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上気道感染に伴う両眼の発赤【日常診療アップグレード】第48回

上気道感染に伴う両眼の発赤問題23歳女性。3日前から喉の違和感と鼻汁を自覚している。2日前から両眼の発赤とかゆみがある。眼痛や視力障害はない。アレルギー性鼻炎の既往はない。服薬している薬もない。職業は保育士である。身体診察ではバイタルサインは正常。両眼の結膜充血と眼脂を認める。シプロフロキサシン点眼薬を処方した。

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災害時、“トイレが使えない”現実を前に――医療者として何を備えるべきか【実例に基づく、明日はわが身の災害医療】第13回

災害時、“トイレが使えない”現実を前に――医療者として何を備えるべきか大規模災害が発生した際、医療機関が直面する最も深刻なインフラ障害の一つが「トイレ」です。能登半島地震の支援で現地へ向かった際、私自身その現実を痛感しました。支援に入った本部で突き付けられたのは、「下水が完全に止まっている」という事実でした。小便は雪解け水をバケツで汲み、便器に流し込んで重力で無理やり流すしかありませんでした。大便については、幸いポータブルトイレがあったため対応できましたが、もしなかったら、支援に入った医療者も被災者も、排泄すらままならない状況だったと思います。排泄物の処理方法、照明のない暗い個室、強い臭気や衛生面の不安……。診療の前に、人としての基本が揺らぐ環境がそこにありました。図1. トイレに雪解け水を利用図2. 災害時ポータブルトイレトイレが使えないと、なぜ医療が成り立たなくなるのか災害時、排泄環境は「最初に悪化し」「最後まで復旧が遅れる」インフラといわれています。しかし、その影響は単なる不便さにとどまりません。高齢者や基礎疾患のある方は、排泄を我慢するだけで、脱水、急性腎障害、電解質異常、便秘、せん妄を起こしやすいことが指摘されています1)。我慢そのものが健康被害につながるのです。また、適切な排泄管理ができない環境ではノロウイルスなどの胃腸炎が集団発生しやすく、避難所や臨時診療所の医療機能を大きく低下させるリスクがあります2,3)。国際的な災害医療基準でも「医療従事者自身のトイレ環境の確保」は必須項目として位置付けられています4,5)。医療者が安全にトイレを使用できなければ、長時間にわたる診療継続は困難になります。つまりトイレとは、医薬品や医療機器と同様に医療を支える基礎インフラなのです。来たるべきトイレ問題に何を備えておくべきか能登での経験から、小規模医療機関であっても「トイレが止まれば診療が止まる」という現実が浮き彫りになりました。ここでは『避難所におけるトイレの確保・管理ガイドライン』6)を基に、無理なく準備できる最低限の備えをまとめます。(1)携帯トイレ(凝固剤タイプ)の備蓄1日5〜7回を目安に、職員と患者さん分の数日分を備蓄しておくことが望ましいです。既存の洋式トイレにビニール袋をかぶせ、用を足したら凝固剤を入れ、封をして破棄することで、下水道が止まっていてもトイレを使用することができます。(2)ポータブルトイレの準備能登でも、ポータブルトイレが“あるか・ないか”で現場の負担が大きく変わりました。急性期は50人当たりに1台のトイレが推奨されており、有床診療所や小規模な病院であれば、職員も合わせて1、2台あれば足りるでしょう。発災時に災害用のトイレが迅速に調達できるよう、関係団体と協定を結んでおくのもよいと思います。マンホール直上にトイレを設置する方法もあります7,8)。マンホールトイレは、下水道管路にあるマンホールの上に簡易な便座やパネルを設け、災害時に迅速にトイレ機能を確保するものです。図3. 東日本大震災や熊本地震で使用されたマンホールトイレ(参考文献8より)(3)雑用水(洗浄・手洗い用水)のストック雪解け水でしのいだ経験からも、飲用とは別に生活用水の備蓄は必須だと実感しました。飲料水の確保は考えていても、排泄用の水を試算にいれてないことが多いため、事前に計算して備蓄しておくことをお勧めします。また感染症予防のために手洗い水の確保も重要です。(4)トイレ空間の簡易照明停電下でトイレが真っ暗になると、転倒リスクが高まり、医療者の利用にも支障を来します。また防犯上も明かりは必須です。充電式、乾電池式のヘッドライトなどが役立ちます。トイレを確保することは、医療と被災者の安全を守ること災害時には、医療者も被災者も排泄の安全を確保することが不可欠です。医療者は診療継続のため、被災者は健康保持のため、清潔で使いやすいトイレの存在が重要になります。診療を守るための第一歩として、今一度、災害時のトイレの備えを見直していただければと思います。 1) 阪東 美智子. 避難所・応急仮設住宅の現状と課題 ― 高齢者・障がい者への配慮や健康影響の視点から. 保健医療科学. 2021;70:407-417. 2) Kasaoka S, et al. Poor Environmental Conditions Created the Acute Health Deteriorations in Evacuation Shelters after the 2016 Kumamoto Earthquake. Tohoku J Exp Med. 2023;26:309-315. 3) 前田 信治, ほか. 東日本大震災時における避難所のトイレの実態調査. 空気調和・衛生工学会論文集. 2018;43:59-64. 4) Sphere Association. The Sphere Handbook: Humanitarian Charter and Minimum Standards in Humanitarian Response. WASH Section. 2018. 5) World Health Organization (WHO). Technical Notes on Drinking-water, Sanitation and Hygiene in Emergencies. WHO Press. 2013. 6) 避難所におけるトイレの確保・管理ガイドライン. 内閣府. 2022. 7) マンホールトイレ整備・運用のためのガイドライン2025年版. 国土交通省. 2025. 8) 国土交通省. 災害時に使えるトイレ

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庭で倒れていた家族から有機溶媒臭【中毒診療の初期対応】第4回

<今回の症例>年齢・性別55歳・女性患者情報 2ヵ月前に母親がクモ膜下出血で突然死した。1ヵ月前頃よりうつ状態となり、最近では「死にたい」などと家族に訴えていた。仕事から帰宅した夫に、自宅の庭で倒れているところを発見され、救急要請された。救急隊現着時は鼾様呼吸、呼吸数24回/分、SpO2 82%、血圧 94/60mmHg、心拍数 42bpm、意識レベルJCS 100、瞳孔左右 1.5mm同大、対光反射±、体温35.6℃であった。患者の着衣は吐物で汚染され、シンナーのような有機溶剤臭がした。また、気道分泌物が著明で、尿失禁および便失禁を認めた。非再呼吸式リザーバー付きフェイスマスクにて酸素10L/分を投与しSpO2 92%となった。患者は経口摂取による急性中毒を疑われて救命救急センターに搬送された。<問題1><解答はこちら>4.脱衣・シャワー浴救急車内は換気されていたが、有機溶剤臭が著しく、救急隊員は気分不快を訴えた。除染スペースで患者を脱衣させ衣類をビニール袋に密閉し、シャワーで身体を洗浄してからERに搬入した。初診時は気道分泌過多による呼吸不全、洞性徐脈、血圧低下、昏睡、縮瞳、尿失禁、便失禁を認めた。胸部の聴診では湿性ラ音を、腹部の聴診では腸蠕動音の亢進を認めた。気管挿管により気道を確保し、人工呼吸器管理とした。並行して、静脈路の確保・急速輸液、および採血を施行した。検査値・画像所見末梢血では、WBC 8.90x103/mm3、Hb 13.2g/dL、Ht 38.0%、Plt 142x103/mm3、生化学検査では、TP 7.1g/dL、AST(GOT) 14IU/L、ALT(GPT) 11IU/L、LDH 158IU/L、CPK 78IU/L、AMY 222IU/L、Glu 112mg/dL、BUN 10mg/dL、Cr 0.6mg/dL、Na 142mEq/L、K 4.1mEq/L、Cl 104mEq/L、血清コリンエステラーゼ(ChE)40IU/L未満、動脈血ガス(非再呼吸式リザーバー付きフェイスマスクにて酸素10L/分)、pH 7.362、PaCO2 42.4Torr、PaO2 64.3Torr、HCO3- 19.4mmol/L、BE -2.2mmol/L、乳酸値 3.8mmol/Lであった。<問題2><解答はこちら>3.有機リン後日、患者の夫が庭の収納棚で有機リンであるフェニトロチオンを50.0%含有する殺虫剤100mLの空ボトルを発見した。 <問題3><解答はこちら>1.アトロピン1)上條 吉人編. 臨床中毒学 第2版. 医学書院. 2023.

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第303回 がん細胞が作るアルツハイマー病予防タンパク質を発見

中国の研究者らによる10年を優に超える研究が実を結び、がん細胞が放つタンパク質のシスタチンC(Cyst-C)がどうやらアルツハイマー病を阻止する効果を担うことが突き止められました1,2)。がんとアルツハイマー病の併発がまれなことは長く知られており、そのどちらかがもう片方を防ぐ仕組みがあるのかもしれないと考えられてきました。イタリア北部の100万人超を調べた2013年の報告では、アルツハイマー病患者のがんのリスクは50%低く、がん患者のアルツハイマー病のリスクは35%低いことが示されています3)。米国でのFramingham Heart試験も同様で、がん生存者のアルツハイマー病のリスクががんでない人に比べて33%低いという結果となっています4)。最近のメタ解析でもやはりがん患者はアルツハイマー病をより免れていました。2020年9月2日までの22の観察試験の960万例超が解析され、がんと診断された人のアルツハイマー病発生率はがんではない人より11%低いことが示されます5)。アルツハイマー病の病変を抑制するがんの効果を示唆する報告もあります。785例を死ぬまで追跡した試験では、アルツハイマー病のアミロイドやタウ病変の程度ががんと診断された人では低くて済んでいました6,7)。それらの裏付けの数々に背中を押され、中国の武漢市の華中科技大学(Huazhong University of Science and Technology)の神経学者Youming Lu氏らはがんがアルツハイマー病を生じにくくする仕組みを調べることを思い立ちます2)。まずLu氏らは研究に最適なマウス作りに取り掛かります。実に6年の歳月を費やした後に、アルツハイマー病を模すマウスに3種類(肺、前立腺、大腸)の腫瘍を移植する手段に行き着きます。それらのマウスはアルツハイマー病に特有の脳のアミロイド病変を生じずに済みます。続いてがん細胞が放つタンパク質の数々を解析し、血液脳関門を通過して脳に浸透しうるタンパク質が探索されました。6年を超える取り組みの甲斐あって、Lu氏らはとうとうCyst-Cにたどり着きます。Cyst-Cは脳のアミロイド重合体に結合し、続いて脳の免疫細胞のマイクログリアの受容体TREM2を活性化します。そうしてマイクログリアがアミロイド病変を分解できるようにします。水に濡れずに済む抜け道をマウスに覚えさせる迷路実験でCyst-Cの記憶改善効果も確認されました。アルツハイマー病マウスはその抜け道を探すのに苦労しますが、Cyst-Cやがん細胞の分泌タンパク質一揃いを与えたところ手際が良くなり、抜け道をより早く見つけられるようになりました8)。アルツハイマー病の薬といえば大抵が脳の新たな障害の予防が焦点ですが、Cyst-Cはすでに生じてしまったアミロイド病変の除去を促す効果があります。ヒトでもマウスと同様の効果があるなら、認知症の新たな治療法へと通じる道が開けそうです。参考1)Li X, et al. Cell. 2026 Jan 22. [Epub ahead of print] 2)Cancer might protect against Alzheimer’s - this protein helps explain why / Nature3)Musicco M, et al. Neurology. 2013;81:322-328.4)Driver JA, et al. BMJ. 2012;344:e1442.5)Ospina-Romero M, et al. JAMA Netw Open. 2020;3:e2025515.6)Karanth SD, et al. Brain. 2022;145:2518-2527.7)Cancer Tied to Reduced Risk of Alzheimer’s Disease / TheScientist8)Cancer tumors may protect against Alzheimer's by cleaning out protein clumps / Medical Xpress

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併存疾患を有する関節リウマチ患者の疼痛・ADLを処方提案で改善【うまくいく!処方提案プラクティス】第71回

 今回は、関節リウマチの疼痛増悪により日常生活動作(ADL)に支障を来していた慢性骨髄性白血病も併存する患者について、病態と治療を評価して処方提案を行うことで疼痛とADLの顕著な改善を達成した症例を紹介します。慢性骨髄性白血病治療中の患者では、免疫抑制薬の追加・増量は慎重に検討する必要があり、薬剤の特性を理解した処方提案が重要となります。患者情報80歳、女性(外来)、身長147cm、体重46kg基礎疾患関節リウマチ、慢性骨髄性白血病、脂質異常症、不安神経症、高血圧症、腰部脊柱管狭窄症、睡眠障害生活状況独居(近くに娘が居住)ADL障害高齢者の日常生活自立度J1、認知症高齢者の日常生活自立度I検査値Scr 0.71mg/dL(推定CCr>60)、AST 23U/L、ALT 27U/L、Hb 10.9g/dL薬学的管理開始時の処方内容1.プレドニゾロン錠1mg 1錠 分1 朝食後2.ボノプラザン錠10mg 1錠 分1 朝食後3.ロスバスタチン錠2.5mg 1錠 分1 朝食後4.アムロジピンOD錠2.5mg 1錠 分1 朝食後5.デュロキセチンOD錠20mg 2錠 分1 朝食後6アセトアミノフェン錠500mg 疼痛時頓用 1回1錠他科受診・併用薬大学病院にて慢性骨髄性白血病をフォロー中アシミニブ錠40mg 2錠 分1 朝食後本症例のポイント患者は関節リウマチによる疼痛増悪(Numerical Rating Scale[NRS]:9)により、服の着脱も困難な状態でADLが著しく低下していました。施設入居を計画していましたが、疼痛のため外出もできず、このままでは生活の質がさらに低下します。この状況では疼痛管理の強化が急務であり、通常であればMTXなどの免疫抑制薬の追加や服薬中のプレドニゾロンの増量を検討します。しかし、本患者は慢性骨髄性白血病を併存しておりアシミニブを内服中です。免疫抑制薬やプレドニゾロンを追加・増量すると、感染リスクの増大や慢性骨髄性白血病治療に影響する恐れがあるため慎重に検討すべきです。そこで、NSAIDsの導入を提案することにしました。NSAIDsは中等度の活動性を持つ関節リウマチ患者において、痛みや全体的な健康状態を効果的に管理できることが報告されています1)。適切なNSAIDsを選択すれば安全に導入でき、患者のADL制限を解除することができると考えました。医師への提案と経過まず、医師に現状の課題として、患者の疼痛が高度でADLが著しく低下していること、そしてアセトアミノフェン頓用では疼痛コントロールが不十分であることを伝えました。懸念事項として、慢性骨髄性白血病治療中であることから免疫抑制の恐れのある薬剤の追加・増量は慎重に検討すべきであること、そして疼痛管理が不十分なままではADLのさらなる低下や施設入居計画にも支障を来す可能性があることを伝えました。その上で、メロキシカムの追加を提案しました。幸い、患者の腎機能(推定CCr>60)は保たれており、NSAIDsの使用に大きな障壁はありません。すでにボノプラザンが併用されているため胃粘膜保護が図られており、消化性潰瘍の既往もとくにありません。メロキシカムは選択的COX-2阻害薬であり、非選択的NSAIDsと比較して消化管障害のリスクが相対的に低く、1日1回投与のため服用時点を朝食後に統一できることから服薬アドヒアランスの維持も期待できます。医師に提案を採用いただき、翌日からメロキシカム5mg 1錠 分1 朝食後が開始となりました。開始1週間後のフォローアップの電話では、患者から「だいぶ痛みがすっきりしてきた。手先も動くので服の着脱がしやすくなった」とのうれしい報告がありました。NRSは9から4まで改善し、可動範囲が広がり行動制限が解除されました。さらに、入居を希望していた施設の見学にも行けるようになるなど、ADLの顕著な改善を認めました。考察とまとめ本症例では、慢性骨髄性白血病を併存する関節リウマチ患者に対してNSAIDsを適切に選択することで、免疫抑制薬を追加・増量させずに疼痛とADLの改善を達成できました。また、患者の腎機能や消化管リスクなどを総合的に評価し、NSAIDsの中でも消化管リスクが相対的に低いメロキシカムを選択したことで、高齢者でも安全に治療をすることができました。特殊な背景を有する患者では、リスク・ベネフィットバランスを慎重に検討することがとくに重要です。参考文献1)Karateev AE, et al. Mod Rheumatol. 2021;15:57-63.

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RSV感染症とインフルの症状を比較、RSV感染症の重症化リスク因子は?

 RSウイルス(RSV)とインフルエンザウイルスはいずれも下気道感染症の主要な原因であり、冬から春にかけて流行することが多い。従来RSVは主に乳幼児の感染症として認識されてきたが、近年では、高齢者や基礎疾患を持つ人を中心に、成人においても重篤な下気道感染症や合併症を引き起こすとの報告が相次いでいる。こうした背景から、両ウイルスの臨床的特徴や予後への影響を比較した研究が行われた。中国・国立呼吸器疾患臨床研究センター(北京)のRui Su氏らによる本研究の結果は、International Journal of Infectious Diseases誌オンライン版2026年1月9日号に掲載された。 本研究は北京市の中日友好病院において、呼吸器疾患の流行期(2023年11月1日~2024年1月30日)に実施された。検査でRSVまたはインフルエンザA型の感染が確認され、入院した全成人患者を対象とした。RSV群、インフルエンザ群、両ウイルスの重複感染群の3群に分類し、臨床的特徴、併存疾患、治療法、合併症、転帰などを比較した。 主な結果は以下のとおり。・対象患者538例の内訳は、RSV群162例(30.1%)、インフルエンザ群355例(66.0%)、重複感染群21例(3.9%)であった。重複感染群は最も高齢(中央値72歳)で喫煙者の割合が著しく高く(90.5%)、低酸素血症(71.4%)や呼吸困難(76.2%)を呈する頻度が高かった。・RSV群では痰を伴う咳の頻度が高く(62.3%)、インフルエンザ群は発熱(64.8%)および筋肉痛(14.6%)の頻度が高かった。・抗ウイルス療法の実施率はRSV群で最も低かった(24.1%)。一方で、抗ウイルス療法の実施率が最も高いインフルエンザ群において、合併症発症が最も多かった(99.2%)。・人工呼吸器の使用率は重複感染群で最も高かった(42.9%)ものの、全死亡率およびICU入院率では3群間で差を認めなかった。・RSV群の多変量解析では、喫煙(調整済みオッズ比[aOR]:2.61)、慢性閉塞性肺疾患(COPD)(aOR:2.99)、慢性心不全(aOR:3.71)、肺炎(aOR:3.14)が独立した予後不良因子だった。 研究者らは「RSVおよびインフルエンザウイルス感染症は合併症の負担が大きいという共通点はあるが、臨床的特徴はそれぞれ異なっている。COPD、心不全、肺炎を伴うRSV患者はよりリスクが高く、重複感染は人工呼吸器使用頻度の増加など、重症度をさらに深刻化させる。このため、RSVワクチン接種を含む、個別化された予防・治療戦略が必要である」としている。

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小児片頭痛、起立性調節障害を伴わない場合は亜鉛欠乏か?

 片頭痛は学童期の子供の約10%にみられ、起立性調節障害を併存していることが多い。成人では血清亜鉛レベルの低下と片頭痛の関連が報告されているが、小児におけるエビデンスはこれまで限られていた。兵庫医科大学の徳永 沙知氏らの研究によると、小児片頭痛患者のうち、起立性調節障害を併存していない群では併存群に比べて血清亜鉛レベルが有意に低く、両者の病態生理が異なる可能性が示唆された。Nutrients誌2025年11月28日号に掲載。 本研究では、2017年12月~2022年3月に片頭痛と診断された小児患者57例を対象に、初診時の血清亜鉛、鉄、銅、フェリチン濃度および起立性調節障害併存の有無を後ろ向きに調査した。亜鉛欠乏は血清濃度80μg/dL未満と定義し、起立性調節障害の診断は日本の診断基準に基づき、立ちくらみ、悪心、動悸や呼吸困難、朝起きるのが困難などの主要症状のうち2つ以上ある場合とした。 主な結果は以下のとおり。・解析対象の57例(男児26例、女児31例、年齢中央値13歳[範囲:7~19])において、血清亜鉛濃度の中央値は80.7μg/dL(範囲:57.8~113.3)であり、全体の40%に亜鉛欠乏が認められた。・起立性調節障害を併存していないのは31例(54.4%)、併存しているのは26例(45.6%)であった。・起立性調節障害を併存していない群の血清亜鉛濃度中央値は77.5μg/dL(範囲:57.8~102.9)であり、併存群の86μg/dL(74.4~113.3)と比較して有意に低かった(p<0.001)。・亜鉛欠乏の割合は、起立性調節障害の非併存群で67.7%(21/31例)であったのに対し、併存群では7.7%(2/26例)であった(p<0.001)。・線形混合モデル(LMM)解析の結果、年齢、性別、BMI、鉄、銅、フェリチンなどの要因を調整した後も、起立性調節障害の併存の有無のみが血清亜鉛濃度と有意に関連する因子であった(p=0.019)。・鉄、銅、フェリチンの各レベルについては、起立性調節障害併存の有無による有意な差は認められなかった。 本研究により、片頭痛と診断される小児患者であっても、起立性調節障害の併存の有無によって亜鉛の栄養状態が大きく異なることが示された。著者らは、起立性調節障害を伴わない片頭痛患者では亜鉛欠乏が病態に関与している可能性を指摘しており、血清亜鉛レベルを考慮することが、これら2つの病態を鑑別するための有用な指標になる可能性があるとし、今後の課題として、健康対照群を用いた大規模な前向き研究が必要だとまとめている。

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逆流性食道炎へのボノプラザン、5年間の安全性は?(VISION研究)

 逆流性食道炎は再発や再燃を繰り返しやすく、カリウムイオン競合型アシッドブロッカー(P-CAB)やプロトンポンプ阻害薬(PPI)による維持療法が長期に及ぶことがある。P-CABのボノプラザンは、PPIより強力かつ持続的な酸分泌抑制を示すが、長期使用による高ガストリン血症を介した胃粘膜の変化や、腫瘍性変化のリスクが懸念されていた。 CareNet.comでは、P-CABとPPIの安全性に関するシステマティックレビューおよびメタ解析結果を報告した論文(Jang Y, et al. J Gastroenterol Hepatol. 2026;41:28-40.)について、記事「P-CABとPPI、ガストリン値への影響の違いは?」を公開している。本論文では、P-CAB群はPPI群と比較して血清ガストリン値が高かったものの、有害事象プロファイルはPPI群と同様であることが示唆された。しかし、メタ解析に含まれた研究は観察期間が短く、本邦で実施されたボノプラザンとランソプラゾールの比較試験「VISION研究」は含まれていない。 そこで本稿では、逆流性食道炎患者を対象に、5年間の維持療法としてボノプラザンとランソプラゾールを比較した国内第IV相試験「VISION研究」について紹介する。本試験では、維持療法を実施した5年間において、ボノプラザン群とランソプラゾール群のいずれでも、腺窩上皮細胞の腫瘍性/異形成性変化が1例も認められず、逆流性食道炎の累積再発率はボノプラザン群で低かった。本試験の結果は、上村 直実氏(国立国際医療研究センター国府台病院 名誉院長/東京医科大学内視鏡センター 客員教授)らによって、Clinical Gastroenterology and Hepatology誌2025年4月号で報告された。【VISION研究の概要】・試験デザイン:国内多施設共同非盲検無作為化並行群間比較第IV相試験・対象:Helicobacter pylori(H. pylori)陰性で、ロサンゼルス分類A~Dの逆流性食道炎患者(H. pylori除菌歴のある患者は除外)・試験群(ボノプラザン群):ボノプラザン(20mg、1日1回)を最大8週間→ボノプラザン(10mgまたは20mg、1日1回)を最大260週間 139例対照群(ランソプラゾール群):ランソプラゾール(30mg、1日1回)を最大8週間→ランソプラゾール(15mgまたは30mg、1日1回)を最大260週間 69例・評価項目:[主要評価項目]胃粘膜病理組織学的検査で臨床的に問題となる症例の割合(腺窩上皮細胞の腫瘍性/異形成性変化など)[副次評価項目]内視鏡所見での逆流性食道炎再発割合、治療期終了時における逆流性食道炎の治癒割合、安全性[その他の評価項目]血清ガストリン値、血清クロモグラニンA値など 主な結果は以下のとおり。・本試験において、最大8週間の治療期から最大260週間の維持療法期へ移行したのは、ボノプラザン群135例、ランソプラゾール群67例であった。・維持療法期へ移行した患者の平均年齢は、ボノプラザン群60.4歳、ランソプラゾール群61.5歳であった。男性の割合はそれぞれ71.9%、61.2%であり、治療開始時の血清ガストリン値(平均値)はそれぞれ130.2pg/mL、155.4pg/mLで、血清クロモグラニンA値の中央値は両群ともに0ng/mLであった。・260週時における血清ガストリン値の中央値は、ボノプラザン群625pg/mL、ランソプラゾール群200pg/mL、血清クロモグラニンA値の中央値はそれぞれ250ng/mL、100ng/mLであり、ボノプラザン群が高かった(p<0.0001)。血清ガストリン値と血清クロモグラニンA値は、両群で投与期間を通じて安定して推移し、4~260週時のいずれの測定時点においてもボノプラザン群が高値であった(p<0.001)。・260週時点までに、腺窩上皮細胞の腫瘍性/異形成性変化が認められた症例は、ボノプラザン群、ランソプラゾール群のいずれも0例であった。260週時点の病理組織学的所見の発現割合の詳細は以下のとおり(ボノプラザン群vs.ランソプラゾール群)。 腺窩上皮細胞の腫瘍性/異形成性変化:0%vs.0% 壁細胞隆起/過形成:97.1%vs.86.5%(p=0.01) 腺窩上皮細胞過形成:14.7%vs.1.9%(p=0.01) G細胞過形成:85.3%vs.76.9%(p=0.29) ECL細胞過形成:4.9%vs.7.7%(p=0.49)・維持療法期に胃底腺ポリープ(260週時の発現割合:ボノプラザン群72.1%、ランソプラゾール群84.9%)および胃過形成性ポリープ(同:23.1%、11.3%)の発現が増加したが、いずれも両群に有意な差はみられなかった。・神経内分泌腫瘍は、いずれの群にも認められなかった。・有害事象の発現割合は、ボノプラザン群93.3%(126/135例)、ランソプラゾール群95.5%(64/67例)であり、治療関連有害事象は、それぞれ45.9%(62/135例)、53.7%(36/67例)に発現した。204週時までに、ボノプラザン群で腺窩上皮型腺腫が1例、ランソプラゾール群で胃底腺型胃腺腫が1例認められた。・260週時点までの逆流性食道炎の累積再発率は、ボノプラザン群10.8%、ランソプラゾール群38.0%であった(p=0.001、log-rank検定)。 本結果について、本論文の筆頭著者である上村氏にコメントを求めたところ、以下の回答が得られた。【上村氏のコメント】日本人の胃酸分泌はH. pylori感染率の低下とともに増えてきた 日本人の胃酸分泌はH. pyloriの感染率の低下に伴い次第に増加してきた。すなわち50年前の1970年代には陽性者が80%以上であり、加齢とともに胃酸分泌が低下していた。その後、感染率が低下するとともに、高齢になっても胃粘膜の老化現象を認めず胃酸分泌の低下を認めないH. pylori未感染者が多数を占めるようになり、2020年代の30歳未満の感染率は5%台まで低下し、除菌治療の影響も加わって高酸分泌を呈する高齢者も多くなり、逆流性食道炎を含む胃食道逆流症(GERD)の患者が増加している。胃酸分泌の増加と酸関連疾患の変化とともに新たな胃酸分泌抑制薬が開発された 1980年に登場したヒスタミン受容体拮抗薬(H2ブロッカー)により外科的治療が必要であった胃潰瘍や十二指腸潰瘍に対して、H2ブロッカーを用いた内科的な治療が主体となった。さらに強力な胃酸分泌抑制が必要となった1990年にPPIが登場して、難治性潰瘍やGERDの治療および低用量アスピリン(LDA)や非ステロイド消炎鎮痛薬(NSAID)による潰瘍の予防に大きな役割を果たしている。2000年に保険適用となったH. pylori除菌治療により消化性潰瘍の再発がほぼ消失して、コントロールが必要な主な酸関連疾患は逆流性食道炎・GERDとなってきた。2015年には、PPIよりさらに強力な酸分泌抑制薬のボノプラザン(VPZ)が日本において開発されて、PPIから置き変わりつつあるのが現状である。VISION研究はボノプラザン長期投与の安全性を検証する試験 H2ブロッカーが出現した当初から酸分泌抑制に対するフィードバックとして出現する高ガストリン血症によるEnterochromaffin-like(ECL)細胞の過形成に続く神経内分泌腫瘍(Neuroendocrine cell neoplasm:NEN[カルチノイド])の発生が危惧されていた。しかし、より強力な酸分泌抑制を有するPPIの長期投与による高ガストリン血症が、胃カルチノイドの発生リスクを著明に上昇させる明確なエビデンスも得られていない。 筆者らが本研究を企画したのは、VPZの承認を目的とした臨床治験の結果において、血清ガストリン値がPPIに比べてもさらなる高値を示し、3,000pg/mL以上の高値を示す症例が存在したことから、一般診療現場における長期投与が胃内微小環境に与える影響、とくに腫瘍性変化のリスクを危惧したためである。 VPZを含むP-CABとPPIの安全性に関するYewon Jang氏らによるメタ解析には、日本の臨床治験3試験と米国の1試験を含む11の研究結果が解析されているが、CareNet.comの記事に指摘されているように、観察期間が1年以下と短く、腫瘍の発生や組織学的変化のリスクを評価するには短期間にすぎるものである。さらに一般臨床の現場では数年間使用されることもあり、長期間の胃酸分泌抑制に伴う副事象の解明が必要と考えて5年間の経過観察とした次第である。 VISION研究では、VPZ群とPPI群に無作為に分類して、5年間毎年、生検を含む内視鏡検査により胃内微小環境の変化を観察した結果、内視鏡的に胃底腺ポリープや過形成ポリープの新たな発生や数の増加を認めた。一方、PPIに比べてVPZは有意な高ガストリン血症および高クロモグラニンA血症を呈したものの、カルチノイドなどの組織学的腫瘍性変化を認めなかった。内分泌腫瘍の腫瘍マーカーとして知られている血清クロモグラニンA値が高値を示した点から、ECL細胞が胃底腺粘膜全体に増加している可能性も推測され、カルチノイドの発生には5年よりさらに長期間の慎重な観察が必要と思われた。 VISION研究の結果から、著明な肝機能異常や骨折および重篤な腸管感染症のリスクはPPIと同様の安全性を示すことが確認された。しかし、本研究はH. pylori陽性や除菌後を除く陰性の逆流性食道炎患者としている点は非常に重要であり、一般の診療現場では、本試験の結果をそのまま充当できないH. pylori現感染者や除菌後の患者に対する診療では胃がんやカルチノイドのリスクにも注意することが必要である。

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日本におけるベンゾジアゼピン処方制限が向精神薬使用による自殺企図に及ぼす影響

 ベンゾジアゼピン系薬剤の過剰摂取では、自殺企図が問題となる。日本では、2012年からベンゾジアゼピン系薬剤の多剤使用に対する政府の規制が開始された。その結果、ベンゾジアゼピン系薬剤の処方数と多剤使用数が減少した。帝京大学の赤羽 晃寿氏らは、この規制後、日本において向精神薬の過剰摂取による自殺企図が減少したかどうかを検証した。Neuropsychopharmacology Reports誌2025年12月号の報告。 帝京大学医学部附属病院の高度救命救急センター集中治療室に入院した患者4,183例(2013年4月〜2015年3月の2年間、規制導入直後:第1期)および4,140例(2018年4月〜2020年3月の2年間、規制強化後:第2期)の診療記録から、それぞれ2年間の情報をレトロスペクティブに収集した。自殺企図、向精神薬の過剰投与、患者の臨床的特徴について両期間で比較を行った。 主な結果は以下のとおり。・向精神薬の過剰投与による自殺企図患者の割合は、第1期では4.1%であったのに対し、第2期では2.8%と有意な減少が認められた(p=0.004)。・過剰投与群におけるジアゼパム換算の1日平均投与量は、第1期では32.0±33.3mgであったのに対し、第2期では25.6±30.0mgとなり、有意な減少が確認された(p=0.01)。・ベンゾジアゼピン系薬剤の平均併用数においても、第1期の2.8±1.4から第2期の2.0±1.0へと有意な減少が認められた(p=0.0002)。 著者らは「日本におけるベンゾジアゼピン系薬剤の多剤使用を抑制する政府の規制により、処方されたベンゾジアゼピン系薬剤の数と用量が減少し、処方された向精神薬の過量投与による自殺企図が減少したことが明らかとなった」としている。

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1日5分の中高強度身体活動増加で、総死亡の10%を予防/Lancet

 世界保健機関(WHO)は、週に150分の中高強度身体活動(moderate-to-vigorous intensity physical activity:MVPA)を推奨しているが、これを達成できるのは少数とされる。また、従来の研究の多くは身体活動データを参加者の自己申告に基づき収集しているが、これは計測機器で測定した場合に比べバイアスが生じやすいことが知られている。ノルウェー・Norwegian School of Sport SciencesのUlf Ekelund氏らは、計測機器を用いた研究のデータを収集・解析し、最も活動量の多い上位20%を除いた集団では、1日5分という、ごくわずかで現実的なMVPAの増加が、総死亡の10%を予防する可能性があり、さらに1日30分の座位時間の削減が、総死亡の7.3%を防ぐ可能性があることを示した。研究の成果は、Lancet誌2026年1月24日号で報告された。3ヵ国7件の前向きコホート研究のメタ解析 研究グループは、身体活動量と座位行動時間のわずかで現実的な変化が、集団レベルの死亡率に及ぼす影響の評価を目的にメタ解析を行った(特定の研究助成は受けなかった)。 解析には、腰部装着型の加速度計を使用して身体活動量と座位時間を測定した3ヵ国7件の前向きコホート研究(ABC、HAI[スウェーデン]、NHANES、REGARDS、WHS[米国]、NNPAS、Tromso[ノルウェー])の参加者の、個人レベルのデータを用いた。 活動量の変化による死亡の予防割合(潜在的影響割合[potential impact fraction:PIF])を、(1)最も活動量が少ない約20%の参加者(高リスクアプローチ)、および(2)最も活動量の多い約20%を除いた約80%の参加者(集団ベースアプローチ)において推算した。MVPAの10分増加で、総死亡の14.9%予防の可能性 7件のコホート研究の参加者13万5,046人(平均年齢63.9[SD 8.7]歳、女性8万2,451人[61%])を平均8.2(SD 1.9)年間追跡した。このうち4万327人の個人レベルのデータをメタ解析の対象とした。追跡期間中に4,895人が死亡した。平均MVPA時間は27.7分/日(計測機器装着時間の3.1%)だった。 高リスクアプローチ(平均MVPA時間2.2分/日)では、MVPAの1日5分の増加により総死亡数の6.0%(95%信頼区間[CI]:4.3~7.4)を回避でき、10分の増加で8.8%(7.0~10.4)を回避可能と推定された。 また、集団ベースアプローチ(平均MVPA時間17.4分/日)では、MVPAを1日5分増加させると、総死亡の10.0%(95%CI:6.3~13.4)を、10分の増加で14.9%(9.7~19.3)を、それぞれ回避できると推定された。座位時間60分削減で、総死亡の12.6%予防の可能性 座位時間に関する高リスクアプローチ(最も座位時間の長い約20%の集団、平均座位時間721分/日)に基づく推定では、座位時間の1日30分の削減で予防可能な総死亡の推定割合は3.0%(95%CI:2.0~4.1)で、60分の削減では5.5%(3.9~6.9)であった。 また、集団ベースアプローチ(最も座位時間の短い約20%を除く集団、平均座位時間 605分/日)に基づく推定では、座位時間の1日30分の削減で予防可能な総死亡の推定割合は7.3%(95%CI:4.8~9.6)、60分の削減では12.6%(8.4~16.4)だった。LPA、総身体活動の60分増加は、MVPAの5分増加とほぼ同等 一方、低強度身体活動(light-intensity physical activity:LPA)の1日60分の増加で予防可能な推定死亡割合は、高リスクアプローチで5.5%(95%CI:4.0~6.7)、集団ベースアプローチで8.9%(3.1~13.8)であった。 また、総身体活動(LPA時間+MVPA時間)の1日60分の増加で予防可能な推定死亡割合は、それぞれ5.5%(95%CI:4.1~6.8)および10.6%(5.7~14.9)だった。これらLPA、総身体活動の60分増加の効果は、MVPA時間の5分増加とほぼ同程度であった。 著者らは、「WHOの推奨目標値を下回るわずかな身体活動量の増加により、生存に関する有益性が得られることが示された」「座位時間の30分の削減は、現実の環境下で実現可能と考えられ、効果的な介入による8時間労働当たり座位時間の40~100分の削減の可能性を示唆する研究や、高齢者に対する座位行動変容介入で45分/日の座位時間の削減を示唆する研究などがある」「今後、総死亡以外の健康アウトカムについて検証する必要がある」としている。

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体内時計の乱れが認知症リスクの上昇に関連

 概日リズムの乱れは認知症の初期兆候である可能性が新たな研究で示された。概日リズムの相対振幅(最も活動的な時間帯と最も活動が少ない時間帯の差)が低く、リズムの断片化が進んでいることは、認知症リスクの上昇につながることが明らかになったという。米テキサス大学サウスウェスタン医療センター疫学・内科学分野のWendy Wang氏らによるこの研究の詳細は、「Neurology」に12月29日掲載された。 Wang氏は、「概日リズムの変化は加齢に伴い起こる。また、概日リズムの乱れは、認知症のような神経変性疾患のリスク因子になり得ることを示すエビデンスがある。今回の研究で、休息・活動リズムのメリハリが弱く、断片化している人や、1日の遅い時間に活動量がピークに達する人では、認知症リスクの高いことが明らかになった」とニュースリリースの中で述べている。 体内時計とも呼ばれる概日リズムは、24時間周期の睡眠サイクルを調整している。脳によって制御され、光への曝露からも影響を受ける概日リズムは、ホルモンの分泌や消化、体温などの身体機能の調整にも関わっている。Wang氏らによると、概日リズムが明瞭な人では、体内時計が24時間周期にうまく同調し、身体のさまざまな機能に明確なシグナルが送られるだけでなく、スケジュール変更や季節による日照時間の変化があっても、規則正しい睡眠サイクルが維持される傾向にある。一方、概日リズムの相対振幅が低い人は、季節の変化やスケジュール変更によって体内時計が乱れやすいという。 Wang氏らは今回の研究で、平均年齢79歳の男女2,183人の追跡データを分析した。研究開始時点では、認知症を発症していた参加者はいなかった。全ての参加者に胸に貼り付けるタイプの小型の心臓モニターを平均で12日間装着してもらい、概日リズムに関するデータを収集した。その後、参加者を中央値で3年間追跡した。その間に176人(8%)が認知症と診断された。モニターの測定データから、昼と夜の活動のメリハリを示す相対振幅、生活リズムの断片化(乱れ)を示す日内変動、日々のリズムの一貫性(規則性)を示す日間安定性を算出し、参加者の休息―活動リズムを評価した。 その結果、相対振幅の1標準偏差(SD)の減少および日内変動の1SDの増加は、それぞれ認知症リスクの54%(95%信頼区間32~78%)、および19%(95%信頼区間2~38%)の増加と関連していた。また、相対振幅を三群に分けて解析したところ、相対振幅が低い群では727人中106人が認知症を発症していたのに対し、高い群では728人中31人にとどまっていた。年齢や血圧、心疾患などを調整した解析では、低い群の認知症リスクが高い群に比べて約2.5倍高いことが示された。さらに、概日リズムのピークが午後の遅い時間に現れる人も、認知症のリスクが高かった。具体的には、活動量のピークが午後2時15分以降に現れる人では、ピークが午後1時11分から2時14分の間の人と比べて認知症のリスクが45%高かった。活動量のピークが遅いことは、体内時計が季節による光の変化と同調できていない可能性があることを意味している。 Wang氏は、「概日リズムの乱れは炎症などの生体プロセスの変化を招いたり、睡眠を妨げたりする可能性がある。さらに、認知症に関連するアミロイド斑の増加、あるいは脳内のアミロイド除去の減少につながる可能性が考えられる」と述べている。その上で、「光療法や生活習慣の改善といった概日リズムへの介入が認知症リスクの低下に役立つかどうかを検討するため、今後さらなる研究が必要だ」と付け加えている。

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お金の心配が心臓の老化を早めて死亡リスクを高める

 家計のやりくりの心配が、既に知られている心臓病のリスク因子と同程度以上に、心臓の老化や死亡リスクに関係していることが報告された。米メイヨー・クリニック心臓血管研究センターのAmir Lerman氏らの研究によるもので、詳細は「Mayo Clinic Proceedings」12月号に掲載された。 この研究によると、経済的負担と食料不安が心臓の老化を加速させる最も大きな要因であって、それらに関連する心臓の老化は、糖尿病や高血圧、心筋梗塞の既往などの既に知られているリスク因子によって引き起こされる老化と似ているという。そして、そのような心臓の老化の結果として、心臓病の発症と心臓関連死のリスクが上昇するとのことだ。Lerman氏は、「われわれの研究は、心臓の老化と死亡率の上昇に対する、社会的要因の重要性を浮き彫りにしている」と話している。 Lerman氏らは、2018~2023年にメイヨー・クリニックで治療を受けた28万323人(平均年齢59.8±16.4歳、女性50.8%)を対象とする横断研究を実施。健康に影響を及ぼし得る社会的要因を質問票で把握するとともに、人工知能(AI)を援用した心電図データの解析により心臓年齢を評価して、両者の関連を調べた。社会的要因として調査した項目は、ストレス、運動習慣、教育歴、経済的負担、食料不安、居住環境、社会的つながりなど。米疾病対策センター(CDC)はこれらの非医学的因子も、人々の健康と死亡リスクに重大な影響を及ぼす可能性があるとしている。 解析の結果、心臓年齢が実際の年齢よりも高いこと(心臓の老化の進行)と、社会的要因との有意な関連が明らかになった。例えば経済的負担(β=-1.02〔95%信頼区間-1.03~-1.01〕)や食料不安(β=-0.74〔同-0.74~-0.733〕)は、調査した社会的要因の中で特に強い関連が認められた(いずれもP<0.001)。また社会的要因は、心臓の健康に影響を及ぼす疾患の存在や人口統計学的因子と比較して、心臓の老化への寄与度が高かった。 本研究についてLerman氏は、「既知のリスク因子のみでは心臓の病気のリスクを説明しきれないという事実や、人によって既知のリスクの影響の現れ方が異なるという事実からも、社会的要因の存在が示唆される。さらに言えば、医療従事者および患者がともにまだ意識していない、心臓の老化を進める社会的要因が存在する可能性もある」と語っている。 この研究では、死亡リスクとの関連も解析された。その結果、社会的要因は既知のリスク因子と同等以上の影響をもたらす可能性が示唆された。例えば、経済的負担は早期死亡のリスクの60%上昇と関連し(ハザード比〔HR〕1.6〔1.5~1.72〕)、居住環境の不安定さは18%のリスク上昇と関連していた(HR1.18〔1.07~1.3〕)。それに対して、心筋梗塞の既往があることは10%(HR1.1〔1.03~1.18〕)、喫煙は27%(HR1.27〔1.22~1.32〕)のリスク上昇だった。 Lerman氏は、「心臓の老化の最も重要なリスク因子を特定することにより、的を絞った予防的介入が可能になるとともに、患者中心の医療の推進、および心臓病の社会的要因の改善につながっていくのではないか」と述べている。

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ステント重視? 心房細動重視?(解説:後藤信哉氏)

 「ステント血栓症には抗血小板薬」「心房細動の脳卒中予防には抗凝固薬」のように、適応症、製薬企業によるマーケティング戦略は切り分けられていた。血栓予防には、抗凝固薬、抗血小板薬ともに有用であるが、いずれも出血合併症を増加させる。抗血栓効果は抗凝固薬のほうが強いが、出血合併症も多いという状況で冠動脈にはステントを入れた心房細動例の至適抗血栓が探索された。ステント治療後の標準療法である抗血小板薬併用療法のみでも重篤な出血合併症は多発する。抗凝固薬を併用すると出血イベントリスクは著しく増加してしまう。抗血小板薬ないし抗凝固薬を止めて出血イベントリスクを受け入れ、可能なレベルまで低減させる必要がある。 冠動脈疾患に対するステント治療後の血栓イベントリスクは時に致死的である。本試験ではステント留置後最低1年経過している心房細動合併例を、抗凝固薬単剤と抗凝固薬・P2Y12 ADP受容体阻害薬群にランダムに振り分けた。本研究はプラクティカルな研究であるため、有効性と安全性の複合エンドポイントが用いられた。エンドポイントは総死亡・心筋梗塞・ステント血栓症・脳梗塞・全身性塞栓症・重篤な出血イベントである。複合エンドポイントが複合的すぎて検証された仮説は明確とは言えなくなっている。しかし、重篤な出血も含めたイベントリスクが単剤群にて9.6%、抗凝固薬とP2Y12阻害薬の併用群では17.2%であったので、実臨床では1年以上経過した症例は抗凝固薬単剤でよいとの結論には、とくに反対ではない。 NEJMは臨床医学の最高権威の雑誌であるが、本研究は複合エンドポイントを用いた仮説が明確でない研究であり、また研究が施行されたのが韓国のみであるため一般性にも疑問が残る。NEJMの掲載競争は以前ほどtightではないのかもしれない。

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第279回 救急搬送677万人のうち高齢者が6割超、救急需要は構造的増加/消防庁

<先週の動き> 1.救急搬送677万人のうち高齢者が6割超、救急需要は構造的増加/消防庁 2.2026改定の「短冊」提示、かかりつけ医評価は小幅修正 要件は拡大/厚労省 3.マイナ保険証の利用率レセプトベースで49.5%に/厚労省 4.出生数急減、少子化の加速で自治体の7割が「地域社会の維持に影響」/厚労省 5.東大教授が収賄容疑で逮捕、国際卓越研究大の認定 相次ぐ不祥事でガバナンス焦点/東大 6.77日連続勤務の果てに若手医師自殺、病院側を提訴/千葉県 1.救急搬送677万人のうち高齢者が6割超、救急需要は構造的増加/消防庁総務省消防庁は1月20日に「令和7年版救急・救助の現況」を発表した。これによると、2024年の救急車出動件数は772万件、救急搬送人員は677万人と、いずれも3年連続で過去最多を更新した。119番通報から現場到着までの平均時間は全国で9.8分と前年より0.2分短縮したが、通報から医療機関へ引き継ぐまでの時間は平均44.6分で、コロナ禍前の2019年と比べると約5分長い水準が続いている。需要増に対して受け入れ調整や搬送がボトルネックとなり、救急体制の逼迫が慢性化している実態が浮き彫りとなった。救急搬送者の63.3%は65歳以上で、とくに75歳以上が全体の約半数を占めた。内訳では75~84歳が24.9%、85歳以上が24.8%とほぼ同水準で、高齢者救急が構造的に増加している。その一方で、乳幼児の搬送は大幅に減少しており、救急需要の中心が明確に高齢者へ移行していることがわかる。傷病程度別では「軽症(外来診療)」が減少する一方、「中等症(入院)」や「重症」は増加しており、単なる軽症要請だけでなく、医療的介入を要する症例が増えている点も特徴的。事故種別では「急病」が最多で、転倒などの一般負傷や転院搬送も増加した。東京都では救急出動が約93万件に達し、救急要請の約2割が不要不急とされる。不要不急の要請の増加は、現場到着や搬送調整の遅延を招き、真に緊急性の高い患者の救命に影響しかねない。かかりつけ医や開業医にとっては、高齢患者の増悪予防、転倒・脱水・感染症流行期の早期対応、救急要請の判断基準の共有が一層重要となる。また、電話相談「#7119」や救急受診ガイドの周知、夜間・休日の受療行動の整理を通じ、救急の適正利用を地域で支える役割が求められている。救急需要が構造的に増え続ける中、外来・在宅での1次対応力が救急医療の持続性を左右する局面に入ったといえる。 参考 1) 令和7年版 救急・救助の現況(消防庁) 2) 救急搬送者数が3年連続で過去最多更新 24年は677万人 総務省消防庁(CB news) 3) 救急車の到着9.8分 出動件数は最多更新(MEDIFAX) 2.2026改定の「短冊」提示、かかりつけ医評価は小幅修正 要件は拡大/厚労省厚生労働省は、1月23日に開いた中央社会保険医療協議会(中医協)総会で2026年度診療報酬改定に向けた「個別改定項目」(いわゆる「短冊」)を示した。2026年度診療報酬改定の個別改定項目では、かかりつけ医・開業医に関わる外来医療の評価は「小幅修正」にとどまり、制度的な位置付けの明確化は先送りされた。2025年度に開始した「かかりつけ医機能報告制度」と診療報酬を直接ひも付ける見直しは行われず、機能強化加算の点数も据え置かれた。支払い側や財務省が求めていた機能に応じた初・再診料の差別化は反映されず、支払側からはメリハリ不足との指摘もある。その一方で、開業医の日常診療に直結する運用面での変更は多い。機能強化加算では、災害時の診療継続を想定した業務継続計画(BCP)の策定が新たな要件として追加され、外来・在宅データ提出加算の提出を促す記載が盛り込まれた。さらに、外来医師過多区域で新規開業し、保険医療機関指定期間が3年とされた医療機関は、機能強化加算を算定できない仕組みが導入され、都市部での開業戦略に影響を与える。生活習慣病管理料では、事務負担軽減策として療養計画書への患者署名が不要となる方針が示された。一方で、包括評価である管理料(I)については、少なくとも6ヵ月に1回以上の血液検査実施が要件化され、検査実施の管理がより厳格化される。糖尿病診療では、眼科・歯科との連携を評価する新たな加算が設けられ、地域連携の実績が収益に結び付く構造が強まる。また、在宅自己注射指導管理料については、糖尿病以外の薬剤でも併算定が可能となり、慢性疾患を多く抱える患者への対応の幅が広がる。特定疾患療養管理料では、胃・十二指腸潰瘍患者に禁忌とされる非ステロイド性抗炎症薬(NSAIDs)を投与している場合、算定不可とする案が示され、処方内容と管理料算定の整合性が改めて問われる。病診連携では、特定機能病院からの「逆紹介」を受けた患者の初診を評価する新加算が創設され、診療所や200床未満病院が患者を受け入れるインセンティブが強化された。連携強化診療情報提供料も対象が拡大される一方、算定頻度は「月1回」から「3ヵ月に1回」へと整理される。物価・賃上げ対応として初・再診料は引き上げられるが、病院への配分が相対的に厚く、診療所ではベースアップ評価料の活用による職員賃上げの実行力が経営上の鍵となる。今回の改定は大きな制度転換こそ見送られたものの、かかりつけ医には「体制整備」「データ提出」「地域連携」を前提とした診療の質と説明責任が一層求められる内容といえる。 参考 1) 中央社会保険医療協議会 総会(厚労省) 2) かかりつけ医の報酬、26年度改定は小幅 メリハリ欠く(日経新聞) 3) 生活習慣病管理料の療養計画書は患者署名を不要とする方針(日経メディカル) 4) 厚労省が個別改定項目を提示 機能強化加算とかかりつけ医機能報告制度のひも付けは行わず(同) 3.マイナ保険証の利用率レセプトベースで49.5%に/厚労省厚生労働省は、2025年11月のマイナ保険証利用率が49.5%だったと公表した。厚労省はこれまで用いてきた「オンライン資格確認件数ベース」ではなく、レセプト件数ベースで初めて算出。レセプト件数ベースは、実際に診療を受けた患者数に近い指標であり、利用実態をより正確に反映するとされている。利用率は前月から2.22ポイント、前年同月比では約30ポイント上昇しており、制度移行後も着実に浸透が進んでいることが示された。参考値として示されたオンライン資格確認件数ベースでは、25年12月時点で47.7%だった。マイナ保険証を通じて取得された情報の閲覧利用件数は、25年11月分で診療情報が約6,094万件、薬剤情報が約2,296万件、特定健診等情報が約3,062万件に上った。これらは患者の同意を前提に医療機関や薬局が活用した実績であり、外来診療や薬物療法における情報連携が一定程度機能していることを示す。その一方で、薬剤情報や健診情報の閲覧件数は前月から減少しており、必ずしも「取得した情報を十分に使い切れていない」現場の実態もうかがえる。デジタル庁によると、マイナ保険証の利用登録件数は9,000万件を超え、マイナンバーカード保有者の約9割、総人口比でも約73%に達しているなど登録は広がる一方、実際の利用はまだ途上といえる。国は今後、薬剤重複投与の防止や高額療養費の窓口負担軽減といったメリットの周知を強化する方針。医療現場では、スマートフォン対応マイナ保険証に対応した施設が約8.4万に拡大しているものの、患者側のスマホ登録は約500万件にとどまる。かかりつけ医・開業医にとっては、利用率が「5割」に近づいた今、単なる資格確認手段としてではなく、薬剤・健診情報を診療にどう活かすかが問われる段階に入った。今後の評価制度やDX加算の在り方を見据え、現場での活用度が差別化要因になりつつある。 参考 1) マイナ保険証利用率49.48%、昨年11月 レセプト件数ベースで初めて公表 厚労省(CB news) 2) マイナ保険証、利用登録9,000万件超え 年内「9割超え」目指す(Impress Watch) 4.出生数急減、少子化の加速で自治体の7割が「地域社会の維持に影響」/厚労省厚生労働省は1月23日に2025年11月分の「人口動態統計速報」を公表した。これによると、2025年1~11月の出生数は64万5,255人と前年同期比で2.5%減少した。外国人を含む数値で、日本人のみの通年出生数は、過去最少だった2024年の約68万人をさらに下回る見通し。1899年の統計開始以降初めて2024年は70万人を割り込み、少子化は加速局面に入ったといえる。未婚・晩婚化の進行や子育て費用の負担感が主因とされ、婚姻数は2025年1~11月で1.1%増加したものの、出生数の回復には結び付いていない。こうした少子化を背景に、人口減少が地域社会に及ぼす影響も深刻化している。日本経済新聞社が実施した全国首長調査では、自治体の約7割が「人口減少が地域社会の維持に影響している」と回答した。2~3年後の人口動向については、8割超の自治体が「人口減が進む」と見通し、2割は「想定以上のスピード」と答えた。とくに四国、中国、東北など地方部で危機感が強い。影響が最も大きい分野は「地域コミュニティー」で、祭りや住民活動の維持が困難とする自治体は7割超に上る。公共交通網への影響も顕著で、全国の7割以上が「すでに影響が出ている」と回答し、担い手不足と財政制約が限界に近付いている。人口減対策としては「子育て支援」を挙げる自治体が最多で、医療費無償化や保育・給食の無償化が効果的施策として重視されている。少子化の進行は将来の医療需要や地域医療体制にも影響が及ぶ可能性があり、医療政策と地域政策を横断した対応が求められている。 参考 1) 人口動態統計速報(令和7年11月分)(厚労省) 2) 25年1~11月出生数64万5千人(共同通信) 3) 25年出生数、通年で最少の可能性 24年の約68万人を下回る見通し(産経新聞) 4) 自治体の7割、急速な人口減で地域社会の維持「困難」 全国首長調査(日経新聞) 5.東大教授が収賄容疑で逮捕、国際卓越研究大の認定 相次ぐ不祥事でガバナンス焦点/東大警視庁は2026年1月24日、東京大学大学院医学系研究科の教授(皮膚科学、62歳)を収賄容疑で逮捕した。報道によれば、民間団体との共同研究で便宜を図った見返りとして、共同研究先の一般社団法人から高級クラブや性風俗店を含む接待(約30回、計約180万円相当)を受けた疑いがある。国立大学法人の教職員は刑法上「みなし公務員」に当たり、金銭に限らず接待などの利益供与も収賄の対象となり得る。認否は明らかにされていない。共同研究は、同大学側に設置された社会連携講座で、大麻草由来成分の1つであるカンナビジオール(CBD)の皮膚疾患への有効性などを検討する目的だったとされる。運営費は民間側が負担する枠組みで、研究内容の選定や実施方針に影響し得る立場の研究者が接待を受けた点は、臨床研究の中立性・利益相反管理への不信を招きやすい。また、同講座を巡っては2025年にトラブルが表面化し、同大学が検証や制度見直しに動いた経緯が報じられている。研究資金の受入れや対外契約を伴う「社会連携講座」は医療系でも増えている一方、ガバナンスの脆弱性が露呈すれば、研究者個人のみならず大学・医局・附属病院全体の信頼や共同研究の継続性に波及する。同大学は国の「国際卓越研究大学」認定を巡り継続審査となっており、不祥事が続く中で、研究資金・外部連携の管理体制やコンプライアンス強化の実効性が問われる局面を一段と厳しくする。 参考 1) 東大大学院教授収賄疑い 法人側 接待の場で教授に研究の要望か(NHK) 2) 東京大学でまたも汚職事件 10兆円ファンドの支援、組織改革が左右(日経新聞) 3) 東大大学院教授を収賄容疑で逮捕 風俗店などで180万円分の接待か(朝日新聞) 4) 銀座のクラブに吉原のソープ 収賄容疑の東大大学院教授が受けた接待(同) 5) 国際卓越研究大に東京科学大と京大 「本命視」の東大、なぜ継続審査(同) 6.77日連続勤務の果てに若手医師自殺、病院側を提訴/千葉県千葉県松戸市の市立病院に勤務していた男性医師が2023年に自殺したのは、病院側が労働環境の管理を怠り、過重な長時間労働を強いたことが原因だとして、遺族が病院を運営する松戸市を相手取り、約1億8,900万円の損害賠償を求めて山形地裁に提訴した。男性医師は2021年に大学を卒業後、臨床研修を経て2023年4月に同病院へ勤務を開始した。訴状などによると、勤務開始直後から業務負担は極めて重く、2023年4月の時間外労働は約150時間、5月は約198時間に達した。4月3日からは77日間連続で勤務し、休日は一切なかったとされる。入院患者の診療に加え、専門外来や救急当番にも従事し、労働時間はいわゆる「過労死ライン」とされる月100時間を大きく超える状態が続いていた。6月中旬には適応障害を発症し休職したが、7月初旬に職場復帰した後も業務量は軽減されず、同月26日に自殺した。遺族は、長時間労働と連続勤務が強い心理的負荷となり、精神障害の発症となり自殺に至ったと主張。病院側には業務量調整や健康管理を行う「安全配慮義務」があったにもかかわらず、これを怠ったとしている。報道によれば、この事案については労災認定されたとされる。病院側は「係争中のためコメントは差し控える」としている。 参考 1) 医師「過労自殺」と病院側を提訴 両親、1億8,900万円賠償求め(共同通信) 2) 松戸市の病院勤務医が77日連続勤務後に自殺 山形市の遺族が市を提訴し1億9,000万円求める(山形放送)

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事例40 左手指(から手背)真皮縫合の査定と復活【斬らレセプト シーズン4】

解説内科診療所にて行われた事例です。指に対して行った「K000 創傷処理(筋肉、臓器に達する)(直径5cm未満)に伴う 注2 真皮縫合の算定」について、C事由(医学的理由による不適当)が適用されて査定となりました。手指に対する真皮縫合は、その構造の理由から真皮縫合加算は認められていません(支払基金審査情報提供事例(医科)手術33 真皮縫合加算(3)(指))。また、内科の診療所における創処理としても疑義が生じていたのではないかとカルテを確認してみました。カルテには、「左第2指背部近位から手背部遠位にかけて連続した創」が、簡単なイラストで表現され、指に対しては表皮縫合、連続した手背部には真皮縫合を行ったことが示されていました。傷病名欄を見ると「左示指切創(背部)」と部位が記載されていました。そのイラストからみて「手背部にも及ぶ切創」であること表す病名としては診療報酬上不十分と感じられました。医師にはイラストを添えての記載を続けていただくようにお願いしました。レセプトチェックシステムには、真皮縫合の算定があった場合に病名部位の確認をするよう表示をさせて査定対策としています。事例ではカルテのイラストを添えて再審査請求を行ったところ復活しています。場合によっては、文字記録よりイラストの表現のほうが伝わりやすいことを改めて認識した査定でした。

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検査における腫瘍の見落とし【医療訴訟の争点】第18回

症例検査を行った際、“精査を目的としていた部位以外の部位に腫瘍が映り込んでいる”ということもありうるところ、本稿では、胸部陰影の精査目的で撮影された画像に写っていた胃の病変が指摘されなかったことが「見落とし」として責任原因となるかが争われた東京地裁令和6年9月26日判決を紹介する。<登場人物>患者女性(当時80歳)原告患者の相続人(子)被告1放射線科クリニック被告2PET-CT検査を実施した医療法人被告3大学附属病院被告医師ら上記各医療機関に所属する医師事案の概要は以下の通りである。平成25年10月患者は健康診断で左上肺野に異常陰影を指摘された。10月28日精査目的で、被告放射線科クリニックにおいて胸部CT検査(本件CT検査1)が実施された。担当医師(被告医師1)は肺病変の有無を中心に読影を行い、両肺上葉に腫瘤などを認めたのでこれを指摘して被告大学病院を紹介したが、胃の病変について特段の指摘を行わなかった。なお、当該検査画像には、後方視的にみれば胃壁に径約2.5cm程度の腫瘍性病変(後に消化管間質腫瘍[Gastrointestinal Stromal Tumor:GIST]と診断される本件腫瘍)が描出されていたとされるものであった。10月30日本件患者は被告大学病院を受診し、被告大学病院の医師は、肺がんの病期診断を目的として、頭頸部から大腿基部までを対象としたPET-CT検査を行うため、被告医療法人を紹介した。11月18日被告医療法人が開設する診療所において、PET-CT検査が実施された。同診療所の医師(被告医師2)は、同検査結果を踏まえた診断を行い、左肺がん(疑い)について転移を疑う明らかな異常所見は認められないと診断した。なお、同診療所の医師(被告医師2)は、胃に存在する本件腫瘍について診断を行うことも、放射線読影医に相談することもなかった。12月4日被告大学病院の担当医(被告医師3)は、同日までに実施した頭部MRI検査、気管支鏡検査(経気管支的腫瘍生検)、本件PET-CT検査などの各検査結果を踏まえて、本件患者につき、肺がんの遠隔転移はみられないとして、左上葉肺腺がん(cT1bN0M0、Stage1B)と診断。肺がんについて、本件患者は外科手術を希望しなかったため、放射線治療が行われることとなった。12月18日放射線治療における照射範囲の特定のため、被告大学病院において胸部CT検査(本件CT検査2)が実施。平成26年1月本件患者に対し、放射線治療が行われた。平成29年11月16日吐血12月2日吐血平成30年1月4日被告病院の消化器内科において、上部消化管内視鏡検査を実施し、胃に粘膜下腫瘍(本件腫瘍)を指摘される。1月25日本件患者は、被告病院消化器内科にて、上記、胃粘膜下腫瘍の精査目的で、腹部CT検査を受けたところ、胃の小弯側に径約5.6cmの腫瘤性病変(本件腫瘍)が認められた。2月他院にて、胃のGISTと診断された。その後、治療が開始された。令和5年12月29日本件腫瘍により死亡。実際の裁判結果患者側は、これら一連の画像検査において本件腫瘍が見落とされたことが、診断および治療開始の遅れにつながったとして、各医療機関および医師に対し損害賠償を求めて本件訴訟を提起した。裁判所は、各検査が実施された目的や経緯、当時の医療水準、画像所見の性質などを踏まえ、医師に課される注意義務につき、以下のとおり判断した。1)被告1(被告放射線科クリニック)の医師(被告医師1)の注意義務違反について原告は、被告医師1が、平成25年10月28日当時、本件CT検査1の結果の読影を踏まえて、その胃に本件腫瘍があると診断し、あるいは、追加の造影CT検査などを実施する注意義務があったにもかかわらず、これらの診断などを怠った過失がある旨を主張した。これに対し、裁判所は、本件患者が本件CT検査1を受けるに至った経緯および目的が、健康診断のレントゲン検査によりその左上肺野に陰影が認められたことからその精査目的であったことを指摘し、「被告医師1が同検査結果を読影する際に課せられる注意義務の範囲については、特別の事情がない限り、検査の目的に関連のある範囲に限られるというべき」とした。その上で、以下の点を指摘し、「同検査結果に本件腫瘍が撮像されていたとしても、被告医師1においてこれを読影により捕捉する注意義務があると認めることはできない」として被告医師1の注意義務違反を否定した。本件患者が、本件CT検査1の実施に先立って、被告医師1に対し、消化管出血、腹痛などのGISTの存在を疑わせる症状やその腹部や消化管に関する異常や違和感を申告していないことGISTの発症に関与する既往歴などを申告したという事情もないこと本件CT検査1の対象であった胸部(肺・呼吸器)と本件腫瘍の存在した腹部(胃・消化器)についてはその部位や器官の性質も異なることGISTが発症頻度の低い疾患であること2)被告2(PET-CT検査を実施した医療機関)の医師(被告医師2)の注意義務違反について原告は、被告医師2が、平成25年11月18日当時、本件CT検査1および本件PET-CT検査の各結果の読影を踏まえて、その胃に本件腫瘍があると診断し、あるいは、放射線読影医に相談する注意義務があったにもかかわらず、これらの診断などを怠った過失がある旨を主張した。これに対し、裁判所は、被告1の場合と同様、本件患者が本件PET-CT検査を受けるに至った経緯および目的が、肺がんの病期診断(肺がんの進行度及び遠隔転移の有無の診断)であったことを指摘し、「本件PET-CT検査の結果を読影する際に課せられる注意義務の範囲については、特別の事情がない限り、検査の目的に関連のある範囲に限られるというべき」とした。その上で、以下の点を指摘し、「本件PET-CT検査結果に本件腫瘍が撮像されていたとしても、被告医師2においてこれを読影により捕捉する注意義務があると認めることはできない」として被告医師2の注意義務違反を否定した。本件患者が、検査の実施に先立って、被告医師2に対し、GISTの存在を疑わせる症状やその腹部や消化管に関する症状を申告していないことGISTの発症に関与する既往歴などを申告したという事情もないこと肺がんについて胃に遠隔転移する蓋然性があることを示す医学的知見は示されていないことGISTが発症頻度の低い疾患であること3)被告3(大学病院)の医師(被告医師3)の注意義務違反について原告は、被告医師3が、平成25年12月18日当時、本件CT検査2の結果の読影を踏まえて、その胃に本件腫瘍があると診断し、あるいは、放射線読影医に相談する注意義務があったにもかかわらず、これらの診断などを怠った過失がある旨を主張した。これに対し、裁判所は、被告1、2の場合と同様、本件患者が本件CT検査2を受けるに至った経緯および目的が、本件患者の希望も踏まえて本件放射線治療を実施することとして、その放射線照射部位を特定することを目的としていたことを指摘し、「かかる検査の経緯、目的などに照らせば、被告医師3が同検査結果を読影する際に課せられる注意義務の範囲については、特別の事情がない限り、検査の目的に関連のある範囲に限られるというべき」とした。その上で、以下の点を指摘し、「同検査結果に本件腫瘍と推測される腫瘤像が描出されていたとしても、被告医師3においてこれを読影により捕捉する注意義務があったと認めることはできない」として被告医師3の注意義務違反を否定した。本件患者が、検査の実施に先立って、被告医師3に対し、GISTの存在を疑わせる症状やその腹部や消化管に関する症状を申告していないことGISTの発症に関与する既往歴等を申告したという事情もないこと本件CT検査2の対象である胸部と本件腫瘍のあった胃とではその部位や器官の性質も異なることGISTが発症頻度の低い疾患であること注意ポイント解説本件は、画像検査における「腫瘍の見落とし」が問題となった事案である。ほかの診療科領域の疾患が画像に写っていたにもかかわらず、それを正しく指摘できなかったことが注意義務違反とされるかが問題となった点で、第14回(「症例報告の類似事例の誤診・見落とし?」)で取り上げた東京高裁令和2年1月30日判決と共通する部分がある。本件において裁判所は、単に画像上に腫瘍が写っていたか否かではなく、当該検査を行うに至った経緯、当該検査の目的を踏まえ、「注意義務の範囲については、特別の事情がない限り、検査の目的に関連のある範囲に限られるというべき」と判断している点が特徴的である。また、本件において原告は「放射線読影専門医は、画像診断を専門とする以上、その画像検査の目的の範囲外の部位であっても、患者の生存ないし健康に大きな影響を及ぼす病変を示す異常所見が偶発的に撮像された場合には、読影の際にその偶発所見を発見し、指摘するのが当時の臨床医学の実践としての医療水準であった」と主張した。これに対し裁判所は、以下のとおり判示し、不可能を課すものではない旨を明示し原告の主張を排斥している。「画像技術の進歩により、高解像度、大容量の画像が取得されるようになったことにより、偶発所見が発見されることも増えてはいるものの、画像の処理、識別、判断を医師において行う以上、その処理には当然限界があり、検査の目的とは直接関係のない偶発所見を発見すべき注意義務を医師に課すことは不可能を強いることに他ならない」上記の判示のとおり、裁判所は医師に不可能な義務を課すものではないものの、他方で、本件では、GISTが比較的稀な疾患であり、原告が見落としを指摘する画像上も、腫瘍が小さく、コントラストも薄く、胃壁の蠕動との識別が困難であったことに留意する必要がある。すなわち「そもそも全身を精査する目的での画像検査が行われた場合」や「特定の部位の検査を目的としていても、画像上、その部位以外の箇所に著明な疾患を示唆する所見がはっきりと写っている場合」などには、その所見の指摘・精査(他科へのコンサルトを含む)をしないことが注意義務違反とされる可能性があることに留意する必要がある。また、「読影レポートを作成する放射線科専門医が、検査対象部位以外の部位の病変をレポートしている場合」には、その所見の指摘・精査(他科へのコンサルトを含む)をしないことが注意義務違反とされる可能性がある。そして、近時はAIを用いた画像読影補助システムも導入されているところ、そのようなシステムが検査対象部位以外の部位の病変をレポートした場合などにも同様の問題が生じうる。この意味で、本裁判所の判断は当然に一般化できるとは限らないことに留意して診療にあたる必要がある。医療者の視点本判決は、画像検査における「目的外の偶発的所見」の見落としについて、医師の法的責任を限定する判断を示しました。裁判所は、高解像度の画像から得られる膨大な情報すべてを精査することは不可能であり、特段の事情(関連症状の訴えなど)がない限り、注意義務の範囲は「検査目的に関連のある範囲」に限られるとしました。これは、多忙を極める臨床現場の実情や、人間の認知能力の限界を考慮した現実的な判断であると評価できます。実臨床では、たとえ肺がん疑いの胸部CTであっても、撮像範囲に含まれる胃や肝臓などに明らかな異常がないか、可能な限り確認しようとする医師が多いでしょう。しかし、これを法的な「義務」として課されてしまえば、現場は萎縮し、過度な防衛医療を招きかねません。法的に義務が限定されたからといって、臨床的に「目的外は見なくてよい」と割り切ることはできませんが、本判決は、結果責任を問われる際の「合理的な境界線」を引いたという点で、実臨床を行う医師にとって非常に意義深いものと考えます。Take home message後方視的に異常と評価できる所見が存在していても、それだけで直ちに過失が認定されるわけではない特定箇所の精査目的の画像検査において偶発的に写り込んだ所見について、患者からその所見と結びつく症状がなく、その申告がなされていない場合には、医師に課される注意義務の範囲は、検査目的や臨床状況により限定される検査目的や患者の症状次第では、偶発所見への対応が問題となりうるため、判断の根拠や検討過程を記録しておくことが重要キーワード肺がん、GIST(消化管間質腫瘍)、精密検査、画像所見、他科領域の知見、見落とし、医療水準

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英語で「百日咳」ってどう言う?【患者と医療者で!使い分け★英単語】第47回

医学用語紹介:百日咳 pertussis日本でもたびたび流行のニュースが聞かれる「百日咳」。海外からの旅行客の診察で、疑わなければならないシーンもあるかもしれません。専門用語ではpertussisといいますが、患者さんにはまず通じないでしょう。患者さんにこの百日咳を説明する際に、どのような一般用語で言い換えればよいでしょうか?講師紹介

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小児眼科領域における診断と治療 最近の進歩

発達段階に応じた診療の決定版「眼科」67巻10号(2025年10月臨時増刊号)雑誌『眼科』本年の臨時増刊号のテーマは「小児眼科領域における診断と治療 最近の進歩」です。迅速で正確な診断と個々の発達段階に応じた治療選択がきわめて重要である小児に対する眼科診療について、前眼部から後眼部までの基本事項はもちろん、近視、斜視、弱視、病診連携やロービジョンケアといった分野まで、忙しい日常臨床の場で役に立つ基礎知識と最新の知見を第一線で活躍されている専門家の先生方にご執筆いただきました。画像をクリックすると、内容の一部をご覧いただけます。※ご使用のブラウザによりPDFが読み込めない場合がございます。PDFはAdobe Readerでの閲覧をお願いいたします。目次を見るPDFで拡大する目次を見るPDFで拡大する小児眼科領域における診断と治療 最近の進歩定価9,350円(税込)判型B5判頁数272頁発行2025年10月編集後藤 浩/飯田 知弘/雑賀司 珠也/門之園 一明/石川 均/根岸 一乃/福地 健郎ご購入(電子版)はこちらご購入(電子版)はこちら紙の書籍の購入はこちら医書.jpでの電子版の購入方法はこちら紙の書籍の購入はこちら

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妊娠中のアセトアミノフェン、神経発達症と関連なし

 アセトアミノフェンは、妊娠中の解熱・鎮痛の第1選択薬であり、非ステロイド性抗炎症薬やオピオイドより安全性が高いとされる一方で、近年自閉スペクトラム症(ASD)などの神経発達症への影響が議論され、注目を集めた。そこで、イタリア・University of ChietiのFrancesco D'Antonio氏らは、妊娠中のアセトアミノフェン使用と児のASD、注意欠如・多動症(ADHD)、知的障害(ID)リスクの関連を検討するため、システマティックレビューおよびメタ解析を実施した。その結果、妊婦のアセトアミノフェン使用とこれらの神経発達症のリスクとの間に関連はみられなかった。本研究結果は、The Lancet Obstetrics, Gynaecology, & Women's Health誌オンライン版2026年1月16日号に掲載された。 研究グループは、MEDLINE、Embase、ClinicalTrials.gov、Cochrane Libraryを用いて、2025年9月30日までに発表されたコホート研究を検索した。対象の研究は、妊娠中のアセトアミノフェン使用と小児アウトカム(ASD/ADHD/ID)を評価し、調整済み推定値が示されているものとした。本研究の主要解析では、きょうだい比較を用いた研究に限定して、妊娠中のアセトアミノフェン使用とASD、ADHD、IDの関連を評価した。また、バイアスリスクが低い研究や追跡期間が5年以上の研究についても解析した。 主な結果は以下のとおり。・システマティックレビューには43件の文献が抽出され、そのうち17件がメタ解析の対象となった。・きょうだい間比較を用いた研究において、妊娠中のアセトアミノフェン使用は、児のASD、ADHD、IDのいずれとも関連がみられなかった。オッズ比(OR)、95%信頼区間(CI)、p値、I2値は以下のとおり。 ASD:0.98、0.93~1.03、p=0.45、I2=0% ADHD:0.95、0.86~1.05、p=0.31、I2=18% ID:0.93、0.69~1.24、p=0.63、I2=48%・バイアスリスクが低い研究のみに限定した解析でも、児のASD、ADHD、IDのいずれとも関連はみられなかった。OR、95%CI、p値、I2値は以下のとおり。 ASD:1.03、0.86~1.23、p=0.78、I2=75% ADHD:0.97、0.89~1.05、p=0.49、I2=10% ID:1.11、0.92~1.34、p=0.28、I2=57%・調整済み推定値を報告したすべての研究を含めた解析や、5年以上の追跡期間を有する研究に限定した解析においても、一貫して関連はみられなかった。 本研究結果について、著者らは「現在のエビデンスでは、用法・用量どおりにアセトアミノフェンを使用した妊婦の児において、ASD、ADHD、IDが臨床的に重要な程度で増加することは示されなかった。これらの知見は、妊娠中のアセトアミノフェンの安全な使用に関する現在の推奨を支持するものである」とまとめている。

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