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血栓溶解療法後の低リスク例、低頻度のモニタリングで十分か/Lancet

 急性期虚血性脳卒中に対する静脈内血栓溶解療法では、施行後の高強度のモニタリングが標準とされ、患者だけでなく看護師の負担がとくに大きく、果たして症候性脳出血のリスクが低い患者にも必要かとの疑問が生じている。中国・復旦大学のCraig S. Anderson氏らOPTIMISTmain Investigatorsは、「OPTIMISTmain試験」において、血栓溶解療法を受けた軽度または中等度の神経学的障害を有する患者では、モニタリングの頻度を低くした低強度モニタリングは高強度の標準モニタリングに対し、不良な機能的アウトカムの発生に関して非劣性であるとの弱いエビデンスを確認し、重篤な有害事象の発現にも差はないことを示した。研究の成果は、Lancet誌オンライン版2025年5月21日号に掲載された。8ヵ国のstepped-wedgeクラスター無作為化非劣性試験 OPTIMISTmain試験は、低強度モニタリングのプロトコールの標準モニタリングのプロトコールに対する非劣性を検証する、実践的なstepped-wedgeクラスター無作為化対照比較非劣性試験であり、2021年4月~2024年9月に8ヵ国(高所得国4ヵ国、低・中所得国4ヵ国)の120病院(クラスター)で患者を登録した(オーストラリア国立保健医療研究評議会[NHMRC]などの助成を受けた)。  年齢18歳以上、急性期虚血性脳卒中と診断され、静脈内血栓溶解療法の開始から2時間以内の神経学的障害が軽度または中等度(NIHSSスコア[0~42点、高点数ほど重症度が高い]が10点未満)で、臨床的に安定した患者を対象とした。 参加病院はプロトコールの実施について、4つの期間の3つの実施順序に無作為に割り付けられ、各病院で標準モニタリング(対照)から低強度モニタリング(介入)へと段階的に切り換えを行った。 低強度モニタリングのプロトコールでは、血栓溶解療法後24時間までの神経学的評価とバイタルサインの評価の頻度を低くし、15分ごと2時間、2時間ごとに8時間(標準モニタリングでは30分ごとに6時間)、その後は4時間ごと(標準モニタリングでは1時間ごと)に行った。 主要アウトカムは、90日後の時点における不良な機能的アウトカムとし、修正Rankinスケールスコア(0[症状なし]~6[死亡]点)の2~6点と定義した。非劣性マージンは、ITT集団におけるリスク比(RR)1.15に設定した。不良な機能的アウトカム、低強度モニタリグング群31.7%vs.標準モニタリグング群30.9% 114病院で4,922例を登録し、低強度モニタリング群に2,789例、標準モニタリング群に2,133例を割り付けた。全体の平均年齢は65.9(SD 13.2)歳、性別を報告した4,916例中1,890例(38.4%)が女性であり、民族を報告した4,913例中2,523例(51.4%)がアジア系だった。ベースラインのグラスゴー・コーマ・スケールスコア中央値は15点(四分位範囲[IQR]:15~15)、NIHSSスコア中央値は4点(IQR:2~7)であり、頻度の高いリスク因子は高血圧(61.3%)と糖尿病(24.9%)であった。 90日の時点で修正Rankinスケールスコアが2~6点であった不良な機能的アウトカムの患者は、低強度モニタリング群が2,552例中809例(31.7%)、標準モニタリング群は1,963例中606例(30.9%)であり(RR:1.03[95%信頼区間[CI]:0.92~1.15]、非劣性のp=0.057)、低強度モニタリング群の非劣性を示唆する弱いエビデンスが得られた。  7日目または退院時のいずれか早い時点でのNIHSSスコアは、低強度モニタリング群が1.9点、標準モニタリング群は2.1点であった(平均群間差:-0.11点[95%CI:-0.36~0.13])。低強度モニタリングは導入の検討に値する 症候性頭蓋内出血は、低強度モニタリング群で2,783例中5例(0.2%)、標準モニタリング群で2,122例中8例(0.4%)に発現した(RR:0.57[95%CI:0.15~2.13])。また、重篤な有害事象の発現は、それぞれ2,789例中309例(11.1%)および2,133例中240例(11.3%)と両群で同程度だった。  著者は、「この介入は、多くの国で集中治療室(ICU)の外部で行うことが許容され、実行は可能であり、結果として看護業務の流れに柔軟性をもたらし、集中治療の医療資源を解放するという有益性を認めたことから、各国の病院は急性期脳卒中の治療体制を改善するために、このアプローチの導入を検討してよいだろう」としている。

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真性多血症へのrusfertideの第III相試験、32週までの結果(VERIFY)/ASCO2025

 標準治療を受けている真性多血症(PV)患者で頻回の瀉血を必要とする患者に対するrusfertideの上乗せのベネフィットを評価する現在進行中の国際共同第III相VERIFY試験のパート1aにおいて、臨床的奏効割合、瀉血回数、ヘマトクリット値および症状の改善が示された。米国・Moffitt Cancer CenterのAndrew Tucker Kuykendall氏が、米国臨床腫瘍学会年次総会(2025 ASCO Annual Meeting)のプレナリーセッションで発表した。 PVは赤血球の過剰産生を特徴とし、心血管・血栓イベントリスクを増加させる。rusfertideは鉄恒常性における主な調節因子であるヘプシジンのペプチド模倣薬である。この国際共同無作為化プラセボ対照第III相試験は、パート1a(用量漸増、二重盲検)、パート1b(非盲検)、パート2(非盲検、長期安全性評価)から成り、パート1a(0~32週)を完了した患者がパート1b(32~52週)に移行し、パート1bを完了した患者がパート2に進む。今回はパート1aの結果が報告された。・対象:標準治療(瀉血±細胞減少療法)を受けているPV患者で、過去28週に3回以上もしくは過去1年に5回以上瀉血を受けた患者・試験群:標準治療+rusfertide(週1回皮下投与、開始用量20mg、用量範囲10~90mg)・対照群:標準治療+プラセボ・評価項目:[主要評価項目]臨床的奏効(20~32週に瀉血の対象でないこと)割合[重要な副次評価項目]0~32週の平均瀉血回数、ヘマトクリット値45%未満の患者割合、PROMIS Fatigue SF-8a ScoreおよびMFSAF Total Symptom Score(TSS)7のベースラインからの変化の平均 主な結果は以下のとおり。・約400例がスクリーニングされ、最終的に293例(男性73.0%、年齢中央値57歳)が、rusfertide群(147例)とプラセボ群(146例)に無作為に割り付けられた。rusfertide群は56.5%、プラセボ群は55.5%が同時細胞減少療法を受けていた。・主要評価項目である臨床的奏効割合は、rusfertide群(76.9%)がプラセボ群(32.9%)の2倍を超え、有意に多かった(p<0.0001)。年齢、リスク因子、同時細胞減少療法などを考慮したサブグループ間でも奏効割合に差はみられなかった。・0~32週の平均瀉血回数は、rusfertide群(0.5回)がプラセボ群(1.8回)より少なく(p

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HER2+進行乳がん1次治療のT-DXd+ペルツズマブ、進行/死亡リスクを44%減(DESTINY-Breast09)/ASCO2025

 HER2+の進行または転移を有する乳がん患者の1次治療として、トラスツズマブ デルクステカン(T-DXd)+ペルツズマブ併用療法の有用性を評価した第III相DESTINY-Breast09試験の中間解析の結果、現在の標準治療よりも無増悪生存期間(PFS)を有意に改善したことを、米国・ダナファーバーがん研究所のSara M. Tolaney氏が米国臨床腫瘍学会年次総会(2025 ASCO Annual Meeting)で発表した。 DESTINY-Breast09試験は、HER2+の進行または転移を有する乳がん患者の1次治療として、T-DXd単独またはT-DXd+ペルツズマブ併用療法の有効性と安全性を、標準治療であるタキサン+トラスツズマブ+ペルツズマブ併用療法(THP療法)と比較評価することを目的として実施された。対象は、HER2+(IHC 3+またはISH+)の進行または転移を有する乳がんと診断され、進行・転移病変に対する化学療法またはHER2標的療法の治療歴がない、または内分泌療法歴が1ラインのみの患者であった。術前または術後補助療法として化学療法またはHER2標的療法の治療歴があっても、進行・転移までの期間が6ヵ月を超える場合は対象となった。 主要評価項目はRECIST v1.1に基づく盲検下独立中央判定(BICR)によるPFS、主要副次評価項目は全生存期間(OS)、副次評価項目は治験責任医師によるPFS、奏効率(ORR)、奏効期間(DOR)、2次治療開始後のPFS(PFS2)、安全性であった。 今回は、T-DXd+ペルツズマブ併用療法vs.THP療法の中間解析結果が報告された(データカットオフ:2025年2月26日)。 主な結果は以下のとおり。・T-DXd+ペルツズマブ群は383例、THP群は387例であった。年齢中央値は、54歳(範囲:27~85)/54歳(同:20~81)、アジア人が49.1%/49.4%、IHC 3+が83.0%/81.4%、HR+が54.0%/54.0%、de novoが52.2%/51.7%、PIK3CA変異陽性が30.3%/31.3%、脳転移ありが6.5%/5.7%、術前または術後補助療法歴ありが43.3%/43.7%であった。・主要評価項目であるBICRによるPFS中央値は、T-DXd+ペルツズマブ群40.7ヵ月(95%信頼区間[CI]:36.5~NC)、THP群26.9ヵ月(同:21.8~NC)であり、T-DXd+ペルツズマブ群において統計学的に有意かつ臨床的に意義のある改善を示した(ハザード比[HR]:0.56[95%CI:0.44~0.71]、p<0.00001)。24ヵ月PFS率は70.1%および52.1%であった。・治験責任医師によるPFS中央値は、T-DXd+ペルツズマブ群40.7ヵ月(95%CI:36.5~NC)、THP群20.7ヵ月(同:17.3~23.5)であった(HR:0.49[95%CI:0.39~0.61]、p<0.00001)。24ヵ月PFS率は68.6%および43.7%であった。・PFSのベネフィットはサブグループ間で一貫していた。・BICRによるORRは、T-DXd+ペルツズマブ群85.1%(95%CI:81.2~88.5)、THP群78.6%(同:74.1~82.5)であった。完全奏効率は、15.1%および8.5%であった。・BICRによるDOR中央値は、T-DXd+ペルツズマブ群39.2ヵ月(95%CI:35.1~NC)、THP群26.4ヵ月(同:22.3~NC)であった。・OSデータおよびPFS2データは未成熟であったが、T-DXd+ペルツズマブ群で良好な傾向がみられた。・Grade3以上の治療関連有害事象は、T-DXd+ペルツズマブ群54.9%、THP群52.4%に発現し、重篤な試験治療下における有害事象は27.0%および25.1%に発現した。間質性肺疾患/肺臓炎は、T-DXd+ペルツズマブ群46例(12.1%、Grade5が2例[0.5%])およびTHP群4例(1.0%、すべてGrade1/2)に発現した。T-DXd+ペルツズマブ群の安全性は既知のプロファイルと一致していた。 これらの結果より、Tolaney氏は「DESTINY-Breast09試験において、T-DXd+ペルツズマブ併用療法は統計学的に有意かつ臨床的に意義のあるPFSの改善をもたらした。HER2+進行乳がん患者の新たな第1選択の標準治療となる可能性がある」とまとめた。

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小細胞肺がん2次治療、タルラタマブがOS・PFS改善(DeLLPhi-304)/ASCO2025

 2ライン以上の治療歴を有する小細胞肺がん(SCLC)患者を対象とした国際共同第II相試験「DeLLphi-301試験」1)において、タルラタマブが良好な成績を示したことを受け、本邦では「がん化学療法後に増悪した小細胞肺」の適応で2025年4月16日に発売された。また、『肺診療ガイドライン2024年版』では、全身状態が良好(PS0~1)な再発SCLCの3次治療以降にタルラタマブを用いることを弱く推奨することが記載されている2)。より早期におけるタルラタマブの有用性を検討する試験として、SCLCの2次治療におけるタルラタマブの有用性を化学療法との比較により検証する国際共同第III相試験「DeLLphi-304試験」が進行中である。米国臨床腫瘍学会年次総会(2025 ASCO Annual Meeting)において、Charles M. Rudin氏(米国・メモリアルスローンケタリングがんセンター)が、本試験の第1回中間解析の結果を報告した。本試験において、タルラタマブは化学療法と比較して全生存期間(OS)および無増悪生存期間(PFS)を改善することが示された。本結果は、NEJM誌オンライン版2025年6月2日号に同時掲載された3)。・試験デザイン:国際共同第III相無作為化比較試験・対象:プラチナ製剤を含む化学療法±抗PD-1/PD-L1抗体薬による1次治療を受けたSCLC患者(無症候性の脳転移は治療歴を問わず許容)・試験群(タルラタマブ群):タルラタマブ(1日目に1mg、8、15日目に10mgを点滴静注し、以降は2週間間隔で10mgを点滴静注) 254例・対照群(化学療法群):化学療法(トポテカン、アムルビシン、lurbinectedinのいずれか)※ 255例・評価項目:[主要評価項目]OS[主要な副次評価項目]PFS、患者報告アウトカム[副次評価項目]奏効率(ORR)、奏効期間(DOR)、安全性など※:日本はアムルビシン 主な結果は以下のとおり。・対象患者の年齢中央値は、タルラタマブ群64歳、化学療法群66歳であった。脳転移を有する割合は、それぞれ44%、45%であり、肝転移については、それぞれ33%、37%であった。1次治療で抗PD-1/PD-L1抗体薬による治療を受けた割合は、いずれの群も71%であった。・主要評価項目のOS中央値は、タルラタマブ群13.6ヵ月、化学療法群8.3ヵ月であり、タルラタマブ群が有意に改善した(ハザード比[HR]:0.60、95%信頼区間[CI]:0.47~0.77、p<0.001)。1年OS率は、それぞれ53%、37%であった(追跡期間中央値はそれぞれ11.2ヵ月、11.7ヵ月)。・OSのサブグループ解析において、化学療法無治療期間が6ヵ月未満(化学療法抵抗性)の集団を含めて、いずれのサブグループでもタルラタマブ群が良好な傾向にあった。とくに脳転移を有する集団でタルラタマブ群が優位であった(HR:0.45、95%CI:0.31~0.65)。・PFS中央値は、タルラタマブ群4.2ヵ月、化学療法群3.7ヵ月であり、タルラタマブ群が有意に改善した(HR:0.71、95%CI:0.59〜0.86、p=0.002)。1年PFS率は、それぞれ20%、4%であった。・ORRは、タルラタマブ群35%、化学療法群20%であり、DOR中央値は、それぞれ6.9ヵ月、5.5ヵ月であった。・患者報告アウトカムの息切れ、咳についてもタルラタマブ群が化学療法群と比べて有意に改善した(それぞれp<0.001、p=0.012)。胸痛については、有意差がみられなかったもののタルラタマブ群が良好な傾向にあった。・Grade3以上の治療関連有害事象(TRAE)の発現割合は、タルラタマブ群27%、化学療法群62%であった。治療中断または減量に至ったTRAEの発現割合は、タルラタマブ群19%、化学療法群55%であった。・タルラタマブの注目すべき有害事象であるサイトカイン放出症候群(CRS)は、タルラタマブ群の56%に発現したが、そのうちの98%はGrade1/2であった。またCRSの多くが投与2回目までに発現した。・免疫エフェクター細胞関連神経毒性症候群(ICANS)は、タルラタマブ群の6%に発現したが、1例を除いてGrade1/2であった。1例はGrade5であった。 本結果について、Rudin氏は「タルラタマブがSCLCの2次治療における標準治療となることを支持するものであり、DeLLphi-304試験はSCLCの2次治療の標準治療を塗り変えるだけでなく、肺がん領域におけるBiTE(二重特異性T細胞誘導)抗体による免疫療法の活用法に、新たな時代を切り拓くものであると考えている」とまとめた。

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2025年版 心不全診療ガイドライン改訂のポイント(前編)【心不全診療Up to Date 2】第1回

2025年版 心不全診療ガイドライン改訂のポイント(前編)Key Point予防と早期介入の重視:心不全リスク段階(ステージA)に慢性腎臓病(CKD)を追加し、発症前の予防的アプローチを強化薬物療法の進展:SGLT2阻害薬が左室駆出率を問わず基盤治療薬となり、HFpEF/HFmrEFや肥満合併例への新薬(フィネレノン、インクレチン関連薬など)推奨を追加包括的・患者中心ケアへの転換:地域連携・多職種連携、急性期からのリハビリテーション、患者報告アウトカム評価、併存症管理を強化し、より統合的なケアモデルを推進はじめに心不全(Heart Failure:HF)は、本邦における高齢化の進展とともに患者数が増加し続け、医療経済的にも社会的にも大きな課題となっている1)。日本循環器学会(JCS)および日本心不全学会(JHFS)は、これまで2017年改訂版および2021年フォーカスアップデート版の「急性・慢性心不全診療ガイドライン」を策定してきたが、近年の国内外における新たなエビデンスの集積などを踏まえ、この度、2025年版としてガイドラインが7年ぶりに全面的に改訂された1)。本改訂では、治療アプローチの一貫性と包括性を重視し、患者の生活の質(Quality of Life:QOL)の向上を目指すとともに、本邦の診療実態、とくに高齢化社会における心不全診療の課題や特異性にも配慮がなされている。実臨床において質の高い心不全診療を提供するための指針となることを目的としており、本稿では、その主要な改訂点について概説する。主な改訂領域は、ガイドライン名称の変更、心不全の定義・分類の更新、左室駆出率(left ventricular ejection fraction:LVEF)別心不全に対する薬物療法、原疾患治療、特殊病態、診断・評価法、社会的側面への対応(地域連携・包括ケア)、急性非代償性心不全の管理、急性期リハビリテーション、併存症管理の強化など多岐にわたる。主な改訂点1. ガイドライン名称の変更とその背景今回の改訂における最も象徴的な変更点の1つは、ガイドラインの名称が従来の「急性・慢性心不全診療ガイドライン」から「心不全診療ガイドライン」へと変更されたことである。この変更の背景には、2つの重要な臨床的観点が存在する。第一に、心不全診療においては、急性増悪期から安定期、さらには終末期に至るまで、切れ目のない継続的な治療・管理が極めて重要であるという認識の高まりがある。第2に、臨床現場では心不全の急性期と慢性期を明確に区別することが困難な場合が多く、両者を一体のものとして捉えるほうが実態に即しているという判断がある。この名称変更は、単なる表題の変更に留まらず、心不全を急性期と慢性期という二分法で捉えるのではなく、患者の生涯にわたる連続的な病態(スペクトラム)として認識し、その各段階に応じたシームレスな管理戦略を志向する、より統合的なアプローチへの転換を示唆している。臨床医には、入院加療から外来管理、在宅ケアまでを見据えた、より長期的かつ包括的な視点での患者管理が求められる。2. 心不全の定義・分類の更新心不全の定義と分類に関して、国際的な整合性を図るため、2021年に発表された「心不全の普遍的定義と分類(Universal Definition and Classification of Heart Failure)」が全面的に採用された2)(図1)。図1. 心不全ステージの治療目標と病の軌跡画像を拡大するステージA(心不全リスク At Risk for HF)心不全のリスク因子(高血圧、糖尿病、肥満、心毒性物質曝露、心筋症の家族歴など)を有するが、器質的心疾患や心筋バイオマーカー異常、心不全症状・徴候を認めない段階。ステージB(前心不全 Pre-HF)器質的心疾患(心筋梗塞後、弁膜症、左室肥大など)、心機能異常(LVEF低下、拡張機能障害など)、または心筋バイオマーカー(Na利尿ペプチド、心筋トロポニン)上昇のいずれかを認めるが、現在および過去に心不全症状・徴候がない段階。ステージC(心不全 HF)器質的心疾患を有し、現在または過去に心不全症状・徴候を有する段階。ステージD(進行性心不全 Advanced HF)安静時にも重度の心不全症状があり、ガイドラインに基づいた治療(guideline-directed medical therapy:GDMT)にもかかわらず再入院を繰り返す、治療抵抗性または不耐容であり、心臓移植、機械的補助循環、緩和ケアなどの高度治療を要する段階。今回の改訂では、心不全への進展予防や早期介入の重要性が強調され、ステージAおよびステージBに関する記載が大幅に充実した。とくに注目すべきは、慢性腎臓病(chronic kidney disease:CKD)がステージAを定義する独立したリスク因子として明確に追加された点である。具体的には、推算糸球体濾過量(eGFR)が 60mL/min/1.73m2未満、またはアルブミン尿(尿中アルブミン/クレアチニン比[UACR]30mg/g以上)がCKDの基準として挙げられている。これは、心不全発症前の段階からCKDを重要なリスクとして認識し、早期介入を促す意図がある。ステージA/Bへの注力とCKDの明確な位置付けは、心不全管理における戦略的な重点が、発症後の治療のみならず、発症前の予防へと大きくシフトしていることを示している(図2)。心血管リスク因子、とくにCKDを早期に特定し、心臓への構造的・機能的ダメージが生じる前、あるいは症状が出現する前に介入することの重要性が強調されている。CKDの追加は、心腎連関の重要性を再認識させ、腎臓専門医との連携や、心腎双方に有益な治療法(例:SGLT2阻害薬)の早期導入を促進する可能性がある。これにより、臨床現場ではリスク因子の系統的なスクリーニングと、より早期からの予防的治療介入(血圧管理、CKD/糖尿病合併例でのSGLT2阻害薬など)が求められることになる。図2. 心不全予防アルゴリズム画像を拡大する3. LVEF別心不全に対する薬物療法のアップデートLVEFに基づいた薬物療法アルゴリズムは、2021年のフォーカスアップデート以降に発表された大規模臨床試験の結果を反映し、大幅に更新された(図3)。とくに、HFmrEF/HFpEFにおけるSGLT2阻害薬、MRAの推奨を追加、肥満合併心不全に対するインクレチン関連薬の推奨が追加された。図3 心不全治療のアルゴリズム画像を拡大するこれらの改訂の中で特筆すべきは、SGLT2阻害薬がHFrEFのみならず、HFmrEF、HFpEFにおいてもClass I推奨となった点である。これは、SGLT2阻害薬がLVEFや糖尿病の有無によらず、心不全の予後を改善する可能性を示唆しており、心不全薬物療法の基盤となる薬剤として位置付けられたことを意味する。一方で、HFpEFにおいては、SGLT2阻害薬Class I推奨に加え、特定の表現型(フェノタイプ)に基づいた治療戦略の重要性も示唆されている。とくに、肥満合併例に対するインクレチン関連薬(GLP-1受容体作動薬、GIP/GLP-1受容体作動薬)のClass IIa推奨は、HFpEFの多様性を考慮し、個々の患者の背景にある病態生理や併存疾患に応じた個別化治療へと向かう流れを示している。表1:肥満合併心不全に対するインクレチン関連薬(GLP-1受容体作動薬、GIP/GLP-1受容体作動薬)の推奨画像を拡大する次回は、本ガイドライン改訂における特殊病態や新規疾患概念とその治療や評価法、社会的側面への対応、急性非代償性心不全の管理などのポイントについて解説する。 1) Kitai T, et al. Circ J. 2025 Mar 28. [Epub ahead of print] 2) Bozkurt B, et al. J Card Fail. 2021;27:387-413. 3) Kosiborod Mikhail N, et al. N Engl J Med. 2023;389:1069-1084. 4) Packer M, et al. N Engl J Med. 2025;392:427-437.

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添付文書改訂:サイアザイド系やアセタゾラミドを含む利尿薬に急性近視など眼系副作用追加/リオシグアトとアゾール系抗真菌剤が併用禁忌から併用注意に ほか【最新!DI情報】第40回

2025年5月20日に、厚生労働省より「使用上の注意」の改訂指示が発出されました。この通知に基づき、以下の医薬品の添付文書の改訂が行われました。サイアザイド系利尿薬、アセタゾラミドを含む利尿薬<対象薬剤>利尿薬のうちスルホンアミド構造を有する炭酸脱水酵素阻害薬(経口剤、注射剤)、サイアザイド系利尿薬(アセタゾラミド、アセタゾラミドナトリウム、インダパミド、メフルシド、ヒドロクロロチアジド、ベンチルヒドロクロロチアジド、トリクロルメチアジド、カンデサルタン シレキセチル・ヒドロクロロチアジド、テルミサルタン・ヒドロクロロチアジド、テルミサルタン・アムロジピンベシル酸塩・ヒドロクロロチアジド、バルサルタン・ヒドロクロロチアジド、ロサルタンカリウム・ヒドロクロロチアジド、イルベサルタン・トリクロルメチアジド)<改訂年月>2025年5月<改訂項目>「重要な基本的注意」や「副作用」などの項に「急性近視、閉塞隅角緑内障、脈絡膜滲出」の記載または追記<ここがポイント!>海外(米国、EU、カナダなど)においては、サイアザイド系利尿薬(サイアザイド類似利尿薬含む)およびアセタゾラミドを含む利尿薬に関して、急性近視、閉塞隅角緑内障、脈絡膜滲出に関するリスク評価や安全対策が行われています。また、スルホンアミド構造を有する医薬品とこれらの有害事象との関連性を示唆する報告も複数存在しています。これらの情報を踏まえ、国内外の副作用症例および公表論文を評価した結果、該当する医薬品については「使用上の注意」の改訂が適切であると判断されました。なお、フロセミドについては、閉塞隅角緑内障または脈絡膜滲出との因果関係が否定できないと評価された症例が各1例であること、トラセミドおよびアゾセミドについては急性近視、閉塞隅角緑内障、脈絡膜滲出との因果関係が否定できない症例が認められていないことから、現時点での使用上の注意の改訂は不要と判断されています。リオシグアト<対象薬剤>リオシグアト<改訂年月>2025年5月<改訂項目>アゾール系抗真菌剤(イトラコナゾール、ボリコナゾール)を禁忌および併用禁忌から削除し、イトラコナゾール、ボリコナゾールとして併用注意に記載<ここがポイント!>リオシグアトは、初回審査時には臨床薬物相互作用試験の成績は得られていませんでしたが、複数のCYP分子種(CYP1A1、CYP3Aなど)によって代謝され、またP糖タンパク/乳がん耐性タンパク(P-gp/BCRP)の基質であることが知られていました。このため、アゾール系抗真菌薬(イトラコナゾール、ボリコナゾール)やHIVプロテアーゼ阻害薬(リトナビル、アタザナビルなど)との併用は禁忌とされていました。しかし、2022年9月には、HIVプロテアーゼ阻害薬の併用について、「併用注意」へと変更されました。今回、リオシグアトとアゾール系抗真菌剤との薬物動態学的相互作用を検討したin vitro試験の結果から、イトラコナゾールまたはボリコナゾールの併用時のリオシグアトの曝露量の増加は、ケトコナゾールやHIVプロテアーゼ阻害薬併用時と同程度であると推定されました。加えて、リオシグアトは低用量から開始し、患者の状態に応じて用量調整することや開始用量・維持用量の減量、低血圧の症状および徴候のモニタリングなどが実施されるため、イトラコナゾールまたはボリコナゾール併用時の安全性は確保できると考えられました。このため、イトラコナゾールおよびボリコナゾールとの併用は禁忌から削除され、併用注意への記載に改訂されました。なお、欧米などの海外添付文書においてもイトラコナゾールおよびボリコナゾールはリオシグアトとの併用禁忌とされていません。ドンペリドン<対象薬剤>ドンペリドン<改訂年月>2025年5月<改訂項目>「禁忌」から「妊婦又は妊娠している可能性のある女性」を削除し、「妊婦」の項に「妊婦または妊娠している可能性のある女性には、治療上の有益性が危険性を上回ると判断される場合にのみ投与すること」の注意喚起を記載<ここがポイント!>ドンペリドンは、開発段階におけるラット胎児の器官形成期投与試験において、臨床用量の約65倍(200mg/kg)の用量で胎児に内臓および骨格異常などの催奇形性が認められたことから、「妊婦または妊娠している可能性のある女性」への投与は禁忌とされていました。しかし、70mg/kg/日の用量(最大推奨臨床用量の23倍に相当)では母動物に毒性および胎児に軽度の毒性が認められたものの、催奇形性は認められませんでした。さらに、妊娠初期における本剤の曝露に関する疫学研究では、先天異常のリスク増加を示唆する結果は得られていません。また、国内ガイドラインにおいても、本剤は「妊娠初期のみ使用された場合、臨床的に有意な胎児への影響はないと判断してよい医薬品」の一覧に記載されています。加えて、海外添付文書においても、本剤の妊婦への使用は禁忌とされていません。これらの情報から、本剤の添付文書における「禁忌」から「妊婦または妊娠している可能性のある女性」が削除されました。一方、海外添付文書の記載状況を踏まえて、「妊婦」の項に「妊婦または妊娠している可能性のある女性には、治療上の有益性が危険性を上回ると判断される場合にのみ投与すること」との注意喚起が記載されました。ベネトクラクス、セリチニブ<対象薬剤>ベネトクラクス、セリチニブ<改訂年月>2025年5月<改訂項目>ベネトクラクス:「禁忌」の項の「用量漸増期における強いCYP3A阻害剤」にセリチニブを追記。「併用禁忌」の項にセリチニブを追記セリチニブ:「禁忌」の項に「次の薬剤を投与中の患者:ベネトクラクス」を追記。「併用禁忌」の項にベネトクラクスを追記<ここがポイント!>セリチニブの強いCYP3A阻害作用により、ベネトクラクスの血中濃度が上昇し、腫瘍崩壊症候群の発現が増強される恐れがあるため、使用上の注意を改訂することが適切と判断されました。エプレレノン、ボリコナゾール、ポサコナゾール<対象薬剤>エプレレノン、ボリコナゾール、ポサコナゾール<改訂年月>2025年5月<改訂項目>エプレレノン:「禁忌」および「併用禁忌」の項にボリコナゾール、ポサコナゾールを追記ボリコナゾール、ポサコナゾール:「禁忌」および「併用禁忌」の項にエプレレノンを追記<ここがポイント!>強力なCYP3A4阻害薬であるケトコナゾールとの併用による臨床薬物相互作用試験において、エプレレノンの曝露量(AUC)は約5.4倍に増加することが確認されています。この結果を踏まえ、エプレレノンの承認時より、ケトコナゾールと同程度のCYP3A阻害作用を有する薬剤(イトラコナゾールなど)は併用禁忌とされています。一方、エプレレノンとボリコナゾールまたはポサコナゾールの臨床薬物相互作用試験の結果はありませんが、これらの薬剤もCYP3Aを強力に阻害することが知られています。そのため、これらの薬剤と併用した場合、エプレレノンの血漿中濃度が著しく上昇し、副作用のリスクが高まる可能性が懸念されます。以上の知見を踏まえ、使用上の注意を改訂し、両剤の併用を禁忌とすることが適切と判断されました。

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医学的に説明困難な身体症状【日常診療アップグレード】第31回

医学的に説明困難な身体症状問題72歳男性。3ヵ月前から始まった夜間の息苦しさを主訴に来院した。高血圧、糖尿病、逆流性食道炎で近くのクリニックに通院中である。バルサルタン(ARB)、シタグリプチン(DPP-4阻害薬)、ランソプラゾール(PPI)を内服中である。血液検査、尿検査、心電図、心エコー検査、上部内視鏡検査で異常を認めない。説明が非常に難しい苦しみで、ある時にスッとよくなるという。バイタルサインは正常で、身体診察でも異常はない。患者は心疾患を心配している。冠動脈CT検査をオーダーした。

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第269回 糖尿病黄斑浮腫患者の視力が経口薬ラミブジンで改善

糖尿病黄斑浮腫患者の視力が経口薬ラミブジンで改善専門家の手を必要とする目への注射ではなく経口投与で事足りる抗ウイルス薬のラミブジンが、小規模ながら歴としたプラセボ対照無作為化試験で糖尿病黄斑浮腫(DME)患者の視力を改善しました1,2)。網膜に水が溜まることで生じるDMEは糖尿病患者の失明の主な原因であり、糖尿病患者の14例に1例ほどが被ると推定されています。DMEの鉄板の治療といえば目への血管内皮増殖因子(VEGF)阻害薬の定期的な注射ですが、高価であり、世界的には多くの患者がしばしば手にすることができていません。DMEをラミブジンのような経口薬で治療できるなら、たいてい毎月1回の投与が必要な注射薬に比べて格段に便利であり、DME治療を飛躍的に進歩させることができそうです。月20ドルかもっと安価なラミブジンは核酸系逆転写酵素阻害薬(NRTI)の類いの1つで、ウイルスのポリメラーゼ(逆転写酵素)を抑制するもともとの効果に加えて、免疫系の一員のインフラマソームを阻止する作用があります。インフラマソームは感染の感知に携わりますが、悪くするとどうやらDMEの発現に手を貸してしまうようです。ゆえにインフラマソーム阻害作用を有するラミブジンはDMEに効くかもしれないと米国のバージニア大学の研究者Jayakrishna Ambati氏らは考えました。Ambati氏はブラジルの大学と協力して無作為化試験にDME成人患者24例を組み入れ、10例にはラミブジン、あとの14例にはプラセボを8週にわたって1日2回服用してもらいました。また、4週目にはVEGF阻害薬ベバシズマブが眼内に注射されました(わが国では眼病変に対する投与は適応外)。ベバシズマブの効果が及ぶ前の4週時点で、ラミブジン投与群の視力検査の成績はもとに比べて約10文字(9.8文字)改善していました。一方プラセボ群は逆に2文字ほど(1.8文字)悪化していました。ラミブジンはベバシズマブの効果をも高めうるようで、ベバシズマブ眼内注射後4週時点での視力検査成績は17文字ほど(16.9文字)改善していました。プラセボ群のベバシズマブ眼内注射後4週時点の視力改善はわずか5文字ほど(5.3文字)でした。より大規模な試験でのさらなる裏付けが必要ですが、今回の試験結果によるとラミブジンは単独投与とベバシズマブ眼内注射との組み合わせのどちらでも効果があるようです。専門医に診てもらうことがままならない、定期的な診療を受ける余裕や交通手段がない世界の多くの患者をラミブジンが劇的に生きやすくしうる可能性があるとAmbati氏は言っています。NRTIを作り変えて逆転写酵素には手出ししないようにしたKamuvudineと銘打つインフラマソーム阻害薬も生み出されており3)、その1つのKamuvudine-9(K9)がDME患者相手の第I相試験段階に至っています4)。Ambati氏を共同設立者の1人とするInflammasome Therapeutics社が試験に協力しています。 参考 1) Pereira F, et al. Med. 2025 May 23. [Epub ahead of print] 2) HIV drug can improve vision in patients with common diabetes complication, clinical trial suggests / Eurekalert 3) Narendran S, et al. Signal Transduct Target Ther. 2021;6:149. 4) ClinicalTrials.gov / Evaluation of K9 in Subjects With Diabetic Macular Edema (DME)

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日本人大腸がんの半数に腸内細菌が関与か、50歳未満で顕著/国がんほか

 日本を含む11ヵ国の大腸がん症例の全ゲノム解析によって発がん要因を検討した結果、日本人症例の50%に一部の腸内細菌から分泌されるコリバクチン毒素による変異シグネチャーが認められた。これらの変異シグネチャーは50歳未満の若年者において高頻度に認められ、高齢者と比較して3.3倍多かった。この報告は、国立がん研究センターを含む国際共同研究チームによるもので、Nature誌オンライン版2025年4月23日号に掲載された。 本研究は、世界のさまざまな地域におけるがんの全ゲノム解析を行うことで、人種や生活習慣の異なる地域でがんの発症頻度に差がある原因を解明し、地球規模で新たな予防戦略を進めることを目的としている。今回は、大腸がん症例の全ゲノム解析データから突然変異を検出し、複数の解析ツールを用いて変異シグネチャーを同定した。その後、地域ごと、臨床背景ごとに変異シグネチャーの分布に有意差があるかどうかを検討した。 主な結果は以下のとおり。・大腸がんの発症頻度の異なる11ヵ国から981例のサンプルを収集した。内訳は、日本28例、ブラジル159例、ロシア147例、イラン111例、カナダ110例、タイ104例、ポーランド94例、セルビア83例、チェコ56例、アルゼンチン53例、コロンビア36例であった。日本人症例28例は、男性が18例、50歳以上が20例であった。・国別の変異シグネチャーの比較では、腸内細菌由来のコリバクチン毒素による変異シグネチャー(SBS88またはID18)は日本人症例の50%で検出され、他の地域の平均と比較して2.6倍多かった。・国別の大腸がん発症頻度は変異シグネチャーの量と正の相関を示し、11ヵ国で最も大腸がんの発症頻度が高い日本人症例において最もSBS88およびID18の量が多かった。・SBS88およびID18は、若年者症例(50歳未満)のほうが高齢者症例(70歳以上)よりも3.3倍多く検出された。・ドライバー変異と変異シグネチャーとの関連の検討では、大腸がんにおいて最も早期に起こるドライバー異常であるAPC変異の15.5%がSBS88またはID18のパターンと一致し、コリバクチン毒素によるDNA変異が大腸がんの発症早期から関与していることが示唆された。・変異シグネチャーの有無とコリバクチン毒素産生菌の量には有意な相関は認められず、早期からの持続的な暴露が大腸がんの発症に関与している可能性が考えられた。 これらの結果より、研究グループは「本研究によって、大腸がんの遺伝子変異には地域や年齢による違いがあることが明らかになった。コリバクチン毒素産生菌への早期からの曝露が、若年発症大腸がんの増加に関与している可能性が示唆される」とまとめた。

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うつ病リスクに影響を及ぼす食事パターン、男女や年齢で違いがあるか?

 食生活パターンは、うつ病リスクと関連している可能性がある。男女間および年齢層別の食生活パターンの違いは報告されているものの、うつ病リスクへの影響はこれまで十分に検討されていなかった。フランス・マルセイユ大学のYannis Achour氏らは、性別および年齢層における食生活パターンとうつ病リスクとの関連性を調査し、ターゲットを絞った予防および介入戦略に役立てるため、脆弱な集団を特定することを目指し、本研究を実施した。Nutrients誌2025年5月4日号の報告。 2021〜23年に横断的オンライン国際調査ALIMENTAK研究として実施された。食生活データは検証済み食品摂取頻度質問票、うつ病データは検証済み自己申告質問票を用いて収集した。主要成分分析(PCA)を用いて、異なる食品摂取パターンを特定した。さらに食生活パターンとうつ病との関連性を評価するため、複数の潜在的な交絡因子で調整したのち、多変量解析を実施した。 主な結果は以下のとおり。・慢性疾患でないまたは現在向精神薬治療を行っていない参加者1万5,262人のうち、4,923人(32.2%)がうつ病群に分類された。・18〜34歳の参加者において、超加工食品摂取は、男女とも同様に、うつ病リスク上昇との関連が認められた。・18〜34歳の女性では、炭酸飲料および缶詰/冷凍食品は、うつ病リスク上昇と関連していた。●18〜34歳【超加工食品】女性のオッズ比(OR):1.21(95%信頼区間[CI]:1.15〜1.27)、男性のOR:1.21(95%CI:1.07〜1.18)【炭酸飲料】女性の調整OR:1.10(95%CI:1.06〜1.95)【缶詰/冷凍食品】女性の調整OR:1.10(95%CI:1.04〜1.15)・35〜54歳および55歳以上の参加者において、女性でのみ超加工食品とうつ病リスクとの関連が認められた。・果物、ナッツ、緑黄色野菜などの健康的な食事とうつ病リスク低下との間に有意な関連が認められた。●35〜54歳【超加工食品】女性の調整OR:1.30(95%CI:1.20〜1.42)【健康的な食事(果物、ナッツ、緑黄色野菜)】調整OR:0.82(95%CI:0.75〜0.89)●55歳以上【超加工食品】女性の調整OR:1.41(95%CI:1.11〜1.79)【健康的な食事(果物、ナッツ、緑黄色野菜)】調整OR:0.79(95%CI:0.64〜0.97) 著者らは「食生活パターンとうつ病リスクとの関連性は、男女間および年齢層間で有意な差があることが明らかとなった。これらの知見は、公衆衛生介入のより明確なターゲティングに役立つ可能性がある」と結論付けている。

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PD-L1陽性の未治療進行TN乳がん、SG+ペムブロリズマブがPFSを改善(ASCENT-04/KEYNOTE-D19)/ASCO2025

 PD-L1を発現する未治療で手術不能の局所進行または転移を有するトリプルネガティブ乳がん患者を対象に、サシツズマブ ゴビテカン(SG)+ペムブロリズマブ併用療法の有効性と安全性を評価した第III相ASCENT-04/KEYNOTE-D19試験の結果、SG+ペムブロリズマブは化学療法+ペムブロリズマブよりも無増悪生存期間(PFS)を有意に改善したことを、米国・ダナファーバーがん研究所のSara M. Tolaney氏が米国臨床腫瘍学会年次総会(2025 ASCO Annual Meeting)で発表した。・試験デザイン:国際共同非盲検ランダム化第III相試験・対象:PD-L1を発現する(CPS≧10、22C3アッセイ)、未治療(根治治療の完了から6ヵ月以上経過)で手術不能の局所進行または転移を有するトリプルネガティブ乳がん患者 443例・試験群:サシツズマブ ゴビテカン(21日サイクルの1・8日目に10mg/kg)+ペムブロリズマブ(21日サイクルの1日目に200mg) 221例・対照群:医師選択の化学療法(ゲムシタビン+カルボプラチン、パクリタキセル、nab-パクリタキセル)+ペムブロリズマブ※ 222例 ※病勢進行時はSGへのクロスオーバーが許容・評価項目:[主要評価項目]RECIST v1.1に基づく盲検下独立中央判定(BICR)によるPFS[副次評価項目]全生存期間(OS)、BICRによる奏効率(ORR)、BICRによる奏効期間(DOR)、安全性、QOL・データカットオフ:2025年3月3日 主な結果は以下のとおり。・443例が両群に1:1に無作為に割り付けられ、病勢進行または許容できない毒性が認められるまで投与が継続された。追跡期間中央値は14.0ヵ月(範囲:0.1~28.6)であった。・年齢中央値はSG+ペムブロリズマブ群54歳、化学療法+ペムブロリズマブ群55歳、両群ともにde novoが34%、6~12ヵ月以内の再発が18%、12ヵ月以上前の再発が48%であった。以前の治療歴は、タキサン系が52%/51%、ゲムシタビン+カルボプラチンが48%/49%、PD-(L)1阻害薬が4%/5%であった。・主要評価項目であるBICRによるPFS中央値は、SG+ペムブロリズマブ群11.2ヵ月(95%信頼区間[CI]:9.3~16.7)、化学療法+ペムブロリズマブ群7.8ヵ月(同:7.3~9.3)であり、SG+ペムブロリズマブ群において統計学的に有意かつ臨床的に意義のある改善を示した(ハザード比[HR]:0.65[95%CI:0.51~0.84]、p<0.001)。12ヵ月PFS率は、48%および33%であった。・治験担当医評価のPFS中央値は、SG+ペムブロリズマブ群11.3ヵ月(95%CI:9.2~14.6)、化学療法+ペムブロリズマブ群8.3ヵ月(同:7.3~9.3)であった(HR:0.67[95%CI:0.52~0.87]、p=0.002)。12ヵ月PFS率は、48%および36%であった。・ORRは、SG+ペムブロリズマブ群60%(95%CI:52.9~66.3)、化学療法+ペムブロリズマブ群53%(同:46.4~59.9)であった(オッズ比:1.3[95%CI:0.9~1.9])。完全奏効は13%および8%であった。・DOR中央値は、SG+ペムブロリズマブ群16.5ヵ月(95%CI:12.7~19.5)、化学療法+ペムブロリズマブ群9.2ヵ月(同:7.6~11.3)であった。・OSデータは未成熟(成熟度26%)であったが、SG+ペムブロリズマブ群において良好な傾向がみられた。・Grade3以上の試験治療下における有害事象(TEAE)は、SG+ペムブロリズマブ群71%、化学療法+ペムブロリズマブ群70%に発現した。10%以上に発現したGrade3以上のTEAEは、SG+ペムブロリズマブ群では好中球減少症(43%)と下痢(10%)で、化学療法+ペムブロリズマブ群では好中球減少症(45%)や貧血(16%)、血小板減少症(14%)であった。新たな安全性シグナルは認められなかった。・SG+ペムブロリズマブ群では、TEAEによる治療中止が化学療法+ペムブロリズマブ群よりも少なかった(12%および31%)。 これらの結果より、Tolaney氏は「ASCENT-04/KEYNOTE-D19試験の結果は、SG+ペムブロリズマブ併用療法がPD-L1陽性の未治療進行トリプルネガティブ乳がん患者に対する新たな標準治療となる可能性を支持するものである」とまとめた。

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どのように多発性骨髄腫治療の長い道のりを乗り越えるか/日本骨髄腫学会

 多発性骨髄腫の治療は目覚ましい進歩を遂げている。その一方で、高齢化や治療の長期化に伴う課題も顕在化している。第50回日本骨髄腫学会学術集会では、多発性骨髄腫診療における地域連携と多職種連携について議論された。多発性骨髄腫治療の課題を解決する中核病院と診療所の「並走的連携」 兵庫医科大学の吉原 享子氏は、地域の中核病院の立場から多発性骨髄腫治療について述べた。多発性骨髄腫の治療は、中核病院で患者を安定させ、地域連携病院や在宅診療へと移行するのが通常である。長期に渡る治療においては合併症のフォローアップが重要であり、地域医療機関との連携は不可欠である。とくに、CAR-T療法などの高度治療では、紹介元病院との連携を密にして円滑に治療を提供できる体制づくりが求められる。 医療法人星医院の磯田 淳氏は多発性骨髄腫診療の課題として、治療薬の高度化、患者の高齢化、治療期間の長期化をあげた。院内連携で高度化や複雑化に対応し、高齢化や長期化に対応には地域連携で対応する。現在の日本の骨髄腫の病診連携の形としては、中核病院が診療を継続し診療所がサポートする「並走型連携」が現実的である。こうした地域との連携が機能することで、入院中の高度なレジメンが患者の予後改善に効果的に結びつくことになる。多発性骨髄腫患者をチームで支える看護師、薬剤師 渋川医療センターの本多 昌子氏は看護師の立場から病院での取り組みを紹介。院内における対面カンファレンスの重要性を指摘した。また、患者にとって最も身近な存在である看護師は、収集した情報をカンファレンスで提供し、チームのハブとしての役割を担うべきだと述べた。 国立国際医療研究センターの小室 雅人氏は、多発性骨髄腫治療の複雑化に伴い、薬剤師の役割が重要になっていると指摘。患者・家族への服薬指導だけでなく、医師に対する処方提案やポリファーマシー対策の提言も薬剤師の重要な業務である。とくに高齢患者においては、副作用により治療が継続不能になる可能性があるため薬剤師の役割は大きいという。かかりつけ医と骨髄腫主治医の連携を 日本骨髄腫患者の会の上甲 恭子氏は、2022年と25年に行ったアンケートの結果も交え、多発性骨髄腫患者が抱えるさまざまな問題について説明。医師との意識のギャップ、かかりつけ医と骨髄腫主治医の連携の重要性を指摘した。 アンケートの結果から、治療については骨髄腫主治医への依存度が高いこと、かかりつけ医と骨髄腫の主治医の連携によって患者のウェルビーイングが向上すると示唆された。

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末梢肺結節の診断、ナビゲーショナル気管支鏡検査は針生検に非劣性/NEJM

 直径10~30mmの末梢肺結節の悪性・良性を鑑別するための生検において、ナビゲーショナル気管支鏡検査は経胸壁針生検に対し、診断精度に関して非劣性であり、気胸の発生が有意に少ないことが、米国・Vanderbilt University Medical CenterのRobert J. Lentz氏らInterventional Pulmonary Outcomes Groupが実施した「VERITAS試験」で示された。研究の成果は、NEJM誌オンライン版2025年5月18日号で報告された。米国の医師主導型無作為化非劣性試験 VERITAS試験は、医師主導型の非盲検無作為化並行群間非劣性試験であり、2020年9月~2023年6月に米国の7施設で参加者を登録した(Medtronicなどの助成を受けた)。  肺がんの事前確率が10%以上で、直径10~30mmの末梢肺結節を有する成人患者を対象とした。被験者を、ナビゲーショナル気管支鏡検査を受ける群または経胸壁針生検を受ける群に1対1の割合で無作為に割り付けた。  主要アウトカムは診断精度とし、生検で特定の診断(悪性腫瘍または特定の良性病変)を受けた患者のうち、12ヵ月間の臨床的経過観察によりその診断が正確であることが確認された患者の割合と定義した(非劣性マージンは10%ポイント)。副次アウトカムには、気胸の発生などの手技に関連する合併症が含まれた。手技に要した時間は長かった 234例が主要アウトカムの解析の対象となり、ナビゲーショナル気管支鏡検査群に121例(年齢中央値66.0歳[四分位範囲[IQR]:62.0~72.0]、女性47.1%、追跡不能の2例[1.7%]を含む)、経胸壁針生検群に113例(68.0歳[61.0~74.0]、49.6%、3例[2.7%])を割り付けた。全体の結節の直径中央値は15mm(IQR:12~19)であり、82.5%は内部が充実成分のみの結節(solid nodule)で、87.6%では肺の外側3分の1の領域に結節が位置していた。  生検による特定の診断が、12ヵ月間の臨床的経過観察で正確であると確認されたのは、ナビゲーショナル気管支鏡検査群が119例中94例(79.0%)、経胸壁針生検群は110例中81例(73.6%)であり(絶対群間差:5.4%ポイント[95%信頼区間[CI]:-6.5~17.2])、診断精度に関してナビゲーショナル気管支鏡検査群の経胸壁針生検群に対する非劣性が示された(非劣性のp=0.003、優越性のp=0.17)。  生検により悪性腫瘍または特定の良性病変の病理所見が示された患者の割合は、ナビゲーショナル気管支鏡検査群が79.3%、経胸壁針生検群は77.9%であった(絶対群間差:1.5%ポイント[95%CI:-9.9~12.8])。このうち悪性腫瘍の診断の割合はそれぞれ64.5%および54.0%、特定の良性病変の診断の割合は13.2%および15.0%だった。また、手技に要した時間中央値は、それぞれ36分(IQR:28~48)および25分(13~36)であった(群間差中央値:11分[95%CI:8~18])。手技関連合併症、気胸は有意に少ない 手技関連合併症は、経胸壁針生検群で113例中33例(29.2%)に発生したのに対し、ナビゲーショナル気管支鏡検査群は121例中6例(5.0%)と有意に少なかった(絶対群間リスク差:24.2%ポイント[95%CI:15.0~35.6]、p<0.001)。このうち気胸は、ナビゲーショナル気管支鏡検査群で4例(3.3%)、経胸壁針生検群で32例(28.3%)に発現し(25.0%ポイント[15.3~34.8]、p<0.001)、胸腔ドレーン留置、入院、またはこれら両方に至ったのはそれぞれ1例(0.8%)および13例(11.5%)であった(10.7%ポイント[3.7~17.6])。  介入を要する出血は発生せず、12ヵ月の追跡期間中に死亡例はなかった。 著者は、「これらの結果は、技術的にどちらのアプローチも可能な肺結節の生検では、診断精度が経胸壁針生検と同程度で、合併症が少ないナビゲーショナル気管支鏡検査が選択すべき手技であることを示唆する」「本試験には教育施設と地域施設が参加しているが、ナビゲーショナル気管支鏡検査は経験豊富な呼吸器専門医が行っているため、今回の知見は専門知識が少ない施設には一般化できない可能性がある」としている。

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食生活の質は初潮を迎える年齢に影響する

 何を食べるかが、女児の初潮を迎える年齢に影響を与えるようだ。新たな研究で、食生活の炎症レベルが最も高かった女児では最も低かった女児に比べて、翌月に初潮を迎える可能性が約15%高いことが示された。この結果は、身長やBMIで調整後も変わらなかったという。米フレッド・ハッチンソンがんセンターのHolly Harris氏らによるこの研究の詳細は、「Human Reproduction」に5月6日掲載された。 この研究は、9〜14歳の米国の小児を対象にした追跡調査研究であるGrowing Up Today Study(GUTS)に1996年と2004年に参加した女児のうち、ベースライン時に初潮を迎えておらず、食生活の評価など必要なデータの完備した7,530人を対象にしたもの。参加者は初潮を迎える前に、9〜18歳の若者向けの食品摂取頻度調査(youth/adolescent food frequency questionnaire;YAQ)に回答しており、追跡期間中(2001〜2008年)に初潮を迎えた場合には、その年齢を報告していた。 研究グループは、YAQのデータを用いて代替健康食指数(Alternate Healthy Eating Index 2010;AHEI-2010)と経験的炎症性食事パターン(Empirical Dietary Inflammatory Pattern;EDIP)のスコアを算出し、食生活の質を評価した。AHEI-2010は、野菜、豆類、全粒穀物などの健康的な食品に高い点数を、赤肉や加工肉などの食品やトランス脂肪酸、塩分などを含む食品といった不健康な食品には低い点数を付与する。一方EDIPは、食生活が体内で炎症を引き起こす可能性を総合的に評価する。参加者を、スコアごとに最も高い群から最も低い群の5群に分類した上で、AHEI-2010スコアおよびEDIPスコアと初潮を迎える年齢との関連を検討した。 参加者の93%が追跡期間中に初潮を迎えていた。BMIや身長を考慮して解析した結果、AHEI-2010スコアが最も高い群、つまり、食生活が最も健康的な群は最も低い群に比べて、翌月に初潮を迎える可能性が8%低いことが示された(ハザード比0.92、95%信頼区間0.85〜0.99、P=0.03)。また、EDIPが最も高い群、つまり、食事の炎症性レベルが最も高い群では最も低い群に比べて、翌月に初潮を迎える可能性が15%高いことも示された(同1.15、1.06〜1.25、P=0.0004)。 Harris氏は、「AHEI-2010とEDIPの2つの食生活パターンは初潮年齢と関連しており、食生活がより健康的な女児では初潮年齢の高いことが示唆された。重要なのは、これらの結果がBMIや身長とは無関係である点だ。これは、体格に関わりなく健康的な食生活が重要であることを示している。初潮年齢の早期化は、糖尿病、肥満、心血管疾患、乳がんのリスク上昇など、その後の人生におけるさまざまな転帰と関連していることを考えると、これらの慢性疾患のリスク低減に取り組む上で、初潮を迎える前の時期は重要な可能性がある」と述べている。 Harris氏はまた、「われわれの調査結果は、全ての小児期および思春期の子どもが健康的な食事へのアクセスと選択肢を持つべきこと、また、学校で提供される朝食や昼食は、エビデンスに基づくガイドラインに準拠したものであるべきことを浮き彫りにしている」と話している。

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中耳炎の治療、将来は抗菌ゲルの単回投与で済むかも?

 中耳炎に罹患した幼児の面倒を見た経験のある親なら、症状の治りにくさや再発のしやすさを知っているだろう。小児の中耳炎では、通常は数日間に及ぶ経口抗菌薬を用いた治療が行われるが、耐性菌が発生しやすく、再発リスクも高い。こうした中、ゲル状の外用抗菌薬の単回投与により中耳炎を効果的に治療できる可能性のあることが動物実験で明らかになった。米コーネル大学R.F.スミス化学・生体分子工学科のRong Yang氏らによるこの研究結果は、「ACS Nano」4月8日号に掲載された。 耳に抗菌薬を直接塗布すると、経口抗菌薬の服用により生じ得る胃の不調やカンジダ症感染などの副作用を軽減できる可能性がある。しかし、中耳炎は通常、鼓膜の奥で発生し、鼓膜自体が浸透性の構造ではないため薬が届きにくく、ほとんど効果が得られないという。 そこでYang氏らは、抗菌薬のシプロフロキサシンをリポソームに封入して薬を患部にまで到達させる方法を考え出した。脂質二重膜でできたカプセル状構造物のリポソームは、皮膚や鼓膜のような膜組織の細胞構造と相互作用して薬の浸透性を高めることが知られている。一般には正に帯電したリポソームは、皮膚組織などに薬をよく届けるとされている。しかしYang氏らは今回、正に帯電したリポソームだけでなく、負に帯電したリポソームにもシプロフロキサシンを封入し、温度に応じてその性質を変化させる温度感受性ハイドロゲルに添加して抗菌薬ゲルを作った。その上で、これら2種類のゲルと、ハイドロゲルとシプロフロキサシンを合わせただけのゲルの3種類の効果を、チンチラを用いて検証した。チンチラは中耳炎の研究において、人間の耳とよく似た反応を示す動物モデルとして広く使用されている。 その結果、中耳炎に罹患したチンチラのうち、負に帯電したリポソームに封入されたシプロフロキサシン含有ゲルを鼓膜に塗布されたチンチラでは、24時間以内に治癒が確認された。また、治癒後7日間の間に鼓膜の炎症や中耳炎の再発は見られなかった。これに対し、ハイドロゲルとシプロフロキサシンを合わせたゲル、または正に帯電したリポソームに封入されたシプロフロキサシン含有ゲルで治療されたチンチラのうち、治療から7日後に治癒が確認された個体の割合はそれぞれ25%と50%にとどまり、鼓膜の炎症の程度も未治療の場合と同程度であった。 ただし、動物実験の結果は人間では異なる場合が多いと研究グループは指摘する。それでもYang氏らは、中耳炎に対する治療が抗菌薬の単回投与で済むのなら、患者の治療遵守が高まり、小児における抗菌薬の使用が減り、その結果、患者ケアが改善される可能性があると述べている。 Yang氏は、「私は、この技術を研究室での実験から臨床現場へ応用する次の段階に大きな期待を抱いている。この技術は患者の治療遵守を高め、耐性菌の減少に寄与し、最終的には小児に対する抗菌薬の投与法を変える可能性があるからだ」と話している。

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不定愁訴、魚介類の摂取不足が原因か

 女性は男性よりも原因不明の体調不良(不定愁訴)を訴える可能性が高い。今回、日本の若い女性における不定愁訴と抑うつ症状の重症度が、魚介類の摂取量と逆相関するという研究結果が報告された。研究は和洋女子大学健康栄養学科の鈴木敏和氏らによるもので、詳細は「Nutrients」に4月3日掲載された。 不定愁訴は、器質的な疾患背景を伴わない、全身の倦怠感、疲労感、動悸、息切れ、脳のもやもやなどの症状を指す。これらの症状は、検査で原因が特定できない場合が多く、心身のストレスや自律神経の乱れが関与していると考えられている。過去50年間に行われた様々な横断研究より、不健康なライフスタイルとそれに伴う栄養摂取の影響が不定愁訴に関連することが報告されている。しかし、不定愁訴と特定の食品、栄養素との関連は未だ明らかにされていない。このような背景を踏まえ、著者らは不定愁訴および抑うつ症状を定量化し、これらの症状の重症度と関連する栄養素や食品を特定することを目的として、日本の若年女性を対象とした横断的調査を実施した。 質問調査は2023年6~12月にかけて行われた。和洋女子大学に所属する18~27歳までの学部生86人が対象となり、参加者は同日に微量栄養素欠乏症関連愁訴質問票(MDCQ)、食物摂取頻度調査票(FFQg)、日本版ベック抑うつ質問票(BDI-II)の3種類の質問票に回答した。MDCQのスコアは26をカットオフとし、スコア26以下の参加者を愁訴の訴えが少ない群(LC群)、スコア27以上を訴えが多い群(HC群)とした。HC群では微量栄養素欠乏症の可能性があることを示す。BDI-IIスコアは、13をカットオフとし、13以下の参加者を抑うつ度の低い群(LD群)、14以上を抑うつ度の高い群(HD群)に分類した。2群間の比較にはMann-WhitneyのU検定を用いた。 FFQgから得られた86人の体組成、栄養摂取量は、2019年の国民健康・栄養調査報告(厚生労働省)から引用した20~29歳の日本人女性のそれとほぼ同等であった。参加者はMDCQスコア(≤26:LC群、≥27:HC群)とBDI-IIスコア(≤13:LD群、≥14:HD群)に基づいて2つのグループに分類された。摂取していた栄養素について、HC群とLC群およびHD群とLD群を比較したところ、HC群とHD群ではエイコサペンタエン酸(EPA)、ドコサヘキサエン酸(DHA)、ビタミンD、ビタミンB12の摂取量が有意に少ないことが分かった。これらの栄養素は日本人において主に魚から摂取されているため、両群の魚介類の摂取量を比較した。その結果、HC群の魚介類の摂取量(中央値〔範囲〕)は有意にLC群より低かった(35.9〔0~107.7〕g vs 53.8〔2.6~148.7〕g、P=0.005)。HD群とLD群を比較した場合でも、同様の低下が認められた(35.9〔0~107.7〕g vs 53.8〔0~148.7〕g、P=0.006)。 参加者はさらに、愁訴の訴えが少なくかつ抑うつ度の低いLC-LD群(MDCQ≦26かつBDI-II≦13)と愁訴の訴えが多くかつ抑うつ度の高いHC-HD群(MDCQ≧27かつBDI-II≧14)の2群に分けられた。両群の栄養素・食品摂取量を比較したところ、HC-HD群のEPA、DHA、ビタミンD、ビタミンB12の摂取量はLC-LD群よりも有意に低かった。さらに、HC-HD群では、亜鉛、セレン、モリブデン、パントテン酸といったその他の微量栄養素も有意に減少していた。食品摂取量に関しては、HC-HD群の魚介類の摂取量は、LC-LD群よりも75%低かった(12.8〔0~107.7〕g vs 53.8〔2.6~148.7〕g、P=0.001)。 本研究について著者らは、「本研究から、魚介類の摂取量は、不定愁訴の重症度および抑うつ状態に関連があることが分かった。魚介類の摂取または、EPA、DHA、ビタミンDなどの摂取が、精神神経疾患の不定愁訴およびうつ病の予防・管理に有効であるかどうかを検証するには、さらなる研究が必要だ」と述べている。 本研究の限界点については、推定された栄養素および食品量は絶対値でなく概算値であったこと、食事の質や抑うつ症状の有病率に影響する社会経済的地位のような共変量を考慮していないことなどを挙げている。

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NEJMに掲載された論文でも世界の標準治療に影響を与えるとは限らない?(解説:後藤信哉氏)

 心筋梗塞と脳梗塞の病態には類似点が多い。心筋梗塞は冠動脈の動脈硬化巣破綻部位に形成される血栓が原因であるのに対して、脳梗塞の原因には塞栓症、微小血管障害などもあり複雑である。心筋梗塞により病態の似ているlarge-vessel occlusionによる脳梗塞が本研究の対象とされた。 脳も心臓も虚血臓器に速やかに血液を灌流することが重要である。虚血の原因は血栓であるため、血栓溶解療法に期待が大きかった。しかし、心筋梗塞治療では血栓溶解療法の役割は残らなかった。病院への搬送に時間がかかる場合には救急車内にて血栓溶解療法を施行することも検討されたが、再灌流障害としての心室細動なども考えると、ともかくカテーテル治療のできる施設に素早く搬送することが何よりも重要との結論になった。 本研究は中国で施行された550例のランダム化比較試験である。発症4.5時間以内の症例に限局し、90日の自立の予後はtenecteplase治療群にて良好とされた。比較的小規模の、必ずしもhardではないendpointの1国でのランダム化比較試験は、以前であればNEJMに届かなかった。本研究が公開されても標準治療が変わるとは思い難い。

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第245回 医師を襲うSNS誹謗中傷、ワクチンについての正しい情報発信が敵意の対象に

<先週の動き> 1.医師を襲うSNS誹謗中傷、ワクチンについての正しい情報発信が敵意の対象に 2.「宿直医の遠隔兼務」を検討へ、ICT活用で実現へ/政府 3.地域医療の“最後の砦”は誰が担う? 特定機能病院制度に再編の兆し/厚労省 4.「骨太の方針2025」で開業医狙い撃ち? 報酬適正化と負担増の両刃政策/政府 5.B型肝炎の既往歴を主治医が見落とし、リウマチ患者が死亡/名古屋大学 6.フランスで「死の援助」法案が下院可決、終末期医療の転換点に 1.医師を襲うSNS誹謗中傷、ワクチンについての正しい情報発信が敵意の対象に新型コロナウイルス感染拡大の時期に、メディアを通じて医療現場の実情やワクチンの有効性を発信してきた医師たちが、SNS上で激しい誹謗中傷にさらされたことをきっかけにネットでの医師の情報発信について法的対応が必要になってきた。埼玉医科大学総合医療センター教授の岡 秀昭医師は、SNSでの発信を始めた2020年以降、匿名アカウントからの罵詈雑言や容姿・家族への攻撃、自宅住所の晒し行為、さらには殺害予告まで受けた。岡医師は弁護士らと相談の上、2022年10月に制度化された「発信者情報開示命令」を活用し、人格攻撃に該当すると判断された投稿約50件について情報開示を申し立て、これまでに20人超を特定。投稿削除や謝罪、最大100万円の和解金支払いに至ったケースもある。その一方で、一部の対象者には民事訴訟や刑事告訴も進行中だ。投稿者の中には「感情的になり軽率だった」とする謝罪文を送る者もいたが、「殺意」などの過激な投稿もあり、深刻さは増している。同様に、コロナワクチン情報サイト「こびナビ」の元副代表・木下 喬弘医師も中傷被害に遭い、自宅住所の晒しや虚偽情報拡散を受け、法的対応を決断した。だが、情報開示には半年以上を要し、証拠収集や投稿精査に膨大な労力がかかったという。木下医師は「施策実行の妨げになる」との危機感から提訴に踏み切ったと述べる。発信者情報開示制度は、従来の二段階手続きを簡素化し、原則1件数千円・約100日で開示に至る。しかし、SNS事業者側が必要情報を持たない場合や、投稿者の支払い能力がない場合には、費用回収も困難となる。また、開示の可否は投稿が名誉毀損や人格攻撃に該当するか否かで左右されるため、慎重な証拠収集が求められる。投稿日時やURL入りのスクリーンショットの保存が有効とされる。最高裁判所によると、開示命令の申立件数は2023年で前年比1.7倍の6,779件に上るなど急増しており、社会に「反撃」意識が浸透しつつあることが背景にあるとみられる。国際大学グローバル・コミュニケーション・センターの山口 真一准教授は、法制度だけでなくSNS運営会社による速やかな削除対応や、投稿者への啓発が今後の課題と指摘している。医師による科学的情報発信が敵意にさらされる現実に、医療従事者自身も直面する可能性がある。SNS上の発信には正確さと冷静さを求められると同時に、攻撃への備えとして法的手段や証拠の保存を知ることが、自身と社会を守る手段となり得る。 参考 1) テロリスト、戦犯…女性がXに不穏な投稿を続けた理由を語った 標的は「コロナ対策を呼びかける医師」(東京新聞) 2) ネットリンチ…1時間に30件の暴言にさらされ続けた岡秀昭医師 「発信者」たちを特定しようと決意した経緯(同) 3) コロナ解説きっかけ、SNS中傷5,000件被害の医師「萎縮すれば正しい情報伝わらない」(読売新聞) 4) SNSひぼう中傷受けた医師 投稿者20人超を特定した秘策(NHK) 2.「宿直医の遠隔兼務」を検討へ、ICT活用で実現へ/政府医師の宿直義務について、政府は今後、オンラインを活用した「遠隔兼務」を正式に制度化する方向で検討を開始する。規制改革推進会議の答申(5月28日付)では、2025年度上期から要件の検討を始め、遅くとも2027年度中に結論を得て、措置を講じると明記された。これは、とくに医師不足が深刻な地方病院において、夜間帯の宿直体制を効率化し、昼間の診療体制を確保する狙いがある。宿直対応を1人の医師が複数の病院で遠隔的に担うという新たな勤務モデルが導入されれば、医療資源の最適配置に大きく貢献できる可能性がある。この議論の背景には、谷田病院(熊本県甲佐町)をはじめとする慢性期医療機関の現場からの強い要望がある。谷田病院では2024年の平日夜間、宿直1回当たりの平均対応件数が0.78回と非常に少なく、大半のケースは電話やカルテ確認によるオンコール対応で済んでいた。実際に、夜間の発熱や軽度高血圧などに対しては、解熱剤処方や経過観察の指示で十分対応可能だったという。こうした現場の実情を踏まえ、厚労省は2025年に医療法第16条とその施行規則に基づく「宿直医義務」の例外規定について解釈の明確化を図る。これまで「電話による指示」に限定されていた部分を、「オンライン等の情報通信機器」による対応も含まれることを明確にし、ICT技術の進展を制度に反映させる。加えて、医療提供体制を維持する観点から、電子カルテの情報共有などを含めた技術的要件と、医師の駆け付け可能な距離・対応時間などの勤務条件を整備することが検討されている。地域間格差の拡大を避けるため、「ローカルルール」の発生を防ぐことも留意事項に盛り込まれている。今後の焦点は、実際に「遠隔兼務」が可能となる医療機関の条件整備と、緊急時対応の安全性確保にある。とりわけ、死亡診断や蘇生処置など現地での対応が必要なケースとの線引きが課題となる。少子高齢化が進行し、医療需要が高まる中、限られた人材で地域医療を維持するために、「常駐」から「最適配置」への転換が求められている。今回の制度改革は、そうした時代の要請に応える第一歩となるだろう。 参考 1) 宿直医、複数病院の掛け持ち可能に 人手不足解消へ厚労省が容認(日経新聞) 2) 宿直医のオンライン活用による「遠隔兼務」、遅くとも2027年度中に結論へ(日経メディカル) 3) 資料「地域における病院機能の維持に資する医師の宿直体制の見直し」について(規制改革推進会議) 4) 規制改革推進に関する答申(同) 3.地域医療の“最後の砦”は誰が担う? 特定機能病院制度に再編の兆し/厚労省厚生労働省は5月29日、「特定機能病院及び地域医療支援病院のあり方に関する検討会」を開き、大学病院本院以外の特定機能病院の承認要件の見直しに着手した。現在、88の特定機能病院のうち79が大学病院本院である一方、それ以外の9病院は総合型(国立国際医療研究センター病院、聖路加国際病院)と特定領域型(がん・循環器など)に分類され、実績や機能にばらつきがあることが厚労省から示された。厚労省は、大学病院本院に対しては「基礎的基準」と「発展的(上乗せ)基準」の二段階で評価し、「高度医療・研究・教育・医師派遣」の4本柱を求める方針を提示。一方で、大学病院本院以外の施設は医師派遣や臨床研修医の受け入れが想定されておらず、実績も限定的であることがデータから明らかとなった。検討会では、こうした実態に配慮しつつ、大学病院本院以外を特定機能病院と同一に扱うべきか、あるいは「別枠」で評価すべきかが論点として浮上。構成員からは、要件満たさなくなる医療機関について経過措置の必要性や、従来の投資や安全体制への配慮を求める声も上がった。また、地域医療構想や医師偏在対策との整合性も重視され、都市部に集中する大学病院本院以外の施設が「地域の最後の砦」として機能していない現状を踏まえ、特定機能病院制度そのものの再定義も視野に入る。新承認要件の具体化と並行して、次回以降の検討会では該当病院からのヒアリングも行われる予定だ。2026年度の診療報酬改定への影響も見込まれる中、制度設計は医療提供体制の構造的見直しに発展する可能性がある。高機能病院の役割とその評価のあり方が、今、改めて問われている。 参考 1) 大学附属病院本院以外の特定機能病院の現状及びあり方等について(厚労省) 2) 第24回特定機能病院及び地域医療支援病院のあり方に関する検討会 資料(同) 3) 大学本院以外の特定機能病院、承認要件見直し論点に 要件満たさなくなる医療機関の取り扱い慎重に 厚労省(CB news) 4) 大学病院本院「以外」の特定機能病院、大学病院本院とは異質で「特定機能病院と別の枠組み」での評価など検討へ-特定機能病院等あり方検討会(Gem Med) 4.「骨太の方針2025」で開業医狙い撃ち? 報酬適正化と負担増の両刃政策/政府政府は5月26日に経済財政諮問会議を開き、今年度の「骨太の方針」の骨子案を提示した。これをもとに6月に「骨太の方針2025」が閣議決定されるが、この中に医療・介護分野の職員の賃上げを明記するとともに、診療報酬や介護報酬など公定価格の引き上げが検討されている。一方で、社会保障制度の持続性確保の名の下に、医療界にとって見逃せない複数の構造改革も盛り込まれる方向となっている。民間議員や財政審は、診療報酬を用いて医療・介護現場の確実な賃上げに繋げる一方で、医療資源の偏在や無駄な医療提供の是正も主張。病床の適正化や外来機能の集約、さらには医師の開業シフトを抑制する報酬体系の再設計も求められている。また、医療法人に対する職種別給与情報の開示や経営情報の「見える化」も強化され、経営の透明性向上と報酬配分のメリハリが焦点になる。さらに、医療費の適正化策として薬剤の自己負担見直しやOTC薬へのスイッチ促進、市販品類似薬の保険外化などが検討されている。これらは高額療養費制度見直しとセットで実施される可能性があり、患者負担が現場の診療にも影響を及ぼす恐れが危惧されている。診療所の利益率が高いという財政審の分析を背景に、今後は病院と診療所の費用構造の違いを踏まえた報酬の差別化も想定される。医学部定員増世代の開業適齢期到来を踏まえ、診療所の過剰供給を防ぐ対策も検討課題に挙げられた。一方、医療界からは物価・人件費の高騰に即応できない診療報酬制度に対して強い危機感が示され、診療報酬の期中改定や柔軟な財政支援の必要性が訴えられている。財政審はこれに対し「どれだけ国民の理解があるか」と慎重な姿勢を崩していない。医療界にとって、「賃上げ」を名目とした制度改変が、実質的には財政再建と歳出抑制の手段と化すリスクも孕んでいる。制度の持続性と現場の実情をいかに調和させるかが、今後の診療報酬議論の中核となる。 参考 1) 経済財政運営と改革の基本方針2025骨子案 (内閣府) 2) 政府、骨太方針の骨子案に「公定価格の引き上げ」明記 医療・介護の賃上げ具体化を検討(JOINT) 3) 諮問会議で民間議員 診療報酬で「現場の確実な賃上げに」 薬剤自己負担見直しなど改革が「一層重要」(ミクスオンライン) 4) 財政審 基礎的財政収支の黒字化 “来年度にかけ早期に”(NHK) 5) 診療報酬の「適正化」求める建議、財政審 社会保障は「秋が主戦場」 増田氏(CB news) 6) 26年度予算の概算要求、最重要事項1項目のみ要望 物価・人件費高騰に対応できる報酬体系創設を 四病協(同) 7) 経営安定化や幅広い職種の賃上げに対応 厚労相 次期診療・介護報酬改定などで(同) 5.B型肝炎の既往歴を主治医が見落とし、リウマチ患者が死亡/名古屋大学名古屋大学医学部附属病院は5月28日、過去にB型肝炎ウイルス(HBV)感染歴のあった70代女性患者が、リウマチ治療中にHBV再活性化による急性肝不全を発症し、2021年に死亡した事例について、医療ミスを認め記者会見で謝罪した。女性は2008年に関節リウマチと診断され、免疫抑制療法が開始された。初診時の検査でHBV感染歴が判明しており、定期的なウイルス量測定および肝機能検査が予定されていたが、主治医は検査異常を薬剤性肝障害と誤認。2016年8月以降は患者の既往歴を失念し、一部の検査を中止していた。その結果、HBV再活性化を見逃し、2021年4月の肝機能悪化時にも詳細な評価を行わず、薬剤減量のみの対応に留めたことで病状が進行。同年6月に急性肝不全で死亡した。外部の事例調査委員会は、主治医が既往歴を考慮せず、肝障害の緊急性を正しく評価しなかったことを問題視。さらに、HBV再活性化リスクに関する病院内の情報共有体制や注意喚起機能の不備も指摘された。名古屋大学病院は遺族に謝罪し、損害賠償について協議している。再発防止策として、電子カルテへの感染歴表示、検査未実施時の警告アラート導入などを進めるとした。丸山 彰一病院長は会見で「当院の医療行為が不幸な結果を招いたことを深くおわび申し上げる」と述べた。今回の事例は、免疫抑制療法下におけるHBV再活性化対策の徹底と、診療科横断での患者情報共有の重要性を改めて浮き彫りにした。定期的な検査の実施や既往歴の把握、さらに肝機能障害時の鑑別診断が求められる。 参考 1) 関節リウマチの治療中、免疫抑制剤等によりB型肝炎ウイルスが 再活性化し、肝不全から死亡に至った事例について(名古屋大学) 2) 名大病院、誤診で女性死亡 肝炎患者に適切な治療せず(産経新聞) 3) 名古屋大附属病院 B型肝炎ウイルス感染の患者 医療ミスで死亡(NHK) 4) 名古屋大病院でB型肝炎の悪化見逃し70代女性死亡 医療ミス、遺族に謝罪(中日新聞) 6.フランスで「死の援助」法案が下院可決、終末期医療の転換点に5月27日、フランス国民議会(下院)は、終末期患者に対し致死薬の投与を認める「死の援助」法案を賛成305票、反対199票で可決した。本法案は、安楽死や自殺ほう助を禁じてきたフランスの政策を大きく転換するもので、今秋の上院審議を経て成立を目指す。対象は、「治癒不可能で耐え難い苦痛を抱える終末期の成人患者」に限定され、フランス国籍またはフランス在住の18歳以上に限定される。本人による致死薬の自己投与が原則で、身体的に不可能な場合に限り、医師や看護師による投与が例外的に認められる。マクロン大統領は2022年に市民会議を設置し、「死を迎える権利」に関する国民的議論を主導。その結果、多数の市民が死の援助に賛同し、今回の法案提出に至った。一方、カトリック教徒の多い同国では、宗教界や一部医療関係者の強い反対も根強く、国民投票の可能性も指摘されている。法案が成立すれば、フランスはドイツ、スペイン、スイスなどと並び、終末期医療において「死の援助」を制度的に認める欧州の少数国の1つとなる。 参考 1) フランス下院、「死の援助」法案を可決(AFPB) 2) フランス下院、終末期患者への「死の援助」法案を可決(毎日新聞) 3) 終末期「死の援助」法可決 仏下院、秋に上院審議へ(共同通信) 4) フランスで終末期患者に対する「死への援助」導入する法案が可決 フランス在住の18歳以上の成人のみ可能…患者自身で致死量の薬を投与(FNN) 5) フランス下院が自殺幇助法案を可決 妨害行為には禁錮、罰金刑も(産経新聞)

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