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BMJ誌が「事前登録なし」を理由に却下した臨床試験のその後/BMJ

 臨床試験の事前登録は、研究の透明性を高め、出版バイアスや選択的な結果報告を防止するために不可欠な手続きとされる。医学雑誌編集者国際委員会(ICMJE)は、2005年7月、ICMJE加盟誌への論文の掲載資格を得るには、最初の参加者の登録時またはそれ以前に、承認された登録機関(WHO国際臨床試験登録プラットフォームの18の主要登録機関、ClinicalTrials.gov、UMIN臨床試験登録システムなど)に試験を登録することを義務付けているが、実際には順守が不十分な試験が散見されるという。スペイン・カタルーニャ国際大学のDavid Blanco氏らは、ICMJE承認の登録機関への「事前登録なし」を理由に、BMJ誌が却下した試験の多くが後に、高インパクトのジャーナルに「ICMJE勧告への準拠」を主張して(多くの場合、登録不備の開示なしに)掲載されている実態を明らかにした。BMJ誌2026年2月18日号掲載の報告。事前登録なしの可能性が低い6つの条件 研究グループは、ICMJEの定義に基づき臨床試験の結果を報告し、編集者により事前登録されていない可能性があると指摘されたBMJ誌投稿論文287件のうち239件(2019~23年)と、同期間に投稿されたすべての臨床試験の無作為抽出リストから選択したICMJE承認の登録機関に事前登録された239件の試験について調査した(筆頭著者は、スペイン・科学・イノベーション省の助成を受けている)。 ICMJE承認の登録機関への事前登録なしの可能性が低い条件として、以下の6つが挙げられた。 (1)より多い症例数(101~500例vs.1~100例、オッズ比[OR]:0.43[95%信頼区間[CI]:0.22~0.84]、p=0.01)、(2)責任著者がオセアニア出身(欧州出身者との比較、OR:0.35[95%CI:0.14~0.82]、p=0.02)、(3)著者数が多い(10人vs.5人、OR:0.71[95%CI:0.59~0.87]、p=0.004)、(4)臨床試験報告に関する統合基準(CONSORT)への言及(あるvs.ない、OR:0.22[95%CI:0.06~0.67]、p=0.03)、(5)より最近の投稿(2021~23年vs.2019~20年、OR:0.63[95%CI:0.42~0.95]、p<0.001)、(6)資金提供の有無(例:非営利の資金提供vs.資金提供なしまたは情報なし、OR:0.20[95%CI:0.09~0.41]、p<0.001)。 一方、責任著者がアジアに拠点を置いている場合では、事前登録なしの可能性が高かった(欧州を拠点とする著者との比較、OR:1.75[95%CI:1.07~2.89]、p=0.03)。事前登録なしの試験の88%がその後に公表 2019~21年に投稿され、ICMJE承認の登録機関に事前登録されていなかった176件の試験のうち、146件(83%)が事後登録を行い(遅延期間中央値193日)、23件(13%)が未登録のままで、7件(4%)はICMJEが承認していない登録機関に登録されていた。 多くの試験(155件[88%])がその後公表された。このうち138件(89%)はインパクトファクターを有するジャーナル(中央値5.39)に掲載され、96件(62%)はICMJE勧告の順守を表明するジャーナルに掲載された。 BMJ誌への初回投稿から公表までの期間中央値は12ヵ月であった。公表時に、登録不備を明示的に開示していたのは約6分の1のみだった。投稿時に事前登録について回答した72人の著者のうち、60人(83%)が誤って順守を主張していた。編集者、著者、登録機関の管理者に向けた提言 本研究の結果は、ICMJEの勧告を標榜するだけでは、事前登録の徹底には不十分であることを示唆している。著者は、「登録慣行と報告の透明性の向上のためには、編集審査の強化、登録基準の明確化、著者の意識改革が必要である」とし、編集者、著者、登録機関の管理者に向けた提言を行っている。 たとえば、ジャーナルが著者に求めるべき必須要件として、(1)登録機関への正確な提出日と承認日、(2)最初の参加者の登録日、(3)登録機関の名称と登録番号、(4)登録情報へのハイパーリンク、(5)ICMJE承認の登録機関への事前登録の有無を挙げ、「出版時には、これらの項目のすべてを、抄録と本文の両方に明記すべきである」としている。

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脂肪性肝疾患の診断基準、心代謝系・女性の飲酒量について決定/日本消化器病学会・日本肝臓学会

 日本消化器病学会と日本肝臓学会は、今年4月発刊予定の「MASLD診療ガイドライン」に先行し、国内で利用する脂肪性肝疾患(SLD)の診断基準を各会員に向けて公表した(2026年2月2日付)。 2023年9月、欧米3学会*が合同で、非アルコール性脂肪肝疾患(NAFLD)は代謝機能障害関連脂肪性肝疾患(MASLD)へ、非アルコール性脂肪性肝炎(NASH)は代謝機能障害関連脂肪肝炎(MASH)へと病名と分類法を変更。これを受け、両学会は2024年8月にNAFLD/NASHに代わる新たな分類法での日本語病名を公表していた。ただしこの時点では、心代謝系危険因子(cardiometabolic risk factor:CMRF)の基準と女性の飲酒量に関しては、わが国におけるメタボリック症候群ないしアルコール性肝障害の基準とは異なる部分があったため、CMRFの基準と女性の飲酒量に関する診断基準は明らかにされていなかった。*欧州肝臓学会(EASL)、米国肝臓病学会(AASLD)、ラテンアメリカ肝疾患研究協会(ALEH) MASLDなどのSLDに関する診断基準は以下のとおり。<心代謝系基準(cardiometabolic risk criteria)>1.肥満:BMI≧23kg/m2 or 腹囲>94cm(男)、>80cm(女)2.血糖:空腹時≧100mg/dL or 食後2時間≧140mg/dL or HbA1c≧5.7% or 2型糖尿病 or その治療3.血圧:収縮期≧130mmHg or 拡張期≧85mmHg or 降圧薬内服4.中性脂肪≧150mg/dL or 脂質異常症治療薬内服5.HDL≦40mg/dL(男)、≦50mg/dL(女)or 脂質異常症治療薬内服<MetALDの飲酒量(エタノール換算)>男:30~60g/日(210~420g/週)女:20~50g/日(140~350g/週) なお、MASLD診療ガイドラインの改訂点は、2026年4月16~18日に福井県と石川県で開催される第112回日本消化器病学会総会のパネルディスカッション16「MASLD診療ガイドライン」で11の演題が用意され、ガイドライン改訂の経緯、治療フローチャートの概念・定義、診断などが具体的に紹介される予定だ。

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減塩食品の普及が国民の心臓や脳を守る

 加工食品として流通しているパンやピザなどの塩分が減ったとしても、それに気づく人はいないかもしれない。しかし、人々の体は間違いなくその変化に反応するようだ。減塩食品の普及によって、国民の心臓病や脳卒中のリスクが低下した可能性を示唆する欧州発の2件の論文が、「Hypertension」に1月26日掲載された。 一つ目の論文はフランス国立公衆衛生局のClemence Grave氏らによるもので、パンに含まれる食塩を減らすことで、毎年約1,200人のフランス人の命が救われただろうと推測している。同国では2022年に、政府とパン製造業界との間で食塩含有量を減らすための自主的な協定が結ばれており、今回の研究ではその潜在的な影響が調査された。なお、パンは意外なほど食塩含有量が多く、特にバゲット(最も一般的なフランスパン)には、1日当たり推奨摂取量の約25%の食塩が含まれているという。 2023年までに同国で製造されるパンの大半は新しい基準を満たしており、その影響もあり、フランス国民の1日の食塩摂取量は約350mg減少したとのことだ。その結果、心臓関連死は年間約1,186人減少したと推定され、心臓病や脳卒中による入院の減少という変化も現れている。 論文の筆頭著者であるGrave氏は、「この減塩対策は、フランス国民にほとんど気づかれなかった。われわれの研究結果は、そのようなわずかな変化にもかかわらず、このような対策が公衆衛生に大きな影響を与える可能性のあることを示している」と総括。また、「このアプローチは、個人の行動変容に依存しないという点で特に力強い。個人の行動変容を引き起こしてそれを持続させることはしばしば困難だが、この手法であれば、より健康的な食環境が自然に創出される」と解説している。 二つ目の論文は英オックスフォード大学のLauren Bandy氏らによるもので、同国の減塩施策の推進によって、20年間で約10万件の心臓病と2万5,000件の脳卒中を予防できると予測している。同国では2024年までに、さまざまな加工食品に含まれている食塩を削減する数値目標を設定していた。この施策の対象食品には、パン、チーズ、肉、スナックなどの食料品84品目に加え、ハンバーガー、カレー、ピザなどのテイクアウト食品24品目が含まれている。 Bandy氏らの試算によると、この減塩施策が完全に達成された場合、英国民の1日当たりの食塩摂取量は平均6,100mgから4,900mgへと、約18%減少すると考えられ、その結果、前記のように心臓病や脳卒中の発症が大きく減る可能性があるという。論文の筆頭著者である同氏は、「ほかの国と同様に英国でも心血管疾患が主要な死亡原因である。英国の食品会社が塩分削減目標を完全に達成することにより、英国民は食習慣を変える必要もなく、心血管疾患と死亡リスクを大きく抑制でき、医療費を削減できるはずだ」と述べている。その上で同氏は、「食品業界は減塩に関してまだ多くの進歩を遂げる必要があることも明らかであり、改善の余地は大いにある」と付け加えている。

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脳卒中後のリハビリ、対側より同側の腕の訓練が有用?

 脳卒中後のリハビリテーション(以下、リハビリ)は、障害が大きい側の腕や脚の筋力や動作の回復に焦点を当てて行われるのが通常である。しかし、新たな研究で、比較的障害が少ない側の腕に焦点を当ててリハビリを行う方が、動作能力を大きく改善することが示された。米ペンシルベニア州立大学医学部神経リハビリ研究室のCandice Maenza氏らによるこの研究の詳細は、「JAMA Neurology」に2月2日掲載された。Maenza氏は、「障害が少ない側の腕を訓練することで、患者の機能はより改善した。これは、生活の質(QOL)の向上や、介護者の負担軽減につながる可能性がある。片側の腕に重度の麻痺がある人は、食事や着替えなど、日常生活の多くを『良い方の腕』に頼っているためだ」と述べている。 脳卒中は運動を司る脳の領域にダメージを与え、しばしば身体の片側に麻痺や筋力低下をもたらす。これまで、脳卒中後のリハビリでは、障害の程度が重度で機能低下が明らかな側の腕に焦点が置かれてきた。しかし研究グループによると、一見問題がないように見える側の腕も、実は機能が大きく低下している可能性があるという。 論文の上席著者であるペンシルベニア州立大学運動学・神経学分野のRobert Sainburg氏は、「患者は片手でほとんどのことを行おうとするが、それは大きな負担になる。その腕に脳卒中の影響が及ぶと、運動協調性が10〜25%低下する。これは、患者が日常生活をどこまで自力でこなせるか、どの程度介助が必要かに大きく影響する」と話している。 今回の研究では、脳梗塞の病変側とは反対側(対側)の上肢に中等度~重度の障害があり、病変側(同側)の腕にも運動障害がある慢性期脳卒中患者58人(平均年齢59歳、女性32%)を対象に、同側の腕を鍛えることで動作能力が改善するかどうかを検討した。対象者は、5週間、計15回にわたり同側の腕を集中的に訓練する群(同側訓練群、25人)と、従来通り対側の腕を訓練する群(対側訓練群、28人)にランダムに割り付けられた。同側訓練群には、VR(バーチャルリアリティ)を使ったゲームや軌跡をなぞるゲーム、実生活に近い指先トレーニングなどが行われた。 その結果、同側訓練群では介入により、同側の手で小物をつまむ・カードをひっくり返すなどの機能を測定するJebsen Taylor手機能テストにおいて、所要時間が平均5.87秒有意に短縮した(12%の改善に相当)。この改善は、治療直後だけでなく、3週間後および6カ月後も継続していた。一方、対側の腕を鍛えても、大きな改善は見られなかった。 Sainburg氏は、「われわれが行っているのは、これまで一度も実施されてこなかった種類のリハビリだ。障害が少ない側の手の機能を改善し、日常生活動作をより効率的にしようとする試みだ」と述べている。Maenza氏は、「患者は、ボタンを留めるなどの動作はできるものの、時間がかかり過ぎるため、結局は自力でやろうとする意欲を失うことがある。しかし、少し動作が速くなるだけで、自分でやってみようという気持ちが生まれる。これは患者本人だけでなく、配偶者や介護者の生活を大きく変える」と話す。 Sainburg氏は、「このターゲットを絞った介入により、患者はセラピストが『好循環』と呼ぶ状態に入る。機能が少し戻ることで使う頻度が高まり、それがさらなる改善につながるのだ」と話している。研究グループは今後、こうした訓練を従来のリハビリプログラムとどのように組み合わせるかを検討する予定だとしている。

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AI搭載聴診器による心不全、心房細動、弁膜症の診断を検討したプラグマティック・クラスターランダム化比較試験―AI搭載聴診器を実装しても使用されなければ効果はない(解説:名郷直樹氏)

 英国のプライマリ・ケア医を対象に、AI搭載聴診器(Eko DUO, Eko Health Inc, Emeryville, CA, USA)を支給し、トレーニングし、実際の臨床で使用するグループと従来の診療を行うグループを比較し、心不全の診断と診療のセッティングによる心不全診断の違いを1次アウトカムとしたプラグマティック・クラスターランダム化比較試験である。AI搭載聴診器はBluetoothでスマートフォンに接続され、AIによる分析がなされ、心疾患の診断がフィードバックされるようになっている。 結果は1次アウトカムである心不全診断の罹患率比は0.94(95%信頼区間[CI]:0.87~1.00)、2次アウトカムの心房細動、弁膜症でもそれぞれの相対危険は1.01(95%CI:0.94~1.10)、1.00(0.91~1.10)と診断の増加を認めていない。もう1つの1次アウトカムである地域ベースのクリニックと病院のセッティングの違いによる診断についても心疾患診断の増加は認められていない。 しかし、AI聴診器群での実際の患者への1ヵ月当たりの使用数であるが、支給1年後でも40%は使用しておらず、31回以上使用したのは6%にすぎなかった。この研究がプラグマティックと銘打っていることで言えば、AI搭載聴診器は実装しても現実にはあまり臨床現場で使われず、診断の向上をもたらさないことが示されたわけであるが、実際に使用された場合にどれほどの効果があるかをper-protocol analysesで見てみると、心不全で2.33(95%CI:1.28~4.26)、心房細動3.45(2.24~5.32)、弁膜症1.92(1.09~3.40)と診断の増加を認めている。 上記の結果の乖離に注目して、この研究の“interpretation”の“AI聴診器を日常のプライマリケアに「実装」しても、「実装」から12ヵ月後も心不全の診断率や地域ベースの診断率は有意に増加しない。ただAI聴診器の「使用」は、心不全、心房細動、心室頻拍(VHD)の検出率の有意な上昇と独立して関連する”という部分を読めば、なるほどそういうことかというわけである。 「実装」と「使用」の乖離、これは多くの臨床試験における一般的な問題である。薬を出してもちゃんと飲んでくれない、日常的に飲んでいる薬物などの臨床試験の論文も、この「実装」と「使用」の乖離に注目して読むことが、臨床医としては重要だろう。

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高血圧管理・治療ガイドライン2025(3):起立性高血圧【一目でわかる診療ビフォーアフター】Q161

高血圧管理・治療ガイドライン2025(3):起立性高血圧Q161近年注目され始めており、『高血圧管理・治療ガイドライン2025』でも取り上げられた高血圧の新しい表現型である起立性高血圧。その定義は?

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ESR1変異陽性HR+/HER2-乳がんへの経口SERD「イムルリオ錠200mg」【最新!DI情報】第58回

ESR1変異陽性HR+/HER2-乳がんへの経口SERD「イムルリオ錠200mg」今回は、抗エストロゲン剤/抗悪性腫瘍剤「イムルネストラントトシル酸塩(商品名:イムルリオ錠200mg、製造販売元:日本イーライリリー)」を紹介します。本剤は、経口投与が可能な選択的エストロゲン受容体分解薬(SERD)であり、乳がん患者の通院や投与に伴う身体的・時間的な負担の軽減が期待されています。<効能・効果>内分泌療法後に増悪したESR1遺伝子変異を有するホルモン受容体陽性かつHER2陰性の手術不能又は再発乳がんの適応で、2025年12月22日に製造販売承認を取得しました。<用法・用量>通常、成人にはイムルネストラントとして1日1回400mgを空腹時に経口投与します。なお、患者の状態により適宜減量します。<安全性>副作用として、下痢、疲労(いずれも10%以上)、悪心、嘔吐、便秘、腹痛、食欲減退、関節および筋骨格痛、頭痛、ほてり、ALT増加、AST増加(いずれも1~10%未満)、背部痛、静脈血栓症に関連する事象(肺塞栓症)(いずれも1%未満)、咳嗽、トリグリセリド増加(いずれも頻度不明)があります。本剤は生殖能力に有害な影響を及ぼす可能性があるため、妊娠する可能性のある女性に対し、本剤投与中および最終投与後1週間において避妊する必要性および適切な避妊法について説明する必要があります。また、男性に対しては、本剤投与中および最終投与後1週間においてバリア法(コンドーム)を用いて避妊する必要性について説明する必要があります。なお、妊婦または妊娠している可能性のある女性には投与禁忌です。<患者さんへの指導例>1.この薬は、選択的エストロゲン受容体分解薬(SERD)です。内分泌療法後のESR1遺伝子変異を有するホルモン受容体陽性/HER2陰性の乳がんに用いられます。2.エストロゲン受容体(ER)の分解を促進し、エストロゲンのERへの結合を阻害することにより乳がん細胞の増殖を抑えます。3.この薬は、食事とともに服用すると血中濃度が上昇することがあるので、本剤服用の1時間前から服用後2時間は食事を避けてください。4.妊婦または妊娠している可能性のある人はこの薬を使用することはできません。5.妊娠する可能性のある女性および男性は、この薬の投与期間中および最終投与後1週間は必ず避妊してください。<ここがポイント!>乳がんは、がん細胞内部に発現するホルモン受容体(HR)の発現と、がん細胞表面に発現するHER2タンパクの過剰発現またはHER2遺伝子の増幅の有無により、「HR陽性/HER2陰性」、「HR陽性/HER2陽性」、「HR陰性/HER2陽性」「トリプルネガティブ(HR陰性/HER2陰性)」の4つのサブタイプに分類されます。このうち、「HR陽性/HER2陰性」は、乳がん患者の約70%を占める最も頻度の高いサブタイプです。このタイプに対しては、ホルモン療法が標準治療となります。とくに閉経後の患者においては、術後の再発予防や転移例に対し、アンドロゲンからエストロゲンへの変換を阻害するアロマターゼ阻害薬などを用いた治療が広く行われています。しかし、アロマターゼ阻害薬による治療の経過中などに、エストロゲン受容体(ER)をコードするESR1遺伝子に変異が生じることがあります。この変異により、エストロゲンが存在しない状況でもERが恒常的に活性化し、アロマターゼ阻害薬に対する耐性を獲得します。その結果、がん細胞の増殖が抑制されず、再発や転移のリスクが高まります。イムルネストラントは、経口投与が可能な選択的エストロゲン受容体分解薬(Selective Estrogen Receptor Degrader:SERD)であり、ERの分解を促進することでがん細胞の増殖シグナルを遮断します。従来から使用されてきたSERDであるフルベストラントが筋肉注射製剤であるのに対し、本剤は経口製剤であるため、通院や投与に伴う身体的・時間的な負担の軽減が期待されます。ただし、本剤は食事の影響を受けやすく、食事と同時に服用すると血中濃度が上昇する可能性があるため、服用前1時間から服用後2時間は食事を避ける必要があります。内分泌療法歴のあるHR陽性/HER2陰性の局所進行または遠隔転移を有する乳がん患者を対象とした国際共同第III相臨床試験(EMBER-3試験)において、主要評価項目である無増悪生存期間(PFS)の中央値は、本剤単独投与群で5.55ヵ月(95%信頼区間[CI]:5.32~7.26)、治験担当医師が選択した治療(フルベストラントまたはエキセメスタン)単独投与群で5.52ヵ月(95%CI:4.60~5.62)であり、両群の間に統計学的に有意な差は認められませんでした(p=0.1158)。また、ESR1遺伝子変異陽性集団におけるPFSの中央値は、本剤投与群で5.49ヵ月(95%CI:3.91~7.39)、治験担当医師が選択した治療単独投与群で3.84ヵ月(95%CI:3.68~5.52)であり、本剤群で有意な延長が認められました(p=0.0008)。PFSの中央値には1.65ヵ月の改善が認められ、さらに本剤投与群は治験担当医師が選択した治療単独投与群に対して原疾患の増悪または死亡のリスクを38%減少させました(ハザード比:0.617、95%CI:0.464~0.821)。

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3月3日 耳の日【今日は何の日?】

【3月3日 耳の日】〔由来〕「3(み)月3(み)日」との語呂合わせ、数字の「3」が耳の形にみえること、電話の発明家で音声学と聾唖教育で活躍したグラハム・ベルの誕生日であることから、日本耳鼻咽喉科学会の提案により1956(昭和31)年に制定。同会では、都道府県ごとに難聴で悩んでいる方々の相談のほか、一般の方にも耳の病気や健康な耳の大切さの啓発活動を行っている。関連コンテンツ異物除去(10):外耳道異物(3)耳垢塞栓【一目でわかる診療ビフォーアフター】飲酒が加齢性難聴リスクに影響~日本人1万4千人のデータ軽微な難聴で認知症リスク上昇、APOE ε4保有者で顕著難聴への早期介入には難聴者への啓発が重要/日本耳鼻咽喉科頭頸部外科学会認知症予防、どのくらいの聴力低下から補聴器を使ったほうがよいか

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医師夫妻の年収最大化計画(前編)

FPとして、医師夫婦の方にお伝えしたいこと具体的にイメージしていただくために、ある医師夫婦のお悩みと家計相談の事例をご紹介します。ケース:年の差夫婦夫:加藤はじめ(45歳)消化器内科・民間病院医長(年収:手取り1,000万円)妻:加藤さゆり(32歳)麻酔科・大学病院医員(年収:手取り600万円)子:加藤りな(4歳)病院内の保育所を利用2人は妻さゆりさんの初期研修先の病院で知り合い、研修修了後に結婚。さゆりさんは大学病院の麻酔科に入局しましたが、予定外の妊娠で、入局初年度に第1子を出産、1年間の育児休業を取得。常勤として復帰しましたが、当直やオンコールは免除されています。今の悩みもう1人子供が欲しいが、今でも夫婦とも時間的にギリギリの生活で両立する自信がない。夫婦とも両親は遠方に住んでいるためサポートを受けるのは難しい。妻は非常勤への転換を考えている。2人目の出産を考えていらっしゃるんですね。そうなんですが、今の職場はギスギスして居づらい雰囲気があるんです。当直やオンコールが免除されているせいもあって周囲の目が厳しくて…。2人目を考えるなら、いっそ非常勤になったほうがいいかなとも考えています。私は妻が望むなら非常勤に転換してもいいと思っているんです。夫は年が離れていることもあって、私よりもキャリアを確立しているので、夫に頑張ってもらえばいいかなと。ただ、子供が2人になると、将来の教育費などが大変そうなので、本当に非常勤になって大丈夫かも気になるところです。さゆりさんはご自身の今後のキャリアをどのように描いているのですか?私のキャリアですか…? 目の前のことに精一杯で、将来を考える余裕がなくなっていました。出産前は、専門医資格を取得して、その後はサブスペシャリティ領域でより高い専門性を追求しようと意気込んでいました。子供を産んでも「やれる」と思っていたんですけど、育児の大変さは想像以上でした。キャリアか子育てか、夫のキャリアか妻のキャリアかといった二項対立ではなく、夫も妻も望むキャリアを実現できて、キャリアと子育ての両立も可能にするような解決策を、2人で話し合われてはいかがでしょうか。解説ライフプランとキャリアをいかに融合させていくかが、人生の質に大きく影響を及ぼします。夫と妻はライフプランを共有するだけでなく、それぞれのキャリアプランをお互いに支え合う関係になることが大切です。現在の置かれた状況を整理して、さゆりさんが望むキャリアを積んでいくには何が必要か、そのために夫と妻それぞれができることは何か、夫婦だけでなく、周囲に何か利用できる資源はないかを検討してみます。今の職場は居心地が悪いのですが、専門医を取得するためには大学病院にいる必要があって…。過酷な職場なだけに、誰もが余裕を持てなくなっているのでしょうね。たとえば、1ヵ月に1回でも宿日直を引き受けるとか、ほかの人の負担を少しでも軽くすることができれば、居場所の確保につながるかもしれません。はじめさんのスケジュールと擦り合わせて、時間を捻出できないか検討してみてはいかがでしょうか。チームの一員として役割を果たす姿勢を見せていれば2人目の出産に当たっても、気持ちよく産休や育休を取れるのではないでしょうか。これまで家事や育児は私がやるものと思っていたので、考えたことがありませんでした。正直、あまり考えてこなかったですね。何とかやれているんだろうと思ってました。お二人は年齢が離れているので、はじめさんがリタイアした後もさゆりさんのキャリアは10年以上続きます。さゆりさんにとって、今は大事な「修行の時期」ともいえます。当初描いていたキャリアを何とか諦めずに実現する手だてを考えたいですね。実は、そのことが夫婦の資産価値を最大化することにつながるのです。資産価値の最大化ですか?では、試しに世帯の収入をシミュレーションしてみましょう。さゆりさんが常勤で働き続ける場合と、非常勤に転換した場合です。現在の年収は、はじめさんが額面約1,500万円(手取り1,000万円)、さゆりさんが約800万円(同600万円)です。さゆりさんが常勤を継続した場合、後期研修を終える4年後には専門医資格を取得し、大幅な年収アップが見込めます。はじめさんは今後大きな年収アップはなく、65歳で定年退職の見込みですね。さゆりさんははじめさんの年金受給開始後も10年間にわたって常勤医の年収が見込めます。図 常勤・非常勤画像を拡大するでは、さゆりさんが非常勤に転換した場合はどうでしょう? 非常勤は同じ額面年収(約800万円)でも税負担や社会保障費などで手取りが減る傾向があります(さゆりさんのケースでは手取り540万円に)。また専門医の取得が難しくなり、その面での年収アップが見込めません。また、はじめさんの引退後10年以上働けるのは常勤の場合と同様ですが、さゆりさんは国民年金になっているので、自身の年金額が大幅に減ります。画像を拡大する結果として世帯年収は1億円以上の差が付きました。もちろん、働き方や節税によって大きくこの数字は変わってきますが、将来の年金額にも影響が大きいことは注意していただきたいと思います。画像を拡大するこれだけ差が出るのですね…。医師は高収入ですが、実は老後の年金は驚くほど少ないケースが多いのです。さゆりさんが非常勤になると国民年金だけになりますから、常勤医として厚生年金に加入している人より、将来の年金ははるかに少なくなります。主な稼ぎ手を1人に集中させることは、将来の年金にも影響が及ぶのです。老後も心配ですが、子供の教育費も心配です。2人目が生まれるとしたら、その子が大学に入学するころには夫はリタイアしているかも…。子供が医学部に進みたいとなったら学費が大変です。シミュレーションは子供1人の前提で行いましたが、2人目誕生となると、ますます医師資格という資源を最大限活用するという発想が大事になってきます。夫婦でお互いのキャリアを支え合うことで、キャリア形成が資産形成につながるのです。私も妻のキャリアを支えられるよう、できることを考えてみます。2人だけで抱え込まなくてもいいんですよ。ご近所の方の協力を得たり、家事サービスやベビーシッターを利用したりすることも視野に入れてください。費用はかかりますが、キャリアのための投資と考えてもいいのではないでしょうか。解説夫婦ともに医師という高度専門職でありながら、夫のキャリアを優先するというケースは多いものです。私のインタビューに協力していただいた女性医師の方たちも例外ではありませんでした。とくに夫が年上でキャリアも確立し、高収入を得ている場合、妻が家事・育児をメインで担い、夫をサポートする側に回るという選択をしがちです。しかし、すでにポジションを確保した夫には裁量権があり、時間を捻出できる可能性があるかもしれません。お互いの当直・オンコールの担当が被らないように調整したり、家事と育児も分け合ったりすることで、子育て期を乗り切る余地はありそうです。いろいろ工夫しても埋められないときは、外部サービスを利用することも検討してください。そのようなサービスを利用できる経済力も有効な資源となり、将来への投資となります。まとめ発想を転換し、最強の資産を共に最大化するすべての夫婦に共通する3つの原則があります。原則1:長期的な視点を持つ夫婦の年齢、子供の年齢、お互いのキャリアステージを、10年20年といった時間軸で、具体的に見通すことで、今やるべきことが見えてきます。原則2:お互いを最高の「ビジネスパートナー」と考えるキャリアの機会や家庭内の役割を、感情論ではなく、世帯資産の最大化という視点で合理的に判断する。原則3:根気よく対話を続ける状況の変化に応じて、戦略を柔軟に見直し続けるためのコミュニケーションを欠かさない。以上の原則を共有し、最初はぎこちなくても、まずはスタートしてください。価値観は人それぞれ、家族の在り方もそれぞれです。時間の経過とともに考えも変わっていきます。わが家なりの居心地の良いやり方を見つけてください。後編では「同じ年の夫婦」の家計をシミュレーションします!(3月中旬公開予定)

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第308回 アフリカ睡眠病の画期的な新薬をサノフィが無償で提供する

俗に睡眠病として知られるアフリカトリパノソーマ症(以下、睡眠病)を根絶できるかもしれない画期的な経口薬Acoziborole Winthrop(acoziborole)の承認を、欧州医薬品庁(EMA)の実質的な意思決定の場の医薬品委員会(CHMP)が了承しました1-3)。睡眠病は、吸血性のツェツェバエに刺されて伝播する寄生虫2種によって生じます。今回CHMPが承認を了承したAcoziborole Winthropの用途は、アフリカの中央と西部で広まるその1つのガンビアトリパノソーマ(Trypanosoma brucei gambiense)による睡眠病の治療です。睡眠病の大半はそのガンビアトリパノソーマが原因です。もう1種のローデシアトリパノソーマ(T. brucei rhodesiense)はもっぱらアフリカ東部で広まっています。感染の初期症状は発熱と頭痛で、他の病気と見紛うことが多々あります。寄生虫が脳(神経系)に侵入する重症段階になると、その病名のゆえんである寝起きのサイクルの逆転などの異常行動が生じます。治療しないままの患者はやがて昏睡に陥り、ほぼ全員が命を落とします。内戦で荒れた2000年代初期のスーダンの病院に運ばれてきた睡眠病の兵士の特異な振る舞いの様子がScienceのニュースに記されています3)。それら睡眠病の兵士は看護師に激怒したかと思えば治療の途中で行方不明になることもありました。脳に至った寄生虫は攻撃性や精神症状などの症状を引き起こして振る舞いの劇的な変化をもたらします。それゆえ睡眠病の患者を病院に留まらせることは非常に困難で、2週間ほどの治療期間に脱走しないように誰かが付き添っている必要がありました。睡眠病治療の現状はそのように手間で、複数回の投与、点滴静注、筋肉内注射、入院を要します。治療を決める病期判定には、脊髄に針を刺す腰椎穿刺で脳脊髄液(CSF)を採取して神経系に寄生虫が到達しているかどうかを調べる検査が含まれます。一方Acoziborole Winthropは軽症か重症かを問わず使用可能で、痛くて体を傷つける腰椎穿刺をする必要がありません。輸送も容易で、睡眠病が最も猛威を振るう遠隔地に届けることができます。Acoziborole Winthropの投与は1回きりなので、10日間の服用が必要な先発の経口薬fexinidazoleと異なり、医療者が繰り返しその服用を見届ける手間も不要です。スイスを本拠とする非営利団体DNDi(Drugs for Neglected Diseases Initiative)の創薬事業で見つかったAcoziborole Winthropは、2016年にファイザーが買収した米国カリフォルニア州のバイテック企業Anacor Pharmaceuticals社の開発品に端を発します4)。Anacorの社員を含むチームの手によって脳によく届くように最適化され、2012年に始まったフランスでの第I相試験5)でまずはヒトに安全に投与できることが確認されました。続く第II/III相試験はコンゴ民主共和国とギニアで実施され、重度の患者にも有効なことを裏付けた同試験結果6)を拠り所にしてCHMPはAcoziborole Winthrop承認を今回了承しました。第II/III相試験ではガンビアトリパノソーマによる睡眠病(g-HAT)の患者208例にAcoziborole Winthropが単回投与されました。トリパノソーマがCSFに及んでいたより重度の進行段階(second-stage)の患者167例のほとんどの159例(95%)が18ヵ月時点で治癒していました。治癒の定義はトリパノソーマが消失し、CSFの白血球数が20個/μL未満になっていることです。CSFにトリパノソーマが見当たらない感染後間もない段階(first- and intermediate-stage)の患者41例に至っては全員(100%)が18ヵ月月時点で治癒していました。CHMPのお墨付きが今回得られたことで、睡眠病が多いコンゴ民主共和国などの国々でのAcoziborole Winthropの承認の道が開けます。20年以上もの間DNDiと協力関係にあってAcoziborole Winthropを共同開発したサノフィが同剤を提供します。サノフィは同社の慈善事業Foundation Sを介して世界保健機関(WHO)にAcoziborole Winthropを無償で寄付し、患者が無料で使えるようにします。Acoziborole Winthropが相手するガンビアトリパノソーマによる睡眠病を2030年までに撲滅することをWHOは目指しています。Acoziborole Winthropはその目標達成を後押しするでしょう。睡眠病のもう1つの原因のローデシアトリパノソーマはヒトへの感染はまれで、もっぱら野生動物に認められます。それゆえ根絶は現実的ではないようです3)。参考1)Acoziborole Winthrop, developed by DNDi and Sanofi, receives CHMP positive opinion as three-tablet, single-dose treatment for most common form of sleeping sickness/ GlobeNewswire2)New single-dose oral treatment for human African trypanosomiasis (sleeping sickness)/ European Medicines Agency3)‘Truly spectacular’ drug for sleeping sickness simplifies treatment, raising hopes for eradication / Science4)Jacobs RT, et al. PLoS Negl Trop Dis. 2011;5:e1151.5)Human African Trypanosomiasis: First in Man Clinical Trial of a New Medicinal Product, the SCYX-71586)Betu Kumeso VK, et al. Lancet Infect Dis. 2023;23:463-470.

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PPIやNSAIDsの併用、ICIの有効性に影響せず

 免疫チェックポイント阻害薬(ICI)治療中、プロトンポンプ阻害薬(PPI)、非ステロイド性抗炎症薬(NSAIDs)などの一般的な併用薬が治療効果に影響するとの報告があるが、その因果関係には議論がある。米国・ミシガン大学のDaria Brinzevich氏らは、米国退役軍人保健局(VHA)の全国データベースを用い、非小細胞肺がん(NSCLC)患者における一般的併用薬とICI治療成績の関連を検証した。Cancer誌オンライン版2025年12月15日号掲載の報告。 2005~23年に治療を受けたStageIVのNSCLC患者のうち、1次または2次治療でICI(n=3,739)または化学療法(n=6,585)を受けた患者を対象とした。20種類の薬剤クラス(PPI、ヒスタミンH2受容体拮抗薬、抗菌薬、スタチン、β遮断薬、ACE阻害薬/ARB、NSAIDs、オピオイド、ステロイド、抗凝固薬など)について「治療開始前3ヵ月内の処方」を併用と定義した。主要評価項目は全生存期間(OS)とTTNT(次治療開始までの期間)と併用薬の関連で、傾向スコアに基づく重み付けを用いたCox比例ハザードモデルで解析した。ICI群で名目上有意(p<0.05)な関連が認められた薬剤については、化学療法群でも同様の解析を行い、非特異的な影響を検証した。 主な結果は以下のとおり。・ICI群は男性が97%、60~79歳が81%、ICI+化学療法併用が45%、1次治療が71%だった。対照群(化学療法群)は多くの背景因子でICI群と類似していたが、59歳以下が24%(ICI群9.4%)と若年者が多く、併存疾患もやや少なかった。・ICI群において、20の薬剤クラスの中で15はOSと、14はTTNTと有意な関連を示さなかった。一方で、ループ利尿薬、抗凝固薬、オピオイド、ペニシリン系およびフルオロキノロン系抗菌薬はOS不良と関連した。しかし、これらの関連は化学療法群でも同様に認められ、ICIの特異的な影響ではないことが示唆された。これらの薬剤はICI群においてTTNTの悪化とも関連したが、化学療法群でも同様の関連性が観察された。・抗菌薬(1点)、PPI(1点)、ステロイド(2点)から構成される「immunomodulatory drug score」もICI群でOSおよびTTNT不良と関連したが、化学療法群でも同様の関連が認められた。すなわち、同スコアはICI効果修飾因子ではなく、一般的な予後指標である可能性が高いと考えられた。 著者らは、「本研究では、一般的に処方される併用薬がStageIV NSCLCにおけるICIの有効性を変化させることは認められなかった。従来報告されてきた併用薬とICI効果の関連の多くは、疾患重症度や基礎疾患など、未測定の交絡因子による可能性が高い。ICI治療中であっても、併存疾患の治療を過度に制限する必要はない可能性が示唆される」としている。

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脳卒中管理で非専門医が押さえておきたい重要ポイントは?「脳卒中治療ガイドライン」改訂

 一次・二次予防でさまざまな診療科との連携が必要になる脳卒中。2025年8月には『脳卒中治療ガイドライン2021[改訂2025]』が発刊され1)、本書より「改訂のポイント」が各章の冒頭に新設、前版からの改訂点やその経緯が把握しやすい仕様に変更された。近年の知見もタイムリーに反映し、140項目中52項目のエビデンスレベルが見直されている。そこで今回、非専門医が本書を手に取る際に理解しておきたい改訂点や取りこぼしてはいけない点を中心に、ガイドライン作成委員長の黒田 敏氏(富山大学脳神経外科 教授)に話を聞いた。急性期は降圧せず、病期で異なる血圧管理 本書は7項目から章立てられ、14個のClinical Questionが掲載されている。このなかでも非専門医が目を通しておきたいのは、第I章「脳卒中一般」(p.2~56)である。 同章の脳卒中発症予防には、高血圧、糖尿病、脂質異常症といった危険因子ごとのアプローチ方法が示され、とくに高血圧管理については、第I章の全身管理(2)血圧、脈、心電図モニター(p.31)に示されている。本書と同時期に発刊された『高血圧管理・治療ガイドライン2025』(日本高血圧学会編)では、全年齢で「原則的に収縮期血圧130mmHg未満を降圧目標とする」と発表されており2)、亜急性期・慢性期の脳卒中の管理目標がこれに該当する。ただし、“超急性期や急性期では転帰不良が増加することから、急性脳梗塞では状況に応じた降圧治療が必要になり、原則的に降圧しない”や“脳出血では専門医への紹介前から降圧療法を考慮してもよい”と記され(高血圧治療・管理ガイドラインの第9章、p.109)、その根拠の詳細が本書の上述の項や脳出血の血圧管理(p.134)にて解説されている。 また、血圧管理における薬物療法については、2022年10月にLancet誌に報告された論文3)などを踏まえ、各個人が服用しやすい時間、アドヒアランス向上、副作用などを考慮した推奨となった。 一方で、超急性期では血栓溶解療法、機械的血栓回収療法のどちらを実施予定かで管理目標がやや異なり、今回の改訂では後者を行う場合の血圧の管理について新たな推奨文が追加、血栓回収時での過度な降圧回避を考慮した設定となった。この理由について黒田氏は「脳梗塞発症時脳血流が低下しているため、この状況で血栓を回収すると、健常状態よりも血流が多くなり、健常よりも回収時に血圧が大きく増加する。また、血栓回収終了後の厳格な降圧も予後不良に相関することが2つのRCTから示されている」と説明した。―――――――――――――――――――<I. 脳卒中一般 脳卒中急性期 2-1 全身管理(2)血圧、脈、心電図モニター>「機械的血栓回収療法を施行する場合、血栓回収前の降圧は必ずしも必要ないが、血栓回収後には収縮期血圧180mmHg以下に速やかな降圧を行うことは妥当である(推奨度B、エビデンスレベル中)。一方、血栓回収中および回収後には収縮期血圧140mmHg以下の過度な血圧低下は、避けるよう勧められる(推奨度E、エビデンスレベル中)」―――――――――――――――――――アルツハイマー病新薬の処方歴に注意! rt-PAの使用判断に注意 第II章「脳梗塞・TIA」では、機械的血栓回収療法が可能なタイミング、抗血小板薬シロスタゾールの脳領域での評価が反映されているが、診療科横断的な注意事項として、アルツハイマー病に対する抗アミロイド抗体治療薬の投与を受けている患者への脳梗塞超急性期治療についてはぜひ押さえておきたい。同氏は「静注血栓溶解(rt-PA)療法は、急性脳内出血を発症し、死亡例が報告されている。これを踏まえ、rt-PA検討時に慎重に適応を判断するためにMRI検査が必要とされ4)、また、アルツハイマー病の既往や治療歴を確認するためには問診が重要となる。さらに抗アミロイド抗体治療中の18ヵ月間は脳梗塞の発症にも注意してほしい」と強調した。 そして、睡眠中に脳梗塞を発症する発症時刻不明(Wake-up Stroke)患者の場合、これまでは正確な発症時刻がわからず、就寝時刻=最終健常時刻と判断されてきた。たとえば、22時に就寝、6時に起床して症状に気付いた患者では、脳梗塞の発症から8時間経過したと考えざるを得なかった。しかし近年では、頭部MRI画像検査で拡散強調画像(DWI)と水抑制画像(FLAIR)を撮影し、「FLAIR画像から明け方の発症も把握できるため、そのような症例にも血栓回収療法の実施が推奨されるようになった。さらに、重症度の高い患者(大脳半球の6~7割を占める大きな脳梗塞を起こした例)などでも、いくつかの条件を満たせば血栓回収療法により予後良好となるエビデンスが出てきている」と述べ、血栓回収療法の対象患者拡大について言及した。 脳梗塞再発予防については、慢性動脈閉塞症に基づく症状改善に使われていたシロスタゾールにおいて、ラクナ梗塞のような微小出血を有する患者への脳梗塞再発予防効果が示され、推奨文が一部改訂されている。―――――――――――――――――――<II. 脳梗塞・TIA 脳梗塞急性期 1-2 頸動脈的血行再建療法> 最終健常確認時刻から6時間を超えた内頚動脈または中大脳動脈M1部の急性閉塞による脳梗塞では、神経徴候と画像診断にもとづいて救済可能領域が十分にあると判断された患者に対して、最終健常確認時刻から24時間以内に機械的血栓回収療法を開始することが勧められる(推奨度A、エビデンスレベル高)<II. 脳梗塞・TIA 脳梗塞急性期 1-3 抗血小板療法>シロスタゾール200mg/日の単独投与や、低用量アスピリンとの2剤併用投与は、発症早期(48時間以内)の非心原性脳梗塞患者の治療法として考慮してもよい(推奨度C、エビデンスレベル中)―――――――――――――――――――専門医のなかで注目されているポイント、そして新たな脳卒中リハビリとは 第IV章のくも膜下出血の領域では、遅発性脳血管攣縮の予防・治療に関して変更点がある。まず、脳血管攣縮予防のための腰椎ドレナージは、近年のシステマティックレビュー結果を基に推奨度が上がった(推奨度B、エビデンスレベル中)。その一方で、治療ではエンドセリン受容体拮抗薬クラゾセンタンによる術後管理の普及に伴い、多量補液による肺水腫発症が広く認識されていること、triple H療法*によりうっ血性心不全や出血性合併症リスクが増加するといった報告を考慮して、「科学的根拠がないtriple H療法は行うべきではない」(推奨度E、エビデンスレベル低)としている。*循環血液量増加療法(Hypervolemia)、血液希釈療法(Hemodilution)、高血圧療法(Hypertension)の3つを組み合わせて脳血流を維持・改善する方法 このほかにも、リハビリテーション診療の領域では、上肢機能障害のリハビリ効果を高めるためにAI技術の導入が進んでおり、脳卒中後の機能回復にブレイン・マシン・インターフェイス(BCI)を応用した訓練の推奨度がCからBへ上がった。BCIとは、脳と機械を直接つなぎ、脳内情報を読み取ることで脳機能を補填・増進させる技術の総称で、「たとえば、手にロボットを装着した患者が“手を動かしたい”と考える。すると脳波の変化をAIが読み取り、ロボットが指を曲げたり伸ばしたりする」と解説。「片麻痺の患者は“手を動かしたい”というイメージができなくなっているため、それを思い出させるためのBCIの活用はリハビリ効果を高める」と推奨度が上がった理由を述べた。ガイドライン改訂の経緯 本書は6年に1回ごとに改訂、2年ごとに追補版が出版される。2019年からガイドライン作成委員長を務める同氏は本書改訂を振り返り、「これまで2021年、2023年とマイナーアップデートにも携わってきたが、新たな知見が報告されるたびに脳卒中の治療可否において実臨床とガイドラインで乖離が生じはじめ、先生方の誤解を招く可能性があった。また、これまでは追補には新たな知見だけを掲載していたが、矛盾点などが存在する項目はあわせて改訂することになり、今回は"改訂版”と表現を変えた」と説明した。 なお、日本脳ドック学会が脳卒中や認知症予防などに役立つ最新知見をまとめた『脳ドックのガイドライン2026』が2月26日に発刊されたので、あわせて一読されたい。

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アルツハイマー病に伴うアジテーションに対するブレクスピプラゾールの有用性~臨床試験結果の統合解析

 米国・ネバダ大学のJeffrey L. Cummings氏らは、ブレクスピプラゾール2mg/日または3mg/日のアルツハイマー病に伴うアジテーションの治療における有効性を評価するため、統合臨床試験データに基づく解析を実施した。Clinical Drug Investigation誌2026年3月号の報告。 介護施設または地域社会に居住するアルツハイマー病に伴うアジテーションを有する患者を対象に、ブレクスピプラゾール固定用量を投与した2つの12週間多施設共同ランダム化二重盲検プラセボ対照第III相試験のデータを統合した。有効性評価項目には、Cohen-Mansfield Agitation Inventory(CMAI)合計スコア(29種のアジテーション症状の頻度を測定)、臨床全般印象度-重症度(CGI-S)スコア、CMAI因子スコア(攻撃的行動、身体的非攻撃的行動、言語的興奮行動)、治療反応率を含めた。感度分析には、フレキシブルドーズを用いた3つ目の試験を含めた。 主な結果は以下のとおり。・対象患者621例がブレクスピプラゾール群(368例)またはプラセボ群(253例)にランダムに割り付けられており、治療完了率はそれぞれ87.0%(320/368例)、88.9%(225/253例)であった。・ベースラインのCMAI合計スコアの平均値は、ブレクスピプラゾール群で76.9±17.2、プラセボ群で75.5±18.0であった。・12週間にわたるCMAI合計スコアの改善の最小二乗平均値は、ブレクスピプラゾール群で-22.8±0.8、プラセボ群で-18.3±1.0であり、治療群間の最小二乗平均値差は-4.50(95%信頼区間:-6.90~-2.10、p<0.001、Cohen's d=0.30)であった。・CGI-S、CMAI因子、治療反応解析においても、ブレクスピプラゾール群はプラセボ群と比較し、改善度が高いことが示された。・感度解析は、この結果を支持するものであった。 著者らは「アルツハイマー病の大規模統合サンプルにおいて、ブレクスピプラゾール2mg/日または3mg/日投与は、プラセボ群と比較して、12週間にわたりアジテーション症状を軽減することが示された」と結論付けている。

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濾胞性リンパ腫、R-CHOP療法の15年PFS(SWOG S0016)/JAMA Oncol

 濾胞性リンパ腫(FL)に対する、CHOP(シクロホスファミド、ヒドロキシダウノルビシン/ドキソルビシン、ビンクリスチン、プレドニゾン/プレドニゾロン)ベースの化学免疫療法後の長期寛解および治癒の可能性を評価したSWOG S0016試験の15年間の追跡データを、米国・Fred Hutch Cancer CenterのMazyar Shadman氏らが報告した。この2次解析の結果、進行期FL患者の一部がリツキシマブ+CHOP(R-CHOP)により治癒を達成可能であり、再発率が時間経過とともに低下することが示唆された。JAMA Oncology誌オンライン版2026年2月26日号に掲載。 本試験は、全米の大学病院および地域医療機関で実施された多施設共同試験で、未治療の進行期FL患者が登録された。治癒モデリング(治癒した患者の割合を推定するモデル化)は、S0016試験期間中のFL治癒率を推定するため背景死亡率を組み込んで実施した。患者登録は2001年5月~2008年10月、追跡期間中央値は15.5年(四分位範囲:13.6~16.9)、2025年6月に解析した。患者をリツキシマブ+CHOP(R-CHOP)群またはCHOP後に放射免疫療法(RIT)を追加するCHOP-RIT群に無作為に割り付けた。主要評価項目は15年無増悪生存率(PFS)および全生存率(OS)、副次評価項目は治癒モデリングなど。 主な結果は以下のとおり。・最終解析には適格患者531例(女性46%、年齢中央値53歳)が組み入れられ、R-CHOP群267例、CHOP-RIT群264例であった。・15年OSは70%で両群間に有意差はなく、15年PFSは40%(95%信頼区間:36.0~44.7)であった。・15年PFSはCHOP-RIT群が47%でR-CHOP群の34%と比較して優越性を示した(p=0.004)。・治癒モデルでは全体治癒率が42%と推定され、FL国際予後指標スコアが低く、β2ミクログロブリン値が正常な症例で最も高い治癒率が観察された。・再発率は、最初の5年間では6.8%、15~20年では0.6%と、時間経過とともに大幅に減少した。 著者らは、「この知見はFLの理解と治療アプローチにおけるパラダイムシフトを表し、患者との初回相談や将来の研究戦略に影響を与えるもの」としている。

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筋強直性ジストロフィー1型、del-desiranが有望/NEJM

 筋強直性ジストロフィー1型(DM1)は、常染色体優性遺伝性の進行性神経筋疾患であり、DMPK遺伝子の3'-非翻訳領域におけるCTGリピートの伸長によって発症する。本症は、身体機能障害を引き起こし、余命を短縮させるが、承認された治療法はない。米国・Virginia Commonwealth UniversityのNicholas E. Johnson氏らは「MARINA試験」において、本症の治療薬として開発中の抗体-オリゴヌクレオチド複合体delpacibart etedesiran(del-desiran[AOC 1001])の筋組織への送達が一部の患者で確認され、異常な選択的スプライシング(ミススプライシング)の改善を示唆するデータを得たことを報告した。del-desiranは、抗体部分がトランスフェリン受容体1を、オリゴヌクレオチド部分がDMPK遺伝子mRNAを標的とする。研究の成果は、NEJM誌2026年2月19日号で発表された。米国の無作為化プラセボ対照第I/II相試験 MARINA試験は、米国の8施設で実施した二重盲検無作為化プラセボ対照第I/II相試験(Avidity Biosciencesの助成を受けた)。2021年10月~2022年9月に、年齢18~65歳、遺伝子診断でDM1と診断され、DMPK遺伝子のCTGリピートが100回以上に伸長した患者38例(平均年齢42[±12.9]歳、女性28例[74%])を登録した。 本試験は2つのパートから成り、パートAではdel-desiran 1mg/kg体重を1回静脈内投与する群(6例)またはプラセボ群(2例)に、パートBではdel-desiran 2mg/kg体重を3回(1、43、92日)静脈内投与する群(9例)、同4mg/kg体重を3回(同)静脈内投与する群(13例)、またはプラセボ群(8例)に無作為に割り付けた。 主要エンドポイントは安全性であった。副次エンドポイントは、del-desiranの薬物動態・薬力学的プロファイル、および1mg群では投与43日目、2mg/4mg群では投与92日目(2回目投与後49日目)における下流の異常スプライシングパターンの変化とした。重篤な有害事象の1件が試験薬関連と判定 38例中35例に軽度または中等度の有害事象が発現した。プロトコールで規定された投与中止基準に該当した患者はいなかった。投与期間中に、del-desiranの投与を受けた患者のうち5例以上に発現した有害事象は、筋生検に伴う痛み、貧血、新型コロナウイルス感染症、頭痛、悪心であった。 2mg群の1例と4mg群の1例に、重篤な有害事象が1件ずつ発現した。前者は試験薬との関連はないと判定された。後者では、初回投与後24時間以内に記憶力低下と視覚障害の症状が発現し、数日後の頭部MRI検査で視床外側膝状体核領域の両側性の虚血とそれに続く出血性変化の可能性が推定され、試験薬関連と判定されたためその後の投与を中止した。 これにより、米国食品医薬品局によって新規の患者登録が一時的に停止されたが、すでに登録されていた参加者は投与の継続が許可された。この停止措置は、その後解除されている。DMPK mRNAの低下率は3つの用量で同程度 筋生検標本におけるDMPK mRNAレベルの変化率は、del-desiran 1mg群で-46%、2mg群で-44%、4mg群で-37%といずれも同程度に低下し、プラセボ群では0.9%増加した。また、低分子干渉RNA(siRNA)の血漿中最大濃度および曲線下面積は用量の増量に比例して増加し、尿中からは微量のsiRNAが回収された。 ベースラインからの平均複合ミススプライシングスコアの減少率は、1mg群で3%、2mg群で17%、4mg群で16%、プラセボ群で7%であり、2mgおよび4mg群におけるミススプライシングの改善が確認された。 著者は、「総DMPK mRNAの明らかな減少と、オルタナティブスプライシング調節の回復は、siRNAが筋組織に送達されたことを示すと考えられる」「これらのデータは、臨床研究の継続を支持するものである」としている。 現在、MARINA試験を完了した参加者を対象に、より長期の治療効果を評価する目的で、非盲検下の延長試験が進行中で、並行してdel-desiran 4mg/kg体重の8週ごとの投与を評価する二重盲検無作為化プラセボ対照第III相試験(HARBOR試験)が進められているという。

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治療抵抗性高血圧症の新たな治療法「腎デナベーション」、適正使用指針も公表

 治療抵抗性高血圧症の新たな治療法として、日本メドトロニックの「Symplicity Spyral腎デナベーションシステム」*1ならびに大塚メディカルデバイスの「ParadiseTM 超音波式腎デナベーションシステム」*2が、2026年3月1日に保険適用を取得し、順次発売された。*1:2025年9月1日に製造販売承認を取得、2026年3月1日発売*2:2025年8月25日に製造販売承認を取得、2026年3月2日発売 いずれのシステムも対象患者は、高血圧管理・治療ガイドラインに従った治療(生活習慣の修正、非薬物療法及び薬物療法)で適切に血圧がコントロールできない治療抵抗性高血圧症で、2025年8月に発刊された『高血圧管理・治療ガイドライン2025』においても、腎デナベーションは治療抵抗性高血圧に対する補助療法として新たな治療選択肢となり得ることが明記されていた(推奨の強さ:2、エビデンスの強さ:B、合意率:100%)。 本システムの発売に先駆け、2026年2月4日に日本循環器学会などがホームページにて『腎デナベーションシステムの適正使用指針』を公開しており、以下に本指針で示された適応、患者条件を抜粋して示す。―――――――――――――――――――1. 適応(承認適応) 本品は、高血圧管理・治療ガイドラインに従った治療(生活習慣の修正、非薬物療法及び薬物療法)で適切に血圧がコントロールできない治療抵抗性高血圧症患者の追加的治療として血圧を低下させるために使用する。※治療抵抗性高血圧の定義は最新の高血圧管理・治療ガイドラインに基づく2. 患者条件(以下の条件を全て満たす患者) 腎デナベーション治療は最新の高血圧管理・治療ガイドラインに準じて、生活習慣の改善と降圧薬の服薬指導など適切な治療を受けているにもかかわらず、血圧コントロールが不良である高血圧症患者の血圧管理を目的としているものであり、適応は高血圧症患者の病態を高血圧腎デナベーション治療(HRT:Hypertension Renal denervation Treatment)チームが多職種連携して検討の上、決定する。 本治療に適正な患者選択を行うため、別紙1に示す腎デナベーション治療適正使用チェックリストを用いてスクリーニングを行うこと。(1)血圧コントロール不良を判定する前に確認すべき事項生活習慣修正状況、服薬アドヒアランス関連状況、降圧薬の適切な処方、正しい血圧測定と降圧目標の理解、二次性高血圧の除外(2)コントロール不良の血圧基準(選択基準) (i)診察室血圧が140/90mmHg以上、かつABPMで24時間血圧が130/80mmHg以上、若しくは昼間血圧が135/85mmHg以上、又は夜間血圧が120/70mmHg以上 又は  (ii)診察室血圧が140/90mmHg以上、かつ早朝若しくは就寝前家庭血圧が135/85mmHg以上、又は夜間家庭血圧が120/70mmHg以上 (3) 治療抵抗性高血圧(選択基準) 利尿薬を含む異なったクラスの3剤以上の降圧薬治療でコントロール不良の高血圧 ただし利尿薬以外の降圧薬は原則、最大忍容量を用いる。(4)腎デナベーションが不適格な患者(除外基準)・腎動脈瘤、腎動脈狭窄や治療に不適格な腎動脈の解剖学的構造を有する患者(造影CT評価を基本とする)・eGFR<40mL/min/1.73m2・添付文書の禁忌、禁止事項に該当する患者――――――――――――――――――― このほか、施設条件、施行医師条件などは適正使用指針を参照されたい。

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寿命の半分以上は遺伝で決まる?

 長生きするためには、健康的な食生活を送り、適度に運動を行い、悪い習慣を避けることが基本だと言われている。しかし、遺伝の影響(遺伝率)はそれ以上に重要かもしれない。新たな研究で、寿命の約55%は遺伝によって説明される可能性が示された。これは、これまでの推定(6〜33%)を大きく上回る数字だ。ワイツマン科学研究所(イスラエル)のBen Shenhar氏らによるこの大規模研究の詳細は、「Science」に1月29日掲載された。 これまで推定された寿命の遺伝率は20~25%程度と推定されており、なかには6%と見積もられたこともあった。しかし研究グループは、これらの推定値は、事故や感染症などの外的要因による死亡(外因性死亡)と、老化や病気などの内的要因による死亡(内因性死亡)を区別せずに推定された数字だと指摘している。この欠点を踏まえて今回の研究では、外因性死亡と内因性死亡を数学的に分離するモデルを構築し、双子を対象にした3つの大規模研究のデータを用いて、内因性死亡による寿命がどの程度遺伝の影響を受けるのかを検討した。 その結果、外因性死亡の影響を補正すると、内因性死亡の遺伝率は約55%と、従来の推定値より大幅に高いことが示された。このような高い遺伝率は、ヒトの複雑な形質の多くや他の種の寿命の遺伝率とほぼ同様であった。 Shenhar氏は、「この数字は根拠のないものではない。双子研究を見ると、ほとんど全ての人間の形質の遺伝率は50%程度だ。例えば、閉経年齢の遺伝率も約50%だ」と述べている。コペンハーゲン大学(デンマーク)のMorten Scheibye-Knudsen氏も、この方法によって老化を理解する際の「外的ノイズ」を除去できたと指摘している。同氏は、「人間は、最長で120歳まで生きる。酵母の寿命は13日、ボウヘッドクジラ(北極クジラ)の寿命は200年だ。われわれは、遺伝子が寿命の限界を決めていることをすでに知っている。それゆえ、寿命は、われわれの行動だけで説明できる問題ではないということについて、もう少し考えるべきだったと思う」と話している。 一方、米バック老化研究所のEric Verdin氏は、新型コロナウイルス感染症(COVID-19)などの感染症による死亡も遺伝の影響を受ける可能性があると指摘している。しかしShenhar氏らによると、加齢に伴う健康リスクの上昇を考慮してデータを再分析しても、寿命の約50%は遺伝的要因によって説明されることが確認されたという。 さらにこの研究は、100歳まで生きる人が慢性疾患のリスクを下げる遺伝子を持っていることを示す以前の研究結果とも一致している。Shenhar氏は、「100歳まで生きる人は、単に頑張って生き延びているわけではない。加齢による悪影響から身を守る遺伝子を持っているのだ」と説明している。現在、寿命に関わることが分かっている遺伝子はFOXO3、APOE、SIRT6とわずかだが、Verdin氏は、「寿命は一つの遺伝子ではなく、多くの遺伝子が相互に作用して決まる」と述べている。 ただし、Verdin氏とShenhar氏はいずれも、生活習慣の重要性を強調している。Shenhar氏は、「遺伝が寿命の55%を決めるとしても、残りの45%は食事や運動、生活習慣などに左右される。このことは、『それなら何をしたって一緒だ。遺伝で寿命が決まっているのなら、生活習慣を改め、飲酒を控え、運動を行う必要があるのか』と悲観的に捉えられがちだ」と指摘する。その上で、「われわれの論文が伝えているメッセージは、生活習慣や運動、食事が重要ではないということではない。遺伝が潜在的な寿命の範囲を決めているとしても、それは生活習慣次第で多少は伸びたり縮んだりする。だからこそ、生活習慣は依然として大切なのだ」と強調している。

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オキシブチニンが前立腺がんのホットフラッシュを大幅に軽減

 過活動膀胱の治療に使われる薬であるオキシブチニン塩酸塩(以下、オキシブチニン)が、前立腺がんのホルモン療法であるアンドロゲン除去療法(ADT)を受けている男性のほてり(ホットフラッシュ)軽減にも有効であることが、ランダム化比較試験で示された。オキシブチニン(5mg、2.5mg)群ではプラセボ群と比較して、1日当たりのホットフラッシュの回数が有意に減少し、症状による生活への支障度も有意に改善したという。米メイヨー・クリニックの放射線腫瘍科医であるBradley Stish氏らによるこの研究結果は、「Journal of Clinical Oncology」に1月26日掲載された。Stish氏は、「これらの結果は、この困難で見過ごされがちな前立腺がん治療の副作用を管理する上で、オキシブチニンが有効な選択肢であることを強く支持するものだ」と話している。 ADTは、がん細胞の成長を促すテストステロンなどの男性ホルモンのレベルを下げる治療法で、前立腺がんに対して有効だが、治療を受けた患者の最大80%にホットフラッシュを引き起こし、疲労や睡眠障害を招く。これらの副作用を理由に、患者が薬の服用を中止してしまうケースも少なくないという。 過去の研究では、オキシブチニンが女性のホットフラッシュを大幅に軽減することが報告されている。このことからStish氏らは、この薬が男性にも有効である可能性を考えた。そこで同氏らは、ADTを継続的に受けており、週当たりのホットフラッシュの回数が28回以上の前立腺がん患者88人を対象に、オキシブチニンのホットフラッシュ軽減効果を検討するランダム化比較試験を実施した。対象者は、6週間にわたりオキシブチニン5mg(高用量)または2.5mg(低用量)を1日2回服用する群とプラセボ群にランダムに割り付けられた。 最終的に81人が解析対象とされた。試験開始時における1日当たりのホットフラッシュの回数は平均10.1回、1日当たりのホットフラッシュスコアの平均点は18.2点であった。試験開始から6週後における1日当たりのホットフラッシュの回数は、プラセボ群で2.15回、低用量群で4.77回、高用量群で6.89回減少し、両方のオキシブチニン群で、プラセボ群よりも有意な改善が認められた。また、ホットフラッシュスコアの平均低下量は、プラセボ群で4.85点、低用量群で9.94点、高用量群で13.95点であり、高用量群でプラセボ群と比べて統計学的に有意な改善が認められた。さらに、Hot FlashーRelated Daily Interference Scale(HFRDIS)で評価したホットフラッシュによる生活への支障度の総スコアの低下量は、プラセボ群での3.1点に対し、低用量群では14.2点、高用量群では20.7点であり、オキシブチニン投与群ではいずれもプラセボ群より有意に改善した。 Stish氏は、「この結果は非常に励みになる。ADTに伴うホットフラッシュに悩む男性にとって、症状の負担を軽減する新たな治療オプションが利用可能になったのだ」と述べている。同氏は今後の研究で、これらの患者におけるホットフラッシュ治療の選択肢について、さらに詳しく調べる予定だとしている。

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tenecteplaseは標準治療より脳底動脈閉塞症に有効か?(解説:内山真一郎氏)

 TRACE-5試験は、中国で行われた、発症後24時間以内の脳底動脈閉塞症に対するtenecteplase静注療法と標準的治療を比較したPROBEデザインによる無作為化試験である。結果は、90日後に転帰良好例(改訂ランキンスケールスコア0または1)がtenecteplase群で対照群より有意に多く、頭蓋内出血例と死亡例は同等であった。この効果は、TRACE-3試験で示された、血栓回収療法を受けていない前方循環系の大血管閉塞例に対する効果に匹敵した。本試験結果は、tenecteplase静注療法は、発症後24時間以内という広い治療可能時間枠の脳底動脈閉塞症に対して、特別な画像検査を用いたミスマッチによる患者選択の必要なしに、血栓回収療法との併用効果が期待できることを示唆している。ただし、オープンラベルの試験であったこと、重症例(pc-ASPECT 6点未満)は含まれなかったこと、症例は中国人のみであったことに限界があり、プラセボ対照試験の実施、より重症例での検討、他の人種への全般化が今後の課題である。

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