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抗線維化作用と免疫調整作用を併せ持つ肺線維症薬「ジャスケイド錠9mg/18mg」【最新!DI情報】第64回

抗線維化作用と免疫調整作用を併せ持つ肺線維症薬「ジャスケイド錠9mg/18mg」今回は、経口ホスホジエステラーゼ(PDE)4B阻害薬「ネランドミラスト(商品名:ジャスケイド錠9mg/18mg、製造販売元:日本ベーリンガーインゲルハイム)」を紹介します。本剤は抗線維化作用と免疫調整作用を有し、PDE4Bに対して高い選択性を持つ阻害薬であり、希少難病である特発性肺線維症および進行性肺線維症患者の新たな選択肢として期待されています。<効能・効果>特発性肺線維症および進行性肺線維症の適応で、2026年5月18日に製造販売承認を取得しました。<用法・用量>通常、成人にはネランドミラストとして1回18mgを1日2回経口投与します。なお、患者の忍容性に応じて、1回9mg 1日2回に減量することができます。<安全性>重大な副作用として、重度の下痢(1.3%)があります。その他の副作用として、下痢(30.8%)、食欲減退、悪心、体重減少(いずれも1%以上10%未満)、心房細動、背部痛(いずれも1%未満)があります。<患者さんへの指導例> 1.この薬は、抗線維化薬および免疫調整薬と呼ばれる薬です。ホスホジエステラーゼ(PDE)4Bという酵素を阻害することによって、特発性肺線維症および進行性肺線維症の病態形成や進行に関与する反応を抑えます。 2.この薬は光に不安定なため、服用する直前にシートから取り出してください。 3.妊娠する可能性がある女性は、この薬を使用している間および使用終了後4日間は適切に避妊してください。 4.妊娠または妊娠している可能性がある女性は、医師または薬剤師に相談してください。 <ここがポイント!>特発性肺線維症(IPF)は、原因不明で肺が硬くなる特発性間質性肺炎の一種で、国の指定難病です。予後は不良で、未治療の場合の生存期間中央値は3~5年とされています。発症原因は完全には解明されていませんが、加齢、喫煙、生活環境、遺伝的素因などの関与が考えられています。一方、進行性肺線維症(PPF)は、IPF以外の間質性肺疾患のうち、IPFに類似した進行性の線維化を特徴とする疾患群の総称です。これらの肺線維化および炎症の病態形成には、肺に高発現するホスホジエステラーゼ(PDE)4Bが中心的な役割を担っていると考えられています。ネランドミラストは、PDE4Bに対して高い選択性を有する阻害薬です。本剤は、PDE4Bを阻害することで、細胞内セカンドメッセンジャーであるcAMPの濃度を上昇させます。その結果、IPFおよびPPFで過剰に産生される線維化促進性の増殖因子や炎症性サイトカインの発現を抑制し、抗線維化作用および免疫調整作用を発揮すると考えられています。IPF患者を対象とした国際共同第III相試験(FIBRONEER-IPF試験[1305-0014試験])において、主要評価項目である52週時の努力性肺活量(FVC)のベースラインからの絶対変化量は、プラセボ群-183.5mL(95%信頼区間[CI]:-210.9~-156.1)、本剤9mg群-138.6mL(95%CI:-165.6~-111.6)、本剤18mg群-114.7mL(95%CI:-141.8~-87.5)でした。プラセボ群との調整済み平均値の差は、本剤9mg群では44.9mL(95%CI:6.4~83.3、p=0.0222)、本剤18mg群では68.8mL(95%CI:30.3~107.4、p=0.0005)であり、いずれの用量においてもプラセボ群に対し統計学的に有意な差が認められました。

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止まらない鼻出血の処置【日常診療アップグレード】第57回

止まらない鼻出血の処置問題60歳女性。2時間前から鼻出血が出現したため、救急室を受診した。自宅で鼻腔にティッシュを入れ止血を試みたが、出血は止まらなかった。いままで出血傾向を認めたことはない。既往歴は高血圧とアレルギー性鼻炎である。リシノプリルとフルチカゾン点鼻薬の処方を受けている。バイタルサインは正常である。両側の鼻孔は血液が付着し、左鼻孔から血液が落下している。咽頭の奥に少量の血液を確認できる。前鼻腔パッキングで止血を試みた。

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英語論文を読みながら、英語力をアップさせる方法とは?【タイパ時代のAI英語革命】第13回

英語論文を読みながら、英語力をアップさせる方法とは?英語で書かれた医学論文を読むことに苦手意識を持つ日本の医療者は少なくありません。最近では、翻訳アプリやChatGPTのようなAIツールのおかげで、英文を日本語に翻訳して読むことはすぐにできるようになりました。でもせっかくなので、AIツールをもう一段活用して論文を深く読み、深く理解することを目指しましょう。医学論文には共通した「型」があり、その構造を理解することで内容の把握が飛躍的にラクになります。さらにAIを活用することで、専門用語の解釈や英文読解も大幅に効率化できます。厳密には、「英語の論文を読む」ことと「論文を理解する」ことは別のスキルです。本稿では、それぞれの場面でAIをどう活用できるのかを紹介します。まずは「英語の論文を読む」部分から解説します。最初に、英語の論文に関わる単語をおさらいしましょう。英語の医学論文の原稿は、通常「manuscript(マニュスクリプト)」と呼ばれます。このmanuscriptには、ある一定の構造が存在し、世界中の研究者が共通のフォーマットにのっとって論文を書きます。以下がその典型的な構造です。英語医学論文の主な構成要素:・Title(タイトル)論文の主題を示します。ここから研究の全体像を把握します。・Author(s)(著者)研究者名と所属が記載されている欄です。・Abstract(アブストラクト)冒頭に掲載される論文の要約部分です。日本語だと「要旨」もしくは「抄録」と呼ばれることが多いです。多くの場合、Abstractは300ワード前後でまとめられていることが多く、下記のような小見出しに分かれています。―Introduction(背景、目的)研究の背景、目的、先行研究のレビューなどが記載されています。―Methods(方法)研究デザイン、研究対象、使用した統計手法が詳述されます。―Results(結果)主要なデータや統計結果が提示されます。グラフや表が多く用いられます。―Discussion(考察)結果の解釈や意義、研究限界(Limitations)、将来の展望(Future Directions)などが議論されます。―Conclusion(結論)研究の最終的なまとめです。―References(参考文献)本文中で引用された文献一覧のことを英語でReferenceといいます。また、論文を引用することをCitation(引用)と呼びます。論文は必ず論理的な順序で構成されているので、どのセクションにどの情報が書かれているかを把握することで、必要な情報を効率的に読み取ることが可能となります。manuscriptを読む前に、まず目を通したいのがAbstractです。本文を簡潔にまとめてくれており、英語に慣れていない場合でも、Abstractをざっと読むだけで論文の概要を把握することができます。では、Abstractを英語と日本語で読むときのコツをお伝えしましょう。ChatGPTを使って「わからない単語」を辞書化する「頑張って英文のまま読みたい!」という努力家のあなたにおすすめなのが、ChatGPTを「自分専用の医療英単語辞書」のように使う方法です。Abstractは比較的まとまっていて読みやすいものの、読解が難しい専門的な医療英単語がたくさん出てくることが多く、つまずくポイントになりがちです。まずは難解語をChatGPTで自分が理解しやすい単語や表現に変換してもらいます。ChatGPTを開いて、以下のようにプロンプトを入力します。プロンプト例これから英語の医学論文を読むに当たり、英語が苦手な医療者でも理解しやすいように、難解な医学英単語を以下のいずれかの方法で説明してください。1.専門用語をより平易な英単語に言い換える2.わかりやすい英語で定義・解説を加える3.必要であれば日本語でも補足説明を加えるこのAbstractの中から、とくに理解が難しそうな単語・表現をリストアップして、それぞれについて上記の方法で解説してください。このように入力すると、「Abstractのテキストを貼ってください」といった返事がきます。その後は、Abstractをコピー&ペーストで貼り付けるだけで完了です。たとえば、Abstractに「equitable implementation」という表現があった場合、その表現をわざわざ指示しなくとも、ChatGPTが自動で難しそうな表現をピックアップし、下のように表示してくれました。equitable implementation簡単な言い換えfair use for everyone英語での説明Making sure the tool is used equally for different groups (for example, English- and non-English-speaking families).日本語補足すべての患者に公平に導入すること。このように、文中の専門用語が1つずつ丁寧に説明され、自分専用の用語リストがあっという間にできあがります。ほかにもわからない単語・表現があった場合、追加で単語・表現だけをコピーして再入力すれば、個別に解説してくれます。これで、英語を読むスタイルは保ちながらも、難しい単語・表現には辞書を引くようにChatGPTを使いながら読み解くことができます。まとめ英語医学論文は、ChatGPTのようなツールを適切に活用することで、苦手意識を大きく減らすことができます。まずはAbstractのざっと読みから始め、徐々に本文へと読み進めていくのがおすすめです。次のセクションでは、医学論文を読むだけでなく、正しく理解するためのプロンプトを紹介します。

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六病位~乾姜と附子~【Dr.伊東のストーリーで語る漢方薬】第7回

六病位~乾姜と附子~これまで、感冒初期に使う葛根湯(かっこんとう)、麻黄湯(まおうとう)、桂枝湯(けいしとう)、少し時間が経ってから使う小柴胡湯(しょうさいことう)を解説してきました。そろそろ感冒初期、少し時間が経った状態に相当する用語を勉強する頃合いかと思います。漢方の世界では、急性熱性疾患のステージング、進行度を六病位といって、6つに分類します。六病位の順番は漢方の流派によっても若干異なるのですが、大塚流の場合は、太陽病(たいようびょう)、少陽病(しょうようびょう)、陽明病(ようめいびょう)、太陰病(たいいんびょう)、少陰病(しょういんびょう)、厥陰病(けっちんびょう)の順番で病気が進んでいきます(図1)。どれくらい体の抵抗力があるかによっても、この進み具合は変わります。虚証が強く出ている方、たとえば高齢で痩せた患者は、太陽病、少陽病、陽明病をすっ飛ばして、いきなり太陰病や少陰病から始まることもあります。今回は、この六病位を絵的なイメージに落とし込んで、漢方の世界観を皆さんと共有することを目標にします。図1 六病位画像を拡大する太陽病まず、感冒初期に相当する太陽病です。便宜上、ここではウイルス感染症ということにしておきますが、最初にウイルスが外から体表へと侵入しようとしてきます。それによって、空気に触れているところから症状が起こっているというイメージで捉えてください。具体的には、悪寒とか頭痛、もう少し体の奥だと咽頭痛ですね。こういった体表部、空気に触れやすいところに症状が出てくるわけです。それに対して、漢方医学では発汗とともにウイルスを追い出すイメージで治療します。葛根湯、麻黄湯、桂枝湯などは、そういったコンセプトで用いられます(図2)。図2 太陽病画像を拡大する少陽病次に、感冒の5~6日目以降に相当する少陽病です。ウイルスが体表から体のもう少し奥へと侵入して、横隔膜のあたりまで到達するイメージを思い描いてください。胃とか肺のあたりです。そうすると、吐き気が出たり、食欲がなくなったり、咳が出たりしますよね。時間経過で体が消耗してもいるので、倦怠感もあります。この深さまでウイルスが侵入してくると、汗とともにウイルスを追い出す治療が効かなくなってくるため、今度は横隔膜周囲に生じている炎症を緩和するイメージで治療します。東洋のステロイドこと柴胡剤がここで活躍してくるわけです。胸脇苦満(きょうきょうくまん)というキーワードを思い出していただければと思います(図3)。図3 少陽病画像を拡大する陽明病さらに病気が長引いてしまうと、体のさらに深部に熱がたまってきて、たとえば、大腸のあたりも調子を崩してきて、便秘になる方がいます。この状態を陽明病といいます。少しイメージが難しいのですが、急性期病院で肺炎などの急性期疾患がうまく治った患者さんが、転院調整中にやたら便秘を起こしたり、せん妄を起こしたりしている「あの状態」をイメージしていただけるとしっくり来るかもしれません。このような状態を治すには、西洋医学だとセンノシドや酸化マグネシウムを使うことが多いと思うのですが、漢方の場合もかなり似ていて、承気湯(じょうきとう)というグループの漢方薬を使うことがあります。たとえば、調胃承気湯(ちょういじょうきとう)は、大黄(だいおう)、甘草(かんぞう)、芒硝(ぼうしょう)からなる漢方薬です。大黄がセンノシドを含んでいて、芒硝が硫酸ナトリウムを含みます。要は浸透圧性下剤ですね。そのため、誤解を恐れずに言えば、センノシドと酸化マグネシウムを同時に使用しているようなイメージの漢方薬ということになります(図4)。あとは、葛根湯を説明した時の条文クイズで簡単に触れた白虎加人参湯(びゃっこかにんじんとう)も用いられます。喉が渇いてしょうがない時に使う薬ですね。これも、体の深部を冷やす漢方薬なので、陽明病の薬に分類できます。図4 陽明病画像を拡大する太陰病太陽病、少陽病、陽明病をまとめて陽証と呼びますが、これらは体の抵抗力が病気の勢いを上回っている状態です。要は炎症という防御反応がちゃんと機能している状態です。逆に、もともと抵抗力が少ない方、抵抗力があったけれど長い闘病生活でだんだんと病気に負けていった方などの場合は、いわゆる陰証という状態に入っていきます(図5)。図5 陽証と陰証画像を拡大するたとえば、感染症診療に精通されている先生方は、敗血症では高熱の時よりも低体温になっている時の方が危ないということを経験的にご存じかと思うのですが、まさしくその低体温に相当する状況になっていくわけです。その陰証の最初のフェーズが太陰病です。病気に屈すると、まずは腸が冷えてきて下痢をします。この場合の治療では、単純に腸を温めれば良いのです。これまで、お腹に優しい漢方薬をいくつか紹介してきました。桂枝湯の延長線上にある桂枝加芍薬湯(けいしかしゃくやくとう)や小建中湯(しょうけんちゅうとう)などは、太陰病の治療にうってつけです(図6)。図6 太陰病画像を拡大する少陰病・厥陰病問題はそこから先で、さらに病状が進むと腸だけでなく全身が冷えてきます。体がとにかく冷たくて、脈をとっても弱々しい。この状態を少陰病と呼んでいて、さらに進んで危篤状態になると厥陰病といいます。とにかく体全体を温めないとまずいということで、こういう状況下では乾姜(かんきょう)や附子(ぶし)を含む漢方薬を使うことが多いです。乾姜というのは、ショウガを加熱したもので、成分も加熱によってギンゲロールからショウガオールに変わっています。あと、附子はトリカブトの根っこの部分です。この2種類の生薬はとにかく体を温める力が強いのです(図7)。たとえば、人参湯や大建中湯(だいけんちゅうとう)には乾姜が入っていますし、真武湯(しんぶとう)には附子が入っています。いろいろと漢方薬の名前を出してしまいましたが、ここでは乾姜と附子は体を温める力が強いことだけ覚えていただければ十分です。少陰病の治療薬は、乾姜や附子に、人参(にんじん)のような胃腸に優しい生薬が加わってできているものが多いという話でした。図7 少陰病・厥陰病画像を拡大するまとめ最後に少しだけ補足します。実証・虚証の話と、陽証・陰証の話がごちゃまぜになって混乱する方もいるかと思うので、念を押しておきます。実証・虚証は、患者さんの病気に対する抵抗力です。陽証・陰証は、その結果、病気が今どこのstageにあるかということです。たとえば、ご高齢で痩せている方は虚証ですが、その方が軽いかぜをひいて頭痛や微熱が出ていれば太陽病で陽証ですよね。逆に、その方が敗血症性ショックになっていたら厥陰病で陰証です(図8)。もちろん、実証の患者は陽証に留まりやすく、虚証の患者は陰証に進みやすいため、両軸にはちゃんと結びつきがあるのですが、虚実と陰陽は別々に考えてほしいと思います。図8 虚実と陰陽画像を拡大するとりあえず、今回は皆さんに太陽病、少陽病、陽明病、太陰病、少陰病、厥陰病という六病位を覚えてもらえると嬉しいです。このシリーズは、ここまでで一区切りのため、このタイミングで復習することをお勧めします。

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第321回 化学療法を省ける乳がん患者を遺伝子検査Prosignaで同定

化学療法をしなくて大丈夫な初期乳がん患者を、欧米で発売されている遺伝子発現解析検査Prosigna(PAM50)で選定しうることが示されました1,2)。ホルモン受容体陽性/HER2陰性の乳がんを切除し、担当医の見立てで術後化学療法が適切とされた40歳以上の男女4千例超(4,429例)が参加した第III相OPTIMA試験3)の結果です。被験者のほとんどは腋窩リンパ節転移(node-positive)を呈していましたが、腫瘍の大きさが30mm以上の患者は腋窩リンパ節転移が見当たらなくとも試験に参加することができました。被験者は定番の化学療法とそれに続く内分泌療法の組み合わせを実施する群(対照群)か、Prosignaの検査結果に基づいて化学療法をするかしないかを決める群(Prosigna利用群)にそれぞれおよそ半々に割り振られました。Prosignaは米国カリフォルニア州サウスサンフランシスコのがん診断会社Veracyteの製品で、50の遺伝子発現を解析して10年間の再発しやすさ(Risk of Recurrence:ROR)を点数で表します4)。Prosigna利用群の2,214例はROR値が高値(60超)なら対照群の2,215例と同様に化学療法と内分泌療法の組み合わせに振り分けられ、ROR値が低値(60以下)なら化学療法は省いて内分泌療法のみとされました。化学療法を省略しうるROR値が低い患者の割合は68%で、中央値およそ4年間(3.9年間)の浸潤性乳がんか死亡の発生数はProsigna利用群と対照群でほぼ同数のそれぞれ139例と141例でした。その結果からProsigna利用群の浸潤性乳がんなしでの5年間生存(invasive breast cancer free survival:IBCFS)率は90.4%であり、対照群の91.5%に統計的に劣りませんでした。ROR値が低い患者の比較でもやはり非劣性が裏付けられ、5年間IBCFS率はより高く94~95%ほどでした。言うまでもなく化学療法は心身に多大な負担をもたらし、不妊、認知障害、早すぎる閉経を強いる恐れがあります。後を引く神経障害の恐れも大きく、10年ほど前の報告によると、術後化学療法(ドセタキセル)を受けた乳がん患者およそ千人の半数近い43%が長く続く末梢神経障害を被っていました5)。今回のOPTIMA試験の結果は大勢の乳がん患者の治療を劇的に変えうる可能性を秘めており、医師が患者それぞれに見合った治療を選べるようにするのを手助けするだろう、とVeracyte社の乳がん分野の医学責任者Kelly Marcom氏は言っています2)。 参考 1) First results from the OPTIMA phase III randomized non-inferiority trial of test-directed chemotherapy in patients with high clinical risk ER-positive HER2-negative early breast cancer / 2026 ASCO Annual Meeting 2) OPTIMA Trial Results to Be Presented at ASCO Provide New Evidence Supporting Prosigna-Guided Chemotherapy Decisions in Breast Cancer / BusinessWire 3) Optimal personalised treatment of early breast cancer using multiparameter analysis / ISRCTN 4) Prosigna brochure 5) Eckhoff L. et al. Eur J Cancer. 2015;51:292-300.

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広域抗菌薬が投与された肺炎患者の予後は?/感染症学会・化学療法学会

 市中肺炎(CAP)では、緑膿菌などを想定した広域抗菌薬が経験的に使用されることがある。実際に、本邦の研究において全CAP患者の27.4%に抗緑膿菌薬が投与されており、そのうち97.3%が潜在的に不必要な投与であったことが報告されている1)。また、β-ラクタム系薬が投与された耐性菌リスクの低いCAP患者において、β-ラクタム系薬の抗緑膿菌作用の有無別に臨床転帰を後ろ向きに検討した結果、抗緑膿菌作用のあるβ-ラクタム系薬を用いた群は、30日死亡率が有意に高かったことも報告されている2)。 そこで、市中発症肺炎(CAPおよび医療・介護関連肺炎[NHCAP])に対する広域抗菌薬投与の有益性を検討することを目的として、多施設共同後ろ向き観察研究が実施された。その結果、喀痰培養が提出された市中発症肺炎患者の30.9%に抗緑膿菌作用を有する広域抗菌薬が投与されており、広域抗菌薬を使用した群で入院死亡および入院肺炎死亡のオッズが有意に高かった。2026年5月22~24日に開催された第100回日本感染症学会総会・学術講演会/第74回日本化学療法学会総会 合同学会において、岩永 直樹氏(長崎大学病院 呼吸器内科)が本結果を報告した。 本研究は、2017~19年に長崎大学病院を含む関連7施設で実施された多施設共同後ろ向き観察研究である。解析対象は、CAPまたはNHCAPとして治療された市中発症肺炎患者1,907例中、喀痰培養検査が実施された1,542例とした。対象患者を広域抗菌薬群と狭域抗菌薬群に分類し、患者背景、死亡、入院期間、治療期間などを比較した。また、広域抗菌薬群におけるde-escalation実施の有無別にみたサブグループ解析も行った。なお、広域抗菌薬は「グラム陽性菌からグラム陰性菌(緑膿菌を含む)までカバーする抗菌薬」と定義した。 主な結果は以下のとおり。・喀痰培養が提出された1,542例のうち、広域抗菌薬が投与されたのは476例(30.9%)であった。・初期治療薬の割合は、広域抗菌薬群でタゾバクタム・ピペラシリン(68%)が最も多かった。次いでレボフロキサシン(16%)、カルバペネム系抗菌薬(10%)が使用されていた。狭域抗菌薬群では、スルバクタム・アンピシリン(63%)が最も多く、次いでセフトリアキソン(22%)が使用されていた。・広域抗菌薬が投与されやすい患者背景として、単変量解析では男性、NHCAP、PS不良、長期療養病床からの入院、ステロイドまたは免疫抑制薬の使用、90日以内の血管内治療歴、90日以内の入院歴、A-DROP高値が挙げられた。・同様に単変量解析において、併存疾患として間質性肺炎、気管支拡張症、非結核性抗酸菌症、血液がん、臓器移植歴などを有する患者で、広域抗菌薬が投与されやすい傾向がみられた。・多変量解析では、男性、長期療養病床からの入院、A-DROP 3点以上、間質性肺炎、気管支拡張症、非結核性抗酸菌症、血液がんが広域抗菌薬投与と有意に関連する因子として抽出された。・傾向スコアを用いた逆確率重み付け法による解析において、入院死亡のオッズが広域抗菌薬群で有意に高かった(調整オッズ比[aOR]:1.30、95%信頼区間[CI]:1.00~1.69、p=0.0473)。広域抗菌薬群は入院肺炎死亡のオッズも有意に高かった(同:1.65、1.11~2.03、p=0.0076)。・入院生存例のみを対象としたサブグループ解析では、入院期間および抗菌薬治療期間が広域抗菌薬群で有意に長かった(いずれもp<0.0001)。・広域抗菌薬群476例のうち、de-escalationが実施されたのは116例(24.4%)、実施されなかったのは360例(75.6%)であった。de-escalation実施の有無で患者背景を比較したところ、有意差のある項目はなかった。・de-escalationの有無で予後を比較すると、傾向スコアを用いた逆確率重み付け法による解析において、入院肺炎死亡のオッズがde-escalation実施群で有意に低かった(aOR:0.54、95%CI:0.33~0.89、p=0.0138)。 de-escalation実施群で入院肺炎死亡のオッズが有意に低下していたことについて、岩永氏は「de-escalationを実施した患者は、臨床経過が良いという主治医の判断のもとでde-escalationを実施していると考えられ、そのことが結果に反映されている可能性がある」と考察した。

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卵は認知症を予防するか?

 アルツハイマー病リスクと修正可能な食事因子との関連性については、依然として多くの知見が不足している。卵は、脳の健康を支える重要な栄養素の供給源の1つである。米国・ロマリンダ大学のJisoo Oh氏らは、卵摂取量とアルツハイマー病発症率との関連性を調査するため、本研究を実施した。The Journal of Nutrition誌オンライン版2026年4月17日号の報告。 米国の大規模なプロスペクティブコホート研究であるAdventist Health Study-2よりデータを抽出した。食事および生活習慣因子は、検証済みの食物摂取頻度調査票を用いて評価した。卵の摂取頻度は、「まったく食べない/ほとんど食べない」から「週5回以上」までの範囲で分類した。多変量調整Cox比例ハザードモデルを用いて、ハザード比(HR)および95%信頼区間(CI)を推定した。卵摂取量(g/日)を連続変数として、制限付き3次スプライン分析を行った。 主な結果は以下のとおり。・解析対象は、3万9,498例の参加者(平均フォローアップ期間:15.3年)で、そのうち2,858例がアルツハイマー病を発症した。・卵摂取量は、アルツハイマー病リスクとの間に負の相関関係を示した。・卵をまったく食べない/ほとんど食べない場合と比較して、人口統計学的要因、生活習慣、食品群、および併存疾患を調整した後のHRは、月1~3回で0.83(95%CI:0.75~0.92)、週1回で0.83(95%CI:0.74~0.94)、週2~4回で0.80(95%CI:0.71~0.90)、週5回以上で0.73(95%CI:0.60~0.89)であった。・スプラインモデルでは、卵を食べない場合、1日10g摂取した場合と比較して、調整済みハザード比は1.22(95%CI:1.11~1.34)であり、曲線的な関連が認められた。 著者らは「健康意識の高い集団において、適度な卵の摂取はアルツハイマー病のリスクを有意に低下させることが示された。これらの研究結果は、バランスの取れた食事の一部として卵に含まれる栄養素を摂取した場合、神経保護効果が得られる可能性があることを示唆している」としている。

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KEYNOTE-522試験の最終解析結果が発表/ASCO2026

 高リスクの早期トリプルネガティブ乳がん(TNBC)に対し、術前および術後補助療法としてペムブロリズマブの追加を検討したKEYNOTE-522試験の最終解析結果を、スペイン・International Breast Cancer CenterのJavier Cortes氏が米国臨床腫瘍学会年次総会(2026 ASCO Annual Meeting)で発表した。 KEYNOTE-522試験は、21ヵ国183施設で実施された第III相二重盲検無作為化プラセボ対照試験。未治療の高リスク早期TNBC(T1c N1~2またはT2~4 N0~2、ECOG PS 0~1)患者が、術前にペムブロリズマブ(3週ごと)+パクリタキセル+カルボプラチンを4サイクル投与後、ペムブロリズマブ+シクロホスファミド+ドキソルビシン(またはエピルビシン)を4サイクル、術後にペムブロリズマブを最長9サイクル投与する群と、術前に化学療法+プラセボ、術後にプラセボを投与する群に2対1に無作為に割り付けられた。 主要評価項目は病理学的完全奏効(pCR:ypT0/Tis ypN0)および無イベント生存期間(EFS)、重要な副次評価項目は全生存期間(OS)であった。 主な結果は以下のとおり。・1,174例がペムブロリズマブ群(784例)またはプラセボ群(390例)に無作為に割り付けられた。データカットオフ(2025年10月14日)時点の追跡期間中央値は93.8(範囲:84.7~102.8)ヵ月であった。・7年EFS率は、ペムブロリズマブ群78.3%(95%信頼区間[CI]:75.3~81.1)、プラセボ群69.8%(95%CI:65.0~74.2)であり、ペムブロリズマブ上乗せによる臨床的に意義のある改善が認められた(ハザード比[HR]:0.68、95%CI:0.54~0.86)。・pCR別のEFS率は、pCR達成群ではペムブロリズマブ群90.4%およびプラセボ群85.9%と差が小さかった一方、pCR非達成群では57.6%および49.7%と差が大きかった。しかし、HRはそれぞれ0.68(95%CI:0.44~1.07)および0.78(95%CI:0.58~1.03)と類似していた。これは、pCR達成の有無にかかわらずペムブロリズマブの上乗せ効果が得られることを示すとともに、同じpCR達成であってもペムブロリズマブの併用によって達成したほうが化学療法単独で達成するよりもさらに予後が良好になることを示唆している。・7年OS率は、ペムブロリズマブ群85.1%(95%CI:82.5~87.5)、プラセボ群77.2%(95%CI:72.7~81.1)であり、ペムブロリズマブ上乗せによる臨床的に意義のある改善が認められた(HR:0.64、95%CI:0.49~0.85)。・pCR別のOS率は、pCR達成群ではペムブロリズマブ群94.5%およびプラセボ群91.1%(HR:0.64、95%CI:0.37~1.14)、pCR非達成群では69.0%および59.8%(HR:0.76、95%CI:0.55~1.03)であり、EFSと同様の傾向が認められた。・ペムブロリズマブ上乗せによるEFSおよびOSのベネフィットは、PD-L1発現、リンパ節転移の有無および腫瘍径を含む事前に規定されたサブグループでおおむね一貫していた。・7年遠隔無病生存率は、ペムブロリズマブ群82.9%、プラセボ群74.2%であった(HR:0.64、95%CI:0.49~0.83)。・Grade3以上の治療関連有害事象の発現率は、ペムブロリズマブ群77.1%、プラセボ群73.3%であった(死亡は0.5%および0.3%)。全Gradeの免疫介在性有害事象の発現率はそれぞれ35.0%および13.1%であった。 これらの結果より、Cortes氏は「KEYNOTE-522試験の最終解析において、高リスク早期TNBC患者に対する術前ペムブロリズマブ+化学療法に続いて術後ペムブロリズマブを投与する治療法は、引き続きEFSとOSの改善をもたらすことを示した。この長期的な結果は、高リスク早期TNBC患者に対する本アプローチが、この患者群を治療するための標準治療であり続けることをさらに裏付けるものである」とまとめた。

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血栓回収療法前のtenecteplase、機能的自立を改善せず/JAMA

 脳梗塞発症後4.5時間を超えても、血管内治療(EVT)を迅速に受けられる環境にある患者において、EVT前のtenecteplase静注による血栓溶解療法の役割は不明とされる。中国・首都医科大学のYunyun Xiong氏らTNK-PLUS Investigatorsは、「TNK-PLUS試験」において、発症後4.5~24時間以内にEVTを実施可能な施設に直接搬送された近位中大脳動脈(MCA)閉塞による急性期脳梗塞患者では、EVT単独と比較して、EVT前にtenecteplase静注を行っても、機能的自立の達成率は改善しないことを示した。研究の成果は、JAMA誌オンライン版2026年5月8日号に掲載された。中国の第III相無作為化優越性試験 TNK-PLUS試験は、中国の40施設で実施した第III相非盲検(エンドポイント盲検)無作為化優越性試験であり、2024年1月~2025年7月に参加者を募集した(北京市自然科学基金などの助成を受けた)。 対象は、年齢18歳以上、MCA-M1または近位M2の閉塞による急性期脳梗塞で、救済可能な脳組織(虚血コア体積<70mL、ミスマッチ比≧1.8、ミスマッチ体積≧15mL)を有し、最終健常確認時から4.5~24時間以内の患者であった。起床時および目撃者不在の脳梗塞も対象に含めた。 適格基準には、脳梗塞発症前の修正Rankinスケール(mRS)スコア(0[症状なし]~6[死亡]点)が0~2点、NIHSSスコア(0~42点、高点数ほど神経学的障害が重度)が6~25点を満たすことが含まれた。 被験者を、EVT前にtenecteplase(0.25mg/kg、最大用量25mg)の静脈内投与を受ける群またはEVT単独群に、1対1の割合で無作為に割り付けた。 主要アウトカムは、90日時の機能的自立(mRSスコア0~2点)の達成割合とした。90日時の機能的自立、tenecteplase群44.2%vs.EVT単独群43.2%で有意差なし 391例(年齢中央値68歳[四分位範囲[IQR]:59~75]、女性155例[39.6%])を登録し、tenecteplase群に199例、EVT単独群に192例を割り付けた。入院時のNIHSS中央値は13点(IQR:10~17)、発症から無作為化までの時間中央値は10.0時間(IQR:6.5~14.3)、入院からtenecteplase静注までの時間中央値は90分(IQR:69~130)であった。 90日時の機能的自立は、tenecteplase群の88例(44.2%)、EVT単独群の83例(43.2%)で達成され、両群間に有意な差を認めなかった(補正後相対的比率:1.01[95%信頼区間[CI]:0.83~1.24]、p=0.89、リスク群間差:0.99[95%CI:-8.84~10.83])。 また、副次アウトカムである90日時の障害なし、mRSスコア0、1点(tenecteplase群30.2%vs.EVT単独群28.6%)、mRSスコア0~3点(62.8%vs.62.0%)、重度障害または死亡、mRSスコア5、6点(20.1%vs.22.4%)は、いずれも両群間に有意差はみられなかった。症候性頭蓋内出血が数値上は増加 90日以内の死亡の割合は、tenecteplase群で12.7%(25/197例)、EVT単独群で14.2%(27/190例)に、36時間以内の症候性頭蓋内出血は、それぞれ5.1%(10/197例)および2.6%(5/190例)に発生した。また、重篤な有害事象の発生率には両群間に差を認めなかった。 著者は、「本試験の知見は、EVT前のブリッジング血栓溶解療法の分野に重要なデータを追加するものである」としている。 また、「重要な点として、本試験を含め、血栓溶解薬の投与から動脈穿刺までの時間が短かったいくつかの研究の結果は、病院間を転送された場合など、EVTへのアクセスの遅延が予測される患者には適用されない」と指摘している。

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RET融合遺伝子陽性NSCLC、セルペルカチニブによるアジュバント療法でEFS改善(LIBRETTO-432)/ASCO2026

 RET融合遺伝子陽性非小細胞肺がん(NSCLC)に対し、選択的RET阻害薬セルペルカチニブは進行・転移例で有効性が示されている。一方で、早期・局所進行NSCLCに対するアジュバント療法としての有効性と安全性は明らかになっていない。そこで、StageIB~IIIAのRET融合遺伝子陽性NSCLC患者を対象に、アジュバント療法としてのセルペルカチニブの有用性を検証する国際共同第III相試験「LIBRETTO-432試験」が実施された。その結果、セルペルカチニブはプラセボと比較して無イベント生存期間(EFS)を有意に改善することが示された。Jonathan W. Goldman氏(米国・カリフォルニア大学ロサンゼルス校)が、米国臨床腫瘍学会年次総会(2026 ASCO Annual Meeting)で発表した。なお、本研究結果はNEJM誌オンライン版2026年5月31日号に同時掲載された1)。・試験デザイン:国際共同第III相無作為化二重盲検プラセボ対照試験・対象:StageIB~IIIAのRET融合遺伝子陽性NSCLC患者で、根治目的の局所治療(手術または放射線療法)後に再発・進行のない患者151例(補助化学療法は許容)・試験群(セルペルカチニブ群):セルペルカチニブ(体重50kg以上では160mg 1日2回、50kg未満では120mg 1日2回)を最長3年 75例・対照群(プラセボ群):プラセボを最長3年(再発・病勢進行時はクロスオーバーを許容) 76例・評価項目:[主要評価項目]治験担当医師評価によるEFS(StageII~IIIA)[副次評価項目]治験担当医師評価によるEFS(StageIB~IIIAの全体集団)、盲検下独立中央判定(BICR)によるEFS、全生存期間(OS)、安全性など 主な結果は以下のとおり。・主要解析集団は、StageII/IIIAの患者109例(セルペルカチニブ群54例、プラセボ群55例)であった。・主要解析集団の患者背景として、女性(セルペルカチニブ群63.0%、プラセボ群54.5%)、東アジア(それぞれ57.4%、56.4%)、非喫煙者(それぞれ68.5%、69.1%)が多かった。ほぼ全例が手術を受け(それぞれ100%、98.2%)、90%超がアジュバント療法として全身療法を受けていた(それぞれ92.6%、90.9%)。・主要解析集団における治験担当医師評価による2年EFS率は、セルペルカチニブ群91.5%、プラセボ群61.1%であり、セルペルカチニブ群が有意に改善した(ハザード比[HR]:0.172、95%信頼区間[CI]:0.058~0.509、p=0.0003)。・全体集団においても、治験担当医師評価によるEFSはセルペルカチニブ群で有意に改善した(2年EFS率:93.8%vs.69.6%、HR:0.165、95%CI:0.056~0.485、p=0.0002)。・主要解析集団の治験担当医師評価によるEFSに関するサブグループ解析では、症例数およびイベント数が少ないため解釈には注意が必要であるものの、ほとんどのサブグループで、セルペルカチニブ群で良好な傾向がみられた。・主要解析集団のプラセボ群のうち、16例(29.1%)がセルペルカチニブへクロスオーバーした。・OSデータは未成熟であった。データカットオフ時点で死亡は3例報告され、いずれもセルペルカチニブへクロスオーバーしたプラセボ群の患者であった。・全体集団における安全性について、Grade3以上の有害事象はセルペルカチニブ群66.7%、プラセボ群23.7%に認められた。治療中止に至った有害事象はそれぞれ17.3%、1.3%に認められた。中断・減量に至ったのはそれぞれ88.0%、46.1%であった。・セルペルカチニブ群でとくに多く認められた有害事象(セルペルカチニブ群の50%以上に発現)はALT上昇(セルペルカチニブ群62.7%、プラセボ群18.4%)、AST上昇(60.0%、15.8%)であった。セルペルカチニブのとくに注目すべき有害事象では、過敏症(6.7%、0%)、QT延長(9.3%、1.3%)が報告された。 本研究結果についてGoldman氏は、セルペルカチニブのベネフィットの持続性や、再発様式、中枢神経系の保護作用、クロスオーバーの影響を評価するためには、より長期の追跡が必要であることを指摘しつつ「早期RET融合遺伝子陽性NSCLCにおけるアジュバント療法として、セルペルカチニブは新たな標準治療の1つとなることを支持するものである」とまとめた。

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高リスク前立腺がんへの周術期アパルタミド+ADT、主要評価項目達成(PROTEUS)/ASCO2026

 高リスクの限局性または局所進行前立腺がん患者では、根治的前立腺全摘除術(RP)後に約50%の患者で再発が認められる。RPの術前および術後に実施するアパルタミド+ADT併用療法は、プラセボ+ADTとの比較において、RPの治癒成功率を高め、無転移生存期間(MFS)を有意に改善した。日本も参加して行われた第III相PROTEUS試験の最終解析結果を、米国・ダナ・ファーバーがん研究所のMary-Ellen Taplin氏が米国臨床腫瘍学会年次総会(2026 ASCO Annual Meeting)で発表した。なお、本解析結果はNEJM誌オンライン版2026年5月31日号に同時掲載されている1)。・試験デザイン:無作為化二重盲検プラセボ対照試験・対象:高リスクの限局性または局所進行前立腺がん患者(組織学的所見、前立腺特異抗原[PSA]、および画像診断によるcN0/cN1)・試験群:アパルタミド(240mg 1日1回)+アンドロゲン除去療法(ADT)✕6ヵ月→術前2週間休薬→RP→術後4週間休薬→アパルタミド+ADT✕6ヵ月 1,057例・対照群:プラセボ+ADT✕6ヵ月→術前2週間休薬→RP→術後4週間休薬→プラセボ+ADT✕6ヵ月 1,052例・評価項目:[主要評価項目]盲検下独立中央判定(BICR)による病理学的完全奏効(pCR)/微小残存病変(MRD)(≦ypT2、残存腫瘍径≦5mm)、MFS(画像上の遠隔転移の発現、遠隔転移の病理学的検出または死亡のいずれか先に起きた時点までの期間と定義)[副次評価項目]無イベント生存期間(EFS)、初回の後治療開始までの期間(TTST1)、遠隔転移までの期間(TTDM)、安全性など 主な結果は以下のとおり。・ベースライン時点における患者特性は両群でバランスがとれており、年齢中央値はともに66歳、75歳以上は試験群10.0%vs.対照群8.9%、診断時のGleasonスコア≧8が95.7%vs.95.8%、ベースラインのPSA値≧20が38.5%vs.41.5%、≧T3が35.1%vs.35.8%、N1が12.2%vs.12.4%であった。・追跡期間中央値61.7ヵ月(データカットオフ:2026年2月2日)時点で、試験群85.1%vs.対照群87.6%で試験進行中であった。・BICRによるpCR/MRD率は試験群8.9%vs.対照群1.0%(オッズ比[OR]:10.17、95%信頼区間[CI]:5.27~19.64、p<0.0001)、5年MFS率は78.2%vs.73.5%(ハザード比[HR]:0.80、95%CI:0.67~0.96、p=0.02)と、いずれも試験群で統計学的に有意な改善を示した。・EFS中央値(試験群57.1ヵ月vs.対照群38.4ヵ月、HR:0.71、95%CI:0.63~0.80、p<0.001)、TTST1中央値(74.2ヵ月vs.41.5ヵ月、HR:0.65、95%CI:0.57~0.73、p<0.001)、TTDM(ともに未到達、HR:0.68、95%CI:0.55~0.83、p<0.001)のいずれも試験群で統計学的に有意な改善を示した。・一方で、従来の画像診断によるMFSについては、試験群における統計学的に有意な改善は示されなかった(HR:0.84、95%CI:0.67~1.07、p=0.15)。・Grade3以上の試験治療下における有害事象(TEAE)の発現率は試験群39.6%vs.対照群31.0%であり、試験群で多くみられたのとくに注目すべきTEAEは皮疹(5.9%)、虚血性心疾患(1.2%)などであった。 Taplin氏は今回の結果について、高リスクの限局性または局所進行前立腺がん患者に対する標準治療の新たなオプションとして、周術期のアパルタミド+ADT併用療法を支持するものとまとめ、サブスタディとして進行中のRP単独との比較結果が待たれるとした。

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クロノタイプに合わせた運動で効果がより高まる可能性

 運動が健康に良いことは広く知られている。しかし、自分のクロノタイプ(朝型か夜型か)を意識して運動する時間帯を決めると、その効果がさらに高まる可能性を示唆するデータが報告された。血圧や血糖値、LDL(悪玉)コレステロールなど、心臓病のリスク因子がより良好になるという。ラホール大学(パキスタン)のArsalan Tariq氏らの研究の結果であり、詳細は「Open Heart」に4月14日掲載された。研究者らによると、クロノタイプに合わせて運動をすることで睡眠の質の向上も認められ、それも心臓病のリスク因子の改善に寄与している可能性があるとのことだ。 この研究には、心臓病のリスク因子を一つ以上持っている40~60歳の成人150人が参加した。参加者はまずクロノタイプを把握した後に、自分のクロノタイプと一致する時間帯、もしくは一致しない時間帯に運動を行う2群にランダムに割り付けられた。運動の時間帯は、午前8時~11時の間、または午後6時~9時の間のいずれかだった。参加者全員が研究者の監督下で1回40分の中強度の有酸素運動(速歩など)を週5回、12週間にわたり実施した。 計60回の運動を完遂した134人の主な特徴は、平均年齢48.6±8.1歳、男性58.2%、BMI28.7±3.4だった。解析の結果、運動の時間帯がクロノタイプに一致していたか否かにかかわらず全体的に、心臓病のリスク因子、有酸素運動能力、睡眠の質が改善していた。しかし、クロノタイプに一致した時間帯に運動をした群は、血圧、心拍数、血糖値、コレステロール、有酸素運動能力、睡眠の質が、より大きく改善していた。 例えば、クロノタイプに一致しない時間帯に運動をした群の収縮期血圧の低下幅は5.5mmHgだったのに対して、クロノタイプに一致した時間帯に運動をした群は10.8mmHg低下していた(P=0.002)。高血圧患者に限って解析すると、7.1対13.6mmHgという差が認められた(P<0.001)。これらの結果に基づきTariq氏は、「個人の生体リズムに合わせて調整された時間帯に行う運動は、臨床や公衆衛生における実用的な介入戦略となり、より高い効果や継続意欲の向上につながる可能性がある」と結論付けている。 Tariq氏らの報告について、米レノックス・ヒル病院のスポーツ心臓専門医であるChristopher Tanayan氏は、「運動する時間帯をクロノタイプに合わせることで血糖コントロールが改善されることを示した先行研究と一致する結果である」と論評。同氏によると、これらの研究結果は、運動のタイミングがクロノタイプと一致することで、身体がより効率的に働くことを反映している可能性が高いという。「クロノタイプを考慮に入れることで、ホルモン分泌が盛んな時間に運動を行え、その結果、より高い負荷をかけることが可能になって運動によるメリットも大きくなるのではないか」と同氏は解説している。

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心血管死は暑さより寒さと関連

 高齢者や心臓に病気を抱えている人は、暑さよりも寒さに注意すべきかもしれない。心血管死(心筋梗塞や脳卒中などによる死亡)のリスクは、暑さよりも寒さとの関連が強いとする研究結果が報告された。リスクが最低となるのは約23℃で、心血管死のおよそ8割は、それ以下の気温の時に発生しているという。米マウントサイナイ・アイカーン医科大学のPedro Rafael Vieira de Oliveira Salerno氏らが米国心臓病学会年次学術集会(ACC.26、3月28~30日、ニューオーリンズ)で発表し、また、研究内容が3月24日に「American Journal of Preventive Cardiology」に短報として掲載された。 発表によると、心血管死の16件に1件は寒さと関連付けられたのに対して、暑さと関連付けられた心血管死は300件に1件にすぎなかった。Salerno氏は、「熱波が健康問題の焦点となっている現在、多くの人にとって意外かもしれないが、長期的に見ると気温の低さの方が、はるかに多くの心血管死を引き起こしている」と話している。 Salerno氏らは、米国の25歳超の人口の81.9%が含まれる819郡で2000~2020年の20年間で発生した、25歳以上の心血管死1418万68件を、各郡の月平均気温と関連付けた解析を行った。心血管死は、国際疾病分類(ICD-10)のコードI00~I99に該当する疾患(心筋梗塞、心不全、不整脈、心筋症、弁膜症、脳梗塞、脳出血、くも膜下出血、大動脈解離、肺塞栓症、心膜炎など)による死亡と定義した。 解析の結果、心血管死のリスクが最低となる気温は23.2℃であった。暑さに関連した死亡は1年間で2,242件(10万人年当たり1.3)と推定されるのに対して、寒さに関連した死亡は同4万2,735件(25.6)と推定された。これらのデータを基にした検討の結果、心血管死全体の6.3%は寒さに伴い発生し、0.33%は暑さに伴い発生したものと推定された。 この結果について研究者らは、寒さは血圧を高め、心臓の酸素需要を上昇させる傾向があり、心筋梗塞や脳卒中のリスクを高める可能性があると述べている。またSalerno氏は、「臨床医は心血管疾患の発症には季節的なパターンがあるものだと片付けてしまいがちだが、われわれの研究結果は、寒さへの曝露が人口レベルでどの程度の影響を及ぼすのか、定量的に把握することを可能にしている」と本研究の意義を述べている。さらに同氏は、「異常気象による極端な寒さだけが問題なのではなく、日常的な寒さへの曝露でさえ、脆弱な患者にとっては心血管死のリスクを高める可能性がある」と強調している。

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Implementation Scienceと外傷症例のundertriageの克服(解説:香坂俊氏)

 「Implementation Science」、あえて日本語にすれば「実装科学」という言葉が、医療の中でも徐々に市民権を得てきている。これは、臨床試験やガイドラインによって示された有効な介入を、実際の医療現場にどのように届け、定着させ、患者アウトカムの改善につなげるかを扱う学問領域である。循環器領域でも、Implementation Scienceは第III相試験の後に考える補助的な作業ではなく、治療や介入を設計する段階から組み込むべき方法論として位置付けられている(https://www.jacc.org/doi/10.1016/j.jacc.2024.08.068)。 今回の研究は、臨床ガイドラインの「推奨:recommendationを知っている」ことと、「実際に行動できる:implementation」との間にある距離を、正面から扱った試験である。救急の現場における外傷診療、とくに高齢者のtriageは、時間的制約が大きく、診断の不確実性も高い。重症外傷を見逃さず、適切なタイミングで高次医療機関へ転送する判断は容易ではない。実際、重症例を搬送しないundertriageは、とくに高齢者で多いことが知られている。本研究は、その現場の判断を、従来型の講義やマニュアルではなく、serious gameという行動科学に基づいた教育介入によって変えようとした。 試験では、米国の非外傷センターで高齢外傷患者の初期診療を担う救急医800人を対象に、介入群にはtablet上のgame-based trainingが提供された。主要評価項目は、重症外傷患者が高次医療機関へ転送されなかった割合、すなわちundertriageであった。結果として、介入群ではundertriageが49%であったのに対し、通常教育群では57%であり、モデル調整後の差は−7%であった。一方で、軽症患者を過剰に転送するovertriageは有意には増加せず、30日死亡または再入院の複合アウトカムにも明確な差は認められなかった。 この試験の重要性は、介入効果の大きさそのものよりも、臨床判断には修正可能な部分があることを示した点にあると思われる。また、本研究では99%の介入群医師が少なくとも1回gameを使用し、67%が4回すべてのセッションを完了している。これは、教育介入としての受容性が比較的高かったことを示している。さらに探索的解析では、gameの使用回数が多いほど効果が大きく、使用後30日以内に診療した患者で効果が強い傾向が示された。ここには、知識や判断力は一度の講習で固定されるものではなく、反復と近接した経験によって維持されるという、臨床教育の基本に近いメッセージがある。 この研究は「ゲームにすれば医師の判断が変わる」と単純化して読むべきではなく、「医師個人の認知過程に働きかける低負荷の介入が、複雑なシステム内でも一定の行動変容を生みえる」と読むのが妥当であろう。自分の専門である、循環器領域に引き寄せて考えると、現在のimplementationは、スポンサー支援による講演、e-learning、リマインダーに偏りがちである。しかし、実際の臨床判断は、短時間での情報統合、忙しさ、見逃しへの恐れ、過剰診療へのためらいの中で行われる。そこに介入するには、知識の伝達だけでは足りない。上手な判断を反復し、失敗しやすい場面を安全に経験し、フィードバックを受ける仕組みが必要になっている。 Implementation Scienceとは、エビデンスを現場に「説明する」ための学問ではなく、現場の中でエビデンスが実際に使われる条件を設計するための学問なのだと筆者は考えている。外傷診療におけるこのserious gameの試みは、循環器診療においても、私たちが次に考えるべき実装の形を示唆しているものと感じられた。

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第297回 改正健康保険法が成立、出産無償化とOTC類似薬負担増を導入/国会

<先週の動き> 1.改正健康保険法が成立、出産無償化とOTC類似薬負担増を導入/国会 2.診療報酬改定目前、キャンセル料を巡る混乱で厚労相が陳謝/厚労省 3.AIの悪用リスク踏まえ病院のサイバー対策強化を/厚労省 4.直近100日の薬剤情報を表示、ワクチン接種歴も/デジタル庁 5.糖尿病薬の個人間取引に警告 X投稿の7割超がマンジャロ/東京都 6.東京女子医大2歳児死亡事故、ICU責任医に有罪判決/東京地裁 1.改正健康保険法が成立、出産無償化とOTC類似薬負担増を導入/国会改正健康保険法など医療保険制度改革の関連法は5月29日の参議院本会議で、与党自民党や日本維新の会、国民民主党などの賛成多数で可決、成立した。柱は、正常分娩の実質無償化と、市販薬と成分や効能が似る「OTC類似薬」を処方された患者への追加負担の導入である。政府は給付と負担を見直し、現役世代の社会保険料負担を軽減すると説明しているが、患者団体や野党からは受診控えや家計圧迫への懸念がされている。出産費用については、現在は正常分娩が公的医療保険の対象外で、出産育児一時金50万円の支給で対応している。しかし、都市部を中心に費用が一時金を上回るケースが目立つため、厚生労働省が全国一律の基本単価を設定し、公的保険から医療機関へ全額給付する仕組みに改める。改正法の公布後2年以内、遅くとも2028年夏ごろまでの施行を目指す。すべての妊婦を対象に定額の現金給付も設ける。帝王切開は、従来通り保険診療で原則3割負担となり、正常分娩でも個室料などは自己負担となる。当面は医療機関の判断で出産育児一時金を継続できる経過措置も置き、産科経営や地域の周産期医療体制への影響に配慮する。OTC類似薬では、保湿薬、抗アレルギー薬、解熱鎮痛薬、胃腸薬など77成分、約1,100品目を対象とする案が示されている。薬剤費の4分の1を公的保険の給付対象から外し、患者の1~3割負担に上乗せする。2027年3月の開始を目指す。政府は市販薬を購入する人との公平性や、必要性の低い受診の抑制を狙う。その一方で、がんや難病の患者、子供、低所得者、医師が通年処方を必要と判断する患者などには追加負担を求めない方針であり、具体的な範囲は今後、専門家の意見を踏まえて定めるとしている。改正法には、75歳以上の後期高齢者の保険料や窓口負担の算定に、上場株式の配当など金融所得を反映させる仕組みの強化も盛り込まれた。さらに高額療養費制度について、将来の見直し時に、長期療養者の家計への影響を考慮することも明記した。参院厚生労働委員会は、OTC類似薬の対象を薬剤以外の診療行為に広げないよう検討することや、必要な受診が抑制されないよう影響を検証し、必要に応じて見直すことなど19項目の付帯決議を採択した。立憲民主党、公明党、共産党、れいわ新選組などは反対し、国民皆保険の維持と患者負担増の線引きが今後の焦点となる。 参考 1) 健康保険法等の一部を改正する法律案について(厚労省) 2) 「OTC類似薬」処方された患者に追加負担求める法律が成立(NHK) 3) 改正健康保険法が成立…OTC類似薬の患者追加負担、出産費用の実質無償化など柱(読売新聞) 4) 出産費用を無償に、改正法成立 厚労省が全国一律価格を設定へ(日経新聞) 5) 健保法等改正案 参院厚労委で賛成多数で可決 29日の参院本会議での採決を経て成立へ(ミクスオンライン) 2.診療報酬改定目前、キャンセル料を巡る混乱で厚労相が陳謝/厚労省厚生労働省は6月1日に診療報酬を改定する。物価高と賃上げへの対応が柱で、外来の初診料本体は2,910円に据え置く一方で、物価上昇分20円と職員の基本給引き上げに充てるベースアップ評価料170円が上乗せされ、初診時の患者負担は少なくとも190円引き上げられる。また、2026年3月以前からベースアップ評価料を算定していた医療機関でも、現行60円から230円へ引き上げられ、これらの上乗せは1年後にさらに拡大する予定となっている。薬局でも調剤基本料が立地や規模に応じて10~20円引き上げられ、3ヵ月に1回、物価上昇対応分として10円が加算できる。薬局版のベースアップ評価料も新設され、処方箋1回につき40円が上乗せされる。また、後発医薬品がある先発品を患者が希望する場合に、保険の窓口負担とは別に支払う選定療養費は、先発品と後発品の価格差の4分の1から2分の1へ引き上げられる。その一方で、注目された診察予約のキャンセル料について、厚労省は5月29日、「対象は『予約料』を設定し、選定療養として地方厚生局に届け出ている医療機関に限られる」と通知を訂正した。予約を受け付けていても予約料を徴収していない通常診療では、キャンセル料は取れない。対象は2024年8月時点で全国928施設にとどまる。徴収できるのは、患者都合による診察直前のキャンセルに限られ、窓口やウェブサイトなどで事前に説明し、患者の同意を得る必要がある。3月の通知では対象が選定療養に限られることが明確でなく、すべての医療機関でキャンセル料を取れるとの誤解が広がった。上野 賢一郎厚労相は「現場に混乱を生じさせた」と陳謝した。医療機関には、価格改定や人件費対応の一方で、患者説明と同意、掲示、届出の適正な運用が求められる。 参考 1) 診察予約キャンセル料 一定条件で請求可能に 厚労省が周知へ(NHK) 2) 診察キャンセル料めぐり厚労相謝罪 6月から一部医療機関で徴収可へ(朝日新聞) 3) 診察キャンセル料は一部病院のみ 厚労省が通知訂正、周知不足陳謝(共同通信) 4) 診療報酬、来月1日に改定 キャンセル料徴収可に 初診190円上げ(日経新聞) 3.AIの悪用リスク踏まえ病院のサイバー対策強化を/厚労省厚生労働省は5月27日、都道府県を通じ、医療機関に高性能AIの悪用リスクを踏まえたサイバーセキュリティ対策の再確認を求める事務連絡を発出した。AI技術の急速な進展により、脆弱性探索や攻撃手法の自動化が進み、攻撃のスピードや規模が拡大する恐れがあるための措置。医療分野は国民の生命・健康を支える重要インフラであり、電子カルテや医療機器、院内ネットワークが停止すれば診療継続に重大な支障が生じるとして、厚労省は経営層のリーダーシップによる対策強化を求めている。通知では、米Anthropic社が4月に公表した「Claude Mythos Preview」など、脆弱性の発見・修正能力を高めたフロンティアAIモデルの登場を例示。内閣官房国家サイバー統括室などが5月18日に発出した重要インフラ向け注意喚起を踏まえ、医療情報システムの安全管理ガイドラインを要約し、医療機関が優先的に確認すべき事項を整理した。重点項目では、サイバーセキュリティを経営課題に位置付け、責任者や意思決定体制、連絡系統を明確にすることを求めている。さらに、電子カルテ、医療機器、院内ネットワークなど重要システムの把握とリスク評価、ネットワーク分離やアクセス制御、外部委託・クラウド利用時の責任分担の明確化を要請するほか、機器の棚卸し、セキュリティパッチの迅速な適用、サポート終了機器の見直しも明記した。ランサムウェア対策では、オフラインを含むバックアップの取得・保管と復旧訓練、不審メール対応、感染兆候の早期検知体制を挙げた。インシデント発生時には、初動対応、影響範囲の確認、厚労省やベンダーとの連携、原因分析と再発防止策が必要とした。全職員への定期的な教育、標的型攻撃訓練、医療機器メーカーとの情報共有、調達段階からのセキュリティ要件確認も求めている。厚労省は、サイバー攻撃を想定したBCP(事業継続計画)の策定・見直しや、システム停止時の紙運用など代替手段の確保も促し、チェックリストを用いた点検を呼びかけている。 参考 1) 「高性能AIの悪用リスクを踏まえたサイバーセキュリティ対策の強化について(医療機関等向け注意喚起)」(厚労省) 2) 最新AI攻撃の対策確認を要請 医療機関に厚労省(毎日新聞) 3) 医療機関は最新AI対策の確認を サイバー攻撃悪用で厚労省(東京新聞) 4.直近100日の薬剤情報を表示、ワクチン接種歴も/デジタル庁デジタル庁は、マイナポータルの「薬」のページをリニューアルし、直近100日以内に受け取った薬の情報を確認できるようにした。従来は診療報酬明細書、いわゆるレセプト情報を基にしていたため、反映は前月分までに限られ、実臨床で使うにはタイムラグが大きかった。今回の改善により、電子処方箋に対応する薬局や医療機関で薬を受け取った場合、原則として当日中に情報が表示される。画面には「最近の薬」「最近の処方箋」が新設され、受け取った日付、薬局名、薬剤名、用法・用量が確認できる。政府によると、現在は薬局の89%が電子処方箋に対応している。その一方で、厚生労働省は6月から、ワクチン接種歴や副反応疑い事例を集約する新たな予防接種データベースの運用を始める。対象は公費助成を受けられる定期接種ワクチンで、接種したワクチンの種類や接種日などを市区町村から収集し、2028年春までに全国民の情報を集める計画である。国民はマイナポータルなどを通じて、自身の接種歴を確認できるようになる。6月以降の情報が中心で、5月以前の接種分の提供は任意となる。新データベースは、接種情報に加えて死亡情報、副反応疑い事例、レセプト情報とも連結される予定であり、2028年度から研究者らがワクチンの有効性や安全性、副反応疑い事例の発生頻度を活用し、分析しやすくする。今後、麻しん、風しんなどの流行時には、本人が接種歴を確認し、未接種であれば接種行動につながることも期待されている。医療者にとっては、問診時の服薬歴・接種歴確認の精度向上が見込まれる。救急外来、入院時、周術期、ポリファーマシー対策、ワクチン接種相談などで活用の余地は大きい。ただし、情報の反映範囲や過去接種歴の欠落、患者本人の閲覧・提示への依存といった限界もある。マイナポータル情報を補助線として使いつつ、従来の問診、お薬手帳、紹介状、薬剤師との連携を組み合わせる運用が求められる。 参考 1) 薬の画面で最近の薬や処方せんの情報を確認できるようになりました(デジタル庁) 2) 100日以内に受け取った薬の情報確認 マイナポータル改善、電子処方箋対応なら当日表示(産経新聞) 3) ワクチン接種歴、マイナポータルなどで確認可能に…新DB6月に運用開始・「効果」「副反応」分析にも活用へ(読売新聞) 5.糖尿病薬の個人間取引に警告 X投稿の7割超がマンジャロ/東京都東京都が2025年度、X(旧ツイッター)上で医薬品の不正販売が疑われる投稿に警告した497件のうち、約75%に当たる375件が、2型糖尿病治療薬チルゼパチド(商品名:マンジャロ)など糖尿病薬の取引に関するものだったことがわかった。都は公式アカウント「東京都庁薬務課」から、販売をうたう投稿に対し「医薬品であるマンジャロを許可等なく販売等することは医薬品医療機器等法に違反します。直ちに販売を中止して下さい」とリプライで警告している。マンジャロは2型糖尿病治療薬として承認されている一方で、近年は体重減少効果への関心から、ダイエットや美容目的での使用が広がっている。医療用医薬品を入手するには原則として医師の診察と処方が必要で、個人が許可なく販売する行為は、たとえ1回であっても医薬品医療機器等法に違反する恐れがある。東京都は、フリマサイトやオークションサイト、SNSでの医薬品販売に注意を呼びかけており、改善がない場合はX側に投稿削除を要請している。糖尿病薬をめぐっては、適応外使用や自己判断での使用による健康被害も懸念される。厚生労働省も、添付文書に基づく適切な使用がなされない場合、思わぬ健康被害につながる可能性があるとして注意喚起している。とくにGLP-1受容体作動薬などの使用では、消化器症状、低血糖リスク、既往歴や併用薬への配慮が必要であり、医師の管理を離れた流通は安全性の面で大きな問題となる。都による警告件数は、2023年度は62件、2024年度は78件だったが、2025年度は検索業務を外部委託したことで大幅に増えた。糖尿病薬関連に関して2023・24年度はいずれも2件にとどまっており、今回の急増はマンジャロ人気とSNS上の流通拡大を映している。Xから秘匿性の高い通信アプリ「テレグラム」に誘導するケースも確認されており、都は2026年度からテレグラム上でも警告を始める方針。医療者には、処方時の適正使用説明に加え、患者がSNS経由で医薬品を入手しないよう啓発する役割も求められる。 参考 1) 薬の不正販売疑い投稿、糖尿病薬が7割超 昨年度 都が「X」で確認・警告(日経新聞) 2) 「直ちに販売を中止して下さい」東京都庁薬務課、「マンジャロ」めぐりXで警告 歓迎の声相次ぐ(J-CASTニュース) 6.東京女子医大2歳児死亡事故、ICU責任医に有罪判決/東京地裁東京女子医科大学病院で2014年、手術後の2歳男児に鎮静剤プロポフォールが長時間・高用量で投与され死亡した医療事故を巡り、東京地裁は5月29日、業務上過失致死罪に問われた当時ICUの現場責任者の麻酔科医に禁錮1年6月、執行猶予3年を言い渡した。その一方で、当時後期研修医だった医師については無罪とした。プロポフォールは手術麻酔や鎮静に広く使われるが、添付文書では集中治療における人工呼吸中の小児への投与が禁忌とされている。裁判では、投与と死亡の因果関係、当時の医療水準からみた注意義務違反の有無が争点となった。判決では、医師の裁量で禁忌薬を使用する余地はあり得るとしつつ、本件では「投与量・投与時間が目安を大きく超え、心電図異常も継続していたことから、副作用リスクが高まった段階で投与を中止すべきだった」と認定。「通常の専門医であれば到底行わない高用量、長時間投与」として、責任者の過失を重くみた。その一方で、後期研修医については、当時は専門医資格を持たず、鎮静薬選択を日常的に担う立場ではなかったとして、死亡を具体的に予見できたとは認められないと判断した。判決は、チーム医療において職位、専門性、権限に応じて刑事責任を分けた点でも注目される。医療現場への示唆は大きい。禁忌薬や安全性が十分確認されていない医療行為を行う場合、医学的合理性、家族への説明と同意、リスク監視、投与量・時間の記録、異常時の中止基準を組織として明確化する必要がある。女子医大は事故後、特定機能病院の承認を取り消されており、厚生労働省は2016年、特定機能病院に対し安全性未確立の薬剤使用時の院内審査体制を義務付けた。今回の判決は、個人の裁量に依存せず、病院全体で高リスク医療を管理する体制整備の重要性を改めて示したものといえる。 参考 1) 2歳児死亡、麻酔科医に有罪 元研修医は無罪、東京女子医大(東京新聞) 2) 東京女子医大病院で2歳児死亡 医師1人に無罪判決、もう1人は有罪(朝日新聞) 3) 東京女子医大の2歳児死亡、元准教授に有罪判決 元研修医は無罪(日経新聞) 4) 東京女子医大 鎮静剤投与で2歳児死亡 責任者の医師に有罪判決(NHK)

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「肥満のスティグマ」が気になる患者さん【Dr. 坂根の糖尿病外来NGワード】第48回

■外来NGワード「肥満は自己責任の病気です」(スティグマを助長する発言)「減量できないのは、意志が弱いからです」(意志が弱いと強調)「もっと、努力しないと」(努力不足を責める発言)■解説「スティグマ(stigma)」とは、特定の人や集団に対して否定的な評価や差別的なレッテルを貼ることを指します。語源はギリシャ語の「烙印」に由来します。スティグマは、実際に経験する「経験的スティグマ」と、スティグマに対する恐れである「予期的スティグマ」に大別され、さらに「社会的スティグマ」「罪悪的スティグマ」「自己スティグマ」といった側面があります。社会的スティグマとしては、「採用や昇進で不利に扱われた」「太っているからだらしない」「検査値が悪いのは肥満のせいだ」などと言われることがあります。また、体型について指摘されることを避けるために人前に出ることを控えたり、スポーツジムや医療機関の受診をためらったりする場合があります。罪悪的スティグマとしては、「自己管理ができていないと非難された」「食べ過ぎや運動不足と決めつけられた」「努力不足とみなされた」といった経験が挙げられます。また、生活習慣のせいにされることを懸念して、食事内容を過少に申告することもあります。自己スティグマとしては、「自分は意志が弱くてだめな人間だ」と自己評価を低くしたり、受診や相談をためらったり、「自分は痩せられない」と思い込んだりすることが見られます。これらのスティグマは相互に関連しており、受療行動の抑制や生活習慣改善への動機低下を介して、長期的な健康アウトカムに影響を及ぼす可能性があります。そのため、臨床現場ではスティグマを軽減するための配慮あるコミュニケーションが求められます。■患者さんとの会話でロールプレイ患者先生、この間、ある人から「あなた太っているわね」って言われて…「私、意志が弱くて、だめなんですよね」…(「太っている=自己管理ができていない」と認識)。医師そう感じられる方は多いですね。でも、肥満症は「自己責任」だけではなく、体質・遺伝・ホルモン・心理的ストレスなど、いろんな要因が重なって起こる“病気”の1つなんですよ。患者えっ、そうなんですか? でも周りから「食べすぎ」「運動不足」って言われると、「意志が弱い」って、自分を責めてしまって…。医師なるほど。それが「スティグマ(偏見)」の典型ですね。実際、大半の太っている人が「自分のせい」だと感じているという調査もありますが、肥満症という病気は慢性疾患の1つで、糖尿病や高血圧と同じように適切な診断と治療が必要なんですよ。患者えっ、そうなんですか。肥満症の治療って、薬を飲むことですか?医師場合によってはお薬も使いますが、生活の中でできる範囲から一緒に取り組むのが基本になります。患者なるほど。どんなことに気を付けたらいいですか?医師体重増加は30kcal、もったいないからと、ちょこっとだけ余分なものを食べることから始まります。患者その一口が…ですね。30 kcalというとどのくらいですか?医師クッキー1枚とか、チョコ1かけになりますね。これがその一覧です(表をみせながら説明)。患者そのくらいなら我慢できそうです。医師まずは、余分なものを食べない習慣を取り入れてもらうと、チリも積もれば山となるので、少しずつ体重が減ると思いますよ!患者はい。わかりました。頑張ってやってみます。(うれしそうな顔)何より大切です。■医師へのお勧めの言葉「意志が弱いと思っている方にダイエット法がありますよ!」「体重増加は、もったいないと思って食べる、その1口、30 kcalから始まっています。まずは余分なものを食べないことから始めてみませんか?」

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サラッとStat応用編:プロペンシティスコア解析がワカる【Oncologyインタビュー】第58回

出演岐阜大学泌尿器科学講座 古家 琢也氏京都大学医学統計生物情報学 森田 智視氏医療者にとって臨床統計の解釈は大きな課題である。岐阜大学泌尿器科学講座の古家琢也氏と京都大学医学統計生物情報学の森田智視氏が臨床目線で送る“ワカる”臨床統計解説。

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英語で「憩室炎」、患者に説明するには?【患者と医療者で!使い分け★英単語】第62回

医学用語紹介:憩室炎 diverticulitis「憩室炎」について説明する際、患者さんにdiverticulitis(発音はダイヴァーティキュライティス) と言ってもまず通じないでしょう。この単語は一般の方にはかなりなじみの薄い用語です。では、どのような一般用語で言い換えればよいでしょうか?講師紹介

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ハブクラゲ刺傷、酢がない場合の応急処置は?【中毒診療の初期対応】第8回

<今回の症例>年齢・性別9歳・女児患者情報夏休み中に両親と沖縄旅行に来ていた。沖縄本島北部の海岸の水深80cm程の浅瀬で遊んでいたが、突然大腿部に焼けつくような鋭い痛みを感じて「痛い!」と叫んだ。父親が駆けつけると、女児の近くで半透明かつ白色の立方体状の傘のあるクラゲ(図1)が遊泳していた。急いで、女児を抱き上げて陸地に運ぶと、女児の左右の大腿部に40cm程度の3本の白い触手が絡みついていた。父親はスマートフォンで救急要請し、現場での応急処置の指導を仰いだ。(図1)女児の父親が目撃したクラゲの傘画像を拡大する<問題1><解答はこちら>2. ハブクラゲ<問題2><解答はこちら>3. 触手に酢をかけて剥ぎとるカツオノエボシに遭遇したら…カツオノエボシは日本では夏~秋にかけて本州の太平洋沿岸でよくみられる。成体は気体のつまった長さ10cm程度の青みがかった気胞体(図2)によって海面に浮遊し、その上部にある三角形の出っ張りで帆のように風を受けて移動する。この種はヒドロ虫の仲間で、成長の過程で分化して形態や機能が異なった多くの個体が集まって形成された群体である。気胞体の下面の短い幹から感触体、栄養体、生殖体が垂れ下がっているが、感触体にある刺胞から発射される刺糸を通して毒液を注入する。(図2)カツオノエボシの浮遊体画像を拡大する<問題3><解答はこちら>2. 感触体を海水で洗い落す上條 吉人編. 臨床中毒学 第2版. 医学書院. 2023.

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