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成人ADHDに対するさまざまな治療の有用性比較〜ネットワークメタ解析

 成人の注意欠如多動症(ADHD)に対する利用可能な介入のベネフィットとリスクの比較は、これまで十分に行われていなかった。英国・オックスフォード大学のEdoardo G. Ostinelli氏らは、これらの重要なギャップを解消し、将来のガイドライン作成に役立つ入手可能なエビデンスを包括的に統合するため、システマティックレビューおよびコンポーネントネットワークメタ解析(NMA)を実施した。The Lancet Psychiatry誌2025年1月号の報告。 2023年9月6日までに公表された、成人ADHDに対する薬理学的および非薬理学的介入を調査した発表済みおよび未発表のランダム化比較試験(RCT)を複数のデータベースより検索した。ADHDと診断された18歳以上の成人に対する症状改善を目的とした治療介入群と対照群またはその他の適格な積極的介入群を比較したRCTの集計データを含めた。薬理学的介入は、国際ガイドラインに従い最大計画投与量が適格であると判断された研究のみを対象とした。薬理学的介入は1週間以上、心理学的介入は4セッション以上、神経刺激的介入は適切とみなされる任意の期間であったRCTを分析に含めた。薬物療法、認知機能トレーニング、神経刺激単独療法のRCTについては、二重盲検RCTのみを対象に含めた。2人以上の研究者により、特定された研究を独立してスクリーニングし、適格なRCTよりデータを抽出した。主要アウトカムは、有効性(12週間に最も近い評価時点における自己評価および臨床医評価尺度によるADHDの中核症状の重症度変化)および受容性(すべての原因による治療中止)とした。介入を特定の治療要素に分解し、ペアワイズランダム効果およびコンポーネントNMAを使用して、標準化平均差(SMD)およびオッズ比(OR)を推定しました。研究および執筆には、成人ADHDの実体験を有する人が関与した。 主な結果は以下のとおり。・3万2,416件の研究のうち、113件のRCT、1万4,887例(女性:6,787例[45.6%]、男性:7,638例[51.3%]、性別不明:462例[3.1%])を分析対象に含めた。・113件のRCTには、薬理学的介入63件(55.8%、参加者:6,875例)、心理学的介入28件(24.8%、1,116例)、神経刺激的介入およびニューロフィードバック10件(8.8%、194例)、対照群97件(85.8%、5,770例)が含まれた。・12週時点でのADHD中核症状の軽減は、自己評価および臨床医評価の両方において、アトモキセチンと神経刺激薬が、プラセボよりも高い有効性を示した(NMAの信頼性[CINeMA]:非常に低い〜中程度)。【アトモキセチン】自己評価尺度SMD:−0.38(95%CI:−0.56〜−0.21)、臨床医評価尺度SMD:−0.51(95%CI:−0.64〜−0.37)【神経刺激薬】自己評価尺度SMD:−0.39(95%CI:−0.52〜−0.26)、臨床医評価尺度SMD:−0.61(95%CI:−0.71〜−0.51)・認知行動療法、認知機能改善療法、マインドフルネス認知療法、心理教育、経頭蓋直流電気刺激法は、臨床医評価尺度のみでプラセボよりも優れていた。【認知行動療法】臨床医評価尺度SMD:−0.76(95%CI:−1.26〜−0.26)【認知機能改善療法】臨床医評価尺度SMD:−1.35(95%CI:−2.42〜−0.27)【マインドフルネス認知療法】臨床医評価尺度SMD:−0.79(95%CI:−1.26〜−0.29)【心理教育】臨床医評価尺度SMD:−0.77(95%CI:−1.35〜−0.18)【経頭蓋直流電気刺激法】臨床医評価尺度SMD:−0.78(95%CI:−1.13〜−0.43)・許容性に関しては、アトモキセチンとグアンファシン以外は、プラセボと同等であった。【アトモキセチン】OR:1.43、95%CI:1.14〜1.80、CINeMA:中程度【グアンファシン】OR:3.70、95%CI:1.22〜11.19、CINeMA:高い・受容性は、プラセボよりも低かった。・自己評価によるADHD中核症状のベースライン重症度、公表年、男性の割合、ADHDと他の精神疾患を併発している患者の割合は、自己評価によるADHD中核症状の未調整非構成要素モデルで観察された異質性を説明できなかった。・治療期間の異質性には、ほとんど影響を及ぼさなかった。 著者らは「短期的に成人ADHD患者の中核症状を軽減する点で、神経刺激薬およびアトモキセチンによる薬理学的介入は、自己評価および臨床医評価の両方においてその有効性が裏付けられた。しかし、アトモキセチンは、プラセボよりも許容性が不良であった」とし「ADHD治療薬は、QOLなどの追加の関連アウトカムに対し効果が実証されておらず、長期的なエビデンスは不十分である。また、非薬理学的介入の効果は、評価者により一貫性が認められていない」としている。

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日本における遺伝子パネル検査、悪性黒色腫の治療到達割合は6%

 悪性黒色腫(メラノーマ)は、アジア諸国では欧米に比べてまれな疾患であり、前向き臨床試験による検証が難しい状況がある。日本において、包括的がんゲノムプロファイリング検査(CGP)を使用して悪性黒色腫患者の遺伝子変異と転帰を解明することを目的とした後ろ向き研究が行われた。北海道大学の野口 卓郎氏らによる本研究の結果は、JCO Precision Oncology誌2025年1月9日号に掲載された。 研究者らは、標準治療が終了(完了見込みも含む)し、保険適用となるCGPを受けた悪性黒色腫患者のデータをがんゲノム情報管理センター(C-CAT)から得て、結果を分析した。 主な結果は以下のとおり。・2020年10月~2023年5月に、C-CATに登録された569例の悪性黒色腫患者が対象となった。遺伝子パネル検査の種類はFoundationOneCDxが84%、FoundationOne Liquid CDxが6%、OncoGuide NCCオンコパネルシステムが9.7%で、それぞれ324、324、137遺伝子が解析対象となった。・悪性黒色腫の発生部位は皮膚悪性黒色腫が64%、粘膜悪性黒色腫が28%、ブドウ膜悪性黒色腫が7%だった。・遺伝子変異で多かったものはBRAFが25%、NRASが20%、NF1が17%、KITが17%だった。BRAFの82%、NRASの97%、NF1の69%、KITの54%が特定の薬剤で対応可能な変異だった。・BRAF V600E/K変異は皮膚の22%、粘膜の2%で発生したが、ブドウ膜では発生しなかった。皮膚悪性黒色腫における平均腫瘍負荷は4.2variants/Mbだった。・BRAF V600E/K変異体を有する患者のうち、16例は検体採取前にBRAF/MEK阻害薬による治療を受けている一方で、66例は受けていなかった。以前にBRAF標的療法で治療を受けた患者は、治療を受けていない患者よりも頻繁にBRAFおよび細胞周期遺伝子の増幅を示した。・Molecular Tumor Board(MTB:がんゲノム医療カンファレンス)は全体の3分の1の患者に治療の推奨を行ったが、実際に推奨された治療を受けた患者は36例(6%)だった。36例中29例は詳細な治療情報が得られ、10人は米国食品医薬品局(FDA)承認薬以外の治療を受けていた。 研究者らは「BRAF、NRAS、NF1、KITにおける遺伝子変化は、日本人の悪性黒色腫患者によく見られるが、推奨に従って治療を受けた患者は少なかった。日本においては承認薬、もしくは臨床試験における治療薬へのアクセスを容易にすることが求められている」とした。

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BRAF V600E変異mCRC、1次治療のエンコラフェニブ+セツキシマブが有用(BREAKWATER)

 前治療歴のあるBRAF V600E変異型の転移大腸がん(mCRC)に対して、BRAF阻害薬・エンコラフェニブと抗EGFRモノクローナル抗体・セツキシマブの併用療法(EC療法)はBEACON試験の結果に基づき有用性が確認され、本邦でも承認されている。一方、BRAF V600E変異mCRCに対する1次化学療法の有効性は限定的であることが示されており、1次治療としてのEC療法の有用性を検証する、第III相BREAKWATER試験が計画・実施された。 1月23~25日、米国・サンフランシスコで行われた米国臨床腫瘍学会消化器がんシンポジウム(ASCO-GI 2025)では、米国・テキサス大学MDアンダーソンがんセンターのScott Kopetz氏が本試験の解析結果を発表し、Nature Medicine誌オンライン版2025年1月25日号に同時掲載された。・試験デザイン:国際共同第III相無作為化比較試験・対象:未治療のBRAF V600E変異mCRC、ECOG 0~1・試験群:EC群:エンコラフェニブ+セツキシマブEC+mFOLFOX6群:エンコラフェニブ+セツキシマブ+mFOLFOX6(オキサリプラチン、ロイコボリン、5-FU)・対照群:標準化学療法(SOC)群:CAPOX or FOLFOXIRI or mFOLFOX6±ベバシズマブ・評価項目:[主要評価項目]無増悪生存期間(PFS)、奏効率(ORR)[副次評価項目]全生存期間(OS)、奏効期間(DOR)、安全性など※試験中にプロトコルが変更され、EC+mFOLFOX6群とSOC群を比較する試験デザインとなった。今回はORRの1次解析、OSの暫定的解析が報告され、PFSをはじめとするほかの評価項目は解析中で、後日報告される予定だ。 主な結果は以下のとおり。・2021年11月16日~2023年12月22日にEC+mFOLFOX6群に236例、SOC群243例が割り付けられた。治療期間中央値はEC+mFOLFOX6群で28.1週間、SOC群で20.4週間であり、データカットオフ(2023年12月22日)時点でEC+mFOLFOX6群は137例、SOC群は82例が治療継続中だった。・ORRはEC+mFOLFOX6群60.9%、SOC群40.0%だった(オッズ比:2.44、95%信頼区間[CI]:1.40~4.25、p=0.0008)。奏効期間中央値は13.9ヵ月対11.1ヵ月であった。設定されたすべてのサブグループにおいて同様の結果が認められた。DORが6ヵ月または12ヵ月を超える患者の割合は、EC+mFOLFOX6群ではSOC群の約2倍だった。・OSデータは未成熟であったが、EC+mFOLFOX6群が優位な傾向が見られた。・重篤な有害事象の発現率は、37.7%と34.6%であった。安全性プロファイルは既知のものと同様であった。 研究者らは、「本試験では、BRAF V600E変異を有するmCRC患者を対象に、1次治療としてのEC+mFOLFOX6併用療法がSOC療法と比較して、有意に高い奏効率を示し、その奏効が持続することが示された」とした。なお、2024年12月、米国食品医薬品局(FDA)は、本試験の結果に基づき、エンコラフェニブとセツキシマブの併用療法をBRAF V600E変異を有するmCRCの1次治療として迅速承認している。

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重大な副作用にアナフィラキシー追加、アルギニン含有製剤など/厚労省

 2025年1月29日、厚生労働省はアルギニン含有注射剤などに対して、添付文書の改訂指示を発出した。副作用の項に重大な副作用としてアナフィラキシーの追記がなされる。 対象医薬品は以下のとおり。◯プラスアミノ輸液(混合アミノ酸・ブドウ糖製剤)◯ツインパル輸液(混合アミノ酸・ブドウ糖・無機塩類製剤)◯ビーフリード輸液(その他の配合剤)◯アルギU点滴静注(一般名:L-アルギニン塩酸塩)◯アルギニン点滴静注(同) 今回、アルギニン含有注射剤についてアナフィラキシー関連症例を評価して専門委員の意見も聴取した結果、アナフィラキシーとの因果関係が否定できない症例が集積した品目について、使用上の注意を改訂することが適切と判断された。 また、検討の過程で、アルギニンのみを有効成分とし、添加剤を含まない注射剤投与後のアナフィラキシー関連症例の集積を踏まえ、アルギニンによるアナフィラキシー発現の可能性に関して専門委員及び関連学会の意見を聴取したところ、アルギニンがマスト細胞を直接刺激しヒスタミンなどの化学伝達物質を遊離させる可能性1)の指摘があったことから、調査対象はアルギニン含有注射剤のうち、「副作用」の重大な副作用の項にアナフィラキシーの記載がない品目とした。しかしながら、その後の専門協議において、マスト細胞を直接刺激する機序については仮説に過ぎないとの意見があったこと、高浸透圧製剤の静脈内投与に起因する可能性があること、アルギニンは体内で生合成されるアミノ酸であることから、現時点でアルギニンそのものによりアナフィラキシーが発現し得るかは明確でないと判断し、アルギニン含有注射剤を一律に措置対象とするのではなく、措置の要否については、各品目の副作用症例の評価を基に検討された。 なお、他の品目については、専門協議にてアナフィラキシーとの因果関係が否定できないと評価された症例があるものの、集積が少なくかつこれらの症例ではアナフィラキシー発現の原因として併用薬等も考えられることから、集積がない品目も含め、現時点では使用上の注意の改訂は不要と判断されたが、アルギニンを添加剤として含有する注射剤についても、上記と同様に、添付文書の記載状況を踏まえた上で、必要に応じてアナフィラキシー関連症例の確認・評価を実施するとしている。

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「プレハビリテーション」は有効か?~メタ解析/BMJ

 運動、栄養ならびに運動を含む多要素的な手術前のリハビリテーション(プレハビリテーション)は、手術を受ける成人患者に有用で、ネットワークメタ解析およびコンポーネントネットワークメタ解析において一貫した意味のある効果推定値が得られたことを、カナダ・オタワ大学のDaniel I. McIsaac氏らが報告した。著者は、「これらプレハビリテーションを臨床ケアにおいて考慮すべきであることが示唆された。一方で、プレハビリテーションの有効性をより確実にするためには、優先度の高いアウトカムに関して適切な検出力のあるバイアスリスクが低い多施設共同試験が必要である」とまとめている。BMJ誌2025年1月22日号掲載の報告。無作為化比較試験のネットワークおよびコンポーネントネットワークメタ解析を実施 研究グループは、手術を受けた成人患者の術後合併症、入院期間、健康関連QOLおよび身体回復に及ぼす相対的な有効性を推定する目的で、無作為化比較試験のシステマティックレビューとネットワークメタ解析およびコンポーネントネットワークメタ解析を行った。 Medline、Embase、PsycINFO、CINAHL、Cochrane Library、Web of Scienceを2022年3月1日に検索し、2023年10月25日に再検索して対象研究を特定した。対象研究の選択基準は、待機的手術を受ける18歳以上の成人を対象にプレハビリテーション群と対照(通常ケア、標準ケア)群を比較した無作為化試験で、重要なアウトカムを報告しているものとし、術前のリスク因子管理(禁煙、貧血治療など)を単独で評価した研究や、プレハビリテーションの期間が7日未満の研究などは除外した。 評価者2人がそれぞれ対象研究を特定し、1人がデータ抽出を、他の1人が検証を行った後、研究リーダー1人と他の評価者1人がコクランバイアスリスクツールを用いてバイアスリスクを評価した。 治療レベルでの各アウトカムに関するエビデンスの確実性は、CINeMA(Confidence in Network Meta-Analysis)を用いて評価した。多要素介入は、合併症、入院期間、健康関連QOL、術後の身体的回復を改善 186件の無作為化比較試験(被験者計1万5,684例)が解析対象となった。 ランダム効果ネットワークメタ解析の結果、通常ケアと比較して以下のプレハビリテーションは合併症を減少させる可能性が高かった。・運動単独(オッズ比:0.50[95%信頼区間[CI]:0.39~0.64]、エビデンスの確実性:非常に低い)・栄養単独(0.62[0.50~0.77]、非常に低い)・運動+栄養+心理社会的ケアの併用(0.64[0.45~0.92]、非常に低い) また、次のプレハビリテーションは、通常ケアと比較して入院期間を短縮する可能性が高かった。・運動+心理社会的ケアの併用(-2.44日[95%CI:-3.85~-1.04]、非常に低い)・運動+栄養の併用(-1.22日[-2.54~0.10]、中程度)・運動単独(-0.93日[-1.27~-0.58]、非常に低い)・栄養単独(-0.99日[-1.49~-0.48]、非常に低い) 健康関連QOLおよび身体的回復の改善に有効だったのは、運動+栄養+心理社会的ケアの併用で、Short Form(SF)-36 の身体項目スコアの平均群間差は3.48(95%CI:0.82~6.14、エビデンスの確実性:非常に低い)、6分間歩行テストでの距離の平均群間差は43.43m(95%CI:5.96~80.91、エビデンスの確実性:非常に低い)であった。 コンポーネントネットワークメタ解析の結果、運動と栄養はすべての重要なアウトカムを改善する可能性が最も高かった。すべてのアウトカムに関するすべての比較のエビデンスの確実性は、試験レベルのバイアスリスクと不正確さのため、一般的に低いまたは非常に低いであったが、バイアスリスクが高い試験を除外した場合、運動と栄養のプレハビリテーションの有効性の確実性は高かった。

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心筋線維化を伴う無症候性重症AS、早期介入の効果は?/JAMA

 心筋線維化を伴う無症候性重症大動脈弁狭窄症(AS)患者において、早期の大動脈弁置換術による介入は標準的な管理と比較し、全死因死亡またはASに関連した予定外の入院の複合アウトカムに関して、明らかな有効性は認められなかった。英国・エディンバラ大学のKrithika Loganath氏らが、英国およびオーストラリアの心臓センター24施設で実施した前向き非盲検無作為化エンドポイント盲検化試験「Early Valve Replacement Guided by Biomarkers of Left Ventricular Decompensation in Asymptomatic Patients with Severe Aortic Stenosis trial:EVOLVED試験」の結果を報告した。AS患者では、左室代償不全に先立って心筋線維化が進行し、長期的な予後不良につながる。早期介入は、AS関連の臨床イベントリスクが高い患者において潜在的な利点が示唆されていた。著者は、「本試験では主要エンドポイントの95%信頼区間(CI)が広く、今回の結果を確認するにはさらなる研究が必要である」とまとめている。JAMA誌2025年1月21日号掲載の報告。経カテーテルまたは外科的大動脈弁置換術の早期介入と保存的管理を比較 研究グループは、2017年8月4日~2022年10月31日に、18歳以上の無症候性重症AS患者をスクリーニングし、高感度トロポニンI値が6ng/L以上または心電図で左室肥大が認められた場合に心臓MRIを行い、心筋線維化が確認された患者を、経カテーテルまたは外科的大動脈弁置換術を行う早期介入群と、ガイドラインに従った保存的管理を行う対照群に1対1の割合で無作為に割り付けた。最終追跡調査日は2024年7月26日であった。 主要アウトカムは、全死因死亡またはASに関連した予定外の入院(ASに起因する失神、心不全、胸痛、心室性不整脈、房室ブロック2度または3度を伴う)の複合とし、初回イベント発生までの時間についてITT解析を行った。副次アウトカムは、主要アウトカムの各イベント、12ヵ月時の症状(NYHA心機能分類による評価)などを含む9項目であった。複合アウトカムに両群で有意差なし 当初は356例の登録が計画されていたが、COVID-19の流行期に英国政府の指示に従い患者登録は5ヵ月間中断され、流行後も進まなかった。別の新たな2件の無作為化試験の結果から必要イベント件数が35件と推定されたことから、患者登録は早期に中止となった。 解析対象は224例(早期介入群113例、対照群111例)で、患者背景は平均(±SD)年齢73±9歳、女性63例(28%)、平均大動脈弁最大血流速度は4.3±0.5m/秒であった。 主要アウトカムのイベントは、早期介入群で113例中20例(18%)、対照群で111例中25例(23%)に発生した。ハザード比(HR)は0.79(95%CI:0.44~1.43、p=0.44)、群間差は-4.82%(95%CI:-15.31~5.66)であり、有意差は認められなかった。 副次アウトカムは、9項目中7項目で有意差が示されなかった。全死因死亡は、早期介入群で16例(14%)、対照群で14例(13%)に発生した(HR:1.22、95%CI:0.59~2.51)。ASに関連した予定外の入院は、それぞれ7例(6%)および19例(17%)確認された(0.37、0.16~0.88)。また、早期介入群は対照群と比較して、12ヵ月時のNYHA心機能分類II~IVの症状を有する患者の割合が低かった(21例[19.7%]vs.39例[37.9%]、オッズ比:0.37、95%CI:0.20~0.70)。

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血液検査でワクチン効果の持続期間が予測できる?

 幼少期に受けた予防接種が、麻疹(はしか)や流行性耳下腺炎(おたふくかぜ)から、われわれの身を守り続けている一方、インフルエンザワクチンは、毎年接種する必要がある。このように、あるワクチンが数十年にわたり抗体を産生するように免疫機能を誘導する一方で、他のワクチンは数カ月しか効果が持続しない理由については、免疫学の大きな謎とされてきた。米スタンフォード大学医学部の微生物学・免疫学教授で主任研究員のBali Pulendran氏らの最新の研究により、その理由の一端が解明され、ワクチン効果の持続期間を予測できる血液検査の可能性が示唆された。 Pulendran氏は同大学が発表したニュースリリースで、「われわれの研究では、ワクチン接種後数日以内に現れる特徴的な分子パターンを特定することにより、ワクチン反応の持続期間を予測できる可能性が示唆された」と述べている。同氏らの研究結果は、「Nature Immunology」に1月2日掲載された。研究グループの説明によると、ワクチン効果の持続性は血液凝固に関与する巨核球と呼ばれる血小板の前駆細胞と密接な関係があることが示されたという。 この研究では、H5N1型鳥インフルエンザワクチンを接種した健常なボランティア50人を対象に追跡調査を行った。ワクチン接種後100日間の間に血液サンプルを12回採取し、各被験者の免疫反応に関連する全ての遺伝子、タンパク質、抗体を解析した。 その結果、ワクチンの接種から数カ月後の抗体反応の強さと、血小板に含まれる巨核球由来のRNA小片の量に正の相関があることが示された。血小板は、骨髄に存在する巨核球から分離された後、血流に乗って全身に運ばれる。この過程で、血小板中には巨核球由来のRNAの一部が含まれる。 研究グループはさらに、巨核球がワクチン効果の持続性に関係していることを証明するため、実験用マウスに鳥インフルエンザワクチンとトロンボポエチン(TPO)を投与した。TPOには骨髄内の活性化した巨核球の数を増やす働きがある。その結果、TPOを投与したマウスでは、2カ月以内に鳥インフルエンザに対する抗体産生量が6倍に増加したことが確認された。追加の研究で、巨核球が、抗体産生を担う骨髄細胞の生存を助ける物質を生成していることも判明した。 研究グループは、また、季節性インフルエンザ、黄熱病、マラリア、新型コロナウイルス感染症(COVID-19)など7種類の感染症に対するワクチンを接種した244人のデータを収集解析した。その結果、いずれのワクチンにおいても、巨核球活性化の兆候が抗体産生期間の延長と関連していることが示された。 この結果は、巨核球の活性化を評価することで、どのワクチンの効果がより長く持続するか、またどのワクチン接種者がより長期にわたり免疫反応を持続できるかを予測できる可能性を示している。研究グループは、ワクチンによる巨核球の活性化レベルの違いを解明するため、さらなる研究を予定しているという。その研究から得られる知見は、より効果的で長期間効果が持続するワクチンの開発に貢献する可能性がある。 Pulendran氏は、「巨核球の活性化をターゲットとした簡易なPCR検査法が開発されれば、追加接種が必要な時期が予測できるため、個々人に個別化されたワクチン接種スケジュールを立てることも可能になるのではないか」と述べている。また、同氏はワクチン効果の持続期間は多くの複雑な要因に影響される可能性が高く、巨核球の役割はその全体像を構成する一部分にすぎないのではないかと付言している。

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“医者”になりたいです【Dr. 中島の 新・徒然草】(565)

五百六十五の段 “医者”になりたいです2025年になったばかりというのに、もう1月も終わろうとしています。何とまあ月日の経つのは早いですね。さて、私はよくYouTubeで評論家の岡田 斗司夫氏のしゃべっているのを聴いています。その岡田氏が先日「おたくの王様論」というチャンネルで面白いことを言っていました。動画のタイトルは「【岡田斗司夫と医者】※患者を救いたいと思えない..昔いじめてたやつが急患で運ばれてきた..医者の僕と高卒の彼女..【切り抜き】」という長いもの。YouTubeのタイトル画面には「患者に言えない医者の本音」とあったのでドキッとしつつ、つい聴いてしまいました。その動画の中で岡田 斗司夫氏に質問してきたのは卒後10年弱の内科医。質問者は「医学に対する知的好奇心から医学部を志し、今でも医学の勉強が楽しくて仕方がない」という立派な先生です。ところが「患者にはまったく興味がなく『患者を救いたい』という気持ちになったことがありません」というのがこの先生の悩み。とはいえ、診療に手を抜くことはなく、転勤に伴って追いかけてくる患者さんやお手紙を送ってくる人が何人もいるというくらい患者満足度の高い人です。しかし、いくら患者さんに感謝されても、やりがいや幸福感はないのだとか。そして周囲の熱意あふれるお医者さんたちをうらやましく思い、「『患者を救いたい』という、医師として当たり前の感情を抱くのに、なにか方法はありますでしょうか。“医者”になりたいです」という悩みを持っているとのことでした。これに対して岡田 斗司夫氏はいろいろと回答しているわけですが、複雑過ぎて何を言っているのか、私にはよく理解できませんでした。さて、もし私がこの先生にアドバイスするなら……今さら「患者を救いたい」という感情を持つ必要なんかない、というのが回答になりますね。自分が患者だったら、むしろこういう医師に診てもらいたいです。この先生の医学や診療に対する熱意というのは、たとえてみれば精巧なプラモデルを作るみたいなものではないでしょうか。「救いたい」という動機でも「精巧なプラモデルを完成させたい」という動機でも、患者さんにとっては同じことです。むしろ「救いたい」よりも「完璧に遂行したい」という動機のほうが、仕事に没頭できるはず。この先生、せっかく一生懸命にやって結果も良く、患者さんにも感謝されているのですから、それで十分です。「救いたい」などという邪心が入ってしまったら、むしろ結果が悪くなったりしないかな。ただ、僭越ながら一つだけアドバイスさせていただくなら……目の前の疾患にベストの治療を行うのは1つの目標ではありますが、その患者さんの人生を可能なかぎり満足感のあるものにする、というのも、もう1つの目標だと思います。この第1の目標と第2の目標に対する診療はほぼ一致するわけですが、いつも一致するわけではありません。われわれ医師が悩まされるのは、そういう時ですね。「“医者”になりたいです」などという邪念にとらわれる暇があったら、そのエネルギーをこういった悩みの解決に使ったほうがいいのでは?読者の皆さまもそれぞれに思うところがあることでしょう。私自身もいろいろと考えさせられた悩み相談でした。最後に1句若者の 邪心を払う 睦月かな

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Austrian症候群【1分間で学べる感染症】第20回

画像を拡大するTake home messageAustrian症候群は、肺炎球菌による肺炎、髄膜炎、感染性心内膜炎の3つがそろった症候群。とくに脾臓摘出後の患者を中心に液性免疫低下患者では、脾臓摘出後重症感染症(overwhelming postsplenectomy infection:OPSI)と呼ばれる致死率の高い重症感染症を引き起こすことがある。皆さんは、Austrian症候群という言葉を聞いたことがありますか。Austrian症候群は、肺炎球菌(Streptococcus pneumoniae)を原因菌とする肺炎、髄膜炎、感染性心内膜炎の3つが、同時または短期間に発生することを特徴とする疾患です。疾患名を覚えることは必須ではありませんが、肺炎球菌による感染症はこれまで取り上げた感染症の中でも頻度が高い感染症であり、肺炎球菌は世界的にも重要な菌の1つです。今回は、Austrian症候群を入口として、肺炎球菌感染症について学んでいきます。背景Austrian症候群はRichard Heschlがドイツで最初に提唱したとの記述がありますが、正式には1881年にWilliam Oslerによって「Osler's triad(オスラーの3徴)」として報告されました。そして、1957年にRobert Austrianが詳細な臨床報告を発表したことから、その名を取ってAustrian症候群という疾患名で広く認知されています。リスク因子肺炎球菌は、市中肺炎や細菌性髄膜炎、さらに菌血症の原因菌として最も頻度が高い病原体の1つです。リスク因子を持つ患者では、通常よりも侵襲性感染症に進行する可能性が高くなります。具体的には、アルコール多飲、高齢、脾摘後や脾機能低下、免疫抑制(HIV感染者や化学療法中の患者など)が主なリスク因子として挙げられます。臨床症状近年では、Austrian症候群の「オスラーの3徴」がすべてそろうことはまれですが、3つの中で最も頻度の高い肺炎球菌による肺炎患者において、頭痛、発熱、意識障害、項部硬直など髄膜炎を疑う症状を合併する、心雑音、塞栓症状、持続的菌血症などを伴い感染性心内膜炎を疑う所見を合併する、といった場合には、血液培養のみならず髄液検査、心エコー検査(とくに経食道エコー)など、それぞれの診断のための精査を進めることが求められます。治療法、予防Austrian症候群は致死率が高いため、迅速な治療が求められます。臨床的に髄膜炎を疑った段階では、抗菌薬の髄液移行性とペニシリン耐性肺炎球菌の可能性を考慮し、セフトリアキソンとバンコマイシンの併用療法をただちに開始します。とくに脾摘後患者を中心に液性免疫低下患者では、致死率が高い脾臓摘出後重症感染症を引き起こすことがあります。こうしたリスクのある患者に対しては、肺炎球菌感染症の予防のために、積極的な肺炎球菌ワクチン接種やペニシリンの予防内服が推奨されます。1)AUSTRIAN R. AMA Arch Intern Med. 1957;99:539-544.2)Rakocevic R, et al. Cureus. 2019;11:e4486.3)Rubin LG, et al. N Engl J Med. 2014;371:349-356.

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“添付文書に従わない経過観察”の責任は?【医療訴訟の争点】第8回

症例薬剤の添付文書には、使用上の注意や重大な副作用に関する記載があり、副作用にたりうる特定の症状が疑われた場合の処置についての記載がされている。今回は、添付文書に記載の症状が「疑われた」といえるか、添付文書に記載の対応がなされなかった場合の責任等が争われた京都地裁令和3年2月17日判決を紹介する。<登場人物>患者29歳・女性妊娠中、発作性夜間ヘモグロビン尿症(発作性夜間血色素尿症:PNH)の治療のためにエクリズマブ(商品名:ソリリス)投与中。原告患者の夫と子被告総合病院(大学病院)事案の概要は以下の通りである。平成28年(2016年)1月妊娠時にPNHが増悪する可能性を指摘されていたため、被告病院での周産期管理を希望し、被告病院産科を受診。4月4日被告病院血液内科にて、PNHの治療(溶血抑制等)のため、エクリズマブの投与開始(8月22日まで、薬剤による副作用はみられず)7月31日出産のため、被告病院に入院(~8月6日)8月22日午前被告病院血液内科でエクリズマブの投与を受け、帰宅昼過ぎ悪寒、頭痛が発生16時55分本件患者は、被告病院産科に電話し、午前中にエクリズマブの投与を受け、その後、急激な悪寒があり、39.5℃の高熱があること、風邪の症状はないこと等を伝えた。電話対応した助産師は、感冒症状もなく、乳房由来の熱発が考えられるとし、本件患者に対し、乳腺炎と考えられるので、今晩しっかりと授乳をし、明日の朝になっても解熱せず乳房トラブルが出現しているようであれば、電話連絡をするよう指示した。21時18分本件患者の母は、被告病院産科に電話し、熱が40℃から少し下がったものの、悪寒があり、発汗が著明で、起き上がれないため水分摂取ができず脱水であること、手のしびれがあること、体がつらいため授乳ができないこと等を伝えた。21時55分被告病院産科の救急外来を受診し、A医師が診察。診察時、血圧は95/62 mmHgであり、SpO2は98%、脈拍は115回/分、体温は36.3℃(17時に解熱鎮痛剤服用)、項部硬直及びjolt accentuation(頭を左右に振った際の頭痛増悪)はいずれも陰性であった。22時45分乳腺炎は否定的であること、エクリズマブの副作用の可能性があること等から、被告病院血液内科に引き継がれ、B医師が診察した。診察時、本件患者の意識状態に問題はなく、意思疎通可能、移動には介助が必要であるものの短い距離であれば介助なしで歩行可能であった。血液検査(22時15分採血分)上、白血球、好中球、血小板はいずれも基準値内であった。23時30分頃経過観察のため入院となった。8月23日4時25分本件患者の全身に紫斑が出現、血圧67/46mmHg、血小板数3,000/μLとなり、敗血症性ショックと播種性血管内凝固症候群(DIC)の病態に陥った。抗菌薬(タゾバクタム・ピペラシリン[商品名:ゾシンほか])が開始された。10時43分敗血症性ショックとDICからの多臓器不全により、死亡。8月24日本件患者の細菌培養検査の結果が判明し、血液培養から髄膜炎菌が同定された。8月29日薬剤感受性検査の結果、ペニシリン系薬剤に感受性あることが判明した。実際の裁判結果本件では、(1)エクリズマブの副作用につき血液内科の医師が産科の医師に周知すべき義務違反、(2)8月22日夕方に電話対応した助産師の受診指示義務違反、(3)8月22日夜の救急外来受診時の投薬義務違反等が争われた。本稿では、このうちの(3)救急外来受診時の投薬義務違反について取り上げる。本件で問題となったエクリズマブの添付文書には、以下のように記載されている。※注:以下の内容は本件事故当時のものであり、2024年9月に第7版へ改訂されている。「重大な副作用」「髄膜炎菌感染症を誘発することがあるので、投与に際しては同感染症の初期徴候(発熱、頭痛、項部硬直、羞明、精神状態の変化、痙攣、悪心・嘔吐、紫斑、点状出血等)の観察を十分に行い、髄膜炎菌感染症が疑われた場合には、直ちに診察し、抗菌薬の投与等の適切な処置を行う(海外において、死亡に至った重篤な髄膜炎菌感染症が認められている。)。」「使用上の注意」「投与により髄膜炎菌感染症を発症することがあり、海外では死亡例も認められているため、投与に際しては、髄膜炎菌感染症の初期徴候(発熱、頭痛、項部硬直等)に注意して観察を十分に行い、髄膜炎菌感染症が疑われた場合には、直ちに診察し、抗菌剤の投与等の適切な処置を行う。髄膜炎菌感染症は、致命的な経過をたどることがある」この「疑われた場合」の解釈につき、患者側は、「疑われた場合」は「否定できない場合」とほぼ同義であり、症状からみて髄膜炎菌感染症の可能性がある場合には「疑われた場合」に当たる旨主張した。対して、被告病院側は、「疑われた場合」に当たると言えるためには、「否定できない場合」との対比において、「積極的に疑われた場合」あるいは「強く疑われた場合」であることが必要である旨を主張した。このため、添付文書に記載の「疑われた場合」がどのような場合を指すのかが問題となった。裁判所は、添付文書の上記記載の趣旨が、エクリズマブは髄膜炎菌を始めとする感染症を発症しやすくなるという副作用を有し、髄膜炎菌感染症には急速に悪化し致死的な経過をたどる重篤な例が発生しているため、死亡の結果を回避するためのものであることを指摘し、以下の判断を示した(=患者側の主張を積極的に採用するものではないが、被告病院側の主張を排斥した)。積極的に疑われた場合または強く疑われる場合に限定して理解することは、その趣旨に整合するものではない少なくとも、強くはないが相応に疑われる場合(相応の可能性がある場合。他の鑑別すべき複数の疾患とともに検討の俎上にあがり、鑑別診断の対象となり得る場合)を含めて理解する必要がある添付文書の警告の趣旨・理由を強調すると、可能性が低い場合かほとんどゼロに近い場合(単なる除外診断の対象となるにすぎない場合)を含めて理解する余地があるその上で、裁判所は、以下の点を指摘し、本件は添付文書にいう「疑われた場合」にあたるとした。『入院診療計画書』には、「細菌感染や髄膜炎が強く疑われる状況となれば、速やかに抗生剤を投与する」ために入院措置をとった旨が記載されており、担当医は、髄膜炎菌感染症を含む細菌感染の可能性について積極的に疑っていなくとも、相応の疑いないし懸念をもっていたと解されること(CRPや白血球の数値が低い点はウイルス感染の可能性と整合する部分があるものの)ウイルス感染であれば上気道や気管の炎症を伴うことが多いのに、本件でその症状がなかった点は、これを否定する方向に働く事情であり、ウイルス感染の可能性が高いと判断できる状況ではなかったといえること(CRPや白血球の数値が低いことは細菌感染の可能性を否定する方向に働き得る事情ではあるものの)細菌感染の場合、CRPは発症から6~8時間後に反応が現れるといわれており、それまではその値が低いからといって細菌感染の可能性がないとは判断できず、疑いを否定する根拠になるものではないこと。同様に、白血球の数値も重度感染症の場合には減少することもあるとされており、同じく細菌感染の疑いを否定する根拠になるものではないことそして、裁判所は「細菌感染の可能性を疑いながら速やかに抗菌薬を投与せず、また、(省略)…細菌感染の可能性について疑いを抱かなかったために速やかに抗菌薬を投与しなかったといえるから、いずれにしても速やかに抗菌薬を投与すべき注意義務に違反する過失があったというべき」として、被告病院担当医の過失を認めた。この点、被告病院は「すぐに抗菌薬を投与するか経過観察をするかは、いずれもあり得る選択であり、いずれかが正しいというものではない」として医師の裁量である旨を主張したが、裁判所は、以下のとおり判示し、添付文書に従わないことを正当化する合理的根拠とならないとした。「あえて添付文書と異なる経過観察という選択が裁量として許容されるというためには、それを基礎づける合理的根拠がなければならないところ、細菌感染症でない場合に抗菌薬を投与するリスクとして、抗菌薬投与が無駄な治療になるおそれ、アレルギー反応のリスク、肝臓及び腎臓の障害を生じるリスク、炎症の原因判断が困難になるリスクが考えられるが、これらのリスクは、髄膜炎菌感染症を発症していた場合に抗菌薬を投与しなければ致死的な経過をたどるリスクと比較すると、はるかに小さいといえるから、添付文書に従わないことを正当化する合理的根拠となるものではない」注意ポイント解説本件では、添付文書において「髄膜炎菌感染症が疑われた場合には、直ちに診察し、抗菌薬の投与等の適切な処置を行う」となっているところ、抗菌薬の投与等がなされないまま経過観察となっていた。そのため、「疑われた場合」にあたるのか、あたるとして経過観察としたことが医師の裁量として許容されるのかが問題となった。添付文書の記載の解釈について判断が示された比較的新しい裁判例である上、添付文書でもよく目にする「疑われた場合」に関する解釈を示した裁判例として注目される。「疑われた場合」の判断において本判決は、その記載の趣旨が、エクリズマブは髄膜炎菌を始めとする感染症を発症しやすくなる副作用を有し、髄膜炎菌感染症は急速に悪化し致死的な経過をたどる例があり、そのような結果を避けるためであることを理由とする。そのため、本判決の判断が、他の薬剤の添付文書の解釈でも同様に妥当するとは限らない。とくに、可能性が低い場合かほとんどゼロに近い場合(単なる除外診断の対象となるに過ぎない場合)を含めて理解する余地があるかについては、生じうる事態の軽重によりケースバイケースで判断されることとなると考えられる。しかしながら、一定の悪しき事態が生じうることを念頭に添付文書の記載がなされていることからすると、添付文書に「疑われた場合」とある場合は、強くはないが相応に疑われる場合(相応の可能性がある場合。他の鑑別すべき複数の疾患とともに検討の俎上にあがり、鑑別診断の対象となり得る場合)を含めるものとされる可能性が高いと認識しておくことが無難である。また、本判決は、添付文書と異なる対応をすることが医師の裁量として許容されるかについて、生じうるリスクの重大性を比較しており、生じ得るリスクの重大性の比較が考慮要素の一つとして斟酌されることが示されており参考になる。もっとも、添付文書の記載に従ったほうが重大な結果が生じるリスクが高い、という事態はそれほど多くはないと思われるうえ、そのような重大な事態が生じるリスクが高いことを立証することは容易ではないと考えられる。このため、前回(第7回:造影剤アナフィラキシーの責任は?)にコメントしたように、添付文書の記載と異なる使用による責任が回避できるとすれば、それは必要性とリスク等を患者にきちんと説明して同意を得ている場合がほとんどと考えられる(ただし、医師の行ったリスク説明が誤っている場合には、患者の同意があったとして免責されない可能性がある)。なお、本件薬剤の投与にあたり、患者に「患者安全性カード」(感染症に対する抵抗力が弱くなっている可能性があり、感染症が疑われる場合は緊急に診療し必要に応じて抗菌剤治療を行う必要がある旨が記載されたもの)が交付されており、診療にあたりすべての医師に示すように伝えられていたものの、このカードが示されなかったという事情がある。しかし、裁判所は、患者からは本件薬剤の投与を受けている旨の申告がされており、このカードの記載内容は添付文書にも記載されているとして、患者からカードの提示がなかったことが医師の判断を誤らせたという関係にはないとしている。医療者の視点本判決の焦点は、添付文書の記載の解釈でした。しかし、一臨床医としてより重要と考えた点は、「普段使用することが少ない薬剤であっても、しっかりと添付文書を確認し、副作用や留意点に目を通しておく必要がある」ということです。本件においても、関係した医療者がエクリズマブという比較的新しい薬剤の副作用を熟知していれば、あるいは処方した医師や薬剤師から情報共有がなされていれば、このような事態は回避できたかもしれません。エクリズマブの適応疾患は非常に限られており、使用経験のある医師は少ないと考えられます。たとえそのような稀にしか使用されることがない薬剤であっても、その副作用を熟知しておかなければならない、という教訓を示した案件と考えました。昨今は目まぐるしい速度で新薬が発表されています。常に知識・情報をアップデートしていないと、本件のようなトラブルを引き起こしかねません。多忙な勤務の中、各科の学会誌やガイドラインを熟読することは困難です。医療系のウェブサイトやSNSなどを有効的に活用し、効率よく情報を刷新していくことも重要と考えます。Take home message普段使用することが少ない薬剤であっても、その副作用や留意点を熟知しておく必要がある。添付文書に「疑われた場合」とある場合は、強くはないが相応に疑われる場合(相応の可能性がある場合。他の鑑別すべき複数の疾患とともに検討の俎上にあがり、鑑別診断の対象となり得る場合)を含めるものとされる可能性が高い。副作用と疑われる症状が発症した場合、副作用であることを念頭に添付文書の推奨に従って対応することが望ましく、もし添付文書と異なる対応をする場合、患者や家族に十分な説明を行う必要がある。キーワード添付文書(能書)の記載事項と過失との関係最高裁平成8年1月23日判決が、以下のように判断しており、これが裁判上の確立した判断枠組みとなっているため、添付文書の記載と異なる対応の正当化には医学的な裏付けの立証が必要であり、それができない場合には過失があるものとされる。「医薬品の添付文書(能書)の記載事項は、当該医薬品の危険性(副作用等)につき最も高度な情報を有している製造業者又は輸入販売業者が、投与を受ける患者の安全を確保するために、これを使用する医師等に対して必要な情報を提供する目的で記載するものであるから、医師が医薬品を使用するに当たって右文書に記載された使用上の注意事項に従わず、それによって医療事故が発生した場合には、これに従わなかったことにつき特段の合理的理由がない限り、当該医師の過失が推定されるものというべきである」

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映画「クワイエットルームにようこそ」(その3)【実はこれが医療保護入院を廃止できない諸悪の根源だったの!?(扶養義務)】Part 1

今回のキーワード家族の権利家族の義務保守政党扶養義務者扶養義務の呪縛扶養圧力前回(その2)は、医療保護入院制度の問題点を明らかにして、強制入院ビジネスの不都合な真実に迫りました。これだけ問題点が明らかなのですから、今後にこの制度の廃止は容易でしょうか? 現実は、まだ厳しいです。どういうことでしょうか?今回(その3)は、映画「クワイエットルームにようこそ」を通して、逆に医療保護入院が必要とされてしまう現実的な理由を明らかにします。そして、医療保護入院が廃止できない諸悪の根源を突き止めます。逆になんで医療保護入院制度は必要とされてしまうの?まず、医療保護入院が必要とされてしまう現実的な理由を、家族、社会、国の3つ立場から迫ってみましょう。(1)権利として必要だと家族が思っているからその2でも触れましたが、母親と絶縁していた明日香のように、関係が希薄になっている家族は増えています。一方で、関係が希薄になっていない家族はいまだに多いです。たとえば、「ブルジョア部屋」(一泊2万円)に5年間入院しているサエちゃんがそうでした。このような家族は、とくに親子関係において、子供は成人しても親の言うことを聞くべきであり、困ったら親を頼るべきであると考えます。つまり、親は子供を良くも悪くも、「子供扱い」し続けます。そして、その子供に問題が起きたら、親が解決すべきであると考えます。1つ目の理由は、家族(親)が自分に責任があり、権利として必要だと思っているからです。わかりやすく言うなら、子供は親の「体の一部」です。よって、強制入院させるかどうかを決めるのは親の権利である、だからこそ強制入院に家族の同意を得るのは当然と考えます。そして、入院費を支払うのも当然の義務と考えます。まるで、自分のことを決めるかのように、子供の強制入院に介入します。だから、退院についても、家族が慎重になれば、その意向が反映され、長期化してしまうのです。逆に、医療保護入院制度が廃止されたら、どうなるでしょうか? たとえば、映画に登場していた摂食障害の患者たちのほとんどは、入院できなくなります。入院するとしても、身体的な危機を脱するのが主な目的となり、欧米並みの短期間になるでしょう。すると、たいていは同居して、家族が家で抱え込むことになります。「子供は親の言うことを聞く」はずなのに、もちろん摂食については言うことを聞きません。親は、「手に負えない」と思い、結局家族が困るという事態を招きます。ちなみに、昨今は、成人したひきこもりの子供に手を焼いた親が、「引き出し屋」(民間救急会社)に依頼して、精神科病院に「発達障害」の診断で医療保護入院させるケースもあるようです1)。次のページへ >>

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