器学会のホームページでPDFとして公開している。詳細はそちらを参照いただきたい。

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進行悪性黒色腫、術前・術後のペムブロリズマブは有効か/NEJM

 切除可能なIII/IV期の悪性黒色腫患者の治療では、ペムブロリズマブの投与を術前と術後の双方で受けた患者は、術後補助療法のみを受けた患者と比較して、無イベント生存期間が有意に長く、新たな毒性作用は検出されなかった。米国・テキサス大学MD AndersonがんセンターのSapna P. Patel氏らが実施した第II相無作為化試験「S1801試験」で示された。NEJM誌2023年3月2日号掲載の報告。米国の第II相無作為化臨床試験 S1801試験は、米国の90施設で実施され、2019年2月~2022年5月の期間に患者の登録が行われた(米国国立がん研究所[NCI]とMerck Sharp and Dohmeの助成を受けた)。 対象は、年齢18歳以上、臨床的に検出可能で測定可能なIIIB~IVC期の悪性黒色腫を有し、外科的切除が適用と考えられる患者であった。 被験者は、術前補助療法としてペムブロリズマブを3回投与したのち手術を行い、術後補助療法としてペムブロリズマブを15回投与する群(術前・術後補助療法群)、または手術を行い、術後にペムブロリズマブ(3週ごとに200mgを静脈内投与、合計18回)を約1年間、あるいは疾患の再発か、許容できない毒性が発現するまで投与する群(術後補助療法単独群)に無作為に割り付けられた。 主要評価項目は、intention-to-treat集団における無イベント生存であった。イベントは、手術が不可能な増悪または毒性の発現、すべての肉眼的病変の切除が不可能な場合、術後84日以内に術後補助療法の開始が不可能な増悪・手術合併症・治療による毒性作用、悪性黒色腫の術後の再発、全死因死亡と定義された。2年無イベント生存率:72% vs.49% 313例が登録され、術前・術後補助療法群に154例(年齢中央値64歳[範囲:19~90]、女性40%)、術後補助療法単独群に159例(62歳[22~88]、30%)が割り付けられた。追跡期間中央値は両群とも14.7ヵ月であった。 合計105件のイベントが発生し、このうち術前・術後補助療法群が38件、術後補助療法単独群は67件であった。無イベント生存期間は、術前・術後補助療法群が術後補助療法単独群よりも長かった(log-rank検定のp=0.004)。 ランドマーク解析では、2年時の無イベント生存率は、術前・術後補助療法群が72%(95%信頼区間[CI]:64~80)、術後補助療法単独群は49%(41~59)であった。 ベースラインの患者特性に基づくサブグループのすべてで、術前・術後補助療法群の有益性が認められたが、いくつかサブグループは症例数が少ないため確定的ではなかった。 術前・術後補助療法群のうち、142例が術前補助療法終了後に画像による奏効の評価を受け、9例(6%)で完全奏効が、58例(41%)で部分奏効が得られた。 補助療法中のGrade3以上の有害事象の発現率は両群で同程度で、術前・術後補助療法群が12%、術後補助療法単独群は14%であった。両群とも、ペムブロリズマブによる新たな毒性作用は認められず、死亡例はなかった。術前補助療法後に手術を受け、有害事象のデータが得られた127例のうち、9例(7%)で手術関連のGrade3/4の有害事象が発現した。 著者は、「本試験の結果は、手術との関連において、免疫チェックポイント阻害薬の投与のタイミングが、患者の転帰に大きな影響を及ぼす可能性があることを示すものである」としている。

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第138回 新型コロナ5類移行後、医療費は原則自己負担/政府

<先週の動き>1.新型コロナ5類移行後、医療費は原則自己負担/政府2.新型コロナ病床確保の補助金半減、9月末まで継続/厚労省3.コロナワクチン接種後死亡症例、「因果関係は否定できない」と認定/厚労省4.第8次医療計画へ新興感染症対策を追加、大筋で合意/厚労省5.アレルギー情報、薬剤禁忌などカルテ情報の共有へ/厚労省6.介護保険料の負担金額、4月以降 過去最高に/厚労省1.新型コロナ5類移行後、医療費は原則自己負担/政府政府は3月10日に新型コロナウイルス感染症対策本部を持ち回りで開催し、5月8日新型コロナウイルスの感染症法上の位置付けを5類に変更するのに合わせ、医療提供体制および公費支援の見直しを行うと発表した。従来行ってきた行政による入院措置や限られた医療機関による特別な対応から、幅広い医療機関による通常の対応に移行するのに合わせ、医療費については原則自己負担を求め、高額な医薬品代は公費支援を9月末まで継続する。外来診療については、新型コロナ罹患や疑いのみを理由とする診療拒否は「正当な事由」に該当しないとし、現在、新型コロナ患者を診療している約4.2万の医療機関を、季節性インフルエンザを対応している最大6.4万の医療機関まで拡充するとした。(参考)新型コロナウイルス感染症の感染症法上の位置づけの変更に伴う医療提供体制及び公費支援の見直し等について(厚労省)加藤大臣会見概要[新型コロナウイルス感染症対策本部後](同)コロナ5類移行後、原則自己負担 病院名公表は継続、政府決定(共同通信)政府 コロナ5類移行後 最大6万4000の医療機関で受け入れ目指す(NHK)コロナ5類移行 医療費負担が増える? 受診できる医療機関はQ&A(同)2.新型コロナ病床確保の補助金半減、9月末まで継続/厚労省厚生労働省は、新型コロナウイルスの感染症法上の分類引き下げに伴い、医療提供体制を正常化するため、コロナ患者の受け入れ医療機関に対して払ってきた「病床確保料」を半減させる方針を、3月10日に加藤厚生労働大臣の記者会見で明らかにした。また、受け入れ病院はこれまで約3,000の医療機関だったが、5月以降は約8,200の全病院での対応を目指す。このため急性期病棟以外での要介護者の受入れを評価するなど受入れを推進する。(参考)コロナ病床確保料半減へ 5類移行で厚労省、9月末まで(日経新聞)コロナ病床の補助金半減 通常医療と両立目指す(東京新聞)診療報酬のコロナ特例、5月8日に見直し 24年度からウィズコロナの報酬体系へ(CB news)3.コロナワクチン接種後死亡症例、「因果関係は否定できない」と認定/厚労省厚生労働省は、3月10日に厚生科学審議会予防接種・ワクチン分科会副反応検討部会と、薬事・食品衛生審議会薬事分科会医薬品等安全対策部会安全対策調査会を開催した。この中で、昨年11月初旬に、ファイザー社のオミクロン株対応ワクチンの接種を受け、同日中に死亡した症例についても検討が行われた。症例は接種5分後に体調悪化を発言し、15分後に呼吸停止、心肺蘇生を行ったが、アドレナリン注射は静脈ルートからの注射を指示されるも静脈ルートがなく、医療機関へ搬送したが、接種開始後1時間40分余りで死亡した。委員会は発生した患者とワクチンの因果関係については「ワクチン接種と死亡との直接的因果関係は否定できない」とした。(参考)第92回厚生科学審議会予防接種・ワクチン分科会副反応検討部会、令和4年度第27回薬事・食品衛生審議会薬事分科会医薬品等安全対策部会安全対策調査会資料(厚労省)コロナワクチン接種後42歳女性死亡「因果関係否定できない」 初認定(産経新聞)コロナワクチン接種後の死亡で初の認定「因果関係否定できず」(NHK)コロナワクチン接種後に死亡、因果関係「否定できず」 初めて評価(朝日新聞)42歳女性の接種後死亡「因果関係否定できず」…コロナワクチンで初の判定(読売新聞)4.第8次医療計画へ新興感染症対策を追加、大筋で合意/厚労省厚生労働省は、3月9日に「第23回第8次医療計画に関する検討会」を開催し、2024年度から始まる第8次医療計画に新たに「新興感染症発生・まん延時の医療」について盛り込む方向性を大筋で合意した。これまで医療計画には、5疾病(がん、脳卒中、急性心筋梗塞、糖尿病、精神疾患)、5事業(救急医療、災害医療、へき地医療、周産期医療、小児医療)」を二次医療圏ごとに定めてきたが、次なる新興感染症の発生・蔓延に備えて、医療計画の中に「新興感染症対策」を位置付けて整備を進める。この中で、新興感染症の発生時には、まず特定感染症指定医療機関・第1種感染症指定医療機関・第2種感染症指定医療機関(345病院)が中心となって対応し、流行の場合は特別協定を締結した医療機関が対応する。さらにその後、公立・公的病院や地域医療支援病院、特定機能病院に対応を拡大し、最終的には「入院医療を担当する」などの協定を結んだ医療機関など全体で対応することとし、平時から医療機関と自治体で締結することを求めた。厚生労働省は、今年5月には指針・関連通知を示したいとしている。(参考)第23回第8次医療計画等に関する検討会(厚労省)意見のとりまとめ(新興感染症発生・まん延時における医療)(同)医療計画での新興感染症対策、取りまとめ大筋了承 厚労省検討会、5月ごろに計画作成指針(CB news)新興感染症への医療計画での対応方針固まる!感染症の流行度合に応じ「段階的」な対応体制を平時から固めておく!?第8次医療計画検討会(Gem Med)5.アレルギー情報、薬剤禁忌などカルテ情報の共有へ/厚労省厚生労働省は、3月9日「第7回 健康・医療・介護情報利活用検討会医療情報ネットワークの基盤に関するワーキンググループ」を開催し、新たに立ち上げる電子カルテ情報交換サービス(仮称)において、診療情報提供書や退院時サマリーを電子的に紹介先病院と共有・送付する仕組みや、患者のアレルギー情報、薬剤禁忌、検査値などの電子カルテ情報を患者自身や全国の医療機関で確認できる仕組みを可能とする方向性について討議し、大枠で合意した。ただ、電子カルテはベンダーごとに規格が異なり、早期に体制を整えるために、国が標準規格を策定する必要があるなどさらに検討が必要だが、厚生労働省は2023年度から社会保険診療報酬支払基金でシステム構築を進めたいとしている。(参考)第7回健康・医療・介護情報利活用検討会 医療情報ネットワークの基盤に関するワーキンググループ資料(厚労省)医療のデジタル化、現状は? マイナ保険証の活用が鍵(日経新聞)医療機関・患者自身で「電子カルテ情報」を共有する仕組みの大枠決定、2023年度からシステム構築開始-医療情報ネットワーク基盤WG(1)(Gem Med)6.介護保険料の負担金額、4月以降 過去最高に/厚労省厚生労働省は、現役世代が支払う介護保険料(第2号保険料)が今年の4月以降で、現在より100円余り増加し、平均6,200円余りと過去最高となると推計を発表した。介護保険制度は2000年に発足し、40歳以上で介護認定を受けた被保険者の介護サービス利用の場合、9割まで給付する内容となっている。令和4年度の介護給付費は予算ベースで12.3兆円となっており、財源の半分は加入者からの保険料が50%、残りは公費(国25%、都道府県12.5%、市町村12.5%)からとなっている。発足当初、第2号保険料は2,075円だったが、今回の厚生労働省の推計によれば、平均で1月あたり6,216円と発足時の3倍となり現役世代の負担が増加している。同省では、団塊の世代が後期高齢者になるのを前に、高齢者の負担能力に応じた負担の見直しや、高齢者が支払う介護保険料の見直しを検討し、今年の夏までに結論を出すことにしている。(参考)令和5年度 介護納付金の算定について(厚労省)現役世代が支払う介護保険料 4月以降 過去最高に 厚労省推計(NHK)2023年4月から「介護保険料」改定で6,216円に。40歳~65歳未満「現役世代」の負担は重く(LIMO)

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多剤耐性抗結核治療薬を用いた薬剤感受性結核の治療期間短縮トライアル(解説:栗原宏氏)

Strong point 8週間(標準治療24週の1/3の治療期間)でも非劣性が示された標準治療と比較して死亡、治療失敗、有害事象に有意差なしWeak point リファンピシン感受性結核菌に対し多剤耐性抗結核薬を使用している高額な治療コスト日本国内ではベダキリン、リネゾリドは薬剤感受性結核には適応外 結核は、発展途上国を中心に年間約1千万人が発症、約160万人が死亡する疾患である。日本国内では減少傾向ではあるものの、2021年には約1.1万人が新規に登録され、約2千人が死亡している。 結核の治療は結核菌の耐性化予防が非常に重要であり、多剤併用、長期間投与が基本となる。一方、複雑な治療方法や長期間の治療は患者の服薬アドヒアランスの低下、ひいては治療失敗、耐性化の原因にもなり得る。このような背景の下、結核治療は治療期間の短縮が模索されてきた。 1950年代前半に登場した3剤併用レジメンが24ヵ月であった。新薬の開発とともにエビデンスが積み上げられ、1980年代に登場した現在行われている標準治療レジメンでは6ヵ月になった。最近ではrifapentineを用いたレジメンで4ヵ月に短縮できたという報告もある1)。現在も短縮は模索されており、本研究もその1つである。 本研究で使用された薬剤について簡単に解説する。rifapentine(本邦未発売):いくつかの調査から治療期間の短縮が期待されている1),2)。副作用として好中球減少、肝機能障害、C.ディフィシル腸炎が知られている。ベダキリン:本邦では2018年に承認された多剤耐性結核治療薬。耐性発現を防ぐため、適正使用が強く求められ、製造販売業者が行うRAP(Responsible Access Program)に登録された医師・薬剤師のいる登録医療機関・薬局において、登録患者に対して行うこととされている。副作用としてQT延長を来す。リネゾリド:本邦ではMRSA治療薬として使用されるが、世界的には多剤耐性結核の治療薬としても用いられており、今後国内でも認可される可能性がある。副作用として骨髄抑制が有名。 本研究での対象は多剤耐性結核菌ではなくリファンピシン感受性結核菌である点、多剤耐性結核菌に対するレジメンで使用される治療薬であるベダキリン、リネゾリドを用いている点に留意する必要があるが、治療期間が8週間と標準治療24週の1/3に短縮できる可能性が示された。治療終了後96週時点で標準治療と比較して、ベダキリン+リネゾリド レジメンでは死亡例、治療失敗例の数、有害事象ともに有意な差がなかった。 一方、先行研究で治療期間短縮が有望視されているrifapentineを用いたレジメンは調査に組み込まれていたが、プロトコルにより途中で登録が中止されており評価対象とならなかった。また、完遂したレジメンのうち、日本国内でも使用可能なリファンピシンを、高用量(体重によって異なるが大まかに標準レジメンの3倍)で用いたレジメンでは非劣性を示すことができなかった。 治療期間短縮は魅力的であるが、日本国内では現時点において、多剤耐性結核治療薬であるベダキリンおよび適応外使用となるリネゾリドを用いる本レジメンは薬剤感受性結核菌の治療に直ちに適用できるものではない。日本国内における多剤耐性結核の治療成功率は40~70%とされる。開発が容易ではない多剤耐性結核治療薬は非常に貴重であり、今後も使用適応は限定されると思われる。 参考までに、本レジメンでの治療コストは、ベダキリンとリネゾリドの主要薬剤2剤で約230万円となり、結核治療としてはかなり高額になる。

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第59回 歪度と尖度とは?【統計のそこが知りたい!】

第59回 歪度と尖度とは?今回は、引き続き正規分布に関連した項目である「ゆがみ」(歪度:わいど)と「とがり」(尖度:せんど)を説明します。「ゆがみ」(歪度:Skewness)は「分布が正規分布からどれだけ歪んでいるか」を表します。「とがり」(尖度:Kurtosis)は「分布が正規分布からどれだけ尖っているか」を表します。集団の分布は、左右対称であったり、峰が右にあったり、山が2つあったり、さまざまな場合があります。そこで正規分布を基準としたとき、集団の分布が上下あるいは左右に、どの程度偏っているかを調べるための散布度が「ゆがみ」と「とがり」です(図1)。図1 形で理解するゆがみ(歪度)ととがり(尖度)「ゆがみ」、「とがり」が0に近いほどその集団の分布は正規分布に近いといえますが、残念ながら値がいくつの区間に入れば正規分布に従うという統計学的基準はありません。経験上、度数分布の歪度、尖度どちらも-0.5~0.5の間にあれば、度数分布の形状は正規分布と判断します。図2の3つの中では、Bが「ゆがみ」「とがり」の値がいずれも-0.5~0.5の間にあるので「正規分布である」といえます。図2 どれが正規分布の図か【度数分布の形状を判別する際の目安】歪度、尖度ともに-0.5~0.5の間にあれば正規分布図3の事例は、20代女性29人の1ヵ月間に「かかりつけ医」に診療にいった回数のデータです。この分布の歪度、尖度を求め、このデータは正規分布であるかを求めてみましょう。図3 29人の受診回数に関するデータ歪度と尖度を求めて判断します。両方とも図4のようにExcel関数で求められます。図4以上から、歪度=1.1719>0.5、尖度=1.6798>0.5であるため、「かかりつけ医」に診療にいった回数の度数分布は正規分布とはいえないことがわかりました。次回は「正規確率プロット」について説明します。■さらに学習を進めたい人にお薦めのコンテンツ統計のそこが知りたい!第41回 外れ値とは?第54回 スピアマン順位相関係数とは?第55回 スピアマン順位相関係数の計算方法は?第56回 正規分布とは?第57回 正規分布の面積(確率)の求め方は?

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事例019 突合点検で判明した報酬調整について【斬らレセプト シーズン3】

解説今回は、まれな査定を見過ごすところだったと他院から教えていただいた事例です。調剤薬局の請求誤りが医療機関の誤りではないかとして「突合点検結果連絡書(兼 処方箋内容不一致連絡書)」(以下「連絡書」)が届いたという事例です。「連絡書」は、「院外処方箋を調剤した調剤レセプトと医療機関レセプトを突き合わせて差異が認められる場合に、医療機関の責であれば次月の診療報酬から相殺しますよ」という連絡です。事例では、何らかの事情で調剤薬局側から過剰投与量の請求が行われていました。審査の結果として適正量まで査定となったものです。これが医療機関の責ではないかとの問合せでした。「連絡書」が届いたときには、「また傷病名漏れで相殺か」と考えられていたようです。数日後に改めて見返すと、院外処方箋と一致していないことがわかり、慌てて不一致の連絡手続きが行われたそうです。支払基金では不一致の連絡を受理すると、調剤した保険薬局から当該処方箋を取り寄せ再度の突合点検を行い審査されます。この手続きは、「連絡書」を受け取った月の18日(休日の場合は翌営業日)までに、「連絡書」の「請求内容」欄に記載された該当医薬品に「〇」印を付け、「処方箋内容不一致連絡書」として所轄の支払基金に郵送しなければなりません。期日までに不一致の連絡が支払基金に到着しないと、次月の診療報酬から査定額が相殺されてしまいます。「連絡書」は交付した院外処方箋にかかる調剤報酬の査定を連絡していただけるものです。無用な報酬相殺を避けるためにも、必ず当院の責の有無を点検することが必要です。

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認知症になってから何年生きられるのか?【外来で役立つ!認知症Topics】第3回

認知症臨床の場において、「あるある質問」として代表的なものには、筆者の場合、3つある。まずアルツハイマー病と認知症が同じか否かというもの。次に遺伝性の有無と、では自分は?という質問。そして今回のテーマ、「認知症になってから何年生きられるか?」という質問である。長年この問題に関して、正解とまでは言わずとも、エビデンスがしっかりした答えを知りたいと思ってきた。またこの質問の意図はそう単純ではない。長生きを望む人もあれば、逆に…という場合もありうる。今さらではあるが、2021年にLancet Healthy Longevity誌1)で優れたメタアナリシスが報告されていることを知り、丁寧に読んだ。その概要を臨床の場を鑑みながら解説する。メタアナリシスでの認知症平均余命まずメタアナリシスの素材となったのは、78の研究である。ここでは6.3万人余りの認知症があった人、15.2万人余りの認知症がなかった人のコントロールデータが扱われた。なお原因疾患はアルツハイマー病、血管性認知症、レビー小体型認知症と前頭側頭葉変性症である。アウトカムとして、まずあらゆる原因による「死亡率:mortality rate」、すなわち一定期間における死亡者数を総人口で割った値が用いられた。次に、認知症の診断もしくは発症から亡くなるまでの年数も用いられた。まず認知症全体としての死亡率は、認知症のない者に比べて5.9倍も高い。また全体では、発症の平均年齢が68.1±7.0歳、診断された年齢は72.7±5.9歳、初発から死亡までが7.3±2.3年。さらに診断から死亡までが4.8±2.0年となされている。全体の3分の2を占めるアルツハイマー病では、初発から死亡まで7.6±2.1年、診断から死亡までが5.8±2.0年になっている。つまりアルツハイマー病の診断がついた患者さんやその家族から「余命は何年か?」の質問を受けたなら、4~8年程度と答えることになる。もっとも本論文の対象は、われわれが対応する患者さんの年齢より、少し若いかなという印象がある。最も生命予後が良い/悪い認知症性疾患は?さて注目すべきは、4つの認知症性疾患の中でアルツハイマー病の生命予後が一番良いという結果である。逆にレビー小体型認知症(パーキンソン病に伴う認知症を含む)では、認知症のなかったコントロールに比べて、死亡率は17.88倍も高く、4つの認知症性疾患の中で最悪である。アルツハイマー病に比べても余命は1.12年も短い。その理由として以下に述べられている。1つには幻覚や妄想などの精神症状を伴うことである。それにより危険行為や衝動性に結び付きやすいことをよく経験する。また従来のデータでも示されてきたように、認知症性疾患のなかで、認知機能の低下率が大きく、合併疾患の割合が高く、QOLも悪いとされる。こうしたものが高い死亡率に結び付いているのではと考察している。確かにと納得できる。次に血管性認知症は、アルツハイマー病に比べて、死亡率が1.26倍高く、余命は1.33年短い。恐らくは心血管系の問題が大きく寄与していると考えられている。さらに前頭側頭葉変性症も生命予後は良くない。その理由として、運動障害に注目した面白い報告がある。近年よく知られるようになったが、前頭側頭型認知症では、パーキンソニズム、錐体外路徴候などによる運動障害を示す例が少なくない。さらにジストニアや失行も見られる。筆者はこれらによる転倒・転落を経験してきた。一方で、ある程度以上進むと、いわゆる早食いや詰め込み食いも見られることがある。こうしたことによる窒息や誤嚥性肺炎が死亡率を高めていると考察されている。自分の臨床経験では、このような突然死の多くは、盗んだり隠れたりして食べていたのである。治療のためにも早期受診が不可欠以上について、論文の著者らは注目していないが、いくつか感想がある。まず初発から診断までに、4年余りかかっているという結果である。疾患修復薬が前駆期・早期なら有用かと期待されるようになった今日、これでは治療の好機を逃してしまう。早期受診の重要性を再度認識する。次に自分が対応するアルツハイマー病の患者さんに限っても、何年経ってもほとんど変わらない人もいるが、1年以内に急速に悪化してしまう人もいる。こうしたケースはrapidly progressive Alzheimer diseaseと呼ばれることもあり、認知機能のみならず生命予後も不良である。そして現場では、主治医である筆者がその責任を厳しく問われることもある。けれども遺伝子、併存疾患、または症候学等からみて、この急速悪化群の関連因子はまだ定まっていない。こうしたsubtypeの予想も臨床的には不可欠な観点だろう。終わりに。アルツハイマー病以外の認知症性疾患に対しては、今のところこれという薬物治療法はない。それだけにこれらの疾患のある人に対する治療の場では、上に示した余命を短縮させてしまう因子に注意を払い、少しでもQOLが高く健やかな生活を実現する努力がこれまで以上に望まれる。参考1)Liang CS, et al. Mortality rates in Alzheimer's disease and non-Alzheimer's dementias: a systematic review and meta-analysis. Lancet Healthy Longev. 2021;2:e479-e488.

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