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腱滑膜巨細胞腫、pimicotinibが高い奏効率/Lancet

 腱滑膜巨細胞腫(TGCT)は、関節滑膜、滑液包、腱鞘などに発生する局所的に侵襲性の高いまれな軟部組織腫瘍であり、痛み、腫れ、こわばり、関節可動域の低下が一般的な症状で、適切な治療が行われないと関節や骨に不可逆的な損傷を引き起こす可能性があるという。中国・首都医科大学のHairong Xu氏らは「MANEUVER試験」において、手術不能なTGCTの治療ではプラセボと比較してpimicotinib(高選択性の強力なコロニー刺激因子-1受容体[CSF-1R]阻害薬)は、25週時の客観的奏効率(ORR)が有意に高く、TGCT関連の機能制限および症状の負担に関して臨床的に意義のある改善をもたらし、管理可能な安全性プロファイルを有することを示した。研究の成果は、Lancet誌2026年3月14日号で報告された。40施設の無作為化プラセボ対照第III相試験 MANEUVER試験は、中国の23施設、欧州の7施設、北米の10施設、合計40施設が参加した二重盲検無作為化プラセボ対照第III相試験。2023年4月~2024年3月に、年齢18歳以上、手術不能なTGCTと診断され、無作為化前の2週間にわたり症状(患者報告による最悪時のこわばりと痛みがそれぞれ4点以上[0~10点、点数が高いほど症状が重度])を有する患者を登録した。 本試験は3つのパートで構成され、今回はパート1の結果を報告した。パート1は24週間の二重盲検期間で、被験者をpimicotinib(50mg、1日1回)またはプラセボを経口投与する群に2対1の比率で無作為に割り付けた。 主要評価項目は、25週の時点で独立審査委員会が盲検下に評価したITT集団におけるORRであった。ORRはpimicotinib群54%vs.プラセボ群3%、1例で完全奏効 94例(年齢中央値40.0歳、女性64例[68%]、中国の施設での例数45例[48%])を登録し、pimicotinib群に63例、プラセボ群に31例を割り付けた。80例(85%)がびまん型TGCTで、56例(60%)は少なくとも1回の手術歴を有しており、88例(94%)は全身療法を受けたことがなかった。88例(94%)がパート1を完了した。 主要評価項目のORRは、プラセボ群が3%(1/31例)であったのに対し、pimicotinib群は54%(34/63例)と有意に優れた(絶対群間差:51%、95%信頼区間:33~63、p<0.0001)。pimicotinib群の奏効例のうち、1例が完全奏効、33例は部分奏効だった。 25週時の相対的関節可動域(p=0.0003)、最悪時のこわばり(p<0.0001)、最悪時の痛み(p<0.0001)、身体機能(p=0.0074)は、いずれもpimicotinib群で有意に良好であった。有害事象の多くは軽度で管理可能 pimicotinib群では、試験期間中に発現した有害事象の多くが軽度であり、ほとんどは管理可能な無症状の検査値異常や臨床イベント(そう痒、顔面浮腫、発疹、眼窩周囲浮腫、疲労感など)であった。試験期間中にpimicotinib群の10%以上に発生したGrade3または4の有害事象は血中クレアチンホスホキナーゼ(CK/CPK)値の上昇のみであり、63例中8例(13%)に認めた。プラセボ群で最も頻度の高かった治療関連有害事象は、疲労感(7例[23%])および関節痛(7例[23%])であった。 pimicotinib群の63例中5例(8%)で投与量の減量が行われ、1例(2%)が投与中止となった。懸念された胆汁うっ滞性肝毒性、薬剤誘発性肝障害、皮膚や毛髪の低色素沈着は認めなかった。 著者は、「治療法が限られている本疾患において、pimicotinibは管理可能な安全性プロファイルを備えた有効な治療選択肢となり、手術が適用とならない患者に対し、新たな標的薬による全身療法を提供するものである」「痛みを緩和し、身体機能を改善することで、生活の質の向上をももたらすと考えられる」としている。

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1次治療前のがん遺伝子パネル検査の結果が生存期間を延長する可能性(FIRST-Dx)/日本臨床腫瘍学会

 1次治療前からのがん遺伝子パネル検査(CGP検査)は推奨治療を受けた患者の生存を改善するという結果が第23回日本臨床腫瘍学会学術集会(JSMO2026)において報告された。 日本でのCGP検査は2019年6月から保険診療で実施可能となったが、その適応は「標準治療がない、もしくは終了した症例」に限られている。そのため、CGP検査の結果から、有効な治療薬に到達する割合は低い。厚生労働省第12回がんゲノム医療中核拠点病院等連絡会議資料では、CGP検査結果に基づいた治療を実際に受けた症例は8.2%にとどまる。 一方、世界的なCGP検査の推奨時期は、1次治療開始前または可能な限り早期、である。そのような中、日本でも1次治療開始前に切除不能進行・再発がんにCGP検査を行う「FIRST-Dx研究」が2021年5月から先進医療Bとして実施された。同学術集会では、FIRST-Dx研究の3年追跡研究の結果が東京大学の鹿毛 秀宣氏から発表された。・試験デザイン:多施設共同前向き観察研究(FIRST-Dx最終症例登録から3年間)・対象:FIRST-Dx研究に登録され、FoundationOne CDx検査が行われた全身療法未施行の20歳以上の切除不能進行・再発がん(消化器・肺・乳腺・婦人科・悪性黒色腫)172例・主要評価項目:全生存期間(OS) 主な結果は以下のとおり。・観察期間中央値25.0ヵ月で、26.7%(46例)の患者がエキスパートパネルによる分子標的に基づく推奨分子標的治療(MBRT)を受けた。・推奨MBRT群(上記46例)の標準治療群に対するOSのハザード比(HR)は0.62(95%信頼区間[CI]:0.39〜0.99)で、有意に推奨MBRT群で長かった(p=0.047)。・FIRST-Dx研究と保険診療(リアルワールド)データをプロペンシティ・スコアでマッチング(各67例)した探索的解析の結果、リアルワールドデータ群に対するFIRST-Dx群のOS HRは0.61(95%CI:0.44〜0.94)で、FIRST-Dx群で有意に延長した(p=0.02)。 これら2つの結果から、発表者は1次治療前のCGP検査は推奨MBRTを受けた患者の生存率を改善に導くと結んだ。

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肝がん、TACE後のアテゾリズマブ+ベバシズマブが有用(TALENTACE)/日本臨床腫瘍学会

 Intermediate Stage(中間期)の肝細胞がん(HCC)に対して、TACE(肝動脈化学塞栓療法)が標準治療として広く用いられているものの、腫瘍負荷の高いHCCではその有効性は限定的である。TACE後にアテゾリズマブ+ベバシズマブを投与することで予後が改善する可能性があることが報告された。中国と日本のHCC患者を対象に行われたTALENTACE試験の結果を、第23回日本臨床腫瘍学会学術集会(JSMO2026)のPresidential Sessionで近畿大学の工藤 正俊氏が発表した。・試験デザイン:第III相非盲検無作為化試験・対象:TACE適応、全身療法未治療のHCC患者、最大腫瘍径と病変数の合計が6以上・試験群:TACE実施後、14日から8週間以内にアテゾリズマブ(1,200mg、3週ごと静脈内投与)及びベバシズマブ(15mg/kg、3週ごと静脈内投与)を投与(アテゾ+ベバ群)・対照群:TACE単独(単独群)[主要評価項目]治験責任医師が評価したTACE-PFS(TACE治療不能な進行、TACEの失敗/不応、または原因を問わない死亡までの期間)、全生存期間(OS)[副次評価項目]無増悪生存期間(PFS)、安全性など・データカットオフ:2025年2月28日 主な結果は以下のとおり。・2021年3月~2023年8月に、342例がアテゾ+ベバ群(171例)と単独群(171例)に無作為に割り付けられた。・追跡期間中央値26ヵ月時点において、アテゾ+ベバ群(11.3ヵ月、95%信頼区間[CI]:7.52~15.01)は単独群(7.0ヵ月、95%CI:5.32~8.41)と比較して、TACE-PFSの有意な延長が認められた(ハザード比[HR]:0.71、95%CI:0.55~0.92、p=0.009)。・TACE-PFSの有益性は、すべてのサブグループで一貫して認められた。・PFSも有意な改善を示し、アテゾ+ベバ群では中央値10.3ヵ月、単独群では6.4ヵ月だった(HR:0.64、95%CI:0.50~0.82、p<0.001)。・OSは未成熟であった。・治療関連有害事象の発現割合は、Grade3~4はアテゾ+ベバ群60.8%対単独群40.5%、Grade5は3.0%対1.7%であり、新たな安全性リスクは認められなかった。 工藤氏は「全身療法未治療で腫瘍負荷が中程度から高いHCC患者において、TACE後のアテゾリズマブ+ベバシズマブは、TACE単独と比較して、TACE-PFSにおいて統計学的に有意かつ臨床的に意義のある改善を示した。安全性プロファイルは概ね管理可能であり、各薬剤の既知のプロファイルと一致していた。OSは未成熟であるため、今回の結果だけで標準治療が変わることはないが、TACE+アテゾリズマブ+ベバシズマブの併用療法は、中間期の肝細胞がんにおける新たな治療選択肢となる可能性があり、今後さらなる解析を実施、報告する予定だ」とした。

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HER2変異陽性NSCLCへのゾンゲルチニブ、脳転移例にも奏効(Beamion LUNG-1)/ELCC2026

 ゾンゲルチニブは、未治療のHER2遺伝子変異陽性非小細胞肺がん(NSCLC)患者において、管理可能な安全性プロファイルとともに高い抗腫瘍活性を示し、活動性脳転移を有する患者においても良好な頭蓋内活性を示した。欧州肺がん学会(ELCC2026)において、John V. Heymach氏(米国・テキサス大学MDアンダーソンがんセンター)が、国際共同第Ia/Ib相試験「Beamion LUNG-1試験」のコホート2(未治療のチロシンキナーゼドメイン[TKD]の変異陽性患者)、およびコホート4(ベースライン時に活動性脳転移を有するTKDの変異陽性患者)の結果を報告した。なお、本試験の結果を基に、米国食品医薬品局(FDA)はHER2遺伝子変異陽性進行NSCLCに対する1次治療として、ゾンゲルチニブを2026年2月に迅速承認した。また、本邦でも同適応に関する適応追加申請が行われたことが、2026年3月に発表されている。 本試験は第Ia相と第Ib相で構成され、第Ib相の中間解析の結果から1日1回120mgの用量が選択された。今回は、未治療のHER2遺伝子変異(TKDの変異)陽性NSCLC患者コホート(コホート2)、ベースライン時に活動性脳転移を有するHER2遺伝子変異(TKDの変異)陽性NSCLC患者コホート(コホート4)のうち、1日1回120mgの用量で投与された患者の結果が報告された。有効性の主要評価項目は、コホート2がRECIST v1.1に基づく盲検下独立中央判定(BICR)による奏効率(ORR)、コホート4はRANO-BM基準に基づくBICRによる頭蓋内奏効率(icORR)であった。 主な結果は以下のとおり。・患者背景について、コホート2(74例)の年齢中央値は67歳で、ベースライン時に脳転移を有していた割合は30%であった。コホート4(30例)の年齢中央値は59歳であり、未治療の割合は27%であった。・コホート2において、BICRによる確定ORRは76%(CR:11%、PR:65%)で、確定病勢コントロール率は96%であった。・コホート2における奏効までの期間の中央値は1.4ヵ月であった。・コホート2における無増悪生存期間(PFS)中央値は14.4ヵ月、奏効期間(DOR)中央値は15.2ヵ月であった。・コホート4において、BICRによる確定icORRは47%、確定頭蓋内DCR(icDCR)は87%であった。脳への放射線治療歴がない患者(17例)における確定icORRは59%、確定icDCRは94%であった。・コホート4における頭蓋内PFS中央値は8.2ヵ月、頭蓋内DOR中央値は6.9ヵ月であった。・コホート2において、治療関連有害事象(TRAE)は91%(67例)に認められ、Grade3以上のTRAEは19%(14例)であった。・コホート2で頻度の高かったTRAEは下痢(55%、Grade3:3%)、皮疹(24%、Grade3以上はなし)、ALT増加(18%、Grade3:4%)であった。・コホート2において、有害事象による減量は16%(12例)、投与中止は9%(7例)に認められた。 本結果について、Heymach氏は「ゾンゲルチニブは、活動性脳転移を有する患者を含めて、HER2遺伝子変異陽性NSCLC患者において臨床的に意義のあるベネフィットを示し、Grade3以上のTRAEが非常に少なく管理可能な安全性プロファイルを示した」と結論付けた。なお、未治療のHER2遺伝子変異陽性進行NSCLC患者を対象として、標準治療との比較によりゾンゲルチニブの有用性を検証する国際共同第III相無作為化比較試験「Beamion LUNG-2試験」が進行中である。また、切除可能なHER2遺伝子変異陽性NSCLC患者を対象として、術後補助療法におけるゾンゲルチニブの有用性を評価する国際共同第III相無作為化比較試験「Beamion LUNG-3試験」も進行中である。

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高血圧管理・治療ガイドライン2025(5):Na/K比【一目でわかる診療ビフォーアフター】Q163

高血圧管理・治療ガイドライン2025(5):Na/K比Q163近年、NaとKの摂取バランスをみる指標として蓄尿・随時尿中Na/K比が提唱され、エビデンスが集積されてきている。健康な日本人における至適目標値と実現可能目標値は?

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第312回 包茎手術で傷つきうる亀頭下の扇状領域こそ男性の性感帯の中心らしい

これまで看過されてきたペニスの神経解剖学的領域に、神経末端(終末)と感覚受容構造(sensory structure)が密集していることが新たな研究で判明しました1,2)。小帯デルタ(frenular delta)と呼ばれるその解剖学的領域こそ性感帯の中心をなす男性版のGスポットなのかもしれません。包皮と陰茎を繋ぐ小帯(裏筋)を含む小帯デルタは、ペニスの亀頭の下側にその名のとおり扇状に広がり、亀頭と茎(シャフト)の境目に位置し、割礼や包茎手術で損傷する恐れがある領域でもあります。性行為のときのペニスの感じ方を知る男性にとってはすでに自明のことかもしれませんが、性感帯の中心を成すペニスの解剖学的領域の存在が今回の研究成果で科学的に裏付けられました。スペインのサンティアゴ・デ・コンポステーラ大学のAlfonso Cepeda-Emiliani氏らのその成果を拠り所にして、小帯デルタを男性のGスポットとみなせそうだと国際性医学会(International Society for Sexual Medicine[ISSM])の次の会長のEric Chung氏は述べています。Cepeda-Emiliani氏は死亡した45~96歳の男性14人のホルマリン固定ペニス組織を手にし、数マイクロンほどの薄さで切っていき、神経に結合する特別な色素を添加して感覚神経の分布を顕微鏡下で調べました。解剖学の教科書や巷の性のハウツーガイドではもっぱら亀頭が男性の性感帯の中心とされています。しかしCepeda-Emiliani氏らの検討によると神経終末の密度がより高く、より敏感らしい小帯デルタこそ性感帯の中心のようです。小帯デルタには神経終末の束でできた独特の接触受容体である感覚小体(sensory corpuscle)が最も密集していることも分かりました。小帯デルタの感覚小体の一種のクラウゼ小体は、皮膚がこすれて生じるかすかな振動を感知して性的快感を生じさせることにどうやら携わることが先立つ研究で知られています3)。小帯デルタの初出は2001年のことで、ニュージーランドのオークランド工科大学のKen McGrath氏の解説に記されています4)。McGrath氏は快楽領域である小帯デルタを女性のGスポットになぞらえて男性のGスポットと初めて呼びもしました2)。しかしその名称はよく知られる女性のGスポットのようには広まりませんでした。Gスポット云々はさておき、包皮切除をする医師は今回の成果で詳らかにされた神経密集領域の小帯デルタについて学ぶ必要があるようです。その手術では包皮を取り除くのに小帯デルタがばっさり切られることもあり、込み入った神経網がそのせいで支障を来すかもしれません。切り込みが深かったり小帯がすっかり取り除かれたりすれば性感が損なわれるかもしれません。「泌尿器科医の手術の訓練の際に小帯デルタやその部分の独特な神経について教わることはなかった」というオーストラリアの泌尿器科医のKesley Pedler氏のコメントが科学情報サイトのNewScientistに記されています。Pedler氏によると、小帯デルタは泌尿器科で最も高評価の手術解剖学書のどれにも言及されていません。最新版ですらそのありさまです。Pedler氏はもともと慎重で、包皮の圧迫が度を越しているなどの医学的に必要な場合に限って包皮切除手術をしてきました。しかし小帯デルタの神経に関する今回の発見により、いまや包皮切除手術は絶対に必要な場合に限られることになったとPedler氏は言っています。ところで、女性のGスポットは俗によく知られる一方で、医学の世界での受け入れは滞っているようです。死亡した女性の膣を調べても神経や感覚小体が明らかに集まっている領域が見つかっておらず、女性のGスポットの存在は疑問視されてもいます。Cepeda-Emiliani氏らは死亡した女性の膣やクリトリスを今回の研究と同様に徹底的に調べることをすでに始めています。参考1)Cepeda-Emiliani A, et al. Andrology. 2026;14:661-701.2)Surprising male G-spot found in most detailed study of the penis yet / NewScientist3)Qi L, et al. Nature. 2024;630:926-934.4)McGrath K. The Frenular Delta. In:Denniston GC, et al. Understanding Circumcision. Boston:Springer;2001.

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研修生活が始まる前にこれだけはやっておけ!【研修医ケンスケのM6カレンダー】第11回

研修生活が始まる前にこれだけはやっておけ!さて、お待たせしました「研修医ケンスケのM6カレンダー」。この連載は、普段は初期臨床研修医として走り回っている私、杉田研介が月に1回配信しています。私が医学部6年生当時の1年間をどう過ごしていたのか、月ごとに振り返りながら、皆さんと医師国家試験までの1年をともに駆け抜ける、をテーマにお送りして参ります。早いもので、この連載も開始から1年が経とうとしています。執筆が毎月遅れてしまってすみません。今回は2月分と併せて2本一気に書いていきたいと思っています。1つ目は「国家試験が終わってから研修がスタートするまでに何を準備しておくか」、2つ目は「研修が始まるに当たって何を大切にしてほしいか」です。国試が終わり合格発表があって、自分は研修が始まるまでどんな思いで過ごしていたのかを懐かしみながら…そして今、2年間の初期臨床研修を終えて何をお伝えすべきか…ぜひ2本ともお楽しみください!医師国家試験、お疲れ様でした!(サクラ咲く!)本編をスタートさせる前に…遅くなりましたが、2月7日〜8日に行われた医師国家試験、大変お疲れ様でした。そして合格された方、誠におめでとうございます。みなさん試験はいかがだったでしょうか。難しかった、簡単だった、色んな話題で当日は賑わったことでしょう。私も当日速報を見ていたのですが、Aブロックの序盤にあった発作性上室性頻拍に関する問題は痺れましたね。出鼻にあの問題は今年は波乱の予感か…?なんて感じました。合格された皆さん、当日に十分にパフォーマンスを発揮できたことに加えて、これまで思うようにいかなかったこともあった数々の試験を乗り越えてきた結果です。改めておめでとうございます。今回惜しくも不合格であった方も、まずはお疲れ様でした。当日だけでなく、準備期間から色んなプレッシャーと対峙されてきたことでしょう。医師国家試験を受験できたこと自体、尊いことですし、今回の結果が全てではありません。医師国家試験も初期臨床研修も、キャリアの中の、人生の中の通過点の1つです。ぜひ次の1年を良い時間としていきましょう。「学生」という免罪符(研修医も色んなことができますけどね!?笑)さて、1本目のメインテーマは、初期臨床研修が始まるまでに何を準備するか?です。結論から申し上げると、とくに意識して何か準備しなくても大丈夫です。おすすめすることがないわけではないですが、何かを準備・予習するよりも重要なことがあると思います。それは「学生」という肩書きを使うことができる時間を有効に活用してほしい、ということです。「学生」とは実に強力なカードだと思います。一般的な話として、若者は、若者でいる、それだけで世間に大切にされやすい立場にあると思います。みなさんの中にも、実習や旅先で「学生なのですが…」と口にすると、興味を持ってもらえたり、奢ってもらえたり、時間を作っていただいた経験があるはずです。「学生なのですが…」が4月1日になった瞬間から使えないと思うと寂しく、そして今のうちに!と焦りさえ覚えたことを思い出します。3月31日の夜は憂鬱でしたね笑使う場面は問いませんが、普段なかなか会うことが難しい方へ会いたい、会うことを意識してみると、より充実した時間になると思います。大事にされる分、自分自身もバリューを出す努力をお忘れなく。ちなみに、「学生」ほどわかりやすくはないですが、「初期臨床研修医」「研修医」も大事にしていただけることが多いです。そして、何を隠そう、私はついに「初期臨床研修医」であるのもあと数日なのです!笑初期臨床研修が始まるまでに準備することというわけで、色んな意味で「学生」のうちにできることに時間と体力を注いでください、というメッセージがこの章で私が最も伝えたいことです。その前提で、敢えて準備するならということを申し上げます。まずオススメしたいことは「研修医になってから読む〜」というタイトルの本を1冊、臨床に寄せた本を1冊、臨床だけでなく働き方やキャリア戦略に寄せたものを1つ、それぞれ読んでみることです。『初期臨床研修医として働くこと』は学生とは立ち回りが色々異なります。医学を学ぶということ以外に「医療に携わる」、「診療行為を行う」、という側面もあれば、「社会人として働く」という医師のみでなく全ての新社会人に共通するような側面も出てきます。色んな意味で「初期」なので、悩みも多様になる研修医が多いわけです。ただ割と悩むポイントやぶつかる壁は様々ですが、例年決まっていて、それらを知り尽くした指導医の先生方が書かれた書籍や先輩の声は大変頼りになります。大いに悩んで、安全な範囲で失敗もして良いと思いますが、先輩方の軌跡から先取りする手段として書籍に手を伸ばしてみるのはいかがでしょうか。最後に(みなさんの能力が開花しますように!)いかがだったでしょうか。医師国家試験が終わってから旅行に、引っ越し、書類手続きなど、意外と休まる時間がないかと思います。人それぞれペースがあるので、自身の心地よいように時間を過ごしていただきたいですが、もし私があの3月に戻るなら「学生ですが…ちょっとお話いいですか?」と色んな大人に声をかけてみたいですね。いずれにしても、良い春休みを!

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生涯を通じた食生活の質が認知機能と関連している

 食生活は、高齢期における認知機能低下や認知症発症のリスク因子である。しかし、食生活の質と認知機能の長期的な関係は、これまであまりよくわかっていなかった。米国・タフツ大学のKelly C. Cara氏らは、食生活の質と認知機能の傾向、そして生涯にわたるこれらの相互関係について調査を行った。Current Developments in Nutrition誌2025年12月20日号の報告。 1946年英国出生コホート(3,059例、男性の割合:50.2%)のデータを用いて、混合軌跡モデリング(group-based trajectory modeling)により、幼少期から成人期後期までの食生活と認知機能の軌跡およびそれらの関連性、また食生活の軌跡とその後の認知症の徴候との関連性を調査した。Healthy Eating Index-2020のスコアは、4歳、36歳、43歳、53歳、60~64歳における食事の回想および日記から算出した。認知機能の全体的パーセンタイル順位は、8歳、11歳、15歳、43歳、53歳、60~64歳、68~69歳における知的能力と認知機能の検査から算出した。68~69歳におけるアデンブルック認知機能検査IIIのスコアに基づき、認知症の可能性を評価した。多項ロジットモデルを用いて、軌跡群の早期予測因子を決定した。 主な結果は以下のとおり。・3つの食生活の質の軌跡および4つの認知機能の軌跡が特定された。・性別、出生地、幼少期の社会階級、余暇活動は、軌跡群の予測因子であった。・結合軌跡モデルでは、認知機能が最も低い群には、主に食生活の質が低いまたは中程度の参加者がそれぞれ58%、35%含まれていた。・一方、認知機能が最も高い群には、食事の質が中程度または高い参加者がそれぞれ57%、36%含まれていた。・68~69歳で認知症の兆候を示した参加者の割合は、食事の質が低い群で、中程度および高い群と比較し、それぞれ3.8%、7.4%高かった。 著者らは「これらの結果は、生涯を通じた食事の質と認知機能との間に関連があること、そして幼少期から成人期にかけて食事の質が低い人は認知症の可能性が高いことを示唆している。食事ガイドラインに沿った食生活を長期にわたって継続することは、生涯を通じて認知機能にプラスの影響を与える可能性がある。しかし、これらの結果を確認するには、より多くの縦断的研究が求められる」としている。

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「心疾患患者の妊娠・出産の適応、管理に関するガイドライン」をフォーカスアップデート/日本循環器学会

 『2026年JCS/JSOGガイドラインフォーカスアップデート版 心血管疾患患者の妊娠・出産の適応と診療』1)が第90回日本循環器学会学術集会(2026年3月20~22日)会期中の3月20日に発刊された。本ガイドラインの研究班長を務めた神谷 千津子氏(国立循環器病研究センター循環器病周産期センター)と桂木 真司氏(宮崎大学産科・婦人科 主任教授)が本学術集会プログラム「ガイドラインを学ぶ2」において、妊娠を避けることを強く望まれる心疾患、妊産婦に注意が必要な循環器用薬を中心に解説した。 本書では、新規薬物治療をはじめとした循環器診療の進歩、思春期以降の男女を対象にしたプレコンセプションケアの取り組み、国内外からの心血管疾患合併妊娠を中心に、シェアード・ディシジョン・メイキング(SDM)を支えることも目標として作成され、今回のアップデート版では以下の7項目を主に取り扱う。そこで本稿では、とくに押さえておきたい項目として、「妊娠を避けることを強く推奨する疾患、病態」「妊娠中、授乳中の循環器薬物治療の安全性」にフォーカスする。―――――――――――――――――――・日本の疫学(周産期データベース、妊産婦死亡症例検討)・プレコンセプションケアと妊娠関連ハートチーム(PHT)・妊娠を避けることを強く推奨する疾患、病態・妊娠中、授乳中の循環器薬物治療の安全性・周産期管理:産科(分娩方法の選択、妊娠高血圧症候群)・周産期管理:麻酔科(麻酔方法の選択、硬膜外麻酔)・産後の注意点―――――――――――――――――――周産期の死亡原因として挙がる心大血管疾患とは 日本産婦人科学会の周産期データベースによると、2014~23年に登録された母体約220万人のうち、基礎疾患に何らかの心疾患を有したのは1.2%(2万6,894例)であった。神谷氏は「心疾患を有する母体は基礎内科疾患がない者と比較して、無痛分娩率、帝王切開率、帝王切開時の全身麻酔率、分娩時出血量、転科率、そして母体死亡率が高い傾向にある」と指摘。また、日本産婦人科医会による妊産婦死亡症例登録システムのデータでは、心大血管疾患は間接産科的死亡*1の第1位であり、大動脈解離、周産期心筋症、肺高血圧症などが原因であることが明らかになっている。同氏は「周産期に初めて診断され、産科と内科の連携が不十分な場合もある。これを解消するために循環器医ができることとして、コンサルテーションの閾値を低く、速やかな検査・治療が求められる」と強調した。*1 妊娠前から存在した疾患または妊娠中に発症した疾患により死亡したもの2)妊娠を避けることを強く望まれる心疾患 妊娠の際に厳重な注意を要する、あるいは妊娠を避けることが強く望まれる心疾患は、第2版までは6項目にとどまっていた。今回、大幅にアップデートがなされ、10項目が表13(p.25)に示された。・高度な体心室機能低下(LVEF<30%、体心室RVEF<40%)や心不全(NYHA心機能分類III~IV度)・重症閉塞性肥大型心筋症(HOCM)・周産期心筋症の既往と左心室機能低下の残存・中等度から重度のPAH(アイゼンメンジャー症候群含む)・重症僧帽弁狭窄(MS)・妊娠前から症状を伴う重度流出路狭窄(大動脈弁高度狭窄:平均圧較差≧40mmHg)・マルファン症候群(上行大動脈拡張期径>45mm、高リスク症例では≧40mm)や大動脈二尖弁を伴う大動脈疾患(大動脈径>50mm)・症状、有意な合併症のあるフォンタン術後・未修復の重症大動脈縮窄症・重症チアノーゼ性心疾患(SpO2<85%) 第3章では上記に対する推奨がCQ1~7とFRQ1で示されている*2。主な変更点について「妊娠を避けることを推奨する左室駆出率(LVEF)が以前は35~40%未満であったが、30%未満へと引き下げた(CQ1)。肺高血圧症患者では、血行動態の重症度が中等度~重度の場合は妊娠を避けることを強く推奨するが、状態の安定した軽症例であれば、妊娠を前向きに考えることが可能と、世界に先駆けてリスク分類した(CQ2)。また、機械弁置換後のリスクは抗凝固療法に起因するものであるため、強く妊娠を希望する場合は、周産期の抗凝固療法に習熟した専門施設での妊娠・分娩管理を強く推奨する(CQ3)。ただし、状態の安定した軽症の肺高血圧症患者や機械弁を有する患者が妊娠継続を希望する場合、各専門施設で周産期管理が求められるため、施設要件が合致した場合にのみ前向きに検討が可能である(p.25、表14)点には留意してほしい」と解説した。 続けて、「流出路狭窄がある場合には、妊娠前から症状を伴うような重症例では妊娠を避けることを強く推奨する一方で、平均圧較差が40~50mmHgで無症状の場合は主治医と相談しながら検討していくことが推奨される(CQ4)。さらに、有症状、有意な合併症をもつフォンタン術後の場合は妊娠リスクを避けることが推奨される(CQ6)。周産期心筋症の既往をもつ場合、LVEF50%未満が継続する患者では妊娠を避けることを強く推奨する(CQ7)」と説明した。*2 CQ:クリニカルクエスチョン、FRQ:フューチャーリサーチクエスチョン なお、これらは妊娠についての意思決定を支える推奨であり、医療的「介入」ではないため、推奨強度は付記しない方針とされている点には注意が必要である。妊娠中に選択できる循環器薬、アテノロールは実は危険! 心疾患合併妊娠のリスク因子のなかで、調整可能な因子の1つに薬剤選択が挙げられる。今回アップデートされた薬剤クラスには、抗凝固薬、降圧薬、利尿薬、抗不整脈薬、肺高血圧症や心不全、脂質異常症の治療薬がある。このなかで特筆すべきはβ遮断薬のアテノロールで、これまで妊娠中の禁忌記載がないβ遮断薬であったにもかかわらず、近年ではアテノロールが最も胎児へのリスクが高いと報告された3)ため、「使用可能だが、在胎不当過小児(SGA)のリスクが最も大きく、他剤への変更が推奨される」と変更した(p.58、表23)ことを強調した。 スタチンについては「添付文書上は禁忌であるが、家族性高コレステロール血症(ホモ接合体)患者や2次予防目的について、FDAでは使用を勧告している。本フォーカスアップデートでもその旨を記載した」と述べ、DOACについては、「妊娠中の安全性は未確立だが、リバーロキサバンにおいては授乳安全性が確立されつつある」とコメント。降圧薬のうちCa拮抗薬については、前版よりニフェジピン、アムロジピン、カルベジロール、ビソプロロールが妊娠中禁忌から有益性投与に変更している。ACE阻害薬やARBは妊娠中に禁忌であるが授乳中の安全性は確立しているため、「出産後に速やかに再開処方することは可能」と話した。 続いて桂木氏は、薬剤選択・用量・投与速度が妊娠中や分娩前後で調節が可能であること、循環器・産科・麻酔科で情報共有・管理することが重要である点に触れ、「妊娠中の薬物は禁忌も多いが、一律に禁忌ではなく症例に応じた病態別評価が必要であり、妊娠は循環器治療を止める理由ではない。また、母体へのリスクは即時的で致死的なものが多いため、母体のベネフィットと胎児リスクを比較して代替薬の選択を検討してほしい」とコメントした。さらに、「薬剤管理は母体死亡を減らす鍵となる。そのためには、妊娠中の循環器薬剤は“中止”より“最適化”を目指してほしい。産科薬剤は循環動態に影響するため、投与を慎重に判断し、分娩前から循環器・産科・麻酔科による情報共有を行ってほしい」と強調した。これまでのガイドラインと改訂の経緯 これまで、心血管疾患患者の妊娠中の病態について取り扱ったガイドラインは、2005年に初版が発刊、2018年に第2版となる『心血管疾患患者の妊娠・出産の適応、管理に関するガイドライン』が日本産科婦人科学会と合同で作成されていた。それから8年が経過し、新たなエビデンスが集積したことから、今回は前版の内容に補足するかたちで作成・公表がなされた。日本循環器学会(JCS)学術集会まとめページはこちら

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多臓器mCRC、腫瘍減量療法追加で全生存期間は改善するか/JAMA

 多臓器の転移を有する大腸がん(mCRC)患者の治療では、局所治療と全身療法の併用が生存率を改善する可能性が、多くの後ろ向き研究で示唆されている。オランダ・Radboud University Medical CenterのElske C. Gootjes氏らORCHESTRA Study Groupは、この課題を前向きに検討し(ORCHESTRA試験)、緩和的全身化学療法単独と比較して、全身療法に局所治療として腫瘍減量療法を加えても、全生存期間(OS)および無増悪生存期間(PFS)は改善せず、重篤な有害事象が有意に増加することを示した。研究の成果は、JAMA誌オンライン版2026年3月16日号に掲載された。オランダと英国の無作為化第III相試験 本研究は、オランダの27施設と英国の1施設で実施した研究者主導型の非盲検無作為化第III相試験(Dutch Cancer Societyなどの助成を受けた)。2013年5月~2023年5月に、年齢18歳以上、少なくとも2つの異なる臓器への転移を有するmCRCで、緩和的全身化学療法の1次治療の施行前に、切除、放射線照射、アブレーションにより80%以上の腫瘍減量が可能と判定された患者を登録した。 これらの患者に、カペシタビン+オキサリプラチン(±ベバシズマブ)療法(CAPOX[B])を3サイクル、またはフルオロウラシル/ロイコボリン+オキサリプラチン(±ベバシズマブ)療法(FOLFOX[B])を4サイクル施行し、部分・完全奏効または病勢安定が得られた患者を、引き続き化学療法のみを受ける群(標準治療群)または腫瘍減量療法後に化学療法を受ける群(介入群)に1対1の比率で無作為に割り付けた。 介入群は追加の化学療法を受けた後、局所治療を受け、その後はCAPOX(B)またはFOLFOX(B)を、総サイクル数がそれぞれ8および12サイクル以上となるまで継続投与した。 主要評価項目はOSとし、副次評価項目はPFSおよび重篤な有害事象であった。OS中央値:標準治療群27.5ヵ月vs.介入群30.0ヵ月 382例を登録し、標準治療群に190例(年齢中央値64歳、男性67%)、介入群に192例(64歳、69%)を割り付けた。肝転移は、標準治療群で154例(80.2%)、介入群で152例(80.0%)に認められた。 追跡期間中央値32.3ヵ月の時点で、ITT集団におけるOS中央値は、標準治療群が27.5ヵ月、介入群は30.0ヵ月と、両群間に有意な差はみられなかった(補正後ハザード比[HR]:0.88、95%信頼区間[CI]:0.70~1.10、p=0.26)。 また、PFS中央値は、標準治療群が10.4ヵ月、介入群は10.5ヵ月であった(補正後HR:0.83、95%CI:0.67~1.02、p=0.08)。 重篤な有害事象は、標準治療群で74例(39%)に発現したのに対し、介入群では101例(53%)と有意に多かった(p=0.006)。CEAはOS、PFSの予測因子ではない ベースラインのCEAは、OS(CEA≦200μg/L[補正後HR:0.84、95%CI:0.66~1.08、p=0.17]、CEA>200μg/L[0.90、0.32~2.52、p=0.84]、交互作用のp=0.87)およびPFS(CEA≦200μg/L[補正後HR:0.83、95%CI:0.66~1.04、p=0.11]、CEA>200μg/L[0.72、0.25~2.06、p=0.54]、交互作用のp=0.64)について標準治療群と介入群で統計学的に有意な差はなく、予測因子ではなかった。 また、BRAF V600E変異陽性の患者および野生型の患者の双方とも、OSおよびPFSについて両群間に有意な差を認めなかった。RAS変異についても、その有無を問わず、両群間にOSおよびPFSについて有意な差はなかった。一方、ほぼすべての患者がマイクロサテライト安定型であったため、マイクロサテライト不安定性の状態の解析はできなかった。 著者らは、「緩和的全身化学療法への腫瘍減量療法の追加は、多臓器mCRC患者の標準治療ではないことが明らかとなった。より限局性で転移数が少ない(oligometastatic)大腸がん患者における局所治療の有用性については、さらなる検討が必要であり、現在、臨床試験が進行中である」としている。

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再発・難治性濾胞性リンパ腫へのエプコリタマブ+R2併用療法のEPCORE FL-1試験、日本人解析を含む最新データ/日本臨床腫瘍学会

 1ライン以上の治療歴を持つ濾胞性リンパ腫に対するエプコリタマブ+R2(レナリドミド+リツキシマブ)療法とR2療法を比較した国際第III相試験であるEPCORE FL-1試験において、規定された2回目の中間解析から得られた、日本人データを含む最新版のデータについて、がん研究会有明病院の丸山 大氏が第23回日本臨床腫瘍学会学術集会(JSMO2026)で発表した。エプコリタマブ+R2療法群はR2療法群に比べ、有意に高い全奏効割合(ORR)と無増悪生存期間(PFS)の延長が認められ、日本人集団の追跡期間は短いものの全体集団の結果と一貫していることが示唆された。 本試験は、国際共同第III相無作為化非盲検試験で日本を含む30ヵ国189施設で実施された。1ライン以上の治療歴のあるCD20陽性の再発・難治性濾胞性リンパ腫の成人患者を対象に、エプコリタマブ+R2群とR2群に無作為に割り付け、最大12サイクル投与した。エプコリタマブは2または3ステップの漸増投与(SUD)レジメンで初期誘導し、その後全量48mgを投与した。サイクル1~3は毎週、サイクル4~12は4週ごとに皮下投与した。主要評価項目はORRおよびPFS、主な副次評価項目は完全奏効割合(CRR)、全生存期間(OS)、奏効期間(DOR)および安全性を設定した。データカットオフ時点(2025年3月24日)での追跡期間中央値は14.8ヵ月であった。 主な結果は以下のとおり。・2022年9月~2025年1月に、エプコリタマブ+R2群に243例、R2群に245例が無作為に割り付けられた。そのうち日本人はそれぞれ11例、17例であった。・人口統計学的特性および疾患特性は全体集団、日本人集団とも概ね均衡していた。年齢中央値は日本人集団が全体集団より高く、65歳以上の割合が高かった。全体集団において、2年以内の疾患進行(POD24)が約40%、抗CD20抗体とアルキル化剤の両方に抵抗性を示す患者が37%であった。日本人集団では、エプコリタマブ+R2群のPOD24が73%と高かった。・PFSは、エプコリタマブ+R2群がR2群に比べて有意に良好で、全体集団においてハザード比(HR)は0.21(95%信頼区間[CI]:0.14~0.31、p<0.0001)であり、日本人集団においても追跡期間は短いが全体集団と同様の傾向を示した。サブグループ解析でも、予後良好な背景を持つ患者も含め、エプコリタマブ+R2群が良好であった。・ORRは、エプコリタマブ+R2群95%、R2群79%、CRRはエプコリタマブ+R2群83%、R2群50%と、どちらもエプコリタマブ+R2群が有意に(p<0.0001)高かった。日本人集団においてもエプコリタマブ+R2群が良好であり、ORRとCRRのいずれも100%に達した。・DOR中央値は、エプコリタマブ+R2群は未到達で、R2群と比較したHRは0.19(95%CI:0.12~0.30、p<0.0001)であった。・次治療までの期間(TTNLT)の中央値は、エプコリタマブ+R2群では未到達、R2群では24.3ヵ月であった。・OS中央値は両群で未到達であり、16ヵ月時点の推定OS率はエプコリタマブ+R2群で95.8%、R2群で88.8%であった。・日本人集団における有害事象は、エプコリタマブ+R2群で感染症と好中球減少症の発現率が高かったが、エプコリタマブ中止例はなく、発熱性好中球減少症や致死的な有害事象は報告されなかった。・サイトカイン放出症候群(CRS)は、全体集団において3SUDを受けた133例のうち26%で発現したが、すべて低Gradeで、その後すべて回復した。CRSおよび免疫細胞関連神経毒性症候群(ICANS)による中止例はなかった。 丸山氏は、「エプコリタマブ+R2療法は外来投与に適した新しい化学療法フリーの治療であり、本レジメンが2次治療以降の濾胞性リンパ腫における新たな標準治療となることが示唆された」と展望を述べた。

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転移乳がんへのサシツズマブ ゴビテカン、アジアを含む安全性統合解析/日本臨床腫瘍学会

 サシツズマブ ゴビテカン(SG)は、既治療で転移を有するトリプルネガティブおよびHR+/HER2-乳がん患者を対象とした複数の臨床試験において、標準治療と比較して患者の転帰を大幅に改善し、安全性プロファイルは管理可能であることが示されている。今回、米国やカナダ、欧州、アジアで実施された試験でSGを投与された転移乳がん患者の安全性データを統合した解析結果を、米国・UCSF Helen Diller Family Comprehensive Cancer CenterのHope S. Rugo氏が第23回日本臨床腫瘍学会学術集会(JSMO2026)で発表した。 対象となった試験は、北米・欧州で実施されたASCENT試験、TROPiCS-02試験、IMMU-132-01試験、アジアで実施されたEVER-132-001試験、EVER-132-002試験、ASCENT-J02試験であった。試験治療下における有害事象(TEAE)は初回投与日から最終投与の30日以内に発現したすべての有害事象(AE)と定義し、北米・欧州とアジアの両地域で比較した。 主な結果は以下のとおり。・解析には、北米・欧州の688例とアジアの281例が含まれた。両地域のほぼ全例(99%以上)がいずれかのGradeのTEAEを経験し、Grade3以上のTEAEは北米・欧州74%およびアジア78%、重篤な有害事象は28%および22%に発現した。・SGの減量(北米・欧州28%、アジア24%)、中断(61%、63%)、中止(5%、4%)、死亡(1%、3%)につながったTEAEの発現率は両地域で同程度であった。・投与中止につながった最も一般的なTEAEは、北米・欧州では好中球減少症、下痢、疲労、肺炎(それぞれ1%未満)であり、アジアでは好中球減少症、白血球減少症、疲労、敗血症性ショック(それぞれ1%)であった。・全GradeおよびGrade3以上の好中球減少症、貧血、白血球減少症、全GradeのAST/ALT上昇、低アルブミン血症はアジアのほうが北米・欧州よりも高頻度であった。・全GradeおよびGrade3以上の下痢と全Gradeの疲労はアジアのほうが少なかった。・好中球減少症は両地域ともに治療初期に多く発現したが、適切なマネジメントや減量により、その後減少した。・両地域ともにG-CSF製剤の予防的投与は好中球減少症の発現率の低下と関連しており、1次予防としてのG-CSF製剤の有用性が示唆された。・下痢および悪心も適切な支持療法によって管理可能であることが示唆された。 これらの結果より、Rugo氏は「全GradeおよびGrade3以上のTEAE、減量・中断・中止・死亡につながったTEAEの発現率は北米・欧州とアジアの両地域で同程度であった。本研究は、転移乳がんにおけるSGのアジアを含む安全性解析としてはこれまでで最大規模のものであり、患者サブグループ間でSGが一貫して管理可能な安全性プロファイルを有する治療薬であることを改めて裏付けるものである」とまとめた。

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遠隔診療で医療費が対面診療の約5分の1に

 遠隔診療は単に便利なだけでなく、患者と医療システム双方の医療費削減につながることが、新たな研究で示された。特に頻度の高い症状の診療においては、遠隔診療では対面診療と比べて医療費を約5分の1に抑えられることが明らかになったという。米ペンシルベニア大学戦略的イニシアチブのシニアバイスプレジデントであるDavid Asch氏らによるこの研究の詳細は、「JAMA Network Open」に2月9日掲載された。 Asch氏は「この研究を行う前は、遠隔診療は“応急処置”を気軽に受けられる手段の一つに過ぎず、対面診療を先延ばしにするだけで、結果的に全体の医療費を押し上げるのではないかという懸念があった」と説明。その上で、「しかし、われわれの研究から、それが事実ではないことが明らかになった。多くの患者にとって、遠隔診療は応急処置のための一時的な対応となるだけでなく、完全な解決策となり得るのだ」とニュースリリースの中で述べている。 論文の研究背景によると、新型コロナウイルス感染症(COVID-19)パンデミック中の緊急措置により遠隔診療へのアクセスが拡大し、その利用が急増した。例えば、ペンシルベニア大学ヘルスシステム(UPHS)での遠隔診療の件数は、2020年3月から2021年2月までの1年間で100万件に達し、2019年の1万1,000件から約90倍に増加した。 しかし、遠隔診療の有効性や費用対効果については依然として疑問が残っていたという。論文の上席著者である同大学生物統計学教授のYong Chen氏は、「遠隔診療が万能ではないことは認識している。特に精神および行動の健康問題に対しては、慎重なトリアージやフォローアップ、継続的なケアが依然として重要である。そのため、われわれは、医療資源の効率的な配分が実現されているのかを解明したいと考えた」と述べている。 研究グループは今回、2024年1月1日から4月30日までの4カ月間にわたる16万3,308件の診察データを分析した。データには、対面診療および遠隔診療の両方の診察データが含まれていた。対象はCOVID-19、呼吸器症状、神経発達障害、睡眠障害、不安症など10種類の一般的な症状や疾患の診察とし、初回受診の7日前から30日後まで追跡し、その後の受診の必要性を調べた。 その結果、遠隔診療に関連する請求額は平均で96.60ドル(1ドル158円換算で約1万5,300円)だったのに対し、対面診療では509.21ドル(約8万円)だった。また、その後の受診回数は、遠隔診療で平均3.44回であったのに対し、対面診療では平均4.44回であった。特に呼吸器症状などでは対面診療よりも遠隔診療の方が平均で800ドル(約12万6,400円)以上医療費が少なかった。一方、精神科医療については、対面診療と遠隔診療の医療費はほぼ同額であることが示された。 論文の筆頭著者である同大学応用数学・計算科学のBingyu Zhang氏は、「多くの医療システムでは、すでに精神科医療の大部分を遠隔診療によって提供している。精神科医療は、他の疾患のような検査や処置ではなく、カウンセリングや服薬管理が主体となるからだ。したがって、治療や処方の流れは診療形態にかかわらず同じようなものであり、診療エピソードにかかる費用も同程度になる。ただし、それでも遠隔診療ではその後の受診回数が少ない傾向にある」と説明している。 研究グループはまた、遠隔診療へのアクセスを拡大したコロナ禍の規制を維持するために米議会が対応する必要があると主張している。UPHSのCEOであるKevin Mahoney氏はニュースリリースの中で、「もし遠隔診療がCOVID-19以前のような制限された形に戻れば、今回われわれが明らかにした医療費削減効果は失われる可能性がある」と指摘し、「病院や医療システムが深刻な財政的逆風にさらされている今、このような節減は極めて重要だ。それによって、患者ケアへの再投資やイノベーションの推進が可能になる」と述べている。

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BMIでは見えない死亡リスク?新体型指標の可能性~日本人大規模コホート

 体格評価に広く用いられるBMI(体格指数)だが、その限界も指摘されている。近年、体型の丸みや腹囲を反映する指標であるBody Roundness Index(BRI)や、体型形状を考慮したA Body Shape Index(ABSI)が提案されている。今回、日本人約78万人を対象とした大規模研究で、これらの指標が死亡リスク評価に新たな視点をもたらす可能性が示された。研究は、東京大学大学院医学系研究科ヘルスサービスリサーチ講座の木村悠哉氏らによるもので、詳細は1月31日付で「Journal of Obesity」に掲載された。 BMIは体脂肪の指標として広く用いられているが、脂肪と筋肉を区別できない点や脂肪分布を反映しない点が課題とされている。同じBMIでも体組成や死亡リスクが異なる可能性があり、近年は腹囲や内臓脂肪を反映した新たな体型指標であるBRIやABSIが提案されている。欧米や糖尿病患者を対象とした研究では、これらの指標がBMIより死亡リスク評価に優れる可能性が示唆されているが、アジア人の一般集団でのエビデンスは限られている。本研究では、日本人を含むアジア集団において、BMI・BRI・ABSIと全死亡との関連を比較し、BMIカテゴリ内でのより詳細なリスク層別化が可能かを検証することを目的とした。 本研究では、全国を代表する日本のレセプトデータベース(2014~2022年)を用いた後ろ向きコホート研究として、健康診断を受診した77万8,812人を解析対象とした。主要評価項目は全死亡とした。3つの身体計測指標は、制限付き三次スプライン曲線から算出したカットオフ値に基づき5群(Q1~Q5)に分類した。人口統計学的因子、生活習慣および併存疾患で調整した多変量Cox比例ハザードモデルを用いて、これらのカテゴリ変数と全死亡との関連を評価した。 参加者の平均(標準偏差)年齢は62.8(9.6)歳で、女性は44万5,250人(57.2%)であった。死亡例ではABSIが生存者より高値であった一方、BMIおよびBRIには明確な差はみられなかった。また、BRIはBMIと強い相関を示したのに対し、ABSIはBMIとほとんど相関が認められなかった。 追跡期間中央値(四分位範囲)4.53(3.28~6.23)年の間に、1万4,690件の死亡が確認された。BMIおよびBRIでは、値が低すぎても高すぎても死亡リスクが上昇する「U字型」の関連がみられた。一方、ABSIでは低値域ではリスク上昇が比較的緩やかで、高値になるほど急激にリスクが増加する「J字型」の関係が示された。 基準カテゴリ(Q3)と比較した死亡リスクの有意差は、BMIではQ1・Q2・Q5の3カテゴリに認められたのに対し、BRIおよびABSIでは基準カテゴリ(Q3)以外のすべて(Q1・Q2・Q4・Q5)で認められた。 著者らは、「本研究はアジア人集団における死亡リスク評価において新たな身体計測指標を考慮することの有用性を示唆している。また、これらの知見は、体組成評価や肥満管理におけるより包括的なアプローチの発展に寄与する可能性がある」と述べている。 なお、本研究の限界として、民族差を検討できない点、死因別死亡が解析できない点、観察期間が比較的短い点、選択バイアスや社会経済的要因を調整できないことによる残余交絡の可能性がある点などを挙げている。

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第288回 患者減少が迫る構造転換、小児医療は県境越えて連携へ/厚労省

<先週の動き> 1.患者減少が迫る構造転換、小児医療は県境越えて連携へ/厚労省 2.新たな地域医療構想、2040年を見据えて急性期集約と外来偏在対策を加速/厚労省 3.人材紹介料が医療経営を圧迫 厚労省に上限規制を要請/日医・四病協 4.紹介状が「全国で閲覧可能」に 医療・介護連携DXを加速/厚労省 5.原油高が医療崩壊リスクに 資材不足と経営悪化で緊急要望/保団連 6.手術中に麻酔科医が不在30分 薬剤抜き取り・自己使用で懲戒免職/川崎市 1.患者減少が迫る構造転換、小児医療は県境越えて連携へ/厚労省厚生労働省は、3月26日に「小児がん拠点病院等の指定要件に関するワーキンググループ」を開き、少子化と専門医不足のため、小児医療の提供体制を都道府県単位から広域連携へ転換する方針を明らかにした。小児の集中治療や心臓手術など高度医療は症例減少により各都道府県単独での維持が困難となっており、県外搬送や遠隔相談を前提とした体制整備、財政支援、将来的な集約化を検討する。これらの政策は第9次医療計画への反映が見込まれ、医師不足地域では他科医との連携やオンライン診療、小児科医派遣による維持策も示された。小児がん領域でも体制見直しが進む。高度治療や研究開発を担う拠点病院は集約化しつつ、全都道府県に標準治療を提供する「県拠点病院」を新設、さらに連携医療機関を整備する三層構造へ再編する。症例数減少と分散、ドラッグ・ラグ、アクセス格差が背景にあり、質とアクセスの両立を図る。2027年から新体制が開始される予定。その一方で、人口減少は医療提供体制全体に影響を及ぼす構造問題として顕在化しており、人口減少問題を議論する「未来を選択する会議」の白書では社会保障費増大やインフラ維持への危機感が8割超に達し、出生減少の要因として経済負担や性別役割意識の影響が指摘された。人口減少は、地域差・世代差を伴いながらも全国各地で進行しており、医療政策も広域化・集約化とともに社会制度改革と不可分の課題となっている。 参考 1) 小児がん拠点病院等について(厚労省) 2) 今後の小児がん拠点病院等の指定の考え方について(同) 3) 小児医療、県またぎ連携 厚労省、心臓手術など 少子化や専門医不足で(日経新聞) 4) 小児がん診療体制を大きく見直し、「拠点病院の集約化」とともに「全都道府県に県拠点病院を指定」へ-小児がん拠点病院指定要件WG(Gem Med) 5) 人口減少問題 有識者団体が報告書 “社会経済全般の改革必要”(NHK) 6) 人口減に50歳以上の7割が「危機感」、未来選択会議が初の「人口問題白書」…少子化対策のヒントも(読売新聞) 7) 民間組織「未来を選択する会議」が人口問題白書を発行、人口減見据え(朝日新聞) 8) 人口問題白書2025(未来を選択する会議) 2.新たな地域医療構想、2040年を見据えて急性期集約と外来偏在対策を加速/厚労省厚生労働省は、3月26日に社会保障審議会医療部会を開き、2040年を見据えた新たな地域医療構想のガイドラインを4月中に公表し、都道府県は2026~28年度に新構想を策定することを明らかにした。構想区域は「人口20万人以上」を基本としつつ、地域の実情に応じ柔軟に設定。区域内では医療機関の機能分担や病床再編を協議し、急性期拠点機能は人口20~30万人に1ヵ所を目安に集約化を進める方向である。社会保障審議会での議論では、ガイドラインはあくまで参考とし、地域実情を優先すべきとの意見や、老朽病院の建て替え支援、都道府県への技術的・財政的支援を求める声が相次いだ。あわせて外来医師偏在対策も具体化し、外来医師過多区域で2026年10月以降に新設される無床診療所について、地域で不足する医療機能の提供状況や要請・勧告の有無を「医療情報ネット(ナビイ)」で公表する方針が了承された。スマホ対応マイナ保険証、RSウイルスワクチン、指定難病対応などの情報も追加される。その一方で、「要請・勧告といったネガティブ情報の公開は制度趣旨とずれる」「不公平を生む」との慎重論も出た。医療機関の定期報告率は全国平均72.4%だが、都道府県差が大きく、入力負担軽減と周知徹底が課題とされた。今後、オンライン診療受診施設の広告規制や不適切広告対策の強化も進められ、外来・在宅・介護連携まで含めた医療提供体制の再構築が本格化する。 参考 1) 地域医療構想及び医療計画等に関する検討会とりまとめについて(厚労省) 2) 地域医療構想「人口20万人以上」 40年見据えガイドライン骨子 厚労省(時事通信) 3) 新地域医療構想等のガイドライン、医療部会意見も踏まえて「2026年4月中」に作成・公表、急性期機能等の集約化を地域で推進(Gem Med) 4) 地域医療構想策定ガイドラインは4月に 社保審・医療部会(CB news) 5) 全国の医療機関情報掲載する「ナビイ」に外来医師過多区域での医療機能提供などの情報も公表-医療機能情報提供制度等分科会(Gem Med) 3.人材紹介料が医療経営を圧迫 厚労省に上限規制を要請/日医・四病協3月24日に日本医師会と四病院団体協議会は、医療・介護分野の人材紹介サービスの適正化に向け、紹介手数料の上限規制導入や返戻金制度の義務化を求める要望書を上野 賢一郎厚生労働大臣に提出した。背景には、近年の人材紹介手数料の高騰と早期離職の増加があり、医療機関の経営を圧迫している実態がある。とくに紹介手数料の総額は2023年度に1,000億円を超え、その多くが公的医療保険を原資として支払われている点が問題視されている。医療機関にとっては、診療報酬が公定価格という環境で、採用コストを価格転嫁できず、地方や中小医療機関ほど影響が大きく、地域医療提供体制の持続性にも関わる課題となっている。さらに医療・介護分野では入職後6ヵ月以内の早期離職が多く、採用のたびに高額手数料が発生する構造が経営リスクを増幅させている。要望では、早期離職時の返戻金制度を義務化し、その水準を標準化することで、紹介会社にも一定の責任を負わせる仕組みを提案した。ただし、返戻期間の単純延長では離職の後ろ倒しを招く可能性もあり、実効性ある設計が必要とされる。また、離職実態の可視化として6ヵ月超1年以内の離職データ報告義務化や、求職者が紹介手数料の実額を把握できる仕組みの導入も求めた。加えて、ハローワークやナースセンターなど無料職業紹介の活用促進も提言。民間紹介への依存が進めば人材の都市部集中や地域偏在が加速する懸念がある。これら一連の提言は、単なるコスト問題にとどまらず、人材確保と医療提供体制の持続性に直結する構造課題への対応を求めるもの。厚生労働省では、まず実態把握を進める姿勢を示しており、今後の制度設計が医療経営に与える影響は大きい。 参考 1) 高額な紹介手数料、「原資は公的医療保険」と指摘 日医会長が問題視、緊急対応を要望(CB news) 2) 医療・介護の人材紹介手数料に上限規制を 医師会と病院団体、上野厚労相へ要望書(Joint) 3) 有料職業紹介事業の適正化とハローワークの機能強化に関する要望書(四病院団体協議会・日本医師会) 4) 有料職業紹介事業に関するワーキンググループ報告書~医療分野における人材確保と有料職業紹介事業等の適正化に向けた提言~(同) 4.紹介状が「全国で閲覧可能」に 医療・介護連携DXを加速/厚労省厚生労働省は、3月18日に「健康・医療・介護情報利活用検討会」の医療等情報利活用ワーキンググループと介護情報利活用ワーキンググループの合同会議を開催し、医療と介護の情報連携を強化するため、「全国医療情報プラットフォーム(PF)」を活用し、診療情報提供書や訪問看護指示書・計画書・報告書を医療・介護関係者間で共有する方針を示した。これまで医療分野では電子カルテ情報共有サービス、介護分野では介護情報基盤の整備が進められてきたが、両分野をまたぐ情報共有の具体像は整理されていなかった。今回、標準様式が存在する文書から連携を開始し、将来的にはリハビリ計画書や入退院情報などへ拡大する方向で検討を進める。電子カルテ情報共有サービスでは、診療情報提供書や退院時サマリーなどの「3文書6情報」を全国で共有できるものとし、2027年初頭の本格運用が見込まれる。その一方で、介護情報基盤も要介護認定情報やLIFEデータ、ケアプランなどの共有を2026年度から段階的に開始する予定であり、両基盤を接続することで多職種連携の高度化が期待される。背景には、高齢化の進展に伴い医療と介護の複合ニーズを持つ患者が増加している現状がある。情報連携により入退院時の引き継ぎや在宅療養支援の質向上、災害時対応の強化などが見込まれる一方で、同意取得の在り方や情報セキュリティ、介護側のICT環境整備、標準化の難しさなど課題も多い。とくに介護情報は生活背景や主観的評価を含むため、医療情報との整合性確保が重要となる。今後、合同ワーキンググループでは、詳細設計を進め、2026年夏に開発方針を取りまとめる予定。医療・介護の分断を埋める基盤整備は、地域包括ケアの実効性を左右する鍵となる。 参考 1) 「全国医療情報プラットフォーム」における医療介護連携の進め方について(厚労省) 2) 健康・医療・介護情報利活用検討会 第30回医療等情報利活用ワーキンググループ、及び第10回介護情報利活用ワーキンググループ資料について(同) 3) 医療と介護の情報共有、診療情報提供書などから 全国医療情報プラットフォームで 厚労省案(CB news) 4) 医療・介護連携を「情報面」からも進めるため、まず【診療情報提供書】【訪問看護指示書・計画書・報告書】の電子的共有を検討(Gem Med) 5.原油高が医療崩壊リスクに 資材不足と経営悪化で緊急要望/保団連中東情勢の緊迫化に伴う原油価格の急騰を受け、全国保険医団体連合会(保団連)は政府に対し、医療資材の供給確保と財政支援を求める緊急要望書を提出した。背景には、イランを巡る中東情勢の悪化とホルムズ海峡の機能不全による世界的な原油供給不安があり、医療現場にも直接的な影響が及び始めている。医療用ガウンやグローブ、注射器、点滴バッグ、カテーテルなど、原油由来のプラスチック製品を中心にコスト上昇と供給不安が顕在化しており、基礎的医薬品を含めた医療資材の不足は診療継続そのものに直結するリスクとなる。加えて、在宅医療では燃料費の上昇が訪問コストを押し上げ、結果として患者負担の増加につながる可能性も指摘される。医療機関の経営面でも、光熱費や材料費の高騰が収益を圧迫しており、2026年度診療報酬改定で盛り込まれた物価対応分(+0.76%)は今回の急激な原油高を想定したものではなく、十分な対応とは言えないとの批判がある。さらに改定施行が6月である点も、足元の急激なコスト上昇への対応としては遅いとされる。こうした状況を踏まえ、保団連は医療資材および基礎的医薬品の国内在庫確保と安定供給、診療報酬の期中改定や補助金の拡充による即時的な財政支援を要請した。医療機関が機能不全に陥る前の早期対応を求める内容であり、原油高は単なるコスト問題を超え、地域医療の持続性を揺るがす構造リスクとして顕在化している。今後の政策対応は、医療経営の安定のみならず、患者アクセス維持の観点からも重要な局面を迎えている。 参考 1) 【要望】原油価格高騰に伴う医療資材の不足等への緊急対応を(保団連) 2) 「原油急騰で機能不全に陥る前に…」医師団体が政府に緊急の要望書 医療資材の在庫確保など求める(弁護士JPニュース) 6.手術中に麻酔科医が不在30分 薬剤抜き取り・自己使用で懲戒免職/川崎市川崎市立川崎病院は、麻酔薬を自己使用し患者への投与量を改変したとして、28歳の麻酔科医を懲戒免職とした。医師は不眠に悩み、「麻酔で眠る患者を見て自分も眠りたかった」と供述している。事件は2025年12月、手術中に無断で手術室を離れ、麻酔薬プロポフォールを自己注射したことに始まる。この間、約30分間にわたり麻酔科医不在の状態で手術が継続され、後に別の医師が対応した。さらに2026年1月の復職後、患者に使用予定の麻酔薬から一部を抜き取り、自身の使用目的で持ち去ろうとした上、生理食塩水で希釈した薬剤を患者に投与する不正行為が発覚した。翌日にも同様の行為を試みたが看護師が発見し、事態が明るみになった。患者への健康被害は確認されていないものの、医療安全および倫理の観点から重大な問題と判断され、病院は懲戒免職とともに窃盗容疑で警察に被害届を提出した。この事件により、病院の薬剤管理体制の脆弱性のみならず、医師の健康管理や勤務環境の問題も浮き彫りにした。長時間手術や慢性的な睡眠不足の中で、適切なサポート体制が機能していたかが問われる。医療機関における薬剤管理、職員のメンタルヘルス対策および医療安全体制の再点検が求められる事案といえる。 参考 1) 「不眠に悩み」患者の麻酔薬一部持ち去り自己注射 28歳医師処分(毎日新聞) 2) 不眠に悩む麻酔科医「患者にこんなに効くなら…」抜き取って自分に注射、患者には薄めて 川崎市立病院、懲戒免職(東京新聞) 3) 手術室離れて麻酔薬を自分に注射 「少しでも寝たかった」医師を免職(朝日新聞)

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英語で「整復する」ってどう言う?【患者と医療者で!使い分け★英単語】第55回

医学用語紹介:整復する reduce脱臼した関節や骨折を元の位置に戻すことを医学用語では「reduce(整復する)」と表現し、名詞では「reduction(整復)」となります。でも、患者さんにそのまま“reduce your shoulder”と言っても「肩を減らす?」と困惑されてしまいがちです。一般用語ではどう言い換えるとよいでしょうか?講師紹介

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辛い食品は炎症性腸疾患リスクを上げるのか

 潰瘍性大腸炎やクローン病を含む炎症性腸疾患(IBD)は世界的に有病率が増加しており、その原因として食事の関与が指摘されている。今回、サウジアラビア・保健省のAnas Almofarreh氏らが、辛い食品の毎日の摂取とIBDリスクとの関連を検討したところ、クローン病とは関連を示したが、潰瘍性大腸炎との関連は認められなかった。Nutrition誌2026年5月号に掲載。 本研究は症例対照研究で、サウジアラビアの民間クリニックにおける潰瘍性大腸炎患者157例、クローン病患者226例、対照群390例を対象とした。IBDの診断には、臨床検査、生検を伴う内視鏡検査、画像検査を用いた。辛い食品は、唐辛子やホットソースを使用した料理と定義し、自己記入式質問票を用いて評価した。辛い食品の摂取とIBDリスクとの関連を評価するために多変量ロジスティック回帰分析を用い、調整オッズ比(OR)および95%信頼区間(CI)を算出した。 主な結果は以下のとおり。・辛い食品の毎日の摂取は、クローン病の発症リスク上昇と有意に関連していた(OR:1.61、95%CI:1.11~2.33)が、潰瘍性大腸炎とは関連していなかった(OR:1.03、95%CI:0.67~1.60)。・辛い食品とIBDの病変範囲や重症度との間には有意な関連が認められなかった。

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透析患者でもGLP-1薬開始で心血管イベント・死亡リスク低下と関連

 維持透析を受けている腎不全の2型糖尿病患者において、GLP-1受容体作動薬(GLP-1薬)の新規使用は、他の一般的な血糖降下薬と比較して心血管イベントおよび全死因死亡のリスク低下と関連していたことを、米国・Duke University School of MedicineのBenjamin Catanese氏らが示した。Journal of the American Society of Nephrology誌オンライン版2026年3月12日号掲載の報告。 GLP-1薬は、透析を必要としない慢性腎臓病患者において心血管イベントリスクを低減することが報告されている。しかし、透析に至った腎不全患者におけるGLP-1薬の有益性は依然として不明であり、腎不全患者の心血管アウトカムを改善する治療選択肢は限られている。そこで研究グループは、腎不全と2型糖尿病を併発している患者を対象に、GLP-1薬または他の血糖降下薬を新たに使用開始した場合の心血管アウトカムを比較する観察研究を実施した。 電子カルテ、メディケア請求データ、米国腎臓データシステム(United States Renal Data System、2011~21年)を用いて、維持透析中の2型糖尿病患者におけるGLP-1薬、DPP-4阻害薬、スルホニル尿素薬(SU薬)の新規使用者を特定した。主要解析では61の共変量を用いた傾向スコアマッチングにより、GLP-1薬とDPP-4阻害薬の開始者を1対1で比較した。副次解析として、GLP-1薬とSU薬の開始者についても同様に比較した。 主要アウトカムは全死因死亡を含む修正主要心血管イベント(MACE)で、副次アウトカムには主要アウトカムの個々の構成要素と心不全による入院が含まれた。原因別Cox比例ハザードモデルによりハザード比(HR)と95%信頼区間(CI)を推定した。 主な結果は以下のとおり。・新規使用者は、GLP-1薬3,629例、DPP-4阻害薬2万1,369例、SU薬3万2,296例で、最大2年間追跡された。・GLP-1薬とDPP-4阻害薬の開始者3,284組のマッチングにおいて、GLP-1薬の使用はMACE、全死因死亡、心不全による入院のリスク低下と関連していた。 MACE HR:0.87(95%CI:0.78~0.97) 全死因死亡 HR:0.83(95%CI:0.74~0.94) 心不全による入院 HR:0.90(95%CI:0.83~0.99)・GLP-1薬とSU薬の開始者2,792組のマッチングにおいて、GLP-1薬の使用はMACEおよび全死因死亡のリスク低下と関連していた。 MACE HR:0.83(95%CI:0.74~0.93) 全死因死亡 HR:0.80(95%CI:0.69~0.91)

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