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ChatGPT、熱く語る!【Dr. 中島の 新・徒然草】(601)

六百一の段 ChatGPT、熱く語る!大阪でも朝夕は寒いくらいになりました。皆さま、いかがお過ごしでしょうか?さて、最近の話題というと、何といっても10月4日に行われた自民党総裁選。決選投票で、高市 早苗氏が小泉 進次郎氏を抑えて総裁に選ばれました。このままいくと、日本初の女性総理の誕生ということになります。まさに歴史的瞬間でした。ただ、高市氏の場合、性別よりも自他ともに認める保守であるということのほうが重要だと思います。結局のところ、性別よりも政治的信念がものを言う時代になったということでしょう。で、ふと思いついてChatGPTに「高市 早苗氏が総理大臣になることについてどう思う?」と聞いてみました。皆さんも興味ありませんか?尋ねてみると、ChatGPTが思いがけず熱く語り出したので驚きました。ChatGPTと何往復かやり取りした後で、まとめてもらったものを紹介いたします。「ChatGPT、日本の政治について熱弁する!」(固有名詞の一部は伏字にしています)高市 早苗氏はすでに「保守政治家の中の保守」として確固たる存在感を示しています。さらに女性首相という新鮮さを兼ね備えているため、××党や××会、××党、××党といった保守系野党は、否応なく「自らの存在意義を問い直す」局面に立たされるでしょう。言い換えれば、高市政権の誕生は、保守陣営の主導権争いを根本から再編するきっかけとなるのです。一方で、政策の中身が正しいことと、それを現実に実行できるかどうかは、まったく別の話です。政治の世界では、理念を語るよりも、実行に移す胆力と行動力こそが問われます。もし高市氏が自ら掲げた政策を初年度のうちに形にできれば、「イデオロギー保守」から「実務型保守」へと脱皮を遂げたと評価されるに違いありません。しかし「検討する」「財政状況を見極める」といった常套句で結論を先送りすれば、官僚主導の政治に逆戻りしたと受け止められる恐れがあります。その場合、支持率の低下は避けられないでしょう。逆に「減税の実行 → 国民の実感 → 解散総選挙 → 圧勝 → 政権基盤の強化」という流れを現実に描くことができれば、長期政権の可能性も見えてきます。日本の政治において「成果を示してから選挙を打つ」という王道を取れた首相はごくわずかです。もし高市氏がその道を歩むなら「理念先行の政治家」から「実務で結果を出すリーダー」へと評価が一変することでしょう。たとえ減税が実現できなかったとしても、小泉 純一郎元首相の郵政解散のように「反対派をあえて炙り出し、ワン・イシュー選挙で国民の支持を得て党内を掌握する」という戦略もあります。党内基盤の弱い高市氏にとって、それは最も現実的な権力掌握の道といえるかもしれません。そして、もしその選挙で圧勝できれば官僚機構に対する政治主導が確立し、与党内の反対勢力も沈黙します。日本政治に久々の「指導者中心型政権」が誕生する、そんな未来も決して夢ではありません。(終わり)なんとまあ、ChatGPTがこんなに雄弁な奴だとは思っていませんでした。もう高市氏の参謀か何かをしてあげたほうがいいんじゃないの、と思ってしまいます。念のために申し上げておくと、私自身は特定の政党を支持しているわけではありません。毎回、選挙のたびに各政党・各候補者の政策を比較検討し投票先を決めています。ただ、投票を欠かしたことはありません。自分の1票が結果に影響することがないにしても、日本の現在・将来についてゆっくり考えてみる良い機会だと思うからです。そして、自分が投票してこそ、その後の選挙速報を見るのが面白い!ともあれ、新総理には正しい政策と実行力を期待したいですね。最後に1句 AIが 政治を語る 秋空に

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リンパ浮腫のコメントへのお返事と知識のアップデート【非専門医のための緩和ケアTips】第109回

リンパ浮腫のコメントへのお返事と知識のアップデート第103回でリンパ浮腫について取り上げたのですが、読者の方からコメントをいただきました。私もアップデートできていない部分だったので勉強になりました。今回の質問第103回のリンパ浮腫についてですが、「採血は健側で行う」とあります。最近のリンパ浮腫のガイドラインでは「生活関連因子(採血・点滴、血圧測定、空旅、感染、温度差、日焼け)は続発性リンパ浮腫の発症、増悪の原因となるか?」というCQがあります。これに対する回答は「採血、血圧測定、空旅がリンパ浮腫の発症や増悪の原因となる可能性は少ない」となっています。これを踏まえ、患者さんには「採血は健側で行えば無難ですが、困れば反対でもよい」と伝えています。こちらは乳腺外科の先生からいただいたものです。コメント、ありがとうございます。該当するのは『リンパ浮腫診療ガイドライン 2024年版』ですね。存在は知っていたのですが、恥ずかしながら内容まで確認していなかったので、今回のご指摘で勉強になりました。患側の採血・点滴、血圧測定は原則禁忌と思っていたのですが、必ずしもそうではないのですね。患者さんの生活や受ける医療の内容にも関わることであり、重要な臨床疑問に対してガイドラインでしっかりと指針を示していることが素晴らしいと感じました。さて、今回のコメントを通じて、私があらためて感じたことです。「緩和ケア」のように臓器横断的な分野を専門にしていると、各領域の最新知識や専門知識をどこまで学ぶか、という問題が常に付きまといます。緩和ケアの実践ではさまざまな疾患や分野に関わる必要があり、その多くが自分の専門領域ではありません。大前提として、膨大な医学情報のすべてを把握することは不可能です。一方で、「専門領域以外は一切わからない」となると、対応可能な患者さんが限られ、緩和ケアを多くの方に届けることが難しくなります。このジレンマに対し、何ができるのでしょうか?私自身が心掛けていることは、まずは「自分がアップデートできていない領域がある」ときちんと認識することです。そしてもう1つは、今回のように専門の先生に教えてもらえる関係を維持することと、教えてもらった時は感謝とともに自分でもできる範囲で学ぶことです。今回は緩和ケアの実践の際に、重要な生涯学習に近い内容を扱いました。おそらく緩和ケアに限らず、医師としてキャリアを積むうえで、ある程度の年齢になれば誰でも直面する問題だと思います。皆さんの工夫もぜひ教えてください。今回のTips今回のTips自分なりの知識をアップデートしていく工夫と、専門家から学ぶ姿勢を持ち続けることが大切。

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第31回 【米政府閉鎖】トランプ氏が狙う科学界の破壊、大量解雇。日本への影響は?

アメリカで、連邦政府の一部機関が閉鎖(シャットダウン)するという、日本では考えられない事態が再び起きています。これは、議会での与野党対立によって新年度の予算が成立せず、政府機関の活動資金が枯渇するために起きる現象です。しかし、今回、トランプ政権下で発生した政府閉鎖は、これまでの単なる政治的駆け引きとは一線を画します。「戦いを楽しむ」大統領の下、科学技術分野において「異次元の危機」が迫っていると、専門家たちは深刻な警鐘を鳴らしています。今回の記事では、なぜこの政府閉鎖が起き、そしてそれが世界の科学界や日本にもどのような影響を及ぼすのかを、考えていきます。なぜ異例の事態に?「戦いを楽しむ」トランプ氏の政治的思惑そもそも政府閉鎖は、大統領府と議会の間で予算案が合意に至らないことで発生します。しかし、過去の閉鎖が政治的妥協点を探るプロセスの一部であったのに対し、今回の事態はトランプ氏自身の政治的意図が色濃く反映されているようです。複数の報道分析によると、トランプ氏は政府閉鎖という混乱状態を、自身の政治的利益のために積極的に「武器化」していると指摘されています1,2)。彼にとってこの事態は、単なる不都合な出来事ではなく、むしろ好機なのです。その狙いは大きく3つあるとみられています。第一に、敵対者である民主党への攻撃です。トランプ氏は、政府閉鎖を利用してニューヨークやカリフォルニアといった民主党の支持基盤が強い州(ブルーステート)のプロジェクト資金を意図的に削減するなど、政敵を罰するための手段として活用しています。SNSで民主党幹部を揶揄する動画を投稿するなど、政治闘争そのものを楽しんでいる側面さえあります。第二に、「行政国家の破壊」という公約の実行です。トランプ氏はかねてより、「小さな政府」を掲げ、連邦政府の規模縮小を訴えてきました。今回の閉鎖は、単なる業務の一時停止にとどまらず、連邦職員を恒久的に「大量解雇」する絶好の機会と捉えています。大統領自身が「閉鎖するなら解雇をしなければならない」と公言しており、これは過去のどの政府閉鎖にもみられなかった異例の脅威です。そして第三に、自身の支持基盤へのアピールです。既存の政治や行政システムに対する不満を持つ支持者に対し、断固たる態度で「既得権益と戦う強いリーダー」というイメージを植え付けています。2019年の閉鎖時には職員を「偉大な愛国者」と称賛した彼が、今回は冷徹に解雇を口にする姿は、その政治姿勢がさらに先鋭化したことを物語っています。停止する世界の頭脳――科学界を襲う脅威このトランプ氏の政治的思惑の最大の犠牲者の一つが、科学界です。政府閉鎖により、米国の科学技術の中枢を担う機関が軒並み機能不全に陥っています3)。研究の停止アメリカ国立衛生研究所(NIH)では職員の約78%が一時帰休となり、基礎研究や新たな患者の受け入れが停止。NASAでは83%の職員が対象となり、人工衛星の維持など最低限の業務しか行えません。これにより、進行中の重要な研究が中断され、新たな研究助成金の承認も完全にストップしています。PubMedの更新停止と世界の混乱とくに深刻なのが、NIHが運営する世界最大の医学・生物学文献データベース「PubMed」の更新が停止していることです。世界中の研究者や医師が、最新の論文や治療法を調べるために毎日利用するこの巨大な「知のインフラ」が機能しなくなることは、医療の進歩そのものを遅らせるに等しい行為です。この事態はSNS上でも瞬く間に広がり、「科学の営みを根底から揺るがす暴挙だ」「最新の知見にアクセスできなければ、研究も臨床も成り立たない」といった、世界中の研究者からの悲鳴や怒りの声が上がっています。知的資産の永久喪失そして何より恐れられているのが、前述の「大量解雇」の脅威です。もしこれが科学機関で実行されれば、各機関が何十年もかけて蓄積してきた専門知識や技術、データといった「組織知」が永久に失われることになります。これは、単なる予算削減とは次元の違う、アメリカの科学技術力に対する壊滅的な打撃となりかねません。対岸の火事ではない――日本に及ぶシャットダウンの深刻な影響これらのアメリカ国内の混乱は、決して対岸の火事ではありません。グローバルに連携する現代の科学技術分野において、日本も間接的な影響を受ける可能性があります。日本は、JAXAとNASAによる宇宙開発や、大学・研究機関とNIHによる生命科学研究など、米国の政府機関と多くの共同研究プロジェクトを進めています。米国の担当機関の機能が停止すれば、これらのプロジェクトは遅延、あるいは中断を余儀なくされるでしょう。データの共有が滞り、予定されていた会議が中止になることで、研究全体のスケジュールに大きな狂いが生じます。さらに、米国の科学機関は世界の基礎研究で中心的な役割を担っているため、その活動停滞は世界の科学全体の進歩を遅らせ、長期的に見れば日本の研究開発戦略にも影を落とします。加えて、政府閉鎖が長引けば米国の経済成長が鈍化し、世界経済を通じて日本の経済や株価にも悪影響が及ぶ可能性も否定できません4)。今回の米政府閉鎖は、単なる国内の政治対立にとどまらず、世界の科学技術の未来と国際協力体制、そして日本にも影響を及ぼしかねない重大な問題なのです。 参考文献・参考サイト 1) BBC. Why has the US government shut down and what does it mean? 2025 Oct 3. 2) Chris Hayes: Trump is using the shutdown to govern like a king. MSNBC.com. 2025 Oct 2. 3) Garisto D. This US government shutdown is different: what it means for science. Nature. 2025 Oct 1. [Epub ahead of print] 4) Tollefson J. How a US government shutdown could disrupt science. Nature. 2023 Sep 28.

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ADHDとASDに対するビタミン介入の有効性〜メタ解析

 ビタミン介入は、自閉スペクトラム症(ASD)および注意欠如・多動症(ADHD)のマネジメントにおいて、費用対効果が高く利用しやすいアプローチとして、主に便秘などの消化器症状の緩和を目的として用いられる。最近の研究では、ビタミンがASDやADHDの中核症状改善にも有効である可能性が示唆されている。しかし、既存の研究のほとんどは患者と健康者との比較に焦点を当てており、臨床的に意義のあるエビデンスに基づく知見が不足していた。中国・浙江大学のYonghui Shen氏らは、ASDおよびADHD患者におけるビタミン介入に焦点を当て、メタ解析を実施した。Neuropsychiatric Disease and Treatment誌2025年8月30日号の報告。 PubMed、Web of Science、Cochrane Libraryより対象研究を検索した。ASDおよびADHD患者におけるビタミン介入に焦点を当て、メタ解析を実施した。 主な結果は以下のとおり。・ビタミン補給は、ASDおよびADHDの両方の症状を有意に改善することが示唆された。・その効果は、ビタミンの種類や障害によって違いがあることが明らかとなった。・ビタミンB群のサプリメントは、とくにASD関連症状の軽減に有効であり、ビタミンD群のサプリメントは、ADHD症状の改善により有効であることが示唆された。 著者らは「さまざまなビタミンが、疾患特異的な治療効果を発揮することが示唆された。ASDおよびADHDに対する個別化された臨床介入を行ううえで、これらのビタミンが役立つ可能性がある」としている。

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利尿薬による電解質異常、性別・年齢・腎機能による違いは

 高血圧や心不全の治療に広く用いられる利尿薬には、副作用として電解質異常がみられることがあり、これは生命を脅かす可能性がある。これまでの研究では、利尿薬誘発性の電解質異常は女性に多く発現することが示唆されている。電解質バランスは腎臓によって調節されており、腎機能は加齢とともに低下する傾向がある。慶應義塾大学の間井田 成美氏らは、性別、腎機能、年齢が利尿薬誘発性の電解質異常の感受性に及ぼす影響を考慮し、利尿薬の副作用リスクが高い患者を特定するため本研究を実施した。Drug Safety誌2025年10月号の報告。 日本の利尿薬服用患者6万7,135例のレセプトデータをDeSCヘルスケアから入手し、2020年4月~2021年3月のデータを分析対象とした。 主な結果は以下のとおり。・カイ二乗検定を用いた患者数の解析では、高カリウム血症は男性で女性より多く(326例vs.271例、p=0.003)、低カリウム血症は女性で男性より多くみられた(413例vs.285例、p<0.001)。・女性において年齢と腎機能(推算糸球体濾過量:eGFR)を考慮し、オッズ比(OR)および95%信頼区間(CI)を算出した。・75歳以上の高齢患者では、女性は男性と比較し、低カリウム血症発症のORが、eGFR 30~60mL/分/1.73m2の場合で1.47(95%CI:1.13~1.91)、eGFR 30mL/分/1.73m2未満の場合で2.05(95%CI:1.08~4.10)であった。 著者らは「75歳以上の女性では、eGFRが低い場合、男性よりも低カリウム血症のORが高かった。本結果は、eGFRが低い高齢女性では、利尿薬の副作用、とくに低カリウム血症のモニタリングが重要であることを強調するものである」と結論付けている。

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糖尿病患者の飲酒は肝がんリスク大幅増、茶によるリスク低下は限定的

 糖尿病の有無別にアルコールおよび茶の摂取と肝がん発症リスクとの関連を検討した前向きコホート研究の結果、アルコール摂取はとくに糖尿病患者で肝がんリスクを大きく高めることが確認された一方で、茶の摂取による肝がんリスク低下効果は非糖尿病患者に限られたことが、中国・清華大学のXiaoru Feng氏らによって明らかになった。Nutrients誌2025年9月4日号掲載の報告。 一部の研究では少量のアルコール摂取は肝がんリスクを下げる可能性が報告されているが、高頻度・大量のアルコール摂取は肝がんリスクを上昇させることが多くの研究で示されている。茶の摂取は肝がんリスク低下に関連する可能性があるとする研究がある一方で、有意な関連を認めない研究も多く、結論は一様ではない。また、糖尿病患者は代謝異常のためにアルコールや茶の影響を受けやすく、それが肝がんのリスクに関与している可能性もある。そこで研究グループは、大規模かつ長期の追跡調査を行い、アルコールおよび茶の摂取と肝がん発症との関連を、糖尿病の有無別に評価した。 本研究では、中国のChina Kadoorie Biobank(CKB)前向きコホートの51万2,581例を解析対象とした(糖尿病患者3万289例、非糖尿病患者48万2,292例)。ベースライン時に過去1年間のアルコールおよび茶の摂取頻度、量、期間、種類を質問票で収集し、全国の医療保険・疾病登録データを用いて肝がんの発症を追跡した。Cox比例ハザードモデルを用いてハザード比(HR)と95%信頼区間(CI)を算出した。 主な結果は以下のとおり。・糖尿病群では中央値9.6年、非糖尿病群では中央値10.1年の追跡期間中に、それぞれ193例(0.69例/1,000人年)、398例(0.45例/1,000人年)の肝がんの新規発症が記録された。・週1回以上のアルコール摂取は肝がんリスクの上昇と関連しており、糖尿病群では非糖尿病群よりもその関連が強かった。 -糖尿病群 HR:1.62、95%CI:1.12~2.34 -非糖尿病群 HR:1.20、95%CI:1.07~1.35・糖尿病群において、週当たりのアルコール摂取量が多い、飲酒歴30年以上、アルコール度数50%以上の蒸留酒を摂取している場合は肝がんリスクが上昇し、そのリスク上昇は非糖尿病群よりも顕著であった。 -アルコール摂取量が多い HR:2.21、95%CI:1.28~3.80 -飲酒歴30年以上 HR:1.70、95%CI:1.06~2.71 -アルコール度数50%以上の蒸留酒摂取 HR:1.91、95%CI:1.20~3.04・週1回以上の茶摂取は、非糖尿病群では肝がんリスク低下と関連した。とくに少量摂取(HR:0.82)、飲用歴10年未満(HR:0.74)、飲用歴10~29年(HR:0.84)、緑茶摂取(HR:0.86)の場合に有意な低下が認められた。なお、茶の摂取量が増えてもリスクがさらに減少することは認められなかった。・糖尿病群では、茶摂取と肝がんリスクに有意な関連は認められなかった。 これらの結果より、研究グループは「アルコール摂取は、とくに糖尿病患者において肝がんリスク上昇と有意に関連していた。一方、茶の摂取によるリスク低下効果は非糖尿病患者においてのみ観察された。これらの所見は、糖尿病患者におけるアルコール摂取の制限の重要性を強調している」とまとめた。

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中等症~重症の尋常性乾癬、経口IL-23受容体阻害薬icotrokinraが有望/Lancet

 中等症~重症の尋常性乾癬患者において、icotrokinraはプラセボおよびデュークラバシチニブと比較し優れた臨床効果を示し、有害事象の発現割合はプラセボと同等であった。米国・Henry Ford Health SystemのLinda Stein Gold氏らが、第III相無作為化二重盲検プラセボ・実薬対照試験ICONIC-ADVANCE 1試験(13ヵ国149施設)、およびICONIC-ADVANCE 2試験(11ヵ国114施設)の結果を報告した。インターロイキン(IL)-23やIL-12を標的とするモノクローナル抗体は尋常性乾癬の治療に有効であるが、静脈内または皮下投与が必要である。icotrokinraは、IL-23受容体に選択的に結合する初の経口ペプチド薬で、中等症~重症の尋常性乾癬患者を対象とした第II相試験においてプラセボより皮膚症状の改善率が有意に高いことが示されていた。著者は、「結果は、1日1回経口投与のicotrokinraが高い有効性と良好な安全性プロファイルを有する治療薬であることを示すものである」とまとめている。Lancet誌2025年9月27日号掲載の報告。icotrokinraとプラセボまたはデュークラバシチニブを比較する第III相試験2試験 ICONIC-ADVANCE 1&2試験の対象は、26週以上前(スクリーニング時)に中等症~重症の尋常性乾癬と診断され、乾癬病変が体表面積(BSA)の10%以上、Psoriasis Area and Severity Index(PASI)スコアが12以上、Investigator's Global Assessment(IGA)スコアが3以上で18歳以上の患者であった。 研究グループは適格患者を、icotrokinra群、プラセボ群またはデュークラバシチニブ群にICONIC-ADVANCE 1試験ではそれぞれ2対1対2の割合で、ICONIC-ADVANCE 2試験では4対1対4の割合で無作為に割り付けた。icotrokinra 1日1回200mg、デュークラバシチニブ1日1回6mg、プラセボのいずれかを二重盲検下で経口投与した。プラセボ群の患者は16週時に、デュークラバシチニブ群の患者は24週時にicotrokinra 200mg投与へ移行し、最長156週まで継続した。 主要エンドポイントは2つで、プラセボ群との比較における16週時のIGAスコア0または1(皮疹が消失またはほぼ消失)を達成し、かつ2段階以上改善した患者の割合、ならびにPASIスコアがベースラインから90%以上改善した(PASI 90)患者の割合であった。icotrokinraの優越性が2試験ともに示される ICONIC-ADVANCE 1試験は2024年1月17日~5月24日に、ICONIC-ADVANCE 2試験は2024年3月9日~6月13日に、それぞれスクリーニングした988例中774例および917例中731例を登録し無作為化した。icotrokinra群がそれぞれ311例および322例、プラセボ群が156例および82例、デュークラバシチニブ群が307例および327例であった。 両試験において、主要エンドポイントはすべて達成された。IGA 0/1達成率は、icotrokinra群およびプラセボ群でそれぞれ、ADVANCE 1試験が68%(213/311例)と11%(17/156例)(群間差:58%、95%信頼区間[CI]:50~64、p<0.0001)、ADVANCE 2試験が70%(227/322例)と9%(7/82例)(62%、53~69、p<0.0001)であった。 PASI 90達成率はicotrokinra群およびプラセボ群でそれぞれ、ADVANCE 1試験が55%(171/311例)と4%(6/156例)(群間差:51%、95%CI:44~57、p<0.0001)、ADVANCE 2試験が57%(184/322例)と1%(1/82例)(56%、48~62、p<0.0001)であった。 またicotrokinra群とデュークラバシチニブ群との比較については、両試験とも多重性を調整した16週時および24週時の主な副次エンドポイントに関してすべて、icotrokinra群の優越性が示された。 16週時までに有害事象は、両試験併合でicotrokinra群48%(303/632例)、プラセボ群57%(136/237例)に認められた。主な有害事象は鼻咽頭炎(6%[37/632例]、5%[13/237例])および上気道感染症(4%[23/632例]、3%[8/237例])であった。 24週時の有害事象発現割合について、icotrokinra群(57%[359/632例])はデュークラバシチニブ群(65%[411/634例])より低かった。

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がん治療関連心機能障害のリスク予測モデル、性能や外部検証が不十分/BMJ

 オランダ・アムステルダム大学のClara Gomes氏らは、がん治療関連心機能障害(CTRCD)のリスクを予測するために開発または検証されたすべての予測モデルのシステマティックレビューと、性能の定量的解析を目的としたメタ解析を行った。その結果、現存するCTRCD予測モデルは臨床応用に先立ち、さらなるエビデンスの蓄積が必要であることを報告した。現存するモデルについては、重要な性能指標に関する報告が不足し外部検証も限られていたことが正確な評価を妨げており、Heart Failure Association-International Cardio-Oncology Society(HFA-ICOS)ツールは、とくに軽度CTRCDに関する性能が不十分であった。著者は、「今後は、さまざまながん種を対象とする大規模なクラスター化データセットを用い、既存モデルの検証と更新を進め、その性能、汎用性および臨床的有用性を高めるべきである」とまとめている。BMJ誌2025年9月23日号掲載の報告。CTRCDのリスク予測モデルを開発または検証した56件の研究について解析 研究グループは、Medline(Ovid)、Embase(Ovid)、およびCochrane Central Register of Controlled Trialsを用い、データベース開始から2024年8月23日までに発表された文献を検索した。 適格基準は、がん患者またはがん生存者におけるCTRCDリスクを推定するための予測モデルの開発・検証・更新を報告している論文で、欧州心臓病学会(ESC)のcardio-oncologyガイドラインに記載されているCTRCDのいずれかを含み、CTRCDが主要アウトカムもしくは複合心血管アウトカムの一部であり、対象集団が化学療法または分子標的治療(チロシンキナーゼ阻害薬、モノクローナル抗体、免疫療法など)を受けた患者で、予測モデルは少なくとも2つ以上の予測因子を含み、予測モデルの使用予定時期が全身性抗がん治療の開始前または治療後のサバイバー期であることであった。適格基準を満たせば、非がん患者向けに開発された心血管リスク予測モデルの外部検証研究も対象とした。放射線誘発性心毒性に関する研究は除外した。 2人の評価者がそれぞれ研究のスクリーニングとデータ抽出を行い、Prediction model Risk Of Bias ASsessment Tool(PROBAST)を用いてバイアスリスクを評価した。予測モデルの性能はランダム効果メタ解析で統合した。 1万935件の論文がスクリーニングされ、適格基準を満たした56件の研究が解析対象となった。このうち29件が1つ以上の予測モデルを開発し、20件が外部検証を実施し、7件が開発と外部検証の両方を実施していた。ほぼすべてのモデルでバイアスリスク高、HFA-ICOSツールは軽度CTRCDを過小評価 最終的にがん患者またはがん生存者におけるCTRCDリスク予測モデルとして51件が特定された。67%(34/51件)は成人データから開発され、その多くは乳がん(20/34件、59%)または血液悪性腫瘍(6/34件、18%)を対象とし、治療前リスクの予測を目的としていた(33/34件、97%)。一方、小児・青年・若年成人(39歳以下)を対象としたモデルでは、大半(16/17件、94%)ががん生存者を研究対象とし、血液悪性腫瘍や胚細胞腫瘍を含む多様ながん種(14/17件、82%)が含まれた。 開発モデル51件のうち25%(13件)、外部検証44件のうち14%(6件)でのみ性能指標や較正指標が報告されていた。ほぼすべてのモデルで、バイアスリスクが高かった。 開発モデル51件中12件(24%)(若年群4/17件[24%]、成人群8/34件[24%])が開発モデルに対して外部検証を受けていた。最も多く検証されたのはHFA-ICOSツール(11回)であり、主にHER2標的療法を受ける乳がん患者(5/11件、45%)で使用されていた。このツールは、すべての外部検証でリスクを過小評価する傾向を示し、とくに軽度CTRCDが多く報告された研究では、観察されたイベント発生率が予測リスクを上回っていた。抗HER2治療を受けた乳がん患者における統合C統計量は0.60(95%信頼区間:0.52~0.68)であった。同集団にて観察されたイベント発生率は、低リスク群で12%(予測値<2%)、中リスク群で15%(2~9%)、高リスク群で25%(10~19%)、超高リスク群で41%(≧20%)であった。

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シロシビンによるうつ病改善効果、5年後も持続

 「シロシビン」の大うつ病性障害(以下、うつ病)に対する効果は、最長で5年間持続する可能性のあることが、新たな研究で示唆された。シロシビンはマジックマッシュルームと呼ばれるキノコに含まれている幻覚作用のある成分である。初期のシロシビンに関する臨床試験を追跡調査したこの研究では、試験参加者の3分の2が試験から5年が経過した後もうつ病の完全寛解を保っていたことが判明したという。米オハイオ州立大学コロンバス校幻覚剤研究教育センター所長のAlan Davis氏らによるこの研究の詳細は、「Journal of Psychedelic Studies」に9月4日掲載された。 Davis氏は、「5年が経過した今でも、ほとんどの人はこの治療法が安全で、有意義かつ重要で、生活の改善を促すものだと見なしている」と語っている。同氏はまた、「治療後に起こり得ることを詳細に理解することは重要だ。結果がどうであれ、このような臨床試験に参加したことで彼らの人生が改善されたことを示していると思う」と同大学のニュースリリースの中で述べている。 米国立補完統合衛生センターによると、シロシビンはアルコール依存症、不安症、うつ病の治療に有効である可能性のあることが、研究で示されている。Davis氏らが2021年に発表した臨床試験では、24人のうつ病患者が心理療法との併用でシロシビンの2回投与を受け、症状が有意に軽減したことが確認された。 今回の研究では、これら24人のうち、試験終了後5年間の追跡調査に同意し、精神的・感情的健康状態を測定する一連のオンラインアンケートに回答した18人が対象とされた。主要評価項目は、ベースラインから5年後の追跡調査時までの臨床医が評価した抑うつ症状のスコアの変化であった。 その結果、追跡調査に参加しなかった6人は寛解していないと仮定した上で解析に含めても、67%の参加者が治療後少なくとも5年間は寛解状態を維持していることが明らかになった。また、不安症状や日常生活の機能障害が改善していることも示された。さらに、参加者に対するインタビューでは、心の持ち方、感情面の健康、人間関係における前向きな変化が長期にわたり続いていることが報告された。 研究グループは、追跡調査時の参加者の健康状態は、5年前のシロシビンによる治療だけで得られたものではないと指摘している。なぜなら、追跡調査参加者のうち、臨床試験以降もうつ病関連の治療を受けていなかったのはわずか3人であり、残りの参加者は、抗うつ薬を使用したり、心理療法を受けたり、幻覚剤を服用したりしていたからだ。しかし、参加者へのインタビューでは、この試験に参加したことで、参加者はうつ病を状況に応じて対処することが可能な疾患として認識するようになったことが示唆された。 Davis氏は、「参加者は、うつ病が再発するかどうかにかかわらず、全体的にポジティブな感情や熱意を抱く能力が高まったと感じていた。多くの人が、こうした変化が抑うつ気分に見舞われた際の対処法に大きな変化をもたらしたと報告していた」と話している。 ただしDavis氏は、本研究はサンプル数が少なく、参加者の経験に基づいて結論を導き出すのは困難であることを認めている。それでも同氏は、「この結果は、うつ病に対するシロシビン療法の潜在的かつ永続的な好影響を垣間見せてくれる」と述べている。

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喫煙は2型糖尿病のリスクを高める

 喫煙者は2型糖尿病のリスクが高く、特に糖尿病になりやすい遺伝的背景がある場合には、喫煙のためにリスクがより高くなることを示すデータが報告された。カロリンスカ研究所(スウェーデン)のEmmy Keysendal氏らが、欧州糖尿病学会年次総会(EASD2025、9月15~19日、オーストリア・ウィーン)で発表した。Keysendal氏は、「インスリン作用不足の主因がインスリン抵抗性の場合と分泌不全の場合、および、肥満や加齢が関与している場合のいずれにおいても、喫煙が2型糖尿病のリスクを高めることは明らかだ」と語っている。 この研究では、ノルウェーとスウェーデンで実施された2件の研究のデータを統合して解析が行われた。対象は2型糖尿病群3,325人と糖尿病でない対照群3,897人であり、前者は、インスリン分泌不全型糖尿病(495人)、インスリン抵抗性型糖尿病(477人)、肥満に伴う軽度の糖尿病(肥満関連糖尿病〔693人〕)、加齢に伴う軽度の糖尿病(高齢者糖尿病〔1,660人〕)という4タイプに分類された。 解析の結果、喫煙歴のある人(現喫煙者および元喫煙者)は、喫煙歴のない人よりも前記4種類のタイプ全ての糖尿病リスクが高く、特にインスリン抵抗性型糖尿病との関連が強固だった。具体的には、インスリン分泌不全型糖尿病は喫煙によりリスクが20%上昇し、肥満関連糖尿病は29%、高齢者糖尿病は27%のリスク上昇であったのに対して、インスリン抵抗性型糖尿病に関しては2倍以上(2.15倍)のリスク上昇が認められた。また、インスリン抵抗性型糖尿病の3分の1以上は、喫煙が発症に関与していると考えられた。その他の3タイプでは、発症に喫煙の関与が考えられる割合は15%未満だった。 さらに、ヘビースモーカー(タバコを1日20本以上、15年間以上吸っていることで定義)ではより関連が顕著であり、インスリン抵抗性型糖尿病は喫煙によって2.35倍にリスクが高まり、インスリン分泌不全型糖尿病は52%、肥満関連糖尿病は57%、高齢者糖尿病は45%のリスク上昇が認められた。このほかに、遺伝的にインスリン分泌が低下しやすい体質の人でヘビースモーカーの場合は、喫煙によりインスリン抵抗性型糖尿病のリスクが3.52倍に高まることも示された。 これらの結果についてKeysendal氏は、「われわれの研究結果は2型糖尿病の予防における禁煙の重要性を強調するものである。喫煙と最も強い関連性が認められた糖尿病のタイプは、インスリン抵抗性を特徴とするタイプだった。これは、喫煙がインスリンに対する体の反応を低下させることで、糖尿病の一因となり得ることを示唆している」と述べている。また、「禁煙によって糖尿病リスクをより大きく抑制することのできる個人を特定する際に、遺伝的背景に関する情報が役立つと考えられる」と付け加えている。 なお、学会発表された研究結果は、査読を受けて医学誌に掲載されるまでは一般に予備的なものと見なされる。

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マンモグラフィの画像からAIモデルが心血管リスクを評価

 定期的なマンモグラフィ検査は、乳がんの早期発見に有効であるだけでなく、女性の心臓病リスクを正確に予測するのにも役立つ可能性があるようだ。マンモグラフィの画像から心血管疾患(CVD)リスクを予測する人工知能(AI)モデルの予測性能は、米国心臓協会(AHA)や他の専門家グループが開発したCVDイベントリスク予測方程式(Predicting Risk of Cardiovascular Disease Events;PREVENT)の予測性能と同等であることが、新たな研究で示された。ジョージ国際保健研究所(オーストラリア)で心血管プログラムのグローバルディレクターを務めているClare Arnott氏らによるこの研究結果は、「Heart」に9月16日掲載された。 Arnott氏は、「多くの女性は、心血管リスクが高まる人生の段階ですでにマンモグラフィ検査を受けている。心血管リスクのスクリーニングとマンモグラフィを用いた乳がん検診を統合することで、乳がんとCVDという二つの主要な疾患と死亡の原因を特定し、予防できる可能性が高まる」と述べている。 研究グループによると、CVDは世界中の女性の死因として最も多く、CVDによる死亡は全死亡数の約3分の1に当たる年間約900万人を占めるという。マンモグラフィの画像に映し出される乳房動脈石灰化や乳腺濃度は、心血管リスクと関連することが知られている。このことを踏まえてArnott氏らは、日常的に撮影されるマンモグラフィ画像から心血管リスクを予測する深層学習モデルを開発した。このAIモデルは、女性のマンモグラフィ画像と年齢のみを用いて心血管リスクを評価するもので、医師が血圧やコレステロール値、血糖値などの情報を追加で入力する必要はない。  本研究では、オーストラリアのビクトリア州に住む4万9,196人の女性の定期的なマンモグラフィ検査の画像を用いて、このAIモデルの予測性能を従来のリスク予測モデル(ニュージーランドのPREDICTツール、AHAのPREVENT方程式など)と比較した。 中央値8.8年間の追跡期間中に、3,392人の女性に心筋梗塞や脳卒中、心不全、冠動脈疾患などの心血管イベントが発生していた。解析の結果、マンモグラフィ画像と年齢のみを用いたAIモデルの予測性能(C統計量0.72)は、PREDICTやPREVENT方程式による予想性能とほぼ同程度であることが明らかになった。C統計量が0.72とは、予測モデルが72%の確率でリスクが高い人と低い人を正しく識別できることを意味する。 Arnott氏は、「われわれの開発したAIモデルは、マンモグラフィ画像のさまざまな特徴と年齢だけを組み合わせた初めてのモデルだ。このアプローチの主な利点は、追加の病歴聴取や医療記録データを必要としないため、実装に必要なリソースが少なくて済むにもかかわらず、非常に正確であることだ」と述べている。 研究グループによると、このAIモデルは特に、すでに効果的な乳がん検診プログラムを実施している国の女性にベネフィットをもたらす可能性があるという。論文の筆頭著者であるジョージ国際保健研究所のJennifer Barraclough氏は、「本研究では、この革新的な新しいスクリーニングツールの可能性を明らかにした。今後は、さらに多様な集団でこのモデルを検証し、臨床への導入にあたり障壁となり得るものを理解していきたい」と同研究所のニュースリリースの中で述べている。

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心不全はないが左室駆出率が軽度低下した急性心筋梗塞患者にβ遮断薬は有効(解説:佐田政隆氏)

 急性心筋梗塞後の患者で、左室駆出率が40%未満の場合にβ遮断薬が有効であることは議論の余地がない。一方、左室駆出率が40%以上で心不全がない急性心筋梗塞にβ遮断薬が有効であるかどうかは、今までほとんどRCTが行われてこなかった。 日本で行われて2018年にPLoS Oneに報告されたCAPITAL-RCT試験ではβ遮断薬の有効性は示されなかった。デンマークとノルウェーで行われたBETAMI-DANBLOCK試験が2025年8月30日のNEJM誌に報告されたが、β遮断薬は総死亡と主要心血管イベントを減少させた。一方、同日、同じNEJM誌にスペインとイタリアで行われたREBOOT試験の結果が報告されたが、総死亡、再梗塞、心不全入院にβ遮断薬は有効性を示さなかった。上記の4試験は、「左室駆出率が40%以上で心不全がない急性心筋梗塞」を対象に行われたが、その中の「左室駆出率が軽度低下した」サブグループの解析は、対象患者数が少なくて、個々の試験では統計的検定を行うに至らなかった。そこで、本研究では4研究のメタ解析を行った。 結果としては、心不全徴候がなく、左室駆出率が軽度低下(40~49%)した急性心筋梗塞患者において、β遮断薬は、総死亡、再梗塞、心不全を減少させることが明らかとなった。急性心筋梗塞後、左室駆出率が40%未満だけでなく、40~49%でもβ遮断薬投与が推奨されることになると思われる。 ただし、急性心筋梗塞後、とくに早期に再灌流療法が成功した場合には、急性期に低下していた左室壁運動が回復期に著明に改善することをしばしば目にする。上記の4試験では、急性心筋梗塞後14日以内に割り付けがなされているが、発症後何日目の左室駆出率をもとにしているかが大きな問題であると思われる。1回の心エコー図検査などで判断するのではなく、個々の症例で心機能の変化や残存狭窄の有無などを参考に、β遮断薬の適応を注意深く検討すべきであると考える。

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英語論文のさらなる探索サポートツール【タイパ時代のAI英語革命】第9回

英語論文のさらなる探索サポートツールこれまで、リサーチクエスチョンや論文検索の方法について説明してきましたが、今回はさらに一歩進んだ「医学英語論文に関連するAIツール」をご紹介します。とくに、先週までのさまざまな方法を使って選定した論文を「さらにどう活用するか?」「その関連文献をどう深掘りしていくか?」という課題に対して、視覚的・直感的なアプローチを可能にしてくれるのが、以下で紹介するAIツールです。これらのツールを使えば、「英語を読む」より先に「見る」ことでハードルがぐっと下がり、英語論文への理解もよりスムーズに進められるようになるはずです。1. ResearchRabbit:論文の関連性を視覚的に評価する概要と特徴英語論文の検索は「タイトルを見てもよくわからない」「アブストラクトを読むのが大変」など、最初の一歩のハードルが高いと感じる方も多いかもしれません。また、「楽しく論文検索をしたい」という方にも、ResearchRabbit(リサーチ・ラビット)は良いツールです。ResearchRabbitは、英語論文を探索するうえで、とくに「次に何を読むべきか」を考えるときに大きな助けとなるツールです。従来の論文検索では、キーワードを入力して一覧表示された文献を一つひとつクリックしていく必要がありましたが、ResearchRabbitでは論文同士のつながりを視覚的に「見える化」してくれる点が最大の特徴です。類似の機能を持つAIツールは他にも存在しますが、現時点ではResearchRabbitが最も高機能なツールといえるでしょう。しかも、現在(2025年9月時点)は、すべての機能が無料で利用可能です。使い方このツールの魅力は、視覚的に研究の流れを把握できる点にあります。ウェブサイトや論文情報は英語対応のみですが、操作自体はそこまで複雑ではありません。まず、サイト(https://www.researchrabbit.ai/)から、アカウントを作成します。ログイン後、「New Collection」を選択して、好きな名前のフォルダー(collection)を作成します。下の画像では、一例で「1」というフォルダーを作ってみました。そしてAdd Papersをクリックします。画像を拡大するまずは、気になる1本の論文を入力します(タイトル、DOI、PubMed IDなどが検索利用可能です)。すると、その論文を中心として、関連文献が下のネットワーク図のように視覚的に表示されます。画像を拡大するこの図では、各論文が「点」として示され、点と点を結ぶ「線」が論文間の関係性を表します。その論文がどの文献を引用しているか、またはどの文献に引用されているかといった情報が一目でわかります。このネットワーク図の優れている点は、マウスとクリック操作で自由に動かし、特定の論文をクリックすると、アブストラクトの表示や原文へのリンクにすぐアクセスできることです。さらに、同じ著者の他の論文著者間の関係性(共同研究など)といった情報まで直感的に探索できます。たとえば、ある論文の周囲にたくさんの線でつながっている文献があれば、それはその分野で注目されている中核的な論文である可能性があります。また、最近の論文が急に増えている場合には、「この研究分野は今、盛り上がっているのだな」といった研究トレンドを感じ取ることも可能です。唯一気になる点としては、使える機能が非常に多く自由度が高い分、操作に迷うこともあるかもしれません。また、クリックを繰り返していくと次々と新しい情報が表示されるため、慣れるまで時間がかかる可能性があります。2. Connected Papers:とにかく簡単! ログインなしで論文マップが見えるツール概要と特徴ResearchRabbitほどの多機能さは求めないけれど、「もっと気軽に」「もっとシンプルに」英語論文を探索したい。そんな方にぴったりなのが、Connected Papersというツールです。このツール最大の魅力は、ログイン不要ですぐに使えること、そして操作が非常にシンプルなことです。試しに使ってみる際には個人情報の入力も不要です。使い方サイト(https://www.connectedpapers.com/)からページに飛ぶと、下のような検索窓のあるページが表示されます。ここに、気になる論文のタイトル、またはDOIを入力して、「Build a graph」というボタンをクリックすれば完了です。すると、その論文のネットワーク図が即座に表示されます。画像を拡大する思い立ったらすぐに使えるというのは、忙しい医療従事者や、英語に苦手意識のある方にとって非常に大きなメリットです。表示されるのは、その論文と「内容的に近い論文たち」のネットワークです。ResearchRabbitと同様に、それぞれの論文が「点」としてマップ上に配置され、距離が近いほど関係性が強いことを示しています。他にも、引用数が多いほど点が大きく表示色が濃いほど最近の論文といった情報も、視覚的に一瞬で把握できます。点をクリックすると、右側にその論文のタイトル、著者、アブストラクトなどが表示され、そのまま元論文のページへのリンクにもアクセスできます。論文タイトルをいちいち読む前に、「このあたりの文献は密につながっていそうだな」とか「この方向には新しい研究が多そうだ」といった感覚的な情報が図として目に飛び込んできます。英語に苦手意識がある方でも、研究の流れをつかむことができます。Connected Papersのもう1つの特徴として、検索結果画面の上部にある「Prior works(先行研究)」および「Derivative works(派生研究)」をクリックすることで、基礎研究から臨床応用への研究の時間的流れを視覚的に追うことができます。ただし、Connected Papersには無料版と有料版があり、無料版では一定時間内の使用回数に制限がある点にご注意ください。まとめ3週にわたり、英語論文や医学情報の検索に苦手意識がある方でも、効率よく調べ物ができるようになるためのAIツールを紹介してきました。これらは、単に英語の検索を簡単にしてくれるだけでなく、情報の質や信頼性のチェック関連文献の広がりの把握といった、「調べる力」そのものを強化するための支援ツールでもあります。以下に、過去3回で紹介した各ツールの要点をまとめました。【第7回で紹介】ChatGPT内のGPT機能(PubMed Buddy):PubMedと連携し、論文を検索・要約できるChatGPT内の特化型チャットボックス。ChatGPTを使った検索式作成:自然言語からPubMed用の精密な検索式を自動生成できるプロンプト活用法。【第8回で紹介】Elicit:自然言語の質問文から関連論文を抽出し、それぞれの要約や研究デザインを自動で整理してくれるリサーチツール。OpenEvidence:医療系の信頼性あるエビデンスを検索・比較できるヘルスケア特化型のチャットボックス。【今回紹介】ResearchRabbit:関連論文をネットワーク図化し、研究分野の詳細から全体の構造まで立体的に把握できるリサーチツール。Connected Papers:簡単操作で1つの論文から関連研究をネットワーク図化し、研究の展開も視覚的にたどることができるリサーチツール。これらのツールを活用すれば、英語に不安がある方でも、質の高い情報に効率よくアクセスできるようになります。次回からは、こうして得られた情報をどのように読み解き(reading)、どのように書き表すのか(writing)、そのAI活用方法を紹介していく予定です。

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第284回 自由診療クリニックで相次ぐ再生医療等安全性確保法がらみの事件(後編)  個人輸入のウイルスベクターがカルタヘナ法に抵触し治療中止、怪しげな遺伝子治療はこれで駆逐に向かうか?

高市新総裁誕生で社会保障政策はどうなる?こんにちは。医療ジャーナリストの萬田 桃です。医師や医療機関に起こった、あるいは医師や医療機関が起こした事件や、医療現場のフシギな出来事などについて、あれやこれや書いていきたいと思います。自民党に初の女性総裁が誕生しました。高市 早苗総裁はこのまま行けば、日本初の女性総理大臣に就任します。社会保障分野での目立った実績はありませんが、第3次安倍内閣で総務大臣をしていた2015年には、「新公立病院改革ガイドライン」の策定に関与し、地域医療構想に沿った公立病院の病床機能分化・連携強化を推し進めました。菅 義偉元首相と同様、病院経営や病院リストラに関しては一定の素養がある(石破 茂現首相はそうした素養ゼロ)とみられます。総裁選のマニフェストに「地域医療・福祉の持続・安定に向け、コスト高に応じた診療・介護報酬の見直しや人材育成支援を行います」と書いていることを踏まえると、苦境に立つ医療機関(とくに病院)経営を考慮して、来年の診療報酬改定にはそれなりの追い風となる気もしますが、一方で、病院再編に向けては大ナタを振るうかもしれません。とは言え、社会保障財源不足の状況は変わりません。また、連立政権の枠組みも不安定で、法案成立にも相当苦労するでしょう(「新たな地域医療構想」を定めた医療法改正案はまだ成立していません)。総理大臣就任後の社会保障政策を注視したいと思います。さて、今回も前回に引き続き、都内のクリニックで発覚した、再生医療等安全性確保法がらみの事件について書いてみたいと思います。こちらは、同法に加えて遺伝子改変した動植物が拡散することを防ぐ「遺伝子組換え生物等の使用等の規制による生物の多様性の確保に関する法律(カルタヘナ法)」にも抵触したケースでした。中国から個人輸入した未承認の医薬品を進行・末期がんの患者に対し自由診療で使用8月22日付の朝日新聞等の報道によると、厚生労働省と環境省は同日、医療法人社団DAP・北青山D.CLINIC(東京都渋谷区)の阿保 義久院長に対し、カルタヘナ法に基づく措置命令を下し、手続きを経ていない製剤の適切な廃棄などを命じました。カルタヘナ法に基づく自由診療への措置命令は初めてとのことです。同クリニックは「CDC6shRNA治療」と称して、中国から個人輸入した未承認の医薬品を進行・末期がんの患者に対し自由診療で使用していました。「CDC6shRNA治療」はがん細胞の無限増殖を促すタンパク質であるCDC6を標的とした遺伝子治療で、CDC6に対応するshRNAをレンチウイルスベクターを使ってがん細胞に送達し、CDC6の発現をノックダウンするというもの。ウイルスベクターを用いる治療法のため、カルタヘナ法に基づく届け出が必要にもかかわらず、届け出が行われていませんでした。 遺伝子治療は、昨年改正された再生医療等安全性確保法で新たに規制対象に含まれることになりました(施行は2025年5月31日)。改正前は「細胞加工物」を用いる治療が規制対象であり、体内で直接遺伝子の導入・改変を行う治療法(核酸やウイルスベクター等を用いたもの)は対象外でした。しかし、多種多様、有象無象の遺伝子治療が自由診療の医療機関などで広がりを見せていることを背景に、安全性・信頼性を担保するために、新たに規制対象となりました。同クリニックは改正再生医療等安全性確保法に則った届け出の準備を進める過程で、「CDC6shRNA治療」がカルタヘナ法に基づいた承認も必要だと認識し、厚労省に相談したことでカルタヘナ法に違反した状態だったことが判明、今回の措置命令となりました。遺伝子組換え生物等を取り扱う際に、生物多様性への悪影響を未然に防止するために規制措置を講じることを目的としたカルタヘナ法カルタヘナ法は、遺伝子組換え生物等を取り扱う際に、生物多様性への悪影響を未然に防止するために規制措置を講じることを目的とした法律です。バイオセーフティに関する国際合意「カルタヘナ議定書」に基づいて2004年に施行されました。医療分野に限らず、農業分野、食品分野など遺伝子組換え生物を扱うあらゆる分野が対象となります。遺伝子治療を実施する際は、遺伝子組換え生物ごとに第一種使用(環境中への拡散を防止しないで行う使用等)、第二種使用(環境中への拡散を防止しつつ行う使用等)の認定を受け、厚生労働省への申請および承認が必要となります。今回のレンチウイルスを用いたin vivo(患者体内)の遺伝子治療は第一種使用に該当し、同法の規制対象だったわけですが、用いたウイルスは「複製能力を持たず自然条件下で組み換えを起こすことは極めて低いこと」等の理由で、同クリニックは規制対象外だと判断していたとのことです。患者への同意文書には「がん細胞に特異的に発生するCDC6というたんぱくを消去するための遺伝子を投与する」と記載 各紙報道によれば、同クリニックでは、この「CDC6shRNA治療」を2009年以降、末期がん患者等3,000人以上に提供していました。患者への同意文書には「がん細胞に特異的に発生するCDC6というたんぱくを消去するための遺伝子を投与する」と記載、治療は1週間に1〜2回の頻度で、9月3日付の日経バイオテクの報道によれば、「料金は1回当たり約30万円〜80万円」だったそうです。ちなみに、現在、「CDC6shRNA治療」が保険適用されている国はどこにもなく、臨床試験にも至っていません。国内では、がん患者などを対象に、科学的根拠が十分ではない遺伝子治療が、全額患者の自費負担になる自由診療として多く実施されています。実際、この「CDC6shRNA治療」も、インターネットで検索すると北青山D.CLINIC以外にも実施していそうなところがいくつか出てきます。こうした医療機関においても、仮にウイルスベクターを用いているとすれば、すぐにでも再生医療等安全性確保法とカルタヘナ法に則った対応が必要になります。北青山D.CLINICのホームページに掲載された「遺伝子治療の現況と経緯」と題する報告には、「遺伝子治療の一時停止」を詫びるとともに、「本治療の早期再開が必要な患者さん方の期待に応えられるよう速やかに治療の再開を果たすべく再生医療等安全性確保法及びカルタヘナ法の手続きに急ぎ着手しております。同法の申請手続きにおいて、行政府の承認、許可を得るのに相応の時間を要すると聞いておりますが、可及的速やかに治療の再開が果たせるように尽力いたします」と書かれています。しかし、現実問題としてその再開は難しそうです。遺伝子治療がダメでもエクソソーム療法が、規制当局と医療機関のイタチごっこはまだまだ続く改正された再生医療等安全性確保法では、核酸等を用いる医療技術は最も高いリスクが想定される「第一種再生医療等技術」に分類されました。これによって、適用対象の治療を提供するには、医療機関が第一種再生医療等提供計画を作成し、特定認定再生医療等委員会を経た上で、厚生労働大臣へ計画を提出。厚生科学審議会(再生医療等評価部会)への諮問を経て、承認されることが必要です。さらに、医療機関が国内外の施設に製剤の製造を委託するには、特定細胞加工物等製造施設を届け出た上で、医薬品医療機器総合機構の調査を経て、許可や認定を受けなければなりません。今回のケースでは、製造元の中国企業の製造施設を届け出て調査を受ける必要が出てきます。9月8日付の日経バイオテクはこうした手続きと承認に至るまでのハードルの高さを指摘、「『事実上、きちんとしたエビデンスが蓄積された提供計画でないと厚生科学審議会は通らないと見られる。また、PMDAの調査もハードルは高い』と厚労省の関係者は指摘します」と書いています。というわけで、エビデンスが希薄にもかかわらず患者から暴利を貪る怪しげな遺伝子治療は、日本においては実質的に駆逐に向かいそうです。しかし、再生医療に詳しい知人の記者は、「まだまだ抜け道がある。その一つがエクソソーム療法だ」と話します。「第189回 エクソソーム療法で死亡事故?日本再生医療学会が規制を求める中、真偽不明の“噂”が拡散し再生医療業界混乱中」でも書いたように、日本では細胞培養上清液やエクソソームは細胞断片であり、細胞には当たらないと整理されており、再生医療等安全性確保法の対象外となっています。インターネットで検索するとエクソソームを用いたがん治療を提供している自由診療の医療機関がたくさんヒットします。怪しげながん治療法を提供している医療機関の中には、法律のハードルが高くなった遺伝子治療からエクソソーム療法に鞍替えするところも多数出てくるでしょう。前回書いた「一般社団法人」の問題とあわせて、自由診療の医療機関で提供される怪しげな治療法を巡っては、規制当局と医療機関のイタチごっこはまだまだ続きそうです。

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抜管直後の「少量飲水」の効果と安全性【論文から学ぶ看護の新常識】第34回

抜管直後の「少量飲水」の効果と安全性抜管直後から「少量ずつ飲水」することの効果と安全性を検証したランダム化比較試験が行われ、「抜管直後の少量飲水は口渇と咽頭不快感を和らげる効果があり、有害事象は増加しない」ことが示唆された。Sarka Sedlackova氏らの研究で、Journal of Critical Care誌オンライン版2025年8月7日号に掲載の報告。抜管直後の「少量飲水」vs.経口水分摂取の遅延:ランダム化比較試験研究チームは、抜管後すぐに経口で水分を「少量ずつ摂取」することが、口渇と不快感を軽減し、集中治療の現場において安全であるかどうかを評価することを目的に、単施設ランダム化比較試験を行った。抜管基準を満たしたICU患者160例を、水分摂取遅延群(抜管2時間後から水分摂取を開始)と、即時少量飲水群(2時間かけて最大3mL/kgを摂取)のいずれかに1:1でランダムに割り付けた。口渇、不快感、および有害事象(吐き気、嘔吐、誤嚥)を、0分、5分、30分、60分、90分、120分後に評価した。主な結果は以下の通り。120分時点では、両群ともに80例中64例(80%、95%信頼区間[CI]:70~88%)が口渇を訴え、群間差は0.0%であった(95%CI:-12%~12%、p=1.000)。120分後までの口渇の緩和は、少量飲水群の11.3%(95%CI:5~20%)に対し、水分摂取遅延群では1.3%(95%CI:0~7%)であり、10%の有意な差が認められた(95%CI:1~19%、p=0.0338)。90分時点での咽頭の不快感は、少量飲水群の23.8%(95%CI:15~35%)に対し、水分摂取遅延群では42.5%(95%CI:32~54%)であり、-18.7%の有意な差が認められた(95%CI:-34%~-3%、p=0.0118)。有害事象(吐き気、嘔吐)はまれであり、両群で同等であった;誤嚥はどちらの群でも観察されなかった。抜管直後からの少量飲水は、安全であり、喉の渇きを和らげ、ICU患者の不快感を軽減し、有害事象を増加させることなく行えると考えられる。皆さんの施設では抜管後いつから飲水が可能になりますか?施設によっては厳密な基準はなく、「翌日から飲水可能」といった大まかなスケジュールで運用されているかもしれません。でもこれって実はエビデンスが乏しく、慣習的に決められていることが多いです。「患者さんは喉が渇いてないかな?」と気にかかりながらも、「でも吐かないかな?誤嚥して肺炎になったらどうしよう」と思う葛藤を、皆さん一度は抱いたことがあるのではないでしょうか?今回は、「抜管2時間後から飲水可能」vs.「抜管直後からの少量飲水(ちょびちょび飲み:シッピング)」を比較した研究を紹介します。研究の結果、2時間後の口渇感の有無自体には両群で差はありませんでした。しかし、口渇感と咽頭不快感の軽減については、「抜管直後からの少量飲水」群が有意に優れていました。さらに、吐き気、嘔吐、誤嚥などの有害事象の発生率は両群で同等であり、少量飲水によりリスクは増加しないことが示されました。これらの知見は、従来の画一的な2時間の絶飲食に疑問を投げかけ、より患者中心に不快感を低減するケアを考えるきっかけとなります。ただし、患者さんの不快感をとるために、無制限に飲水をしていいわけではありません。まず、この研究では一度の摂取量は5~10mL程度とごく少量で、2時間かけて最大3mL/kg(合計約200mL)を上限にする制限も設けられています。またリスクがある、上部消化管手術(食道、胃、十二指腸)、頭蓋外傷、または嚥下や意識に影響を与える神経学的障害がある患者は、事前に除外しています。あくまでも誤嚥や創部に水が入るリスクが低いと想定される患者さんに限定していることは覚えておきましょう。また実臨床で取り入れる場合には、飲水により胃内容物が溜まることでPONV(Postoperative Nausea And Vomiting:術後悪心・嘔吐)のリスクが増すため、女性、オピオイド使用、非喫煙者、乗り物酔いの既往がある患者さんでは注意が必要です。適切なリスク評価を行った上で、実施可能であれば、患者さんの不快感を減らす新たなアプローチの導入を検討してみてはいかがでしょうか。論文はこちらSedlackova S, et al. J Crit Care. 2025 Aug 7. [Epub ahead of print]

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減塩には甘じょっぱい味は向かない/京都府立医科大

 高血圧の管理では、塩分摂取量の削減は重要である。人間は塩分を好むという前提に基づいているが、高濃度の塩分に対し、嫌悪感も認識することが大切である。近年の研究では、慢性腎臓病(CKD)患者において味覚認識だけでなく、高塩分濃度への嫌悪感も変化していることが明らかにされた一方で、さまざまな味覚を組み合わせた場合の影響は依然として不明であった。そこで、京都府立医科大学大学院医学研究科腎臓内科学の奥野-尾関 奈津子氏らの研究グループは、甘味を加えることでCKD患者の塩分嫌悪に影響を与えるかどうかを研究した。その結果、甘味は健康成人とCKD患者の双方で高塩分への嫌悪感を低減することが判明した。この結果はScientific Reports誌電子版2025年7月7日号に掲載された。 研究グループは、健康成人100例とCKD患者66例を対象に、濃度の異なる塩化ナトリウム、スクロース、酒石酸、キニーネ塩酸塩を浸した濾紙を用いた味覚試験を実施した。嫌悪閾値は、不快と感じられる最低濃度と定義し、甘味と塩味、酸味、苦味の組み合わせにおける嫌悪閾値を測定した。  主な結果は以下のとおり。・塩味、酸味、苦味に対する嫌悪感は濃度とともに増加した。・高塩分濃度に対する嫌悪を示さなかったのは健康成人が44%、CKD患者が79%だった。・甘味を加えると塩味嫌悪が有意に減少し、高塩分濃度に対する嫌悪を示さなかったのは健康成人が52%、CKD患者が92.4%だった。・甘味は酸味に対する嫌悪感をやや軽減したが、いずれの群においても苦味には影響しなかった。・甘味は健康成人とCKD患者の双方において、高塩分濃度への嫌悪感を低減した。 著者らは、「塩分摂取を制限するには、塩分含有量を減らすだけでなく、塩分嫌悪感を低下させる過剰な甘味も避けるべきである」と結論している。

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アルツハイマー病に伴うアジテーションに対するブレクスピプラゾール〜RCTメタ解析

 アジテーションは、苦痛を伴う神経精神症状であり、アルツハイマー病の約半数にみられる。また、アルツハイマー病に伴うアジテーションは、認知機能の低下を促進し、介護者の負担を増大させる一因となっている。セロトニンおよびドーパミンを調節するブレクスピプラゾールは、アルツハイマー病に伴うアジテーションに対する有効性が示されている薬剤であるが、高齢者における有効性、安全性、適切な使用については、依然として不確実な点が残っている。ブラジル・Federal University of PernambucoのAnderson Matheus Pereira da Silva氏らは、アルツハイマー病高齢者のアジテーションに対するブレクスピプラゾールの有効性および安全性を評価するため、ランダム化比較試験(RCT)のシステマティックレビューおよびメタ解析を実施した。CNS Drugs誌オンライン版2025年8月31日号の報告。 本研究は、PRISMA 2020ガイドラインおよびコクランハンドブックに従い、実施した。分析対象には、臨床的にアルツハイマー病と診断された高齢者を対象に、ブレクスピプラゾール(0.5〜3mg/日)とプラセボを比較したRCTを組み入れた。主要アウトカムは、アジテーションの重症度、臨床的重症度、精神神経症状、有害事象とした。アジテーションの重症度、臨床的重症度、精神神経症状の評価には、それぞれCohen-Mansfield Agitation Inventory(CMAI)、臨床全般印象度-重症度(CGI-S)、Neuropsychiatric Inventory Questionnaire(NPI)を用いた。リスク比(RR)、平均差(MD)、95%信頼区間(CI)は、ランダム効果モデルを用いて統合した。ランダム効果メタ解析は、頻度主義モデルおよびベイズモデルver.4.3.0を用いて実施した。 主な結果は以下のとおり。・5件のRCT、1,770例を分析に含めた。・ブレクスピプラゾール治療は、CMAIのアジテーション(MD:-5.79、95%CI:-9.55〜-2.04、予測区間:-14.07〜-2.49)の減少、CGI-Sスコア(MD:-0.23、95%CI:-0.32〜-0.13、予測区間:-0.39〜-0.06)の改善との関連が認められた。・NPIスコアに有意な差は認められなかった。・錐体外路症状や日中の眠気などの有害事象は、ブレクスピプラゾール群でより多く発現したが、その範囲は広く、有意ではなかった。・メタ回帰分析では、用量または投与期間は、効果修飾因子として同定されなかった。 著者らは「ブレクスピプラゾールは、認知機能の悪化を伴わずに、アルツハイマー病に伴うアジテーションに対し、短期的に中程度の効果をもたらす可能性があるが、安全性に関するシグナルは依然として不明確な部分が残っている。しかし、予測区間には相当の不確実性があり、ブレクスピプラゾール使用は個別化され、綿密にモニタリングすべきであることが示唆された。今後の試験では、長期的なアウトカムや患者中心の指標を優先的に評価すべきである」と結論付けている。

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