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医学生に労働法の知識を!医師や弁護士がモデル講義/厚生労働省

 医師の過重労働の問題が指摘されて久しいが、2024年4月から医師に対する時間外労働の上限規制をはじめとした「医師の働き方改革」がスタートする。これを踏まえ、厚生労働省では、今後医師となる医学生に対し、労使関係の基本となる労働法や医師の働き方改革の基本を知ってもらうべく、医師や弁護士を講師としたモデル授業をスタートした。 2022年度からスタートしたこのモデル講義について、大学関係者に対して紹介する「医学部等における労働法教育を考えるシンポジウム」が開催され、モデル授業を担当した医師や弁護士が講義内容やその意義を報告した。 関西医科大学などで講義を行った大阪医科薬科大学 消化器外科の河野 恵美子氏は次のように振り返る。 「講義は、医師の働き方改革のあゆみや今後のスケジュールの共有からスタートしました。私は外科医なので日本外科学会が2012年に行ったアンケート結果から、20~30代の外科医の75%近くが週80時間以上の労働時間となっている、という厳しい実態を紹介しました。そして海外と比較した日本の病床数や医師の業務実態などのデータを提供し、働き方の改善策を考えてもらいました。次に私自身のキャリアや育児期の働き方を紹介し、女性外科医のリアルな働き方を知ってもらいました。講義後のアンケートでは約9割の学生から『有意義だった』という感想が寄せられ、自由回答でも『外科は厳しい印象があったが、やり方次第では出産・育児と両立できそうだと感じた』といった声が寄せられました。講義のポイントは、働き方改革の趣旨・目的を伝え、多様な働き方を提示することで学生の内発的モチベーションを向上させることだと感じました」 続いて日本医師会で常任理事を務める神村 裕子氏が自分の講義を振り返った。 「講義の冒頭で1998年の研修医過労死、1999年の小児科医過労自死と、今の働き方改革につながった重大な事件を紹介し、合わせて働き過ぎで肉体、精神がいかに蝕まれるかについての具体的なデータを示しました。私は精神科医なので、精神疾患による労災認定が増えているデータや、ワークライフバランスが崩れている意識がある人は超過労働がうつ病の発症に結びつきやすいというデータも示しました。過重労働が心身に与える影響を理解してもらい、研修医・医師も労働法に守られかつ守る立場であること、自分だけではなく他職種の労働上の権利も尊重すべきであること、という要点を伝えました」 日本赤十字社医療センター産婦人科の木戸 道子氏は「医学生は先輩などから医師になった後の働き方の情報を入手しているが、部分的なものであることが多く、法的根拠を含めた全体的な知識を持つことが重要だ。学生も参加するワークショップ形式にすることで、まだ臨床実習の始まっていない年次の学生でも自分ごととして捉えてもらえる。モデル講義を重ねてブラッシュアップし、今後の医学教育のカリキュラムとして組み込んでいくことが求められる」と話した。 厚生労働省ではモデル講義の導入を検討する医学部関係者に対し、取り組みやモデル授業の概要、実施のステップをまとめた冊子1)を作成して配布、PDFでも公開している。

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統合失調症における抗精神病薬使用と心臓突然死リスク

 抗精神病薬で治療される統合失調症患者は、心臓突然死のリスクが高いといわれている。獨協医科大学の岡安 寛明氏らは、統合失調症患者における抗精神病薬の使用と心臓突然死リスクとの関連を明らかにするため、deceleration capacity(DC)(心臓突然死の予測因子として用いられる心拍変動の指標)の低下を調査し、抗精神病薬の使用による心臓突然死リスクを、DCの評価と補正QT間隔(QTc)との関連で評価した。DCが抗精神病薬を使用する統合失調症患者の心臓突然死リスク増加の特定に役立つ可能性 その結果、抗精神病薬を使用している統合失調症患者においてDCを評価することは、心臓突然死リスク増加のモニタリングおよび特定に役立つ可能性が示唆された。また、DCとQTcの両方の評価で、心臓突然死の予測精度が向上する可能性があることも報告された。General Hospital Psychiatry誌オンライン版2023年1月14日号の報告。 統合失調症患者138例のDCとQTcを測定し、年齢、性別をマッチさせた健康対照者86例と統合失調症患者86例のDCを比較した。統合失調症患者138例のDCと使用する抗精神病薬の用量の相関関係を調査するため、線形回帰分析を用いた。QT延長の有無による統合失調症患者のDCを比較した。 統合失調症患者における抗精神病薬の使用と心臓突然死リスクとの関連を評価した主な結果は以下のとおり。・抗精神病薬を使用している統合失調症患者と健康対照者で、DCが有意に異なることが確認された。・DCは抗精神病薬の使用(とくにクロルプロマジン、ゾテピン、オランザピン、クロザピン)と用量依存的な負の相関が認められた。・DCとQTcとの間に有意な関連は認められなかった。

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コロナ感染拡大しやすいのは夜間営業店~東京都で大規模調査/東北大

 新型コロナウイルス感染症(COVID-19)のパンデミック下では、ロックダウンなど人流の抑制や行動制限の介入による感染拡大のコントロールが世界的に実施されてきたが、社会経済への影響も大きかった。現在はワクチン接種の普及に伴い行動制限の緩和が進んでいるものの、直近の第8波ではコロナ関連死亡者数が過去最多を更新し、依然として感染拡大のコントロールは困難だ。 社会経済活動を維持しつつ感染拡大リスクが高い場面に焦点を絞った感染防止対策の構築のため、東北大学の今村 剛朗氏らによる東京都、東北大学医科学研究科、国立感染症研究所の合同チームは、東京都に報告されたコロナ感染者4万4,054例を対象として、保健所での積極的疫学調査による情報を用いた後ろ向き解析を行った。その結果、夜間営業店と医療機関・福祉施設とでクラスターが多く生じていたことなどが明らかとなった。JAMA Network Open誌2023年2月24日号に掲載の報告。 本研究では、ワクチン接種実施以前の2020年1月23日~12月5日の期間に東京都に報告された新型コロナウイルス感染者4万4,054例を対象として後ろ向き解析を行った。この期間において、コロナ第1波が2020年1月14日~5月25日、第2波が5月26日~9月30日、第3波の一部が10月1日~12月6日であった。 対象者の感染経路を、海外、ナイトライフ、飲食店、職場、家庭、医療機関(福祉施設含む)、その他の7つの感染環境に分類し、感染環境ごとの症例数およびその後の感染伝播の発生可能性を比較した。「ナイトライフ」の定義は、レストラン、バー、ナイトクラブ(ホストクラブ、ホステスクラブ含む)、その他の夜間営業の飲食店とした。ナイトライフは、さらに接待を伴う施設と接待を伴わない施設とに分類し、性的サービスを提供する施設は、接待を伴う施設に分類した。「飲食店」の定義は、ナイトライフの定義を満たさない飲食店とした。 主な結果は以下のとおり。・全症例数4万4,054例のうち、2万5,241例(57.3%)は男性患者で、患者の年齢中央値は36歳(四分位範囲:26~52)であった。・感染経路が確認できたのは1万3,122例で、家庭6,768例(51.6%)、次いで医療機関2,733例(20.8%)、ナイトライフ1,174例(8.9%)であった。・症例致死率(CFR)は、医療機関で最も多く(2,733例中268例[9.8%])、医療機関におけるすべての死亡例は、患者または訪問者の間で発生した(すなわち、医療従事者の間では発生しなかった)。・6,624件の感染現場が特定され、1次感染例から5例以上の2次感染例(クラスター)が確認された感染現場数は、ナイトライフが380件中72件(18.9%)、医療機関が329件中119件(36.2%)で、飲食店、職場、家庭、その他の環境よりもとくに多かった。・特定されたナイトライフ380件の中で、接待を伴う施設でクラスターが193件中59件(30.6%)発生していた。一方、接待を伴わない施設でのクラスターは187件中13件(7.0%)だった。・ナイトライフの症例は流行の波の初期に多く、家庭と医療機関の症例は後期に多かった。第1波では、ナイトライフでの発症日の中央値は、家庭での発症日の中央値よりも10日早く、医療機関での発症日の中央値よりも16日早かった。第2波では、ナイトライフでの発症日の中央値は、家庭よりも35日、医療機関よりも40日早かった。・ナイトライフの症例と比較して、家庭および医療機関の症例は、その後の感染伝播を引き起こす可能性が低かった。家庭の調整オッズ比[aOR]:0.03(95%信頼区間[CI]:0.02~0.05)、医療機関のaOR:0.57(95%CI:0.41~0.79)。・家庭環境は世代間伝播と関連し、非家庭環境は主に同年齢群間の伝播であった。・感染現場が特定されていない3万932例において、ナイトライフの履歴のある症例は、履歴のない症例よりも、非家庭環境へ感染伝播する可能性が高く(aOR:5.30、95%CI:4.64~6.05)、家庭環境へ感染伝播する可能性は低かった(aOR:0.85、95%CI:0.75~0.97)。 著者は本結果について、ナイトライフで確認されたCOVID-19症例は、家庭および医療機関での症例よりも、その後に感染伝播する可能性が高いため、とくに流行の初期段階において、ナイトライフの場を対象としたサーベイランスや行動制限の介入を優先させるべきだとしている。

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リンパ節転移のないHER2陽性乳がん、術後PTX+トラスツズマブでの10年生存率/Lancet Oncol

 リンパ節転移のないHER2陽性(HER2+)乳がんに対するパクリタキセル+トラスツズマブでの術後補助療法の長期アウトカムを調査した非盲検単群第II相試験の10年間の解析結果について、米国・Dana-Farber Cancer InstituteのSara M. Tolaney氏らがLancet Oncology誌2023年3月号で報告した。著者らはこの結果から、「腫瘍サイズが小さくリンパ節転移のないHER2+乳がんの術後補助療法の標準治療として、パクリタキセル+トラスツズマブが妥当である」としている。HER2陽性乳がんに対する術後補助療法で10年全生存率が94.3% 本試験は、米国13都市16施設から、腫瘍の大きさが3cm以下でリンパ節転移のない18歳以上のHER2+乳がんでPS 0~1の患者を対象とした。適格患者には、パクリタキセル(80mg/m2)+トラスツズマブ(負荷量4mg/kg、維持量2mg/kg)の静脈内投与を12週、その後トラスツズマブ(毎週2mg/kgもしくは3週ごとに6mg/kg)を40週投与した。主要評価項目は3年無浸潤疾患生存(iDFS)率で、今回はプロトコールで規定された治療を受けた患者すべてを対象とした10年生存率と、HER2DXゲノムツールを用いた探索的解析の結果を報告した。 HER2陽性乳がんに対するパクリタキセル+トラスツズマブでの術後補助療法の10年生存率などを調査した主な結果は以下のとおり。・2007年10月29日~2010年9月3日に登録されたHER2陽性乳がん患者410例中406例がパクリタキセル+トラスツズマブの術後補助療法を受けた。・登録時の平均年齢は55歳(標準偏差:10.5)、406例中女性が405例(99.8%)、白人が350例(86.2%)、ホルモン受容体陽性が272例(67.0%)だった。・追跡期間中央値10.8年(四分位範囲:7.1~11.4)で、解析集団406例においてiDFSイベントが31例に観察され、局所同側再発6例(19.4%)、新規の対側乳がん9例(29.0%)、遠隔再発6例(19.4%)、死亡10例(32.3%)であった。・10年無浸潤疾患生存率は91.3%(95%信頼区間[CI]:88.3~94.4)、10年無再発率は96.3%(95%CI:94.3~98.3)、10年全生存率は94.3%(95%CI:91.8~96.8)、10年乳がん特異的生存率は98.8%(95%CI:97.6~100)であった。・HER2DXリスクスコアは、無浸潤疾患生存率(10単位増加当たりのハザード比[HR]:1.24、95%CI:1.00~1.52、p=0.047) および無再発期間(HR:1.45、95%CI:1.09~1.93、p=0.011)と有意に関連していた。

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BRCA/ATM遺伝子変異陽性の転移を有する前立腺がん、rucaparibが有効/NEJM

 第2世代アンドロゲン受容体経路遮断薬(ARPI)による治療後に増悪した、BRCAまたはATM遺伝子変異陽性の転移性前立腺がんの治療において、ポリ(アデノシン二リン酸[ADP]リボース)ポリメラーゼ(PARP)阻害薬rucaparibは、医師が選択した対照薬と比較して、画像所見に基づく無増悪生存期間が有意に長く、BRCA変異陽性例で最大の効果が認められたが、ATM変異陽性例では両群で同程度であったことが、フランス・パリサクレー大学のKarim Fizazi氏らが実施した「TRITON3試験」で示された。研究の成果は、NEJM誌2023年2月23日号で報告された。12ヵ国143施設の無作為化第III相試験 TRITON3は、12ヵ国143施設で実施された非盲検無作為化対照比較第III相試験であり、2017年2月~2022年2月の期間に参加者のプレスクリーニングまたはスクリーニングが行われた(Clovis Oncologyの助成を受けた)。 対象は、BRCA1、BRCA2、ATM遺伝子のいずれかに変異が認められ、第2世代ARPI(酢酸アビラテロン、エンザルタミド、アパルタミドなど)による治療後に増悪した転移のある去勢抵抗性前立腺がんの患者であった。 被験者は、rucaparib(600mg、1日2回、経口)または医師が選択した対照薬(ドセタキセルまたは第2世代ARPI[酢酸アビラテロンまたはエンザルタミド])の投与を受ける群に、2対1の割合で無作為に割り付けられた。 主要評価項目は、画像所見に基づく無増悪生存期間中央値であり、独立判定による評価が行われた。ATM変異陽性例では有効性が限定的 405例(intention-to-treat集団)が登録され、270例(年齢中央値70歳[範囲:45~90]、BRCA変異陽性 201例、ATM変異陽性 69例)がrucaparib群、135例(71歳[47~92]、101例、34例)は対照群に割り付けられた。対照群では、75例(56%)がドセタキセル、28例(21%)が酢酸アビラテロン、32例(24%)はエンザルタミドの投与を受けた。 62ヵ月の時点で、画像所見に基づく無増悪生存期間中央値は、BRCA変異陽性のサブグループ(rucaparib群11.2ヵ月vs.対照群6.4ヵ月、ハザード比[HR]:0.50、95%信頼区間[CI]:0.36~0.69)およびintention-to-treat集団(10.2ヵ月vs.6.4ヵ月、HR:0.61、95%CI:0.47~0.80)の双方で、rucaparib群が対照群よりも長かった(いずれもp<0.001)。 一方、ATM変異陽性のサブグループの探索的解析では、画像所見に基づく無増悪生存期間中央値はrucaparib群が8.1ヵ月、対照群は6.8ヵ月であった(HR:0.95、95%CI:0.59~1.52)。 客観的奏効率は、BRCA変異陽性のサブグループではrucaparib群が45%、対照群は17%で、intention-to-treat集団ではそれぞれ35%、16%であり、ATM変異陽性のサブグループでは0%、14%だった。 最も頻度の高かった有害事象は、rucaparib群では倦怠感(61%)、悪心(50%)、貧血/ヘモグロビン低下(47%)であり、対照群では倦怠感(63%)、下痢(28%)、ニューロパチー(28%)であった。最も頻度の高かったGrade3以上の有害事象は、rucaparib群では貧血/ヘモグロビン低下(24%)、好中球減少症/好中球数減少(7%)、倦怠感(7%)であり、対照群では倦怠感(9%)、好中球減少症/好中球数減少(8%)だった。 投与中止の原因となった有害事象は、rucaparib群が15%、対照群は22%で発現した。有害事象による死亡は、それぞれ5例(2%)、3例(2%)で認められたが、試験薬に関連したものはなかった。 著者は、「本試験では、BRCA1変異を有する患者数がBRCA2変異を有する患者数よりも少なかったため、BRCA1変異陽性例での治療効果は確定的ではなかった。また、第2世代ARPIの反復使用はわずかな活性しか示さなかった。これらの知見は、先行研究の結果と一致していた」としている。

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第137回 コロナウイルス5類に移行後、診療拒否は認めない方針/厚労省

<先週の動き>1.コロナウイルス5類に移行後、診療拒否は認めない方針/厚労省2.外来機能報告制度、3月29日までに報告を/厚労省3.地域医療構想実現のため、病床過剰地域での病院再編を加速へ/厚労省4.昨年の出生数は80万人割れで過去最少、死亡数は158万人超/厚労省5.介護人材不足で、介護施設の経営に影響/社会保障審議会6.自由診療の再生医療、審査体制に疑問あり/国立がん研究センター1.コロナウイルス5類に移行後、診療拒否は認めない方針/厚労省今年の5月に新型コロナウイルス感染症が、感染症法において2類相当から5類への位置付けの変更により、今後の医療体制について3月10日に政府は検討し、発表する見込み。現在判明している見直し案では、2類相当の新型コロナは、特定の医療機関以外は例外的に応召義務の適用外となっているが、5類となる5月以降は、コロナ感染が疑われることを理由とした診療拒否は認められないと明記し、周知徹底を図る。同時に、コロナ患者に対応した医療機関に対しては、診療報酬を上乗せするなどしてきた特例措置は、段階的に縮小する。また、ホテルで隔離しての宿泊療養は原則廃止とするが、高齢者や妊婦については、自治体の判断で9月末まで継続可能だが原則有料とされる見込み。(参考)「5類移行後」のコロナ医療費、外来は原則自己負担…治療薬は9月末まで公費継続(読売新聞)5類移行後に診療拒否 医師法違反の可能性 神奈川県が見解(東京新聞)コロナ軽症者の宿泊療養制度、原則廃止へ 「5類」移行で(毎日新聞)2.外来機能報告制度、3月29日までに報告を/厚労省厚生労働省は令和3年に成立した改正医療法により、3月6日より全国の医療機関に対して、医療資源を重点的に活用する外来について情報を集め、診療実績を元に、地域の医療関係者や医療保険者らと協議を行い、地域ごとに「医療資源を重点的に活用する外来」を持つ「紹介受診重点医療機関」を6月以降公表する見込み。報告対象医療機関は、一般病床か療養病床がある病院と有床診療所が対象だが、無床診療所の報告は任意だが、意向がある医療機関は提出できる。報告しない医療機関には、「報告対象外医療機関」の申告書または医療機関等情報支援システム(G-MIS)からダウンロードした報告書を提出することを求めている。締切は3月29日まで。(参考)令和4年度外来機能報告(報告様式2)の報告開始等について(厚労省)外来機能報告「様式2」週明け開始、厚労省 29日まで、診療実績「見える化」(CB news)3.地域医療構想実現のため、病床過剰地域での病院再編を加速へ/厚労省厚生労働省は3月1日に「第8次医療計画等に関する検討会」の地域医療構想及び医師確保計画に関するワーキンググループを開催した。二次医療圏において、病床過剰地域では複数の医療機関による再編・統合については、中止しないことを明らかにした。これまで、病床過剰地域での新たな医療機関の開設や増床については中止勧告を出せるとしたが、今後は再編統合の前後で病床の総数が増加しないで、地方厚生局長が適当である旨の認定をする再編計画の仕組みであれば、中止勧告を出さないことが了承された。(参考)病床過剰地域での複数病院の再編、中止勧告せず 条件付きで(CB news)地域医療構想に係る医療機関の再編計画の認定等について(関東信越厚生局)第11回地域医療構想及び医師確保計画に関するワーキンググループ(厚労省)病院再編が進み「淘汰される」時代に 日本医師会副会長・全日本病院協会会長の猪口雄二氏に聞く(日経ヘルスケア)4.昨年の出生数は80万人割れで過去最少、死亡数は158万人超/厚労省厚生労働省は2月28日に人口動態統計(速報)を公表した。これによると、2022年の出生数は79万9,728人と1899年の統計開始以来、過去最少となった。一方、死亡数は158万2,033人と新型コロナウイルス感染による死亡のほか、心不全などで死亡する高齢者が急増しており、過去最高を記録した。厚生労働省によれば、コロナウイルスの感染による死亡は3万8,881人と前年の1万4,926人に比べ、約2万4千人増加しているが、コロナ以外の死因での死亡も増えていた。岸田総理はこれに対して「危機的な状況と認識している」とし、少子化政策を進めることを明らかにした。(参考)人口動態統計速報[令和4年12月分](厚労省)出生数、初の80万人割れ コロナ影響、減少加速-22年人口動態統計速報・厚労省(時事通信)22年の死亡158万人超、戦後最多 コロナ余波も(日経新聞)首相、出生数80万人割れ「危機的な状況」(産経新聞)5.介護人材不足で、介護施設の経営に影響が/社会保障審議会厚生労働省が2月27日に開催した社会保障審議会介護保険部会において、コロナ感染拡大により、介護人材不足のため介護施設が休止・閉鎖したほか、病院でも介護人材の確保のため派遣業者や紹介業者に支払う費用負担が経営を圧迫していることが話題になった。2月20日に開催された社会保障審議会介護給付費分科会でも、この問題が検討されており、福祉医療機構が1月に公表した令和3年度の通所介護の経営状況調査の結果で、通所介護サービス事業者の46.5%が赤字であったことが明らかとなっており、今後、検討される見込み。(参考)第106回社会保障審議会介護保険部会(厚労省)第214回社会保障審議会介護給付費分科会(同)介護人材の紹介料・派遣料が高い…審議会で悲鳴 「立ち行かなくなる」「真剣に検討を」(JOINT)通所介護の約半数が赤字 「危機的状況」「介護提供体制が崩壊する」の声=社保審・介護給付費分科会(同)介護職員不足 施設休止・閉鎖相次ぐ/青森県内(東奥日報)2021年度(令和3年度)通所介護の経営状況について(福祉医療機構)6.自由診療の再生医療、審査体制に疑問あり/国立がん研究センター国立がん研究センターや京都大学iPS細胞研究所の研究者チームが、保険診療外の自由診療で行われている再生医療について、そのうち25%が「安全性の科学的根拠に疑義がある」とする調査結果を発表した。報告によると、再生医療の審査を行う特定認定再生医療等委員会の中に、独立・公正な審査を期待できない委員会が存在すること、承認された治療計画の中に安全性の科学的根拠や医師の専門性に疑義が認められるものが一定数認められ、誇大広告など不適切な広告によって患者さんの理解や治療選択が誤導される恐れがあることなど問題が認められた。研究チームは、再生医療法の改正や現行制度の運用の見直しを求め、患者の理解や治療選択の参考になるように公正な審査体制の整備を求めている。(参考)自由診療で行われる再生医療の審査に関する課題を調査 今後の制度改正に期待(国立がん研究センター)保険外の再生医療、25%が「安全性に疑義」…肝障害を美容外科医が治療のケースも(読売新聞)再生医療実施計画の審査 独立で公正な審査期待できないおそれ(NHK)

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生活習慣の改善(8)食事療法5【一目でわかる診療ビフォーアフター】Q56

生活習慣の改善(8)食事療法5Q56本邦の「動脈硬化性疾患予防ガイドライン」2022年版で推奨されている日本食パターン「The Japan Diet」のほかにも、動脈硬化性疾患予防に期待されている食形態がある。一般でも有名なその食形態、2つの名称は?

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3月6日 世界リンパ浮腫の日【今日は何の日?】

【3月6日 世界リンパ浮腫の日】〔由来〕2016(平成28)年にアメリカ・上院でリンパ浮腫の認識を高めるために3月6日を「World Lymphedema Day」(世界リンパ浮腫の日)と制定。そして、同じくリンパ浮腫の正しい知識と情報を共有し、治療環境の発展などを目的に患者と医療者の会である「リンパカフェ」が2018(平成30)年に制定。関連コンテンツ浮腫の見分け方、発症形式と部位を押さえよう!【Dr.山中の攻める!問診3step】リンパ節が腫れたときの症状チェック【患者説明用スライド】浮腫による蜂窩織炎の再発予防、圧迫療法は有効か/NEJM乳がん関連リンパ浮腫、リンパ節照射より腋窩手術の種類が影響/JCO術前化学療法を受けた乳がん患者の術後上肢リンパ浮腫、リスク因子は?/JAMA Surgery

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FMCテキストブック 出生前検査・診断と遺伝カウンセリングの実際

出生前検査・診断・遺伝カウンセリングの「最前線」!国内における胎児診療の専門家集団が、出生前検査・診断の正しい知識や手技の実際、診療の問題点、遺伝カウンセリングの心構えやノウハウに至るまで、余すことなく解説しました。出生前検査・診断をこれから行おうとしている医療従事者はもちろん、産科・胎児・周産期医療に携わるすべての医療従事者の道しるべとなる1冊です。画像をクリックすると、内容の一部をご覧いただけます。※ご使用のブラウザによりPDFが読み込めない場合がございます。PDFはAdobe Readerでの閲覧をお願いいたします。画像をクリックすると、内容の一部をご覧いただけます。※ご使用のブラウザによりPDFが読み込めない場合がございます。PDFはAdobe Readerでの閲覧をお願いいたします。    FMCテキストブック 出生前検査・診断と遺伝カウンセリングの実際定価9,350円(税込)判型B5判頁数400頁発行2023年2月編集中村 靖/田村 智英子電子版でご購入の場合はこちら

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低炭水化物食はテストステロンの血清レベルを上昇させて勃起機能を改善する可能性

 低炭水化物食はテストステロンの血清レベルを上昇させ、メタボリックシンドロームに伴う男性の性腺機能低下症の勃起機能を改善する可能性があることがブラジルのCaio da Silva Schmitt氏らが行った非盲検ランダム化臨床試験によってわかった。BMC Endocrine Disorders誌2023年2月2日号の報告。 低炭水化物食群では血清総テストステロン値の有意な上昇が見られた メタボリックシンドロームはいくつかの疾患の危険因子であり、その中でもメタボリックシンドロームと性腺機能低下症の関係はよく知られている。著者らは、低炭水化物食が血清総テストステロンを増加させ、メタボリックシンドロームに伴う性腺機能低下症の男性の勃起機能を改善できるかどうかを評価する目的で研究を行った。 メタボリックシンドロームの性腺機能低下症の男性18例を対象に、低炭水化物食群と対照食群を3ヵ月間比較する非盲検ランダム化臨床試験を実施した。身体測定値(体重、BMI、腹囲、ヒップ周り、胴囲)、血清総テストステロン値、性腺機能低下症の症状(ADAMおよびAMSスコアによって測定)、性機能(IIEF-5スコアによって測定)が評価された。 低炭水化物食が血清総テストステロンを増加させ、メタボリックシンドロームに伴う性腺機能低下症の男性の勃起機能を改善できるかどうかを研究した主な結果は以下のとおり。・身体測定値は低炭水化物食群でのみ正常値に近づいた。・低炭水化物食群ではIIEF-5スコアが統計学的に増加し、AMSとADAMスコアが有意に減少した(p<0.001)。・対照食群と比較して、低炭水化物食群では血清総テストステロン値の有意な上昇が見られた(p<0.001)。

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ChatGPTが医師の代わりに?抗菌薬処方の助言を求めると…

 人工知能(AI)言語モデルを用いたチャットサービス『ChatGPT』は、米国の医師免許試験において医学部3年生に匹敵する成績を収めるなど、注目を集めている。そこで、抗菌薬への耐性や微生物の生態、臨床情報を複合的に判断する必要のある感染症への対応について、8つの状況に関する質問をChatGPTへ投げかけ、得られる助言の適切性、一貫性、患者の安全性について評価した。その結果、ChatGPTは質問の状況を理解し、免責事項(感染症専門医へ相談することを推奨)も含めて一貫した回答を提供していたが、状況が複雑な場合や重要な情報が明確に提供されていない場合には、危険なアドバイスをすることもあった。本研究は英国・リバプール大学のAlex Howard氏らによって実施され、Lancet infectious diseases誌オンライン版2023年2月20日号のCORRESPONDENCEに掲載された。 臨床医がChatGPTに助言を求めるという設定で、以下の8つの状況に関する質問を投げかけた。・第1選択薬で効果不十分な蜂窩織炎・腹腔内膿瘍に対する抗菌薬による治療期間・カルバペネマーゼ産生菌に感染した患者の発熱性好中球減少症・複数の薬剤が禁忌の患者における原因不明の感染症・院内肺炎に対する経口抗菌薬のステップダウン・カンジダ血症の患者の次の管理ステップ・中心静脈カテーテル関連血流感染症の管理方法・重症急性膵炎の患者に対する抗菌薬の使用 主な結果は以下のとおり。・ChatGPTによる回答は、スペルや文法に一貫性があり、意味も明確であった。・抗菌スペクトルとレジメンは適切であり、臨床反応の意味を理解していた。・血液培養の汚染などの問題点を認識していた。・基本的な抗菌薬スチュワードシップ(細菌感染の証拠がある場合のみ抗菌薬を使用するなど)が盛り込まれていた。・治療期間については、一般的な治療期間は適切であったが、治療期間の延長の根拠とされる引用が誤っていたり、無視されたりするなど、ばらつきがみられた。・抗菌薬の禁忌を認識していなかったり(Tazocin[本邦販売中止]とピペラシリン/タゾバクタムを同一薬と認識せずに重度のペニシリンアレルギー患者に提案する、カルバペネム系抗菌薬とバルプロ酸ナトリウムの相互作用を認識していなかったなど)、患者の安全性に関する情報を見落としたりするなど、危険なアドバイスが繰り返されることがあった。 本論文の著者らは、ChatGPTを臨床導入するための最大の障壁は、状況認識、推論、一貫性にあると結論付けた。これらの欠点が患者の安全を脅かす可能性があるため、AIが満たすべき基準のチェックリストの作成を進めているとのことである。また、英国・リバプール大学のプレスリリースにおいて、Alex Howard氏は「薬剤耐性菌の増加が世界の大きな脅威となっているが、AIによって正確かつ安全な助言が得られるようになれば、患者ケアに革命を起こす可能性がある」とも述べた1)。

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Yes/No調査による認知症スクリーニングの精度~福井県での調査

 認知症の予防には、早期介入が非常に重要である。しかし、認知症の早期発見に、どのようなスクリーニングが有用であるかは、これまで明らかになっていない。福井大学の濱野 忠則氏らは、サポートやケアを必要とするリスクが高い高齢者を特定するため厚生労働省が作成した基本チェックリストに基づき福井県の認知症予防チームが開発したYes/No自己申告調査の結果と、ミニメンタルステート検査(MMSE)との関連を検討し、Yes/No自己申告調査の認知症スクリーニングに対する有効性を評価した。その結果、認知症スクリーニングに対するYes/No自己申告調査の有効性が示された。とくに、「電話番号を調べて電話をかけられない」「銀行やATMで自身の預貯金を管理できない」などは、認知症のサインであると報告されている。Frontiers in Aging Neuroscience誌2023年1月4日号の報告。 福井県在住の介護保険制度を利用していない65歳以上の高齢者8万7,867人を対象に、Yes/No自己申告調査を郵送にて実施した。調査結果に基づき、選択された対象者には個別に、MMSEによる評価のため地元の病院での受診を勧めた。 主な結果は以下のとおり。・Yes/No自己申告調査に回答した5万1,043人(58.1%)のうち、8,803人(17.2%)に対し、認知症の可能性を確認するため、かかりつけ医の診療を受けるように促した。・地元の病院で受診した高齢者1,877人(21.3%)のうち、MMSEのデータが収集できた1,873人(男性:803人、女性:1,070人、平均年齢:76.8±6.4歳)を分析に含めた。・多変量解析で低MMSEスコア(23以下)との関連が認められた項目は次のとおりであった。 ●電話番号を調べて電話をかけられない(オッズ比[OR]:2.74、95%信頼区間[CI]:1.89~3.97、p<0.0001) ●銀行やATMで自身の預貯金を管理できない(OR:2.12、95%CI:1.46~3.07、p<0.0001) ●今日が何日かわからない(OR:2.03、95%CI:1.40~2.96、p<0.0001) ●同じことを繰り返し質問する(OR:1.98、95%CI:1.45~2.70、p<0.0001)

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早期妊娠高血圧腎症予防のアスピリンを24~28週で中止、発生率は?/JAMA

 アスピリンは、早期妊娠高血圧腎症のリスクが高い妊婦においてその発生率を抑制するが、周産期出血のリスクを上昇させる可能性があるという。スペイン・バルセロナ自治大学のManel Mendoza氏らは、可溶性fms様チロシンキナーゼ1(sFlt-1)と胎盤増殖因子(PlGF)の比が正常な妊婦では、妊娠36週までアスピリンの投与を継続した場合と比較して、24~28週での投与中止は、早期妊娠高血圧腎症の発生に関して非劣性であり、出血性合併症は減少することを示した。研究の成果は、JAMA誌2023年2月21日号で報告された。スペインで行われた第III相無作為化試験 本研究は、スペインの9施設で実施された第III相非盲検無作為化試験であり、2019年8月~2021年9月の期間に参加者の募集が行われた(Instituto de Salud Carlos IIIなどの助成を受けた)。 対象は、年齢18歳以上、妊娠第1期(妊娠11~13週)に早期妊娠高血圧腎症のリスクが高いと判定された妊娠24~28週(24週0日~27週6日)の単胎妊娠で、妊娠16週6日までにアスピリン150mg/日の投与を開始し、sFlt-1/PlGF比≦38の妊婦であった。  被験者は、アスピリンの投与を中止する群(介入群)または36週まで投与を継続する群(対照群)に無作為に割り付けられた。 主要アウトカムは、妊娠37週未満における妊娠高血圧腎症(早期妊娠高血圧腎症)を伴う出産とされた。早期妊娠高血圧腎症の発生率の95%信頼区間(CI)の上限値が1.9%未満の場合に非劣性基準を満たすと判定された。用量・治療期間の異なる投与法の検討が必要 936例(平均年齢32.4[SD 5.8]歳)が登録され、473例が介入群、463例は対照群に割り付けられた。 早期妊娠高血圧腎症は、介入群が1.48%(7/473例)、対照群は1.73%(8/463例)で発生し(絶対群間差:-0.25%、95%CI:-1.86~1.36)、介入群の対照群に対する非劣性が確認された。 早期妊娠高血圧腎症妊婦の出産時の妊娠週数中央値は、介入群が35.1週、対照群も35.1週であった(p=0.42)。妊娠34週未満での有害アウトカムおよび37週未満での有害アウトカムの発生には、両群間に有意な差は認められなかった。 少なくとも1回の出血性合併症の発生率は、対照群(12.7%[59/463例])に比べ介入群(8.0%[38/473例])で低かった(絶対群間差:-4.71%、95%CI:-8.61~-0.81)。新生児の有害アウトカムについては、いずれも両群間に有意な差はみられなかった。 著者は、「アスピリンの用量および治療期間が異なる投与法の臨床的意義を検討するために、新たな研究が必要と考えられる」としている。

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血友病A、遺伝子治療のvaloctocogene roxaparvovecが有効/NEJM

 アデノ随伴ウイルスベクターを用いてBドメイン欠損第VIII因子のコード配列を送達し、重症血友病A患者の出血を予防するとされるvaloctocogene roxaparvovecについて、安全性と有効性を検証した第III相非盲検単群試験「GENEr8-1試験」の結果が、南アフリカ共和国・ウィットウォーターズランド大学のJohnny Mahlangu氏らにより示された。本薬投与から2年の時点で治療を要する出血の発生率は大幅に低下し、52週以降に新たな安全性シグナルの発現は認められなかったという。研究の成果は、NEJM誌2023年2月23日号に掲載された。単回投与から104週後の治療を要する出血イベントを評価 GENEr8-1試験は、少なくとも6ヵ月間の第VIII因子による定期補充療法を受けている重症血友病Aの男性患者(年齢18歳以上)134例を対象とする第III相非盲検単群試験であり、valoctocogene roxaparvovec投与から49~52週の時点で、ベースラインに比べ有意に高い第VIII因子活性が示され、治療を要する出血エピソードや第VIII因子の使用の頻度が有意に減少したことがすでに報告されている(BioMarin Pharmaceuticalの助成を受けた)。 参加者は、6×1013ベクターゲノム/kg体重のvaloctocogene roxaparvovecの単回投与を受けた。今回の主要エンドポイントは、本薬投与から104週の時点における、治療を要する出血イベントの年間発生率のベースラインからの変化量であった。 本薬の薬物動態をモデル化し、導入遺伝子由来の第VIII因子活性と関連付けて出血リスクを推定した。5年後の第VIII因子活性は軽症例の表現型と一致 valoctocogene roxaparvovecによる遺伝子導入から104週の時点で、134例中132例が試験を継続しており、112例がベースラインの時点で前向きに収集されたデータを有していた。追跡期間中央値は110.9週(範囲:66.1~197.4)だった。 治療を要する出血の平均年間発生率は、ベースラインでの4.8件と比較して104週時には0.8件と、84.5%低下した(p<0.001)。第VIII因子の使用は、ベースライン時の3,961.2 IU/kg/年から104週時には69.9 IU/kg/年へと、98.2%減少した(-3,891.3 IU、95%信頼区間[CI]:-4,221.0~-3,561.5、p<0.001)。  モデルで推定された導入遺伝子由来の第VIII因子産生系の半減期は123週間(95%CI:84~232)であった。また、260週時の発色合成基質法で測定した第VIII因子の推定値(平均値:11.8 IU/dL、中央値:5.7 IU/dL)は、軽症血友病Aの表現型と一致していた。 関節出血のリスクは、導入遺伝子由来の第VIII因子が5 IU/dLの場合に、関節出血エピソードの発生は年間1.0件と予測された。 投与から2年の時点で、新たな安全性シグナルは観察されなかった。最も頻度の高い有害事象はアラニンアミノトランスフェラーゼ値の上昇で、参加者の88.8%で認められ、上昇の期間中央値は21.0日(範囲:1~498)だった。重篤な治療関連有害事象は24例(17.9%)で発現し、このうち5例(3.7%)がvaloctocogene roxaparvovec関連であったが、いずれも52週までにみられており、52週以降には新たな重篤な治療関連有害事象は発現していなかった。 著者は、「現在、本試験と他試験の参加者の追跡が進められており、投与後15年までの参加者における本薬の有効性に関して、新たな知見が得られると考えられる」としている。

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研究成果、誤解なく発信できていますか?「信頼性」の意味は研究者と一般人で違う

 3月16日(木)に、「医学系研究をわかりやすく伝えるための手引き」シンポジウムがオンラインで開催される。シンポジウムに先立って、本プロジェクトの主任研究員である井出 博生氏と山田 恵子氏が、成果の一端を2週にわたって報告する。第1回は井出氏が、医学系研究で使われる用語が研究者と一般人で意味が異なるケースについて、調査結果を踏まえて紹介する。 医療情報をわかりやすく発信するプロジェクトでは、AMED研究開発ネットワーク事業(令和3年度主任研究者:井出 博生 東京大学未来ビジョン研究センター特任准教授、令和4年度主任研究者:山田 恵子 埼玉県立大学保健医療福祉学部准教授)として、2022年3月より「医学系研究をわかりやすく伝えるための手引き」をWebサイトで公開するなど、医師や研究者が研究成果を世の中に正確に発信していくための研究・支援を行っています。 その一環として、医学系研究で使われる典型的な用語のアンケート調査を行いました。その結果は上記の手引きの作成に活用したほか、分析結果を学会(ヘルスコミュニケーションウィーク2022)で発表しました。最近では大学内、学会で活用していただく場面も出てきています。 さらに現在、それらの用語そのもののデータベース(コーパス)を作成し、ある用語が新聞やテレビで、どういった意味で使われているかを調べています。 コーパスを分析していて、いくつかの新しい知見が得られました。そのなかでも研究班がとくに注目したのは、非常に一般的な単語で、研究者と一般人では通常違う意味で使っているものが少なからずあるということです。 そうした例の典型なものの一つが「信頼性」です。 医学系研究で「信頼性」とは「同じ条件で実験等を行ったときに得られる結果が一致していること」を意味します。しかし、一般の方にアンケートでは、67.2%(n=1,773)の人が「『信頼性』が高いとは、確実な治療効果が見込まれること」という意味だと誤った理解していました。なお、研究者に対するアンケートで82.3%(n=497)が正しく理解していることも確認しています。 信頼性という言葉は、一般の日本語では、「頼りになると信じること」、「信用」という意味で使われることが多いこともわかりました。「発言の信頼性が問われる事態になっている」、「政治全体の信頼性を損なうことにつながる」、「商品の信頼性を担保する」といった使われ方です。研究者も一般の生活者として信頼性という用語に触れた時には、場面によって別のニュアンスもあることに気付くのではないでしょうか。 もう一つの例は「適応」です。 医療の場面で多く使われますが、適応は「薬や治療法などの効果が医学的に認められ、使用の対象となること」です。一般の人の新しい薬や治療法への期待も大きいためか、「適応」という言葉は一般のニュースでも目にする機会が増えています。とりわけ現在は、新型コロナウイルス感染症という大きな社会課題があり、その傾向が高まっているように見受けられます。 ただし、「適応」は一般の日本語では、「外部の環境に適するための行動や意識の変容」を指すことも多いのです。英語で考えてみるとわかりやすいかもしれません。医学系研究における適応の意味が“application”であるのに対し、日本語の適応には“adjustment”の意味もあります。「信頼性」と同様、一般の人が医学系研究で使われる「適応」という言葉を誤解しているケースが多いことが先のアンケートで確認できました。 研究班では2022年度、このようなコーパスを活用した自然言語処理からわかった知見を取り入れ、「医学系研究をわかりやすく伝えるための手引き」の改訂を進めてきました。同時に、手引きに付随する動画や一般向けパンフレットの制作、研究者に手引きを使っていただくための普及活動も行っています。 これらの成果は、2023年3月16日(木)にオンラインシンポジウムを開催し、発表する予定です。ご興味がある方はぜひご覧ください。(東京大学未来ビジョン研究センター特任准教授 井出 博生) ※この記事は「医療情報をわかりやすく発信するプロジェクト」の趣旨に賛同する、m3.com、日経メディカル Online、CareNet.comの3つの医療・医学メディア共同で同時掲載しています。

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ハチミツでなくとも甘くてトロリとしたものなら鎮咳効果がある?【Dr. 倉原の“おどろき”医学論文】第229回

ハチミツでなくとも甘くてトロリとしたものなら鎮咳効果がある?Pixabayより使用ハチミツって咳をおさめる効果があるとされる唯一の食材なのですが、実はかなり議論の余地があります。私はハチミツの味が苦手なので使いませんが、子供の咳に対して有効とする報告はこれまでいくつもあります。たとえば、就寝前に「スプーン1杯(2.5mL)のハチミツを取るグループ」、「咳止めを飲むグループ」、「何もせず様子をみるグループ」のいずれかにランダムに割り付けた研究では、ハチミツを与えられた患児で、有意に咳が減少することが示されました1)。コクランレビューでも2018年の時点では、急性の咳に対するハチミツは、何もしないよりは咳止めの効果があり、「既存の咳止めと大差がないほど効果的だ」という結論になっています2)。Nishimura T, et al.Multicentre, randomised study found that honey had no pharmacological effect on nocturnal coughs and sleep quality at 1-5 years of age.Acta Paediatr. 2022 Nov;111(11):2157-2164.これは上気道炎による急性咳嗽を呈した1~5歳児を対象としたランダム化二重盲検プラセボ対照試験です。日本国内の複数の小児科クリニックから患児を登録しました。参加者には、ハチミツまたはハチミツ風味のシロップ(プラセボ)を2晩連続で、眠前1時間のタイミングで摂取してもらいました。夜間咳嗽と睡眠について、7段階のリッカート尺度で評価しました。161人が登録され、78人がハチミツ群、83人がプラセボ群にランダム化されました。この分野ではかなり多い登録数だと思います。結果、確かに夜間の咳嗽の改善はみられたのですが、ハチミツ群とプラセボ群の有意差が観察されなかったのです。つまり、ハチミツによる有効性はプラセボ効果をみているのか、あるいはシロップのような甘いものであれば鎮咳効果があるのか、どちらかの可能性が高そうです。過去の研究が正しいとするなら、後者のほうが妥当な解釈かなと思います。となると、甘くてトロリとしたものであれば、ハチミツでなくてもよいのかもしれませんね。1)Paul IM, et al. Effect of honey, dextromethorphan, and no treatment on nocturnal cough and sleep quality for coughing children and their parents. Arch Pediatr Adolesc Med. 2007 Dec;161(12):1140-1146.2)Oduwole O, et al. Honey for acute cough in children. Cochrane Database Syst Rev. 2018 Apr 10;4(4):CD007094.

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第149回 今の日本の医療IoT、東日本大震災のイスラエル軍支援より劣る?(後編)

2月6日に発生したトルコ・シリア大地震のニュースを見て村上氏は東日本大震災時のイスラエル軍の救援活動を思い出します。後編の今回は、現在の日本が顔負けのIoTを駆使したイスラエル軍の具体的な支援内容についてお伝えします。前編はこちら 仮設診療所エリアには内科、小児科、眼科、耳鼻科、泌尿器科、整形外科、産婦人科があり、このほかに冠状動脈疾患管理室(CCU)、薬局、X線撮影室、臨床検査室を併設。臨床検査室では血液や尿の生化学的検査も実施できるという状態だった。ちなみにこうした診察室や検査室などはそれぞれプレハブで運営されていた。一般に私たちが災害時の避難所で見かける仮設診療所は避難所の一室を借用し、医師は1人のケースが多い。例えて言うならば、市中の一般内科クリニックの災害版のような雰囲気だが、それとは明らかに規模が違いすぎた。当時、仮設診療所で働いていたイスラエル人の男性看護師によると、これでも規模としては小さいものらしく、彼が参加した中米・ハイチの地震(2010年1月発生)での救援活動では「全診療科がそろった野外病院を設置し、スタッフは総勢200人ほどだった」と説明してくれた。この仮設診療所での画像診断は単純X線のみ。プレハブで専用の撮影室を設置していたが、完全なフィルムレス化が実行され、医師らはそれぞれの診療科にあるノートPCで患者のX線画像を参照することができた。ビューワーはフリーのDICOMビューアソフト「K-PACS」を使用。検査技師は「フリーウェアの利用でも診療上のセキュリティーもとくに問題はない」と淡々と語っていた。実際、仮設診療所内の診療科で配置医師数が4人と最も多かった内科診療所では「K-PACS」の画面で患者の胸部X線写真を表示して医師が説明してくれた。彼が表示していたのは肺野に黒い影のようなものが映っている画像。この内科医曰く「通常の肺疾患では経験したことのない、何らかの塊のようなものがここに見えますよね。率直に言って、この診療所での処置は難しいと判断し、栗原市の病院に後送しましたよ」と語った。ちなみに東日本大震災では、津波に巻き込まれながらも生還した人の中でヘドロや重油の混じった海水を飲んでしまい、これが原因となった肺炎などが実際に報告されている。内科医が画像を見せてくれた症例は、そうした類のものだった可能性がある。診療所内の薬局を訪問すると、イスラエル人の薬剤師が案内してくれたが、持参した医薬品は約400品目にも上ると最初に説明された。薬剤師曰く「持参した薬剤は錠剤だけで約2,000錠、2ヵ月分の診療を想定しました。抗菌薬は第2世代ペニシリンやセフェム系、ニューキノロン系も含めてほぼ全種類を持ってきたのはもちろんのこと、経口糖尿病治療薬、降圧薬などの慢性疾患治療薬、モルヒネなども有しています」と説明してくれ、「見てみます?」と壁にかけられた黒いスーツカバーのようなものを指さしてくれた。もっとも通常のスーツカバーの3周りくらいは大きいものだ。彼はそれを床に置くなり、慣れた手つきで広げ始めた。すると、内部はちょうど在宅医療を受けている高齢者宅にありそうなお薬カレンダーのようにたくさんのポケットがあり、それぞれに違う経口薬が入っていた。最終的に広げられたカバー様のものは、当初ぶら下げてあった時に目視で見ていた大きさの4倍くらいになった。この薬剤師によると、イスラエル軍衛生部隊では海外派遣を想定し、国外の気候帯や地域ブロックに応じて最適な薬剤をセットしたこのような医薬品バッグのセットが複数種類、常時用意されているという。海外派遣が決まれば、気候×地域性でどのバッグを持っていくかが決まり、さらに派遣期間と現地情報から想定される診療患者数を割り出し、それぞれのバッグを何個用意するかが即時決められる仕組みになっているとのこと。ちなみに同部隊による医療用医薬品の処方は南三陸町医療統轄本部の指示で、活動開始から1週間後には中止されたという。この時、最も多く処方された薬剤を聞いたところ、答えは意外なことにペン型インスリン。この薬剤師から「処方理由は、糖尿病患者が被災で持っていたインスリン製剤を失くしたため」と聞き、合点がいった。ちなみにイスラエルと言えば、世界トップのジェネリックメーカー・テバの本拠地だが、この時に持参した医薬品でのジェネリック採用状況について尋ねると、「インスリンなどの生物製剤、イスラエルではまだ特許が有効な高脂血症治療薬のロスバスタチンなどを除けば、基本的にほとんどがジェネック医薬品ですよ。とくに問題はないですね」とのことだった。この取材で仮設診療所エリア内をウロウロしていた際に、偶然ゴミ集積所を見かけたが、ここもある意味わかりやすい工夫がされていた。感染性廃棄物に関しては、「BIO-HAZARD」と大書されているピンクのビニール袋でほかの廃棄物とは一見して区別がつくようになっていたからだ。大規模な医療部隊を運営しながら、フリーウェアやジェネリック医薬品を使用するなど合理性を追求し、なおかつ患者情報はリアルタイムで電子的に一元管理。ちなみにこれは今から11年前のことだ。2020年時点で日常診療を行う医療機関の電子カルテ導入率が50~60%という日本の状況を考えると、今振り返ってもそのレベルの高さに改めて言葉を失ってしまうほどだ。

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3月3日 耳の日【今日は何の日?】

【3月3日 耳の日】〔由来〕 「3(み)月3(み)日」との語呂合わせ、数字の「3」が耳の形にみえること、電話の発明家で音声学と聾唖教育で活躍したグラハム・ベルの誕生日であることから、日本耳鼻咽喉科学会の提案により1956(昭和31)年に制定。同会では、都道府県ごとに難聴で悩んでいる方々の相談のほか、一般の方にも耳の病気や健康な耳の大切さの啓発活動を行っている。関連コンテンツ難聴と認知症【外来で役立つ!認知症Topics】耳鳴りがするときの症状チェック【患者説明用スライド】コロナにやられて耳が聞こえない!【Dr. 中島の 新・徒然草】医療マンガ大賞2021 言葉にしないと伝わらないこと(言語聴覚士視点)フクラアカリガエル氏高齢者における難聴とうつ病との関係~メタ解析

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日本人・小中高校生の頭痛有病率~糸魚川紅ズワイガニ研究

 新潟・糸魚川総合病院の勝木 将人氏らは、小児および青年期の頭痛、片頭痛、薬物乱用頭痛の有病率を調査するため、小学校から高校までの日本人学生を対象に、学校ベースのオンラインアンケートを実施した。また、片頭痛を引き起こすトリガーについて調査するとともに、頭痛頻度に対するCOVID-19パンデミックの影響も併せて検討を行った。その結果、小児および青年期において、頭痛による生活への支障は大きいことが明らかとなった。結果を踏まえ著者らは、頭痛の臨床診療におけるアンメットニーズを修正する必要があるとしている。Clinical Neurology and Neurosurgery誌オンライン版2023年1月20日号の報告。 2022年4月~8月に、新潟県糸魚川市内の小中高の学生(6~17歳)に対しオンラインアンケートを実施した。片頭痛および薬物乱用頭痛の定義には、国際頭痛分類第3版を用いた。片頭痛を引き起こすトリガーを調査するため、因子分析およびクラスタリングを実施した。頭痛頻度へのCOVID-19パンデミックの影響についての回答も収集した。 主な結果は以下のとおり。・有効回答数2,489例のうち、頭痛は907例(36.44%)、片頭痛は236例(9.48%)、薬物乱用頭痛は11例(0.44%)で認められた。・頭痛の回答者の最大70%は日常生活への支障を訴え、約30%は医師に相談していた。・片頭痛のトリガーは、因子分析により5つの因子にグループ化され、因子に対する片頭痛患者の感受性は、3つのクラスターに分類された。 ●クラスター1は、さまざまなトリガーに対し強い感受性を示していた。 ●クラスター2は、天気、スマートフォン、ビデオゲームに対し敏感な反応がみられた。 ●クラスター3は、トリガーに対する感受性が低かった。・クラスター2は、片頭痛による支障が非常に大きいにもかかわらず、医師の診察を受けていない傾向が認められた。・COVID-19パンデミック下では、頭痛の回答者の10.25%で頭痛の発作が増加し、3.97%で減少していた。

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体外受精と自然妊娠、生まれた子供に違いや特徴は?

 体外受精(IVF)で授かった子供の学齢期の発達と教育の成果は、自然妊娠の子供と同等であることを、オーストラリア・メルボルン大学のAmber L. Kennedy氏らが明らかにした。著者らは、「この結果は、現在および将来の両親と臨床医に大きな安心感を与えるものである」とまとめている。PLOS Medicine誌2023年1月24日号の報告。 体外受精は生体外での一般的な受胎の方法であるが、生まれた子供への長期的な影響を理解することは重要である。研究者らは、体外受精による妊娠が小学校在学中の児童期の発達および教育の成果に及ぼす影響を、自然妊娠と比較し明らかにする目的で本研究を行った。体外受精と発達上の脆弱性の因果関係を評価 対象者は、自然妊娠または体外受精で妊娠した単胎児で、2005年から2014年の間にオーストラリアのビクトリア州で生まれた41万2,713人の児童である。4~6歳の発達上の脆弱性(developmental vulnerability)、7~9歳の教育の成果を2つのアウトカム指標で評価した。1つ目の4~6歳の発達上の脆弱性は、オーストラリア幼児発達人口調査(AEDC)を用いて評価し(17万3,200人)、身体の健康と幸福感、社会性、感情的成熟、言語と認知スキル、コミュニケーションスキルと一般知識の5つの発達領域のうち2つ以上で10パーセンタイル未満のスコアが認められた場合と定義した。2つ目の7~9歳の教育の成果は、National Assessment Program-Literacy and Numeracy(NAPLAN)のデータを用いて評価し(34万2,311人)、5領域(文法と句読法、読み、書き、スペル、計算能力)における総合zスコアで定義した。母集団の平均因果効果を推定するために、回帰調整を伴う逆確率加重を用いた。因果推論法を用いて、対象となる無作為化臨床試験を模した方法で観察データを分析した。州全体でリンクされた母親と子供の行政データも使用された。 体外受精による妊娠が小学校在学中の児童期の発達および教育の成果に及ぼす影響を、自然妊娠と比較した主な結果は以下のとおり。・AEDC指標において、自然妊娠の子供と比較して、4~6歳の発達上の脆弱性のリスクに対する体外受精の因果関係はなく、調整リスク差は-0.3%(95%信頼区間[CI]:-3.7%~3.1%)、調整リスク比は0.97(95%CI:0.77~1.25)であった。・7~9歳の時点で、NAPLANの総合zスコアに体外受精の因果関係はなく、体外受精による妊娠で生まれた子供と自然妊娠で生まれた子供の調整平均差は0.030(95%CI:-0.018~0.077)であった。

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